(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】移動する複数のパルス化X線源を使用する高速3次元X線撮影
(51)【国際特許分類】
A61B 6/02 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
A61B6/02 303M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546071
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 US2021013681
(87)【国際公開番号】W WO2021154519
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522300662
【氏名又は名称】アイクススキャン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジアンキアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,リンボ
(72)【発明者】
【氏名】マオリンベイ,マナト
(72)【発明者】
【氏名】タン,シャオフィ
(72)【発明者】
【氏名】ク,チュン-ユアン
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA07
4C093AA11
4C093DA06
4C093EA06
4C093EA07
4C093EA20
4C093EB13
4C093EC17
4C093EC37
4C093FA54
4C093FA55
4C093FC27
(57)【要約】
高効率及び超高速の3次元X線撮影を行うために、移動する複数のパルス化X線源を使用するX線イメージングシステムが提示される。移動する構造体に取り付けられて、X線源のアレイを形成する複数のパルス化X線源がある。複数のX線源は、一定の速度において、予め設定された円弧軌道上で被写体に対してグループとして同時に移動する。それぞれの個々のX線源は、わずかな距離において、その静止位置の周囲を高速で移動することもできる。X線源が、グループ速度に等しい速度を有するが、反対の移動方向を有する場合、X線源及びX線フラットパネル検出器は、X線源が瞬間的に静止状態に留まるように、外部の露光制御ユニットを通して起動される。これは、各X線源の大幅に短縮された移動距離をもたらす。3次元走査は、はるかにより短い時間ではるかにより広いスイープ角度をカバーすることができ、及び画像分析もリアルタイムで行われ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する複数のパルス化X線源を使用して高速3次元X線撮影を提供するシステムであって、
所定の形状を有する円弧レール上で自由に移動する1次モータステージと、
前記1次モータステージと係合し、及び前記1次モータステージの速度を制御する1次モータと、
前記1次モータステージに結合され、及び前記円弧レールの方向に沿って移動する複数の2次モータステージと、
それぞれ2次モータステージと係合し、及び2次モータステージの速度を制御する複数の2次モータと、
それぞれ2次モータステージによって移動される複数のX線源と、
前記1次モータステージ及び2次モータステージのためのハウジングを提供する支持フレーム構造と、
X線イメージングデータを受け取るフラットパネル検出器と
を含むシステム。
【請求項2】
前記1次モータステージ及び2次モータステージの前記速度は、ソフトウェアによって調整可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1次モータステージ及び2次モータステージの初期空間位置は、ソフトウェアによって調整可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記X線源の電流及び電圧は、ソフトウェアによって調整可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記X線源の露光時間は、ソフトウェアによって調整可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
被写体は、静止している、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
移動する複数のパルス化X線源を使用して高速3次元X線撮影を提供するシステムであって、
円弧レール上で移動する複数の直接接触型モータステージと、
それぞれ直接接触型モータステージに係合し、及び前記直接接触型モータステージの速度を制御する複数の直接接触型モータと、
それぞれ1つの直接接触型モータステージに結合された複数のX線源と、
直接接触型モータ及び直接接触型モータステージのための支持フレーム構造ハウジングと、
X線イメージングを受け取るフラットパネル検出器と
を含むシステム。
【請求項8】
移動する複数のパルス化X線源を使用する高速3次元X線撮影の方法であって、
1次モータステージ及び1つ又は複数の2次モータステージを所定の初期位置に位置決めすること、
前記1次モータステージを前記1次モータによって所定の一定の速度でスイープすること、
前記2次モータステージのそれぞれを、対応する2次モータにより、所定の順序で揺動させること、
前記1次モータステージの方向と反対の方向において、及び前記1次モータステージの選択された速度で2次モータステージが移動するとき、X線源及びフラットパネル検出器を電気的に起動すること、及び
フラットパネルで前記X線源からの画像データを取得すること
を含む方法。
【請求項9】
X線源の空間位置及びX線検出器の空間位置を較正することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
異なるX線源電圧で前記1次モータステージを2回以上スイープすることにより、デュアルエネルギー又はマルチエネルギーイメージングデータを取得することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
スマート走査は、前記X線源を所定の順序で起動することによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
X線イメージングデータは、リアルタイムで取得及び再構築される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
4次元イメージングは、3次元空間イメージングデータに時間成分を加えることによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
関心領域に基づいてスイープ角度を変更することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
スイープ中、被写体密度に基づいてX線源電圧入力を変更することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
X線検出器は、前記X線源の位置に基づいて位置を調整するためにリニアステージに結合される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第62967325号に対する優先権を主張し、その内容は、参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本特許明細書は、3次元X線撮影システム及び方法の分野におけるものあり、特に、パルス化X線源及び広域のデジタルフラットパネルX線検出器の使用に向けたものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
マンモグラフィ、同じくデジタルトモシンセシス(DTS)のような一種のデジタルX線3次元撮影があり、従来のX線撮影と同等の放射線量レベルで高解像度の限定角度断層撮影を行うための方法である。
【0004】
これらのデジタルトモシンセシスシステムは、一般に、回転式のCアームアセンブリの一端に取り付けられたX線源と、他端に取り付けられたデジタルフラットパネル検出器とを使用する。X線源と検出器との間には、乳房を圧迫して固定できる装置がある。乳房の圧迫は、X線散乱の低減、放射線量の低減、検出器全体のより均一な光学濃度及び解剖学的構造の改善された可視化のために必要である。
【0005】
トモシンセシスは、症状のない女性の乳がんの初期兆候をスクリーニングするために使用することができる。この種の画像は、乳がんの症状がある女性の診断ツールとして使用することもできる。トモシンセシスは、マンモグラフィの高度な種類である。デジタルブレストトモシンセシス(DBT)は、2Dマンモグラフィよりも多くのがんを検出し、偽陽性が少なく、病変の位置を正確に特定する。
【0006】
トモシンセシスが行われる場合、X線源は、乳房の周りで弧を描くように移動する必要があり得る。X線源が乳房の周りを移動する間、一連の低線量X線画像が異なる角度で取得される。
【0007】
収集されたデータセットにより、平行な平面を再構成することができる。各平面は、焦点が合っており、平面外の組織画像であるものは、ぼやけている。通常、スイープ角度を広くすれば、より多くのデータ投影を生成し、3次元解像度が向上するが、より長い時間がかかる。データ処理は、異なる再構成アルゴリズムが使用される可能性があるため、メーカー固有のものである。
【0008】
このような種類のデジタルトモシンセシスシステム及び方法は、COVID用X線3次元胸部診断システム、X線3次元非破壊検査(NDT)システム及びX線3次元セキュリティ検査システムなど、他のX線3次元撮影用途にも適用できることが強調されるべきである。
【0009】
X線3次元撮影を行うために単一のX線源及び単一のフラットパネルを具備する従来技術がある。しかしながら、従来技術には欠点がある。
【0010】
主な欠点は、単一のX線源が良好なデータ投影を取得するのに非常に長い時間がかかることである。これは、連続モードとステップアンドシュートモードとの両方に当てはまる。連続モードでは、X線源は、移動しながらX線を放射し、ステップアンドシュートモードでは、X線源は、ある場所に移動し、停止してX線を放射し、次の場所への移動を続ける。
【0011】
すべての患者は、X線撮像ができるだけ速く行われることを望むが、最低限のX線源の移動スイープ角度が必要である。X線源の移動量が少なく、必要な合計時間が短くなるようにスイープ角度を小さくしすぎると、システムのデータ投影数が少なくなる。データ投影数が少ないと、奥行き解像度が低下し、細部の認識が損なわれることになる。3次元解像度を高めるため、良好なデータ投影のために十分にスイープ角度を大きくする必要がある場合、単一のX線源では機械的な移動距離が長くなりすぎて、患者が不快に感じたり、乳房を静止した状態に保つことができなくなったりする可能性がある。場合により、50度のスイープに約30秒もかかる。
【0012】
第2の欠点は、すべてが遅いため、リアルタイムの再構築が困難なことである。通常、従来技術ではスイープを終えるのに数十秒かかる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
第1の態様において、移動する複数のパルス化X線源を使用して高速3次元X線撮影を提供するシステムであって、所定の形状を有する円弧レール上で自由に移動する1次モータステージと、前記1次モータステージと係合し、及び1次モータステージの速度を制御する1次モータと、前記1次モータステージに結合され、及び円弧レールの方向に沿って移動する複数の2次モータステージと、それぞれ2次モータステージと係合し、及び2次モータステージの速度を制御する複数の2次モータと、それぞれ2次モータステージによって移動される複数のX線源と、1次モータステージ及び2次モータステージのためのハウジングを提供する支持フレーム構造と、X線イメージングデータを受け取るフラットパネル検出器とを備えるシステムである。
【0014】
第2の態様において、移動する複数のパルス化X線源を使用する高速3次元X線撮影の方法は、1次モータステージ及び1つ又は複数の2次モータステージを所定の初期位置に位置決めすること、1次モータステージを前記1次モータによって所定の一定の速度でスイープすること、2次モータステージのそれぞれを、対応する2次モータにより、所定の順序で揺動させること、1次モータステージの方向と反対の方向において、及び1次モータステージの選択された速度で2次モータステージが移動するとき、X線源及びフラットパネル検出器を電気的に起動すること、及びフラットパネルでX線源からの画像データを取得することを含む。
【0015】
別の態様において、超高速で高効率の3次元X線撮影を行うために、移動する複数のパルス化X線源を使用するX線イメージングシステムが提示される。このシステムでは、移動する構造体に取り付けられて、X線源のアレイを形成する複数のパルス化X線源がある。複数のX線源は、グループの一定の速度において、予め設定された軌道上で被写体の周囲を同時に移動する。それぞれの個々のX線源は、わずかな距離において、その静止位置の周囲を高速で移動することもできる。個々のX線源が、グループ速度に等しい速度を有するが、反対の移動方向を有する場合、個々のX線源は、外部の露光制御ユニットを通してトリガされる。この配置は、X線源が、X線パルストリガ露光時間中、比較的静止した状態を保つことを可能にする。複数のX線源は、個々のX線源大幅に短縮した移動距離をもたらすことができる。X線受容体は、X線フラットパネル検出器である。3次元X線撮影画像投影データは、はるかに短い時間で全体的にはるかに広いスイープで取得され得、及び走査が進行する間に画像分析もリアルタイムで行われ得る。
【0016】
別の態様において、高効率及び超高速の3次元X線撮影を行うために、移動する複数のパルス化X線源を使用するX線イメージングシステムは、X線源のアレイを形成するために、移動する構造体に取り付けられた複数のパルス化X線源を含む。複数のX線源は、一定の速度において、予め設定された円弧軌道上で被写体に対してグループとして同時に移動する。それぞれの個々のX線源は、わずかな距離において、静止位置の周りを高速で移動することもできる。個々のX線源が、グループ速度に等しい速度を有するが、反対の移動方向を有する場合、個々のX線源及びX線検出器が外部露光制御ユニットを通して起動される。この配置は、X線源が、X線源の起動とX線検出器の露光との間、比較的静止した状態を保つことを可能にする。X線受容体は、X線フラットパネル検出器である。移動動作する複数のX線源は、個々のX線源の大幅に短縮した移動距離をもたらすことができる。3次元X線撮影画像データは、はるかに短い時間で全体的により広いスイープ角度で取得され得、及び走査が進行する間に画像解析もリアルタイムで行われ得る。
【0017】
実装形態において、X線は、ランダム照射スキームを使用して、アレイ内のX線源の1つからランダムに起動することもできる。各蓄積された分析の結果から、次のX線源及び露光条件を決定する。3次元X線撮影画像は、X線露光源の角度付き形状による各画像に基づいて再構築される。はるかにより広い用途は、3次元マンモグラフィ又はトモシンセシス、COVID向け胸部3次元X線撮影又は高速3次元NDT、高速3次元X線セキュリティ検査を含む。
【0018】
上記のシステムの利点は、以下の1つ又は複数を含み得る。移動する複数のX線源の様々な実施形態は、新規超高速3次元X線撮影システムで使用される。
【0019】
第1の利点は、システム全体が数倍速くなることである。各X線源は、円弧状の軌道の全距離のごく一部を機械的に移動するのみでよいであろう。これにより、X線診断装置で患者に必要なデータ取得時間が大幅に短縮される。第2の利点は、走査が進行する間にリアルタイムで画像解析も行われ得ることである。取得した画像の判断は、次の撮影のためのX線源の位置に影響を与える。レイヤー画像再構築を行うために全体的な画像の取得が終わるまで待つ必要もない。
【0020】
第3の利点は、モーションアーチファクトの低減により、高解像度及び高コントラストの画像の取得が可能であることである。各X線源は、原位置付近でX線源を振動させる下部構造体にも取り付けられる。この振動速度と軌道速度との組み合わせにより、個々のX線源が起動される瞬間にX線源の相対的な静止位置がもたらされる。
【0021】
第4の利点は、システムがより速く、より多くのデータ投影を取得するために、より広い範囲をスイープできることである。より多くのデータ投影は、よりよい画像を構築することを意味し、これは、誤診率の低下につながるであろう。
【0022】
第5の利点は、より広い角度及びより高速な画像取得のために、3次元空間イメージングに時間成分を追加して4次元イメージングデータセットを形成することが可能であることである。
【0023】
好ましい実施形態の観点から本発明を記載してきたが、均等物、代替形態及び変更形態は、明示的に記載されたものとは別に可能であり、添付の請求項の範囲内にあることが認識される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面の簡単な説明
【
図1】移動する複数のX線源を備える超高速3次元デジタルX線撮影システムを示す。
【
図2】X線源がモーション制御により位置決めされることを示す機械的な図である。
【
図3】1次及び2次モータステージが反対方向に、しかし同じ速度で移動している瞬間に、個々のX線源が一時的に静止した位置でX線ビームを発することを示す。
【
図4】5つのX線源を備えるシステムがそれぞれ全距離の5分の1だけ移動することによって25セットの投影データを取得することを示す。
【
図5】複数X線源超高速3次元デジタルX線撮影システムが超高速トモシンセシスによる全視野マンモグラフィに存在することを示す。
【
図6】複数X線源超高速3次元デジタルX線撮影システムが、関連する3次元胸部超高速X線撮影で使用できることを示す。
【
図7】一般的なNDT又はセキュリティ用途による3次元超高速X線撮影における複数X線源超高速3次元デジタルX線撮影システムを示す。
【
図8】1次モータ及び1次モータステージを省略でき、個々のX線源がモーション制御により所定の軌道に沿って移動できる別の実施形態を示す。
【
図9】超高速3次元デジタルX線撮影システムの動作のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好ましい実施形態の詳細な説明
複数のパルス化X線源を使用する新しい超高速3次元デジタルイメージングシステムを
図1に示す。これは、1次モーションステージ2と係合する1次モータ1と、複数のX線源5と、X線フラットパネル検出器7とを含む。すべてのモータ、すべてのモータステージ及びX線源は、支持フレーム構造6に取り付けられる。
【0026】
各2次モータ3は、2次モーションステージ4に係合される。すべての2次モーションステージ4は、1次モーションステージ2上に取り付けられる。各X線源5は、2次モータステージ4に取り付けられる。すべてのモータは、プログラム可能なモーション制御ハードウェアによって制御され、所定の速度でモータステージを前後に動かすことができる。2次モータステージ4は、隣接するステージとの間隔が等しくなるように配置される。その結果、すべてのX線源5は、1次モータステージ2と共に移動するが、個々のX線源5は、2次モータステージ4と共に個別に移動することも可能である。
【0027】
X線フラットパネル検出器7は、追加のリニアステージに取り付けることも可能である。X線フラットパネル検出器7は、より広い範囲の画像を有するように、X線源5の位置に基づいて前後に移動することができる。
【0028】
図2は、2次モータ3が剛体構造のアセンブリとして相互接続される別の例示的な実施形態を示し、その剛体構造のアセンブリは、縁部に回転ホイールを有するため、それ自体が1次ステージ2として供される。1次モータ1は、歯車によって1次ステージ2に係合する。1次モータ1は、1次ステージ2を剛性レールに沿って所定の定速で移動させることができる。すべての2次モーションステージ3が取り付けられるため、これらも剛性レールに沿って所定の定速で移動することができる。2次モータ3は、隣の2次モータ3に対して等間隔に配置される。各2次モータステージ4は、2次モータ3によって前後に移動することができる。X線源5が2次モータステージ4に取り付けられる。2次モータステージ4上の各X線源5の動きは、加速、定速、減速及び初期位置への戻りの4つのセッションがある。常に、1次モータステージ2と反対の方向に動く1つのみのX線源5が定速状態であり得る。2次モータステージ4の定速は、1次モータステージモーション2の定速と等しくなるようにプログラムされる。
【0029】
図3は、モーション制御動作の実行方法を示す。1つのデータ取得サイクルについて、1次モータステージ2は、定速で一方向に移動し、その後、初期位置に戻る。1次モータステージ2が定速で移動している間、2次モータステージ4のそれぞれは、所定の速度で振動している。2次モータステージ4が1次モーションステージ1と反対方向に移動し、同じ定速を有するとき、X線源5とX線フラットパネル検出器7とがトリガされる。このトリガの瞬間、X線源5は、まさにX線ビームを発しながら静止しているように挙動をする。したがって、静止状態の動的な配置により、X線源5は、X線イメージングシステムが非常に短時間で異なる空間角度の位置から多数の画像を取得することを可能にする。2次モータステージ4の定速モーションの持続時間は、X線露光時間に合うようにソフトウェアによってプログラムすることができる。1つの2次モータステージ4が定速状態であるとき、他の2次モータステージ4は、その次の定速に備えるために、加速、減速又は初期位置への戻りの状態であり得る。X線源5は、ランダムシーケンスにおける各独立した外部トリガパルスに基づいてオンデマンドで露光を実行するようにプログラムすることもできる。
【0030】
超高速コンピュータが広く利用可能であることを考慮すると、画像解析は、画像取得と共にリアルタイムで行うことができる。撮影された画像の判断は、次の撮影のためのX線源5の位置に影響を与える。画像再構築を行うために、全体の画像取得が終了するまで待つ必要はない。
【0031】
図4は、完全な露光位置を示す。この事例では、5つのX線源5があり、5つのX線源5は、異なる角度位置で合計25回のX線露光を実行する。しかし、各2次モータステージ4は、合計カバー角度の5分の1のみ移動する必要がある。したがって、複数のX線源5を並列に動作させることにより、大量の投影データを短時間で取得することができる。X線フラットパネル検出器7は、X線の受光部として機能する。
【0032】
電子信号は、常に機械的な動きより速く、制限要因のボトルネックは、常にモータステージの動き自体である。次のボトルネックは、検出器の読み出し制限である。検出器は、多くのメガピクセルデータを読み出し、コンピュータに送るのにいくらかの時間を必要とするためである。
【0033】
図5は、複数X線源超高速3次元デジタルX線撮影システムが、超高速トモシンセシスを備えた全視野マンモグラフィにおけるものであることを示す。女性患者の乳房8は、よりよいX線投影データを得るために圧迫器9によってX線フラットパネル検出器7に圧迫される。他のマンモグラフィシステムと比較して、本システムは、はるかにより多くのデータ投影を取得し、女性患者の痛みを軽減しながら、はるかにより速く動作することができる。
【0034】
図6は、複数X線源超高速3次元デジタルX線撮影システムがCOVID関連用途モードで使用される別の実施形態を示す。X線フラットパネル検出器7の上に人体10を寝かせ、関心領域の高速3次元X線画像を得る。COVIDウイルスは、通常、人間の肺にダメージを与えるため、本システムは、肺の状態を確認するための超高速3次元胸部X線撮影を迅速に実行することができる。人間の肺の超高速3次元X線イメージングは、肺の状態を監視するだけでなく、正確な診断にも役立ち得る。
【0035】
図7は、複数X線源デジタルX線撮影システムが一般NDT又はセキュリティ検査用途モードであることを示す。X線フラットパネル検出器7の上に一般的な物体11を置き、関心領域の高速3次元X線画像を得る。本システムは、一般的な物体11を使用して3次元超高速X線撮影を行うことができる。したがって、本システムは、セキュリティ目的のために、荷物ケース又は他の物体内の内容物の高速3次元ビューを提供することができる。
【0036】
X線源5の電流(mA)、電圧(kV)及び露光時間などの制御パラメータは、ソフトウェアを通して電子的に制御することができる。したがって、アプリケーション又はユーザは、様々な被写体に対してX線源5の適切なmA及びkVを選択することができる。
【0037】
1次モータステージ2は、複数回、毎回異なるkVでスイープすることができる。この場合、システムは、同一の被写体に対してデュアルエナジー画像又はマルチエナジー画像を取得することができる。
【0038】
X線スマート走査を行うことも可能である。この場合、X線のmA、kV、速度及びスイープ角度等は、人工知能(AI)によって決定される。例えば、X線のkVは、被写体の密度に基づいて自動的に決定される。
【0039】
オペレータは、特定の関心領域にのみX線走査を行うことを望む場合がある。これは、範囲を走査することができ、ごく特定の走査角度に絞り込むことができる。X線源5は、異なる角度にあり、X線フラットパネル検出器7は、非常に高速でデータを読み出すことができる動的検出器であることから、X線マルチアングルのリアルタイム走査を行うこともできる。
【0040】
スマート走査機能を有する一実施形態では、X線源5は、予め定められた順序で作動され、様々な被写体に対して予め定められた電流/電圧の設定を使用する。X線照射は、複数のX線源5からであり、また複数の異なる角度からであるため、システムは、標準的な3次元X-Y-Z空間情報に加えて、時間成分が画像に内蔵された4次元イメージングを実行することも可能である。
【0041】
図8は、別の代替的な簡略化された実施形態を示す。X線源5は、直接接触型モータステージ14の上に載置される。直接接触型モータステージ14は、直接接触型モータ12と係合する。したがって、直接接触型モータ12は、X線源5を駆動して、長い歯車で所定のレールに沿って移動させることができる。直接接触型モータステージ14及び直接接触型モータ12を収容するために、直接接触型支持フレーム構造13が使用される。この場合、直接接触型モータステージ14のそれぞれは、静止、加速、定速及び減速の状態の1つを有する。X線源5は、静止状態においてのみX線を発する。常に1つのX線源5のみがX線を発することができる。あるX線源5がX線を発している間、他のX線源5が加速、定速及び減速の状態であるという設定を、ソフトウェアを備えたコンピュータで簡単にプログラムすることができる。このようにして、システムは、大きい角度をスイープすることもでき、大量のデータを迅速に取得することもできる。
【0042】
図9は、超高速3次元デジタルX線撮影システムの動作の典型的なフローチャートを示す。超高速3次元デジタルX線撮影システムは、いくつかの高度な特徴を有するが、ほとんどのユーザは、標準的な超高速3次元X線走査のみを望む。
【0043】
電源をオンにした後、システムを初期化する必要があり得る。ソフトウェアプログラムは、システムの初期化を行う必要があり得る。X線源5は、通常、X線管及び高電圧制御エレクトロニクスが安定する状態までウォームアップする必要がある。モーションコントロールシステムは、1次モータステージ2及び複数の2次モータステージ4が共に正しい初期空間位置にあることを確認する。X線源5のそれぞれは、2次モータステージ4に取り付けられ、2次モータステージ4のそれぞれは、1次モータステージ2に取り付けられるため、1次モータステージ2及び複数の2次モータステージ4の正しい位置は、X線源5の正しい位置を意味する。この処理は、ステップS1のブロックに示される。初期化後、X線源5の位置は、最初に広角の形状に均一に分布し、各X線源5は、
図4に記載されるように、走査角度のごく一部のみを担当する。これにより、複数のX線源5が並列に動作するシステムが使用できるようになる。
【0044】
ステップS2のブロックが次のステップである。このステップは、X線走査の試料の準備に関する。したがって、X線走査の被写体の性質に応じて、ステップS2は、長い時間を要する場合がある。被写体が女性患者の乳房である場合、乳房の圧迫が伴い、さらに左右が加わる。被写体が人間の全身又は体の一部である場合、走査される人を正しい位置に寝かせる必要があるであろう。被写体が動物である場合、システムオペレータの指示を聞き入れないことが通常であるため、より多くの作業が必要になる。しかしながら、走査の被写体がNDTのための工業部品又はセキュリティ検査のための荷物である場合、ステップS2は、比較的速く実行することができる。
【0045】
機械及び走査被写体の両方が準備できた後、システムオペレータは、何をすべきかを決定する必要があるであろう。ステップS3のブロックは、動作要求を待っている待機状態である。システムは、多くの高度な特徴を有するが、ほとんどの顧客は、異常が発生しない限り、最小限の労力で超高速高効率の良好なX線放射線画像を必要とするのみである。
【0046】
ステップS4のブロックで決定がなされる。動作には、2つのカテゴリがある。1つは、標準動作であり、もう1つは、多くの高度な特徴が追加された非標準動作である。標準動作は、大量の処理向けに設計され、非標準動作は、包括的な検討向けに設計される。
【0047】
システムオペレータが標準動作で行くことを決定した場合、ステップS5のブロックにおいて、動作速度が若干遅くなることを犠牲にしてX線走査を若干包括的にする別の可能性がある。これは、標準動作における手動モードである。この場合、システムオペレータは、ステップS2に戻ってX線走査被写体の設定の状態を再確認し、位置が正しいこと、関心領域が正しいことを確認する必要がある。
【0048】
X線走査被写体の状態を再確認した後、システムオペレータは、標準的な自動X線走査と同様に、直接ステップS6に進むことができる。ステップS6のブロックは、システムが標準的なX線動作を実行し、画像再構築も実行することを示す。
【0049】
複数のX線源5が並行して動作する新しい方法を使用することにより、ステップS6は、単一のX線源を使用する従来技術の他の方法よりもはるかに速く実行することができる。X線照射回数は、ソフトウェアによって制御される。現在の機械構造では、モータ速度及びX線フラットパネル検出器7の読み出し速度が最高速度の制限因子となる。
【0050】
画像再構築が行われると、ステップS7でシステムオペレータに結果が提示される。このステップS7では、従来技術に比べて、はるかに詳細な情報をはるかに短い時間で得ることができる。ステップS7のブロックは、結果が満足のいくものでない場合、システムオペレータがX線走査処理全体を複数回繰り返すことも可能にする。
【0051】
ステップS4のブロックにおいて要求されたX線走査動作が非標準X線動作である場合、システムオペレータは、ステップS8のブロックに入ることができる。ステップS8において、システムは、システムオペレータが、どのような種類の特定のX線が所望されるかを決定することを必要とするであろう。デュアルエネルギー又はマルチエネルギー走査、4次元X線走査、スマートX線走査及び特定の関心領域の走査など、いくつかの選択肢がある。従来技術では、単一のX線源によるX線走査速度が非常に遅いため、デュアルエネルギー又はマルチエネルギー走査、4次元X線走査、スマートX線走査及び特定の関心領域の走査を行うことは、通常、商業規模では実現不可能である。広範なX線走査を伴うため、これらの種類のプロセスは、所望の結果を得るためにはるかに長い時間を要するであろう。したがって、従来技術では、顧客は、そのようなX線走査を実行するために長時間待つことを好まない場合がある。しかしながら、この新しい超高速X線走査システムにより、すべてのこれらの高度に専門的な走査は、今や商業的に実現可能なものになりつつある。
【0052】
ステップS9では、システムは、要求された特定のX線動作を実行する。X線動作だけでなく、イメージング再構築も特定的である。したがって、ステップS10におけるイメージング処理からの結果は、標準的な超高速X線走査のものよりも多くの情報を有するであろう。この情報は、通常、非常に細かい画面解像度でコンピュータのモニタに表示される。結果が満足のいくものでない場合、システムオペレータは、望む結果が得られるまで常に動作を複数回実行することができる。
【0053】
機械で実行するタスクが多くない場合、システムは、日常的に何らかのメンテナンスを必要とする。ステップS11のブロックは、システムが将来の動作サイクルのために要求又は推奨されるメンテナンスを実行する機会を有することを示す。
【0054】
コンピュータプログラム製品は、1つ又は複数の記憶媒体、例えば固体ディスク、磁気ディスク又は磁気テープなどの磁気記憶媒体、光ディスク、光テープ若しくは機械可読バーコードなどの光学記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)若しくは読み取り専用メモリ(ROM)などの固体電子記憶装置又は本発明による方法を実施するために1つ若しくは複数のコンピュータを制御する命令を有するコンピュータプログラムを格納するために採用される任意の他の物理デバイス若しくは媒体を含み得る。
【0055】
上述したプロセスを制御するソフトウェアは、コンピュータプログラム製品として使用するために、有形のコンピュータ可読記憶媒体に格納することができ、及び/又はコンピュータネットワーク又は他の伝送媒体を介して伝送することができる。
【0056】
上記の特定の実施形態は、例示であり、本開示の趣旨又は添付の請求項の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対する多くの変形形態を導入することが可能である。例えば、異なる例及び例示的な実施形態の要素及び/又は特徴は、本開示及び添付の請求項の範囲内で互いに組み合わされ、及び/又は互いに置換され得る。
【0057】
現在好ましい実施形態を特に参照して本発明を詳細に記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲内で変更形態及び修正形態がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、現在開示されている実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的でないと考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その意味及び均等物の範囲内に入るすべての変更形態は、それに包含されることが意図される。
【国際調査報告】