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特表2023-512290異種性を低減させるためにウイルス調製物を処理するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】異種性を低減させるためにウイルス調製物を処理するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20230316BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230316BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230316BHJP
   G01N 1/44 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C12N7/02
G01N27/62 V
G01N1/28 J
G01N1/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547046
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 US2021016325
(87)【国際公開番号】W WO2021158603
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/969,323
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャロルド,マーティン・エフ
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,デヴィッド・イー
(72)【発明者】
【氏名】ドレイパー,ベンジャミン・イー
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ,ローレン・エフ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G052
4B065
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041FA11
2G041GA08
2G041GA17
2G041GA18
2G041JA10
2G041LA08
2G052AA28
2G052AB16
2G052AB27
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052EB11
2G052EB12
2G052GA24
2G052HA17
2G052HC04
2G052HC17
2G052HC22
2G052HC38
2G052JA06
2G052JA08
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065BC03
4B065BD08
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
ウイルス調製物の異種性を低減させるための方法は、ウイルス調製物からウイルスイオンを発生させることと、ウイルス調製物及び発生させたウイルスイオンのうちの少なくとも1つの増加させた温度において、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つを繰り返し増加させることと、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定することと、それぞれの質量電荷比及び電荷の大きさに基づいて、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において質量スペクトルを決定することと、質量スペクトルに基づいて、ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒に最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定することとを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス調製物の異種性を低減させるための方法であって、
前記ウイルス調製物からウイルスイオンを発生させることと、
前記ウイルス調製物及び前記発生させたウイルスイオンのうちの少なくとも1つの増加させた温度において、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つを繰り返し増加させることと、
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、前記発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定することと、
それぞれの質量電荷比及び電荷の大きさの値に基づいて、前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において質量スペクトルを決定することと、
前記質量スペクトルに基づいて、前記ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、前記ウイルス調製物の異種性を一緒に最小化するか又は少なくとも低減させる前記温度及び前記インキュベーション期間の最適なものを決定すること
を含む、方法。
【請求項2】
冷却プロファイルを、増加させた温度がそれぞれのインキュベーション期間後に低下される方式に対応するように変化させることと、
前記質量スペクトルに基づいて、前記ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、前記ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものと共に、最適な冷却プロファイルを決定すること
を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加熱プロファイルを、前記ウイルス調製物及び前記発生させたウイルスイオンのうちの少なくとも1つの温度が増加される方式に対応するように変化させることと、
前記質量スペクトルに基づいて、前記ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、前記ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる前記温度及び前記インキュベーション期間の最適なものと共に、最適な加熱プロファイルを決定すること
を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
冷却プロファイルを、前記増加させた温度がそれぞれのインキュベーション期間後に低下される方式に対応するように変化させることと、
前記質量スペクトルに基づいて前記ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、前記ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる前記温度及び前記インキュベーション期間の最適なものと共に、最適な冷却プロファイルを決定すること
を更に含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、前記発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定することが、電荷検出質量分析計を使用して行われる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、前記発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定することが、質量分析計を使用して行われる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれの質量スペクトルにおける少なくとも1つの目的の質量ピークの質量分解能に基づいて、前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加においてウイルス集団の異種性を決定すること、
を更に含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、前記それぞれの質量スペクトルが、前記ウイルス調製物中の最高質量キャプシドのものよりも大きい質量を有する識別可能な粒子を含む場合に凝集が発生したと決定すること
を更に含み、
前記温度及び前記インキュベーション期間の前記最適なものの少なくとも1つが、凝集が発生したそれぞれの質量スペクトルのそれぞれの温度及びインキュベーション期間未満である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス調製物の他の試料を、その異種性を最小化するか又は少なくとも低減させるために、前記ウイルス調製物の他の試料の各々を最適なインキュベーション期間にわたって決定された最適温度まで加熱することによって処理すること、
を更に含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルス調製物が、ウイルス調製溶液であり、
前記ウイルスイオンを発生させることが、エレクトロスプレーイオン化源を使用して、前記ウイルス調製溶液から前記ウイルスイオンを発生させることを含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つを繰り返し増加させることが、前記ウイルス調製物に連結された第1の熱エネルギーデバイスを制御して、前記ウイルス調製物を加熱することを含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つを繰り返し増加させることが、熱エネルギーを発生させたイオンに伝達するように位置付けられた第2の熱エネルギーデバイスを制御して、前記発生させたイオンを加熱することを含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ウイルス調製物の異種性を低減させるための方法であって、
前記ウイルス調製物の増加させた温度において温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つを順次増加させることと、
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、前記ウイルス調製物からウイルスイオンを発生させることと、
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、前記発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定することと、
それぞれの質量電荷比及び電荷の大きさの値に基づいて、前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、質量スペクトルを決定することと、
前記質量スペクトルに基づいて、前記ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、前記ウイルス調製物の異種性を一緒に最小化するか又は少なくとも低減させる前記温度及び前記インキュベーション期間の最適なものを決定すること
を含む、方法。
【請求項14】
冷却プロファイルを、増加させた温度がそれぞれのインキュベーション期間後に低下される方式に対応するように変化させることと、
前記質量スペクトルに基づいて、前記ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、前記ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる前記温度及び前記インキュベーション期間の最適なものと共に、最適な冷却プロファイルを決定すること
を更に含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
加熱プロファイルを、前記ウイルス調製物及び前記発生させたウイルスイオンのうちの少なくとも1つの温度が増加される方式に対応するように変化させることと、
前記質量スペクトルに基づいて、前記ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、前記ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる前記温度及び前記インキュベーション期間の最適なものと共に、最適な加熱プロファイルを決定することと
を更に含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
冷却プロファイルを、増加させた温度がそれぞれのインキュベーション期間後に低下させられる方式に対応するように変化させることと、
前記質量スペクトルに基づいて、最適な加熱プロファイル、並びに前記ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、前記ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる前記温度及び前記インキュベーション期間の最適なものと共に、最適な冷却プロファイルを決定することと
を更に含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において前記発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定することが、電荷検出質量分析計を使用して行われる、
請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において前記発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定することが、質量分析計を使用して行われる、
請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
それぞれの質量スペクトルにおける少なくとも1つの目的の質量ピークの質量分解能に基づいて、前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加においてウイルス集団の異種性を決定すること
を更に含む、
請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、前記それぞれの質量スペクトルが、前記ウイルス調製物中の最高質量キャプシドのものよりも大きい質量を有する識別可能な粒子を含む場合に凝集が発生したと決定すること
を更に含み、
前記温度及び前記インキュベーション期間の前記最適なものの少なくとも1つが、凝集が発生したそれぞれの質量スペクトルのそれぞれの温度及びインキュベーション期間未満である、
請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルス調製物の他の試料を、その異種性を最小化するか又は少なくとも低減させるために、前記ウイルス調製物の他の試料の各々を最適なインキュベーション期間にわたって決定された最適温度まで加熱することによって処理すること
を更に含む、
請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルス調製物が、ウイルス調製溶液であり、
前記ウイルスイオンを発生させることが、エレクトロスプレーイオン化源を使用して、前記ウイルス調製溶液から前記ウイルスイオンを発生させることを含む、
請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記温度及び前記インキュベーション期間のうちの少なくとも1つを順次増加させることが、前記ウイルス調製物に連結された第1の熱エネルギーデバイスを制御して、前記ウイルス調製物を加熱することを含む、
請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本国際公開出願は、2020年2月3日に出願された米国仮特許出願第62/969,323号の利益及び優先権を主張するものであり、その仮特許出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
政府の権利
[0002]本発明は、国立衛生研究所によって授与されたGM131100の下で政府の支援により行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
[0003]本開示は、概して、質量分光分析に関し、より具体的には、限定されるものではないが、ウイルス粒子が含まれる生物学的混合物粒子の質量を、異なる範囲の温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルにわたって測定及び分析するための機器及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0004]アデノ随伴ウイルス(AAV)は、その病原性の欠如、低免疫原性及び異なる向性を有する多くの血清型の存在のために、広く受け入れられている遺伝子療法ベクターの一例である。試料調製及び包装技術に関連し得る用量関連免疫毒性の可能性が存在することが見出されている。限定されないが、AAVなどのウイルス調製物を、そのような調製物の異種性を低減させる方法で処理することは有益であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0005]本開示は、添付の特許請求の範囲に記載された特徴のうちの1つ以上、及び/又は以下の特徴のうちの1つ以上並びにそれらの組み合わせを含み得る。第1の態様では、ウイルス調製物の異種性を低減させるための方法は、ウイルス調製物からウイルスイオンを発生させるステップと、ウイルス調製物及び発生させたウイルスイオンのうちの少なくとも1つの増加させた温度において、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つを繰り返し増加させるステップと、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定するステップと、それぞれの質量電荷比及び電荷の大きさの値に基づいて、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において質量スペクトルを決定するステップと、質量スペクトルに基づいて、ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒に最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定するステップとを含み得る。
【0005】
[0006]第2の態様は、第1の態様の特徴を含むことができ、冷却プロファイルを、増加させた温度がそれぞれのインキュベーション期間後に低下される方式に対応するように変化させるステップと、質量スペクトルに基づいて、最適な冷却プロファイルと共に、ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定するステップとを更に含み得る。
【0006】
[0007]第3の態様は、第1の態様の特徴を含むことができ、加熱プロファイルを、ウイルス調製物及び発生させたウイルスイオンのうちの少なくとも1つの温度が増加される方式に対応するように変化させるステップと、質量スペクトルに基づいて、最適な加熱プロファイルと共に、ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定するステップとを更に含み得る。
【0007】
[0008]第4の態様は、第3の態様の特徴を含むことができ、冷却プロファイルを、増加させた温度がそれぞれのインキュベーション期間後に低下される方式に対応するように変化させるステップと、質量スペクトルに基づいて、最適な冷却プロファイルと共に、ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定するステップとを更に含み得る。
【0008】
[0009]第5の態様は、第1の態様から第4の態様までのいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定するステップは、電荷検出質量分析計を使用して行われる。
【0009】
[0010]第6の態様は、第1の態様から第4の態様までのいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定するステップは、質量分析計を使用して行われる。
【0010】
[0011]第7の態様は、第1の態様から第6の態様までのいずれかの特徴を含むことができ、それぞれの質量スペクトルにおける少なくとも1つの目的の質量ピークの質量分解能に基づいて、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加においてウイルス集団の異種性を決定するステップを更に含むことができる。
【0011】
[0012]第8の態様は、第1の態様から第7の態様までのいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、それぞれの質量スペクトルが、ウイルス調製物中の最高質量キャプシドのものよりも大きい質量を有する識別可能な粒子を含む場合に凝集が発生したと決定するステップを更に含むことができ、温度及びインキュベーション期間の最適なものの少なくとも1つは、凝集が発生したそれぞれの質量スペクトルのそれぞれの温度及びインキュベーション期間未満である。
【0012】
[0013]第9の態様は、第1の態様から第8の態様までのいずれかの特徴を含むことができ、ウイルス調製物の他の試料を、その異種性を最小化するか又は少なくとも低減させるために、ウイルス調製物の他の試料の各々を最適なインキュベーション期間わたって決定された最適温度まで加熱することによって処理するステップを更に含むことができる。
【0013】
[0014]第10の態様は、第1の態様から第9の態様までのいずれかの特徴を含むことができ、ウイルス調製物は、ウイルス調製溶液であり、ウイルスイオンを発生させるステップは、エレクトロスプレーイオン化源を使用して、ウイルス調製溶液からウイルスイオンを発生させることを含む。
【0014】
[0015]第11の態様は、第1の態様から第10の態様までのいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つを繰り返し増加させるステップは、ウイルス調製物に連結された第1の熱エネルギーデバイスを制御してウイルス調製物を加熱することを含む。
【0015】
[0016]第12の態様は、第1の態様から第11の態様までのいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つを繰り返し増加させるステップは、熱エネルギーを発生させたイオンに伝達するように位置付けられた第2の熱エネルギーデバイスを制御して、発生させたイオンを加熱することを含む。
【0016】
[0017]第13の態様では、ウイルス調製物の異種性を低減させるための方法は、ウイルス調製物の増加させた温度において温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つを順次増加させるステップと、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加においてウイルス調製物からウイルスイオンを発生させるステップと、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定するステップと、それぞれの質量電荷比及び電荷の大きさの値に基づいて、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において質量スペクトルを決定するステップと、質量スペクトルに基づいて、ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒に最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定するステップとを含み得る。
【0017】
[0018]第14の態様は、第13の態様の特徴を含むことができ、冷却プロファイルを、増加させた温度がそれぞれのインキュベーション期間後に低下される方式に対応するように変化させるステップと、質量スペクトルに基づいて、最適な冷却プロファイルと共に、ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定するステップとを更に含むことができる。
【0018】
[0019]第15の態様は、第13の態様の特徴を含むことができ、加熱プロファイルを、ウイルス調製物及び発生させたウイルスイオンのうちの少なくとも1つの温度が増加される方式に対応するように変化させるステップと、質量スペクトルに基づいて、最適な加熱プロファイルと共に、ウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定するステップとを更に含むことができる。
【0019】
[0020]第16の態様は、第15の態様の特徴を含むことができ、冷却プロファイルを、増加させた温度がそれぞれのインキュベーション期間後に低下される方式に対応するように変化させるステップと、質量スペクトルに基づいて、最適な冷却プロファイルと共に、最適な加熱プロファイル、並びにウイルス調製物中のウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を一緒になって最小化するか又は少なくとも低減させる温度及びインキュベーション期間の最適なものを決定するステップとを更に含むことができる。
【0020】
[0021]第17の態様は、第13の態様から第16の態様のいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定するステップは、電荷検出質量分析計を使用して行われる。
【0021】
[0022]第18の態様は、第13の態様から第16の態様のいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において発生させたウイルスイオンの少なくともいくつかの質量電荷比及び電荷の大きさを測定するステップは、質量分析計を使用して行われる。
【0022】
[0023]第19の態様は、第13の態様から第18の態様のいずれかの特徴を含むことができ、それぞれの質量スペクトルにおける少なくとも1つの目的の質量ピークの質量分解能に基づいて、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加においてウイルス集団の異種性を決定するステップを更に含むことができる。
【0023】
[0024]第20の態様は、第13の態様から第19の態様のいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つの各増加において、それぞれの質量スペクトルが、ウイルス調製物中の最高質量キャプシドのものよりも大きい質量を有する識別可能な粒子を含む場合に凝集が発生したと決定するステップを更に含むことができ、温度及びインキュベーション期間の最適なものの少なくとも1つは、凝集が発生したそれぞれの質量スペクトルのそれぞれの温度及びインキュベーション期間未満である。
【0024】
[0025]第21の態様は、第13の態様から第20の態様のいずれかの特徴を含むことができ、ウイルス調製物の他の試料を、その異種性を最小化するか又は少なくとも低減させるために、ウイルス調製物の他の試料の各々を最適なインキュベーション期間にわたって決定された最適温度まで加熱することによって処理するステップを更に含むことができる。
【0025】
[0026]第22の態様は、第13の態様から第21の態様のいずれかの特徴を含むことができ、ウイルス調製物は、ウイルス調製溶液であり、ウイルスイオンを発生させるステップは、エレクトロスプレーイオン化源を使用して、ウイルス調製溶液からウイルスイオンを発生させることを含む。
【0026】
[0027]第23の態様は、第13の態様から第22の態様のいずれかの特徴を含むことができ、温度及びインキュベーション期間のうちの少なくとも1つを連続的に増加させるステップは、ウイルス調製物に連結された第1の熱エネルギーデバイスを制御してウイルス調製物を加熱することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】[0028]ウイルス調製物から荷電粒子を繰り返し発生させて、次いで荷電粒子の質量を決定及び分析するための機器の実施形態の簡略図であり、ウイルス調製物及び/又は荷電粒子は、少なくとも1つの範囲の異なる温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルに供される。
図2】[0029]ウイルス調製物及び/又は荷電粒子を少なくとも1つの範囲の異なる温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルに供するために、図1に図示された熱エネルギー源のうちの1つ以上を制御するための、次いで、機器を制御して、ウイルス調製物から荷電粒子を発生させ、温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの各組み合わせにおいて荷電粒子の質量を決定及び分析して、調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を最小化するか又は少なくとも低減させる温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの少なくとも1つの最適な組み合わせを決定するためのプロセスの実施形態の簡略化フロー図である。
図3】[0030]調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を最小化するか又は少なくとも低減させる目的で、図2に図示されたプロセスを使用してあらかじめ決定された温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの最適なセットに従ってウイルスを処理するためのプロセスの実施形態の簡略化フロー図である。
図4】[0031]図4Aは、周囲条件下(25℃)での例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対存在量のプロットである。[0032]図4Bは、10分間の例示的なインキュベーション期間にわたって45℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対存在量のプロットである。[0033]図4Cは、10分間の例示的なインキュベーション期間にわたって50℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対存在量のプロットである。[0034]図4Dは、10分間の例示的なインキュベーション期間にわたって55℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対存在量のプロットである。[0035]図4Eは、10分間の例示的なインキュベーション期間にわたって60℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対存在量のプロットである。[0036]図4Fは、10分間の例示的なインキュベーション期間にわたって65℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対存在量のプロットである。
図5】[0037]図5Aは、周囲条件下(25℃)での別の例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対強度のプロットである。[0038]図5Bは、20分間の例示的なインキュベーション期間にわたって55℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対強度のプロットである。[0039]図5Cは、30分間の例示的なインキュベーション期間にわたって55℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対強度のプロットである。[0040]図5Dは、40分間の例示的なインキュベーション期間にわたって55℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対強度のプロットである。[0041]図5Eは、60分間の例示的なインキュベーション期間にわたって55℃に上昇させた例示的なウイルス調製物についての図2のプロセスの操作を示す質量対強度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[0042]本開示の原理の理解を促進する目的で、添付の図面に示される多くの例示的な実施形態が参照され、それを説明するために特定の言語が使用される。
[0043]本開示は、ウイルス調製物から荷電粒子を繰り返し発生させて、次いで荷電粒子の質量を決定及び分析するための装置及び技術に関し、ウイルス調製物及び/又は荷電粒子は、調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、調製物の異種性を最小化するか又は少なくとも低減させる温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの少なくとも1つの最適な組み合わせを決定する目的で、少なくとも1つの範囲の異なる温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルに供される。本開示はまた、調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、調製物の異種性が最小化されているか、又は少なくとも低減されている処理されたウイルス調製物を生成するために、ウイルス調製物を温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルのあらかじめ決定された最適な組み合わせに供することによる、ウイルス調製物を連続的に処理するための装置及び技術に関する。添付の図面に例示され、本明細書に記載される装置及び技術は、調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、かかる調製物の異種性を最小化するか又は少なくとも低減させる目的で、それぞれがウイルスの異なる調製物を処理するための、及び/又は異なるウイルスの調製物を処理するための、温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの最適な組み合わせのライブラリーを構築するために例示として使用され得る。本文書の目的では、「インキュベーション期間」という用語は、ウイルス調製物によって、及び/又はウイルス調製物から発生させた荷電粒子によって特定の温度で費やされる時間の量を意味するものと理解されたい。「凝集」という用語は、典型的には、上昇温度及びインキュベーション期間の様々な組み合わせでウイルス調製物において起こる、2つ以上のウイルスキャプシド又はキャプシドフラグメントの互いに対する接着又は付着を意味するものと理解されたい。本文書の目的では、「イオン(複数可)」及び「荷電粒子(複数可)」という用語は同義であると理解され、したがって、互換的に使用されてもよい。
【0029】
[0044]ここで図1を参照すると、ウイルス調製物から荷電粒子を繰り返し発生させ、次いで荷電粒子の質量を決定及び分析するための機器10であり、ここでは、ウイルス調製物及び/又は荷電粒子は、少なくとも1つの範囲の異なる温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルに供される機器10の図が示されている。図示した実施形態では、機器10は、質量分析計14の入口に連結された出口を有するイオン源領域12を例示として含む。
【0030】
[0045]イオン源領域12は、イオン、すなわち荷電粒子を試料16から発生させるように構成されたイオン発生器18を例示として含む。図示した実施形態では、イオン発生器18は、溶液入口で注入管18Bに連結され、かつ溶液出口で機器10のイオン源領域12に配置されたキャピラリー出口を有するキャピラリー18Cに連結されたポンプ18Aを有する従来のエレクトロスプレーイオン化(ESI)源の形態で実装されている。ESI源18は、注入管18Bを通してポンプ18Aに、例えば周囲圧で溶液を吸い込み、キャピラリー18Cの出口を介して機器10のイオン源領域12に荷電溶液粒子の微細なスプレー又は液滴を放出するために従来の方式で動作可能である。代替実施形態では、イオン発生器18は、試料からイオンを発生させるための任意の従来のデバイス又は装置であってもよく、イオン源領域12の外側に位置付けられても、又はイオン源領域12の内部に位置付けられてもよい。後者の1つの例示的な例として、多少なりとも限定的なものとしてみなされるべきではないが、図1に図示された構造体25は、従来のマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)源の形態のイオン発生器18又はイオン源領域12の内側に配置された試料16からイオンを発生させるように構成された他の従来のイオン発生器を表してもよい。いくつかの実施形態では、図1に図示された構造体25は、代替として又は追加として、その開示が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年6月4日に出願された同時係属中の国際出願第PCT/US2019/035379号に開示された構造体のいずれかなどのイオン注入インターフェースを表してもよい。他の実施形態では、構造体25は省略されてもよい。
【0031】
[0046]イオンがそれから発生される試料16は、例示としては、任意の種類のウイルスの、又はそれらを含む任意の混合物若しくは溶液などの任意のウイルス調製物であってもよく、これらの1つの非限定的な例は、上述したようなAAVである。代替実施形態では、試料16は、生物学的及び/又は非生物学的成分の任意の混合物、溶液若しくは他の形態であり得る。図1に図示された例では、試料16は、例えば、容器16B内で溶液中16Aに溶解され、分散され、又は別の方法で担持されたウイルス調製物であるが、他の実施形態では、試料16は、溶液又は溶液の一部でなくてもよい。図1に図示された例示的な実施形態では、容器16Bは、ESI源18の注入管18Bから下方にずれて示されており、容器16Bは、注入間18Bが試料溶液16Aと流体連通するように方向Dで上方に移動可能であることが理解されよう。
【0032】
[0047]例示した実施形態では、電圧源VS1は、数字Jの単一経路(Jは、任意の正の整数であり得る)を介してプロセッサ20に電気的に接続され、数字Kの単一経路(Kは、同様に、任意の正の整数であり得る)を介してイオン発生器18に更に電気的に接続されている。いくつかの実施形態では、電圧源VS1は、単一の電圧源の形態で実装されてもよく、他の実施形態では、電圧源VS1は、任意の数の別個の電圧源を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電圧源VS1は、1つ以上の選択可能な大きさの時不変な(すなわち、DC)電圧を生成して供給するように構成又は制御され得る。代替として又は追加として、電圧源VS1は、1つ以上の切り替え可能な時変な電圧、すなわち、1つ以上の切り替え可能なDC電圧を生成して供給するように構成又は制御され得る。代替として又は追加として、電圧源VS1は、選択可能な形状、デューティサイクル、ピークの大きさ、及び/又は周波数の1つ以上の時変信号を生成して供給するように構成又は制御され得る。
【0033】
[0048]プロセッサ20は、例示としては従来型のものであり、単一の処理回路又は複数の処理回路を含み得る。プロセッサ20は、例示としては、プロセッサ20によって実行されると、プロセッサ20が、電圧源VS1を制御して、イオン発生器18の動作を選択的に制御するための1つ以上の出力を生成させる、その中に保存された命令を有するメモリ22を含むか、又はそれに連結されている。いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、1つ以上の従来型のマイクロプロセッサ又はコントローラの形態で実装されてもよく、そのような実施形態では、メモリ22は、1つ以上のマイクロプロセッサ実行可能な命令又は命令セットの形態でその中に保存された命令を有する1つ以上の従来型のメモリユニットの形態で実装され得る。他の実施形態では、プロセッサ20は、代替として又は追加として、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は同様な回路機構の形態で実装されてもよく、そのような実施形態では、メモリ22は、その中に命令をプログラムして保存することができる、FPGA内に含まれる、及び/又はその外側にあるプログラマブル論理ブロックの形態で実装されてもよい。更に他の実施形態では、プロセッサ20及び/又はメモリ22は、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)の形態で実装されてもよい。当業者であれば、プロセッサ20及び/又はメモリ22が実装され得る他の形態を認識するであろうし、実装の任意のそのような他の形態が、本開示によって企図され、かつ本開示の範囲内に入るように意図されることを理解されよう。いくつかの代替実施形態では、電圧源VS1は、1つ以上の定出力電圧及び/又は時変出力電圧を選択的に生成するように、それ自体プログラム可能であり得る。
【0034】
[0049]例示した実施形態では、電圧源VS1は、例示としては、プロセッサ20によって生成された制御信号に応答して1つ以上の電圧を生成し、イオン発生器18に従来の方法で試料16からイオンを発生させるように構成される。いくつかの実施形態では、試料16は、図1に示されるように、イオン源領域12の外側に位置付けられ、他の実施形態では、イオン源18は、イオン源領域12の内部に位置付けられてもよい。例示した実施形態では、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源18は、VS1により供給された1つ以上の電圧に応答して、電荷液滴の細かい霧状の形態で試料16からイオンを発生させるように構成されている。上述したように、ESI及びMALDIは、無数にある従来型のイオン発生器の2つの例を表したにすぎないこと、及びイオン発生器18は、試料が溶液であろうと溶液でなかろうと、試料からイオンを発生させるための任意のそのようなあらゆる従来型のデバイス又は装置であり得るか、又はそのようなあらゆる従来型のデバイス又は装置を含み得る。
【0035】
[0050]少なくとも1つの熱エネルギー源が、試料16及び/又はイオン発生器18及び/又はイオン源領域12内の電荷粒子に熱的に選択的にエネルギーを与える、すなわち、熱エネルギーを伝達するように構成されている。例示した実施形態では、例えば、熱エネルギー源24は、ウイルス調製物を含有する溶液16Aを担持する容器16Bに動作的に連結されて示されており、この実施形態では、熱エネルギー源24は、熱エネルギーを、容器16Bを介してウイルス調製溶液16Aに伝達するように構成されている。代替として又は追加として、熱エネルギー源24’が、イオン発生器18に動作的に連結されてもよい。いくつかのそのような実施形態では、熱エネルギー源24’は、ポンプ18A及び/又は注入管18Bに連結されてもよく、そのような実施形態では、熱エネルギー源24’は、例えば、溶液16Aのイオン化の前に、ポンプ18A及び/又は管18Bを介して、熱エネルギーをウイルス調製溶液16Aに伝達するように構成されている。他のそのような実施形態では、熱エネルギー源24’は、キャピラリー18Cに連結されてもよく、そのような実施形態では、熱エネルギー源24’は、キャピラリー18C内の溶液16Aに、及び/又はキャピラリー18Cから出る荷電粒子に熱エネルギーを伝達するように構成されている。代替として又は更に追加として、熱エネルギー源24’’が、機器10のイオン源領域12に動作的に連結されてもよく、そのような実施形態では、熱エネルギー源24’’は、イオン源領域12内の荷電粒子に、すなわち、イオン発生器18から出る荷電粒子に、そして質量分析計14に入る前の荷電粒子に熱エネルギーを伝達するように構成されている。
【0036】
[0051]いくつかの実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’によって生成された熱エネルギーは、エネルギー源24、24’、24’’から試料16、イオン発生器18及び/又は荷電粒子まで伝達される熱の形態であり得、他の実施形態では、熱エネルギーは、試料16、イオン発生器18及び/又は荷電粒子からエネルギー源24、24’、24’’まで伝達される、すなわち、試料粒子を冷却する熱の形態であり得る。いくつかの実施形態では、エネルギー源24、24’、24’’は、試料温度が、より暖かいからより冷えた温度に、又はより冷えたからより暖かい温度に周囲温度をスイープされ得るように、又は冷えたからより冷えた温度に、より冷えたからあまり冷えていない温度に、冷えた若しくは涼しいから暖かい若しくは熱い温度に、暖かい若しくは熱いから冷えた若しくは涼しい温度に、暖かいからより暖かい温度に、より暖かいからあまり暖かくない温度に、暖かいから熱い温度に、熱いから暖かい温度になどスイープされ得るように加熱能力と冷却能力の両方を含み得る。例示的な熱源24、24’、24’’としては、従来型の溶液ヒーター及び加熱ユニット、1つ以上の放射線源、例えば、赤外、レーザー、マイクロ波、若しくは任意の放射線波長での何らかのもの、1つ以上の加熱ガス又は他の流体(複数可)などが挙げられ得るが、これらに限定されず、例示的な冷却源24、24’、24’’としては、従来型の溶液チラー、1つ以上の冷却ガス又は他の流体(複数可)などが挙げられ得るが、これらに限定されない。熱エネルギー源24’’のいくつかの例及び荷電粒子を加熱するためのその動作は、その開示が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年12月5日に出願された、同時係属中の国際出願第PCT/US2018/064005号に記載されている。当業者であれば、ウイルス調製物からの荷電粒子の発生前又は発生後に加熱若しくは冷却することによって、ウイルス調製物16の温度を制御するための他の構造体及び/又は技術を認識するであろうし、任意のそのような他の構造体及び/又は技術が、本開示の範囲内に入るよう意図されることを理解するであろう。
【0037】
[0052]図1の例によって例示される、いくつかの実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、電圧源VS1に電気的に接続されており、電圧源VS1は、プロセッサ20によって生成された1つ以上の制御信号に応答して、1つ以上の対応する電圧を生成して、熱エネルギー源24、24’、24’’によって生成された熱エネルギーを制御するように構成されている。代替実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、プロセッサ20によって生成された制御信号に応答して、熱エネルギーを選択的に生成するように構成されてもよく、そのような実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、プロセッサ20に直接電気的に接続されても、又は従来型の回路機構を介して接続されてもよい。熱エネルギー源24及び/又は熱エネルギー源24’を含むいくつかの実施形態では、電圧源VS1によってそれに供給された電圧/電流又は熱エネルギー源24、24’それ自体は、プロセッサ20によって制御されない場合があり、むしろ、図1で破線の表現で示された別個の従来型の制御回路Cによって制御され得る。いくつかの実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、従来型の主導制御された熱エネルギー源、例えば、手動制御ヒーター及び/又は氷浴などであり得、そのような実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’の動作は、プロセッサ20又は制御回路Cによっては制御されず、例えば、熱エネルギー源を手動で制御し、例えば、従来型の温度計又は温度センサーによって温度を手動で監視し、及び/又は従来型のタイマー、ストップウォッチ又は同様なデバイスによってインキュベーション期間を手動で監視することにより、手動で制御される。いずれの場合も、熱エネルギー源24、24’、24’’は、1つ以上の従来型のヒーター若しくは加熱素子及び/又は1つ以上の従来型のクーラー若しくは冷却素子の形態で実装され得る。
【0038】
[0053]熱エネルギー源24、24’、24’’がプロセッサ20によって、又は制御回路Cによって制御される実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、電圧源VS1によって生成された1つ以上の電圧に、及び/又はプロセッサ20若しくは制御回路Cによって生成された1つ以上の制御信号に応答して、試料16の温度、イオン発生器18の温度及び/又はイオン源領域12内の荷電粒子の温度並びにインキュベーション期間、すなわち、熱エネルギー源24、24’、24’’が任意の特定の温度に制御される持続時間を制御する。
【0039】
[0054]いくつかの実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、電圧源VS1によって生成された1つ以上の電圧に応答して、熱エネルギー源24、24’、24’’の物理的制限を考慮して、実行可能な限り迅速に目標の上昇温度を達成するように構成されている。代替実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、プロセッサ20又は制御回路Cによって生成された信号を制御するようにプログラムされ、又は応答して、複数の異なる加熱プロファイルのいずれかに従って目標の上昇温度を達成するように構成され得る。そのような加熱プロファイルの例としては、線形的に増加する、例えば、傾斜温度プロファイル、非線形的若しくは区分線形的に増加する温度プロファイル又はそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかのそのような実施形態では、加熱プロファイルの持続時間、すなわち、現在の温度から目標の上昇温度までもまた、プロセッサ20又は制御回路Cによって制御され得る。
【0040】
[0055]いくつかの実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、電圧源VS1によって生成された1つ以上の電圧に応答して、熱エネルギー源24、24’、24’’の物理的制限を考慮して、実行可能な限り迅速に目標の低減温度を達成するように構成されている。一例として、熱エネルギー源24、24’、24’’は、熱エネルギー源24、24’、24’’を単純に切るか、又は低くすることによって、目標の低減温度を達成するように構成することができ、この場合、目標の低減温度は、熱エネルギー源24、24’、24’’並びに試料16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12が一緒に目標の低減温度まで冷える持続時間にわたって達成されるであろう。代替実施形態では、熱エネルギー源24、24’、24’’は、プロセッサ20又は制御回路Cによって生成された信号を制御するようにプログラムされ、又は応答して、複数の異なる冷却プロファイルのいずれかに従って目標の低減温度を達成するように構成され得る。そのような冷却プロファイルの例としては、線形的に減少する、例えば、傾斜温度プロファイル、非線形的若しくは区分線形的に減少する温度プロファイル又はそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかのそのような実施形態では、冷却プロファイルの持続時間、すなわち、現在の温度から目標の低減温度までもまた、プロセッサ20又は制御回路Cによって制御され得る。
【0041】
[0056]いくつかの実施形態では、試料16、イオン源18及び/又はイオン源領域12における荷電粒子は、冷却させるか、又は今述べたように能動的に冷却され、その結果、質量分析計14による分析が周囲温度又は周囲温度近くで荷電粒子に対して行われる。他の実施形態では、試料16、イオン源18及び/又はイオン源12における荷電粒子は、周囲温度未満まで冷却され得、その結果、質量分析計14による分析が周囲より低い温度まで冷却された荷電粒子で行われる。更に他の実施形態では、試料16、イオン源18及び/又はイオン源12における荷電粒子は、今述べたように、1つ以上の上昇温度まで1つ以上のインキュベーション期間にわたって加熱されるが、その後、質量分析計14による分析が、1つ以上の上昇温度までそれぞれ1つ以上のインキュベーション期間にわたって加熱された荷電粒子で行われるように、実質的に冷却されない。
【0042】
[0057]質量分析計14は、例示として、一緒に連結した2つのセクション、イオン処理領域26及びイオン検出領域28を含む。第2の電圧源VS2は、数字Lの単一経路(Lは、任意の正の整数であり得る)を介してプロセッサ20に電気的に接続され、数字Mの単一経路(Mは、同様に任意の正の整数であり得る)を介してイオン処理領域26に電気的に接続されている。いくつかの実施形態では、電圧源VS2は、単一の電圧源の形態で実装されてもよく、他の実施形態では、電圧源VS2は、任意の数の別個の電圧源を含んでもよい。いくつかの実施形態では、電圧源VS2は、選択可能な大きさの1つ以上の時不変(すなわち、DC)電圧を生成して供給するように構成又は制御され得る。代替として又は追加として、電圧源VS2は、1つ以上の切り替え可能な時不変電圧、すなわち、1つ以上の切り替え可能なDC電圧を生成して供給するように構成又は制御され得る。代替として又は追加として、電圧源VS2は、選択可能な形状、デューティサイクル、ピークの大きさ、及び/又は周波数の1つ以上の時変信号を生成して供給するように構成又は制御可能であり得る。多少なりとも限定するものとみなされるべきではない、後者の実施形態の1つの具体的な例として、電圧源VS2は、高周波数(RF)範囲における1つ以上の正弦波(又は他の形状の)電圧の形態で、1つ以上の時変電圧を生成し供給するように構成又は制御可能であり得る。
【0043】
[0058]いくつかの実施形態では、質量分析計14は、イオン発生器18によって発生させた荷電粒子の質量電荷比及び電荷の大きさの両方を同時に測定するように構成され、そのため、プロセッサ20は、次いで、これらの測定値に基づいてイオン質量を決定することができる。そのような実施形態では、イオン検出領域28は、数字Nの電荷検出増幅器CA(Nは、任意の正の整数であり得る)の各々の入力部に電気的に接続され、数字Nの電荷検出増幅器CAの出力部は、図1に示されるように、プロセッサ20に電気的に接続されている。電荷検出増幅器(複数可)CAは、それぞれ、例示としては従来型であり、電荷検出領域28中に配置された1つ以上のそれぞれの電荷検出器上の荷電粒子によって誘導された電荷に対応して、その出力部において対応する電荷検出信号を生成して、電荷検出信号をプロセッサ20に供給する。
【0044】
[0059]質量分析計14がイオン発生器18によって発生させた電荷粒子の質量電荷比及び電荷の大きさの両方を同時に測定するように構成された質量分析計の形態で提供される一実施形態では、質量分析計14は、電荷検出質量分析計(CDMS)の形態で実装されることができ、ここでは、イオン処理領域26は、従来型の質量分析計若しくは質量分析器であるか、又はそれを含み、イオン検出領域28は、例示として、1つ以上の対応するCDMS電荷検出器を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のCDMS電荷検出器は、1つ以上の静電イオン線形イオントラップ(ELIT)の形態で提供されてもよく、他の実施形態では、1つ以上のCDMS電荷検出器は、少なくとも1つのオービトラップの形態で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、CDMS電荷検出器(複数可)は、少なくとも1つのELITと、少なくとも1つのオービトラップとを含んでもよい。CDMSは、例示としては、単一イオンの質量電荷比及び電荷の大きさの値を測定するように動作可能な単一粒子技術であるが、一部のCDMS検出器は、2つ以上の荷電粒子の質量電荷比及び電荷の大きさを一度に測定するように設計され、及び/又は動作可能になっている。図1の質量分析計14において、又は質量分析計14として実装され得るCDMS機器及び/又は技術のいくつかの例、並びにCDMS電荷検出器及び/又は技術のいくつかの例は、全て2019年1月11日に出願された、同時係属中の国際出願第PCT/US2019/013251号、同第PCT/US2019/013274号、同第PCT/US2019/013277号、同第PCT/US2019/013278号、同第PCT/US2019/013280号、同第PCT/US2019/013283号、同第PCT/US2019/013284号、及び同第PCT/US2019/013285号に開示されており、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に全て組み込まれる。
【0045】
[0060]質量分析計14がイオン発生器18によって発生させた電荷粒子の質量電荷比及び電荷の大きさの両方を同時に測定するように構成された質量分析計の形態で提供される別の実施形態では、質量分析計14は、荷電粒子の質量電荷比を測定するように構成され、荷電粒子の電荷の大きさを同時に測定するように更に構成された質量分析計の形態で実装され得る。そのような実施形態では、イオン処理領域26は、イオン加速領域及び/又は走査質量電荷比フィルターであるか、又はそれを含み、イオン検出領域28は、例示として、電界フリードリフト領域又はドリフトチューブ内に配置された電荷検出器アレイを含む。そのような実施形態では、従来型のイオン検出器30、例えば、従来型のマイクロチャネルプレート検出器又は他の従来型のイオン検出器は、ドリフト領域又はドリフトチューブの出口端部に位置付けられ、図1の破線の表現で示されるように、プロセッサに電気的に接続されている。そのような質量分析計のいくつかの例は、2020年12月16日に出願された同時係属中の国際出願第PCT/US2020/065301号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
[0061]質量分析計14が提供される特定の形態とは無関係に、機器10の様々なセクションが、その従来通りの動作のために準大気圧に制御される。例示した実施形態では、例えば、いわゆる真空ポンプP1は、イオン源領域12に動作的に連結され、別の真空ポンプP2は、質量分析計14のイオン処理領域26に動作的に連結され、更に別の真空ポンプP2は、質量分析計のイオン検出領域28に動作的に連結されている。例示した実施形態では、ポンプP1、P2及びP3の各々は、プロセッサ20が、ポンプP1、P2及びP3の各々の動作を制御し、したがって、3つのそれぞれの領域12、26、及び28の各々における圧力を個別に制御するよう構成されるように、プロセッサ20に動作的に連結されている。代替実施形態では、ポンプP1、P2及び/又はP3のうちの1つ以上は、手動で制御されてもよい。なお他の実施形態では、機器10のより多くの又はより少ないそれぞれの部分における圧力を制御するために、より多くの又はより少ないポンプが実装されてもよい。領域12、26、及び28の領域における圧力は、領域28の方向に正のガス流を提供する従来の方式で例示として設定される。
【0047】
[0062]機器10は、更に例示として、数字Pの単一経路(Pは、任意の正の整数であり得る)を介して、プロセッサ20に動作的に連結される1つ以上の周辺デバイス32を含む。周辺デバイス(複数可)32は、例えば、1つ以上のモニター、キーボード、キーパッド、ポイント&クリックデバイス、プリンター、グラフィカルディスプレイなどが挙げられるが、これらに限定されない従来の周辺デバイスのいずれか1つ又は組み合わせであり得るか、又はそれを含み得る。
【0048】
[0063]ここで図2を参照すると、ウイルス調製物16及び/又はイオン発生器18によって発生させた電荷ウイルス調製物粒子を、少なくとも1つの範囲の異なる温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルに供するために熱エネルギー源(複数可)24、24’、24’’を制御するための、及びまた機器10を制御して、ウイルス調製物から荷電粒子を発生させ、温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの各組み合わせにおいて荷電粒子の質量を決定及び分析して、調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物の異種性を最小化するか又は少なくとも低減させる温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの少なくとも1つの最適な組み合わせを決定するための、例示的なプロセス100を描写する簡略化フローチャートが示されている。プロセス100のステップのいくつかは、以下に記載される対応する機能を実行するために、メモリ22内に保存され、プロセッサ20によって実行可能な命令の形態で例示として提供されており、ステップの他のものは、手動で実行されても、又は図1に示された制御回路Cで実行されてもよい。
【0049】
[0064]プロセス100は、ステップ102で開始し、ここでは、ウイルス調製物の試料16が調製されるか、又は得られる。上述したように、ウイルス調製物16は、限定されることなく、任意の種類のウイルス又はウイルスの組み合わせを含有してよい。以下のプロセス100の説明の目的で、ウイルス調製物16は、例示として、図1に描写されたESI源が、上記のような霧状ミスト又は液滴の形態でそれから荷電粒子を発生させる形態であるように、溶液のウイルス調製物である。しかしながら、他の実施形態におけるウイルス調製物16が、非溶液で提供されてもよく、及び/又は他の実施形態におけるイオン発生器が、その例が上述されている別の従来型のイオン発生器であってもよいことが理解されよう。
【0050】
[0065]プロセス100は、ステップ102からステップ104に進み、ここでは、プロセッサ20が、イオン発生器18を制御して、ウイルス調製物16から荷電粒子を発生させるために、メモリ22に保存された対応する命令の実行に従うように動作可能であり、荷電粒子は、機器10によって、例えば、ESI源18の大気圧とイオン源領域12の真空状態との間の圧力差を介して、及び/又はイオン源領域12の真空状態と質量分析計14のより低い真空状態との間の圧力差を介して、及び/又はインターフェース25を含む実施形態における注入インターフェースを介して、イオン源領域12を通って質量分析計14に向けられる。プロセッサ20は更に、ステップ104で、質量分析器14を制御して、上記のように発生させた荷電粒子の質量電荷比及び電荷の大きさを測定し、次いで、質量電荷比及び電荷の大きさの測定値に基づいて荷電粒子の質量を算出して、荷電粒子質量の質量スペクトルを生成するように動作可能である。ステップ104において、ウイルス調製物は、例示としては、周囲温度、例えば25℃にあり、上昇温度処理にまだ供されておらず、ステップ104で機器10によって行われる測定は、同様に周囲温度による。代替実施形態では、ウイルス調製物16及び/又は機器10によって行われる測定は、周囲温度よりも高くても、又は低くてもよい。
【0051】
[0066]ステップ104で生成される質量スペクトル300の例を、図4Aに示す。例示的な質量スペクトル300は、EF1a-GFPゲノムを伴い、約4.6MDaで広い質量ピークを有するAAV8を含有するウイルス調製溶液の存在量対質量のプロットとして、図4Aに表されている。ウイルス調製物16の温度は25℃であり、質量スペクトル300は、機器10によって、同様に25℃にあると測定された。いくつかの代替実施形態では、質量スペクトル300は、測定されたイオン強度対質量の形態を取ってもよく、他の代替実施形態では、質量スペクトル300は、粒子電荷対粒子質量の形態で表されてもよい(すなわち、散布図)。
【0052】
[0067]ステップ104の後に、プロセス100は、ステップ106に進み、ここでは、カウンターの数字、例えば、M、N、P、Q及びRが、例えば、1などの開始値に例示として設定される。その後、ステップ108において、ウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子が、例示として、加熱プロファイルP(例えば、ステップ108の最初の実行における加熱プロファイル1)を使用して、上昇温度T(M)に(すなわちT1はステップ108の最初の実行における上昇温度)、インキュベーション期間N(例えば、ステップ108の最初の実行におけるインキュベーション期間1)にわたって加熱される。ステップ104で周囲条件、例えば25℃で取られた測定値と温度T(1)との間の、並びにステップ108の各実行における各T(M)間の温度変化(複数可)、すなわち、温度ステップサイズ(複数可)は、任意の整数値又は非整数値を有してもよく、ステップ108の各実行で同じ値を有しても又は有さなくてもよい。ステップ1の最初の実行では、T(1)は、例示としては、ステップ104の温度条件よりも高い。ステップ108のその後の実行では、T(M)は、ステップ108の前の実行に対して変化しても変化しなくてもよく、ステップ108の任意のそのような後続の実行におけるT(M)における任意の変化は、均一若しくは一定であっても、又はそうでなくともよい。ウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子は、図1に関して上述された様々なデバイス、装置及び/又は技術のいずれか1つ又は組み合わせを使用して、ステップ108で加熱され得る。いくつかの実施形態では、例えば、プロセッサ20は、プロセッサ20に電圧源V1を制御させて、熱エネルギー源24が加熱プロファイルPを使用してウイルス調製物16を温度T(M)に対応するインキュベーション期間Nにわたって加熱するように制御するために、メモリ22に保存された命令を実行するように動作可能であり得る。代替として又は追加として、プロセッサ20は、プロセッサ20に電圧源V1を制御させて、熱エネルギー源24’が、加熱プロファイルPを使用して、イオン発生器18を、その任意の部分に含まれるウイルス調製物16を加熱する方式で、温度T(M)まで対応するインキュベーション期間Nにわたって加熱するように制御するために、及び/又はプロセッサ20に電圧源V1を制御させて、熱エネルギー源24’’が、加熱プロファイルPを使用して、イオン源18によってイオン源領域12に放出された荷電粒子を、温度T(M)まで対応するインキュベーション期間Nにわたって加熱するように制御するために、メモリ22に保存された命令を実行するように動作可能であり得る。あるいはまた、制御回路Cは、熱エネルギー源24、24’、24’’のいずれか1つ又は組み合わせを制御するように、プロセッサ20によるそれらの制御に代えて、又はそれに加えて、プログラムされてもよい。更に他の実施形態では、ウイルス調製物16及び/又はイオン発生器18及び/又はイオン源領域12の温度は、加熱プロファイルPを使用して、温度T(M)に対応するインキュベーション期間にわたって手動で制御されてもよい。
【0053】
[0068]インキュベーション期間(複数可)、すなわち、ステップ108の各実行において設定された温度T(M)でウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子によって費やされた持続期間は、数日、数時間、数分、数秒及び/又はわずか1秒足らずのいずれか1つ若しくは組み合わせの任意の値を有してよく、ステップ108の任意の実行時のインキュベーション期間は、ステップ108の任意の他の実行時のインキュベーションステップと同じ持続期間を有しても、有さなくてもよい。加熱プロファイル(複数可)、すなわち、ウイルス調製物16、イオン発生器18、イオン発生器18を出ていく荷電粒子及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子の温度(複数可)が、ステップ104でのものよりも高い温度まで、又はステップ108の前の実行のものよりも高い温度までステップ108で増加される持続期間及び/又は方式は、そのいくつかの非限定的な例が上述されている任意の所望の加熱プロファイルであり得るか、又はそれを有することができ、ステップ108の任意の実行時に温度T(M)における任意の増加において使用される加熱プロファイルは、ステップ108の任意の他の実行時に使用されるものと同じであっても又はそうでなくともよい。
【0054】
[0069]プロセス100のいくつかの実施形態では、ウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子は、ステップ108に続いて、また機器10によって処理される前に、ステップ108における温度よりも低い温度に冷却される。そのような実施形態では、プロセス100は、例示として、ステップ108の実行後にプロセス100が進むステップ110を含み、ここでは、ウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子が、冷却プロファイルQ、例えば、ステップ110の最初の実行時での加熱プロファイル1を使用して、低減温度、T(R)まで冷却される。冷却プロファイル(複数可)、すなわち、ウイルス調製物16、イオン発生器18、イオン発生器18を出ていく荷電粒子及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子の温度(複数可)がステップ108でのものよりも低い温度までステップ110において低減される持続期間及び/又は方式は、そのいくつかの非限定的な例が上述されている任意の所望の冷却プロファイルであり得るか、又はそれを有することができ、ステップ110の任意の実行時に温度T(Q)における任意の減少において使用される冷却プロファイルは、ステップ110の任意の他の実行時に使用されるものと同じであっても又はそうでなくともよい。ウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子は、図1に関して上述された様々なデバイス、装置及び/又は技術のいずれか1つ又は組み合わせを使用して、ステップ110で冷却され得る。
【0055】
[0070]いくつかの実施形態では、ウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子は、ウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子が周囲温度よりも高い上昇温度まで加熱されるステップ108の各実行後に、周囲温度(複数可)、例えば25℃まで冷却され、それにより、いずれかの場合における質量分析計14によって実施される測定が周囲温度、例えば25℃で、荷電粒子に対して実行される。1つの例示的なそのような実施形態では、ステップ108の各実行は、加熱プロファイルPを使用して、ウイルス調製物16のみを上昇温度T(M)にインキュベーション期間Nにわたって加熱することによって実行され、次いで、その後ステップ110においてウイルス調製物16が周囲温度まで冷却され、それにより、加熱、インキュベーション及び冷却ステップが完了するまで、ウイルス調製物が機器10によって影響を受けない。代替実施形態では、ウイルス調製物16、イオン発生器18及び/又はイオン源領域12内に常在する荷電粒子の各実行ステップ108でのT(M)への対応するインキュベーション期間にわたる加熱から生じた荷電粒子が、同じ温度(複数可)T(M)で又はその近くで機器10によって測定されるように、ステップ110は省略されてもよい。
【0056】
[0071]ステップ110に続いて、ステップ110を含む実施形態及びそうでなければステップ108に続く実施形態では、プロセス100は、ステップ112に進み、ここでは、プロセッサ20が、イオン発生器18を制御して、ウイルス調製物16から荷電粒子を発生させるために、メモリ22に保存された対応する命令の実行に従って再び動作可能であり、荷電粒子は、機器10によって、イオン源領域12を通って質量分析計14に向けられ、質量分析器14を制御して、上記のように発生させた荷電粒子の質量電荷比及び電荷の大きさを測定し、次いで、質量電荷比及び電荷の大きさの測定値に基づいて荷電粒子の質量を算出して、荷電粒子質量の更新された質量スペクトルを生成する。いくつかの実施形態では、上述したように、ウイルス調製物16は、例示として、周囲温度、例えば25℃にあり、ステップ112での機器10によって行われる測定が、同様に周囲温度で行われるが、代替実施形態では、ウイルス調製物16及び/又はステップ112での機器10によって行われる測定が、また上述されたように、周囲温度よりも高い、又は低い温度であってもよい。
【0057】
[0072]ステップ112に続いて、プロセス100はステップ114及び116に進み、ここでは、ステップ112の直近の実行時に決定された更新された質量スペクトルが、直近の以前に決定された質量スペクトルと、例えば、ステップ114の最初の実行中にステップ104で決定された質量スペクトル及びそうでなければステップ114の以前の実行時に決定された質量スペクトルと比較され、更新された質量スペクトルが、改善がウイルスキャプシドの凝集なしの質量ピーク分解能であることを示すかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、ステップ114及び116は、プロセッサ20によって実行され、他の実施形態では、ステップ114及び116のいずれか又は両方が、手動で、すなわち、更新された質量スペクトルと以前の質量スペクトルを視覚的に比較することによって、実行され得る。いずれの場合にも、質量ピーク幅は、従来の方式で、プロセッサ20を介して、又は視覚的に決定することができる。
【0058】
[0073]凝集もまた、プロセッサ20を介して、又は視覚的に同様に決定され得る。例えば、凝集中に2つ以上のウイルスキャプシド又はキャプシドフラグメントが互いに接着又は付着する場合、これは、一般に、十分に高い温度及びインキュベーション期間の様々な組み合わせで起こるが、接着又は付着したキャプシドは、非凝集キャプシドよりもより高い質量及びより高い電荷を有する荷電粒子を一般にもたらす。したがって、更新された質量スペクトルが、増加した質量及び/又は電荷値を示すかどうかを決定することによって、凝集の開始を、視覚的に、又はプロセッサ20によって自動的にのいずれかで検出することができる。
【0059】
[0074]いずれの場合も、ステップ116において、ステップ114で行われた比較が、更新された質量スペクトルが、凝集なしに質量ピーク分解能における改善を提示することを示す場合には、プロセス100は、ステップ118に進み、ここでは、カウンターのうちの1つ以上、M、N、P、Q及び/又はRが、ステップ108にループバックする前に進められる、及び/又はリセットされる。上で詳述したように、ウイルス調製物16の温度、イオン発生器18の1つ以上の構成要素の温度、イオン源領域12内の荷電粒子温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び冷却プロファイルのうちの1つ以上が、ステップ118の各実行時に変化されても、又は変化されなくてもよい。2つの異なる例は、図4A~4F及び図5A~5Eに関して以下に説明される。
【0060】
[0075]ステップ116において、ステップ114で行われた比較が、更新された質量スペクトルが質量ピーク分解能における改善を提示しないか、又は検出可能な量の凝集を提示することを示す場合、プロセスはステップ120に進み、ここでは、直近の以前の質量スペクトルを生成した可変値が記録され、例えば、温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル、及びいくつかの実施形態では冷却プロファイルの少なくとも1つの最適な組み合わせ、すなわち、調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく調製物の異種性を最小化するか又は少なくとも低減させる目的で、ウイルス調製物などを処理するための条件として、メモリ22に保存される。温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル、及びいくつかの実施形態では冷却プロファイルの他の組み合わせ、すなわち、調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく調製物の異種性をまた最小化するか又は少なくとも低減させるウイルス調製物を処理するための条件があり得ること、そしていくつかの実施形態では、変数のうちの1つ以上の他の値を使用してプロセス100の実行から得られる冷却プロファイル、条件もまた記録され得ることが理解されよう。
【0061】
[0076]上で簡単に述べたように、プロセス100は、それぞれが、ウイルスの同じ調製物、ウイルスの異なる調製物及び/又は異なるウイルスの調製物を、調製物中に残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、そのような調製物の異種性を最小化、又は少なくとも低減させる目的で処理するための、温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの最適な組み合わせのライブラリーを構築するために使用され得る。例えば、今説明したようなプロセス100の実行から得られた温度、インキュベーション期間、加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの少なくとも1つの最適な組み合わせの記録に続いて、別のプロセスが実行され、条件の最適な組み合わせを、まだ未処理である同様なウイルス調製物に適用することができる。ここで図3を参照すると、そのようなプロセス200の一例の簡略化フロー図が示されている。プロセス200は、例示として、ステップ202で開始し、ここでは、ウイルス調製物が調製又は得られる。ウイルス調製物は、任意の形態、例えば、混合物、溶液、バルク形態などで調製又は得ることができ、限定されないが、任意の種類のウイルス又はウイルスの組み合わせを含有することができる。その後、ステップ204で、以前に記録された、温度及びインキュベーション期間、並びにいくつかの実施形態では加熱プロファイル及び/又は冷却プロファイルの最適な組み合わせが得られる。いくつかの実施形態では、2つ以上の最適な組み合わせが以前に記録されていてもよく、そのような実施形態では、そのような複数の最適な組み合わせのうちの1つが、手動で又は自動的に選択されてもよい。その後、ステップ206で、ウイルス調製物が、選択された最適な温度に対応するインキュベーション期間にわたって加熱される。いくつかの実施形態では、選択された最適な組み合わせは、最適な加熱プロファイルを含んでもよく、そのような実施形態では、ウイルス調製物は、ステップ206で、最適な加熱プロファイルを使用して、最適な温度に加熱され得る。いくつかの実施形態では、選択された最適な組み合わせは、代替として又は追加として、最適な冷却プロファイルを含んでもよく、そのような実施形態では、ウイルス調製物は、ステップ206で、最適な温度に最適なインキュベーション期間にわたって加熱され、続いて、最適な冷却プロファイルを使用してウイルス調製物を冷却することができる。いずれの場合も、ステップ206に続いて、処理されたウイルス調製物は、残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、最小化されるか、又は少なくとも低減された異種性を有する。
【実施例1】
【0062】
[0077]ここで図4A~4Fを参照すると、図2に図示されたプロセス100のステップ102~118の例が示されている。上述のように、図4Aは、EF1a-GFPゲノムを伴うAAV8を含有する(プロセス100によって)以前に処理されていないウイルス調製溶液16の存在量対質量のプロットの形態で、プロセス100のステップ104で生成された質量スペクトル300の例を描写する。ウイルス調製物16の温度は25℃であり、質量スペクトル300は、機器10によって25℃で同様に測定された。図4Aの例に図示されるように、質量スペクトル300は、約4.6MDaで広い質量ピークを有する。
【0063】
[0078]図4Bは、ウイルス調製物に連結された従来型の加熱コイル24を制御して、ウイルス調製物16の温度を45℃に可能な限り急速に上昇させることによって、ウイルス調製物16の温度が増大され、次いで、ウイルス調製物16の温度が、45℃で15分のインキュベーション期間にわたって維持された、プロセス100のステップ108の実行から得られた別の質量スペクトル302を描写する。図示した例では、プロセス100は、インキュベーション期間の終了後に、ウイルス調製物16が加熱コイルから取り外され、氷上で1分間冷却され、次いで、自然な状態で25℃に温めるステップ110を含んだ。25℃に冷却後に、ステップ112を、25℃で同様に動作する機器10を用いて冷却されたウイルス調製物16で実行した。ステップ114で、質量スペクトル302を質量スペクトル300と比較すると、質量スペクトル302が、質量スペクトル300のものを超える質量ピーク分解能における改善を提示することが、図4A及び4Bから明らかである。更に、得られた質量スペクトル302が、質量スペクトル300で描写された唯一の質量ピークのものよりも質量がより高い、いかなるピークも提示するようには見えないため、質量スペクトル302に凝集が存在するとは思われない。したがって、ステップ116はステップ118に進み、ここで、この場合には、温度値だけが、それを5℃増加させることによって変更される。
【0064】
[0079]今説明したプロセスステップ108~118を4回更に繰り返して、ウイルス調製物16が、それぞれ50℃、55℃、60℃及び65℃に、各々15分のインキュベーション期間にわたってさらされる。それぞれ図4C~4Fに示した得られた質量スペクトル304、306、308、310は、各々が、識別可能な凝集を有さない以前に決定された質量スペクトルのものを超える質量ピーク分解能における改善を提示する。図4A~4Fに示された例は、65℃を超えて継続せず、したがって、この例では凝集の開始は観察されなかった。したがって、プロセス100を継続することによって、質量ピーク分解能における何らかの追加の改善を実現することができるかどうかは、図4A~4Fからは識別することができず、また同様に、65℃で15分の例示的なウイルス調製物16のためのインキュベーション期間が、残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物16の異種性を最小化する温度及びインキュベーション期間の最適な組み合わせを表すかどうかを、図4A~4Fから識別することはできない。しかしながら、図4A~4Fから、65℃で15分の例示的なウイルス調製物16のためのインキュベーション期間が、残存するウイルスキャプシドを凝集させることなく、ウイルス調製物16の異種性を実質的に低減させることを結論付けることができる。
【実施例2】
【0065】
[0080]ここで図5A~4Eを参照すると、ステップ120を含む、図2に示されたプロセス100の別の例が示されている。図示した例では、図5Aは、例えばAAVを含有し得るウイルス調製物を代表する、以前に処理されておらず(プロセス100によって)、シミュレートされたウイルス調製物16の相対的イオン強度対質量のプロットの形態で、プロセス100のステップ104で生成された質量スペクトル400の例を描写する。シミュレートされたウイルス調製物16の温度は25℃であり、質量スペクトル400を生成するために機器10によって行われたシミュレートされた測定も、同様に25℃であった。図5Aの例によって例示されるように、質量スペクトル400は、その各々が、ウイルスキャプシドの異なる含有量に相当するいくつかのピークを有する。例えば、約3.8MDaにおける質量ピーク402は、中空キャプシド、すなわち、ゲノム又は部分ゲノムを含有しないものに起因し、約4.3MDa及び4.6MDaにおける質量ピークは、部分キャプシド、すなわち、部分ゲノムを含有するもの又は部分ゲノムに起因し、約5MDaにおける質量ピーク406は、完全キャプシド、すなわち、各々、単一ゲノムを含有するものに起因し、約5.2MDaにおける質量ピーク408は、オーバーパッケージ化キャプシド、すなわち、目的のゲノム及び目的の別の部分又は完全ゲノムを含有するものに起因する。
【0066】
[0081]図5Bは、シミュレートされたウイルス調製物16の温度が25℃から55℃まで、20分のシミュレートされたインキュベーション期間にわたって段階的に上昇された、プロセス100のステップ108の実行から得られた別の質量スペクトル410を描写する。図示した例では、プロセス100は、インキュベーション期間の終了に続いて、シミュレートされたウイルス調製物16が、ステップ112(ここでは、機器10によるシミュレートされた測定が、25℃で動作する機器10を用いて、シミュレートされ、冷却されたウイルス調製物16で実行された)を実行するために、55℃から25℃に戻すように温度を段階的に低減されたステップ110を含んだ。ステップ114において質量スペクトル410を質量スペクトル400と比較すると、質量スペクトル410が、質量スペクトル400のものを超えて各キャプシドタイプの質量ピーク分解能における改善を提示することが、図5A及び5Bから明らかである。更に、得られた質量スペクトル410が、質量スペクトル400で描写されたオーバーパッケージ化キャプシドに起因するものよりも質量がより高い、いかなるピークも提示するようには見えないため、質量スペクトル410に凝集が存在するとは思われない。中空キャプシド及び完全キャプシドの質量ピーク402及び406が、それぞれ、安定した又は増加した信号強度を伴い、より高質量分解能性であるように見える一方で、部分キャプシド及びオーバーパッケージ化キャプシドの質量ピーク404及び408はそれぞれ、質量スペクトル400と比較して信号強度が減少しているように見える。いずれの場合も、ステップ116はステップ118に進み、ここで、この例では、インキュベーション期間だけが、それを10分増加させることによって変更される。温度の増加は、55℃で同じままである。
【0067】
[0082]今説明したプロセスステップ108~118が更に3回繰り返され、シミュレートされたウイルス調製物16を、それぞれ30分、40分及び60分の各3回の徐々に増加されたインキュベーション期間で55℃にさらす。図5C及び5Dに示された得られた質量スペクトル420及び430は、それぞれ、識別可能な凝集を有さない以前に決定された質量スペクトルのものを超える中空キャプシド402及び完全キャプシド406の質量ピーク分解能における改善を各々が提示する。図5A~5Dもまた実証するように、部分キャプシド及びオーバーパッケージ化キャプシドは、上昇温度でインキュベーション持続期間を増大させた状態で分解し始めて分解し続け、これはそれぞれ、部分キャプシド及びオーバーパッケージ化キャプシドの質量ピーク404及び408のそのような条件下での強度の減少並びに図5Dにおける最終的な消失によって示されるとおりであり、そのようなキャプシドが、上昇温度及びそれぞれのインキュベーション期間の下で安定ではないことを示している。しかしながら、図5A~5Dに描写された条件下での部分キャプシド及びオーバーパッケージ化キャプシドのそのような不安定性が、使用される特定の例示的なウイルス調製物16を代表するものであり得るが、他の種類のウイルス調製物を必ずしも代表する必要はないこと、及び他の種類のウイルス調製物において、キャプシドタイプの1つ又は任意の組み合わせが、残存するキャプシドタイプを安定した状態を保ちながら、そのような不安定性を提示し得ることを理解されたい。
【0068】
[0083]図5Eに更に示されるように、得られた質量スペクトル440は、同様に、以前に決定された質量スペクトル430のものを超える中空キャプシド402及び完全キャプシド406の質量ピーク分解能における改善を提示するが、質量スペクトル440もまた、6~7MDa範囲における高質量成分、すなわち、オーバーパッケージ化キャプシドに起因する元の最高の質量ピーク408のものよりも大きい質量を有する成分を提示し、これは、残存する中空キャプシド及び/又は完全ウイルスキャプシドの少なくともいくつかの凝集の指標である。更に、例えば、0.2~2MDaの間のより低い質量ピーク444、446及び488も、図5Eに描写されたスペクトル440で観察される。ピーク444は、キャプシドのいくつかの分解から得られた一本鎖DNAに起因し、ピーク446は、一本鎖DNAのいくつかの結合から得られた二本鎖DNAに起因する。ピーク448は、分解された部分キャプシド及び/又はオーバーパッケージ化キャプシドのゲノムと関連するタンパク質に起因する。
【0069】
[0084]図5A~5Eに描写されたプロセス100の例示的な実行において、目的のピークの質量分解能は、55℃の通常の、上昇したウイルス調製物温度で各々インキュベーション期間を徐々に増加させることで改善するが、凝集の開始が、40分~60分のインキュベーション時間に生じるように見える。したがって、このプロセス100の例示的な実行では、凝集させることなくウイルス調製物の異種性を最小化するか又は少なくとも低減させる変数の最適な組み合わせは、温度=55℃で40分のインキュベーション期間にわたるものである。加熱プロファイルが変数の最適な組み合わせに含まれるべきである場合、この特定な例における加熱プロファイルは、段階的変化であり、これは、実際の適用では、熱エネルギー源24を制御して、ウイルス調製物の温度を25℃から55℃まで可能な限り迅速に増加させることに相当する。冷却プロファイルが変数の最適な組み合わせに含まれるべきである場合、この特定の例における冷却プロファイルは同様に段階的変化であり、これは、実際の適用では、例えば、氷浴又は他の急速冷却環境におけるウイルス調製物の冷却に相当する。いずれの場合にも、この例における変数の最適な組み合わせは、残存するキャプシドを凝集させることなく、異種性を最小化するか又は少なくとも低減させる目的で、同様なウイルス調製物を熱処理するために、図3に描写されたプロセス300でその後使用され得る。
【0070】
[0085]本開示は、前述の図面及び説明において詳細に図示され、説明されてきたが、これは例示的であると考えるべきであり、制限される性質のものではなく、その例示的な実施形態だけが示され説明されており、本開示の趣旨の範囲内にある全ての変更及び修正が保護されることが望ましいことが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】