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特表2023-512285遠心力で促進する流体系、装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】遠心力で促進する流体系、装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230316BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12M1/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546644
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 GB2021050221
(87)【国際公開番号】W WO2021152333
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】2001399.1
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522303685
【氏名又は名称】オーディエックス・イノヴェーションズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ODX INNOVATIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】SOLASTA HOUSE, 8 INVERNESS CAMPUS, INVERNESS SCOTLAND IV2 5NA, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】マレー,セオイルセ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセ・ファン・レンズバーグ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】イザード,ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】グリムウェイド,スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング,ピアーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャーンサイド,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】マレチャ,マイク
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB02
4B029FA03
4B029FA11
(57)【要約】
遠心力下で流体の動きを引き起こすように構成された流体装置(1)は、装置の中心回転軸(X)周りの中心領域と、中心領域から径方向外側に広がる周辺領域とを備えている。装置の中心領域内に設けられた流体リザーバ(4)は、流体サンプルを収容し、および少なくとも一つの流体系(6)と連通し、流体系は、流体リザーバ(4)から装置の周辺領域内へ径方向外側に延びている。各流体系(6)は、分析のための流体サンプルの一部を保持するように構成された流体分析チャンバ(12)を備えている。流路構成(26)は、流体リザーバ(4)と流体分析チャンバ(12)との間の流体的連通を可能にするように構成され、流路構成を介した流体サンプルの動きは、中心回転軸(X)周りの装置の回転運動から生じる遠心力によって引き起こされる。バルブ機構(8)は、流体リザーバ(4)と分析チャンバ(12)との間に配置され、および装置の回転の速度が所定値よりも小さい場合には、流路構成(26)の一部を介した流体フローを阻止するように構成されている。装置の切欠き部(24)は、流体装置(1)を化学分析装置内に正しく配置するのに役に立つ。また、流体装置の回転運動を引き起こすための装置と、流体装置内で流体サンプルを移動させるための方法も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力下で流体の動きを引き起こすように構成された流体装置であって、該流体装置は、
前記装置の中心回転軸周りの中心領域、および該中心領域から径方向外側に広がる周辺領域と、
前記装置の前記中心領域内に設けられた、流体サンプルを収容するための流体リザーバであって、該流体リザーバは、少なくとも一つの流体系と連通し、該少なくとも一つの流体系は、該流体リザーバから前記装置の前記周辺領域内へ径方向外側に延びている流体リザーバとを備え、該流体系または各流体系は、
分析のための流体サンプルの一部を保持するように構成された流体分析チャンバと、
前記流体リザーバと前記流体分析チャンバとの間の流体的連通を可能にするように構成された流路構成であって、該流路構成を介した前記流体サンプルの動きは、前記中心回転軸周りの前記装置の回転運動から生じる遠心力によって引き起こされる流路構成と、
前記装置の回転の速度が第一の所定値よりも小さい場合には、前記流路構成の一部を介した流体フローを阻止するように構成された第一のバルブ機構であって、前記流体リザーバと前記分析チャンバとの間に配置される第一のバルブ機構と、
を備える、流体装置。
【請求項2】
前記流路構成は、
前記流体サンプルが前記分析チャンバに入る前に、不必要な粒子を該流体サンプルから除去するように構成された分離チャンバと、
前記流体リザーバから前記分離チャンバへ径方向外側に延び、および前記分離チャンバの径方向外側領域内の壁部を介して該分離チャンバと連通する第一の流路と、
を備える、請求項1に記載の流体装置。
【請求項3】
前記分離チャンバは、該分離チャンバのベースと、該分離チャンバの上部との間の高さを定義する深さ(d)を有し、前記第一の流路は、該分離チャンバの該ベースにおいて、または、該ベースの近傍において該分離チャンバと連通するように配置される、請求項2に記載の流体装置。
【請求項4】
前記流路構成は、
前記分離チャンバと前記流体分析チャンバとの間の流体的連通のために構成された第二の流路を備え、
前記第一のバルブ機構は、前記分離チャンバと前記分析チャンバとの間の前記第二の流路のフロー経路内に配設される、請求項2または請求項3に記載の流体装置。
【請求項5】
前記第二の流路は、実質的に逆平行の方向での流体フローを可能にするように構成された一対の流路アームを備え、および該第一のバルブ機構は、該二つの流路アームの間のフロー経路内に配設される、請求項4に記載の流体装置。
【請求項6】
前記第二の流路は、前記分離チャンバと前記第一のバルブ機構との間の流体的連通のための第一の流路アームを備え、該第一の流路アームは、該分離チャンバから該第一のバルブ機構へ径方向内側に延び、および該分離チャンバの径方向内側の領域内の壁部を介して該分離チャンバと連通している、請求項4または請求項5に記載の流体装置。
【請求項7】
前記第二の流路は、前記第一のバルブ機構と前記分析チャンバとの間の流体的連通のための第二の流路アームを備え、該第二の流路アームは、該第一のバルブ機構から該分析チャンバへ径方向外側に延びている、請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の流体装置。
【請求項8】
前記流路アームの内部角部は、使用時に、流体に作用する遠心力と逆の方向の前記流路に沿った該流体のウィッキングを低減するように丸みがある、請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の流体装置。
【請求項9】
前記第一のバルブ機構は、前記分離チャンバおよび/または前記流体分析チャンバの径方向内側に配設される、請求項1乃至8のいずれかに記載の流体装置。
【請求項10】
前記第一のバルブ機構は、所定量の気体を収容するチャンバを画定し、該チャンバは、x軸、y軸およびz軸において最大寸法を有し、該x軸は径方向を定義し、該y軸は、径方向面内で該x軸に直角な方向を定義し、および該z軸は、回転の軸に平行な、該x軸および該y軸の両方に直角な方向を定義し、および前記第一のバルブ機構は、該z軸において最大寸法を有する、請求項1乃至9のいずれかに記載の流体装置。
【請求項11】
前記第一のバルブ機構は、前記流体リザーバの周囲において周方向におよび該流体リザーバに隣接して配置される、請求項1乃至10のいずれかに記載の流体装置。
【請求項12】
前記流体分析チャンバは、前記分離チャンバの径方向外側に配置され、好ましくは、該流体分析チャンバは、前記流体系の径方向の最も外側の要素である、請求項2乃至請求項11のいずれかに記載の流体装置。
【請求項13】
前記流体分析チャンバは、前記装置の軸方向面において、実質的に円形の断面を有する円筒形である、請求項1乃至12のいずれかに記載の流体装置。
【請求項14】
前記流体系のうちの一つ以上は、それらのある領域に、前記流体サンプル中での溶解に適した形態での少なくとも一つの薬物を含む、請求項1乃至13のいずれかに記載の流体装置。
【請求項15】
前記流路構成は、第三の流路をさらに備え、該第三の流路は、前記流体分析チャンバと、第二のバルブ機構との間に延びるように配置され、および該第二のバルブ機構は、該分析チャンバの径方向内側に配設される、請求項1乃至14のいずれかに記載の流体装置。
【請求項16】
少なくとも一つの流体系は、前記流体サンプルに対してアッセイされる少なくとも一つの薬物を含み、該薬物は、前記流体分析チャンバ内に、前記第一のバルブ機構と該流体分析チャンバとの間に配設された第一の薬物保持チャンバ内に、または、前記第二のバルブ機構と該流体分析チャンバとの間に配設された第二の薬物保持チャンバ内に供給される、請求項1乃至15のいずれかに記載の流体装置。
【請求項17】
抗生物質のアモキシシリンを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のアモキシシリン/クラブラン酸の組合せを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のセファレキシンを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のシプロフロキサシンを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のエルタペネムを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のホスホマイシンを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のレボフロキサシンを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のメシリナムを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のニトロフラントインを含む少なくとも一つの流体系と、
抗生物質のトリメトプリムを含む少なくとも一つの流体系と、および/または
抗生物質のトリメトプリム/スルファメトキサゾールの組合せを含む少なくとも一つの流体系と、および必要に応じて、
抗生物質を含まない少なくとも一つの流体系および/または有効量の殺菌剤を含む少なくとも一つの流体系と、
を備える、請求項14乃至請求項16のいずれかに記載の流体装置。
【請求項18】
複数の流体系は、前記抗生物質または抗生物質の組合せのうちの一つを含み、および複数の微小系の各微小系は、使用時に、所定の異なる濃度の該抗生物質が、該複数の流体系のそれぞれの各分析チャンバ内の流体サンプル中に生成されるように、異なる所定量の該抗生物質または抗生物質の組合せを含む、請求項17に記載の流体装置。
【請求項19】
前記流体サンプルと混合された場合に、該流体サンプル中に潜在的に存在する細菌の成長を促進するように構成された細菌成長培地をさらに備え、該成長培地は、前記流体リザーバ内に、または、該流体リザーバと流体的に連通している成長培地コンパートメント内に設けられる、請求項1乃至18のいずれかに記載の流体装置。
【請求項20】
前記成長培地は、フィルタ要素または膜を介して前記流体リザーバと流体的に連通している成長培地コンパートメント内に設けられる、請求項19に記載の流体装置。
【請求項21】
前記流体リザーバおよび前記少なくとも一つの流体系に移送される流体サンプルを収容するサンプル収容ウェルをさらに備える、請求項19または請求項20に記載の流体装置。
【請求項22】
前記流体装置の前記中心領域は、流体サンプルを収容するサンプル収容ウェルを備え、および該サンプル収容ウェルは、成長培地と、使用時に、流体サンプルと成長培地の混合物が前記流体リザーバに入る前に該混合物をろ過するように構成されたフィルタ要素とを含む成長培地コンパートメントを介して該流体リザーバと連通している、請求項1乃至21のいずれかに記載の流体装置。
【請求項23】
前記サンプル収容ウェルを囲むためのキャップをさらに備え、および該サンプル収容ウェルは、前記装置の前記中心領域の直立した首部内に形成され、該首部には、該キャップの相補的な固定特徴部と係合する固定特徴部が設けられる、請求項21または請求項22に記載の流体装置。
【請求項24】
前記キャップは、上部壁と、該上部壁から下方に突出した外側環状周壁とを有し、該外側周壁の内側面には、前記流体装置の前記首部の相補的なねじ山と螺合するねじ山が設けられる、請求項23に記載の流体装置。
【請求項25】
前記キャップは、該キャップの前記上部壁から下方に突出し、および前記外側環状周壁の径方向内側に配置された円筒形のプランジャ要素をさらに備え、該プランジャ要素の外側環状面は、前記キャップが前記流体装置の前記首部に係合されたときに、所定量の流体を前記サンプル収容ウェルから移動させるために、該サンプル収容ウェルの内側環状面と一致するように構成される、請求項23または請求項24に記載の流体装置。
【請求項26】
破断可能なシール要素が、前記サンプル収容ウェルと前記成長培地コンパートメントとの間に設けられる、請求項21乃至請求項25のいずれかの請求項に記載の流体装置。
【請求項27】
径方向内側に配置され、および前記キャップから下方に突出し、および(i)前記サンプル収容ウェルと前記成長培地コンパートメントとの間の流体的連通を可能にするために、該サンプル収容ウェルと該成長培地コンパートメントとの間の前記シール要素を貫通するように、および/または(ii)流体サンプルと該成長培地を撹拌しおよび/または混合して、使用時の該成長培地の流体サンプルへの溶解を改善するように構成された一つ以上の突出部をさらに備える、請求項23乃至請求項25のいずれかに従属する場合の請求項26に記載の流体装置。
【請求項28】
前記装置の前記首部と前記キャップとの間で係合可能であり、およびカラー要素が定位置にある状態で、前記一つ以上の突出部が前記シール要素を貫通できないように、該キャップと該首部との係合の深さを制限するように構成された該カラー要素をさらに備える、請求項27に記載の流体装置。
【請求項29】
流体サンプルを前記サンプル収容ウェルの上部に案内するように構成された漏斗要素を備える、請求項21乃至請求項28のいずれかに記載の流体装置。
【請求項30】
前記首部は、外側環状壁と内側環状壁とで形成され、該内側環状壁は、前記サンプル収容ウェルの少なくとも一部を画定し、および該外側環状壁には、前記キャップの前記相補的な固定特徴部との係合のための固定特徴部が設けられる、請求項23乃至請求項29のいずれかに記載の流体装置。
【請求項31】
前記首部の前記外側環状壁と前記内側環状壁の間の空間は、環状チャンバを画定し、または、複数の放射状に離間した壁部または隆条部によって、複数の放射状にセグメント化されたチャンバに分割される、請求項30に記載の流体装置。
【請求項32】
前記環状チャンバまたは前記放射状にセグメント化されたチャンバのうちの少なくとも一つはオーバーフローチャンバであり、該オーバーフローチャンバは、少なくとも一つのオーバーフロー開口を介して前記サンプル収容ウェルと流体的に連通し、該オーバーフロー開口は、該サンプル収容ウェル内の前記流体サンプルが、該少なくとも一つのオーバーフロー開口(の高さ)に達する前に、所定の最大量の流体サンプルを、該サンプル収容ウェル内に収容できるように構成される、請求項31に記載の流体装置。
【請求項33】
前記放射状にセグメント化されたチャンバのうちの少なくとも一つはガス放出チャンバであり、該ガス放出チャンバは、少なくとも一つの下方ガス放出開口を介して前記流体リザーバと流体的に連通し、該下方ガス放出開口は、該ガス放出チャンバの下方領域と連通し、および該流体リザーバが前記サンプル収容ウェルからの流体サンプルで満たされる際に、該流体リザーバ内のガスを、該少なくとも一つのガス放出チャンバに向かって上方へ排出することができるように構成される、請求項31または請求項32に記載の流体装置。
【請求項34】
一つ以上のオリフィスが、前記キャップの上部を通って設けられ、好ましくは、該一つ以上のオリフィスは、ガス圧力が、前記装置の内部と大気の間で均等化することを可能にするために、疎水性フィルタまたは膜で覆われる、請求項23乃至請求項33のいずれかに記載の流体装置。
【請求項35】
本体およびベースを備え、前記流体リザーバおよび前記少なくとも一つの流体系は、前記装置の該本体内に画定され、および該ベースは、該流体リザーバの下面および流体系を画定するように該本体と接続可能である、請求項1乃至34のいずれかに記載の流体装置。
【請求項36】
前記ベースは、接着剤により、または、ヒートシーリングにより、前記装置の前記本体に取付けられるように構成されたフィルムである、請求項35に記載の流体装置。
【請求項37】
複数の抗生物質を含む抗生物質感受性パネルを備え、好ましくは、該複数の抗生物質は、表1、表2または表3に開示されている該抗生物質の量のうちの一つ以上から選択される量になっている、請求項1乃至36のいずれかに記載の流体装置。
【請求項38】
表3で定義されているCLSI基準および/またはEUCAST基準に準拠した抗生物質感受性パネルを備える、請求項1乃至37のいずれかに記載の流体装置。
【請求項39】
請求項1乃至38のいずれかに記載の流体装置と、
前記流体装置の前記回転軸周りの該流体装置の回転運動を駆動する駆動機構と、
前記駆動機構に、前記流体リザーバから前記分析チャンバまたは各分析チャンバへの前記流体サンプルのフローを制御させるための機械可読コードを実行する制御部と、
を備える装置。
【請求項40】
光学装置をさらに備え、該光学装置は、
光の入射ビームを放射して、前記流体分析チャンバまたは各流体分析チャンバ内の前記流体サンプルに照射するように構成された光源と、
前記流体分析チャンバまたは各流体分析チャンバから出る散乱光を検出するように構成された光検出器と、
を備える、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
容器に係合するように構成され、および前記または各流体分析チャンバを、前記光学装置の前記光源からの光の前記入射ビームと周期的に一致させおよび一致させないように構成されたサンプル容器カルーセルをさらに備える、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記検出した散乱光を分析して、前記流体分析チャンバまたは各流体分析チャンバに収容されている前記流体サンプルの一つ以上の特性を判断するように構成されている少なくとも一つのプロセッサをさらに備える、請求項40または請求項41に記載の装置。
【請求項43】
判断される前記特性は、細菌の相対量と、細菌の相対濃度と、時間の関数としての細菌の該相対量の変化と、時間の関数としての細菌の該相対濃度の変化と、細菌の定性的量と、細菌の定性的濃度と、細菌の実際の量と、時間の関数としての細菌の該相対量の変化と、時間の関数としての前記分析チャンバ内の前記流体サンプル中に存在する細菌の実際の濃度と、から選択される、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
流体リザーバから、流体装置内に形成された流体系を介して流体サンプルを移動させる方法であって、該流体系は、流体分析チャンバと、該流体リザーバと該流体分析チャンバとの流体的連通を可能にするように構成された流路構成とを備え、該方法が、
前記流体リザーバから前記流路構成の第一の部分内へ前記流体サンプルのフローを押し進めるのに十分な第一の遠心力を生成するように、駆動機構により、前記流体装置を回転軸周りに、第一の回転速度でおよび第一の時間にわたって、回転させることと、
前記流路構成の前記第一の部分から該流路構成の第二の部分へ前進する前記流体サンプルのフローを、バルブ機構によって、前記第一の遠心力と反対側に前記バルブ機構が及ぼす圧力を介して、防ぐことと、
前記バルブ機構の前記圧力に打ち勝って、前記流体サンプルのフローを、前記流路構成の前記第二の部分内へ、およびそれによって前記流体分析チャンバ内へ押し進めるのに十分な第二の遠心力を生成するように、前記駆動機構により、前記流体装置を前記回転軸周りに、第二のより大きな回転速度でおよび第二の時間にわたって、回転させることと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心力で促進する流体系を備える容器および装置に関し、特に、流体サンプルの一部を配分するためのこのような容器および装置の使い方と、サンプル特性に関する後の分析とに関する。
【背景技術】
【0002】
流体系は、流路およびチャンバまたはリザーバを備え、およびミクロンメートルからミリメートル範囲の寸法を有する、相互接続された閉じたネットワークまたは構造である。
【0003】
該流体系中の流路およびチャンバから成る該相互接続されたネットワークを介した流体のフローは、中に該流体系が形成されている該装置またはプラットフォームの回転を介して生成される遠心力/向心力を利用して押し進めることができまたは動かすことができる。
【0004】
回転を介した流体系による流体の遠心力で動かすまたは押し進めるフローという概念は、さまざまな装置に用いられており、また、幅広い技術分野にわたって適用可能である。化学的および/または生物学的なアッセイ技術に関連してこのような概念を用いるいくつかの異なる装置があり、このような場合、該流体の特性の分析は、一般的には、このような動きの最中または後のいずれかにおいて実行される。
【0005】
本発明の装置、システムおよび方法が考案されてきたのはこのような背景においてである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様によれば、遠心力下で流体の動きを引き起こすように構成された流体装置が提供され、該流体装置は、前記装置の中心回転軸周りの中心領域および該中心領域から径方向外側に広がる周辺領域と、前記装置の前記中心領域内に設けられた、流体サンプルを収容するための流体リザーバであって、該流体リザーバは、少なくとも一つの流体系と連通し、該少なくとも一つの流体系は、該流体リザーバから前記装置の前記周辺領域内へ径方向外側に延びている流体リザーバとを備え、該流体系または各流体系は、分析のための流体サンプルの一部を保持するように構成された流体分析チャンバと、前記流体リザーバと前記流体分析チャンバとの間の流体的連通を可能にするように構成された流路構成であって、該流路構成を介した前記流体サンプルの動きは、前記中心回転軸周りの前記装置の回転運動から生じる遠心力によって引き起こされる流路構成と、前記装置の回転の速度が第一の所定値よりも小さい場合には、前記流路構成の一部を介した流体フローを阻止するように構成された第一のバルブ機構であって、この場合、該第一のバルブ機構は、前記流体リザーバと前記分析チャンバとの間に配置される第一のバルブ機構とを備える。どの態様および実施形態においても、該バルブ機構は、有利には、空圧ゲートまたは「空気ばね」とすることができる。
【0007】
適切には、このような態様および実施形態において、前記流路構成は、前記流体サンプルが前記分析チャンバに入る前に、不必要な粒子を該流体サンプルから除去するように構成された分離チャンバと、前記流体リザーバから前記分離チャンバへ径方向外側に延びている第一の流路とを備えている。好ましくは、この場合、該第一の流路構成は、前記分離チャンバの径方向外側領域内の壁部を介して該分離チャンバと連通している。
【0008】
いくつかの実施形態において、該第一の流路は、該少なくとも一つの流体系の径方向の最も外側の部分まで延びている。他の実施形態では、該分離チャンバは、該流体系の径方向の最も外側の箇所を包囲するように形成されている。他の特に適切な実施形態においては、該流体分析チャンバは、該分離チャンバの径方向外側に配置される。最も適切には、該流体分析チャンバは、該流体系の径方向の最も外側の要素である。実施形態において、該流体分析チャンバは、該装置の軸方向面に実質的に円形の断面を有する円筒形である。
【0009】
該分離チャンバは、該第一の流路のためのインレットの径方向外側に延びているポケット、「先端(toe)」または角部を画定するように構成/形成することができる。有益には、このような構成において、入って来る非清澄化流体は、該分離チャンバの該径方向の最も外側の部分に蓄えられた/集められたどのような沈殿物も乱さない。いくつかの実施形態において、該分離チャンバは楔形であり、この場合、該分離チャンバの比較的広い領域は、該分離チャンバの比較的狭い領域の径方向外側に向けられている。このことは、沈殿物を該第一の流路の該インレットからさらに沈殿させるのをさらに補助することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、該分離チャンバは、該分離チャンバのベースと該分離チャンバの上部との間の高さを定義する深さ(d)を有し、および該第一の流路は、該分離チャンバの該ベースにおいて、または該ベースの近傍において、該分離チャンバと連通するように配置され、その結果、該分離チャンバには、該ベースから上方へ流体サンプルが充填される。
【0011】
適切には、該流路構成は、前記分離チャンバと前記流体分析チャンバとの間の流体的連通のために構成された第二の流路を備え、この場合、前記第一のバルブ機構は、前記分離チャンバと前記分析チャンバとの間の前記第二の流路のフロー経路内に配設される。このような実施形態において、該第二の流路は、好適には、実質的に逆平行方向での流体フローを可能にするように構成された一対の流路アームを備え(例えば、該第一および第二の流路アームはともに、概して径方向に延びるように配置することができる)、この場合、該第一のバルブ機構は、該二つの流路アームの間の該フロー経路内に配設される。したがって、該第二の流路は、前記分離チャンバと前記第一のバルブ機構との間の流体的連通のための第一の流路アームを備えてもよく、該第一の流路アームは、該分離チャンバから該第一のバルブ機構へ径方向内側に延び、および該分離チャンバの径方向内側の領域内の壁部を介して該分離チャンバと連通している。そのため、有利には、該第一の流路は、該第二の流路の該第一の流路アームの径方向外側に該分離チャンバと連通し、その結果、該分離チャンバに入る非清澄化流体は、該バルブ機構の方向において該分離チャンバから出る前に清澄化することができる。
【0012】
有益には、堰部(または、段部)が、該分離チャンバと、該第二の流路の入口との間に、または、該分離チャンバと、該第二の流路の入口との接続部に配設される。該堰部は、清澄化が行われる間、該流体サンプルを一定期間、該分離チャンバ内で保持することにより、該分離チャンバによってもたらされる分離/清澄化機能を向上させることができる。また、堰部は、該流体中の粒子が、該第二の流路内を自由に通過することを阻止することもできる。該堰部または段部の高さは、選好および所望の機能性により段差を付けてもよい。
【0013】
さらに、実施形態において、該第二の流路は、該第一のバルブ機構と該分析チャンバとの間の流体的連通のための第二の流路アームを備え、該第二の流路アームは、該第一のバルブ機構から該分析チャンバへ径方向外側に延びている。
【0014】
有益には、これらの態様および実施形態によれば、該第一のバルブ機構は、該分離チャンバおよび/または該流体分析チャンバの径方向内側に配設される。
【0015】
本開示の実施形態において、前記第一のバルブ機構は、所定量の気体を収容するチャンバを画定し、該チャンバは、x軸、y軸およびz軸において寸法を有し、該x軸は径方向を定義し、該y軸は、径方向面内で該x軸に直角な方向を定義し、および該z軸は、回転の軸に平行な、該x軸および該y軸の両方に直角な方向を定義する。いくつかの好適な実施形態において、該前記第一のバルブ機構は、該z軸において最大寸法を有する(すなわち、該z軸方向における該チャンバの該最大寸法は、該x軸寸法および該y軸寸法の両方における該最大寸法よりも長い)。該バルブ機構の該最大寸法が、該回転の軸の方向にあるように構成されていることにより、(例えば、該第一のバルブ機構の該最大x軸寸法の低減により)該流体装置の該径方向寸法を有益に低減することができ、および/または該流体装置は、好ましくは、(例えば、該第一のバルブ機構の該最大y軸寸法の低減により)該装置の周囲において周方向に配置されるより多くの流体系を備えることができる可能性がある。有益には、該第一のバルブ機構は、該流体リザーバの周囲において周方向に、該流体リザーバの径方向外側におよび該流体リザーバに隣接して配置される。典型的には、該第一のバルブ機構は、約150~600μlの範囲の容積を有するチャンバを画定している。このような任意の実施形態において、該分析チャンバの該容積は、約30~150μlの範囲とすることができる。いくつかのこのような実施形態において、沈殿チャンバの該容積は、約60~300μlの範囲とすることができる。したがって、該開示の態様および実施形態によれば、該沈殿チャンバの該容積は、適切には、該分析チャンバの該容積の約二倍であり、また、該空気ばねの該容積は、適切には、該沈殿チャンバの該容積の約二倍~四倍の範囲である。有益には、本実施形態に関して、該空気ばね/バルブ機構の該容積は、約150~600μlの範囲とすることができ、および/または該分析チャンバの該容積は、約30~150μlの範囲とすることができ、および/または該沈殿チャンバの該容積は、約60~300μlの範囲とすることができる。
【0016】
特に、一つ以上の抗生物質に対する細菌感受性を測定する際の利用の場合、該流体系のうちの一つ以上は、それらの領域内に、該流体サンプル中での溶解に適した形態で少なくとも一つの抗生物質を含む。有益には、該抗生物質は乾燥形態になっている。実施形態において、該抗生物質は、乾燥され、および該装置の該分析チャンバに可逆的に付着する。いくつかの実施形態においては、抗生物質以外の薬物または他の添加物/化学物質を、流体サンプル中での溶解に適した形で、該開示による装置の一つ以上の該流体系内に含むことができる。適切には、該一つ以上の抗生物質、薬物または化学物質は、臨まされることが予想される流体サンプル、感染性因子/病原体、または、評価すべき該サンプルまたは病原体の特性に従って選択することができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、該流路構成は、該流体分析チャンバと第二のバルブ機構との間に延びている第三の流路をさらに備え、この場合、該第二のバルブ機構は、該分析チャンバの径方向内側に配設される。適切には、該第一のおよび/または第二のバルブ機構はそれぞれ、(圧縮)ガスを含む貯蔵チャンバを備えている。このようないくつかの実施形態において、該第二のバルブ機構は、該10~50μlの範囲の容積を有するチャンバを画定している。そのため、一般的には、該第二のバルブ機構の該容積は、有する場合、該第一のバルブ機構の該容積よりも小さい(例えば、3~15分の1以下)。
【0018】
使用時に、該装置の該流体系内の流体は、遠心力、ガス圧力、および該遠心力およびその他の力に逆らって作用する可能性のある、該流体が比較的狭い流路を、および特に、該流路と、該流路のカバーおよびベースとの境界における非常に小さい(例えば、100μm以下の)領域を通って移動することの結果としてのウィッキング/毛細管力を含む力の組合せに曝される。このような何らかの望ましくない流体の動きを減らすために、該少なくとも一つの流体系のうちの一つ以上の流路を、該流体系内の毛細管力を減らすための丸みの付いた内部角部で構成することができる。具体的には、少なくとも、該流体分析チャンバと該第一のバルブ機構との間の該流路(または、該第二の流路の第二の流路アーム)は、丸みの付いた内部角部を有していてもよい。同様に、該第一のバルブ機構と該分離チャンバとの間の該流路(または、該第二の流路の第一の流路アーム)は、丸みの付いた内部角部を有していてもよい。この開示のこのような態様および実施形態によれば、丸みの付いた内部角部は、約0.05~1mm、例えば、0.1~0.8mmまたは0.2~0.6mm(例えば、約0.6mm以下)の曲率半径を有していてもよい。
【0019】
適切には、該装置の少なくとも一つの流体系は、該流体サンプルに対してアッセイされる少なくとも一つの薬物を含み、この場合、該薬物は、該流体分析チャンバ内に、該第一のバルブ機構と該流体分析チャンバとの間に配設された第一の薬物保持チャンバ内に、または、該第二のバルブ機構と該流体分析チャンバとの間に配設された第二の薬物保持チャンバ内に供給される。該薬物は抗生物質とすることができる。適切には、該薬物は、凍結乾燥型および/またはフリーズドライ型である。
【0020】
任意の一つ以上の抗生物質を、本発明による該流体装置に組み込んでもよいことは正しく認識されるであろう。種々の態様および実施形態において、当業者は、例えば、臨まされることが予想される該感染性因子に依拠して、または、該流体装置と関連して使用される該流体サンプルに基づいて、選好に従って該システムに用いる一つ以上の抗生物質および該一つ以上の抗生物質の一つ以上の濃度とを選択することができる。特定の実施形態において、該薬物/抗生物質は、シプロフロキサシン塩酸塩一水和物(Ciproflaxacin HCl monohydrate:CIP)、ホスホマイシン二ナトリウム塩(Phosphomycin Disodium Salt:FOS)、メシリナム塩酸塩(Mecilinam Hydrochloride:MEC HCl)、ニトロフラントインナトリウム(Nitrofurantoin Sodium:NIT)、トリメトプリム乳酸塩(Trimethoprim Lactate:TMP)およびスルファメトキサゾールナトリウム(Sulfamethaxazole Sodium:SXT)を含む/から成る群のうちの一つ以上から選択することができる。他の実施形態では、該薬物/抗生物質は、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸(2:1合剤)、セファレキシン、シプロフロキサシン、エルタペネム、ホスホマイシン、レボフロキサシン、メシリナム、ニトロフラントイン、トリメトプリム、およびトリメトプリム/スルファメトキサゾール(1:19合剤)を含む/から成る群のうちの一つ以上から選択される。より具体的には、少なくとも一つの流体系は抗生物質のアモキシシリンを含み、少なくとも一つの流体系は、アモキシシリンとクラブラン酸の該抗生物質の組合せを含み、少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のセファレキシンを含み、少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のシプロフロキサシンを含み、少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のエルタペネムを含み、少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のホスホマイシンを含み、少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のレボフロキサシンを含み、少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のメシリナムを含み、少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のニトロフラントインを含み、少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のトリメトプリムを含み、および/または少なくとも一つの流体系は、該抗生物質のトリメトプリム/スルファメトキサゾール合剤を含み、および必要に応じて、少なくとも一つの流体系は抗生物質を含まず、および/または少なくとも一つの流体系は、有効量の殺菌剤を含む。いくつかの実施形態において、該装置は、例えば、本願明細書に開示されている該抗生物質から選択された複数の異なる抗生物質を含む。いくつかの実施形態において、該装置は、複数の微小流体系のうちの異なるものに沈殿させた二つ、三つ、四つ、五つまたは六つの抗生物質または抗生物質の合剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、該装置は、上記の抗生物質の各々を含む。適切には、該抗生物質または他の薬物/化学物質は、乾燥型で、または、サンプル溶液中での薬剤の溶解を補助するのに適した別の形態で与えられる。
【0021】
本発明の態様および実施形態によれば、この開示の装置の複数の流体系は、該抗生物質または抗生物質の組合せ(または、他の薬剤)のうちの一つを含み、および複数の微小系の各微小系は、使用時に、所定の異なる濃度の該抗生物質(または、他の薬剤)が、該複数の流体系のそれぞれの各分析チャンバ内の流体サンプル中に生成されるように、異なる所定量の該抗生物質または抗生物質の組合せを含む。本開示による好適な装置は、表1および/または表2の該抗生物質と対応する量から選択された量で、一つ以上の抗生物質を含む。具体的には、該開示の実施形態において、各流体系内に含まれる抗生物質の該量は、使用時に、該分析チャンバに充填するために、該第一の空気ばね/バルブ機構を通る該量の流体サンプル中に溶解されたときに、該分析チャンバ内の該流体サンプル中の抗生物質の該濃度が所望の所定濃度に略等しくなるように決められる。適切には、抗生物質(または、抗生物質の組合せ)の該濃度は、CLSI規格によるそれぞれの細菌のブレイクポイントに等しい。他の実施形態では、抗生物質(または、抗生物質の組合せ)の該濃度は、EUCAST規格による該それぞれの細菌の該ブレイクポイントに等しい。いくつかの実施形態において、該抗生物質は、使用時に、多数の別々の流体系の最終的な流体サンプル中での所望の範囲の異なる抗生物質濃度を実現するために、該多数の別々の流体系内に、それぞれ異なる量で存在する可能性がある。例えば、該所望の/ターゲットの抗生物質濃度は、該CLSIおよび/またはEUCAST濃度の倍数(例えば、1x、1.5x、2x、3x、4x、5x、6x、8x、10xまたはそれ以上という倍数)とすることができる。特定の抗生物質または他の薬剤の有効性が、生体サンプルおよび/または成長培地の状態によって影響を及ぼされる/変えられる可能性が有り、そのため、有効な阻止濃度または致死濃度は、CLSIまたはEUCASTによって予測されるであろうものと異なっている可能性があることは正しく認識されるであろう。したがって、態様および実施形態においては、任意の適切な抗生物質(または他の薬剤)濃度または量(または、濃度範囲または量の範囲)を、選好および所望の結果に従って組み込むことができる。
【0022】
有益には、該流体装置は、使用時に、流体サンプルと混合したときに、該流体サンプル中に潜在的に存在する細菌の成長を促進するように構成された細菌成長培地を備えている。このような実施形態において、該成長培地は、該流体リザーバ内に、または、該流体リザーバと流体的に連通している成長培地コンパートメント内に設けられる。有利には、任意のこのような実施形態において、該成長培地は、フィルタ要素または膜を介して該流体リザーバと流体的に連通している成長培地コンパートメント内に設けられる。該成長培地は、高濃度の液状にすることができるが、有利には、固体状または粉末状である。固体状は、一般的には好適であり、および該装置の組み立て中に取り扱うのが容易である可能性がある。例えば、該媒体は、圧縮ペレットまたはピルの形態で、または、可溶性カプセル内の粉末状で設けることができる。このようなカプセルの実施形態は、該成長培地が、使用前の大気/環境への好ましくない曝露から保護されるが、一旦、該カプセルから放出されると、該生体サンプルとの接触時に迅速に溶解させることができるため、有益である可能性がある。
【0023】
したがって、該流体サンプルが該流体系内に入る前に、該流体サンプルをろ過するために、膜を設けてもよい。一般的には、該流体サンプルが成長培地と混合された後に、フィルタまたは他の膜を設けることが有益である。フィルタまたは他の膜装置は、成長培地の溶解していない断片および/または該サンプル中に存在する可能性のある他の比較的大きな汚染物質が該流体系に入るのを防ぐ際に有益である可能性がある。例えば、塩および100μm以上の(溶解していない成長培地等の)他の粒子状物質を都合良く捕捉する100μm等の任意の適当な膜/フィルタ細孔径を用いてもよい。便利なフィルタまたは部材は、高分子材料(例えば、ポリプロピレン)または金属材料(例えば、ステンレス鋼)で形成することができる。金属フィルタ要素は、いくつかの構成において好適である。
【0024】
任意の実施形態の該流体装置は、流体サンプルが、該流体リザーバに移送された後、該少なくとも一つの流体系に移送される前に、該流体サンプルを収容するサンプル収容ウェルを備えていてもよい。
【0025】
いくつかの有益な実施形態において、該流体装置の中心領域は、流体サンプルを収容するサンプル収容ウェルを備えている。該サンプル収容ウェルは、典型的には、成長培地を含む成長培地コンパートメントを介して、該流体リザーバと連通可能であり、およびフィルタ要素は、使用時に、流体サンプルと成長培地の混合物が該流体リザーバに入る前に、該混合物をろ過するために、該成長培地コンパートメントと該流体リザーバとの間に軸方向に配置することができる。有利には、該サンプル収容ウェル、成長培地コンパートメント、フィルタ要素および流体リザーバは、該装置の中心回転軸周りに一列に配置される。
【0026】
該装置の任意の実施形態においては、該サンプル収容ウェルを囲むためのキャップまたは蓋を設けてもよい。便宜上、該サンプル収容ウェルは、(該装置の中心回転軸周りの軸方向にも配置されている)該装置の該中心領域の上方に突出した首部内に形成される。適切には、該首部には、該キャップの相補的な固定特徴部(feature)との係合のための固定特徴部が設けられている。特定の実施形態において、該固定特徴部は、ねじ山である。例えば、該首部の外壁には、該キャップまたは蓋の内壁面の相補的な雌型ねじ山との螺合用の雄型ねじ山を設けることができる。
【0027】
典型的には、該キャップは、上部/上方壁部と、該上部壁から下方に突出した外側環状周壁とを有している。便宜上、該外側周壁の該内側面には、該流体装置の該首部の該相補的なねじ山との螺合用のねじ山を設けることができる。
【0028】
有利には、本開示の任意の実施形態において、該キャップは、(例えば、環状スカートまたはリップによって)該サンプル収容ウェルの該内側面とのシーリングまたは摩擦フィットを形成するように構成されたプラグまたはプランジャを備えていてもよく、その結果、該キャップが該流体装置の該首部に係合したときに、流体が該プランジャを通って該流体系から離れて実質的に漏出することなく、該プランジャは、所定量の該流体を該サンプル収容ウェルから中央リザーバに向かって移動させる。したがって、該キャップは、該キャップの該上部壁から下方に突出し、および該外側環状周壁の径方向内側に配置された円筒形のプランジャ要素を備えていても良い。このような実施形態において、該プランジャ要素の該外側環状面は、該キャップが該流体装置の該首部に係合されたときに、所定量の流体を該サンプル収容ウェルから移動させるために、該サンプル収容ウェルの該内側環状面と一致するように構成することができる。
【0029】
本開示の代替的な実施形態においては、該キャップが、サンプル流体を該中央リザーバに向かって下方へ押し込むように構成されたプラグまたはプランジャ要素を備えている必要はない。より適切に言えば、溶解した媒体と混合された該サンプルは、重力、および使用中の遠心力、圧力変化または該装置が使用される際に、該サンプル収容ウェル内に残っている何らかの液体サンプルに作用する他の力の作用下で、該サンプル収容ウェルと該中央リザーバとの間に配置された任意のフィルタ/膜構成を通過することができる。このことは、性能に妥協することなく、該装置の製造を単純化することができる。
【0030】
該成長培地を実質的にクリーンな環境または無菌環境で維持するために、あるいは、該装置の使用前に、該成長培地が該環境に曝されるのを防ぐために、破断可能なシール要素を便宜上設けてもよい。該シール要素は、該サンプル収容ウェルと該成長培地コンパートメントとの間に都合良く設けられる。適切には、(適切な材料で形成することができる)該シールは、固体粒子および/または液体および/または気体に対して実質的に不透過性である。例えば、該シールは、箔材料またはプラスチック/高分子材料で形成してもよい。別法として、該シールは、生体サンプル等の水ベースの液体の存在下で分解/劣化または溶解する可能性がある。該シール要素は、本願明細書に記載されているような何らかの適当な機構を利用して、例えば、接着剤によって定位置に取付けられる。代替的な実施形態において、該成長培地とサンプル収容ウェルとの間のシールは、例えば、該成長培地が別の方法で該環境から保護されている場合、例えば、該成長培地に保護コーティングが設けられている場合、または、該成長培地が別の方法でペレット状または粉末状で、例えば、カプセルまたは他の同様のピルの形態でカプセルに封入されている場合は設けなくてもよい。
【0031】
特に有益な実施形態において、該キャップは、該キャップの径方向内側に配置され、および該キャップから下方に突出した一つ以上の突出部を備えている。これらの突出部は、該サンプル収容ウェルと該成長培地コンパートメントとの間の流体的連通を可能にするために、該サンプル収容ウェルと該成長培地コンパートメントとの間の該シール要素(有する場合)を貫通するように構成されている。正しく認識されるように、該シール要素の貫通は、該サンプル収容ウェル内に保持された流体サンプルと、成長培地チャンバ内に保持された成長培地との混合を可能にする。好適な実施形態において、該一つ以上の突出部は、有する場合、該プランジャ要素の下面から下方に突出して配置される。該一つ以上の突出部は、任意の有効な形態、例えば、本願明細書に記載されている該形態または構成のうちのいずれかを取ることができる。例えば、それらは、該成長培地コンパートメントと該サンプル収容ウェルとの間のシールを貫通すること、および溶解を改善するために該流体サンプルと該成長培地の混合を改善することの両方が可能であるフィンまたはブレードの形態を取ることができる。さらに、いくつかの実施形態において、該フィンまたはブレードは、該成長培地コンパートメントの内側壁を掻きとるように構成することができ、その結果、使用時に、該装置の壁部に付着している可能性のある該成長培地を、より容易に溶け易くすることができる。
【0032】
本開示のどの実施形態の該流体装置も、該装置の該首部と該キャップとの間に係合可能であり、およびユーザが意図する前に、該キャップを該装置の該首部に完全に係合することができないように、該キャップと該首部との間の係合の該深さを制限するように構成されたカラー要素を備えることができる。例えば、該キャップと該首部の不注意な完全な係合を防ぐことにより、該ユーザは、該首部に該キャップを意図せずに固定する(この場合、再利用を制御するために、または、汚染された装置への曝露を制御するために、ラッチング特徴部が存在している)ことができないであろうし、および/またはシール要素を有する場合、該成長培地を該環境に曝露するように、このシール要素を意図せずに貫通することはないであろう(この目的のために、一つ以上の突出部が、該キャップの該下面に設けられている)。いくつかの実施形態において、該カラー要素は、該キャップと一体形成されている。他の実施形態では、該カラー要素は、該キャップとは独立して形成されている。いくつかのこのような実施形態において、該カラー要素は、該キャップの該外側周壁と一体形成することができ、および該カラーとキャップとの間の接合部は、ユーザが、工具を用いることなく、該カラーを該キャップから取り外すことを可能にするために、(手で)破壊可能であるように構成されている。該カラーが該キャップと別々に形成されている場合は、このことは、該カラーを該キャップとは異なる材料で有利に形成できるようにし、このことは、例えば、より安価な、より容易に取り除くことができる、またはより再利用が可能な材料を可能にすることができる。しかし、いくつかの実施形態においては、キャップ制限特徴部はカラーでなくてもよく、該キャップが該装置の該首部に完全に係合するのを防ぐためのタブ等の何らかの他の適当な機構であってもよい。
【0033】
実施形態において、該流体装置は、該流体サンプルを該サンプル収容ウェルの上部内に案内するように構成された漏斗要素を備えていてもよい。
【0034】
任意の実施形態において、該首部は、外側環状壁と内側環状壁とで形成することができ、該内側環状壁は、該サンプル収容ウェルの少なくとも一部を画定し、および該外側環状壁には、該キャップの該相補的な固定特徴部との係合用の該固定特徴部が設けられている。いくつかのこのような実施形態において、該首部の該外側環状壁と該内側環状壁との間の空間は、環状チャンバを画定し、または、複数の放射状に(radially)離間した壁部または隆条部によって、複数の放射状にセグメント化されたチャンバに分割してもよい。有益には、該環状チャンバまたは該径方向にセグメント化されたチャンバのうちの少なくとも一つは、オーバーフローチャンバとして構成され、該オーバーフローチャンバは、少なくとも一つのオーバーフロー開口を介して該サンプル収容ウェルと流体的に連通している。有利には、該オーバーフロー開口は、該サンプル収容ウェル内の該流体サンプルが該少なくとも一つのオーバーフロー開口(の高さ)に達する前に、所定の最大量の流体サンプルを、該サンプル収容ウェル内に収容できるように構成されている。したがって、該オーバーフロー特徴部は、該装置の外部への流体の溢れ出しを軽減しながら、該サンプル収容ウェルに注入することができる該流体の量を制限する。実施形態において、該オーバーフロー開口は、該サンプル収容ウェルの壁部に設けられ、または、流体サンプルを該サンプル収容ウェルの該上部に案内するように構成されている漏斗要素内に設けられる。したがって、該オーバーフロー開口は、該オーバーフローチャンバの上方領域と連通することができる。記述されているように、該オーバーフローチャンバは、使用中に、該流体装置の一つ以上のオーバーフローチャンバ内に余分な流体サンプルを捕捉することにより、該流体装置の外部を汚染するリスクを防ぐかまたは低減するのを補助し、オーバーフローチャンバは、使用時に、例えば、キャップで該装置の該首部を覆う係合により、該環境から密封することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、該径方向にセグメント化されたチャンバのうちの少なくとも一つは、ガス放出チャンバとして構成され、該ガス放出チャンバは、少なくとも一つのガス放出開口を介して該中央流体リザーバと流体的に連通し、該ガス放出開口は、該ガス放出チャンバの下方領域と連通し、および該流体リザーバが該サンプル収容ウェルからの流体サンプルで満たされた際に、該流体リザーバ内のガスを、該少なくとも一つのガス放出チャンバに向かって上方へ排出することができるように構成されている。このような構成は、該流体リザーバを流体サンプルで満たすことができるように、該流体リザーバから空気を除去することを有益に可能にし、また該構成は、該流体装置内の該流体サンプルの過圧を回避することもでき、使用時に、該流体サンプルが該中央流体リザーバから排出されて、さまざまな流体系内へ分散された場合に、該流体サンプルの背後に真空が形成されることを防ぐことができる。このような実施形態において、該装置内で圧力を均等化することを可能にするために、ガス/流体放出開口を、該首部、漏斗部および/またはキャップの上面に設けてもよい。このようなガス放出オリフィスはどれも、液体サンプルが該装置から漏出するのを防ぐための疎水性膜によって好適に覆うことができる。
【0036】
いくつかの実施形態においては、便宜上、該キャップの該プラグまたはプランジャの底面には、上述したように、使用時に、ガスが該サンプル収容ウェルおよび/または該中央流体リザーバから漏出することを可能にする一つ以上のガス放出オリフィスを設けることができる。このようなオリフィスは、液体サンプルが該装置から漏れることを防ぐための液体不透過性のまたは疎水性の膜によって好適に覆うことができる。適切には、このような実施形態においては、ガスを大気中に逃がすことを可能にするために、および/または該装置内の圧力を該大気と均等化することを可能にするために、第二の複数のガス放出オリフィスが、(ガス放出オリフィスの第一のセットと連通して)該キャップの該上面を介して設けられる。
【0037】
さまざまな態様および実施形態においては、該装置の内部と該大気との間で圧力を均等化することを可能にするための「通気口」を設けるために、一つ以上のオリフィスを、該キャップの該上部に設けてもよい。このようなオリフィスは、フィルタまたは膜、好ましくは、流体が該サンプル収容ウェルから漏出するのを防ぐための疎水性フィルタまたは膜によって適切に覆うことができる。このようなフィルタまたは膜は適切には、圧力が上昇するのを防ぐために、圧力を該装置と該大気との間で均等化することを可能にするように選択された穿孔内径を有し、例えば、約0.45μmの該内径は、細菌が入るのを防ぐには十分に小さいが、圧力均等化のためのエアフローを過度に制限することはあってはならない。このような通気口は、便宜上、該サンプル収容ウェルと連通する該キャップの中心に設けることができ、その結果、追加的なまたは専用のガス放出チャンバは必要でない可能性がある。
【0038】
典型的には、本開示の実施形態において、該流体装置は、本体およびベースを備え、該流体リザーバと該少なくとも一つの流体系は、該装置の該本体内に画定され、および該本体の下面に露出している。このような実施形態において、該ベースは、該流体系を密封して流体の漏出を防ぐために、該本体と接続可能になっている。したがって、該ベースは、該中央流体リザーバおよび流体系の該下面またはベースを構成している。重要なことには、少なくとも一つの流体分析チャンバの該下面を画定する該ベースの少なくとも一部は、所望の波長の光に対して光透過性である。いくつかのこのような実施形態において、該ベースは、接着剤により、ヒートシールにより、または、他の何らかの適当な機構により、該装置の該本体に取付けられるように構成されたフィルムである。いくつかの有益な実施形態においては、接着剤を用いてもよく、他の有益な実施形態では、ヒートシールを用いてもよい。
【0039】
実施形態において、該流体装置は、複数の抗生物質を含む抗生物質感受性パネルを備えていてもよい。適切には、該複数の抗生物質は、表1または表2または表3に開示されている抗生物質量のうちの一つ以上から選択された量で使用することができる。特定の実施形態において、該流体装置は、適切には、表3で定義されている該CLSI基準および/または該EUCAST基準の該抗生物質濃度に準拠した抗生物質感受性試験パネルを備えている。しかし、他の実施形態では、例えば、特定の用途に対して、例えば、尿路感染症(UTI)における感染性因子の該抗生物質感受性の試験において、アッセイシステムを最適化するために、該選択された抗生物質のうちの一つ以上に対する適切な抗生物質濃度を、任意の基準系とは無関係に決めることができる。
【0040】
第二の態様においては、本開示のいずれかの態様または実施形態による該流体装置と、該流体装置の該回転軸周りの該流体装置の回転運動を駆動する駆動機構と、該駆動機構に該流体リザーバから該分析チャンバへまたは各分析チャンバへの該流体サンプルのフローを制御させるための機械可読コードを実行する制御部とを備える装置が提供される。
【0041】
この第二の態様の実施形態において、該装置は光学装置を備えることができ、該光学装置は、光の入射ビームを放射して、該流体分析チャンバまたは各流体分析チャンバ内の該流体サンプルに照射するように構成された光源と、該流体分析チャンバまたは各流体分析チャンバから出る散乱光を検出するように構成された光検出器とを備えている。
【0042】
また、この態様の実施形態は、サンプル容器に係合するように構成され、および該流体分析チャンバまたは各流体分析チャンバを、該光学装置の該光源からの光の該入射ビームと周期的に一致させおよび一致させないように構成されたサンプル容器カルーセルも備えていてもよい。
【0043】
便宜上、少なくとも一つのプロセッサは、該検出した散乱光を分析して、該流体分析チャンバまたは各流体分析チャンバに収容されている該流体サンプルの一つ以上の特性を判断するように構成されている。適切には、判断される該特性は、細菌の相対量と、細菌の相対濃度と、時間の関数としての細菌の該相対量の変化と、時間の関数としての細菌の該相対濃度の変化と、細菌の定性的量と、細菌の定性的濃度と、細菌の実際の量と、時間の関数としての細菌の該相対量の変化と、時間の関数としての該分析チャンバ内の該流体サンプル中に存在する細菌の実際の濃度とから選択される。
【0044】
第三の態様によれば、流体リザーバから、流体装置内に形成された流体系を介して流体サンプルを移動させる方法が提供され、該流体系は、流体分析チャンバと、該流体リザーバと該流体分析チャンバとの流体的連通を可能にするように構成された流路構成とを備え、該方法は、該流体リザーバから該流路構成の第一の部分内へ該流体サンプルのフローを押し進めるのに十分な第一の遠心力を生成するように、駆動機構により、該流体装置を回転軸周りに、第一の回転速度でおよび第一の時間にわたって、回転させることと、該流路構成の該第一の部分から該流路構成の第二の部分へ前進する該流体サンプルのフローを、該バルブ機構によって、前記第一の遠心力と反対側に前記バルブ機構が及ぼす圧力を介して、防ぐことと、該バルブ機構の該圧力に打ち勝って、該流体サンプルのフローを、該流路構成の該第二の部分内へ、およびそれによって該流体分析チャンバ内へ押し進めるのに十分な第二の遠心力を生成するように、該駆動機構により、該流体装置を該回転軸周りに、第二のより大きな回転速度でおよび第二の時間にわたって、回転させることとを含む。
【0045】
いくつかの実施形態においては、(溶解した成長培地とともに)該流体サンプルが該装置の該流体系全体に分散される前に、該流体サンプルが、どのような成長培地とも十分に混ざって溶解することを可能にするための初期「混合」高速回転段階があってもよい。該初期混合高速回転は、任意の適当な期間および速度とすることができるが、該成長培地が該サンプル中に適切に溶解されるまで、流体サンプルが該流体系の該流路内に分散されないことを確保するように選択しなければならない。例えば、該混合段階は、約250rpm~約750rpmの速度、例えば、約400rpm~600rpmの速度での、該流体装置の往復または振動(交互の時計回りおよび反時計回り/前後方向)回転を備えることができる。一つの有益な実施形態において、該振動混合ステップは、約500rpmである。このような初期混合は、該媒体の溶解性に従って必要に応じて、約30秒から1分、最大で約10分間実行することができる。例えば、該慣性混合は、各方向において、3秒~10秒の間(例えば、4秒から8秒の間、例えば、5秒または6秒)、所望の繰り返し回数、例えば、3~10回の繰り返し、4~8回の繰り返し、または5回または6回の繰り返しとすることができる。一つの有益な実施形態において、該初期媒体混合段階は、各方向において、特に約500rpmの速度で、5秒周期で5回、実行してもよい。
【0046】
この方法のいくつかの実施形態において、該流体サンプルを分散させて該サンプルを清澄化するための第一の回転速度は、約1,800~3,000rpm、例えば、約2,000~2,800rmp、または、約2,200~2,600rpmとすることができる。一つの有益な実施形態において、該第一の回転速度は、約2,600rpmである。該第一の回転速度は、約30秒の間、例えば、約10秒~20秒の間、適用することができる。一つの有益な実施形態において、該第一の回転速度は、約15秒の間、適用される。しかし、いくつかの実施形態においては、除去しようとする粒子の種類により、より長い第一の高速回転時間(例えば、約1分以上)を選択してもよい。適切には、この回転速度および時間は、該流路構成の該第一の部分に該流体サンプルの一部を充填するのに、および該流体サンプル中の粒子状物質を沈殿させて、清澄化されたサンプルを生成するのに十分である。好ましくは、直径約10μm以上の粒状物質が、該流路構成の該第一の部分に沈殿される。
【0047】
任意の実施形態において、該分析チャンバを充填する該第二の回転速度は、適切には、約1,900rpm、例えば、約2,800~4,500rpm、例えば、約3,000~4,200rpm、または、約3,200~4,000rpmである。一つの有益な実施形態において、該第二の回転速度は、約4,000rpmである。該第二の回転速度は、該バルブ機構に向かうおよび該バルブ機構を通る該流体サンプルの動きに対して逆の圧力を与える該バルブ機構に従って決定される。実施形態において、該第二の回転速度は、約10~30秒の間、例えば、約12~25秒の間、または、約14~20秒の間、適用することができる。一つの有益な実施形態において、該第二の回転速度は、約15秒間、適用される。該流体装置を該第二の回転速度で回転させると、流体サンプルを該分析チャンバに充填することができる。
【0048】
続いて、この態様の実施形態は、該流体装置を、約1,300rpm~1,500rpmという第三の、より遅い回転速度で回転させることを含んでいてもよい。この速度において、該バルブ機構8内の該ガスが、膨張し、および前と同じように、該バルブを通る流体の動きを防ぐために十分な圧力を与える。このことは、該流路構成の該第一の部分内の流体と、該流路構成の該第二の部分内の流体との間に物理的なガスバリアを形成する。
【0049】
該方法は、所定量の一つ以上の抗生物質を、該流路構成の一部に供給することをさらに含んでいてもよく、この抗生物質は、抗生物質の所望の所定の濃度を実現するために、該流体サンプルに接触したときに、該流体サンプル中に容易に溶ける形態になっている。有益には、該抗生物質は、例えば、該分析チャンバの表面に乾燥型で設けられる。場合により、該抗生物質は、該流体サンプル中に迅速に溶けない可能性があり、そのため、該方法は、該流体サンプル中での該抗生物質(または他の薬剤)の溶解を促進するための慣性混合を実行することをさらに含んでもよい。
【0050】
適宜には、該方法は、該分析チャンバに流体サンプルが充填された後に、約500rpmから最大で約2,000rpm、例えば、約800rpm~1,800rpm、または、約1,000rpm~約1,600rpmの速度での、該流体装置の往復または振動(交互の時計回りおよび反時計回り)回転を含むその後の慣性混合ステップを実行することをさらに含んでいてもよい。一つの有益な実施形態において、該振動慣性混合ステップは、約1,500rpmである。このような慣性混合は、該薬物または他の化学物質の該溶解性に従って必要に応じて、任意の適当な期間、典型的には、約30秒~1分、最大で約10分間、実行することができる。例えば、該慣性混合は、各方向において、3秒~10秒の間(例えば、4秒から8秒の間、例えば、5秒または6秒)、所望の繰り返し回数、例えば、3~10回の繰り返し、4~8回の繰り返し、または5回または6回の繰り返しとすることができる。一つの有益な実施形態において、該慣性混合は、各方向において、特に約1,500rpmの速度で、6秒周期で5回とすることができる。
【0051】
該方法は、該分析チャンバ内の流体に関するアッセイを実行しながら、該流体装置を所定の速度で回転させることをさらに含んでもよい。例えば、該方法は、該分析チャンバ内の流体サンプルを光源に晒し、それにより、粒子状物質、例えば、各サンプル中に存在する細菌によって生じる光散乱の量が、時間に応じて測定され、または単純に検出されることにより、該分析チャンバの各々の中の個別の(薬剤が投与された)流体サンプルを分析することを含んでもよい。サンプルによる該光散乱の量の変化は、該流体サンプル中に存在する粒子状物質、特に細菌の該量(または濃度)を示すことができる。有益には、該方法は、該光散乱の量の低下を、当該サンプルに投与するのに用いられる、該薬剤に対する、または、該薬剤の該濃度に対する、該サンプル中に存在する関連のある細菌の菌株の該感受性の指標として検出することを含む。いくつかの実施形態において、該光散乱の量は、サンプル中の細菌の相対濃度または絶対濃度にも比例している可能性があり、および該散乱した光の量に基づく適当なアルゴリズムによって判断してもよい。
【0052】
この態様における該方法は、各流体分析チャンバ内の該サンプルの該分析をさらに含んでもよい。該分析の間、該流体装置は、同じ方向で一定の速度で、例えば、約50~300rpm、例えば、約100~200rpm、および特に、約100rpmまたは約150rpmで適切に回転される。この速度での回転の該期間は、該アッセイの長さ次第であり、および約20~90分、例えば、約30~75分、または、約30~60分の間とすることができる。該方法は、適切には、各分析チャンバ内の該流体サンプルを順に、該回転の速度によって決まる所定の時間間隔で照らすことと、該流体サンプル内の微粒子(例えば、細菌)によって散乱される該光の量を光検出器によって測定することとを含む。便宜上、散乱された該光の量は、該流体サンプル中の粒子状物質(例えば、細菌)の該量および/または濃度に相関しまたは比例している可能性がある。したがって、散乱した光の増加は、該微粒子(例えば、細菌)の量の増加に関する指標であり、逆も同様である。
【0053】
いくつかの実施形態において、該分析は、サンプル測定値の(加重)移動平均に基づいている。有益には、該移動平均は、50~500の測定値にわたって、特に100の測定値にわたって適用することができ、このことは、100rpmの回転速度での各分析点に対する60秒の読取りに等しい。
【0054】
実施形態において、該流体装置は、複数の検出チャンバを備え、該複数の検出チャンバのうちの少なくとも二つは、該それぞれの流体サンプル中に二つの異なる濃度の薬物を供給するために、異なる量の同じ薬物/薬剤/抗生物質を投与した流体サンプルを含む。そして、該方法は、入射ビーム軸に沿って放射される該光の中に、該薬物が投与されたサンプルを収容している該複数の検出チャンバの各々を連続的に配設することと、該複数の検出チャンバの各々に関して該方法の各連続的なステップを実行することと、該流体サンプルに投与するのに用いられる該薬物の該それぞれの濃度に対する該サンプル中の該細菌の相対感受性を判断し、それにより、治療法に使われる最も有効な薬物濃度を識別することとを含んでもよい。同じかまたは代替的な実施形態において、該流体装置は、複数の検出チャンバを備え、該複数の検出チャンバのうちの少なくとも二つは、該同じ細菌に対する二つの異なる有効な薬剤を提供するために、異なる薬物/薬剤/抗生物質を投与した流体サンプルを含む。そして、該方法は、入射ビーム軸に沿って放射される該光の中に、該薬物が投与されたサンプルを収容している該複数の検出チャンバの各々を連続的に配設することと、該複数の検出チャンバの各々に関して該方法の各連続的なステップを実行することと、該流体サンプルを投与するのに用いる該それぞれの濃度に対する該サンプル中の該細菌の該相対感受性を判断し、それにより、治療法に使われる最も有効な薬物を識別することとを含んでもよい。
【0055】
適切には、該方法は、第二の光検出器により、該入射ビーム軸に平行に該検出チャンバまたは各検出チャンバを通過する非散乱光を集めることと、該同じ検出チャンバに関して、該第二の光検出器によって集められた該非散乱光の強度と、該第一の光検出器によって集められた該散乱光の強度を比較することとをさらに含んでもよい。
【0056】
この出願の範囲内においては、先行の段落、特許請求の範囲および/または以下の説明および図面に、および特にそれらの個別の形状構成に記載されているさまざまな態様、実施形態、実施例および代替例を、単独でまたは任意の組合せで利用することができることが明確に意図されている。すなわち、すべての実施形態および/または任意の実施形態の形状構成は、そのような形状構成に互換性がある限り、どのような方法でもおよび/またはどのような組合せでも組合せることができる。本出願人は、そのように最初にクレームされていないが、他のいずれかのクレームの任意の形状構成に従属するようにおよび/または該任意の形状構成を包含するように、任意の最初に出願されたクレームを修正する権利を含む、任意の最初に出願されたクレームまたはファイルをそれに応じて任意の新たなクレームに変える権利を有している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
次に、本開示の上記のおよびその他の態様について、単に一例として、添付図面を参照して説明する。
図1】本開示の実施形態による、サンプル流体をそこを通して遠心力で促進することができる複数の流体系を備えるサンプル容器本体の側面図である。
図2A図1の該サンプル容器本体の平面図を示す。
図2B図2Aの該サンプル容器内に設けられた該流体系の一つの分解図を示す。
図2C】代替的な実施形態による該サンプル容器本体の平面図を示す。
図2D図2Cの該サンプル容器内に設けられた該流体系のうちのいくつかの拡大図を示す。
図3】該容器の中央部内の臨床サンプル流体のさまざまなフロー経路を示す、図1の組立て済みのサンプル容器本体2の垂直断面図である。
図4】該サンプル容器内に、該臨床サンプル流体を固定するためのキャップも含む、図3の該サンプル容器本体を備える、組立て済みの流体装置1の垂直断面図である。
図5A】臨床サンプル分析の方法を実施するのに用いることができる本開示の別の実施形態による流体装置1の分解図を示す。
図5B】この実施形態による該流体装置1の断面図を示す。
図5C】本開示の別の実施形態による流体装置1の分解図を示す。
図5D】本開示のさらに別の実施形態による流体装置1の分解図を示す。
図6A図5Aおよび図5Bに示す該容器キャップの底部斜視図である。
図6B図4の該容器キャップの側面図である。
図7A図5Cおよび図5Dに示す該容器キャップの上部分解斜視図である。
図7B図5Cおよび図5Dの該容器キャップの底面図である。
図8】本開示の実施形態による完全なサンプル容器およびキャップを製造する方法のさまざまなステップを示すフロー図である。
図9A】本開示の実施形態による、該容器の中央リザーバから個別の流体系にサンプル流体を再配分するプロセス中のサンプル容器の概略スナップショットを示す。
図9B】本開示の実施形態による、該容器の中央リザーバから個別の流体系にサンプル流体を再配分するプロセス中のサンプル容器の概略スナップショットを示す。
図9C】本開示の実施形態による、該容器の中央リザーバから個別の流体系にサンプル流体を再配分するプロセス中のサンプル容器の概略スナップショットを示す。
図9D】本開示の実施形態による、該容器の中央リザーバから個別の流体系にサンプル流体を再配分するプロセス中のサンプル容器の概略スナップショットを示す。
図9E】本開示の実施形態による、該容器の中央リザーバから個別の流体系にサンプル流体を再配分するプロセス中のサンプル容器の概略スナップショットを示す。
図10図9Aから図9Eに関連して用いられる、サンプル流体を再配分する該方法のさまざまなステップを示すフロー図である。
図11】さまざまな薬物に対する、臨床サンプル中の細菌の感受性を測定するために、上述した図面に示す該サンプル容器とともに用いることのできる光学分析装置の垂直断面図を示す。
図12図11の該装置の一部の斜視図である。
図13図11の該装置内に存在し、および本願明細書に記載されおよび示されている流体装置とインタフェースをとるサンプルカルーセルの底部斜視図である。
図14】実施態様例における図11の該装置に用いられる光学構成の概略図である。
図15図11の該装置と、本願明細書に記載されている該サンプル容器とを用いて、臨床サンプル中の細菌の薬物感受性を測定する方法のさまざまなステップを示すフロー図である。
図16】臨床サンプル中の細菌に対する異なる抗生物質の効果を示す、図11の該装置における時間に応じた検出機強度出力の異なるプロットを示す。
図17】本開示の実施形態に従って用いるための流体系の代替的な構成を示す。
【0058】
該図面においては、類似の特徴は、類似の参照符号によって示されている。
【発明を実施するための形態】
【0059】
次に、該クレームで定義されている概念の完全な理解を実現するために、多数の特徴が詳細に説明されている、本開示の具体的な実施例および実施形態について説明する。しかし、当業者には、該具体的な詳細のすべてを要することなく、本開示を具体化できること、および場合により、本開示を不必要に不明瞭にしないために、周知の方法、技術および構造が詳細に記載されていないことは明らかであろう。
【0060】
図1は、複数の流体系を介して、流体サンプルの一部の遠心力で促進する配分/動作を可能にするように構成されている流体装置の一部を示し、サンプル部分は、後の分析のために、個別の検出/分析チャンバ内に保持される。
【0061】
その最も一般的な意味において、中央に設けられた主流体リザーバ4を有する本体2を備え、該主流体リザーバ4には該流体サンプルが最初に導入されて保持されている。複数の流体系6が、該主流体リザーバ4の周りに間隔をおいて、該主流体リザーバ4から径方向外側に延びて、および該主流体リザーバと流体的に連通して設けられている。使用時において、中心回転軸X周りの該流体装置1の回転運動は、該主流体リザーバ4内に保持されている流体サンプルに遠心力を印加し、それにより、より少ない量の該最初の流体サンプルを、該個別の流体系6の各々に押し進めるように構成されている。
【0062】
該個別の流体系6を通る該流体サンプルのその後のフローは、(例えば、特定の所定の時間間隔で適用されるさまざまな回転速度を実施することにより)印加される一つ以上の異なる遠心力の組合せを介して制御される。流体フローの追加的な制御は、それぞれの流体系内の要衝箇所(strategic point)に配設された一つ以上のバルブ機構/空気ばねの利用によって実現される。具体的には、各流体系6において、バルブ機構8は、該流体系の入口点10と、流体分析チャンバ12との間の該フロー経路内の中間点に配設されている。このバルブ機構8は、該容器1が所定の閾値速度以下の速度で回転されている場合に、該流体サンプルの該フローと反対側の圧力を及ぼすように、およびそれによって、該流体分析チャンバ12内への流体フローを防ぐように構成されている。この場合、該容器1の回転による、該流体サンプルによって及ぼされる該遠心力は、該流体装置1が十分に速い速度で回転するまで、該バルブ機構8内の圧縮ガスの反対方向の力に打ち勝つには不充分であろう。
【0063】
典型的には、本開示の態様および実施形態において、図1の該サンプル容器本体2は、光学的に透明な支持体材料(例えば、ポリカーボネート等のプラスチック材料)から形成されおよび成型される。該容器本体2は、垂直方向断面が概して円形であり、および二つの主部分、すなわち、(i)中に該主流体リザーバ4を有し、および円筒形の容器首部16を形成するように上方に延びている壁部を有する、径方向内側壁部14と、(ii)中に形成された該複数の流体系6を有する径方向外側部18とに分けられている。該容器首部16は、該流体サンプルが該組立て済みの容器本体2内に確実に保持されるように、使用時に、該容器本体2に固定することができるキャップまたはカバー20を受け入れるように構成されている。この点で、図示されている実施形態における該容器首部16は、該キャップ20と該容器本体2の確実な係合を可能にするために、(図5および図6により詳細に図示されているように)該キャップ20に設けられた対応する内部突出部/ねじ山20aと螺合するように構成されている複数の外部突出部/ねじ山22aを備えている。当然のことながら、スナップフィット機構または摩擦機構あるいはクリップ/クランプ/ラッチ等のキャップを容器本体に固定する何らかの他の適当な機構を代替的に用いてもよいことは正しく認識されるであろう。本開示の説明を分かり易くするためには、この開示のさまざまな実施形態は、特に、具体的に記載されている特徴が本質的ではなくまたは随意的であることが明白である場合、該図面に関連して記載されているすべての特徴を必ず含むことによって限定されることは意図されていないことを正しく認識すべきである。
【0064】
図1に示す該実施形態において、該容器本体2の該外側部18は、容易な、向きが固有のインタフェースおよび該容器アセンブリ1内の流体サンプルの後の分析中に用いられる光学分析装置を備えている装置と該流体装置1の係合を可能にするように構成されている切欠きセグメント24を備えている。それに応じて、該概して円形の容器本体2は、径方向切欠き部を備えていてもよい。該切欠きセグメント24は、該切欠きセグメント24の径方向内側面に、角度の付いた壁部25をさらに備え、壁部25に、該流体装置1およびその内容物の詳細を記憶するのに利用できる(例えば、RFIDタグまたはバーコードの形の)識別コードまたはその他の情報を配置することができる。後に詳述するように、該切欠きセグメント24は、該流体サンプルの後の利用中の光学分析装置の部分とインタフェースをとるようなサイズで形成しおよび構成することができ、およびそのため、任意の適当なサイズおよび形状とすることができる。流体系6の数を最大化する際の実用性および効率性のために、該切欠きは、例えば、約20°~60°の角度、適切には、約30°~50°の角度をなすことができるが、分析装置において該装置の正しい位置合わせの目的に役立つのを補助する任意の適当な角度が有益である可能性がある。
【0065】
図2Aは、該主流体リザーバ4およびその中に設けられている該流体系6の詳細をさらに強調する図1の該容器本体2の平面図を示し、一方、図2Bは、該流体系6のうちの一つの拡大図を示す。前述したように、各流体系6は、特定の当該流体系6内の該流体サンプル部の最終的な行き先に該当する流体分析チャンバ12を備えている。さらに、各流体系6は、該容器本体2の中心における該主流体リザーバ4と、該容器本体2の径方向外側部におけるそれぞれの流体分析チャンバ12を連通する流体フロー経路を形成している流路構成26を備えている。
【0066】
より詳細には、該流路構成26は、(該容器1の該回転軸Xに対して)その径方向の最も内側の範囲に、該主流体リザーバ4と連通している入口ポート28aを有し、および、その径方向の最も外側の範囲に、中間分離または清澄化チャンバ30と連通している出口ポート28bを有する第一の入口流路28を備えている。該図示されている実施形態において、該出口ポート28bは、該流体系6の径方向外側の限界に向かって配設されている。例えば、図2Cおよび図2Dに示されているような他の実施形態では、該分離チャンバ30は、該流体系6の該径方向外側箇所には配設されない。
【0067】
特に図2Bを参照すると、該分離チャンバ30は、該容器本体2の該径方向外側部18の該支持体に形成されたウェルの形態をとっており、および該流体サンプルの残りの部分からの不必要な粒子/不純物の分離を可能にするように構成されている。該第一の流路28の該出口ポート28bは、その径方向の最も外側の壁/縁部に向かって該分離チャンバ30と連通しており、それにより、サンプル流体を該分離チャンバ30に導入するための「ボトムフィーディング(bottom-feeding)」機能と見なすことのできるものを実現している(すなわち、流体サンプルは、該分離チャンバ30の径方向の最も外側から該チャンバに入る)。そのため、任意の実施形態において、該流路28は、有益には、該分離チャンバ30の該径方向の最も外側の縁部において、該分離チャンバ30と連通している。しかし、いくつかの実施形態においては、該分離チャンバ30は、有利には、(例えば、該ポート28bから離間された沈殿ゾーンを形成するために)該径方向の最も外側の壁が、該回転軸X、および該流路28の該出口ポート28bから離れて斜めに角度が付けられているような形状に形成される。このようにして、該沈殿チャンバ30に入る該流体中の粒子は、ポート28bからある距離に、例えば、該分離チャンバ30の「つま先部」または「ポケット」30a内に沈殿しおよび集中し、この結果、沈殿物は、入って来る流体によって乱されず、このことは、清澄化された流体サンプルを作り出すプロセスに影響を及ぼすであろう。一旦、該分離チャンバ30内に入ると、該沈殿チャンバ30の該径方向内側部の該流体は清澄化される。入って来る流体サンプルの「ボトムフィーディング」により(すなわち、入って来る流体は、該チャンバの該径方向外側の限界に向かって該沈殿チャンバ30に入る)、(以下でさらに説明するように)必要に応じて、清澄化された流体が該バルブ機構8および分析チャンバ12に向かって該沈殿チャンバ30から押し出される。対照的に、該ポート28bが該沈殿チャンバ30の該径方向内側の縁部に向かって配設されていた場合には、(流路28を介して)該主流体リザーバ4から入って来る流体は、該沈殿チャンバ30の該径方向内側部の清澄化された流体と混合し、および清澄化されていない流体を該分析チャンバ12に向かって押し込むリスクに晒すことになる。さらに、該ボトムフィーディング構成は、たった一つの空気ゲート/空気ばねを用いて、該主流体リザーバ4から該分析チャンバ12への流体の進行を可能にするような該流体系を可能にする。このことは、製造の複雑性と、ハード/機械弁の操作によるものではなく、回転速度の制御に基づく流体サンプルの動作に関する後の制御の複雑性とを低減する。
【0068】
該流路構成26は、該分離チャンバ30と連通する入口ポート32aと、該流体分析チャンバ12と連通している出口ポート32bとを有する第二の流路32をさらに備えている。堰部(または、段部)30aが、該分離チャンバ30と、該第二の流路32の該入口ポート32aとの間に配設され、このことは、該分離チャンバ30によってもたらされる該分離/清澄化機能の向上を助けることができる。該堰部30aを考慮すると、該分離チャンバ30内の清澄化された流体サンプルの該量は、該堰部から溢れて該第二の流路32に入るのに十分な多くの量に達しなければならず、一方、不必要な不純物は、該分離チャンバ30内に保持する(および事実上、該分離チャンバの該径方向外側の壁に当たって沈殿させる)ことができる。実際には、該液体サンプルに作用する遠心力は、使用時に、より重い粒子/不必要な不純物を、該分離チャンバ30の該径方向の最も外側の壁に向かって外側へ押し込み、その結果、それらの粒子/不純物は、図示されているように、典型的には、該分離チャンバ30の該径方向内側の縁部に配設されている該堰部30aから最も遠くにある箇所に保持され、このことは、および該分離チャンバ30の該径方向外側の壁に向かって配設されている該ポート28bのさらに有益な特徴は、不必要な微粒子物質が該第二の流路系32内に押し込まれ/引き込まれる可能性を低減する。
【0069】
有用には、この開示の該態様および実施形態のいずれかにおいて用いられるように、堰部30aの存在は、分離チャンバ30の床部に対する流路32の床部/ベースの高さを上昇させ、および流路32を通らなければならない流体の該量を最小限にするのに役に立つ。遠心力によって該バルブ機構8に向かって動かされる流体の該量を最小限にすることにより、該バルブ機構8内に移動されるガスの該量も同様に低減され/最小限にされ、このことも同様に、該バルブ機構8内の圧力増加を低減し、および(以下で説明するように)液体サンプルを該バルブ機構8を通って押し込むのに必要な該回転速度を低減する。実施形態において、該容器1の該回転速度は、使用時において、10μm以上の直径を有する粒子を捕捉/沈殿させるために選択され、このことは、適切な細菌を浮遊状態で保持することを可能にする。
【0070】
該第二の流路32は、実質的にU字状であり、および流路を概して逆平行に形成するように設けられた第一および第二の流路アーム32c、32dを備えている。具体的には、該第一の流路アーム32cは、概略的に該第一の流路28に(逆)平行に延びており、その結果、該流体サンプルを、該分離チャンバ30から流出させ、且つ該第一の流路アーム32cに沿って、(該流体装置1の該回転軸Xに向かう)径方向内側方向に流すことができ、該第二の流路アーム32dは、概略的に該第一の流路アーム32cに(逆)平行に延びており、および該流体サンプルが、(該第一の流路アーム32c内の該フローに対して)そのフロー方向を逆にすることを可能にし、その結果、該流体サンプルは、該流体分析チャンバ12に向かって径方向外側方向に進む。適切には、本開示の任意の実施形態において、該流路28、32aおよび32bの各々は、略径方向に配置されている。
【0071】
該二つの流路アーム32c、32dは、(該図示されている実施形態において)流体(液体)が該流体系6の該流路を通って該バルブ機構8に向かって移動する際に、圧縮されて、増大した圧力下に置かれている(空気等の)ガスが充填されている貯蔵チャンバの形態をとる該バルブ機構8を介して、それらの径方向の最も内側の範囲において互いに流体的に連通している。したがって、該圧縮されたガスは、該流体装置1の回転によって該流体サンプルに印加される該遠心力と反対側にガス圧力を及ぼすことにより、該二つの流路アーム32c、32d間の流体フローを遮断するように/防ぐように構成することができる。また、このようなバルブ機構は、場合により、従来技術においては、「空気(バイパス)弁」、「空気式ばね」、「空気バラストチャンバ」または「空気ばね」としても知られている。
【0072】
次に、該流体装置の変更実施形態について、図2Cおよび図2Dを参照して説明する。この実施形態においては、該分離チャンバ30は、該分離チャンバ30の径方向外側部/縁部のインレットを介して、これまでのように該流路28を介して該主/中央流体リザーバ4と連通している。該分離チャンバ30は、有益には、比較的狭い径方向内側端部/部分の径方向外側のより幅広の端部/部分を有する楔形状で形成されている。このようにして、該分離チャンバ30内で該清澄化された流体から分離されている任意の沈殿物を乱す、入って来る流体を緩和するために、沈殿物を、該流路28と該分離チャンバ30の連通の箇所(28b)から距離を置いた該沈殿チャンバ30の領域30a内に便宜的に集めることができ、また、該沈殿チャンバ30の該楔形状も、該中央リザーバ4からの異なる径方向距離における該流体装置の該円形/ディスク形状の利用可能な領域の利用を最適化するのに役に立つ。
【0073】
この実施形態において、該分離チャンバ30と該バルブ機構8の間に連通している該第一の流路アーム32cは比較的短く、また、該バルブ機構8と該流体分析チャンバ12の間に連通している該第二の流路アーム32bは、該バルブ機構8と該流体分析チャンバ12との間の該分離チャンバ30の径方向の位置に依存している。このようにして、より大きな遠心力と、該バルブ機構8からの圧力とが、以下でさらに説明する、該開示されている方法の培養および測定段階中の該分析チャンバ12の内部の該流体サンプルを保持するのに役立つように組み合わさる。
【0074】
必要に応じて、本願明細書に記載されているこのおよび他の任意の態様及び実施形態において、該流路アーム32dの該内部角部32d’および32d”は、該流体サンプルの該分析チャンバ12への移動または保持に有害に対抗する可能性のある何らかのウィッキング/毛細管力を低減するために、(高い曲率を有する)丸みを付けることができる。同様に、該流路アーム32cの該内部角部32c’および32c”にも90°に近い鋭い角部を避けるために丸みを付けてもよい。当然のことながら、この流路内でのウィッキング/毛細管力を回避するために、わずかな曲率を有する該流路28の該内部角部を形成することも望ましい可能性がある。例えば、約1.5mm幅および0.75mmの深さの流路において、該内部角部は、約0.05~1mmの半径を有する曲率を有していてもよい。いくつかの実施例においては、該曲率半径は、約0.6mmであり、他の実施例では、該曲率半径は、約0.1mm、約0.2mmまたは約0.3mmである。
【0075】
続いて、該流体サンプルがそれによって該容器本体2内に配分される機構についてより詳細に説明するが、該主流体リザーバ4と該流体分析チャンバ12の内の一つの間の該流体系6を通る該流体サンプルが通る該フロー経路に関する概要を、該流体系の上述した要素と関連付けて記載する。
【0076】
該サンプル流体は、最初に該主流体リザーバ4内に配設され、該流体装置1が、該サンプル流体のより小さな部分を該流体系6の各々へ押し進めるのに十分な遠心力を生成する第一の速度で回転され、具体的には、該流体サンプル部分は、該複数の第一の流路28のそれぞれ一つを通って各流体系6に入り、およびそれぞれの分離チャンバ30に入る。この第一の回転速度は、各流路28を充填するために各流体系6に十分な流体を押し進めて、その後該分離チャンバ30を充填し始めて、微粒子物質が該分離チャンバ30内の溶液から出て沈殿することを可能にするのに十分な第一の期間、維持される。使用時において、該回転速度は、該分離チャンバ30に流体サンプルを充填するための時間を可能にするように、およびそうするのが望まれる前に、流体サンプルが、該空気ばね/バルブ機構に向かって前方に押し進められることを防ぐように選択することができる。該沈殿チャンバ30の該径方向内側縁部における堰部30a(または、ダム部/部分的壁部)は、清澄化されるまで/該分析チャンバ12へ向かう該流体の前方への動きが生成されるのが望まれるまで、該沈殿チャンバ30内に流体を保持するように作用する。一旦、沈殿が十分に完了すると、各流体系6内の該流体サンプル部のレベルは、該回転速度を上げることによって上昇させることができる。各流体系6内の清澄化された溶液が、そのそれぞれの堰部30aの上部に到達するにつれて、該溶液は溢れて、関連する第一の流路アーム32cに入る。しかし、この第一の速度は、十分な遠心力を該流体サンプルに与え、該サンプルが、当該容積内のガスの該圧縮により、このとき該バルブ機構8内で生成された反対圧力に打ち勝つことができるようにするには、低すぎるように選択されるため、該流体は、該バルブ8を通って、該第二の流路アーム32dに入ることができない。換言すると、該バルブ機構8に対するサンプル流体の該動きは、圧力間のバランス/差によって制御することができ、すなわち、回転ディスクによって引き起こされる遠心力の差は、液体が該バルブ機構8を通過する前に、該低減されたガス容積によって引き起こされる増加した圧力(過度の圧力)に打ち勝たなければならない。
【0077】
該液体サンプルを該分析チャンバ12に向かってさらに押し込むために、該流体装置1は、該バルブ機構8のガス圧力に打ち勝つのに十分な遠心力を生成する第二のより速い速度で回転され、それにより、該バルブ機構8によってもたらされる「シール」(圧力ブロック)が克服されて、該流体サンプルは、該第二の流路アーム32dに流入することができる。この第二の速度で回転を続けると、該第二の流路アーム32dを通る追加的な流体が押し進められて、該流体サンプルを該流体分析チャンバ12に入れさせて充填させる。一般的に、該分析チャンバ12は、該容器本体2の該支持体に設けられた円筒形のウェルの形態になっている。有益には、本発明の任意の実施形態において、該第二の流路アーム32dは、分析チャンバ12の該ベースに向かって該分析チャンバ12と連通している。このようにして、該分析チャンバ12内へ向かう該清澄化された流体サンプルの動きは、該第二の流路アーム32dおよび分析チャンバ12内の先行のガスが、該分析チャンバ12から出て移動し、および該バルブ機構8に向かって径方向内側に戻ることを可能にする。このことは、該流体サンプルに関して実行すべき該分析の精度/感度を損なう可能性がある、圧力ブロックが該分析チャンバ12内で起きること、および/または気泡が該分析チャンバ12内に捉えられることを回避する。一旦、十分な流体が該バルブ機構8を通過すると、該流体分析チャンバ12および該第二の流路アーム32d内で該流体サンプルを保持するが、(該バルブ機構8のガス圧力による)該流体サンプルの該第一の流路アーム32cへの逆流を防ぐように、該容器1の該回転速度を低減することができる。説明のため、該回転速度を低減することにより、チャンバ8内の空気は、それに対する圧力が少ない場合には、もう一度、自由に膨張できる。このことが起きた場合、チャンバ30内の該流体は、流路28を介して該中央チャンバ4へ押し戻される。このことは、該分析チャンバ12内の該流体と、該分離チャンバ30および中央リザーバ4内の流体との間のエアバリアを形成し、そのため交叉汚染は起きない。さらに、一旦、該分析チャンバ12がガスを排気すると、該液体サンプルを該バルブ機構8に向かって径方向内側に押し込む力は存在しないため、該分析チャンバ12からの流体のどのような逆流も阻止される。
【0078】
該バルブ機構8のゲーティングレベルが、流体を該流路28、32およびチャンバ30を介して該それぞれの分析チャンバ12へ移動させるのに必要な該流体系6内の内部圧力変化を決定することができることは正しく認識されるであろう。そのため、該バルブ機構が空気式バイパス弁または「空気ばね」である実施形態において、該バルブ機構8の容積は、(i)該分析チャンバ12に充填するために、該流体系6を介して押し込まなければならない流体の該量と、(ii)該分析プロセス中の該流体装置1の該所望の回転速度と、を考慮して、流体運動に対して適切な抵抗/ゲーティングをもたらすように選択することができることは正しく認識されるであろう。例えば、(該所定量の液体サンプルの動きにより)該空気ばね内に圧縮された追加的なガスは、遠心力によって打ち勝たなければならない該バルブ機構8におけるガス圧力の比較的小さな増加を引き起こすため、空気バネの大きい容積は、バルブを通った所定の量の流体サンプルを移動するために必要な回転速度を低減する。
【0079】
したがって、この開示の実施形態において、該空気ばねの容積は、該検出チャンバの該容積に適切に関連付けることができ、該検出チャンバの該容積はしたがって、該分析チャンバ12を充填するために十分な流体を清澄化しなければならない該沈殿チャンバ30の該容積に関連付けることができる。したがって、該沈殿チャンバ30の該容積は、適切には、該分析チャンバ12の該容積の約二倍であり、また、該空気ばね8の該容積は、適切には、該沈殿チャンバ30の該容積の約2~4倍の範囲である。例えば、該空気ばね8の該容積は、約150~600μlの該範囲とすることができる。比較すると、該分析チャンバ12の該容積は、約30~150μlの該範囲とすることができ、および該沈殿チャンバ30の該容積は、約60~300μlの該範囲とすることができる。この開示の特定の実施形態において、該空気ばね8は、約400μlの容積を有し、該分析チャンバ12は、約50μlの容積を有し、および該沈殿チャンバ30は、約100μlの容積を有する。この開示の他の特定の実施形態においては、該空気ばね8は、約400μlの容積を有し該分析チャンバ12は、約125μlの容積を有し、および該沈殿チャンバ30は、約200μlの容積を有する。
【0080】
便宜上、フィルタ42と、培地36と、サンプル収容ウェル/リザーバ48(例えば、図1図3および図4を参照)とを収容するための隆起した内側コアを備えた概してディスク状とすることができる、該サンプル容器本体2の全体的な外形を考慮すると、該バルブ機構、例えば、空気ばね8の必要な容積は、特に、本開示の好適な実施形態に従って、該バルブ機構8が、該サンプル容器本体2の該外側領域の径方向の最も内側の部分の比較的小さな容積内に配設されている場合、該サンプル容器本体2の外側領域18の比較的大きな割合をそれ故に包含することができる。したがって、該バルブ機構8(空気ばね)の最大寸法が、概して該流体系の平面内に、すなわち、該容器本体2の軸方向面内に配置されている場合、より多くの表面積が該バルブ機構8によって包含され、また、所望数の流体系6を収容するために、該容器本体2を該径方向により大きくしなければならず、または、該装置に収容できる該流体系6を少なくしなければならない。本開示のいくつかの実施形態において、例えば、該装置1のスタッキングを改善するために、概して平坦な装置1を構成する要望がある可能性がある。しかし、容器本体のサイズの増加は、環境的に(使用されるおよび廃棄する材料(例えば、プラスチック)の量の増加)、および経済的に(例えば、輸送、保管、および該容器本体2との適合性のためだけに必要なより大きな診断/アッセイ装置)等の多くの理由により望ましくない可能性がある。そのため、望ましくは、該装置1および本体2は、最大の所望数の流体系6を保有しながら、特に該径方向に、可能な限り小さく形成することができる。これらの目的と一致して、該バルブ8/空気室が該容器本体の径方向軸に直角であるように、すなわち、該バルブ8の主要寸法が、該容器本体2の該中央領域および主流体リザーバ4を通る該X軸と本質的に平行に配置されるように、該バルブ機構8の向きを構成することが有益に見出されている。したがって、図3および図4に最も良く図示されているように、該流体系6の各々の該バルブ機構8は、該主流体リザーバ4およびサンプル収容ウェル48の周囲に配置されたそれぞれの空気室8によって設けることができる。実施形態において、該複数のバルブ機構8の該空気室は、該首部16の外側壁16aの軸方向下方に配設することができ、具体的には、該主流体リザーバ4およびフィルタ要素42の周囲に円周方向に配置され、および該バルブ機構8の深さの径方向寸法を低減するために、概して軸方向に向けて配向することができる。このようにして、同じかまたは改良された機能性を維持しながら、該容器本体2の該サイズ(特に該径方向寸法)を低減することができる。
【0081】
特定の実施形態において、上述した該流体装置1は、(尿または血液等の)臨床流体サンプルの特性を処理して分析するのに使用されるより大きな全体的システムまたは装置の一部を構成することができる。さらに、この分析は、該臨床サンプル中の粒子状物質(例えば、細菌)の該濃度によって引き起こされる光分散の評価/分析を伴っていてもよい。このようにして、該流体装置1は、該サンプルを提供した感染患者のための適切な治療を特定するために、細菌の該薬物感受性を確かめるのに特に用いることができる。いくつかの実施態様において、該装置は、流体サンプル中の光散乱粒子の該相対濃度を評価するための方法、または、流体サンプル中の光散乱粒子の該量または濃度を評価するための方法に用いることができる。特定の実施形態においては、細菌等の光散乱粒子の「濃度勾配」を測定することができる。
【0082】
次に図3図7に関連して記載されている説明は、細菌薬物感受性を測定するための臨床サンプル分析の特定の用途という観点で、さまざまな態様および実施形態の流体装置1の例示を包含する。しかし、これらの流体装置1が、(前述のような)他の用途を潜在的に有していてもよいこと、および後述する特徴のうちのいくつかを、そのような用途に適応するように結果として変更してもよいことは正しく認識されるであろう。
【0083】
特に図3および図4を参照すると、それらの図面は、図1の該容器本体2(図3)の、および本開示のさまざまな実施形態に従って、臨床サンプル分析での用途のために構成されている該容器本体2(図4)を備えている微小流体装置1の垂直断面斜視図を示している。前述した該サンプル容器の該本体2に加えて、該流体装置1は、成長特性の分析のための該臨床サンプル流体中の細菌の成長を促進する(このような実施形態において、典型的には、固体の形態の)成長培地または培地36をさらに備えている。便宜上、図示されている実施形態の場合、該成長培地は、乾燥され(例えば、凍結乾燥されまたはフリーズドライになっており)、および固体の形態になっている。しかし、粉末化された乾燥成長培地も用いることができ、および該培地は、流体サンプル中での該培地の迅速な溶解に役に立つ可能性がある。具体的には、粉末状の成長培地は、例えば、開かれたときに、該粉末を放出する溶解可能な/分解可能なカプセル内に収容することができる。代替的な実施形態においては、濃縮された液体成長培地を代替的に用いてもよい。該成長培地36は、最初、該図示されている実施形態において、該主流体リザーバ4(図3)の上に(該流体装置1の該中心回転軸Xに沿って)実質的に垂直方向に配設されている該容器本体2の該内側壁部14(図1を参照)内に配設されているコンパートメント38内に隔離されている。
【0084】
該図示されている実施形態において、該成長培地コンパートメント38は、その上部および底部が箔カバー40a、40bで閉塞されており、その結果、該成長培地36は、特に、該サンプルが最初に該流体装置1内に導入されたときに、該流体サンプルからの隔離を確保するために、外部環境から隔離することができる。該箔カバー40a、40bは、該成長培地36を収容する該コンパートメントを密封するための何らかの適当なヒートシーリング技術(または接着剤、溶接)を用いて、それらの所望の位置に(例えば、それぞれのエンクロージャの周囲に)付着させることができる。また、フィルタ要素42も該成長培地36の下に、および該主流体リザーバ4の上に配設されており、および該容器本体2の該内側壁部14の内径に実質的にわたって及ぶように、(例えば、ヒートシーリング、接着剤または溶接を介して)取付けられている。該フィルタ要素42は、該サンプルが該主リザーバ4に入る前に、該サンプル中の(該フィルタ特性によって決まる)所定のサイズを超える不純物をろ過して除去するための機構を形成し、および約100μmの細孔径を有する多孔質膜の形をとることができる。当業者が正しく認識するように、該フィルタの該細孔径は、該フィルタが、該サンプル中の(サイズが最大でも数ミクロンにすぎない)細菌が、該溶解した成長培地とともに該フィルタを通って、該主流体リザーバ4に入るのを可能にするように選択される。しかし、該フィルタは、該サンプル中の塩およびその他の比較的大きな粒子、例えば、貫通した箔の片、成長培地の溶解していない塊、および該サンプルからの大きな人の組織細胞および繊維が通過するのを防ぐように選択される。図5Aに関連して以下で説明するように、実施形態において、該箔カバー40a、40bを備え、および該成長培地36ならびに該フィルタ要素42を収容している該コンパートメント38は、該容器本体2の他のコンポーネントとは別に製造されて、該サンプル容器の組立て中に挿入される内蔵カプセルコンポーネント43または430(図5Cおよび図5Dを参照)内に便宜上、設けることができる。このことは、後に詳細に説明することとする。いくつかの実施形態において、該箔カバー40a、40bは、該培地コンパートメント38を密封する他の手段と置換することができることは正しく認識されるであろう。例えば、該シールは、紙材料、または、該液体サンプル等の流体中で溶解する材料で形成することができる。いくつかの実施形態において、下方シール40bは任意的であってもよく、代わりに、乾燥培地を、該フィルタ要素42によって直接、該培地コンパートメント内に保持してもよい。いくつかの実施形態においては、上方シール40aも任意的であり、省略してもよい。いくつかの実施形態において、該培地は、(濃縮した)液状で設けられる。
【0085】
製造の都合の良い様態において、該流体系6は、該容器本体2の下面に流路および凹部として形成される。そのため、閉鎖系を構成するために、該容器本体2の該ベースに対応する表面領域の設置面積を有するベースカバー44が、アセンブリを閉鎖するように、および該容器本体2の主要部の該下面に形成される該流体系6および流体リザーバ4を覆うように、該流体装置1の該底部に取付けられる。いくつかの実施形態において、該容器本体2には、該容器本体の該周囲から下方に延びている短い壁またはリップ部222を設けてもよく、および該ベースカバー44は、該周囲リップ部間で該容器本体2の該ベースにわたって延在していてもよい。他の実施形態では、該容器本体は、周壁222の代わりに、該容器本体2の該径方向外側部18の周囲に間隔を空けて配置された、下方に突出するペグまたはポストを含んでもよい。適切には、該ベースカバー44はフィルムである。より詳細に後述するように、該ベースカバー44の存在は、該流体系6が、便宜上、該容器本体2を構成する該支持体の該ベースに成形されるため重要である。該ベースカバー44がない場合、該流体系6は、該環境に対して開口することになり、および該流体装置1の使用中に、液体を収容できなくなる。このベースカバー44は、該それぞれの流体分析チャンバ12内での該細菌(または、光散乱能力に対して評価すべき他の粒子状物質)の後の分析を可能にするために、少なくとも該分析チャンバ12(の一部)の軸方向に下の領域において、光学的に透明である。いくつかの実施形態において、該ベースカバーは、例えば、使用時に光学的なネガティブコントロールを与えるためとすることができる分析チャンバ12の下等の特別に定義された領域内の光に対して不透明であってもよい。該ベースカバー44は、ヒートシーリング、超音波溶接、液状接着シーリング等のいくつかの周知の適当なシーリング技術のうちの任意の一つ以上によって、該サンプル容器本体2の下面に取付けることができ、または、該ベースカバー44は、片面/両面接着フィルムを備えていてもよい。
【0086】
どのシーリング技術が利用されるにしても、後に続く分析プロセスに悪影響を及ぼすのを避けるために、高レベルの光学的透明度が維持され、および該ベースカバー44または使用される任意の接着剤からの入射光の反射が(特に、該流体分析チャンバ12をカバーする該領域内において)最小限に確保されることが重要である。加えて、該シーリングプロセスは、該流体装置1の構成要素のいずれか(例えば、該容器内に置かれる任意の薬物)と適合しなければならない(および干渉を避けなければならない)。具体的には、使用時の該液体サンプルの潜在的な汚染を避けるために、該流体系の流路およびリザーバ内の該ベースカバー44の該上面での接着剤または他の化学物質の曝露がないかまたは最小限になることが望ましい。また、すべての流路およびチャンバを完全に密封するために、および該分析チャンバ12を通る安定した光伝送に干渉する可能性のある、該カバー44の波打ち(rippling)または他の不必要な表面効果を軽減するために、該容器本体2とベースカバー44の結合は、可能な限り確実で堅固なものにしなければならないことも正しく認識されるであろう。そのため、該カバー44が取付けられる該容器本体2の表面は、最小限の表面特徴部または凹凸によって、可能な限り平坦にしなければならない。例えば、該平坦性は、約70μm(平面からのピーク偏差)未満、約50μm未満、または、約20μm~40μm未満であることが望ましい。
【0087】
また、該容器本体2および該流体装置1の他の何らかの構成要素を、適切な追加的な製造プロセスによって形成してもよいこと、したがって、いくつかのそのようなプロセスにおいて、該ベースカバー44を該容器本体2の該本体に一体形成して、独立したベースカバー44に対する必要性をなくしてもよいことも想像される。
【0088】
該図示されている実施形態においては、該流体装置1への該流体サンプルの導入を容易にするために、該容器首部16の上方部内に配設され、および該上方部に係合するフィラーインサートまたは漏斗部46も設けられる。図3および図4に示すように、該容器首部16は、円筒形の内側壁16bから径方向に離間された円筒形の外側壁16aを備えている。図示されているように、該内側壁16bは、該流体サンプルが最初、その中に導入される円筒形のサンプルリザーバまたは収容ウェル48を包囲して形成し、そのため、該収容ウェル48は、該円筒形の容器首部16内に同心に配設されている。該図示されている実施形態においては、隣接する間仕切り50の間に、概して楔形状の空間52a、52bを形成するために、(図5Aに最も良く示す)複数の径方向の間仕切り壁50が、該容器首部16内に間隔を置いて径方向に配設され、該内側壁16bと該外側壁16aとの間に延在している。本開示の実施形態において、該空間52a、52bは、該容器首部16の周りで交互していてもよい。
【0089】
該漏斗部46は、該流体サンプルが、該漏斗部46を介して該流体装置1に注入される際に、該流体サンプルを該円筒形のサンプル収容ウェル48内に案内するために、環状周縁54と、該周縁54の径方向内側の下方に突出している環状スカート部58とを備えている。該図示されている実施形態においては、該液体サンプルが、該サンプルリザーバまたは収容ウェル48を過剰充填することによって溢れる可能性を低減するためのオーバーフロー特徴部として作用するように、複数の開口またはスロット60が該環状スカート部48に設けられている。該図示されている実施形態においては、三つのスロット60が該漏斗スカート部58に形成されているが、より多くのまたはより少ない(例えば、一つ、二つまたは四つの)スロットを代替的に設けてもよい。開口流路56aを画定するために、複数の突出部(例えば、壁)56(図5Aに最も良く示す)が、各スロット60の周囲の該漏斗部46の下面から下方に突出して配置されている。該突出部56は、該容器首部16の該空間52aと相補的になるように、および該容器首部の該空間内に収容されるように適切なサイズおよび形状に形成されており、その結果、各開口流路56aは、オーバーフロー流体を、囲まれた収容空間52a内に向けることができる。また、該突出部56は、該漏斗部46を、該首部16内に所望の向きで固定するように有益に作用する。さらに、図5Aの該実施形態に図示されているように、該漏斗部46の該下面には、該首部16の該外側壁16aの径方向内側面に接触するように構成することができる、複数の下方に突出する位置決めフィンまたはピン57を設けてもよい。このようなピン57はさらに、該漏斗部46を該首部16内で該所望の向きで配置して固定するように作用することができる。
【0090】
実施形態においては、図3および図4に図示されているように、該周縁54および/または環状スカート部58の該下面/底面は、該間仕切り壁50の上面に載せることができ、および該環状スカート部58の径方向内側部は、該首部16内での該漏斗部46の位置を正しく定めるように、該容器首部の内側壁16bの上面に載るようにおよび該上面と界接するように構成することができる。また、該漏斗部46は、(図3および図4に図示されているように)いくつかの実施形態においては、該漏斗部が該首部16内に適切に配設された場合に、該空間52bと垂直方向に位置合わせされて、以下で説明する「通気(breathing)」機構の一部を一緒に構成する、環状に離間された開口またはスロット74bから成る第二のセットも含んでもよい。代替的な実施形態においては、専用の通気流路は設けなくてもよく、代わりに、該装置内のガス圧力を大気と等しくすることを可能にするために、通気開口を、該キャップ20の該上部20cに設けてもよい。
【0091】
本開示の実施形態による該流体装置1の該流体サンプルの該フローが、図3に示されている。
【0092】
使用時において、該サンプル流体は、まず該ユーザにより、該円筒形の収容ウェル48に注入され、そして該流体サンプルは、該収容ウェル48に収容され、および該上方箔カバー40aによって、該成長培地36に到達するのを阻止されている。続いて、該上方箔カバー40a(および有している場合、下方箔カバー40b)が穿孔されるかまたは取り除かれた後に、該流体サンプルは、順に、該成長培地36を含む該コンパートメント38を通って、該フィルタ要素42を通って、および該容器本体2の該ベースにおいて該主流体リザーバ4に流入することができる。
【0093】
該サンプルリザーバ48内の該サンプル流体レベルがオーバーフローレベルに達した場合、余分な流体は、該スロット60を介して、行き止まり容積である内部流出チャンバ空間52aに分流されて、その中で保持されることになる(図3の幅広の灰色の矢印を参照)。しかし、他の便宜的なオーバーフロー機構を代替的に用いてもよい。例えば、別の実施形態では、該漏斗スカート部58は、該空間52aの少なくとも一つと連通する一つ以上の周囲流路/開口部を形成するために、その下面が該内側壁16bの該上方縁部の上で軸方向に離間されているように、該内側壁16bの径方向内側に延在していてもよく、および配置することができ、これにより、該収容リザーバ48に装入された該サンプルが、該容器首部16の該内側壁16bと、該収容リザーバ48の該ベースとによって画定された容積を超える場合に、該サンプル流体の余分な量は、該内側壁16bの上方縁部を越えて該空間52a内に流入するようになる。
【0094】
使用時の臨床サンプルの不正確な注入の可能性を低減するために、溢れ出し回収特徴部を設けてもよい。したがって、図1図3および図4に該図示されている実施形態においては、該首部16の外側面から溢れ出す可能性のある流体を捉えて、それを、該外側壁16aと、直立した周壁62aとの間で該外側壁16aの外周に設けられた外部溢れ出しチャンバ62内に案内するために、環状流路または堀部63が設けられている。該溢れ出しチャンバ62が、該外側壁16aを完全に取り囲んでいなくてもよいこと、および該外側壁を完全に包囲する必要のないこと、より適切に言えば、該外側壁16aを完全に取り囲んでいてもよい該堀部63は、溢れ出た流体を、該外側壁16aの一部のみを取り囲む溢れ出しチャンバ62内に流入させることができることは正しく認識されるであろう。図3および図4に図示されているように、該環状堀部63は、便宜上、該容器首部16の下方部と同心でありおよび該下方部を包囲している該周壁62aの短い直立部を備えることによって形成されている。したがって、これらの実施形態における該周壁62aは、部分的に囲まれた流路を形成するために、該チャンバ62の上面に延在している。図5Aおよび図5Bに図示されている該実施形態等の代替的な実施形態においては、該周壁62aが、直立した周囲突出部を含んでいないため、該環状堀部63が無く、およびこのオーバーフロー形状構成を省くことができ、または、該首部16の該外側壁16aの径方向外側の代替的な流体捕捉容積/溢れ出しチャンバ62bによって設けてもよい。例えば、図5Bに図示されているように、本開示のさまざまな実施形態において、該溢れ出しチャンバ62bは、該首部16の該外側壁16aと、該切欠きセグメント24の該径方向内側面上の該角度の付いた壁部25との間の空間内に配設することができる。溢れた流体が該溢れ出しチャンバ62b内に入ることができるように、該溢れ出しチャンバ62bの該上部壁内の開口部(図示せず)を設けてもよい。
【0095】
図5Aおよび図5Bはそれぞれ、本開示の別の実施形態による流体装置1の分解斜視図と、該キャップ20が(完全に係合されてはいないが)該容器本体2の該首部16に取付けられたときの図5Aの該流体装置1の垂直断面図とを示し、同様の特徴が、図3および図4の該実施形態に関連して用いられているのと同じ参照数字によって識別される。図5Cおよび図5Dはそれぞれ、同じ参照数字が、類似の形状構成を示すのに用いられている、本開示の二つの別の実施形態による流体装置1の分解斜視図を示す。
【0096】
図6Aは、図5Aおよび図5Bの該キャップ20の詳細な分解図を示し、一方、図6Bは、図4の該実施形態によるキャップ20の追加的な詳細を記載している。図7Aは、図5Cおよび図5Dの該キャップ200の詳細な分解図を示し、一方、図7Bは、下から見た場合の該キャップ200の追加的な詳細を記載している。
【0097】
前述したように、該キャップ20、200は、該容器首部16に嵌るようなサイズおよび形状に形成され、および該首部16の内部容積を覆うように構成された上方面20cと、下方に突出している環状壁20b、200bとを有し、該環状壁の内側面は、該容器首部の外側壁16aの該径方向外側面に設けられた該外側(雄型)ねじ山22aと相補的であり、および該ねじ山に螺合するように構成されている複数の雌型の(内側に突出した)ねじ山20a、200aを画定している。それにより、該ねじ山22a、20a、200a間の螺合は、該キャップ20を、ねじで該容器首部16に取付けて固定できるようにする。消耗品が再使用されるのを回避するために、および/または潜在的に汚染されるサンプルが、使用中または使用後に該流体装置1から漏出するリスクを最小限にするために、ロッキング機構を相補的な特徴部のペアとして設けてもよく、そのうちの一つは、該キャップ20、200上に設けられ、また、そのうちの一つは、該容器本体2に設けられる。該図示されている実施形態において、該ロッキング機構は、相補的なラッチ構成部64a、64bのペアを備え、すなわち、該キャップ20の下方内側面の一つ(図6Aおよび図7Bに最も良く示される64a、)と、該外側壁16aの該外側面の下方部の対応する一つ64b(図5A図5Cおよび図5Dに最も良く示される特徴部64b)とを備えている。該相補的なラッチ特徴部は、一旦、該キャップ20、200が、その所定の最終的な位置にねじ込まれると、該ラッチ構成部64a、64bが互いに係合して、該キャップ20、200を該容器首部16の定位置に確実に固定するように適切に構成されている。
【0098】
正しく認識されるように、使用される、すなわち、該容器本体2に装入される液体サンプルの該容積を計測することが重要であり得る。例えば、分析/アッセイのために、任意の細菌を該流体装置1内で最適に成長させることができるように、所定の容積/量の臨床サンプルを、所定量の成長培地と混合することが望ましい。このことを考慮して、図4図5Bおよび図6Aの該実施形態では、培地と混合されて、該主流体リザーバ4に装入された臨床サンプルの該容積を計測するために、該キャップ20は、該容器首部16内に設けられた該円筒形の収容ウェル48内に実質的なシーリングフィットを構成するようなサイズおよび形状に形成されている内側円筒状延長部、プランジャまたはプラグ66を備えている。図5Bおよび図6Aの該図示されている実施形態において、該プラグ66は、該収容ウェル48の該内面と接触するシーリングを構成する、弾性的な外側に突出するリップ部またはスカート部66aを含む。さらに、該プラグ66の深さは、該キャップ20が、該容器本体2の定位置に完全にねじ込まれたときに、所望の所定量の容積の液体サンプルを該収容リザーバ48から該主流体リザーバ4内へ移動させる距離だけ、該プラグ66が該収容リザーバ48に向かって下方に動くように、該プラグ66(または、収容リザーバ48)の断面積を考慮して便宜上、構成することができる。他の実施形態では、該プラグ66とスカート部66aは、該収容ウェル48から該流体リザーバ4内へのサンプル流体の流出を促進するように作用することができるが、所定の「計測」機能は有していなくてもよい。別法として、図7Aおよび図7Bの該キャップ200の実施形態に図示されているように、プラグ66は、該キャップ200の該下面に設けられていない。これらの実施形態において、液体サンプルは、使用時の重力、毛細管力および遠心力の下で、該収容ウェル48からフィルタ42を介して該主流体リザーバ4内へ流入させることができる。このような実施形態において、該主流体リザーバ4に入る流体の量は、該主流体リザーバ4の該容積によって良好に制御することができる。
【0099】
臨床サンプルと該成長培地の混合の時間を制御するために、例えば、図4および図5Aの該実施形態に図示されているように、複数の、角度が付けられた/尖ったフィンまたは突出部68が、該円筒形プラグ66の下面に形成され、および該下面から延びている。別法として、図5C図5D図7Aおよび図7Bの異なる実施形態に図示されているように、複数の、角度が付けられた/尖ったフィンまたは突出部68が、該キャップ200の該下面に形成され、および該下面から延びている。一旦、該液体サンプルが、該収容リザーバ48内に装入され、および該キャップ20、200が該容器首部16にねじ込まれると、該突出部68は、該液体収容リザーバ48およびサンプルを通って垂直方向の下方に進み、最終的に、該上部箔カバー40aを貫通し、それにより、該円筒形の収容ウェル48内のサンプル流体が下の該コンパートメント38に入って該成長培地36と混合することが可能になる。該キャップ20、200がさらに回転させられて下方へ移動させられると、その後、該突出部68が該底部箔カバー40bを貫通し、それにより、流体サンプルと成長培地36の該混合物が該コンパートメント38から出て、該フィルタ要素42を通って、該容器本体2の該ベースにおける該主流体リザーバ4に入ることが可能になる。有益には、該キャップ20、200を回転させて、それをさらに該容器首部16にねじ込むプロセスにおいて、該突出部58は、(該底部箔カバー40bを貫通する前に)該サンプル流体と成長培地の混合物を撹拌しおよび/または掻き混ぜて、該成長培地をより小さく細分化するのを補助し、および該サンプル流体中での混合性および溶解を改善するという追加的な機能も実行できる。この趣旨で、該突出部68は、サンプル流体と培地の混合を改善するために、ブレードまたはフィンとして形成することができる。有利には、該突出部68は、該チャンバ38の該壁部に固着する可能性のある培地を取り除くことによって、該成長培地36と該サンプル流体の混合をさらに促進するために、該成長培地コンパートメント38の側部を掻き取るように構成される。
【0100】
該キャップ20、200が該首部16を越えて下方に進むにつれて、液体サンプルの増加する容積が該フィルタ要素42を通って、該主流体リザーバ4に押し込まれる。該主流体リザーバ4が液体サンプルで完全に充填されることと、気泡の捕捉が回避されることとを確実にするためには、該主流体リザーバ4と連通する空気/流体放出機構52b、74bを設けることが有益である可能性がある。図4および図5Bの該キャップ20がさらに下方にねじ込まれていく際、液体サンプルは、フィルタ要素42および放出チャンバ52bを通って上に行った後、開口部74bを介して該漏斗部46の該周縁54から出ることにより、該容器本体2から漏出できるようになっている空気を移動させることによって、該主流体リザーバ4を充填し続ける。すべての空気が移動されることを確実にするためには、該リザーバ4の該容積を充填するのに必要な量よりも多い液体サンプルを該主流体リザーバ4に押し込むことが有利である。また、余分な液体サンプルも、(上述した)空気と同じ該放出機構52b、74bを介して該主流体リザーバ4から漏出することができる。この目的のために、該チャンバ52bの該底部は(該チャンバ52aとは違って)閉じられていない。さらに、この放出機構は、使用時に、サンプル流体が該流体系6を充填するためにリザーバ4から径方向外側に移動させられたときに、ガス(空気)が該リザーバ4へ戻ることを可能にするように作用し、その結果、該流体系6の動作に害を及ぼすであろう真空が該リザーバ4内に形成するのが回避される。そのため、該放出機構は、リザーバ4内の空気圧力が大気圧と等しくなることを可能にする。
【0101】
代替的な実施形態においては、図5Bおよび図6に図示されているように、該漏斗部46内にスロット74bはなく、代わりに、液体の漏出を防ぐためにガス透過性膜75(図6を参照)によって都合良く覆うことができる該プラグの該下面における一連の開口/オリフィス74”を介して該キャップ20を貫通するガス放出機構が設けられている。別法として、任意のこのような実施形態において、該プラグ66の端部は、例えば、複数の個別のオリフィス/通気穴74”を設ける必要性を避けるために、ガス透過性の流体不透過性膜によって全体的にまたは部分的に形成してもよい。このような実施形態および同様の実施形態においては、大気圧と等しくすることを可能にするために、該キャップ20の上面20cに、(該キャップ20の別の実施形態を示す図7に示すような)さらなるオリフィス74aを設けてもよい。このようなオリフィスもガス透過性膜21によって覆うことができる。
【0102】
図5C図5D図7Aおよび図7Bに図示されているような、該キャップ200および容器本体2の他の代替的な実施形態においては、例えば、関連する開口部74bを備えた専用の放出チャンバ52bを設けなくてもよい。代わりに、該サンプル収容ウェル48および主流体リザーバ4と連通する、該キャップ200の上部を通って設けられた一つ以上の開口(または、オリフィス)74aを備える、空気漏出および圧力均等化のためのよりシンプルな機構が設けられ、その結果、空気または他のガスは、該収容ウェル48から直接漏出することができる。該一つ以上の開口部74aは、前述したのと同様の方法で、疎水性フィルタ/ガス透過性膜75で都合良く覆われる。また、さらなる圧力放出膜21が該疎水性膜75の上に設けられてもよい。しかし、他の実施形態では、膜75および21の一方のみがあってもよく、このことは、流体の不必要な動きを防ぐのに十分である。いくつかの実施形態においては、例えば、特徴部21は、ラベルとすることができる。
【0103】
有利には、本開示の実施形態において、該キャップ20、200の任意の該プラグ66および突出部68は、該キャップ20、200が該容器本体2に完全に係合して取付けられたときに、該突出部68が該フィルタ42に到達しない/接触しない、すなわち、望ましくないであろう、予期せずに該フィルタ要素42を貫通したり穿孔したりすることを避けるために、該突出部68の先端が、該底部箔カバー40bと該フィルタ42との間の軸方向の空間内に留まるようなサイズで形成される。
【0104】
ユーザが、意図する利用の前に、(結果として起こる汚染のリスクを伴って)該フィルムまたは箔蓋部40a(存在する場合)を予期せずに貫通させて、該培地を該環境に晒すことを避けるために、一つの実施形態による図4および図6Bの該実施形態に、別の実施形態による図5Aおよび図5Bの実施形態に、および別の実施形態による図5Cの実施形態に図示されているように、安全性(汚染防止)手段70を都合良く設けることができる。該安全性手段は、適切には、(図4および図6Bの該図示されている実施形態においては)該キャップ20、200の下方の外周壁20bと一体形成され、および該容器首部16の周りに嵌合するように構成されている環状スペーサストリップまたはカラー70の形態になっている。その結果、該キャップ20、200が該容器首部16に係合された場合、該カラー70は、該キャップ20、200の垂直方向下に配設される。図4に示すように、該カラー70の幅は、該カラー70が定位置にある状態で、該キャップ20が該容器首部16にねじ込まれた場合に、該キャップ20、200が、該プラグ66の該下面から突出している該突出部68が該上部の箔カバー40a(または、代替的に設けてもよい他のカバー要素)を貫通できるのに十分な遠い所までねじ込まれるのを該カラー70が阻止するようなサイズに形成される。したがって、この機構は、該成長培地36が、使用前に、該大気および潜在的な汚染源に不注意に晒されないことと、該蓋部が該容器本体2に確実に取付けられた状態で該アッセイを実行しようとするまで、該サンプル流体および該成長培地36の分離が維持されることとを確実にする。適切には、使用時に、該流体装置1がその中に装填される該アッセイ装置は、例えば、該キャップ20、200が十分に密封され、および任意の臨床サンプルを適切に収容するように該容器本体2に固定されることを確実にできるようにするために、該キャップ20が該容器本体2に完全に係合されるまで、該流体装置1を受け入れないようにおよび/または該流体装置とともに作動しないように構成することができる。
【0105】
したがって、該キャップ20、200と容器本体2を完全に係合してアッセイを開始するためには、例えば、図4および図6Bの該実施形態においては、該カラーを該キャップ20、200の壁部20bから引っ張るか/引きちぎることによって、該カラー70を取り除かなければならない。この目的のために、該カラーには、把持/使用の容易さのためのプルタブ70aを設けることができる。有利には、カラー70とキャップ側壁20bとの接合は、十分な力を要することなく、該カラーを取り外すことが可能になるように、ミシン目が入れられているか、または、別の方法で脆弱化されている。例えば、ユーザが、彼自身/彼女自身が手動で、該カラーを該キャップ20、200から取り外すことができることが概して好適である。別法として、図5A図5B図5Cに図示されているように、該カラー70は、該キャップ20、200とは別に設けてもよい。このことは、該カラー70を、(必要に応じて)該キャップ20、200とは異なる材料で形成することができることを、例えば、該カラー70を、ボール紙等のリサイクル可能な材料で形成してもよいことを有益に意味している。加えて、該カラー70を該キャップ20、200とは別に設けると、該カラー70を該ユーザによって取り除くことができるという容易さが増す。一旦、該カラー70が該キャップ20、200から取り除かれると、該キャップ20、200は、その場合、通常の用途のために、該容器本体2に確実に取付けることができる。さらに、図5Aおよび図5Bの該実施形態においては、堀部の上方壁62a(および堀部62)がなく、このことが、最初に該キャップ20を(部分的に)緩めることなく、該カラー70を取り外すことを可能にすることに留意すべきである。
【0106】
しかし、当業者が想像することができる、該キャップ20、200と該容器本体2の望ましくない時期尚早の完全な係合を防ぐための他の何らかの適当な機構を代替的に用いてもよいことが正しく認識されるであろう。有益には、このような代替的な機構は、該装置を利用することが所望されるまで、該突出部/ブレード68が該サンプル収容ウェル/リザーバ48に十分に到達して、該上方カバー40a(または、使用してもよい他のカバー)を貫通することなく、該キャップ20、200を(必要に応じて)該容器本体2に保持できるようにすることが可能である。
【0107】
図6A図6B図7Aおよび図7Bに示すように、該キャップ20、200の該外側周壁20bは、該キャップ20、200を回転させて、それを該容器首部16に固定するときに、ユーザが該キャップ20、200を掴む能力を向上させる、その周りに放射状に離間された複数のタブまたは隆起部72を備えている。特に、該図示されている実施形態において、該キャップ20、200の該上面20cは、圧力通気口として作用する、圧力除去膜21によって覆われた一連の貫通開口部/オリフィス74aを備えている。一方、図7Aおよび図7Bの該実施形態においては、該オリフィス74aは、疎水性膜75で追加的に覆われている。該キャップ20、200は、該容器首部16の定位置に固定されるように下方へねじ込まれるが、該開口部74aは、該首部16、チャンバ52bおよび/または中央リザーバ4に収容されているガスが、本開示の実施形態に従って異なる経路で該装置1から逃げることを可能にしている。前述したように、図3および図4の該実施形態によれば、該リザーバ4からのガス放出は、チャンバ52bと、該漏斗部46の該周縁54に設けられた通気開口74bとを介して進行する。別法として、図5A図5Bおよび図6の該実施形態によれば、該リザーバ4およびウェル48からのガス放出は、該プラグまたはプランジャ66の該底面の通気口/開口部74”と、図3および図4の場合と同様に、(該プラグ66の径方向外側ではなく)該プラグ66の径方向内側の該容積と連通するように配置されている該オリフィス74aとを介して進行する。図7Aおよび図7Bの該実施形態によるまた別の代替例においては、該リザーバ4およびウェル48からのガス放出は、該キャップ200の上部を通るオリフィス74aを介して直接的に進行する。したがって、該キャップ20、200および/または漏斗部46またはプラグ66のこれらの開口部74aは、協力して、該キャップ20、200の取付中に、および該キャップ20、200が定位置に固定された後に、組立て済みの装置1内で生じる可能性のある該圧力を調節/放出するのを促進する。
【0108】
図8は、該容器本体2および該キャップ20、200を備える該流体装置1を製造するのに用いられる方法300のさまざまなステップを説明するフロー図を示す。好適な方法は、該キャップ20、200の、および該容器本体2のさまざまな構成要素の別々の製造を包含することに留意されたい。典型的には、これらの個別の構成要素のすべては、まとめて組立て済みの流体装置1としてエンドユーザに提供される。しかし、特定の構成要素部材を別々にまたは独立した形で供給できることが想像され、例えば、異なる臨床サンプルを利用できるようにするために、および異なるアッセイを実行できるようにするために、該培地および/またはフィルタ構成要素を独立したユニット43として提供することが可能である。
【0109】
図5Aに図示されている)一つの適切な実施形態において、該カラー70は、まず、該キャップ20の残りの部分とは独立した要素として形成されおよび成型される。いくつかの実施形態において、ステップ305において、該カラー70は、代わりに、完成したキャップ20を形成するための取外し(引き剥がし)可能なストリップとして、該キャップの該残りの部分と(例えば、成型により)一体形成して製造することができる。ステップ310において、該容器本体2は、具体的に設計された型を用いて成型してもよい。このステップは、個別の流体系6を、該容器本体2の該径方向外側部18を形成する該支持体の一部の下面に成型することも包含する。
【0110】
また、カプセル43、430および該漏斗部46、460も、この段階で成型することにより、独立して製造される。
【0111】
続いて、ステップ315において、該成長培地36が、該カプセル43、430内に配置され、該カプセルの内部に密封される。便宜上、該底部箔カバー40bが、まず該カプセル43、430内で定位置に密封されまたは溶接され、その後、該成長培地36が、該箔カバー40bの上部に載せられて、最後に、該上部の箔カバー40aが、定位置に密封されまたは溶接されて、該コンパートメント38が完成されて、および該成長培地36が外部環境から隔離される。そして、ステップ320において、該フィルタ要素42を該底部箔カバー40bの下の定位置に密封または溶接することができる。別法として、いくつかの実施形態においては、該成長培地6を収容している独立したカプセル43、430の形成を要することなく、代わりに、該カプセル43、430に収容されている該個別の要素を該主容器本体2に直接組み込んでもよい。このような実施形態において、該底部箔カバー40bは、該容器首部16内の定位置にシールまたは溶接され、該成長培地36は、該箔カバー40bの上部に載せられ、そして、該コンパートメント38を完成させて、該成長培地36を該外部環境から隔離するために、該上部の箔カバー40aが定位置にシールされまたは溶接される。ステップ320において、該フィルタ要素42は再び、該底部箔カバー40bの下の定位置にシールまたは溶接される。いくつかの実施形態においては、既に述べたように、該成長培地6は、乾燥ペレットまたはカプセルではなく、粉末または濃縮した液体として供給してもよい。当業者には正しく認識されるように、該カプセル43、430は、上述されているものと異なる順序で組み立ててもよく、およびどのような製造の代替的な順序も、本態様および実施形態の範囲に入ることが意図されている。例えば、図5Aに図示されているように、該カプセル43は、下から該サンプル収容ウェル18と連通させて配置してもよく、それに対して、図5Cおよび図5Dに図示されているように、該カプセル430は、上から該サンプル収容ウェル18内に配置してもよい。望ましくは、該カプセル43、430の該製造は、「クリーンな」条件下で実行される。いくつかの実施形態においては、該カプセル43を「無菌の」条件下で製造することが好適である。
【0112】
該キャップ20、200、容器本体2および流体系6、漏斗部46、460およびカプセル43、430は、代替的に、任意の適当な方法で、例えば、3Dプリンティング/付加製造法によって、または、それらの都合のよい組合せによって製造することができることは正しく認識されるであろう。
【0113】
次に、ステップ325において、検査すべき該薬物/抗生物質が、必要に応じて、各流体系6内の(例えば、該流体分析チャンバ12内の)それらの各位置に載せられる。便宜上、最終製品においては、少なくとも該薬物/抗生物質は、例えば、最初に該流体分析チャンバの該ベース上に載せられて、そこで乾燥される結果として、乾燥形態になっている。このことは、該サンプル容器が、長期間(例えば、最長で2年、最長で12ヶ月、最長で6ヶ月、または、約1ヶ月~3ヶ月)未使用のままであっても、該薬物が有効のままであることを確保するのに役に立つ。しかし、当業者には正しく認識されるように、他の形態/投与量の薬物/抗生物質を、優先度または適合性に従って用いてもよく、例えば、該薬物は、該液体サンプル中に溶解される該流体系6の領域内に配置される紙(例えば、ろ紙)の上に載せてもよく、または、該薬物は、液状に存在していてもよい。一旦、これらのすべての個別要素、すなわち、漏斗部46、460および(必要に応じて)成長培地カプセル43、430が形成されると、ステップ335において、該完成する流体装置は、該漏斗部46、460を該容器本体2の該首部に挿入し、および、該カプセル43、430を、該容器本体2の該下側の、または、図5Cおよび図5Dの該実施形態においては、該容器本体2の上部側の、収容領域に挿入することによって組み立てられる。該個別の構成要素のすべてが該サンプル容器本体2に組み込まれると、ステップ335において、該ベースカバー44が該サンプル容器本体2の該底部に密封されまたは溶接される。しかし、該漏斗部46、460は、実際には、該プロセスの異なる段階で(例えば、該ベースカバー44が取付けられた後に)挿入してもよいことは正しく認識されるであろう。有利には、該ベースカバー44は、使用時に、流体が該流体系6から漏出するのを防ぐように、液密シールが、該流体系6のすべての流路およびチャンバの縁部周囲に形成されているならば、都合の良い手段によって該容器本体2の該下面にシールすることができるフィルム/シート材料である。該容器本体2への該カバー44の適切なシーリングは、何らかの公知の処理、例えば、圧力検査によって検査することができる。そして、ステップ340において、該最終的な流体装置1は、該容器本体2および挿入体を、それぞれのキャップ20、200およびカラー70と結合した後、流通の準備のために(潜在的には、より大きなバッチの容器の一部として)包装することによって組み立てることができる。
【0114】
必要に応じて、場合により、追加的な構成要素をパッケージングとともに含めてもよく、それらの構成要素は、流体装置1の対応するバッチ、および/または後に実行しなければならない該分析および処理の詳細に関連する情報を含んでいてもよい。このような追加的な情報は、所望される場合、メモリースティック、チップまたはRFIDタグの形で記憶させることができる。
【0115】
一旦、該エンドユーザに該流体装置1が提供されると、該キャップ20、200を取り外して、該カラー70を該キャップ20、200から分離することにより(キャップ20、200とカラー70が別々に形成されている場合は、該カラー70を該容器本体2の該首部16から取り外すことにより、または、該キャップ20と一体形成されている場合には、該カラー70を該キャップ20から取り外すことにより)、所望の(または、指示された)レベルまで、サンプル流体を該容器本体2に(すなわち、該収容ウェル48内に)注入することにより、および該キャップ20、200を、該容器本体2の該首部16を覆って定位置に固定することによって、該サンプル流体が該流体装置1に移送されて該流体装置内に収容され、すなわち、サンプルが中に収容された状態の該流体装置1は、その後、アッセイ(診断/検査)装置内に配置して、(細菌の成長を促進するための適切な濃度の成長培地を含有する)上手く混合されたサンプル部分が各流体系6内に配分され、および一部は、後の分析のために、該それぞれの流体分析チャンバ12によって最終的に保持されることを確実にするように、一連の回転運動段階を介して駆動することができる。このような回転運動は、典型的には、該流体装置1を、例えば、より大きなプログラム可能な分析装置/デバイスの一部として、それと操作可能に結合されるモータまたは他のプログラム可能な駆動機構を用いて駆動されるであろう。
【0116】
次に、臨床サンプルの分析のための該サンプル(再)配分プロセスのさまざまな段階について、図9A図9Eに示す該サンプル容器本体2の概略スナップショット平面図および図10の該フロー図に示す方法500を参照して説明する。
【0117】
該プロセスは、該キャップ20、200を該容器本体2に取付けることによって、該流体サンプルと成長培地の混合物が該主流体リザーバ4内に既に配設されているステップ505(図10を参照)で始まり、この段階は、図9Aに示されている。次いで、最初の回転「混合」段階が、ステップ510において実行され、この場合、該流体装置1は、該流体サンプル中での徹底的な慣性混合および溶解を促進するために、往復または振動回転を受け、すなわち、該サンプル容器の交互の時計回りのおよび反時計回りの回転が、第一の速度で(例えば、約250rpmから最高で約1,500rpmで、例えば、約500rpmで)、および第一の期間(典型的には、約30秒から一分、最長で約10分間)にわたって駆動され、このプロセスは、図9Bに図示されている。例えば、五回の往復サイクルを、各方向において5秒間、五回繰り返して実行することができる。
【0118】
一旦、該成長培地36が、該流体サンプル中で十分に混合されて溶解されると、配分および清澄化回転を実行できる第二の段階がステップ515で実施され、この場合、該流体装置1は、第二のより速い回転速度(最高で約1,800~3,000rpm)で、第二の期間(例えば、約10~30秒)にわたって、一方向(該図示されている実施形態においては、時計回り)に回転される。実施形態において、該清澄化回転は、約15秒間の約2,600rpmの速度とすることができる。この回転運動は、該主流体リザーバ4内の該流体サンプルへの遠心力の生成および印加をもたらして、該各第一の流路28の径方向外側に沿って該流体サンプルを強制的に流して、各流体系6の関連する分離チャンバ30内に押し込む。ステップ520において、この段階での延長された回転は、該各分離チャンバ30内に存在する該流体サンプルが、該チャンバの径方向外側において、より大きな粒子状物質の沈殿物として清澄化することを可能にするであろう。この段階での該回転の速度は、該流体を該分離チャンバ30からさらに内側に押す該流体への力と、該バルブ機構(空気ばね)8内の該圧縮ガスによって及ぼされる圧力を均衡させるように選択され、このことは、図9Cに図示されているように、該流体サンプルが、関連する堰部30aから溢れて該第二の流路32の該各第一の流路アーム32cに入るのを阻止する。次に、ステップ525において、該サンプル容器は、第三の段階において、さらに速い速度(1,900rpm超え、例えば、約2,800~4,500rpm)で、第三の期間(約10~30秒)にわたって回転される。実施形態において、この分析チャンバ充填高速回転は、約4,000rpmの速度で、約15秒間とすることができる。しかし、選択された回転速度を、特定のバルブ機構8(例えば、該空気ばねの該容積)に適合させることができ、このことから、それが、該バルブ機構8を通って該流体サンプルを押し込むのに必要な力を決定づけることが正しく認識されるであろう。このより速い回転運動の結果として生成された該遠心力は、該主流体リザーバ4内に存在する残りの流体サンプルの実質的にすべてを該個別の流体系6へ押し進め、次に、このことが、該分離チャンバ30内に既に存在していた該清澄化された流体を、該第二の流路32の該第一の流路アーム32c内へさらに(径方向内側に)移動させる。それにより、該第一の流路アーム32cを充填する該流体によって該バルブ機構8に圧力が及ぼされ、この圧力は、該バルブ機構の貯蔵チャンバ内に収容されている該圧縮ガスによって及ぼされる反対の圧力に打ち勝つのに十分に高く、その場合、該流体サンプルは、該第二の流路アーム32dを通って、その後、該流体分析チャンバ12に流入することができる。このことは、図9Dに図示されている。
【0119】
該第三の期間の終了時においては、十分な流体が、該それぞれのバルブ機構8を通過して、(該分析チャンバ12内に存在していたガスが、該バルブ機構/空気ばね8から押し出されおよび押し戻される状態で)該関連する流体分析チャンバ12を充填している。この段階において、該回転運動は、ステップ530において、この開示におけるどの該態様および実施形態においても、第四の速度(例えば、約3,000rpmから、約1,300rpm~1,500rpm)まで低減することができる。この速度で、該バルブ機構8内の該ガスは膨張し、該分離チャンバ30から径方向内側への該流体の運動に打ち勝つのに十分な圧力を再度提供することができ、その結果、図9Eに図示されているように、該バルブ8の第一の側(分離チャンバ30)の流体と、該バルブ8の第二の側(分析チャンバ12)の流体との間に物理的なガスバリアを形成する。この段階においては、該流体サンプル中で検査すべき該薬剤の溶解性に依存して、該分析チャンバ12内の該サンプルを、検査のために用意することができる。別法として、(該分析チャンバ12内に収容された)該流体サンプル中の該薬物/抗生物質との徹底的な混合および該薬物/抗生物質の溶解を促進するために、中間的な(第四の)回転プロセスを実施してもよい。例示として、該流体装置1は、この第四の速度で、および(例えば、数分程度の)第四の期間にわたって、時計回りおよび反時計回りで交互に再び回転させてもよい。回転方向のこの周期的な反転は、該流体の方向をそれに応じて変化させ、それによって、該流体サンプルと、(この実施形態においては)該流体分析チャンバ12内に既に置かれている該それぞれの薬物の慣性混合を促進する(図9E)。当然のことながら、いくつかの用途においては、対照サンプルは、該分析チャンバ12内で抗生物質または他の薬物に晒されない。本願明細書に記載されているどの実施形態においても、(例えば、約4mmの幅と、約4mmの深さを有するように該分析チャンバを構成することにより)該分析チャンバの該幅と、該分析チャンバの該深さを略一致させることにより、特に円筒形状のウェルと関連して慣性混合を改善することができることが分かっている。典型的には、該分析チャンバは、検査される所望の容積と、該装置1の所望のサイズとに依存して、約3mm~約8mmの幅および深さを有することができる。有益には、該幅および深さは、ほぼ同じ長さである。
【0120】
該流体サンプルが、それらの各薬物と適切に混合された後、ステップ535において、該流体系6の各々の中の個別の(薬物が投与された)サンプル部分が、光源に晒されることによって分析され、粒子状物質、例えば、各サンプル中に存在する細菌によって引き起こされる光散乱の量が、時間の関数として測定されまたは単に検出される分析段階を実施することができる。サンプルによる該光散乱の量の変化、および具体的には、経時的な光散乱の減少は、該流体サンプル中に存在する粒子状物質、特に細菌の該量(例えば、濃度)を示すことができ、そのため、有益には、検出された光散乱の該量の低下は、該サンプル中に存在する関連の菌株の、当該サンプルを投与するのに用いられる該薬物に対する、または、該薬物の該濃度に対する該感受性を示すことができる。薬物の異なる種類および濃度に対する、所与のサンプル中の該細菌の相対的な感受性は、上述した流体装置1および方法300を用いることによって確かめることができ、それにより、検査すべき薬物の各種類および/または濃度は、該流体系6の異なる一つに供給される。いくつかの実施形態において、該光散乱の量は、サンプル中の細菌の相対濃度に、または絶対濃度にも比例する可能性があり、および該散乱した光の量に基づく適切なアルゴリズムによって測定することができる。
【0121】
例えば、図1図5Dに図示されている該流体装置1を用いる一つの実施形態において、該容器本体2は、19の個別の流体系6を備えることができる。このことは、任意の数の異なる検査を、最大で19まで実行できるようにするであろう。いくつかの実施形態においては、一つの特定の薬物を、例えば、該それぞれの分析チャンバ12内の異なる濃度の範囲で、同じ流体サンプルに対して複数回、検査することができる。他の実施形態では、複数の異なる薬物を、それぞれ一つ以上の濃度で、該同じ流体サンプルに対して検査することができる。また、陰性および陽性の検査比較も実行することができる。例えば、最大で19の検査ウェルを設けることにより、以下の検査、すなわち、(a)最大でそれぞれ三つの異なる濃度での、五つまたは六つの異なる薬物(または、薬物の混合物)、(b)最大でそれぞれ二つの異なる濃度での、七つまたは八つの異なる薬物(または、薬物の混合物)、または(c)それぞれさまざまな異なる濃度での、さまざまな薬物(または、薬物の混合物)の検査を実行することが可能である。これらの三つの事例の各々においては、最小で一つのコントロールシステムと、少なくとも二つのコントロールシステム(例えば、何の薬物も存在していない流体系、すなわち、典型的には、薬物を含有していない一つのポジティブコントロールと、該チャンバが光学的に不透明になっている一つのネガティブオプティカルコントロール)を、比較目的のために保有することができる。他の実施形態では、トリクロサン等の殺菌性の化学物質を該流体系のうちの一つに配置することにより、生物学的ネガティブコントロールを、該光学的ネガティブコントロールの代わりに、または、該光学的ネガティブコントロールに加えて含めてもよい。要約すると、一つの臨床サンプルの最大で18の異なる薬物/薬物用量に対する効果を、各流体装置1を用いて検査することができる。検査すべき特定の薬物、および検査すべき特定の薬物濃度は、該装置が使用される国/地域に、および/またはスクリーニングされる疑わしい医学的指標(medical indication)および可能性のある細菌感染に依存する可能性があることは理解されるであろう。
【0122】
図9A図9Eに図示されている該流体装置1を用いる別の実施形態においては、該サンプル容器は、24の個別の流体系を備えていてもよい(例えば、この実施形態において、該容器本体のベースは、どのようなセグメントまたは切欠きも要せずに、完全な円形を構成する)。この場合、最大で三つの、比較のためのコントロールシステムを維持しながら、最大で七つの異なる薬物の三つの異なる濃度を検査することができる。換言すると、一つの臨床サンプルの最大で23の(または、より少ないコントロールシステムが用いられる場合には、それ以上の)異なる薬物用量に対する該効果を、各流体装置1を用いて検査することができる。
【0123】
別法として、そうしないで、該サンプル容器のサイズをさらに低減してもよく、および該容器本体2は、わずか16のさらには八つの個別の流体系6を備えていてもよい。このような容器は、より少ない物理的スペースを占めるであろうが、当然のことながら、より少ない範囲の薬物用量(すなわち、より少ない薬物種類および/または濃度)を検査できることを意味する。このような装置は、例えば、プラスチック材料の使用および廃棄を低減しながら、より多くの対象を絞った検査および分析に対して有益である可能性がある。
【0124】
薬物および薬物濃度の選択は、該装置の意図した最終用途に従って、当業者が行うことができることは正しく認識されるであろう。該流体装置1が、患者または被験者の尿を含む臨床サンプルを検査するのに用いられる、および具体的には、該流体装置1が、尿路感染症(UTI)の治療に用いるために最も適切な薬物を判断するのに用いられる、特定の実施態様において、該流体装置1内に配置される該薬物/抗生物質は、シプロフロキサシン塩酸塩一水和物(CIP)、ホスホマイシン二ナトリウム塩(FOS)、メシリナム塩酸塩(MEC HCl)、ニトロフラントインナトリウム(NIT)、トリメトプリム乳酸塩(TMP)およびスルファメトキサゾールナトリウム(SXT)を含む群のうちの一つ以上から選択することができる。適切には、該抗生物質は、該上述した抗生物質から成る該群のうちの一つ以上から選択される。
【0125】
好適な実施形態において、疑わしいUTIに存在する細菌の薬物感度を評価する際に用いられる、該流体装置1内に配置される該薬物/抗生物質は、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸(2:1合剤)、セファレキシン、シプロフロキサシン、エルタペネム、ホスホマイシン、レボフロキサシン、メシリナム、ニトロフラントイン、トリメトプリム、およびトリメトプリム/スルファメトキサゾール(1:19合剤)を含む群のうちの一つ以上から選択することができる。適切には、該抗生物質は、該上述した抗生物質から成る該群のうちの一つ以上から選択される。
【0126】
UTIと関連のある可能性のある、およびそれに対して該アッセイを実行することができる可能性のある細菌は、以下を、すなわち、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、β型連鎖球菌、ブドウ球菌および緑膿菌を含む。サンプル中には、一つ以上のこのような細菌が存在する可能性があり、および異なる細菌が異なる抗生物質感度を有している可能性があるため、該装置1の該分析チャンバ12内でアッセイされる該流体サンプル中で、適当な抗生物質濃度の適切な範囲をもたらすように、妥当な量の範囲で、適当な抗生物質の範囲を含むことが有利である。
【0127】
有益には、複数の抗生物質、例えば、2~18の、2~15のまたは3~12の、例えば、4、5、6、7、8、9、10または11の異なる抗生物質および/または抗生物質の組合せが、該流体装置1内で、およびこの開示の方法において用いられる。有益には、該一つ以上の抗生物質の各々は、該流体系6の各々に、複数の所定の異なる量で供給され、その結果、一旦、該液体サンプル中に溶解すると、各分析チャンバ12内に検査のための所望の範囲の抗生物質濃度が実現される。一般的に、各独立した流体系6は、各検査サンプルが、既知の濃度で一つの抗生物質のみを含有するように、予め選択された量で一つの抗生物質のみを含有している。しかし、いくつかのにおいては、(所望の濃度を該同じ検査サンプル中に生成するために)、例えば、特定の細菌に対する多剤アッセイの有効性を検査するために、例えば、特定の感染症の治療に対して、治療的に指示できるように、二つ以上の抗生物質を、予め選択された量で供給することが望ましい可能性があることが予想される。
【0128】
抗生物質の有効性は、有機体の成長を阻止するのに必要な抗生物質の最小濃度である、最小発育阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentration:MIC)に基づいて評価することができる。当業者は、特定の細菌に対する特定の抗生物質の該MICを容易に得ることができる。例えば、一つのシンプルな方法においては、該細菌は、さまざまな濃度の該抗生物質を含むプレートに加えられる。該抗生物質の濃度は、各連続するプレートにおいて二倍にされ、該MICは、潜伏期後に目に見えるコロニーが無い第一のプレートを同定することによって見つけられる。好適な実施形態において、該上記の抗生物質は、使用する場合、約一倍から五倍のMICの範囲内、約一倍から三倍のMICの範囲内、または、約一倍から二倍のMICの範囲内で、各分析チャンバ12内の該流体サンプル中に溶解した所定濃度の薬物を供給するために、必要な量で配置することができる。しかし、サンプル種類および流体/アッセイ装置を含むアッセイ条件を考慮して、異なる濃度を代替的に用いてもよい。
【0129】
別法として、各流体系6内に配置される該抗生物質の量は、該選択された薬物に対する細菌「ブレイクポイント」の倍数と等しいか、または該細菌ブレイクポイントの倍数として決まる、各分析チャンバ内の該流体サンプル中の溶解した抗生物質の濃度を実現できるように選択することができる。ブレイクポイントは、細菌の種類が、該抗生物質に対して感受性があるか、中間であるか、または耐性があるか否かを定義する抗生物質の選択された濃度(mg/L)である。該MICが感受性ブレイクポイント以下である場合、該細菌は、該抗生物質に対して感受性があると見なされる。該MICがこの値より大きい場合は、該抗生物質に対して中間であるか、または耐性があると見なされる。したがって、ブレイクポイントは、感受性検査の結果の解釈において用いられる、識別力のある抗菌性濃度と見なすことができるが、該ブレイクポイントの値は、臨床上の、薬理学上の、微生物学上のおよび/または薬力学上の考慮事項に従って設定することができ、これらのファクタは、頻繁な評価が継続しているため、時々または関連のある地域に従って変わる可能性がある。例えば、欧州のブレイクポイントは、欧州抗微生物薬感受性試験委員会(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing:EUCAST)によって設定され、一方、米国内でのブレイクポイントは、臨床検査標準協会(Clinical Laboratory Standards Institute:CLSI)によって設定されている。該EUCASTおよびCLSIブレイクポイントは、特定の抗生物質および特定の細菌種に対して異なっているため、本開示の実施形態は、該CLSI標準に従って米国(および他の地域)での使用のための流体装置1を提供することに注力されており、また、本開示の他の実施形態は、該EUCAST標準に従って欧州(および他の地域)での使用のための流体装置1を提供することに注力されている。本開示のいくつかの実施形態は、各システムの異なる規格と一致するように適切な量の抗生物質を供給することにより、欧州および米国の両方での使用に適している可能性のある流体装置1に関する。MIC濃度およびブレイクポイント濃度が、CLSIおよびEUCASTにより、個別の有機体に対して標準化され、および培養によって臨床サンプルから隔離された細菌に対して合成培地中で抗生物質を検査することに基づいていることを正しく認識することが重要である。しかし、本開示の該装置および方法は、通常、このような「理想的な」条件下では用いられない。したがって、他の実施形態では、この開示の該流体装置に導入される抗生物質の量(および結果として生じる濃度)は、該検査の予想される条件下での各適当な抗生物質(または、他の薬物)の活性濃度または活性量を判断するために、アッセイ(アッセイは、当業者の能力の範囲内にある)の結果に基づいて選択される。例えば、目標の該抗生物質の適切な濃度を判断するために、手探り試験を、臨床尿の培地内で、および必要に応じて、この開示による微小流体系内で実行してもよい。このようにして、この開示の該流体装置内に配置される該抗生物質(または、他の薬物)の量を、適切に、意図されたサンプル種別中で最も興味深い活性を示すものとすることができる。このようにして、目標の生体サンプル中の目標の該活性間で識別および区別することが予想される、EUCASTブレイクポイントまたはCLSIブレイクポイントに基づく予想値と異なる可能性のある、抗生物質の量/濃度の範囲を決定することができる。さらに、抗生物質または薬物の有効な組合せおよび濃度を識別するために、抗生物質または他の薬物の組合せを同様に組合せて検査してもよい。
【0130】
そのため、本開示の実施形態は、本願明細書に記載されている該態様および実施形態のいずれかによる流体装置1を対象としており、該装置は、少なくとも一つの流体系6内に、該分析チャンバ12内の流体サンプル中に溶解した、例えば、一倍から五倍の細菌ブレイクポイントの所望の抗生物質濃度を実現するのに十分な量の、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸(2:1合剤)、セファレキシン、シプロフロキサシン、エルタペネム、ホスホマイシン、レボフロキサシン、メシリナム、ニトロフラントイン、トリメトプリム、およびトリメトプリム/スルファメトキサゾール(1:19合剤)から選択される、ある量の抗生物質を含む。いくつかの実施形態においては、該抗生物質の量は、該分析チャンバ12内の流体サンプル中に溶解した、一倍から三倍、一倍から二倍、および適切には一倍の該細菌ブレイクポイントの所望の抗生物質濃度を実現するのに十分である。好ましくは、該流体装置1は、上記で挙げたものから選択された、少なくとも三つ、少なくとも五つ、少なくとも七つ、少なくとも九つ、少なくとも11の異なる抗生物質(または、抗生物質の組合せ)を含み、この場合、該装置1の各流体系6は、上記で挙げた抗生物質または抗生物質の組合せのうちの最大でも一つを含む。上記で挙げた該抗生物質の量は、該EUCAST規格および/またはCLSI規格に従って定義することができる。以下の表1および表2は、本開示による流体装置で用いられる各抗生物質の該量によって実現される例示的な目標濃度を示す。
【0131】
【表1】
表1:CLSI採用国での使用に適合された、本開示による装置1の分析チャンバ12内の流体サンプル中で実現すべき各抗生物質の目標濃度。本開示による装置1は、左側の欄(欄1)に挙げられている該抗生物質のうちの一つ以上を含んでもよく、および/または欄4~欄7のいずれかに挙げられている溶解した抗生物質濃度をもたらすのに必要な各抗生物質の該量のうちの一つ以上を含んでよい。
【0132】
【表2】
表2:EUCAST採用国での使用に適合された、本開示による装置1の分析チャンバ12内の流体サンプル中で実現すべき各抗生物質の目標濃度。本開示による装置1は、該左側の欄(欄1)に挙げられている該抗生物質のうちの一つ以上を含んでもよく、および/または欄4~欄7のいずれかに挙げられているような溶解した抗生物質濃度をもたらすのに必要な各抗生物質の該量のうちの一つ以上を含んでもよい。
【0133】
上記の表1および表2を参照すると、当業者は、装置1が、各特定の抗生物質に対して、欄4~欄7に挙げられている該濃度のうちの二つ以上を与えるように意図された量で、一つ以上の抗生物質を含んでもよいことを正しく認識するであろう。他の実施形態では、装置1は、該それぞれの抗生物質に対して、欄4~欄7に挙げられている該濃度のうちの一つ以上を与えることが意図されている一つ以上の量で、欄1に挙げられているような複数の抗生物質(または、抗生物質の組合せ)を含んでもよい。
【0134】
いくつかの実施形態において、本開示による流体装置1は、16の検査微小流体系6を備え、各微小流体系は、それぞれ、表3の欄1(以下に)挙げられた該抗生物質(または、複数の抗生物質)を、表3の欄3に挙げられている該CLSI濃度、または、表3の欄4に挙げられている該EUCAST濃度に等しい、各それぞれの分析チャンバ12内の抗生物質の濃度を生成するのに適した量で含む。
【0135】
【表3】
表3:CLSI採用国での(欄3)またはEUCAST採用国での(欄4)使用に適合された本開示による装置1のそれぞれの分析チャンバ12内の流体サンプル中で実現される、例示的な抗生物質および各抗生物質の目標濃度。
【0136】
(例えば、表3に記載されているような)本開示の実施形態による流体装置1は、好ましくは、細菌成長または光散乱のバックグラウンドレベルをアッセイするために、一つ以上のポジティブコントロールおよび/または一つ以上のネガティブコントロールを実行できる追加的な流体系6を備えていてもよい。例えば、ポジティブコントロールの流体系6は、阻止/最適な成長条件下での該流体サンプル中での細菌成長の速度を実証するための抗生物質がなくてもよい。ネガティブコントロールの流体系6は、光が該分析チャンバ12を通過することおよび潜在的に散乱光として集光されることを防ぐための該分析チャンバを覆う不透明面を備えていてもよく、および/または細菌が増殖するのを防ぐために、該微小流体チャンバ内に殺菌性の(静菌性の)薬剤(例えば、トリクロサン)を含んでもよい。
【0137】
該上記の表1~表3は、本開示に従って用いることができるいくつかの例示的な実施形態および抗生物質の濃度について記載しているが、上述されているように、他の公知の抗生物質および/またはそのような抗生物質のいずれかの濃度を、例えば、該システム内で/目的の条件下で、望ましい結果または有益な結果を示すことが既に確定されているものを本開示に従って用いることができることは正しく認識されるであろう。
【0138】
次に、臨床サンプルを処理し、および時間の関数としての細菌の数または濃度の対応する変化を示す、該サンプル中での光散乱の変化を測定することにより、それらのサンプル中での該細菌の薬物感受性を測定するための光学分析装置を備えている装置内で該流体装置1が用いられる実施態様例について説明する。
【0139】
図11図15は、この目的のために用いることができる例示的な光学分析装置の詳細を示す。この装置の概要をここに記載し、この装置のさらなる詳細は、「Apparatus,System and Method for Measuring Properties of a Sample」というタイトルの本出願人の同時係属出願(例えば、英国特許出願第2001397.5号明細書を参照)でも見つけることができる。
【0140】
図11は、光学構成1102およびサンプル位置決め機構1104を備えているデバイスまたは装置1101の垂直方向断面図を示す。これら二つの構成要素は、該上述した細菌濃度測定を実行できるようにするために、分析中の該臨床サンプルを収容している該流体装置1とやり取りするように構成されている。
【0141】
該サンプル位置決め機構1104は、該流体装置1に係合して支持するように、および該流体装置1の少なくとも一部と、該光学装置1102の構成要素とを光学的に結合するか、または接続するように構成されている。より詳細には、該サンプル位置決め機構1104は、サンプルカルーセルまたはサンプルキャリア1108と、動作可能に結合されたモータ1110、例えば、BLDC(ブラシレスDC)モータ、または、該サンプルカルーセル1108の回転(およびそれにより、係合された流体装置1の回転)を制御する、他の同様の駆動機構とを備えている。使用時に、該流体装置1と該光学装置1102が光学的に結合されると、該光学装置2は、該流体装置1の該流体分析チャンバ12内に収容されている該臨床サンプルの部分を照らすように構成される。また、該光学装置1102は、該照らされた臨床サンプル部分の細菌粒子によって散乱された光を検出して測定するように構成されている。そして、該検出した散乱光の強度は、該サンプル中の該細菌の特性、具体的には、時間の関数としての該サンプル中の該細菌濃度(細胞分裂/成長速度の相対濃度)を確かめるために分析することができる。
【0142】
該装置1101は、他の構成要素を中に収容する外側ケーシングまたはハウジング1112を備えている。該図示されている実施形態において、該ハウジング1112は、該他の装置の構成要素がその上に取付けられるベース1112aと、該ハウジング1112の壁を形成する前方本体部1112bおよび後方本体部1112cと、移動可能な/着脱可能な蓋1112dとを備えている。該図示されている実施形態において、該蓋1112dは、該後方本体部1112cに枢動可能に取付けられているが、当然のことながら、他の取付機構および位置を用いてもよい。該蓋1112dは、該本体部1112b、1112cおよび該ベース1112aとともに、該装置1101が使用されるときに、さまざまな装置部品をその中に収容するエンクロージャを構成している。しかし、該ハウジング1112のさまざまな部分に、本願明細書に図示されている部材よりも多くのまたはより少ない部材を代わりに設けてもよいことは正しく認識されるであろう。該装置1101は、例えば、該流体装置1が、該装置1101内のその意図された位置に挿入されて、該サンプルカルーセル1108に係合された後に、閉じた、ロックされた位置に該蓋1112dを維持するのに用いられるクロージャ/固定機構1113をさらに備えている。さまざまな実施形態において、該クロージャ機構1113は、該蓋1112dが開かれる場合に、プログラム可能に作動させることができる、該装置ハウジング1112内に配置されたアクチュエータ1113aを備えている。
【0143】
該装置1101は、好適な温度範囲内(例えば、約36°~38°、好ましくは、約36°~37°、例えば、約37°)で、該ハウジング1112内の温度、および特に、該流体装置1を包囲する領域内の温度を維持するように構成されている温度制御モジュールまたは構成1114をさらに備えている。この温度範囲は、該臨床サンプル中の該細菌の成長を、最適な成長条件で促進しおよび維持するのに特に好ましい。さらに、該図示されている装置は、ユーザインタフェース1115、例えば、該装置1101のユーザが、それを介して、該装置1101のさまざまな態様とやり取りしおよび該態様をプログラムし、特定の結果を見て、および/または該分析プロセスの経過をモニタすることができるインタラクティブタッチスクリーンディスプレイも備えている。例えば、該患者または被験者の識別を可能にするための詳細は該ユーザが入力することができ、測定パラメータは、該インタフェースを用いて表示しおよび変更することができ、該装置1101のためのソフトウェアのアップデートは、該ユーザインタフェース1115を用いて、該ユーザのやり取りを介してダウンロードすることもでき、測定の経過およびさまざまな中間結果および最終結果も、該ユーザインタフェース1115を介して該ユーザに対して表示することができる。加えて、該ユーザインタフェース1115は、サンプルを該流体装置1に装填し、その後、該流体装置1を該サンプルカルーセル1108に正しく係合させる該プロセスにおけるさまざまなステップを介してユーザを案内するために、該ユーザに該指示を与えるのに用いることができる。例えば、該ユーザインタフェース1115は、以下のステップ、すなわち、(i)該キャップ20を取り外すステップ、(ii)該カラー70を取り除くステップ、(iii)該サンプルを該収容ウェル48に注入するステップ、および(iv)該キャップ20をねじ込むステップを実行することを該ユーザに指示することができる。そして、該装置1101は、該さまざまな装置構成要素(例えば、該光学装置1102、該サンプル位置決め機構1104、該蓋クロージャ機構1113および/または該ユーザインタフェース1115)のプログラム可能な制御を実行できる一つ以上のプロセッサまたは処理ユニット1116を備えている。
【0144】
次に、該装置1101の該さまざまな構成要素の構成、およびそれらの構成要素間の相互作用のさらなる詳細について、図12および図13と関連して記載する。
【0145】
具体的には、それらの図を見て分かるように、該モータ1110は、該ハウジング1112の該ベース1112aに取付けられて該ベースによって支持され、また、該モータ1110は、該装置1101の残りの構成要素がその上にまたはそれに取付けられる支持ベースを有効に構成している。該サンプルカルーセル1108は、形状が実質的に円形であり、および該サンプルカルーセル1108の中心を通る垂直方向に延びる軸Xに沿って延びている回転可能なシャフト1117を介して、該モータ1110の上に取付けられ、および該モータに接続されている。それにより、中心軸X周りの該サンプルカルーセル1108の回転運動は、該モータ1110によって駆動することができる。
【0146】
該サンプルカルーセル1108は、該サンプルカルーセル1108の周りに放射状(radial)の間隔を空けて設けられた複数の開口部1118を備えている。該図示されている実施形態によれば、該開口部1118は、該流体装置1が、正しい向きで、該サンプルカルーセル1108に正確に界接して係合したときに、該複数の開口部1118の各々一つの位置が、該流体装置1内に設けられた該複数の流体分析チャンバ12の一つの位置と位置合わせされて、該位置に対応するように、該サンプルカルーセル1108の外側部の周りに放射状に配設されている。したがって、該流体分析チャンバ12は、該流体装置1の任意の適切な位置に、例えば、その外側領域に配設することができる。当業者は正しく認識するように、各開口部1118と、対応する流体分析チャンバ12との位置合わせは、(以下で説明するように)光源からの光が該開口部1118を通って、それぞれの流体分析チャンバ12に入ることを可能にするように適合させなければならない。
【0147】
該光学装置1102は、光源1122および平行光学系(図示せず)を備え、例えば、レーザダイオードと、集光部または集光構成1124と、少なくとも一つの光検出器1126とを備えている。該光源1122は、入射ビーム軸「Y」に沿って光を放射して該流体装置1の該流体分析チャンバ12内に存在する該サンプル部分を照らす。該集光部1124は、該サンプル中の細菌(粒子)によって前方方向に散乱した光を、具体的には、該入射ビーム軸Yから約±3~±24度の角度で、該入射ビーム軸Yから±4~±20度の角度で散乱した光を、およびいくつかの実施形態においては、(例えば、該光ビームの周りの特定の半径のリング内で)該入射ビーム軸Yの両側で、+4~+16度で、-4~-16度で散乱した光を集光する。いくつかの実施形態において、該集光された光は、該入射ビーム軸Yの両側で、+5~+16度の角度で、および-5~-16度の角度で散乱させることができる。当然のことながら、さらに小さな角度(すなわち、該入射ビーム軸の両側で、±3または±4度未満の角度)にわたって散乱した光も集光することができるが、このことは、該集光部1124によって集光される非散乱入射光の割合を不必要に増加させる可能性があることは当業者によって正しく認識されるであろう。該入射光ビームの幅は、さらに小さい角度で散乱した光を、該非散乱光の過度な割合を含むことなく集光できるように低減することができるが、このことも同様に、より少量のサンプルの照射をもたらし、このことが、生成される散乱光の量を低減するであろう。そのため、この点で、維持されるバランスがある。
【0148】
集光された散乱光は、該集光部1124によって該光検出器1126へ向けられ、そこで、例えば、検出された散乱光の量に応じた所定時点での該検出チャンバ内の該サンプルの相対的な細菌量または濃度を確かめるために、該集光された散乱光の強度を分析することができる。
【0149】
該光学装置1102のさまざまな構成要素は、該図示されている実施形態において、該モータ1110または該モータのハウジング1110aから実質的に垂直方向上方に延在して、該モータまたは該ハウジングによって支持される光学的「タワー」を構成するために、支持プレートまたは構造1128に取付けられる。しかし、該光学的「タワー」1128の取付は、該光学装置1102を、該モータ1110によって生じる可能性のある何らかの振動から遮断するために、該モータ1110およびそのハウジング1110aと分離するかまたは切り離してもよいことは正しく認識されるであろう。そのため、いずれの場合でも、この光学的タワー1128の構造は、該サンプルカルーセル1108および流体装置1が、使用時に載る平面に対して実質的に直角になっている。そのため、該光源1122から放射された該光の該入射ビーム軸Yは、該サンプルカルーセル1108の該回転軸Xに平行であるが、距離「d」だけ該回転軸Xから横方向にずれている。
【0150】
該回転軸Xと該入射ビーム軸Yの横方向のずれ「d」は、該流体分析チャンバ12(の該中心)と、該流体装置1の該中心との間の径方向距離に実質的に相当する。便宜上、該距離「d」は、該サンプルカルーセル1108の該中心から、該プラットフォーム内に設けられた該開口部1118までの径方向距離と同じかまたは実質的に同じであってもよい。該光学装置1102のための支持構造1128は、該光源1122と該集光構成1124との間に(該垂直面内のどこかに)および該サンプルカルーセル1108の平面内に配設されている、該装置に設けられたギャップまたは切欠き1130を有し、この切欠き1130は、該サンプルカルーセル1108の径方向外側部分を該切欠き内に収容するように構成されるように、サイズが形成されおよび配設されている。したがって、該サンプルカルーセル1108のこの収容部分(および対応する、使用時に係合した流体装置1の対応する部分)は、該支持構造1128および光学的タワー内に延在して、それにより、該光源1122から放射された該光の該入射ビーム軸Yと交差してもよい。実際には、該サンプルカルーセル1108、支持構造1128、光学装置1102および流体装置1は、使用時に、該光源1122から放射された光が、該サンプルカルーセル1108の該開口部1118の該一つを通過して、その後、該それぞれの開口部1118と位置合わせされている対応する流体分析チャンバ12に入り、それにより、当該流体分析チャンバ12に収容されている該サンプル部分を照らして分析できるようになっているように設計されおよび適合されている。
【0151】
その結果として、該流体装置1が該サンプルカルーセル1108に係合された場合、該流体装置1の該流体分析チャンバ12の各々が、該光源1122からの該光のビーム経路を通って、該流体装置1の該モータ1110による回転を介して、該入射ビーム軸Y内に順に配置可能となる。したがって、各流体分析チャンバ12内に収容されている該サンプルの該部分の該細菌粒子からの散乱光も、該光学装置1102によって順に集光して測定することができる。いくつかの実施形態において、「測定する」とは、該サンプル中の細菌によって散乱される光の該量/光の該強度を定量的に評価することを意味するが、他の実施形態では、異なるサンプルチャンバ内のサンプルによって引き起こされた散乱の相対量の定性的評価を実行することができることを意味する。
【0152】
該図示されている実施形態において、該光学装置の支持構造1128は、該光学装置1102の該構成要素のうちのいくつか、例えば、該集光構成1124および該光検出器1126を支持する上方の(突き出た)カバー部1132を備えている。該上方カバー1132は、該実質的に垂直方向の入射ビーム軸Yに沿って進行する非散乱光が、該装置1101から出ること、または、(該光源1122が光を放射している間に、該ハウジング1112の該蓋1112dが取り外された場合に)誤って該装置1101の該ユーザに到達することを防ぐという追加的な有用な機能も提供できる。さらに、該光学ハウジング1112は、該装置1101への挿入前に、該ユーザが該装置1の外部に放置している可能性のあるサンプルのトレースから光学的構成要素を防いでいる。
【0153】
図13に示すように、本開示の実施形態において、該サンプルカルーセル1108は、その下面に配設され、複数の較正特徴部または歯1182を備えている、追加的な較正リングまたは歯車1180を備えている。該図示されている実施形態において、該較正特徴部1182は、間隔を置いて該較正リング1180から突出している複数の径方向に延びているスポークに相当し、および各較正特徴部1182が、該複数の開口部1118のうちの対応する一つと連動されるように配置されている。
【0154】
使用時に、該流体装置1が該サンプルカルーセル1108に係合されると、各較正特徴部1182は、そのために、該サンプル容器本体2内の該複数の流体分析チャンバ12のうちの対応する一つとも連動されることとなる。該装置1101は、該サンプルカルーセル1108の該下面に隣接して配設され、および使用時に、該サンプルカルーセル1108が該駆動軸1117によって回転される際に、該較正特徴部1182の各々と順にインタフェースをとるように構成された較正読取部1184をさらに備えている。具体的には、該較正読取部1184は、例えば、該較正読取部1184内の光学ビーム経路を通過し、および一時的に遮断する該較正特徴部1182によって引き起こされる光信号の減少または喪失の検出によって、それを通過するまたは傍を通りすぎる各較正特徴部1182を検出するように構成されている光学構成を備えていてもよい。
【0155】
該較正特徴部1182が、該流体分析チャンバ12の一つとそれぞれ連動される際、該較正読取部1184は、該サンプルカルーセル1108の各開口部1118と連動する各較正特徴部1182を検出して、信号を該装置1の制御部/プロセッサへ送って、該較正特徴部1182の検出後の所定期間の、および該分析チャンバ12が、該分析チャンバ12の該壁に衝突することなく該光源1122からの該光を遮る期間を包含するのに十分な所定期間(すなわち、各分析チャンバ12内の該流体からの読取値または光散乱を得るのに十分なしばらくの間)の、散乱光強度の測定を開始するのに用いることができる。有益には、このようにして、該光検出器の読取値が該分析チャンバ12と適切に一致することを確実にするために、光散乱測定ウィンドウが、該流体装置1の回転毎に複数回リセットされる。該較正特徴部の数は、選好に従って選択することができ、例えば、該サンプルカルーセル1108のすべての開口部1118と連動する一つの較正特徴部があってもよく、または、開口部1118から成る所定の群と連動する一つの較正特徴部(例えば、二つ、三つ、四つ、五つまたは六つ毎等の開口部1118に対して一つの較正特徴部1182)があってもよいことは正しく認識されるであろう。
【0156】
別法として、該較正1182’は、異なる形態をとっていてもよい。例えば、該較正特徴部は、該サンプルカルーセル1108の該周囲に間隔を置いて設けられている隆条部、フィン部またはフラッグ部の形態をとっていてもよい。この場合、該較正読取部1184は、代わりに、該較正特徴部が該較正読取部1184の該光学構成を通過するように取付けおよび方向付けてもよい。適切には、一つの較正特徴部は、該較正読取部1184の該光学構成が通る各較正特徴部の通過が、対応する各分析チャンバ12から得られる散乱光の読取または測定のためのトリガーを構成することができるように、該サンプルカルーセル1108の各開口部1118と連動される。有益には、このことは、特定のインジケータが各開口部1118ならびに各分析チャンバ12と関連付けられている場合に、モータ速度の変動により該「ウィンドウ」内で起きるドリフトを防ぐのに役に立つ。
【0157】
場合により、該較正読取部1184(または、該光検出器1126と関連するプロセッサ)を、該読取部1184を通過する隣接する較正特徴部1182間の時間間隔を計算するように、およびそれらの計算された間隔を、集光された散乱光の該強度が測定される所定の間隔と比較するように構成してもよい。該測定した「較正」時間間隔と、該所定の測定時間間隔の間に不一致があり、当該不一致が所定の時間間隔を超えている場合には、該プロセッサは、該「較正」時間間隔と一致するように該測定時間間隔を変更するように構成できることが想定されている。このことは、該強度測定が、該流体分析チャンバ12が該入射ビーム軸と正確に位置合わせされている場合に、すなわち、該光源からの該光が、該流体分析チャンバ12の該中心を実質的に通って入射する場合に行われることを確実にする。また、このことは、適切な時間ウィンドウでのみ光散乱測定を分析することによって処理電力も節約する。
【0158】
図14は、該光学装置1102内の光学構成要素の構成例の詳細を示す。この構成において、光源1122は、該流体分析チャンバ12内に収容されている該サンプル部分を照らすための特定の波長で光を生成するのに用いられる(例えば、620nm~750nm、およびより具体的には、約635nmの波長の赤色光)レーザダイオードを有するレーザモジュールに相当する。上記の波長は、尿サンプルの該分析に関連した用途に対して想定されているが、分析すべき該サンプルの性質により、使用する光の該波長が異なっていてもよいことに留意されたい。例えば、(約650nm~約1,350nmの)近赤外波長は、血液サンプルに関連して用いることができるであろう。該レーザダイオードは、レーザ出力の変調周波数および位相を制御するように適合されている信号発生器(図示せず)に接続されている。該光検出器1126は、ロックインアンプ(これも図示せず)に接続されているフォトダイオードに相当し、該ロックインアンプも同様に、該レーザダイオードのための該信号発生器に接続されている。このことは、該フォトダイオードが、該レーザダイオードのための該信号発生器によって生成された該変調周波数に対応する周波数および位相を有する特定の受信信号を分離して除去することを可能にしている。このことは、他の周波数のノイズ(例えば、バックグラウンドノイズ、電気的ノイズ)(光)信号を除去できるようにし、それにより、該光学装置1102を用いて得ることが可能な信号対ノイズ比を改善する。これらの構成要素は、該システムのプロセッサ1116のうちの一つ以上を介して制御することができ、該プロセッサは、一つ以上のプログラム可能な回路基板(Programmable Circuit Board:PCB)の形態を取っていてもよい。
【0159】
この実施例における該集光部1124は、該図示されている実施形態において、該入射ビーム経路を横切って延在するように該支持構造1128に取付けられているリフレクタまたは反射面を備えている。具体的には、図14の該集光部1124は、その中に設けられた偏心開口、穴または開口部1146を有する、湾曲した凹状楕円形ミラー1144に相当する。該ミラー1144は、該穴1146が該入射ビーム軸Yと位置合わせされ、それにより、該流体分析チャンバ12から出て、該ビーム軸Yに沿って進行する非散乱光が、実質的に逸れずに該ミラー1144を明確に通過することを可能にし、それにより、この非散乱光は、該光検出器1126に到達するのを阻止されるように、該支持構造1128に取付けられている。さらに該ミラー1144は、該サンプル中の該粒子によって前方方向に散乱した該光が、および具体的には、該入射ビーム軸Yの約+4~+16度、および-4~-16度の角度の範囲内で散乱した該光が、該ミラー1144によって反射されて、該光検出器1126に向かって進むような角度で配置され、およびそのようなサイズになっている。いくつかの他の実施形態では、該ミラー1144によって該光検出器1126に向かって反射された該光は、該入射ビーム軸Yの約+3~+24度および約-3~-24度の角度の範囲内、約+3~+20度および約-3~-20度の角度の範囲内、約+5~+20度および約-5~-20度の角度の範囲内、または、約+5~+16度および約-5~-16度の角度の範囲内にある可能性がある。該図示されている実施形態の該構成において、凹状の楕円形ミラー1144は、該光検出器1126に集中されるように/該光検出器に焦点を合わせられるように、該入射ビーム軸Yから(および図示されている該特定の非限定的な実施形態においては、該入射ビーム軸Yに対して90度だけ)離れて所定角度内で、散乱光を前方へ反射させる。該システムプロセッサ1116のうちの一つ以上は、該光検出器1126と連動されて、検出された該散乱光の該強度を計算するために、該光検出器1126によって生成された検出信号を処理する。(時間の関数として測定された散乱光強度に相当する)該検出器の出力のグラフまたはプロットを生成してもよく、このようなグラフの実施例を図16に示す。このグラフおよび/またはそれを生成するのに用いられるデータは、いくつかの実施形態においては、該ユーザインタフェース1115を介して、例えば、経過の実質的にリアルタイムの指標として、一定間隔で、または、一旦、所与のサンプルに対する該分析プロセスが完了すると、最終的な(概要)出力として、該ユーザに対して表示してもよい。
【0160】
図14に示すように、この実施形態の該システムは、該入射ビーム軸「Y」と位置合わせされているが、該サンプルから該集光部1124の反対側に配設され、および該ミラー1144の該穴1146を通過する該非散乱光を検出して測定するように配置された第二の光検出器1148も備えている。この第二の光検出器1148もまた、該第一の(主)光検出器1128と実質的に同じ方法で構成することができるフォトダイオードに相当し、すなわち、該第二の光検出器1148は、該第二の光検出器1148(および/または該光検出器1148と関連する該プロセッサ1116のうちの一つ)もまた、所望のレーザ信号の周波数および位相を任意のノイズ信号から取り除くことができることを確実にするために、ロックインアンプを介して該光源1122の該信号発生器に接続されている。この追加的な第二の光検出器1148を設けることは、該第一の(主)光検出器1126によって測定された該散乱光強度と比較することができる、該非散乱レーザ光のベースライン測定値(baseline measurement)の取得を可能にする。このことは、例えば、該照射中の異常を検出できるようにし、また、分析中のレーザ安定性も評価して考慮することもできる。本開示の該実施形態のいずれかにおいては、第二の光検出器1148を省いてもよいことは正しく認識されるであろう。いくつかのこのような実施形態において、該レーザから非散乱光を集光するのに、ビームダンプまたは他の装置を用いてもよい。
【0161】
図14に図示されている該光学構成は、本開示を実行する/実施するのに必要な部材の数を低減する際に特に有益であるが、他の光学構成も可能である。例えば、図14のカスタマイズされた凹状楕円形ミラー1144は、反射要素のペア、例えば、散乱光を焦点レンズに向かって前方に偏向させる第一のミラーと、該第一のミラーからの反射光を光検出器1126へ集中させる第二の凹状ミラーとに置き換えてもよい。
【0162】
次に、該上述した装置1101を用いる方法700について図15を参照して説明する。
【0163】
初めに、ステップ705において、該ユーザにより、該臨床サンプルが該流体装置1内に固定配置され、その後、ステップ710において、該流体装置1は、該装置1101内の適切な位置に挿入される。このことは、該流体装置1を該光学タワー支持構造1128と正しく位置合わせすること(例えば、該流体装置1のインデント部または切欠きセグメントまたは他の表面形状構成24を該支持構造1128、または、該装置1の対応する/相補的な構造と位置合わせる。該切欠きセグメント24は、該光学タワー支持構造1128のプロファイルを概して反映するような形状およびサイズとなっている)と、該流体装置1を該サンプルカルーセル1108に係合することとを包含する。いくつかの実施形態において、該プロセスは、(例えば、一連の略図および対応する書込まれた/話された指示を介して)該ユーザインタフェース1115によって案内することができる。次いで、ステップ720において、該所望のサンプル分析を実行するために該装置の該さまざまな構成要素によって行われるべき、予めプログラムされた動作のシーケンスを開始するために、該装置1101の該蓋1112dが閉じられて、該ユーザは該ユーザインタフェース1115とやり取りする。
【0164】
該装置1101は、これらの予めプログラムされた動作が実行される前に、または、実際には、それらの動作の一部として、ステップ715において、該流体装置1を識別するように、および該流体装置1自体または該流体装置のパッケージングに提供されているデータに基づいて、特定の流体装置1に関連する情報を判断するように構成することができる。場合により、この情報は、該流体装置1に与えられた固有識別コード内に含んでもよく、または、該コードを介して取得可能であってもよく、該コードは、該流体装置1自体に関連する固有識別子を、該流体装置1がその一部を構成する特定のバッチに関連する固有識別子を、および該流体装置1の内容物に対する使用期限を含んでいてもよい。この識別コードは、(例えば、該装置1101に連動する独立したスキャナを介して)該流体装置1の該挿入前に、または、(例えば、該装置1101に一体化されたスキャナを介して)該流体装置1の挿入後に、該装置1101によってスキャンすることができる、RFIDタグまたはバーコード(例えば、2Dバーコード)の形で与えることができる。例えば、該装置のハウジング1112の内壁に取付けられている、内部バーコードスキャナ/リーダー1159が(図11の該図示されている装置内に)示されている。この実施形態において、該スキャナ1159は、該サンプル容器に配設された識別RFIDタグまたはバーコードの方に向けられるような特定の角度で取付けられている。例えば、該バーコードまたは識別の他の手段は、該流体装置1の角度の付いた部分25に配設することができる(例えば、該流体装置1が、一旦、該装置1101に挿入されると、該スキャナ1159によって読取ることができるように、該流体装置1の該切欠きセグメント24に隣接して配置することができる)。
【0165】
また、追加的な情報、例えば、所与の流体装置1の該流体分析チャンバ12の各々の中に供給された該特定の薬物の詳細を、該識別コードの一部として、または、該識別コードに加えて与えてもよく、その結果、該分析は、検査されている該薬物の情報とともに実行される。さらに、実装される必要がある可能性のあるソフトウェアの更新に関する詳細も、与えられる情報の一部として含むことができ、このことは、該装置1101が、必要である可能性のある適切なソフトウェアの更新および変更に関する情報を該流体装置1自体から容易かつ有効に取得することを可能にする。
【0166】
追加的にまたは別法として、該固有識別コードは、該流体装置1の該パッケージングに(例えば、特定のバッチの一つまたは複数の流体装置1の箱に)設けることができ、または、例えば、該パッケージングに関連する、および関連のある識別情報が既に組み込まれているUSBメモリの形で、該パッケージングとともに与えてもよい。有利には、該パッケージングまたは独立したUSBメモリを利用して、この情報を与えることは、該データを収容するのに利用可能な格納スペースを増加させ、それにより、より多くのデータを該識別コード内に設けることを可能にしている。このような場合、該装置のハウジング1112には該USBメモリを収容して、該USBメモリとインタフェースをとるためのポートを備えていてもよい。
【0167】
また、該装置1101は、該流体装置1が、該装置1101とともに使用できる承認されたバッチの容器のうちの一つであることを確認するように(例えば、任意の偽造のまたは無許可のサンプル容器を識別して、それらが該装置1101に使用されるのを防ぐように)プログラムすることもできる。この点について、該流体装置1には、該装置1101によって検出可能な識別(偽造防止の)特徴部を設けてもよく、これは、上述した該固有識別コードの一部として、または該固有識別コードに加えて設けることができる。該装置1101は、このような特徴部を含んでいない任意の流体装置1を処理するのを拒絶または拒否して、信頼性のないまたは誤解を招く結果が検出されてユーザに報告されるのを避けるようにプログラムしてもよい。
【0168】
したがって、ステップ725において、該装置1101によって実行される第一の一連の予めプログラムされた動作は、該臨床サンプルの部分を、該流体装置1の該主流体リザーバ4から、該複数の流体分析チャンバ12の各々へ再配分するために、すなわち、図10に示す該方法500のステップ510~ステップ530を実行するために、特定の回転数で、特定の所定方向に、および特定の期間にわたって回転するように、該モータ1110を作動させることである。
【0169】
一旦、このプロセスが実行され、およびさまざまな薬物が投与されたサンプル部分が、それらの各流体分析チャンバ12に再配分されると、該装置1101によって行われる次の一連の予めプログラムされた動作は、各流体分析チャンバ12内の該サンプルの該分析を含み、すなわち、次に、図10の該方法500におけるステップ535の該詳細について説明する。該モータ1110は、該サンプルカルーセル1108およびその関連する流体装置1の回転を、一定の回転速度(例えば、100rpm)で、長期間にわたって(例えば、約30~90分の経過にわたって)駆動するようにプログラムされ、その結果、該流体装置1上の所定の箇所、例えば、特定の流体分析チャンバ12は、約0.6秒毎にフル回転を実行する。それに応じて、各検出チャンバ20は、100rpmの回転速度で、(約0.6秒毎の)所定の間隔で、該入射ビーム軸Yを通過することになる。そのため、そのそれぞれの流体分析チャンバ12内の各サンプル部分が(所定間隔毎に)順に照らされ、該散乱した光は、該光検出器1126によって集光されて、およびアッセイ(細菌成長/抗生物質の感受性アッセイ)の該経過にわたって、一定時間毎に処理し/分析することができる。場合によっては、測定の頻度を仮定すると、サンプル測定値の(加重)移動平均を、各検出チャンバ12から得られた該散乱光測定値を処理して組合せるのに利用できることが想定される。このことは、(該加重平均を得るために組合された個別の測定の数の平方根により)各平均化されたサンプル測定に関連する該ノイズを有益に低減するであろう。例えば、場合により、該移動平均は、50~500の測定値にわたって(例えば、予想される該100rpmの回転速度で60秒に等しい、100の測定値にわたって)適用することができることが想定される。いくつかの実施形態において、該サンプルカルーセル1108(および流体装置1)の該回転速度は、予めプログラムされた/工場出荷時の設定に従って選択され、および該装置1101の処理速度および/または所望される測定の該頻度に従って決めることができる。そのため、アッセイ中の該流体装置1の該回転速度は、100rpmよりも速くても遅くてもよい(例えば、50~300rpm)。同様に、アッセイの長さも、予めプログラムされた/工場出荷時の設定に基づいていてもよく、または、いくつかの実施形態においては、ユーザの選好に従って設定してもよい。例えば、該アッセイの該長さは、細菌および/または該細菌に接触させて検査すべき該抗生物質の種類によって決めることができ、および約20分~4時間、例えば、約20分~2時間、または、約20分~1時間半とすることができる。いくつかの好適な実施形態において、該アッセイの該長さは、約20分~1時間、または、約30分~1時間である。
【0170】
この文書において簡潔に前述してきたように、測定された該散乱光強度の結果として、該主「信号」フォトダイオード1126によって生成された該信号の強度は、分析される/アッセイされる該サンプル中の(細菌の)粒子の該量および/または濃度と相関関係がある。換言すると、より大きな/より強い信号は、より多くの量の光散乱に、ひいては、同様に、該サンプル中の細菌粒子のより高い濃度を示す、より大きな散乱光強度に相当する。したがって、(該散乱光強度に基づく)経時的な該検出信号に関するグラフ表示は、サンプル中の細菌の量および/または濃度の時変の変化を可視化および/または計算し、それによって、当該の特定のサンプルに既に投与されている薬物の該種類および濃度に対する、当該サンプル中の該細菌の該感受性を示しおよび最終的に判断するのに用いることができる。
【0171】
そのようなグラフ表示の実施例を図16に示し、この場合、5種類の異なる抗生剤に対する、臨床サンプル中の細菌の該感受性を検査した。この実施例においては、該流体装置1は、28の別々の流体分析チャンバ12と、臨床サンプルを該28の流体分析チャンバ12内に分離するための関連する流路とに分割され、その結果、最大で28の別々のアッセイを同時に実行することができるであろう。該28のアッセイは、領域1~領域4と標記された四つの領域に分けられ、および各領域において、五つの抗生物質感受性検査を(入射光が通過するのを防ぐために、該流体分析チャンバが変更されている(例えば、不透明にされている))一つのネガティブコントロールと、(抗生物質が何もない場合の抑制されない細菌成長に追従するための)一つのポジティブコントロールとともに実行した。この場合、各領域の五つのアッセイチャンバの各々にそれぞれ、五つの異なる抗生物質が供給され、その結果、各抗生物質に対する細菌感受性を、該四つの領域の各々で一つのこのような検査を、流体装置1毎に4回繰り返して検査することができるであろう。このようにして、該流体装置1を中心として該アッセイの再現性を評価することもできるであろう。該流体装置1は約100rpmで回転され、および各流体分析チャンバ12から集められた散乱光強度の測定値は、約80分の該経過にわたって取得した。
【0172】
図16の該グラフから明らかなように、該ポジティブコントロールとして作用するそれらの流体分析チャンバは、該測定期間の該経過にわたる、検出された散乱光強度の概して指数関数的増加(ひいては、対応する指数関数的な細菌の量および/または濃度の増加)を示した。このことは、薬物または他の反応抑制剤が存在していない場合、および該細菌を、適切な濃度の成長培地を含有する溶液中で普通に成長させて複製することができる場合に、(該アッセイ条件下で)典型的に予想されるであろう細菌の量および/または濃度の増加の程度を反映している。その間、該ネガティブコントロールとして作用するそれらの流体分析チャンバは、予想されるように、全測定期間にわたって、最小限の検出強度を示した。さまざまな抗生物質を含有する各象限内の該五つの流体分析チャンバのうちの四つは、検出した強度の変化を示し、これは、該抗生物質の作用の結果としての(該ポジティブコントロールと比較して)細菌の量および/または濃度の低下を示し、すなわち、ポジティブコントロール曲線と比較して低いかまたは負の勾配を有するが、依然として(少なくとも最初は)ネガティブコントロールラインより上の値を有する曲線を示す。したがって、該ポジティブコントロールのサンプルと比較した、該さまざまな薬物を投与したサンプルのうちの、経時的に、該測定した光散乱の強度の最大の減少を示す一つは、該サンプル中に存在する該細菌の菌株が最も感受性がある、特定の種類および/または濃度の抗生物質が既に投与されている該サンプルに(理論的に)相当する。そのため、該臨床サンプルを取得する該患者を治療する際に、比較的短期間の該経過にわたって、どの抗生物質が、およびどのような濃度が、最も有効になりそうかを容易に判断することができる。
【0173】
当然のことながら、多くの異なる抗生物質を、該サンプル中の該細菌がそれに対して感受性がある可能性があるものになることを判断することができることが可能である(および実際には可能性がかなり高い)。そのため、治療に用いられる最も適切な抗生物質を判断するためのさまざまな異なるアプローチを考えることができる。例えば、少なくとも一つの抗生物質が有効であることが確かめられた後は、どの時点でも、該分析を終了する能力によって、該感受性の結果をリアルタイムで該ユーザに提示することができる。しかし、例えば、細菌の培養の反応が少し長い期間をかけて変化する場合、または、ある抗生物質が効果を発揮するまでにより長い時間を要する場合、これは、必ずしも投与するのに最も適切な抗生物質ではない可能性がある。別法として、アプローチを、該検査が実行される時間を(例えば、30分、45分または1時間に)制限するようにする、および当該時間の後に、該結果を該ユーザに提示するようにしてもよく、このことは、多数の(または、全くない)抗生物質および/または投与レベルを、被験者への投与のために考慮してもよいことを意味する。別の選択肢は、一定数の抗生物質が有効と思われた後に、単に結果を提示することである。このことは、当然のことながら、該検査に必要な所要時間が変わることを意味する。当然のことながら、本開示の実施形態においては、これらのアプローチの組合せを採用してもよい。
【0174】
添付の特許請求の範囲で定義されているような本開示の範囲から逸脱することなく、上記の実施例に関して多くの変更を行ってもよい。
【0175】
例えば、該薬物は、該流体分析チャンバ12内に供給する必要はなく、代わりに、該流体系6の異なる部分に、例えば、該第二の流路32の該第二の流路アーム32d内に配置することができるであろう。
【0176】
追加的に、または別法として、図17に示すように、特定の薬物が恐らく該流体サンプル中に迅速に溶解されない場合に、(正逆回転中に該二つのバルブ間を往復する「スロッシング」動作を介した)該サンプルと該薬物のより効果的な混合を可能にするために、圧縮収容ガスのチャンバを備えている第二のバルブ機構を、該流体分析チャンバ12の後ろの各流体系6の該フロー経路内のある位置に設けてもよい。
【0177】
図17は、本開示の実施形態による使用のための流体系6’の代替的な構成を示す。該流体系6’は、図2図2Aの該流体系6と概して同じ方法で、該主流体リザーバ4と、該分析チャンバ12との間の領域に配置されている。したがって、該流体系6’は、該主流体リザーバ4と連通している、その径方向の最も内側の範囲に入口ポート28aを有し、および分離または清澄化チャンバ30と連通している、その径方向の最も外側の範囲に出口ポート28bを有している第一の入口流路28を備えている流路構成26を備えている。該図示されている実施形態において、該出口ポート28bは、該流体系6の該径方向の最も外側の範囲に向かって配設されているが、図2Cおよび図2Dに関連して記載されているように、さまざまな実施形態において、該流体分析チャンバ12は、該径方向の最も外側の流体チャンバであってもよい。これまでのように、該分離チャンバ30は、該容器本体2の該径方向外側部18の該支持体に形成されたウェルの該形態をとっており、および該流体サンプルの残りの部分からの不必要な粒子/不純物の該分離を可能にするように構成されている。該第一の流路28の該出口ポート28bは、好ましくは、該分離チャンバウェル30の該最も外側の壁部(すなわち、径方向「ベース」の近傍)に向かって接続されている。該流路構成26は、該分離チャンバ30と連通している入口ポート32aと、該流体分析チャンバ12と連通している出口ポート32bとを有する第二の流路32をさらに備えている。堰部(または、段部)30aが、該分離チャンバ30と、該第二の流路32の該入口ポート32aとの間に配設されており、このことは、該分離チャンバ30によってもたらされる該分離/清澄化機能を向上させる。該第二の流路32は、実質的にU字状であり、および該第一のバルブ機構/空気ばね8のいずれかの側で概して逆方向に流体フローを生成するように構成された第一および第二の流路アーム32c、32dを備えている。したがって、該第一の流路アーム32cは、該第一の流路28に概して(逆)平行に延在し、その結果、該流体サンプルは、該分離チャンバ30から出て、径方向内側方向に該第一の流路アーム32cに沿って流れ、および該第二の流路アーム32dは、該第一の流路アーム32cに概して(逆)平行に延在し、および該流体サンプルが、そのフロー方向を逆にすることを可能にし、その結果、該流体サンプルは、該流体分析チャンバ12に向かって径方向外側方向に進む。該二つの流路アーム32c、32dは、該第一の空気ばね8を介して、それらの径方向の最も内側の範囲において互いに連通している。したがって、該圧縮ガスは、該流体装置1の回転によって該流体サンプルに印加される該遠心力と反対のガス圧力を及ぼすことにより、該二つの流路アーム32c、32d間の流体フローを防ぐために、対向する圧力を供給するように構成することができる。この実施形態によれば、第三の流路35が、該分析チャンバ12に連通して、該分析チャンバ12と第二のバルブ機構または空気ばね8’を接続している。該第三の流路35は、該分析チャンバ12と連通する入口ポート35aと、該第二のバルブ機構8’と連通する出口ポート35bとを有し、該第三の流路35は、該第二の流路32の該第二の流路アーム32dと概して(逆)平行に配置され、その結果、該第二のバルブ機構8’は、該分析チャンバ12の径方向内側に配置されている。いくつかの実施形態においては、該分析チャンバ12内の代わりに、その中に薬物/抗生物質を配置することができる、該第三の流路35の拡大領域35cを設けてもよい。
【0178】
便宜上、本開示のこの態様の実施形態によれば、使用時に、一旦、サンプル流体が該分析チャンバ12を充填すると、該流体装置1の該回転速度を、該液体サンプルを流路35に沿って該第二のバルブ機構8’に向かって押し込むように増加させることができる。一旦、該液体サンプルが、(いくつかの実施形態においては、該流路の拡大領域でなくてもよいが、薬物が中に置かれる該領域に単純に相当する)該流路の該領域35cの所まで到達すると、該サンプルは、該薬物/抗生物質に溶解し始めることができる。該流体装置1の該回転速度を低下させることにより、該第二のバルブ機構8’内の該圧力が、該液体サンプルの該遠心力に打ち勝って、該サンプルは、該分析チャンバ12に向かって押し戻される。したがって、該回転速度を相互に増減させることにより、該抗生物質が効果的かつ効率的に溶解されるように、該液体サンプルを、該領域35cにわたって、該流路35に沿って前後に流すように(揺動するように)することができる。これらの実施形態は、該サンプルと薬物の混合を改善することができるため、該液体サンプル中に容易に溶解されない可能性がある薬物との組合せでの利用に特に有益である可能性がある。該流体系6’の実施形態は、(上記の)該流体系6に関して既に述べた該回転速度のパターンに従って、概して用いることができる。
【0179】
さらに、該流体装置1の構造は、該チャンバウェルの深さを変えることにより、該流体分析チャンバ12を通過する光の光路長を変えるように変更してもよいことに留意されたい。光路長を増加させることは、該信号を増加させることになり、該光は、該プロセスにおいて、より多くのサンプルを通過して、より多くの細菌粒子と作用するであろう。考慮することのできる実施例の光路長は、3~10mm、または、4~8mm(例えば、4mm、5mm、6mmまたは7mmのウェル深さ)であり、該光路長を変更することは、該流体系6内の他の形状構成、例えば、該清澄化チャンバ30および該空気ばね8またはばね8、8’のサイズの変更も伴うであろう。前述の実施形態に関連して説明したように、該第二の空気ばね/バルブ機構8’は、(例えば、該分析チャンバ12の該容積および/または該装置の所望の回転速度に基づく)選好に従って選択することができる。特定の実施形態においては、該第二の空気ばね8’の該容積は、約10~50μlとすることができる。
【0180】
該信号対ノイズ比を改善するためのその他の機構は、光が該流体装置1の他の部分に入ることまたは該他の部分に作用することを防ぐために、例えば、プラスチックまたは他の薄い材料から成る薄いフィルムまたはシートを、該流体装置1の該ベースに取付けることによって、該流体分析チャンバ12の縁部を「マスキング」することを包含し、例えば、該サンプルカルーセル1108内の該開口部1118は、直径が該流体分析チャンバ12の該直径よりも小さくてもよい。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】