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特表2023-512292ジアミン連結受容体特異的環状ペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ジアミン連結受容体特異的環状ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20230316BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230316BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61K9/08
A61P27/02
A61P27/04
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547053
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 US2021016007
(87)【国際公開番号】W WO2021158463
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】63/124,927
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/969,311
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508041600
【氏名又は名称】パラティン テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドッド,ジョン,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー,アクセル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076CC46
4C076DD09F
4C076DD22Z
4C076DD23D
4C076DD23Z
4C076DD30Z
4C076DD43Z
4C076EE23F
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF61
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA25
4C084CA59
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC411
4C084ZC412
4H045AA10
4H045BA14
4H045BA31
4H045EA28
4H045FA33
4H045FA57
4H045GA25
(57)【要約】
式(I)
【化1】

(式中、Xaa、Xaa、Xaa、x、R1、R2、Rs及びR4は、本明細書で定義される通りである)
の受容体特異的環状ペプチド、前述の式のペプチドを含む組成物及び製剤並びに式(I)のメラノコルチン受容体特異的環状ペプチドを利用して、メラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態及び症候群を予防するか、寛解させるか又は処置する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
Xaa及びXaaは、それぞれ独立に、骨格アミド結合によって連結される1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にC~C直鎖状又は分岐状アルキルでアルキル化され、及び任意選択的にアルキル化される場合、前記アルキルは、任意選択的に、同じアミノ酸の側鎖と、前記側鎖が脂肪族である場合に環を形成し、前記環は、任意選択的に置換され;
は、H又はL-若しくはD-異性体アミノ酸側鎖であり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又はC~C直鎖状若しくは分岐状アルキルであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、骨格アミド結合によって連結される1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
vは、2~5であり;及び
wは、2~5である)
の側鎖-尾部型のジアミン連結環化ペプチドであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含む側鎖-尾部型のジアミン連結環化ペプチド又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される、請求項1に記載の式Iのペプチド。
【請求項3】
は、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である、請求項1に記載の式Iのペプチド。
【請求項4】
Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-His-D-Phe-Arg-又は-His-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である、請求項1に記載の式Iのペプチド。
【請求項5】
Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-His-D-Phe-Arg-又は-His-Phe-Arg-からなり、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-His-D-Phe- -His-Phe-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Argの側鎖である、請求項1に記載の式Iのペプチド。
【請求項7】
は、Nle又はArgのL-又はD-異性体である、請求項1に記載の式Iのペプチド。
【請求項8】
Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である、請求項7に記載のペプチド。
【請求項10】
は、存在せず、及びRは、C~C17アシル基である、請求項1に記載の式Iのペプチド。
【請求項11】
Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される、請求項10に記載のペプチド。
【請求項12】
Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である、請求項10に記載のペプチド。
【請求項13】
は、Nle又はArgのL-又はD-異性体であり、及びRは、C~C17アシル基である、請求項1に記載の式Iのペプチド。
【請求項14】
Xaa及びXaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
Xaa及びXaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である、請求項13に記載のペプチド。
【請求項16】
D-Phe又はPheのフェニル環は、1~3個の環置換基で任意選択的に置換され、前記置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルを含む、請求項2、4、5、6、8、9、11、12、15又は14の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項17】
は、-(CH-である、請求項1~16の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項18】
は、-(CH-O-(CH-である、請求項1~16の何れか一項に記載のペプチド。
【請求項19】
前記L-又はD-異性体アミノ酸は、アルファアミノ酸、ベータアミノ酸、ガンマアミノ酸若しくはデルタアミノ酸又はそれらの組み合わせからなる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項20】
式II:
【化2】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
は、置換又は未置換インドール、フェニル又はナフチルであり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、及びそれが-CH-である場合、Rとともに、一般構造
【化3】

の環を形成し;
は、RがRとともに前記環を形成する場合、-Hであるか、又はRは、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-CH
-S-(=O)-CH
置換又は未置換フェニル、
-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)、
【化4】

であり;
は、置換又は未置換フェニル又はナフチルであり;
10は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17直鎖状、分岐状又は環状アルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
【化5】

であり;
11は、-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立に及び各例において独立に、H又はC~C直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル鎖であり;
tは、各例において独立に、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
v及びwは、それぞれ独立に、2~5であり;及び
zは、1~3である)
のものであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含むもの又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項21】
は、未置換ナフチルである、請求項20に記載の環状ペプチド。
【請求項22】
何れかの置換フェニル又はナフチルは、各例において独立に、1~3個の環置換基で置換され、前記置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルである、請求項20に記載の環状ペプチド。
【請求項23】
は、少なくとも1個のL-又はD-異性体アミノ酸を含む、請求項20に記載の環状ペプチド。
【請求項24】
は、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である、請求項23に記載の環状ペプチド。
【請求項25】
前記脂肪族側鎖は、-(CH-CHである、請求項24に記載の環状ペプチド。
【請求項26】
は、少なくとも1個の窒素原子を含む側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である、請求項20に記載の環状ペプチド。
【請求項27】
は、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体である、請求項26に記載の環状ペプチド。
【請求項28】
前記式IIの環状ペプチドは、式:
【化6】

の環状ペプチドである、請求項20に記載の環状ペプチド。
【請求項29】
Xaaは、Ac-Arg、Ac-D-Arg、Ac-Nle、Ac-D-Nle、Ac-Trp、シクロペンチルアセチル、ヘキサノイル、3-フェニルプロパノイル、シクロペンチルアセチル、アセチル、2-ナフチルアセチル又は3-(1-ナフチル)プロパノイルである、請求項20又は28に記載の環状ペプチド。
【請求項30】
は、インドール又はナフタレンである、請求項20又は28に記載の環状ペプチド。
【請求項31】
及びRは、ピロリジンを含む、請求項20又は28に記載の環状ペプチド。
【請求項32】
ピロリジンは、置換される、請求項31に記載の環状ペプチド。
【請求項33】
置換基は、-O-CH-フェニルであり、ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である、請求項32に記載の環状ペプチド。
【請求項34】
は、置換フェニルである、請求項20又は28に記載の環状ペプチド。
【請求項35】
式III:
【化7】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17直鎖状、分岐状又は環状アルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
【化8】

であり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、及びそれが-CH-である場合、Rとともに、一般構造
【化9】

の環を形成し:
は、RがRとともに前記環を形成する場合、-Hであるか、又はRは、
-H、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-R12a
置換又は未置換フェニル、
-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)、
【化10】

であり;
は、置換又は未置換フェニル又はナフチルであり;
11は、-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立に及び各例において独立に、H又はC~C直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル鎖であり;
tは、各例において独立に、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
v及び2は、それぞれ独立に、2~5であり;及び
zは、1~3である)
のものであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含むもの又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項36】
は、未置換ナフチルである、請求項35に記載の環状ペプチド。
【請求項37】
何れかの置換フェニル又はナフチルは、各例において独立に、1~3個の環置換基で置換され、前記置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルである、請求項35に記載の環状ペプチド。
【請求項38】
は、少なくとも1個のL-又はD-異性体アミノ酸を含む、請求項35に記載の環状ペプチド。
【請求項39】
は、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である、請求項38に記載の環状ペプチド。
【請求項40】
は、アセチル、シクロペンチルアセチル、ヘキサノイル、3-フェニルプロパノイル、シクロペンチルアセチル、2-ナフチルアセチル又は3-(1-ナフチル)プロパノイルである、請求項35に記載の環状ペプチド。
【請求項41】
前記式IIIの環状ペプチドは、式:
【化11】

の環状ペプチドである、請求項35に記載の環状ペプチド。
【請求項42】
式IV又はV:
【化12】

(式中、
Zは、H又はN末端基であり;
Xaaは、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のアミノ酸であり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
Xaaは、基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第1の-NH-とアミド結合を形成するカルボキシル基を含む側鎖を有するアミノ酸のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール、アルキル-アリール、アルキル-O-アリール、アルキル-O-アルキル-アリール、-O-アルキル-アリール若しくは-O-アリールで任意選択的に置換されるProのL-若しくはD-異性体アミノ酸であるか、又はXaaは、少なくとも1個の一級アミン、二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド若しくはカルボキシルを含む側鎖を有するL-若しくはD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、置換又は未置換アリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、少なくとも1個の一級アミン、二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はエーテルを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、及びXaaが存在しない場合、C末端カルボキシル基は、前記基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第2の-NH-とアミド結合を形成し;
Xaaは、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1個以上の環置換基で任意選択的に置換される少なくとも1個のアリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、1個以上が存在する場合、同じであるか又は異なり、及び独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール又は-O-アリールであり、C末端カルボキシル基は、前記基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第2の-NH-とアミド結合を形成し;
uは、2~8であり;
v及びwは、それぞれ独立に、2~5であり;
前記基-NH-(CH-NH-及び-NH-(CH-O-(CH-NH-は、それぞれ第1の-NH-及び第2の-NH-を含む)
の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項43】
Zは、直鎖状又は分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール又はアラルキルを含むC~C17アシル基からなる群から選択されるN末端基である、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項44】
Xaaは、Gly又はAla、Nle、Leu、Ile若しくはValのL-若しくはD-異性体からなる群から選択される単一のアミノ酸残基である、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項45】
Xaaは、少なくとも1個の一級アミン、グアニジン又は尿素基を含む側鎖を有する単一のアミノ酸である、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項46】
Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体である、請求項45に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項47】
Xaaは、1~3個の環置換基で任意選択的に置換されるD-Phe又はPheである、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項48】
前記環置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ又はアルコキシ-カルボニルである、請求項47に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項49】
Xaaは、D-Nal1又はD-Nal2である、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項50】
Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab又はDapのL-又はD-異性体である、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項51】
Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体である、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項52】
Zは、C~C直鎖状アルキルアシル基であり;
Xaaは、Nle又はArgのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、Asp又はGluのL-又はD-異性体であり、前記側鎖のカルボキシル基は、前記基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第1の-NH-とアミド結合を形成し;
Xaaは、His、Hyp(Bzl)、Met(O)又はAsnのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、置換又は未置換Phe、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、ArgのL-又はD-異性体であり;及び
Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり、その前記C末端カルボキシル基は、前記基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第2の-NH-とアミド結合を形成する、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項53】
式IVのものであり、Xaaの前記側鎖のカルボキシル基は、前記基-NH-(CH-NHの第1の-NH-とアミド結合を形成し、及びXaaの前記C末端カルボキシル基は、前記基-NH-(CH-NH-の第2の-NH-とアミド結合を形成する、請求項42に記載の環状ペプチド。
【請求項54】
その少なくとも1個の骨格窒素原子は、メチル基を含む、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項55】
そのいかなる骨格窒素原子もメチル基を含まない、請求項42に記載の式IV又はVの環状ペプチド。
【請求項56】
構造:
【化13】

を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項57】
酢酸塩である、請求項56に記載の環状ペプチド。
【請求項58】
トリフルオロ酢酸塩である、請求項56に記載の環状ペプチド。
【請求項59】
【化14】

である環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項60】
請求項56に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項61】
請求項59に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項62】
ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるメラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態又は症候群の処置のための方法であって、請求項60又は61に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項63】
ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるメラノコルチン受容体機能の変化に反応する状態を処置するための方法であって、請求項60又は61に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項64】
ヒトにおける前記メラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態又は症候群は、眼の炎症である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記医薬組成物は、眼の表面への投与のための水性医薬組成物である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記炎症は、眼の状態によって引き起こされ、前記眼の状態は、ドライアイ疾患、角膜潰瘍、角膜びらん、角膜擦過傷、角膜変性、角膜穿孔、角膜瘢痕化、上皮欠損、角結膜炎、特発性ブドウ膜炎、角膜移植、加齢性黄斑変性、糖尿病性眼病変、眼瞼炎、緑内障、眼性高血圧、術後の眼の疼痛及び炎症、後眼部血管新生、増殖性硝子体網膜症、サイトメガロウイルス網膜炎、眼内炎、脈絡膜新生血管膜、血管閉塞性疾患、アレルギー性眼疾患、腫瘍、網膜色素変性症、眼の感染、強膜炎、眼瞼下垂、縮瞳、眼の疼痛、散瞳、神経痛、眼の表面の疾患の瘢痕化、眼部の感染、炎症性の眼疾患、眼の表面の疾患、角膜疾患、網膜疾患、全身性疾患の眼の所見、遺伝性の眼の状態、眼の腫瘍、眼内圧上昇、ヘルペス性感染、翼状片、眼の表面に持続する創傷、レーザー屈折矯正角膜切除術後の眼の疼痛及び炎症、角膜に対する熱若しくは化学的な熱傷、強膜の創傷、円錐角膜又は結膜の創傷である、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記炎症は、ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎によって引き起こされる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記薬学的に許容可能な担体は、約2.79mg/mLのクエン酸三ナトリウム二水和物、約9mg/mLの塩化ナトリウム及び約1mg/mLのポリソルベート80を含む水溶液である、請求項60又は61に記載の医薬組成物。
【請求項69】
前記環状ペプチドは、約1.0μg/mLの濃度のトリフルオロ酢酸塩形態である、請求項68に記載の医薬組成物。
【請求項70】
約0.10mg/mLの無水クエン酸をさらに含む、請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項71】
前記水溶液は、約pH6.5であり、及び前記組成物は、pHを調整するために必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸をさらに含む、請求項68に記載の医薬組成物。
【請求項72】
ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎を処置する方法であって、1日あたり約3回以下の頻度で1つの眼あたり約50μL以下の、請求項69に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項73】
1日あたり1つの眼あたり約150ng以下の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩が投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎を処置する方法であって、各眼の表面に、MC1r及びMC5rのそれぞれで1nM未満のEC50値を有するメラノコルチン受容体特異的ペプチドの水溶液を投与することを含む方法。
【請求項75】
1日あたり1つの眼あたり約150ng以下の前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドが点眼薬として投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、MC1r及びMC5rにおいて、MC3r又はMC4rの少なくとも一方のEC50値以下のEC50値を有する、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、MC1r及びMC5rにおいて、MC3r又はMC4rの少なくとも一方での4分の1以下であるEC50値を有する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記EC50値は、MC1r及びMC5rにおいて、MC3r及びMC4rの両方での4分の1以下である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記ペプチドは、MC1r及びMC5rのそれぞれにおけるアゴニスト又は部分アゴニストの何れかである、請求項74に記載の方法。
【請求項80】
EC50値は、CEREPによって行われるようなHTRF検出方法を使用してcAMP産生によって決定される、請求項74に記載の方法。
【請求項81】
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、請求項1に記載のペプチドである、請求項74に記載の方法。
【請求項82】
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、
【化15】

である、請求項74に記載の方法。
【請求項83】
構造
【化16】

を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項84】
酢酸塩である、請求項83に記載の環状ペプチド。
【請求項85】
トリフルオロ酢酸塩である、請求項83に記載の環状ペプチド。
【請求項86】
【化17】

である環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項87】
請求項83に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項88】
請求項86に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項89】
構造
【化18】

を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項90】
酢酸塩である、請求項89に記載の環状ペプチド。
【請求項91】
トリフルオロ酢酸塩である、請求項89に記載の環状ペプチド。
【請求項92】
【化19】

である環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項93】
請求項89に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項94】
請求項92に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項95】
式II:
【化20】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
は、置換又は未置換インドール、フェニル又はナフチルであり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、及びそれが-CH-である場合、Rとともに、一般構造
【化21】

の環を形成し;
は、RがRとともに前記環を形成する場合、-Hであるか、又はRは、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-CH
-S-(=O)-CH
置換又は未置換フェニル、
-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)、
【化22】

であり;
は、置換又は未置換フェニル又はナフチルであり;
10は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17直鎖状、分岐状又は環状アルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
【化23】

であり;
11は、-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立に及び各例において独立に、H又はC~C直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル鎖であり;
tは、各例において独立に、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
v及びwは、それぞれ独立に、2~5であり;及び
zは、1~3である)
の環状ペプチドであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含む環状ペプチド又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩。
【請求項96】
は、未置換ナフチルである、請求項95に記載の環状ペプチド。
【請求項97】
何れかの置換フェニル又はナフチルは、各例において独立に、1~3個の環置換基で置換され、前記置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルである、請求項95に記載の環状ペプチド。
【請求項98】
は、少なくとも1個のL-又はD-異性体アミノ酸を含む、請求項05に記載の環状ペプチド。
【請求項99】
は、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である、請求項98に記載の環状ペプチド。
【請求項100】
前記脂肪族側鎖は、-(CH-CHである、請求項99に記載の環状ペプチド。
【請求項101】
は、少なくとも1個の窒素原子を含む側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である、請求項95に記載の環状ペプチド。
【請求項102】
は、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体である、請求項101に記載の環状ペプチド。
【請求項103】
式:
【化24】

の環状ペプチドである、請求項95に記載の環状ペプチド。
【請求項104】
Xaaは、Ac-Arg、Ac-D-Arg、Ac-Nle、Ac-D-Nle、Ac-Trp、シクロペンチルアセチル、ヘキサノイル、3-フェニルプロパノイル、シクロペンチルアセチル、アセチル、2-ナフチルアセチル又は3-(1-ナフチル)プロパノイルである、請求項95又は103に記載の環状ペプチド。
【請求項105】
は、インドール又はナフタレンである、請求項95又は103に記載の環状ペプチド。
【請求項106】
及びRは、ピロリジンを含む、請求項95又は103に記載の環状ペプチド。
【請求項107】
ピロリジンは、置換される、請求項106に記載の環状ペプチド。
【請求項108】
置換基は、-O-CH-フェニルであり、ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である、請求項107に記載の環状ペプチド。
【請求項109】
は、置換フェニルである、請求項95又は103に記載の環状ペプチド。
【請求項110】
式III:
【化25】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17直鎖状、分岐状又は環状アルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
【化26】

であり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、及びそれが-CH-である場合、Rとともに、一般構造
【化27】

の環を形成し;
は、RがRとともに前記環を形成する場合、-Hであるか、又はRは、
-H、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-R12a
置換又は未置換フェニル、
-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)、
【化28】

であり;
は、置換又は未置換フェニル又はナフチルであり;
11は、-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立に及び各例において独立に、H又はC~C直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル鎖であり;
tは、各例において独立に、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
v及び2は、それぞれ独立に、2~5であり;及び
zは、1~3である)
のペプチドであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含むペプチド又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩。
【請求項111】
は、未置換ナフチルである、請求項110に記載の環状ペプチド。
【請求項112】
何れかの置換フェニル又はナフチルは、各例において独立に、1~3個の環置換基で置換され、前記置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルである、請求項110に記載の環状ペプチド。
【請求項113】
は、少なくとも1個のL-又はD-異性体アミノ酸を含む、請求項110に記載の環状ペプチド。
【請求項114】
は、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸である、請求項113に記載の環状ペプチド。
【請求項115】
は、アセチル、シクロペンチルアセチル、ヘキサノイル、3-フェニルプロパノイル、シクロペンチルアセチル、2-ナフチルアセチル又は3-(1-ナフチル)プロパノイルである、請求項110に記載の環状ペプチド。
【請求項116】
式:
【化29】

の環状ペプチドである、請求項110に記載の環状ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「Diamine-Linked Receptor-Specific Cyclic Peptides」という名称であり、2020年2月3日に提出された米国仮特許出願第62/969,311号及び「Diamine-Linked Receptor-Specific Cyclic Peptides」という名称であり、2020年12月14日提出の米国仮特許出願第63/124,927号に関し、前述の仮特許出願のそれぞれの明細書及び特許請求の範囲は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
発明の分野(技術の分野):
本発明は、メラノコルチン受容体におけるアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は混合アゴニスト-アンタゴニストである受容体特異的ペプチドを含む側鎖-尾部型のジアミン連結環状ペプチド並びにメラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態及び症候群の処置におけるメラノコルチン受容体特異的ジアミン連結環状ペプチドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明:
ペプチドは、一方がペプチド配列のN末端に近位であり、他方がC末端に近位である2個のアミノ酸残基の側鎖を通して、一般的にはジスルフィド結合を通して(例えば、2個のCys残基の側鎖を通して)又はアミド結合を通して(例えば、1つが、カルボキシル基を含む側鎖を有し、1つが、アミンを含む側鎖を有する2個の残基の側鎖を通して)環化されている。N末端基(例えば、アミン)及びC末端基(例えば、カルボン酸)をカップリングし、それによりアミド連結環状ペプチドを形成することによりアミドが形成されるペプチドなど、頭尾型で環化されたペプチドも知られている。
【0004】
正常なヒトメラノサイト、メラノーマ細胞、マクロファージ及び他の細胞上で発現されるメラノコルチン受容体-1(MC1r);副腎の細胞において発現されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)に対するメラノコルチン受容体-2(MC2r);視床下部、中脳、脳幹の及び末梢組織の細胞において発現されるメラノコルチン受容体-3及びメラノコルチン受容体-4(MC3r及びMC4r);及び末梢組織の広い分布で発現されるメラノコルチン受容体-5(MC5r)を含め、メラノコルチン受容体タイプ及びサブタイプのファミリーが同定されている。MC1rは、炎症、毛髪及び皮膚色素沈着の媒介及び他の機能と関連すると考えられており;MC2rは、ステロイド産生に介在すると考えられており;MC3rは、エネルギーホメオスタシス、摂食行動、炎症の媒介及び他の機能に関連すると考えられており;MC4rは、摂食行動、エネルギーホメオスタシス、性的機能及び他の機能に関連すると考えられており;MC5rは、外分泌腺系の制御及び他の機能に関連すると考えられている。
【0005】
アゴニスト及びアンタゴニストペプチドを含め、アゴニスト及びアンタゴニストメラノコルチン受容体特異的化合物の両方が知られている。例えば、MC4rアゴニストペプチドは、肥満の処置又は体重減少の誘導のため及び男性勃起機能不全及び女性性機能障害を含む様々な形態の性機能障害の処置のために有用であると考えられている。MC4rアンタゴニストペプチドは、結果として体重増加を引き起すと考えられており、悪液質及び他の消耗症候群及び状態などの状態に対する潜在的な有用性がある。
【0006】
内因性アゴニスト、アルファ-メラノコルチン刺激ホルモン(α-MSH)のペプチド類似体が知られている。これらは、直鎖状及び環状の両方のペプチドを含む。環状メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、一般的には、アミド又はシステイン連結などの側鎖を通して環化され、N末端でアシル化され、C末端でアミド化される(内因性α-MSHは、N末端でアシル化され、C末端でアミド化される)が、米国特許第6,579,968号で開示されるように、α-MSH類似体は、C末端カルボキシル基を有し得ることが知られている。
【0007】
科学文献における多くの論文並びに多くの特許出願及び発行された特許により明らかにされている、メラノコルチン受容体特異的ペプチドにおける強い科学的及び薬学的関心にもかかわらず、米国で承認されたメラノコルチン受容体特異的ペプチド薬は、閉経前の女性における機能低下性の性欲障害に対して適応とされている、商品名バイレッシ(登録商標)で販売されるブレメラノチド、骨髄性プロトポルフィリン症の成人患者における光毒性の予防に対して適応とされている、商品名SCENESSE(登録商標)で販売されるアファメラノチド及びプロオピオメラノコルチン(POMC)、プロタンパク質コンバターゼスブチリシン/ケキシン1型(PCSK1)又はレプチン受容体(LEPR)欠損による肥満の処置に対して適応とされている、商品名INCIVREE(商標)で販売されるセトメラノチドのみである。医薬適用、特に炎症関連疾患、適応症、状態及び症候群の処置での使用のためのメラノコルチン受容体特異的ペプチドが依然として非常に強く必要とされている。これは、本発明がなされたこの背景に対するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の簡単な概要
一態様では、本発明は、式I:
【化1】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
Xaa及びXaaは、それぞれ独立に、骨格アミド結合によって連結される1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にC~C直鎖状又は分岐状アルキルでアルキル化され、及び任意選択的にアルキル化される場合、前記アルキルは、任意選択的に、同じアミノ酸の側鎖と、前記側鎖が脂肪族である場合に環を形成し、前記環は、任意選択的に置換され;
は、H又はL-又はD-異性体アミノ酸側鎖であり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又はC~C直鎖状又は分岐状アルキルであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、骨格アミド結合によって連結される1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
vは、2~5であり;及び
wは、2~5である)
の側鎖-尾部型のジアミン連結環化ペプチドであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含む側鎖-尾部型のジアミン連結環化ペプチド又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩に関する。
【0009】
式Iのペプチドにおいて、Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み得、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される。代わりに、Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-His-D-Phe-Arg-又は-His-Phe-Arg-を含み得るか又はそれらからなり得、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である。
【0010】
別の態様では、Rは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖であり得る。
【0011】
また別の態様では、Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-His-D-Phe-又は-His-Phe-を含み得、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Argの側鎖である。
【0012】
式Iのペプチドのまた別の態様では、Rは、Nle又はArgのL-又はD-異性体であり得る。この態様では、Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み得、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される。代わりに、この態様では、Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み得、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である。
【0013】
式Iのペプチドの別の態様では、Rは、存在せず、及びRは、C~C17アシル基である。この態様では、Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み得、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される。代わりに、Xaa-Xaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み得、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である。
【0014】
式Iのペプチドの別の態様では、Rは、Nle又はArgのL-又はD-異性体であり、及びRは、C~C17アシル基である。この態様では、Xaa及びXaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換される。代わりに、Xaa及びXaaは、アミノ酸配列-D-Phe-Arg-又は-Phe-Arg-を含み得、D-Phe又はPheのフェニル環は、任意選択的に置換され、及びRは、L-又はD-異性体アミノ酸Trpの側鎖である。
【0015】
D-Phe又はPheのフェニル環が任意選択的に置換される別の態様では、それは、1~3個の環置換基で任意選択的に置換され、この置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルを含む。
【0016】
式Iのペプチドでは、L-又はD-異性体アミノ酸は、アルファアミノ酸、ベータアミノ酸、ガンマアミノ酸若しくはデルタアミノ酸又はそれらの組み合わせからなり得る。
【0017】
式II:
【化2】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
は、置換又は未置換インドール、フェニル又はナフチルであり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、及びそれが-CH-である場合、Rとともに、一般構造
【化3】

の環を形成し;
は、RがRとともに環を形成する場合、-Hであるか、又はRは、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-CH
-S-(=O)-CH
置換又は未置換フェニル、
-O-CH-フェニル(フェニルは、置換されているか又は未置換である)、
【化4】

であり;
は、置換又は未置換フェニル又はナフチルであり;
10は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17直鎖状、分岐状又は環状アルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
【化5】

であり;
11は、-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立に及び各例において独立に、H又はC~C直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル鎖であり;
tは、各例において独立に、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
v及びwは、それぞれ独立に、2~5であり;及び
zは、1~3である)
のペプチドであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含むペプチド又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩である、式Iのペプチドがさらに提供される。
【0018】
式IIのペプチドにおいて、Rは、未置換ナフチルであり得る。
【0019】
別の態様では、式IIのペプチドにおいて、何れかの置換フェニル又はナフチルは、各例において独立に、1~3個の環置換基で置換され得、この置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルである。
【0020】
式IIのペプチドの別の態様では、Rは、少なくとも1個のL-又はD-異性体アミノ酸を含み、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸であり得、前記脂肪族側鎖が-(CH-CHであるものを含む。代わりに、式IIのペプチドにおいて、Rは、少なくとも1個の窒素原子を含む側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸であり得、RがArg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体であるものを含むが、限定されない。
【0021】
式IIのペプチドの別の態様では、ペプチドは、式:
【化6】

のものであり得る。
【0022】
式IIのペプチドの実施形態の何れかでは、Xaaは、Ac-Arg、Ac-D-Arg、Ac-Nle、Ac-D-Nle、Ac-Trp、シクロペンチルアセチル、ヘキサノイル、3-フェニルプロパノイル、シクロペンチルアセチル、アセチル、2-ナフチルアセチル又は3-(1-ナフチル)プロパノイルであり得;Rは、インドール又はナフタレンであり得;R及びRは、一緒に、ピロリジンを含み得、ピロリジンが置換されるものを含み、置換基が-O-CH-フェニルであり、ここで、フェニルが置換されているか又は未置換であるものを含むが、限定されず;Rは、置換フェニルであり得る。
【0023】
代替的な態様では、式Iのペプチドは、式III:
【化7】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17直鎖状、分岐状又は環状アルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
【化8】

であり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、及びそれが-CH-である場合、Rとともに、一般構造
【化9】

の環を形成し;
は、RがRとともに環を形成する場合、-Hであるか、又はRは、
-H、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-R12a
置換又は未置換フェニル、
-O-CH-フェニル(フェニルは、置換されているか又は未置換である)、
【化10】

であり;
は、置換又は未置換フェニル又はナフチルであり;
11は、-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立に及び各例において独立に、H又はC~C直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル鎖であり;
tは、各例において独立に、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
v及び2は、それぞれ独立に、2~5であり;及び
zは、1~3である)
のペプチドであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含むペプチド又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩であり得る。
【0024】
式IIIの環状ペプチドの一態様では、Rは、未置換ナフチルである。式IIIのペプチドの別の態様では、何れかの置換フェニル又はナフチルは、各例において独立に、1~3個の環置換基で置換され得、この置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルである。
【0025】
式IIIのペプチドの別の態様では、Rは、少なくとも1個のL-又はD-異性体アミノ酸を含み得、これは、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸であり得る。
【0026】
式IIIのペプチドの別の態様では、Rは、アセチル、シクロペンチルアセチル、ヘキサノイル、3-フェニルプロパノイル、シクロペンチルアセチル、2-ナフチルアセチル又は3-(1-ナフチル)プロパノイルであり得る。
【0027】
式IIIのペプチドの別の態様では、ペプチドは、式:
【化11】

の環状ペプチドである。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、式IV又はV:
【化12】

(式中、
Zは、H又はN末端基であり;
Xaaは、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のアミノ酸であり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
Xaaは、基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第1の-NH-とアミド結合を形成するカルボキシル基を含む側鎖を有するアミノ酸のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール、アルキル-アリール、アルキル-O-アリール、アルキル-O-アルキル-アリール、-O-アルキル-アリール若しくは-O-アリールで任意選択的に置換されるProのL-若しくはD-異性体アミノ酸であるか、又はXaaは、少なくとも1個の一級アミン、二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド若しくはカルボキシルを含む側鎖を有するL-若しくはD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、置換又は未置換アリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり;
Xaaは、少なくとも1個の一級アミン、二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はエーテルを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、及びXaaが存在しない場合、C末端カルボキシル基は、基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第2の-NH-とアミド結合を形成し;
Xaaは、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1個以上の環置換基で任意選択的に置換される少なくとも1個のアリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するL-又はD-異性体アミノ酸であり、1個以上が存在する場合、同じであるか又は異なり、及び独立に、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、-O-アルキル、アリール又は-O-アリールであり、C末端カルボキシル基は、基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第2の-NH-とアミド結合を形成し;
uは、2~8であり;
v及びwは、それぞれ独立に、2~5であり;
基-NH-(CH-NH-及び-NH-(CH-O-(CH-NH-は、それぞれ第1の-NH-及び第2の-NH-を含む)
の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0029】
式IV又はVの環状ペプチドにおいて、Zは、直鎖状又は分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール又はアラルキルを含むC~C17アシル基からなる群から選択されるN末端基であり得る。
【0030】
式IV又はVの環状ペプチドにおいて、Xaaは、Gly又はAla、Nle、Leu、Ile若しくはValのL-若しくはD-異性体からなる群から選択される単一のアミノ酸残基であり得る。代わりに、Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体を含むが、限定されない、少なくとも1個の一級アミン、グアニジン又は尿素基を含む側鎖を有する単一のアミノ酸であり得る。
【0031】
式IV又はVの環状ペプチドにおいて、Xaaは、1~3個の環置換基で任意選択的に置換されるD-Phe又はPheであり得る。環置換基は、同じであるか又は異なり得、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ又はアルコキシ-カルボニルである。代わりに、Xaaは、D-Nal1又はD-Nal2であり得る。
【0032】
式IV又はVの環状ペプチドにおいて、Xaaは、Arg、Lys、Orn、Dab又はDapのL-又はD-異性体であり得、Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり得る。
【0033】
式IV又はVの環状ペプチドは、従って、以下の置換基を含むが、限定されない:
Zは、C~C直鎖状アルキルアシル基であり;
Xaaは、Nle又はArgのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、Asp又はGluのL-又はD-異性体であり、側鎖カルボキシル基は、基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第1の-NH-とアミド結合を形成し;
Xaaは、His、Hyp(Bzl)、Met(O)又はAsnのL-又はD-異性体であり;
Xaaは、置換又は未置換Phe、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり;
Xaaは、ArgのL-又はD-異性体であり;及び
Xaaは、Trp、Nal1又はNal2のL-又はD-異性体であり、そのC末端カルボキシル基は、基-NH-(CH-NH-又は-NH-(CH-O-(CH-NH-の第2の-NH-とアミド結合を形成する。
【0034】
式IVの環状ペプチドの実施形態がさらに提供され、Xaaの側鎖カルボキシル基は、基-NH-(CH-NHの第1の-NH-とアミド結合を形成し、及びXaaのC末端カルボキシル基は、基-NH-(CH-NH-の第2の-NH-とアミド結合を形成する。
【0035】
式IV又はVの環状ペプチドの別の態様では、その少なくとも1個の骨格窒素原子は、メチル基を含み得る。代替的な態様では、そのいかなる骨格窒素原子もメチル基を含まない。
【0036】
別の実施形態では、構造:
【化13】

を有する環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0037】
前述の環状ペプチドにおいて、薬学的に許容可能な塩は、酢酸塩であり得るか又は代わりにトリフルオロ酢酸塩であり得る。
【0038】
別の実施形態では、
【化14】

である環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩が提供される。
【0039】
上記で示されるような環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物がさらに提供される。
【0040】
本発明は、ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるメラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態又は症候群の処置のための方法であって、上記で示されるような1個以上の環状ペプチドを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法をさらに含む。本発明は、ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるメラノコルチン受容体機能の変化に反応する状態を処置するための方法であって、上記で示されるような1個以上の環状ペプチドを含む医薬組成物を投与する工程を含む方法をさらに含む。処置方法では、ヒトにおけるメラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態又は症候群は、眼部の炎症であり得、本医薬組成物は、眼の表面への投与のための水性医薬組成物であり得る。
【0041】
メラノコルチン受容体機能の変化に対する眼部炎症反応は、眼の状態によって引き起こされ得、眼の状態は、ドライアイ疾患、角膜潰瘍、角膜びらん、角膜擦過傷、角膜変性、角膜穿孔、角膜瘢痕化、上皮欠損、角結膜炎、特発性ブドウ膜炎、角膜移植、加齢性黄斑変性、糖尿病性眼病変、眼瞼炎、緑内障、眼性高血圧、術後の眼の疼痛及び炎症、後眼部血管新生、増殖性硝子体網膜症、サイトメガロウイルス網膜炎、眼内炎、脈絡膜新生血管膜、血管閉塞性疾患、アレルギー性眼疾患、腫瘍、網膜色素変性症、眼の感染、強膜炎、眼瞼下垂、縮瞳、眼の疼痛、散瞳、神経痛、眼の表面の疾患の瘢痕化、眼部の感染、炎症性の眼疾患、眼の表面の疾患、角膜疾患、網膜疾患、全身性疾患の眼の所見、遺伝性の眼の状態、眼の腫瘍、眼内圧上昇、ヘルペス性感染、翼状片、眼の表面に持続する創傷、レーザー屈折矯正角膜切除術後の眼の疼痛及び炎症、角膜に対する熱若しくは化学的な熱傷、強膜の創傷、円錐角膜又は結膜の創傷である。一態様では、炎症は、ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎によって引き起こされる。
【0042】
一実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、約2.79mg/mLのクエン酸三ナトリウム二水和物、約9mg/mLの塩化ナトリウム及び約1mg/mLのポリソルベート80を含む水溶液である、眼への投与のための医薬組成物が提供される。本医薬組成物において、環状ペプチドは、約1.0μg/mLの濃度のトリフルオロ酢酸塩形態であり得る。本医薬組成物は、約0.10mg/mLの無水クエン酸をさらに含み得る。本医薬組成物の水溶液は、約pH6.5であり、及び本組成物は、pHを調整するために必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸をさらに含む。さらなる態様では、本発明は、ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎を処置する方法であって、1日あたり約3回以下の頻度で約50μL以下の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。好ましくは、1日あたり1つの眼あたり約150ng以下の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩が投与される。
【0043】
関連する態様では、本発明は、ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎を処置する方法であって、1日あたり3回以下で投与される分割用量において、眼の表面に、1つの眼あたり1日あたり約150ng以下の、MC1r及びMC5rのそれぞれで1nM未満のEC50値を有するメラノコルチン受容体特異的ペプチドを投与することを含む方法を提供する。投与される用量は、150ng/眼/日未満の本発明のペプチドであり得、及び約100ng/眼/日又は約50ng/眼/日の本発明のペプチドであり得る。ペプチドは、CEREPによって行われるようなHTRF検出方法を使用してcAMP産生によって決定されるEC50値を有する、MC1r及びMC5rのそれぞれにおけるアゴニスト又は部分アゴニストである。一態様では、メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、構造:
【化15】

の環状ペプチドである。
【0044】
一態様では、生物学的受容体に対する受容体特異的ペプチドの作製において利用され得る環状ペプチド鋳型が提供される。
【0045】
別の態様では、メラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態及び症候群の処置での使用のための、メラノコルチン受容体特異的ペプチドに基づく医薬組成物が提供される。
【0046】
別の態様では、ペプチドに基づくメラノコルチン受容体特異的医薬品が提供され、このペプチドは、選択的であり、MC1rに対するアゴニストであり、MC4rにおけるアンタゴニストである。
【0047】
別の態様では、ペプチドに基づくメラノコルチン受容体特異的医薬品が提供され、このペプチドは、選択的であり、MC1rに対するアゴニストであり、MC4rにおける部分アゴニストである。
【0048】
別の態様では、サブナノモルのEC50値で1つ以上のメラノコルチン受容体において機能的に活性である受容体特異的ペプチドが提供される。
【0049】
別の態様では、1nM未満のEC50値のMC1r及びMC5rでのアゴニスト又は部分アゴニストであるメラノコルチン受容体特異的ペプチドが提供される。
【0050】
本発明の他の態様並びに新規な特徴及び適用性のさらなる範囲は、一部では、続く詳細な記載において示され、一部では、以下の試験時に当業者にとって明らかになるか又は本発明の実施によって学ばれ得る。本発明の態様は、特に添付される特許請求の範囲に示される手段及び組み合わせによって実現及び達成され得る。
【0051】
図面の簡単な説明
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付の図面は、1つ以上の本発明の実施形態を例示し、本記載と一緒に本発明の原理を説明するために役立つ。図面は、単に1つ以上の本発明の好ましい実施形態を例示することを目的とし、本発明を限定すると解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1A】あらゆる処置前に疾患を確立するための、スコポラミンの経皮投与を伴う制御された乾燥環境への第1日での曝露後の、第12日の角膜フルオレセインスコアの中央値(線)、25th/75thパーセンタイル(箱)、平均(+)及び(ひげ)を示す箱/ひげプロットである。個々のデータ点は、黒丸として示される。未処置群(n=14)を除き、眼の個数(n)は、1群あたり24個であった。
図1B図1Aでの群の第13日に開始された処置後の、第24日の角膜フルオレセインスコアの中央値(線)、25th/75thパーセンタイル(箱)、平均(+)及び(ひげ)を示す箱/ひげプロットである。個々のデータ点は、黒丸として示される。未処置の眼について、P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。
図2図1A及び図1Bにおけるようなデータの箱/ひげプロットであり、未処置の眼、PBS(ビヒクル対照リン酸緩衝食塩水)及び各試験化合物に対する、第12日(処置前)と第24日(試験化合物での局所処置の12日後)との間の処置による比較を示す。10-2~10-4mg/mLの用量でペプチド番号60を投与した結果、第12日から第24日で角膜フルオレセインスコアが統計学的に有意に改善した。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
1.0 定義
本発明の説明を進める前に、特定の用語を本明細書に示される通り定義する。
【0054】
本明細書に開示されるペプチドに対して与えられる配列において、アミノ酸残基は、Manual of Patent Examining Procedure, 9thEdのChapter 2400で与えられるようなそれらの従来の意味を有する。従って、「Ala」はアラニンであり、「Asn」はアスパラギンであり、「Asp」はアスパラギン酸であり、「Arg」はアルギニンであり、「Cys」はシステインであり、「Gly」はグリシンであり、「Gln」はグルタミンであり、「Glu」はグルタミン酸であり、「His」はヒスチジンであり、「Ile」はイソロイシンであり、「Leu」はロイシンであり、「Lys」はリジンであり、「Met」はメチオニンであり、「Phe」はフェニルアラニンであり、「Pro」はプロリンであり、「Ser」はセリンであり、「Thr」はスレオニンであり、「Trp」はトリプトファンであり、「Tyr」はチロシンであり、「Val」はバリンであるなどである。D-異性体は、3文字コード又はアミノ酸名の前の「D-」により示され、例えばD-PheはD-フェニルアラニンとなることを理解されたい。前述のものにより包含されないアミノ酸残基としては、以下の側鎖を有するものが挙げられるが、限定されず、このようなアミノ酸残基は、L-異性体又はD-異性体であり得ることが理解される。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
アミノ酸残基としては、さらに以下が挙げられるが、限定されず、このようなアミノ酸残基は、L-異性体又はD-異性体であり得ることが理解される。
【0061】
【表6】
【0062】
「アルファアミノ酸」という用語は、一般構造
【化16】

(その非イオン化形態で示される)のあらゆるアミノ酸を含み、式中、Rは、何らかの側鎖基又は水素であり、先行する表及び段落に記載のアミノ酸残基又は側鎖基を含むが、限定されない。
【0063】
「L-又はD-異性体アミノ酸」又は「L-又はD-異性体アミノ酸(複数)」という用語は、本明細書で定義されるようなあらゆるアミノ酸残基のあらゆる異性体の形態を含み、具体的に何らかのアルファアミノ酸、ベータアミノ酸、ガンマアミノ酸又はデルタアミノ酸を含む、DNAにより直接コードされるアミノ酸、翻訳後修飾されたアミノ酸、DNAによる直接的なもの以外の生物学的手段により発現されるアミノ酸、タンパク質原性若しくは非タンパク質原性のアミノ酸又は何らかの合成若しくは人工アミノ酸を含むが、限定されない。
【0064】
L-又はD-異性体アミノ酸を含め、アミノ酸は、「アミド結合」又はアミド連結により一緒に連結されて、1個のアミノ酸の骨格カルボン酸基を別のアミノ酸の骨格アミノ基とつなげる共有ペプチド結合を形成し、それによりペプチド結合(-C(=O)-NH-)又は骨格アミド結合を形成する。
【0065】
「アシル」という用語は基R(C=O)-を含み、式中、Rは有機基であり、アルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル又はヘテロシクリルなどである。置換アシル基に本明細書で言及する場合、前記有機基(R)が置換されることを意味する。アシル基の非限定例としては、本明細書でアセチル基又は「Ac」と呼ばれるCH-C(=O)-;本明細書でヘキサノイル又は「Hex」と呼ばれることがあるCH-(CH-C(=O)-;本明細書でヘプタノイル又は「Hept」と呼ばれることがあるCH-(CH-C(=O)-;及び様々なシクリル基、例えばフェニルプロパノイル及びシクロペンチルアセチルなどが挙げられる。
【0066】
ペプチド又は脂肪族部分は、脂肪族若しくは置換脂肪族基又は芳香族置換芳香族基がカルボニル{-(C=O)-}基を通して結合されてアシル基を形成する場合、アシル化される。ペプチドは、N末端でアシル化されることが最も多い。
【0067】
「アルカン」という用語は、直鎖状又は分岐状飽和炭化水素を含む。直鎖状アルカン基の例としては、メタン、エタン、プロパンなどが挙げられる。分岐状又は置換アルカン基の例としては、メチルブタン又はジメチルブタン、メチルペンタン、ジメチルペンタン又はトリメチルペンタンなどが挙げられる。一般に、何らかのアルキル基はアルカンの置換基であり得る。
【0068】
「アルケン」という用語は、1個以上の二重炭素-炭素結合を含有する不飽和炭化水素を含む。このようなアルケン基の例としては、エチレン、プロペンなどが挙げられる。
【0069】
「アルケニル」という用語は、2~6個の炭素原子の直鎖状一価炭化水素基又は少なくとも1個の二重結合を含有する3~6個の炭素原子の分岐状一価炭化水素基を含み;その例としては、エテニル、2-プロペニルなどが挙げられる。
【0070】
本明細書で特定される「アルキル」基としては、直鎖又は分岐状鎖の何れかの飽和脂肪族炭化水素基である指定される長さのアルキル基が挙げられる。C1~10アルキルは、1~10個の炭素原子を有するアルキルを意味する。このようなアルキル基の非限定例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、三級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが挙げられる。
【0071】
「アルキン」という用語は、少なくとも1個の三重結合を含有する、2~6個の炭素原子の直鎖状一価炭化水素基又は3~6個の炭素原子の分岐状一価炭化水素基を含み;その例としてはエチン、プロピン、ブチンなどが挙げられる。
【0072】
「アリール」という用語は、6~12個の環原子の単環式又は二環式芳香族炭化水素基を含み、独立にアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ又はアルコキシ-カルボニルから選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換される。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、ナフタレン、ナフチル、1-ナフチル及び2-ナフチル、その誘導体などが挙げられる。同様に、「ナフチル」という用語は1-ナフチル及び2-ナフチルを含み、「ナフタレン」は、1-ナフタリン及び2-ナスタリンを含む。
【0073】
「アラルキル」という用語は、基-R(式中、Rは、アルキレン(二価アルキル)基を含み、Rは、上記で定義されるようなアリール基である)を含む。アラルキル基の例としては、ベンジル、フェニルエチル、3-(3-クロロフェニル)-2-メチルペンチルなどが挙げられる。
【0074】
「脂肪族」という用語は、例えばアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルカン、アルケン、アルキン及びその誘導体など、炭化水素鎖を有する化合物を含む。
【0075】
本明細書で使用される場合、「アミド」という用語は、カルボニル基に連結される三価窒素を有する化合物、即ち-C(=O)-NH(即ち一級アミド)、-C(=O)-NHR及び-C(=O)-NR(式中、R及びRのそれぞれは、独立に、水素又は有機基を表す)を含む。置換アミド基に本明細書で言及される場合、前記有機基(R及びR)の少なくとも1個が置換されることを意味する。アミドの例としては、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミドなどが挙げられる。
【0076】
「アミン」としては、アミノ基(-NH)、-NHR及び-NR(式中、R及びRのそれぞれは、独立に、水素又は有機基を表す)が挙げられる。置換アミン基に本明細書で言及される場合、有機基(R及びR)の少なくとも1個が置換されることを意味する。
【0077】
「ニトリル」は、カルボン酸誘導体であり、有機基に結合される(-CN)基を含有する化合物を含有する。
【0078】
「ハロゲン」という用語は、ハロゲン原子フッ素、塩素、臭素及びヨウ素並びに1個以上のハロゲン原子を含む基、例えば-CFなどを含むものとする。
【0079】
「組成物」という用語は、医薬組成物におけるように、有効成分及び担体を構成する不活性成分を含む生成物並びに成分の何らかの2つ以上の組み合わせ、錯体化又は凝集から、又は成分の1つ以上の解離から、又は成分の1つ以上の反応若しくは相互作用の他のタイプから、直接的又は間接的に生じる、何らかの生成物を包含するものとする。従って、医薬組成物は、有効成分と1つ以上の薬学的に許容可能な担体とを混合することにより作製されるあらゆる組成物を包含する。
【0080】
メラノコルチン受容体「アゴニスト」は、メラノコルチン受容体と相互作用し、メラノコルチン受容体の特徴である、アデニルシクラーゼ活性化など、シグナル伝達を開始させることを含む、受容体の活性化を含むが、限定されない薬理学的反応を開始させ得る、本明細書で開示されるペプチド化合物の特定のものを含む、内因性物質、製剤原料又は化合物を意味する。メラノコルチン受容体アゴニストは、MC1r、MC2r、MC3r、MC4r及びMC5rの1つ以上でのアゴニストであり得る。
【0081】
メラノコルチン受容体「アンタゴニスト」は、メラノコルチン受容体においてアゴニストの作用を阻止するか又は弱める、本明細書で開示されるペプチド化合物の特定のものを含む、内因性物質、製剤原料又は化合物を意味する。メラノコルチン受容体アンタゴニストは、MC1r、MC2r、MC3r、MC4r及びMC5rの1つ以上でのアンタゴニストであり得る。本明細書で開示されるペプチド化合物の特定のものを含む特定の化合物は、1つ以上のメラノコルチン受容体におけるアゴニスト及び1つ以上の他のメラノコルチン受容体におけるアンタゴニストであり得る。
【0082】
「α-MSH」は、NDP-α-MSHを含むが、限定されない、ペプチドAc-Ser-Tyr-Ser-Met-Glu-His-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH及びその類似体及び相同体を意味する。
【0083】
「NDP-α-MSH」は、ペプチドAc-Ser-Tyr-Ser-Nle-Glu-His-D-Phe-Arg-Trp-Gly-Lys-Pro-Val-NH及びその類似体及び相同体を意味する。
【0084】
「EC50」は、そのアゴニストについて最大の可能な反応の50%を生じさせる、部分アゴニストを含むアゴニストのモル濃度を意味する。例として、MC4r細胞発現系でcAMPアッセイにおいて決定される場合にその化合物に対して72nMの濃度で最大の可能な反応の50%を生じさせる試験化合物のEC50は、72nMである。別段の指定がない限り、EC50決定に関連するモル濃度は、ナノモル/リットル(nM)である。
【0085】
「Ki(nM)」は、競合物の非存在下での平衡時の受容体の結合部位の半分に結合する競合化合物のモル濃度を表す平衡阻害剤解離定数を意味する。一般に、Kiの数値は、受容体に対する化合物の親和性に逆相関し、Kiが低い場合、親和性が高くなる。Kiは、Cheng及びPrusoffの式を使用して決定され得る(Cheng Y., Prusoff W. H., Biochem. Pharmacol. 22: 3099-3108, 1973)。
【数1】
【0086】
別段の指定がない限り、Ki決定と関連するモル濃度はnMである。Kiは、特異的な受容体(例えばMC1r、MC3r、MC4r又はMC5r)に関して表され得る。
【0087】
「阻害」は、既知の標準と比較した、競合阻害アッセイにおける受容体結合のパーセント減弱又は減少を意味する。従って、「1μM(NDP-α-MSH)での阻害」は、本明細書で以下に記載するアッセイ条件下などでの、試験化合物1μMなどの試験しようとする化合物の決定された量の添加による、NDP-α-MSHの結合のパーセント低下を意味する。例として、NDP-α-MSHの結合を阻害しない試験化合物の阻害は0%であり、NDP-α-MSHの結合を完全に阻害する試験化合物の阻害は100%である。一般的には、本明細書で以下に記載されるように、I125-標識NDP-α-MSHなどを用いた競合的阻害試験又はEu-NDP-α-MSHなどを用いたランタニドキレート蛍光アッセイのために、検出可能に標識されるアッセイが使用される。しかし、異なる標識又はタグ系の使用を含む、試験競合阻害の他の方法が知られており、一般に、競合阻害を試験するための当技術分野で公知の何れかの方法が本発明で使用され得る。従って、「阻害」は、試験化合物がメラノコルチン受容体に対するα-MSHの結合を減弱させるか否かを決定するための1つの尺度であることが分かり得る。
【0088】
「結合親和性」とは、化合物又は薬物がその生物学的標的に結合する能力を意味し、本明細書でKi(nM)として表される。
【0089】
「Emax」は、アデニリルシクラーゼの最大刺激など、指定されたメラノコルチン受容体発現細胞系において化合物により達成可能な最大機能活性を意味する。NDP-α-MSHにより達成される最大刺激は、100%の「Emax」とされ、NDP-α-MSHの最大活性の半分を刺激可能な化合物のEmaxは50%であるとされる。本明細書に記載のアッセイ条件下で70%以上のEmaxを有する本発明の化合物は、アゴニストとして分類され得、Emaxが10%~70%である化合物は部分アゴニストとして分類され得、Emaxが10%を下回る化合物は不活性として分類され得る。
【0090】
一般に、「機能的活性」は、化合物による受容体の活性化時の、メラノコルチン受容体などによる、受容体のシグナル伝達の尺度又は受容体関連シグナル伝達の変化の尺度である。メラノコルチン受容体は、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化を通してシグナル伝達を開始させる。一態様では、メラノコルチン受容体はアデニリルシクラーゼによるcAMPの産生を触媒するGαを通してシグナル伝達する。従って、アデニリルシクラーゼの刺激の決定、例えばアデニリルシクラーゼの最大刺激の決定などは、機能活性の1つの尺度であり、本明細書で例示される主な尺度である。しかし、本発明の実施において機能活性の代替的尺度が使用され得、具体的に企図され、本発明の範囲内に含まれることが理解される。従って、一例において、細胞内遊離カルシウムは、Mountjoy K. G. et al., Melanocortin receptor-medicated mobilization of intracellular free calcium in HEK293 cells. Physiol Genomics 5: 11-19, 2001又はNewman et al., Activation of the melanocortin-4 receptor mobilizes intracellular free calcium in immortalized hypothalamic neurons. J Surg Res: 132: 201-207, 2006で開示される方法によって及びそれらを使用して報告されている、Fura2など、カルシウムへの特異的な蛍光分子結合を使用して測定され得る。Fluo-4は、一般的にも使用される代替的なカルシウム結合色素である(Nohr et al., The orphan G protein-coupled receptor GPR139 is activated by the peptides: Adrenocorticotropic hormone(ACTH), α-, and β-melanocyte stimulating hormone (α-MSH, and β-MSH), and the conserved core motif HFRW. Neurochem Int 102: 105-113, 2017)。Ca2放出事象に対して及び同じ経路においてさらなる上流において、市販のHTRFアッセイなどのホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸からのイノシトール三リン酸又はジアシルグリセロールの産生の測定によって活性化を測定することも可能である
(Liu et al., Comparison on functional assays for Gq-coupled GPCRs by measuring inositol monophospate-1 and intracellular calcium in 1536-well plate format. Curr Chem Genomics 1: 70-77, 2008)。機能活性のまた別の尺度は、Nickolls S. A. et al., Functional selectivity of melanocortin 4 receptor peptide and nonpeptide agonists: evidence for ligand specific conformational states. J Pharm Exper Therapeutics 313: 1281-1288, 2005で開示される方法などを使用した、制御経路の活性化の結果起こる受容体内部移行である。機能活性のまた別の尺度は、Gタンパク質受容体の活性化と関連するヌクレオチドの交換及び交換速度であり、例えばGタンパク質αサブユニットにおけるGTP(グアノシン三リン酸)へのGDP(グアノシン二リン酸)の変換であり、これは、Manning D. R., Measures of efficacy using G proteins as endpoints: differential engagement of G proteins through single receptors. Mol Pharmacol 62: 451-452, 2002において開示されるようなグアノシン5’-(γ-[35S]チオ)-三リン酸を使用したラジオアッセイを含むいくつもの手段により測定され得る。リガンド結合時のGα及びGγサブユニットの離脱を測定するためのBRET(生体発光共鳴エネルギー移動)に基づくバイオセンサーを使用して、それが受容体に関連するため、Gi、Gq、Gs、Gi2/i3サブファミリーに属する14種類の異なるGα種の活性/結合を測定するための比較的新しいアッセイプラットフォームが発明されている(Zhao et al., Biased signaling of protease-activated receptors. Front Endocrinol 5: 67, 2014;及びvan der Westhuizen et al., Quantification of ligand bias for clinically relevant β2-adrenergic receptor ligands: Implications for drug taxonomy. Molecular Pharm 85: 492-509, 2014)。様々な遺伝子に基づくアッセイが、Chen W. et al., A colorimetric assay from measuring activation of Gs- and Gq-coupled signaling pathways. Anal Biochem 226: 349-354, 1995;Kent T. C. et al., Development of a generic dual-reporter gene assay for screening G-protein-coupled receptors. Biomol Screening, 5: 437-446, 2005;又はKotarsky K. et al., Improved receptor gene assays used to identify ligands acting on orphan seven-transmembrane receptors. Pharmacology & Toxicology 93: 249-258, 2003で開示されるものなど、G-カップリングタンパク質の活性化を測定するために開発された。Chen et al.の比色分析アッセイは、Hruby V. J. et al., Cyclic lactam α-melanocortin analogues of Ac-Nle4-cyclo[Asp5, D-Phe7, Lys10]α-melanocyte-stimulating hormone-(4-10)-NH2 with bulky aromatic amino acids at position 7 shows high antagonist potency and selectivity at specific melanocortin receptors. J Med Chem 38: 3454-3461, 1995で開示されるように、メラノコルチン受容体活性化の測定での使用に適している。一般に、機能活性は、Gカップリング受容体の活性化及び/又はシグナル伝達を決定する方法を含めて、本明細書において以下で開発又は報告され得る方法をさらに含めて、何らかの方法により測定され得る。前述の論文のそれぞれ及び本明細書で開示される方法は、完全に示されるかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
「処置する」、「処置すること」及び「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患又は障害の重症度を軽減する、患者が指定される疾患又は障害に罹患している間に起こる作用を企図する。
【0092】
本明細書で使用される場合、「薬学的有効量」(「治療的有効量」を含む)という用語は、所望の治療的又は生物学的効果を誘導するのに十分である本発明によるペプチドの量を意味する。
【0093】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」という用語は、医師又は他の臨床家により処置されている哺乳動物において生物学的又は医学的反応を誘発する本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「予防的効果」又は「予防的」という用語は、患者が指定される疾患又は障害に罹患し始める前に、医師又は他の臨床家が予防、阻害又は軽減しようとする医学的状態がある哺乳動物の苦痛を予防若しくは阻害するか又は苦痛を軽減する、本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0095】
2.0 臨床適応症及び有用性
本明細書で開示される組成物及び方法は、医学的な適用及び動物畜産又は獣医学的適用の両方に対して使用され得る。「患者」という用語は、ヒトを示すものであり、本明細書を通して及び特許請求の範囲においてそのように使用される。本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドの主な適用はヒト患者を含むが、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドは、実験室、農場、動物園、野生動物、ペット、スポーツ又は他の動物に適用され得る。臨床適応症及び具体的な有用性としては、以下が挙げられる。
【0096】
2.1 炎症及び線維性疾患及び状態
MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、患者における炎症性疾患及び炎症性状態の処置で利用され得る。そのように処置され得る多くの炎症性疾患及び炎症性状態がある。一態様では、炎症性状態は、変形性関節症、関節リウマチ、敗血性関節炎、痛風及び偽痛風、若年性特発性関節炎、スチル病及び強直性脊椎炎を含むが、限定されない関節炎並びに他の疾患に続発する関節炎、例えば紅斑性狼瘡に続発する関節炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、乾癬性関節炎、反応性関節炎、ヘモクロマトーシス、肝炎、ヴェーゲナー肉芽腫、脈管炎症候群、ライム病、家族性地中海熱、反復性の発熱を伴う高免疫グロブリン血症D、TNF
受容体関連周期性症候群及びクローン病及び潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患の形態を含む疾患から起こる。別の態様では、炎症性状態は、炎症性腸疾患、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、膠原線維性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎、ベーチェット症候群、感染性大腸炎及び鑑別困難大腸炎の形態を含む疾患の結果から起こる。別の態様では、炎症性状態は、全身性症候群、例えば全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、強皮症、関節リウマチ及び多発性筋炎又は局所の身体系のみに影響を与える症候群、例えば内分泌系(I型糖尿病、橋本甲状腺炎、アジソン病など)、皮膚科学的な系(尋常性天疱瘡)、血液系(自己免疫溶血性貧血)又は神経系(多発性硬化症)を含むが、限定されない自己免疫疾患の結果から起こる。従って、自己免疫疾患は、上記で論じた一般的な症候群に加えて、急性播種性脳脊髄炎、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫卵巣炎、セリアック病、クローン病、妊娠性類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、グレーブズ病、ギランバレー症候群、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、川崎病、紅斑性狼瘡、混合性結合組織疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、眼球クローヌスミオクローヌス症候群、視神経炎、オルド甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、シェーグレン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、自己免疫性溶血性貧血及びヴェーゲナー肉芽腫のような疾患及び状態を含む。
【0097】
別の態様では、炎症性状態は、例えば慢性気管支炎、肺気腫、塵肺症、肺新生物及び他の肺障害などの完全には可逆的ではない気道における気流の病的な制限を特徴とする疾患を含むが、限定されない、慢性閉塞性気道疾患としても知られる慢性閉塞性肺疾患(COPD)から起こるか又はそれらに関連する。他の炎症性状態としては、上気道又は下気道疾患及び障害、例えばアレルギー性喘息、非アレルギー性喘息、鼻過敏症、血管運動性鼻炎、アレルギー性結膜炎、非アレルギー性結膜炎など、並びに様々な形態の塵肺症(炭鉱労働者の塵肺症、石綿肺、珪肺症、ボーキサイト線維症、ベリリウム症又は鉄沈着症)、綿肺又は過敏性肺臓炎(農夫の肺又は鳥飼病)などの外毒素又は物質に関連する気道疾患が挙げられる。炎症性状態を含む他の肺疾患としては、急性呼吸窮迫症候群が挙げられる。本発明のペプチド及び組成物は、COPD、喫煙者における喘息及び全体又は一部で肺における好酸球蓄積、好中球浸潤及び活性化、肺胞マクロファージ動員及び活性化、IL-8の上皮細胞発現又はTNF-αの発現上昇を特徴とする他の状態など、グルココルチコイドが所望の薬理学的反応を引き起こすために無効であるか又は不適切であるかの何れかである状態の処置のために特定の有用性がある。気道又は肺障害に対して、一態様では、本発明のペプチドは、全身的に送達され;別の態様では、本発明のペプチドは、吸入投与などにより局所的に送達される。
【0098】
また別の態様では、炎症性状態は、移植片対宿主病、超急性拒絶、急性拒絶又は慢性拒絶など、移植関連状態又は症候群の一部の形態の結果から引き起こされるか又はそれに関連する。移植片対宿主病は、同種骨髄移植の一般的な合併症であるが、他の移植及び特に移植片中に混入物として又は意図的に導入されたものとしての何れかで存在するT細胞により起こり得る。超急性、急性又は慢性拒絶は、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、子宮、心臓又は肺などの身体器官並びに骨、角膜、顔面、手、陰茎若しくは皮膚の移植物により起こり得る。一実施形態では、本発明のペプチドの1つ以上を含む医薬組成物は、体液、臓器又は部位の移植直前、移植中又は移植後など、移植関連状態又は症候群を制限するか又は防ぐために予防的に与えられる。別の実施形態では、本発明のペプチドの1つ以上を含む医薬組成物の溶液で、移植しようとする体液、臓器又は部分に対して灌流を行う。また別の実施形態では、本発明のペプチドの1つ以上は、移植拒絶に対する1つ以上の他の薬剤、例えばシクロスポリン又はタクロリムスを含むカルシニューリン阻害剤、シロリムス又はエベロリムスを含むmTOR阻害剤、アザチオプリン又はミコフェノール酸を含む抗増殖剤、プレドニゾロン又はヒドロコルチゾンを含むコルチコステロイド、モノクローナル抗IL-2Rα受容体抗体、バシリキシマブ又はダクリズマブなどの抗体又は抗胸腺細胞グロブリン若しくは抗リンパ球グロブリンなどのポリクローナル抗T細胞抗体と併せて、それらと組み合わせて又はそれらと連なって投与される。
【0099】
また別の態様では、MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物が、患者における線維性及び硬化性疾患、適応症、状態及び症候群の処置において利用され得る。そのように処置され得る多くの線維性及び硬化性疾患、適応症、状態及び症候群がある。線維性及び硬化性疾患、適応症、状態及び症候群は、炎症性因子を含むことが多く、従って多くは同様に炎症性疾患又は状態として分類され得、上記で列挙される。線維性及び硬化性疾患及び状態は、炎症性成分を含むことに加えて、また、特発性、毒性、遺伝性の及び/又は薬理学的に誘発される障害でもあり得る。一般に、線維性障害は、臓器機能の喪失を引き起こし得る細胞外マトリクス、主にI型コラーゲンの過剰産生を特徴とする。理論により縛られることを望むものではないが、MC1rのアゴニズムの結果、ヒト皮膚線維芽細胞により形質転換増殖因子-β-誘導性コラーゲン合成の抑制が起こり得、それにより線維性及び硬化性疾患、適応症、状態及び症候群に対する治療及び/又は予防のベネフィットを提供すると考えられる。そのように処置され得る代表的な線維性及び硬化性疾患及び状態としては、局所的な強皮症、全身性硬化症、皮膚の強皮症性の移植片対宿主疾患、特発性肺線維症、ブレオマイシン誘導性肺線維症、シクロスポリン誘導性腎症、肝臓の硬変、肥厚性瘢痕、ケロイドなどが挙げられるが、限定されない。
【0100】
また別の態様では、MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせ及び特にMC1r及びMC5rアゴニストであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、患者における線維性疾患、状態及び症候群の処置において利用され得る。このような線維性過程は慢性炎症に続発し得、線維症の発症は慢性炎症の一般的な結果である。肺線維症、肝臓線維症及び肝硬変、慢性腎臓病、心筋梗塞及び全身性自己免疫疾患、例えば全身性硬化症などを含む線維症が死亡及び病的状態の原因である多岐にわたる疾患がある。線維症は、眼の疾患、特に慢性炎症を特徴とするものでも起こり得る。本発明のペプチド及び組成物は、線維症の形成を阻害し得、再生特性を有し得、線維症の影響を軽減又は寛解させると考えられる。
【0101】
また別の態様では、MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、患者におけるサイトカイン発現の上昇に関連する疾患及び関連疾患、適応症、状態及び症候群の処置において利用され得る。様々なサイトカインの発現は、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症性過程を含め、炎症性過程中に増加する。TNF-αは、主にマクロファージ及び他のタイプの細胞によっても産生される多面的なサイトカインである。循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症性過程を含む、炎症性過程中に増加する他のサイトカインとしては、IL-1及びIL-6が挙げられる。TNF-αなどのサイトカインが多くの例において有益な効果を有する一方で、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発するなどの顕著なレベル上昇は、病理学的影響を有し得る。一態様では、循環性ショックに続発するなどの低酸素性又は虚血性組織の再灌流の結果、サイトカイン発現の上昇を含め、炎症性反応が起こる。
【0102】
一実施形態では、本発明は、循環性ショック、虚血、再灌流傷害などに続発する炎症促進性サイトカイン産生及び発現の低下を含め、炎症促進性サイトカイン産生及び発現を低下させるために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。TNF-α、IL-1及びIL-6の1つ以上を含むが、限定されない炎症促進性サイトカインの産生及び発現の低下は、好ましくは本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後の短い時間内に起こる。
【0103】
関連する実施形態では、本発明は、抗炎症性サイトカイン産生及び発現を増加させるためにMC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物の1つ以上を使用する方法を対象とする。IL-10を含むが、限定されない抗炎症性サイトカインの産生及び発現の上昇は、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後の短い時間内に起こる。
【0104】
2.2 皮膚科学的適応症
また別の態様では、MC1rアゴニスト又は部分アゴニストであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、皮膚科学的及び美容上の疾患、適応症、状態及び症候群の処置において利用され得る。一態様では、本発明のペプチド及び組成物は、皮膚におけるメラニンのレベルを上昇させるためにメラノサイト及び関連細胞を刺激するMC1rアゴニストである。皮膚におけるメラニンのレベルを上昇させることにより、紫外線(UVR)、太陽及び光によって引き起こされる皮膚の光毒性及び光線過敏からの保護を含め、紫外線(UVR)及び太陽光に対する保護が可能になる。
【0105】
また別の態様では、MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、皮膚疾患、適応症、状態及び症候群、例えば尋常性ざ瘡(一般的にニキビと呼ばれる)、アトピー性皮膚炎(一般的にアトピー性湿疹又は湿疹と呼ばれる)、多形日光疹、乾癬、酒さ、脂漏性皮膚炎、白斑、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、骨髄性プロトポルフィリン症、日光蕁麻疹、色素性蕁麻疹又は色素性乾皮症などの予防的及び/又は治療的処置のために利用され得る。別の態様では、本発明の、ペプチド、組成物及び方法は、例えば単純性ヘルペスウイルス(一般的に感染の部位に依存して、口唇ヘルペス及び性器ヘルペスと呼ばれる)、ヒトパピローマウイルス及び水痘帯状疱疹ウイルスなど、光過敏性又は光反応性のウイルス感染を予防、制限又は処置するために利用され得る。別の態様では、本発明のペプチド、組成物及び方法は、前癌状態での使用及び日光角化症、基底細胞癌腫、メラノーマ又は扁平細胞癌腫での使用を含め、皮膚の癌を予防、制限又は処置するために利用され得る。別の態様では、本発明のペプチド、組成物及び方法は、光線力学的治療などの光線療法を含む、様々な治療の有害作用を防ぐか又は制限するために利用され得る。また別の態様では、本発明のペプチド、組成物及び方法は、日焼けを誘導するため、白髪化を減少させるため又はメラニン産生増加に関連する類似及び関連目的のために利用され得る。
【0106】
2.3 癌
中皮腫などの特定の癌は、サイトカイン及び成長因子の成長促進的な影響に非常に感受性が高いということが報告されており、MC1rに選択的なペプチドにより処置可能であり得る。Canania, A., et al.,“Autocrine inhibitory influences of α-melanocyte-stimulating hormone in malignant pleural mesothelioma,”J. Leukoc. Biol. 75: 253-259 (2004)。そのように処置され得る癌としては、MC1r及び受容体タンパク質に対するmRHAを発現することが知られている胸膜中皮腫並びに肺腺癌などの腺癌を含むが、限定されないMC1rを発現する他の腫瘍が挙げられる。
【0107】
2.4 眼の疾患及び適応症
MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は前述のものの何らかの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物で処置され得る、サイトカイン産生上昇を含むが、限定されない、炎症を特徴とする多くの眼の疾患、適応症、状態及び症候群がある。一例は、集団のおよそ10~20%に影響を及ぼす眼の疾患である、ドライアイ症候群又は乾燥性角結膜炎としても知られるドライアイ疾患である。この疾患は、老化するにつれて集団のより高い割合に対して進行性に影響を及ぼし、これらの患者の大部分は女性である。さらに、乾燥環境である長時間の視覚的な業務(例えばコンピュータでの業務)、眼の乾燥などを生じさせる薬物療法を使用することなど、特定の環境下で眼の刺激性が経験されるか又は状態としてのドライアイの症状及び/又は徴候が時折経験される。ドライアイに罹患している個体では、通常、眼の表面を保護する涙の防御層が損なわれ、1つ以上の涙成分の産生が不十分であるか又は不健全である結果である。これは、眼の表面の曝露につながり得、最終的には表面細胞の乾燥及び損傷を促進する。ドライアイの徴候及び症状としては、角膜炎、結膜及び角膜染色、発赤、視界不良、涙膜分解時間の短縮、涙産生、涙体積及び涙の流れの低下、結膜発赤の向上、涙膜における過剰な残屑、眼の乾燥、眼の異物感、眼の灼熱感、眼における異物感、過剰な涙排出、羞明、眼の刺すような痛み、屈折機能障害、眼の過敏性及び眼の刺激性が挙げられるが、限定されない。患者は、これらの症状の1つ以上を経験し得る。
【0108】
循環型ホルモンのレベル、様々な自己免疫疾患(例えば、シェーグレン症候群及び全身性紅斑性狼瘡)、PRK又はLASIKを含む眼の外科的手術、多くの薬物療法、環境的な状態、コンピュータ使用などの視覚的業務、眼性疲労、コンタクトレンズ装着及び角膜過敏性などの器質的影響、部分的眼瞼閉鎖、表面の不整(例えば翼状片)及び眼瞼の不整(例えば眼瞼下垂、眼瞼内反/眼瞼外反、瞼裂斑)を含むドライアイの患者の徴候又は症状に影響を及ぼし得る多くの可能性のある変動要素がある。デフロスターがある車内に座っていること又は乾燥気候帯で生活していることなど、脱水を引き起こす環境などの低湿度環境は、ドライアイ症状を増悪させ得るか又はドライアイ症状を引き起こし得る。さらに、視覚的業務は症状を増悪させ得る。症状に大きく影響を及ぼし得る業務としては、瞬き頻度が減少する、長時間にわたるTV視聴又はコンピュータの使用が挙げられる。
【0109】
ブドウ膜炎は、眼の中間層又はぶどう膜の炎症を含む眼の疾患であり、眼の内部を含む何らかの炎症過程を含むとも理解され得る。ブドウ膜炎は、前部、中間部、後部及び汎ぶどう膜炎形態を含み、殆どのブドウ膜炎の症例は前部に位置し、虹彩及び前眼房の炎症を含む。この状態は、単一のエピソードとして起こり、適格な処置で鎮静化し得るか、又は反復性若しくは慢性の性質を呈し得る。症状としては、赤眼、結膜充血、疼痛及び視力減退が挙げられる。徴候としては、毛様体血管の拡張、前眼房における細胞及びフレアの存在及び角膜の後部表面でのケラチン沈着が挙げられる。中間部ブドウ膜炎は、炎症及び硝子体腔における炎症性細胞の存在を含み、後部ブドウ膜炎は、網膜及び脈絡膜の炎症を含む。ブドウ膜炎は、急性後部多巣性板状色素上皮症、強直性脊椎炎、ベーチェット病、散弾状脈絡網膜症、ブルセラ症、単純ヘルペス、帯状疱疹、炎症性腸疾患、若年性関節リウマチ、川崎病、レプトスピラ症、ライム病、多発性硬化症、乾癬性関節炎、ライター症候群、サルコイドーシス、梅毒、全身性紅斑性狼瘡、トキソカラ症、トキソプラズマ症、結核、フォークト・小柳・原田症候群、ウィップル病又は結節性多発動脈炎を含む、多くの疾患及び障害の何れかに続発し得る。
【0110】
処置のために本発明のペプチドの1つ以上が使用され得る他の眼の炎症状態としては、角膜潰瘍、角膜びらん、角膜擦過傷、角膜変性、角膜穿孔、角膜瘢痕化、上皮欠損、角結膜炎、特発性ブドウ膜炎、角膜移植、加齢性黄斑変性、糖尿病性眼病変、眼瞼炎、緑内障、眼性高血圧、術後の眼の疼痛及び炎症、後眼部血管新生、増殖性硝子体網膜症、サイトメガロウイルス網膜炎、眼内炎、脈絡膜新生血管膜、血管閉塞性疾患、アレルギー性眼疾患、腫瘍、網膜色素変性症、眼の感染、強膜炎、眼瞼下垂、縮瞳、眼の疼痛、散瞳、神経痛、瘢痕化する眼の表面の疾患、眼部感染、炎症性の眼疾患、眼の表面の疾患、角膜疾患、網膜疾患、全身性疾患の眼の所見、遺伝性の眼の状態、眼の腫瘍、眼内圧上昇、ヘルペス性感染、翼状片、眼の表面に持続する創傷、レーザー屈折矯正角膜切除術後の眼の疼痛及び炎症、角膜に対する熱若しくは化学的な熱傷、強膜の創傷、円錐角膜又は結膜の創傷が挙げられるが、限定されない。
【0111】
一実施形態では、本発明は、前述の眼疾患、適応症、状態及び症候群の何れかの処置のために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。このような処置は、点眼薬、軟膏、ゲル、洗浄剤、埋め込み物、プラグ又は本発明のペプチドの1つ以上を眼の表面に送達するための他の手段及び方法によるか又は代わりに硝子体液への送達を提供する硝子体注射若しくは同様の手段による、又は代わりにそれに反応する患者への経口投与、皮下注射又は静脈内注射を含む全身性投与による処置を含み得る。
【0112】
角膜移植及び同様のエクスビボ手順に対して、本発明は、炎症促進性サイトカインの減少、IL-10産生の促進及び内皮細胞生存の向上を含むが、限定されない、移植組織の保存のために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。従って、本発明は、移植組織の保存のために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法及びまた患者を角膜移植の直前、角膜移植時及び角膜移植後に処置する方法の両方を対象とし、この処置は、本発明のペプチドの1つ以上の点眼薬の投与及び他の局所投与を含み得る。
【0113】
2.5 虚血及び関連適応症
また別の態様では、MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、虚血及び関連疾患、適応症、状態及び症候群の処置において使用され得る。虚血は、何らかの身体臓器、組織、細胞又は部分に対する血液供給の何らかの減少又は停止を含み、特にその減少又は停止は、身体の臓器、組織、細胞又は部分に対する虚血損傷につながるか又はつながると思われる。「虚血エピソード」は、何らかの一時的又は永久的な虚血期間を指す。虚血は、脈管構造の何らかの狭窄又は閉塞の結果であり得るか、又は出血性ショック、血液量減少性ショックなどの循環性ショックの結果であり得る。血流の減少又は欠如の結果、身体の影響を受ける部分に対する酸素の減少又は欠如が起こり、その結果また、様々なサイトカイン及び他の物質などの炎症性疾患介在化学物質の増加も起こり得る。心臓手術及び臓器移植などの特定の手術手順中、血液の流れが一時的に停止され、次いで再開され(再灌流)、その結果、虚血再灌流傷害が起こる。心臓発作中、心臓に供給する血液が停止し、その結果また虚血が起こり、これが発展して梗塞になり得る。心臓発作を緩和するための現在の処置は、血栓溶解薬又は冠動脈形成術を使用することによるなど、心臓の虚血領域の再灌流を必要とする。
【0114】
本発明のペプチド及び組成物は、腎臓虚血に続発する肺損傷を含む腎臓虚血による損傷の予防、心筋梗塞後の虚血性の心臓損傷の予防若しくは制限、心筋梗塞、発作などを含むが、限定されない心血管系の損傷後の虚血性の脳損傷の予防若しくは制限において特定の適用を有する。脳虚血又は脳卒中の患者、特に同時に低血圧である患者への本発明の組成物の投与によって神経保護がもたらされる。本発明のペプチド及び組成物は、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓又は小腸の移植を含む臓器移植での虚血性臓器障害の予防又は制限においてさらなる特定の適用を有する。一態様では、本発明の医薬組成物は、移植臓器の再灌流のために利用され得、再灌流は、臓器の移植前、移植中又は移植後であり得る。
【0115】
一実施形態では、本発明は、患者の心臓、脳又は他の臓器を虚血によって引き起こされる損傷から保護するために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。虚血に対する保護効果は、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後、即時に又は短時間内に起こる。
【0116】
虚血は、様々な疾患又は状態の何れかからの結果でもあり得、一実施形態では、本発明は、患者の臓器を虚血の結果起こる損傷から保護するために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とし、虚血は、疾患又は状態によって引き起こされる。このような疾患又は状態としては、例として、アテローム性硬化性疾患、例えば血栓症を伴うアテロマータ、心臓から若しくは何らかの臓器からの血管からの塞栓、血管痙攣、心疾患による低血圧、感染若しくはアレルギー性反応を含む全身性疾患による低血圧又は1つ以上の毒性化合物若しくは薬物の投与、摂取若しくはそれへの他の曝露の結果起こる低血圧が挙げられ得るが、限定されない。虚血は、続発性の虚血でもあり得、別の実施形態では、本発明は、続発性虚血の結果生じる損傷から患者の臓器を保護するために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。このような続発性虚血は、糖尿病、高脂血症、高リポタンパク血症、閉塞性血栓血管症とも呼ばれる脂質異常症バージャー病、高安動脈炎、側頭性動脈炎、リンパ節症候群とも呼ばれる川崎病、皮膚粘膜結節疾患、乳児多発動脈炎、心血管系梅毒及び様々な結合組織疾患及び障害などの疾患又は状態に続発し得る。
【0117】
また別の態様では、MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、虚血再灌流傷害及び関連疾患、適応症、状態及び症候群の処置において使用され得る。虚血後の血流回復が機能組織を保存するために必須である一方で、再灌流それ自身が組織にとって有害であることが知られている。虚血及び再灌流の両方が、組織壊死に重要な寄与因子であることが知られている。いくつかの機序が、虚血再灌流傷害と関連する組織損傷の生成において原因となる役割を果たすと思われる。本発明のペプチド及び組成物の特定のものは、腎臓再灌流に続発する肺損傷を含む腎臓再灌流傷害の予防又は重症度の制限、心筋梗塞後の再灌流心臓損傷の予防又は制限、心筋梗塞、脳卒中などを含むが、限定されない心血管系損傷後の再灌流脳損傷の予防又は制限において特定の適用を有する。本発明は、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓又は小腸の移植を含む、臓器移植における再灌流臓器障害の予防又は制限におけるさらなる特定の適用を有する。一態様では、本発明の医薬組成物は、移植臓器の灌流のために利用され得、この灌流は、臓器移植前、臓器移植中又は臓器移植後であり得る。
【0118】
一実施形態では、本発明は、再灌流によって引き起こされるか又は再灌流中の損傷を含む虚血再灌流傷害によって引き起こされる損傷から患者の心臓、脳又は他の臓器を保護するために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。虚血再灌流傷害からの保護効果は、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後即時に又は短時間以内に起こる。
【0119】
また別の態様では、MC1r、MC3r、MC4r及び/又はMC5rアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない、本発明のペプチド及び組成物は、患者における循環性ショック及び関連疾患、適応症、状態及び症候群の処置において使用され得る。本発明は、ペプチド、使用のための組成物及び患者において出血性ショックを含むショックを処置又は予防する方法を提供し、この方法は、失血が起こっていると診断された患者に本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物を投与することを含む。失血は、必要ではないが、例えば約15%を超える総血液体積又は対象の総体積の20%、25%、30%、35%、40%又は50%を超える失血など、対象の血液体積のパーセンテージとして測定され得る。代わりに、失血は、必要ではないが、例えばヒト対象における約750mL、1000mLの喪失、約1500mLの喪失又は約2000mL若しくはそれを超える量の喪失など、特定の対象において出血性ショックを引き起こすのに十分な何らかの量の血液体積の減少に関して測定され得る。失血は、例えば対象の正常収縮期血圧よりも約20mmHg、30mmHg、40mmHg、50mmHg、60mmHg、70mmHg、80mmHg、90mmHg又は100mmHg又は100mmHgを超えて低い収縮期血圧の低下など、収縮期血圧の低下に関しても測定され得る。特定の実施形態では、対象は、手術、輸注又は分娩などであるが、限定されない医学的手順を受けているか又は受けたことがある。他の特定の実施形態では、対象は、自動車事故、労働災害又は銃創から生じたものなどであるが、限定されない外傷的損傷を受けている。
【0120】
本発明のさらなる実施形態では、それぞれがショックの何れかの段階にあり得る、心原性ショック、血液量減少ショック及び血管拡張性ショックを処置するために本組成物及び方法が使用される。本発明の特定の一実施形態では、本方法は、心原性ショックを処置するために使用される。心原性ショックは、一般的に言えば、心臓が適格な血液を拍出しない心臓機能不全によって引き起こされる低血流又は灌流である。原因としては、塞栓形成、虚血、逆流及び弁機能不全などであるが、限定されない心室充満又は排出を妨害する何らかの状態が挙げられ得る。本発明の別の特定の実施形態では、本方法は、血管拡張性ショックを処置するために使用される。血管拡張性ショックは、重篤な静脈又は細動脈拡張によって引き起こされ、その結果、血流が不十分になる。脳外傷、薬物又は毒物の毒性、アナフィラキシー、肝不全、菌血症及び敗血症を含むが、限定されない、いくつかの既知の原因が、血管拡張性ショックに寄与する。本発明の別のより特定の実施形態では、本方法は、敗血症又は菌血症の結果生じるショックを処置するために使用される。さらにより特定の実施形態では、本組成物及び方法は、ステージI、II又はIIIのショックと呼ばれるショックにおいて敗血性ショック又は菌血症ショックを処置するために使用される。また別の実施形態では、本発明の組成物及び方法は、血液量減少性ショックを処置するために使用される。血液量減少性ショックは、一般的に言って、血管内体積を減少させ、血管内体積の低下は相対的又は絶対的であり得る。潰瘍、胃腸損傷、外傷、事故、手術及び動脈瘤などであるが、限定されない状態からの出血は、血液量減少性ショックを引き起こし得るが;他の体液の喪失も血液量減少性ショックを引き起こし得る。例えば、腎臓の体液喪失、血管内体液喪失、水又は他の腹水の喪失は、血液量減少性ショックに寄与し得る。本発明の特定の一実施形態では、血液量減少性ショックを処置するために本発明のペプチドの1つ以上の投与を含む組成物及び方法が使用される。さらにより特定の実施形態では、本組成物及び方法は、ステージI、ステージII又はステージIIIの血液量減少性ショックを処置するために使用される。
【0121】
一実施形態では、本発明は、循環性ショックによって引き起こされる損傷から患者の心臓、脳又は他の臓器を保護するために本発明のペプチドの1つ以上を使用する方法を対象とする。循環性ショックからの保護効果は、本発明のペプチドの1つ以上を含む組成物の投与後即時的に又は短時間内に、好ましくは投与後遅くとも約40分以内に起こる。
【0122】
2.6 MC4r反応性の適応症
また別の態様では、MC4rアゴニスト若しくは部分アゴニスト又はMC3rアゴニスト若しくは部分アゴニスト又は何らかのそれらの組み合わせであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、エネルギーホメオスタシス及び代謝関連(糖尿病、特に2型糖尿病;脂質異常症;脂肪肝;痛風;高コレステロール血症;高トリグリセリド血症;高尿酸血症;耐糖能障害;空腹時高血糖;インスリン抵抗性症候群;及びメタボリックシンドロームなど)、摂食関連(過食症;過食;食欲亢進;及び心因性過食など)及び/又はエネルギーバランス及び体重関連疾患、障害及び/又は状態、より具体的には過体重及び/又は過食を特徴とするような疾患、障害及び状態を含む、MC4r機能、より具体的にはMC4rの活性化の調整に反応性がある疾患、障害及び/又は状態、即ちMC4rでのアゴニズム(完全又は部分アゴニズムを含む)から利益を受ける疾患、障害及び/又は状態又はMC3r機能、より具体的にはMC3rの活性化の調整に反応性がある疾患、障害及び/又は状態、即ちMC3rでのアゴニズム(完全又は部分アゴニズムを含む)又はMC4r及びMC3r機能の両方の調整から利益を受ける疾患、障害及び/又は状態を処置することにおいて利用され得る。一態様では、本発明の化合物は、POMC遺伝子における突然変異によるプロ-オピオメラノコルチン欠乏(POMCヘテロ接合性欠損肥満)、プラダ・ウィリー症候群、MC4r欠損による肥満、レプチン受容体欠損性肥満、先天性レプチン欠損を含むレプチン欠損性肥満、バルデ・ビードル症候群、アルストレーム症候群及び様々な他の疾患、状態、遺伝子欠損、代謝性障害及び症候群などの様々な発現又は受容体遺伝性疾患に関連する状態を処置するために利用される。
【0123】
このようなペプチドは、肥満及び過体重を含む過剰体重(体重減少の促進、体重減少の維持及び/又は薬物誘導性の体重増加若しくは禁煙に続発する体重増加を含む体重増加の予防による)及び肥満及び/又は過体重と関連する疾患、障害及び/又は状態、例えばインスリン抵抗性;耐糖能障害;2型糖尿病;メタボリックシンドローム;脂質異常症(高脂血症を含む);高血圧;心臓障害(例えば冠動脈心疾患、心筋梗塞);心血管系障害;非アルコール性脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎を含む);関節障害(続発性の変形性関節症を含む);胃食道逆流;睡眠時無呼吸;アテローム性動脈硬化症;脳卒中;大血管及び微小血管疾患;脂肪症(例えば肝臓における);胆石;及び胆嚢障害を特徴とする体重関連疾患、障害及び/又は状態の処置のために有用であると特に考えられる。
【0124】
MC4rは、レプチン-メラノコルチン経路又はプロ-オピオメラノコルチン(POMC)-MC4r経路の一部分である。この経路の構成物メンバーとしては、α-MSH、POMC、レプチン及びレプチン受容体を含むタンパク質の幅広い多様性が挙げられる。特定の疾患、状態及び症候群は、POMC-MC4r経路と関連するか又はPOMC-MC4r経路の1つ以上の構成物メンバーにおける遺伝子欠陥障害を含め、突然変異及びバリエーションから起こる。本発明の化合物は、本明細書で後に記載されるように、POMC-MC4r経路の1つ以上の構成物メンバーと関連するか又はそれにおける遺伝子欠陥障害を含む突然変異及びバリエーションから起こる疾患、状態及び症候群の処置において有用であり得る。
【0125】
視床下部POMC-MC4r経路は、摂食行動、食欲及び体重を調整する制御系の一部である。遺伝学的欠損又は破壊の結果から生じると考えられる視床下部POMC-MC4r経路の破壊と関連すると記載されている多くの疾患、状態及び症候群があり、POMC-MC4r経路における遺伝子の欠損又は破壊が含まれる。例えば、プラダ・ウィリー症候群は、顕著な過食及び重度の肥満として現れ、学習能力障害、神経学的機能異常、性腺機能低下症、低身長及び発達及び認知の遅れなど、他の特性及び徴候を含み得る。本発明の化合物は、本明細書で後に記載されるように、プラダ・ウィリー症候群並びにPOMC-MC4r経路における遺伝子の欠損又は破壊を含む他の疾患、状態及び症候群の処置に有用であり得る。
【0126】
従って、本発明の化合物は、2番染色体の位置23.3に位置するPOMC遺伝子におけるホモ接合又は複合ヘテロ接合性の機能喪失突然変異によって引き起こされるPOMC欠損が関連する肥満及び過食の処置に対して利用され得、適応される。完全な喪失を引き起こすか又はPOMCポリペプチドの産生を顕著に低下させるPOMC遺伝子における突然変異は、α-MSH産生の消失又は産生低下につながる。この内因性α-MSHの喪失の結果、MC4r活性が顕著に低下し、過食及び肥満となる。本発明の化合物は、内因性α-MSHがあまりないか又は全くない患者において補充MC4rアゴニスト療法として利用され得る。
【0127】
視床下部POMC-MC4r経路の破壊に関連する様々な疾患、状態又は症候群に対して、予想される患者の診断の一部として様々な遺伝学的及び遺伝子型判定試験が使用され得、このような予想される患者において本発明の化合物の使用に対する適切性を決定する。プラダ・ウィリー症候群に対する限定されない例として、15番染色体、15q11-q13領域の特異的な部分において活性遺伝子の喪失、具体的には父性第15番染色体の少なくとも15q11-q13領域の欠失を確認するために、DNAに基づくメチル化試験などの遺伝学的試験を利用することが可能である。同様に、POMC欠損は、POMC遺伝子における機能喪失突然変異により診断され得る。従って、本発明の化合物による処置は、15q11-q13領域に影響を及ぼすプラダ・ウィリー症候群に対する機能喪失突然変異、POMC遺伝子、レプチン遺伝子、レプチン受容体遺伝子及びPOMC-MC4r経路での様々な他の遺伝子における機能喪失突然変異を含むが、限定されない、POMC-MC4r経路における機能喪失突然変異又は他の突然変異の存在を確認するための、様々な診断及び遺伝子検査を含み得る。
【0128】
また別の態様では、MC4rアゴニスト又は部分アゴニストであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、男性の勃起機能不全及び女性の性機能障害の両方を含む性機能障害の処置のために使用され得る。女性の性機能障害としては、機能低下性の性欲障害が挙げられるが、限定されない。特定の一実施形態では、本発明のペプチド、組成物及び方法は、膣性交を可能にするための勃起機能の向上を含むが、限定されない、勃起機能の向上のために男性患者において使用される。別の特定の実施形態では、本発明のペプチド、組成物及び方法は、性的興奮成功率、欲求成功率、性的興奮及び欲求のレベルの向上を含むが、限定されない、女性の性機能障害を処置するために使用される。機能低下性の性欲障害を含む女性の性機能障害に対して、エンドポイントは、必要ではないが、Female Sexual Distress Scale, Female Sexual Encounter Profile, Female Sexual Function Index及びGlobal Assessment Questionnaireを含むが、限定されない多くの検証された手段の何れかによって決定され得る。女性の性機能障害について処置される患者は、閉経前の女性又は閉経後の女性であり得る。
【0129】
また別の態様では、MC4rアゴニスト又は部分アゴニストであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、飲酒を抑制するか、又は飲酒量を減少させるか、又はアルコール中毒を処置若しくは予防するか、又はアルコール乱用を処置若しくは予防するか、又はアルコール関連障害を処置若しくは予防するために使用され得る。別の関連態様では、乱用薬物の消費を抑制するか、乱用薬物の消費量を減少させるか、又は薬物乱用を処置若しくは予防するか、又は薬物乱用関連障害を処置若しくは予防するために本ペプチドの1つ以上を使用し得る。乱用薬物は、一般的には、規制される物質である。これらは、規制される天然由来の薬物、例えばヘロイン、モルヒネ、アヘン、コカイン、マリファナなど、並びに合成薬物、例えばバイコジン(登録商標)、ロータブ(登録商標)、ローセット(登録商標)、パーコセット(登録商標)、ペルコダン(登録商標)、タイロックス(登録商標)、ヒドロコドン、オキシコンチン(登録商標)、メサドン、トラマドール、様々なメタンフェタミン及び他の精神安定薬、刺激物質又は乱用されることが知られる鎮静剤並びに確立された医薬品としての有用性がない薬物、例えばエクスタシー、LSD又はPCPなどを含む。
【0130】
また別の態様では、MC1r、MC2r、MC3r及びMC5rの1つ以上におけるアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト又はインバースアゴニストであり得る、MC4rアンタゴニスト又はインバースアゴニストペプチドを含む、MC4rアンタゴニスト又は任意選択的にMC4rでのインバースアゴニストであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、悪液質、サルコペニア及び消耗症候群又は疾患を含む様々な体重障害の処置において及び炎症及び免疫障害の処置のために使用され得る。体重障害は、望ましくない及び不健康な体重減少若しくは体細胞質量の喪失を引き起こす1つ以上の「消耗性」障害(例えば消耗症候群、悪液質、サルコペニア)を含む。高齢者において並びに癌及びAIDS患者において、消耗性疾患の結果、脂肪区画及び脂肪不含区画の両方を含む、望ましくない体重減少が起こり得る。消耗性疾患は、不適格な食物摂取及び/又は疾病及び/又は加齢過程に関連する代謝変化の結果であり得る。癌患者及びAIDS患者並びに広範囲の手術後の患者又は慢性感染性、免疫学的疾患、甲状腺機能亢進症、クローン病、心因性疾患、慢性心不全又は他の重度の外傷を有する患者は、消耗性疾患に苦しむことが多い。消耗性疾患は、悪液質と呼ばれることもあり、一般に代謝障害及び時として摂食障害として認識される。悪液質はさらに、代謝亢進及び異化亢進を特徴とし得る。高齢者に影響を及ぼし得る、また別のこのような障害であるサルコペニアは、一般的には、筋肉量の喪失を特徴とする。上記のような最終ステージの消耗性疾患は、悪液質又はサルコペニアの何れかに罹患している個体において発生し得る。
【0131】
2.7 核医学及び薬物送達適用
また別の態様では、MC1rアゴニスト、部分アゴニスト又はアンタゴニストであるペプチドを含むが、限定されない本発明のペプチド及び組成物は、ある種の癌、このようなメラノーマ及び他の適応症に対する標的とされるイメージング及び細胞傷害性療法において、それを必要とする患者で使用され得る。本発明のペプチド、組成物及び方法は、本発明のペプチドと組み合わせて放射性核種を使用した診断イメージングによるなど、メラノーマ及びMC1rの比較的高い発現を一部特徴とする他の癌又は疾患又は状態をイメージングするために使用され得る。診断イメージングの場合、一般的には、本発明のペプチドは、本発明のペプチドを放射性核種にカップリングさせるリンカー、例えば架橋剤などの使用によって放射性核種に複合化させる。放射性核種は好ましくは、ガンマ検出器又はカメラ、例えば単一光子放射断層撮影などを使用してイメージングされ得るガンマエミッター又はポジトロン断層撮影を使用してイメージングされ得るポジトロンエミッターである。そのように使用され得るガンマエミッターとしては、とりわけ99mTc、111In、123I及び67Gaが挙げられる。そのように使用され得るポジトロンエミッターとしては11C、13N、15O及び18Fが挙げられる。
【0132】
関連態様では、本発明のペプチド、組成物及び方法は、本発明のペプチドと組み合わせて毒素を含む化学療法剤又は放射線療法剤を利用することなどにより、メラノーマ、MC1rの比較的高い発現を一部特徴とする他の癌又は疾患又は状態の細胞傷害性療法のために使用され得る。化学療法剤としては、何らかの抗新生物薬又は化学物質、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤及び他の抗腫瘍剤などが挙げられる。アルキル化剤の非限定例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル及びイホスタミドが挙げられ;代謝拮抗剤の例としては、アザチオプリン及びメルカプトプリンが挙げられ;アントラサイクリンの例としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン及びミトキサントロンが挙げられ;植物アルカロイドの例としては、ビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン及びビンデシン及びタキサン、例えばパクリタキセル及びドセタキセルが挙げられ;トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、カンプトテシン、例えばイリノテカン及びトポテカンなど、及びII型トポイソメラーゼ、例えばアムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩及びテニポシドなどが挙げられる。しかし、標的とされる細胞傷害性療法での使用に適切な何らかの薬剤がそのように使用され得る。そのように使用され得る放射線療法剤の非限定例としては、とりわけ131I、125I、211At、186Re、188Re、90Y、153Sm、212Bi及び32Pが挙げられる。
【0133】
例えば非放射性同位体の代わりに、とりわけ11C、13N、15Oの使用などにより、診断イメージング又は細胞毒性療法剤が本発明のペプチドに組み合わせられ得るか;例えばハロゲン化若しくは他の直接的な錯体化の方法などにより、本発明のペプチドに直接連結され得るか;又はリンカー若しくはキレート化ユニットによる抱合反応など、本発明のペプチドに間接的に連結され得る。リンカーユニットは、当技術分野において周知であり、遊離反応基との間の少なくとも1つのジスルフィド結合、チオエーテル結合又は共有結合を含む化学的に連結される複合物が挙げられるが、限定されない。代表的な架橋及び複合化試薬は、とりわけ米国特許第7,169,603号、同第7,820,164号及び同第5,443,816号及び米国特許出願公開第2009/0297444号で開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
3.0 ある種の適応症に対する併用療法
本発明のペプチド、組成物及び方法は、1つ以上の他の医薬的活性化合物と組み合わせた投与により、前述の疾患、適応症、状態若しくは症候群の何れか又はMC1r介在性若しくは反応性である何れかの疾患、適応症、状態若しくは症候群の処置のために使用され得る。このような組み合わせ投与は、本発明のペプチド及び1つ以上の他の医薬的活性化合物の両方を含む単回剤形によるものであり得、このような単回剤形としては、錠剤、カプセル、スプレー、吸入粉末、注射のための液体などが挙げられる。代わりに、組み合わせ投与は、一方の剤形が本発明のペプチドを含有し、他方の剤形が別の医薬的活性化合物を含む、2つの異なる剤形の投与によるものであり得る。この例において、剤形は、同じ又は異なり得る。「同時投与」という用語は、併用療法中の少なくとも2つの化合物のそれぞれが、生物学的活性又は効果の個々の期間が重複する時間枠中で投与されることを示す。従って、この用語は、一方の化合物が本発明のペプチドの1つ以上である化合物の連続投与並びに同時投与を含む。複数の化合物が同時投与される場合、2つ以上の化合物の投与経路は同じである必要はない。組み合わせ療法に限定することを意味するものではなく、以下は、使用され得るある種の組み合わせ療法を例証する。
【0135】
3.1 抗炎症剤との組み合わせ療法
炎症関連疾患、適応症、状態及び症候群の処置のために、本発明のペプチドは、1つ以上の抗炎症剤との同時投与によるものを含む組み合わせ療法で使用され得る。抗炎症剤の一クラスは、コルチゾンを含むが、限定されないグルココルチコイドであり、コルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、フルドロコルチゾン酢酸エステル、酢酸デオキシコルチコステロン及びアルドステロンを含む。同時投与によることを含む、組み合わせ療法で使用され得る他の抗炎症剤としては、アスピリン、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)(イブプロフェン及びナプロキシンなど)、TNF-α阻害剤(テニダップ及びラパマイシン又はその誘導体など)又はTNF-αアンタゴニスト(例えばインフリキシマブ、OR1384)、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(即ちCOX-1及び/又はCOX-2阻害剤、例えばナプロキセン(登録商標)又はセレブレックス(登録商標)など)、CTLA4-Igアゴニスト/アンタゴニスト、CD40リガンドアンタゴニスト、IMPDH阻害剤、例えばミコフェノラート(セルセプト(登録商標))、インテグリンアンタゴニスト、アルファ-4ベータ-7インテグリンアンタゴニスト、細胞接着阻害剤、インターフェロンガンマアンタゴニスト、ICAM-1、プロスタグランジン合成阻害剤、ブデソニド、クロファジミン、p38有糸分裂活性化タンパク質キナーゼ阻害剤、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)阻害剤、IKK阻害剤、過敏性腸症候群の処置のための治療剤(例えばゼルマック(登録商標)及びマキシ-K(登録商標)開口薬、例えば米国特許第6,184,231号で開示されるものなど)又は他のNF-κB阻害剤、例えばコルチコステロイド、カルホスチン、CSAID、米国特許第4,200,750号で開示されるような4置換イミダゾ[1,2-A]キノキサリン;インターロイキン-10、サリチレート、硝酸オキシド及び他の免疫抑制剤;及び核転移阻害剤、例えばデオキシスパガリン(DSG)などが挙げられる。
【0136】
3.2 ホスホジエステラーゼ阻害剤との組み合わせ療法
特定の適用及び適応症に対して、炎症性細胞活性と関連するヌクレオチドメッセンジャーである環状アデノシン3’,5’一リン酸(cAMP)の産生を向上させ、そのレベルを維持することが望ましい。本発明のペプチドは、cAMPの細胞内レベルを向上させ、cAMPの分解を阻害する化合物又は物質とともに同時投与され得る。cAMPは、ホスホジエステラーゼ(PDE)により加水分解されて不活性型になり;PDEを阻害する化合物又は物質により、利用可能なcAMPの維持及び/又は増加が起こり得る。PDE阻害剤として知られる化合物のクラスは、喘息、COPD及び急性呼吸窮迫症候群など、炎症性疾患の処置での使用のために広く研究されている。PDEタイプ1、2、3、4、7、8、10又は11の阻害剤が好ましく;一態様では、これには、例としてロリプラム、シロミラスト、イブジラスト及びピクラミラストなど、選択的なPDEタイプ4阻害剤又は特定のタイプのPDE4アイソザイムに対する選択性を有する阻害剤であるcAMP-PDE阻害剤が含まれる。
【0137】
3.3 眼の適応症での組み合わせ療法
眼の適応症に対して、眼への剤形は、本発明のペプチドの1つ以上に加えて、例えば人工涙液成分、局所コルチコステロイド、非ステロイド抗炎症性薬又はカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン-A眼用エマルジョン(レスタシス(登録商標) - Allergan)など、1つ以上の有効成分を含み得る。同時投与は、人工涙液成分、局所コルチコステロイド、非ステロイド抗炎症性薬、カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン-Aなど又は前述のものの何れかの組み合わせを含む眼用剤形の個別投与など、本発明のペプチドとは個別に与えられる1つ以上のさらなる化合物の投与を含むことも可能である。
【0138】
具体的に複数の活性医薬成分を含む溶液を含め、組み合わせ眼用溶液を使用し得る。一態様では、本発明のペプチドと組み合わせて非ステロイド抗炎症性薬(NSAID)が使用される。組み合わせ眼用溶液中での使用に適切なNSAIDは、プロピオン酸化合物、例えばナプロキセン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン;ケトロラクトロメタミンなど;酢酸誘導体、例えばスリンダク、インドメタシン及びエトドラクなど;フェニル酢酸、例えばジクロフェナク、ブロムフェナク及びスプロフェンなど;アリール酢酸プロドラッグ、例えばネパフェナク及びアンフェナクなど;サリチル酸、例えばアスピリン、サルサラート、ジフルニサル、トリサリチル酸コリンマグネシウムなど;パラ-アミノフェノール誘導体、例えばアセトアミノフェンなど;ナフチルアルカノン、例えばナブメトンなど;エノール酸誘導体、例えばピロキシカム及びメロキシカムなど;フェマナート、例えばメフェナム酸、メクロフェナム酸及びフルフェナム酸など;ピロール酢酸、例えばトルメチンなど;及びピラゾロン、例えばフェニルブタゾンなど;及びシクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害剤、例えばセレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ及びルアリコキシブなどを含むが、限定されない、シクロオキシゲナーゼ(COX)-1及び/又は-2酵素を阻害する薬剤、それらのエステル及びその薬学的に許容可能な塩を含む。眼用溶液は、血管収縮薬、抗アレルギー薬、抗感染薬、ステロイド、麻酔薬、抗炎症剤、鎮痛剤、ドライアイ治療剤(例えば分泌促進物質、粘液模倣物、ポリマー、脂質、抗酸化剤)を含むが、限定されない他の有効成分をさらに含み得るか、又は血管収縮薬、抗アレルギー剤、抗感染薬、ステロイド、麻酔薬、抗炎症剤、鎮痛剤、ドライアイ治療剤(例えば分泌促進物質、粘液模倣物、ポリマー、脂質、抗酸化剤)などを含むが、限定されない他の有効成分を含む医薬組成物と併せて(同時に又は連続的に)投与され得る。
【0139】
3.4 ショック関連適応症における併用療法
本発明の循環性ショックを処置又は予防する方法は、本発明のペプチドの1つ以上に加えて、対象に1つ以上の物質を同時投与することにも関する。例えば、本発明のペプチドの1つ以上は、アンドロステントリオール、アンドロステンジオール又はその誘導体、様々なバソプレシンアゴニスト又は他の医薬活性物質、例えばカテコールアミン又はエピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、イソプロテレノール、バソプレシン及びドブタミンを含むが、限定されない、他のαアドレナリン作動性アゴニスト、αアドレナリン作動性アゴニスト、βアドレナリン作動性アゴニスト又はβアドレナリン作動性アゴニストと同時投与され得る。代わりに、本発明のペプチドの1つ以上は、血液量減少性ショック、血管拡張性ショック又は心原性ショックに罹患しているか、その症状を呈しているか又は罹患するリスクがある対象において症状を軽減するか、減弱させるか、予防するか又は除去することが可能である液体又は他の物質と同時投与され得る。本発明のペプチドの1つ以上と同時投与され得る液体のタイプは、ショックに罹患しているか、その症状を呈しているか又は罹患するリスクがある特定の対象の周囲の状況に対して特異的であるべきである。例えば、本発明のペプチドの1つ以上と同時投与され得る液体としては、塩溶液 - 例えば、塩化ナトリウム及び重炭酸ナトリウムなど - 並びに全血、合成血液代替物、血漿、血清、血清アルブミン及びコロイド溶液が挙げられるが、限定されない。コロイド溶液としては、ヘタスターチ、アルブミン又は血漿を含有する溶液が挙げられるが、限定されない。本発明の特定の一実施形態では、塩溶液、コロイド溶液、全血、合成血液代替物、血漿又は血清の1つ以上などの液体は、出血性ショックなどの血液量減少性ショックに罹患しているか又はその症状を呈している患者において、本発明のペプチドの1つ以上と同時投与される。
【0140】
3.5 肥満及び関連するメタボリックシンドロームに対する組み合わせ療法
本発明の1つ以上のペプチドは、様々な体重及び摂食関連障害、例えば肥満及び/又は過剰体重などの処置において有用な1つ以上の他の薬理学的に活性のある薬剤、特にエネルギー消費、解糖系、糖新生、グルコジェノリシス、脂肪分解、脂肪生成、脂肪吸収、脂肪貯蔵、脂肪排出、空腹及び/又は満腹及び/又は渇望機序、食欲/動機付け、食物摂取又は胃腸運動に影響を与える他の抗肥満薬と組み合わせられ得る。エネルギー摂取を減少させる薬剤は、一部、食欲低下薬と呼ばれる様々な薬理学的物質を含み、これらは、体重減少プログラムにおいて行動療法に対する補助として使用される。
【0141】
一般に、以下に記載の肥満制御剤又は薬物の総投与量は、1つ以上の本発明のペプチドと組み合わせて使用される場合、単回又は2~4回の分割投与で、0.01~3,000mg/日、好ましくは約0.1~50mg/日、より好ましくは約0.1~10mg/日の範囲であり得る。しかし、正確な用量は、担当の臨床医によって決定され、投与される化合物の効力、患者の年齢、体重、状態及び反応のような因子に依存する。
【0142】
本発明の1つ以上のペプチドは、他の抗糖尿病薬など、糖尿病の処置において有用である1つ以上の他の薬理学的活性物質と組み合わせられ得る。
【0143】
本発明の1つ以上のペプチドは、さらに又は代わりに、インスリン抵抗性;耐糖能障害;2型糖尿病;メタボリックシンドローム;脂質異常症(高脂血症を含む);高血圧;心臓障害(例えば冠動脈心疾患、心筋梗塞);心血管系障害;非アルコール性脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎を含む);関節障害(続発性の変形性関節症を含む);胃食道逆流;睡眠時無呼吸;アテローム性動脈硬化症;脳卒中;大血管及び微小血管疾患;脂肪症(例えば肝臓における);胆石;及び胆嚢障害など、肥満及び/又は過剰体重と関連する疾患、障害及び/又は状態の処置において有用である1つ以上の他の薬理学的活性物質とさらに組み合わせられ得る。
【0144】
本発明のさらなる態様によれば、このような治療的処置を必要とする哺乳動物、例えばヒトなどに、任意選択的に薬学的に許容可能な担体と一緒に以下の薬剤:
- インスリン及びインスリン類似体;
- スルホニル尿素(例えばグリピジド)及び食事性グルコース制御物質(「短時間作用型分泌促進物質」と呼ばれることがある)、例えばメグリチニド(例えばレパグリニド及びナテグリニド)を含む、インスリン分泌促進物質;
- インクレチン作用を改善する薬剤、例えばジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)阻害剤(例えばビルダグリプチン、サキサグリプチン及びシタグリプチン)及びグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アゴニスト(例えばエキセナチド)など;
- チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン及びロシグリタゾン)などのペルオキシソーム増殖剤活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニスト及びPPARアルファ、ガンマ及びデルタ活性の何れかの組み合わせとの薬剤を含む、インスリン増感剤;
- 肝臓グルコースのバランスを調整する薬剤、例えばビグアナイド(例えばメトホルミン)、フルクトース1,6-ビスホスファターゼ阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害剤及びグルコキナーゼ活性化剤;
- 腸からのグルコースの吸収を減少/遅延させるために設計された薬剤、例えばアルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えばミグリトール及びアカルボース);
- グルカゴンの作用と拮抗するか又はその分泌を減少させる薬剤、例えばアミリン類似体(例えばプラムリンチド)など;
- 腎臓によるグルコースの再吸収を防ぐ薬剤、例えばナトリウム依存性糖輸送担体2(SGLT-2)阻害剤(例えばダパグリフロジン)など;
- 長期の高血糖の合併症を処置するために設計された薬剤、例えばアルドースレダクターゼ阻害剤(例えばエパルレスタット及びラニレスタット)など;及び微小血管症に関連する合併症を処置するために使用される薬剤;
- 抗脂質異常剤、例えばHMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン、例えばロスバスタチン)及び他のコレステロール低下剤など;PPARαアゴニスト(フィブラート、例えばゲムフィブロジル及びフェノフィブラート);胆汁酸捕捉剤(例えばコレスチラミン);コレステロール吸収阻害剤(例えば植物ステロール(即ちフィトステロール)、合成阻害剤);コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤;回腸胆汁酸輸送系の阻害剤(IBAT阻害剤);胆汁酸結合レジン;ニコチン酸(ナイアシン)及びその類似体;抗酸化剤、例えばプロブコールなど;及びオメガ-3脂肪酸;
- アドレナリン作動性受容体アンタゴニストを含む降圧剤、例えばベータブロッカー(例えばアテノロール)、アルファブロッカー(例えばドキサゾシン)及びアルファ/ベータ混合型ブロッカー(例えばラベタロール)など;アルファ-2アゴニスト(例えばクロニジン)を含むアドレナリン作動性受容体アゴニスト;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えばリシノプリル)、カルシウムチャネルブロッカー、例えばジヒドロプリジン(例えばニフェジピン)、フェニルアルキルアミン(例えばベラパミル)及びベンゾチアゼピン(例えばジルチアゼム)など;アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト(例えばカンデサルタン);アルドステロン受容体アンタゴニスト(例えばエプレレノン);中枢作用性アドレナリン作動性薬、例えば中枢アルファアゴニスト(例えばクロニジン)など;及び利尿剤(例えばフロセミド);
- 抗血栓薬を含む止血調整剤、例えば線維素溶解の活性化因子;トロンビンアンタゴニスト;第VIIa因子阻害剤;抗凝固薬、例えばビタミンKアンタゴニスト(例えばワルファリン)、ヘパリン及びその低分子量類似体、第Xa因子阻害剤及び直接トロンビン阻害剤(例えばアルガトロバン)など;抗血小板剤、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばアスピリン)、アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤(例えばクロピドグレル)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えばシロスタゾール)、糖タンパク質IIB/IIA阻害剤(例えばチロフィバン)及びアデノシン再取り込み阻害剤(例えばジピリダモール);
- ノルアドレナリン作動性薬(例えばフェンテルミン)及びセロトニン作動性薬(例えばシブトラミン)、膵臓リパーゼ阻害剤(例えばオルリスタット)、ミクロソームトランスファータンパク質(MTP)調整剤、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤及びカンナビノイド(CB1)受容体アンタゴニスト(例えばリモナバント)を含む、抗肥満剤、例えば食欲抑制薬(例えばエフェドリン)など;
- 摂食行動調整剤、例えばオレキシン受容体調整剤及びメラニン濃縮ホルモン(MCH)調整剤など;
- グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体調整剤;
- 神経ペプチドY(NPY)/NPY受容体調整剤;
- ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)調整剤;
- セロトニン受容体調整剤;
- レプチン/レプチン受容体調整剤;
- グレリン/グレリン受容体調整剤;又は
- モノアミン伝達調整剤、例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(例えばフルオキセチン)、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NARI)、ノルアドレナリン-セロトニン再取り込み阻害剤(SNRI)、トリプルモノアミン再取り込みブロッカー(例えばテソフェンシン)及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)(例えばトロキサトン及びアミフラミン)など、又は
薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、このような塩の溶媒和物又はそのプロドラッグ
から選択されるものの1つ以上との同時、連続又は個別投与で、任意選択的に薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と一緒に、本発明によるペプチド又はその薬学的に許容可能な塩の薬理学的有効量を投与することを含む組み合わせ処置が提供される。
【0145】
本発明のさらなる態様によれば、超低カロリー食(VLCD)又は低カロリー食(LCD)の同時、連続又は個別投与で、任意選択的に薬学的に許容可能な担体と一緒に、薬理学的有効量の本発明による化合物又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む組み合わせ処置が提供される。
【0146】
参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016/168388号、「Therapies for Obesity, Diabetes and Related Indications」で開示されるような本発明の追加的なさらなる態様によれば、1つ以上の本発明のペプチド及び好ましくはMC4rアゴニストであるペプチドは、GLP-1受容体アゴニストと併せて投与され得る。従って、本明細書の発明は、1投与あたりベースを含めて、肥満の処置における皮下投与のため又は体重減少を誘導するための医薬組成物を含む:
GLP-1受容体アゴニストと併せずに単剤療法として投与された場合に少なくとも最小限の体重減少を誘導するのに十分な量のMC4rアゴニストである本発明のペプチド;及び
医薬組成物が好ましくは相乗的な抗肥満効果を有する、MC4rアゴニストと併せずに単剤療法として投与された場合に血糖制御を誘導するのに十分であるが体重減少を誘導しない量のGLP-1受容体アゴニスト。
【0147】
関連態様では、本発明は、(a)GLP-1受容体アゴニストと併せずに単剤療法として投与された場合に少なくとも最小限の体重減少を誘導するのに十分な量のMC4rアゴニストである本発明のペプチド及び(b)MC4rアゴニストと併せずに単剤療法として投与された場合に血糖制御を誘導するために十分であるが体重減少を誘導しない量のGLP-1受容体アゴニストを患者に投与することを含む、肥満、糖尿病又はメタボリックシンドロームの患者を処置する方法を提供する。好ましくは、本方法は、肥満の処置に対する相乗的効果を誘発する。
【0148】
別の態様では、本発明は、患者において、肥満、糖尿病又はメタボリックシンドロームの処置のための治療剤と関連する副作用を軽減する方法を提供し、この方法は、
GLP-1受容体アゴニストを伴わずに単剤療法として投与された場合、投与されたMC4rアゴニストペプチドの量が、単剤療法として投与された場合に患者において肥満、糖尿病及びメタボリックシンドロームを含む群からの少なくとも1つの状態を処置することにおいて所望の薬理学的反応を開始させるのに十分ではない量の、MC4rアゴニストである本発明のペプチドの投与;及び
MC4rアゴニストを伴わずに単剤療法として投与される場合、投与されたGLP-1受容体アゴニストの量が、単剤療法として投与された場合に患者において肥満、糖尿病及びメタボリックシンドロームを含む群からの少なくとも1つの状態を処置することにおいて所望の薬理学的反応を開始させるのに十分ではない量の、GLP-1受容体アゴニストの投与
を含み;
MC4rアゴニストの量及びGLP-1受容体アゴニストの量が一緒になって、患者において肥満、糖尿病及びメタボリックシンドロームを含む群からの少なくとも1つの状態を処置する所望の薬理学的反応を開始させるために有効となり、それにより、患者において肥満、糖尿病又はメタボリックシンドロームの少なくとも1つの処置における副作用を軽減する。
【0149】
3.6 性機能障害のための併用療法
性機能障害の処置のためなどの他の薬物又は薬剤と組み合わせて、本発明の環状ペプチドを使用することも可能であり、企図される。これらの他の薬物及び薬剤は、ホスホジエステラーゼ-5(PDE-5)阻害剤、テストステロン、プロスタグランジンなどを含め、勃起活性を誘導する薬剤を含み得る。本発明の好ましい実施形態では、本発明の環状ペプチドは、治療的有効量の環状GMP特異的なホスホジエステラーゼ阻害剤又はアルファ-アドレナリン作動性受容体アンタゴニストと組み合わせて使用される。「Multiple Agent Therapy for Sexual Dysfunction」という名称の米国特許第7,235,625号の教示及び開示は、完全に示されるかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
従って、本発明は、性機能障害を処置する方法を提供し、この方法は、治療的有効量の第2の性機能障害医薬品と組み合わせて、治療的有効量の本発明の環状ペプチドを性機能障害があるか又はそれを有するリスクがある患者に投与する工程を含む。本発明の環状ペプチドは、治療的有効量の第2の性機能障害医薬品の投与と同時に、その投与前に又はその投与後に投与され得る。好ましくは、本発明のペプチドは、治療的有効量の第2の性機能障害医薬品の投与の、1時間以内に、好ましくは30分未満以内に投与される。しかし、例えば治療的有効量のホルモン又はホルモン関連性機能障害医薬品との組み合わせなど、組み合わせ療法の特定の形態に対して、ホルモン又はホルモン関連性機能障害医薬品は、独立したスケジュールで投与され得、本発明のペプチド及びホルモン又はホルモン関連性機能障害医薬品の投与間のセット又は具体的な時間関係はない。従って、例えば、ホルモン又はホルモン関連性機能障害医薬品を毎日、又は他の用量において、又はパッチ若しくは他の継続投与スケジュールにより、患者により所望されるか又は必要とされる場合に本発明のペプチドの投与とともに投与され得る。
【0151】
従って、本発明は、性機能障害を処置する方法であって、性機能障害を有するか又はそれを有するリスクがある患者に、性機能障害の処置において有用な別の化合物と組み合わせて治療的有効量の本発明の環状ペプチドを投与する工程を含む方法を提供する。組み合わせ療法の好ましい実施形態では、性機能障害は、機能低下性の性欲障害を含むが、限定されない女性性機能障害である。組み合わせ療法の別の好ましい実施形態では、性機能障害は勃起機能不全である。
【0152】
本発明は、本発明の環状ペプチド及び性機能障害の処置に有用な第2の化合物を含む医薬組成物も提供する。本発明の一実施形態では、性機能障害の処置に有用なさらなる化合物は、好ましくは、ホスホジエステラーゼ阻害剤;環状GMP特異的なホスホジエステラーゼ阻害剤;プロスタグランジン;アポモルフィン;オキシトシン調整剤;α-アドレナリン作動性アンタゴニスト;アンドロゲン;選択的アンドロゲン受容体調整剤(SARM);ブプロプリオン;血管作動性腸ペプチド(VIP);中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEP);及び神経ペプチドY受容体アンタゴニスト(NPY)からなる群から選択されるが、限定されない。
【0153】
本方法及び組成物の一実施形態では、第2の性機能障害医薬品はテストステロンである。
【0154】
組み合わせ療法の別の実施形態では、第2の性機能障害医薬品は、V型ホスホジエステラーゼ(PDE-5)阻害剤である。例えば、PDE-5阻害剤は、シルデナフィルの商標であるバイアグラ(登録商標)、バルデナフィルの一塩酸塩の商標であるレビトラ(登録商標)又はタダラフィルの商標であるシアリス(登録商標)であり得る。他のPDE-5阻害剤は、参照により本明細書に組み込まれる2007年6月22日に発行された名称「Multiple Agent Therapy for Sexual Dysfunction」の米国特許第7,235,625号で開示される。
【0155】
上記組成物の別の実施形態では、性機能障害の処置のために有用な化合物は、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストである。一実施形態では、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは、(-)-シス-6-フェニル-5-[-4-(2-ピロリジン-1-イル-エトキシ)-フェニル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフト-タレン-2-オール(ラソフォキシフェンとしても知られる)又はその光学若しくは幾何異性体;薬学的に許容可能な塩、N-オキシド、エステル、四級アンモニウム塩;又はそのプロドラッグである。より好ましくは、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは、D-酒石酸塩の形態である。
【0156】
上記組成物のまた別の実施形態では、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニストは、タモキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、セントクロマン、イドキシフェン、6-(4-ヒドロキシ-フェニル)-5-[4-(2-ピペリジン-1-イル-エトキシ)-ベンジル]-ナフタレン-2-オール、{4-[2-(2-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル)-エトキシ]-フェニル}-[6-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-ベンゾ[b]チオフェン-3-イル]-メタノン、EM-652、EM-800、GW5368、GW7604、TSE-424及びその光学若しくは幾何異性体;及び薬学的に許容可能な塩、N-オキシド、エステル、四級アンモニウム塩及びそのプロドラッグからなる群から選択される。
【0157】
また別の実施形態では、本発明の環状ペプチドは、何らかの公知の機械的な補助物又は装置と組み合わせて使用され得る。
【0158】
4.0 投与及び使用の方法
投与及び使用の方法は、本明細書で開示される具体的なペプチドの又は本明細書で開示される式の特徴、処置しようとする疾患、適応症、状態又は症候群及び当業者にとって公知の他の因子に依存して変動する。一般に、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドとともに、当技術分野で公知の又は本発明以後に開発される投与及び使用の何らかの方法を使用し得る。以下の投与及び使用の方法は、前述のものに限定することなく、指示される適応症に対する具体的な適用を有する。
【0159】
4.1 皮下注射の使用
一態様では、1つ以上の本発明のペプチドを含む組成物は皮下注射のために処方され、皮下注射は、毎週又は各日1回以上など、指定される間隔で与えられる。別の態様では、本組成物は、注射可能な持続放出製剤として処方される。一実施形態では、本発明のペプチドは、ポリエチレングリコール、例えばポリエチレングリコール3350及び任意選択的に賦形剤、例えば塩、ポリソルベート80など、pHを調整するための水酸化ナトリウム又は塩酸などを含むが、限定されない1つ以上のさらなる賦形剤及び保存剤とともに処方される。別の実施形態では、本発明のペプチドは、ポリマー骨格中の乳酸のパーセンテージが何れかに変動する自己触媒型ポリ(オルトエステル)であり得るポリ(オルトエステル)及び任意選択的に1つ以上のさらなる賦形剤とともに処方される。一実施形態では、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマー(PLGAポリマー)が使用され、好ましくは親水性末端基を有するPLGAポリマー、例えばBoehringer Ingelheim, Inc.(Ingelheim, Germany)からのPLGA RG502Hなどである。例えば、リアクター中で適切な混合条件下において、メタノールなどの適切な溶媒中で本発明のペプチドを塩化メチレン中のPLGAの溶液と組み合わせ、ポリビニルアルコールの連続相溶液をそれに添加することにより、このような製剤が作製され得る。一般に、好ましくは、持続放出性の注射可能な製剤中において好ましくは接着性ポリマーでもある、多くの注射可能な生体分解性ポリマーの何れかが使用され得る。米国特許第4,938,763号、同第6,432,438号及び同第6,673,767号の教示及びそこで開示される製剤の生体分解性ポリマー及び方法は、参照により本明細書に組み込まれる。本製剤は、ペプチドの濃度及び量、ポリマーの生体分解性速度及び当業者にとって公知の他の因子に依存して、毎週、毎月又は他の周期的ベースで注射が必要とされるようなものであり得る。
【0160】
4.2 吸入の使用
一態様では、1つ以上の本発明のペプチドを含む組成物は、単独で又は1つ以上の不活性担体若しくはさらなる活性医薬成分と組み合わせて及び溶液、懸濁液、エアロゾル又は乾燥粉末製剤の形態において、ネブライザーのためのエアロゾル若しくは溶液の形態又は吹送若しくは吸入のための微細粉末などとして、気道への投与のために処方される(例えば、肺及び/又は気道に局所的に)。一般的にCryan, S.-A.,“Carrier-based strategies for targeting protein and peptide drugs to the lungs,”The AAPS Journal 7: E20-41 (2005)を参照されたい。一般に、本発明のペプチドは、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる以下の米国特許又は特許出願の1つ以上に記載される、装置、製剤、組成物及び手段で使用され得る:米国特許出願公開第20090241949号、「Dry powder inhalation system」;同第20080066741号、「Methods and systems of delivering medication via inhalation」;同第20070298116号、「Amorphous, spray-dried powders having a reduced moisture content and a high long term stability」;同第20070140976号、「Aqueous inhalation pharmaceutical composition」;同第20060054166号、「Inhalation nebulizer」;同第20050211244号、「Dry powder preparations」;同第20050123509号.「Modulating charge density to produce improvements in the
characteristics of spray-dried proteins」;同第20040241232号、「Dry powder medicament formulations」;米国特許第7,582,284号、「Particulate materials」;同第7,481,212号、「Increased dosage metered dose inhaler」;同第7,387,794号、「Preparation of powder agglomerate」;同第7,258,873号、「Preservation of bioactive materials by spray drying」;同第7,186,401号、「Dry powder for inhalation」;同第7,143,764号、「Inhalation device」;同第7,022,311号、「Powdery inhalational preparations and process for producing the same」;同第6,962,151号、「Inhalation nebulizer」;同第6,907,880号、「Inhalation device」;同第6,881,398号、「Therapeutic dry powder preparation」;同第6,698,425号、「Powder inhaler」;同第6,655,380号、「Inhalation device」;同第6,645,466号、「Dry powder for inhalation」;同第6,632,456号、「Compositions for inhalation」;同第6,610,272号、「Medicinal aerosol formulation」;同第6,596,261号、「Method of administering a medicinal aerosol formulation」;同第6,585,957号、「Medicinal aerosol formulation」;同第6,582,729号、「Powered pharmaceutical formulations having improved dispersibility」;同第6,572,893号、「Systems and processes for spray drying hydrophobic drugs with hydrophilic excipients」;同第6,551,578号、「Modulated release particles for aerosol delivery」;同第6,520,179号、「Inhalation device」;同第6,518,239号、「Dry powder compositions having improved dispersivity」;同第6,503,481号、「Compositions for aerosolization and inhalation」;同第6,358,530号、「Powdered pharmaceutical formulations having improved dispersibility」;同第6,325,061号、「Inhalation device」;同第6,257,232号、「Inhalation device」;同第6,187,344号、「Powdered pharmaceutical formulations having improved dispersibility」;同第6,116,237号、「Methods of dry powder inhalation」;同第5,934,272号、「Device and method of creating aerosolized mist of respiratory drug」;及び同第5,558,085号、「Intrapulmonary delivery of peptide drugs」。
【0161】
本組成物は、吸入による肺への局所送達のための乾燥粉末組成物であり得る。本組成物は、本発明のペプチド及び適切な粉末基剤、希釈剤又は担体物質、例えばラクトース、グルコース、デキストラン、マンニトール又は別の糖若しくはデンプンなどの吸入のための粉末混合物を含有し得る。本組成物は、リザーバ乾燥粉末吸入器、複数回投与乾燥粉末吸入器又は噴霧式定量吸入器など、様々な乾燥粉末装置の何れかにおいて使用され得る。本組成物は、さらなる賦形剤、例えばアルコール、界面活性剤、滑沢剤、抗酸化剤又は安定化剤を含み得る。適切な噴霧剤としては、炭化水素、クロロフルオロカーボン及びヒドロフルオロアルカン噴霧剤又は何らかのこのような噴霧剤の混合物が挙げられる。
【0162】
加圧噴霧式定量吸入器によるなど、エアロゾル送達のための液状噴霧剤中で吸入溶液も処方され得る。また別の製剤では、溶液は、単回投与又は複数回投与装置の何れかとして、適切なpH又は等張性調節が行われるか又は行われない、霧状化された水性懸濁液又は溶液の形態であり得る。
【0163】
4.3 鼻腔送達
担体が固体である鼻腔投与に適切な製剤又は組成物は、スナッフが投与される(即ち、鼻の近くに保持した粉末の容器から鼻腔を通して急速吸入することによる)方式で投与される、粒径が例えば20~500ミクロンの範囲である粗い粉末を含む。適切な粉末組成物としては、例として、気管支内投与に許容可能なラクトース又は他の不活性粉末と徹底的に混合される有効成分の粉末化調製物が挙げられる。粉末組成物は、エアロゾル分散装置を介して投与され得るか、又はカプセルを穿刺し、吸入に適切な一定の流れの中で粉末を噴き出す装置に患者により挿入され得る破壊可能なカプセル中に入れられ得る。代わりに、適切な製剤は、例えば鼻腔スプレー又は点鼻薬として液体担体を含み得、これは有効成分の水性又は油状溶液を含み得る。
【0164】
4.4 頬側及び粘膜送達
医薬組成物は、例えば、水、緩衝液(例えば中性緩衝食塩水又はリン酸緩衝食塩水)、エタノール、鉱物油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えばグルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチド又はアミノ酸、例えばグリシンなど、抗酸化剤、キレート剤、例えばEDTA又はグルタチオンなど及び/又は保存剤の1つ以上をさらに含み得る。さらに、1つ以上の他の有効成分が(必要ではないが)本明細書で提供される医薬組成物中に含まれ得る。
【0165】
4.5 経口送達
一態様では、MC1rアゴニストを含む本発明のペプチドは、炎症性腸疾患、大腸炎又は他のメラノコルチン受容体介在性又は反応性の、消化管の疾患、適応症、状態及び症候群の処置のために、経口投与され、特定の態様では、患者の結腸を含め、腸管の全て又は一部の内腔に実質的にインタクトに送達される。pH依存性放出ポリマーを含むが、限定されない本発明のペプチドを含む遅延放出ポリマー製剤が使用され得る。国際公開PCT/米国特許出願公開第2019/023575号として及び「Melanocortin Receptor-Specific Formulations and Methods for Gastrointestinal Tract-Specific Delivery」という名称で出願された国際公開第2019/183472号の教示及び開示は、完全に示されるかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
全身性投与のために、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の1つ以上のペプチドを含む組成物は、錠剤又はカプセルなどの個々の剤形で経口投与され得る。好ましい一態様では、個々の剤形は、腸溶性コーティング及び任意選択的に取り込みを増加させ、プロテアーゼ分解を減少させ、細胞透過性を向上させるためなどの1つ以上の薬剤を含む。リポソーム性組成物、粘膜付着性又は胃内滞留型送達系、吸収促進剤、多機能性薬物送達システム、浸透促進剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤の同時投与、例えば細胞浸透能を向上させるための様々な化学的又は生物学的補助剤との共有抱合反応、腸溶性コーティング、様々なナノ粒子などを含むが、限定されない様々な送達技術の何れかが、本発明のペプチドの経口送達において使用され得る。
【0167】
5.0 作製方法
一般に、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドは、固相合成によるものを含め、当技術分野で公知の何れかの手段により合成され得、当技術分野で公知の方法に従い、精製され得る。本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドを調製するために、様々なレジン及び試薬を利用する多くの周知の手順の何れかが使用され得る。
【0168】
固相ペプチド合成法は、当技術分野で周知であり、実施されている。このような方法において、本発明のペプチドの合成は、固相法の一般的な原理に従い、伸長するペプチド鎖に1回に1個、所望のアミノ酸残基を連続的に組み込むことによって行われ得る。
【0169】
ペプチドの化学合成において、様々なアミノ酸残基の反応性側鎖基を適切な保護基により保護し、この保護基は、保護基が除去されるまで、その部位で化学反応が起こることを防ぐ。カルボキシル基でその部分が反応する一方で、アミノ酸残基又は断片のアルファアミノ基を保護し、続いてアルファアミノ保護基を選択的に除去して、その部位で行われる続く反応を可能にすることも一般的である。具体的な保護基は、固相合成法及び溶液相合成法で開示されており、公知である。
【0170】
アルファアミノ基は、ウレタン型保護基、例えばベンジルオキシカルボニル(Z)及び置換ベンジルオキシカルボニル、例えばp-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、p-ビフェニル-イソプロポキシカルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)及びp-メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)及び脂肪族ウレタン型保護基、例えばt-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル及びアリルオキシカルボニル(Alloc)を含む適切な保護基により保護され得る。Fmocはアルファアミノ保護に特に適切である。
【0171】
グアニジノ基は、ニトロ、p-トルエンスルホニル(Tos)、Z、ペンタメチルクロマンスルホニル(Pmc)、アダマンチルオキシカルボニル、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)及びBocなどの適切な保護基により保護され得る。Pbf及びPmcは、Argに対する好ましい保護基である。アミン及びカルボン酸基を含む他の反応基が同様に保護され得、例えばGluに対する1-tert-ブチルエステル(OtBu)、Trpに対するBoc、Hisに対するトリチル(Trt)などである。
【0172】
製造者により提供される通りのプログラミングモジュールを使用し、製造者のマニュアルに示されるプロトコールに従い、自動ペプチド合成装置による固相合成を使用して、本明細書に記載の本発明のペプチドの直鎖状ペプチド前駆体を調製した。
【0173】
固相合成は、ペプチドのC末端から開始される。一態様では、ジアミンリンカー又はジアミンエーテルリンカーは、適切なレジンに対してカップリングされ、それにより出発レジンを形成させ、次に保護されたアルファアミノ酸をジアミン又はジアミンエーテルリンカーにカップリングさせる。例えば、アルファアミノ保護アミノ酸をジアミン又はジアミンエーテルリンカーによりp-ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)レジン、2-クロロトリチルクロリドレジン又はオキシムレジンに連結させることにより、このような出発材料を調製し得る。ジアミン及びジアミンエーテルトリチルレジンは市販されており、市販される場合、一般的に使用される。
【0174】
本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、アミノ酸間のペプチド連結の形成のための公知の従来の手順により容易に合成され得る。このような従来の手順は、例えば、そのカルボキシル基及び保護された他の反応基を有するアミノ酸残基の遊離アルファアミノ基と、そのアミノ基又は保護された他の反応基を有する別のアミノ酸残基の遊離一級カルボキシル基との間での縮合を可能にする何らかの溶液相手順を含む。好ましい従来の手順において、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、固相合成により合成され得、当技術分野で公知の方法に従い精製され得る。様々なレジン及び試薬を利用する多くの周知の手順の何れかを使用して、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドを調製し得る。
【0175】
本環状ペプチドを合成するための工程は、1回に1個、連続して、別のアミノ酸残基に所望の配列中の各アミノ酸残基が添加される手順又は所望のアミノ酸配列があるペプチド断片が従来的に最初に合成される手順によって行われ得る。次に、本発明の環状ペプチドを得るために、得られた直鎖状ペプチドを溶液相で環化する。
【0176】
一態様では、本発明のペプチドを作製するために固相合成が使用される。この方法において、使用される保護基スキームに依存して、Fmoc又はBocなど、N末端保護基(PG)が使用され得る。例えばTrp(Boc)、Arg(Pbf)、His(Trt)、Glu(OtBu)などとして、反応基があるアミノ酸側鎖がオルソゴナルにさらに保護され得る。一般的に、保護基は、オルソゴナル保護基の除去を含め、固相レジンからのペプチドの切断時に、ペプチドが包括的に脱保護されるように選択される。
【0177】
固体支持体(太線の丸により以下の図で示される)は、所望の反応基で官能化された小さいポリマー性レジンビーズである。一態様では、反応基は、ジアミン基を含み、好ましくは以下を含む基から選択される:
-NH-(CH2~8-NH-、又は
-NH-(CH2~5-O-(CH2~5-NH-。
【0178】
以下で示されるスキームにおいて、示される反応性ジアミン基は、-NH-(CH2~8-NH-であるが、反応基-NH-(CH2~5-O-(CH2~5-NH-が同様に使用され得ることを理解されたい。
【0179】
ペプチド鎖N末端にカップリングしようとする各アミノ酸は、そのN末端及びその側鎖においてアミノ酸が反応基を含有する場合、保護されなければならない。N末端は、何らかの適切な保護基を使用することにより保護され得;Boc及びFmocは、固相ペプチド合成において一般的に使用される保護基であり、本発明の実施において同様に使用され得る。以下で見られ得るように、交互のN末端脱保護及びカップリング反応の反復サイクルにより固相ペプチド合成が従来的に進行する。しかし、アミドレジンを使用する従来の固相ペプチド合成とは異なり、本発明の一実施形態では、-NH-(CH2~8-NH-又は-NH-(CH2~5-O-(CH2~5-NH-を含み得るジアミンリンカーを伴うレジンが使用される。
【0180】
一実施形態では、合成を容易にするために、予め組み込まれているトリチル基が使用され;例として、限定ではなく、出発レジンは、
1,4-ジアミノブタントリチルレジン(ChemImpex、カタログ番号04303)、
1,2-ジアミノエタントリチルレジン(ChemImpex、カタログ番号04306)、又は
1,5-ジアミノペンタントリチルレジン(ChemImpex、カタログ番号04308)
などのジアミンリンカー基をさらに含むトリチルレジンであり得る。
【0181】
しかし、他のレジンが使用され得、他のジアミン又はジアミンエーテルリンカー基が使用され得る。必要に応じて、所望のジアミンリンカー基を提供するために、特異的なレジンが作製され得る。一態様では、2-クロロ-トリチルなどのレジンが利用され、最初の工程は、選択されたジアミン又はジアミンエーテルリンカー基をレジンに連結し、その後、合成を開始することである。
【化17】
【0182】
例として、出発レジン1,4-ジアミノブタントリチルレジン(ChemImpex、カタログ番号04303、0.77mmol/g、0.4mmol)をペプチド合成装置上に載せる。次の連続的なアミノ酸残基は、カルボキシ末端アミノ酸であり、これは例えばTrpであり得る。その場合、Trp(Boc)などの保護されたTrpが使用され、その結果、-Trp(Boc)保護基の脱保護後に-Trp(Boc)-NH-(CH-NH-レジンが得られる。他のジアミンリンカーが使用され得、同様にジアミンエーテルリンカーが使用され得ることは容易に分かり得る。
【0183】
各脱保護工程は、例えばピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの使用を含み得、続いて、必要に応じて反復サイクルで、DMF又はメチルtert-ブチルエーテル(MBTE)などでの洗浄サイクルを行う。
【0184】
各カップリング工程は、とりわけ、ジクロロメタン(DCM)、HOBT、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、DMF又は2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)を含むカップリング試薬とともに、例えば所望の保護されたアミノ酸、例えばFmoc-AA-OHなどを使用することを含み得る。カップリング後、DMF又はMBTEなどを用いて洗浄サイクルを使用し得る。
【0185】
合成されたペプチドをレジンに又は溶液中でカップリングする一方で、N末端は、アセチル化などにより修飾され得る。一態様では、N末端での保護基の除去後、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基の存在下でレジン結合ペプチドをジクロロメタン中で無水酢酸と反応させる方法が使用される。N末端アセチル化の他の方法は、溶液相アセチル化を含め、当技術分野で公知であり、使用され得る。
【0186】
適切な温度、例えば室温などで、20分間など適切な時間にわたり、レジン結合ペプチドをトリフルオロ酢酸(TFA)、トリイソプロピルシラン(TIS)及び水の混合物、例えばTFA/TIS/HO(95:2.5:2.5、v/v/v)の混合物と混合するなど、当技術分野で公知の何れかの手段により、得られたレジン結合ペプチドをレジンから切断し得る。必要に応じて、TFA/TIS/HOの混合物とレジン結合ペプチドを混合する1回以上のさらなるサイクルをろ過後に行い得る。室温などで、2時間にわたり、合わせたろ液を保管し得、次いでN気流でパージすることによって濃縮し得る。次に、切断した直鎖状ペプチドを冷エーテルから沈殿させ得、次に得られた残基を50%t-ブタノール/水中で溶解させ、凍結乾燥して直鎖状ペプチドを得る。
【0187】
次に、アミド結合濃縮を通した、環化のための従来の反応手段により、得られた粗製直鎖状ペプチドを溶液中で環化し得る。直鎖状ペプチドを最初にDMF、テトラヒドロフラン(THF)、DCM又は1-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの適切な溶媒中で溶解させる。適切な環状カップリング試薬としては、例えば2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、HBTU、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TATU)、2-(2-オキソ-1(2H)-ピリジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TPTU)又はN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド/1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCCI/HOBt)が挙げられる。カップリングは従来、DIPEA、sym-コリジン又はN-メチルモルホリン(NMM)などの適切な塩基の使用によって開始される。
【0188】
溶液環化後、得られた混合物を既知の手段によって濃縮し得、次に、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を利用した研和などにより、部分的に精製し得る。次に、得られた分画をプールし、凍結乾燥し得る。
【0189】
本発明のペプチド番号60に対して、ペプチド合成装置上に1,4-ジアミノブタントリチルレジン(ChemImpex、カタログ番号04303、0.77mmol/g、0.4mmol)の出発レジンを載せることで合成を開始した。アミノ酸Fmoc-Trp(Boc)、Fmoc-Arg(Pbf)、Fmoc-D-Phe(4-F)、Fmoc-His(Trt)、Fmoc-Glu(OtBu)及びFmoc-Nleを個々に順にカップリングさせ、それぞれの個々のカップリング後に脱保護し、適切な時間にわたるDMF中の無水酢酸及びピリジンの使用などにより、Fmoc-Nleを脱保護し、その結果アミンがアシル化されて、オルソゴナルに保護されたレジン結合直鎖状ペプチドを得た。
Ac-Nle-Glu(OtBu)-His(Trt)-D-Phe(4-F)-Arg(Pbf)-Trp(Boc)-NH(CHNH-レジン
【0190】
本ペプチド-レジンをTFA/TIS/HO(95:2.5:2.5、v/v/v)を含む8mLの切断溶液と20分間混合し、これは、オルソゴナル保護基も切断した。次に、さらに20分間にわたり8mLの新鮮な切断溶液と混合することにより、混合を反復した。合わせたろ液を室温で2時間保管し、その後、パージN気流の使用により、約25mLに濃縮した。切断された直鎖状ペプチドを冷エーテルから沈殿させた。残渣を50%t-ブタノール/水中で溶解させ、凍結乾燥して、直鎖状ペプチドを得た(約0.4mmol)。
Ac-Nle-Glu-His-D-Phe(4-F)-Arg-Trp-NH(CHNH
【0191】
3mLのDMF及び3mLのDCMの混合液中で粗製直鎖状ペプチドを溶解させ、得られた溶液を氷水浴で冷却した。冷溶液に、0.35mLのEDC(0.18g、0.9mmol)及びHOAt(DMF中の1.5mLの0.6M溶液、0.9mmol)を添加し、続いてジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(0.35mL、2.5mmol)をpH9になるまで添加した。室温まで温めながら反応混合物を撹拌し、室温で一晩撹拌し続けた。LC/MS分析から、環化が完了したことが示された。2mLの1N HClを反応混合物に添加し、さらに2時間撹拌し、次にpHをpH3~pH4に調整した。pH調整された反応混合物を分取HPLCに直接載せ、得られた純粋な分画をプールし、凍結乾燥し、97.2mg(収率19.8%)の環状ペプチドを得た。
【化18】
【0192】
18カラムなどの適切なカラムを使用して、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により、最終的精製も行い得るか、又はペプチドのサイズ若しくは電荷に基づく方法などの分離若しくは精製の他の方法も使用し得る。精製したら、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アミノ酸分析、質量分析など、何らかの多くの方法により、ペプチドの特徴を調べ得る。
【0193】
Hisの代わりにMet(O)に置き換え、D-Phe(4-F)の代わりにD-Nalに置き換えて、上記で示されるように本発明のペプチド番号54を合成した。合成後、200mLのDMF/THF混合液(3:7、v/v)中でのPyBop(3.3g、6mmol)との混合により、レジンからの切断及び包括的脱保護、粗製直鎖状ペプチドの環化(約6mmol)を開始し、得られた懸濁液を氷冷水浴中で冷却した。40mLのDMF/THF(3:7、v/v)の混合液中のPyBop(6.4g、12mmol)及びNMM(6.52mL、59.4mmol、9.9eq)の混合物を冷溶液に添加した。これを3時間反応させ、反応混合物をロータリーエバポレーター上で濃縮し、次いで冷MTBEとともに3~4回研和した。得られた油性残渣を20mLの50%AcOH/水中で溶解させ、一晩保管し、次いでHPLC精製に供した。純粋な分画をプールし、凍結乾燥して、670mgのペプチド番号54(収率9.7%)を得た。
【0194】
それぞれが5個のアミノ酸から構成され、ペプチド番号71の場合にはN末端基がヘプタノイルであり、ペプチド番号72の場合には3-フェニルプロパノイルであることを除き、ペプチド番号60に対して上記で示されるように本発明のペプチド番号71及び72を合成した。各例において、合成、レジンからの切断及び包括的脱保護後、100mLのDMF/THF混合液(3:7、v/v)中でのPyBop(1.6g、3mmol)との混合により、粗製直鎖状ペプチド(約3mmol)の環化を開始させ、得られた懸濁液を氷冷水浴中で冷却した。20mLのDMF/THF(3:7、v/v)の混合液中のPyBop(3.2g、6mmol)及びNMM(3.26mL、29.7mmol、9.9eq)の混合物を冷溶液に添加した。これを3時間反応させ、反応混合物をロータリーエバポレーター上で濃縮し、次いで冷MTBEで3~4回研和した。油性残渣を10mLの50%AcOH/水中で溶解させ、一晩保管し、次いでHPLC精製に供した。純粋な分画をプールし、凍結乾燥して、ペプチド番号71(312mg、収率8.8%)及びペプチド番号72(320mg、収率8.9%)を生成させた。
【0195】
ペプチド番号75が5個のアミノ酸からなり、N末端基が2-ナフチルアセチルであることを除き、ペプチド番号60に対して上記で示されるようにペプチド番号77を合成した。140mLのDMF/THF混合液(3:7、v/v)中でのPyBop(4.16g、4mmol)との混合により、粗製直鎖状ペプチド(約4mmol)の環化を開始させ、得られた懸濁液を氷冷水浴中で冷却した。20mLのDMF/THF(3:7、v/v)の混合液中のPyBop(4.16g、8mmol)及びNMM(6.52mL、39.6mmol、9.9eq)の混合物を冷溶液に添加した。これを3時間反応させ、反応混合物をロータリーエバポレーター上で濃縮し、次いで冷MTBEで3~4回研和した。油性残渣を15mLの50%AcOH/水中で溶解させ、一晩保管し、次いでHPLC精製に供した。純粋な分画をプールし、凍結乾燥して、ペプチド番号77(586mg、収率11.8%)を生成させた。
【0196】
オルソゴナル保護基も必要に応じて使用し得る。例えば、本発明のペプチドは、アミノ基含有側鎖を有する複数のアミノ酸を含有する。アミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸に対して使用される、異なる反応条件下で切断可能である、特定のアミノ酸でのアリル-Alloc保護スキーム及びオルソゴナル保護基を含め、様々な保護基の何れかを使用し得る。従って、例えば、Fmoc-Glu(OAll)-OHアミノ酸(Glu(OAll)はグルタミン酸5-アリルエステルを指す)は、環化時にC末端ジアミン基に連結される位置に対して使用され得、一方でアミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸は、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Lys(Pbf)-OH、Fmoc-Dab(Pbf)-OHなどを伴う、異なる及びオルソゴナルな保護基を有し得る。他の保護基が同様に使用され得;例として、限定ではないが、Hisの側鎖とともに、Mtt(4-メチルトリチル)又はMtt/OPp(4-メチルトリチル/2-フェニルイソプロピル)が使用され得、Mtt又はMtt/OPpの切断に適切な条件を使用して切断可能ではない他の位置に対してオルソゴナル保護基が利用される。
【0197】
固相合成中又はレジンからの除去後の何れかに、ペプチド中の反応基を選択的に修飾し得る。例えば、アセチル化などのN末端修飾を得るために、レジン上にあるときに、ペプチドを修飾し得るか、又は切断試薬の使用によりレジンから除去し、次いで修飾し得る。同様に、アミノ酸の側鎖を修飾するための方法は、ペプチド合成の熟練者にとって周知である。ペプチド上に存在する反応基に対してなされる修飾の選択は、一部、ペプチドにおいて所望される特徴によって決定される。
【0198】
主に固相Fmoc化学に言及して合成が記載されている一方で、例として、限定ではなく、固相ペプチド合成を利用して使用され得る何れかの方法、Boc化学、溶液化学、様々な保護基スキームの何れか、断片縮合、レジン上又はレジンからの除去後の何れかの環化及び他の化学及び合成方法を使用する方法など、本発明の環状ペプチドを作製するために他の化学及び合成方法が使用され得ることを理解されたい。
【0199】
6.0 製剤
所望の投与経路に依存して、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の1つ以上の環状ペプチドを含む組成物の製剤は変動し得る。従って、本製剤は、皮下注射、徐放皮下注射、静脈内注射、鼻腔噴霧適用、吸入適用、胃腸疾患の処置のための経口放出を含むが、限定されない経口投与、頬側又は他の粘膜適用、他の経皮適用などに適切であり得る。一般に、製剤は、本発明のペプチドの投与の何れかの形態に対して使用され得る。
【0200】
6.1 環状ペプチドの塩形態
本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、何らかの薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む薬学的に許容可能な無毒性塩基又は酸から調製される塩を指す。無機塩基由来の塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容可能な有機無毒性塩基由来の塩としては、一級、二級及び三級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換レジン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミンレジン、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。
【0201】
本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドが塩基性である場合、無機及び有機酸を含む薬学的に許容可能な無毒性酸から酸付加塩が調製され得る。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファスルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、TFAなどが挙げられる。本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドの酸付加塩は、ペプチド及び過剰な酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、TFA、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸又はメタンスルホン酸などから適切な溶媒中で調製される。
【0202】
酢酸塩、酢酸アンモニウム及びTFA塩の形態は、特に有用である。本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドが酸性部分を含む場合、適切な薬学的に許容可能な塩としては、アルカリ金属塩、例えばナトリウム若しくはカリウム塩又はアルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩若しくはマグネシウム塩が挙げられ得る。式I~Vの特定のペプチドは、遊離ペプチドの溶媒和物又は本化合物の塩の溶媒和物を含め、溶媒和形態及び非溶媒和物形態で存在し得ることも理解されたい。「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物及び1つ以上の薬学的に許容可能な溶媒分子、例えばエタノールを含む分子複合体を記載するために本明細書で使用される。「水和物」という用語は、前記溶媒が水である場合に使用される。異なる多形の混合物を含む全ての多形は、特許請求されるペプチドの範囲内に含まれることを理解されたい。
【0203】
6.2 医薬組成物
本発明は、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドと薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。担体は、液体製剤であり得、好ましくは緩衝され、等張性である水溶液である。薬学的に許容可能な担体は、本明細書で後に記載されるように、賦形剤、例えば希釈剤など、担体など、及び添加剤、例えば安定化剤、保存剤、可溶化剤、緩衝液なども含む。
【0204】
本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチド組成物は、所望され得る場合、賦形剤、例えば希釈剤、担体など、及び添加剤、例えば安定化剤、保存剤、可溶化剤、緩衝液などを含む1つ以上の薬学的に許容可能な担体と一緒に、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の少なくとも1つの環状ペプチドを含む医薬組成物に処方され得るか又は化合され得る。処方賦形剤は、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを含み得る。注射又は他の液体投与製剤に対して、少なくとも1つ以上の緩衝構成成分を含有する水が好ましく、安定化剤、保存剤及び可溶化剤も使用され得る。固体投与製剤に対して、デンプン、糖、セルロース誘導体、脂肪酸など、様々な増粘剤、充填剤、増量剤及び担体添加物の何れかが使用され得る。局所投与製剤に対して、様々なクリーム、軟膏、ゲル、ローションなどの何れかを使用し得る。殆どの医薬製剤に対して、不活性成分が、調製物の重量又は体積でより大きい部分を構成する。医薬製剤に対して、投与量が、長時間にわたり本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドの送達を提供するために処方され得るように、様々な定量放出、徐放又は持続放出製剤及び添加剤の何れかを使用し得ることも企図される。
【0205】
一般に、患者に投与される本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドの実際の量は、投与形式、使用される製剤及び所望の反応に依存して幅広い範囲の間で変動する。
【0206】
実際の使用において、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、従来の医薬品配合技術に従う医薬品担体との混合において有効成分として組み合わせられ得る。担体は、投与、例えば、経口、非経口(静脈内を含む)、尿道、膣、鼻腔、頬側、舌下などに望ましい調製物の形態に依存して、多岐にわたる形態をとり得る。経口剤形のための組成物を調製することにおいて、例えば懸濁液、エリキシル及び溶液などの経口液体調製物の場合、例えば水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤など;又は例えば粉末、硬及び軟カプセル及び錠剤などの経口固体調製物の場合、例えばデンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤などの担体など、通常の医薬媒体の何れかが使用され得る。
【0207】
錠剤及びカプセルは、投与が容易であるため、有利な経口単位剤形に相当する。所望される場合、錠剤は、標準的な水性又は非水性技術によりコーティングされ得る。このような治療的に有用な組成物中の活性ペプチドの量は、有効な投与量が得られるようなものである。別の有利な単位剤形において、シート、オブラート、錠剤など、舌下用構築物が使用され得る。
【0208】
錠剤、丸剤、カプセルなどは、結合剤、例えばポビドン、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチンなど;希釈剤;充填剤、例えば微結晶セルロースなど;賦形剤、例えばリン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン又はアルギン酸など;保存剤;着色剤;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど;及び甘味剤、例えばスクロース、ラクトース又はサッカリンなども含有し得る。単位剤形がカプセルである場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、油脂などの液体担体を含有し得る。コーティングとして又は剤形の物理的形態を修飾するために様々な他の材料が利用され得る。例えば、錠剤は、セラック、糖又は両方でコーティングされ得る。シロップ剤又はエリキシル剤は、有効成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン、顔料及びチェリー又はオレンジ風味などの香味剤を含有し得る。
【0209】
経口送達のために処方される場合、本ペプチドは、腸溶保護剤中で包まれるように、より好ましくは錠剤又はカプセルが胃に移行し、任意選択的に小腸の部分にさらに移行するまで放出されないように、処方され、作製され得る。本願の文脈において、腸溶コーティング又は材料という用語は、基本的にインタクトに胃を通過するが、胃を通過した後に崩壊して、活性製剤原料を放出する、コーティング又は材料を指すと理解される。使用され得る材料としては、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチル-エチルセルローススクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ポリ酢酸フタル酸ビニル及びメタクリル酸-メタクリル酸メチルコポリマーが挙げられる。使用される腸溶コーティングは、胃の外側の部位で主に剤形の溶解を促進し、少なくともおよそ5.5のpH、より好ましくは約6.0~約8.0のpHで腸溶コーティングが溶解するように選択され得る。
【0210】
腸溶コーティングの溶解時に腸における取り込みを向上させるために、様々な浸透促進剤の何れかが使用され得る。一態様では、浸透促進剤は、傍細胞輸送系又は経細胞輸送系の何れかを向上させる。このような浸透促進剤の代表的な非限定例としては、カルシウムキレート剤、胆汁酸塩(コール酸ナトリウムなど)及び脂肪酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、腸プロテアーゼに対する基質として作用するペプチド又はポリペプチドがさらに添加される。
【0211】
環状ペプチドは、非経口的にも投与され得る。これらの活性ペプチドの溶液又は懸濁液は、ヒドロキシ-プロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水の中で調製され得る。分散液もグリセロール、液体ポリエチレングリコール及び油中のそれらの混合物中で調製され得る。これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために任意選択的に保存剤を含有し得る。
【0212】
注射可能な使用に適切な医薬品形態としては、滅菌水溶液又は分散液及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、この形態は、無菌性でなければならず、シリンジにより投与され得る程度に流動性でなければならない。形態は、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングリコール又は液体ポリエチレングリコール、適切なその混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0213】
本明細書で開示される環状ペプチドは、鼻腔投与により治療的に適用され得る。本ペプチドは、水溶液、例えば食塩水、クエン酸塩又は他の一般的な賦形剤又は保存剤並びに吸収若しくは浸透促進剤、経細胞浸透促進剤、粘膜付着性ポリマー及び様々な担体系を含む溶液中などであり得る。本ペプチドは、乾燥又は粉末製剤でもあり得る。本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、ペプチド薬を含む薬物の有効な鼻腔吸収を増加させる様々な薬剤の何れかとともに処方され得る。これらの薬剤は、粘膜への許容できない損傷なく鼻腔吸収を増加させ得る。とりわけ、米国特許第5,693,608号、同第5,977,070号及び同第5,908,825号は、吸収促進剤を含め、使用され得る多くの医薬組成物を教示し、前述のもののそれぞれの教示及びそこで引用される全ての参考文献及び特許が参照により組み込まれる。
【0214】
水溶液において、食塩水、酢酸、リン酸、クエン酸、酢酸又は他の緩衝剤により環状ペプチドが適切に緩衝され得る場合、これは何らかの生理学的に許容可能なpHであり得、一般に約pH4~約pH7である。リン酸緩衝食塩水、食塩水及び酢酸緩衝液など、緩衝剤の組み合わせも使用され得る。食塩水の場合、0.9%食塩水溶液が使用され得る。酢酸、リン酸、クエン酸などの場合、50mM溶液が使用され得る。緩衝剤に加えて、細菌及び他の微生物増殖を防ぐか又は制限するために、適切な保存剤が使用され得る。使用され得るあるこのような保存剤は0.05%塩化ベンザルコニウムである。
【0215】
代替的な実施形態では、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、肺に直接投与され得る。吸気中に患者により発動させられる場合に本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドの定量ボーラスの自己投与を可能にする装置である噴霧式定量吸入器により、肺内投与が行われ得る。この実施形態の一態様では、本環状ペプチドは、粒子が、肺表面上に定着し、呼息されないために十分な質量を有するが、肺に到達する前に気道の表面上にそれらが沈着しないように十分に小さくなるような、乾燥した粒状の形態、例えば約0.5~6.0μmの粒子、であり得る。様々な異なる技術の何れかが乾燥粉末微粒子の作製のために使用され得、これはマイクロ製粉、噴霧乾燥及び急速凍結エアロゾルとそれに続く凍結乾燥を含むが、限定されない。微粒子を用いて、本ペプチドは、肺の深部に沈着し得、それにより血流への急速で効率的な吸収が起こる。さらに、このようなアプローチでは、経皮、鼻腔又は経口粘膜送達経路の場合に時折あるように、浸透促進剤は求められない。噴霧剤に基づくエアロゾル、ネブライザー、単回投与乾燥粉末吸入器及び複数回投与乾燥粉末吸入器を含め、様々な吸入器の何れかが使用され得る。現在の使用における一般的な装置は、噴霧式定量吸入器を含み、これは、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの処置のための医薬品を送達するために使用される。好ましい装置は乾燥粉末吸入器を含み、常に約6.0μm未満である粒径の微細粉末の雲状体又はエアロゾルを形成するように設計される。
【0216】
平均粒径分布を含む微粒子サイズは、作製方法により制御され得る。微小製粉の場合、フライスヘッドのサイズ、ローターの速度、処理の時間などが微粒子サイズを制御する。噴霧乾燥の場合、ノズルサイズ、流速、乾燥機の熱などが微粒子サイズを制御する。迅速凍結エアロゾルとそれに続く凍結乾燥による作製の場合、ノズルサイズ、流速、エアロゾル化溶液の濃度などが、微粒子サイズを制御する。これらのパラメーター及び他のものが微粒子サイズを制御するために使用され得る。
【0217】
本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、持続放出製剤の注射により治療的に投与され得る。一実施形態では、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、ポリエチレングリコール3350などのポリエチレングリコール及び任意選択的に、塩、ポリソルベート80、pHを調整するための水酸化ナトリウム又は塩酸などの賦形剤を含むが、限定されない、1つ以上のさらなる賦形剤及び保存剤とともに、製剤の、臀部又は三角筋などにおける深部筋肉内注射のために処方される。別の実施形態では、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、ポリマー骨格中の乳酸のパーセンテージが何れかに変動する自己触媒型ポリ(オルトエステル)であり得るポリ(オルトエステル)及び任意選択的に1つ以上のさらなる賦形剤とともに処方される。一実施形態では、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーが使用される。一般に、一態様では、持続放出性の注射用製剤中で、好ましくは接着性ポリマーでもある多くの注射可能な及び生体分解性のポリマーの何れかが使用され得る。代わりに、皮下注射を可能にする製剤を含め、他の持続放出製剤が使用され得、他の製剤は、ナノ/ミクロスフェア(PLGAポリマーを含む組成物など)、リポソーム、エマルジョン(油中水エマルジョンなど)、ゲル、不溶性の塩又は油中の懸濁液の1つ以上を含み得る。この製剤は、環状ペプチドの濃度及び量、使用される物質の持続放出速度及び当業者にとって公知の他の因子に依存して、毎日、毎週、毎月又は他の周期に基づき注射が求められるようなものであり得る。
【0218】
6.3 投与経路
本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の1つ以上のペプチドを含む組成物が注射により投与される場合、注射は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内注射又は当技術分野で公知の他の手段であり得る。本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチドは、錠剤、カプセル、カプレット、懸濁液、粉末、凍結乾燥調製物、坐薬、点眼薬、皮膚パッチ、経口可溶性製剤、スプレー、エアロゾルなどとしての製剤を含むが、限定されない、当技術分野で公知の何らかの手段により処方され得、緩衝剤、結合剤、賦形剤、安定化剤、抗酸化剤及び当技術分野で公知の他の薬剤と混合され、それらとともに処方され得る。一般に、本発明のペプチドが細胞の表皮層を横切って導入される投与経路の何れかが使用され得る。従って、投与手段は、粘膜、頬側投与、経口投与、皮膚投与、吸入投与、鼻腔投与、尿道投与、膣投与などを通した投与を含み得る。
【0219】
6.4 治療的有効量
一般に、患者に投与される本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドの実際の量は、投与方式、使用される製剤及び所望の反応に依存して非常に広い範囲の間で変動する。処置のための投与量は、所望の治療効果をもたらすのに十分な量の、前述の手段の何れか又は当技術分野で公知の何れかの他の手段による投与である。本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式の環状ペプチドは、一般に、非常に活性が高い。例えば、環状ペプチドは、選択される具体的なペプチド、所望の治療反応、投与経路、製剤及び当業者にとって公知の他の因子に依存して、約0.001、0.01、0.1、0.5又は1μg/kg体重で投与され得る。
【0220】
7.0 ペプチドの評価において使用される試験及びアッセイ
本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のメラノコルチン受容体特異的ペプチドは、結合、機能状態及び有効性を決定するために、様々なアッセイ系及び動物モデルにより試験され得る。
【0221】
7.1 CEREPで実施されるアゴニスト活性に対するアッセイ
CEREP(Eurofins CEREP SA, Celle-Levescault, France)でHTRF検出方法を使用してcAMP産生におけるそれらの効果を測定することにより、メラノコルチン受容体における化合物のアゴニスト活性の評価を決定した。20mM HEPES(pH7.4)及び500μM IBMXを補足したHBSS緩衝液(Invitrogen)中で細胞を懸濁し、次いでマイクロプレート中で分配し、HBSS(基底対照)、試験化合物又は参照アゴニストの存在下で温置した。以下の表1には、温置時間、温度、細胞数、参照アゴニスト及び細胞株情報が含まれる。刺激された対照測定の場合、個別のアッセイウェルは、参照化合物を含有する。温置後、細胞を溶解させ、蛍光アクセプター(D-標識されたcAMP)及び蛍光ドナー(ユーロピウムクリプテートで標識された抗cAMP抗体)を添加した。室温で60分後、マイクロプレートリーダー(Envision, Perkin Elmer)を使用して、励起波長337nm及び発光波長620及び665nmで蛍光移動を測定した。665nmで測定されたシグナルを620nmで測定したもので除すことにより(比)cAMP濃度を決定した。
【0222】
この結果は、参照物1μMに対する対照反応のパーセントとして表す。いくつかの濃度で各実験において標準参照アゴニストを試験して濃度反応曲線を作成し、そこからそのEC50値を計算する。
【0223】
【表7】
【0224】
7.2 CEREPで実施されるアンタゴニスト活性に対するアッセイ
このアッセイは、HTRF検出方法を使用してcAMP産生における効果を測定することによって決定されるメラノコルチン受容体での化合物のアンタゴニスト活性を評価するために利用された。
【0225】
20mM HEPES(pH7.4)及び500μM IBMXを補足したHBSS緩衝液(Invitrogen)中でメラノコルチン受容体がある所望の細胞を懸濁し、次に、HBSS(基底対照)、試験化合物又は参照アゴニストの存在下においてマイクロプレート中で分配する。その後、cAMP産生を刺激するためにアゴニストの1つの濃度を添加する。基底対照測定の場合、個別アッセイウェルは参照アゴニストを含有しない。以下の表2には、温置時間、温度、細胞数、参照アゴニスト及び細胞株情報が含まれる。
【0226】
温置後、細胞を溶解させ、蛍光アクセプター(D-標識されたcAMP)及び蛍光ドナー(ユーロピウムクリプテートで標識された抗cAMP抗体)を添加する。室温で60分後、マイクロプレートリーダー(Envision, Perkin Elmer)を使用して、励起波長337nm及び発光波長620及び665nmで蛍光移動を測定する。665nmで測定されたシグナルを620nmで測定したもので除すことにより(比)cAMP濃度を決定する。結果は、参照アゴニストに対する対照反応のパーセント阻害として表す。いくつかの濃度で各実験において標準参照アゴニストを試験して濃度反応曲線を作成し、そこからそのIC50値を計算する。
【0227】
【表8】
【0228】
7.3 アゴニスト活性に対する代替的アッセイ
組み換えMC3r若しくはMC4rを発現するHEK-293細胞又はネイティブMC1rを発現するB16-F10(マウス)及びHBL(ヒト)細胞株の何れかで機能的反応を誘発するためのペプチドの能力の尺度として、細胞内cAMPの蓄積を調べた。酵素不含細胞解離緩衝液中での温置によってコンフルエント細胞を培養プレートから剥がした。10mM HEPES(pH7.5)、1mM MgCl、1mMグルタミン、0.5%アルブミン及び0.3mM 3-イソブチル-1-メチル-キサンチン(IBMX)、ホスホジエステラーゼ阻害剤を含有するハンクス平衡塩溶液中で、分散させた細胞を懸濁した。細胞0.5×10個/ウェルの密度で細胞を96ウェルプレートに分配し、10分間にわたり予め温置した。200μLの総アッセイ体積で、0.05~5000nMの濃度範囲のDMSO中で溶解させたペプチド(最終DMSO濃度1%)に細胞を37℃で15分間、曝露した。参照アゴニストとしてNDP-α-MSHを使用した。Perkin-Elmer Victorプレートリーダー上で665及び620nMにおいて読み取ったプレートを用いて、クリプテート標識された抗cAMP及びD-標識されたcAMPを利用して、Cisbio BioassaysからのHTRF(登録商標)cAMP細胞に基づくアッセイ系により、cAMPレベルを決定した。Graph-Pad Prism(登録商標)ソフトウェアを用いて非線形回帰分析によってデータ分析を行った。試験ペプチドの最大有効性を参照物メラノコルチンアゴニストNDP-α-MSHにより達成されるものと比較した。
【0229】
7.4 高及び低密度hMC4r機能アッセイ
ヒトMC4rを遺伝子移入したHEK293細胞株(Palatin Technologies, USより、University of Michiganからのライセンスあり)を使用した。T-REx(商標)System, Invitrogenを使用することにより、HEK293にヒトMC4rを導入した。T-REx(商標)Systemは、大腸菌(E. coli)Tn10によりコードされるテトラサイクリン(Tet)耐性オペロンからの調節エレメントを使用するテトラサイクリン調節型の哺乳動物発現系を使用する。T-REx(商標)Systemの使用により、関心のある遺伝子、ヒトMC4r遺伝子、の発現が、テトラサイクリン又はドキシサイクリンの非存在下で阻止され、テトラサイクリン又はドキシサイクリンの存在下で誘導される(Invitrogenにより刊行されたT-REx(商標)System Manualを参照されたい)。
【0230】
5%CO及び37℃で95%湿度において、L-グルタミン(Gibco 25030)、10%子牛血清(FBS)、200μg/mLゼオシン(Invitrogen 46-0072)及び6mg/mLブラスチシジン(Invitrogen 46-1120)を補充したDMEM(Gibco 11965)中でHEK293-T-REx-MC4r細胞を培養した。MC4r発現を誘導するために、5%CO中で37℃において16~18時間、2つの濃度のドキシサイクリン(低密度hMC4r系を提供するために0.1ng/mL、高密度系hMC4rを提供するために10ng/mL)とともに、75%コンフルエンスの細胞のT-150フラスコを温置した。アッセイ日に、細胞をPBS(Gibco 14190)で洗浄し、細胞解離緩衝液(Gibco 13150-016)を使用して回収し、次いで遠心分離し、ハンクス平衡塩溶液(+Ca、+Mg)(Gibco 14025)、10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)(pH7.4)(Sigma H0887)、1mM L-グルタミン(Gibco 25030)、1mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma A3311)及び0.3mM 3-イソブチル-1-メチル-キサンチン(IBMX)中で再懸濁した。
【0231】
次に、細胞198μL(約5×10)/ウェルで96ウェルプレート(BD353916)に細胞を分配し、37℃で10分間温置した。NDP-α-MSHを参照アゴニストとして使用し、200μLの総アッセイ体積で、10-5~10-13Mの濃度範囲においてDMSO中で溶解させたペプチド(最終DMSO濃度1%)に細胞を37℃で15分間曝露した。15μLの溶解緩衝液/ウェルを添加することにより、反応を停止させ、プレートを室温で30分間振盪した。
【0232】
665及び620nMでのPerkin-Elmer Victorプレートリーダー上でのプレート読み取りを用いて、クリプテート標識された抗cAMP及びd2-標識されたcAMPを利用して、Cisbio BioassaysからのHTRF(登録商標)cAMP細胞ベースアッセイ系により、cAMPレベルを決定した。Graph-Pad Prism(登録商標)ソフトウェアを用いて非線形回帰分析によってデータ分析を行った。試験ペプチドの最大有効性を参照物メラノコルチンアゴニストNDP-α-MSHにより達成されるものと比較した。
【0233】
MC4rのアゴニスト刺激は、アデノシン三リン酸(ATP)からの3’,5’-環状アデノシン一リン酸(cAMP)の形成を触媒する酵素であるアデニル酸シクラーゼを活性化する。従って、MC4rのアゴニスト刺激は、cAMPレベルを上昇させる。cAMP dynamic 2HTRFキットを使用してcAMP-レベルを測定した(CisBio カタログ番号62AM4PEC;CisBioにより公開されるマニュアルを参照されたい)。プレート対照(0%について1%DMSO、100%について400nM NDP-α-MSH)及び712nM~0.04nM cAMPの範囲の較正曲線(CisBio HTRFキットにおいて記載のように)に対して、cAMPレベルを正規化した。振盪装置上で室温において1時間、プレートを温置し、665及び620nmでPerkin-Elmer Victorプレートリーダー上で読み取った。次に、CisBio HTRFキットにおいて記載のように蛍光比を計算し、可変勾配の用量反応曲線を使用し、計算したcAMP濃度に基づいて、GraphPad Prismソフトウェアを用いて、cAMP濃度に対する蛍光パーセント値の変化をプロットし、EC50及びEmax値を決定した。
【0234】
8.0 ペプチド構造の例
一態様では、環状部分内の配列His-Phe-Arg-Trp由来のコア配列又はその配列の修飾を含有する環状ペプチドが提供され、ペプチドは、N末端側、His(又はHisの誘導体、修飾又はそれに対する置換)のすぐ隣のアミノ酸の側鎖及びそのペプチドのC末端基を通して環化される。環状ペプチドは、環状部分内で5個のアミノ酸を含有する少なくとも1個の環状ペンタペプチドであり、任意選択的に環状ヘキサペプチド、ヘプタペプチド又はより大きい環状ペプチドであり、N末端上の環状部分の外側に1個以上のさらなるアミノ酸残基を有する。
【0235】
MC1r、MC3r若しくはMC54アゴニスト又はそれらの組み合わせを同時に含み得るMC4rアンタゴニストの場合、いくつかの態様でのHis-Phe-Arg-Trp由来のコア配列は、L-PheではなくPhe位置でD-Pheを、D-Nal1若しくはD-Nal2など、Phe位置で、Nal1又はNal2置換を含むか、又は代わりに、置換されたL-Phe又はD-Pheなど、Phe位置において置換Pheを含み得る。コア配列において残りのアミノ酸に対して様々なアミノ酸が利用され得る。一般に、His位置は置換又は未置換Proであり得るか、又は少なくとも1個の一級アミン、二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコール、エーテル、スルフィド、スルホン、スルホキシド、カルバモイル又はカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸であり得る。Arg位置は置換又は未置換Proであり得るか、又は少なくとも1個の一級アミン、二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はエーテルを含む側鎖を有するアミノ酸であり得る。Trp位置は、少なくとも1個の置換又は未置換アリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であり得るか、又は代わりに取り除かれ得る。
【0236】
式I、II、III、IV及びV内に包含されるペプチドは、不斉中心、ステレオジェニック軸などの1つ以上の非対称エレメントを含有し、このような式内に包含されるペプチドは、異なる立体異性体形態で存在し得る。式I、II、III、IV及びV内に包含されるペプチドを含む具体的に記載されるペプチド及び一般的に記載されるペプチドの両方に対して、エナンチオマー及びジアステレオマーを含む全てのキラル中心又は他の異性中心での異性体の全ての形態が、本明細書に包含されるものとする。本発明のペプチドそれぞれが、複数のキラル中心を含み、エナンチオマー的に純粋な調製物における本発明のペプチドの使用に加えて、ラセミ混合物又はエナンチオマー的に濃縮された混合物として使用され得る。一般的には、本発明のペプチドは、エナンチオマー的純粋性を維持するように試薬、条件及び方法を使用して、キラル的に純粋な試薬、例えば指定されたL-又はD-異性体アミノ酸の使用によって合成されるが、ラセミ混合物が作製され得ることも可能であり、企図される。このようなラセミ混合物は、周知の技術を使用して任意選択的に分離され得、個々のエナンチオマーが単独で使用され得る。ペプチドが互変異性形態で存在し得る場合及びペプチドが互変異性形態で存在し得る温度、溶媒及びpHの具体的な条件下において、各互変異性形態は、平衡状態で存在するにしても又は1つの形態で優先的に存在するにしても、本発明内に含まれ得るものとして企図される。従って、光学活性形態である式I~Vのペプチドの単一のエナンチオマーは、非対称合成、光学的に純粋な前駆体からの合成又はラセミ体の分割により得られ得る。
【0237】
本明細書で開示されるペプチドは、式I~Vのペプチドの特異的な立体異性体形態であるが、本発明は、本明細書で開示されるペプチドにより包含される立体異性体形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0238】
本発明は、投与時に活性薬理学的ペプチドとなる前に代謝過程によって化学的な変換を受ける本発明のペプチドのプロドラッグを含むことがさらに意図される。一般に、このようなプロドラッグは、本ペプチドの機能的誘導体であり、インビボで式I~Vのペプチドに容易に変換可能である。プロドラッグは、何らかの共有結合される化合物であり、インビボで式I~Vの活性親ペプチド薬物を放出する。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製に対する従来の手順は、例えば“Design of Prodrugs”, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。プロドラッグの典型的な例は、例えばヒドロキシル、カルボキシル又はアミノ官能基のエステル化によるなど、機能部位上で生物学的に不安定な保護基を有する。従って、例として及び限定ではなく、プロドラッグは、例えば式I~VのR基の低級アルキルエステルなど、エステルプロドラッグ形態が使用される式I~Vのペプチドを含み、例えばRは-OHであり、低級アルキルエステルがアルキル基において1~8個の炭素を含み得るか、アラルキルエステルはアラルキル基において6~12個の炭素を有する。広く言うと、プロドラッグは、酸化、還元、アミン化、脱アミン化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、デヒドロライズ、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化又は脱リン酸化されて、インビボで式Iの活性のある親ペプチド薬物を生成させ得る化合物を含む。
【0239】
本発明は、式I~Vで引用されるものと同一であるペプチドも含むが、このような式で示される1つ以上の原子は、天然で通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子により置換されるという事実がある。本発明のペプチドに組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素及び酸素の同位体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18O及び17Oが挙げられる。上述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する、本明細書で開示されるか又は本明細書で開示される式のペプチド及び前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩又は溶媒和物は、本発明の範囲内である。特定の同位体で標識されるペプチド、例えばH及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれるものは、様々なアッセイにおいて、例えば薬物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて使用され得る。1個以上の水素原子の重水素(H)での置換など、より重い同位体での置換は、代謝安定性の向上を含め、一部の例において薬理学的長所を提供し得る。同位体標識される式Iのペプチドは、一般に、非同位体標識試薬に対して同位体標識試薬を置換することによって調製され得る。
【実施例
【0240】
9.0 実施例
本発明は、以下の非限定例によりさらに例示される。
【0241】
9.1 合成されたペプチド及び機能データ
9.1.1 上記の一般的方法によって以下の構造のペプチドを合成し、ペプチドに対するEC50値が示されるように決定された。「」でマークされるEC50値は、CEREPによって決定した。「%」は、EC50値の場合、Emaxパーセント(陽性対照で得られる最大反応のパーセント)を示す。「NC」のEC50値は、EC50値が10,000nMを上回り、故に計算されなかったことを示す。
【0242】
【表9】
【0243】
【表10】
【0244】
【表11】
【0245】
【表12】
【0246】
【表13】
【0247】
【表14】
【0248】
【表15】
【0249】
【表16】
【0250】
【表17】
【0251】
【表18】
【0252】
【表19】
【0253】
【表20】
【0254】
【表21】
【0255】
【表22】
【0256】
【表23】
【0257】
【表24】
【0258】
【表25】
【0259】
【表26】
【0260】
【表27】
【0261】
【表28】
【0262】
【表29】
【0263】
【表30】
【0264】
【表31】
【0265】
【表32】
【0266】
【表33】
【0267】
【表34】
【0268】
【表35】
【0269】
【表36】
【0270】
【表37】
【0271】
9.1.1 以下の構造のペプチドは、上記の一般的な方法により合成され、ペプチドに対するEC50値は、上記で開示されるように決定される。
【化19】

式中、Xaaは、
D-Phe(4-Cl)、
D-Phe(4-Me)、
D-Phe(4-OMe)、
D-Phe(4-Ph)、
D-Phe(4-NO)、
D-Phe(4CN)、
D-Phe(3-Cl)、
D-Phe(3-Me)、
D-Phe(3-OMe)、
D-Phe(3-Phe)、
D-Phe(3-NO)、
D-Phe(3-CN)、
D-Phe(2,4-ジF)、
D-Phe(2,4-ジMe)、
D-Phe(3,5-ジF)、
D-Phe(3,4-ジF)、
D-Phe(3,4-ジOMe)、
D-Phe(2,4-ジCl)、
D-Phe(2-Cl,4F)、
D-Nal1、
D-Phe(2,3-ジF)、
D-Phe(2,3-ジCl)、
D-Phe(2,3-ジMe)、及び
D-Phe(2,3-ジOMe)
である。
【0272】
合成後、本明細書に記載のようにペプチドを試験し、メラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態及び症候群を予防する、寛解させる又は処置する方法で利用される。
【0273】
9.2 ペプチド番号60の合成
粗製環状ペプチド中間体を得るために標準的な固相ペプチド化学を利用して、前臨床及び臨床研究のために実施例60のペプチドを合成した。一連の洗浄及び分取クロマトグラフィー工程を通して、得られたペプチド中間体を精製した。最終的に、最後の包装及び保管前に、精製ペプチドを凍結乾燥させた。以下の工程概説フロー図は、実施例60のペプチドの酢酸塩の製造のための合成方法を示す。
【0274】
工程1~6 Fmoc-Trp(Boc)-NH-(CH-NH-2Cl-Trt-レジン
完全なサイクル、以下の連続的なアミノ酸を各サイクルで付加、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-His(Trt)-OH、Fmoc-Nle-OHを利用
1.膨潤:DMF
2.De-Fmoc:ピペリジン/DBU/HOBt/DMF
3.洗浄サイクル:DMF、MBTE、DMF
4.カップリングサイクル:DCM/Fmoc-AA-OH/HOBt、DIPEA、DMF、HBTU
5.洗浄サイクル:DMF、MBTE、DMF。
【0275】
工程7 Fmoc-Nle-Glu(OtBu)-His(Trt)-D-Phe(4-F)-Arg(Pbf)-Trp(Boc)-NH-(CH-NH-2Cl-Trt-レジン
レジン結合完全ペプチド配列のアセチル化
1.脱Fmoc:ピペリジン/DBU/HOBt/DMF
2.洗浄サイクル:DMF、MBTE、DMF
3.N末端アセチル化:Ac-O/ピリジン/DMF
4.洗浄サイクル:DMF/MBTE
5.乾燥:真空下、室温。
【0276】
工程8 Ac-Nle-Glu(OtBu)-His(Trt)-D-Phe(4-F)-Arg(Pbf)-Trp(Boc)-NH-(CH-NH-2Cl-Trt-レジン
包括的な切断及び脱保護
1.切断:95%TFA、2.5%TIS、2.5%H
2.沈殿:MTBE(0~5℃)
3.ろ過及び洗浄:MTBE
4.乾燥:室温で真空
5.最後の洗浄及びろ過:n-ヘキサン
6.乾燥:室温で真空。
【0277】
工程9 Ac-Nle-Glu-His-D-Phe(4-F)-Arg-Trp-NH-(CH-NH ・ xTFA(x=1-3)
ペプチド環化
溶解:THF/DMF及びPyBOP中で直鎖状ペプチド
環化:PyBOP、NMM及びTHF/DMF
濃縮:ロータリー濃縮
研和:EtOAc/MBTE
乾燥:室温で真空。
【0278】
工程10 Ac-Nle-シクロ(Glu-His-D-Phe(4-F)-Arg-Trp-NH-(CH-NH) xTFA(x=1-2)
イオン交換及び生成物溶出
溶解及びろ過:TFA/水/ACN中で環状ペプチド、ろ過
カラムローディング:C18シリカゲルカラムに載せる
溶出:TFA/水/ACNの勾配
塩交換:0.5M酢酸アンモニウム
溶出:AcOH、HO、ACN
凍結乾燥:Lyoフラスコ。
【0279】
最終 Ac-Nle-シクロ(Glu-His-D-Phe(4-F)-Arg-Trp-NH-(CH-NH) xAcOH(x=1-2)
【0280】
固体支持体ペプチドレジン上に保護されたアミノ酸を次々に連結させた濃縮ストラテジーを使用してペプチド配列を得た。固相ペプチド合成を使用してアミノ酸のカップリングを行い、ここで、Fmoc保護基を使用して、ペプチド鎖N末端にカップリングしようとする次のアミノ酸をそのN末端及び側鎖において保護する。一般的なSPPS手順は、交代性のN末端脱保護及びカップリング反応の反復サイクルの1つであり、各工程間でレジン洗浄を行う。
【0281】
工程内カイザーテスト並びにクロルアニル/トルエン試験の使用を介して、カップリングを監視し、これによりネガティブな結果が生じ、それによりカップリング反応が完全であることを示す。反応が完了したら、リアクターから液体を排出させ、レジンを乾燥させる。
【0282】
完全なペプチド配列をレジン及びアセチル化されたN末端基に接着させたら、TFA、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジト(DODT)、TIS及び水のカクテルを使用して、温度制御条件下においてガラス製リアクター中でペプチドレジンの切断を行った。切断後、反応混合物をろ過し、TFAで洗浄した。温度制御条件下でMTBEを使用してろ液中のペプチドを沈殿させ、次いでろ過した。沈殿したペプチドを回収し、n-ヘキサンとともに研和したら、粗製直鎖状ペプチドを真空下で乾燥させた。
【0283】
得られた直鎖状ペプチドを環化し、続いてペプチド沈殿及び真空下での乾燥を行った。直鎖状ペプチドをカップリング剤ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)で処理することにより、環化を行った。この反応は、周囲温度で、カップリング媒体、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)及びジメチルホルムアミド(DMF)の混合液中のN-メチルモルホリン(NMM)などの非求核三級アミン塩基の存在下で行った。分析的RP HPLC試験によって反応を監視した。反応が不完全であった場合、PyBOP及びNMMのさらなるアリコートを反応混合物に添加し、反応を完全な環化のために継続した。環化が完了したら、ロータリーエバポレーター上で反応混合物を濃縮した。濃縮液を酢酸エチル及びMTBEの混合物と研和し、撹拌し、静置した。傾けて上清を捨て、同時に沈降物を回収した。次に、固化した生成物をろ過又は遠心分離により単離した。得られた固体環状ペプチドを真空下で乾燥させた。
【0284】
最終ペプチド生成物を得るために分取逆相高速クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用して、粗製環状ペプチドの精製を行った。TFA、水及びアセトニトリル(ACN)緩衝系でのペプチドの共溶出によって精製を行った。工程内コントロールHPLC法を使用して、同時溶出分画を純度及び不純プロファイルについて分析した。塩交換により、酢酸、アセトニトリル、酢酸アンモニウム及び水緩衝溶液を利用して、精製ペプチドを酢酸塩に変換する。精製ペプチドをろ過し、水及び残存する残渣有機溶媒を除去するために、マニフォールド凍結乾燥装置を利用して凍結乾燥した。
【0285】
得られた合成ペプチドの化学式は、酢酸塩としてC4967FN14であった(CHCOOH(1≦x≦2)(式中、xは、単一のペプチド分子である))。酢酸塩がない、得られたペプチドの正確な質量は998.43Daであり、分子量は999.16Daである。
【0286】
9.3 眼科での使用のためのペプチド番号60の製剤
ペプチド番号60は、ドライアイ疾患などの疾患のための局所投与のための成形同時充填用量容器中の眼用溶液薬物製品としての製剤である。製造は無菌的であり、滅菌ろ過は、リダンダントな0.2μm滅菌グレードポリエーテルスルホンフィルターを利用する。この溶液のpHは、眼への局所投与の場合に約6.5である。単回使用の成形同時充填アンプルにおいて薬物生成物が供給され、これにより、眼への直接的なプロドラッグ投与が可能になる。各アンプルは、0.25mLの名目体積を含有する。二次パッケージングは、各パウチ中に3本のアンプルを含有するホイルパウチである。以下の表は、眼科用溶液薬物製品の処方をまとめる。
【0287】
【表38】
【0288】
9.4 ドライアイ疾患に対するペプチド番号60の非臨床試験
中等症の慢性ドライアイ疾患に対するペプチド番号60の効果を調べるために、雄C57BL/6JRjマウスをスコポラミンの経皮投与(SiccaSystem(商標))とともに、制御された乾燥環境に曝露し、あらゆる処置前に疾患を確立した。試験第10日及び12日(処置前)及び第24日(試験化合物での局所処置から12日後)に角膜フルオレセイン染色を行った。第12日のフルオレセインスコアに基づき、6種類の異なる実験群に動物を無作為に分けた(各処置群に対してn=12、非処置の眼に対してn=7)。処置アームには、未処置及びビヒクル処置動物及びペプチド番号60(3種類の異なる濃度、10-2、10-3及び10-4mg/mL)又は商品名レスタシス(登録商標)で販売される参照化合物シクロスポリン眼用エマルジョンを与える動物が含まれた。
【0289】
ノンパラメトリッククラスカル-ウォリスANOVAにより、第12日の実験群の間で統計学的有意性は示されなかった(P=0.84;図1A)。第24日に、角膜フルオレセインスコアは、処置群間で統計学的に有意な差があった(クラスカル-ウォリスANOVA、P<0.001;図1B)。レスタシス(登録商標)(P<0.001)及びペプチド番号60(10-2mg/mLに対してP<0.05、10-3及び10-4mg/mLに対してP<0.01)は、未処置の眼と比較して、統計学的に有意なより低い角膜フルオレセイン染色を示した(ダンの多重比較検定;図1B)。
【0290】
さらに、第12日の角膜フルオレセインを処置による同じ眼に対する第24日と比較した。この分析に基づくと、未処置の眼におけるフルオレセイン染色は、第12日及び第24日の間で同様のままであった(P=0.75)。全ての実験処置(ビヒクルを除く)の結果、角膜フルオレセイン染色の統計学的に有意な改善が起こった(図2)。
【0291】
10-2~10-4mg/mLの用量でのペプチド番号60の結果、第12日から第24日で角膜フルオレセインスコアの統計学的に有意な改善が起こった。
【0292】
9.5 ペプチド番号60でのヒト臨床試験
およそ160名の対象(1処置アームあたり80名の対象)を登録した多施設、二重盲検、ランダム化プラセボ対照並行群間の第2相試験において実施例9.3の眼科用の溶液薬物中のペプチド番号60を利用した。この試験の目的は、制御された有害環境(CAE)設定で、軽症、中等症又は重症ドライアイ疾患の成人対象において第1日(ベースライン)から第85日(第12週)で、ペプチド番号60の安全性及び有効性をそのビヒクルと比較することであった。定期的な来院時に徴候及び症状の両方を評価した。
【0293】
スクリーニング期間中、試験に参加させる適格性を確認するためにCAEへの90分の曝露を2回行った。12週間にわたり二重盲検方式で試験薬又はプラセボを受けるために、認定された対象を無作為に分けた。対象は1日3回(TID)、点眼薬を自己投与し、指示通りに毎日の日記評価を完遂した。
【0294】
来院3回目(第15日、第2週)、4回目(第29日、第4週)、5回目(第57日、第8週)及び6回目(第85日、第12週)に、対象をCAEに曝露し、眼の徴候及び症状のCAE前、CAE中(症状のみ)及びCAE後の評価を行った。
【0295】
12週の一次評価来院時に測定した場合の、軽症、中等症又は重症患者を含んだ全体的な登録集団において、一次エンドポイントに対する統計学的な有意性、角膜下方の染色(徴候)及び眼部不快感(症状)の改善には到達しなかった。中等症~重症患者集団において、投与2週間後及び12週の来院時に、複数の徴候及び症状における統計学的に有意な改善が達成された。安全性シグナルは確認されず、ペプチド番号60の眼科用溶液薬物製品は眼において優れた忍容性があった。
【0296】
中等症~重症患者のサブ集団(N=61)において、ペプチド番号60の眼科用溶液薬物製品は、下方(一次徴候エンドポイント)、上方及び全体の角膜染色、側頭部、鼻及び全体的な結膜染色及び涙膜崩壊時間及び眼部不快感を含む複数の眼部症状を含め、複数の徴候に対して第2週及び第12週に統計学的な有意性を達成した(ビヒクルに対してP値<0.05)。さらに、複数の徴候及び症状の尺度は有意性の傾向があった(ビヒクルに対してP値<0.1)。
【0297】
試験結果から、優れた安全性及び忍容性プロファイルが示された。観察された試験処置と関連する重篤な有害事象はなかった。プラセボにおける3名の患者及びペプチド番号60における1名の患者(薬物関連とみなされない)が試験を中断した。ペプチド番号60対象において眼の薬物関連有害事象はなかった。
【0298】
9.6 α-MSHとのペプチド番号60の比較
ペプチド番号60の効力(nM単位のEC50値)をα-MSHと比較した。プロファイルは、α-MSHと比較して、MC1r及びMC5rでのペプチド番号60のより大きい相対効力を示し、MC3r及びMC4rでのペプチド番号60の効力は、α-MSHと大まかに見て同等であった。動物モデル試験に基づき、ペプチド番号60の効力は、ドライアイ及び他の眼部疾患に対して優れた受容体プロファイルを提供し、一方でMC3r及びMC4rゆえに副作用は最小限である。さらに、ペプチド番号60に対するMC1r及びMC5rでの実質的に同一であるEC50値は、MC1r及びMC5r両方との同時結合を確実にする。それに反して、α-MSHのEC50値から、他の先行技術メラノコルチン受容体ペプチド及び化合物は、多くの濃度範囲でMC1rに結合し、MC5rに結合しないと思われる。MC1r及びMC5rの両方と結合させるためにα-MSH及び他の先行技術メラノコルチン受容体ペプチド及び化合物をより高い濃度で利用すると、MC3r及びMC4rとの望ましくない結合が起こると思われる。それに反して、EC50値から、ペプチド番号60は、MC3r及びMC4rと結合せずに選択濃度でMC1r及びMC5rと結合し、その結果、最小限のオフターゲット効果で優れた薬理学的反応が生じる。
【0299】
【表39】
【0300】
9.7 ブレメラノチドとのペプチド番号60の比較
閉経前の女性における機能低下性欲障害の処置のために最近承認された米国特許第6,579,968号で開示されるようなブレメラノチド、配列Ac-Nle-シクロ(Asp-His-D-Phe-Arg-Trp-Lys)-NHの合成ペプチドとペプチド番号60の効力(nM単位のEC50値)を比較した。このプロファイルから、ブレメラノチドと比較して、MC1rでペプチド番号60がおよそ等しい効力を有することが示されたが、ブレメラノチドはMC5r活性を欠いていた。ドライアイにおけるMC5rの役割は、炎症の解消のため及びまたMC5rを発現する、分泌を制御する3つの腺 - マイボーム腺(脂質)、涙腺(水性)及び結膜/杯細胞(粘液) - を考えると、涙構造の両方に重要である。
【0301】
【表40】
【0302】
9.8 ペプチド番号60の安定性及び薬物動態学
いくつかの安定性及び薬物動態モデルにおいてペプチド番号60を評価した。マウスモデルにおいて、眼への投与後4時間及び24時間の両方で、結膜及び涙腺の両方においてペプチド番号60が見出された。
【0303】
これらの好ましい実施形態を特に参照して本発明を詳細に説明してきたが、他の実施形態が同じ結果を達成し得る。本発明の変形形態及び変更形態は、当業者に明らかであり、全てのこのような変更形態及び均等物を包含するものとする。上記で引用される全ての参考文献、出願、特許及び刊行物の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】

(式中、
Xaaは、-R-Rであり;
は、置換又は未置換インドール、フェニル又はナフチルであり;
は、-(CH-又は-(CH-O-(CH-であり;
は、H又は任意選択的に1個以上のC=C二重結合を含むC~C直鎖状若しくは分岐状脂肪族鎖であり;
は、-H又は-CHであり;
は、任意選択的に存在し、及び存在する場合、1~3個のL-若しくはD-異性体アミノ酸又はそれらの組み合わせであり、何れかの骨格窒素原子は、任意選択的にメチル化され;
は、H又は任意選択的に置換される直鎖状若しくは分岐状アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはヘテロアリールを含むC~C17アシル基であり;
は、-H、-CH又は-CH-であり、及びそれが-CH-である場合、Rとともに、一般構造
【化2】

の環を形成し;
は、RがRとともに前記環を形成する場合、-Hであるか、又はRは、
-(CH
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O-(R12a)、
-S-(=O)-CH
-S-(=O)-CH
置換又は未置換フェニル、
-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)、
【化3】

であり;
は、置換又は未置換フェニル又はナフチルであり;
10は、
-N(R12a)(R12b)、
-NH-(CH-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=NH)-N(R12a)(R12b)、
-NH-C(=O)-N(R12a)(R12b)、
-O(R12a)、
-C~C17直鎖状、分岐状又は環状アルキル鎖、
-S(=O)-CH
-S(=O)-CH
-C(=O)-O(R12a)、
【化4】

であり;
11は、-O-CH-フェニル(ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換である)であり;
12a及びR12bは、それぞれ独立に及び各例において独立に、H又はC~C直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル鎖であり;
tは、各例において独立に、1~4であり;
xは、1~5であり;
uは、2~8であり;
v及びwは、それぞれ独立に、2~5であり;及び
zは、1~3である)
の環状ペプチドであって、その全てのエナンチオマー、立体異性体又はジアステレオマーを含む環状ペプチド又は前述のものの何れかの薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
(a)Rは、未置換ナフチルであるか;又は
(b)何れかの置換フェニル又はナフチルは、各例において独立に、1~3個の環置換基で置換され、前記置換基は、同じであるか又は異なり、及びそれぞれ独立に、ハロ、(C~C10)アルキル-ハロ、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルコキシ、(C~C10)アルキルチオ、アリール、(C~C10)アルキルアリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルバモイル、カルボキシ、カルバモイル、アルコキシ-カルボニル又はアリールオキシ-カルボニルであるか;又は
(c)Rは、少なくとも1個のL-又はD-異性体アミノ酸を含み;任意選択的に、Rは、脂肪族側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸であり;任意選択的に、前記脂肪族側鎖は、-(CH-CHであるか;又は
(d)Rは、少なくとも1個の窒素原子を含む側鎖を有する単一のL-又はD-異性体アミノ酸であり;任意選択的に、Rは、Arg、Lys、Orn、Dab、Dap又はCitのL-又はD-異性体である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
前記式IIの環状ペプチドは、式:
【化5】

の環状ペプチドである、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
Xaaは、Ac-Arg、Ac-D-Arg、Ac-Nle、Ac-D-Nle、Ac-Trp、シクロペンチルアセチル、ヘキサノイル、3-フェニルプロパノイル、シクロペンチルアセチル、アセチル、2-ナフチルアセチル又は3-(1-ナフチル)プロパノイルである、請求項1又は3に記載の環状ペプチド。
【請求項5】
(a)Rは、インドール又はナフタレンであるか;又は
(b)R及びRは、ピロリジンを含み;任意選択的に、ピロリジンは、置換され;任意選択的に、置換基は、-O-CH-フェニルであり、ここで、フェニルは、置換されているか又は未置換であるか;又は
(c)Rは、置換フェニルである、請求項1又は3に記載の環状ペプチド。
【請求項6】
構造
【化6】

を有する、請求項1に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
構造
【化7】

を有する、請求項1に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
構造
【化8】

を有する、請求項1に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
酢酸塩又はトリフルオロ酢酸塩である、請求項6~8の何れか一項に記載の環状ペプチド。
【請求項10】
【化9】

である、請求項1に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項11】
【化10】

である、請求項1に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
【化11】

である、請求項1に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項13】
請求項6~8の何れか一項に記載の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項14】
(a)ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるメラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態又は症候群;又は
(b)ヒト又は非ヒト哺乳動物におけるメラノコルチン受容体機能の変化に反応する状態
を処置するための方法であって、任意選択的に、
ヒトにおける前記メラノコルチン受容体介在性疾患、適応症、状態又は症候群は、眼の炎症であり;任意選択的に、
(i)前記医薬組成物は、眼の表面への投与のための水性医薬組成物であるか;又は
(ii)前記炎症は、眼の状態によって引き起こされ、前記眼の状態は、ドライアイ疾患、角膜潰瘍、角膜びらん、角膜擦過傷、角膜変性、角膜穿孔、角膜瘢痕化、上皮欠損、角結膜炎、特発性ブドウ膜炎、角膜移植、加齢性黄斑変性、糖尿病性眼病変、眼瞼炎、緑内障、眼性高血圧、術後の眼の疼痛及び炎症、後眼部血管新生、増殖性硝子体網膜症、サイトメガロウイルス網膜炎、眼内炎、脈絡膜新生血管膜、血管閉塞性疾患、アレルギー性眼疾患、腫瘍、網膜色素変性症、眼の感染、強膜炎、眼瞼下垂、縮瞳、眼の疼痛、散瞳、神経痛、眼の表面の疾患の瘢痕化、眼部の感染、炎症性の眼疾患、眼の表面の疾患、角膜疾患、網膜疾患、全身性疾患の眼の所見、遺伝性の眼の状態、眼の腫瘍、眼内圧上昇、ヘルペス性感染、翼状片、眼の表面に持続する創傷、レーザー屈折矯正角膜切除術後の眼の疼痛及び炎症、角膜に対する熱若しくは化学的な熱傷、強膜の創傷、円錐角膜又は結膜の創傷であり;任意選択的に、
前記炎症は、ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎によって引き起こされる、方法での使用のための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記薬学的に許容可能な担体は、約2.79mg/mLのクエン酸三ナトリウム二水和物、約9mg/mLの塩化ナトリウム及び約1mg/mLのポリソルベート80を含む水溶液であり;任意選択的に、
前記水溶液は、約pH6.5であり、及び前記組成物は、pHを調整するために必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸をさらに含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記環状ペプチドは、約1.0μg/mLの濃度のトリフルオロ酢酸塩形態である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
約0.10mg/mLの無水クエン酸をさらに含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎を処置する方法であって、1日あたり約3回以下の頻度で1つの眼あたり約50μL以下の、請求項16に記載の医薬組成物を投与することを含み;任意選択的に、
1日あたり1つの眼あたり約150ng以下の環状ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩が投与される、方法での使用のための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ドライアイ疾患又は乾燥性角結膜炎を処置する方法での使用のための、MC1r及びMC5rのそれぞれで1nM未満のEC50値を有するメラノコルチン受容体特異的ペプチドの水溶液であって、前記方法は、各眼の表面に、MC1r及びMC5rのそれぞれで1nM未満のEC50値を有するメラノコルチン受容体特異的ペプチドの前記水溶液を投与することを含み;任意選択的に、
(a)1日あたり1つの眼あたり約150ng以下の前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドが点眼薬として投与されるか;又は
(b)前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、MC1r及びMC5rにおいて、MC3r又はMC4rの少なくとも一方のEC50値以下のEC50値を有し;任意選択的に、
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、MC1r及びMC5rにおいて、MC3r又はMC4rの少なくとも一方での4分の1以下であるEC50値を有し;任意選択的に、
前記EC50値は、MC1r及びMC5rにおいて、MC3r及びMC4rの両方での4分の1以下であるか;又は
(c)前記ペプチドは、MC1r及びMC5rのそれぞれにおけるアゴニスト又は部分アゴニストの何れかであるか;又は
(d)EC50値は、CEREPによって行われるようなHTRF検出方法を使用してcAMP産生によって決定されるか;又は
(e)前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、請求項1に記載のペプチドであり;任意選択的に、
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、
【化12】

である、水溶液。
【国際調査報告】