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  • 特表-制御放出セレキシパグ組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】制御放出セレキシパグ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4965 20060101AFI20230316BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230316BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230316BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A61K31/4965
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/34
A61P17/02
A61P3/10
A61P9/12
A61P11/00
A61P9/00
A61P13/12
A61K9/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546493
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2021052059
(87)【国際公開番号】W WO2021152060
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/052519
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500226786
【氏名又は名称】アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH-4123 Allschwil,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】カトリン リュイテン
(72)【発明者】
【氏名】アンネリエン ヴァン ドルーゲンブルーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC19
4C076DD47
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE32
4C076EE33
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE38
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC48
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ、NS-304、ACT-293987)、及びその薬学的に許容される塩、並びに/又は2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグの代謝物、MRE-269、ACT-333679)及びその薬学的に許容される塩を含む、経口投与のための制御放出組成物、そのような制御放出組成物を調製するためのプロセス、並びにその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬製剤であって、
-有効活性成分として、2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)、若しくはその薬学的に許容される塩、及び/又は、2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、若しくはその薬学的に許容される塩と、水溶性ポリマーと、を含み、薬物コアを形成するための粒子と、
-エチルセルロース(EC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む放出速度制御膜コーティングでコーティングされている、前記粒子と、
-任意選択で、1つ以上の保護コートと、を含む、医薬製剤。
【請求項2】
前記放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)対ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量比が、95:5(w/w)~50:50(w/w)である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記放出速度制御膜コーティングが、可塑剤を更に含む、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記可塑剤が、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、及びトリアセチンを含む群から選択される、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、HPMC2910 5mPa.sである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記エチルセルロース(EC)が、エチルセルロース(EC)20である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)+ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量が、前記薬物コアの重量に基づいて5重量%~50重量%の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーが、
-ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、好ましくはヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、
-ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、
-ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)
-アルキルセルロース、好ましくはメチルセルロース、
-ヒドロキシアルキルセルロース、好ましくはヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロース、
-カルボキシアルキルセルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロース、
-カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、
-カルボキシアルキルアルキルセルロース、好ましくはカルボキシメチルエチルセルロース、
-カルボキシアルキルセルロースエステル、
-デンプン、
-ペクチン、好ましくはカルボキシメチルアミロペクチン、
-キチン誘導体、好ましくはキトサン、
-多糖類、好ましくはアルギン酸、そのアルカリ金属及びアンモニウム塩、カラギーナン、ガラクトマンナン、トラガント、寒天、アラビアガム、グアーガム、及びキサンタンガム、
-ポリアクリル酸及びその塩、
-ポリメタクリル酸及びその塩、メタクリレートコポリマー、
-ポリビニルアルコール、
-ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、並びに
-ポリアルキレンオキシド、好ましくはポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーが、
-ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及び
-ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記水溶性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC2910 5mmPa.sである、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
遊離形態の前記有効活性成分の前記水溶性ポリマーに対する重量比が、1:0.5~1:100の範囲内である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記有効活性成分及び前記水溶性ポリマーが、不活性球体上に層状化又はコーティングされている、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記不活性球体が、250~1180マイクロメートルの直径を有する球体である、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記保護コートが、光保護コート及び/又はシールコートである、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記保護コートが、前記薬物コアと前記放出速度制御膜コーティングとの間にあり、かつ/又は、前記保護コートが、前記放出速度制御膜コーティング上にある、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
治療有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬製剤を含む、剤形。
【請求項17】
前記剤形が、1日1回経口投与用である、請求項16に記載の剤形。
【請求項18】
容器と、請求項16に記載の剤形と、前記剤形の投与方法を指定するパッケージに添付される書面と、を含む、商業的販売に適した医薬パッケージ。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬製剤を調製するプロセスであって、
(a)有効活性成分である2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)、若しくはその薬学的に許容される塩、及び/又は、2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、若しくはその薬学的に許容される塩を、有機溶媒中で水溶性ポリマーと混合し、薬物コアを形成することと、
(b)任意選択で、前記薬物コアに保護コートを適用することと、
(c)エチルセルロース(EC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及び任意選択で可塑剤を有機溶媒中で混合し、放出速度制御膜コーティングを適用することと、
(d)任意選択で、前記放出速度制御膜コーティングを含む粒子に保護コートを適用することと、を含む、プロセス。
【請求項20】
請求項19に記載のプロセスによって得ることができる、医薬製剤。
【請求項21】
潰瘍、手指潰瘍、糖尿病性壊疽、糖尿病性足潰瘍、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、フォンタン病及びフォンタン病に関連する肺高血圧、サルコイドーシス及びサルコイドーシスに関連する肺高血圧、末梢循環障害、結合組織疾患、任意のステージの糸球体腎炎及び糖尿病性腎症を含む慢性腎疾患、器官若しくは組織の線維症が関与する疾患、又は呼吸器疾患の予防又は治療における使用のための、請求項1~15又は20のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項22】
肺動脈高血圧症(PAH)の予防又は治療における使用のための、請求項21に記載の医薬製剤。
【請求項23】
潰瘍、手指潰瘍、糖尿病性壊疽、糖尿病性足潰瘍、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、フォンタン病及びフォンタン病に関連する肺高血圧、サルコイドーシス及びサルコイドーシスに関連する肺高血圧、末梢循環障害、結合組織疾患、任意のステージの糸球体腎炎及び糖尿病性腎症を含む慢性腎疾患、器官若しくは組織の線維症が関与する疾患、又は呼吸器疾患を予防及び/又は治療するための方法であって、請求項1~15又は請求項20のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ、NS-304、ACT-293987)、及びその薬学的に許容される塩、並びに/又は2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグの代謝物、MRE-269、ACT-333679)及びその薬学的に許容される塩を含む、経口投与のための制御放出組成物、そのような制御放出組成物を調製するためのプロセス、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セレキシパグ及びその代謝物は、以下の化学構造を有する。
【0003】
【化1】
【0004】
セレキシパグ(2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド、NS-304、ACT-293987)及びその活性代謝物(2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸、MRE-269、ACT-333679)の調製及び医薬としての使用は、国際公開第2002/088084号、同第2009/157396号、同第2009/107736号、同第2009/154246号、同第2009/157397号、同第2009/157398号、同第2010/150865号、同第2011/024874号、Nakamura et al.,Bioorg Med Chem(2007),15,7720-7725、Kuwano et al.,J Pharmacol Exp Ther(2007),322(3),1181-1188、Kuwano et al.,J Pharmacol Exp Ther(2008),326(3),691-699、O.Sitbon
et al.,N Engl J Med(2015),373,2522-33、Asaki et al.,Bioorg Med Chem(2007),15,6692-6704、Asaki et al.,J.Med.Chem.(2015),58,7128-7137に記載されている。ある特定の製剤は、国際公開第2013/024051号、同第2014/069401号、同第2018/162527号、及びCN107811994号に開示されている。
【0005】
セレキシパグは、成人に対する肺動脈高血圧症の治療に有益であることが示された。第III相臨床試験では、肺動脈高血圧症を有する患者間で、肺動脈高血圧症に関連する死又は合併症の主要な複合エンドポイントのリスクは、プラセボを受けた患者間よりもセレキシパグを受けた患者間で有意に低かった。セレキシパグは、例えば、米国で販売承認を受けており、疾患の進行を遅延させ、PAHの入院リスクを低減させるための肺動脈高血圧症(PAH、WHOグループI)の治療について示されている。
【0006】
セレキシパグは、哺乳動物、特にヒトにおいて、活性代謝産物2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸の持続的な選択的IP受容体アゴニスト活性を発揮することができるプロドラッグとして(IP受容体に対するある程度のアゴニスト活性をそれ自体で保持しながら)機能すると考えられる。セレキシパグのインビボ代謝は、可能性として、活性を延長し、かつ高濃度のPGI2アゴニストに関連する典型的な有害反応を低減させる「遅放出機構」のような作用を効果的に発揮し得る(Kuwano et al.,J Pharmacol Exp Ther(2007),322(3),1181-1188)。
【0007】
PGI2アゴニストに関連する有害反応はまた、特定のアップタイトレーション(up-titration)スケジュールによって対処される。成人に対する経口セレキシパグの推奨開始用量は、200マイクログラムであり、1日2回付与される。次いで、1日2回での200マイクログラムの増分で、通常は1週間の間隔をもって、1日2回での最大1600マイクログラムの最大許容用量まで、用量を増加させる。患者が許容することができない用量に達した場合、投与量は前の許容用量まで低減されるべきである。
【0008】
セレキシパグは、PAHのある成人において証明された有効性及び安全性を有する経口使用のための選択的IP受容体アゴニストである。今日まで、セレキシパグは、不十分な疾患制御のために追加の治療を必要とする成人患者において、主に現在の最前線の経口PAH特異的医薬と併用して、WHO FC II-IIIにわたる長期治療に関して世界的に承認された唯一のIP受容体アゴニストである。セレキシパグは、これらの患者の重要な追加の治療選択肢の典型である。
【0009】
経口使用のための、アドオン療法におけるPAH疾患の転帰に対する利益を実証する、セレキシパグ、すなわち高選択性IP受容体アゴニストの利用可能性は、患者のライフスタイルにあまり影響を与えることなく、PAH疾患の医学的に適切な段階でプロスタサイクリン経路療法を開始するために重要な理論的根拠を提供する。
【0010】
これまでに、1日2回の経口投与を意図したセレキシパグの標準的なフィルムコーティング錠剤製剤が使用されており、賦形剤は、D-マンニトール、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びステアリン酸マグネシウムを含み、錠剤は、ヒプロメロース、プロピレングリコール、二酸化チタン、カルナウバワックスを酸化鉄の混合物と一緒に含有するコーティング材料でフィルムコーティングされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、セレキシパグ又はその代謝物の投与が1日当たり1回に低減され得る場合、患者にとって利点がある。したがって、有効活性成分の徐放、つまり制御放出を提供するセレキシパグ又はその代謝物の製剤を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、セレキシパグ及び/又はその代謝物の制御放出製剤を提供することで
ある。
【0013】
発明者らは、特定のコーティングが、有効活性成分のそのような制御放出を提供することを見出した。更に、更なる保護コーティングが、有効活性成分の安定性に関して利点を提供し得ることが見出された。
【0014】
したがって、本発明は、薬物コアと、任意選択で1つ以上の保護コートを含む放出速度制御膜と、を含む、医薬製剤に関する。更に、本発明は、患者における持続薬物放出のための当該製剤を含む医薬剤形に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】3つの異なる量の放出速度制御膜を有する医薬製剤を含有する400マイクログラムのセレキシパグカプセルのインビトロ溶出試験のグラフを示す。溶出試験は、パドル装置を37℃で使用し、0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液pH6.8中で実施した。
図2】放出速度制御膜を有する医薬製剤を含有する400マイクログラムのセレキシパグ代謝物カプセルのインビトロ溶出試験のグラフを示す。溶出試験は、パドル装置を37℃で使用し、0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液pH6.8中で実施した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、
-有効活性成分として、2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)、若しくはその薬学的に許容される塩、及び/又は、2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、若しくはその薬学的に許容される塩と、水溶性ポリマーと、を含み、薬物コアを形成するための粒子と、
-エチルセルロース(EC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む放出速度制御膜コーティングでコーティングされている、当該粒子と、
-任意選択で、1つ以上の保護コートと、を含む、医薬製剤に関する。
【0017】
本発明の医薬製剤は、薬学的活性成分及び放出速度制御膜コーティングを含む粒子で構成される。限定されないが、保護コーティングなどの追加のコーティングは、任意選択で、粒子に適用され得る。
【0018】
本文脈では、明示的に記載されていない場合、「有効活性成分(API)」という用語は、遊離形態の2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)、及び/若しくはその薬学的に許容される塩、並びに/又は、遊離形態の2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、及び/若しくはその薬学的に許容される塩を包含する。
【0019】
一実施形態では、医薬製剤は、遊離形態の2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)を有効活性成分として含む。
【0020】
一実施形態では、医薬製剤は、遊離形態の2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、及び/又はその薬学的に許容される塩を有効活性成分として含む。
【0021】
一実施形態では、医薬製剤は、遊離形態の2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)を有効活性成分として含む。
【0022】
一実施形態では、医薬製剤は、2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)及び2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、並びに/又はそれらの薬学的に許容される塩を含む。
【0023】
用語「薬学的に許容される塩」は、セレキシパグ又はその代謝物の所望される生物活性を保持し、望ましくない毒性効果が最小限である塩を指す。そのような塩として、無機若しくは有機酸、及び/又は塩基付加塩が挙げられる。参考のために、例えば、「Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use」(P.Heinrich Stahl,Camille G.Wermuth(Eds.),Wiley-VCH,2008)、及び「Pharmaceutical Salts and Co-crystals」(Johan Wouters and Luc Quere(Eds.),RSC Publishing,2012)を参照されたい。
【0024】
本発明において、セレキシパグは、好ましくは非晶質状態で存在する。
【0025】
医薬製剤の粒子は、薬物コアを含み、すなわち、粒子のコアは、遊離形態又はその薬学的に許容される塩のいずれかとして、有効活性成分を含む。それにより、薬物コアは、水溶性ポリマーなどの少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を更に含む。本発明は、コア自体が、有効活性成分及び水溶性ポリマーなどの薬学的に許容される賦形剤によって形成される粒子を包含する。しかしながら、好ましくは、本発明は、薬物コアが、有効活性成分及び水溶性ポリマーを含む薬物コートによってコーティングされた不活性粒子である粒子を包含する。それにより、水溶性ポリマーは、以下に更に記載されるポリマーである。この文脈において、「薬物コア」及び「薬物コーティングされたコア」という用語は、同義語として使用される。
【0026】
エチルセルロース(EC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の特定の混合物は、放出速度制御膜コーティングの形成に特に有用であることが見出されている。
【0027】
エチルセルロース(EC)は、セルロース由来の、セルロースの骨格を持つエチルセルロースポリマーである。セルロースを最初にアルカリ溶液で処理してアルカリセルロースを生成し、その後、塩化エチルと反応させ、非水溶性ポリマーである粗エチルセルロースを生成する。好ましいエチルセルロース(EC)は、48.0~49.5%のエトキシル含有量を有する。エチルセルロースは、多くの異なる粘度で生成することができる。粘度は、分子の長さが増加するにつれて増加する。好適なECには、3~110mPa.sの粘度、好ましくは16~24mPa.s、例えば、20mPa.sの粘度を有するものが含まれ、好ましくは公称粘度として示される。
【0028】
特に好ましいのは、25℃で測定した5%溶液(80%トルエン及び20%エタノール中)について、16~24mPa.s(cP)の範囲の粘度、すなわち、16~24mPa.sの公称ウベローデ粘度を有するエチルセルロース(EC)である。エトキシル含有量は、上記の通り、好ましくは48.0~49.5%である。そのようなエチルセルロース(EC)の例は、本明細書ではエチルセルロース(EC)20と呼ばれる(20という
用語は、mPa.s単位の公称粘度を指す)。エチルセルロース(EC)20の例は、Ethocel(商標)standard premium 20である。
【0029】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はヒプロメロース(INN、Martindale,The Extra Pharmacopoeia,29th edition,page 1435参照)は、プロピレンオキシドで置換されたメチルセルロースである。様々な重合度及び置換度が知られている。好適なHPMCは、それを水溶性にするのに十分なヒドロキシプロピル及びメトキシ基を含有する。メトキシ置換度は、セルロース分子の無水グルコース単位当たりに存在するメチルエーテル基の平均数を指す。ヒドロキシプロピルモル置換は、セルロース分子の各無水グルコース単位と反応したプロピレンオキシドの平均モル数を指す。
【0030】
好ましくは、低粘度、すなわち5mPa.sを有するヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 5mPa.sが使用される。4桁の数字「2910」において、最初の2桁は、メトキシル基のおおよそのパーセントを表し、3及び4桁目は、ヒドロキシプロポキシル基のおおよそのパーセント組成である。5mPa.sは、20℃の2%水溶液の見かけの粘度を示す値である。より正確には、そのようなヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 5mPa.sは、28~30%のメトキシル置換(「29」として表される)、及び7.0~12.0%のヒドロキシプロピル置換(「10」として表される)を有する。
【0031】
好適なHPMCには、1~100mPa.s、特に3~15mPa.s、好ましくは5mPa.sの粘度を有するものが含まれる。5mPa.sの粘度を有する最も好ましい種類のHPMCは、市販のHPMC2910 5mPa.sである。
【0032】
エチルセルロース(EC)対ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の放出速度制御膜コーティングにおける重量比は、95:5~50:50の範囲であり得る。エチルセルロース(EC)対ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量比の好適な上限は、95:5、90:10、85:15である。エチルセルロース(EC)対ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量比の好適な下限は、50:50、55:45、60:40、及び65:35である。各上限を各下限と組み合わせ、エチルセルロース(EC)対ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の範囲を定義できることを理解されたい。具体的には、範囲は、95:5~50:50のEC対HPMC(w/w)、95:5~55:45のEC対HPMC(w/w)、95:5~60:40のEC対HPMC(w/w)、95:5~65:35のEC対HPMC(w/w)、90:10~50:50のEC対HPMC(w/w)、90:10~55:45のEC対HPMC(w/w)、90:10~60:40のEC対HPMC(w/w)、90:10~65:35のEC対HPMC(w/w)、85:15~50:50のEC対HPMC(w/w)、85:15~55:45のEC対HPMC(w/w)、85:15~60:40のEC対HPMC(w/w)、85:15~65:35のEC対HPMC(w/w)、80:20~50:50のEC対HPMC(w/w)、80:20~55:45のEC対HPMC(w/w)、80:20~60:40のEC対HPMC(w/w)、又は80:20~65:35のEC対HPMC(w/w)であり得る。セレキシパグに特に好ましい範囲は、例えば、95:5~50:50のEC対HPMC(w/w)、90:10~55:45のEC対HPMC(w/w)、85:15~60:40のEC対HPMC(w/w)、80:20~60:40のEC対HPMC(w/w)、又は80:20~65:35のEC対HPMC(w/w)であり得る。セレキシパグの好ましい例は、エチルセルロース(EC):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量比が75:25及び90:10であり、特に好ましくは75:25である。
【0033】
放出速度制御膜コーティングは、可塑剤を含み得る。可塑剤は、エチルセルロースフィルムの柔軟性及び完全性を増加させる。コーティング中、乾燥中、又は保管時のクラック形成により、ビーズの下の層から薬物が露出し、例えば、放出プロファイルの変化、破裂、化学的安定性の問題をもたらす。フィルムの機械的特性の改善に加えて、可塑剤は、フィルムを通る薬物放出に影響を与える場合がある。
【0034】
可塑剤は、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、及びトリアセチンを含む群から選択される。セバシン酸ジブチルは、好ましい可塑剤である。
【0035】
放出速度制御膜コーティングにおける可塑剤の重量パーセントは、10~40重量%である。計算の例として、EC及びHPMCの合わせた含有量が100mgである場合、20重量%の可塑剤は20mgであり、全てを合計すると120mgとなる。一実施形態では、可塑剤であるセバシン酸ジブチルは、放出速度制御膜コーティングのEC/HPMC含有量に対して10重量%~30重量%、好ましくは15~25重量%、たとえて18~22重量%、最も好ましくは20重量%で放出速度制御膜コーティングに含有される。
【0036】
放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)+ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量は、薬物コアの重量に基づいて5重量%~50重量%の範囲である。
【0037】
好ましくは、放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)+ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量は、薬物コアの重量に基づいて5重量%~40重量%、又は5重量%~35重量%、例えば、8重量%~35重量%、又は10重量%~30重量%、例えば10重量%、20重量%、又は30重量%などの範囲である。これは、以下の実施例では「重量増加」とも呼ばれる。それは、薬物コアの理論上の重量で計算される。活性成分の粒子からの放出速度は、放出速度制御膜コーティングの厚さとほぼ反比例する。エチルセルロース(EC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)に加えて、放出速度制御膜は、上記のように、追加の賦形剤、例えば可塑剤を更に含み得る。そのような場合、完全な放出速度制御膜コーティングの重量増加は比例的に高くなることを理解されたい。
【0038】
放出速度制御膜コーティングは、有機溶媒系中の溶液又は分散液として薬物コアに適用され得る。有用な有機系は、塩素化炭化水素、アセトン及び/又はアルコール、又はそれらの混合物を含む。塩素化炭化水素は、好ましくはジクロロメタンである。アルコールは、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールからなる群から選択され得る。好ましくは、アルコールは、メタノール又はエタノールである。好ましくは、放出速度制御膜コーティングは、塩素化炭化水素とアルコール、例えば、ジクロロメタンとエタノール、又はジクロロメタンとメタノールを含む有機溶媒系において薬物コアに適用される。特に好ましいのは、50/50(m/m)の比のジクロロメタン/エタノールである。
【0039】
任意選択で、保護コートは、薬物コアと放出速度制御膜コーティングとの間にある。この保護コートは、光保護コート又はシールコートであり得る。例えば、シールコーティングポリマー層を薬物コーティングコアに適用して、プロセス中の粒子の粘着を防ぎ、薬物の放出速度制御膜への移動を防止する。好ましくは、HPMC2910 5mPa.s及びポリエチレングリコール(PEG)、特にポリエチレングリコール400の薄層を、シールコーティングポリマー層として使用する。更に、顔料が、光保護のために保護コートに適用され得る。そのような顔料は、酸化鉄、例えば赤色酸化鉄及び/又は二酸化チタンであり得る。
【0040】
以下では、薬物コア、すなわち、有効活性成分として、2-{4-[N-(5,6-ジ
フェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)、若しくはその薬学的に許容される塩、及び/又は、2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、若しくはその薬学的に許容される塩と、水溶性ポリマーと、を含む粒子が説明される。
【0041】
水溶性ポリマーは、好都合には、フィルム形成ポリマーであり得る。有用な水溶性ポリマーは、1~100mPa.sの見かけの粘度を有するポリマーである。それにより、粘度は、特定のポリマーに適した媒体中で測定される。例えば、HPMCの粘度は、20℃で2%水溶液中で測定され得る。
【0042】
好ましくは、水溶性ポリマーは、以下からなる群から選択される。
-ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、好ましくはヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、
-ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、
-ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)
-アルキルセルロース、好ましくはメチルセルロース、
-ヒドロキシアルキルセルロース、好ましくはヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びヒドロキシブチルセルロース、
-カルボキシアルキルセルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロース、
-カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、
-カルボキシアルキルアルキルセルロース、好ましくはカルボキシメチルエチルセルロース、
-カルボキシアルキルセルロースエステル、
-デンプン、
-ペクチン、好ましくはカルボキシメチルアミロペクチン、
-キチン誘導体、好ましくはキトサン、
-多糖類、好ましくはアルギン酸、そのアルカリ金属及びアンモニウム塩、カラギーナン、ガラクトマンナン、トラガント、寒天、アラビアガム、グアーガム、及びキサンタンガム、
-ポリアクリル酸及びその塩、
-ポリメタクリル酸及びその塩、メタクリレートコポリマー、
-ポリビニルアルコール(PVA)、
-ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、並びに
-ポリアルキレンオキシド、好ましくはポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー。
【0043】
薬学的に許容され、かつ上記で定義された適切な物理化学的特性を有する列挙されていないポリマーは、本発明による粒子の調製に同様に適している。
【0044】
好適なヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、5~10%水溶液中で30~900mPa.sの粘度を有するものを含む。
【0045】
好適なヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)は、HPMCP
HP-50及びHP-55を含む。様々なグレードのヒプロメロースフタレートが、異なる置換程度及び物理的特性で入手可能であり、グレードHP-50及びHP-55が好ましい。各グレード指定における「HP」後の数は、ポリマーが水性緩衝液中に溶解するときのpH値(x10)を指す。
【0046】
好適なポリビニルアルコール(PVA)は、20℃の4%w/v水溶的において4~7mPa.s、好ましくは5mPa.sの粘度を有するものを含む。最も好ましい種類のPVAは、約86.5モル%超、好ましくは86.5~89.0モル%の加水分解パーセントを有する。
【0047】
好ましくは、水溶性ポリマーは、以下からなる群から選択される。
-ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及び
-ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)。
【0048】
好適なヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)には、20℃の溶液で2%水溶液に溶解したときに、1~100mPa.s、特に3~15mPa.s、好ましくは5mPa.sの粘度を有するものが含まれる。5mPa.sの粘度を有する最も好ましい種類のHPMCは、市販のHPMC2910 5mPa.sである。前述のように、そのようなHPMC2910 5mPa.sは、28~30%のメトキシル置換(「29」として表される)、及び7.0~12.0%のヒドロキシプロピル置換(「10」として表される)を有する。
【0049】
好適なヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)は、20℃の2%水溶液において2.4~3.6mPa.sの粘度を有するものを含む。3mPa.sの公称粘度を有する最も好ましい種類のHPMC-ASは、市販のAQOATである。ヒプロメロースアセテートサクシネートは、アセチル基及びサクシノイル基の含有量、ポリマーが溶解する際のpH、その主な粒径によって、いくつかのグレードで入手可能である。例えば、好適なHPMC-ASは、乾燥状態で計算した、NLT12.0%及びNMT28.0%のメトキシ基(-OCH3)、NLT4.0%及びNMT23.0%のヒドロキシプロポキシ基(-OCH2CHOHCH3)、NLT2.0%及びNMT16.0%のアセチル基(-COCH3)、並びにNLT4.0%及びNMT28.0%のサクシノイル基(-COC2H4COOH)を含有し得る。
【0050】
これにより、上記と同じ特性を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、すなわち、28~30%のメトキシル置換(「29」として表される)、及び7.0~12.0%のヒドロキシプロピル置換(「10」として表される)を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 5mPa.sが特に好ましい。
【0051】
遊離形態の有効活性成分の上記のような水溶性ポリマーに対する重量比は、1:0.5~1:100の範囲内である。好ましくは、遊離形態の有効活性成分の水溶性ポリマーに対する重量比は、1:1~1:50の範囲、1:1~1:40の範囲、1:1~1:35の範囲、例えば1:1~1:30の範囲である。
【0052】
「遊離形態の有効活性成分」という用語は、遊離形態の、すなわち塩ではない、2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)、又は2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)を意味する。これらの化合物の薬学的に許容される塩が使用される場合、塩の分子量に応じて、そのような塩の重量は比例的に高くなる。言い換えれば、重量比は常に、遊離形態を基準として計算され、薬学的に許容される塩が使用される場合、その重量は比例的に高くなる。
【0053】
特に好ましくは、遊離形態の有効活性成分の上記のような水溶性ポリマーとしてのHPMCに対する重量比は、1:0.5~1:100の範囲内である。好ましくは、遊離形態
の有効活性成分の水溶性ポリマーとしてのHPMCに対する重量比は、1:1~1:50の範囲、1:1~1:40の範囲、1:1~1:35の範囲、例えば1:1~1:30の範囲である。
【0054】
有効活性成分の他の水溶性ポリマーに対する重量比は、当業者によって、簡単な実験によって決定され得る。下限は、実際の考慮すべき事項によって決定される。
【0055】
上述のように、一実施形態では、有効活性成分及び水溶性ポリマーは、不活性球体上に層状化又はコーティングされている。これにより、有効活性成分及び水溶性ポリマーは、それらの好ましい実施形態を含む上記の通りである。
【0056】
製剤の不活性球体は、250~1180マイクロメートルの直径を有する球体である。好ましくは、直径は、400~900マイクロメートル、例えば425~850マイクロメートル、又は500~710マイクロメートルである。例えば、600マイクロメートルの公称粒径は、75%以上の500~710マイクロメートルのビーズ、10%以下の710マイクロメートル超のビーズ、及び15%以下の500マイクロメートル未満のビーズである粒径分布規格を指す。
【0057】
本明細書で言及される寸法のペレット、ビーズ、又はコアは、CRC Handbook,64th ed.,page F-114に記載されているように、公称標準試験ふるいを通してふるいにかけることによって得ることができる。公称標準ふるいは、メッシュ/目開き(マイクロメートル)、DIN4188(mm)、ASTM E11-70(番号)、Tyler(商標)(メッシュ)又はBS410(メッシュ)標準値によって特徴付けられる。この説明及び特許請求の範囲を通して、粒径は、メッシュ/目開きをマイクロメートルで、及びASTM E11-70規格における対応するふるい番号を参照することによって指定される。
【0058】
本発明による粒子中のコアとしての使用に好適な材料は、当該材料が薬学的に許容され、上記のように適切な寸法及び硬度を有することを条件で、マニホールドである。そのような材料の例は、ポリマー、例えば、プラスチック樹脂、無機物質、例えば、シリカ、ガラス、ヒドロキシアパタイト、塩(塩化ナトリウム又はカリウム、炭酸カルシウム又はマグネシウム)など、有機物質、例えば、活性炭、酸(クエン酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸など)、及び糖類及びそれらの誘導体である。特に好適な材料は、糖、オリゴ糖、多糖類、及びそれらの誘導体、例えば、グルコース、ラムノース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デキストリン、マルトデキストリン、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン(トウモロコシ、米、ジャガイモ、小麦、タピオカ)などの糖類などの糖類である。
【0059】
糖類が好ましく、微結晶セルロース、糖及びイソマルト球体、特に微結晶セルロース球体としての微結晶セルロースがより好ましい。
【0060】
微結晶セルロース(MCC)球体は、その低い反応性、薬物層状化に使用される溶媒中での不溶性、高球体形度、微細かつ均一な粒径、高い機械的強度、良好な加工性のために特に好ましい。
【0061】
本明細書に記載の薬物が層状化された又は薬物コーティングされた不活性ペレット又は球体の代替として、有効活性成分を含む好適な粒子はまた、当該技術分野において既知の顆粒化又は球形化法に従って調製された顆粒又は球体(球状顆粒)によって形成されてもよい。
【0062】
有効活性成分及び水溶性ポリマーが不活性球体上に層状化又はコーティングされている場合、薬物コーティング溶液は、好適な溶媒系中に適切な量の有効活性成分及び水溶性ポリマーを溶解することによって調製される。好適な溶媒系は、塩素化炭化水素又はアセトン、及び/又はアルコールなどの有機溶媒を含む。好ましい薬物コーティング溶媒は、ジクロロメタン、アセトン、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールである。より好ましくは、塩素化炭化水素とアルコールの混合物である。特に好ましいのは、ジクロロメタン及びメタノール又はジクロロメタン及びエタノールの場合である。塩素化炭化水素とアルコールとの間の比は、全てm/mで、5:1~1:5、又は3:1~1:3、又は2:1~1:2、又は1.5:1~1:1.5の範囲であり得る。特に好ましいのは、1:1m/mの比である。エタノールは、例えば、ブタノンで変性され得る。
【0063】
薬物コーティング溶液中の固体、すなわち有効活性成分及び水溶性ポリマーの量は、1%~15%(w/w)、好ましくは2%~8%の範囲であり得る。溶液は、好ましくは、コーティングプロセス中に撹拌される。
【0064】
更に、本発明による粒子は、増粘剤、潤滑剤、界面活性剤、防腐剤、錯化剤及びキレート剤、電解質又は他の活性成分などの様々な添加剤を更に含有し得る。
【0065】
任意選択で、保護コートは、薬物コアと放出速度制御膜コーティングとの間にある。更に、保護コートは、放出速度制御膜コーティング上に配置され得る。
【0066】
この保護コートは、光保護コート及び/又はシールコートであってもよいが、腸溶性コートなどの更なる機能性コーティングであってもよい。腸溶性コートは、当該技術分野において既知である。
【0067】
本発明による医薬製剤、すなわち、有効活性成分及び水溶性ポリマーを含む粒子は、上記のような放出速度制御膜コーティングでコーティングされている粒子であり、医薬剤形の一部であり得る。そのような医薬剤形は、治療有効量の本明細書に記載の医薬製剤を含む。医薬剤形は、医薬製剤が充填されるカプセルであってもよい。それにより、カプセルは、例えば、光保護によって、その中の医薬製剤を保護するのに更に役立ち得る。これは、酸化鉄、例えば赤色酸化鉄、又は二酸化チタンなどの顔料、更には光保護有機化合物でカプセルを染色することによって達成することができる。
【0068】
治療有効量は、20~3500マイクログラム/日であってよく、すなわち、カプセルであり得る剤形は、20~3500マイクログラム、好ましくは400マイクログラム~3200マイクログラムを含有し得る。カプセルであり得る剤形当たりの好ましい量は、400マイクログラム、600マイクログラム、800マイクログラム、1000マイクログラム、1200マイクログラム、1400マイクログラム、1600マイクログラム、1800マイクログラム、2000マイクログラム、2200マイクログラム、2400マイクログラム、2600マイクログラム、2800マイクログラム、3000マイクログラム、及び3200マイクログラムである。
【0069】
医薬製剤及び/又はそれを含む剤形は、1日1回経口投与に特に好適である。言い換えれば、本発明は、本明細書に記載の疾患の予防又は治療に使用するための医薬製剤及び/又はそれを含む剤形に関し、治療有効量の当該製剤又は剤形は、好ましくは1日1回経口投与される。
【0070】
本発明による医薬製剤及び/又はそれを含む剤形は、好ましくは、1日1回投与後の24時間中に、治療有効量の有効活性成分を患者に送達する。
【0071】
更に、本発明の医薬製剤及び/又は剤形は、結腸送達に適している。
【0072】
好ましくは、医薬剤形は、カプセル、好ましくは硬質ゼラチンカプセルである。更に好ましいのは、例えば、光保護物質、例えば、酸化鉄、例えば赤色酸化鉄、及び二酸化チタンなどの顔料を含む、硬質ゼラチンカプセルである。これにより、医薬製剤の粒子は、標準的な自動カプセル充填機を使用して、カプセル、好ましくは硬質ゼラチンカプセルに充填され得る。好適な接地及び脱イオン化装置は、静電荷の発生を有利に防止することができる。
【0073】
本発明はまた、容器と、上記の薬学的活性成分/剤形の製剤と、当該製剤の投与方法を指定するパッケージに添付される書面と、を含む、商業的販売に適した医薬パッケージに関する。
【0074】
当該医薬パッケージは、標的用量の有効活性成分を含み、すなわち、1日用量に包装され得る。それらはまた、「IP受容体アゴニスト」未経験、すなわち、以前にIP受容体アゴニストに曝露されたことがない患者、及び更なる高用量に曝露される前に最適用量に達するまで、低い良好な耐容性を示す用量で開始する必要がある患者の用量設定のために適合され得る。
【0075】
それにより、当該用量漸増は、400マイクログラム/日の開始用量強度を含み得、400マイクログラムずつ最大3200マイクログラム/日で漸増する。言い換えれば、医薬パッケージは、400マイクログラム/日から、800マイクログラム/日まで、1200マイクログラム/日まで、1600マイクログラム/日まで、2000マイクログラム/日まで、2400マイクログラム/日まで、2800マイクログラム/日まで、最大用量3200マイクログラム/日までの患者の用量設定に適合され得る。患者は、それらが留まる個人の最大耐容維持用量に用量漸増される。この指示は、リーフレットに含まれ得る。
【0076】
更に、本発明は、本明細書に記載の医薬製剤を調製するためのプロセスであって、
(a)有効活性成分である2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)、若しくはその薬学的に許容される塩、及び/又は、2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、若しくはその薬学的に許容される塩を、有機溶媒中で水溶性ポリマーと混合し、薬物コアを形成することと、
(b)任意選択で、薬物コアに保護コートを適用することと、
(c)エチルセルロース(EC)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及び任意選択で可塑剤を有機溶媒中で混合し、放出速度制御膜コーティングを適用することと、
(d)任意選択で、放出速度制御膜コーティングを含む粒子に保護コートを適用することと、を含む、プロセスに関する。
【0077】
好ましくは、工程(a)において、有効活性成分である2-{4-[N-(5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)-N-イソプロピルアミノ]ブチルオキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド(セレキシパグ)、若しくはその薬学的に許容される塩、及び/又は、2-(4-((5,6-ジフェニルピラジン-2-イル)(イソプロピル)アミノ)ブトキシ)酢酸(セレキシパグ代謝物)、若しくはその薬学的に許容される塩は、有機溶媒中で水溶性ポリマーと混合され、中性又は不活性粒子に適用される。これは、薬物コアが、有効活性成分と水溶性ポリマーの混合物を不活性粒子に適用することによって形成されることを意味する。
【0078】
更に、本発明は、上記のプロセスによって得られる医薬製剤に関する。このプロセスは、有機溶媒の使用を伴う。好ましい有機溶媒又は溶媒系は、薬物コア/薬物コートの調製に関して本明細書に記載されるもの、並びに放出速度制御膜コーティングについて記載されるものである。放出速度制御膜コーティングが、エチルセルロース(EC)を含むとき、フィルム構造は、使用される溶媒系、すなわち、水性対有機溶媒系によって異なり得る。
【0079】
したがって、本発明による粒子は、以下の方法で都合よく調製される。薬物コーティング溶液は、好適な有機溶媒系中に適切な量の有効活性成分及び水溶性ポリマーを溶解することによって調製される。好適な溶媒系は、上記の塩素化炭化水素及び/又はアルコールなどの有機溶媒、例えばジクロロメタンとメタノールの混合物を含む。薬物コーティング溶液中の固体、すなわち有効活性成分及び水溶性ポリマーの量は、1%~15%(w/w)、好ましくは2%~8%(w/w)の範囲であり得る。溶液は、好ましくは、コーティングプロセス中に撹拌される。
【0080】
薬物コーティングプロセス(工業規模において)は、Wurster底部噴霧インサート(例えば、18インチのWursterインサート)を備えた流動床造粒機(例えば、Glatt型WSG-30又はGPCG-30)で便利に行われる。ラボスケールのプロセス開発は、4インチのWurster底部インサート及びMini Glattを備えるGCPG-2で実行することができる。明らかに、プロセスパラメータは、使用される機器に依存する。
【0081】
噴霧速度は注意深く調節しなくてはならない。噴霧速度が低すぎると、ある程度の薬物コーティング溶液の噴霧乾燥を引き起こし、生成物の損失をもたらす可能性がある。噴霧速度が高すぎると、その後の凝集による過剰な湿潤が引き起こされる。凝集は最も深刻な問題であるため、最初はより低い噴霧速度を使用し、コーティングプロセスが進行し、粒子がより大きく成長するにつれて上昇させてよい。
【0082】
薬物コーティング溶液が適用される噴霧空気圧も、コーティング性能に影響を与える。低い噴霧空気圧は、より大きな液滴の形成及び凝集の傾向の増加をもたらす。高い噴霧空気圧は、薬物溶液を噴霧乾燥するリスクが考えられ得るが、これは問題ではないことがわかった。その結果、噴霧空気圧は、ほぼ最大レベルに設定され得る。
【0083】
流動性空気量は、最適なペレット循環が得られるように設定しなくてはならない。空気量が少なすぎると、ペレットの不十分な流動化となる可能性があり、空気量が大きすぎると、装置内で空気流が逆流し、ペレット循環を妨害するであろう。
【0084】
コーティングプロセスは、約40℃~約65℃の範囲の吸気温度を用いることによって有利に行われる。より高い温度は、プロセスを高速化し得るが、溶媒蒸発が迅速すぎて、コーティング溶液がペレットの表面上に均一に広がらないという欠点を有し、その結果、高多孔性の薬物コーティング層の形成をもたらす。コーティングされたペレットのバルク体積が増加するにつれて、薬物溶解は、許容できないレベルまで顕著に減少し得る。明らかに、最適なプロセス温度は、使用される機器、コアの性質、バッチ体積、溶媒、及び噴霧速度に更に依存する。
【0085】
放出速度制御膜コーティングポリマー層は、Wurster底部噴霧インサートを備える流動床造粒機内で薬物(又はシール)コーティングされたコアに適用される。放出速度制御膜コーティング懸濁液又は溶液は、適切な量の放出速度制御膜コーティングポリマーを適切な溶媒系に懸濁又は溶解することによって調製することができる。そのような系は
、例えば、塩素化炭化水素、アセトン及び/又はアルコール、好ましくは塩素化炭化水素とアルコールとの混合物、例えば、ジクロロメタン及びメタノール又はエタノール、好ましくはジクロロメタン及びエタノールである。塩素化炭化水素とアルコールとの間の比は、5:1~1:5の範囲、又は上記の比率のいずれかであり得、好ましくは1.5:1(m/m)の比である。エタノールは、例えば、ブタノンで変性され得る。
【0086】
噴霧懸濁液又は溶液中の放出速度制御膜コーティングポリマーの量は、1~10%(w/w)、好ましくは3~8%(w/w)、より好ましくは3.5~7.5%(w/w)の範囲であり得る。放出速度制御膜コーティング噴霧懸濁液又は溶液は、有利には噴霧プロセス中に撹拌される。この最後の工程を実施するためのパラメータ設定は、これまでのコーティングプロセスで使用されるものと本質的に同様である。
【0087】
全てのコーティングプロセスは、好ましくは、例えば窒素の不活性雰囲気下で行われる。コーティング装置は、好ましくは接地され、効率的な凝縮システムを含む適切な溶媒回収システムを備えるべきである。
【0088】
放出速度制御膜コーティングの適用後の有機溶液由来のペレット中の残留溶媒レベルを減少させるために、ペレットは、好適な乾燥装置で便利に乾燥させることができる。乾燥後、粒子をふるいにかけることができる。
【0089】
上記医薬製剤又は剤形は、潰瘍、手指潰瘍、糖尿病性壊疽、糖尿病足潰瘍、褥瘡(床ずれ)、高血圧症、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、フォンタン病及びフォンタン病に関連する肺高血圧、サルコイドーシス及びサルコイドーシスに関連する肺高血圧、末梢循環障害(例えば、慢性動脈閉塞、間欠性跛行、末梢塞栓症、振動症候群、レイノー病)、結合組織疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織疾患、血管炎症候群)、経皮経管冠動脈形成術(percutaneous transluminal coronary angioplasty、PTCA)後の再閉塞/再狭窄、動脈硬化、血栓症(例えば、急性期脳血栓症、肺塞栓症)、一過性脳虚血発作(transient ischemic attack、TIA)、糖尿病性神経障害、虚血性障害(例えば、脳梗塞、心筋梗塞)、狭心症(例えば、安定狭心症、不安定狭心症)、任意のステージの糸球体腎炎及び糖尿病性腎症を含む慢性腎疾患、アレルギー、気管支喘息、アテレクトミー及びステント移植などの冠動脈インターベンション後の再狭窄、透析による血小板減少症、臓器又は組織の線維症が関与する疾患[例えば、尿細管間質性腎炎などの腎疾患)、呼吸器疾患(例えば、間質性肺炎/(特発性)肺線維症、慢性閉塞性肺疾患)、消化性疾患(例えば、肝硬変、ウイルス性肝炎、慢性膵炎、及びスキルス胃癌)、心血管疾患(例えば、心筋線維症)、骨及び関節疾患(例えば、骨髄線維症及び関節リウマチ)、皮膚疾患(例えば、手術後の瘢痕、熱傷による瘢痕、ケロイド、及び肥厚性瘢痕)、産科疾患(例えば、子宮筋腫)、泌尿器疾患(例えば、前立腺肥大)、他の疾患(例えば、アルツハイマー病、硬化性腹膜炎、I型糖尿病、及び手術後臓器癒着)]、勃起機能不全(例えば、糖尿病性勃起機能不全、心因性勃起機能不全、精神病性勃起機能不全、慢性腎不全に関連する勃起機能不全、前立腺を除去するための骨盤内手術後の勃起機能不全、並びに老化及び動脈硬化に関連する血管性勃起機能不全)、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸結核、虚血性大腸炎、及びベーチェット病に関連する腸潰瘍)、胃炎、胃潰瘍、虚血性眼科障害(例えば、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、虚血性視神経障害)、突発性難聴、無血管性骨壊死、非ステロイド性抗炎症剤の投与によって引き起こされる腸損傷、並びに腰部脊柱管狭窄症に関連する症状の予防及び/又は治療での使用に好適である。
【0090】
好ましくは、当該医薬製剤又は剤形は、潰瘍、手指潰瘍、糖尿病性壊疽、糖尿病性足潰瘍、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、フォンタン病及びフォンタン病に関連する肺高血圧、サルコイドーシス及びサルコイドーシスに関連する肺高血圧、末梢循環障害、結合組織疾
患、任意のステージの糸球体腎炎及び糖尿病性腎症を含む慢性腎疾患、器官若しくは組織の線維症が関与する疾患、又は呼吸器疾患の予防又は治療に使用され得る。
【0091】
好ましくは、当該医薬製剤又は剤形は、肺動脈高血圧症(PAH)の予防又は治療に使用され得る。
【0092】
上記実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物は、薬剤の製造に、特に上記適応症を予防及び/又は治療するための薬剤に使用され得ることを理解されたい。
【0093】
本発明はまた、上記疾患を予防及び/又は治療するための方法に関することを更に理解されたい。
【0094】
例えば、本発明は、潰瘍、手指潰瘍、糖尿病性壊疽、糖尿病性足潰瘍、肺高血圧症、肺動脈高血圧症、フォンタン病及びフォンタン病に関連する肺高血圧、サルコイドーシス及びサルコイドーシスに関連する肺高血圧、末梢循環障害、結合組織疾患、任意のステージの糸球体腎炎及び糖尿病性腎症を含む慢性腎疾患、器官若しくは組織の線維症が関与する疾患、又は呼吸器疾患を予防及び/又は治療するための方法であって、上記医薬製剤又は剤形を、それを必要とするヒト患者に投与することを含む、方法にも関する。
【実施例
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1:有効活性成分である遊離形態のセレキシパグを有する徐放ビーズ(SRビーズ)を含有するカプセルの生成プロセス
SRビーズを含有するカプセルの製造プロセスは、以下の工程で行われる。
1.コーティング混合物1(APIコーティング)の調製:
a.塩化メチレン及びメタノールを適切な容器に移す。
b.塩化メチレン及びメタノールを含有する溶媒混合物に、ヒプロメロース2910
5mPa.s及びセレキシパグを添加する。
c.両方の成分が溶解するまで撹拌する。
2.ビーズコーティングプロセス1(層1)
a.微結晶セルロース球体を適切な流動床コーターに移す。
b.コーティング混合物(1)を微結晶セルロース球体上に噴霧する。
c.噴霧後、得られたビーズを装置内で乾燥させる。
d.適切な容器内にビーズを回収する。
3.コーティング混合物2(SR層)の調製:
a.塩化メチレン、エタノール(96%)及びセバシン酸ジブチルを適切な容器に移す。
b.塩化メチレン及びエタノールを含有する溶媒混合物に、エチルセルロース20mPa.s、及びヒプロメロース2910 5mPa.sを添加する。
c.均質な混合物が得られるまで撹拌する。
4.ビーズコーティングプロセス2(層2)
a.工程2から得られたビーズを適切な流動床コーターに移す。
b.コーティング混合物(2)をビーズ上に噴霧する。
c.噴霧後、得られたビーズを装置内で乾燥させる。
d.適切な容器内にビーズを回収する。
5.SRビーズのカプセル化:
a.適切なカプセル充填剤を使用して、適切な量のSRコーティングされたビーズを硬質ゼラチンカプセル(サイズ3、赤色のキャップ及び本体)に充填する。
b.カプセルを閉じる。
c.充填されたカプセルにおいて100%の重量チェックを実施する。
d.充填されたカプセルを適切なバッグ内に回収する。
【0097】
実施例2:バルクビーズの総理論重量の30%(w/w)の重量増加に適用した、75/25比のエチルセルロース/ヒプロメロースポリマー混合物を有する持続放出ビーズ及びカプセル。400マイクログラムのセレキシパグを含む経口カプセル。
【0098】
上記のように、「体重増加」は、薬物コアの重量に基づく放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)+ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量に関する。
【0099】
【表2】
【0100】
実施例3:バルクビーズの総理論重量の20%(w/w)の重量増加に適用した、75/25比のエチルセルロース/ヒプロメロースポリマー混合物を有する持続放出ビーズ及びカプセル。400マイクログラムのセレキシパグを含む経口カプセル。
【0101】
【表3】
【0102】
実施例4:バルクビーズの総理論重量の10%(w/w)の重量増加に適用した、75/25比のエチルセルロース/ヒプロメロースポリマー混合物を有する持続放出ビーズ及びカプセル。400マイクログラムのセレキシパグを含む経口カプセル。
【0103】
【表4】
【0104】
実施例5:バルクビーズの総理論重量の10%(w/w)の重量増加に適用した、90/10比のエチルセルロース/ヒプロメロースポリマー混合物を有する持続放出ビーズ及びカプセル。400マイクログラムのセレキシパグ代謝物を含む経口カプセル。
【0105】
【表5】
【0106】
実施例6:
図1は、3つの異なる放出速度制御膜を有する医薬製剤を含有する400マイクログラムのセレキシパグカプセルのインビトロ溶出試験のグラフを示す。溶出試験は、パドル装置を37℃で使用し、0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液pH6.8中で実施した。医薬製剤の粒子によって、放出速度制御膜の厚さが異なっていた。全て薬物コアの重量に基づいて、第1の実施例では、放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)+ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量は、10重量%(10%コーティング重量増加)であり、第2の実施例では、放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)+ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量は、20重量%(20%コーティング重量増加)であり、第3の実施例では、放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)+ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量は、30重量%(30%コーティング重量増加)であった。
【0107】
図2は、放出速度制御膜を有する医薬製剤を含有する400マイクログラムのセレキシパグ代謝物カプセルのインビトロ溶出試験のグラフを示す。溶出試験は、パドル装置を37℃で使用し、0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液pH6.8中で実施した。医薬製剤の粒子では、放出速度制御膜コーティング中のエチルセルロース(EC)+ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の重量は、薬物コアの重量に基づいて10重量%(10%コーティング重量増加)であった。
【0108】
実施例6:健康な男性対象におけるセレキシパグ持続放出の試験は実施中である。
この試験は、1日1回の投与レジメンを支持するセレキシパグ及びその代謝物ACT-333679のPKプロファイルを提供する経口SR製剤を特定及び選択するために行われるパイロット製剤スクリーニング試験である。
【0109】
これを達成するために、SR製剤は、12時間おいて2回投与されるIR製剤に相当す
る1日用量と同等の1日曝露量(濃度-時間曲線下面積[AUC])をもたらさなければならず、一方で、SR製剤の最大血漿中濃度(Cmax)は、IR製剤のCmaxに近いか又はそれ以下でなくてはならず、SR製剤の投与後24時間の血漿濃度(C24h)は、IR製剤のC24hに近いか又はそれ以上でなくてはならない。薬物動態パラメータ(PP)は、それらの異なる力価を考慮してセレキシパグ及びACT333679を組み合わせ(PPcombined)、SR及びIR製剤の主要比較に使用する。
【0110】
高速(F)、中速(M)、及び低速(S)放出プロファイルとして設計された3つの異なる放出プロファイルを試験する。試験されるのは、本発明に記載されるような持続放出ペレットSRepである。
【0111】
1日1回の投与レジメンを支持するセレキシパグのSR剤形の開発により、患者に対して、セレキシパグ治療に対する改善された利便性を提供すると予想される。PAHは、重大な罹患率及び死亡率を有する慢性進行性疾患であるため、臨床成績の観点から小さな改善であっても、入院率及び疾患進行度を低下させることによって、個々の患者及び社会の両方にとって有益であり得る。
【0112】
主要目的は、健康な男性対象においてセレキシパグIR錠剤と比較する、3つの異なる放出プロファイルを有する400マイクログラムの用量のセレキシパグのSRepの単回経口投与後のセレキシパグ及びACT-333679のPKを評価することである。
【0113】
副次的目的は、健康な男性対象においてセレキシパグIR錠剤と比較する、3つの異なる放出プロファイルを有する400マイクログラムの用量のSRepセレキシパグ製剤の単回経口投与の安全性及び忍容性を評価することである。
【0114】
各対象について合計4回の投与時通院があり、3つの異なる放出プロファイルを有するセレキシパグSR処方が投与される3回の投与時通院と、並びにセレキシパグIRが投与される1回の通院がある。表4に、処置方法を更に詳細に記載する。治験薬は、各処置期間の1日目に投与される。個々の対象ごとの処置期間は、少なくとも7日間のウォッシュアウト期間によって分けられる。ウォッシュアウト期間は、1つの処置期間における治験薬投与後に開始し、次の処置期間における治験薬投与で終了する。
【0115】
【表6】
IR=即時放出、SRep=カプセル化持続放出ペレット、F=高速放出プロファイル、M=中速放出プロファイル、S=低速放出プロファイル
【0116】
12人の健康な対象をランダムに割り当て、4回の連続する処置期間中に4回のセレキシパグ経口投与(非盲検)を受ける。処置期間1の1日目の投与前に、対象を、1:1:1:1の比率で、4つの処置順のうちの1つに対してランダムに割り当てる(表5参照)。
【0117】
【表7】
IR=即時放出、F=高速放出プロファイル、M=中速放出プロファイル、S=低速放出プロファイル
【0118】
治験薬は、240mLの非炭酸水を用いて、少なくとも10時間の一晩絶食後の絶食条件下で、各処置期間1日目の朝、8:00~11:00AMに経口投与される。
【0119】
IR製剤のみの処置では、セレキシパグIR200μgの2回の経口用量が12時間おいて与えられる。上記で指定されたように、1日目の朝に最初の用量を与え、2回目の用量を12時間後に与える。セレキシパグIRの夕方の用量は、240mLの水で投与される。
【0120】
セレキシパグ及びACT333679の血漿濃度を決定するための血液試料は、時間及び事象スケジュールに示される時点に採取する。
【0121】
SR製剤の各個々の投与後に合計17個のPK試料を採取するが、IR製剤の2回の連続投与(12時間おいて投与)を完全にカバーするために、合計26個のPK試料が必要である。
図1
図2
【国際調査報告】