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特表2023-512127フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス
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  • 特表-フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/383 20060101AFI20230316BHJP
   C07C 25/13 20060101ALI20230316BHJP
   C07C 17/00 20060101ALI20230316BHJP
   C07C 245/20 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C07C17/383
C07C25/13
C07C17/00
C07C245/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571519
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 CN2021099262
(87)【国際公開番号】W WO2022134489
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011550607.9
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521522939
【氏名又は名称】福建中欣▲ふう▼材高宝科技有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520321498
【氏名又は名称】浙江中欣▲ふう▼材股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】袁其亮
(72)【発明者】
【氏名】繆永奕
(72)【発明者】
【氏名】石永根
(72)【発明者】
【氏名】張翌強
(72)【発明者】
【氏名】陳寅鎬
(72)【発明者】
【氏名】王超
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC30
4H006AD11
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BD10
4H006BD33
4H006BD35
4H006BD40
4H006BD53
4H006BD70
4H006BD84
4H006BE01
4H006EA21
(57)【要約】
本発明は、フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセスを提供し
、ハロゲン化炭化水素炭素環有機化合物の製造技術分野に属する。芳香族アミン、フッ化
水素は、別々に恒温器A、Bにポンプで送り込まれ、恒温後、マイクロチャンネル反応器
Cに流入して塩形成反応させ、ニトロシル硫酸の硫酸溶液が恒温器Dにポンプで送り込ま
れ、恒温後、マイクロチャンネル反応器Cから流出した塩形成生成物と共にマイクロチャ
ンネル反応器Eに流入してジアゾ化反応させ、生成物はマイクロチャンネル反応器Fに流
入して熱分解反応させ、冷却器Gで冷却した後、三相分離器Hに入って連続分離され、窒
素ガスがスプレーされて酸を除去した後に排出され、フッ素含有芳香族炭化水素粗生成物
が連続アルカリ洗浄され、連続的に乾燥され、連続的に精留されて、フッ素含有芳香族炭
化水素製品を得て、フッ化水素酸と硫酸との混合物が連続的に蒸留されて、フッ化水素及
び硫酸を得る。本完全連続フロー合成プロセスは、高い反応収率、優れた製品品質、良好
な生産安全性、少ない汚染物質の排出という利点を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)芳香族アミンとフッ化水素と仕込み割合に応じて、芳香族アミンをポンプで恒温
器Aに、フッ化水素をポンプで恒温器Bに送り込み、原料温度を一定にするステップと、
(2)恒温器から流出した芳香族アミン及びフッ化水素は、マイクロチャンネル反応器
Cに流入して塩形成反応し、芳香族アミンフッ化水素塩のフッ化水素酸溶液を得るステッ
プと、
(3)ニトロシル硫酸と芳香族アミンとの仕込み割合に応じて、ニトロシル硫酸の硫酸
溶液を恒温器Dにポンプで送り込み、原料温度を一定にするステップと、
(4)マイクロチャンネル反応器Cから流出した芳香族アミンフッ化水素塩のフッ化水
素酸溶液と、恒温器Dから流出したニトロシル硫酸の硫酸溶液とは、マイクロチャンネル
反応器Eに流入してジアゾ化反応して、アリールジアゾニウム塩溶液を得るステップと、
(5)マイクロチャンネル反応器Eから流出したアリールジアゾニウム塩溶液は、マイ
クロチャンネル反応器Fに流入して熱分解反応し、フッ素含有芳香族炭化水素、フッ化水
素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物を得るステップと、
(6)マイクロチャンネル反応器Fから流出したフッ素含有芳香族炭化水素、フッ化水
素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物は、冷却器Gを通過した後、三相分離器Hに送
入されて連続分離され、窒素ガスが三相分離器Hのガス排出口から排出され、フッ素含有
芳香族炭化水素粗生成物が三相分離器Hの軽液相排出口から流出し、フッ化水素酸と硫酸
との混合物が三相分離器Hの重液相排出口から流出するステップと、
(7)三相分離器Hのガス排出口から排出した窒素ガスは、スプレー塔Iでスプレーさ
れて酸を除去した後に排出されるステップと、
(8)三相分離器Hの軽液相排出口から流出したフッ素含有芳香族炭化水素粗生成物は
、連続アルカリ洗浄塔Jに入ってアルカリ洗浄して酸を除去した後、連続乾燥塔Kで脱水
されて、連続精留塔Lで精留され、フッ素含有芳香族炭化水素製品を得るステップと、
(9)三相分離器Hの重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合物は、連
続蒸留塔Mで蒸留され、回収フッ化水素及び回収硫酸を得るステップと、
を含むことを特徴とするフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロ
セス。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記芳香族アミンは、アニリン、o-メチルアニリン、m-
メチルアニリン、p-メチルアニリン、o-エチルアニリン、m-エチルアニリン、p-
エチルアニリン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,5-ジメ
チルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、3,4-ジメチルアニリン、3,5-ジメチ
ルアニリン、2,3,4-トリメチルアニリン、2,3,5-トリメチルアニリン、2,
3,6-トリメチルアニリン、2,4,5-トリメチルアニリン、2,4,6-トリメチ
ルアニリン、3,4,5-トリメチルアニリン、2,3,4,5-テトラメチルアニリン
、2,3,5,6-テトラメチルアニリン、2,3,4,6-テトラメチルアニリン、ペ
ンタメチルアニリンから選ばれるいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載の
フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記フッ化水素の含水量は1.0%未満であることを特徴と
する請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス
【請求項4】
ステップ(1)において、芳香族アミンとフッ化水素との物質量の比は1:5~50で
あることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フ
ロー合成プロセス。
【請求項5】
ステップ(1)において、芳香族アミンが恒温器Aで恒温後の温度は-20~70℃で
あり、温度変動は±2℃未満であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族
炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項6】
ステップ(1)において、フッ化水素が恒温器Bで恒温後の温度は-50~20℃であ
り、温度変動は±2℃未満であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭
化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項7】
ステップ(2)において、マイクロチャンネル反応器Cの排出口の原料温度は-10~
20℃に制御され、温度変動は±2℃未満であることを特徴とする請求項1に記載のフッ
素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項8】
ステップ(3)において、前記ニトロシル硫酸の硫酸溶液において、ニトロシル硫酸の
有効含有量は10%~50%であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族
炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項9】
ステップ(3)において、ニトロシル硫酸の硫酸溶液が恒温器Dで恒温後の温度は-3
0~50℃であり、温度変動±2℃未満であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素
含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項10】
ステップ(3)において、芳香族アミンとニトロシル硫酸との物質量の比は1:1~1
.2であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全
連続フロー合成プロセス。
【請求項11】
ステップ(4)において、マイクロチャンネル反応器E内の原料温度は-20~20℃
に制御され、排出口の原料温度は-20~20℃に制御され、温度変動は±2℃未満であ
ることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロ
ー合成プロセス。
【請求項12】
ステップ(5)において、マイクロチャンネル反応器F内の原料温度は20~100℃
に制御され、排出口の原料温度は20~100℃に制御され、温度変動は±2℃未満であ
ることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロ
ー合成プロセス。
【請求項13】
ステップ(6)において、冷却器Gの排出口の原料温度は-20~20℃に制御される
ことを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー
合成プロセス。
【請求項14】
ステップ(6)において、三相分離器Hの排出口の原料温度は-20~20℃に制御さ
れることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フ
ロー合成プロセス。
【請求項15】
ステップ(7)において、スプレー塔Iのスプレー方式は、単段式アルカリ溶液スプレ
ー、多段式アルカリ溶液スプレー、水とアルカリ溶液との統合スプレーから選ばれるいず
れか1種であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の
完全連続フロー合成プロセス。
【請求項16】
ステップ(7)において、スプレー塔Iの構造は、充填塔または棚段塔から選ばれるい
ずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物
の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項17】
ステップ(7)において、スプレー塔Iでスプレー用のアルカリ溶液は無機アルカリの
水溶液であり、無機アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、
炭酸カリウムから選ばれる1種または2種以上であり、アルカリ溶液のpHは9より大き
いことを特徴とする請求項15に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フ
ロー合成プロセス。
【請求項18】
ステップ(7)において、スプレー塔Iの作動温度は常温であることを特徴とする請求
項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項19】
ステップ(8)において、連続アルカリ洗浄塔Jで液相対向流方式を採用し、アルカリ
溶液が連続アルカリ洗浄塔Jの上部から入り、二相分離後連続アルカリ洗浄塔Jの底部か
ら流出し、フッ素含有芳香族炭化水素粗生成物が連続アルカリ洗浄塔Jの下部から入り、
二相分離後連続アルカリ洗浄塔Jの頂部から流出することを特徴とする請求項1に記載の
フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項20】
ステップ(8)において、連続アルカリ洗浄塔Jで使用したアルカリ溶液は無機アルカ
リの水溶液であり、無機アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウムから選ばれる1種または2種以上であり、アルカリ溶液のpHは9より
大きいことを特徴とする請求項19に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連
続フロー合成プロセス。
【請求項21】
ステップ(8)において、連続アルカリ洗浄塔Jの作動温度は常温であることを特徴と
する請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセス
【請求項22】
ステップ(8)において、連続精留塔Lの構造は、充填塔または棚段塔から選ばれるい
ずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物
の完全連続フロー合成プロセス。
【請求項23】
ステップ(9)において、連続蒸留塔Mの構造は、充填塔または棚段塔から選ばれるい
ずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素含有芳香族炭化水素系化合物
の完全連続フロー合成プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセスに関し、
ハロゲン化炭化水素炭素環有機化合物の製造技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
フルオロベンゼンやメチルフルオロベンゼンなどのフッ素含有芳香族化合物は、芳香族
フッ化物の重要な基礎原料であり、医薬品、農薬、染料の合成に直接使用できるだけでな
く、上記の分野のためのさまざまなフルオロベンゼン誘導体をニトロ化、塩素化、アシル
化などの反応後に合成することができ、近年では特殊なエンジニアリングプラスチックの
調製などにも使用されており、その用途は非常に広く、市場の需要は年々増加している。
フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の工業的な製造方法には、主にBaz-Schirman法、ハロ
ゲン交換法、フッ化水素法の3種類がある。Baz-Siemann法は、現在、フッ素含有芳香族
炭化水素系化合物の製造で一般的に使用されている方法であるが、大量のテトラフルオロ
ホウ酸を消費する必要があり、熱分解の過程で窒素が発生するだけでなく、強い腐食性と
毒性を持つ三フッ化ホウ素ガスが発生するため、製造過程で深刻な環境汚染と高い安全性
の問題が発生し、現在、徐々に廃止の圧力に直面している。ハロゲン交換法は、Baz-Schi
rman法に比べて製造操作が簡単で、安全性のリスクも低いが、ベンゼン環に強い電子吸収
基を持つハロゲン化芳香族にしか適用できず、応用範囲が狭いのが難点である。Baz-Schi
rman法を発展させたフッ化水素法では、テトラフルオロホウ酸の使用を避けることができ
るため、熱分解過程で強い腐食性と毒性を持つ三フッ化ホウ素ガスが発生せず、反応の安
全性と環境への配慮がある程度向上する。その欠点は、反応過程で過剰なフッ化水素を使
用することであり、フッ化水素は低沸点、高揮発性、高腐食性、高毒性であるため、その
製造工程は今でも安全上の大きな問題となっている。したがって、フッ化水素法の適用範
囲は、生産工程でのフッ化水素の液体保持量や無秩序の揮発量をいかに減らして生産工程
の安全性を高めるかに直結する。
【0003】
現在、フッ化水素法がフルオロベンゼンの製造に適用されている。従来のフッ化水素法
によるフルオロベンゼンの製造プロセスは、まずアニリンをフッ化水素で塩形成させ、次
に乾燥した亜硝酸ナトリウムでジアゾ化させ、反応温度は0~10℃に制御され、反応後
にジアゾニウム塩溶液が40℃以下で熱分解し、熱分解が完了した後、静置分層し、分離
した有機層を水、アルカリで洗浄し、水蒸気で蒸留してフルオロベンゼン粗生成物を得て
、最後に、無水塩化カルシウムで脱水されてフルオロベンゼン生成物を得る。収率は約8
0%で、すべてのプロセスはバッチ式ケトル型で操作される。
従来のフッ化水素法は、他の工業用フルオロベンゼン製造方法と比較して、製品単位あ
たりの原料消費量が少ない、製造工程が短い、設備投資額が少ない、投資回収期間が短い
、反応収率が高い、製品品質が良い(純度>99%)などの利点があるため、競争力が高
く、現在、国内外のフルオロベンゼンの工業的製造方法の主流となっている。
【0004】
とはいえ、従来のフッ化水素法では、バッチ式ケトル型の製造方法を使って生産するた
め、以下のような避けられない欠点がある。
(1)生産の安全性が低い。まず、製造工程では大量のフッ化水素の液体保持量があり
、フッ化水素は低沸点、高揮発性、高腐食性、高毒性であるため、製造工程での安全上の
問題が大きいこと、次に、ジアゾニウム塩は熱に非常に敏感で、熱分解の際に窒素が発生
し、フッ化水素の沸点が低くてすぐに蒸発してしまうことと相まって、いったん温度が急
激に上昇すると、反応器内のジアゾニウム塩が急速に分解し、大量の揮発性ガスが発生し
てシステムの圧力が急激に上昇し、重大な安全上の問題、さらには爆発が発生している。
(2)反応の収率は低い。熱分解段階では、熱分解の速度を制御し、窒素を秩序よく放
出させるために、温度を徐々に上げ、ジアゾニウム塩の熱分解工程全体で6時間以上とな
る。長時間の加熱工程では、ジアゾニウム塩の一部が加水分解や重合などの副反応を起こ
し、反応収率は約80%に過ぎない。
(3)3つの廃棄物の量は多く、処理が困難である。ジアゾニウム塩が長時間熱分解す
る間に、ジアゾニウム塩の一部が加水分解や重合などの副反応を起こし、タール状の副生
成物が大量に発生し、これがフルオロベンゼンやフッ化水素の分離・回収に影響を与え、
3つの廃棄物の発生をさらに増加させ、最終的には処理が極めて困難な大量のフッ素含有
有害固体廃棄物を形成することになる。
(4)生産環境が悪く、EHSの要件を満たしていない。バッチ式ケトル型の製造方法
のため、製造工程の密閉性が十分ではなく、フッ化水素の揮発を避けることができず、操
業中の作業者や周辺環境に害を及ぼすことになる。低濃度のフッ化水素を長時間吸入する
と、慢性中毒、嘔吐、めまいを起こし、フッ化水素の濃度が30μg/m以上になると
急性中毒になる。大気中のフッ化水素は、銀杏、りんご、大麦、トウモロコシ、米などの
果樹や農作物の収穫量を減少させる原因にもなる。
【0005】
フルオロベンゼン製造のための従来のバッチ式ケトル型フッ化水素法の欠点を克服する
ために、CN110283039Aは、ジアゾニウム塩の熱分解反応に管式反応器を用い
て従来のケトル型熱分解反応に代えているが、管状反応器の熱伝達効果が低いため、反応
熱の蓄積を避けるためには、供給速度を遅くして熱分解時間を長くすることでしか克服で
きず、結果としてその熱分解反応時間は依然として長く、熱分解反応の制御不能なリスク
が依然として存在し、副反応の発生をうまく克服できず、反応の安定性が低いである。ま
た、アニリンとフッ化水素の塩形成反応やジアゾ化反応は、依然としてバッチ式ケトル型
プロセスで行われており、フッ化水素によるフルオロベンゼンの製造プロセスの強化には
限界がある。CN111116303Aには、上記の技術に基づいて、ジアゾ化試薬とし
てニトロシル硫酸を使用し、炭化ケイ素製のマイクロチャネル反応器を用いて、アニリン
フッ化水素塩のフッ化水素酸溶液とニトロシル硫酸との連続的なジアゾ化反応を実現し、
ジアゾ化反応液は熱分解器に入って5~60分間の熱分解反応を行い、最後に一連の後処
理を行ってフルオロベンゼンを得るという方法が開示されている。当該技術は、ジアゾ化
反応段階では、炭化ケイ素製のマイクロチャンネル反応器を使用してジアゾ化反応の連続
性の問題を解決しており、従来のバッチ式ケトル型フッ化水素法の製造プロセスに比べて
大きく改善されているが、そのジアゾニウム塩の熱分解反応は依然として管状反応器を使
用しており、熱分解反応時間は依然として長く、また、アニリンとフッ化水素の塩形成反
応は依然としてバッチ式ケトル型の操作を使用しており、製造プロセスにおけるフッ化水
素の液体保持量は依然として非常に多く、フッ化水素の安全リスクは効果的に低減されず
、後処理も従来のバッチ式方法で行われるため、バッチ式ケトル型フッ化水素法の製造工
程を部分的に改善するだけで、フッ化水素法の欠点を根本的に解決することはできない。
そのため、フッ化水素の製造プロセスを最適化するためには、まだ多くの課題が存在して
いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような観点から、先行技術の欠点に対して、本発明は、効率的で安全なフッ素含有
芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセスを提供するものであり、このプロ
セスは、高い反応収率、優れた製品品質、良好な生産安全性、少ない汚染物質の排出とい
う利点を有し、全プロセスの連続生産と自動制御を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明で使用する技術的解決策は、
(1)芳香族アミンとフッ化水素と仕込み割合に応じて、芳香族アミンをポンプで恒温
器Aに、フッ化水素をポンプで恒温器Bに送り込み、原料温度を一定にするステップと、
(2)恒温器から流出した芳香族アミン及びフッ化水素は、マイクロチャンネル反応器
Cに流入して塩形成反応し、芳香族アミンフッ化水素塩のフッ化水素酸溶液を得るステッ
プと、
(3)ニトロシル硫酸と芳香族アミンとの仕込み割合に応じて、ニトロシル硫酸の硫酸
溶液を恒温器Dにポンプで送り込み、原料温度を一定にするステップと、
(4)マイクロチャンネル反応器Cから流出した芳香族アミンフッ化水素塩のフッ化水
素酸溶液と、恒温器Dから流出したニトロシル硫酸の硫酸溶液とは、マイクロチャンネル
反応器Eに流入してジアゾ化反応して、アリールジアゾニウム塩溶液を得るステップと、
(5)マイクロチャンネル反応器Eから流出したアリールジアゾニウム塩溶液は、マイ
クロチャンネル反応器Fに流入して熱分解反応し、フッ素含有芳香族炭化水素、フッ化水
素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物を得るステップと、
(6)マイクロチャンネル反応器Fから流出したフッ素含有芳香族炭化水素、フッ化水
素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物は、冷却器Gを通過した後、三相分離器Hに送
入されて連続分離され、窒素ガスが三相分離器Hのガス排出口から排出され、フッ素含有
芳香族炭化水素粗生成物が三相分離器Hの軽液相排出口から流出し、フッ化水素酸と硫酸
との混合物が三相分離器Hの重液相排出口から流出するステップと、
(7)三相分離器Hのガス排出口から排出した窒素ガスは、スプレー塔Iでスプレーさ
れて酸を除去した後に排出されるステップと、
(8)三相分離器Hの軽液相排出口から流出したフッ素含有芳香族炭化水素粗生成物は
、連続アルカリ洗浄塔Jに入ってアルカリ洗浄して酸を除去した後、連続乾燥塔Kで脱水
されて、連続精留塔Lで精留され、フッ素含有芳香族炭化水素製品を得るステップと、
(9)三相分離器Hの重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合物は、連
続蒸留塔Mで蒸留され、回収フッ化水素及び回収硫酸を得るステップと、
を含むことを特徴とするフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロ
セスである。
【0008】
本発明は、以下の反応式で表すことができる。
ここで、R~Rは、それぞれ独立して、H、C1~C3の直鎖または分岐したアル
キル基から選択できる。
【0009】
本発明は、さらに、以下のように設定される。
【0010】
前記芳香族アミンは、アニリン、o-メチルアニリン、m-メチルアニリン、p-メチ
ルアニリン、o-エチルアニリン、m-エチルアニリン、p-エチルアニリン、2,3-
ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,5-ジメチルアニリン、2,6-ジ
メチルアニリン、3,4-ジメチルアニリン、3,5-ジメチルアニリン、2,3,4-
トリメチルアニリン、2,3,5-トリメチルアニリン、2,3,6-トリメチルアニリ
ン、2,4,5-トリメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、3,4,5-
トリメチルアニリン、2,3,4,5-テトラメチルアニリン、2,3,5,6-テトラ
メチルアニリン、2,3,4,6-テトラメチルアニリン、ペンタメチルアニリンから選
ばれるいずれか1種である。
【0011】
前記フッ化水素は、含水率が低いことが求められるが、実際の使用においては、フッ化
水素を絶対的に無水にすることはできませんので、フッ化水素の含水量は1.0%未満、
好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.2%未満であることが求められる。フッ化
水素の含水量が増加すると、フッ化水素の腐食性が高まり、設備の腐食損傷のリスクが高
くなる。さらに、フッ化水素に含まれる水分は、その後のジアゾ化・熱分解反応において
、ジアゾニウム塩加水分解の副反応を引き起こし、タールの生成につながる可能性もあり
、反応収率が低下するだけでなく、マイクロチャンネル反応器の目詰まりのリスクも高く
なる。
【0012】
前記ニトロシル硫酸は、ニトロシル硫酸の硫酸溶液であり、ニトロシル硫酸の有効含有
量が10%~50%、好ましくはニトロシル硫酸の含有量が20%~40%である。ニト
ロシル硫酸中の硫酸は、溶媒としてのみ使用され、ニトロシル硫酸のみがジアゾ化試薬と
して使用されて、芳香族アミンと反応して対応するジアゾニウム塩を生成する。
【0013】
芳香族アミンと、フッ化水素と、ニトロシル硫酸との仕込み割合は、芳香族アミンと、
フッ化水素と、ニトロシル硫酸との物質量の比が1:(5~50):(1~1.2)であ
る。
【0014】
恒温器A、B、Cは、原料である芳香族アミン、フッ化水素及びニトロシル硫酸がマイ
クロチャンネル反応器に入る前の温度を制御するために使用され、主な目的は(1)マイ
クロチャンネル反応器に入る原料の温度を安定させ、原料温度変動、特に時間、季節、地
理的位置などによる原料の温度変化を避け、システムの全天候・全地域型の安定した運転
を助長することと、(2)原料温度を一定にし、マイクロチャンネル反応器の安定した状
態の維持と、完全連続フローシステムの試運転に寄与し、試運転が安定した後の完全連続
フローシステムの長期安定運転を保証することである。恒温器の基本原理は熱交換器と同
じで、相互に隔離された温度調整可能な熱交換媒体を介して、恒温器に入る原料の温度を
調整し、原料温度が必要な温度範囲で一定になるようにする。芳香族アミンが恒温器Aを
通過した後、排出口温度は-20~70℃に制御され、温度変動は低いほど良く、一般的
には±2℃未満、好ましくは±1℃未満、より好ましくは±0.5℃未満であることが要
求される。フッ化水素が恒温器Bを通過した後、排出口温度は-50~20℃に制御され
、温度変動は低いほど良く、一般的には±2℃未満、好ましくは±1℃未満、より好まし
くは±0.5℃未満であることが要求される。ニトロシル硫酸の硫酸溶液が恒温器Dで恒
温した後、温度は-30~50℃に制御され、温度変動は低いほど良く、一般的には±2
℃未満、好ましくは±1℃未満、より好ましくは±0.5℃未満であることが要求される
。恒温器A、B、Cの材料は、接触する材料の性質によって選択が異なる。恒温器Aは、
接触する原料が芳香族アミンであるため、腐食性が低く、炭化ケイ素、モネル合金、ハス
テロイ、316L、304Lなど幅広い材料を選択できる。恒温器B、Cは、接触する原
料が腐食性であるため、炭化ケイ素、モネル合金、ハステロイなど耐食性の高い材料を選
択する必要がある。
【0015】
前記マイクロチャンネル反応器Cは、優れた混合効果と、芳香族アミンとフッ化水素と
を反応させて芳香族アミンフッ化水素塩を生成する際に発生した熱を速やかに輸出する優
れた熱交換効果とを有し、フッ化水素酸の腐食に耐えられる材料が要求され、選択できる
材質は、炭化ケイ素、モネル合金、ハステロイなどがある。マイクロチャンネル反応器C
の排出口の原料温度は-10~20℃に制御され、且つ温度変動は低いほど良く、一般的
には±2℃未満、好ましくは±1℃未満、より好ましくは±0.5℃未満であることが要
求される。マイクロチャンネル反応器Cにおいて、芳香族アミンがフッ化水素と反応して
芳香族アミンフッ化水素塩を生成し、過剰なフッ化水素酸に溶解して芳香族アミンフッ化
水素塩のフッ化水素酸溶液を形成し、マイクロチャンネル反応器Cの排出口から流出し、
マイクロチャンネル反応器Eに入る。
【0016】
前記マイクロチャンネル反応器Eは、優れた混合効果と、芳香族アミンフッ化水素塩と
ニトロシル硫酸とのジアゾ化反応で発生した熱を速やかに輸出する優れた熱交換効果とを
有し、フッ化水素酸と硫酸の腐食に耐えられる材料が要求され、選択できる材質は、炭化
ケイ素、モネル合金、ハステロイなどがある。マイクロチャンネル反応器E内の原料温度
は-20~20℃に制御され、排出口の原料温度は20~20℃に制御され、且つ温度変
動は低いほど良く、一般的には±2℃未満、好ましくは±1℃未満、より好ましくは±0
.5℃未満であることが要求される。マイクロチャンネル反応器Eにおいて、芳香族アミ
ンフッ化水素塩がニトロシル硫酸と反応してアリールジアゾニウム塩を生成し、過剰なフ
ッ化水素酸に溶解してアリールジアゾニウム塩のフッ化水素酸溶液を形成し、マイクロチ
ャンネル反応器Eの排出口から流出し、マイクロチャンネル反応器Fに入る。
【0017】
前記マイクロチャンネル反応器Fは、優れた混合効果と、ジアゾニウム塩の熱分解時に
発生する熱を速やかに輸出する優れた熱交換効果とを有し、フッ化水素酸と硫酸の腐食に
耐えられる材料が要求され、選択できる材質は、炭化ケイ素、モネル合金、ハステロイな
どがある。マイクロチャンネル反応器F内の原料温度は20~100℃に制御され、排出
口の原料温度は20~100℃に制御され、温度変動は±2℃未満である。マイクロチャ
ンネル反応器Fにおいて、アリールジアゾニウム塩が熱分解反応し、フッ素含有芳香族炭
化水素、フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスなどからなる混合物が生成され、マイクロチ
ャンネル反応器Fの排出口から流出し、冷却器Gに入る。
【0018】
前記冷却器Gは、熱分解後に生成されるフッ素含有芳香族炭化水素、フッ化水素酸、硫
酸、及び窒素ガスなどからなる混合物を素早く冷却し、窒素以外の低沸点液体の揮発を防
ぐ優れた混合効果が要求される。冷却器Gの材質は、フッ化水素酸と硫酸の腐食に耐えら
れることが要求され、選択できる材質は、炭化ケイ素、モネル合金、ハステロイなどがあ
る。冷却器Gの排出口の原料温度は-20~20℃に制御される。フッ素含有芳香族炭化
水素、フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスなどからなる混合物は、冷却器Gで冷却した後
、三相分離器Fに入る。
【0019】
前記三相分離器Hは、窒素ガスによって形成される气相と、フッ素含有芳香族炭化水素
によって形成される軽い液相と、フッ化水素酸及び硫酸によって形成される重液相との3
つの相を十分に分離されることが確保し、3つの相の密度差に応じて、三相分離器Hの異
なる位置で三相分離器から流出し、气相成分である窒素ガスは、三相分離器Hのガス排出
口から排出され、フッ素含有芳香族炭化水素によって形成される軽い液相は、三相分離器
Hの軽液相排出口から流出し、フッ化水素酸及び硫酸によって形成される重液相は、三相
分離器Hの重液相排出口から流出し、3つの相の連続分離を実現する。三相分離器Hは、
水平構造または垂直構造を採用でき、材質は、フッ化水素酸と硫酸の腐食に耐えられるこ
とが要求され、選択できる材質は、炭化ケイ素、モネル合金、ハステロイ、PTFEなど
がある。三相分離器H内の原料温度は-20~20℃に制御される。
【0020】
三相分離器Hのガス排出口から排出した窒素ガスは、少量のフッ化水素を含有し、スプ
レー塔Iでスプレーされて酸を除去する方式で、混入したフッ化水素を除去し、窒素ガス
を直接排出基準に合わせる。スプレー塔Iのスプレー方式は、単段式アルカリ溶液スプレ
ー、または多段式アルカリ溶液スプレー、または水とアルカリ溶液との統合スプレーなど
から選ばれることができ、スプレー塔の構造は充填塔または棚段塔であってもよい。使用
したアルカリ溶液は無機アルカリの水溶液であり、無機アルカリは、水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムから選ばれる1種または2種以上であり
、アルカリ溶液のpHは、9より大きいことが要求される。スプレー塔Iの作動温度は、
常温である。
【0021】
三相分離器Hの軽液相排出口から流出したフッ素含有芳香族炭化水素粗生成物は、少量
のフッ化水素及び硫酸が含有され、連続アルカリ洗浄塔Jでアルカリ洗浄して酸を除去す
る方式で除去し、連続乾燥塔Kで脱水され、そして連続精留塔Lで精留されてフッ素含有
芳香族炭化水素製品を得る。前記連続アルカリ洗浄塔Jでアルカリ洗浄して酸を除去した
後、液相対向流方式を採用し、アルカリ溶液がアルカリ洗浄塔の上部から入り、二相分離
後アルカリ洗浄塔の底部から流出し、フッ素含有芳香族炭化水素粗生成物がアルカリ洗浄
塔の下部から入り、二相分離後アルカリ洗浄塔の頂部から流出する。使用したアルカリ溶
液は無機アルカリの水溶液であり、無機アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上である。アルカリ溶液的
pHは、大于9より大きいことが要求される。作動温度は、常温である。前記連続乾燥塔
Kでの脱水では、乾燥塔に脱水モレキュラーシーブが充填され、フッ素含有芳香族炭化水
素粗生成物が乾燥塔の底部から連続的に入り、脱水モレキュラーシーブ層を経過し、乾燥
塔の上部から流出する。作動温度は、常温である。前記連続精留塔Lによる精留では、蒸
留塔の構造は充填塔又は棚段塔であってもよく、精留方式は、常圧精留であり、塔頂画分
が凝縮されてフッ素含有芳香族炭化水素製品を得る。
【0022】
三相分離器Hの重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合物は、連続蒸留
塔Mに入って蒸留され、蒸留塔の構造は充填塔や棚段塔であってもよく、材質は、フッ化
水素酸と硫酸の腐食に耐えられることが要求され、選択できる材質は、炭化ケイ素、モネ
ル合金、ハステロイ、PTFEなどがあり、蒸留方式は、常圧蒸留を採用し、塔頂画分が
凝縮されて回収フッ化水素を得て、塔底の濃縮物は回収硫酸である。回収フッ化水素は、
循環して塩形成反応に利用できる。
【0023】
主要原料である芳香族アミンを計算基準として、本発明のフッ素含有芳香族炭化水素系
化合物の完全連続フロー合成プロセスを用いた場合、フッ素含有芳香族炭化水素のモル収
率は90%以上、純度は99.9%以上に達し、そのなか、フルオロベンゼンやp-フル
オロトルエンなどの一部のフッ素含有芳香族炭化水素の収率は95%以上に達する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって提供されるフッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プ
ロセスは、従来技術と比較して、以下の主要な革新を有する。
(1)原料である芳香族アミン、フッ化水素、ニトロシル硫酸は、マイクロチャンネル
反応器に入る前に、恒温器で適切な温度に制御されており、原料温度の違いによる完全連
続フローシステムへの熱衝撃を回避し、システムの安定稼働を実現している。
(2)芳香族アミンとフッ化水素的塩形成反応において、初めてマイクロチャンネル反
応器を用いて連続的な塩生成プロセスを実現したことにより、従来の釜ケトル型塩生成反
応における放熱不良による局所的な過熱によるフッ化水素の揮発や、塩生成プロセスの遅
さ、装置効率の低さなどの欠点を回避しただけでなく、より重要な点として、フッ素含有
芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー生産プロセスの実現の基礎を築いる。
(3)熱分解反応において、従来の反応器や管状反応器の代わりにマイクロチャンネル
反応器を使用することで、マイクロチャンネル反応器のより良い混合効果や伝熱効率、よ
り少ない液体保持量で、熱分解反応の安全性と環境保護性を大幅に強化し、反応収率を向
上させることができる。
(4)新旧のプロセスと設備の組み合わせを採用し、最新のマイクロチャンネル反応器
をベースに、連続三相分離装置、連続スプレー装置、連続洗浄装置、連続蒸留装置などの
伝統的な技術と組み合わせることで、原料供給、原料定温、塩生成反応、ジアゾ反応、熱
分解反応、原料分離、製品精製までの全生産工程の連続生産を実現する。
(5)完全連続フローフッ素含有芳香族炭化水素製造プロセスを採用した後、全製造工
程でマイクロチャネル反応器と完全閉鎖型反応系を使用し、製造設備内のフッ化水素液体
保持量とフッ化水素の無秩序な揮発量を最小限に抑え、フッ化水素法によるフッ素含有芳
香族炭化水素系化合物製造の安全性の問題を根本的に解決し、製造プロセスのEHS基準
を大幅に向上させ、フッ化水素法によるフッ素含有芳香族炭化水素系化合物製造の普及と
応用を助長している。
【0025】
本発明は、添付の図面および具体的な実施形態に関連して以下にさらに説明される。こ
こで注意すべきことは、本発明の理解を助けることのみを目的とした以下の実施形態は、
本発明を限定するものではないということである。具体的な実施形態において、本発明の
すべての技術的特徴を網羅することはできませんが、本明細書で取り上げられている技術
的特徴のうち、互いに矛盾を生じさせないものであれば、互いに組み合わせて新たな実施
形態を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明のプロセス流程示意図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
基本実施例:
フッ素含有芳香族炭化水素系化合物の完全連続フロー合成プロセスは、図1に示すよう
に、設備リストと操作手順は以下の通りである。
【0028】
表1 設備リスト

【0029】
操作流程は、以下である。
(1)芳香族アミンは計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Aに送り込まれ、流
速は10~100g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は20~7
0℃に制御され、温度変動は±0.5℃未満である。
(2)フッ化水素は計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Bに送り込まれ、流速
は10~900g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は-50~2
0℃に制御され、温度変動は±0.5℃未満である。
(3)恒温器A、Bから流出した芳香族アミン及びフッ化水素は、直ちにマイクロチャ
ンネル反応器Cに流れ込み、塩形成反応して芳香族アミンフッ化水素塩溶液を得て、マイ
クロチャンネル反応器Cの排出口温度は-10~20℃に制御され、温度変動は±0.5
℃未満である。
(4)ニトロシル硫酸の硫酸溶液は計量ポンプで計量された後、恒温器Dにポンプで送
り込まれ、流速は10~800g/minに制御され、恒温器Dを通過した後、排出口温
度は-30~50℃に制御され、温度変動は±0.5℃未満である。
(5)マイクロチャンネル反応器Cから流出した芳香族アミンフッ化水素塩溶液と、恒
温器Dから流出したニトロシル硫酸の硫酸溶液とは、ともにマイクロチャンネル反応器E
に流入してジアゾ化反応し、反応器内の原料温度は-20~20℃に制御され、排出口の
原料温度は-20~20℃に制御され、温度変動は±0.5℃未満である。
(6)マイクロチャンネル反応器Eから流出したアリールジアゾニウム塩溶液は、マイ
クロチャンネル反応器Fに流入して熱分解反応し、反応器内の原料温度は20~100℃
に制御され、排出口の原料温度は20~100℃に制御され、温度変動は±2℃未満であ
り、フッ素含有芳香族炭化水素、フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物を得
る。
(7)マイクロチャンネル反応器Fから流出したフッ素含有芳香族炭化水素、フッ化水
素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物は、冷却器Gを通過した後、排出口温度は-2
0~20℃に制御される。
(8)冷却器Gから流出したフッ素含有芳香族炭化水素、フッ化水素酸、硫酸、及び窒
素ガスからなる混合物は、三相分離器Hに入って連続分離され、窒素ガスが三相分離器H
の頂部のガス排出口から排出され、フッ素含有芳香族炭化水素粗生成物が三相分離器Hの
上部の軽液相排出口から流出し、フッ化水素酸と硫酸との混合物が三相分離器Hの底部の
重液相排出口から流出し、三相分離器H内の原料温度は-20~20℃に制御される。
(9)三相分離器Hの頂部のガス排出口から排出した窒素ガスは、スプレー塔Iでスプ
レーされて酸を除去した後に排出され、スプレー塔Iは二段タンデム式アルカリスプレー
塔が選ばれ、構造が充填塔の形式を採用し、環状PTFEフィラーが内部に充填され、ス
プレーで使用したアルカリ溶液は水酸化カリウム水溶液であり、pHは9以上に制御され
、作動温度は室温である。
(10)三相分離器Hの上部の軽液相排出口から流出したフッ素含有芳香族炭化水素粗
生成物は、まず連続アルカリ洗浄塔Jで酸を除去し、そして連続乾燥塔Kで脱水されて、
連続精留塔Lで精留され、フッ素含有芳香族炭化水素製品を得る。連続アルカリ洗浄塔J
の構造は充填塔構造であり、液相対向流方式が採用され、アルカリ液がアルカリ洗浄塔の
上部から入り、二相分離後にアルカリ洗浄塔の底部から流出し、フッ素含有芳香族炭化水
素粗生成物がアルカリ洗浄塔の下部から入り、二相分離後にアルカリ洗浄塔の頂部から流
出し、作動温度は常温である。連続乾燥塔Kは充填塔構造であり、3Aモレキュラーシー
ブが内部に充填され、3つの塔の形式(1つは使用、1つはスタンバイ、1つは活性化)を採
用し、3つの塔の間には柔軟に切り替えられ、フッ素含有芳香族炭化水素粗生成物が乾燥
塔の下部から入り、乾燥塔の上部から流出し、作動温度は常温である。連続精留塔Lはフ
ィラー構造を採用し、ステンレス製金網フィラーが内部に充填され、塔缶加熱で、常圧精
留であり、塔頂画分が凝縮されてフッ素含有芳香族炭化水素製品を得る。
(11)三相分離器Hの底部の重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合
物は、連続蒸留塔Mで蒸留され、塔頂画分が凝縮されて回収フッ化水素を得て、塔底濃縮
物は回収硫酸である。連続蒸留塔Mは、充填塔の構造を採用し、内部に環状PTFEフィ
ラーが充填され、塔缶加熱で、常圧蒸留である。
【0030】
以下は、本発明の実施過程における原料の種類、流速、温度などを具体的に検討する。
【0031】
実施例1
本実施例は、フルオロベンゼンの完全連続フロー合成であり、図1を参照すると、具体
的な手順は次のとおりである。
(1)アニリンは計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Aに送り込まれ、流速は
50g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は5±0.5℃に制御さ
れた。
(2)フッ化水素は計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Bに送り込まれ、流速
は215g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は-10±0.5℃
に制御された。
(3)恒温器A、Bから流出したアニリン及びフッ化水素は、直ちにマイクロチャンネ
ル反応器Cに流れ込み、塩形成反応してアニリンフッ化水素塩のフッ化水素酸溶液を得て
、マイクロチャンネル反応器Cの排出口温度は0±0.5℃に制御された。
(4)40%ニトロシル硫酸の硫酸溶液は計量ポンプで計量された後、恒温器Dにポン
プで送り込まれ、流速は181g/minに制御され、恒温器Dを通過した後、排出口温
度は0±0.5℃に制御された。
(5)マイクロチャンネル反応器Cから流出したアニリンフッ化水素塩のフッ化水素酸
溶液と、恒温器Dから流出したニトロシル硫酸の硫酸溶液とは、ともにマイクロチャンネ
ル反応器Eに流入してジアゾ化反応し、ジアゾ化反応温度は5~10℃に制御され、排出
口の原料温度は10±0.5℃に制御され、フェニルジアゾニウム塩溶液を得た。
(6)マイクロチャンネル反応器Eから流出したフェニルジアゾニウム塩溶液は、マイ
クロチャンネル反応器Fに流入して熱分解反応し、熱分解温度は70±2℃に制御され、
排出口でフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物を得た。
(7)マイクロチャンネル反応器Fから流出したフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫
酸、及び窒素ガスからなる混合物は、冷却器Gに流入して降温され、冷却器Gの排出口温
度は5~10℃に制御された。
(8)冷却器Gから流出したフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスか
らなる混合物は、三相分離器Hに入って連続分離され、窒素ガスが三相分離器Hの頂部の
ガス排出口から排出され、フルオロベンゼン粗生成物が三相分離器Hの上部の軽液相排出
口から流出し、フッ化水素酸と硫酸との混合物が三相分離器Hの底部の重液相排出口から
流出し、三相分離器H内の原料温度は5~10℃に制御された。
(9)三相分離器Hの頂部のガス排出口から排出した窒素ガスは、二段式シリーズスプ
レー塔Iでスプレーされて酸を除去した後に排出され、スプレー塔Iの作動温度は室温で
あった。
(10)三相分離器Hの上部の軽液相排出口から流出したフルオロベンゼン粗生成物は
、まず連続アルカリ洗浄塔Jでアルカリ洗浄して酸を除去した後、連続乾燥塔Kで脱水さ
れて、連続精留塔Lで精留され、フルオロベンゼン製品を得た。
(11)三相分離器Hの底部の重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合
物は、連続蒸留塔Mで蒸留され、塔頂画分が凝縮されて回収フッ化水素酸を得て、塔底濃
縮物は回収硫酸であった。
本実施例のフルオロベンゼン高効率連続フロー合成プロセスは、供給開始から安定した
運行まで12時間がかかった。試運転完了後、300時間の安定稼働を経て、その結果は
、アニリン900kg、フッ化水素酸3870kg、40%ニトロシル硫酸溶液3258
kgを消費し、フルオロベンゼン製品918.5kgを収率98.9%、純度99.97
%で得た。
【0032】
実施例2
本実施例はp-メチルフルオロベンゼンの完全連続フロー合成であり、図1を参照する
と、具体的な手順は次のとおりである。
(1)p-メチルアニリンは計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Aに送り込ま
れ、流速は60g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は55±0.
5℃に制御された。
(2)フッ化水素は計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Bに送り込まれ、流速
は168g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は-20±0.5℃
に制御された。
(3)恒温器A、Bから流出したp-メチルアニリン及びフッ化水素は、直ちにマイク
ロチャンネル反応器Cに流れ込み、塩形成反応してp-メチルアニリンフッ化水素塩のフ
ッ化水素酸溶液を得て、マイクロチャンネル反応器Cの排出口温度は10±0.5℃に制
御された。
(4)30%ニトロシル硫酸の硫酸溶液計量ポンプで計量された後、にポンプで送り込
まれ、恒温器Dにおいて、流速は250g/minに制御され、恒温器Dを通過した後、
排出口温度は-5±0.5℃に制御された。
(5)マイクロチャンネル反応器Cから流出したp-メチルアニリンフッ化水素塩のフ
ッ化水素酸溶液、与从恒温器Dから流出したニトロシル硫酸の硫酸溶液、ともにマイクロ
チャンネル反応器Eに流入してジアゾ化反応し、ジアゾ化反応温度は0~5℃に制御され
、排出口の原料温度は5±0.5℃に制御され、p-メチルフェニルジアゾニウム塩溶液
を得た。
(6)マイクロチャンネル反応器Eから流出したp-メチルフェニルジアゾニウム塩溶
液は、マイクロチャンネル反応器Fに流入して熱分解反応し、熱分解温度は60±2℃に
制御され、排出口でp-メチルフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスか
らなる混合物を得た。
(7)マイクロチャンネル反応器Fから流出したp-メチルフルオロベンゼン、フッ化
水素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物、冷却器Gに流入して降温され、冷却器G排
出口温度は0~5℃に制御された。
(8)冷却器Gから流出したp-メチルフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、及び
窒素ガスからなる混合物は、三相分離器Hに入って連続分離され、窒素ガスが三相分離器
Hの頂部のガス排出口から排出され、p-メチルフルオロベンゼン粗生成物が三相分離器
Hの上部の軽液相排出口から流出し、フッ化水素酸と硫酸との混合物が三相分離器Hの底
部の重液相排出口から流出し、三相分離器H内の原料温度は0~5℃に制御された。
(9)三相分離器Hの頂部のガス排出口から排出した窒素ガスは、二段式シリーズスプ
レー塔Iでスプレーされて酸を除去した後に排出され、スプレー塔Iの作動温度は室温で
あった。
(10)三相分離器Hの上部の軽液相排出口から流出したp-メチルフルオロベンゼン
粗生成物は、まず連続アルカリ洗浄塔Jでアルカリ洗浄して酸を除去した後、連続乾燥塔
Kで脱水されて、連続精留塔Lで精留され、p-メチルフルオロベンゼン製品を得た。
(11)三相分離器Hの底部の重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合
物は、連続蒸留塔Mで蒸留され、塔頂画分が凝縮されて回収フッ化水素酸を得て、塔底濃
縮物は回収硫酸であった。
本実施例のp-メチルフルオロベンゼン高効率連続フロー合成プロセスは、供給開始か
ら安定した運行まで15時間がかかった。試運転完了後、300時間の安定稼働を経て、
その結果は、p-メチルアニリン1080kg、フッ化水素酸3024kg、30%ニト
ロシル硫酸溶液4500kgを消費し、p-メチルフルオロベンゼン製品1093.4k
gを収率98.5%、純度99.93%で得た。
【0033】
実施例3
本実施例は、o-メチルフルオロベンゼンの完全連続フロー合成であり、図1を参照す
ると、具体的な手順は次のとおりである。
(1)o-メチルアニリンは計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Aに送り込ま
れ、流速は80g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は15±0.
5℃に制御された。
(2)フッ化水素は計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Bに送り込まれ、流速
は150g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は-15±0.5℃
に制御された。
(3)恒温器A、Bから流出したo-メチルアニリン及びフッ化水素は、直ちにマイク
ロチャンネル反応器Cに流れ込み、塩形成反応してo-メチルアニリンフッ化水素塩のフ
ッ化水素酸溶液を得て、マイクロチャンネル反応器Cの排出口温度は-3±0.5℃に制
御された。
(4)20%ニトロシル硫酸の硫酸溶液は計量ポンプで計量された後、恒温器Dにポン
プで送り込まれ、流速は485g/minに制御され、恒温器Dを通過した後、排出口温
度は5±0.5℃に制御された。
(5)マイクロチャンネル反応器Cから流出したo-メチルアニリンフッ化水素塩のフ
ッ化水素酸溶液と、恒温器Dから流出したニトロシル硫酸の硫酸溶液とは、ともにマイク
ロチャンネル反応器Eに流入してジアゾ化反応し、ジアゾ化反応温度は-5~0℃に制御
され、排出口の原料温度は0±0.5℃に制御され、o-メチルフェニルジアゾニウム塩
溶液を得た。
(6)マイクロチャンネル反応器Eから流出したo-メチルフェニルジアゾニウム塩溶
液は、マイクロチャンネル反応器Fに流入して熱分解反応し、熱分解温度は50±2℃に
制御され、排出口でo-メチルフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスか
らなる混合物を得た。
(7)マイクロチャンネル反応器Fから流出したo-メチルフルオロベンゼン、フッ化
水素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物は、冷却器Gに流入して降温し、冷却器G排
出口温度は0~5℃に制御された。
(8)冷却器Gから流出したo-メチルフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、及び
窒素ガスからなる混合物、三相分離器Hに入って連続分離され、窒素ガスが三相分離器H
の頂部のガス排出口から排出され、o-メチルフルオロベンゼン粗生成物が三相分離器H
の上部の軽液相排出口から流出し、フッ化水素酸と硫酸との混合物が三相分離器Hの底部
の重液相排出口から流出し、三相分離器H内の原料温度は0~5℃に制御された。
(9)三相分離器Hの頂部のガス排出口から排出した窒素ガスは、二段式シリーズスプ
レー塔Iでスプレーされて酸を除去した後に排出され、スプレー塔Iの作動温度は室温で
あった。
(10)三相分離器Hの上部の軽液相排出口から流出したo-メチルフルオロベンゼン
粗生成物は、まず連続アルカリ洗浄塔Jでアルカリ洗浄して酸を除去した後、連続乾燥塔
Kで脱水されて、連続精留塔Lで精留され、o-メチルフルオロベンゼン製品を得た。
(11)三相分離器Hの底部の重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合
物は、連続蒸留塔Mで蒸留され、塔頂画分が凝縮されて回収フッ化水素酸を得て、塔底濃
縮物は回収硫酸であった。
本実施例のo-メチルフルオロベンゼン高効率連続フロー合成プロセスは、供給開始か
ら安定した運行まで15時間がかかった。試運転完了後、300時間の安定稼働を経て、
その結果は、o-メチルアニリン1440kg、フッ化水素酸2700kg、20%ニト
ロシル硫酸溶液8730kgを消費し、o-メチルフルオロベンゼン製品1451.9k
gを収率98.1%、純度99.91%で得た。
【0034】
実施例4
本実施例は、m-メチルフルオロベンゼンの完全連続フロー合成であり、図1を参照す
ると、具体的な手順は次のとおりである。
(1)m-メチルアニリンは計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Aに送り込ま
れ、流速は70g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は-5±0.
5℃に制御された。
(2)フッ化水素は計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Bに送り込まれ、流速
は157g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は0±0.5℃に制
御された。
(3)恒温器A、Bから流出したm-メチルアニリン及びフッ化水素は、直ちにマイク
ロチャンネル反応器Cに流れ込み、塩形成反応してm-メチルアニリンフッ化水素塩のフ
ッ化水素酸溶液を得て、マイクロチャンネル反応器Cの排出口温度は0±0.5℃に制御
された。
(4)25%ニトロシル硫酸の硫酸溶液は、計量ポンプで計量された後、恒温器Dにポ
ンプで送り込まれ、流速は359g/minに制御され、恒温器Dを通過した後、排出口
温度は2±0.5℃に制御された。
(5)マイクロチャンネル反応器Cから流出したm-メチルアニリンフッ化水素塩のフ
ッ化水素酸溶液と、恒温器Dから流出したニトロシル硫酸の硫酸溶液とは、ともにマイク
ロチャンネル反応器Eに流入してジアゾ化反応し、ジアゾ化反応温度は-2~2℃に制御
され、排出口の原料温度は2±0.5℃に制御され、m-メチルフェニルジアゾニウム塩
溶液を得た。
(6)マイクロチャンネル反応器Eから流出したm-メチルフェニルジアゾニウム塩溶
液は、マイクロチャンネル反応器Fに流入して熱分解反応し、熱分解温度は40±2℃に
制御され、排出口でm-メチルフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスか
らなる混合物を得た、
(7)マイクロチャンネル反応器Fから流出したm-メチルフルオロベンゼン、フッ化
水素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物は、冷却器Gに流入して降温されて、冷却器
G排出口温度は0~10℃に制御された。
(8)冷却器Gからから流出したm-メチルフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、
及び窒素ガスからなる混合物は、三相分離器Hに入って連続分離され、窒素ガスが三相分
離器Hの頂部のガス排出口から排出され、m-メチルフルオロベンゼン粗生成物が三相分
離器Hの上部の軽液相排出口から流出し、フッ化水素酸と硫酸との混合物が三相分離器H
の底部の重液相排出口から流出し、三相分離器H内の原料温度は0~10℃に制御された

(9)三相分離器Hの頂部のガス排出口から排出した窒素ガスは、二段式シリーズスプ
レー塔Iでスプレーされて酸を除去した後に排出され、スプレー塔Iの作動温度は室温で
あった。
(10)三相分離器Hの上部の軽液相排出口から流出したm-メチルフルオロベンゼン
粗生成物は、まず連続アルカリ洗浄塔Jでアルカリ洗浄して酸を除去した後、連続乾燥塔
Kで脱水されて、連続精留塔Lで精留され、m-メチルフルオロベンゼン製品を得た。
(11)三相分離器Hの底部の重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合
物は、連続蒸留塔Mで蒸留され、塔頂画分が凝縮されて回収フッ化水素酸を得て、塔底濃
縮物は回収硫酸であった。
本実施例のm-メチルフルオロベンゼン高効率連続フロー合成プロセスは、供給開始か
ら安定した運行まで15時間がかかった。試運転完了後、300時間の安定稼働を経て、
その結果は、m-メチルアニリン1260kg、フッ化水素酸2826kg、25%ニト
ロシル硫酸溶液6462kgを消費し、m-メチルフルオロベンゼン製品1273kgを
収率98.3%、純度99.94%で得た。
【0035】
実施例5
本実施例は3,5-ジメチルフルオロベンゼンの完全連続フロー合成であり、フッ化水
素が回収されてリサイクルされ、図1を参照すると、具体的な手順は次のとおりである。
(1)3,5-ジメチルアニリンは計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Aに送
り込まれ、流速は40g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は60
±0.5℃に制御された。
(2)フッ化水素は計量ポンプで計量された後、ポンプで恒温器Bに送り込まれ、流速
は198g/minに制御され、恒温器Aを通過した後、排出口温度は-30±0.5℃
に制御された。
(3)恒温器A、Bから流出した3,5-ジメチルアニリン及びフッ化水素は、直ちに
マイクロチャンネル反応器Cに流れ込み、塩形成反応して3,5-ジメチルアニリンフッ
化水素塩のフッ化水素酸溶液を得て、マイクロチャンネル反応器Cの排出口温度は5±0
.5℃に制御された。
(4)35%ニトロシル硫酸の硫酸溶液は計量ポンプで計量された後、恒温器Dにポン
プで送り込まれ、流速は132g/minに制御され、恒温器Dを通過した後、排出口温
度は-3±0.5℃に制御された。
(5)マイクロチャンネル反応器Cから流出した3,5-ジメチルアニリンフッ化水素
塩のフッ化水素酸溶液と、恒温器Dから流出したニトロシル硫酸の硫酸溶液とは、ともに
マイクロチャンネル反応器Eに流入してジアゾ化反応し、ジアゾ化反応温度は-10~-
5℃に制御され、排出口の原料温度は-5±0.5℃に制御され、3,5-ジメチルフェ
ニルジアゾニウム塩溶液を得た。
(6)マイクロチャンネル反応器Eから流出した3,5-ジメチルフェニルジアゾニウ
ム塩溶液は、マイクロチャンネル反応器Fに流入して熱分解反応し、熱分解温度は80±
2℃に制御され、排出口で3,5-ジメチルフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸、及
び窒素ガスからなる混合物を得た。
(7)マイクロチャンネル反応器Fから流出した3,5-ジメチルフルオロベンゼン、
フッ化水素酸、硫酸、及び窒素ガスからなる混合物は、冷却器Gに流入して降温され、冷
却器Gの排出口温度は0~5℃に制御された。
(8)冷却器Gから流出した3,5-ジメチルフルオロベンゼン、フッ化水素酸、硫酸
、及び窒素ガスからなる混合物は、三相分離器Hに入って連続分離され、窒素ガスが三相
分離器Hの頂部のガス排出口から排出され、3,5-ジメチルフルオロベンゼン粗生成物
が三相分離器Hの上部の軽液相排出口から流出し、フッ化水素酸と硫酸との混合物が三相
分離器Hの底部の重液相排出口から流出し、三相分離器H内の原料温度は5~10℃に制
御された。
(9)三相分離器Hの頂部のガス排出口から排出した窒素ガスは、二段式シリーズスプ
レー塔Iでスプレーされて酸を除去した後に排出され、スプレー塔Iの作動温度は室温で
あった。
(10)三相分離器Hの上部の軽液相排出口から流出した3,5-ジメチルフルオロベ
ンゼン粗生成物は、まず連続アルカリ洗浄塔Jでアルカリ洗浄して酸を除去した後、連続
乾燥塔Kで脱水されて、連続精留塔Lで精留され、フルオロベンゼン製品を得た。
(11)三相分離器Hの底部の重液相排出口から流出したフッ化水素酸と硫酸との混合
物は、連続蒸留塔Mで蒸留され、塔頂画分が凝縮されて回収フッ化水素酸を得て、塩形成
反応にリサイクルされ、塔底濃縮物は回収硫酸であった。
本実施例の3,5-ジメチルフルオロベンゼン高効率連続フロー合成プロセスは、フッ
化水素が回収されてリサイクルされ、供給開始から安定した運行まで20時間がかかった
。試運転完了後、300時間の安定稼働を経て、その結果は、3,5-ジメチルアニリン
720kg、フッ化水素酸142kg、35%ニトロシル硫酸溶液2376kgを消費し
、3,5-ジメチルフルオロベンゼン製品717.8kgを収率97.3%、純度99.
90%で得た。
【0036】
実施例6
本実施例は、アニリンとフッ化水素との仕込み割合を除いて実施例1と同様に操作して
、アニリンとフッ化水素との異なる仕込み割合が反応に対する影響を調べ、その結果を表
2にまとめた。
【0037】
表2 アニリンとフッ化水素との仕込み割合の反応に対する影響
【0038】
表2からわかるように、アニリンとフッ化水素との物質量の比が1:(5~50)の場
合、反応が良好に進行し、フルオロベンゼンの収率が90%以上、純度が99.80%以
上であった。アニリンとフッ化水素との物質量の比が1:8未満の時、反応収率著しく低
下する。これは、フッ化水素が、反応原料としてだけでなく、反応工程での反応溶剤とし
ても使用されるためである。フッ化水素が少なすぎると、アニリンフッ化水素塩の溶解・
希釈が進まず、マイクロチャンネル反応器内での反応液の動きが悪くなり、熱や物質の移
動が弱くなり、副反応が増えて、反応の収率に影響している。過剰な量のフッ化水素は、
熱・物質移動の問題はないものの、フッ化水素中の生成物の巻き込み損失を増加させ、反
応収率を低下させ、また過剰な量のフッ化水素は合成効率を低下させ、フッ化水素回収圧
力を増加させる。
【0039】
実施例7
本実施例は、アニリンとニトロシル硫酸との仕込み割合を除いて実施例1と同様に操作
して、アニリンとニトロシル硫酸との異なる仕込み割合が反応に対する影響を調べ、その
結果を表3にまとめた。
【0040】
表3 アニリンとニトロシル硫酸との仕込み割合の反応に対する影響
【0041】
表3からわかるように、アニリンとニトロシル硫酸との仕込み割合が1:(1.0~1
.2)の場合、反応が良好に進行し、フルオロベンゼンの収率が90%以上、純度99.
80%以上であった。ニトロシル硫酸仕込み割合の増加と伴い、フルオロベンゼン収率は
上昇した後に低下するという変化を示した。これは、ニトロシル硫酸の理論使用量がアニ
リン物質量の1当量であるが、実際の反応でニトロシル硫酸の損失もあり、ニトロシル硫
酸の使用量が不足している場合、ニトロシル硫酸の使用量の増加に伴い、フルオロベンゼ
ンの収率が上昇するように見えるが、ニトロシル硫酸の使用量が実際の必要量を超えると
、系内に存在する過剰なニトロシル硫酸が副反応を起こし、フルオロベンゼンの収率が低
下した。
【0042】
実施例8
本実施例は、ジアゾ化反応温度を除いて実施例1と同様に操作して、異なるジアゾ化温
度が反応に対する影響を調べ、その結果を表4にまとめた。
【0043】
表4 ジアゾ化温度の反応に対する影響
【0044】
表4からわかるように、ジアゾ化反応温度が-20~20℃の場合、反応が良好に進行
し、フルオロベンゼンの収率が90%以上、純度が99.80%以上であった。ジアゾ化
反応温度の上昇と伴い、フルオロベンゼンの収率及び純度は上昇した後に低下するという
変化を示した。これは、反応温度が低すぎるとジアゾ化反応の速度が遅くなり、マイクロ
チャンネル反応器の液体保持体積や原料流速が一定の場合、ジアゾ化反応が十分に行われ
ず、反応収率が低下するためであると考えられた。ジアゾ化反応温度が高すぎると、加水
分解や重合などの一連の副反応が起こり、反応収率が低下した。
【0045】
実施例9
本実施例は、熱分解反応温度を除いて実施例1と同様に操作して、異なる熱分解温度が
反応に対する影響を調べ、その結果を表5にまとめた。
【0046】
表5 熱分解温度の反応に対する影響
【0047】
表5からわかるように、熱分解反応温度は40~100℃の場合、反応が良好に進行し
、フルオロベンゼンの収率が90%以上、純度が99.8%以上であった。熱分解反応温
度の上昇と伴い、フルオロベンゼンの収率及び純度は上昇した後に低下するという変化を
示した。これは、反応温度が低すぎると熱分解反応の速度が遅くなり、マイクロチャンネ
ル反応器の液体保持体積や原料流速が一定の場合、熱分解反応が十分に行われず、反応収
率が低下するためであると考えられた。熱分解反応温度が高すぎると、加水分解や重合な
どの一連の副反応が起こり、反応収率が低下した。
【0048】
実施例10
本実施例は、アニリン、フッ化水素及びニトロシル硫酸の仕込み割合を変えずに供給速
度を変えることを除いて実施例1と同様に操作して、異なる供給速度が反応に対する影響
を調べ、その結果を表6にまとめた。
【0049】
表6 供給速度の反応に対する影響

【0050】
固定式の完全連続フロー反応装置の場合、設備の大きさすでに確定され、特に主な反応
設備であるマイクロチャンネル反応器C、E及びFが、その内部構造及び液体保持量が固
定されたため、原料の流速が変化すると、必然的にマイクロチャンネル反応器内の材料の
移動状態及び滞留時間の変化が生じることになる。原料の流速は、完全連続フロー反応装
置の運行中の重要なパラメータであり、マイクロチャンネル反応器構造、運行温度、原料
割合などとともに、完全連続フロー合成プロセスの成否を決定する複雑な相互関連パラメ
ータ群を形成している。マイクロチャンネル反応器構造、運行温度、及び原料割合が固定
された場合、上記の固定されたパラメータに合わせた最適な流速が必ず存在する。最適な
流速は、長期間にわたる設備運行や試運行が必要となるが、最適な流速で反応器内の物質
の最適な滞留時間及び最適な移動状態を確保することで、最適な状態で反応が行われるた
め、最適な反応結果を得ることができる。
図1
【国際調査報告】