(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ガス電子増倍器基板の光電子増倍管
(51)【国際特許分類】
H01J 47/06 20060101AFI20230316BHJP
G01T 1/20 20060101ALN20230316BHJP
【FI】
H01J47/06
G01T1/20 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544249
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2021016311
(87)【国際公開番号】W WO2021158596
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517318263
【氏名又は名称】ベイカー ヒューズ ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッキニー、ケヴィン スコット
【テーマコード(参考)】
2G188
5C038
【Fターム(参考)】
2G188BB04
2G188CC21
5C038DD04
5C038DD05
5C038DD10
5C038DD15
(57)【要約】
光電子増倍管は、近位端部及び遠位端部を含むハウジングと、ハウジングの近位端部に配置された光学窓と、ハウジングの遠位端部に配置された端壁プレートと、端壁プレートを貫通するフィードスルーと、光学窓と端壁プレートとの間に配置されたガス電子増倍器(GEM)基板と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
近位端部及び遠位端部を含むハウジングと、
前記ハウジングの前記近位端部に配置された光学窓と、
前記ハウジングの前記遠位端部に配置された端壁プレートと、
前記端壁プレートを貫通するフィードスルーと、
前記光学窓と前記端壁プレートとの間に配置されたガス電子増倍器(GEM)基板と、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記光学窓の表面上に薄膜としてコーティングされた光カソードを更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記光カソードが、カリウムナトリウムアンチモン化物を含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フィードスルーが、
前記端壁プレートを貫通する導電性ワイヤと、
前記導電性ワイヤと前記端壁プレートとの間の気密封止と、を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記光学窓が、サファイアを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ハウジングが、チタン又はアルミニウムを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
ガス混合物を更に含み、前記ガス混合物が、比例ガスを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記比例ガスが、周期表の18族又は窒素のうちの1つを含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記比例ガスが窒素である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ガス混合物が、クエンチガスを更に含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記クエンチガスが、CO
2、CH
4、又はCF
4のうちの1つを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記光カソードが、少なくとも1つの蒸着された材料層を含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの蒸着された材料層のうちの1つ以上の厚さが、200ナノメートル以下である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの蒸着された材料層の各々が、アンチモン(Sb)、アンチモンとカリウムとの化合物(1:1)(KSb)、アンチモンとカリウムとの化合物(2:1)(KSb
2)、アンチモンとカリウムとの化合物(5:4)(K
5Sb
4)、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)、セシウム(Cs)、アンチモン化セシウム(Cs
3Sb)、ヒ化ガリウム(GaAs)、セシウム含有ヒ化ガリウム(GaAs(Cs))、ビスマス化セシウム(Cs
3Bi)、酸素含有ビスマス化セシウム(Cs
3Bi(O))、銀含有ビスマス化セシウム(Cs
3Bi(Ag))、ヨウ化セシウム(CsI)、酸化セシウム(Cs
2O)、テルル化セシウム(Cs
2Te)、ガリウムアルミニウムヒ化物(Ga
0.25Al
0.75As)、ガリウムヒ化リン化物(GaAs
1-xP
x)、セシウム含有ガリウムヒ化リン化物(GaAs
1-xP
x(Cs))、窒化ガリウム(GaN)、セシウム含有窒化ガリウム(GaN(Cs))、リン化ガリウム(GaP)、インジウムガリウムヒ化物(InGaAs)、セシウム含有インジウムガリウムヒ化物(InGaAs(Cs))、インジウムガリウムヒ化リン化物(InGaAsP)、セシウム含有インジウムガリウムヒ化リン化物(InGaAsP(Cs))、リン化インジウム(InP)、アンチモン化リチウム(Li
3Sb)、酸素(O)、カリウム(K)、アンチモン化カリウム(K
3Sb)、臭化カリウム(KBr)、カリウムセシウムアンチモン化物(K
2CsSb)、塩化カリウム(KCl)、酸化カリウム(K
2O)、カリウムナトリウムセシウムアンチモン化物((Cs)Na
2KSb)、ナトリウム(Na)、アンチモン化ナトリウム(Na
3Sb)、ヒ化ナトリウム(Na
3As)、ナトリウムセシウムアンチモン化物(Na
2CsSb)、酸化ナトリウム(Na
2O)、ナトリウムカリウムアンチモン化物(Na
2KSb)、ルビジウムセシウムアンチモン化物(Rb
2CsSb)、銀(Ag)、銀ビスマス酸素セシウム(Ag-Bi-O-Cs)、炭化ケイ素(SiC)、及び銀酸素セシウム(Ag-O-Cs)からなる群から選択される1つ以上の材料を最低90重量%含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの蒸着された材料層の各々が、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、臭素(Br)、セシウム(Cs)、塩素(Cl)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リチウム(Li)、酸素(O)、リン(P)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、ナトリウム(Na)、及びテルル(Te)からなる群から選択される1つ以上の材料を最低90重量%含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項16】
前記少なくとも1つの蒸着された材料層の各々が、ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)、二酸化チタン(TiO
2)、炭化ケイ素(SiC)、及び二酸化ケイ素(SiO
2)からなる群から選択される1つ以上の材料を最低90重量%含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
電位差が、前記光カソードと前記GEM基板との間に印加される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項18】
読み出しアノードを更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
導電性シリンダ又はリングを含む集束素子を更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記ハウジングが、円筒状である、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月3日に出願された「Gas Electron Multiplier Board Photomultiplier」と題する米国特許仮出願第62/969,389号の利益を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
光電子増倍管チューブ(photomultiplier tube、PMT)は、吸収された光子のエネルギーを放出された電子に変換して、電気信号を生成することによって、電磁スペクトルの紫外、可視、及び近赤外範囲の光を検出し得る。いくつかのPMTは、電子増倍のための真空管及びダイノード構造を使用する。それらは、入射光によって生成される電流を、複数のダイノード段階で、1億倍(例えば、約160dB)にも増倍し、それによって、低い検出閾値を可能にする。
【0003】
いくつかのPMTは、真空圧力下で維持されるガラス製ハウジングに基づいて構築される。しかしながら、そのようなPMTは、例えば、真空ガラス管構造を使用し得、内部構造(例えば、ダイノード構造及び接続部)が複雑で繊細であり得るため、脆弱であり、高温又は振動に耐えることができない可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、デバイスは、ハウジング、光学窓、端壁プレート、フィードスルー、及びガス電子増倍器(gas electron multiplier、GEM)基板を含む。ハウジングは、近位端部及び遠位端部を含み得る。光学窓は、ハウジングの近位端部に配置され得る。端壁プレートは、ハウジングの遠位端部に配置され得る。フィードスルーは、端壁プレートを貫通し得る。ガス電子増倍器(GEM)基板は、光学窓と端壁プレートとの間に配置され得る。
【0005】
以下の特徴のうちの1つ以上が、任意の実行可能な組み合わせに含まれ得る。例えば、デバイスは、光学窓の表面上に薄膜としてコーティングされた光カソードを含み得る。光カソードは、カリウムナトリウムアンチモン化物を含み得る。フィードスルーは、端壁プレートを貫通する導電性ワイヤと、導電性ワイヤと端壁プレートとの間の気密シールとを含み得る。光学窓は、サファイアを含み得る。ハウジングは、チタン又はアルミニウムを含み得る。デバイスは、ガス混合物を含み得、ガス混合物は、比例ガスを含む。比例ガスは、周期表の18族又は窒素のうちの1つを含み得る。ガス混合物は、クエンチガスを更に含み得る。クエンチガスは、CO2、CH4、又はCF4のうちの1つを含み得る。光カソードは、少なくとも1つの蒸着された材料層を含み得る。少なくとも1つの蒸着された材料層のうちの1つ以上の厚さは、約200ナノメートル以下であり得る。
【0006】
少なくとも1つの蒸着された材料層のうちの1つ以上は、アンチモン(Sb)、アンチモンとカリウムとの化合物(1:1)(KSb)、アンチモンとカリウムとの化合物(2:1)(KSb2)、アンチモンとカリウムとの化合物(5:4)(K5Sb4)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、セシウム(Cs)、アンチモン化セシウム(Cs3Sb)、ヒ化ガリウム(GaAs)、セシウム含有ヒ化ガリウム(GaAs(Cs))、ビスマス化セシウム(Cs3Bi)、酸素含有ビスマス化セシウム(Cs3Bi(O))、銀含有ビスマス化セシウム(Cs3Bi(Ag))、ヨウ化セシウム(CsI)、酸化セシウム(Cs2O)、テルル化セシウム(Cs2Te)、ガリウムアルミニウムヒ化物(Ga0.25Al0.75As)、ガリウムヒ化リン化物(GaAs1-xPx)、セシウム含有ガリウムヒ化リン化物(GaAs1-xPx(Cs))、窒化ガリウム(GaN)、セシウム含有窒化ガリウム(GaN(Cs))、リン化ガリウム(GaP)、インジウムガリウムヒ化物(InGaAs)、セシウム含有インジウムガリウムヒ化物(InGaAs(Cs))、インジウムガリウムヒ化リン化物(InGaAsP)、セシウム含有インジウムガリウムヒ化リン化物(InGaAsP(Cs))、リン化インジウム(InP)、アンチモン化リチウム(Li3Sb)、酸素(O)、カリウム(K)、アンチモン化カリウム(K3Sb)、臭化カリウム(KBr)、カリウムセシウムアンチモン化物(K2CsSb)、塩化カリウム(KCl)、酸化カリウム(K2O)、カリウムナトリウムセシウムアンチモン化物((Cs)Na2KSb)、ナトリウム(Na)、アンチモン化ナトリウム(Na3Sb)、ヒ化ナトリウム(Na3As)、ナトリウムセシウムアンチモン化物(Na2CsSb)、酸化ナトリウム(Na2O)、ナトリウムカリウムアンチモン化物(Na2KSb)、ルビジウムセシウムアンチモン化物(Rb2CsSb)、銀(Ag)、銀ビスマス酸素セシウム(Ag-Bi-O-Cs)、炭化ケイ素(SiC)、及び銀酸素セシウム(Ag-O-Cs)からなる群から選択される1つ以上の材料を最低90重量%含み得る。
【0007】
少なくとも1つの蒸着された材料層のうちの1つ以上は、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、臭素(Br)、セシウム(Cs)、塩素(Cl)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リチウム(Li)、酸素(O)、リン(P)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、ナトリウム(Na)、及びテルル(Te)からなる群から選択される1つ以上の材料を最低90重量%含み得る。少なくとも1つの蒸着された材料層のうちの1つ以上は、ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)、二酸化チタン(TiO2)、炭化ケイ素(SiC)、及び二酸化ケイ素(SiO2)からなる群から選択される1つ以上の材料を最低90重量%含み得る。電位差が、光カソードとGEM基板との間に印加され得る。デバイスは、読み出しアノードを含み得る。デバイスは、集束素子を含み得る。集束素子は、導電性シリンダ又はリングを含み得る。ハウジングは、円筒状であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
各図面の簡単な説明は、本開示の発明を実施するための形態で使用される図面をより十分に理解するために提供される。
【
図1】ダイノードを備える真空管光電子増倍管の例を示す図である。
【
図2】ダイノードを備える真空管光電子増倍管を示す概略図である。
【
図3】例示的な実施形態による、ガス電子増倍器(GEM)基板を使用する光電子増倍管を示す概略図である。
【
図4A】GEM基板を備える電子増倍の機構を示す概略図である。
【
図4B】例示的な実施形態による、光電子増倍管内の電子経路のシミュレーション結果を示す概略図である。
【
図5】光カソードとガス電子増倍器(GEM)基板との間のハウジング内に印加される電位場を示す概略図である。
【
図6A】本開示の例示的な実施形態による、GEM基板を使用する別の例示的な光電子増倍管を示す概略側面断面図である。
【0009】
上に参照された図面は、本開示の基本原理を例示する様々な特徴の幾分簡略化された表現を提示し、必ずしも縮尺通りではないことを理解されたい。例えば、特定の寸法、向き、位置、及び形状を含む本開示の特定の設計特徴は、特定の意図された用途及び使用環境によって部分的に決定される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ガラス製真空管構造に起因して、いくつかの光電子増倍管チューブ(PMT)は、ダウンホール掘削用途などの、PMTを高温及び高振動に曝す作業環境では、壊れやすく、適合不可である場合がある。ガラス製真空管PMTも、信頼性がなく、高価であり得る。したがって、本開示の実施形態は、これらの欠陥に対処する改善された光電子増倍管を提供する。一例として、改善された光電子増倍管は、耐久性のあるハウジングと、衝撃及び振動性能を改善するガス電子増倍器(GEM)基板とを含み得る。いくつかの実施形態では、ダイノード構造は、デバイスの長さを低減するために、1つ以上のGEM基板で置き換えられ得る。改善された光電子増倍管の用途としては、ダウンホール掘削用途におけるガンマ線検出、セキュリティ用途、ヘルスケア用途用の放射能検出などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0011】
図1は、ダイノード100を使用する真空管光電子増倍管の一例を示し、
図2は、ダイノード100を備える真空管光電子増倍管の概略図を示す。
図2を参照すると、ダイノード100を備える真空管光電子増倍管は、ガラス管110の端部に配置された光学窓105を通して入射光を受容し得る。ガラス管110は、真空圧力下で維持される。光カソード115は、光学窓105上に配置され、複数のダイノード120は、ガラス管110内に配置され、アノード125は、複数のダイノード120の後に配置される。アノード125及び複数のダイノード120の各々は、フィードスルーを通してコネクタピン130に接続されている。動作中、入射光子は、光学窓105の内部表面上に堆積(例えば、蒸着)された薄い導電層の形態であり得る光カソード115材料に衝突し得る。光電効果に起因して、光カソード115材料の表面から電子が放出され得る。放出された電子は、集束電極140によって電子増倍器に向かって方向付けられ得、二次放出によって電子は増倍される。ダイノード120の各々は、電子を引き付け、より多くの二次電子145を生成するために、先行するダイノードよりも増大するより高い正電位(例えば、約100ボルト)に供され得る。いくつかの実施形態では、検出の目標波長に応じて、シンチレータ135は、光学窓105の前に配置され得る。例えば、ガンマ線を検出するために、高エネルギー光子150は、シンチレータ135内の低エネルギー光子155に変換され得、低エネルギー光子155は、光カソード115によって一次電子160に変換され得る。
【0012】
図3は、本開示の例示的な実施形態による、ガス電子増倍器(GEM)基板305を使用する光電子増倍管300の1つの例示的な実施形態の概略図を示す。
図6A~
図6Bは、GEM基板を使用する別の例示的な光電子増倍管を示す。
図3を参照すると、光電子増倍管300は、近位端部310p及び遠位端部310dを含むハウジング310を含み得る。光電子増倍管300は、ハウジング310の近位端部に配置された光学窓315と、ハウジング310の遠位端部310dに配置された端壁プレート320とを含み得る。GEM基板305は、光学窓315と端壁プレート320との間に配置され得る。端壁プレート320を貫通するフィードスルーは、GEMへの電気接続を行うために含まれ得る。
【0013】
ハウジング310は、金属などの耐久性のある材料を含み得る。いくつかの実現形態では、ハウジング310は、チタン、アルミニウム、又はそれらの合金が挙げられるが、これらに限定されない材料から形成され得る。いくつかの実現形態では、ガラスなどの材料が利用される。しかしながら、ハウジング310を形成する材料は、これらに限定されず、様々な他の耐久性のある材料が使用され得る。
【0014】
光学窓315は、耐久性のある光学的透過性材料を含み得る。いくつかの実現形態では、光学窓315は、サファイアから形成され得る。サファイアは、紫外から近赤外までの広い光学的透過性帯域、高い機械的強度、高い耐擦傷性及び耐摩耗性、並びに高温能力に起因して、光学窓315を形成するために使用される場合に利点を提供し得る。
【0015】
端壁プレート320もまた、耐久性のある材料から形成され得る。いくつかの実現形態では、端壁プレート320は、ハウジング310と同じ金属材料から形成され得る。他の実施形態では、端壁プレート320は、ハウジング310とは異なる材料から形成され得る。特定の実施形態では、端壁プレート320は、セラミック又は金属から形成され得る。端壁プレート320が導電性材料(例えば、金属)から形成される実現形態では、コネクタピンのためのフィードスルーは、絶縁され得る。これらの絶縁体は、例えば、ガラス対金属又はセラミック対金属封止を使用して、端壁プレート320に封止されたセラミック又はガラスを含み得る。
【0016】
ハウジング310、光学窓315、及び端壁プレート320を形成するための耐久性のある材料の使用に起因して、光電子増倍管300の実施形態は、高温動作及び/又は高振動環境に耐え得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、ハウジング310は、実質的に円筒状の形状で形成され得る。例えば、ハウジング310の直径は、約1/2インチ~約1インチ(例えば、約1/2インチ、約3/4インチ、又は約1インチ)の範囲内であり得る。例えば、ハウジング310の特徴的な長さは、約1/2インチ~約3インチの範囲内であり得る。しかしながら、本開示の実施形態による光電子増倍管300の寸法は、これに限定されず、寸法は、設計要件及び用途に基づいて様々に修正され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、光カソード325は、光学窓315の内部表面上に光カソード材料をコーティングすることによって形成され得る。光カソード材料は、薄膜として堆積され得る。任意の薄膜堆積法を使用して、光カソード325を形成し得る。例えば、めっき、化学溶液堆積(chemical solution deposition、CSD)、化学浴堆積(chemical bath deposition、CBD)、ラングミュア-ブロジェット法、スピンコーティング、浸漬コーティング、化学蒸着(chemical vapor deposition、CVD)、プラズマ強化CVD、及び原子層堆積(atomic layer deposition、ALD)などの化学堆積、又は物理蒸着(physical vapor deposition、PVD)、分子線エピタキシ(molecular beam epitaxy、MBE)、スパッタリング、レーザ堆積、及びエレクトロスプレー堆積などの物理堆積を使用して、光カソード325を光学窓315(例えば、サファイア光学窓)上にコーティングし得る。
【0019】
いくつかの実現形態では、光カソード325は、少なくとも1つの蒸着された材料層を含み得る。例えば、1~約20の蒸着された材料層を用いて、光カソード325を形成し得る。少なくとも蒸着された材料層の各々の厚さは、約200ナノメートル(nanometer、nm)以下であり得る。少なくとも1つの蒸着された材料層の実施形態は、アンチモン(Sb)、アンチモンとカリウムとの化合物(1:1)(KSb)、アンチモンとカリウムとの化合物(2:1)(KSb2)、アンチモンとカリウムとの化合物(5:4)(K5Sb4)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、セシウム(Cs)、アンチモン化セシウム(Cs3Sb)、ヒ化ガリウム(GaAs)、セシウム含有ヒ化ガリウム(GaAs(Cs))、ビスマス化セシウム(Cs3Bi)、酸素含有ビスマス化セシウム(Cs3Bi(O))、銀含有ビスマス化セシウム(Cs3Bi(Ag))、ヨウ化セシウム(CsI)、酸化セシウム(Cs2O)、テルル化セシウム(Cs2Te)、ガリウムアルミニウムヒ化物(Ga0.25Al0.75As)、ガリウムヒ化リン化物(GaAs1-xPx)、セシウム含有ガリウムヒ化リン化物(GaAs1-xPx(Cs))、窒化ガリウム(GaN)、セシウム含有窒化ガリウム(GaN(Cs))、リン化ガリウム(GaP)、インジウムガリウムヒ化物(InGaAs)、セシウム含有インジウムガリウムヒ化物(InGaAs(Cs))、インジウムガリウムヒ化リン化物(InGaAsP)、セシウム含有インジウムガリウムヒ化リン化物(InGaAsP(Cs))、リン化インジウム(InP)、アンチモン化リチウム(Li3Sb)、酸素(O)、カリウム(K)、アンチモン化カリウム(K3Sb)、臭化カリウム(KBr)、カリウムセシウムアンチモン化物(K2CsSb)、塩化カリウム(KCl)、酸化カリウム(K2O)、カリウムナトリウムセシウムアンチモン化物((Cs)Na2KSb)、ナトリウム(Na)、アンチモン化ナトリウム(Na3Sb)、ヒ化ナトリウム(Na3As)、ナトリウムセシウムアンチモン化物(Na2CsSb)、酸化ナトリウム(Na2O)、ナトリウムカリウムアンチモン化物(Na2KSb)、ルビジウムセシウムアンチモン化物(Rb2CsSb)、銀(Ag)、銀ビスマス酸素セシウム(Ag-Bi-O-Cs)、炭化ケイ素(SiC)、及び銀酸素セシウム(Ag-O-Cs)からなる群から選択される1つ以上の材料を含み得る。これらの材料は、光カソード325の各単層に最低90重量%含まれ得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの蒸着された材料層の各々は、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、臭素(Br)、セシウム(Cs)、塩素(Cl)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リチウム(Li)、酸素(O)、リン(P)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、銀(Ag)、ナトリウム(Na)、及びテルル(Te)からなる群から選択される1つ以上の材料を含み得る。これらの材料は、光カソード325の各単層に最低90重量%含まれ得る。
【0021】
いくつかの実現形態では、少なくとも1つの蒸着された材料層の各々は、ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)、二酸化チタン(TiO2)、及び二酸化ケイ素(SiO2)からなる群から選択される1つ以上の材料を含み得る。これらの材料は、光カソード325の各単層に最低90重量%含まれ得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、光カソード325は、カリウムナトリウムアンチモン化物を含み得る。しかしながら、光カソード材料は、上に列挙された材料に限定されず、他の光カソード材料も使用され得る。
【0023】
本開示の実施形態によれば、ガス混合物は、ハウジング310、光学窓315、及び端壁プレート320によって画定される内部空間を充填し得る。ガス混合物は、比例ガスを含み得る。いくつかの実現形態では、比例ガスは、周期表からの18族のガスを含み得る。代替的又は追加的に、比例ガスは、窒素を含み得る。光(又は電磁波)強度に対する電流応答の比例を制御するために、クエンチガスがガス混合物中に添加され得る。クエンチガスは、CO2、CH4、又はCF4のうちの1つ以上を含み得る。ガス混合物は、光電子増倍管300の内部容積を、約1気圧以上(室温)の圧力で充填し得る。いくつかの実現形態では、圧力は、1気圧未満であり得る。光電子増倍管300の内部容積は、ほぼ大気圧に維持されるため、光電子増倍管300は、動作中の外部衝撃に起因する爆縮の傾向がより低くなる可能性がある。
【0024】
光電子増倍管300は、電子の濃度を増加させるために、ガス電子増倍器(GEM)基板305を含み得る。増倍は、例えば、
図4Aを参照して以下により詳細に示され記載されるように、電界線の濃度に起因して、GEM基板の穴で起こり得る。GEM基板305は、2つの電極間に電位差を印加し得、それによって、電子がガス内の放射線によって放出されることを可能にする。放出された電子は、増倍し得、収集領域に移動し得る。
【0025】
本開示の例示的な実施形態による光電子増倍管300内で、GEM基板305は、光学窓315と端壁プレート320との間に配置され得る。いくつかの実施形態では、2つ以上のGEM基板305が、直列に配置され得る。例えば、2つ又は3つのGEM基板305を配列し(例えば、GEM基板305の各々の間に軸方向の間隔で積層し)、増幅ゲインを増加させ得る。GEM基板305の各々は、両側に電極でコーティングされた穿孔ポリマー箔として形成され得る。いくつかの実現形態では、GEM基板305は、複数の開口部を含むように化学的に穿孔された、薄い金属被覆ポリマー箔を含み得る。例えば、GEM基板305は、各側に銅電極の薄層を有する厚さおよそ50μmのポリアミドフィルムを含み得る。いくつかの実現形態では、各開口部の直径は、約0.1mm~約2mmの範囲の値であり得る。いくつかの実現形態では、各開口部の直径は、約0.3mm~約1mmの範囲の値であり得る。いくつかの実現形態では、GEM基板305の厚さは、0.020インチ又は0.060インチなどの、約0.01インチ~約0.1インチの範囲の値であり得る。いくつかの実現形態では、GEM基板305の複数の開口部は、GEM基板305の全領域にわたって分散され得る。いくつかの実現形態では、複数の開口部は、集束電子ビームが衝突する領域内に閉じ込められ得る。いくつかの実現形態では、例えば、高温用途について、GEM基板305は、ポリイミド回路基板及び/又はセラミック回路基板を含み得る。
【0026】
図4Aは、電子増倍器400Aの機構を概略的に示す。イオン化比例ガス(正イオン)が、カソードに向かってドリフトし、電子が、GEM基板305及び開口部の内側に向かってドリフトすると、開口部内に強い電界が生成される。したがって、電子は、ガス分子と衝突して、カスケーディングプロセスにおいて追加の電子を生成する。
図4Bは、本開示の例示的な実施形態による光電子増倍管300内の電子経路のシミュレーション結果400Bの概略図である。
【0027】
いくつかの実現形態では、光カソード325とGEM基板305との間に電位差を印加して、電子をGEM基板305に向かって集束させ得る。
図5は、光カソード325とGEM基板305との間のハウジング310内に印加される電位場を概略的に示す。追加的又は代替的に、集束素子は、光カソード325と第1のGEM基板305との間に配置されて、光電子増倍管300内に印加された電位場を形成し得る。集束素子は、導電性シリンダ又はリングを含み得る。いくつかの実施形態では、集束素子は、複数のシリンダ又はリングを含み得る。
【0028】
本開示の例示的な実施形態による光電子増倍管300は、GEM基板305と端壁プレート320との間に読み出しアノード330を含み得る。増倍された電子を読み出しアノード330に収集して、電流の量を測定することを可能にし得る。いくつかの実現形態では、最後のGEM基板305の底部を使用して、電流パルスを読み出すことができる。測定された電流は、較正に基づいて光強度に変換され得る。
【0029】
複数のGEM基板305が含まれる場合、読み出しアノード330は、最後のGEM基板305と端壁プレート320との間に配置され得る。本明細書では、第1のGEM基板及び最後のGEM基板は、電子の進行方向に対して定義され得る。例えば、光カソード325に最も近く配置されたGEM基板は、第1のGEM基板と称され得、端壁プレート320に最も近く配置されたGEM基板は、最後のGEM基板と称され得る。
【0030】
上で考察されたように、GEM基板305及び読み出しアノード330への電気接続を行うために、少なくとも1つのフィードスルーが、端壁プレート320に形成され得る。電気フィードスルー602を含む光電子増倍管600の形態の光電子増倍管300の実施形態が、
図6A~
図6Bに示される。フィードスルー602は、端壁プレート320を貫通する導電性ワイヤを含み得る。導電性ワイヤと端壁プレート320との間に、ガス密封止が含まれ得る。例えば、気密封止を導電性ワイヤの周囲に適用して、導電性ワイヤと端壁プレート320との間にガス密封止を作製し得る。各GEM基板305には、典型的には2つの電気接続が必要であり(両側の各電極用)、追加の2つの電気接続が必要である(カソード用のもの及び読み出しアノード用のもの)ため、n個のGEM基板305に対応するためには、最小合計数2n+2個のフィードスルー602が、端壁プレート320を通して形成され得る。集束素子を含む実現形態では、フィードスルー602の数は、増加し得る。電気フィードスルー602を通して、負電圧が光カソード325に印加され得、読み出しアノード330が接地され得る。いくつかの実現形態では、読み出しアノード330は、正の高電圧であり得、光カソードは、接地され得る。GEM基板305の電極は、光カソードの負電圧と読み出しアノード330の接地電圧との間の中間(負)電圧に維持され得る。
【0031】
本明細書に記載されるように、本開示の例示的な実施形態による光電子増倍管は、光カソードのためのより強い光学窓及び耐久性のあるハウジングを含む。したがって、本開示に従う光電子増倍管は、耐高温性及び耐衝撃性を提供し得る。本開示による光電子増倍管は、ダウンホール掘削用途におけるガンマ線検出、セキュリティ用途、ヘルスケア用途の放射能検出などに使用され得る。
【0032】
本開示の実施形態は、本明細書に記載される例示的な実施形態に限定されず、変形及び修正で具体化され得る。例示的な実施形態は、当業者が本開示の範囲を理解することを可能にするために単に提供され、これは、特許請求の範囲の範囲によって定義されるであろう。したがって、いくつかの実施形態では、プロセスの周知の動作、周知の構造、及び周知の技術は、本開示の不明瞭な理解を回避するために詳細には記載されない。本明細書全体を通して、同じ参照番号は、同じ要素を指す。
【0033】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確に示されない限り、複数形も含むものとする。「含む(comprise)」及び/又は「含んでいる(comprising)」という用語は、本明細書で用いられる場合、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在若しくは追加を除外するものではない点を更に理解されたい。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のいずれか及び全ての組み合わせを含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、又は文脈から明らかでない限り、「約」、「およそ」、及び「実質的に」という用語は、互換的に使用され、例えば平均の2標準偏差以内など、記載値の当技術分野における通常の許容範囲内と理解され得る。「約」、「およそ」、及び/又は「実質的に」は、記載値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内であると理解され得る。文脈から明らかでない限り、本明細書で提供される全ての数値は、「約」という用語によって修飾される。
【0035】
以上、本開示は、具体的な構成要素などの具体的事項、例示的な実施形態、及び図面によって記載されているが、それらは、単に本開示の全体の理解を補助するために提供される。したがって、本開示は、例示的な実施形態に限定されない。本開示がこの記載に関連する当業者によって、様々な修正及び変更が行われ得る。したがって、本開示の趣旨は、上記の例示的な実施形態に限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲、並びに特許請求の範囲に等しく又は同等に修正された全ての技術的趣旨は、本開示の範囲及び趣旨内にあると解釈されるべきである。
【国際調査報告】