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▶ エーツェーペー エントヴィッケルングゲゼルシャフト エムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】血管内血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/113 20210101AFI20230316BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20230316BHJP
   A61M 60/414 20210101ALI20230316BHJP
   A61M 60/825 20210101ALI20230316BHJP
   A61M 60/829 20210101ALI20230316BHJP
【FI】
A61M60/113
A61M60/237
A61M60/414
A61M60/825
A61M60/829
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546483
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2021051989
(87)【国際公開番号】W WO2021152013
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】20154831.0
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515170724
【氏名又は名称】エーツェーペー エントヴィッケルングゲゼルシャフト エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スクルジープシザク デニス
(72)【発明者】
【氏名】デッケ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】リービング ライナー
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077CC03
4C077DD10
4C077HH09
4C077HH15
4C077JJ03
4C077JJ16
4C077KK21
4C077KK23
(57)【要約】
血管内血液ポンプ(1)は、カテーテル(5)、ロータ(10)、ロータ(10)が収容されるハウジング(11)、および、カテーテル(5)を通って延び、ロータ(10)の近位に位置する近位軸受(13)内に回転可能に支持される、可撓性の高い駆動軸(12)を備える。近位軸受(13)は、軸受スリーブ(30)および外側軸受リング(32)を備える。軸受スリーブ(30)は、外側軸受リング(32)の近位に位置する近位部分を備え、軸受スリーブ(30)の近位部分が、外側軸受リング(32)の近位表面と軸方向軸受を形成する。軸受スリーブ(30)は、軸受スリーブ(30)の近位部分から外側軸受リング(32)内へ遠位に延びる遠位部分を備え、軸受スリーブ(30)の遠位部分は、外側軸受リング(32)と径方向軸受を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル(5)と、
ロータ(10)が収容されるハウジング(11)であって、前記カテーテル(5)の遠位端に装着される、ハウジング(11)と、
前記カテーテル(5)を通って延び、前記ロータ(10)に接続される可撓性の高い駆動軸(12)であって、前記ロータ(10)の近位に位置する近位軸受(13)内に回転可能に支持される、駆動軸(12)と
を備える、血管内血液ポンプ(1)であって、
前記近位軸受(13)は、軸受スリーブ(30)および外側軸受リング(32)を備え、
前記軸受スリーブ(30)は、前記外側軸受リング(32)の近位に位置する近位部分(30a)を備え、前記軸受スリーブ(30)の前記近位部分(30a)が、前記外側軸受リング(32)の近位表面と一緒に前記近位軸受の軸方向軸受を形成し、
前記軸受スリーブ(30)は、前記軸受スリーブ(30)の前記近位部分(30a)から前記外側軸受リング(32)内へ遠位に延びる遠位部分(30b)を備え、前記軸受スリーブ(30)の前記遠位部分(30b)は、前記外側軸受リング(32)と一緒に前記近位軸受の径方向軸受を形成することを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軸受スリーブ(30)は、前記可撓性の高い駆動軸(12)に固定的に接続されることを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記外側軸受リング(32)は、前記カテーテル(5)の遠位端領域の内側または前記ハウジング(11)の近位端領域の内側に位置することを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記外側軸受リング(32)に対する前記軸受スリーブ(30)の軸方向運動を制限する制限部材(33)が、前記カテーテル(5)および前記ハウジング(11)のうちの少なくとも一方の内側で前記軸受スリーブ(30)の近位に位置することを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記可撓性の高い駆動軸(12)には、封止剤が少なくとも部分的に充填されることを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軸受スリーブ(30)および前記外側軸受リング(32)のうちの少なくとも一方は、以下の材料:セラミックスおよび金属のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軸受スリーブ(30)および前記外側軸受リング(32)のうちの少なくとも一方は、コーティングを含むことを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記ハウジング(11)の前記近位端領域または前記カテーテル(5)の前記遠位端領域のうちの一方または両方は、1つまたは複数の径方向の貫通穴を含むことを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記可撓性の高い駆動軸(12)は、前記駆動軸(12)の中央内腔内に長手方向に延びる補強要素(35)を含むことを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記外側軸受リング(32)と前記軸受スリーブ(30)との間の径方向の軸受隙間は、2μm~10μm、好ましくは3μm~4μmであることを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記軸受スリーブ(30)は、前記外側軸受リング(32)の遠位に延びる部分を備え、前記ロータ(10)は、前記軸受スリーブ(30)の遠位に延びる前記部分に取り付けられることを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記ロータ(10)は、前記外側軸受リング(32)から0.001mm~8mmの距離に位置することを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記径方向軸受によって画定される隙間を通ってパージ流体が流れるように、前記パージ流体を供給するために配置されるパージ流体供給ラインを備えることを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記駆動軸(12)は、減少した直径の区域を有し、前記軸受スリーブ(30)の少なくとも前記遠位部分(30b)は、前記減少した直径の区域に配置されることを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記ロータ(10)および前記ハウジング(11)は、径方向に拡張可能であることを特徴とする、血管内血液ポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは任意選択的にさらに動物における血液循環を支援するための、血管内血液ポンプ、詳細には、経皮的に挿入可能な血液ポンプに関する。例えば、血液ポンプは、例えば、心臓のポンプ作用を支援するため、またはこれに取って代わるために、患者の大腿動脈内に経皮的に挿入され、患者の血管系を通じて誘導されるように設計され得る。
【0002】
本発明は、長く可撓性の高い駆動軸を介して体外モータによって駆動される拡張可能なロータが中に収容される拡張可能なハウジングを有する血管内血液ポンプの文脈において説明されるが、本発明は、他のタイプの血管内血液ポンプにおいても適用可能である。
【背景技術】
【0003】
先に述べた拡張可能なタイプの血液ポンプは、例えば、カテーテルポンプアセンブリを開示する米国第2013/0303969 A1号から知られている。拡張可能なハウジングは、カテーテルの遠位端に位置する。拡張可能なハウジングは、カテーテルの第1の内腔を通って延びる可撓性の高い駆動軸によって駆動される拡張可能なロータを囲む。カテーテルポンプアセンブリの遠位部分は、例えば、セルディンガー技術を使用して、経皮アクセスを介して心臓の内側に置かれ得る。駆動軸は、中央内腔を含み、これは、ガイドワイヤがそのガイドと一緒に駆動軸を通過すること可能にし、心臓の内側へのカテーテルポンプアセンブリの正確な位置付けを可能にする。ロータは、カテーテルの端に、およびロータの近位に配置される近位軸受内に回転可能に支持される。本明細書では、「近位」および「遠位」は、医師に対して見たものである。故に、カテーテルが置かれるとき、近位は、医師に比較的近いものを指す一方、遠位は、医師から比較的遠くに離れているものを指す。
【0004】
血管内血液ポンプの使用中、ロータおよび駆動軸は、著しい速度で回転することが要求される。故に、高耐久性を維持しながら低摩擦で駆動軸を回転可能に支持する軸受を提供する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、血管内血液ポンプは、カテーテル、およびロータが収容されるハウジングを備え、ハウジングは、カテーテルの遠位端に装着される。さらには、本明細書に開示される血管内血液ポンプにおいて、可撓性の高い駆動軸が、カテーテルを通って延びる。可撓性の高い駆動軸は、ロータに接続され、ロータの近位に位置する近位軸受内に回転可能に支持される。近位軸受は、軸受スリーブおよび外側軸受リングを備え、軸受スリーブは、外側軸受リングの近位に位置する近位部分を備え、軸受スリーブの近位部分が、外側軸受リングの近位表面と軸方向軸受を形成する。軸受スリーブは、軸受スリーブの近位部分から外側軸受リング内へ遠位に延びる遠位部分をさらに備え、軸受スリーブの遠位部分は、外側軸受リングと径方向軸受を形成する。説明された近位軸受の設計は、有利には、径方向軸受によって画定される隙間を通ってパージ流体が流れるように提供されるときに特に、低摩擦および高耐久性を達成し得る。
【0006】
好ましくは、軸受スリーブは、可撓性の高い駆動軸に固定的に接続される。軸受スリーブは、可撓性の高い駆動軸に圧着、はんだ付け、溶接、糊付け、または焼嵌めされ得る。軸受スリーブを糊付けすることは、有利には、軸受スリーブのいかなるゆがみまたはねじれも回避し得る。
【0007】
近位軸受は、好ましくは、カテーテルの遠位端領域の内側および/またはハウジングの近位端領域の内側に位置する。代替的に、近位軸受、好ましくは軸方向の近位軸受は、カテーテル内のどこに位置してもよく、また2つ以上の近位軸受が存在することさえあり、ここで用語「近位」が意味するのは、軸受がロータの近位にどこかに位置するということである。好ましくは、外側軸受リングは、カテーテルの遠位端領域の内側またはハウジングの近位端領域の内側に固定的に接続される。外側軸受リングは、カテーテルおよび/またはハウジング内へ圧入および/または糊付けされ得る。いくつかの実施形態において、外側軸受リングは、ハウジングおよびカテーテルの両方へはめ込まれ得、以て、ハウジングをカテーテルと接続する。カテーテルの遠位端またはハウジングの近位端に位置する近位軸受は、駆動軸およびロータのための特に安定した支持を提供し得る。
【0008】
好ましくは、制限部材が、カテーテルおよび/またはハウジングの内側で軸受スリーブの近位に位置する。それは、ハウジングの近位端の内側またはカテーテルの遠位端の内側に固定的に取り付けられ得る。制限部材は、外側軸受リングに対する軸受スリーブの軸方向運動を制限する停止部として作用する。制限部材は、有利には、軸受スリーブが外側軸受リングから滑り出るのを防ぎ得る。いくつかの実施形態において、制限部材は、近位軸受の一部を形成する。好ましくは、制限部材の内径は、可撓性の高い駆動ケーブルとの摩擦接触を回避し、パージ流体を通過させるために、可撓性の高い駆動ケーブルの直径よりもわずかに大きい。
【0009】
軸受リングの内径は、好ましくは0.6mm~2.2mm、より好ましくは0.9mm~1.3mmである。軸受リングの軸方向の長さは、好ましくは、軸受リングの内径の1倍~2倍、より好ましくは軸受リングの内径の1.2~1.6倍に対応する。特に好ましい実施形態において、内径は、1.1mmであり、軸方向の長さは、1.6mmである。
【0010】
好ましくは、外側軸受リングと軸受スリーブとの間の径方向の軸受隙間は、1μm~10μm、より好ましくは2μm~8μmの幅である。最も好ましくは、上記径方向の軸受隙間は、およそ3.5μmの幅である。パージ流体は、近位軸受の径方向の軸受隙間を通って押し出され得る。径方向の軸受隙間がこのようにして構成される場合、パージ流体は、好適なパージ流体圧を前提として再現可能な速度で流れ得る。
【0011】
好ましくは、可撓性の高い駆動軸には、封止剤が少なくとも部分的に充填される。好ましくは、封止剤は、可撓性の高い駆動軸に完全に浸透し、少なくとも1つの位置において耐水駆動軸を作成する。ここでは、封止剤は、流体として層に浸透し、その後、パージ流体の浸透を防ぐために十分に硬化する物質である。本発明の意味での封止剤の例は、接着剤、ポリマー、および/または熱可塑性プラスチックである。
【0012】
好ましくは、軸受スリーブおよび/または外側軸受リングは、1つ以上のセラミックスおよび/または金属を含む。金属は、好ましくは、MP35、35NLT、ニチノール、またはステンレス鋼である。金属製の場合、軸受スリーブおよび/または外側軸受は、コーティングを含み得る。好ましくは、軸受スリーブおよび/または外側軸受リングは、ハードコート、例えば、DLCコートされる。有利には、この様式で設計される軸受スリーブまたは外側軸受リングは、軽量の耐久性の高い近位軸受を可能にする。
【0013】
好ましくは、ハウジングの近位端領域および/またはカテーテルの遠位端領域は、1つ以上の径方向の貫通穴を含む。径方向の貫通穴は、弾性を増加させて、ハウジングおよび/またはカテーテル内への近位軸受の圧入を可能にし得る。貫通穴はさらに、糊の導入、および近位軸受に挿入するときの位置監視を可能にする。とりわけ、糊は、軸受とハウジングとの間の隙間を封止して、パージ流体の漏出を回避するために使用され、すなわち、隙間が完全に充填されることに注意を払わなければならない。径方向の貫通穴は、0.5mm~1mmの直径を有し得る。周方向に伸長を伴う細長い穴は、軸受の切り込みを充填するのに有利であり得、この場合、前述の直径とは、細長い穴の小さい方の直径を指す。
【0014】
好ましくは、可撓性の高い駆動軸は、駆動軸の中央内腔内を長手方向に延びる補強要素、好ましくは、同軸の堅い補強ロッドを含む。より詳細には、駆動軸は、いくつかの実施形態において、その遠位端領域において補強要素によって補強される。これは、駆動軸が、ロータの遠位端内へ、およびいくつかの実施形態においては、これに直面して延びるときに特に有利である。したがって、補強要素は、近位軸受の近位の領域から駆動軸の遠位端まで延び得る。補強要素は、好ましくは、例えば、ばね鋼、金属ワイヤ、または炭素線で作製される、金属ロッドである。1つの実施形態において、金属ワイヤは、1.4310ステンレス鋼で作製される。
【0015】
軸受スリーブは、外側軸受リングの遠位に延びる部分を備え得、ロータは、外側軸受リングの遠位に延びる上記部分に取り付けられ得る。そのような設計は、ロータの特に安定した構成を可能にし得る。特に、軸受スリーブは、ロータの軸方向の長さの主要部に沿って、より好ましくは、ロータの遠位端まで延び得る。
【0016】
ロータは、好ましくは、外側軸受リングの遠位表面から0.001mm~8mmの距離にある。ロータと近位軸受との間の最小距離は、これによりロータが近位軸受に引っかかることを防ぐことから望ましい。
【0017】
好ましくは、ロータは、追加的に、遠位軸受内に支持される。
【0018】
可撓性の高い軸は、好ましくは、カテーテル全体を通って延びる。駆動軸は、好ましくは、中空である。可撓性の高い駆動軸は、好ましくは、異なって配向されたファイバ層で好ましくは形成される可撓性の高いケーブルからなるか、またはこれを備える。特に、可撓性の高い駆動軸は、最も好ましくは、駆動軸に沿って軸方向に延びる内腔の周りにらせん状に走る、好ましくは異なる巻き方向、特に好ましくは交互の巻き方向を有する複数の同軸巻き線で構成される。例えば、可撓性の高い駆動軸は、反対の巻き方向を有する2つの同軸巻き線を備えることができる。駆動軸の外径は、好ましくは、0.4mm~2mm、より好ましくは、0.6mm~1.2mm、特に好ましくは、0.8mm~1.0mmであり得る。可撓性の高い駆動軸の近位端は、好ましくは、体外電気モータに装着される。可撓性の高い駆動軸は、電気モータから駆動軸の遠位端にあるロータへトルクを伝達する役割を果たす。場合によっては、可撓性の高い駆動軸は、ロータに安定性を提供するために、その遠位端に堅く剛性の高い軸を備えてもよく、その軸上に、ロータがハウジングの内側で装着される。
【0019】
1つの実施形態において、可撓性の高い駆動軸は、少なくとも1つの外層および少なくとも1つの内層を備える。可撓性の高い駆動軸の少なくとも1つの外層は、好ましくは、可撓性の高い駆動軸が近位軸受内に支持される区域においては存在しないか、または薄くされている。故に、駆動軸は、減少した直径の区域を有し、外側軸受リングと一緒に径方向軸受を形成する軸受スリーブの少なくとも遠位部分は、その区域に配置される。好ましくは、少なくとも1つの外層が存在しないか、または薄くされている区域の軸方向の長さは、その区域内の駆動軸直径の1~15倍、好ましくは2~5倍、例えば、2mm~5mmである。
【0020】
少なくとも1つの外層および少なくとも1つの内層は、好ましくは、金属から作製される。より好ましくは、すべての層が金属層で作製され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの内層および/または少なくとも1つの外層は、ワイヤまたはケーブルであってもよい。外層および/または内層は、中空金属パイプで作製され得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの外層のうちの少なくとも1つおよび/または少なくとも1つの内層のうちの少なくとも1つは、1つの巻き線またはいくつかの巻き線に巻かれるワイヤを備えるか、またはこれからなる。各ワイヤは、例えばツイストされ得る1つ以上の撚線を備え得る。ワイヤが層で巻かれる代わりに、ワイヤは、好ましくは、例えばカーンマントルロープの外側の鞘に類似して、編み組まれてもよい。少なくとも1つの内層または少なくとも1つの外層の巻き線は、らせんを形成し得る。代替的に、いくつかまたはすべての層は各々、多条ねじに類似した、好ましくは軸方向にシフトされる2つ以上のらせんからなる。異なる層は、らせんの異なる掌性、例えば、1つの層から次の隣接する層へ交互の掌性を有し得る。ワイヤは、金属からなり得るか、または表面コーティングなど、金属および追加材料を含み得る。
【0022】
好ましくは、可撓性の高い駆動軸には、少なくとも1つの内層に浸透する封止剤が少なくとも部分的に充填される。層が穴を含むか、ワイヤで作製される場合、封止剤は、層をまたいで浸透し得る。場合によっては、層、特に可撓性の高い駆動軸のワイヤ(複数可)には、封止剤が部分的または全体的に充填され得る。
【0023】
例えば、近位軸受および/または遠位軸受は、パージ流体でパージされるように構成される。パージ流体は、摩擦を低減し、近位軸受から離れる方へ摩擦熱を輸送し得る。また、それは、血液が軸受隙間を通って入ることを防ぎ得る。パージ流体が、近位軸受を通り抜ける際に軸受隙間に加えて可撓性の高い駆動軸を通って流れることができる場合、規定のパージ流体流を作成するのは困難である。したがって、可撓性の高い駆動軸に封止剤が充填される場合、駆動軸を通るパージ流体流が防がれ得、近位軸受を通る規定のパージ流体流の作成が促進され得る。
【0024】
可撓性の高い駆動軸が軸受スリーブの内側に封止剤を充填される場合、軸受スリーブを通るパージ流体流は、有利には、防がれ得る。しかしながら、場合によっては、いくつかの層を保有する可撓性の高い駆動軸は、封止剤を全体的に充填するのは非常に困難であり得る。可撓性の高い駆動軸を通る残留パージ流体流が結果として生じ得る。いくつかの実施形態において、1つの内層のみが存在し、内層ならびに少なくとも1つの外層は、巻かれたワイヤからなる。同時に、少なくとも1つの外層は、スリーブの場所において完全に除去され得る。
【0025】
さらに代替案において、3つ以上の外層を伴う設計では、少なくとも1つの内層のみが残るように、1つの外層または複数の外層を除去することが可能である。この場合、軸受スリーブの内側の少なくとも1つの内層に封止剤を充填することは、可撓性の高い駆動軸を通る流れを止めることに特に効果的であり得る。これは、封止剤が層間の空間に浸透して軸受スリーブの内側を完全に封止する必要がないためである。
【0026】
別の実施形態において、軸受スリーブの内径は、駆動軸の少なくとも1つの内層の外径または薄くされた少なくとも1つの外層の外径にほぼ等しい。好ましくは、軸受スリーブは、可撓性の高い駆動軸の少なくとも1つの内層または薄くされた少なくとも1つの外層に固定的に接続される。軸受スリーブの遠位部分の外径は、少なくとも1つの外層の外径にほぼ等しい。このように、近位軸受の内側径方向軸受表面は、駆動軸の外径に対応し、好ましくは、デバイスの組み立てを容易にするために駆動軸の少なくとも1つの外層よりもわずかに大きくてもよい。
【0027】
少なくとも1つの内層は、軸受スリーブの内側で軸方向に断絶され得る。少なくとも1つの内層が軸受スリーブの内側で軸方向に断絶されている場合、少なくとも1つの内層の上に軸受スリーブを固定することが特に容易であり得る。軸方向に断絶された内層がない場合、少なくとも1つの内層は、少なくとも1つの外層の次の続く区域が少なくとも1つの内層に提供され得る前に、軸受スリーブを通じて供給される必要があり得る。これは、少なくとも1つの内層が近位軸受を越えて遠位に延びる実施形態において特に有利である。
【0028】
いくつかの実施形態において、軸受スリーブの内部空間は、油圧により分離され、すなわち、液体は、軸受スリーブの片側から反対側へ内部に流れなくてもよい。いくつかの実施形態において、軸受スリーブは、貫通穴を含む円筒ではなく、2つの止まり穴を分離する壁を有する円筒であってもよい。このとき、軸方向に断絶された少なくとも1つの内層の2つの端は各々、止まり穴のそれぞれに挿入され得る。穴の間の壁は、いかなるパージ流体も軸受スリーブを通って流れることを防ぎ、その結果として、軸方向に断絶された少なくとも1つの内層は封止される必要はなく、単に軸受スリーブに装着される。
【0029】
好ましい実施形態において、軸受スリーブの遠位部分のみが、減少した直径を有する駆動軸区域に取り付けられる一方、近位部分は、増加した内径を有し、可撓性の高い駆動軸の少なくとも1つの外層を覆って近位に延びる。以て、駆動軸が異なる直径間での遷移における剛性の変化に起因して壊れるリスクは効果的に低減される。基本的に同じ機能を有する遠位保護リングが、異なる直径間での遠位の遷移に提供され得、可撓性の高い軸の少なくとも1つの外層および軸受スリーブの部分の遠位延長部の両方を覆って延び得る。
【0030】
軸受スリーブを有する近位軸受および遠位保護リングは、好ましくは、以下のように組み立てられ得る。駆動軸の少なくとも1つの内層および少なくとも1つの外層は、互いから機械的に分離され得るか、または、生産中、少なくとも1つの内層が少なくとも1つの外層から突き出るように、取り付けられ得る。内層からの少なくとも1つの外層の機械的分離の後、少なくとも1つの外層は、わずかに回転しながら、内層から引きはがされる。駆動軸の少なくとも1つの外層の上に、軸受スリーブの遠位部分が、その長い方の部分が駆動軸の少なくとも1つの外層に機械的にまたは別のやり方で固定されるように、位置付けられる。軸受スリーブの遠位部分の短い方の部分は、駆動軸の少なくとも1つの内層と重なり合う。その後、低粘度の接着剤が、重なり合ったエリアに入れられ、軸受スリーブの遠位部分を駆動軸の少なくとも1つの内層上に糊付けするために使用される。軸受スリーブの遠位端部分は、軸受スリーブの近位部分内に到達してこれと重なり合うように位置付けられる。接着剤が硬化した後、駆動軸および軸受スリーブの組み合わせは、液体不浸透性について試験され得る。外側軸受リングが、次いで、軸受スリーブの遠位部分の上に位置付けられる。先に除去された少なくとも1つの外層は、それが軸受スリーブに接触して適所に糊付けされるまで少なくとも1つの内層に押し付けられる。次いで、遠位保護リングが、軸受スリーブの遠位部分と重なり合うように、先に除去された少なくとも1つの外層の上に置かれる。遠位保護リングは、外側軸受リングと軸受スリーブとの間の所定の軸方向の遊びが設定されるように位置付けられる。遠位保護リングは、次いで、駆動軸に、機体的にまたは別のやり方で固定される。少なくとも1つの外層上への保護リングの固定は、追加的に、少なくとも1つの外層の緩みを防ぎ得る。故に、遠位保護リングおよび軸受スリーブの近位部分の両方が、軸受スリーブに隣接する少なくとも1つの外層の端を囲む。
【0031】
その結果、軸受スリーブの近位部分は、外側軸受リングと制限部材との間に軸方向に置かれる。制限部材は、上で述べたように、外側軸受リングに対する駆動軸の軸方向運動を制限する限界として作用する。1つの実施形態において、外側軸受リングの遠位に取り付けられるロータまたはロータ軸が、保護リングを形成し得、この場合、制限部材は、有利には、ロータまたはロータ軸の外側軸受リングとの接触を防ぐ。
【0032】
好ましくは、保護リングおよび/または軸受スリーブの近位部分は、可撓性の高い駆動軸に固定的に接続される。保護リングは、好ましくは、少なくとも1つの外層に、および/または軸受スリーブに、圧着、はんだ付け、溶接、糊付け、または焼嵌めされる。
【0033】
好ましくは、保護リングは、1つ以上のセラミックスおよび/または金属、特に、MP35、35NLT、ニチノール、またはステンレス鋼を含む。金属の場合、保護リングは、ハードコート、例えば、DLCコートされ得る。
【0034】
軸受リングに面する軸受スリーブの近位部分の表面は、好ましくは、軸受リングの反対面と軸方向軸受を形成する。遠位保護リングは、好ましくは、軸受リングが軸受スリーブから滑って外れるのを防ぐために、軸受リングのための停止要素を形成する。
【0035】
好ましくは、2つの異なる接着剤が、駆動軸において使用される。第1の接着剤は、好ましくは、少なくとも1つの外層および/または少なくとも1つの内層、特に、それらの外側および/または内側巻き線に浸透するために使用される。第1の接着剤は、封止剤であってもよい。第1の接着剤は、好ましくは、外側および/または内側巻き線に完全に浸透することができるように特に低い粘度を有する。第1の接着剤は、好ましくは、硬化前、80cPs~200cPsの範囲の粘度を有する。好適な接着剤は、2成分エポキシ樹脂である。異なる第2の接着剤は、好ましくは、スリーブおよび/または遠位保護リングを可撓性の高い駆動軸に接続するために使用される。好ましくは、第1の接着剤は、第2の接着剤よりも低い粘度を有する。第2の接着剤は、好ましくは、中程度またはペースト様の粘度を有する。好適な接着剤は、2成分エポキシ樹脂である。
【0036】
特に好ましい実施形態によると、軸受スリーブは、ロータ内へ延びる。しばしば、軸受スリーブは、ロータが駆動軸の遠位端に取り付けられる他の実施形態と比較して、ロータがより剛性の高い支持を有し得るように、駆動軸よりも堅い。
【0037】
好ましくは、外側軸受リングと軸受スリーブとの間の径方向の軸受隙間は、1μm~μm、より好ましくは2μm~8μmの幅、より好ましくは、およそ3.5mmの幅である。
【0038】
血管内血液ポンプは、ロータの遠位端を回転可能に支持するための遠位軸受をさらに備え得る。遠位軸受は、ロータの内側または遠位のいずれかに位置する。好ましくは、遠位軸受は、ロータの遠位端内へ、またはこれに直面して突き出る静的支持部材を備える。代替的に、駆動軸の、または軸受スリーブの遠位端は、遠位軸受によって支持され得る。
【0039】
別の実施形態において、駆動軸は、遠位軸受内で支持されない。代わりに、ロータは、好ましくはロータ内にまたはこれに直面して延びる静的支持部材によって支持されるのがロータの遠位端であるように、駆動軸の最終端上に、もしくは駆動軸の最終端に、または近位軸受スリーブの遠位延長部上にそれぞれ取り付けられる。このようにすると、特に、回転構造体が回転羽根の先端を越えて延びない場合、腱構造体が回転部に引っかかる可能性は低い。これは、より長い寿命を伴ったより安全な血管内血液ポンプにつながり得る。
【0040】
血管内血液ポンプは、好ましくは、拡張可能な区域を有するハウジングを伴う拡張可能な血液ポンプとして設計される。いくつかの実施形態において、ハウジングは、形状記憶材料、特にニチノールを含むか、またはこれからなる。経皮的に挿入可能な血液ポンプの直径は、一般的に、横断されることになる最小血管の内径により制限される。血管内血液ポンプは、ハウジングが折りたたみ状態にある状態で血管を通って移動され得る。心臓またはより大きい血管に到達すると、血管内血液ポンプのハウジングは、拡張され得る。これにより、この方法以外で可能なものよりも大きい血液ポンプを心臓内に経皮挿入することが可能になる。そのようなより大きい血液ポンプでは、より多い血流量を生成させることが可能であり得る。
【0041】
血液ポンプが拡張可能なポンプとして設計されるとき、カニューレは、好ましくは、ロータの近位にある駆動軸の一部分の周りに提供され、ハウジングおよびロータは、カニューレ内へ少なくとも部分的に移送されるように構成される。そのような移送の間、ハウジングの拡張可能な区域およびロータは、拡張した状態から圧縮した状態へと、少なくとも、長手方向に対して横方向に延びる径方向に沿って圧縮される。好ましくは、ロータ羽根などのロータの部分、またはロータ全体もまた、より大きいロータが心臓内へ挿入されることを可能にするために拡張可能であり、このことが流量を改善し得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、遠位軸受の静的支持部材は、ロータの遠位端に直面して突き出る。静的支持部材がロータ内へ突き出る実施形態と比較して、血管内血液ポンプの特に可撓性の高いポンプ区域が作成され得る。ポンピングデバイスの高い可撓性は、血管内血液ポンプの挿入および除去中に特に有利である。静的支持部材がロータ内に突き出ず、代わりに、単にロータの遠位端に直面して置かれる場合、ポンプ区域が血管を通るポンピングデバイスの操作中に屈曲するとき、ロータから意図的に外れ得る。ポンプ区域が、心臓の内側のその最終目的地に到達するとき、それは、真っすぐになり得、静的支持部材は、それがロータの遠位端に直面して突き出る位置を取り戻し得る。
【0043】
好ましくは、静的支持部材は、ハウジングの遠位端に装着され、ハウジングの拡張は、静的支持部材を介してロータの遠位端上へ軸方向の力を提供し得る。好ましくは、力は、1.8N以下である。静的支持部材がロータの遠位端に直面して突き出るとき、それは、ハウジングのさらなる拡張を制限し得る。
【0044】
ハウジングが圧縮されるとき、静的支持部材は、好ましくは、ロータの遠位端から離れる方へ移動する。この状態では、静的支持部材およびロータの相対的な径方向運動が可能になるため、ポンプ区域は、より可撓性が高い。これは、血管内血液ポンプの挿入中または回収中に有利であり得る。
【0045】
特定の実施形態において、血管内血液ポンプは、ロータの遠位端においてノーズ部を備える。ハウジングが拡張した状態にあるとき、ノーズ部は、静的支持部材内へ突き出るが、この静的支持部材は、好ましくは、相応して形成された凹部を保有する。ノーズ部は、ロータの回転を中心に置く、ならびにハウジングの拡張後にロータおよび静的支持部材を正しい相対位置にするという目的を有する。ノーズ部は、好ましくは、0.1mm~2mm、より好ましくは、0.2mm~1mm、および最も好ましくは、0.3mm~0.5mmだけ、ロータの周囲面上に突き出る。静的支持部材内の凹部の深さは、ノーズ部に対応し、好ましくは、0.1mm~2mm、より好ましくは、0.2mm~1mm、および最も好ましくは、0.3mm~0.5mmである。
【0046】
静的支持部材がロータ内へ突き出るいくつかの実施形態において、ロータは、底または段を有するその遠位端における凹部など、静的支持部材のための軸方向停止部を備える。底または段は、ロータの遠位端における静的支持部材の近位端のための軸方向停止部を画定する。これは、拡張可能な血液ポンプの文脈において特に有利である。その拡張した状態では、ロータ内へ軸方向に突き出る静的支持部材の近位端は、軸方向停止部と接触状態にあり得、以て、ハウジングのさらなる拡張を防ぎ、および故に、ロータ羽根の外縁と拡張可能なハウジングの内面との間の径方向の隙間幅を制限する。代替的に、拡張可能な血液ポンプの拡張した状態では、静的支持部材の近位端および軸方向停止部は、隙間を形成し得、これは、軸方向に、好ましくは、0.01mm~1mm、より好ましくは、0.01mm~0.1、および最も好ましくは、0.01mm~0.05mmの幅である。
【0047】
軸方向に測定されるロータの遠位端における凹部の長さは、例えば、0.5mm~8mm、好ましくは、1mm~5mm、特に好ましくは、1.5mm~2.5mmである。ハウジングがカニューレ内へ移動されるとき、ハウジングは、好ましくは、軸方向に0.5mm~2.5mmだけ、より好ましくは、1mm~2mm、最も好ましくは、およそ1.7mmだけ伸びる。
【0048】
駆動軸の遠位端の内側、すなわち、ロータ軸の内側に、血管内血液ポンプは、ロータを通じて遠位軸受へとパージ流体を誘導するように配置される任意選択の流体ラインを含み得る。いくつかの実施形態において、ロータは、流体ラインの一部として中空区域を含み、血管内血液ポンプは、ロータの中空区域を通じて遠位軸受へとパージ流体を誘導するように配置される。パージ流体は、カテーテルを介して流体ラインへ輸送され得る。パージ流体は、電気モータのハウジングの内側でカテーテルおよび/または駆動軸に入り得る。パージ流体は、駆動軸に隣接したカテーテルの内側を流れ得る。駆動軸が中空である場合、パージ流体は、部分的に、主に、または全体的に、駆動軸内腔を通って流れ得る。カテーテルの遠位端からロータまで、パージ流体は、駆動軸を通って流れ得る。少なくともカテーテルの遠位端とロータの近位端との間の空間において、駆動軸は、パージ流体が上記空間から漏出することを防ぐためにカバーを備え得る。
【0049】
代替的に、パージ流体は、駆動軸を含むカテーテルの主要内腔を通じて誘導されず、1つ以上の別個の二次内腔を通じて誘導され得る。
【0050】
カテーテルの遠位端領域において、パージ流体は、好ましくは、ロータ軸の内側の流体ライン内へ移動する。場合によっては、ロータ軸またはロータハブは、流体ラインを収容するために中央内腔を有し得る。特に、中空駆動軸の場合、駆動軸は、ロータ軸および流体ラインの両方を形成するためにロータ内へ延び得るか、または中空駆動軸は、ロータ軸および流体ラインの両方を形成するために中空管によって延長され得る。代替的に、近位軸受の軸受スリーブの遠位延長が中空駆動軸を形成し得る。中空駆動軸は、いくつかの場所においては、パージ流体に対して透過性があってもよい。
【0051】
パージされた近位および/または遠位軸受においては、血液が軸受隙間に入る可能性は低い。その結果、血塊が防がれる。加えて、パージされた軸受は、先行技術における代替的な軸受よりも少ない摩擦を有し得る。特に、パージ流体は、軸受を円滑にし、摩擦熱を軸受から離れる方へ輸送することができる。これは、より高い回転速度、より低い電力消費、および血液ポンプの増大した寿命を可能にし得る。パージ流体は、軸受をパージするのに好適な任意の生体適合流体であってもよい。好適な医療用流体の例としては、各々がヘパリンありまたはなしの、生理食塩水、グルコース溶液、および/または水が挙げられる。
【0052】
代替の実施形態において、近位および/または遠位軸受は、パージされない。したがって、近位および/または遠位軸受へのパージ流体の輸送はなく、血管内血液ポンプは、流体ラインを備えなくてもよい。
【0053】
遠位軸受は、好ましくは、パージ流体が、静的支持部材と、ロータの遠位端であって、静的支持部材がその中へ、またはそこに直面して突き出る、ロータの遠位端と、の間を出ることができるように配置される。好ましくは、遠位軸受は、パージ流体が流体ラインの遠位端から遠位軸受へ流れるように配置される。特に、血管内血液ポンプは、中空駆動軸またはロータ軸を通過するいかなるパージ流体も、全体的または部分的に、遠位軸受を通って出るように配置され得る。好適な圧力を印加することにより、パージ流体は、遠位軸受の軸受隙間を通ることを強いられ得、いくつかの実施形態において、この軸受隙間は、静的支持部材およびロータの隣接区域によって囲まれた隙間である。好ましくは、パージ流体の圧力は、300mmHg(0.4バール)~1500mmHg(2バール)の範囲、より好ましくは、600mmHg(0.8バール)~1100mmHg(およそ1.5バール)の範囲にある。遠位軸受がパージされ、ロータが静的支持部材内へ突き出るノーズ部を備える場合、ノーズ部は、パージ流体がノーズ部と静的支持部材との間の軸受隙間に入ることを可能にするために少なくとも1つの開口部を含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、静的支持部材の遠位端は、ハウジングの遠位端に取り付けられる。ハウジングの遠位端は、ロータの遠位端を支持する静的支持部材のための安定した支持を提供し得る。
【0055】
静的支持部材は、好ましくは、遠位から近位に延び、ロータの遠位端に直面して、または好ましくはこれの中へ、突き出るピンを備える。故に、ピンは、ロータのための遠位軸受を形成するように配置され得る。遠位軸受がパージされる実施形態において、ピンは、好ましくは、パージ流体がピンとピンに取り付けられたロータとの間を出ることができるように配置される。
【0056】
好ましくは、ピンは、円形断面を保有する。しかしながら、他の断面が、ロータの外側に位置するピンの遠位部において等しく可能である。例えば、ピンは、卵形断面を有し得る。いくつかの実施形態において、ピンは、中空であってもよい。代替的に、ピンは、中実材料で作製され得る。好ましくは、ピンは、その近位端に向かって先細にされる。ピンは、好ましくは、ポンプヘッドの屈曲の間、ロータがハウジングに対する同心を保つように、弾性的に屈曲可能であり得る。
【0057】
好ましくは、静的支持部材、特にピンが、軸方向に中に突き出るロータの遠位端における内径は、0.3mm~1.5mm、より好ましくは、0.5mm~1.2mm、および最も好ましくは、0.7mm~0.9mmの幅である。好ましくは、ピンの外側とその反対側の軸受表面との間の径方向の軸受隙間は、1μm~10μm、より好ましくは、2μm~8μmの幅である。
【0058】
いくつかの実施形態において、ピンは、特に長く、ロータ内へ突き出て、ロータ全体を通って近位に延びる。好ましくは、ピンは、ロータを近位に出て、駆動軸の内側に続き、例えば、近位軸受の内側で終わる。この場合、ピンの端は、近位軸受に位置付けられる駆動軸の部分の内側に配置され得る。ロータの長さ全体を通って、および近位軸受内へ延びる長いピンを採用することにより、特に堅く低振動のポンプが作成され得る。代替的に、ピンは、近位軸受の近位の点へとさらに延び得る。ロータを通って延びるピンは、パージされる場合とそうでない場合とがあり、中空駆動軸と、または長さの一部に沿ってのみ中空である駆動軸と併せて使用され得る。
【0059】
好ましくは、ピンの材料は、以下の材料のうちの少なくとも1つを含む:生体適合性材料、特に、MP35N、35NLT、ニチノール、ステンレス鋼(特に医療グレードのステンレス鋼)、およびセラミックスのうちの1つ以上。ピンの表面は、コーティング、例えば、ハードコーティング、例えば、ダイヤモンド状炭素(DLC)コーティングを含み得る。
【0060】
好ましくは、ピンが血管内血液ポンプの動作状態の間にロータの遠位端内へ突き出るピンの長さは、0.5mm~8mm、好ましくは、1mm~5mm、特に好ましくは、1.5mm~2.5mmである。内のり長さが長いほど、ロータ支持は堅くなり、故に、ロータ羽根の外縁とハウジングの内面との間の隙間の幅はより良好に制御可能である。羽根は、ハウジングの内面に接触してはならず、隙間は、血液損傷を防ぐのに十分に大きくなければならない。より堅く支持されるロータはまた、より低い偏位およびより少ない振動で動作され得、これが血液適合性を改善する。
【0061】
ピンは、ハウジングおよびロータが圧縮した状態にあるとき、ロータの遠位端内に留まるのに十分な長さを有し得る。ハウジングおよびロータが圧縮した状態にあるときロータの遠位端の内側に留まるピンの長さは、好ましくは、1.5mm超、より好ましくは、1.7mm超、および最も好ましくは、2mm超である。ハウジングおよびロータが血液ポンプの配備の前に圧縮されるとき、ハウジングは、長手方向に延長され、ハウジングの遠位端内へ延びる静的支持部材、特にピンは、おそらくは、ロータから全体的に抜け出し得る。次いで、ハウジングが再び拡張されるとき、ピンは、ロータ内へ戻らない場合があり、ポンプは機能的ではない場合がある。したがって、ピンがハウジングの圧縮した状態においてもロータの内側に留まるような十分な長さを伴ってピンが選択される場合、そのような問題は回避され得る。
【0062】
ピンを伴う実施形態において、遠位軸受表面は、ピンの表面ならびに遠位外側軸受表面であり、これは、ロータ自体によって、またはロータのハブ内の遠位軸受のスリーブによって提供され得る。場合によっては、遠位外側軸受表面は、上で述べた補剛要素によって提供され得る。
【0063】
遠位軸受のスリーブは、好ましくは、0.3mm~1.5mm、より好ましくは、0.5mm~1.2mm、および最も好ましくは、0.7mm~0.9mmの範囲に及ぶ内径を有し得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、血管内血液ポンプは、患者の組織への損傷を回避するために可撓性の高い無傷先端を備える。無傷先端は、Pebax(登録商標)またはポリウレタンなどの可撓性の高い医療グレードポリマーで作製され得る。好ましくは、可撓性の高い無傷先端は、ピッグテールとして、またはJ字形に設計される。
本発明の第2の態様によると、上に説明される血管内血液ポンプは、患者内で使用され、すなわち、それは、血流を支援するために患者の内側に挿入され、そこで動作される。
【0065】
以後、本発明は、添付の図面を参照して例により説明される。添付の図面は、縮尺通りには描写されていない。図面において、様々な図に例証される同一または対応する構成要素は、同じ番号で表される。明瞭性のため、すべての構成要素がすべての図面において符号付けされるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】心臓の左室内に位置付けられる血管内血液ポンプの概略図である。
図2】血管内血液ポンプの概略図である。
図3A】拡張した状態および圧縮した状態にある血管内血液ポンプの概略図である。
図3B】拡張した状態および圧縮した状態にある血管内血液ポンプの概略図である。
図4A】第1の実施形態による、ロータの遠位端内へ延びる静的支持部材を伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図4B】第1の実施形態による、ロータの遠位端内へ延びる静的支持部材を伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図4C】第1の実施形態による、ロータの遠位端内へ延びる静的支持部材を伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図5】第2の実施形態による、ロータの遠位端内へ延びる静的支持部材を伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図6A】第3の実施形態による、遠位端にノーズ部を有するロータを伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図6B】第3の実施形態による、遠位端にノーズ部を有するロータを伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図6C】第3の実施形態による、遠位端にノーズ部を有するロータを伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図6D】第3の実施形態による、遠位端にノーズ部を有するロータを伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図7】近位および遠位軸受を伴う血管内血液ポンプの概略図である。
図8A】血管内血液ポンプ内のパージ流体の経路の概略図である。
図8B】血管内血液ポンプ内のパージ流体の経路の概略図である。
図9A】外層および内層を備える駆動軸を示す図である。
図9B】軸受スリーブ、外側軸受リング、および保護リングを伴う駆動軸を示す図である。
図10A】油圧的に分割された軸受スリーブを示す図である。
図10B】制限部材を伴う軸受を示す図である。
図11A】制限部材およびロータを伴う軸受を示す図である。
図11B】制限部材およびロータを伴う軸受を示す図である。
図12A】外側軸受リングおよび特別に形成された軸受スリーブを伴う近位軸受の2つの異なる実施形態を示す図である。
図12B】外側軸受リングおよび特別に形成された軸受スリーブを伴う近位軸受の2つの異なる実施形態を示す図である。
図13A】流体力学的軸方向軸受を示す図である。
図13B】流体力学的軸方向軸受を示す図である。
図13C】流体力学的軸方向軸受を示す図である。
図13D】流体力学的軸方向軸受を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、この特定の例ではヒトの心臓の左室2を支援するための血管内血液ポンプ1の使用を示す。血管内血液ポンプ1は、カテーテル5およびポンピングデバイスを備え、ポンピングデバイスは、カテーテル5の遠位端領域に取り付けられるポンプ区域4を備える。血管内血液ポンプ1は、経皮経管的技術を使用して心臓の内側に置かれ得る。例えば、血管内血液ポンプ1は、大腿動脈を通じて導入され得る。しかしながら、鎖骨下動脈を通じたアクセスなど、代替の血管アクセスが同様に可能である。大腿動脈を通過した後、カテーテル5は、ポンプ区域4が大動脈弁を通って心臓内へ到達するように、大動脈内へ押し込まれ得る。図1におけるポンプ区域4の位置付けは、単に例としての役割を果たすにすぎず、心臓の右室の内側にポンプ区域4を位置付けることなど、異なる配置が可能である。
【0068】
ポンプ区域4は、ポンプ区域4の遠位端における血流入口6から血流入口6の近位に位置する血流出口7まで血液を流すためにロータ10を備える。カテーテル5は、好ましくは患者の身体の外側に置かれる電気モータ8によって駆動される駆動軸12を収容する。駆動軸12は、ポンプ区域4の内側に含まれるロータを駆動する。ポンプ区域4は、その遠位端において、ピッグテールまたはJ字形の形態を有する可撓性の高い無傷先端9を保有し、これが、患者の血管系の内側でのナビゲーションを助けることにより血管内血液ポンプ1の配置を容易にする。さらには、可撓性の高い無傷先端9の柔らかさは、ポンプ区域4が左室2の壁に対して無傷に自立することを可能にする。
【0069】
図2は、血管内血液ポンプ1をさらに詳細に示す。ロータ10は、ハウジング11の内側に位置する。この実施形態では、ロータ10およびハウジング11の両方が圧縮可能である。この場合、血管内血液ポンプ1は、ロータ10およびハウジング11の両方が圧縮した状態にある間、患者の血管系を通じて輸送される。ポンプ区域4がその標的位置に来ると、ハウジング11およびロータ10は拡張される。可撓性の高い無傷先端9は、ハウジング11の遠位端に位置付けられる。駆動軸12は、駆動軸ケーブルとして実現される。駆動軸12の遠位端に配置されるロータ10を伴う駆動軸12は、カテーテル5の遠位端から突き出て見える。ハウジング11の内側のロータ10が駆動軸12により回転されるとき、血液は、ハウジング11の遠位端における血流入口6内へ、およびハウジング11を通って、ハウジング11に装着され近位に延びる下流チュービング20内へ運ばれる。血液は、次いで、下流チュービング20から、下流チュービング20内に提供される、より近くに位置する血流出口7を通って、大動脈内へ放出され、この血流出口は、複数の出口開口部を備える。下流チュービング20は、患者の心臓が拍動しているとき大動脈弁によって圧縮され得るように、可撓性の高い材料で作製される。下流チュービング20は、典型的には、回転中のロータ10によって生成される活性血流に主に起因して拡張される。左室2の内側に血流入口6および大動脈の内側に血流出口7を置くことにより、血管内血液ポンプ1は、患者の全身血液循環を支援し得る。血管内血液ポンプ1が異なって構成され、置かれる場合、それは、例えば、代わりに患者の肺血液循環を支援するために使用され得る。
【0070】
この例では、液体、特にパージ流体は、患者の身体の外側からカテーテル5を通ってポンプ区域4へ供給される。ポンプ区域4の内側では、液体は、図4および図5に関連してさらに説明されるように、摩擦を低減し、ポンプ区域4を冷却するために、1つ以上の軸受をパージするために使用され得る。好ましくは、液体は、少なくとも遠位軸受をパージするために使用される。そのような場合、パージ流体の圧力は、血液が軸受に入ることを防ぐために、患者の血圧よりも高くなるように選択される。好ましくは、パージ流体の圧力は、300mmHg(0.4バール)~1500mmHg(2バール)の範囲、より好ましくは、600mmHg(0.8バール)~1100mmHg(およそ1.5バール)の範囲にある。
【0071】
ハウジング11は、好ましくは、ニチノールなどの形状記憶材料から製作され、ロータ10の周りにケージを提供する。図5に見られるように、ハウジング11の中央部は、チャネルを画定するスリーブを保持し、このチャネルを通じて血液がロータ10により圧送される。このチャネルの近位および遠位では、ハウジング11は、血液がハウジング11内へ吸い込まれ、ハウジング11から下流チュービング20内へ押し出されることを可能にする(図2に示されるように)。
【0072】
図3Aおよび図3Bは、それぞれ拡張した状態および圧縮した状態にある、ポンプ区域4、そのロータ10、ならびにそのハウジング11を示す。カニューレ16は、カテーテル5の遠位端に配置される。最初、血管内血液ポンプ1の配備前、ポンプ区域4は、カニューレ16の内側にその圧縮した状態で提供される。カニューレ16は、患者の身体内へのカテーテル5の挿入を助けるためにカテーテル5またはピールアウェイシースに付属するカニューレ16であってもよい。カテーテル5が患者の血管系の内側に正しく置かれることを医師が決定したとき、医師は、ハウジング11をカニューレ16の外へ押し出す。カニューレ16が除去されると、ハウジング11は、その形状記憶特性に起因して拡張する。同時に、ロータ10は、その弾性に起因して拡張する。ハウジング11が駆動軸12から離れる方へ径方向に拡張すると、それは、長手方向に収縮する。
【0073】
ロータ10は、ピン19を有する静的支持部材18を備える遠位軸受14によって、ロータ10の遠位区域内に支持され、静的支持部材18は、その一端でハウジング11に装着され、その反対端でそのピン19によりロータ10の遠位端内へ延びるため、ハウジング11の拡張の際、ピン19は、ロータの遠位端10の内側で軸方向に移動することができる。好ましくは、ピン19は、ハウジング11がその圧縮した状態にあるとき、ピン19がロータ10の内側に留まるために十分に長い。血管内血液ポンプ1がその拡張した状態にあり、心臓から除去される必要があるとき、医師は、ハウジング11をカニューレ16内へ引き戻し、これによりハウジング11を径方向に圧縮して、長手方向に延長させ、その結果として、ハウジング11の遠位端が、静的支持部材18およびロータ10の遠位端内へ延びるそのピン19と一緒にロータ10から離れる方へ移動する。こうして達成されるハウジング11のより小さい直径は、患者からの血管内血液ポンプ1の除去を容易にする。
【0074】
先行技術の遠位軸受14において、駆動軸12は、時として、ロータ10の遠位に、および遠位軸受内へ延びる。しかしながら、これは、心臓の腱索が駆動軸12と絡み合うことを引き起こし得、可能性として凝固およびデバイス故障につながる。したがって、ロータ10に対して遠位およびロータ羽根に対して遠位の回転部分に関与しない、遠位軸受14の一部としての静的支持部材18の使用が有利である。
【0075】
図4Aおよび図4Bは、ハウジング11、および駆動軸12によって駆動されるロータ10を含め、第1の実施形態によるポンプ区域4をさらに詳細に説明する。駆動軸12は、ロータ10の近位の(またはハウジングの近位部内の)カテーテル5の遠位端における近位軸受13、およびロータ10の遠位端に位置する遠位軸受14の両方において回転可能に支持される。図4Aでは、駆動軸12は、その遠位端において中空であり、またはより詳細には、ロータ軸は、流体ライン15を形成するように中空であり、この流体ライン15を通ってパージ流体が遠位軸受14の方へ圧送され得る。駆動軸が中空であり、ロータ10の遠位端まで延びる場合、ロータ10は、ロータ軸が駆動軸によって形成されるように駆動軸12の遠位端に直接形成され得、これにより、近位および遠位軸受の領域において、駆動軸12は、例えば射出成形塑性材料によって補剛され、それぞれ適切な外側および内側軸受表面仕上げを提供され得る。代替的に、駆動軸12の軸受区域を含む端領域全体は、ポンプ区域のより堅い構造を得るために補剛され得る。例えば、駆動軸12は、その遠位端において薄くされ、堅い中空管が、薄くされた端の上にかぶせられ、遠位に延びてロータ軸および軸受区域を形成する。パージ流体は、ロータ軸内の流体ライン15を通って遠位軸受14へ輸送され得る。図4Aに示される実施形態において、パージ流体は、中央流体ライン15を通ることを強いられて、駆動軸12をその遠位端において出て、遠位軸受14の軸受隙間をさらに通って、血流内へ出る。パージ流体による遠位軸受14のパージは、より少ない摩擦、故に、遠位軸受に対するより少ない摩耗をもたらし、さらには、血液が軸受隙間内に入って詰まることを防ぐ。
【0076】
血管内血液ポンプ1が効率的であるためには、大きいロータ直径が望ましい。しかしながら、ロータ10とハウジング11との間の隙間が小さくなるにつれて、血液細胞またはロータ10が損傷されるリスクが増大する。近位軸受13のみが使用される場合、本システムは振動し得、ロータ10の羽根の先端とハウジング11の内面との間の隙間は、大きな変化を経る場合がある。可撓性の高い無傷先端9が心臓壁に接触するとき、心臓の運動がハウジングの屈曲を引き起こし得、これはハウジングがロータに接触することをもたらし得る。使用中のハウジングおよびロータの接触は、血液細胞への損傷の著しい増大を引き起こし得、血流に入るハウジングおよび/またはロータからの粒子による摩耗も引き起こし得る。図4Aおよび図4Bに例証されるように、近位軸受13および遠位軸受14の両方を使用することにより、ロータ10の位置はより安定し、上記隙間のサイズの変動は、1つだけの軸受の場合よりも低い。所定のハウジング11では、これは、ロータ10直径がより大きくなることを可能にし得、これによりハウジングがロータに接触することなく血管内血液ポンプ1のより高い流量を可能にする。
【0077】
ロータ10は、その遠位端に、凹部17を備える。ハウジング11の遠位端に対して固定される静的支持部材18は、そのピン19により凹部17内へ突き出る。図4A内の凹部17の底19は、段として形成され、ロータ10の内側の停止部を画定し、この停止部に当接して静的支持部材18のピン19は静止することができる。図4Aでは、流体ライン15は、パージ流体がピン19と凹部17との間の遠位軸受14から出ることを可能にするために、凹部17の底を貫通する。
【0078】
図4B内の血管内血液ポンプ1の実施形態は、図4A内の実施形態と類似している。しかしながら、重要なことには、図4B内の遠位軸受は、パージされず、代わりに血液内で動作するように設計される。故に、駆動軸12は、中空である必要がない。したがって、図4Bには流体ライン15が存在しない。凹部17の底は、パージ流体がピン19と凹部17との間の軸受隙間を通って流れるための開口部を含まない。そのような実施形態においては、より少ないパージ流体が必要とされ得る。近位軸受がパージされない場合、血管内血液ポンプは、パージ流体を全く必要としない場合がある。
【0079】
図4Cは、図4Aおよび図4Bと類似の実施形態を示す。ここでは、ピン19は、特に長く、近位にロータ軸を通って、および駆動軸12内へ、延びる。図4Cの実施形態では、ピン19の近位端は、近位軸受13の内側に位置する駆動軸12の部分の内側に位置する。
【0080】
代替の実施形態において、ピン19の近位端は、例えば、近位軸受13の近位に、またはロータ10と近位軸受13との間に位置し得る。近位軸受13内へ延びるピン19を有することにより、血管内血液ポンプ1のより大きい剛性が達成され得る。さらには、図4Cに示されるピン19は、血管内血液ポンプ1の振動を、その動作中に低減するのに役立ち得、また望ましくない屈曲を減少させ得る。
【0081】
図4C内の近位軸受13は、図4Aおよび図4B内の近位軸受13の場所から遠位に、ハウジング11の内側に位置する。近位軸受13とロータ10との間の距離は、示される実施形態において特に小さく、例えば、近位軸受13の外径よりも小さい。短距離は、血管内血液ポンプ1の剛性をさらに増大させ得る。
【0082】
図4C内のピン19は、いくつかの実施形態において、パージ流体が、駆動軸12を通って流れ、ピン19を過ぎてロータ10の遠位端で出ることができるように、中空駆動軸12と組み合わされ得る。代替的に、いくつかの実施形態において、パージ流体は使用されない場合がある。この場合、図4Cの長いピン19は、長さのいくらかの部分に沿ってのみ中空である駆動軸と組み合わされ得る。
【0083】
図5は、圧縮可能なハウジング11および中空駆動軸12によって駆動されるロータ10をここでも伴って第2の実施形態によるポンプ区域4を示し、中空駆動軸12は、カテーテル5の遠位端においてロータ10の近位に配置される近位軸受13内に回転可能に支持される。この実施形態において、遠位軸受14の一部を形成する静的支持部材18のピン19は、尖った端を有する。ハウジング11およびピン19の寸法が、ハウジング11が圧縮されるときにピン19がロータ10から出るようなものである場合、ピン19の尖った端は、ハウジング11が再び拡張されるとき、ロータの遠位端10における開口部内へのピン19の再導入を容易にする。好ましくは、ピン19は、ハウジング11が圧縮した状態にあるとき、ピン19がロータ10の内側に留まるために十分に長い。これは、ハウジング11が拡張されているときにピン19がロータ10に再び入ることができない状況を回避し得る。場合によっては、必要な軸受隙間がピン19の全長にわたって存在する適切な機能は必要ではない。むしろ、ピン19の外側とその反対側の軸受表面との間の軸受隙間は、少なくとも1つの場所において、1μm~10μm、より好ましくは、2μm~8μmの幅であれば十分である。
【0084】
この実施形態では、ロータの遠位端10における開口部内に底または段を提供するよりも、静的支持部材18には、ショルダが設けられてもよく、このショルダに対して、ロータ10は、ハウジング11の拡張した状態において当接し、以て、所望の場合、ハウジング11のさらなる拡張を制限する。いくつかの実施形態において、遠位軸受14は、排他的に径方向軸受であってもよい。
【0085】
ここでも、パージ流体は、駆動軸12の流体ライン15を通って遠位軸受14の方へ供給され、ロータ10のための遠位径方向軸受を形成するピン19を通過し、ロータ10からその遠位端において出ることができる。これは、血液がロータ10に入ることを防ぎ、摩擦を低減し、遠位軸受14を冷却する。代替的に、遠位軸受14は、パージされなくてもよい。したがって、流体ライン15は存在しなくてもよい。
【0086】
さらには、図5に示される実施形態において、ピン19は、ハウジング11が拡張されるとき、ロータ10の中央ダクトの内側にある。この場合、例えば、駆動軸12は、ロータ10の遠位端面において終端し得る。代替的に、駆動軸12の遠位端は、ピン19のための停止部を形成するように、ロータ10の内側に、例えば、図4の実施形態に見られるように、凹部の底のレベルに位置し得る。
【0087】
図6A図6B図6C、および図6Dは、圧縮可能なハウジング11、およびハウジング11に装着される静的支持部材18を伴うポンプ区域4の第3の実施形態を示す。ロータ10は、その遠位端にノーズ部21を備える。図6A図6B、および図6Cでは、駆動軸12の遠位端の内側の流体ライン15は、ノーズ部21内の開口部へつながり、この開口部を通って、パージ流体は、静的支持部材18の近位端においてノーズ部21と対応する凹部22との間の遠位軸受14の軸受隙間に入ることができる。しかしながら、図6Dでは、遠位軸受14はパージされない。故に、図6Dの実施形態は、流体ライン15およびノーズ部21内の開口部を保有しない。パージされない遠位軸受14は、血管内血液ポンプ1を動作させるのに必要とされるパージ流体の量を減少させ得る。パージされない近位軸受13と組み合わせると、血管内血液ポンプ1は、パージ流体を全く必要としなくてもよい。
【0088】
ハウジング11が圧縮されるとき、ノーズ部21は、凹部22から外れ、故に、血管内血液ポンプ1はより可撓性が高くなる。ハウジング11が標的部位において拡張されるとき、ノーズ部21は、凹部22内へ自動的に移動し、ノーズ部21の円すい形もしくは球形または別の方法で収束する形状は、ノーズ部21を凹部22内へ誘導するのを助け、ロータ10を静的支持部材18に対して中心に置く。図6bは、ロータ10におけるノーズ部21および対応する凹部22を伴う遠位軸受14の拡大断面を示す。図6b内の垂直点鎖線は、図6Cの断面平面を示す。図6Cに提示される断面は、遠位軸受14を同心円で表示する。周辺から中心へ、同心円は、凹部22、凹部22とノーズ部21との間の遠位軸受隙間、ノーズ部21、および遠位軸受隙間内への流体ライン15の開口部を示す。
【0089】
図7は、血管内血液ポンプ1をそのカテーテル5およびそのポンプ区域4と共に概略的に示す。この実施形態では、血管内血液ポンプ1は、カテーテル5の遠位端の内側に近位軸受13を備える。近位軸受13の内側で、内側軸受スリーブ24は、滑らかな軸受表面を提供するために駆動軸12上に糊付けされる。軸受スリーブ24をはめ込むため、駆動軸12は、その外側巻き線のうちの一部が除去されてその直径を減少させている。パージ流体は、このとき、カテーテル5を通って流れて、軸受隙間を通じて近位軸受13から出ることができる。パージ流体の一部は、駆動軸12を通ってロータ10内へも流れる。
【0090】
近位軸受のスリーブ24は、好ましくは、0.3mm~1.5mm、より好ましくは、0.5mm~1.2mm、および最も好ましくは、0.7mm~0.9mmの範囲に及ぶ内径を有し得る。
【0091】
近位軸受の軸受スリーブ24の外径は、好ましくは、0.5mm~2mm、より好ましくは、0.8mm~1.8mm、および最も好ましくは、0.9mm~1.2mmである。近位軸受の軸受隙間は、好ましくは、1μm~10μm、より好ましくは、2μm~8μmである。
【0092】
ロータの内側の駆動軸12から、パージ流体は、流体ライン15を通ってロータ10の凹部17内へ流れる。凹部17の内側に配置されるのは、ロータ10の遠位軸受25のスリーブである。遠位軸受25のスリーブの内面およびピン19の外面は、遠位軸受14の軸受表面を形成する。パージ流体は、遠位軸受25のスリーブとピン19との間の軸受隙間を介してロータ10から出る。
【0093】
遠位軸受25のスリーブは、好ましくは、0.3mm~1.5mm、より好ましくは、0.5mm~1.2mm、および最も好ましくは、0.7mm~0.9mmの内径を有する。遠位軸受25のスリーブの外径は、好ましくは、0.5mm~1.7mm、より好ましくは、0.7mm~1.4mm、および最も好ましくは、0.9mm~1.1mmである。ピン19と遠位軸受25のスリーブとの間の軸受隙間は、好ましくは、1μm~10μm、より好ましくは、2μm~8μmである。
【0094】
図8Aは、血管内血液ポンプの内側のパージ流体経路を概略的に示す。モータ8のハウジングの内側で、パージ流体は、カテーテル5内へ、および駆動軸12内へ供給される。ここでは、近位軸受13は概略的に示され、その構成要素、特に、外側軸受リング32および軸受スリーブ30は、示されない。近位軸受13において、パージ流体は、摩擦を低減し、近位軸受13を冷却するために軸受隙間を通じてカテーテル5から出る。パージ流体の一部分は、軸受隙間を通じてカテーテル5から出ずに、駆動軸12を通ってロータ10内へ流れる。いくつかの実施形態において、駆動軸12は、パージ流体が、カテーテル5の遠位端とロータ10の近位端との間で駆動軸12から漏出することなしにカテーテル5からロータ10へ流れることができるようにカバーを備え得る。ロータ10の内側で、パージ流体は、流体ライン15を通って、次いでロータの遠位端10において凹部17内へ流れ続ける。代替の実施形態において、駆動軸12は、パージ流体が駆動軸12から直接的に凹部17内へ流れるように、凹部17に至るまで、または凹部17内へ続き得る。そこから、パージ流体は、ピン19とロータ10の隣接面との間の遠位軸受14の軸受隙間を通って流れる。
【0095】
図8Bは、図8Aに類似する血液ポンプの実施形態を示す。図8Bでは、近位軸受13は、図8Aの場合よりもロータ10に近く、小さい隙間によってのみロータ10から分離される。上記隙間を通じて、パージ流体は、矢印に示されるように漏れ得る。
【0096】
図9Aは、1つの外層28および1つの内層29を備える駆動軸12の例を示す。この実施形態では、外層28および内層29は、らせん巻きのワイヤからなり、内層29のらせんは右巻きであり、外層28のらせんは左巻きである。図9Aに示されるように、外層28の一部が内層29から除去されて、別個に示される。外層28の一部の除去は、外層28をわずかに回転させながら外層28を引っ張ることによって実行され得る。軸受スリーブ30は、それが外層28に当接するまで、露出された内層29上へ押され得、この外層28の一部は、次いで、軸受スリーブ30に隣接する内層29上へ戻して取り付けられ得る。
【0097】
図9Bは、外層28および内層29を伴う可撓性の高い軸受軸12を示し、外層28は、中央場所にはなく、軸受スリーブ30は、上記中央場所において内層29の上に位置付けられる。さらには、軸受スリーブ30の両側にあり、それと重なり合うのは、軸受スリーブ30に面する外層28の端にかぶせられる2つの保護リング31である。保護リング31のより短い部分が、軸受スリーブ30に重なり合う一方、より大きい部分は、外層28を被覆する。このようにして、小さい軸直径と大きい軸直径との間での遷移における剛性の変化に起因する駆動軸の破損のリスクは低減される。
【0098】
組み立て中、外層28は、切断されて、駆動軸12の一端から除去され得る。この時点では、駆動軸12は、図9A内の図に似ている。その後、第1の保護リング31が、残りの外層28の端を覆って置かれる。次いで、軸受スリーブ30は、外層28が除去される内層29の上に置かれ、保護リング31と重なり合う。外側軸受リング32は、軸受スリーブ30の上に置かれる。次いで、先に除去された外層28は、外層28の端および軸受スリーブ30に重なり合う第2の保護リング31と共に内層29の上に再び取り付けられる。軸受スリーブ30および保護リング31は、低粘度接着剤を使用して駆動軸12に付着され得る。接着剤が固まった後、軸受スリーブ30は、硬化について試験され得、すなわち、それは、パージ流体が軸受スリーブ30を通過することができるかどうかを試験され得る。
【0099】
軸受スリーブ30は、外側軸受リング32内に回転可能に支持され、また、この外側軸受リング32は、カテーテルに、またはロータが収容されるハウジングの近位端に固定される。軸受スリーブ30および外側軸受リング32は、径方向軸受を形成する一方、保護リング31は、軸方向停止部を、またいくつかの実施形態においては、外側軸受リング32を伴う軸方向軸受も形成する。軸受スリーブ30は、保護リング31と一緒に、材料の単一片から構築され得る。述べたように、軸受スリーブ30および保護リング31は、駆動軸12に固定的に接続され、好ましくは、糊付けされる。糊は、内層29および外層28の巻き線に充填して、パージ流体が駆動軸12を通って漏れることを防ぐためにも使用される。
【0100】
この例では、軸受スリーブ30の内径は、内層29の外径とほぼ同じである。軸受スリーブ30の外径は、外層28の外径とほぼ同じである。
【0101】
図10Aは、2つの止まり穴の間に壁を含む油圧的に分割された軸受スリーブ30を示す。内層29は、軸方向に断絶されている。軸受スリーブ30の止まり穴の各々は、軸方向に断絶された内層29のそれぞれの軸方向端を受容する。軸受スリーブ30は、いかなるパージ流体も軸方向に通さない。これに起因して、内層29は、内層29を通るパージ流体のいかなる流れも防ぐために糊で充填される必要がない。糊は、内層29を軸受スリーブ30に装着するために依然として使用され得るが、はんだ付け、圧着、および溶接などの代替の装着技術も可能である。外側軸受リング32は、軸受スリーブ30上にあり、2つの保護リング31によって軸受スリーブ30から押し出されることが防がれる。ここでも、軸受スリーブ30は、保護リング31のうちの1つと一緒に、材料の単一片から構築され得る。
【0102】
図10Bは、軸受スリーブ30と共に径方向軸受を形成する外側軸受リング32を伴う別の実施形態を示す。さらには、近位保護リング31aおよび遠位保護リング31bは、以前に説明される様式で、軸受スリーブ30に対して軸方向に固定される。駆動軸12が遠位に(図10B内の左に)移動する場合、近位保護リング31aは、外側軸受リング32の近位表面に当接し、いかなるさらなる遠位運動も防がれる。駆動軸12が近位方向に移動する場合、近位保護リング31aは、制限部材33の遠位面に当接し、近位方向におけるいかなるさらなる運動も停止する。遠位保護リング31bの近位表面と外側軸受リング32の遠位表面との間の最大距離amaxが、制限部材33の遠位表面と近位保護リング31aの近位表面との間の最小距離cmaxよりも大きい場合、遠位保護リング31bは、外側軸受リング32に決して接触しない。この条件は、不等式a>b+cと等価であり、b+cは一定である。
【0103】
ロータ10が、図11Aに示されるように、遠位保護軸受31bに取り付けられる場合、上の不等式に従って選択される距離a、b、およびcは、ロータが外側軸受リング32に接触するのを防ぐ。同様に、および図11Bに示されるように、ロータ10が軸受スリーブ30の遠位延長部に取り付けられる場合、上の条件は、軸受スリーブ30上のロータ10が外側軸受リング32に接触するのを防ぐ。ロータ10および外側軸受リング32の接触は、さもなければ、ロータ10への、または近位軸受13への損傷を引き起こし得る。
【0104】
図12Aは、ハウジング11および駆動軸12に取り付けられたロータ10を伴う血管内血液ポンプ1を示す。近位軸受13は、外側軸受リング32内に回転可能に支持される軸受スリーブ30を備える。駆動軸12は、軸受スリーブ30内へ糊付けされる。駆動軸12は、駆動軸の遠位端を安定させるための同軸ロッドとして実装される補強要素35を囲む。ロッドは、近位軸受13の近位からロータ10の遠位端まで延びる。代替的に、駆動軸12は、パージ流体が遠位軸受へ到達することを可能にするために中空であってもよい。制限部材33は、軸受スリーブ30の近位に位置し、軸受スリーブ30が外側軸受リング32から外れるのを防ぐ。制限部材33および外側軸受リング32の両方は、ハウジング11の遠位端内へ圧入および/または糊付けされる。加えて、制限部材33は、カテーテル5内へ圧入および/または糊付けされる。以て、制限部材33は、ハウジング11およびカテーテル5を接続する。ハウジング11内の径方向の貫通穴34は、制限部材33および外側軸受リング32をハウジング11に固定的に接続するために糊を導入する役割を果たす。糊は、制限部材33および外側軸受リング32の両方に提供される溝36に沿って周方向に分布し得る。さらには、径方向の貫通穴34は、外側軸受リング32および制限部材33の位置制御のために使用され得る。両方の接続は、接続をしっかりと保つため、およびパージ流体の漏出を防ぐために、糊付けされる。
【0105】
図12Aに見られるように、軸受スリーブ30は、外側軸受リング32の近位に位置する近位部分30a、および近位部分30aから外側軸受32内へ遠位に延びる遠位部分30bを備える。近位部分30aは、外側軸受32の近位表面と共に軸方向軸受を形成する一方、遠位部分30bは、外側軸受リング32と共に径方向軸受を形成する。軸方向軸受および径方向軸受は一緒に、近位軸受13を構成する。
【0106】
近位軸受13を通って近位から遠位へ押されるパージ流体は、まず、軸受スリーブ30の近位部分30aをその径方向外面に沿って通過し、次いで、近位部分30aの遠位表面と外側軸受リング32の近位表面との間の軸受隙間を通って径方向に内向きに流れ、最後に、軸受スリーブ30の遠位部分30bと外側軸受リング32の径方向内面との間に径方向に形成される軸受隙間を通ってさらに遠位方向に流れる。軸受隙間は、パージ流体に対して近位から好適な圧力を印加することによって、パージ流体が厳密に制御可能な様式で軸受隙間を通って流れるように、ほとんど許容誤差なしに設計され得る。径方向の切り込み(複数可)(示されない)は、動作中、ロータ10が軸受スリーブ32を遠位方向に引っ張るとき、パージ流体が、外側軸受リング32と軸受スリーブ30の遠位部分30bとの間の径方向の軸受隙間へ流れることができることを保証するために、静的外側軸受リング32の近位表面に提供され得る。
【0107】
図12Bは、図12Aの実施形態に対する代替の実施形態を示す。ここでは、駆動軸12は、減少した直径の区域を有し、軸受スリーブ30の遠位部分30bは、減少した直径の区域に配置される。このようにして、図12Bには具体的に示されないが、外側軸受リング32の外径は、相応に減少され得、その結果として、カテーテル5の外径が同様に減少され得る。このようにして、より可撓性の高い、およびより良好に操作可能なカテーテルが達成され得る。
【0108】
図12Bに示されるような軸受スリーブ30の構造は、図13図15に関連して上に説明されるような軸受構造に匹敵する。より詳細には、軸受スリーブ30の近位部分30aは、近位保護リング31aに相当する(図10Bを参照)。したがって、駆動軸12および軸受スリーブ30の遠位部分30bの遠位端の両方に重なり合う遠位軸受リング31bもまた、図12Bに示される実施形態に提供される。それは、図13図15に関連して説明されるものと同じ様式で、外側軸受リング32内での軸12の軸方向運動を制限する。
【0109】
図13Aは、流体力学的軸方向軸受の静止表面のグラフィック描写を示す。具体的には、図13Aは、中心に位置する駆動軸12を伴う外側軸受リング32の近位表面を示す。図13A内の湾曲した放射状の線は、軸受表面の上昇した部分を表し、これは図13Bにより詳細に示される。図13Aおよび図13B内の矢印は、反対面の運動の方向を例証する。これは、このとき、軸方向の軸受隙間内の潤滑膜の運動方向に対応する。表面は、平らである反対静止表面と一緒に収束する隙間を形成する斜面を有する。これは、流体力学的圧力を潤滑膜内で上昇させる。以て、軸方向の軸受隙間を形成する表面は離間したままとなる。
【0110】
図13Cは、ハウジング11の内側の軸受スリーブ30および外側軸受リング32を示す。軸受スリーブ30は、平らな遠位表面を有する。ここでは、外側軸受リング32の反対近位表面は、収束する隙間を形成するために傾斜される。使用中、これは、流体力学的軸受に必要とされる潤滑膜を作成する。
【0111】
図13Dは、外側軸受リング32の近位軸受表面の別の実施形態におけるらせん状溝を示す。らせん状溝は、好ましくは、近位軸受13の移動表面、すなわち、軸受スリーブ30の近位部分30aに構成される。この場合、いくつかの溝は、軸受スリーブ30の近位部分30aの遠位表面にらせんの形状で位置付けられる。軸受スリーブ30が図13D内の矢印によって示される方向に回転するとき、潤滑膜は、溝に沿って径方向に内向きに輸送され、軸受表面間に圧力を形成して、それらを離れたままに保つ。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図13D
【国際調査報告】