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特表2023-512076中性子検出器、ホウ素を中性子変換層として用いたその製造方法及びコンフォーマルドーピング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】中性子検出器、ホウ素を中性子変換層として用いたその製造方法及びコンフォーマルドーピング
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/08 20060101AFI20230315BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G01T3/08
G01T1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546404
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 US2021015782
(87)【国際公開番号】W WO2021155202
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/968,373
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナンダゴパラ クリシュナン,シッダールタ スリニーヴァッサン
(72)【発明者】
【氏名】カラヴェオ フレスカス,ジーザス アルフォンソ
(72)【発明者】
【氏名】アヴィラ-アヴェンダノ,カルロス ヒューゴ
(72)【発明者】
【氏名】クエヴェド ロペス,マニュエル
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188BB09
2G188CC28
2G188DD43
2G188DD44
(57)【要約】
熱中性子検出器及びその製造方法を提供する。熱中性子検出器は、半導体基板において、ホウ素を、中性子変換層中とコンフォーマルドーピング源として両方に、二重に使用することができる。中性子検出器は、60ミクロン以下の深さを有するキャビティを備えた微細構造ダイオードとすることができる。ホウ素でキャビティを充填し、拡散アニールプロセスにより半導体基板に拡散させることができる。
【選択図】 図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱中性子検出器を製造する方法であって、
半導体基板の第1の表面にn型ドーピングを行い、
p型ドーパント材料を使用して、前記半導体基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面にp型ドーピングを行い、
前記半導体基板の前記第2の表面に微細構造をエッチングし、
前記微細構造の前記p型ドーパント材料をバックフィリングし、
前記微細構造にバックフィリングされた前記p型ドーパント材料を有する前記半導体基板で拡散アニールを行って、前記p型ドーパント材料の少なくとも1つの元素が前記半導体基板に拡散するようにすることを含む、方法。
【請求項2】
前記p型ドーパント材料は、ホウ素を含み、前記p型ドーパント材料の前記少なくとも1つの元素は、ホウ素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の各微細構造は、500μm以下の深さを有する、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記半導体基板の前記第2の表面にp型ドーピングを行う前に、前記半導体基板の前記第2の表面に絶縁層誘電体を堆積して、前記第2の表面に露出した活性パターンを残し、前記p型ドーピングが前記活性パターンで行われることをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法
【請求項5】
前記n型ドーピングは、リン及びリチウムの少なくとも1つを含むn型ドーパント材料を使用する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記p型ドーパント材料は、ホウ素を含む粉末である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記p型ドーパント材料は、ホウ素-10(10B)を含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記p型ドーパント材料は、10B粉末である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体基板の前記第1の表面に第1の電気コンタクトを堆積し、前記半導体基板の前記第2の表面に第2の電気コンタクトを堆積することをさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記微細構造は、反応性イオンエッチング(RIE)を使用して、前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされる、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記微細構造は、ウェットエッチングプロセスを使用して、前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされる、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記p型ドーピングは、スピンオンガラスドーピングによって行われ、前記n型ドーピングは、固体拡散によって行われる、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の少なくとも1つの微細構造は、円形孔の幾何学的形状を有する、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の少なくとも1つの微細構造は、四角形孔の幾何学的形状を有する、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の少なくとも1つの微細構造は、トレンチの幾何学的形状を有する、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の各微細構造は、4μmの開口半径及び60μm以下の深さを有する円形孔の幾何学的形状を有する、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の各微細構造は、60μm以下の深さを有し、
前記方法は、さらに、
前記半導体基板の前記第2の表面に前記p型ドーピングを行う前に、前記半導体基板の前記第2の表面に絶縁層誘電体を堆積して、前記第2の表面に露出した活性パターンを残し、前記活性パターンに前記p型ドーピングを行い、
前記半導体基板の前記第1の表面に第1の電気コンタクトを堆積し、前記半導体基板の前記第2の表面に第2の電気コンタクトを堆積することを含み、
前記p型ドーパント材料は、10Bを含む粉末であり、
前記微細構造は、RIEを使用して、前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされ、
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の少なくとも1つの微細構造は、円形孔の幾何的形状、四角形孔の幾何的形状、又はトレンチの幾何的形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記製造された熱中性子検出器の熱中性子検出効率は、約12.5%である、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記製造された熱中性子検出器の熱中性子検出効率は、約21%である、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記製造された熱中性子検出器の熱中性子検出効率は、12.5%~21%の範囲である、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
第1の表面に微細構造を含む半導体基板を含み、前記半導体基板は、
前記半導体基板の前記第1の表面とは反対側の第2の表面にn型ドーピングによって形成されたnドープ部と、
p型ドーパント材料を用いて、前記半導体基板の前記第1の表面にp型ドーピングによって形成されたpドープ部とを含み、
前記p型ドーパント材料は、前記微細構造に充填され、
前記微細構造にバックフィリングされた前記p型ドーパント材料を有する前記半導体基板で拡散アニールが行われ、前記p型ドーパント材料の少なくとも1つの元素が、前記微細構造の側壁を通って前記半導体基板に拡散するようにしたものであり、
前記半導体基板の前記第1の表面の前記微細構造の各微細構造は、500μm以下の深さを有する、熱中性子検出器。
【請求項22】
前記p型ドーパント材料は、ホウ素を含み、前記p型ドーパント材料の前記少なくとも1つの元素は、ホウ素を含む、請求項21に記載の熱中性子検出器。
【請求項23】
前記p型ドーパント材料は、10Bを含む、請求項21~22のいずれかに記載の熱中性子検出器。
【請求項24】
前記半導体基板の前記第1の表面に第1の電気コンタクトと、前記半導体基板の前記第2の表面に第2の電気コンタクトとをさらに含む、請求項21~23のいずれかに記載の熱中性子検出器。
【請求項25】
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の少なくとも1つの微細構造は、円形孔の幾何的形状、四角形孔の幾何的形状、又はトレンチの幾何的形状を有する、請求項21~24のいずれかに記載の熱中性子検出器。
【請求項26】
前記半導体基板の前記第2の表面にエッチングされた前記微細構造の各微細構造は、4μmの開口半径及び60μm以下の深さを有する円形孔の幾何的形状を有する、請求項21~25のいずれか一項に記載の熱中性子検出器。
【請求項27】
前記熱中性子検出器の熱中性子検出効率は、約12.5%である、請求項21~26のいずれかに記載の熱中性子検出器。
【請求項28】
前記熱中性子検出器の熱中性子検出効率は、約21%である、請求項21~26のいずれかに記載の熱中性子検出器。
【請求項29】
前記熱中性子検出器の熱中性子検出効率は、12.5%~21%の範囲である、請求項21~26のいずれかに記載の熱中性子検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2020年1月31日出願の米国仮出願第62/968,373号の優先権を主張するものであり、図表を含む全内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体放射線検出器において、入射放射線は、検出器材料と相互作用して、電子-正孔対を生成する。生成された電荷は、それぞれの電極によって収集され、粒子の種類、エネルギー、到着時間、及びフラックスに関する情報を有する電気パルスを生成する。半導体検出器の最も重要な特徴は、低いイオン化ポテンシャルによる優れたエネルギー分解能と、半導体検出器を放射線検出用途での使用に理想的なものとするコンパクトなサイズである。一次イオン化物は、核放射線のエネルギーを直接測定するために収集されなければならないため、ガスよりも高い密度を有する凝縮相は、単位長さ当たりの放射線粒子のより効率的な停止をもたらす。また、金属は、生成された電荷の急速な再結合を可能にし、絶縁体は、これらの電荷の収集を阻害するので、放射線遮蔽のために使用されるが、凝縮相中性子検出器の良い候補ではない。これらの理由から、半導体が、放射線検出器として広く使用される唯一の良い選択肢と考えられる。
【0003】
シリコン及びゲルマニウムは、固体イオン化チャンバにおいて最も一般的に使用される半導体材料である。他の材料に基づく半導体が研究されてきたが、入手可能性、環境被害、及び製造技術のような元々の欠点のために、商業的用途に規模を調整することは困難であることが分かっている。中性子は、検出器の直接イオン化を引き起こさないので、二次効果に頼るものである。中性子相互作用から帯電粒子を生成するために使用される最も一般的な反応は、10B(n,α)LiとLi(n,α)Hの反応(非特許文献1、2、3)である。熱中性子が変換材料と衝突すると、アルファ、ガンマ、核子等の一次反応生成物が生成される。荷電反応生成物が検出媒体を通って移動すると、イオン化によって二次反応生成物が生成され、最終的に熱中性子の検出を示す電気信号を与える。典型的な平面中性子検出器では、中性子吸収によって生成される一次反応生成物はアルファ粒子であり、その後、典型的には逆バイアス下で動作する半導体検出器をイオン化し、電子-正孔対を生成する。これらの生成された電荷は、印加された電界によって分離され、接触で収集される。固体熱中性子検出器は小型であり、低電圧で動作し、ガス系検出器と比較して、振動誘起ノイズに対してより安定である。これらの利点にもかかわらず、薄膜コーティングされた平面検出器の最大検出効率は、ヘリウム系ガス検出器の70%と比較して、5%に制限される(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G. Knoll, Radiation Detection and Measurement, Third. John Wiley & Sons, Ltd., 2000.
【非特許文献2】W. Price, Nuclear Radiation Detection, 2nd ed. McGraw Hill ,New York, 1964.
【非特許文献3】N. Tsoulfanidis, Measurement and Detection of Radiation, 2nd ed. Taylor and Francis, New York, 1995.
【非特許文献4】D. S. McGregor, M. D. Hammig, Y. H. Yang, H. K. Gersch, and R. T. Klann, "Design considerations for thin film coated semiconductor thermal neutron detectors - I: Basics regarding alpha particle emitting neutron reactive films," Nucl. Instruments Methods Phys. Res. Sect. A Accel. Spectrometers, Detect. Assoc. Equip., vol. 500, no. 1-3, pp. 272-308, 2003.
【非特許文献5】A. N. Caruso, "The physics of solid-state neutron detector materials and geometries.," J. Phys. Condens. Matter, vol. 22, no. 44, p. 443201, 2010.
【非特許文献6】R. G. Fronk et al., "Microstructured Semiconductor Neutron Detectors (MSND) and Instrumentation."
【非特許文献7】R. G. Fronk, "Dual-side etched microstructured semiconductor neutron detectors, an abstract of a dissertation," 2011.
【非特許文献8】D. S. McGregor, S. L. Bellinger, and J. Kenneth Shultis, "Present status of microstructured semiconductor neutron detectors," J. Cryst. Growth, vol. 379, pp. 99-110, 2013.
【非特許文献9】T. C. Unruh, D. S. McGregor, J. K. Shultis, W. J. McNeil, and S. L. Bellinger, "Microstructured semiconductor neutron detectors," Nucl. Instruments Methods Phys. Res. Sect. A Accel. Spectrometers, Detect. Assoc. Equip., vol. 608, no. 1, pp. 125-131, 2009.
【非特許文献10】J. K. Shultis and D. S. Mcgregor, "Design and performance considerations for perforated semiconductor thermal-neutron detectors," 2009.
【非特許文献11】Runkle, R. C.; Bernstein, A.; Vanier, P. E. Securing special nuclear material: Recent advances in neutron detection and their role in nonproliferation. J. Appl. Phys. 2010, 108, 111101.
【非特許文献12】Ahmed, S. N. Physics and Engineering of Radiation Detection, 2nd ed.; Elsevier B.V., 2015; pp 137-143.
【非特許文献13】Oed, A. Detectors for thermal neutrons. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2004, 525, 62-68.
【非特許文献14】Kouzes, R. T.; Ely, J. H.; Erikson, L. E.; Kernan, W. J.; Lintereur, A. T.; Siciliano, E. R.; Stephens, D. L.; Stromswold, D. C.; Van Ginhoven, R. M.; Woodring, M. L.; Woodring, M. L. Neutron detection alternatives to 3He for national security applications. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2010, 623, 1035-1045.
【非特許文献15】Rinard, P. Neutron Interactions with Matter. Technical Report; Los Alamos National Laboratory, NUREG/CR-5550, LA-UR-90-732, 1991.
【非特許文献16】Shao, Q.; Voss, L. F.; Conway, A. M.; Nikolic, R. J.; Dar, M. A.; Cheung, C. L. High aspect ratio composite structures with 48.5% thermal neutron detection efficiency. Appl. Phys. Lett 2013, 102, 063505.
【非特許文献17】Murphy, J. W.; Kunnen, G. R.; Mejia, I.; Quevedo-Lopez, M. A.; Allee, D.; Gnade, B.; Gnade, B. Optimizing diode thickness for thin-film solid state thermal neutron detectors. Appl. Phys. Lett. 2012, 101, 143506.
【非特許文献18】Smith, L.; Murphy, J. W.; Kim, J.; Rozhdestvenskyy, S.; Mejia, I.; Park, H.; Allee, D. R.; Quevedo-Lopez, M.; Gnade, B. Thin film CdTe based neutron detectors with high thermal neutron efficiency and gamma rejection for security applications. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2016, 838, 117-123.
【非特許文献19】Nikolic, R. J.; Shao, Q.; Voss, L. F.; Conway, A. M.; Radev, R.; Wang, T. F.; Dar, M.; Deo, N.; Cheung, C. L.; Fabris, L.; Britton, C. L.; Ericson, M. N. Si Pillar Structured Thermal Neutron Detectors: Fabrication Challenges and Performance Expectations. SPIE Proceedings, LLNL-PROC-480809, 2011.
【非特許文献20】Uher, J.; Frojdh, C.; Jakubek, J.; Kenney, C.; Kohout, Z.; Linhart, V.; Parker, S.; Petersson, S.; Pospisil, S.; Thungstrom, G. Characterization of 3D thermal neutron semiconductor detectors. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2007, 576, 32-37.
【非特許文献21】Nikolic, R. J.; Conway, A. M.; Reinhardt, C. E.; Graff, R. T.; Wang, T. F.; Deo, N.; Cheung, C. L. 6:1 aspect ratio silicon pillar based thermal neutron detector filled with. Appl. Phys. Lett. 2008, 93, 133502.
【非特許文献22】Yu, B.; Zhao, K.; Yang, T.; Jiang, Y.; Fan, X.; Lu, M.; Han, J. Process effects on leakage current of Si-PIN neutron detectors with porous microstructure. Phys. Status Solidi 2017, 214, 1600900.
【非特許文献23】McGregor, D. S.; McNeil, W. J.; Bellinger, S. L.; Unruh, T. C.; Shultis, J. K. Microstructured semiconductor neutron detectors. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2009, 608, 125-131.
【非特許文献24】Wu, J.-W.; Weltz, A.; Koirala, M.; Lu, J. J.-Q.; Dahal, R.; Danon, Y.; Bhat, I. B. Boron-10 nanoparticles filled silicon trenches for thermal neutron detection application. Appl. Phys. Lett. 2017, 110, 192105.
【非特許文献25】Bellinger, S. L.; Fronk, R. G.; McNeil, W. J.; Sobering, T. J.; McGregor, D. S. Enhanced variant designs and characteristics of the microstructured solid-state neutron detector. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2011, 652, 387-391.
【非特許文献26】Bellinger, S. L.; Fronk, R. G.; McNeil, W. J.; Shultis, J. K.; Sobering, T. J.; McGregor, D. S. Characteristics of the Stacked Microstructured Solid State Neutron Detector. Proceedings of SPIE 7805, Hard X-Ray, Gamma-Ray, and Neutron Detector Physics XII,2010, p 78050N.
【非特許文献27】Fronk, R. G.; Bellinger, S. L.; Henson, L. C.; Ochs, T. R.; Smith, C. T.; Kenneth Shultis, J.; McGregor, D. S. Dual-sided microstructured semiconductor neutron detectors (DSMSNDs). Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2015, 804, 201-206.
【非特許文献28】Dahal, R.; Huang, K. C.; Clinton, J.; Licausi, N.; Lu, J.-Q.; Danon, Y.; Bhat, I. Self-powered micro-structured solid state neutron detector with very low leakage current and high efficiency. Appl. Phys. Lett. 2012, 100, 243507.
【非特許文献29】McGregor, D. S.; Kenneth Shultis, J. Reporting detection efficiency for semiconductor neutron detectors: A need for a standard. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2011, 632, 167-174.
【非特許文献30】Shultis, J. K.; Mcgregor, D. S. Design and performance considerations for perforated semiconductor thermal-neutron detectors. Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A 2009, 606, 608-636.
【非特許文献31】MCNP Users Manual-Code Version 6.2; Werner, C. J., Ed.; Los Alamos National Laboratory, Report LA-UR-17-29981, 2017.
【非特許文献32】Werner, C. J.; Bull, J. S.; Solomon, C. J. MCNP6.2 Release Notes, Los Alamos National Laboratory, Report LA-UR-18-20808, 2018.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、新規かつ有利な熱中性子検出器及びその製造方法を提供する。熱中性子検出器は、同位体濃縮ホウ素(例えば、10-ホウ素(10B)又はホウ素含有材料(例えば、10B含有材料))を、中性子変換層中とコンフォーマルドーピング源として両方に、二重に使用することによって可能になる高検出効率を有する。中性子検出器は、微細構造ダイオード(例えば、PINダイオード又はPNダイオード)とすることができ、半導体基板内にキャビティがエッチングされる。キャビティは、任意の適切なタイプの幾何学的形状(例えば、トレンチ、円形孔、四角形孔、三角形孔)を有し、全て同じタイプの幾何学的形状を有することができ、ダイオードの他のキャビティとは異なるタイプの幾何学的形状を示すことができ、いくつかのキャビティは、他のキャビティと幾何学的形状を共有する、他のキャビティとは異なる幾何学的形状を有する、又はそれらの組合せとすることができる。キャビティは、粉末(例えば、10B粉末、10C、10等)である濃縮ホウ素又はホウ素含有物質で充填することができる。充填されたキャビティを有する基板は、次いで、半導体(例えば、シリコン又はゲルマニウム)基板へのホウ素の固体拡散のために熱処理され、キャビティの露出表面全体にわたって連続したコンフォーマル導電層を与える。キャビティは、500マイクロメートル(μm)以下(例えば、60μm以下)の典型的な深さを有する、可変の深さの微細構造とすることができる。ホウ素(例えば、10B)充填は、ホウ素(例えば、10B)転移反応を起こすための中性子変換として作用し、アルファ粒子を放出し、これはダイオード(例えば、PINダイオード又はPNダイオード)によって検知される。ホウ素はまた、シリコン中へのホウ素の固体拡散源として使用され、微細構造ダイオードのコンフォーマルドーピングを行って、中性子検出効率を大幅に増大し、装置の製造複雑性を大幅に削減することができる。
【0006】
一実施形態において、熱中性子検出器を製造する方法は、半導体基板の第1の表面にn型ドーピングを行い、p型ドーパント材料を使用して、半導体基板の第1の表面とは反対側の第2の表面にp型ドーピングを行い、半導体基板の第2の表面に微細構造をエッチングし、微細構造のp型ドーパント材料をバックフィリングし、微細構造にバックフィリングされたp型ドーパント材料を有する半導体基板で拡散アニールを行って、p型ドーパント材料の少なくとも1つの元素(例えば、ホウ素)が半導体基板に拡散するようにすることを含む。半導体基板の第2の表面にエッチングされた微細構造の各微細構造は、500μm以下(例えば、60μm以下)の深さを有する。本方法は、半導体基板の第2の表面にp型ドーピングを行う前に、半導体基板の第2の表面に絶縁層誘電体を堆積して、第2の表面に露出した活性パターンを残すことをさらに含み、活性パターンにp型ドーピングが行われる。p型ドーパント材料は、ホウ素を含むが、実施形態はこれに限定されない。p型ドーパント材料は、例えば、10B粉末である。いくつかの実施形態において、微細構造は、半導体基板の第1の表面にエッチングすることもできる。
【0007】
他の実施形態において、熱中性子検出器は、その第1の表面に微細構造を含む半導体基板を含み、半導体基板は、半導体基板の第1の表面とは反対側の第2の表面にn型ドーピングによって形成されたnドープ部と、p型ドーパント材料を使用して、半導体基板の第1の表面にp型ドーピングによって形成されたpドープ部とを含む。p型ドーパント材料は、微細構造内に充填され、微細構造にバックフィリングされたp型ドーパント材料を有する半導体基板で拡散アニールが行われて、p型ドーパント材料の少なくとも1つの元素が、微細構造の側壁を通って半導体基板に拡散するようになっている。p型ドーパント材料の少なくとも1つの元素(例えば、ホウ素)が、拡散アニールの結果として微細構造の側壁を通って半導体基板に拡散する場合、これは、このように形成されない中性子検出器と比較して構造的差異をもたらし、非常に高い中性子検出効率につながる(例えば、図6a及び6bを参照)。第2の表面は、微細構造を有することもある。半導体基板の第1の表面及び/又は第2の表面における微細構造の各微細構造は、500μm以下(例えば、60μm以下)の深さを有する。p型ドーパント材料は、ホウ素を含むことができるが、実施形態はこれに限定されない。p型ドーパント材料は例えば、10B粉末であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による、中性子検出器を製造する方法のプロセスフローを示す。
図2a】相対カウント対チャネルのプロットであり、平面PINダイオード及び微細構造ダイオードによる中性子検出の比較を示す。高いカウント値の曲線は、微細構造ダイオードについてのものである(平面ダイオードについての3.5%効率と比較して、12.5%効率)。
図2b】本発明の一実施形態による、微細構造ダイオード内に微細構造を生成するのに使用される幾何学的形状の上面図を示す。
図2c】本発明の一実施形態による微細構造PINダイオードの断面図を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図3a】電流(アンペア(A))対電圧(ボルト(V))のプロットであり、ホウ素-10(10B)アニールを行ったがコンフォーマルドーピングなしの平面ダイオードと微細構造ダイオードにおけるリーク電流を示す。両方の場合において、ダイオード活性領域は、100平方ミリメートル(mm)である。高い電流(円形データ点)を有する曲線は、微細構造ダイオードのものである。
図3b】相対カウント対チャネルのプロットであり、10Bが充填されたがコンフォーマルドーピングなしの平面PINダイオードと微細構造ダイオードによる熱中性子検出の比較を示す。高いカウント値を有する曲線は、平面ダイオードについてのものである(コンフォーマルドーピングなしの微細構造ダイオードが<1%であるのと比較して3.5%の効率)。
図4a】電流(A)対電圧(V)のプロットであり、異なるダイオード領域の微細構造ダイオードのリーク電流を示す。最高値の曲線(三角形データ点)は、100mmのダイオード領域のものであり、中央値の曲線(円形データ点)は、50mmのダイオード領域のものであり、最低値の曲線(四角形データ点)は、25mmのダイオード領域のものである。
図4b】平面ダイオード及び微細構造ダイオードについての、ダイオード領域(mm)に対するリーク電流密度(A/mm)のプロットである。より高い値を有する曲線(四角形データ点)は微細構造ダイオードについてであり、より低い値を有する曲線(円形データ点)は、平面ダイオードについてである。
図5a】リーク電流及び中性子検出効率に対するそれらの影響を減少させるための微細構造ダイオードにおける表面処理を示すものであり(非特許文献8より引用)、酸化物層を有する選択的に拡散されたダイオードの断面図を示す。
図5b】リーク電流及び中性子検出効率に対するそれらの影響を減少させるための微細構造ダイオードにおける表面処理を示すものであり(非特許文献8より引用)、コンフォーマルドーピングの断面図を示す。
図5c】リーク電流及び中性子検出効率に対するそれらの影響を減少させるための微細構造ダイオードにおける表面処理を示すものであり(非特許文献8より引用)、異なるダイオードついてのリーク電流(A)対逆電圧(V)のプロットを示す。
図5d】リーク電流及び中性子検出効率に対するそれらの影響を減少させるための微細構造ダイオードにおける表面処理を示すものであり(非特許文献8より引用)、異なるダイオードについての中性子検出のプロットを示す。
図6a】電流(A)対電圧(V)のプロットであり、平面ダイオード、10Bアニールなしの微細構造ダイオード、及び10Bアニールありの微細構造ダイオード(950℃)のリーク電流を示す。全てのダイオードのダイオード活性領域は100mmである。-1Vで最高値を有する曲線(円形データ点)は、アニールなしの微細構造ダイオードのものであり、-1Vで中央値を有する曲線(四角形データ点)は、平面ダイオードのものであり、-1Vで最低値を有する曲線(三角形データ点)は、10Bアニールありの微細構造ダイオードのものである。
図6b】相対カウント対チャネルのプロットであり、平面ダイオード、微細構造PINダイオード、及びコンフォーマルドープされた微細構造ダイオードによる熱中性子検出(252Cf源を使用)の比較を示す。最高カウント値を有する曲線は、コンフォーマルドープされた微細構造ダイオード(12.5%効率)のものであり、中央値を有する曲線は、平面ダイオード(3.5%効率)のものであり、最低値を有する曲線は、コンフォーマルドーピングなしの微細構造PINダイオード(<1%効率)のものである。
図7】シート抵抗又は抵抗率(1平方当たりのオーム(Ω/平方))対アニール時間(分)のプロットであり、10B充填及びアニールプロセス後の基板(例えば、シリコン)の抵抗を示す。
図8a】微細構造ダイオードにおける微細構造の異なるサイズの開口部についての固有効率(%)対半導体幅(マイクロメートル(μm))のプロットである。各サイズの微細構造は、40μmの深さを有する円形孔の幾何学的形状を有していた。最高値(円形データ点)を有する曲線は、4μmの開口部のものであり、中央値(四角形データ点)を有する曲線は、3μmの開口部のものであり、最低値(三角形データ点)を有する曲線は、8μmの開口部のものである。プロットの右下の大きな三角形は、8μmの開口部を用いて実験的に得られた固有効率を示す。
図8b】4μm幅の開口部の異なる形状の開口部についての固有効率(%)対半導体幅(μm)のプロットを示す。3.0μmで最高値を有する曲線(三角形データ点)は、四角形孔のものであり、3.0μmで中央値を有する曲線(四角形データ点)は、トレンチのものであり、3.0μmで最低値を有する曲線(円形データ点)は、円形孔のものである。
図9】本発明の実施形態による、中性子検出器を製造する方法のためのプロセスフローを示す。
図10】本発明の実施形態による、微細構造ダイオードの10Bをバックフィリングする遠心分離プロセスのプロセスフローを示す。
図11】本発明の実施形態による、製造された微細構造ダイオードの模式図を示す。
図12】シート抵抗(R、Ω/平方)対アニール時間(t、分)のプロットを示し、0分のアニール時間が、基板のシート抵抗(約10Ω/平方)を指す、固有シリコン中で同位体濃縮10Bを使用するドーピングの影響を示す。挿入図は、電圧(V)対電流密度(1平方センチメートル当たりのアンペア/(A/cm))のプロットであり、アニールの結果としての拡散前後のダイオードリーク電流に対する影響を示している。
図13】本発明の実施形態による、熱中性子検出器の模式図を示す。10B及びシリコンを、それぞれ、p型ドーパント及び基板の材料として挙げてあるが、これらは例示のためだけであり、限定されるものではない。
図14】本発明の実施形態による、遠心分離法により10Bを密に充填した狭トレンチの断面の走査型電子顕微鏡像である。
図15】孔分離(マイクロメートル(μm))対中性子検出効率(%)のプロットを示し、様々な直径の円形孔を有する微細構造検出器のモンテカルロシミュレーションの結果を示す。三角形データ点を有する曲線は、8μmの直径のものであり、円形データ点を有する曲線は、6μmの直径のものであり、四角形データ点を有する曲線は、4μmの直径のものである。
図16】相対カウント対チャネルのプロットを示し、コンフォーマルドープされた平面ダイオード及び微細構造ダイオード(円形孔の設計)による熱中性子検出の比較を示す。最高カウント値を有する曲線は、コンフォーマルドープされた微細構造ダイオード(12.5%効率)のものであり、最低カウント値を有する曲線は、平面ダイオード(3.5%効率)のものである。
図17】中性子検出効率(%)対トレンチ間隔(μm)のプロットを示し、トレンチ設計を有する微細構造中性子検出器の理論的にシミュレートされた効率と実験的な効率との比較を示す。検出器の形状は、挿入図に示されている。円形データ点を有する曲線は実験結果のものであり、四角形データ点を有する曲線は、理論的なデータ点のものである。
図18】中性子検出のために微細構造検出器によって使用される電子機器を示すセットアップの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、新規かつ有利な熱中性子検出器及びその製造方法を提供する。熱中性子検出器は、同位体濃縮ホウ素、例えば、10-ホウ素(10B)又はホウ素含有材料(例えば、10B含有材料)を、中性子変換層中とコンフォーマルドーピング源として両方に、二重に使用することによって可能になる高検出効率を有する。中性子検出器は、微細構造ダイオード(例えば、PINダイオード又はPNダイオード)とすることができ、半導体基板内にキャビティがエッチングされる。キャビティは、任意の適切なタイプの幾何学的形状(例えば、トレンチ、円形孔、四角形孔、三角形孔)を有し、全て同じタイプの幾何学的形状を有することができ、ダイオードの他のキャビティとは異なるタイプの幾何学的形状を示すことができ、いくつかのキャビティは、他のキャビティと幾何学的形状を共有する、他のキャビティとは異なる幾何学的形状を有する、又はそれらの組合せとすることができる。キャビティは、粉末(例えば、10B粉末)である、濃縮ホウ素又はホウ素含有物質で充填することができる。充填されたキャビティを有する基板は、次いで、半導体(例えば、シリコン又はゲルマニウム)基板へのホウ素の固体拡散のために熱処理され、キャビティの露出表面全体にわたって連続したコンフォーマル導電層を与える。キャビティは、60μm以下の深さを有する。ホウ素(例えば、10B)充填は、ホウ素(例えば、10B)転移反応を起こすための中性子変換として作用し、アルファ粒子を放出し、これはダイオード(例えば、PINダイオード又はPNダイオード)によって検知される。ホウ素はまた、シリコン中へのホウ素の固体拡散源としても使用され、微細構造ダイオードのコンフォーマルドーピングを行って、装置の中性子検出効率を大幅に増大させることができる。ホウ素は、ここでは、p型ドーパントとして記載しているが、例示のためだけであり、限定されるものではない。他のp型ドーパントを用いることができる。
【0010】
「約」という用語を、数値と併せて使いる場合、値は値の95%~105%の範囲、すなわち、値は、記載された値の+/5%と考えられる。例えば、「約1kg」は、0.95kg~1.05kgを意味する。
【0011】
三次元(3D)微細構造半導体検出器は、高効率の固体熱中性子検出器となる可能性を示した。これらの微細構造検出器は、例えば、内部にエッチングされたキャビティを有する逆バイアスPINダイオードであってもよく、その後、ダイオードが中性子を検出できるよう、中性子変換材料をバックフィリングする。本発明の実施形態において、中性子変換材料は、10B(又は10B含有材料)等のホウ素(又はホウ素含有材料)とすることができ、同じ材料を、コンフォーマルドーピングのためのホウ素源として使用することができ、装置の中性子検出効率を高めることができる。
【0012】
図1に、本発明の実施形態による、中性子検出器を製造する方法のためのプロセスフローを示す。図9にも、中性子検出器を製造するためのプロセスフローを示す。図1及び図9を参照すると、n(例えば、n+又はn++)ドーピングは、半導体基板の第1の表面(例えば、基板の「裏面」)で行われる。図1に示される半導体基板は、真性シリコンウェハであるが、これは例示のためだけであり、任意の適切な半導体基板を使用することができる(例えば、ゲルマニウム又はn型もしくはp型シリコン)。次に、堆積を行い(例えば、絶縁層誘電体(ILD))、半導体基板の第1の表面とは反対側の第2の表面(例えば、基板の「前面」)の活性パターンは露出されたままとする。次に、p(例えば、p+又はp++)ドーピングを、活性パターン/領域で行う。次に、基板の第2の表面(例えば、前面)に微細構造をエッチングして、微細構造中でホウ素バックフィリングを行う。次に、バックフィリングされたホウ素が基板中に拡散するように、拡散アニールを基板で行う。電気コンタクトは、基板の第1及び第2の表面(例えば、裏面及び前面)にそれぞれ堆積することができる。pドーピングのドーピング源は、10B(又は10B含有材料)等のホウ素(又はホウ素含有材料)とすることができ、これはホウ素バックフィリングに使用されるのと同じ材料とすることができる。
【0013】
pドーピングは、当技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば、スピンオンガラスドーピングによって行うことができる。nドーピングは、当技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば、固体拡散によって行うことができる。リン及び/又はリチウムをnドーピングのためのドーパントとして使用することができるが、実施形態はこれらに限定されない。微細構造のエッチング中に、当技術分野で公知の任意の適切なエッチング方法を使用することができ、例えば、金属の薄層をハードマスクとして使用してパターンを形成し、微細構造をドライエッチングプロセス(例えば、反応性イオンエッチング(RIE))又はウェットエッチングプロセスによってエッチングすることができる。バックフィリングは、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって、例えば、遠心分離又は沈降によって行うことができる。拡散アニールを行って、エッチングされた微細構造の側壁にホウ素を拡散させることができる。電気コンタクトは、当技術分野で公知の任意の適切な材料、例えば、アルミニウム-シリコン(Al-Si)オーミックコンタクトから作製することができ、当技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて、例えば、スパッタリングによって堆積することができる。
【0014】
特定の実施形態において、中性子検出器は、シリコンウェハ(例えば、10kΩ-cmを超える抵抗率を有する525ミクロンのフロートゾーンシリコンウェハ)を用いて製造することができる。ウェハの裏面全体を、例えば、固体拡散によってリン及び/又はリチウムでドープすることができる。次に、ウェハの前面をパターニングして活性領域を開き、次いでスピンオンガラスドーピングによってホウ素(例えば、10B)でドープすることができる。金属薄層をハードマスクとして使用して、パターンを形成し、ドライエッチングプロセスによって微細構造をエッチングすることができる。ハードマスクは、微細構造をエッチングした後に除去することができ、次いで、微細構造を、遠心分離によってホウ素(例えば、10B)でバックフィリングすることができる。別の拡散アニールを行って、遠心分離されたホウ素を、エッチングされた微細構造の側壁に拡散させることができる。最後に、Al-Siオーミックコンタクトを、スパッタリングによってウェハの前面及び裏面の両方に堆積させて、PINダイオードを完成させる。
【0015】
微細構造シリコンダイオードは、微細構造が活性検出領域を増加させるにつれて、中性子検出効率を有利に増加させる。関連技術の装置は、中性子変換層として作用するフッ化リチウムで充填された非常に深いトレンチ(>60μmの深さ)を使用する。本発明の実施形態において、ホウ素(例えば、10B)で充填された浅いキャビティ(例えば、<60μmの深さ)は、深いトレンチのものに匹敵する高検出効率を示す。図2aは、(本発明の実施形態による)直径8ミクロン、深さ40ミクロンの円形キャビティを有する微細構造ダイオードのものと比較した、平面PINダイオードを使用した場合の中性子検出効率を示す。図2aを参照すると、本発明の実施形態のダイオードの効率は、平面ダイオードの効率よりも3.5倍以上大きい。
【0016】
RIEを使用して微細構造を作製する場合、RIEプロセスから表面損傷が生じ、ダイオード性能及び検出効率に悪影響を及ぼす可能性がある。中性子検出は、逆バイアス下でダイオード電流の変化をセンシングすることによって行われる。従って、PINダイオードは、可能な限り低いリーク電流(すなわち、逆バイアス下の電流)を有していなければならない。エッチングプロセス及び現在露出している基板表面(例えば、シリコン基板表面)におけるダングリングボンドの存在による損傷は、微細構造ダイオードのリーク電流を増加させ、ひいては検出効率を低下させる可能性がある。図3aは、電流(アンペア(A))対電圧(ボルト(V))のプロットであり、10Bアニールを行ったが、コンフォーマルドーピングは行わなかった平面ダイオード及び微細構造ダイオードにおけるリーク電流を示す。両方の場合において、ダイオード活性領域は、100平方ミリメートル(mm)である。図3bは、相対カウント対チャネルのプロットであり、10Bアニールを行ったが、コンフォーマルドーピングは行わなかった平面PINダイオード及び微細構造ダイオードによる熱中性子検出の比較を示している。図3a及び図3bを参照すると、平面ダイオードは、コンフォーマルドーピングを行わなかった微細構造ダイオードよりも3.5倍以上高い検出効率を有する。
【0017】
微細構造をエッチングする悪影響は、ダイオード領域が増えるにつれてさらに顕著になる。表面欠陥は、検出領域が増えるにつれて増加し、より高いリーク電流が観察される。これは、図4a及び図4bから分かるように、前者は、PIN構造において微細構造がエッチングされた後の、25mm、50mm、及び100mmの領域の製造されたダイオードの電流-電圧(I-V)特性を示す。25mmで観察されたリーク電流は、中性子検出性能に大きな影響を与えないが、検出器が広い面積にわたって特別な核物質をモニターするためには、より広い面積のダイオード(例えば、都市ネットワーク、入港検出器、移動ユニット、及びハンドヘルド検出器)が必要とされることがある。図5a及び5bは、微細構造ダイオード上のリーク電流を減少する方法を示し、図5c及び5dは、これらの技術を使用したダイオードのI-V特性及び中性子検出を示す(非特許文献8)。
【0018】
リーク電流の減少(すなわち、エッチングプロセス中に生成される欠陥の不動態化)を助けるために使用される方法としては、熱酸化、酸化膜コーティング、及びコンフォーマルドーピングが挙げられる。熱酸化では、酸化剤を高温で基板中に拡散させ、それと反応させることによって、露出したシリコン面に二酸化ケイ素(SiO)の薄層を熱成長させる。コンフォーマル成長は、酸化剤が気相にあり、キャビティの周囲と内部の全てを進みながら達成される。酸化膜コーティングでは、原子層堆積(ALD)又はプラズマ化学気相堆積(PECVD)等のコンフォーマルコーティング技術を使用して、薄い酸化膜を堆積する。コンフォーマルドーピングでは、微細構造の側壁が拡散されて、コンフォーマルPN接合を形成して、露出したシリコン表面におけるエッチング損傷を不動態化する。図5c及び5dを参照すると、コンフォーマルドーピングが最良の結果を与えている。
【0019】
本発明の実施形態において、コンフォーマルドーピングは、基板(例えば、シリコン)へのホウ素の固相拡散によって極めて簡便な方法で行うことができる。ホウ素(例えば、10B)充填は、中性子変換層として使用されるだけでなく、基板(例えば、シリコン)のコンフォーマルドーピングのためのホウ素源としても使用される。コンフォーマルドーピングは、損傷を受けた表面を不動態化し、キャビティ全体に導電層を形成して、より良好な電界分布を与える。図6aは、10Bの充填プロセス及び製造後のアニール後の100mm活性領域のI-V特性を示し、図6bは、中性子検出曲線を示す。リーク電流は著しく減少し、熱中性子検出効率はホウ素コンフォーマルドーピングと共に著しく増大した。
【0020】
図7は、シート抵抗又は抵抗率(1平方当たりのオーム(Ω/平方))対アニール時間(分)のプロットであり、10B充填及びアニールプロセス後の基板(例えば、シリコン)の抵抗を示す。図7を参照すると、基板(例えば、シリコン)へのホウ素の拡散が、熱処理後の基板のシート抵抗によって確認される。10B層を慎重に除去して、基板表面に接近させて、図7の結果を得た。
【0021】
任意の形状、幅/直径、及び深さ(60μmまで)を微細構造に使用することができる。図8a及び8bは、異なる開口部直径(図8a)及び幾何学的形状(図8b)の結果を示す。異なる形状とサイズを用いたシミュレーションにおいて、37%までの中性子検出効率を達成した。
【0022】
本発明の実施形態は、中性子変換層として、またコンフォーマルドーピングのためのホウ素源としてホウ素充填材料を利用する。浅い微細構造(深さ500μmまで(例えば、深さ60μmまで))は、関連技術の装置と比較して、高い熱中性子検出効率を達成しつつ使用することができる。本発明の実施形態の装置及び方法は、半導体(例えば、シリコン)微細構造のコンフォーマルドーピングを行う、簡単かつ費用効果のあるものである。
【0023】
本発明の実施形態及びその多くの利点は、例示としての以下の実施例から理解されるであろう。以下の実施例は、本発明の方法、用途、実施形態、及び変形例のいくつかを例示するものである。これらは、当然のことながら、本発明を限定するものとは考えられない。本発明に関して、多数の変更及び修正を行うことができる。
【0024】
実施例1
中性子検出器は、抵抗率>10,000Ω-cmの最上級の単面研磨n型フロートゾーンウェハを基板として用いて製造した。後のステップの間、拡散マスクとして作用する保護熱酸化物層を、1000℃で90分間成長させる前に、緩衝酸化物エッチング(BOE)を用いた標準酸化物ストリップを、未処理のウェハで行った。前面の酸化物を保護しながら、ウェハの裏面の酸化物を、BOEを用いてストリップした。ウェハの裏面をドープする直前に、周知のRCAクリーニングをウェハで行って、有機材料、微粒子、又は微量金属を除去した。その後、試料をリンドーピング炉に速やかに移し、950℃で30分間固相拡散を行って、ウェハ裏面全体に高導電率のn++膜を形成した。拡散後、拡散中に形成された薄いガラス層及び前のステップで成長させた熱酸化物を、ウェハ上の疎水性が目視で確認されるまでBOEを用いて除去した。ピラニアクリーニング、続いてフッ化水素酸(HF)ストリップを行って、前のステップから残った有機残留物を除去した。クリーニングの直後に、別の絶縁層誘電体(ILD)スタックを成長させ、必要になるまでドープされた裏面を保護しながら、前面ドーピング中に拡散マスクとして作用させた。ILDの第1の層を、1000℃で40分間熱成長させた酸化物であり、続いて、低圧化学蒸着(LP-CVD)によって、第2の層、窒化ケイ素を堆積させた。S1813フォトレジストを使用して、ウェハの前面をパターニングし、拡散窓を開いた。RIEを用いて拡散窓内のILDスタックを除去し、続いてBOEを用いて酸化物ストリップを、疎水性が目視で確認されるまでした。次いで、フォトレジストをストリップし、第2のRCAクリーニングを行って、ホウ素拡散プロセスのためのウェハを調製した。
【0025】
Borofilm-100スピンオンガラス(SOG)ドーパントの薄層を、クリーニングしたウェハにコーティングした後、200℃で20分間焼成して溶媒を除去した。その後、950℃で15分間ドーピングを行い、ホウ素ドーパントを露出したシリコン面に打ち込んだ。SOGからの残留ガラス層は、ウェハの反対側で先に行われたようにして、BOEを用いて除去された。アルミニウムの非常に薄い層を、電子ビーム蒸着によって堆積し、微細構造をエッチングするためのディープシリコンエッチング(DSE)プロセス中にハードマスクとして機能させた。前述したように、微細構造のパターンを、S1813フォトレジストを用いてアルミニウムに形成した。フォトレジストを除去し、次いで、ハードマスクとしてパターニングされたアルミニウムを用いた通常のDSEプロセスを使用して、微細構造をエッチングした。次いで、アルミニウムハードマスクをエッチング後に除去し、ピラニアクリーニングを行って、DSEプロセス中に堆積したポリマーを除去し、続いてHFクリーニングを行った。BOEを用いた金属堆積の直前に、疎水性が見られるまでプレメタルクリーニングを行った。ウェハを速やかにスパッタツールに移して、300nmのアルミニウム-シリコンコンタクトを堆積させた。基底圧は、少なくとも約1×10-7Torrに維持した。S1813を使用する最後のリソグラフィステップを行って、40℃でアルミニウムエッチング液を使用してアルミニウムをエッチングすることによって、活性領域内のアルミニウムコンタクトを画定した。次いで、ハードベークされたS1813フォトレジストを使用して、ウェハの前面を保護し、ウェハの裏面のILD積層体を、前に行われたように除去した。裏面の疎水性が観察されたら、前面のフォトレジストをストリップし、次いで、コンタクトをスパッタリングによって堆積させる前に、別のプレメタルクリーニングを裏面で行った。次に、製造プロセスの最終ステップとして、フォーミングガス中、430℃で30分間、コンタクトをアニールした。
【0026】
Keithley4200-SCSとHP4284AプレシジョンLCRメータを用いてI-V特性を測定して、装置の容量-電圧(C-V)を測定した。放射線検出のために、ポロニウム-210(Po-210)をアルファ源として使用し、カリホルニウム-252(Cf-252)を中性子源として使用した。Ortec142Aプリアンプは、バイアスを適用し、放射線源から発生するパルスのプリアンプを増幅するために使用され、パルスの整形は、Ortec575シェーピングアンプを用いて行われた。最後に、Ortec EASY-MCA-2Kマルチチャネルアナライザーを使用して、パルスがカウントされるビンを作製した。
【0027】
いくつかの異なる実験を行って、I-V特性中性子検出結果及びシート抵抗を得た。結果を図2a、3a、3b、4a、4b、6a、6b、及び7に示す。これらの結果は、本明細書で上述してある。図8a及び8bは、異なる開口部直径(40μmの深さを有する円形孔の幾何学的形状、図8a)及び異なる幾何学的形状(4μmの一定の開口部幅/直径を有する、図8b)を有する本発明の実施形態のダイオードの固有効率をシミュレートするために行ったシミュレーションの結果を示す。
【0028】
実施例2
10B粉末をドープして中性子検出器を作製した。10Bの粉末をエタノール中に懸濁し、平面状のシリコンウェハに分散させ、950℃でアニールした。アニール後、残留ホウ素粉末を除去し、表面をHFでクリーニングして、アニール中に成長した熱酸化物を除去した。シリコンウェハはn型であったので、10Bはp+ドーピングが起こすために、最初にウェハを逆ドーピングしなければならなかった。
【0029】
ダイオード製造プロセスを図9図10、及び図11に示す。>1×10Ω-cmの抵抗率を有する最上級の片面研磨n型フロートゾーンウェハを基板として使用した。後の製造工程中に拡散マスクとして作用する、厚さ200nmの熱酸化物層を成長させた。緩衝酸化物エッチング(BOE)を使用して、ウェハの裏面上の任意の酸化物を除去した。RCAクリーンを次に行った、有機材料、微粒子、又は微量金属を除去した。基板は、固体拡散を用いて、リンドーピングのために速やかに移された。これにより、図9のステップ1に示すように、ウェハの裏面に高導電性のn+層が形成された。ピラニアクリーンに続いて、フッ化水素酸(HF)ストリップが行われ、有機残留物が除去され、絶縁誘電体(ILD)スタックが堆積された。ILDは、ウェハの裏面を保護しながら、前面ドーピングの間、拡散バリアとして作用する。ILDスタックは、厚さ200nmの酸化シリコンと、50nmの低圧化学蒸着(LP-CVD)堆積窒化シリコンとを含む。次いで、ウェハの前面をパターニングして、誘電体スタック内の拡散窓を開き(ステップ1)、第2のRCAクリーニングを行って、ホウ素拡散プロセスのために、Borofilm-100SOGドーパントの薄層を使用してウェハの前面を調製した。Borofilmをスピニングした後、ウェハを950℃で15分間アニールして、ホウ素ドーパントを露出したシリコン表面に打ち込んだ。これにより、図9のステップ2に示されるように、ウェハのパターニングされた前面にp+層が形成される。次に、アルミニウムの薄層が堆積されて、ディープシリコンエッチング(DSE)プロセスのためのハードマスクとして作用した。その後、微細構造を、DSEプロセスを用いてエッチングした。アルミニウムハードマスクは、DSEエッチング後に除去され、ピラニアクリーンを行って、DSEプロセス中に堆積されたポリマーを除去した。
【0030】
微細構造の画定及びエッチングに続いて、5μm未満の粒子サイズを有する市販の99.9%純度の濃縮ホウ素(96%10B)(それらの大部分は100~500nmの粒子サイズを有する)を使用して、エッチングされたキャビティを充填した。まず、エタノール中の10B粉末の懸濁液を調製し、遠心分離を用いて微細構造をバックフィリングした。遠心分離プロセスのために、(予めダイシングされた)微細構造ウェハを、トレンチを上向きにして、遠心分離管の底部にある有孔試料ホルダーに配置した。次いで、管にエタノール-10B懸濁液を充填し、Beckmann-Coulter超遠心機中で7000rpmで回転させた。このプロセスは、図9(ステップ3)に示されるように、10B粉末を懸濁液から微細構造ウェハのトレンチ内に送り込む。過剰の10B粉末は回収され、再利用される。図10に充填プロセスを模式的に示す。
【0031】
次いで、10B充填微細構造を950℃でアニールして、トレンチ内のコンフォーマルドーピング(ステップ3)、同様に部分焼結を行って、充填物をさらに緻密化した。このステップの後に、BOEを用いたプレメタルクリーニング及びウェハの前面の300nmのアルミニウム-シリコン(Al-Si)コンタクトが続いた。最終リソグラフィステップを行って、Al-Siコンタクトをエッチングすることによって、活性領域内のコンタクトを画定した。製造プロセスにおける最終ステップは、裏面コンタクトの堆積と、それに続くフォーミングガス中での430℃でのアニールであった(図9のステップ4)。図11に、200mmの完全に製造された微細構造素子を示す。
【0032】
試験のためのセットアップの模式図を図18に示す。中性子源として、水希釈ポリエステルシールドに保持された減速カリホルニウム-252(252Cf)を使用した。測定位置の熱中性子束は、9900熱中性子/mm/時であった。Ortec142Aプリアンプを使用して、ダイオードにバイアスを適用し、ダイオード内のアルファによって生成されたパルスをプリアンプした。パルス整形は、Ortec575整形アンプで行った。Ortec EASY-MCA-2Kマルチチャネルアナライザーを使用して、パルス/チャネルを測定した。
【0033】
図12は、10B溶液が、アニール後にシリコンをうまくドープし、約10Ω/平方から約8×10Ω/平方にシート抵抗を効果的に減少させたことを示している。この結果は、従来のスピンオンガラス(SOG)技術を用いて典型的に得られるシート抵抗(約2×10Ω/平方)に匹敵し、図12に星印で示されている。シート抵抗の減少は、10Bドーピングがドーピング濃度を増加させ、シリコンがn型からp型にカウンタードーピングによって変化することを示している。ドーピング濃度は、15分間のアニール後に飽和した。この拡散はまた、それぞれ非ドープ及びドープ微細構造ダイオードのリーク電流密度の減少から明らかなように、微細構造ダイオードに連続したp+-n接合部をもたらした。これは、図12の挿入図に示されている。低いリーク電流が、トレンチ形成中の表面状態のエッチング損傷の減少を示している。コンフォーマルドーピングによって達成されるこの低いリーク電流は、高い中性子検出効率を達成するために重要である。
【0034】
実施例3
モンテカルロ核粒子(MCNP)シミュレーションを用いて、(a)円形孔と(b)トレンチの2つの基本的な微細構造設計を考察し、中性子検出のための幾何学的形状と比較した。
【0035】
マイクロ構造化ダイオードのための予想される熱中性子検出効率は、MCNPコード(v6.2)を使用して最初にシミュレートされた(全体が参考文献として援用される非特許文献31及び非特許文献32も参照のこと)。中性子捕獲イオンアルゴリズムを用いて、10B(n,α)Liの反応による10B膜中の中性子捕獲を調べた。次いで、MCNPのパルス高さタリーツールを使用して、ダイオードのバルク中のアルファ粒子によって蓄積した電荷を求めた。
【0036】
この解析に用いた検出器の概略形状を図13に示す。その潜在的な物理的ロバスト性のため、シミュレーション及び実験研究のために円形孔の幾何学的形状を選択した。円形の幾何学的形状は、10B充填微細構造に加えて、ダイオードの上部に、3μm厚の10B層を含む。図14は、10B充填微細構造の走査型電子顕微鏡(SEM)断面図である。熱中性子の約90%がこの深さ(又はその範囲内)で捕獲されるので、微細構造の深さを40μmで一定に保った。孔径と間隔を変えた結果を図15に示す。4μmの孔間隔では、孔径の影響で約13%の効率となった。しかしながら、孔間隔を2μmに減少させると、26%までの効率が得られる。径が大きいほど、半導体に到達するまでに10B層に捕獲されるアルファ粒子が多くなるため、効率は孔径に反比例するように見えた。これは、10B変換材料中のアルファ粒子の約3μm領域に直接的に関連している。従って、孔径及び間隔を小さくすることによって、シリコン内の空間電荷領域に到達する荷電粒子の確率が増え、結果として、中性子検出効率がより高くなる。
【0037】
実施例4
200mm領域を有する平面と微細構造ダイオードの両方(本発明の実施形態による)の熱中性子検出性能を、高密度ポリエチレンで減速された252Cf源を用いて測定した。検出器は、中性子源から15cmの真空下、ステンレススチール暗室内で垂直に整列させた。この位置での熱中性子束(9900中性子/mm/h)は、測定を実施する前に、30%の効率で、較正された中性子検出器を使用して決定した。同じプロセスフローを用いて作製した平面検出器の固有熱中性子検出効率は、300keVの下限ディスクリミネータで約3.5%であった。コンフォーマルドーピングは、再結合前にダイオードの空乏領域に到達する電荷の確率を高め、熱中性子検出効率を12.5%まで高める(図16)。コンフォーマルドーピングプロセスを用いて、連続p+層を生成しながら、微細構造の側壁のエッチング損傷を排除すると、良好な熱中性子検出効率が得られる。これは、図15に示すように、MCNPシミュレーションとよく一致している。同一面積の平面検出器と比較した場合、200mm微細構造検出器のチャンネルに対する総計数の増加が図16に示されている。この結果によれば、微細構造検出器にコンフォーマルドーピングすることにより、熱中性子検出効率が増大することがわかる。増大した効率は、平面検出器と比較した場合、コンフォーマルドープされたダイオードにおける大きな活性領域に起因する。同様に、微細構造検出器内に大量の10Bが存在すると、中性子相互作用の可能性が増大する。これらの2つの効果の組み合わせは、平面検出器と比較した場合、コンフォーマルドープされた微細構造検出器において、高い中性子検出効率が得られる。
【0038】
円形孔微細構造設計にコンフォーマルドープされた側壁を組み込むと、平面検出器よりも実質的に改善されることが分かる。トレンチと比較してこの孔設計の検出器の性能が低いのは、所与の寸法に対するトレンチと比較して、孔内の10Bが比較的少ないためである。
【0039】
実施例5
4μmの一定のトレンチ幅でトレンチ微細構造を有する装置の中性子検出効率を試験した。結果を図17に示す。トレンチ間の間隔を4μmから2μmに減少することにより、実験効率は約14%から21%に増大した。トレンチ間の間隔を2μmに減少させることにより、検出器は、4μm間隔のトレンチを有するものと比較して、より多く10Bを有することが可能になる。さらに、シリコンは、10Bで生成されたアルファを捕獲するために約1.3μmの厚さを必要とする。従って、トレンチ間の2μm間隔は、アルファによって蓄積したエネルギーを完全に吸収するのに十分である。これによって、より多くの中性子が中性子変換材料と相互作用することが可能となり、その結果、中性子検出効率が増大する。
【0040】
実験結果から得られた効率は、図17に示すように、MCNPシミュレーション効率と同じ傾向に従う。MCNPシミュレーション効率と比較すると、実験効率は、円形孔及びトレンチの幾何学的形状を有する検出器において、それぞれ15%及び25%以内である。固有熱中性子検出効率の不一致は、微細構造中の10Bの充填密度の違いに起因する。シミュレーション微細構造中の10Bの充填密度は、100%と仮定した。これは、100%の微細構造充填の材料の固体ブロックのようなものであり、最大可能変換効率を与える。しかし、このような実験における10B粉末の完全充填は現実的ではない。
【0041】
概して、同位体濃縮10B粉末の中性子変換材料とコンフォーマルドーピング源としての二重使用が実証された。実験結果から、MCNPシミュレーションを用いて予測した熱中性子検出効率が立証された。微細構造ダイオードの改善された効率は、バックフィリング10Bの半導体中への拡散の結果、側壁のコンフォーマルドーピングと改善された電荷収集によるものである。コンフォーマルドーピングのさらなる証拠は、微細構造ダイオードにおけるリーク電流の低下によって実証された。
【0042】
本明細書に記載した実施例及び態様は例示のみを目的とし、当業者にはそれらに照らした様々な修正又は変更が示唆され、それらは、本明細書の趣旨及び範囲内に含まれるものとする。
【0043】
本明細書において言及又は引用された全ての特許、特許出願、仮出願、及び刊行物(「先行技術文献」の部におけるものを含む)は、それらが本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、全ての図面及び表を含むそれらの全体が参照により援用される。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】