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特表2023-512263組織アブレーションおよびそれに関連する測定のためのシステムならびに方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】組織アブレーションおよびそれに関連する測定のためのシステムならびに方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20230316BHJP
   G01J 5/46 20060101ALI20230316BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A61B18/18 100
G01J5/46
A61B5/01 250
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546439
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 IB2021050682
(87)【国際公開番号】W WO2021152508
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/968,726
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/112,101
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522301991
【氏名又は名称】ヘプタ メディカル エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アリソン, ロバート シー.
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】レニハン, ティム
【テーマコード(参考)】
2G066
4C117
4C160
【Fターム(参考)】
2G066AC13
2G066BA10
2G066CB01
4C117XB01
4C117XC40
4C117XD40
4C117XE23
4C117XR06
4C160JK02
4C160JK03
4C160JK10
(57)【要約】
例示的アブレーションシステムが、提供される。本システムは、例えば、アブレーション中に測定される感知されるパラメータ(例えば、組織温度)に基づいたフィードバックおよびエネルギー放出の滴定を可能にする、制御され、再現可能な様式においてエネルギーを放出することによる、組織の中への安全かつ有効なエネルギー送達のために設計される。本システムは、標的組織の加熱と、加熱された組織の温度を監視するための放射測定との両方のための切替アンテナを含んでもよい。例えば、切替アンテナは、近位放射要素が近位放射要素のチョーク作用を打破するための短絡部を含むように、近位放射要素および遠位放射要素によって形成される、単極子を含んでもよい。本システムは、標的組織の温度を計算し、標的組織温度に基づいてアブレーション病変の体積を推定するためのプロセッサをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内の標的組織をアブレートするためのシステムであって、前記システムは、
近位領域と、遠位領域とを有するカテーテルと、
単極子を備えるメインアンテナであって、前記メインアンテナは、前記カテーテルの遠位領域に配置され、前記標的組織をアブレートするためにエネルギーを放出し、前記エネルギー放出の結果として発生される放射計温度を測定するように構成される、メインアンテナと、
前記カテーテルの遠位領域に配置される基準終端であって、前記基準終端は、前記遠位領域における基準温度を測定するように構成される、基準終端と、
前記メインアンテナおよび前記基準終端に動作可能に結合されるプロセッサであって、前記プロセッサは、
前記メインアンテナおよび前記基準終端に電気的に結合されるスイッチを介して交互に入れ替わる様式において、メインカテーテルに放射計温度を測定させ、前記基準終端に基準温度を測定させることと、
前記測定された放射計温度および前記測定された基準温度に基づいて標的組織温度を計算することと
を行うように構成される、プロセッサと
を備える、システム。
【請求項2】
前記単極子は、近位放射要素と、遠位放射要素とを備え、前記近位放射要素の近位端は、前記近位放射要素のチョーク作用を打破するように構成される短絡部を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スイッチは、前記近位放射要素と前記遠位放射要素との間に配置されるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記スイッチは、前記近位放射要素の近位領域内に配置されるように構成され、前記近位領域は、前記近位放射要素と前記遠位放射要素との間の接合部の近位にある、請求項2または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記スイッチは、第1の切替ダイオードと、第2の切替ダイオードとを備える、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記スイッチは、前記標的組織のアブレーション中に前記放射計温度からの前記基準終端の絶縁を改良するように構成される第3の切替ダイオードを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記スイッチは、前記基準温度の測定中に前記放射計温度からの前記基準終端の絶縁を改良するように構成される第4の切替ダイオードを備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の切替ダイオードおよび前記第4の切替ダイオードは、前記メインアンテナと直列であり、マイクロストリップ伝送ラインによって分離される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記スイッチを格納するように構成されるスイッチモジュールであって、前記スイッチモジュールは、前記カテーテルの同軸ケーブルに除去可能に結合されるように構成される近位同軸コネクタと、遠位同軸コネクタとを備える、スイッチモジュールをさらに備える、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記標的組織温度に基づいて、アブレーション手技中に前記エネルギー放出によって作成されるアブレーション病変の体積を推定するようにさらに構成される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記アブレーション病変の推定される体積に基づいて前記エネルギー放出の滴定を可能にするようにさらに構成される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、平均標的組織温度または前記標的組織温度のプロットされた曲線下の面積のうちの少なくとも一方に基づいて、アブレーション手技中にエネルギー放出によって作成されるアブレーション病変の体積を推定するようにさらに構成される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記標的組織温度に基づいて前記エネルギー放出の滴定を可能にするようにさらに構成される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、交互的様式において、前記メインアンテナにエネルギーを放出させ、放射計温度を測定させ、前記基準終端に基準温度を測定させるようにさらに構成される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサは、第1の時間周期にわたって、前記メインカテーテルにエネルギーを放出させ、第2の時間周期にわたって、交互に入れ替わる様式において、前記メインカテーテルに放射計温度を測定させ、前記基準終端に基準温度を測定させるように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の時間周期は、前記第1の時間周期および前記第2の時間周期の合計の少なくとも80パーセントである、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサは、前記計算された標的組織温度が所定の閾値内に維持されるように、前記エネルギー放出を変調させるようにさらに構成される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記メインアンテナを介したエネルギー放出中の前記基準終端の加熱を考慮するための基準終端較正と、前記メインアンテナを介したエネルギー放出中の前記標的組織に隣接する環境の加熱を考慮するための放射計較正とを実施するようにさらに構成される、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記基準終端と、前記メインアンテナを介したエネルギー放出中の前記標的組織に隣接する前記環境との加熱を考慮しながら、前記測定された放射計温度および前記測定された基準温度に基づいて前記標的組織温度を計算するようにさらに構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
少なくとも前記カテーテルの遠位領域にわたって配置される冷却スリーブであって、前記冷却スリーブは、冷却剤源に結合され、冷却剤が前記メインアンテナおよび前記基準終端を越流し、それによって、事前アブレーション較正中ならびにアブレーション手技中に前記メインアンテナおよび前記基準終端を冷却することを可能にするように構成される、冷却スリーブをさらに備える、前記請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
患者内の標的組織をアブレートするためのシステムであって、前記システムは、
近位領域と、遠位領域とを有するカテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域に配置されるメインアンテナであって、前記メインアンテナは、前記標的組織をアブレートするためにエネルギーを放出し、前記エネルギー放出の結果として発生される放射計温度を測定するように構成される、メインアンテナと、
前記カテーテルの遠位領域に配置される基準終端であって、前記基準終端は、前記遠位領域における基準温度を測定するように構成される、基準終端と、
プロセッサであって、
前記メインアンテナを介したエネルギー放出中の前記基準終端の加熱を考慮するための基準終端較正と、前記メインアンテナを介したエネルギー放出中の前記標的組織に隣接する環境の加熱を考慮するための放射計較正とを実施することと、
前記基準終端と、前記メインアンテナを介したエネルギー放出中の前記標的組織に隣接する前記環境との加熱を考慮しながら、前記測定された放射計温度および前記測定された基準温度に基づいて前記標的組織温度を計算することと
を行うように構成される、プロセッサと
を備える、システム。
【請求項22】
前記プロセッサは、前記メインアンテナおよび基準終端が、前記メインアンテナに隣接する環境の温度が一定のままであるように前記メインアンテナを横断して高流体流を提供する恒温槽内にある間、前記メインアンテナによって放出されるエネルギーの種々のレベルのために前記基準終端によって発生されるエネルギー放出から結果として生じる出力電圧を測定し、前記測定された電圧とエネルギー放出の種々のレベルを比較し、エネルギー放出中の前記基準終端上へのエネルギー放出の効果を考慮することによって、前記基準終端較正を実施するように構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサは、前記メインアンテナおよび前記基準終端が恒温槽内にある間、それぞれ、前記メインアンテナと第1のノイズレベルならびに第2のノイズレベルの衝突に応答して第1の温度および第2の温度を測定し、前記第1の温度および前記第2の温度と前記第1のノイズレベルならびに前記第2のノイズレベルを比較し、エネルギー放出中の前記標的組織に隣接する前記環境上へのエネルギー放出の効果を考慮することによって、前記放射計較正を実施するように構成される、請求項21または22に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記メインアンテナおよび基準終端が、第1の温度を有する第1の槽内にある間、第1の放射計信号に応答して第1の出力電圧ならびに第1の温度を測定し、前記メインアンテナおよび基準終端が、前記第1の温度と異なる第2の温度を有する第2の槽内にある間、第2の放射計信号に応答して第2の出力電圧ならびに第2の温度を測定し、前記第1の出力電圧および前記第2の出力電圧と前記第1の温度ならびに前記第2の温度を比較し、エネルギー放出中の前記標的組織に隣接する前記環境上へのエネルギー放出の効果を考慮することによって、前記放射計較正を実施するように構成される、請求項21-23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
少なくとも前記カテーテルの遠位領域にわたって配置される冷却スリーブであって、前記冷却スリーブは、冷却剤源に結合され、冷却剤が前記メインアンテナおよび前記基準終端を越流し、それによって、放射計較正およびアブレーション手技中に前記メインアンテナならびに前記基準終端を冷却することを可能にするように構成される、冷却スリーブをさらに備える、請求項21-24のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
患者内の標的組織をアブレートするためのシステムであって、前記システムは、
近位領域と、遠位領域とを有するカテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域に配置されるメインアンテナであって、前記メインアンテナは、前記標的組織をアブレートするためにエネルギーを放出し、前記エネルギー放出の結果として発生される放射計温度を測定するように構成される、メインアンテナと、
前記カテーテルの遠位領域に配置される基準終端であって、前記基準終端は、前記遠位領域における基準温度を測定するように構成される、基準終端と、
少なくとも前記カテーテルの遠位領域にわたって配置される冷却スリーブであって、前記冷却スリーブは、冷却剤源に結合され、冷却剤が前記メインアンテナおよび前記基準終端を越流し、それによって、事前アブレーション較正中ならびにアブレーション手技中に前記メインアンテナおよび前記基準終端を冷却することを可能にするように構成される、冷却スリーブと
を備える、システム。
【請求項27】
前記メインアンテナおよび前記基準終端に動作可能に結合されるプロセッサであって、前記プロセッサは、前記測定された放射計温度ならびに前記測定された基準温度に基づいて標的組織温度を計算するように構成される、プロセッサをさらに備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記プロセッサは、前記標的組織温度に基づいて、前記アブレーション手技中に前記エネルギー放出によって作成されるアブレーション病変の体積を推定するようにさらに構成される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記プロセッサは、前記アブレーション病変の体積に基づいて前記エネルギー放出の滴定を可能にするようにさらに構成される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
患者内の標的組織をアブレートするためのシステムであって、前記システムは、
近位領域と、遠位領域とを有するカテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域に配置されるメインアンテナであって、前記メインアンテナは、前記標的組織をアブレートするためにエネルギーを放出し、前記エネルギー放出の結果として発生される放射計温度を測定するように構成される、メインアンテナと、
前記カテーテルの遠位領域に配置される基準終端であって、前記基準終端は、前記遠位領域における基準温度を測定するように構成される、基準終端と、
プロセッサであって、
前記測定された放射計温度および前記測定された基準温度に基づいて標的組織温度を計算することと、
平均標的組織温度または前記標的組織温度のプロットされた曲線下の面積のうちの少なくとも一方に基づいて、アブレーション手技中にエネルギー放出によって作成されるアブレーション病変の体積を推定することと
を行うように構成される、プロセッサと
を備える、システム。
【請求項31】
前記プロセッサは、前記標的組織温度に基づいて前記エネルギー放出の滴定を可能にするようにさらに構成される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記プロセッサは、交互的様式において、前記メインカテーテルにエネルギーを放出させ、放射計温度を測定させ、前記基準終端に基準温度を測定させるようにさらに構成される、請求項30または31に記載のシステム。
【請求項33】
前記プロセッサは、第1の時間周期にわたって、前記メインカテーテルにエネルギーを放出させ、第2の時間周期にわたって、交互に入れ替わる様式において、前記メインカテーテルに放射計温度を測定させ、前記基準終端に基準温度を測定させるように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記第1の時間周期は、前記第1の時間周期および前記第2の時間周期の合計の少なくとも80パーセントである、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記プロセッサは、前記メインアンテナおよび前記基準終端に電気的に結合されるスイッチを介して交互に入れ替わる様式において、メインカテーテルに放射計温度を測定させ、前記基準終端に基準温度を測定させるように構成される、請求項33または34に記載のシステム。
【請求項36】
前記プロセッサは、前記計算された標的組織温度が所定の閾値内に維持されるように、前記エネルギー放出を変調させるようにさらに構成される、請求項30-35のいずれかに記載のシステム。
【請求項37】
患者内の標的組織をアブレートするためのシステムであって、前記システムは、
近位領域と、遠位領域とを有するカテーテルと、
前記カテーテルの遠位領域に配置されるメインアンテナであって、前記メインアンテナは、前記標的組織をアブレートするためにエネルギーを放出し、前記エネルギー放出の結果として発生される放射計温度を測定するように構成される、メインアンテナと、
前記カテーテルの遠位領域に配置される基準終端であって、前記基準終端は、前記遠位領域における基準温度を測定するように構成される、基準終端と、
プロセッサであって、
前記測定された放射計温度および前記測定された基準温度に基づいて標的組織温度を計算することと、
前記標的組織温度を監視し、前記標的組織温度内のポップを予測および/または検出することと
を行うように構成される、プロセッサと
を備える、システム。
【請求項38】
前記ポップは、急速な標的組織温度上昇と、続いて、突然の標的組織温度低下とを示す、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記プロセッサは、前記ポップが検出された場合に警告を発生させるようにさらに構成される、請求項37または38に記載のシステム。
【請求項40】
前記プロセッサは、前記ポップが予測される場合、前記メインアンテナを介して前記エネルギー放出を自動的に変調させ、前記標的組織温度または前記標的組織温度の増加率のうちの少なくとも一方を低減させるようにさらに構成される、請求項37-39のいずれかに記載のシステム。
【請求項41】
前記プロセッサに動作可能に結合されるディスプレイをさらに備え、前記プロセッサは、前記ディスプレイに前記標的組織温度内の前記ポップを表示させるようにさらに構成される、請求項37-40のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年11月10日に出願された、米国仮特許出願第63/112,101号および2020年1月31日に出願された、米国仮特許出願第62/968,726号の優先権を主張し、そのそれぞれの全内容が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本願は、概して、例えば、アブレーション中にパラメータ(例えば、標的組織の温度)を測定し、かつ測定されたパラメータに基づいてアブレーション病変の体積を測定することによる、標的組織の安全かつ有効なアブレーションのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
組織アブレーションが、種々の臨床的障害を処置するために使用され得、凍結アブレーション、マイクロ波アブレーション、高周波(RF)アブレーション、および超音波アブレーションを含むいくつかのアブレーション技法が、開発されている。多数の処置スキームが、動脈の内壁に接触するカテーテルによって印加されるRF電力を使用して、神経に影響を及ぼす。
【0004】
そのような技法は、典型的には、臨床医によって実施され、臨床医は、アブレーション先端を有するカテーテルを静脈血管系を介して標的組織に導入し、触覚フィードバック、マッピング心電図(ECG)の信号、解剖学的構造、および/または蛍光透視結像に基づいて適切な領域であると臨床医が考えるものに隣接してアブレーション先端を位置付け、灌注液の流動を作動させ、選択された領域の表面を冷却し、次いで、選択された領域内の組織を破壊するために十分であると考えられる時間周期にわたってアブレーション先端を作動させる。
【0005】
商業的に利用可能なアブレーション先端は、デジタルディスプレイを介して温度フィードバックを提供するための熱電対を含み得るが、そのような熱電対は、典型的には、灌注式アブレーション中に意味のある温度フィードバックを提供しない。例えば、熱電対は、表面温度のみを測定するのに対して、組織アブレーションをもたらす組織の加熱または冷却は、組織表面の下方のある深部において生じ得る。また、組織の表面が灌注液を用いて冷却される手技に関して、熱電対は、灌注液の温度を測定し、したがって、さらに、特に深部における組織の温度に関するいかなる有用な情報も隠蔽する。したがって、臨床医は、アブレートされているときの組織の温度、またはアブレーションの時間周期が十分であるかどうかに関する有用なフィードバックを有していない。
【0006】
故に、手技が完了された後にのみ、標的化された異常な経路が適切に中断されなかったことが露見され得る。そのような状況において、臨床医は、組織の正しくない領域がアブレートされたため、標的組織を破壊するために十分な時間周期にわたってアブレーション先端が作動されなかったため、アブレーション先端が組織に接触していなかったまたは組織に不十分に接触していたため、アブレーションエネルギーの出力が不十分であったため、もしくは上記のいくつかの組み合わせのために手技が失敗したかどうかを知らない場合がある。標的組織をアブレートするように再び試みるようにアブレーション手技を繰り返すことに応じて、臨床医は、第1の手技中と同程度にフィードバックを殆ど有さない場合があり、したがって、潜在的に、再び、異常な経路を破壊することに失敗し得る。加えて、臨床医が、標的組織の以前にアブレートされた領域を再度処置し、標的組織をアブレートするだけではなく隣接する組織を損傷させるいくつかのリスクが存在し得る。
【0007】
いくつかの状況では、アブレーション手技をそのまま繰り返さなければならないことを回避するために、臨床医は、成功したアブレーションの可能性を高めるために、それに沿って標的組織が存在すると考えられる標的組織の一連の領域をアブレートし得る。しかしながら、それらのアブレートされた領域のいずれかが十分に破壊されているかどうかを臨床医が判断することを補助するためには、不十分なフィードバックが再び存在する。
【0008】
Sterzerの米国特許第4,190,053号は、温熱療法処置装置を説明し、その中ではマイクロ波源が、生体組織の中にエネルギーを蓄積して温熱療法をもたらすために使用される。本装置は、組織内の深部における温度を測定するための放射計を含み、測定された温度に対応する放射計からの制御信号をフィードバックしてマイクロ波源からのエネルギーの印加を制御するコントローラを含む。
【0009】
Carr et al.の米国特許第7,769,469号は、ほぼ同時の加熱および温度測定を可能にするダイプレクサを有する、不整脈、腫瘍、ならびに同等物を処置するための統合された加熱および感知カテーテル装置を説明する。この特許はまた、放射計によって測定される温度が、例えば、選択された加熱プロファイルを維持するように、エネルギーの印加を制御するために使用され得ることを説明する。
【0010】
放射測定の使用によってもたらされる精密な温度測定感度および制御の見込みにもかかわらず、この技術の成功した商業的医療用途は、殆ど存在していない。以前から知られているシステムの1つの欠点は、放射計において使用されるマイクロ波アンテナの構築内のわずかな変動に起因する非常に再現可能な結果を得ることができないことであり、これは、カテーテル間の測定温度の有意な差につながり得る。組織によって放出される放射エネルギーを適切に捕捉するようにカテーテル上の放射計アンテナを配向することに関する問題、および、放射計の構成要素と術野内の他のデバイスとの間の干渉を防止するように、外科手術環境内の高周波数マイクロ波構成要素を遮蔽することに関する問題もまた、生じている。
【0011】
マイクロ波ベースの温熱療法処置および温度測定技法の受入もまた、放射測定温度制御スキームを実装することと関連付けられる資本コストによって妨げられている。高周波アブレーション技法は、そのようなシステムが、例えば、潅注が採用される場合、深部における組織温度を正確に測定することができないこと等の厳しい限界を有し得るにもかかわらず、医学界においてかなりの支持を博している。しかしながら、RFアブレーションシステムの普及している受入、そのようなシステムを用いる医学界の広範囲にわたる知識ベース、および、より新しい技術への切替およびより新しい技術のための訓練に対して要求される多くのコストは、放射測定の普及した取入れを劇的に遅延させている。
【0012】
McCarthy et al.の米国特許第8,926,605号および第8,932,284号は、アブレーション中に温度を放射測定的に測定するためのシステムを説明し、その各々の内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0013】
前述に照らして、組織内の深部における温度の高度な放射測定的測定を可能にし、マイクロ波加熱を用いた正確な温度測定を達成するシステムおよび方法を提供することが望ましい。
【0014】
そのようなマイクロ波加熱システムおよび放射測定的測定システムの較正のためのシステムならびに方法を提供することが、さらに望ましい。
【0015】
加えて、アブレーションシステムの有効性および安全性を改良するためにアブレーション手技中に標的組織を検出する、ならびに/もしくはその過熱を防止するためのフィードバック機構を有するアブレーションシステムを提供することが、望ましい。
【0016】
ある範囲の条件を処置し、改良された転帰、より低いリスク、および短縮された回復時間の見込みを与えるある範疇のエネルギーベースのデバイスが、存在するが、転帰を推進してリスクプロファイルを改良するための最適な療法をもたらすような明確に異なる技術の能力を利用するための有意な機会も、残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4,190,053号明細書
【特許文献2】米国特許第7,769,469号明細書
【特許文献3】米国特許第8,926,605号明細書
【特許文献4】米国特許第8,932,284号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、標的組織をアブレートし、かつアブレーション中にパラメータ(例えば、温度)を感知するためのアブレーションシステムおよび方法を提供する。好ましい実施形態では、アブレーションシステムは、アブレーションのためにマイクロ波エネルギーを利用する。例えば、患者内の標的組織をアブレートするためのシステムは、近位領域と、遠位領域とを有する、カテーテルと、カテーテルの遠位領域に配置される、メインアンテナとを含んでもよい。メインアンテナは、標的組織をアブレートするためにエネルギーを放出し、エネルギー放出の結果として発生される放射計温度を測定することの両方を行ってもよい。本システムは、遠位領域における基準温度を測定するための、カテーテルの遠位領域に配置される基準終端をさらに含む。本システムは、例えば、アブレーション中に測定される感知パラメータ(例えば、組織温度)に基づいたフィードバックおよびエネルギー放出の滴定を可能にする、制御され、再現可能な様式においてエネルギーを放出することによる、組織の中への安全かつ有効なエネルギー送達のために設計される。本システムは、少なくともカテーテルの遠位領域にわたって配置される、冷却スリーブを含んでもよい。冷却スリーブは、冷却剤源に結合され、冷却剤がメインアンテナおよび基準終端を越流し、それによって、事前アブレーション較正中ならびにアブレーション手技中にメインアンテナおよび基準終端を冷却することを可能にし得る。このように、生体内アブレーション手技に先立つ生体外較正が、アブレーション手技と綿密に整合し、パラメータ(例えば、アブレーション中の標的組織)の正確な感知を確実にする。
【0019】
加えて、本システムは、メインアンテナおよび基準終端に動作可能に結合されるプロセッサをさらに含んでもよい。プロセッサは、交互的様式において、メインカテーテルにエネルギーを放出させ、放射計温度を測定させ、基準終端に基準温度を測定させてもよい。例えば、プロセッサは、第1の時間周期にわたって、メインカテーテルにエネルギーを放出させ、第2の時間周期にわたって、交互に入れ替わる様式において、メインカテーテルに放射計温度を測定させ、基準終端に基準温度を測定させてもよい。第1の時間周期は、第1の時間周期および第2の時間周期の合計の少なくとも80パーセントであってもよい。また、プロセッサは、メインアンテナおよび基準終端に電気的に結合されるスイッチを介して交互に入れ替わる様式において、メインカテーテルに基準温度を測定させ、基準終端に基準温度を測定させるようにプログラムされてもよい。
【0020】
プロセッサは、測定された放射計温度および測定された基準温度に基づいて標的組織温度を計算するようにプログラムされてもよい。また、プロセッサは、標的組織温度に基づいて、アブレーション手技中にエネルギー放出によって作成されたアブレーション病変の体積を推定するようにプログラムされてもよい。例えば、アブレーション病変体積は、平均標的組織温度または標的組織温度のプロットされた曲線下の面積のうちの少なくとも一方に基づいて推測されてもよい。さらに、プロセッサは、アブレーション病変の体積に基づいてエネルギー放出の滴定をさらに可能にしてもよい。加えて、プロセッサは、計算された標的組織温度が所定の閾値内に維持されるようにエネルギー放出を変調させてもよい。
【0021】
本発明の別の側面によると、プロセッサは、メインアンテナを介したエネルギー放出中の基準終端の加熱を考慮するための基準終端較正、および前メインアンテナを介したエネルギー放出中の標的組織に隣接する環境の加熱を考慮するための放射計較正を実施するようにプログラムされてもよい。加えて、プロセッサは、基準終端と、メインアンテナを介したエネルギー放出中の標的組織に隣接する環境との加熱を考慮しながら、測定された放射計温度および測定された基準温度に基づいて標的組織温度を計算するようにプログラムされてもよい。
【0022】
例えば、基準終端較正は、メインアンテナおよび基準終端がメインアンテナに隣接する環境の温度が一定のままであるように、メインアンテナを横断して高流体流を提供する恒温槽内にある間、メインアンテナによって放出されるエネルギーの種々のレベルのために基準終端によって発生されるエネルギー放出から結果として生じる出力電圧を測定するステップと、測定された電圧とエネルギー放出の種々のレベルを比較し、エネルギー放出中の基準終端上へのエネルギー放出の効果を考慮するステップを含んでもよい。
【0023】
また、放射計較正は、メインアンテナおよび基準終端が恒温槽内にある間、それぞれ、メインアンテナと第1のノイズレベルならびに第2のノイズレベルの衝突に応答して第1の温度および第2の温度を測定するステップと、第1の温度および第2の温度と第1のノイズレベルならびに第2のノイズレベルを比較し、エネルギー放出中の標的組織に隣接する環境上へのエネルギー放出の効果を考慮するステップとを含んでもよい。代替として、放射計較正は、メインアンテナおよび基準終端が、第1の温度を有する第1の槽内にある間、第1の放射計信号に応答して第1の出力電圧ならびに第1の温度を測定するステップと、メインアンテナおよび基準終端が、第1の温度と異なる第2の温度を有する第2の槽内にある間、第2の放射計信号に応答して第2の出力電圧ならびに第2の温度を測定するステップと、第1の出力電圧および第2の出力電圧と第1の温度ならびに第2の温度を比較し、エネルギー放出中の標的組織に隣接する環境上へのエネルギー放出の効果を考慮するステップとを含んでもよい。
【0024】
本発明のさらに別の側面によると、プロセッサは、測定された放射計温度および測定された基準温度に基づいて標的組織温度を計算し、標的組織温度を監視し、標的組織温度内のポップ(例えば、急速な標的組織温度上昇、続いて、突然の標的組織温度低下)を予測ならびに/もしくは検出するようにプログラムされてもよい。故に、プロセッサは、ポップが検出された場合に警告を発生させてもよい。また、プロセッサは、ポップが予測される場合、メインアンテナを介してエネルギー放出を自動的に変調させ、標的組織温度または標的組織温度の増加率のうちの少なくとも一方を低減させるようにプログラムされてもよい。加えて、本システムは、プロセッサが、ディスプレイに標的組織温度内のポップを表示させるように、プロセッサに動作可能に結合されるディスプレイをさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の別の側面によると、患者内の標的組織をアブレートするための代替システムが、提供される。本システムは、近位領域と、遠位領域とを有する、カテーテルと、単極子を有する、メインアンテナとを含んでもよい。メインアンテナは、カテーテルの遠位領域に配置されてもよく、標的組織をアブレートするためにエネルギーを放出し、エネルギー放出の結果として発生される放射計温度を測定してもよい。加えて、本システムは、基準終端が遠位領域における基準温度を測定し得るように、カテーテルの遠位領域に配置される基準終端を含んでもよい。また、本システムは、メインアンテナおよび基準終端に動作可能に結合されるプロセッサであって、プロセッサは、メインアンテナおよび基準終端に電気的に結合されるスイッチを介して交互に入れ替わる様式において、メインカテーテルに放射計温度を測定させ、基準終端に基準温度を測定させ、測定された放射計温度ならびに測定された基準温度に基づいて標的組織温度を計算するように構成される、プロセッサを含んでもよい。
【0026】
単極子は、近位放射要素の近位端が、近位放射要素のチョーク作用を打破するように設計される短絡部を有するように、近位放射要素と、遠位放射要素とを含んでもよい。故に、スイッチは、近位放射要素と遠位放射要素との間に配置されてもよい。代替として、スイッチは、近位放射要素の近位領域内に配置されてもよく、近位領域は、近位放射要素と遠位放射要素との間の接合部の近位にある。
【0027】
スイッチは、第1の切替ダイオードと、第2の切替ダイオードとを含んでもよい。また、スイッチは、標的組織のアブレーション中に放射計温度からの基準終端の絶縁を改良する、第3の切替ダイオードをさらに含んでもよい。加えて、スイッチは、基準温度の測定中に放射計温度からの基準終端の絶縁を改良する、第4の切替ダイオードを含んでもよい。第2の切替ダイオードおよび第4の切替ダイオードは、メインアンテナと直列であり、マイクロストリップ伝送ラインによって分離されてもよい。本システムは、スイッチを格納するように定寸および成形される、スイッチモジュールをさらに含んでもよい。スイッチモジュールは、カテーテルの同軸ケーブルに除去可能に結合されるように構造化される、近位同軸コネクタと、遠位同軸コネクタとを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、ディッケスイッチを有するマイクロ波放射計の単純化されたブロック図である。
【0029】
図2図2は、ディッケスイッチおよび基準終端がアンテナへの接続部の近傍の同軸ケーブルの端部に配置されるマイクロ波加熱および温度感知システムのブロック図である。
【0030】
図3図3は、本発明の原理に従って構築される例示的マイクロ波アブレーションシステムのブロック図である。
【0031】
図4図4Aは、図3のシステムのマイクロ波加熱によって作成される温度場および電力損失密度のコンピュータシミュレーションを図示し、図4Bは、切断面の温度分布を図示する。
【0032】
図5-1】図5Aは、基準終端が放射計アンテナの双極子の間に配置される、例示的マイクロ波アブレーションシステムを図示し、図5Bは、図5Aのマイクロ波アブレーションシステムの切替ネットワークを図示し、図5Cは、図5Aのマイクロ波アブレーションシステムを図示する。
図5-2】図5Aは、基準終端が放射計アンテナの双極子の間に配置される、例示的マイクロ波アブレーションシステムを図示し、図5Bは、図5Aのマイクロ波アブレーションシステムの切替ネットワークを図示し、図5Cは、図5Aのマイクロ波アブレーションシステムを図示する。
【0033】
図6図6は、本発明の原理に従って構築される例示的マイクロ波アブレーションシステムのマイクロ波放射要素の基本的な双極子を図示する。
【0034】
図7図7は、本発明の原理による例示的マイクロ波アブレーションシステムのマイクロ波放射要素のバラン変換器を図示する。
【0035】
図8図8は、本発明の原理に従って構築される例示的マイクロ波アブレーションシステムの放射計アンテナの切取内部図である。
【0036】
図9A図9Aは、本発明の原理に従って構築される例示的マイクロ波アブレーションシステムのマイクロ波放射要素の背中合わせのバラン変換器を図示する。
【0037】
図9B図9Bは、本発明の原理による、切替ダイオードおよび基準終端レジスタを伴う図9Aの背中合わせのバラン変換器を図示する。
【0038】
図10図10Aは、例示的マイクロ波アブレーションシステムのダイオードがオンにバイアスされたときの組織内での電力消散を図示し、図10Bは、例示的マイクロ波アブレーションシステムのダイオードがオフにバイアスされたときの組織内での電力消散を図示する。
【0039】
図11図11は、本発明の原理に従って構築されるバラン変換器の3つの導体の伝送ラインの断面である。
【0040】
図12図12は、本発明の原理による例示的マイクロ波アブレーションシステムのカプセル化されたパッケージ化されていないダイオードを図示する。
【0041】
図13図13は、本発明の原理に従って構築される冷却剤スリーブを有する、例示的マイクロ波アブレーションシステムを図示する。
【0042】
図14図14は、本発明の原理による標的組織をアブレートするステップを図示する、フローチャートである。
【0043】
図15図15は、本発明の原理による例示的基準終端較正のステップを図示する、フローチャートである。
【0044】
図16A図16Aは、本発明の原理による例示的放射計較正のステップを図示する、フローチャートである。
【0045】
図16B図16Bは、本発明の原理による代替の例示的放射計較正のステップを図示する、フローチャートである。
【0046】
図17図17は、本発明の原理に従って行われるアブレーション手技の温度対時間を図示する、グラフである。
【0047】
図18A図18Aは、本発明の原理に従って行われるアブレーション手技のアブレーション病変体積対平均標的組織温度を図示する、グラフである。
【0048】
図18B図18Bは、本発明の原理に従って行われるアブレーション手技のアブレーション病変体積対標的組織温度の曲線下の放射計面積を図示する、グラフである。
【0049】
図19図19は、標的組織温度内のポップ条件を図示する、グラフである。
【0050】
図20図20は、均質組織内の誘発された熱病変を示す、データを図示する。
【0051】
図21A図21A-21Cは、本発明の原理によるアブレーションシステムを使用したヒートシンク試験の結果を図示する。
図21B図21A-21Cは、本発明の原理によるアブレーションシステムを使用したヒートシンク試験の結果を図示する。
図21C図21A-21Cは、本発明の原理によるアブレーションシステムを使用したヒートシンク試験の結果を図示する。
【0052】
図22図22は、本発明の原理に従って行われるアブレーション手技を使用した、ウシの肝臓上でのヒートシンク試験の結果を図示する。
【0053】
図23図23は、本発明の原理に従って行われるアブレーション手技を使用した、ウシの肝臓上での肺アブレーション試験の結果を図示する。
【0054】
図24図24Aは、肺アブレーション試験から結果として生じる放射計AUCを示すデータを図示し、図24Bは、肺アブレーション試験から結果として生じる送達されたエネルギーを示すデータを図示する。
【0055】
図25A図25Aは、例示的マイクロ波アブレーションシステムのマイクロ波放射要素の基本的な双極子を図示する。
【0056】
図25B図25Bは、本発明の原理による、図25Aの基本的な双極子の単極子への転換を図示する。
【0057】
図25C図25Cは、本発明の原理に従って構築される細い単極子を図示する。
【0058】
図26A図26Aは、切替ネットワークが本発明の原理による単極子内に配置される、例示的マイクロ波アブレーションシステムを図示する。
【0059】
図26B図26Bは、図26Aのマイクロ波アブレーションシステムの切替ネットワークを図示する。
【0060】
図26C図26Cは、図26Aのマイクロ波アブレーションシステムの代替の切替ネットワークを図示する。
【0061】
図27図27Aおよび27Bは、本発明の原理による、切替ネットワークが押し戻される、例示的マイクロ波アブレーションシステムを図示する。
【0062】
図28図28A-28Cは、本発明の原理に従って構築される例示的スイッチモジュールを図示する。
【0063】
図29図29は、本発明の原理に従って構築される、例示的スイッチ基板を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の詳細な説明
前述に照らして、温度測定および制御のために放射測定システム(例えば、マイクロ波放射測定システム)を採用する、生体組織を処置するためのシステムならびに方法を提供することが望ましい。本発明の一側面によると、マイクロ波アブレーション中に温度を放射測定的に測定する、すなわち、放射計からの信号に基づいて温度を計算するためのシステムおよび方法が、提供される。マイクロ波アブレーションシステムでは、アンテナが、アブレーション信号電力が標的組織内に分散される方法を判定する。これは、電力損失密度として定量化されることができる。放射測定感知システムでは、アンテナは、電力損失密度が電源密度の状態になる、厳密に逆方向に稼働する。総受信電力は、測定体積内の電源の全ての合計である。電源の相対的な受信規模は、伝送またはアブレーションの場合のための電力損失の相対的な消散規模と同一である。
【0065】
既存の市販のアブレーションシステムにおいて使用される標準的な熱電対技法とは異なり、放射計は、組織アブレーションが生じる深部における組織温度に関する有用な情報を提供し、したがって、臨床医が標的組織の選択された領域をアブレートするときの組織損傷の範囲に関して臨床医にフィードバックを提供し得る。具体的には、本開示は、標的組織のマイクロ波アブレーションおよびアブレーション中の標的組織の温度を測定するための改良されたシステムならびに方法を提供することによって、以前から知られているシステムの欠点を克服する。また、本開示は、基準終端およびアンテナに隣接する環境上へのエネルギー放出の効果を考慮し、アブレーション病変体積を推定し、アブレーションシステムの望ましくない加熱ならびに/もしくは移動を示すポップ条件を検出および/または予測し、それによって、本システムの安全性ならびに有効性を改良するための、アブレーションシステムを較正するための改良されたシステムおよび方法を提供する。本明細書に説明される新規の発明は、カテーテル/プローブベースの療法への広範囲の適用を有し得、カテーテル/プローブベースの療法は、限定ではないが、肝臓、腎臓、前立腺、および肺における血管系の中の標的ならびに軟組織標的を含む。例えば、本明細書に説明される本発明の原理は、公知のブレーションシステム(例えば、NeuWaveTMマイクロ波アブレーションシステム(Johnson & Johnson(Bridgewater, New JerseyおよびCincinnati, Ohio)の一部である、Ethicon製)に組み込まれ得る。
【0066】
標的組織へのマイクロ波加熱、および、加熱された組織の温度を監視する手段としてのマイクロ波放射測定は、所望の温度がもたらされ、標的組織を適切に処置し、療法上の目標を達成することを確実にし、Allisonの米国特許出願公開第2019/0365466号(その全内容が参照により本明細書に援用される)に説明される。具体的には、加熱および温度感知が、両方の機能のために共有される単一のアンテナを使用するカテーテルを用いて遂行される。マイクロ波加熱は、標的組織に向かって指向されてもよい。マイクロ波発電機と同一の周波数において動作してアンテナを時分割する放射計が、アンテナを囲繞する領域からのマイクロ波放出を感知し、これらを組織温度に転換する。この場合、監視されている組織の体積は、例えば、腫瘍性肺組織を含む。アルゴリズムが、標的領域における温度を体積温度の読取値に関連付ける。
【0067】
しかしながら、マイクロ波加熱を用いた放射測定を使用して正確な温度測定を達成するためには、障害物が、存在する。これらは、放射計とアンテナとの間の比較的に長い同軸ケーブル内での消散損失から生じる。通常のアプローチは、加熱されている標的組織の未知の温度を放射計内の既知の温度の内部基準と比較するディッケ放射計を使用する。放射計出力電圧は、以下の通りである。
【化1】
【0068】
式中、傾きは、1度あたりのボルト感度であり、オフセットは、固定誤差の全ての合計である。これらの定数は、ホット入力終端およびコールド入力終端を使用した較正によって判定される。
【化2】
【0069】
図1は、ディッケ放射計を有するそのようなシステムの単純化されたブロック図を図示する。図1に示されるように、アンテナ入力28または内部基準入力(例えば、基準温度終端)30のいずれかを選択する入力スイッチ(例えば、ディッケスイッチ)32が、使用される。本アプローチは、ディッケスイッチ32の背後の測定経路における全てのものが、アンテナ入力28からの標的測定および基準温度終端30からの基準測定の両方に対して共通であり、可能性として考えられる測定誤差の大部分が計算から外れるため、人気がある。
【0070】
アンテナカテーテルの問題は、カテーテルの長さにわたって延設される同軸カテーテル内での消散損失である。ケーブル損失から生じる放出は、アンテナによって受信される放出から区別不可能である。放射計は、ケーブル温度と組み合わせられるアンテナ温度を測定する。問題は、高損失を要求する小径カテーテル、小径同軸ケーブルのための要望、および、発電機の電力の一部の消散によって引き起こされる同軸ケーブルの加熱によって、さらに悪化させられる。
【0071】
解決策が、図2のブロック図に開示される。図2に図示されるように、ディッケスイッチ34および基準終端36が、同軸ケーブル(例えば、アンテナ40への接続部の近傍の、メインカテーテルケーブルの遠位端における短い可撓性ケーブル38)の端部に移動されている。ここで、同軸ケーブルは、アンテナ40からの標的測定および基準終端36からの基準測定の両方の一部であり、そこから消散する熱は、温度計算から外れる。しかしながら、本スキームは、加熱するケーブルへのその近接度に起因して、基準の加熱から生じるある誤差を被る。
【0072】
以前から知られている放射測定システムの欠点を克服するために、本発明は、アンテナに統合されたディッケスイッチ放射計機能を統合する。例えば、ここで図3を参照すると、本発明の原理に従って構築されるマイクロ波加熱および温度感知システム10を図示するブロック図が、提供される。図3に示されるように、発電機12は、アンテナスイッチバイアスダイプレクサ18が後に続く伝送/受信(T/R)スイッチ16を通してアブレーションエネルギーを切替アンテナ22に供給する。発電機12は、任意の以前から知られている商業的に利用可能なアブレーションエネルギー発電機(例えば、マイクロ波エネルギー発電機)であり、それによって、放射測定技法が低減された資本支出で採用されることを可能にし得る。
【0073】
さらに、放射計24は、切替アンテナ22からケーブル20(例えば、同軸ケーブル)を介して温度測定値を受信する。切替アンテナ22は、マイクロ波エネルギーを放出するため、および、メインアンテナに隣接する組織の温度を測定するための、1つまたは複数のマイクロ波放射要素を有するメインアンテナと、基準温度を測定するための基準終端とを含む。加えて、切替アンテナ22は、アブレーションを受ける組織の体積温度を検出するための、その中に統合される切替ネットワーク(例えば、ディッケスイッチ)を含む。切替ネットワークは、切替アンテナ22のメインアンテナからの測定された放射計温度(例えば、アブレーション手技中のメインアンテナに隣接する組織の温度)を示す信号と、切替アンテナ22の基準終端からの測定された基準温度を示す信号との間で選択する。切替ネットワークが、切替アンテナ22内に統合され、ケーブル20および切替アンテナ22の接続点から十分に離れているため、ケーブル20による基準終端の加熱は、回避される。
【0074】
スイッチ16およびアンテナスイッチバイアスダイプレクサ18は、スイッチ16の状態に応じて切替アンテナ22から温度測定値を受信するための放射計24と共に、ハンドル14内に配置され得る。例えば、スイッチ16は、マイクロ波出力が発電機12から切替アンテナ22に伝送され得るようなアブレーション状態にあってもよい、または、スイッチ16は、放射計24が切替アンテナ22から(例えば、メインアンテナならびに/もしくは基準終端から)温度測定値を受信し得るような測定状態にあってもよい。故に、スイッチバイアスダイプレクサ18は、放射計24がメインアンテナから温度測定値を受信し得るようなメインアンテナ状態にあってもよい、またはスイッチバイアスダイプレクサ18は、放射計24が基準終端から温度測定値を受信し得るような基準終端状態にあってもよい。ハンドル14は、再利用可能であってもよい一方で、ケーブル20および切替アンテナ22は、使い捨て可能であってもよい。
【0075】
システム10は、例えば、ハンドル14およびケーブル20を介して、発電機12ならびに切替アンテナ22に結合されるコントローラ26をさらに含み、それらの間の信号を調整する。コントローラ26は、それによって、動作のために要求される情報を発電機12に提供し、臨床医の制御下でアブレーションエネルギーを切替アンテナ22に伝送し、臨床医による使用のために、アブレートされているときの組織の深部における温度を温度ディスプレイを介して表示してもよい。表示される温度は、コンピュータアルゴリズムを使用して、切替アンテナ22によって測定される信号に基づいて計算されてもよい。したがって、コントローラ26は、コントローラ26によって実行されるべき命令を記憶するためのメモリを有するプロセッサを含む。プロセッサは、プログラム可能なマイクロプロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ(例えば、プログラミングを記録するためのEEPROM)、および不揮発性記憶装置(例えば、ファームウェアを記録するためのフラッシュメモリ)を含み得る、1つまたは複数の商業的に利用可能なマイクロコントローラユニットを備えてもよい。プロセッサのメモリは、プロセッサによって実行されると、プロセッサおよびシステム10の機能コンポーネントに、本明細書においてそれらに起因する機能性を提供させる、プログラム命令を記憶する。プロセッサは、プログラミングデータがプロセッサのメモリ内に記憶される、またはネットワークを介してアクセス可能であるように、プログラム可能であるように構成される。当業者に容易に理解されるように、図3は、1つのコントローラを示すように図示されるが、プロセッサは、単一の場所/筐体または複数の場所/筐体内で利用される、複数のプロセッサを含んでもよい。さらに、図3の再利用可能機器は、共通の筐体または別個の筐体内に格納されてもよい。
【0076】
プロセッサは、上記に説明されるように、アブレーション状態と測定状態との間を移行するようにスイッチ16を指向してもよい。例えば、プロセッサは、スイッチ16がアブレーション状態にあるとき、切替アンテナ22のメインアンテナにマイクロ波エネルギーを放出させてもよく、スイッチ16が測定状態にあるとき、放射計24に切替アンテナ22からの(例えば、メインアンテナおよび/または基準終端からの)温度測定値を示す信号を受信させてもよい。加えて、プロセッサは、上記に説明されるように、メインアンテナ状態と基準終端状態との間を移行するようにスイッチバイアスダイプレクサ18を指向してもよい。例えば、プロセッサは、スイッチバイアスダイプレクサ18がメインアンテナ状態にあるとき、切替アンテナ22のメインアンテナからの測定された放射計温度(例えば、アブレーション手技中の切替アンテナ22に隣接する組織の温度)を示す信号、およびスイッチバイアスダイプレクサ18が基準終端状態にあるとき、切替アンテナ22の基準終端からの測定された基準温度を示す信号を受信してもよい。故に、プロセッサは、信号に基づいてアブレーションを受ける組織の体積温度を計算することができる。また、プロセッサは、フィードバックループの一部として、持続的にアブレーションを受ける組織の計算された体積温度に基づいてメインアンテナ43を介して放出されるエネルギーのレベルを変調させ、標的組織の温度が所定の閾値内に維持されることを確実にしてもよい。
【0077】
本発明の一側面によると、プロセッサは、アブレーション周期の大部分(例えば、50%超、75%超、80%超、または、好ましくは、90%超)にわたってアブレーション状態に位置付けられ、消散される電力を最大化するように、スイッチ16を指向する。故に、プロセッサは、アブレーション周期の残り(例えば、それぞれ、50%未満、25%未満、20%未満、または、好ましくは、10%未満)にわたって測定状態に位置付けられるように、スイッチ16を指向してもよい。また、スイッチ16が測定状態にあるアブレーション周期中に、プロセッサは、交互に入れ替わり、メインアンテナ状態に位置付けられることと基準終端状態に位置付けられることとの間で交互に入れ替わりようにスイッチバイアスダイプレクサ18を指向してもよい。
【0078】
例えば、1秒サイクルにおいて、プロセッサは、メインアンテナが900ミリ秒にわたって標的組織にマイクロ波エネルギーを放出するように、900ミリ秒にわたってアブレーション状態に位置付けられるようにスイッチ16を指向し、次いで、100ミリ秒にわたって測定状態に位置付けられるようにスイッチ16を指向してもよい。スイッチ16が測定状態にある100ミリ秒中に、プロセッサは、例えば、1、2、3、4、または5ミリ秒毎にメインアンテナ状態と基準終端状態との間で交互に入れ替わるようにスイッチバイアスダイプレクサ18を指向してもよい。当業者によって理解されるように、プロセッサは、900ミリ秒超またはそれ未満にわたってアブレーション状態に位置付けられるようにスイッチ16を指向してもよく、プロセッサは、1ミリ秒未満または5ミリ秒超の任意の時間を含む、時間周期毎に交互に入れ替わるようにスイッチバイアスダイプレクサ18を指向してもよい。また、切替構成要素(例えば、スイッチ16およびスイッチバイアスダイプレクサ18)のうちの少なくとも1つが、下記にさらに詳細に説明されるように、切替アンテナ22内に統合されてもよい。
【0079】
マイクロ波出力は、発電機12からカテーテルの中のケーブル20を辿ってカテーテル先端における切替アンテナ22に伝搬する。マイクロ波出力は、切替アンテナ22のメインアンテナから外向きに、標的組織(例えば、腫瘍等の標的肺組織)の中へ放射する。アブレーションシステムが除神経のために使用される場合等の他の実施例では、導入器デバイスが、身体管腔内にカテーテルを送達するために使用されてもよく、スペーサデバイスが、切替アンテナ22が身体管腔のおおよその中心に展開されることを確実にするために使用されてもよい。体温において身体管腔を通して流動する血液の体積は、血液との即時の接触において身体管腔の表面を冷却し得る。加えて、または代替として、カテーテルの冷却管腔を通して導入される、身体の外側からの冷却剤が、身体管腔の表面を冷却するために使用され得る。この冷却を被っていない、管腔壁を越えた組織は、熱くなる。十分なマイクロ波出力が、供給され、標的組織(例えば、神経面積)を、標的組織を破壊する温度まで加熱する。
【0080】
マイクロ波加熱によって作成される、温度場のコンピュータシミュレーションが、図4に示される。図4は、切替アンテナおよび囲繞する組織を通した切断部を図示する。効果は、アンテナの周囲で対称的であり、そのため、切断面の一方の半体のみが、示される。ピーク温度を通した半径方向の線に沿った温度が、標的組織内の温度を示す。温度は、組織表面の近傍の組織の内側で上昇し、標的組織の近傍の深部において最大に到達する。図4はまた、切替アンテナによって知覚されるマイクロ波出力損失密度パターンを図示する。切替アンテナおよび周波数が、発電機および放射計の両方に共通であるため、両方の機能のために生成されるパターンは、一致しており、放射計は、加熱される領域を最適に監視する。
【0081】
ここで図5A図5Cを参照すると、マイクロ波アブレーションシステム10の切替アンテナ22が、提供される。切替アンテナ22は、マイクロ波加熱および温度感知の両方のために使用されるメインアンテナ43と、基準温度(例えば、切替アンテナ22に隣接する温度)を測定するための基準終端48とを含む。例えば、切替アンテナ22のメインアンテナ43は、1つまたは複数のマイクロ波放射要素(例えば、第1のマイクロ波放射要素44a、および第2のマイクロ波放射要素44b)を含み、1つまたは複数のマイクロ波放射要素は、発電機12からケーブル20を介して電力を受け取るように、かつ、標的組織をアブレートするために十分なレベルにおけるマイクロ波エネルギーを、囲繞する標的組織の中へ放出するように設計される。
【0082】
切替アンテナ22のメインアンテナ43は、アンテナを囲繞する領域からのマイクロ波放出を検出するための手段(例えば、マイクロ波放射要素44a、44bによって形成される1つまたは複数の回路)をさらに含み、これらを切替アンテナ22に隣接する組織の温度(すなわち、放射計温度)に転換する。切替アンテナ22は、基準温度を測定するための基準終端48をさらに含む。加えて、切替アンテナ22は、切替アンテナ22のメインアンテナ43のマイクロ波放射要素44a、44bの双極子半体の間に配置される切替ネットワーク42(例えば、ディッケスイッチ)を統合する。上記に詳細に説明されるように、プロセッサは、メインアンテナ43を介したマイクロ波エネルギー放出を可能にすることと、メインアンテナ43または基準終端48を介した温度測定を可能にすることとの間で交互に入れ替わるように切替ネットワーク42を指向してもよい。
【0083】
体積温度出力は、放射計温度(例えば、メインアンテナ43を囲繞する加熱された組織の温度)と、基準終端48によって測定される基準温度との間の差異である。体積温度出力は、アルゴリズム(例えば、米国特許第8,932,284号および第8,926,605号(その両方とも、参照により本明細書に援用される)に説明されるもの)を使用して、メインアンテナ43のマイクロ波放射要素44a、44bからの測定された放射計温度を示す信号と、基準終端48からの測定された基準温度を示す信号とに基づいて、計算されてもよい。
【0084】
具体的には、切替コンポーネント(例えば、切替ダイオード46a、46b)および基準終端48の全てが、2つのアンテナ双極子半体の接合部に位置する。2つのアンテナ双極子半体の間の接合部は、例えば、5mm以下、好ましくは、3mm以下の長さを有し得る。故に、マイクロ波アブレーションシステム10の統合されたアンテナ/スイッチ構成は、物理的により短く、より可撓性を有する。切替ダイオード46a、46bは、切替ダイオード46a、46bをオンまたはオフにバイアスすることによって作動され、連動して同一状態に切り替えられる。故に、単一のバイアス源のみが、要求され、ケーブル20の導体を介して切替ダイオード46a、46bに動作可能に結合され得る。切替ダイオード46a、46bは、例えば、マイクロ波PINダイオードであってもよく、オン状態においてわずかな順電流でバイアスされる、または、オフ状態において負の電圧でバックバイアスされる。
【0085】
加えて、マイクロ波チョーク配列52が、マイクロ波放射要素44a、44bから同軸カテーテルシャフト上へのマイクロ波エネルギーの放射パターンの折り返しを最小限にするために提供される。チョークは、近位双極子半体(例えば、マイクロ波放射要素44a)をメインアンテナ43の給電点におけるケーブル20に接続することによって形成される。メインアンテナ43とケーブル20との間に開回路チョークをもたらす同軸構造が、マイクロ波放射要素44aとケーブル20との間に形成される。
【0086】
メインアンテナ43からのまたは基準終端48からの入力が、ケーブル20の中心導体39に印加されるバイアス電流の極性を反転させることによって選択される。直列に接続される切替ダイオード46a、46bは、マイクロ波信号を通過させる低い抵抗、または、バイアス極性に応じて信号を遮断する小さい静電容量のいずれかである。レジスタ(例えば、バイアス構成要素53)は、ケーブル110の外側導体41を通してバイアス電流を返す。バイアス電流ダイプレクサが、身体の外側のカテーテルの近位端にバイアスを供給する。
【0087】
チップレベルの切替構成要素(ダイオード、レジスタ、およびコンデンサ)は、非常に小さく、マイクロ波放射要素44a、44bの双極子半体の間のわずかな空間内のセラミックカード上に常駐する。ケーブル20およびアンテナ構造は、狭い通路を通り抜け得る可撓性材料から形成される。唯一の堅性区分は、切替ネットワーク42であり得、これは、約3mm以下である。
【0088】
システム10は、基準終端48が基準温度を確立しなければならない、肺組織のアブレーション等の用途のために好適である。この理由のために、基準終端48は、アンテナ放射パターンを阻害させ得るメインアンテナ43の給電点を温度センサが横断する必要がないように、アンテナ構造の近位側に位置する。外側導体41と、基準終端48の基準レジスタの近傍で終端する非常に細い異種金属ワイヤとによって形成される熱電対回路が、この目的のために使用され得る。
【0089】
図6に図示されるように、マイクロ波放射要素44a、44bは、発電機12からケーブル20を介して電力を受け取る基本的な双極子である。図6に示されるように、マイクロ波放射要素44a、44bは、円筒形の形状を有し得る。当業者によって理解されるように、マイクロ波放射要素44a、44bは、渦巻き状の巻線を含む他の形状を有し得る。マイクロ波放射要素44a、44bの各々の中にあるものは、バラン変換器である。バラン変換器は、シングルエンド伝送ラインシステムを、バラン変換器54aを図示する図7に示されるような平衡システムに変換する。
【0090】
ここで図8を参照すると、代替の例示的マイクロ波アブレーションシステム60が、提供される。マイクロ波アブレーションシステム60は、図3のマイクロ波アブレーションシステム10と同様に構築され、同様の構成要素が、同様にプライミングされた参照番号によって識別される。例えば、ケーブル20’が、ケーブル20と対応し、切替アンテナ22’が、切替アンテナ22と対応し、メインアンテナ43’が、メインアンテナ43と対応し、マイクロ波放射要素44a’、44b’が、マイクロ波放射要素44a、44bと対応し、切替ダイオード46a’、46b’が、切替ダイオード46a、46bと対応し、基準終端48’が、基準終端48と対応する。図8に示されるように、マイクロ波放射要素44a、44bの各々の中にあるものは、それぞれ、バラン変換器54a、54bである。
【0091】
マイクロ波アブレーションシステム60は、基準終端48’が第2のマイクロ波放射要素44b’の遠位に配置される点において、マイクロ波アブレーションシステム10と異なる。具体的には、切替アンテナ22’は、切替ネットワーク(例えば、切替ダイオード46a’、46b’を含むディッケスイッチ)をメインアンテナ43’の中へ統合し、これは、基準終端48’がメインアンテナ43’の遠位端から外に突出することを可能にする。故に、システム60は、基準終端48’が血流によって体温に維持され得る、腎除神経等の用途において使用され得る。
【0092】
メインアンテナ43’の構造は、それが、放射計のディッケスイッチ機能を可撓性の遠隔アンテナの中へ統合し、放射計基準終端48’がメインアンテナ43’から安定した温度領域(例えば、血流の経路)の中へ突出することを提供する点において、一意である。体積温度出力は、放射計温度(例えば、メインアンテナ43’を囲繞する加熱された組織の温度)と、基準温度(例えば、(例えば、腎動脈の中の)基準終端48’にわたって血流によって提供される既知の安定した体温)との間の差異である。体積温度出力は、アルゴリズム(例えば、米国特許第8,932,284号および第8,926,605号(その両方とも、参照により本明細書に援用される)に説明されるもの)を使用して、メインアンテナ43’のマイクロ波放射要素44a’、44b’からの測定された放射計温度を示す信号と、基準終端48’からの測定された基準温度を示す信号とに基づいて、計算されてもよい。
【0093】
図9Aに図示されるように、マイクロ波放射要素44a’、44b’は、2つの背中合わせのバラン変換器54a、54bを含む。図9Bに示されるように、2つの切替ダイオード(例えば、切替ダイオード46a’、46b’)は、メインアンテナ43’のマイクロ波放射要素44a’、44b’内に統合される。切替ダイオード46a’は、バラン変換器54a、54bの間に位置付けられ、切替ダイオード46b’は、バラン変換器54bの遠位に(例えば、バラン変換器54bと基準終端48’(図示せず)との間に)位置付けられる。切替ダイオード46a’、46b’が閉鎖されると、シングルエンド入力は、マイクロ波放射要素44a’、44b’に接続する平衡出力に変換される。バラン変換器54aは、メインアンテナ43’の遠位端に短絡され、したがって、平衡出力における開回路に変換する。切替ダイオード46a’、46b’が、図9Aに示されるように開放しているとき、変換は、行われず、構造は、メインアンテナ43’の遠位端への伝送ライン経路を通して直線の状態になり、基準終端(例えば、基準終端48’)が図9Bに図示されるように位置する。
【0094】
図9Bは、それらの中に統合される切替ダイオード46a’、46b’を伴う背中合わせのバラン変換器54a、54bと、バイアス遮断コンデンサ56および基準終端レジスタ58を有する基準終端48’とを有する切替アンテナ22’を図示する。さらに図9Bに示されるように、接続部62aが、マイクロ波放射要素44a’に接続し、接続部62bが、マイクロ波放射要素44b’に接続する。切替ダイオード46a’、46b’は、切替ダイオード46a’、46b’をオンまたはオフにバイアスすることによって作動され、連動して同一状態に切り替えられる。故に、単一のバイアス源のみが、要求され、ケーブル20の導体を介して切替ダイオード46a’、46b’に動作可能に結合され得る。
【0095】
切替ダイオード46a’、46b’は、例えば、マイクロ波PINダイオードであってもよく、オン状態においてわずかな順電流でバイアスされる、または、オフ状態において負の電圧でバックバイアスされる。バイアス遮断コンデンサ56は、バイアス電流が基準終端48’の基準終端レジスタ58の中で消散することを防止する。基準終端レジスタ58は、接続伝送ラインが基準終端レジスタ58のレジスタ値と同一の特性インピーダンスを有する限り、マイクロ波放射要素44a’、44b’のバラン変換器54a、54bから任意の距離を置いて位置し、基準終端48’の加熱を最小限にし得る。
【0096】
ここで図10Aおよび10Bを参照すると、切替ダイオード46a’、46b’の両方のスイッチ位置(例えば、オンおよびオフ)のためのアンテナ電力損失密度パターンが、提供される。例えば、図10Aは、切替ダイオード46a’、46b’がオンにバイアスされるときの切替アンテナ22’の動作中の組織内での電力消散を図示する。図10Aに示されるように、(例えば、アブレートされるべき標的組織が位置する)標的組織内の所定の深度における組織の体積が、アブレーションのために十分な所望の温度まで加熱される。図10Bは、切替ダイオード46a’、46b’がオフにバイアスされるときの組織内での電力消散を図示し、したがって、切替アンテナ22’が基準終端48’のみを検出していることを示す消散は、示されていない。
【0097】
バラン構造を構築し、可撓性の小径カテーテルの中に切替ダイオードを搭載する課題を克服するために、図11に示されるように、3つの導体の伝送ライン構造が、バラン変換器54a、54bを形成するために使用される。図11に図示されるように、薄い可撓性の誘電体基板64が、基板64の上面上に印刷される中心導体66と、基板64の底面上に印刷される2つの分割接地導体68a、68bとを含む。基板64は、例えば、高々0.005インチの厚さ、好ましくは、最大0.005インチの厚さであり得る。加えて、基板64の誘電率は、比較的に高く、例えば、約少なくとも10である。伝送ラインインピーダンスは、導体の幅および分割接地導体68a、68b間の間隙のサイズの関数である。
【0098】
切替アンテナ22’は、例えば、大腿動脈から腎動脈の中への方向転換を行うために、標的組織部位への送達中に撓曲する必要があり得る。切替アンテナ22’の幾何学形状を小さく保つために、パッケージ化されていないダイオードが、使用され、カプセル化され、メインアンテナ43’が撓曲するときの損傷を防止する。例えば、図12は、上面側回路トレース72上に位置付けられるダイオードチップ70およびリボン接続部76、ならびにカプセル化物質74を図示する。加えて、図12は、マイクロ波放射要素44a’に接続する接続部62aと、マイクロ波放射要素44b’に接続する接続部62bとを図示する。
【0099】
メインアンテナ43’が基板の一方の平面内で硬質である実施形態では、メインアンテナ43’は、それが患者の動脈内で例えば屈曲を通り抜けさせ得るように、少なくとも一方の平面内で可撓性を有する。例えば、メインアンテナ43’は、基板64の平面内で比較的に硬質であり得るが、基板64に対して垂直な平面内で丸まり得る。これは、カテーテルが捻転され、それを要求される屈曲の方向に配向することのみを要求する十分な可撓性を有すると判断される。したがって、メインアンテナ43’の構造は、メインアンテナ43’が少なくとも一方の平面、好ましくは、両方の平面内で可撓性を有することを可能にする。発泡誘電体が、マイクロ波放射要素44a’、44b’の下の基板64の上方および下方の領域を充填するために使用されてもよい。編組金属遮蔽層もまた、マイクロ波放射要素44a’、44b’の下のバラン変換器54a、54bを被覆するために使用されてもよい。
【0100】
ここで図13を参照すると、その上に配置される冷却剤スリーブを有する例示的アブレーションシステムが、提供される。図13に示されるように、冷却剤スリーブ80は、ケーブル20および切替アンテナ22にわたって配置されてもよい。冷却剤スリーブ80は、ケーブル20および切替アンテナ22を囲繞し、冷却材が、それを通して流動することを可能にするように定寸ならびに成形される通路84を有する、内側管82を含んでもよい。内側管82は、ケーブル20および切替アンテナ22と同軸であってもよい。加えて、冷却剤スリーブ80は、冷却剤が通路84、接合空洞89を通して、通路88を通して図13に図示される矢印の方向において外に流動し得るように、接合空洞89を介して内側管82の通路84と流体連通する通路88を有する、外側管86を含んでもよい。図13に示されるように、外側管86はまた、ケーブル20および切替アンテナ22と同軸であってもよい。故に、冷却剤スリーブ86の近位端は、冷却剤源に流体的に結合されてもよい。冷却剤が、切替アンテナ22を越流するとき、冷却剤は、切替アンテナ22の表面を冷却し、切替アンテナ22が所定の量を超えて熱くなることを防止する。冷却剤スリーブ80が、冷却剤が冷却剤スリーブ80内に維持され、患者の身体の中に排出されないような閉ループ冷却を可能にし得る。下記にさらに詳細に説明されるように、冷却剤スリーブ86は、基準終端42が事前アブレーション較正中に所定の量を超えて熱くなることを防止するためにさらに使用されてもよい。冷却剤は、アブレートされている組織の表面を冷却し、それによって、エネルギーが標的組織の中により深く堆積されることを可能にするためにさらに使用されてもよい。故に、ピーク温度が、図4Bに示されるように、表面においてではなく、組織内の深部において達成される。
【0101】
ここで図14を参照すると、本発明の原理に従って標的組織をアブレートするための例示的方法100が、提供される。事前アブレーション中に、ステップ101において、本システムのプロセッサが、基準終端のマイクロ波エネルギー放出の効果を考慮するように、基準終端較正を実施してもよい。例えば、メインアンテナ43(例えば、切替アンテナ22の外側における基準温度センサ(熱電対))と基準終端42(例えば、切替アンテナ22内のマイクロ波基準終端)との間に、温度オフセットが、存在する。オフセットは、メインアンテナ43と基準終端42との間の熱抵抗の関数である。基準終端42の加熱が、メインアンテナ43内の少量の印加されたマイクロ波アブレーション電力の消散によって引き起こされる。基準終端42の較正は、測定されている切替アンテナ22に隣接する組織を一定の温度に保持しながら、放射計24を使用して基準終端42の温度上昇を測定するステップを伴う。
【0102】
図15は、基準終端較正を実施するための例示的方法ステップ101を図示する。ステップ108において、切替アンテナ22が、消散する組織として作用する、恒温槽内に位置付けられる。事実上、通常の温度測定が、逆に行われ、既知の基準が、メインアンテナ43によって捉えられる水槽であり、未知の基準が、基準終端42である。ステップ109において、高い循環流体流が、アンテナ22の周囲の環境が、高流体流がメインアンテナ43から放出されるマイクロ波エネルギーによって発生される全ての熱を除去するときに、加熱しないように、槽内に提供されてもよい。ステップ110において、種々のレベルのマイクロ波エネルギーが、メインアンテナ22を介して放出され、これは、ケーブル/回路を通して進むマイクロ波エネルギーに起因して、基準終端42をわずかに加熱させ、基準終端42によって発生されるエネルギー放出から結果として生じる電圧が、エネルギー放出の種々のレベルのそれぞれに関して測定される。上記に説明されるように、切替アンテナ22の周囲の環境は、種々のレベルのマイクロ波エネルギーが、メインアンテナ43を横断した高流量槽に起因して放出されるため、加熱しない。ステップ111において、測定された電圧が、エネルギー放出の種々のレベルと比較され、メインアンテナ43を介したエネルギー放出中の基準終端42上へのエネルギー放出の効果を考慮する。具体的には、外部温度センサに対する基準終端42の温度の比較が、その傾きが熱抵抗である、印加されたマイクロ波電力との線形関係を露見させる。この熱抵抗定数が、印加された電力レベルによって乗算され、アブレーション中の基準終端42の温度を見出す。
【0103】
再び図14を参照すると、事前アブレーション中に、ステップ102において、本システムのプロセッサは、メインアンテナ43を介したエネルギー放出中の標的組織に隣接する環境上へのマイクロ波エネルギー放出の効果を考慮するように、放射計較正を実施してもよい。放射計較正は、放射計42対エネルギー放出中の標的組織に隣接する環境の温度によって感知されたマイクロ波エネルギーを判定するための能力を提供する。
【0104】
ここで図16Aを参照すると、基準終端較正を実施するための例示的方法102が、提供される。ステップ112において、切替アンテナ22が、恒温槽内に位置付けられる。ステップ113において、温度に対してすでに較正された、既知のマイクロ波ノイズ源を使用して、メインアンテナ43が、第1のノイズレベルと衝突され、第1の既知の温度を作成し、ステップ114において、第1の温度が、測定される。ステップ115において、温度に対してすでに較正された、既知のマイクロ波ノイズ源を使用して、メインアンテナ43が、第1のノイズレベルと異なる第2のノイズレベルと衝突され、第2の既知の温度を作成し、ステップ116において、第2の温度が、測定される。故に、この放射計較正中に、基準終端42は、冷却される必要はない。ステップ117において、第1の測定された温度および第2の測定された温度が、第1のノイズレベルならびに第2のノイズレベルと比較され、切替アンテナ22に隣接する環境上へのメインアンテナ43を介したエネルギー放出の効果を較正する。また、基準終端42によって発生されるエネルギー放出から結果として生じる第1の出力電圧および第2の出力電圧が、第1の温度と第2の温度との間の温度差が電圧差によって除算され、放射計24のボルトあたりの度感度を提供するように、第1の温度ならびに第2の温度を測定する間に記録されてもよい。
【0105】
ここで図16Bを参照すると、基準終端較正を実施するための代替の例示的方法102’が、提供される。ステップ118において、切替アンテナ22が、第1の既知の温度を有する第1の槽内に位置付けられる。ステップ119において、放射計信号が、メインアンテナ43に印加され、ステップ120において、放射計信号の印加に応答して基準終端42によって発生されるエネルギー放出から結果として生じる第1の出力電圧が、測定される。ステップ121において、切替アンテナ22が、第1の温度と異なる第2の既知の温度を有する、第2の槽内に位置付けられる。ステップ122において、放射計信号が、メインアンテナ43に再び印加され、ステップ123において、放射計信号の印加に応答して基準終端42によって発生されるエネルギー放出から結果として生じる第1の出力が、測定される。上記に説明されるように、冷却材が、切替アンテナ22を横断して流動し、それによって、切替アンテナ22を冷却することを可能にされてもよい。故に、基準終端42の温度は、異なる温度を有する2つの異なる槽内に設置されると、変化せず、温度の上昇のみが、切替アンテナ22に隣接する未知の環境のものである。ステップ124において、第1の測定出力電圧および第2の測定出力電圧が、第1の既知の温度ならびに第2の既知の温度と比較され、切替アンテナ22に隣接する環境上へのメインアンテナ43を介したエネルギー放出の効果を較正する。当業者によって理解されるように、ユーザは、放射計較正方法102または102を使用してもよく、基準終端較正ステップ101および放射計較正方法102、102’を任意の好ましい順序においてさらに実施してもよい。
【0106】
再び図14を参照すると、ステップ103において、切替アンテナ22が、標的組織(例えば、肺組織)に隣接して位置付けられる。ステップ104において、上記に説明されるように、本プロセスは、交互的様式において、切替アンテナ22の切替ネットワークを介して、メインアンテナ43がマイクロ波エネルギーを放出することを可能にすることと、メインアンテナ43がメインアンテナ43によるエネルギー放出の結果として発生される放射計温度を測定することを可能にすることとの間で切り替える。ステップ105において、プロセッサは、メインアンテナ43が放射計温度を測定することを可能にすることと、基準終端42が基準温度を測定することを可能にすることとの間で切り替える。例えば、上記に説明されるように、(所望に応じて繰り返され得る)1つのアブレーションサイクルにおいて、メインアンテナ43が、アブレーションサイクルの90%にわたってマイクロ波エネルギーを放出し、電力消散を最大化してもよく、メインアンテナ43および基準終端42が、交互に入れ替わり、アブレーションサイクルのアブレーション周期の残りにわたって、それぞれ、放射計温度ならびに基準温度を測定してもよい。ステップ106において、プロセッサは、基準終端42上へのエネルギー放出の効果およびメインアンテナ43を介したエネルギー放出中の標的組織に隣接する環境上へのマイクロ波エネルギー放出の効果を考慮するために、上記に説明される較正された値を使用して、測定放射計温度ならびに測定された基準温度に基づいて、標的組織温度を計算してもよい。例えば、図17は、マイクロ波アブレーションの周期中に測定された標的組織温度を図示する、チャートである。
【0107】
再び図14を参照すると、ステップ107において、プロセッサは、標的組織温度に基づいて、アブレーション手技中にメインアンテナ43を介したマイクロ波エネルギー放出から結果として生じるアブレーション病変の体積を推定してもよい。具体的には、アブレーション手技中のエネルギー放出によって作成されるアブレーション病変の体積が、平均標的組織温度または標的組織温度のプロットされた曲線下の面積のうちの少なくとも一方に基づいて推測されてもよい。例えば、図18Aは、平均標的組織温度対推測されるアブレーション病変体積をプロットする、グラフを図示し、図18Bは、標的組織温度のプロットされた曲線下の放射計面積対推測されるアブレーション病変体積をプロットする、グラフを図示する。また、推測されたアブレーション病変体積が、エネルギー放出の滴定が所望の療法上の目標を達成することを可能にするために使用されてもよい。
【0108】
ここで図19を参照すると、ポップ条件(例えば、水蒸気ポップ)が、上記に説明されるプロセッサの中にプログラムされるアルゴリズムを介して検出および/または予測されてもよい。図19に示されるように、ポップ条件90は、急速な標的組織温度上昇と、続いて、突然の標的組織温度低下とを示す。突然の低下は、切替アンテナが当該場所から外に移行し、したがって、もはや標的組織を加熱しなくなる状態を示し得る。故に、プロセッサが、標的組織温度をリアルタイムで監視するにつれて、プロセッサは、標的組織温度が過度に急速に上昇しているとき、または、そうでなければ、所定の閾値から外れた様式にあるときを検出し、ポップ条件が観察されることを予測することが可能であり得る。ポップ条件90が、生じることが検出または予測されると、プロセッサは、加熱を自動的に遮断する、ならびに/もしくはユーザに課題が存在することを警告するための警告を発生させてもよい。
【0109】
加えて、または代替として、プロセッサは、ポップ条件の検出もしくは予測に応答してメインアンテナ22を介してエネルギー放出を自動的に変調させ、それによって、標的組織および/または他の組織の加熱を防止するようにプログラムされてもよい。例えば、メインアンテナを介したエネルギー放出は、ポップが予測される場合、標的組織温度または標的組織温度の増加率のうちの少なくとも一方を低減させるように変調されてもよい。ポップ条件の検出および予測は、本明細書に説明されるアブレーションシステムの安全性ならびに有効性を改良する。また、プロセッサは、ユーザが標的組織温度内のポップ条件を可視化し得るように、標的組織温度の監視を表示するためのディスプレイに結合されてもよい。加えて、温度は、電力を変調させ、一定の温度を達成することによって設定された温度点に制御されてもよい。
【0110】
下記に議論される臨床試験結果は、本明細書に説明されるマイクロ波加熱および測定システムの有効性を確認する。例えば、図20は、均質組織中のマイクロ波アブレーションによって誘発された熱病変を示す、データを図示する。
【0111】
図21A-21Cは、本発明の原理によるアブレーションシステムを使用したヒートシンク試験の結果を図示する。例えば、ガラス管が、アブレーションの場内に位置付けられ、加熱の区域から熱を引き出した。これは、血管を模倣する。図21A-21Cに示されるように、曲線下のより狭い放射計面積(「Rad AUC」)は、管(またはヒートシンク)内の流動が、それがオフであるときと比較して、オンであるときに達成される。これは、より小さい病変サイズと相関する。故に、病変の体積は、アブレーション区域から熱を引き離す、ヒートシンク(例えば、血管)が存在するときにも判定され得る。既知の方法は、ユーザが電力を制御し、電力および時間のレベルを設定することのみを可能にし、これは、ユーザが、熱が事実上、組織を加熱ならびに破壊しているかどうかを判定することを可能にするものではない。例えば、ユーザは、熱を引き離す(より小さい病変を作成する)、10個の脈管、または熱を引き離す、ゼロの脈管が存在するかどうかを把握することはできない。本発明の原理によると、ユーザは、ヒートシンク(例えば、血管)の存在下での病変サイズをより精密に予測し得る。
【0112】
図22は、本発明の原理に従って行われるアブレーション手技を使用した、ウシの肝臓上でのヒートシンク試験の結果を図示する。具体的には、ヒートシンクのより極端な実施例が、シミュレートされた。アンテナが、組織の表面のわずかに下方に位置付けられ、組織が、水槽内に位置付けられた。故に、片側上では、アンテナが、全ての組織を捉えており、他側では、アンテナは、より少ない組織、大部分は、水/食塩水を捉えていた。加えて、水中の流動が、ヒートシンキングの極端な方法として水中の熱を引き離すように作成された。ここで再び、放射計が、アンテナが表面の近傍に存在し、水が熱を引き離す状態(狭AUC)の多くのヒートシンクが存在するとき、およびいかなるヒートシンクも存在せず(組織内に完全に埋め込まれている)、したがって、より高い加熱ならびにより広いAUCが存在するときを検出し得る。
【0113】
図23は、本発明の原理に従って行われるアブレーション手技を使用した、ウシの肝臓上での肺アブレーション試験の結果を図示する。非常に均質である、上記に議論される肝臓組織と比較すると、肝臓組織は、非均質である(例えば、空気ポケットおよび結合組織等を有する)。図23に示されるように、本発明の原理に従って構築されるマイクロ波アブレーションシステムが、病変体積との強いAUC相関を伴うアブレーション病変体積を予測するために非均質組織上でさらに使用されてもよい。また、図24Aは、肺アブレーション試験から結果として生じる放射計AUCを示すデータを図示し、図24Bは、肺アブレーション試験から結果として生じる送達されたエネルギーを示すデータを図示する。具体的には、図24Aは、放射計AUC対直径、長さ、および体積の回帰プロット(左から右)を図示し、図24Bは、送達されたマイクロ波エネルギー対直径、長さ、ならびに体積(左から右)の回帰プロットを図示する。
【0114】
ここで図25Aを参照すると、例示的マイクロ波アブレーションシステムの切替アンテナのマイクロ波放射要素の基本的な双極子が、提供される。具体的には、図25Aは、明確化のために、切替ネットワークが省略された状態で、図5Aの切替アンテナ22と同様に構築された、切替アンテナを図示する。図25Aに示されるように、切替アンテナは、切替アンテナの2つの双極子半体を形成する、マイクロ波放射要素44a、44bを含む。上記に説明されるように、マイクロ波放射要素44aの近位端におけるマイクロ波チョーク配列52が、マイクロ波放射要素44a、44bから同軸カテーテルシャフト上へのマイクロ波エネルギーの放射場パターンの折り返しを最小限にする。チョークは、近位双極子半体(例えば、マイクロ波放射要素44a)を切替アンテナの給電点においてケーブル20に接続することによって形成される。同軸構造が、マイクロ波放射要素44aとケーブル20との間に形成され、これは、切替アンテナとケーブル20との間に開回路チョークをもたらす。
【0115】
図25Bに示されるように、図25Aの切替アンテナの基本的な双極子は、マイクロ波放射要素44a’’の近位端を短絡させ、マイクロ波放射要素44a’’のチョーク作用を打破することによって単極子に転換され得る。故に、マイクロ波放射要素44a’’および44b’’は、単極子を形成し得る。単極子は、図25Cに示されるように、ケーブル20’’に類似する直径を有し、それによって、全体的により小径の切替アンテナを提供してもよい。単極子の放射折り返しパターンは、より小径のデバイスが本明細書に説明される用途のために要求され得るため、許容され得る。
【0116】
ここで図26Aを参照すると、図25Bおよび25Cの切替アンテナが、描写される切替ネットワーク42’’内に図示される。図26Aに示されるように、切替ネットワーク42’’は、マイクロ波放射要素44a’’と44b’’との間の接合部に位置付けられてもよい。図26Bに示されるように、切替ネットワーク42’’は、切替ネットワーク42’’が、第1の切替ダイオード46a’’および第2の切替ダイオード46b’’ならびに付加的なバイアス構成要素53’’に加えて第3の切替ダイオード46cをさらに含み得ることを除いて、図5Bの切替ネットワーク42と同様に構築されてもよい。第3の切替ダイオード46cは、放射計温度(例えば、標的組織のアブレーション中の、アブレーションに起因する組織の加熱)からの基準終端48’’の絶縁を改良し得る。
【0117】
ここで図26Cを参照すると、別の代替の切替ネットワークが、提供される。切替ネットワーク42’’’は、第1の切替ダイオード46a’’’と、第2の切替ダイオード46b’’’と、第3の切替ダイオード46c’とに加えて、第4の切替ダイオード46dを含む。第4の切替ダイオード46dは、基準温度の測定中の放射計温度からの基準終端48’’’の絶縁を改良し得る。図26Cに示されるように、第4の切替ダイオード46dおよび第2の切替ダイオード46b’’’は、メインアンテナ(例えば、マイクロ波放射要素44b’’’)と直列であり、切替ネットワーク基板上のマイクロストリップ伝送ライン92によって分離されてもよい。マイクロストリップ伝送ライン92は、2つの切替ダイオード46b’‘‘、46dによって達成される絶縁を改良し得、これは、より高いアブレーション周波数を使用した印加のために特に有用であり得る。当業者によって理解されるように、切替ネットワーク42’’’は、図26Aの切替アンテナ内の切替ネットワーク42’’を置き換え得る。
【0118】
ここで図27Aおよび27Bを参照すると、図26Aの切替アンテナが、切替ネットワーク42’’が、単極子先端から押し戻され、メインアンテナ(例えば、マイクロ波放射要素44b’’)またはその近傍のより小径の同軸ケーブル(例えば、ケーブル20’’)を収容する状態で図示される。図27Aに示されるように、切替ネットワーク42’’は、マイクロ波放射要素44b’’の近位端の近位にある、ケーブル20’’の遠位領域の中に押し戻されてもよい。代替として、図27Bに示されるように、切替ネットワーク42’’は、例えば、ケーブル20’’がより小径の同軸ケーブル部分20a’からより大径の同軸ケーブル部分20b’’に遷移する、ケーブル20’’に沿った点における、ケーブル20’’の遠位領域の中にさらに戻るように押動されてもよい。具体的には、切替ネットワーク42’’は、ケーブル20’’のより大径の同軸ケーブル部分20b’’内に、さらに、マイクロ波放射要素44b’’から離れるように配置され得るため、ケーブル20’’は、マイクロ波放射要素44b’’と切替ネットワーク42’’との間に延在する、より小径の同軸ケーブル部分20a’’を含んでもよい。
【0119】
切替ネットワーク42’’は、標的デバイスの同軸ケーブルに除去可能に結合され得るように構造化され得る、スイッチモジュール130内に配置されてもよい。図27Bに示されるように、スイッチモジュール130は、近位コネクタ96を介してケーブル20’’のより大径の同軸ケーブル部分20b’’の遠位端に、および遠位コネクタ94を介してケーブル20’’のより小径の同軸ケーブル部分20a’’の近位端に除去可能に結合され、それによって、発電機とマイクロ波放射要素44b’’との間に電気接続を提供してもよい。当業者によって理解されるように、図27Bは、ケーブル部分20a’’より大きい直径を有する、ケーブル部分20b’’を描写しているが、ケーブル部分20a’’および20b’’は、ケーブル20’’が全体を通して均一な直径を有し得るように、同一の直径を有してもよい。
【0120】
ここで図28A-28Cを参照すると、例示的スイッチモジュールが、提供される。図28Aに示されるように、スイッチモジュール130は、近位コネクタ96と電気的に結合され得る、近位コネクタ132aと、遠位コネクタ94と電気的に結合され得る、遠位コネクタ132bとを含んでもよい。例えば、近位コネクタ132aは、近位コネクタ132aおよび近位コネクタ96が、解放可能に係合され得るように、近位コネクタ96の一部を受容するように定寸ならびに成形される、管腔を有してもよく、遠位コネクタ132bは、遠位コネクタ132bおよび遠位コネクタ94が解放可能に係合され得るように、遠位コネクタ94の一部を受容するように定寸ならびに成形される、管腔を有してもよい。故に、スイッチモジュール130は、既存の標的デバイスと容易に統合され得る。
【0121】
図28Aに示されるように、切替ネットワーク42’’は、スイッチモジュール130内に配置され得る基板64’’上に配置されてもよい。例えば、図28Bに示されるように、スイッチモジュール130は、導体134(例えば、同軸ケーブル20’’の中心導体)を含み、ケーブル20’’とスイッチモジュール130内の基板64’’との間に電気接続を提供してもよい。また、図28Cに示されるように、スイッチモジュール130は、スイッチモジュール130内への基板64’’に支持を提供するための、突起部136をさらに含んでもよい。
【0122】
ここで図29を参照すると、図26Bの切替ネットワーク42’’が、基板64’’上に図示される。図29に示されるように、第1の切替ダイオード46a’’および第2の切替ダイオード46b’’は、基板64’’の第1の側(左の写真)に配置されてもよく、第3の切替ダイオード46cは、基板64’’の反対側(右の写真)に配置されてもよい。
【0123】
本発明の種々の例証的実施形態が、上記に説明されるが、種々の変更および修正が本発明から逸脱することなく本明細書に成され得ることが、当業者に明白となる。本明細書に説明されるシステムおよび方法が、腎動脈以外の組織のアブレーションおよび温度測定のために利用され得ることもさらに理解されたい。添付の請求項は、本発明の真の精神および範囲内にある全てのそのような変更および修正を網羅するように意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図22
図23
図24A
図24B
図25A
図25B
図25C
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図28A
図28B
図28C
図29
【国際調査報告】