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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】電解液
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230315BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20230315BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20230315BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0525
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546405
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 US2021015857
(87)【国際公開番号】W WO2021155250
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/968,684
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509354042
【氏名又は名称】アセンド・パフォーマンス・マテリアルズ・オペレーションズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ASCEND PERFORMANCE MATERIALS OPERATIONS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】イーバート,ジェファーソン・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘーゼルタイン,ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ07
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ07
5H029HJ18
5H029HJ19
5H029HJ20
(57)【要約】
イオン成分、ベース溶媒、および添加剤パッケージを含む電解液。添加剤パッケージは、トリニトリル化合物および環状カーボネートを含む。電解液は、電解液の全重量に基づいて、19wt%よりも多い量の対称直鎖状カーボネートを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン成分、
ベース溶媒、ここでベース溶媒は場合により対称直鎖状カーボネートを含む、ならびに
添加剤パッケージ、ここで添加剤パッケージは、
化学構造C2x-1(CN)(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、および
以下の化学構造:
【化1】
(好ましくは、式中、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、水素、ハロゲン、(C~C10)アルキル、または(C~C10)ハロアルキル、好ましくは、ビニレンカーボネートまたはエチレンカーボネート、またはその組み合わせから選択される)を有する環状カーボネート化合物を含む、
を含む電解液であって、
前記電解液の全重量に基づいて、19wt%よりも多い量で、前記対称直鎖状カーボネート、好ましくはジエチルカーボネート、またはジメチルカーボネート、またはその組み合わせを含む、電解液。
【請求項2】
前記環状カーボネート化合物が、フルオロエチレンカーボネートを含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
環状カーボネート30wt%未満、好ましくはエチレンカーボネート30wt%未満を含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
フルオロエチレンカーボネート6wt%未満を含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項5】
50wt%未満の量で、非対称直鎖状カーボネート、好ましくはエチルメチルカーボネートをさらに含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項6】
前記トリニトリル化合物が、トリシアノヘキサンを含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項7】
前記環状カーボネート化合物の前記トリニトリル化合物に対する重量比が、0.5:1~5:1である、請求項1に記載の電解液。
【請求項8】
前記添加剤パッケージが、スルホネートをさらに含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項9】
前記トリニトリル化合物がトリシアノヘキサンを含み、カーボネート化合物がビニリデンカーボネートを含み、溶液が、電圧降下0.25V未満を示す、請求項1に記載の電解液。
【請求項10】
メチレンメタンジスルホネートまたはフルオロエチレンカーボネート、またはその組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項11】
20サイクルにわたって0.85よりも高い第1サイクルクーロン効率、および/または25サイクルにわたって20%未満のインピーダンス増大を示す、請求項1に記載の電解液。
【請求項12】
イオン成分、
ベース溶媒、ならびに
添加剤パッケージ、ここで添加剤パッケージは、
化学構造C2x-1(CN)(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、および
以下の化学構造:
【化2】
(式中、aおよびbは独立して1~4である)を有するスルホネート化合物を含む、
を含む電解液であって、
前記電解液の全重量に基づいて、19wt%よりも多い量の対称直鎖状カーボネートを含む、電解液。
【請求項13】
前記トリニトリル化合物がトリシアノヘキサンを含む、請求項12に記載の電解液。
【請求項14】
カソード、ここでカソードは場合によりリチウム含有遷移金属複合酸化物を含むカソード活物質を有する、
アノード、ここでアノードは場合によりグラファイトを含む、ならびに
電解液、ここで電解液は、
イオン成分、
ベース溶媒、および
添加剤パッケージ、ここで添加剤パッケージは、
化学構造C2x-1(CN)(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、および
以下の化学構造:
【化3】
(式中、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、水素、ハロゲン、(C~C10)アルキル、または(C~C10)ハロアルキルから選択される)を有する環状カーボネート化合物を含む、を含む
を含む二次電池であって、
前記電解液が、前記電解液の全重量に基づいて、19wt%よりも多い量の対称直鎖状カーボネートを含む、二次電池。
【請求項15】
電池が、4.48ボルトで動作される場合、5日ガス発生値4.9mL未満を示す、請求項14に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2020年1月31日出願の米国特許仮出願第62/968684号に対して優先権を主張するものであり、それは、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
[0002]本開示は、一般に、例えば、二次電池、例えば充電式バッテリーまたは他の電気機器において使用するための電解液に関する。より詳細には、本開示は、トリニトリル化合物を含み、改善された性能特性を示す電解液を提供する。
【背景技術】
【0003】
[0003]充電式バッテリーまたは蓄電池としても既知である二次電池は、何度も充電し、放電し、再充電することができる、電気的バッテリーの種類である。用語「二次」電池により、再充電できない一次電池からこれらのバッテリーが区別された。二次電池は、カソード、アノード、および触媒として働く電解液を含む。充電するとき、陽イオンの集積がカソードで発生する。結果として、電子がアノードからカソードへ向かって移動し、カソードとアノードとの間で電位を生じる。蓄積する電圧は、正のカソードから外部負荷を通って、負のアノードへ戻る通過電流によって放出される。
【0004】
[0004]電解液は、電位を生じるイオン流動を支える故に、いずれの二次電池にも重要な成分である。電解液は、充電でカソードからアノードへのイオンの動き、放電で逆のイオンの動きを促進することによって、二次電池を導電性にする触媒として作用する。電解液が、バッテリーの電源能力、高温および/または低温でのバッテリー性能、および使用の安全性に影響を及ぼし得るので、二次電池の性能は、電解液に極めて依存する。二次電池の機能を改善するために、電解液は、好ましくは、電子流動に対する低い抵抗、例えば、インピーダンスを示し、広範囲の温度にわたって、一貫して安全に作動する。リチウムイオン電池は、広く開発され、近年使用される、二次電池の種類である。例えば、リチウムイオン電池は、パワーポータブル電子機器に使用される。典型的なリチウムイオン電池は、グラファイト系アノード、リチウム含有遷移金属複合酸化物、および非水性有機電解液を含む。
【0005】
[0005]電解液の選択は、リチウムイオン電池において、とりわけ重要であり得る。リチウムイオン電池において、固体電解質相間界面としても既知である不動態化膜が、アノードの表面に形成する。固体電解質相間界面は、電気絶縁性をもたらすが、通常のバッテリー機能を支えるための、十分なイオン伝導性も有する。さらに、固体電解質相間界面は、劣化からアノードを保護し、リチウムイオン電池の長寿命に寄与する。固体電解質相間界面の形成中に、電解液の一部が消費される。したがって、電解液の選択、例えば、電解液中のある種の成分または添加剤の包含によって、固体電解質相間界面の形成を容易にすることにより、または固体電解質相間界面の劣化を防ぐことにより、リチウムイオン電池の機能性を改善することができる。
【0006】
[0006]米国特許第9819057号には、化学式1によって表される化合物を含む、再充電可能なリチウム電池が開示される。化学式1において、k、l、およびmのそれぞれは、独立して、整数0~20であり、nは整数1~7であり、k、l、およびmは、化学式1の化合物が非対称構造を有するように選択される。化学式1の化合物は、再充電可能なリチウム電池の正極、負極、または電解質に含まれ得る。
【0007】
[0007]電解液は、改善された二次電池、例えばリチウムイオン電池の開発に不可欠である。ポータブル電子機器は発展し続けている故に、製造者および消費者は、高性能な二次電池を要求する。これに関して、予想外の改善された性能特性、例えば、インピーダンス増大を示す二次電池、例えばリチウムイオン電池で使用するための、意外な化学的特徴、例えば、分極率、引火点、および/または粘度を有する新規の電解液が必要である。
【発明の概要】
【0008】
[0008]本開示は、電解液、例えば、二次電池において使用するものを提供する。一部の場合において、本開示は、イオン成分、場合により電解液の全重量に基づいて19wt%よりも多い量の対称直鎖状カーボネート(ジエチルカーボネートまたはジメチルカーボネート、またはその組み合わせ)を含むベース溶媒、および添加剤パッケージを含む電解液を記載する。添加剤パッケージは、本明細書に記載の化学構造を有するトリニトリル化合物(トリシアノヘキサン)、および(30wt%未満の)本明細書に記載の化学構造を有する環状カーボネート化合物(ビニレンカーボネートもしくはエチレンカーボネート、もしくはその組み合わせ、またはフルオロエチレンカーボネート(6wt%未満))を含む。電解液は、50wt%未満の量の、非対称直鎖状カーボネート、例えば、エチルメチルカーボネート、場合によりスルホネート、例えば、メチレンメタンジスルホネートをさらに含むことができる。環状カーボネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比は、0.5:1~5:1であってもよい。一部の場合において、トリニトリル化合物はトリシアノヘキサンを含み、カーボネート化合物はビニリデンカーボネートを含み、溶液は電圧降下0.25V未満を示す。電解液は、20サイクルにわたって0.85よりも高い第1サイクルクーロン効率、および/または25サイクルにわたって20%未満のインピーダンス増大を示すことができる。一部の場合において、本開示は、イオン成分、ベース溶媒、ならびに本明細書に記載の化学構造を有する、トリニトリル化合物およびスルホネート化合物を含む添加剤パッケージを含む電解液に関する。一部の実施形態において、本開示は、場合によりリチウム含有遷移金属複合酸化物を含むカソード活物質を有するカソード、場合によりグラファイトを含むアノード、および電解液を含む二次電池に関する。電池は、4.48ボルトで動作される場合、5日ガス発生値(5 day gas generation value)4.9mL未満を示すことができる。
【0009】
[0009]開示された技術の性質および有利な点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および図を参照することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0010]本開示の実施形態の実施例および比較例について、規格化容量対サイクルのプロットを示す図である。
図2】[0011]本開示の実施形態の実施例および比較例について、デルタV対サイクルのプロットを示す図である。
図3】[0012]本開示の実施形態の実施例および比較例について、規格化容量対サイクルのプロットを示す図である。
図4】[0013]本開示の実施形態の実施例および比較例について、(零点規正)デルタV対サイクルのプロットを示す図である。
図5】[0014]本開示の実施形態の実施例および比較例について、規格化容量対サイクルのプロットを示す図である。
図6】[0015]本開示の実施形態の実施例および比較例について、(零点規正)デルタV対サイクルのプロットを示す図である。
図7】[0016]本開示の実施形態の実施例および比較例について、規格化容量対サイクルのプロットを示す図である。
図8】[0017]本開示の実施形態の実施例および比較例について、(零点規正)デルタV対サイクルのプロットを示す図である。
図9】[0018]本開示の実施形態の実施例および比較例について、電圧対時間のプロットを示す図である。
図10】[0019]本開示の実施形態の実施例および比較例について、電圧対時間のプロットを示す図である。
図11】[0020]本開示の実施形態の実施例および比較例について、規格化放電容量対サイクルのプロットを示す図である。
図12】[0021]本開示の実施形態の実施例および比較例について、(零点規正)デルタV対サイクルのプロットを示す図である。
図13】[0022]本開示の実施形態の実施例および比較例について、規格化放電容量対サイクルのプロットを示す図である。
図14】[0023]本開示の実施形態の実施例および比較例について、放電容量対サイクルのプロットを示す図である。
図15】[0024]本開示の実施形態の実施例および比較例について、放電容量対サイクルのプロットを示す図である。
図16】[0025]本開示の実施形態の実施例および比較例について、エネルギー効率対サイクルのプロットを示す図である。
図17】[0026]本開示の実施形態の実施例および比較例について、デルタV対サイクルのプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
緒言
[0027]従来の電解液は、イオン成分およびベース溶媒を含む。加えて、添加剤パッケージは、しばしば含まれて、電解質組成物が利用される電池の性能を改善する特質をもたらす。従来のベース溶媒は、カーボネート、例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)を含むことができる。しかし、これらのベース溶媒には、従来の添加剤パッケージと共に用いられる場合、粘度および分極率、ならびに低い引火点に伴う問題がある。結果として、従来の電解質組成物を用いるバッテリー電池は、他の欠点の中でも、インピーダンス増大、クーロン効率(CE)、容量保持、およびガス発生値に関して劣った性能を示す。
【0012】
[0028]ここで、添加剤パッケージおよびベース溶媒の特有の組み合わせは、相乗効果的な化学的特徴、例えば、分極率、引火点、および/または粘度を示す電解質組成物をもたらすことが見出された。さらに、様々なバッテリー電池において用いられる場合、これらの電解質組成物により、バッテリー性能特性における予想外の、相乗効果的な改善、例えば、低いインピーダンス増大、優れたCE、および容量保持、ならびに低レベルのガス発生および誘電率がもたらされることが見出された。トリニトリルおよび環状カーボネートの組み合わせは、本明細書で開示される特定のベース溶媒と共に用いられる場合、これらの特質に寄与する。トリニトリル添加剤の使用により、他の特徴、例えば粘度に悪影響を及ぼすことなく、分極率および引火点の性能が有利に改善されることが見出された。別の言い方をすれば、場合により、開示された濃度で用いられる前述の成分によって、より低い粘度を維持することが見出され、それによって、分極率および引火点の特徴を依然として維持しながら、予想外のインピーダンス増大性能がもたらされる。
【0013】
[0029]添加剤パッケージ中の添加剤に加えて、ベース溶媒中、および/または添加剤パッケージ中の様々なカーボネートの組み合わせが、電解液の全体の性能において重要であることが見出された。理論に束縛されることなく、電解液中の化合物の含量および化学構造は、性能に有意な効果を有すると考えられる。さらに、特に、環状および対称の、直鎖状のカーボネートの相乗効果的な組み合わせは、予想外なことに、有利な電解質組成物の特徴に寄与することが見出され、それにより、電解質の性能において有意な差がもたらされる。一例として、開示されたレベルで、対称直鎖状カーボネート、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)および/またはDECの濃度を維持することにより、分極率、引火点、および/または粘度の相乗効果的なバランスがもたらされる。従来の電解液は、より少ない量の対称直鎖状カーボネートに加えて、有意により多い量の環状カーボネート、例えば、ECおよびVCを用い、本明細書の実施例に示すように、有意により劣った性能を示す。
【0014】
[0030]上記の通り、ニトリル化合物の存在と併せて、電解液中のカーボネート化合物の含量および構造(直鎖状に対して環状、対称に対して非対称)により、上記で開示された、意外な化学的特徴および性能特性がもたらされることが明らかになった。
【0015】
[0031]本開示は、二次電池、例えばリチウムイオン電池において使用するための電解液を提供する。電解液は、イオン成分、ベース溶媒、および添加剤パッケージを含む。一部の場合において、実際には、イオン成分をベース溶媒中に溶解させ、添加剤パッケージを、場合により、生成された溶液に添加する。本開示はまた、本明細書に記載された電解液を利用する二次電池、例えばリチウムイオン電池も記載する。一部の実施形態において、電解液は、イオン成分、対称直鎖状カーボネート、トリニトリル化合物、および環状カーボネートを含む。
【0016】
[0032]一部の実施形態において、電解液は、トリニトリル化合物およびカーボネート化合物を、例えば、添加剤パッケージの成分として含む。一部の場合において、電解液は、スルホネート化合物をさらに含む。以下に説明するように、電解液のトリニトリル化合物、カーボネート化合物、スルホネート化合物は、様々な形態をとることができる。
【0017】
[0033]一部の実施形態において、例えば、電解液は、トリニトリル化合物、例えばトリシアノヘキサン(TCH)およびカーボネート化合物、例えばビニレンカーボネート(VC)の混合物を含むことができる。他の実施形態において、電解液は、トリニトリル化合物、例えばTCHおよびカーボネート化合物、例えばフルオロエチレンカーボネート(FEC)の混合物を含むことができる。他の実施形態において、電解液は、トリニトリル化合物、例えばTCH、カーボネート化合物、例えばVC、およびスルホネート化合物、メチレンメチルジスルホネート(MMDS)の混合物を含むことができる。
【0018】
[0034]一部の場合において、電解質組成物は、ニトリル化合物およびスルホネート、例えば、プロパンスルトン(PS)を含む。
添加剤パッケージ
[0035]添加剤パッケージは、トリニトリル化合物、場合により別の成分、例えばカーボネート化合物(添加剤として)を含む。一部の場合において、添加剤パッケージおよびベース溶媒はそれぞれ、カーボネート化合物を含み、特定の例において、同じカーボネート化合物がベース溶媒と添加剤パッケージとの両方において存在すると考察される。一部の実施形態において、ベース溶媒は、イオン化合物を初めに溶解させた溶媒である。この場合、ベース溶媒がイオン化合物を初めに溶解させたカーボネートであるならば、そのカーボネートは、ベース溶媒の成分であると考えられる。一部の実施形態において、添加剤パッケージが、ベース溶媒と組み合わせたカーボネートを含む場合、そのカーボネートは、添加剤パッケージの成分であると考えられる。一部の場合において、カーボネート化合物は、ベース溶媒として、かつ添加剤パッケージの成分として作用することができる。
【0019】
トリニトリル化合物
[0036]本明細書に記載の電解液は、添加剤パッケージ中に、添加剤成分としてトリニトリル化合物を含む。トリニトリル化合物は、3個のシアノ官能基またはニトリル官能基を含む、任意の有機化合物であってもよい。発明者らは、これらのトリニトリル化合物の存在により、有利なことに、とりわけ、電解液によって高まった安定化効果、例えば、高められた、または改善された吸湿活性がもたらされ得ることを見出した。例えば、トリニトリル化合物のニトリル官能基は、電解液中に存在する水を回収することができる。電解液中の水の存在は、二次電池の劣化に寄与することがあり、機能および/または使用の安全性を損なうことになる。トリニトリル化合物は、おそらく3個のニトリル基の配置を含む化学構造故に、電解液の他の成分と組み合わされる場合、安定化の利点に加えて、前述された性能特性の多くにも寄与する。
【0020】
[0037]一部の実施形態において、トリニトリル化合物は、炭素原子の飽和鎖に、3個のシアノ官能基またはニトリル官能基を有する有機化合物である。例えば、一部の実施形態において、トリニトリル化合物は、トリニトリルアルカン、例えば、化学式C2x-1(CN)(式中、xは4~10である)を有する有機化合物である。例示的なトリニトリル化合物には、ブタントリニトリル(例えば、トリシアノブタン)、ペンタントリニトリル(例えば、トリシアノペンタン)、ヘキサントリニトリル(例えば、TCH)、ヘプタントリニトリル(例えば、トリシアノヘプタン)、オクタントリニトリル(例えば、トリシアノオクタン)、ノナントリニトリル(例えば、トリシアノノナン)、およびデカントリニトリル(例えば、トリシアノデカン)、ならびにその組み合わせが挙げられる。一部の場合において、トリニトリル化合物は、TCH、ブタントリニトリル、もしくはペンタントリニトリル、またはその組み合わせを含む。
【0021】
[0038]化学構造に関して、トリニトリル化合物は、以下の構造:
【0022】
【化1】
【0023】
[0039](式中、a、b、およびcは、独立して0~4であり、a、b、およびcの合計は4~10である)を有することができる。
[0040]電解液の添加剤パッケージ中に存在するトリニトリル化合物の含量は、特に限定されず、様々であることができる。一実施形態において、電解液の添加剤パッケージは、トリニトリル化合物を15wt.%~45wt.%、例えば、15wt.%~42wt.%、15wt.%~40wt.%、15wt.%~38wt.%、15wt.%~35wt.%、18wt.%~45wt.%、18wt.%~42wt.%、18wt.%~40wt.%、18wt.%~38wt.%、18wt.%~35wt.%、20wt.%~45wt.%、20wt.%~42wt.%、20wt.%~40wt.%、20wt.%~38wt.%、20wt.%~35wt.%、22wt.%~45wt.%、22wt.%~42wt.%、22wt.%~40wt.%、22wt.%~38wt.%、22wt.%~35wt.%、24wt.%~42wt.%、24wt.%~40wt.%、24wt.%~38wt.%、または24wt.%~35wt.%含む。下限に関して、電解液の添加剤パッケージは、トリニトリル化合物を15wt.%よりも多く、例えば、18wt.%よりも多く、20wt.%よりも多く、22wt.%よりも多く、または24wt.%よりも多く含むことができる。上限に関して、電解液の添加剤パッケージは、トリニトリル化合物を45wt.%未満、例えば、42wt.%未満、40wt.%未満、38wt.%未満、または35wt.%未満で含むことができる。
【0024】
[0041]一部の場合において、トリニトリル化合物は、全電解液の重量パーセントに関して特徴づけることができる。例えば、電解液は、トリニトリル化合物を0.01wt%~10wt%、例えば、0.05wt%~7wt%、0.1wt%~5wt%、0.1wt%~3wt%、0.5wt%~5wt%、0.5wt%~3wt%、または0.5wt%~2wt%含むことができる。上限に関して、電解液は、トリニトリル化合物を10wt%未満、例えば、7wt%未満、5wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1.5wt%未満、または1wt%未満含むことができる。下限に関して、電解液は、トリニトリル化合物を0.01wt%よりも多く、例えば、0.05wt%よりも多く、0.08wt%よりも多く、0.1wt%よりも多く、0.3wt%よりも多く、0.5wt%よりも多く、または1wt%よりも多く含むことができる。
【0025】
カーボネート化合物
[0042]本明細書に記載の電解液の添加剤パッケージは、トリニトリル化合物に加えて、カーボネート化合物、例えば、環状カーボネート化合物を含む。一部の場合において、添加剤パッケージは、トリニトリル化合物よりもより多くの環状カーボネート化合物(重量で)を、例えば、少なくとも10%より多く、少なくとも20%より多く、少なくとも50%より多く、少なくとも75%より多く、少なくとも100%より多く、または少なくとも125%より多く含む。
【0026】
[0043]カーボネート化合物は、任意の炭酸のエステル、例えば、2個のアルコキシ官能基の側面にある、1個のカルボニル官能基を含む有機化合物であってもよい。発明者らは、これらのカーボネート化合物の存在により、有利なことに、とりわけ、ニトリル化合物のニトリル官能性とバランスがとれる場合、電解液の改善された機能がもたらされることを見出した。例えば、カーボネート化合物の包含により、より広い温度範囲にわたって、電解液の性能を改善することができる。
【0027】
[0044]一部の場合において、ベース溶媒および添加剤パッケージは、カーボネート化合物を含む。一部の実施形態において、ベース溶媒(中のカーボネート化合物)は、イオン化合物を初めに溶解させた溶媒であり、および/または添加剤パッケージ(中のカーボネート化合物)は、その後、ベース溶媒/イオン化合物と組み合わされる成分である。一部の場合において、カーボネート化合物は、ベース溶媒の成分として、かつ添加剤パッケージの成分として作用することができる。
【0028】
[0045]カーボネート化合物のアルコキシ官能基の構造は、特に限定されず、様々であることができる。一部の実施形態において、カーボネート化合物の2個のアルコキシ官能基は同じであり、他の実施形態において、2個のアルコキシ官能基は互いに異なる。それぞれのアルコキシ官能基は、脂肪族または芳香族の構成成分から選択することができる。好適な脂肪族アルコキシ官能基の例には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(例えば、n-プロポキシまたはイソプロポキシ)、およびブトキシ(butaoxy)(例えば、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、またはtert-ブトキシ)が挙げられる。好適な芳香族官能基の例には、フェノキシ基およびベンジルオキシ基が挙げられる。例示的なカーボネート化合物には、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジベンジルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、メチルベンジルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、エチルベンジルカーボネート、プロピルブチルカーボネート、プロピルフェニルカーボネート、プロピルベンジルカーボネート、ブチルフェニルカーボネート、ブチルベンジルカーボネート、およびフェニルベンジルカーボネートが挙げられる。
【0029】
[0046]カーボネート化合物は、炭酸の環状エステルであってもよく、それによって、2個のアルコキシ官能基が炭素ブリッジによって連結される。一部の実施形態において、カーボネート化合物は、不飽和炭素鎖によって結合された、炭酸の環状エステルである。化学構造に関して、これらの実施形態のカーボネート化合物は、以下の構造:
【0030】
【化2】
【0031】
[0047](式中、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン、(C~C10)アルキル、または(C~C10)ハロアルキルから選択される)を有することができる。例えば、一部の実施形態において、RおよびRのそれぞれは水素であり、カーボネート化合物はビニレンカーボネートである。
【0032】
[0048]一部の実施形態において、カーボネート化合物は、飽和炭素鎖によって結合された、炭酸の環状エステルである。化学構造に関して、これらの実施形態のカーボネート化合物は、以下の構造:
【0033】
【化3】
【0034】
[0049](式中、R、R、R、およびRは、独立して、水素、ハロゲン、(C1~C10)アルキル、または(C1~C10)ハロアルキルから選択される)を有することができる。例えば、一部の実施形態において、R、R、R、およびRのそれぞれは水素であり、カーボネート化合物はエチレンカーボネートである。
【0035】
[0050]一部の実施形態において、R、R、R、R、R、およびRの1つまたは複数は、ハロゲンである。好適なハロゲンの例には、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。一部の実施形態において、例えば、カーボネート化合物は、フルオロビニレンカーボネート、クロロビニレンカーボネート、ブロモビニレンカーボネート、ヨードビニレンカーボネート、ジフルオロビニレンカーボネート、ジクロロビニレンカーボネート、ジブロモビニレンカーボネート、ジヨードビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ヨードエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ジヨードエチレンカーボネート、トリフルオロエチレンカーボネート、トリクロロエチレンカーボネート、トリブロモエチレンカーボネート、トリヨードエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、テトラクロロエチレンカーボネート、テトラブロモエチレンカーボネート、テトラヨードエチレンカーボネートであってもよい。一部の実施形態において、カーボネート化合物は、フルオロエチレンカーボネートである。
【0036】
[0051]一部の実施形態において、R、R、R、R、R、およびRの1つまたは複数は、アルキル基である。好適なアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシル基が挙げられる。一部の実施形態において、例えば、カーボネート化合物は、置換または非置換の、4-メチル-1,3,-ジオキソール-2-オン、4-エチル-1,3,-ジオキソール-2-オン、4-プロピル-1,3,-ジオキソール-2-オン、4-メチル-5-メチル-1,3,-ジオキソール-2-オン、4-エチル-5-メチル-1,3,-ジオキソール-2-オン、4-プロピル-5-メチル-1,3,-ジオキソール-2-オン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはブチレンカーボネート(例えば、1,2-ブチレンカーボネート、cis-2,3-ブチレンカーボネート、またはtrans-2,3-ブチレンカーボネート)である。
【0037】
[0052]一部の実施形態において、1つまたは複数のR、R、R、R、R、およびRは、ハロアルキル基である。好適なハロアルキル基の例には、-CHX、-CHX、-CX、-CHCHX、-CHCHX、-CHCX、-CHXCH、-CHXCHX、-CHXCHX、-CHXCX、-CXCH、-CXCHX、-CXCHX、-CXCX、-CHCHCHX、-CHCHCHX、-CHCHCX、-CHCHXCH、-CHCHXCHX、-CHCHXCHX、-CHCHXCX、-CHCXCH、-CHCXCHX、-CHCXCHX、-CHCXCX、-CHXCXCHX、-CHXCXCHX、-CHXCXCX、-CXCXCX、-CHCHCHCX、-CHCHCHXCHX、-CHCHCHXCHX、-CHCHCHXCX、-CHCHCXCH、-CHCHCXCHX、-CHCHCXCHX、-CHCHCXCX、-CHCHXCXCH、-CHCHXCXCHX、-CHCHXCXCHX、および-CHCHXCXCX(式中、Xは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択されるハロゲンである)が挙げられる。
【0038】
[0053]電解液の添加剤パッケージ中に存在するカーボネート化合物の含量は、特に限定されず、様々であることができる。一実施形態において、電解液は、カーボネート化合物を35wt.%~90wt.%、例えば、35wt.%~75wt.%、35wt.%~70wt.%、35wt.%~68wt.%、35wt.%~65wt.%、40wt.%~75wt.%、40wt.%~72wt.%、40wt.%~70wt.%、40wt.%~68wt.%、40wt.%~65wt.%、45wt.%~75wt.%、45wt.%~72wt.%、45wt.%~70wt.%、45wt.%~68wt.%、45wt.%~65wt.%、50wt.%~75wt.%、50wt.%~72wt.%、50wt.%~70wt.%、50wt.%~68wt.%、または50wt.%~65wt.%含む。下限に関して、電解液の添加剤パッケージは、カーボネート化合物を35wt.%よりも多く、例えば、40wt.%よりも多く、45wt.%よりも多く、または50wt.%よりも多く含むことができる。上限に関して、電解液の添加剤パッケージは、カーボネート化合物を90wt.%未満、例えば、75wt.%未満、72wt.%未満、70wt.%未満、68wt.%未満、または65wt.%未満含むことができる。
【0039】
[0054]一部の場合において、カーボネート化合物は、全電解液の重量パーセントに関して特徴づけることができる。例えば、電解液は、カーボネート化合物を0.01wt%~10wt%、例えば、0.05wt%~7wt%、0.1wt%~5wt%、0.1wt%~4wt%、0.5wt%~5wt%、0.5wt%~3wt%、または0.5wt%~2.5wt%含むことができる。上限に関して、電解液は、カーボネート化合物を10wt%未満、例えば、7wt%未満、5wt%未満、3wt%未満、2.5wt%未満、1.5wt%未満、または1wt%未満含むことができる。下限に関して、電解液は、カーボネート化合物を0.01wt%よりも多く、例えば、0.05wt%よりも多く、0.08wt%よりも多く、0.1wt%よりも多く、0.3wt%よりも多く、0.5wt%よりも多く、または1wt%よりも多く含むことができる。
【0040】
低いVC/EC
[0055]上記したように、ニトリル化合物の存在に加えて、電解液中のカーボネート化合物の含量および構造(直鎖状に対して環状、対称に対して非対称)は、上記で開示された、意外な化学的特徴および性能特性をもたらすことが見出された。したがって、直鎖状、環状、対称、および非対称のカーボネートの特有の相乗効果的な組み合わせは、予想外の性能特性に寄与する。
【0041】
[0056]対称は、化合物を二分することができ、得られた2つの側が互いの鏡像であることを意味する。非対称は、化合物を二分することができ、得られた2つの側が互いに鏡像ではないことを意味する。
【0042】
[0057]一部の実施形態において、電解質組成物は、少ない環状カーボネート含量(CCC)を有する。カーボネート化合物は、環状カーボネートを含み、これらは、特有の量で用いられる。一部の場合において、この環状カーボネートは、ベース溶媒および添加剤成分として用いられる環状カーボネートを含むことができる。例えば、電解液は、環状カーボネート化合物を0.01wt%~40wt%、例えば、0.05wt%~30wt%、0.1wt%~30wt%、0.1wt%~30wt%、0.1wt%~25wt%、0.5wt%~30wt%、または0.5wt%~25wt%含むことができる。上限に関して、電解液は、カーボネート化合物を40wt%未満、例えば、30wt%未満、25wt%未満、20wt%未満、15wt%未満、10wt%未満、または5wt%未満含むことができる。環状カーボネートは、VCおよび/またはEC(および/またはFEC)を含むことができ、VCおよび/またはEC(および/または(FEC)はこれらの量で存在する。一部の場合において、環状カーボネートはECを含み、ECは、これらの少量で存在する。一部の場合において、電解液は、環状カーボネート化合物、例えば、ECを含むことができない。一部の場合において、FECが存在する場合、電解液は、FECを7wt%未満、例えば、6wt%未満、5wt%未満、4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、または1wt%未満含む。
【0043】
高いDMC/DEC
[0058]一部の場合において、カーボネート化合物は、対称直鎖状カーボネートの高い含量を有する。カーボネート化合物は、対称直鎖状カーボネートを含み、これらは、特有の量で用いられる。一部の場合において、この対称直鎖状カーボネートには、ベース溶媒として用いられる対称直鎖状カーボネートを含むことができる。例えば、電解液は、対称直鎖状カーボネートを19wt%~90wt%、例えば、19wt%~85wt%、20wt%~85wt%、20wt%~80wt%、19wt%~80wt%、20wt%~75wt%、または25wt%~75wt%含むことができる。下限に関して、電解液は、対称直鎖状カーボネートを15wt%よりも多く、例えば、18wt%よりも多く、19wt%よりも多く、20wt%よりも多く、22wt%よりも多く、25wt%よりも多く、30wt%よりも多く、40wt%よりも多く、50wt%よりも多く、または60wt%よりも多く含むことができる。対称直鎖状カーボネートは、DECおよび/またはDMCを含むことができ、DECおよび/またはDMCは、これらの量で存在する。一部の場合において、対称直鎖状カーボネートはDECを含み、DECはこれらの多量で存在する。これらのより多い量の使用は、たとえあったとしても、対称直鎖状カーボネート、例えば、DECおよび/またはDMCを少ししか含まない電解液と対比して、前述された粘度、引火点、およびインピーダンスの利点に寄与することが示された。例えば、予想外なことに、より多い量の対称直鎖状カーボネート(トリニトリル化合物と組み合わせた)の使用により、粘度に悪影響を及ぼすことなく、引火点/誘電率が高められることが見出された。
【0044】
低いEMC
[0059]一部の場合において、電解液は、ベース溶媒として用いられる、(少量の)非対称(直鎖状)カーボネート、例えばEMCを含むことができる。例えば、電解液は、非対称(直鎖状)カーボネートを0.01wt%~50wt%、例えば、0.05wt%~45wt%、0.1wt%~40wt%、0.1wt%~35wt%、0.1wt%~25wt%、0.5wt%~35wt%、または0.5wt%~25wt%含むことができる。上限に関して、電解液は、非対称(直鎖状)カーボネートを50wt%未満、例えば、45wt%未満、40wt%未満、35wt%未満、30wt%未満、25wt%未満、または10wt%未満含むことができる。非対称(直鎖状)カーボネートはEMCを含むことができ、これらの量で存在することができる。一部の場合において、電解液は、非対称(直鎖状)カーボネート、例えば、EMCを含むことができない。ここで、より少ない量の非対称直鎖状カーボネート(トリニトリル化合物と組み合わせた)の使用は、有利なことに、引火点および誘電率の性能を犠牲にすることなく、電解液のより低い粘度に寄与する。
【0045】
[0060]カーボネート化合物の含量は、トリニトリル化合物の含量に対して記載することもできる。一実施形態において、カーボネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比は、0.5:1~5:1、例えば、0.5:1~4:1、0.5:1~3.5:1、0.5:1~3:1、0.5:1~2.5:1、0.75:1~5:1、0.75:1~4:1、0.75:1~3.5:1、0.75:1~3:1、0.75:1~2.5:1、1:1~5:1、1:1~4:1、1:1~3.5:1、1:1~3:1、1:1~2.5:1、1.25:1~5:1、1.25:1~4:1、1.25:1~3.5:1、1.25:1~3:1、1.25:1~2.5:1、1.5:1~5:1、1.5:1~4:1、1.5:1~3.5:1、1.5:1~3:1、または1.5:1~2.5:1である。下限に関して、カーボネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比は、0.5以上:1、例えば、0.75以上:1、1以上:1、1.25以上:1、または1.5以上:1であってもよい。上限に関して、カーボネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比は、5以下:1もしくはそれに等しく、例えば、4以下:1、3.5以下:1、3以下:1、または2.5以下:1であってもよい。
【0046】
スルホネート化合物
[0061]一部の実施形態において、電解液は、スルホネート化合物をさらに含む。スルホネート化合物は、任意のスルホン酸のエステルであってもよい。したがって、スルホネート化合物は、少なくとも1個の官能基R’SOOR’’(式中、R’およびR’’はそれぞれ、任意の有機官能基(例えば、アルキル基、アルケニル基、またはアリール基)である)を含む。例えば、R’およびR’’は、独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基であってもよい。
【0047】
[0062]一部の実施形態において、R’およびR’’は、炭素ブリッジを形成する。言い換えると、一部の実施形態において、スルホネート化合物は、環状スルホン酸エステル、またはスルトンである。例えば、スルホネート化合物は、置換または非置換の、3個の炭素のブリッジ(例えば、1,3-プロパンスルトン)、4個の炭素のブリッジ(例えば、1,4-ブタンスルトン)、または5個の炭素のブリッジ(例えば、1,5-ペンタンスルトン)を含むことができる。
【0048】
[0063]一部の実施形態において、スルホネート化合物は、ジスルホネートエステルである。したがって、スルホネート化合物は、2個の官能基R’SOOR’’を含め、そのそれぞれが、同じであっても異なっていてもよく、式中、R’およびR’’はそれぞれ、例えば、上記に記載されたような任意の有機官能基である。一部の実施形態において、スルホネート化合物は、環状ジスルホネートエステルである。化学構造に関して、これらの実施形態のスルホネート化合物は、以下の構造:
【0049】
【化4】
【0050】
[0064](式中、aおよびbは、独立して1~4である)を有することができる。一部の実施形態において、例えば、スルホネート化合物は、メチレンメタンジスルホネート、メチレンエタンジスルホネート、メチレンプロパンジスルホネート、メチレンブタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、エチレンエタンジスルホネート、エチレンプロパンジスルホネート、エチレンブタンジスルホネート、プロピレンメタンジスルホネート、プロピレンエタンジスルホネート、プロピレンプロパンジスルホネート、プロピレンブタンジスルホネート、ブチレンメタンジスルホネート、ブチレンエタンジスルホネート、ブチレンプロパンジスルホネート、またはブチレンブタンジスルホネートであってもよい。
【0051】
[0065]電解液の添加剤パッケージ中に存在するスルホネート化合物の含量は、特に限定されず、様々であることができる。一実施形態において、電解液は、スルホネート化合物を15wt.%~40wt.%、例えば、15wt.%~37wt.%、15wt.%~35wt.%、15wt.%~32wt.%、15wt.%~30wt.%、スルホネート化合物を18wt.%~40wt.%、18wt.%~37wt.%、18wt.%~35wt.%、18wt.%~32wt.%、18wt.%~30wt.%、スルホネート化合物を20wt.%~40wt.%、例えば、20wt.%~37wt.%、20wt.%~35wt.%、20wt.%~32wt.%、20wt.%~30wt.%、スルホネート化合物を22wt.%~40wt.%、例えば、22wt.%~37wt.%、22wt.%~35wt.%、22wt.%~32wt.%、22wt.%~30wt.%、スルホネート化合物を24wt.%~40wt.%、例えば、24wt.%~37wt.%、24wt.%~35wt.%、24wt.%~32wt.%、または24wt.%~30wt.%含む。下限に関して、電解液は、スルホネート化合物を15wt.%よりも多く、例えば、18wt.%よりも多く、20wt.%よりも多く、22wt.%よりも多く、または24wt.%よりも多く含むことができる。上限に関して、電解液は、スルホネート化合物を40wt.%未満、例えば、37wt.%未満、35wt.%未満、32wt.%未満、または30wt.%未満含むことができる。
【0052】
[0066]一部の場合において、スルホネート化合物は、全電解液の重量パーセントに関して特徴づけることができる。例えば、電解液は、トリニトリル化合物および/またはカーボネート化合物に関して前述された組成の範囲および制限に従って、スルホネート化合物を含むことができる。
【0053】
[0067]スルホネート化合物の含量は、トリニトリル化合物の含量に対して記載することもできる。一実施形態において、スルホネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比は、0.1:1~3:1、例えば、0.1:1~2.75:1、0.1:1~2.5:1、0.1:1~2:1、0.1:1~1.75:1、0.25:1~3:1、0.25:1~2.75:1、0.25:1~2.5:1、0.25:1~2:1、0.25:1~1.75:1、0.5:1~3:1、0.5:1~2.75:1、0.5:1~2.5:1、0.5:1~2:1、0.5:1~1.75:1、0.75:1~3:1、0.75:1~2.75:1、0.75:1~2.5:1、0.75:1~2:1、0.75:1~1.75:1、0.9:1~3:1、0.9:1~2.75:1、0.9:1~2.5:1、0.9:1~2:1、または0.9:1~1.75:1である。下限に関して、スルホネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比は、0.1以上:1、例えば、0.25以上:1、0.5以上:1、0.75以上:1、または0.9以上:1であってもよい。上限に関して、スルホネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比は、3以下:1もしくはそれに等しく、例えば、2.75以下:1、2.5以下:1、2以下:1、または1.75以下:1であってもよい。
【0054】
[0068]スルホネート化合物の含量は、カーボネート化合物の含量に対して記載することもできる。一実施形態において、カーボネート化合物のスルホネート化合物に対する重量比は、0.5:1~5:1、例えば、0.5:1~4:1、0.5:1~3.5:1、0.5:1~3:1、0.5:1~2.5:1、0.75:1~5:1、0.75:1~4:1、0.75:1~3.5:1、0.75:1~3:1、0.75:1~2.5:1、1:1~5:1、1:1~4:1、1:1~3.5:1、1:1~3:1、1:1~2.5:1、1.25:1~5:1、1.25:1~4:1、1.25:1~3.5:1、1.25:1~3:1、1.25:1~2.5:1、1.5:1~5:1、1.5:1~4:1、1.5:1~3.5:1、1.5:1~3:1、または1.5:1~2.5:1である。下限に関して、カーボネート化合物のスルホネート化合物に対する重量比は、0.5以上:1、例えば、0.75以上:1、1以上:1、1.25以上:1、または1.5以上:1であってもよい。上限に関して、カーボネート化合物のスルホネート化合物に対する重量比は、5以下:1もしくはそれに等しく、例えば、4以下:1、3.5以下:1、3以下:1、または2.5以下:1であってもよい。
【0055】
ベース溶媒
[0069]ベース溶媒は、イオン成分を溶解させる溶媒である。ベース溶媒は、様々であることができ、多くのベース溶媒が知られている。
【0056】
[0070]ベース溶媒は非水性有機溶媒である。非水性有機溶媒は、バッテリーの電気化学反応に関与するイオンを送るための媒体として作用する。一部の場合において、特有のベース溶媒成分、例えば、カーボネートは、例えば、DEC、DMC、EC、およびVCについて上記で説明された範囲および制限で存在することができる。前述されたように、特定のベース溶媒成分の使用は、本明細書に記載の、予想外の性能の利点に寄与する。
【0057】
[0071]非水性有機溶媒は、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、または非プロトン性溶媒を含むことができる。カーボネート系溶媒の例には、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびブチレンカーボネート(BC)が挙げられる。エステル系溶媒の例には、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、1,1-ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド、バレロラクトン、メバロノラクトン、およびカプロラクトン、ならびに添加剤に関して前述された他のカーボネートが挙げられる。エーテル系溶媒の例には、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、およびテトラヒドロフランを挙げることができる。ケトン系溶媒の例には、シクロヘキサノンが挙げられる。アルコール系溶媒の例には、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが挙げられる。非プロトン性溶媒の例には、ニトリル、例えばR-CN(式中、Rは、二重結合、芳香族環、またはエーテル結合を含む、C~C20の直鎖状、分枝鎖状、または環状の炭化水素基である)、アミド、例えばジメチルホルムアミド、ジオキソラン、例えば1,3-ジオキソラン、スルホランが挙げられる。
【0058】
[0072]1種の非水性有機溶媒を使用することができ、または溶媒の混合物を使用することができる。有機溶媒の混合物が使用される場合、混合比は、本明細書で説明された範囲および制限に従って制御することができる。
【0059】
[0073]芳香族炭化水素系有機溶媒もまた用いることができる。炭化水素系有機溶媒の例には、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、1,2-ジフルオロトルエン、1,3-ジフルオロトルエン、1,4-ジフルオロトルエン、1,2,3-トリフルオロトルエン、1,2,4-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、1,2-ジクロロトルエン、1,3-ジクロロトルエン、1,4-ジクロロトルエン、1,2,3-トリクロロトルエン、1,2,4-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、1,2-ジヨードトルエン、1,3-ジヨードトルエン、1,4-ジヨードトルエン、1,2,3-トリヨードトルエン、1,2,4-トリヨードトルエン、キシレン、またはその組み合わせが挙げられる。
【0060】
イオン成分
[0074]電解液はまた、イオン成分、例えばリチウム塩も含む。
[0075]イオン成分をベース溶媒中に溶解させることができる。イオン成分は、バッテリーにリチウムイオンを供給し、再充電可能なリチウム電池の基本的な動作を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオン輸送を改善する。リチウム塩の例には、支持電解質塩、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(CxF2x+1SO)(CyF2y+1SO)(式中、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビス(オキサラート)ボラート、LiBOB)、またはその組み合わせが挙げられる。
【0061】
[0076]リチウム塩は、約0.1M~約2.0M、例えば、0.5M~2.0M、または0.8M~1.6Mの範囲の濃度で使用することができる。
二次電池
[0077]上記の通り、本明細書に記載の電解液は、二次電池における使用のために考えられる。二次電池は、アノード、カソード、および本明細書に記載の任意の電解液を含む。
【0062】
[0078]アノードは、放電中に電子を放出する電極である。本明細書に記載の電解液と共に使用される、二次電池のアノードは、好ましくはグラファイトを含む。
[0079]カソードは、放電中に放出された電子を引き付ける電極である。本明細書に記載の電解液と共に使用される、二次電池のカソードは、カソード活物質を有する。カソード活物質は、リチウム含有遷移金属複合酸化物を含む。例えば、カソード活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、スピネルマンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト-ニッケル-マンガン含有リチウム複合酸化物、および/またはアルミニウム-ニッケル-コバルト含有リチウム複合酸化物を含むことができる。
【0063】
[0080]一部の実施形態において、リチウム含有遷移金属複合酸化物は、化学式LiNiMnCo(式中、x、y、およびzは、独立して0~8から選択される)を有する。一部の実施形態において、リチウム含有遷移金属複合酸化物が、化学式LiNiMnCoを有するように、例えば、xは6であり、yは2であり、zは2である。他の実施形態において、リチウム含有遷移金属複合酸化物が、化学式LiNiMnCoOを有するように、例えば、xは8であり、yは1であり、zは1である。
【0064】
[0081]一部の実施形態において、リチウム含有遷移金属複合酸化物は、化学式LiNiCoAl(式中、x、y、およびzは、独立して0~8から選択される)を有する。
【0065】
性能特性
[0082]本開示の電解液は、意外なことに、二次電池、例えば、リチウムイオン電池の機能を改善することが見出された。特に、本開示の電解液は、意外なことに、二次電池および/または電解液が試験される、様々な性能特性の改善を示す。
【0066】
[0083]本明細書において、「よりも多く」は、以上を意味するものとして説明することができ、「未満」は、以下を意味するものとして説明することができる。
電圧降下
[0084]二次電池、例えばリチウムイオン電池は、電解液中で、金属間の、例えばアノードとカソードとの間の電位の発生によって作動する。特に、アノードとカソードとの間の電位差は、回路から分離される場合、開回路電圧を生じる。開回路電圧は、二次電池の内部抵抗のために低下することがある。これは、典型的には電圧降下として知られている。様々な因子が、電圧降下に寄与し、例えば、本発明者らは、電圧降下が、カソードでの酸化反応によって引き起こされ得ることを見出した。
【0067】
[0085]高い電圧降下は、開回路電圧を下げ、それによって起電力を下げる故に望ましくない。これは、二次電池、例えば、リチウムイオンバッテリーの効率を減じる。したがって、電解液が、低い電圧降下を示すことが望ましい。電圧降下は、当分野で既知の、従来の手段によって調べることができる。
【0068】
[0086]一部の実施形態において、本明細書に記載の電解液を用いるバッテリーは、電圧降下0.25V未満、例えば、0.22V未満、0.2V未満、0.18V未満、0.16V未満、0.14V未満、または0.12V未満を示す。下限に関して、電解液を用いるバッテリーは、0Vよりも大きい、例えば、1mVよりも大きい、5mVよりも大きい、10mVよりも大きい、15mVよりも大きい、または25mVよりも大きい電圧降下を示すことができる。範囲に関して、電解液は、0V~0.25V、例えば、0V~0.22V、0V~0.2V、0V~0.18V、0V~0.16V、0V~0.14V、0V~0.12V、1mV~0.25V、1mV~0.22V、1mV~0.2V、1mV~0.18V、1mV~0.16V、1mV~0.14V、1mV~0.12V、5mV~0.25V、5mV~0.22V、5mV~0.2V、5mV~0.18V、5mV~0.16V、5mV~0.14V、5mV~0.12V、10mV~0.25V、10mV~0.22V、10mV~0.2V、10mV~0.18V、10mV~0.16V、10mV~0.14V、10mV~0.12V、15mV~0.25V、15mV~0.22V、15mV~0.2V、15mV~0.18V、15mV~0.16V、15mV~0.14V、15mV~0.12V、25mV~0.25V、25mV~0.22V、25mV~0.2V、25mV~0.18V、25mV~0.16V、25mV~0.14V、または25mV~0.12Vの電圧降下を示すことができる。
【0069】
ガス発生値
[0087]電気化学反応、製造中の進行、および/または二次電池の動作、例えば、リチウムイオン電池における固体電解質相間界面の形成により、ガスの生成がもたらされ得る。例えば、ガス状水素および/またはガス状酸素。従来の二次電池、例えば鉛蓄電池において、ガスの存在および/または電解液中の気泡は、二次電池が充電の完全状態に達しつつあることを示すので望ましい。しかし、本発明者らは、ある種の二次電池、例えば、リチウムイオン電池におけるガスの生成は、二次電池の劣化に寄与することを見出した。例えば、ガスの生成は、内容物の体積に影響を及ぼし得る。最悪の場合、これは、爆発をもたらし得る。したがって、製造中および/または動作中に比較的少ないガスを生じる二次電池を開発することが望ましい。
【0070】
[0088]本発明者らは、意外なことに、本明細書で開示された電解液は、二次電池の製造中および/または動作中に比較的少ないガスを生じることを見出した。特に、電解液は、リチウムイオン電池における固体電解質相間界面の形成中に比較的少ないガスを生じる。この形成ステップ中に生じるガスの量は、「ガス値」として報告することができる。ガス値は、当分野で既知の従来の手段によって調べることができる。
【0071】
[0089]一実施形態において、電解液を用いるバッテリーは、ガス値4.9mL未満、例えば、4.8mL未満、4.5mL未満、3.8mL未満、3mL未満、2mL未満、1mL未満、0.75mL未満、または0.3mL未満を示す。下限に関して、電解液を用いるバッテリーは、ガス値を0mLよりも多く、例えば、0.01mLよりも多く、0.02mLよりも多く、0.03mLよりも多く、または0.04mLよりも多く示すことができる。範囲に関して、電解液は、0mL~3mL、例えば、0mL~2mL、0mL~1mL、0mL~0.75mL、0mL~0.3mL、0.01mL~3mL、0.01mL~2mL、0.01mL~1mL、0.01mL~0.75mL、0.01mL~0.3mL、0.02mL~3mL、0.02mL~2mL、0.02mL~1mL、0.02mL~0.75mL、0.02mL~0.3mL、0.03mL~3mL、0.03mL~2mL、0.03mL~1mL、0.03mL~0.75mL、0.03mL~0.3mL、0.04mL~3mL、0.04mL~2mL、0.04mL~1mL、0.04mL~0.75mL、または0.04mL~0.3mLのガス値を示すことができる。バッテリーは、4.2V、4.3V、4.4V、または4.48ボルトで動作される場合、これらの結果を得ることができる。
【0072】
クーロン効率
[0090]二次電池は、二次電池から回復されたエネルギーが、二次電池に投入された充電未満であるような非効率性を有することが知られている。例えば、二次電池内で起こる寄生反応は、高い効率を妨げることがある。二次電池の重負荷もまた、その効率を減じることがある。これもまた、サイクル寿命を減じることによってバッテリーの負担に寄与する。二次電池の効率は、一般に、クーロン効率(ときにファラデー効率(faradic efficiency)と称される)として測定される。クーロン効率(CE)は、全サイクルにわたって、バッテリーから抽出された全充電の、バッテリーに投入された全充電に対する比率である。CEは、当業者に既知の従来の手段によって調べることができる。
【0073】
[0091]従来のリチウムイオン電池は、比較的高いCEを有することが知られているが、バッテリーの効率は、バッテリーが充電される条件によって制限される。特に、従来のリチウムイオン電池の高いCEは、中程度の電流および比較的低い温度での充電を要する。さらに、従来のリチウムイオンは、典型的には、初期サイクルで低いCEを有し、サイクル後に改善されたCEを示すだけである。したがって、高い初期CEを示す、改善された二次電池、例えば、リチウムイオン電池の必要性がある。
【0074】
[0092]本発明者らは、二次電池、例えば、リチウムイオン電池のCEが、電解液の選択によって改善され得ることを見出した。特に、本明細書に記載の電解液を用いるバッテリーは、初期サイクルで比較的高いCEを示す。一部の実施形態において、電解液を用いるバッテリーは、第1サイクルで、平均CEを0.8よりも高く、例えば、0.82よりも高く、0.84よりも高く、0.85よりも高く、0.86よりも高く、または0.88よりも高く示す。上限に関して、電解液は、第1サイクルで、平均CEを1.0以下、例えば、0.999未満、0.998未満、0.997未満、または0.996未満示すことができる。範囲に関して、電解液を用いるバッテリーは、第1サイクルで、平均CEを0.8~1.0、例えば、0.8~0.999、0.8~0.998、0.8~0.997、0.8~0.996、0.82~1.0、0.82~0.999、0.82~0.998、0.82~0.997、0.82~0.996、0.84~1.0、0.84~0.999、0.84~0.998、0.84~0.997、0.84~0.996、0.86~1.0、0.86~0.999、0.86~0.998、0.86~0.997、0.86~0.996、0.88~1.0、0.88~0.999、0.88~0.998、0.88~0.997、または0.88~0.996示すことができる。
【0075】
[0093]本明細書に記載の電解液もまた、後のサイクルで比較的高いCEを示す。一部の実施形態において、電解液を用いるバッテリーは、20番目のサイクルで、平均CEを0.9よりも高く、例えば、0.92よりも高く、0.94よりも高く、0.96よりも高く、0.98よりも高く、0.99よりも高く、0.995よりも高く、0.996よりも高く、または0.997よりも高く示す。上限に関して、電解液を用いるバッテリーは、20番目のサイクルで、平均CEを1.0以下、例えば、0.999未満、0.998未満、0.997未満、または0.996未満示すことができる。範囲に関して、電解液を用いるバッテリーは、20番目のサイクルで、平均CEを0.9~1.0、例えば、0.9~0.999、0.9~0.998、0.9~0.997、0.9~0.996、0.92~1.0、0.92~0.999、0.92~0.998、0.92~0.997、0.92~0.996、0.94~1.0、0.94~0.999、0.94~0.998、0.94~0.997、0.94~0.996、0.96~1.0、0.96~0.999、0.96~0.998、0.96~0.997、0.96~0.996、0.98~1.0、0.98~0.999、0.98~0.998、0.98~0.997、または0.98~0.996示すことができる。バッテリーは、特有の電圧、例えば、4.2V、4.3V、4.4V、または4.48Vで動作される場合にこれらの結果を得ることができる。
【0076】
インピーダンス(増大)
[0094]上記の通り、二次電池、例えば、リチウムイオン電池は、動作において非効率性を被る。非効率性の1つの原因はインピーダンスであり、それは、内部抵抗およびリアクタンスの組み合わせである。二次電池バッテリーの内部抵抗は、2つの成分:電気(またはオーム)抵抗およびイオン抵抗からなる。電気抵抗は、電気回路における電流の流れに対抗する尺度である。イオン抵抗は、内部因子、例えば電極表面積および電解質導電性のために、電流の流れに対抗するものである。インピーダンス増大は、典型的には、サイクルの平均充電電圧と平均放電電圧との差として報告される。インピーダンス増大は、当業者に既知の従来の手段によって調べることができる。
【0077】
[0095]二次電池、例えば、リチウムイオン電池の内部抵抗は、典型的には、時間および/またはサイクルと共に増加する。より低い内部抵抗は、一般に、より高い容量および効率を示す故に、内部抵抗におけるこの増加は、二次電池の劣化に寄与する。
【0078】
[0096]本発明者らは、意外なことに、電解液が、時間と共にインピーダンスの増大を減じることを見出した。一部の実施形態において、電解液を用いるバッテリーは、25サイクルにわたって、インピーダンス増大を20%未満、例えば、18%未満、16%未満、14%未満、または12%未満示す。下限に関して、電解液を用いるバッテリーは、25サイクルにわたって、インピーダンス増大を0%よりも多く、例えば、2%よりも多く、4%よりも多く、6%よりも多く、または8%よりも多く示すことができる。範囲に関して、電解液を用いるバッテリーは、25サイクルにわたって、インピーダンス増大を0%~20%、例えば、0%~18%、0%~16%、0%~14%、0%~12%示すことができ、25サイクルにわたって、2%~20%、例えば、2%~18%、2%~16%、2%~14%、2%~12%示すことができ、25サイクルにわたって、4%~20%、例えば、4%~18%、4%~16%、4%~14%、4%~12%示すことができ、25サイクルにわたって、6%~20%、例えば、6%~18%、6%~16%、6%~14%、6%~12%示すことができ、25サイクルにわたって、8%~20%、例えば、8%~18%、8%~16%、8%~14%、または8%~12%示すことができる。
【0079】
容量保持
[0097]一部の実施形態において、バッテリーで動作される場合、バッテリーは、容量保持を95よりも多く、例えば、96よりも多く、97よりも多く、98よりも多く、または99よりも多く示すことができる。
【0080】
容量低下
[0098]一部の実施形態において、電解液は、容量低下を0.0060未満、例えば、0.0055未満、0.0053未満、0.0050未満、0.0049未満、または0.00485未満示す。バッテリーは、特有の電圧、例えば、3.7Vまたは4.3Vで動作される場合、これらの結果を得ることができ、測定は、サイクル2に零点規正され得る。
【0081】
粘度
[0099]一部の実施形態において、電解液は、粘度を1.16cps未満、例えば、1.12未満、1.0未満、0.98cps未満、0.95cps未満、0.75cps未満、0.70cps未満、0.68cps未満、0.67cps未満、または0.66cps未満有する。これは、1.16cpsよりも(有意に)より高い粘度を有する、従来の溶液に有意に満たない。範囲に関して、電解液は、0.50cps~1.16cps、例えば、0.55cps~0.12cps、0.57cps~1.0cps、または0.60cps~0.98cpsの範囲の粘度を有することができる。従来の粘度測定技術は周知である。
【0082】
引火点
[00100]一部の実施形態において、電解液は、12℃よりも高い、例えば、15℃よりも高い、16℃よりも高い、17℃よりも高い、20℃よりも高い、22℃よりも高い、25℃よりも高い、27℃よりも高い、または30℃よりも高い引火点を有する。範囲に関して、電解液は、12℃~30℃、例えば、17℃~30℃、23℃~30℃、または25℃~30℃の範囲の引火点を有することができる。従来の引火点測定技術は周知である。
【0083】
分極率/誘電率
[00101]一部の実施形態において、電解液は、例えば、高い誘電率によって表される高い分極率を有する。例えば、電解液は、40よりも高い、例えば、45よりも高い、48よりも高い、50よりも高い、52よりも高い、55よりも高い、57よりも高い、60よりも高い、または62よりも高い誘電率を有することができる。これは、40に(有意に)満たない誘電率を有する、従来の溶液に有意に満たない。従来の誘電率測定技術は周知である。
【実施例
【0084】
[00102]本開示は、以下の例によってさらに理解され、それらは非限定的かつ説明的なものである。
[00103]以下の例は、本明細書に記載の電解液を含む二次電池の製造および/または動作からの実験データを含む。比較例も同様に、開示された電解液の意外な性能特長を示すために提供される。実施例において、電解液は、イオン成分(LiPF)をベース溶媒(EC:EMC:DEC)中に溶解させ、添加剤パッケージ(TCH+xyz)を添加することによって調製された。以下に示すように、ベース溶媒は多数の成分を含んだ。溶媒成分を混合し、イオン成分、例えば、LiPFをそれに添加した。トリニトリルおよびカーボネート/スルホネートを含む、様々な添加剤パッケージをそれぞれの電解液に添加した。比較例は、トリニトリル化合物を含有しなかった。
【0085】
[00104]電解液は、より多い含量の、例えば、19wt%よりも多いDECおよび/またはDMCを含み、それは、ニトリル化合物と組み合わせて、本明細書で示された、予想外の性能特長をもたらした。
【0086】
[00105]バッテリー電池は、電解液を使用して製造した。バッテリー電池は、アノードおよびカソード、ならびに他の従来の成分を含んだ。別段の指示がなければ、電池は、320mAh(ミリアンペア時間)性能で設計された。電池を、様々な電圧、例えば、4.2V、4.3V、または4.4Vで動作し、多くのバッテリー性能特性について調べた。以下に示すように、開示された電解液は、多くのカソードおよび/または溶媒の組み合わせと組み合わせて使用される場合、予想外の性能特長をもたらした。
【0087】
実施例1~6
[00106]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表1に示す。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に、非TCH添加剤、例えば、スクシノニトリルを含む。これらの添加剤は、TCHよりも2倍多く加えた。
【0088】
[00107]電池は、様々な電圧で動作され、第1サイクルクーロン効率について測定され、それは、電子がバッテリー内で輸送される充電効率を説明する。一部の場合において、CEは、全サイクルにわたって、バッテリーから抽出された全充電の、バッテリーに投入された全充電に対する比率を表す。
【0089】
[00108]結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
[00109]表1に示すように、開示された電解液の使用は、開示された電解液を用いなかった、同様の比較の溶液と対比して、クーロン効率の有意な改善をもたらした。TCHはスクシノニトリルよりも優れていた。
【0092】
[00110]これらの差は、実測値において小さい、例えば、数千と考えられ得るが、これらの差は、バッテリー性能を評価する場合、顕著であり、有意である。これはその通りであり、本明細書で説明された表および図に適用される。図において、グラフの僅かな差で現れるものでさえ、バッテリー性能の有意な改善である。
【0093】
実施例7~11
[00111]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表2に示す。1.2MのLiPFを、重量比30:70:1でエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(EMC)、およびビニルカーボネート(VC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に、非TCH添加剤、例えば、スクシノニトリルを含む。これらの添加剤は、TCHよりも2倍多く加えた。
【0094】
[00112]電池は、4.48ボルトで動作され、体積変化法(volumetric displacement method)によって決定される5日ガス発生、および標準の測定、例えば、放電法によって決定される容量保持について測定された(これらの方法は一貫して使用された)。温度は50℃であった。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
[00113]表2に示すように、開示された電解液の使用は、開示された電解液を用いなかった、同様の比較の溶液と対比して、ガス発生および容量保持の有意な改善をもたらした。重要なことには、上記したように、非ニトリル(非TCH)添加剤をTCHよりも2倍多く加えたが、TCH電解質は、依然として、比較の電解質/添加剤よりも優れ、それによって結果がさらにより意外なもの、および有益なものとなった。
【0097】
実施例12~17
[00114]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表3に示す。1.2MのLiPFを、重量比30:70:1でエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(EMC)、およびビニルカーボネート(VC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に、非TCH添加剤、例えば、プロパンスルトンを含む。これらの添加剤は、TCHよりも4倍多く加えた。
【0098】
[00115]電池は4.48ボルトで動作され、5日ガス発生および容量保持について測定された。温度は50℃であった。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
[00116]表3に示すように、開示された電解液の使用は、開示された電解液を用いなかった、同様の比較の溶液と対比して、ガス発生および容量保持の有意な改善をもたらした。重要なことに、上記したように、非ニトリル(非TCH)添加剤をTCHよりも4倍多く加えたが、TCH電解質は、依然として、比較の電解質/添加剤よりも優れ、それによって結果がさらにより意外なもの、および有益なものとなった。
【0101】
実施例18~26
[00117]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表4に示す。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に非TCH添加剤を含む。
【0102】
[00118]電池は、様々な電圧で動作され、体積変化法によって決定されるガス発生について測定された。温度は40℃であった。電圧範囲は、2.8V~4.2Vであった。C/20充電およびC/20放電を用いた。上限は、48時間OCVであった。結果を表4に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
[00119]表4に示すように、開示された電解液の使用は、開示された電解液を用いなかった、同様の比較の溶液と対比して、ガス発生の有意な改善をもたらした。TCH電解質は、比較の電解質/添加剤よりも優れていた。
【0105】
実施例27
[00120]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表5に示す。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に非TCH添加剤を含む。
【0106】
[00121]電池は、様々な電圧で動作され、サイクルにかけられ、規格化された容量およびインピーダンスについて測定された。成分の組成を表5に示す。温度は40℃であった。電圧範囲は2.8V~4.2Vであった。C/5CCCV充電およびC/2CC放電を用いた。結果を図1図6に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
[00122]図1図6に示すように、開示された電解液の使用は、容量およびデルタV(インピーダンス)において有意な改善をもたらした。特に、図6でのデータ点の比較は、特に際立つ。TCH電解質は、例えば、改善された容量保持、インピーダンス制御、およびキャパシタンスに関して、比較の電解質/添加剤よりも優れていた。
【0109】
実施例28
[00123]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表6に示す。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に非TCH添加剤を含む。
【0110】
[00124]電池は、様々な電圧で動作され、サイクルにかけられ、規格化された容量およびデルタV(サイクル10に零点規正)について測定された。成分の組成を表6に示す。温度は40℃であった。電圧範囲は2.8V~4.2Vであった。C/5CCCV充電およびC/2CC放電を用いた。結果を図7および図8に示す。
【0111】
【表6】
【0112】
[00125]図7および図8に示すように、開示された電解液の使用は、容量およびデルタVにおいて有意な改善をもたらした。特に、下方の線で示される比較例の容量減少は、特に際立つ。TCH電解質は、比較の電解質/添加剤よりも優れていた。
【0113】
実施例29および実施例30
[00126]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表7に示す。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に非TCH添加剤を含む。
【0114】
[00127]電池は、様々な電圧で動作され、容量低下(サイクル2に零点規正)について測定された。成分の組成および結果を表7に示す。温度は40℃であった。電圧範囲は、2.2V~3.7Vであった。C/5CCCV充電およびC/2CC放電を用いた。結果を表7に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
[00128]表7に示すように、開示された電解液の使用は、容量低下の有意な改善をもたらした。TCH電解質は、比較の電解質/添加剤よりも優れていた。
実施例31および実施例32
[00129]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表8に示す。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に非TCH添加剤を含む。
【0117】
[00130]電池は、4.3ボルトで動作され、サイクルにかけられ、電圧(高温)および電圧低下について測定され、標準の電圧測定装置が用いられた。温度は60℃(高温)であった。C/5CCCV充電およびC/2CC放電を用いた。結果を図9および図10に示す。
【0118】
【表8】
【0119】
[00131]図9および図10に示すように、開示された電解液の使用は、電圧降下における有意な改善をもたらした。特に、上方の線と下方の線との差によって示される、比較例の容量減少は特に際立つ。TCH電解質は、比較の電解質/添加剤よりも優れていた。
【0120】
実施例33
[00132]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表9に示す。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に非TCH添加剤を含む。
【0121】
[00133]電池は、2.8V~4.2Vで動作され、サイクルにかけられ、放電容量およびデルタV(低温)について測定された。温度は0℃(低温)であった。C/2、C/5、およびC/10の放電レートを用いた。「+」は、C/2レートを表し、「○」はC/5レートを表し、「●」はC/10レートを表す。結果を図11および図12に示す。
【0122】
【表9】
【0123】
[00134]図11および図12に示すように、開示された電解液の使用は、低温性能における有意な改善をもたらした。TCH電解質は、比較の電解質/添加剤よりも優れていた。
【0124】
実施例34
[00135]バッテリー電池を実施例33で上記されたように製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表10に示す。
【0125】
[00136]電池は、2.8V~4.2Vで動作され、サイクルにかけられ、放電容量(低温)について測定された。温度は0℃(低温)であった。C/2、C/5、およびC/10の放電レートを用いた。「+」はC/2レートを表し、「○」はC/5レートを表し、「●」はC/10レートを表す。結果を図13に示す。
【0126】
【表10】
【0127】
[00137]図13に示すように、開示された電解液の使用は、低温性能において有意な改善をもたらした。特に、上方の線と下方の線との差によって示される、比較例の容量減少は特に際立つ。TCH電解質は、比較の電解質/添加剤よりも優れていた。
【0128】
実施例34
[00138]バッテリー電池を上記の通り製造した。カソード、アノード、および電解液の組成を以下の表11に示す。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。比較例は、添加剤パッケージ中に非TCH添加剤を含む。
【0129】
[00139]電池は、2.8V~4.2Vで動作され、速いサイクルにかけられ、高レート放電容量、エネルギー効率、およびデルタVについて測定された。温度は30℃であった。C/2、C/5、およびC/10の放電レートを用いた。結果を図14~17に示す。
【0130】
【表11】
【0131】
[00140]図14~17に示すように、開示された電解液の使用は、高レート性能において有意な改善をもたらした。TCH電解質は、比較の電解質/添加剤よりも優れていた。
実施例35~37
[00141]電解液を上記の通り調製した。1.2MのLiPFを、重量比25:5:70でエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジメチルカーボネート(DMC)を含むベース溶媒中に溶解させた。電解液の添加剤パッケージの組成を以下の表12に示す。
【0132】
【表12】
【0133】
[00142]電池を、表13で示した材料を使用して上記の通り製造した。電池は、4.2V~4.4Vで動作された。それぞれの電解液について、様々な電圧で、電圧降下、ガス発生値、クーロン効率(第1サイクルおよび第20サイクル)を測定した。結果を以下の表13に報告する。結果を表13に示す。
【0134】
【表13】
【0135】
[00143]表13に示すように、本明細書に記載の電解液は、二次電池の電圧が上がるときでさえも、比較的低い電圧降下を示す。また、本明細書に記載の電解液は、様々な電圧で比較的低いガス発生値を示し、電解液は、様々な電圧で、比較的高い、第1サイクルのCEを示した。
【0136】
[00144]電池はインピーダンスについて調べられた。インピーダンスを第1サイクルおよび第25サイクルについて測定した。結果を以下の表14に報告する。
【0137】
【表14】
【0138】
[00145]表14に示すように、本明細書に記載の電解液は、比較的低いインピーダンスを示し、インピーダンスは、継続してサイクルにかけても、低い増大を有する。
[00146]別段の指示がなければ、例における性能測定は、当分野で既知である、微分容量分析、電気機械的インピーダンス分光法、サイクリックボルタンメトリーおよびリニアボルタンメトリー、ならびに高精度クーロメトリーによって決定された。
【0139】
実施形態
[00147]以下で用いられるように、一連の実施形態へのいずれの言及も、その実施形態のそれぞれを選言的に言及するものとして理解されるべきである(例えば、「実施形態1から4」は「実施形態1、2、3、または4」として理解されるべきである)。
【0140】
[00148]実施形態1は、化学式CxH2x-1(CN)3(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、および以下の化学構造:
【0141】
【化5】
【0142】
[00149](式中、R1およびR2は、独立して、水素、ハロゲン、(C1~C10)アルキル、または(C1~C10)ハロアルキルから選択される)を有するカーボネート化合物を含む電解液であって、電解液が、電圧降下0.25V未満を示す、電解液である。
【0143】
[00150]実施形態2は、トリニトリル化合物がトリシアノヘキサンを含む、実施形態(複数可)1の電解液である。
[00151]実施形態3は、カーボネート化合物がビニレンカーボネートを含む、実施形態(複数可)1または2の電解液である。
【0144】
[00152]実施形態4は、カーボネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比が、0.5:1~5:1である、実施形態(複数可)1から3の電解液である。
[00153]実施形態5は、トリニトリル化合物がTCHを含み、カーボネート化合物がVCを含み、溶液が電圧降下0.25V未満を示し、電解液がガス値3mL未満を示す、実施形態(複数可)1から4の電解液である。
【0145】
[00154]実施形態6は、メチレンメタンジスルホネートをさらに含む、実施形態(複数可)1から5の電解液である。
[00155]実施形態7は、電解液が、20サイクルにわたって、0.9よりも高い平均クーロン効率を示す、実施形態(複数可)1から6の電解液である。
【0146】
[00156]実施形態8は、電解液が、25サイクルにわたって20%未満のインピーダンス増大を示す、実施形態(複数可)1から7の電解液である。
[00157]実施形態9は、化学式CxH2x-1(CN)3(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、以下の化学構造:
【0147】
【化6】
【0148】
[00158](式中、R1およびR2は、独立して、水素、ハロゲン、(C1~C5)アルキル、または(C1~C5)ハロアルキルから選択される)を有するカーボネート化合物、および以下の化学構造:
【0149】
【化7】
【0150】
[00159](式中、aおよびbは、独立して1~4である)を有するスルホネート化合物を含む電解液であって、電解液が、電圧降下0.25V未満を示す、電解液である。
[00160]実施形態10は、トリニトリル化合物がトリシアノヘキサンを含む、実施形態(複数可)9の電解液である。
【0151】
[00161]実施形態11は、カーボネート化合物がビニレンカーボネートを含む、実施形態(複数可)9または10の電解液である。
[00162]実施形態12は、スルホネート化合物がメチレンメタンジスルホネートを含む、実施形態(複数可)9から11の電解液である。
【0152】
[00163]実施形態13は、カーボネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比が、0.5:1~5:1である、実施形態(複数可)9から12の電解液である。
[00164]実施形態14は、カーボネート化合物のスルホネート化合物に対する重量比が、0.1:1~3:1である、実施形態(複数可)9から13の電解液である。
【0153】
[00165]実施形態15は、電解液が、20サイクルにわたって0.9よりも高い平均クーロン効率を示す、実施形態(複数可)9から14の電解液である。
[00166]実施形態16は、電解液が、25サイクルにわたって20%未満のインピーダンス増大を示す、実施形態(複数可)9から15の電解液である。
【0154】
[00167]実施形態17は、化学式CxH2x-1(CN)3(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、および以下の化学構造:
【0155】
【化8】
【0156】
[00168](式中、R3、R4、R5、およびR6は、独立して、水素、ハロゲン、(C1~C10)アルキル、または(C1~C10)ハロアルキルから選択される)を有するカーボネート化合物を含む電解液である。
【0157】
[00169]実施形態18は、トリニトリル化合物がトリシアノヘキサンを含む、実施形態(複数可)17の電解液である。
[00170]実施形態19は、カーボネート化合物がフルオロエチレンカーボネートを含む、実施形態(複数可)17または18の電解液である。
【0158】
[00171]実施形態20は、カーボネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比が、0.5:1~5:1である、実施形態(複数可)17から19の電解液である。
[00172]実施形態21は、電解液が、20サイクルにわたって0.9よりも高い平均クーロン効率を示す、実施形態(複数可)17から20の電解液である。
【0159】
[00173]実施形態22は、電解液が、25サイクルにわたって20%未満のインピーダンス増大を示す、実施形態(複数可)17から21の電解液である。
[00174]実施形態23は、リチウム含有遷移金属複合酸化物を含むカソード活物質を有するカソード;グラファイトを含むアノード;および先行する実施形態のいずれかの電解液を含む二次電池である。
【0160】
[00175]実施形態24は、リチウム含有遷移金属複合酸化物が、化学式LiNixMnyCozO2(式中、x、y、およびzは、独立して0~8から選択される)を有する、実施形態(複数可)23の二次電池である。
【0161】
[00176]実施形態25は、リチウム含有遷移金属複合酸化物が、化学式LiNi6Mn2Co2O2を有する、実施形態(複数可)23または24の二次電池である。
[00177]実施形態26は、リチウム含有遷移金属複合酸化物が、化学式LiNi8MnCoO2を有する、実施形態(複数可)23または24の二次電池である。
【0162】
[00178]実施形態27は、リチウム含有遷移金属複合酸化物が、化学式LiNixCoyAlzO2(式中、x、y、およびzは、独立して0~8から選択される)を有する、実施形態(複数可)23の二次電池である。
【0163】
[00179]実施形態28は、イオン成分、ベース溶媒、化学式C2x-1(CN)(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、および以下の化学構造:
【0164】
【化9】
【0165】
(式中、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、水素、ハロゲン、(C~C10)アルキル、または(C~C10)ハロアルキルから選択される)を有する環状カーボネート化合物を含む添加剤パッケージを含む電解液であって、電解液が、電解液の全重量に基づいて、19wt%よりも多い量の対称直鎖状カーボネートを含む、電解液である。
【0166】
[00180]実施形態29は、対称直鎖状カーボネートが、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、またはその組み合わせを含み、対称直鎖状カーボネートが、電解液の全重量に基づいて、19%よりも多い量で存在する、実施形態(複数可)28の電解液である。
【0167】
[00181]実施形態30は、環状カーボネート化合物が、ビニレンカーボネートまたはエチレンカーボネート、またはその組み合わせを含む、実施形態(複数可)28または29の電解液である。
【0168】
[00182]実施形態31は、環状カーボネート化合物が、フルオロエチレンカーボネートを含む、実施形態(複数可)28から30の電解液である。
[00183]実施形態32は、電解液が、環状カーボネート30wt%未満を含む、実施形態(複数可)28から31の電解液である。
【0169】
[00184]実施形態33は、電解液が、エチレンカーボネート30wt%未満を含む、実施形態(複数可)28から32の電解液である。
[00185]実施形態34は、電解液が、FEC6wt%未満を含む、実施形態(複数可)28から33の電解液である。
【0170】
[00186]実施形態35は、電解液が、50%wt未満の量で存在する非対称直鎖状カーボネートをさらに含む、実施形態(複数可)28から34の電解液である。
[00187]実施形態36は、電解液が、50wt%未満の量で、エチルメチルカーボネートをさらに含む、実施形態(複数可)28から35の電解液である。
【0171】
[00188]実施形態37は、トリニトリル化合物がトリシアノヘキサンを含む、実施形態(複数可)28から36の電解液である。
[00189]実施形態38は、環状カーボネート化合物のトリニトリル化合物に対する重量比が、0.5:1~5:1である、実施形態(複数可)28から37の電解液である。
【0172】
[00190]実施形態39は、添加剤パッケージが、スルホネートをさらに含む、実施形態(複数可)28から38の電解液である。
[00191]実施形態40は、トリニトリル化合物がトリシアノヘキサンを含み、カーボネート化合物がビニリデンカーボネートを含み、溶液が電圧降下0.25V未満を示す、実施形態(複数可)28から39の電解液である。
【0173】
[00192]実施形態41は、メチレンメタンジスルホネートまたはフルオロエチレンカーボネート、またはその組み合わせをさらに含む、実施形態(複数可)28から40の電解液である。
【0174】
[00193]実施形態42は、電解液が、20サイクルにわたって0.85よりも高い第1サイクルクーロン効率を示す、実施形態(複数可)28から41の電解液である。
[00194]実施形態43は、電解液が、25サイクルにわたって20%未満のインピーダンス増大を示す、実施形態(複数可)28から42の電解液である。
【0175】
[00195]実施形態44は、イオン成分、ベース溶媒、ならびに化学式C2x-1(CN)(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、および以下の化学構造:
【0176】
【化10】
【0177】
(式中、aおよびbは、独立して1~4である)を有するスルホネート化合物を含む添加剤パッケージを含む電解液であって、電解液が、電解液の全重量に基づいて、19wt%よりも多い量の対称直鎖状カーボネートを含む、電解液である。
【0178】
[00196]実施形態45は、トリニトリル化合物がトリシアノヘキサンを含む、実施形態(複数可)44の電解液である。
[00197]実施形態46は、場合により、リチウム含有遷移金属複合酸化物を含むカソード活物質を有するカソード;場合により、グラファイトを含むアノード;ならびにイオン成分、ベース溶媒、化学式C2x-1(CN)(式中、xは4~10である)を有するトリニトリル化合物、および以下の化学構造:
【0179】
【化11】
【0180】
(式中、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、水素、ハロゲン、(C~C10)アルキル、または(C~C10)ハロアルキルから選択される)を有する環状カーボネート化合物を含む添加剤パッケージを含む電解液を含む二次電池であって、電解液が、電解液の全重量に基づいて、19wt%よりも多い量の対称直鎖状カーボネートを含む、二次電池である。
【0181】
[00198]実施形態47は、電池が、4.48ボルトで動作される場合、5日ガス発生値4.9mL未満を示す、実施形態(複数可)46の電解液である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】