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特表2023-512291電荷検出質量分析用信号の時間ドメイン分析
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】電荷検出質量分析用信号の時間ドメイン分析
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/00 20060101AFI20230316BHJP
   H01J 49/26 20060101ALI20230316BHJP
   H01J 49/02 20060101ALI20230316BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
H01J49/00 360
H01J49/26
H01J49/02 700
H01J49/42 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547047
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 US2021016435
(87)【国際公開番号】W WO2021158676
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/969,325
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ジャロルド,マーティン・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ボタマネンコ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
5C038
【Fターム(参考)】
5C038HH05
5C038HH18
5C038HH28
(57)【要約】
電荷検出質量分析計(CDMS)は、静電線形イオントラップ(ELIT)と、プロセッサと、プロセッサによって実行可能な命令がメモリ内に記憶された、メモリとを含み、プロセッサは、(a)ELITを制御してイオンを捕捉し、(b)捕捉されたイオンが、ELITを通って前後に振動するときに、イオン測定情報を収集し、イオン測定情報が、イオンがELITを毎回通過する間に、ELITの電荷検出器でイオンによって誘導される電荷と、誘導された電荷の互いに相対的なタイミングとを含み、(c)イオン測定情報の複数の連続する時間窓のそれぞれについて、時間ドメインでイオン測定情報を処理し、各時間窓の間にイオンの電荷の大きさを決定し、(d)時間窓のそれぞれの電荷の大きさに基づいて、捕捉されたイオンの電荷の大きさを決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのイオンミラー間に配置された電荷検出シリンダを含む静電線形イオントラップ内の、イオンの電荷を測定する方法であって、前記イオンが、イオン捕捉イベントの際に、前記電荷検出シリンダを通過し、前記電荷検出シリンダで対応する電荷を誘導するたびに、前記2つのイオンミラー間で前後に繰り返し振動し、前記捕捉イベントの際に、前記誘導電荷の大きさおよび前記誘導電荷のタイミングを含む、イオン測定信号がイオン測定ファイルに記録され、前記方法が、
(a)前記イオン測定ファイルの開始時に、前記イオン測定信号の時間窓を設定するステップと、
(b)信号周波数、電荷の大きさ、信号位相、およびデューティサイクルの推定値を含む入力パラメータを使用して、前記イオン測定信号の前記時間窓についての、シミュレーテッドイオン測定信号を生成するステップと、
(c)分散が収束に達するまで前記入力パラメータの値を調整することにより、前記イオン測定信号の前記時間窓と前記シミュレーテッドイオン測定信号との間の前記分散を、繰り返し処理するステップと、
(d)(c)から得られる電荷の大きさの値を記録するステップと、
(e)前記イオン測定信号の前記時間窓を、増分時間だけ進めるステップと、
(f)前記時間窓が、前記イオン測定ファイルの最後に達するまで、(b)~(d)を繰り返すステップと、
(g)前記時間窓のそれぞれの前記電荷の大きさの値に基づいて、前記イオンの前記電荷を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
(b)が、信号周波数および電荷の大きさの前記推定値を決定するために、前記イオン測定信号の前記時間窓を処理するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン測定信号の前記時間窓を処理するステップが、前記イオン測定信号の前記時間窓の高速フーリエ変換(FFT)を計算するステップと、前記(FFT)に基づいて、信号周波数および電荷の大きさの前記推定値を決定するステップとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン測定ファイルの開始時の、前記イオン測定信号の前記時間窓についての(b)の最初の実行について、前記信号位相の最初の推定値がゼロにセットされ、
(b)が、前記シミュレーテッドイオン測定信号と、前記イオン測定信号の前記時間窓との相互相関を行うステップと、前記信号位相の前記推定値を、前記相互相関から得られる最小値に更新するステップとをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(c)が、
(1)前記イオン測定信号の前記時間窓と前記シミュレーテッドイオン測定信号との間の分散を決定するステップ、
(2)前記イオン測定信号の前記時間窓と前記シミュレーテッドイオン測定信号との間の前記分散を小さくするために、最適化プロセスを実行するステップ、ならびに
(3)前記最適化プロセスの結果に基づいて、前記入力パラメータの値を調整するステップ
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(c)が、前記分散の収束時に、前記調整された電荷の大きさの値を記録するステップをさらに含み、
(g)が、前記時間窓のそれぞれの前記調整された電荷の大きさの値に基づいて、前記イオンの前記電荷の大きさを決定するステップを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(e)が、前記入力パラメータを、(c)から得られる前記調整された入力パラメータの値に設定するステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(d)が、ステップ(c)から得られる周波数の値を記録するステップをさらに含み、
前記イオン捕捉イベントの際に、前記時間窓のそれぞれの前記周波数の値に基づいて、前記イオンの前記振動の周波数を決定するステップをさらに含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン測定ファイルの高速フーリエ変換(FFT)を計算するステップと、
前記イオン捕捉イベントの際に、前記FFTに基づいて、前記イオンの前記振動の周波数を決定するステップと
をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記捕捉イベントの際に、前記イオンの前記振動の前記決定された周波数に基づいて、前記イオンの質量電荷比を決定するステップと、
前記イオンの前記決定された質量電荷比、および前記イオンの前記決定された電荷に基づいて、前記イオンの質量を決定するステップと
をさらに含む、請求項8または8に記載の方法。
【請求項11】
静電線形イオントラップ(ELIT)と、
前記ELITにイオンを供給するよう構成されたイオン源と、
前記ELITに動作可能に結合された入力を有する、電荷感応型プリアンプと、
前記ELITおよび前記増幅器の出力に動作可能に結合された、少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのメモリと
を備える、電荷検出質量分析計(CDMS)であって、前記メモリ内に命令が記憶され、前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、(a)前記ELITを制御させ、前記イオン源から供給されるイオンを前記ELIT内に捕捉させ、(b)前記捕捉されたイオンが、前記ELITを通って前後に振動するときに、前記電荷感応型プリアンプによって生成される出力信号に基づいて、イオン測定情報を収集させ、前記イオン測定情報が、前記イオンが前記ELITを毎回通過する間に、前記ELITの電荷検出器で前記イオンによって誘導される電荷と、前記誘導された電荷の互いに相対的なタイミングとを含み、(c)前記イオン測定情報の複数の連続する時間窓のそれぞれについて、時間ドメインで前記イオン測定情報を処理させ、各時間窓の間に前記イオンの電荷の大きさを決定させ、(d)前記時間窓のそれぞれの前記電荷の大きさに基づいて、前記捕捉されたイオンの前記電荷の大きさを決定させる、電荷検出質量分析計(CDMS)。
【請求項12】
前記ELITが、2つのイオンミラー間に配置された電荷検出シリンダを備え、前記イオンが、イオン捕捉イベントの際に、前記電荷検出シリンダを通過し、前記電荷検出シリンダで対応する電荷を誘導するたびに、前記2つのイオンミラー間で前後に繰り返し振動し、前記捕捉イベントの際に、前記誘導電荷の大きさおよび前記誘導電荷のタイミングを含む、イオン測定信号がイオン測定ファイルに記録される、請求項11に記載のCDMS。
【請求項13】
(a)が、
(i)前記イオン測定ファイルの開始時に、前記イオン測定信号の時間窓を設定することと、
(ii)信号周波数、電荷の大きさ、信号位相、およびデューティサイクルの推定値を含む入力パラメータを使用して、前記イオン測定信号の前記時間窓についての、シミュレーテッドイオン測定信号を生成することと、
(iii)分散が収束に達するまで前記入力パラメータの値を調整することにより、前記イオン測定信号の前記時間窓と前記シミュレーテッドイオン測定信号との間の前記分散を、繰り返し処理することと、
(iv)(iii)から得られる電荷の大きさの値を記録することと、
(v)前記イオン測定信号の前記時間窓を、増分時間だけ進めることと、
(vi)前記時間窓が、前記イオン測定ファイルの最後に達するまで、ステップ(ii)~(iv)を繰り返すことと、
(vi)前記時間窓のそれぞれの前記電荷の大きさの値に基づいて、前記イオンの前記電荷を決定することと
を含む、請求項12に記載のCDMS。
【請求項14】
(iv)が、(c)から得られる周波数の値を記録することをさらに含み、
前記少なくとも1つのメモリに記憶された前記命令が、前記イオン捕捉イベントの際に、前記時間窓のそれぞれの前記周波数の値に基づいて、前記イオンの前記振動の周波数を決定するための、前記プロセッサによって実行可能な命令をさらに含む、
請求項13に記載のCDMS。
【請求項15】
前記少なくとも1つのメモリに記憶された前記命令が、前記イオン測定ファイルの高速フーリエ変換(FFT)を計算し、前記イオン捕捉イベントの際に、前記FFTに基づいて、前記イオンの前記振動の周波数を決定するための、前記プロセッサによって実行可能な命令をさらに含む、請求項12または13に記載のCDMS。
【請求項16】
前記少なくとも1つのメモリに記憶された前記命令が、前記捕捉イベントの際に、前記イオンの前記振動の前記決定された周波数に基づいて、前記イオンの質量電荷比を決定し、前記イオンの前記決定された質量電荷比、および前記イオンの前記決定された電荷に基づいて、前記イオンの質量を決定するための、前記プロセッサによって実行可能な命令を含む、請求項14または15に記載のCDMS。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]この国際特許出願は、2020年2月3日に出願された米国仮特許出願第62/969,325号の利益および優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0002】
政府の権利
[0002]この発明は、国立衛生研究所から授与されたGM1311100の下で、政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明に、ある一定の権利を有する。
【0003】
[0003]本開示は、概ね、電荷検出質量分析機器に関し、より詳細には、かかる機器を用いた質量および電荷測定の実行に関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]電荷検出質量分析(CDMS:charge detection mass spectrometry)は、イオンの質量が、通常「m/z」と呼ばれる、イオンの質量電荷比および電荷を同時に測定することによって決定される、粒子分析技術である。一部のCDMS機器では、かかる測定を行うのに、静電線形イオントラップ(ELIT:electrostatic linear ion trap)が使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]本開示は、添付の特許請求の範囲に列挙されている特徴のうちの1つもしくは複数、ならびに/または以下の特徴および特徴の組合せのうちの1つもしくは複数を含むことができる。一態様では、電荷検出質量分析計(CDMS)は、静電線形イオントラップ(ELIT)と、ELITにイオンを供給するよう構成されたイオン源と、ELITに動作可能に結合された入力を有する、電荷感応型プリアンプと、ELITおよび増幅器の出力に動作可能に結合された、少なくとも1つのプロセッサと、命令がメモリ内に記憶された、少なくとも1つのメモリとを備えることができ、命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、(a)ELITを制御させ、イオン源から供給されるイオンをELIT内に捕捉させ、(b)捕捉されたイオンが、ELITを通って前後に振動するときに、電荷感応型プリアンプによって生成される出力信号に基づいて、イオン測定情報を収集させ、イオン測定情報が、イオンがELITを毎回通過する間に、ELITの電荷検出器でイオンによって誘導される電荷と、誘導された電荷の互いに相対的なタイミングとを含み、(c)イオン測定情報の複数の連続する時間窓のそれぞれについて、時間ドメインでイオン測定情報を処理させ、各時間窓の間にイオンの電荷の大きさを決定させ、(d)時間窓のそれぞれの電荷の大きさに基づいて、捕捉されたイオンの電荷の大きさを決定させる。
【0006】
[0006]別の態様では、2つのイオンミラー間に配置された電荷検出シリンダを含む静電線形イオントラップ内の、イオンの電荷を測定する方法が提供され、イオンは、イオン捕捉イベントの際に、電荷検出シリンダを通過し、電荷検出シリンダで対応する電荷を誘導するたびに、2つのイオンミラー間で前後に繰り返し振動し、また捕捉イベントの際に、誘導電荷の大きさおよび誘導電荷のタイミングを含む、イオン測定信号がイオン測定ファイルに記録される。この方法は、(a)イオン測定ファイルの開始時に、イオン測定信号の時間窓を設定するステップと、(b)信号周波数、電荷の大きさ、信号位相、およびデューティサイクルの推定値を含む入力パラメータを使用して、イオン測定信号の時間窓についての、シミュレーテッドイオン測定信号を生成するステップと、(c)分散が収束に達するまで入力パラメータの値を調整することにより、イオン測定信号の時間窓とシミュレーテッドイオン測定信号との間の分散を、繰り返し処理するステップと、(d)(c)から得られる電荷の大きさの値を記録するステップと、(e)イオン測定信号の時間窓を、増分時間だけ進めるステップと、(f)時間窓が、イオン測定ファイルの最後に達するまで、(b)~(d)を繰り返すステップと、(g)時間窓のそれぞれの電荷の大きさの値に基づいて、イオンの電荷を決定するステップとを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】制御および測定構成要素が結合された静電線形イオントラップ(ELIT)の実施形態を含む、CDMSシステムの簡略図である。
図2A】M1のミラー電極が、M1内にイオン透過電界を生成するよう制御されている、図1に示されたELITのイオンミラーM1の拡大図である。
図2B】M2のミラー電極が、M2内にイオン反射電界を生成するよう制御されている、図1に示されたELITのイオンミラーM2の拡大図である。
図3図1に示されたプロセッサの実施形態の簡略図である。
図4A図4Aは、ELIT内に少なくとも1つのイオンを取り込み、イオンをイオンミラー間で、電荷検出シリンダを通して前後に振動させ、複数の電荷検出イベントを測定および記録するための、イオンミラーの順次制御および動作を示す、図1のELITの簡略図である。
図4B図4Bは、ELIT内に少なくとも1つのイオンを取り込み、イオンをイオンミラー間で、電荷検出シリンダを通して前後に振動させ、複数の電荷検出イベントを測定および記録するための、イオンミラーの順次制御および動作を示す、図1のELITの簡略図である。
図4C図4Cは、ELIT内に少なくとも1つのイオンを取り込み、イオンをイオンミラー間で、電荷検出シリンダを通して前後に振動させ、複数の電荷検出イベントを測定および記録するための、イオンミラーの順次制御および動作を示す、図1のELITの簡略図である。
図5】イオン測定イベントファイルに含まれる信号測定値を時間ドメインで分析して、イオン捕捉イベントの際に、ELITの電荷検出シリンダを通って前後に振動するイオンの、周波数および電荷の大きさ(z)を決定するプロセスの実施形態を示す、簡略化されたフローチャートである。
図6】静電線形イオントラップ内での、軸方向のイオンの軌道についてシミュレーテッド信号の1周期を示す、信号対時間のグラフである。
図7】デューティサイクルが40%から60%の間で変化する、図6のシミュレーテッド信号の拡張されたグラフである。
図8】周波数が10kHzから15kHzの間で変化する、図6のシミュレーテッド信号の別の拡張されたグラフである。
図9】修正される変形形態が重ね合わされて示され、修正される変形形態がRC減衰を導入する、図6のシミュレーテッド信号の、拡張されたグラフである。
図10】シミュレーテッドイオン信号の位相の初期推定値を決定するための、相互相関プロセスの実施形態を示す、簡略化された作業のフローチャートである。
図11】シミュレーテッドイオン信号とイオン測定信号との間の分散を低減するための、最適化アルゴリズムの実施形態を示す、簡略化された作業のフローチャートである。
図12図11の最適化アルゴリズムによる収束の例を示す、SRS対反復回数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0020]この開示の原理の理解を促進するために、添付の図面に示されているいくつかの例示的な実施形態をここで参照し、実施形態を説明するために、特定の言語が使用されることになる。
【0009】
[0021]この開示は、電荷検出質量分析計(CDMS)の静電線形イオントラップ(ELIT)によって生成される、時間ドメインのイオン測定信号を処理し、イオン質量電荷比、および次いでイオン質量が決定され得るイオン電荷を同時に決定する、装置および技術に関する。この開示において、「電荷検出イベント」という句は、電荷検出器をただ1回通過するイオンによって、ELITの電荷検出器で誘導される電荷の検出と定義され、「イオン測定イベント」という句は、選択された回数または選択された期間、電荷検出器を通ってイオンが前後に振動することによって得られる、電荷検出イベントの集合と定義される。電荷検出器を通ったイオンの前後の振動は、下記で詳細に説明されるように、ELIT内のイオンの制御された捕捉によって生じるので、「イオン測定イベント」という句は、本明細書ではあるいは、「イオン捕捉イベント」または単に「捕捉イベント」と呼ばれることもあり、また「イオン測定イベント」、「イオン捕捉イベント」、「捕捉イベント」という句、およびこれらの変形は、互いに同義であると理解されるものとする。
【0010】
[0022]図1を参照すると、制御および測定構成要素が結合された静電線形イオントラップ(ELIT)14の実施形態を含む、CDMSシステム10が示されている。図示の実施形態では、CDMSシステム10は、ELIT14の入口に動作可能に結合されたイオン源12を含む。イオン源12は、例示的に、サンプルからイオンを生成する従来の任意のデバイスまたは装置を含み、さらに、1つまたは複数の分子の特性に従って、イオンの電荷の状態を分離、収集、フィルタ処理、分解、および/または正規化もしくはシフトする、1つまたは複数のデバイスおよび/または機器を含むことができる。イオン源12は、決して限定的と見なされるべきではないが、1つの例示的な例として、従来の質量分析計の入口に結合される、従来の電気スプレーイオン化源、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI:matrix-assisted laser desorption ionization)源などを含むことができる。質量分析計は、たとえば、飛行時間型(TOF:time-of-flight)質量分析計、リフレクトロン質量分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR:Fourier transform ion cyclotron resonance)質量分析計、四重極型質量分析計、三重四重極型質量分析計、磁気セクタ質量分析計などを含むがこれらに限定されるものではない、従来の任意の設計物であり得る。いずれの場合も、質量分析計のイオンの出口は、ELIT14のイオンの入口に、動作可能に結合される。イオンが生成されるサンプルは、任意の生物学的な、または他の材料であり得る。
【0011】
[0023]図示の実施形態では、ELIT14は、例示的に、接地チャンバまたはシリンダGCで囲繞され、ELIT14の両端にそれぞれ配置された、対向するイオンミラーM1、M2に動作可能に結合された、電荷検出器CDを含む。イオンミラーM1は、イオン源12と電荷検出器CDの一方の端部との間に動作可能に配置され、イオンミラーM2は、電荷検出器CDの反対側の端部に、動作可能に配置される。各イオンミラーM1、M2は、それぞれ、イオンミラー内にイオンミラー領域R1、R2を画定する。下記でより詳細に説明されるように、イオンミラーM1、M2の領域R1、R2、電荷検出器CD、ならびに電荷検出器CDとイオンミラーM1、M2との間の空間は、一体に、これらを通る中央に長手方向軸20を画定し、長手方向軸20は、ELIT14を貫く、イオンミラーM1とM2との間の、理想的なイオン移動経路を例示的に表す。
【0012】
[0024]図示の実施形態では、電圧源V1、V2は、それぞれイオンミラーM1、M2と電気的に接続されている。各電圧源V1、V2は、例示的に、N個のプログラム可能または制御可能な電圧を、選択的に生成するよう制御またはプログラムされ得る、1つまたは複数の切替え可能なDC電圧源を含み、ここでNは、任意の正の整数であり得る。かかる電圧の例示的な例が、図2Aおよび図2Bに関連して下記で説明され、下記で詳細に説明されるように、イオンミラーM1、M2のそれぞれの、2つの相異なる動作モードのうちの一方を設定する。いずれの場合も、イオンは、電圧源V1、V2によって選択的に形成された電界の影響下で、ELIT14内の、電荷検出器CDおよびイオンミラーM1、M2を通って中央に延出する長手方向軸20の近くを移動する。
【0013】
[0025]電圧源V1、V2は、例示的に、メモリ内に命令が記憶されたメモリ18を含む従来のプロセッサ16と、P本の信号経路によって電気的に接続されるよう図示されており、命令は、プロセッサ16によって実行されると、それぞれのイオンミラーM1、M2の領域R1、R2内に、イオン透過電界およびイオン反射電界、それぞれTEF、REFを選択的に形成するために、プロセッサ16に、電圧源V1、V2を制御させ、所望のDC出力電圧を生成させる。Pは、任意の正の整数であり得る。いくつかの代替の実施形態では、電圧源V1、V2の一方または両方が、1つまたは複数の一定の出力電圧を選択的に生成するようプログラム可能であり得る。他の代替の実施形態では、電圧源V1、V2の一方または両方が、任意の所望の波形の、1つまたは複数の時間で変化する出力電圧を生成するよう構成され得る。代替の実施形態では、より多くのまたはより少ない電圧源が、ミラーM1、M2に電気的に接続され得ることが理解されよう。
【0014】
[0026]電荷検出器CDは、例示的に、電荷感応型プリアンプCPの信号入力に電気的に接続された、導電性シリンダの形態で備えられており、電荷感応型プリアンプCPの信号出力は、プロセッサ16に電気的に接続されている。電圧源V1、V2は、例示的に、下記で詳細に説明されるように、ELIT14に入るイオンを選択的に捕捉し、イオンをELIT14内のイオンミラーM1とM2との間で前後に振動させ、これにより、捕捉されたイオンが繰り返し電荷検出器CDを通過するように制御される。イオンが、ELIT14内に捕捉され、イオンミラーM1とM2との間で前後に振動すると、電荷感応型プリアンプCPは、例示的に、イオンが電荷検出シリンダCDを通ってイオンミラーM1とM2との間を通過するときに、電荷検出シリンダCDで誘導される電荷(CH:charge)を検出し、検出した電荷に対応する電荷検出信号(CHD:charge detection signal)を生成する、従来の方式で動作可能である。電荷検出信号CHDは、例示的に、振動周期の値の形態で記録され、因みに各振動周期の値は、ただ1つの、それぞれの電荷検出イベントでの、イオン測定情報を表す。複数のかかる振動周期の値は、それぞれのイオン測定イベントの際に(すなわち、イオン捕捉イベントの際に)捕捉されたイオンについて測定および記録され、結果的にイオン測定イベントについて得られた、複数の記録された振動周期の値、すなわち、記録されたイオン測定情報の集合は、下記で説明されるように、イオンの電荷、質量電荷比、および/または質量の値を決定するために処理される。複数のイオン測定イベントは、このようにして処理され得、サンプルの質量電荷比および/または質量スペクトルは、例示的に、この処理により作成され得る。
【0015】
[0027]ここで図2Aおよび図2Bを参照すると、それぞれに、図1に示されたELIT14のイオンミラーM1、M2の実施形態が示されている。イオンミラーM1、M2は、例示的に、それぞれが4つの離間された導電性ミラー電極のカスケード構造を含むという点で、互いに同一である。イオンミラーM1、M2のそれぞれについて、第1のミラー電極30は、厚さW1を有し、ミラー電極30の中央を貫く直径P1の通路を画定する。エンドキャップ32は、第1のミラー電極30の外面に付着されるか、さもなければ結合され、対応するイオンミラーM1、M2それぞれへの、かつ/またはそれぞれからの、入口および/または出口として機能する、エンドキャップ32の中央を貫く開口部A1を画定する。イオンミラーM1の場合、エンドキャップ32は、図1に示されているイオン源12のイオン出口に結合されるか、またはイオン出口の一部である。エンドキャップ32ごとの開口部A1は、例示的に、直径P2を有する。
【0016】
[0028]各イオンミラーM1、M2の第2のミラー電極30は、幅W2の空間によって、第1のミラー電極30から離間されている。第2のミラー電極30は、ミラー電極30と同様に、厚さW1を有し、ミラー電極30の中央を貫く直径P2の通路を画定する。各イオンミラーM1、M2の第3のミラー電極30は、同様に、幅W2の空間によって、第2のミラー電極30から離間されている。第3のミラー電極30は、厚さW1を有し、ミラー電極30の中央を貫く幅P1の通路を画定する。
【0017】
[0029]第4のミラー電極30は、幅W2の空間によって、第3のミラー電極30から離間されている。第4のミラー電極30は、例示的に、W1の厚さを有し、電荷検出器CDの周りに配置された接地シリンダGCのそれぞれの端部で形成されている。第4のミラー電極30は、ミラー電極30の中央を貫く開口部A2を画定し、開口部A2は、例示的に、形状が円錐であり、接地シリンダGCの内面で画定される直径P3から、接地シリンダGCの外面(また、それぞれのイオンミラーM1、M2の内面でもある)の直径P1まで、接地シリンダGCの内面と外面との間で直線的に増加する。
【0018】
[0030]ミラー電極30~30の間で画定された空間は、いくつかの実施形態では空所、すなわち真空の間隙であり得、他の実施形態では、かかる空間は1つまたは複数の非導電性、たとえば誘電性の材料で満たされ得る。ミラー電極30~30およびエンドキャップ32は、軸方向に整列されている、すなわち、同一直線上にあり、そのため長手方向軸22は、整列された各通路の中央を通過し、開口A1、A2の中央も通過する。ミラー電極30~30間の空間が、1つまたは複数の非導電性材料を含む実施形態では、かかる材料は、同様に、軸方向に整列された空間を貫く、すなわち同一線上にある、それぞれの通路を画定し、通路は、ミラー電極30~30を貫いて画定され、例示的に、P2以上の直径を有する。例示的に、P1>P3>P2であるが、他の実施形態では、他の相対的な直径の構造が可能である。
【0019】
[0031]1つの領域R1は、イオンミラーM1の開口部A1とA2との間に画定され、もう1つの領域R2は、同様に、イオンミラーM2の開口部A1とA2との間に画定される。領域R1、R2は、例示的に、形状および体積が互いに同一である。
【0020】
[0032]上記で説明されたように、電荷検出器CDは、例示的に、イオンミラーM1、M2の対応する部分間に配置され、幅W3の空間だけ離間された、細長い導電性シリンダの形態で提供される。一実施形態では、W1>W3>W2、およびP1>P3>P2であるが、代替の実施形態では、他の相対的な幅の構造が可能である。いずれの場合も、長手方向軸20は、例示的に、電荷検出シリンダCDを貫いて画定された通路を通って中央に延出し、したがって長手方向軸20は、イオンミラーM1、M2および電荷検出シリンダCDの組合せを通って中央に延出する。動作中、接地シリンダGCは、例示的に、各イオンミラーM1、M2の第4のミラー電極30が常に接地電位にあるように、接地電位に制御される。いくつかの代替の実施形態では、イオンミラーM1、M2のいずれかまたは両方の第4のミラー電極30は、任意の所望のDC基準電位に、または切替え可能なDCもしくは他の時間で変化する電圧源に、設定され得る。
【0021】
[0033]図2Aおよび図2Bに示されている実施形態では、電圧源V1、V2はそれぞれ、4つのDC電圧D1~D4それぞれを生成し、電圧D1~D4を、それぞれのイオンミラーM1、M2のミラー電極30~30のうちのそれぞれ1つに供給するよう構成される。ミラー電極30~30のうちの1つまたは複数が、常に接地電位に保持されるべきいくつかの実施形態では、かかる1つまたは複数のミラー電極30~30は、別法として、それぞれの電圧供給V1、V2の接地基準に電気的に接続されてもよく、対応する1つまたは複数の電圧出力D1~D4は省略されてもよい。代替的または追加的に、ミラー電極30~30のうちの任意の2つ以上が、同じゼロでないDC値に制御されるべき実施形態では、かかる任意の2つ以上のミラー電極30~30は、電圧出力D1~D4のうちのただ1つの電圧出力に電気的に接続されてもよく、出力電圧D1~D4のうちの不必要なものは、省略されてもよい。
【0022】
[0034]各イオンミラーM1、M2は、例示的に、電圧D1~D4を選択的に印加することにより、それぞれの電圧源V1、V2によって生成される電圧D1~D4が、イオンミラーのそれぞれの領域R1、R2内にイオン透過電界(TEF:transmission electric field)を形成する、イオン透過モード(図2A)と、それぞれの電圧源V1、V2によって生成される電圧D1~D4が、イオンミラーのそれぞれの領域R1、R2内にイオン反射電界(REF:reflection electric field)を形成する、イオン反射モード(図2B)との間で、制御および切替え可能である。図2Aの例に示されているように、イオン源12からのイオンが、イオンミラーM1の入口開口部A1を通ってイオンミラーM1の領域R1に飛び込むと、イオンは、V1の電圧D1~D4の選択的制御で、イオンミラーM1の領域R1内に形成されたイオン透過電界TEFによって、ELIT14の長手方向軸20に向かって集束される。イオンミラーM1の領域R1内での、透過電界TEFの集束効果の結果、接地チャンバGCの開口部A2を通ってイオンミラーM1の領域R1を出るイオンは、換言すれば、電荷検出器CDを通る、長手方向軸20に近いイオンの移動経路を維持するために、電荷検出器CD内への、また電荷検出器CDを通る、狭い軌道を得る。同一のイオン透過電界TEFが、電圧源V2の電圧D1~D4の同様の制御によって、イオンミラーM2の領域R2内に選択的に形成され得る。イオン透過モードでは、電荷検出シリンダCDからM2の開口部A2を通って領域R2に入るイオンは、領域R2内のイオン透過電界TEFによって、長手方向軸20に向かって集束され、これによりイオンは、イオンミラーM2の開口部A1を出る。
【0023】
[0035]例として図2Bに示されているように、V2の電圧D1~D4を選択的に制御することによって、イオンミラーM2の領域R2内に形成されたイオン反射電界REFは、電荷検出シリンダCDからM2のイオン入口開口部A2を通ってイオン領域R2に入るイオンを、減速および停止し、イオンの軌道42で示されているように、停止したイオンを反対方向へ加速してM2の開口部A2を通し、M2に隣接する電荷検出シリンダCDの端部内に戻し、電荷検出器CDを通り、イオンミラーM1に向かって戻るイオンの狭い軌道を維持するために、イオンミラーM2の領域R2内の中央にある長手方向軸20に向かってイオンを集束させるよう作用する。同一のイオン反射電界REFが、電圧源V1の電圧D1~D4の同様の制御によって、イオンミラーM1の領域R1内に選択的に形成され得る。イオン反射モードでは、電荷検出シリンダCDからM1の開口部A2を通って領域R1に入るイオンは、領域R1内に生成されたイオン反射電界REFによって減速および停止され、次いで反対方向に加速され、M1の開口部A2を通って、M1に隣接する電荷検出シリンダCDの端部内へ戻り、電荷検出器CDを通り、イオンミラーM1に向かって戻るイオンの狭い軌道を維持するために、イオンミラーM1の領域R1内の中央にある長手方向軸20に向かって集束される。ELIT14の端から端まで通過し、イオン領域R1、R2内のイオン反射電界REFによって反射されるイオンは、まさに説明されたように、イオンが、電荷検出シリンダCDを通って、イオンミラーM1とM2との間を前後に移動し続けることを可能にするように、ELIT14内に捕捉されていると見なされる。
【0024】
[0036]それぞれのイオンミラーM1、M2を、上記のイオン透過および反射モードに制御するための、電圧源V1、V2によってそれぞれ生成される出力電圧D1~D4の例示的なセットが、下記の表1に示されている。以下のD1~D4の値は、例として提示されているにすぎず、D1~D4のうちの1つまたは複数に、別法として、他の値が使用されてもよいことが理解されよう。
【表1】
【0025】
[0037]イオンミラーM1、M2および電荷検出シリンダCDは、これらを貫く円筒形の通路を画定するように、図1図2Bに示されているが、代替の実施形態では、イオンミラーM1、M2および/または電荷検出シリンダCDのいずれかまたは両方が、これらを貫く円筒形ではない通路を画定してもよく、これにより、長手方向軸20が中央を通過する通路のうちの1つまたは複数が、円形ではない断面および輪郭を示すことが理解されよう。さらに他の実施形態では、断面の輪郭の形状に関係なく、イオンミラーM1を貫いて画定された通路の断面が、イオンミラーM2を貫いて画定された通路とは異なっていてもよい。
【0026】
[0038]ここで図3を参照すると、図1に示されたプロセッサ16の実施形態が示されている。図示の実施形態では、プロセッサ16は、電荷感応型プリアンプCPによって生成された電荷検出信号CHDを受信する入力と、従来のアナログからデジタルへの(A/D:Analog-to-Digital)変換器42の入力に電気的に接続された出力とを有する、従来の増幅回路40を含む。A/D変換器42の出力は、プロセッサ50(P1)に電気的に接続されている。増幅器40は、従来の方式で動作可能であり、電荷感応型プリアンプCPによって生成された電荷検出信号CHDを増幅し、次に、A/D変換器は、従来の方式で動作可能であり、増幅された電荷検出信号を、デジタルの電荷検出信号CDSに変換する。
【0027】
[0039]図3に示されているプロセッサ16は、電荷感応型プリアンプCPによって生成された電荷検出信号CHDを受信する第1の入力と、閾値電圧発生器(TG:threshold voltage generator)46によって生成された閾値電圧CTHを受信する第2の入力と、プロセッサ50に電気的に接続された出力とを有する、従来の比較器44をさらに含む。比較器44は、従来の方式で動作可能であり、比較器44の出力において、閾値電圧CTHの大きさと比べた、電荷検出信号CDHの大きさによって変わる、トリガ信号TRを生成する。一実施形態では、比較器44は、たとえば、CHDがCTH未満である限り、基準電圧、たとえば、接地電位またはその近くの、「非アクティブ」トリガ信号TRを生成するよう動作可能であり、CHDがCTH以上である場合、回路40、42、44、46、50の電源電圧もしくはその近くの、またはさもなければ非アクティブTR信号と区別可能な、「アクティブ」TR信号を生成するよう動作可能である。代替の実施形態では、比較器44は、CHDがCTH未満である限り、電源電圧またはその近くの「非アクティブ」トリガ信号TRを生成するよう動作可能であってもよく、CHDがCTH以上である場合、基準電位またはその近くの、「アクティブ」トリガ信号TRを生成するよう動作可能である。本発明の属する技術分野の技術者は、トリガ信号TRの「非アクティブ」状態および「アクティブ」状態を形成するために、かかるトリガ信号の異なる大きさ、および/またはトリガ信号の異なる極性が、プロセッサ50によって区別可能である限り、他のトリガ信号の異なる大きさ、および/またはトリガ信号の異なる極性が、使用されてもよいことを認識されよう。また、かかる他のどんなトリガ信号の異なる大きさおよび/またはトリガ信号の異なる極性も、この開示の範囲に入ることが、意図されていることが理解されよう。比較器44はさらに、いずれの場合も、基準電圧と電源電圧との間の出力の急速な切替えを防ぐために、従来の方式で、所望の量のヒステリシスを含むよう設計され得る。
【0028】
[0040]プロセッサ50は、例示的に、閾値電圧制御信号THCを生成し、THCを閾値発生器46に供給して、閾値発生器46の動作を制御するよう動作可能である。いくつかの実施形態では、プロセッサ50は、閾値電圧発生器46を制御して所望の大きさおよび/または極性を有するCTHを生成するように、閾値電圧制御信号THCの生成を制御するようプログラムされるか、またはプログラム可能である。他の実施形態では、ユーザは、たとえば、後段のプロセッサを通じて、たとえば、仮想制御および視覚化ユニットを介して、プロセッサ50にリアルタイムで命令を与え、閾値電圧発生器46を制御して所望の大きさおよび/または極性を有するCTHを生成するように、閾値電圧制御信号THCの生成を制御することができる。いずれの場合も、閾値電圧発生器46は、いくつかの実施形態では、例示的に、閾値制御信号THCのデジタル形態、たとえばただ1つの直列デジタル信号または複数の並列デジタル信号の形態に、応答するよう構成された従来の制御可能なDC電圧源の形態で実装され、デジタル閾値制御信号THCによって規定された極性および大きさを有する、アナログ閾値電圧CTHを生成する。いくつかの代替の実施形態では、閾値電圧発生器46は、直列または並列デジタル閾値電圧TCHに応答して、デジタル閾値制御信号THCによって規定される大きさ、およびいくつかの実施形態では極性を有する、アナログ閾値電圧CTHを生成する、従来のデジタルからアナログへの(D/A:digital-to-analog)変換器の形態で提供され得る。いくつかのかかる実施形態では、D/Aコンバータは、プロセッサ50の一部を形成してもよい。本発明の属する技術分野の技術者は、制御信号THCの1つまたは複数のデジタルおよび/またはアナログの形態に応答して、所望の大きさおよび/または極性の閾値電圧CTHを選択的に生成する、他の従来の回路および技術を認識されよう。また、かかる他のどんな従来の回路および/または技術も、この開示の範囲に入ることが、意図されていることが理解されよう。
【0029】
[0041]プロセッサ50によって実行される前述の機能に加えて、プロセッサ50はさらに、図2A図2Bに関連して上記のように、電圧源V1、V2を制御して、イオンミラーM1、M2それぞれの領域R1、R2内に、イオン透過および反射フィールドを選択的に生成するよう動作可能である。いくつかの実施形態では、プロセッサ50は、電圧源V1、V2を制御するようプログラムされるか、またはプログラム可能である。他の実施形態では、電圧源V1および/またはV2は、たとえば、後段のプロセッサ52を通じて、たとえば、仮想制御および視覚化ユニットを介して、ユーザによってリアルタイムでプログラムされるか、またはさもなければ制御され得る。いずれの場合も、プロセッサ50は、一実施形態では例示的に、ユーザによってプログラムされるか、またはさもなければ命令され、電荷検出イベントおよびイオン測定イベントで電荷検出信号CDSを収集および記憶し、閾値電圧CTHの大きさおよび/または極性が決定または導出される閾値制御信号TCHを生成し、電圧源V1、V2を制御する、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)の形態で提供される。この実施形態では、図1に関連して説明されたメモリ18は、FPGAのプログラミングに統合され、FPGAのプログラミングの一部を形成する。代替の実施形態では、プロセッサ50は、1つまたは複数の従来のマイクロプロセッサまたはコントローラと、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはコントローラによって実行されると、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはコントローラを、まさに説明されたように動作させる命令がメモリユニット内に記憶された、1つまたは複数の付随するメモリユニットとの形態で提供されてもよい。他の代替の実施形態では、処理回路50は、単に、上記のように動作するよう設計された1つもしくは複数の従来のハードウェア回路の形態で、または1つもしくは複数のかかるハードウェア回路と、メモリに記憶された命令を実行するよう動作可能で、上記のように動作する、少なくとも1つのマイクロプロセッサもしくはコントローラとの組合せとして、実装されてもよい。
【0030】
[0042]図3に示されているプロセッサ16の実施形態はさらに、例示的に、第1のプロセッサ50に、また少なくとも1つのメモリユニット54にも結合された、第2のプロセッサ52を含む。いくつかの実施形態では、プロセッサ52は、ディスプレイモニタなどの1つまたは複数の周辺デバイス、1つまたは複数の入力および/または出力デバイスなどを含むことができるが、他の実施形態では、プロセッサ52は、かかるどんな周辺デバイスも、含んでいなくてもよい。いずれの場合でも、プロセッサ52は、例示的に、イオン測定イベントを分析するための少なくとも1つのプロセスを実行するよう構成される、すなわち、プログラムされる。電荷検出信号CDSを通じてプロセッサ50によって受信される、電荷の大きさおよび電荷のタイミングデータの形態の(すなわち、電荷検出シリンダのイオンによって相互に誘導された、電荷のタイミングの検出)データは、例示的に、各イオン測定イベントの完了時に処理および分析するために、プロセッサ50からプロセッサ52へ直接転送される。
【0031】
[0043]いくつかの実施形態では、プロセッサ52は、例示的に、かかるデータの収集/記憶と分析との両方を実行するよう動作可能な、高速サーバの形態で提供される。かかる実施形態では、1つまたは複数の高速メモリユニット54が、プロセッサ52に結合され得、プロセッサ52によって受信および分析されたデータを記憶するよう動作可能である。一実施形態では、1つまたは複数のメモリユニット54は、例示的に、プロセッサ52によって使用されている、または使用されるべきデータを記憶する、少なくとも1つのローカルメモリユニット、およびデータを長期間記憶する、少なくとも1つの永続的記憶メモリユニットを含む。かかる一実施形態では、プロセッサ52は、例示的に、4つのIntel(登録商標)Xeon(商標)プロセッサ(たとえば、E5-465L v2 12コア、2.4GHz)を備えたLinux(登録商標)サーバ(たとえば、OpenSuse Leap42.1)の形態で提供される。この実施形態では、従来のWindows(登録商標)PC(たとえば、i5-2500K、4コア、3.3GHz)と比較して、ただ1つのイオン測定イベントファイルの平均分析時間の、100倍を超える改善が実現される。同様に、この実施形態のプロセッサ52は、高速/高性能メモリユニット54と共に、例示的に、データ記憶速度において、100倍を超える改善を可能にする。本発明の属する技術分野の技術者は、プロセッサ52として実装され得る1つまたは複数の他の高速データ処理および分析システムを、認識されよう。また、かかる1つまたは複数の他のどんな高速データ処理および分析システムも、この開示の範囲に入ることが、意図されていることが理解されよう。代替の実施形態では、プロセッサ52は、1つまたは複数の従来のマイクロプロセッサまたはコントローラと、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはコントローラによって実行されると、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはコントローラを、本明細書で説明されたように動作させる命令がメモリユニット内に記憶された、1つまたは複数の付随するメモリユニットとの形態で提供されてもよい。
【0032】
[0044]図示の実施形態では、メモリユニット54は、例示的に、ELIT14によって生成されたイオン測定イベントデータを分析し、分析中のサンプルのイオン質量スペクトル情報を決定するための、プロセッサ52によって実行可能な命令を、メモリユニット54内に記録している。一実施形態では、プロセッサ52は、「イオン測定イベント」(この用語が上記で定義されたような)を構成する、複数の「電荷検出イベント」(この用語が上記で定義されたような)のそれぞれの際に測定される、電荷の大きさおよび電荷検出タイミング情報の形態で、プロセッサ50からイオン測定イベントデータを受信し、かかるイオン測定イベントを構成する、かかる電荷検出イベントを処理し、イオン電荷および質量対電荷データを決定し、次いでイオン電荷および質量対電荷データからイオン質量データを決定するよう動作可能である。複数のイオン測定イベントが同様のやり方で処理され、分析中のサンプルの質量スペクトル情報を作成することができる。
【0033】
[0045]図2Aおよび図2Bに関連して上記で簡単に説明されたように、電圧源V1、V2は、例示的に、たとえば、プロセッサ52を介して、プロセッサ50によって、イオンミラーM1の領域R1内およびイオンミラーM2の領域R2内で、イオン透過およびイオン反射電界を選択的に形成するように制御され、ELIT14内に導入されるイオンを、イオン源12からELIT14を通して誘導し、次いで、ただ1つのイオンをELIT14内に選択的に捕捉して閉じ込め、これにより捕捉されたイオンは、M1とM2との間で前後に振動するので、電荷検出器CDを繰り返し通過する。図4A図4Cを参照すると、図1のELIT14の簡略図が示されており、ELIT14のイオンミラーM1、M2のかかる順次制御および動作の例を示している。以下の例では、プロセッサ52は、プロセッサ52のプログラミングに従って、電圧源V1、V2の動作を制御するものとして説明されているが、電圧源V1の動作および/または電圧源V2の動作は、少なくとも部分的に、プロセッサ50によって仮想的に制御され得ることが理解されよう。
【0034】
[0046]図4Aに示されているように、ELIT制御シーケンスは、プロセッサ52が、電圧源V1を制御して、イオンミラーM1の領域R1内にイオン透過フィールドを形成することによって、イオンミラーM1をイオン透過動作モード(T)に制御し、また電圧源V2も制御して、同様にイオンミラーM2の領域R2内にイオン透過フィールドを形成することによって、イオンミラーM2をイオン透過動作モード(T)に制御することから始まる。その結果、イオン源12によって生成されたイオンは、イオンミラーM1内に進み、領域R1内に形成されたイオン透過フィールドによって、電荷検出シリンダCD内に進むときに、長手方向軸20に向かって集束される。次いで、イオンは、電荷検出シリンダCDを通ってイオンミラーM2内に進み、ここでM2の領域R2内に形成されたイオン透過フィールドが、イオンを、長手方向軸20に向けて集束させ、これにより図4Aに示されたイオンの軌道60によって示されているように、イオンが、M2の出口開口部A1を通過する。
【0035】
[0047]ここで図4Bを参照すると、イオンミラーM1、M2の両方が、選択された期間にわたってイオン透過動作モードで動作した後、かつ/またはイオン透過動作モードによるイオン透過が首尾良く達成されるまで、プロセッサ52は、例示的に、イオンミラーM1を図示のようにイオン透過動作モード(T)に維持しながら、電圧源V2を制御し、イオンミラーM2の領域R2内にイオン反射フィールドを形成することにより、イオンミラーM2をイオン反射動作モード(R)に制御するよう動作可能である。その結果、イオン源12によって生成された少なくとも1つのイオンが、イオンミラーM1内に入り、領域R1内に形成されたイオン透過フィールドによって長手方向軸20に向かって集束され、これにより、図4Aに関連してまさに説明されたように、少なくとも1つのイオンが、イオンミラーM1を通って電荷検出シリンダCD内に進む。次いで、イオンは、電荷検出シリンダCDを通ってイオンミラーM2内に進み、ここでM2の領域R2内に形成されたイオン反射フィールドが、図4Bのイオンの軌道62によって示されているように、イオンを反射してイオンを反対方向に移動させ、電荷検出シリンダCD内に戻す。
【0036】
[0048]ここで図4Cを参照すると、イオン反射電界がイオンミラーM2の領域R2内に形成された後、プロセッサ52は、イオンをELIT14内に捕捉するために、イオンミラーM2をイオン反射動作モード(R)に維持しながら、電圧源V1を制御し、イオンミラーM1の領域R1内にイオン反射フィールドを形成することにより、イオンミラーM1をイオン反射動作モード(R)に制御するよう、動作可能である。いくつかの実施形態では、プロセッサ52は、例示的に、ELIT14が、図4Bに示されている状態で、すなわち、M1がイオン透過モードで、かつM2がイオン反射モードで、選択された期間動作した後に、プロセッサ52が、イオンミラーM1を反射動作モード(R)に制御するよう動作可能である、「ランダム捕捉モード」または「連続捕捉モード」でELIT14を制御するよう動作可能である、すなわち、プログラムされる。ELIT14は、選択された期間が経過するまで、図4Bに示されている状態で動作するよう制御される。他の実施形態では、プロセッサ52は、例示的に、ランダム捕捉モードと比較して、ELIT14内にただ1つのイオンを捕捉する確率が実質的により高くなる「トリガ捕捉モード」で、ELIT14を制御するよう動作可能である、すなわち、プログラムされる。「トリガ捕捉モード」では、プロセッサ52は、イオンが、電荷検出シリンダCDを通過するのが検出された後、イオンミラーM1を反射動作モード(R)に制御するよう動作可能である。
【0037】
[0049]いずれの場合も、イオンミラーM1、M2の両方が、イオン反射動作モード(R)に制御され、ELIT14内でイオンを捕捉すると、イオンは、イオンミラーM1およびM2それぞれの領域R1およびR2内に形成された、対向するイオン反射フィールドによって、図4Cに示されるイオンの軌道64によって示されているように、かつ上記のように、イオンミラーM1とM2との間で前後に振動させられ、毎回電荷検出シリンダCDを通過する。一実施形態では、プロセッサ50は、イオンが、電荷検出シリンダCDを選択された回数通過するまで、図4Cに示されている動作状態を維持するよう動作可能である。代替の実施形態では、プロセッサ50は、M1(およびいくつかの実施形態ではM2)を、イオン反射動作モード(R)に制御した後、選択された期間、図4Cに示されている動作状態を維持するように動作可能である。どちらの実施形態でも、図4Cに示されている状態で費やされるサイクル数または時間は、例示的に、たとえば、メモリ54に記憶された命令によってプログラムされるか、またはユーザインタフェースを通して制御され得、いずれの場合も、イオンによる電荷検出シリンダの通過のたびに得られるイオン検出イベント情報は、一時的にプロセッサ50に、たとえば、予め規定されたデータまたはサンプルの長さを例示的に有することができる、イオン測定ファイルの形態で記憶される。イオンが、電荷検出シリンダCDを選択された回数通過したとき、または選択された時間にわたってイオンミラーM1とM2との間で前後に振動したとき、プロセッサ50に記憶された電荷検出イベントの総数が、イオン測定イベントを規定し、イオン測定イベントが完了すると、イオン測定イベントを規定する記憶されたイオン検出イベント、たとえば、イオン測定イベントファイルが、プロセッサ52に渡されるか、またはプロセッサ52によって取得される。次いで、図4A図4Cに示されているシーケンスは、電圧源V1、V2が上記のように制御され、イオンミラーM1、M2それぞれの領域R1、R2内で、イオン透過フィールドを形成することにより、イオンミラーM1、M2をそれぞれ、イオン透過動作モード(T)に制御する、図4Aに示されているシーケンスに戻る。次いで、図示されているシーケンスが、必要な回数だけ繰り返される。
【0038】
[0050]これまで、イオン測定イベントファイルは、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)アルゴリズムを使用して、周波数ドメインで分析されていた。かかる実施態様では、イオンの質量電荷比(m/z)は、校正定数(C)を使用して、信号の基本振動周波数(f0)から計算され(式1)、イオンの電荷は、FFTの基本周波数ピークの大きさによって決定された。
【0039】
【数1】
【0040】
[0051]イオンの電荷を決定する際に基本周波数だけが使用されたので、信号は、わずか1つの正弦波として表されると考えられ得る。しかし、より高次の高調波は無視されるので、信号に関するかなりの量の情報が、FFTによって使用されていない。これは、電荷状態の分解能を得るのに、より長い間信号が測定される必要があることを意味する。波形をより完全に表現することが、振幅の不確かさを減少させ、これにより電荷の精度が向上し、電荷状態の分解能に達するまでに必要な捕捉時間が短縮される。さらに、FFT分析のピークの大きさは、信号のデューティサイクルなどの要因に依存するが、時間ドメインの信号振幅は、所与の電荷に対して一定であり、時間ドメインでの振幅測定は、デューティサイクルに依存しない。イオンが、バックグラウンドガスとの衝突および検出シリンダとの静電相互作用によってエネルギーを失うので、イオン振動周波数および信号デューティサイクルが変化する、CDMSで見られるような、時間で変わる信号の過渡状態がある用途では、これらの特性が、時間ドメインでの分析を有利なものにする。
【0041】
[0052]以下で、イオン電荷をより正確に測定するために、信号測定値を疑似(シミュレーテッド)波形に当てはめることにより、より高次の高調波に含まれる情報を組み込むFFTと組み合わせて、時間ドメインのイオン測定イベントファイルに含まれる信号測定値を分析するプロセスについて説明する。以下の説明では、ELITは、イオン測定イベントファイルに記憶された時間ドメインの電荷検出信号CHDが、方形波信号(すなわち、50%のデューティサイクルを有する)であるように設計されているが、代替の実施態様では、ELITが、時間ドメインの電荷検出信号CHDのデューティサイクルが50%を超えるか、または50%を下回るように設計されていてもよいことが理解されよう。以下のアルゴリズムは、イオン測定ファイルに含まれる50%デューティサイクル信号の測定によって、電荷の大きさの決定精度を、FFTと比較して15%から20%向上させ、これは、ガウスノイズによって破損した方形波の振幅の不確かさの、統計的下限に達する。方形波で達成され得る最良の電荷の標準偏差は、以下の関係式によって、ノイズの標準偏差(σnoise)、および波形が、LO状態で費やされるポイントと比較された、HI状態で費やすポイントの数(それぞれ、NHIおよびNLO)に関係付けられる。
【0042】
【数2】
【0043】
[0053]ここで図5を参照すると、時間ドメインのイオン測定イベントファイルに含まれる信号測定値を分析して、イオン捕捉イベントの際に、ELITの電荷検出シリンダを通って前後に振動するイオンの、周波数および電荷の大きさ(z)を決定するプロセス100の、実施形態の簡略化されたフローチャートが示されている。この周波数の決定によって、イオンの質量電荷比(m/z)が式1から決定され、イオンの質量が、m/zとzとの積として決定される。プロセス100は、例示的に、プロセス100の機能を実行するために、プロセッサ16によって実行可能な命令の形態で、プロセッサ16のメモリに記憶される。
【0044】
[0054]プロセス100は、時間窓カウンタNが1(または他の何らかの定数値)に初期化されるステップ102で開始する。プロセス100は、例示的に、測定イベントファイルの複数の連続する時間窓のうちのそれぞれの、信号測定値を分析することによって、イオン測定イベントファイルに含まれる信号測定値を分析するよう設計されている。このファイルの窓処理手法は、有利なことに、信号測定値の周波数およびデューティサイクルが各時間窓内で実質的に変化しない限り、時間で変化する周波数およびデューティサイクルの、測定された振幅への影響を低減し、これにより、これらのパラメータの近似値を、各窓の期間にわたって一定にすることを可能とする。イオン測定イベントファイルの長さが約100ミリ秒であり、約1,000サイクルの信号測定値を含む、例示的な一実施態様では、時間窓は、例示的に、それぞれの長さが10ミリ秒になるように選択され、10個の時間窓のそれぞれが、100サイクルの信号測定値を含む。
【0045】
[0055]プロセス100は、ステップ102に続いて、プロセッサ16が、イオン測定イベントファイル(これ以降、イオン測定信号IMS:ion measurement signal)に含まれる信号の測定値の、第1の時間窓のFFT分析を実行し、上記のような従来の方式で、IMS信号の第1の時間窓の基本振動周波数(FFFT)および電荷の大きさ(CHFFT)を決定するよう動作可能である、ステップ104に進む。例示的な一実施態様では、プロセス100で後に使用するために、CHFFTに2.955ADCビット/eを掛けて、ADCビットでの時間ドメインの信号振幅を取得する。
【0046】
[0056]プロセス100は、ステップ104に続いて、プロセッサ16が、入力パラメータF、CH、PH、およびDCを使用して、N番目の時間窓のシミュレーテッドイオン信号(SIS:simulated ion signal)を生成するよう動作可能である、ステップ106に進み、ここでFは周波数、CHは電荷の大きさ、PHは位相、DCはデューティサイクルである。
【0047】
[0057]例示的な一実施態様では、SISは、FortranのBeemanアルゴリズム(修正された速度Verletアルゴリズム(Velocity Verlet algorithm))を使用し、10.02306kHzで、SIMION8.1を使って計算された電界を使用して、25,600THのm/zを有する1つの130eV/zのイオンの、ELIT内での軌道をシミュレーションすることによって生成された。そのイオンの信号は、電荷検出シリンダが+1を有し、かつ他のすべての電極が接地で保持されている電位アレイに、イオンの軌道を重ね合わせることによって生成された。これが、図6の例に示されるように、Greenの相反定理に従って+1に正規化された信号160を生成する。信号160は、1つの負方向への遷移160Aと、正方向への遷移160Bとの、2つの区間に分割される。信号の1周期が、OriginPro2018で、2つのバイドースシグモイド曲線(bi-dose sigmoidal curve)を使用して当てはめられた。以下の式に従って、1つの曲線が正方向への遷移160B(イオンが検出シリンダに入るときについての)に使用され、別の曲線が負方向への遷移160A(イオンがシリンダから出るときについての)に使用された。
【0048】
【数3】
【0049】
ここで、tは時間、pはシグモイド曲線用の汎用の当てはめパラメータであり、IおよびIは、SIS波形160が上昇または下降する時間を表す。IおよびIの値はさらに、生成された波形160のデューティサイクルが、比較のために図示されている名目上の50%デューティサイクル(トレース170B)と共に、40%(トレース170A)から60%(トレース170C)まで変化する図7の例で示されているように、負方向への遷移は一定のままであるが、正方向への遷移のデューティサイクルを変更するために、ΔDCだけ調整された。
【0050】
[0058]式3において、fscalingは、この波形の分析関数を最初に作成する際に使用される名目上の周波数で割った、所望の周波数である(たとえば、10.02306kHz)。かかる例示的な分析関数が図8に示されており、信号160は、より低い周波数180A、たとえば10kHzと、より高い周波数180B、たとえば15kHzとの間で変化する。Tは波の周期時間であり、最後の波の周期が始まってから経過した時間は、t-tであり、Aは振幅である。位相は、位相時間を、波形を指定された時間だけシフトするtに加えることによって調整される。変数hおよびhは、波がLOからHIまたはHIからLOの状態に遷移する速度を表す。hの値がより小さいほど、一層丸みのある波形を生成する一方、hの値がより大きいほど、遷移が一層急な波形を生成する。変数hscalingは、hを乗法的に調整して、遷移スロープを調整する。こうした曲線の最小値と最大値は、それぞれ0および+1に制限されるため、曲線は端と端とが連結され、周期的な波形を生成することができた。次いで、SIS波形が1500ADCビットの振幅にスケーリングされ、ゼロを中心に合わされた。
【0051】
[0059]図9の例で示されているように、既存の質量分析計で留意されるRC減衰190を適用するために、高域通過フィルタの離散時間の1次漸化式の実施態様(τ=7.89320623×10-5秒)が、SIS波形160に適用された。以下の式に従って、減衰定数に波形の対称数値微分を掛けて、SIS波形関数のRC減衰点iを生成した。
【0052】
【数4】
【0053】
[0060]τ定数は、関数発生器によって生成された方形波を、分光計の電荷検出シリンダに近接するアンテナに印加し、時間ドメインの方形波に様々なRC値を当てはめ、最適に当てはまる値を見つけることによって決定された。変数Δtは、ただ1つのADCサンプルの時間(400ns)を表す。
【0054】
[0061]F=FFFT、CH=CHFFT、PH=ゼロ、および130eV/zで軸方向の軌道を移動するイオンのデューティサイクルに相当するDCの推定値=49.2%でシミュレーテッドイオン信号SISの第1の時間窓(N=1)の最初の通過について、図5のプロセス100のステップ106をもう一度参照する。相互相関はさらに、例示的に、ステップ106で、図10に示されるプロセス200の例によって示されているように、IMSの最初の時間窓とSISとの間で実行される。このプロセス200では、初期SIS(PH=0)は、SISを1つのサンプリングポイント(たとえば、400ns)だけシフトし、次いで、たとえば、従来の残差平方和(SRS:sum of residual squares)を使用して、各フェーズでのIMSとSISとの間の分散を計算することにより、IMSとの相互相関が行われる。結果として得られる相関関数の最小値(IMSおよびSISの位相が、最も近い取得ポイントに一致する)は、次いで、例示的に、SIS信号のPHの位相の、ゼロ以外の初期推定値として役立つ。
【0055】
[0062]プロセス100は、シミュレーションされるイオン信号(SIS)が生成され、まさに説明されたように初期入力パラメータ値を入力されると、ステップ106から、プロセッサ16が、IMSとSISとの間の分散を決定するよう動作可能である、ステップ108に進む。一実施形態では、信号の分散は、以下の式に従って従来の残差平方和(SRS)を使用して決定され、一実施態様では、M=25,000取得ポイント(IMSファイルの10ミリ秒の窓内のポイント数)であるが、代替の実施態様では、Mは、任意の正の整数であり得る。
【0056】
【数5】
【0057】
代替の実施形態では、他の従来の分散判定方程式および/またはプロセスが使用され得る。
[0063]いずれの場合でも、プロセス100は、ステップ108に続いて、プロセッサ16が、ステップ108で実行された分散プロセスが収束したかどうかを決定するよう動作可能である、ステップ110に進む。ステップ110での収束は、例示的に、式5の結果を、式5の前の実行結果と比較することによって実行される。ステップ110の最初の実行では、式5の実行がただ1回だけであるため、プロセス100は、ステップ110のNO分岐に従い、プロセッサ16が、IMSとSISとの間の分散を低減するよう構成された、最適化アルゴリズムを実行するよう動作可能である、ステップ112へ進む。
【0058】
[0064]入力パラメータの組合せごとにステップ108で決定された、IMSとSISとの間の分散は、例示的に、ステップ112で、様々な従来の最適化アルゴリズムのいずれかを使用して、最小化され得るコスト関数を生成する。例示的な一実施態様では、最適化アルゴリズムとして例示的に、従来の勾配降下法が使用される。この特定の最適化方法は、高速な1次近似アルゴリズムを使用することにより、スループットの大幅な向上が実現され得るので、現在の状況では有益である。勾配降下法は、この分析方法を、計算コストを大幅に増やすことなく高速化して、リアルタイムでのデータ取得に遅れずについていくことを可能にする。代替の実施形態では、1つまたは複数の他の従来の最適化アルゴリズムが使用され得る。
【0059】
[0065]勾配降下法での最適化において、IMSとSISとは、入力パラメータの特定のセットについて、IMSとSISとの間のSRSを計算することによって比較される。次いで、入力パラメータを比較的少量だけ変化させて、入力パラメータのそれぞれに対するSRSの数値偏導関数を判定する。偏導関数の計算に続いて、ステップ114で、入力パラメータごとに、分散の個々の収束率に基づいて、SRSのそれぞれの偏導関数に一意の学習率(γ)を掛けることにより、入力パラメータが調整される。Xが、n回の反復でのパラメータのベクトルであり、γが、学習率のベクトルである場合、ステップn+1の勾配降下法の式は、以下のように記述され得る(式6)。ここで、F、DC、PH、CH、およびSは、それぞれ、ノイズのない波形の合成に使用される周波数、デューティサイクル、位相、振幅、および遷移スロープのパラメータを表す。
【0060】
【数6】
【0061】
[0066]遷移は瞬間的なので、遷移スロープSは、方形波には適用されず、図5に示されているプロセスのような場合には、遷移スロープが省略されることに留意されたい。いずれの場合も、プロセスは、プロセッサ16が、ステップ114の実行によって得られる調整されたパラメータを使用して、新しくシミュレーテッドイオン信号(SIS)を生成するよう動作可能である、ステップ106にループバックする。ステップ106~114のこの反復プロセスは、図11に示されるプロセス210による代替形態でも示され、プロセッサ16が、ステップ110で収束限界に達したと判定するまで、継続される。一実施形態では、この収束限界は、現在の反復でのSRS(SRS)と、前の反復でのSRS(SRSn-1)との比率によって設定される。SRS/SRSn-1が、所定の回数、たとえば50回を超える反復で、十分に1に近い、たとえば0.99999999と1との間となる場合、プロセッサ16は、当てはめが収束したと判定するよう動作可能である。収束時の最適に当てはめられた波形240の一部の例が、ノイズによって破損されたIMS信号230の上に重ね合わされた、図13に示されている。
【0062】
[0067]プロセス100は、ステップ110のYES分岐に続いて、プロセッサが、周波数F(N)、電荷の大きさCH(N)、およびSMSに当てはめられたIMSのN番目の時間窓のデューティサイクルDC(N)を決定するよう動作可能である、ステップ116に進む。イオン測定信号IMSのN番目の時間窓の周波数F(N)は、例示的に、信号サイクルの時間ベースの遷移(たとえば、上記で説明された例示的な実施態様では、約100サイクル)から直接計算される。イオン測定信号IMSのN番目の時間窓の電荷の大きさCH(N)は、例示的に、N番目の時間窓を構成するサイクルの振幅の平均値として計算され、DC(N)は、収束時のDCの最後の値である。
【0063】
[0068]プロセス100は、ステップ116に続いて、プロセッサ16が、イオン測定信号IMSの最後の時間窓が処理されたかどうかを判定するよう動作可能である、ステップ118に進む。NOの場合、プロセス100は、プロセッサ16が、時間窓を期間ΔT、たとえば10ミリ秒だけ進めるよう動作可能である、ステップ120に進む。その後、プロセッサ16は、ステップ122で、時間窓カウンタNを1だけ進め、入力パラメータF、CH、およびDCの初期値を設定するよう動作可能である。最初の時間窓(N=1)が分析された後、次の窓の最初の推測は、前の窓で最適に当てはめられた、周波数、デューティサイクル、および電荷の振幅で構成される。N≧2の窓ごとに、例示的に、ステップ106~114の反復プロセスのうちの最初の50回の反復が、次の窓の位相PHを見つけるために確保され、次いで、その後の反復では、収束に達するまで、すべてのパラメータを最適化する。これは、図12に、SRS対反復回数のグラフとしてグラフィックに示され、波形220は、位相PHが見つけられる最初の50回の反復が、比較的平坦であり、その後、波形220は収束する方へ移ることを示している。
【0064】
[0069]ステップ116で、プロセッサ16が、IMSの最後の時間窓が処理されたと判定した場合、プロセス100は、イオン測定信号の基本周波数FIMSを決定するために、複数の時間窓の周波数の値F(N)が、プロセッサ16によって処理される、ステップ124に進む。いくつかの実施形態では、ELIT内のイオンの振動の測定値は、イオンミラーM1、M2のスイッチング電圧に起因する、過渡状態が鎮まるのを可能にするために、すぐには記録されない。その後、イオンは通常、バックグラウンドガスとの衝突、および電荷検出シリンダとの静電相互作用により、イオンミラーM1とM2との間で前後に振動するときに、エネルギーを失う。かかるエネルギーの損失は、図11にグラフィックに示されているように、イオンがイオンミラーM1とM2との間で前後に振動し続けるほどに、周波数の増加をもたらす。かかる実施形態では、基本周波数FIMSは、例示的に、時間の関数としてすべての時間窓の周波数F(N)に線を当てはめ、次いで、イオンがどんなエネルギーも失う前のFIMSを決定するために、捕捉イベントの開始部分に外挿することによって決定される。これもまた図11にグラフィックに示され、基本周波数FIMSはf0として示されている。次いで、イオンの質量電荷比は、FIMSを使用して、式1を用いて計算される。より短い捕捉時間および/または改善されたELIT構造の他の実施形態では、イオンは、捕捉イベントの際に、感知できるほどにエネルギーを失うことはなく、かかる実施形態では、基本周波数FIMSは、N個の窓にわたるF(N)の平均として計算され得る。
【0065】
[0070]プロセッサ16はさらに、ステップ124で、複数の時間窓の電荷の大きさの値CH(N)を処理して、イオンの電荷の大きさCHIMSを決定するよう動作可能である。電荷は、IMSファイル全体で一定なので、電荷CHIMSは、例示的に、N個の窓すべてにわたって電荷の大きさの値CH(N)を平均化することによって決定される。
【0066】

[0071]持続時間100ミリ秒の、ガウスノイズの1000ADCビットRMSDで破損した方形波信号を含む、1000個のファイルのFFT分析では、1.65電気素量(e)の電荷RMSDが得られた。本明細書で説明された技術を使用した、同じファイルの時間ドメイン分析の結果、1.35eのRMSDが得られた。加えて、時間ドメイン分析で報告された振幅は、RC減衰に依存せず、信号対雑音比が1%増加している。これは、FFTと比較すると、電荷の精度が合計で19%向上することを表している。理論上の最適な電荷RMSDが、50%デューティサイクルの方形波で、時間ドメイン分析を用いて達成された(式1ごとに、σnoise=1000ADCビット、50%デューティサイクルでNHI=NLO=125,000ポイント、σbest=4ADCビットまたは1.35電気素量)。ガウスノイズの1000ADCビットRMSDで破損した、シミュレーテッドイオン信号を含むファイルに対して同一の分析が実行された結果、FFT分析で1.65eのRMSD、時間ドメイン分析で1.45eのRMSDが得られ、13%の電荷の精度向上を示した。
【0067】
[0072]方形波と比較した、シミュレーテッドイオン信号の電荷精度の改善度の減少は、このアルゴリズムによって当てはめられるパラメータのそれぞれについて、2階偏導関数のヘッセ行列を検討することによって理解され得る。
【0068】
【数7】
【0069】
ヘッセ行列が対角線上に支配的である場合、最適化問題は、明確なグローバル最小値があり、パラメータのそれぞれによる不確かさが互いに結合しない、良設定となる。この状況では、パラメータは線型独立であり、1次勾配降下アルゴリズムは、こうした問題を迅速に解決することができる。これは、信号のHI状態とLO状態との間の遷移が瞬間的である、方形波信号で実現される(少なくとも2.5MHzのサンプリング周波数によって提供される時間分解能の範囲内で)。これは、各遷移の高さおよび遷移が生じる時間が、信号の振幅、周波数、デューティサイクル、および位相などのパラメータに依存しないことを意味する。一方、HI状態とLO状態との間で段階的に遷移するイオン信号のヘッセ行列は、対角線上に支配的ではなく、パラメータおよびパラメータのそれぞれの不確かさを互いにリンクする、混合偏導関数(mixed partial derivative)による、かなりの寄与がある。これは、遷移の立ち上がり時間および立ち下がり時間が、周波数の不確かさを他のすべてのパラメータの不確かさに結合する(すなわち、遷移がいつ生じるかわからないことが、デューティサイクルが確信的には割り当てられ得ず、誤った振幅測定によって補正されることを意味する)、周波数の関数になることを意味する。こうした不良設定の最適化問題に対する、固有の解決策は存在せず、信号がノイズによって隠されている場合、コスト関数の最小値に向かって収束することは困難である。パラメータの相互依存性は、LO状態とHI状態との間で急峻に遷移する信号を生成する検出システムを設計することにより、最小限に抑えられる。たとえば、これは、イオン信号の立ち上がり時間および立ち下がり時間が速くなるように、検出シリンダの内径を最小化することにより実現され得る。
【0070】
[0073]代替の実施形態では、ELITの幾何学的欠陥および/または他の設計上の特徴から生じる信号形状の歪みを考慮して、イオン信号が最適に当てはめられたバイドースシグモイド方程式が、質量分析計によって生成された信号に当てはまるよう修正され得る。より高い精度で実際の機器のイオン信号がわかっているほど、波形合成機能は、一層正確に、機器の信号の当てはめに適用され得る。波形合成サブルーチンでは、任意の関数が、任意の信号を当てはめるのに使用され得るが、パラメータの理論上の精度は、波形の特性に依存することに留意されたい。最後に、より高速な最適化アルゴリズム、またはシンプレックスオプティマイザなどの非線形最適化問題に関してより好適なアルゴリズムが、ノイズのない波形を信号に当てはめるために使用され得る。加えて、AMS Gradなどの、モメンタムを加えた高速1次勾配降下アルゴリズムを当てはめられ得る、信号を生成するシステムを設計することにより、スループットの大幅な向上が実現され得る。別法として、ニュートン法などの2次最適化スキームを使用することにより、収束に達するために必要とされるステップ数が、最小限に抑えられ得る。こうした改善により、リアルタイムFFT分析と組み合わせて、ファイルの時間ドメイン分析を実行することが可能である。
【0071】
[0074]この開示は、前述の図面および説明において詳細に例示および説明されてきたが、この開示は例示的であり、特性を限定するものではないと見なされるべきであり、この開示の例示的な実施形態だけが示され、説明されており、この開示の精神の範囲内にある、すべての変更および修正が保護されることが望ましいことを、理解されたい。たとえば、添付の図に示され、本明細書で説明されたELIT14は、単に例として提示されており、上記の概念、構造、および技術は、様々な代替設計のELITにおいて、直接実施され得ることが理解されよう。かかる代替の任意のELITの設計は、たとえば、複数のELIT領域のうちの任意の1つまたは組合せ、より多くの、より少ない、かつ/または異なる形状のイオンミラー電極、より多くの、またはより少ない電圧源、電圧源のうちの1つまたは複数によって生成される、より多くの、またはより少ない、DCまたは時間で変化する信号、追加の電界領域を画定する1つまたは複数のイオンミラーなどを含むことができる。別の例として、いくつかの代替の実施形態では、図5に示されたプロセスは、捕捉イベントでのイオンの電荷の大きさ、CHIMS(すなわち、z)を決定するためだけに使用され得、上記で説明された従来のFFTの手法は、質量電荷比(m/z)を決定するために使用され得る。さらに別の例として、図5に示されたプロセスは、1つまたは複数の時間窓内での周波数測定における、起こり得る変動を考慮に入れるよう修正され得、かつ/またはイオン測定ファイル全体は、周波数測定における、かかる起こり得るどんな変動も考慮に入れるように処理され得る。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】