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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】T細胞形質導入のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230316BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230316BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230316BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20230316BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230316BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230316BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230316BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230316BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230316BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20230316BHJP
   A61K 35/17 20150101ALN20230316BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61P31/00
A61P37/06
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P37/02
C12N5/0783
C12N15/867 Z
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/725
A61K35/17 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545794
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 US2021015333
(87)【国際公開番号】W WO2021154887
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/967,005
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヘイグ ニール
(72)【発明者】
【氏名】テオ ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA03
4C087BB37
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB32
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
T細胞への形質導入のための方法を、本明細書に提供する。いくつかの態様において、提供される方法には、CCR7+発現について選択された細胞をレトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスベクターと共にインキュベートすることによる、T細胞への形質導入が含まれる。提供される方法は、形質導入頻度を増加させることによっておよび/または生物学的試料間の形質導入頻度のばらつきを低減することによって、T細胞を遺伝子改変するためのプロセスを改良する。その結果得られる、組換え遺伝子または異種遺伝子が形質導入された細胞、およびその組成物も、提供される。いくつかの態様において、提供される細胞および組成物は、養子免疫治療の方法において使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、
(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、
(b)インプット集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む、工程、および
(c)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程
を含む、方法。
【請求項2】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、
(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、および
(b)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子をインプット細胞集団のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程
を含む、方法。
【請求項3】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、
(a)CCR7+T細胞が富化されているインプット初代T細胞集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む、工程、および
(b)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程
を含む、方法。
【請求項4】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、
組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、CCR7+T細胞が富化されているインプット初代T細胞集団のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程
を含む、方法。
【請求項5】
インプット集団の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
インプット集団の少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
インプット集団の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
生物学的試料が血液試料である、請求項1、2および5~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
生物学的試料が白血球アフェレーシス試料である、請求項1、2および5~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
T細胞が、未分画T細胞であるか、富化もしくは単離されたCD3+T細胞であるか、富化もしくは単離されたCD4+T細胞であるか、または富化もしくは単離されたCD8+T細胞である、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
インプット集団が、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
インプット集団が、CD4+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
インプット集団が、CD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
インプット集団が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
CD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比が、1:1、1:2、2:1、1:3、もしくは3:1であるか、または約1:1、1:2、2:1、1:3、もしくは3:1である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
インプット集団が、CD3+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
インプット集団が、100×106~500×106個の総T細胞を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
インプット集団が、200×106~400×106個の総T細胞、任意で300×106または約300×106個の総T細胞を含む、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
総T細胞が生存T細胞である、請求項17または請求項18記載の方法。
【請求項20】
刺激された組成物の細胞のうちの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%が、
(i)HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40L、および4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し、
(ii)IL-2、IFN-ガンマ、およびTNF-アルファからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、
(iii)細胞周期のG1期以降にあり、および/または
(iv)増殖能を有する、
請求項1、3、および519のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
刺激性試薬が、
TCR複合体のメンバーに特異的に結合する、任意でCD3に特異的に結合する、一次作用物質
を含む、請求項1、3、および5~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
刺激性試薬が、T細胞共刺激分子に特異的に結合する二次作用物質をさらに含み、任意で、共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSから選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
一次作用物質および/または二次作用物質が抗体を含み、任意で、刺激性試薬が、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはそれらの抗原結合フラグメントとのインキュベーションを含む、請求項21または請求項22記載の方法。
【請求項24】
一次作用物質および/または二次作用物質が、固形支持体の表面に存在する、請求項21~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
固形支持体がビーズであるかまたはビーズを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
一次作用物質および二次作用物質が、複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子を含むオリゴマー型粒子試薬の表面に可逆的に結合している、請求項21~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれが、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸の配列におけるストレプトアビジン中の位置に関して位置44~47に対応する配列位置に、Val44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47のアミノ酸配列を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれが、ストレプトアビジンムテイン分子であり、複数のストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれが、
(a)SEQ ID NO:36、41、48~50、または53~55のいずれか1つに示されるアミノ酸の配列、
(b)SEQ ID NO:36、41、48~50、または53~55のいずれか1つに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を呈し、かつVal44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47に対応するアミノ酸配列を含有し、かつ/またはビオチン、ビオチン類似体、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、アミノ酸の配列、または
(c)ビオチン、ビオチン類似体もしくはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
であるか、またはそれを含み、
任意で、複数のストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれが、SEQ ID NO:36またはSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む、
請求項26記載の方法。
【請求項29】
形質導入細胞の集団が、組換えタンパク質を発現する細胞を、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、請求項1~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
形質導入細胞の集団が、組換えタンパク質を発現する細胞を、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
形質導入細胞の集団における、組換えタンパク質を発現する細胞のパーセンテージが、選択工程によってCCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞組成物と比較して、少なくとも0.5倍、少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍大きい、請求項1~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
ウイルスベクター粒子をインキュベートする工程が、ウイルスベクター粒子を、インプット集団または刺激された組成物と共にスピノキュレーションに付すことを含む、請求項1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
スピノキュレーションに付すことが、遠心分離チャンバの内側キャビティにおいて、ウイルスベクター粒子およびインプット集団または刺激された組成物を回転させることを含み、
回転が、
それぞれ両端の値を含め、500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または約500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または
少なくとも600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000g、または少なくとも約600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000g
である、キャビティ側壁の内面における相対遠心力で行われる、
請求項32記載の方法。
【請求項34】
スピノキュレーションに付すことが、
5分超もしくは約5分、10分超もしくは約10分、15分超もしくは約15分、20分超もしくは約20分、30分超もしくは約30分、45分超もしくは約45分、60分超もしくは約60分、90分超もしくは約90分、または120分超もしくは約120分、または
それぞれ両端の値を含め、5分~60分、10分~60分、15分~60分、15分~45分、30分~60分、もしくは45分~60分、または約5分~60分、10分~60分、15分~60分、15分~45分、30分~60分、もしくは45分~60分
である時間にわたって行われる、請求項32または請求項33記載の方法。
【請求項35】
インキュベートする工程の少なくとも一部の間に、刺激された組成物および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む、請求項1、3および5~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
インキュベートする工程の少なくとも一部の間に、インプット集団および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む、請求項2、4~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
接触させる工程が、ウイルスベクター粒子をインプット集団または刺激された組成物と共にスピノキュレーションに付す前に、またはそれと同時に、またはその後に、実行される、請求項35または請求項36記載の方法。
【請求項38】
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部が、37℃±2℃または約37℃±2℃で実行される、請求項1~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部が、スピノキュレーション後に実行される、請求項1~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部が、2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下、または約2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下にわたって実行される、請求項38または請求項39記載の方法。
【請求項41】
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部が、24時間または約24時間にわたって実行される、請求項38~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの総継続時間が、12時間、24時間、36時間、48時間、または72時間以下である、請求項1~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
ウイルスベクター粒子がレンチウイルスベクター粒子である、請求項1~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
レンチウイルスベクター粒子が複製欠損性である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
ウイルスベクター粒子が、ウイルスエンベロープ糖タンパク質でシュードタイプ化されている、請求項1~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
ウイルスエンベロープ糖タンパク質がVSV-Gである、請求項45記載の方法。
【請求項47】
ウイルスベクター粒子が、20.0未満もしくは約20.0未満または10.0未満もしくは約10.0未満の感染多重度でインキュベートされる、請求項1~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
ウイルスベクター粒子が、1.0 IU/細胞~10 IU/細胞もしくは2.0U/細胞~5.0 IU/細胞、または約1.0 IU/細胞~10 IU/細胞もしくは2.0U/細胞~5.0 IU/細胞の感染多重度でインキュベートされるか、または
ウイルスベクター粒子が、少なくとも1.6 IU/細胞、1.8 IU/細胞、2.0 IU/細胞、2.4 IU/細胞、2.8 IU/細胞、3.2 IU/細胞、3.6 IU/細胞、4.0 IU/細胞、5.0 IU/細胞、6.0 IU/細胞、7.0 IU/細胞、8.0 IU/細胞、9.0 IU/細胞、もしくは10.0 IU/細胞、または少なくとも約1.6 IU/細胞、1.8 IU/細胞、2.0 IU/細胞、2.4 IU/細胞、2.8 IU/細胞、3.2 IU/細胞、3.6 IU/細胞、4.0 IU/細胞、5.0 IU/細胞、6.0 IU/細胞、7.0 IU/細胞、8.0 IU/細胞、9.0 IU/細胞、もしくは10.0 IU/細胞の感染多重度でインキュベートされる、
請求項1~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
刺激された組成物が、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む、請求項1、3および5~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
刺激された組成物が、両端の値を含め50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞、任意で両端の値を含め100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む、請求項1、3および5~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
インプット集団が、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む、請求項2および4~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
インプット集団が、両端の値を含め50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞、任意で両端の値を含め100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む、請求項2および4~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
ウイルス粒子と共にインキュベートされるT細胞が、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む、請求項1~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
ウイルス粒子と共にインキュベートされるT細胞が、両端の値を含め50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞、任意で両端の値を含め100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む、請求項1~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
組換えタンパク質が抗原受容体である、請求項1~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
抗原受容体がトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である、請求項55記載の方法。
【請求項57】
抗原受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項55記載の方法。
【請求項58】
CARが、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメイン、ITAMを含む細胞内シグナリングドメイン、および細胞外ドメインと細胞内シグナリングドメインとを連結する膜貫通ドメインを含む、請求項57記載の方法。
【請求項59】
細胞内シグナリングドメインがCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
膜貫通ドメインがCD28の膜貫通部分を含む、請求項58または請求項59記載の方法。
【請求項61】
細胞内シグナリングドメインがT細胞共刺激分子の細胞内シグナリングドメインをさらに含む、請求項58~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
T細胞共刺激分子がCD28および41BBからなる群より選択される、請求項61記載の方法。
【請求項63】
抗原受容体が、疾患または状態と関連する抗原に特異的に結合するか、またはユニバーサルタグに特異的に結合する、請求項55~62のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
疾患または状態が、がん、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、または感染性疾患である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
形質導入細胞の集団が、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞を含む、請求項1~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
形質導入細胞の集団におけるT細胞の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%に、異種ポリヌクレオチドが形質導入されている、請求項65記載の方法。
【請求項67】
形質導入細胞の集団におけるT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%に、異種ポリヌクレオチドが形質導入されている、請求項65または請求項66記載の方法。
【請求項68】
異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、CCR7+である、請求項65~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
形質導入細胞の集団から、本方法によって生産された形質導入T細胞を回収または単離する工程を、さらに含む、請求項65または請求項66記載の方法。
【請求項70】
形質導入細胞の複数の集団の間での、形質導入細胞の集団における、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞のパーセンテージのばらつきが、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、または10%以下である、請求項1~69のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
インビトロまたはエクスビボで実行される、請求項1~70のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
請求項1~71のいずれか一項記載の方法によって生産された形質導入細胞の集団を含む、組成物。
【請求項73】
冷凍保存物質をさらに含む、請求項72記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「METHODS FOR T CELL TRANSDUCTION」と題する、2020年1月28日に出願された米国仮出願第62/967,005号に基づく優先権を主張し、この仮出願の内容は参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組入れ
以下のASCIIテキストファイルでの提出物の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。すなわち、73504_2023140_SEQLIST.txtという名称のファイルとして、コンピュータ可読形式(CRF)の配列表を提供する。このファイルは2021年1月27日に作成されたもので、サイズは53,345バイトである。
【0003】
分野
本開示は、T細胞への形質導入のための方法を提供する。いくつかの態様において、提供される方法には、CCR7+発現について選択された細胞をレトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスベクターと共にインキュベートすることによる、T細胞への形質導入が含まれる。いくつかの態様において、このような方法は、形質導入頻度を増加させることによっておよび/または生物学的試料間の形質導入頻度のばらつきを低減することによって、T細胞を遺伝子改変するためのプロセスを改良することになる。その結果得られる、組換え遺伝子または異種遺伝子、例えばキメラ抗原受容体などのキメラ受容体またはトランスジェニックT細胞受容体などの他の組換え抗原受容体をコードする遺伝子が形質導入された細胞、およびその組成物も提供される。いくつかの態様において、提供される細胞および組成物は、養子免疫治療の方法において使用することができる。
【背景技術】
【0004】
背景
インビトロでT細胞集団への形質導入を行うための戦略は、養子細胞免疫治療またはがん治療において使用するためにインビトロでT細胞への形質導入を行うための戦略を含めて、種々利用可能である。研究、診断および治療などの目的で、細胞集団への形質導入をインビトロで行うために、形質導入頻度が増加し、生物学的試料間での一貫性が高くなるように、改良された戦略が必要とされている。そのような必要を満たす方法が提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、(b)任意で、インプット集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む、工程、および(c)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子をインプット細胞集団のT細胞、または任意で、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法が、本明細書において提供される。
【0006】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、(b)インプット集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む、工程、および(c)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。
【0007】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、および(b)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子をインプット細胞集団のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。
【0008】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、(a)CCR7+T細胞が富化されているインプット初代T細胞集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む、工程、および(b)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。
【0009】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、CCR7+T細胞が富化されているインプット初代T細胞集団のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。
【0010】
任意のそのような態様のいくつかでは、インプット集団の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である。任意のそのような態様のいくつかでは、インプット集団の少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である。任意のそのような態様のいくつかでは、インプット集団の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である。
【0011】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、選択する工程は、(a)CCR7+およびCD45RO+、または(b)CCR7+およびCD27+、または(c)CCR7+およびCD45RA-、または(d)CCR7+およびCD62L+、または(e)CCR7+およびCD45RA+、または(f)CCR7+およびCD62L-である細胞を選択する工程を含まない。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、(a)CCR7+およびCD45RO+、または(b)CCR7+およびCD27+、または(c)CCR7+およびCD45RA-、または(d)CCR7+およびCD62L+、または(e)CCR7+およびCD45RA+、または(f)CCR7+およびCD62L-であるT細胞が富化されていない。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CCR7+およびCD45RO+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RO+T細胞である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CCR7+およびCD27+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD27+T細胞である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CCR7+およびCD45RA-T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RA-T細胞である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CCR7+およびCD62L+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD62L+T細胞である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CCR7+およびCD45RA+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RA+T細胞である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CCR7+およびCD62L-T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD62L-T細胞である。
【0012】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、生物学的試料は血液試料である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、生物学的試料は白血球アフェレーシス試料である。
【0013】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、T細胞は未分画T細胞であるか、または富化もしくは単離されたCD3+T細胞であるか、または富化もしくは単離されたCD4+T細胞であるか、または富化もしくは単離されたCD8+T細胞である。
【0014】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CD4+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、CD8+T細胞に対するCD4+T細胞の比は、1:1、1:2、2:1、1:3、もしくは3:1、または約1:1、1:2、2:1、1:3、もしくは3:1である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、CD3+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。
【0015】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、100×106~500×106個の総T細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、200×106~400×106個の総T細胞、任意で300×106または約300×106個の総T細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、総T細胞は生存T細胞である。
【0016】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、刺激された組成物の細胞のうちの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%は、(i)HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し、(ii)IL-2、IFN-ガンマ、TNF-アルファからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、(iii)細胞周期のG1期以降にあり、および/または(iv)増殖能を有する。
【0017】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、刺激性試薬は、TCR複合体のメンバーに特異的に結合する、任意でCD3に特異的に結合する、一次作用物質を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、刺激性試薬は、T細胞共刺激分子に特異的に結合する二次作用物質をさらに含み、任意で、共刺激分子は、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSから選択される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、一次作用物質および/または二次作用物質は抗体を含み、任意で、刺激性試薬は、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはそれらの抗原結合フラグメントとのインキュベーションを含む。
【0018】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、一次作用物質および/または二次作用物質は、固形支持体の表面に存在する。任意のそのような態様のいくつかにおいて、固形支持体はビーズであるか、またはビーズを含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、一次作用物質および二次作用物質は、複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子を含むオリゴマー型粒子試薬の表面に可逆的に結合している。任意のそのような態様のいくつかにおいて、複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれは、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸の配列におけるストレプトアビジン中の位置に関して位置44~47に対応する配列位置に、Val44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47のアミノ酸配列を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれは、a)SEQ ID NO:35もしくは56に示されるアミノ酸の配列、またはb)SEQ ID NO:35もしくは56に示されるアミノ酸の配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列、またはc)ビオチン、ビオチン類似体もしくはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するa)もしくはb)の機能的フラグメントであるか、またはそれを含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれはストレプトアビジンムテイン分子であり、複数のストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれは、a)SEQ ID NO:36、41、48~50または53~55のいずれかに示されるアミノ酸の配列、b)SEQ ID NO:36、41、48~50または53~55のいずれかに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上の配列同一性を呈し、Val44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47に対応するアミノ酸配列を含有し、および/またはビオチン、ビオチン類似体もしくはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、アミノ酸の配列、またはc)ビオチン、ビオチン類似体もしくはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合するa)もしくはb)の機能的フラグメントであるか、またはそれを含み、任意で、複数のストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれは、SEQ ID NO:36またはSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む。
【0019】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、形質導入細胞の集団は、組換えタンパク質を発現する細胞を、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、形質導入細胞の集団は、組換えタンパク質を発現する細胞を、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。
【0020】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、形質導入細胞の集団における、組換えタンパク質を発現する細胞のパーセンテージは、選択工程によってCCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞組成物と比較して、少なくとも0.5倍、少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍、大きい。
【0021】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子をインキュベートする工程は、ウイルスベクター粒子をインプット集団と共にスピノキュレーションに付す工程を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子をインキュベートする工程は、ウイルスベクター粒子を、刺激された組成物と共にスピノキュレーションに付す工程を含む。
【0022】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、スピノキュレーションに付す工程は、遠心分離チャンバの内側キャビティにおいて、ウイルスベクター粒子およびインプット集団を回転させる工程を含み、回転は、それぞれ両端の値を含め、500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または約500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または少なくとも600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000g、または少なくとも約600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000gである、キャビティ側壁の内面における相対遠心力で行われる。任意のそのような態様のいくつかにおいて、スピノキュレーションに付す工程は、遠心分離チャンバの内側キャビティにおいて、ウイルスベクター粒子および刺激された組成物を回転させる工程を含み、回転は、それぞれ両端の値を含め、500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または約500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または少なくとも600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000g、または少なくとも約600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000gである、キャビティ側壁の内面における相対遠心力で行われる。
【0023】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、スピノキュレーションに付す工程は、5分超もしくは約5分、10分超もしくは約10分、15分超もしくは約15分、20分超もしくは約20分、30分超もしくは約30分、45分超もしくは約45分、60分超もしくは約60分、90分超もしくは約90分、または120分超もしくは約120分、またはそれぞれ両端の値を含め、5分~60分、10分~60分、15分~60分、15分~45分、30分~60分、もしくは45分~60分、または約5分~60分、10分~60分、15分~60分、15分~45分、30分~60分、もしくは45分~60分である時間にわたる。
【0024】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、本方法は、インキュベートする工程の少なくとも一部の間に、インプット集団および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、本方法は、インキュベートする工程の少なくとも一部の間に、刺激された組成物および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、本方法は、インキュベートする工程の少なくとも一部の間に、刺激された組成物および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む。
【0025】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、本方法は、インキュベートする工程の少なくとも一部分の間、インプット集団および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む。
【0026】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、前記接触させる工程は、ウイルスベクター粒子をインプット集団と共にスピノキュレーションに付す前に、またはそれと同時に、またはその後に、実行される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、前記接触させる工程は、ウイルスベクター粒子を、刺激された組成物と共にスピノキュレーションに付す前に、またはそれと同時に、またはその後に、実行される。
【0027】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部は、37℃±2℃または約37℃±2℃で実行される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの前記少なくとも一部は、スピノキュレーション後に実行される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの前記少なくとも一部は、2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下、または約2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下にわたって実行される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの前記少なくとも一部は、24時間または約24時間にわたって実行される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの総継続時間は、12時間、24時間、36時間、48時間、または72時間以下である。
【0028】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子はレンチウイルスベクター粒子である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、レンチウイルスベクター粒子は複製欠損性である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質でシュードタイプ化されている。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスエンベロープ糖タンパク質はVSV-Gである。
【0029】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子は、20.0未満もしくは約20.0未満または10.0未満もしくは約10.0未満の感染多重度でインキュベートされる。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルスベクター粒子は、1.0 IU/細胞~10 IU/細胞もしくは2.0 U/細胞~5.0 IU/細胞、または約1.0 IU/細胞~10 IU/細胞もしくは2.0 U/細胞~5.0 IU/細胞の感染多重度でインキュベートされるか、またはウイルスベクター粒子は、少なくとも1.6 IU/細胞、1.8 IU/細胞、2.0 IU/細胞、2.4 IU/細胞、2.8 IU/細胞、3.2 IU/細胞、3.6 IU/細胞、4.0 IU/細胞、5.0 IU/細胞、6.0 IU/細胞、7.0 IU/細胞、8.0 IU/細胞、9.0 IU/細胞、もしくは10.0 IU/細胞、または少なくとも約1.6 IU/細胞、1.8 IU/細胞、2.0 IU/細胞、2.4 IU/細胞、2.8 IU/細胞、3.2 IU/細胞、3.6 IU/細胞、4.0 IU/細胞、5.0 IU/細胞、6.0 IU/細胞、7.0 IU/細胞、8.0 IU/細胞、9.0 IU/細胞、もしくは10.0 IU/細胞の感染多重度でインキュベートされる。
【0030】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、刺激された組成物は、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、刺激された組成物は、両端の値を含め、50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、刺激された組成物は、両端の値を含め、100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む。
【0031】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、両端の値を含め50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、インプット集団は、両端の値を含め100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む。
【0032】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルス粒子と共にインキュベートされるT細胞は、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルス粒子と共にインキュベートされるT細胞は、両端の値を含め50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、ウイルス粒子と共にインキュベートされるT細胞は、両端の値を含め100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む。
【0033】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、組換えタンパク質は抗原受容体である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、抗原受容体はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、抗原受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。任意のそのような態様のいくつかにおいて、CARは、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインと、ITAMを含む細胞内シグナリングドメインとを含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、CARは、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメイン、ITAMを含む細胞内シグナリングドメイン、および細胞外ドメインと細胞内シグナリングドメインとを連結する膜貫通ドメインを含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、細胞内シグナリングドメインはCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、CARは、細胞外ドメインと細胞内シグナリングドメインとを連結する膜貫通ドメインを、さらに含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通部分を含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、細胞内シグナリングドメインは、T細胞共刺激分子の細胞内シグナリングドメインを、さらに含む。任意のそのような態様のいくつかにおいて、T細胞共刺激分子は、CD28および41BBからなる群より選択される。
【0034】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、抗原受容体は、疾患または状態と関連する抗原に特異的に結合するか、またはユニバーサルタグに特異的に結合する。任意のそのような態様のいくつかにおいて、疾患または状態は、がん、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、または感染性疾患である。
【0035】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、形質導入細胞の集団は、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞を含む。
【0036】
任意のそのような態様のいくつかでは、形質導入細胞の集団におけるT細胞の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%に、異種ポリヌクレオチドが形質導入されている。任意のそのような態様のいくつかでは、形質導入細胞の集団におけるT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%に、異種ポリヌクレオチドが形質導入されている。任意のそのような態様のいくつかにおいて、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、CCR7+である。
【0037】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、本方法は、形質導入細胞の集団から、本方法によって生産された形質導入T細胞を回収または単離する工程を、さらに含む。
【0038】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、形質導入細胞の複数の集団の間での、形質導入細胞の集団における、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞のパーセンテージのばらつきは、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、または10%以下である。
【0039】
任意のそのような態様のいくつかにおいて、本方法はインビトロまたはエクスビボで実行される。
【0040】
本明細書において提供される態様のいずれか1つの方法によって生産される形質導入細胞の集団を含む組成物も、本明細書において提供される。任意のそのような態様のいくつかにおいて、組成物は冷凍保存物質(cyropreservant)をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、6人のドナーの間でのT細胞の最大形質導入可能頻度のばらつきを実証するベクタータイトレーション実験の結果を表すグラフである。
図2A図2Aおよび図2Bは、3人の健常ドナーから得られた試料からのT細胞サブセット間で形質導入頻度を評価した研究の結果を表す。図2Aおよび図2Bのそれぞれにおいて、左上の図は、活性化と形質導入の前(インプット組成物もしくはインプット集団または選択された組成物もしくは選択された集団)のT細胞組成を表し、右上の図は、それらのT細胞サブセットにおいて結果的に得られた形質導入頻度を表し、下側の図は、各集団が呈する形質導入T細胞の比率を表す。
図2B図2Aの説明を参照のこと。
図3A図3Aおよび図3Bは、6人の健常ドナーから得られた試料からのT細胞サブセット間で形質導入頻度を評価した、より大きなスケールでの研究の結果を表す。図3Aおよび図3Bにそれぞれにおいて、左上の図は、活性化と形質導入の前(インプット組成物もしくはインプット集団または選択された組成物もしくは選択された集団)のT細胞組成を表し、右上の図は、それらのT細胞サブセットにおいて結果的に得られた形質導入頻度を表し、下側の図は、各集団が呈する形質導入T細胞の比率を表す。
図3B図3Aの説明を参照のこと。
図4図4は、再発/難治性大B細胞リンパ腫を持つ患者から得られた試料における、CCR7+およびCCR7-である選択されたCD4およびCD8 T細胞亜集団の頻度を、フローサイトメトリーによって評価した研究の結果を表す(n=145)。図4に示す箱は四分位範囲を示し、ヒゲは全範囲を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
詳細な説明
形質導入を実行する前に、または形質導入の実行に関連して、CCR7の表面発現が富化された初代T細胞の集団を選択しまたは他の形で得ることによって、初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法が提供される。
【0043】
一般に、レトロウイルスベースのベクター、例えばレンチウイルスベクターは、細胞に関心対象の遺伝子を安定に組み込むために使用することができる。初代細胞のうち、T細胞は、レトロウイルスベースのベクターによる形質導入が特に難しい。場合によっては、最初に細胞を刺激作用物質(例えば抗CD3/抗CD28)で活性化することによって、形質導入効率が改良される。活性化は、場合によってはLDL受容体発現を増加させ、それによって、レンチウイルスベクターの取込みを強化することが示されている。典型的には、T細胞は、養子T細胞治療において使用するための形質導入に先立って、少なくとも1日(時には最大3日またはそれ以上)にわたって活性化される。例えば、T細胞のためのレンチウイルス形質導入プロトコールは、典型的には、形質導入に先立って、少なくとも24時間の活性化を必要とする(Amirache et al.(2014)Blood, 123:1422-1424)。いくつかの例において、養子免疫治療用の遺伝子改変T細胞を調製するための利用可能な手順は、選択、活性化、形質導入および拡大という逐次的エクスビボ工程を必要とする場合がある。
【0044】
現在の形質導入方法は、特に養子細胞治療との関連では、完全に満足できるものではない場合もある。例えば、本明細書に示すように、形質導入頻度は、異なる対象からの細胞集団間ではばらつきが大きい場合があり、その効果はドナー依存的である。形質導入頻度のばらつきは、さらに、例えば異種遺伝子(例えばキメラ抗原受容体などの組換え受容体)が陽性である細胞の閾数を達成するために投与する必要があるだろう総細胞数が、異なる対象間では著しく変動しうることから、または投与戦略が閾総細胞数(threshold number of total cells)に基づく場合には異種遺伝子が陽性である細胞の頻度がばらつくことから、治療用細胞組成物の投与のばらつきをもたらしうる。加えて、形質導入頻度のばらつきは、医薬品の調製および製造プロセスにも、例えば形質導入頻度が、その方法の1つまたは複数の工程における改変プロセスの成功をモニターするために使用される基準であるなら、例えば細胞収穫までの時間などに、強い影響を与えうる。
【0045】
本明細書記載の知見は、T細胞には、他の亜集団よりも形質導入可能性が高い一定の亜集団が存在することを実証している。このことは、異なる対象間でのそのような亜集団のばらつきの結果として、異なる対象からの複数の細胞集団間での形質導入頻度の不一致と共に一部の細胞集団における低い形質導入頻度をもたらす、形質導入頻度のばらつきの説明になりうる。具体的には、提供される方法は、異なる対象からの細胞集団間ではCCR7発現が著しく異なり、CCR7+T細胞はCCR7-T細胞よりも高い形質導入頻度を呈するという知見に基づく。したがって提供される方法は、形質導入において使用するために、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞が選択される工程、またはCCR7+T細胞が富化されている初代T細胞が他の方法で得られる工程を含めることによって、それらが細胞集団の形質導入頻度を増加させ、同時に異なる患者からの細胞集団間での形質導入頻度のばらつきを低減するという点で、有利である。
【0046】
提供される方法は、CCR7陽性の細胞が富化されおよび/または選択された細胞のインプット集団(以下、インプット組成物ともいう)への形質導入を含む。いくつかの態様において、提供される方法は、例えばセクションI-Aに記載するように、初代T細胞の集団から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程を伴う。いくつかの態様では、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団が、異種遺伝子(異種タンパク質または組換えタンパク質をコードするもの)を含有するウイルスベクター粒子と共に、集団内の細胞に形質導入を行うための条件下でインキュベートされる。場合により、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団は、最初に、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬(例えば抗CD3/抗CD28)の存在下でのインキュベーションなどによって、刺激性条件下で刺激され、次に、集団内の細胞に形質導入を行うための条件下でウイルスベクター粒子と共にインキュベートされる。
【0047】
いくつかの態様において、提供される方法は、本明細書において例えばセクションI-Bに記載するように、刺激性条件下で前もってインキュベートされた細胞の組成物から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択し、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されている刺激された集団を生成させ、続いて、その集団に形質導入を行う工程を伴う。
【0048】
したがって、初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、(b)インプット集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件がTCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む工程、および(c)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。
【0049】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、(a)CCR7+T細胞が富化されているインプット初代T細胞集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させる、工程であって、刺激条件がTCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む工程、および(b)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。
【0050】
本願において言及する刊行物は、特許文書、科学論文およびデータベースを含めていずれも、あたかも個々の刊行物が参照により個別に本明細書に組み入れられた場合と同じ程度に、あらゆる目的で、その全体が本明細書に組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、特許出願、公開特許出願および他の刊行物において示される定義と相反するかまたは他の形で矛盾する場合は、本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義に優先する。
【0051】
本明細書において使用されるセクション見出しには構成上の目的しかなく、記載されている主題を限定すると解釈してはならない。
【0052】
I. T細胞形質導入のための方法
CCR7の表面発現が陽性である細胞、例えば初代T細胞を、細胞の組成物から選択する工程、および選択された細胞をレトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスベクター粒子とインキュベートするまたは接触させる工程を含む、細胞、例えば初代T細胞の形質導入頻度を増加させる方法が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、本方法は、本明細書において例えばセクションI-Bに記載するように、初代T細胞を刺激性条件下でインキュベートする工程をさらに含む。いくつかの態様において、初代T細胞は、CCR7の表面発現が陽性である細胞を選択した後に、刺激条件下でインキュベートされる。いくつかの態様において、初代T細胞は、CCR7の表面発現が陽性である細胞を選択する前に、刺激性条件下でインキュベートされる。いくつかの局面において、細胞の組成物は、対象から得られる初代細胞の組成物、例えば生物学的試料であり、場合によっては、細胞の亜集団またはサブセットが選択されおよび/または富化されている。組成物の特徴を規定する。
【0053】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、(b)インプット集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させる、工程、および(c)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。いくつかの態様において、刺激条件は、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む。
【0054】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット細胞集団のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。いくつかの態様では、インキュベーションに先立って、インプット細胞集団の細胞が刺激性条件下でインキュベートされている。
【0055】
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、(a)CCR7+T細胞が富化されているインプット初代T細胞集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させる、工程、および(b)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法も、本明細書において提供される。いくつかの態様において、刺激条件は、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む。
【0056】
提供される細胞のいずれかの一部において、刺激性条件下でのインキュベーションは、細胞集団中の細胞の活性化または刺激をもたらし、または細胞集団中の細胞の活性化または刺激につながり、および/または細胞集団の細胞、例えばCD4+T細胞におけるシグナル、例えばTCRおよび/または補助受容体から生じるシグナルを活性化もしくは刺激することができる。
【0057】
いくつかの態様において、細胞は、例えばセクションI-Dに記載するように、提供される方法による遺伝子改変で導入された1つまたは複数の核酸(例えばポリヌクレオチド)を含み、それにより、そのような核酸(例えばポリヌクレオチド)の組換え産物または遺伝子改変産物を発現する。いくつかの態様において、核酸(例えばポリヌクレオチド)は異種、すなわちある細胞またはその細胞から得られる試料中に常態では存在しないもの、例えば別の生物または細胞から得られる核酸であって、改変される細胞および/またはそのような細胞が由来する生物において通常は見いだされないものである。いくつかの態様において、核酸(例えばポリヌクレオチド)は、天然には存在せず、例えば複数の異なる細胞タイプ由来のさまざまなドメインをコードする核酸のキメラ的組合せを含むものなど、天然には見いだされない核酸である。
【0058】
本方法の加工工程は、多数の細胞加工工程のうちの任意の1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて、含みうる。特定の態様において、加工工程は、レトロウイルスベクター、例えば細胞における発現のために組換え産物をコードするものを含有するウイルスベクター粒子による、細胞への形質導入を含む。本方法は、他の加工工程、例えば細胞の単離、分離、選択、洗浄、懸濁、希釈、濃縮および/または製剤化のための工程などを、さらに、および/または代替的に、含みうる。場合により、本方法は、培養(例えば細胞の増殖および/または活性化を誘導するための、細胞の刺激など)のためのエクスビボ工程も含むことができる。別の例では、細胞を刺激または活性化するための工程が、対象への細胞の投与後に、抗原の認識によって、ならびに/または対象における細胞の拡大、活性化および/もしくは増殖をブーストもしくは増強するための1つもしくは複数の作用物質の投与に続いて、インビボで実行される。いくつかの態様において、本方法は、対象から細胞を単離し、それらを調製、加工、培養および/または改変し、冷凍保存の前または後に、それらを同じ対象に再導入する工程を含む。
【0059】
いくつかの態様において、本方法は、順番に実行される加工工程であって、細胞、例えば初代細胞が、まず、生物学的試料から単離、例えば選択または分離され、選択された細胞が形質導入のためにウイルスベクター粒子と共にインキュベートされ、形質導入された細胞が組成物に製剤化される加工工程を含む。場合により、形質導入細胞は、刺激試薬、例えば抗CD3/抗CD28、ならびに/または1つもしくは複数の組換えT細胞刺激性サイトカイン、例えばIL-2、IL-7および/もしくはIL-25の存在下での刺激などによって、エクスビボで活性化され、拡大され、または増殖される。活性化工程または刺激工程は、いくつかの態様において、初代細胞が1つまたは複数の選択工程、例えばCCR7の表面発現が陽性である細胞の選択を受ける前、またはその後に、行われる。いくつかの態様において、本方法は、細胞の洗浄、懸濁、希釈および/または濃縮のうちの1つまたは複数の加工工程を含むことができ、それらは、単離、例えば分離もしくは選択、形質導入、刺激、および/または製剤化工程のうちの1つまたは複数の前、その間、またはそれと同時に、またはその後に、行うことができる。
【0060】
いくつかの態様では、加工工程、例えば単離、選択および/または富化、加工、形質導入および改変に関連するインキュベーション、ならびに製剤化工程のうちの1つもしくは複数または全部が、統合型もしくは独立型システム中のシステム、デバイスもしくは装置を使って、および/または自動的にもしくはプログラム可能な形で、実行される。いくつかの局面において、システムまたは装置は、そのシステムまたは装置と連絡しているコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含み、ユーザーはそれを使って、加工、単離、改変および製剤化工程をプログラムし、制御し、そのアウトカムを評価し、ならびに/またはそのさまざまな局面を調節することができる。一例において、システムは、国際特許出願公開番号WO 2009/072003、またはUS 20110003380 A1に記載のシステムである。一例において、システムは、国際公開番号WO 2016/073602に記載のシステムである。
【0061】
いくつかの態様において、提供される形質導入方法に関連する細胞の調製、加工および/またはインキュベーションに関して、細胞加工工程のうちの1つまたは複数は、遠心分離チャンバ、例えば概して円柱状であって回転軸の周りを回転することができる実質的に剛直なチャンバの内側キャビティ中で実行することができ、これは、他の利用可能な方法と比較して一定の利点をもたらすことができる。いくつかの態様では、すべての加工工程が、同じ遠心分離チャンバ中で実行される。いくつかの態様では、1つまたは複数の加工工程が異なる遠心分離チャンバ中で、例えば同じタイプの複数の遠心分離チャンバ中で、実行される。そのような方法には、国際公開番号WO 2016/073602に記載の方法がいずれも含まれる。
【0062】
例示的な遠心分離チャンバとしては、Biosafe SAによって製造販売されているもの、例えばSepax(登録商標)およびSepax(登録商標)2システムと共に使用されるもの、例えばA-200/FおよびA-200遠心分離チャンバならびにそのようなシステムと共に使用するためのさまざまなキットが挙げられる。例示的なチャンバ、システム、ならびに加工機器およびキャビネットは、例えば米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号および米国特許出願公開、公開番号US 2008/0171951、ならびに国際特許出願公開、公開番号WO 00/38762に記載されており、これらの各文献の内容は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。具体的プロセス(例えば希釈、洗浄、形質導入、製剤化)に応じて、そのプロセスに適当な具体的キットを選ぶことは、当業者の水準内にある。そのようなシステムと共に使用するための例示的キットとしては、CS-430.1、CS-490.1、CS-600.1またはCS-900.2という製品名でBioSafe SAが販売している使い捨てキットが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。遠心分離チャンバを使った形質導入のための例示的方法は、国際特許公開番号WO 2016/073602に記載されている。
【0063】
いくつかの態様において、システムは、そのシステムにおいて実施されるさまざまな加工工程の諸局面を操作し、自動化し、制御し、および/またはモニターするための機器などといった他の機器と共に組み込まれ、および/またはそれら他の機器と関連づけられる。この機器は、いくつかの態様では、キャビネット内に収容される。いくつかの態様において、機器は、制御回路、遠心分離機、カバー、モーター、ポンプ、センサー、ディスプレイ、およびユーザーインターフェイスを収容する筐体を含むキャビネットを含む。例示的なデバイスは、米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号およびUS 2008/0171951に記載されている。
【0064】
いくつかの態様において、システムは、バッグなどの一連の容器、管系、活栓、締付け具、接続具、および遠心分離機チャンバを含む。いくつかの態様において、バッグなどの容器には、同じ容器または別々の容器に、例えば同じバッグまたは別々のバッグに、形質導入が行われる細胞と、ウイルスベクター粒子とを含有する、バッグなどの、1つまたは複数の容器が含まれる。いくつかの態様において、システムは、方法の実施中に構成要素および/または組成物を希釈し、再懸濁し、および/または洗浄するためにチャンバおよび/または他の構成要素に引き込まれる媒体、例えば希釈剤および/または洗浄溶液が入っている、バッグなどの、1つまたは複数の容器を、さらに含む。容器は、システム中の1つまたは複数の位置に、例えばインプットライン、希釈液ライン、洗浄液ライン、廃棄ラインおよび/またはアウトプットラインに対応する位置に、接続することができる。
【0065】
いくつかの態様において、システム、例えば閉鎖システムは、無菌である。いくつかの態様において、システムの構成要素の接続、例えば接続具を介した管系ラインと容器の間の接続は、すべて、無菌条件下で行われる。いくつかの態様において、接続は層流下で行われる。いくつかの態様において、接続は、管系と容器の間に無菌溶接点などの無菌接続を生じる無菌接続デバイスを使って行われる。いくつかの態様において、無菌接続デバイスは、無菌性を維持するのに十分な高さの、例えば少なくとも200℃の温度、例えば少なくとも260℃または300℃の温度の熱条件下で、接続を達成する。
【0066】
いくつかの態様において、システムは、使い捨てキットなど、ディスポーザブルである。いくつかの態様において、使い捨てキットは、1つまたは複数のプロセスの複数サイクルにおいて、例えば連続的または半連続的に行われるプロセスにおいて、例えば少なくとも2、3、4もしくは5回またはそれ以上、利用することができる。いくつかの態様において、使い捨てキットなどのシステムは、単一患者からの細胞の加工に使用される。
【0067】
遠心分離チャンバは一般に回転軸の周りを回転することができ、キャビティは典型的にはチャンバと同軸である。いくつかの態様において、遠心分離チャンバは、一般にキャビティの体積を変化させるためにチャンバ内での運動(例えば軸方向運動)が可能な、ピストンなどの可動部材を、さらに含む。したがって特定の態様において、内側キャビティは、チャンバの側壁と端壁および可動部材によって囲まれ、可動部材を動かすことによって調節することができる可変容積を有する。可動部材は、剛直な材料、実質的にもしくは概して剛直な材料、柔軟な材料、またはそれらの組合せで作られていてよい。
【0068】
チャンバは一般に、キャビティ内外への液体および/またはガスの取込みおよび圧出(expression)を可能にすることができる、1つまたは複数の開口部、例えば1つもしくは複数の入口、1つもしくは複数の出口、および/または1つもしくは複数の出入口(inlet/outlet)も含む。場合により、開口部は液体および/またはガスの取込みと圧出の両方が行われる出入口であることができる。場合により、1つまたは複数の入口は、1つまたは複数の出口とは別であるか、または異なることができる。1つまたは複数の開口部は端壁の一つに存在しうる。いくつかの態様において、液体および/またはガスは、キャビティの容積を増加および/または減少させるための可動部材の運動によって、キャビティに取り込まれおよび/またはキャビティから圧出される。別の態様において、液体および/またはガスは、例えばラインまたは流路を自動的に制御されうるポンプ、シリンジまたは他の機構と接続してその制御を受けるように配置することにより、開口部と接続しているまたは開口部と接続して配置された管系ラインまたは他の流路によって、キャビティに取り込まれおよび/またはキャビティから圧出されうる。
【0069】
いくつかの態様において、チャンバは、管系ラインおよび接続具および蓋などのさまざまな他の追加構成要素を有する、無菌システムなどの閉鎖システムの一部であり、その内部で加工工程が行われる。したがっていくつかの態様において、提供される方法および/またはその工程は、別個の無菌環境、例えばバイオセイフティキャビネットまたはバイオセイフティルームを必要とすることなく、対象への治療的投与のための細胞の生産を容易にする、完全な閉鎖環境または半閉鎖環境において、例えば閉鎖無菌システムまたは半閉鎖無菌システムにおいて、実行される。本方法は、いくつかの態様において、自動的に、または一部自動的に、実行される。
【0070】
いくつかの態様において、チャンバは、チャンバの回転、例えばその回転軸を中心とする回転を達成することができる遠心分離機と関連づけられる。回転は、加工工程のうちの1つまたは複数において、インキュベーション前、インキュベーション中および/またはインキュベーション後に、行われうる。したがっていくつかの態様において、さまざまな加工工程のうちの1つまたは複数が、回転下で、例えば特定の力で実行される。チャンバは、典型的には、遠心分離中はチャンバが垂直の状態にあり、側壁および軸が垂直または概して垂直であると共に、端壁が水平または概して水平であるように、垂直回転または概して垂直回転が可能である。
【0071】
本方法の諸曲面において、プロセスは、同じ閉鎖システム中で、例えば同じ遠心分離チャンバ中で、実施される必要はなく、異なる閉鎖システム下で、例えば異なる遠心分離チャンバで実施することができ、いくつかの態様では、そのような異なる遠心分離チャンバが、同じシステムと関連して配置された、例えば同じ遠心分離機と関連して配置された、本方法におけるそれぞれのポイントにある。いくつかの態様では、すべての加工工程が、1つの閉鎖システムにおいて実施され、各1つまたは複数の加工工程のすべてまたは一部が、同じまたは異なる遠心分離チャンバにおいて実施される。
【0072】
A. 試料および細胞調製物
細胞は一般に真核細胞、例えば哺乳動物細胞であり、典型的にはヒト細胞である。いくつかの態様において、細胞は、血液、骨髄、リンパまたはリンパ器官に由来し、免疫系の細胞、例えば自然免疫または適応免疫の細胞、例えば骨髄系もしくはリンパ系の細胞、例えばリンパ球、典型的にはT細胞および/またはNK細胞である。他の例示的細胞としては、誘導多能性幹細胞(iPSC)を含む、複能性および多能性幹細胞などの幹細胞が挙げられる。いくつかの態様において、細胞は生物学的試料に由来する。いくつかの態様において、生物学的試料は血液試料である。いくつかの態様において、生物学的試料は白血球アフェレーシス試料である。いくつかの態様において、細胞はT細胞である。
【0073】
細胞は典型的には初代細胞、例えば対象から直接単離されたものおよび/または対象から単離され凍結されたものである。いくつかの態様において、細胞には、T細胞または他の細胞タイプの1つまたは複数のサブセット、例えば全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞およびそれらの亜集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化能、拡大能、再循環能、局在化能、および/もしくは持続能、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官もしくはコンパートメントにおける存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、ならびに/または分化度によって定義されるものが含まれる。処置される対象に関して、細胞は、同種異系および/または自家でありうる。方法には既製の方法が含まれる。いくつかの局面において、例えば既製技術の場合、細胞は多能性および/または複能性であり、例えば幹細胞、例えば誘導多能性幹細胞(iPSC)である。いくつかの態様において、本方法は、対象から細胞を単離し、それらを調製、加工、培養および/または改変し、冷凍保存の前または後に、それらを同じ対象に再導入する工程を含む。
【0074】
T細胞の、および/またはCD4+T細胞の、および/またはCD8+T細胞の、サブタイプおよび亜集団には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、内在性および誘導性制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、およびデルタ/ガンマT細胞がある。
【0075】
いくつかの態様において、細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様において、細胞は単球または顆粒球、例えば骨髄性細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0076】
いくつかの態様において、細胞は、細胞株、例えばT細胞株に由来する。細胞は、いくつかの態様において、異種供給源、例えばマウス、ラット、非ヒト霊長類およびブタから得られる。
【0077】
いくつかの態様では、試料、例えば生物学的試料、例えば対象から得られるものまたは対象に由来するものから、細胞を単離しうる。いくつかの態様において、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有するか、または細胞治療を必要とするか、または細胞治療が施行される対象である。いくつかの態様における対象は、特定の治療的介入、例えば養子細胞治療であってそのために細胞が単離、加工および/または改変されているものを必要とするヒトである。
【0078】
したがって細胞は、いくつかの態様において、初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料には、対象から直接採取される組織、体液その他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子改変(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄および/またはインキュベーションなどといった1つまたは複数の加工工程の結果得られる試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接取得される試料、または加工された試料であることができる。生物学的試料としては、体液、例えば血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗、組織および器官の試料が挙げられ、それらに由来する加工された試料も含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0079】
いくつかの局面において、細胞が由来するまたは細胞が単離される試料は、血液もしくは血液由来の試料であるか、またはアフェレーシス産物もしくは白血球アフェレーシス産物であるか、またはアフェレーシス産物もしくは白血球アフェレーシス産物に由来する。例示的な試料として、全血、末梢血単核球(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃、もしくは他の器官、および/またはそれに由来する細胞が挙げられる。細胞治療、例えば養子細胞治療との関連で、試料には、自家供給源および同種異系供給源からの試料が含まれる。
【0080】
いくつかの例では、対象の循環血から、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって、細胞が得られる。試料は、いくつかの局面において、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球および/または血小板を含有し、いくつかの局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。
【0081】
いくつかの態様では、対象から収集された血液細胞が、例えば血漿画分を除去し、後続の加工工程にとって適当な緩衝液または培地に細胞を入れるために、洗浄される。いくつかの態様において、細胞はリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの態様において、洗浄溶液はカルシウムおよび/またはマグネシウムを欠き、かつ/または多くのもしくはすべての二価カチオンを欠く。いくつかの局面において、洗浄工程は、半自動「フロースルー(flow-through)」遠心分離機(例えばCobe 2991細胞プロセッサー、Baxter)により、製造者の説明書に従って遂行される。いくつかの局面において、洗浄工程は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)により、製造者の説明書に従って遂行される。いくつかの態様において、細胞は、洗浄後に、例えばCa++/Mg++非含有PBSなどといった、種々の生体適合性緩衝液に再懸濁される。一定の態様では、血液細胞試料の構成要素が取り出され、細胞が培養培地に直接懸濁される。
【0082】
いくつかの態様では、細胞の富化および/または選択に先立って、試料をヒト血清もしくはヒト血漿などの血清もしくは血漿と接触させ、および/または試料がヒト血清もしくはヒト血漿などの血清もしくは血漿を含有する。いくつかの態様において、血清または血漿は、細胞が得られた対象にとって自家である。いくつかの態様において、血清または血漿は、少なくとも10%(v/v)もしくは少なくとも約10%(v/v)、少なくとも15%(v/v)もしくは少なくとも約15%(v/v)、少なくとも20%(v/v)もしくは少なくとも約20%(v/v)、少なくとも25%(v/v)もしくは少なくとも約25%(v/v)、少なくとも30%(v/v)もしくは少なくとも約30%(v/v)、少なくとも35%(v/v)もしくは少なくとも約35%(v/v)、または少なくとも40%(v/v)もしくは少なくとも約40%(v/v)の濃度で、試料中に存在する。いくつかの態様では、細胞の選択および/または形質導入に先立って、初代細胞を含有する試料を抗凝固剤と接触させるか、または初代細胞を含有する試料が抗凝固剤を含有する。いくつかの態様において、抗凝固剤は、遊離クエン酸イオン、例えば抗凝固クエン酸デキストロース溶液(anticoagulant citrate dextrose solution)A液(ACD-A)であるか、またはそれを含有する。
【0083】
いくつかの態様において、インプット組成物は血清を含まないおよび/または実質的に含まない。特定の態様では、無血清培地中でインプット組成物をインキュベートするおよび/または接触させる。いくつかの態様において、無血清培地は、限定細胞培養培地および/または既知組成細胞培養培地(defined and/or well-defined cell culture medium)である。一定の態様において、無血清培地は、加工された、例えば阻害因子および/または成長因子を除去するために濾過された、制限培養培地(controlled culture medium)である。いくつかの態様において、無血清培地はタンパク質を含有する。一定の態様において、無血清培地は、血清アルブミン、加水分解物、成長因子、ホルモン、担体タンパク質、および/または接着因子を含有しうる。いくつかの態様において、無血清培地は、タンパク質、例えばアルブミン、例えばウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、および/または組換えアルブミンを含有する。いくつかの態様において、無血清培地は、アミノ酸、ビタミン、無機塩、緩衝剤、酸化防止剤およびエネルギー源を含有する基本培地、例えばDMEMまたはRPMI1640を含有する。いくつかの態様では、無血清培地に、例えば限定するわけではないが、アルブミン、化学的に明確な脂質、成長因子、インスリン、サイトカイン、および/または酸化防止剤などが、補足される。いくつかの態様において、無血清培地は、一定の細胞タイプの細胞、例えば免疫細胞、T細胞、ならびに/またはCD4+およびCD8+T細胞などの成長、増殖、健康、ホメオスタシスを支えるように、処方される。
【0084】
いくつかの態様では、細胞の選択および/または富化に先立って、試料または試料中の細胞を、さらなる加工工程の前に、休ませるまたは保持することができる。いくつかの態様において、試料は、最大48時間、例えば最大12時間、24時間または36時間にわたって、2℃~8℃または約2℃~8℃の温度で維持または保持される。
【0085】
いくつかの態様において、調製方法は、形質導入および改変のための単離、選択および/または富化および/または刺激および/または活性化および/またはインキュベーションの前または後に、細胞を凍結、例えば冷凍保存するための工程を含む。いくつかの態様において、凍結およびその後の解凍工程は、細胞集団中の顆粒球を除去し、ある程度までは単球も除去する。いくつかの態様において、細胞は、例えば血漿および血小板を除去するための洗浄工程の後に、凍結溶液に懸濁される。さまざまな公知の凍結溶液およびパラメータはいずれも、いくつかの局面において使用されうる。ある例では、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結培地を使用する。次にこれを、DMSOおよびHSAの最終濃度がそれぞれ10%および4%になるように、培地で1:1希釈する。次に、一般的には、細胞を、毎分1°の速度で-80℃まで凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相において保存する。
【0086】
いくつかの態様において、細胞の単離は、1つまたは複数の調製工程および/または非アフィニティーベースの細胞分離工程を含む。いくつかの例では、例えば不要な構成要素を除去し、所望の構成要素を富化し、特定の試薬に対して感受性である細胞を溶解し、または除去するために、細胞を洗浄し、遠心分離し、および/または1つまたは複数の試薬の存在下でインキュベートする。いくつかの例では、1つまたは複数の性質、例えば密度、付着性、サイズ、特定の構成要素に対する感受性および/または耐性に基づいて、細胞が分離される。
【0087】
いくつかの態様において、本方法は、密度に基づく細胞分離方法、例えば赤血球の溶解とPercollまたはFicoll勾配による遠心分離とによる末梢血からの白血球の調製を含む。
【0088】
いくつかの態様において、単離方法は、細胞における1つまたは複数の特異的分子、例えば表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカーまたは核酸の、発現または存在に基づく、異なる細胞タイプの分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく公知の分離方法をいずれも使用しうる。いくつかの態様において、分離はアフィニティーまたはイムノアフィニティーに基づく分離である。例えば分離は、いくつかの局面において、1種または複数種のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの、細胞での発現または発現レベルに基づく、例えば当該マーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーションと、それに続く、一般的には洗浄工程および前記抗体または結合パートナーに結合している細胞の、前記抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの分離とによる、細胞および細胞集団の分離を含む。
【0089】
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞がさらなる使用のために保持される正の選択に基づき、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合していない細胞が保持される負の選択に基づくことができる。いくつかの例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの局面において、負の選択は、不均一な集団中のある細胞タイプを特異的に同定する抗体が利用可能でない場合には、特に役立ち、分離は、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて最もうまく実行される。
【0090】
分離が、特定細胞集団または特定マーカーを発現する細胞の100%の富化または除去をもたらす必要はない。例えば、特定タイプの細胞、例えばあるマーカーを発現する細胞についての正の選択または富化とは、そのような細胞の数またはパーセンテージを増加させることを指すが、そのマーカーを発現しない細胞の完全な欠如をもたらす必要はない。同様に、特定タイプの細胞、例えばあるマーカーを発現する細胞の負の選択、除去または枯渇とは、そのような細胞の数またはパーセンテージを減少させることを指すが、すべてのそのような細胞の完全な除去をもたらす必要はない。
【0091】
いくつかの例では、複数ラウンドの分離工程が実行され、この場合は、ある工程からの正または負に選択された画分が、別の工程、例えば後続の正または負の選択に供される。いくつかの例では、細胞を、それぞれが負の選択のための標的となるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共にインキュベートすることなどにより、単一の分離工程で、複数のマーカーを発現する細胞を同時に枯渇させることができる。同様に、細胞を、さまざまな細胞タイプ上に発現する複数の抗体または結合パートナーと共にインキュベートすることにより、複数の細胞タイプを同時に正に選択することもできる。
【0092】
例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定亜集団、例えば1種または複数種の表面マーカーが陽性であるかそれらを高レベルに発現する細胞、例えばCD4、CD8、CD3+、CD28+、および/またはCCR7+T細胞が、正または負の選択技法によって単離される。
【0093】
例えば、CD3、CD28T細胞は、抗CD3/抗CD28コンジュゲート磁性ビーズ(例えばDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を使って、正に選択することができる。
【0094】
いくつかの態様において、T細胞、例えば初代T細胞の集団は、未分画T細胞であるか、または富化もしくは単離されたCD3+T細胞であるか、または富化もしくは単離されたCD4+T細胞であるか、または富化もしくは単離されたCD8+T細胞である。
【0095】
いくつかの態様において、単離は、正の選択による特定の細胞集団の富化、または負の選択による特定の細胞集団の枯渇によって実施される。いくつかの態様において、正または負の選択は、それぞれ正または負に選択される細胞上に発現されるか(マーカー)または比較的高レベルに発現される(マーカーhigh)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する、1つまたは複数の抗体または他の結合物質と共に細胞をインキュベートすることによって達成される。
【0096】
いくつかの態様において、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球などの非T細胞上に発現されるマーカー、例えばCD14の負の選択によって、PBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4またはCD8選択工程が、CD4ヘルパーT細胞およびCD8細胞傷害性T細胞を分離するために用いられる。そのようなCD4およびCD8集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリー、および/またはエフェクターT細胞亜集団上に発現されるか、または比較的高度に発現されるマーカーについての正または負の選択によって、亜集団へとさらに選別することができる。
【0097】
いくつかの態様において、CD8細胞は、例えばそれぞれの亜集団と関連する表面抗原に基づく正または負の選択などにより、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞のさらなる富化または枯渇が行われる。いくつかの態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化を行うことで、効力の増加、例えば投与後の長期生存率、拡大および/または生着の改良がなされ、いくつかの局面では、これが、そのような亜集団において特にロバストである。Terakura et al.(2012)Blood.1:72-82、Wang et al.(2012)J Immunother. 35(9):689-701参照。いくつかの態様では、TCM富化CD8T細胞とCD4T細胞とを組み合わせることにより、効力がさらに強化される。
【0098】
いくつかの態様において、ナイーブT(TN)細胞またはセントラルメモリーT(TCM)細胞の富化は、CCR7、CD4、CD8、およびCD3のうちの1つまたは複数の、正の表面発現または高い表面発現に基づく。そのような選択は、いくつかの局面では、同時に実行され、他の局面では、逐次的に、いずれかの順序で実行される。いくつかの局面では、CD8細胞集団またはCD8細胞亜集団の調製に使用されるものと同じCD4発現に基づく選択工程が、CD4細胞集団またはCD4細胞亜集団を生成させるためにも使用され、したがってCD4に基づく分離による正の画分と負の画分はどちらも保持されて、任意で1つまたは複数のさらなる正または負の選択後に、本方法の後続工程において使用される。
【0099】
具体的一例において、PBMCの試料または他の白血球試料は、CD4細胞、またはCD8+細胞、またはCD3+細胞、またはCD4+およびCD8+細胞の選択に供され、ここでは、負の画分と正の画分がどちらも保持される。
【0100】
一例において、負の選択によってCD4細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DRおよびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、正の選択および/または負の選択のための細胞の分離が可能になるように、抗体または結合パートナーは、固形支持体またはマトリックス、例えば磁性ビーズまたは常磁性ビーズに結合される。例えばいくつかの態様において、細胞および細胞集団は、免疫磁気(またはアフィニティー磁気)分離技法を使って、分離または単離される(Methods in Molecular Medicine, vol.58:Metastasis Research Protocols, Vol.2:Cell Behavior In Vitro and In Vivo,p17-25(S.A. BrooksおよびU. Schumacher編(著作権)Humana Press Inc.,ニュージャージー州トトワ)に総説がある)。
【0101】
いくつかの態様において、組成物、例えばインプット集団は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。いくつかの態様において、組成物、例えばインプット集団は、CD4+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。いくつかの態様において、組成物、例えばインプット集団は、CD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。いくつかの態様において、組成物、例えばインプット集団は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。いくつかの態様において、CD8+T細胞に対するCD4+T細胞の比は、1:1、1:2、2:1、1:3、もしくは3:1、または約1:1、1:2、2:1、1:3、もしくは3:1である。いくつかの態様において、組成物、例えばインプット集団は、CD3+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。
【0102】
いくつかの態様において、本方法は、CCR7+T細胞が富化されている初代T細胞の細胞集団、例えばCCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団の使用を含む。
いくつかの態様では、CCR7の表面発現が陽性である細胞が富化されている集団が、生物学的試料から選択され、または得られる。いくつかの態様において、選択工程は、初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されている細胞集団を生成させる、工程を含む。いくつかの局面では、CCR7+初代T細胞が富化されている細胞集団を、「CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団」という。いくつかの態様において、選択は、生物学的試料から、CCR7が陽性である細胞を選択または単離することによる、正の選択である。いくつかの態様において、選択は、生物学的試料から、CCR7が陰性である細胞を除去しまたは枯渇させることによる、負の選択である。選択は、本明細書において例えばセクションI-Bに記載するように、細胞を刺激性条件下でインキュベートする前またはインキュベートした後に行うことができる。
【0103】
一定の態様において、陰性発現、例えば特定タンパク質の陰性発現、例えばCCR7の陰性発現、すなわちCCR7-とは、例えば標準的技法を使って、例えばそのタンパク質に対して特異的でない対照抗体、例えばアイソタイプ抗体による抗体染色を伴う技法を使って検出される、バックグラウンド発現レベル以下の発現である。一定の態様において、陰性発現は、タンパク質または遺伝子発現を評価するための適切な技法、例えば限定するわけではないが、免疫組織化学、免疫蛍光、またはフローサイトメトリーに基づく技法などによって検出した場合に、バックグラウンド発現レベル以下である。いくつかの態様において、陽性発現、例えば特定タンパク質の陽性発現、例えばCCR7の陽性発現、すなわちCCR7+とは、例えば標準的技法を使って、例えばそのタンパク質に対して特異的でない対照抗体、例えばアイソタイプ抗体による抗体染色を伴う技法を使って検出される、バックグラウンドを上回る量、レベルまたは濃度での、タンパク質の表面発現であるか、またはそのような表面発現を含む。一定の態様において、陽性発現は、タンパク質または遺伝子発現を評価するための適切な技法、例えば限定するわけではないが、免疫組織化学、免疫蛍光、またはフローサイトメトリーに基づく技法などによって検出した場合に、バックグラウンド発現レベルより高い。特定の態様において、試料、組成物または集団におけるタンパク質発現、例えば表面発現が陰性または陽性である細胞の量、頻度、またはパーセンテージは、フローサイトメトリーによって決定される。
【0104】
一定の態様では、生物学的試料からCCR7+T細胞を選択し、単離し、または富化する前に、T細胞、例えばCD3+、またはT細胞のサブセット、例えばCD4+もしくはCD8+T細胞が、生物学的試料から選択、単離または富化される。いくつかの態様では、T細胞、例えばCD3+、またはT細胞のサブセット、例えばCD4+もしくはCD8+T細胞が、富化CCR7+T細胞の集団から選択、単離、または富化される。特定の態様において、T細胞、例えばCD3+、またはT細胞のサブセット、例えばCD4+もしくはCD8+T細胞を選択し、単離し、または富化する工程は、試料からの、CD3、CD4またはCD8が陽性である細胞の正の選択を伴う。
【0105】
特定の態様では、(1)生物学的試料からCD4+T細胞を富化、選択、または単離し、それによって、富化CD4+T細胞の集団と、CD4-細胞が富化されている非選択集団とを生成させ、(2)富化CD4-細胞の非選択集団からCD8+T細胞を富化、選択、または単離し、それによって、富化CD8+T細胞の集団を生成させ、(3)富化CD4+およびCD8+T細胞集団からCCR7+T細胞を選択または単離して、富化CCR7+CD4+およびCCR7+CD8+T細胞の集団を生成させる。特定の態様では、(1)生物学的試料からCD8+T細胞を富化、選択、または単離し、それによって、富化CD8+T細胞の集団と、CD8-細胞が富化されている非選択集団とを生成させ、(2)富化CD4-細胞の非選択集団からCD4+T細胞を富化、選択、または単離し、それによって、富化CD4+T細胞の集団を生成させ、(3)富化CD4+およびCD8+T細胞集団からCCR7+T細胞を選択または単離して、富化CCR7+CD4+およびCCR7+CD8+T細胞の集団を生成させる。
【0106】
特定の態様では、生物学的試料からCD4+T細胞を富化、選択、または単離し、それによって、CD4+T細胞の富化集団を生成させ、次に、CD4+T細胞の富化集団からCCR7+細胞を選択または単離し、それによって、富化CCR7+CD4+T細胞の集団を生成させる。特定の態様では、生物学的試料からCD8+T細胞を富化、選択、または単離し、それによって、CD8+T細胞の富化集団を生成させ、次にCD8+T細胞の富化集団からCCR7+細胞を同定または選択し、それによって、富化CD57-CD8+T細胞を生成させる。
【0107】
特定の態様では、生物学的試料からCD3+T細胞を富化、選択、または単離し、それによって、CD3+T細胞の富化集団を生成させ、次にCD3+T細胞の富化集団からCCR7+細胞を同定または選択し、それによって、富化CCR7+CD8+T細胞を生成させる。
【0108】
いくつかの態様では、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団の少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である。いくつかの態様では、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である。いくつかの態様において、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団の少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である。いくつかの態様において、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団の少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である。いくつかの態様において、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である。
【0109】
いくつかの態様において、選択工程は、(a)CCR7+およびCD45RO+、または(b)CCR7+およびCD27+、または(c)CCR7+およびCD45RA-、または(d)CCR7+およびCD62L+、または(e)CCR7+およびCD45RA+、または(f)CCR7+およびCD62L-である細胞を選択する工程を含まない。
【0110】
いくつかの態様において、インプット集団は、(a)CCR7+およびCD45RO+、または(b)CCR7+およびCD27+、または(c)CCR7+およびCD45RA-、または(d)CCR7+およびCD62L+、または(e)CCR7+およびCD45RA+、または(f)CCR7+およびCD62L-であるT細胞が富化されていない。いくつかの態様では、インプット集団の50%未満、55%未満、60%未満、65%未満、70%未満、75%未満、80%未満、85%未満、または90%未満が、(a)CCR7+およびCD45RO+、または(b)CCR7+およびCD27+、または(c)CCR7+およびCD45RA-、または(d)CCR7+およびCD62L+、または(e)CCR7+およびCD45RA+、または(f)CCR7+およびCD62L-T細胞である。いくつかの態様において、インプット集団は、CCR7+およびCD45RO+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RO+T細胞である。いくつかの態様において、インプット集団は、CCR7+およびCD27+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD27+T細胞である。いくつかの態様において、インプット集団は、CCR7+およびCD45RA-T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RA-T細胞である。いくつかの態様において、インプット集団は、CCR7+およびCD62L+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD62L+T細胞である。いくつかの態様において、インプット集団は、CCR7+およびCD45RA+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RA+T細胞である。いくつかの態様において、インプット集団は、CCR7+およびCD62L-T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD62L-T細胞である。
【0111】
いくつかの局面では、分離しようとする細胞の試料または組成物が、小さな磁化可能材料または磁気応答性材料、例えば磁気応答性粒子または磁気応答性微粒子、例えば常磁性ビーズ(例えばDynalbeadsまたはMACSビーズなど)と共にインキュベートされる。磁気応答性材料、例えば磁気応答性粒子は、一般に、分離しようとする、例えば負または正に選択しようとする、1つもしくは複数の細胞または細胞集団上に存在する表面マーカーなどの分子に特異的に結合する抗体などの結合パートナーに、直接的または間接的に取り付けられる。
【0112】
いくつかの態様において、磁性粒子または磁性ビーズは、抗体その他の結合パートナーなどといった特異的結合メンバーに結合された磁気応答性材料を含む。磁気分離方法に使用される周知の磁気応答性材料は数多い。適切な磁性粒子には、Moldayの米国特許第4,452,773号、および欧州特許明細書EP 452342 Bに記載されているものがあり、これらの文献は参照により、本明細書に組み入れられる。別の例として、コロイドサイズの粒子、例えばOwenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されているものが挙げられる。
【0113】
インキュベーションは、一般的には、試料内の細胞上に細胞表面分子が存在する場合に、磁性粒子もしくは磁性ビーズに取り付けられた抗体もしくは結合パートナー、またはそのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する分子、例えば二次抗体もしくは他の試薬が、その細胞表面分子に特異的に結合する条件下で実行される。
【0114】
いくつかの局面では、試料を磁場に置くと、磁気応答性粒子または磁化可能粒子が付着している細胞は磁石に引き寄せられ、非標識細胞から分離されることになる。正の選択の場合は、磁石に引き寄せられた細胞が保持され、負の選択の場合は引き寄せられなかった細胞(非標識細胞)が保持される。いくつかの局面では、同じ選択工程中に正の選択と負の選択の組合せが実施され、その場合は、正の画分と負の画分が保持されて、さらに加工されるか、またはさらなる分離工程に供される。
【0115】
一定の態様において、磁気応答性粒子は、一次抗体または他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、またはストレプトアビジンに覆われている。一定の態様では、磁性粒子を、1つまたは複数のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを介して、細胞に付着させる。一定の態様では、ビーズではなく細胞が一次抗体または結合パートナーで標識され、次に、細胞タイプ特異的な二次抗体または他の結合パートナー(例えばストレプトアビジン)で被覆された磁性ビーズが加えられる。一定の態様では、ストレプトアビジン被覆磁性粒子が、ビオチン化された一次または二次抗体と一緒に使用される。
【0116】
いくつかの態様では、引き続いてインキュベート、培養および/または改変される細胞に、磁気応答性粒子を付着したままにしておき、いくつかの局面では、患者に投与するための細胞に、粒子を付着したままにしておく。いくつかの態様では、磁化可能粒子または磁気応答性粒子が細胞から除去される。磁化可能粒子を細胞から除去するための方法は公知であり、例えば競合非標識抗体の使用、および切断可能なリンカーにコンジュゲートされた磁化可能粒子または抗体の使用が挙げられる。いくつかの態様において、磁化可能粒子は生分解性である。
【0117】
いくつかの態様において、アフィニティーに基づく選択は、磁気活性化細胞選別(magnetic-activated cell sorting:MACS)(Miltenyi Biotech、カリフォルニア州オーバーン)による。磁気活性化細胞選別(MACS)システムでは、磁化粒子が付着している細胞の高純度選択が可能である。一定の態様において、MACSは、外部磁場の適用後に非標的種と標的種とを逐次的に溶出させるモードで作動する。すなわち、磁化粒子に付着した細胞は、付着していない種が溶出される間は、その場に保持される。次に、この第1溶出工程が完了した後に、磁場に捕捉されて溶出が妨げられていた種が、それらを溶出させ回収することができるように、何らかの方法で解放される。一定の態様では、非標的細胞を標識して、不均一な細胞集団から枯渇させる。
【0118】
一定の態様において、単離または分離は、本方法の単離、細胞調製、分離、加工、インキュベーション、培養、および/または製剤化工程のうちの1つまたは複数を実行するシステム、デバイス、または装置を使って実行される。いくつかの局面において、システムは、例えばエラー、ユーザーハンドリングおよび/または汚染を最小限に抑えるために、これらの工程のそれぞれを閉鎖環境または無菌環境で実行するために使用される。一例において、システムは、国際特許出願公開番号WO 2009/072003、またはUS 20110003380 A1に記載のシステムである。一例において、システムは、国際公開番号WO 2016/073602に記載のシステムである。
【0119】
いくつかの態様において、本方法は、選択の全部または一部が遠心分離チャンバの内側キャビティ内において、例えば遠心回転下で、実行される、細胞の選択を含む。いくつかの態様において、細胞と選択試薬、例えばイムノアフィニティーに基づく選択試薬とのインキュベーションは、遠心分離チャンバ内で実施される。
【0120】
例えばイムノアフィニティーに基づく選択は、分離される細胞と、その細胞上のマーカーに特異的に結合する分子、例えば粒子などの固形物表面上の抗体または他の結合パートナーとの間の、有利なエネルギー相互作用に依存しうる。ビーズなどの粒子を用いるアフィニティーに基づく分離のための利用可能な一定の方法では、粒子と細胞とを、エネルギー的に有利な相互作用の促進を助けるように一定の細胞密度対粒子(例えばビーズ)比で、振とうまたは混合しながら、チューブまたはバッグなどの容器中でインキュベートする。そのようなアプローチは、大スケール生産での使用には、例えば所望の細胞数を維持しつつ最適なまたは所望の細胞対粒子比を維持するために大きな体積の使用を必要としうることから、理想的ではないかもしれない。したがってそのようなアプローチは、バッチ方式またはバッチ形式での加工を必要とする場合があり、これには、時間、工程数、ハンドリングの増加が必要になって、費用およびユーザーエラーのリスクが増加する場合がある。
【0121】
いくつかの態様では、そのような選択工程またはその一部(例えば抗体被覆粒子、例えば磁性ビーズとのインキュベーション)を遠心分離チャンバのキャビティ内で行うことにより、ユーザーは、一定のパラメータ、例えばさまざまな溶液の体積、加工中の溶液の添加およびそのタイミングを制御することができ、それは、利用可能な他の方法と比較して利点になりうる。例えば、インキュベーション中のキャビティ内の液量を減少させることができれば、選択に使用される粒子(例えばビーズ試薬)の濃度を、したがって溶液の化学ポテンシャルを、キャビティ内の細胞の総数に影響を及ぼすことなく増加させることができる。これにより、結果として、加工される細胞と選択に使用される粒子の間のペアワイズ相互作用を強化することができる。いくつかの態様では、例えば本明細書記載のシステム、回路、制御と関連する場合に、チャンバ内でインキュベーション工程を実行することにより、ユーザーは、インキュベーション中の所望の時点で溶液の撹拌を達成することが可能になり、これによっても相互作用を改良することができる。
【0122】
いくつかの態様において、選択工程の少なくとも一部は、遠心分離チャンバ内で実施され、これには細胞の、選択試薬とのインキュベーションが含まれる。そのようなプロセスのいくつかの局面では、ある体積の細胞を、同じ数の細胞および/または同じ体積の細胞について製造者の説明書に従ってチューブまたは容器内で同様の選択を実施する場合に通常使用される量よりもはるかに少ない量の、アフィニティーに基づく所望の選択試薬と混合する。いくつかの態様では、同じ数の細胞および/または同じ体積の細胞を製造者の説明書に従って選択するためにチューブベースまたは容器ベースのインキュベーションにおいて細胞の選択に使用される同じ選択試薬の量の5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、25%以下、50%以下、60%以下、70%以下、または80%以下の量の1つまたは複数の選択試薬が使用される。
【0123】
例えばチャンバキャビティ内で実施されうる選択方法の一部としての、1つまたは複数の選択試薬とのインキュベーションには、1つまたは複数の特異的分子、例えば表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の、細胞内または細胞上での発現または存在に基づいて、1つまたは複数の異なる細胞タイプを選択するために、1つまたは複数の選択試薬を使用することが含まれる。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく選択のために1つまたは複数の選択試薬を使用する公知の方法をいずれも使用しうる。いくつかの態様において、1つまたは複数の選択試薬は、アフィニティーまたはイムノアフィニティーに基づく分離である分離をもたらす。例えば選択は、いくつかの局面において、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの、細胞での発現または発現レベルに基づく、例えば当該マーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーションと、それに続く、一般的には洗浄工程および前記抗体または結合パートナーに結合している細胞の、前記抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの分離とによる、細胞および細胞集団の分離のための1つまたは複数の試薬とのインキュベーションを含む。
【0124】
いくつかの態様では、選択のために、例えばイムノアフィニティーに基づく細胞の選択のために、細胞を、チャンバのキャビティ内で、選択緩衝液も含有する組成物中、選択試薬、例えば富化および/または枯渇させようとする細胞上の表面マーカーには特異的に結合するが、組成物中の他の細胞上の表面マーカーには特異的に結合しない分子、例えば抗体であって、任意でポリマーまたは表面、例えばビーズ、例えば磁性ビーズなどのスキャフォールドにカップリングされているもの、例えばCD4およびCD8に特異的なモノクローナル抗体にカップリングされた磁性ビーズと共にインキュベートする。いくつかの態様において、記載のとおり、選択試薬は、チャンバのキャビティ内の細胞に、選択がチューブ内で振とうまたは回転によって実施される場合に同じ数の細胞または同じ体積の細胞の選択をほぼ同じまたは類似する効率で達成するために典型的に使用されるまたは必要になるであろう選択試薬の量と比較して実質的に少ない量(例えば5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%以下の量)で加えられる。いくつかの態様において、インキュベーションは、試薬のインキュベーションを含めて、例えば10mL~200mL、例えば少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、またはおよそ少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または約10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mLの標的体積が達成されるように、細胞および選択試薬に選択緩衝液を添加して実施される。いくつかの態様において、選択緩衝液と選択試薬は、細胞への添加前に、前もって混合される。いくつかの態様において、選択緩衝液と選択試薬は別々に細胞に加えられる。いくつかの態様において、選択インキュベーションは断続的で穏和な混合条件で実行され、これにより、エネルギー的に有利な相互作用の促進を助け、それによって、高い選択効率を達成すると同時に選択試薬の総使用量を減らすことができる。
【0125】
いくつかの態様において、選択試薬とのインキュベーションの総継続時間は、5分~6時間、または約5分~6時間、例えば30分~3時間、例えば少なくとも30分、60分、120分、もしくは180分、またはおよそ少なくとも30分、60分、120分、もしくは180分である。
【0126】
いくつかの態様において、インキュベーションは、一般に混合条件下で、例えば、一般的には比較的弱い力または低い速度、例えば細胞をペレット化するのに使用されるものより小さい速度、例えば600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば600rpm、1000rpmもしくは1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、1000rpmもしくは1500rpmもしくは1700rpm、または少なくとも600rpm、1000rpmもしくは1500rpmもしくは1700rpm)の速度、例えば試料またはチャンバもしくは他の容器の壁におけるRCFが、約80g~100g(例えば80g、85g、90g、95gもしくは100g、または約80g、85g、90g、95gもしくは100g、または少なくとも80g、85g、90g、95gもしくは100g)である速度で回転している状態で実行される。いくつかの態様において、回転は、そのような低速での回転後に休止期間を設ける繰り返し間隔、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10秒にわたる回転および/または休止、例えばおよそ1または2秒間の回転とそれに続くおよそ5、6、7または8秒間の休止を使って実行される。
【0127】
いくつかの態様において、そのようなプロセスは、チャンバと一体化した完全に閉鎖されたシステム内で実行される。いくつかの態様において、このプロセス(およびいくつかの局面では1つまたは複数の追加工程、例えば細胞を含有する試料、例えばアフェレーシス試料を洗浄する、事前の洗浄工程)は、自動プログラムを使って単一の閉鎖システム中で洗浄および結合工程が完了するように、細胞、試薬および他の構成要素が、適当な時点でチャンバに引き込まれ、チャンバから押し出され、遠心分離が達成される形で、自動的に実行される。
【0128】
いくつかの態様では、細胞と1つおよび/または複数の選択試薬とのインキュベーションおよび/または混合後に、インキュベートされた細胞を、1つまたは複数のその特定試薬の有無に基づいて細胞を選択するための分離に供する。いくつかの態様では、さらなる選択が遠心分離チャンバ外で実施される。いくつかの態様において、分離は、遠心分離チャンバが存在し、細胞の、選択試薬とのインキュベーションが実施されたものと、同じ閉鎖システム中で実施される。いくつかの態様では、選択試薬とのインキュベーション後に、インキュベートされた細胞は、選択試薬が結合している細胞を含めて、遠心分離チャンバから圧出され、例えば遠心分離チャンバから、イムノアフィニティーに基づく細胞分離のためのシステムへと移される。いくつかの態様において、イムノアフィニティーに基づく分離のためのシステムは、磁気分離カラムであるか、または磁気分離カラムを含有する。いくつかの態様では、分離に先立って、1つまたは複数の他の加工工程、例えば洗浄を、チャンバ内で実施することができる。
【0129】
いくつかの局面において、分離および/または他の工程は、例えば閉鎖および無菌システムにおける臨床スケールレベルでの細胞の自動分離のために、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotic)を使って実行される。構成要素には、組込みマイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、および種々のピンチ弁が含まれうる。組込みコンピュータは、いくつかの局面において、その器具のすべての構成要素を制御し、標準化されたシーケンスで反復手順を実施するようにシステムを指図する。磁気分離ユニットは、いくつかの局面において、可動性永久磁石と選択カラムのための保持具を含む。蠕動ポンプは、管系セットの至るところで流速を制御し、ピンチ弁と共に、システムを流れる緩衝液の制御された流れおよび細胞の絶え間ない懸濁を保証する。
【0130】
CliniMACSシステムでは、いくつかの局面において、無菌非発熱性溶液に入れて供給される抗体結合磁化可能粒子が使用される。いくつかの態様では、磁性粒子による細胞の標識後に、過剰の粒子を除去するために、細胞が洗浄される。次に、細胞調製バッグが管系セットに接続され、それがさらに、緩衝液が入っているバッグおよび細胞収集バッグに接続される。管系セットは、プレカラムと分離カラムとを含む組立済の無菌管系からなり、使い捨て用である。分離プログラムの開始後は、システムが自動的に細胞試料を分離カラムに適用する。標識された細胞はカラム内に保持される一方、非標識細胞は一連の洗浄工程によって除去される。いくつかの態様において、本明細書記載の方法で使用される細胞集団は非標識であり、カラムには保持されない。いくつかの態様において、本明細書記載の方法で使用される細胞集団は標識されており、カラムに保持される。いくつかの態様において、本明細書記載の方法で使用される細胞集団は、磁場の除去後にカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
【0131】
一定の態様では、分離および/または他の工程が、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を使って実行される。CliniMACS Prodigyシステムには、いくつかの局面において、遠心分離による細胞の自動洗浄および自動分画を可能にする細胞加工ユニットが装着される。CliniMACS Prodigyシステムは、ソース細胞産物の肉眼的な層を識別することによって最適な細胞分画終点を決定する内蔵カメラおよび画像認識ソフトウェアも含むことができる。例えば末梢血は赤血球、白血球および血漿層に自動的に分離される。CliniMACS Prodigyシステムは、例えば細胞の分化および拡大、抗原負荷、および長期細胞培養などの細胞培養プロトコールを遂行する一体型細胞培養チャンバも含むことができる。入口ポートは、培地の無菌的な取り出しと補充を可能にすることができ、一体型顕微鏡を使って細胞をモニターすることができる。例えばKlebanoff et al.(2012)J Immunother.35(9):651-660、Terakura et al.(2012)Blood.1:72-82、およびWang et al.(2012)J Immunother.35(9):689-701を参照されたい。
【0132】
いくつかの態様において、本明細書記載の細胞集団は、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体流にのせて運ばれるフローサイトメトリーによって、収集され、富化(または枯渇)される。いくつかの態様では、分取スケールでの(FACS)選別によって、本明細書記載の細胞集団が収集され、富化(または枯渇)される。一定の態様において、微小電気機械システム(MEMS)チップをFACSに基づく検出システムと併用することによって、本明細書記載の細胞集団が収集され、富化(または枯渇)される(例えばWO 2010/033140、Cho et al.(2010)Lab Chip 10,1567-1573、およびGodin et al.(2008)J Biophoton.1(5):355-376参照。どちらの場合も、細胞を複数のマーカーで標識して、高純度の明確なT細胞サブセットの単離を可能にすることができる。
【0133】
いくつかの態様では、正の選択および/または負の選択のための分離が容易になるように、抗体または結合パートナーが、1つまたは複数の検出可能マーカーで標識される。例えば分離は蛍光標識抗体への結合に基づきうる。いくつかの例では、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離が、流体流中で、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)によって、例えばフローサイトメトリー検出システムと組み合わされた分取スケールでの(FACS)および/または微小電気機械システム(MEMS)チップなどによって行われる。そのような方法により、複数のマーカーに基づく正の選択および負の選択が同時に可能になる。
【0134】
いくつかの態様において、提供されるレトロウイルス粒子は、刺激されおよび/または活性化されたT細胞への形質導入を行うことができる。特定の態様において、提供されるレトロウイルス粒子は、休止T細胞への形質導入を行うことができる。いくつかの態様において、インプット組成物は、複数の細胞、例えば非周期および/または静止および/または休止細胞であるか、または形質導入される集団中の細胞の大部分、例えば50%、60%、70%、80%、80%またはそれ以上を上回る細胞が非周期および/または静止および/または休止細胞である免疫細胞、例えばT細胞を含む。いくつかの態様において、インプット組成物は、集団中のT細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上が休止T細胞、例えば表面マーカーまたは細胞内のサイトカインその他のマーカーなどといったT細胞活性化マーカーを欠くT細胞、および/または細胞周期のG0もしくはG0G1a期にあるT細胞である、T細胞の集団を含む。いくつかの態様において、細胞は、細胞周期のG0、G0/G1aまたはG1期にある。
【0135】
いくつかの態様において、形質導入される細胞は、形質導入に先立って、刺激性条件下でインキュベートされた。いくつかの態様では、形質導入される細胞のうちの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%が、(i)HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40Lおよび4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し、(ii)IL-2、IFN-ガンマ、TNF-アルファからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、(iii)細胞周期のG1期以降にあり、および/または(iv)増殖能を有する。
【0136】
B. 活性化および刺激
いくつかの態様において、提供される方法は、刺激条件下での細胞のインキュベーションに関連して使用される。いくつかの態様において、刺激条件は、細胞、例えばCD4+T細胞におけるシグナル、例えばTCRおよび/または補助受容体から生成するシグナルを活性化しもしくは刺激するおよび/または活性化しもしくは刺激することができる条件を含む。いくつかの態様において、刺激条件は、刺激性試薬、例えば細胞におけるシグナルを活性化しもしくは刺激するおよび/または活性化しもしくは刺激することができる試薬と共におよび/またはその存在下で、細胞を培養し(culturing)、培養し(cultivating)、インキュベートし、活性化し、増殖させる、1つまたは複数の工程を含む。いくつかの態様において、刺激性試薬は、TCRおよび/または補助受容体を刺激および/または活性化する。特定の態様において、刺激性試薬は、本明細書において提供される試薬、例えばセクションI-B-1に記載するものである。
【0137】
一定の態様では、細胞の遺伝子改変に先立って、例えば細胞へのトランスフェクションおよび/または形質導入を、例えば本明細書において提供される方法または技法によって、例えばセクションI-CおよびI-Dに記載の方法または技法によって行う前に、富化T細胞の1つまたは複数の組成物が刺激条件下でインキュベートされる。特定の態様において、刺激条件下でインキュベートされる富化T細胞の組成物はインプット組成物である。一定の態様において、インプット組成物の細胞は、生物学的試料から、前もって単離、選択、富化または取得されている。特定の態様において、インプット組成物からの細胞は、前もって低温凍結され貯蔵されており、インキュベーションに先立って融解される。
【0138】
いくつかの態様において、提供される方法は、細胞、例えばインプット組成物からの細胞を刺激する工程を含む、1つまたは複数の加工工程に関連して使用される。一定の態様において、インキュベーションは、遺伝子改変、例えば本明細書に記載の形質導入の態様、例えばセクションI-Dに記載の方法がもたらす遺伝子改変に先立って、またはその遺伝子改変に関連して、行われうる。いくつかの態様において、刺激は、例えば改変に先立って、例えば形質導入に先立って、細胞の活性化および/または増殖をもたらす。
【0139】
いくつかの態様において、加工工程は、インプット細胞および/またはインプット組成物の細胞などといった細胞のインキュベーションを含み、インキュベーション工程は、細胞の培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、および/または増殖を含むことができる。いくつかの態様では、組成物または細胞が、刺激条件または刺激性作用物質の存在下でインキュベートされる。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、拡大、活性化、および/もしくは生存を誘導するように、および/または抗原曝露を模倣するように、および/または遺伝子改変のために、例えば組換え抗原受容体の導入のために、細胞をプライミングするように、設計されたものが含まれる。
【0140】
一定の態様において、細胞、例えばインプット組成物の細胞は、例えば、刺激性試薬の存在下などといった刺激条件下、5×107細胞/mL、4×107細胞/mL、3×107細胞/mL、2×107細胞/mL、1×107細胞/mL、9×106細胞/mL、8×106細胞/mL、7×106細胞/mL、6×106細胞/mL、5×106細胞/mL、4×106細胞/mL、もしくは3×106細胞/mL未満、または約5×107細胞/mL、4×107細胞/mL、3×107細胞/mL、2×107細胞/mL、1×107細胞/mL、9×106細胞/mL、8×106細胞/mL、7×106細胞/mL、6×106細胞/mL、5×106細胞/mL、4×106細胞/mL、もしくは3×106細胞/mL未満の密度で、インキュベートされる。特定の態様において、細胞は、5×106細胞/mL未満の密度でインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞は、1×103細胞/mL~1×109細胞/mL、1×104細胞/mL~1×108細胞/mL、1×105細胞/mL~1×107細胞/mL、5×105細胞/mL~1×107細胞/mL、1×106細胞/mL~5×106細胞/mL、または3×106細胞/mL~5×106細胞/mLの密度でインキュベートされる。特定の態様において、細胞は、1×106細胞/mL、1.5×106細胞/mL、2×106細胞/mL、2.5×106細胞/mL、3×106細胞/mL、3.5×106細胞/mL、4×106細胞/mL、4.5×106細胞/mL、もしくは5×106細胞/mL、または約1×106細胞/mL、1.5×106細胞/mL、2×106細胞/mL、2.5×106細胞/mL、3×106細胞/mL、3.5×106細胞/mL、4×106細胞/mL、4.5×106細胞/mL、もしくは5×106細胞/mLの密度でインキュベートされる。特定の態様において、細胞は、3×106細胞/mLまたは約3×106細胞/mLの密度でインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞は生存細胞である。一定の態様において、細胞は、アポトーシスマーカー、例えばアネキシンVまたは活性カスパーゼ3が陰性である。特定の態様において、細胞はCD4+T細胞およびCD8+T細胞であるか、またはそれらを含む。
【0141】
特定の態様において、生存能の指標には、細胞複製、ミトコンドリア機能、エネルギーバランス、膜完全性および細胞死の指標が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一定の態様において、生存能の指標には、酸化ストレス、代謝活性化、代謝安定性、酵素誘導、酵素阻害および細胞膜輸送体との相互作用の指標が、さらに含まれる。いくつかの態様において、生存細胞には、正常な機能的細胞プロセスを起こしている細胞、および/または壊死もしくはプログラム細胞死を起こしたものでないかまたは起こしている途中でない細胞が含まれる。いくつかの態様において、生存能は、細胞の酸化還元電位、細胞膜の完全性、またはミトコンドリアの活性もしくは機能によって評価することができる。いくつかの態様において、生存能は、細胞死と関連する特異的分子の非存在またはアッセイにおける細胞死の徴候の非存在である。特定の態様において、細胞の生存能は、多くの常套的手段によって検出し、測定しおよび/またはアッセイすることができる。そのような生存能アッセイの非限定的な例としては、色素取込みアッセイ(例えばカルセインAMアッセイ)、XTT細胞生存能アッセイ、および色素排除アッセイ(例えばトリパンブルー、エオシン、またはプロピジウム色素排除アッセイ)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。生存能アッセイは、細胞用量、細胞組成物および/または細胞試料中の生存細胞の数またはパーセンテージ(例えば頻度)を決定するのに有用である。
【0142】
特定の態様において、アポトーシスマーカーには、アポトーシスと関連する任意の公知マーカーを含めることができ、遺伝子、タンパク質もしくは活性型タンパク質の発現、またはブレブ形成および/もしくは核破壊などといったアポトーシスと関連する特徴の出現を含めることができる。一定の態様において、アポトーシスマーカーは、アポトーシスと関連するマーカーであり、これには、アポトーシスを開始することが公知であるアポトーシス促進因子、デス受容体経路のメンバー、ミトコンドリア(内在性)経路の活性型メンバー、Bax、Bad、およびBid、Fas、FADDなどのBcl-2ファミリーメンバー、核収縮の存在(例えば顕微鏡によるモニタリング)、染色体DNA断片化の存在(例えば染色体DNAラダーの存在)、またはTUNEL染色およびアネキシンV染色などのアポトーシスアッセイと関連するマーカーが含まれうるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、アポトーシスのマーカーは、カスパーゼ発現、例えば活性型カスパーゼ-1、カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8、カスパーゼ-9、カスパーゼ-10および/またはカスパーゼ-13の発現である。いくつかの態様において、アポトーシスのマーカーはアネキシンVである。一定の態様において、アポトーシスマーカーは活性カスパーゼ-3である。
【0143】
いくつかの態様では、1×105もしくは約1×105~500,000×106もしくは約500,000×106個の細胞、1×106もしくは約1×106~50,000×106もしくは約50,000×106個の細胞、10×106もしくは約10×106~5,000×106もしくは約5,000×106個の細胞、1×106もしくは約1×106~1,000×106もしくは約1,000×106個の細胞、50×106もしくは約50×106~5,000×106もしくは約5,000×106個の細胞、10×106もしくは約10×106~1,000×106もしくは約1,000×106個の細胞、100×106もしくは約100×106~2,500×106もしくは約2,500×106個の細胞、100×106もしくは約100×106~500×106もしくは約500×106個の細胞、200×106もしくは約200×106~400×106もしくは約400×106個の細胞、例えばインプット組成物の細胞が、例えば刺激条件下で、例えば刺激性試薬の存在下で、インキュベートされる。特定の態様では、少なくとも50×106個の細胞、100×106個の細胞、150×106個の細胞、200×106個の細胞、250×106個の細胞、300×106個の細胞、350×106個の細胞、400×106個の細胞、450×106個の細胞もしくは500×106個の細胞、または50×106個の細胞、100×106個の細胞、150×106個の細胞、200×106個の細胞、250×106個の細胞、300×106個の細胞、350×106個の細胞、400×106個の細胞、450×106個の細胞もしくは500×106個の細胞、または約50×106個の細胞、100×106個の細胞、150×106個の細胞、200×106個の細胞、250×106個の細胞、300×106個の細胞、350×106個の細胞、400×106個の細胞、450×106個の細胞もしくは500×106個の細胞が、例えば刺激条件下でインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞は生存細胞である。一定の態様において、細胞は、アポトーシスのマーカー、例えばアネキシンVまたは活性カスパーゼ3が陰性である。特定の態様において、細胞はCD4+T細胞およびCD8+T細胞であるか、またはそれらを含む。
【0144】
いくつかの態様では、1×105もしくは約1×105~25,000×106もしくは約25,000×106、1×106もしくは約1×106~25,000×106もしくは約25,000×106、10×106もしくは約10×106~2,500×106もしくは約2,500×106、1×106もしくは約1×106~500×106もしくは約500×106、50×106もしくは約50×106~2,500×106もしくは約2,500×106、10×106もしくは約10×106~500×106もしくは約500×106、100×106もしくは約100×106~500×106もしくは約500×106、200×106もしくは約200×106~400×106もしくは約400×106、50×106もしくは約50×106~300×106もしくは約300×106個のCD4+T細胞、例えばインプット組成物のCD4+T細胞が、例えば刺激条件下で、例えば刺激性試薬の存在下で、インキュベートされる。特定の態様において、少なくとも25×106、50×106、75×106、100×106、125×106、150×106、175×106、200×106、225×106もしくは250×106個、または25×106、50×106、75×106、100×106、125×106、150×106、175×106、200×106、225×106もしくは250×106個、または約25×106、50×106、75×106、100×106、125×106、150×106、175×106、200×106、225×106もしくは250×106個のCD4+T細胞が、例えば刺激条件下でインキュベートされる。いくつかの態様において、CD4+T細胞は生存CD4+T細胞である。一定の態様において、CD4+T細胞は、アポトーシスのマーカー、例えばアネキシンVまたは活性カスパーゼ3が陰性である。
【0145】
一定の態様では、1×105もしくは約1×105~25,000×106もしくは約25,000×106、1×106もしくは約1×106~25,000×106もしくは約25,000×106、10×106もしくは約10×106~2,500×106もしくは約2,500×106、1×106もしくは約1×106~500×106もしくは約500×106、50×106もしくは約50×106~2,500×106もしくは約2,500×106、10×106もしくは約10×106~500×106もしくは約500×106、100×106もしくは約100×106~500×106もしくは約500×106、200×106もしくは約200×106~400×106もしくは約400×106、50×106もしくは約50×106~300×106もしくは約300×106個のCD8+T細胞、例えばインプット組成物のCD8+T細胞が、例えば刺激条件下で、例えば刺激性試薬の存在下で、インキュベートされる。いくつかの態様では、少なくとも25×106、50×106、75×106、100×106、125×106、150×106、175×106、200×106、225×106もしくは250×106個、または25×106、50×106、75×106、100×106、125×106、150×106、175×106、200×106、225×106もしくは250×106個、または約25×106、50×106、75×106、100×106、125×106、150×106、175×106、200×106、225×106もしくは250×106個のCD8+T細胞が、例えば刺激条件下でインキュベートされる。いくつかの態様において、CD8+T細胞は生存CD8+T細胞である。一定の態様において、CD8+T細胞は、アポトーシスのマーカー、例えばアネキシンVまたは活性カスパーゼ3が陰性である。
【0146】
いくつかの態様において、刺激および/または活性化のための条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオンおよび/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された他の任意の作用物質のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0147】
いくつかの態様において、刺激性試薬は一次作用物質を含み、これは、本明細書記載の任意の刺激性試薬であることができる。いくつかの態様において、刺激性試薬は一次作用物質と二次作用物質とを含む。二次作用物質は、いくつかの態様において、本明細書記載の任意の刺激性試薬であることができる。いくつかの態様において、一次作用物質は、TCR複合体のメンバーに特異的に結合し、任意でCD3に特異的に結合する。いくつかの態様において、二次作用物質は、T細胞共刺激分子に特異的に結合し、任意で、共刺激分子は、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSから選択される。
【0148】
いくつかの態様において、刺激条件または刺激性試薬は、TCR複合体のメンバーに結合(例えば特異的に結合)することができる1つまたは複数の試薬、例えばリガンドを含む。いくつかの態様において、TCR複合体のメンバーはCD3である。いくつかの態様において、刺激条件または刺激性試薬は、TCR複合体の細胞内シグナリングドメインを刺激または活性化することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの局面において、例えば一次シグナルを送達するのに適した作用物質、例えばITAM誘導シグナルの活性化を開始するのに適した作用物質、例えばTCR構成要素に特異的な作用物質、例えば抗CD3、および/または共刺激性シグナルを促進する作用物質、例えばT細胞共刺激受容体に特異的な作用物質、例えばビーズなどの固形支持体に結合している抗CD28もしくは抗4-1BB、および/または1つもしくは複数のサイトカインは、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナリングカスケードをオンにし、または開始する。いくつかの態様において、T細胞共刺激分子に特異的に結合する作用物質は、CD28、CD137(4-1BB)、OX40、またはICOSに特異的に結合する作用物質である。刺激性試薬には、抗CD3/抗CD28ビーズ(例えばDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander、および/またはExpACT(登録商標)ビーズ)がある。任意で、拡大方法は、抗CD3および/または抗CD28抗体を培地に加える工程を、さらに含みうる。いくつかの態様において、刺激作用物質はサイトカインを含む。
【0149】
特定の態様において、刺激条件は、細胞を刺激性試薬と共にインキュベート、培養(culturing)および/または培養(cultivating)することを含む。特定の態様において、刺激性試薬は、本明細書において提供される試薬、例えばセクションI-B-1に記載する試薬である。一定の態様において、刺激性試薬はビーズを含有し、またはビーズを含む。一定の態様において、刺激条件下でのインキュベーション、細胞の培養(culturing)および/または培養(cultivating)のスタートおよび/または開始は、細胞を刺激性試薬と接触させおよび/または刺激性試薬と共にインキュベートした時に起こる。特定の態様において、細胞は、細胞の遺伝子改変、例えば細胞への形質導入またはトランスフェクションなどによる組換えポリヌクレオチドの導入の前、その間および/またはその後にインキュベートされる。
【0150】
いくつかの態様において、富化T細胞の組成物は、3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1.25:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、0.75:1、0.67:1、0.5:1、0.3:1もしくは0.2:1、または約3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1.25:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、0.75:1、0.67:1、0.5:1、0.3:1もしくは0.2:1の、刺激性試薬および/またはビーズ対細胞の比で、インキュベートされる。特定の態様において、刺激性試薬および/またはビーズ対細胞の比は、2.5:1~0.2:1、2:1~0.5:1、1.5:1~0.75:1、1.25:1~0.8:1、または1.1:1~0.9:1である。特定の態様において、刺激性試薬対細胞の比は約1:1であるか、または1:1である。
【0151】
特定の態様において、刺激条件は、細胞、例えばインプット組成物からの細胞を、1つまたは複数のサイトカインと共におよび/またはその存在下で、インキュベート、培養(culturing)および/または培養(cultivating)することを含む。特定の態様において、1つまたは複数のサイトカインは組換えサイトカインである。いくつかの態様において、1つまたは複数のサイトカインはヒト組換えサイトカインである。一定の態様において、1つまたは複数のサイトカインは、T細胞によって発現されおよび/またはT細胞にとって内在性である受容体に結合しおよび/または結合することができる。特定の態様において、1つまたは複数のサイトカインは、4-アルファ-ヘリックスバンドルサイトカインファミリー(4-alpha-helix bundle family of cytokines)のメンバーであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、4-アルファヘリックスバンドルサイトカインファミリーのメンバーとしては、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、1つまたは複数のサイトカインはIL-15であるか、またはIL-15を含む。特定の態様において、1つまたは複数のサイトカインはIL-7であるか、またはIL-7を含む。特定の態様において、1つまたは複数のサイトカインはIL-2であるか、またはIL-2を含む。
【0152】
一定の態様において、1つまたは複数のサイトカインの量または濃度は、国際単位(International Unit:IU)で測定および/または定量される。国際単位は、ビタミン、ホルモン、サイトカイン、ワクチン、血液製剤、および類似の生物学的に活性な物質を定量するために使用されうる。いくつかの態様において、IUは、特定重量または特定力価の国際標準品、例えばヒトIL-2のWHO第1国際標準品86/504との比較による、生物学的調製物の力価の測定単位であるか、またはそれを含む。国際単位は、生物学的活性単位数を報告するための、一般に認められ標準化された唯一の方法であり、国際的共同研究の努力によるものである。特定の態様において、サイトカインの組成物、試料または供給源についてのIUは、類似するWHO標準品との製品比較試験によって得ることができる。例えばいくつかの態様において、ヒト組換えIL-2、IL-7またはIL-15の組成物、試料または供給源のIU/mgは、それぞれWHO標準IL-2製剤(NIBSCコード:86/500)、WHO標準IL-17製剤(NIBSCコード:90/530)およびWHO標準IL-15製剤(NIBSCコード:95/554)と比較される。
【0153】
いくつかの態様において、IU/mgでの生物学的活性は、(ng/mLでのED50-1×106と等価である。特定の態様において、組換えヒトIL-2またはIL-15のED50は、CTLL-2細胞を用いる細胞増殖(XTT切断)の最大半量刺激(half-maximal stimulation)に必要な濃度と等価である。一定の態様において、組換えヒトIL-7のED50は、PHA活性化ヒト末梢血リンパ球の増殖のための最大半量刺激に必要な濃度と等価である。IL-2についてのIUのアッセイと計算に関する詳細は、Wadhwa et al., Journal of Immunological Methods(2013), 379(1-2):1-7およびGearing and Thorpe, Journal of Immunological Methods(1988), 114(1-2):3-9において論じられており、IL-15についてのIUのアッセイと計算に関する詳細は、Soman et al. Journal of Immunological Methods(2009)348(1-2):83-94において論じられている。
【0154】
いくつかの態様において、細胞、例えばインプット細胞は、1もしくは約1 IU/mL~1,000もしくは約1,000 IU/mL、10もしくは約10 IU/mL~50もしくは約50 IU/mL、50もしくは約50 IU/mL~100もしくは約100 IU/mL、100もしくは約100 IU/mL~200もしくは約200 IU/mL、100もしくは約100 IU/mL~500もしくは約500 IU/mL、250もしくは約250 IU/mL~500もしくは約500 IU/mL、または500もしくは約500 IU/mL~1,000もしくは約1,000 IU/mLの濃度のサイトカイン、例えば組換えヒトサイトカインと共に、インキュベートされる。
【0155】
いくつかの態様において、細胞、例えばインプット細胞は、1もしくは約1 IU/mL~500もしくは約500 IU/mL、10もしくは約10 IU/mL~250もしくは約250 IU/mL、50もしくは約50 IU/mL~200もしくは約200 IU/mL、50もしくは約50 IU/mL~150もしくは約150 IU/mL、75もしくは約75 IU/mL~125もしくは約125 IU/mL、100もしくは約100 IU/mL~200もしくは約200 IU/mL、または10もしくは約10 IU/mL~100もしくは約100 IU/mLの濃度のIL-2、例えばヒト組換えIL-2と共に、例えば無血清培地中でインキュベートされる。特定の態様において、細胞、例えばインプット組成物の細胞は、50 IU/mL、60 IU/mL、70 IU/mL、80 IU/mL、90 IU/mL、100 IU/mL、110 IU/mL、120 IU/mL、130 IU/mL、140 IU/mL、150 IU/mL、160 IU/mL、170 IU/mL、180 IU/mL、190 IU/mLもしくは100 IU/mL、または約50 IU/mL、60 IU/mL、70 IU/mL、80 IU/mL、90 IU/mL、100 IU/mL、110 IU/mL、120 IU/mL、130 IU/mL、140 IU/mL、150 IU/mL、160 IU/mL、170 IU/mL、180 IU/mL、190 IU/mLもしくは100 IU/mLの濃度の組換えIL-2と共に、インキュベートされる。いくつかの態様において、細胞、例えばインプット細胞は、100 IU/mLまたは約100 IU/mLの組換えIL-2、例えばヒト組換えIL-2の存在下でインキュベートされる。
【0156】
いくつかの態様において、細胞、例えばインプット細胞は、100もしくは約100 IU/mL~2,000もしくは約2,000 IU/mL、500もしくは約500 IU/mL~1,000もしくは約1,000 IU/mL、100もしくは約100 IU/mL~500もしくは約500 IU/mL、500もしくは約500 IU/mL~750もしくは約750 IU/mL、750もしくは約750 IU/mL~1,000もしくは約1,000 IU/mL、または550もしくは約550 IU/mL~650もしくは約650 IU/mLの濃度の組換えIL-7、例えばヒト組換えIL-7と共に、例えば無血清培地中でインキュベートされる。特定の態様において、細胞、例えばインプット細胞は、50 IU/mL、100 IU/mL、150 IU/mL、200 IU/mL、250 IU/mL、300 IU/mL、350 IU/mL、400 IU/mL、450 IU/mL、500 IU/mL、550 IU/mL、600 IU/mL、650 IU/mL、700 IU/mL、750 IU/mL、800 IU/mL、750 IU/mL、750 IU/mL、750 IU/mLもしくは1,000 IU/mL、または約50 IU/mL、100 IU/mL、150 IU/mL、200 IU/mL、250 IU/mL、300 IU/mL、350 IU/mL、400 IU/mL、450 IU/mL、500 IU/mL、550 IU/mL、600 IU/mL、650 IU/mL、700 IU/mL、750 IU/mL、800 IU/mL、750 IU/mL、750 IU/mL、750 IU/mLもしくは1,000 IU/mLの濃度のIL-7と共に、インキュベートされる。特定の態様において、細胞、例えばインプット細胞は、600 IU/mLまたは約600 IU/mLのIL-7、例えばヒト組換えIL-7の存在下でインキュベートされる。
【0157】
いくつかの態様において、細胞、例えばインプット細胞は、1もしくは約1 IU/mL~500もしくは約500 IU/mL、10もしくは約10 IU/mL~250もしくは約250 IU/mL、50もしくは約50 IU/mL~200もしくは約200 IU/mL、50もしくは約50 IU/mL~150もしくは約150 IU/mL、75もしくは約75 IU/mL~125もしくは約125 IU/mL、100もしくは約100 IU/mL~200もしくは約200 IU/mL、または10もしくは約10 IU/mL~100もしくは約100 IU/mLの濃度の組換えIL-15、例えばヒト組換えIL-15と共に、例えば無血清培地中でインキュベートされる。特定の態様において、細胞、例えばインプット組成物の細胞は、50 IU/mL、60 IU/mL、70 IU/mL、80 IU/mL、90 IU/mL、100 IU/mL、110 IU/mL、120 IU/mL、130 IU/mL、140 IU/mL、150 IU/mL、160 IU/mL、170 IU/mL、180 IU/mL、190 IU/mLもしくは200 IU/mL、または約50 IU/mL、60 IU/mL、70 IU/mL、80 IU/mL、90 IU/mL、100 IU/mL、110 IU/mL、120 IU/mL、130 IU/mL、140 IU/mL、150 IU/mL、160 IU/mL、170 IU/mL、180 IU/mL、190 IU/mLもしくは200 IU/mLの濃度の組換えIL-15と共に、インキュベートされる。いくつかの態様において、細胞、例えばインプット細胞は、100 IU/mLまたは約100 IU/mLの組換えIL-15、例えばヒト組換えIL-15の存在下でインキュベートされる。
【0158】
特定の態様において、細胞、例えばインプット組成物からの細胞は、刺激条件において、IL-2、IL-7および/またはIL-15の存在下、例えば無血清培地中でインキュベートされる。いくつかの態様において、IL-2、IL-7および/またはIL-15は組換えIL-2、IL-7および/またはIL-15である。一定の態様において、IL-2、IL-7および/またはIL-15はヒトのIL-2、IL-7および/またはIL-15である。特定の態様において、1つまたは複数のサイトカインはヒト組換えIL-2、IL-7および/またはIL-15であるか、またはそれらを含む。一定の態様において、細胞は、刺激条件において、組換えIL-2、IL-7およびIL-15の存在下、無血清培地中でインキュベートされる。
【0159】
条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオンおよび/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された他の任意の作用物質のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0160】
いくつかの局面において、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al.(2012)J Immunother.35(9):651-660、Terakura et al.(2012)Blood.1:72-82、および/またはWang et al.(2012)J Immunother.35(9):689-701に記載の技法などといった技法に従って実行される。
【0161】
いくつかの態様において、インキュベーションは、無血清培地中で実施される。いくつかの態様において、無血清培地は、限定細胞培養培地および/または既知組成細胞培養培地である。一定の態様において、無血清培地は、加工された、例えば阻害因子および/または成長因子を除去するために濾過された、制限培養培地である。いくつかの態様において、無血清培地はタンパク質を含有する。一定の態様において、無血清培地は、血清アルブミン、加水分解物、成長因子、ホルモン、担体タンパク質、および/または接着因子を含有しうる。
【0162】
いくつかの態様において、1つまたは複数の刺激条件または刺激性試薬の存在下でのインキュベーションの少なくとも一部は、国際公開番号WO 2016/073602に記載されているように、遠心分離チャンバの内部キャビティにおいて、例えば遠心回転下で実行される。いくつかの態様において、遠心分離チャンバで実施されるインキュベーションの少なくとも一部は、刺激および/または活性化を誘導するために1つまたは複数の試薬と混合する工程を含む。いくつかの態様において、細胞、例えば選択された細胞は、遠心分離チャンバ内で、刺激条件または刺激性作用物質と混合される。そのようなプロセスのいくつかの局面では、ある体積の細胞が、細胞培養プレートまたは他のシステムにおいて同様の刺激を実施する場合に使用される量よりもはるかに少ない量の、1つまたは複数の刺激条件または刺激作用物質と混合される。
【0163】
いくつかの態様において、刺激作用物質は、チャンバのキャビティ内の細胞に、選択が遠心分離チャンバ内での混合を伴わずに例えばチューブまたはバッグ中で断続的振とうまたは回転によって実施される場合に同じ数の細胞または同じ体積の細胞の選択をほぼ同じまたは類似する効率で達成するために典型的に使用されるまたは必要になるであろう刺激作用物質の量と比較して実質的に少ない量(例えば5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%以下の量)で加えられる。いくつかの態様において、インキュベーションは、試薬のインキュベーションを含めて、例えば10mL~200mL、例えば少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または少なくとも約10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または約10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mL、または10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、150mL、もしくは200mLの標的体積が達成されるように、細胞および刺激作用物質にインキュベーション緩衝液を添加して実施される。いくつかの態様において、インキュベーション緩衝液と刺激作用物質は、細胞への添加前に、前もって混合される。いくつかの態様において、インキュベーション緩衝液および刺激作用物質は、別々に細胞に加えられる。いくつかの態様において、刺激インキュベーションは断続的で穏和な混合条件で実行され、これにより、エネルギー的に有利な相互作用の促進を助け、それによって、細胞の刺激と活性化を達成すると同時に刺激作用物質の総使用量を減らすことができる。
【0164】
いくつかの態様において、インキュベーションは、一般に混合条件下で、例えば、一般的には比較的弱い力または低い速度、例えば細胞をペレット化するのに使用されるものより小さい速度、例えば600rpmまたは約600rpm~1700rpmまたは約1700rpm(例えば600rpm、1000rpmもしくは1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、1000rpmもしくは1500rpmもしくは1700rpm、または少なくとも600rpm、1000rpmもしくは1500rpmもしくは1700rpm)の速度、例えば試料またはチャンバもしくは他の容器の壁におけるRCFが、80または約80g~100g(例えば80g、85g、90g、95gもしくは100g、または約80g、85g、90g、95gもしくは100g、または少なくとも80g、85g、90g、95gもしくは100g)である速度で回転している状態で実行される。いくつかの態様において、回転は、そのような低速での回転後に休止期間を設ける繰り返し間隔、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10秒にわたる回転および/または休止、例えばおよそ1または2秒間の回転とそれに続くおよそ5、6、7または8秒間の休止を使って実行される。
【0165】
いくつかの態様において、刺激条件下でのインキュベーションの、例えば刺激性試薬とのインキュベーションの、総継続時間は、1時間~96時間、1時間~72時間、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間、12時間~24時間、18時間~30時間、または約1時間~96時間、1時間~72時間、1時間~48時間、4時間~36時間、8時間~30時間、12時間~24時間、18時間~30時間、例えば少なくとも6時間、12時間、18時間、24時間、36時間もしくは72時間、または少なくとも約6時間、12時間、18時間、24時間、36時間もしくは72時間である。いくつかの態様において、例えば刺激性試薬とのインキュベーションの総継続時間は、18時間または約18時間~約30時間である。
【0166】
いくつかの態様において、細胞は、ポリヌクレオチド、例えば組換え受容体をコードするポリヌクレオチドを細胞に、例えば形質導入および/またはトランスフェクション、例えばセクションI-Cに記載するものによって導入する工程の前および/またはその工程の間に、刺激条件下で培養(culture)、培養(cultivate)および/またはインキュベートされる。一定の態様において、細胞は、遺伝子改変に先立って、30分~2時間、1時間~8時間、6時間~12時間、12時間~18時間、16時間~24時間、18時間~30時間、24時間~48時間、24時間~72時間、42時間~54時間、60時間~120時間、96時間~120時間、90時間、1日~7日、3日~8日、1日~3日、4日~6日、または4日~5日の時間にわたって、刺激条件下で培養(culture)、培養(cultivate)および/またはインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞は、18時間~30時間または約18時間~30時間にわたって、刺激条件下でインキュベートされる。特定の態様において、細胞は、24時間または約24時間にわたって、刺激条件下で培養される。
【0167】
いくつかの態様において、細胞を刺激条件下でインキュベートする工程は、細胞を、セクションI-B-1に記載の刺激性試薬と共にインキュベートする工程を含む。いくつかの態様において、刺激性試薬は常磁性ビーズなどのビーズを含有しまたは含み、細胞は、3:1(ビーズ:細胞)未満の比、例えば1:1の比で、刺激性試薬と共にインキュベートされる。特定の態様において、細胞は、1つまたは複数のサイトカインの存在下で、刺激性試薬と共にインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞は、組換えIL-2、IL-7およびIL-15の存在下、1:1(ビーズ:細胞)の比で、刺激性試薬と共にインキュベートされる。
【0168】
特定の態様では、CD4+およびCD8+T細胞を含有する細胞のインプット組成物が、刺激条件下でインキュベートされる。一定の態様において、細胞は無血清培地中でインキュベートされる。特定の態様において、インプット組成物は、1:1の、または約1:1の、CD4+T細胞対CD8+T細胞の比を有する。いくつかの態様において、インプット組成物は、1:1、1:2、2:1、1:3もしくは3:1、または約1:1、1:2、2:1、1:3もしくは3:1の、CD4+T細胞対CD8+T細胞の比を有する。一定の態様では、少なくとも100×106または約100×106個の細胞、例えばインプット組成物からの細胞を、例えば5×106細胞/mL未満または約5×106細胞/mLの密度で、刺激条件下でインキュベートする。特定の態様では、少なくとも50×106または約50×106個のCD4+T細胞および少なくとも50×106または約50×106個のCD8+T細胞が、刺激条件下でインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞は18時間~30時間にわたってインキュベートされる。特定の態様において、細胞を刺激条件下でインキュベートする工程は、細胞を、IL-2、IL-7および/またはIL-15の存在下で、刺激性試薬と共にインキュベートする工程を含む。一定の態様において、細胞は、3:1未満の刺激性試薬対細胞比で、刺激性試薬と共にインキュベートされる。いくつかの態様において、細胞は、50もしくは約50 IU/mL~200もしくは約200 IU/mLのIL-2、400もしくは約400~1,000もしくは約1,000 IU/mLのIL-7、および/または50もしくは約50 IU/mL~200もしくは約200 IU/mLのIL-15と共にインキュベートされる。
【0169】
一定の態様では、CD4+およびCD8+Tを1:1または約1:1の比で含有するインプット組成物の100×106~500×106個の細胞が、刺激条件下でインキュベートされる。一定の態様では、CD4+およびCD8+Tを1:1または約1:1の比で含有するインプット組成物の200×106~400×106個の細胞が、刺激条件下でインキュベートされる。一定の態様において、細胞は生存細胞であり、アポトーシスマーカーが陰性である。いくつかの態様では、インプット組成物の300×106または約300×106個の細胞がインキュベートされる。特定の態様において、細胞は無血清培地中でインキュベートされる。特定の態様において、細胞は、3×106細胞/mLまたは約3×106細胞/mLの密度でインキュベートされる。いくつかの態様では、150×106または約150×106個のCD4+T細胞と150×106または約150×106個のCD8+T細胞とがインキュベートされる。特定の態様において、細胞は、1:1または約1:1の刺激性試薬対細胞比で、刺激性試薬と共にインキュベートされる。一定の態様において、細胞は、100 IU/mLまたは約100 IU/mLのIL-2、600 IU/mLまたは約600 IU/mLのIL-7、および50 IU/mL~200または約200 IU/mLのIL-15の存在下で、インキュベートされる。
【0170】
1. 刺激性試薬
いくつかの態様において、富化細胞の組成物を刺激条件下でインキュベートする工程は、富化細胞の組成物を、T細胞を活性化および/または拡大することができる刺激性試薬とインキュベートするおよび/または接触させる工程であるか、またはそのような工程を含む。いくつかの態様において、刺激性試薬は、細胞内の1つまたは複数のシグナルを刺激しおよび/または活性化することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のシグナルは受容体によって媒介される。特定の態様において、1つまたは複数のシグナルは、シグナル伝達ならびに/または二次メッセンジャー、例えばcAMPおよび/もしくは細胞内カルシウムのレベルもしくは量の変化、1つまたは複数の細胞タンパク質の量、細胞内局在、コンファメーション(confirmation)、リン酸化、ユビキチン化および/または切断の変化、および/または細胞活動、例えば転写、翻訳、タンパク質分解、細胞形態、活性化状態および/または細胞分裂の変化であるか、またはそのような変化と関連する。特定の態様において、刺激条件は、細胞を刺激性試薬と共にインキュベート、培養(culturing)および/または培養(cultivating)することを含む。一定の態様において、刺激性試薬はビーズを含有し、またはビーズを含む。一定の態様において、刺激の開始は、細胞を刺激性試薬と共にインキュベートするか、または刺激性試薬と接触させた時に起こる。特定の態様において、刺激性試薬は、オリゴマー型試薬、例えばストレプトアビジンムテインオリゴマーを含有し、またはオリゴマー型試薬、例えばストレプトアビジンムテインオリゴマーを含む。特定の態様において、刺激性試薬は、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化し、および/または活性化することができる。いくつかの態様において、刺激性試薬はいずれも一次作用物質とも呼ばれ、および/または刺激性試薬はいずれも二次作用物質とも呼ばれる。いくつかの態様において、刺激性試薬は、一次作用物質、例えばTCR複合体のメンバーに特異的に結合する一次作用物質を含む。いくつかの態様において、一次作用物質はCD3に特異的に結合する。いくつかの態様において、刺激性試薬は、二次作用物質、例えばT細胞共刺激分子に特異的に結合する二次作用物質を含む。いくつかの態様において、二次作用物質は、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSに特異的に結合する。
【0171】
いくつかの態様において、刺激条件または刺激性試薬は、TCR複合体の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの態様において、本明細書において想定される作用物質としては、RNA、DNA、タンパク質(例えば酵素)、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、炭水化物、脂質レクチン、または所望の標的に対してアフィニティーを持つ他の任意の生体分子を挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、所望の標的はT細胞受容体および/またはT細胞受容体の構成要素である。一定の態様において、所望の標的はCD3である。一定の態様において、所望の標的はT細胞共刺激分子、例えばCD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSである。1つまたは複数の作用物質は、当技術分野において公知の利用可能な種々の方法によって、ビーズに直接的または間接的に取り付けうる。取り付けは、共有結合性、非共有結合性、静電的または疎水性であってよく、化学的手段、機械的手段または酵素的手段を含むさまざまな取り付け手段によって達成されうる。いくつかの態様において、作用物質は抗体またはその抗原結合フラグメント、例えばFabである。いくつかの態様において、生体分子(例えばビオチン化抗CD3抗体)は、ビーズに直接取り付けられた別の生体分子(例えば抗ビオチン抗体)を介して、間接的に取り付けられうる。
【0172】
いくつかの態様において、刺激性試薬は、細胞(例えばT細胞)上の以下の高分子のうちの1つまたは複数に特異的に結合する1つまたは複数の作用物質(例えば抗体またはその抗原結合フラグメント、例えばFab)を含有する:CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD25、CD27、CD28、CD29、CD31、CD44、CD45RA、CD45RO、CD54(ICAM-1)、CD127、MHCI、MHCII、CTLA-4、ICOS、PD-1、OX40、CD27L(CD70)、4-1BB(CD137)、4-1BBL、CD30L、LIGHT、IL-2R、IL-12R、IL-1R、IL-15R;IFN-ガンマR、TNF-アルファR、IL-4R、IL-10R、CD18/CD11a(LFA-1)、CD62L(L-セレクチン)、CD29/CD49d(VLA-4)、Notchリガンド(例えばデルタ様1/4、Jagged 1/2など)、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、およびCXCR3またはそのフラグメント、これらの高分子またはそのフラグメントに対する、対応するリガンドを含む。いくつかの態様において、刺激性試薬は、細胞(例えばT細胞)上の以下の高分子のうちの1つまたは複数に特異的に結合する1つまたは複数の作用物質(例えば抗体またはその抗原結合フラグメント、例えばFab)を含有する:CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RA、および/またはCD45RO。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は、ビーズ(例えば常磁性ビーズ)に取り付けられているか、または取り付けることができる。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は、オリゴマー型試薬、例えばストレプトアビジンムテインオリゴマーに(例えば可逆的に)取り付けられているか、または取り付けることができる。
【0173】
いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は、抗体またはその抗原結合フラグメント、例えばFabを含む。抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、多重エピトープ特異性を持つ抗体組成物、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、および単鎖分子、ならびに抗体フラグメント(例えばFab、F(ab')2、およびFv)を挙げることができる。いくつかの態様において、刺激性試薬は、抗体フラグメント(抗原結合フラグメントを含む)、例えばFab、Fab'-SH、Fv、scFv、または(Fab')2フラグメントであるか、またはそれを含む。本明細書において想定される抗体には、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEの定常領域を含む任意のアイソタイプの定常領域を使用できること、そしてそのような定常領域は任意のヒトまたは動物種(例えばマウス種)から得ることができることは、理解されるだろう。いくつかの態様において、作用物質は、T細胞受容体の1つまたは複数の構成要素に結合しおよび/またはそれらを認識する抗体であるか、またはそのような抗体を含む。特定の態様において、作用物質は抗CD3抗体であるか、または抗CD3抗体を含む。一定の態様において、作用物質は、補助受容体に結合しおよび/または補助受容体を認識する抗体であるか、またはそのような抗体を含む。いくつかの態様において、刺激性試薬は抗CD28抗体であるか、または抗CD28抗体を含む。いくつかの態様において、刺激性試薬は、抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメントであるかまたはそれを含む一次作用物質と、抗CD28抗体もしくはその抗原結合フラグメントであるかまたはそれを含む二次作用物質とを含む。
【0174】
いくつかの態様において、細胞、例えばインプット集団の細胞は、刺激性試薬対細胞の比が3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1.25:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、0.75:1、0.67:1、0.5:1、0.3:1もしくは0.2:1、または約3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1.25:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、0.75:1、0.67:1、0.5:1、0.3:1もしくは0.2:1である状態で、刺激される。特定の態様において、刺激性試薬対細胞の比は、2.5:1~0.2:1、2:1~0.5:1、1.5:1~0.75:1、1.25:1~0.8:1、または1.1:1~0.9:1である。特定の態様において、刺激性試薬対細胞の比は約1:1であるか、または1:1である。
【0175】
いくつかの態様において、細胞は、106細胞あたり0.01μg、0.02μg、0.03μg、0.04μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.75μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μgもしくは10μg、または約0.01μg、0.02μg、0.03μg、0.04μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.75μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μgもしくは10μg、または少なくとも0.01μg、0.02μg、0.03μg、0.04μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.75μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μgもしくは10μgの刺激性試薬の存在下で、刺激される。いくつかの態様において、細胞は、106細胞あたり4μgまたは約4μgの存在下で、刺激される。特定の態様において、細胞は、106細胞あたり0.8μgまたは約0.8μgの存在下で、刺激される。さまざまな態様において、細胞は、106細胞あたり0.8μgまたは約0.8μgの存在下で、刺激される。
【0176】
a. ビーズ試薬
一定の態様において、刺激性試薬は、細胞、例えばT細胞を活性化および/または拡大することができる1つまたは複数の作用物質、例えば生体分子にコンジュゲートまたは連結された粒子、例えばビーズを含有する。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は固形支持体に結合している。いくつかの態様において、固形支持体はビーズであるか、またはビーズを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質はビーズに結合している。いくつかの態様において、ビーズは生体適合性である。すなわちビーズは生物学的使用に適した材料で構成されている。いくつかの態様において、ビーズは培養細胞、例えば培養T細胞にとって非毒性である。いくつかの態様において、ビーズは、作用物質と細胞の間の相互作用が可能な形で作用物質を取り付けることができる任意の粒子でありうる。
【0177】
いくつかの態様において、刺激性試薬は、ビーズに、例えばビーズの表面に結合しているか、または他の形で付着している細胞、例えばT細胞を活性化および/または拡大することができる1つまたは複数の作用物質を含有する。一定の態様において、ビーズは、細胞でない粒子(non-cell particle)である。特定の態様において、ビーズは、コロイド粒子、マイクロスフェア、ナノ粒子、磁性ビーズなどを含みうる。いくつかの態様において、ビーズはアガロースビーズである。一定の態様において、ビーズはセファロースビーズである。
【0178】
特定の態様において、刺激性試薬は、単分散である粒子を含有する。一定の態様において、単分散であるビーズは、互いに5%未満の直径標準偏差を有するサイズ分散を含む。
【0179】
いくつかの態様において、ビーズは、1つまたは複数の作用物質、例えばビーズの表面に(直接的または間接的に)カップリング、コンジュゲートまたは連結された作用物質を含有する。いくつかの態様において、本明細書において想定される作用物質としては、RNA、DNA、タンパク質(例えば酵素)、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、炭水化物、脂質レクチン、または所望の標的に対してアフィニティーを持つ他の任意の生体分子を挙げることができるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、所望の標的はT細胞受容体および/またはT細胞受容体の構成要素である。一定の態様において、所望の標的はCD3である。一定の態様において、所望の標的はT細胞共刺激分子、例えばCD28、CD137(4-1-BB)、OX40またはICOSである。1つまたは複数の作用物質は、当技術分野において公知の利用可能な種々の方法によって、ビーズに直接的または間接的に取り付けうる。取り付けは、共有結合性、非共有結合性、静電的または疎水性であってよく、化学的手段、機械的手段または酵素的手段を含むさまざまな取り付け手段によって達成されうる。いくつかの態様において、生体分子(例えばビオチン化抗CD3抗体)は、ビーズに直接取り付けられた別の生体分子(例えば抗ビオチン抗体)を介して、間接的に取り付けられうる。
【0180】
いくつかの態様において、刺激性試薬は、ビーズと、細胞表面上の高分子と直接的に相互作用する1つまたは複数の作用物質とを含有する。一定の態様において、ビーズ(例えば常磁性ビーズ)は、細胞上の1つまたは複数の高分子(例えば1つまたは複数の細胞表面タンパク質)に特異的な1つまたは複数の作用物質(例えば抗体)を介して細胞と相互作用する。一定の態様において、ビーズ(例えば常磁性ビーズ)は、本明細書記載の第1作用物質、例えば一次抗体(例えば抗ビオチン抗体)または他の生体分子で標識され、次に第2作用物質、例えば二次抗体(例えばビオチン化抗CD3抗体)または他の第2生体分子(例えばストレプトアビジン)が加えられ、それにより、前記二次抗体または他の第2生体分子は、粒子上の前記一次抗体または他の生体分子に特異的に結合する。
【0181】
いくつかの態様において、刺激性試薬は、ビーズ(例えば常磁性ビーズ)に取り付けられていて、細胞(例えばT細胞)上の以下の高分子のうちの1つまたは複数に特異的に結合する、1つまたは複数の作用物質(例えば抗体)を含有する:CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD25、CD27、CD28、CD29、CD31、CD44、CD45RA、CD45RO、CD54(ICAM-1)、CD127、MHCI、MHCII、CTLA-4、ICOS、PD-1、OX40、CD27L(CD70)、4-1BB(CD137)、4-1BBL、CD30L、LIGHT、IL-2R、IL-12R、IL-1R、IL-15R;IFN-ガンマR、TNF-アルファR、IL-4R、IL-10R、CD18/CD11a(LFA-1、αLβ2)、CD62L(L-セレクチン)、CD29/CD49d(VLA-4)、Notchリガンド(例えばデルタ様1/4、Jagged 1/2など)、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、およびCXCR3またはそのフラグメント、これらの高分子またはそのフラグメントに対する、対応するリガンドを含む。いくつかの態様において、ビーズに取り付けられた作用物質(例えば抗体)は、細胞(例えばT細胞)上の以下の高分子のうちの1つまたは複数に特異的に結合する:CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RAおよび/またはCD45RO。
【0182】
いくつかの態様において、ビーズに取り付けられる作用物質のうちの1つまたは複数は抗体である。抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、多重エピトープ特異性を持つ抗体組成物、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、および単鎖分子、ならびに抗体フラグメント(例えばFab、F(ab')2、およびFv)を挙げることができる。いくつかの態様において、刺激性試薬は、抗体フラグメント(抗原結合フラグメントを含む)、例えばFab、Fab'-SH、Fv、scFvまたは(Fab')2フラグメントである。本明細書において想定される抗体には、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEの定常領域を含む任意のアイソタイプの定常領域を使用できること、そしてそのような定常領域は任意のヒトまたは動物種(例えばマウス種)から得ることができることは、理解されるだろう。いくつかの態様において、作用物質は、T細胞受容体の1つまたは複数の構成要素に結合しおよび/またはそれらを認識する抗体である。特定の態様において、作用物質は抗CD3抗体である。一定の態様において、作用物質は、補助受容体に結合しおよび/または補助受容体を認識する抗体である。いくつかの態様において、刺激性試薬は抗CD28抗体を含む。いくつかの態様において、ビーズは、0.001もしくは約0.001μm超、0.01もしくは約0.01μm超、0.1もしくは約0.1μm超、1.0もしくは約1.0μm超、10もしくは約10μm超、50もしくは約50μm超、100もしくは約100μm超、または1000もしくは約1000μm超、かつ1500もしくは約1500μm超の直径を有する。いくつかの態様において、ビーズは、1.0もしくは約1.0μm~500もしくは約500μm、1.0もしくは約1.0μm~150もしくは約150μm、1.0もしくは約1.0μm~30もしくは約30μm、1.0もしくは約1.0μm~10もしくは約10μm、1.0もしくは約1.0μm~5.0もしくは約5.0μm、2.0もしくは約2.0μm~5.0もしくは約5.0μm、または3.0もしくは約3.0μm~5.0もしくは約5.0μmの直径を有する。いくつかの態様において、ビーズは、3または約3μm~5または約5μmの直径を有する。いくつかの態様において、ビーズは、少なくとも0.001μm、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、5.0μm、5.5μm、6.0μm、6.5μm、7.0μm、7.5μm、8.0μm、8.5μm、9.0μm、9.5μm、10μm、12μm、14μm、16μm、18μm、もしくは20μm、または少なくとも約0.001μm、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、5.0μm、5.5μm、6.0μm、6.5μm、7.0μm、7.5μm、8.0μm、8.5μm、9.0μm、9.5μm、10μm、12μm、14μm、16μm、18μm、もしくは20μm、または約0.001μm、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μm、5.0μm、5.5μm、6.0μm、6.5μm、7.0μm、7.5μm、8.0μm、8.5μm、9.0μm、9.5μm、10μm、12μm、14μm、16μm、18μm、もしくは20μmの直径を有する。一定の態様において、ビーズは4.5または約4.5μmの直径を有する。一定の態様において、ビーズは2.8または約2.8μmの直径を有する。
【0183】
いくつかの態様において、ビーズは、0.001もしくは約0.001g/cm3超、0.01もしくは約0.01g/cm3超、0.05もしくは約0.05g/cm3超、0.1もしくは約0.1g/cm3超、0.5もしくは約0.5g/cm3超、0.6もしくは約0.6g/cm3超、0.7もしくは約0.7g/cm3超、0.8もしくは約0.8g/cm3超、0.9もしくは約0.9g/cm3超、1もしくは約1g/cm3超、1.1もしくは約1.1g/cm3超、1.2もしくは約1.2g/cm3超、1.3もしくは約1.3g/cm3超、1.4もしくは約1.4g/cm3超、1.5もしくは約1.5g/cm3超、2もしくは約2g/cm3超、3もしくは約3g/cm3超、4もしくは約4g/cm3、または5もしくは約5g/cm3超の密度を有する。いくつかの態様において、ビーズは、0.001もしくは約0.001g/cm3~100もしくは約100g/cm3、0.01もしくは約0.01g/cm3~50もしくは約50g/cm3、0.1もしくは約0.1g/cm3~10もしくは約10g/cm3、0.1もしくは約0.1g/cm3~5もしくは約5g/cm3、0.5もしくは約0.5g/cm3~1もしくは約1g/cm3、0.5もしくは約0.5g/cm3~1.5もしくは約1.5g/cm3、1もしくは約1g/cm3~1.5もしくは約1.5g/cm3、1もしくは約1g/cm3~2もしくは約2g/cm3、または1もしくは約1g/cm3~5もしくは約5g/cm3の密度を有する。いくつかの態様において、ビーズは、0.5もしくは約0.5g/cm3、0.5もしくは約0.5g/cm3、0.6もしくは約0.6g/cm3、0.7もしくは約0.7g/cm3、0.8もしくは約0.8g/cm3、0.9もしくは約0.9g/cm3、1.0もしくは約1.0g/cm3、1.1もしくは約1.1g/cm3、1.2もしくは約1.2g/cm3、1.3もしくは約1.3g/cm3、1.4もしくは約1.4g/cm3、1.5もしくは約1.5g/cm3、1.6もしくは約1.6g/cm3、1.7もしくは約1.7g/cm3、1.8もしくは約1.8g/cm3、1.9もしくは約1.9g/cm3、または2.0もしくは約2.0g/cm3の密度を有する。一定の態様において、ビーズは、1.6もしくは約1.6g/cm3の密度を有する。特定の態様において、ビーズまたは粒子は1.5もしくは約1.5g/cm3の密度を有する。一定の態様において、粒子は1.3もしくは約1.3g/cm3の密度を有する。
【0184】
一定の態様において、複数のビーズは一様な密度を有する。一定の態様において、一様な密度は、平均ビーズ密度の10もしくは約10%未満、5もしくは約5%未満、または1もしくは約1%未満の密度標準偏差を含む。
【0185】
いくつかの態様において、ビーズは、粒子各1グラムにつき0.001もしくは約0.001m2(m2/g)~1,000もしくは約1,000m2/g、0.010もしくは約0.010m2/g~100もしくは約100m2/g、0.1もしくは約0.1m2/g~10もしくは約10m2/g、0.1もしくは約0.1m2/g~1もしくは約1m2/g、1もしくは約1m2/g~10もしくは約10m2/g、10もしくは約10m2/g~100もしくは約100m2/g、0.5もしくは約0.5m2/g~20もしくは約20m2/g、0.5もしくは約0.5m2/g~5もしくは約5m2/g、または1もしくは約1m2/g~4もしくは約4m2/gの表面積を有する。いくつかの態様において、粒子またはビーズは、1もしくは約1m2/g~4もしくは約4m2/gの表面積を有する。
【0186】
いくつかの態様において、ビーズは、作用物質にカップリング、連結またはコンジュゲートすることができる少なくとも1つの材料を、ビーズ表面に、またはビーズ表面近くに、含有する。いくつかの態様において、ビーズは表面が官能化されている。すなわち、ビーズは、結合分子、例えばポリヌクレオチドまたはポリペプチドとの共有結合を形成することができる官能基を含む。特定の態様において、ビーズは、表面に露出したカルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、トシル、エポキシ、および/またはクロロメチル基を含む。特定の態様において、ビーズは、表面に露出したアガロースおよび/またはセファロースを含む。一定の態様において、ビーズ表面には、結合分子に結合または付着することができる刺激性試薬が取り付けられている。特定の態様において、生体分子はポリペプチドである。いくつかの態様において、ビーズは、表面に露出したプロテインA、プロテインGまたはビオチンを含む。
【0187】
いくつかの態様において、ビーズは磁場において反応する。いくつかの態様において、ビーズは磁性ビーズである。いくつかの態様において、磁性ビーズは常磁性である。特定の態様において、磁性ビーズは超常磁性である。一定の態様において、ビーズは、それらが磁場に曝露されない限り、いかなる磁気的性質も呈さない。
【0188】
特定の態様において、ビーズは、磁性コア、常磁性コア、または超常磁性コアを含む。いくつかの態様において、磁性コアは金属を含有する。いくつかの態様において、金属は、例えば鉄、ニッケル、銅、コバルト、ガドリニウム、マンガン、タンタル、亜鉛、ジルコニウム、またはそれらの任意の組合せであることができるが、それらに限定されるわけではない。一定の態様において、磁性コアは、金属酸化物(例えば酸化鉄)、フェライト(例えばマンガンフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライトなど)、ヘマタイトおよび合金(例えばCoTaZn)を含む。いくつかの態様において、磁性コアは、フェライト、金属、合金、鉄オキシド、または二酸化クロムのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様において、磁性コアは元素鉄またはその化合物を含む。いくつかの態様において、磁性コアは、マグネタイト(Fe3O4)、マグへマイト(γFe2O3)、またはグレイガイト(Fe3S4)のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様において、内側コアは酸化鉄(例えばFe3O4)を含む。
【0189】
一定の態様において、ビーズは、表面官能化コートまたはコーティングで覆われた磁性コア、常磁性コアおよび/または超常磁性コアを含有する。いくつかの態様において、コートは、例えば限定するわけではないが、ポリマー、多糖、シリカ、脂肪酸、タンパク質、炭素、アガロース、セファロース、またはそれらの組合せを含むことができる材料を、含有することができる。いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリグルタルアルデヒド、ポリウレタン、ポリスチレン、またはポリビニルアルコールであることができる。一定の態様において、外側のコートまたはコーティングはポリスチレンを含む。特定の態様において、外側のコーティングは表面が官能化される。
【0190】
いくつかの態様において、刺激性試薬は、金属酸化物コア(例えば酸化鉄コア)とコートとを含有するビーズを含み、金属酸化物コアは少なくとも1つの多糖(例えばデキストラン)を含み、コートは、少なくとも1つの多糖(例えばアミノデキストラン)、少なくとも1つのポリマー(例えばポリウレタン)およびシリカを含む。いくつかの態様において、金属酸化物コアはコロイド酸化鉄コアである。一定の態様において、1つまたは複数の作用物質は抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。特定の態様において、1つまたは複数の作用物質は抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む。いくつかの態様において、刺激性試薬は抗CD3抗体、抗CD28抗体および抗ビオチン抗体を含む。いくつかの態様において、刺激性試薬は抗ビオチン抗体を含む。いくつかの態様において、ビーズは約3μm~約10μmの直径を有する。いくつかの態様において、ビーズは約3μm~約5μmの直径を有する。一定の態様において、ビーズは約3.5μmの直径を有する。
【0191】
いくつかの態様において、刺激性試薬は、金属酸化物コア(例えば酸化鉄内側コア)とコート(例えば保護コート)とを含むビーズに取り付けられた1つまたは複数の作用物質を含み、コートはポリスチレンを含む。一定の態様において、ビーズは、常磁性(例えば超常磁性)鉄コア、例えばマグネタイト(Fe3O4)および/またはマグヘマイト(γFe2O3)cと、ポリスチレンコートまたはコーティングとを含む、単分散の常磁性(例えば超常磁性)ビーズである。いくつかの態様において、ビーズは非多孔性である。いくつかの態様において、ビーズは、1つまたは複数の作用物質が取り付けられた、官能化された表面を含有する。一定の態様において、1つまたは複数の作用物質は、ビーズに、その表面において共有結合される。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体と、標識抗体(例えばビオチン化抗体)、例えば標識抗CD3または抗CD28抗体に結合することができる抗体またはその抗原フラグメントとを含む。一定の態様において、ビーズは、約1.5g/cm3の密度と約1m2/g~約4m2/gの表面積とを有する。特定の態様において、ビーズは、約4.5μmの直径と約1.5g/cm3の密度とを有する単分散の超常磁性ビーズである。いくつかの態様において、ビーズは、約2.8μmの平均直径と約1.3g/cm3の密度とを有する単分散の超常磁性ビーズである。
【0192】
いくつかの態様において、富化T細胞の組成物は、3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1.25:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、0.75:1、0.67:1、0.5:1、0.3:1もしくは0.2:1、または約3:1、2.5:1、2:1、1.5:1、1.25:1、1.2:1、1.1:1、1:1、0.9:1、0.8:1、0.75:1、0.67:1、0.5:1、0.3:1もしくは0.2:1のビーズ対細胞の比で、刺激試薬と共にインキュベートされる。特定の態様において、ビーズ対細胞の比は、2.5:1~0.2:1、2:1~0.5:1、1.5:1~0.75:1、1.25:1~0.8:1、または1.1:1~0.9:1である。特定の態様において、ビーズ対細胞の比は約1:1であるか、または1:1である。
【0193】
b. オリゴマー型試薬
特定の態様において、刺激性試薬は、TCR複合体の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドにコンジュゲートされ、連結され、または取り付けられたオリゴマー型試薬、例えばストレプトアビジンムテイン試薬を含有する。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質には、オリゴマー型試薬の特定結合部位(例えば結合部位Z)に結合することができる結合ドメインまたは結合パートナー(例えば結合パートナーC)が取り付けられている。いくつかの態様では、複数の作用物質がオリゴマー型試薬に可逆的に結合される。さまざまな態様において、オリゴマー型試薬は複数の特定結合部位を有し、それらが、一定の態様では、複数の作用物質の結合ドメイン(例えば結合パートナーC)に可逆的に結合される。いくつかの態様において、結合される作用物質の量は、競合試薬、例えば前記特定結合部位(例えば結合部位Z)に同様に結合することができる試薬の存在下では、低減しまたは減少する。抗CD3/抗CD28オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬を含むオリゴマー型刺激性試薬は、国際PCT出願番号WO 2018/197949に記載されている。
【0194】
いくつかの態様において、刺激性試薬は、少なくとも1つの作用物質(例えばT細胞などの細胞においてシグナルを生じさせることができる作用物質)がオリゴマー型試薬と会合する、例えば可逆的に会合する、可逆系であるか、またはそのような可逆系を含む。いくつかの態様において、試薬は、作用物質に結合する、例えば可逆的に結合することができる複数の結合部位を含有する。いくつかの態様において、刺激性試薬は、複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子を含むオリゴマー型粒子試薬の表面に可逆的に結合している。いくつかの態様において、刺激性試薬(例えば一次作用物質および二次作用物質)は、複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子を含むオリゴマー型粒子試薬の表面に可逆的に結合している。場合により、試薬は、T細胞などの細胞においてシグナルを生じさせることができる作用物質が少なくとも1つは取り付けられているオリゴマー型粒子試薬である。いくつかの態様において、作用物質は、前記分子のエピトープまたは一領域に特異的に結合することができる少なくとも1つの結合部位、例えば結合部位Bを含有し、試薬の少なくとも1つの結合部位、例えば試薬の結合部位Zに特異的に結合する結合パートナー(本明細書では結合パートナーCともいう)も含有する。いくつかの態様において、結合パートナーCと少なくとも1つの結合部位Zとの間の結合相互作用は、非共有結合相互作用である。場合により、結合パートナーCと少なくとも1つの結合部位Zとの間の結合相互作用は、共有結合相互作用である。いくつかの態様において、結合パートナーCと少なくとも1つの結合部位Zとの間の、非共有結合相互作用などの結合相互作用は、可逆的である。
【0195】
そのような可逆系においてオリゴマー型試薬として使用されうる物質は公知である。例えば米国特許第5,168,049号、同第5,506,121号、同第6,103,493号、同第7,776,562号、同第7,981,632号、同第8,298,782号、同第8,735,540号、同第9,023,604号ならびに国際公開されたPCT出願WO 2013/124474およびWO 2014/076277を参照されたい。可逆的相互作用を形成することができる試薬と結合パートナーの非限定的な例、ならびにそのような結合を反転させることができる物質(例えば競合試薬)は後述する。
【0196】
いくつかの態様において、オリゴマー型試薬は、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテイン、ストレプトアビジン類似体、アビジン、アビジンムテイン、もしくはアビジン類似体(例えばニュートラアビジン)のオリゴマーまたはそれらの混合物であり、この場合、そのようなオリゴマー型試薬は、作用物質の結合ドメイン(例えば結合パートナーC)との可逆的会合のために、1つまたは複数の結合部位を含有する。いくつかの態様において、作用物質の結合ドメインは、ビオチン、ビオチン誘導体、ビオチン類似体、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドであるか、またはストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテイン、ストレプトアビジン類似体、アビジン、アビジンムテインもしくはアビジン類似体に特異的に結合することができる他の分子であることができる。
【0197】
一定の態様において、1つまたは複数の作用物質(例えばT細胞などの細胞においてシグナルを生じさせることができる作用物質)は、オリゴマー型試薬と、例えばオリゴマー型試薬上に存在する複数の特定結合部位(例えば結合部位Z)を介して、会合(例えば可逆的に結合)する。場合によっては、これにより、作用物質が互いに密に配置されて、作用物質によって結合されるまたは作用物質によって認識される(少なくとも2コピーの)細胞表面分子を有する標的細胞を作用物質と接触させた場合に、アビディティー効果が生じうるようになる。
【0198】
いくつかの態様において、オリゴマー型試薬は、ストレプトアビジンオリゴマー、ストレプトアビジンムテインオリゴマー、ストレプトアビジン類似体オリゴマー、アビジンオリゴマー、アビジンムテインもしくはアビジン類似体(例えばニュートラアビジン)で構成されるオリゴマー、またはそれらの混合物である。特定の態様において、オリゴマー型試薬は、作用物質の結合ドメイン(例えば結合パートナーC)に結合することができる特定結合部位を含有する。いくつかの態様において、結合ドメインは、ビオチン、ビオチン誘導体、ビオチン類似体、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドであるか、またはストレプトアビジン、ストレプトアビジンムテイン、ストレプトアビジン類似体、アビジン、アビジンムテインもしくはアビジン類似体に特異的に結合することができる他の分子であることができる。
【0199】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンは野生型ストレプトアビジン、またはストレプトアビジンムテインもしくはストレプトアビジン類似体、例えばストレプトアビジン様ポリペプチドであることができる。同様に、アビジンは、いくつかの局面において、野生型アビジン、またはアビジンのムテインもしくは類似体、例えば典型的にはより中性に近いpiを呈し、ネイティブアビジンの代わりに利用することができる、アルギニンが修飾された脱グルコシル化アビジンであるニュートラアビジンを含む。一般に、脱グルコシル化された中性型のアビジンには、Sigma Aldrichから入手可能な「エクストラアビジン(Extravidin)」またはThermo ScientificもしくはInvitrogenから入手可能な「ニュートラアビジン(NeutrAvidin)」などの市販型が含まれる。
【0200】
いくつかの態様において、試薬はストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインもしくはストレプトアビジン類似体である。いくつかの態様において、野生型ストレプトアビジン(wt-ストレプトアビジン)は、Argarana et al、Nucleic Acids Res.14(1986)1871-1882に開示されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:34)を有する。一般に、ストレプトアビジンは4つの同一サブユニットの四量体として天然に存在し、すなわちストレプトアビジンはホモ四量体であり、各サブユニットが、ビオチン、ビオチン誘導体もしくはビオチン類似体、またはビオチン模倣物に対する単一の結合部位を含有する。ストレプトアビジンのサブユニットの例示的な配列は、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸の配列であるが、そのような配列は、ストレプトミセス属の別の種に由来するそのホモログ中に存在する配列を含むこともできる。特に、ストレプトアビジンの各サブユニットは、平衡解離定数(KD)が10-14または約10-14M程度の強い結合アフィニティーをビオチンに対して呈しうる。場合により、ストレプトアビジンは、4つの結合部位のうちの1つだけが機能的である一価四量体(Howarth et al.(2006)Nat. Methods, 3:267-73、Zhang et al.(2015)Biochem. Biophys. Res. Commun., 63:1059-63)、4つの結合部位のうちの2つが機能的である二価四量体(Fairhead et al.(2013)J. Mol. Biol., 426:199-214)として存在するか、または単量体型もしくは二量体型として存在することができる(Wu et al.(2005)J. Biol. Chem., 280:23225-31、Lim et al.(2010)Biochemistry, 50:8682-91)。
【0201】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンは、野生型のまたは無修飾のストレプトアビジン、例えばストレプトミセス属の種(Streptomyces species)に由来するストレプトアビジン、または機能的に活性なそのフラグメントであって、ビオチン、ビオチン誘導体、ビオチン類似体もしくはビオチン模倣物に対する結合部位を含有する機能的サブユニットを少なくとも1つは含むものなど、任意の形態にあってよく、例えば一般的には、SEQ ID NO:34に示されるストレプトミセス・アビジニイ(Streptomyces avidinii)由来の野生型ストレプトアビジンの機能的サブユニットまたは機能的に活性なそのフラグメントを少なくとも1つは含有する。例えば、いくつかの態様において、ストレプトアビジンは、N末端および/またはC末端が短縮されている野生型ストレプトアビジンのフラグメントを含むことができる。そのような最小ストレプトアビジンには、N末がSEQ ID NO:34のアミノ酸位置10~16の領域で始まり、C末がSEQ ID NO:34のアミノ酸位置133~142の領域で終わるものがいずれも含まれる。いくつかの態様において、ストレプトアビジンの機能的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:35に示されるアミノ酸の配列を含有する。いくつかの態様において、ストレプトアビジン、例えばSEQ ID NO:35に示されるものは、SEQ ID NO:34に示されるナンバリングでAla13に対応する位置に、N末メチオニンをさらに含有することができる。ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインにおける残基の位置への言及は、SEQ ID NO:34における残基のナンバリングに準拠する。
【0202】
ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインの例は、例えばWO 86/02077、DE 19641876 A1、US 6,022,951、WO 98/40396またはWO 96/24606で言及されている。ストレプトアビジンムテインの例は当技術分野において公知である。例えば米国特許第5,168,049号、同第5,506,121号、同第6,022,951号、同第6,156,493号、同第6,165,750号、同第6,103,493号、もしくは同第6,368,813号、または国際公開されたPCT出願WO 2014/076277号を参照されたい。
【0203】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、無修飾ストレプトアビジンまたは野生型ストレプトアビジンの一部ではないアミノ酸を含有するか、または野生型ストレプトアビジンもしくは無修飾ストレプトアビジンの一部だけを含むことができる。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは少なくとも1つのサブユニットを含有し、そのサブユニットは、無修飾ストレプトアビジンまたは野生型ストレプトアビジンのサブユニットと比較して、例えばSEQ ID NO:34に示される野生型ストレプトアビジンのサブユニットまたは例えばSEQ ID NO:35もしくはSEQ ID NO:56に示される機能的に活性なそのフラグメントと比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換(置き換え)を有することができる。
【0204】
いくつかの態様において、結合ドメインに対するストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインの結合アフィニティー、例えば解離定数(Kd)は、1×10-4M、5×10-4M、1×10-5M、5×10-5M、1×10-6M、5×10-6Mもしくは1×10-7M未満、または約1×10-4M、5×10-4M、1×10-5M、5×10-5M、1×10-6M、5×10-6Mもしくは1×10-7M未満であるが、一般的には、1×10-13M、1×10-12M、または1×10-11Mより大きい。例えば、米国特許第5,506,121号に開示されているようなペプチド配列(Strep-tag)は、ビオチン模倣物として作用することができ、例えばKDが約10-4~約10-5Mである結合アフィニティーをストレプトアビジンに対して示す。場合によっては、ストレプトアビジン分子内に変異を作ることによって、結合アフィニティーをさらに改良することができる。例えば米国特許第6,103,493号または国際公開されたPCT出願WO 2014/076277を参照されたい。いくつかの態様において、結合アフィニティーは、当技術分野において公知の方法、例えば本明細書記載のいずれかによって、決定することができる。
【0205】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインなどの試薬は、ペプチドリガンド結合パートナーに対して結合アフィニティーを呈し、このペプチドリガンド結合パートナーは、作用物質(例えば受容体結合作用物質または選択作用物質)中に存在する結合パートナーCであることができる。いくつかの態様において、ペプチド配列は一般式His-Pro-Xaa(式中、Xaaはグルタミン、アスパラギンまたはメチオニンである)を持つ配列、例えばSEQ ID NO:51に示される配列を含有する。いくつかの態様において、ペプチド配列は、例えばSEQ ID NO:42に示されるものなど、SEQ ID NO:52に示される一般式を有する。ある例において、ペプチド配列はTrp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly(Strep-tag(登録商標)とも呼ばれ、SEQ ID NO:43に示される)である。一例において、ペプチド配列はTrp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys(Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:37に示される)である。いくつかの態様において、ペプチドリガンドは、少なくとも2つのストレプトアビジン結合モジュールの連続的配列を含有し、それら2つのモジュール間の距離は、少なくとも0アミノ酸かつ50アミノ酸以下であり、一方の結合モジュールは3~8アミノ酸を有し、少なくとも配列His-Pro-Xaaを含有し、この場合、Xaaはグルタミン、アスパラギンまたはメチオニンであり、他方の結合モジュールは同じまたは異なるストレプトアビジンペプチドリガンド、例えばSEQ ID NO:52に示されるものを有する(例えば国際公開されたPCT出願WO 02/077018、米国特許第7,981,632号を参照されたい)。いくつかの態様において、ペプチドリガンドはSEQ ID NO:44または45のいずれかに示される式を有する配列を含有する。いくつかの態様において、ペプチドリガンドはSEQ ID NO:38~40、46および47のいずれかに示されるアミノ酸の配列を有する。ほとんどの場合、これらのストレプトアビジン結合ペプチドはいずれも、同じ結合部位、すなわちストレプトアビジンのビオチン結合部位に結合する。1つまたは複数のそのようなストレプトアビジン結合ペプチドを結合パートナーC、例えばC1およびC2として使用する場合、結合パートナーCを介して1つまたは複数の作用物質に結合される多量体化試薬および/またはオリゴマー型粒子試薬は、典型的には、1つまたは複数のストレプトアビジンムテインで構成される。
【0206】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは米国特許第6,103,493号記載の変異体である。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、野生型ストレプトアビジンのアミノ酸配列、例えばSEQ ID NO:34に示されるものに基づき、アミノ酸位置44~53の領域内に少なくとも1つの変異を含有する。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、1つまたは複数の残基44、45、46および/または47に変異を含有する。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、野生型ストレプトアビジンの位置44のGluの、疎水性脂肪族アミノ酸、例えばVal、Ala、IleもしくはLeuによる置き換え、位置45の任意のアミノ酸、脂肪族アミノ酸、例えば位置46の疎水性脂肪族アミノ酸、および/または位置47のValの、塩基性アミノ酸、例えばArgまたはLys、例えば一般的にはArgによる置き換えを含有する。いくつかの態様では、Alaが位置46にあり、および/またはArgが位置47にあり、および/またはValまたはIleが位置44にある。いくつかの態様において、ストレプトアビジン変異体、例えばSEQ ID NO:48またはSEQ ID NO:49もしくは50(ストレプトアビジン変異体1、SAM1としても公知である)に示されるアミノ酸の配列を含有する例示的なストレプトアビジンムテインに示されるものは、残基Val44-Thr45-Ala46-Arg47を含有する。いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテイン、例えばSEQ ID NO:53、36または41(SAM2としても公知である)に示されるアミノ酸の配列を含有する例示的ストレプトアビジンムテインにおいて示されるものは、残基Ile44-Gly45-Ala46-Arg47を含有する。場合により、そのようなストレプトアビジンムテインは、例えば米国特許第6,103,493号に記載されており、Strep-Tactin(登録商標)という商標で市販されている。いくつかの態様において、ムテインストレプトアビジンは、SEQ ID NO:54またはSEQ ID NO:55に示されるアミノ酸の配列を含有する。特定の態様において、分子は、SEQ ID NO:35、49、36、54、56、50または41のいずれかに示される配列を含むストレプトアビジンまたはストレプトアビジンムテインの四量体であり、これは、四量体として、単量体1つあたり1つのN末アミンと4つのリジンとを含む20個の第1級アミンを含有する分子である。
【0207】
いくつかの態様において、ストレプトアビジンムテインは、ペプチドリガンド(Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly;Strep-tag(登録商標)とも呼ばれ、SEQ ID NO:43に示される)に対して3.7×10-5であるか、もしくは3.7×10-5以下もしくは約3.7×10-5M以下であり、および/またはペプチドリガンド(Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys;Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:37に示される)に対して7.1×10-5であるか、もしくは7.1×10-5以下もしくは約7.1×10-5M以下であり、ならびに/またはSEQ ID NO:37、44~47、38~40、42、43、51および52のいずれか1つに示されるペプチドリガンドのいずれか1つに対して、7.0×10-5M、5.0×10-5M、1.0×10-5M、5.0×10-6M、1.0×10-6M、5.0×10-7Mもしくは1.0×10-7Mであるか、もしくは7.0×10-5M、5.0×10-5M、1.0×10-5M、5.0×10-6M、1.0×10-6M、5.0×10-7Mもしくは1.0×10-7M以下、または約7.0×10-5M、5.0×10-5M、1.0×10-5M、5.0×10-6M、1.0×10-6M、5.0×10-7Mもしくは1.0×10-7M以下であるが、一般に1×10-13M、1×10-12Mもしくは1×10-11Mまたは約1×10-13M、1×10-12Mもしくは1×10-11Mよりは大きい平衡解離定数(KD)を特徴とする、結合アフィニティーを呈する。
【0208】
いくつかの態様において、結果として得られるストレプトアビジンムテインは、ペプチドリガンド(Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly;Strep-tag(登録商標)とも呼ばれ、SEQ ID NO:43に示される)に対して2.7×104であるか、もしくは2.7×104以上もしくは約2.7×104M-1以上であり、および/またはペプチドリガンド(Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys;Strep-tag(登録商標)IIとも呼ばれ、SEQ ID NO:37に示される)に対して1.4×104であるか、もしくは1.4×104以上もしくは約1.4×104M-1以上であり、および/またはSEQ ID NO:37、44~47、38~40、42、43、51および52のいずれか1つに示されるペプチドリガンドのいずれか1つに対して、1.43×104M-1、1.67×104M-1、2×104M-1、3.33×104M-1、5×104M-1、1×105M-1、1.11×105M-1、1.25×105M-1、1.43×105M-1、1.67×105M-1、2×105M-1、3.33×105M-1、5×105M-1、1×106M-1、1.11×106M-1、1.25×106M-1、1.43×106M-1、1.67×106M-1、2×106M-1、3.33×106M-1、5×106M-1、1×107M-1であるか、もしくは1.43×104M-1、1.67×104M-1、2×104M-1、3.33×104M-1、5×104M-1、1×105M-1、1.11×105M-1、1.25×105M-1、1.43×105M-1、1.67×105M-1、2×105M-1、3.33×105M-1、5×105M-1、1×106M-1、1.11×106M-1、1.25×106M-1、1.43×106M-1、1.67×106M-1、2×106M-1、3.33×106M-1、5×106M-1、1×107M-1以上、もしくは約1.43×104M-1、1.67×104M-1、2×104M-1、3.33×104M-1、5×104M-1、1×105M-1、1.11×105M-1、1.25×105M-1、1.43×105M-1、1.67×105M-1、2×105M-1、3.33×105M-1、5×105M-1、1×106M-1、1.11×106M-1、1.25×106M-1、1.43×106M-1、1.67×106M-1、2×106M-1、3.33×106M-1、5×106M-1、1×107M-1以上であるが、一般的には1×1013M-1、1×1012M-1もしくは1×1011M-1未満である平衡会合定数(KA)を特徴とする結合アフィニティーを呈する。
【0209】
特定の態様において、本明細書では、複数のストレプトアビジン四量体もしくはストレプトアビジンムテイン四量体で構成される、および/または複数のストレプトアビジン四量体もしくはストレプトアビジンムテイン四量体を含有する、オリゴマー型粒子試薬が提供される。一定の態様において、本明細書において提供されるオリゴマー型粒子試薬は、1つもしくは複数の作用物質、例えば刺激性作用物質および/もしくは選択作用物質に、可逆的に結合するか、または1つもしくは複数の作用物質、例えば刺激性作用物質および/もしくは選択作用物質に、可逆的に結合することができる、複数の結合部位を含有する。いくつかの態様において、オリゴマー型粒子は、両端の値を含め70もしくは約70nm~125もしくは約125nmの半径、例えば平均(averageまたはmean)半径、両端の値を含め1×107もしくは約1×107g/mol~1×109もしくは約1×109g/molの分子量、および/または両端の値を含め1,000もしくは約1,000~5,000もしくは約5,000個のストレプトアビジンもしくはストレプトアビジンムテイン四量体を有する。いくつかの態様において、オリゴマー型粒子試薬は、1つまたは複数の作用物質、例えば細胞の表面上の分子、例えば受容体に結合する作用物質に結合、例えば可逆的に結合される。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は、抗体またはその抗原結合フラグメント、例えばFabであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は、細胞(例えばT細胞)上の以下の高分子のうちの1つまたは複数に特異的に結合する:CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD25、CD27、CD28、CD29、CD31、CD44、CD45RA、CD45RO、CD54(ICAM-1)、CD127、MHCI、MHCII、CTLA-4、ICOS、PD-1、OX40、CD27L(CD70)、4-1BB(CD137)、4-1BBL、CD30L、LIGHT、IL-2R、IL-12R、IL-1R、IL-15R;IFN-ガンマR、TNF-アルファR、IL-4R、IL-10R、CD18/CD11a(LFA-1)、CD62L(L-セレクチン)、CD29/CD49d(VLA-4)、Notchリガンド(例えばデルタ様1/4、Jagged 1/2など)、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7およびCXCR3またはそれらのフラグメント、これらの高分子またはそのフラグメントに対する対応するリガンドを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は、細胞(例えばT細胞)上の以下の高分子のうちの1つまたは複数に特異的に結合する:CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD3、CD4、CD8、CD45RAおよび/またはCD45RO。いくつかの態様において、1つまたは複数の作用物質は、抗体またはその抗原結合フラグメント、例えばFabを含み、抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、多重エピトープ特異性を持つ抗体組成物、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、および単鎖分子、ならびに抗体フラグメント(例えばFab、F(ab')2、およびFv)を挙げることができる。いくつかの態様において、1つまたは複数の試薬は、抗体フラグメント(抗原結合フラグメントを含む)、例えばFab、Fab'-SH、Fv、scFv、または(Fab')2フラグメントであるか、またはそれを含む。本明細書において想定される抗体には、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEの定常領域を含む任意のアイソタイプの定常領域を使用できること、そしてそのような定常領域は任意のヒトまたは動物種(例えばマウス種)から得ることができることは、理解されるだろう。いくつかの態様において、1つまたは複数の試薬は、T細胞受容体の1つまたは複数の構成要素に結合しおよび/またはそれらを認識する抗体であるか、またはそのような抗体を含む。特定の態様において、1つまたは複数の試薬は、抗CD3抗体であるか、または抗CD3抗体を含む。一定の態様において、1つまたは複数の試薬は、補助受容体に結合しおよび/または補助受容体を認識する抗体であるか、またはそのような抗体を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の試薬は、抗CD28抗体であるか、または抗CD28抗体を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数の試薬は、抗CD3および/もしくは抗CD28抗体またはその抗原結合フラグメント、例えば結合パートナー、例えばストレプトアビジン結合ペプチド、例えばStrep-tag(登録商標)IIを含有する抗体またはその抗原フラグメントであるか、またはそれを含む。特定の態様において、1つまたは複数の作用物質は、結合パートナー、例えばストレプトアビジン結合ペプチド、例えばStrep-tag(登録商標)IIを含有する抗CD3 Fabおよび/または抗CD28 Fabであるか、またはそれを含む。
【0210】
いくつかの態様において、本明細書では、複数のストレプトアビジン四量体もしくはストレプトアビジンムテイン四量体で構成される、および/または複数のストレプトアビジン四量体もしくはストレプトアビジンムテイン四量体を含有する、オリゴマー型粒子試薬が提供される。一定の態様において、本明細書において提供されるオリゴマー型粒子試薬は、1つもしくは複数の作用物質、例えば刺激性作用物質および/もしくは選択作用物質に、可逆的に結合するか、または1つもしくは複数の作用物質、例えば刺激性作用物質および/もしくは選択作用物質に、可逆的に結合することができる、複数の結合部位を含有する。いくつかの態様において、オリゴマー型粒子は、両端の値を含め80もしくは約80nm~120もしくは約120nmの半径、例えば平均半径、両端の値を含め7.5×106もしくは約7.5×106g/mol~2×108もしくは約2×108g/molの分子量、例えば平均分子量、および/または両端の値を含め500もしくは約500~10,000もしくは約10,000個のストレプトアビジンもしくはストレプトアビジンムテイン四量体の量、例えば平均量を有する。いくつかの態様において、オリゴマー型粒子試薬は、1つまたは複数の作用物質、例えば細胞の表面上の分子、例えば受容体に結合する作用物質に結合、例えば可逆的に結合される。いくつかの態様において、作用物質は、抗CD3 Fabおよび/または抗CD28 Fab、例えば結合パートナー、例えばストレプトアビジン結合ペプチド、例えばStrep-tag(登録商標)IIを含有するFabである。特定の態様において、1つまたは複数の作用物質は、結合パートナー、例えばストレプトアビジン結合ペプチド、例えばStrep-tag(登録商標)IIを含有する、抗CD3 Fabおよび/または抗CD28 Fabである。
【0211】
いくつかの態様において、細胞は、106細胞あたり0.01μg、0.02μg、0.03μg、0.04μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.75μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μgもしくは10μg、または約0.01μg、0.02μg、0.03μg、0.04μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.75μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μgもしくは10μg、または少なくとも0.01μg、0.02μg、0.03μg、0.04μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.75μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μgもしくは10μg、または少なくとも約0.01μg、0.02μg、0.03μg、0.04μg、0.05μg、0.1μg、0.2μg、0.3μg、0.4μg、0.5μg、0.75μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μgもしくは10μgのオリゴマー型刺激性試薬の存在下で、刺激される。いくつかの態様において、細胞は、106細胞あたり4μgまたは約4μgの存在下で、刺激される。特定の態様において、細胞は、106細胞あたり0.8μgまたは約0.8μgの存在下で、刺激される。一定の局面において、4μgのオリゴマー型刺激性試薬は、3もしくは約3μgのオリゴマー型粒子と、1もしくは約1μgの取り付けられた作用物質、例えば0.5もしくは約0.5μgの抗CD3 Fabおよび0.5もしくは約0.5μgの抗CD28 Fabであるか、またはそれらを含む。
【0212】
2. 細胞からの刺激性試薬の除去
いくつかの態様において、刺激性試薬は、細胞を収集、収穫、または製剤化する前に、細胞または細胞集団から除去または分離される。いくつかの態様において、刺激性試薬は、本明細書においてセクションI-Dなどに記載するインキュベーションなどのインキュベーション後またはインキュベーション中に、細胞または細胞集団から除去または分離される。一定の態様において、細胞または細胞集団は、インキュベーション後に、ただし細胞を収集、収穫または製剤化するための工程の前に、刺激性試薬を除去するためのプロセス、手順、工程、または技法に供される。特定の態様において、細胞または細胞集団は、インキュベーション後に、刺激性試薬を除去するためのプロセス、手順、工程または技法に供される。いくつかの局面において、刺激性試薬がインキュベーション中に細胞から分離または除去される場合、インキュベーションの残りの継続時間は、分離または除去前と同じインキュベーション条件に、細胞を戻す。
【0213】
一定の態様において、刺激性試薬は細胞から除去および/または分離される。特定の態様において、刺激性試薬と細胞との間の結合および/または会合は、いくつかの状況では、インキュベーション中に経時的に低減されうる。一定の態様では、刺激性試薬と細胞との間の結合および/または会合を低減するために、1つまたは複数の作用物質を加えうる。特定の態様では、細胞培養条件の変化、例えば作用物質の添加ならびに/または培地の温度および/もしくはpHの変化によって、刺激性試薬と細胞との間の結合および/または会合が低減しうる。したがっていくつかの態様では、刺激性試薬を、例えばインキュベーション、細胞培養系および/または溶液から細胞も一緒に除去するのではなく、細胞とは別に、インキュベーション、細胞培養系および/または溶液から除去しうる。
【0214】
一定の態様において、刺激性試薬は、ある時間後に、細胞から分離および/または除去される。特定の態様において、ある時間とは刺激の開始からの時間である。特定の態様において、インキュベーションのスタートは、細胞を刺激性試薬および/または刺激性試薬を含有する培地もしくは溶液と接触させた時点またはおよそその時点であるとみなされる。特定の態様において、刺激性試薬は、刺激の開始から、端点を含む120時間、108時間、96時間、84時間、72時間、60時間、48時間、36時間、24時間、もしくは12時間以内、または約120時間、108時間、96時間、84時間、72時間、60時間、48時間、36時間、24時間、もしくは12時間以内に、細胞から除去または分離される。特定の態様において、刺激性試薬は、刺激が開始された後、48時間または約48時間で、細胞から除去または分離される。一定の態様において、刺激性試薬は、刺激が開始された後、72時間または約72時間で、細胞から除去または分離される。いくつかの態様において、刺激性試薬は、刺激が開始された後、96時間または約96時間で、細胞から除去または分離される。
【0215】
刺激性試薬(例えば、ビーズ粒子もしくは磁化可能粒子であるか、またはそれらの粒子を含有する刺激性試薬)を細胞から除去するための方法は公知である。一定の態様では、ビーズ刺激性試薬、例えば抗CD3/抗CD28抗体コンジュゲート常磁性ビーズが、細胞または細胞集団から分離または除去される。いくつかの態様において、例えば刺激性試薬の一次抗体に結合して、細胞上のその抗原に対するそのアフィニティーを変化させることにより、穏やかな脱離を可能にする競合抗体、例えば非標識抗体の使用を、利用することができる。場合により、脱離後は、競合抗体が粒子(例えばビーズ粒子)と会合した状態を保つ一方、未反応の抗体は洗い流されるかまたは洗い流すことができ、細胞は単離、選択、富化および/または活性化抗体を含まない。そのような試薬の例はDETACaBEADである(Friedl et al. 1995、Entschladen et al. 1997)。いくつかの態様において、粒子(例えばビーズ粒子)は、切断可能リンカー(例えばDNAリンカー)の存在下で除去することができ、この場合、粒子結合抗体はリンカーにコンジュゲートされる(例えばCELLection、Dynal)。場合により、リンカー領域は、例えばDNaseまたは他の放出緩衝液の添加などによって、単離後に細胞から粒子(例えばビーズ粒子)を除去するための、切断可能部位になる。いくつかの態様では、他の酵素的方法も、細胞から粒子(例えばビーズ粒子)を放出させるために使用することができる。いくつかの態様において、粒子(例えばビーズ粒子または磁化可能粒子)は生分解性である。
【0216】
いくつかの態様において、刺激性試薬は、磁性、常磁性および/もしくは超常磁性であり、ならびに/または磁性、常磁性および/もしくは超常磁性であるビーズを含有し、刺激性試薬は、細胞を磁場に曝露することによって細胞から除去しうる。磁場を発生させるための磁石を含んでいる適切な装備の例としては、DynaMag CTS(Thermo Fisher)、Magnetic Separator(タカラ)およびEasySep Magnet(Stem Cell Technologies)が挙げられる。
【0217】
特定の態様において、刺激性試薬は、提供される方法の完了前に、例えば本明細書において提供される方法によって生産された改変細胞を収穫、収集および/または製剤化する前に、細胞から除去または分離される。いくつかの態様において、刺激性試薬は、細胞を改変した後に、例えば形質導入またはトランスフェクションを行った後に、細胞から除去および/または分離される。一定の態様において、刺激性試薬は、細胞の培養後に、例えば改変された、例えばトランスフェクトまたは形質導入された細胞の、増殖および/または発現を促進するための条件下での培養に先立って、除去される。特定の態様において、刺激性試薬は、細胞の培養中に細胞が閾数、閾密度および/または閾拡大を達成した後に、除去される。いくつかの態様において、刺激性試薬は、細胞を製剤化する前に、例えば培養細胞、閾数、閾濃度または閾拡大を達成した培養細胞が形成される前に、除去される。
【0218】
いくつかの態様において、刺激性ビーズ試薬、例えば刺激性磁性ビーズ試薬は、細胞を収集、収穫または製剤化する前に、細胞または細胞集団から除去または分離される。いくつかの態様において、刺激性ビーズ試薬、例えば刺激性磁性ビーズ試薬は、インキュベーションの間またはインキュベーション後に、例えば本明細書においてセクションI-Dなどに記載するインキュベーションの間またはその後に、磁場への曝露によって、細胞または細胞集団から除去または分離される。一定の態様において、細胞または細胞集団は、インキュベーション後に、ただし細胞を収集、収穫または製剤化するための工程の前に、刺激性ビーズ試薬、例えば刺激性磁性ビーズ試薬を除去するために、磁場に曝露される。特定の態様において、細胞または細胞集団は、インキュベーション後に、刺激性ビーズ試薬、例えば刺激性磁性ビーズ試薬を除去するために磁場に曝露される。いくつかの局面において、刺激性ビーズ試薬がインキュベーション中に細胞または細胞集団から分離または除去される場合、インキュベーションの残りの継続時間は、磁場に曝露する前と同じインキュベーション条件に、細胞または細胞集団を戻す。
【0219】
特定の態様において、刺激性ビーズ試薬、例えば刺激性磁性ビーズ試薬は、刺激の開始から、端点を含む120時間、108時間、96時間、84時間、72時間、60時間、48時間、36時間、24時間、もしくは12時間以内に、または約120時間、108時間、96時間、84時間、72時間、60時間、48時間、36時間、24時間、もしくは12時間以内に、例えば磁場への曝露によって、細胞から除去または分離される。一定の態様において、刺激性ビーズ試薬、例えば刺激性磁性ビーズ試薬は、刺激が開始された後、72時間または約72時間で、例えば磁場への曝露によって、細胞から除去または分離される。いくつかの態様において、刺激性ビーズ試薬、例えば刺激性磁性ビーズ試薬は、刺激が開始された後、96時間または約96時間で、例えば磁場への曝露によって、細胞から除去または分離される。
【0220】
一定の態様において、刺激性試薬は、ある時間後に、細胞から分離および/または除去される。特定の態様において、ある時間とは、刺激条件下でのインキュベーションのスタートおよび/または開始からの時間である。特定の態様において、インキュベーションのスタートは、細胞を刺激性試薬および/または刺激性試薬を含有する培地もしくは溶液と接触させた時点またはおよそその時点であるとみなされる。特定の態様において、刺激性試薬は、インキュベーションのスタートまたは開始後、28日、21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日もしくは9日以内に、または約28日、21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日もしくは9日以内に、細胞から除去または分離される。いくつかの態様において、刺激性試薬は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞をプールし、合わせ、および/または混合してインプット組成物にした後、28日、21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日もしくは9日以内に、または約28日、21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日もしくは9日以内に、細胞から除去または分離される。一定の態様において、刺激性試薬は、生物学的試料からCD4+T細胞およびCD8+T細胞を取得し、単離し、富化し、および/または選択した後、28日、21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日もしくは9日以内に、または約28日、21日、20日、19日、18日、17日、16日、15日、14日、13日、12日、11日、10日もしくは9日以内に、細胞から除去または分離される。
【0221】
いくつかの態様において、刺激性作用物質の除去、例えば記載のオリゴマー型刺激性試薬の除去は、1つまたは複数の刺激性作用物質のシグナリングを途絶する、例えば低減しおよび/または終結させるために、インキュベートされたT細胞の集団に、競合作用物質などの物質を添加することを含む。いくつかの態様において、インキュベートされたT細胞の集団は、競合作用物質などの物質、例えばビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンの存在を含む。いくつかの態様において、競合作用物質などの物質、例えばビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンは、インキュベーション中に当該物質が外から加えられなかった培養T細胞の参照集団または参照調製物中の当該物質の量よりも、少なくとも1.5倍多く、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、もしくは少なくとも1000倍、またはそれ以上多い量で存在する。いくつかの態様において、培養T細胞の集団中の競合作用物質などの物質、例えばビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンの量は、10もしくは約10μM~100もしくは約100μM、100もしくは約100μM~1もしくは約1mM、100もしくは約100μM~500もしくは約500μM、または10もしくは約10μM~100もしくは約100μMである。いくつかの態様では、細胞または細胞集団からオリゴマー型刺激性試薬を分離または除去するために、10μMまたは約10μMのビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンが、細胞または細胞集団に加えられる。
【0222】
一定の態様において、1つまたは複数の作用物質(例えばTCRおよび/または補助受容体を刺激または活性化する作用物質)は、例えばオリゴマー型試薬上に存在する複数の特定結合部位(例えば結合部位Z)を介して、オリゴマー型試薬と会合(例えば可逆的に結合)する。場合によっては、これにより、作用物質が互いに密に配置されて、作用物質によって結合されるまたは作用物質によって認識される(少なくとも2コピーの)細胞表面分子を有する標的細胞を作用物質と接触させた場合に、アビディティー効果が生じうるようになる。いくつかの局面において、受容体結合試薬は、競合試薬の存在下では受容体結合試薬が細胞から解離するように、結合部位Bにおいて細胞の受容体分子に対して低いアフィニティーを有する。したがっていくつかの態様において、競合試薬の存在下では、作用物質が細胞から除去される。
【0223】
いくつかの態様において、オリゴマー型刺激性試薬は、抗CD3 Fabおよび抗CD28 Fabが可逆的に取り付けられているストレプトアビジンムテインオリゴマーである。いくつかの態様において、取り付けられるFabは、ストレプトアビジン結合ドメイン、例えばストレプトアビジンムテインオリゴマーへの可逆的取り付けを可能にするものを含有する。場合により、CD3および/またはCD28を発現しているT細胞を、可逆的に取り付けられたFabを持つオリゴマー型刺激性試薬と接触させた場合に、アビディティー効果が生じうるように、抗CD3 Fabと抗CD28 Fabは互いに密に配置される。いくつかの局面において、Fabは、例えばビオチンまたはビオチンバリアントもしくはビオチン類似体などの競合試薬の存在下ではFabが細胞から解離するように、CD3およびCD28に対して低いアフィニティーを有する。したがって、いくつかの態様において、Fabは、競合試薬、例えばD-ビオチンの存在下で、細胞から除去され、または解離する。
【0224】
いくつかの態様において、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬は、細胞を収集、収穫または製剤化する前に、細胞または細胞集団から除去または分離される。いくつかの態様において、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬は、インキュベーションの後またはその間に、例えば本明細書においてセクションI-Dなどに記載するインキュベーションの後またはその間に、競合試薬、例えばビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンとの接触、またはそれらへの曝露により、細胞または細胞集団から除去または分離される。一定の態様では、細胞または細胞集団を、インキュベーション後に、ただし細胞を収集、収穫または製剤化するための工程の前に、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬を除去するために、競合試薬、例えばビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンと接触させ、またはそれらに曝露する。特定の態様では、細胞または細胞集団を、インキュベーション後に、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬を除去するために、競合試薬、例えばビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンと接触させ、またはそれらに曝露する。いくつかの局面において、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬が、例えば競合試薬、例えばビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンとの接触またはそれらへの曝露などによって、インキュベーション中に細胞から分離または除去される場合、インキュベーションの残りの継続時間は、分離または除去前と同じインキュベーション条件に、細胞を戻す。
【0225】
いくつかの態様では、オリゴマー型刺激性試薬を細胞から除去または分離するために、細胞を、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、100μM、500μM、0.01mM、1mM、もしくは10mM、または約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、100μM、500μM、0.01mM、1mM、もしくは10mM、または少なくとも0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、100μM、500μM、0.01mM、1mM、もしくは10mM、または少なくとも約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、100μM、500μM、0.01mM、1mM、もしくは10mMの競合試薬と接触させる。さまざまな態様では、抗CD3 Fabおよび抗CD28 Fabが可逆的に取り付けられている刺激性ストレプトアビジンムテインオリゴマーを細胞から除去または分離するために、細胞を、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、100μM、500μM、0.01mM、1mMもしくは10mM、または約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、100μM、500μM、0.01mM、1mMもしくは10mM、または少なくとも0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、100μM、500μM、0.01mM、1mMもしくは10mM、または少なくとも約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、100μM、500μM、0.01mM、1mMもしくは10mMのビオチンまたはビオチン類似体、例えばD-ビオチンと接触させる。
【0226】
特定の態様において、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬は、刺激の開始から、端点を含む120時間、108時間、96時間、84時間、72時間、60時間、48時間、36時間、24時間、もしくは12時間以内に、または約120時間、108時間、96時間、84時間、72時間、60時間、48時間、36時間、24時間、もしくは12時間以内に、細胞から除去または分離される。特定の態様において、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬は、刺激を開始した後、48時間または約48時間で、細胞から除去または分離される。一定の態様において、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬は、刺激を開始した後、72時間または約72時間で、細胞から除去または分離される。いくつかの態様において、刺激性オリゴマー型試薬、例えば刺激性オリゴマー型ストレプトアビジンムテイン試薬は、刺激を開始した後、96時間または約96時間で、細胞から除去または分離される。
【0227】
C. ウイルスベクター粒子
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、ウイルスベクターのゲノム中に組換えおよび/または異種分子、例えば組換えまたは異種タンパク質、例えば組換えおよび/または異種受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)または他の抗原受容体をコードする核酸を含有する、レトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルス粒子である。ウイルスベクター粒子のゲノムは、典型的には、組換え分子をコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)の他にも配列を含む。そのような配列には、ゲノムがウイルス粒子にパッケージングされることを可能にする配列、および/またはCARなどの組換え受容体をコードする核酸の発現を促進する配列が含まれうる。
【0228】
1. ウイルスベクター
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、レトロウイルスゲノムベースのベクターに由来するゲノム、例えばレンチウイルスゲノムベースのベクターに由来するゲノムを含有する。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子はレンチウイルスベクター粒子である。提供されるウイルスベクターのいくつかの局面において、組換えタンパク質、例えば抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)またはトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする異種核酸(例えばポリヌクレオチド)は、ベクターゲノムの5'LTR配列と3'LTR配列との間に含有され、および/または位置する。いくつかの態様において、組換えタンパク質は抗原受容体である。いくつかの態様において、組換えタンパク質はT細胞受容体(TCR)である。いくつかの態様において、組換えタンパク質はキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0229】
いくつかの態様において、ウイルスベクターゲノムは、レンチウイルスゲノム、例えばHIV-1ゲノムまたはSIVゲノムなどである。いくつかの態様において、レンチウイルスベクター粒子は複製欠損性である。例えばレンチウイルスベクターは、ビルレンス遺伝子を多重に弱毒化することによって作製されており、例えば遺伝子env、vif、vpuおよびnefを欠失させることで、ベクターを、治療目的にとって、より安全にものにすることができる。レンチウイルスベクターは公知である。Naldini et al.(1996および1998)、Zufferey et al.(1997)、Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたい)。いくつかの態様において、これらのウイルスベクターはプラスミドベースまたはウイルスベースであり、外来核酸の組込み、選択、および宿主細胞への核酸(例えばポリヌクレオチド)の移入のための必須配列を保持するように構成されている。公知のレンチウイルスは、American Type Culture Collection(「ATCC」、20110-2209バージニア州マナッサス・ユニバーシティブルバード10801)などの寄託機関または収集機関から容易に入手することができるか、または一般に利用可能な技法を使って公知の供給源から単離することができる。
【0230】
レンチウイルスベクターの非限定的な例として、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、HIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1(HTLV-1)、HTLV-2またはウマ伝染性貧血ウイルス(E1AV)などのレンチウイルスに由来するものが挙げられる。例えばレンチウイルスベクターは、HIVビルレンス遺伝子を多重に弱毒化することによって作製されており、例えば遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefを欠失させることで、ベクターは、治療目的にとって、より安全なものになる。レンチウイルスベクターは当技術分野において公知である。Naldini et al.(1996および1998)、Zufferey et al.(1997)、Dull et al.,1998、米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたい)。いくつかの態様において、これらのウイルスベクターはプラスミドベースまたはウイルスベースであり、外来核酸の組込み、選択、および宿主細胞への核酸(例えばポリヌクレオチド)の移入のための必須配列を保持するように構成されている。公知のレンチウイルスは、American Type Culture Collection(「ATCC」、20110-2209バージニア州マナッサス・ユニバーシティブルバード10801)などの寄託機関または収集機関から容易に入手することができるか、または一般に利用可能な技法を使って公知の供給源から単離することができる。
【0231】
いくつかの態様において、ウイルスゲノムベクターは、レンチウイルスなどのレトロウイルスの5'LTRおよび3'LTRの配列を含有することができる。いくつかの局面において、ウイルスゲノムコンストラクトは、レンチウイルスの5'LTRおよび3'LTRからの配列を含有してよく、特に、レンチウイルスの5'LTRからのR配列およびU5配列ならびにレンチウイルスの不活化されたまたは自己不活化3'LTRを含有することができる。LTR配列は、任意の種の任意のレンチウイルスに由来するLTR配列であることができる。例えばそれらはHIV、SIV、FIVまたはBIVからのLTR配列でありうる。典型的には、LTR配列はHIV LTR配列である。
【0232】
いくつかの態様において、HIVウイルスベクターなどのウイルスベクターの核酸(例えばポリヌクレオチド)は、追加の転写単位を欠く。ベクターゲノムは、不活化されたまたは自己不活化3'LTRを含有することができる(Zufferey et al. J Virol 72:9873,1998、Miyoshi et al., J Virol 72:8150,1998)。例えば、ウイルスベクターRNAを生産するために使用される核酸(例えばポリヌクレオチド)の3'LTRのU3領域における欠失は、自己不活化(self-inactivating)(SIN)ベクターの生成に使用することができる。その場合、この欠失は、逆転写中にプロウイルスDNAの5'LTRに移入されうる。自己不活化ベクターは、一般に、3'長末端反復(LTR)からのエンハンサーおよびプロモーター配列の欠失を有し、それはベクター組込み(vector integration)時に5'LTRにコピーされる。いくつかの態様では、LTRの転写活性を消失させるためにTATAボックスの除去を含む十分な配列を除去することができる。これにより、形質導入細胞における完全長ベクターRNAの生産を防止することができる。いくつかの局面において、3'LTRのU3エレメントは、そのエンハンサー配列、TATAボックス、Sp1およびNF-カッパB部位の欠失を含有する。自己不活化3'LTRの結果として、進入と逆転写に続いて生成するプロウイルスは、不活化された5'LTRを含有する。これは、ベクターゲノムの可動化のリスクと、LTRが近くの細胞性プロモーターに及ぼす影響とを低減することによって、安全性を改良することができる。自己不活化3'LTRは、当技術分野において公知の任意の方法によって構築することができる。いくつかの態様において、これは、ベクターの力価にも、インビトロまたはインビボでのベクターの性質にも、影響を及ぼさない。
【0233】
任意で、レンチウイルス5'LTRからのU3配列は、ウイルスコンストラクト中のプロモーター配列、例えば異種プロモーター配列で置き換えることができる。これは、パッケージング細胞株から回収されるウイルスの力価を増加させることができる。エンハンサー配列も含めることができる。パッケージング細胞株におけるウイルスRNAゲノムの発現を増加させるエンハンサー/プロモーターの組合せはどれでも使用しうる。一例では、CMVエンハンサー/プロモーター配列が使用される(米国特許第5,385,839号および米国特許第5,168,062号)。
【0234】
一定の態様において、挿入変異生成のリスクは、レンチウイルスベクターゲノムなどのレトロウイルスベクターゲノムを、組込み欠損性になるように構築することによって、最小限に抑えることができる。非組込み型ベクターゲノムを生産するためにさまざまなアプローチを実行することができる。いくつかの態様では、pol遺伝子のインテグラーゼ酵素構成要素中に、それが不活性インテグラーゼを持つタンパク質をコードすることになるように、変異を組み入れることができる。いくつかの態様では、組込みを防止するために、ベクターゲノムそのものを、例えば1つまたは両方の付着部位を変異または欠失させることによって、または3'LTR-近位ポリプリントラクト(proximal polypurine tract)(PPT)を欠失または改変によって非機能的にすることによって、修飾することができる。いくつかの態様では非遺伝子アプローチを利用することができ、それらにはインテグラーゼの1つまたは複数の機能を阻害する薬理学的作用物質が含まれる。これらのアプローチは相互に排他的ではない。すなわち、それらのうちの2つ以上を同時に使用することができる。例えば、インテグラーゼと付着部位の両方が非機能的であってもよいし、インテグラーゼとPPT部位が非機能的であってもよいし、付着部位とPPT部位が非機能的であってもよいし、それらのすべてが非機能的であってもよい。そのような方法およびウイルスベクターゲノムは公知であり、入手することができる(Philpott and Thrasher, Human Gene Therapy 18:483, 2007、Engelman et al. J Virol 69:2729, 1995、Brown et al J Virol 73:9011(1999)、WO 2009/076524、McWilliams et al., J Virol 77:11150, 2003、Powell and Levin J Virol 70:5288, 1996参照)。
【0235】
いくつかの態様において、ベクターは、宿主細胞、例えば原核宿主細胞における増殖のための配列を含有する。いくつかの態様において、ウイルスベクターの核酸(例えばポリヌクレオチド)は、細菌細胞などの原核細胞における増殖のために1つまたは複数の複製起点を含有する。いくつかの態様において、原核生物複製起点を含むベクターは、その発現によって薬物耐性などの検出可能または選択可能マーカーが付与される遺伝子も含有しうる。
【0236】
2. 異種タンパク質をコードする核酸
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、異種組換えタンパク質をコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を含有する。いくつかの態様において、異種組換えタンパク質または異種組換え分子は、組換え受容体、例えば抗原受容体、SB-トランスポゾン、例えば遺伝子サイレンシング用、カプシドに封入されたトランスポゾン(capsid-enclosed transposon)、相同二本鎖核酸、例えばゲノム組換え用またはレポーター遺伝子(例えばGFPなどの蛍光タンパク質)またはルシフェラーゼ)であるか、またはそれを含む。
【0237】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、組換え受容体および/またはキメラ受容体、例えば異種受容体タンパク質をコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を含有する。組換え受容体、例えば異種受容体としては、抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)を含む機能的非TCR抗原受容体、およびトランスジェニックT細胞受容体(TCR)などの他の抗原結合受容体を挙げることができる。受容体としては、他の受容体、例えば他のキメラ受容体、例えば特定のリガンドに結合する受容体であって、CAR中に存在するものと類似する膜貫通ドメインおよび/または細胞内シグナリングドメインを有するものも挙げることができる。
【0238】
そのような例のいずれにおいても、核酸(例えばポリヌクレオチド)は、ウイルスベクターのある領域、例えば一般的にはウイルスゲノムの非必須領域に挿入され、または位置する。いくつかの態様において、核酸(例えばポリヌクレオチド)は、複製欠損性であるウイルスを生産するために、一定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入される。
【0239】
いくつかの態様において、コードされる組換え抗原受容体、例えばCARは、提供する方法および組成物により標的とするために本明細書に記載するものを含め、標的とする細胞または疾患、例えばがん、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、または他の疾患もしくは状態における1つまたは複数のリガンドに特異的に結合することができるものである。
【0240】
一定の態様において、例示的な抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、CAIXまたはG250としても公知である)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、NY-ESO-1およびLAGE-2としても公知である)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD138、CD171、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断型上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(Fc receptor like 5:FCRL5、Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても公知である)、胎児型アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、Gタンパク質共役受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Ra)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Ra2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、メラノーマ関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、メソテリン、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経系細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養芽層糖タンパク質(TPBG、5T4としても知られる)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子であるか、またはそれを含む。受容体が標的とする抗原は、いくつかの態様において、多数の公知B細胞マーカーのうちのいずれかなどといった、B細胞悪性腫瘍と関連する抗原を含む。いくつかの態様において、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79bもしくはCD30であるか、またはそれを含む。
【0241】
いくつかの態様において、例示的な抗原は、オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、L1-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、およびB型肝炎表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、0EPHa2、ErbB2、3もしくは4、FBP、胎児型アセチルコリン受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-アルファ、IL-13R-アルファ2、kdr、カッパ軽鎖、ルイスY、L1細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、腫瘍胎児性抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、およびMAGE A3、CE7、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、サイクリン、例えばサイクリンA1(CCNA1)、ならびに/またはビオチン化分子、ならびに/またはHIV、HCV、HBV、HPVおよび/もしくは他の病原体が発現するおよび/もしくはそれら病原体に特有のもしくは特異的な分子、ならびに/またはそれらのがん遺伝子型である。
【0242】
いくつかの態様において、抗原は、病原体特異的抗原または病原体発現抗原であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、抗原は、ウイルス抗原(例えばHIV、HCV、HBVなどに由来するウイルス抗原)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原である。
【0243】
CARおよび組換えTCRを含む抗原受容体、ならびにそれらの生産および導入は、いくつかの態様において、例えば国際特許出願公開第200014257号、同2013126726号、同第2012/129514号、同第2014031687号、同第2013/166321号、2013/071154号、同第2013/123061号、米国特許出願公開第2002131960号、同第2013287748号、同第20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同8,324,353号、および同8,479,118号、ならびに欧州特許出願第2537416号記載のもの、ならびに/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April;3(4):388-398、Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4):e61338、Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October;24(5):633-39、Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2):160-75に記載のものが含まれる。
【0244】
a. キメラ抗原受容体
いくつかの態様において、ウイルスベクターのゲノムに含有される核酸(例えばポリヌクレオチド)はキメラ抗原受容体(CAR)をコードする。CARは、一般に、1つまたは複数の細胞内シグナリング構成要素に連結された細胞外リガンド結合ドメイン、例えば抗体またはそのフラグメントを含有する細胞外部分を持つ遺伝子改変受容体である。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナリングドメインとを連結する膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインを含む。そのような分子は、典型的には、天然の抗原受容体によるシグナルおよび/またはそのような受容体と共刺激受容体との組合せによるシグナルを模倣し、または近似する。
【0245】
いくつかの態様では、特定のマーカー、例えば養子治療の標的となる特定細胞タイプにおいて発現されるマーカー、例えばがんマーカーおよび/または記載の抗原のいずれかに対して、特異性を持つCARが構築される。したがって、CARは、典型的には、抗体の1つもしくは複数の抗原結合フラグメント、ドメインもしくは一部分、または1つもしくは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。いくつかの態様において、CARは、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合部分、例えば可変重鎖(VH)もしくはその抗原結合部分、またはモノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)に由来する単鎖抗体フラグメント(scFv)を含む。
【0246】
いくつかの態様では、特定の抗原(またはマーカーまたはリガンド)、例えば特定細胞タイプの表面に発現される抗原に対する特異性を持つCARを発現させる、改変された細胞、例えばT細胞が提供される。いくつかの態様において、抗原はポリペプチドである。いくつかの態様において、これは炭水化物または他の分子である。いくつかの態様において、抗原は、正常細胞もしくは正常組織または非標的細胞もしくは非標的組織と比較して、疾患または状態の細胞、例えば腫瘍細胞または病原性細胞上で選択的に発現または過剰に発現される。別の態様において、抗原は正常細胞上に発現し、および/または改変細胞上に発現する。
【0247】
特定の態様において、組換え受容体、例えばキメラ受容体は、細胞内シグナリング領域を含有し、これは、細胞質シグナリングドメインまたは細胞質シグナリング領域(相互可換的に細胞内シグナリングドメインまたは細胞内シグナリング領域とも呼ばれる)、例えばT細胞において一次活性化シグナルを誘導することができる細胞質(細胞内)領域、例えばT細胞受容体(TCR)構成要素の細胞質シグナリングドメインまたは細胞質シグナリング領域(例えばCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のゼータ鎖の細胞質シグナリングドメインもしくは細胞質シグナリング領域、またはその機能的バリアントもしくはシグナリング部分)を含み、および/または免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。いくつかの態様において、CARは、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインと、ITAMを含む細胞内シグナリングドメインとを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリングドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む。
【0248】
いくつかの態様において、キメラ受容体は、リガンド(例えば抗原)抗原に特異的に結合する細胞外リガンド結合ドメインを、さらに含有する。いくつかの態様において、キメラ受容体は、抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインを含有するCARである。いくつかの態様において、リガンド、例えば抗原は、細胞の表面に発現するタンパク質である。いくつかの態様において、CARはTCR様CARであり、抗原は、TCRのように主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子との関連において細胞表面上で認識される、プロセシングされたペプチド抗原、例えば細胞内タンパク質のペプチド抗原である。
【0249】
CARを含む例示的な抗原受容体、およびそのような受容体を改変し細胞に導入するための方法には、例えば国際特許出願公開第200014257号、同2013126726号、同第2012/129514号、同第2014031687号、同第2013/166321号、2013/071154号、同第2013/123061号、米国特許出願公開第2002131960号、同第2013287748号、同第20130149337号、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号、および同第8,479,118号、ならびに欧州特許出願第2537416号に記載のもの、ならびに/またはSadelain et al., Cancer Discov.2013 April;3(4):388-398、Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4):e61338、Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October;24(5):633-39、Wu et al., Cancer, 2012 March 18(2):160-75に記載のものが含まれる。いくつかの局面において、抗原受容体には、米国特許第7,446,190号記載のCAR、および国際特許出願公開第2014055668 A1号記載のものが含まれる。CARの例として、上述の刊行物のいずれか、例えばWO 2014031687、US 8,339,645、US 7,446,179、US 2013/0149337号、米国特許第7,446,190号、米国特許第8,389,282号、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology,10,267-276(2013)、Wang et al.(2012)J. Immunother.35(9):689-701、およびBrentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)に開示されているCARが挙げられる。WO 2014031687、US 8,339,645、US 7,446,179、US 2013/0149337、米国特許第7,446,190号および米国特許第8,389,282号も参照されたい。
【0250】
いくつかの態様では、特定の抗原(またはマーカーまたはリガンド)、例えば養子治療の標的となる特定の細胞タイプにおいて発現する抗原、例えばがんマーカー、および/または減弱応答の誘導を企図している抗原、例えば正常細胞タイプ上または非疾患細胞タイプ上に発現する抗原に対して特異性を持つCARが構築される。したがってCARは、典型的には、その細胞外部分に1つまたは複数の抗原結合分子、例えば1つまたは複数の抗原結合フラグメント、抗原結合ドメインもしくは抗原結合部分、または1つもしくは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。いくつかの態様において、CARは、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合部分、例えばモノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)に由来する単鎖抗体フラグメント(scFv)を含む。
【0251】
いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分を、抗原受容体などの組換え受容体の一部として、細胞上に発現させる。抗原受容体には、機能的非TCR抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。一般に、ペプチド-MHC複合体に対してTCR様の特異性を呈する抗体または抗原結合フラグメントを含有するCARは、TCR様CARと呼ぶこともできる。いくつかの態様において、TCR様CARの、MHC-ペプチド複合体に特異的な細胞外抗原結合ドメインは、1つまたは複数の細胞内シグナリング構成要素に、いくつかの局面ではリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して、連結される。いくつかの態様において、そのような分子は、典型的には、天然の抗原受容体、例えばTCRによるシグナル、および任意で、そのような受容体と共刺激受容体との組合せによるシグナルを、模倣または近似することができる。
【0252】
いくつかの態様において、組換え受容体、例えばキメラ受容体(例えばCAR)は、抗原(またはリガンド)に結合する(例えば特異的に結合する)リガンド結合ドメインを含む。キメラ受容体が標的とする抗原には、養子細胞治療の標的となる疾患、状態または細胞タイプとの関連で発現するものが含まれる。疾患および状態には、増殖性、新生物性および悪性の疾患および障害、例えばがんおよび腫瘍、例えば血液がん、免疫系のがん、例えばリンパ腫、白血病および/または骨髄腫、例えばB、Tおよび骨髄性白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫が含まれる。
【0253】
いくつかの態様において、抗原(またはリガンド)はポリペプチドである。いくつかの態様において、これは炭水化物または他の分子である。いくつかの態様において、抗原(またはリガンド)は、正常細胞もしくは正常組織または非標的細胞もしくは非標的組織と比較して、疾患または状態の細胞、例えば腫瘍細胞または病原性細胞上で選択的に発現または過剰に発現される。別の態様において、抗原は正常細胞上に発現し、および/または改変細胞上に発現する。いくつかの態様において、抗原は、疾患もしくは状態、例えばがん、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、または感染性疾患と関連する。いくつかの態様において、抗原受容体、例えばCARは、ユニバーサルタグに特異的に結合する。
【0254】
いくつかの態様において、CARは、細胞の表面に発現される抗原、例えば無傷の抗原を特異的に認識する抗体または抗原結合フラグメント(例えばscFv)を含有する。
【0255】
いくつかの態様において、抗原(またはリガンド)は、腫瘍抗原またはがんマーカーである。いくつかの態様において、抗原(またはリガンド)抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、CAIXまたはG250としても公知である)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、NY-ESO-1およびLAGE-2としても公知である)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD138、CD171、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断型上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5、Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても公知である)、胎児型アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、Gタンパク質共役受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Ra)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Ra2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、メラノーマ関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、メソテリン、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経系細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養芽層糖タンパク質(TPBG、5T4としても知られる)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子であるか、またはそれを含む。受容体が標的とする抗原は、いくつかの態様において、多数の公知B細胞マーカーのうちのいずれかなどといった、B細胞悪性腫瘍と関連する抗原を含む。いくつかの態様において、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79bもしくはCD30であるか、またはそれを含む。
【0256】
いくつかの態様において、抗原または抗原結合ドメインはCD19である。いくつかの態様において、scFvは、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントに由来するVHおよびVLを含有する。いくつかの態様において、CD19に結合する抗体または抗体フラグメントは、FMC63およびSJ25C1などのマウス由来抗体である。いくつかの態様において、抗体または抗体フラグメントは、例えば米国特許出願公開番号US 2016/0152723に記載のヒト抗体である。
【0257】
いくつかの態様において、scFvはFMC63由来である。FMC63は、一般に、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1細胞およびNalm-16細胞に対して産生させたマウスモノクローナルIgG1抗体を指す(Ling, N. R., et al.(1987)Leucocyte typing III.302)。いくつかの態様において、FMC63抗体は、SEQ ID NO:60に示されるCDRH1、SEQ ID NO:61に示されるCDRH2、およびSEQ ID NO:62またはSEQ ID NO:76に示されるCDRH3、ならびにSEQ ID NO:57に示されるCDRL1、およびSEQ ID NO:58またはSEQ ID NO:77に示されるCDRL2、およびSEQ ID NO:59またはSEQ ID NO:78に示されるCDRL3を含む。いくつかの態様において、FMC63抗体は、SEQ ID NO:63のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:64のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0258】
いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:57のCDRL1配列、SEQ ID NO:58のCDRL2配列、およびSEQ ID NO:59のCDRL3配列を含有する可変軽鎖、ならびにSEQ ID NO:60のCDRH1配列、SEQ ID NO:61のCDRH2配列、およびSEQ ID NO:62のCDRH3配列を含有する可変重鎖を含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:57のCDRL1配列、SEQ ID NO:77のCDRL2配列、およびSEQ ID NO:78のCDRL3配列を含有する可変軽鎖、ならびにSEQ ID NO:60のCDRH1配列、SEQ ID NO:61のCDRH2配列、およびSEQ ID NO:76のCDRH3配列を含有する可変重鎖を含む。
【0259】
いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:63に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:64に示される可変軽鎖領域を含む。いくつかの態様において、可変重鎖および可変軽鎖はリンカーによってつながれる。いくつかの態様において、リンカーはSEQ ID NO:80に示される。いくつかの態様において、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様において、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:65に示されるヌクレオチドの配列、またはSEQ ID NO:65に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を呈する配列によってコードされる。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:65に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:65に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を呈する配列を含む。
【0260】
いくつかの態様において、scFvはSJ25C1由来である。SJ25C1は、一般に、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1細胞およびNalm-16細胞に対して産生させたマウスモノクローナルIgG1抗体である(Ling, N. R., et al.(1987)Leucocyte typing III.302)。いくつかの態様において、SJ25C1抗体は、それぞれSEQ ID NOS:69~71に示されるCDRH1、H2およびH3と、それぞれSEQ ID NOS:66~68に示されるCDRL1、CDRL2およびCDRL3配列とを含む。いくつかの態様において、SJ25C1抗体は、SEQ ID NO:72のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:73のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0261】
いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:66のCDRL1配列、SEQ ID NO:67のCDRL2配列、およびSEQ ID NO:68のCDRL3配列を含有する可変軽鎖、ならびにSEQ ID NO:69のCDRH1配列、SEQ ID NO:70のCDRH2配列、およびSEQ ID NO:71のCDRH3配列を含有する可変重鎖を含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:72に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:73に示される可変軽鎖領域を含む。いくつかの態様において、可変重鎖および可変軽鎖はリンカーによってつながれる。いくつかの態様において、リンカーはSEQ ID NO:74に示される。いくつかの態様において、scFvは、順に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様において、scFvは、順に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様において、scFvは、SEQ ID NO:75に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:75に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を呈する配列を含む。
【0262】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメント(例えばscFvまたはVHドメイン)は、抗原、例えばBCMAを特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、BCMAに特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントに由来するか、またはそのバリアントである。
【0263】
いくつかの態様において、CARは、BCMA、例えばヒトBCMAに特異的な抗BCMA CARである。マウス抗ヒトBCMA抗体およびヒト抗ヒト抗体を含む抗BCMA抗体を含有するキメラ抗原受容体、ならびにそのようなキメラ受容体を発現する細胞は、既に記載されている。Carpenter et al., Clin Cancer Res., 2013,19(8):2048-2060、WO 2016/090320、WO 2016090327、WO 2010104949A2およびWO 2017173256を参照されたい。いくつかの態様において、抗原または抗原結合ドメインはBCMAである。いくつかの態様において、scFvは、BCMAに特異的な抗体または抗体フラグメントに由来するVHおよびVLを含有する。いくつかの態様において、BCMAに結合する抗体または抗体フラグメントは、国際特許出願公開番号WO 2016/090327およびWO 2016/090320に示される抗体または抗体フラグメントからのVHおよびVLであるか、またはそれらを含有する。
【0264】
いくつかの態様において、抗原または抗原結合ドメインはGPRC5Dである。いくつかの態様において、scFvは、GPRC5Dに特異的な抗体または抗体フラグメント由来のVHおよびVLを含有する。いくつかの態様において、GPRC5Dに結合する抗体または抗体フラグメントは、国際特許出願公開番号WO 2016/090329およびWO 2016/090312に示される抗体または抗体フラグメントからのVHおよびVLであるか、またはそれらを含有する。
【0265】
いくつかの局面において、CARは、ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープを結合または認識する(例えば特異的に結合する)リガンド(例えば抗原)結合ドメインを含有する。いくつかの局面において、結合ドメインは、疾患または障害と関連する抗原を認識する異なる結合分子(例えば抗体または抗原結合フラグメント)に連結することができる分子、タグ、ポリペプチドおよび/またはエピトープに、結合することができる。例示的なタグまたはエピトープとして、色素(例えばフルオレセインイソチオシアネート)またはビオチンが挙げられる。いくつかの局面において、タグに連結された結合分子(例えば抗体または抗原結合フラグメント)であって、疾患または障害と関連する抗原、例えば腫瘍抗原を認識するものは、そのタグに特異的なCARを発現する改変細胞と共に、改変細胞の細胞傷害性または他のエフェクター機能を引き起こす。いくつかの局面において、疾患または障害と関連する抗原に対するCARの特異性は、タグ付けされた結合分子(例えば抗体)によってもたらされ、異なるタグ付き結合分子を使用することで、異なる抗原を標的にすることができる。ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープに特異的な例示的CARには、例えばU.S.9,233,125、WO 2016/030414、Urbanska et al.,(2012)Cancer Res 72:1844-1852、およびTamada et al.,(2012).Clin Cancer Res 18:6436-6445に記載のものがある。
【0266】
いくつかの態様において、抗原は、病原体特異的抗原または病原体発現抗原であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、抗原は、ウイルス抗原(例えばHIV、HCV、HBVなどに由来するウイルス抗原)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原である。いくつかの態様において、CARは、MHC-ペプチド複合体として細胞表面上に提示される腫瘍関連抗原などの細胞内抗原を特異的に認識するTCR様抗体、例えば抗体または抗原結合フラグメント(例えばscFv)を含有する。いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体を認識する抗体またはその抗原結合部分は、抗原受容体などの組換え受容体の一部として、細胞上に発現させることができる。抗原受容体には、機能的非TCR抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。一般に、ペプチド-MHC複合体に対してTCR様の特異性を呈する抗体または抗原結合フラグメントを含有するCARは、TCR様CARと呼ぶこともできる。
【0267】
「主要組織適合遺伝子複合体」(MHC)とは、多形ペプチド結合部位または多形ペプチド結合溝であって、場合により、細胞機構によってプロセシングされたペプチド抗原などといったポリペプチドのペプチド抗原と複合体を形成することができる結合部位または結合溝を含有する、タンパク質、一般的には糖タンパク質をいう。場合により、MHC分子は、T細胞上の抗原受容体、例えばTCRまたはTCR様抗体によって認識されうるコンフォメーションで抗原を提示するために、例えばペプチドとの複合体、すなわちMHC-ペプチド複合体として、細胞表面上にディスプレイまたは発現されうる。一般に、MHCクラスI分子は、膜を貫通するα鎖、場合により、3つのαドメインを持つものと、非共有結合的に会合したβ2ミクログロブリンとを有する、ヘテロ二量体である。一般に、MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質αおよびβで構成され、それらはどちらも典型的には膜をまたいでいる。MHC分子は、ペプチドを結合するための1つまたは複数の抗原結合部位と、適当な抗原受容体による認識に必要な配列とを含有する、MHCの有効部分を含むことができる。いくつかの態様において、MHCクラスI分子は、サイトゾルで生じたペプチドを細胞表面に送達し、細胞表面では、MHC-ペプチド複合体が、T細胞によって、例えば一般的にはCD8T細胞によって、ただし場合によってはCD4+T細胞によって、認識される。いくつかの態様において、MHCクラスII分子は、小胞系で生じたペプチドを細胞表面に送達し、細胞表面では、それらが典型的にはCD4T細胞によって認識される。一般にMHC分子は、マウスではH-2と総称され、ヒトではヒト白血球抗原(HLA)と総称される、連鎖した一群の遺伝子座によって、コードされる。したがって、通例、ヒトMHCはヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる。
【0268】
「MHC-ペプチド複合体」または「ペプチド-MHC複合体」という用語、またはそれらの異形は、例えば一般的にはMHC分子の結合溝または結合間隙におけるペプチドの非共有結合相互作用による、ペプチド抗原とMHC分子との複合体または会合を指す。いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体は、細胞の表面に存在し、またはディスプレイされる。いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体は、抗原受容体、例えばTCR、TCR様CARまたはその抗原結合部分によって特異的に認識されることができる。
【0269】
いくつかの態様において、ポリペプチドのペプチド、例えばペプチド抗原またはペプチドエピトープは、例えば抗原受容体による認識のために、MHC分子と会合することができる。一般に、ペプチドは、それより長い生物学的分子、例えばポリペプチドまたはタンパク質のフラグメントに由来するか、またはそれに基づく。いくつかの態様において、ペプチドは、典型的には、約8~約24アミノ酸長である。いくつかの態様において、ペプチドは、MHCクラスII複合体における認識の場合は、9~22アミノ酸または約9~22アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、ペプチドは、MHCクラスI複合体における認識の場合は、8~13アミノ酸または約8~13アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様において、MHC分子を背景としてペプチドが認識されると、例えばMHC-ペプチド複合体が認識されると、TCRまたはTCR様CARなどの抗原受容体は、T細胞増殖、サイトカイン生産、細胞傷害性T細胞応答または他の応答などといったT細胞応答を誘導するT細胞への活性化シグナルを生成またはトリガーする。
【0270】
いくつかの態様において、TCR様抗体または抗原結合部分は公知であるか、または公知の方法によって生産することができる(例えばUS出願公開番号US 2002/0150914;US 2003/0223994、US 2004/0191260、US 2006/0034850、US 2007/00992530、US 20090226474、US 20090304679、および国際PCT公開番号WO 03/068201参照)。
【0271】
いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、特異的MHC-ペプチド複合体を含有する有効量の免疫原で宿主を免疫処置することによって生産することができる。場合により、MHC-ペプチド複合体のペプチドは、MHCに結合することができる抗原、例えば腫瘍抗原、例えばユニバーサル腫瘍抗原、骨髄腫抗原、または後述する他の抗原のエピトープである。いくつかの態様では、次に、免疫応答を引き出すために有効量の免疫原が宿主に投与され、ここでは、免疫原が、MHC分子の結合溝におけるペプチドの三次元的提示に対する免疫応答を引き出すのに十分な期間にわたって、その三次元形態を保持する。次に、MHC分子の結合溝におけるペプチドの三次元的提示を認識する所望の抗体が生産されているかどうかを決定するために、宿主から収集された血清がアッセイされる。いくつかの態様では、抗体がMHC-ペプチド複合体を、MHC分子のみ、関心対象のペプチドのみ、およびMHCと無関係なペプチドとの複合体と識別できることを確認するために、生産された抗体をアッセイすることができる。次に所望の抗体を単離することができる。
【0272】
いくつかの態様において、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、ファージ抗体ライブラリーなどの抗体ライブラリーディスプレイ法によって生産することができる。いくつかの態様では、例えばライブラリーのメンバーを1つまたは複数のCDRの1つまたは複数の残基において変異させた、変異体Fab、scFvまたは他の抗体型のファージディスプレイライブラリーを、作成することができる。例えば米国出願公開番号US 20020150914、US 2014/0294841およびCohen CJ.et al.(2003)J Mol.Recogn.16:324-332を参照されたい。
【0273】
本明細書における用語「抗体」は、最も広義に使用され、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、例えば無傷の抗体および機能的(抗原結合性)抗体フラグメント、例えばFab(fragment antigen binding)フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fvフラグメント、組換えIgG(rIgG)フラグメント、抗原に特異的に結合することができる可変重鎖(VH)領域、一本鎖抗体フラグメント、例えば一本鎖可変フラグメント(scFv)および単一ドメイン抗体(例えばsdAb、sdFv、ナノボディ)フラグメントを包含する。この用語は、遺伝子改変型および/または他の修飾型の免疫グロブリン、例えばイントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvを包含する。別段の言明がある場合を除き、「抗体」という用語は、その機能的抗体フラグメントを包含すると理解されるべきである。この用語は、無傷の抗体または完全長抗体も包含し、これには、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgAならびにIgDなど、任意のクラスまたはサブクラスの抗体が含まれる。
【0274】
いくつかの態様において、抗原結合タンパク質、抗体およびその抗原結合フラグメントは、完全長抗体の抗原を特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体の重鎖および軽鎖は完全長であること、または抗原結合部分(Fab、F(ab')2、Fvまたは単鎖Fvフラグメント(scFv))であることができる。別の態様において、抗体重鎖定常領域は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEから選ばれ、特に、例えばIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から、さらに具体的にはIgG1(例えばヒトIgG1)から選ばれる。別の一態様において、抗体軽鎖定常領域は、例えばカッパまたはラムダから、特にカッパから選択される。
【0275】
提供される抗体には抗体フラグメントが含まれる。「抗体フラグメント」とは、無傷の抗体のうち、無傷の抗体が結合する抗原に結合する部分を含む、無傷の抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例として、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、ダイアボディ、線状抗体、可変重鎖(VH)領域、単鎖抗体分子、例えばscFvおよび単一ドメインVH単一抗体、ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、抗体は、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む単鎖抗体フラグメント、例えばscFvである。
【0276】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗原に対する抗体の結合に関与する抗体重鎖または抗体軽鎖のドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は一般に類似する構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つのCDRとを含んでいる。(例えばKindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W. H. Freeman and Co., page 91(2007)を参照されたい。)単一のVHドメインまたはVLドメインでも、抗原結合特異性を付与するには十分でありうる。さらにまた、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体からのVHドメインまたはVLドメインを使ってそれぞれ相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることによって、単離しうる。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887(1993)、Clarkson et al., Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0277】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部分を含む抗体フラグメントである。一定の態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。いくつかの態様において、CARは、抗原、例えばがんマーカー、または標的とする細胞もしくは疾患の、例えば腫瘍細胞またはがん細胞の、細胞表面抗原、例えば本明細書記載の標的抗原または公知の標的抗原のいずれかに、特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含む。
【0278】
抗体フラグメントは、さまざまな技法によって、例えば限定するわけではないが無傷の抗体のタンパク質分解消化および組換え宿主細胞による生産などによって、作製することができる。いくつかの態様において、抗体は組換え生産されたフラグメント、例えば天然には生じない配置を含むフラグメント、例えば2つまたはそれ以上の抗体領域または抗体鎖が合成リンカー、例えばペプチドリンカーで接合されているもの、および/または天然の無傷の抗体の酵素消化では生じえない配置を含むフラグメントである。いくつかの態様において、抗体フラグメントはscFvである。
【0279】
「ヒト化」抗体は、CDRアミノ酸残基のすべてまたは実質上すべてが非ヒトCDRに由来し、FRアミノ酸残基のすべてまたは実質上すべてがヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含みうる。非ヒト抗体の「ヒト化型」とは、典型的には、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティーを保ちつつ、ヒトに対する免疫原性を低減する目的でヒト化を受けた、非ヒト抗体のバリアントを指す。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば抗体の特異性またはアフィニティーを回復または改良するために、非ヒト抗体(例えばCDR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0280】
このように、いくつかの態様において、TCR様CARを含むキメラ抗原受容体は、抗体または抗体フラグメントを含有する細胞外部分を含む。いくつかの態様において、抗体またはフラグメントはscFvを含む。いくつかの局面において、キメラ抗原受容体は、抗体またはフラグメントを含有する細胞外部分と、細胞内シグナリング領域とを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリング領域は細胞内シグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリングドメインは、一次シグナリングドメイン、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することができるシグナリングドメイン、T細胞受容体(TCR)構成要素のシグナリングドメイン、および/または免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナリングドメインであるか、またはそれを含む。
【0281】
いくつかの態様において、CARの細胞外部分、例えばその抗体部分は、スペーサー、例えば抗原認識構成要素、例えばscFvと、膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域を、さらに含む。スペーサーは、免疫グロブリン定常領域またはそのバリアントもしくは修飾型の少なくとも一部分、例えばヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域、ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域であるか、またはそれを含みうる。いくつかの態様において、組換え受容体は、スペーサーおよび/またはヒンジ領域を、さらに含む。いくつかの態様において、定常領域または定常部分は、ヒトIgG、例えばIgG4またはIgG1のものである。いくつかの局面において、定常領域の部分は、scFvなどの抗原認識構成要素と膜貫通ドメインの間のスペーサー領域として役立つ。いくつかの態様において、スペーサーはSEQ ID NO:8に示される配列を有し、SEQ ID NO:9に示される配列によってコードされる。いくつかの態様において、スペーサーはSEQ ID NO:10に示される配列を有する。いくつかの態様において、スペーサーはSEQ ID NO:11に示される配列を有する。
【0282】
いくつかの態様において、定常領域または定常部分はIgDのものである。いくつかの態様において、スペーサーはSEQ ID NO:12に示される配列を有する。いくつかの態様において、スペーサーは、SEQ ID NO:8、10、11および12のいずれかに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を有する。
【0283】
いくつかの態様において、スペーサーは、免疫グロブリン定常領域またはそのバリアントもしくは修飾型の少なくとも一部分、例えばヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域、ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域であるか、またはそれを含みうる。いくつかの態様において、組換え受容体は、スペーサーおよび/またはヒンジ領域を、さらに含む。いくつかの態様において、定常領域または定常部分は、ヒトIgG、例えばIgG4またはIgG1のものである。いくつかの局面において、定常領域の部分は、scFvなどの抗原認識構成要素と膜貫通ドメインの間のスペーサー領域として役立つ。スペーサーは、スペーサーが存在しない場合と比べて、抗原結合後の細胞の応答性を増加させる長さのものであることができる。いくつかの例において、スペーサーは、12もしくは約12アミノ酸長であるか、または12アミノ酸長以下である。例示的なスペーサーとして、列挙する範囲のいずれかの端点間の任意の整数を含めて、少なくとも約10~229アミノ酸、約10~200アミノ酸、約10~175アミノ酸、約10~150アミノ酸、約10~125アミノ酸、約10~100アミノ酸、約10~75アミノ酸、約10~50アミノ酸、約10~40アミノ酸、約10~30アミノ酸、約10~20アミノ酸、または約10~15アミノ酸を有するものが挙げられる。いくつかの態様において、スペーサー領域は、約12アミノ酸以下、約119アミノ酸以下、または約229アミノ酸以下のアミノ酸を有する。例示的なスペーサーとして、IgG4ヒンジのみ、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結されたIgG4ヒンジが挙げられる。例示的なスペーサーとして、Hudecek et al.(2013)Clin. Cancer Res., 19:3153または国際特許出願公開番号WO 2014/031687に記載のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、スペーサーはSEQ ID NO:8に示される配列を有し、SEQ ID NO:9に示される配列によってコードされる。いくつかの態様において、スペーサーはSEQ ID NO:10に示される配列を有する。いくつかの態様において、スペーサーはSEQ ID NO:11に示される配列を有する。
【0284】
いくつかの態様において、定常領域または定常部分はIgDのものである。いくつかの態様において、スペーサーはSEQ ID NO:12に示される配列を有する。いくつかの態様において、スペーサーは、SEQ ID NO:8、10、11および12のいずれかに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を有する。
【0285】
細胞外リガンド結合、例えば抗原認識ドメインは、一般に、1つまたは複数の細胞内シグナリング構成要素、例えばCARの場合であればTCR複合体などの抗原受容体複合体による活性化および/または他の細胞表面受容体によるシグナルを模倣するシグナリング構成要素に連結される。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインと細胞内シグナリングドメインとを連結する。いくつかの態様において、抗原結合構成要素(例えば抗体)は、1つまたは複数の膜貫通領域および細胞内シグナリング領域に連結される。いくつかの態様において、CARは、細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含む。一態様では、CARなどの受容体内のドメインのうちの1つと天然に会合する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの例では、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるべく、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそれらのドメインの結合が回避されるように選択されるか、またはそのようにアミノ酸置換によって修飾される。
【0286】
いくつかの態様において、膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合は、ドメインが、いくつかの局面では、任意の膜結合型または膜貫通型タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137またはCD154に由来するものを含む(すなわち、少なくともそれらの膜貫通領域を含む)。あるいは、膜貫通ドメインは、いくつかの態様では、合成物である。いくつかの局面において、合成膜貫通ドメインは、主に疎水性残基、例えばロイシンおよびバリンを含む。いくつかの局面では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各端に見いだされるだろう。いくつかの態様において、連結は、リンカー、スペーサーおよび/または膜貫通ドメインによる。
【0287】
いくつかの態様では、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えば2~10アミノ酸長のリンカー、例えばグリシン-セリンダブレットなどのグリシンとセリンとを含有するものが、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナリングドメインとの間に存在して、連結部を形成している。
【0288】
組換え受容体、例えばCARは、一般に、少なくとも1つの細胞内シグナリング構成要素を含む。いくつかの態様において、受容体は、TCR複合体の細胞内構成要素、例えばT細胞の活性化と細胞傷害性を媒介するTCR CD3鎖、例えばCD3ゼータ鎖を含む。したがって、いくつかの局面において、抗原結合部分は1つまたは複数の細胞シグナリングモジュールに連結される。いくつかの態様において、細胞シグナリングモジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナリングドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、受容体、例えばCARは、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25またはCD16などといった1つまたは複数の追加分子の一部分を、さらに含む。例えばいくつかの局面において、CARまたは他のキメラ受容体は、CD3-ゼータ(CD3-ζ)またはFc受容体γとCD8、CD4、CD25またはCD16とのキメラ分子を含む。
【0289】
いくつかの態様において、CARまたは他のキメラ受容体のライゲーション(ligation)が起こると、受容体の細胞質ドメインおよび/もしくは細胞質領域または細胞内シグナリングドメインおよび/もしくは細胞内シグナリング領域は、免疫細胞の、例えばCARを発現するように改変されたT細胞の、正常なエフェクター機能または応答のうちの少なくとも1つを活性化する。例えば状況により、CARは、T細胞の機能、例えば細胞溶解活性、またはサイトカインもしくは他の因子の分泌などといったTヘルパー活性を、誘導する。いくつかの態様では、抗原受容体構成要素または共刺激分子の細胞内シグナリングドメインの切断された一部分が、例えばそれがエフェクター機能シグナルを伝達するのであれば、無傷の免疫刺激鎖の代わりに使用される。いくつかの態様において、細胞内シグナリング領域、例えば1つまたは複数の細胞内ドメインを含むものは、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列を含み、いくつかの局面では、天然環境においてそのような受容体と協奏的に作用することで抗原受容体エンゲージメント後のシグナル伝達を開始する補助受容体の細胞質配列、および/またはそのような分子の任意の誘導体もしくはバリアントの細胞質配列、および/または同じ機能的能力を有する任意の合成配列も含む。
【0290】
天然のTCRの場合、完全な活性化には、一般に、TCRによるシグナリングだけでなく、共刺激性シグナルも必要である。したがっていくつかの態様では、完全な活性化を促進するために、CARには、二次シグナルまたは共刺激性シグナルを生成させるための構成要素も含まれる。別の態様では、CARが、共刺激性シグナルを生成させるための構成要素を含まない。いくつかの局面では、追加のCARを同じ細胞中で発現させ、それが二次シグナルまたは共刺激性シグナルを生成させるための構成要素になる。
【0291】
T細胞活性化は、いくつかの局面において、TCRによる抗原依存的一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナリング配列)と、抗原非依存的に作用して二次シグナルまたは共刺激性シグナルを与えるもの(二次細胞質シグナル伝達配列)という、少なくとも2種類の細胞質シグナリング配列によって媒介されると記載される。いくつかの局面において、CARは、そのようなシグナリング構成要素のうちの一方または両方を含む。
【0292】
いくつかの局面において、CARは、TCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナリング配列を含む。刺激性に作用する一次細胞質シグナリング配列は、免疫受容体チロシン活性化モチーフ、すなわちITAMとして公知であるシグナリングモチーフを含有しうる。一次細胞質シグナリング配列を含有するITAMの例として、TCRまたはCD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD8、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものが挙げられる。一定の態様において、一次細胞質シグナリング配列を含有するITAMは、TCRもしくはCD3ゼータ、FcRガンマまたはFcRベータに由来するものを含む。いくつかの態様において、CAR中の細胞質シグナリング分子は、細胞質シグナリングドメイン、その一部分、またはCD3ゼータ由来の配列を含有する。
【0293】
いくつかの態様において、CARは、共刺激受容体、例えばCD28、4-1BB、OX40、CD27、DAP10および/またはICOSの、シグナリングドメインおよび/または膜貫通部分を含む。いくつかの局面では、同じCARが、活性化領域またはシグナリング領域と共刺激構成要素とをどちらも含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリングドメインは、T細胞共刺激分子の細胞内シグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、T細胞共刺激分子は、CD28および41BBからなる群より選択される。
【0294】
いくつかの態様において、活性化ドメインは、1つのCAR内に含まれ、他方、共刺激構成要素は、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。いくつかの態様において、CARは、活性化CARまたは刺激性CARと共刺激性CARとを含み、これらはどちらも同じ細胞上で発現される(WO 2014/055668を参照されたい)。いくつかの局面では、CARが刺激性CARまたは活性化CARであり、別の局面では、それが共刺激性CARである。いくつかの態様において細胞は、例えばオフターゲット効果を低減するなどの目的で、阻害性CAR(iCAR、Fedorov et al.,Sci.Transl.Medicine,5(215)(December,2013)参照、例えば異なる抗原を認識するCARをさらに含み、これにより、第1の抗原を認識するCARによって送達される活性化シグナルは、阻害性CARがそのリガンドに結合することによって、減少しまたは阻害される。
【0295】
一定の態様において、細胞内シグナリングドメインは、CD3細胞内ドメインに連結されたCD28の膜貫通ドメインおよびシグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリングドメインは、CD3細胞内ドメインに連結された、キメラCD28およびCD137共刺激ドメインを含む。
【0296】
いくつかの態様において、CD8細胞傷害性T細胞の細胞内シグナリングドメインは、CD4ヘルパーT細胞の細胞内シグナリングドメインと同じである。いくつかの態様において、CD8細胞傷害性T細胞の細胞内シグナリングドメインは、CD4ヘルパーT細胞の細胞内シグナリングドメインとは異なる。
【0297】
いくつかの態様において、CARは、細胞質部分に、1つまたは複数の、例えば2つ以上の、共刺激ドメインと、活性化ドメイン、例えば一次活性化ドメインとを包含する。例示的なCARは、CD3ゼータ、CD28および4-1BBの細胞内構成要素を含む。
【0298】
いくつかの態様において、提供されるウイルスベクター内の核酸(例えばポリヌクレオチド)によってコードされる組換え受容体、例えばCARは、例えば細胞への形質導入もしくは細胞の改変の確認、ならびに/またはポリヌクレオチドによってコードされる分子を発現させる細胞の選択および/もしくはターゲティングなどの目的で、1つまたは複数のマーカーを、さらに含む。いくつかの局面において、そのようなマーカーは、異なる核酸またはポリヌクレオチドによってコードされていてよく、それは、遺伝子改変プロセス中に、典型的には同じ方法、例えばここに提供される方法のいずれかによる形質導入によって、例えば同じベクターまたは同じタイプのベクターによって、同様に導入されうる。
【0299】
いくつかの局面において、マーカー、例えば形質導入マーカーは、タンパク質であり、および/または細胞表面分子である。例示的なマーカーは、天然マーカー、例えば内在性マーカーの、例えば天然の細胞表面分子の、切断型バリアントである。いくつかの局面において、バリアントは、天然のまたは内在性の細胞表面分子と比較して、低減した免疫原性、低減した輸送機能、および/または低減したシグナリング機能を有する。いくつかの態様において、マーカーは、切断型の細胞表面受容体、例えば切断型EGFR(tEGFR)である。いくつかの局面において、マーカーは、CD34、NGFRまたは上皮成長因子受容体の全部または一部(例えば切断型)(例えばtEGFR)を含む。いくつかの態様において、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば切断可能なリンカー配列、例えばT2A P2A、E2Aおよび/またはF2Aをコードするポリヌクレオチドに、機能的に連結される。例えばWO 2014/031687参照。
【0300】
いくつかの態様において、マーカーは、T細胞上に天然には見いだされないまたはT細胞の表面上に天然には見いだされない分子、例えば細胞表面タンパク質、またはその一部分である。
【0301】
いくつかの態様において、分子は非自己分子、例えば非自己タンパク質、すなわち細胞が養子移入されることになる宿主の免疫系によって「自己」と認識されないものである。
【0302】
いくつかの態様において、マーカーは、治療機能を果たさず、かつ/または遺伝子改変のためのマーカーとして、例えば改変が成功した細胞を選択するために使用されること以外の効果をもたらさない。別の態様において、マーカーは、治療分子であるか、または他の形で何らかの所望の効果を発揮する分子、例えばインビボで遭遇する細胞に対するリガンド、例えば養子移入されてリガンドと遭遇した時に細胞の応答を増強および/または減衰するための共刺激分子または免疫チェックポイント分子であってもよい。
【0303】
場合によっては、CARは、第1世代、第2世代、および/または第3世代のCARである。いくつかの局面において、第1世代のCARは、抗原結合時にCD3鎖が誘導するシグナルだけを提供するものであり、第2世代のCARは、そのようなシグナルと共刺激性シグナルとを提供し、これは例えば、CD28またはCD137などの共刺激受容体からの細胞内シグナリングドメインを含むものであり、いくつかの局面において、第3世代のCARは、いくつかの局面で、異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものである。
【0304】
いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外リガンド結合部分、例えば抗原結合部分、例えば抗体またはそのフラグメントと、細胞内ドメインとを含む。いくつかの態様において、抗体またはフラグメントはscFvまたは単一ドメインVH抗体を含み、細胞内ドメインはITAMを含有する。いくつかの局面において、細胞内シグナリングドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖のゼータ鎖のシグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、細胞外ドメインと細胞内シグナリング領域または細胞内シグナリングドメインとを連結しおよび/またはそれらの間に配置された膜貫通ドメインを含む。
【0305】
いくつかの局面において、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通部分を含有する。細胞外ドメインと膜貫通ドメインは直接的または間接的に連結することができる。いくつかの態様では、細胞外ドメインと膜貫通ドメインが、スペーサー、例えば本明細書記載のいずれかによって連結される。いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを、例えば膜貫通ドメインと細胞内シグナリングドメインの間に、含有する。いくつかの局面において、T細胞共刺激分子はCD28または4-1BBである。
【0306】
いくつかの態様において、CARは、抗体、例えば抗体フラグメントと、CD28の膜貫通部分もしくはその機能的バリアントであるかまたはそれを含有する膜貫通ドメインと、CD28のシグナリング部分またはその機能的バリアントおよびCD3ゼータのシグナリング部分またはその機能的バリアントを含有する細胞内シグナリングドメインとを含有する。いくつかの態様において、CARは、抗体、例えば抗体フラグメントと、CD28の膜貫通部分もしくはその機能的バリアントであるかまたはそれを含有する膜貫通ドメインと、4-1BBのシグナリング部分またはその機能的バリアントおよびCD3ゼータのシグナリング部分またはその機能的バリアントを含有する細胞内シグナリングドメインとを含有する。いくつかのそのような態様において、受容体は、ヒトIg分子などのIg分子の一部分、例えばIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジを含有するスペーサー、例えばヒンジのみのスペーサーを、さらに含む。
【0307】
いくつかの態様において、受容体、例えばCARの膜貫通ドメインは、ヒトCD28またはそのバリアントの膜貫通ドメイン、例えばヒトCD28(アクセッション番号:P10747.1)の27アミノ酸膜貫通ドメインであるか、またはSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:15に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む膜貫通ドメインであり、いくつかの態様において、組換え受容体の膜貫通ドメイン含有部分は、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸の配列、またはそれに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0308】
いくつかの態様において、キメラ抗原受容体は、T細胞共刺激分子の細胞内ドメインを含有する。いくつかの局面において、T細胞共刺激分子はCD28または4-1BBである。
【0309】
いくつかの態様において、細胞内ドメインは、ヒトCD28の細胞内共刺激性シグナリングドメインまたはその機能的バリアントもしくは一部分、例えばその41アミノ酸ドメインおよび/またはネイティブCD28タンパク質の位置186~187にLL→GG置換を持つそのようなドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリングドメインは、SEQ ID NO:17もしくはSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:17もしくはSEQ ID NO:18に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含むことができる。いくつかの態様において、細胞内領域および/または細胞内ドメインは、4-1BBの細胞内共刺激性シグナリングドメインまたはその機能的バリアント、例えばヒト4-1BB(アクセッション番号Q07011.1)の42アミノ酸細胞質ドメイン、またはその機能的バリアントもしくは一部分、例えばSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸の配列またはSEQ ID NO:19に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、または約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む。
【0310】
いくつかの態様において、細胞内シグナリング領域および/または細胞内シグナリングドメインは、ヒトCD3鎖の、任意でCD3ゼータの、刺激性シグナリングドメインまたはその機能的バリアント、例えばヒトCD3ζ(アクセッション番号:P20963.2)のアイソフォーム3の112AA細胞質ドメイン、または米国特許第7,446,190号もしくは米国特許第8,911,993号に記載のCD3ゼータシグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリングドメインは、SEQ ID NO:20、21もしくは22に示されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:20、21もしくは22に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む。
【0311】
いくつかの局面において、スペーサーは、IgGのヒンジ領域のみ、例えばIgG4またはIgG1のヒンジのみ、例えばSEQ ID NO:8に示されるヒンジのみのスペーサーを含有する。別の態様において、スペーサーは、CH2および/またはCH3ドメインに連結された、IgG4ヒンジなどのIgヒンジである。いくつかの態様において、スペーサーは、CH2およびCH3ドメインに連結された、IgG4ヒンジなどのIgヒンジ、例えばSEQ ID NO:10に示されるものである。いくつかの態様において、スペーサーは、CH3ドメインだけに連結された、IgG4ヒンジなどのIgヒンジ、例えばSEQ ID NO:11に示されるものである。いくつかの態様において、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列、または他のフレキシブルリンカー、例えば公知のフレキシブルリンカーであるか、またはそれを含む。
【0312】
例えば、いくつかの態様において、CARは、細胞外リガンド結合部分、例えば抗原結合部分、例えば抗原(例えば本明細書記載の抗原)に特異的に結合する抗体またはそのフラグメント、例えばsdAbおよびscFv;スペーサー、例えばIgヒンジ含有スペーサーのいずれか;CD28の一部分またはそのバリアントである膜貫通ドメイン;CD28のシグナリング部分またはその機能的バリアントを含有する細胞内シグナリングドメイン;およびCD3ゼータシグナリングドメインのシグナリング部分またはその機能的バリアントを含む。いくつかの態様において、CARは、細胞外リガンド結合部分、例えば抗原結合部分、例えば抗原(例えば本明細書記載の抗原)に特異的に結合する抗体またはそのフラグメント、sdAbおよびscFv;スペーサー、例えばIgヒンジ含有スペーサーのいずれか;CD28の一部分またはそのバリアントである膜貫通ドメイン;4-1BBのシグナリング部分またはその機能的バリアントを含有する細胞内シグナリングドメイン;およびCD3ゼータシグナリングドメインのシグナリング部分またはその機能的バリアントを含む。
【0313】
いくつかの態様において、そのようなCARコンストラクトは、T2Aリボソームスキップエレメントおよび/またはtEGFR配列を、例えばCARの下流に、さらに含む。いくつかの態様において、そのようなCARコンストラクトをコードする核酸分子は、リボソームスキップエレメント(例えばT2A)をコードする配列と、それに続くtEGFR配列をコードする配列とを、例えばCARをコードする配列の下流に、さらに含む。いくつかの態様において、抗原受容体(例えばCAR)を発現するT細胞は、非免疫原性選択エピトープとして切断型EGFR(EGFRt)を(例えば2つのタンパク質を同じコンストラクトから発現させるためにT2Aリボソームスイッチによって分離されたCARとEGFRtとをコードするコンストラクトの導入によって)発現するように作製することもでき、その場合は、それを、そのような細胞を検出するためのマーカーとして使用することができる(例えば米国特許第8,802,374号参照)。場合により、T2Aなどのペプチドは、リボソームに2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップ(リボソームスキッピング)させることができ、2A配列の末端と下流にある次のペプチドとの間の分離をもたらす(例えばde Felipe, Genetic Vaccines and Ther. 2:13(2004)およびde Felipe et al. Traffic 5:616-626(2004)を参照されたい)。多くの2Aエレメントが公知である。本明細書に開示される方法および核酸において使用することができる2A配列の例は、米国特許公報第20070116690号に記載されている、口蹄疫ウイルス(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A)、およびブタテッショウウイルス-1(P2A)からの2A配列であるが、それらに限定されるわけではない。
【0314】
対象に投与された細胞によって発現される、CARなどの組換え受容体は、一般には、処置される疾患もしくは状態またはその細胞において発現され、それらと関連し、および/またはそれらに特異的な分子を、認識するか、またはその分子に特異的に結合する。前記分子、例えば抗原に特異的に結合すると、受容体は一般に、ITAMによって伝達されるシグナルなどの免疫刺激性シグナルを細胞内に送達し、それによって、疾患または状態を標的とする免疫応答を増進する。例えば、いくつかの態様において、細胞は、疾患もしくは状態の細胞もしくは組織によって発現される抗原または疾患もしくは状態と関連する抗原に特異的に結合するCARを発現する。
【0315】
b. T細胞受容体(TCR)
いくつかの態様において、核酸(例えばポリヌクレオチド)によってコードされる組換え分子は、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、または組換えT細胞受容体(TCR)を含む。いくつかの態様において、組換えTCRは、抗原、一般的には標的細胞上に存在する抗原、例えば腫瘍特異抗原、自己免疫性または炎症性の疾患と関連する特定の細胞タイプ上に発現する抗原、またはウイルス病原体もしくは細菌病原体に由来する抗原に、特異的である。いくつかの態様では、腫瘍、ウイルスまたは自己免疫タンパク質の抗原などといった標的ポリペプチドのペプチドエピトープまたはT細胞エピトープを認識するTCRまたはその抗原結合部分を発現させる改変された細胞、例えばT細胞が提供される。いくつかの態様において、TCRは、疾患または状態と関連する抗原に特異的に結合するか、またはユニバーサルタグに特異的に結合する。いくつかの態様において、抗原は、疾患もしくは状態、例えばがん、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、または感染性疾患と関連する。
【0316】
いくつかの態様において、「T細胞受容体」または「TCR」は、可変α鎖および可変β鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても公知である)、または可変γ鎖および可変δ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても公知である)、またはそれらの抗原結合部分を含有し、MHC分子に結合したペプチドに特異的に結合することができる分子である。いくつかの態様において、TCRはαβ型である。通例、αβ型およびγδ型で存在するTCRの構造は概ね類似しているが、それらを発現させるT細胞の解剖学的な場所または機能は異なりうる。TCRは、細胞の表面上に見いだされうるか、または可溶型で見いだされうる。一般に、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見いだされ、そこでは一般に、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識を担っている。
【0317】
別段の言明がある場合を除き、「TCR」という用語は、完全なTCRに加えて、その抗原結合部分または抗原結合フラグメントも包含すると理解すべきである。いくつかの態様において、TCRは、αβ型またはγδ型のTCRを含む無傷のまたは完全長のTCRである。いくつかの態様において、TCRは、完全長TCRより短いが、MHC分子に結合している特異的ペプチドに結合する、例えばMHC-ペプチド複合体に結合する、抗原結合部分である。場合により、TCRの抗原結合部分または抗原結合フラグメントは、完全長TCRまたは無傷のTCRの構造ドメインの一部分だけを含有しうるが、それでもなお、完全なTCRが結合するペプチドエピトープ、例えばMHC-ペプチド複合体に結合することができる。場合により、抗原結合部分は、特異的MHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分な、TCRの可変ドメイン、例えばTCRの可変α鎖および可変β鎖を含有する。一般に、TCRの可変鎖は、ペプチド、MHCおよび/またはMHC-ペプチド複合体の認識に関与する相補性決定領域を含有する。
【0318】
いくつかの態様において、TCRの可変ドメインは、超可変ループ、または相補性決定領域(CDR)を含有し、一般的にはこれらが、抗原認識ならびに結合能および結合特異性の主因である。いくつかの態様において、TCRのCDRまたはそれらの組合せは、所与のTCR分子の抗原結合部位の全部または実質上全部を形成する。TCR鎖の可変領域内のさまざまなCDRは、一般に、CDRと比べるとTCR分子間で示される変動が一般に少ないフレームワーク領域(FR)によって分離されている(例えばJores et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 87:9138, 1990、Chothia et al., EMBO J. 7:3745,1988参照;Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003も参照されたい)。いくつかの態様において、CDR3は、抗原結合または抗原特異性を担う主なCDRであり、または抗原認識にとって、および/もしくはペプチド-MHC複合体のプロセシングされたペプチド部分との相互作用にとって、所与のTCR可変領域上の3つのCDRのなかで最も重要である。状況により、アルファ鎖のCDR1は、一定の抗原性ペプチドのN末部分と相互作用することができる。状況により、ベータ鎖のCDR1は、ペプチドのC末部分と相互作用することができる。状況により、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用または同MHC部分の認識に最も強く貢献し、またはそれを担っている主たるCDRである。いくつかの態様において、β鎖の可変領域は、さらなる超可変領域(CDR4またはHVR4)を含有することができ、これは一般的にはスーパー抗原結合に関与し、抗原認識には関与しない(Kotb(1995)Clinical Microbiology Reviews, 8:411-426)。
【0319】
いくつかの態様において、TCRは、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質テールも含有することができる(例えばJaneway et al., Immunobiology:The Immune System in Health and Disease, 3rd Ed., Current Biology Publications, p.4:33, 1997参照されたい)。いくつかの局面において、TCRの各鎖は、1つのN末免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端の短い細胞質テールを持つことができる。いくつかの態様において、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変(invariant)タンパク質と会合している。
【0320】
いくつかの態様において、TCR鎖は1つまたは複数の定常ドメインを含有する。例えば、所与のTCR鎖(例えばα鎖またはβ鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、例えば可変ドメイン(例えばVαまたはVβ;典型的には、Kabatら「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(米国保健社会福祉省公衆衛生局国立衛生研究所、1991年、第5版)のKabatナンバリングに基づいてアミノ酸1~116)と、細胞膜に隣接する定常ドメイン(例えばα鎖定常ドメイン、すなわちCα、典型的には、Kabatナンバリングに基づいてα鎖の位置117~259、またはβ鎖定常領域、すなわちCβ、典型的にはKabatに基づいてβ鎖の位置117~295)とを含有することができる。例えば場合により、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインと2つの膜遠位可変ドメインとを含有し、それらの可変ドメインはそれぞれCDRを含有する。TCRの定常ドメインは、短い連結(connecting)配列であって、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによってTCRの2つの鎖を連結するものを含有しうる。いくつかの態様では、TCRが定常ドメイン中に2つのジスルフィド結合を含有するように、TCRがα鎖とβ鎖のそれぞれに追加のシステイン残基を有しうる。
【0321】
いくつかの態様において、TCR鎖は膜貫通ドメインを含有する。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは正に荷電している。場合により、TCR鎖は細胞質テールを含有する。場合により、その構造は、TCRが、CD3やそのサブユニットのような他の分子と会合することを可能にする。例えば定常ドメインと膜貫通領域を含有するTCRは、そのタンパク質を細胞膜に固定して、CD3シグナリング装置またはCD3シグナリング複合体の不変サブユニットと会合しうる。CD3シグナリングサブユニット(例えばCD3γ、CD3δ、CD3εおよびCD3ζ鎖)の細胞内テールは、TCR複合体のシグナリング能に関与する1つまたは複数の免疫受容体活性化チロシンモチーフ、すなわちITAMを含有する。
【0322】
いくつかの態様において、TCRは、2つの鎖αおよびβ(または任意でγおよびδ)のヘテロ二量体であるか、または単鎖TCRコンストラクトでありうる。いくつかの態様において、TCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合などによって連結された2つの別個の鎖(α鎖とβ鎖またはγ鎖とδ鎖)を含有するヘテロ二量体である。
【0323】
いくつかの態様において、TCRは、実質上完全長のコード配列を容易に入手することができる公知のTCR配列、例えばVα、β鎖の配列から生成させることができる。V鎖配列を含む完全長TCR配列を細胞源から得るための方法は周知である。いくつかの態様において、TCRをコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)は、例えば1つもしくは複数の所与の細胞内のまたは1つもしくは複数の所与の細胞から単離されるTCRコード核酸(例えばポリヌクレオチド)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって、または公的に入手可能なTCR DNA配列の合成によって、さまざまな供給源から得ることができる。
【0324】
いくつかの態様において、TCRは、生物学的供給源から、例えば細胞から、例えばT細胞(例えば細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマ、または他の公的に利用可能な供給源から得られる。いくつかの態様において、T細胞は、インビボで単離された細胞(in vivo isolated cells)から得ることができる。いくつかの態様において、TCRは胸腺で選択されたTCRである。いくつかの態様において、TCRはネオエピトープ拘束性TCRである。いくつかの態様において、T細胞は培養T細胞ハイブリドーマまたは培養T細胞クローンであることができる。いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分またはその抗原結合フラグメントは、TCRの配列に関する知識から合成的に生成させることができる。
【0325】
いくつかの態様では、候補TCRのライブラリーを標的ポリペプチド抗原またはその標的T細胞エピトープに対してスクリーニングすることで同定されまたは選択されたTCRから、TCRを生成させる。TCRライブラリーは、PBMC、脾臓または他のリンパ器官に存在する細胞を含む、対象から単離されたT細胞からのVαおよびVβのレパトアの増幅によって作成することができる。場合により、T細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から増幅することができる。いくつかの態様において、TCRライブラリーは、CD4+細胞またはCD8+細胞から作成することができる。いくつかの態様において、TCRは、正常または健常対象のT細胞供給源から、すなわち正常TCRライブラリーから、増幅することができる。いくつかの態様において、TCRは、罹患対象のT細胞供給源から、すなわち疾患TCRライブラリーから、増幅することができる。いくつかの態様では、縮重プライマーを使って、VαおよびVβの遺伝子レパトアが、例えばヒトから得られたT細胞などの試料におけるRT-PCRによって増幅される。いくつかの態様では、リンカーによって分離されるように増幅産物がクローニングまたはアセンブルされたscTvライブラリーを、ナイーブVαおよびVβライブラリーからアセンブルすることができる。対象および細胞の供給源に依存して、ライブラリーはHLAアレル特異的であることができる。あるいは、いくつかの態様では、親TCR分子またはスキャフォールドTCR分子の変異生成および多様化によって、TCRライブラリーを生成させることもできる。いくつかの局面において、TCRは、例えばα鎖またはβ鎖の、例えば変異生成などによる、指向的進化に供される。いくつかの局面では、TCRのCDR内の特定残基が改変される。いくつかの態様では、選択されたTCRを親和性成熟によって修飾することができる。いくつかの態様において、抗原特異的T細胞は、ペプチドに対するCTL活性を評価するためのスクリーニングなどによって、選択されうる。いくつかの局面において、抗原特異的T細胞などに存在するTCRは、結合活性によって、例えば抗原に対する特定のアフィニティーまたはアビディティーによって選択されうる。
【0326】
いくつかの態様において、遺伝子改変抗原受容体には、組換えT細胞受容体(TCR)および/または天然のT細胞からクローニングされたTCRが含まれる。いくつかの態様において、TCRは、天然のT細胞からクローニングされたものである。いくつかの態様では、標的抗原(例えばがん抗原)に対する高アフィニティーT細胞クローンが患者から同定され、単離されて、細胞に導入される。いくつかの態様では、標的抗原に対するTCRクローンが、ヒト免疫系遺伝子(例えばヒト白血球抗原系、またはHLA)で改変されたトランスジェニックマウスにおいて作製されている。例えば腫瘍抗原を参照されたい(例えばParkhurst et al.(2009)Clin Cancer Res.15:169-180およびCohen et al.(2005)J Immunol.175:5799-5808。いくつかの態様では、ファージディスプレイを使って標的抗原に対するTCRが単離される(例えばVarela-Rohena et al.(2008)Nat Med.14:1390-1395およびLi(2005)Nat Biotechnol.23:349-354参照。いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分は、修飾または改変されたものである。いくつかの態様では、指向的進化法を使って、改変された性質を持つ、例えば特異的MHC-ペプチド複合体に対してより高いアフィニティーを持つ、TCRを生成させる。いくつかの態様において、指向的進化は、限定するわけではないが、酵母ディスプレイ(Holler et al.(2003)Nat Immunol,4,55-62、Holler et al.(2000)Proc Natl Acad Sci USA,97,5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al.(2005)Nat Biotechnol,23,349-54)、またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al.(2008)J Immunol Methods,339,175-84)を含む、ディスプレイ法によって達成される。いくつかの態様において、ディスプレイアプローチでは、公知の親またはリファレンスTCRの改変または修飾が行われる。例えば、場合により、野生型TCRは、CDRの1つまたは複数の残基が変異している変異型TCRを生産するためのテンプレートとして使用することができ、所望の改変された性質、例えば所望の標的抗原に対するアフィニティーが増大している変異体が、選択される。
【0327】
いくつかの態様において、関心対象のTCRの生産または生成において使用するための標的ポリペプチドのペプチドは公知であるか、または当業者であれば容易に同定することができる。いくつかの態様において、TCRまたは抗原結合部分の生成における使用に適したペプチドは、後述する標的ポリペプチドなどの関心対象の標的ポリペプチドにおけるHLA拘束性モチーフの存在に基づいて、決定することができる。いくつかの態様において、ペプチドは利用可能なコンピュータ予測モデルを使って同定される。いくつかの態様において、MHCクラスI結合部位を予測する場合、そのようなモデルには、ProPred1(Singh and Raghava(2001)Bioinformatics 17(12):1236-1237、およびSYFPEITHI(Schuler et al.(2007)Immunoinformatics Methods in Molecular Biology,409(1):75-93 2007参照)などがあるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、MHC拘束性エピトープはHLA-A0201であり、これは、全白人のおよそ39~46%に発現しているので、TCRまたは他のMHC-ペプチド結合分子の調製に使用するためのMHC抗原の適切な選択肢になる。
【0328】
コンピュータ予測モデルを用いた、HLA-A0201結合モチーフ、ならびにプロテアソームおよび免疫プロテアソームによる切断部位は、公知である。MHCクラスI結合部位を予測する場合、そのようなモデルには、ProPred1(Singh and Raghava, ProPred:prediction of HLA-DR binding sites. BIOINFORMATICS 17(12):1236-1237 2001に詳述されている)およびSYFPEITHI(Schuler et al. SYFPEITHI, Database for Searching and T-Cell Epitope Prediction. in Immunoinformatics Methods in Molecular Biology, vol 409(1):75-93 2007を参照されたい)があるが、これらに限定されない。
【0329】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合部分は、組換え生産された天然タンパク質であるか、または結合特性などの1つもしくは複数の性質が改変されたその変異型でありうる。いくつかの態様において、TCRは、さまざまな動物種、例えばヒト、マウス、ラットまたは他の哺乳動物のうちの1つに由来しうる。TCRは、細胞結合型であっても可溶型であってもよい。いくつかの態様では、提供される方法の目的のために、TCRは、細胞の表面上に発現される細胞結合型である。
【0330】
いくつかの態様において、TCRは完全長TCRである。いくつかの態様において、TCRは抗原結合部分である。いくつかの態様において、TCRは二量体型TCR(dTCR)である。いくつかの態様において、TCRは一本鎖TCR(sc-TCR)である。いくつかの態様において、dTCRまたはscTCRは、WO 03/020763、WO 04/033685およびWO 2011/044186に記載の構造を有する。
【0331】
いくつかの態様において、TCRは膜貫通配列に対応する配列を含有する。いくつかの態様において、TCRは細胞質配列に対応する配列を含有する。いくつかの態様において、TCRは、CD3とTCR複合体を形成することができる。いくつかの態様において、TCRは、dTCRまたはscTCRを含めて、どれでも、T細胞表面上の活性TCRをもたらすシグナリングドメインに連結することができる。いくつかの態様において、TCRは細胞の表面上に発現される。
【0332】
いくつかの態様において、dTCRは、TCRα鎖可変領域配列に対応する配列がTCRα鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末に融合されている第1ポリペプチドと、TCRβ鎖可変領域配列に対応する配列がTCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末に融合されている第2ポリペプチドとを含有し、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドはジスルフィド結合によって連結される。いくつかの態様において、この結合は、ネイティブ二量体型αβ TCR中に存在するネイティブ鎖間ジスルフィド結合に対応することができる。いくつかの態様において、鎖間ジスルフィド結合はネイティブTCRには存在しない。例えば、いくつかの態様では、dTCRポリペプチドペアの定常領域細胞外配列に、1つまたは複数のシステインを組み入れることができる。ネイティブジスルフィド結合と非ネイティブジスルフィド結合の両方が望ましい場合もある。いくつかの態様において、TCRは、膜に固定するための膜貫通配列を含有する。
【0333】
いくつかの態様において、dTCRは可変αドメイン、定常αドメインおよび定常αドメインのC末に取り付けられた第1二量体化モチーフを含有するTCRα鎖と、可変βドメイン、定常βドメインおよび定常βドメインのC末に取り付けられた第1二量体化モチーフを含むTCRβ鎖とを含有し、第1二量体化モチーフと第2二量体化モチーフは容易に相互作用して第1二量体化モチーフ中のアミノ酸と第2二量体化モチーフ中のアミノ酸との間にTCRα鎖とTCRβ鎖とを互いに連結する共有結合を形成する。
【0334】
いくつかの態様において、TCRはscTCRである。通例、scTCRは公知の方法を使って生成させることができる。例えばSoo Hoo, W.F. et al. PNAS(USA)89, 4759(1992)、Wuelfing, C. and Plueckthun, A., J. Mol. Biol. 242, 655(1994)、Kurucz, I. et al. PNAS(USA)90 3830(1993)、PCT国際公開番号WO 96/13593、WO 96/18105、WO 99/60120、WO 99/18129、WO 03/020763、WO 2011/044186、およびSchlueter, C. J. et al. J. Mol. Biol. 256, 859(1996)を参照されたい。いくつかの態様において、scTCRは、TCR鎖の会合を増進するために、導入された非ネイティブジスルフィド鎖間結合を含有する(例えばPCT国際公開番号WO 03/020763参照)。いくつかの態様において、scTCRは、そのC末に融合された異種ロイシンジッパーが鎖の会合を増進する、非ジスルフィド連結切断型TCRである(例えばPCT国際公開番号WO 99/60120号参照)。いくつかの態様において、scTCRは、ペプチドリンカーを介してTCRβ可変ドメインに共有結合されたTCRα可変ドメインを含有する(例えばPCT国際公開番号WO 99/18129号を参照)。
【0335】
いくつかの態様において、scTCRは、TCRα鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成される第1セグメントと、TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末に融合されたTCRβ鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成される第2セグメントと、第1セグメントのC末を第2セグメントのN末に連結するリンカー配列とを含有する。
【0336】
いくつかの態様において、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末に融合されたα鎖可変領域配列によって構成される第1セグメントと、β鎖細胞外定常および膜貫通配列に対応する配列のN末に融合されたβ鎖可変領域によって構成される第2セグメントと、任意で第1セグメントのC末を第2セグメントのN末に連結するリンカー配列とを含有する。
【0337】
いくつかの態様において、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末に融合されたTCRβ鎖可変領域配列によって構成される第1セグメントと、α鎖細胞外定常および膜貫通配列に対応する配列のN末に融合されたα鎖可変領域によって構成される第2セグメントと、任意で第1セグメントのC末を第2セグメントのN末に連結するリンカー配列とを含有する。
【0338】
いくつかの態様において、第1TCRセグメントと第2TCRセグメントとを連結するscTCRのリンカーは、TCR結合特異性を保ったまま、単一のポリペプチド鎖を形成することができる任意のリンカーであることができる。いくつかの態様において、リンカー配列は、例えば式-P-AA-P-を有し、式中、Pはプロリンであり、AAは、アミノ酸がグリシンおよびセリンであるアミノ酸配列を表す。いくつかの態様において、第1セグメントと第2セグメントは、それらの可変領域配列がそのような結合に適応するように、ペアを形成する。したがって場合により、リンカーは、第1セグメントのC末と第2セグメントのN末の間またはその逆の間の距離をまたぐのに十分な長さを有するが、標的リガンドに対するscTCRの結合を阻止または低減するほど長くはない。いくつかの態様において、リンカーは、10~45個または約10~45個のアミノ酸、例えば10~30個のアミノ酸または26~41個のアミノ酸残基、例えば29、30、31または32個のアミノ酸を含有することができる。いくつかの態様において、リンカーは式-PGGG-(SGGGG)5-P-を有し、式中、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、Sはセリンである(SEQ ID NO:29)。いくつかの態様において、リンカーは、配列
を有する。
【0339】
いくつかの態様において、scTCRは、α鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基をβ鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基に連結するジスルフィド共有結合を含有する。いくつかの態様では、ネイティブTCR中の鎖間ジスルフィド結合が存在しない。例えばいくつかの態様では、scTCRポリペプチドの第1セグメントおよび第2セグメントの定常領域細胞外配列に、1つまたは複数のシステインを組み入れることができる。ネイティブジスルフィド結合と非ネイティブジスルフィド結合の両方が望ましい場合もある。
【0340】
導入された鎖間ジスルフィド結合を含有するdTCRまたはscTCRのいくつかの態様では、ネイティブジスルフィド結合が存在しない。いくつかの態様では、ネイティブ鎖間ジスルフィド結合を形成する1つまたは複数のネイティブシステインが、セリンまたはアラニンなどの別の残基に置換される。いくつかの態様では、第1セグメントおよび第2セグメント上の非システイン残基をシステインに変異させることによって、導入されたジスルフィド結合を形成させることができる。TCRの例示的な非ネイティブジスルフィド結合は、PCT国際公開番号WO 2006/000830号に記載されている。
【0341】
いくつかの態様において、TCRまたはその抗原結合フラグメントは、標的抗原に対する平衡結合定数が10-5~10-12Mまたは約10-5~約10-12Mならびにその中のあらゆる個々の値および範囲であるアフィニティーを呈する。いくつかの態様において、標的抗原はMHC-ペプチド複合体またはMHC-ペプチドリガンドである。
【0342】
いくつかの態様では、PCR、クローニングまたは他の適切な手段によって、α鎖およびβ鎖などのTCRをコードする1つまたは複数の核酸(例えばポリヌクレオチド)を増幅し、それを1つまたは複数の適切な発現ベクター中にクローニングすることができる。発現ベクターは任意の適切な組換え発現ベクターであることができ、任意の適切な宿主を形質転換またはトランスフェクトするために使用することができる。適切なベクターとしては、増殖および拡大のために、または発現のために、またはその両方のために設計されたもの、例えばプラスミドおよびウイルスが挙げられる。
【0343】
いくつかの態様において、ベクターは、pUC系列(Fermentas Life Sciences)、pBluescript系列(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)、pET系列(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)、pGEX系列(Pharmacia Biotech、スウェーデン国ウプサラ)またはpEX系列(Clontech、カリフォルニア州パロアルト)のベクターであることができる。場合によっては、λG10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4およびλNM1149などのバクテリオファージベクターも使用することができる。いくつかの態様では、植物発現ベクターを使用することができ、これにはpBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121およびpBIN19(Clontech)が含まれる。いくつかの態様において、動物発現ベクターとしては、pEUK-Cl、pMAMおよびpMAMneo(Clontech)が挙げられる。いくつかの態様では、例えばレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターが使用される。
【0344】
いくつかの態様において、組換え発現ベクターは標準的な組換えDNA技法を使って調製することができる。いくつかの態様において、ベクターは、適宜、そのベクターがDNAに基づくかRNAに基づくかを考慮して、そのベクターが導入される宿主のタイプ(例えば細菌、真菌、植物または動物)に特異的な制御配列、例えば転写および翻訳開始ならびに終止コドンを含有することができる。いくつかの態様において、ベクターはTCRをコードするヌクレオチド配列または抗原結合部分(または他のMHC-ペプチド結合分子)に機能的に連結された非ネイティブプロモーターを含有することができる。いくつかの態様において、プロモーターは、非ウイルスプロモーターであるか、またはウイルスプロモーター、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、またはマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復に見いだされるプロモーターであることができる。他の公知のプロモーターも想定される。
【0345】
いくつかの態様では、T細胞クローンを得た後、TCRアルファ鎖およびTCRベータ鎖を単離して、遺伝子発現ベクターにクローニングする。いくつかの態様において、TCRアルファ遺伝子とTCRベータ遺伝子は、両鎖が共発現されるように、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドによって連結される。いくつかの態様において、TCRをコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)は、受容体を発現させるための細胞への形質導入または細胞の改変を確認するためのマーカーを、さらに含む。いくつかの態様において、TCRの遺伝子移入は、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターによって遂行されるか、またはトランスポゾンによって遂行される(例えばBaum et al.(2006)Molecular Therapy:The Journal of the American Society of Gene Therapy.13:1050-1063、Frecha et al.(2010)Molecular Therapy:The Journal of the American Society of Gene Therapy.18:1748-1757、およびHackett et al.(2010)Molecular Therapy:The Journal of the American Society of Gene Therapy.18:674-683を参照されたい。
【0346】
いくつかの態様では、TCRをコードするベクターを生成させるために、関心対象のTCRを発現するT細胞クローンから単離された全cDNAからα鎖およびβ鎖をPCR増幅して、発現ベクターにクローニングする。いくつかの態様において、α鎖とβ鎖は同じベクターにクローニングされる。いくつかの態様において、α鎖とβ鎖は異なるベクターにクローニングされる。いくつかの態様では、生成させたα鎖およびβ鎖が、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターに組み入れられる。
【0347】
c. キメラ自己抗体受容体(CAAR)
いくつかの態様において、組換え受容体はキメラ自己抗体受容体(CAAR)である。いくつかの態様において、CAARは自己抗体に対して特異的である。いくつかの態様では、自己抗体発現細胞に特異的に結合してそれを殺すが、正常抗体発現細胞にはそうしないように、CAARを発現する細胞、例えばCAARを発現するように改変されたT細胞を使用することができる。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、自己抗原の発現に関連する自己免疫疾患、例えば自己免疫疾患を処置するために使用することができる。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、最終的に自己抗体を産生し、それらの細胞表面に自己抗体をディスプレイするB細胞を標的とし、これらのB細胞に、治療的介入のための疾患特異的標的として印をつける。いくつかの態様において、CAAR発現細胞は、抗原特異的キメラ自己抗体受容体を使って疾患原因のB細胞を標的とすることによって自己免疫疾患における病原性B細胞を効率よく標的とし、それを殺すために、使用することができる。いくつかの態様において、組換え受容体はCAAR、例えば米国特許出願公開番号US 2017/0051035に記載のいずれかである。
【0348】
いくつかの態様において、CAARは、自己抗体結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナリング領域を含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリング領域は細胞内シグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリングドメインは、一次シグナリングドメイン、T細胞において一次活性化シグナルを誘導することができるシグナリングドメイン、T細胞受容体(TCR)構成要素のシグナリングドメイン、および/または免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナリングドメインであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、細胞内シグナリング領域は、二次または共刺激性シグナリング領域(二次細胞内シグナリング領域)を含む。
【0349】
いくつかの態様において、自己抗体結合ドメインは自己抗原またはそのフラグメントを含む。自己抗原の選択は、標的とする自己抗体のタイプに依存しうる。例えば、自己抗原は、それが、特定疾患状態、例えば自己抗体媒介性自己免疫疾患などの自己免疫疾患と関連する、標的細胞上、例えばB細胞上の自己抗体を認識するという理由で、選ばれうる。いくつかの態様において、自己免疫疾患は尋常性天疱瘡(PV)を含む。例示的な自己抗原としてデスモグレイン1(Dsg1)およびDsg3が挙げられる。
【0350】
d. 多重ターゲティング
いくつかの態様において、細胞および方法は、多重ターゲティング戦略、例えば、それぞれが同じまたは異なる抗原を認識し、典型的にはそれぞれが異なる細胞内シグナリング構成要素を含む、2種以上の遺伝子改変受容体の、細胞上での発現を含む。そのような多重ターゲティング戦略は、例えば国際特許出願公開番号WO 2014055668 A1(活性化CARと共刺激CARの組合せ、例えばオフターゲット、例えば正常細胞上には別々に存在するが、処置される疾患または状態の細胞上でのみ一緒に存在する、2つの異なる抗原を標的とするものについての記載がある)、およびFedorov et al.,Sci.Transl.Medicine,5(215)(December,2013)(活性化CARと阻害性CARとを発現する細胞、例えば活性化CARは正常細胞または非疾患細胞と処置される疾患または状態の細胞との両方に発現する抗原に結合し、阻害性CARは正常細胞または処置しようとしていない細胞上にのみ発現している別の抗原に結合するものについての記載がある)に開示されている。
【0351】
例えばいくつかの態様において、細胞は、第1遺伝子改変抗原受容体(例えばCARまたはTCR)であって、細胞に対する活性化シグナルまたは刺激シグナルを、一般的には第1受容体によって認識される抗原、例えば第1抗原に特異的に結合した時に誘導することができるものを発現する受容体を含む。いくつかの態様において、細胞は、第2遺伝子改変抗原受容体(例えばCARまたはTCR)、例えばキメラ共刺激受容体であって、免疫細胞に対する共刺激性シグナルを、一般的には第2受容体によって認識される第2抗原に特異的に結合した時に誘導することができるものを、さらに含む。いくつかの態様において、第1抗原と第2抗原は同じである。いくつかの態様において、第1抗原と第2抗原は異なる。
【0352】
いくつかの態様において、第1および/または第2の遺伝子改変抗原受容体(例えばCARまたはTCR)は、細胞に対する活性化シグナルまたは刺激シグナルを誘導することができる。いくつかの態様において、受容体は、ITAMまたはITAM様モチーフを含有する細胞内シグナリング構成要素を含む。いくつかの態様において、第1受容体によって誘導される活性化は、免疫応答の開始をもたらすシグナル伝達または細胞におけるタンパク質発現の変化、例えばITAMリン酸化および/またはITAM媒介シグナル伝達カスケードの開始、免疫シナプスの形成および/または結合した受容体(例えばCD4またはCD8など)の近傍での分子のクラスタリング、NF-κBおよび/またはAP-1などの1つまたは複数の転写因子の活性化、ならびに/またはサイトカインなどの因子の遺伝子発現、増殖および/もしくは生残の誘導を伴う。
【0353】
いくつかの態様において、第1および/または第2受容体は、CD28、CD137(4-1BB)、OX40および/またはICOSなどの共刺激受容体の細胞内シグナリングドメインを含む。いくつかの態様において、第1および第2受容体は、異なる共刺激受容体の細胞内シグナリングドメインを含む。一態様において、第1受容体はCD28共刺激性シグナリング領域を含有し、第2受容体は4-1BB共刺激性シグナリング領域を含有するか、またはその逆である。
【0354】
いくつかの態様において、第1および/または第2受容体は、ITAMまたはITAM様モチーフを含有する細胞内シグナリングドメインと共刺激受容体の細胞内シグナリングドメインとをどちらも含む。
【0355】
いくつかの態様において、第1受容体は、ITAMまたはITAM様モチーフを含有する細胞内シグナリングドメインを含有し、第2受容体は、共刺激受容体の細胞内シグナリングドメインを含有する。同じ細胞において誘導される活性化シグナルまたは刺激性シグナルと組み合わされる共刺激性シグナルは、免疫応答、例えばロバストで持続的な免疫応答、例えば遺伝子発現、サイトカインおよび他の因子の分泌、ならびに細胞殺滅などのT細胞媒介エフェクター機能の増加をもたらすものである。
【0356】
いくつかの態様において、第1受容体だけのライゲーションでも、第2受容体だけのライゲーションでも、ロバストな免疫応答は誘導されない。いくつかの局面において、1つの受容体だけがライゲートされた場合、細胞は、抗原に対して寛容化されもしくは非応答性になるか、または阻害状態になり、および/または増殖し、因子を分泌し、またはエフェクター機能を実行するようには誘導されない。しかし、いくつかのそのような態様では、複数の受容体がライゲートされた場合、例えば第1抗原と第2抗原とを発現する細胞に遭遇した場合に、所望の応答、例えば1つもしくは複数のサイトカインの分泌、増殖、持続、および/または標的細胞の細胞傷害的殺滅などの免疫エフェクター機能の実行によって示されるような完全な免疫活性化または免疫刺激が達成される。
【0357】
いくつかの態様において、2つの受容体は、一方の受容体によるその抗原への結合は細胞を活性化しまたは応答を誘導するが、第2の阻害性受容体によるその抗原への結合はその応答を抑制または低下させるシグナルを誘導するような形で、細胞に対する活性化シグナルおよび阻害シグナルを、それぞれ誘導する。活性化CARと阻害性CAR、すなわちiCARとの組合せが、その例である。例えば活性化CARは、ある疾患または状態において発現するが正常細胞上にも発現する抗原に結合し、阻害性受容体は、正常細胞上で発現するが前記疾患または状態の細胞では発現しない別個の抗原に結合するそのような戦略を、使用しうる。
【0358】
いくつかの態様において、多重ターゲティング戦略は、特定の疾患もしくは状態と関連する抗原が非疾患細胞上で発現し、および/または改変細胞そのものでも、一過性に(例えば遺伝子改変と関連する刺激時に)または永続的に発現する場合に、使用される。そのような場合は、2つの別個の、個別に特異的な、抗原受容体のライゲーションを要求することによって、特異性、選択性および/または効力が改良されうる。
【0359】
いくつかの態様では、複数の抗原、例えば第1抗原および第2抗原が、処置される細胞、組織、または疾患もしくは状態、例えばがん細胞上に発現する。いくつかの局面において、前記細胞、組織、疾患または状態は、多発性骨髄腫または多発性骨髄腫細胞である。いくつかの態様において、複数の抗原のうちの1つまたは複数は、一般に、細胞治療の標的とすることを望まない細胞にも、例えば正常または非疾患細胞または組織にも、および/または改変細胞自身にも発現する。そのような態様では、細胞の応答を達成するために複数の受容体のライゲーションを必要とすることにより、特異性および/または効力が達成される。
【0360】
e. 他の調節要素
本明細書において提供される方法および組成物のいくつかの態様において、組換え受容体、例えば抗原受容体、例えばCARをコードする、ウイルスベクターゲノムに含有される核酸(例えばポリヌクレオチド)配列は、特定の様式での関心対象の配列の発現を調節するために、他の遺伝要素、例えばプロモーターまたはエンハンサーを含む転写調節配列と、機能的な関係で、機能的に連結される。一定の例において、そのような転写調節配列は、活性に関して時期的および/または空間的に調節されるものである。構成要素の発現を調節するために使用することができる発現制御要素は公知であり、誘導性プロモーター、恒常的プロモーター、分泌シグナル、エンハンサーおよび他の調節要素が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、ウイルスベクターゲノムに含有される核酸(例えばポリヌクレオチド)配列は、組換え受容体および/または改変細胞、例えば改変受容体を発現する細胞の、発現、機能および/または活性を調節することができるように、例えば、それらが誘導可能、抑制可能、もしくは調節可能であり、および/またはユーザー制御されるように、コードされている異なる構成要素、例えば異なる受容体構成要素および/またはシグナリング構成要素を制御する複数の発現制御要素を含有する。いくつかの態様において、1つまたは複数のベクターは、1つもしくは複数の発現制御要素および/または1つもしくは複数のコードされた構成要素を含有する1つまたは複数の核酸(例えばポリヌクレオチド)配列を、それらの核酸配列が全体として、コードされている構成要素、例えば組換え受容体、または改変細胞の、発現、活性および/または機能を調節することができるように、含有することができる。
【0361】
いくつかの態様において、組換え受容体、例えば抗原受容体、例えばCARをコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)配列は、内部プロモーター/エンハンサー調節配列と機能的に連結される。使用されるプロモーターは、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指示するために、恒常的、組織特異的、誘導性、および/または適当な条件下で有用でありうる。プロモーターは異種または内在性でありうる。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは合成的に生産される。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、組換えクローニングおよび/または核酸増幅技術を使って生産される。
【0362】
場合により、組換え受容体をコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)配列は、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含有する。いくつかの局面において、シグナル配列は、ネイティブポリペプチドに由来するシグナルペプチドをコードしうる。別の局面において、シグナル配列は、異種または非ネイティブシグナルペプチド、例えばSEQ ID NO:32に示され、SEQ ID NO:31のヌクレオチド配列によってコードされる、GMCSFRアルファ鎖の例示的シグナルペプチドをコードしうる。場合により、組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)配列は、シグナルペプチドをコードするシグナル配列を含有する。シグナルペプチドの非限定的な典型例としては、例えばSEQ ID NO:32に示され、SEQ ID NO:31のヌクレオチド配列によってコードされる、GMCSFRアルファ鎖シグナルペプチド、またはSEQ ID NO:33に示されるCD8アルファシグナルペプチドが挙げられる。
【0363】
いくつかの態様において、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドは、組換え受容体の発現を制御するために機能的に連結された少なくとも1つのプロモーターを含有する。いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、組換え受容体の発現を制御するために機能的に連結された2つ、3つまたはそれ以上のプロモーターを含有する。
【0364】
核酸分子が2つ以上の異なるポリペプチド鎖、例えば組換え受容体とマーカーをコードする一定の例では、ポリペプチド鎖のそれぞれが別々の核酸分子によってコードされうる。例えば2つの別個の核酸を用意して、それぞれを、細胞における発現のために細胞に個別に移入または導入することができる。いくつかの態様において、組換え受容体をコードする核酸およびマーカーをコードする核酸は、同じプロモーターに機能的に連結され、任意で配列内リボソーム進入部位(IRES)で分離されるか、または自己切断ペプチドもしくはリボソームスキッピングを引き起こすペプチド(これはT2A、P2A、E2AまたはF2Aであってもよい)をコードする核酸で分離される。いくつかの態様において、マーカーをコードする核酸と組換え受容体をコードする核酸は、2つの異なるプロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様において、マーカーをコードする核酸と組換え受容体をコードする核酸は、細胞のゲノム内で異なる場所に存在しまたは挿入される。いくつかの態様において、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドは、培養細胞を含有する組成物に、例えばレトロウイルス形質導入、トランスフェクションまたは形質転換などによって導入される。
【0365】
ポリヌクレオチドが第1核酸配列と第2核酸配列とを含有する態様など、いくつかの態様では、異なるポリペプチド鎖のそれぞれをコードするコード配列を、同じであっても異なってもよいプロモーターに、機能的に連結することができる。いくつかの態様において、核酸分子は、2つ以上の異なるポリペプチド鎖の発現を駆動する1つのプロモーターを含有することができる。いくつかの態様において、そのような核酸分子は、多シストロン性(二シストロン性または三シストロン性、例えば米国特許第6,060,273号参照)である。いくつかの態様において、転写単位は、単一のプロモーターからの1つのメッセージによる遺伝子産物(例えばマーカーをコードするものおよび組換え受容体をコードするもの)の共発現を可能にするIRES(配列内リボソーム進入部位)を含有する二シストロン性単位として工作することができる。あるいは、場合によっては、自己切断ペプチド(例えば2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えばフューリン)をコードする配列によって互いに分離された2つまたは3つの遺伝子(例えばマーカーをコードする遺伝子と組換え受容体をコードする遺伝子)を単一のオープンリーディングフレーム(ORF)中に含有するRNAの発現を、単一のプロモーターで指示することもできる。こうして、このORFは単一のポリペプチドをコードし、それは翻訳中に(2Aの場合)または翻訳後に、個々のタンパク質へとプロセシングされる。場合により、T2Aなどのペプチドは、リボソームに、2AエレメントのC末におけるペプチド結合の合成をスキップ(リボソームスキッピング)させることができ、それが2A配列の端と下流にある次のペプチドとの間の分離をもたらす(例えばde Felipe, Genetic Vaccines and Ther. 2:13(2004)およびde Felipe et al. Traffic 5:616-626(2004)を参照されたい)。さまざまな2Aエレメントが公知である。本明細書において開示される方法およびシステムにおいて使用することができる2A配列の例は、限定するわけではないが、米国特許出願公開第20070116690号記載の、口蹄疫ウイルス(F2A、例えばSEQ ID NO:28)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A、例えばSEQ ID NO:27)、トセア・アシグナウイルス(T2A、例えばSEQ ID NO:13または24)、およびブタテッショウウイルス-1(P2A、例えばSEQ ID NO:25または26)からの2A配列である。
【0366】
本明細書記載の組換え受容体はいずれも、組換え受容体をコードする1つまたは複数の核酸配列を任意の組合せまたは任意の配置で含有するポリヌクレオチドによってコードされうる。例えば、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のポリヌクレオチドが、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の異なるポリペプチド、例えば組換え受容体をコードすることができる。いくつかの態様では、1つのベクターまたはコンストラクトが、マーカーをコードする核酸配列を含有し、それとは別のベクターまたはコンストラクトが組換え受容体、例えばCARをコードする核酸配列を含有する。いくつかの態様において、マーカーをコードする核酸と組換え受容体をコードする核酸は、2つの異なるプロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様において、組換え受容体をコードする核酸は、マーカーをコードする核酸の下流に存在する。
【0367】
いくつかの態様において、ベクターバックボーンは、1つまたは複数のマーカーをコードする核酸配列を含有する。いくつかの態様において、それら1つまたは複数のマーカーは、形質導入マーカー、代用マーカーおよび/または選択マーカーである。
【0368】
いくつかの態様において、マーカーは、形質導入マーカーまたは代用マーカーである。形質導入マーカーまたは代用マーカーは、ポリヌクレオチド、例えば組換え受容体をコードするポリヌクレオチドが導入されている細胞を検出するために使用することができる。いくつかの態様では、形質導入マーカーによって、細胞の修飾を示しまたは確認することができる。いくつかの態様において、代用マーカーは、組換え受容体、例えばCARと共に細胞表面上に共発現されるようにしたタンパク質である。特定の態様において、そのような代用マーカーは、活性をほとんどまたは全く有しないように修飾された表面タンパク質である。一定の態様において、代用マーカーは、組換え受容体をコードするそのポリヌクレオチド上にコードされる。いくつかの態様において、組換え受容体をコードする核酸配列は、マーカーをコードする核酸配列に機能的に連結され、任意で、それらは配列内リボソーム進入部位(IRES)、または自己切断ペプチドもしくはリボソームスキッピングを引き起こすペプチド、例えばT2A、P2A、E2AもしくはF2Aなどの2A配列をコードする核酸によって分離されていてもよい。細胞の検出または選択を可能にするために、および場合によっては細胞の自殺を促進するためにも、外因性マーカー遺伝子を、場合によっては、利用しうる。
【0369】
例示的な代用マーカーは、切断型細胞表面ポリペプチド、例えば切断型ヒト上皮成長因子受容体2(tHER2)、切断型上皮成長因子受容体(EGFRt、SEQ ID NO:14または23に示される例示的EGFRt配列)または前立腺特異的膜抗原(PSMA)もしくはその修飾型を含むことができる。EGFRtは、抗体セツキシマブ(Erbitux(登録商標))または他の治療用抗EGFR抗体もしくは結合分子によって認識されるエピトープを含有しうる。これは、EGFRtコンストラクトおよび組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)で改変された細胞を同定または選択し、および/または受容体を発現する細胞を排除もしくは分離するために、使用することができる。米国特許第8,802,374号およびLiu et al., Nature Biotech. 2016 April;34(4):430-434を参照されたい。いくつかの局面において、マーカー、例えば代用マーカーは、CD34、NGFRまたは上皮成長因子受容体の全部もしくは一部(例えば切断型)(例えばtEGFR)を含む。いくつかの態様において、マーカーをコードする核酸は、リンカー配列、例えば切断可能なリンカー配列、例えばT2Aをコードするポリヌクレオチドに、機能的に連結される。例えばマーカー、および任意でリンカー配列は、PCT公開番号WO 2014031687に開示されているもののいずれかであることができる。例えばマーカーは、任意で、T2A切断可能リンカー配列などのリンカー配列に連結された切断型EGFR(tEGFR)であることができる。切断型EGFR(例えばtEGFR)の例示的なポリペプチドは、SEQ ID NO:14もしくはSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14もしくは23に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を呈するアミノ酸の配列を含む。
【0370】
いくつかの態様において、マーカーは、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、例えばスーパーフォールド(super-fold)GFP、赤色蛍光タンパク質(RFP)、例えばtdTomato、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedもしくはDsRed2、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青緑色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、および/もしくは黄色蛍光タンパク質(YFP)、ならびに/またはそれらのバリアント、例えば蛍光タンパク質の、種バリアント、単量体型バリアント、ならびにコドン最適化型および/もしくは高感度型バリアントであるか、またはそれらを含む。いくつかの態様において、マーカーは、酵素、例えばルシフェラーゼ、大腸菌(E.coli)由来のlacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ(SEAP)、および/またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であるか、またはそれらを含む。例示的な発光レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ(luc)、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)またはそれらのバリアントが挙げられる。
【0371】
いくつかの態様において、マーカーは選択マーカーである。いくつかの態様において、選択マーカーは、外因性の作用物質または薬物に対する耐性を付与するポリペプチドであるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、選択マーカーは抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様において、選択マーカーは、哺乳動物細胞に抗生物質耐性を与える抗生物質耐性遺伝子である。いくつかの態様において、選択マーカーは、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジェネティシン耐性遺伝子もしくはゼオシン耐性遺伝子またはそれらの改変型であるか、またはそれらを含む。
【0372】
追加の核酸、例えば、導入のための遺伝子には、例えば移入された細胞の生存および/または機能を増進することなどによって治療の効力を改良するためのもの;例えばインビボでの生存または局在化を評価するなどの目的で、細胞を選択および/または評価するための遺伝子マーカーを提供するための遺伝子;例えばLupton S. D. et al., Mol. and Cell Biol., 11:6(1991)およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338(1992)に記載されているように、細胞がインビボでの負の選択を受けやすくなるようにすることなどによって安全性を改良するための遺伝子がある。正の選択が可能な優性マーカーを負の選択が可能なマーカーと融合することによって誘導される二機能性選択可能融合遺伝子の使用を記載しているLuptonらによるPCT/US91/08442およびPCT/US94/05601の公報も参照されたい。例えばRiddellらの米国特許第6,040,177号のカラム14~17を参照されたい。
【0373】
いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、コードセグメントおよび/またはエクソンの上流に位置する5'非コード配列を単離することによって得ることができるような、核酸配列と天然に関連するものでありうる。あるいは、いくつかの態様において、コード核酸セグメントは、天然の状況下ではそのコード核酸配列と通常は関連していない組換えおよび/または異種プロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下に位置してもよい。例えば、組換えDNA構築に使用される例示的プロモーターとして、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース、トリプトファン(trp)、RNAポリメラーゼ(pol)IIIプロモーター、例えばヒトおよびマウスU6 pol IIIプロモーターならびにヒトおよびマウスH1 RNA pol IIIプロモーター;RNAポリメラーゼ(pol)IIプロモーター;サイトメガロウイルス前初期プロモーター(pCMV)、伸長因子1アルファ(EF-1アルファ)、およびラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモーター(pRSV)プロモーター系が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、プロモーターは、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、鳥肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、肝炎Bウイルス、および/またはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得ることができる。プロモーターは、そのプロモーターが標的細胞と適合するのであれば、例えば異種哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーター、またはネイティブ配列と通常関連しているプロモーターであってもよい。一態様において、プロモーターはウイルス発現系中の天然のウイルスプロモーターである。
【0374】
いくつかの態様において、プロモーターは恒常的に活性でありうる。使用しうる恒常的プロモーターの非限定的な例として、ユビキチン(米国特許第5,510,474号、WO 98/32869)、CMV(Thomsen et al., PNAS 81:659,1984、米国特許第5,168,062号)、ベータ-アクチン(Gunning et al.1989 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4831-4835)およびpgk(例えばAdra et al. 1987 Gene 60:65-74、Singer-Sam et al. 1984 Gene 32:409-417、およびDobson et al. 1982 Nucleic Acids Res. 10:2635-2637参照)のプロモーターが挙げられる。
【0375】
いくつかの態様において、プロモーターは、組織特異的プロモーターおよび/または標的細胞特異的プロモーターでありうる。いくつかの態様において、プロモーターは、関心対象の配列の誘導性発現が可能になるように、選択しうる。誘導性発現のための系は、テトラサイクリン応答系、lacオペレーター-リプレッサー系、ならびにさまざまな環境変化または生理学的変化、例えば熱ショック、金属イオン(例えばメタロチオネインプロモーター)、インターフェロン、低酸素、ステロイド(例えばプロゲステロンもしくはグルココルチコイド受容体プロモーター)、放射線(例えばVEGFプロモーター)に応答するプロモーターなど、数多くが公知である。いくつかの態様において、大腸菌(Escherichia coli)のtet抑制(tetr)の阻害作用に基づくテトラサイクリン(tet)調節可能系を、哺乳動物系における使用のために修飾し、発現カセット用の調節可能要素として使用することができる。これらのシステムは周知である。(Goshen and Badgered, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547-51(1992)、Shockett et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6522-26(1996)、Lindemann et al., Mol. Med. 3:466-76(1997)参照)。
【0376】
関心対象の遺伝子の所望の発現を得るためにプロモーターの組合せも使用しうる。当業者は、関心対象の生物または標的細胞における所望の遺伝子発現パターンに基づいて、プロモーターを選択することができるだろう。
【0377】
いくつかの態様において、関心対象の遺伝子の発現を増加させるために、ウイルスコンストラクトにはエンハンサーも存在しうる。エンハンサーは、プロモーターに作用してその転写を増加させる、通常は約10~300by長の、典型的にはシス作用性の核酸要素である。HIVまたはCMVなどのウイルスゲノム中のエンハンサーが数多く公知である。例えばCMVエンハンサー(Boshart et al. Cell, 41:521, 1985)を使用することができる。他の例としては、例えば複製起点の後期側(bp100~270)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。場合により、エンハンサーは、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ-フェトプロテイン、またはインスリンからのエンハンサーなど、哺乳動物遺伝子に由来する。エンハンサーは、異種プロモーターと併用することができる。エンハンサーは、関心対象の遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列に対して5'側または3'側の位置でベクター中に挿入されうるが、一般的にはプロモーターより5'側の部位に位置する。当業者であれば、所望の発現パターンに基づいて、適当なエンハンサーを選択できるだろう。
【0378】
ウイルスベクターゲノムは追加の遺伝要素も含有しうる。コンストラクトに含めることができる要素のタイプは決して限定されず、当業者であれば選ぶことができる。
【0379】
例えば、標的細胞におけるウイルスゲノムの核侵入を容易にするシグナルを含めうる。そのようなシグナルの例は、HIV-1 flapシグナル(場合によってはflap配列という)である。加えて、ベクターゲノムは、関心対象の遺伝子の発現を強化するように設計された1つまたは複数の遺伝要素を含有しうる。いくつかの態様において、ゲノムは、転写後調節要素(PRE)または転写後活性を呈するその修飾型を含有する。例えば、いくつかの態様では、マーモット肝炎ウイルス転写後応答要素(WPRE)を、コンストラクト中に入れることができる(Zufferey et al. 1999. J. Virol. 74:3668-3681、Deglon et al. 2000. Hum. Gene Ther. 11:179-190)。いくつかの態様において、ベクターゲノムはflap配列を欠き、および/またはWPREを欠く。いくつかの態様において、ベクターゲノムは、変異型または欠損性のflap配列および/またはWPREを含有する。
【0380】
いくつかの例では、別々の異種タンパク質をコードする2つ以上のオープンリーディングフレームを含めることができる。例えばいくつかの態様において、レポーターならびに/または検出可能および/もしくは選択可能遺伝子を発現コンストラクトに含めるのであれば、配列内リボソーム進入部位(IRES)配列を含めることができる。典型的には、追加の遺伝要素は、独立したプロモーター/エンハンサーと機能的に連結され、それによって制御される。追加の遺伝要素は、レポーター遺伝子、選択可能マーカーまたは他の所望の遺伝子であることができる。
【0381】
いくつかの態様において、他のさまざまな調節要素は、転写開始領域および/または終結領域を含むことができる。発現ベクターは、転写の終結およびmRNAの安定化のための配列も含有しうる。そのような配列は公知であり、真核またはウイルスDNAまたはcDNAの5'および時には3'非翻訳領域に天然に見いだされることが多い。転写終結領域の例としてはポリアデニル化シグナル配列が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ポリアデニル化シグナル配列の例としては、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリ(A)、SV40後期ポリ(A)、ウサギベータ-グロビン(RBG)ポリ(A)、チミジンキナーゼ(TK)ポリ(A)配列、およびそれらの任意のバリアントが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0382】
いくつかの態様において、調節要素は、組換え受容体、例えばCARの調節可能な発現および/または活性を可能にする調節要素および/または調節系を含むことができる。いくつかの態様において、調節可能な発現および/または活性は、特定の調節要素および/または調節系を含有するかまたはそれらによって制御されるように組換え受容体を構成させることによって達成される。いくつかの態様では、発現調節系に、1つまたは複数の追加の受容体を使用することができる。いくつかの態様において、発現調節系は、組換え受容体の発現および/または活性を調節することができる特異的リガンドへの曝露または前記特異的リガンドの結合を必要とする系を含むことができる。いくつかの態様において、組換え受容体、例えばCARの調節された発現は、調節可能な転写因子放出系、例えば修飾Notchシグナリング系によって達成される(例えばRoybal et al., Cell(2016)164:770-779、Morsut et al., Cell(2016)164:780-791参照)。いくつかの態様において、組換え受容体の活性の調節は、ポリペプチド、例えば組換え受容体のコンフォメーション変化および/または多量体化を誘導することができる追加作用物質の投与によって達成される。いくつかの態様において、追加作用物質は化学誘導物質である(例えば米国特許出願公開第2016/0046700号、Clackson et al.(1998)Proc Natl Acad Sci U S A. 95(18):10437-42、Spencer et al.(1993)Science 262(5136):1019-24、Farrar et al.(1996)Nature 383(6596):178-81、Miyamoto et al.(2012)Nature Chemical Biology 8(5):465-70、Erhart et al.(2013)Chemistry and Biology 20(4):549-57参照)。
【0383】
3. ウイルスベクター粒子の調製
ウイルスベクターゲノムは、典型的には、パッケージング細胞株または生産細胞株にトランスフェクトすることができるプラスミド型で構築される。ウイルスベクターゲノムのRNAコピーを含有するゲノムを持つレトロウイルス粒子を生産するには、さまざまな公知の方法をどれでも使用することができる。いくつかの態様において、ウイルスベースの遺伝子送達系の作製には、少なくとも2つの構成要素が関与する。すなわち、第1に、構造タンパク質およびウイルスベクター粒子を生成させるのに必要な酵素を包含するパッケージングプラスミド、および第2に、ウイルスベクターそのもの、すなわち移入される遺伝物質である。これらの構成要素の一方または両方にバイオセイフティ予防措置を導入することができる。
【0384】
いくつかの態様において、パッケージングプラスミドは、エンベロープタンパク質以外のレトロウイルス)(例えばHIV-1)タンパク質を、すべて含有することができる(Naldini et al., 1998)。別の態様において、ウイルスベクターは、追加のウイルス遺伝子、例えばビルレンスと関連するもの、例えばvpr、vif、vpuおよびnef、ならびに/またはHIVの主要トランス活性化因子Tatを欠くことができる。いくつかの態様において、レンチウイルスベクター、例えばHIVベースのレンチウイルスベクターは、3つの親ウイルス遺伝子、すなわちgag、polおよびrevだけを含み、それが、組換えによって野生型ウイルスが再構成される可能性を、低減または排除する。
【0385】
いくつかの態様において、ウイルスベクターゲノムは、ウイルスベクターゲノムから転写されたウイルスゲノムRNAをウイルス粒子にパッケージングするのに必要な構成要素をすべて含有するパッケージング細胞株に導入される。あるいは、ウイルスベクターゲノムは、関心対象の1つまたは複数の配列、例えば組換え核酸に加えて、ウイルス構成要素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含みうる。しかし、いくつかの局面では、標的細胞におけるゲノムの複製を防止するために、複製に必要な内在性ウイルス遺伝子が除去され、それは別途、パッケージング細胞株中に用意される。
【0386】
いくつかの態様では、パッケージング細胞株に、粒子を生成させるのに必要な構成要素を含有する1つまたは複数のプラスミドベクターがトランスフェクトされる。いくつかの態様では、パッケージング細胞株に、LTR、シス作用性パッケージング配列および関心対象の配列、すなわちCARなどの抗原受容体をコードする核酸を含むウイルスベクターゲノムを含有するプラスミドと、ウイルスの酵素および/または構造構成要素、例えばGag、polおよび/またはrevをコードする1つまたは複数のヘルパープラスミドとをトランスフェクトする。いくつかの態様では、レトロウイルスベクター粒子を生成させるさまざまな遺伝子構成要素を分離するために、複数のベクターを利用する。いくつかのそのような態様では、パッケージング細胞に別々のベクターを与えることで、そうしなければ複製能を持つウイルスが生成するかもしれない組換え事象の可能性を低減させる。いくつかの態様では、すべてのレトロウイルス構成要素を有する単一のプラスミドベクターを使用することができる。
【0387】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスベクター粒子は、宿主細胞の形質導入効率を増加させるために、シュードタイプ化されている。いくつかのそのような態様において、ウイルスベクター粒子、例えばレンチウイルスベクター粒子は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質でシュードタイプ化されている。例えば、レンチウイルスベクター粒子などのレトロウイルスベクター粒子は、いくつかの態様ではVSV-G糖タンパク質でシュードタイプ化され、これにより、形質導入されうる細胞タイプを拡げる幅広い細胞宿主域が得られる。いくつかの態様において、パッケージング細胞株には、例えばキセノトロピック、ポリトロピックまたはアンホトロピックエンベロープ、例えばシンドビスウイルスエンベロープ、GALVまたはVSV-Gを含むように、非ネイティブエンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドまたはポリヌクレオチドがトランスフェクトされる。
【0388】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、ウイルスゲノムRNAをレンチウイルスベクター粒子にパッケージングするためにトランスに必要な、ウイルスの調節タンパク質および構造タンパク質を含む構成要素を提供する。いくつかの態様において、パッケージング細胞株は、レンチウイルスタンパク質を発現し、機能的なレンチウイルスベクター粒子を生産することができる任意の細胞株でありうる。いくつかの局面では、適切なパッケージング細胞株として、293(ATCC CCL X)、293T、HeLA(ATCC CCL 2)、D17(ATCC CCL 183)、MDCK(ATCC CCL 34)、BHK(ATCC CCL-10)およびCf2Th(ATCC CRL 1430)細胞が挙げられる。
【0389】
いくつかの態様において、パッケージング細胞株はウイルスタンパク質を安定に発現する。例えば、いくつかの局面では、gag、pol、revおよび/または他の構造遺伝子を含有するがLTRおよびパッケージング構成要素を持たないパッケージング細胞株を構築することができる。いくつかの態様において、パッケージング細胞株には、1つまたは複数のウイルスタンパク質をコードする核酸分子を、異種タンパク質をコードする核酸分子および/またはエンベロープ糖タンパク質をコードする核酸を含有するウイルスベクターゲノムと一緒に、一過性にトランスフェクトすることができる。
【0390】
いくつかの態様において、ウイルスベクターならびにパッケージングおよび/またはヘルパープラスミドは、パッケージング細胞株へのトランスフェクションまたは感染によって導入される。パッケージング細胞株は、ウイルスベクターゲノムを含有するウイルスベクター粒子を生産する。トランスフェクションまたは感染の方法は周知である。非限定的な例として、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法およびリポフェクション法、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションが挙げられる。
【0391】
組換えプラスミドならびにレトロウイルスLTR配列およびパッケージング配列が特別な細胞株に(例えばリン酸カルシウム沈殿法などによって)導入されると、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写産物がウイルス粒子へとパッケージングされることを可能にし、そのウイルス粒子は次に培養培地中に分泌されうる。次に、いくつかの態様では、組換えレトロウイルスを含有する培地を収集し、任意で濃縮し、遺伝子移入に使用する。例えばいくつかの局面では、パッケージングプラスミドと移入ベクターとをパッケージング細胞株に共トランスフェクトした後に、当業者が使用する標準的な方法によって、ウイルスベクター粒子を培養培地から回収し、力価測定する。
【0392】
いくつかの態様において、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターは、レンチウイルス粒子の生成が可能になるようにプラスミドを導入することにより、例示的HEK 293T細胞株などのパッケージング細胞株において生産することができる。いくつかの態様では、gagおよびpolをコードするポリヌクレオチドと、組換え受容体、例えばCARなどの抗原受容体をコードするポリヌクレオチドとが、パッケージング細胞にトランスフェクトされ、および/またはパッケージ細胞がそれらを含有する。いくつかの態様において、任意でおよび/または追加して、パッケージング細胞株にはrevタンパク質をコードするポリヌクレオチドがトランスフェクトされ、および/またはパッケージング細胞株はそれを含有する。いくつかの態様において、任意でおよび/または追加して、パッケージング細胞株には非ネイティブエンベロープ糖タンパク質、例えばVSV-Gをコードするポリヌクレオチドがトランスフェクトされ、および/またはパッケージング細胞株はそれを含有する。いくつかのそのような態様では、HEK293T細胞などの細胞のトランスフェクションのおよそ2日後には、細胞上清が組換えレンチウイルスベクターを含有し、それを回収して力価測定することができる。
【0393】
回収されたおよび/または生産されたレトロウイルスベクター粒子は、記載の方法による標的細胞への形質導入に使用することができる。標的細胞に入ると、ウイルスRNAは逆転写され、核内に移入され、宿主ゲノムに安定に組み込まれる。ウイルスRNAの組込みの1日後または2日後には、組換えタンパク質、例えばCARなどの抗原受容体の発現を検出することができる。
【0394】
D. 形質導入
提供される態様のいくつかにおいて、提供される方法は、複数の細胞を含む細胞組成物をウイルスベクター粒子と接触させる、例えばインキュベートすることによって、細胞に形質導入を行う方法を伴う。いくつかの態様において、インプット組成物は、対象から得られた初代細胞、例えば対象から富化および/もしくは選択された細胞、ならびに/または刺激性条件下でインキュベートされた細胞であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、複数の細胞を含む細胞組成物は、CCR7などのマーカーの陽性表面発現について選択および/または富化された細胞であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、複数の細胞を含む細胞組成物は、CCR7の陽性表面発現について選択および/または富化され、刺激性条件下でインキュベートされた細胞(以下、「刺激された組成物」ともいう)であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、細胞組成物は刺激された組成物であるか、またはそれを含む。
【0395】
いくつかの態様において、細胞組成物は、対象から得られた初代細胞を含む。いくつかの局面において、試料は、全血試料、バフィーコート試料、末梢血単核球(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球試料、アフェレーシス産物または白血球アフェレーシス産物である。いくつかの態様では、細胞の選択、刺激および/または形質導入の前に、初代細胞を含有する試料を、少なくとも10%(v/v)もしくは少なくとも約10%(v/v)、少なくとも15%(v/v)もしくは少なくとも約15%(v/v)、少なくとも20%(v/v)もしくは少なくとも約20%(v/v)、少なくとも25%(v/v)もしくは少なくとも約25%(v/v)、少なくとも30%(v/v)もしくは少なくとも約30%(v/v)、少なくとも35%(v/v)もしくは少なくとも約35%(v/v)、少なくとも40%(v/v)もしくは少なくとも約40%(v/v)、または少なくとも50%もしくは少なくとも約50%の濃度の血清または血漿と、エクスビボで接触させるか、または初代細胞を含有する試料は、前記濃度の血清または血漿を含有する。いくつかの態様において、試料は、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%もしくは35%(v/v)、またはおよそ約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%もしくは35%(v/v)、または少なくとも約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%もしくは35%(v/v)である濃度の血清または血漿を含有する。いくつかの態様において、血清または血漿はヒトの血清または血漿である。いくつかの態様において、血清または血漿は対象にとって自家である。いくつかの態様では、選択、刺激および/または形質導入の前に、初代細胞を含有する試料を、抗凝固剤と接触させるか、または初代細胞を含有する試料は抗凝固剤を含有する。いくつかの態様において、抗凝固剤は、遊離クエン酸イオン、例えば抗凝固クエン酸デキストロース溶液A液(ACD-A)であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様では、細胞の選択、刺激および/または形質導入の前に、試料が、最大48時間、例えば最大12時間、24時間または36時間にわたって、2℃~8℃または約2℃~8℃の温度に維持される。
【0396】
いくつかの態様において、細胞組成物は、CCR7+細胞、例えばCCR7+T細胞を含み、および/またはそれらが富化されている。いくつかの態様において、細胞組成物は、CD4+および/またはCD8+T細胞を含むT細胞を含み、および/またはそれらが富化されている。いくつかの態様において、細胞組成物は、CCR7+CD4+T細胞、CCR7+CD8+T細胞、CCR7+CD3+T細胞、またはCCR7+CD4+CD8+T細胞を含み、および/またはそれらが富化されている。いくつかの局面において、富化は、初代細胞を、初代細胞の亜集団上に発現する細胞表面分子に特異的に結合する1つまたは複数の選択試薬またはアフィニティー試薬と共にインキュベートし、それによって、選択試薬への結合に基づいて初代細胞を富化することにより、アフィニティーに基づく選択によって実行することができる。いくつかの態様において、富化は、細胞を抗体被覆粒子、例えば磁性ビーズと共にインキュベートすることによって実行することができる。
【0397】
いくつかの態様において、細胞組成物は、75%、80%、85%、90%もしくは95%またはそれ以上を上回る、または約75%、80%、85%、90%もしくは95%またはそれ以上を上回る、対象からの試料から得られたT細胞を含む。いくつかの態様において、細胞組成物は、細胞をウイルスベクター粒子と共にインキュベートすることによる細胞への形質導入に先立って、刺激性条件下でインキュベートされなかった。いくつかの局面において、インキュベーションの前に、細胞組成物のT細胞のうちの5%、10%、20%、30%または40%以下は活性化細胞であって、例えばHLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40L、および4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し、IL-2、IFN-ガンマおよびTNF-アルファからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、細胞周期のG1期以降にあり、および/または増殖能を有する。いくつかの態様において、そのような細胞、例えばインキュベートするおよび/または接触させる工程に先立って1つまたは複数の刺激作用物質によるエクスビボでの刺激に供されていない細胞を含有する細胞組成物は、20%、30%、40%、50%、60%もしくは70%またはそれ以上を上回るT細胞が、低密度脂質受容体(low-density lipid receptor)(LDL-R)を発現する。いくつかの態様において、細胞組成物は、CCR7+T細胞などのT細胞であって、CD4+および/またはCD8+でもあるものが富化および/または選択され、前記インキュベートする工程の前に、20%、30%、40%、50%、60%もしくは70%またはそれ以上を上回る細胞が、低密度脂質受容体(LDL-R)を発現する。
【0398】
いくつかの態様において、細胞組成物(例えば刺激された組成物)は、細胞をウイルスベクター粒子と共にインキュベートすることによる細胞への形質導入に先立って、刺激性条件下でインキュベートされた。いくつかの局面において、インキュベーション前に、細胞組成物のT細胞のうちの少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は活性化細胞であって、例えばHLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40L、および4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し、IL-2、IFN-ガンマおよびTNF-アルファからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、細胞周期のG1期以降にあり、および/または増殖能を有する。いくつかの局面において、インキュベーション前に、細胞組成物のT細胞の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%は活性化細胞であって、例えばHLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40L、および4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し、IL-2、IFN-ガンマおよびTNF-アルファからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、細胞周期のG1期以降にあり、および/または増殖能を有する。
【0399】
いくつかの態様において、インキュベートするおよび/または接触させる工程中または少なくともその一部の間に、細胞組成物は1つまたは複数のサイトカインを含むことができる。いくつかの態様において、サイトカインは、IL-2、IL-7、またはIL-15から選択される。いくつかの態様において、サイトカインは組換えサイトカインである。いくつかの態様において、細胞組成物中のサイトカインの濃度は、独立して、1 IU/mL~1500 IU/mLまたは約1 IU/mL~1500 IU/mL、例えば1 IU/mL~100 IU/mL、2 IU/mL~50 IU/mL、5 IU/mL~10 IU/mL、10 IU/mL~500 IU/mL、50 IU/mL~250 IU/mL、100 IU/mL~200 IU/mL、50 IU/mL~1500 IU/mL、100 IU/mL~1000 IU/mLもしくは200 IU/mL~600 IU/mL、または約1 IU/mL~100 IU/mL、2 IU/mL~50 IU/mL、5 IU/mL~10 IU/mL、10 IU/mL~500 IU/mL、50 IU/mL~250 IU/mL、100 IU/mL~200 IU/mL、50 IU/mL~1500 IU/mL、100 IU/mL~1000 IU/mLもしくは200 IU/mL~600 IU/mLである。いくつかの態様において、細胞組成物中のサイトカインの濃度は、独立して、少なくとも1 IU/mL、5 IU/mL、10 IU/mL、50 IU/mL、100 IU/mL、200 IU/mL、500 IU/mL、1000 IU/mLもしくは1500 IU/mL、または少なくとも約1 IU/mL、5 IU/mL、10 IU/mL、50 IU/mL、100 IU/mL、200 IU/mL、500 IU/mL、1000 IU/mLもしくは1500 IU/mLである。一定の局面では、TCR複合体の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる作用物質、例えば抗CD3および/または抗CD28抗体も、インキュベートする工程中もしくは少なくともその一部の間、またはインキュベートする工程の後に、含めることができる。
【0400】
いくつかの態様において、インキュベートするおよび/または接触させる工程中または少なくともその一部の間に、細胞組成物は血清を含むことができる。いくつかの態様において、血清はウシ胎児血清である。いくつかの態様において、血清はヒト血清である。いくつかの態様において、血清は、細胞組成物中に、それぞれ両端の値を含め、0.5%~25%(v/v)、1.0%~10%(v/v)もしくは2.5%~5.0%(v/v)、または約0.5%~25%(v/v)、1.0%~10%(v/v)もしくは2.5%~5.0%(v/v)の濃度で存在する。いくつかの態様において、血清は、細胞組成物中に、少なくとも0.5%(v/v)、1.0%(v/v)、2.5%(v/v)、5%(v/v)もしくは10%(v/v)、または少なくとも約0.5%(v/v)、1.0%(v/v)、2.5%(v/v)、5%(v/v)もしくは10%(v/v)の濃度で存在する。
【0401】
いくつかの態様において、インキュベートするおよび/または接触させる工程中または少なくともその一部の間に、細胞組成物は無血清および/または実質的に無血清である。いくつかの態様では、インキュベートするおよび/または接触させる工程中または少なくともその一部の間に、細胞組成物を、血清の非存在下でインキュベートするおよび/または接触させる。特定の態様では、インキュベートするおよび/または接触させる工程中または少なくともその一部の間に、細胞組成物を無血清培地中でインキュベートするおよび/または接触させる。いくつかの態様において、無血清培地は、限定細胞培養培地および/または既知組成細胞培養培地である。いくつかの態様において、無血清培地は、一定の細胞タイプの細胞、例えば免疫細胞、T細胞、ならびに/またはCD4+およびCD8+T細胞などの成長、増殖、健康、ホメオスタシスを支えるように、処方される。
【0402】
いくつかの態様において、インキュベートするおよび/または接触させる工程中または少なくともその一部の間に、細胞組成物はN-アセチルシステインを含む。いくつかの態様において、細胞組成物中のN-アセチルシステインの濃度は、それぞれ両端の値を含め、0.4mg/mL~4mg/mL、0.8mg/mL~3.6mg/mLもしくは1.6mg/mL~2.4mg/mL、または約0.4mg/mL~4mg/mL、0.8mg/mL~3.6mg/mLもしくは1.6mg/mL~2.4mg/mLである。いくつかの態様において、細胞組成物中のN-アセチルシステインの濃度は、少なくとも0.4mg/mL、0.8mg/mL、1.2mg/mL、1.6mg/mL、2.0mg/mL、2.4mg/mL、2.8mg/mL、3.2mg/mL、3.6mg/mLもしくは4.0mg/mL、または少なくとも約0.4mg/mL、0.8mg/mL、1.2mg/mL、1.6mg/mL、2.0mg/mL、2.4mg/mL、2.8mg/mL、3.2mg/mL、3.6mg/mLもしくは4.0mg/mL、または約0.4mg/mL、0.8mg/mL、1.2mg/mL、1.6mg/mL、2.0mg/mL、2.4mg/mL、2.8mg/mL、3.2mg/mL、3.6mg/mLもしくは4.0mg/mLである。
【0403】
いくつかの態様において、細胞組成物中の細胞の濃度は、1.0×105細胞/mL~1.0×108細胞/mLまたは約1.0×105細胞/mL~1.0×108細胞/mL、例えば少なくとも1.0×105細胞/mL、5×105細胞/mL、1×106細胞/mL、5×106細胞/mL、1×107細胞/mL、5×107細胞/mLもしくは1×108細胞/mL、またはおよそ少なくとも1.0×105細胞/mL、5×105細胞/mL、1×106細胞/mL、5×106細胞/mL、1×107細胞/mL、5×107細胞/mLもしくは1×108細胞/mL、または約1.0×105細胞/mL、5×105細胞/mL、1×106細胞/mL、5×106細胞/mL、1×107細胞/mL、5×107細胞/mLもしくは1×108細胞/mLである。
【0404】
いくつかの態様において、細胞組成物(例えば刺激された組成物)は、少なくとも25×106細胞、50×106細胞、75×106細胞 100×106細胞、125×106細胞、150×106細胞、175×106細胞、200×106細胞、225×106細胞、250×106細胞、275×106細胞もしくは300×106細胞、またはおよそ少なくとも25×106細胞、50×106細胞、75×106細胞 100×106細胞、125×106細胞、150×106細胞、175×106細胞、200×106細胞、225×106細胞、250×106細胞、275×106細胞もしくは300×106細胞、または約25×106細胞、50×106細胞、75×106細胞 100×106細胞、125×106細胞、150×106細胞、175×106細胞、200×106細胞、225×106細胞、250×106細胞、275×106細胞もしくは300×106細胞を含む。例えばいくつかの態様において、細胞組成物(例えば刺激された組成物)は、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む。
【0405】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、細胞組成物中の細胞の総数または形質導入される細胞の総数につき、一定の比のウイルスベクター粒子のコピー数またはその感染単位( IU)( IU/細胞)で提供される。例えばいくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、接触させる工程の間、細胞1つにつき0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50もしくは60 IU、または約0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50もしくは60 IU、または少なくとも0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50もしくは60 IU、または少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50もしくは60 IUのウイルスベクター粒子量で存在する。
【0406】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子の力価は、1×106 IU/mL~1×108 IU/mLまたは約1×106 IU/mL~1×108 IU/mL、例えば5×106 IU/mL~5×107 IU/mLまたは約5×106 IU/mL~5×107 IU/mL、例えば少なくとも6×106 IU/mL、7×106 IU/mL、8×106 IU/mL、9×106 IU/mL、1×107 IU/mL、2×107 IU/mL、3×107 IU/mL、4×107 IU/mLまたは5×107 IU/mLである。
【0407】
いくつかの態様において、形質導入は、100未満、例えば一般的には60、50、40、30、20、10もしくは5、またはそれ以下を下回る感染多重度(MOI)で達成される。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、20.0未満もしくは約20.0未満または10.0未満もしくは約10.0未満の感染多重度でインキュベートされる。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子は、1.0 IU/細胞~10 IU/細胞または約1.0 IU/細胞~10 IU/細胞の感染多重度でインキュベートされるか、またはウイルスベクター粒子は、少なくとも1.6 IU/細胞、1.8 IU/細胞、2.0 IU/細胞、2.4 IU/細胞、2.8 IU/細胞、3.2 IU/細胞、3.6 IU/細胞、4.0 IU/細胞、5.0 IU/細胞、6.0 IU/細胞、7.0 IU/細胞、8.0 IU/細胞、9.0 IU/細胞、もしくは10.0 IU/細胞、または少なくとも約1.6 IU/細胞、1.8 IU/細胞、2.0 IU/細胞、2.4 IU/細胞、2.8 IU/細胞、3.2 IU/細胞、3.6 IU/細胞、4.0 IU/細胞、5.0 IU/細胞、6.0 IU/細胞、7.0 IU/細胞、8.0 IU/細胞、9.0 IU/細胞、もしくは10.0 IU/細胞の感染多重度でインキュベートされる。
【0408】
いくつかの態様において、本方法は、細胞をウイルスベクター粒子と接触させるかまたはインキュベートする工程、例えば混合する工程を伴う。いくつかの態様において、接触させるかまたはインキュベートする工程は、30分~72時間、例えば30分~48時間、30分~24時間または1時間~24時間、例えば少なくとも30分、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間もしくは36時間またはそれ以上、または少なくとも約30分、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間もしくは36時間またはそれ以上にわたる。
【0409】
いくつかの態様において、接触させるかまたはインキュベートする工程は溶解状態で実施される。いくつかの態様では、細胞とウイルス粒子を、0.5mL~500mLまたは約0.5mL~500mL、例えば0.5mL~200mL、0.5mL~100mL、0.5mL~50mL、0.5mL~10mL、0.5mL~5mL、5mL~500mL、5mL~200mL、5mL~100mL、5mL~50mL、5mL~10mL、10mL~500mL、10mL~200mL、10mL~100mL、10mL~50mL、50mL~500mL、50mL~200mL、50mL~100mL、100mL~500mL、100mL~200mLもしくは200mL~500mL、または約0.5mL~200mL、0.5mL~100mL、0.5mL~50mL、0.5mL~10mL、0.5mL~5mL、5mL~500mL、5mL~200mL、5mL~100mL、5mL~50mL、5mL~10mL、10mL~500mL、10mL~200mL、10mL~100mL、10mL~50mL、50mL~500mL、50mL~200mL、50mL~100mL、100mL~500mL、100mL~200mLもしくは200mL~500mLの体積中で接触させる。
【0410】
いくつかの態様において、接触させるかまたはインキュベートする工程は、遠心分離、例えばスピノキュレーション(例えば遠心分離接種(centrifugal inoculation))で達成することができる。いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子をインキュベートする工程は、ウイルスベクター粒子を、組成物(例えば刺激された組成物)と共にスピノキュレーションに付す工程を含む。いくつかの態様では、細胞、ウイルスベクター粒子および試薬を含有する組成物を、一般的には比較的小さな力または低速で、例えば細胞をペレット化するために使用される速度より低い速度、例えば600rpm~1700rpmまたは約600rpm~1700rpm(例えば600rpm、1000rpm、1500rpmもしくは1700rpm、または約600rpm、1000rpm、1500rpmもしくは1700rpm、または少なくとも600rpm、1000rpm、1500rpmもしくは1700rpm)で、回転させることができる。いくつかの態様において、回転は、例えばチャンバまたはキャビティの内壁または外壁における測定で、100g~3200gまたは約100g~3200g(例えば100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000gもしくは3200g、または約100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000gもしくは3200g、または少なくとも100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000gもしくは3200g、または少なくとも約100g、200g、300g、400g、500g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000gもしくは3200g)の力、例えば相対遠心力で行われる。ウイルスベクター粒子を刺激された組成物と共にスピノキュレーションに付す工程を含むいくつかの態様において、スピノキュレーションに付す工程は、遠心分離チャンバの内側キャビティにおいて、ウイルスベクター粒子および刺激された組成物を回転させる工程を含み、回転は、(a)それぞれ両端の値を含め、500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または約500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または(b)少なくとも600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000g、または少なくとも約600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000gである、キャビティ側壁の内面における相対遠心力で行われる。「相対遠心力」(relative centrifugal force)またはRCFという用語は、一般に、回転軸に対する空間中の特定地点における、地球の重力との相対値としての、物体または物質(例えば細胞、試料もしくはペレットおよび/またはチャンバもしくは回転される他の容器におけるある地点)に伝わる慣性力であると理解される。その値は、重力、回転速度および回転半径(回転軸からRCFが測定されている物体、物質または粒子までの距離)を考慮して、周知の式を使って決定しうる。
【0411】
一定の態様において、改変、形質導入、および/またはトランスフェクションの少なくとも一部は、回転、例えばスピノキュレーションおよび/または遠心分離を使って実施される。いくつかの態様において、回転は、5分、10分、15分、30分、60分、90分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、2日、3日、4日、5日、6日にわたって、または約5分、10分、15分、30分、60分、90分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、2日、3日、4日、5日、6日にわたって、または少なくとも5分、10分、15分、30分、60分、90分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、2日、3日、4日、5日、6日にわたって、または少なくとも約5分、10分、15分、30分、60分、90分、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、2日、3日、4日、5日、6日にわたって、または少なくとも7日にわたって、実施される。いくつかの態様において、回転は60分または約60分にわたって実施される。いくつかの態様において、スピノキュレーションに付す工程は、(a)5分超もしくは約5分、10分超もしくは約10分、15分超もしくは約15分、20分超もしくは約20分、30分超もしくは約30分、45分超もしくは約45分、60分超もしくは約60分、90分超もしくは約90分、または120分超もしくは約120分、または(b)それぞれ両端の値を含め、5分~60分、10分~60分、15分~60分、15分~45分、30分~60分、もしくは45分~60分、または約5分~60分、10分~60分、15分~60分、15分~45分、30分~60分、もしくは45分~60分である時間にわたる。一定の態様において、回転は約30分にわたって実施される。いくつかの態様において、回転は、約30分にわたり、600g~700g、例えば693もしくは約693gで実施される。
【0412】
一定の態様において、改変、形質導入および/またはトランスフェクションの少なくとも一部は、約5mL~約100mL、例えば約10mL~約50mL、約15mL~約45mL、約20mL~約40mL、約25mL~約35mL、または30mLもしくは約30mLの体積(例えばスピノキュレーション体積)で行われる。一定の態様において、スピノキュレーション後の細胞ペレット体積は、約1mL~約25mL、例えば約5mL~約20mL、約5mL~約15mL、約5mL~約10mL、または10mLもしくは約10mLの範囲にある。
【0413】
いくつかの態様において、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションは、組成物の1つまたは複数の細胞を、組換えタンパク質、例えば組換え受容体をコードする核酸分子と接触させることによって実行される。いくつかの態様において、接触させる工程は、遠心分離、例えばスピノキュレーション(例えば遠心分離接種)で達成することができる。そのような方法には、国際公開番号WO 2016/073602に記載の方法がいずれも含まれる。例示的な遠心分離チャンバとしては、Biosafe SAによって製造販売されているもの、例えばSepax(登録商標)およびSepax(登録商標)2システムと共に使用されるもの、例えばA-200/FおよびA-200遠心分離チャンバならびにそのようなシステムと共に使用するためのさまざまなキットが挙げられる。例示的なチャンバ、システム、ならびに加工機器およびキャビネットは、例えば米国特許第6,123,655号、米国特許第6,733,433号および米国特許出願公開、公開番号US 2008/0171951、ならびに国際特許出願公開、公開番号WO 00/38762に記載されており、これらの各文献の内容は、参照により、その全体が本明細書に組み入れられる。そのようなシステムと共に使用するための例示的キットとしては、CS-430.1、CS-490.1、CS-600.1またはCS-900.2という製品名でBioSafe SAが販売している使い捨てキットが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0414】
いくつかの態様において、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションは、組成物(例えば刺激された組成物)および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む。いくつかの態様において、組成物(例えば刺激された組成物)および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程は、ウイルスベクター粒子を組成物(例えば刺激された組成物)とのスピノキュレーションに付す工程の前、またはその工程と同時に、またはその工程後に、実行される。
【0415】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部は、37℃±2℃または約37℃±2℃で実行される。例えばいくつかの態様において、ウイルス粒子のインキュベーションの少なくとも一部は、35~39℃または約35~39℃で実行される。いくつかの態様において、37℃±2℃または約37℃±2℃で実行されるウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部は、2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下、または約2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下にわたって実行される。いくつかの態様において、37℃±2℃または約37℃±2℃で実行されるウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部は、24時間または約24時間にわたって実行される。
【0416】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部は、スピノキュレーション後に実行される。いくつかの態様において、スピノキュレーション後に実行されるウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部は、2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下、または約2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下にわたって実行される。いくつかの態様において、スピノキュレーション後に実行されるウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部は、24時間または約24時間にわたって実行される。
【0417】
いくつかの態様において、ウイルスベクター粒子のインキュベーションの総継続時間は、12時間、24時間、36時間、48時間、または72時間以下である。
【0418】
いくつかの態様において、細胞とウイルスベクター粒子とのインキュベーションは、ウイルスベクター粒子が形質導入された細胞を含むアウトプット組成物を、結果としてもたらし、または生産し、これを本明細書では形質導入細胞の集団ともいう。したがって、いくつかの態様において、形質導入細胞の集団は、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞を含む。いくつかの態様では、形質導入細胞の集団におけるT細胞の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%に、異種ポリヌクレオチドが形質導入されている。いくつかの態様では、形質導入細胞の集団におけるT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%に、異種ポリヌクレオチドが形質導入されている。いくつかの態様において、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、CCR7+である。
【0419】
いくつかの態様において、形質導入細胞の集団は、組換えタンパク質を発現する細胞を、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。いくつかの態様において、形質導入細胞の集団は、組換えタンパク質を発現する細胞を、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む。
【0420】
例えばセクションI-Aに記載するように、CCR7+T細胞を選択する工程または他の形でCCR7+T細胞が富化されたT細胞の集団に形質導入を行う工程を含む、本明細書記載の方法によって生産される形質導入細胞の集団における細胞のパーセンテージは、CCR7+T細胞を富化する工程を欠く点以外は同じ方法によって生産された形質導入細胞の集団における細胞のパーセンテージと比較することができる。いくつかの態様において、形質導入細胞の集団における細胞のパーセンテージは、選択工程によってCCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞組成物と比較して、少なくとも0.5倍、少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍、大きい。いくつかの態様において、形質導入細胞の集団における細胞のパーセンテージは、選択工程によってCCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞組成物と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%は大きい。例えば、形質導入細胞の集団における細胞のパーセンテージが80%であり、CCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞集団における細胞のパーセンテージが40%であるなら、形質導入細胞の集団における細胞のパーセンテージは、CCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞集団と比較して100%大きい。いくつかの態様において、形質導入細胞の集団における、組換えタンパク質を発現する細胞のパーセンテージは、選択工程によってCCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞組成物と比較して、少なくとも0.5倍、少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍、大きい。いくつかの態様において、形質導入細胞の集団における、組換えタンパク質を発現している細胞のパーセンテージは、選択工程によってCCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞組成物と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%は大きい。
【0421】
いくつかの態様において、本方法は、1つまたは複数の追加工程を、さらに含む。いくつかの態様において、本方法は、形質導入細胞の集団から、本方法によって生産された形質導入細胞を回収または単離する工程を、さらに含む。いくつかの態様において、回収または単離する工程は、組換えタンパク質(例えばCARまたはTCR)の発現について選択する工程を含む。
【0422】
形質導入細胞の集団における、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞のパーセンテージは、他の形質導入細胞集団における形質導入T細胞のパーセンテージと比較することができる。例えば複数の形質導入細胞集団における、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞のパーセンテージを比較することができる。いくつかの態様において、複数の集団における形質導入T細胞のパーセンテージ間の最大のばらつきは、それら複数間の形質導入の平均パーセンテージから、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満である。例えば、70%、80%および90%の形質導入パーセンテージを含む複数の形質導入細胞集団は、12.5%の最大ばらつきを有する。いくつかの態様において、複数の形質導入細胞集団は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100個の形質導入細胞集団である。
【0423】
E. さらなる培養および拡大
いくつかの態様において、提供される方法は、改変細胞を培養するための、例えば増殖および/または拡大を促進する条件下で細胞を培養するための、1つまたは複数の工程を含む。一定の態様において、提供される方法は、改変細胞を培養するための工程を含まない。一定の態様において、プロセスの完了後は、改変細胞の数が、細胞を生成させる元となった一次ソース細胞(initial source cells)と比較して、増えている。さまざまな態様において、プロセスの完了後は、改変細胞の数が、細胞を生成させる元となった一次ソース細胞と比較して、減っている。いくつかの態様において、改変細胞は、遺伝子改変の工程、例えば形質導入またはトランスフェクションによって細胞に組換えポリペプチドを導入する工程に続いて、増殖および/または拡大を促進する条件下で培養される。特定の態様において、細胞は、細胞を刺激条件下でインキュベートし、ポリヌクレオチド、例えば組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを細胞に形質導入またはトランスフェクトした後に、培養される。いくつかの態様において、培養される細胞は、例えばセクションI-Dに記載するような形質導入細胞の集団の細胞である。いくつかの態様において、培養される細胞は、本明細書において提供される方法のいずれかによって生産される形質導入細胞の集団の細胞である。いくつかの態様では、培養により、組換え受容体(例えばCAR)を発現する富化T細胞の組成物を含有するアウトプット組成物が生産される。
【0424】
いくつかの態様において、改変細胞は、加えられた細胞を培養するために、細胞培地および/または細胞を例えば供給口から充填することができる容器において、培養される。細胞は、例えば細胞の拡大および/または増殖などのために細胞の培養が望まれる任意の細胞供給源に由来することができる。
【0425】
いくつかの局面において、培養培地は、T細胞などの細胞の成長、培養、拡大または増殖をサポートする、適合した培養培地である。いくつかの局面において、培地は、塩、アミノ酸、ビタミン、糖類またはそれらの任意の組合せの混合物を含有する液状物であることができる。いくつかの態様において、培養培地は、例えばインキュベーション中の細胞の培養、拡大または増殖を刺激するために、1つまたは複数の刺激条件または刺激作用物質を、さらに含有する。いくつかの態様において、刺激条件は、IL-2、IL-7またはIL-15から選択される1つまたは複数のサイトカインであるか、またはそれらを含む。いくつかの態様において、サイトカインは組換えサイトカインである。いくつかの態様において、培養する工程中またはインキュベーション中の培養培地における1つまたは複数のサイトカインの濃度は、独立して、1 IU/mL~1500 IU/mLまたは約1 IU/mL~1500 IU/mL、例えば1 IU/mL~100 IU/mL、2 IU/mL~50 IU/mL、5 IU/mL~10 IU/mL、10 IU/mL~500 IU/mL、50 IU/mL~250 IU/mLもしくは100 IU/mL~200 IU/mL、50 IU/mL~1500 IU/mL、100 IU/mL~1000 IU/mLもしくは200 IU/mL~600 IU/mL、または約1 IU/mL~100 IU/mL、2 IU/mL~50 IU/mL、5 IU/mL~10 IU/mL、10 IU/mL~500 IU/mL、50 IU/mL~250 IU/mLもしくは100 IU/mL~200 IU/mL、50 IU/mL~1500 IU/mL、100 IU/mL~1000 IU/mLもしくは200 IU/mL~600 IU/mLである。いくつかの態様において、1つまたは複数のサイトカインの濃度は、独立して、少なくとも1 IU/mL、5 IU/mL、10 IU/mL、50 IU/mL、100 IU/mL、200 IU/mL、500 IU/mL、1000 IU/mLもしくは1500 IU/mL、または少なくとも約1 IU/mL、5 IU/mL、10 IU/mL、50 IU/mL、100 IU/mL、200 IU/mL、500 IU/mL、1000 IU/mLもしくは1500 IU/mLである。
【0426】
いくつかの局面において、細胞は、改変細胞と培養培地の移動(transfer)後の時間の少なくとも一部にわたってインキュベートされる。いくつかの態様において、刺激条件は、一般的には、ヒトTリンパ球などの初代免疫細胞の増殖に適している温度、例えば少なくとも摂氏約25度、概して少なくとも約30度、および概して摂氏37または約37度を含む。いくつかの態様では、細胞を、摂氏25~38度、例えば摂氏30~37度、例えば摂氏37もしくは約37度±摂氏2度の温度でインキュベートする。いくつかの態様において、インキュベーションは、培養(culture)、例えば培養(cultivation)または拡大によって、所望のまたは閾の密度、数または用量の細胞がもたらされるまで、ある期間にわたって実行される。いくつかの態様において、インキュベーションは、24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日もしくは9日またはそれ以上を上回る期間、または約24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日もしくは9日またはそれ以上を上回る期間、または約24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日もしくは9日またはそれ以上、または24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、8日もしくは9日またはそれ以上にわたる。
【0427】
いくつかの態様において、細胞は、細胞培養中の二酸化炭素の標的量が維持される条件下で、インキュベートされる。いくつかの局面では、これにより、成長中の細胞の最適な培養、拡大および増殖が保証される。いくつかの局面において、二酸化炭素(CO2)の量は、10%~0%(v/v)の該ガス、例えば8%~2%(v/v)の該ガス、例えば5%または約5%(v/v)CO2の量である。
【0428】
いくつかの態様では、培養開始組成物に非分裂末梢血単核球(PBMC)などのフィーダー細胞を(例えば、結果として生じる細胞の集団が、拡大させるべき初期集団中の各Tリンパ球に対して少なくとも約5、10、20、もしくは40個、またはそれ以上のPBMCフィーダー細胞を含有することになるように)添加し、培養物を(例えばT細胞の数を拡大させるのに十分な時間にわたって)インキュベートすることによって、T細胞を拡大する。いくつかの局面において、非分裂フィーダー細胞は、ガンマ照射PBMCフィーダー細胞を含むことができる。いくつかの態様において、PBMCには、細胞分裂を阻止するために、約3000~3600ラドの範囲のガンマ線が照射される。いくつかの局面において、フィーダー細胞は、T細胞の集団の添加に先立って、培養培地に添加される。
【0429】
いくつかの態様において、刺激条件は、ヒトTリンパ球の増殖に適している温度、例えば少なくとも摂氏約25度、概して少なくとも約30度、および概して摂氏37または約37度を含む。任意で、インキュベーションは、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダー細胞として添加することを、さらに含んでもよい。LCLには、約6000~10,000ラドの範囲のガンマ線を照射することができる。LCLフィーダー細胞は、いくつかの局面において、任意の適切な量、例えば少なくとも約10:1のLCLフィーダー細胞対初期Tリンパ球比で、提供される。
【0430】
いくつかの態様において、細胞は、バイオリアクターに関連して使用される容器、例えばバッグを使ってインキュベートされる。場合により、バイオリアクターには振動または揺動を与えることができ、これにより、いくつかの局面では、酸素移動が増加しうる。バイオリアクターの運動には、バイオリアクターの水平軸に沿った回転、垂直軸に沿った回転、傾斜した(tiltedまたはinclined)水平軸に沿った揺動運動、またはそれらの任意の組合せが含まれうるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、インキュベーションの少なくとも一部は、揺動しながら実行される。揺動速度および揺動角度は、所望の撹拌が達成されるように調節されうる。いくつかの態様において、揺動角度は、20°、19°、18°、17°、16°、15°、14°、13°、12°、11°、10°、9°、8°、7°、6°、5°、4°、3°、2°もしくは1°、または約20°、19°、18°、17°、16°、15°、14°、13°、12°、11°、10°、9°、8°、7°、6°、5°、4°、3°、2°もしくは1°である。一定の態様において、揺動角度は6~16°である。別の態様において、揺動角度は7~16°である。別の態様において、揺動角度は8~12°である。いくつかの態様において、揺動速度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40rpmである。いくつかの態様において、揺動速度は、両端の値を含め4~12rpm、例えば4~6rpmである。細胞培養拡大の少なくとも一部は、例えば5°~10°、例えば6°の角度、一定した揺動速度、例えば5~15RPM、例えば6RMPまたは10RPMの速度での、揺動運動を伴って実施される。CD4+細胞とCD8+細胞は、それらがそれぞれ閾量または閾細胞密度に達するまで、それぞれ別々に拡大される。
【0431】
いくつかの態様において、インキュベーションの少なくとも一部は静的条件下で実行される。いくつかの態様において、インキュベーションの少なくとも一部は、例えば培養中に消耗した培地を流し出し新鮮な培地を流し入れるために、灌流しながら実行される。いくつかの態様において、本方法は、新鮮な培養培地を例えば供給口を通して細胞培養に灌流する工程を含む。いくつかの態様において、灌流中に加えられる培養培地は、1つまたは複数の刺激作用物質、例えば1つまたは複数の組換えサイトカイン、例えばIL-2、IL-7および/またはIL-15を含有する。いくつかの態様において、灌流中に加えられる培養培地は静的インキュベーション中に使用されるものと同じ培養培地である。
【0432】
いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の抗イディオタイプ抗体、例えば改変細胞が発現する組換え受容体に結合しまたはそれを認識する抗イディオタイプ抗体の存在下で、拡大または培養される。
【0433】
いくつかの態様では、インキュベーションに続いて、細胞治療薬を製造し、生成させ、または生産するための1つまたは複数の他の処理工程を実行するためのシステムに、容器、例えばバッグを再接続する。例えば遠心分離チャンバを含有するシステムに、容器、例えばバッグを再接続する。いくつかの局面において、培養された細胞は、培養された細胞を製剤化するために、バッグからチャンバの内部キャビティに移される。
【0434】
II. 組成物
本明細書において提供される方法のいずれかによって生産される形質導入細胞の集団を含む組成物も、本明細書において提供される。
【0435】
いくつかの態様において、本明細書に開示する形質導入方法を含む方法によって生成される治療組成物(例えば治療用T細胞組成物)、例えばアウトプット組成物、例えばセクションI-DまたはセクションI-Eに開示するものが、本明細書において提供される。いくつかの態様において、治療組成物は、例えばセクションI-Dに記載の形質導入細胞の集団を含む。いくつかの態様では、本明細書に開示する特徴のうちの1つまたは複数を有する治療組成物(例えば治療用T細胞組成物)が、本明細書において提供される。いくつかの態様において、組換え抗原受容体、例えばCARまたはTCRで改変された細胞を含む細胞の用量は、薬学的組成物または薬学的製剤などの組成物または製剤として提供される。そのような組成物は、提供される方法および/または提供される組成物に従って、例えば疾患、状態および障害の防止もしくは処置において、または検出方法、診断方法および予後判定方法において、使用することができる。
【0436】
「薬学的製剤」という用語は、そこに含有される活性成分の生物学的活性が有効であることを許すような形態にあって、その製剤を投与されることになる対象にとって、許容できないほどに毒性な追加の構成要素を含有しない調製物を指す。
【0437】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤または保存剤が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0438】
いくつかの局面において、担体の選択は、一つには、特定細胞もしくは特定作用物質によって、および/または投与方法によって決まる。したがって、種々の適切な製剤がある。例えば薬学的組成物は保存剤を含有することができる。適切な保存剤としては、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムを挙げることができる。いくつかの局面では、2種以上の保存剤の混合物が使用される。保存剤またはその混合物は、典型的には、組成物全体の約0.0001重量%~約2重量%の量で存在する。担体は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed.(1980)に記載されている。薬学的に許容される担体は、使用される投薬量および濃度において受容者にとって一般に無毒性であり、これには、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;単糖、二糖および他の糖質、例えばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または非イオン界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)などがあるが、それらに限定されるわけではない。
【0439】
いくつかの局面では、緩衝作用物質が組成物に含まれる。適切な緩衝作用物質としては、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに他のさまざまな酸および塩が挙げられる。いくつかの局面では、2種以上の緩衝作用物質の混合物が使用される。緩衝作用物質またはその混合物は、典型的には、組成物全体の約0.001重量%~約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams&Wilkins;21st ed.(May 1, 2005)に、より詳しく記載されている。
【0440】
製剤または組成物は、細胞または作用物質で防止または処置される特定の適応症、疾患または状態に有用な2種以上の活性成分も含有してよく、各活性は互いに悪影響を及ぼさない。そのような活性成分は、適宜、意図した目的に有効な量で組み合わされて存在する。したがって、いくつかの態様において、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な作用物質または薬物、例えば化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどを、さらに含む。いくつかの態様において、作用物質または細胞は、塩の形態、例えば薬学的に許容される塩の形態で投与される。適切な薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの無機酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸などの有機酸から誘導されるものが挙げられる。
【0441】
薬学的組成物は、いくつかの態様において、疾患または状態を処置または防止するのに有効な量の、例えば治療有効量または予防有効量の、作用物質または細胞を含有する。治療効力または予防効力は、いくつかの態様では、処置対象の定期的評価によってモニターされる。数日またはそれ以上にわたる反復投与の場合は、状態に応じて、処置は、疾患症状の所望の抑制が起こるまで繰り返される。ただし、他の投薬レジメンが役立つ場合もあり、他の投薬レジメンを決定することができる。所望の投薬量は、組成物の単回ボーラス投与によって、または組成物の複数回のボーラス投与によって、または組成物の持続注入投与によって、送達することができる。
【0442】
作用物質または細胞は、任意の適切な手段によって、例えば、ボーラス注入によって、または注射、例えば、静脈内もしくは皮下注射、眼内注入、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、サブコンジェクトバル注射(subconjectval injection)、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、眼球周囲注射、または後部強膜近傍送達によって、投与することができる。いくつかの態様において、それらは、非経口投与、肺内投与および鼻腔内投与によって、ならびに局所的な処置のために望ましい場合は、病巣内投与によって、投与される。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が挙げられる。いくつかの態様において、所与の用量は、細胞または作用物質の単回ボーラス投与によって投与される。いくつかの態様において、それは、細胞もしくは作用物質の複数回のボーラス投与によって、例えば、3日以下の期間にわたって、または細胞もしくは作用物質の持続注入投与によって、投与される。
【0443】
疾患の防止または処置に関して、適当な投薬量は、処置される疾患のタイプ、1つまたは複数の作用物質のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、作用物質または細胞が防止目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、治療歴、対象の臨床歴および作用物質または細胞に対する応答、ならびに担当医の裁量に依存しうる。組成物は、いくつかの態様において、1回で、または一連の処置で、対象に適切に投与される。
【0444】
細胞または作用物質は、標準的な投与技法、製剤、および/またはデバイスを使って投与されうる。組成物の貯蔵および投与のための製剤およびデバイス、例えばシリンジおよびバイアルが提供される。細胞に関して、投与は自家または異種であることができる。例えば、免疫応答性の細胞または前駆細胞を、ある対象から取得して、それを同じ対象または適合する異なる対象に投与することができる。末梢血由来の免疫応答性細胞またはそれらの子孫(例えばインビボ、エクスビボまたはインビトロで派生させたもの)は、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射または非経口投与によって投与される。治療組成物(例えば、遺伝子修飾された免疫応答性細胞または神経毒性の症状を処置しもしくは寛解させる作用物質を含有する薬学的組成物)を投与する場合、それらは、一般的には、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、エマルション)に製剤化されるだろう。
【0445】
製剤には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与または坐薬投与用の製剤が含まれる。いくつかの態様において、作用物質または細胞集団は非経口的に投与される。本明細書において使用される場合、用語「非経口」には、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、膣内投与および腹腔内投与が含まれる。いくつかの態様において、作用物質または細胞集団は、静脈内注射、腹腔内注射または皮下注射による末梢全身性送達を用いて対象に投与される。
【0446】
いくつかの態様における組成物は、無菌液状調製物、例えば等張性水性の溶液、懸濁液、エマルション、分散液、または粘性組成物として提供され、それらは、いくつかの局面では、選択されたpHに緩衝化されうる。液状調製物は、通常は、ゲル、他の粘性組成物、および固形組成物よりも調製が容易である。加えて、液状組成物の方が、投与、特に注射による投与には、いくらか好都合である。他方、粘性組成物は、特定組織と、より長時間接触することになるように、適当な粘度範囲内で製剤化することができる。液状組成物または粘性組成物は担体を含むことができ、担体は、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。
【0447】
抗微生物保存剤、酸化防止剤、キレート剤および緩衝剤など、組成物の安定性および無菌性を向上させるさまざまな添加剤を加えることができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗細菌作用物質および抗真菌作用物質、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって、確保することができる。注射可能な薬学的形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって生じさせることができる。
【0448】
いくつかの態様において、製剤緩衝液は冷凍保存剤(cryopreservative)を含有する。いくつかの態様において、細胞は、1.0%~30%DMSO溶液、例えば5%~20%DMSO溶液または5%~10%DMSO溶液を含有する冷凍保存溶液を使って製剤化される。いくつかの態様において、冷凍保存溶液は、例えば20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適切な細胞凍結培地であるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、冷凍保存溶液は、例えば少なくとも7.5%または約7.5%DMSOであるか、またはそれを含有する。いくつかの態様において、加工工程は、細胞を冷凍保存溶液に入れるために、形質導入されおよび/または拡大された細胞を洗浄する工程を伴うことができる。いくつかの態様において、細胞は、培地および/または溶液中、12.5%、12.0%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5.5%もしくは5.0%、または約12.5%、12.0%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%、9.5%、9.0%、8.5%、8.0%、7.5%、7.0%、6.5%、6.0%、5.5%もしくは5.0%DMSO、または1%~15%、6%~12%、5%~10%もしくは6%~8%DMSOの最終濃度で、凍結、例えば冷凍保護または冷凍保存される。特定の態様において、細胞は、培地および/または溶液中、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.25%、1.0%、0.75%、0.5%もしくは0.25%、または約5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.25%、1.0%、0.75%、0.5%もしくは0.25%HSA、または0.1%~-5%、0.25%~4%、0.5%~2%もしくは1%~2%HSAの最終濃度で、凍結、例えば冷凍保護または冷凍保存される。
【0449】
特定の態様において、富化T細胞、例えば選択され、刺激され、改変されおよび/または培養されたT細胞の組成物は、製剤化され、冷凍保護された後、ある期間にわたって貯蔵される。一定の態様において、製剤化され冷凍保護された細胞は、細胞が注入用に出荷されるまで貯蔵される。特定の態様において、製剤化された冷凍保護細胞は、1日~6ヶ月、1ヶ月~3ヶ月、1日~14日、1日~7日、3日~6日、6ヶ月~12ヶ月、または12ヶ月超にわたって貯蔵される。いくつかの態様において、細胞は冷凍保護され、1日、2日、3日、4日、5日、6日もしくは7日、または約1日、2日、3日、4日、5日、6日もしくは7日、または1日、2日、3日、4日、5日、6日もしくは7日未満にわたって貯蔵される。一定の態様において、細胞は貯蔵後に融解され、対象に投与される。一定の態様において、細胞は5日または約5日にわたって貯蔵される。いくつかの態様において、製剤化された細胞は冷凍保存されない。
【0450】
無菌注射可能溶液は、作用物質または細胞を溶媒に組み入れることにより、例えば適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば無菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合物として、調製することができる。
【0451】
インビボ投与に使用される製剤は一般に無菌状態にある。無菌性は例えば滅菌濾過膜による濾過などによって容易に達成することができる。
【0452】
(i)本明細書記載の任意の組成物と、(ii)対象への組成物の投与に関する説明書とを含む、製造品またはキットも提供される。
【0453】
いくつかの態様において、製造品またはキットは、1つまたは複数の容器、典型的には複数の容器、梱包材料、ならびに前記1つもしくは複数の容器および/または梱包の上のまたはそれに付随するラベルまたは添付文書であって、一般的には使用説明書を含むものを含む。いくつかの態様において、製造品およびキットは、組換え受容体を発現する改変細胞またはその組成物、例えば本明細書において提供される方法を使って生成させたもの、および任意で使用説明書、例えば投与に関する説明書を含む。いくつかの態様において、説明書は、細胞治療を受ける前の対象が、疾患または障害を処置するための組換え受容体発現改変細胞の投与後に、応答しそうかどうか、または応答しそうと疑われるかどうかを評価し、または応答の程度もしくはレベルを評価するための指針を与え、またはその方法を指定する。いくつかの局面において、製造品は、改変細胞の用量または組成物を含むことができる。
【0454】
本明細書において提供される製造品は梱包材料を含む。提供される材料の梱包に使用するための梱包材料は当業者には周知である。例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号および同第5,033,252号を参照されたい。梱包材料の例としては、ブリスター包装、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、使い捨て実験用品、例えばピペットチップおよび/またはプラスチックプレート、または瓶が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。製造品またはキットは、材料の分配が容易になるように、またはハイスループットでの使用もしくは大スケールでの使用が容易になるように、例えばロボット装備での使用が容易になるように、デバイスを含むことができる。典型的には、梱包は、そこに含まれる組成物とは反応しない。
【0455】
いくつかの態様において試薬および/または細胞組成物は別々に梱包される。いくつかの態様において、各容器は単一の区画を有することができる。いくつかの態様において、製造品またはキットの他の構成要素は、個別に、または単一の区画に一緒に、梱包される。
【0456】
III. 処置および使用の方法
本明細書では、例えば本明細書記載の改変細胞または改変細胞を含有する組成物のいずれかを投与する工程を含む、処置方法が提供される。いくつかの局面において、本明細書記載の改変細胞または改変細胞を含有する組成物のいずれかを対象、例えば疾患または障害を有する対象に投与する方法も提供される。いくつかの局面において、疾患または障害の処置のための、本明細書記載の改変細胞または改変細胞を含有する組成物のいずれかの使用も提供される。いくつかの局面において、疾患または障害を処置するための医薬を製造するための、本明細書記載の改変細胞または改変細胞を含有する組成物のいずれかの使用も提供される。いくつかの局面において、疾患もしくは障害の処置における使用のための、または疾患もしくは障害を有する対象への投与のための、本明細書記載の改変細胞または改変細胞を含有する組成物のいずれかも提供される。
【0457】
養子細胞治療のための細胞の投与のための方法は公知であり、提供された方法および組成物に関連して、それらを使用しうる。例えば、養子T細胞治療方法は、Gruenberg et alの米国特許出願公開第2003/0170238号、Rosenbergの米国特許第4,690,915号、Rosenberg(2011)Nat Rev Clin Oncol.8(10):577-85などに記載されている。例えば、Themeli et al.(2013)Nat Biotechnol.31(10):928-933、Tsukahara et al.(2013)Biochem Biophys Res Commun 438(1):84-9、Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4):e61338を参照されたい。
【0458】
処置される疾患または状態は、抗原の発現が疾患状態または障害の原因に関連および/または関与しているもの、例えば抗原の発現が、そのような疾患、状態または障害を引き起こし、悪化させ、またはそのような疾患、状態もしくは障害に他の形で関与するものなら、何でもよい。例示的な疾患および状態としては、悪性腫瘍もしくは細胞の形質転換(例えばがん)、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患、または例えば細菌性病原体、ウイルス性病原体もしくは他の病原体によって引き起こされる感染性疾患を挙げることができる。例示的な抗原は、処置することができるさまざまな疾患および状態と関連する抗原を含めて、上述した。特定の態様において、キメラ抗原受容体またはトランスジェニックTCRは、疾患または状態と関連する抗原に特異的に結合する。
【0459】
疾患、状態、および障害には、腫瘍、例えば固形腫瘍、血液学的悪性腫瘍、および黒色腫、および例えば限局的腫瘍および転移性腫瘍、感染性疾患、例えばウイルスまたは他の病原体、例えばHIV、HCV、HBV、CMV、HPVによる感染症、および寄生生物疾患、ならびに自己免疫性および炎症性疾患が含まれる。いくつかの態様において、疾患、障害または状態は、腫瘍、がん、悪性腫瘍、新生物、または他の増殖性疾患もしくは障害である。そのような疾患としては、白血病、リンパ腫、例えば、急性骨髄(または骨髄性)白血病(AML)、慢性骨髄(または骨髄性)白血病(CML)、急性リンパ球性(またはリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞白血病(HCL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、濾胞性リンパ腫、難治性濾胞性リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)および多発性骨髄腫(MM)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、疾患または状態は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、成人ALL、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、およびびまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)より選択されるB細胞悪性腫瘍である。いくつかの態様において、疾患または状態はNHLであり、NHLは、高悪性度NHL、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、NOS(de novo and transformed from indolent:デノボおよび無痛性からの形質転換)、原発性縦隔大B細胞リンパ腫(PMBCL)、T細胞/組織球リッチ大B細胞リンパ腫(TCHRBCL)、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ならびに/または濾胞性リンパ腫(FL)、任意で、濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B)からなる群より選択される。
【0460】
いくつかの態様において、疾患または状態は、感染性の疾患または状態であり、例えばウイルス、レトロウイルス、細菌、および原生動物感染症、免疫不全症、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスによるものであるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、疾患または状態は自己免疫性または炎症性の疾患または状態であり、例えば関節炎、例えば、関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、全身性ループスエリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息、および/または移植と関連づけられる疾患もしくは状態である。
【0461】
いくつかの態様において、疾患または障害と関連づけられる抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9、CAIXまたはG250としても知られる)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG、NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られる)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、切断型上皮成長因子タンパク質(tEGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5、Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られる)、胎児型アセチルコリン受容体(胎児型AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体5D(GPCR5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、メラノーマ関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経系細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児性抗原、メラノーマ優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養芽層糖タンパク質(TPBG、5T4としても知られる)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1、TYRP1またはgp75としても知られる)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2、ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼまたはDCTとしても知られる)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチニル化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子であるか、またはそれを含む。受容体が標的とする抗原は、いくつかの態様において、多数の公知B細胞マーカーのうちのいずれかなどといった、B細胞悪性腫瘍と関連する抗原を含む。いくつかの態様において、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79bまたはCD30であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、抗原は、病原体特異的抗原または病原体が発現する抗原、例えばウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBVからのウイルス抗原)、細菌抗原、および/または寄生生物抗原であるか、またはそれを含む。
【0462】
いくつかの態様において、CARの抗体または抗原結合フラグメント(例えばscFvもしくはVHドメイン)は、CD19などの抗原を特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合フラグメントは、CD19に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントに由来するか、またはそのバリアントである。いくつかの態様において、細胞治療、例えば養子T細胞治療は、自家移入によって実行され、この場合は、細胞が、細胞治療を受ける予定の対象から、またはそのような対象に由来する試料から、単離されおよび/または他の形で調製される。したがって、いくつかの局面において、細胞は、処置を必要とする対象、例えば患者に由来し、単離および加工後に、同じ対象に投与される。
【0463】
いくつかの態様において、細胞治療、例えば養子T細胞治療は、同種移入によって実行され、この場合は、細胞が、細胞治療を受ける予定である対象以外または最終的に細胞治療を受ける予定である対象以外の対象、例えば第1対象以外の対象から、単離されおよび/または他の形で調製される。そのような態様では、細胞が、次に、同じ種の異なる対象、例えば第2対象に投与される。いくつかの態様において、第1対象と第2対象は遺伝子的に同一である。いくつかの態様において、第1対象と第2対象は遺伝子的に類似している。いくつかの態様において、第2対象は、第1対象と同じHLAクラスまたはHLAスーパータイプを発現する。
【0464】
細胞は、任意の適切な手段によって、例えばボーラス注入によって、または注射、例えば、静脈内もしくは皮下注射、眼内注入、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、サブコンジェクトバル注射(subconjectval injection)、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、眼球周囲注射、もしくは後部強膜近傍送達によって、投与することができる。いくつかの態様において、それらは、非経口投与、肺内投与および鼻腔内投与によって、ならびに局所的な処置のために望ましい場合は、病巣内投与によって、投与される。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が挙げられる。いくつかの態様において、所与の用量は、細胞の単回ボーラス投与によって投与される。いくつかの態様において、それは、細胞の複数回のボーラス投与によって、例えば、3日以下の期間にわたって、または細胞の持続注入投与によって、投与される。いくつかの態様において、細胞用量または任意の追加治療、例えばリンパ球枯渇治療、介入治療および/または併用治療の施行は、外来患者への送達によって実行される。
【0465】
疾患の防止または処置に関して、適当な投薬量は、処置される疾患のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、細胞が防止目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、治療歴、対象の臨床歴および細胞に対する応答、ならびに担当医の裁量に依存しうる。組成物および細胞は、いくつかの態様において、1回で、または一連の処置で、対象に適切に投与される。
【0466】
いくつかの態様において、細胞の用量は、提供される方法に従って、および/または提供される製造品もしくは組成物で、対象に投与される。いくつかの態様において、用量のサイズまたはタイミングは、対象における特定の疾患または状態に応じて決定される。場合により、提供される記載を考慮した特定の疾患に関する用量のサイズまたはタイミングは、経験的に決定されてよい。
【0467】
いくつかの態様において、細胞の用量は、2×105もしくは約2×105細胞/kg~2×106もしくは約2×106細胞/kg、例えば4×105もしくは約4×105細胞/kg~1×106もしくは約1×106細胞/kg、または6×105もしくは約6×105細胞/kg~8×105もしくは約8×105細胞/kgを含む。いくつかの態様において、細胞の用量は、対象の体重1キログラムあたり2×105個以下の細胞(例えば抗原発現細胞、例えばCAR発現細胞)(細胞/kg)、例えば3×105個以下もしくは約3×105個以下の細胞/kg、4×105個以下もしくは約4×105個以下の細胞/kg、5×105個以下もしくは約5×105個以下の細胞/kg、6×105個以下もしくは約6×105個以下の細胞/kg、7×105個以下もしくは約7×105個以下の細胞/kg、8×105個以下もしくは約8×105個以下の細胞/kg、9×105個以下もしくは約9×105個以下の細胞/kg、1×106個以下もしくは約1×106個以下の細胞/kg、または2×106個以下もしくは約2×106個以下の細胞/kgを含む。いくつかの態様において、細胞の用量は、対象の体重1キログラムあたり少なくとも2×105個または少なくとも約2×105個または2×105個または約2×105個の細胞(例えば抗原発現細胞、例えばCAR発現細胞)(細胞/kg)、例えば少なくとも3×105個もしくは少なくとも約3×105個もしくは3×105個もしくは約3×105個の細胞/kg、少なくとも4×105個もしくは少なくとも約4×105個もしくは4×105個もしくは約4×105個の細胞/kg、少なくとも5×105個もしくは少なくとも約5×105個もしくは5×105個もしくは約5×105個の細胞/kg、少なくとも6×105個もしくは少なくとも約6×105個もしくは6×105個もしくは約6×105個の細胞/kg、少なくとも7×105個もしくは少なくとも約7×105個もしくは7×105個もしくは約7×105個の細胞/kg、少なくとも8×105個もしくは少なくとも約8×105個もしくは8×105個もしくは約8×105個の細胞/kg、少なくとも9×105個もしくは少なくとも約9×105個もしくは9×105個もしくは約9×105個の細胞/kg、少なくとも1×106個もしくは少なくとも約1×106個もしくは1×106個もしくは約1×106個の細胞/kg、または少なくとも2×106個もしくは少なくとも約2×106個もしくは2×106個もしくは約2×106個の細胞/kgを含む。
【0468】
一定の態様において、細胞、または細胞のサブタイプの個々の集団は、約100万個~約1000億個の範囲で、および/または体重1キログラムあたりその量で、例えば体重1キログラムあたり100万個~約500億個の細胞(例えば約500万個の細胞、1000万個の細胞、約1500万個の細胞、約2000万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前述の値のうち任意の2つによって規定される範囲)、例えば約1000万個~約1000億個の細胞(例えば約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前述の値のうち任意の2つによって規定される範囲)で、また場合によっては、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)、またはこれらの範囲の間のおよび/もしくは体重1キログラムあたりの任意の値で、対象に投与される。投薬量は、疾患もしくは障害、および/または患者の、および/または他の処置に特有の属性に応じて変動しうる。
【0469】
いくつかの態様において、細胞の用量は、細胞のフラット用量または細胞の固定用量であって、対象の体表面積または体重に結び付けられていないか、またはそれに基づかない。
【0470】
いくつかの態様において、例えば、対象がヒトである場合、用量は、総数が約5×108個未満である組換え受容体(例えばCAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核球(PBMC)、例えば約1×106~5×108の範囲のそのような細胞、例えば総数が2×106、5×106、1×107、5×107、1×108もしくは5×108個であるそのような細胞、または前述の値の任意の2つの間の範囲を含む。
【0471】
いくつかの態様において、遺伝子改変細胞の用量は、総数が1×105~5×108個もしくは約1×105~5×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×105~2.5×108個もしくは約1×105~2.5×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×105~1×108個もしくは約1×105~1×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×105~5×107個もしくは約1×105~5×107個であるCAR発現T細胞、総数が1×105~2.5×107個もしくは約1×105~2.5×107個であるCAR発現T細胞、総数が1×105~1×107個もしくは約1×105~1×107個であるCAR発現T細胞、総数が1×105~5×106個もしくは約1×105~5×106個であるCAR発現T細胞、総数が1×105~2.5×106個もしくは約1×105~2.5×106個であるCAR発現T細胞、総数が1×105~1×106個もしくは約1×105~1×106個であるCAR発現T細胞、総数が1×106~5×108個もしくは約1×106~5×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×106~2.5×108個もしくは約1×106~2.5×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×106~1×108個もしくは約1×106~1×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×106~5×107個もしくは約1×106~5×107個であるCAR発現T細胞、総数が1×106~2.5×107個もしくは約1×106~2.5×107個であるCAR発現T細胞、総数が1×106~1×107個もしくは約1×106~1×107個であるCAR発現T細胞、総数が1×106~5×106個もしくは約1×106~5×106個であるCAR発現T細胞、総数が1×106~2.5×106個もしくは約1×106~2.5×106個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×106~5×108個もしくは約2.5×106~5×108個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×106~2.5×108個もしくは約2.5×106~2.5×108個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×106~1×108個もしくは約2.5×106~1×108個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×106~5×107個もしくは約2.5×106~5×107個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×106~2.5×107個もしくは約2.5×106~2.5×107個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×106~1×107個もしくは約2.5×106~1×107個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×106~5×106個もしくは約2.5×106~5×106個であるCAR発現T細胞、総数が5×106~5×108個もしくは約5×106~5×108個であるCAR発現T細胞、総数が5×106~2.5×108個もしくは約5×106~2.5×108個であるCAR発現T細胞、総数が5×106~1×108個もしくは約5×106~1×108個であるCAR発現T細胞、総数が5×106~5×107個もしくは約5×106~5×107個であるCAR発現T細胞、総数が5×106~2.5×107個もしくは約5×106~2.5×107個であるCAR発現T細胞、総数が5×106~1×107個もしくは約5×106~1×107個であるCAR発現T細胞、総数が1×107~5×108個もしくは約1×107~5×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×107~2.5×108個もしくは約1×107~2.5×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×107~1×108個もしくは約1×107~1×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×107~5×107個もしくは約1×107~5×107個であるCAR発現T細胞、総数が1×107~2.5×107個もしくは約1×107~2.5×107個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×107~5×108個もしくは約2.5×107~5×108個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×107~2.5×108個もしくは約2.5×107~2.5×108個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×107~1×108個もしくは約2.5×107~1×108個であるCAR発現T細胞、総数が2.5×107~5×107個もしくは約2.5×107~5×107個であるCAR発現T細胞、総数が5×107~5×108個もしくは約5×107~5×108個であるCAR発現T細胞、総数が5×107~2.5×108個もしくは約5×107~2.5×108個であるCAR発現T細胞、総数が5×107~1×108個もしくは約5×107~1×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×108~5×108個もしくは約1×108~5×108個であるCAR発現T細胞、総数が1×108~2.5×108個もしくは約1×108~2.5×108個であるCAR発現T細胞、または総数が2.5×108~5×108個もしくは約2.5×108~5×108個であるCAR発現T細胞を含む。
【0472】
いくつかの態様において、遺伝子改変細胞の用量は、少なくとも1×105個もしくは少なくとも約1×105個のCAR発現細胞、少なくとも2.5×105個もしくは少なくとも約2.5×105個のCAR発現細胞、少なくとも5×105個もしくは少なくとも約5×105個のCAR発現細胞、少なくとも1×106個もしくは少なくとも約1×106個のCAR発現細胞、少なくとも2.5×106個もしくは少なくとも約2.5×106個のCAR発現細胞、少なくとも5×106個もしくは少なくとも約5×106個のCAR発現細胞、少なくとも1×107個もしくは少なくとも約1×107個のCAR発現細胞、少なくとも2.5×107個もしくは少なくとも約2.5×107個のCAR発現細胞、少なくとも5×107個もしくは少なくとも約5×107個のCAR発現細胞、少なくとも1×108個もしくは少なくとも約1×108個のCAR発現細胞、少なくとも2.5×108個もしくは少なくとも約2.5×108個のCAR発現細胞、または少なくとも5×108個もしくは少なくとも約5×108個のCAR発現細胞を含む。
【0473】
いくつかの態様において、細胞治療は、それぞれ両端の値を含め1×105~5×108個もしくは約1×105~5×108個の総組換え受容体発現細胞、総T細胞、もしくは総末梢血単核球(PBMC)、5×105~1×107個もしくは約5×105~1×107個の総組換え受容体発現細胞、総T細胞、もしくは総末梢血単核球(PBMC)、または1×106~1×107個もしくは約1×106~1×107個の総組換え受容体発現細胞、総T細胞、もしくは総末梢血単核球(PBMC)である細胞数を含む用量の投与を含む。いくつかの態様において、細胞治療は、少なくとも1×105個または少なくとも約1×105個の総組換え受容体発現細胞、総T細胞、または総末梢血単核球(PBMC)、例えば少なくとも1×106個または少なくとも1×106個、少なくとも1×107個または少なくとも約1×107個、少なくとも1×108個または少なくとも約1×108個のそのような細胞である細胞数を含む細胞の用量の投与を含む。いくつかの態様において、数は、CD3+またはCD8+の、またいくつかの例では組換え受容体も発現する(例えばCAR+の)、細胞の総数に関する。いくつかの態様において、細胞治療は、それぞれ両端の値を含め1×105~5×108個もしくは約1×105~5×108個のCD3+もしくはCD8+総T細胞またはCD3+もしくはCD8+組換え受容体発現細胞、5×105~1×107個もしくは約5×105~1×107個のCD3+もしくはCD8+総T細胞またはCD3+もしくはCD8+組換え受容体発現細胞、または1×106~1×107個もしくは約1×106~1×107個のCD3+もしくはCD8+総T細胞またはCD3+もしくはCD8+組換え受容体発現細胞の細胞数を含む用量の投与を含む。いくつかの態様において、細胞治療は、それぞれ両端の値を含め1×105~5×108個もしくは約1×105~5×108個の総CD3+/CAR+もしくはCD8+/CAR+細胞、5×105~1×107個もしくは約5×105~1×107個の総CD3+/CAR+もしくはCD8+/CAR+細胞、または1×106~1×107個もしくは約1×106~1×107個の総CD3+/CAR+もしくはCD8+/CAR+細胞の細胞数を含む用量の投与を含む。
【0474】
いくつかの態様において、前記用量のT細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはCD4+およびCD8+T細胞を含む。
【0475】
例えば対象がヒトであるいくつかの態様において、前記用量のCD8+T細胞は、CD4+およびCD8+T細胞を含む用量中を含めて、約1×106~5×108個の総組換え受容体(例えばCAR)発現CD8+細胞、例えば約5×106~1×108個の範囲のそのような細胞、例えば総数が1×107、2.5×107、5×107、7.5×107、1×108もしくは5×108個のそのような細胞、または前述の値の任意の2つの間の範囲を含む。いくつかの態様において、患者には、複数の用量が投与され、用量のそれぞれまたは総用量は、前述の値のいずれか以内にあることができる。いくつかの態様において、細胞の用量は、それぞれ両端の値を含め1×107~0.75×108個または約1×107~0.75×108個の総組換え受容体発現CD8+T細胞、1×107~2.5×107個の総組換え受容体発現CD8+T細胞、1×107~0.75×108個または約1×107~0.75×108個の総組換え受容体発現CD8+T細胞の投与を含む。いくつかの態様において、細胞の用量は、1×107、2.5×107、5×107 7.5×107、1×108もしくは5×108個または約1×107、2.5×107、5×107 7.5×107、1×108もしくは5×108個の総組換え受容体発現CD8+T細胞の投与を含む。
【0476】
いくつかの態様において、細胞、例えば組換え受容体発現T細胞の用量は、単回投与として対象に投与されるか、または2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年もしくはそれ以上の期間内に1回だけ投与される。
【0477】
養子細胞治療との関連では、所与の「用量」の投与は、所与の量または数の細胞の、単一の組成物および/または単一の連続した投与としての、例えば1回の注射または持続注入としての投与を包含し、また、指定された期間にわたって、例えば3日以下にわたって、複数の個別の組成物または注入として提供される、所与の量または数の細胞の、分割用量としての、または複数の組成物としての、投与も包含する。このように用量は、状況により、単一時点に与えられまたは開始される、指定された数の細胞の、単回投与または連続的投与である。しかし、状況によっては、用量は、3日以下の期間にわたる複数回の注射または注入で、例えば3日もしくは2日にわたって1日1回、または1日での複数回の注入によって、投与される。
【0478】
このようにいくつかの局面において、前記用量の細胞は単一の薬学的組成物として投与される。いくつかの態様において、前記用量の細胞は、全体として前記用量の細胞を含有する複数の組成物として投与される。
【0479】
いくつかの態様において、「分割用量」という用語は、2日以上にわたって投与されるように分割された用量を指す。このタイプの投与は本方法によって包含され、単一用量であるとみなされる。
【0480】
したがって細胞の用量は、分割用量として、例えば時間をかけて投与される分割用量として、投与されうる。例えばいくつかの態様において、用量は、2日にわたって、または3日にわたって、対象に投与されうる。分割投与の例示的な方法として、用量の25%を1日目に投与し、用量の残り75%を2日目に投与することが挙げられる。別の態様では、用量の33%が1日目に投与され、残りの67%が2日目に投与される。いくつかの局面では、用量の10%が1日目に投与され、用量の30%が2日目に投与され、用量の60%が3日目に投与される。いくつかの態様では、分割用量が3日超にわたることはない。
【0481】
いくつかの態様において、前記用量の細胞は、複数の組成物または溶液の投与、例えばそれぞれが前記用量の細胞の一部を含有する第1および第2の、任意でそれ以上の、組成物または溶液によって投与される。いくつかの局面では、それぞれが異なる集団および/またはサブタイプの細胞を含有する複数の組成物が、別々にまたは独立して、任意で一定の期間内に、投与される。細胞の集団またはサブタイプとしては、例えば、それぞれCD8およびCD4のT細胞、ならびに/または、それぞれCD8+およびCD4+が富化された集団、例えば組換え受容体を発現するように遺伝子改変された細胞をそれぞれが個別に含むCD4+および/またはCD8+T細胞を挙げることができる。いくつかの態様において、前記用量の投与は、ある用量のCD8+T細胞またはある用量のCD4+T細胞を含む第1組成物の投与と、前記用量のCD4+T細胞およびCD8+T細胞の他方を含む第2組成物の投与とを含む。
【0482】
いくつかの態様において、前記組成物または前記用量の投与、例えば複数の細胞組成物の投与は、それら細胞組成物の別々の投与を伴う。いくつかの局面では、別々の投与が、同時に、または逐次的に任意の順序で、実行される。いくつかの態様において、用量は第1組成物および第2組成物を含み、第1組成物と第2組成物は、0~12時間の間を空けて、0~6時間の間を空けて、または0~2時間の間を空けて投与される。いくつかの態様において、第1組成物の投与の開始と第2組成物の投与の開始は、2時間以下、1時間以下、または30分以下、15分以下、10分以下、もしくは5分以下の間を空けて実行される。いくつかの態様において、第1組成物の投与の開始および/または完了と第2組成物の投与の完了および/または開始は、2時間以下、1時間以下、または30分以下、15分以下、10分以下、もしくは5分以下の間を空けて実行される。
【0483】
ある組成物では、第1組成物、例えば前記用量の第1組成物が、CD4+T細胞を含む。ある組成物では、第1組成物、例えば前記用量の第1組成物が、CD8+T細胞を含む。いくつかの態様において、第1組成物は第2組成物に先立って投与される。
【0484】
いくつかの態様において、細胞の用量または細胞の組成物は、所定の比の、または標的とする比の、組換え受容体を発現するCD4+細胞対組換え受容体を発現するCD8+細胞、および/またはCD4+細胞対CD8+細胞を含み、その比は、任意で、およそ1:1であるか、またはおよそ1:3~およそ3:1、例えばおよそ1:1である。いくつかの局面において、異なる細胞集団の標的とする比または所望の比(例えばCD4+:CD8+比またはCAR+CD4+:CAR+CD8+比、例えば1:1)での組成物または用量の投与は、一方の集団を含有する細胞組成物の投与と、次に、標的とする比または所望の比での、またはそれに近い比での、他方の集団を含む別個の細胞組成物の投与を伴う。いくつかの局面において、所定の比での用量または組成物の投与は、T細胞治療の拡大、持続性および/または抗腫瘍活性の改良につながる。
【0485】
いくつかの態様において、対象には、細胞の複数の用量、例えば2つ以上の用量または複数の継続用量(consecutive dose)が与えられる。いくつかの態様において、対象には、2つ以上の用量が投与される。いくつかの態様において、対象には、継続用量、例えば2つ目の用量が、例えば最初の用量のおよそ4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または21日後に、投与される。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加用量が、継続用量の投与後に投与されるように、最初の用量に続いて複数の継続用量が投与される。いくつかの局面において、追加用量において対象に投与される細胞の数は、最初の用量および/または継続用量と同じであるか、または類似する。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加用量は先の用量より大きい。
【0486】
いくつかの局面において、第1用量および/または継続用量のサイズは、1つまたは複数の基準、例えば化学治療などの先行処置に対する対象の応答、対象における疾病負荷、例えば腫瘍量、腫瘍の嵩、サイズもしくは腫瘍度、転移の程度およびタイプ、ステージ、ならびに/または対象が毒性アウトカム、例えばCRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、神経毒性、および/もしくは投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫応答を発生させる可能性もしくはその発生率などに基づいて、決定される。
【0487】
いくつかの局面において、第1用量の投与と継続用量の投与との間の時間は、約9~約35日、約14~約28日、または15~27日である。いくつかの態様において、継続用量の投与は、第1用量の投与後、約14日超かつ約28日未満の時点で行われる。いくつかの局面において、第1用量と継続用量との間の時間は約21日である。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加用量、例えば継続用量は、継続用量の投与後に投与される。いくつかの局面において、1つまたは複数の追加継続用量は、先行用量の投与後、少なくとも約14日かつ約28日未満で投与される。いくつかの態様において、追加用量は先行用量後、約14日未満で、例えば先行用量の4、5、6、7、8、9、10、11、12または13日後に投与される。いくつかの態様において、先行用量後、14日未満で投与される用量はなく、および/または先行用量後、約28日を超えて投与される用量はない。
【0488】
いくつかの態様において、細胞、例えば組換え受容体発現細胞の用量は、第1用量のT細胞と継続用量のT細胞とを含む2つの用量(例えば2倍量(double dose))を含み、第1用量と第2用量の一方または両方は、分割量のT細胞の投与を含む。
【0489】
いくつかの態様において、細胞の用量は、一般的には、疾病負荷の低減に有効であるように、十分大きい。
【0490】
いくつかの態様において、細胞は所望の投薬量で投与され、この投薬量は、いくつかの局面では、所望の用量もしくは数の細胞もしくは細胞タイプおよび/または所望の比の細胞タイプを含む。したがって、細胞の投薬量は、いくつかの態様において、細胞の総数(または体重1kgあたりの数)と、所望の比の個々の集団またはサブタイプ、例えばCD4+対CD8+比とに基づく。いくつかの態様において、細胞の投薬量は、個々の集団または個々の細胞タイプにおける細胞の所望の総数(または体重1kgあたりの数)に基づく。いくつかの態様において、投薬量は、そのような特徴の組合せ、例えば総細胞の所望の数、所望の比、および個々の集団における細胞の所望の総数に基づく。
【0491】
いくつかの態様において、細胞の集団またはサブタイプ、例えばCD8T細胞およびCD4T細胞は、所望の総細胞用量の、例えば所望のT細胞用量の、許容差または許容差内で投与される。いくつかの局面において、所望の用量は、所望の細胞数であるか、または細胞が投与される対象の単位体重あたりの所望の細胞数、例えば細胞/kgである。いくつかの局面において、所望の用量は最小細胞数または単位体重あたりの最小細胞数であるか、またはそれを上回る。いくつかの局面において、所望の用量で投与される総細胞には、個々の集団またはサブタイプが、所望のアウトプット比(例えばCD4対CD8比)で、またはその近くで、例えばそのような比の一定の許容差または許容誤差内で存在する。
【0492】
いくつかの態様において、細胞は、細胞の個々の集団またはサブタイプのうちの1つまたは複数の所望の用量、例えばCD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量の、許容差で、または許容差内で、投与される。いくつかの局面において、所望の用量は、サブタイプまたは集団の所望の細胞数であるか、または細胞が投与される対象の単位体重あたりのそのような細胞の所望の数、例えば細胞/kgである。いくつかの局面において、所望の用量は、集団またはサブタイプの最小細胞数または単位体重あたりの集団もしくはサブタイプの最小細胞数であるか、またはそれを上回る。
【0493】
したがって、いくつかの態様において、投薬量は、総細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、および/または個々のサブタイプもしくは亜集団のうちの1つまたは複数の、例えばそれぞれの、所望の固定量に基づく。したがって、いくつかの態様において、投薬量は、T細胞の所望の固定用量または最小用量およびCD4細胞対CD8細胞の所望の比に基づき、ならびに/またはCD4および/もしくはCD8細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
【0494】
いくつかの態様において、細胞は、複数の細胞集団またはサブタイプ、例えばCD4+およびCD8+細胞またはサブタイプの所望のアウトプット比の許容範囲で、または許容範囲内で投与される。いくつかの局面において、所望の比は具体的な比であることができ、または比の範囲であることができる。例えばいくつかの態様において、所望の比(例えばCD4細胞対CD8細胞の比)は、5:1もしくは約5:1~5:1もしくは約5:1(すなわち約1:5より大きく約5:1より小さい)、または1:3もしくは約1:3~3:1もしくは約3:1(すなわち約1:3より大きく約3:1より小さい)、例えば2:1もしくは約2:1~1:5もしくは約1:5(すなわち約1:5より大きく約2:1より小さい、例えば5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9:1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、または約5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9:1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5である。いくつかの局面において、許容差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内であり、これらの範囲の間の任意の値を含む。
【0495】
特定の態様において、細胞の数および/または濃度は、組換え受容体(例えばCAR)発現細胞の数を指す。別の態様において、細胞の数および/または濃度は、投与されるすべての細胞、T細胞、または末梢血単核球(PBMC)の数または濃度を指す。
【0496】
いくつかの局面において、用量のサイズは、1つまたは複数の基準、例えば化学治療などの先行処置に対する対象の応答、対象における疾病負荷、例えば腫瘍量、腫瘍の嵩、サイズもしくは腫瘍度、転移の程度およびタイプ、ステージ、ならびに/または対象が毒性アウトカム、例えばCRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、神経毒性、および/もしくは投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫応答を発生させる可能性もしくはその発生率に基づいて、決定される。
【0497】
いくつかの態様において、本方法は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞および/またはリンパ球枯渇治療の1つまたは複数の追加用量を投与する工程を含み、および/または本方法の1つもしくは複数の工程が反復される。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加用量は最初の用量と同じである。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加用量は最初の用量とは異なり、例えば最初の用量より高い、例えば2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍もしくは10倍またはそれ以上であるか、または最初の用量より少ない、例えば最初の用量の2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1もしくは10分の1またはそれ未満である。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加用量の投与は、最初の処置もしくは任意の先行処置に対する対象の応答、対象における疾病負荷、例えば例えば腫瘍量、腫瘍の嵩、サイズもしくは腫瘍度、転移の程度およびタイプ、ステージ、ならびに/または対象が毒性アウトカム、例えばCRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍溶解症候群、神経毒性、および/もしくは投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫応答を発生させる可能性もしくはその発生率に基づいて、決定される。
【0498】
いくつかの態様において、細胞は、他の治療的介入、例えば抗体または改変細胞または受容体または作用物質、例えば細胞傷害性の作用物質または治療作用物質との併用処置の一部として、例えばそれらと同時に、または任意の順序で逐次的に、投与される。いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の追加の治療作用物質と共投与されるか、または他の治療的介入と関連して、同時に、または任意の順序で逐次的に、共投与される。いくつかの文脈において、細胞は、別の治療と、その細胞集団が1つまたは複数の追加の治療作用物質の効果を強化するように、またはその逆になるように、時間的に十分な近さで、共投与される。いくつかの態様において、細胞は1つまたは複数の追加の治療作用物質に先立って投与される。いくつかの態様において、細胞は1つまたは複数の追加の治療作用物質の後に投与される。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加作用物質は、例えば持続性を強化するために、IL-2などのサイトカインを含む。いくつかの態様において、本方法は化学治療剤の投与を含む。
【0499】
いくつかの態様において、本方法は、例えば投与に先立って腫瘍負荷を低減させるための、化学治療剤、例えばコンディショニング化学治療剤の投与を含む。
【0500】
免疫枯渇(例えばリンパ球枯渇)治療で対象をプレコンディショニングする工程は、いくつかの局面において、養子細胞治療(ACT)の効果を改良することができる。
【0501】
したがって、いくつかの態様において、本方法は、細胞治療の開始に先立って対象にプレコンディショニング剤、例えばリンパ球枯渇剤または化学治療剤、例えばシクロホスファミド、フルダラビンまたはそれらの組合せを投与する工程を含む。例えば対象には、細胞治療の開始の少なくとも2日前、例えば少なくとも3、4、5、6、または7日前に、プレコンディショニング剤を投与しうる。いくつかの態様において、対象には、細胞治療の開始の7日前以降、例えば6、5、4、3、または2日前以降に、プレコンディショニング剤が投与される。
【0502】
いくつかの態様において、対象は、20mg/kg~100mg/kgまたは約20mg/kg~100mg/kg、例えば40mg/kg~80mg/kgまたは約40mg/kg~80mg/kgの用量のシクロホスファミドでプレコンディショニングされる。いくつかの局面において、対象は、60mg/kgまたは約60mg/kgのシクロホスファミドでプレコンディショニングされる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは単回用量で投与されうるか、または複数の用量、例えば毎日、1日おき、または3日ごとに与えられる複数の用量で、投与されうる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは1日または2日にわたって1日1回投与される。いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤がシクロホスファミドを含む場合、対象は、両端の値を含め100mg/m2~500mg/m2または約100mg/m2~500mg/m2、例えば200mg/m2~400mg/m2もしくは約200mg/m2~400mg/m2、または250mg/m2~350mg/m2もしくは約250mg/m2~350mg/m2の用量のシクロホスファミドを投与される。いくつかの例では、対象は約300mg/m2のシクロホスファミドを投与される。いくつかの態様において、シクロホスファミドは単回用量で投与されうるか、または複数の用量、例えば毎日、1日おき、または3日ごとに与えられる複数の用量で、投与されうる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、例えば1~5日間、例えば3~5日間、毎日、投与される。いくつかの例では、対象は、細胞治療の開始に先立って、約300mg/m2のシクロホスファミドを3日間、毎日投与される。
【0503】
いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤がフルダラビンを含む場合、対象は、両端の値を含め1mg/m2~100mg/m2または約1mg/m2~100mg/m2、例えば10mg/m2~75mg/m2もしくは約10mg/m2~75mg/m2、15mg/m2~50mg/m2もしくは約15mg/m2~50mg/m2、20mg/m2~40mg/m2もしくは約20mg/m2~40mg/m2、または24mg/m2~35mg/m2もしくは約24mg/m2~35mg/m2の用量のフルダラビンを投与される。いくつかの例では、対象は約30mg/m2のフルダラビンを投与される。いくつかの態様において、フルダラビンは単回用量で投与されうるか、または複数の用量、例えば毎日、1日おき、または3日ごとに与えられる複数の用量で、投与されうる。いくつかの態様において、フルダラビンは、例えば1~5日間、例えば3~5日間、毎日、投与される。いくつかの例では、対象は、細胞治療の開始に先立って、約30mg/m2のフルダラビンを3日間、毎日投与される。
【0504】
いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤は、作用物質の組合せ、例えばシクロホスファミドおよびフルダラビンの組合せを含む。したがって作用物質の組合せは、任意の用量または投与スケジュールで、例えば上述のもので、シクロホスファミドを含み、任意の用量または投与スケジュールで、例えば上述のもので、フルダラビンを含みうる。例えば、いくつかの局面において、対象は、第1用量または後続用量に先立って60mg/kg(約2g/m2)のシクロホスファミドおよび3~5回の25mg/m2フルダラビンを投与される。
【0505】
細胞の投与後、いくつかの態様における改変細胞集団の生物学的活性は、例えば多数の公知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメータには、インビボでの、例えばイメージングによる、またはエクスビボでの、例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによる、改変されたもしくは天然のT細胞または他の免疫細胞の、抗原への特異的結合が含まれる。一定の態様において、操作された細胞が標的細胞を破壊する能力は、例えばKochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7):689-702(2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1):25-40(2004)に記載されている細胞傷害性アッセイなど、任意の適切な公知の方法を用いて測定することができる。一定の態様において、細胞の生物学的活性は、1つまたは複数のサイトカイン、例えばCD107a、IFNγ、IL-2およびTNFの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面において、生物学的活性は、臨床アウトカム、例えば腫瘍負荷または腫瘍量の低減を評価することによって測定される。
【0506】
一定の態様において、改変細胞は、それらの治療効力または予防効力が増加するように、多くの手法でさらに修飾される。例えば、集団によって発現された改変CARまたは改変TCRは、直接的にまたはリンカーを介して間接的に、標的部分にコンジュゲートすることができる。化合物、例えばCARまたはTCRを、標的部分にコンジュゲートする作業は公知である。例えば、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3:111(1995)および米国特許第5,087,616号を参照されたい。
【0507】
いくつかの態様において、細胞は、他の治療的介入、例えば抗体または改変細胞または受容体または作用物質、例えば細胞傷害性の作用物質または治療作用物質との併用処置の一部として、例えばそれらと同時に、または任意の順序で逐次的に、投与される。いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の追加の治療作用物質と共投与されるか、または他の治療的介入と関連して、同時に、または任意の順序で逐次的に、共投与される。いくつかの文脈において、細胞は、別の治療と、その細胞集団が1つまたは複数の追加の治療作用物質の効果を強化するように、またはその逆になるように、時間的に十分な近さで、共投与される。いくつかの態様において、細胞は1つまたは複数の追加の治療作用物質に先立って投与される。いくつかの態様において、細胞は1つまたは複数の追加の治療作用物質の後に投与される。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加作用物質は、例えば持続性を強化するために、IL-2などのサイトカインを含む。
【0508】
IV. 定義
別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用される専門用語、表記ならびに他の技術的および科学的な用語および術語はすべて、特許請求される主題が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有するものとする。場合によっては、一般に理解されている意味を持つ用語を、明確な記述のためにかつ/またはすぐに参照できるように、本明細書において定義するが、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当技術分野において一般に理解されているものとの実質的相違を表すと解釈されるべきではない。
【0509】
本明細書において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含する。例えば「a」または「an」は「少なくとも1つ」または「1つまたは複数の」を意味する。
【0510】
本開示の全体を通して、特許請求される主題のさまざまな局面は、範囲形式で表される。範囲形式での説明は、単に便宜上および簡潔な表現のためであって、特許請求される主題の範囲に対する確固たる限定であると解釈してはならないと、理解すべきである。したがって、ある範囲の記載は、その範囲内の考えうる部分的範囲および個々の数値を具体的に開示しているとみなすべきである。例えば、ある値の範囲が与えられた場合、それは、その範囲の上限と下限の間に介在する各値、および言明された範囲内の他の言明された値または介在値はいずれも、特許請求される主題内に包含される。これらの小範囲の上限と下限は、独立して、その小範囲に含まれてよく、それらもまた、言明された範囲中の特に除外される任意の限度値を考慮した上で、特許請求される主題内に包含される。言明された範囲が限度値の一方または両方を含む場合、それら含まれる限度値のどちらか一方または両方を除外した範囲も、特許請求される主題に含まれる。これは範囲の幅とは無関係に適用される。
【0511】
本明細書において使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者にはすぐにわかるそれぞれの値にとっての通常の誤差範囲を指す。本明細書において、ある値またはパラメータについて「約」という場合は、その値またはパラメータそのものに向けられる態様が包含される(そして記載される)。
【0512】
本明細書にいう対象には、生きている任意の生物、例えばヒトおよび他の哺乳動物が含まれる。哺乳動物としては、ヒト、非ヒト動物、例えば農用動物、スポーツ動物、齧歯類およびペットが含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、対象はヒト対象である。
【0513】
本明細書において、1つまたは複数の特定細胞タイプまたは細胞集団に関して「枯渇させる」とは、その細胞タイプまたは集団の数またはパーセンテージを、例えばその集団もしくは細胞が発現させるマーカーに基づく負の選択によって、または枯渇させようとする細胞集団もしくは細胞上には存在しないマーカーに基づく正の選択によって、例えばその組成物中の細胞の総数またはその組成物の体積と比較して、または他の細胞タイプと比較して、減少させることを指す。この用語は、組成物からのその細胞、細胞タイプまたは集団の完全な除去を必要としない。
【0514】
本明細書において、1つまたは複数の特定細胞タイプまたは細胞集団に関して「富化する」とは、その細胞タイプまたは集団(例えばCCR7+細胞)の数またはパーセンテージを、例えばその集団もしくは細胞が発現させるマーカーに基づく正の選択によって、または枯渇させようとする細胞集団もしくは細胞上には存在しないマーカーに基づく負の選択によって、例えばその組成物中の細胞の総数またはその組成物の体積と比較して、または他の細胞タイプと比較して、増加させることを指す。この用語は、組成物からの他の細胞、細胞タイプまたは細胞集団の完全な除去を必要とせず、そのように富化された細胞が、富化組成物中に100%存在することを必要とせず、100%近く存在することさえ必要としない。
【0515】
本明細書において、細胞または細胞の集団が、特定マーカーについて「陽性」または「+」であるという言明は、特定マーカー、典型的には表面マーカーの、細胞上または細胞中での検出可能な存在を指す。表面マーカーに関する場合、この用語は、いくつかの態様ではフローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し、該抗体を検出することによって検出される、表面発現の存在を指し、この場合、染色は、フローサイトメトリーにより、アイソタイプ対応対照を使用し、他の点では同一条件下で同じ手順を実行することで検出される染色を実質的に上回るレベルで検出可能であり、および/またはそのマーカーについて陽性であることが公知である細胞と実質的に類似するレベルであり、および/またはそのマーカーについて陰性であることが公知である細胞よりも実質的に高いレベルである。
【0516】
本明細書において、細胞または細胞の集団が、特定マーカーについて「陰性」であるという言明は、特定マーカー、典型的には表面マーカーの、細胞上または細胞中での実質的な検出可能な存在がないことを指す。表面マーカーに関する場合、この用語は、いくつかの態様ではフローサイトメトリーによって、例えばマーカーに特異的に結合する抗体で染色し、該抗体を検出することによって検出される、表面発現が存在しないことを指し、この場合、染色は、フローサイトメトリーにより、アイソタイプ対応対照を使用し、他の点では同一条件下で同じ手順を実行することで検出される染色を実質的に上回るレベルでは検出されず、および/またはそのマーカーについて陽性であることが公知である細胞よりも実質的に低いレベルであり、および/またはそのマーカーについて陰性であることが公知である細胞と比較して実質的に類似するレベルである。
【0517】
本明細書において「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」および「パーセント同一性」とは、アミノ酸配列(リファレンスポリペプチド配列)に関して使用される場合、どの保存的置換も配列同一性の一部とはみなさずに、パーセント配列同一性が最大になるように配列を整列し、必要であればギャップを導入した後の、リファレンスポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野における技量の範囲内にあるさまざまな方法で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に利用できるコンピュータソフトウェアを使って、達成することができる。当業者は、配列を整列させるための適当なパラメータを、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要なあらゆるアルゴリズムを含めて、決定することができる。
【0518】
アミノ酸置換はポリペプチドの中のあるアミノ酸の別のアミノ酸による置き換えを含みうる。アミノ酸は一般に、以下の共通する側鎖の性質に従って分類することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0519】
非保存的アミノ酸置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うだろう。
【0520】
本明細書において、「に対応する位置に」、またはヌクレオチドもしくはアミノ酸の位置が、開示される配列、例えば配列表に示される配列におけるヌクレオチド位置もしくはアミノ酸位置に「対応する」という叙述は、GAPアルゴリズムなどの標準的アラインメントアルゴリズムを使って同一性が最大になるように、開示される配列とアラインメントした時に同定される、ヌクレオチド位置またはアミノ酸位置を指す。配列をアラインメントすることにより、当業者は、例えば保存された同一アミノ酸残基をガイドとして使用することにより、対応する残基を同定することができる。一般に、対応する位置を同定するには、最も高次な一致が得られるようにアミノ酸の配列をアラインメントする(例えばComputational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994、Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press,1987、およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York,1991、Carrillo et al.(1988)SIAM J Applied Math 48:1073参照)。
【0521】
本明細書において使用する用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を増殖させる能力を有する核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターも、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれているベクターも包含する。一定のベクターは、それらが機能的に連結されている核酸の発現を指示する能力を有する。そのようなベクターを本明細書では「発現ベクター」という。ベクターとしては、別の核酸を保持するゲノムを有し、それを増殖させるために宿主ゲノムに挿入する能力を有するウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターまたはガンマレトロウイルスベクターが挙げられる。
【0522】
本明細書にいう「組成物」とは、細胞を含む2種以上の物品、物質または化合物の任意の混合物を指す。これは、水性、非水性またはそれらの任意の組合せである、溶液、懸濁液、液状物、粉末、ペーストでありうる。
【0523】
本明細書において使用される「処置」、「処置する」または「処置すること」という用語は、疾患もしくは状態もしくは障害、または症状、副作用もしくはアウトカム、またはそれらと関連する表現型の完全なもしくは部分的な回復または低減を指す。一定の態様において、効果は治療的であって、疾患もしくは状態またはそれに帰すことができる有害な症状を部分的にまたは完全に治癒させる。
【0524】
本明細書にいう化合物または組成物または組合せの「治療有効量」とは、必要な投薬量および必要な期間で、例えば疾患、状態または障害の処置、および/または処置の薬物動態効果もしくは薬力学的効果に関して、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。本明細書における治療有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別および体重などの因子、ならびに投与される細胞の集団に従って変動しうる。
【0525】
V. 例示的態様
提供される態様には以下の態様が含まれる。
1.
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、
(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、
(b)インプット集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件が、TCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む、工程、および
(c)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程
を含む、方法。
2.
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、
(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、および
(b)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子をインプット細胞集団のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程
を含む、方法。
3.
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、
(a)初代T細胞の集団を含む生物学的試料から、CCR7の表面発現が陽性である初代T細胞を選択する工程であって、それによって、CCR7+初代T細胞が富化されているインプット集団を生成させる、工程、
(b)任意で、インプット集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件がTCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む、工程、および
(c)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子をインプット細胞集団のT細胞、または任意で、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程
を含む方法。
4.
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、
(a)CCR7+T細胞が富化されているインプット初代T細胞集団を刺激性条件下でインキュベートする工程であって、それによって、刺激された組成物を生成させ、刺激条件がTCR複合体の1つもしくは複数の構成要素の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激分子の1つもしくは複数の細胞内シグナリングドメインを活性化することができる刺激性試薬の存在を含む、工程、および
(b)組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、刺激された組成物のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程
を含む方法。
5.
初代T細胞の形質導入頻度を増加させるための方法であって、組換えタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むウイルスベクター粒子を、CCR7+T細胞が富化されているインプット初代T細胞集団のT細胞と共にインキュベートする工程であって、それによって、形質導入細胞の集団を生成させる、工程を含む方法。
6.
インプット集団の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である、態様1~5のいずれか一つの方法。
7.
インプット集団の少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である、態様1~6のいずれか一つの方法。
8.
インプット集団の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%が、CCR7+初代T細胞である、態様1~7のいずれか一つの方法。
9.
選択する工程が、(a)CCR7+およびCD45RO+、または(b)CCR7+およびCD27+、または(c)CCR7+およびCD45RA-、または(d)CCR7+およびCD62L+、または(e)CCR7+およびCD45RA+、または(f)CCR7+およびCD62L-である細胞を選択する工程を含まない、態様1~3および6のいずれか一つの方法。
10.
インプット集団は、(a)CCR7+およびCD45RO+、または(b)CCR7+およびCD27+、または(c)CCR7+およびCD45RA-、または(d)CCR7+およびCD62L+、または(e)CCR7+およびCD45RA+、または(f)CCR7+およびCD62L-であるT細胞が富化されていない、態様1~9のいずれか一つの方法。
11.
インプット集団は、CCR7+およびCD45RO+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RO+T細胞である、態様1~10のいずれか一つの方法。
12.
インプット集団は、CCR7+およびCD27+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD27+T細胞である、態様1~11のいずれか一つの方法。
13.
インプット集団は、CCR7+およびCD45RA-T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RA-T細胞である、態様1~12のいずれか一つの方法。
14.
インプット集団は、CCR7+およびCD62L+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD62L+T細胞である、態様1~13のいずれか一つの方法。
15.
インプット集団は、CCR7+およびCD45RA+T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD45RA+T細胞である、態様1~14のいずれか一つの方法。
16.
インプット集団は、CCR7+およびCD62L-T細胞が富化されておらず、任意で、インプット集団の全細胞の85%未満がCCR7+およびCD62L-T細胞である、態様1~15のいずれか一つの方法。
17.
生物学的試料が血液試料である、態様1、3および6~16のいずれか一つの方法。
18.
生物学的試料が白血球アフェレーシス試料である、態様1、3および6~16のいずれか一つの方法。
19.
T細胞が、未分画T細胞であるか、富化もしくは単離されたCD3+T細胞であるか、富化もしくは単離されたCD4+T細胞であるか、または富化もしくは単離されたCD8+T細胞である、態様1~18のいずれか一つの方法。
20.
インプット集団が、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、態様1~19のいずれか一つの方法。
21.
インプット集団が、CD4+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、態様1~20のいずれか一つの方法。
22.
インプット集団が、CD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、態様1~20のいずれか一つの方法。
23.
インプット集団が、CD4+T細胞およびCD8+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、態様1~20のいずれか一つの方法。
24.
CD4+T細胞のCD8+T細胞に対する比が、1:1、1:2、2:1、1:3、もしくは3:1であるか、または約1:1、1:2、2:1、1:3、もしくは3:1である、態様23の方法。
25.
インプット集団が、CD3+T細胞である細胞を、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、態様1~19のいずれか一つの方法。
26.
インプット集団が、100×106~500×106個の総T細胞を含む、態様1~25のいずれか一つの方法。
27.
インプット集団が、200×106~400×106個の総T細胞、任意で300×106または約300×106個の総T細胞を含む、態様1~26のいずれか一つの方法。
28.
総T細胞が生存T細胞である、態様26または態様27の方法。
29.
刺激された組成物の細胞のうちの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%が、
(i)HLA-DR、CD25、CD69、CD71、CD40L、および4-1BBからなる群より選択される表面マーカーを発現し、
(ii)IL-2、IFN-ガンマ、およびTNF-アルファからなる群より選択されるサイトカインの細胞内発現を含み、
(iii)細胞周期のG1期以降にあり、および/または
(iv)増殖能を有する、
態様1~28のいずれか一つの方法。
30.
刺激性試薬が、
TCR複合体のメンバーに特異的に結合する、任意でCD3に特異的に結合する、一次作用物質
を含む、態様1~29のいずれか一つの方法。
31.
刺激性試薬が、T細胞共刺激分子に特異的に結合する二次作用物質をさらに含み、任意で、共刺激分子が、CD28、CD137(4-1-BB)、OX40、またはICOSから選択される、態様30の方法。
32.
一次作用物質および/または二次作用物質が抗体を含み、任意で、刺激性試薬が、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはそれらの抗原結合フラグメントとのインキュベーションを含む、態様30または態様31の方法。
33.
一次作用物質および/または二次作用物質が、固形支持体の表面に存在する、態様30~32のいずれか一つの方法。
34.
固形支持体がビーズであるかまたはビーズを含む、態様33の方法。
35.
一次作用物質および二次作用物質が、複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子を含むオリゴマー型粒子試薬の表面に可逆的に結合している、態様30~34のいずれか一つの方法。
36.
複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれが、SEQ ID NO:34に示されるアミノ酸の配列におけるストレプトアビジン中の位置に関して位置44~47に対応する配列位置に、Val44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47のアミノ酸配列を含む、態様35の方法。
37.
複数のストレプトアビジン分子またはストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれが、ストレプトアビジンムテイン分子であり、複数のストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれが、
(a)SEQ ID NO:36、41、48~50、または53~55のいずれか1つに示されるアミノ酸の配列、
(b)SEQ ID NO:36、41、48~50、または53~55のいずれか1つに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を呈し、かつVal44-Thr45-Ala46-Arg47またはIle44-Gly45-Ala46-Arg47に対応するアミノ酸配列を含有し、かつ/またはビオチン、ビオチン類似体、もしくはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する、アミノ酸の配列、または
(c)ビオチン、ビオチン類似体もしくはストレプトアビジン結合ペプチドに可逆的に結合する(a)もしくは(b)の機能的フラグメント
であるか、またはそれを含み、
任意で、複数のストレプトアビジンムテイン分子のそれぞれが、SEQ ID NO:36またはSEQ ID NO:41に示されるアミノ酸配列であるか、またはそれを含む、
態様35の方法。
38.
形質導入細胞の集団が、組換えタンパク質を発現する細胞を、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、態様1~37のいずれか一つの方法。
39.
形質導入細胞の集団が、組換えタンパク質を発現する細胞を、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%含む、態様1~38のいずれか一つの方法。
40.
形質導入細胞の集団における、組換えタンパク質を発現する細胞のパーセンテージが、選択工程によってCCR7+初代T細胞が富化されなかった細胞組成物と比較して、少なくとも0.5倍、少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍大きい、態様1~39のいずれか一つの方法。
41.
ウイルスベクター粒子をインキュベートする工程が、ウイルスベクター粒子を、インプット集団または刺激された組成物と共にスピノキュレーションに付すことを含む、態様1~40のいずれか一つの方法。
42.
スピノキュレーションに付すことが、遠心分離チャンバの内側キャビティにおいて、ウイルスベクター粒子およびインプット集団または刺激された組成物を回転させることを含み、
回転が、
それぞれ両端の値を含め、500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または約500g~2500g、500g~2000g、500g~1600g、500g~1000g、600g~1600g、600g~1000g、1000g~2000g、もしくは1000g~1600g、または
少なくとも600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000g、または少なくとも約600g、800g、1000g、1200g、1600g、もしくは2000g
である、キャビティ側壁の内面における相対遠心力で行われる、
態様41の方法。
43.
スピノキュレーションに付すことが、
5分超もしくは約5分、10分超もしくは約10分、15分超もしくは約15分、20分超もしくは約20分、30分超もしくは約30分、45分超もしくは約45分、60分超もしくは約60分、90分超もしくは約90分、または120分超もしくは約120分、または
それぞれ両端の値を含め、5分~60分、10分~60分、15分~60分、15分~45分、30分~60分、もしくは45分~60分、または約5分~60分、10分~60分、15分~60分、15分~45分、30分~60分、もしくは45分~60分
である時間にわたって行われる、態様41または態様42の方法。
44.
インキュベートする工程の少なくとも一部の間に、刺激された組成物および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む、態様1~43のいずれか一つの方法。
45.
インキュベートする工程の少なくとも一部の間に、インプット集団および/またはウイルスベクター粒子を形質導入アジュバントと接触させる工程を、さらに含む、態様2、3、および5~44のいずれか一つの方法。
46.
接触させる工程が、ウイルスベクター粒子をインプット集団または刺激された組成物と共にスピノキュレーションに付す前に、またはそれと同時に、またはその後に、実行される、態様44の方法。
47.
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部が、37℃±2℃または約37℃±2℃で実行される、態様1~46のいずれか一つの方法。
48.
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部が、スピノキュレーション後に実行される、態様1~47のいずれか一つの方法。
49.
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部が、2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下、または約2時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間、もしくは72時間以下にわたって実行される、態様47または態様48の方法。
50.
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの少なくとも一部が、24時間または約24時間にわたって実行される、態様47~49のいずれか一つの方法。
51.
ウイルスベクター粒子のインキュベーションの総継続時間が、12時間、24時間、36時間、48時間、または72時間以下である、態様1~50のいずれか一つの方法。
52.
ウイルスベクター粒子がレンチウイルスベクター粒子である、態様1~51のいずれか一つの方法。
53.
レンチウイルスベクター粒子が複製欠損性である、態様52の方法。
54.
ウイルスベクター粒子が、ウイルスエンベロープ糖タンパク質でシュードタイプ化されている、態様1~53のいずれか一つの方法。
55.
ウイルスエンベロープ糖タンパク質がVSV-Gである、態様54の方法。
56.
ウイルスベクター粒子が、20.0未満もしくは約20.0未満または10.0未満もしくは約10.0未満の感染多重度でインキュベートされる、態様1~55のいずれか一つの方法。
57.
ウイルスベクター粒子が、1.0 IU/細胞~10 IU/細胞もしくは2.0U/細胞~5.0 IU/細胞、または約1.0 IU/細胞~10 IU/細胞もしくは2.0U/細胞~5.0 IU/細胞の感染多重度でインキュベートされるか、または
ウイルスベクター粒子が、少なくとも1.6 IU/細胞、1.8 IU/細胞、2.0 IU/細胞、2.4 IU/細胞、2.8 IU/細胞、3.2 IU/細胞、3.6 IU/細胞、4.0 IU/細胞、5.0 IU/細胞、6.0 IU/細胞、7.0 IU/細胞、8.0 IU/細胞、9.0 IU/細胞、もしくは10.0 IU/細胞、または少なくとも約1.6 IU/細胞、1.8 IU/細胞、2.0 IU/細胞、2.4 IU/細胞、2.8 IU/細胞、3.2 IU/細胞、3.6 IU/細胞、4.0 IU/細胞、5.0 IU/細胞、6.0 IU/細胞、7.0 IU/細胞、8.0 IU/細胞、9.0 IU/細胞、もしくは10.0 IU/細胞の感染多重度でインキュベートされる、
態様1~56のいずれか一つの方法。
58.
刺激された組成物が、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む、態様1~57のいずれか一つの方法。
59.
刺激された組成物が、両端の値を含め50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞、任意で両端の値を含め100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む、態様1、3、4および6~58のいずれか一つの方法。
60.
インプット集団が、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む、態様2および6~59のいずれか一つの方法。
61.
インプット集団が、両端の値を含め50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞、任意で両端の値を含め100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む、態様2および6~59のいずれか一つの方法。
62.
ウイルス粒子と共にインキュベートされるT細胞が、少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、またはおよそ少なくとも50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞、または約50×106細胞、100×106細胞もしくは200×106細胞を含む、態様1~61のいずれか一つの方法。
63.
ウイルス粒子と共にインキュベートされるT細胞が、両端の値を含め50×106または約50×106細胞~300×106または約300×106細胞、任意で両端の値を含め100×106または約100×106細胞~200×106または約200×106細胞を含む、態様1~61のいずれか一つの方法。
64.
組換えタンパク質が抗原受容体である、態様1~63のいずれか一つの方法。
65.
抗原受容体がトランスジェニックT細胞受容体(TCR)である、態様64の方法。
66.
抗原受容体がキメラ抗原受容体(CAR)である、態様64の方法。
67.
CARが、標的抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメイン、ITAMを含む細胞内シグナリングドメイン、および細胞外ドメインと細胞内シグナリングドメインとを連結する膜貫通ドメインを含む、態様66の方法。
68.
細胞内シグナリングドメインがCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内ドメインを含む、態様67の方法。
69.
細胞外ドメインと細胞内シグナリングドメインとを連結する膜貫通ドメインをさらに含む、態様67または態様68の方法。
70.
膜貫通ドメインがCD28の膜貫通部分を含む、態様69の方法。
71.
細胞内シグナリングドメインがT細胞共刺激分子の細胞内シグナリングドメインをさらに含む、態様67~70のいずれか一つの方法。
72.
T細胞共刺激分子がCD28および41BBからなる群より選択される、態様71の方法。
73.
抗原受容体が、疾患または状態と関連する抗原に特異的に結合するか、またはユニバーサルタグに特異的に結合する、態様64~72のいずれか一つの方法。
74.
疾患または状態が、がん、自己免疫疾患もしくは自己免疫障害、または感染性疾患である、態様73の方法。
75.
形質導入細胞の集団が、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞を含む、態様1~74のいずれか一つの方法。
76.
形質導入細胞の集団におけるT細胞の少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%に、異種ポリヌクレオチドが形質導入されている、態様75の方法。
77.
形質導入細胞の集団におけるT細胞の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%に、異種ポリヌクレオチドが形質導入されている、態様75または態様76の方法。
78.
異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、CCR7+である、態様75~77のいずれか一つの方法。
79.
形質導入細胞の集団から、本方法によって生産された形質導入T細胞を回収または単離する工程を、さらに含む、態様75または態様76の方法。
80.
形質導入細胞の複数の集団の間での、形質導入細胞の集団における、異種ポリヌクレオチドが形質導入されているT細胞のパーセンテージのばらつきが、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、または10%以下である、態様1~79のいずれか一つの方法。
81.
インビトロまたはエクスビボで実行される、態様1~80のいずれか一つの方法。
82.
態様1~81のいずれか一つの方法によって生産された形質導入細胞の集団を含む、組成物。
83.
冷凍保存物質をさらに含む、態様82の組成物。
【実施例
【0526】
VI. 実施例
以下の実施例は例示のために含まれるに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0527】
実施例1:ドナーT細胞間での形質導入頻度の評価
再発/難治性大B細胞リンパ腫を持つ複数のヒト対象からの白血球アフェレーシス試料から単離されたPBMCから、初代CD4+およびCD8+T細胞を選択した。CD4+T細胞とCD8+T細胞(それぞれ約300×106細胞)を、抗CD3および抗CD28抗体とコンジュゲートされた常磁性ビーズの存在下、約1:1のビーズ対細胞比で、組換えIL-2、IL-7およびIL-15の存在下で、個別に刺激した。刺激は18~30時間のインキュベーションによって実行した。次に、刺激された細胞を、標的体積の、異種核酸をコードするレンチウイルスベクター(この実施例では特異的抗原(例えばCD19)に対するキメラ抗原受容体(CAR)をコードするもの)と共にインキュベートし、スピノキュレーションによる形質導入を行った。細胞への形質導入は10μg/ml硫酸プロタミンの存在下で行った。スピノキュレーション後に、細胞を37℃±6℃で72時間までインキュベートした。形質導入されたCD4またはCD8 T細胞を、CARの細胞外抗原結合ドメインに特異的な蛍光標識抗イディオタイプ抗体を用いるフローサイトメトリーによって測定される形質導入頻度について評価した。形質導入頻度は、形質導入されたドナー細胞集団(CD4またはCD8細胞)中のCD3+CAR+細胞のパーセンテージとして算出した。
【0528】
表E1に示すとおり、CD4細胞集団とCD8細胞集団のどちらについても、形質導入頻度に高度なばらつきが観察された。CD4細胞の形質導入頻度はドナーに依存して35~93%の範囲にあり、CD8細胞の形質導入頻度はドナーに依存して16~92%の範囲にあった。
【0529】
(表E1)
【0530】
T細胞形質導入頻度の分散に影響を及ぼしうる因子を決定するための研究を行った。実質的に上述したように、複数のヒトドナー白血球アフェレーシス試料から単離されたPBMCから、初代CD4+およびCD8+T細胞を選択し、抗CD3/抗CD28常磁性ビーズで刺激し、異種タンパク質をコードする核酸を含有するレンチウイルスベクターによる形質導入を行った。実験は上述のように別々のCD4+T細胞集団とCD8+T細胞集団で実施すると共に、CD4+およびCD8+T細胞の集団でも実施した。ドナー、ベクターのロット、CD4および/またはCD8 T細胞サブタイプ、形質導入に使用したプロセス、および分析のばらつき(analytic variability)などといった因子を、形質導入頻度の分散との関連について評価した。表E2に示すように、これらの研究により、T細胞形質導入頻度の全分散の主要源(principal source)(約70%)は、ドナーT細胞集団における不均一性に帰すことができることが実証された。
【0531】
(表E2)
*研究では、ドナー、構成要素、プロセスおよび分析上のばらつき(analytical variability)の効果を検討した。
**研究では、ドナー、プロセスおよび分析上のばらつきを検討した。
【0532】
形質導入頻度に対するドナーとウイルスベクターの寄与を対比してさらに評価するために、体積タイトレーションによってベクターの量を増加させるベクタータイトレーション実験を実行した。実質的に上述したように、6人のヒトドナーからのCD4およびCD8 T細胞を単離し、刺激し、形質導入を行った。図1に示すように、T細胞の最大形質導入可能頻度のドナー間でのばらつきが観察され、このばらつきは、ベクターのタイトレーションを増加させることによっては克服されなかった。これは、異なるドナーからのT細胞集団の間には、形質導入頻度に影響すると思われる相違があることを実証している。
【0533】
実施例2:T細胞サブセット間の形質導入頻度の評価
CD4細胞またはCD8細胞のどちらか一方を含むT細胞組成物に、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするレンチウイルスベクターを使って、実質的に実施例1に記載したように、形質導入を行った。
【0534】
ある研究では、3人の健常ドナーからの白血球アフェレーシス試料から単離されたPBMCから、CD4+T細胞とCD8+T細胞を個別に選択した。実施例1に記載した抗イディオタイプ抗体を使って、ウイルスベクターの接種の24時間後、48時間後および72時間後に、形質導入頻度をモニターした。分化マーカーCCR7に基づく表現型キャラクタリゼーションのためにも、細胞をフローサイトメトリーで分析した。分化度の低いナイーブT細胞(Tn)およびセントラルメモリーT細胞(Tcm)は、CCR7発現(CCR7+)を特徴とし、分化度が高いエフェクターT細胞(Te)およびエフェクターメモリーT細胞(Tem)はCCR7発現の非存在(CCR7-)を特徴とする。
【0535】
結果を図2A(CD4)および図2B(CD8)に図示する。図2Aおよび図2Bのそれぞれにおいて、左上の図は、活性化と形質導入の前(インプット組成物または選択された組成物)のT細胞組成を表し、右上の図は、それらのT細胞サブセットにおいて結果的に得られた形質導入頻度を表し、下側の図は、各集団が呈する形質導入T細胞の比率を表す。ヒゲは観察されたデータの範囲を表す。図2A図2Bの両方の右上の図に示すように、フローサイトメトリーによる表現型キャラクタリゼーションにより、CCR7+発現を特徴とする分化度の低いTnおよびTcm細胞は、CCR7発現の非存在を特徴とする分化度の高いTeおよびTem細胞よりも、高い頻度で形質導入されることが実証された。図2Aおよび図2Bの下側の図に示すように、形質導入されたCD4 T細胞およびCD8 T細胞の実質的比率は、CCR7+であると特徴づけられる比率であった。これらの結果は、形質導入に対してCCR7+T細胞の方が高い感受性を有し、CCR7-T細胞は形質導入に対する感受性が低いことを実証しており、それにより、CD4 T細胞とCD8 T細胞のどちらにおいても、CCR7発現と、異種タンパク質をコードするウイルスベクターによる形質導入との間には、関連があることを実証している。
【0536】
2人の健常ヒトドナーからCD4+およびCD8+T細胞を選択した後、それぞれ約300×106細胞を抗CD3/抗CD28常磁性ビーズで個別に刺激し、標的体積の、CARをコードするレンチウイルスベクターとのスピノキュレーションによる形質導入を行うことにより、さらなる研究を、より大きなスケールで行った。形質導入頻度およびCCR7発現に関する表現型キャラクタリゼーションは、上述のように、ただしウイルスベクターの接種の0時間後、24時間後、48時間後、72時間後、および120時間後に行った。結果を図3A(CD4+)および図3B(CD8+)に図示する。各図において、左上の図は、活性化と形質導入の前のT細胞組成を表し、右上の図は、それらのT細胞サブセットにおいて結果的に得られた形質導入頻度を表し、下側の図は、各集団が呈する形質導入T細胞の比率を表す。ヒゲは観察されたデータの範囲を表す。上述の小スケールでの研究と同様に、形質導入されたCD4およびCD8 T細胞の実質的比率は、CCR7+であることを特徴とする比率であり(図3Aおよび図3Bの下側の図)、CD4 T細胞とCD8 T細胞の両方におけるCCR7発現とウイルスベクターによる形質導入との間の相関関係も、図3Aおよび図3Bの右上の図に示すように観察された。ただし、CD8 T細胞組成物の方が強い相関関係を示した。
【0537】
実施例1の研究で述べた再発/難治性大B細胞リンパ腫を持つ対象のうち、選択されたCD4およびCD8 T細胞のCCR7+である亜集団とCCR7-である亜集団の頻度も、フローサイトメトリーで評価した(n=145)。結果を図4に図示する。これは、CD4 T細胞集団でもCD8 T細胞集団でも、CCR7発現が著しく不定であることを実証している。図4に示す箱は四分位範囲を示し、ヒゲは全範囲を示す。形質導入は、患者試料からのCD4+およびCD8+T細胞の選択後に行われるので、このデータは、CCR7+T細胞対CCR7-T細胞の相対的比率が、形質導入時点での患者材料間で著しく不定であることを明らかにしている。例えば、CD8 T細胞のT細胞形質導入頻度は、この研究での再発/難治性大B細胞リンパ腫を持つ対象の群(n=133)では、形質導入工程直前のCCR7+T細胞のパーセンテージと高度に相関することがわかった(n=133;スピアマンの順位相関係数、p値<0.0006、ρ 0.302)。
【0538】
全体として、これらの研究での結果は、患者試料間での形質導入頻度のばらつきが、主として、患者のT細胞亜集団組成の相違、例えばCCR7+亜集団とCCR7-亜集団の比率の相違の結果であることを示唆している。これらの結果は、形質導入に先立ってまず患者試料からCCR7+T細胞を選択することによって形質導入頻度のばらつきを最小限に抑えまたは低減することができる方法と矛盾しない。
【0539】
開示した特定態様は、例えば本発明のさまざまな局面を例示するなどの目的で提供されているのであって、本発明の範囲は、それらの特定態様に限定されるものではない。記載の組成物および方法のさまざまな変更態様は、本明細書における記載および教示から、明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および要旨から逸脱することなく実施することができ、本発明の範囲に包含されるものとする。
【0540】
配列
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
【配列表】
2023512209000001.app
【国際調査報告】