(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】併用療法及びその使用及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230315BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230315BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230315BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230315BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20230315BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230315BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A61K47/68
A61K38/05
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545916
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2021050664
(87)【国際公開番号】W WO2021152495
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】アイラ、グプタ
(72)【発明者】
【氏名】アクセル、フース
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA14
4C084BA01
4C084BA32
4C084CA59
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA14
4C085AA22
4C085AA26
4C085BB11
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、免疫調節薬、例えば、PD-1に結合する抗原結合タンパク質との組合せ、その医薬組成物、その使用、及び当該組合せを投与すること(癌における使用を含む)を含む処置方法が、本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者において癌を処置する方法であって、
前記方法が、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを投与することを含み、
前記PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、配列番号11のCDRH1又はそのバリアント、配列番号12のCDRH2又はそのバリアント、配列番号13のCDRH3又はそのバリアント、配列番号14のCDRL1又はそのバリアント、配列番号15のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号16のCDRL3又はそのバリアントを含む、前記方法。
【請求項2】
前記BCMAに結合する抗原結合タンパク質が、配列番号1のCDRH1又はそのバリアント、配列番号2のCDRH2又はそのバリアント、配列番号3のCDRH3又はそのバリアント、配列番号4のCDRL1又はそのバリアント、配列番号5のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号6のCDRL3又はそのバリアントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記BCMAに結合する抗原結合タンパク質が、MMAF又はMMAEに連結された抗体を含む抗体薬物複合体である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記BCMAに結合する抗原結合タンパク質が、ベランタマブマホドチンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、ドスタリマブである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
それを必要とする患者において癌を処置する方法であって、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
ベランタマブマホドチンが約0.03mg/kg~約4.6mg/kgで投与され、ドスタリマブが約100mg~約2000mgで投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ベランタマブマホドチンが、約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgで投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ドスタリマブが約500mgで投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、癌に対する少なくとも3種の前治療ラインを既に処置されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者がヒトである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ベランタマブマホドチン及びドスタリマブが、21日サイクルの1日目(Q3W)に投与される、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
それを必要とする患者において多発性骨髄腫を処置する方法であって、
前記方法が、21日サイクルの1日目(Q3W)に、
a)約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチン、及び
b)約500mgのドスタリマブ
を投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含む組合せであって、
前記PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、配列番号11のCDRH1又はそのバリアント、配列番号12のCDRH2又はそのバリアント、配列番号13のCDRH3又はそのバリアント、配列番号14のCDRL1又はそのバリアント、配列番号15のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号16のCDRL3又はそのバリアントを含む、前記組合せ。
【請求項16】
ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含む組合せ。
【請求項17】
約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチン及び約500mgのドスタリマブを含む、請求項16に記載の組合せ。
【請求項18】
癌の処置に使用するための、請求項15~17のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項19】
前記癌が、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫である、請求項18に記載の組合せ。
【請求項20】
癌を処置するための医薬の製造における、請求項15~17のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【請求項21】
それを必要とする患者における癌の処置のための、請求項15~17のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【請求項22】
ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。
【0002】
発明の分野
本発明は、抗BCMA抗原結合タンパク質、例えば、ヒトBCMAに対するモノクローナル抗体を免疫調節薬、例えば、抗PD-1抗原結合剤と組み合わせて含む組合せに関する。さらに、本発明は、哺乳動物、例えば、ヒトにおける癌の処置における組合せの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
過剰増殖性疾患、例えば、癌の効果的な処置は、腫瘍学分野における継続的な目標である。一般に、癌は、細胞分裂、分化及びアポトーシス細胞死を制御する正常なプロセスの調節解除に起因し、無制限の成長、局所増殖及び全身転移の可能性がある悪性細胞の増殖を特徴とする。正常なプロセスの調節解除には、シグナル伝達経路の異常と、正常な細胞に見られるものとは異なる要因への反応とが含まれる。
【0004】
免疫療法は、過剰増殖性疾患を処置するための1つのアプローチである。様々な種類の癌免疫療法の開発において科学者及び臨床医が遭遇した主なハードルは、腫瘍退縮につながる強力な抗腫瘍反応を開始するために、自己抗原(癌)に対する寛容を壊すことであった。腫瘍を標的とする低分子及び高分子の薬剤の従来の開発とは異なり、癌免疫療法は、エフェクター細胞の記憶プールを生成する可能性のある免疫系の細胞を標的にして、より持続的な効果を誘発し、再発を最小限に抑える。
【0005】
BCMA(CD269又はTNFRSF17)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。これは、リガンドであるBAFF及びAPRILに対する非グリコシル化内在性膜受容体である。BCMAのリガンドは、さらなる受容体にも結合することができる。TACI(膜貫通活性化因子及びカルシウム調節因子及びシクロフィリンリガンド相互作用物質(Transmembrane Activator and Calcium modulator and cyclophilin ligand Interactor))は、APRIL及びBAFFに結合し、並びに、BAFF-R(BAFF受容体又はBR3)は、BAFFに制限されるが、BAFFに対して高い親和性を示す。一緒になって、これらの受容体及びそれらの対応するリガンドは、体液性免疫、B細胞の発達及び恒常性の異なる実施形態を調節する。
【0006】
BCMAの発現は通常、B細胞系統に限定されており、最終的なB細胞分化において増加すると報告されている。BCMAは、扁桃腺、脾臓及び骨髄由来のヒト形質芽細胞及び形質細胞により発現されるが、扁桃メモリーB細胞及び胚中心B細胞によっても発現され、これらはTACI-BAFFR低表現型を有する(Darce et al., 2007)。BCMAは、未感作及びメモリーB細胞上にはほとんど存在しない(Novak et al., 2004a 及び Novak et al., 2004b)。BCMA抗原は細胞表面上で発現され、抗体にアクセスすることができるが、ゴルジ体においても発現されている。その発現プロファイルにより示唆されるように、BCMAシグナル伝達は、典型的にはB細胞生存及び増殖と関連しており、B細胞分化の後期において重要であるが、長寿命の骨髄形質細胞(O’Connor et al., 2004)及び形質芽球(Avery et al., 2003)の生存にも重要である。さらに、BCMAは高親和性でAPRILに結合するため、BCMA-APRILシグナル伝達軸は、B細胞分化の後期において優性であり、おそらく生理的に最も重要な相互作用であることが示唆されている。
【0007】
BCMAに結合し、シグナル伝達を調節する抗原結合タンパク質及び抗体は、当技術分野で知られており、例えば、癌に対する免疫療法として開示されている。
【0008】
PD-1リガンドであるPD-L1及びPD-L2が、T細胞に見られるPD-1受容体に結合すると、T細胞の増殖及びサイトカイン産生が阻害される。PD-1リガンドのアップレギュレーションは一部の腫瘍で生じ、この経路を介したシグナル伝達は、腫瘍に対するアクティブなT細胞免疫監視の阻害に寄与し得る。PD-1受容体と結合し、PD-L1及びPD-L2とのPD-1受容体の相互作用を遮断する抗原結合タンパク質及び抗体は、免疫応答、例えば、抗腫瘍免疫応答に対するPD-1経路媒介性の阻害を解除し得る。
【0009】
抗腫瘍T細胞機能の亢進及びT細胞増殖の誘導は、癌処置のための強力且つ新規なアプローチである。3種の免疫腫瘍学的抗体(例えば、免疫調節薬)が現在、販売されている。抗CTLA-4(ヤーボイ/イピリムマブ)は、T細胞プライミングの段階で免疫応答を増強すると考えられており、抗PD-1抗体(オプジーボ/ニボルマブ及びキートルーダ/ペンブロリズマブ)は、既にプライミングされ活性化されている腫瘍特異的T細胞において阻害チェックポイントを解除することによって局所の腫瘍微小環境で作用すると考えられている。キートルーダ/ペンブロリズマブは、癌処置のためにメルクにより販売されている抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブのアミノ酸配列及び使用方法は、米国特許第8,168,757号に記載されている。投与は、3週間ごとに200mgのIV注入であり得る
【0010】
癌処置には近年の多くの進展があるが、癌の影響を被る個人に対するより効果的な及び/又は増強された処置の必要が依然として存在する。抗腫瘍免疫を増強するための併用療法アプローチに関する本明細書の組合せ及び方法は、この必要性に取り組むものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、治療有効量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、治療有効量の、免疫調節標的に結合する抗原結合タンパク質とを含む組合せを提供する。例示的な免疫調節標的には、PD-1が含まれる。
【0012】
別の実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、免疫複合体(例えば、抗体薬物複合体(ADC))として細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされる。細胞傷害性薬剤は、MMAE又はMMAFを含んでもよく、細胞傷害性薬剤は、リンカー、例えば、シトルリン-バリン又はマレイミドカプロイルを介してBCMAに結合する抗原結合タンパク質にコンジュゲートされてもよい。
【0013】
一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質はアンタゴニストである。別の実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、IgG1モノクローナル抗体である。
【0014】
本発明は、治療有効量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、治療有効量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含む組合せを提供する。
【0015】
一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、ベランタマブマホドチンである。
【0016】
一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、ドスタリマブである。
【0017】
本発明の組合せを含む医薬組成物もまた提供される。
【0018】
治療有効量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、治療有効量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含む治療有効量の組合せを投与することを含む、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)において癌を処置する方法もまた提供される。一実施形態において、癌は、多発性骨髄腫(MM)又は非ホジキンリンパ腫B細胞白血病(NHL)である。一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質及びPD-1に結合する抗原結合タンパク質は、同時に又は順次に投与される。方法は、組合せの全身(例えば、静脈内)又は腫瘍内投与を提供する。
【0019】
癌の処置に使用するための、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含む組合せが企図される。
【0020】
癌を処置するための医薬の製造における、本明細書に記載の組合せの使用が企図される。
【0021】
好適には、本発明の医薬組成物を、1種又は2種以上の薬学的に許容可能な担体とともに含むキットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
組合せ
本発明の一実施形態において、治療有効量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質又はそのフラグメントと、治療有効量の、免疫調節標的に結合する抗原結合タンパク質又はそのフラグメントとを含む組合せが提供される。
【0023】
本発明の一実施形態において、治療有効量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質又はそのフラグメントと、治療有効量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質又はそのフラグメントとを含む組合せが提供される。
【0024】
本発明の一実施形態において、治療有効量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質又はそのフラグメントと、治療有効量のドスタリマブとを含む組合せが提供される。
【0025】
本発明の一実施形態において、治療有効量のベランタマブマホドチンと治療有効量のドスタリマブとを含む組合せが提供される。
【0026】
BCMAに結合する抗原結合タンパク質
(本見出し下の「抗原結合タンパク質」への言及は、別段の明示的な記載がない限り、BCMAに結合する抗原結合タンパク質を指す。)
一実施形態では、BCMA、例えば、ヒトBCMA(hBCMA)に特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)又はそのフラグメントが提供される。別の実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、BCMA受容体へのBAFF及び/又はAPRILの結合を阻害する。
【0027】
さらなる実施形態において、抗原結合タンパク質又はそれらのフラグメントは、FcγRIIIAと結合し、FcgRIIIAにより媒介されるエフェクター機能を媒介する能力を有するか、又はFcγRIIIAにより媒介されるエフェクター機能が増強されている。本明細書で提供される本発明の一実施形態において、抗原結合タンパク質は内部移行することができる。本明細書で提供される本発明の特定の一実施形態において、本明細書に記載の抗原結合タンパク質は迅速に内部移行することができる。例えば、抗原結合タンパク質は、12時間未満又は6時間未満又は120分未満で内部移行する。一実施形態において、抗原結合タンパク質は、30分未満、例えば、15分で内部移行する。抗原結合タンパク質の内部移行は、当技術分野で公知の技術を使用して測定され得、例えば、その受容体に結合しているBCMAであって、細胞内小胞(エンドソーム及びリソソーム)と共局在している又は細胞質中に存在しているBCMAを可視化する共焦点顕微鏡によって、或いは、内部移行を示すBCMAの消失を伴った、細胞表面のBCMAの存在の経時的変動を検出するフローサイトメトリーによって測定され得る。
【0028】
さらなる実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有し、例えば、抗原結合タンパク質はADCCエフェクター機能が増強されている。
【0029】
さらなる実施形態において、抗原結合タンパク質は、細胞傷害性薬剤である薬物とコンジュゲートされて免疫複合体(例えば、抗体薬物複合体(ADC))を形成する。一つのこのような実施形態において、細胞傷害性薬剤はアウリスタチンである。さらなる実施形態において、細胞傷害性薬剤は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)又はモノメチルアウリスタチンF(MMAF)である。一実施形態において、免疫複合体はまたADCCも増強されている。
【0030】
一実施形態において、細胞傷害性薬剤は、リンカー、例えば、バリン-シトルリン(VC)又はマレイミドカプロイル(mc)を介して、BCMAに結合する抗原結合タンパク質とコンジュゲートされる。
【0031】
一つのこのような実施形態において、免疫複合体は、免疫原性細胞死を引き起こすことができる。本発明の一実施形態において、非膜結合型BCMA、例えば、血清BCMAと結合する本明細書に記載の本発明による抗原結合タンパク質が提供される。
【0032】
別の例において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、BCMAと、BCMAリガンド、例えば、BAFF又はAPRILとの結合を遮断するアンタゴニストである。
【0033】
一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、免疫グロブリン様ドメイン又はそのフラグメントを含む。別の実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD若しくはIgE、それらのサブクラス、又はそれらの改変バリアントである。さらに別の実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質はIgG抗体である。
【0034】
本発明の一実施形態では、配列番号3のCDRH3又はそのバリアントを含む、本明細書に記載の抗原結合タンパク質が提供される。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCHRH3を含む。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に記載の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質であって、配列番号1のCDRH1若しくはそのバリアント、配列番号2のCDRH2若しくはそのバリアント、配列番号3のCDRH3若しくはそのバリアント、配列番号4のCDRL1若しくはそのバリアント、配列番号5のCDRL2若しくはそのバリアント、及び/又は配列番号6のCDRL3若しくはそのバリアントの1又は2以上を含む、抗原結合タンパク質が提供される。
【0036】
さらなる実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号3のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL及び配列番号6のCDRL3を含む。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR領域を含む。
【0037】
本発明の一実施形態では、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0038】
本発明の一実施形態では、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0039】
本発明の一実施形態では、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0040】
別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号8に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0041】
本発明の一実施形態では、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0042】
本発明の一実施形態では、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0043】
本発明の一実施形態では、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗原結合タンパク質が提供される。
【0044】
別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号10に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0045】
一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、以下の配列を含む抗体である(可変領域は太字であり、CDR領域には下線が引かれている)。
【0046】
【0047】
【0048】
一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、抗体薬物複合体GSK2857916である(Tai, Blood, 123(20:3128-38 (2014))。GSK2857916は、マレイミドカプロイル(mc)リンカーを介して、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)コンジュゲートしている抗BCMA抗体である。
【0049】
別の実施形態において、抗BCMA抗体はJ6M0であり、配列番号9及び配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0050】
一実施形態において、抗体薬物複合体は、ベランタマブマホドチンである。
【0051】
さらなる実施形態において、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の軽鎖可変領域のいずれかと組み合わせて、本明細書に記載の重鎖可変領域のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、BCMA、例えば、ヒトBCMAに結合する(例えば、拮抗する)ことができる。
【0052】
一実施形態において、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の本発明による1又は2以上のCDRを含むか、或いは、本明細書に記載の本発明による重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の一方又は両方を含む抗体又はその抗原結合フラグメントである。一実施形態において、抗原結合タンパク質は霊長類BCMAに結合する。一つのこのような実施形態において、抗原結合タンパク質は、さらに、非ヒト霊長類BCMA、例えば、カニクイザルBCMAに結合する。
【0053】
別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体及びミニボディからなる群から選択される。
【0054】
本発明の一実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり、さらなる実施形態において、抗体はヒト化されている。
【0055】
一実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。
【0056】
本発明の一実施形態において、抗原結合タンパク質はキメラ抗原受容体(CAR)である。さらなる実施形態において、CARは、結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内エフェクタードメインを含む。
【0057】
一実施形態において、膜貫通ドメインは、天然源又は合成源のいずれかに由来し得る。一実施形態において、膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。或いは、膜貫通ドメインは合成性であり得、主に疎水性残基、例えば、ロイシン及びバリンを含み得る。
【0058】
例えば、膜貫通ドメインは、CDタンパク質(例えば、CD4、CD8、CD3又はCD28)、T細胞受容体のサブユニット(例えば、α、β、γ又はδ)、IL-2受容体(α鎖)のサブユニット、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR又はp75)のサブユニット(β鎖又はγ鎖)又はFc受容体のサブユニット鎖の膜貫通ドメインであり得る。一実施形態において、膜貫通ドメインは、CD4、CD8又はCD28の膜貫通ドメインを含む。さらなる実施形態において、膜貫通ドメインは、CD4又はCD8の膜貫通ドメイン(例えば、参照により本明細書に組み込まれるNCBI参照配列:NP_001139345.1に記載されるCD8α鎖)を含む。別のさらなる実施形態において、膜貫通ドメインは、CD4の膜貫通ドメインを含む。
【0059】
細胞内エフェクタードメイン又は「シグナル伝達ドメイン」は、標的結合ドメインが標的に結合した後に細胞内シグナル伝達を担う。細胞内エフェクタードメインは、CARが発現される免疫細胞の通常のエフェクター機能のうち少なくとも1つの活性化を担う。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性又はヘルパー活性(例えば、サイトカインの分泌)であり得る。CAR足場における使用のためのエフェクタードメインの好ましい例は、天然のT細胞受容体の細胞質配列及び抗原結合後のシグナル伝達を惹起するために協調して働く補助受容体の細胞質配列、並びにこれらの配列の任意の誘導体又はバリアント及び同じ機能的能力を有する任意の合成配列であり得る。エフェクタードメインは、2種のクラス:抗原依存的一次活性化を惹起するクラスと、抗原非依存的に作用して二次シグナル又は補助刺激シグナルをもたらすクラスとに分けることができる。一次活性化エフェクタードメインは、immunoreceptor tyrosine-based activation motif(ITAM)として知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。ITAMは、様々な受容体の細胞質内テールに共通に見られる、よく定義されたシグナル伝達モチーフであり、syk/zap70クラスのチロシンキナーゼの結合部位として機能する。本発明で使用されるITAMの例は、非限定的な例として、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dに由来するITAMを含み得る。一実施形態において、細胞内エフェクタードメインは、CD3ζシグナル伝達ドメイン(CD247としても知られる)を含む。天然のTCRはCD3ζシグナル伝達分子を含み、したがって、このエフェクタードメインの使用が、天然に存在するTCR構築物に最も近い。
【0060】
本発明の一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζエフェクタードメインである。
【0061】
エフェクタードメインはまた、二次シグナル又は補助刺激シグナルももたらし得る。T細胞は、例えば、増殖の活性化、分化等を増強することによってT細胞応答を増強するために、抗原提示細胞上の同族の補助刺激リガンドに結合する補助刺激分子をさらに含む。したがって、一実施形態において、細胞内エフェクタードメインは、補助刺激ドメインをさらに含む。さらなる実施形態において、補助刺激ドメインは、CD28、CD27、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、ICOS(CD278)、CD30、CD40、PD-1(CD279)、CD2、CD7、NKG2C(CD94)、B7-H3(CD276)又はそれらの任意の組合せから選択される補助刺激分子の細胞内ドメインを含む。別のさらなる実施形態において、補助刺激ドメインは、CD28、CD27、4-1BB、OX40、ICOS又はそれらの任意の組合せから選択される補助刺激分子の細胞内ドメインを含む。
【0062】
本発明の抗原結合タンパク質及び参照抗体の競合は、競合ELISA、FMAT又はBiacoreによって決定され得る。一実施形態において、競合アッセイは、Biacoreによって実施される。この競合にはいくつかの理由が存在し得る。すなわち、2種のタンパク質が同一の又は重複するエピトープに結合する可能性があり、結合の立体阻害が存在する可能性があり、或いは、第1のタンパク質の結合が、抗原に立体構造変化を誘導して第2のタンパク質の結合を妨害する又は減少させる可能性がある。
【0063】
別の実施形態において、抗原結合タンパク質はヒトBCMAに高い親和性で結合し、例えば、Biacoreにより測定した場合、抗原結合タンパク質はヒトBCMAに20nM以下の親和性又は15nM以下の親和性又は5nM以下の親和性又は1000pM以下の親和性又は500pM以下の親和性又は400pM以下の親和性又は300pM以下の親和性、例えば、約120pMの親和性で結合する。さらなる実施形態において、Biacoreにより測定した場合に、抗原結合タンパク質はヒトBCMAに、約100pM~約500pM、又は約100pM~約400pM、又は約100pM~約300pMの親和性で結合する。本発明の一実施形態において、抗原結合タンパク質は、BCMAに150pm未満の親和性で結合する。
【0064】
一つのこのような実施形態において、これは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2012163805の実施例4に示されるBiacoreにより測定される。
【0065】
別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、細胞中和アッセイにおいて、ヒトBCMAと結合し、BCMA受容体に対するリガンドBAFF及び/又はAPRILの結合を中和し、ここで、抗原結合タンパク質のIC50は、約1nM~約500nM、又は約1nM~約100nM、又は約1nM~約50nM、又は約1nM~約25nM、又は約5nM~約15nMである。本発明のさらなる実施形態において、抗原結合タンパク質は、細胞中和アッセイにおいてBCMAに結合し、BCMAを中和し、ここで、抗原結合タンパク質のIC50は、約10nMである。
【0066】
一つのこのような実施形態において、これは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2012163805の実施例4.6に示される細胞中和アッセイにより測定される。
【0067】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、GSK2857916(GSK)、Bb2121(Bluebird Bio)、Bb21217(Bluebird Bio)、FCARH143(Fred Hutchinson)、JCARH125(Celgene/Juno)、MCARH171(Eureka) 、AUTO2(Autolus)、LCAR-B38M(ヤンセン)、BION-1301(Aduro)、IM21 CART(Beijing Immunochina)、MEDI3338(MedImmune)、CC-93269(Celgene)、AMG 701(Amgen)、AMG 420(Amgen)、AMG 224(Amgen)、JNJ-64007957(ヤンセン)、MEDI2228(MedImmune)、PF-06863135(ファイザー)、Descartes-08(Cartesian Therapeutics)、KITE-585(Gilead)、REGN5458(Regeneron)、CTX4419(Compass Therapeutics)及び/又はP-BCMA-101(Poseida)のうちの1以上である。
【0068】
別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、二重/三重特異性抗体、抗体薬物複合体(ADC)又はCAR-T治療薬である。
【0069】
抗BCMA抗原結合タンパク質の適切な治療有効用量は、当業者によって容易に決定される。本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質の適切な用量は、患者の体重に従って患者について計算可能であり、例えば、適切な用量は、約0.1mg/kg~約20mg/kg、例えば、約1mg/kg~約20mg/kg、例えば、約10mg/kg~約20mg/kg、例えば、約1mg/kg~約15mg/kg、例えば、約10mg/kg~約15mg/kgであり得る。
【0070】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療有効用量は、約0.03mg/kg~約4.6mg/kgである。さらに別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療有効用量は、約0.95mg/kg~約3.4mg/kgである。さらに別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療有効用量は、約1.9mg/kg~約3.4mg/kgである。さらに別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療有効用量は、0.03mg/kg、0.06mg/kg、0.12mg/kg、0.24mg/kg、0.48mg/kg、0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg、3.4mg/kg又は4.6mg/kgである。さらに別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療有効用量は、0.95mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kg又は3.4mg/kgである。さらに別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療有効用量は、1.9mg/kg、2.5mg/kg又は3.4mg/kgである。
【0071】
別の実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療有効用量は、mg/kgにおける用量ではなく固定用量である。固定用量を使用することにより、体重ベースの用量と同様の暴露範囲をもたらし得る。固定投与は、誤投与の減少、薬物廃棄の減少、調製時間の短縮、及び投与の容易さの改善という利点を提供し得る。したがって、一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質の固定用量は、70kg又は80kgの参照体重(関与する体重の中央値(median participating weight))に基づく。
【0072】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、1日1回、週1回、2週間に1回(Q2W)及び3週間に1回(Q3W又は21日サイクルの1日目)からなる群から選択される頻度で投与される。サイクルは、疾患の進行、耐え難い毒性、インフォームドコンセントの撤回、研究の一部若しくは研究の終了、又は死亡まで継続する。
【0073】
PD-1に結合する抗原結合タンパク質
(本見出し下の「抗原結合タンパク質」への言及は、別段の明示的な記載がない限り、PD-1に結合する抗原結合タンパク質を指す。)
本発明の一実施形態において、本明細書に記載のように、この組合せは、BCMAに特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)と、PD-1に特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)又はそのフラグメントとを含む。一例において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、ヒトPD-1(hPD-1)に特異的に結合する。別の例において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、PD-1リガンド、例えば、PD-L1又はPD-L2とのPD-1の結合を遮断するアンタゴニストである。
【0074】
一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、免疫グロブリン様ドメイン又はそのフラグメントを含む。別の実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD若しくはIgE、それらのサブクラス、又はそれらの改変バリアントである。さらに別の実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質はIgG抗体である。別の実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質はIgG4抗体である。
【0075】
本発明の一実施形態では、配列番号16のCDRL3又はそのバリアントを含む、本明細書に記載の抗原結合タンパク質が提供される。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号16に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCHRL3を含む。
【0076】
本発明の一実施形態では、配列番号24のCDRL3又はそのバリアントを含む、本明細書に記載の抗原結合タンパク質が提供される。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号24に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCHRL3を含む。
【0077】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に記載の抗原結合タンパク質であって、配列番号11のCDRH1若しくはそのバリアント、配列番号12のCDRH2若しくはそのバリアント、配列番号13のCDRH3若しくはそのバリアント、配列番号14のCDRL1若しくはそのバリアント、配列番号15のCDRL2若しくはそのバリアント、及び/又は配列番号16のCDRL3若しくはそのバリアントを含む、抗原結合タンパク質が提供される。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び/又は配列番号16に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR領域を含む。
【0078】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書に記載の抗原結合タンパク質であって、配列番号11のCDRH1若しくはそのバリアント、配列番号12のCDRH2若しくはそのバリアント、配列番号13のCDRH3若しくはそのバリアント、配列番号14のCDRL1若しくはそのバリアント、配列番号15のCDRL2若しくはそのバリアント、及び/又は配列番号24のCDRL3若しくはそのバリアントを含む、抗原結合タンパク質が提供される。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15及び/又は配列番号24に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR領域を含む。
【0079】
本発明の一実施形態において、配列番号17から選択される単離された重鎖可変ドメインを含む抗原結合タンパク質が提供される。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号17に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0080】
本発明の別の実施形態において、配列番号18から選択される単離された軽鎖可変領域を含む抗原結合タンパク質が提供される。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号18に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0081】
本発明のさらなる実施形態において、、配列番号17から選択される単離された重鎖可変領域と、配列番号18から選択される単離された軽鎖可変領域とを含む抗原結合タンパク質が提供される。別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列番号17に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号18に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0082】
本発明の一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号19に記載の重鎖配列を含む抗体である。
【0083】
本発明の一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号21に記載の重鎖配列を含む抗体である。
【0084】
本発明の一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号22に記載の重鎖配列を含む抗体である。
【0085】
本発明の一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号23に記載の重鎖配列を含む抗体である。
【0086】
本発明の一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号20に記載の軽鎖配列を含む抗体である。
【0087】
本発明の一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号19に記載の重鎖配列と、配列番号20に記載の軽鎖配列とを含む抗体である。
【0088】
一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、以下の配列を含む抗体である(可変領域は太字であり、CDR領域には下線が引かれている)。
【0089】
【0090】
【0091】
一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、以下の重鎖配列:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISGGGSYTYYQDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASPYYAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESDGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
を含む抗体である。
【0092】
一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、以下の重鎖配列:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISGGGSYTYYQDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASPYYAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPEDNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
を含む抗体である。
【0093】
一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、以下の重鎖配列:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISGGGSYTYYQDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASPYYAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESDGQPEDNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
を含む抗体である。
【0094】
一実施形態において、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の本発明による1又は2以上のCDRを含むか、或いは、本明細書に記載の本発明による重鎖可変領域又は軽鎖可変領域の一方又は両方を含む抗体又はその抗原結合フラグメントである
【0095】
別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体及びミニボディからなる群から選択される。
【0096】
一実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり、さらなる実施形態において、抗体はヒト化されている。
【0097】
一実施形態において、抗体はモノクローナル抗体である。
【0098】
本明細書に記載の単離された抗体は、ヒトPD-1に結合し、遺伝子Pdcd1又はそれに対して90パーセントの相同性若しくは90パーセントの同一性を有する遺伝子若しくはcDNA配列によりコードされるヒトPD-1に結合し得る。完全なhPD-1 mRNA配列は、GenBank受託番号U64863として入手可能である。ヒトPD-1のタンパク質配列は、GenBank受託番号AAC51773で入手可能である。
【0099】
別の実施形態において、抗原結合タンパク質は、ヒトPD-1に高い親和性で結合し、例えば、Biacoreにより測定した場合、抗原結合タンパク質はヒトPD-1に1nM以下の親和性で結合する。本発明の一実施形態において、抗原結合タンパク質は、100pm未満の親和性でPD-1に結合する。
【0100】
解離速度定数(kd)又は「解離速度」は、複合体の安定性を表し、すなわち、毎秒に減衰する複合体画分を表す。例えば、0.01s-1のkdは、毎秒複合体の1%が減衰することと同等である。一実施形態において、解離速度定数(kd)は、1×10-3s-1以下、1×10-4s-1以下、1×10-5s-1以下、又は1×10-6s-1以下である。kdは1×10-5s-1~1×10-4s-1又は1×10-4s-1~1×10-3s-1であり得る。
【0101】
本発明の抗原結合タンパク質及び参照抗体の競合は、競合ELISA、FMAT又はBiacoreによって決定され得る。一実施形態において、競合アッセイは、Biacoreによって実施される。この競合にはいくつかの理由が存在し得る。すなわち、2種のタンパク質が同一の又は重複するエピトープに結合する可能性があり、結合の立体阻害が存在する可能性があり、或いは、第1のタンパク質の結合が、抗原に立体構造変化を誘導して第2のタンパク質の結合を妨害する又は減少させる可能性がある。
【0102】
一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、TSR-042(テサロ)であり、例えば、米国特許第9,815,897号、WO2018/085468、WO2018/129559及びWO2017/058859に記載され、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
別の実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質はドスタリマブである。
【0104】
一実施形態において、ドスタリマブの治療有効用量は、約3mg/kg又は10mg/kgである。その他の実施形態において、治療有効用量は、約100~2000mgの用量である(例えば、用量約100mg;用量約200mg;用量約300mg;用量約400mg;用量約500mg;用量約600mg;用量約700mg;用量約800mg;用量約900mg;用量約1000mg;用量約1100mg;用量約1200mg;用量約1300mg;用量約1400mg;用量約1500mg;用量約1600mg;用量約1700mg;用量約1800mg;用量約1900mg;又は用量約2000mg)。その他の実施形態において、治療有効用量は約1mg/kgである。さらにその他の実施形態において、治療有効用量は約3mg/kgである。その他の実施形態において、治療有効用量は約10mg/kgである。その他の実施形態において、治療有効用量は約500mgの用量である。特定の実施形態において、治療有効用量は約800mgである。その他の実施形態において、治療有効用量は約1000mgである。
【0105】
別の実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、約100mg~約2000mgの用量で投与されるドスタリマブである。さらに別の実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、約500mgの用量で投与されるドスタリマブである。
【0106】
一実施形態において、ドスタリマブは、3週間ごとに500mgで投与される。別の実施形態において、ドスタリマブは、3週間ごとに500mgで4回投与され、次いで、6週間ごとに1000mgで投与される。ドスタリマブによる処置は、疾患の進行又は許容できない毒性が生じるまで続行し得る。別の実施形態において、ドスタリマブは、静脈内注入として、3週間ごとに500mgで4回投与され、次いで、6週間ごとに1000mgで、疾患の進行又は許容できない毒性が生じるまで投与される。
【0107】
別の実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質の治療有効用量は、mg/kgにおける用量ではなく固定用量である。固定用量を使用することにより、体重ベースの用量と同様の暴露範囲をもたらし得る。固定投与は、誤投与の減少、薬物廃棄の減少、調製時間の短縮、及び投与の容易さの改善という利点を提供し得る。したがって、一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質の固定用量は、70kg又は80kgの参照体重(関与する体重の中央値)に基づく。
【0108】
一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、1日1回、週1回、2週間に1回(Q2W)及び3週間に1回(Q3W又は21日サイクルの1日目)からなる群から選択される頻度で投与される。サイクルは、疾患の進行、耐え難い毒性、インフォームドコンセントの撤回、研究の一部若しくは研究の終了、又は死亡まで継続する。
【0109】
医薬組成物及び処置方法
本発明はさらに、本明細書に記載の組合せと、1種又は2種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。本発明の組合せは2種の医薬組成物を含み得、一方はBCMAに結合する抗原結合タンパク質又はそのフラグメントを含み、他方はPD-1に結合する抗原結合タンパク質又はそのフラグメントを含み、そのそれぞれは、同じ又は異なる担体、希釈剤又は賦形剤を含み得る。担体、希釈剤又は賦形剤は、その調合物のその他の成分と適合し、医薬調合能を有し、且つ、そのレシピエントに対して有害でないという意味で許容可能である必要がある。
【0110】
本発明の組合せの成分及びそのような成分を含む医薬組成物は、いずれの順序で、異なる投与経路で逐次に投与されてもよく、上記成分及び上記成分を含む医薬組成物は同時に投与されてもよい。
【0111】
本明細書に記載の組合せの成分のそれぞれは、同じバイアル/容器又は異なるバイアル/容器中に製造されてもよい。例えば、一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と同じバイアル/容器中に製造され、この組合せのすべての成分が同時に投与される。別の例示的実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と異なるバイアル/容器中に製造され、この組合せの成分のそれぞれは同時に又は逐次に、同じ又は異なる投与経路で投与され得る。
【0112】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の組合せの成分と1種又は2種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤とを混合することを含む、医薬組成物の調製のための方法もまた提供される。
【0113】
本発明の成分は、任意の適当な経路によって投与され得る。いくつかの成分について、好適な経路は、経口、直腸、鼻腔、局所(例えば、口内及び舌下)、膣及び非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内及び硬膜外)を含む。好ましい経路は、例えば、組合せのレシピエントの状態及び処置される癌によって異なり得ることが認識される。投与される薬剤のそれぞれはまた、同じ又は異なる経路によって投与されてもよいこと、及びこれらの成分は一緒に配合されていても又は別個の医薬組成物であってもよいことも認識される。
【0114】
一実施形態において、本発明の組合せの1種又は2種以上の成分は静脈内投与される。別の実施形態において、本発明の組合せの1種又は2種以上の成分は腫瘍内投与される。別の実施形態において、本発明の組合せの1種又は2種以上の成分は、全身投与、例えば静脈内投与され、本発明の組合せの1種又は2種以上のその他の成分は、腫瘍内投与される。別の実施形態において、本発明の組合せのすべての成分は、全身投与、例えば静脈内投与される。別の実施形態において、本発明の組合せのすべての成分は腫瘍内投与される。いずれの実施形態において、例えば、本段落におけるいずれの実施形態においても、本発明の成分は、1種又は2種以上の医薬組成物として投与される。
【0115】
本発明の組合せの治療有効量(又は組合せの各成分の治療有効量)の投与は、治療有効量の成分化合物の別個の投与に比較した場合に、それらの組合せが以下の特性の改善のうち1種又は2種以上をもたらすという点で別個の成分化合物よりも有利である:i)最も活性の高い単剤よりも大きな抗癌作用、ii)相乗的又は極めて相乗的な抗癌活性、iii)副作用プロファイルの低減とともに、抗癌活性の増強を示す投与プロトコル、iv)毒性作用プロファイルの低減、v)治療域の増大、又はvi)成分化合物の一方又は両方のバイオアベイラビリティの増大。
【0116】
一実施形態において、本発明は、治療有効量の本明細書に記載の組合せを投与することを含む、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)における癌、例えば、B細胞障害を処置する方法を提供する。一実施形態において、癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態において、癌は非ホジキンリンパ腫である。別の実施形態において、処置される患者は、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫を有する。さらに別の実施形態において、処置される患者は、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫を有し、標準的なケア治療法、例えば、免疫調節薬(IMID)、プロテアソーム阻害剤(PI)及び/又は抗CD38抗体(例えば、ダラツムマブ)によって既に処置されている。別の実施形態において、患者は、本明細書に記載の組合せで処置される前に、0種、1種、2種、3種、4種又は5種以上の前治療ラインを受けていてもよい。別の実施形態において、患者は、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫を有し、本明細書に記載の組合せで処置される前に、0種、1種、2種、3種、4種又は5種以上の前治療ラインを受けていてもよい。別の実施形態において、患者は、免疫調節薬(IMiD)、プロテアソーム阻害剤(PI)及び抗CD38処置(例えば、ダラツムマブ)を含み得る少なくとも3種の前治療ラインを既に処置されている。治療方針は、国際骨髄腫ワークショップ(IMWG)のコンセンサスパネル[Rajkumar, 2011]によって定義され得る。
【0117】
組合せの成分のいずれかの特定の開始用量が患者に許容されない場合には、副作用を軽減するため、及び/又は許容性を高めるために、開始用量は、より低い用量に減量され得る。例えば、BCMAに結合する抗原結合タンパク質の3.4mg/kgの開始用量は、患者の忍容性に基づいて2.5mg/kg又は1.9mg/kgに減量され得る。
【0118】
本明細書に記載の組合せは、同時に又は逐次に投与され得る。一実施形態において、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、BCMAに結合する抗原結合タンパク質が投与されてから1時間後に投与される。別の実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、PD-1に結合する抗原結合タンパク質が投与されてから1時間後に投与される。
【0119】
一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを投与することを含む、それを必要とする患者において癌を処置する方法が提供される。
【0120】
一実施形態において、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含む組合せを投与することを含む、それを必要とする患者において癌を処置する方法が提供される。
【0121】
一実施形態において、抗BCMA抗体及び抗PD-1抗体を投与することを含む、それを必要とする患者において癌を処置する方法が提供される。
【0122】
一実施形態において、抗BCMA抗体及び抗PD-1抗体を含む組合せを投与することを含む、それを必要とする患者において癌を処置する方法が提供される。
【0123】
一実施形態において、抗BCMA抗体薬物複合体及び抗PD-1抗体を投与することを含む、それを必要とする患者において癌を処置する方法が提供される。
【0124】
一実施形態において、抗BCMA抗体薬物複合体及び抗PD-1抗体を含む組合せを投与することを含む、それを必要とする患者において癌を処置する方法が提供される。
【0125】
一実施形態において、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを投与することを含む、それを必要とする患者において癌を処置する方法が提供される。
【0126】
一実施形態において、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含む組合せを投与することを含む、それを必要とする患者において癌を処置する方法が提供される。
【0127】
一実施形態において、それを必要とする患者において癌を処置する方法であって、この方法が、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを投与することを含み、PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、配列番号11のCDRH1又はそのバリアント、配列番号12のCDRH2又はそのバリアント、配列番号13のCDRH3又はそのバリアント、配列番号14のCDRL1又はそのバリアント、配列番号15のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号16のCDRL3又はそのバリアントを含む、方法が提供される。
【0128】
一実施形態において、それを必要とする患者において癌を処置する方法であって、この方法が、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含む組合せを投与することを含み、PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、配列番号11のCDRH1又はそのバリアント、配列番号12のCDRH2又はそのバリアント、配列番号13のCDRH3又はそのバリアント、配列番号14のCDRL1又はそのバリアント、配列番号15のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号16のCDRL3又はそのバリアントを含む、方法が提供される。
【0129】
一実施形態において、それを必要とする患者において癌を処置する方法であって、この方法が、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを投与することを含み、BCMAに結合する抗原結合タンパク質が、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号3のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2及び配列番号6のCDRL3を含み、PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、配列番号11のCDRH1、配列番号12のCDRH2、配列番号13のCDRH3、配列番号14のCDRL1、配列番号15のCDRL2及び配列番号16のCDRL3を含む、方法が提供される。
【0130】
一実施形態において、それを必要とする患者において癌を処置する方法であって、この方法が、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含む組合せを投与することを含み、BCMAに結合する抗原結合タンパク質が、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号3のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2及び配列番号6のCDRL3を含み、PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、配列番号11のCDRH1、配列番号12のCDRH2、配列番号13のCDRH3、配列番号14のCDRL1、配列番号15のCDRL2及び配列番号16のCDRL3を含む、方法が提供される。
【0131】
一実施形態において、癌を処置する方法であって、本発明のBCMAに結合する抗原結合タンパク質又はその抗体薬物複合体のいずれか1つと、ドスタリマブ又はそれに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列相同性を含む抗体とを投与することを含む、方法が提供される。
【0132】
一実施形態において、それを必要とするヒトにおいて癌を処置する方法であって、
i)治療有効量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質、ここで、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、配列番号1のCDRH1又はそのバリアント、配列番号2のCDRH2又はそのバリアント、配列番号3のCDRH3又はそのバリアント、配列番号4のCDRL1又はそのバリアント、配列番号5のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号6のCDRL3又はそのバリアントを含む抗BCMA抗体を含み、MMAFにコンジュゲートしている免疫複合体であり;及び
ii)治療有効量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質、ここで、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号11のCDRH1又はそのバリアント、配列番号12のCDRH2又はそのバリアント、配列番号13のCDRH3又はそのバリアント、配列番号14のCDRL1又はそのバリアント、配列番号15のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号16のCDRL3又はそのバリアントを含む、
を含む治療有効量の組合せを投与することを含む、方法が提供される。
【0133】
一実施形態において、それを必要とするヒトにおいて癌を処置する方法であって、
この方法が、
i)治療有効量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質、ここで、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、配列番号1のCDRH1又はそのバリアント、配列番号2のCDRH2又はそのバリアント、配列番号3のCDRH3又はそのバリアント、配列番号4のCDRL1又はそのバリアント、配列番号5のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号6のCDRL3又はそのバリアントを含む抗BCMA抗体を含み、MMAFにコンジュゲートしている免疫複合体であり;及び
ii)治療有効量のドスタリマブ
を含む治療有効量の組合せを投与することを含み、患者が、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫を有し、組合せが、21日サイクルの1日目(Q3W)に投与される、方法が提供される。
【0134】
一実施形態において、抗BCMA抗原結合タンパク質(例えば、抗BCMA抗体又は抗BCMA ADC)及びドスタリマブを患者に投与することを含む、それを必要とするヒトにおいて癌(例えば、多発性骨髄腫)を処置する方法が提供される。
【0135】
別の実施形態において、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを患者に投与することを含む、それを必要とするヒトにおいて癌(例えば、多発性骨髄腫)を処置する方法が提供される。
【0136】
一実施形態において、約0.03mg/kg~約4.6mg/kgのベランタマブマホドチンと、約100mg~約2000mgのドスタリマブとを投与することを含む、それを必要とするヒトにおいて癌(例えば、多発性骨髄腫)を処置する方法が提供される。
【0137】
一実施形態において、約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチンと、約500mgのドスタリマブとを投与することを含む、それを必要とするヒトにおいて癌(例えば、多発性骨髄腫)を処置する方法が提供される。
【0138】
一実施形態では、21日サイクルの1日目(Q3W)に約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチンと、約500mgのドスタリマブとを投与することを含む、それを必要とするヒトにおいて癌(例えば、多発性骨髄腫)を処置する方法が提供される。
【0139】
哺乳動物における癌の腫瘍サイズが、単剤療法として使用されるBCMAに対する抗原結合タンパク質及びPD-1に結合する抗原結合タンパク質による処置と比較して、相加量よりも縮小する方法が提供される。好適には、組合せは相乗作用性であり得る。
【0140】
一実施形態において、哺乳動物は、BCMAに対する抗原結合タンパク質又はPD-1に対する抗原結合タンパク質を単剤療法として受容した哺乳動物と比較して、本明細書に記載の組合せにより処置された場合に高い生存を示す。一実施形態において、これらの方法は、それを必要とする哺乳動物に少なくとも1種の抗新生物薬を投与することをさらに含む。
【0141】
それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)での癌の処置、特に、B細胞障害の処置における使用が企図される。一実施形態において、癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態において、癌は非ホジキンリンパ腫である。
【0142】
一実施形態において、それを必要とするヒトにおいて癌(例えば、多発性骨髄腫)を処置するための組合せの使用であって、組合せが、抗BCMA抗原結合タンパク質(例えば、抗BCMA抗体又は抗BCMA ADC)及びドスタリマブを含む、使用が提供される。
【0143】
一実施形態において、それを必要とするヒトにおいて癌(例えば、多発性骨髄腫)を処置するための組合せの使用であって、組合せが、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含む、使用が提供される。
【0144】
一実施形態において、それを必要とするヒトにおいて癌(例えば、多発性骨髄腫)を処置するための組合せの使用であって、組合せが、約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチンと、約500mgのドスタリマブとを含む、使用が提供される。
【0145】
本発明では、癌、特にB細胞障害を処置するための医薬の製造における本発明の組合せ又は医薬組成物の使用もまた提供される。一実施形態において、癌は多発性骨髄腫である。別の実施形態において、癌は非ホジキンリンパ腫である。
【0146】
一実施形態では、癌(例えば、多発性骨髄腫)の処置のための医薬の製造における組合せの使用であって、組合せが、抗BCMA抗原結合タンパク質(例えば、抗BCMA抗体又は抗BCMA ADC)及びドスタリマブを含む、使用が企図される。
【0147】
一実施形態では、癌(例えば、多発性骨髄腫)の処置のための医薬の製造における組合せの使用であって、組合せが、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含む、使用が企図される。
【0148】
一実施形態では、癌(例えば、多発性骨髄腫)の処置のための医薬の製造における組合せの使用であって、組合せが、約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチンと、約500mgのドスタリマブとを含む、使用が企図される。
【0149】
一実施形態では、癌(例えば、多発性骨髄腫)の処置に使用するための組合せであって、抗BCMA抗原結合タンパク質(例えば、抗BCMA抗体又は抗BCMA ADC)及びドスタリマブを含む、組合せが企図される。
【0150】
一実施形態では、癌(例えば、多発性骨髄腫)の処置に使用するための組合せであって、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含む、組合せが企図される。
【0151】
一実施形態では、癌(例えば、多発性骨髄腫)の処置に使用するための組合せであって約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチンと、約500mgのドスタリマブとを含む、組合せが企図される。
【0152】
本発明の組合せのいずれかを含む、癌を処置するための医薬組成物もまた提供される。
【0153】
本発明はまた、本発明の医薬組成物を、1種又は2種以上の薬学的に許容可能な担体とともに含む組合せキットを提供する。キットは、必要に応じて使用説明書を含んでもよい。
【0154】
一実施形態において、本発明は、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含むキットを企図する。
【0155】
B細胞障害は、B細胞の発達/免疫グロブリン産生の欠陥(免疫不全)及び過度の/制御を欠いた増殖(リンパ腫、白血病)に分けることができる。本明細書で使用する場合、B細胞障害は両タイプの疾患を指し、B細胞障害を抗原結合タンパク質で処置する方法が提供される。
【0156】
癌、特に、B細胞介在又は形質細胞介在疾患又は抗体介在疾患又は障害の例としては、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非分泌型多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、意義不明単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、孤立性形質細胞腫(骨、髄外)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症、形質細胞白血病、原発性アミロイドーシス(AL)、H鎖病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、POEMS症候群/骨硬化性骨髄腫、I型及びII型寒冷グロブリン血症、軽鎖沈着症、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、急性糸球体腎炎、天疱瘡障害、類天疱瘡障害、及び後天性表皮水疱症;又は任意の非ホジキンリンパ腫性B細胞白血病(NHL)又はホジキンリンパ腫(HL)が挙げられる。
【0157】
特定の実施形態において、疾患又は障害は、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫性B細胞白血病(NHL)、濾胞性リンパ腫(FL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群から選択される。
【0158】
本発明の一実施形態において、疾患は、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫性B細胞白血病(NHL)である。
【0159】
本発明の一実施形態において、疾患は多発性骨髄腫である。
【0160】
好適には、本発明は、本明細書に記載されるように癌を処置する、又はその重篤度を軽減するための方法に関する。
【0161】
本発明の組合せは、単独で使用してもよいし、又は1種又は2種以上のその他の治療薬と併用してもよい。
【0162】
本発明の医薬組成物又は組合せが癌を処置するために投与される場合、本明細書で使用する用語「投与する」及びその派生語は、本明細書に記載の組合せ及び癌の処置において有用であることが知られている追加の1又は2以上の有効成分(例えば、化学療法(例えば、抗新生物薬)、放射線処置及び手術)の同時投与又は別個の逐次投与の任意の様式のいずれかを意味する。追加の1又は2以上の有効成分という用語は、本明細書で使用する場合、癌の処置を必要とする患者に投与された際に有利な特性が知られているか、又は示されている任意の化合物又は治療薬を含む。一実施形態において、投与が同時でない場合には、これらの化合物は互いにすぐ近い時間内に投与される。さらに、これらの化合物は同じ又は異なる剤形で投与され得、例えば、一方の化合物を静脈内投与し、他方の化合物を経口投与してもよい。
【0163】
一般に、処置される感受性腫瘍に対して活性を有する任意の抗新生物薬は、本発明における癌の処置において本明細書に記載の組合せとともに投与され得る。このような薬剤の例としては、Cancer Principles and Practice f Oncology by V.T. Devita and S. Hellman (editors), 6th edition (February 15, 2001), Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見出すことができる。当業者ならば、関与する薬物及び癌の特定の性質に基づいて薬剤のどの組合せが有用であるかを識別することができる。本発明において有用な典型的な抗新生物薬としては、限定されないが、微小管阻害剤、例えば、ジテルペノイド及びビンカアルカロイド;白金錯体;アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、オキシアザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素及びトリアゼン;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、アクチノマイシン及びブレオマイシン;トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、エピポドフィロトキシン;代謝拮抗物質、例えば、プリン類似体、ピリミジン類似体及び葉酸拮抗化合物;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、カンプトテシン;ホルモン及びホルモン類似体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体型チロシンキナーゼ血管新生阻害剤;免疫治療剤;アポトーシス促進剤;及び細胞周期シグナル伝達阻害剤が含まれる。抗新生物薬の非限定的な例を本明細書に示す。
【0164】
本明細書に記載の組合せとともに投与するための追加の1種又は2種以上の有効成分の例は化学療法剤である。
【0165】
微小管阻害剤又は有糸分裂阻害剤は、細胞周期のM期、すなわち有糸分裂期の腫瘍細胞の微小管に対して活性である細胞周期特異的薬剤である。微小管阻害剤の例としては、限定されないが、ジテルペノイド及びビンカアルカロイドが挙げられる。
【0166】
ジテルペノイドは、天然源に由来し、細胞周期のG2/M期に作用する細胞周期特異的抗癌剤である。ジテルペノイドは、微小管のβ-チューブリンサブユニットと結合することによりこのタンパク質を安定化させると考えられている。次いで、タンパク質の分解が阻害され、有糸分裂が停止し、細胞死をたどると思われる。ジテルペノイドの例としては、限定されないが、パクリタキセル及びその類似体であるドセタキセルが挙げられる。
【0167】
パクリタキセル、5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサ-ヒドロキシタクス-11-エン-9-オン4,10-ジアセテート2-ベンゾエートの(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンとの13-エステルは、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)から単離された天然ジテルペン生成物であり、注射液タキソールとして市販されている。パクリタキセルは、テルペンのタキサンファミリーのメンバーである。パクリタキセルは、1971年に、Wani et al. J. Am. Chem, Soc., 93:2325. 1971)によって初めて単離され、彼らは化学的方法及びX線結晶学的方法によってその構造を同定した。その活性の一つの機序は、パクリタキセルの、チューブリンに結合することで癌細胞の増殖を阻害する能力に関連する。Schiff et al., Proc. Natl, Acad, Sci. USA, 77:1561-1565 (1980); Schiff et al., Nature, 277:665-667 (1979); Kumar, J. Biol, Chem, 256: 10435-10441 (1981)。数種のパクリタキセル誘導体の合成及び抗癌活性に関する総説としては、D. G. I. Kingston et al., Studies in Organic Chemistry vol. 26, entitled “New trends in Natural Products Chemistry 1986”, Attaur-Rahman, P.W. Le Quesne編(Elsevier, Amsterdam, 1986) pp 219-235を参照。
【0168】
パクリタキセルは、米国において、難治性卵巣癌の処置における臨床的使用(Markman et al., Yale Journal of Biology and Medicine, 64:583, 1991; McGuire et al., Ann. lntem, Med., 111:273,1989)及び乳癌の処置(Holmes et al., J. Nat. Cancer Inst., 83:1797,1991)に承認されている。パクリタキセルは、皮膚における新生物(Einzig et. al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 20:46)及び頭頸部癌(Forastire et. al., Sem. Oncol., 20:56, 1990)の処置のための潜在的候補である。またこの化合物は、多発性嚢胞腎疾患(Woo et. al., Nature, 368:750. 1994)、肺癌、及びマラリアの処置にも可能性を示している。パクリタキセルで患者を処置すると、閾値濃度(50nM)を超える投与期間に関連して(Kearns, C.M. et. al., Seminars in Oncology, 3(6) p.16-23, 1995)、骨髄抑制が起こる(複数の細胞系譜、Ignoff, R.J. et. al, Cancer Chemotherapy Pocket Guide, 1998)。
【0169】
ドセタキセル、(2R,3S)-N-カルボキシ-3-フェニルイソセリン,N-tert-ブチルエステルの5β-20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタクス-11-エン-9-オン4-アセテート2-ベンゾエートとの13-エステルの三水和物は、注射液としてタキソテールとして市販されている。ドセタキセルは、乳癌の処置に指示される。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの針葉から抽出した天然の前駆物質10-デアセチル-バッカチンIIIを使用して製造された、パクリタキセル(前項目参照)の半合成誘導体である。ドセタキセルの用量制限毒性は好中球減少症である。
【0170】
ビンカアルカロイドは、ニチニチソウ由来の細胞周期特異的な抗新生物薬である。ビンカアルカロイドは、チューブリンと特異的に結合することによって細胞周期のM期(有糸分裂)に作用する。その結果、結合されたチューブリン分子は、微小管に重合することができない。有糸分裂は中期で停止し、細胞死をたどると考えられている。ビンカアルカロイドの例としては、限定されないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビンが挙げられる。
【0171】
ビンブラスチン、硫酸ビンカロイコブラスチンは、注射液としてベルバン(VELBAN)として市販されている。ビンブラスチンは、種々の固形腫瘍の第二選択療法として指示される可能性があるが、精巣癌、ホジキン病、リンパ球性リンパ腫及び組織球性リンパ腫を含む種々のリンパ腫の処置に主として指示される。骨髄抑制がビンブラスチンの用量制限副作用である。
【0172】
ビンクリスチン、ビンカロイコブラスチンの22-オキソ-硫酸塩は、注射液としてオンコビン(ONCOVIN)として市販されている。ビンクリスチンは、急性白血病の処置に指示されており、ホジキン及び非ホジキン悪性リンパ腫の処置計画の中でも使用されている。脱毛及び神経学的作用がビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、程度は低いが、骨髄抑制及び胃腸粘膜炎作用が生じる。
【0173】
酒石酸ビノレルビンの注射液(ナベルビン(NAVELBINE))として市販されているビノレルビン、3’,4’-ジデヒドロ-4’-デオキシ-C’-ノルビンカロイコブラスチン[R-(R*,R*)-2,3-ジヒドロキシブタン二酸(1:2)(塩)]は、半合成ビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、単剤として、又はその他の化学療法剤、例えば、シスプラチンと組み合わせて、種々の固形腫瘍、特に、非小細胞肺癌、進行性乳癌及びホルモン不応性前立腺癌の処置に指示される。骨髄抑制がビノレルビンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0174】
白金配位錯体は、非細胞周期特異的な抗癌剤であり、DNAと相互作用する。白金錯体は、腫瘍細胞に侵入し、アクア化を受け、DNAとの鎖内架橋及び鎖間架橋を形成し、腫瘍に対して有害な生物学的作用を引き起こす。白金配位錯体の例としては、限定されないが、シスプラチン及びカルボプラチンが挙げられる。
【0175】
シスプラチン、シス-ジアンミンジクロロ白金は、注射液としてプラチノール(PLATINOL)として市販されている。シスプラチンは、主として転移性の精巣癌及び卵巣癌並びに進行性膀胱癌の処置に指示される。シスプラチンの主要な用量制限副作用は、腎毒性(これは水分補給及び利尿により管理できる)及び耳毒性である。
【0176】
カルボプラチン、ジアンミン[1,1-シクロブタン-ジカルボキシレート(2-)-O,O’]白金は、注射液としてパラプラチン(PARAPLATIN)として市販されている。カルボプラチンは、主として進行性卵巣癌の第一選択及び第二選択処置に指示される。骨髄抑制がカルボプラチンの用量制限毒性である。
【0177】
アルキル化剤は、非細胞周期特異的な抗癌剤(non-phase anti-cancer specific agents)であり、且つ、強力な求電子試薬である。一般に、アルキル化剤は、DNA分子の求核部分、例えば、リン酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基及びイミダゾール基を介して、アルキル化によって、DNAと共有結合を形成する。このようなアルキル化によって核酸機能が破壊され細胞死に至る。アルキル化剤の例としては、限定されないが、ナイトロジェンマスタード、例えば、シクロホスファミド、メルファラン及びクロラムブシル;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン;トリアゼン、例えば、ダカルバジンが挙げられる。
【0178】
シクロホスファミド、2-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ-2H-1,3,2-オキシアザホスホリン2-オキシド一水和物は、注射液又は錠剤としてシトキサン(CYTOXAN)として市販されている。シクロホスファミドは、単剤として、又はその他の化学療法剤と組み合わせて、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫及び白血病の処置に指示される。脱毛症、悪心、嘔吐及び白血球減少症がシクロホスファミドの最も一般的な用量制限副作用である。
【0179】
メルファラン、4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-L-フェニルアラニンは、注射液又は錠剤としてアルケラン(ALKERAN)として市販されている。メルファランは、多発性骨髄腫及び切除不能な卵巣上皮癌の待期療法に指示される。骨髄抑制がメルファランの最も一般的な用量制限副作用である。
【0180】
クロラムブシル、4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、ロイケラン(LEUKERAN)錠剤として市販されている。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病及び悪性リンパ腫(例えば、リンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫及びホジキン病)の緩和医療に指示される。骨髄抑制がクロラムブシルの最も一般的な用量制限副作用である。
【0181】
ブスルファン、ジメタンスルホン酸1,4-ブタンジオールは、マイレラン(MYLERAN)錠剤として市販されている。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の緩和医療に指示される。骨髄抑制がブスルファンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0182】
カルムスチン、1,3-[ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソ尿素は、BiCNUとして凍結乾燥物質の単一バイアルとして市販されている。カルムスチンは、脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫用に、単剤として、又はその他の薬剤と組み合わせて、緩和医療に指示される。遅延型骨髄抑制がカルムスチンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0183】
ダカルバジン、5-(3,3-ジメチル-1-トリアゼノ)-イミダゾール-4-カルボキサミドは、材料の単一バイアルとしてDTIC-Domeとして市販されている。ダカルバジンは、転移性悪性黒色腫の処置、及びその他の薬剤と組み合わせてホジキン病の第二選択処置に指示される。悪心、嘔吐及び食欲不振症がダカルバジンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0184】
抗生物質系抗新生物薬は、非細胞周期特異的な薬剤であり、DNAと結合するか又はDNAにインターカレートする。一般に、このような作用によって安定なDNA複合体又は鎖の切断を生じ、それにより核酸の通常機能が乱れ、細胞死に至る。抗生物質系抗新生物薬の例としては、限定されないが、アクチノマイシン、例えば、ダクチノマイシン;アントロサイクリン、例えば、ダウノルビシン及びドキソルビシン;及びブレオマイシンが挙げられる。
【0185】
ダクチノマイシンは、アクチノマイシンDとしても知られ、注射液の形態でコスメゲン(COSMEGEN)として市販されている。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍及び横紋筋肉腫の処置に指示される。悪心、嘔吐及び食欲不振症がダクチノマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0186】
ダウノルビシン、(8S-シス-)-8-アセチル-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リクソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、リポソーム注射形態としてダウノキソーム(DAUNOXOME)として、又は注射液としてセルビジン(CERUBIDINE)として市販されている。ダウノルビシンは、急性非リンパ球性白血病及び進行性HIV関連カポジ肉腫の処置における寛解導入に指示される。骨髄抑制がダウノルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0187】
ドキソルビシン、(8S,10S)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リクソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-8-グリコロイル,7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、注射可能な形態としてルベックス(RUBEX)又はアドリアマイシンRDF(ADRIAMYCIN RDF)として市販されている。ドキソルビシンは、主として急性リンパ芽球性白血病及び急性骨髄芽球性白血病の処置に指示されるが、いくつかの固形腫瘍及びリンパ腫の処置における有用成分でもある。骨髄抑制がドキソルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0188】
ブレオマイシン、ストレプトミセス・ヴェルチシルス(Streptomyces verticillus)の株から単離された細胞傷害性グリコペプチド系抗生物質の混合物は、ベレノキサン(BLENOXANE)として市販されている。ブレオマイシンは、単剤として、又はその他の薬剤と組み合わせて、扁平上皮癌、リンパ腫及び精巣癌の緩和医療に指示される。肺及び皮膚毒性がブレオマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0189】
トポイソメラーゼII阻害剤としては、限定されないが、エピポドフィロトキシンが挙げられる。
【0190】
エピポドフィロトキシンは、マンドレイク植物由来の細胞周期特異的な抗新生物薬である。エピポドフィロトキシンは、一般に、トポイソメラーゼIIとDNAとの三元複合体を形成してDNA鎖の切断を引き起こすことによって、細胞周期のS期及びG2期において細胞に影響を及ぼす。この鎖切断が蓄積し、細胞死をたどる。エピポドフィロトキシンの例としては、限定されないが、エトポシド及びテニポシドが挙げられる。エピポドフィロトキシンの例としては、限定されないが、エトポシド及びテニポシドが挙げられる。
【0191】
エトポシド、4’-デメチル-エピポドフィロトキシン9[4,6-0-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド]は、注射液又はカプセル剤としてベプシド(VePESID)として市販されており、一般にVP-16として知られている。エトポシドは、単剤として、又はその他の化学療法剤と組み合わせて、精巣癌及び非小細胞肺癌の処置に指示される。白血球減少症の罹患率は血小板減少症よりも深刻である傾向がある。
【0192】
テニポシド、4’-デメチル-エピポドフィロトキシン9[4,6-0-(R)-テニリデン-β-D-グルコピラノシド]は、注射液としてブモン(VUMON)として市販されており、一般にVM-26として知られている。テニポシドは、単剤として、又はその他の化学療法剤と組み合わせて、小児における急性白血病の処置に指示される。骨髄抑制がテニポシドの最も一般的な用量制限副作用である。テニポシドは、白血球減少症及び血小板減少症の両方を含み得る。
【0193】
代謝拮抗性抗新生物薬は、DNA合成を阻害すること、又はプリン若しくはピリミジン塩基の合成を阻害し、それによりDNA合成を制限することによって細胞周期のS期(DNA合成)に作用する、細胞周期特異的な抗新生物薬である。その結果、S期は進行せず、細胞死をたどる。代謝拮抗性抗新生物薬の例としては、限定されるものではないが、フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メカプトプリン(mecaptopurine)、チオグアニン及びゲムシタビンが挙げられる。
【0194】
5-フルオロウラシル、5-フルオロ-2,4-(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして市販されている。5-フルオロウラシルを投与すると、チミジル酸合成が阻害され、さらにRNA及びDNAの両方に組み込まれる。その結果は一般に細胞死である。5-フルオロウラシルは、単剤として、又はその他の化学療法剤と組み合わせて、乳癌、結腸癌、直腸癌、胃癌及び膵癌の処置に指示される。骨髄抑制及び粘膜炎が5-フルオロウラシルの用量制限副作用である。その他のフルオロピリミジン類似体としては、5-フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)及び5-フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
【0195】
シタラビン、4-アミノ-1-β-D-アラビノフラノシル-2(1H)-ピリミジノンは、シトサール-U(CYTOSAR-U)として市販されており、一般にAra-Cとして知られている。シタラビンは、成長中のDNA鎖へのシタラビンの末端組み込みによってDNA鎖の伸長を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示すと考えられている。シタラビンは、単剤として、又はその他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の処置に指示される。その他のシチジン類似体としては、5-アザシチジン及び2’,2’-ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。シタラビンには、白血球減少症、血小板減少症及び粘膜炎が含まれる。
【0196】
メルカプトプリン、1,7-ジヒドロ-6H-プリン-6-チオン一水和物は、プリントール(PURINETHOL)として市販されている。メルカプトプリンは、現時点でまだ特定されていないメカニズムによってDNA合成を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示す。メルカプトプリンは、単剤として、又はその他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の処置に指示される。骨髄抑制及び消化管粘膜炎が高用量でのメルカプトプリンの予想される副作用である。有用なメルカプトプリン類似体はアザチオプリンである。
【0197】
チオグアニン、2-アミノ-1,7-ジヒドロ-6H-プリン-6-チオンは、タブロイド(TABLOID)として市販されている。チオグアニンは、現時点でまだ特定されていないメカニズムによってDNA合成を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示す。チオグアニンは、単剤として、又はその他の化学療法剤と組み合わせて、急性白血病の処置に指示される。白血球減少症、血小板減少症及び貧血を含む骨髄抑制がチオグアニン投与の最も一般的な用量制限副作用である。しかしながら、消化管副作用も起こり、用量制限となり得る。他のプリン類似体としては、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビン及びクラドリビンが挙げられる。
【0198】
ゲムシタビン、2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン一塩酸塩(β-異性体)は、ジェムザール(GEMZAR)として市販されている。ゲムシタビンは、S期にて、またG1/S境界を通過する細胞の進行を遮断することによって、細胞期特異性を示す。ゲムシタビンは、シスプラチンと組み合わせて局所進行性非小細胞肺癌の処置に指示され、単独で局所進行性膵癌の処置に指示される。白血球減少症、血小板減少症及び貧血を含む骨髄抑制がゲムシタビン投与の最も一般的な用量制限副作用である。
【0199】
メトトレキサート、N-[4[[(2,4-ジアミノ-6-プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]-L-グルタミン酸は、メトトレキサートナトリウムとして市販されている。メトトレキサートは、プリンヌクレオチド及びチミジル酸の合成に必要とされるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を介して、DNAの合成、修復及び/又は複製を阻害することによって、特にS期に細胞周期作用を示す。メトトレキサートは、単剤として、又はその他の化学療法剤と組み合わせて、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫、乳癌、頭部癌、頸部癌、卵巣癌及び膀胱癌の処置に指示される。骨髄抑制(白血球減少症、血小板減少症及び貧血)及び粘膜炎がメトトレキサート投与の予想される副作用である。
【0200】
カンプトテシン及びカンプトテシン誘導体を含むカンプトテシン類は、トポイソメラーゼI阻害剤として入手可能又は開発中である。カンプトテシン細胞傷害活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性に関連すると考えられている。カンプトテシンの例としては、限定されないが、イリノテカン、トポテカン、及び下記の7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20-カンプトテシンの種々の光学形態が挙げられる。
【0201】
イリノテカンHCl、(4S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-9-[(4-ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]-1H-ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオン塩酸塩は、注射液カンプトサール(CAMPTOSAR)として市販されている。
【0202】
イリノテカンは、その活性代謝物SN-38とともにトポイソメラーゼI-DNA複合体と結合する、カンプトテシンの誘導体である。細胞傷害性は、トポイソメラーゼI:DNA:イリンテカン又はSN-38の三元複合体と複製酵素との相互作用により引き起こされる回復不能な二本鎖切断の結果として生じると考えられている。イリノテカンは、結腸又は直腸の転移性癌の処置に指示される。イリノテカンHClの用量制限副作用は、骨髄抑制(例えば、好中球減少症)及びGI作用(例えば、下痢)である。
【0203】
トポテカンHCl、(S)-10-[(ジメチルアミノ)メチル]-4-エチル-4,9-ジヒドロキシ-1H-ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14-(4H,12H)-ジオン一塩酸塩は、注射液ハイカムチン(HYCAMTIN)として市販されている。トポテカンは、トポイソメラーゼI-DNA複合体と結合して、DNA分子のねじれ歪みに応答してトポイソメラーゼIにより引き起こされる一本鎖切断の再連結を妨げるカンプトテシンの誘導体である。トポテカンは、転移性の卵巣癌及び小細胞肺癌の第二選択下痢に指示される。トポテカンHClの用量制限副作用は骨髄抑制、主として好中球減少症である。
【0204】
また、ラセミ混合物(R,S)形態並びにR及びS鏡像異性体を含む、現在開発中の下式A:
【化5】
のカンプトテシン誘導体も注目され、化学名7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20(R,S)-カンプトテシン(ラセミ混合物)又は7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20(R)-カンプトテシン(R鏡像異性体)又は7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20(S)-カンプトテシン(S鏡像異性体)として知られる。このような化合物及び関連化合物は、製造方法を含め、米国特許第6,063,923号;第5,342,947号;第5,559,235号;第5,491,237号及び1997年11月24日出願の係属中米国特許出願第08/977,217号に記載されている。
【0205】
ホルモン及びホルモン類似体は、ホルモンと癌の増殖及び/又は増殖の欠如との間に関係がある癌を処置するために有用な化合物である。癌処置に有用なホルモン及びホルモン類似体の例としては、限定されないが、小児の悪性リンパ腫及び急性白血病の処置において有用な副腎皮質ステロイド、例えば、プレドニゾン及びプレドニゾロン;副腎皮質癌及びホルモン依存性乳癌(例えば、エストロゲン受容体依存性乳癌)の処置において有用な、アミノグルテチミド及びその他のアロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール、レトラゾール、ボラゾール、及びエキセメスタン;ホルモン依存性乳癌及び子宮内膜癌の処置において有用なプロゲクチン、例えば、酢酸メゲストロール;前立腺癌及び良性前立腺肥大の処置において有用なエストロゲン、アンドロゲン及び抗アンドロゲン作用薬、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン及び5α-レダクターゼ、例えば、フィナステリド及びデュタステライド;ホルモン依存性乳癌及びその他の感受性癌の処置において有用な抗エストロゲン作用薬、例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン並びに選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMS)、例えば、米国特許第5,681,835号、同第5,877,219号及び同第6,207,716号に記載されているもの;並びに前立腺癌の処置のために黄体形成ホルモン(LH)及び/又は卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)及びその類似体、例えば、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト、例えば、酢酸ゴセレリン及びルプロリドが挙げられる。
【0206】
レトロゾール(商標フェマーラ)は、術後のホルモン応答性乳癌の処置のための経口非ステロイド系アロマターゼ阻害剤である。エストロゲンは、アロマターゼ酵素の活性を介したアンドロゲンの変換により産生される。次いで、エストロゲンはエストロゲン受容体と結合し、細胞を分裂させる。レトロゾールは、そのシトクロムP450単位のヘムに競合的可逆的に結合することによりアロマターゼのエストロゲン産生を妨げる。この作用は特殊であり、レトロゾールは鉱質又はコルチコステロイドの産生を低下させない。
【0207】
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内変化を引き起こす化学プロセスを遮断又は阻害する阻害剤である。本明細書で使用する場合、この変化は細胞増殖又は分化である。本発明において有用なシグナル伝達阻害剤としては、限定されないが、受容体チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断剤、セリン/トレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達及びRas癌遺伝子の阻害剤が含まれる。
【0208】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与する種々のタンパク質の特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。このようなタンパク質チロシンキナーゼは、大きく受容体又は非受容体型キナーゼとして分類することができる。
【0209】
受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン及びチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは細胞増殖の調節に関与し、一般に、成長因子受容体と呼ばれる。これらのキナーゼの多くの不適当な又は制御を欠いた活性化、すなわち、例えば、過剰発現又は変異による異常なキナーゼ成長因子受容体活性は、制御を欠いた細胞増殖をもたらすことが示されている。よって、このようなキナーゼの異常な活性は悪性組織増殖に関連付けられている。結果として、このようなキナーゼの阻害剤は癌処置法を提供することができる。成長因子受容体には、例えば、上皮細胞成長因子受容体(EGFr)、血小板由来成長因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮成長因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様及び上皮細胞成長因子同一性ドメインを有するチロシンキナーゼ(tyrosine kinase with immunoglobulin-like and epidermal growth factor homology domains)(TIE-2)、インスリン成長因子-I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkB及びTrkC)、エフリン(eph)受容体及びRET癌原遺伝子が挙げられる。増殖受容体のいくつかの阻害剤が開発下にあり、リガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。成長因子受容体及び成長因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えば、Kath, John C., Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(6):803-818; Shawver et al DDT Vol 2, No. 2 February 1997;及びLofts, F. J. et al, “Growth factor receptors as targets”, New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Workman, Paul and Kerr, David編, CRC press 1994, Londonに記載
されている。
【0210】
成長因子受容体キナーゼでないチロシンキナーゼは、非受容体型チロシンキナーゼである。抗癌剤の標的又は潜在的標的となる、本発明において有用な非受容体型チロシンキナーゼには、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(接着斑キナーゼ)、ブルトン型チロシンキナーゼ及びBcr-Ablが含まれる。このような非受容体型キナーゼ及び非受容体型チロシンキナーゼ機能を阻害する薬剤は、Sinh, S. and Corey, S.J., (1999) Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8 (5): 465-80;及びBolen, J.B., Brugge, J.S., (1997) Annual review of Immunology. 15: 371-404に記載されている。
【0211】
SH2/SH3ドメイン遮断剤は、PI3-K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)及びRas-GAPをはじめとする、様々な酵素又はアダプタータンパク質においてSH2又はSH3ドメイン結合を妨害する薬剤である。抗癌剤の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall, T.E. (1995), Journal of Pharmacological and Toxicological Methods. 34(3) 125-32に記載されている。
【0212】
セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤、例えば、MAPキナーゼカスケード遮断剤、これには、Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェン又は細胞外調節キナーゼ(Mitogen or Extracellular Regulated Kinase)(MEK)、及び細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断剤;及びPKC(α、β、γ、ε、μ、λ、ι、ζ)の遮断剤を含むタンパク質キナーゼCファミリーメンバー遮断剤が含まれる。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、AKTキナーゼファミリーメンバー、及びTGFβ受容体キナーゼ。このようなセリン/トレオニンキナーゼ及びそれらの阻害剤は、Yamamoto, T., Taya, S., Kaibuchi, K., (1999), Journal of Biochemistry. 126 (5) 799-803; Brodt, P, Samani, A., and Navab, R. (2000), Biochemical Pharmacology, 60. 1101-1107; Massague, J., Weis-Garcia, F. (1996) Cancer Surveys. 27:41-64; Philip, P.A., and Harris, A.L. (1995), Cancer Treatment and Research. 78: 3-27, Lackey, K. et al Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, (10), 2000, 223-226;米国特許第6,268,391号;及びMartinez-Iacaci, L., et al, Int. J. Cancer (2000), 88(1), 44-52に記載されている。
【0213】
ホスファチジルイノシトール-3キナーゼファミリーメンバーの阻害剤、例えば、PI3-キナーゼ、ATM、DNA-PK及びKuの遮断剤もまた本発明において有用である。このようなキナーゼは、Abraham, R.T. (1996), Current Opinion in Immunology. 8 (3) 412-8; Canman, C.E., Lim, D.S. (1998), Oncogene 17 (25) 3301-3308; Jackson, S.P. (1997), International Journal of Biochemistry and Cell Biology. 29 (7):935-8; and Zhong, H. et al, Cancer res, (2000) 60(6), 1541-1545に記載されている。
【0214】
ホスホリパーゼC遮断剤及びミオイノシトール類似体等のミオイノシトールシグナル伝達阻害剤もまた本発明において有用である。このようなシグナル阻害剤は、Powis, G., and Kozikowski A., (1994) New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Paul Workman and David Kerr編, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0215】
シグナル伝達経路阻害剤の別の群は、Ras癌遺伝子の阻害剤である。このような阻害剤には、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル-ゲラニルトランスフェラーゼ、及びCAAXプロテアーゼの阻害剤、並びにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム及び免疫療法が含まれる。このような阻害剤は、野生型突然変異rasを含有する細胞においてras活性化を遮断し、それにより抗増殖薬として作用することが示されている。Ras癌遺伝子阻害は、Scharovsky, O.G., Rozados, V.R., Gervasoni, S.I. Matar, P. (2000), Journal of Biomedical Science. 7(4) 292-8; Ashby, M.N. (1998), Current Opinion in Lipidology. 9 (2) 9-102; and Bennett, C.F. and Cowsert, L.M. BioChim. Biophys. Acta, (1999) 1489(1):19-30で考察されている。
【0216】
前述のように、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体アンタゴニストもまたシグナル伝達阻害剤として働き得る。この群のシグナル伝達経路阻害剤には、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体の使用が含まれる。例えば、Imclone C225 EGFR特異的抗体(Green, M.C. et al, Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors, Cancer Treat. Rev., (2000), 26(4), 269-286参照)ハーセプチンerbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kinases, Breast cancer Res., 2000, 2(3), 176-183参照);及び2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken, R.A. et al, Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti-VEGF antibody blocks tumor growth in mice, Cancer Res. (2000) 60, 5117-5124参照)。
【0217】
非受容体型キナーゼ血管新生阻害剤もまた、本発明において使用が見出せる。血管新生関連VEGFR及びTIE2の阻害剤は、シグナル伝達阻害剤に関して上述されている(両受容体とも受容体型チロシンキナーゼである)。erbB2及びEGFRの阻害剤は血管新生、主としてVEGF発現を阻害することが示されているので、血管新生は一般に、erbB2/EGFRシグナル伝達に関連する。よって、erbB2/EGFR阻害剤と血管新生阻害剤の組合せは意味を成す。したがって、非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤は、本発明のEGFR/erbB2阻害剤と併用可能である。例えば、VEGFR(受容体型チロシンキナーゼ)を認識しないがそのリガンドと結合する抗VEGF抗体;血管新生を阻害するインテグリン(αvβ3)の小分子阻害剤;エンドスタチン及びアンギオスタチン(非RTK)も、開示されているerbファミリー阻害剤と組み合わせると有用であることが分かり得る(Bruns CJ et al (2000), Cancer Res., 60: 2926-2935; Schreiber AB, Winkler ME, and Derynck R. (1986), Science, 232: 1250-1253; Yen L et al. (2000), Oncogene 19: 3460-3469参照)。
【0218】
パゾパニブは、ボトリエントとして市販されており、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。パゾパニブは、化学名5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸塩の、塩酸塩として提供されている。パゾパニブは、進行性腎細胞癌患者の処置に承認されている。
【0219】
ベバシスマブは、アバスチンとして市販されており、VEGF-Aを遮断するヒト化モノクローナル抗体である。アバスチンは、様々な癌、例えば、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、腎癌及び膠芽腫の処置に承認されている。
【0220】
リツキシマブは、キメラモノクローナル抗体であり、リツキサン及びマブセラとして市販されている。リツキシマブは、B細胞上のCD20と結合し、細胞アポトーシスを引き起こす。リツキシマブは静脈内に投与され、関節リウマチ及びB細胞非ホジキンリンパ腫の処置に承認されている。
【0221】
オファツムマブは、完全ヒトモノクローナル抗体であり、アルゼラとして市販されている。オファツムマブは、B細胞上のCD20と結合し、フルダラビン(フルダラ)及びアレムツズマブ(キャンパス)処置に不応の成人において慢性リンパ球性白血病(CLL;白血球の癌の一種)を処置するために使用されている。
【0222】
トラスツズマブ(ハーセプチン)は、HER2受容体と結合するヒト化モノクローナル抗体である。その元の適応はHER2陽性乳癌である。トラスツズマブエメタシン(商標カドサイラ)は、細胞傷害性薬剤(DM1と連結されたモノクローナル抗体トラスツズマブ(ハーセプチン)からなる抗体薬物複合体である。トラスツズマブは単独で、HER2/neu受容体と結合することにより癌細胞の増殖を停止させ、一方、DM1は細胞に入ってチューブリンと結合することによりそれらを破壊する。このモノクローナル抗体はHER2を標的とし、HER2は癌細胞においてのみ過剰発現されるので、この複合体は毒素を腫瘍細胞に特異的に送達する。この複合体はT-DM1と略される。
【0223】
セツキシマブ(エルビタックス)は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)を阻害するキメラマウスヒト抗体である。
【0224】
mTOR阻害剤としては、限定されないが、ラパマイシン(FK506)及びラパログ、RAD001又はエベロリムス(アフィニトール)、CCI-779又はテムシロリムス、AP23573、AZD8055、WYE-354、WYE-600、WYE-687及びPp121が挙げられる。
【0225】
エベロリムスは、ノバルティス社によりアフィニトールとして販売され、シロリムスの40-O-(2-ヒドロキシエチル)誘導体であり、シロリムスと同様にmTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的)阻害剤として働く。エベロリムスは現在、臓器移植拒絶の予防及び腎細胞癌の処置のために免疫抑制剤として使用されている。また、複数の癌に使用するためにエベロリムス及びその他のmTOR阻害剤に対して多くの研究が行われてきた。エベロリムスは以下の化学構造(式II):
【化6】
を有し、化学名はジヒドロキシ-12-[(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メトキシシクロヘキシル]プロパン-2-イル]-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペントンである。
【0226】
ベキサロテンは、ターグレチンとして販売され、レチノイドX受容体(RXR)を選択的に活性化するレチノイドのサブクラスのメンバーである。これらのレチノイド受容体は、レチノイン酸受容体(RAR)とは異なる生物活性を有する。化学名は4-[1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]安息香酸である。ベキサロテンは、疾患が少なくとも1種のその他の投薬で上手く処置され得なかった人において、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL、皮膚癌の一種)を処置するために使用される。
【0227】
ソラフェニブは、ネクサバールとして市販されており、マルチキナーゼ阻害剤と呼ばれる薬剤の一種である。その化学名は、4-[4-[[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]-N-メチル-ピリジン-2-カルボキサミドである。ソラフェニブは、進行性腎細胞癌(腎臓で始まる癌の一種)を処置するために使用される。ソラフェニブはまた、切除不能肝細胞癌(手術で処置不能な肝臓癌の一種)を処置するためにも使用される。
【0228】
免疫療法計画に使用される薬剤もまた式(I)の化合物を組み合わせて有用であり得る。erbB2又はEGFRに対する免疫応答を生成するためには複数の免疫戦略がある。これらの戦略は一般に腫瘍ワクチン接種の領域である。免疫アプローチの有効性は、小分子阻害剤を用いたerbB2/EGFRシグナル伝達経路の複合阻害を介して大幅に増強され得る。erbB2/EGFRに対する免疫/腫瘍ワクチンアプローチの考察は、Reilly RT et al. (2000), Cancer Res. 60: 3569-3576;及びChen Y, Hu D, Eling DJ, Robbins J, and Kipps TJ. (1998), Cancer Res. 58: 1965-1971に見出すことができる。
【0229】
erbB阻害剤の例としては、ラパチニブ、エルロチニブ及びゲフィチニブが挙げられる。ラパチニブ、N-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン(示されているように式III:
【化7】
で表される)は、HER2-陽性転移性乳癌の処置にカペシタビンと組み合わせて承認されている、強力な経口、小分子の、erbB-1及びerbB-2(EGFR及びHER2)チロシンキナーゼの二重阻害剤である。式(III)の化合物の遊離塩基、HCl塩、及び二トシル酸は、1999年7月15日公開のWO99/35146;及び2002年1月10日公開のWO02/02552に開示されている手順に従って製造することができる。
【0230】
エルロチニブ、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-4-キナゾリンアミンは、商標タルセバとして市販されており、示されているように式IV:
【化8】
で表される。エルロチニブの遊離塩基及びHCl塩は、例えば米国特許第5,747,498号の実施例20に従って製造することができる。
【0231】
ゲフィチニブ、4-キナゾリンアミン,N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-4-モルホリン)プロポキシ]は、示されるような式V:
【化9】
で表される。ゲフィチニブは、商標イレッサ(Astra-Zenenca)として市販されており、白金に基づく及びドセタキセルの両化学療法が上手くいかなかった後に局所進行性又は転移性非小細胞肺癌患者の処置に単剤療法として指示されるerbB-1阻害剤である。ゲフィチニブの遊離塩基、HCl塩、及び二HCl塩は、1996年4月23日に出願され、1996年10月31日にWO96/33980として公開された国際特許出願PCT/GB96/0096の手順に従って製造することができる。
【0232】
トラスツズマブ(ハーセプチン)は、HER2受容体と結合するヒト化モノクローナル抗体である。その元の適応は、HER2陽性乳癌である。
【0233】
セツキシマブ(エルビタックス)は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)を阻害するキメラマウスヒト抗体である。
【0234】
ペルツズマブ(2C4とも呼ばれる、商標オムニターグ)は、モノクローナル抗体である。「HER二量体化阻害剤」と呼ばれる薬剤系列のそのクラスの筆頭。HER2と結合することにより、それはHER2とその他のHER受容体との二量体化を阻害し、腫瘍増殖の緩徐化をもたらすと推測されている。ペルツズマブは2001年1月4日公開のWO01/00245に記載されている。
【0235】
リツキシマブは、キメラモノクローナル抗体であり、リツキサン及びマブセラとして市販されている。リツキシマブは、B細胞上のCD20と結合し、細胞アポトーシスを引き起こす。リツキシマブは静脈内に投与され、関節リウマチ及びB細胞非ホジキンリンパ腫の処置に承認されている。
【0236】
オファツムマブは、完全ヒトモノクローナル抗体であり、アルゼラとして市販されている。オファツムマブは、B細胞上のCD20と結合し、フルダラビン(フルダラ)及びアレムツズマブ(キャンパス)処置に不応の成人において慢性リンパ球性白血病(CLL;白血球の癌の一種)を処置するために使用されている。
【0237】
アポトーシス誘導レジメンに使用される薬剤(例えば、bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド)もまた、本発明の組合せにおいて使用可能である。Bcl-2ファミリータンパク質のメンバーはアポトーシスを遮断する。したがって、bcl-2の上方制御は化学耐性に関連付けられている。研究によれば、上皮細胞成長因子(EGF)はbcl-2ファミリーの抗アポトーシスメンバー(すなわち、mcl-1)を刺激することが示されている。したがって、腫瘍においてbcl-2の発現を下方制御するように設計された戦略は、実証された臨床利益を有し、現在、第II/III相治験下にある(すなわち、GentaのG3139 bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド)。
bcl-2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド戦略を使用するこのようなアポトーシス誘導戦略は、Water JS et al. (2000), J. Clin. Oncol. 18: 1812-1823;及びKitada S et al. (1994), Antisense Res. Dev. 4: 71-79に考察されている。
【0238】
細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるタンパク質キナーゼファミリー及びそれらとサイクリンと呼ばれるタンパク質ファミリーとの相互作用が、真核細胞周期の進行を制御している。細胞周期の正常な進行には、種々のサイクリン/CDK複合体の協調した活性化及び不活化が不可欠である。細胞周期シグナル伝達のいくつかの阻害剤が開発下にある。例えば、CDK2、CDK4及びCDK6をはじめとするサイクリン依存性キナーゼ及びそれらの阻害剤の例は、例えば、Rosania et al, Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(2):215-230に記載されている。
【0239】
本明細書で使用する場合、「免疫調節薬」は、モノクローナル抗体を含め、免疫系に作用するいずれの物質も意味する。本発明のPD-1抗原結合タンパク質は、免疫調節薬と見なすことができる。免疫調節薬は癌の処置のために抗新生物薬として使用され得る。例えば、免疫調節薬としては、限定されないが、抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブ(ヤーボイ)及び抗PD-1抗体(オプジーボ/ニボルマブ及びキートルーダ/ペンブロリズマブ)が含まれる。その他の免疫調節薬としては、限定されないが、OX-40抗体、PD-L1抗体、LAG3抗体、TIM-3抗体、41BB抗体及びGITR抗体が含まれる。
【0240】
ヤーボイ(イピリムマブ)は、Bristol Myers Squibbにより市販されている完全ヒトCTLA-4抗体である。イピリムマブのタンパク質構造及び使用方法は、米国特許第6,984,720号及び第7,605,238号に記載されている。
【0241】
オプジーボ/ニボルマブは、Bristol Myers Squibbにより市販されている、免疫増強活性を有する、負の免疫調節ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム細胞死-1又はプログラム細胞死-1/PCD-1)に対する完全ヒトモノクローナル抗体である。ニボルマブは、Igスーパーファミリー膜貫通タンパク質であるPD-1と結合し、そのリガンドPD-L1及びPD-L2によるPD-1の活性化を遮断して、T細胞の活性化及び腫瘍細胞又は病原体に対する細胞媒介性免疫応答をもたらす。活性化PD-1は、T細胞の活性化、及びPi3k/Akt経路の活性化の抑制を介したエフェクター機能に負の調節を行う。ニボルマブのその他の名称としては、BMS-936558、MDX-1106及びONO-4538が含まれる。ニボルマブのアミノ酸配列並びに使用及び製造方法は、米国特許第8,008,449号に開示されている。
【0242】
キートルーダ/ペンブロリズマブは、肺癌の処置のためにMerckにより市販されている抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブのアミノ酸配列及び使用方法は、米国特許第8,168,757号に開示されている。
【0243】
OX40としても知られるCD134は、CD28とは異なり、休止中のナイーブT細胞上には構成的に発現されない受容体のNFRスーパーファミリーのメンバーである。OX40は、活性化の24~72時間後に発現される二次的補助刺激分子であり;そのリガンドOX40Lもまた休止中の抗原提示細胞では発現されないが、それらの活性化後には発現される。OX40の発現は、T細胞の完全な活性化に依存し、CD28がなければ、OX40の発現は遅れ、4分の1のレベルとなる。OX-40抗体、OX-40融合タンパク質及びそれらの使用方法は、米国特許第7,504,101号;同第7,758,852号;同第7,858,765号;同第7,550,140号;同第7,960,515号;WO2012027328;WO2013028231に開示されている。
【0244】
PD-L1(CD274又はB7-H1とも呼ばれる)に対する抗体及び使用方法は、米国特許第7,943,743号;同第8,383,796号;US20130034559、WO2014055897、米国特許第8,168,179号;及び同第7,595,048号に開示されている。PD-L1抗体は、癌処置のための免疫調節薬として開発中である。
【0245】
別の実施形態では、治療有効量の
a)本発明の組合せ;及び
b)少なくとも1種の抗新生物薬
を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において癌を処置する方法が提供される。
【0246】
別の実施形態では、治療有効量の
a)本発明の組合せ;及び
b)少なくとも1種の免疫調節薬
を必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において癌を処置する方法が提供される。
【0247】
実施形態において、本発明の組合せは、癌処置のその他の治療法と併用してもよい。特に、抗新生物療法では、その他の化学療法剤、ホルモン薬、抗体薬並びに上記のもの以外の外科的処置及び/又は放射線処置との併用療法が想定される。
【0248】
一実施形態において、さらなる抗癌療法は、外科的療法及び/又は放射線療法である。
【0249】
一実施形態において、さらなる抗癌療法は、少なくとも1種の追加の抗新生物薬である。
【0250】
処置される感受性腫瘍に対して活性を有するいずれの抗新生物薬も本組合せで使用可能である。有用な典型的な抗新生物薬としては、限定されないが、微小管阻害剤、例えば、ジテルペノイド及びビンカアルカロイド;白金錯体;アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、オキシアザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素及びトリアゼン;抗生物質、例えば、アントラサイクリン、アクチノマイシン及びブレオマイシン;トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、エピポドフィロトキシン;代謝拮抗物質、例えば、プリン類似体、ピリミジン類似体及び葉酸拮抗化合物;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、カンプトテシン;ホルモン及びホルモン類似体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体型チロシン血管新生阻害剤;免疫治療薬;アポトーシス促進薬;及び細胞周期シグナル伝達阻害剤が含まれる。
【0251】
一実施形態において、本発明の組合せは、抗BCMA抗原結合タンパク質と、PD-1抗原結合タンパク質と、微小管阻害剤、白金錯体、アルキル化剤、抗生物薬、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体型チロシンMEK血管新生阻害剤(non-receptor tyrosine MEKngiogenesis inhibitors)、免疫治療薬、アポトーシス促進薬、及び細胞周期シグナル伝達阻害剤から選択される少なくとも1種の抗新生物薬とを含む。
【0252】
一実施形態において、本発明の組合せは、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と、少なくとも1種の抗新生物薬、すなわち、ジテルペノイド及びビンカアルカロイドから選択される微小管阻害剤とを含む。
【0253】
さらなる実施形態において、少なくとも1種の抗新生物薬は、ジテルペノイドである。
【0254】
さらなる実施形態において、少なくとも1種の抗新生物薬は、ビンカアルカロイドである。
【0255】
一実施形態において、本発明の組合せは、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と、少なくとも1種の抗新生物薬、すなわち、白金錯体とを含む。
【0256】
さらなる実施形態において、少なくとも1種の抗新生物薬は、パクリタキセル、カルボプラチン又はビノレルビンである。
【0257】
さらなる実施形態において、少なくとも1種の抗新生物薬は、カルボプラチンである。
【0258】
さらなる実施形態において、少なくとも1種の抗新生物薬は、ビノレルビンである。
【0259】
さらなる実施形態において、少なくとも1種の抗新生物薬は、パクリタキセルである。
【0260】
一実施形態において、本発明の組合せは、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と、少なくとも1種の抗新生物薬、すなわち、シグナル伝達経路阻害剤とを含む。
【0261】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、成長因子受容体キナーゼVEGFR2、TIE2、PDGFR、BTK、erbB2、EGFr、IGFR-1、TrkA、TrkB、TrkC又はc-fmsの阻害剤である。
【0262】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、セリン/トレオニンキナーゼrafk、akt又はPKC-ζの阻害剤である。
【0263】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、srcファミリーのキナーゼから選択される非受容体型チロシンキナーゼの阻害剤である。
【0264】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、c-srcの阻害剤である。
【0265】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、ファルネシルトランスフェラーゼ及びゲラニルゲラニルトランスフェラーゼの阻害剤から選択されるRas癌遺伝子の阻害剤である。
【0266】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、PI3Kからなる群から選択されるセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤である。
【0267】
さらなる実施形態において、シグナル伝達経路阻害剤は、二重EGFr/erbB2阻害剤、例えば、N-{3-クロロ-4-[(3-フルオロベンジル)オキシ]フェニル}-6-[5-({[2-(メタンスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フリル]-4-キナゾリンアミン(以下の構造)である。
【化10】
【0268】
定義
本明細書で使用する場合、用語「アゴニスト」は、補助シグナル伝達受容体と接触した際に、(1)その受容体を刺激又は活性化すること、(2)その受容体の活性、機能若しくは存在を増強、増大若しくは促進、誘導若しくは延長すること、(3)その受容体を介して1又は2以上のシグナル伝達事象を誘発すること、天然リガンドの1又は2以上の機能を模倣すること、又はその受容体を介した既知の機能若しくはシグナル伝達において見られる1又は2以上の部分的若しくは完全な立体配座変化を誘発することを含むこと、及び/又は(4)その受容体の発現を増強、増大、促進又は誘導することのうち1又は2以上を生じる、限定されるものではないが抗体を含む抗原結合タンパク質を意味する。アゴニスト活性は、当技術分野で公知の様々なアッセイ、例えば、これらに限定されないが、細胞シグナル伝達、細胞増殖、免疫細胞活性化マーカー、サイトカイン産生の測定によってin vitroで測定され得る。アゴニスト活性はまた、サロゲートエンドポイントを測定する様々なアッセイ、例えば、これらに限定されないが、T細胞増殖又はサイトカイン産生の測定によってin vivoで測定され得る。
【0269】
本明細書で使用する場合、用語「アンタゴニスト」は、補助シグナル伝達受容体と接触した際に、(1)その受容体を減弱、遮断若しくは不活性化すること、及び/又はその天然リガンドによる受容体の活性化を遮断すること、(2)その受容体の活性、機能若しくは存在を低下、低減若しくは短縮すること、及び/又は(3)その受容体の発現を低下、低減、排除することのうち1又は2以上を生じさせる、限定されるものではないが抗体を含む、抗原結合タンパク質を意味する。アンタゴニスト活性は、当技術分野で公知の様々なアッセイ、例えば、これらに限定されないが、細胞シグナル伝達、細胞増殖、免疫細胞活性化マーカー、サイトカイン産生の増加又は減少の測定によってin vitroで測定され得る。アンタゴニスト活性はまた、サロゲートエンドポイントを測定する様々なアッセイ、例えば、これらに限定されないが、T細胞増殖又はサイトカイン産生の測定によってin vivoで測定され得る。
【0270】
したがって、本明細書で使用する場合、用語「本発明の組合せ」は、抗BCMA抗原結合タンパク質、好適には、アンタゴニスト抗BCMA抗原結合タンパク質と、PD-1抗原結合タンパク質、好適には、アンタゴニスト抗PD-1抗原結合タンパク質とを含む組合せを意味し、そのそれぞれは本明細書で記載されるよう別個に投与されても、又は同時に投与されてもよい。
【0271】
本明細書で使用する場合、用語「癌」、「新生物」及び「腫瘍」は、単数形又は複数形で互換的に使用され、悪性形質転換を受けた、又は異常な若しくは調節を欠いた増殖若しくは過剰増殖をもたらす細胞変化を受けた細胞を意味する。このような変化又は悪性形質転換は通常、このような細胞を宿主生物にとって病的とし、よって、病的となった又は病的となる可能性があり、本発明からの利益を必要とする又は受け得る前癌又は前癌細胞も含まれるものとする。原発性癌細胞(すなわち、悪性形質転換の部位近傍から得られる細胞)は、十分に確立された技術、特に、組織検査によって非癌細胞から容易に特定することができる。癌細胞の定義は、本明細書で使用する場合、原発性癌細胞だけでなく、癌細胞祖先に由来するいずれの細胞も含む。これには転移癌細胞、並びに癌細胞に由来するin vitro培養物及び細胞株が含まれる。通常固形腫瘍として発現する癌のタイプに関して、「臨床的に検出可能な」腫瘍は、例えばCATスキャン、MRイメージング、X線、超音波又は触診等の手法による腫瘍塊に基づいて検出可能なもの、及び/又は患者から取得可能なサンプル中での1又は2以上の癌特異的抗原の発現のために検出可能なものである。言い換えれば、これらの用語は本明細書において、臨床医が前癌、腫瘍、上皮内増殖及び期転移性増殖と呼ぶものを含め、いずれの病期の細胞、新生物、癌及び腫瘍も含む。腫瘍は、造血系腫瘍、例えば、液性腫瘍を意味する血液細胞の腫瘍等であってもよい。このような腫瘍に基づく臨床状態の具体的な例として、白血病、例えば、慢性骨髄球性白血病又は急性骨髄球性白血病;骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫;リンパ腫等が挙げられる。
【0272】
本明細書で使用する場合、用語「薬剤」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト又はその他の対象において所望の効果をもたらす物質を意味するものと理解される。よって、用語「抗新生物薬」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト又はその他の対象において抗新生物効果をもたらす物質を意味するものと理解される。「薬剤」はまた、単一の化合物であっても、又は2種若しくは3種以上の化合物の組合せ若しくは組成物であってもよいと理解される。
【0273】
用語「処置する」及びその派生語は、本明細書で使用する場合、治療的療法を意味する。特定の病態に関して処置は、(1)その病態の生物学的発現の1又は2以上の状態を改善すること、(2)(a)その病態につながる若しくはその病態の原因である生物学的カスケードの1又は2以上の点、若しくは(b)その病態の生物学的発現の1又は2以上に干渉すること、(3)その病態に関連する症状、影響若しくは副作用の1又は2以上、又はその病態若しくはその処置に関連する症状、影響若しくは副作用の1又は2以上を緩和すること、(4)その病態若しくはその病態の生物学的発現の1又は2以上の進行を緩徐化すること、及び/又は(5)寛解の期間に追加の処置なしに、その発現に関して寛解状態であると見なされる期間、その病態の生物学的発現の1又は2以上を排除する若しくは検出不能なレベルにまで軽減することにより、その病態若しくはその病態の生物学的発現の1又は2以上を治癒させることを意味する。当業者は、特定の疾患又は病態に関して寛解と見なされる期間を理解するであろう。予防的療法もまた企図される療法である。当業者は、「予防」が絶対的な用語でないことを認識するであろう。医学では、「予防」は、ある病態若しくはその生物学的発現の尤度若しくは重篤度を実質的に減らすため、又はこのような病態若しくはその生物学的発現の発生を遅延させるための薬物の予防的投与を意味すると理解される。予防的療法は、例えば、対象が癌の強い家族歴を有する場合又は対象が発癌物質に曝されていた場合等、対象に癌を発症する高いリスクがあると見なされる場合に適当である。
【0274】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、例えば、研究者又は臨床医により求められる組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を惹起する薬物又は医薬剤の量を意味する。さらに、用語「治療有効量」は、そのような量を受容していない対応する対象に比べて、治療、治癒、予防の改善、又は疾患、障害若しくは副作用の改善、又は疾患若しくは障害の進行速度の低下をもたらすいずれの量も意味する。この用語はまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増進するのに有効な量も含む。
【0275】
「抗原結合タンパク質」は、抗体又は抗体と同様に機能する遺伝子操作された分子を含め、抗原と結合するタンパク質を意味する。このような別の抗体形式としては、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体及びミニボディが含まれる。また、本開示に従って任意の分子の1又は2以上のCDRが、好適な非免疫グロブリンタンパク質足場又は骨格上に配置された別の足場、例えば、アフィボディ、SpA足場、LDL受容体クラスAドメイン、アビマー(例えば、米国特許出願公開第2005/0053973号、同第2005/0089932号、同第2005/0164301号参照)又はEGFドメインも含まれる。ABPはまた、このような抗体又はその他の分子の抗原結合フラグメントも含む。さらに、本発明の組合せのABP、又はその方法若しくは使用は、適当な軽鎖と対合される場合、全長抗体、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメント、二重特異性若しくは二重パラトープ分子又はその等価物(例えば、scFV、ビボディ、トリボディ、テトラボディ、Tandab等)形式とされたVH領域を含んでもよい。抗原結合タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4;又はIgM;IgA、IgE若しくはIgD又はその改変バリアントである抗体を含み得る。抗体重鎖の定常ドメインは相応に選択することができる。軽鎖定常ドメインは、κ又はλ定常ドメインであり得る。ABPはまた、抗原結合領域と非免疫グロブリン領域を含むWO86/01533に記載のタイプのキメラ抗体であってもよい。
【0276】
抗原結合タンパク質はまたキメラ抗原受容体であってもよい。用語「キメラ抗原受容体」(「CAR」)は、本明細書で使用する場合、細胞外標的結合ドメイン(通常、モノクローナル抗体に由来する)、スペーサー領域、膜貫通領域、及び1又は2以上の細胞内エフェクタードメインからなる遺伝子操作された受容体を意味する。CARはまたキメラT細胞受容体又はキメラ免疫受容体(CIR)とも呼称されてきた。CARは一般に、特異性を所望の細胞表面抗原に向け直すためにT細胞等の造血細胞に導入される。
【0277】
キメラ抗原受容体(CAR)は、MHC-抗原ペプチド複合体と結合する必要なくT細胞に新規な特異性を作り出すための人工TCRとして開発された。これらの合成受容体は、単一の融合分子中に、フレキシブルリンカーを介して1又は2以上のシグナル伝達ドメインと会合された標的結合ドメインを含む。標的結合ドメインは、病的細胞の表面の特異的標的にT細胞を標的化するために使用され、シグナル伝達ドメインは、T細胞の活性化及び増殖のための分子機構を含む。T細胞膜を貫通する(すなわち、膜貫通ドメインを形成する)フレキシブルリンカーは、CARの標的結合ドメインの細胞膜提示を可能とする。CARは、T細胞を、リンパ腫及び固形腫瘍を含む種々の悪性腫瘍から腫瘍細胞の表面で発現される抗原に対して向け直すことを首尾良く可能とした(Jena et al. (2010) Blood, 116(7):1035-44)。
【0278】
CARの開発はこれまで3世代からなった。第1世代CARは、CD3ζの細胞質領域又はFc受容体γ鎖に由来するシグナル伝達ドメインに結合された標的結合ドメインを含んだ。第1世代CARは、選択された標的にT細胞を首尾良く向け直すことが示されたが、in vivoにおいてそれらは長期的な拡大増殖及び抗腫瘍活性を提供することができなかった。第2及び第3世代CARは、CD28、OX-40(CD134)及び4-1BB(CD137)等の補助刺激分子を含むことにより改変されたT細胞の生存の増進及び増殖の増大に焦点を当てたものであった。
【0279】
CARを有するT細胞は、疾患状態で病的細胞を排除するために使用することができた。一つの臨床目的は、アフェレーシス及びT細胞単離後に、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)を介して患者細胞を組換えDNAを含有するCAR用の発現構築物で形質転換することであろう。T細胞の拡大増殖後、病的標的細胞を標的化して死滅させる目的で、それらを患者に再注入する。
【0280】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、抗原結合ドメイン、場合により、免疫グロブリン様ドメイン又はそのフラグメントを有する分子を意味し、モノクローナル(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD又はIgE及びその改変バリアント)、組換え、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、二重パラトープ性、二重特異性及びヘテロコンジュゲート抗体、又は閉構造多重特異性抗体が含まれる。「抗体」は、異種、同種異系、同系又はその他のその改変形態を含んだ。抗体は単離又は精製されてよい。抗体はまた、組換え型、すなわち、組換え手段によって生産されてもよく、例えば、参照抗体と90%同一の抗体は、当技術分野で公知の組換え分子生物学技術を使用し、特定の残基の変異誘発により作製され得る。したがって、本発明の抗体は、天然抗体構造の形式とされてもよいし、或いは適当な軽鎖と対合とされる場合、全長組換え抗体、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメント、二重特異性若しくは二重パラトープ分子又はその等価物(例えば、scFV、ビボディ、トリボディ、テトラボディ、Tandab等)の形式とされてもよい、本発明の組合せ、又はその方法若しくは使用の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み得る。抗体はIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4又はその改変バリアントであり得る。抗体重鎖の定常ドメインは相応に選択することができる。軽鎖定常ドメインは、κ又はλ定常ドメインであり得る。抗体はまた、抗原結合領域と非免疫グロブリン領域を含むWO86/01533に記載のタイプのキメラ抗体であってもよい。
【0281】
当業者ならば、本発明の抗原結合タンパク質はそれらの標的上のエピトープと結合することを認識するであろう。抗原結合タンパク質のエピトープは、その抗原の、抗原結合タンパク質が結合する領域である。2種の抗原結合タンパク質は、それぞれがその抗原に対する他方の結合を競合的に阻害する(遮断する)場合には、同じ又は重複するエピトープに結合する。すなわち、競合結合アッセイで測定した場合に、競合抗体を含まない対照に比べて、1倍、5倍、10倍、20倍又は100倍を超える一方の抗体が、他方の結合を少なくとも50%、好ましくは、75%、90%又はさらには99%阻害する(例えば、参照により本明細書に組み込まれるJunghans et al., Cancer Res. 50:1495, 1990参照)。或いは、一方の抗体の結合を低減又は排除する抗原における本質的にすべてのアミノ酸変異が他方の結合を低減又は排除する場合には、2種の抗体は同じエピトープを有する。同じエピトープはまた、例えば、一方の抗体の結合を低減又は排除するいくつかのアミノ酸変異が他方の結合を低減又は排除する場合には、「重複するエピトープ」を含み得る。
【0282】
結合の強度は、本発明の組合せ、又はその方法若しくは使用の抗原結合タンパク質の用量及び投与に重要であり得る。一実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、その標的(例えば、BCMA又はPD-1)に高い親和性で結合する。親和性は、ある分子、例えば、本発明の組合せ、又はその方法若しくは使用の抗体と、別の分子、例えば、その標的抗原との単一の結合部位での結合の強度である。抗体とその標的との結合親和性は、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又はラジオイムノアッセイ(RIA))、又は速度論(例えば、BIACORE分析)によって決定することができる。例えば、当技術分野で公知のBiacore(表面プラズモン共鳴)法が結合親和性を測定するために使用可能である。
【0283】
アビディティーは、例えば相互作用価を考慮した、2分子の複数部位の互いの結合の合計強度である。
【0284】
本明細書では、本発明の組合せ、又はその方法若しくは使用の抗原結合タンパク質の機能的フラグメントが企図される。
【0285】
よって、「結合フラグメント」及び「機能的フラグメント」は、インタクトな抗体のFcフラグメントを欠き、循環からより急速に排除され、インタクトな抗体よりも非特異的組織結合が少ない可能性があるFab及びF(ab’)2フラグメント (Wahl et al., J. Nuc. Med. 24:316-325 (1983))であり得る。また、Fvフラグメント(Hochman, J. et al. (1973) Biochemistry 12:1130-1135; Sharon, J. et al.(1976) Biochemistry 15:1591-1594)も含まれる。これらの種々のフラグメントは、プロテアーゼ切断又は化学切断(例えば、Rousseaux et al., Meth. Enzymol., 121:663-69 (1986)参照)等の従来の技術を使用して作製される。
【0286】
「機能的フラグメント」は、本明細書で使用する場合、抗原結合部位を含み且つ親抗原結合タンパク質と同じ標的と結合し得る、例えば、限定されるものではないが、同じエピトープと結合し得、本明細書に記載の又は当技術分野で公知の1又は2以上の調節又はその他の機能もまた保持する、本発明の組合せ、又はその方法若しくは使用の抗原結合タンパク質の部分又はフラグメントを意味する。
【0287】
本発明の抗原結合タンパク質は、天然抗体構造の形式とされ得る本発明の組合せ、又はその方法若しくは使用の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み得るので、機能的フラグメントは、本明細書に記載の全長抗原結合タンパク質の結合又は1若しくは2以上の機能を保持するものである。よって、本発明の組合せ、又はその方法若しくは使用の抗原結合タンパク質の結合フラグメントは、適当な軽鎖と対合され得る場合、VL又はVH領域、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメント、二重特異性若しくは二重パラトープ分子又はその等価物(例えば、scFV、ビボディ、トリボディ、テトラボディ、Tandab等)のフラグメントを含み得る。
【0288】
用語「CDR」は、本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質の相補性決定領域アミノ酸配列を意味する。これらは、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域である。
免疫グロブリンの可変部分には3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDR(又はCDR領域)が存在する。
【0289】
CDR配列には様々なナンバリング規則が存在することは当業者には自明である;Chothia(Chothia et al. (1989) Nature 342: 877-883)、Kabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987))、AbM(バース大学)及びContact(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)。「最小結合単位」を得るためには、Kabat、Chothia、AbM及びcontact法のうち少なくとも2つを用いて最小オーバーラッピング領域を決定することができる。最小結合単位は、CDRの一部分であり得る。抗体の構造及びタンパク質フォールディングは、その他の残基がCDR配列の一部と考えられ、当業者によりそのように理解されるであろうことを意味し得る。CDRの定義のいくつかは使用される個々の刊行物によって異なる場合があることに留意されたい。
【0290】
そうではないことが述べられない限り、及び/又は具体的に示される配列がなければ、本明細書で「CDR」、「CDRL1」(又は「LC CDR1」)、「CDRL2」(又は「LC CDR2」)、「CDRL3」(又は「LC CDR3」)、「CDRH1」(又は「HC CDR1」)、「CDRH2」(又は「HC CDR2」)、「CDRH3」(又は「HC CDR3」)という場合には、既知の規則のいずれかに従ってナンバリングされたアミノ酸配列を意味し、或いは、CDRは、可変軽鎖の「CDR1」、「CDR2」、「CDR3」、並びに可変重鎖の「CDR1」、「CDR2」及び「CDR3」と呼称される。特定の実施形態において、ナンバリング規則は、Kabat規則である。
【0291】
用語「バリアント」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つ、例えば、1、2又は3つのアミノ酸置換、欠失又は付加により改変された重鎖可変領域又は軽鎖可変領域を意味し、ここで、重鎖又は軽鎖バリアントを含む改変抗原結合タンパク質は、改変前の抗原結合タンパク質の生物学的特徴を実質的に保持する。一実施形態において、バリアント重鎖可変領域又は軽鎖可変領域配列を含む抗原結合タンパク質は、改変前の抗原結合タンパク質の60%、70%、80%、90%、100%の生物学的特徴を保持する。各重鎖可変領域又は軽鎖可変領域は、単独で、又は別の重鎖可変領域若しくは軽鎖可変領域と組み合わせて改変され得ることが認識される。本開示の抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%相同な重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。本開示の抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%相同な軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0292】
相同性パーセントは、全重鎖可変領域及び/又は全軽鎖可変領域にわたってもよいし、或いは、相同性パーセントはフレームワーク領域に限定されてもよいが、CDRに相当する配列は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域内で本明細書に開示されるCDRと100%の同一性を有する。
【0293】
用語「CDRバリアント」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つ、例えば、1、2又は3つのアミノ酸置換、欠失又は付加により改変されたCDRを意味し、ここで、CDRバリアントを含む改変抗原結合タンパク質は、改変前の抗原結合タンパク質の生物学的特徴を実質的に保持する。一実施形態において、バリアントCDRを含む抗原結合タンパク質は、改変前の抗原結合タンパク質の60%、70%、80%、90%、100%の生物学的特徴を保持する。改変可能な各CDRは、単独で、又は別のCDRと組み合わせて改変され得ることが認識される。一態様において、改変は、置換、特に、例えば表1に示されるような保存的置換である。
【0294】
【0295】
例えば、あるCDRバリアントにおいて、最小結合単位のアミノ酸残基は、Kabat又はChothia定義の一部としてCDRを含むフランキング残基が保存的アミノ酸残基で置換されていてもよいこと以外は同じ状態であり得る。
【0296】
上記のような改変されたCDR又は最小結合単位を含むこのような抗原結合タンパク質は、本明細書では、「機能的CDRバリアント」又は「機能的結合単位バリアント」と呼称する場合がある。
【0297】
抗体は、いずれの種のものであってもよく、又は交差種に投与するために好適となるように改変されてもよい。例えば、マウス抗体由来のCDRはヒトへの投与のためにヒト化され得る。いずれの実施形態においても、抗原結合タンパク質は場合によりヒト化抗体である。
【0298】
「ヒト化抗体」は、非ヒトドナー免疫グロブリンに由来するそのCDRを有し、その分子の残りの免疫グロブリン由来部分は1つ(又は複数)のヒト免疫グロブリンに由来する操作抗体の一種を意味する。加えて、フレームワーク支持残基は、結合親和性を保存するように変更されてもよい(例えば、Queen et al., Proc. Natl Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989), Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421 (1991)参照)。好適なヒトアクセプター抗体は、従来のデータベース、例えば、KABATデータベース、Los Alamosデータベース及びSwissタンパク質データベースから、ドナー抗体のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列との相同性により選択されたものであり得る。ドナー抗体のフレームワーク領域との相同性(アミノ酸ベースでの)を特徴とするヒト抗体は、重鎖定常領域及び/又はドナーCDRの挿入のための重鎖可変フレームワーク領域を提供するために好適であり得る。軽鎖定常又は可変フレームワーク領域を供与し得る好適なアクセプター抗体も同様に選択され得る。アクセプター抗体重鎖及び軽鎖は同じアクセプター抗体に起源する必要はないことに留意されたい。従来技術はこのようなヒト化抗体を生産するいくつかの方法を記載している(例えば、EP-A-0239400及びEP-A-054951参照)。
【0299】
別のさらなる実施形態において、ヒト化抗体は、IgGであるヒト抗体定常領域である。別の実施形態において、IgGは、上記の参照文献又は特許公報のいずれかに開示されている配列である。
【0300】
「増強されたFcγRIIIA媒介エフェクター機能」とは、本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質の通常のエフェクター機能がその通常レベルに比べて意図的に増大されていることを表す。これは例えば、FcYRIIIA結合に対する親和性を増大させる変異による、又は抗原結合タンパク質のグリコシル化の変更(例えば、フコシルトランスフェラーゼのノックアウト)による等の当技術分野で公知のいずれの手段によって行ってもよい。
【0301】
ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に関して、用語「同一の」又は「同一性」は、最適にアラインされ、適当な挿入又は欠失を伴って比較された場合の2つの核酸配列又は2つのアミノ酸配列の間の同一性の程度を示す。
【0302】
2配列間の同一性パーセントは、それらの2配列の最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、それらの配列に共有される同一の位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数×100)である。2配列間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、下記のように、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。
【0303】
クエリー核酸配列と対象核酸配列との間の同一性パーセントは、ペアワイズBLASTNアラインメントが実行された後に対象核酸配列がクエリー核酸配列と100%のクエリーカバー率を有する場合にBLASTNアルゴリズムにより計算される、パーセンテージとして表される「同一性」値である。このようなクエリー核酸配列と対象核酸配列との間のペアワイズBLASTNアラインメントは、アメリカ国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイトで利用可能なBLASTNアルゴリズムのデフォルト設定を用いることにより、低複雑性領域のフィルターを解除して実行される。重要なこととして、クエリー核酸配列は本明細書の1又は2以上の請求項で特定される核酸配列により記載することができる。
【0304】
クエリーアミノ酸配列と対象アミノ酸配列との間の同一性パーセントは、ペアワイズBLASTPアラインメントが実行された後に対象アミノ酸配列がクエリーアミノ酸配列と100%のクエリーカバー率を有する場合にBLASTPアルゴリズムにより計算される、パーセンテージとして表される「同一性」値である。このようなクエリーアミノ酸配列と対象アミノ酸配列との間のペアワイズBLASTPアラインメントは、アメリカ国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイトで利用可能なBLASTPアルゴリズムのデフォルト設定を用いることにより、低複雑性領域のフィルターを解除して実行される。重要なこととして、クエリーアミノ酸配列は本明細書の1又は2以上の請求項で特定されるアミノ酸配列により記載することができる。
【0305】
本明細書に記載の本発明の一実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列表に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。特定の実施形態において、抗原結合タンパク質は、配列表に見られる配列に対して、少なくとも98%、例えば99%の配列同一性を有する。
【0306】
本明細書に記載された参考文献又は刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0307】
本発明は、以下の実施形態を企図する。
【0308】
それを必要とする患者において癌を処置する方法であって、
前記方法が、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを投与することを含み、
前記PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、配列番号11のCDRH1又はそのバリアント、配列番号12のCDRH2又はそのバリアント、配列番号13のCDRH3又はそのバリアント、配列番号14のCDRL1又はそのバリアント、配列番号15のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号16のCDRL3又はそのバリアントを含む、前記方法。
【0309】
前記BCMAに結合する抗原結合タンパク質が、配列番号1のCDRH1又はそのバリアント、配列番号2のCDRH2又はそのバリアント、配列番号3のCDRH3又はそのバリアント、配列番号4のCDRL1又はそのバリアント、配列番号5のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号6のCDRL3又はそのバリアントを含む、請求項1に記載の方法。
【0310】
前記BCMAに結合する抗原結合タンパク質が、MMAF又はMMAEに連結された抗体を含む抗体薬物複合体である、請求項2に記載の方法。
【0311】
前記BCMAに結合する抗原結合タンパク質が、ベランタマブマホドチンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0312】
前記PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、ドスタリマブである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0313】
それを必要とする患者において癌を処置する方法であって、ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを投与することを含む、前記方法。
【0314】
ベランタマブマホドチンが約0.03mg/kg~約4.6mg/kgで投与され、ドスタリマブが約100mg~約2000mgで投与される、請求項6に記載の方法。
【0315】
ベランタマブマホドチンが、約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgで投与される、請求項6に記載の方法。
【0316】
ドスタリマブが約500mgで投与される、請求項6に記載の方法。
【0317】
前記癌が、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0318】
前記患者が、癌に対する少なくとも3種の前治療ラインを既に処置されている、請求項10に記載の方法。
【0319】
前記患者がヒトである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0320】
ベランタマブマホドチン及びドスタリマブが、21日サイクルの1日目(Q3W)に投与される、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【0321】
それを必要とする患者において多発性骨髄腫を処置する方法であって、
前記方法が、21日サイクルの1日目(Q3W)に、
a)約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチン、及び
b)約500mgのドスタリマブ
を投与することを含む、前記方法。
【0322】
BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含む組合せであって、
前記PD-1に結合する抗原結合タンパク質が、配列番号11のCDRH1又はそのバリアント、配列番号12のCDRH2又はそのバリアント、配列番号13のCDRH3又はそのバリアント、配列番号14のCDRL1又はそのバリアント、配列番号15のCDRL2又はそのバリアント、及び配列番号16のCDRL3又はそのバリアントを含む、前記組合せ。
【0323】
ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含む組合せ。
【0324】
約0.95mg/kg、約1.9mg/kg、約2.5mg/kg又は約3.4mg/kgのベランタマブマホドチン及び約500mgのドスタリマブを含む、請求項16に記載の組合せ。
【0325】
癌の処置に使用するための、請求項15~17のいずれか一項に記載の組合せ。
【0326】
前記癌が、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫である、請求項18に記載の組合せ。
【0327】
癌を処置するための医薬の製造における、請求項15~17のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【0328】
それを必要とする患者における癌の処置のための、請求項15~17のいずれか一項に記載の組合せの使用。
【0329】
ベランタマブマホドチン及びドスタリマブを含むキット。
【0330】
配列
配列番号1:BCMA CDRH1
NYWMH
【0331】
配列番号2:BCMA CDRH2
ATYRGHSDTYYNQKFKG
【0332】
配列番号3:BCMA CDRH3
GAIYDGYDVLDN
【0333】
配列番号4:BCMA CDRL1
SASQDISNYLN
【0334】
配列番号5:BCMA CDRL2
YTSNLHS
【0335】
配列番号6:BCMA CDRL3
QQYRKLPWT
【0336】
配列番号7:BCMA重鎖可変領域
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSS
【0337】
配列番号8:BCMA軽鎖可変領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSNLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYRKLPWTFGQGTKLEIKR
【0338】
配列番号9:BCMA重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSNYWMHWVRQAPGQGLEWMGATYRGHSDTYYNQKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGAIYDGYDVLDNWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0339】
配列番号10:BCMA軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSNLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYRKLPWTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0340】
配列番号11:PD-1 CDRH1
SYDMS
【0341】
配列番号12:PD-1 CDRH2
TISGGGSYTYYQDSVKG
【0342】
配列番号13:PD-1 CDRH3
PYYAMDY
【0343】
配列番号14:PD-1 CDRL1
KASQDVGTAVA
【0344】
配列番号15:PD-1 CDRL2
WASTLHT
【0345】
配列番号16:PD-1 CDRL3
QHYSSYPWT
【0346】
配列番号17:PD-1重鎖可変領域
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISGGGSYTYYQDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASPYYAMDYWGQGTTVTVSS
【0347】
配列番号18:PD-1軽鎖可変領域
DIQLTQSPSFLSAYVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASTLHTGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQHYSSYPWTFGQGTKLEIK
【0348】
配列番号19:PD-1全長重鎖配列
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISGGGSYTYYQDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASPYYAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0349】
配列番号20:PD-1全長軽鎖配列
DIQLTQSPSFLSAYVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASTLHTGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQHYSSYPWTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0350】
配列番号21:PD-1全長重鎖配列
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISGGGSYTYYQDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASPYYAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESDGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0351】
配列番号22:PD-1全長重鎖配列
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISGGGSYTYYQDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASPYYAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPEDNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0352】
配列番号23:PD-1全長重鎖配列
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISGGGSYTYYQDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCASPYYAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESDGQPEDNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0353】
配列番号24:PD-1 CDRL3
QHYNSYPWT
【0354】
【配列表】
【国際調査報告】