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特表2023-512237NRG1融合体を有するがんの治療のためのポジオチニブの使用
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  • 特表-NRG1融合体を有するがんの治療のためのポジオチニブの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】NRG1融合体を有するがんの治療のためのポジオチニブの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20230316BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230316BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230316BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230316BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230316BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A61K31/517
C12Q1/02
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
G01N33/574 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545993
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 US2021015686
(87)【国際公開番号】W WO2021155130
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/967,265
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヘイマッハ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロビショー ジャクリン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ58
4B063QR08
4B063QS25
4B063QS36
4B063QX02
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
ポジオチニブを用いた治療のためにがん患者を選択する方法、およびそのように選択されたがん患者を治療する方法が、本明細書において提供される。がん患者は、患者のがんがNRG1融合体を有する場合、治療のために選択される。次いで、選択された患者は、ポジオチニブを単独で用いて、またはHER2/HER3標的化抗体との組み合わせで用いて、治療される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有する患者を治療する方法であって、
治療的有効量のポジオチニブを該患者に投与する工程
を含み、該がんがNRG1融合体を有する、方法。
【請求項2】
がんを有する患者を治療する方法であって、
(a)該患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを、決定するまたは決定していた工程;
(b)該患者のがんがNRG1融合体を有する場合に、ポジオチニブを用いた治療のために、該患者を、選択するまたは選択していた工程;および
(c)治療的有効量のポジオチニブを、該選択された患者に、投与するまたは投与していた工程
を含む、方法。
【請求項3】
前記NRG1融合体が、NRG1-DOC4融合体、NRG1-VAMP2融合体、NRG1-CLU融合体、NRG1-SLC3A2融合体、NRG1-CD74融合体、NRG1-ATP1B1融合体、またはNRG1-SDC4融合体である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
HER2/HER3標的化抗体を前記患者に投与する工程
をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記HER2/HER3標的化抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、またはT-DM1を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程(a)が、
(i)前記患者から生体試料を、得るまたは得ていた段階;および
(ii)前記患者のがんがNRG1融合体を有することを決定するために、該生体試料に対してアッセイを、実施するまたは実施していた段階
を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記患者にさらなる抗がん療法を施す工程
をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記さらなる抗がん療法が、手術療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、神経芽腫、膵臓がん、脳腫瘍、胃がん、皮膚がん、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記がんが、乳がんまたは肺がんである、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、少なくとも1ラウンドの抗がん療法を以前に受けている、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記患者のがんにおけるNRG1融合体の存在を報告する工程
をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
報告する工程が、文書でのまたは電子的な報告書を作成する段階を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記対象、医師、病院、または保険会社に、前記報告書を提出する工程
をさらに含む、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
ポジオチニブを用いた治療のために、がんを有する患者を選択する方法であって、
(a)該患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを、決定するまたは決定していた工程;
(b)該患者のがんがNRG1融合体を有する場合に、ポジオチニブを用いた治療のために、該患者を、選択するまたは選択していた工程
を含む、方法。
【請求項16】
工程(a)が、
(i)前記患者から生体試料を、得るまたは得ていた段階;および
(ii)前記患者のがんがNRG1融合体を有することを決定するために、該生体試料に対してアッセイを、実施するまたは実施していた段階
を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
(c)治療的有効量のポジオチニブを、前記選択された患者に、投与するまたは投与していた工程
をさらに含む、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
前記NRG1融合体が、NRG1-DOC4融合体、NRG1-VAMP2融合体、NRG1-CLU融合体、NRG1-SLC3A2融合体、NRG1-CD74融合体、NRG1-ATP1B1融合体、またはNRG1-SDC4融合体である、請求項15~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
HER2/HER3標的化抗体を前記患者に投与する工程
をさらに含む、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記HER2/HER3標的化抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、またはT-DM1を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記患者にさらなる抗がん療法を施す工程
をさらに含む、請求項17~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記さらなる抗がん療法が、手術療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記がんが、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、神経芽腫、膵臓がん、脳腫瘍、胃がん、皮膚がん、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である、請求項15~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記がんが、乳がんまたは肺がんである、請求項15~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、少なくとも1ラウンドの抗がん療法を以前に受けている、請求項15~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記患者のがんにおけるNRG1融合体の存在を報告する工程
をさらに含む、請求項17~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
報告する工程が、文書でのまたは電子的な報告書を作成する段階を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記対象、医師、病院、または保険会社に、前記報告書を提出する工程
をさらに含む、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
がんを有する患者を治療する方法であって、
組み合わせた治療的有効量のポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを、該患者に投与する工程
を含み、該がんがNRG1融合体を有する、方法。
【請求項30】
がんを有する患者を治療する方法であって、
(a)該患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを、決定するまたは決定していた工程;
(b)該患者のがんがNRG1融合体を有する場合に、ポジオチニブおよびHER2/HER3標的化抗体を用いた治療のために、該患者を、選択するまたは選択していた工程;ならびに
(c)組み合わせた治療的有効量のポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを、該選択された患者に、投与するまたは投与していた工程
を含む、方法。
【請求項31】
前記NRG1融合体が、NRG1-DOC4融合体、NRG1-VAMP2融合体、NRG1-CLU融合体、NRG1-SLC3A2融合体、NRG1-CD74融合体、NRG1-ATP1B1融合体、またはNRG1-SDC4融合体である、請求項29または30記載の方法。
【請求項32】
前記HER2/HER3標的化抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、またはT-DM1を含む、請求項29~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
工程(a)が、
(i)前記患者から生体試料を、得るまたは得ていた段階;および
(ii)前記患者のがんがNRG1融合体を有することを決定するために、該生体試料に対してアッセイを、実施するまたは実施していた段階
を含む、請求項29~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
前記患者にさらなる抗がん療法を施す工程
をさらに含む、請求項29~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
前記さらなる抗がん療法が、手術療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記がんが、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、神経芽腫、膵臓がん、脳腫瘍、胃がん、皮膚がん、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である、請求項29~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記がんが、乳がんまたは肺がんである、請求項29~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記患者が、少なくとも1ラウンドの抗がん療法を以前に受けている、請求項29~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
前記患者のがんにおけるNRG1融合体の存在を報告する工程
をさらに含む、請求項29~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
報告する工程が、文書でのまたは電子的な報告書を作成する段階を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記対象、医師、病院、または保険会社に、前記報告書を提出する工程
をさらに含む、請求項39または40記載の方法。
【請求項42】
ポジオチニブおよびHER2/HER3標的化抗体を用いた治療のために、がんを有する患者を選択する方法であって、
(a)該患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを、決定するまたは決定していた工程;
(b)該患者のがんがNRG1融合体を有する場合に、ポジオチニブおよびHER2/HER3標的化抗体を用いた治療のために、該患者を、選択するまたは選択していた工程
を含む、方法。
【請求項43】
工程(a)が、
(i)前記患者から生体試料を、得るまたは得ていた段階;および
(ii)前記患者のがんがNRG1融合体を有することを決定するために、該生体試料に対してアッセイを、実施するまたは実施していた段階
を含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
(c)組み合わせた治療的有効量のポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを、前記選択された患者に、投与するまたは投与していた工程
をさらに含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項45】
前記NRG1融合体が、NRG1-DOC4融合体、NRG1-VAMP2融合体、NRG1-CLU融合体、NRG1-SLC3A2融合体、NRG1-CD74融合体、NRG1-ATP1B1融合体、またはNRG1-SDC4融合体である、請求項42~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
前記HER2/HER3標的化抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、またはT-DM1を含む、請求項42~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
前記患者にさらなる抗がん療法を施す工程
をさらに含む、請求項44~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
前記さらなる抗がん療法が、手術療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記がんが、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、神経芽腫、膵臓がん、脳腫瘍、胃がん、皮膚がん、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である、請求項42~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
前記がんが、乳がんまたは肺がんである、請求項42~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
前記患者が、少なくとも1ラウンドの抗がん療法を以前に受けている、請求項42~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
前記患者のがんにおけるNRG1融合体の存在を報告する工程
をさらに含む、請求項44~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
報告する工程が、文書でのまたは電子的な報告書を作成する段階を含む、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記対象、医師、病院、または保険会社に、前記報告書を提出する工程
をさらに含む、請求項52または53記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2020年1月29日に出願された米国特許仮出願第62/967,265号の優先権の恩恵を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1.分野
本発明は、概して、医学および腫瘍学の分野に関する。より詳細には、本発明は、ポジオチニブを、単独で用いた、またはHER2/HER3標的化抗体との組み合わせで用いた治療のために、がん患者を選択するための方法、およびそのように選択されたがん患者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
NRG1融合体は非小細胞肺がん(NSCLC)の0.3%で生じ、胆嚢(0.5%)、乳房(0.2%)、卵巣(0.4%)、および結腸直腸(0.1%)がんを含めたいくつかの他のがんタイプで観察されている(Jonna et al., 2019)。共通のNRG1融合体パートナーは、CD74(NRG1融合体の29%)、ATP1B1(NRG1融合体の10%)、およびSDC4(NRG1融合体の7%)である(Jonna et al., 2019)。NRG1はHER3受容体に結合して、HER2との優先的なヘテロ二量体化を引き起こし(Shin et al., 2018;Jung et al., 2015;Fernandez-Cuesta et al., 2014)、これは、ERBBファミリーシグナリングの最も強力な形態の1つである(Holbro et al., 2003)。以前の報告によって、HER2/HER3シグナリング経路を標的指向することが、NRG1融合体がもたらすErbBシグナリングの阻害に有効であり得ることが示された(Shin et al., 2018;Fernandez-Cuesta et al., 2014;Drilon et al., 2018)。以前の報告によって、ポジオチニブが、EGFR(Robichaux et al., 2018)およびHER2(Robichaux et al., 2019)変異の両方を阻害し得ることも示された。しかし、NRG1融合体を有する患者のための承認された標的療法はない。
【発明の概要】
【0004】
概要
一態様では、がんを有する患者を治療する方法であって、
(a)患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを、決定するまたは決定していた工程;
(b)患者のがんがNRG1融合体を有する場合に、ポジオチニブを用いた治療のために、患者を、選択するまたは選択していた工程;および
(c)治療的有効量のポジオチニブを、選択された患者に、投与するまたは投与していた工程
を含む、方法が、本明細書において提供される。
いくつかの局面では、工程(a)は、
(i)患者から生体試料を、得るまたは得ていた段階;および
(ii)患者のがんがNRG1融合体を有することを決定するために、生体試料に対してアッセイを、実施するまたは実施していた段階、を含む。
【0005】
一態様では、がんを有する患者を治療する方法であって、治療的有効量のポジオチニブを、患者に投与する工程を含み、がんがNRG1融合体を有する、方法が、本明細書において提供される。一態様では、患者のがん治療で使用するための、治療的有効量のポジオチニブを含む組成物であって、患者のがんがNRG1融合体を有する、組成物が、本明細書において提供される。
【0006】
一態様では、ポジオチニブを用いた治療のために、がんを有する患者を選択する方法であって、
(a)患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを、決定するまたは決定していた工程;
(b)患者のがんがNRG1融合体を有する場合に、ポジオチニブを用いた治療のために、患者を、選択するまたは選択していた工程
を含む、方法が、本明細書において提供される。
いくつかの局面では、工程(a)は、
(i)患者から生体試料を、得るまたは得ていた段階;および
(ii)患者のがんがNRG1融合体を有することを決定するために、生体試料に対してアッセイを、実施するまたは実施していた段階、を含む。
いくつかの局面では、方法は、
(c)治療的有効量のポジオチニブを、選択された患者に、投与するまたは投与していた工程
をさらに含む。
【0007】
一態様では、がんを有する患者を治療する方法であって、
(a)患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを、決定するまたは決定していた工程;
(b)患者のがんがNRG1融合体を有する場合に、ポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを用いた治療のために、患者を、選択するまたは選択していた工程;および
(c)組み合わせた治療的有効量のポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを、選択された患者に、投与するまたは投与していた工程
を含む、方法が、本明細書において提供される。
いくつかの局面では、工程(a)は、
(i)患者から生体試料を、得るまたは得ていた段階;および
(ii)患者のがんがNRG1融合体を有することを決定するために、生体試料に対してアッセイを、実施するまたは実施していた段階、を含む。
【0008】
一態様では、がんを有する患者を治療する方法であって、組み合わせた治療的有効量のポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを、患者に投与する工程を含み、がんがNRG1融合体を有する、方法が、本明細書において提供される。一態様では、患者のがん治療で使用するための、治療的有効量のポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを含む組成物であって、患者のがんがNRG1融合体を有する、組成物が、本明細書において提供される。
【0009】
一態様では、ポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを用いた治療のために、がんを有する患者を選択する方法であって、
(a)患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを、決定するまたは決定していた工程;
(b)患者のがんがNRG1融合体を有する場合に、ポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを用いた治療のために、患者を、選択するまたは選択していた工程
を含む、方法が、本明細書において提供される。
いくつかの局面では、工程(a)は、
(i)患者から生体試料を、得るまたは得ていた段階;および
(ii)患者のがんがNRG1融合体を有することを決定するために、生体試料に対してアッセイを、実施するまたは実施していた段階、を含む。
いくつかの局面では、方法は、
(c)組み合わせた治療的有効量のポジオチニブとHER2/HER3標的化抗体とを、選択された患者に、投与するまたは投与していた工程
をさらに含む。
【0010】
態様のいずれかのいくつかの局面では、NRG1融合体は、NRG1-DOC4融合体、NRG1-VAMP2融合体、NRG1-CLU融合体、NRG1-SLC3A2融合体、NRG1-CD74融合体、NRG1-ATP1B1融合体、またはNRG1-SDC4融合体である。
【0011】
態様のいずれかのいくつかの局面では、方法は、HER2/HER3標的化抗体を、患者に投与する工程をさらに含む。いくつかの局面では、HER2/HER3標的化抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、またはT-DM1を含む。
【0012】
態様のいずれかのいくつかの局面では、方法は、患者にさらなる抗がん療法を施す工程をさらに含む。いくつかの局面では、さらなる抗がん療法は、手術療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、毒素療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である。
【0013】
態様のいずれかのいくつかの局面では、がんは、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、神経芽腫、膵臓がん、脳腫瘍、胃がん、皮膚がん、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、食道がん、子宮頸がん、頭頸部がん、黒色腫、または膠芽腫である。いくつかの局面では、がんは、乳がんまたは肺がんである。
【0014】
態様のいずれかのいくつかの局面では、患者は、少なくとも1ラウンドの抗がん療法を以前に受けている。態様のいずれかのいくつかの局面では、方法は、患者のがんにおけるNRG1融合体の存在を報告する工程をさらに含む。いくつかの局面では、報告する工程は、文書でのまたは電子的な報告書を作成する段階を含む。いくつかの局面では、方法は、対象、医師、病院、または保険会社に報告書を提出する工程をさらに含む。
【0015】
本明細書において使用する場合、特定の成分の観点から「本質的にない」は、特定の成分のいずれも意図的に組成物中に配合されていないこと、および/または混入物としてしか存在しない、もしくは微量でしか存在しないことを意味するように、本明細書において使用される。組成物の任意の意図されない混入に起因する特定の成分の総量は、したがって、0.05%をはるかに下回り、好ましくは0.01%を下回る。特定の成分の量が標準的な分析方法で検出することができない組成物が、最も好ましい。
【0016】
本明細書において使用する場合、「1つ(a)」または「1つ(an)」は、1つまたは複数を意味し得る。請求項において使用する場合、単語「1つ(a)」または「1つ(an)」は、単語「含む(comprising)」とともに使用される場合に、1つまたは1つより多くを意味し得る。
【0017】
請求項における用語「または」の使用は、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持するが、代替物のみを指すことが明確に示されていない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するように使用される。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味し得る。
【0018】
本出願の全体を通して、用語「約」は、値が、値を決定するために用いられるデバイス、方法についての誤差の固有の変動、研究対象の間に存在する変動、または記載される値の10%以内の値を含むことを示すように使用される。
【0019】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい態様を示すが、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになると考えられることから、例示のためのみに与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の局面をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することにより、より良く理解することができる。
図1】ポジオチニブで72時間処理したMDA175-VII(NRG1-DOC4融合体)についてのIC50値の棒グラフ。
図2図2A:低用量ポジオチニブ(0.1nM)ありおよびなしで示される、HER2/HER3抗体で72時間処理したMDA175-VII(NRG1-DOC4融合体)細胞株の用量反応曲線。X軸の100ng/mLの値で、線は、上から下に、T-DM1、トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブ+ポジオチニブ0.1nM、T-DM1+ポジオチニブ0.1nM、およびペルツズマブ+ポジオチニブ0.1nMを表す。図2B:低用量ポジオチニブ(0.1nM)ありおよびなしで示される、HER2/HER3抗体で72時間処理したMDA175-VII(NRG1-DOC4融合体)細胞株についてのIC50値の棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
NRG1融合体を有するがん患者を治療するための方法が、本明細書において提供される。特に、本方法は、NRG1融合体を有するとして特定されたがん患者への、単独で、またはHER2/HER3標的化抗体との組み合わせで、のいずれかの、ポジオチニブ(HM781-36Bとしても公知である)の投与を含む。さらに、本方法は、患者のがんがNRG1融合体を有するかどうかを決定することによって、単独で、またはHER2/HER3標的化抗体との組み合わせで、のいずれかの、ポジオチニブの投与から恩恵を受ける可能性があるがん患者を、特定および選択することを含む。
【0022】
I.NRG1融合体
NRG1融合体遺伝子は、異なる染色体位置からの配列に融合したNRG1遺伝子の少なくとも一部を含む。「少なくとも一部」は、NRG1遺伝子全体が、融合体またはその一部に存在し得ることを示す。融合体は、少なくともNRG1のエクソン6、7、および8のコード配列を有し得る。NRG1融合体遺伝子中のNRG1部分を定義する別の方法は、それがNRG1のEGF様ドメインを含むということである。EGF様ドメインは本遺伝子の3’末端にコードされ、ErbB-3への結合に必要である。NRG1融合体は、EGF様ドメインについてインフレームのコード領域を保持する。NRG1遺伝子の一部は、異なる染色体位置からの配列に融合していてもよく、その結果、該配列はNRG1遺伝子の一部に対して5’または3’に位置する。
【0023】
好ましくは、NRG1遺伝子の3’末端は異なる染色体位置からの配列に融合し得る。特に、NRG1融合体遺伝子は、NRG1遺伝子の3’末端と、以下からなる群より選択される遺伝子の1つの5’配列との、融合体である:DOC4(テニューリン膜貫通タンパク質4(TENM4);タンパク質Odd Oz/Ten-M相同体4;テネイシン-M4;Ten-M4;Ten-4;ODZ4;TNM4;Odz、Odd Oz/Ten-M相同体4(ショウジョウバエ(Drosophila));Odz、Odd Oz^en-M相同体4;テニューリン-4;KIAA1302;Doc4;ETM5;HGNC:29945;Entrez Gene:26011;Ensembl:ENSG00000149256;OMIM:610084;およびUniProtKB:Q6N022としても公知である);CD74(CD74分子;CD74抗原(主要組織適合遺伝子複合体の不変ポリペプチド、クラスII抗原関連);CD74分子、主要組織適合遺伝子複合体、クラスII不変鎖;HLA-DR抗原関連不変鎖;クラスII抗原のガンマ鎖;1a関連不変鎖;MHC HLA-DRガンマ鎖;HLA-DR-ガンマ;DHLAG;P33;HLAクラスII組織適合抗原ガンマ鎖;1a抗原関連不変鎖;1a-ガンマ;HLADG;HGNC:1697;Entrez Gene:972;Ensembl:ENSG00000019582;OMIM:142790、およびUniProtKB:P04233としても公知である);TNFRSF10B(TNF受容体スーパーファミリーメンバー10b;腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー10b;TNF関連アポトーシス誘導リガンド受容体2;細胞死受容体5;TRAIL-R2;TRAILR2;KILLER;TRICK2;ZTNFR9;DR5;P53調節性DNA損傷誘導性細胞死受容体(キラー);腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10B;腫瘍壊死因子受容体様タンパク質ZTNFR9;TRAIL/Apo-2Lに対するデスドメイン含有受容体;アポトーシス誘導タンパク質TRICK2A/2B;アポトーシス誘導受容体TRAIL-R2;細胞傷害性TRAIL受容体-2;Fas様タンパク質;TRAIL受容体2;CD262抗原;KILLER/DR5;TRICK2A;TRICK2B;TRICKB;CD262;HGNC:11905;Entrez Gene:8795;Ensembl:ENSG00000120889;OMIM:603612;およびUniProtKB:014763としても公知である);CLU(クラスタリン;テストステロン抑制前立腺メッセージ2;アポリポタンパク質J;補体関連タンパク質SP-40,40;補体細胞溶解インヒビター;補体溶解インヒビター;硫酸化糖タンパク質2;Ku70結合タンパク質1;NA1/NA2;TRPM-2;APO-J;APOJ;KUB1;CLI;クラスタリン(補体溶解インヒビター、SP-40,40、硫酸化糖タンパク質2、テストステロン抑制前立腺メッセージ2、アポリポタンパク質J);老化関連遺伝子4タンパク質;老化関連タンパク質4;SGP-2;SP-40;TRPM2;AAG4;CLU1;CLU2;SGP2;HGNC:2095;Entrez Gene:1191;Ensembl:ENSG00000120885;OMIM:185430;およびUniProtKB:P10909としても公知である);VAMP2(小胞結合膜タンパク質2;シナプトブレビン2;SYB2;小胞結合膜タンパク質2;シナプトブレビン-2;HGNC:12643;Entrez Gene:6844;Ensembl:ENSG00000220205;OMIM:185881;およびUniProtKB:P63027としても公知である);SLC3A2(溶質輸送体ファミリー3メンバー2;リンパ球活性化抗原4F2大サブユニット;溶質輸送体ファミリー3(二塩基性および中性アミノ酸輸送の活性化因子)、メンバー2;モノクローナル抗体4F2、TRA1.10、TROP4、およびT43によって特定される抗原;溶質輸送体ファミリー3(アミノ酸トランスポーター重鎖)、メンバー2;4F2細胞表面抗原重鎖;CD98重鎖;4F2HC;MDU1;モノクローナル抗体4F2、重鎖によって規定される抗原;モノクローナル抗体4F2によって規定される抗原;4F2重鎖抗原;4F2重鎖;CD98抗原;CD98HC;4T2HC;NACAE;CD98;4F2;HGNC:11026;Entrez Gene:6520;Ensembl:ENSG00000168003;OMIM:158070;およびUniProtKB:P08195としても公知である);RBPMS(複数のスプライシングを有するRNA結合タンパク質(RNA Binding Protein With Multiple Splicing);心臓およびRRM発現配列;HERMES;複数のスプライシングを有するRNA結合タンパク質(RNA-Binding Protein With Multiple Splicing);RBP-MS;HGNC:19097;Entrez Gene:11030;Ensembl:ENSG00000157110;OMIM:601558;およびUniProtKB:Q93062としても公知である);WRN(ウェルナー症候群RecQ様ヘリカーゼ;DNAヘリカーゼ、RecQ様タイプ3;RecQタンパク質様2;エキソヌクレアーゼWRN;RECQL2;RECQ3;ウェルナー症候群ATP依存的ヘリカーゼ;ウェルナー症候群、RecQヘリカーゼ様;ウェルナー症候群;EC 3.6.4.12;EC 3.1.-.-;EC 3.6.1;RECQL3;HGNC:12791;Entrez Gene:7486;Ensembl:ENSG00000165392;OMIM:604611およびUniProtKB:Q14191としても公知である);SDC4(シンデカン4(アンフィグリカン、リュウドカン);シンデカンプロテオグリカン4;リュウドカンコアタンパク質;アンフィグリカン;SYND4;リュウドカンアンフィグリカン;シンデカン-4;HGNC:10661;Entrez Gene:6385;Ensembl:ENSG00000124145;OMIM:600017;およびUniProtKB:P31431としても公知である);KIF13B;SLECA2;PDE7A;ATP1B1;CDK1;BMPRIB;MCPH1;ならびにRAB2IL1。
【0024】
本開示のある特定の態様は、対象がNRG1融合体を有するかどうかを決定することに関する。PCR解析、核酸シークエンシング、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、発色性インサイチューハイブリダイゼーション(CISH)、および比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)を含めて、検出方法は当技術分野で公知である。
【0025】
本明細書において記載される方法での使用に適する試料は、遺伝物質、例えばゲノムDNA(gDNA)を含む。ゲノムDNAは、典型的には、血液または口腔内壁の粘膜剥離物などの生体試料から抽出されるが、尿、腫瘍、または喀出痰を含めた他の生体試料から抽出されてもよい。試料は、それ自体で、典型的には、腫瘍組織を含めて、対象から取り出された有核細胞(例えば、血液または口腔細胞)または組織を含むと考えられる。試料を得る、処理する、および解析するための方法および試薬は、当技術分野において公知である。いくつかの態様では、試料は、例えば、採血するまたは腫瘍生検を得るために医療提供者の助けを借りて得られる。いくつかの態様では、例えば、頬スワブもしくはブラシを使用して得られる口腔細胞を含む試料または口腔洗浄試料などの試料が非侵襲的に得られる場合、試料は医療提供者の助けなしで得られる。
【0026】
特に、患者試料は、対象のがんからの核酸を含む、身体の任意の組織または流体であり得る。ある特定の態様では、試料は循環性腫瘍細胞または無細胞DNAを含む血液試料であると考えられる。他の態様では、試料は、腫瘍組織などの組織であり得る。腫瘍組織は、新鮮凍結またはホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)され得る。
【0027】
場合によっては、DNA単離のために生体試料を処理することができる。例えば、細胞または組織試料中のDNAを、試料の他の成分から分離することができる。当技術分野において公知の標準的な技法を使用して、細胞を生体試料から採取することができる。例えば、細胞試料を遠心分離し、ペレット化した細胞を再懸濁すことによって、細胞を採取することができる。リン酸緩衝食塩水(PBS)などの緩衝化溶液に細胞を再懸濁することができる。細胞懸濁液を遠心分離して細胞ペレットを得た後、細胞を溶解してDNA、例えばgDNAを抽出することができる。試料を濃縮および/または精製して、DNAを単離することができる。任意の種類のさらなる処理に供されるものを含めて、対象から得られるすべての試料は、対象から得られると見なされる。例えば、フェノール抽出を含めて、慣例的な方法を使用して、生体試料からゲノムDNAを抽出することができる。あるいは、QIAamp(登録商標)組織キット(Qiagen, Chatsworth, Calif.)またはWizard(登録商標)ゲノムDNA精製キット(Promega)などのキットを用いてゲノムDNAを抽出することができる。
【0028】
核酸の増幅は、望ましい場合、当技術分野において公知の方法、例えばPCRを使用して成し遂げることができる。一例を挙げれば、試料(例えば、ゲノムDNAを含む試料)を対象から得る。次いで、本明細書において記載されるように、NRG1融合体の同一性を決定するために、試料中のDNAを調べる。NRG1融合体は、本明細書において記載される任意の方法によって、例えば、シークエンシングによって、または核酸プローブ、例えば、DNAプローブ(これには、cDNAおよびオリゴヌクレオチドプローブが含まれる)またはRNAプローブに対する、ゲノムDNA中の遺伝子、RNA、またはcDNAのハイブリダイゼーションによって、検出することができる。核酸プローブは、特定のNRG1融合体と特異的または優先的にハイブリダイズするように設計することができる。
【0029】
プローブのセットは、典型的には、本開示の実行可能な治療推奨で使用される標的遺伝的変異(例えば、NRG1融合体)を検出するために使用される、プライマーのセットを、通常は、プライマー対、および/または検出可能な程度に標識されたプローブを、指す。プライマー対は、NRG1融合体に対応する増幅産物を規定するために、増幅反応で使用される。増幅産物のセットは、マッチするプローブのセットで検出される。例示的な態様では、本方法は、標的遺伝的変異のセット、例えばNRG1融合体を検出するために使用される、TaqMan(商標)(Roche Molecular Systems, Pleasanton, Calif.)アッセイを使用することができる。一態様では、プローブのセットは、核酸シークエンシング反応、例えば次世代シークエンシング反応で検出される増幅産物を生成するために使用される、プライマーのセットである。これらの態様では、例えば、AmpliSEQ(商標)(Life Technologies/Ion Torrent, Carlsbad, Calif.)またはTruSEQ(商標)(Illumina, San Diego, Calif.)技術を用いることができる。
【0030】
核酸マーカーの解析は、非限定的に、配列解析および電気泳動解析を含めて、当技術分野において公知の技法を使用して実施することができる。配列解析の非限定例としては、マクサム・ギルバートシークエンシング、サンガーシークエンシング、キャピラリーアレイDNAシークエンシング、サーマルサイクルシークエンシング、固相シークエンシング、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF/MS)などの質量分析を用いるシークエンシング、およびハイブリダイゼーションによるシークエンシングが挙げられる。電気泳動解析の非限定例としては、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動などのスラブゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、および変性剤濃度勾配ゲル電気泳動が挙げられる。さらに、企業からの市販されているキットおよび機器、例えば、Life Technologies/Ion Torrent PGMまたはProton、Illumina HiSEQまたはMiSEQ、およびRoche/454次世代シークエンシングシステムを使用して、次世代シークエンシング方法を実施することができる。
【0031】
核酸解析の他の方法としては、直接手動シークエンシング(米国特許第5,288,644号);自動蛍光シークエンシング;一本鎖高次構造多型分析(SSCP);勾配をつけない一定濃度の変性剤を用いて行うゲル電気泳動(CDGE);二次元ゲル電気泳動(2DGEまたはTDGE);コンフォメーション高感度ゲル電気泳動(CSGE);変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE);変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC);赤外線マトリクス支援レーザー脱離イオン化(IR-MALDI)質量分析;移動度シフト解析;制限酵素解析;定量的リアルタイムPCR;ヘテロ二本鎖解析;化学的ミスマッチ切断(CMC);RNaseプロテクションアッセイ;ヌクレオチドミスマッチを認識するポリペプチド、例えば、大腸菌(E. coli)mutSタンパク質の使用;アレル特異的PCR、およびそのような方法の組み合わせを挙げることができる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2004/0014095号を参照されたい。
【0032】
一例を挙げれば、試料中のNRG1融合体を特定する方法は、NRG1融合体をコードする核酸に特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブと、試料由来の核酸を、接触させる工程、および該ハイブリダイゼーションを検出する工程を含む。特定の態様では、前記プローブは、放射性同位体(3H、32P、もしくは33P)、蛍光作用物質(ローダミンもしくはフルオレセイン)、または発色作用物質などで検出可能な程度に標識される。特定の態様では、プローブはアンチセンスオリゴマー、例えばPNA、モルホリノ-ホスホロアミデート、LNA、または2’-アルコキシアルコキシである。プローブは、約8ヌクレオチド~約100ヌクレオチドまたは約10~約75または約15~約50または約20~約30であり得る。別の局面では、本開示の前記プローブは、試料中のNRG1融合体を特定するためのキット中に提供され、該キットは、特定のNRG1融合体に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含む。キットは、キットを使用したハイブリダイゼーション試験の結果に基づいて、ポジオチニブを単独で用いて、またはHER2/HER3標的化抗体との組み合わせを用いて、のいずれかで、NRG1融合体を含む腫瘍を有する患者を治療するための指示書を、さらに含むことができる。
【0033】
II.HER2/HER3標的化抗体
本明細書において使用される「HER2/HER3標的化抗体」としては、HER2および/またはHER3の機能を妨げる、任意の分子が挙げられる。したがって、HER2/HER3標的化抗体としては、抗HER2抗体(例えば、トラスツズマブまたはペルツズマブ)、抗HER3抗体、および抗HER2/HER3二重特異性抗体(例えば、WO2018/182422に開示される抗体またはMCLA-128)が挙げられる。HER2/HER3標的化抗体は、HER2/HER2二量体および/またはHER2/HER3二量体の形成を防止することができる(例えば、トラスツズマブまたはペルツズマブ)。場合によっては、HER2/HER3標的化抗体は、抗体薬物コンジュゲート(例えば、T-DM1またはU3-1402)でもよい。
【0034】
ある特定の態様では、HER2/HER3標的化抗体は、トラスツズマブ(GenentechおよびRoche)、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1;GenentechおよびRoche)、ペルツズマブ(Genentech)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)(Fresenius)、マルジェツキシマブ(MacroGenics)、MCLA-128(ゼノクツズマブ;Merus)MM-111(Merrimack)、MM-121(Merrimack)、CT-P06(Celltrion)、GSK2849330(GlaxoSmithKline)、PF-05280014(Pfizer)、MM-302(Merrimack)、SB3(Merck & Co)、CMAB302(Shanghai CP Guojian)、RG7116(レムレツズマブ(lemretuzumab);Genentech/Roche)、TrasGEX(Glycotope)、ARX788(AmbrxおよびZhejiang Medicine)、SYD985(Synthon)、FS102(Bristol-Myers Squibbおよびf-star)、BCD-022(Biocad)、ABP 980(Amgen)、DS-8201a(Daiichi Sankyo)、HLX02(Shanghai Henlius)、SAR256212(Sanofi Oncology)、RG7597(Genentech)、U3-1402(Daiichi Sankyo)、またはCANMAb(BioconおよびMylan)である。
【0035】
トラスツズマブ(CAS 180288-69-1、HERCEPTIN(登録商標)、huMAb4D5-8、rhuMAb HER2、Genentech)は、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質、HER2(ErbB2)の細胞外ドメインに高親和性で選択的に結合する、ヒト化IgG1カッパモノクローナル抗体である(米国特許第5,677,171号;第5,821,337号;第6,054,297号;第6,165,464号;第6,339,142号;第6,407,213号;第6,639,055号;第6,719,971号;第6,800,738号;第7,074,404号)。トラスツズマブは、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域を有するヒトフレームワーク領域を含む。トラスツズマブはHER2抗原に結合し、それによりがん性細胞の成長を阻害する。トラスツズマブは、インビトロアッセイと動物の両方において、HER2を過剰発現するヒト腫瘍細胞の増殖を阻害することが示された。トラスツズマブは抗体依存性細胞傷害、すなわちADCCのメディエーターである。
【0036】
ado-トラスツズマブエムタンシンとしても公知であり、商品名KADCYLA(登録商標)で販売されているトラスツズマブエムタンシンは、細胞傷害性作用物質エムタンシン(DM1)に共有結合しているヒト化モノクローナル抗体トラスツズマブからなる、抗体-薬物コンジュゲートである。トラスツズマブは単独で、HER2受容体に結合することによってがん細胞の成長を停止させるが、トラスツズマブエムタンシンは細胞中への受容体媒介性内部移行を受け、リソソームで異化され、ここで、DM1含有異化産物が放出され、続いて、チューブリンに結合して、有糸分裂停止および細胞死を引き起こす。HER2に結合するトラスツズマブは受容体のホモ二量体化またはヘテロ二量体化(HER2/HER3)を防止し、最終的に、MAPKおよびPI3K/AKT細胞シグナリング経路の活性化を阻害する。モノクローナル抗体がHER2を標的にし、HER2ががん細胞でのみ過剰発現しているので、前記コンジュゲートは、細胞傷害性作用物質DM1を腫瘍細胞に特異的に送達する。前記コンジュゲートは、T-DM1と略語化される。T-DM1は、2~3mg/kg、例えば3.6mg/kgの用量で投与することができる。T-DM1は、静脈内注入によって投与することができる。
【0037】
ペルツズマブ(CAS登録番号380610-27-5、OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)は、HER2の二量体化を阻害する組換えヒト化モノクローナル抗体である(米国特許第6,054,297号;第6,407,213号;第6,800,738号;第6,627,196号、第6,949,245号;第7,041,292号)。ペルツズマブは、ヒトIgG1(x)フレームワーク配列を含む。ペルツズマブおよびトラスツズマブは、HER2チロシンキナーゼ受容体の異なる細胞外領域を標的にする。ペルツズマブはHER2のサブドメイン2内のエピトープに結合するが、トラスツズマブのエピトープはサブドメイン4に局在している。ペルツズマブは、HER2受容体が他のHER受容体ファミリーメンバー、すなわち、HER1/EGFR、HER3、およびHER4と協働する能力を遮断する(米国特許第6,949,245号)。がん細胞では、HER2が他のHERファミリー受容体と協働する能力を妨げることによって、細胞シグナリングを遮断し、最終的に、がん細胞の成長の阻害およびがん細胞の死につながり得る。
【0038】
さらなる例示的なHER2/HER3標的化抗体としてはMM-121/SAR256212が挙げられ、これは、HER3受容体を標的にする完全ヒトモノクローナル抗体であり、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、および卵巣がんの治療に有用であることが報告されている。SAR256212は、HER3(ErbB3)受容体を標的にする、治験中の完全ヒトモノクローナル抗体である。ドゥリゴツズマブ(Duligotuzmab)(MEHD7945A、RG7597)は、HER1およびHER3を標的にするヒト化IgG1モノクローナル抗体であり、頭頸部がんに有用であると記載されている。マルジェツキシマブ(MGAH22)は、HER2を標的にするFc最適化モノクローナル抗体である。
【0039】
本開示による抗体は、まず第一に、その結合特異性によって定義することができる。当業者は、当業者に周知の技法を使用して所与の抗体の結合特異性/親和性を評価することによって、そのような抗体が本特許請求の範囲の範囲に入るかどうかを決定することができる。抗体がポリペプチドまたはタンパク質と相互作用するかどうかを決定するために、当業者に公知の様々な技法を使用することができる。例示的な技法としては、例えば、慣例的なクロスブロッキングアッセイが挙げられる。クロスブロッキングは、ELISA、バイオレイヤー干渉法、または表面プラスモン共鳴法などの様々な結合アッセイで測定することができる。他の方法としては、アラニンスキャニング突然変異解析、ペプチドブロット解析、ペプチド切断解析、単粒子再構成、cryoEM、または断層撮影法を使用する高解像度電子顕微鏡技法、結晶学的研究、およびNMR解析が挙げられる。
【0040】
本開示は、同じエピトープまたは該エピトープの一部に結合することができる抗体を含む。その上、本開示は、本明細書において記載される特定の例示的な抗体のいずれかと標的またはそのフラグメントへの結合について競合する抗体も含む。当技術分野において公知の慣例的な方法を使用して、抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するか、または結合について参照抗体と競合するかどうかを容易に決定することができる。例えば、試験抗体が参照と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体を飽和条件下で標的に結合させる。次に、試験抗体が標的分子に結合する能力を評価する。参照抗体との飽和結合後に試験抗体が標的分子に結合することができる場合、試験抗体は、参照抗体と異なるエピトープに結合する、と結論付けることができる。その一方で、参照抗体との飽和結合後に試験抗体が標的分子に結合することができない場合、試験抗体は、参照抗体が結合したエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0041】
2種の抗体は、それぞれ抗原への他方の結合を競合的に阻害する(遮断する)場合、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、競合的結合アッセイで測定した場合に、1、5、10、20、または100倍過剰の一方の抗体は、少なくとも50%であるが好ましくは75%、90%、またはさらに99%、他方の結合を阻害する。あるいは、一方の抗体の結合を低減させるかまたは排除する、抗原中の本質的にすべてのアミノ酸変異が、他方の結合を低減させるかまたは排除する場合に、2種の抗体は同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低減させるかまたは排除するいくつかのアミノ酸変異が他方の結合を低減させるかまたは排除する場合、2種の抗体は重複するエピトープを有する。
【0042】
次いで、試験抗体の結合について観察された欠如が、実際に参照抗体と同じエピトープへの結合によるかどうか、または立体的遮断(もしくは別の現象)が、観察された結合の欠如に関与するかどうかを確かめるために、さらなる慣例的な実験(例えば、ペプチド突然変異および結合解析)を行うことができる。この種類の実験は、ELISA、RIA、表面プラスモン共鳴法、フローサイトメトリー、または当技術分野において利用可能な任意の他の定量的または定性的な抗体結合アッセイを使用して実施することができる。EMまたは結晶解析法を用いた構造的研究も、結合について競合する2種の抗体が同じエピトープを認識するかどうかを示すことができる。
【0043】
別の局面では、抗体は、さらなる「フレームワーク」領域を含むその可変配列によって定義することができる。さらに、抗体配列は、任意で以下により詳細に記載される方法を使用して、これらの配列から変化する可能性がある。例えば、核酸配列は、(a)可変領域が、軽鎖および重鎖の定常ドメインから分離され得る、(b)核酸が上記のものから変化する可能性があるが、それによってコードされる残基に影響を及ぼさない、(c)核酸が、所与のパーセンテージ、例えば、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性によって、上記のものから変化する可能性がある、(d)核酸が、例えば約50℃~約70℃の温度の約0.02M~約0.15M NaClによってもたらされる低塩および/もしくは高温条件で例示されるような高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする能力によって、上記のものから変化する可能性がある、(e)アミノ酸が、所与のパーセンテージ、例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性によって、上記のものから変化する可能性がある、または(f)アミノ酸が、保存的置換(以下に記載)を可能にすることによって、上記のものから変化する可能性がある、という点において、上記のものから変化する可能性がある。
【0044】
ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列を比較する場合、以下に記載のように、最大一致となるよう整列させた場合に、2つの配列のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が同じであれば、2つの配列は「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、比較ウィンドウにわたって配列を比較して、配列類似性の局所領域を特定し、比較することによって実施される。本明細書において使用する場合、「比較ウィンドウ」は、2つの配列を最適に整列させた後に、同じ数の連続的な位置の参照配列と配列が比較され得る、通常30~約75、40~約50である少なくとも約20の連続的な位置のセグメントを指す。
【0045】
比較のための配列の最適なアライメントは、デフォルトパラメーターを使用して、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergeneスイート(Lasergene suite of bioinformatics software)(DNASTAR, Inc., Madison, Wis.)中のMegalignプログラムを使用して行うことができる。このプログラムは、以下の参考文献に記載されているいくつかのアライメントスキームを取り入れている:Dayhoff, M. O. (1978) A model of evolutionary change in proteins--Matrices for detecting distant relationships. In Dayhoff, M. O. (ed.) Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, Washington D.C. Vol. 5, Suppl. 3, pp. 345-358;Hein J. (1990) Unified Approach to Alignment and Phylogeny pp. 626-645 Methods in Enzymology vol. 183, Academic Press, Inc., San Diego, Calif.;Higgins, D. G. and Sharp, P. M. (1989) CABIOS 5:151-153;Myers, E. W. and Muller W. (1988) CABIOS 4:11-17;Robinson, E. D. (1971) Comb. Theor 11:105;Santou, N. Nes, M. (1987) Mol. Biol. Evol. 4:406-425;Sneath, P. H. A. and Sokal, R. R. (1973) Numerical Taxonomy--the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, San Francisco, Calif.;Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. (1983) Proc. Natl. Acad., Sci. USA 80:726-730。
【0046】
あるいは、比較のための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman (1981) Add. APL. Math 2:482の局所的同一性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の同一性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444の類似性検索法によって、コンピュータによるこれらのアルゴリズムの実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WisのGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA)によって、または検査によって、行うことができる。
【0047】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに適したアルゴリズムの1つの特定の例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al. (1977) Nucl. Acids Res. 25:3389-3402およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、本開示のポリヌクレオチドおよびポリペプチドについて配列同一性パーセントを決定するために、例えば、本明細書において記載されるパラメーターを用いて、使用することができる。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは国立バイオテクノロジー情報センターを通じて公的に利用可能である。抗体配列の再編成された性質および各遺伝子の長さが一定でないことにより、単一抗体配列に対して複数ラウンドのBLAST検索が必要となる。また、異なる遺伝子の手動アセンブリーは難しく、エラーを起こしやすい。配列解析ツールIgBLAST(ncbi.nlm.nih.gov/igblast/のワールド・ワイド・ウェブ)は、生殖系列V、D、およびJ遺伝子へのマッチ、再編成ジャンクションの詳細、Ig Vドメインフレームワーク領域および相補性決定領域の描写を明らかにする。IgBLASTはヌクレオチド配列またはタンパク質配列を解析することができ、バッチで配列を処理することができ、生殖系列遺伝子データベースおよび他の配列データベースに対して同時に検索を可能にして、おそらく最もマッチする生殖系列V遺伝子を見落とす確率を最小限にする。
【0048】
1つの実例では、累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(1対のマッチする残基に対する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチの残基に対するペナルティースコア;常に<0)を使用して計算することができる。各方向におけるワードヒットの延長は:累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下する;1つまたは複数の負のスコアの残基アライメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になる;またはいずれかの配列の末端に達する場合に、停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターのW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)はデフォルトとして、11のワード長(W)および10の期待値(E)を、ならびにBLOSUM62スコア行列(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照されたい)アライメント、50の(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。
【0049】
アミノ酸配列については、スコア行列を使用して累積スコアを計算することができる。各方向におけるワードヒットの延長は:累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下する;1つもしくは複数の負のスコアの残基アライメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になる;またはいずれかの配列の末端に達する場合に、停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXはアライメントの感度および速度を決定する。
【0050】
1つのアプローチでは、「配列同一性のパーセンテージ」は、少なくとも20の位置の比較のウィンドウにわたって2つの最適に整列させた配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適なアライメントのために、参照配列(これは、付加または欠失を含まない)と比較して、20パーセント以下、通常5~15パーセントまたは10~12パーセントの付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、両方の配列に同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定してマッチした位置の数を得て、マッチした位置の数を参照配列の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算される。
【0051】
抗体を定義するさらに別の方法は、記載される抗体およびその抗原結合フラグメントのいずれかの「誘導体」として、である。用語「誘導体」は、免疫特異的に抗原に結合するが、「親」(または野生型)分子と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のアミノ酸置換、付加、欠失または修飾を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを指す。そのようなアミノ酸置換または付加は、天然に存在する(すなわち、DNAにコードされる)または天然に存在しないアミノ酸残基を導入することができる。用語「誘導体」は、増強されたまたは損なわれたエフェクターまたは結合特性を示す変異体Fc領域を有する、例えば抗体などを形成するように、例えば、変化したCH1、ヒンジ、CH2、CH3、またはCH4領域を有する変異体として包含する。用語「誘導体」は、非アミノ酸修飾、例えば、グリコシル化(例えば、マンノース、2-N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース、グルコース、シアル酸、5-N-アセチルノイラミン酸、5-グリコールノイラミン酸などの含量の変化)、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などを受けている可能性があるアミノ酸をさらに包含する。いくつかの態様では、糖修飾の変化は、以下の1つまたは複数をモジュレートする:抗体の可溶化、抗体の細胞内輸送および分泌の容易化、抗体アセンブリーの促進、コンフォメーションの完全性、ならびに抗体媒介性エフェクター機能。特定の態様では、糖修飾の変化は、糖修飾を欠く抗体と比較して、抗体媒介性エフェクター機能を増強する。抗体媒介性エフェクター機能の変化につながる糖修飾は、当技術分野において周知である。
【0052】
誘導体抗体または抗体フラグメントは、ビーズベースもしくは細胞ベースのアッセイ、または動物モデルにおけるインビボ研究によって測定した場合に、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、抗体依存性好中球食作用(ADNP)、または抗体依存性補体沈着(ADCD)機能の好ましいレベルの活性を与えるために、操作された配列またはグリコシル化状態を用いて生成することができる。
【0053】
誘導体抗体または抗体フラグメントは、限定されないが、特異的化学切断、アセチル化、製剤、ツニカマイシンの代謝合成などを含めて、当業者に公知の技法を使用して、化学修飾によって修飾することができる。一態様では、抗体誘導体は、親抗体と類似または同一の機能を有するであろう。別の態様では、抗体誘導体は、親抗体と比較して変化した活性を示すであろう。例えば、誘導体抗体(またはそのフラグメント)は、親抗体に比べて、そのエピトープに、より堅固に結合することができる、またはタンパク質分解に、より抵抗性であり得る。
【0054】
III.治療の方法
本発明は、ポジオチニブを単独で用いて、またはHER2/HER3標的化抗体との組み合わせを用いて、のいずれかで、がん患者を治療する方法を提供する。そのような治療は、別の治療的体制、例えば、化学療法または免疫療法と組み合わせることもできる。本発明のある特定の局面は、患者のがん細胞におけるNRG1融合体の存在に基づいて治療のためのがん患者を選択するために使用することができる。様々な局面では、がんを構成する細胞の約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%がNRG1融合体を内部に持つ可能性があり、これは、患者が治療の候補であることを示す。いくつかの局面では、患者のがん細胞はEGFR T790および/またはEGFR C797における突然変異を欠く。いくつかの局面では、患者のがん細胞は、HER2 T798および/またはHER2 C805における突然変異を欠く。
【0055】
ある特定の局面では、対象は、対象由来のゲノム試料を解析することによって、NRG1融合体を有することが決定された。いくつかの局面では、ゲノム試料は、唾液、血液、尿、または腫瘍組織から単離される。特定の局面では、NRG1融合体の存在は、核酸シークエンシング(例えば、腫瘍組織の、もしくは血漿由来循環遊離DNAの、DNAシークエンシング)またはPCR解析によって決定される。
【0056】
ある特定の態様は、NRG1融合体を有することが決定された対象へのポジオチニブ(HM781-36B、HM781-36、および1-[4-[4-(3,4-ジクロロ-2-フルオロアニリノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イル]オキシピペリジン-1-イル]プロパ-2-エン-1-オンとしても公知である)の投与に関する。ポジオチニブは、HER1、HER2、およびHER4を含むチロシンキナーゼ受容体のHERファミリーを介したシグナリングを不可逆的に遮断する、キナゾリンベースの汎HERインヒビターである。ポジオチニブまたは構造的に類似した化合物(例えば、米国特許第8,188,102号および米国特許出願公開第20130071452号;参照により本明細書に組み入れられる)は、本方法で使用することができる。
【0057】
いくつかの局面では、ポジオチニブは、さらにポジオチニブ塩酸塩と定義される。ある特定の局面では、ポジオチニブ塩酸塩は錠剤として製剤化される。ポジオチニブは、錠剤中などで経口的に投与することができる。ポジオチニブは、4~25mgの用量で、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25mgの用量で投与することができる。ある特定の局面では、ポジオチニブは、6mg、8mg、12mg、または16mgの用量で投与される。投薬は、1日あたり2回、毎日、隔日、3日ごと、または毎週であり得る。投薬は、28日サイクルなどの連続的なスケジュールであり得る。
【0058】
ある特定の局面では、ポジオチニブおよび/またはHER2/HER3標的化抗体は、静脈内に、皮下に、骨内に、経口的に、経皮的に、持続性放出で、制御放出で、遅延放出で、坐剤として、または舌下に投与される。いくつかの局面では、ポジオチニブおよび/またはHER2/HER3標的化抗体の投与は、局所的、領域的、または全身的投与を含む。特定の局面では、ポジオチニブおよび/またはHER2/HER3標的化抗体は、2回以上、例えば、毎日、隔日、または毎週投与される。
【0059】
いくつかの局面では、ポジオチニブはHER2/HER3標的化抗体より前、または後に、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、3週間、1か月またはそれ以上離して、投与される。いくつかの局面では、ポジオチニブはHER2/HER3標的化抗体と同時に投与される。
【0060】
本明細書において使用する場合、用語「対象」または「患者」は、主題の方法が実施される任意の個体を指す。一般に患者はヒトであるが、当業者によって認識されるように、患者は動物でもよい。したがって、哺乳動物、例えば、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットを含める)、ネコ、イヌ、ウサギ、家畜、例えば、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタなど、ならびに霊長類(サル、チンパンジー、オランウータン、およびゴリラを含める)を含めて、他の動物が患者の定義内に含まれる。
【0061】
「治療」および「治療する」は、疾患または健康関連状態の治療的利益を得ることを目的とした、対象への治療剤の投与もしくは適用または対象に対する手順もしくはモダリティの実施を指す。例えば、治療は、投与化学療法、免疫療法、放射線療法、手術の実行、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0062】
本明細書において記載される方法は、細胞(例えば、腫瘍細胞)の生存または増殖の阻害、増殖性疾患(例えば、がん、乾癬)の治療、および病原性感染の治療に有用である。一般に、用語「がん」および「がん性」は、典型的には無秩序な細胞成長を特徴とする、哺乳動物の生理状態を指すかまたは説明する。より具体的には、本明細書において提供される方法に関連して治療されるがんとしては、限定されないが、固形腫瘍、転移性がん、または非転移性がんが挙げられる。ある特定の態様では、がんは、肺、腎臓、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、十二指腸、小腸、大腸、結腸、直腸、肛門、歯茎、頭部、肝臓、鼻咽頭、頚部、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮で生じ得る。
【0063】
がんは、特に以下の組織型のものであり得るが、それらに限定されない:新生物、悪性;がん腫;非小細胞肺がん;腎臓がん;腎細胞がん;腎明細胞がん腫;リンパ腫;芽腫;肉腫;がん腫、未分化;髄膜腫;脳腫瘍;中咽頭がん;鼻咽頭がん;胆道がん;褐色細胞腫;膵島細胞がん;リー・フラウメニ腫瘍;甲状腺がん;副甲状腺がん;下垂体腫瘍;副腎腫瘍;骨原性肉腫腫瘍;神経内分泌腫瘍;乳がん;肺がん;頭頸部がん;前立腺がん;食道がん;気管がん;肝臓がん;膀胱がん;胃がん;膵臓がん;卵巣がん;子宮がん;子宮頸がん;精巣がん;結腸がん;直腸がん;皮膚がん;巨細胞および紡錘細胞がん;小細胞がん;小細胞肺がん;乳頭がん;口腔がん;中咽頭がん;鼻咽頭がん;呼吸器がん;泌尿生殖器がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛基質がん;移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;胃腸がん;ガストリノーマ、悪性;胆管がん;肝細胞がん;肝細胞がんと胆管がんの混合型;索状腺がん;腺様嚢胞がん腫;腺腫性ポリープ内腺がん;腺がん、家族性大腸ポリポーシス;固形がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞上皮がん;乳頭腺がん腫;嫌色素性がん;好酸性がん;好酸性腺がん;好塩基性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞腺がん;乳頭状・濾胞腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;類内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘膜表皮がん;嚢胞腺がん腫;乳頭状嚢腺がん;乳頭状漿液嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性導管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;ページェット病、乳房;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん腫;扁平上皮化生随伴腺がん;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞がん;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑内悪性黒色腫;悪性黒子型黒色腫;末端性ほくろ性黒色腫;結節性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;がん肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎生期がん;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛上皮腫;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;内分泌もしくは神経内分泌がんまたは造血器がん;松果体腫、悪性;脊索腫;中枢または末梢神経系組織がん;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;B細胞リンパ腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫;パラ肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;マントル細胞リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ様白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病;慢性骨髄芽球性白血病;ならびにヘアリーセル白血病。
【0064】
本出願の全体を通して使用される用語「治療的利益」または「治療的に有効な」は、この状態の医学的治療に関して、対象の健康な状態を促進または増強するいかなるものも指す。これとしては、限定はされないが、疾患の徴候または症状の頻度または重症度の低減が挙げられる。例えば、がん治療は、例えば、腫瘍の侵襲性の低減、がんの成長速度の低減、または転移の予防をともない得る。がん治療は、がんを有する対象の生存を延ばすことを指すこともできる。
【0065】
同様に、治療に対する患者の有効な応答または患者の「応答性」は、疾患もしくは障害の危険性があるまたは疾患もしくは障害を罹患している患者に与えられる、臨床的または治療的利益を指す。そのような利益としては、細胞応答または生物学的応答、完全奏効、部分奏効、安定している疾患(進行も再発もなし)、または晩期再発をともなう応答を挙げることができる。例えば、有効な応答は、がんと診断された患者における腫瘍サイズの低減または無増悪生存期間であり得る。
【0066】
新生物状態の治療に関して、新生物状態のステージに応じて、新生物状態の治療は、以下の療法の1つまたは組み合わせをともなう:新生物組織を除去するための手術、放射線療法、および化学療法。他の治療レジメンを抗がん剤、例えば、治療用組成物および化学療法剤の投与と組み合わせることができる。例えば、そのような抗がん剤で治療される患者はまた、放射線療法を受けることができ、かつ/または手術を受けることができる。
【0067】
疾患の治療について、治療用組成物の適切な投薬量は、上記で定義されたような治療される疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、以前の療法、患者の病歴および剤に対する応答、ならびに医師の裁量に依存すると考えられる。剤は、1回で、または一連の治療にわたって、患者に適切に投与され得る。
【0068】
併用療法を含む方法および組成物は、治療的もしくは保護的効果を増強し、かつ/または別の抗がんもしくは抗過剰増殖療法の治療的効果を増大する。治療的および予防的方法および組成物は、望ましい効果、例えば、がん細胞の死滅および/または細胞の過剰増殖の阻害を達成するのに有効な組み合わせた量で提供することができる。組織、腫瘍、もしくは細胞は、1種もしくは複数種の剤を含む1種もしくは複数種の組成物もしくは薬理学的製剤と接触させることができ、または組織、腫瘍、および/もしくは細胞を2種以上の異なる組成物もしくは製剤と接触させることによって、接触させることができる。また、そのような併用療法は、放射線療法、手術療法、または免疫療法とあわせて使用できることが企図される。
【0069】
組み合わせ投与は、同じ剤形での2種以上の剤の同時投与、別々の剤形での同時投与、および別々の投与を含むことができる。すなわち、主題の治療用組成物および別の治療剤を同じ剤形中に一緒に製剤化することができ、同時に投与することができる。あるいは、主題の治療用組成物および別の治療剤を同時に投与することができ、この場合、両方の剤は別々の製剤に存在する。別の代替法では、治療剤を投与し、直後に他の治療剤を投与してもよく、またはその逆でもよい。別々の投与プロトコールでは、主題の治療用組成物および別の治療剤を、数分離して、または数時間離して、または数日離して、投与することができる。
【0070】
第1の抗がん治療は、第2の抗がん治療に対して、その前、間、後、または様々な組み合わせで投与することができる。投与は、同時~数分~数日~数週に及ぶ期間であり得る。第2の治療とは別に第1の治療が患者に提供される態様では、一般に、各送達の時間の間に有効な期間が切れず、その結果、2種の化合物が有利に組み合わされた効果を依然として患者に発揮できるであろうことを確実にするであろう。そのような場合、第1の療法および第2の療法を互いの約12~24または72時間以内に、より詳細には、互いの約6~12時間以内に患者に提供することができることが企図される。状況によっては、治療のための期間を著しく延ばすことが望ましい場合もあり、この場合、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6、または7)~数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)が経過する。
【0071】
ある特定の態様では、1クールの治療は、1~90日またはそれ以上(このような範囲はその間の日を含む)続くと考えられる。1つの剤を1日目~90日目(このような範囲はその間の日を含む)の任意の日に、またはこれらの任意の組み合わせで与えることができ、別の剤を1日目~90日目(このような範囲はその間の日を含む)の任意の日に、またはこれらの任意の組み合わせで与えることが企図される。1日(24時間周期)以内に、剤の1回または複数回投与を患者に施すことができる。さらに、1クールの治療後、抗がん治療が投与されない期間が存在することが企図される。この期間は、患者の状態、例えば、患者の予後、体力、健康状態などに応じて、1~7日、および/または1~5週、および/または1~12か月以上(このような範囲はその間の日を含む)続く可能性がある。必要に応じて治療サイクルが繰り返されるであろうことが予測される。
【0072】
様々な組み合わせを用いることができる。以下の例について、(a)ポジオチニブが「A」であり、HER2/HER3標的化抗体が「B」である;または、(b)単独もしくはHER2/HER3標的化抗体との組み合わせのいずれかのポジオチニブが「A」であり、別の抗がん療法が「B」であるか、のいずれかである:
【0073】
本発明の任意の化合物または療法の患者への投与は、もしあれば剤の毒性を考慮して、そのような化合物の投与のための一般的なプロトコールに従う。したがって、いくつかの態様では、併用療法に起因し得る毒性をモニターする工程が存在する。
【0074】
1.化学療法
多種多様の化学療法剤を本発明に従って使用することができる。用語「化学療法」は、がんを治療するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、がん治療で投与される化合物または組成物を含んで使用される。これらの剤または薬物は、細胞内のそれらの活性様式、例えば、それらが細胞周期に影響を及ぼすかどうか、およびそれらがどのステージで細胞周期に影響を及ぼすかによって、カテゴリー化される。あるいは、剤は、DNAを直接架橋結合する、DNA中にインターカレートする、または核酸合成に影響を及ぼすことによって染色体および有糸分裂の異常を誘導するその能力に基づいて、特徴付けることができる。
【0075】
化学療法剤の例としては、以下が挙げられる:アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine)、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethiylenethiophosphoramide)、およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含める);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼルシン、およびビゼレシン合成類似体を含める);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含める);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、およびウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine);抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマlIおよびカリケアマイシンオメガIl);ジネミシン、例えばジネミシンA;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連した色素タンパク質エネジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノド-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含める)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、およびトリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、およびフロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトン;抗副腎剤、例えば、ミトタンおよびトリロスタン;葉酸補充剤、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);エリプチニウムアセテート;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシノイド、例えば、マイタンシンおよびアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖類複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼインヒビターRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DFMO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター、トランス白金、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体。
【0076】
2.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広範に使用されている他の因子としては、γ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の指向性送達として一般に公知であるものが挙げられる。マイクロ波、陽子ビーム照射(米国特許第5,760,395号および第4,870,287号)、ならびにUV照射など、DNA損傷因子の他の形態も企図される。これらの因子のすべては、DNA、DNAの前駆物質、DNAの複製および修復、ならびに染色体のアセンブリーおよびメンテナンスに対する幅広い損傷に影響を及ぼす可能性が最も高い。X線の放射線量範囲は、長期間(3~4週間)のための50~200レントゲンの1日線量から、2000~6000レントゲンの単回線量に及ぶ。放射性同位体の放射線量範囲は広く変動し、同位体の半減期、放射される放射線の強さおよびタイプ、ならびに新生物細胞の取り込みに依存する。
【0077】
3.免疫療法
当業者は、本発明の方法と組み合わせて、またはあわせて、さらなる免疫療法を使用できることを理解するであろう。がん治療において、免疫療法は、一般に、免疫エフェクター細胞、およびがん細胞を標的にし、破壊するための分子の使用に依拠する。リツキシマブ(Rituxan(登録商標))はそのような例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上の何らかのマーカーに対して特異的な抗体であり得る。抗体だけで療法のエフェクターとして働くことができ、または抗体は他の細胞を動員して、細胞死滅に実際に影響を及ぼすことができる。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートさせることができ、単に標的指向物質として働くことができる。あるいは、エフェクターは、直接的または間接的のいずれかで腫瘍細胞標的と相互作用する表面分子を保有する、リンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞には細胞障害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0078】
免疫療法の一局面では、腫瘍細胞は、標的化に適する、すなわち、他の細胞の大部分に存在しない、何らかのマーカーを有さなくてはならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれかは、本発明における標的化に適し得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、CD20、がん胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erb B、およびp155が挙げられる。免疫療法の代替局面は、抗がん効果を免疫刺激効果と組み合わせることである。サイトカイン、例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFN、ケモカイン、例えば、MIP-1、MCP-1、IL-8、および成長因子、例えばFLT3リガンドを含めて、免疫刺激分子も存在する。
【0079】
現在検討中であるまたは使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許5,801,005号および第5,739,169号;Hui and Hashimoto, Infection Immun., 66(11):5329-5336, 1998;Christodoulides et al., Microbiology, 144(Pt 11):3027-3037, 1998);サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、およびγ、IL-1、GM-CSF、およびTNF(Bukowski et al., Clinical Cancer Res., 4(10):2337-2347, 1998;Davidson et al., J. Immunother., 21(5):389-398, 1998;Hellstrand et al., Acta Oncologica, 37(4):347-353, 1998);遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、およびp53(Qin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(24):14411-14416, 1998;Austin-Ward and Villaseca, Revista Medica de Chile, 126(7):838-845, 1998;米国特許第5,830,880号および第5,846,945号);ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185(Hanibuchi et al., Int. J. Cancer, 78(4):480-485, 1998;米国特許第5,824,311号)である。1種または複数種の抗がん療法を本明細書において記載される抗体療法とともに用いることができることが企図される。
【0080】
いくつかの態様では、免疫療法は養子免疫療法でもよく、これは、エクスビボで生成された自己抗原特異的T細胞を移入することを含む。養子免疫療法のために使用されるT細胞は、抗原特異的T細胞を拡大させるか、または遺伝子工学によるT細胞のリダイレクションのいずれかによって、生成することができる。腫瘍特異的T細胞の単離および移入は、黒色腫の治療で成功したことが示された。トランスジェニックT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)の遺伝的伝達によって、T細胞の新規な特異性が首尾よくもたらされた。CARは、単一融合分子において1つまたは複数のシグナリングドメインと結合している標的指向部分からなる合成受容体である。一般に、CARの結合部分は、可動性リンカーによって結合したモノクローナル抗体の軽鎖可変フラグメントを含む、単鎖抗体(scFv)の抗原結合ドメインからなる。受容体またはリガンドドメインに基づく結合部分もうまく使用されている。第1世代CARのシグナリングドメインはCD3ゼータまたはFc受容体ガンマ鎖の細胞質領域に由来する。CARは、リンパ腫および固形腫瘍を含めた様々な悪性腫瘍由来の腫瘍細胞の表面で発現する抗原に対して、T細胞を首尾よくリダイレクトした。
【0081】
一態様では、本出願はがん治療のための併用療法を提供し、併用療法は、養子T細胞療法およびチェックポイントインヒビターを含む。一局面では、養子T細胞療法は自己および/または同種のT細胞を含む。別の局面では、自己および/または同種のT細胞は腫瘍抗原に対して標的指向化される。
【0082】
免疫調節剤としては、免疫チェックポイントインヒビター、共刺激分子のアゴニスト、および免疫阻害分子のアンタゴニストが挙げられる。免疫調節剤は、薬物、例えば、小分子、リガンドもしくは受容体の組換え形態、または抗体、例えば、ヒト抗体(例えば、国際特許公開第WO2015/016718号;Pardoll, Nat Rev Cancer, 12(4): 252-264, 2012;両方とも参照により本明細書に組み入れられる)であり得る。免疫チェックポイントタンパク質の公知のインヒビターまたはそれらの類似体を使用することができ、特に、キメラ化、ヒト化、またはヒト形態の抗体を使用することができる。当業者なら知っているように、本開示で言及されるある特定の抗体について、代替および/または同等の名前が使用されている可能性がある。そのような代替および/または同等の名前は、本開示において互換的である。例えば、ランブロリズマブは、代替および同等の名前、MK-3475およびペンブロリズマブでも公知であることが公知である。
【0083】
共刺激分子は、免疫細胞の表面上の受容体、例えば、CD28、4-1BB、OX40(CD134としても公知である)、ICOS、およびGITRと相互作用するリガンドである。一例として、ヒトOX40の完全なタンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_003318を有する。いくつかの態様では、免疫調節剤は抗OX40抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法での使用に適する抗ヒトOX40抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗OX40抗体を使用することができる。例示的な抗OX40抗体はPF-04518600(例えば、WO 2017/130076を参照されたい)である。ATOR-1015はCTLA4およびOX40を標的化する二重特異性抗体である(例えば、WO 2017/182672、WO 2018/091740、WO 2018/202649、WO 2018/002339を参照されたい)。
【0084】
本明細書において提供される方法で標的にされ得る別の共刺激分子は、CD278としても公知であるICOSである。ヒトICOSの完全なタンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_036224を有する。いくつかの態様では、免疫チェックポイントインヒビターは、抗ICOS抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法での使用に適する抗ヒトICOS抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗ICOS抗体を使用することができる。例示的な抗ICOS抗体としては、JTX-2011(例えば、WO 2016/154177、WO 2018/187191を参照されたい)およびGSK3359609(例えば、WO 2016/059602を参照されたい)が挙げられる。
【0085】
本明細書において提供される方法で標的にされ得るさらに別の共刺激分子は、TNFRSF18およびAITRとしても公知であるグルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体関連タンパク質(GITR)である。ヒトGITRの完全なタンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_004186を有する。いくつかの態様では、免疫調節剤は、抗GITR抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法での使用に適する抗ヒトGITR抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗GITR抗体を使用することができる。例示的な抗GITR抗体はTRX518(例えば、WO 2006/105021を参照されたい)である。
【0086】
免疫チェックポイント遮断によって標的にされ得る免疫チェックポイントタンパク質としては、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276としても公知である)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、CCL5、CD27、CD38、CD8A、CMKLR1、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CD152としても公知である、CTLA-4)、CXCL9、CXCR5、HLA-DRB1、HLA-DQA1、HLA-E、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(CD223としても公知である、LAG-3)、Merチロシンキナーゼ(MerTK)、NKG7、プログラム死1(PD-1)、プログラム死リガンド1(CD274としても公知である、PD-L1)、PDCD1LG2、PSMB10、STAT1、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)、ならびにT細胞活性化のVドメインIg抑制因子(C10orf54としても公知である、VISTA)が挙げられる。特に、PD-1軸および/またはCTLA-4を標的化する免疫チェックポイントインヒビターは、多様ながんタイプにわたって広くFDAの承認を受けている。
【0087】
いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な局面では、PD-1リガンド結合パートナーはPD-L1および/またはPD-L2である。別の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な局面では、PD-L1結合パートナーはPD-1および/またはB7-1である。別の態様では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な局面では、PD-L2結合パートナーはPD-1である。アンタゴニストは、抗体、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、米国特許第8,735,553号、第8,354,509号、および第8,008,449号に記載されており、これらのすべては参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において提供される方法で使用するための他のPD-1軸アンタゴニストは当技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開第2014/0294898号、第2014/022021号、および第2011/0008369号に記載されており、これらのすべては参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストは抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの態様では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびCT-011からなる群より選択される。いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの態様では、PD-1結合アンタゴニストはAMP-224である。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)としても公知であるニボルマブは、WO2006/121168に記載されている抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475としても公知であるペンブロリズマブは、WO2009/114335に記載されている抗PD-1抗体である。hBATまたはhBAT-1としても公知であるCT-011は、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても公知であるAMP-224は、WO2010/027827およびWO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0089】
本明細書において提供される方法で標的にされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD152としても公知である細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列はGenBankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面に見出され、抗原提示細胞の表面上でCD80またはCD86に結合した場合に「オフ」スイッチとして作用する。CTLA-4はT細胞共刺激タンパク質、CD28と類似しており、両方の分子は、抗原提示細胞上で、それぞれB7-1およびB7-2とも呼ばれるCD80およびCD68に結合する。CTLA-4は阻害性シグナルをT細胞に伝えるが、CD28は刺激性シグナルを伝える。細胞内CTLA-4は調節性T細胞でも見出され、その機能に重要であり得る。T細胞受容体およびCD28を通じたT細胞活性化は、B7分子に対する阻害性受容体であるCTLA-4の発現の増大につながる。
【0090】
いくつかの態様では、免疫チェックポイントインヒビターは、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法での使用に適する抗ヒトCTLA-4抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗CTLA-4抗体を使用することができる。例えば、米国特許第8,119,129号;PCT公開第WO 01/14424号、第WO 98/42752号、第WO 00/37504号(トレメリムマブとしても公知であるCP675,206;以前はチシリムマブ);米国特許第6,207,156号;Hurwitz et al. (1998) Proc Natl Acad Sci USA, 95(17): 10067-10071;Camacho et al. (2004) J Clin Oncology, 22(145): Abstract No. 2505(抗体CP-675206);およびMokyr et al. (1998) Cancer Res, 58:5301-5304に開示される抗CTLA-4抗体を本明細書において開示される方法で使用することができる。前述の刊行物のそれぞれの教示は、参照により本明細書に組み入れられる。当技術分野で認識されるこれらの抗体のいずれかとCTLA-4への結合について競合する抗体も使用することができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は国際特許出願第WO2001/014424号、第WO2000/037504号、および米国特許第8,017,114号に記載されており;すべてが参照により本明細書に組み入れられる。
【0091】
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、およびYervoy(登録商標)としても公知である)またはその抗原結合フラグメントおよび変異体である(例えば、WO 01/14424を参照されたい)。他の態様では、抗体は、イピリムマブの重鎖および軽鎖のCDRまたはVRを含む。したがって、一態様では、抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびにイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の態様では、抗体は、上記の抗体と同じCTLA-4上のエピトープとの結合について競合する、および/または該エピトープに結合する。別の態様では、抗体は、上記の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、95%、または99%の可変領域同一性)を有する。CTLA-4をモジュレートするための他の分子としては、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5844905号、第5885796号、および国際特許出願第WO1995001994号および第WO1998042752号に記載されているようなCTLA-4リガンドおよび受容体、ならびに参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8329867号に記載されているようなイムノアドヘシンが挙げられる。
【0092】
本明細書において提供される方法で標的にされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、CD223としても公知であるリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)である。ヒトLAG-3の完全なタンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP-002277を有する。LAG-3は、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、および形質細胞様樹状細胞の表面上で見出される。LAG-3は、抗原提示細胞の表面上でMHCクラスIIに結合した場合に「オフ」スイッチとして作用する。LAG-3の阻害は、エフェクターT細胞とインヒビター調節性T細胞の両方とも活性化する。いくつかの態様では、免疫チェックポイントインヒビターは、抗LAG-3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法での使用に適する抗ヒトLAG-3抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗LAG-3抗体を使用することができる。例示的な抗LAG-3抗体は、レラトリマブ(BMS-986016としても公知である)またはその抗原結合フラグメントおよび変異体である(例えば、WO 2015/116539を参照されたい)。他の例示的な抗LAG-3抗体としては、TSR-033(例えば、WO 2018/201096を参照されたい)、MK-4280、およびREGN3767が挙げられる。MGD013は、WO 2017/019846に記載されている抗LAG-3/PD-1二重特異性抗体である。FS118は、WO 2017/220569に記載されている抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体である。
【0093】
本明細書において提供される方法で標的にされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、C10orf54としても公知であるT細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)である。ヒトVISTAの完全なタンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_071436を有する。VISTAは白血球細胞で見出され、T細胞のエフェクター機能を阻害する。いくつかの態様では、免疫チェックポイントインヒビターは、抗VISTA3抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法での使用に適する抗ヒトVISTA抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗VISTA抗体を使用することができる。例示的な抗VISTA抗体は、JNJ-61610588(オンバチリマブとしても公知である)である(例えば、WO 2015/097536、WO 2016/207717、WO 2017/137830、WO 2017/175058を参照されたい)。VISTAは、PD-L1とVISTAの両方を選択的に標的にする小分子CA-170でも阻害され得る(例えば、WO 2015/033299、WO 2015/033301を参照されたい)。
【0094】
本明細書において提供される方法で標的にされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質はCD38である。ヒトCD38の完全なタンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_001766を有する。いくつかの態様では、免疫チェックポイントインヒビターは、抗CD38抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法での使用に適する抗ヒトCD38抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗CD38抗体を使用することができる。例示的な抗CD38抗体はダラツムマブである(例えば、米国特許第7,829,673号を参照されたい)。
【0095】
本明細書において提供される方法で標的にされ得る別の免疫チェックポイントタンパク質は、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)である。ヒトTIGITの完全なタンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_776160を有する。いくつかの態様では、免疫チェックポイントインヒビターは、抗TIGIT抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)、それらの抗原結合フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。本方法での使用に適する抗ヒトTIGIT抗体(またはそれに由来するVHおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗TIGIT抗体を使用することができる。例示的な抗TIGIT抗体はMK-7684である(例えば、WO 2017/030823、WO 2016/028656を参照されたい)。
【0096】
免疫調節のために標的にされ得る他の免疫阻害分子としては、STAT3およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)が挙げられる。例として、ヒトIDOの完全なタンパク質配列はGenBankアクセッション番号NP_002155を有する。いくつかの態様では、免疫調節剤は小分子IDOインヒビターである。例示的な小分子としては、BMS-986205、エパカドスタット(INCB24360)、およびナボキシモド(GDC-0919)が挙げられる。
【0097】
4.手術
がんを有する人のおよそ60%は、予防的、診断的、または病期分類的、治癒的、および姑息的手術を含めた何らかのタイプの手術を受けると考えられる。治癒的手術としては、がん性組織のすべてまたは一部が物理的に除去される、切除される、および/または破壊される摘出が挙げられ、この手術は、他の療法、例えば、本発明の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法とあわせて使用することができる。腫瘍摘出は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍摘出に加えて、手術による治療としては、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡制御手術(モース手術)が挙げられる。
【0098】
がん性細胞、組織、または腫瘍の一部またはすべての切除の際に、体内に腔が形成され得る。治療は、さらなる抗がん療法を用いたその領域の灌流、直接注射、または局所的適用によって成し遂げることができる。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、または7日ごと、または1、2、3、4、および5週ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12か月ごとに繰り返すことができる。これらの治療は、投薬量も変動し得る。
【0099】
5.他の剤
治療の治療的効力を向上させるために、他の剤を本発明のある特定の局面と組み合わせて使用できることが企図される。これらのさらなる剤としては、細胞表面受容体およびGAPジャンクションのアップレギュレーションに影響を及ぼす剤、細胞増殖抑制および分化剤、細胞接着のインヒビター、アポトーシス誘導因子への過剰増殖細胞の感受性を高める剤、または他の生物学的剤が挙げられる。GAPジャンクションの数を増加させることによる細胞間シグナリングの増大は、隣接する過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果を高めると考えられる。他の態様では、治療の抗過剰増殖効力を向上させるために、細胞増殖抑制または分化剤を本発明のある特定の局面と組み合わせて使用することができる。本発明の効力を向上させるために、細胞接着のインヒビターが企図される。細胞接着インヒビターの例は、接着斑キナーゼ(FAK)インヒビターおよびロバスタチンである。治療効力を向上させるために、アポトーシスへの過剰増殖細胞の感受性を高める他の剤、例えば抗体c225を本発明のある特定の局面と組み合わせて使用できることがさらに意図される。
【0100】
IV.キット
本発明の様々な局面では、診断剤、治療剤、および/または送達剤を含むキットが想定される。いくつかの態様では、本発明は、患者の腫瘍細胞においてNRG1融合体を検出するためのキットを企図する。いくつかの態様では、本発明は、本発明の療法を調製および/または施すためのキットを企図する。キットは、本発明の活性なまたは有効な剤の投与に使用することができる試薬を含むことができる。キットの試薬は、併用療法の1種または複数種の抗がん成分、ならびに本発明の成分を調製する、製剤化する、および/もしくは投与する、または本発明の方法の1つもしくは複数の工程を実施するための試薬を含むことができる。いくつかの態様では、キットは適切な容器手段を含むこともでき、これは、キットの成分と反応しないと考えられる容器、例えば、エッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、またはチューブである。容器は、滅菌可能な材料、例えば、プラスチックまたはガラスから作製され得る。キットは、方法の手順工程の概要を述べ、かつ本明細書において記載されるものと実質的に同じ手順に従うか、または当業者に公知である指示シートをさらに含むことができる。
【実施例
【0101】
V.実施例
以下の実施例は本発明の好ましい態様を示すために含まれる。以下の実施例で開示される技法は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者によって発見された技法を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成するとみなすことができることを当業者は理解されたい。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示される特定の態様において多くの変更を行うことができ、依然として同様または類似の結果を得ることができることを認識されたい。
【0102】
実施例1
HER2およびHER2/HER3二量体化を標的化する抗体ならびに抗体薬物コンジュゲート(ADC)ありおよびなしのポジオチニブの処理で、乳がん細胞株、MDA175-VII(NRG1-DOC4融合体)の細胞生存率を試験した。細胞生存率はCell Titer Gloアッセイによって決定した。ポジオチニブは、0.287nMの平均IC50値で、MDA175-VII細胞を強力に阻害した(図1)。これらのデータは、ポジオチニブが、以前に報告されたTKIより低い濃度で、NRG1融合体を強力に阻害することを示す。
【0103】
さらに、HER2標的化抗体トラスツズマブ、T-DM1、およびペルツズマブによる処理は、それぞれ、>10000ng/mL、634.5ng/mL、および53.7ng/mLのIC50値を有していた(図2A)。さらに、HER2抗体と低用量ポジオチニブ(0.1nM)との組み合わせは、トラスツズマブ、ペルツズマブ、およびT-DM1への感受性を高め、IC50値をそれぞれ1.37nM、1.23nM、および1.32nMに低減させる(図2B)。
【0104】
実施例2
Ba/F3細胞の生成。 WT ErbB2とWT ErbB3とを、またはWT ErbB3とWT ErbB4とを、安定して共発現するBa/F3細胞を、以前に述べられているように生成する。手短に言えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスの構築物をPhoenix 293T細胞中にトランスフェクトしてウイルスを生成し、これをBa/F3細胞株と一晩インキュベートする。ウイルスを除去し、細胞をピューロマイシン中で10日間培養して、レトロウイルス構築物を安定して発現するBa/F3細胞株を選択する。選択後、抗HER2、抗HER3、および抗HER4抗体(Biolegend)を使用して細胞を選別する。次いで、表1AのNRG融合体のプラスミドを含むレンチウイルスを、細胞株に再び形質導入する。次いで、FACSによって、NRG1の発現について細胞を選別する。次いで、安定な細胞株からIL-3を除く。得られた安定な細胞は、薬物スクリーニングを含む下流の解析で使用する。
【0105】
薬物スクリーニングおよびIC50の決定。 薬物スクリーニングは、以前に述べられているように実施する。手短に言えば、384ウェルプレート(Greiner Bio-One)にウェルあたり2000~3000細胞で技術的な3連で細胞をプレーティングする。7つの異なる濃度のTKIまたはDMSOビヒクルを添加して、ウェルあたり40μLの最終量にする。72時間後、11μLのCell Titer Glo(Promega)を各ウェルに添加する。最低でも10分間プレートをインキュベートし、FLUOstar OPTIMAプレートリーダー(BMG LABTECH)を使用して生物発光を測定する。DMSO対照で処理した細胞に対して、生の生物発光値を正規化し、GraphPad Prismで値をプロットする。非線形回帰を使用して、可変勾配で正規化データに適合させ、GraphPad prismにより、50%阻害時の濃度の内挿によってIC50値を決定する。薬物スクリーニングは、各プレートにおける技術的な3連、および2連または3連の生物学的反復のいずれかで実施する。
【0106】
過剰発現モデル。 過剰発現モデルは、表1AのNRG1融合体のレンチウイルス形質導入によって生成する。レンチウイルスは、Lenti-X cells Lenti-X single shotキット(Takarabio)を使用して生成する。レンチウイルスは、製造者によって記載されているように生成する。次いで、レンチウイルスを表1Bの細胞株に添加する。24時間のウイルス形質導入後に、ウイルスを除去し、選択のために細胞を2μg/mlピューロマイシン中に入れる。10日間の選択後、細胞株からタンパク質およびRNAを採取し、NRG1融合体の発現をそれぞれウエスタンブロッティングおよびRT-PCRによって決定する。NRG1融合体を発現する安定な細胞株は、ウエスタンブロッティングおよびELISAを含む下流の解析に使用する。
【0107】
過剰発現細胞株におけるウエスタンブロッティングおよびELISAによるHERシグナリングの阻害の決定。 親細胞株および過剰発現(OE)細胞株を10cmディッシュにプレーティングし、1nm~100nmの漸増用量のポジオチニブで処理する。細胞をインヒビターおよび/または抗体とともに4時間、1日、および3日にわたってインキュベートし、溶解バッファー(Cell Signaling)を使用してタンパク質を採取する。NRG1融合体、リン酸化EGFR、HER2、HER3、およびHER4ならびに総EGFR、HER2、HER3、およびHER4の発現をウエスタンブロッティングによって決定し、ブロットをBioRad Chemidocイメージャーを使用して露光する。タンパク質発現の変化を定量化するために、ポジオチニブで処理した親細胞株およびOE発現細胞株由来のタンパク質をELISA(Cell Signaling)にロードし、製造者の指示書に従ってELISAを完了する。
【0108】
(表1A)NRG1融合体プラスミド
【0109】
(表1B)ヒト細胞株モデル
【0110】
本明細書において開示および主張する方法のすべては、本開示に照らして必要以上の実験をしないで、遂行および実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様の観点から記載してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書において記載される方法および方法の工程または一連の工程に変更を加えることができることは当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理的にも関連しているある特定の作用物質を本明細書において記載される作用物質と置換することができ、同時に同じまたは類似の結果が達成されるであろうことは明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内であるとみなされる。
【0111】
参考文献
以下の参考文献は、それらが、本明細書において記載されるものを補う例示的な手順または他の詳細を提供するという程度まで、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
図1
図2
【国際調査報告】