(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(54)【発明の名称】ボルネオールベースのポリマーならびにその調製方法および応用
(51)【国際特許分類】
C08F 16/18 20060101AFI20230315BHJP
C08G 63/664 20060101ALI20230315BHJP
C07C 43/10 20060101ALN20230315BHJP
C07C 41/30 20060101ALN20230315BHJP
C07C 67/03 20060101ALN20230315BHJP
C07C 69/675 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
C08F16/18
C08G63/664
C07C43/10
C07C41/30
C07C67/03
C07C69/675
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564687
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2020123223
(87)【国際公開番号】W WO2021135550
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911412816.4
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(71)【出願人】
【識別番号】519080883
【氏名又は名称】中新国際聯合研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】蘇 健裕
(72)【発明者】
【氏名】楊 柳
(72)【発明者】
【氏名】方 立明
(72)【発明者】
【氏名】孟 暁風
【テーマコード(参考)】
4H006
4J029
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA03
4H006AC43
4H006AC48
4H006BA66
4H006BB12
4H006BC10
4H006BC19
4H006BC31
4H006BJ30
4H006BN10
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4H006GP10
4H006KA03
4H006KC12
4J029AA02
4J029AB02
4J029AB04
4J029AC03
4J029AE06
4J029EG09
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4J029JB171
4J029JF371
4J029KE09
4J100AE09P
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100CA01
4J100CA27
4J100FA12
4J100FA19
4J100JA53
(57)【要約】
本発明は、ボルネオールベースのポリマーならびにその調製方法および応用を開示し、高分子化学の技術分野に属する。当該ポリマーは、原料としてD-ボルネオール、ジエチレングリコールモノビニルエーテルを使用し、触媒としてp-トルエンスルホン酸を使用し、置換、エーテル形成反応を介して、優れた静菌効果を持つボルネオールベースのポリマーを得る。次に、それとε-カプロラクトンを原料として使用し、スズのオクトエート(stannous octoate)によって触媒し、重合して酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーを得て、抗腫瘍薬の調製に使用する。本発明の化合物の調製に使用される原料は、単純で入手が容易であり、反応条件が穏やかであり、操作が単純で便利であり、幅広い用途の見通しを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルネオールベースのポリマーであって、
前記ボルネオールベースのポリマーの化学構造式は次のとおりであり、
【化1】
上記の式において、mは重合度であり、その数値は1~110であり、さらに1~35であることを特徴とするボルネオールベースのポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載のボルネオールベースのポリマーの調製方法であって、
D-ボルネオールをジクロロメタンに溶解し、p-トルエンスルホン酸を加え、撹拌して溶液Aを得るステップ(1)と、
ジエチレングリコールモノビニルエーテルをジクロロメタン溶媒に溶解し、溶液Bを得て、前記溶液Bを前記溶液Aに滴下して反応させるステップ(2)と、
酸塩基調整剤を反応系にpH=7~8まで加え、p-トルエンスルホン酸を除去し、回転蒸発により溶媒を除去し、ジクロロメタンで抽出し、有機層を収集し、水を除去し、回転蒸発により溶媒を除去し、ヘキサン溶液中で沈殿させ、ボルネオールポリジエチレングリコールモノビニルエーテルを得るステップ(3)とを含むことを特徴とするボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【請求項3】
前記D-ボルネオール、前記ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよび前記p-トルエンスルホン酸の投与量は、D-ボルネオール:ジエチレングリコールモノビニルエーテル:p-トルエンスルホン酸=質量比1:30~50:0.04~0.08として計算され、
さらに、1:25~30:0.06~0.07として計算されることを特徴とする請求項2に記載のボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【請求項4】
前記ステップ(1)の前記ジクロロメタンの投与量は、D-ボルネオール:ジクロロメタン=1g:70~150mLとして計算され、
前記ステップ(2)の前記ジクロロメタンの投与量は、ジエチレングリコールモノビニルエーテル:ジクロロメタン=1g:1~5mLとして計算され、
前記ステップ(1)の前記撹拌条件は、回転速度800~1000r/min、時間1~2hであり、
前記ステップ(2)の前記反応の条件は、温度0~10℃、回転速度800~1000r/min、時間2~4hであり、
前記ステップ(3)の前記酸塩基調整剤は、飽和重炭酸ナトリウム水溶液であり、
前記ステップ(3)の前記水を除去する方法は、吸湿剤で水を除去することであることを特徴とする請求項2に記載のボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【請求項5】
請求項1に記載のボルネオールベースのポリマーの使用であって、
静菌剤の調製における上記のボルネオールベースのポリマーの使用。
【請求項6】
請求項1に記載のボルネオールベースのポリマーの使用であって、
酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製におけるボルネオールベースのポリマーの使用。
【請求項7】
酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーは、次のとおりの化学構造式を有し、
【化2】
上記の式において、mとnは重合度であり、その数値は両方とも1~110であり、
さらには1~35であることを特徴とする酸分解性を有するボルネオールベースのポリマー。
【請求項8】
請求項7に記載の酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製方法であって、
請求項1に記載のボルネオールベースのポリマーをトルエンに添加し、トルエンと水を蒸留で除去するステップAと、
乾燥トルエン、スズのオクトエートおよびε-カプロラクトンを添加して反応させ、将応生成物を濃縮させ、氷河シクロヘキサンで沈殿させて、酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーを得るステップBとを含むことを特徴とする酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【請求項9】
前記ボルネオールベースのポリマー、前記スズのオクトエート、前記ε-カプロラクトンの投与量は、ボルネオールベースのポリマー:スズのオクトエート:ε-カプロラクトン=質量比1:0.01~0.08:0.2~2.5として計算され、
さらに、1:0.07~0.08:1~2として計算され、
前記ステップAおよび前記ステップBの前記トルエンの投与量は、ボルネオールベースのポリマー:トルエン=1g:10~30mLとして計算され、
さらに、1g:20~25mLとして計算され、
前記ステップBの前記反応の条件は、窒素条件下で、温度120~140℃、時間24~48hであることを特徴とする請求項8に記載の酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【請求項10】
抗腫瘍薬の調製における請求項7に記載の酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化学の技術分野に属し、特に、ボルネオールベースのポリマーならびにその調製方法および応用に関する。
【背景技術】
【0002】
漢方薬の有効成分の研究は、漢方薬の開発と応用における重要な問題であり、新薬創出の重要な源である。漢方薬の有効なモノマー成分に基づく新薬の開発には、2つの側面があり、1つは、漢方薬から新しい有効なモノマー化合物を発見し、新薬を開発することであり、もう1つは、天然の有効成分に基づいて構造の修飾または変換を実行し、新しい効率的で安全な薬剤を選別することである。
【0003】
プラムスライスとしても知られるボルネオール(borneol)は、二環式モノテルペンアルコールである。ボルネオールは、天然ボルネオールと合成ボルネオールに分けられ、抗炎症、殺菌、鎮痛、抗酸化などの薬理作用がある。ただし、ボルネオールを単一のハーブとして使用すると、有効性が低く、揮発性が高く、溶解性が低いなどの欠点がある。ボルネオールのヒドロキシル基を修飾することにより、ボルネオールの溶解性と安定性を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アセタール結合は、国際的に認められている酸感受性基である。近年、薬物負荷物質としての刺激応答性化合物が注目を集めている。腫瘍と炎症組織の細胞外環境のpHは約6.5であるが、リソソームと細胞核のpHは5.0から5.5の間で、さらに低くなる。アセタール結合基は、アルカリ性および中性条件下で非常に安定しているが、酸性腫瘍組織で破壊され、抗がん剤を急速に放出する効果を実現する。これは、薬物の血漿半減期を延長するだけでなく、腫瘍組織からの薬物の迅速な放出を可能にする。
【0005】
本発明の主な目的は、従来技術の欠点および欠陥を克服し、ボルネオールベースのポリマーを提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、上記のボルネオールベースのポリマーの調製方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらに別の目的は、上記のボルネオールベースのポリマーの応用を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、酸分解性の特性を有するボルネオールベースのポリマー、ならびにその調製方法および応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下の技術的解決策を通じて達成される。
PBDという名前のボルネオールベースのポリマーの化学構造式は次のとおりである。
【0010】
【0011】
上記の式において、mは重合度であり、その数値は1~110であり、好ましくは1~35である。
【0012】
前記ボルネオールベースのポリマー平均の平均分子量は、280~17427であり、好ましくは280~4777である。
【0013】
上記のボルネオールベースのポリマーの調製方法は、原料としてD-ボルネオール(天然ボルネオール)およびジエチレングリコールモノビニルエーテルを使用し、触媒としてp-トルエンスルホン酸を使用し、置換、エーテル形成反応を介して、PBDと名付けられたボルネオールポリジエチレングリコールモノビニルエーテルを得るステップを含む。
【0014】
好ましくは以下のステップを含む。
D-ボルネオールをジクロロメタンに溶解し、p-トルエンスルホン酸を加え、撹拌して溶液Aを得るステップ(1)と、
ジエチレングリコールモノビニルエーテルをジクロロメタン溶媒に溶解し、溶液Bを得た後、前記溶液Bを溶液Aに滴下して反応させるステップ(2)と、
酸塩基調整剤を反応系にpH=7~8まで加え、p-トルエンスルホン酸を除去し、回転蒸発により溶媒を除去し、ジクロロメタンで抽出し、有機層を収集し、水を除去し、回転蒸発により溶媒を除去し、シクロヘキサン溶液中で沈殿させ、ボルネオールポリジエチレングリコールモノビニルエーテルを得て、生成物は無色の粘着性固体であるステップ(3)とを含む。
【0015】
前記D-ボルネオール、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびトルエンスルホン酸の投与量は、好ましくはD-ボルネオール:ジエチレングリコールモノビニルエーテル:p-トルエンスルホン酸=質量比1:30~50:0.04~0.08として計算され、より好ましくは、1:25~30:0.06~0.07として計算される。
【0016】
ステップ(1)の前記ジクロロメタンの投与量は、好ましくは、D-ボルネオール:ジクロロメタン=1g:70~150mLとして計算され、より好ましくは、1g:90~100mLとして計算される。
【0017】
ステップ(2)の前記ジクロロメタンの投与量は、好ましくは、ジエチレングリコールモノビニルエーテル:ジクロロメタン=1g:1~5mLとして計算され、より好ましくは、1g:2~3mLとして計算される。
【0018】
ステップ(1)の前記撹拌条件は、好ましくは、回転速度800~1000r/min、時間1~2hであり、より好ましくは、回転速度1000r/min、時間2hである。
【0019】
ステップ(2)の前記溶液Bを、定圧漏斗を介して溶液Aに滴下することが好ましい。
ステップ(2)の前記反応の条件は、好ましくは、温度0~10℃、回転速度800~1000r/min、時間2~4hであり、より好ましくは、温度0℃、回転速度1000r/min、時間4hである。
【0020】
ステップ(3)の前記酸塩基調整剤は、好ましくは、飽和重炭酸ナトリウム水溶液である。
【0021】
前記飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加モードは、バッチで添加することである。
【0022】
ステップ(3)の前記抽出回数は3回が好ましい。
ステップ(3)の前記水を除去する方法は、好ましくは吸湿剤で水を除去することであり、吸湿剤は好ましくは無水硫酸ナトリウムである。無水硫酸ナトリウムで水を除去する場合、時間は4~8時間であり、水の除去が完了した後、無水硫酸ナトリウムを濾過により除去する。
ステップ(3)の前記沈殿回数は、好ましくは2~4回、より好ましくは3回である。
【0023】
上記静菌剤の調製における上記のボルネオールベースのポリマーの応用。
上記酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製におけるボルネオールベースのポリマーの応用。
【0024】
酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーで、PBD-PCLと呼ばれ、その化学構造式は次のとおりである。
【0025】
【0026】
上記の式において、mとnは重合度であり、その数値は両方とも1~110であり、好ましくは1~35である。
【0027】
前記ポリマーの平均分子量は2000~21000であり、好ましくは2000~6124である。
【0028】
上記酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製方法は、ε-カプロラクトンおよび上記ボルネオールベースのポリマーを原料として使用し、スズのオクトエート(stannous octoate)によって触媒し、重合して標的生成物PBD-PCLを得るステップを含む。
【0029】
好ましくは、上記ボルネオールベースのポリマーをトルエンに添加し、トルエンと水を蒸留で除去するステップAと、
乾燥トルエン、スズのオクトエートおよびε-カプロラクトンを添加して反応させ、将応生成物を濃縮させ、氷河シクロヘキサンで沈殿させて、酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーを得て、生成物は淡黄色の粘着性の固体であるステップBとを含む。
【0030】
前記ボルネオールベースのポリマー、スズのオクトエート、ε-カプロラクトンの投与量は、好ましくは、ボルネオールベースのポリマー:スズのオクトエート:ε-カプロラクトン=質量比1:0.01~0.08:0.2~2.5として計算され、より好ましくは、1:0.07~0.08:1~2として計算される。
【0031】
ステップAおよびステップBの前記トルエンの投与量は、好ましくは、ボルネオールベースのポリマー:トルエン=1g:10~30mLとして計算され、より好ましくは、1g:20~25mLとして計算される。
【0032】
ステップAの前記蒸留は、好ましくは真空蒸留である。
前記真空蒸留の温度は、好ましくは85~95℃、より好ましくは90℃である。
【0033】
ステップBの前記反応の条件、好ましくは、窒素条件下で、温度は120~140℃であり、時間は24~48時間であり、より好ましくは、温度は130℃であり、時間は48時間である。
ステップBの前記濃縮は、好ましくは減圧下で濃縮される。
ステップBの前記沈殿回数は、好ましくは2~4回、より好ましくは3回である。
その調製経路は、次の反応式に示されている。
【0034】
【0035】
抗腫瘍薬の調製における上記酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの応用。
前記腫瘍には、肺がん、乳がん、子宮頸がん、悪性黒色腫、肝臓がん、結腸がんが含まれる。
【発明の効果】
【0036】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点および効果を有する。
本発明の化合物の調製に使用される原料は、すべて簡単に入手しやすく、反応条件は穏やかであり、操作は簡単で便利であり、反応生成物は食品、化学および医療用医薬品キャリアの分野で幅広い用途の見通しがある。
【0037】
本発明の化合物は、酸に敏感な特性を有する。その感度は、弱酸または中程度の強酸条件下で、アセタール結合が切断されて対応するアルデヒドおよびアルコールを生成し、ボルネオール自体が薬効を有することを意味する。したがって、本発明は、制御放出の特定の薬効を有する。その分解反応式は次のとおりである。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施例1の反応プロセス方程式である。
【
図2】本発明の実施例1における中間生成物ボルネオールポリマーの赤外スペクトログラムである。
【
図3】本発明の実施例1における中間生成物ボルネオールポリマーの水素核磁気共鳴スペクトルである。
【
図4】本発明の実施例1の標的生成物の赤外スペクトログラムである。
【
図5】本発明の実施例1の標的生成物の水素核磁気共鳴スペクトルである。
【
図6】本発明の実施例1の標的生成物の透過ゲルクロマトグラムである。
【
図7】本発明の実施例1における分解前後のポリマー透過ゲルのクロマトグラムである。
【
図8】本発明の実施例1における2つの細菌に対するD-ボルネオールポリマーPBD
2K(m=15)の効果の増殖曲線図であり、ここで、aは大腸菌の増殖曲線であり、bは黄色ブドウ球菌の増殖曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、実施例および添付の図面を参照して以下でさらに詳細に説明されるが、本発明の実施形態はそれに限定されない。
【0041】
実施例1
酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製である反応プロセスを
図1に示す。詳細は、次のとおりである。
【0042】
(1)室温で、ボルネオール0.3031gを秤量し、それをジクロロメタン30mLに溶解し、触媒p-トルエンスルホン酸20.21mgを加え、回転速度1000r/minで2時間撹拌して、溶液Aを得る。
(2)7.794gのジエチレングリコールモノビニルエーテルを20mLのジクロロメタン溶媒に室温で溶解して溶液Bを得る。0℃および1000r/minの反応系の条件下で、50mLの円筒形定圧漏斗を通過させる。溶液Bを溶液Aにゆっくりと滴下する。反応時間は4時間である。
(3)飽和重炭酸ナトリウム水溶液をpH=8までバッチで反応系に加えてp-トルエンスルホン酸を除去し、回転蒸発させ、3×10mLのジクロロメタンで3回抽出し、有機層を集め、無水硫酸ナトリウム3gを加えて水を除去する。
(4)濾過して無水硫酸ナトリウムを除去し、回転蒸発させて溶媒を除去し、3×50mLのシクロヘキサン溶液中で3回沈殿させて無色の粘着性固体ボルネオールポリマー(すなわち、ボルネオールポリジエチレングリコールモノビニルエーテル)を得る。
(5)ステップ(4)で得られたボルネオールポリマー1.4435gを秤量し、30mLのトルエン溶媒に加え、110℃で真空蒸留してトルエンと水を除去する。30mLの乾燥トルエン、0.1034gのスズのオクトエート、および1.1788gのε-カプロラクトンをボルネオールポリマーに添加する。反応系の条件は130℃、窒素保護、48時間反応させる。
(6)減圧下で濃縮し、氷河シクロヘキサン3*50mLで3回沈殿させて、淡黄色のコロイド状固体である最終生成物を得る。
【0043】
実施例1で得られた中間生成物ボルネオールポリマーを赤外スペクトルで検出し、赤外スペクトルグラムは、
図2に示される。
【0044】
実施例1の中間生成物であるボルネオールポリマーを水素核磁気共鳴分光計により検出し、水素核磁気共鳴スペクトルは
図3に示される。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ7.28(s,1H),5.30(s,1H),4.81(ddd,J=12.9,6.9,3.2Hz,9H),3.98-3.82(m,7H),3.82-3.43(m,78H),2.21(t,J=2.6Hz,2H),3.22-1.69(m,4H),2.33-1.69(m,3H),1.69-1.39(m,1H),1.43-1.29(m,27H),1.29-1.02(m,1H),1.00-0.80(m,2H),0.02--0.02(m,1H)。
【0045】
図2および
図3は、また、実施例1が中間生成物ボルネオールポリマー(ボルネオールポリジエチレングリコールモノビニルエーテル、PBDと略称される)の合成が成功したことを示している。その分子構造式は次のとおりである。
【0046】
【0047】
m値は15、分子量は2134である。
【0048】
実施例1の最終生成物は、赤外分光計によって検出され、赤外スペクトログラムが
図4に示されている。
【0049】
実施例1の生成物を水素核磁気共鳴分光計により検出し、水素核磁気共鳴スペクトルは
図5に示される。
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ7.28(s,33H),4.88-4.72(m,35H),4.75-4.72(m,7H),4.75-4.62(m,10H),4.40-4.21(m,49H),4.21-4.01(m,78H),4.01-3.85(m,8H),3.82-3.48(m,542H),3.46-3.34(m,13H),2.97-2.09(m,197H),2.12-1.95(m,9H),1.70-0.78(m,487H),1.00-0.81(m,6H),1.00-0.78(m,6H),0.03--0.03(m,33H)。
【0050】
実施例1の最終生成物の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定され、ゲル浸透クロマトグラムが
図6に示されている。
図4、
図5、および
図6は、最終生成物(PBD-PCLと略称)の合成が成功したことを示している。
その分子構造式は次のとおりである。
【0051】
【0052】
重量平均分子量は、Mw=6124であり、m、nの値はそれぞれ15、35である。
【0053】
適用実施例1
実施例1で得られたポリマー(PBD
15-PCL
35)100mgを取り、それを2mLのテトラヒドロフランに溶解し、1mL(0.2mol/L)、pH=5.2のPBS溶液を加え、30分間撹拌する。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でポリマーの分子量を測定し、その結果を
図7に示す。図の結果から、酸分解を受けたグループの重量平均分子量は、30分後に6124から1040に減少したことがわかる。
【0054】
効果実施例1
本発明の内容によれば、異なるm/nのポリマーのいくつかのポリマーが合成された。ここで、n=0の場合に異なる分子量を有するボルネオールポリマーPBD(PBD2K(m=15)、PBD3K(m=22)、PBD4K(m=30)、PBD5K(m=37))。n=0の場合に異なる分子量を有するボルネオールポリマーPBDの調製方法は次のとおりである。
(1)実施例1ステップ(1)~(4)に従って調製した場合、実施例1との唯一の違いは、使用したジエチレングリコールモノビニルエーテルの量が7.794gであり、PBD2K(m=15)を得る。
(2)実施例1ステップ(1)~(4)に従って調製した場合、実施例1との唯一の違いは、使用したジエチレングリコールモノビニルエーテルの量が11.691gであり、PBD3K(m=22)を得る。
(3)実施例1ステップ(1)~(4)に従って調製した場合、実施例1との唯一の違いは、使用したジエチレングリコールモノビニルエーテルの量が15.588gであり、PBD4K(m=30)を得る。
(4)実施例1ステップ(1)~(4)に従って調製した場合、実施例1との唯一の違いは、使用したジエチレングリコールモノビニルエーテルの量が19.485gであり、PBD5K(m=37)を得る。
【0055】
上記調製により得られたポリマー静菌特性を、実施例1で得られたブロックポリマーPBD
15-PCL
35と比較した。従来の光学密度法を用いて、各物質の最小発育阻止濃度(MIC)と細菌増殖阻害曲線を評価した。結果は、表1と
図8に示される。MICは薬剤の静菌力の指標であり、薬剤の静菌作用を正確に反映することができる。
[表1]さまざまな物質の最小発育阻止濃度(MIC)
【0056】
【表1】
注:原料aはD-ボルネオール、原料bはジエチレングリコールモノビニルエーテル、PBD上付き文字は対応する分子量である。使用した菌種は、実験用黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus ATCC25923、大腸菌Escherichia coli ATCC25922、サルモネラ菌Salmonella enterica ATCC14028、緑膿菌Pseudomonas aeruginosa ATCC27853、リステリア菌Listeria monocytogenes ATCC13932である。
【0057】
D-ボルネオールの水溶性が低く揮発性が強いため、D-ボルネオールの水溶液の静菌効果は著しくではなく、最小発育阻止濃度は40mg/mLを超えている。ジエチレングリコールモノビニルエーテルは水溶性有機中間体であり、その水溶液の静菌性は、D-ボルネオールよりも優れているが、ジエチレングリコールモノビニルエーテルは空気中で不安定であるため、酸性条件下で自己重合しやすく、静菌効果に影響を与える。以上の結果から、アセタール反応により生成されるD-ボルネオールポリマーPBDの静菌力は、D-ボルネオールやジエチレングリコールモノビニルエーテルよりも大幅に優れており、いくつかの菌株の最小発育阻止濃度は2.5~5mg/mLである。ブロックコポリマーPBD15-PCL35はいくつかの菌株に対して静菌効果を示さず、最小発育阻止濃度は40mg/mLを超えている。
【0058】
カプロラクトンとの共重合は、D-ボルネオールポリマーPBDの静菌性に影響を与える。これは、分子の疎水性セグメントの増加が原因である可能性があり、ポリマーの水溶性が低下し、それによってその静菌活性が低下する。
【0059】
n=0の場合、mが増加すると、つまりD-ボルネオールポリマーPBDの分子量が増加すると、最小発育阻止濃度がわずかに増加する傾向がある。黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌およびリステリア菌の場合、5mg/mLの細菌が10mg/mLに増加する。分子量の増加がD-ボルネオールポリマーPBDの静菌効果を低下させる可能性がある。
【0060】
OD値はバクテリアの増殖状態を反映することができる。OD値が高いほど、試験された菌株によって吸収される光学密度が高くなり、その濃度が高くなることを表す。
図8に示すように、曲線aとbは、それぞれ黄色ブドウ球菌と大腸菌でのD-ボルネオールポリマーPBD(PBD
2K(m=15))の増殖曲線である。この図から、通常の状態では2つの細菌が正常に増殖し、OD
630nmが最初に増加してから水平になる傾向があることがあり、D-ボルネオールポリマーPBD溶液1×MICおよび2×MICの作用下で、2つの株のOD
630nmは水平に近づき、正常に成長できない。これは、より低い質量濃度(大腸菌の場合は2.5mg/mL、黄色ブドウ球菌の場合は5mg/mL)でも、D-ボルネオールポリマーPBD溶液が黄色ブドウ球菌と大腸菌の正常な増殖を効果的に阻害できることを示している。
【0061】
以上は、本発明の一実施形態および適用例に過ぎないが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、本明細書の実施形態を変更できることを理解すべきである。もちろん、これは本発明の権利の範囲を制限するものではないので、本発明の特許請求の範囲に従って行われた同等の変更は、依然として本発明の範囲内にある。
【0062】
(付記)
(付記1)
ボルネオールベースのポリマーであって、
前記ボルネオールベースのポリマーの化学構造式は次のとおりであり、
【化7】
上記の式において、mは重合度であり、その数値は1~110であり、さらに1~35であることを特徴とするボルネオールベースのポリマー。
【0063】
(付記2)
付記1に記載のボルネオールベースのポリマーの調製方法であって、
D-ボルネオールをジクロロメタンに溶解し、p-トルエンスルホン酸を加え、撹拌して溶液Aを得るステップ(1)と、
ジエチレングリコールモノビニルエーテルをジクロロメタン溶媒に溶解し、溶液Bを得て、前記溶液Bを前記溶液Aに滴下して反応させるステップ(2)と、
酸塩基調整剤を反応系にpH=7~8まで加え、p-トルエンスルホン酸を除去し、回転蒸発により溶媒を除去し、ジクロロメタンで抽出し、有機層を収集し、水を除去し、回転蒸発により溶媒を除去し、ヘキサン溶液中で沈殿させ、ボルネオールポリジエチレングリコールモノビニルエーテルを得るステップ(3)とを含むことを特徴とするボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【0064】
(付記3)
前記D-ボルネオール、前記ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよび前記p-トルエンスルホン酸の投与量は、D-ボルネオール:ジエチレングリコールモノビニルエーテル:p-トルエンスルホン酸=質量比1:30~50:0.04~0.08として計算され、
さらに、1:25~30:0.06~0.07として計算されることを特徴とする付記2に記載のボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【0065】
(付記4)
前記ステップ(1)の前記ジクロロメタンの投与量は、D-ボルネオール:ジクロロメタン=1g:70~150mLとして計算され、
前記ステップ(2)の前記ジクロロメタンの投与量は、ジエチレングリコールモノビニルエーテル:ジクロロメタン=1g:1~5mLとして計算され、
前記ステップ(1)の前記撹拌条件は、回転速度800~1000r/min、時間1~2hであり、
前記ステップ(2)の前記反応の条件は、温度0~10℃、回転速度800~1000r/min、時間2~4hであり、
前記ステップ(3)の前記酸塩基調整剤は、飽和重炭酸ナトリウム水溶液であり、
前記ステップ(3)の前記水を除去する方法は、吸湿剤で水を除去することであることを特徴とする付記2に記載のボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【0066】
(付記5)
付記1に記載のボルネオールベースのポリマーの使用であって、
静菌剤の調製における上記のボルネオールベースのポリマーの使用。
【0067】
(付記6)
付記1に記載のボルネオールベースのポリマーの使用であって、
酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製におけるボルネオールベースのポリマーの使用。
【0068】
(付記7)
酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーは、次のとおりの化学構造式を有し、
【化8】
上記の式において、mとnは重合度であり、その数値は両方とも1~110であり、
さらには1~35であることを特徴とする酸分解性を有するボルネオールベースのポリマー。
【0069】
(付記8)
付記7に記載の酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製方法であって、
付記1に記載のボルネオールベースのポリマーをトルエンに添加し、トルエンと水を蒸留で除去するステップAと、
乾燥トルエン、スズのオクトエートおよびε-カプロラクトンを添加して反応させ、将応生成物を濃縮させ、氷河シクロヘキサンで沈殿させて、酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーを得るステップBとを含むことを特徴とする酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【0070】
(付記9)
前記ボルネオールベースのポリマー、前記スズのオクトエート、前記ε-カプロラクトンの投与量は、ボルネオールベースのポリマー:スズのオクトエート:ε-カプロラクトン=質量比1:0.01~0.08:0.2~2.5として計算され、
さらに、1:0.07~0.08:1~2として計算され、
前記ステップAおよび前記ステップBの前記トルエンの投与量は、ボルネオールベースのポリマー:トルエン=1g:10~30mLとして計算され、
さらに、1g:20~25mLとして計算され、
前記ステップBの前記反応の条件は、窒素条件下で、温度120~140℃、時間24~48hであることを特徴とする付記8に記載の酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの調製方法。
【0071】
(付記10)
抗腫瘍薬の調製における付記7に記載の酸分解性を有するボルネオールベースのポリマーの使用。
【国際調査報告】