(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】難燃性ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230315BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20230315BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20230315BHJP
C08G 18/46 20060101ALI20230315BHJP
C08G 18/50 20060101ALI20230315BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20230315BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230315BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C09K21/12
C08G18/40 018
C08G18/46 007
C08G18/50 003
C08K5/521
C08L75/04
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546050
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 US2021014842
(87)【国際公開番号】W WO2021154626
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】スリヤデバラ、カリ アナント
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ、マーク ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】レン、ダカイ ディー.
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4H028AA35
4J002CK031
4J002CK041
4J002EW046
4J002EW056
4J002FD136
4J002FD320
4J002GF00
4J002GL00
4J034AA04
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC02
4J034DD09
4J034DF01
4J034DF21
4J034DF35
4J034DG29
4J034HA01
4J034HA06
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB03
4J034KC02
4J034KD02
4J034KE02
4J034MA16
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA08
4J034QB17
4J034RA05
4J034RA10
4J034RA15
(57)【要約】
熱硬化性フォームは、0.2~4.0重量%の少なくとも1種の脂肪族臭素化ポリエーテルポリオールと、2.0~7.0重量%の少なくとも1種の芳香族臭素化ポリエステルポリオールと、2.0~7.5重量%の、有機ホスフェート、有機ホスホネート又は有機ホスファイトを含む少なくとも1種の難燃剤とを含み、全臭素の百分率として表される脂肪族臭素の量対全臭素の百分率として表される芳香族臭素の量の比は、10:90~50:50である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性フォームであって、
0.2~4.0重量%の少なくとも1種の脂肪族臭素化ポリエーテルポリオールと、
2.0~7.0重量%の少なくとも1種の芳香族臭素化ポリエステルポリオールと、
2.0~7.5重量%の、有機ホスフェート、有機ホスホネート又は有機ホスファイトを含む少なくとも1種の難燃剤と
を含み、全臭素の百分率として表される脂肪族臭素の量対全臭素の百分率として表される芳香族臭素の量の比は、10:90~50:50である、熱硬化性フォーム。
【請求項2】
前記難燃剤は、オリゴマーアルキルホスフェートを更に含む、請求項1に記載フォーム。
【請求項3】
前記難燃剤は、トリエチルホスフェートとオリゴマーアルキルホスフェートとのブレンドである、請求項2に記載のフォーム。
【請求項4】
トリエチルホスフェート対オリゴマーアルキルホスフェートの比は、90:10~50:50である、請求項3に記載のフォーム。
【請求項5】
請求項1に記載のフォームと、前記フォームの少なくとも1つの外面に取り付けられた少なくとも1つの表面板とを含む複合材料。
【請求項6】
前記表面板は、樹脂含浸繊維、プラスチック、木材又は金属を含む、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
前記金属は、アルミニウムである、請求項6に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用断熱材に特に好適である難燃性ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアヌレート(PIR)フォームボードストックは、商業ビル及び住居用ビルの屋根及び壁アセンブリにおける断熱材として広く使用されている。プラスチックフォーム製品として、PIRフォームは、それらの耐熱性に加えて厳しい耐火性要件を満たさなければならない。特に、形状(コア、表面加工、スリット)の全てにおいて、ASTM E84又はUL 723トンネル燃焼試験及び工場相互(FM)4880標準を満たすために、FM 4880ルームコーナー燃焼試験に合格することができるPIRフォームがとりわけ望ましい。これらの試験の合格は、壁及び天井設置の両方でフォーム製品が露出されたままであることを可能にする(他のアセンブリによるカバレージが全く必要でない)であろう。より良好な耐火性を提供するために、難燃性(FR)添加剤が使用される。これらのFR添加剤は、気相又は凝縮相のメカニズムによって耐火性の増加を提供することができる。
【0003】
FM 4880ルームコーナー試験に合格することができる現在の組成物は、アリール臭素化フタレートジオール、非反応性の脂肪族臭素化小分子(n-プロピルブロミド、nPBr)及びホスフェートトリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCPP)を含む。nPBrなどの臭素化された非反応性小分子難燃剤は、それらの高い蒸気圧と、環境保護衛生及び労働者衛生並びに経時的に潜在的に低下する製品耐火性をもたらす、製品から移動する高い傾向とのために望ましくないものになっている。加えて、nPBrは、71℃の低い沸点を有するため、この材料の大部分は、フォームプラスチックが火災シナリオ中にその熱分解温度(ポリウレタンに関して>200℃)に達する前にフォームから放出されるであろう。nPBrのこの時期尚早の放出は、気相難燃剤の不十分な使用を引き起こし、従って、燃焼試験標準によって示されるような耐火性要件を満たすために、製品中の臭素化化学種のより高い濃度を必要とする。
【0004】
最も一般的に使用される塩素化ホスフェートエステルの1つであるTCPPは、ポリウレタンフォームにおいて凝縮相耐火性及び気相耐火性の両方を提供する。しかしながら、この材料は、現在、いくつかの規制機関からの環境精査に直面している。この精査は、市販材料におけるTCPPの将来的な使用の制限をもたらす可能性が高い。難燃剤業界は、ポリウレタンフォームに使用されるTCPPのいくつかの代替品を開発しているが、これらの材料は、一般に、TCPPよりもはるかに高価である。トリエチルホスフェート(TEP)は、1つの低コスト代替品である。それにもかかわらず、TEPは、その熱分解温度(>300℃)よりも著しく低い沸点(209℃)を有する。TEPは、そのより低い沸点が火災において早期の蒸発をもたらすため、凝縮相にとどまるよりもむしろ気相難燃剤であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、顧客又は官庁仕様を満たし、且つ変化する環境保護基準を遵守するポリウレタンフォームを提供するための、費用効率が高い解決策を見出すことが継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
熱硬化性フォームは、
0.2~4.0重量%の少なくとも1種の脂肪族臭素化ポリエーテルポリオールと、
2.0~7.0重量%の少なくとも1種の芳香族臭素化ポリエステルポリオールと、
2.0~7.5重量%の、有機ホスフェート、有機ホスホネート又は有機ホスファイトを含む少なくとも1種の難燃剤と
を含み、全臭素の百分率として表される脂肪族臭素の量対全臭素の百分率として表される芳香族臭素の量の比は、10:90~50:50である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
熱硬化性フォーム
「熱硬化性ポリウレタンフォーム」は、フォームのポリマー網状構造の分解なしに、温度の変化時に固体から流動可能な状態に可逆的に進むことができないフォームである。
【0008】
本発明の熱硬化性フォームは、
0.2~4.0重量%の少なくとも1種の脂肪族臭素化ポリエーテルポリオールと、
2.0~7.0重量%の少なくとも1種の芳香族臭素化ポリエステルポリオールと、
2.0~7.5重量%の少なくとも1種の難燃剤と
を含む。
【0009】
好ましくは、全臭素の百分率として表される脂肪族臭素の量対全臭素の百分率として表される芳香族臭素の量の比は、10:90~50:50である。この比の構成要素は、気相難燃剤効率を著しく向上させることが分かった。意外な発見は、断熱性及び他の物理的特性に影響を及ぼすことなく、現在の商業技術(3.0%Br)と比べて約半分の臭素含有量(1.6%Br)でのフルルームコーナー試験の合格であった。更に、脂肪族Br/芳香族Br比は、現在の技術よりも著しく低い。
【0010】
代表的な脂肪族臭素化ポリオールは、Solvay Specialty Chemicals,Houston,TXから入手可能なIXOL(登録商標)B-251又はIXOL(登録商標)M-125である。
【0011】
代表的な芳香族臭素化ポリオールは、Albemarle,Charlotte,NC製のSAYTEX(登録商標)RB-9170である。
【0012】
難燃剤
好ましい難燃剤は、リンベースの難燃剤である。
【0013】
好適な難燃剤には、有機ホスフェート、有機ホスホネート、有機ホスファイト又はオリゴマーアルキルホスフェートが含まれる。代表的な有機ホスフェートは、トリエチルホスフェートである。
【0014】
一実施形態において、難燃剤は、トリエチルホスフェートとオリゴマーアルキルホスフェートとのブレンドであり、トリエチルホスフェート対オリゴマーアルキルホスフェートの比は、90:10~50:50である。
【0015】
代表的なアルキルホスフェートは、トリエチルホスフェートである。
【0016】
代表的なアルキルホスフェートは、ICL Industrial Products,Tarrytown,NY製のFyrol(登録商標)PNX、Clariant,Muttenz,Switzerland製のEXOLIT(登録商標)OP 550又はOP 560、ブチルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート及びトリフェニルホスフェートである。
【0017】
フォームの他の構成要素
いくつかの実施形態において、有機シリコーン界面活性剤も、火災事象中にブリスターサイズを小さくするのに役立つために存在し得る。
【0018】
熱硬化性フォームは、界面剤、リン含有化合物、塩素含有化合物、追加の臭素化難燃剤、防腐剤、酸化防止剤、触媒、着色剤、苦味剤、充填材、赤外線減衰剤(カーボンブラック、黒鉛及び二酸化チタンなど)並びに残留発泡剤又は起泡剤から選択される1つ又は2つ以上などの他の構成要素を含有することができる。
【0019】
フォームは、当技術分野において公知の任意の好適な方法によって調製され得、代表的な方法は、米国特許第4,572,865号明細書に記載されている。
【0020】
複合構造体
上に記載されたような熱硬化性フォームは、少なくとも1つの表面板がフォームの少なくとも1つの外面に接合されたフラットパネルなどの複合構造体を製造するために使用され得る。好ましくは、フォームの少なくとも1つの外面に接合された少なくとも1つの表面板がある。表面板材料は、プラスチックシート若しくは板、樹脂含浸繊維状糸(プリプレグ)、木材又は金属であり得る。典型的な金属シートは、24又は26ゲージ亜鉛めっき鋼である。好ましい金属は、アルミニウムである。表面板は、接着フィルムによって又はプリプレグ中の樹脂から、圧力下において且つ通常熱を用いてフォームに取り付けられる。硬化は、プレス、オーブン又はオートクレーブにおいて実施され得る。そのような技法は、当業者によって十分に理解される。
【0021】
試験方法
ASTM E84-19b建材の表面燃焼特性に関する標準試験方法
UL723-11建材の表面燃焼特性に関する標準試験方法
FM 4880:2017断熱建築パネルアセンブリ及び内装材料の火災性能の評価
NFPA 286(2019)室内火災成長への壁及び天井内装の寄与を評価するための燃焼試験の標準方法
UL 1715(1997)内装材料の燃焼試験に関する標準
【0022】
他の試験方法は、以下に列挙される。
【0023】
【実施例】
【0024】
以下の実施例は、本発明を例示するために与えられ、決してそれを限定すると解釈されるべきではない。本発明に従って調製される実施例は、数値で示す。対照又は比較例は、文字で示す。
【0025】
PIR調合物に使用される材料を表1に、調合物を表2に示す。表2の全ての部は、特に明記しない限り、ポリオールの百部当たりの部による。表3は、調合物中の特定の構成要素の百分率をまとめる。比較例及び発明実施例の燃焼試験結果は、表4にある。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
表3のデータは、以下を示す:
・比較例B:nPBrなしでは、フォームボードは、ペンタン%を下げたが、E84スリット形状又はUL1715に合格せず、比較的高いハロゲン含有量を有した。
・実施例1:適切なBr放出プロファイルありでは、ボードは、はるかにより低い全ハロゲンでE84スリットに合格することができた。
・実施例2:適切なBr放出プロファイルありでは、反応性脂肪族臭素%を増やすことにより、ボードが壁及び天井形状においてE84スリット及びUL 1715に合格することを可能にした。
・実施例3:FRパッケージとシリコーン界面活性剤との相乗効果により、対照(比較例A)と比較してより低い全ハロゲンでUL1715フルルームコーナーに合格することができた。
【国際調査報告】