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特表2023-512067逆アミド結合を持つメラノコルチン受容体に特異的な環状ペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】逆アミド結合を持つメラノコルチン受容体に特異的な環状ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/54 20060101AFI20230315BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20230315BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20230315BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20230315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20230315BHJP
   A61P 27/02 20060101ALN20230315BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20230315BHJP
   A61K 38/12 20060101ALN20230315BHJP
   A61K 38/22 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
C07K7/54 ZNA
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P17/00
A61P35/00
A61P27/02
A61P9/10
A61K38/12
A61K38/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546360
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 US2021016011
(87)【国際公開番号】W WO2021158464
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/969,315
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508041600
【氏名又は名称】パラティン テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドッド,ジョン,エイチ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA16
4C084BA24
4C084DB01
4C084DB20
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA89
4C084ZB11
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZC04
4C084ZC41
4H045AA10
4H045BA01
4H045BA13
4H045BA35
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
Xaa、R、R、R、R、R、R、R10、t、x及びyが明細書で定義されるとおりである式のメラノコルチン受容体に特異的な環状ペプチド、前記式のペプチドを含む組成物及び製剤、並びに式(I)のメラノコルチン受容体に特異的な環状ペプチドを使用し、メラノコルチン受容体介在性疾患、徴候、病態及び症候群を予防、寛解又は治療する方法に関する。
【化1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのペプチド:
【化1】

(式中:
Xaaは、-R-Rであり;
は、置換又は非置換のインドール、フェニル又はナフチルであり;
は、-(CH-であり;
は、H又はC~Cの直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であって、任意選択的には1つ以上のC=C二重結合を含むものであり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的には存在し、存在する場合、1~3のL-若しくはD-異性体アミノ酸、又はそれらの組み合わせであり、ここで任意の骨格の窒素原子は、任意選択的にはメチル化されており;
は、H又はC~C17アシル基であって、任意選択的には置換された直鎖状若しくは分岐状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むものであり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、それが-CH-である場合、Rと一般構造
【化2】

の環を形成し;
がRと環を形成する場合、Rは、-Hであり、またRは、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-CH
-S-(=O)-CH
置換又は非置換のフェニル、
-O-CH-フェニルであり、ここでフェニルは、置換又は非置換の
【化3】

であり;
は、置換又は非置換のフェニル又はナフチルであり;
10は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
11は、-O-CH-フェニルであり、ここでフェニルは、置換又は非置換の
【化4】

であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立して、及び各場合に独立して、H又はC~Cの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル鎖であり;
yは、0又は1であり、それが0である場合、角括弧基は不在であり、それが1である場合、角括弧基は存在し;
tは、各場合に独立して、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、1~8であり;且つ
zは、1~3である)
であって、その全ての鏡像異性体、立体異性体若しくはジアステレオ異性体、又は前述のいずれかの薬学的に許容される塩を含む、ペプチド。
【請求項2】
は、非置換ナフチルである、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
任意の置換フェニル又はナフチルは、各場合に独立して、1~3の間の環置換基で置換され、ここで前記置換基は、同じか又は異なり、且つそれぞれ独立して、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル、又はアリールオキシ-カルボニルである、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
は、少なくとも1つのL-又はD-異性体アミノ酸を含む、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項5】
は、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である、請求項4に記載の環状ペプチド。
【請求項6】
前記脂肪族側鎖は、-(CH-CHである、請求項5に記載の環状ペプチド。
【請求項7】
は、少なくとも1つの窒素原子を含む側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項8】
は、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体である、請求項7に記載の環状ペプチド。
【請求項9】
式(I)の環状ペプチドは、式:
【化5】

の環状ペプチドである、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項10】
及びRは、基:
【化6】

を一緒に含む、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項11】
は、-C(=O)-N(R12a)(R12b)である(式中、R12a及びR12bは、Hである)、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項12】
は、イミダゾール環である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項13】
は、不在である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項14】
は、C~C17アシル基を含む、請求項13に記載の環状ペプチド。
【請求項15】
yは、0である、請求項14に記載の環状ペプチド。
【請求項16】
式(II):
【化7】

(式中、
Zは、H又はN末端基であり;
Xaaは、任意選択的には存在し、存在する場合、1~3のアミノ酸であり、ここで任意の骨格の窒素原子は、任意選択的にはメチル化されており;
Xaaは、Xaaのカルボキシル基とアミドを形成するアミン基を含む側鎖を有するアミノ酸のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、任意選択的には、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール、アルキル-アリール、アルキル-O-アリール、アルキル-O-アルキル-アリール、-O-アルキル-アリール、若しくは-O-アリールで置換された、ProのL-又はD-異性体アミノ酸であり、又はXaaは、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド、若しくはカルボキシルを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、置換又は非置換のアリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はエーテルを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、Xaaが存在しない場合、Xaaの前記アミン基とアミド結合を形成するC末端カルボキシル基を有し;
Xaaは、任意選択的には存在し、存在する場合、任意選択的には1つ以上の環置換基で置換された、少なくとも1つのアリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、1つ以上が存在する場合、同じか又は異なり、独立して、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール、又は-O-アリールであり、Xaaの前記アミンとアミド結合を形成するC末端カルボキシル基を有し;且つ
Xaaは、グリシン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸及び8-アミノカプリル酸から選択されるアミノ酸である)の環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
Zは、直鎖状又は分岐状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール又はアラルキルを含むC~C17のアシル基からなる群から選択されるN末端基である、式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【請求項18】
Xaaは、Gly又はAla、Nle、Leu、Ile又はValのL-又はD-異性体からなる群から選択される単一のアミノ酸残基である、式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【請求項19】
Xaaは、少なくとも1つの一級アミン、グアニジン又は尿素基を含む側鎖を有する単一のアミノ酸である、式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【請求項20】
Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体である、式(II)の請求項19に記載の環状ペプチド。
【請求項21】
Xaaは、任意選択的には1~3の環置換基で置換された、D-Phe又はPheである、式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【請求項22】
前記環置換基は、同じか又は異なり、且つそれぞれ独立して、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、又はアルコキシ-カルボニルである、式(II)の請求項21に記載の環状ペプチド。
【請求項23】
Xaaは、D-Nal1又はD-Nal2である、式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【請求項24】
Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab又はDapのL-又はD-異性体である、式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【請求項25】
Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体である、式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【請求項26】
Zは、C~Cの直鎖状アルキルアシル基であり;
Xaaは、Nle又はArgのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、Dab、Dap、Orn又はLysのL-又はD-異性体であり、ここで前記側鎖アミン基は、Xaaの前記カルボキシルとアミド結合を形成し;
Xaaは、His、Hyp(Bzl)、Met(O)、又はAsnのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、置換又は非置換のPhe、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、ArgのL-又はD-異性体であり;且つ
Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり、ここでそのC末端カルボキシル基は、Xaaの前記アミンとアミド結合を形成する、
式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【請求項27】
その少なくとも1つの骨格窒素原子は、メチル基を含む、式(II)の請求項16に記載の環状ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年2月3日に出願された“Reverse Amide-Linked Melanocortin Receptor-Specific Cyclic Peptides”という表題の米国仮特許出願第62/969,315号の出願に対する優先権及びその利益を主張し、明細書及びその特許請求の範囲は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発明の分野(技術分野):
本発明は、メラノコルチン受容体で、アゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は混合アゴニスト-アンタゴニストである環状ペプチドを含む、ヘッドトゥーテールの逆アミド結合されたメラノコルチン受容体に特異的な環状ペプチド、並びにメラノコルチン受容体介在性疾患、徴候、病態及び症候群の治療におけるメラノコルチン受容体に特異的な逆アミド結合された環状ペプチドの使用に関する。
【0003】
関連技術の説明:
ペプチドは、一方がペプチド配列のN末端に近位であり、及び他方がC末端に近位である2つのアミノ酸残基の側鎖を介して、典型的にはジスルフィド結合を介して(例えば、2つのCys残基の側鎖を介して)又はアミド結合を介して(例えば、一方がカルボキシル基を含む側鎖を有し、及び一方がアミンを含む側鎖を有する2つの残基の側鎖を介して)環化されている。N末端基(例えばアミン)及びC末端基(例えばカルボキシ)をカップリングすることによってアミドが形成され、それによりアミドが結合した環状ペプチドを形成する場合のペプチドなど、ヘッドトゥーテールの環化ペプチドも公知である。
【0004】
正常なヒトメラノサイト、メラノーマ細胞、マクロファージ及び他の細胞で発現されるメラノコルチン受容体1(MC1r);副腎の細胞で発現される、ACTH(アドレノコルチコトロピン)に対するメラノコルチン受容体2(MC2r);視床下部、中脳、脳幹及び末梢組織における細胞で発現される、メラノコルチン受容体3及びメラノコルチン受容体4(MC3r及びMC4r);並びに末梢組織に広範な分布で発現されるメラノコルチン受容体5(MC5r)を含む、メラノコルチン受容体タイプ及びサブタイプのファミリーは、同定されている。MC1rは、炎症の媒介、毛髪及び皮膚色素沈着、及び他の機能に関連すると考えられ;MC2rは、ステロイド産生を媒介すると考えられ;MC3rは、エネルギー恒常性、摂食行動、炎症の媒介、及び他の機能に関連すると考えられ;MC4rは、摂食行動、エネルギー恒常性、性機能、及び他の機能に関連すると考えられ;そしてMC5rは、外分泌腺系調節及び他の機能に関連すると考えられる。
【0005】
アゴニスト及びアンタゴニストペプチドを含む、アゴニスト及びアンタゴニスト双方のメラノコルチン受容体に特異的な化合物は、公知である。例えば、MC4rアゴニストペプチドは、肥満又は誘導性体重減少の治療や、男性勃起不全及び女性性機能障害を含む、性機能障害の様々な形態の治療において有用性を有すると考えられる。MC4rアンタゴニストペプチドは、体重増加を生じるとともに、悪液質や他の消耗性症候群及び状態などの病態に対する潜在的有用性を有すると考えられる。
【0006】
内因性アゴニストであるアルファ・メラノコルチン刺激ホルモン(α-MSH)のペプチド類似体は公知である。これらは、直鎖状及び環状ペプチドの双方を含む。環状メラノコルチン受容体に特異的なペプチドは、典型的には、アミド又はシステイン結合などの側鎖を介して環化され、N末端でアシル化され、C末端でアミド化される(内因性α-MSHは、N末端でアシル化され、C末端でアミド化される)が、米国特許第6,579,968号に開示のとおり、α-MSH類似体がC末端カルボキシル基を有してもよいことは公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
科学文献における極めて多数の論文並びに極めて多数の特許出願及び交付済み特許によって明示された、メラノコルチン受容体に特異的なペプチドにおける強い科学的及び薬学的関心にもかかわらず、米国内で専ら認可されたメラノコルチン受容体に特異的なペプチド薬は、閉経前女性における性的欲求低下障害に対して適応される、VYLEESI(登録商標)の商品名で販売されたブレメラノチド、骨髄性プロトポルフィリン症を有する成人患者における光毒性の予防に適応される、SCENESSE(登録商標)の商品名で販売されたアファメラノチド、及びプロオピオメラノコルチン(POMC)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン1型(PCSK1)又はレプチン受容体(LEPR)の欠損に起因する肥満の治療に適応される、INCIVREE(商標)の商品名で販売されたセトメラノチドである。薬学的適用、特に炎症関連疾患、徴候、病態及び症候群の治療における使用のためのメラノコルチン受容体に特異的なペプチドに対する有意な実質的需要が以前としてある。それは、本発明が構築されたこうした背景に対抗する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の簡単な説明
一態様において、本発明は、式Iのペプチド:
【化1】

(式中:
Xaaは、-R-Rであり;
は、置換又は非置換のインドール、フェニル又はナフチルであり;
は、-(CH-であり;
は、H又はC~Cの直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であって、任意選択的には1つ以上のC=C二重結合を含むものであり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的には存在し、存在する場合、1~3のL-若しくはD-異性体アミノ酸、又はそれらの組み合わせであり、ここで任意の骨格の窒素原子は、任意選択的にはメチル化されており;
は、H又はC~C17アシル基であって、任意選択的には置換された直鎖状若しくは分岐状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むものであり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、それが-CH-である場合、Rと一般構造
【化2】

の環を形成し;
は、-Hであり、RがRと環を形成する場合、すなわちRは、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-CH
-S-(=O)-CH
置換又は非置換のフェニル、
-O-CH-フェニルであり、ここでフェニルは、置換又は非置換の
【化3】

であり;
は、置換又は非置換のフェニル又はナフチルであり;
10は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17直鎖状、分岐状又は環状のアルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
11は、-O-CH-フェニルであり、ここでフェニルは、置換又は非置換の
【化4】

であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立して、及び各場合に独立して、H又はC~Cの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル鎖であり;
yは、0又は1であり、それが0である場合、角括弧基は不在であり、それが1である場合、角括弧基は存在し;
tは、各場合に独立して、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、1~8であり;及び
zは、1~3である)
であって、その全ての鏡像異性体、立体異性体若しくはジアステレオ異性体、又は前述のいずれかの薬学的に許容される塩を含む、ペプチドに関する。
【0009】
一態様において、Rは、非置換ナフチルである。別の態様において、式(I)の環状ペプチド中に存在する任意の置換フェニル又はナフチルは、各場合に独立して、1~3の間の環置換基で置換され、ここで置換基は、同じか又は異なり、及びそれぞれ独立して、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル、又はアリールオキシ-カルボニルである。
【0010】
式(I)の環状ペプチドの一態様において、Rは、少なくとも1つのL-又はD-異性体アミノ酸を含む。別の態様において、Rは、脂肪族側鎖が-(CH-CHであることを含む、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である。別の態様において、Rは、少なくとも1つの窒素原子を含む側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸であり、Rが、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体であることを含む。
【0011】
式(I)の環状ペプチドは、式:
【化5】

の環状ペプチドを含む。
【0012】
式(I)の環状ペプチドにおいて、R及びRは、基:
【化6】

を一緒に含んでもよい。
【0013】
式(I)の環状ペプチドにおいて、Rは、C(=O)-N(R12a)(R12b)(式中、R12a及びR12bは、Hである)であってもよい。
【0014】
式(I)の環状ペプチドにおいて、Rは、イミダゾール環であってもよい。
【0015】
式(I)の環状ペプチドにおいて、Rは、不在であってもよく、そのような場合、任意選択的には、Rは、C~C17アシル基であってもよい。
【0016】
別の態様において、本発明は、式(II):
【化7】

(式中、
Zは、H又はN末端基であり;
Xaaは、任意選択的には存在し、存在する場合、1~3のアミノ酸であり、ここで任意の骨格の窒素原子は、任意選択的にはメチル化されており;
Xaaは、Xaaのカルボキシル基とアミドを形成するアミン基を含む側鎖を有するアミノ酸のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、任意選択的には、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、O-アルキル、アリール、アルキル-アリール、アルキル-O-アリール、アルキル-O-アルキル-アリール、-O-アルキル-アリール、若しくは-O-アリールで置換された、ProのL-又はD-異性体アミノ酸であり、又はXaaは、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド、若しくはカルボキシルを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、置換又は非置換のアリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はエーテルを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、Xaaが存在しない場合、Xaaのアミン基とアミド結合を形成するC末端カルボキシル基を有し;
Xaaは、任意選択的には存在し、存在する場合、任意選択的には1つ以上の環置換基で置換された、少なくとも1つのアリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、1つ以上が存在する場合、同じか又は異なり、独立して、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール、又は-O-アリールであり、Xaaのアミンとアミド結合を形成するC末端カルボキシル基を有し;及び
Xaaは、グリシン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸及び8-アミノカプリル酸から選択されるアミノ酸である)
の環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0017】
式(II)の環状ペプチドにおいて、Zは、直鎖状又は分岐状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール又はアラルキルを含むC~C17アシル基からなる群から選択されるN末端基であってもよい。
【0018】
式(II)の環状ペプチドにおいて、Xaaは、Gly又はAla、Nle、Leu、Ile又はValのL-又はD-異性体からなる群から選択される単一のアミノ酸残基であってもよい。或いは、式(II)の環状ペプチドにおいて、Xaaは、少なくとも1つの一級アミン、グアニジン又は尿素基を含む側鎖を有する単一のアミノ酸であってもよい。或いは、式(II)の環状ペプチドにおいて、Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体であってもよい。
【0019】
式(II)の環状ペプチドにおいて、Xaaは、任意選択的には1~3の環置換基で置換された、D-Phe又はPheであってもよい。環置換基は、同じであっても又は異なってもよく、及びそれぞれ独立して、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、又はアルコキシ-カルボニルである。或いは、式(II)の環状ペプチドにおいて、Xaaは、D-Nal1又はD-Nal2であってもよい。
【0020】
式(II)の環状ペプチドにおいて、Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab又はDapのL-又はD-異性体であってもよい。
【0021】
式(II)の環状ペプチドにおいて、Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であってもよい。
【0022】
式(II)の環状ペプチドにおける一実施形態において、
Zは、C~C直鎖状アルキルアシル基であり;
Xaaは、Nle又はArgのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、Dab、Dap、Orn又はLysのL-又はD-異性体であり、ここで側鎖アミン基は、Xaaのカルボキシルとアミド結合を形成し;
Xaaは、His、Hyp(Bzl)、Met(O)、又はAsnのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、置換又は非置換のPhe、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、ArgのL-又はD-異性体であり;及び
Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり、ここでそのC末端カルボキシル基は、Xaaのアミンとアミド結合を形成する。
【0023】
式(II)の環状ペプチドは、上記のような実施形態をさらに含み、ここでその少なくとも1つの骨格窒素原子は、メチル基を含む。
【0024】
一態様において、生物学的受容体に対する受容体に特異的なペプチドの作製において利用されてもよい、環状ペプチド鋳型が提供される。
【0025】
別の態様において、メラノコルチン受容体介在性疾患、徴候、病態及び症候群の治療における使用のための、メラノコルチン受容体に特異的なペプチドベースの医薬組成物が提供される。
【0026】
別の態様において、ペプチドベースのメラノコルチン受容体に特異的な医薬品が提供され、ここでペプチドは、選択的であり、及びMC1rのアゴニストであり、MC4rでのアンタゴニストである。
【0027】
別の態様において、ペプチドベースのメラノコルチン受容体に特異的な医薬品が提供され、ここでペプチドは、選択的であり、及びMC1rのアゴニストであり、MC4rでの部分アゴニストである。
【0028】
別の態様において、ペプチドベースのメラノコルチン受容体に特異的な医薬品が提供され、ここでペプチドは、選択的であり、及びMC4rのアゴニストである。
【0029】
別の態様において、ナノモル以下のEC50値で、1つ以上のメラノコルチン受容体で機能的に活性である受容体に特異的なペプチドが提供される。
【0030】
別の態様において、1nM未満のEC50値で、MC1r、MC3r、及びMC5rの1つ以上でアゴニスト又は部分アゴニストである、メラノコルチン受容体に特異的なペプチドが提供される。
【0031】
本発明の他の態様及び新規な特徴、及び適用性のさらなる範囲は、一部には以下の詳細な説明の中で記載され、一部には以下の試験時に当業者に明白になるであろうし、又は本発明の実施によって認知されてもよい。本発明の態様は、特に添付の特許請求の範囲に指摘される手段及び組み合わせを用いて実現及び達成されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
1.0 定義.
本発明の記載を進める前に、特定の用語が、本明細書に記載されるとおりに定義される。
【0033】
本明細書で開示されるペプチドに所与される配列において、アミノ酸残基は、Chapter 2400 of the Manual of Patent Examining Procedure,9th Edに示されるようなその通常の意味を有する。それ故、例えば、「Ala」はアラニンであり、「Asn」はアスパラギンであり、「Asp」はアスパラギン酸であり、「Arg」はアルギニンであり、「Cys」はシステインであり、「Gly」はグリシンであり、「Gln」はグルタミンであり、「Glu」はグルタミン酸であり、「His」はヒスチジンであり、「Ile」はイソロイシンであり、「Leu」はロイシンであり、「Lys」はリジンであり、「Met」はメチオニであり、「Phe」はフェニルアラニンであり、「Pro」はプロリンであり、「Ser」はセリンであり、「Thr」はトレオニンであり、「Trp」はトリプトファンであり、「Tyr」はチロシンであり、「Val」はバリンである。D-異性体が3文字コード又はアミノ酸名の前の「D-」によって名付けられることから、例えばD-PheがD-フェニルアラニンであることは理解されるべきである。前述によって包含されないアミノ酸残基としては、限定はされないが、以下の側鎖を有するものが挙げられ、そのようなアミノ酸残基がL-異性体又はD-異性体であってもよいことは理解されている。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
アミノ酸残基は、限定はされないが、以下をさらに含み、そのようなアミノ酸残基がL-異性体又はD-異性体であってもよいことは理解されている。
【0039】
【表5】
【0040】
「アルファアミノ酸」という用語は、一般構造(その非イオン化形態で表される)
【化8】

の任意のアミノ酸(式中、Rは、限定はされないが先行する表及びパラグラフに記載のアミノ酸残基又は側鎖基を含む、任意の側鎖基又は水素である)を含む。
【0041】
「L-又はD-異性体アミノ酸(amino acid)」又は「L-又はD-異性体アミノ酸(amino acids)」という用語は、本明細書で定義されるような任意のアミノ酸残基の任意の異性体形態を含み、具体的には、限定はされないが、DNAによって直接的にコードされるアミノ酸、翻訳後修飾アミノ酸、DNAによって直接的にではなく生物学的手段によって発現されるアミノ酸、タンパク質原性若しくは非タンパク質原性アミノ酸、又は任意の合成若しくは人工アミノ酸を含む、任意のアルファアミノ酸、ベータアミノ酸、ガンマアミノ酸又はデルタアミノ酸を含む。
【0042】
L-又はD-異性体アミノ酸を含むアミノ酸は、「アミド結合(amide bond)」又はアミド結合(amide linkage)によって一緒に連結され、1つのアミノ酸の骨格カルボン酸基を別のアミノ酸の骨格アミノ基と連結する共有結合ペプチド結合を形成し、それによりペプチド結合(-C(=O)-NH-)又は骨格アミド結合を形成する。
【0043】

「アシル」という用語は、基R(C=O)-(式中、Rは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル又はヘテロシクリルなどの有機基である)を含む。本明細書で置換アシル基に対して参照がなされるとき、それは前記有機基(R)が置換されることを意味する。アシル基の非限定例としては、CH-C(=O)-、本明細書でアセチル基又は「Ac」と称される;CH-(CH-C(=O)-、本明細書でヘキサノイル又は「Hex」と称される;CH-(CH-C(=O)-、本明細書でヘプタノイル又は「Hept」と称される;並びにフェニルプロパノイル及びシクロペンチルアセチルなどの様々なシクリル基が挙げられる。
【0044】
ペプチド又は脂肪族部分は、脂肪族基若しくは置換脂肪族基、又は芳香族の置換芳香族基がカルボニル{-(C=O)-}基を介して結合され、アシル基を形成するとき、「アシル化される」。ペプチドは、最も通常的にはN末端でアシル化される。
【0045】
「アルカン」という用語は、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素を含む。直鎖状アルカン基の例としては、メタン、エタン、プロパンなどが挙げられる。分岐状又は置換アルカン基の例としては、メチルブタン又はジメチルブタン、メチルペンタン、ジメチルペンタン又はトリメチルペンタンなどが挙げられる。一般に、任意のアルキル基は、アルカンの置換基であってもよい。
【0046】
「アルケン」という用語は、1つ以上の二重炭素-炭素結合を有する不飽和炭化水素を含む。そのようなアルケン基の例としては、エチレン、プロペンなどが挙げられる。
【0047】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する2~6個の炭素原子の直鎖状一価炭化水素ラジカル又は3~6個の炭素原子の分岐状一価炭化水素ラジカルを含み;それらの例としては、エテニル、2-プロペニルなどが挙げられる。
【0048】
本明細書で特定される「アルキル」基は、直鎖又は分岐鎖のいずれかの飽和脂肪族炭化水素基である、指定された長さのアルキルラジカルを含む。C1~10アルキルは、1~10個の炭素原子を有するアルキルを意味する。そのようなアルキルラジカルの非限定例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、三級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが挙げられる。
【0049】
「アルキン」という用語は、少なくとも1つの三重結合を有する2~6個の炭素原子の直鎖状一価炭化水素ラジカル又は3~6個の炭素原子の分岐状一価炭化水素ラジカルを含み;それらの例としては、エチン、プロピン、ブチンなどが挙げられる。
【0050】
「アリール」という用語は、6~12個の環原子の単環式又は二環式芳香族炭化水素ラジカルであって、任意選択的には、独立して、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキチオ(alkythio)、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、又はアルコキシ-カルボニルから選択される1つ以上の置換基で置換されたものを含む。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、ナフタレン、ナフチル、1-ナフチル、及び2-ナフチル、それらの誘導体などが挙げられる。同様に、「ナフチル」という用語は、1-ナフチル及び2-ナフチルを含み、「ナフタレン」は、1-ナフタリン及び2-ナフタリンを含む。
【0051】
「アラルキル」という用語は、ラジカル-R(式中、Rは、アルキレン(二価アルキル)基であり、Rは、上で定義されるようなアリール基である)を含む。アラルキル基の例としては、ベンジル、フェニルエチル、3-(3-クロロフェニル)-2-メチルペンチルなどが挙げられる。
【0052】
「脂肪族」という用語は、例えば、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルカン、アルケン、アルキン、及びそれらの誘導体などの炭化水素鎖を有する化合物を含む。
【0053】
本明細書で用いられるとき、「アミド」という用語は、カルボニル基に結合した三価窒素、すなわち-C(=O)-NH(すなわち、一級アミド)、-C(=O)-NHR及び-C(=O)-NR(式中、R及びRのそれぞれは、独立して水素又は有機基を表す)を有する化合物を含む。置換アミド基に対して参照がなされるとき、それは前記有機基(R及びR)の少なくとも1つが置換されることを意味する。アミドの例としては、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミドなどが挙げられる。
【0054】
「アミン」は、アミノ基(-NH)、-NHR及び-NR(式中、R及びRのそれぞれは、独立して水素又は有機基を表す)を含む。置換アミン基に対して参照がなされるとき、それは有機基(R及びR)の少なくとも1つが置換されることを意味する。
【0055】
「ニトリル」は、カルボン酸誘導体であり、有機基に結合した(-CN)基を有する化合物を含む。
【0056】
「ハロゲン」という用語は、ハロゲン原子のフッ素、塩素、臭素及びヨウ素、並びに1つ以上のハロゲン原子を含む基、例えば-CFなどを含むことが意図される。
【0057】
「組成物」という用語は、医薬組成物などの場合、活性成分、及び担体を形成する不活性成分を含む生成物、並びに成分の任意の2つ以上の組み合わせ、複合体化又は凝集から、又は成分の1つ以上の解離から、又は成分の1つ以上の反応若しくは相互作用の他のタイプから直接的又は間接的に得られる任意の生成物を包含することが意図される。したがって、医薬組成物は、活性成分と1つ以上の薬学的に許容される担体とを混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0058】
メラノコルチン受容体「アゴニスト」は、限定はされないが、メラノコルチン受容体に特徴的である、アデニルシクラーゼ活性化などの、シグナル伝達を開始させることを含む、受容体の活性化を含む、メラノコルチン受容体と相互作用し、薬理学的応答を開始させ得る、特定の本明細書で開示されるペプチド化合物を含む、内因性物質、原体又は化合物を意味する。メラノコルチン受容体アゴニストは、MC1r、MC2r、MC3r、MC4r及びMC5rの1つ以上でのアゴニストであってもよい。
【0059】
メラノコルチン受容体「アンタゴニスト」は、メラノコルチン受容体でアゴニストの作用をブロックするか又は弱める、特定の本明細書で開示されるペプチド化合物を含む、内因性物質、原体又は化合物を意味する。メラノコルチン受容体アンタゴニストは、MC1r、MC2r、MC3r、MC4r及びMC5rの1つ以上でのアンタゴニストであってもよい。特定の本明細書で開示されるペプチド化合物を含む、特定の化合物は、1つ以上のメラノコルチン受容体でのアゴニスト及び1つ以上の他のメラノコルチン受容体でのアンタゴニストであってもよい。
【0060】
「α-MSH」は、ペプチドAc-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH並びにその類似体及び相同体を意味し、限定はされないが、NDP-α-MSHを含む。
【0061】
「NDP-α-MSH」は、ペプチドAc-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH並びにその類似体及び相同体を意味する。
【0062】
「EC50」は、アゴニストにおける最大可能応答の50%を生成した、部分アゴニストを含むアゴニストのモル濃度を意味する。例としては、MC4r細胞発現系におけるcAMPアッセイにおいて決定されたとおり、72nMの濃度で、その化合物の最大可能応答の50%を生成する試験化合物は、72nMのEC50を有する。特に指定されない限り、EC50の決定に関連するモル濃度は、1リットル当たりのナノモル(nM)の単位である。
【0063】
「Ki(nM)」は、競合者の不在下の平衡時に、受容体の結合部位の半分に結合する競合化合物のモル濃度を表す平衡阻害剤解離定数を意味する。一般に、Kiの数値は、受容体に対する化合物の親和性に逆相関することで、Kiが低い場合、親和性は高い。Kiは、Cheng及びPrusoffの式(Cheng Y.,Prusoff W.H.,Biochem.Pharmacol.22:3099-3108,1973):
【数1】

を用いて決定されてもよい。特に指定されない限り、Kiの決定に関連するモル濃度は、nM単位である。Kiは、特定の受容体(例えば、MC1r、MC3r、MC4r又はMC5r)の観点から表されてもよい。
【0064】
「阻害」は、既知の標準と比較した、競合阻害アッセイにおける、受容体結合におけるパーセント減弱、又は減少を意味する。したがって、「1μM(NDP-α-MSH)での阻害」は、後述されるアッセイ条件下などで決定された量の試験対象化合物、例えば1μMの試験化合物の添加による、NDP-α-MSHの結合におけるパーセント減少を意味する。例としては、NDP-α-MSHの結合を阻害しない試験化合物は、0%阻害を有し、NDP-α-MSHの結合を完全に阻害する試験化合物は、100%阻害を有する。典型的には、後述されるとおり、競合阻害試験のため、例えばI125標識NDP-α-MSHによる検出可能標識のアッセイ、又は例えばEu-NDP-α-MSHによるランタニドキレート蛍光アッセイが使用される。しかし、異なる標識系又はタグ系の使用を含む、競合阻害を試験する他の方法は公知であり、一般に競合阻害を試験するための当該技術分野で公知の任意の方法が、本発明において使用されてもよい。それ故、「阻害」が試験化合物がメラノコルチン受容体に対するα-MSHの結合を減弱させるか否かを判定するための一つの尺度であることは認められてもよい。
【0065】
「結合親和性」は、本明細書でKi(nM)として表される、化合物又は薬剤がその生物学的標的に結合する能力を意味する。
【0066】
「Emax」は、アデニリルシクラーゼの最大刺激などの、特定のメラノコルチン受容体を発現する細胞系内の化合物によって達成可能な最大機能活性を意味する。NDP-α-MSHによって達成される最大刺激は、100%のEmaxとして指定され、NDP-α-MSHの最大活性の半分を刺激することが可能な化合物は、50%のEmaxを有するものとして指定される。本明細書に記載のアッセイ条件下で70%以上のEmaxを有する本発明の化合物は、アゴニストとして分類されてもよく、10%~70%の間のEmaxを有する化合物は、部分アゴニストとして分類されてもよく、10%未満のEmaxを有する化合物は、不活性として分類されてもよい。
【0067】
一般に、「機能活性」は、メラノコルチン受容体などの場合、化合物による受容体の活性化時の、受容体のシグナル伝達の尺度、又は受容体関連シグナル伝達における変化の尺度である。メラノコルチン受容体は、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化を介して、シグナル伝達を開始させる。一態様において、メラノコルチン受容体は、アデニリルシクラーゼによってcAMPの産生を触媒するGαを介してシグナル伝達する。したがって、アデニリルシクラーゼの最大刺激の測定などの、アデニリルシクラーゼの刺激の測定は、機能活性の一尺度であり、本明細書で例示される主要な尺度である。しかし、機能活性の代替的尺度が本発明の実施において利用されてもよく、具体的に検討され、本発明の範囲内に含まれることは理解されるべきである。したがって、一例において、細胞内遊離カルシウムが、Mountjoy K.G.et al.,Melanocortin receptor-medicated mobilization of intracellular free calcium in HEK293 cells.Physiol Genomics 5:11-19,2001、又はNewman et al.,Activation of the melanocortin-4receptor mobilizes intracellular free calcium in immortalized hypothalamic neurons.J Surg Res:132:201-207,2006に開示された方法によって又はそれを用いて報告された、Fura2などの、カルシウムに結合する特定の蛍光分子を用いて測定されてもよい。Fluo-4は、さらに一般に使用される代替的なカルシウム結合色素である(Nohr et al.,The orphan G protein-coupled receptor GPR139 is activated by the peptides:Adrenocorticotropic hormone(ACTH),α-,and β-melanocyte stimulating hormone(α-MSH,and β-MSH),and the conserved core motif HFRW.Neurochem Int 102:105-113,2017)。さらに、市販のHTRFアッセイなどで、Ca2放出事象に対して上流の、同じ経路内で、ホスファチジルイノシトール4,5-ビホスフェートからのイノシトール三リン酸又はジアシルグリセロールの産生の測定によって活性化を測定することも可能である(Liu et al.,Comparison on functional assays for Gq-coupled GPCRs by measuring inositol monophospate-1 and intracellular calcium in 1536-well plate format.Curr Chem Genomics 1:70-77,2008)。機能活性のさらに別の尺度は、Nickolls S.A.et al.,Functional selectivity of melanocortin 4 receptor peptide and nonpeptide agonists:evidence for ligand specific conformational states.J Pharm Exper Therapeutics 313:1281-1288,2005に開示された方法などを用いる、調節経路の活性化に起因する受容体内部移行である。機能活性のさらに別の尺度は、Gタンパク質αサブユニットについてのGDP(グアノシン二リン酸)のGTP(グアノシントリホスファーゼ(guanosine triphosphase))との交換などの、Gタンパク質受容体の活性化に関連するヌクレオチドの交換、及び交換率であり、それらは、Manning D.R.,Measures of efficacy using G proteins as endpoints:differential engagement of G proteins through single receptors.Mol Pharmacol 62:451-452,2002に開示されたとおり、グアノシン5’-(γ-[35S]チオ)-トリホスフェートを使用する放射分析を含むいくつもの手段によって測定されてもよい。比較的新しいアッセイプラットフォームが、Gi、Gq、Gs、Gi2/i3サブファミリーに属する14の異なるGα種の活性/会合を、それが受容体に関連することから、リガンド結合時のGα及びGγサブユニットの離脱を測定するためのBRET(生物発光共鳴エネルギー移動)ベースのバイオセンサーを使用して測定するため、考案されている(Zhao et al.,Biased signaling of protease-activated receptors.Front Endocrinol 5:67,2014;及びvan der Westhuizen et al.,Quantification of ligand bias for clinically relevant β2-adrenergic receptor ligands:Implications for drug taxonomy.Molecular Pharm 85:492-509,2014)。G共役タンパク質の活性化を測定するため、様々な遺伝子ベースのアッセイ、例えば、Chen W.et al.,A colorimetric assay from measuring activation of Gs- and Gq-coupled signaling pathways.Anal Biochem 226:349-354,1995;Kent T.C.et al.,Development of a generic dual-reporter gene assay for screening G-protein-coupled receptors.Biomol Screening,5:437-446,2005;又はKotarsky K.et al.,Improved receptor gene assays used to identify ligands acting on orphan seven-transmembrane receptors.Pharmacology&Toxicology 93:249-258,2003に開示されたものが開発されている。Hruby V.J.et al.,Cyclic lactam α-melanocortin analogues of Ac-Nle4-cyclo[Asp5,D-Phe7,Lys10] α-melanocyte-stimulating hormone-(4-10)-NH2with bulky aromatic amino acids at position 7 shows high antagonist potency and selectivity at specific melanocortin receptors.J Med Chem 38:3454-3461,1995に開示のとおり、Chenらの比色分析が、メラノコルチン受容体活性化の測定における使用に適応されている。一般に、機能活性は、G共役受容体の活性化及び/又はシグナル伝達を測定する方法を含み、さらに後に開発又は報告されるかもしれない方法を含む、任意の方法によって測定されてもよい。前記論文のそれぞれ、及びそれらの中で開示された方法は、あたかも完全に記載される如く、参照により本明細書に援用される。
【0068】
「治療する(treat)」、「治療する(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、本明細書で用いられるとき、患者が特定の疾患又は障害を患っている間に生じる、疾患又は障害の重症度を低減する作用を企図する。
【0069】
本明細書で用いられるとき、「薬理学的有効量」(「治療有効量」を含む)という用語は、所望される治療的又は生物学的効果を誘導するのに十分である、本発明に従うペプチドの量を意味する。
【0070】
本明細書で用いられるとき、「治療有効量」という用語は、医学博士又は他の臨床医によって治療されている哺乳動物において生物学的又は医学的応答を誘発することになる、本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0071】
本明細書で用いられるとき、「予防的に有効な」又は「予防的」という用語は、患者が特定の疾患又は障害を患い始める前、医学博士又は他の臨床医が予防、阻害、又は軽減しようとする医学的状態を有する哺乳動物の、苦痛を予防若しくは阻害し、又は苦痛を軽減することになる、本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0072】
2.0 臨床的適応及び有用性
本明細書で開示される組成物及び方法は、医学的適用と畜産又は獣医学的適用の双方に使用され得る。「患者」という用語は、ヒトを表すことが意図され、本明細書全体を通じて、また特許請求の範囲内で、そのように使用される。本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチド主な適用は、ヒト患者を含むが、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドは、実験室、農地、動物園、野生生物、ペット、スポーツ又は他の動物に適用されてもよい。臨床的適応及び具体的有用性は、以下を含む:
【0073】
2.1 炎症性及び線維性の疾患及び病態
限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト又は部分アゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、患者における炎症性疾患及び炎症状態の治療において使用されてもよい。そのように治療されてもよい炎症性疾患及び炎症状態がいくつか存在する。一態様において、炎症状態は、限定はされないが、変形性関節症、関節リウマチ、化膿性関節炎、痛風及び偽痛風、若年性特発性関節炎、スチル病及び強直性脊椎炎、並びにエリテマトーデスに続発する関節炎などの他の疾患に続発する関節炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ヘモクロマトーシス、肝炎、ウェゲナー肉芽腫症、血管炎症候群、ライム病、家族性地中海熱、再発熱を伴う高グロブリンD血症、TNF受容体関連周期性症候群及び炎症性腸疾患、例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎を含む、関節炎の形態を含む疾患に起因する。別の態様において、炎症状態は、クローン病、潰瘍性大腸炎、コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、ベーチェット症候群、感染性大腸炎及び非定型的大腸炎などの炎症性腸疾患の形態を含む疾患に起因する。別の態様において、炎症状態は、限定はされないが、全身性エリテマトーデスなどの全身性症候群、シェーグレン症候群、強皮症、関節リウマチ及び多発性筋炎、又は内分泌系(1型糖尿病、橋本甲状腺炎、アジソン病など)、皮膚科系(尋常性天疱瘡)、血液学系(自己免疫性溶血性貧血)、若しくは神経系(多発性硬化症)などの局所的身体系のみを冒す症候群を含む、自己免疫疾患に起因する。それ故、自己免疫疾患は、上で考察された一般的な症候群に加えて、急性散在性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、妊娠性類天疱瘡、グッドパスツール病、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、川崎病、エリテマトーデス、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、シェーグレン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、自己免疫性溶血性貧血及びウェゲナー肉芽腫症などの疾患及び病態を含む。
【0074】
別の態様において、炎症状態は、限定はされないが、例えば、慢性気管支炎、肺気腫、塵肺、肺新生物及び他の肺障害などの、完全には可逆的でない気道における気流の病理学的制限を特徴とする疾患を含む、慢性閉塞性気道疾患としても知られる、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に起因するか又はそれに関連する。他の炎症状態は、アレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、アレルギー性結膜炎、非アレルギー性結膜炎などの上気道又は下気道の疾患及び障害、並びに、塵肺の様々な形態(炭坑夫塵肺、石綿肺、珪肺、ボーキサイト線維症、ベリリウム肺症、又は鉄肺)、綿肺又は過敏性間質性肺炎(農夫肺又は鳥飼病)などの、外部毒素又は物質に関連する気道疾患を含む。炎症状態を含む他の肺疾患は、急性呼吸促迫症候群を含む。本発明のペプチド及び組成物は、COPD、喫煙者における喘息、並びに、全体的又は部分的に、肺における好酸球蓄積、好中球の浸潤及び活性化、肺胞マクロファージの動員及び活性化、IL-8の上皮細胞発現又はTNF-αの発現増加を特徴とする他の病態などの、グルココルチコイドが所望される薬理学的応答をもたらすのに無効又は不適切のいずれかであるような病態の治療に特に有用である。気道又は肺障害では、一態様において、本発明のペプチドは、全身的に送達され;別の態様において、本発明のペプチドは、吸入投与などによって局所的に送達される。
【0075】
さらに別の態様において、炎症状態は、移植片対宿主病、超急性拒絶、急性拒絶、又は慢性拒絶などの、移植に関連した病態又は症候群の一部の形態に起因するか又はそれに関連する。移植片対宿主病は、同種骨髄移植の一般合併症であるが、他の移植、特に汚染物質又は意図的に導入されたもののいずれかとしてグラフト中に存在するT細胞の場合で生じ得る。超急性、急性又は慢性拒絶は、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、子宮、心臓又は肺などの身体臓器、並びに骨、角膜、顔、手、陰茎又は皮膚の移植で生じ得る。一実施形態において、本発明のペプチドの1つ以上を含む医薬組成物は、体液、臓器又は一部の移植の直前、間又は後などに、移植に関連した病態又は症候群を制限又は予防するため、予防的に投与される。別の実施形態において、移植されている体液、臓器又は一部は、本発明のペプチドの1つ以上を含む医薬組成物の溶液によって灌流される。さらに別の実施形態において、本発明のペプチドの1つ以上は、シクロスポリン若しくはタクロリムスを含むカルシニューリン阻害剤、シロリムス若しくはエベロリムスを含むmTOR阻害剤、アザチオプリン若しくはミコフェノール酸を含む抗増殖剤、プレドニゾロン若しくはヒドロコルチゾンを含むコルチコステロイド、モノクローナル抗IL-2Rα受容体抗体、バシリキシマブ若しくはダクリズマブなどの抗体、又は抗胸腺細胞グロブリン若しくは抗リンパ球グロブリンなどのポリクローナル抗T細胞抗体などの、移植拒絶に対する1つ以上の他の薬剤と併せて、それらと組み合わせて又はそれらと連続して投与される。
【0076】
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト若しくは部分アゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、患者における線維性及び硬化性の疾患、徴候、病態及び症候群の治療において使用されてもよい。そのように治療されてもよい、線維性及び硬化性の疾患、徴候、病態及び症候群がいくつか存在する。線維性及び硬化性の疾患、徴候、病態及び症候群は、多くは炎症性成分を含み、それ故、多くが同様に、炎症性疾患又は病態として分類されてもよく、上に列記されている。線維性及び硬化性の疾患及び病態は、炎症性成分を含むことに加え、さらに特発性、毒性、遺伝性及び/又は薬理学的誘導性の障害であってもよい。一般に、線維性障害は、臓器機能の欠損をもたらすことがある、細胞外マトリックス、主にI型コラーゲンの過剰な産生を特徴とする。理論によって拘束されることを望まないが、MC1rのアゴニズムが、ヒト皮膚線維芽細胞によるトランスフォーミング成長因子-β1誘導性のコラーゲン合成の抑制をもたらし、それにより線維性及び硬化性の疾患、徴候、病態及び症候群に対する治療的及び/又は予防的利益を提供し得ると考えられる。そのようにして治療され得る、代表的な線維性及び硬化性の疾患及び病態としては、限定はされないが、局所性強皮症、全身性硬化症、皮膚の強皮症性移植片対宿主病、特発性肺線維症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、シクロスポリン誘導性腎症、肝臓の硬変、肥厚性瘢痕、ケロイドなどが挙げられる。
【0077】
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせ、特にMC1r及びMC5rアゴニストであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、患者における線維性疾患、病態及び症候群の治療において使用されてもよい。そのような線維性プロセスは、慢性炎症に続発することがあり、線維症の発現は、慢性炎症に共通の結果である。肺線維症、肝線維症及び肝硬変、慢性腎疾患、心筋梗塞、及び全身性硬化症などの全身性自己免疫疾患を含む、線維症が死亡率及び罹患率の原因である疾患は、広範に存在する。線維症はまた、眼疾患、特に慢性炎症を特徴とするものにおいて生じることがある。本発明のペプチド及び組成物が、線維症の形成を阻害することができるとともに、線維症の作用を低減するか又は寛解させるような再生特性を有し得ることが考えられる。
【0078】
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、患者におけるサイトカイン発現の増加に関連する疾患及び関連の疾患、徴候、病態及び症候群の治療において使用されてもよい。様々なサイトカインの発現は、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症性プロセスを含む、炎症性プロセス中に増強される。TNF-αは、主にマクロファージによって、さらに細胞の他のタイプによって産生される多面発現性サイトカインである。循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症性プロセスを含む、炎症性プロセス中に増加する他のサイトカインは、IL-1及びIL-6を含む。TNF-αなどのサイトカインが多くの場合に有益な効果を有する一方で、例えば、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する有意に増加したレベルは、病理学的効果を有し得る。一態様において、例えば循環性ショックに続発する、低酸素又は虚血組織の再灌流は、サイトカイン発現の増加を含む、炎症性応答をもたらす。
【0079】
一実施形態において、本発明は、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症促進性サイトカインの産生及び発現の低減を含む、炎症促進性サイトカインの産生及び発現を低減するための本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。限定はされないが、TNF-α、IL-1及びIL-6の1つ以上を含む、炎症促進性サイトカインの産生及び発現の低減は、好ましくは、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後、短期間内に生じる。
【0080】
関連の実施形態において、本発明は、抗炎症性サイトカインの産生及び発現を増加させるため、限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物の1つ以上を使用する方法を対象とする。限定はされないが、IL-10を含む、抗炎症性サイトカインの産生及び発現の増加は、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後、短期間内に生じる。
【0081】
2.2 皮膚徴候
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1rアゴニスト、部分アゴニスト、若しくはアンタゴニスト、又はそれらの組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、皮膚科及び美容上の疾患、徴候、病態及び症候群の治療において使用されてもよい。一態様において、本発明のペプチド及び組成物は、メラノサイト及び関連細胞を刺激し、皮膚におけるメラニンのレベルを増加させる、MC1rアゴニストである。皮膚におけるメラニンのレベルを増加させることによって、紫外線照射(UVR)及び日光に対する保護、例えば、UVR、太陽及び光によって引き起こされる皮膚の光毒性及び光過敏性に対する保護がもたらされる。
【0082】
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、尋常性座瘡(一般に座瘡と称される)、アトピー性皮膚炎(一般にアトピー性湿疹又は湿疹と称される)、多形日光疹、乾癬、酒さ、脂漏性皮膚炎、白斑、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、赤血球生成性プロトポルフィリン症、日光蕁麻疹、色素性蕁麻疹又は色素性乾皮症などの、皮膚の疾患、徴候、病態及び症候群の予防的及び/又は治療的処置に利用されてもよい。別の態様において、本発明のペプチド、組成物及び方法は、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)(一般に、感染部位に応じて、口唇ヘルペス及び陰部ヘルペスと称される)、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus)及び水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus)などの、光感受性又は光応答性ウイルス感染を予防、制限又は治療するため、使用されてもよい。別の態様において、本発明のペプチド、組成物及び方法は、皮膚のがんを予防、制限又は治療するため、使用されてもよく、それは前癌状態における使用を含み、また日光角化症、基底細胞がん、メラノーマ又は扁平上皮がんにおける使用を含む。別の態様において、本発明のペプチド、組成物及び方法は、光線力学的療法などの光線療法を含む、様々な治療法の有害作用を予防又は制限するため、使用されてもよい。さらに別の態様において、本発明のペプチド、組成物及び方法は、日焼けを誘発するため、髪の灰色化を低減するため、又はメラニン生成の増加に関連する同様の関連する目的のため、使用されてもよい。
【0083】
2.3 がん.
中皮腫などの特定のがんは、サイトカイン及び増殖因子の増殖促進性の影響に対して非常に感受性が高いことが報告されており、MC1rに選択的なペプチドを用いて治療可能な場合がある。Canania,A.,et al.,“Autocrine inhibitory influences of α-melanocyte-stimulating hormone in malignant pleural mesothelioma,”J.Leukoc.Biol.75:253-259(2004)。そのように治療されてもよいがんは、MC1rにおけるmRHA及び受容体タンパク質を発現することが知られる胸膜中皮腫、並びに限定はされないが、肺腺がんなどの腺がんを含む、MC1rを発現する他の腫瘍を含む。
【0084】
2.4 眼の疾患及び徴候
限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又は前記の任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物で治療されてもよい、限定はされないがサイトカイン産生の増加を含む炎症を特徴とする、眼の疾患、徴候、病態及び症候群がいくつか存在する。一例としては、人口の約10~20%が冒される眼疾患である、ドライアイ症候群又は乾性角結膜炎としても知られるドライアイ疾患が挙げられる。この疾患は、加齢に応じて、人口のより大きい百分率が次第に冒され、これらの患者の大部分は女性である。さらに、時として、例えば、長引く視覚的課題(例えば、コンピュータ上での作業)、乾燥環境下であること、眼球乾燥をもたらす薬物療法の使用などの特定の環境下で、眼球刺激が経験され、又は病態としてのドライアイの症状及び/又は徴候が経験される。ドライアイを患う個体において、通常は眼表面を保護する涙の保護層は、1つ以上の涙成分の不十分又は不健康な生成の結果として損なわれる。これは、眼の表面の曝露を引き起こし、最終的に表面細胞の乾燥及び損傷を促進し得る。ドライアイの徴候及び症状としては、限定はされないが、角膜炎、結膜及び角膜着色、発赤、霧視、涙膜破壊時間の減少、減少した涙産生、涙体積、及び涙流、結膜発赤の増加、涙膜中の過剰なデブリ、眼の乾き、眼のゴロゴロ感、眼のヒリヒリ感、眼内異物感、過剰な流涙、羞明、眼の刺痛、屈折障害、眼の敏感性、及び眼球刺激が挙げられる。患者は、これらの症状の1つ以上を経験することがある。
【0085】
循環ホルモンのレベルを含む、ドライアイの患者の徴候又は症状、様々な自己免疫疾患(例えば、シェーグレン症候群及び全身性エリテマトーデス)、PRK又はLASIKを含む眼科手術、多くの薬物療法、環境条件、コンピュータ使用などの視覚作業、眼精疲労、コンタクトレンズ装着、及び機械的影響、例えば、角膜感受性、部分的閉瞼、表面の不規則性(例えば、翼状片)、及びまぶたの不規則性(例えば、下垂症、眼瞼内反/眼瞼外反、瞼裂斑)に影響し得ることが考えられる変数が多く存在する。低湿度の環境、例えば、デフロスターを有する車内に座ること、又は乾燥気候帯で生活することなどの、脱水を引き起こす環境は、ドライアイ症状を引き起こす、又は悪化させる可能性がある。さらに、視覚作業は、症状を悪化させ得る。症状に大いに影響し得る作業は、まばたき速度が減少する場合の長期間にわたるテレビ視聴又はコンピュータ使用を含む。
【0086】
ぶどう膜炎は、眼の中間層又はぶどう膜の炎症を含む眼疾患であり、さらに眼の内部を含む任意の炎症性プロセスを含むように理解されてもよい。ぶどう膜炎は、虹彩及び前房の炎症を含む、前部、中間部、後部及び全ブドウ膜炎(panuveitic)形態を含む(大部分のぶどう膜炎症例は前部に位置する)。この病態は、単一のエピソードとして生じ、適切な治療で鎮静し得るか、又は再発性若しくは慢性を呈することがある。症状は、赤目、注射された結膜、疼痛及び視力減退を含む。徴候は、毛様体血管の拡張、前房内の細胞及び発赤の存在、及び角膜の後面上の角膜沈着物を含む。中間部ぶどう膜炎は、硝子体空洞内の炎症及び炎症細胞の存在を含み、後部ぶどう膜炎は、網膜及び脈絡膜の炎症を含む。ぶどう膜炎は、急性後部多発性斑状色素上皮症、強直性脊椎炎、ベーチェット病、散弾状脈絡網膜症、ブルセラ症、単純ヘルペス、帯状疱疹、炎症性腸疾患、若年性関節リウマチ、川崎病、レプトスピラ症、ライム病、多発性硬化症、乾癬性関節炎、ライター症候群、サルコイドーシス、梅毒、全身性エリテマトーデス、トキソカラ症、トキソプラズマ症、結核、フォークト・小柳・原田症候群、ウィップル病又は結節性多発動脈炎を含む、いくつかの疾患及び障害のいずれかに続発することがある。
【0087】
本発明のペプチドの1つ以上が治療に使用されてもよい、他の眼内炎症状態としては、限定はされないが、角膜潰瘍、角膜びらん、角膜擦過傷、角膜変性、角膜穿孔、角膜瘢痕、上皮欠損、角結膜炎、特発性ぶどう膜炎、角膜移植、加齢性黄斑変性症、糖尿病性眼、眼瞼炎、緑内障、高眼圧症、術後眼痛及び炎症、後区新血管新生、増殖性硝子体網膜症、サイトメガロウイルス網膜炎、眼内炎、脈絡膜新生血管膜、血管閉塞性疾患、アレルギー性眼疾患、腫瘍、網膜色素変性症、眼感染、強膜炎、下垂症、縮瞳、眼痛、散瞳、神経痛、瘢痕性眼表面疾患、眼感染症、炎症性眼疾患、眼表面疾患、角膜疾患、網膜疾患、全身性疾患の眼球徴候、遺伝性の眼の状態、眼腫瘍、眼圧亢進、ヘルペス感染症、翼状片、眼表面で長引く傷(wound sustained to ocular surface)、光屈折角膜切除術後の眼痛及び炎症、角膜に対する温度熱傷又は化学熱傷、強膜創傷、円錐角膜又は結膜創傷が挙げられる。
【0088】
一実施形態において、本発明は、前述の眼の疾患、徴候、病態及び症候群のいずれかの治療のための、本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。そのような治療は、本発明のペプチドの1つ以上を眼表面に送達するための点眼剤、軟膏剤、ゲル剤、洗浄剤、インプラント剤、プラグ又は他の手段及び方法を用いる治療、又は代替的に、硝子体液への送達をもたらす硝子体内注射若しくは同様の手段による治療、又は代替的に、それに対して応答する患者への経口投与、皮下注射若しくは静脈内注射を含む全身投与による治療を含んでもよい。
【0089】
2.5 虚血及び関連徴候
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、虚血及び関連疾患、徴候、病態及び症候群の治療において使用されてもよい。虚血は、任意の身体臓器、組織、細胞、又は一部への血液供給における任意の減少又は停止を含み、それは特に、その減少又は停止が、身体臓器、組織、細胞、又は一部に虚血性障害を引き起こすか又は引き起こす可能性が高くなる場合である。「虚血性エピソード」は、虚血の任意の一過性又は持続性期間を指す。虚血は、脈管構造の任意の狭窄又は閉塞に起因することがあり、又は出血性ショック、血液量減少性ショックなどの循環性ショックに起因することがある。血流の減少又は欠如は、身体の罹患部分への酸素の減少又は欠如をもたらし、また様々なサイトカイン及び他の物質などの炎症性疾患のメディエーター物質の増加をもたらすこともある。心臓手術及び臓器移植などの特定の外科手技の間、血液の流れが一時的に停止され、次いで再開され(再灌流)、虚血-再灌流傷害をもたらす。心臓発作の間、心臓に供給される血液が停止され、さらに梗塞に発展し得る虚血をもたらす。心臓発作を軽減するための現在の治療は、例えば血栓溶解薬又は冠動脈形成術を用いることによる、心臓の虚血領域の再灌流を必要とする。
【0090】
本発明のペプチド及び組成物は、限定はされないが、心筋梗塞、脳卒中などを含む、腎虚血に続発する肺損傷を含む腎虚血に起因する損傷の予防、心筋梗塞に続発する虚血性心臓損傷の予防又は制限、心血管損傷に続発する虚血性脳損傷の予防又は制限における特定の用途を有する。神経保護が、本発明の組成物の、大脳虚血又は脳卒中を有する患者、特に同時に低血圧である患者への投与によって提供される。本発明のペプチド及び組成物は、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓又は小腸の移植を含む、臓器移植における虚血性臓器損傷の予防又は制限において、さらなる特定の用途を有する。一態様において、本発明の医薬組成物は、移植臓器の灌流に使用されてもよく、ここで灌流は、臓器移植の前、間又は後であってもよい。
【0091】
一実施形態において、本発明は、患者の心臓、脳又は他の臓器を、虚血に起因する損傷に対して保護するための、本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。虚血に対する保護効果は、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後、即時的に又は短期間内に生じる。
【0092】
虚血は、種々の疾患又は症状のいずれかに起因することもあり、一実施形態において、本発明は、患者の臓器を、疾患又は病態によって引き起こされる虚血に起因する損傷に対して保護するための、本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。そのような疾患又は病態は、例えば限定はされないが、アテロームなどのアテローム硬化性疾患とともに、血栓症、心臓若しくは任意の臓器からの血管からの塞栓症、血管攣縮、心疾患に起因する低血圧、感染若しくはアレルギー反応を含む全身疾患に起因する低血圧、又は1つ以上の毒性化合物若しくは薬剤の投与、摂取若しくはそれらへの他の曝露に起因する低血圧を含んでもよい。虚血はまた、二次性虚血であってもよく、別の実施形態において、本発明は、患者の臓器を、二次性虚血に起因する損傷に対して保護するための、本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。そのような二次性虚血は、糖尿病、高脂血症、高リポ蛋白血症、脂質異常症、閉塞性血栓性血管炎とも呼ばれるバージャー病、高安動脈炎、側頭動脈炎、リンパ節症候群とも呼ばれる川崎病、皮膚粘膜リンパ節疾患(mucocutaneous node disease)、乳児多発性動脈炎、心血管梅毒、並びに様々な結合組織の疾患及び障害などの疾患又は病態に続発することがある。
【0093】
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、虚血-再灌流傷害及び関連疾患、徴候、病態及び症候群の治療において使用されてもよい。虚血後の血流の回復が機能的組織を保つのに必須である一方で、再灌流自体は、組織に対して有害であることが知られている。虚血と再灌流の双方は、組織壊死に対する重要な寄与体であることが知られている。いくつかの機構は、虚血-再灌流傷害に関連する組織損傷の生成における原因的役割を果たすように思われる。特定の本発明のペプチド及び組成物は、限定はされないが、心筋梗塞、脳卒中などを含む、腎再灌流に続発する肺損傷を含む腎再灌流傷害の重症度の予防又は制限、心筋梗塞に続発する再灌流心臓損傷の予防又は制限、心血管損傷に続発する再灌流脳損傷の予防又は制限における特定の用途を有する。本発明は、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓又は小腸の移植を含む、臓器移植における再灌流臓器損傷の予防又は制限において、さらなる特定の用途を有する。一態様において、本発明の医薬組成物は、移植臓器の灌流に使用されてもよく、ここで灌流は、臓器の移植の前、間又は後であってもよい。
【0094】
一実施形態において、本発明は、患者の心臓、脳又は他の臓器を、再灌流に起因するか又はその間の損傷を含む、虚血-再灌流傷害に起因する損傷に対して保護するための、本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。虚血-再灌流傷害に対する保護効果は、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後、即時的に又は短期間内に生じる。
【0095】
さらに別の態様において、限定はされないが,MC1r、MC3r、MC4r及び/若しくはMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、患者における循環性ショック及び関連疾患、徴候、病態及び症候群の治療において使用されてもよい。本発明は、使用のためのペプチド、組成物、及び患者における出血性ショックを含むショックを治療又は予防する方法であって、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物を、失血を患っていると診断された患者に投与することを含む、方法を提供する。失血は、例えば、全血液量の約15%を超える失血、又は対象の全体積の20%、25%、30%、35%、40%、若しくは50%を超える失血など、対象の血液量の百分率として測定されてもよいが、そうである必要はない。或いは、失血は、例えば、ヒト対象における約750mL、1000mL、約1500mL、又は約2000mL又はそれ以上の低下など、特定の対象において出血性ショックを引き起こすのに十分な任意の量での血液量の低下の観点で測定されてもよいが、そうである必要はない。失血はまた、例えば、対象の正常な収縮期血圧よりも約20mmHg、約30mmHg、約40mmHg、約50mmHg、約60mmHg、約70mmHg、約80mmHg、約90mmHg又は約100mmHg又は約100mmHgを越えて低い収縮期血圧の低下など、収縮期血圧の低下の観点で測定されてもよい。特定の実施形態において、対象は、限定はされないが、手術、輸血又は出産などの医療処置を受けつつあるか又は受けている。他の特定の実施形態において、対象は、例えば限定はされないが、自動車事故に起因する、労働傷害に起因する、又は銃創に起因する外傷を患っている。
【0096】
本発明のさらなる実施形態において、組成物及び方法は、心原性ショック、血液量減少性ショック及び血管拡張性ショックを治療するために使用され、それらのそれぞれは、ショックの任意のステージであり得る。本発明の1つの特定の実施形態において、該方法は、心原性ショックを治療するために使用される。心原性ショックは、概して、心臓が十分な血液を駆出しない場合の心機能不全によって引き起こされる低い血流又は灌流である。原因は、限定はされないが、塞栓症、虚血、逆流及び弁機能不全など、心室充満又は排出と干渉する任意の病態を含み得る。本発明の別の特定の実施形態において、該方法は、血管拡張性ショックを治療するために使用される。血管拡張性ショックは、重度の静脈又は細動脈拡張によって引き起こされ、不十分な血流をもたらす。いくつかの既知の原因は、限定はされないが、大脳外傷、薬又は毒物の毒性、アナフィラキシー、肝不全、菌血症及び敗血症を含む、血管拡張性ショックに寄与する。本発明の別のさらなる特定の実施形態において、該方法は、敗血症又は菌血症に起因するショックを治療するために使用される。さらなる特定の実施形態において、組成物及び方法は、ステージI、II又はIIIショックと称されるショックの中の敗血症性ショック又は菌血症性ショックを治療するために使用される。さらに別の実施形態において、本発明の組成物及び方法は、血液量減少性ショックを治療するために使用される。血液量減少性ショックは、概して、血管内体積の減少であり、血管内体積の減少は、相対的又は絶対的であり得る。限定はされないが、潰瘍、胃腸損傷、外傷、事故、手術、及び動脈瘤などの病態からの出血は、血液量減少性ショックを引き起こすことがあるが;他の体液の減少も、血液量減少性ショックを引き起こすことがある。例えば、腎臓液の減少、血管内液の減少、水又は他の腹水の減少は、血液量減少性ショックに寄与することがある。本発明の1つの特定の実施形態において、本発明のペプチドの1つ以上の投与を含む、組成物及び方法は、血液量減少性ショックを治療するために使用される。さらなる特定の実施形態において、組成物及び方法は、ステージI、ステージII又はステージIIIにおける血液量減少性ショックを治療するために使用される。
【0097】
一実施形態において、本発明は、患者の心臓、脳又は他の臓器を、循環性ショックによって引き起こされる損傷に対して保護するための、本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。循環性ショックに対する保護効果は、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後、即時的に又は短期間内に、好ましくは投与後の少なくとも約40分以内に生じる。
【0098】
2.6 MC4r応答性の徴候
さらに別の態様において、限定はされないが、MC4rアゴニスト若しくは部分アゴニスト若しくはMC3rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、MC4r機能の調節、より詳細にはMC4rの活性化に対して応答性がある疾患、障害及び/若しくは病態、すなわち、MC4rで(完全若しくは部分アゴニズムを含む)アゴニズムから利益を得ることになる、若しくはMC3r機能の調節、より詳細にはMC3rの活性化に対して応答性がある疾患、障害及び/若しくは病態、すなわち、MC3rで(完全若しくは部分アゴニズムを含む)アゴニズムから利益を得ることになる、若しくはエネルギー恒常性及び代謝関連(糖尿病、特に2型糖尿病;脂質異常症;脂肪肝;痛風;高コレステロール血症;高トリグリセリド血症;高尿酸血症;耐糖能障害;空腹時グルコース障害;インスリン抵抗性症候群;及びメタボリックシンドロームなど)、食物摂取関連(食欲過剰;気晴らし食い;大食症;及び過食症など)を含む、MC4r及びMC3r機能双方の調節に対して応答性がある疾患、障害及び/若しくは病態、及び/又はエネルギー平衡及び体重関連疾患、障害及び/若しくは病態、より詳細には、過剰な体重及び/若しくは過剰な食事摂取を特徴とするような疾患、障害及び病態の治療において使用されてもよい。一態様において、本発明の化合物は、様々な発現又は受容体の遺伝性疾患、例えば、POMC遺伝子における突然変異に起因するプロオピオメラノコルチン欠損(POMC異型接合型欠損肥満)、プラダー・ウィリー症候群、MC4r欠損に起因する肥満、レプチン受容体欠損肥満、レプチン欠損肥満、先天性レプチン欠損など、バルデ・ビードル症候群、アルストレーム症候群、及び様々な他の疾患、病態、遺伝的欠損、代謝障害、及び症候群に関連する状態を治療するために使用される。
【0099】
そのようなペプチドは、特に、(体重減少の促進、体重減少の維持、及び/又は薬物誘導性の体重増加若しくは喫煙の中断に続発する体重増加を含む体重増加の予防による)肥満及び過体重を含む過剰な体重を特徴とする体重関連疾患、障害及び/又は病態の治療、並びにインスリン抵抗性;耐糖能障害;2型糖尿病;メタボリックシンドローム;脂質異常症(高脂血症を含む);高血圧症;心臓障害(例えば、冠動脈心疾患、心筋梗塞);心血管障害;非アルコール性脂肪性肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎を含む);関節障害(二次変形性関節症を含む);胃食道逆流;睡眠時無呼吸;粥状動脈硬化;脳卒中;巨大及び微小血管疾患;(例えば肝臓の)脂肪肝;胆石;及び胆嚢障害などの、肥満及び/若しくは過体重に関連する疾患、障害及び/又は病態の治療に有用であると考えられる。
【0100】
MC4rは、レプチン-メラノコルチン経路、又はプロオピオメラノコルチン(POMC)-MC4r経路の一部である。この経路の構成メンバーは、α-MSH、POMC、レプチン及びレプチン受容体を含む、多種多様なタンパク質を含む。特定の疾患、病態及び症候群は、POMC-MC4r経路の1つ以上の構成メンバーに関連するか又はそれらにおける、遺伝子欠損障害を含む、突然変異及び変異に起因する。本発明の化合物は、後述されるとおり、POMC-MC4r経路の1つ以上の構成メンバーに関連するか又はそれらにおける、遺伝子欠損障害を含む、突然変異及び変異に起因する疾患、病態及び症候群の治療において有用であってもよい。
【0101】
視床下部POMC-MC4r経路は、食行動、食欲及び体重を調節する制御系の一部である。POMC-MC4r経路内の遺伝子における欠損又は破壊を含む、遺伝子欠損又は破壊に起因すると考えられる、視床下部POMC-MC4r経路の破壊に関連する、いくつかの疾患、病態及び症候群については記載がなされている。例えば、プラダー・ウィリー症候群は、有意な食欲過剰及び重度肥満において顕在化し、学習障害、異常な神経機能、性腺機能低下、低身長、並びに発育及び認知遅延などの他の特徴及び徴候を含んでもよい。本発明の化合物は、後述されるとおり、プラダー・ウィリー症候群、並びにPOMC-MC4r経路内の遺伝子における欠損又は破壊を含む他の疾患、病態及び症候群の治療において有用であってもよい。
【0102】
それ故、本発明の化合物は、染色体2の23.3位に位置するPOMC遺伝子における機能突然変異のホモ接合性又は複合ヘテロ接合性欠損によって引き起こされるPOMC欠損に関連する肥満及び食欲過剰の治療に使用されてもよく、治療が指示される。POMCポリペプチドの完全欠損をもたらす、又はその産生を有意に低減する、POMC遺伝子における突然変異は、α-MSHの産生を引き起こさないか又はその減少を引き起こす。内因性α-MSHのこの欠損は、有意に低下したMC4r活性をもたらし、食欲過剰及び肥満がもたらされる。本発明の化合物は、内因性α-MSHをほとんど又は全く有しない患者におけるMC4rアゴニスト置換療法として使用されてもよい。
【0103】
視床下部POMC-MC4r経路の破壊に関連する種々の疾患、病態又は症候群では、様々な遺伝子及び遺伝子型判定検査が、予定患者の診断、及びそのような予定患者における本発明の化合物の使用の適合性を判定する診断の一部として使用されてもよい。例えば限定はされないが、プラダー・ウィリー症候群の場合、染色体15の特定部分15q11-q13領域内の活性遺伝子の欠損、具体的には父性染色体15の少なくとも15q11-q13領域の欠失を確認するため、DNAベースのメチル化検査などの遺伝子検査を利用することは可能である。同様に、POMC欠損は、POMC遺伝子における機能欠失変異によって診断されてもよい。それ故、本発明の化合物による治療は、限定はされないが、15q11-q13領域を冒すプラダー・ウィリー症候群における機能欠失変異、POMC-MC4r経路におけるPOMC遺伝子、レプチン遺伝子、レプチン受容体遺伝子、及び様々な他の遺伝子における機能欠失変異を含む、POMC-MC4r経路における機能欠失変異又は他の変異の存在を確認するための、様々な診断及び遺伝子検査を含んでもよい。
【0104】
さらに別の態様において、限定はされないが、MC4rアゴニスト又は部分アゴニストであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、男性勃起不全及び女性性機能障害の双方を含む、性機能障害の治療において使用されてもよい。女性性機能障害としては、限定はされないが、性的欲求低下障害が挙げられる。1つの特定の実施形態において、本発明のペプチド、組成物及び方法は、限定はされないが、膣性交を可能にするような勃起機能の増強を含む、勃起機能を増強するため、男性患者において使用される。別の特定の実施形態では、本発明のペプチド、組成物及び方法は、限定はされないが、覚醒成功率、欲求成功率(desire success rate)、覚醒及び欲求のレベルの増加を含む、女性性機能障害を治療するため、使用される。性的欲求低下障害を含む女性性機能障害では、エンドポイントは、限定はされないが、Female Sexual Distress Scale,Female Sexual Encounter Profile、Female Sexual Function Index、及びGlobal Assessment Questionnaireを含む、いくつかの検証された手段のいずれかによって決定されてもよいが、そうである必要はない。女性性機能障害に対して治療された患者は、閉経前女性であっても又は閉経後女性であってもよい。
【0105】
さらに別の態様において、限定はされないが、MC4rアゴニスト又は部分アゴニストであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、アルコール消費を阻害するため、又はアルコール消費を低減するため、又はアルコール依存を治療若しくは予防するため、又はアルコール乱用を治療若しくは予防するため、又はアルコール関連障害を治療若しくは予防するため、使用されてもよい。別の関連する態様において、本ペプチドの1つ以上は、乱用薬物の消費を阻害するため、又は乱用薬物の消費を低減するため、又は薬物乱用を治療若しくは予防するため、又は薬物乱用関連障害を治療若しくは予防するため、使用されてもよい。乱用薬物は、典型的には規制物質である。これらは、ヘロイン、モルヒネ、アヘン、コカイン、マリファナなどの規制された天然由来薬物、並びに合成的に製造された薬物、例えば、Vicodin(登録商標)、Lortab(登録商標)、Lorcet(登録商標)、Percocet(登録商標)、Percodan(登録商標)、Tylox(登録商標)、ヒドロコドン、OxyContin(登録商標)、メサドン、トラマドール、様々なメタンフェタミン、及び乱用されることで知られている他の精神安定薬、刺激薬、又は鎮静薬、並びにエクスタシー、LSD、又はPCPなどの確立された薬学的有用性が認められない薬物を含む。
【0106】
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1r、MC2r、MC3r及びMC5rの1つ以上でのアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又はインバースアゴニストであってもよい、MC4rアンタゴニスト又はインバースアゴニストペプチドを含む、MC4rアンタゴニスト、又は任意選択的にはMC4rでのインバースアゴニストであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、悪液質、筋肉減少症及び消耗性症候群又は疾患を含む、種々の体重障害の治療において、並びに炎症及び免疫異常の治療において使用されてもよい。体重障害は、望ましくない不健康な体重減少又は体細胞集団の減少を引き起こす、1つ以上の「消耗性」障害(例えば、消耗性症候群、悪液質、筋肉減少症)を含む。高齢者において、並びにがん及びAIDS患者において、消耗性疾患は、肥満及び無肥満の区画の双方を含む、望ましくない体重減少を生じ得る。消耗性疾患は、疾病及び/又は老化過程に関連する不適切な食物摂取及び/又は代謝的変化の結果であり得る。がん患者及びAIDS患者、並びに拡大手術に従う、又は慢性感染、免疫疾患、甲状腺機能亢進症、クローン病、心因性疾患、慢性心不全若しくは他の重症外傷を有する患者は、消耗性疾患に罹患することが多い。消耗性疾患は、時として悪液質とも称され、一般に代謝障害、時として摂食障害として認められる。悪液質は、加えて、代謝亢進及び異化亢進を特徴とすることがある。加齢個体を冒し得るようなさらに別の障害である筋肉減少症は、典型的には筋肉量の減少を特徴とする。上記のような末期の消耗性疾患は、悪液質又は筋肉減少症のいずれかを患う個体において発現し得る。
【0107】
2.7 核医学及び薬物送達用途
さらに別の態様において、限定はされないが、MC1rアゴニスト、部分アゴニスト又はアンタゴニストであるペプチドを含む、本発明のペプチド及び組成物は、それを必要とする患者における、メラノーマ及び他の徴候のような特定のがんに対する標的化イメージング及び細胞傷害性療法において使用されてもよい。本発明のペプチド、組成物及び方法は、部分的にMC1rの比較的高い発現によって特徴づけられる、メラノーマ及び他のがん又は疾患若しくは病態のイメージングのため、例えば本発明のペプチドと組み合わせた放射性核種を使用する診断イメージングによって使用されてもよい。診断イメージングでは、典型的には本発明のペプチドは、本発明のペプチドを放射性核種にカップリングさせる架橋剤などのリンカーの使用によって、放射性核種にコンジュゲートされる。放射性核種は、好ましくは、単一光子放射コンピュータ断層撮影などのガンマ検出器又はカメラを使用して画像化されてもよいガンマエミッターであり、又は陽電子放射断層撮影を使用して画像化されてもよいポジトロンエミッターである。そのように使用されてもよいガンマエミッターは、特に、99mTc、111In、123I及び67Gaを含む。そのように使用されてもよいポジトロンエミッターは、11C、13N、15O及び18Fを含む。
【0108】
関連する態様において、本発明のペプチド、組成物及び方法は、部分的にMC1rの比較的高い発現によって特徴づけられる、メラノーマ、他のがん又は疾患若しくは病態の細胞傷害性療法のため、例えば本発明のペプチドと組み合わせた毒素又は放射線治療薬を含む化学療法剤を使用することによって使用されてもよい。化学療法剤は、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、及び他の抗腫瘍薬などの任意の抗悪性腫瘍薬又は化学物質を含む。アルキル化剤の非限定例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル及びイホスファミドが挙げられ;代謝拮抗薬の例としては、アザチオプリン及びメルカプトプリンが挙げられ;アントラサイクリンの例としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン及びミトキサントロンが挙げられ;植物アルカロイドの例としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン及びビンデシンなどのビンカアルカロイド、並びにパクリタキセル及びドセタキセルなどのタキサンが挙げられ;トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、イリノテカン及びトポテカンなどのカンプトテシン、並びにアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド及びテニポシドなどのII型トポイソメラーゼが挙げられる。しかしながら、標的化細胞傷害性療法における使用に適した任意の薬剤は、そのように使用されてもよい。そのように使用されてもよい放射線治療薬の非限定例としては、特に、131I、125I、211At、186Re、188Re、90Y、153Sm、212Bi及び32Pが挙げられる。
【0109】
診断イメージング剤又は細胞傷害性治療薬は、例えば、非放射性同位元素の代わりに、特に、11C、13N、15Oの使用などによって、本発明のペプチド中に組み込まれてもよく;例えば、ハロゲン化若しくは他の直接的な複合体形成方法などによって、本発明のペプチドに直接的に連結されてもよく;又はリンカー若しくはキレート化単位を用いるコンジュゲーションなどによって、本発明のペプチドに間接的に連結されてもよい。リンカー単位は、当該技術分野で周知であり、限定はされないが、遊離反応基間の少なくとも1つのジスルフィド結合、チオエーテル結合又は共有結合を含む、化学的に連結されたコンジュゲートが挙げられる。代表的な架橋及びコンジュゲート試薬は、特に、参照により本明細書中に援用される、米国特許第7,169,603号、米国特許第7,820,164号及び米国特許第5,443,816号及び米国特許出願公開第2009/0297444号に開示されている。
【0110】
3.0 特定の徴候に対する併用療法
本発明のペプチド、組成物及び方法は、前述の疾患、徴候、病態若しくは症候群のいずれか、又はMC1r媒介性又は応答性である任意の疾患、徴候、病態若しくは症候群の、1つ以上の他の薬学的活性化合物と組み合わせた投与による治療において使用されてもよい。そのような組み合わせ投与は、錠剤、カプセル剤、噴霧剤、吸入粉末、注射液などを含む単一剤形など、本発明のペプチドともう一つの他の薬学的活性化合物の両方を含む単一剤形によるものであってもよい。或いは、組み合わせ投与は、一方の剤形が本発明のペプチドを含み、他方の剤形が別の薬学的活性化合物を含む、2つの異なる剤形の投与によるものであってもよい。この場合、剤形は、同じであっても又は異なってもよい。「同時投与する」という用語は、併用療法における少なくとも2つの化合物のそれぞれが、生物学的活性又は効果の各期間が重複する時間枠の間に投与されることを示す。それ故、該用語は、一方の化合物が本発明のペプチドの1つ以上である場合、化合物の逐次及び同時投与を含む。2つ以上の化合物が同時投与される場合、2つ以上の化合物の投与の経路は、同じである必要がない。併用療法を制限することを意図しないが、以下は、用いられてもよい特定の併用療法を例示する。
【0111】
3.1 抗炎症剤を用いる併用療法
炎症関連疾患、徴候、病態及び症候群の治療では、本発明のペプチドは、例えば、1つ以上の抗炎症剤との同時投与を用いる、併用療法において使用されてもよい。抗炎症剤の1つのクラスが、限定はされないが、酢酸コルチゾンを含むコルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン及びアルドステロンを含む、グルココルチコイドである。例えば同時投与を用いる、併用療法において使用されてもよい他の抗炎症剤は、アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(イブプロフェン及びナプロキシン(naproxin)など)、TNF-α阻害剤(テニダップ及びラパマイシン又はその誘導体など)、又はTNF-αアンタゴニスト(例えば、インフリキシマブ、OR1384)、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(すなわち、ナプロキセン(登録商標)又はCelebrex(登録商標)などのシクロオキシゲナーゼ-1及び/又はシクロオキシゲナーゼ-2阻害剤)、CTLA4-Igアゴニスト/アンタゴニスト、CD40リガンドアンタゴニスト、IMPDH阻害剤、例えばミコフェノール酸塩(CellCept(登録商標))、インテグリンアンタゴニスト、アルファ4ベータ7インテグリンアンタゴニスト、細胞接着阻害剤、インターフェロンガンマアンタゴニスト、ICAM-1、プロスタグランジン合成阻害剤、ブデソニド、クロファジミン、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ阻害剤、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)阻害剤、IKK阻害剤、過敏性腸症候群の治療用の治療薬(例えば、米国特許第6,184,231号に開示された、Zelmac(登録商標)及びMaxi-K(登録商標)開口薬)、又は他のNF-κB阻害剤、例えば、コルチコステロイド、カルフォスチン、CSAID、4-置換イミダゾ[1,2-A]キノキサリン(米国特許第4,200,750号に開示されたとおり);インターロイキン-10、サリチル酸、一酸化窒素、及び他の免疫抑制剤;及びデオキシスパガリン(DSG)などの核移行阻害剤を含む。
【0112】
3.2 ホスホジエステラーゼ阻害剤を用いる併用療法
特定の用途及び指示では、炎症細胞活性に関連するヌクレオチドメッセンジャーである環状アデノシン3’,5’一リン酸(cAMP)の生成及び維持レベルを増加させることが望ましい。本発明のペプチドは、cAMPの細胞内レベルを増加させ、cAMPの分解を阻害する化合物又は物質と同時投与され得る。cAMPは、ホスホジエステラーゼ(PDE)によって、不活性型に加水分解され;PDEを阻害する化合物又は物質は、それにより、利用可能なcAMPの維持及び/又は増加をもたらすことがある。PDE阻害剤として公知の化合物のクラスは、喘息、COPD及び急性呼吸促迫症候群などの炎症性疾患の治療における使用のため、広範に試験されている。PDEタイプ1、2、3、4、7、8、10又は11の阻害剤が好ましく;一態様において、これは、cAMP-PDE阻害剤、すなわち選択的PDEタイプ4阻害剤、又は例えば、ロリプラム、シロミラスト、イブジラスト、及びピクラミラストなどのPDE4アイソザイムの1つの特定タイプに対する選択性を有する阻害剤を含む。
【0113】
3.3 眼の徴候における併用療法
眼の徴候では、点眼剤形は、本発明のペプチドの1つ以上に加えて、例えば、人工涙液成分、局所コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、又はシクロスポリンA眼科用エマルジョン(Restasis(登録商標)-Allergan)などのカルシニューリン阻害剤などの1つ以上の活性成分を含んでもよい。同時投与が、人工涙液成分、局所コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、シクロスポリンAのようなカルシニューリン阻害剤、又は前述のいずれかの組み合わせを含む点眼剤形の分離投与などの、本発明のペプチドとは別に与えられる1つ以上のさらなる化合物の投与を含むことも可能である。
【0114】
具体的には2つ以上の活性医薬成分を含む溶液を含む、点眼液の組み合わせが使用されてもよい。一態様において、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、本発明のペプチドと組み合わせて使用される。点眼液の組み合わせにおける使用に適したNSAIDは、限定はされないが、ナプロキセン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェンなどのプロピオン酸化合物;ケトロラクトロメタミン;スリンダク、インドメタシン、及びエトドラクなどの酢酸誘導体;ジクロフェナク、ブロムフェナク、及びスプロフェンなどのフェニル酢酸;ネパフェナク、及びアンフェナクなどのアリール酢酸プロドラッグ(arylacetic prodrugs);アスピリン、サルサラート、ジフルニサル、トリサリチル酸コリンマグネシウムなどのサリチル酸;アセトアミノフェンなどのパラ・アミノフェノール誘導体;ナブメトンなどのナフチルアルカノン;ピロキシカム及びメロキシカムなどのエノール酸誘導体;メフェナム酸、メクロフェナム酸及びフルフェナム酸などのフェナム酸;トルメチンなどのピロール酢酸;及びフェニルブタゾンなどのピラゾロン;及びセレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、及びルアリコキシブ(luaricoxib)などのCOX-2選択的阻害剤を含む、シクロオキシゲナーゼ(cycloxygenase)(COX)-1及び/又は-2酵素を阻害する薬剤、そのエステル及びその薬学的に許容される塩を含む。点眼液は、限定はされないが、血管収縮薬、抗アレルゲン剤、抗感染薬、ステロイド、麻酔薬、抗炎症薬、鎮痛薬、ドライアイ治療剤(例えば、分泌促進物質、粘膜擬似物質(mucomimetics)、ポリマー、脂質、抗酸化剤)などを含む、他の活性成分をさらに含んでもよく、又は限定はされないが、血管収縮薬、抗アレルゲン剤、抗感染薬、ステロイド、麻酔薬、抗炎症薬、鎮痛薬、ドライアイ治療剤(例えば、分泌促進物質、粘膜擬似物質、ポリマー、脂質、抗酸化剤)などを含む、他の活性成分を含む医薬組成物と併せて(同時に又は順次的に)投与されてもよい。
【0115】
3.4 ショックに関連する徴候における併用療法
さらに、本発明の循環性ショックを治療又は予防する方法は、1つ以上の物質を、本発明のペプチドの1つ以上に加えて、対象に同時投与することに関する。例えば、本発明のペプチドの1つ以上は、アンドロステントリオール、アンドロステンジオール又はその誘導体、様々なバソプレシンアゴニスト、又は他の薬学的活性物質、例えば、カテコールアミン又は他のαアドレナリンアゴニスト、α2アドレナリンアゴニスト、βアドレナリンアゴニスト又はβ2アドレナリンアゴニスト、例えば限定はされないが、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、イソプロテレノール、バソプレシン及びドブタミンと同時投与されてもよい。或いは、本発明のペプチドの1つ以上は、血液量減少性ショック、血管拡張性ショック又は心原性ショックを患う、その症状を呈する、又はそれを患うリスクがある対象における症状を軽減、減弱、予防又は除去する能力がある体液又は他の物質と同時投与されてもよい。本発明のペプチドの1つ以上と同時投与され得る体液のタイプは、ショックを患う、その症状を呈する、又はそれを患うリスクがある特定の対象の周囲の環境に特異的であるべきである。例えば、本発明のペプチドの1つ以上と同時投与されてもよい体液としては、限定はされないが、塩化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムなどの塩類溶液、並びに全血、合成血液代替物、血漿、血清、血清アルブミン及びコロイド溶液が挙げられる。コロイド溶液としては、限定はされないが、ヘタスターチを含有する溶液、アルブミン又は血漿が挙げられる。本発明の1つの特定の実施形態において、塩類溶液、コロイド溶液、全血、合成血液代替物、血漿又は血清の1つ以上などの体液は、出血性ショックなどの血液量減少性ショックを患う又はその症状を呈する患者において、本発明のペプチドの1つ以上と同時投与される。
【0116】
3.5 肥満及び関連メタボリックシンドロームに対する併用療法
本発明の1つ以上のペプチドは、肥満及び/又は過体重などの様々な体重及び摂食関連障害の治療において有用である、1つ以上の他の薬理活性剤、特に、エネルギー消費、解糖、糖新生、グリコーゲン分解(glucogenolysis)、脂肪分解、脂肪生成、脂肪吸収、脂肪貯蔵、脂肪排泄、空腹及び/又は満腹及び/又は欲求機構、食欲/意欲、食物摂取、又は胃腸運動に影響する他の抗肥満薬と組み合わされてもよい。エネルギー摂取を低減する薬剤は、部分的に、体重減少プログラムにおける行動療法に対する補助剤として使用される、食欲低下薬と称される、様々な薬理学的薬剤を含む。
【0117】
一般に、下記の肥満調節剤(obesity control agent)又は薬剤の全用量は、本発明の1つ以上のペプチドと組み合わせて使用されるとき、単回又は2~4回の分割用量で、0.01~3,000mg/日、好ましくは約0.1~50mg/日、より好ましくは約0.1~10mg/日の範囲であり得る。しかしながら、正確な用量は、担当臨床医によって決定され、投与される化合物の効力、患者の年齢、体重、病態及び応答などの要素に依存する。
【0118】
本発明の1つ以上のペプチドは、他の抗糖尿病薬などの、糖尿病の治療において有用である1つ以上の他の薬理活性剤と組み合わされてもよい。
【0119】
本発明の1つ以上のペプチドは、追加的に又は代替的に、インスリン抵抗性;耐糖能障害;2型糖尿病;メタボリックシンドローム;脂質異常症(高脂血症を含む);高血圧症;心臓障害(例えば、冠動脈心疾患、心筋梗塞);心血管障害;非アルコール性脂肪性肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎を含む);関節障害(二次変形性関節症を含む);胃食道逆流;睡眠時無呼吸;粥状動脈硬化;脳卒中;巨大及び微小血管疾患;(例えば肝臓の)脂肪症;胆石;及び胆嚢障害などの、肥満及び/又は過体重に関連する疾患、障害及び/又は病態の治療において有用である、1つ以上の他の薬理活性剤とさらに組み合わされてもよい。
【0120】
本発明のさらなる態様によると、任意選択的には薬学的に許容される希釈剤又は担体と併せた、薬理学的有効量の、本発明に従うペプチド、又はその薬学的に許容される塩の投与とともに、
-インスリン及びインスリン類似体;
-インスリン分泌促進物質、スルホニルウレア(例えば、グリピジド)及び食事グルコース制御因子(時として「短期作用型分泌促進物質」と呼ばれる)など、例えばメグリチニド(例えば、レパグリニド及びナテグリニド);
-インクレチン作用を改善する薬剤、例えば、ジペプチジル・ペプチダーゼIV(DPP-4)阻害剤(例えば、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、及びシタグリプチン)、及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アゴニスト(例えば、エキセナチド);
-インスリン感作剤、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニストなど、例えば、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン及びロシグリタゾン)、及びPPARアルファ、ガンマ及びデルタ活性の任意の組み合わせを有する薬剤;
-肝グルコース平衡を調節する薬剤、例えば、ビグアナイド(例えば、メトホルミン)、フルクトース1,6-ビスホスファターゼ阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害剤、及びグルコキナーゼアクチベーター;
-腸からのグルコースの吸収を低減/遅延するように設計された薬剤、例えば、アルファグルコシダーゼ阻害剤(例えば、ミグリトール及びアカルボース);
-グルカゴンの作用をアンタゴナイズするか又はその分泌を低減する薬剤、例えば、アミリン類似体(例えば、プラムリンチド);
-腎臓によるグルコースの再吸収を阻害する薬剤、例えば、ナトリウム依存性グルコーストランスポーター2(SGLT-2)阻害剤(例えば、ダパグリフロジン);
-長期高血糖の合併症を治療するように設計された薬剤、例えば、アルドースレダクターゼ阻害剤(例えば、エパルレスタット及びラニレスタット);及び微小血管症に関連する合併症を治療するために使用される薬剤;
-抗脂質異常症剤、例えば、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン、例えば、ロスバスタチン)及び他のコレステロール低下薬;PPARαアゴニスト(フィブラート、例えば、ゲムフィブロジル及びフェノフィブラート);胆汁酸捕捉剤(例えば、コレスチラミン);コレステロール吸収阻害剤(例えば、植物ステロール(すなわち、フィトステロール)、合成阻害剤);コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤;回腸胆汁酸輸送系の阻害剤(IBAT阻害剤);胆汁酸結合樹脂;ニコチン酸(ナイアシン)及びその類似体;抗酸化剤、例えば、プロブコール;及びω3脂肪酸;
-降圧薬、アドレナリン受容体アンタゴニストなど、例えば、β遮断薬(例えば、アテノロール)、α遮断薬(例えば、ドキサゾシン)、及び混合α/β遮断薬(例えば、ラベタロール);アドレナリン受容体アゴニスト、α2アゴニストなど(例えば、クロニジン);アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、リシノプリル)、カルシウムチャネルブロッカー、例えば、ジヒドロプリジン(例えば、ニフェジピン)、フェニルアルキルアミン(例えば、ベラパミル)、及びベンゾチアゼピン(例えば、ジルチアゼム);アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えば、カンデサルタン);アルドステロン受容体アンタゴニスト(例えば、エプレレノン);中枢作用性アドレナリン作用薬、例えば、中枢性アルファアゴニスト(例えば、クロニジン);及び利尿薬(例えば、フロセミド);
-止血モジュレーター、抗血栓薬など、例えば、線維素溶解アクチベーター;トロンビンアンタゴニスト;第VIIa因子阻害剤;抗凝固剤、例えば、ビタミンKアンタゴニスト(例えば、ワルファリン)、ヘパリン及びその低分子量類似体、第Xa因子阻害剤、及び直接トロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバン);抗血小板薬、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、アスピリン)、アデノシンニリン酸(ADP)受容体阻害剤(例えば、クロピドグレル)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、シロスタゾール)、糖タンパク質IIB/IIA阻害剤(例えば、チロフィバン)、及びアデノシン再取り込み阻害剤(例えば、ジピリダモール);
-抗肥満薬、例えば、食欲抑制薬(例えば、エフェドリン)、ノルアドレナリン作動薬(例えば、フェンテルミン)及びセロトニン作用薬(例えば、シブトラミン)、膵臓リパーゼ阻害剤(例えば、オルリスタット)、ミクロソーム転送タンパク質(MTP)モジュレーター、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤、及びカンナビノイド(CB1)受容体アンタゴニスト(例えば、リモナバン)など;
-摂食行動調節剤、例えば、オレキシン受容体モジュレーター及びメラニン凝集ホルモン(MCH)モジュレーター;
-グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体モジュレーター;
-ニューロペプチドY(NPY)/NPY受容体モジュレーター;
-ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)モジュレーター;
-セロトニン受容体モジュレーター;
-レプチン/レプチン受容体モジュレーター;
-グレリン/グレリン受容体モジュレーター;又は
-モノアミン伝達調節剤、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(例えば、フルオキセチン)、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NARI)、ノルアドレナリン・セロトニン再取り込み阻害薬(SNRI)、三重モノアミン再取り込み遮断薬(例えば、テソフェンシン)、及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)(例えば、トロキサトン及びアミフラミン)、
から選択される薬剤の1つ以上、又は任意選択的には、そのような治療的処置を必要とするヒトなどの哺乳動物への、薬学的に許容される担体と併せた、薬学的に許容される塩、溶媒和物、そのような塩の溶媒和物、若しくはそのプロドラッグの同時、逐次又は分離投与を含む、組み合わせ治療が提供される。
【0121】
本発明のさらなる態様によると、任意選択的には薬学的に許容される担体と併せた、薬理学的有効量の、本発明に従う化合物、又はその薬学的に許容される塩の投与とともに、非常に低いカロリー食(VLCD)又は低いカロリー食(LCD)の同時、逐次又は分離投与を含む組み合わせ治療が提供される。
【0122】
本発明のさらなる態様によると、参照により本明細書中に援用される、国際公開第2016/168388号の“Therapies for Obesity,Diabetes and Related Indications”に開示のとおり、本発明の1つ以上のペプチド、好ましくはMC4rアゴニストであるペプチドは、GLP-1受容体アゴニストと併せて投与されてもよい。したがって、本明細書中の本発明は、用量ベースで:
GLP-1受容体アゴニストを伴わない単独療法として投与されるときの、少なくとも最小の体重減少を誘導するのに十分な量の、MC4rアゴニストである本発明のペプチド;及び
MC4rアゴニストを伴わない単独療法として投与されるときの、体重減少でなく、血糖コントロールを誘導するのに十分な量のGLP-1受容体アゴニスト
を含む、肥満の治療における皮下投与のための又は体重減少を誘導するための医薬組成物であって、好ましくは相乗的な抗肥満効果を有する、医薬組成物を含む。
【0123】
関連する態様において、本発明は、肥満、糖尿病又はメタボリックシンドロームを有する患者を治療する方法であって、患者に、(a)GLP-1受容体アゴニストを伴わない単独療法として投与されるときの、少なくとも最小の体重減少を誘導するのに十分な量の、MC4rアゴニストである本発明のペプチド、及び(b)MC4rアゴニストを伴わない単独療法として投与されるときの、体重減少でなく、血糖コントロールを誘導するのに十分な量のGLP-1受容体アゴニストを投与することを含む、方法を提供する。好ましくは、肺方法は、肥満の治療に対する相乗効果を誘発する。
【0124】
別の態様において、本発明は、患者における肥満、糖尿病又はメタボリックシンドロームの治療における、治療薬に関連する副作用を低減する方法であって:
投与されるMC4rアゴニストペプチドの量が、GLP-1受容体アゴニストを伴わない単独療法として投与される場合、単独療法として投与されるときの患者における肥満、糖尿病及びメタボリックシンドロームを含む群からの少なくとも1つの病態の治療において、所望される薬理学的応答を開始させるのに十分でない場合の量での、MC4rアゴニストである本発明のペプチドの投与;及び
投与されるGLP-1受容体アゴニストの量が、MC4rアゴニストを伴わない単独療法として投与される場合、単独療法として投与されるときの患者における肥満、糖尿病及びメタボリックシンドロームを含む群からの少なくとも1つの病態の治療において、所望される薬理学的応答を開始させるのに十分でない場合の量での、GLP-1受容体アゴニストの投与
を含み、
ここでMC4rアゴニストの量及びGLP-1受容体アゴニストの量は、患者における肥満、糖尿病及びメタボリックシンドロームを含む群からの少なくとも1つの病態を治療し、
それにより、患者における肥満、糖尿病又はメタボリックシンドロームの少なくとも1つの治療における副作用を低減する、所望される薬理学的応答を開始させるのに共に有効である、方法を提供する。
【0125】
3.6 性機能障害に対する併用療法
例えば性機能障害の治療のため、本発明の環状ペプチドを他の薬物又は薬剤と組み合わせて使用することも可能であり、考慮される。これらの他の薬物及び薬剤は、ホスホジエステラーゼ-5(PDE-5)阻害剤、テストステロン、プロスタグランジンなどを含む、勃起活性を誘導する薬剤を含んでもよい。本発明の好ましい実施形態において、本発明の環状ペプチドは、治療有効量の、環状GMPに特異的なホスホジエステラーゼ阻害剤又はアルファアドレナリン受容体アンタゴニストと併せて使用される。“Multiple Agent Therapy for Sexual Dysfunction”という表題の米国特許第7,235,625号の教示及び開示は、完全に記載されるが如く、参照により本明細書で援用される。
【0126】
したがって、本発明は、性機能障害を治療する方法であって、性機能障害を有するか又は有するリスクがある患者に、治療有効量の本発明の環状ペプチドを、治療有効量の第2の性機能障害薬と組み合わせて投与するステップを含む、方法を提供する。本発明の環状ペプチドは、治療有効量の第2の性機能障害薬の投与に対して同時、前又は後に投与されてもよい。好ましくは、本発明のペプチドは、治療有効量の第2の性機能障害薬の投与の1時間以内、好ましくは30分未満以内に投与される。しかしながら、例えば治療有効量のホルモン又はホルモンに関連した性機能障害薬と組み合わせた併用療法の特定の形態では、ホルモン又はホルモンに関連した性機能障害薬は、本発明のペプチドの投与とホルモン又はホルモンに関連した性機能障害薬の投与との間に設定された又は特定の時間的な関係が認められないように、独立したスケジュールで投与されてもよい。したがって、例えば、ホルモン又はホルモンに関連した性機能障害薬は、患者によって所望される又は必要とされるとき、一日若しくは他の用量で、又はパッチ若しくは他の連続投与スケジュールを用いて、本発明のペプチドの投与ととともに投与されてもよい。
【0127】
したがって、本発明は、性機能障害を治療する方法であって、性機能障害を有するか又は有するリスクがある患者に、治療有効量の本発明の環状ペプチドを、性機能障害の治療において有用である別の化合物と組み合わせて投与するステップを含む、方法を提供する。併用療法の好ましい実施形態において、性機能障害は、女性性機能障害である。併用療法の別の好ましい実施形態において、性機能障害は、勃起不全である。
【0128】
本発明はまた、本発明の環状ペプチド及び性機能障害の治療にとって有用な第2の化合物を含む医薬組成物を提供する。組成物の実施形態において、性機能障害の治療にとって有用なさらなる化合物は、好ましくは、限定はされないが、ホスホジエステラーゼ阻害剤;環状GMPに特異的なホスホジエステラーゼ阻害剤;プロスタグランジン;アポモルヒネ;オキシトシンモジュレーター;α-アドレナリンアンタゴニスト;アンドロゲン;選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM);ブプロプリオン;血管作用性小腸ペプチド(VIP);中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEP);及び神経ペプチドY受容体アンタゴニスト(NPY)からなる群から選択される。
【0129】
方法及び組成物の実施形態において、第2の性機能障害薬は、テストステロンである。
【0130】
併用療法の別の実施形態では、第2の性機能障害薬は、V型ホスホジエステラーゼ(PDE-5)阻害剤である。例えば、PDE-5阻害剤は、シルデナフィルのブランド名のViagra(登録商標)、バルデナフィルの一塩酸塩のブランド名のLevitra(登録商標)、又はタダラフィルのブランド名のCialis(登録商標)であってもよい。他のPDE-5阻害剤は、参照により本明細書で援用される、2007年6月22日に交付された“Multiple Agent Therapy for Sexual Dysfunction”という表題の米国特許第7,235,625号において開示されている。
【0131】
上記組成物の別の実施形態において、性機能障害の治療にとって有用な化合物は、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストである。一実施形態において、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは、(-)-シス-6-フェニル-5-[-4-(2-ピロリジン-1-イル-エトキシ)-フェニル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフタレン-2-オール(ラソフォキシフェンとしても公知)又はその光学若しくは幾何異性体;薬学的に許容される塩、N-オキシド、エステル、四級アンモニウム塩;又はそれらのプロドラッグである。より好ましくは、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは、D-酒石酸塩の形態である。
【0132】
上記組成物のさらに別の実施形態において、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、セントクロマン、イドキシフェン、6-(4-ヒドロキシ-フェニル)-5-[4-(2-ピペリジン-1-イル-エトキシ)-ベンジル]-ナフタレン-2-オール、{4-[2-(2-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)-エトキシ]-フェニル}-[6-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-ベンゾ[b]チオフェン-3-イル]-メタノン、EM-652、EM-800、GW5368、GW7604、TSE-424及びそれらの光学又は幾何異性体;及び薬学的に許容される塩、N-オキシド、エステル、四級アンモニウム塩、及びそれらのプロドラッグからなる群から選択される。
【0133】
さらに別の実施形態において、本発明の環状ペプチドは、任意の公知の機械的補助又は装置と併せて使用されてもよい。
【0134】
4.0 投与及び使用の方法
投与及び使用の方法は、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の特定のペプチドの特徴、治療対象の疾患、徴候、病態又は症候群、及び当業者に公知の他の要素に応じて変化する。一般に、当該技術分野で公知の又は後に開発される、投与及び使用の任意の方法は、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドとともに使用されてもよい。前述に限定することなく、投与及び使用の以下の方法は、指示徴候についての特定の用途を有する。
【0135】
4.1 皮下注射使用
一態様において、本発明の1つ以上のペプチドを含む組成物は、皮下注射用に製剤化され、皮下注射は、毎週又は毎日1回以上などの特定間隔で投与される。別の態様において、組成物は、注射可能な徐放性製剤として製剤化される。一実施形態において、本発明のペプチドは、ポリエチレングリコール3350などのポリエチレングリコール、及び任意選択的には、限定はされないが、塩、ポリソルベート80、水酸化ナトリウム又はpHを調節するための塩酸などの賦形剤を含む、1つ以上のさらなる賦形剤及び保存剤を用いて製剤化される。別の実施形態において、本発明のペプチドは、高分子骨格中の乳酸を変動百分率のいずれかで有する自己触媒ポリ(オルトエステル)であってもよい、ポリ(オルトエステル)、及び任意選択的には1つ以上のさらなる賦形剤を用いて製剤化される。一実施形態において、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー(PLGAポリマー)、好ましくは、Boehringer Ingelheim,Inc.(Ingelheim,Germany)製のPLGA RG502Hなどの親水性末端基を有するPLGAポリマーが使用される。そのような製剤は、例えば、メタノールなどの好適な溶媒中の本発明のペプチドを、塩化メチレン中のPLGAの溶液と組み合わせ、反応器内の好適な混合条件下でポリビニルアルコールの連続相溶液をそれに加えることによって、作製されてもよい。一般に、好ましくは接着性ポリマーでもある、いくつかの注射可能な生分解性ポリマーのいずれかは、徐放性注射用製剤中で使用されてもよい。米国特許第4,938,763号、米国特許第6,432,438号、及び米国特許第6,673,767号の教示内容、並びにそれらの中で開示された生分解性ポリマー及び製剤化方法は、参照により本明細書で援用される。注射が、ペプチドの濃度及び量、ポリマーの生分解速度、及び当業者に公知の他の要素に応じて、毎週、毎月又は他の周期ベースで必要とされるように、製剤化されてもよい。
【0136】
4.2 吸入使用
一態様において、本発明の1つ以上のペプチドを含む組成物は、気道への投与を意図して、例えば、噴霧器用のエアロゾル又は溶液の形態で、又は(例えば、局所的に肺及び/又は気道への)空気注入若しくは吸入のための超微粒子粉末として、単独で又は1つ以上の不活性担体若しくはさらなる活性医薬成分と組み合わせて、並びに溶液、懸濁液、エアロゾル若しくは乾燥粉末製剤の形態で製剤化される。一般には、Cryan,S.-A.,“Carrier-based strategies for targeting protein and peptide drugs to the lungs,”The AAPS Journal 7:E20-41(2005)を参照されたい。一般に、本発明のペプチドは、以下の米国特許又は特許出願(それらのそれぞれは参照により本明細書中に援用される):米国特許出願公開第20090241949号、“Dry powder inhalation system”;米国特許出願公開第20080066741号、“Methods and systems of delivering medication via inhalation”;米国特許出願公開第20070298116号、“Amorphous, spray-dried powders having a reduced moisture content and a high long term stability”;米国特許出願公開第20070140976号、“Aqueous inhalation pharmaceutical composition”;米国特許出願公開第20060054166号、“Inhalation nebulizer”;米国特許出願公開第20050211244号、“Dry powder preparations”;米国特許出願公開第20050123509号.“Modulating charge density to produce improvements in the characteristics of spray-dried proteins”;米国特許出願公開第20040241232号、“Dry powder medicament formulations”;米国特許第7,582,284号、“Particulate materials”;米国特許第7,481,212号、“Increased dosage metered dose inhaler”;米国特許第7,387,794号、“Preparation of powder agglomerate”;米国特許第7,258,873号、“Preservation of bioactive materials by spray drying”;米国特許第7,186,401号、“Dry powder for inhalation”;米国特許第7,143,764号、“Inhalation device”;米国特許第7,022,311号“Powdery inhalational preparations and process for producing the same”;米国特許第6,962,151号、“Inhalation nebulizer”;米国特許第6,907,880号、“Inhalation device”;米国特許第6,881,398号、“Therapeutic dry powder preparation”;米国特許第6,698,425号、“Powder inhaler”;米国特許第6,655,380号、“Inhalation device”;米国特許第6,645,466号、“Dry powder for inhalation”;米国特許第6,632,456号、“Compositions for inhalation”;米国特許第6,610,272号、“Medicinal aerosol formulation”;米国特許第6,596,261号、“Method of administering a medicinal aerosol formulation”;米国特許第6,585,957号、“Medicinal aerosol formulation”;米国特許第6,582,729号、“Powered pharmaceutical formulations having improved dispersibility”;米国特許第6,572,893号、“Systems and processes for spray drying hydrophobic drugs with hydrophilic excipients”;米国特許第6,551,578号、“Modulated release particles for aerosol delivery”;米国特許第6,520,179号、“Inhalation device”;米国特許第6,518,239号、“Dry powder compositions having improved dispersivity”;米国特許第6,503,481号、“Compositions for aerosolization and inhalation”;米国特許第6,358,530号、“Powdered pharmaceutical formulations having improved dispersibility”;米国特許第6,325,061号、“Inhalation device”;米国特許第6,257,232号、“Inhalation device”;米国特許第6,187,344号、“Powdered pharmaceutical formulations having improved dispersibility”;米国特許第6,116,237号、“Methods of dry powder inhalation”;米国特許第5,934,272号、“Device and method of creating aerosolized mist of respiratory drug”;及び米国特許第5,558,085号、“Intrapulmonary delivery of peptide drugs”の1つ以上に記載のデバイス、製剤、組成物及び手段において使用されてもよい
【0137】
組成物は、吸入による肺への局所送達のための乾燥粉末組成物であってもよい。組成物は、本発明のペプチドの吸入のための混合粉体、及び好適な粉末ベース、希釈剤又は担体物質、例えば、ラクトース、グルコース、デキストラン、マンニトール又は別の糖若しくはデンプンを含有してもよい。組成物は、リザーバー乾燥粉末吸入器、複数回投与乾燥粉末吸入器、又は定量噴霧式吸入器などの種々の乾燥粉末装置のいずれかにおいて使用されてもよい。組成物は、アルコール、界面活性剤、潤滑剤、抗酸化剤又は安定化剤などのさらなる賦形剤を含んでもよい。好適な噴霧剤は、炭化水素、クロロフルオロカーボン及びヒドロフルオロアルカン噴霧剤、又は任意のそのような噴霧剤の混合物を含む。
【0138】
さらに、吸入溶液は、加圧式定量噴霧式吸入器などを用いて、エアロゾル送達のための液化噴霧剤で製剤化され得る。さらなる別の製剤において、溶液は、単回投与又は複数回投与装置のいずれかとして、好適なpH又は浸透圧調節の存在下又は不在下での、噴霧される水性懸濁液又は溶液の形態であってもよい。
【0139】
4.3 経鼻送達
担体が固体である、経鼻投与に適した製剤又は組成物は、嗅ぎ薬が投与される様式で(すなわち、鼻まで閉じたままの粉末の容器からの鼻道を通じた迅速な吸入により)投与される、例えば20~500ミクロンの範囲内の粒径を有する粗粉末を含む。好適な粉末組成物は、例として、気管支内投与が許容されるラクトース又は他の不活性粉末と徹底的に混合された活性成分の粉末製剤が挙げられる。粉末組成物は、エアロゾルディスペンサーを介して投与され得るか、又はカプセルを穿刺し、吸入に適した定常流で粉末を吹き飛ばす装置に患者によって挿入されてもよい、壊れやすいカプセルで包まれ得る。或いは、好適な製剤は、活性成分の水性又は油性溶液を含んでもよい、例えば鼻スプレー又は点鼻のような液体担体を含んでもよい。
【0140】
4.4 頬側及び粘膜送達
医薬組成物は、例えば、水、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水又はリン酸緩衝食塩水)、エタノール、鉱油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、グリシンなどのポリペプチド若しくはアミノ酸、抗酸化剤、EDTA若しくはグルタチオンなどのキレート剤及び/又は保存剤の1つ以上をさらに含んでもよい。さらに、1つ以上の他の活性成分は、本明細書に提供される医薬組成物中に含まれてもよい(がそうである必要はない)。
【0141】
4.5 経口送達
一態様において、MC1rアゴニストを含む本発明のペプチドは、炎症性腸疾患、大腸炎又は胃腸管の他のメラノコルチン受容体媒介性若しくは応答性の疾患、徴候、病態及び症候群の治療のため、経口的に投与され、特定の態様において患者の結腸を含む、腸管の全部又は一部の内腔に実質的に無傷に送達される。限定はされないが、pH依存性放出ポリマーを含む、本発明のペプチドを含む遅延放出ポリマー製剤が、使用されてもよい。国際出願PCT/US2019/023575号の国際出願番号として出願され、“Melanocortin Receptor-Specific Formulations and Methods for Gastrointestinal Tract-Specific Delivery”という表題の国際公開番号が国際公開第2019/183472号の教示及び開示は、完全に記載されるが如く、参照により本明細書中に援用される。
【0142】
全身投与では、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の1つ以上のペプチドを含む組成物は、錠剤又はカプセル剤などの個別の剤形で経口的に投与されてもよい。1つの好ましい態様において、個別の剤形は、腸溶コーティング、及び任意選択的には、取り込みを増加させる、プロテアーゼ分解を低減する、細胞透過性を増加させるなどを意図した1つ以上の薬剤を含む。限定はされないが、リポソーム組成物、粘膜付着性又は胃内滞留性送達システム、吸収促進剤、多機能性薬物送達システム、透過促進剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤の同時投与、様々な化学又は生物学的補助剤との共有結合コンジュゲーション(例えば細胞透過能力を増強するため)、腸溶コーティング、様々なナノ粒子などを含む、種々の送達技術のいずれかが、本発明のペプチドの経口送達において使用されてもよい。
【0143】
5.0 作製する方法
一般に、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドは、固相合成を含む、当該技術分野で公知の任意の手段によって合成されてもよく、当該技術分野で公知の方法に従って精製されてもよい。種々の樹脂及び試薬を使用する、いくつかの周知の方法のいずれかは、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドを調製するため、使用されてもよい。
【0144】
固相ペプチド合成法は、当該技術分野で周知であり、実施される。そのような方法において、本発明のペプチドの合成は、固相法の一般的原理に従い、所望されるアミノ酸残基を一度に一つずつ成長するペプチド鎖に順次組み込むことによって実施され得る。
【0145】
ペプチドの化学合成において、様々なアミノ酸残基の反応性側鎖基は、保護基が除去されるまでその部位で化学反応が生じることを阻止する、好適な保護基で保護される。さらに、アミノ酸残基又は断片のアルファアミノ基の保護は一般的である一方で、その実体はカルボキシル基で反応し、続いてアルファアミノ保護基の選択的除去がなされ、後続する反応がその部位で生じることを可能にする。特定の保護基は、開示されており、固相合成法及び液相合成法において公知である。
【0146】
アルファアミノ基は、ウレタン型保護基、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)及び置換ベンジルオキシカルボニル、例えば、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、p-ビフェニル-イソプロポキシカルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)及びp-メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)及び脂肪族ウレタン型保護基、例えば、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、及びアリルオキシカルボニル(Alloc)を含む、好適な保護基によって保護されてもよい。Fmocは、特にアルファアミノ保護に適する。
【0147】
グアニジノ基は、ニトロ、p-トルエンスルホニル(Tos)、Z、ペンタメチルクロマンスルホニル(Pmc)、アダマンチルオキシカルボニル、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)及びBocなどの好適な保護基によって保護されてもよい。Pbf及びPmcは、Argにとって好ましい保護基である。アミン及びカルボン酸基を含む、他の反応性基は、例えば、Gluに対する1-tert-ブチルエステル(OtBu)、Trpに対するBoc、Hisに対するトリチル(Trt)などのように、同様に保護されてもよい。
【0148】
本明細書に記載の本発明のペプチドの直鎖状ペプチド前駆体は、自動ペプチドシンセサイザーによる固相合成を用いて、製造業者によって提供されたとおりのプログラミングモジュールを用いて、そして製造業者の使用説明書に記載されるプロトコルに従って調製された。
【0149】
側鎖アミン基から直鎖状ペプチドのC末端カルボキシル基に至るリンカーは、水素以外の側鎖を有しない直鎖アルキルアミノ酸である。したがって、リンカーは、グリシン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノカプリル酸などであってもよい。
【0150】
固相合成を利用する一態様において、合成は、ペプチドのC末端から開始され、直鎖アルキルアミノ酸が好適な樹脂にカップリングされ、それにより出発樹脂が形成され、次に保護されたアルファアミノ酸が直鎖アルキルアミノ酸にカップリングされる。例えば、前負荷されたトリチル基が利用されてもよく、それに、
Fmoc-8-アミノカプリル酸(ChemImpex、カタログ番号04945)
Fmoc-7-アミノヘプタン酸(ChemImpex、カタログ番号07157)
Fmoc-6-アミノヘキサン酸(ChemImpext、カタログ番号02490)
Fmoc-5-アミノ吉草酸(ChemImpex、カタログ番号04797)
Fmoc-γ-アミノ酪酸(ChemImpex、カタログ番号02692)
Fmoc-β-アラニン(ChemImpex、カタログ番号02374)
Fmoc-グリシン(ChemImpex、カタログ番号02416)
などのFmocで保護された直鎖アルキルアミノ酸が結合される。しかしながら、ペプチド酸の生成のため、メリフィールド樹脂、ワング樹脂、ブロモベンジル樹脂、2-クロロ-トリチル樹脂又は他の樹脂など、他の樹脂が使用されてもよい。一般に、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、アミノ酸間のペプチド結合の形成のための既知の従来の方法によって容易に合成されてもよい。そのような従来の方法として、例えば、保護されたカルボキシル基及び他の反応性基を有するアミノ酸残基の遊離アルファアミノ基と保護されたアミノ基又は他の反応性基を有する別のアミノ酸残基の遊離一級カルボキシル基との縮合を可能にする任意の液相方法が挙げられる。本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドを調製するため、種々の樹脂及び試薬を使用するいくつかの周知の方法のいずれかが使用されてもよい。
【0151】
本発明のペプチド番号16では、合成が、Fmoc-5-アミノ吉草酸(Fmoc-5-Ava-OH、ChemImpex、カタログ番号04797、1.4g、4.0ミリモル)とともに、手作業で前負荷した2-クロロトリチル塩化物樹脂(ChemImpex、カタログ番号03498、0.9g、1.0ミリモル)で開始された。得られたFmoc-5-Ava-2Clトリチル樹脂(約1.0ミリモル)がペプチドシンセサイザーに負荷された。次に、Fmocで保護されたアミノ酸Trp(Boc)、Arg(Pbf)、D-Phe(4-F)、His(Trt)、Dab(Boc)、及びNleが個別に順にカップリングされた。
【0152】
Fmoc-NleからのFmoc脱保護後、得られたN末端アミン基は、好適な期間にわたるDMF中の無水酢酸及びピリジンの使用などによってアシル化され、ペプチド樹脂:
Ac-Nle-Dab(Boc)-His(Trt)-D-Phe(4-F)-Arg(Pbf)-Trp(Boc)-NH(CHCOO-樹脂
が得られた。
【0153】
ペプチド樹脂は、20分間にわたって、TFA/TIS/HO(95:2.5:2.5、v/v/v)を含む30mLの切断溶液と混合され、さらに直交保護基が切断された。次に、20分間にわたって、別の新規に調製された30mLの切断溶液との混合が反復された。組み合わせた濾液が、室温で2時間にわたって貯蔵され、パージングNストリームの使用によって濃縮された。切断された直鎖状ペプチドを冷エーテルから沈殿させた。固体/油残渣が50%のt-ブタノール/水に溶解され、凍結乾燥され、粗直鎖状ペプチド(約1.0ミリモル):
Ac-Nle-Dab-His-D-Phe(4-F)-Arg-Trp-NH-(CH-COOH
が得られた。
【0154】
粗直鎖状ペプチド(約1.0ミリモル)は、7.5mLのDMFと7.5mLのDCMの混合物に溶解され、氷冷水槽内で冷却された。冷却溶液に、EDC(0.288g、1.5ミリモル)及びHOAt(0.45mLのDMF中0.6Mの溶液、0.75ミリモル)、続いてトリエチルアミン(TEA)(0.4mL、3.0ミリモル)が、pH8~9になるまで加えられた。反応混合物が、室温まで、そして室温で一晩にわたって温めながら、撹拌された。LC/MS分析は、環化の完了を示した。5mLの1N HClが反応混合物に加えられ、pH3~4に調節され、1時間にわたって撹拌された。反応混合物は、0.45μのシリンジフィルターを通して濾過され、分取HPLCに直接的に負荷された。純粋な画分がプールされ、凍結乾燥され、73mgの環状ペプチドが得られた(収率6%):
【化9】
【0155】
本発明の他のペプチドは、同様の手段によって作製されてもよい。
【0156】
一般に、各脱保護ステップは、例えば、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの使用、それに続くDMF又はメチルtert-ブチルエーテル(MBTE)などでの洗浄サイクルとともに、必要に応じた反復サイクルを含んでもよい。
【0157】
各カップリングステップは、例えば、FMOC-AA-OHなどの所望される保護アミノ酸と、特に、ジクロロメタン(DCM)、HOBT、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、DMF、又は2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸(HBTU)を含むカップリング試薬との使用を含んでもよい。カップリング後、DMF又はMBTEなどでの洗浄サイクルが用いられてもよい。
【0158】
合成ペプチドが溶液中の樹脂にカップリングされる一方で、例えばアセチル化によって、N末端が修飾されてもよい。一態様において、N末端の保護基の除去後、樹脂結合ペプチドが、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基の存在下で、ジクロロメタン中の無水酢酸と反応されるような方法が用いられる。液相アセチル化を含む、N末端アセチル化の他の方法は、当該技術分野で公知であり、用いられてもよい。
【0159】
得られる樹脂結合ペプチドは、樹脂結合ペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリイソプロピルシラン(TIS)及び水の、例えばTFA/TIS/HO(95:2.5:2.5、v/v/v)の混合物と、好適な温度、例えば室温で好適な期間、例えば20分間混合するなど、当該技術分野で公知の任意の手段によって、樹脂から切断されてもよい。所望のとおり、樹脂結合ペプチドをTFA/TIS/HOの混合物と混合する1つ以上のさらなるサイクルは、濾過後に実施されてもよい。組み合わせた濾液は、例えば室温で2時間にわたって貯蔵されてもよく、次にNストリームでパージすることによって濃縮されてもよい。次に、切断された直鎖状ペプチドを冷却エーテルから沈殿させ、次に得られた残渣を50%のt-ブタノール/水に溶解させ、凍結乾燥させることで、直鎖状ペプチドを得てもよい。
【0160】
次に、得られる粗直鎖状ペプチドは、アミド結合縮合を介した環化のための通常の反応手段によって、溶液中で環化されてもよい。直鎖状ペプチドは、最初に、DMF、テトラヒドロフラン(THF)、DCM又は1-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの好適な溶媒に溶解される。好適な環状カップリング試薬として、例えば、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、HBTU、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TATU)、2-(2-オキソ-1(2H)-ピリジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TPTU)又はN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド/1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCCI/HOBt)が挙げられる。カップリングは、通常、DIPEA、sym-コリジン又はN-メチルモルホリン(NMM)などの好適な塩基の使用によって開始される。
【0161】
溶液環化後、得られる混合物は、公知の手段によって濃縮されてもよく、次に、例えばメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を使用する研和によって、部分的に精製されてもよい。次に、得られる画分は、プールされ、凍結乾燥されてもよい。
【0162】
典型的には、直交保護基は、必要に応じて使用されてもよい。例えば、本発明のペプチドは、アミノ基含有側鎖を有する複数のアミノ酸を有する。特定のアミノ酸のアリル-アロック保護スキーム、及びアミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸に使用される、異なる反応条件下で切断可能な直交保護基を含む、種々の保護基のいずれかが使用されてもよい。したがって、例えば、アミン基含有側鎖を有するアミノ酸は、例えば、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Lys(Pbf)-OH、Fmoc-Dab(Pbf)-OHの場合に、異なる直交保護基を有してもよい。他の保護基が同様に使用されてもよく;例えば限定はされないが、Mtt(4-メチルトリチル)又はMtt/OPp(4-メチルトリチル/2-フェニルイソプロピル)が、Hisの側鎖に使用され得、直交保護基が、Mtt又はMtt/OPpの切断に適した条件を用いて、切断可能でない他の位置に使用され得る。
【0163】
ペプチド中の反応性基は、固相合成の間又は樹脂からの除去後のいずれかに、選択的に修飾され得る。例えば、ペプチドは、樹脂上にありながら、アセチル化などのN末端修飾を得るように修飾され得る、又は切断試薬の使用によって樹脂から除去され、次に修飾されてもよい。同様に、アミノ酸の側鎖を修飾するための方法は、ペプチド合成についての当業者に周知である。ペプチド上に存在する反応性基を修飾するという選択は、一部には、ペプチドにおける所望される特徴によって決定されることになる。
【0164】
合成が主に固相Fmoc化学に関連して記載されているが、本発明の環状ペプチドを作製するため、例えば限定はされないが、Boc化学、溶液化学を用いる方法、並びに他の化学及び合成方法などの他の化学及び合成方法が用いられてもよいことは理解されるべきである。
【0165】
6.0 製剤
本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の1つ以上の環状ペプチドを含む組成物の製剤は、所望される投与経路に応じて改変されてもよい。したがって、製剤は、皮下注射、遅延放出性の皮下注射、静脈内注射、鼻スプレー適用、吸入適用、経口投与、限定はされないが、胃腸疾患の治療のための経口放出など、頬側又は他の粘膜適用、他の経皮適用などに好適であってもよい。一般に、製剤は、本発明のペプチドの任意の投与形態に使用されてもよい。
【0166】
6.1 環状ペプチドの塩形態
本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、任意の薬学的に許容される塩の形態であってもよい。「薬学的に許容される塩」という用語は、無機又は有機の塩基及び無機又は有機の酸を含む、薬学的に許容される非毒性塩基又は酸から調製された塩を指す。無機塩基に由来する塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを含む。アンモニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩が特に好ましい。薬学的に許容される有機非毒性塩基に由来する塩は、一級、二級、及び三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩を含む。
【0167】
本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドが、塩基性である場合、酸付加塩が、無機酸及び有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性酸から調製されてもよい。そのような酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、TFAなどを含む。本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドの酸付加塩は、ペプチド及び過剰な酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、TFA、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸又はメタンスルホン酸からの好適な溶媒中で調製される。
【0168】
酢酸塩、アンモニウム酢酸塩及びTFA塩形態は、特に有用である。本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドが酸性部分を含む場合、好適な薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩若しくはカリウム塩などのアルカリ金属塩、又はカルシウム塩若しくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩を含んでもよい。式(I)~(V)の特定のペプチドが、遊離ペプチドの溶媒和物又は該化合物の塩の溶媒和物を含む溶媒和形態、及び非溶媒和形態で存在し得ることも理解されるべきである。「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物及び1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えばエタノールを含む分子複合体を記述するため、本明細書で用いられる。「水和物」という用語は、前記溶媒が水である場合に使用される。異なる多形体の混合物を含む全ての多形体が特許請求されるペプチドの範囲内に含まれることは理解されるべきである。
【0169】
6.2 医薬組成物
本発明は、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチド、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。担体は、液体製剤であってもよく、好ましくは、緩衝液、等張液、水溶液である。薬学的に許容される担体は、後述されるとおり、希釈剤、担体などの賦形剤、及び安定化剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤などの添加剤も含む。
【0170】
本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチド組成物は、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の少なくとも1つの環状ペプチドを、所望されるかもしれないが、希釈剤、担体などの賦形剤、及び安定化剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤などの添加剤を含む1つ以上の薬学的に許容される担体とともに含む医薬組成物に、製剤化又は配合されてもよい。製剤用賦形剤は、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含んでもよい。注射又は他の液体投与製剤では、少なくとも1つ以上の緩衝成分を含有する水が好ましく、さらに、安定化剤、保存剤及び可溶化剤が使用されてもよい。固体投与製剤では、デンプン、糖、セルロース誘導体、脂肪酸などの、種々の増粘剤、充填剤、増量剤及び添加担体のいずれかが使用されてもよい。局所投与製剤では、種々のクリーム、軟膏、ゲル、ローションなどのいずれかが使用されてもよい。大部分の医薬製剤では、非活性成分が、製剤の、重量又は体積を基準としてより大きな部分を構成することになる。医薬製剤では、種々の計量放出(measured-release)、遅延放出又は徐放製剤のいずれか及び添加剤が使用されてもよいことで、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドの長期にわたる送達をもたらすような投与量で製剤化されてもよいことも考慮される。
【0171】
一般に、患者に投与される、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドの実際量は、投与様式、使用される製剤、及び所望される応答に応じて、かなり広範囲にわたって変化することになる。
【0172】
実用上、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、通常の医薬配合技術に従い、薬学的担体との混合物中の活性成分として組み合わされ得る。担体は、経口、非経口(静脈内を含む)、尿道、膣、経鼻、頬側、舌下などの投与に望ましい製剤の形態に応じて、多種多様な形態をとってもよい。経口剤形用の組成物の調製において、例えば、懸濁液、エリキシル及び溶液などの経口液体製剤の場合、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などの通常の医薬培地;又は例えば、散剤、ハード・ソフトカプセル及び錠剤などの経口固体製剤の場合、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体のいずれかが使用されてもよい。
【0173】
錠剤及びカプセル剤は、それらの投与の容易性が理由で、有利な経口投与量単位形態を表す。必要に応じて、錠剤は、標準の水性又は非水性技術によってコーティングされてもよい。そのような治療的に有用な組成物中の活性ペプチドの量のため、有効な投与量が得られることになる。別の有利な投与量単位形態において、シート、ウエハー、錠剤などの舌下構築物が使用されてもよい。
【0174】
錠剤、丸剤、カプセル剤などは、ポビドン、ガムトラガント、アカシア、コーンスターチ又はゼラチンなどの結合剤;希釈剤;微結晶セルロースなどの充填剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン又はアルギン酸などの崩壊剤;保存剤;着色剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びスクロース、ラクトース又はサッカリンなどの甘味剤をさらに含有してもよい。投与量単位形態がカプセルである場合、それは、上記タイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有してもよい。コーティング剤として、又は投与量単位の物理的形態を修飾するため、様々な他の材料が使用されてもよい。例えば、錠剤は、セラック、糖又は双方でコーティングされてもよい。シロップ又はエリキシルは、活性成分に加えて、甘味剤としてスクロース、保存剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素並びにサクランボ又はオレンジ香料などの香味剤を含有してもよい。
【0175】
経口送達用に製剤化される場合、ペプチドは、それが腸管保護剤中に包まれるように、より好ましくは、錠剤又はカプセル剤が胃を通過する、任意選択的には小腸の一部をさらに通過するまでそれが放出されないように、製剤化及び作製されてもよい。本願との関連において、腸溶コーティング剤又は材料という用語が、本質的に無傷な状態で胃を通過することになるが、胃を通過後に崩壊し、活性原体を放出することになるコーティング剤又は材料を指すことは理解されるであろう。使用されてもよい材料は、酢酸フタル酸セルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチル-エチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ポリ酢酸ビニル、及びメタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体を含む。使用される腸溶コーティング剤は、主に胃の外側部位で剤形の溶解を促進し、そして腸溶コーティング剤がおよそ少なくとも5.5のpH、より好ましくは約6.0~約8.0のpHで溶解するように選択されてもよい。
【0176】
腸溶コーティング剤の溶解時、腸の取り込みを増加させるため、種々の透過促進剤のいずれかが使用されてもよい。一態様において、透過促進剤は、傍細胞又は細胞通過輸送系のいずれかを増強する。そのような透過促進剤の代表的な非限定例としては、カルシウムキレート剤、胆汁酸塩(コール酸ナトリウムなど)、及び脂肪酸が挙げられる。いくつかの実施形態において、腸管プロテアーゼの基質として作用するペプチド又はポリペプチドが、さらに加えられる。
【0177】
環状ペプチドはまた、非経口的に投与されてもよい。これらの活性ペプチドの溶液又は懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水で調製され得る。さらに、分散液は、油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物で調製され得る。これらの製剤は、任意選択的には、微生物の成長を阻止するための保存剤を含有してもよい。
【0178】
注射使用に適した医薬剤形は、滅菌注射用液又は分散液の即時調製のための滅菌水溶液又は分散液及び滅菌粉末を含む。あらゆる場合に、該剤形は、滅菌されなければならず、注射器によって投与されてもよい程度まで液体でなければならない。該剤形は、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール又は液体ポリエチレングリコール、それらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0179】
本明細書で開示される環状ペプチドは、経鼻投与を用いて、治療的に適用されてもよい。ペプチドは、生理食塩水、クエン酸塩又は他の一般的な賦形剤若しくは保存剤を含む溶液などの水溶液、並びに吸収又は透過促進剤、細胞透過促進剤、粘膜付着性ポリマー、及び様々な担体系の中に存在してもよい。ペプチドはまた、乾燥又は粉末製剤中に存在してもよい。本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、ペプチド薬剤を含む薬剤の有効な経鼻吸収を増強する種々の薬剤のいずれかとともに製剤化されてもよい。これらの薬剤は、粘膜に対する許容できない損傷を伴わずに、経鼻吸収を増強してもよい。特に、米国特許第5,693,608号、米国特許第5,977,070号及び米国特許第5,908,825号は、吸収促進剤を含む、使用されてもよいいくつかの医薬組成物を教示し、前記のそれぞれの教示、並びにそれらの中で引用された全ての参考文献及び特許は、参照により援用される。
【0180】
環状ペプチドは、水溶液中に存在する場合、任意の生理学的に許容されるpH、一般に約pH4~約pH7であってもよい、生理食塩水、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩又は他の緩衝剤を用いて、適切に緩衝化されてもよい。さらに、リン酸緩衝食塩水、生理食塩水及び酢酸緩衝液などの緩衝剤の組み合わせが使用されてもよい。生理食塩水の場合、0.9%の生理食塩水が使用されてもよい。酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩などの場合、50mMの溶液が使用されてもよい。細菌及び他の微生物の成長を阻止又は制限するため、緩衝剤に加えて、好適な保存剤が使用されてもよい。使用されてもよい1つのそのような保存剤は、0.05%の塩化ベンザルコニウムである。
【0181】
代替的な実施形態において、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、肺に直接的に投与されてもよい。肺内投与は、吸気中の患者によって駆動されるとき、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドの定量ボーラスの自己投与を可能にする装置の定量噴霧式吸入器を用いて実施されてもよい。この実施形態の一態様において、環状ペプチドは、乾燥された微粒子形態、例えば、粒子が肺表面上に吐出されずに定着するのに十分な質量を有するが、肺に達する前に気道の表面上に堆積しないほどに十分に小さいような約0.5~6.0μmの間の粒子で存在してもよい。乾燥粉末微粒子を作製するため、限定はされないが、マイクロミリング、噴霧乾燥及び急速凍結エアロゾル後の凍結乾燥を含む、種々の異なる技術のいずれかが使用されてもよい。微粒子の場合、ペプチドは、深部肺まで堆積され、それにより血流への急速且つ効率的な吸収をもたらすことがある。さらに、そのような手法の場合、透過増強剤は、時として経皮、経鼻又は口腔粘膜送達経路内などの場合には、必要とされない。噴霧剤ベースのエアロゾル、噴霧器、単回投与乾燥粉末吸入器及び複数回投与乾燥粉末吸入器を含む、種々の吸入器のいずれかが使用され得る。現在使用されている一般的な装置は、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの治療のための薬物を送達するために使用される、定量噴霧式吸入器を含む。好ましい装置は、常に約6.0μm未満の粒径を有する微粉の雲又はエアロゾルを形成するように設計された乾燥粉末吸入器を含む。
【0182】
平均サイズ分布を含む微粒子サイズは、作製方法を用いて制御されてもよい。マイクロミリングでは、ミリングヘッドのサイズ、ローターの速度、加工時間などが、微粒子サイズを制御する。噴霧乾燥では、ノズルサイズ、流速、ドライヤー熱などが、微粒子サイズを制御する。急速凍結エアロゾル後の凍結乾燥を用いる作製では、ノズルサイズ、流速、エアロゾル化溶液(aerosoled solution)の濃度などが、微粒子サイズを制御する。微粒子サイズを制御するため、これらのパラメータ及びその他が使用されてもよい。
【0183】
本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、徐放性製剤の注射を用いて、治療的に投与されてもよい。一実施形態において、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、ポリエチレングリコール3350などのポリエチレングリコール、及び任意選択的には、限定はされないが、塩、ポリソルベート80、水酸化ナトリウム又はpHを調節するための塩酸などの賦形剤を含む1つ以上のさらなる賦形剤及び保存剤を有する製剤の、例えば臀部筋又は三角筋における深部筋肉内注射のため、製剤化される。別の実施形態において、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、高分子骨格中の乳酸を変動百分率のいずれかで有する自己触媒ポリ(オルトエステル)であってもよいポリ(オルトエステル)、及び任意選択的には1つ以上のさらなる賦形剤を用いて製剤化される。一実施形態において、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーが使用される。一般に、一態様において、好ましくは接着性ポリマーでもある、いくつかの注射可能な生分解性ポリマーのいずれかは、徐放性注射用製剤中で使用されてもよい。或いは、皮下注射を可能にする製剤を含む、他の徐放性製剤が使用されてもよく、他の製剤は、ナノ/マイクロスフェア(PLGAポリマーを含む組成物など)、リポソーム、乳剤(油中水エマルジョンなど)、ゲル剤、不溶性塩又は油中懸濁液の1つ以上を含んでもよい。注射が、環状ペプチドの濃度及び量、使用される材料の徐放速度、及び当業者に公知の他の要素に応じて、毎日、毎週、毎月又は他の周期ベースで必要とされるように、製剤化されてもよい。
【0184】
6.3 投与の経路
本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の1つ以上のペプチドを含む組成物が注射によって投与される場合、注射は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内又は当該技術分野で公知の他の手段であってもよい。本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチドは、限定はされないが、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、懸濁剤、散剤、凍結乾燥製剤、坐剤、眼用ドロップ(ocular drops)、皮膚パッチ、経口可溶性製剤、噴霧剤、エアロゾルなどの製剤を含む、当該技術分野で公知の任意の手段によって製剤化されてもよく、緩衝液、結合剤、賦形剤、安定剤、抗酸化剤及び当該技術分野で公知の他の薬剤と混合され、それらとともに製剤化されてもよい。一般に、本発明のペプチドが細胞の表皮層を通じて導入される場合の任意の投与経路が使用されてもよい。それ故、投与手段は、粘膜、頬側投与、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与、経尿道投与、腟内投与などを介した投与を含んでもよい。
【0185】
6.4 治療有効量
一般に、患者に投与される、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドの実際量は、投与様式、使用される製剤、及び所望される応答に応じて、かなり広範囲にわたって変化することになる。治療の投与量は、前述の手段又は当該技術分野で公知の任意の他の手段のいずれかによって、所望される治療効果をもたらすのに十分な量で投与される。本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、一般に高度に活性である。例えば、環状ペプチドは、選択される特定のペプチド、所望される治療反応、投与経路、製剤化及び当業者に公知の他の要素に応じて、約0.001、約0.01、約0.1、約0.5、又は約1μg/kg体重で投与され得る。
【0186】
7.0 ペプチドの評価において利用される試験及びアッセイ
本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のメラノコルチン受容体に特異的なペプチドは、結合性、機能的状態及び有効性を判定するための種々のアッセイ系及び動物モデルによって試験されてもよい。
【0187】
7.1 CEREPで実施されるアゴニスト活性についてのアッセイ
メラノコルチン受容体での化合物のアゴニスト活性の評価については、cAMP生成に対するそれらの効果を、CEREP(Eurofins CEREP SA,Celle-Levescault,France)でのHTRF検出方法を用いて測定することによって判定された。細胞は、20mMのヘペス(pH7.4)及び500μMのIBMXが添加されたHBSS緩衝液(Invitrogen)に懸濁させ、次にマイクロプレート内に分布させ、HBSS(基礎対照)、試験化合物又は参照アゴニストの存在下でインキュベートされた。インキュベーション時間、温度、細胞数、参照アゴニスト及び細胞株情報は、下の表1に含まれる。刺激対照の測定では、別々のアッセイウェルは、参照化合物を含有する。インキュベーション後、細胞は溶解させ、蛍光アクセプター(D2標識cAMP)及び蛍光ドナー(ユーロピウムクリプテートで標識された抗cAMP抗体)が加えられた。室温で60分後、マイクロプレートリーダー(Envision,Perkin Elmer)を使用し、励起波長337nmと発光波長620及び665nmで、蛍光導入が測定された。cAMP濃度は、665nmで測定されたシグナルを620nmで測定されたシグナルで除すること(比)によって決定された。
【0188】
結果は、1μMの参照に対する制御応答のパーセントとして表される。標準の参照アゴニストは、各実験において、いくつかの濃度で試験され、そのEC50値が計算される元の濃度-応答曲線が作成される。
【0189】
【表6】
【0190】
7.2 CEREPで実施されたアンタゴニスト活性についてのアッセイ
このアッセイを利用し、HTRF検出方法を用いてcAMP生成に対する効果を測定することによって判定された、メラノコルチン受容体での化合物のアンタゴニスト活性が評価された。
【0191】
メラノコルチン受容体を有する所望される細胞が、20mMのヘペス(pH7.4)及び500μMのIBMXが添加されたHBSS緩衝液(Invitrogen)に懸濁され、次にHBSS(基礎対照)、試験化合物又は参照アンタゴニストの存在下でマイクロプレートに分布される。その後、ある濃度のアゴニストが加えられ、cAMP生成が刺激される。基礎対照の測定では、別々のアッセイウェルは、参照アゴニストを含有しない。インキュベーション時間、温度、細胞数、参照アゴニスト及び細胞株の情報は、下の表2に含まれる。
【0192】
インキュベーション後、細胞は溶解され、蛍光アクセプター(D2標識cAMP)及び蛍光ドナー(ユーロピウムクリプテートで標識された抗cAMP抗体)が加えられる。室温で60分後、マイクロプレートリーダー(Envision,Perkin Elmer)を使用し、励起波長337nmと発光波長620及び665nmで、蛍光導入が測定される。cAMP濃度は、665nmで測定されたシグナルを620nmで測定されたシグナルで除すること(比)によって決定される。結果は、参照アゴニストに対する対照応答のパーセント阻害として表される。標準の参照アンタゴニストは、各実験において、いくつかの濃度で試験され、そのIC50値が計算される元の濃度-応答曲線が作成される。
【0193】
【表7】
【0194】
7.3 アゴニスト活性についての代替的なアッセイ
細胞内cAMPの蓄積が、組換えMC3r又はMC4r又はB16-F10を発現するHEK-293細胞(マウス)及び天然MC1rを発現するHBL(ヒト)細胞株のいずれかにおいて、機能的応答を誘発するペプチドの能力の尺度として試験された。コンフルエント細胞が、酵素を含まない細胞解離緩衝液中でのインキュベーションによって、培養プレートから剥離された。分散された細胞が、10mMのヘペス(pH7.5)、1mMのMgCl、1mMのグルタミン、0.5%アルブミン及び0.3mMの3-イソブチル-1-メチル-キサンチン(IBMX)のホスホジエステラーゼ阻害剤を含有するハンクス平衡塩類溶液に懸濁された。細胞は、0.5×10個の細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに分配され、10分間プレインキュベートされた。細胞は、37℃で15分間、200μLの全アッセイ体積中、0.05~5000nMの濃度範囲でDMSO(1%の最終DMSO濃度)に溶解されたペプチドに曝露された。NDP-α-MSHが、参照アゴニストとして使用された。cAMPレベルは、クリプテート標識抗cAMP及びD2標識cAMPを使用し、プレートをPerkin-Elmer Victorプレートリーダーで665及び620nMで読み取る、Cisbio Bioassays製のHTRF(登録商標)cAMP細胞ベースアッセイ系によって決定された。データ分析は、Graph-Pad Prism(登録商標)ソフトウェアによる非線形回帰分析によって実施された。試験ペプチドの最大有効性は、参照メラノコルチンアゴニストNDP-α-MSHによって達成された場合と比較された。
【0195】
7.4 高密度及び低密度hMC4r機能アッセイ
ヒトMC4r(米国、Palatin Technologies製、University of Michiganから認可を得た)がトランスフェクトされたHEK293細胞株が使用された。T-REx(商標)System,Invitrogenを使用することによって、ヒトMC4rがHEK293に導入された。T-REx(商標)Systemでは、大腸菌(E.Coli)Tn10でコードされたテトラサイクリン(Tet)耐性オペロンからの調節エレメントを用いる、テトラサイクリン調節性哺乳動物発現系が使用される。T-REx(商標)Systemの使用によって、目的の遺伝子であるヒトMC4r遺伝子の発現は、テトラサイクリン又はドキシサイクリンの不在下で抑制され、テトラサイクリン又はドキシサイクリンの存在下で誘導される(Invitrogenによって公表されたT-REx(商標)System Manualを参照されたい)。
【0196】
HEK293-T-REx-MC4r細胞が、37℃、5%CO及び95%湿度下で、L-グルタミン(Gibco 25030)、10%ウシ胎仔血清(FBS)、200μg/mLのゼオシン(Invitrogen 46-0072)及び6mg/mLのブラストサイジン(Invitrogen 46-1120)が添加されたDMEM(Gibco 11965)中で培養された。75%コンフルエンスでの細胞のT-150フラスコが、37℃、5%CO下で16~18時間にわたって、2つの濃度のドキシサイクリン(低密度hMC4r系を提供するための0.1ng/mL及び高密度hMC4r系を提供するための10ng/mL)とともにインキュベートされ、MC4rの発現が誘導された。アッセイ当日、細胞は、PBS(Gibco 14190)で洗浄され、細胞解離緩衝液(Gibco 13150-016)を使用して収集され、次に遠心分離され、ハンクス平衡塩類溶液(+Ca、+Mg)(Gibco 14025)、10mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(ヘペス)(pH7.4)(Sigma H0887)、1mMのL-グルタミン(Gibco 25030)、1mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma A3311)及び0.3mMの3-イソブチル-1-メチル-キサンチン(IBMX)に再懸濁された。
【0197】
次に、細胞は、96ウェルプレート(BD 353916)に198μL(約5×10個)の細胞/ウェルにおいて分配され、37℃で10分間インキュベートされた。細胞は、37℃で15分間にわたって、200μLの全アッセイ体積、10-5~10-13Mの濃度範囲で、DMSO(1%の最終DMSO濃度)中に溶解されたペプチドに曝露され、NDP-α-MSHが参照アゴニストとして使用された。反応は、15μLの溶解緩衝液/ウェルを加えることによって停止され、プレートは、室温で30分間にわたって振盪された。
【0198】
cAMPレベルは、クリプテート標識抗cAMP及びd2標識cAMPを使用し、プレートを665及び620nMでPerkin-Elmer Victorプレートリーダーで読み取る、Cisbio Bioassays製のHTRF(登録商標)cAMP細胞ベースアッセイ系によって決定された。データ分析は、Graph-Pad Prism(登録商標)ソフトウェアによる非線形回帰分析によって実施された。試験ペプチドの最大有効性が、参照メラノコルチンアゴニストNDP-α-MSHによって達成されたものと比較された。
【0199】
MC4rのアゴニスト刺激により、3’,5’-サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)のアデノシン三リン酸(ATP)からの形成を触媒する酵素である、アデニル酸シクラーゼが活性化される。したがって、MC4rのアゴニスト刺激により、cAMPのレベルが増加する。cAMPレベルは、cAMP dynamic 2HTRFキット(CisBioのカタログ番号62AM4PEC;CisBioによって公表された使用説明書を参照されたい)を用いて測定された。cAMPレベルは、プレート対照(0%について1%DMSO、100%について400nMのNDP-α-MSH)及び(CisBio HTRFキットに記載のような)712nM~0.04nMのcAMPの範囲の較正曲線に対して正規化された。プレートは、室温で1時間にわたって振盪機上でインキュベートされ、665及び620nmでPerkin-Elmer Victorプレートリーダーで読み取られた。次に、蛍光比が、CisBio HTRFキットに記載のように計算され、可変勾配用量反応曲線を用いて、蛍光パーセント値の変化対cAMP濃度をプロットするため、GraphPad Prismソフトウェアが使用され、計算されたcAMP濃度に基づき、EC50及びEmax値が決定された。
【0200】
8.0 ペプチド構造例
一態様において、環状部分内部の配列His-Phe-Arg-Trpに由来するコア配列又はその修飾を有する環状ペプチドであって、N末端側のHis(又はHisの誘導体、修飾又は置換基)に直かに接するアミノ酸の側鎖及びペプチドのC末端基を介して環化されるペプチドが提供される。環状ペプチドは、少なくとも、環状部分内部に5つのアミノ酸を有する環状ペンタペプチドであり、任意選択的には、N末端側の環状部分の外側に1つ以上のさらなるアミノ酸残基を有する、環状ヘキサペプチド、ヘプタペプチド又はより大きい環状ペプチドである。
【0201】
MC1r、MC3r又はMC54アゴニスト、又はそれらの組み合わせを同時に含んでもよいMC4rアンタゴニストでは、いくつかの態様におけるHis-Phe-Arg-Trp由来のコア配列は、D-Nal1又はD-Nal2など、Phe位置にL-Phe、Nal1又はNal2の置換ではなく、Phe位置にD-Pheを含むことになり、又は代替的に、置換D-Phe又は置換L-Pheなど、Phe位置に置換Pheを含んでもよい。種々のアミノ酸が、コア配列内の残存するアミノ酸に使用されてもよい。一般に、His位置は、置換又は非置換Proであってもよく、又は少なくとも1つの一級アミン、二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコール、エーテル、スルフィド、スルホン、スホキシド(sufoxide)、カルバモイル若しくはカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。Arg位置は、置換又は非置換Proであってもよく、又は少なくとも1つの一級アミン、二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、若しくはエーテルを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。Trp位置は、少なくとも1つの置換又は非置換のアリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよく、又は代替的には除かれてもよい。
【0202】
式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)中に包含されるペプチドは、不斉中心、不斉軸などの1つ以上の不斉配列を有することで、そのような式中に包含されるペプチドは、異なる立体異性体形態で存在し得る。式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)中に包含されるペプチドを含む、具体的に記述されるペプチド及び一般的に記述されるペプチドの双方では、鏡像異性体及びジアステレオマーを含む、全てのキラル又は他の異性体中心での異性体の全ての形態は、本明細書で包含されることが意図される。本発明のペプチドは、それぞれ、複数のキラル中心を含み、エナンチオピュアな製剤における本発明のペプチドの使用に加えて、ラセミ混合物又は鏡像異性的に濃縮された混合物として使用されてもよい。典型的には、本発明のペプチドは、鏡像異性純度が維持されるような試薬、条件及び方法を用いて、特定のL-又はD-異性体アミノ酸などのキラル的に純粋な試薬の使用によって、合成されることになるが、ラセミ混合物が作製されることは可能であり、考慮される。そのようなラセミ混合物は、任意選択的には、周知の技術を用いて分離されてもよく、個別の鏡像異性体が単独で使用されてもよい。ペプチドが互変異性形態で存在するような温度、溶媒及びpHの場合及びそれらの特定の条件下で、各互変異性形態は、平衡状態で又は支配的に1つの形態で存在することとは無関係に、本発明中に含まれるものとして考えられる。それ故、光学活性形態である、式(I)~(V)のペプチドの単一の鏡像異性体は、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、又はラセミ化合物の分割によって得ることができる。
【0203】
本明細書で開示されるペプチドは、式(I)~(V)のペプチドの特定の立体異性体形態であるが、本発明は、本明細書で開示されるペプチドによって包含される立体異性体形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0204】
本発明は、投与時、薬理学的活性ペプチドになる前の代謝過程によって化学変換を受ける、本ペプチドのプロドラッグを含むことがさらに意図される。一般に、そのようなプロドラッグは、インビボで式(I)~(V)のペプチドに容易に変換可能である、本ペプチドの機能的誘導体となる。プロドラッグは、インビボで式(I)~(V)の活性親ペプチド薬物を放出する、任意の共有結合化合物である。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための通常の手順は、例えば、“Design of Prodrugs”,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載されている。プロドラッグの典型例は、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル又はアミノ機能のエステル化によって、官能基上に生物学的に不安定な保護基を有する。それ故、例えば限定はされないが、プロドラッグは、例えば、式(I)、(II)又は(III)のR基(例えば、Rは-OHである)の低級アルキルエステルなどの、エステルプロドラッグ形態が使用される、式(I)、(II)又は(III)のペプチドを含み、ここで低級アルキルエステルは、アルキルラジカル又はアラルキルエステル(アラルキルラジカル中に6~12個の炭素を有する)中に1~8個の炭素を含んでもよい。概して、プロドラッグは、インビボで式(I)の活性親ペプチド薬物を生成するため、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化又は脱リン酸化が可能である化合物を含む。
【0205】
本発明はまた、式(I)中に表される1つ以上の原子が、通常は自然に見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子で置換されるという事実を除いては、式(I)に挙げられるペプチドに一致するペプチドを含む。本発明のペプチド中に組み込まれ得る同位体の例として、H、H、13C、14C、15N、18O及び17Oなどの、水素、炭素、窒素及び酸素のそれぞれの同位体が挙げられる。上記の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する、本明細書で開示される、又は本明細書で開示される式のペプチド、及び前記ペプチドの薬学的に許容される塩又は溶媒和物は、本発明の範囲内に含まれる。特定の同位体標識ペプチド、例えばH及び14Cなどの放射性同位元素が組み込まれるペプチドは、薬物及び/又は基質組織分布アッセイなどの種々のアッセイにおける用途を有してもよい。1つ以上の水素原子のジュウテリウム(2H)による置換などの、より重い同位体による置換は、いくつかの場合、代謝安定性の増加を含む、薬理学的利点を提供し得る。式(I)の同位体標識ペプチドは、一般に、同位体標識試薬を非同位体標識試薬と置換することによって調製され得る。
【0206】
9.0 実施例
本発明は、以下の非限定例によってさらに例示される:
以下の構造のペプチドは、上記の一般的方法によって合成し、ペプチドのEC50値は、指示されるどおりに決定した。「*」でマークしたEC50値は、CEREPによって決定された。「%」は、EC50値の場合におけるEmaxパーセント(陽性対照の場合に得られた最大反応のパーセント)を示す。「NC」のEC50値は、EC50値が10,000nMを超え、故に計算不能であったことを示す。
【0207】
【表8】
【0208】
【表9】
【0209】
【表10】
【0210】
【表11】
【0211】
【表12】
【0212】
【表13】
【0213】
【表14】
【0214】
本発明は、これらの好ましい実施形態に対する特定の参照によって詳述されているが、他の実施形態は、同じ結果を達成し得る。本発明の変形及び修飾は、当業者にとって明白であろうし、全てのそのような修飾及び均等物を包含することが意図される。上で引用された全ての参考文献、出願、特許、及び刊行物の全開示は、参照により本明細書で援用される。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのペプチド:
【化1】

(式中:
Xaaは、-R-Rであり;
は、置換又は非置換のインドール、フェニル又はナフチルであり;
は、-(CH-であり;
は、H又はC~Cの直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であって、任意選択的には1つ以上のC=C二重結合を含むものであり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的には存在し、存在する場合、1~3のL-若しくはD-異性体アミノ酸、又はそれらの組み合わせであり、ここで任意の骨格の窒素原子は、任意選択的にはメチル化されており;
は、H又はC~C17アシル基であって、任意選択的には置換された直鎖状若しくは分岐状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むものであり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、それが-CH-である場合、Rと一般構造
【化2】

の環を形成し;
がRと環を形成する場合、Rは、-Hであり、またRは、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-CH
-S-(=O)-CH
置換又は非置換のフェニル、
-O-CH-フェニルであり、ここでフェニルは、置換又は非置換の
【化3】

であり;
は、置換又は非置換のフェニル又はナフチルであり;
10は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
11は、-O-CH-フェニルであり、ここでフェニルは、置換又は非置換の
【化4】

であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立して、及び各場合に独立して、H又はC~Cの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル鎖であり;
yは、0又は1であり、それが0である場合、角括弧基は不在であり、それが1である場合、角括弧基は存在し;
tは、各場合に独立して、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、1~8であり;且つ
zは、1~3である)
であって、その全ての鏡像異性体、立体異性体若しくはジアステレオマー、又は前述のいずれかの薬学的に許容される塩を含む、ペプチド。
【請求項2】
は、非置換ナフチルである、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
任意の置換フェニル又はナフチルは、各場合に独立して、1~3の間の環置換基で置換され、ここで前記置換基は、同じか又は異なり、且つそれぞれ独立して、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル、又はアリールオキシ-カルボニルである、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
は、少なくとも1つのL-又はD-異性体アミノ酸を含む、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項5】
は、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸であり;任意選択的には、
前記脂肪族側鎖は、-(CH-CHである、
請求項4に記載の環状ペプチド。
【請求項6】
は、少なくとも1つの窒素原子を含む側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸であり;任意選択的には、
は、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体である、
請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項7】
式(I)の環状ペプチドは、式:
【化5】

の環状ペプチドである、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項8】
及びRは、基:
【化6】

を一緒に含む、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項9】
は、-C(=O)-N(R12a)(R12b)である(式中、R12a及びR12bは、Hである)、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項10】
は、イミダゾール環である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項11】
は、不在である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項12】
は、C~C17アシル基を含む、請求項11に記載の環状ペプチド。
【請求項13】
yは、0である、請求項12に記載の環状ペプチド。
【請求項14】
式(II):
【化7】

(式中、
Zは、H又はN末端基であり;
Xaaは、任意選択的には存在し、存在する場合、1~3のアミノ酸であり、ここで任意の骨格の窒素原子は、任意選択的にはメチル化されており;
Xaaは、Xaaのカルボキシル基とアミドを形成するアミン基を含む側鎖を有するアミノ酸のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、任意選択的には、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール、アルキル-アリール、アルキル-O-アリール、アルキル-O-アルキル-アリール、-O-アルキル-アリール、若しくは-O-アリールで置換された、ProのL-又はD-異性体アミノ酸であり、又はXaaは、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド、若しくはカルボキシルを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、置換又は非置換のアリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、少なくとも1つの一級アミン、二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はエーテルを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、Xaaが存在しない場合、Xaaの前記アミン基とアミド結合を形成するC末端カルボキシル基を有し;
Xaaは、任意選択的には存在し、存在する場合、任意選択的には1つ以上の環置換基で置換された、少なくとも1つのアリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、1つ以上が存在する場合、同じか又は異なり、独立して、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール、又は-O-アリールであり、Xaaの前記アミンとアミド結合を形成するC末端カルボキシル基を有し;且つ
Xaaは、グリシン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸及び8-アミノカプリル酸から選択されるアミノ酸である)の環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
(a)Zは、直鎖状又は分岐状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール又はアラルキルを含むC~C17アシル基からなる群から選択されるN末端基であり;又は
(b)Xaaは、Gly又はAla、Nle、Leu、Ile若しくはValのL-若しくはD-異性体からなる群から選択される単一のアミノ酸残基であり;又は
(c)Xaaは、少なくとも1つの一級アミン、グアニジン又は尿素基を含む側鎖を有する単一のアミノ酸であり;任意選択的には、
Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体であり;又は
(d)Xaaは、任意選択的には、1~3の環置換基で置換されたD-Phe又はPheであり;任意選択的には、
前記環置換基は、同じであるか又は異なり、且つそれぞれ独立して、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、又はアルコキシ-カルボニルであり;又は
(e)Xaaは、D-Nal1又はD-Nal2であり;又は
(f)Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab又はDapのL-又はD-異性体であり;又は
(g)Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり;又は
(h)Zは、C~C直鎖状アルキルアシル基であり;
Xaaは、Nle又はArgのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、Dab、Dap、Orn又はLysのL-又はD-異性体であり、前記側鎖アミン基は、Xaaの前記カルボキシルとアミド結合を形成し;
Xaaは、His、Hyp(Bzl)、Met(O)、又はAsnのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、置換又は非置換Phe、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、ArgのL-又はD-異性体であり;且つ
Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり、その前記C末端カルボキシル基は、Xaaの前記アミンとアミド結合を形成し;又は
(i)その少なくとも1つの骨格窒素原子は、メチル基を含む、
式(II)の請求項14に記載の環状ペプチド。
【国際調査報告】