(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】PUFAsのマグネシウム塩およびそれを含有する組成物の生成プロセス
(51)【国際特許分類】
C11C 1/04 20060101AFI20230315BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20230315BHJP
【FI】
C11C1/04
A23L33/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545440
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 CA2021050095
(87)【国際公開番号】W WO2021151200
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521163477
【氏名又は名称】シリサイクル インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】シアオウェイ ウー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ メロン
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア カーペンティア
(72)【発明者】
【氏名】シャビエル ピジョン
【テーマコード(参考)】
4B018
4H059
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD03
4B018MD10
4B018MD11
4B018MD12
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4H059AA02
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4H059BC03
4H059BC06
4H059CA32
4H059CA38
4H059CA74
(57)【要約】
本開示は、1つ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs:polyunsaturated fatty acids)のマグネシウム塩、その調製プロセス、および1つ以上のPUFAのマグネシウム塩と少なくとも1つの安定性エンハンサーとを含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)のマグネシウム塩を生成するためのプロセスであって、
1)PUFAトリグリセリドを含む脂肪または油を、アルコール、水およびアルカリ塩基を含むアルコール溶液中で、約0℃超から前記アルコールの沸点付近までの間における温度(ただし約80℃未満)で混合するステップであって、
前記アルコールに対する前記水の比は、約0.5:99.5~約10:90(v/v)であり、
前記アルコール溶液に対する前記アルカリ塩基の比は、約1:15(w/w)~約1:30(w/w)であり、
前記溶媒に対する前記脂肪または油の比は、約1:3(w/w)~約1:6(w/w)であり、
PUFAアルカリ金属塩および沈殿固体を含むアルコール溶液を準備する、
混合するステップと、
2)前記PUFAアルカリ塩を含む前記アルコール溶液から前記沈殿固体を除去するステップであって、
随意に、前記沈殿固体を有機溶媒で洗浄して、前記PUFAアルカリ塩を含む有機溶液を準備し、また、前記PUFAアルカリ塩を含む前記アルコール溶液と、前記PUFAアルカリ塩を含む前記有機溶液とを組み合わせる、除去するステップと、
3)前記アルコール溶液、または前記組み合わせたアルコール溶液および有機溶液から揮発性物質を蒸発させて、濃縮濾液を準備するステップと、並びに
4)一定量の水溶性マグネシウム塩と前記濃縮濾液とを水中で混合するステップであって、前記マグネシウム塩の量は、1つ以上のPUFAsの前記マグネシウム塩を準備するために、pHを約9未満の値に下げるのに十分な量である、混合するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記PUFAsは、オメガ-3 PUFAsおよびオメガ-6 PUFAsのうちの少なくとも一方を含む、プロセス。
【請求項3】
請求項2に記載のプロセスにおいて、前記オメガ-3 PUFAsは、ドコサヘキサエン酸(C22:6(n-3))(DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5(n-3))(EPA)およびα-リノレン酸(C18:3(n-3))(ALA)のうちの少なくとも1つを含む、プロセス。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプロセスにおいて、前記オメガ-3 PUFAsは、さらに、エイコサトリエン酸(C20:3(n-3))(ETE)、エイコサテトラエン酸(C20:4(n-3))(ETA)、ヘンエイコサペンタエン酸(C21:5(n-3))(HPA)、ドコサペンタエン酸(C22:5(n-3)(DPA)、テトラコサペンタエン酸(C24:5(n-3))、およびテトラコサヘキサエン酸(C24:6(n-3))のうち少なくとも1つを含む、プロセス。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記オメガ-6 PUFAsは、リノール酸(C18:2(n-6))およびアラキドン酸(C20:4(n-6))のうちの少なくとも一方を含む、プロセス。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記オメガ-6 PUFAsは、さらに、エイコサジエン酸(C20:2(n-6))、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3(n-6))(DGLA)、ドコサジエン酸(C22:2(n-6))、アドレン酸(C22:4(n-6))、ドコサペンタエン酸(C22:5(n-6))、テトラコサテトラエン酸(C24:4(n-6)、およびテトラコサペンタエン酸(C24:5(n-6))のうちの少なくとも1つを含む、プロセス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記PUFAsは、脂肪または油に含まれる、プロセス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記アルカリ塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、または炭酸ナトリウムである、プロセス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記4)のステップで、前記水溶性マグネシウム塩が前記溶液中に添加されて、約8~約9の範囲のpHを準備する、プロセス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記水溶性マグネシウム塩は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、オロチン酸マグネシウム、L-トレオン酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせである、プロセス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記油または脂肪は、マグロ油またはアザラシ油である、プロセス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記油は、トリグリセリドの総量に対して、22.9~23.3%のDHAおよび7.1~7.5%のEPA wt/wtを含むマグロ油トリグリセリドである、プロセス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記油は、トリグリセリドの総量に対して、23.1%のDHAおよび7.3%のEPA wt/wtを含むマグロ油トリグリセリドである、プロセス。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記油は、トリグリセリドの総量に対して、7.0~10%のDHA、7~10%のEPAおよび3~5%のDPA wt/wtを含むアザラシ油トリグリセリドである、プロセス。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記油は、トリグリセリドの総量に対して、8.2%のDHA、7.0%のEPAおよび4.2%のDPA wt/wtを含むアザラシ油トリグリセリドである、プロセス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、前記アルコール溶液は、エタノールおよびメタノールのうちの少なくとも一方を含む、プロセス。
【請求項17】
1つ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)のマグネシウム塩と、少なくとも1つの安定性エンハンサーと、を含む組成物であって、
前記組成物は、約20~25℃の温度で固体形態であり、
前記組成物は、該組成物の総重量に対して、1つ以上のPUFAsの前記マグネシウム塩を30%~60%(w/w)含む、
組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物において、前記PUFAsは、オメガ-3 PUFAおよびオメガ-6 PUFAのうちの少なくとも一方を含む、組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物において、前記オメガ-3 PUFAsは、ドコサヘキサエン酸(C22:6(n-3))(DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5(n-3))(EPA)およびα-リノレン酸(C18:3(n-3))(ALA)のうちの少なくとも1つを含む、組成物。
【請求項20】
請求項18または19に記載の組成物において、前記オメガ-3 PUFAsは、さらに、エイコサトリエン酸(C20:3(n-3))(ETE)、エイコサテトラエン酸(C20:4(n-3))(ETA)、ヘンエイコサペンタエン酸(C21:5(n-3))(HPA)、ドコサペンタエン酸(C22:5(n-3)(DPA)、テトラコサペンタエン酸(C24:5(n-3))、およびテトラコサヘキサエン酸(C24:6(n-3))の少なくとも1つを含む、組成物。
【請求項21】
請求項18~20のいずれか一項に記載の組成物において、前記オメガ-6 PUFAsは、リノール酸(C18:2(n-6))およびアラキドン酸(C20:4(n-6))のうちの少なくとも一方を含む、組成物。
【請求項22】
請求項18~21のいずれか一項に記載の組成物において、前記オメガ-6 PUFAsは、さらに、エイコサジエン酸(C20:2(n-6))、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3(n-6))(DGLA)、ドコサジエン酸(C22:2(n-6))、アドレン酸(C22:4(n-6))、ドコサペンタエン酸(C22:5(n-6))、テトラコサテトラエン酸(C24:4(n-6)、およびテトラコサペンタエン酸(C24:5(n-6))のうちの少なくとも1つを含む、組成物。
【請求項23】
請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、請求項17~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
1つ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)のマグネシウム塩と、少なくとも1つの安定性エンハンサーと、を含む組成物の生成方法であって、
A)請求項1に記載のプロセスを実施することによって、1つ以上のPUFAsの固体マグネシウム塩を準備するステップと、
B)前記PUFAsのマグネシウム塩および少なくとも1つの安定性エンハンサーを分散性有機溶媒中に分散させて、分散物を得るステップと、並びに
C)前記分散性有機溶媒を前記分散物から除去して、流動性の貯蔵安定性粉末を得るステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、前記安定性エンハンサーは、トコフェロール、ポリアミン、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE、ローズマリー抽出物、カルノシン酸、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである、方法。
【請求項26】
請求項24または25に記載の方法において、前記分散性有機溶媒は、アセトニトリルまたはプロピオニトリルである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs:polyunsaturated fatty acids)のマグネシウム塩、その調製プロセス、ならびに1つ以上の前記PUFAsのマグネシウム塩および少なくとも1つの安定性エンハンサー(stability enhancer)を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オメガ-3(ω-3)およびオメガ-6(ω-6)を含む多価不飽和脂肪酸(PUFAs)は、30年前に人間の栄養および病気の予防に有益な効果があることが認識されて以来、多くの注目を集めてきた。それにもかかわらず、PUFAsの1日あたりの平均食物摂取量は不十分であり、人口の食事パターンおよびPUFAsの豊富な食物性脂質の利用可能性などの様々な理由により、ほとんどの人口で推奨される0.65gという1日摂取量をはるかに下回っている。したがって、PUFAsの食物による補給は、通常、トリアシルグリセロール(TAG)型、エチルエステル(EE)型、遊離酸型(FFA)の3つの形態で存在する、一般的に用いられる食物中の脂質の代替品に取って代わられる。FFA型およびTAG型のPUFAの生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)は、EE型のPUFAsよりも優れていることが実証されている。さらに、FFA型のPUFAは、膵臓リパーゼへの依存がないこと、およびTAGのグリセロールの骨格の複雑な脂肪酸プロファイルに起因して、TAG型よりも利点を有する。
【0003】
コレステロールおよび他の飽和脂肪酸の摂取量の増加のみならず、ビタミンの過剰摂取のリスクを減らしながら、所望の利益をもたらすための適切な用量のPUFAsを摂取する手段を見つけることが望まれる。海産油(marine oils)由来のPUFAの濃縮形態が調査され、また、吸着クロマトグラフィー、分別蒸留または分子蒸留、酵素分解、脱ろう、超臨界流体抽出、および尿素錯体形成などの数種の技術が開発されてきた。それらの中で大規模な生産に適しているのはごくわずかである。脱ろうは、所定の温度で特定の溶媒中のPUFAsを富化(enrich)するための伝統的かつ簡易な方法として広く利用されており、通常は:カテゴリ1)FFA型またはEE型のPUFAが、低温結晶化によって濃縮される;カテゴリ2)金属塩(EPAなど)としての1つのPUFAが、脂肪酸由来の他成分(DHAおよびDPAなど)の存在下で低温結晶化によって選択的に濃縮される;という2つのカテゴリに分類される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様は、1つ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)のマグネシウム塩と、少なくとも1つの安定性エンハンサーと、を含む組成物であって、前記組成物は約20~25℃の温度で固体形態であり、かつ、前記組成物は、該組成物の総重量に対して、1つ以上のPUFAsの前記マグネシウム塩を30%~60%(w/w)含む、組成物に関する。
【0005】
さらなる態様は、1つ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)のマグネシウム塩を生成するためのプロセスであって、1)PUFAトリグリセリドを含む脂肪または油を、アルコール、水およびアルカリ塩基を含むアルコール溶液中で、約0℃超から前記アルコールの沸点付近までの間における温度(ただし約80℃未満)で混合するステップであって、前記アルコールに対する前記水の比は、約0.5:99.5~約10:90(v/v)であり、前記アルコール溶液に対する前記アルカリ塩基の比は、約1:15(w/w)~約1:30(w/w)であり、前記溶媒に対する前記脂肪または油の比は、約1:3(w/w)~約1:6(w/w)であり、PUFAアルカリ金属塩および沈殿固体を含むアルコール溶液を提供する、該混合するステップと、2)前記PUFAアルカリ塩を含むアルコール溶液から沈殿固体を除去するステップであって、随意に、前記沈殿固体を有機溶媒で洗浄して、前記PUFAアルカリ塩を含む有機溶液を準備し、また、前記PUFAアルカリ塩を含む前記アルコール溶液と、前記PUFAアルカリ塩を含む前記有機溶液とを組み合わせる(combining)、該除去するステップと、3)前記アルコール溶液、または前記組み合わせたアルコール溶液および有機溶液から揮発性物質を蒸発させて、濃縮濾液を準備するステップと、並びに4)一定量の水溶性マグネシウム塩と前記濃縮濾液とを水中で混合するステップであって、前記マグネシウム塩の量は、1つ以上のPUFAsの前記マグネシウム塩を準備するために、pHを約9未満の値に下げるのに十分な量である、該混合するステップと、を含む、プロセスに関する。
【0006】
さらに別の態様は、1つ以上の多価不飽和脂肪酸(PUFAs)のマグネシウム塩と、少なくとも1つの安定性エンハンサーと、を含む組成物の生成方法であって、A)本明細書で定義されるプロセスを実施することによって、1つ以上のPUFAsの固体マグネシウム塩を準備するステップと、B)PUFAsのマグネシウム塩および少なくとも1つの安定性エンハンサーを分散性有機溶媒中に分散させて、分散物を得るステップと、並びにC)分散性有機溶媒を分散物から除去して、流動性の貯蔵安定性粉末を得るステップと、を含む、方法に関する。
【0007】
一実施形態において、PUFAsは、オメガ-3 PUFAsおよびオメガ-6 PUFAsのうちの少なくとも一方を含む。
【0008】
別の実施形態において、オメガ-3 PUFAsは、ドコサヘキサエン酸(C22:6(n-3))(DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5(n-3))(EPA)およびα-リノレン酸(C18:3(n-3))(ALA)のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
さらなる実施形態において、オメガ-3 PUFAsは、さらに、エイコサトリエン酸(C20:3(n-3))(ETE)、エイコサテトラエン酸(C20:4(n-3))(ETA)、ヘンエイコサペンタエン酸(C21:5(n-3))(HPA)、ドコサペンタエン酸(C22:5(n-3)(DPA)、テトラコサペンタエン酸(C24:5(n-3))、テトラコサヘキサエン酸(C24:6(n-3))の少なくとも1つを含む。
【0010】
さらなる実施形態において、オメガ-6 PUFAsは、リノール酸(C18:2(n-6))およびアラキドン酸(C20:4(n-6))のうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
さらなる実施形態において、オメガ-6 PUFAsは、さらに、エイコサジエン酸(C20:2(n-6))、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3(n-6))(DGLA)、ドコサジエン酸(C22:2(n-6))、アドレン酸(C22:4(n-6))、ドコサペンタエン酸(C22:5(n-6))、テトラコサテトラエン酸(C24:4(n-6)、およびテトラコサペンタエン酸(C24:5(n-6))のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
一実施形態において、PUFAsは、脂肪または油に含まれる。
【0013】
別の実施形態において、アルカリ塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、または炭酸ナトリウムである。
【0014】
さらなる実施形態において、本明細書に包含される方法は、ステップ4)において、水溶性マグネシウム塩が溶液中に添加されて、約8~約9の範囲のpHを準備するステップを含む。
【0015】
別の実施形態において、水溶性マグネシウム塩は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、オロチン酸マグネシウム、L-トレオン酸マグネシウム、またはそれらの組み合わせである。
【0016】
別の実施形態において、油または脂肪は、マグロ油またはアザラシ油である。
【0017】
補足的な実施形態において、油は、トリグリセリドの総量に対して、22.9~23.3%のDHAおよび7.1~7.5%のEPA wt/wtを含むマグロ油トリグリセリドである。
【0018】
一実施形態において、油は、トリグリセリドの総量に対して、23.1%のDHAおよび7.3%のEPA wt/wtを含むマグロ油トリグリセリドである。
【0019】
さらなる実施形態において、油は、トリグリセリドの総量に対して、7.0~10%のDHA、7~10%のEPAおよび3~5%のDPA wt/wtを含むアザラシ油トリグリセリドである。
【0020】
別の実施形態において、油は、トリグリセリドの総量に対して、8.2%のDHA、7.0%のEPAおよび4.2%のDPA wt/wtを含むアザラシ油トリグリセリドである。
【0021】
一実施形態において、アルコール溶液は、エタノールおよびメタノールのうちの少なくとも一方を含む。
【0022】
本明細書に記載のプロセスによって得られる組成物も包含される。
【0023】
別の実施形態において、安定性エンハンサーは、トコフェロール、ポリアミン、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE、ローズマリー抽出物、カルノシン酸、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである。
【0024】
さらなる実施形態において、分散性有機溶媒は、アセトニトリルまたはプロピオニトリルである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で使用される「多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid)」すなわち「PUFA」という用語は、それらの炭素骨格に2つ以上のエチレン性炭素-炭素二重結合を含有する脂肪酸化合物を意味する。PUFAsの2つの主要なクラスは、オメガ-3 PUFAsおよびオメガ-6 PUFAsであり、PUFAsの化学構造における最後の二重結合の位置によって特徴付けられる。
【0026】
オメガ-3 PUFAsは、最後の二重結合の位置を指し、オメガ-3では、二重結合は「オメガ」、すなわち分子鎖の末端から3番目および4番目の炭素原子の間にある。
【0027】
最も重要な3つのオメガ-3 PUFAはドコサヘキサエン酸(DHA)で、22個の炭素およびメチル末端から3番目の炭素から始まる6個の二重結合を有し、(C22:6 n-3)と表され、エイコサペンタエン酸(EPA)は(20:5 n-3)と表され、および、α-リノレン酸(ALA)は(C18:3 n-3)と表される。
【0028】
その他のオメガ-3 PUFAsとしては、エイコサトリエン酸(ETE)(C20:3(n-3))、エイコサテトラエン酸(ETA)(C20:4(n-3))、ヘネイコサペンタエン酸(HPA)(C21:5(n-3))、ドコサペンタエン酸(イワシ酸(Clupanodonic acid)) (DPA)(C22:5(n-3))、テトラコサペンタエン酸(C24:5(n-3))、および、テトラコサヘキサエン酸(ニシン酸)(C24:6(n-3))が挙げられる。
【0029】
オメガ-6 PUFAsは、オメガ6位と呼ばれる部分に末端二重結合を有し、これは、最後の二重結合が脂肪酸分子のオメガ末端から6番目の炭素に存在することを意味する。
【0030】
オメガ-6 PUFAsのうち、リノール酸(C18:2(n-6))およびアラキドン酸(C20:4(n-6))は、2つの主要なオメガ-6である。
【0031】
その他のオメガ-6 PUFAsとしては、エイコサジエン酸(C20:2(n-6))、ジホモ-γ-リノレン酸(DGLA)(C20:3(n-6))、ドコサジエン酸(C22:2(n-6))、アドレン酸(C22:4(n-6))、ドコサペンタエン酸(オスボンド酸)(C22:5(n-6))、テトラコサテトラエン酸(C24:4(n-6))、およびテトラコサペンタエン酸(C24:5(n-6))が挙げられる。
【0032】
本明細書で使用される「脂肪(fat)」および/または「油(oil)」という用語は、本明細書に記載の組成物および方法での使用に適したレベルのPUFAsを含有する任意の脂肪および/または油を指す。脂肪または油中に存在するPUFAエステルは、アルキルエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、またはそれらの混合物として存在する。ジグリセリドまたはトリグリセリドの場合、グリセロール単位は随意にリン誘導体を有することがあり得る(したがって、脂肪および/または油はリン脂質であるか、リン脂質を含有することができる)。
【0033】
本明細書で使用される「安定性エンハンサー(stability enhancer)」という用語は、PUFAsのマグネシウム塩を含む組成物の安定性および貯蔵寿命を長引かせる、食品または薬剤組成物に対する使用に許容された薬剤を意味する。安定性エンハンサーは、過酸化物価(PV)、アニシジン価(AV)および/または当技術分野で知られているTotox値によって評価されるように、また本明細書にも規定されているように、安定性および貯蔵寿命の増加を付与するのに有効な量であるべきであることが理解される。PVまたはAVの少なくとも1つの数値の減少は、元の大きさに依存する、すなわち、数百単位の非常に大きな値が、1処理で20単位の値に減少し得る。規制値の25に近いAV値(例えば、20~50)は、油が由来である種および添加される安定性エンハンサーの量に応じて、約1~5の値に減少し得る。約3~10のPV値は、油が由来である種および添加される安定性エンハンサーの量に応じて、約0.1~2に減少し得る。PV値が検出限界を下回る場合もあった。
【0034】
本明細書で使用される「アルカリ塩基(alkali base)」は、アルコール水溶液に実質的に完全に溶解し、トリグリセリドのグリセロールと脂肪酸との間のエステル結合を加水分解(けん化)できる適切な塩基を指す。アルカリ塩基は、例えばこれらに限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムおよび炭酸ナトリウムなどの水酸化アルカリであり得る。
【0035】
PUFAのマグネシウム塩を分散させるために本明細書で使用される「分散性有機溶媒(dispersive organic solvent)」という用語は、PUFAsのマグネシウム塩を溶解しない(または少なくとも実質的に、もしくは収率に実質的な悪影響を与える量では溶解しない)任意の有機溶媒を指す。本明細書に包含されるように、そのような分散性有機溶媒の例は、アセトニトリルおよびプロピオニトリルである。
【0036】
一態様では、PUFAのマグネシウム塩と、ポリアミンおよび/またはビタミンE、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ローズマリー抽出物およびカルノシン酸などの少なくとも1つの安定性エンハンサーと、を含む組成物が提供される。
【0037】
一実施形態において、組成物は栄養補助食品として使用される。
【0038】
一実施形態において、組成物は、該組成物の重量に対する重量パーセント基準で、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、30~60の間、35~60の間、または40~60の間の量で1つ以上のPUFAの前記マグネシウム塩を含む。マグネシウムは分子量が小さい(すなわち、650に対して24.305であり、約4%の変動である)ため、マグネシウム-PUFAのパーセンテージはPUFAのパーセンテージと同様であるべきであることを理解されたい。
【0039】
二酸化ケイ素、水酸化マグネシウム、シクロデキストリン、およびデンプンなどの任意の許容される固体食品添加物もこの組成物に導入することができる。
【0040】
一実施形態において、分散性有機溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリルまたはブチロニトリルである。
【0041】
一実施形態において、組成物は、精油以外の少なくとも1つの安定性エンハンサーを、好ましくは少なくとも約500ppm、少なくとも約1000ppm、少なくとも約1500ppm、少なくとも約2000ppm、少なくとも約3000ppm、少なくとも約4000ppm、約500~約4000ppmの間、約1000~約3000ppmの間の濃度で含む。
【0042】
一実施形態において、安定性エンハンサーは、トコフェロール、ポリアミン、およびパルミチン酸アスコルビルのうちの少なくとも1つである。他のエンハンサーとしては、ポリアミンおよび/またはビタミンE、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ローズマリー抽出物、およびカルノシン酸を含む。
【0043】
一実施形態において、組成物は、トコフェロールを少なくとも約500ppm、少なくとも約1000ppm、少なくとも約1500ppm、少なくとも約2000ppm、少なくとも約3000ppmの濃度で含む。
【0044】
一実施形態において、組成物は、ポリアミンを少なくとも約500ppm、少なくとも約1000ppm、少なくとも約1500ppm、少なくとも約2000ppm、少なくとも約3000ppmの濃度で含む。
【0045】
一実施形態において、組成物は、トコフェロール、ポリアミン、およびパルミチン酸アスコルビルを含み、トコフェロールは、少なくとも約1000ppm、少なくとも約1400ppm、約1000ppm~約2000ppmの間、または約1400ppm~約1600ppmの間の濃度であり、ポリアミンは、少なくとも約250ppm、少なくとも約400ppm、約250ppm~約750ppmの間、または約400ppm~約600ppmの間の濃度であり、パルミチン酸アスコルビルは、少なくとも約1000ppm、少なくとも約1400ppm、約1000ppm~約2000ppmの間、または約1400ppm~約1600ppmの間の濃度である。
【0046】
一態様では、PUFAsのマグネシウム塩の生成プロセスが提供される。
【0047】
PUFAsのマグネシウム金属塩は、脂肪および/または油から飽和および一価不飽和遊離酸のアルカリ塩を除去し、次いで、富化されたPUFAsのアルカリ塩に対してメタセシス反応を行うことによるプロセスで得られる。一実施形態において、本明細書に記載のプロセスはワンステッププロセスである。
【0048】
該プロセスは、飽和脂肪酸(SFA)、一価不飽和脂肪酸(MUFA)、およびPUFAsの金属塩の異なる溶解度を利用することによる鹸(けん)化を含む。
【0049】
上記のように、一態様は、PUFAのマグネシウム塩を生成するにプロセスに関する。
【0050】
一実施形態において、最初のステップは攪拌されながら実施される。
【0051】
一実施形態において、洗浄は、脂肪酸金属塩の溶解度が最も低い有機溶媒または溶媒の混合物を最小量にして行う最適なリンシング(すすぎ)によって実施される。任意の有機溶媒を使用できるが、有機溶媒はQ3Cガイダンスにリストされているクラス3であることが好ましく、酢酸エチルおよびエタノールが好ましい。
【0052】
一実施形態において、プロセスは、溶液を濃縮するステップ、および水を添加するステップをさらに含む。
【0053】
一実施形態において、pHが約9未満、約8~約9の間、約8.3~約8.7の間の範囲になるまで、水溶性マグネシウム塩が溶液に加えられる。一実施形態において、水溶性マグネシウム塩は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、オロト酸マグネシウム、L-トレオン酸マグネシウム、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0054】
一実施形態において、油または脂質はマグロ油および/またはアザラシ油である。
【0055】
一実施形態において、プロセスは大気圧下で行われる。
【0056】
一実施形態において、プロセスは、不活性ガスの有無にかかわらず行うことができる。
【0057】
一実施形態において、油は、トリグリセリドの総量に対して、22.9~23.3%のDHAおよび7.1~7.5%のEPA、例えば23.1%のDHAおよび7.3%のEPA wt/wtを含むマグロ油トリグリセリドである。
【0058】
一実施形態において、油は、トリグリセリドの総量に対して、7.0~10%のDHA、7~10%のEPAおよび3~5%のDPA、例えば8.2%のDHA、7.0%のEPAおよび4.2%のDPA wt/wtを含むアザラシ油トリグリセリドである。
【0059】
一実施形態において、アルカリ塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムのうちの少なくとも1つである。
【0060】
脂肪または油に相当するアルカリ塩基の正確な化学量論は、様々な魚油の分子量が不明確であるため、すべての脂肪および油について決定することは不可能である。脂肪または油の起源はそれぞれ異なり、トリグリセリド、ジグリセリド、およびモノグリセリドの様々な割合など、異なる種の割合を含有し得る。ただし、すべてのグリセリドは炭素長がC14~C24の脂肪酸に完全に加水分解されるため、炭素鎖の平均長の有用な推定値はC19である。したがって、本明細書に包含されるように、分子量307g/molを使用して、鹸化に使用されるアルカリ塩基の量を推定することができる。過剰量のアルカリ塩基を使用して、完全な加水分解を確実にする。
【0061】
一実施形態において、アルコール溶液は、水対エタノールの比率が約0.5:99.5~約10:90(v/v)、または約2:98~約5:95(v/v)の範囲であるエタノールを含み、薄層クロマトグラフィー(TLC)または当技術分野で知られている任意の他の方法により、最終生成物中に検出可能なエステル形態(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドおよびエタノールエステル)がすべて存在しないことによって証明されるような、完全な鹸化を確実にする。
【0062】
さらなる実施形態において、エタノールに対する水の比率は、約5:95(v/v)である。
【0063】
一実施形態において、アルコール溶液は、水対メタノールの比率が約0.5:99.5~約10:90(v/v)、または約2:98~約5:95(v/v)の範囲であるメタノールを含み、薄層クロマトグラフィー(TLC)または当技術分野で知られている任意の他の方法によって、最終生成物中に検出可能なエステル形態(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドおよびエステル)がすべて存在しないことによって証明されるような、完全な鹸化を確実にする。
【0064】
一実施形態において、けん化は、約80℃未満、約60℃未満、約0℃~約80℃の間、約20℃~約50℃の間の任意の温度で行われる。好ましい実施形態において、鹸化は室温(すなわち、約20~25℃の間)で行われる。
【0065】
一実施形態において、形成された固体は、SFAsおよびMUFAsを含む。
【0066】
一実施形態において、形成された固体は、デカンテーション、濾過、圧縮、遠心分離、クロマトグラフィーなどを含む、固体から液体を分離するための当業者に知られている任意の物理的手段によって溶液から分離され得る。
【0067】
一実施形態において、水不溶性脂肪酸マグネシウム塩の沈殿物を形成するために、溶液を任意にリンスすることができ、十分な量の金属イオンからなる水溶性マグネシウム塩溶液を添加する前に、溶媒を除去または部分的に除去することができる。
【0068】
過剰量の水溶性マグネシウム塩を使用して、マグネシウム塩としてPUFAs濃縮物の形成を完全に行うことを確実にする。例えば、1モルの脂肪酸を沈殿させるのに必要なマグネシウム塩の量は0.5モルである。一実施形態において、0.52~2.0当量が添加される。
【0069】
上記のように、PUFAのマグネシウム塩と少なくとも1つの安定性エンハンサーとを含む組成物が提供される。
【0070】
一実施形態において、PUFAsのマグネシウム塩が、それらの溶媒から分離されることが包含される。さらなる実施形態において、分離は、デカンテーション、濾過、圧縮、遠心分離、クロマトグラフィーなどを含む、固体から液体を分離するための当業者に知られている任意の物理的手段によって実施される。
【0071】
一実施形態において、真空乾燥などによるさらなる乾燥ステップが包含される。
【0072】
一実施形態において、分散性有機溶媒はアセトニトリルである。
【0073】
一実施形態において、少なくとも1つの安定性エンハンサーは、トコフェロール、ポリアミンまたはパルミチン酸アスコルビルのうちの1つである。
【0074】
一実施形態において、方法は、使用する装置の特性に応じて、0℃~70℃の減圧下で微粉末を生成するステップをさらに含む。
【0075】
得られた組成物の酸化状態は、過酸化物価(PV)、アニシジン価(AV)およびTotox値によって定量化され得る。PVは、生成物中の一次酸化生成物(primary oxidation products)(脂質ヒドロペルオキシド)のレベルの尺度であり、サンプル1kgあたりのミリ当量O2で規定され、一方、AVは飽和および不飽和カルボニル化合物の非特異的な尺度である。Totox=2×PV+AVである。
【0076】
以下の詳細な説明は、本開示を例示することを意図しており、本開示を限定することを意図していない。
【0077】
[サンプルの特性評価]
すべての試薬を、化学会社から受け取りもしくは購入している。すべての試薬に対して付加的な精製は行わない。
【0078】
フードラボアナライザー(Food Lab Analyzer)とは、サンプルの酸化レベルを決定するための、当技術分野で知られているいくつかの手法の1つである。過酸化物価(PV)およびアニシジン価(AV)を決定するために、CDR FoodLab(登録商標)ジュニアアナライザーを本明細書に記載のように使用した。手順は以下の通りである。
【0079】
固体生成物0.5gを、1:10(v/v)の比率のMeOHおよびHCl溶液2mlに溶解した。混合物を5分間攪拌し、続いて5mlの水を添加した。混合物を、100ppmのブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含有する3mlのヘキサンで抽出した。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で0~70℃の温度で蒸発させて、遊離酸形態の魚油を得た。これをCDR FoodLab(登録商標)ジュニアアナライザーを使用してアニシジン価および過酸化物価を得ることで、評価した。
【0080】
ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)によって、エステル形態のPUFAs濃縮物を同定する。
【0081】
PUFAsのエステル化として、約25mgのFFAまたはFFAの塩を密閉チューブに入れ、2% H2SO4溶液2mlを加えて均一な溶液を生成し、次いでこれを(攪拌せずに)80℃で30分間加熱した。続いて、溶液を室温まで冷却した後、飽和NaHCO3水溶液2mlを加えた。エステル形態のFFAを、8~10mlの100ppm BHTヘキサンで1度抽出した。続いて、有機層をMgSO4で乾燥させ、GC-MSで分析した。
【実施例】
【0082】
以下の実施例では、混合プロセスに回転子-固定子ホモジナイザーを使用する。通常、ホモジナイザーの速度は50rpm~500rpm、好ましくは100~200rpmである。
【0083】
[実施例1]
エタノール200mLを用いたMgSO4によるマグロ油トリグリセリド由来の脂肪酸マグネシウム塩の調製
【0084】
2Lの三つ口丸瓶ガラス器具に200mLの95%エタノールを入れ、続いて10gのNaOHを加えた。均質な溶液が得られるまで混合物を攪拌した。続いて、40.2meqO2/kgのPVおよび6.8A/gのAVを示す、トリグリセリドの総量に対して23.1%のDHAおよび7.3%のEPA wt/wtを有する50gのマグロ油トリグリセリドを混合物に添加し、薄層クロマトグラフィー(TLC)により反応が完了するまで、室温でオーバーヘッドスターラーを用いて200rpmの速度で撹拌した。形成された固体を濾過により除去し、酢酸エチルで洗浄した。得られた濾液を濃縮し、H2Oを600mL添加した。均質な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。次いで、pHが8~9になるまで、10%のMgSO4水溶液を添加した。生成した沈殿物を濾別し、多量の水で洗浄した後、真空乾燥して生成した固体を、パルミチン酸トコフェロールの酸化防止剤を含有するアセトニトリルにさらに分散させて、2600ppmのトコフェロールを含み、5.84meqO2/kgのPVおよび1.4A/gのAVを有する流動性の良い(free-flowing)粉末を生成する。PUFAsの総量に対して、64%のω-3 wt/wtを含むPUFAsマグネシウム塩(EPA 15%;DHA 49%)を69%の収率で生成した。上記のデータに基づくと、飽和および/またはモノ不飽和脂肪マグネシウム塩は、約36%の量であろう。
【0085】
[実施例2]
エタノール150mLを用いたMgSO4によるマグロ油トリグリセリド由来の脂肪酸マグネシウム塩の調製
【0086】
2Lの三つ口丸瓶ガラス器具に150mLの95%エタノールを入れ、続いて10gのNaOHを加えた。均質な溶液が得られるまで混合物を攪拌した。続いて、PVが40.2meqO2/kgおよびAVが6.8A/gを示す、23.1%のDHAおよび7.3%のEPA (トリグリセリドの総量に対するwt/wt)を有する50gのマグロ油トリグリセリドを混合物に添加し、反応が完了するまで室温でオーバーヘッドスターラーを用いて200rpmの速度で撹拌し、薄層クロマトグラフィー(TLC)で確認した。形成された固体を濾過により除去し、酢酸エチルで洗浄した。得られた濾液を濃縮し、H2Oを600mL添加した。均質な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。次いで、pHが8~9になるまで、10%のMgSO4水溶液を添加した。生成した沈殿物を濾別し、多量の水で洗浄した後、真空乾燥して生成した固体を、トコフェロール、ポリアミン、およびパルミチン酸アスコルビルの酸化防止剤を含有するアセトニトリルにさらに分散させて、1500ppmのトコフェロール、500ppmのポリアミン、および1500ppmのパルミチン酸アスコルビルを含み、PVが1.56meqO2/kgおよびAVが<0.5A/g(未満)を示す流動性の良い粉末を生成した。66%のω-3を含むPUFAs濃縮脂肪酸金属塩(EPA 16%;DHA 50%)を44%の収率で生成した。
【0087】
[実施例3]
Mg(CH3COO)2によるマグロ油トリグリセリド由来の脂肪酸マグネシウム塩の調製
【0088】
2Lの三つ口丸瓶ガラス器具に200mLの95%エタノールを入れ、続いて10gのNaOHを加えた。均質な溶液が得られるまで混合物を攪拌した。続いて、PVが40.2meqO2/kgおよびAVが6.8A/gを示す、23.1%のDHAおよび7.3%のEPA (トリグリセリドの総量に対するwt/wt)を有する50gのマグロ油トリグリセリドを混合物に添加し、反応が完了するまで室温でオーバーヘッドスターラーを用いて200rpmの速度で撹拌し、TLCで確認した。形成された固体を濾過により除去し、酢酸エチルで洗浄した。得られた濾液を濃縮し、H2Oを600mL添加した。均質な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。次いで、pHが8~9になるまで、10%のMg(CH3COO)2水溶液を添加した。生成した沈殿物を濾別し、多量の水で洗浄した後、真空乾燥して生成した固体を、トコフェロール、ポリアミン、およびパルミチン酸アスコルビルの酸化防止剤を含有するアセトニトリルにさらに分散させて、1500ppmのトコフェロール、500ppmのポリアミン、および1500ppmのパルミチン酸アスコルビルを含み、PVが2.42meqO2/kgおよびAVが<0.5A/gを示す流動性の良い粉末を生成した。61%のω-3を含むPUFAs濃縮脂肪酸金属塩(EPA 14%;DHA 47%)を69%の収率で生成した。
【0089】
[実施例4]
MgCl2によるマグロ油トリグリセリド由来の脂肪酸マグネシウム塩の調製
【0090】
2Lの三つ口丸瓶ガラス器具に200mLの95%エタノールを入れ、続いて10gのNaOHを加えた。均質な溶液が得られるまで混合物を攪拌した。続いて、PVが40.2meqO2/kgおよびAVが6.8A/gを示す、23.1%のDHAおよび7.3%のEPA (トリグリセリドの総量に対するwt/wt)を有する50gのマグロ油トリグリセリドを混合物に添加し、反応が完了するまで室温でオーバーヘッドスターラーを用いて200rpmの速度で撹拌し、TLCで確認した。形成された固体を濾過により除去し、酢酸エチルで洗浄した。得られた濾液を濃縮し、H2Oを600mL添加した。均質な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。次いで、pHが8~9になるまで、10%のMgCl2水溶液を添加した。生成した沈殿物を濾別し、多量の水で洗浄した後、真空乾燥して生成した固体を、トコフェロール、ポリアミン、およびパルミチン酸アスコルビルの酸化防止剤を含有するアセトニトリルにさらに分散させて、1500ppmのトコフェロール、500ppmのポリアミン、および1500ppmのパルミチン酸アスコルビルを含み、PVが2.38meqO2/kgおよびAVが<0.5A/gを示す流動性の良い粉末を生成した。77%のω-3を含むPUFAs濃縮脂肪酸金属塩(EPA 18%;DHA 59%)を65%の収率で生成した。
【0091】
[実施例5]
Mg(CH3COO)2を用いたアザラシ油トリグリセリド由来の脂肪酸カルシウム塩の調製
【0092】
2Lの三つ口丸瓶ガラス器具に200mLの95%エタノールを入れ、続いて10gのNaOHを加えた。均質な溶液が得られるまで混合物を攪拌した。続いて、PVが>50meqO2/kg(超)およびAVが47.7A/gを示す、8.2%のDHAおよび7.0%のEPAおよび4.2%のDPA(トリグリセリドの総量に対するwt/wt)を有する50gのアザラシ油トリグリセリドを混合物に添加し、反応が完了するまで室温でオーバーヘッドスターラーを用いて200rpmの速度で撹拌し、TLCで確認した。形成された固体を濾過により除去し、酢酸エチルで洗浄した。得られた濾液を濃縮し、H2Oを600mL添加した。均質な溶液が得られるまで混合物を撹拌した。次いで、pHが8~9になるまで、10%のCaCl2.2H2O水溶液を添加した。凝集した固体が生成され、水をデカントし、続いて真空乾燥して固体を生成し、これをトコフェロール、ポリアミン、パルミチン酸アスコルビルの酸化防止剤を含有するアセトニトリルにさらに分散させて、1500ppmのトコフェロール、500ppmのポリアミン、および1500ppmのパルミチン酸アスコルビルを含み、PVが0.96meqO2/kgおよびAVが<0.5A/gを示す流動性の良い粉末を生成した。44%のω-3を含むPUFAs濃縮脂肪酸金属(EPA 19%;DHA 20% DPA 5%)を57%の収率で生成した。
【0093】
本開示は、その具体的な実施形態に関連して説明されてきたが、さらなる変更が可能であり、本出願は、当技術分野内の既知または慣例の範囲内にあり、本明細書で前に述べた本質的な特徴に適用され得るような、および添付の特許請求の範囲において記載のような本開示からの逸脱を含む、あらゆる変形、使用または適合を包含することを意図していることを理解されたい。
【国際調査報告】