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特表2023-512020アセフェート及びその中間体の調製のための連続フロープロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】アセフェート及びその中間体の調製のための連続フロープロセス
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/24 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
C07F9/24 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545905
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2021050540
(87)【国際公開番号】W WO2021152443
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】202021004454
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521257525
【氏名又は名称】ユーピーエル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】UPL LIMITED
【住所又は居所原語表記】UPL Limited, UPL House, 610 B/2, Bandra Village, Off Western Express Highway, Bandra (East), Mumbai, Maharashtra, India
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キニ プラシャント ヴァサント
(72)【発明者】
【氏名】ロイ サルカール サプラティム
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA02
4H050AB02
4H050AC50
4H050BA67
4H050BC10
4H050BC19
(57)【要約】
本発明は、アセフェート及びその中間体の合成のための連続フロープロセスに関する。本発明は、より具体的には、マイクロリアクターシステムにおけるアセフェート及びその中間体の合成に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセフェートの生成のためのプロセスであって、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセフェートに変換することを含み、マイクロリアクターでO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと硫酸ジメチルとを連続的に反応させることによって前記O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを調製する、プロセス。
【請求項2】
i)マイクロリアクターユニットに、前記ユニットの第1のラインを通じてO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを投入することと、
ii)マイクロリアクターユニットに、前記ユニットの第2のラインを通じて硫酸ジメチルを投入することと、
iii)マイクロリアクター内でO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成することと、
iv)O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセフェートに変換することと、を含む、請求項1に記載のアセフェートの生成のためのプロセス。
【請求項3】
前記アセフェートが、溶媒の非存在下で連続的に調製される、請求項1又は2に記載のアセフェートの生成のためのプロセス。
【請求項4】
前記プロセスが、プラグフローリアクター(PFR)、連続撹拌タンクリアクター(CSTR)、ループリアクター、パック床リアクター(PBR)、及びそれらの組み合わせを含む群から選択されるマイクロリアクターで実施される連続フロープロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記O,O-ジメチルホスホロアミドチオエート及び前記硫酸ジメチルが、1:0.10~0.20の化学量論比で、前記マイクロリアクターに連続流によって投入される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロセスにおける反応物の滞留時間が、約30秒~1時間である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応の温度が、約50~約120℃である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
反応容器の圧力が、約1~約10バールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
生成されるアセフェートが、少なくとも98%の純度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アセフェートの変換が、マイクロリアクターでO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートと、アセチル化剤とを反応させて、アセフェートの生成物流を形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記アセチル化剤が、ハロゲン化アセチル及びその無水物、ケテンであり、好ましくは、前記アセチル化剤が、無水酢酸(acetic anhydride)である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
連続フロープロセスによってアセフェートを生成することを含むプロセスであって、
マイクロリアクターでO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとの連続反応を実施して、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成し、アセチル化剤で前記O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを処理して、アセフェートを形成する、プロセス。
【請求項13】
請求項11に記載の連続フロープロセスによってアセフェートを生成することを含むプロセスであって、前記プロセスを、溶媒の非存在下で実施する、プロセス。
【請求項14】
アセフェートの連続生成を含むプロセスであって、
i)マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの連続流を投入すること、
ii)前記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、アセチル化剤の連続流を投入すること、
iii)マイクロリアクター内でO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートと、アセチル化剤とを反応させて、アセフェートの生成物流を形成すること、
を含む、プロセス。
【請求項15】
請求項13に記載の連続フロープロセスによってアセフェートを生成することを含むプロセスであって、前記プロセスを、溶媒の非存在下で実施する、プロセス。
【請求項16】
請求項1に記載のアセフェートの調製のための連続プロセスであって、酢酸を連続的に回収することを含み、前記酢酸を、短経路蒸留によって回収する、プロセス。
【請求項17】
連続フロープロセスによってアセフェートを生成するためのマイクロリアクターユニットを含むシステムであって、前記連続フロープロセスが、
i)マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入すること、
ii)前記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、硫酸ジメチルを連続流として投入すること、
iii)マイクロリアクター内でO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成すること、
iv)O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの流れを連続マイクロリアクターに、連続流として投入することと、
v)アセチル化剤を連続マイクロリアクターに、連続流として投入すること、
vi)マイクロリアクター内で、アセチル化剤によってO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセチル化して、アセフェートの生成物流を形成すること、
を含む、システム。
【請求項18】
請求項11に記載の連続フロープロセスによってアセフェートを生成するためのマイクロリアクターユニットを含むシステムであって、前記プロセスが、溶媒の非存在下で行われる、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセフェート及びその中間体の合成のための連続フロープロセスに関する。本発明は、より具体的には、マイクロリアクターシステム内のアセフェート及びその中間体の合成に関する。
【背景技術】
【0002】
有機リン化合物であるアセフェート(N-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミド)は、農薬の世界において非常に望ましい殺虫剤である。それは、果物(柑橘類を含む)、ツル、ホップ、オリーブ、綿、大豆、ピーナッツ、マカダミアナッツ、ビーツ、アブラナ属、セロリ、豆、ジャガイモ、米、タバコ、観賞植物、森林、及び他の作物において、広範囲の咀嚼性及び吸汁性の虫、例えば、アブラムシ、アザミウマ、鱗翅類の幼虫、ハバチ、ハモグリムシ、ヨコバイ、ネキリムシなどを制御するために使用される。
【0003】
アセフェート及びその中間体の合成の改善策として、従来技術では、様々な他のプロセスが試行されてきた。
【0004】
通例、当技術分野で開示されるプロセスは、バッチプロセスであり、これは、頻繁に変更しなければならない原材料の断続的な導入、容器内の様々なプロセス条件の変更、及び種々の精製方法を必要とし得る。典型的には、バッチ処理では、原材料の投入を待っている間、又は品質管理チェック及び洗浄の間に、容器は多くの場合、待機状態になる。
【0005】
バッチプロセスによる種々の方法が試行されているが、依然として、問題点、例えば、アセフェート分解の問題、バッチプロセスの高い発熱性故の溶媒なしのプロセス反応の高い困難性、低い収率と純度、がある。
【0006】
これら及び類似の欠点により、従来技術のプロセスは、工業規模及び商業規模の生産を実行可能ではなく、それによって経済的及び環境的観点から好適ではない。したがって、アセフェートの調製のための単純かつ迅速なプロセスが当該技術分野において必要とされている。
【0007】
連続フロープロセスは、プロセス容器への原材料の不断の供給を可能にし、連続的な生成物の取り出しを可能にする。連続フロープロセスは、従来のバッチシステムと比較して、非常に均一な滞留時間、はるかに良好な熱制御、及びより低いホールドアップを提供するため、非常に有望な最近の微小反応技術であり、化学収率、選択性、及び安全性の観点から有意な工程変化をもたらす。連続フローマイクロリアクターは、現在、新しい合成経路の試験及び開発のために研究室で広く使用されている。実験室での及び開発のための研究では、それらは、十分な滞留時間を有する非常に小さいホールドアップを提供して、試験材料の使用量を非常に小さくする。これは、要求された量を作製するのに必要な時間を短縮できるため、そして原料が高価である場合に、開発段階において非常に重要である。加えて、関連する材料が少量であることは、安全性及び環境リスクを著しく低減する。
【0008】
アセフェート及びその中間体の調製のための単純かつ商業的に実行可能なプロセスを開発する必要性が存在する。本発明は、先行技術の問題を克服することによって、高い収率及び純度でアセフェートを生成する連続プロセスなどの、アセフェートの調製のための工業的に有用なプロセスを提供する。したがって、本発明は、既存の知識と比較して技術的な進歩を伴うか、経済的な意義を有するか、又はその両方であり、当業者にとって自明ではないものである。本連続プロセスでは、溶媒なしで反応を実行することができ、アセフェートの分解、発熱性、生成物の純度、酢酸の回収などの問題は、本発明によって解決される。
【0009】
発明の目的
本発明の目的は、先行技術のプロセスの上記の欠点のうちの少なくとも1つを克服又は改善することであり、連続フロープロセスによるアセフェートのための調製プロセスを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、マイクロリアクターシステム内のアセフェートの調製のためのプロセスを提供することである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、好ましくない環境効果を低減することによって、アセフェートの合成のための商業的に有用で、経済的で、かつ連続的なフロープロセスを提供することである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、高い収率及び純度のアセフェートの合成のための単純かつ迅速な連続フロープロセスを提供することである。
【0013】
本発明の重要な利点は、反応が、いずれの溶媒も有しないマイクロリアクター内で連続様式で実行され、所望の生成物の生成能力が、2つ以上のリアクターを簡略化された方法で接続することによって増加され得ることである。また、反応中、高容量の酢酸ナトリウムが生成され、大規模生産の主要な問題につながるが、この問題及び他の問題が本発明によって解決される。更に、異性化及びアセチル化工程におけるリアクター内の熱伝達、熱除去、及び攪拌は、このプロセスを商業規模へのスケールアップに適さなくさせる重要な問題であるが、この問題は、連続フローリアクター内でプロセスを実行することによって解決される。更に、中和段階は、多量のアンモニアを必要とする。驚くべきことに、本発明者らは、このような問題が本発明のプロセスによって克服され得ることを見出した。
【発明の概要】
【0014】
ある態様では、本発明は、連続フロープロセスによるアセフェートの調製のためのプロセスを提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、アセフェートの調製のためのプロセスを提供し、上記プロセスは、マイクロリアクターシステム内の硫酸ジメチルを使用してO,O-ジメチルホスホロアミドチオエート(O,O-dimethyl phosphoramidothioate、DMPAT)を異性化し、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエート(O,S-dimethyl phosphoramidothioate、MMD)を連続的に生成することを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、マイクロリアクターシステム内でMMDをアセチル化し、アセフェートを連続的に生成することを含む、アセフェートの調製のためのプロセスを提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、マイクロリアクターで硫酸ジメチルを使用してDMPATを異性化し、MMDを連続的に生成し、その後、マイクロリアクター内でMMDをアセチル化し、溶媒の非存在下でマイクロリアクターシステム内でアセフェートを連続的に生成する、アセフェートの合成のためのプロセスを提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続的に生成するためのマイクロリアクター内で、硫酸ジメチルを使用してO,O-ジメチル(dimehyl)ホスホロアミドチオエートを異性化し、アセフェートを連続的に生成するためのマイクロリアクター内で、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセチル化することを含む、アセフェートの調製のためのプロセスを提供する。
【0019】
本発明の別の態様では、アセフェートの調製のための連続フロープロセスであって、
-マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入することと、
-上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、硫酸ジメチルを連続流として投入することと、
-マイクロリアクターでO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成することと、
を含む、プロセスを提供する。
【0020】
本発明の別の態様では、アセフェートの調製のための連続フロープロセスであって、
-マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入することと、
-上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、アセチル化剤を連続流として投入することと、
-マイクロリアクター内でO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートと、アセチル化剤とを反応させて、アセフェートの生成物流を形成することと、
を含む、プロセスを提供する。
【0021】
本発明の別の態様では、アセフェートの調製のための連続フロープロセスであって、
i)マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入することと、
ii)上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、硫酸ジメチルを連続流として投入することと、
iii)マイクロリアクターでO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成することと、
iv)O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの流れを連続マイクロリアクターに、連続流として投入することと、
v)アセチル化剤を連続マイクロリアクターに、連続流として投入することと、
vi)マイクロリアクター内で、アセチル化剤によってO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセチル化して、アセフェートの生成物流を形成することと、
を含む、プロセスを提供する。
【0022】
本発明の別の態様では、アセフェートの調製のための連続プロセスからの酢酸の連続回収が提供される。
【0023】
本明細書に記載された図面は、選択された実施形態の例示のみを目的としており、全ての可能な実装形態ではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の一実施形態による、アセフェートを生成するためのプロセスフロー図である。
図1B】本発明の一実施形態による、アセフェートを生成するためのプロセスフロー図である。
図1C】本発明の一実施形態による、アセフェートを生成するためのプロセスフロー図である。
図1D】本発明の一実施形態による、アセフェートを生成するためのプロセスフロー図である。
図2】本発明の一実施形態によるマイクロリアクターシステムである。
図3】本発明を表すマイクロリアクターの配置である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書において説明かつ例示されているが、当業者は、本明細書に記載の機能を実行するため、及び/又は結果を得るため、及び/又は1つ以上の利点を取得するための、様々な他の手段及び/又は構造を容易に想定するであろうが、そのような変更及び/又は修飾の各々は、本発明の範囲内にあると見なされる。本発明は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせが、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
概して、本発明は、以下の反応スキームによって更に説明されるアセフェートを調製するプロセスを企図する。
【0027】
【化1】
【0028】
本発明の連続フロープロセスは、従来のバッチ容器よりも以下の点においてより有益である。(i)物質移動及び熱伝達は、リアクターの大きさを減少させることによって著しく改善することができ、(ii)連続フロー合成の実現可能性及びデバイスの柔軟性によって、より少ない輸送制限を提供することができ、(iii)温度、圧力、及び滞留時間などの反応変数の正確な制御により、収率及び選択性を改善することができ、(iv)連続フロー合成のスケールアップは、リアクターの数を単に増加させるか、又はリアクターのサイズを大きくすることによって、容易に達成される。
【0029】
本発明者らは、これらの利点に動機付けられ、アセフェートの製造のためのマイクロリアクターシステムにおける連続フロー合成を実現した。本発明者らは、様々な連続フロースクリーニング実験を実施し、驚くべきことに、最大収率及び高純度のアセフェートをもたらすプロセスに到達した。
【0030】
一態様では、本発明は、(i)マイクロリアクターで硫酸ジメチルを使用して、DMPATを異性化し、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続的に生成することと、(ii)O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをマイクロリアクター内でアセチル化し、マイクロリアクターシステム内、所定の温度、圧力、及び流量の条件下で、アセフェートを連続的に生成させることと、から選択される反応を含む、アセフェートの生成のための商業的プロセスを提供する。
【0031】
本発明によれば、反応は、クリーンで純粋な反応であり、好ましくは溶媒なしで実施される。
【0032】
したがって、本発明は、アセフェートの生成のためのプロセスを提供し、本プロセスは、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセフェートに変換することを含み、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートは、マイクロリアクター内でO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを連続的に反応させることによって調製される。
【0033】
有利には、本発明によるアセフェートの生成は、溶媒の非存在下で連続的に調製される。
【0034】
本発明によるプロセスで使用されるマイクロリアクターは、化学プロセスのレジメンにおいて追加の機能を発揮する更なる機能的ユニットを含み得る。そのような機能的ユニットの構成は、マイクロリアクター合成の当業者に既知である。例えば、マイクロリアクターは、プラグフローリアクター(Plug Flow Reactor、PFR)、連続撹拌タンクリアクター(Continuous Stirred Tank Reactor、CSTR)、ループリアクター、パック床リアクター(Loop reactor, Packed Bed Reactor、PBR)、及びそれらの組み合わせを含む群から選択することができる。
【0035】
本発明のマイクロリアクターシステムは、生産能力を高めるために、1~100個の平行なマイクロ反応システムを更に含むことができる。典型的には、マイクロリアクターシステムは、1つ以上の混合リアクター、1つ以上の反応リアクター、1つ以上の混合及び反応リアクター、1つ以上の加熱及び冷却要素、又はそれらの任意の組み合わせを含み、これらは、システム内の反応容器の所望の温度及び圧力を維持するように、ジャケット付きとなるように設計され得る。
【0036】
本発明は、材料の短い滞留時間、高い選択性、高収率、より少ない機器投資、製造コストの節約、材料消費の低減、副生成物量の低減といった利点を有する。したがって、プロセス全体が、従来のプロセスと比べて、連続的、低エネルギー消費の点で技術的に向上した、効率的かつ実行可能なアセフェート及びその中間体の連続合成である。
【0037】
したがって、本発明は、高い収率及び純度のアセフェート生成のための連続操作によるマイクロリアクター合成を提供する。
【0038】
本発明によれば、アセフェートの調製のための連続フロープロセスであって、
-マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入する工程と、
-上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、硫酸ジメチルを連続流として投入する工程と、
-マイクロリアクター内で、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成する工程と、
を含む、プロセスを提供する。
【0039】
本発明によれば、アセフェートの調製のための連続フロープロセスであって、
-マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入する工程と、
-上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、硫酸ジメチルを連続流として投入する工程と、
-マイクロリアクター内で、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成する工程と、
-O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセフェートに変換する工程と、
を含む、プロセスが提供される。
【0040】
本発明の別の態様では、アセフェートの調製のための連続フロープロセスであって、
-マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入することと、
-上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、アセチル化剤を連続流として投入することと、
-マイクロリアクター内で、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートと、アセチル化剤とを反応させて、アセフェートの生成物流を形成することと、
を含む、プロセスを提供する。
【0041】
本発明の別の態様では、アセフェートの調製の連続フロープロセスであって、
i)マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入することと、
ii)上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、硫酸ジメチルを連続流として投入することと、
iii)マイクロリアクター内で、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成することと、
iv)O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの流れを連続マイクロリアクターに、連続流として投入することと、
v)アセチル化剤を連続マイクロリアクターに、連続流として投入することと、
vi)マイクロリアクター内で、アセチル化剤でO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセチル化して、アセフェートの生成物流を形成することと、
を含む、プロセスを提供する。
【0042】
次いで、アセフェートを含有する生成物流を、マイクロリアクターに接続された容器内に回収する。典型的には、純アセフェートを最終生成物流から単離すると同時に、酢酸も最終生成物流から取り出すが、これもプロセスの追加の利点である。したがって、本プロセスは、単純で、迅速かつ工業的に実行可能である。
【0043】
本明細書で使用される連続フロープロセスは、特に限定されず、本発明の範囲内で当業者によって更に変更され得る。一般に、例えば、限定するものではないが、連続フロープロセスは、リアクター、容器、又はライン内に投入され得る反応物の連続流を可能にし、生成物を形成するための反応物の混合又は反応を可能にする。これに続いて、リアクター、容器、又はラインからの生成物の連続流(排出)が生じる。したがって、連続フロープロセスは、反応物がリアクター、容器、又はラインに投入又は供給されるプロセスと見なすことができ、一方、生成物は、これと同時に、反応プロセスの途中で取り除かれる。連続フロープロセスは、単一の工程又は複数の工程が実行されることを可能にし得るが、ここで、各工程は、反応、分離、又は精製であり得る。
【0044】
本明細書で使用される「連続」という用語は、介在する単離又は精製工程を伴わずに、1つの反応工程から次の反応工程まで連続的に流れる1または複数の試薬流を指す。
【0045】
本明細書で使用される「ライン」という用語は、特に限定されず、当業者に既知であるべきである。一般に、ラインは、例えば、限定するものではないが、流体を搬送又は輸送するための管、導管、又はパイプを指す。連続フロープロセスでは、ラインは、反応物又は生成物などの流体の投入及び/又は排出を可能にするように設計され得る。加えて、(反応混合ラインにおけるような)ラインは、反応物を受容し、反応物の混合及び/又は反応を可能にするように設計することができる。ラインが反応物を受容するように設計されている場合、ラインのサイズ及び形状は、混合を増強し、反応物のラインへの流れを許容し、背圧を最小化するように適合させることができる。
【0046】
本明細書で使用される「リアクター」又は「容器」という用語は、特に限定されず、当業者に既知であるべきである。一般に、リアクター又は容器は、例えば、限定するものではないが、化学反応などの化学プロセスのための化学物質を受容するように設計された容器又はバットに関する。連続フロープロセスでは、リアクター又は容器は反応物の連続投入を受け取り、生成物の形成を可能にするように、反応物の混合及び/又は反応を、任意選択的にリアクター又は容器内の反応物の滞留時間で実施し、続いて生成物の連続排出するように設計することができる。リアクター又は容器は、反応物の混合を可能にするための撹拌器又はバッフルなどの手段を備えることができる。
【0047】
本明細書で使用される「滞留時間」という用語は、試薬流中の分子がマイクロリアクターの全長を移動するのにかかる時間を指す。マイクロリアクターにおける試薬流のための滞留時間は、マイクロリアクターの長さ及び幅、並びに試薬流の流量に依存し得る。
【0048】
本明細書で使用される「溶液」という用語は、特に限定されず、当業者に既知であるべきである。一般に、溶液は、一相のみからなる均質混合物である。そのような混合物では、溶質は、溶媒として知られる別の物質に溶解された物質である。溶媒によって溶解が生じる。溶液は、多かれ少なかれ、その相を含む溶媒の特性を呈し、溶媒は通例、混合物の主要な画分である。本明細書で使用される溶液という用語は、溶液中に存在しないか、又は溶液中に不溶性であるいくつかの固体を有する混合物を含み得、それらは全体的な反応及びプロセスを妨げない。
【0049】
本プロセスで使用されるアセチル化剤は、ハロゲン化アセチル及び無水物(Anhydrides)、ケテンから選択され、好ましくはアセチル化剤は、無水酢酸(acetic anhydride)である。
【0050】
本発明によるアセフェート及びその中間体の生成のためのプロセスは、以下の実施形態に例示されるが、その後の説明及びその中に言及される図/図面に限定されない。
【0051】
アセフェートの合成のための例示的な連続フローリアクターの概略図である図1を参照すると、マイクロリアクターは、反応容器(CP-01)を有するプラグフローリアクター(PFR)として説明される本プロセスを実行するために提供される。反応容器(CP-01)は、反応条件に従って、必要とされる温度及び圧力を維持するようにジャケット付けされ、かつ反応チャンバ(6)を含むように設計されている。加熱要素HE(HE-01)は、反応容器(CP-01)に取り付けられて、温度センサ(7)によって示される必要な温度を提供する。供給容器(1)及び(2)は、反応物を別々に保持し、混合ライン(4)及び(5)をそれぞれ通じて反応容器(CP01)に接続される。ポンプP1及びP2は混合ラインに取り付けられ、供給容器(1)及び(2)に含まれる反応物をリアクター(CP-01)に移動させる。第1の混合ライン(4)は、ポンプ(P-1)を介してリアクター(CP-01)に接続される。第2の混合ライン(5)は、ポンプ(P-2)を介してリアクター(CP-01)に接続される。圧力要素PGは、反応容器(CP-01)に接続されて、反応中の圧力を表示する。反応容器(CP-01)は、最終生成物流が回収される回収容器(3)に接続される。好ましくは、アセフェートを含有する生成物流を、マイクロリアクターに接続された容器内に回収する。
【0052】
図3を参照すると、ここに記載のマイクロリアクターは、工程1のMMD用反応容器(CP-01)及び工程2のアセフェート用反応容器(CP-02)を有するプラグフローリアクター(PFR)であり、次にSPD、さらに連続抽出カラムが続く。反応容器(CP-01)は、反応の条件に従って、必要とされる温度及び圧力を維持するようにジャケット付けされ、かつ反応チャンバ(6)を含むように設計されている。加熱要素HE(HE-01)は、反応容器(CP-01)に取り付けられて、温度センサ(7)によって示される必要な温度を提供する。供給容器(1)及び(2)は、それぞれ混合ライン(4)及び(5)で反応容器(CP01)に接続され、反応物を別々に保持する。
【0053】
ポンプP1及びP2は、それが供給容器(1)及び(2)に含まれる反応物をリアクター(CP-01)に移動させるように、これらの混合ラインに取り付けられる。第1の混合ライン(4)は、ポンプ(P-1)を介してリアクター(CP-01)に接続される。第2の混合ライン(5)は、ポンプ(P-2)を介してリアクター(CP-01)に接続される。圧力要素PGは、反応容器(CP-01)及び(CP-02)に接続されて、反応中に圧力を表示する。反応容器(CP-01)は、RTRに接続され、次いで、最終生成物(MMD)が回収される場所から回収容器(3)に接続される。供給容器(3)及び(8)は、それぞれ混合ライン(9)及び(10)で反応容器(CP-02)に接続され、反応物を別個に保持する。ポンプP3及びP4は、それが供給容器(3)及び(8)に含まれる反応物をリアクター(CP-02)に移動させるように、これらの混合ラインに取り付けられる。第1の混合ライン(9)は、ポンプ(P-3)を介してリアクター(CP-02)に接続される。第2の混合ライン(10)は、ポンプ(P-4)を介してリアクター(CP-02)に接続される。反応容器(CP-02)は、排出ライン(11)に接続され、そこから、酢酸(13)の連続蒸留のために、短経路蒸留(Short Path Distillation、SPD)にアセフェート物質が供給される。コレクタ容器(12)から最終的な粗アセフェートが回収される。ポンプP5は、連続抽出カラム内の回収容器(12)から粗アセフェート物質を移動させるように混合ライン(14)に取り付けられて、MDC生成物層を得て、次いで、それは、回収容器(15)内に回収される。次いで、コレクタ容器(15)内のMDC層を蒸発させ、結晶化させて、精製された工業等級のアセフェートを得る(16)。
【0054】
一実施形態では、本発明はまた、請求項1に記載のアセフェートの調製のための連続プロセスにおいて、短経路蒸留によって酢酸を回収する、酢酸の連続回収を含むプロセスを提供する。
【0055】
一実施形態では、図2に表されるようなマイクロリアクターシステムは、プラグフローリアクター内に流入する前に反応物が予備混合されてプレミックスが得られ、得られたプレミックスが別のPFRを通過することを可能にする、プラグフローリアクターの前に配置されたループリアクターを含む。アセフェートの合成のためのプロセスは、以下に記載されるように、本発明に従って実施される。
【0056】
本発明によれば、以下の工程を含む、マイクロリアクターシステム内のアセフェートの調製のための連続フロープロセスが提供される。
【0057】
工程1:O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートの、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートへの異性化
この工程では、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートは、所定の速度で、第1の投与ラインによって滞留時間リアクター(Residence time reactor、RTR)を有する2ラインPFR型フローリアクターに供給され、硫酸ジメチルは、所定の速度で第2の投与ラインによってリアクターに供給された。2つの投与ラインの全てが、それらの内容物を約50~100℃に維持された反応領域内に排出する。MMDは、15分未満の滞留時間内に形成され、回収された。O,O-ジメチルホスホロアミドチオエート及び硫酸ジメチルは、1:0.10~0.20の化学量論比で、マイクロリアクターに連続流として投入される。
【0058】
工程2:O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートのアセフェートへのアシル化
O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの第1工程溶液(stage-1 solution)は、所定の速度で第1の投与ラインによって、2ラインPFR型フローリアクターに供給され、アセチル化剤は、所定の速度で第2の投与ラインによってリアクターに供給される。これら2つの投与ラインの全てが、5それらの内容物を0~100℃に維持された反応領域内に排出し、10分以内の滞留時間内に所望の生成物であるアセフェートを有する反応物質が回収される。
【0059】
工程3:酢酸の回収
工程2で得られた反応物質を、短経路蒸留に供して、酢酸を回収する。酢酸の留出物を回収し、残りの反応物質をアセフェートの単離に使用する。
【0060】
工程4:純アセフェートの単離
工程3からの粗アセフェートを有する反応物質を中和し、好適な溶媒を使用して再結晶化して、高純度の純アセフェートを得る。
【0061】
一実施形態では、本発明は、アセフェートの連続生成を含むプロセスを提供し、このプロセスは、溶媒の不在下で行われ、上記プロセスは、
i)マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入することと、
ii)マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、アセチル化剤を連続流として投入することと、
iii)マイクロリアクター内で、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートと、アセチル化剤とを反応させて、アセフェートの生成物流を形成することと、
を含む、プロセスを提供する。
【0062】
本発明の一実施形態では、アセフェートの合成のための連続フロープロセスは、プラグフローリアクター(PFR)、連続撹拌タンクリアクター(CSTR)、ループリアクター、パック床リアクター(PBR)、及びそれらの組み合わせを含む群から選択されるマイクロリアクター内で実施される。
【0063】
本発明の一実施形態では、アセフェートの合成のための連続フロープロセスは、プラグフローリアクター(PFR)において実施される。
【0064】
本発明の一実施形態では、アセフェートの合成のための連続フロープロセスは、ループリアクター内で実施される。
【0065】
本発明の一実施形態では、アセフェートの合成のための連続フロープロセスは、ループリアクター及びプラグフローリアクター(PFR)を直列に組み合わせて、これによって、反応物をループリアクター内で混合することを可能にして、プレミックスを得ることによって実行され、次いで、プレミックスがPFRを通過することを可能にする。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、第1のラインから流れる反応物の流量は、最大100mlの容量のリアクター内で1ml/分~20ml/分まで変動する。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、第2のラインから流れる反応物の流量は、最大100mlの容量のリアクター内で1ml/分~20ml/分まで変動する。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、第3のラインから流れる反応物の流量は、最大100mlの容量のリアクター内で1ml/分~20ml/分まで変動する。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、第1、第2、及び第3のラインからの反応物の流量は、生成物の所望の出力体積に基づいて変動し得る。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、実験室規模でアセフェートの合成のための連続フロープロセスを実施するためのマイクロリアクターの容積は、アセフェートの所望の出力容積に基づいて、1ml、10ml、50ml、100mlなどの様々な容量範囲から選択される。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、商業規模でアセフェートの合成のための連続フロープロセスを実施するためのマイクロリアクターの容積は、アセフェートの所望の出力容積に基づくことができる、1L、10L、50L、100L、500L、1000L、2000L、5000L、50000L以上の様々な容量範囲から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、アセフェートの合成は、既知の方法と比較して、より短い反応時間で生じる。
【0073】
いくつかの実施形態では、アセフェートを合成するための反応容器内の反応物の滞留時間は、約1時間以下、約30分以下、又は場合によっては約20分以下であり得る。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、アセフェートを合成するための反応容器内の反応物の滞留時間は、約1時間以下である。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、アセフェートを合成するための反応容器内の反応物の滞留時間は、約30分以下である。
【0076】
本発明の好ましい一実施形態によれば、アセフェートを合成するための反応容器内の反応物の滞留時間は、約6分以下であり得る。
【0077】
本発明の好ましい一実施形態によれば、滞留時間は、約60秒未満である。
【0078】
本発明の好ましい一実施形態によれば、滞留時間は、約30秒である。
【0079】
理論に拘束されることを望むものではないが、そのような滞留時間は、以下により詳細に記載されるように、マイクロリアクター内で達成可能な急速な物質移動及び熱伝達、高温、並びに高圧により、他のプロセス(例えば、バッチプロセス)に対する、マイクロリアクターにおける化学反応の速度の増加に起因し得る。
【0080】
一実施形態では、高収率及び純度でアセフェートの合成のためのプロセスは、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを硫酸ジメチルと反応させて、反応物の温度、圧力、及び流量の所定の条件下、マイクロリアクター内で、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを形成する工程を含む。
【0081】
マイクロリアクター内でO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを生成する工程は、約50~約120℃の温度及び約1バール~約10バールの圧力で実施され得る。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、反応の温度は、約90℃~約100℃であり、連続流としてO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを生成する。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、反応温度は、約60~65℃である。
【0084】
本発明によれば、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを生成するためのマイクロリアクタープロセスは、第1のラインからO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続的に流し、所定の温度、および存在下(and present)、及び流量で第2のラインから硫酸ジメチルを連続的に流して、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを得ることを含む。本発明によれば、このようにして生成されたS-ジメチルホスホロアミドチオエートは、本明細書に記載のプロセスによって直ちにアセフェートに変換される。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、第1のラインから流れるO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートTの流量は、最大100mlの容量のリアクター内で1ml/分~20ml/分まで変動する。
【0086】
本発明の一実施形態によれば、第1のラインから流れるO,O-ジメチルホスホロアミドチオエートの流量は、最大5000リットルの容量のリアクター内で1ml/分~20ml/分まで変動する。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、第2のラインから流れる硫酸ジメチルの流量は、最大100mlの容量のリアクター内で1ml/分~20ml/分まで変動する。
【0088】
本発明の一態様では、アセフェートの調製のための連続フロープロセスは、
-マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入する工程と、
-上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、硫酸ジメチルを連続流として投入する工程と、
-マイクロリアクター内で、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成する工程と、
-O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセフェートに変換する工程と、
を含む。
【0089】
次いで、アセフェートを含有する生成物流を、マイクロリアクターから容器内に回収する。
【0090】
O,O-ジメチルホスホロアミドチオ:ジメチル硫酸ジメチルの供給流は、1:0.10~0.20の化学量論比でマイクロリアクターに供給され得る。
【0091】
O,O-ジメチルホスホロアミドチオエート:硫酸ジメチルの供給流は、好ましくは1:0.15の化学量論比でマイクロリアクターに供給することができる。
【0092】
本発明のプロセスは、HPLCによる純度が少なくとも90%のアセフェートを提供する。
【0093】
本発明のプロセスは、HPLCによる純度が少なくとも95%のアセフェートを提供する。
【0094】
本発明のプロセスは、少なくとも80%の高収率で、95%超、好ましくは98%超の高純度のアセフェートを提供する。
【0095】
好ましくは、本発明に従って生成されたアセフェートは、98.5%の純度を有する。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、連続流では、ループリアクター及びプラグフローリアクターが互いに隣接して直列に配置され、ラインを介して取り付けられるように、プラグフローリアクターの前にループリアクターが取り付けられる。
【0097】
本発明の一態様では、アセフェートの調製のための連続フロープロセスであって、
-マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入することと、
-上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、アセチル化剤を連続流として投入することと、
-マイクロリアクター内でO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートと、アセチル化剤とを反応させて、アセフェートの生成物流を形成することと、
を含む、プロセスを提供する。
【0098】
本発明の一実施形態によれば、第1のラインからループリアクターに流れるO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの流量は、20mlの容量を有するリアクター内で1ml/分~10ml/分で変動する。
【0099】
本発明の一実施形態によれば、第2のラインからループリアクターに流れるアセチル化剤溶液の流量は、30mlの容量を有するリアクター内で1ml/分~20ml/分で変動する。
【0100】
一実施形態では、本プロセスは、出力されるアセフェートの所望の容積に基づいて、20L又はそれ以上のループリアクター容積に容易にスケールアップすることができる。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、30ml容量のリアクターからのアセフェートの出力速度は、約5ml/分~約30ml/分である。
【0102】
一実施形態によれば、連続フロープロセスにおけるO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの合成のためのマイクロリアクターにおける滞留時間は、約10秒~10分である。
【0103】
本発明の別の実施形態によれば、マイクロリアクターにおける反応温度は、約65℃に維持される。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、連続流動で合成されたアセフェート及びその中間体は、様々な化学化合物、医薬化合物、及び農薬化合物を合成する際に使用され得る。
【0105】
本主題は、その特定の好ましい実施形態を参照してかなり詳細に説明されてきたが、他の実施形態が可能である。したがって、本開示の趣旨及び範囲は、その中に含まれる好ましい実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0106】
一実施形態では、本発明は、本プロセスが溶媒の非存在下で行われる連続フロープロセスによってアセフェートを生成するためのマイクロリアクターユニットを含むシステムを提供する。
【0107】
一実施形態では、本発明は、連続フロープロセスによってアセフェートを生成するためのマイクロリアクターユニットを含むシステムであって、連続フロープロセスが、
i)マイクロリアクターユニットの第1のラインを通じて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートを連続流として投入することと、
ii)上記マイクロリアクターユニットの第2のラインを通じて、硫酸ジメチルを連続流として投入することと、
iii)マイクロリアクター内で、O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートと、硫酸ジメチルとを反応させて、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの生成物流を形成することと、
iv)O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの流れを連続マイクロリアクターに、連続流として投入することと、
v)アセチル化剤を連続マイクロリアクターに、連続流として投入することと、
vi)マイクロリアクター内で、アセチル化剤によってO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートをアセチル化して、アセフェートの生成物流を形成することと、
を含む、システムを提供する。
【0108】
本発明の利点:
本発明の連続フロープロセスは、簡単、迅速、高効率、及び容易な操作である。
【0109】
プロセスは、中断することなく新しい反応物を連続的に添加すること、すなわち、所望の生成物の製造のためにプロセス全体を通じて連続的に流れることによって、連続的に実施される。
【0110】
有利には、プロセスの反応時間は、本プロセスによって30秒~6分以内に引き下げることができ、それによって、プロセスのコスト及び操作工程の両方を低減する。
【0111】
本発明の連続フロープロセスは、溶媒なしで連続式で実施される。溶媒なしの反応は、バッチプロセスにおける高い発熱のために非常に困難である。溶媒なしの連続プロセスでは、反応を続けることができ、アセフェートの分解、発熱性、低収率、及び酢酸回収などの問題が解決される。
【0112】
したがって、本発明は、既存の知識と比較して技術的な進歩を伴うか、経済的な意義を有するか、又はその両方であり、当業者にとって自明ではないものである。
【0113】
本プロセスにおいて、酢酸の回収は、最終的なアセフェートの分解なしにSPDを使用することによって実施される。
【0114】
得られた生成物は、高純度で高収率である。
【0115】
本発明の連続フロープロセスは、単純、迅速、高効率、及び容易な操作である。
【0116】
本連続フロープロセスは、マイクロサイズのリアクターにおけるアセフェートの連続生成を伴い、それによって材料の混合及び物質移動を容易かつ工業的に実行可能にする。
【0117】
プロセスは、中断することなく新しい反応物を連続的に添加すること、すなわち、所望の生成物の製造のためにプロセス全体を通じて連続的に流れることによって、連続的に実施される。
【0118】
有利には、プロセスの反応時間は、本プロセスによって30秒~5分以内に引き下げることができ、それによって、プロセスのコスト及び操作工程の両方を低減する。
【0119】
以下の記載は、本発明の特定の実施形態として提供される。本発明の他の変更は、当業者には容易に明らかであろう。そのような変更は、本発明の範囲内であると理解される。本発明は、以下の実施例によって例示されるが、それらは、本発明を限定するものではない。
【0120】
実施例1:
アセフェートの調製のための一般的なプロセス
工程1:この工程は、2つの入口及び1つの出口、並びに温度コントローラ内の油媒の循環を有する、PFR型フローリアクター(50ml)内で実行した。リアクターの温度を加熱によって60~65℃に設定した。O,O-ジメチルホスホロアミドチオエートの供給を、第1の入口を通じて開始し、次いで、所定の流量(化学量論比(stochiometric ratio)1:0.15)で、硫酸ジメチルの供給を、第2の入口を通じて開始した。反応を6分の滞留時間にわたって継続し、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエート塊を出口から連続的に回収した。
【0121】
工程2:この工程は、背圧調整器と、ジャケット内及び温度コントローラ内の油媒の循環とを伴い、2つの入口及び1つの出口を有する、PFR型フローリアクター(50ml)内で実行した。
リアクターを40~50℃に加熱した。O,S-ジメチルホスホロアミドチオエート(工程1から回収)を、第1の入口を通じてリアクターに供給し、次いで、無水酢酸+HSOのプレミックス混合物を、所定の流量で第2の入口を通じて供給した。反応を4分の滞留時間にわたって継続し、反応物質を出口から回収した。
【0122】
工程3:この工程は、加熱用油媒の循環、凝縮器用冷却器、真空ポンプ、及び添加漏斗と共に配置された、0.04M2ガラスSPD機器内で実行される。
リアクターを90~95℃に加熱し、冷却機を-10℃とした。工程2から得られた反応物質をSPDに添加し、混合物から酢酸を留去して、粗アセフェート物質を得た。
【0123】
工程4
添加の完了後、粗アセフェートを含有する底部生成物を回収し、メチレンジクロリドをそれに添加した。混合物を、液体アンモニア溶液を使用して中和した。分離された水層を、塩化メチレンで抽出した。有機層を蒸発させて、アセフェートを得た。-5℃~-10℃の酢酸エチルでアセフェートを結晶化して、アセフェート結晶を得る。
【0124】
様々な反応に使用される反応パラメータを以下の表に提供する。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例2
O,S-ジメチルホスホロアミドチオエートの調製のためのプロセス
プロセスは、2つの入口及び1つの出口、並びに油貫通及び温度コントローラ内の油媒の循環を有する、PFR型フローリアクター(50ml)内で実行した。リアクターの温度を加熱によって65℃に設定した。7.4ml/分の速度でのO,O-ジメチルホスホロアミドチオエート(95%、600g)の供給を、第1の入口を通じて開始し、次いで、硫酸ジメチル(83G)の供給を、0.94ml/分の速度で第2の入口を通じて開始した。反応を6分の滞留時間にわたって継続し、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエート物質を出口から連続的に回収した。
純度:GCにおいて90%
【0127】
実施例3
アセフェートの調製
プロセスは、背圧調整器と、ジャケット内及び温度コントローラ内の油媒の循環とを伴い、2つの入口及び1つの出口を有する、PFR型フローリアクター(50ml)内で実行した。
【0128】
リアクターを50℃に加熱した。O,S-ジメチルホスホロアミドチオエート(実施例2で回収された683g)を、6.75ml/分の速度で第1の入口を通じてリアクターに供給し、次いで、無水酢酸+HSO(433g+13.4g)のプレミックス混合物を、5.75ml/分の速度で第2の入口を通じて供給した。反応を4分の滞留時間にわたって継続し、反応物質を出口から回収した。
【0129】
次いで、反応物質(1129g)を、20g/分の流量及び温度90℃で54分間、短経路蒸留のために、加熱用油媒の循環、凝縮器用冷却器、真空ポンプ、及び添加漏斗と共に配置された0.04M2ガラスSPD機器に供した。酢酸(230g)を留出させ、反応混合物から回収した。粗アセフェートを含有する底部の塊(899g)を、純アセフェートを単離するために使用した。
【0130】
上記で得られた反応塊(899g)を、温度を15~20℃に維持することによって、(1200gの)MDC、(225gの)水、及び(196g、20%の)の液体アンモニアで中和した。分離された水層をMDC(4×400g)で抽出した。合わせた有機層を、一定重量まで蒸発させた。物質を-5℃~-10℃で酢酸エチル(700g)を使用して結晶化して、アセフェート結晶(571g)を得た。
収率:76%、純度:HPLCで98%
【0131】
実施例4
アセフェートの調製のためのプロセス
工程1
プロセスは、2つの入口及び1つの出口、並びに温度コントローラ内の油媒の循環を有する、PFR型フローリアクター(50ml)内で実行した。リアクターの温度を加熱によって65℃に設定した。7.4ml/分の速度での95%DMPAT(558ml)の供給を、第1の入口を通じて開始し、次いで、所定の流量(化学量論比(stochiometric ratio)1:0.15)で、硫酸ジメチル(62.4ml)の供給を、第2の入口を通じて開始した。反応を6分の滞留時間にわたって継続し、O,S-ジメチルホスホロアミドチオエート塊を別のPFR内に連続的に供給する。
【0132】
工程2
背圧調整器と、ジャケット内及び温度コントローラ内の油媒の循環とを伴い、2つの入口及び1つの出口を有する、PFR型フローリアクター(50ml)を50℃に加熱した。工程1からのO,S-ジメチルホスホロアミドチオエートを、第1の入口を通じてリアクターに供給し、次いで、無水酢酸+HSO(401ml+12ml)のプレミックス混合物を、所定の流量で第2の入口を通じて供給した。反応を4分の滞留時間にわたって継続する。
【0133】
次いで、反応塊を、加熱用油媒の循環、凝縮器用器、真空ポンプ、及び添加漏斗と共に配置された0.04M2ガラスSPD機器内に、温度90℃で54分、及び-10℃での冷却による短経路蒸留のために導入した。酢酸(192ml)を留出させ、反応混合物から回収した。粗アセフェートを含有する底部塊(899g)を分離し、純アセフェートを単離した。
【0134】
工程3
上記で得られた反応塊(899g)を、温度を15~20℃に維持することによって、(900mlの)MDC及び(196ml、20%の)液体アンモニアで中和した。分離された水層をMDC(4×300ml)で抽出した。合わせた有機層を、一定重量まで蒸発させた。反応塊を-5℃~-10℃において、酢酸エチル(875ml)を使用して結晶化して、アセフェート結晶(586g)を得た。
収率:79%、純度:HPLCで98%
【0135】
したがって、本発明の発明者らは、マイクロリアクターシステム内の連続流でアセフェート及びその中間体を首尾よく調製した。上記のプロセスは、制御された条件下で非常に迅速にアセフェートを合成することができる。本主題は、その特定の好ましい実施形態を参照してかなり詳細に説明されているが、他の実施形態が可能である。したがって、本開示の趣旨及び範囲は、その中に含まれる好ましい実施形態の説明に限定されるべきではない。

図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
【国際調査報告】