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特表2023-512132高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔とその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔とその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20230316BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D1/00 311
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508794
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 CN2021073865
(87)【国際公開番号】W WO2022141709
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011615422.1
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521222176
【氏名又は名称】広東嘉元科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 崇華
(72)【発明者】
【氏名】庄 偉雄
(72)【発明者】
【氏名】鍾 孟捷
(72)【発明者】
【氏名】王 俊鋒
(72)【発明者】
【氏名】廖 平元
(72)【発明者】
【氏名】劉 少華
(72)【発明者】
【氏名】温 丙台
(72)【発明者】
【氏名】郭 志航
(57)【要約】
本発明は、電解銅箔の分野に関する。具体的には、本発明は、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔及びその調製方法に関する。高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔には、原料箔層と表面処理層が含まれている。電解銅箔の厚さは12~35μmで、単位面積あたりの重量偏差は5.0%未満で、25℃での引張強度は300N/mm以上である。25℃での伸び率は6.0%以上、25℃での剥離防止強度は1.0Kg/cm以上で、粗面Rz≦3.0μmである。本発明の高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔は、原材料が単純で、無毒で、無害で、安全で、環境に優しく、その単位面積の重量偏差は5.0%未満であり、優れた引張強度、伸び率と剥離防止強度に加え、200℃で30分間焼いた場合でも酸化や変色がなく、スーパー情報フロー回路基板の要求に応え、今日の5G時代の発展にも適応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料箔層及び表面処理層を含み、電解銅箔の厚さは12-35μmで、単位面積あたりの重量偏差は<5%で、25℃での引張強度は≧300N/mmで、25℃での伸び率は≧6.0%で、25℃での剥離防止強度は≧1.0Kg/cmで、粗面の粗さはRz≦3.0μmである、ことを特徴とする高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項2】
前記原料箔層は、銅イオンを含む電解液中での電気分解によって得られ、電解液は50~100g/Lの銅イオン、100~160g/Lの硫酸及び150-300g/Lの添加剤を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項3】
前記添加剤は、結晶粒微細化剤及びレベリング剤を含み、それらの濃度比は、1:(10~25)である、ことを特徴とする請求項2に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項4】
前記結晶粒微細化剤は、ポリジチオジプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、エチレンチオ尿素、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸塩、4-[[2-(アセチルアミノ)エチル]ジチオ]-1-ブタンスルフィン酸ナトリウム、テトラヒドロチアゾールチオン、チアミンジスルフィド化合物、2-置換ヒドラジニリデン-1,3-ジチアペンタン及び2-メルカプトベンズイミダゾールのうちの1つまたは複数から選択される、ことを特徴とする請求項3に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項5】
前記レベリング剤は、窒素含有レベリング剤、ポリエーテルレベリング剤及び第四級アンモニウム塩レベリング剤のうちの1つまたは複数から選択される、ことを特徴とする請求項3に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項6】
前記窒素含有レベリング剤は、ゼラチン、アミノピリジン、ピリジン、脂肪族アミンエトキシスルホネート及びビピリジンのうちの1つまたは複数から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項7】
前記ゼラチンの重量平均分子量は50,000~60,000である、ことを特徴とする請求項6に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項8】
前記ポリエーテルレベリング剤は、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースのうちの1つまたは複数から選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項9】
前記第四級アンモニウム塩レベリング剤の重量平均分子量は3,000~5,000であり、25℃での粘度は10~30mPa・sである、ことを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔。
【請求項10】
ステップ(1)電解液の構成:50~100g/Lの銅イオン、100~160g/Lの硫酸及び150~300g/Lの添加剤を混合して電解液を得て、
ステップ(2)原料箔の準備:直流を流して、電流密度が3000-11000A/mで、銅箔を陰極に析出させ、剥がして原料箔を得て、
ステップ(3)表面処理:ステップ(2)で調製した原料箔に表面処理を行うこと、という三つのステップを含む、ことを特徴とする請求項2~9のいずれか1項に記載の高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔の分野に関し、具体的には、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展とともに、5Gの時代に入り、PCB製品は、高周波及び高速通信アンテナの送信と基地局情報を受信及び変換するためのキャリアとして非常に重要な役割を果たしている。電解銅箔は部品間の通信ブリッジとして、神経中枢としての役割を果たし、伝送信号の損失と伝送速度は電子製品の性能に直接関係している。銅箔の粗面の結晶核のサイズ、均一性、及びピーク粗さは、信号の損失と伝送速度を直接決定する。電解銅箔は、信号伝送時に高周波及び高速性能を満たす必要があり、銅箔の性能を向上させる必要がある。既存の材料で作られた回路基板の多くは、実際の使用時に比較的大きな誘電損失があり、高周波伝送に使用される場合の高周波信号の減衰も比較的激しい。同時に、銅箔の表面粗さが減少し続けているので、プレスの後、銅箔及び関連する不活性樹脂の接着力が低下する。
【発明の概要】
【0003】
従来技術におけるいくつかの問題を考慮して、本発明の第1の態様は、原料箔層及び表面処理層を含む高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を提供する。前記電解銅箔の厚さは12-35μmで、単位面積あたりの重量偏差は<5%で、25℃での引張強度は≧300N/mmで、25℃での伸び率は≧6.0%で、25℃での剥離防止強度は≧1.0Kg/cmで、粗面の粗さはRz≦3.0μmである。
【0004】
本発明の好ましい技術的解決策として、前記原料箔層は、銅イオンを含む電解液中での電気分解によって得られ、前記電解液は50~100g/Lの銅イオン、100~160g/Lの硫酸及び150-300g/Lの添加剤を含む。
【0005】
本発明の好ましい技術的解決策として、前記添加剤は、結晶粒微細化剤及びレベリング剤を含み、それらの濃度比は、1:(10~25)である。
【0006】
本発明の好ましい技術的解決策として、前記結晶粒微細化剤は、ポリジチオジプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、エチレンチオ尿素、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸塩、4-[[2-(アセチルアミノ)エチル]ジチオ]-1-ブタンスルフィン酸ナトリウム、テトラヒドロチアゾールチオン、チアミンジスルフィド化合物、2-置換ヒドラジニリデン-1,3-ジチアペンタン及び2-メルカプトベンズイミダゾールのうちの1つまたは複数から選択される。
【0007】
本発明の好ましい技術的解決策として、前記レベリング剤は、窒素含有レベリング剤、ポリエーテルレベリング剤及び第四級アンモニウム塩レベリング剤のうちの1つまたは複数から選択される。
【0008】
本発明の好ましい技術的解決策として、前記窒素含有レベリング剤は、ゼラチン、アミノピリジン、ピリジン、脂肪族アミンエトキシスルホネート、及びビピリジンのうちの1つまたは複数から選択される。
【0009】
本発明の好ましい技術的解決策として、前記ゼラチンの重量平均分子量は50,000~60,000である。
【0010】
本発明の好ましい技術的解決策として、前記ポリエーテルレベリング剤は、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースのうちの1つまたは複数から選択される。
【0011】
本発明の好ましい技術的解決策として、前記第四級アンモニウム塩レベリング剤の重量平均分子量は3000~5000であり、25℃での粘度は10~30mPa・sである。
【0012】
本発明の第2の態様は、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔の調製方法を提供し、以下のステップを含む。
(1)電解液の構成:50~100g/Lの銅イオン、100~160g/Lの硫酸及び150~300g/Lの添加剤を混合して電解液を得る。
(2)原料箔の準備:直流を流して、電流密度が3000-11000A/mで、銅箔を陰極に析出させ、剥がして原料箔を得る。
(3)表面処理:ステップ(2)で調製した原料箔に表面処理を行う。
【0013】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明の高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔は、原材料が単純で、無毒無害で、安全で、環境に優しく、その単位面積の重量偏差は5.0%未満であり、優れた引張強度、伸び率、剥離防止強度に加え、200℃で30分間焼いた場合でも酸化や変色がなく、高情報フロー回路基板の要求に応え、今日の5G時代の発展に適応する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、原料箔層及び表面処理層を含む、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を提供する。前記電解銅箔の厚さは12~35μmであり、単位面積あたりの重量偏差は<5.0%で、25℃での引張強度は≧300N/mmで、25℃での伸び率は≧6.0%で、25℃での剥離防止強度は≧1.0Kg/cmで、粗面の粗さはRz≦3.0μmである。
【0015】
一つの実施形態では、前記原料箔層は銅イオンを含む電解液中での電気分解によって得られる。
【0016】
一つの実施形態では、前記電解液は50~100g/Lの銅イオン、100~160g/Lの硫酸、及び150~300g/Lの添加剤を含む。
【0017】
好ましくは、前記電解液は、80g/Lの銅イオン、126g/Lの硫酸、及び236g/Lの添加剤を含む。
【0018】
本発明の電解質の溶媒は脱イオン水である。
【0019】
銅イオン
本発明における銅イオンの供給源は特に限定されず、当業者は日常的な選択を行うことができる。
【0020】
一つの実施形態では、前記銅イオンの供給源は硫酸銅五水和物である。
【0021】
本発明において、硫酸銅五水和物は、本出願における原料箔層の主成分として使用され、電極プロセスに関与する。本出願における原料箔層の調製プロセスにおいて、硫酸銅五水和物の濃度が高すぎると、銅イオンの分散性が悪く、硫酸銅五水和物の濃度が低すぎると、高電流層の銅箔層が焼けてしまう。
【0022】
硫酸
本出願では、無機酸として硫酸が使用され、電極プロセスに関与する。銅イオン濃度が50~100g/Lの場合、硫酸銅五水和物の分解が促進され、銅の析出が速い。
【0023】
添加剤
一つの実施形態では、前記添加剤は結晶粒微細化剤およびレベリング剤を含み、その濃度比は1:(10~25)である。
【0024】
好ましくは、前記結晶粒微細化剤およびレベリング剤の濃度比は1:15である。
【0025】
一つの実施形態では、前記結晶粒微細化剤は、ポリジチオジプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、エチレンチオ尿素、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸塩、4-[[2-(アセチルアミノ)エチル]ジチオ]-1-ブタンスルフィン酸ナトリウム、テトラヒドロチアゾールチオン、チアミンジスルフィド化合物、2-置換ヒドラジニリデン-1,3-ジチアペンタン及び2-メルカプトベンズイミダゾールのうちの1つまたは複数から選択される。
【0026】
好ましくは、前記結晶粒微細化剤は、ポリジチオジプロパンスルホン酸ナトリウムである。
【0027】
一つの実施形態では、前記レベリング剤は、窒素含有レベリング剤、ポリエーテルレベリング剤及び第四級アンモニウム塩レベリング剤のうちの1つまたは複数から選択される。
【0028】
好ましくは、前記窒素含有レベリング剤は、ゼラチン、アミノピリジン、ピリジン、脂肪族アミンエトキシスルホネート及びビピリジンのうちの1つまたは複数から選択される。
【0029】
一つの実施形態では、前記窒素含有レベリング剤はゼラチンである。
【0030】
好ましくは、前記ゼラチンの重量平均分子量は50,000~60,000である。
【0031】
一つの実施形態では、前記ポリエーテルレベリング剤は、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシエチルメチルセルロースのうちの1つまたは複数から選択される。
【0032】
好ましくは、前記ポリエーテルレベリング剤はヒドロキシエチルセルロースである。
【0033】
一つの実施形態では、前記レベリング剤はゼラチン及びヒドロキシエチルセルロースを含む。
【0034】
好ましくは、前記ゼラチンとヒドロキシエチルセルロースの重量比は(2~6):1であり、より好ましくは、ゼラチンとヒドロキシエチルセルロースの重量比は5:1である。
【0035】
一つの実施形態では、前記レベリング剤は、第四級アンモニウム塩レベリング剤をさらに含む。
【0036】
好ましくは、前記第四級アンモニウム塩レベリング剤とヒドロキシエチルセルロースの重量比は(0.8~2.5):1であり、より好ましくは、前記第四級アンモニウム塩レベリング剤とヒドロキシエチルセルロースの重量比は1.2:1である。
【0037】
一つの実施形態では、前記第四級アンモニウム塩レベリング剤は、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩である。
【0038】
出願人は、実験において、重量平均分子量が50,000~60,000であるゼラチンをヒドロキシエチルセルロースと併用すると、得られる電解銅箔の粗面の粗さであるRzが比較的大きく、粗面の粗さのRz<3.0μmを達成することが困難であることを発見した。出願人は、レベリング剤が第四級アンモニウム塩レベリング剤も含み、第四級アンモニウム塩レベリング剤とヒドロキシエチルセルロースとの重量比が(0.8~2.5):1である場合、電解銅箔の表面粗さがRz<3.0μmであることを予期せず発見した。
出願人は考えられる理由は以下のとおりであると考えている。すなわち、重量平均分子量が50000~60000のゼラチン及びヒドロキシエチルセルロース分子に高分子鎖構造が含まれ、それらの間の相互作用で水素結合を形成し、高分子鎖構造はバンプに堆積し、柔軟な分子鎖の一部は凹面サイトをブロックし、凹面への銅イオンの堆積を防ぎ、それに、第四級アンモニウム塩レベリング剤、特にアルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩が一方ではめっき液中で重平均分子量50000~60000のゼラチン分子とヒドロキシエチルセルロースの相互作用を妨げ、他方では電解質として作用し、析出した銅イオンの分布に影響を与え、その結果、原料箔表面の平坦度が向上し、後続の表面処理工程の基礎となる。
【0039】
一つの実施形態では、前記アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩の重量平均分子量は3000~5000であり、25℃での粘度は10~30mPa・sである。
【0040】
好ましくは、前記アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩の重量平均分子量は4000であり、25℃での粘度は20mPa・sである。
【0041】
出願人は、前記アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩の重量平均分子量が4000で、25℃での粘度が20mPa・sである場合、電解銅箔の伸び率が大幅に改善でき、その値は≧6.0%を超えることを予期せず発見した。
【0042】
一つの実施形態では、前記ヒドロキシエチルセルロースのモル置換度は1.8~2.0である。
【0043】
セルロースエーテルが側方分岐エーテルを形成する場合、各脱水グルコースユニットに結合した置換エーテル基の総量は、モル置換度(molar degree of substitution,MS)で表される。
【0044】
出願人は、ヒドロキシエチルセルロースのモル置換度が1.8~2.0の場合、伸び率、耐折性、応力が向上できることを意外にも発見した。出願人は、可能性のある原因として、モル置換度が1.8~2.0である場合、ヒドロキシエチルセルロースが凹面の角に吸着され、凹面の角での銅イオンの堆積を抑制し、ピンホールの形成によって引き起こされる内部応力欠陥を回避できる、ことを考えている。
【0045】
本発明の第2の態様は、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔の調製方法を提供する。以下のステップを含む。
(1)電解液の構成:50~100g/Lの銅イオン、100~160g/Lの硫酸、及び150~300g/Lの添加剤を混合して電解液を得る。
(2)原料箔の準備:直流を印加し、電流密度3000~11000A/mの条件で、銅箔を陰極に析出させ、剥がして原料箔を得る。
(3)表面処理:ステップ(2)で調製した原料箔に表面処理を行う。
【0046】
一つの実施形態では、前記高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔の調製方法は、以下のステップを含む。
(1)電解質構成:80g/Lの銅イオン、126g/Lの硫酸、及び236g/Lの添加剤を混合して電解質を得る。
(2)原料箔の準備:直流を印加し、電流密度が8000A/mの条件で、銅箔を陰極に析出させ、剥がして原料箔を得る。
(3)表面処理:ステップ(2)で調製した原料箔に表面処理を行う。
【0047】
本発明の表面処理は、特に限定されるものではなく、酸処理段階、粗面化処理段階、硬化処理段階、耐熱層処理段階、酸化防止処理段階、シランカップリング剤処理段階などが挙げられる。具体的な処理方法に特に制限はなく、当業者は日常的な選択を行うことができる。
【0048】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらの実施例は単なる例示であり、限定的なものではないことを理解されたい。他に記載がない場合、以下の実施例で使用されている原材料はすべて市販されている。
【実施例1】
【0049】
本発明の実施例1は、前記原料箔層と表面処理層とで構成される高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔を提供する。
【0050】
前記原料箔層は、銅イオンを含む電解液中での電気分解によって得られる。
【0051】
前記電解液は、50g/Lの銅イオン、100g/Lの硫酸、及び150g/Lの添加剤を混合して得られる。
【0052】
前記銅イオンの供給源は硫酸銅五水和物である。
【0053】
前記添加剤は結晶粒微細化剤およびレベリング剤で、濃度比は1:10であり、前記結晶粒微細化剤はポリジスルフィドジプロパンスルホン酸ナトリウムであり、前記レベリング剤はゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩である。前記ゼラチンとヒドロキシエチルセルロースの重量比は2:1であり、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩とヒドロキシエチルセルロースの重量比は0.8:1である。前記ゼラチンの重量平均分子量は50000~60000である。前記アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩の重量平均分子量は4000で、25℃での粘度は20mPa・sである。前記ヒドロキシエチルセルロースのモル置換度は1.8-2.0で、型番はHEC-15000である。
【0054】
前記高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔の調製方法は以下のとおりである。
(1)電解液構成:50g/Lの銅イオン、100g/Lの硫酸、及び150g/Lの添加剤を混合して電解液を得る。
(2)原料箔の調製:直流を印加し、電流密度が8000A/mの条件で銅箔を陰極に析出させ、剥がして原料箔を得る。
(3)表面処理:ステップ(2)で調製した原料箔を硫酸酸性化処理、粗面化処理、亜鉛クロム酸化防止処理、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン処理を施した。
【実施例2】
【0055】
本発明の実施例2は、原料箔層と表面処理層とで構成される高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔を提供する。
【0056】
前記原料箔は、銅イオンを含む電解液中での電気分解によって得られる。
【0057】
前記電解液は、100g/Lの銅イオン、160/Lの硫酸、及び300g/Lの添加剤を混合して得られる。
【0058】
前記銅イオンの供給源は硫酸銅五水和物である。
【0059】
前記添加剤は結晶粒微細化剤およびレベリング剤で、濃度比は1:25であり、前記結晶粒微細化剤はポリジスルフィドジプロパンスルホン酸ナトリウムであり、前記レベリング剤はゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩である。前記ゼラチンとヒドロキシエチルセルロースの重量比は6:1であり、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩とヒドロキシエチルセルロースの重量比は2.5:1である。前記ゼラチンの重量平均分子量は50000~60000である。前記アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩の重量平均分子量は4000で、25℃での粘度は20mPa・sである。前記ヒドロキシエチルセルロースのモル置換度は1.8-2.0で、型番はHEC-15000である。
【0060】
前記高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔の調製方法は以下のとおりである。
(1)電解液構成:100g/Lの銅イオン、160g/Lの硫酸、及び300g/Lの添加剤を混合して電解液を得る。
(2)原料箔の調製:直流を印加し、電流密度が8000A/mの条件で銅箔を陰極に析出させ、剥がして原料箔を得る。
(3)表面処理:ステップ(2)で調製した原料箔を硫酸酸性化処理、粗面化処理、亜鉛クロム酸化防止処理、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン処理を施した。
【実施例3】
【0061】
本発明の実施例3は、原料箔層と表面処理層とで構成される高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔を提供する。
【0062】
前記原料箔は、銅イオンを含む電解液中での電気分解によって得られる。
【0063】
前記電解液は、80g/Lの銅イオン、126g/Lの硫酸、及び236g/Lの添加剤を混合して得られる。
【0064】
前記銅イオンの供給源は硫酸銅五水和物である。
【0065】
前記添加剤は結晶粒微細化剤およびレベリング剤で、濃度比は1:15であり、前記結晶粒微細化剤はポリジスルフィドジプロパンスルホン酸ナトリウムであり、前記レベリング剤はゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩である。前記ゼラチンとヒドロキシエチルセルロースの重量比は5:1であり、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩とヒドロキシエチルセルロースの重量比は1.2:1である。前記ゼラチンの重量平均分子量は50000~60000である。前記アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩の重量平均分子量は4000で、25℃での粘度は20mPa・sである。前記ヒドロキシエチルセルロースのモル置換度は1.8-2.0で、型番はHEC-15000である。
【0066】
前記高周波・高速プリント回路基板用電解銅箔の調製方法は以下のとおりである。
(1)電解液構成:50g/Lの銅イオン、100g/Lの硫酸、及び150g/Lの添加剤を混合して電解液を得る。
(2)原料箔の調製:直流を印加し、電流密度が8000A/mの条件で銅箔を陰極に析出させ、剥がして原料箔を得る。
(3)表面処理:ステップ(2)で調製した原料箔を硫酸酸性化処理、粗面化処理、亜鉛クロム酸化防止処理、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン処理を施した。
【実施例4】
【0067】
本発明の実施例4は、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を提供する。具体的な実施方法は実施例3と同じで、異なる点は:前記レベリング剤はゼラチンとヒドロキシエチルセルロースで、重量比は5:1であり、前記ゼラチンの重量平均分子量は50000~60000で、ヒドロキシエチルセルロースのモル置換度は1.8~2.0、型番はHEC-15000である。
【0068】
前記高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を調製する方法の具体的な実施方法は、実施例3の実施方法と同じである。
【実施例5】
【0069】
本発明の実施例5は、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を提供する。具体的な実施方法は実施例3と同じである。異なる点は:前記アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩の重量平均分子量は5000で、25℃での粘度は7mPa・sである。
【0070】
前記高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を調製する方法の具体的な実施方法は、実施例3の実施方法と同じである。
【実施例6】
【0071】
本発明の実施例6は、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を提供する。具体的な実施方法は、ヒドロキシエチルセルロースのモル置換度が2.2~2.8であることを除いて、実施例3と同じである。
【0072】
前記高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を調製する方法の具体的な実施方法は、実施例3の実施方法と同じである。
【実施例7】
【0073】
本発明の実施例7は、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を提供する。具体的な実施方法は、結晶粒微細化剤がテトラヒドロチアゾリルチオンであることを除いて、実施例3と同じである。
【0074】
前記高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を調製する方法の具体的な実施方法は、実施例3の実施方法と同じである。
【実施例8】
【0075】
本発明の実施例8は、高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を提供する。具体的な実施方法は、実施例3の実施方法と同じで、異なる点は:前記レベリング剤はヒドロキシエチルセルロース、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩であり、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩とヒドロキシエチルセルロースの重量比は1.2:1であり、アルキルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化硫黄を共重合させた第四級アンモニウム塩の重量平均分子量は4000で、粘度は25℃で20mPa・sで、ヒドロキシエチルセルロースのモル置換度が1.8~2.0であり、型番はHEC-15000である。
【0076】
前記高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔を調製する方法の具体的な実施方法は、実施例3の実施方法と同じである。
【0077】
性能評価
1.単位面積あたりの重量偏差:実施例1~8で得られた高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔の単位面積あたりの重量は、GB/T5230-1995規格に従って試験した。各実施例は10回試験してから、単位面積あたりの重量偏差を計算した。単位面積あたりの重量偏差が<5.0%であれば、優れると記録され、単位面積あたりの重量偏差が5.0~7.0%であれば、良いと記録され、単位面積あたりの重量偏差が>7.0% であれば、不良と記録される。
【0078】
2.粗面の粗さ:実施例1~8で得られた高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔の粗さは、GB/T5230-1995規格に従って試験した。微視的不均一性(Rz)を試験した。ここで、Rzは、サンプリング長さ内の5つの最大プロファイルピーク高さの平均と5つの最大プロファイル谷深さの平均の差である。ここで、測定された粗面の粗さがRz<2.5μmであれば、優れると記録され、粗面の粗さRzが2~5~3.0μmであれば、合格と記録され、粗面の粗さRz>3.0μmであれば、不合格と記録される。
【0079】
3.伸び率:実施例1-8に示す高周波・高速プリント回路基板用の電解銅箔の伸び率をGB/T5230-1995規格に従って試験し、試験温度は25℃である。伸び率が6%以上の場合は適格と記録され、それ以外の場合は不適格と記録される。
【0080】
4.剥離防止強度:実施例1~8に示す高周波及び高速プリント回路基板用電解銅箔の剥離防止強度をGB/T5230-1995規格に準拠して試験し、試験温度は25℃である。剥離防止強度が≧1.0Kg/cmであれば、一級として記録され、剥離防止強度が0.7~1Kg/cm(1Kg/cmを含まない)であれば、二級と記録され、剥離防止強度0.7Kg/cm未満であれば、三級と記録される。
【0081】
前述の例は例示に過ぎず、本発明の方法のいくつかの特徴を説明するために使用される。添付の特許請求の範囲は、考えられる可能な限り広い範囲を要求することを意図しており、本明細書に提示される実施形態は、すべての可能な実施形態の組み合わせに基づく選択された実施の説明にすぎない。したがって、出願人の意図は、添付の特許請求の範囲が、本発明の特徴を説明する実施例によって限定されないことである。請求項で使用されるいくつかの数値範囲には、それらの中にサブ範囲も含まれ、これらの範囲の変更も、可能であれば、添付の請求項の対象となると解釈されるべきである。
【国際調査報告】