(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ミトコンドリア標的イソケタール/イソレブグランジンスカベンジャー及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 229/16 20060101AFI20230316BHJP
C07D 213/20 20060101ALI20230316BHJP
A61K 31/66 20060101ALI20230316BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20230316BHJP
A61K 31/222 20060101ALI20230316BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20230316BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230316BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230316BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230316BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230316BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230316BHJP
C07F 9/54 20060101ALI20230316BHJP
C07C 229/34 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C07C229/16
C07D213/20 CSP
A61K31/66
A61K31/216
A61K31/222
A61K31/4425
A61P29/00
A61P43/00 107
A61P39/06
A61P9/12
A61P9/00
C07F9/54
C07C229/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545909
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 US2021015322
(87)【国際公開番号】W WO2021154877
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511183973
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】305 Kirkland Hall,2201 West End Avenue,Nashville, Tennessee 37240, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ディカロフ,セルゲイ アイ.
(72)【発明者】
【氏名】アマーナス,ベンカタラマン
【テーマコード(参考)】
4C055
4C086
4C206
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4C055AA10
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC17
4C086DA34
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZB11
4C086ZB22
4C206DA34
4C206FA11
4C206FA51
4C206KA01
4C206KA14
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZB11
4C206ZB22
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006AB22
4H006AB23
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BT12
4H006BU38
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
4H050AB22
4H050AB23
(57)【要約】
イソレブグランジンのスカベンジャーとしての新規な2-ヒドロキシベンジルアミン誘導体の使用
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】
(式中:
Xは、結合手、アルキル、アルコキシ、メトキシ、-O-又は-CH
2-であり、
各Rは、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択され、
Aは、
【化2】
であり、
各R
1は、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択される)
の化合物であって、場合により対イオンを含む化合物、並びにその立体異性体及び薬学的塩。
【請求項2】
以下の式:
【化3】
(式中:
Xは、結合手、アルキル、-O-又は-CH
2-であり、
Rは、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルである)
の請求項1に記載の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的塩。
【請求項3】
以下の式:
【化4】
(式中:
Rは、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルである)
の請求項1に記載の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的塩。
【請求項4】
以下の式:
【化5】
(式中:
R
1は、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルである)
の請求項1に記載の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的塩。
【請求項5】
以下の式:
【化6】
(式中:
R
1は、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルである)
の請求項1に記載の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的塩。
【請求項6】
以下の式:
【化7】
(式中:
Xは、結合手、-O-又は-CH
2-であり、
Rは、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルであり、
R
1は、C
1からC
12の置換若しくは非置換アルキル又はアセトキシメチルである)
の請求項1に記載の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩。
【請求項7】
以下の式:
【化8】
(式中:
各Rは、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択され、
各R
1は、独立してC
1からC
12までの置換若しくは非置換アルキル又はアセトキシメチルから選択される)
の請求項1に記載の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩。
【請求項8】
以下の式:
【化9】
(式中:
Rは、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルであり、R
2は、-P-Ph
3又は
【化10】
から選択される)
の請求項1に記載の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩。
【請求項9】
以下の式:
【化11-1】
【化11-2】
の請求項1に記載の化合物、及びその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
以下の式:
【化12】
の請求項1に記載の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩。
【請求項11】
対イオンを場合によってさらに含む、請求項1、2、3、8、9又は10の1項に記載の化合物。
【請求項12】
以下の式:
【化13】
(式中:
Xは、結合手、アルキル、アルコキシ、メトキシ、-O-又は-CH
2-であり、
各Rは、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択され、
Aは、
【化14】
であり、
各R
1は、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択される)
の化合物であって、場合によって対イオンを含む化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩と、
薬学的に許容されるキャリアと
を含む組成物。
【請求項13】
請求項1~12の1項に記載の化合物と、薬学的に許容されるキャリアとを含む組成物。
【請求項14】
請求項1~10の1項に記載の化合物、又は請求項12に記載の組成物の治療有効量を、ヒト又は動物対象に投与すること
を含む、対象を処置する方法。
【請求項15】
請求項1~10の1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量と、薬学的キャリアとを対象に投与することを含む、対象における炎症を処置、防止及び改善する方法。
【請求項16】
請求項1~10の1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量と、薬学的キャリアとを対象に投与することを含む、対象におけるミトコンドリア機能障害を処置、防止及び改善する方法。
【請求項17】
請求項1~10の1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量と、薬学的キャリアとを対象に投与することを含む、対象における酸化ストレスを処置、防止及び改善する方法。
【請求項18】
請求項1~10の1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量と、薬学的キャリアとを対象に投与することを含む、対象における高血圧症を処置、防止及び改善する方法。
【請求項19】
請求項1~10の1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量と、薬学的キャリアとを対象に投与することを含む、対象におけるSirt3不活化を処置、防止及び改善する方法。
【請求項20】
請求項1~10の1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量と、薬学的キャリアとを対象に投与することを含む、対象における血管機能障害を処置、防止及び改善する方法。
【請求項21】
炎症、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレス、高血圧症、Sirt3不活化又は血管機能障害の少なくとも1つを処置するための、請求項1~10の1項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
[0001]
本発明は、米国国立衛生研究所より授与されたR01HL124116、P01HL129941、K23GM129662、R01GM112871及びRO1HL144943の下での米国政府の支援により行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景及び要旨
[0002]
本出願は、新規な化合物及び組成物、並びにそれらの使用に関する。本発明の化合物は、疾患及び状態、例えば炎症、敗血症、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレス及び高血圧症の処置において有用であることが見出されている。
【背景技術】
【0003】
[0003]
炎症は、西洋社会において病的状態及び死亡の主な原因である。複数の薬物の使用にもかかわらず、慢性及び急性の炎症はともに、いまだに主要な健康上の負担である。炎症は、反応性が高いジカルボニル脂質過酸化生成物、例えばイソレブグランジンを生成し、これらは、タンパク質を共有結合により修飾し、リジン残基を介して架橋する。ミトコンドリア機能障害は、炎症とも関連付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]
本発明者らは、炎症により誘発されるイソレブグランジンが、ミトコンドリア機能障害及び死亡に寄与することを見出した。本発明者らは、(a)合成15-E2-イソレブグランジン(IsoLG)及びその付加物に応答するミトコンドリア機能障害について調査し、(b)2-ヒドロキシベンジルアミンを親油性カチオントリフェニルホスホニウムである(4-(4-アミノメチル)-3-ヒドロキシフェノキシ)ブチル)-トリフェニルホスホニウムにコンジュゲートすることを含んで、イソレブグランジンの新規なミトコンドリア標的スカベンジャー(mito2HOBA)を開発し、(c)炎症のリポ多糖モデルを用いて、mito2HOBAを含む本発明の化合物がミトコンドリア機能障害及び死亡から防御することを見出した。
【0005】
[0005]
IsoLG、又はリジン、エタノールアミン若しくはホスファチジルエタノールアミンとのIsoLG付加物のいずれかへの急性曝露は、ミトコンドリア呼吸を阻害し、複合体I活性を減弱させる。複合体II機能は、IsoLGに対する耐性が遥かにより高かった。本発明者らは、mito2HOBAを含む本発明の化合物が、単離ミトコンドリア内に著しく蓄積し、IsoLGと反応性が高いことを確認した。
【0006】
[0006]
ミトコンドリアIsoLGの役割を試験するために、本発明者らは、敗血症のリポ多糖マウスモデルにおける本発明の化合物の治療能を研究した。例えば、リポ多糖処置マウスに対して飲用水中のmito2HOBA(0.1 g/L)を補充すると、生存が3倍に増加し、複合体I媒介呼吸が改善され、病理組織学的分析は、細胞傷害からの腎皮質のmito2HOBA媒介防御を支持した。これらのデータは、ミトコンドリア機能障害及び炎症におけるミトコンドリアIsoLGの役割を支持する。よって、本発明者らは、ミトコンドリアIsoLGの低減が、ミトコンドリア性酸化ストレス及び機能障害に関連する炎症及び病的状態における治療標的であることを確認できた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]
よって、本発明の観点は、ミトコンドリア呼吸を阻害し、複合体I活性を減弱させるイソレブグランジン及びそれらの付加物を含む;トリフェニルホスホニウムにコンジュゲートした2-ヒドロキシベンジルアミンであるmito2HOBAを含む本発明の化合物は、ミトコンドリアに蓄積する;飲用水中のmito2HOBAは敗血症のLPSモデルにおける複合体I媒介呼吸を改善する;イソレブグランジンのミトコンドリア標的スカベンジャーであるmito2HOBAはLPSモデルにおける死亡を低減させる。
【0008】
[0008]
同様に、高血圧症は、いまだに、西洋社会における主要な健康問題であり、血圧は、複数の薬物の使用にもかかわらず、三分の一の患者においてほとんど管理されていない。ミトコンドリア機能障害は高血圧症に寄与し、ミトコンドリア標的薬剤は高血圧症の処置を改善する可能性がある。本発明者らは、ミトコンドリア酸化ストレスが、反応性ジカルボニル脂質過酸化生成物であるイソレブグランジン(isoLG)を生成し、ミトコンドリアisoLGの除去が血管機能を改善し、高血圧症を低減することを示す。この仮説を検証するために、我々は、本態性高血圧症の患者及び高血圧症のアンジオテンシンIIモデルにおいて、質量分析及びウェスタンブロット分析を用いて、ミトコンドリアisoLG-タンパク質付加物の蓄積を研究した。ミトコンドリアisoLGを標的することの治療可能性は、新規なミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーであるmito2HOBAにより試験した。高血圧患者の細動脈におけるミトコンドリアisoLGは、正常血圧対象の細動脈におけるよりも250%高く、高血圧対象の細動脈のエクスビボmito2HOBA処置は、鍵となるミトコンドリア抗酸化剤、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)の脱アセチル化を増加させた。アンジオテンシンII+TNFαで刺激したヒト大動脈内皮細胞において、mito2HOBAは、ミトコンドリアのスーパーオキシド、及びミトコンドリア酸化ストレスの特異的マーカーであるカルジオリピン酸化を低減した。アンジオテンシンII注入マウスにおいて、mito2HOBAは、ミトコンドリアisoLG-タンパク質付加物を減らし、Sirt3ミトコンドリア脱アセチル化酵素活性を上昇させ、血管スーパーオキシドを低減し、内皮一酸化窒素を増加させ、内皮依存性弛緩を改善し、高血圧症を減じた。Mito2HOBAは、アンジオテンシンII注入マウスにおいてミトコンドリア呼吸を保存し、ATP生成を防御し、ミトコンドリア透過性孔開放を低減した。これらのデータは、内皮機能障害及び高血圧症におけるミトコンドリアisoLGの役割を支持する。本発明者らは、ミトコンドリアisoLGの除去が、血管機能障害及び高血圧症の処置において治療上の利益を有することを見出した。
【0009】
[0009]
最近のガイドラインにより、ほぼ半数の成人が高血圧症を有し、世界で推定14億人が高血圧症を有する。この疾患は、脳卒中、心筋梗塞及び心不全の主要なリスクファクターである。複数の薬物での処置にもかかわらず、3分の1の高血圧の患者が、おそらく現在の処置により影響されない機構のために、高血圧のままである。高血圧症の処置を改善できる新しいクラスの抗高血圧剤が長く必要とされてきた。高血圧症は、多因子障害であり、酸化ストレスは、高血圧症における複数の器官で増加する。酸化ストレスは、交感神経流出を増加し、腎臓機能障害を促進し、全身血管抵抗を増加することにより、高血圧症に寄与する。一方、一般的な抗酸化剤、例えばアスコルベート及びビタミンEは、循環器疾患及び高血圧症の処置において効果がなく、いくつかの研究においては、転帰を悪化させている。内因性酵素抗酸化剤は、低分子量抗酸化剤と比べて酸化ストレスに対してより効果的であるが、これらの内因性抗酸化剤は、高血圧症において不活化され得る。本態性高血圧症は、ミトコンドリア脱アセチル化酵素サーチュイン3(Sirt3)の活性低減による触媒中心のリジン残基のアセチル化により、鍵となるミトコンドリア抗酸化剤であるスーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)の不活化に関連づけられているが、Sirt3不活化の正確な機構及びSOD2阻害の分子的な結果は、わかっていない。
【0010】
[0010]
1つの可能性のある機構は、脂質過酸化、特にミトコンドリアイソレブグランジン(isoLG)の形成を含む。IsoLGは、反応性が高く、有害なジカルボニル脂質過酸化生成物である。これらは、酸化種、例えばスーパーオキシドのプロトン化された形であるヒドロペルオキシルラジカルによるアラキドン酸の過酸化により生成される。IsoLGは、一級アミン、例えばタンパク質のリジン残基に迅速に付加して、細胞機能障害を促進する。樹状細胞では、isoLGは、自己タンパク質の修飾を促進し、これは、適応免疫応答を駆動するネオ抗原として働くことができる。isoLGスカベンジャーである2-ヒドロキシベンジルアミン(2HOBA)での処置は、樹状細胞及びT細胞活性化を低減し、アンジオテンシンII及びDOCA塩により誘導される高血圧症を減じる。注目すべきことに、2HOBAは、抗酸化剤ではないが、反応性isoLGを除去し、樹状細胞活性化を減少させることにより、樹状細胞におけるスーパーオキシドの生成を低減する。しかし、isoLGの特異的供給源及び標的は、まだわかっていない。isoLGの病態生理学的役割は、樹状細胞に限定されない。なぜなら、isoLGは、血管組織、内皮、上皮及びその他の細胞において生成できるからである。高血圧症は、ミトコンドリア酸化ストレスに関連し、ミトコンドリアは、isoLGの可能性のある供給源であるが、高血圧症におけるミトコンドリアisoLGの役割は、まだ研究されていない。本発明者らは、ミトコンドリアisoLGが、高血圧症においてSirt3不活化及びミトコンドリア機能障害に寄与し得ることを示す。
【0011】
[0011]
ボーラスでisoLGを用いる単離ミトコンドリアの処置は、ミトコンドリア呼吸を乱し、ミトコンドリア膜透過性転移孔(mPTP)の開放を促進する。ミトコンドリア内isoLGのインビボでの具体的な役割を研究するために、本発明者らは、ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBAを、2HOBAを親油性カチオントリフェニルホスホニウムにコンジュゲートすることにより開発した。Mito2HOBAは、活性酸素種を除去しない。理論にも機構のも拘束されないが、Mito2HOBAは、異なるガンマ-ケトアルデヒドと反応できるが、特にisoLGと反応性がある。Mito2HOBAは、ミトコンドリアに蓄積し、敗血症のリポ多糖マウスモデルにおけるmito2HOBA補充は、動物の生存を3倍増加し、複合体I媒介呼吸を増加し、腎皮質損傷を妨げ、ミトコンドリア機能障害におけるミトコンドリアisoLGの役割を支持する。
【0012】
[0012]
ミトコンドリア機能障害は、高血圧症及び循環器疾患の病因に寄与する。しかし、ヒトの健康及び疾患におけるミトコンドリアの中心的な役割にもかかわらず、ミトコンドリアを直接標的する承認医薬は存在しない。ミトコンドリア機能障害は、細胞機能障害及びアポトーシスを導くATPレベルの低減及び酸化ストレスの増加を特徴とする。ミトコンドリア膜透過性転移孔(mPTP)の開放は、高血圧症におけるミトコンドリア機能障害及び末端器官損傷において鍵となる役割を演じる。本発明者らは、mPTP開放の調節サブユニットであるシクロフィリンD(CypD)の枯渇又は阻害が、血管機能を改善し、高血圧症を減じることを見出した。興味深いことに、リジン166でのCypDアセチル化は、mPTP開放を促進し、ミトコンドリアSirt3がCypD-K166を脱アセチル化する。
【0013】
[0013]
Sirt3は、代謝及び抗酸化ミトコンドリア機能の調節の鍵となる中心点(節)である。Sirt3の枯渇は、内皮機能障害、血管肥厚、血管炎症及び末端器官損傷を促進する。臨床研究は、循環器疾患リスクファクターが、Sirt3レベル及び活性の低減と関連することを示す。本発明者らは、Sirt3減損が、主要な心血管リスクファクターの相互作用の根底にある、新しい収束性の機構であることを発見した。本発明者らは、ミトコンドリアisoLGがSirt3を不活化し、ミトコンドリアisoLGの除去が、Sirt3活性を防御し、血管機能を改善し、高血圧症を低減することを見出した。
【0014】
[0014]
本明細書で用いる略語は、以下を含む:IsoLG、イソレブグランジン(すなわちイソケタール);PE、ホスファチジルエタノールアミン;15-E2-IsoLG、イソレブグランジンの15-E2立体異性体;15-E2-IsoLG-PE、PEと15-E2-IsoLG立体異性体との付加物;2HOBA、2-ヒドロキシベンジルアミン;4HOBA、2HOBAの非スカベンジャーアナログ、4-ヒドロキシベンジルアミン;mito2HOBA、2-ヒドロキシベンジルアミンと親油性カチオントリフェニルホスホニウムとのコンジュゲート、(4-(4-アミノメチル)-3-ヒドロキシフェノキシ)ブチル)-トリフェニルホスホニウム;mitoTEMPO、(2-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル-4-イルアミノ)-2-オキソエチル) トリフェニルホスホニウム;mPTP、ミトコンドリア膜透過性転移孔;PUFA、多価不飽和脂肪酸;ROS、活性酸素種;LPS、リポ多糖;WT、野生型C57BL/6Jマウス;SMP、サブミトコンドリア粒子。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1A~1Cは、IsoLG又はIsoLG-PEでの急性処置がミトコンドリア呼吸を損なうことを示す。(A)インタクトなマウス腎臓ミトコンドリアを、ビヒクルとしてのエタノール(シャム)、IsoLG (20μM)又はIsoLG-PE (20μM)とインキュベート(5分)し、次いで、呼吸緩衝液で20倍に希釈した後に、グルタメート及びマラート、ADP (50μM)を加え、状態IIIでの酸素消費を測定した。*シャムに対してP<0.001、**IsoLGに対してP<0.03。(B)複合体I基質であるグルタメート+マラート及びADPの存在下(状態III)での酸素消費、並びに呼吸チャンバにおいてビヒクル、IsoLG (1.5μM)又はIsoLG-PE (1.5μM)で処置したインタクト腎臓ミトコンドリアにおける呼吸調節比(状態III/状態IV、%)。(C)呼吸チャンバにおいてビヒクル、IsoLG (1.5μM)又はIsoLG-PE (1.5μM)の添加後の、複合体II基質であるスクシネート及びADPの存在下での状態III呼吸及び呼吸調節比(状態III/状態IV、%)。データは、平均±STD (N=4~6)として表す。*ビヒクルに対してP<0.01。
【
図2】
図2は、IsoLG及びIsoLG-付加物による複合体I及び複合体II活性阻害を示す。(A、B)マウス腎臓ミトコンドリア溶解物を、DMSO(ビヒクル)又はIsoLGと5分間インキュベートした後に、以前に記載されたようにして複合体I又は複合体II活性を分析した[29、30]。*シャムに対してP<0.01。**シャムに対してP<0.05。(C)マウス腎臓ミトコンドリア溶解物を、DMSO (対照)、エタノールアミン、スペルミン、L-リジン、IsoLG (1.5μM)又はIsoLG修飾-エタノールアミン(IsoLG-ETN、1.5μM)、-スペルミン (IsoLG-Sper、1.5μM)、L-リジン (IsoLG-Lys、1.5μM)、-ホスファチジルエタノールアミン(IsoLG-PE、1.5μM)で急性処置した後に、対照(100%)の%で表す複合体I活性を測定した。データは、平均±STD (N=3~6)として表す。*シャムに対してP<0.001、#IsoLGに対してP<0.01。
【
図3】
図3は、IsoLGスカベンジャーmito2HOBAのミトコンドリアターゲティングを示す。2-ヒドロキシベンジルアミンを親油性カチオントリフェニルホスホニウムに連結することにより、mito2HOBAはミトコンドリアを指向する。なぜなら、その膜電位は、細胞内の他のオルガネラよりかなり高く、このことにより、ミトコンドリア内での選択的な蓄積が導かれるからである。炎症及び酸化ストレスは、アラキドン酸を反応性IsoLGに酸化し、これが、タンパク質のリジン残基及びホスファチジルエタノールアミンと迅速に反応して、細胞傷害性のIsoLG付加物を生み出す。単離ミトコンドリア(1 mg/ml)とのmito2HOBA (0.1μM)のインキュベーションは、ミトコンドリア画分におけるmito2HOBAの豊富な蓄積を引き起こす。データは、平均±STD (N=4)として表す。ミトコンドリア標的mito2HOBAは、ミトコンドリアマトリックスにおいてIsoLGを除去することにより、ミトコンドリア機能障害を低減できる可能性がある。
【
図4】
図4は、対照シャム、mito2HOBA補充、LPS処置、LPS+mito2HOBAマウスから単離した腎臓ミトコンドリアの呼吸を示す。ミトコンドリア機能を研究するために、グルタメート及びマラート(GM)の組み合わせ又はスクシネートを基質として用いた。グルタメートは、アミノ酸転移によりα-ケトグルタレート、さらにはスクシネートに変換され得るので、本発明者らは、複合体II阻害剤であるマロネートを用いて、特異的複合体I呼吸を定義した。基礎呼吸(1)を、呼吸基質を補充したミトコンドリアにおいて測定した。次いで、ADPを加えて、共役呼吸(2)を測定した。複合体V阻害剤オリゴマイシンAの添加の後に、プロトン漏出(3)を決定した。CCCPを補充した後に、非共役呼吸(4)を測定した。最後に、アンチマイシンA+ロテノンを加えて、非ミトコンドリア呼吸(5)を、以前に記載されたようにして評価した[32]。データは、平均±STD (n=4~6)である。*GMに対してP<0.001、#対照に対してP<0.01、§対照に対してP<0.001、**LPSに対してP<0.01。
【
図5】
図5は、対照、mito2HOBA補充、及びLPS処置マウスにおける動物生存(A)、複合体I/複合体II活性比(B)及び(C)病理組織学的スコアを示す。3月齢C57BL/6Jマウス(25~28 g)に、mito2HOBA (飲用水、0.1 g/L)を補充した72時間後に、LPSを注射した(25μg/g)。複合体I/複合体II活性比は、対照(100%)と比較した%として表す。(C)腎傷害の病理組織学的スコアは、方法のセクションに記載する。細胞傷害の定量分析は、mito2HOBAでの処置が、LPS単独での処置と比較して、細胞傷害の有意な低減を導くことを示す。データは、平均±STDであり、* LPS (n=6)に対してP<0.01、* LPS (n=10)に対してP<0.01。
【
図6】
図6A~Hは、対照、mito2HOBA補充、LPS注射、及びLPS+mito2HOBA処置マウスの腎臓における細胞傷害の組織学的分析を示す。対照マウスの代表的切片は、皮質(A)及び髄質(B)における正常な糸球体(g)、近位尿細管(P)、及び遠位尿細管(*)を示す。mito2HOBA単独で処置したマウスの腎臓切片(C及びD)は、対照マウスのものと非常によく似ていた。ほとんどの尿細管は正常であるように見られるが、髄質(D)における少数の近位尿細管細胞は、細胞質空胞化のわずかな証拠を示した。皮質(C)における傷害の証拠はなかった。対照的に、LPSで処置したマウスの腎臓切片は、皮質(E)及び髄質(F)において、空胞化及び細胞変性(矢印)を示す。髄質において、多数の近位尿細管細胞は、塩基好性(矢じり)に染色され、このことは、細胞内代謝の変化を示唆する。遠位尿細管(*)は、正常であるように見られる。マウスをLPS及びmito2HOBAで処置した場合、細胞傷害は髄質(H)で検出されたが、皮質(G)は正常であるように見られた。全体的な傷害は、LPSで処置したマウスのものと比較して大きく低減された。髄質において、細胞質変性の小さい領域(矢印)及び塩基好性染色(矢じり)が明らかであった。スケールバー=50μm。
【
図7】
図7A及び7Bは、(A)本発明のミトコンドリア標的化合物の一例の合成と、(B)この化合物がIsoLGの効果的なスカベンジャーであることを示す。
【
図8】
図8A~Dは、(A)正常血圧及び高血圧の対象からのヒト細動脈(n=5)におけるミトコンドリアisoLGのウェスタンブロット、(B)ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBAOの開発、(C、D)正常血圧及び高血圧の対象から単離し、エクスビボでmito2HOBA (0.5μM、24時間、DMEM)と処理したヒト細動脈におけるSOD2アセチル化を示す。データは、複合体Iレベル(シャムが100%である)により規格化した。データは、平均±SEMである。*正常血圧のシャムに対してP<0.01、**高血圧に対してP<0.01 (n=5)。
【
図9】
図9A及びBは、アンジオテンシンII+TNFαにより誘導されたヒト大動脈内皮細胞におけるミトコンドリアスーパーオキシド及びカルジオリピン酸化に対するmito2HOBAの影響を示す。(A)ミトコンドリアスーパーオキシドを、mitoSOX-スーパーオキシド特異的生成物であるmito-2-ヒドロキシエチジウム(Mito-2OH-Et+)のHPLC分析により測定した。Mito2HOBA (50 nM)は、ミトコンドリアスーパーオキシドの刺激を無効にしたが、同様の用量の非標的isoLGスカベンジャー2HOBA (50 nM)又は高い用量のisoLG-不活性アナログ4HOBA (10μM)は、防御しない。*対照に対してP<0.01、**アンジオテンシンII+TNFαに対してP<0.001。(B)カルジオリピン酸化は、アンジオテンシンII+TNFαにより誘導され、LC/MSにより測定された。カルジオリピン酸化は、mito2HOBA (50 nM)により著しく減じられたが、非標的2HOBA (10μM)は、効果的でない。補足
図S1は、代表的なクロマトグラムを示す。データは、平均±SEMである。*対照に対してP<0.01、**アンジオテンシンII+TNFαに対してP<0.01 (n=4)。
【
図10】
図10A~Dは、アンジオテンシンIIにより誘導された高血圧症及びミトコンドリアisoLGタンパク質付加物の蓄積に対するmito2HOBAの影響を示す。(A) 飲用水中のmito2HOBA (0.1 g/L)又は等モル量の非標的アナログ2HOBA (0.17 mmol/L)を補充されたシャム又はアンジオテンシンII-注入雄性マウスにおける血圧テールカフ測定。(B) mito2HOBA又はビヒクルとして淡水を補充されたアンジオテンシンII-注入マウスにおける血圧の遠隔測定。(C)isoLG-リジル-ラクタム付加物の代表的なLC/MS/MSクロマトグラム。(D)mito2HOBAを補充されたシャム又はアンジオテンシンII-注入マウスから単離した腎臓ミトコンドリアにおけるisoLG-Lys-ラクタムのレベル。結果は、平均±SEMである。*シャムに対してP<0.01、** Ang IIに対してP<0.01 (n=8)。
【
図11】
図11A~Dは、シャム及びmito2HOBAで処置したアンジオテンシンII-注入マウスから単離した大動脈におけるミトコンドリアアセチル化のウェスタンブロット分析を示す。(A)代表的なウェスタンブロット isoLG-タンパク質付加物(D11 ab)、Sirt3、アセチル-リジン、SOD2-K68-アセチル化、CypDアセチル化、複合体I NDUFS1 75 KDaサブユニットとのisoLG付加物、及びミトコンドリア複合体I;(B)Sirt3レベル;(C)ミトコンドリアタンパク質リジンアセチル化;(D)SOD2-K68-アセチルレベル;並びに(E)CypD-アセチルレベル。飲用水中のmito2HOBA (m2H) (0.1 g/L)及びアンジオテンシンII (浸透圧ポンプ、0.7 mg/kg/日)を14日間補充されたマウス。データは、複合体Iレベル(シャムが100%である)で規格化した。結果は、平均±SEM (n=5)である。*シャムに対してP<0.01、**アンジオテンシンII (Ang II)に対してP<0.01。
【
図12】
図12A~Dは、アンジオテンシンII-注入マウスにおける、ミトコンドリアスーパーオキシド(A)、血管スーパーオキシド(B)、内皮一酸化窒素(C)及び内皮依存性弛緩(D)に対するmito2HOBA補充の影響を示す。ミトコンドリア及び血管O2・は、ミトコンドリア標的スーパーオキシドプローブmitoSOX (1μM)又は非標的スーパーオキシドプローブDHE (50μM)により、HPLCを用いて測定した。46 内皮一酸化窒素を、NOスピントラップFe(DETC)2及びESRにより分析した。47 C57Bl/6Jマウスに、Ang IIを注入し、mito2HOBAを飲用水中で与えた(0.1 g/L)。補足
図S2は、代表的なHPLCクロマトグラムを示す。補足
図S3は、一酸化窒素測定の代表的なESRスペクトルを示す。結果は、平均±SEMである。*シャムに対してP<0.01、**Ang IIに対してP<0.01 (n=6)。
【
図13】
図13A~Bは、mito2HOBAがmPTP開放を低減し、ミトコンドリア機能障害を妨げることを示す。C57Bl/6Jマウスに、Ang II (0.7 mg/kg/ml)及びmito2HOBAを飲用水中(0.1 g/L)で注入した。Ang II注入の14日後に、動物を犠牲にし、ミトコンドリア研究のために腎臓を単離した。Ca2+保持能力を超えてCaCl
2をミトコンドリアに加えることにより、mPTP開放及びミトコンドリア膨化が導かれた。71Ang II-注入マウスから単離されたミトコンドリアは、mPTP開放が増えたためにCa2+保持能力が著しく低減し、CypD阻害剤シクロスポリンA(CsA)は、Ca2+保持能力をレスキューした(A)。呼吸調節比(状態3/状態4)を、グルタメート及びマラートを用いて単離腎臓ミトコンドリアにおいて測定した(B)。対照レベルは、100%である。(C)腎臓ATPを、新たに単離した組織において、ルシフェラーゼに基づく発光アッセイにより測定した。72 結果は、平均±SEMである。*シャムに対してP<0.01、**アンジオテンシンIIに対してP<0.01 (n=5)。
【
図14】
図14は、高血圧症がSirt3不活化と連関し、Sirt3不活化が、ミトコンドリアタンパク質、例えばシクロフィリンD (CypD)及びミトコンドリアスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)の過剰アセチル化を導くことを示す。CypDアセチル化は、mPTP開放を刺激し、mPTP開放が、ミトコンドリアスーパーオキシドの生成を増加させるが、SOD2アセチル化は、SOD2を不活化する。このことは、増加したスーパーオキシド生成と減弱したスーパーオキシドジスムターゼ活性との間の不均衡をもたらし、ミトコンドリア酸化ストレス、及びミトコンドリアにおける多価不飽和脂肪酸(PUFA)の反応性ガンマ-ケトアルデヒドであるイソレブグランジン(isoLG)への酸化を導く。ミトコンドリアisoLGは、血管及びミトコンドリアの機能障害を促進するが、ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBAでの処置は、Sirt3不活化を低減し、ミトコンドリア及び血管の機能を改善し、高血圧症を減じる。本発明は、ミトコンドリアisoLGを標的することが、Sirt3不活化を妨げ、ヒト対象における血管機能障害の処置を改善できることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0029]
本発明は、以下の本発明の詳細な説明及びそこに含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解できる。
【0017】
[0030]
本発明の化合物、組成物、物品、系、装置及び/又は方法を開示及び記載する前に、これらは、そうでないと記載しない限り特定の合成方法、又はそうでないと記載しない限り特定の試薬に限定されず、それ自体は、もちろん変動することがあると理解される。本明細書で用いる術語は、特定の観点を記載する目的のためだけであり、限定することを意図しないことも理解される。本明細書に記載するものと類似又は等価な任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験において用いることができるが、例示的な方法及び材料を以下に記載する。
【0018】
[0031]
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないと指図しない限り、複数形の言及を含む。よって、例えば、「官能基」、「アルキル」又は「残基」への言及は、2種以上のそのような官能基、アルキル又は残基の混合物を含む、などである。
【0019】
[0032]
範囲は、本明細書において、「約」或る特定の値から及び/又は「約」別の値までと表現し得る。このような範囲を表現する場合、さらなる態様は、1つの特定の値から及び/又は別の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を用いることにより近似として値を表現する場合、特定の値がさらなる観点を形成することが理解される。さらに、各範囲の終点が他方の終点との関係において及び他方の終点とは独立して重要であることも理解される。また、本明細書に開示するいくつかの値があり、各値は、その値自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示されるならば、「約10」も開示される。2つの特定の単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10及び15が開示されるならば、11、12、13及び14も開示される。
【0020】
[0033]
本明細書で用いる場合、用語「場合による」又は「場合によって」は、その後に記載される事象又は状況が、生じるか又は生じないことがあり、その記載が、前記事象又は状況が生じる場合と、生じない場合とを含むことを意味する。
【0021】
[0034]
本明細書で用いる場合、用語「対象」は、投与の標的のことをいう。本明細書に開示する方法の対象は、脊椎動物、例えば哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類又は両生類であり得る。よって、本明細書に開示する方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット又はげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢又は性別を示さない。よって、雄性又は雌性の、成体及び新生の対象並びに胎児をカバーすることを意図する。患者は、疾患又は障害に苦しむ対象のことをいう。用語「患者」は、ヒト及び獣医学的対象を含む。
【0022】
[0035]
本明細書で用いる場合、用語「処置」は、疾患、病理的状態又は障害を治癒、改善、安定化又は防止することを意図した患者の医療的管理のことをいう。この用語は、能動的処置、つまり疾患、病理的状態又は障害の改善に特異的に向けられた処置を含み、原因処置、つまり関連する疾患、病理的状態又は障害の原因の除去に向けられた処置も含む。さらに、この用語は、待機処置、つまり疾患、病理的状態又は障害の治癒よりもむしろ症状の緩和のために設計された処置、予防的処置、つまり関連する疾患、病理的状態又は障害の発生を最小限にすること又はそれを部分的若しくは完全に阻害することに向けられた処置、並びに支持処置、つまり関連する疾患、病理的状態又は障害の改善に向けられた別の特定の療法の補充のために用いられる処置を含む。
【0023】
[0036]
本明細書で用いる場合、用語「防止する」又は「防止」は、特に事前の行為により、何かが生じることを排除する、避ける、未然に防ぐ、先んじる、止める又は邪魔をすることをいう。本明細書において低減する、阻害する又は防止するを用いる場合、そうでないと特に記載しない限り、他の2つの語の使用も明白に開示されることが理解される。本明細書において見られるように、処置及び防止の定義は、重複している。
【0024】
[0037]
本明細書で用いる場合、用語「診断され」は、当業者、例えば医師による身体検査に供され、本明細書に開示する化合物、組成物又は方法により診断又は処置できる状態を有することが見いだされたことを意味する。本明細書で用いる場合、障害の処置が必要であると同定された」などとの句は、障害の処置に対する必要性に基づく対象の選択のことをいう。例えば、対象は、当業者による前もっての診断に基づいて障害(例えば炎症に関連する障害)の処置を必要とすると同定され得、その後に、その障害の処置に供され得る。一観点において、同定は、診断を行う人とは別の人により行い得ることが企図される。さらなる観点では、投与は、その後に投与を行う人により行うことができることも企図される。
【0025】
[0038]
本明細書で用いる場合、用語「投与する」及び「投与」は、対象に薬学的調製物を与える任意の方法のことをいう。このような方法は、当業者に公知であり、それらに限定されないが、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局部投与、膣内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、直腸投与、並びに注射、例えば静脈内投与、動脈内投与、筋内投与及び皮下投与を含む非経口投与を含む。投与は、連続的又は間欠的であり得る。様々な観点において、調製物は、療法的に投与でき、つまり、現存する疾患又は状態を処置するために投与される。さらなる様々な観点において、調製物は、予防的に投与されることができ、つまり、疾患又は状態の防止のために投与される。
【0026】
[0039]
本明細書で用いる場合、用語「有効量」は、所望の結果を達成するため又は望ましくない状態に対して影響を有するために十分な量のことをいう。例えば、「治療有効量」は、所望の療法的な結果を達成するため又は望ましくない症状に対して影響を有するために十分であるが、有害な副作用をもたらすには一般的に不十分である量のことをいう。任意の特定の患者についての特定の治療有効用量レベルは、処置される障害及び障害の重篤度、用いる具体的な組成物、患者の年齢、体重、全身の健康、性別及び食餌、投与の時間、投与の経路、用いる具体的な化合物の排泄速度、処置期間、用いる具体的化合物と組み合わせ又は同時に用いる薬物などの医療の技術において公知の因子を含む様々な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要レベルよりも低いレベルの用量から開始して、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加することが当業者に公知である。所望により、有効一日用量を、投与の目的のために複数の用量に分けることができる。よって、単回用量組成物は、このような量又はその約数を含んで、一日用量を構成することができる。投与量は、いずれの禁忌の事象において個別の医師が調整できる。投与量は、変動でき、毎日1回以上の用量の投与において、1又は数日にわたって投与できる。所定のクラスの薬学的製品について適当な投与量について、文献に手引きを見い出すことができる。さらなる様々な観点において、調製物は、「予防有効量」、つまり、疾患又は状態の防止に効果的な量で投与できる。
【0027】
[0040]
本発明は、アラキドン酸及び他の多価不飽和脂肪酸に由来する反応性が高い脂質ジカルボニル、イソレブグランジン(isoLG、イソケタール又はガンマ-ケトアルデヒドとしても知られる)のスカベンジャーである、2-ヒドロキシベンジルアミンのミトコンドリア標的誘導体、該化合物を含む医薬組成物、並びにミトコンドリア機能障害、酸化ストレス、例えばミトコンドリア酸化ストレス、高血圧症及び敗血症を含む病的状態を処置する方法に関する。
【0028】
[0041]
本発明の別の実施形態において、対象におけるミトコンドリア機能障害を処置、防止及び改善するための方法であって、本発明のミトコンドリア標的スカベンジャー又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0029】
[0042]
本発明の別の実施形態において、対象における酸化ストレスを処置、防止及び改善するための方法であって、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0030】
[0043]
本発明の別の実施形態において、対象における高血圧症を処置、防止及び改善するための方法であって、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0031】
[0044]
本発明の別の実施形態において、対象における敗血症を処置、防止及び改善するための方法であって、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0032】
[0045]
本発明の化合物、組成物、物品、系、装置及び/又は方法を開示及び記載する前に、これらは、そうでないと記載しない限り特定の合成方法、又はそうでないと記載しない限り特定の試薬に限定されず、それ自体は、もちろん変動することがあると理解される。本明細書で用いる術語は、特定の態様を記載する目的のためだけであり、限定することを意図しないことも理解される。本明細書に記載するものと類似又は等価な任意の方法及び材料を本発明の実施又は試験において用いることができるが、例示的な方法及び材料を以下に記載する。
【0033】
[0046]
ある観点では、本発明は、炎症、高血圧症、ミトコンドリア酸化ストレス及びミトコンドリア機能障害を含む本明細書に記載する適応症の処置に有用な化合物又はその薬学的に許容される誘導体に関する。一般的に、開示される誘導体はそれぞれ、場合によって、さらに置換できることが企図される。任意の1種以上の誘導体は、場合によって本発明から除くことができることも企図される。開示される化合物は、開示される方法により提供できることが理解される。開示される方法は、開示される使用方法において用いることができることも理解される。開示される化合物は全て、対応する医薬組成物として用いることができることも理解される。
【0034】
[0047]
本発明の一実施形態は、以下の式:
【化1】
(式中:
Xは、結合手、アルキル、アルコキシ、メトキシ、-O-又は-CH
2-であり、
各Rは、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択され、
Aは、
【化2】
であり、
各R
1は、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択される)
の化合物であって、場合によって対イオンを含む化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0035】
[0048]
本発明の別の実施形態は、以下の式:
【化3】
(式中:
Xは、結合手、アルキル、-O-又は-CH
2-であり、
Rは、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルである)
の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0036】
[0049]
本発明の別の実施形態は、以下の式:
【化4】
(式中:
Rは、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルである)
の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0037】
[0050]
本発明の別の実施形態は、以下の式:
【化5】
(式中:
R
1は、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルである)
の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0038】
[0051]
本発明の別の実施形態は、以下の式:
【化6】
(式中:
R
1は、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルである)
の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0039】
[0052]
本発明の別の実施形態は、以下の式:
【化7】
(式中:
Xは、結合手、-O-又は-CH
2-であり、
Rは、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルであり、
R
1は、C
1からC
12の置換若しくは非置換アルキル又はアセトキシメチルである)
の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0040】
[0053]
本発明の別の実施形態は、以下の式:
【化8】
(式中:
各Rは、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択され、
各R
1は、独立してC
1からC
12までの置換若しくは非置換アルキル又はアセトキシメチルから選択される)
の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0041】
[0054]
別の実施形態において、ミトコンドリア標的スカベンジャーは、以下の式:
【化9】
(式中:
Rは、C
1からC
12の置換又は非置換アルキルであり、R
2は、-P-Ph
3又は
【化10】
から選択される)
の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0042】
[0055]
本発明の別の実施形態は、以下の式:
【化11-1】
【化11-2】
の化合物、及びその薬学的に許容される塩である。
【0043】
[0056]
本発明の別の実施形態は、以下の式:
【化12】
の化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩である。
【0044】
一般的なスキーム
[0057]
本発明のミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーの合成を、以下に記載する。
【0045】
[0058]
エーテル結合のための合成スキーム
【化13】
炭酸セシウム(4.9 g、15 mmol)を、アセトニトリル(50 ml)中の2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(4.2 g、30 mmol)及び1,4-ジブロモブタン(6.6 g、30 mmol)に加えた。混合物をアルゴン下に80℃に5時間加熱し、冷却し、1 Mホスフェート緩衝液、pH7(30 ml)、氷及びKH
2PO
4(2 g)に混合しながら加えた。固体を濾過により除去し、濾液を酢酸エチルで抽出した。カラム精製(シリカ、9:1ヘキサン-酢酸エチル)により、4-(4-ブロモブトキシ)2-ヒドロキシベンズアルデヒド(4.1 g、50%)を得た。これを、トルエン(75 ml)中のトリフェニルホスフィン(4.2 g)と混合し、アルゴン下に15時間還流した。ピンク色の固体を、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の0~10%メタノール)により精製して、4-(4-ホルミル-3-ヒドロキシフェノキシ)ブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(4.8 g、60%)を得た。エタノール(40 ml)中のNH
2OH.HCl (0.63 g)及びCH
3CO
2Na (0.74 g)と1時間撹拌することにより、アルデヒドをオキシムに変換した。粗生成物を、酢酸(40 ml)に溶解し、亜鉛粉末(6 g)で処理した。反応混合物を、水浴中で徐々に60℃まで加熱し、この温度に20分間維持し、冷却し、濾過した。酢酸を除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ:5~20% 0.1 M酢酸アンモニウム-アセトニトリル)により精製した。他の化合物は、適当なジブロモアルケンを用いて同様に調製される。
【0046】
[0059]
メチレン結合のためのスキーム
【化14】
5-(クロロメチル)-2-ヒドロキシベンズアルデヒド(4.5 g)を、アセトニトリル中のトリフェニルホスフィン(5.75 g)と5時間還流した。冷却後に、付加物をカラム精製した(シリカ;ジクロロメタン中の0~15%メタノール)。アルデヒドをオキシムに変換し、酢酸中の亜鉛で還元し、mito2HOBA-C4について記載するようにして精製した。アルキル鎖は、伸長できる。
【0047】
[0060]
元のmitoサリチルアミンアナログは、以下に示すようにして調製した。
【化15】
【0048】
[0062]
エステル及び酸のための合成スキーム
【化16】
メチル4-ヒドロキシベンゾエート(8.3 g)を、パラホルムアルデヒド(8 g)、塩化マグネシウム(10 g)及びトリエチルアミン(28 mL)を含むアセトニトリル中で還流した。30分後に、反応混合物を酸性化し、酢酸エチルで抽出した。粗生成物を、シリカカラムで精製した(5:1ヘキサン-酢酸エチル)。アルデヒドをオキシムに変換し、後者を2等量のLiOHと1:1メタノール-水中で75~80℃に2時間加熱した。オキシム-酸を、冷却及び酸性化の後に白色固体として単離した。これ(2.3 g)をDMF (25 mL)に溶解し、氷中で冷却し、KHCO
3及び酢酸ブロモメチル(1.7 g)で処理した。混合物を18時間撹拌し、粗生成物をシリカ精製した(2:1ヘキサン-酢酸エチル0;2.1 gの澄明な液体。オキシムを亜鉛粉末(3.2 g)及び酢酸(30 mL)で還元して、AcMO-2HOBAを得た。
第1工程で得られたメチル3-ホルミル-4-ヒドロキシベンゾエートをオキシムに変換し、還元して、mcm-2HOBAを得た。同様に、エチル3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートが、ece-2HOBAのための出発化合物であった。
【0049】
[0063]
ジエステルのための合成スキーム
【化17】
5-(クロロメチル)-2-ヒドロキシベンズアルデヒド(8 g)を、ジエチルイミノジアセテート(5 mL)とともにTHF (40 mL)中のトリエチルアミン(5.6 mL)と2時間撹拌した。粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィーに供した(シリカ;3:1ヘキサン-酢酸エチル)。エタノール中のヒドロキシルアミン.HCl及び酢酸ナトリウムと処理することにより、アルデヒド基をオキシムに変換した。亜鉛及び酢酸での還元の後に、2HOBA-ジエステルをシリカカラムで精製した。純粋生成物を、30%メタノール-酢酸エチルを用いて溶出した。
【0050】
[0064]
用語「アルキル」は、本明細書で用いる場合、1から24個の炭素原子の分岐又は非分岐飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。アルキル基は、環状又は非環状であり得る。アルキル基は、分岐又は非分岐であり得る。アルキル基は、置換又は非置換でもあり得る。例えば、アルキル基は、それらに限定されないが、本明細書に記載するように、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハライド、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホオキソ又はチオールを含む1種以上の基で置換され得る。「低級アルキル」基は、1から6(例えば1から4)個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0051】
[0065]
明細書を通じて、「アルキル」は、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方のことを一般的にいうが、置換アルキル基も、アルキル基の特定の置換基を同定することにより、本明細書において具体的に言及される。例えば、用語「ハロゲン化アルキル」は、1種以上のハライド、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素で置換されたアルキル基のことを具体的にいう。用語「アルコキシアルキル」は、以下に記載するように1種以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基のことを具体的にいう。用語「アルキルアミノ」は、以下に記載するように1種以上のアミノ基で置換されたアルキル基などのことを具体的にいう。「アルキル」を或る場合に用い、具体的な用語、例えば「アルキルアルコール」を別の場合に用いるとき、用語「アルキル」は具体的な用語、例えば「アルキルアルコール」などを指称するものではないことを意味しない。
【0052】
[0066]
用語「アルコキシ」及び「アルコキシル」は、本明細書で用いる場合、エーテル結合を介して結合するアルキル又はシクロアルキル基のことをいう。つまり、「アルコキシ」基は、-OAL (ここで、ALは、上で規定されるアルキル又はシクロアルキルである)と規定できる。「アルコキシ」は、直前に説明したアルコキシ基の重合体も含む。つまり、アルコキシは、ポリエーテル、例えば-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3(ここで、「a」は、1から200までの整数であり、A1、A2及びA3は、アルキル及び/又はシクロアルキル基である)であり得る。
【0053】
[0067]
本明細書に記載する化合物は、1つ以上の二重結合を含むことができ、よって、シス/トランス(E/Z)異性体とともに他の配座異性体を生じさせる可能性がある。そうでないと述べない限り、本発明は、全てのこのような可能性のある異性体及びそのような異性体の混合物を含む。
【0054】
[0068]
本明細書に記載する化合物は、所望により又は必要により、場合によって対イオンを含むことも理解される。これらの場合による対イオンの例は、クロライド、メシレート、バイカルボネート、フルオリド、ニトレート、ブロミド、スルフェート、シトレート、ベンゾエート、サッカリンアニオン及びアセテートを含む。例えば、トリフェニルホスホニウム化合物について記載するならば、トリフェニルホスホニウムブロミドを想定できる。
【0055】
[0069]
そうでないと記載しない限り、実線のみで示し、くさび又は点線で示していない化学結合を含む式は、それぞれの可能性のある異性体、例えばエナンチオマー及びジアステレオマーのそれぞれ、並びに異性体の混合物、例えばラセミ又はスカレミック混合物を企図する。本明細書に記載する化合物は、1つ以上の非対称中心を含むことができ、よって、ジアステレオマー及び光学異性体を生じる可能性がある。そうでないと述べない限り、本発明は、全てのこのような可能性のあるジアステレオマー、並びにそれらのラセミ混合物、実質的に純粋な分割されたエナンチオマー、全ての可能性のある幾何異性体、及びそれらの薬学的に許容される塩を含む。立体異性体の混合物、並びに単離された具体的な立体異性体も含まれる。このような化合物を調製するために用いる合成手順中に、又は当業者に既知のラセミ化若しくはエピマー化手順を用いる場合、そのような手順の生成物は、立体異性体の混合物であり得る。さらに、「非置換」であると明示的に記載しない限り、全ての置換基は、置換又は非置換であり得る。
【0056】
[0070]
いくつかの態様において、化合物の構造は式:
【化18】
で表すことができ、これは、式:
【化19】
(式中、nは、代表的には、整数である)
と等価であると理解される。つまり、R
nは、5つの独立した置換基、R
n(a)、R
n(b)、R
n(c)、R
n(d)、R
n(e)を表すと理解される。「独立した置換基」は、各R置換基が、独立して規定され得ることを意味する。例えば、ある場合においてR
n(a)がハロゲンであるならば、R
n(b)は、その場合において必ずしもハロゲンでない。同様に、R基が4つの置換基であると規定される場合、Rは、4つの独立した置換基、R
a、R
b、R
c及びR
dを表すと理解される。そうでないと記載しない限り、置換基は、いずれの特定の順序又は配置に限定されない。
【0057】
[0071]
ある観点では、本発明は、開示される化合物を含む医薬組成物に関する。つまり、治療有効量の少なくとも1種の開示される化合物又は開示される方法の少なくとも1種の生成物と、薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物が提供され得る。
【0058】
[0072]
あるいくつかの観点では、開示される医薬組成物は、有効成分としての開示される化合物(その薬学的に許容される塩を含む)と、薬学的に許容されるキャリアと、場合によってその他の治療成分又は補助剤とを含む。本組成物は、経口、直腸、局部及び非経口(皮下、筋内及び静脈内を含む)投与に適切なものを含むが、任意の場合における最も適切な経路は、特定のホスト、並びに有効成分が投与される状態の性質及び重篤度に依存する。医薬組成物は、簡便には単位剤形であり得、薬学技術において公知の任意の方法により調製できる。
【0059】
[0073]
本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される非毒性塩基又は酸から調製される塩のことをいう。本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基及び有機塩基を含む薬学的に許容される非毒性の塩基から簡便に調製できる。そのような無機塩基に由来する塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二銅及び第一銅)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二マンガン及び第一マンガン)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩を含む。特に好ましくは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基に由来する塩は、一級、二級及び三級アミン、並びに環状アミン、並びに置換アミン、例えば天然及び合成の置換アミンの塩を含む。塩を形成できる他の薬学的に許容される有機非毒性塩基は、イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどを含む。
【0060】
[0074]
本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容される非毒性酸」は、無機酸、有機酸及びそれらから調製される塩、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸などを含む。好ましくは、クエン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
【0061】
[0075]
実際に、本発明の化合物又は本発明のその薬学的に許容される塩は、有効成分として、従来の薬学上の配合技術に従って薬学的キャリアとの完全混和物で組み合わせることができる。キャリアは、投与、例えば経口又は非経口(静脈内を含む)のために望ましい調製物の形に依存した様々な形をとることができる。よって、本発明の医薬組成物は、所定量の有効成分をそれぞれが含む経口投与に適する別個の単位、例えばカプセル剤、カシェ剤又は錠剤であることができる。さらに、組成物は、散剤、顆粒剤、液剤、水性液体中の懸濁剤、非水性液体、水中油型乳剤、又は油中水型液体乳剤であり得る。上記の一般的な剤形に加えて、本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩は、制御放出手段及び/又は送達装置により投与することもできる。組成物は、任意の薬学的方法により調製できる。一般的に、このような方法は、1種以上の必要な材料を構成するキャリアと有効成分を接触させる工程を含む。一般的に、組成物は、液体のキャリア若しくは微粉化した固体キャリア又はその両方と有効成分を均一かつ完全に混和することにより調製される。生成物を、次いで、所望の体裁に簡便に形作ることができる。
【0062】
[0076]
よって、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容されるキャリアと、本発明の化合物又は薬学的に許容される塩とを含むことができる。本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩は、1種以上の他の治療活性化合物と組み合わせて医薬組成物に含めることもできる。用いられる薬学的キャリアは、例えば、固体、液体又は気体であり得る。固体キャリアの例は、ラクトース、白土、ショ糖、タルク、ゼラチン、アガー、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸を含む。液体キャリアの例は、液糖、ピーナツ油、オリーブ油及び水を含む。気体キャリアの例は、二酸化炭素及び窒素を含む。
【0063】
[0077]
経口剤形の組成物の調製において、任意の簡便な薬学的媒体を用いることができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などを用いて、経口液体調製物、例えば懸濁剤、エリキシル剤及び液剤を形成できるが、キャリア、例えばデンプン、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などを用いて、経口固体調製物、例えば散剤、カプセル剤及び錠剤を形成することができる。投与が容易であるので、錠剤及びカプセル剤が好ましい経口投与単位であり、よって、固体薬学的キャリアが用いられる。場合によって、錠剤は、標準的な水性又は非水性技術により被覆できる。
【0064】
[0078]
本発明の組成物を含む錠剤は、圧縮又は湿製により、場合によって1種以上の付属成分又は補助剤とともに調製できる。圧縮錠剤は、適切な機械において、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性又は分散剤と場合によって混合した流動性の形、例えば粉末又は顆粒の有効成分を圧縮することにより調製できる。湿製錠剤は、適切な機械において、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を成形することにより作製できる。
【0065】
[0079]
本発明の医薬組成物は、有効成分として本発明の化合物(又はその薬学的に許容される塩)と、薬学的に許容されるキャリアと、場合によって1種以上のさらなる治療剤又は補助剤とを含むことができる。本組成物は、経口、直腸、局部及び非経口(皮下、筋内及び静脈内を含む)投与に適切な組成物を含むが、任意の場合における最も適切な経路は、特定のホスト、並びに有効成分が投与される状態の性質及び重篤度に依存する。医薬組成物は、簡便には単位剤形であり得、薬学技術において公知の任意の方法により調製できる。
【0066】
[0080]
非経口投与に適切な本発明の医薬組成物は、水中の活性化合物の液剤又は懸濁剤として調製できる。適切な界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースを含むことができる。懸濁剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及び油中のそれらの混合物中で調製することもできる。さらに、保存剤を含めて、微生物の有害な成長を妨げることができる。
【0067】
[0081]
注射用に適切な本発明の医薬組成物は、滅菌水性液剤又は分散剤を含む。さらに、組成物は、このような注射用液剤又は分散剤の即座の調製のための滅菌散剤の形であり得る。全ての場合において、最終注射剤形は、滅菌されなければならず、注射を容易にするために、効果的には流体でなければならない。医薬組成物は、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、よって、好ましくは、微生物、例えば細菌及び真菌の混入作用に対して保存される。キャリアは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、植物油、及びその適切な混合物を含む溶剤又は分散媒であり得る。
【0068】
[0082]
本発明の医薬組成物は、局部使用に適切な形、例えばエアゾール剤、クリーム、軟膏剤、ローション剤、散布剤、洗口剤、含嗽剤などであり得る。さらに、組成物は、経皮装置での使用のために適切な形であり得る。これらの製剤は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を用いて、従来の加工方法により調製できる。例えば、クリーム又は軟膏剤を、親水性材料及び水を、約5wt%から約10 wt%の化合物とともに混合して、所望の粘稠度を有するクリーム又は軟膏剤を生成することにより調製される。
【0069】
[0083]
本発明の医薬組成物は、直腸投与に適切な形であり得、ここで、キャリアは、固体である。混合物が単位用量坐剤を形成することが好ましい。適切なキャリアは、カカオ脂、及び当該技術において一般的に用いられる他の材料であり得る。坐剤は、柔らかくしたか又は溶かしたキャリアと組成物をまず混和した後に、冷やして、型において形作ることにより簡便に形成できる。
【0070】
[0084]
上記のキャリア成分に加えて、上記の医薬製剤は、1種以上の追加のキャリア成分、例えば希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などを適宜含むことができる。さらに、他の補助剤を含めて、意図する受容者の血液と製剤を等張にすることができる。本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩を含む組成物は、粉末又は濃縮された液体の形でも調製できる。
【0071】
[0085]
代謝調節型グルタメート受容体活性の強化を必要とする処置条件において、適当な投与量レベルは、一般的に、患者の体重kgあたり1日あたり約0.01から500 mgであり、単回又は複数回用量で投与できる。好ましくは、投与量レベルは、1日あたり約0.1から約250 mg/kgであり、より好ましくは1日あたり0.5から100 mg/kgである。適切な投与量レベルは、1日あたり約0.01から250 mg/kg、1日あたり約0.05から100 mg/kg又は1日あたり約0.1から50 mg/kgであり得る。この範囲内で、投与量は、1日あたり0.05から0.5、0.5から5.0又は5.0から50 mg/kgであり得る。経口投与のために、組成物は、処置される患者の投与量の症状による調整のために、1.0から1000ミリグラムの有効成分、特に1.0、5.0、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900及び1000ミリグラムの有効成分を含む錠剤の形で好ましくは与えられる。化合物は、1日あたり1から4回、好ましくは1日あたり1又は2回のレジメンで投与できる。この投与レジメンは、最適な治療応答を得るために調整できる。
【0072】
[0086]
しかし、任意の特定の患者についての具体的な用量レベルは、様々な因子に依存することが理解される。このような因子は、患者の年齢、体重、全身の健康、性別及び食餌を含む。他の因子は、投与の時間及び経路、排出速度、薬物の組み合わせ、並びに療法を受ける特定の疾患の種類及び重篤度を含む。
【0073】
[0087]
開示される医薬組成物は、上記の病理的状態の処置に通常施与される他の治療有効化合物をさらに含むことができる。
【0074】
[0088]
開示される組成物が開示される化合物から調製できることが理解される。開示される組成物が開示される使用方法において用いることができることも理解される。
【0075】
[0089]
1種以上の開示される化合物と、薬学的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物もここにさらに開示される。
【0076】
[0090]
よって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、1種以上の他の有効成分を含むものを含む。
【0077】
[0091]
上記の組み合わせは、開示される化合物と1種の別の有効化合物だけでなく、2種以上の他の有効化合物との組み合わせを含む。同様に、開示される化合物は、開示される化合物が有用である疾患又は状態を防止、処置、管理、改善又はそのリスクの低減において用いられる他の薬物と組み合わせて用いることができる。このような他の薬物は、一般的に用いられる経路及び量により、本発明の化合物と同時又は逐次的に投与できる。本発明の化合物を1種以上の他の薬物と同時に用いる場合、本発明の化合物に加えてそのような他の薬物を含む医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて1種以上の他の有効成分も含むものを含む。
【0078】
[0092]
第二の有効成分に対する本発明の化合物の重量比は、変動でき、各成分の有効量に依存する。一般的に、それぞれの有効量を用いる。つまり、例えば、本発明の化合物を別の薬剤と組み合わせる場合、他の薬剤に対する本発明の化合物の重量比は、一般的に、約1000:1から約1:1000まで、好ましくは約200:1から約1:200までの範囲である。本発明の化合物と他の有効成分との組み合わせも、一般的に、上記の範囲内であるが、各場合において、各有効成分の有効量を用いるべきである。
【0079】
[0093]
そのような組み合わせにおいて、本発明の化合物と他の有効な薬剤とは、別々又は一緒に投与してよい。さらに、1つの要素の投与は、他の薬剤の投与の前、同時又は後であり得る。
【0080】
[0094]
したがって、主題の化合物は、単独で、或いは主題の適応症に有益であることが知られている他の薬剤、或いは開示される化合物の有効性、安全性、簡便性を増加するか、又は望ましくない副作用若しくは毒性を低減する受容体又は酵素に影響する他の薬物との組み合わせで用いることができる。主題の化合物及び他の薬剤は、併用療法若しくは固定した組み合わせのいずれかで同時投与してよい。
【0081】
[0095]
ある観点では、化合物は、抗高血圧薬剤、抗炎症薬剤及び/又は抗酸化ストレス薬剤と組み合わせて用いることができる。よって、開示される化合物は、上記の疾患、障害及び状態の処置、防止、管理、改善又はそのリスクの低減において用いることができる。開示される化合物を1種以上の他の薬物と同時に用いる場合、そのような薬物及び開示される化合物を含む単位剤形の医薬組成物が好ましい。しかし、重複するスケジュールで併用療法も施与できる。1種以上の有効成分と開示される化合物との組み合わせが、いずれかの単一薬剤よりも効力があるということも企図される。
【0082】
[0096]
ある観点では、本発明は、哺乳動物における適応症を処置するために有効な投与量及び量の本発明の少なくとも1つの化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における処置方法に関する。あるいくつかの実施形態では、化合物は、以下の式:
【化20】
(式中:
Xは、結合手、アルキル、アルコキシ、メトキシ、-O-又は-CH
2-であり、
各Rは、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択され、
Aは、
【化21】
であり、
各R
1は、独立してC
1からC
12までの置換又は非置換アルキルから選択される)
の化合物であって、場合によって対イオンを含む化合物、並びにその立体異性体及び薬学的な塩により表される構造を有する。
【0083】
[0097]
あるいくつかの観点において、対象、例えば哺乳動物又はヒトは、投与工程の前に適応症と診断されている。さらなる観点において、開示される方法は、対象、例えば本明細書に記載する適応症、疾患、障害及び状態の処置を必要とする哺乳動物又はヒトを同定する工程をさらに含み得る。さらなる観点において、対象、例えば哺乳動物又はヒトは、投与工程の前に処置を必要とすると診断されている。
【0084】
[0098]
開示される化合物は、本発明の化合物又は他の薬物が有用な上記の適応症、疾患、障害及び状態の処置、防止、管理、改善又はそのリスクの低減において、単一の薬剤、又は1種以上の他の薬物との組み合わせで用いてよく、ここで、薬物を一緒に組み合わせることは、いずれかの薬物単独よりも安全又は効果的である。他の薬物は、そのために一般的に用いられる経路及び量で、開示される化合物と同時又は逐次的に投与してよい。開示される化合物を1種以上の他の薬物と同時に用いる場合、そのような薬物及び化合物を含む単位剤形の医薬組成物が好ましい。しかし、重複するスケジュールで併用療法も施与できる。1種以上の有効成分と開示される化合物との組み合わせが、いずれかの単一薬剤よりも効力があり得るということも企図される。
【0085】
[0099]
本発明の化合物は、薬学的に許容されるキャリアと投与できる。本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容されるキャリア」は、滅菌水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン、並びに使用直前の滅菌注射用液剤又は分散剤への再構成のための滅菌粉末のことをいう。適切な水性及び非水性キャリア、希釈剤、溶剤又はビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの適切な混合物、植物油(例えばオリーブ油)及び注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む。例えばコーティング材、例えばレシチンの使用により、分散液の場合必要とされる粒子サイズを維持することにより、そして界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持できる。これらの組成物は、補助剤、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤も含むことができる。微生物の作用は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含むことにより、確実に防止できる。等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましいこともある。注射用の薬学上の形の延長吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含むことによりもたらすことができる。注射用デポー形は、生分解性ポリマー、例えばポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルソエステル)及びポリ(無水物)中の薬物のマイクロカプセル化マトリクスを形成することにより作製される。ポリマーに対する薬物の比率及び用いる特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出速度を制御できる。デポー注射用製剤は、体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによっても調製される。注射用製剤は、例えば細菌保持フィルタを通しての濾過、又は滅菌水若しくは他の滅菌注射用媒体に使用直前に溶解若しくは分散できる滅菌固体組成物の形の滅菌剤を組み込むことにより、滅菌できる。適切な不活性キャリアは、糖類、例えばラクトースを含み得る。望ましくは、有効成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01から10マイクロメートルの範囲の有効粒子サイズを有する。
【0086】
[00100]
本明細書で用いる場合、用語「置換され」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことを企図する。広い観点において、許容される置換基は、有機化合物の非環状及び環状で、分岐及び非分岐で、炭素環式及び複素環式で、芳香族及び非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基は、例えば以下に記載するものを含む。許容される置換基は、適当な有機化合物について1種以上で、同じ又は異なり得る。本開示の目的のために、ヘテロ原子、例えば窒素は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の価数を満足する本明細書に記載する有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。本開示は、有機化合物の許容される置換基により何れの様式でも限定されることを意図しない。また、用語「置換」又は「で置換され」は、そのような置換が置換原子及び置換基の許容される価数に従い、置換が安定な化合物、例えば転位、環化、脱離などによる変換を自発的に受けない化合物をもたらすという暗黙の条件を含む。
【0087】
[00101]
もちろん、本発明の一観点は、本明細書で論じる適応症、疾患、障害及び状態の処置における本発明の化合物の使用に関する。
【0088】
炎症
[00102]
炎症は、循環器疾患、急性腎障害並びに肺及び心不全を含む、西洋社会における病的状態及び死亡の主な原因である多くの疾患に関わる。複数の薬物の使用にもかかわらず、慢性及び急性の炎症はともに、いまだに主要な健康上の負担である。近年、酸化ストレスが、炎症と関連する多くの状態、例えば循環器疾患及び敗血症の病態生理学において重要な役割を演じることが明らかになっている。脂質過酸化の増加は、臨床的に確認されたマーカーであるF2-イソプロスタンを用いて、高血圧症、アテローム動脈硬化症及び敗血症において示されている。イソプロスタン経路を介する脂質過酸化は、反応性が高いγ-ケトアルデヒド、イソレブグランジン(IsoLG)のファミリーを生成し、これらは、一級アミンと迅速に反応して、細胞性機能障害を引き起こす。IsoLGは、リジン残基と反応することによりタンパク質を共有結合的に修飾及び架橋し、この修飾は、酵素機能を直接阻害し、炎症を誘導し、細胞障害性の影響を引き起こす。IsoLGは、高血圧症における炎症誘発性樹状及びT細胞活性化に関わっている。IsoLGでの単離ミトコンドリアの急性処置は、ミトコンドリア呼吸を妨げ、ミトコンドリア膜透過性転移孔(mPTP)開放を促進するが、病理的状態におけるミトコンドリアIsoLGの役割は、調べられていない。
【0089】
[00103]
敗血症は、破壊的な多臓器不全、例えば急性腎傷害を引き起こし、これは、酸化ストレス及びミトコンドリア機能障害の増加と結び付いている。IsoLG付加物のレベルは、敗血症実験モデルにおいて上昇する。炎症は、ミトコンドリア機能障害と関連している。しかし、その病態生理学的役割及び分子機構は、まだ不明瞭である。ミトコンドリアは、IsoLGを生成できるフリーラジカルの主要な供給源の1つである。IsoLGの高度に有害な可能性がある性質に鑑みて、本発明者らは、炎症誘導IsoLGがミトコンドリア機能障害において重要な役割を演じることを示す。
【0090】
[00104]
酸化ストレスは複数の病的状態において一般的であるが、抗酸化剤療法は、現在利用可能でなく、一般的な抗酸化剤、例えばアスコルベート及びビタミンEは、臨床研究において効果的でない。これらの薬剤は、フリーラジカル生成の重要な位置、例えばミトコンドリアに到達しにくい。さらに、抗酸化剤は、酸化還元シグナル伝達を妨げることができ、サイトカイン生成の増加及びNrf2シグナル伝達の抑制により炎症及び組織傷害を増加させる。
【0091】
[00105]
老化及び炎症における酸化ストレスは、多価不飽和脂肪酸(PUFA)に対する過酸化損傷の増加をもたらす。イソプロスタン型の脂質過酸化の原因は、まだ不明である。PUFAの自己酸化が、ミトコンドリアにおいて生成されるスーパーオキシドラジカルのプロトン化された形であるペルヒドロキシルラジカル(HO2
・)により開始され得ることが提案されている。低酸素及び組織の酸化は、HO2
・の生成を増加させる。本発明者らは、酸化損傷ミトコンドリアリン脂質及びIsoLG付加物の蓄積が、ミトコンドリアHO2
・によるPUFA酸化の結果であることを示す。イソプロスタン脂質過酸化のHO2
・の仮説は、古典的抗酸化剤が、この型の酸化ストレス及び老化の防止に効果的でないという既知の事実に合致する。イソプロスタン脂質過酸化は、様々な形のイソプロスタン及びイソレブグランジンのラセミ混合物を生成する。イソプロスタンのいくつかは、炎症応答の開始を直接担うことができるが、反応性IsoLGは、細胞傷害性かつ免疫原性のIsoLG-ラクタム付加物を生成する。
【0092】
[00106]
IsoLGの生成は、酸化ストレスの一般的な下流生成物の1つであり、2-ヒドロキシベンジルアミン(これは、抗酸化剤でない)を用いるIsoLGの除去は、内皮機能障害を低減し、線維症を減らし、高血圧症を減じる。ミトコンドリアを特異的に標的する療法は、標的器官損傷を低減するための見込みのある方策である。本発明者らは、IsoLGスカベンジャー2-ヒドロキシベンジルアミンを親油性カチオントリフェニルホスホニウムとコンジュゲートすることによりミトコンドリアに標的付けることが、ミトコンドリア機能障害を低減し、敗血症に関連する死亡を減じることを示す。本発明は、(a)合成IsoLG及びその付加物に応答するミトコンドリア機能障害を探索し、(b)新しいミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャーmito2HOBAを開発し、(c)mito2HOBAが敗血症のリポ多糖(LPS)モデルにおいてミトコンドリア機能障害及び死亡から防御するかを試験した。
【0093】
材料および方法
試薬
[00107]
LPSは、Sigma (St Louis、MO)から得た。2-ヒドロキシベンジルアミン(2HOBA)及びその非スカベンジャーアナログ4-ヒドロキシベンジルアミン(4HOBA)は、前に記載するようにして調製した。15-E2-IsoLGは、Amarnathらの方法により合成し、DMSOストック溶液にて-80℃で保存した。全ての他の試薬は、Sigma (St Louis、MO)からであった。
【0094】
動物実験
[00108]
全ての実験手順は、Vanderbilt及びMercer施設動物保護及び使用委員会により承認された。LPSの使用は、げっ歯類の細菌性敗血症のよく確立されたモデルである(1~3)。マウスにおいて敗血症を誘導するために用いることができるLPSの濃度は、多くの因子(LPSの供給源、動物の年齢/サイズ及び株、所望の応答時間、興味対象の標的など)に依存し、異なる製造者間で異なり得る。mito2HOBAの防御特性を試験するために、本発明者らは、大腸菌(E. coli)O111:B4からのLPS (Sigma L8274)を用いた。予備研究で試験したLPSのロットは、注射後24時間にて25μg/gのLD50を有した。研究全体を通して、同じロットのLPSを用いた。
【0095】
[00109]
40匹のC57BL/6J 3月齢マウスを4群に等分した:シャム(対照)、LPS注射マウス(LPS)、飲用水中のmito2HOBA (0.1g/リットル)を補充したマウス(mito2HOBA)、及び飲用水中のmito2HOBAで前処置したLPS注射マウス(LPS+mito2HOBA)。動物群内で敗血症により誘導される死亡を、mito2HOBAの防御的役割を評価するために用いた。死亡は、3日連続で1日あたり数回定期的に評価した。追加の実験において、マウスをLPS注射の24時間後に犠牲にして、ミトコンドリア複合体I及び複合体II活性を分析した。
【0096】
ミトコンドリア研究
[00110]
ミトコンドリア単離、呼吸分析及び呼吸鎖酵素学のための全ての手順は、前に記載されている。ミトコンドリア複合体I及び複合体II活性を、上記のようにLPS注射の24時間後に評価した。ミトコンドリアを、12~14週齢雄性C57BL6/6Jマウス腎臓から単離した。呼吸研究のために、電子を複合体I(基質としてグルタメート+マラート)又は複合体II (基質としてスクシネート)のいずれかに入れた。いくつかの器官、例えば脳のミトコンドリアは、50%までのピルベート及びグルタメートをアミノ基転移によりα-ケトグルタレートに酸化し、さらにスクシネートに変換する。腎臓ミトコンドリアは、他の器官からのミトコンドリアと比較してあまり研究されていないので、本発明者らは、複合体IIの特異的阻害剤であるマロネート(5 mM)を用いて、グルタメート酸化の代替経路を評価した。複合体IIが媒介する呼吸は、マロネートが阻害する酸素消費と定義した一方、複合体I特異的呼吸は、マロネート耐性酸素消費と定義した。
【0097】
[00111]
呼吸速度は、蛍光寿命マイクロオキシゲンモニタリングシステム(Instech Laboratories, Inc.)を用いて測定した。各基質について2回の酸素消費速度測定を行い、各回に、0.24 mg/mlのタンパク質、ADP (125μM)を添加して、状態III及びその後の状態IV呼吸を刺激した。亜ミトコンドリア粒子(SMP)におけるOXPHOS特異的酵素活性を、温度制御セルホルダーを備えたVarian Cary 300 Bio UV/Vis分光光度計を用いて測定した。簡単に述べると、SMPは、単離したオルガネラの超音波破砕により調製した。複合体I活性を三重の試料において、40μM NADHを用いる15μgのミトコンドリアタンパク質による、272 nmの10μMのデシルユビキノンの低減としてモニタリングした。この方法を用いて、90~100%の合計の複合体I活性が、ロテノン阻害に対して感受性である。複合体II活性は、2 mM KCN並びに2μg/mlのロテノン及びアンチマイシンAの存在下で65μMユビキノンによる人工電子アクセプターとしての50μM DCPIPの酸化中に600 nmの吸光度をモニタリングすることにより測定した。
【0098】
腎臓ミトコンドリアにおける複合体I及び複合体II媒介呼吸の分析
[00112]
敗血症のLPSモデルにおけるミトコンドリア呼吸の特異的変化を定義し、mito2HOBAによる可能性のある防御を試験するために、本発明者らは、ミトコンドリア基質グルタメート+マラート(GM)又はスクシネートの存在下でのミトコンドリア研究についてのSeahorseプロトコールを採用した。複合体I媒介呼吸の特異的役割を定義するために、本発明者らは、複合体II阻害剤マロネート(5 mM)の存在下で測定を行った。本発明者らは、ミトコンドリア+基質の存在下での基礎呼吸、ADP (2 mM)添加後の共役呼吸、オリゴマイシン A (2.5μM)添加後のプロトン漏出、CCCP (1μM)の補充後の非共役呼吸、及びアンチマイシンA及びロテノン(1μM)の混合物を用いる非ミトコンドリア呼吸を測定した。ミトコンドリア研究は、Oroboros O2k高解像度呼吸量測定及び蛍光寿命マイクロオキシゲンモニタリングシステム(Instech Laboratories, Inc)を用いて、2つの実験室で独立して確認した。腎臓ミトコンドリアは、対照シャムマウス、LPS注射マウス(25μg/g、注射後16時間)、mito2HOBA補充マウス(0.1 g/リットル飲用水、4日間)又はmito2HOBA+LPS (0.1 g/リットルmito2HOBAを3日間+LPS注射)から単離した。一方の腎臓をミトコンドリア研究に用い、次の腎臓を病理組織学的研究に用いた。
【0099】
腎臓組織学的分析
[00113]
腎臓をマウスから採取し、直ちに10%ホルマリンに入れた。固定後、腎臓を生理食塩水で洗浄し、70%エタノールに入れ、以下の順序で処理した:70%エタノール;80%エタノール;95%エタノール;100%エタノール;100%キシレン。次いで、腎臓をPOLY/Finパラフィン(ThermoFisher)に包埋した。5μm切片を、Leitz 1512ミクロトームを用いて切断し、ガラススライド上に戴置した。切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色し、Olympus IX70顕微鏡を用いて観察した。Jenoptix Progress C12デジタルカメラを用いて画像を取り込んだ。腎臓の病理組織学的スコアを、以下のようにして測定した:(0)尿細管傷害なし;(1)<10%の尿細管が傷害;(2)10~25%の尿細管が傷害;(3)25~50%の尿細管が傷害;(4)50~75%の尿細管が傷害;(5)>75%の尿細管が傷害。
【0100】
ミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャーmito2HOBAの合成(
図7を参照)
[00114]
炭酸セシウム(4.9 g、15 mmol)を、アセトニトリル(50 ml)中の2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(4.2 g、30 mmol)及び1,4-ジブロモブタン(6.6 g、30 mmol)に加えた。混合物をアルゴン下に80℃に5時間加熱し、冷却し、1Mホスフェート緩衝液、pH7(30 ml)、氷及びKH
2PO
4 (2g)に混合しながら加えた。固体を濾過により取り除き、濾液を酢酸エチルで抽出した。カラム精製(シリカ、9:1ヘキサン-酢酸エチル)により、4-(4-ブロモブトキシ)-2-ヒドロキシベンズアルデヒド(4.1 g、50%)を得た。これを、トルエン(75 ml)中のトリフェニルホスフィン(triphenylphosphene) (4.2 g)と混合し、アルゴン下に15時間還流した。ピンク色の固体をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の0~10%メタノール)により精製して、4-(4-ホルミル-3-ヒドロキシフェノキシ)ブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(4.8 g、60%)を得た。エタノール(40 ml)中のNH
2OH.HCl (0.63 g)及びCH
3CO
2Na (0.74 g)と1時間撹拌することにより、アルデヒドをオキシムに変換した。粗生成物(5.6 g)を酢酸(60 ml)に溶解した。亜鉛粉末(6 g)を加え、懸濁物を水浴(60℃)中で1時間加熱した。混合物を冷却し、Celiteを通して濾過した。濾液を蒸発させ、トルエン (3×10 mL)及びエタノール(15 mL)と共蒸発させた。残渣を温2-プロパノール(200 ml)中で加熱し、濾過し、冷却して、純粋なmito2HOBA;3.0 g;MS m/z 456 (M
+)を得た。
【0101】
統計
[00115]
データは、Student-Neuman-Keuls事後検定及び分散分析(ANOVA)を用いて分析した。Pレベル<0.05を有意とみなした。
【0102】
結果
イソレブグランジンは、ミトコンドリア呼吸を弱めた
[00116]
複合体Iは、ミトコンドリア酸化的リン酸化の鍵となる要素である。複合体Iの不活化は、ATP生成の低減及び組織損傷を導き得る。細胞へのIsoLGの添加は、タンパク質-付加物及びIsoLG-ホスファチジルエタノールアミン付加物(IsoLG-PE)の両方を生成し、これらは独立してミトコンドリア機能障害に寄与し得る。本発明者らは、IsoLG又はIsoLG-PEがミトコンドリア機能障害に寄与し得るかを試験した。単離ミトコンドリアを15-E
2-IsoLG-PE (20μM)で5分間処理することにより、状態3呼吸が41%阻害され、複合体I基質グルタメート+マラートの存在下で同様の用量の15-E
2-IsoLGは、状態3呼吸を74%低減した(
図1A)。これらのデータは、ミトコンドリア機能障害におけるIsoLG-PE及びIsoLG-タンパク質付加物の可能性のある役割を支持する。ミトコンドリアにおけるIsoLGの可能性のある標的をさらに定義するために、本発明者らは、複合体I及び複合体II媒介呼吸に対するIsoLG及びIsoLG-PEの影響を研究した。低用量の15-E
2-IsoLG (0.5μM)の急性の添加は、複合体I媒介呼吸を著しく減じたが、複合体II呼吸はあまり影響されなかった(
図1B、C)。インタクトなミトコンドリアを低用量の15-E
2-IsoLG-PEで処理すると、複合体I呼吸が部分的に減ったが、複合体II呼吸に影響しなかった。これらのデータは、IsoLG及びIsoLG-PEによるミトコンドリア呼吸の減損を直接証明する。
【0103】
IsoLG及びIsoLG付加物は、複合体I活性を阻害する
[00117]
本発明者らは、IsoLGが複合体I及び複合体II活性に直接影響できると仮定した。この仮説を試験するために、本発明者らは、IsoLGの急速投与により処理したミトコンドリア溶解物中の複合体I及び複合体II活性を研究した。IsoLGが堅牢な複合体I不活化を74%引き起こすが、複合体II活性は21%だけ阻害されたことがわかった(
図2A)。これらのデータは、複合体I呼吸がIsoLGに部分的に感受性であることを示した。
【0104】
[00118]
上に示したように、IsoLG及びIsoLG-PEはともに、複合体I媒介呼吸を減らし、よって、複合体Iは、IsoLGにより直接影響されるか、又は低分子量IsoLG付加物により阻害され得る。本発明者らは、急速投与IsoLGと比較したIsoLG付加物による複合体Iの阻害を試験した。IsoLG修飾エタノールアミン(IsoLG-ETN)、修飾L-リジン(IsoLG-Lys)、又は修飾PE (IsoLG-PE)の補充は、急速投与IsoLGの影響と同様に、複合体I活性を80%を超えて阻害した(
図2B)。興味深いことに、IsoLG修飾スペルミン(IsoLG-スペルミン)は複合体Iに影響せず、このことは、天然のポリアミンはIsoLG媒介阻害から複合体Iを保護する可能性があることを示唆した。これらのデータは、複合体Iが、低分子量IsoLG付加物、例えばIsoLG-Lys及びIsoLG-PEにより直接阻害されることを示した。よって、これらの付加物は、IsoLGの直接添加により誘導される複合体Iの減損を媒介し得る。これらのデータにより複合体IのIsoLG媒介阻害がミトコンドリア機能障害に寄与することが直接確認される。
【0105】
ミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャーmito2HOBA
[00119]
ミトコンドリアにおけるIsoLGの特異的除去がミトコンドリア機能を改善するという仮説を試験するために、本発明者らは、親油性カチオントリフェニルホスホニウムを2-ヒドロキシベンジルアミンにコンジュゲートすることにより、ミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャー、mito2HOBAを開発した(
図3)。生細胞内のミトコンドリアの膜電位は、内部が負である(-150 mV)。この膜電位は細胞内の他のオルガネラよりもかなり高いので、親油性カチオン、例えばトリフェニルホスホニウムは、ミトコンドリア内に選択的に蓄積する。トリフェニルホスホニウムにコンジュゲートする分子は、よって、ミトコンドリアを標的する。例えば、mitoTEMPOは、500倍を超えてミトコンドリアマトリックス内に濃縮される。
【0106】
[00120]
Mito2HOBAは、媒体中に供給して、飲用水中で動物に与えることができる水溶性化合物である。動物実験において、mito2HOBAは、0.1~0.3 g/Lの用量で良好に耐容した。飲用水中(0.1 g/L)でmito2HOBAを5日間受けたマウスから単離した腎臓及び心臓ミトコンドリアの質量分光学分析により、mito2HOBAは、μMレベルでミトコンドリア画分に大部分が(80%)蓄積されることが確認された。同様に、単離ミトコンドリアとmito2HOBA (0.1μM)のインキュベーションは、400から600倍のミトコンドリアペレットへのmito2HOBAの豊富な蓄積を引き起こす(
図3)。
【0107】
[00121]
mito2HOBAのIsoLG除去特性を確認するために、本発明者らは、本発明者らが前に記載したようにして、IsoLGアナログ、4-オキソペンタナールとのその反応を研究した。Mito2HOBAは、2HOBA自体の約50%の反応速度定数で4-オキソペンタナールとの反応性が高かった(補足
図1S)。反応速度のわずかな低減は、嵩高いトリフェニルホスホニウム基による立体障害のせいであり得る。生理的条件下でのIsoLG除去の全体的な速度は、速度定数及びスカベンジャーの局所濃度(V=k*[mito2HOBA]*[IsoLG])の両方に依存する。重要なことに、2HOBAアナログは、オキシダント、例えばO
2-
・及びペルオキシナイトライトを除去しない。本発明者らは、低いマイクロモル以下のレベルでのmito2HOBAの補充が、本発明者らがミトコンドリア標的mitoTEMPOについて以前に記載したことと同様に、低い細胞質レベルであるが著しいミトコンドリア蓄積をもたらすことを示す(
図3)。このことは、細胞質における低いレベルのmito2HOBAであるが高いミトコンドリア蓄積をもたらし、ミトコンドリアにおけるIsoLGの特異的除去を導く(
図3)。
【0108】
LPS及びmito2HOBA処置マウスにおける複合体I及び複合体II媒介腎臓呼吸
[00122]
腎臓は、エネルギー要求が高く、腎臓ミトコンドリアは、アミノ基転移によりグルタメートをα-ケトグルタレートに酸化し、さらにスクシネートに変換することができる。本発明者らは、グルタメート+マラート(GM)、スクシネートの存在下でミトコンドリア呼吸を分析し、複合体II阻害剤であるマロネートを用いて、特異的複合体I媒介呼吸を測定した。マロネートは、グルタメートにより駆動される呼吸の58%を阻害し(
図4A)、このことは、腎臓ミトコンドリアの代謝的可塑性を支持した。興味深いことに、LPS注射は、GM+マロネートの存在下で、GM及びスクシネート媒介呼吸の両方を低減し、複合体I特異的酸素消費を実質的に減らす(
図4B)。LPSは、両方の基質でのミトコンドリアタンパク質漏出を実質的に増加させ、このことは、ミトコンドリア呼吸の脱共役を示す。Mito2HOBAは単独で、GM+マロネートの存在下で、スクシネートにより駆動される呼吸をわずかに低減し、複合体I特異的酸素消費を改善した(
図4C)。さらに、mito2HOBA補充は、GM+マロネートの存在下で、GM媒介呼吸及び複合体I特異的酸素消費のLPS誘導性減損から著しく防御したが、スクシネート媒介呼吸又はミトコンドリアタンパク質漏出に影響しなかった(
図4D)。
【0109】
Mito2HOBAは、敗血症のLPSモデルにおいてミトコンドリア機能障害を低減し死亡を減じる
[00123]
IsoLG媒介ミトコンドリア機能障害の役割を試験するために、本発明者らは、新規なミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャーmito2HOBA(0.1 g/L)をマウスに補充した。LPS (25μg/g-体重)での処置は、著しい死亡を引き起こしたが、ミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャーであるmito2HOBAでの処置は、注射後96時間での動物の生存を3倍増加させた(
図5A)。追加の研究は、複合体I/複合体II活性比率が、ビヒクル処置マウスと比較して、LPS処置マウスの腎臓から単離されたミトコンドリアにおいて著しく減少したことを示した(
図5B)。mito2HOBAのマウスへの補充は、LPS処置の後でさえ、複合体I/複合体II活性比率を完全に保存した。これらのデータは、敗血症に関連するミトコンドリア機能障害及び死亡におけるミトコンドリアIsoLGの役割を支持する。
【0110】
Mito2HOBAは、LPS誘導性腎損傷に対して防御する
[00124]
腎臓の組織学的分析を行って、mito2HOBA防御の視覚的証拠を得た(
図6)。対照腎臓の皮質及び髄質は、傷害の証拠なく正常であるように見えた。対照的に、LPSで処置したマウスの腎臓は、著しい細胞傷害を示した。多数の領域の空胞化及び細胞変性(矢印)が、LPS注射マウスの腎臓皮質及び髄質において同定された。髄質において、多数の近位尿細管が塩基好性に染色され(矢じり)、このことは、細胞内代謝プロセスの変化を示唆する。対照マウスと同様に、mito2HOBAを補充したマウスの腎臓は、正常であるように見えた。いくつかの小さい領域の細胞変性は、髄質にわたってまばらに散在した(図示せず)。マウスをLPS+mito2HOBAで処置した場合、皮質は正常であるように見えたが、細胞傷害が、腎臓髄質において明らかであった。小さい領域の細胞変性及び塩基好性染色が髄質にわたって観察されたが、傷害の大きさ及び程度は、LPS単独で処置されたマウスの腎臓におけるよりも小さかった。
図5Cに定量的に示されるように、mito2HOBAは、LPS誘導性細胞傷害に対して防御的であるように見えた。
【0111】
考察
[00125]
本発明者らは、IsoLG又はその安定付加物であるIsoLG-PEが、マラート及びグルタメートの存在下で、ミトコンドリア呼吸、特に複合体I媒介呼吸を損なうことを示す(
図1)。ミトコンドリア溶解物における実験は、IsoLG及びIsoLG付加物が複合体I活性を特異的に阻害したことを示す(
図2)。さらに、本発明者らは、既知のIsoLGスカベンジャー2HOBAのミトコンドリア標的形(
図3)が、LPS誘導性敗血症モデルにおける腎傷害及び動物の死亡に対して著しく防御したことを示した(
図5、6)。
【0112】
[00126]
酸化的リン酸化の減損は、敗血症における器官損傷に著しく寄与する。敗血症におけるミトコンドリア機能障害は、最近、複合体I損傷と結び付けられ、複合体Iの標的化防御は、敗血症の処置として提案されている。敗血症はIsoLG生成を増加させると以前に示されており、IsoLGは、ミトコンドリア膜透過性転移を誘導できる。本発明者らは、IsoLGが敗血症において見いだされるミトコンドリア機能障害も媒介し得ることを示す。実際に、データは、複合体I活性がIsoLG及びIsoLG付加物に特に感受性であることを示し、このことは、敗血症誘導性IsoLGが複合体I活性を阻害して、ミトコンドリア機能障害を促進する可能性があることを示唆する。結果的に、この経路は、敗血症により誘導される多臓器不全に重要であり得る。
【0113】
[00127]
NADH及びNAD依存性基質を用いると、呼吸速度は、複合体IのFAD依存性NADH脱水素酵素により制限されることが公知である。よって、呼吸鎖の全ての下流の部位は、酸化されたままであり、ほとんど活性酸素種を生成しない。速いATP生成を必要とする器官は、ピルベート又はグルタメートのアミノ基転移により生成されるスクシネートの酸化を用いて、ミトコンドリア呼吸及びATP生成の速度を加速する。本発明者らは、脳ミトコンドリアがこの経路を用いることを以前に示し、今回、本発明者らは、初めて、腎臓ミトコンドリアも、ミトコンドリア代謝産物の流れをスクシネートに迂回させることにより複合体II媒介呼吸に供給して、高いエネルギー要求に適応することを示す。複合体IIは、より単純なタンパク質であり、複合体Iと比較して存在量が多い。興味深いことに、これは、LPSモデルにおける炎症の有害な影響に対して感受性がかなり低いようである(
図4、5)。一方、複合体IIによるより高い呼吸速度は、逆電子伝達によるミトコンドリア活性酸素種の過剰生成を駆動するので、実質的な落とし穴を有する。スクシネート媒介オキシダント生成は、脳及び心臓傷害に寄与し、スクシネート駆動型逆電子伝達は、新しい治療標的として提案されている。データは、LPSが複合体Iから複合体II呼吸へのスイッチを誘導するが、以前に報告されたスクシネート駆動型心外傷と同様に、この適応不良が腎臓損傷及び炎症を促進し得ることを示す。特異的基質利用の分析は、LPS誘導性敗血症における腎臓ミトコンドリア中の複合体I、II及びIV並びに脂肪酸媒介呼吸の著しい減少を示した。データは、mito2HOBAがミトコンドリアを防御し、細胞傷害を低減することを示す。しかし、ミトコンドリアIsoLGの特異的標的は、わかりにくいままである。IsoLGは、複数のミトコンドリア複合体の機能を減じ、脂肪酸のミトコンドリア代謝を減らすことができる。ミトコンドリアIsoLGの特異的病態生理学的役割を明らかにするために、さらなる研究が正当化される。敗血症は、腎臓炎症、腎尿細管細胞傷害、アポトーシス及びミトコンドリア膨化を誘導し、脂質酸化のミトコンドリア標的阻害剤、SS-31での処置は、敗血症誘導性器官機能障害を低減する。データは、敗血症における病理的変化からのmito2HOBAの防御効果を支持する。
【0114】
[00128]
敗血症におけるミトコンドリア機能障害は、最近、複合体I損傷と結び付けられ、複合体Iの標的化が、敗血症において提案されている。本研究において、本発明者らは、複合体Iの阻害におけるIsoLG及びIsoLG付加物の可能性のある役割と、複合体I機能に対するmito2HOBAの治療効果とを証明している。本発明者らは、ミトコンドリアIsoLGの標的化が、ミトコンドリア呼吸を改善し、炎症性傷害に関連する状態におけるミトコンドリア機能障害からレスキューすることを示す。
【0115】
[00129]
炎症誘導ミトコンドリア機能障害におけるIsoLGの役割を示すために、本発明者らは、ミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャーmito2HOBAを開発した。その親油性トリフェニルホスホニウム部分に駆動されて、mito2HOBAは、複数の器官、例えば腎臓、心臓及び肝臓のミトコンドリアに豊富に蓄積された。飲用水中0.1 g/Lにて、mito2HOBAは、マウスで良好に耐容された。Mito2HOBAは、敗血症のLPSモデルにおいて著しい防御効果を示した。実際に、mito2HOBA補充は、動物の即座及び拡張された死亡を1/3に低減し、mito2HOBAは、LPS処置マウスにおける複合体I/複合体II活性比率を完全に保存する。mito2HOBAでの処置は、腎皮質における尿細管への傷害も排除し、髄質尿細管における細胞変性及び傷害を著しく低減する。mito2HOBAの迅速な効果は、敗血症患者に対して医療関係者が追加の救命手順を行うための追加の時間を与え得るので、臨床背景における転帰を改善できる。まとめると、これらのデータは、ミトコンドリア機能障害におけるミトコンドリアIsoLGの役割と、ミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャーmito2HOBAの治療能力とを支持する。
【0116】
[00130]
本発明者らは、ミトコンドリアIsoLGを標的することが、ミトコンドリアROS生成を単純に標的することよりも効果的であり得ることも示す。Kozlovらは、ミトコンドリアROSが、炎症応答を加速し、末端器官損傷を促進するので、ミトコンドリアROSを標的することが、効果的な炎症の処置であろうと提案した。実際に、ミトコンドリア標的抗酸化剤であるmitoTEMPO及びSkQ1を用いるLPS処置ラットの処置は、誘導型一酸化窒素合成酵素の発現を低減し、器官損傷のマーカーを減らした。しかし、これらのミトコンドリア標的抗酸化剤は、早い時点にて器官損傷のマーカーを増加させ、このことは、防御応答を活性化するために必要な細胞シグナル伝達との抗酸化剤の干渉の可能性を示唆した。さらに、腸管穿孔敗血症モデルの最近の研究は、ミトコンドリア抗酸化剤の延命効果の欠如も示した。これらの以前の研究で観察された明らかな矛盾した影響が敗血症の特定のモデル、用いた動物種又は敗血症侵襲の大きさに帰することがあり得るかは、明らかでない。ROSの主な非ミトコンドリア供給源であるp47phox欠損マウスにおけるNADPHオキシダーゼの遺伝子破壊は、野生型マウスと比較して、LPS誘導性NF-κB活性化を悪化させ、肺における炎症誘発性サイトカインの発現を増加し、好中球性肺胞炎を増加し、より大きい肺傷害を持続した。著しいことには、2HOBA誘導体は、ROS、例えばO2-
・及びペルオキシナイトライトを除去しないので、mito2HOBAは、以前に記載された多くの抗酸化剤のように細胞酸化還元シグナル伝達に干渉しない。これらのデータは、敗血症におけるROSの可能性のある多様な役割と、特定の細胞及び細胞内区画、例えばミトコンドリアを標的することの重要性とを示唆する。
【0117】
[00131]
本発明者らは、敗血症に関連するミトコンドリア機能障害及び死亡におけるIsoLGの可能性のある役割を、新しいミトコンドリア標的IsoLGスカベンジャーmito2HOBAを用いて試験した(図画要約及び
図5スキームを参照されたい)。本発明者らは、IsoLGが複数の酵素及び非酵素経路により生成でき、ミトコンドリアIsoLGの除去が炎症に関連するミトコンドリア機能障害及び細胞傷害を特異的に減じ得ることも示す。興味深いことに、ミトコンドリア標的抗酸化剤MitoQ及びMitoEは、ミトコンドリア脂質過酸化を減じ、インターロイキン-6を低減し、ミトコンドリア機能を改善し、LPS誘導性敗血症のラットモデルにおける器官機能障害のマーカーを減らし、これは、イソプロスタン経路における脂質過酸化により生成されるIsoLGの病態生理学的役割と一致する。よって、本発明は、ミトコンドリアIsoLGを特異的に標的することの可能性のある治療上の利益を示す。
【0118】
高血圧症
[00132]
高血圧症におけるミトコンドリアisoLGの役割を試験するために、本発明者らは、正常血圧の及び高血圧のヒト対象並びに高血圧症のアンジオテンシンIIマウスモデルにおけるミトコンドリアisoLG-タンパク質付加物の蓄積を、質量分析及びウェスタンブロット分析を用いて研究した。ミトコンドリアisoLGを標的することの治療上の可能性を、新規なミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBAにより試験した。結果は、高血圧症における血管及び腎臓組織でのミトコンドリアisoLGタンパク質付加物の実質的な蓄積を示した。さらに、高血圧の対象からの細動脈のmito2HOBA処置は、SOD2脱アセチル化を増加させ、ヒト大動脈内皮細胞におけるミトコンドリアスーパーオキシドを低減する。マウスにおいて、mito2HOBAは、ミトコンドリアisoLG-タンパク質付加物の蓄積を妨げ、SOD2及びCypDのアセチル化を低減し、ミトコンドリア呼吸を保護し、ATP生成を保存し、ミトコンドリア膜透過性孔開放をブロックし、血管スーパーオキシドを低減し、内皮NOを防御し、内皮依存性弛緩を改善し、高血圧症を減じる。これらのデータは、ミトコンドリアisoLGがミトコンドリア及び内皮機能障害を促進し、ミトコンドリアisoLGの除去が血管機能障害及び高血圧症の処置において治療能力を有し得ることを示す。
【0119】
材料及び方法
試薬
[00133]
ジヒドロエチジウム(DHE)及びMitoSOXスーパーオキシドプローブは、Invitrogen (Grand Island、NY)から購入した。Sirt3(54905)抗体はCell Signalingからであった。アセチル-K68-SOD2 (ab137037)、複合体I NDUFS1 75 kDaサブユニット(ab22094)並びにCypD (ab110324)及びGAPDH (ab8245)抗体は、Abcamからであった。SOD2 (sc30080)抗体はSanta Cruz Biotechnologyから得た。アセチル-リジン抗体(ab3839)はMillipore-Sigmaから得た。D11、isoLG-リジル付加物特異的scFv抗体は、以前に特徴決定されている。全ての抗体は1000倍希釈で用いた。2-ヒドロキシベンジルアミン(2HOBA)、ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBA及びisoLG不活性アナログ4-ヒドロキシベンジルアミン(4HOBA)を、前に記載されたようにして合成した。全ての他の試薬はSigma (St Louis、MO)から得た。
【0120】
動物実験
[00134]
高血圧症は、前に記載されたようにして、アンジオテンシンII(0.7 mg/kg/分)により誘発した。ミトコンドリアisoLGの除去の治療的能力を試験するために、野生型C57Bl/6J雄性及び雌性マウス(Jackson Labs)は、生理食塩水又はアンジオテンシンIIミニポンプ留置を受け、淡水(ビヒクル)又は飲用水中のmito2HOBA(0.1 g/リットル)を受けた。血圧は、前に記載されたようにして、遠隔測定及びテールカフ測定によりモニタリングした。Vanderbilt施設動物保護及び使用委員会は、手順を承認した(プロトコールM1700207)。単純無作為化を用いて、処置群に割り当てられる見込みが等しくなるように、シャム、アンジオテンシンII又はmito2HOBA群の動物を選択した。
【0121】
腎臓ミトコンドリア単離
[00135]
C57Bl/6Jマウスは二酸化炭素により犠牲にし、腎臓を摘出し、脂肪組織を取り除き、氷-スラリー冷単離媒体に入れた。低温室において、腎臓を切り刻み、単離媒体で洗浄し、Polytron解砕機を各々2秒間の2パルスで用いてホモジナイズした。ホモジネートを7倍(w/v)に希釈し、ミトコンドリアを分画遠心により単離し、Percollグラジエントを用いて精製した。単離媒体は、75mMマンニトール、175mMショ糖、20mM MOPS、pH7.2、1mM EGTAを含んだ。ミトコンドリアタンパク質濃度は、Bradford法により測定した。
【0122】
質量分析によるミトコンドリアisoLGの測定
[00136]
IsoLG-リジル-ラクタム付加物を、シャム又はアンジオテンシンII-注入マウスの腎臓から単離したミトコンドリアにおいて、質量分析を用いて測定した。ミトコンドリアタンパク質を、個々のアミノ酸への完全酵素消化に供した。[13C6]内部標準を加え、isoLG-リジル付加物を、固相抽出及びHPLCにより精製した後に、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析アッセイ(LC/ESI/MS/MS)により、前に記載された同位体希釈を用いて定量した。
【0123】
カルジオリピン酸化の測定
[00137]
ヒト大動脈内皮細胞におけるカルジオリピン酸化を、前に記載されたようにして、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)により測定した44。抽出脂質画分を、Waters Acquity UPLCシステム(Waters Corp.、Milford、MA)を用いてUPLCによりオンラインで分離した。質量分析を、Thermo Quantum Ultra 三重四重極型質量分析計(Thermo Scientific Inc.、San Jose、CA、USA)で行った。
【0124】
ミトコンドリア呼吸の測定
[00138]
腎臓ミトコンドリアの呼吸を、前に記載されたようにして、蛍光寿命マイクロオキシゲンモニタリングシステム(Instech Laboratories, Inc.)を用いて測定した。以下の呼吸媒体を用いた(mMで):125 mM KCl、10 mM MOPS (pH 7.2)、2 mM MgCl2、2 mM KH2PO4、10 mM NaCl、1 mM EGTA、0.7 mM CaCl2、10 mMグルタメート及び2 mMマラート。腎臓ミトコンドリア(0.2 mg/ml)、ADP(125μM)及びCCCP (0.2μM)を、従って、呼吸チャンバに加えた。呼吸調節比を、状態3の状態4に対する速度比率として計算し、ここで、状態4は、ADPリン酸化後の速度である。
【0125】
腎臓組織におけるATPレベル
[00139]
腎臓組織におけるATP濃度を、発光ATP検出アッセイキット(Abcam;Cat#ab113849)により測定した。発光シグナルを、Biotek Synergy H1プレートリーダーを用いて読み取った。発光単位は、μmol/mgタンパク質としてATP校正曲線に基づいてとして計算し、タンパク質濃度は、Bradford法により測定した。
【0126】
カルシウム保持能の推定
[00140]
カルシウム保持能(CRC)は、膜透過性転移孔が開放されるまでミトコンドリア内に負荷できるカルシウム量である。CRCは、腎臓ミトコンドリアタンパク質1mgあたりのナノモルCa2+と表す。我々は、前に記載されたpH法を用いた。この方法は、1mMのPiの存在下で、H+/Ca2+比率は比較的安定であり、pHシフトが、添加したCa2+が消費された瞬間を明確に示すという事実に基づく。ミトコンドリアCRCの値は、210 mMショ糖、20 mM KCl、3mMグリシル-グリシン(pH 7.2)、1mM KH2PO4及び0.5 mg/mミトコンドリアを含む最終容量2.0 mlの媒体において推定した。基質は、10 mMグルタメート及び2mMマラートであった。CaCl2での滴定は、ミトコンドリアに10 mM CaCl2の5μlアリコートを加えることにより行った。
【0127】
細胞培養
[00141]
ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)は、Lonza (Chicago、IL)から購入し、2%FBSを補充したが抗生物質を含まないEGM-2培地で培養した。研究の前日に、FBS濃度を1%に減らした。
【0128】
HPLCを用いるスーパーオキシド測定
[00142]
マウス大動脈セグメントに、37℃の組織培養インキュベーター中で30分間のインキュベーションにより、KHB緩衝液中のDHE (50μM)又はミトコンドリア標的mitoSOX (1μM)を負荷した。次に、大動脈セグメントをメタノール(300μl)中に入れ、ガラス乳棒でホモジナイズした。組織ホモジネートを0.22μmシリンジフィルターに通し、メタノール濾液を、以前に発表されたプロトコールに従ってHPLCにより分析した。スーパーオキシド特異的生成物である2-ヒドロキシエチジウムを、C-18逆相カラム(Nucleosil 250から4.5 mm)、並びに0.1%トリフルオロ酢酸を含む移動相及びアセトニトリル勾配(37%から47%まで)を0.5 ml/分の流速で用いて検出した。2-ヒドロキシエチジウムを、前に記載されたようにして、580 nmの発光波長及び480 nmの励起を用いる蛍光検出器により定量した。
【0129】
電子スピン共鳴(ESR)による一酸化窒素測定
[00143]
大動脈における一酸化窒素生成を、我々が前に記載したようにして、ESR及びコロイドFe(DETC)2により測定した。全てのESR試料を、液体窒素を満たした石英デュアー(Corning、New York、NY)に入れた。ESRスペクトルを、EMX ESR分光光度計(Bruker Biospin Corp.、Billerica、MA)及びスーパーハイQマイクロ波キャビティを用いて記録した。ESR設定は、以下の通りであった:磁場掃引、160ガウス;マイクロ波周波数、9.42 GHz;マイクロ波出力、10ミリワット;振幅変調、3ガウス;スキャン時間、150 msec;時定数、5.2 sec;及びレシーバゲイン、60 dB (n=4スキャン)。
【0130】
血管拡張研究
[00144]
等尺性張力研究を、C57B/6Jマウスから摘出した血管周囲脂肪がない2mmマウス冠動脈リングに対して行った。研究は、130 mM NaCl、4.7 mM KCl、1.2 mM MgSO4、1.2 mM KH2PO4、15 mM NaHCO3、5.5 mMグルコース及び1.6 mM CaCl2の組成の生理的塩溶液を含む水平ワイヤミオグラフ(DMT、Aarhus、Denmark、モデル610M及び620M)で行った。各血管の等尺性緊張を、LabChart Pro v7.3.7 (AD Instruments、Australia)を用いて記録した。冠動脈リングは、血管を最適ベースライン張力である36 mNewtonまで加熱及び拡張した後に、3サイクルの60 mM KCl生理食塩水溶液を用いて収縮することにより、2時間の期間にわたって平衡化した。内皮依存性及び非依存性の血管弛緩を、1μMフェニレフリンでの予備収縮の後に試験した。血管が定常状態収縮に一旦達したら、アセチルコリンの濃度を増加させ、薬物の各濃度に対する応答を記録した。
【0131】
ヒト研究
[00145]
SOD2及びSOD2アセチル化のウェスタンブロット分析について前に記載されたようにして、細動脈(100から200μm直径)を、本態性高血圧症(BP>140/90 mmHg)及び正常血圧の対象を含む心臓手術中の酸素リスク(Risk of Oxygen during Cardiac Surgery;ROCS)無作為化臨床試験に参加している心臓手術中に患者から得たヒト縦隔脂肪から採取した。完全なインフォームドコンセントを、全ての組織試料について得た。
【0132】
統計
[00146]
データは、平均±SEMとして表す。mito2HOBAあり又はなしでのアンジオテンシンII注入に対する応答を比較するために、二元配置分散分析(ANOVA)の後にBonferroni事後検定を用いた。2を超える群を比較するために、一元配置ANOVAの後にBonferroni事後検定を用いた。経時的な遠隔血圧測定のために、測定を反復する二元配置ANOVAを、GraphPad Prism 7を用いて行った。P値<0.05を有意とみなした。
【0133】
結果
高血圧の対象からの細動脈におけるミトコンドリアisoLGの蓄積及びSOD2アセチル化
[00147]
ミトコンドリアは、スーパーオキシドラジカルの主な供給源であり、多価不飽和脂肪酸に富む。アラキドン酸の過酸化は、反応性が高いisoLGを生成でき、これがリジン残基とタンパク質付加物を迅速に形成する。ミトコンドリアisoLGの蓄積を試験するために、我々は、抗体D11を用いてウェスタンブロットを行ったが、該抗体は、ヒト細動脈から単離したミトコンドリアにおいて、アミノ酸配列に依存せずにisoLG付加タンパク質を検出する。我々は、高血圧の患者から単離したミトコンドリアにおいて、正常血圧の対象と比較して、ミトコンドリアisoLG-リジル-ラクタムタンパク質付加物の250%の増加を観察した(
図8A)。
【0134】
[00148]
高血圧症は、ミトコンドリア脱アセチル化酵素Sirt3の不活化及びミトコンドリアスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)の過剰アセチル化に関連付けられる。Sirt3不活化におけるミトコンドリアisoLGの可能性のある役割を研究するために、我々は、ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBAを開発した(
図8B)。Mito2HOBAは、その親油性カチオントリフェニルホスホニウムのために、ミトコンドリアに選択的に蓄積する。我々は、オルガノイド培養物中のヒト細動脈を低用量のmito2HOBAで処理するとSOD2脱アセチル化が刺激されるかを試験した。実際に、mito2HOBA (0.5μM、24時間、DMEM)の補充は、SOD2アセチル化を著しく低減した(
図8C、D)。SOD2はSirt3により脱アセチル化されるので、これらのデータは、ミトコンドリアisoLGがSirt3機能を阻害することを示唆する。さらに、SOD2アセチル化はSOD2を不活化し、ミトコンドリア酸化ストレスに寄与するので、ミトコンドリアisoLGの除去は、ミトコンドリア酸化ストレスを低減し得る。
【0135】
ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBAは、内皮細胞における酸化ストレスを低減する
[00149]
本発明者らは、アンジオテンシンII (Ang II)及びTNFαが高血圧症を促進し、内皮Sirt3活性を低減することを以前に示した。我々は、mito2HOBAが、アンジオテンシンII+TNFαで4時間刺激されたヒト大動脈内皮細胞(HAEC)においてミトコンドリア酸化ストレスを低減するかを試験した(
図9)。実際に、HAECへのmito2HOBA (50 nM)の補充は、特異的スーパーオキシド-MitoSOX生成物である2-OH-Mito-エチジウムの蓄積により測定して、TNFα及びAng IIにより刺激されたミトコンドリアスーパーオキシド生成を低減した。重要なことに、同一濃度の非標的isoLGスカベンジャー2HOBA(50 nM)を細胞に補充しても、ミトコンドリアスーパーオキシドレベルに影響しなかった。ヒドロキシル基の転位のためにisoLGを除去できないisoLG不活性アナログである4HOBAでの処置は、ミトコンドリア酸化ストレスから内皮細胞を防御しなかった。
【0136】
[00150]
カルジオリピンは、ミトコンドリア内膜のマトリクス側に選択的に局在し、カルジオリピン酸化は、ミトコンドリア酸化ストレスの特異的マーカーである。我々は、mito2HOBAがアンジオテンシンII+TNFαで刺激されたヒト大動脈内皮細胞においてカルジオリピン酸化を低減するかを試験した。実際に、低用量のmito2HOBA (50 nM)をHAECに補充するとカルジオリピン酸化は阻害されたが、非標的isoLGスカベンジャー2HOBAは効果がなかった。これらのデータは、SOD2アセチル化に関連するミトコンドリア酸化ストレスの発展におけるミトコンドリアisoLGの役割を支持する。
【0137】
ミトコンドリアisoLGタンパク質付加物蓄積及び高血圧症に対するmito2HOBAの影響
[00151]
高血圧症におけるミトコンドリアisoLGの機能的役割を試験するために、我々は、高血圧症のAng IIモデルを用い、テールカフ(
図10A)及び遠隔測定(
図10B)により血圧をモニタリングした。Mito2HOBA単独は、対照マウスにおいて血圧に影響しなかった。野生型C57Bl/6JマウスにAng II(0.7 mg/kg/日)を注入すると、収縮期血圧が162 mmHgまで増加した。飲用水中(0.1 g/L)のmito2HOBAでマウスを処置すると、テールカフ及び遠隔測定の両方により測定して、Ang II誘導高血圧症を140 mmHgまで著しく減じた。マウスに同じモル用量の非標的アナログ2HOBAを補充しても、Ang II誘導高血圧症を減じなかったことに注目することが重要である(
図10A)。
【0138】
[00152]
ミトコンドリアisoLGの除去の明白な証拠を得るために、我々は、isoLG-リジル-ラクタム付加物蓄積を、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS)により、単離ミトコンドリアからの抽出タンパク質のタンパク質分解性消化の後に測定した。高血圧症は、ミトコンドリアisoLG-リジル-ラクタムタンパク質付加物の4倍の増加と関連付けられ、mito2HOBAは、腎臓ミトコンドリアにおけるisoLG-リジル-ラクタム付加物形成を止めた(
図10C、D)。
【0139】
アンジオテンシンII注入マウスにおけるミトコンドリアCypD及びSOD2脱アセチル化に対するmito2HOBAの影響
[00153]
追加の実験において、本発明者らは、Ang II誘導高血圧症が大動脈におけるミトコンドリアタンパク質の著しい過剰アセチル化と結び付き(420%)、このことが、mito2HOBAで動物を同時処置することにより正常化されることを発見した(
図11A、B)。ミトコンドリアにおける唯一の脱アセチル化酵素とまでは言わなくてもSirt3が優勢であるので、このことは、ミトコンドリアisoLGがSirt3の活性を低減することを示唆する。Sirt3は、特定のリジン残基の脱アセチル化によりSOD2を活性化し、高血圧症は、SOD2過剰アセチル化と結び付く。本発明者らは、ミトコンドリアisoLGの除去がSOD2アセチル化を低減するかを試験した。実際に、高血圧のマウスから単離した大動脈におけるSOD2アセチル化は、260%増加したが、mito2HOBA補充は、SOD2アセチル化を著しく低減した(対照マウスと比較して147%) (
図11C、D)。
【0140】
[00154]
本発明者らは、ミトコンドリア膜透過性転移孔(mPTP)の調節サブユニットであるシクロフィリンD(CypD)の欠失が、血管機能を改善し、高血圧症を減じることを報告した。CypDのSirt3媒介脱アセチル化は、mPTP開放を減じる。本発明者らは、Ang II誘導高血圧症がCypD過剰アセチル化を誘導するか、そしてmito2HOBAがCypDアセチル化を減じるかを決定することを試みた。実際に、CypDアセチル化は、高血圧のマウスから単離した大動脈において356%増加し、mito2HOBA補充は、CypDアセチル化を著しく低減した(対照と比較して156%) (
図11E)。
【0141】
[00155]
高血圧症は、大動脈ミトコンドリアにおけるisoLG-リジル-ラクタムタンパク質付加物の蓄積と関連付けられた。Mito2HOBAは、ミトコンドリアisoLG付加物の形成を阻害し、ミトコンドリアアセチル化の低減に関連付けられるisoLG-複合体I NDUFS1サブユニット付加物レベルを低減した(
図11)。
【0142】
大動脈スーパーオキシド、内皮一酸化窒素及び内皮依存性弛緩に対するmito2HOBAの影響
[00156]
Mito2HOBAは、SOD2過剰アセチル化を妨げ、このことは、mito2HOBAがミトコンドリアスーパーオキシドを低減できることを示唆する。実際に、Ang II注入高血圧症は、大動脈ミトコンドリアスーパーオキシドの2倍の増加に関連した。この増加は、mito2HOBA補充により完全に妨げられた(
図12A)。高血圧症は、ミトコンドリア及び細胞質の両方における血管スーパーオキシドの増加に関連する。これの増加は、ミトコンドリアとNADPHオキシダーゼとの間のクロストークにより容易になる。我々は、mito2HOBAが、Ang II注入マウスにおいて、非標的細胞性スーパーオキシドプローブDHEにより測定される細胞質スーパーオキシドレベルを低減するかを試験した。Ang II注入高血圧症は、大動脈細胞性スーパーオキシドの217%の増加に関連し、この増加は、mito2HOBA補充により実質的に低減された(シャム対照と比較して152%、
図12B)。
【0143】
[00157]
血管スーパーオキシドの増加は、高血圧症において内皮機能障害に寄与する。これは、血管収縮を促進し、全身性血管抵抗を増加する内皮一酸化窒素レベルを低減する。一酸化窒素バイオアベイラビリティの低減は、よって、高血圧症における内皮酸化ストレスの特徴である。我々は、ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBAでマウスを処置することが内皮酸化窒素を防御し、内皮依存性弛緩を改善するかを試験した。大動脈一酸化窒素生成は、電子スピン共鳴及び特異的酸化窒素スピントラップFe(DETC)
2により定量した。
図12に示すように、Ang II誘導高血圧症は、内皮一酸化窒素の2倍の減少と、内皮依存性弛緩の減損と関連した。著しいことに、mito2HOBAの補充は、Ang II注入マウスにおいて酸化窒素の下落を完全に妨げ、内皮依存性弛緩を保存した(
図12C、D)。これらのデータは、内皮機能障害におけるミトコンドリアisoLGのまだ認識されていなかった役割を証明する。
【0144】
ミトコンドリア呼吸、腎ATPレベル及びCa
2+保持能に対するmito2HOBA影響
[00158]
高血圧症は、mPTP開放により媒介される可能性があり、高血圧症における末端器官損傷に寄与する呼吸の減損及びATP生成の低減を特徴とするミトコンドリア機能障害と関連付けられる。現在の研究において、mito2HOBAは、mPTPのCa
2+依存性調節サブユニットであるCypDのアセチル化を低減した。我々は、mito2HOBA補充が、ミトコンドリアCa
2+保持能により測定されるmPTP開放を低減し、ミトコンドリア呼吸及びATP生成を改善するかを試験した。実際に、Ang II誘導高血圧症は、腎ミトコンドリアCa
2+保持能の50%の減少と関連し、この減少は、CypD阻害剤であるシクロスポリンAのエクスビボ補充により正常化された。Ang II注入マウスをmito2HOBAで処置すると、Ca
2+保持能の下落が完全に妨げられた(
図13A)。さらに、mito2HOBAは、基質としてグルタメート+マラートにより支持されるミトコンドリア呼吸も保存した(
図13B)。Ang II誘導性高血圧症も、腎ATPレベルの50%の減少と関連し、この減少は、mito2HOBAにより妨げられた(
図13C)。これらのデータは、ミトコンドリア呼吸を阻害できる高血圧症におけるCypD依存性mPTP開放におけるミトコンドリアisoLGが、 ATPレベルを低減し、高血圧症における末端器官損傷を促進することと関係する。
【0145】
考察
[00159]
この例は、ミトコンドリアisoLGが、本態性高血圧症の患者の細動脈及びAng II誘導高血圧症のマウスにおいて、蓄積することの最初の証拠を示す。ミトコンドリアisoLGは、正常血圧の対象と比較して高血圧の患者の細動脈から単離したミトコンドリアにおいて、そしてAng II誘導高血圧症の発症後のマウスにおける大動脈及び腎臓から単離したミトコンドリアにおいて、著しく増加した。ミトコンドリアisoLG-リジル-ラクタムタンパク質付加物の形成は、2つの独立した方法、すなわちD11-抗体アッセイ及び質量分析により確認された。これらの方法は、以前に精力的に確認されており、ミトコンドリアにおけるisoLG-タンパク質付加物の蓄積を明白に支持する。さらに、ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBAは、ミトコンドリアにおけるisoLG-タンパク質付加物の蓄積を妨げ、mito2HOBAは、高血圧の患者からのヒト細動脈におけるSOD2脱アセチル化を増加し、ヒト大動脈内皮細胞におけるミトコンドリアスーパーオキシドを低減し、血管酸化ストレスを阻害し、内皮機能を改善し、Ang II誘導高血圧症を低減した。さらに、Ang II注入マウスへのmito2HOBAの補充は、腎臓ATPレベルを上昇させ、ミトコンドリア呼吸を防御し、mPTP開放を減じ、このことは、高血圧症におけるミトコンドリア機能障害の発生におけるミトコンドリアisoLG蓄積の役割を支持する。ウェスタンブロット研究により、高血圧症はSirt3脱アセチル化酵素活性及びミトコンドリア過剰アセチル化の低減と関連付けられる一方、mito2HOBAはミトコンドリアタンパク質、特にSOD2及びCypDのSirt3媒介脱アセチル化を増加させることが明らかになった。これらの知見は、SOD2不活化 及びCypD依存性mPTP開放におけるミトコンドリアisoLGの役割を支持する(
図14を参照されたい)。
【0146】
[00160]
高血圧症は、ミトコンドリア酸化ストレスに関連する多因子障害である。しかし、高血圧症におけるミトコンドリア酸化ストレスの正確の標的は、明らかでない。我々は、高血圧症の動物モデルにおけるミトコンドリアスーパーオキシドの生成の増加と、ミトコンドリアSOD2活性の低減とを以前に示した12。ミトコンドリアスーパーオキシドの増加とSOD2活性の低減との間の不均衡は、ミトコンドリア酸化ストレスを導く。ミトコンドリアは、スーパーオキシドラジカルの主な供給源であり、不飽和脂肪酸、例えばアラキドン酸に富む。アラキドン酸のフリーラジカル酸化は、isoLGを含む反応性が高い脂質ジカルボニルを生成する。これらは、タンパク質リジン残基と迅速に付加し、細胞性機能障害を誘導し得る。我々のデータは、高血圧症における血管及び腎臓組織から単離したミトコンドリアにおけるisoLG-リジル-ラクタムタンパク質付加物の実質的な蓄積を示す。低用量のミトコンドリア標的isoLGスカベンジャーmito2HOBA (50 nM)の補充は、ヒト大動脈内皮細胞におけるミトコンドリア酸化ストレスを妨げるが、非標的アナログ2HOBAは、効果的でない。2HOBA及びmito2HOBAはスーパーオキシド、ペルオキシナイトライト又は過酸化水素と反応せず、よってROS除去により直接その影響を発揮しないことに注目することが重要である。対照的に、Ang II注入マウス及びHAECにおいて観察されるミトコンドリア、細胞性及び大動脈スーパーオキシドにおけるmito2HOBA媒介低減は、SOD2によるこのラジカルの除去の促進による可能性がある。これは、我々の知見の合理的な解釈である。なぜなら、我々は、mito2HOBA処置動物においてAng II誘導性SOD2過剰アセチル化の劇的な低減を観察し、SOD2が唯一のミトコンドリアスーパーオキシドジスムターゼであるからである。
【0147】
[00161]
内皮機能障害は、一酸化窒素不活化、内皮一酸化窒素生成の低減及び内皮依存性弛緩の減損を導く血管スーパーオキシドの増加と結び付く。Mito2HOBAは、血管スーパーオキシドを低減し、内皮一酸化窒素を防御し、内皮依存性弛緩を改善する。内皮細胞において、mito2HOBAは、スーパーオキシド生成を阻害し、酸化ストレスを低減する。mito2HOBAのこれらの効果は、SOD2及びCypDのSirt3媒介脱アセチル化の増加と関連した。Sirt3減損は、血管炎症、肥厚及び内皮機能障害に寄与する。我々の新しいデータは、Sirt3不活化、内皮及び血管機能障害におけるミトコンドリアisoLGの重要な役割を支持する。
【0148】
[00162]
ミトコンドリア機能障害は、高血圧症における標的器官損傷に寄与する。高血圧症は、代謝及びミトコンドリア機能障害と結び付く腎臓疾患の主な原因である。本研究において、我々は、Ang II誘導高血圧症が、腎臓ミトコンドリアisoLGの4倍の増加、mPTP開放の増加及び腎臓ミトコンドリアにおける呼吸の減損と関連することを見出した。これらの事象は、腎臓ATPレベルの2倍の減少と関連した。著しいことに、mito2HOBA補充は、腎臓におけるミトコンドリアisoLGの蓄積を妨げ、mPTP開放を減じ、ミトコンドリア呼吸を保存し、腎臓ATP生成を防御する。これらのデータは、高血圧腎傷害におけるミトコンドリアisoLGの役割を強く支持する。これらのデータは、リポ多糖処置マウスにおけるmito2HOBA補充が腎臓ミトコンドリアの呼吸を改善し、細胞傷害から腎皮質を防御することを示す我々の以前の知見と一致する。
【0149】
[00163]
よって、本発明者らは、主要心血管リスクファクターの相互作用の根底にある新しい収束機構としてのSirt3不活化を示す。Sirt3減損は、脂質代謝を阻害し、特定のリジン残基の過剰アセチル化により鍵となるミトコンドリア抗酸化剤、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)を不活化する。よって、Sirt3不活化は、ミトコンドリアにおいて一緒に反応して反応性が高いisoLGを生成する多価不飽和脂肪酸及びスーパーオキシドのレベルを増加させる。IsoLGは、リジン残基と共有結合して、細胞傷害性かつ炎症誘発性のisoLG付加物を作製する。我々は、高血圧症においてミトコンドリアisoLGが4倍増加することを見出した。ミトコンドリアisoLGは、ミトコンドリア酸化ストレスと疾患進行との間の機械論的結び付きとなる。以前の研究は、複合体VのF1FoサブユニットとのisoLGs付加物を同定しており、我々は、ミトコンドリア複合体IのNDUFS1サブユニットとのisoLG付加物の形成を報告する。ミトコンドリアisoLGが直接
64及び間接的相互作用により、Sirt3不活化を引き起こすことが考えられる。一方、ミトコンドリアisoLGとSirt3不活化との間の因果関係は、まだ明らかでない。isoLG曝露がSirt3を阻害することが明らかであるが、Sirt3減損がミトコンドリアisoLG形成を促進することも可能である。実際に、高血圧の患者から単離したヒト細動脈の処置は、Sirt3活性をレスキューし、Sirt3媒介SOD2脱アセチル化を増加させる。我々は、Sirt3不活化とミトコンドリアisoLGとの間のフィードフォワードサイクルが血管機能障害を促進し、ミトコンドリアisoLGの除去がこのサイクルを破壊し、血管機能を改善することを示す(
図14を参照されたい)。よって、isoLGがSirt3不活化の上流及び下流の両方であることがわかる。
【0150】
[00164]
isoLGの病態生理学的役割は、血管炎症、高血圧症及び心不全を含む様々な状態で報告されている。非標的isoLGスカベンジャー2HOBAの補充は、血管炎症を低減し、組織線維化を減らし、大動脈硬化を減少し、心肥大を和らげ、高血圧症及び心不全を減じる。これらの状態において、NADPHオキシダーゼの刺激は、細胞質におけるisoLGの形成を促進し、ここで2HOBAにより消去され得る。一方、ミトコンドリアは、isoLGの供給源及び可能性のある標的であるので、細胞質において生成されるisoLGは、ミトコンドリア機能障害にも寄与し得る。実際に、我々の実験は、2HOBAが培養ヒト大動脈内皮細胞におけるミトコンドリアスーパーオキシドの過剰生成を部分的に減じることを示し(
図2)、このことは、ミトコンドリア内及びミトコンドリア外のisoLGがともに、ミトコンドリア酸化ストレスを促進することを示唆した。
【0151】
[00165]
よって、本発明は、培養内皮細胞における、ヒト細動脈を含むオルガノイド培養における及び全動物補充におけるmito2HOBAの効果を示す。内皮、平滑筋及び他の細胞におけるミトコンドリアisoLGの特異的役割を決定するために、さらなる研究が必要である。我々は、本発明の化合物が、ミトコンドリアisoLGの遮断に効果的であり、血管酸化ストレスを低減し、内皮機能を改善する代謝及び抗酸化ミトコンドリア機能を回復するSirt3脱アセチル化酵素活性をレスキューし、よって、mito2HOBAが血管機能障害及び高血圧症の処置を改善できることを示す。
【0152】
[00166]
高血圧症は、老化とともに高く普及しており、成人の75%は、70歳以上で高血圧である。Sirt3機能は、年齢とともに減退し、Sirt3枯渇は、血管老化を加速し、ミトコンドリア酸化ストレスに関連する年齢依存性高血圧症を誘導する。Sirt3発現は、ヒト長寿と関連し、Sirt3過剰発現は、血管機能障害及び高血圧症から防御する。Sirt3減損及びミトコンドリアisoLGが年齢依存性血管変化及び高血圧症を促進でき、よって、ミトコンドリアisoLGの除去がこれらの年齢に関連する変化を遅延及び逆転できるとの推測は、興味深い。実際に、我々のヒト組織研究は、mito2HOBAが本態性高血圧症の患者におけるSirt3活性を部分的にレスキューすることを示唆する。著しいことに、オキシダントのほとんどは、非常に短い寿命(秒単位)を有するが、isoLGは、年齢とともに蓄積し得るので年齢に関連する状態の発展に寄与し得るむしろ安定な付加物(日単位の寿命)を生成する。
【0153】
[00167]
高血圧症に加えて、ミトコンドリア酸化ストレスは、老化、アテローム動脈硬化症、糖尿病、炎症及び変性神経障害を含む多くの他の状態に寄与する可能性がある。ミトコンドリアisoLGの蓄積は、これらの状態に影響し得る。ミトコンドリア標的isoLGスカベンジャー、例えばmito2HOBAの使用がこれらの状態において有益であり得ることが考えられる。比較的低用量でミトコンドリアを防御する能力は、非標的物質、例えば2HOBAと比較して、可能性のある不利な効果も制限し得る。
【0154】
[00168]
本明細書で言及する全ての出版物、特に以下に言及するものは、出版物が引用された関連する方法及び/又は材料について開示及び記載するために、参照により本明細書に組込まれている。本明細書で論じる出版物は、本出願の出願日前の開示についてのみ提供される。本明細書のいずれも、本発明が、先立つ発明のおかげでこのような出版物が先立たないことを認めると解釈されない。さらに、本明細書に示す出版物の日付は、実際の公開日と異なる可能性があり、これは個別に確認する必要がある。
【0155】
参考文献
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【0156】
本発明について記載したが、本発明は多くの様式で異なり得ることは明らかである。当業者に明らかなこのような変動は、本開示の一部であるとみなされる。
そうでないと記載しない限り、本明細書で用いる成分、特性、例えば反応条件などの量を表す全ての数字は、用語「約」で全ての場合において修飾されていると理解される。したがって、そうでないと記載しない限り、明細書及び特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、本発明により決定しようとする所望の特性に依存して変動し得る近似値である。
本発明の広い範囲に記載される数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、実験部又は実施例部に記載される数値は、できるだけ正確に報告される。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定において見いだされる標準偏差に必然的に起因するある種の誤差を固有に含む。
【国際調査報告】