IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マウンテン エアロスペース リサーチ ソリューションズ, インク.の特許一覧

<>
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図1
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図2
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図3
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図4
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図5
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図6
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図7
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図8
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図9
  • 特表-エア吸入ロケットエンジン 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】エア吸入ロケットエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02K 7/18 20060101AFI20230316BHJP
   F02K 7/08 20060101ALI20230316BHJP
   F02K 9/78 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
F02K7/18
F02K7/08
F02K9/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545805
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 US2021015091
(87)【国際公開番号】W WO2021154727
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】16/776,325
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/828,285
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522297993
【氏名又は名称】マウンテン エアロスペース リサーチ ソリューションズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィス, アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ステグマン, スコット
(57)【要約】
【要約】
特定の実施形態におけるエア吸入式ロケットエンジンは、砂時計形の外側シェルと、外側シェルのフロント端内に完全に設けられている内部部分とを備える。内側部分は、フロアで終わる漏斗状のインテークと、内側フロント壁と漏斗状のインテークの外側面との間に第1の周方向ギャップを形成する内側フロント壁とを含む。インテークには、外側シェル内のスロートおよび排気口領域に流体連通する中央開口部がある。フロント内壁の外側面と外側シェルのフロント端部の内側面との間に第2の周方向ギャップが形成され、外側シェル内のスロートおよび排気領域に流体連通している。1つまたは複数のインジェクタポートおよび1つまたは複数の点火ポートが、第2の周方向ギャップのフロント端に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル;
周囲流体をエンジンに引き込む、前記シェル内に設けられているインテーク;
燃料と酸化剤の混合物を燃焼させる、前記シェル内に設けられている一次燃焼室;および
前記インテークに流体連通する、前記シェル内に設けられている二次燃焼室であって、前記インテークを介して受け取られる周囲流体と前記一次燃焼室から排出される未燃焼質量との混合物を燃焼させる、二次燃焼室;
を備えるエンジンであって、
前記エンジンが動作しているときに、前記一次燃焼室から前記二次燃焼室への質量の放出により、周囲流体を前記インテークを介して前記二次燃焼室に吸い込ませる圧力差が生じるように、前記インテーク、前記一次燃焼室、および前記二次燃焼室が、集合的に、構成されている、エンジン。
【請求項2】
前記シェル、前記インテーク、前記一次燃焼室、および前記二次燃焼室が、全て一体の材料から形成されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記エンジンが作動中、前記インテークを介して前記二次燃焼室に引き込まれる前記周囲流体が、前記二次燃焼室内の反応質量として使用される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記エンジンが作動中であり、そして前記周囲流体が酸化剤を含む場合、前記インテークを介して前記二次燃焼室に引き込まれる前記周囲流体中の酸化剤が、前記二次燃焼室での燃焼に使用される、請求項3に記載のエンジン。
【請求項5】
前記一次燃焼室が、環状の形状であり、そして前記エンジンの長軸の周りに配置されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項6】
前記インテークおよび前記一次燃焼室が、ヴィークルの前記エンジンの作動中、前記エンジンの意図する移動方向に対して前記エンジンのフロント端内に設けられている、請求項5に記載のエンジン。
【請求項7】
前記一次燃焼室が、前記シェルのフロント端の内側面と前記インテークの外側面との間の前記長手方向中心軸の周りに画定されている環状ギャップを備える、請求項6に記載のエンジン。
【請求項8】
前記二次燃焼室が、前記シェルの内側面の一部によって画定されているスロート領域を備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項9】
前記インテークの形状が実質的に円錐形であり、そして前記インテークのフロント開口が、ヴィークルの前記エンジンの作動中、前記エンジンの意図する移動方向に対して前記インテークのリア開口よりも広い、請求項1に記載のエンジン。
【請求項10】
酸化剤ポートおよび燃料ポートをさらに備え、それぞれが前記一次燃焼室に流体連通していて、酸化剤および燃料をこれらを介してそれぞれ前記一次燃焼室に導入する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項11】
複数の酸化剤ポートおよび複数の燃料ポートをさらに備え、それぞれが前記一次燃焼室に流体連通し、酸化剤および燃料をそれらを介して前記一次燃焼室にそれぞれ導入し、前記複数の酸化剤ポートおよび前記複数の燃料ポートが、前記長手方向中心軸の周りに周方向に配置されている、請求項1に記載のエンジン。
【請求項12】
エンジンの長手方向中心軸に沿って画定されているフロント端部およびリア端部を有するシェルであって、前記長手方向中心軸が、前記エンジンがヴィークル上で作動しているときに前記エンジンの意図する運動方向に平行である、シェル;
周囲流体を前記エンジンに引き込むためのインテークであって、前記フロント端内に設けられていて、そして前記エンジンの前記長手方向中心軸に沿って配置されている、インテーク;
前記シェルのフロント端の内側面と前記インテークの外側面との間の前記長手方向中心軸の周りに画定されている環状ギャップであって、燃料と酸化剤の混合物を燃焼させる一次燃焼室として機能するように構成されている環状ギャップ;
前記フロント端と前記リア端との間の前記シェルの内部の一部によって画定されていて、そして前記インテークに流体連通するスロート領域であって、前記インテークを介して受け取られる周囲流体と前記一次燃焼室から排出される未燃焼質量との混合物を燃焼させる二次燃焼室を形成する、スロート領域、
を備えるエンジンであって、
前記エンジンが作動しているときに、前記環状燃焼室から前記スロート領域への質量の放出が、前記インテークを介して前記スロート領域に周囲流体を引き込ませる圧力差を発生させるように、前記インテーク、前記環状ギャップ、および前記スロート領域が、集合的に構成されていて、そして前記インテーク内に引き込まれる前記周囲流体が、前記エンジンの動作時に前記スロート領域の反応質量として使用され、そして前記シェル、前記インテーク、前記環状ギャップ、および前記スロート領域が、全て一体の材料から形成されている、
エンジン。
【請求項13】
前記エンジンが作動しているとき、前記スロート領域に引き込まれる前記周囲流体が反応質量として使用される、請求項12に記載のエンジン。
【請求項14】
前記エンジンが作動中でありそして前記周囲流体が酸化剤を含む場合、前記スロート領域に引き込まれる前記周囲流体中の酸化剤が燃焼に使用される、請求項13に記載のエンジン。
【請求項15】
それぞれが前記一次燃焼室に流体連通する、複数の酸化剤ポートおよび複数の燃料ポートをさらに備え、酸化剤および燃料がそれらを介してそれぞれ前記一次燃焼室に導入される、請求項12に記載のエンジン。
【請求項16】
前記複数の酸化剤ポートおよび前記複数の燃料ポートが、前記長手方向中心軸の周りに周方向に配置されている、請求項13に記載のエンジン。
【請求項17】
シェル;
燃料および酸化剤が、燃焼のためにそれらを介してエンジンに受け入れられる複数のポート;および
前記エンジン内に周囲流体を引き込むための圧力差を生成するために、そして前記エンジン内でa)追加の燃焼用の酸化剤またはb)反応質量の少なくとも1つとして使用される、前記エンジンに受け入れられる前記燃料と酸化剤を燃焼させることにより、前記エンジン内の可動部品を使用せずに、前記シェルから反応質量を排出することによって推力を発生させる、前記シェル内に配置されている推力発生手段
を備えるエンジン。
【請求項18】
前記シェルおよび前記推力発生手段が、全て、一体の材料から形成されている、請求項17に記載のエンジン。
【請求項19】
前記エンジンが作動中でありそして前記周囲流体が酸化剤を含むとき、エンジン内に引き込まれる前記周囲流体が燃焼に使用される、請求項17に記載のエンジン。
【請求項20】
前記エンジンが作動中でありそして前記周囲流体が酸化剤を含まないとき、エンジン内に引き込まれる前記周囲流体が反応質量として使用される、請求項19に記載のエンジン。
【請求項21】
推力を発生させる方法であって、
エンジンへの燃料と酸化剤を受け取るステップ、および
周囲流体を前記エンジンに引き込むための圧力差を発生させるために、前記エンジンに受け入れられる前記燃料と酸化剤を燃焼させることと、
a)追加の燃焼のための酸化剤、またはb)反応質量のうちの少なくとも1つとして、当該圧力差によって前記エンジンに引き込まれる周囲流体を使用することと
により、前記エンジンから反応質量を排出することによって推力を発生させる、ステップ
を備える方法。
【請求項22】
前記推力の発生が、前記エンジン内に可動部品を必要としない、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エンジン内に引き込まれる前記周囲流体を反応質量として使用するステップを備える、請求項21に記載のエンジン。
【請求項24】
前記周囲流体が酸化剤を含む場合、エンジンに引き込まれる前記周囲流体中の酸化剤を燃焼用の追加の酸化剤として使用するステップを更に備える、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月24日に出願された米国特許出願第 16/828,285 号の優先権を主張し、この米国出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般に推進エンジンの分野に、より具体的には、周囲流体を自由反応質量として使用するために取り入れ、そして流体内に含まれる酸化剤を燃焼サイクルに使用することができる、可動部品のないロケットエンジンに関する。
【背景技術】
【0003】
ロケットエンジンとジェットエンジンには2つの大きな相違がある。第1は、ロケットエンジンは、自身の燃料を全て宇宙に運ぶだけではなく、その燃料を燃焼させるための酸素源も運ばなければならないということである。一方、ジェットエンジンは燃料を運ぶが、エア中の酸素を使って燃料を燃焼させる。第2の大きな相違は、ジェットエンジンにはインテークと排気口があるのに対し、ロケットエンジンは、通常、閉じたマニホールドシステムを介して燃料と酸化剤を受け取り、そして排気口しかないことである。何れのタイプのエンジンも、内圧差によって推力を生成し、そしてエンジンの移動経路の方向とは反対に排気ガスを排出する。
【0004】
船舶用および航空宇宙用ジェットエンジンを含む現在のジェットエンジン設計は、機能させるためにインペラまたはコンプレッサの様な可動部品に依存している。これらの可動部品は、製造コストとメンテナンスコストを増加させ、そして性能上のリスクをもたらす。例えば、航空宇宙用エンジンのタービンまたはコンプレッサブレードの故障は、エンジン全体の壊滅的な故障や人命の損失につながる可能性がある。以下に、公知のエンジン設計の幾つかの例を示す。
【0005】
発明の名称が「ダクトフローにおける燃料燃焼」である特許文献1(”Lane”)は、エアのフローを収容するためのダクトと、ダクトに沿って横方向に間隔をあけて延在するロンジロン部材のアセンブリを有するエア燃料混合デバイスとを備えた燃焼装置を提供する。ロンジロン部材は、ダクトを通るフローの大部分がロンジロン部材の間の空間を通過するように、ダクトを通るフローの一般的な方向とダクトの壁とに対して傾斜している。ロンジロン部材の長手方向のエッジは、連続的な渦を発生させるように形成されている。バッフルは、ロンジロン部材の上流端を横切って延在し、そして保護されたパイロット燃焼ゾーンを形成する。特許文献1のエンジンは、パイロットゾーンで可燃性混合気のパイロット渦を発生させて、各パイロット渦を分割させ、そして各パイロット渦の分割部分を、隣接するロンジロン部材の隣接する部分に沿って下流に通過させる手段をさらに備える。
【0006】
発明の名称が「インパルスジェットエンジン」である特許文献2(”Chester”)には、可動部品が無くそしてトロイダル燃焼室を有するジェットエンジンが記載されている。トロイダル排気ポートは、排気ガスを、半径方向に内側にそしてエンジン出口に向ける。排気ガスは、エンジンを通過する二次エアフローを誘発し、そしてこの誘発された二次エアはエンジンの入口に入り、これによってこの誘発された二次エアが排気ガスを冷却しそして排気ガスを減速させる。代替の実施形態では、ハウジングのリア端は円錐台形であり、そして排気ポートが排気ガスを互いに収束するように導き、これによって誘発されたエアが収束パターンで流れるようになる。両方の実施形態において、誘発された二次エアの質量は、排気ガスの質量に比べて大きいので、二次エアは相対的に低速でエンジンを通って流れる。
【0007】
発明の名称が「ガスタービンエンジン」である特許文献3(“Seymour”)は、小型の「エア吸入」ガスタービンエンジンを開示している。このエンジンは、燃焼室内の無炎一次混合ゾーン、一次燃焼ゾーン、二次燃焼ゾーン、および希釈ゾーンを備える。コンプレッサとタービンホイールの間には、ベアリングアセンブリが設けられている。冷却キャビティが、タービンホイールとベアリングアセンブリの間に位置している。特許文献3のエンジンは、コンプレッサとタービンホイールとの間にトロイダル形状のコンプレッサ吐出プレナムも備えている。このトロイダル形状のコンプレッサ吐出プレナムは、エアアキュムレータ、エアショックアブソーバ、およびエアスタビライザとして機能する。
【0008】
発明の名称が「航空機エンジンのタービンエンジン用定容燃焼システム」である特許文献4(“Taliercio”)は、複数の燃焼室が長軸の周りに規則的に分布しているタービンエンジン用の燃焼システムを提供している。トロイダルマニホールドは、コンプレッサエアを各燃焼室に供給するための半径方向に配向されている出口を含む。半径方向に配向されている入口を備えたトロイダルマニホールドは、マニホールド出口と排気管入口との間に半径方向に配向されている燃焼室から燃焼ガスを収集する。マニホールド出口からの圧縮エアの吸引と排気管への燃焼ガスの噴出は、各チャンバのタイミングデバイスによって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,428,191号
【特許文献2】米国特許第5,282,359号
【特許文献3】米国特許第5,727,378号
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/0038278号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
本出願では、少なくとも1つの実施形態において、シェル、インテーク、一次燃焼室、および二次燃焼室を備えるエンジンが紹介される。インテークは、シェル内に設けられ、そして(エアのような、但し、これに限定されない)周囲流体をエンジンに引き込むためのチャネルである。一次燃焼室は、シェル内に設けられ、そして燃料と酸化剤の混合物を燃焼させるために使用される。二次燃焼室は、シェル内に設けられ、そしてインテークに流体連通している。この二次燃焼室は、インテークを介して受け取られた周囲流体と一次燃焼室から排出された未燃焼質量との混合物を燃焼させるために使用される。エンジンが作動しているときに、一次燃焼室から二次燃焼室への質量の放出により、圧力差を発生させ、これにより、周囲流体がインテークから二次燃焼室へ引き込まれるように、インテーク、一次燃焼室、および二次燃焼室は、集合的に、構成されている。
【0011】
少なくともいくつかの実施形態では、シェル、インテーク、一次燃焼室、および二次燃焼室は、全て、一体の材料から形成されている。少なくともいくつかの実施形態では、エンジンが作動しているとき、インテークを介して二次燃焼室に引き込まれる周囲流体は、二次燃焼室内の反応質量として使用される。そして、もし周囲流体が酸化剤を含む場合、周囲流体中の酸化剤は二次燃焼室での燃焼に使用される。
【0012】
少なくともいくつかの実施形態では、一次燃焼室は、環状の形状であり、そしてエンジンの長軸の周りに配置されている。少なくともいくつかの実施形態では、インテークおよび一次燃焼室は、ヴィークルのエンジンの作動中のエンジンの意図する移動方向に対して、エンジンのフロント端内に設けられている。少なくともいくつかの実施形態では、一次燃焼室は、シェルのフロント端の内側面とインテークの外側面との間の長手方向中心軸の周りに画定された環状(例えば、トロイダル)ギャップを備える。
【0013】
少なくともいくつかの実施形態では、二次燃焼室は、シェルの内側面の一部によって画定されているスロート領域を備える。少なくともいくつかの実施形態では、インテークは形状が実質的に円錐形であり、そしてインテークのフロント開口は、ヴィークルのエンジンの作動中のエンジンの意図する移動方向に対して、インテークのリア開口より広い。
【0014】
少なくともいくつかの実施形態では、エンジンは、さらに酸化剤ポートおよび燃料ポートを備えている。それぞれのポートは、一次燃焼室に流体連通し、これにより酸化剤および燃料がそれぞれ一次燃焼室に導入される。少なくともいくつかの実施形態では、エンジンは、複数の酸化剤ポートおよび複数の燃料ポートを備えている。それぞれのポートは、一次燃焼室に流体連通していて、これにより酸化剤および燃料がそれぞれ一次燃焼室に導入される。複数の酸化剤ポートおよび複数の燃料ポートは、長手方向の中心軸の周りに周方向に配置されている。
【0015】
本出願で紹介する技術は、推力を発生させる方法も含む。少なくともいくつかの実施形態では、この方法は、エンジンへの燃料および酸化剤を受け取ることと、周囲流体を前記エンジンに引き込むための圧力差を発生させるために、エンジンに受け入れられる燃料と酸化剤を燃焼させることと、a)追加燃焼のための酸化剤、またはb)反応質量の少なくとも1つとして、当該圧力差によってエンジンに引き込まれる周囲流体を使用することとにより、エンジンから反応質量を排出することによって推力を発生させる。
【0016】
少なくとも1つの実施形態では、エンジンが、外側シェルであって、この外側シェルは砂時計形状であり、そしてフロント端、スロート領域、および排気口を有し、このスロート領域はフロント端と排気口との間に設けられていて、このスロート領域は、フロント端または排気よりも小さい内側直径を持っている、外側シェルと;外側シェルのフロント端の少なくとも部分的に内側に設けられていて、フロアで終わる漏斗状のインテークと;外側シェルのフロント端の周囲を形成する周方向フロントレッジであって、周方向フロントレッジが、1つまたは複数のインジェクタポートとを備える、周方向フロントレッジと;周方向フロントレッジとスロート領域との間にある、外側シェルのフロント端で外側シェルの外側に設けられていて、少なくとも1つの点火ポートと;を備え、周方向フロントレッジが、内側エッジおよび外側エッジを備え;内側フロント壁が、周方向フロントレッジの内側エッジからフロアまで延在し;インテークが、フロアの上にスカートを形成する外側壁を備え;インテークの外側壁、内側フロント壁、およびスカートが、インテークと内側フロント壁との間に第1の周方向ギャップを形成するように構成されていて、第1の周方向ギャップが、スロートまたは排気に流体連通せず;第1の周方向ギャップが内側直径を有し、そして第1の周方向ギャップの内側直径が、第1の周方向ギャップのフロント端からスカートまで広がっていて;内側フロント壁が外側面を含み、外側シェルが内側面を備え、そして前内壁の外側面および外側シェルのフロント端の内側面が、第2の周方向ギャップを形成するように構成されていて、第2の周方向ギャップが、少なくとも1つのインジェクタポートおよび少なくとも1つの点火ポートに流体連通していて;第2の周方向ギャップが内側直径を有し、そして第2の周方向ギャップの内側直径が第2の周方向ギャップの末端で減少し、第2の周方向ギャップの末端がフロアと横方向に整列していて;第2の周方向ギャップが、スロートおよび排気に流体連通していて;インテークが、インテークのフロントエッジからフロアの前方の点まで減少し、前記点からフロアまで増加する内側直径を有し;インテークが、インテークのフロントエッジからフロアまで延在し、そしてスロート領域および排気口に流体連通する中央開口部を備え;スロート領域がフロント端を含み、そして第2の周方向ギャップの末端がスロート領域のフロント端に設けられていて;スロート領域が、排気に流体連通していて;そしてインテークの中央開口部がスロート領域のフロント端で終わっている。
【0017】
少なくとも1つの実施形態では、外側シェルは外側面を含み、外側シェルの外側面は複数の交差したリッジ部を含む。少なくとも1つの他の実施形態では、内側フロント壁は内側面を含み、内側フロント壁の内側面は複数の周方向リッジを含む。一実施形態では、第1の周方向ギャップのフロント端は大気に開放されている。
【0018】
少なくとも1つの実施形態では、周方向フロントレッジの外側エッジはある直径を有し、外側シェルはリアエッジを含み、このリアエッジは形状が円形であり、このリアエッジは外径を有し、そして外側シェルのリアエッジの外径は、フロント周方向レッジの外側エッジの直径よりも大きい。少なくとも1つの他の実施形態では、フロアは周囲を有し、このフロアの周囲は丸みを帯びた周方向外側エッジを有する球状の形状である。さらに別の実施形態では、このフロアはインテークの中央開口に向かって上向きに傾斜している。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、フロアは幅を有し、中央開口部は幅を有し、そしてインテークのフロントエッジは幅を有する。フロアの幅は、中央開口部の幅よりも大きいが、インテークのフロントエッジの幅よりも小さい。少なくとも1つの他の実施形態では、スロート領域は内側直径を有する中央部分を備え、外側シェルのリアエッジは内側直径を有し、そしてスロート領域の中央部分の内側直径は、外側シェルのリアエッジの内側直径の約0.5倍である。さらに別の実施形態では、第2の周方向ギャップの内側直径は、末端を除いて一定であり、そして末端における第2の周方向ギャップの内側直径は、末端以外の第2の周方向ギャップの内側直径の約0.38倍である。
【0020】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、添付図面の図において限定ではなく例として示され、同様の参照は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本出願で紹介するエンジンの正面斜視図である。
図2】エンジンの後方斜視図である。
図3】エンジンの正面図である。
図4】エンジンの背面図である。
図5】エンジンの側面図である。
図6図5の側面図に対応するエンジンの断面図である。
図7】エンジンの正面切り欠き斜視図である。
図8】エンジンの内部の正面斜視図である。
図9】エンジンの内部の後方斜視図である。
図10図5の側面図に対応し、寸法注釈を含むエンジンの断面図である。
【0022】
参照番号
以下の参照番号は、以下の開示において使用される:
1 エンジンのフロント端
2 エンジンのリア端
3 漏斗状のインテーク
3a インテークのフロントエッジ
3b インテークの外側壁
4 燃料/酸化剤インジェクタポート
5 周方向フロントレッジ
5a 周方向フロントレッジの内側エッジ
5b 周方向フロントレッジの外側エッジ
6 第1周方向ギャップ
7 内側フロント壁
7a 内側フロント壁の中心
8 フロア
8a フロアの丸みを帯びた外側エッジ
8b スカート
9 スロート領域
10 外側シェル
11 エンジンのリア端
12 排気口
13 取付金具
14 点火ポート
15 外側シェルのフロント端
16 第2周方向ギャップ
17 外側シェルのフロント端の周方向リッジ
18 内側フロント壁の内側面の周方向リッジ
19 外部リッジ
20 インテークの中央開口部
21 エンジンの内側部分
【発明を実施するための形態】
【0023】
この記載において、「一実施形態」、「一実施形態」などへの言及は、説明されている特定の特徴、機能、構造、または特徴が、ここで紹介する技術の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。本明細書におけるそのような語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。一方、参照される実施形態は、必ずしも相互に排他的ではない。
【0024】
本願で導入されるエンジンは、従来のロケットエンジンでも従来のジェットエンジンでもないエンジンである。何故ならば、このエンジンが搭載されるヴィークルは、燃料と酸化剤の両方を運ぶが、従来のロケットエンジンが必要とする酸化剤よりも少ない酸化剤しか必要としないからである。このエンジンは一体の材料から形成することが出来るので、エンジン本体と燃料システムの構造的完全性を検証する以外にメンテナンスをする必要は無い。本明細書で「周囲エア」が言及される場合には常に、周囲エアに代えて他の流体を使用することが出来ることに留意されたい。「周囲流体」という用語には、周囲エアが含まれるが、これに限定されることは無い。
【0025】
図1は、本願に導入される少なくともいくつかの実施形態によるエンジンの正面斜視図である。全ての図に示されているように、このエンジンは、可動部品のない一体の材料とすることが出来る。この特性自体により、このエンジンは、航空または宇宙用途で使用される他6エンジンと区別される。少なくとも1つの実施形態では、この材料は、INCONEL(登録商標)ニッケルクロム合金または他の任意の耐火超合金である。図1および2を参照すると、このエンジンは、フロント端1およびリア端2を備える。フロント端1は、このエンジンが搭載されるヴィークルの意図する進行方向に対して前方にある端部である。リア端2は、このエンジンが搭載されるヴィークルの意図する進行方向に対して後方にある端である。このエンジンのフロント端1は、漏斗状のインテーク3と、複数の燃料および酸化剤噴射ポート4とを備えている。この漏斗状のインテークは、このインテークの最も広い部分が、このエンジンのフロント端1で開口を形成するように前方に向いている。
【0026】
複数の燃料および酸化剤噴射ポート4は、エンジンのフロント端の周囲に放射状に配置されていて、そして(インテーク3の周方向フロントレッジ5とフロントエッジ3aとの間にギャップ6を有して)インテーク3のフロントエッジ3aを取り囲んでいる。複数の燃料および酸化剤噴射ポート4は、エンジンのフロント端1の周囲を形成する周方向フロントレッジ5上に設けられている。周方向フロントレッジ5の内側エッジ5aが、周方向フロントレッジ5の外側エッジ5bよりもエンジンのフロント端1にわずかに近くなるように、周方向フロントレッジ5には、下向きに角度が付けられていることが好ましい。従って、この複数の燃料および酸化剤噴射ポートは、エンジンの縦方向の中心軸に対して約45度(45°)の角度、またはエンジンの横方向の軸に対して約135度(135°)の角度を成している(図5を参照)。インテーク3のフロントエッジ3aは、インテーク3のフロントエッジ3aがエンジンの最前部となるように、周方向フロントレッジ5の内側エッジ5aの前方に延在する(図5参照)ことが、好ましい。インテーク3のフロントエッジ3a、周方向フロントレッジ5の内側エッジ5a、および周方向フロントレッジ5の外側エッジは、全て円形であることが、好ましい。
【0027】
上述したように、インテーク3のフロントエッジ3aと周方向フロントレッジ5の内側エッジ5aとの間には、第1の周方向ギャップ6が存在する。この第1の周方向ギャップ6は、インテーク3の外側壁3bと、周方向フロントレッジ5の内側エッジ5aの真下(後方)に設けられていてそして外側シェル10内にある内側フロント壁7の内側面との間に存在する。一実施態様(図示せず)では、燃焼室に伝導冷却を提供しそして燃料を予熱するために、第1の周方向ギャップ6のフロント端は、密閉されていて、そして燃料が燃焼する前に燃料を循環させる。別の実施形態では、第1の周方向ギャップ6のフロント端は、冷却を提供するために周囲エアに対して開いている。
【0028】
インテーク3の外側壁3bと内側フロント壁7とは、所定の距離、離間されていてそしてスカート8bで共に結合されている(図6参照)。内側フロント壁7は、エンジンの長手方向中心軸に対して、約45度(45°)に等しい相対的に一定の角度で、内向きに(エンジンの中心に向かって)テーパ形状に形成されているのに対し、漏斗状のインテーク3は、内側フロント壁7よりも大幅に内側にテーパ形状に形成されている。したがって、インテーク3の外側壁3bと内側フロント壁7との間の距離(すなわち、第1の周方向ギャップ6の大きさ)は、第1の周方向ギャップ6のフロント端からスカート8bに向かって増加している。フロア8は、エンジンの内側(すなわち、外側シェル10の内側)で、スロート領域9(図6参照)の一番前、そしてエンジンのフロント端1内(図6参照)に設けられている。フロア8はスカート8bの内側にある。
【0029】
このエンジンは、さらに、周方向フロントレッジ5の外側エッジ5bからエンジンのリアエッジ11にまで延在する外側シェル10を備える。リアエッジ11は、円形状でそして周方向フロントレッジ5の外側エッジ5bよりも直径が大きい。外側シェル10は、砂時計のような形状をしている:これは、周方向フロントレッジ5の外側エッジ5bからエンジンのスロート領域9(または腰部)まで内向きにテーパ状に形成されていて、次いで、排気口12まで外向きに拡大している。図示されるように、取付ブラケット13は、外側シェル10をスロート領域9とフロント端15とで(縦方向に)スパンしていることが好ましい。対向する2対の点火ポート14が、周方向フロントレッジ5の下(または後方)の外側シェル10のフロント端15に設けられている。燃料および酸化剤噴射ポート4および点火ポート14には、ねじ山が切られていて、そして燃料および/または酸化剤ホースとスパークプラグが、それぞれ、嵌まるように構成されていることが好ましい。少なくとも1つの実施形態では、5つのインジェクタポート4ごとに1つの点火ポート14が存在する。外側シェル10、インテーク3の外側壁36、および内側フロント壁7の厚さは、モジュールと引張強度の要件、および局所的な熱要件に応じて、最適化させることができる(すなわち、質量を特定の領域で追加または削減することができる)。
【0030】
内側フロント壁7の外側面と外側シェル10との間には、第2の周方向ギャップ16が存在する(図4参照)。この第2の周方向ギャップ16は、スロート領域9および排気口12に流体連通している(すなわち、開いている)が、第1の周方向ギャップ6はこれらに流体連通していない。周方向フロントレッジ5は、第2の周方向ギャップ16のフロント端を取り囲み、そして燃料および酸化剤噴射ポート4は、第2の周方向ギャップ16への燃料および/または酸化剤の噴射を可能とするように構成されている。少なくとも1つの実施形態では、外側シェル10のフロント端15の外側面は、複数の周方向リッジ17(「ハットバンディング」または「強化フープ」とも呼ばれる)を備えている;これらのリッジは、エンジンの構造的完全性に貢献している。内側フロント壁7の内側面(すなわち、漏斗状のインテーク3に面する内側フロント壁7の側)も、同じ理由から、複数の周方向リッジ18を備えていることが好ましい。
【0031】
図3および4は、それぞれ、エンジンの正面図および背面図である。図5はエンジンの側面図である。図1および2ならびに図4に図示されるように、外側シェルは、周方向フロントレッジ5の外側エッジ5bからエンジンのリアエッジ11にまで延在する外側リッジ19の交差パターンを備えていることが好ましい。これらの外部リッジ19は、エンジンに追加の構造的完全性を与える。これらは、外側シェル10のフロント端15の周方向リッジ17上にあることが好ましい。
【0032】
図6は、図5の側面図に対応する、エンジンの長手方向中心軸を通る垂直面での断面図である。インテーク3は、ある点(図6の「X」)までテーパ状に形成されていて、そしてフロア8に向かって外側に広がっている(インテーク3の外側壁3bの外側への広がりが、スカート8bを形成する)ことが好ましいことに留意されたい。少なくとも1つの実施形態では、フロアの幅(図6の「Y」)は、「X」(中央開口20の幅)よりも大きいが、フロントエッジ3aにおけるインテーク3の幅(図6では "Z" として示されている)よりも小さい。少なくとも1つの実施形態では、フロア8は平らではなく、むしろ中央開口20に向かって上向きに傾斜している。
【0033】
図7は、エンジンの正面切り欠き斜視図である。この図は、インテーク3が (フロントからリアに) 点 "X" までテーパ状に形成されていて、次でインテーク3が(再び前から後ろに) 広がっているフロア8を形成していることを示している。(テーパポイント「X」によって形成されている)インテーク3の中央開口20は、エンジンのスロート9およびエキゾースト12部分に流体連通している(すなわち開いている)(図4および6も参照)。
【0034】
図8はエンジンの内部の前方斜視図であり、図9はエンジン内部の後方斜視図である。これらの2つの図では、エンジンの内部をより良く示すために、外側シェル10および(燃料ポート4および酸化剤ポート4を有する)周方向レッジ5は、除去されている。エンジンの内部部分21は、インテーク3、内側フロント壁7およびフロア8を備えている(上述したように、インテークの外側壁3bと内側フロント壁7はスカート8bで接合されている)。第1の周方向ギャップ6は図示されているが、第2の周方向ギャップ16は、外側シェル10が除去されているので図示されていない。
【0035】
フロア8の周囲は、丸みを帯びた周方向外側エッジ8aを有する球状の形状であることが好ましいことに留意されたい。内側フロント壁7は、その中心7aで内向きにテーパ状に形成されている(図6も参照)。内側フロント壁7の中心7aと外側シェル10との間にある第2の周方向ギャップ16の部分は、環状(例えば、トロイダル)燃焼室を形成している。上述したように、フロア8は、エンジンのフロント端1のリア部とスロート領域9のフロント部とを画定している(図6参照)。したがって、エンジンの内部部分21全体は、エンジンのフロント端1内に設けられている。
【0036】
図10は、図6に示したものと同じ図であるが、エンジンの特定の寸法的特徴に関する注釈が追加されている。寸法Aは、リアエッジ11における排気口12の内側直径である。寸法Bは、スロート領域9の中央部分におけるエンジンの内側直径である。寸法Cは、インテーク3のフロア8の2つの最もリアのポイントの間の距離(図6ではYとしても記載されている)である。寸法Dは、図6でXと記載されているチョークポイントでのインテーク3の内側直径である。寸法Eは、図6でZと記載されているフロントエッジ3aでのインテーク3の内側直径である。寸法X'は、ギャップ16に存在する流体がスロート領域に入るポイントでの第2の周方向ギャップ16の内側直径である。寸法Y'は、その中心における(およびそれが寸法X'までテーパ状に形成されているギャップ16の長さのほとんどに沿う)第2の周方向ギャップ16の内側直径である。
【0037】
少なくとも1つの実施形態では、図10に示される寸法を参照すると、寸法Bは、寸法Aの約2分の1(0.5)である。寸法Cは、寸法Aの約0.4であり、そして寸法Bの約0.8である。
【0038】
寸法Dは、寸法Aの約0.1、寸法Bの約0.2、そして寸法Cの約0.25である。寸法Eは、寸法Dの5倍(5.0)であることが好ましい。少なくとも1つの実施形態では、Y'に対するX'の比率は、0.38である。前述の寸法は、最大の燃料効率と推力を提供するために最適化されている。
【0039】
流体力学の当業者には明らかであるように、本発明は、流体の流速の増加が圧力の減少をもたらすと言うベルヌーイの原理を利用して設計されている。この原理は、本開示の文脈では、寸法X’および寸法Cの両方に適用される。これらは、流体が、圧縮され、次いでより大きな容積の領域に放出され、これによってベンチュリ効果が生じる、エンジンの構造内の2つの場所である。本明細書に開示されるエンジンでは、1つは、トロイダル燃焼室16が流体をスロート領域9に排出する場所で、もう1つは、インテーク3が流体をスロート領域9に排出する場所で、2つの真空が生成される。このエンジンは、これらの真空の両方が、スロート領域のフロント端で発生し、そして横方向に互いに整列するように設計されている (図6を参照)。外気も、ベルヌーイ効果の原理に従って部分的に取り込まれ、これにより一次燃焼室からこの領域に渡された未燃焼燃料の混合が完了する。
【0040】
作動中、推進剤(燃料および酸化剤)は、トロイダル燃焼室(すなわち、第2の周方向ギャップ16)に噴射され、寸法X’で圧搾され、次いで相対的に高速でトロイダル燃焼室からスロート領域9(これは、副燃焼室として機能する)に排出される。流体は、この時点で最高速度 (そして最低圧力) にあるので、これによりインテーク3の中心を通って燃料リッチの高速燃焼ストリームと混合されるスロート領域9に周囲流体を引き込む真空が生成される。流体温度はトロイダル燃焼室16内で最高になる。ここで初期燃焼が発生し、そしてトロイダル燃焼室16からの火炎はスロート領域9に入り、そして排気口12の中心を通る。相対的に低温の周囲エアが、インテーク3から入り、そしてスロート領域9で高温のエアと混合して、初期燃焼から燃料リッチ燃焼ストリームの燃焼が完了する。
【0041】
燃焼は、インジェクタポート4からの燃料が酸化されるトロイダル燃焼室(一次燃焼室である第2の周方向ギャップ16)と、インテーク3からの周囲エアがトロイダル燃焼室からの高温ガスと混合されるスロート領域9(二次燃焼室) とで発生する。周囲流体が反応質量として使用されるのは二次燃焼室である。もし周囲流体に酸化剤が含まれている場合、これは完全燃焼に使用される。そうでない場合、これは単に自由な反応質量として機能する。二次燃焼室は、図10でZ'として示されている。エンジンは周囲流体を反応質量として使用するため、本発明のエンジンを装備したロケットヴィークルは、従来のロケットヴィークルよりも運ぶ必要の酸化剤が少なくて済む。簡単に言えば、従来のロケットヴィークルが、必要な燃料と酸化剤を全て運ぶのに対し、従来のジェットヴィークルは、必要な燃料は全て運ぶが、(酸化剤として周囲のエアを使用するので)酸化剤は運ばない。本発明のエンジンは、従来のロケットエンジンでも従来のジェットエンジンでもない。何故ならば、このエンジンを搭載するヴィークルは、燃料と酸化剤の両方を搭載しているが、従来のロケットエンジンよりも必要な酸化剤が少なくて済む。本明細書で「周囲エア」に言及する場合は常に、他の流体を周囲エアに置き換えても良いことに留意されたい。「周囲流体」という用語は、周囲エアを含むが、これに限定されることはない。
【0042】
エンジンに受け入れられる燃料と酸化剤を燃焼させることにより、周囲流体を、エンジンに引き込み、そしてa)追加の燃焼用の酸化剤、またはb)反応質量の少なくとも1つとしてエンジン内で使用させる圧力差を生成し、エンジン内の可動部品を使用せずにシェルから反応質量を排出することにより、インテーク3、(一次燃焼室とも呼ばれる周方向ギャップ16である)トロイダル燃焼室、および(二次燃焼室とも呼ばれる)スロート領域9は、それらの形状および相対的なサイズおよび配置により、推力を発生させる「推力発生手段」を集合的に形成する。
【0043】
エンジンの少なくとも1つの実施形態が示されそして説明されて来たが、当業者には、本発明から逸脱することなく、そのより広い態様において多くの変更および修正を行うことができることは、明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内にあるような全ての変更および修正をカバーすることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】