(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】片持ち式片側実装車輪付き自転車
(51)【国際特許分類】
B60B 5/02 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
B60B5/02 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546052
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 GB2021050211
(87)【国際公開番号】W WO2021152324
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518032111
【氏名又は名称】カーボン キネティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ソープ リチャード
(57)【要約】
自転車用の射出成形片側実装可能車輪であって、リムと、中央ハブと、リムを中央ハブに接続する複数の中空スポークと、を備える、車輪。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車用の射出成形の片持ち式片側実装可能車輪であって、
リムと、
中央ハブと、
前記リムを前記中央ハブに接続する複数の中空スポークと、を備えた、車輪。
【請求項2】
前記中央ハブが、前記リムの中心線によって画定される平面からずれている、請求項1に記載の車輪。
【請求項3】
前記リムが中空断面を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項4】
前記車輪が空気入りタイヤを受け入れるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項5】
前記車輪の内輪ハブ表面が、複数の内側排出孔を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項6】
前記複数の内側排出孔の各内側排出孔が、前記複数の中空スポークのそれぞれの最内端と位置合わせされている、請求項5に記載の車輪。
【請求項7】
前記リムの外面が、複数の外側排出孔を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項8】
前記複数の外側排出孔の各外側排出孔が、前記複数の中空スポークのそれぞれの最外端と位置合わせされている、請求項7に記載の車輪。
【請求項9】
前記複数の外側排出孔の各外側排出孔が、周囲の補強領域を含む、請求項7または請求項8に記載の車輪。
【請求項10】
前記補強領域の線形サイズが、前記それぞれの外側排出孔の線形サイズよりも2.0~4.0倍大きい、好ましくは2.0~3.0倍大きい、最も好ましくは2.5倍大きい、請求項9に記載の車輪。
【請求項11】
前記外側排出孔が、実質的に楕円形であり、
各外側排出孔の幅が、6ミリメートル~10ミリメートル、好ましくは7ミリメートル~9ミリメートル、最も好ましくは8ミリメートルであり、
各外側排出孔の長さが、16ミリメートル~24ミリメートル、好ましくは18ミリメートル~22ミリメートル、最も好ましくは20ミリメートルである、請求項7~10のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項12】
各外側排出孔の幅が、約8ミリメートルであり、前記排出孔の長さが、約20ミリメートルである、請求項11に記載の車輪。
【請求項13】
タイヤバルブステムを受け入れるように構成された前記リムの前記外面にタイヤバルブステム孔をさらに有し、前記タイヤバルブステム孔が、周囲の補強領域を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項14】
各補強領域が、前記外面の公称厚さよりも1.5~3.0倍厚い、好ましくは2.0~3.0倍厚い、最も好ましくは2.5倍厚い、請求項8もしくは13、またはそれに従属する任意の請求項に記載の車輪。
【請求項15】
前記外面の前記公称厚さが、1.5ミリメートル~3.5ミリメートル、好ましくは1.9ミリメートル~3.1ミリメートル、より好ましくは1.9ミリメートル~2.1ミリメートル、最も好ましくは2.0ミリメートルである、請求項14に記載の車輪。
【請求項16】
前記車輪が前記自転車に取り付けられる場合に、前記車輪が、自転車に当接するように配置されたハブ接続面を含み、前記当接面が、前記リムの前記中心線によって画定される前記平面からずれている、請求項1~15のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項17】
各スポークの長手方向に沿って延びる各中空スポークの軸が湾曲している、請求項16に記載の車輪。
【請求項18】
各中空スポークの断面積が、前記車輪の中央から半径方向の外向きに滑らかに減少する、請求項1~17のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項19】
各中空スポーク内に対称に延在し、前記リムの前記中心線によって画定される前記平面に対して垂直な平面を成す中央スパーをさらに備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項20】
前記車輪の直径が、500ミリメートルより小さく、かつ/または前記車輪の直径が、300ミリメートルより大きい、請求項1~19のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項21】
前記車輪のハブが、それぞれの複数のボルトを受け入れるように構成された、前記車輪の中心回転軸に平行な複数の貫通孔を備える、請求項1~20のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項22】
前記車輪が、ロストコア射出成形の片側実装可能車輪または可溶性コア射出成形の片側実装可能車輪である、請求項1~21のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項23】
前記車輪が、ガラス充填ナイロン製である、請求項1~22のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項24】
5つの中空スポーク、6つの中空スポーク、または7つ以上の中空スポークを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の車輪を備える自転車。
【請求項26】
前記車輪が、複数のボルトおよび車輪ハブカラーを用いて前記自転車に取り付けられる、請求項25に記載の自転車。
【請求項27】
前記車輪に取り付けられた空気入りタイヤをさらに備える、請求項25または請求項26に記載の自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自転車の車輪に関し、より詳細には、片側実装型の自転車の車輪に関する。
【背景技術】
【0002】
現在最新の自転車の大部分の車輪は、2つの固定点で自転車フレームに取り付けられている。従来の自転車の車輪は、これらの2つの点に取り付けられており、これらの点は、一般に、車輪中心面の両側にあり、通常、車輪ハブの車軸をリア側またはフロント側フォークフレーム部材に堅固に接続する留め金具を伴う。
【0003】
このような両側実装型の従来の自転車の車輪には、製造コストの低さ、軽量、頑丈な構造、標準化された製造およびメンテナンスなどの多くの利点がある一方、大きな欠点もある。タイヤおよびチューブに効果的にアクセスするため、またはタイヤおよびチューブを交換するため(パンクを修理する場合など)、車輪を自転車フレームおよびチェーンから完全に取り外す必要がある。両側実装型の従来の車輪の自転車フレームの前輪を取り外すことは、いわゆるクイックリリース(Quick release skewer)を使用した場合に比較的簡単であり、通常、ユーザーの手にグリースが付くようなことはない。
【0004】
しかしながら、両側実装型の従来の車輪の自転車の後輪を取り外すことは、通常、遥かに複雑で、煩雑で、やっかいな操作であり、リアディレイラーギアおよびチェーンシステムからの油または汚れでユーザーの手または衣服を汚す結果となる。車輪を取り外す前に確実にブレーキシステムを解放し、その後、車輪をフレームに再度取り付けた後で安全に再調整するという複雑さも加わる。後輪の自転車遊星式多段ギアハブを採用した両側実装型の従来の車輪の自転車のフレームでは、ユーザーが、通常、チェーンまたはベルトの張力を、いわゆる「水平リアドロップアウト」または偏心ボトムブラケット調整構造を用いて調整する必要があるという複雑さも加わる。
【0005】
両側実装車輪のフレームの構成にはさらに欠点があり、それは折り畳み時に前輪と後輪を同軸構成で位置決めする折り畳みヒンジ機構を有する折り畳み式自転車に取り付ける場合に顕在化する。両側実装車輪のフレームは、折り畳んだ車輪軸の分、折り畳んだ自転車の幅が広がることで、折り畳んだ状態の自転車が一層大きくなり、かさばるため望ましくない。
【0006】
Strida(商標)、Gocycle(商標)、IF Move(商標)、Mando Footloose(商標)などの少数の特殊な自転車は、片側実装車輪の使用を先駆けである。これらの片側実装車輪の自転車の設計には、乗り手がタイヤを車輪から取り外す上で自転車から車輪を取り外す必要がないという独自の利点がある。
【0007】
片側実装車輪の設計では、現在の最新の片側実装車輪の自転車によって大きく異なる。その違いは、材料の選択、製造における材料の組み合わせ、形状および構造に関係する。
【0008】
例えば、一部の片側実装型の自転車の車輪の設計では、金属リムを張力でもって中央ハブに接続する三角ワイヤースポークなどの従来の自転車技術を採用していることから、中央ハブは軸受けおよび片持ち配置の片側で自転車フレームと篏合する十分に大きな車軸に取り付けられる。
【0009】
この設計の欠点は、スポークを三角に組んで、リムの中心平面の各側面に等しい張力を提供する必要があるため、ワイヤースポークの構造が相対的に幅広になることである。この幅は、折り畳み式自転車の設計またはディスクブレーキを使用する設計では望ましいものではなく、ディスクブレーキのキャリパーを、ワイヤースポーク車輪が最も幅広くなる場所にすなわち車輪の中心回転軸に近接して取り付ける必要があることによる。ディスクブレーキキャリパーは、回転スポークに対し十分なクリアランスをとる必要があるため、ディスクブレーキキャリパーの車輪実装の構造全体で幅を追加的に広げる必要がある。
【0010】
ワイヤースポークの片側実装車輪を使用する設計のさらなる欠点は、スポークが、その複雑な性質および多数のスポークが、乗車中に汚れやグリースを拾うため、きれいに保つのが困難なことである。ワイヤースポーク車輪はまた、スポークの張力を一定にし、車輪が正しく走行するように定期的なメンテナンスを必要とすることもある。
【0011】
他の片側実装車輪の設計では、片側実装車輪が、繊維強化プラスチック、または樹脂およびガラスもしくは炭素マトリックス、またはアルミニウムまたはマグネシウムなどの材料を、射出成形もしくは鋳造、または鍛造もしくは真空もしくは圧力形成複合材料製造プロセスにかけて作製される。これらの設計では一般的に、スポークが湾曲するように形成されるか、または車輪を自転車に接続するハブもしくは領域が車輪の中心平面の一方の側にずれるようにスポークがリムおよびハブに接続される。
【0012】
これらの片側実装車輪の固定構造は、自動車のものと同様であり、通常であれば、車輪を回転可能なハブ、ディスクブレーキ、およびスタブ車軸アセンブリに接続するためのいくつかのハブ取り付けボルトの形態をとる。これらの車輪中心線からずれた、湾曲したスポークの利点は、スポークのずれによりディスクブレーキキャリパーを収容する空間があり、車輪およびハブの実装構造がよりコンパクトになることである。またこれらの片持ち式片側実装車輪では、ワイヤースポーク車輪と比較して、空気力学性能を改善し、その滑らかな形状と少ないスポーク数によりワイヤースポーク車輪よりも清掃が容易である。
【0013】
しかしながら、現在最新の片持ち式片側車輪にはいくつかの欠点がある。一般に、上記形状を作成するために使用される材料およびプロセスでは、重い車輪、または高価な車輪、または安全性および性能に対して十分な強度もしくは剛性がない車輪のいずれかとなる可能性がある。
【0014】
マグネシウムまたはアルミニウムの鋳造または鍛造による設計および構造の場合、金属は塗装を必要とするため重量およびコストがさらに増え、またベースとなる金属が多孔性を有する時は表面の仕上がりに問題が生じる可能性がある。
【0015】
プラスチック射出成形車輪の場合、車輪は塗料を必要とせず、製造プロセスは非常に低コストとなる可能性があるが、使用される材料は、求められる重量に対して十分な剛性および強度を欠くため、安全要件を満たすのに十分な強度を持たせようとすると、車輪は重くなり過ぎる傾向がある。
【0016】
ガラス強化プラスチック材料で作られた射出成形リムに対して、特に高圧タイヤを装着した場合、またはユーザーがリムの定格よりも高い圧力でタイヤを膨らませた場合に、大きな課題がある。これらのリムが、正しく設計されていない場合、壊滅的な故障を引き起こす可能性があり、一般的には、材料を追加して実質的な補強が必要となり、重量が増える。
【0017】
いくつかの設計では、射出成形プラスチックスポークおよびハブからなるサブアセンブリに対して、ボルト留めまたは接着または接合された従来型の金属押出リムを使用することにより、射出成形プラスチックリムに取り付けられた高圧タイヤの課題を克服しようと試みてきた。このアプローチの欠点として一般に、コストの上昇、重量の増加、さらに異なる材料同士を接合することの複雑さおよび耐久性、ならびに長期的な信頼性が挙げられる。
【0018】
これらの材料および製造プロセスの設計のいずれも中空ボックス断面を採用できないという制限を受けているが、これを採用すれば重量を増やすことなく材料の応力を減らし、剛性を高めることができる。一般に利用可能な自動注入成形、鍛造、または鋳造の製造プロセスでは「U」チャネルまたは「Iビーム」チャネル断面(例えば、中空断面は不可能)を採用する設計のみ可能であるが、中空ボックス断面構造よりも特定の強度および剛性において実質的に劣っている。
【0019】
炭素またはガラス複合材料の車輪にはボックス断面構造を採用することができ、内部コアは、空気、発泡体または金属マトリックスのコアであって外側の炭素繊維もしくはガラス繊維の壁に結合したもので充填される。この設計は、非常に強力で、剛性があり、軽量な車輪を提供するが、価格は大幅に高くなる。この高い価格は、複雑な製造方法、複合材料繊維の材料コストの高さ、およびマルチピース構造によるものである。
【0020】
自転車の車輪が故障すると、重傷または死亡につながる可能性があるため、自転車の車輪は、空気入りタイヤの過剰な膨張、または非常に暑いまたは非常に寒い条件(例えば、暑い日の車内、または雪の野外)で保管されるなどの極端な条件に耐えるように構築される必要がある。車輪の成形プロセスおよび特定の幾何学形状は、強度および剛性などの車輪の材料の特性を変化させる可能性があるため、製造業者は、故障のリスクを低減するために、試行錯誤を重ねた方法を選んでいる。
【発明の概要】
【0021】
本発明の第1の態様はリム、中央ハブ、および外側リムを中央ハブに接続する複数の中空スポークを備えた自転車用の射出成形による片持ち式片側実装が可能な車輪である。
【0022】
片側実装可能車輪は、一方の側からのみ取り付け可能な車輪である。
【0023】
好ましくは、中央ハブは、外側リムの中心線によって画定される平面からずれている。
【0024】
従来の射出成形技術は、中空スポークなどの中空構造を作成するために使用することはできないため、このような設計は、従来の射出成形の設計に反する。
【0025】
「ロストコア」または「可溶性コア」プロセスとして知られる比較的新しい製造プロセスが存在する。このプロセスは、低コストで高効率な射出成形に基づいているが、中空スポークなどの内部中空構造を採用することができる。中心固体「ロストコア」は、通常金属製であり、通常それを液体に溶解し、射出成形プロセスの後、部品から排出することによって除去される。
【0026】
最終部品は中空の「ボックス」断面構造を有するため、従来の射出成形の片側実装車輪と比較して、本車輪は、比強度および剛性の点で実質的に向上しており、製造コストに見合った軽量な構造を実現できる。
【0027】
ロストコアプロセスを使用して片側実装車輪を作製することは、リムの中心線によって画定された平面から中央ハブがずれる(すなわち、スポークが中央ハブに接続する場所は、車輪のリムの中心線が位置する平面からずれる)ため、車輪が非対称となり、成形プロセス中の温度変化により、車輪が非対称に収縮するおよび/または変形するおよび/または湾曲するリスクがあるため、特に困難である。したがって、非対称な幾何構造および形状を有する片持ち式片側実装車輪のためにロストコアプロセスを使用することは、以前は検討されていなかった。このような車輪設計は、キャリパー式ブレーキの代わりにディスクブレーキが使用される場合に使用されることが典型的である。車輪のリムに接触して制動力を与えるキャリパー式ブレーキを使用することは、以前の形態の射出成形車輪に対しては回避されることが多いが、これはキャリパーブレーキが主に制動中の加熱によって、車輪を形作るリムの材料に対して有害な影響を与えるためである。
【0028】
本車輪は、スクータ、三輪車または四輪車などの他の車両であって、自転車に一般的に使用されるまたは使用可能な車輪を使用するにも使用され得る。
【0029】
好ましくは、リムは中空断面を含む。「リム」という用語は、スポークによって典型的に支持される車輪リムを意味することを意図する。車輪フレームおよび/またはタイヤなど、外側リムよりもハブから見てさらに外側に延びるさらなる特徴を有してもよい。このように、リムは、外側リムまたは車輪リムとも称される。
【0030】
好ましくは、車輪は空気圧式タイヤを受け入れるように構成されている。
【0031】
本車輪は、その半径方向の中心にハブを有してもよく、ハブは、車軸に取り付け可能であってもよく、または車軸を提供してもよい。ハブは、内側車輪ハブ表面を提供する表面を有してもよい。内側車輪ハブ表面は、使用中に車軸と係合するように配置されたリングなどのリングを提供してもよい。好ましくは、車輪の内側車輪ハブ表面は、複数の内側排出孔を含む。より好ましくは、複数の内側排出孔の各内側排出孔は、複数の中空スポークのそれぞれ1つの最内端と実質的に位置が合わされている。
【0032】
好ましくは、リムの外面は、複数の外側排出孔を含む。より好ましくは、複数の外側排出孔の各外側排出孔は、複数の中空スポークのそれぞれ1つの最外端と実質的に位置が合わされている。
【0033】
リムの外面は、車輪リムチューブ接触面であってもよい。戦略的に位置決めおよび成形された孔(内側排出孔および/または外側排出孔など)によって、「ロストコア」を溶解し、射出成形後に車輪から排出できるようにする。
【0034】
好ましくは、複数の外側排出孔の各外側排出孔は、周囲の補強領域を含む。
【0035】
好ましくは、補強領域の線形サイズは、それぞれの外側排出孔の線形サイズの2.0倍と4.0倍の間、好ましくは2.0倍と3.0倍の間、最も好ましくは2.5倍大きい。
【0036】
線形サイズとは、外側排出孔の幅および長さを指す。例えば、各補強領域の長さおよび幅は、好ましくは、外側排出孔の長さおよび幅のそれぞれ2.0倍と3.0倍の間、最も好ましくは2.5倍大きい。
【0037】
好ましくは、外側排出孔は(実質的に)楕円形であり、各外側排出孔の幅は、6ミリメートルと10ミリメートルの間、好ましくは7ミリメートルと9ミリメートルの間、最も好ましくは8ミリメートルであり、各外側排出孔の長さは、16ミリメートルと24ミリメートルの間、好ましくは18ミリメートルと22ミリメートルの間、最も好ましくは20ミリメートルである。
【0038】
任意に、各外側排出孔の幅は約8ミリメートルであり、各外側排出孔の長さは約20ミリメートルである。
【0039】
空気入りタイヤの相対的に高い空気圧は、リムの外面に極端な応力を生じさせる。排出孔およびバルブステム孔の周りの補強材は、応力を均等に分配するので、15%ガラス充填ナイロン66などの低コスト材料の使用を可能にする。中実ゴムタイヤのような非空気入りタイヤについては、タイヤによって生じる応力は遥かに低く、(ユーザーによる空気圧タイヤの過充填または温度や高度によるタイヤ圧力の変化などによる)変動が少ないので、このような問題は考慮されない。
【0040】
好ましくは、本車輪は、タイヤバルブステムを受け入れるように構成されたリムの外面に、タイヤバルブステム孔をさらに備える。
【0041】
好ましくは、タイヤバルブステム孔は、周囲の補強領域を含む。
【0042】
好ましくは、各補強領域は、外面の公称厚さの1.5倍と3倍の間、好ましくは2.0倍と3.0倍の間、最も好ましくは2.5倍の厚さである。
【0043】
好ましくは、外面の公称厚さは、1.5ミリメートルと3.5ミリメートルの間、好ましくは1.9ミリメートルと3.1ミリメートルの間、より好ましくは1.9ミリメートルと2.1ミリメートルの間、最も好ましくは2.0ミリメートルである。「公称厚さ」という語句は、厚肉化が適用されない車輪が作られる材料の典型的な厚さを意味することを意図しており、ここでいう厚肉化とは意図的な厚肉化または厚みが増大する可能性のある角または曲率の増加した場所を表しており、厚肉化が行われないそのような場所は、リムの側面および各スポークの中央部分に存在し得る。
【0044】
任意に、本車輪は、車輪が自転車に取り付けられる場合に自転車に当接するように配置されたハブ接続面を含み、当接面は、リムの中心線によって画定される平面からずれている。
【0045】
任意に、各スポークの長手方向に沿って延びる各中空スポークの軸は、湾曲している。この軸は、車輪に対する半径方向軸であってもよい(ただし、リムが配置されている平面に対して角度をもって配向される可能性がある)。
【0046】
ずれたハブ接続面および湾曲したスポークは、ディスクブレーキのためのより多くの空間を確保できる。
【0047】
任意に、各中空スポークの断面積は、車輪の中央から半径方向の外向きに滑らかに減少する。
【0048】
任意に、車輪は、各中空スポーク内に対称に延在し、リムの中心線によって画定される平面に対して垂直である中央スパーウェブ(spar web)構造をさらに備える。このようなスパーは、成形プロセスにおける冷却中にスポークを安定させるとともに、車輪の横方向の剛性を上げるためにスポークの外形を安定させるのに役立つ。
【0049】
任意に、車輪は、車輪の回転中心と同軸の円錐形の中央車輪ハブをさらに備える。
【0050】
好ましくは、車輪の直径は500ミリメートルより小さい。
【0051】
好ましくは、車輪の直径は300ミリメートルより大きい。
【0052】
好ましくは、車輪のハブは、それぞれの複数のボルトを受け入れるように配置された、車輪の中心回転軸に平行な複数の貫通孔を含む。
【0053】
好ましくは、車輪は、ロストコア射出成形片側実装車輪または可溶性コア射出成形片側実装車輪である。
【0054】
好ましくは、車輪はガラス充填ナイロン製である。例えば、車輪は、(約)15%ガラス充填ナイロン66で作製され得る。もちろん、他のガラス充填率(%)および他の種類のナイロンも使用され得る。
【0055】
好ましくは、車輪は均質な材料で形成される。
【0056】
任意に、車輪は、5つの中空スポーク、6つの中空スポーク、または7つ以上の中空スポークを含んでもよい。
【0057】
本発明の第2の態様としては、第1の態様の車輪を備える自転車がある。
【0058】
好ましくは、車輪は、複数のボルトおよび車輪ハブカラーで自転車に取り付けられる。さらに、車輪ハブカラーは車軸とされてもよい。
【0059】
車輪ハブカラーは、ボルトからの押圧負荷を車輪全体に均等に広げることにより、材料の応力を軽減する。
【0060】
好ましくは、自転車は、車輪に取り付けられた空気入りタイヤをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0061】
添付の図面を参照して、ここで本発明の例を詳細に説明する。
【0062】
【
図1】片持ち式片側実装車輪を備えた自転車の側面図を示す。
【
図2】自転車に取り付けられたリア側片持ち式片側実装車輪の斜視図である。
【
図3】片持ち式片側実装車輪の斜視図が示されており、その中で
図2の片持ち式片側実装車輪のスポークおよびリムを通る切り取り断面が示されている。
【
図4】自転車の前輪ハブおよびフロント側フォークシャフトアセンブリに取り付けられた片持ち式片側実装車輪を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
【0064】
図2に示されるように、自転車のリア側では、回転可能な車輪ハブ23にディスクブレーキローター7が堅固に取り付けられ、自転車1に堅固に取り付けられたブレーキキャリパー3と連動する。タイヤ4の取り付けられた片持ち式片側実装車輪2を、リア側の回転可能な車輪ハブ23に取り付けるために、車輪ハブカラー取り付けボルト6を複数用いて車輪ハブカラー5を片持ち式片側実装車輪2に押し付けることで、リア側の回転可能な車輪ハブ23に堅固に取り付けている。
【0065】
片持ち式片側実装車輪2の斜視図が
図3に示されており、
図3は、湾曲した車輪スポーク11、中央車輪ハブ21、および車輪リム内側形状22、および車輪リムチューブ接触面8を通る切り取り断面を示す。片持ち式片側実装車輪2は均一な構造であり、また全体を通して均質な材料からなる。
【0066】
片持ち式片側実装車輪2の材料の性質は、理想的には、加熱され液体となった状態で成形型に注入し、続いて冷却および固化することができる繊維強化プラスチック類である。片持ち式片側実装車輪2の製造プロセスは、いわゆる「ロストコア」または「可溶性コア」の射出成形プロセスであり、それによって、個体、通常は金属のコアが、射出成形段階中に内部中空構造を形成するために使用され、その後、コアを溶解し、それを洗浄または排出することによって部品から除去される。
【0067】
片持ち式片側実装車輪2は、概ね円形で円錐形で、片持ち式片側実装車輪2の回転中心と同軸に位置する中央車輪ハブ21で形成され、さらに実質的に直交する平面的な車輪ハブ接続面19を有し、理想的にはこの面が片持ち式片側実装車輪2の垂直面に対して平行である。代替手段として、中央車輪ハブ21および車輪ハブ接続面19を、円錐形のテーパー形状を形成するように組み合わせてもよい。
【0068】
車輪ハブ接続面19を通して、自転車1に片持ち式片側実装車輪2を取り付けるために、複数の車輪ハブ取り付けボルト穴9が存在する。中央車輪ハブ21内には、各湾曲車輪スポーク11と概ね位置が合わされた複数の内側スポーク排出孔10が存在する。
【0069】
内側スポーク排出孔10の働きは、「ロストコア」製造プロセスの内側コアを、片持ち式片側実装車輪2の材料の固化後に除去可能とすることである。各内側スポーク排出孔10の形状は、ほぼ丸い形(例えば、円形)または楕円形であり、最小限の鋭利な縁または角を有する滑らかで均一な幾何学形状である。
【0070】
各湾曲車輪スポーク11は、一般に、中空の「ボックス断面」設計であり、均一な厚さである。理想的には、湾曲車輪スポーク11から車輪リム内側形状22に与えられる材料応力を低減するために、湾曲車輪スポーク11を5本とするが、他の本数のスポークを有する車輪も想定され、3本以上のスポークとしてもよい。
【0071】
形状の連続的かつ滑らかな遷移によって湾曲した車輪スポーク11に対して一体的に接続されるのは、車輪リム内側形状22および車輪リムチューブ接触面8であり、これらは自転車のタイヤおよびチューブを受け入れることができる概ね中空の「ボックス断面」構成で作られる。車輪リム内側形状22および車輪リムチューブ接触面8は、チューブおよびタイヤを空気で膨張させるため、自転車チューブのバルブステムを受け入れることができるタイヤバルブステム孔13を有する。
【0072】
車輪リムチューブ接触面8は、各湾曲車輪スポーク11とほぼ位置合わせされた複数の外側スポーク排出孔12を有する。外側スポーク排出孔12の働きは、内側スポーク排出孔10の働きと同様であり、「ロストコア」製造プロセスの内側コアを、片持ち式片側実装車輪2の材料の固化後に除去可能にすることである。内側スポーク排出孔10の形状は、ほぼ円形または楕円形であり、最小限の鋭利な縁または角を有する滑らかで均一な幾何学形状である。
【0073】
排出孔10、12は、スポーク11と位置合わせされているように描かれているが、他の排出孔を、他の位置、例えば、スポーク間の領域に位置を決めて追加してもよい。
【0074】
図4は、中央車輪ハブ21におけるフロント側の回転可能車輪ハブ14と、複数の車輪ハブカラー取り付けボルト6および車輪ハブカラー5を有する前輪ハブベアリング15とに取り付けられた、片持ち式片側実装車輪2を示す垂直断面図である。車輪ハブカラー5の働きは、材料応力を低減するために、各車輪ハブカラー取り付けボルト6からの押圧負荷を、片持ち式片側実装車輪2にわたって均等に広げることである。
【0075】
フロント側回転可能車輪ハブ14はフロント側のフォークシャフトアセンブリ18に回転可能に取り付けられており、これにはフロント側の回転可能車輪ハブ14に堅固に取り付けられているディスクブレーキローター7と連動するブレーキキャリパー3が装着されている。
【0076】
各湾曲車輪スポーク11は、ブレーキキャリパー3のための空間を確保できるように、一般に湾曲しており、2の中心線平面からずれている。同様に、車輪ハブ接続面19は、ブレーキキャリパー3のための空間を確保できるように、片持ち式片側実装車輪2の中心線平面を基準にして一方の側に実質的にずれている。
【0077】
各外側スポーク排出孔12は、外側スポークの排出孔の補強領域16によって囲まれており、この領域は、一般に、車輪リムチューブ接触面8の公称厚さの2倍の厚さである。外側スポーク排出孔補強領域16の働きは、フロント側フォークシャフトアセンブリ18の周りの材料応力を減少させることである。
【0078】
外側スポークの排出孔の補強領域16のサイズおよび形状は、一般に、外側スポーク排出孔12の2倍よりも大きく、車輪リムチューブ接触面8に滑らかにつながる。
【0079】
同様に、タイヤバルブステム孔13は、タイヤバルブステムホール補強領域20によって囲まれており、この領域は、一般に、車輪リムチューブ接触面8および車輪リム内側形状22の公称厚さの2倍よりも厚い。タイヤバルブステム孔補強領域20の働きは、タイヤバルブステム孔13の周りの材料応力を減少させることである。
【0080】
タイヤバルブステムホール補強領域20のサイズおよび形状は、一般に、タイヤバルブステムホール13の2倍よりも大きく、車輪リムチューブ接触面8に滑らかに溶け込む。
【0081】
片持ち式片側実装車輪2は、標準的な自転車用タイヤおよびチューブを受け入れることができるリムタイヤプロファイル17で形成されている。
【0082】
図5は、任意の中央スパーウェブ構造24を有するスポーク11の断面を示す。中央スパー24は、スポーク11の長さのすべてまたはその一部に渡って延在してもよく、車輪2の外側リムの中心線によって画定される平面に垂直な平面内のスポーク11内に対称に延在する。中央スパー24は、成形プロセスにおける冷却中にスポーク11を安定させるとともに、車輪2の横方向の剛性を上げるためにスポーク11の外形を安定させる。
【国際調査報告】