(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】KLK5に対する抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230316BHJP
C07K 16/40 20060101ALI20230316BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230316BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230316BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230316BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230316BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230316BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230316BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230316BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230316BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230316BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230316BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230316BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/40 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P43/00 105
A61P17/00
A61P37/08
A61P11/06
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547072
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2021052249
(87)【国際公開番号】W WO2021156171
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デディ、ネーシャ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、ピーター チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】レイセン、セッペ フランス ローマン
(72)【発明者】
【氏名】メイソン、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン、デイヴィッド ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ネス、ギリアン クレア
(72)【発明者】
【氏名】ペンゴ、ニッコロ
(72)【発明者】
【氏名】レッドヘッド、マーティン アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、アリソン
(72)【発明者】
【氏名】タイソン、ケリー ルイーズ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、KLK5に結合して阻害する抗体、及びKLK5の不均衡によって引き起こされる疾患を治療するためにそれを使用する方法に関する。特に、本発明は、阻害性抗KLK5抗体、並びにネザートン病、アトピー性皮膚炎及びがんの治療におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリクレイン5(KLK5)に結合するモノクローナル抗体であって、可変軽鎖及び可変重鎖を含み、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか一つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む、上記モノクローナル抗体。
【請求項2】
a.可変軽鎖が、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ
b.可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2、及び配列番号10又は14又は23を含むCDR-H3を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
a.可変軽鎖が、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ
b.可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2、及び配列番号23を含むCDR-H3を含む、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
抗体が、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
抗体が、完全長抗体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
完全長抗体が、IgG1、IgG4又はIgG4Pから選択される、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
抗体が、Fab、Fab’、F(ab’)
2、scFv、dAb又はV
HHから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
抗体が、
a.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、及び/又は
b.配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
抗体が、
a.配列番号38を含む可変軽鎖、及び/又は
b.配列番号110を含む可変重鎖を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
抗体が、
a.配列番号36又は40又は44又は48を含む軽鎖、及び
b.配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む重鎖を含む、請求項1から6又は8又は9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
抗体が、
a.配列番号40を含む軽鎖、及び
b.配列番号112を含む重鎖を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
KLK5が、配列番号142若しくは143若しくは144を含むヒトKLK5又は配列番号151を含むカニクイザルKLK5である、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
カリクレイン5(KLK5)に結合し、抗体が、配列番号142を参照して、Leu212、Ser213、Gln214、Lys215、Arg216、Glu218、Asp219、Ala220、Pro222、Gly233、Pro269、Asn270及びPro272からなる群からの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ以上のアミノ酸残基を含むヒトKLK5のエピトープに結合する、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
エピトープが、X線結晶学によって特徴付けられる、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
抗体が、
a.KLK5のプロテアーゼ活性を阻害又は低下させ、及び/又は
b.KLK5がLEKTI又はLEKTIの断片に結合すると、KLK5に結合し、及び/又は
c.KLK5の結合についてLEKTI又はLEKTIの断片と競合せず、及び/又は
d.LEKTI又はLEKTIの断片に結合したKLK5と複合体を形成する、請求項1から14のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項16】
LEKTIの断片が、配列番号145のアミノ酸1~64を含むヒトLEKTIドメイン5又は配列番号152のアミノ酸1~71を含むLEKTIドメイン8である、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
抗体が、ヒトKLK5、好ましくは配列番号144を含むヒトKLK5及びカニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(cyno))KLK5、好ましくは配列番号151を含むカニクイザルKLK5に結合する、請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
抗体が、ヒト若しくはカニクイザルカリクレイン2(KLK2)、又はヒト若しくはカニクイザルカリクレイン4(KLK4)、又はヒト若しくはカニクイザルカリクレイン7(KLK7)に結合しない、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体とKLK5の結合について競合し、及び
a.KLK5に結合について、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体をクロスブロックするか、又は請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体によってクロスブロックされ、又は
b.請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体と同じエピトープにKLK5に結合する抗体であって、
該抗体が、配列番号38による配列と少なくとも90%の同一性又は類似性を有する重鎖可変領域を含み、及び/又は配列番号110による配列と少なくとも90%の同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域を含む、上記抗体。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項21】
ポリヌクレオチドが、
a.軽鎖可変領域であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号31又は35又は39又は43又は47と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号31又は35又は39又は43又は47を含み、又は
iii.配列番号31又は35又は39又は43又は47から本質的になる、上記軽鎖可変領域、或いは
b.重鎖可変領域であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135を含み、又は
iii.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135から本質的になる、上記重鎖可変領域、或いは
c.軽鎖であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号37又は41又は45又は49と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号37又は41又は45又は49を含み、又は
iii.配列番号37又は41又は45又は49から本質的になる、上記軽鎖、或いは
d.重鎖であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137を含み、又は
iii.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137から本質的になる、上記重鎖をコードする、
請求項20に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項22】
請求項20又は21のいずれか一項に記載の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む、クローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項23】
宿主細胞であって、
a.請求項20又は21のいずれか一項に記載の1つ又は複数のポリヌクレオチド、又は
b.請求項22に記載の1つ又は複数の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項24】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体を産生するための方法であって、請求項23に記載の宿主細胞を、抗体を産生するのに適した条件下で培養すること、及び宿主細胞によって産生された抗体を単離することを含む、上記方法。
【請求項25】
請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体と、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項26】
治療に使用するための、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする疾患の治療に使用するための、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
疾患が、ネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がん又はそれらの組合せから選択される、請求項27に記載の使用のための抗体。
【請求項29】
疾患がネザートン症候群である、請求項28に記載の使用のための抗体。
【請求項30】
疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項28に記載の使用のための抗体。
【請求項31】
患者におけるKLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又は請求項25に記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む、上記方法。
【請求項32】
疾患が、ネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がんから選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
疾患がネザートン症候群である、請求項32に記載の使用のための抗体。
【請求項34】
疾患がアトピー性皮膚炎である、請求項32に記載の使用のための抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、KLK5に結合して阻害する抗体、及びKLK5の調節不全によって引き起こされる疾患を治療するために、その抗体を使用する方法に関する。特に、本発明は、抗KLK5抗体、並びにネザートン病、先天性魚鱗癬などの魚鱗癬、アトピー性皮膚炎、及びがんの治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カリクレイン関連ペプチダーゼ(KLKとして知られている)は、ヒトゲノム内のプロテアーゼコード遺伝子(染色体19q13.4)の最大の連続したクラスターによってコードされる、15の高度に保存されたトリプシン又はキモトリプシン様セリンプロテアーゼの単一ファミリーを構成する(Sotiropoulou G.et al.,2009;JBC 284:48,32989-94)。
【0003】
KLKタンパク質は、不活性なプロフォームを分泌するようにタンパク質分解的にプロセシングされる不活性なプレ-プロフォームとして合成される。そのようなプロフォームは、その後、他のKLK若しくはエンドペプチダーゼによって、又はKLK5などの自己触媒的切断によって、N末端プロペプチドの特異的なタンパク質分解的除去によって成熟ペプチダーゼに活性化される。KLK5はトリプシン様活性を有する。そのプレ-プロフォームにおいて、29個のアミノ酸のシグナルペプチド、それに続く37個のアミノ酸の活性化ペプチドを含む。活性な成熟形態は、プロテアーゼ活性を担うセリン-プロテアーゼドメインを含む成熟酵素を含む237個のアミノ酸からなる(Michael I.P et al.,2005;JBC 280:15,14628-35)。
【0004】
KLK5は多くの組織に見られるが、皮膚で最も豊富に発現されるようである。KLK7と共に、KLK5は、KLK7と共に皮膚の上部棘及び顆粒レベルで発現され、そこでケラチノサイトは最終分化を受け、角質層を構築する角質細胞に変換される。角質層は、外部環境に対するバリアとして機能し、落屑のプロセスによって排出される角質細胞の絶え間ない置換によって維持される。KLK5は、プロ-KLK7及び他のカリクレインを活性化することができるので、落屑におけるその役割は不可欠である。
【0005】
活性化後、成熟KLK5は、SPINK5遺伝子によってコードされる内因性阻害剤リンパ上皮カザール型阻害剤(LEKTI)によって不活性化される(Chavans P et al.,2005;Nat Genet 37,56-65)。LEKTIは、KLK5と密接な複合体を形成する15ドメインのセリンプロテアーゼ阻害剤ドメインを含む。pHの変動により、複合体から活性KLK5を放出する酸性pHとのこの緊密な相互作用が左右される(Deraison C et al.2007;Mol Biol Cell 18 3607-19)。
【0006】
SPINK5遺伝子の機能喪失変異は、重度の炎症、皮膚の落屑、IgEレベルの上昇及び一定のアレルギー症状を伴う魚鱗癬の症状を特徴とする稀な常染色体劣性皮膚疾患であるネザートン症候群を引き起こす(Hovnanian A.2013;Cell Tissue Res 351 289-300)。表皮プロテアーゼ活性亢進に次いで、LEKTIの欠如は、デスモグレイン及びデスモソームに対するKLK5活性によって引き起こされる角質層剥離を引き起こし、これは、アトピー性皮膚炎様病変を引き起こす様々なアレルゲンに対して高い透過性を与える。KLK7に対するKLK5活性はまた、アレルゲン及び微生物の透過並びにIL-1βの産生をもたらす不完全な皮膚バリアに寄与する。
【0007】
SPINK5-/-マウスは、疾患の皮膚及び炎症の様子を複製するネザートン症候群を非常によく連想させる表現型を再現する(Yant T et al.;2004,Genes Dev 18 2354-58)。ネザートン症候群患者のSPINK5-/-表皮は、KLK5-PAR2-TSLP(胸腺間質リンホポエチン)軸を含む炎症促進性経路及びシグナル伝達促進性経路の活性化を持続すると考えられる無競争のKLK5及びKLK7プロテアーゼ活性を示す。SPINK5-/-及びKLK5-/-マウスの両方において、KLK5ノックアウトは、LEKTIノックアウトのこのような皮膚症状を矯正するのに十分であり、皮膚恒常性におけるKLK5の重要な役割を示している。
【0008】
近年、いくつかの研究が、アトピー性皮膚炎(AD)とLEKTI多型との間の遺伝的関連を報告しており、LEKTIの異常なバリアントが発現されている(Hovnanian A.2013;Cell Tissue Res 351 289-300)。
【0009】
現在まで、KLK7阻害剤は臨床開発中であるが、KLK5特異的療法は存在しない。LEKTIを置き換えることを目的とした他のアプローチが追求されており、それには、SPINK5レンチウイルスベクター又はアデノウイルスベクターによる遺伝子付加、及び遺伝子補正された患者ケラチノサイトの自己移植片が含まれる(Di WL.et al.;2011,Mol Ther 19 408-16)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、KLK5の調節不全に関連する又はそれによって引き起こされる疾患において治療効果を発揮し得る、KLK5を阻害することを目的とした受動免疫療法などの抗KLK5療法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の実施形態による阻害性抗KLK5抗体を提供することによって上記の必要性に対処する。
【0012】
実施形態1:カリクレイン5(KLK5)に結合するモノクローナル抗体であって、可変軽鎖及び可変重鎖を含み、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか一つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む、上記モノクローナル抗体。
【0013】
実施形態2:a.可変軽鎖は、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2、及び配列番号10又は14又は23を含むCDR-H3を含む、実施形態1に記載の抗体。
【0014】
実施形態3:a.可変軽鎖は、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2、及び配列番号23を含むCDR-H3を含む、実施形態1又は2に記載の抗体。
【0015】
実施形態4:抗体が、キメラ抗体又はヒト化抗体である、実施形態1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【0016】
実施形態5:抗体が、完全長抗体である、実施形態1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【0017】
実施形態6:完全長抗体が、IgG1、IgG4又はIgG4Pから選択される、実施形態5に記載の抗体。
【0018】
実施形態7:抗体が、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dAb又はVHHから選択される、実施形態1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【0019】
実施形態8:抗体が、
a.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、及び/又は
b.配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖を含む、実施形態1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【0020】
実施形態9:抗体が、
a.配列番号38を含む可変軽鎖、及び/又は
b.配列番号110を含む可変重鎖を含む、実施形態1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【0021】
実施形態10:抗体が、
a.配列番号36又は40又は44又は48を含む軽鎖、及び
b.配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む重鎖を含む、実施形態1から6又は8又は9のいずれか一項に記載の抗体。
【0022】
実施形態11:抗体が、
a.配列番号40を含む軽鎖、及び
b.配列番号112を含む重鎖を含む、実施形態1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【0023】
実施形態12:KLK5が、配列番号142若しくは143若しくは144を含むヒトKLK5又は配列番号151を含むカニクイザルKLK5である、実施形態1から11のいずれか一項に記載の抗体。
【0024】
実施形態13:カリクレイン5(KLK5)に結合し、抗体が、配列番号142を参照して、Leu212、Ser213、Gln214、Lys215、Arg216、Glu218、Asp219、Ala220、Pro222、Gly233、Pro269、Asn270及びPro272からなる群からの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ以上のアミノ酸残基を含むヒトKLK5のエピトープに結合する、実施形態1から12のいずれか一項に記載の抗体。
【0025】
実施形態14:エピトープが、X線結晶学によって特徴付けられる、実施形態13に記載の抗体。
【0026】
実施形態15:抗体が、
a.KLK5のプロテアーゼ活性を阻害又は低下させ、及び/又は
b.KLK5がLEKTI又はLEKTIの断片に結合すると、KLK5に結合し、及び/又は
c.KLK5の結合についてLEKTI又はLEKTIの断片と競合せず、及び/又は
d.LEKTI又はLEKTIの断片に結合したKLK5と複合体を形成する、実施形態1から14のいずれか一項に記載の抗体。
【0027】
実施形態16:LEKTIの断片が、配列番号145のアミノ酸1~64を含むヒトLEKTIドメイン5又は配列番号152のアミノ酸1~71を含むLEKTIドメイン8である、実施形態15に記載の抗体。
【0028】
実施形態17:抗体が、ヒトKLK5、好ましくは配列番号144を含むヒトKLK5及びカニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(cyno))KLK5、好ましくは配列番号151を含むカニクイザルKLK5に結合する、実施形態1から16のいずれか一項に記載の抗体。
【0029】
実施形態18:抗体が、ヒト若しくはカニクイザルカリクレイン2(KLK2)、又はヒト若しくはカニクイザルカリクレイン4(KLK4)、又はヒト若しくはカニクイザルカリクレイン7(KLK7)に結合しない、実施形態1から17のいずれか一項に記載の抗体。
【0030】
実施形態19:実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体とKLK5の結合について競合し、及び
a.KLK5に結合について、実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体をクロスブロックするか、又は実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体によってクロスブロックされ、又は
b.実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体と同じエピトープにKLK5に結合する抗体であって、
前記抗体が、配列番号38による配列と少なくとも90%の同一性又は類似性を有する重鎖可変領域を含み、及び/又は配列番号110による配列と少なくとも90%の同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域を含む、上記抗体。
【0031】
実施形態20:実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【0032】
実施形態21:ポリヌクレオチドが、
a.軽鎖可変領域であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号31又は35又は39又は43又は47と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号31又は35又は39又は43又は47を含み、又は
iii.配列番号31又は35又は39又は43又は47から本質的になる、軽鎖可変領域、又は
b.重鎖可変領域であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135を含み、又は
iii.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135から本質的になる、重鎖可変領域、又は
c.軽鎖であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号37又は41又は45又は49と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号37又は41又は45又は49を含み、又は
iii.配列番号37又は41又は45又は49から本質的になる、軽鎖、又は
d.重鎖であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137を含み、又は
iii.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137から本質的になる、重鎖をコードする、実施形態20に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【0033】
実施形態22:実施形態20又は21のいずれか一項に記載の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む、クローニングベクター又は発現ベクター。
【0034】
実施形態23:宿主細胞であって、
a.実施形態20又は21のいずれか一項に記載の1つ又は複数のポリヌクレオチド、又は
b.実施形態22に記載の1つ又は複数の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【0035】
実施形態24:実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体を産生するための方法であって、実施形態23に記載の宿主細胞を、抗体を産生するのに適した条件下で培養すること、及び宿主細胞によって産生された抗体を単離することを含む、上記方法。
【0036】
実施形態25:実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体と、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【0037】
実施形態26:治療に使用するための、実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は実施形態25に記載の医薬組成物。
【0038】
実施形態27:KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする疾患の治療に使用するための、実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体又は実施形態25に記載の医薬組成物。
【0039】
実施形態28:疾患が、ネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がん又はそれらの組合せから選択される、実施形態27に記載の使用のための抗体。
【0040】
実施形態29:疾患がネザートン症候群である、実施形態28に記載の使用のための抗体。
【0041】
実施形態30:疾患がアトピー性皮膚炎である、実施形態28に記載の使用のための抗体。
【0042】
実施形態31:患者におけるKLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする疾患を治療する方法であって、治療有効量の実施形態1から18のいずれか一項に記載の抗体又は実施形態25に記載の医薬組成物を患者に投与する工程を含む、方法。
【0043】
実施形態32:疾患が、ネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がんから選択される、実施形態31に記載の方法。
【0044】
実施形態33:疾患がネザートン症候群である、実施形態32に記載の使用のための抗体。
【0045】
実施形態34:疾患がアトピー性皮膚炎である、実施形態32に記載の使用のための抗体。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】抗体10273によるKLK5刺激ケラチノサイトからのIP-1放出の阻害の図である。ウサギ抗体10273の存在下又は非存在下、KLK5でケラチノサイトを刺激した後に培養培地中に放出されたIP-1の量を決定した。抗体10273はIP-1の放出を阻害したが、アイソタイプ対照抗体は阻害効果を示さなかった。
【
図2】抗体10273及びLEKTI-D5 Fcタンパク質の基質濃度に対してK
obs値をプロットした図である。示されるデータは、2nMの抗体10273及び2nMのLEKTI D5 Fcについてのものである。この傾きは、抗体10273が非競合的阻害剤である一方で、LEKTIタンパク質が競合的阻害剤であることを示している。
【
図3A】サイズ排除クロマトグラフィーのパネルA及びBは、ヒトKLK5単独(実線トレース)、ウサギFab抗体10273単独(点線トレース)、ヒトKLK5+LEKTI-D5 Fc(長い破線トレース、パネルA)又はヒトKLK5+LEKTI D8 Fc(長い破線トレース、パネルB)及びヒトKLK5+LEKTI D5 Fc+ウサギFab抗体10273(短い破線トレース、パネルA)又はヒトKLK5+LEKTI D8 Fc+ウサギFab抗体10273(短い破線トレース、パネルB)の溶出プロファイルを示す図である。
【
図3B】サイズ排除クロマトグラフィーのパネルA及びBは、ヒトKLK5単独(実線トレース)、ウサギFab抗体10273単独(点線トレース)、ヒトKLK5+LEKTI-D5 Fc(長い破線トレース、パネルA)又はヒトKLK5+LEKTI D8 Fc(長い破線トレース、パネルB)及びヒトKLK5+LEKTI D5 Fc+ウサギFab抗体10273(短い破線トレース、パネルA)又はヒトKLK5+LEKTI D8 Fc+ウサギFab抗体10273(短い破線トレース、パネルB)の溶出プロファイルを示す図である。
【
図4A】
図3Aに示すSECからのピーク画分のSDS-PAGEを示す図である。レーン1はMWマーカー、レーン2及び3は二成分KLK5+LEKTI D5複合体の画分、レーン4及び5は三成分KLK5+LEKTI D5+ウサギFab抗体10273複合体のピーク画分。
【
図4B】
図3Bに示すSECからのピーク画分のSDS-PAGEを示す図である。レーン1はMWマーカー、レーン2及び3は二成分KLK5+LEKTI D8複合体のピーク画分、レーン4及び5は三成分KLK5+LEKTI D8+ウサギFab抗体10273複合体のピーク画分。
【
図5】X線結晶学研究のために産生されたKLK5のSDS-PAGEを示す図である。レーンMはMWマーカー。レーン1はキフネンシン(kif)の存在下で増殖させた培養物から精製したヒトKLK5。レーン2はキフネンシン培養物から精製し、エンドグリコシダーゼH(エンドH)で処理したヒトKLK5。
【
図6】ウサギFab抗体10273との複合体におけるヒトKLK5エピトープの概略図である。Fab重鎖及び軽鎖は、模式図にそれぞれ暗表面及び明表面で、透明な表面で示されている。抗体10273が結合したヒトKLK5上のエピトープを形成する残基Leu212(163)、Ser213(164)、Gln214(165)、Lys215(166)、Arg216(167)、Glu218(169)、Asp219(170)、Ala220(171)、Pro222(173)、Gly233(184)、Pro269(223)、Asn270(224)及びPro272(226)を黒い棒として示す。
【
図7】ウサギFab抗体10236及び10273との複合体におけるヒトKLK5の結晶構造の2つの配向を示す図である。ヒトKLK5をリボンの形として示し、ウサギFab抗体10236及び10273を立体の表面として示す。
【
図8】抗体10273のウサギ可変軽鎖配列のヒト化を示す図である。移植片10273gL2、10273gL2 Q1R、10273gL2 Q1K及び10273gL2 Q1Hは、アクセプターフレームワークとしてIGKV1D-13ヒト生殖細胞系を使用した抗体10273のウサギ可変軽鎖のヒト化移植片である。CDRを太字/下線で示す。pI全体の増加をもたらすCDRL1の変異を太字/下線で示し、Q1R、Q1K又はQ1Hを強調している。
【
図9】抗体10273のウサギ可変重鎖配列のヒト化を示す図である。移植片10273gH1、gH4、gH5、gH8、gH10及びgH11は、アクセプターフレームワークとしてIGHV3-66ヒト生殖細胞系を使用して可変重鎖を使用する抗体10273のウサギ可変重鎖のヒト化移植片である。CDRを太字/下線で示す。ドナー残基を太字/斜体で示し、V24、I48、G49、K71、S73及びV78を灰色の網掛けで示す。潜在的なDP加水分解部位(D116E)を除去するため、又はpI(D116N)を増加させるためのCDR-H3の変異を太字/下線で示し、強調している。
【
図10】抗体10273のヒト化移植片によるヒトKLK5の阻害を示す図である。抗体10273のヒト化移植片バリアントをアッセイして、それらがKLK5活性を阻害する程度を決定した。パーセント阻害値を計算し、データを例8に記載のようにプロットした。No Inh=阻害剤なし、No Sub=基質なし、No Enz=酵素なし。
【
図11】異なる組成及びpHの2つの緩衝液中での抗体10273のヒト化移植片の凝集安定性に対するボルテックスの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
ここで、特定の非限定的な態様及びその実施形態に関して、並びに特定の図及び例を参照して、本開示を説明する。
【0048】
技術用語は、別段の指示がない限り、常識によって使用される。特定の意味が特定の用語に伝えられる場合、用語の定義は、その用語が使用される文脈で与えられる。
【0049】
「含む(comprising)」という用語が本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、他の要素を排除するものではない。本開示の目的のために、「からなる(consisting of)」という用語は、「含む(comprising of)」という用語の好ましい具体化であると考えられる。
【0050】
単数名詞を指すときに不定冠詞又は定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その(the)」が使用される場合、特に明記されない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防するという点で予防的であってもよく、及び/又は疾患及び/又は疾患に起因する有害作用の部分的又は完全な治癒という点で治療的であってもよい。したがって、治療は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患の素因を有する可能性があるが、疾患を有するとまだ診断されていない対象において、疾患が発生するのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、疾患の発症を停止させること、及び(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の後退を引き起こすことを含む。
【0052】
「治療有効量」とは、疾患を治療するために哺乳動物又は他の対象に投与された場合、疾患のそのような治療をもたらすのに十分な抗αシヌクレイン抗体又はその抗原結合断片の量を指す。治療有効量は、抗αシヌクレイン抗体又はその抗原結合断片、疾患及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重などに応じて変化する。
【0053】
「単離された」という用語は、本明細書を通して、場合によっては、抗体、抗原結合断片又はポリヌクレオチドが、自然界で生じ得るものとは異なる物理的環境に存在することを意味する。
【0054】
本発明の第1の態様では、カリクレイン5(KLK5)に結合する抗体が提供され、モノクローナル抗体は、可変軽鎖及び可変重鎖を含み、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む。
【0055】
カリクレイン5(KLK5、KLK-L2、SCTE又は任意の他の既知の同義語)はトリプシン様活性を有する。これはプレプロフォームで発現され、バイオインフォマティクスツールSignalP 5.0(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/index.php)による29個のアミノ酸のシグナルペプチドと、それに続く37個のアミノ酸のプロペプチド配列とを含む。プロペプチドの切断は、セリンプロテアーゼに典型的な残基の触媒三連を有する活性部位を有する、237個のアミノ酸からなる活性成熟酵素を産生する(Michael I.P et al.,2005;JBC 280:15,14628-35)。
【0056】
別段特定されない限り、KLK5という用語は、任意の天然のプレフォーム及びプロフォーム(すなわち、シグナル配列及び活性化ペプチドを含む未処理のKLK5)、選択的スプライシング又は天然のバリアント、変異体及び他の種からのKLK5(マウス、カニクイザルなど)並びに活性KLK5(自己切断又はその他から生じる)を指す。ヒトKLK5が特定される場合、ヒトKLK5は、配列番号144に示される配列(活性ヒトKLK5)を含む。本明細書で言及される他のKLK5配列は、配列番号143(シグナル配列を欠くヒトKLK5プロフォーム)又は配列番号142(シグナル配列お及びプロペプチド配列を有する完全長ヒトKLK5)、Uniprot Q9Y337に対応する配列、又は55位及び153位に変異を含む天然バリアント(配列番号142を参照)を含む。これらの変異の例は、残基55でのGlyからArgへの変異(G55R)及び/又は残基153でのAspからAsnへの変異(D153N)を有する、配列番号142による残基23~293を含むヒトKLK5を含む。
【0057】
本発明による抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler&Milstein,1975,Nature,256:495-497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.,1983,Immunology Today,4:72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp77-96,Alan R Liss,Inc.,1985)などの当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。
【0058】
本発明で使用するための抗体はまた、例えばBabcook,J.et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843-7848l、国際公開第92/02551号、国際公開第2004/051268号及び国際公開第2004/106377号により記載される方法によって、特定の抗体を産生するように選択された単一リンパ球から産生した免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングし発現させることにより、単一リンパ球抗体法を用いて産生することができる。
【0059】
一実施形態では、カリクレイン5(KLK5)に結合する抗体は、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号10又は14又は23を含むCDR-H3を含む可変重鎖を含む。
【0060】
好ましい一実施形態では、カリクレイン5(KLK5)に結合する抗体は、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含む可変重鎖を含む。
【0061】
本発明による抗体は、3つが重鎖由来であり、3つが軽鎖由来である相補性決定領域(CDR)を含む。一般に、CDRはフレームワーク内にあり、共に可変領域を形成する。慣例により、抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域内のCDRは、CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と呼ばれ、軽鎖可変領域内のCDRは、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3と呼ばれる。それらは、各鎖のN末端からC末端の方向に連続して番号付けされる。
【0062】
CDRは、従来、Kabatらによって考案されたシステムに従ってナンバリングされる。このシステムは、Kabat et al.,1991,in Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USA(以下「Kabat et al.(前出)」)に記載されている。この番号付けシステムは、別段の指示がない限り、本明細書で使用される。
【0063】
Kabat残基の名称は、アミノ酸残基の直鎖状の番号付けと必ずしも直接対応しない。実際の直鎖状のアミノ酸配列は、基本可変ドメイン構造のフレームワーク又は相補性決定領域(CDR)にかかわらず、構造成分の短縮又は挿入に対応する厳密なKabatナンバリングよりも少ない又は追加のアミノ酸を含むことができる。残基の正しいKabatナンバリングは、抗体の配列における相同性の残基と「標準的な」Kabatナンバリング配列とのアラインメントによって、所与の抗体について決定することができる。
【0064】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)及び残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia,C.and Lesk,A.M.J.Mol.Biol.,196,901-917(1987))によれば、CDR-H1と等価なループは、残基26から残基32まで延びる。したがって、特に指示しない限り、本明細書で使用される「CDR-H1」は、KabatナンバリングシステムとChothiaのトポロジカルループ定義との組合せによって記載される残基26から35を指すことが意図される。
【0065】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)及び残基89~97(CDR-L3)に位置する。
【0066】
CDRループに加えて、第4のループが、CDR-2(CDR-L2又はCDR-H2)と、フレームワーク3(FR3)によって形成されるCDR-3(CDR-L3又はCDR-H3)との間に存在する。Kabatナンバリングシステムは、フレームワーク3を重鎖の位置66~94及び軽鎖の位置57~88として定義する。
【0067】
本開示の文脈で使用される「抗体」という用語は、全抗体及びその機能的に活性な断片、すなわち、抗原結合断片とも呼ばれる、抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む分子を含む。抗体に関して本明細書に記載される特徴は、文脈上他に指示されない限り、抗原結合断片にも適用される。抗体は、モノクローナル、多価、多重特異性、二重特異性、完全ヒト、ヒト化又はキメラであってもよい(又はそれらに由来してもよい)。
【0068】
「免疫グロブリン(Ig)」としても公知の全抗体は、一般に、インタクト又は完全長抗体、すなわち、特徴的なY字形三次元構造を規定するように集合するジスルフィド結合によって相互に連結された2つの重鎖及び2つの軽鎖の要素を含む抗体に関する。古典的な天然全抗体は、1つの抗原タイプに結合するという点で単一特異性であり、2つの独立した抗原結合ドメインを有するという点で二価である。「インタクト抗体」、「完全長抗体」及び「全抗体」という用語は、本明細書で定義されるFc領域を含む、天然の抗体構造に類似した構造を有する単一特異性二価抗体を指すために互換的に使用される。
【0069】
各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。各重鎖は、Igクラスに応じて、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と、3つの定常ドメインCH1、CH2及びCH3、又は4つの定常ドメインCH1、CH2、CH3及びCH4で構成される重鎖定常領域(CH)とで構成される。Ig又は抗体の「クラス」は定常領域のタイプを指し、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMを含み、それらのいくつかはサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に更に分割することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0070】
本明細書で使用される「定常領域」又は「定常ドメイン」という用語は、可変領域の外側にある抗体のドメインを指すために互換的に使用される。定常ドメインは、同じアイソタイプの全ての抗体において同一であるが、アイソタイプごとに異なる。典型的には、重鎖の定常領域は、N末端からC末端に向かって、3つ又は4つの定常ドメインを含むCH1-ヒンジ-CH2-CH3-、場合によりCH4によって形成される。
【0071】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、存在する場合、提案される抗体の機能、特に、必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択することができる。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、ヒトIgG定常領域ドメインは、抗体が治療用途を意図しており、抗体エフェクター機能が必要とされる場合、特にIgG1及びIgG3アイソタイプのものを使用することができる。或いは、抗体が治療目的のために意図され、抗体エフェクター機能が必要とされない場合、IgG2及びIgG4アイソタイプを使用することができる。これらの定常領域ドメインの配列バリアントも使用することができることが理解されるであろう。例えば、241位のセリン(Kabatナンバリングシステムに従ってナンバリング)プロリンに変更されたIgG4が、Angalら(Angal et al.,1993)に記載されている。単一のアミノ酸置換は、SDS-PAGE分析中に観察されるようなキメラマウス/ヒト(IgG4)抗体の不均一性を消失させ(Mol Immunol 30,105-108)、これを使用することができる。これは、本明細書ではIgG4Pと呼ばれる。この単一のアミノ酸置換は、IgG4分子の重鎖が交換してキメラ分子を産生する自然な傾向を妨げる。
【0072】
「Fc領域」、「Fc断片」又は単に「Fc」は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含む抗体のC末端領域を指すために互換的に使用される。したがって、Fcは、IgA、IgD及びIgGの最後の2つの定常ドメイン、CH2及びCH3、又はIgE及びIgMの最後の3つの定常ドメイン、並びにこれらのドメインに対する可撓性ヒンジN末端を指す。ヒトIgG1重鎖Fc領域は、本明細書において、残基C226からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、ナンバリングはKabatのようなEUインデックスに従う。ヒトIgG1の文脈において、KabatのようなEUインデックスに従って、下側ヒンジは、226~236位を指し、CH2ドメインは、237~340位を指し、CH3ドメインは、341~447位を指す。他の免疫グロブリンの対応するFc領域は、配列アラインメントによって同定することができる。
【0073】
本開示の文脈において、存在する場合、定常領域又はFc領域は、上記で定義したように天然であってもよく、又は機能的FcR結合ドメイン、好ましくは機能的FcRn結合ドメインを含む限り、様々な方法で修飾されてもよい。好ましくは、修飾定常領域又はFc領域は、機能性及び/又は薬物動態を改善する。修飾は、Fc断片の特定の部分の欠失を含むことができる。修飾は、抗体の生物学的特性に影響を及ぼすことができる様々なアミノ酸置換を更に含むことができる。FcRn結合、したがってインビボ半減期を増加させるための変異も存在してもよい。修飾は、抗体のグリコシル化プロファイルの修飾を更に含むことができる。天然Fc断片は、297位(Asn297)のアスパラギン残基に結合したN-グリカンが2つの重鎖のそれぞれに存在するCH2ドメイン中でグリコシル化される。本開示の文脈において、抗体は、例えば、改善された特性、例えば改善されたエフェクター機能、又は改善された血清半減期をもたらす特定のグリコシル化プロファイルを有するように遺伝子操作された糖修飾されてもよい。
【0074】
抗体の抗原結合断片としては、一本鎖抗体(例えば、scFv及びdsscFv)、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体又はナノボディ(例えば、VH若しくはVL、又はVHH若しくはVNAR)が挙げられる。本発明で使用するための他の抗体断片としては、国際公開第2011/117648号、国際公開第2005/003169号、国際公開第2005/003170号及び国際公開第2005/003171号(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているFab及びFab’断片が挙げられる。
【0075】
これらの抗体断片を産生及び製造する方法は、当技術分野で公知である(例えば、Verma et al.,1998,Journal of Immunological Methods,216,165-181を参照されたい)。
【0076】
本明細書で使用される典型的な「Fab’断片」又は「Fab’」は、重鎖と軽鎖の対を含み、重鎖は可変領域VH、定常ドメインCH1及び天然又は修飾ヒンジ領域を含み、軽鎖は可変領域VL及び定常ドメインCLを含む。本開示によるFab’の二量体は、例えば二量体化がヒンジによるものであってもよいF(ab’)2を産生する。
【0077】
本明細書で使用される「単一ドメイン抗体」という用語は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片を指す。単一ドメイン抗体の例としては、VH又はVL又はVHH又はV-NARが挙げられる。
【0078】
「Fv」は、2つの可変ドメイン、例えば、同族対又は親和性成熟可変ドメイン、すなわちVH及びVL対などの協同可変ドメインを指す。
【0079】
本明細書で使用される「一本鎖可変断片」又は「scFv」は、VH可変ドメインとVL可変ドメインとの間のペプチドリンカーによって安定化される一本鎖可変断片を指す。
【0080】
本明細書で使用される「ジスルフィド安定化一本鎖可変断片」又は「dsscFv」は、VHとVL可変ドメイン間とのペプチドリンカーによって安定化され、VHとVLとの間のドメイン間ジスルフィド結合も含む一本鎖可変断片を指す(例えば、Weatherill et al.,Protein Engineering,Design&Selection,25(321-329),2012、国際公開第2007109254号を参照されたい)。
【0081】
可変ドメインVHとVLとの間のジスルフィド結合は、以下に列挙する残基のうちの2つの間にある(文脈上別段の指示がない限り、以下のリストではKabatナンバリングが用いられる)(Protein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)、Weatherill et al.,Protein Engineering,Design&Selection,25(321-329),2012、J Biochem.118,825-831 Luo et al(1995)、FEBS Letters 377 135-139 Young et al(1995)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.90 pp.7538-7542 Brinkmann et al(1993)、Proteins 19,35-47 Jung et al(1994)Biochemistry 29 1362-1367、Glockshuber et al(1990)。Kabatナンバリングが参照される場合、関連する参照は、Kabat et al.,1991(5th edition,Bethesda,Md.),in Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USAである。
【0082】
・VH37+VL95C、
・VH44+VL100、
・VH44+VL105、
・VH45+VL87、
・VH55+VL101、
・VH100+VL50、
・VH100b+VL4
・VH98+VL46、
・VH101+VL46、
・VH105+VL43、
・VH106+VL57、
及び分子内に位置する可変領域対におけるそれに対応する1つ又は複数の位置を含む。
【0083】
本明細書で使用される「抗体」という用語はまた、一価、すなわち1つの抗原結合ドメイン(例えば、「半抗体」とも呼ばれる、相互接続された全長重鎖及び全長軽鎖を含む1アーム抗体)のみを含む抗体を包含する。
【0084】
「抗体」という用語はまた、複数の特異性、例えば二重特異性又は三重特異性又は多重特異性抗体を含む多価抗体を包含する。
【0085】
本明細書で使用される「多重特異性(Multispecific)」又は「多重特異性(multi-specific)抗体」は、少なくとも2つの結合ドメイン、すなわち2つ以上の結合ドメイン、例えば2つ又は3つの結合ドメインを有する本明細書に記載の抗体を指し、少なくとも2つの結合ドメインは、2つの異なる抗原又は同じ抗原上の2つの異なるエピトープに独立して結合する(マルチパラトピックとも呼ばれる)。多重特異性抗体は、一般に、各特異性(抗原)に対して一価である。本明細書に記載の多重特異性抗体は、一価及び、例えば二価、三価、四価の多重特異性抗体を包含する。
【0086】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」は、標的抗原と特異的に相互作用する1つ又は複数の可変ドメインの一部又は全部、例えば一対の可変ドメインVH及びVLの一部又は全部を含む抗体の一部を指す。結合ドメインは、単一ドメイン抗体を含むことができる。一実施形態では、各結合ドメインは一価である。好ましくは、各結合ドメインは、1つ以下のVH及び1つのVLを含む。
【0087】
様々な多重特異性抗体フォーマットが当技術分野で公知である。様々な分類が提案されているが、多重特異性IgG抗体フォーマットは、一般に、例えばSpiess et al.,Mol Immunol.67(2015):95-106に記載されているように、二重特異性IgG、付加IgG、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体断片、多重特異性(例えば、二重特異性)融合タンパク質、及び多重特異性(例えば、二重特異性)抗体コンジュゲートが挙げられる。
【0088】
二重特異性抗体を作製するための技術としては、CrossMab技術(Klein et al.,Methods 154(2019)21-31)、Knobs-in-holesエンジニアリング(例えば、国際公開第1996027011号、国際公開第1998050431号)、DuoBody技術(例えば、国際公開第2011131746号)、Azymetric技術(例えば、国際公開第2012058768号)が挙げられるが、これらに限定されない。二重特異性抗体を作製するための更なる技術が、例えば、Godar et al.,2018,Expert Opinion on Therapeutic Patents,28:3,251-276に記載されている。二重特異性抗体としては、特にCrossMab抗体、DAF(ツー・イン・ワン)、DAF(フォー・イン・ワン)、DutaMab、DT-lgG、Knobs-in-holes共通LC、Knobs-in-holesアセンブリ、電荷対、Fabアーム交換、SEEDbody、Triomab、LUZ-Y、Fcab、κλ-body及び直交Fabが挙げられる。
【0089】
付加IgGは、古典的には、IgGの重鎖及び/又は軽鎖のN末端及び/又はC末端に追加の抗原結合ドメイン又は抗原結合断片を付加することによって操作された全長IgGを含む。そのような追加の抗原結合断片の例としては、sdAb抗体(例えば、VH又はVL)、Fv、scFv、dsscFv、Fab、scFavが挙げられる。付加IgG抗体フォーマットとしては、例えばSpiess et al.,Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.Mol Immunol.67(2015):95-106に記載されているように、特にDVD-IgG、IgG(H)-scFv、scFv-(H)lgG、IgG(L)-Fv、IgG(L、H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-lgG、IgG(L)-V、V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFv-lgG、IgG-2scFv、scFv4-lg、Zybody及びDVI-IgG(フォー・イン・ワン)が含まれる。
【0090】
例えばSpiess et al.,for bispecific antibodies.Mol Immunol.67(2015):95-106に記載されているように、多重特異性抗体断片としては、ナノボディ、ナノボディ-HAS、BiTE、二重特異性抗体、DART、TandAb、sc二重特異性抗体、sc-二重特異性抗体-CH3、二重特異性抗体-CH3、トリプルボディ、ミニ抗体、ミニボディ、Tri Biミニボディ、scFv-CH3KIH、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFv、F(ab’)2、F(ab’)2-scFv2、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価HCAb、sc二重特異性抗体-Fc、二重特異性抗体-Fc、タンデムscFv-Fc、及び細胞内抗体が挙げられる。
【0091】
多重特異性融合タンパク質としては、Dock and Lock、ImmTAC、HSAbody、sc二重特異性抗体-HAS、及びタンデムscFv-Toxinが挙げられる。多重特異性抗体コンジュゲートとしては、IgG-IgG、Cov-X-Body、及びscFv1-PEG-scFv2が挙げられる。
【0092】
追加の多重特異性抗体フォーマットは、例えばタンデムscFv、トリプルボディ、Fab-VHH、taFv-Fc、scFv4-Ig、scFv2-Fcab、scFv4-IgGについては、例えばBrinkmann and Kontermann,mAbs,9:2,182-212(2017)、特に
図2に記載されている。バイボディ、トリボディ及びその産生方法は、例えば国際公開第99/37791号に開示されている。
【0093】
付加IgG及び付加Fabは、例えば、国際公開第2009/040562号、国際公開第2010035012号、国際公開第2011/030107号、国際公開第2011/061492号、国際公開第2011/061246号及び国際公開第2011/086091号に記載されているように、少なくとも1つの追加の抗原結合ドメイン(例えば、2つ、3つ又は4つの追加の抗原結合ドメイン)、例えば単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL、又はVHH)、scFv、dsscFv、dsFvを当該IgG又はFabの重鎖及び/又は軽鎖のN末端及び/又はC末端に付加することによって操作された全IgG又はFab断片をそれぞれ含む。特に、Fab-Fvフォーマットは、国際公開第2009/040562号に最初に開示され、そのジスルフィド安定化バージョンであるFab-dsFvは、国際公開第2010/035012号に最初に開示された。dsFvがFvのVL又はVHドメインとFabのLC又はHCのC末端との間の単一リンカーを介してFabに連結されている単一リンカーFab-dsFvは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/096390号に最初に開示された。IgGの重鎖又は軽鎖のC末端にdsFvを付加することによって操作された全長IgG1を含む付加IgGは、国際公開第2015/197789号に最初に開示され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
或いは、別の多重特異性フォーマットは、2つのscFv又はdsscFvに連結されたFabを含み、各scFv又はdsscFvは同じ又は異なる標的(例えば、治療標的に結合する1つのscFv又はdsscFvと、例えばアルブミンに結合することによって半減期を延長する1つのscFv又はdsscFv)に結合する。そのような抗体断片は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2015/197772号に記載されている。別のフォーマットは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/068571号及びDave et al.,Mabs,8(7)1319-1335(2016)に記載されているように、ただ1つのscFv又はdsscFvに連結されたFabを含む。
【0095】
多重特異性抗体の他の公知のフォーマットは、以下を含む。
二重特異性抗体は、本明細書で用いる場合、第1のFvのVHが第2のFvのVLに連結され、第1のFvのVLが第2のFvのVHに連結されるように、2つのFv間リンカーを有する2つのFv対、第1のVH/VL対及び更なるVH/VL対を指す。
【0096】
トリアボディは、本明細書で用いる場合、3つのFv及び3つのFv間リンカーを含む二重特異性抗体と同様のフォーマットを指す。
【0097】
テトラボディは、本明細書で用いる場合、4つのFv及び4つのFv間リンカーを含む二重特異性抗体と同様のフォーマットを指す。
【0098】
タンデムscFvは、本明細書で用いる場合、単一のFv間リンカーが存在するように単一のリンカーを介して連結された少なくとも2つのscFvを指す。
【0099】
タンデムscFv-Fcは、本明細書で用いる場合、少なくとも2つのタンデムscFvを指し、それぞれが、例えばヒンジを介して、定常領域断片-CH2CH3のCH2ドメインのN末端に付加されている。
【0100】
Fab-Fvは、本明細書で用いる場合、以下の重鎖のCH1及び軽鎖のCLのそれぞれのC末端に付加された可変領域を有するFv断片を指す。フォーマットは、そのPEG化バージョンとして提供することができる。
【0101】
Fab’-Fvは、本明細書で用いる場合、Fab部分がFab’によって置き換えられているFabFvと同様である。フォーマットは、そのPEG化バージョンとして提供することができる。
【0102】
Fab-dsFvは、本明細書で用いる場合、Fv内ジスルフィド結合が付加C末端可変領域を安定化するFabFvを指す。フォーマットは、そのPEG化バージョンとして提供することができる。
【0103】
Fab-scFvは、本明細書で用いる場合、軽鎖又は重鎖のC末端にscFvが付加されたFab分子である。
【0104】
Fab’-scFvは、本明細書で用いる場合、軽鎖又は重鎖のC末端にscFvが付加されたFab’分子である。
【0105】
DiFabは、本明細書で用いる場合、重鎖のC末端を介して連結された2つのFab分子を指す。
【0106】
DiFab’は、本明細書で用いる場合、そのヒンジ領域内の1つ又は複数のジスルフィド結合を介して連結された2つのFab’分子を指す。
【0107】
本明細書で用いる場合、sc二重特異性抗体は、分子が3つのリンカーを含み、そのVH末端及びVL末端がそれぞれ更なるFv対の可変領域の1つに連結されている通常のscFvを形成するような、Fv内リンカーを含む二重特異性抗体である。
【0108】
Sc二重特異性抗体-Fcは、本明細書で用いる場合、2つのsc二重特異性抗体であり、各sc二重特異性抗体は、定常領域断片-CH2CH3のCH2ドメインのN末端に、例えばヒンジを介して付加されている。
【0109】
ScFv-Fc-scFvは、本明細書で用いる場合、4つのscFvを指し、各scFvは、-CH2CH3断片の重鎖及び軽鎖の両方のN末端及びC末端に付加されている。
【0110】
Sc二重特異性抗体-CH3は、本明細書で用いる場合、例えばヒンジを介してCH3ドメインにそれぞれ連結された2つのsc二重特異性抗体分子を指す。
【0111】
IgG-scFvは、本明細書で用いる場合、各重鎖又は各軽鎖のC末端にscFvを有する完全長抗体である。
【0112】
scFv-IgGは、本明細書で用いる場合、各重鎖又は各軽鎖のN末端にscFvを有する完全長抗体である。
【0113】
V-IgGは、本明細書で用いる場合、各重鎖又は各軽鎖のN末端に可変ドメインを有する完全長抗体である。
【0114】
IgG-Vは、本明細書で用いる場合、各重鎖又は各軽鎖のC末端に可変ドメインを有する完全長抗体である。
【0115】
DVD-Ig(二重VドメインIgGとしても知られる)は、各重鎖及び各軽鎖のN末端に1つずつ、4つの更なる可変ドメインを有する完全長抗体である。
【0116】
本発明によるモノクローナル抗体は、好ましくは完全長抗体である。より好ましくは、完全長抗体は、IgG1、IgG4又はIgG4Pから選択される。
【0117】
別の実施形態では、モノクローナル抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dAb又はVHHから選択される。
【0118】
一実施形態では、本発明による抗体は、抗体が産生された動物のフレームワーク領域を含むことができる。例えば、抗体がウサギにおいて産生された場合、抗体は上記で定義されたCDR及びウサギ抗体のフレームワーク領域、例えば配列番号30による軽鎖可変領域(そのヌクレオチド配列は配列番号31に示される)及び配列番号32による重鎖可変領域(そのヌクレオチド配列は配列番号33に示される)を含む抗体を含む。
【0119】
一実施形態では、抗体は、キメラ又はヒト化であってもよい。或いは、抗体はヒトであってもよい。
【0120】
キメラ抗体は、典型的には、組換えDNA法を用いて産生される。ヒトのL及びH鎖のコード配列を、対応する非ヒト(例えば、マウス又はウサギ)のH及びL定常領域で置き換えることによってDNAを修飾することができる(Morrison;PNAS 81,6851(1984))。
【0121】
ヒト抗体は、抗体の可変領域又は全長鎖がヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られる場合、特定の生殖細胞系配列の「生成物」であるか又はそれに「由来する」重鎖若しくは軽鎖可変領域又は全長重鎖若しくは軽鎖を含む。そのような系には、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを目的の抗原で免疫すること、又はファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを目的の抗原でスクリーニングすることが含まれる。ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列の「生成物」であるか又はそれに「由来する」ヒト抗体又はその断片は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列に配列が最も近い(すなわち、最大%の同一性)ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を選択することによって、同定することができる。特定のヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列の「生成物」であるか又はそれに「由来する」ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞変異又は部位特異的変異の意図的な導入に起因して、生殖細胞系配列と比較してアミノ酸の相違を含むことができる。しかし、選択されたヒト抗体は、典型的には、他の種の生殖細胞系免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖系列配列)と比較した場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列が少なくとも90%同一であり、ヒト抗体をヒトであると同定するアミノ酸残基を含有する。特定の場合において、ヒト抗体は、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列が少なくとも60%、70%、80%、90%、若しくは少なくとも95%、又は更には少なくとも96%、97%、98%、若しくは99%同一であってもよい。典型的には、特定のヒト生殖細胞系配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10個以下のアミノ酸の差を示す。特定の場合において、ヒト抗体は、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と5個以下、又は更には4個、3個、2個若しくは1個以下のアミノ酸の差を示し得る。
【0122】
ヒト抗体は、当業者に公知の多くの方法によって産生することができる。ヒト抗体は、ヒト骨髄腫又はマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞株(Kozbor,J Immunol;(1984)133:3001;Brodeur,Monoclonal Isolated Antibody Production Techniques and Applications,pp51-63,Marcel Dekker Inc,1987)を使用するハイブリドーマ法によって産生することができる。代替的な方法には、ファージライブラリー又はトランスジェニックマウスの使用が含まれ、その両方がヒト可変領域レパートリーを利用する(Winter G;(1994)Annu Rev Immunol 12:433-455,Green LL,(1999)J Immunol Methods 231:1 1-23)。
【0123】
本発明の好ましい一実施形態では、本発明による抗体はヒト化されている。
【0124】
好ましい一実施形態では、カリクレイン5(KLK5)に結合するモノクローナル抗体は、可変軽鎖及び可変重鎖を含み、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含み、
抗体はヒト化され、より好ましくは可変軽鎖は配列番号7を含むCDR-L1を含み、及び可変重鎖は配列番号23を含むCDR-H3を含む。
【0125】
更に好ましい一実施形態では、本発明によるモノクローナル抗体は、好ましくはカリクレイン5(KLK5)に結合し、かつ可変軽鎖及び可変重鎖を含む完全長抗体であり、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか一つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含み、
抗体はヒト化され、より好ましくは可変軽鎖は配列番号7を含むCDR-L1を含み、可変重鎖は配列番号23を含むCDR-H3を含む。更により好ましくは、完全長抗体は、IgG1、IgG4又はIgG4Pから選択される。
【0126】
本明細書で使用される場合、「ヒト化」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワークに移植されたドナー抗体(例えば、マウス又はウサギモノクローナル抗体などの非ヒト抗体)由来の1つ又は複数のCDR(所望であれば、1つ又は複数の修飾CDRを含む)を含む抗体を指す。総説については、Vaughan et al.,Nature Biotechnology,16,535-539,1998を参照されたい。一実施形態では、全CDRが移入されるのではなく、本明細書中上記で記載されるCDRのいずれか1つからの特異性決定残基の1つ又は複数のみがヒト抗体フレームワークに移入される(例えば、Kashmiri et al.,2005,Methods,36,25-34を参照されたい)。一実施形態では、上記の1つ又は複数のCDRからの特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに移入される。別の実施形態では、上記のCDRの各々からの特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに移入される。
【0127】
CDRが移植される場合、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域が含まれる、CDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプを考慮して、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列を使用することができる。
【0128】
好ましくは、本発明によるヒト化モノクローナル抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域並びに本明細書で具体的に提供されるCDRの1つ又は複数を含む可変ドメインを有する。したがって、一実施形態では、KLK5に結合するヒト化モノクローナル抗体であって、可変ドメインがヒトアクセプターフレームワーク領域及び非ヒトドナーCDRを含むヒト化モノクローナル抗体が提供される。
【0129】
本発明において使用することができるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOM(Kabat他、前出)である。例えば、KOL及びNEWMを重鎖に使用することができ、REIを軽鎖に使用することができ、EU、LAY及びPOMを重鎖及び軽鎖の両方に使用することができる。或いは、ヒト生殖細胞系配列を使用することができ、http://www.imgt.org/で入手可能である。
【0130】
本発明によるヒト化抗体において、アクセプター重鎖及び軽鎖は、必ずしも同じ抗体に由来する必要はなく、所望であれば、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含むことができる。
【0131】
本発明によるヒト化モノクローナル抗体の軽鎖に適したフレームワーク領域は、配列番号138を含み、そのヌクレオチド配列が配列番号139に示されているヒト生殖細胞系IGKV1D-13 JK4に由来する。
【0132】
本発明によるヒト化モノクローナル抗体の重鎖に適したフレームワーク領域は、配列番号140に示される配列を含み、そのヌクレオチド配列が配列番号141に示されるヒト生殖細胞系IGHV3-66 JH6に由来する。
【0133】
したがって、一実施形態では、KLK5に結合するヒト化モノクローナル抗体が提供され、抗体は可変軽鎖及び可変重鎖を含み、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含み、
より好ましくは、可変軽鎖は配列番号7を含むCDR-L1を含み、可変重鎖は配列番号23を含むCDR-H3を含み、軽鎖フレームワーク領域は配列番号138を含むヒト生殖細胞系IGKV1D-13 JK4に由来し、重鎖フレームワーク領域は配列番号140を含むヒト生殖細胞系IGHV3-66 JH6に由来する。
【0134】
本発明によるヒト化モノクローナル抗体において、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のものと同じ正確な配列を有していなくてもよい。例えば、異常な残基は、そのアクセプター鎖クラス又はタイプについて、より頻繁に生じる残基に変更されてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域中の選択された残基は、それらがドナー抗体中の同じ位置に見出される残基に対応するように変更されてもよい(Reichmann et al.,1998,Nature,332,323-324を参照されたい)。そのような変更は、ドナー抗体の親和性を回復するのに必要な最小限に保たれるべきである。変更する必要があり得るアクセプターフレームワーク領域中の残基を選択するためのプロトコルは、国際公開第91/09967号(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0135】
したがって、一実施形態では、フレームワーク中の1、2、3、4、5、6、7又は8個の残基が代替アミノ酸残基で置換される。
【0136】
したがって、一実施形態では、少なくとも可変重鎖の(配列番号140を参照して)24、48、49、71、73及び78の各位置の残基がドナー残基である、本発明によるヒト化モノクローナル抗体が提供される。
【0137】
好ましくは、可変重鎖の24位の残基は(アラニンの代わりに)バリン残基であり、48位の残基は(バリンの代わりに)イソロイシンであり、49位の残基は(セリンの代わりに)グリシンであり、71位の残基は(アルギニンの代わりに)リジンであり、73位の残基は(アスパラギンの代わりに)セリンであり、78位の残基は(ロイシンの代わりに)バリンである。
【0138】
したがって、KLK5に結合するヒト化モノクローナル抗体が提供され、抗体は、
a.可変軽鎖が、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む、上記可変軽鎖、及び
b.可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む、上記可変重鎖を含み、
より好ましくは、可変軽鎖は配列番号7を含むCDR-L1を含み、可変重鎖は配列番号23を含むCDR-H3を含み、軽鎖フレームワーク領域は配列番号138を含むヒト生殖細胞系IGKV1D-13 JK4に由来し、重鎖フレームワーク領域は配列番号140を含むヒト生殖細胞系IGHV3-66 JH6に由来し、可変重鎖の(配列番号140を参照して)24、48、49、71、73及び78位のアミノ酸残基はドナー残基である。
【0139】
したがって、一実施形態では、KLK5に結合するヒト化モノクローナル抗体は、
a.配列番号34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、及び
b.配列番号50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖を含む。
【0140】
好ましくは、KLK5に結合するヒト化モノクローナル抗体は、
a.配列番号38を含む可変軽鎖、及び
b.配列番号110を含む可変重鎖を含む。
【0141】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示される配列と80%類似又は同一である配列、例えば関連する配列、例えば可変ドメイン配列、CDR配列、又はCDRを除く可変ドメイン配列の一部又は全部にわたって85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である配列を含む抗体を提供する。一実施形態では、関連する配列は配列番号38である。一実施形態では、関連する配列は配列番号110である。
【0142】
一実施形態では、KLK5に結合するモノクローナル抗体は、軽鎖及び重鎖を含み、可変軽鎖は、配列番号38に含まれる配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性若しくは類似性を有する配列を含み、及び/又は可変重鎖は、配列番号110に含まれる配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む。
【0143】
本明細書で使用される「同一性」、「同一の」又はその文法的変形は、アライメントされた配列の任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。本明細書で使用される「類似度」、「類似の」又はそれらの文法的変形は、アライメントされた配列内の任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で類似のタイプであることを示す。例えば、イソロイシン又はバリンの代わりにロイシンを用いてもよい。互いに置換され得る他のアミノ酸としては、限定されないが、
-フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)、
-リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸)、
-アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸)、
-アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸)、及び
-システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)が挙げられる。
【0144】
同一性及び類似性の程度は、容易に計算することができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、NCBIから入手可能なBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410、Gish,W.&States,D.J.1993,Nature Genet.3:266-272.Madden,T.L.et al.,1996,Meth.Enzymol.266:131-141、Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402、Zhang,J.&Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649-656)。
【0145】
一実施形態では、抗体は、好ましくはIgG1、及びIgG4又はIgG4Pから選択される完全長抗体である。
【0146】
したがって、本発明は、カリクレイン5(KLK5)に結合し、かつ
a.可変軽鎖が、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む、上記可変軽鎖、及び
b.可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む、上記可変重鎖を含み、
より好ましくは、可変軽鎖が配列番号7を含むCDR-L1を含み、可変重鎖が配列番号21を含むCDR-H3を含む、完全長ヒト化モノクローナル抗体を提供し、及び抗体は、IgG4Pアイソフォームである。
【0147】
本発明はまた、KLK5に結合し、
a.配列番号36又は40又は44又は48を含む軽鎖、及び
b.配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む重鎖を含む、全長ヒト化モノクローナル抗体を提供する。
【0148】
好ましくは、KLK5に結合する全長ヒト化モノクローナル抗体は、
a.配列番号40を含む軽鎖、及び
b.配列番号112を含む重鎖を含む。
【0149】
一実施形態では、KLK5に結合するモノクローナル抗体は、配列番号40に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である軽鎖であって、抗体がCDR-L1については配列番号7(又は配列番号1若しくは8若しくは9)を含む配列、CDR-L2については配列番号2を含む配列、及びCDR-L3については配列番号3を含む配列を有する、上記軽鎖と、配列番号112に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である重鎖であって、抗体がCDR-H1については配列番号4、CDR-H2については配列番号5、及びCDR-H3については配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは配列番号10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含む配列を有する、上記重鎖と、を含む。
【0150】
更に別の実施形態では、KLK5に結合するモノクローナル抗体は、配列番号38を含む軽鎖可変領域及び配列番号110を含む重鎖可変領域を含むFab’断片である。
【0151】
別の実施形態では、KLK5に結合するモノクローナル抗体は、配列番号40を含む軽鎖及び配列番号112を含む重鎖を含む全長IgG4抗体である。
【0152】
抗体が様々な翻訳後修飾を受け得ることも当業者によって理解されるであろう。これらの修飾の種類及び程度は、多くの場合、抗体を発現するために使用される宿主細胞株並びに培養条件に依存する。そのような修飾には、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化及びアスパラギン脱アミド化のバリエーションを含むことができる。頻繁な修飾は、(Harris,RJ.Journal of Chromatography 705:129-134,1995に記載されているように)カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端塩基性残基(リジン又はアルギニンなど)の喪失である。したがって、抗体重鎖のC末端リジンは存在しなくてもよい。
【0153】
一実施形態では、抗体由来のC末端アミノ酸は、翻訳後修飾中に切断される。
【0154】
一実施形態では、抗体由来のN末端アミノ酸は、翻訳後修飾中に切断される。
【0155】
別の実施形態では、本発明によるモノクローナル抗体は、好ましくは配列番号144又は143又は142を含むヒトKLK5に結合し、カニクイザル(カニクイザル)KLK5、好ましくは配列番号151を含むカニクイザルKLK5にも結合する。
【0156】
一実施形態では、モノクローナル抗体は、ヒト及び/又はカニクイザルカリクレイン5(KLK5)に結合し、抗体は可変軽鎖及び可変重鎖を含み、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含み、又は
b.可変軽鎖は、配列番号30又は34又は38又は42又は46を含み、可変重鎖は、配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含み、又は
c.モノクローナル抗体は、軽鎖及び重鎖を含む完全長抗体であり、軽鎖は、配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖は、配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む。
【0157】
好ましい実施形態では、モノクローナル抗体は、ヒト及び/又はカニクイザルカリクレイン5(KLK5)に結合し、抗体は可変軽鎖及び可変重鎖を含み、
a.可変軽鎖は、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含み、又は
b.可変軽鎖は、配列番号38を含み、可変重鎖は、配列番号110を含み、又は
c.モノクローナル抗体は、軽鎖及び重鎖を含む完全長抗体であり、軽鎖は配列番号40を含み、重鎖は配列番号112を含む。
【0158】
別の実施形態では、本発明によるモノクローナル抗体は、ヒト若しくはカニクイザルカリクレイン2(KLK2)、又はヒト若しくはカニクイザルカリクレイン4(KLK4)、又はヒト若しくはカニクイザルカリクレイン7(KLK7)に結合しない。言い換えれば、抗体はKLK5に特異的であり、他のカリクレインには特異的ではない。
【0159】
本明細書で使用される「特異的」は、特異的である抗原のみを認識する抗体、又は非特異的である抗原(ガンマシヌクレイン及びベータシヌクレイン)への結合と比較して、特異的である抗原(例えばKLK5)に対して有意に高い結合親和性、例えば少なくとも5、6、7、8、9、10倍高い結合親和性を有する抗体を指すことを意図する。
【0160】
一実施形態では、モノクローナル抗体は、ヒト及び/又はカニクイザルKLK5に結合し、ヒト若しくはカニクイザルKLK2、又はヒト若しくはカニクイザルKLK4、又はヒト若しくはカニクイザルKLK7に結合せず、抗体は可変軽鎖及び可変重鎖を含み、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、かつ可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含み、又は
b.可変軽鎖は、配列番号30又は34又は38又は42又は46を含み、かつ可変重鎖は、配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含み、又は
c.モノクローナル抗体は、軽鎖及び重鎖を含む完全長抗体であり、軽鎖は、配列番号36又は40又は44又は48を含み、かつ重鎖は、配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む。
【0161】
好ましい実施形態では、モノクローナル抗体は、ヒト及び/又はカニクイザルKLK5に結合し、ヒト若しくはカニクイザルKLK2、又はヒト若しくはカニクイザルKLK4、又はヒト若しくはカニクイザルKLK7に結合せず、抗体は可変軽鎖及び可変重鎖を含み、
a.可変軽鎖は、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含み、又は
b.可変軽鎖は、配列番号38を含み、可変重鎖は、配列番号110を含み、又は
c.モノクローナル抗体は、軽鎖及び重鎖を含む完全長抗体であり、軽鎖は配列番号40を含み、重鎖は配列番号112を含む。
【0162】
一実施形態では、本発明によれば、KLK5への抗体の結合は、約7nM以下、好ましくは500pM以下、好ましくは約400pM以下の解離定数(KD)を特徴とする。
【0163】
本明細書で使用される「KD」という用語は、Kd対Ka(すなわち、Kd/Ka)の比から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指す。Kd及びKaは、それぞれ、特定の抗原-抗体(又はその抗原結合断片)相互作用の解離速度及び会合速度を指す。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定する方法は、表面プラズモン共鳴、例えば本明細書の例に記載のBiacore(登録商標)システムを使用し、組換えKLK5又はその適切な融合タンパク質/ポリペプチドを使用することによるものである。一例では、親和性は、本明細書の例に記載の組換えKLK5を使用して測定される。表面プラズモン共鳴の場合、標的分子を固相に固定化し、フローセルに沿って移動する移動相中のリガンドに曝露する。固定化された標的にリガンドが結合すると、局所屈折率が変化してSPR角が変化し、反射光の強度の変化を検出することによってリアルタイムで監視することができる。SPRシグナルの変化速度を分析して、結合反応の会合相及び解離相の見かけの速度定数を得ることができる。これらの値の比により、見かけの平衡定数(親和性)が得られる(例えば、Wolff et al,Cancer Res.53:2560-65(1993)を参照されたい)。
【0164】
一実施形態では、本発明による抗体は、ヒトKLK5に対して、カニクイザル又はマウスKLK5よりも高い結合親和性(すなわち、より小さいKD)を有する。「親和性」という用語は、抗体とKLK5との間の相互作用の強度を指す。
【0165】
一実施形態では、本発明によるモノクローナル抗体は、KLK5プロテアーゼ活性をブロックするために800pM未満のIC50を有し、好ましくは、本発明によるモノクローナル抗体は、本明細書に記載のインビトロアッセイでKLK5プロテアーゼ活性をブロックするために18pM未満のIC50を有する。
【0166】
本明細書で使用されるIC50という用語は、本発明ではKLK5のプロテアーゼ活性である、特定の生物学的又は生化学的機能を阻害する際の抗体などの物質の有効性の尺度である最大半量阻害濃度を指す。IC50は、所与の生物学的プロセス又は機能又は活性を半分阻害するために特定の物質がどの程度必要であるかを示す定量的尺度である。
【0167】
本発明の別の実施形態では、KLK5に結合するモノクローナル抗体であって、抗体は、可変軽鎖及び可変重鎖を含み、及び
a.可変軽鎖は、配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、
b.可変重鎖は、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含み、
抗体は、KLK5のプロテアーゼ活性を阻害又は低下させる。
【0168】
本発明内で、「阻害する」(及びその文法的変形)という用語は、KLK5の生物学的活性に関して本発明による抗体が有する効果を示す。好ましくは、KLK5の生物学的活性は、プロテアーゼ活性、好ましくはセリンプロテアーゼ活性である。この効果は、KLK5のセリンプロテアーゼ活性の完全又は部分的な妨害をもたらす。
【0169】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明によるモノクローナル抗体は、KLK5に結合し、KLK5のプロテアーゼ活性(好ましくはセリンプロテアーゼ活性)を阻害(例えば、完全に又は部分的に)又は低下させ、及び/又は
i)KLK5がLEKTI又はLEKTIの断片に結合すると、KLK5に結合し、及び/又は
ii)KLK5の結合についてLEKTI又はLEKTIの断片と競合せず、及び/又は
iii)LEKTI又はLEKTIの断片に結合したKLK5と複合体を形成する(すなわち、本発明の抗体、KLK5及びLEKTI、又はLEKTIの断片を含む複合体を形成する)と考えられる。
【0170】
「複合体を形成する」(及びその任意の文法的変形)という用語は、KLK5がLEKTIなどの別のタンパク質、又はLEKTIの断片、又は別の抗体若しくはFabなどの抗体断片に既に結合している場合、本発明による抗体がKLK5に結合することができることを意味する。
【0171】
好ましくは、本明細書で特許請求される抗体は、KLK5のプロテアーゼ活性を阻害又は低下させ、及び/又はKLK5がLEKTI又はLEKTIの断片に結合すると、KLK5に結合し、及び/又はKLK5の結合についてLEKTI又はLEKTIの断片と競合せず、及び/又はLEKTI又はLEKTIの断片に結合したKLK5と複合体を形成する。
【0172】
本発明において、「LEKTI」という用語は、15個のドメインからなるリンパ上皮カザール型関連阻害剤を指し、プロテアーゼであるフューリンなどのプロタンパク質変換酵素によってより小さい機能性断片に切断され、1つ又は複数のドメインからなるLEKTIの断片をもたらす。これらの断片は細胞外空間に分泌され、そこでKLK5などのプロテアーゼと阻害性複合体を形成することができる。LEKTIは、セリンプロテアーゼ阻害剤カザール型5(SPINK5)としても知られており、ヒトにおいてSPINK5遺伝子によってコードされるタンパク質である。ヒトでは、LEKTI mRNAの3つのスプライスバリアントが産生され、それらのCOOH末端領域のみが異なるタンパク質の全長、長い及び短いアイソフォームをもたらす。
【0173】
SPINK5は、セリンプロテアーゼの阻害剤をコードする染色体5q32に位置する遺伝子ファミリークラスターのメンバーである。これには、「LEKTI」という用語内に本発明にも含まれる他の表皮タンパク質SPINK6及びLEKTI-2(SPINK9)が含まれる。
【0174】
KLK5に結合し、KLK5の生物学的(すなわち、プロテアーゼ)活性を阻害することができるが、KLK5の結合についてLEKTI又はLEKTIの断片と競合しない抗体に関連する利点は、LEKTIがKLK5:LEKTI複合体から解離する条件、例えば表皮の基底層から角質層へと次第に酸性になる環境において、KLK5活性の阻害を可能にし得ることである。
【0175】
これらの実施形態では、LEKTIの断片は、好ましくは、配列番号145のアミノ酸1~64を含むヒトLEKTIドメイン5又は配列番号152のアミノ酸1~71を含むLEKTIドメイン8である。
【0176】
一実施形態では、本発明によるモノクローナル抗体は、配列番号142を参照して、Leu212、Ser213、Gln214、Lys215、Arg216、Glu218、Asp219、Ala220、Pro222、Gly233、Pro269、Asn270及びPro272からなる群からの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ以上のアミノ酸残基を含むヒトKLK5のエピトープに結合する。好ましくは、エピトープはX線結晶学によって特徴付けられる。括弧内の数字はプロテアーゼ命名法に対応する。
【0177】
本発明内で、「エピトープ」という用語は、立体構造エピトープと直鎖状エピトープの両方に互換的に使用される。立体構造エピトープは、抗原のアミノ酸一次配列の不連続部分から構成され、直鎖状エピトープは、連続したアミノ酸によって形成される配列によって形成される。
【0178】
エピトープは、本発明によって提供される抗体のいずれか1つと組み合わせて、当技術分野で公知の任意の適切なエピトープマッピング方法によって同定することができる。そのような方法の例としては、本発明の抗体又はその断片への結合について、全長KLK5に由来する様々な長さのペプチドをスクリーニングすること、及び抗体によって認識されるエピトープの配列を含む、抗体に特異的に結合することができる最小断片を同定することが挙げられる。KLK5ペプチドは、合成的に又はKLK5のタンパク質分解消化によって産生することができる。抗体に結合するペプチドは、例えば、質量分析によって同定することができる。NMR分光法又はX線結晶学などの方法を使用して、抗体が結合したエピトープを同定することができる。典型的には、エピトープの決定をX線結晶学によって行う場合、CDRから4Å以内の抗原のアミノ酸残基は、エピトープのアミノ酸残基部分であると考えられる。一旦同定されると、エピトープは、本発明の抗体に結合する断片を調製するのに役立つ可能性があり、必要に応じて、同じエピトープに結合する更なる抗体を得るための免疫原として使用することができる。
【0179】
本発明を説明する態様及び実施形態に示されるエピトープは、好ましくは、X線結晶学によって特徴付けられるエピトープである。
【0180】
更に、本発明はまた、配列番号142を参照して、アミノ酸残基Leu212、Ser213、Gln214、Lys215、Arg216、Glu218、Asp219、Ala220、Pro222、Gly233、Pro269、Asn270及びPro272を含むヒトKLK5のエピトープに結合する抗体とクロスブロックするか、又は該抗体によってクロスブロックされることによって、KLK5、好ましくはヒトKLK5との結合について競合する抗体を提供し、抗体は
1.可変軽鎖及び可変重鎖であって、可変軽鎖が、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含む、可変軽鎖及び可変重鎖、又は
2.配列番号38を含む可変軽鎖、及び配列番号110を含む可変重鎖を含む。
【0181】
一実施形態では、そのような競合する抗体は、配列番号110を含む配列と少なくとも80%の同一性又は類似性を有する重鎖可変領域を有し、及び/又は配列番号38を含む配列と少なくとも80%の同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域を有する。
【0182】
本発明の抗体として、「競合する」、「クロスブロックする」、「クロスブロックされる」又は「ヒトKLK5上の同じエピトープに結合する」抗体(及びその任意の文法的変形)とは、本発明の抗体に結合したKLK5と複合体を形成することができない抗体を指す。
【0183】
競合する抗体は、当技術分野における任意の適切な方法を使用して、例えば競合ELISA又はBIAcoreアッセイを使用することによって同定することができ、クロスブロックすることによって又はクロスブロックされることによって、競合する抗体によるKLK5の結合が、本発明の抗体の結合を妨げ、又はその逆も同様である。そのような競合アッセイは、単離された天然若しくは組換えKLK5又はその適切な融合タンパク質/ポリペプチドを使用することができる。一例では、組換えヒト活性KLK5(例えば、配列番号144を含む)を使用して競合を測定する。
【0184】
本発明はまた、本明細書に記載及び特許請求され、KLK5と複合体を形成する抗体が提供され、KLK、好ましくはヒトKLK5は、別の抗体に結合し(又は結合していてもよい)、別の抗体は、
1.配列番号175を含むCDR-L1、配列番号176を含むCDR-L2及び配列番号177を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号178を含むCDR-H1、配列番号179を含むCDR-H2及び配列番号160を含むCDR-H3を含む可変重鎖、及び/は
2.配列番号161を含む可変軽鎖及び配列番号163を含む可変重鎖、及び/又は
3.配列番号162を含むヌクレオチドによってコードされる可変軽鎖及び配列番号164を含むヌクレオチドによってコードされる可変重鎖を含む。
【0185】
一実施形態では、本発明による抗体は、KLK5に結合し、
1.可変軽鎖及び可変重鎖であって、可変軽鎖が、配列番号1又は7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号10~29、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27又は29を含むCDR-H3を含む、可変軽鎖及び可変重鎖、又は
2.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、及び配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖を含み、
抗体は、別の抗体に結合したKLK5、好ましくはヒトKLK5と複合体を形成し、別の抗体は、
1.配列番号175を含むCDR-L1、配列番号176を含むCDR-L2及び配列番号177を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号178を含むCDR-H1、配列番号179を含むCDR-H2及び配列番号160を含むCDR-H3を含む可変重鎖、及び/又は
2.配列番号161を含む可変軽鎖及び配列番号163を含む可変重鎖、及び/又は
3.配列番号162を含むヌクレオチドによってコードされる可変軽鎖及び配列番号164を含むヌクレオチドによってコードされる可変重鎖を含む。
【0186】
更に、本発明はまた、
a.KLK5、好ましくはヒトKLK5、及び
b.KLK5に結合し、
1.可変軽鎖及び可変重鎖であって、可変軽鎖が、配列番号1又は7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号10~29、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27又は29を含むCDR-H3を含む、可変軽鎖及び可変重鎖、又は
2.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、及び配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖を含む、抗体、及び
c.KLK5に結合し、
1.配列番号175を含むCDR-L1、配列番号176を含むCDR-L2及び配列番号177を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号178を含むCDR-H1、配列番号179を含むCDR-H2及び配列番号160を含むCDR-H3を含む可変重鎖であって、抗体がヒト化されていてもよい、可変軽鎖及び可変重鎖、及び/又は
2.配列番号161を含む可変軽鎖及び配列番号163を含む可変重鎖、及び/又は
3.配列番号162を含むヌクレオチドによってコードされる可変軽鎖及び配列番号164を含むヌクレオチドによってコードされる可変重鎖を含む、別の抗体を含む、KLK5抗体複合体を含む。
【0187】
いわゆる「別の抗体」は、以下の例によって示されるように、本明細書に記載のエピトープとは異なり、重複しないエピトープにKLK5、好ましくはヒトKLK5に結合することを理解されたい。この点において、そのような抗体は互いに競合しない。
【0188】
本発明による抗体は、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して得ることができる。その融合タンパク質を含むKLK5、KLK5を(組換え的又は天然に)発現する細胞を使用して、KLK5を特異的に認識する抗体を産生することができる。本明細書に記載の様々な形態のKLK5を使用することができる。
【0189】
一実施形態では、使用される抗原は、活性KLK5であり、好ましくは以下の例に記載されるように産生される。
【0190】
宿主を免疫するために使用するためのKLK5又はその断片は、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から当技術分野で公知の製法によって調製することができるか、又は天然の生物学的供給源から回収することができる。KLK5又はその断片は、いくつかの例では、例えばアフィニティータグなどに融合された融合タンパク質などのより大きなタンパク質の一部であってもよい。
【0191】
本発明によるKLK5に対して産生された抗体は、動物の免疫化が必要な場合、公知の慣習的なプロトコルを使用して、動物、好ましくは非ヒト動物にKLK5を投与することによって得ることができ、例えば、Handbook of Experimental Immunology,D.M.Weir(ed.),Vol 4,Blackwell Scientific Publishers,Oxford,England,1986)を参照されたい。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタなどの多くの温血動物を免疫化することができる。しかし、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが一般に最も適している。
【0192】
抗体のスクリーニングは、KLK5への結合を測定するアッセイ及び/又はKLK5生物学的活性、好ましくはKLK5プロテアーゼ活性の阻害を測定するアッセイを使用して行うことができる。
【0193】
モノクローナル抗体を含む抗体は、酸性及び/又は塩基性官能基を含有し、それによって分子に正味の正電荷又は負電荷を与える。全体的な「観察される」電荷の量は、実体の絶対アミノ酸配列、3D構造中の荷電基の局所環境及び分子の環境条件に依存する。等電点(pI)は、特定の分子又はその溶媒に接触可能な表面が正味の電荷を持たないpHである。一例では、本発明によるKLK5結合するモノクローナル抗体は、適切な等電点を有するように操作することができる。これにより、より堅牢な特性、特に適切な溶解度及び/又は安定性プロファイル及び/又は改善された精製特性を有する抗体を得ることができる。
【0194】
したがって、一実施形態では、KLK5に結合するモノクローナル抗体は、
a.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、及び配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
b.配列番号36又は40又は44又は48を含む軽鎖、及び配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む重鎖を含み、
モノクローナル抗体は、最初に同定された抗体の等電点とは異なる等電点を有するように操作される。
【0195】
抗体は、例えば、酸性アミノ酸残基を1つ又は複数の塩基性アミノ酸残基で置換するなど、アミノ酸残基を置換することによって操作することができる。或いは、塩基性アミノ酸残基を導入してもよいし、又は酸性アミノ酸残基を除去してもよい。或いは、許容できないほど高いpI値を分子が有する場合、必要に応じて、pIを低下させるために酸性残基を導入することができる。pIを操作する場合、抗体又は断片の望ましい活性を保持するために注意を払わなければならないことが重要である。したがって、一実施形態では、操作された抗体は、「未修飾」抗体又は断片と同じ又は実質的に同じ活性を有する。
【0196】
**ExPASY http://www.expasy.ch/tools/pi_tool.html、及びhttp://www.iut-arles.up.univ-mrs.fr/w3bb/d_abim/compo-p.htmlなどのプログラムを使用して、抗体の等電点を予測することができる。
【0197】
本発明によって提供される抗体の親和性は、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して変更することができることが理解されるであろう。したがって、本発明はまた、KLK5、特にヒトKLK5に対する改善された親和性を有する抗体のバリアントに関する。そのようなバリアントは、CDRの変異(Yang et al.,J.Mol.Biol.,254,392-403,1995)、鎖シャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology,10,779-783,1992)、大腸菌(E.coli)の変異株の使用(Low et al.,J.Mol.Biol.,250,359-368,1996)、DNAシャッフリング(Patten et al.,Curr.Opin.Biotechnol.,8,724-733,1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al.,J.Mol.Biol.,256,77-88,1996)及び有性PCR(sexual PCR)(Crameri et al.,Nature,391,288-291,1998)を含むいくつかの親和性成熟プロトコルによって得ることができる。
【0198】
所望であれば、本発明による抗体は、1つ又は複数のエフェクター分子にコンジュゲートすることができる。エフェクター分子は、本発明の抗体に結合することができる単一部分を形成するように連結された単一のエフェクター分子又は2つ以上のそのような分子を含むことができることが理解されるであろう。エフェクター分子に連結された抗体の断片を得ることが望ましい場合、これは、抗体断片が直接又はカップリング剤を介してエフェクター分子に連結される標準的な化学的又は組換えDNA手順によって調製することができる。そのようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートさせるための技術は、当技術分野で公知である(Hellstrom et al.,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,Robinson et al.,eds.,1987,pp.623-53、Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.,62:119-58及びDubowchik et al.,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67-123を参照されたい)。特定の化学的手順としては、例えば、国際公開第93/06231号、国際公開第92/22583号、国際公開第89/00195号、国際公開第89/01476号及び国際公開第03/031581号に記載されているものが挙げられる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、例えば国際公開第86/01533号及び欧州特許第0392745号に記載されているように、組換えDNA手順を使用して連結させることができる。
【0199】
本明細書で使用されるエフェクター分子という用語は、例えば抗悪性腫瘍薬、薬物、毒素、生物学的に活性なタンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体断片、合成又は天然に存在するポリマー、核酸及びその断片、例えばDNA、RNA及びその断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子、並びに蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出することができる化合物などのレポーター基を含む。
【0200】
エフェクター分子の例としては、細胞に有害な(例えば、死滅させる)任意の薬剤を含む細胞毒又は細胞傷害剤を挙げることができる。例としては、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、マイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにそれらの類似体又はホモログが挙げられる。
【0201】
エフェクター分子としてはまた、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、及び抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
他のエフェクター分子としては、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレート化放射性核種、又は限定されないがアルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物が挙げられる。
【0203】
他のエフェクター分子としては、タンパク質、ペプチド及び酵素が挙げられる。目的の酵素としては、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。目的のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドとしては、免疫グロブリン、毒素、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素、タンパク質、例えば、インスリン、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓剤又は抗血管新生剤、例えば、アンギオスタチン又はエンドスタチン、又は生物学的応答調節剤、例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)又は他の成長因子及び免疫グロブリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
他のエフェクター分子としては、例えば診断に有用な検出可能な物質を挙げることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、(陽電子放出断層撮影に使用するための)陽電子放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。診断薬として使用するために抗体にコンジュゲートさせることができる金属イオンについては、一般に米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族としては、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンが挙げられ、適切な発光物質としては、ルミノールが挙げられ、適切な生物発光物質としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられ、適切な放射性核種としては、125I、131I、111In及び99Tcが挙げられる。
【0205】
別の例では、エフェクター分子は、インビボでの抗体の半減期を増加させ、及び/又は抗体の免疫原性を低下させ、及び/又は免疫系に対する上皮バリアを横切る抗体の送達を増強することができる。このタイプの適切なエフェクター分子の例としては、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、又は国際公開第05/117984号に記載されているものなどのアルブミン結合化合物が挙げられる。
【0206】
エフェクター分子がポリマーである場合、一般に、合成又は天然に存在するポリマー、例えば置換されてもよい直鎖若しくは分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー又は分岐若しくは非分岐多糖、例えばホモ又はヘテロ多糖であってもよい。
【0207】
上記の合成ポリマー上に存在し得る特定の任意の置換基としては、1つ又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基が挙げられる。
【0208】
合成ポリマーの具体例としては、置換されていてもよい直鎖若しくは分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に置換されていてもよいポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体が挙げられる。
【0209】
具体的な天然に存在するポリマーとしては、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はそれらの誘導体が挙げられる。
【0210】
一実施形態では、ポリマーは、アルブミン又はその断片、例えばヒト血清アルブミン又はその断片である。
【0211】
本明細書で使用される「誘導体」は、反応性誘導体、例えば、マレイミドなどのチオール選択的反応性基を含むことを意図している。反応性基は、ポリマーに直接又はリンカーセグメントを介して連結されていてもよい。そのような基の残基は、場合によっては、抗体断片とポリマーとの間の連結基として生成物の一部を形成することが理解されるであろう。
【0212】
ポリマーのサイズは、所望に応じて変化させることができるが、一般に、500Da~50000Da、例えば5000~40000Da、例えば20000~40000Daの平均分子量範囲である。ポリマーサイズは、特に、生成物の意図される用途、例えば腫瘍などの特定の組織に局在する能力又は循環半減期を延長する能力に基づいて選択することができる(総説については、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531-545を参照されたい)。したがって、例えば、生成物が循環を離れ、例えば腫瘍の治療に使用するために組織に浸透することを意図している場合、例えば約5000Daの分子量を有する低分子量ポリマーを使用することが有利である可能性がある。生成物が循環中に留まる用途では、例えば20000Da~40000Daの範囲の分子量を有する高分子量ポリマーを使用することが有利である可能性がある。
【0213】
適切なポリマーとしては、ポリアルキレンポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)、又は特にメトキシポリ(エチレングリコール)若しくはその誘導体、特に約15000Da~約40000Daの範囲の分子量を有するものが挙げられる。
【0214】
一例では、本発明による抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合している。特定の一実施形態では、本発明による抗体及びPEG分子は、抗体断片中に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を介して結合することができる。そのようなアミノ酸は、抗体断片中に天然に存在してもよいか、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第5,219,996号、米国特許第5,667,425号、国際公開第98/25971号、国際公開第2008/038024号を参照されたい)を使用して抗体に操作することができる。一例では、本発明の抗体は、修飾Fab断片であり、修飾とは、エフェクター分子の付着を可能にするために、その重鎖のC末端に1つ又は複数のアミノ酸を付加することである。適切には、追加のアミノ酸は、エフェクター分子が結合することができる1つ又は複数のシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を形成する。複数の部位を使用して、2つ以上のPEG分子を結合することができる。
【0215】
適切には、PEG分子は、抗体断片中に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合している。修飾抗体断片に結合した各ポリマー分子は、断片中に位置するシステイン残基の硫黄原子に共有結合することができる。共有結合は、一般に、ジスルフィド結合、又は特に硫黄-炭素結合である。チオール基が結合点として使用される場合、適切に活性化されたエフェクター分子、例えば、マレイミド又はシステイン誘導体などのチオール選択的誘導体を使用することができる。活性化されたポリマーは、上記のポリマー修飾抗体断片の調製における出発材料として使用することができる。活性化されたポリマーは、α-ハロカルボン酸又はエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドなどのチオール反応性基を含む任意のポリマーであってもよい。そのような出発材料は、商業的に得ることができ(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.、米国アラバマ州ハンツビル)、又は従来の化学的手順を使用して商業的に入手可能な出発材料から調製することができる。特定のPEG分子としては、20Kメトキシ-PEG-アミン(Nektar、以前はShearwater、Rapp Polymere、及びSunBioから得ることができる)及びM-PEG-SPA(Nektar、以前はShearwaterから得ることができる)が挙げられる。
【0216】
一実施形態では、抗体は、例えば欧州特許第0948544号又は欧州特許第1090037号(“Poly(ethyleneglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications”,1992,J.Milton Harris(ed),Plenum Press,New York、“Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications”,1997,J.Milton Harris and S.Zalipsky(eds),American Chemical Society,Washington DC及び“Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences”,1998,M.Aslam and A.Dent,Grove Publishers,New York、Chapman,A.2002,Advanced Drug Delivery Reviews2002,54:531-545も参照されたい)に開示されている方法に従って、PEG化されている、すなわちPEG(ポリ(エチレングリコール))が共有結合している修飾Fab断片、Fab’断片又はdiFabである。一例では、PEGはヒンジ領域内のシステインに結合している。一例では、PEG修飾Fab断片は、修飾ヒンジ領域内の単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リジン残基は、マレイミド基に共有結合していてもよく、リジン残基上の各アミン基に、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーが結合していてもよい。したがって、Fab断片に結合したPEGの総分子量は、約40,000Daであってもよい。
【0217】
特定のPEG分子としては、PEG2MAL40K(Nektar、以前はShearwaterから得ることができる)としても知られる、N,N’-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)分子量20,000)修飾リジンの2-[3-(N-マレイミド)プロピオンアミド]エチルアミドが挙げられる。
【0218】
PEGリンカーの代替供給源としては、GL2-400MA3(式中、以下の構造におけるmは5である)及びGL2-400MA(式中、mは2である)を供給するNOFが挙げられ、nは約450である。
【化1】
【0219】
したがって、一実施形態では、PEGは、SUNBRIGHT GL2-400MA3として知られている、2,3-ビス(メチルポリオキシエチレン-オキシ)-1-{[3-(6-マレイミド-1-オキソヘキシル)アミノ]プロピルオキシ}ヘキサン(2アーム分岐PEG、-CH2)3NHCO(CH2)5-MAL、分子量40,000である。
【0220】
以下のタイプの更なる代替PEGエフェクター分子は、
【化2】
Dr Reddy、NOF及びJenkemから入手可能である。
【0221】
一実施形態では、本発明によるFab又はFab’は、PEG分子にコンジュゲートされる。
【0222】
一実施形態では、本開示は、1つ又は複数のPEGポリマー、例えば40kDaのポリマー(複数可)などの1つ又は2つのポリマーを含むFab’PEG分子を提供する。
【0223】
本開示によるFab’-PEG分子は、Fc断片とは無関係の半減期を有するという点で特に有利であり得る。一実施形態では、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子などのポリマーにコンジュゲートされたFab’が提供される。一実施形態では、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子などのポリマーにコンジュゲートされたscFvが提供される。一実施形態では、本開示によるFab又はFab’は、ヒト血清アルブミンにコンジュゲートされる。一実施形態では、抗体又は断片は、例えば半減期を増加させるために、デンプン分子にコンジュゲートされる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,017,739号に記載されているタンパク質にデンプンをコンジュゲートさせる方法。
【0224】
本発明はまた、本発明による抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。本発明による単離されたポリヌクレオチドは、例えば化学処理によって生成された合成DNA、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0225】
分子生物学の標準的な技術を使用して、本発明の抗体をコードするDNA配列を調製することができる。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を使用して完全に又は部分的に合成することができる。部位特異的変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を必要に応じて使用することができる。
【0226】
一実施形態では、本発明による単離されたポリヌクレオチドは、
a.軽鎖可変領域であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号31又は35又は39又は43又は47と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号31又は35又は39又は43又は47を含み、又は
iii.配列番号31又は35又は39又は43又は47から本質的になる、軽鎖可変領域、又は
b.重鎖可変領域であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135を含み、又は
iii.配列番号33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135から本質的になる、重鎖可変領域、
c.軽鎖であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号37又は41又は45又は49と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号37又は41又は45又は49を含み、又は
iii.配列番号37又は41又は45又は49から本質的になる、軽鎖、
d.重鎖であって、ポリヌクレオチドが、
i.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137と少なくとも90%同一であり、又は
ii.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137を含み、又は
iii.配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137から本質的になる、重鎖をコードする。
【0227】
一実施形態では、本発明は、本発明の抗体Fab’断片又はIgG1若しくはIgG4抗体の可変重鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、33又は51又は55又は59又は63又は67又は71又は75又は79又は83又は87又は91又は95又は99又は103又は107又は111又は115又は119又は123又は127又は131又は135に示される配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。配列番号31又は35又は39又は43又は47で示される配列を含む本発明の抗体Fab’断片又はIgG1若しくはIgG4抗体の可変軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドも提供される。
【0228】
別の実施形態では、本発明は、本発明のIgG4(P)抗体の重鎖及び軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、重鎖をコードするポリヌクレオチドが配列番号53又は57又は61又は65又は69又は73又は77又は81又は85又は89又は93又は97又は101又は105又は109又は113又は117又は121又は125又は129又は133又は137で示される配列を含み、軽鎖をコードするポリヌクレオチドが配列番号37又は41又は45又は49で示される配列を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0229】
本発明はまた、本明細書に記載の1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むクローニング又は発現ベクターを提供する。一例では、本発明によるクローニング又は発現ベクターは、配列番号31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135又は137から選択される配列を含む1つ又は複数の単離されたポリヌクレオチドを含む。
【0230】
ベクターを構築することができる一般的な方法、トランスフェクション方法及び培養方法は、当業者に公知である。この点に関しては、“Current Protocols in Molecular Biology”,1999,F.M.Ausubel(ed),Wiley Interscience,New York及びCold Spring Harbor PublishingによるManiatis Manualを参照されたい。
【0231】
本発明による1つ又は複数の単離されたポリヌクレオチド配列、又は本発明の抗体をコードする1つ又は複数の単離されたポリヌクレオチド配列を含む1つ又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。任意の適切な宿主細胞/ベクター系を、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチド配列の発現のために使用することができる。細菌、例えば大腸菌(E.coli)、及び他の微生物系を使用することができ、又は真核生物、例えば哺乳動物、宿主細胞発現系を使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞としては、CHO、骨髄腫又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0232】
本発明での使用に適した種類のチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)としては、DHFR選択マーカーと共に使用することができるCHO-DG44細胞及びCHO-DXB11細胞などのdhfr-CHO細胞、又はグルタミン合成酵素選択可能マーカーと共に使用することができるCHOK1-SVを含むCHO及びCHO-K1細胞を挙げることができる。抗体の発現に使用される他の細胞型としては、リンパ球系細胞株、例えば、NSO骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞が挙げられる。宿主細胞は、本発明による単離されたポリヌクレオチド配列又は発現ベクターで安定に形質転換又はトランスフェクトすることができる。
【0233】
一実施形態では、本発明による宿主細胞は、本発明の単離されたポリヌクレオチド配列を含む、好ましくは配列番号31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135又は137を含む単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターで安定にトランスフェクトされたCHO-DG44細胞である。
【0234】
本発明はまた、本発明によるKLK5結合する抗体を産生するための方法であって、本発明による宿主細胞をモノクローナル抗体の産生に適した条件下で培養すること、及びそのようにして産生したモノクローナル抗体を単離することを含む方法を提供する。
【0235】
抗体は、重鎖又は軽鎖のみを含んでもよく、この場合、宿主細胞をトランスフェクトするために重鎖又は軽鎖ポリヌクレオチド配列のみを使用する必要がある。重鎖及び軽鎖の両方を含む抗体の産生について、細胞株は、軽鎖をコードする第1のベクター及び重鎖をコードする第2のベクターの2つのベクターでトランスフェクトすることができる。或いは、軽鎖及び重鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含む単一のベクターを使用することができる。
【0236】
したがって、宿主細胞を培養し、抗体を発現させ、抗体を単離し、場合により精製して単離された抗体を得るための製法が提供される。したがって、一実施形態では、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合する単離されたモノクローナル抗体、例えばヒト化モノクローナル抗体、特に本発明による抗体を、実質的に精製したもの、特にエンドトキシン及び/又は宿主細胞タンパク質若しくはDNAを含まない又は実質的に含まないものが提供され、
モノクローナル抗体は、KLK、好ましくはヒトKLK5に結合し、及び
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、及び配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0237】
エンドトキシンを実質的に含まないとは、一般に、エンドトキシン含有量が抗体産物1mg当たり1EU又はそれ未満、例えば産物1mg当たり0.5又は0.1EUを指すことを意図する。
【0238】
宿主細胞タンパク質又はDNAを実質的に含まないとは、一般に、必要に応じて、宿主細胞タンパク質及び/又はDNA含有量が抗体産物1mg当たり400μg以下、例えば1mg当たり100μg以下、特に1mg当たり20μgを指すことを意図する。
【0239】
本発明の抗体は、病理学的状態の処置、診断及び/又は予防において有用であるので、本発明はまた、本発明による抗体を薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤の1つ又は複数と組み合わせて含む医薬組成物又は診断組成物を提供する。
【0240】
好ましくは、医薬組成物又は診断組成物は、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合する抗体を含み、及び抗体は、
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0241】
一実施形態では、本発明による抗体が唯一の有効成分である。別の実施形態では、本発明による抗体は、1つ又は複数の追加の有効成分と組み合わせられる。或いは、医薬組成物は、唯一の有効成分である本発明による抗体を含み、他の治療薬、診断薬又は緩和薬と組み合わせて(例えば、同時に、連続的に、又は別々に)患者に個別に投与することができる。
【0242】
別の実施形態では、医薬組成物は、
KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合する抗体であって、かつ
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖を含む完全長抗体であるモノクローナル抗体であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、かつ重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記モノクローナル抗体
を含む上記抗体、
並びに1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む。
【0243】
好ましくは、医薬組成物は、KLK5に結合する抗体であって、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合し、配列番号38の軽鎖可変領域及び配列番号110の重鎖可変領域を含む抗体を含む。
【0244】
本発明による医薬組成物は、必要とされる治療有効量を特定するために患者に適切に投与することができる。
【0245】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、標的疾患若しくは状態を治療、改善若しくは予防するため、又は検出可能な治療効果若しくは予防効果を示すために必要な治療剤の量を指す。任意の抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は動物モデル、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類のいずれかで最初に推定することができる。動物モデルを使用して、適切な濃度範囲及び投与経路を決定することもできる。次いで、そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な投与量及び投与経路を決定することができる。
【0246】
ヒト対象に対する正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の一般的な健康状態、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組合せ、反応感受性及び治療に対する耐性/応答に依存する。一般に、治療有効量は、0.01mg/kg~500mg/kg、例えば100mg/Kgなどの0.1mg/kg~200mg/kgである。医薬組成物は、用量あたり所定量の本発明の活性薬剤を含有する単位用量形態で好都合に提供することができる。
【0247】
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を更に含むことができる。更に、湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質が、そのような組成物中に存在してもよい。そのような担体は、患者が摂取するために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液として医薬組成物を製剤化することができる
【0248】
投与に適した形態としては、例えば注射又は注入による、例えばボーラス注射又は持続注入による、静脈内、吸入可能又は皮下形態の非経口投与に適した形態が挙げられる。生成物が注射又は注入用である場合、生成物は油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンの形態をとることができ、懸濁化剤、保存剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含むことができる。或いは、本発明による抗体は、使用前に適切な滅菌液体で再構成するために、乾燥形態であってもよい。注射前の液体ビヒクル中への溶解又は液体ビヒクル中への懸濁に適した固体形態も調製することができる。
【0249】
製剤化すると、本発明の組成物は対象に直接投与することができる。したがって、医薬の製造のための本発明による抗体の使用が本明細書で提供される。
【0250】
好ましくは、本発明による医薬組成物は、ヒト対象への投与に適合している。
【0251】
したがって、別の態様では、本発明は、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合し、
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖を含む、モノクローナル抗体を提供する。
【0252】
好ましい実施形態では、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合するモノクローナル抗体は、
1.可変軽鎖及び可変重鎖であって、可変軽鎖が、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含む、可変軽鎖及び可変重鎖、又は
2.配列番号38を含む可変軽鎖、及び配列番号110を含む可変重鎖、又は
3.配列番号40を含む軽鎖及び配列番号112を含む重鎖を含む。
【0253】
特に、治療における使用は、KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患の治療における使用を含む。
【0254】
更に別の態様では、本発明は、患者におけるKLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患を治療する方法を提供し、方法は、KLK5に結合する治療有効量のモノクローナル抗体を当該患者に投与することを含み、抗体は、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合し、かつ
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0255】
更に別の態様では、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合するモノクローナル抗体、又はモノクローナル抗体を含む医薬組成物であって、モノクローナル抗体又は組成物は、KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患の治療に使用するためのものであり、抗体は、
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0256】
好ましい一実施形態では、本発明は、患者におけるKLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患を治療する方法を提供し、方法は、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合し、
1.可変軽鎖及び可変重鎖であって、可変軽鎖が、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含む、可変軽鎖及び可変重鎖、又は
2.配列番号38を含む可変軽鎖、及び配列番号110を含む可変重鎖、又は
3.配列番号40を含む軽鎖及び配列番号112を含む重鎖を含む、治療有効量の抗体を当該患者に投与することを含む。
【0257】
別の好ましい一実施形態では、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合するモノクローナル抗体、又はモノクローナル抗体を含む医薬組成物であって、抗体又は医薬組成物は、KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患の治療に使用するためのものであり、抗体は、
1.可変軽鎖及び可変重鎖であって、可変軽鎖が、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含む、可変軽鎖及び可変重鎖、又は
2.配列番号38を含む可変軽鎖、及び配列番号110を含む可変重鎖、又は
3.配列番号40を含む軽鎖及び配列番号112を含む重鎖を含む。
【0258】
好ましくは、KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患は、ネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がん又はそれらの組合せから選択される。
【0259】
したがって、本発明は、患者におけるネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がん又はそれらの組合せを治療する方法を提供し、方法は、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合する治療有効量のモノクローナル抗体、又はモノクローナル抗体を含む医薬組成物を当該患者に投与することを含み、抗体又は医薬組成物は、
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0260】
より好ましくは、方法は、ネザートン症候群及び/又はアトピー性皮膚炎を治療するためのものである。
【0261】
別の態様では、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合するモノクローナル抗体、又はモノクローナル抗体を含む医薬組成物が提供され、抗体又は医薬組成物は、ネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がん又はそれらの組合せの治療に使用するためのものであり、モノクローナル抗体又は医薬組成物は、
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0262】
より好ましくは、抗体は、ネザートン症候群及び/又はアトピー性皮膚炎の治療に使用するためのものである。
【0263】
別の好ましい実施形態では、本発明は、患者におけるネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がん又はそれらの組合せを治療する方法を提供し、方法は、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合する治療有効量の抗体、又はモノクローナル抗体を含む医薬組成物を当該患者に投与することを含み、抗体又は医薬組成物は、
1.可変軽鎖及び可変重鎖であって、可変軽鎖が、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含む、上記可変軽鎖及び可変重鎖、又は
2.配列番号38を含む可変軽鎖、及び配列番号110を含む可変重鎖、又は
3.配列番号40を含む軽鎖及び配列番号112を含む重鎖
を含む。
【0264】
より好ましくは、方法は、ネザートン症候群及び/又はアトピー性皮膚炎を治療するためのものである。
【0265】
別の好ましい一実施形態では、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合する抗体、又はモノクローナル抗体を含む医薬組成物であって、抗体又は医薬組成物は、ネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がん又はそれらの組合せの治療に使用するためのものであり、抗体又は医薬組成物は、
1.可変軽鎖及び可変重鎖であって、可変軽鎖が、配列番号7を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含み、可変重鎖が、配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号23を含むCDR-H3を含む、可変軽鎖及び可変重鎖、又は
2.配列番号38を含む可変軽鎖、及び配列番号110を含む可変重鎖、又は
3.配列番号40を含む軽鎖及び配列番号112を含む重鎖を含む。
【0266】
より好ましくは、抗体は、ネザートン症候群及び/又はアトピー性皮膚炎の治療に使用するためのものである。
【0267】
或いは、本発明はまた、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合する抗体、又はモノクローナル抗体を含む医薬組成物の使用を提供し、抗体又は医薬組成物は、KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患を治療するための医薬品の製造するためのものであり、そのような調節不全は、好ましくはネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がん又はそれらの組合せ、より好ましくはネザートン症候群及び/又はアトピー性皮膚炎であり、抗体は、
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0268】
また、診断的活性薬剤として又は診断アッセイにおいて、例えば、ネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がんを診断するための、KLK5に結合する抗体の使用が本発明により提供され、抗体は、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合する。
【0269】
より好ましくは、モノクローナル抗体は、
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0270】
診断は、好ましくは、生物学的試料に対して行うことができる。「生物学的試料」は、個体から得られた様々な試料タイプを包含し、診断アッセイ又はモニタリングアッセイに使用することができる。定義は、血漿及び血清などの血液、並びに尿及び唾液、脳脊髄液などの生物学的起源の他の液体試料、皮膚生検又は組織培養物などの生検標本などの固体組織試料、又はそれに由来する細胞及びその子孫を包含する。この定義はまた、例えば、試薬による処理、可溶化、又はポリヌクレオチドなどの特定の成分の濃縮などによって、それらの調達後に何らかの方法で操作された試料を含む。
【0271】
診断試験は、好ましくは、ヒト又は動物の身体と接触していない生物学的試料に対して行うことができる。このような診断試験は、インビトロ試験とも呼ばれる。インビトロ診断試験は、i)生物学的試料を本明細書に記載の抗体と接触させる工程、及びii)KLK5への抗体の結合を検出する工程を含む、個体から得られた生物学的試料中のKLK5を検出するインビトロ方法に依存することができる。検出されたKLK5レベル又はKLK5の特定の翻訳後修飾形態(任意のプロフォームを含む)の存在を適切な対照と比較することによって、KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患を同定することができる。したがって、そのような検出方法を使用して、対象(胚又は胎児を含む)が、KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする疾患を有するか、又は発症するリスクがあるかどうかを判定することができる。
【0272】
したがって、本発明は、KLK5に結合する抗体を提供し、抗体は、KLK5、好ましくはヒトKLK5に結合し、抗体は、KLK5の調節不全又はKLK5の阻害の調節不全を特徴とする1つ又は複数の疾患の診断、好ましくはネザートン症候群、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、酒さ、喘息又はがん、例えば卵巣がん若しくは膀胱がんの診断に使用するためのものであり、抗体は、
a.配列番号1又は7又は8又は9を含むCDR-L1、配列番号2を含むCDR-L2及び配列番号3を含むCDR-L3を含む可変軽鎖、並びに配列番号4を含むCDR-H1、配列番号5を含むCDR-H2及び配列番号6又は配列番号10~29のいずれか1つ、好ましくは10、11、13~16、18、20、22~25、27若しくは29のいずれか1つを含むCDR-H3を含む可変重鎖、又は
b.配列番号30又は34又は38又は42又は46を含む可変軽鎖、並びに配列番号32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は102又は106又は110又は114又は118又は122又は126又は130又は134、好ましくは32又は50又は54又は58又は62又は66又は70又は74又は78又は82又は86又は90又は94又は98又は106又は110又は114又は118又は126又は134を含む可変重鎖、又は
c.軽鎖及び重鎖であって、軽鎖が配列番号36又は40又は44又は48を含み、かつ重鎖が配列番号52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は104又は108又は112又は116又は120又は124又は128又は132又は136、好ましくは52又は56又は60又は64又は68又は72又は76又は80又は84又は88又は92又は96又は100又は108又は112又は116又は120又は128又は136を含む、上記軽鎖及び重鎖
を含む。
【0273】
本発明に含まれる配列を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【表1-23】
【表1-24】
【表1-25】
【表1-26】
【表1-27】
【表1-28】
【表1-29】
【表1-30】
【表1-31】
【表1-32】
【表1-33】
【表1-34】
【表1-35】
【0274】
ここで、添付の図面に示された実施形態を参照して、例として本発明を更に説明する。
【実施例】
【0275】
例1:カリクレインタンパク質及びLEKTIドメインのクローニング、発現及び精製
配列番号142によるタンパク質をコードする最適化されたヌクレオチド配列を、HindIII/EcoRI部位を使用して自家哺乳動物発現ベクターにクローニングし、タグのないヒトKLK5タンパク質をコードするベクターを作製した。
【0276】
マウス及びカニクイザル(カニクイザル(cyno))KLK5配列を同様にクローニングすることにより、それぞれ配列番号150及び151を含むこれらのタンパク質の活性形態を産生することができた。
【0277】
(Uniprotにおける番号付けに従って)それぞれ残基292~353及び490~558を含むヒトLEKTI(Uniprot Q9NQ38)のドメイン5(D5)及びドメイン8(D8)をクローニングし、インビトロアッセイにおいて参照タンパク質として使用するために発現させた。
【0278】
どちらも哺乳動物細胞における発現のために最適化されたヒトLEKTIドメイン5及びドメイン8ヌクレオチド配列を、HindIII/XhoI部位を使用して、ウサギFcタグをコードする自家哺乳動物発現ベクターに別々にクローニングし、C末端ウサギFcタグを有するLEKTIドメイン5配列(配列番号145)又はC末端ウサギFcタグを有するLEKTIドメイン8配列(配列番号152)のいずれかをコードするベクターを作製した。コードされたタンパク質は、それぞれLEKTI D5ウサギFc及びLEKTI D8ウサギFcと呼ばれる。
【0279】
製造業者のプロトコルに従ってExpi 293(商標)発現系(Life Technologies(商標))を使用した一過性トランスフェクションによって、KLK5、LEKTIドメイン5及びLEKTIドメイン8ウサギFc融合タンパク質を発現させた。発現中、KLK5は自己活性化して、上清中に活性KLK5(配列番号144、又は配列番号142の残基I67~S293を含む)をもたらす。トランスフェクションの5日後に細胞を回収し、精製のために上清を直ちに使用した。ヒト(又はマウス又はカニクイザル)活性KLK5を含む上清を緩衝液A(50mMトリスpH7.0、50mM NaCl)で4倍希釈し、HiTrap SP HP陽イオン交換カラムにロードした。結合したタンパク質を、緩衝液A(50mMトリスpH7.0、50mM NaCl)及び緩衝液B(50mMトリスpH7.0、1M NaCl)を使用して合計10カラム体積にわたって生成された塩勾配で溶出した。精製されたヒト(又はマウス又はカニクイザル)活性KLK5を含有する画分をプールし、濃縮し、pH7.2の20mMトリス、150mM NaCl、5%グリセロールで平衡化したS200 26/60カラムでのサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。SDS-PAGE分析により、タンパク質が発現中にグリコシル化を受けたことが示された。質量分析による分析の結果、予想される分子量が得られた。
【0280】
ヒトLEKTI D5ウサギFc融合タンパク質(配列番号145による)を含む上清を最初にプロテインAアフィニティークロマトグラフィーに供した。上清を5mlのHitrap(商標)プロテインAカラムにロードした。結合したタンパク質を1Mクエン酸緩衝液、pH2.0で溶出し、画分を2Mトリス塩酸pH8.5で中和した。LEKTI D5ウサギFc融合タンパク質を含有する画分をプールし、濃縮し、PBSで平衡化したS200 26/60カラムを使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。次いで、ヒトLEKTI D5ウサギFc融合タンパク質を含有する画分をプールし、濃縮した。LEKTI D8ウサギFc融合タンパク質(配列番号152による)を、トランスフェクトした細胞培養上清から同様に精製した。
【0281】
LEKTI D5 Fab融合分子(配列番号169及び170による)を発現させ、陽イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。Gly4Serリンカーをコードする配列によって5’及び3’末端に隣接したLEKTIドメイン5ヌクレオチド配列を、アルブミンに特異的なFabの重鎖配列のフレームワーク3(参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2020011868号に記載)に組み込み、10×His配列をコードするタグもFab H鎖の3’末端に配置した。LEKTI D5 Fab融合重鎖を哺乳動物細胞における発現のために最適化し、自家発現ベクターにクローニングし、CHOSXE細胞において、哺乳動物発現のためにも最適化された適切な軽鎖で同時トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、通気フラスコ内で32℃で13日間培養した。上清を回収し、濃縮し、20mMトリス、50mM NaCl、pH7.0に緩衝液交換した後、SP Sepharose HPカラムにロードした。結合したタンパク質を、緩衝液A(20mMトリスpH7.0、50mM NaCl)及び緩衝液B(20mMトリスpH7.0、1M NaCl)を使用して合計10カラム体積にわたって生成された塩勾配で溶出した。LEKTI D5 Fab融合物を含有する画分をプールし、PBS pH7.4で平衡化したS200カラムを使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。関連画分をプールした。
【0282】
全長KLK7をコードするヒトヌクレオチド配列及びカニクイザルヌクレオチド配列を、ヒトKLK5と同様の様式で発現させ、プロKLK7(それぞれ配列番号146及び148を含む)を生成した。KLK5とは異なり、KLK7は発現中に自己活性化せず、そのため、ヒト、マウス及びカニクイザルKLK7(それぞれ配列番号147、186及び149を含む)の活性形態を、サーモリシンを使用して精製タンパク質からプロペプチド配列を切断することによって作製した。ヒト、マウス又はカニクイザルプロKLK7(それぞれ配列番号146、185及び148を含む)を活性化緩衝液(50mMトリスpH7.5、10mM CaCl2、150mM NaCl、0.05%Brij35)において1mg/mlに希釈した。Sigma(商標)製のサーモリシン(25mg)を消化緩衝液(50MトリスpH8.0、0.5mM CaCl2)25mlに再懸濁し、各KLK7タンパク質に1:10の比で37℃で45分間添加した後、陰イオン交換DEAE樹脂(GE Life Sciences(商標))と混合してサーモリシンを結合させ、除去した。フロースルーを活性(ヒト、マウス又はカニクイザル)KLK7として回収した。
【0283】
ヒト、マウス及びカニクイザルKLK7の活性形態を50mMトリスpH7.5、150mM NaCl、5%グリセロール、1mM EDTAに緩衝液交換し、約3.2mg/mlに濃縮した。
【0284】
ヒトKLK2は、R&D Systems(商標)(カタログ番号4104-SE-010)から活性タンパク質として供給された。
【0285】
ヒトKLK4は、R&D Systems(商標)(カタログ番号1719-SE)からプロフォームとして供給され、以下のように活性化された。ヒトプロKLK4を、50mMトリス、10mM CaCl2、150mM NaCl、pH7.5中で200μg/mLに希釈し、R&D Systems(商標)(カタログ番号3097-ZN)から供給される細菌サーモリシンを同じ緩衝液で2μg/mLに希釈した。等量のプロヒトKLK4とサーモリシンを合わせ、室温で10分間インキュベートして活性化させた。EDTAで反応を停止し、最終濃度を10mMにした。
【0286】
例2:KLK5での免疫化による抗体の産生
雌ニュージーランドホワイトウサギ(2kg超)に、等量の完全フロイントアジュバント(Sigma(商標))と混合した100μgの0.4mg/mLのヒト活性KLK5及びヒト活性KLK7(例1に従って発現)による皮下免疫化を行った。動物に、等量の不完全フロイントアジュバント(Sigma(商標))と混合した100μgの同じ免疫原を含むブースト注射を21日間隔で行った。最終ブーストの14日後に脾臓、骨髄及び末梢血単核細胞(PBMC)の単一細胞懸濁液を調製し、ウシ胎児血清(FCS)中の10%ジメチルスルホキシド(DMSO)中で-80℃で凍結した時点で終了とした。
【0287】
B細胞培養物を、Tickle et al.,2015 J Biomol Screen:20(4),492-497に記載されている方法と同様の方法を用いて調製した。手短に言えば、免疫化動物由来のリンパ節細胞、脾細胞又は末梢血単核細胞(PBMC)を、10%FCS(Sigma Aldrich(商標))、2%HEPES溶液(Sigma Aldrich(商標))、2%L-グルタミン溶液(Gibco(商標))、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Gibco(商標))、0.2%Normocin(Invivogen(商標))、0.1%β-メルカプトエタノール(Gibco(商標))を補充した200μl/ウェルRPMI 1640培地(Gibco(商標))を含むバーコード化96ウェル組織培養プレートにおいて、B細胞刺激上清(BSS)の存在下又は非存在下で、CD40L及びIL-2を発現する支持細胞を使用して、ウェル当たり2000細胞の密度で培養した。有糸分裂促進剤であるPhorbol-12-ミリスタート-13-アセタート(PMA)及びフィトヘマグルチニン-L(PHA-L)の存在下でPBMCを6日間培養することによってBSSを生成し、上清を回収する。プレートを37℃及び5%CO2で6日間インキュベートした。全ての免疫化動物由来のB細胞を使用して培養物をセットアップし、合計で約1×109個のB細胞をスクリーニングした。
【0288】
6日後、標的抗原源としてビオチン化ヒトKLK5でコーティングしたSol-R2ストレプトアビジンビーズ(TTP Labtech(商標))及びカウンタースクリーニングのために関連KLK7でコーティングしたSol-R4ストレプトアビジンビーズ(TTP Labtech(商標))を使用した多重均一蛍光ベースの結合アッセイによって、ヒトKLK5(例1のように生成)への結合について上清をスクリーニングした。Lightning-Link Rapid Biotin Type B(Expedeon(商標))を使用して、提供者のプロトコルと比較して5倍モル過剰のタンパク質を使用してタンパク質をビオチン化し、全てのリジン残基の完全な修飾を回避した。バーコード化96ウェル組織培養プレートからの合計10μLの上清を、Agilent Bravoリキッドハンドラを使用して、上記のようなビオチン化KLK被覆Sol-Rビーズ及びFITCコンジュゲートヤギ抗ウサギFc断片特異的(Jackson ImmunoResearch(商標))を含有するバーコード化384ウェル黒色壁アッセイプレートに移した。1時間のインキュベーション後、プレートをミラーボール機器(TTP-Labtech(商標))で読み取った。
【0289】
一次スクリーニングに続いて、Beckman Coulter BiomekNXP(商標)ヒットピッキングロボットを使用して、KLK5への結合について陽性の上清を、96ウェルバーコード化マスタープレート上に固定し、細胞培養プレートのB細胞を-80℃で凍結した。最初に、蛍光マイクロボリュームアッセイ技術(FMAT)によって、固定された上清を再スクリーニングして、ヒトKLK5への結合を確認した。手短に言えば、10μLの上清をバーコード化黒色グライナープレートに移した。50μL/プレートの10μmスーパーアビジン(Bangs Beads(商標))をヒトビオチン化KLK5でコーティングし、Alexa-647(商標)ヤギ抗ウサギIgG Fc断片特異的(Jackson ImmunoResearch(商標))と混合した。次いで、上清を添加し、Applied Biosystems(商標)Cellular Detection System 8200でプレートを読み取った。
【0290】
複数の抗体がKLK5に結合すると同定され、その後、KLK5を特異的に阻害する能力及び他のカリクレインを超えるKLK5に対する特異性について調査した。
【0291】
例3:KLK5阻害抗体の同定
複合体B細胞上清中に存在するプロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害剤のうち、KLK5活性を特異的に阻害することができる抗体を同定するために、スクリーニングアッセイを開発した。Nunc Maxisorp black 384(Sigma Aldrich(商標))を、炭酸緩衝液中10μg/mLのF(ab’)2断片ヤギ抗ウサギIgG Fc断片特異的(Jackson ImmunoResearch(商標))でコーティングし、4℃で一晩放置した。プレートをPBS/0.1%Tween-20を含むBiotek(商標)プレートウォッシャで3回洗浄し、20μL/ウェルPBS/1%BSAで室温で1時間ブロックした。次いで、B細胞上清をプレートに添加し、阻害についての陽性対照として25μLの1nM LEKTI D5ウサギFc融合タンパク質を対照ウェルに添加し、阻害についての陰性対照としてアッセイ緩衝液A(50mMトリス、150mM NaCl、0.05%(v/v)Tween-20、pH7.6)を対照ウェルの別個のセットに添加した。プレートを室温で一晩インキュベートし、次いでPBS/0.1%Tween-20を含むBiotek(商標)プレートウォッシャで3回洗浄した。アッセイ緩衝液A中の10μLの250pMヒトKLK5を各ウェルに添加し、プレートを室温で一晩インキュベートして完全に会合させた。アッセイ緩衝液A中のBoc-VPR-AMC基質(Cambridge Research Biochemicals(商標))を最終濃度600μMまでウェルに添加し、PHERAStar FSX(BMG Labtech(商標))プレートリーダを使用して4時間後に蛍光(λex380nm λem430nm)を決定した。
【0292】
データを分析して、以下の式を使用してKLK5活性の阻害率を決定した。
【数1】
【0293】
試験が試験抗体についての蛍光値である場合、陽性は、阻害ウェルについての陽性対照の蛍光値の平均であり、陰性は、阻害ウェルについての陰性対照の平均蛍光値である。
【0294】
40%超の阻害を示した上清をヒットとみなした。これは、スクリーニングされた上清の全ての約4%に達した。これらの抗体を可変領域回収のために選択した。
【0295】
特異的抗体分泌細胞を同定して、活性化B細胞の異種集団から抗体可変領域遺伝子を回収することを可能にするために、デコンボリューション工程を実施しなければならなかった。蛍光フォーカス法(Clargo et al.,2014)を使用した。手短に言えば、ビオチン化ヒトKLK5で被覆したストレプトアビジンビーズ(New England Biolabs(商標))及びヤギ抗ウサギFc断片特異的FITCコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch(商標))の存在下、抗体分泌細胞を37℃で1時間、静的にインキュベートした。次いで、抗原特異的抗体分泌細胞を、それらを取り囲む蛍光ハローから同定した。次いで、オリンパス製の顕微鏡を使用して同定した複数のこれらの個々のB細胞クローンを、Eppendorf(商標)マイクロマニピュレータで採取し、PCRチューブに入れた。単一細胞からのcDNAを標準的なRT-PCRによって得て、重鎖及び軽鎖の可変免疫グロブリン配列の後続のPCRを、免疫グロブリン遺伝子特異的プライマーを使用して行い、続いて重複ベクター部位を組み込んだネステッドPCRを行って、ウサギIgG(VH)又はウサギκ(VL)哺乳動物発現ベクターに可変領域を直接クローニングさせた。ExpiFectamine(商標)(Life Technologies(商標))及び125mlのErlenmeyer(商標)フラスコ中で30mlの容量で発現させた組換え抗体を使用して、重鎖及び軽鎖構築物をExpiHEK-293細胞に同時トランスフェクトした。5~7日の培養後、上清を回収し、抗体を、AKTA純粋クロマトグラフィーシステムを使用したプロテインA親和性捕捉によって精製した。1mlのプロテインA HiTrap MabSelect SuReカラム(GE Healthcare)をシステムに取り付け、カラムをPBS pH7.4で平衡化した後、細胞培養上清を0.25ml/分の流速でカラムにアプライした。次いで、カラムをPBS pH7.4で洗浄し、結合した材料をクエン酸ナトリウムpH3.4で溶出し、適切な体積の2Mトリス塩酸pH8.5で中和した。溶出画分をPBS(Sigma)pH7.4に緩衝液交換し、0.22μmフィルターに通した。最終精製材料を、A280スキャン、SE-UPLC(BEH200法)、及びPTS Endosafeシステムを使用してエンドトキシンについてアッセイした。
【0296】
この分析から、ウサギ抗体10236及び10273は強力な阻害を示し、更なる特徴付けのために選択した。
【0297】
例4:KLK5特異的阻害抗体の同定
次いで、精製したウサギ抗体10236及び10273をスクリーニングして、KLK5に対する阻害活性を確認し、マウス及びカニクイザルKLK5及びKLK7と共にKLK2、KLK4及びKLK7を含むヒト配列カリクレインファミリーメンバーのパネルを使用することによってKLK5に対する特異性を決定した。600nM~20pMの範囲を有する10点の半対数希釈系列を各抗体について調製し、Beckman Coulter FX(商標)及びMultidrop Systemを使用して5uLを黒色384ウェルアッセイプレート(Corning(商標)、カタログ番号3575)に移した。15μLの活性組換えカリクレインタンパク質を関連するウェルに添加して、以下の最終アッセイ濃度であるアッセイ緩衝液A(50mMトリス、150mM NaCl、200μM EDTA、0.05%(v/v)Tween-20、pH7.6)中の60pMヒトKLK5、250pMヒトKLK7、500pMヒトKLK2、30pMヒトKLK4、30pMカニクイザルKLK5、500pMカニクイザルKLK7、30pMマウスKLK5又は10nMマウスKLK7を達成した。対照として、20μLのアッセイ緩衝液Aを0%の活性のためにウェルに添加し、阻害に対する陽性対照として、LEKTI D5ウサギFcを同じ抗体濃度範囲で使用し、5μLのアッセイ緩衝液A中の15μLのヒトKLK5を100%の活性のために使用した。プレートを室温で一晩インキュベートした後、マルチドロップデバイスを使用して以下のペプチド基質、ヒトKLK5(300μM)、ヒトKLK2(30μM)、マウスKLK5(300μM)及びカニクイザルKLK5(450μM)についてはBoc-VPR-AMC(Cambridge Research Biochemicals(商標))、ヒト及びカニクイザルKLK7(それぞれ90μM及び150μM)についてはKHLF-AMC(Cambridge Research Biochemicals(商標))、ヒトKLK4(200μM)についてはPFR-AMC(R&D Systems(商標))、並びにマウスKLK7(150μM)についてはMca-RPKPVE-Nval-WRK(Dnp)-NH2(R&D Systems(商標))を添加した。試料を4時間インキュベートし、Boc-VPR-AMC、PFR-AMC及びKHLF-AMCについてはλex380nm及びλem430nmで、Mca-RPKPVE-Nval-WRK(Dnp)-NH2についてはλex320nm及びλem400nmで、Pherastar FSXプレートリーダ(BMG Labtech(商標))で読み取った。データを分析して、例3に記載の阻害率を決定した。データを試験抗体の濃度に対してプロットし、4パラメータシグモイドをフィッティングしてIC50(Genedata Screener(商標))を決定した。
【0298】
ウサギ抗体10236に加えて、この測定について、抗体10236及び10273のウサギ可変領域のポリヌクレオチド配列を、S171C変異を含むマウスCカッパベクターの改変版にクローン化して、ウサギVK軽鎖に見られマウス定常領域に存在しない追加のジスルフィド結合を再現した(ウサギ抗体10273 mIgGについては配列番号155及び156、ウサギ抗体10236 mIgGについては配列番号159及び160)。これにより、ウサギ抗体10236 mIgGについては配列番号157及び158、ウサギ抗体10273 mIgGについては配列番号153及び154を含む抗体が得られた。
【0299】
ウサギ抗体10236及び10273 mIgGは、ヒトKLK5の強力な阻害を示し、試験した他のヒトファミリーメンバー(ヒトKLK2、4及び7)に対して活性(すなわち、例2の選択基準による40%閾値未満)はなかった。カニクイザルKLK7ではなく、カニクイザルKLK5の強力な阻害も実証された。マウスKLK5又はKLK7のいずれに対しても阻害活性は明らかではなかった。ウサギ抗体10236、10273及びLEKTI D5ウサギFcについてのIC
50結果を表2に示す。
【表2】
【0300】
例5:KLK5特異的Abの親和性の決定
ヒトKLK5に結合するマウスIgG分子の動態を、25℃での表面プラズモン共鳴(Biacore T200)によって評価した。
【0301】
ヤギ抗マウスIgG Fc特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)を、アミンカップリング化学を介してCM5センサーチップ上に約7000RUのレベルまで固定化した。各分析サイクルは、抗Fc表面への抗KLK5 IgG分子の捕捉、30μl/分で300秒間のKLK5分析物(本発明者らが調製)の注入、続いて600秒間の解離からなった。各サイクルの終わりに、50mM HClの60秒間の注入、続いて5mM NaOHの30秒間の注入及び50mM HClの最終60秒間の注入を用いて、10μL/分の流速で表面を再生した。NaClを補充したHBS-EP+ランニング緩衝液(GE Healthcare)中20nM~0.25nM(4×3倍連続希釈)で最終濃度300mMまでヒトKLK5を滴定した。器具のノイズ及びドリフトを差し引くために、緩衝液ブランク注入を含めた。
【0302】
Biacore T200評価ソフトウェアを使用して1:1結合モデルを使用して速度論的パラメータを決定した。
【0303】
ウサギ抗体10236及び10273の親和性を表3に示す。
【表3】
【0304】
例6:抗体10273の特徴付け
ウサギ抗体10273のKLK5-PAR2細胞アッセイ
KLK5は、ケラチノサイトの表面でプロテアーゼ活性化受容体-2(PAR2)受容体を活性化することが示されている(K.Oikonomopoulou et al.Kallikrein-mediated cell signalling:targeting proteinase-activated receptors(PAR).Biol Chem,387(2006),pp.817-824)。これにより、NFKBによって駆動される炎症カスケード、及びTSLPなどの関連するサイトカインの放出がもたらされる。
【0305】
PAR2はGq共役Gタンパク質共役受容体(GPCR)であるため、活性化はホスホリパーゼのシグナル伝達及びイノシトール一リン酸(IP-1)の生成をもたらす。組換えKLK5への曝露によるHaCatケラチノサイト上に発現される内因性PAR2の活性化を、Cisbio製アッセイキットを使用したIP1の検出によって監視した。
【0306】
コンフルエントなHaCat細胞を回収し、384 Fluoblockプレート(Corning(商標))に10,000細胞/ウェルで播種し、DMEM培地+10%FBS+2mM L-グルタミン+ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies(商標))中、37℃、5%CO2で一晩培養し、その後、IP-One Gqアッセイプロトコル(Cisbio(商標))に従って処理した。試験する抗体を、2μMの最高濃度から1×刺激緩衝液(IP-One Gqアッセイキット、Cisbio(商標))で段階希釈し、200nMヒト組換えKLK5の存在下、37℃で1時間インキュベートした。抗体/KLK5混合物をHaCat細胞に添加し、イノシトール1リン酸(IP1)をIP-One Gqアッセイプロトコルに従って検出し、Synergy Neoプレートリーダで665nM及び620nMで蛍光を読み取った。
【0307】
抗体10273は、KLK5処理HaCat細胞からのIP1放出をほぼ完全に阻害することができ(
図1)、IP1放出の同様の最大阻害を示したが、LEKTIタンパク質と比較してより大きな効力を示した。
【0308】
抗体10273の作用機序
非競合的酵素阻害剤は、酵素の活性を低下させるが、基質の存在下又は非存在下で酵素に等しく良好に結合することができる。阻害剤及び基質は両方とも酵素に同時に結合することができるが、切断された生成物を形成することができず、酵素-基質-阻害剤複合体は酵素-基質又は酵素-阻害剤複合体のいずれかに分解することしかできない。非競合的阻害剤では、阻害速度は基質濃度の増加によって影響されない。
【0309】
抗体10273又はLEKTI-D5 Fcタンパク質を、KLK5に対するIC50の300、30又は3倍のいずれかでアッセイ緩衝液(150mM NaCl、50mMトリス、200μM EDTA、0.05%(v/v)Tween-20、pH7.6)中で調製した(上記参照)。10μLの抗体をCorning低結合性黒色低フランジ384ウェルアッセイプレート(Corning(登録商標))に添加した。30mM~300μMのBoc-VPR-AMC(Cambridge Research Biochemicals(商標))の5段階希釈物10μLをプレートに添加した。Pherastar FSXプレートリーダ(BMG Labtech(商標))を使用して、10μLの1.8nM KLK5(Boc-VPR-AMCは1mM未満)又は180pM KLK5(Boc-VPR-AMCは1mM超)のいずれかの注入を介して反応を同時に開始し、30秒ごとに蛍光(λex380nm λem430nm)を監視した。最終反応条件は、抗体10273又はLEKTI-D5 Fcタンパク質を、(上記のように)決定されたKLK5に対するIC50の100、10又は1倍で含み、Boc-VPR-AMCの段階希釈液は10mM~100μMであり、60又は600pM KLK5であった。抗体又はKLK5をアッセイ緩衝液で置換することによって陰性対照を調製した。
【0310】
各時点でのバックグラウンド蛍光を差し引き、蛍光を時間に対してプロットすることによってデータを分析した。データを以下の式に当てはめた(GraphPad Prism(登録商標)、GraphPadソフトウェア)。
【数2】
【0311】
これにより、観察された時間依存性阻害率k
obsを決定することができ、ここでv
iは初期反応速度であり、v
sは最終速度である。阻害機構を決定するために、基質濃度に対してk
obsの値をプロットした(
図2)。
【0312】
抗体10273によるKLK5の阻害速度は、基質濃度の増加と共に変化せず、抗体10273がKLK5の非競合的阻害剤であることを実証した(
図2A)。LEKTI-D5 Fcタンパク質は、基質濃度の増加に伴う阻害速度の減少を示し、競合的な作用機序を実証する(
図2B)。
【0313】
抗体10273の存在下でのKLK5へのLEKTI結合
表面プラズモン共鳴(SPR)実験を実施して、抗体10273がヒトKLK5への結合についてLEKTI D5タンパク質と競合するかどうかを決定した。これらのアッセイにより、LEKTI D5 Fab融合物のKLK5タンパク質単独に対する親和性と、抗体10273と複合体化したヒトKLK5に対する親和性を比較することができた。
【0314】
Biacore T200(GE Life Sciences(商標))を使用して、ヒトKLK5へのLEKTI D5 Fab融合タンパク質の結合の速度論的測定を得た。表面を調製するために、CM5チップ(GE Life Sciences(商標))を、最初にEDC/NHS(GE Life Sciences(商標))の混合物の5分間の注入(30μL分-1)、続いて酢酸緩衝液、pH5.0中の100μg mL-1のLEKTI D5 Fab融合物(UCB)(GE Life Sciences(商標))の注入で活性化し、チップ表面上に80RU固定化LEKTI D5 Fab融合物を得た。最後に、1M塩酸エタノールアミン-NaOH、pH8.5の注入を利用して表面を不活性化した。次いで、HBS-EP緩衝液(GE Life Sciences(商標))中のヒトKLK5の濃度を0.32nMから32nMに増加させて、単一サイクル動態モードで注入した。緩衝液のみの注入から得られた値を、KLK5注入について得られた値から差し引いて、BIAcore評価ソフトウェア(GE Life Sciences(商標))の1:1結合モデルに当てはめることによって動態を決定した。
【0315】
ヒトKLK5がウサギ抗体10273によって結合された場合に、ヒトLEKTIがヒトKLK5に結合することができるかどうかを決定するために、例4に記載したように、ヤギ抗ウサギFcポリクローナルを使用して抗体捕捉表面を調製し、次いで、Ab10273を補足した。次いで、表面が飽和に達するまで20nMのヒトKLK5を注入した。次いで、LEKTI D5 Fab融合タンパク質(例1に記載されるように産生される)を30pM~100nMの濃度で注入した。緩衝液のみを注入した値を、分析物で得られた値から最初に差し引いた後、Biacore(商標)評価ソフトウェア(GE Life Sciences(商標))における1:1結合速度論モデルにフィッティングした。
【0316】
参照として、ヒトKLK5との相互作用を監視する前に、LEKTI D5 Fab融合タンパク質をチップ表面に固定化した。ヒトLEKTI D5 Fab融合タンパク質は、ヒトKLK5が既にウサギ抗体10273と複合体を形成している場合、19.7nMの親和性でヒトKLK5に結合することができた(表4)。ウサギ抗体10273の非存在下でのヒトKLK5に対するヒトLEKTIの親和性はより高い(40pM)が、この分析により、ヒトLEKTIの存在下又は非存在下でヒトKLK5に結合することにより、ウサギ抗体10273がヒトKLK5に更なる阻害活性を提供することができることが実証される。
【表4】
【0317】
LEKTI-KLK5-抗体10273複合体形成
KLK5は、N末端のTEV切断可能な8xHisタグを有する分泌タンパク質としてHEK293細胞で産生された。タンパク質を最初に、馴化培地からNi2+アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。KLK5を含有するNi2+カラムからの画分をプールし、TEVプロテアーゼで消化してHisタグを除去し、次いで、第2のNi親和性工程を実施してTEVプロテアーゼを除去し、切断されたKLK5をカラムに流した。第2のNi2+カラムからのフロースルー画分を濃縮し、50mMトリスpH7、50mM NaCl、1mM EDTA、5%グリセロール中のサイズ排除カラムで実行した。SECからのKLK5画分をプールし、約10mg/mlに濃縮し、-80℃で保存した。
【0318】
配列番号173によるLEKTIドメイン5(LEKTI D5 Fc TEV)及び配列番号174によるLEKTIドメイン8(LEKTI D8 Fc TEV)は、C末端のTEV切断性Fcタグを有する分泌タンパク質としてHEK293細胞において産生された。これらのタンパク質を、プロテインAビーズ上に馴化培地を通過させることによって精製した。結合したタンパク質を0.1Mクエン酸、pH2.0で溶出し、画分を2Mトリス塩酸、pH8.5の添加によって中和した。LEKTIドメイン5又はドメイン8のいずれかを含有するプロテインAカラムからの画分をプールし、FcタグをTEVプロテアーゼで除去して、LEKTI D5又はLEKTI D8を得た。切断されたタンパク質をサイズ排除クロマトグラフィーのために約15mg/mlに濃縮した。SECはPBS、pH7.2中で行った。LEKTI含有画分をプールし、約10mg/mlに濃縮し、-80℃で凍結保存した。
【0319】
ウサギFab抗体10273を分泌タンパク質としてHEK293細胞で発現させた。配列番号166及び168を含む発現構築物を1:1のモル比で共トランスフェクトした。分泌されたFab(配列番号165及び167を含む)を、馴化培地をプロテインGビーズ上に通過させることによって精製し、0.1Mグリシン、pH2.7で溶出した。画分を2Mトリス塩酸、pH8.5の添加によって中和した。タンパク質をPBS、pH7.2に透析し、次いで約10mg/mlに濃縮し、-80℃で凍結保存した。
【0320】
最初に25μMのKLK5を25μMのLEKTI D5又はLEKTI D8と共に氷上で60分間インキュベートし、次いで25μMのウサギFab抗体10273を添加し、氷上で更に60分間インキュベートすることによってKLK5、LEKTI D5又はLEKTI D8、及びウサギFab抗体10273の複合体を形成した。PBS、pH7.2で平衡化したSuperdex 200サイズ排除カラムに混合物を注入し、これをHPLCに連続して接続した。ピーク画分をSDS-PAGEによる分析のために収集した。
図3A及び
図3Bは、ヒトKLK5単独(実線トレース、右端)、ウサギFab抗体10273単独(点線トレース)、ヒトKLK+LEKTI D5又はD8の二成分複合体(それぞれ
図3A又は
図3B、長い破線)、及びKLK5+LEKTI D5又はD8+ウサギFab抗体10273の三成分複合体(それぞれ
図3A又は
図3B、短い破線、左端)のSECクロマトグラムを示す。
【0321】
図4A及び4Bに示すように、各ピークの成分の分子量(MW)をSDS PAGEによって確認した。
【0322】
KLK5、LEKTI D5又はLEKTI D8とウサギFab抗体10273との間の複合体は、ヒトKLK5を各LEKTI断片と個別に混合し、次いで、二成分複合体をウサギFab抗体10273とインキュベートすることによって、1:1:1の比で混合すると容易に形成した。SEC上及びピーク画分のSDS-PAGEによって二成分複合体及び三成分複合体が観察され、これらが安定であり、他の種からの単離/精製に適していることが示された。
【0323】
例7:KLK5/Fab抗体10273/Fab抗体10236複合体の結晶化
結晶学研究のために、5mMの最終濃度でキフネンシン(Sigma(登録商標))を添加して、Expi293(商標)発現系(Life Technologies(商標))を製造者のプロトコルに従って使用する一過性トランスフェクションによってヒトKLK5を発現させた。キフネンシンは、マンノシダーゼI酵素の強力な阻害剤であり、主に高マンノース糖タンパク質を産生するために細胞培養において使用される。
【0324】
KLK5の発現中、タンパク質は自己活性化して、上清中に活性KLK5タンパク質(配列番号142又は配列番号144の残基I67~S293(UniProt Q9Y337ナンバリング))をもたらす。トランスフェクションの5日後に細胞を回収し、精製のために上清を直ちに使用した。ヒトKLK5を含む上清を緩衝液A(50mMトリスpH7.0、50mM NaCl)で4倍希釈し、HiTrap SP HP陽イオン交換カラムにロードした。結合したタンパク質を、10カラム容量にわたって緩衝液B(50mMトリスpH7.0、1M NaCl)勾配で溶出した。精製ヒトKLK5を含有する分画をプールし、濃縮し、pH7.2の20mMトリス、150mM NaClで平衡化したS200 26/60でのサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。KLK5はSDS-PAGEによって特徴付けられ、高マンノースグリコシル化タンパク質の予想分子量(MW)約35~38kDaと一致するゲル上の位置に移動した。
【0325】
次いで、ヒトKLK5タンパク質を1:100の比でエンドグリコシダーゼH(Endo H)タンパク質で処理し、4℃で一晩インキュベートして、構造研究のために均一な脱グリコシル化KLK5タンパク質を形成した。エンドグリコシダーゼH(Endo H)は、ストレプトマイセス・プリカタス(Streptomyces plicatus)からクローニングされ、大腸菌(E.coli)で過剰発現される組換えグリコシダーゼである。Endo Hは、高マンノースのキトビオースコア及びN結合型糖タンパク質由来の限られた数のハイブリッドオリゴ糖を切断する。Endo Hは複合グリカンを切断しない。酵素的切断は、オリゴ糖のジアセチルキトビオースのコア中の2つのN-アセチルグルコサミン残基の間であり、アスパラギン上に1つのN-アセチルグルコサミン残基を残す。この工程は、均質なヒトKLK5が結晶学的研究に利用可能であることを確実にするために実行された。KLK5はSDS-PAGEによって特徴付けられ(
図5)、脱グリコシル化タンパク質の予想分子量(MW)約25kDaと一致するゲル上の位置に移動した。
【0326】
ウサギFab抗体10273を例6に記載されるように発現させた。ウサギFab抗体10236(配列番号181及び183を含む)を、ウサギFab抗体10273について記載されるように発現させた。手短に言えば、配列番号182及び184を含む発現構築物を1:1のモル比で共トランスフェクトした。分泌されたFabタンパク質のそれぞれを、馴化培地をプロテインGビーズ上に通過させることによって精製し、0.1Mグリシン、pH2.7で溶出した。画分を2Mトリス塩酸、pH8.5の添加によって中和した。それぞれの個々のタンパク質をPBS、pH7.2に透析し、約10mg/mlに濃縮し、-80℃で凍結保存した。
【0327】
1:1.5:1.5のヒトKLK5/ウサギFab抗体10273/ウサギFab抗体10236複合体を作製し、4℃で一晩インキュベートし、サイズ排除クロマトグラフィー(20mMトリス、150mM NaCl、pH7.2溶出緩衝液)によって精製した。複合体を含有する単一のピークを結晶化前に約10.8mg/mlに濃縮した。
【0328】
いくつかの市販の結晶化スクリーニングを使用して、ヒトKLK5/ウサギFab抗体10273/ウサギFab抗体10236複合体の結晶化条件を同定した。これらは、Swissci 96ウェル2液滴MRC結晶化プレート(Molecular Dimensions、カタログ番号MD11-00-100から供給)を使用して、シッティングドロップ形式で実施した。最初に、Microlab STAR液体処理システム(Hamilton)を使用して、スクリーン中の各結晶化溶液75μLをリザーバに充填した。次いで、Mosquitoリキッドハンドラ(TTP LabTech)を使用して、300nLのヒトKLK5/ウサギFab抗体10273/ウサギFab抗体10236複合体及び300nLのリザーバ溶液を結晶化プレートのウェルに分注した。MIDAS+HT-96スクリーン(Molecular Dimensions、カタログ番号MD1-107)の条件16(ウェルB4)で単結晶が得られた。この条件は、45%v/vのペンタエリスリトールプロポキシラート(5/4)、0.2M NaCl及び0.1M MES一水和物pH6.0を含有する。結晶を液体窒素中で急速冷凍し、回折データをビームラインI03(Diamond Light Source、英国)で収集した。データを指数化し、XDS(Kabsch,W.XDS.Acta Cryst.D66,125-132(2010))を使用して統合した後、AIMLESS(2.Evans PR,Murshudov GN.How good are my data and what is the resolution?Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.2013;69(Pt7):1204-1214)を使用してスケーリングした。ヒトKLK5/ウサギFab抗体10273/ウサギFab抗体10236複合体構造を、Phenixソフトウェア一式(Adams PD,Afonine PV,Bunkoczi G,et al.The Phenix software for automated determination of macromolecular structures.Methods.2011;55(1):94-106)のPhaser(McCoy,A.J.,Grosse-Kunstleve,R.W.,Adams,P.D.,Winn,M.D.,Storoni,L.C.,&Read,R.J.Phaser crystallographic software.J.Appl.Cryst.(2007).40,658-674)を用いた分子置換によって解明した。この手順では、KLK5構造2PSX(Debela M,Goettig P,Magdolen V,Huber R,Schechter NM,Bode W.Structural basis of the zinc inhibition of human tissue kallikrein 5.J Mol Biol.2007 Nov 2;373(4):1017-31)及び専売のFabモデルを分子置換鋳型として使用した。許容可能なRwork、Rfree及びラマチャンドラン統計(Molprobity(Williams et al.(2018)MolProbity:More and better reference data for improved all-atom structure validation.Protein Science 27:293-315)で分析した場合)が得られるまで、Coot(P.Emsley;B.Lohkamp;W.G.Scott;Cowtan(2010).“Features and Development of Coot”.Acta Crystallographica.D66:486-501)及びphenix.refine(Towards automated crystallographic structure refinement with phenix.refine.P.V.Afonine,R.W.Grosse-Kunstleve,N.Echols,J.J.Headd,N.W.Moriarty,M.Mustyakimov,T.C.Terwilliger,A.Urzhumtsev,P.H.Zwart,and P.D.AdamsActa Crystallogr D Biol Crystallogr 68,352-67(2012))を手動モデル完成及び改良の以下のサイクルで使用した。
【0329】
ヒトKLK5/ウサギFab抗体10273/ウサギFab抗体10236複合体は、結晶非対称単位で観察された。CCP4ソフトウェア一式中のNCONTを使用して、Fab10273及びFab10236分子によって認識されるKLK5上のエピトープを決定した。KLK5アミノ酸ナンバリングは、UnitProtKBエントリーQ9 Y337に基づいており、括弧内はキモトリプシノゲンに基づく標準的なプロテアーゼナンバリングである。表5は、本発明が最初に記載された時点での精密化統計を示す。
【表5】
【0330】
4Å接触距離でウサギFab抗体10273によって結合されたヒトKLK5エピトープは、配列番号166を参照して、残基Leu212(163)、Ser213(164)、Gln214(165)、Lys215(142)、Arg216(167)、Glu218(169)、Asp219(170)、Ala220(171)、Pro222(173)、Gly233(184)、Pro269(223)、Asn270(224)及びPro272(226)から構成され、括弧内の数字はプロテアーゼ命名法に対応する。結合部位を
図6により詳細に示す。
【0331】
エピトープの近くにあるが、ヒトKLK5とウサギFab抗体10273との間の5Åの接触距離にある他のアミノ酸残基は、配列番号142を参照してAla181(132)、Val211(162)、Tyr221(172)、Asp234(185)及びArg271(225)を含み、括弧内の数字はプロテアーゼ命名法に対応する。
図7に示すように、抗体10236及び10273は、非常に別個の重複しない結合部位を有し、ヒトKLK5上の異なるエピトープに結合する。
【0332】
例8:抗体10273のヒト化及び特徴付け
Ab10273のヒト化
ウサギ抗体10273を、ウサギV領域からのCDRをヒト生殖細胞系抗体V領域フレームワークに移植することによってヒト化した。抗体の活性を回復するために、ウサギV領域からのいくつかのフレームワーク残基もヒト化配列に保持した。これらの残基は、Adair et al.(1991)(Humanized antibodies.国際公開第91/09967号)によって概説されたプロトコルを用いて選択した。設計されたヒト化配列と共に、ウサギ抗体(ドナー)V領域配列とヒト生殖細胞系(アクセプター)V領域配列とのアラインメントを
図8及び9に示す。ドナーからアクセプター配列に移植されたCDRは、Chothia/Kabatの組合せ定義が使用されるCDR-H1(Adair et al.,1991 Humanized antibodies.国際公開第91/09967号を参照されたい)を除いて、Kabat(Kabat et al.,1987)によって定義される通りである。
【0333】
抗体10273については、ヒトV領域IGKV1D-13+JK4J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)を軽鎖CDRのアクセプターとして選択した。ヒト化軽鎖移植片gL2中のフレームワーク残基は全てヒト生殖細胞系遺伝子由来である(
図8)。
【0334】
ヒトV領域IGHV3-66+JH6J領域(IMGT、http://www.imgt.org/)を、抗体10273の重鎖CDRのアクセプターとして選択した。多くのウサギ抗体と同様に、抗体10273のVH遺伝子は、選択されたヒトアクセプターよりも短い。ヒトアクセプター配列とアライメントされた場合、抗体10273のVH領域のフレームワーク1は、ヒト化抗体に保持されているN末端残基を欠いている(
図9)。10273ウサギVH領域のフレームワーク3はまた、βシート鎖DとEとの間のループに2つの残基(75及び76)を欠いており、ヒト化移植片では、ギャップは選択されたヒトアクセプター配列からの対応する残基(リジン75、K75;アスパラギン76、N76)で満たされる(
図9)。10273重鎖のヒト化移植片中のフレームワーク残基は全て、ドナー残基バリン(V24)、イソロイシン(I48)、グリシン(G49)、リジン(K71)、セリン(S73)又はバリン(V78)がそれぞれ保持された残基24、48、49、71、73及び78を含む群からの1つ又は複数の残基を除いて、ヒト生殖細胞系遺伝子に由来する。残基G49の保持は、ヒト化抗体の完全な効力に必須であった。CDRH3における潜在的な加水分解部位を、116位のアスパラギン酸残基をグルタミン酸(D116E)で置換することによって、移植片gH3において修飾した。
【0335】
ヒト化10273抗体のpIは約6.2である。下流処理中のイオン交換クロマトグラフィーによる不純物の除去を容易にするために、移植片gL2の配列番号1を参照して、CDRL1中の残基1をグルタミン(Q)からアルギニン(R)、リジン(K)又はヒスチジン(H)残基のいずれかに変異させることによってpIを増加させた。更に、CDRH3(配列番号6を参照して)の残基19をアスパラギン酸(D)からアスパラギン(N)残基に変異させてpIを更に増加させ、予想外に、CDRH3(D19N)の変異もまた、KLK5に対する親和性の増加をもたらした。
【0336】
移植片抗体10273 gL2-Q24RgH1-D116Nでは、CDR-H3は6個のチロシン残基を含む。この移植片の変異体を調製し、個々のチロシン残基をフェニルアラニン残基で置換して移植片10273 gL2-Q1RgH1-D19N-Y4F、10273 gL2-Q1RgH1-D19N-Y6F、10273 gL2-Q1RgH1-D19N-Y9F、10273 gL2-Q1RgH1-D19N-Y12F、10273 gL2-Q1RgH1-D19N-Y15F、10273 gL2-Q1RgH1-D19N-Y16Fを生成した。更なる変異体は、配列番号6を参照して、15位及び16位の二重チロシンの前に生じるトレオニンを変異させ、移植片10273 gL2-Q1RgH1-D19N-T14V及び10273 gL2-Q1RgH1-D19N-T14Sをもたらすことによって調製した。
【0337】
ヒトKLK5への結合に関するこれらの移植片の動態を、25℃での表面プラズモン共鳴(Biacore T200)によって評価した。
【0338】
ヤギ抗ヒトIgG Fc特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)を、アミンカップリング化学を介してCM5センサーチップ上に約7000RUのレベルまで固定化した。各分析サイクルは、抗Fc表面への抗KLK5 IgG分子の捕捉、30μl/分で180秒間のKLK5分析物(本発明者らが調製)の注入、続いて600秒間の解離からなった。各サイクルの終わりに、50mM HClの60秒間の注入、続いて5mM NaOHの30秒間の注入及び50mM HClの最終60秒間の注入を用いて、10μL/分の流速で表面を再生した。NaClを補充したHBS-EP+ランニング緩衝液(GE Healthcare)中20nM~0.74nM(3×3倍連続希釈)で最終濃度300mMまでヒトKLK5を滴定した。器具のノイズ及びドリフトを差し引くために、緩衝液ブランク注入を含めた。
【0339】
Biacore T200評価ソフトウェアを使用して1:1結合モデルを使用して速度論的パラメータを決定した。
【0340】
表6は、全ての変異が、それらが由来する親抗体又は移植片抗体と同様又はそれに近い親和性でKLK5に依然として結合することができる抗体をもたらすわけではないことを示す。
【表6】
【0341】
ヒト化抗体のプロファイリング
KLK5選択性
ウサギ抗体10273のヒト化が他のカリクレインよりもKLK5選択性を変化させず、親和性又は阻害活性を低下させないことを確認にするために、一連の調査を行った。
【0342】
次いで、精製抗体をスクリーニングして、例4に記載の方法に従ってKLK5に対する阻害活性を確認した。抗体を、600nM~20pMの範囲を有する10点の半対数希釈系列で試験した。Beckman Coulter FX(商標)及びMultidrop Systemを使用して、5μLの各抗体を黒色384ウェルアッセイプレート(Corning(商標)、カタログ番号3575)に移し、アッセイ緩衝液A(150mM NaCl、50mMトリス、200μM EDTA、0.05%(v/v)Tween-20、pH7.6中の15μLの選択された活性組換えカリクレイン酵素を添加して、以下の最終アッセイ濃度60pMのヒトKLK5(UCB)、250pMのKLK7(UCB)、500pMのKLK2(R&D)、30pMのKLK4(UCB)、並びに30pMのカニクイザル組換えKLK5(UCB)、500pMのカニクイザルKLK7、30pMのマウスKLK5(UCB)及び5nMのマウスKLK7(UCB)を達成した。UCBで調製した酵素を括弧内に示し、例1で上記のように調製する。市販の酵素の供給源を括弧内に示す。
【0343】
20μLのアッセイ緩衝液Aのみを0%活性のためにウェルに添加した。LEKTI D5ウサギFc(上記のように調製したUCB)を阻害活性の基準として使用し、したがって、10236 Abs抗体に利用される同じ濃度範囲の5μlのLEKTI D5ウサギFcを15μlのカリクレイン酵素に添加した。5μLのアッセイ緩衝液Aに添加した15μLのヒトKLK5を100%活性基準として使用した。
【0344】
抗体及びカリクレインを室温で一晩インキュベートした。マルチドロップを使用して以下のペプチド基質、ヒトKLK5(300μM)、ヒトKLK2(30μM)、マウスKLK5(300μM)及びカニクイザルKLK5(450μM)についてはBoc-VPR-AMC(Cambridge Research Biochemicals(商標))、ヒト及びカニクイザルKLK7(それぞれ90μM及び150μM)についてはKHLF-AMC(Cambridge Research Biochemicals(商標))、ヒトKLK4(200μM)についてはPFR-AMC(R&D Systems(商標))、並びにマウスKLK7(150μM)についてはMca-RPKPVE-Nval-WRK(Dnp)-NH2(R&D Systems(商標))を添加した。試料を4時間インキュベートし、Boc-VPR-AMC、PFR-AMC及びKHLF-AMCについてはλex380nm及びλem430nmで、Mca-RPKPVE-Nval-WRK(Dnp)-NH2についてはλex320nm及びλem400nmで、Pherastar FSXプレートリーダ(BMG Labtech(商標))で読み取った。データを分析して、例3に記載の阻害率を決定した。データを試験抗体の濃度に対してプロットし、4パラメータシグモイドをフィッティングしてIC50(Genedata Screener(商標))を決定した。
【0345】
Ab 10273のヒト化移植片は、KLK5に対する特異性を保持し、試験した他のKLKファミリーメンバーの阻害をほとんど又は全く示さなかった(データは示さず)。
【0346】
ヒト化移植片によるKLK5の阻害レベル
ヒト化Ab 273移植片バリアントによって媒介されるKLK5活性の阻害レベルを確認するために、捕捉アッセイを開発した。
【0347】
Nunc Maxisorp黒色384ウェルプレート(Sigma Aldrich(商標))を、炭酸塩コーティング緩衝液中10μg/mLのF(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcγ断片特異的(Jackson ImmunoResearch(商標))でコーティングし、4℃で一晩放置した。プレートをPBS及び0.005%Tween-20を含むBiotek(商標)プレートウォッシャで3回洗浄し、プレートを1%BSAを含む20μL/ウェルPBSで室温で1時間ブロックした。プレートを上記のように洗浄し、10μlの5nM抗体(アッセイ緩衝液150mM NaCl、50mMトリス、200μM EDTA、0.005%(v/v)Tween-20、pH7.6を用いてストックから希釈した)を適切なウェルに添加した。プレートを密封し、室温で一晩インキュベートした後、洗浄した。次いで、10μlの250pM KLK5(アッセイ緩衝液中のストックから希釈)を関連ウェルに添加し、室温で4時間インキュベートした後、10μlの600mM BVPR-AMC基質を添加した。抗体を除去し、「最大活性」対照ウェルについてはアッセイ緩衝液で置き換え、一方、「最小活性」対照ウェルには基質又は酵素を加えなかった(アッセイ緩衝液で置き換えた)。蛍光(λex380nm λem430nm)を、PheraStar FSXプレートリーダを用いて4時間にわたって1時間ごとに読み取った。
【0348】
データを分析して、KLK5値の阻害率を得た。各時間0値をその等価な時間4時間値から差し引いて、正規化されたベースライン補正されたデータセットを得た。以下の式を使用して、正規化された蛍光値を阻害%に変換した。
【数3】
Min=最小活性値、Max=最大活性値
【0349】
データをプロットして、
図10に示す棒グラフを生成した。阻害パーセント値は95%~97%の範囲であり、抗体10273移植片がKLK5酵素活性をほぼ完全に阻害することができたことを実証した。
【0350】
例9:ヒト化抗体の生物物理学的特徴付け
質量分析による抗体の特徴付け
各抗体の同定は、Xevo G2 Q-ToF質量分析計を備えたWaters ACQUITY UPLCシステムを使用したLC-MSによる、重鎖及び軽鎖のインタクト質量測定によって確認した。試料(約5μg)を、150mM酢酸アンモニウム中の5mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を用いて37℃で40分間還元した。LCカラムは、0.6mL/分の流速で、95%溶媒A(水/0.02%トリフルオロ酢酸(TFA)/0.08%ギ酸)及び5%溶媒B(95%アセトニトリル/5%水/0.02%TFA/0.08%ギ酸)で平衡化した、450Å、2.7μm、80℃に保持されたWaters BioResolveT RP mAbポリフェニルであった。タンパク質を8.8分間にわたって5%~50%溶媒Bの勾配で溶出し、続いて95%溶媒Bで洗浄し、再平衡化した。UVデータを280nmで取得した。MS条件は以下の、イオンモード:ESI正イオン、分解モード、質量範囲:400~5000m/z及びNaIによる外部較正の通りであったWaters MassLynx及びMaxEntソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0351】
インタクト質量(還元鎖)は、軽鎖について観察された質量が予想質量と一致することを示した。しかし、10273 gL2-Q1RgH1-D19N-Y9Fを除く10273の全ての分子について、観察された重鎖質量と予想された重鎖質量との間に+80ダルトンの差が見られた(表7)。
【0352】
これは、重鎖におけるTyr9の翻訳後修飾であると同定され、抗スルホチロシン抗体を用いたウェスタンブロッティングによって、硫酸化であると確認された。更に、10273 gL2-Q1RgH1-D19Nをアワビのスルファターゼと共に37℃で1時間インキュベートすると、インタクト質量分析によって判断されるように、+80Da修飾の割合が約17%減少した。
【表7】
【0353】
熱安定性(Tm)測定
融解温度(Tm)又はアンフォールディングの中点の温度を、Thermofluorアッセイを用いて決定した。
【0354】
Thermofluorアッセイでは、蛍光色素SYPRO(登録商標)orangeを使用して、温度が上昇するにつれて露出する疎水性領域に結合することによってタンパク質アンフォールディングプロセスを監視した。反応混合物は、試験緩衝液で5000倍濃縮物から希釈した5μLの30×SYPRO(登録商標)Orange Protein Gel Stain(Thermofisher scientific、S6651)を含有した。PBS pH7.4中0.2mg/mLの10273 Ab試料45μLを色素に添加し、混合した。この溶液10μLを384 PCR光学ウェルプレートに四連で分注し、QuantStudio7リアルタイムPCRシステム(Thermofisher(商標))で実行した。PCRシステム加熱デバイスを20℃に設定し、1.1℃/分の速度で99℃に増加させた。電荷結合デバイスはウェルの蛍光変化を監視した。蛍光強度の増加をプロットし、勾配の変曲点を使用して見かけの中点温度(Tm)を生成した。
【0355】
全ての抗体について2つのアンフォールディング転移が観察された。第1のドメインはCH2ドメインに起因する可能性があり、第2のドメインはFabアンフォールディングドメイン及びCH3ドメインのTmの平均に起因する可能性がある。
【0356】
10273 IgG4P抗体間で熱安定性に差はなかった(表8)。予想通り、対応するIgG4Pフォーマットと比較して、抗体10273 gL2gH1のIgG1フォーマットについて熱安定性の増加が観察された。(Heads et al“Relative stabilities of IgG1 and IgG4 Fab domains:influence of the light-heavy interchain disulfide bond architecture”.Protein Sci 2012;21:1315-22)。
【表8】
【0357】
3つのヒト化IgG4P抗体、抗体10273 gL2H1、gL2Q1R-gH1D19N及びgL2Q1R-gH4D19N並びにIgG1形式の抗体10273 gL2gH1について、更なる生物物理学的特徴付けを行った。
【0358】
実験的な等電点(pI)測定
iCE3(商標)全キャピラリイメージングキャピラリ等電点電気泳動(cIEF)システム(ProteinSimple)を使用して、pIを実験的に決定した。10273 Ab試料を、30μLの試料(HPLCグレードの水中の1mg/mLストックから)、35μLの1%メチルセルロース溶液(ProteinSimple、101876)、4μLのpH3~10のファルマライト(ProteinSimple、042-848)、0.5μLの4.65合成pIマーカー、0.5μLの9.77合成pIマーカー(ProteinSimple、102223及び102219)、及び12.5μLの8M尿素溶液(Sigma Aldrich(登録商標))を混合することによって調製した。HPLCグレードの水を使用して最終容量を100μlにした。試料を1.5kVで1分間集束させ、続いて3kVで5分間集束させ、Protein Simpleソフトウェアを使用してキャピラリの280nm画像を撮影した。得られた電気泳動図をiCE3ソフトウェアを用いて分析し、pI値を割り当てた(pIマーカー間の線形関係)。
【0359】
軽鎖Q1R及び重鎖D19Nにおける変異の結果として、より高いpIが観察された。アイソタイプ、すなわちIgG4Pの代わりにIgG1の違いも、実験pIの増加をもたらした。変異とアイソタイプの変化の両方を、第1のイオン交換工程(AEX)における宿主細胞タンパク質の除去のための産生中に利用することができる。pIの増加は、より一般的な緩衝液(pH5~6付近)での製剤化も可能にする。
【表9】
【0360】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、疎水性が高い順に分子を分離する。分子は、高濃度の極性塩の存在下で疎水性固定相に結合し、塩の濃度が低下するにつれて移動相に脱着する。保持時間がより長いと、より大きい見かけの疎水性に等しくなる。
【0361】
2mg/mLの10273 Ab試料を1.6M硫酸アンモニウム及びPBS(pH7.4)で1:2に希釈した。10μg(10μL)の試料を、蛍光検出器を備えたAgilent 1200二成分HPLCに直列に接続したDionex ProPac(商標)HIC-10カラム(100mm×4.6mm)に注入した。分離を固有蛍光(励起波長及び発光波長、それぞれ280nm及び340nm)によって監視した。緩衝液A(0.8M硫酸アンモニウム、100mMリン酸、pH7.4)及び緩衝液B(100mMリン酸、pH7.4)を使用して、試料を以下の勾配溶出、(i)0%Bで2分間保持、(ii)30分間で0~100%Bまでの直線勾配(0.8mL/分)、(iii)次の試料注入の前にカラムを100%Bで2分間洗浄し、0%Bで10分間再平衡化することを使用して分析した。カラム温度を20℃に維持した。保持時間(分)を表10に示す。
【表10】
【0362】
保持時間、すなわち見かけの疎水性のわずかな差のみが、異なる10273抗体間で観察され、全てが平均より大きい測定値を示すと考えられ、したがって凝集する傾向を潜在的に示す(Jain et al “Biophysical properties of the clinical-stage antibody landscape” Proc Natl Acad Sci U S A.2017 Jan 31;114(5):944-949.doi:10.1073/pnas.1616408114.Epub 2017 Jan 17)。したがって、全ての分子が、HICマトリックスに結合するより大きな傾向を示した。HICマトリックスは、製造におけるイオン交換の代替工程として使用されてきた。
【0363】
ポリエチレングリコール(PEG)測定を使用した溶解度測定
コロイド安定性(溶解度)の理解は、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿の効果を調べることから導き出すことができる。PEGを使用して、PEGの濃度(w/v)を増加させ、溶液中に残存するタンパク質の量を測定することによって、定量的に定義可能な様式でタンパク質溶解度を低下させた。このアッセイは、従来の濃縮方法を使用せずに高濃度溶解度の効果を模倣するのに役立つ。
【0364】
ストック40%(w/v)PEG3350(Merck、202444)溶液をPBS pH7.4、50mM酢酸ナトリウム、125mM塩化ナトリウムpH5.0(一般的な貯蔵緩衝液)及び50mMヒスチジン、250mMプロリンpH5.5(一般的な製剤前緩衝液)中で調製した。連続滴定をassist plus液体処理ロボット(Integra、4505)によって行い、40%~15.4%の範囲のPEG3350を得た。非平衡沈殿を最小限に抑えるために、試料調製は、10273 Ab試料とPEG溶液とを1:1の体積比で混合することからなった。35μLのPEG3350ストック溶液を、96ウェルv底PCRプレート(A1~H1)に液体処理ロボットによって加えた。35μLの2mg/mL 10273 Ab溶液をPEGストック溶液に添加して、1mg/mLの試験濃度を得た。この溶液を自動化された低速反復ピペッティングによって混合し、37℃で0.5時間インキュベートして非平衡凝集体を再溶解した。次いで、試料を20℃で24時間インキュベートした。その後、試料プレートを20℃、4000×gで1時間遠心分離した。50μLの上清をUV-Star(登録商標)、ハーフエリア、96ウェル、μClear(登録商標)、マイクロプレート(Greiner、675801)に分注した。タンパク質濃度を、FLUOstar(登録商標)Omegaマルチ検出マイクロプレートリーダ(BMG LABTECH)を使用して280nmでのUV分光光度法によって決定した。得られた値を、GraphPad Prismバージョン7.04を使用してプロットし、PEG中点(PEG)スコアを、シグモイド用量応答(可変勾配)フィットの中点から導いた。
【0365】
データを表11に示し、PEG中点(%)が高いほど、高濃度の安定性/溶解性の可能性が高くなる。
【0366】
pH7.4では、10273 gL2gH1(IgG4P)が最も高いPEG中点(最大の予測溶解度)を示すが、アセタートpH5では最も低い溶解度を示す。この傾向は、PBS pH7.4とアセタートpH5との間で予測溶解度に差がなかった、対応するIgG1分子とは異なっていた。10273gL2-Q1RgH1-D19N及び10273 gL2-Q1RgH4-D19Nの両方が、PBS pH7.4及びヒスチジンpH5.5緩衝液において同様のPEG中点を示したが、アセタートpH5では低下した。
【表11】
【0367】
気液界面での応力の影響(凝集アッセイ)
タンパク質は、疎水性表面が疎水性環境(空気)に提示され、親水性表面が親水性環境(水)に提示される空気-液体界面にさらされるとアンフォールドする傾向がある。タンパク質溶液を撹拌すると、凝集を促進することができる大きな気液界面が得られる。このアッセイは、産生(例えば、限外濾過)中に分子が受けるストレスを模倣し、異なる抗体分子を区別しようとするためにストリンジェントな条件を提供するのに役立つ。
【0368】
Eppendorf Thermomixer Comfort(商標)を使用してボルテックスすることによって、PBS pH7.4又は50mM酢酸ナトリウム及び125m塩化ナトリウムpH5の中の試料にストレスを与えた。ボルテックスする前に、適切な吸光係数(1.46 Abs 280nm、1mg/mL、経路長1cm)を使用して濃度を1mg/mLに調整し、Varian Cary 50-Bio分光光度計(登録商標)を使用して280nm、340nm及び595nmでの吸光度を得て、時間0の読み取り値を確立した。各試料を1.5mLコニカルEppendorf(登録商標)型キャップ付きチューブ(3×250μL)に細分し、1400rpm、25℃で4時間ボルテックスした。Varian Cary(登録商標)50-Bio分光光度計を使用した595nmでの試料の測定によって凝集(濁度)を監視した。
【0369】
異なる抗体についての2つの緩衝液中の4時間での凝集傾向を表12及び
図11に示す。
【表12】
【0370】
IgG1 10273gL2gH1は、両方の緩衝液において最大の凝集安定性を示し、一般に、全ての10273抗体がPBS pH7.4においてより凝集安定であった。
【0371】
円二色性(CD)によるグアニジン塩酸塩アンフォールディングを使用した化学変性(アンフォールディング)
堅牢性の試験として化学変性剤(塩酸グアニジン)を使用して抗体をアンフォールディングさせた。
【0372】
DragonFly(登録商標)(英国ケンブリッジのTTP labtech)を使用して、96ウェルプレート中の48ウェルにわたって、グアニジンHClを0~4Mで滴定し、試料を80μLの総体積中7.5μM(最終)で添加した後、室温で一晩平衡化した。70μLを自動円二色性(Chiroscan(商標):ACD、Applied Photophysics、英国レザーヘッド)による分析のためにディープウェルプレートに移した。円二色性測定は、1秒/時点で0.5nmのステップサイズ、1nmの帯域幅及び0.2mmの経路長のフローセルキュベットを使用して、遠UV領域260~190nmで取得した。210nmでのCDシグナルを、Origin 9bのシグモーダル二用量応答曲線にフィッティングさせた。
【0373】
試験した10273抗体は、化学変性中点(Cm)(表13)に従って同様の変性プロファイルを有するようであり、2つの見かけの遷移があり、したがって化学変性剤と同様の堅牢性を示した。
【表13】
【0374】
AC-SINS(親和性捕捉自己相互作用ナノ粒子分光法)を用いた自己相互作用の評価。
AC-SINSアッセイ(Liu Y.MAbs.2014 Mar-Apr;6(2):483-92)において10273抗体のセットを試験し、自己相互作用傾向を評価し、したがって凝集安定性について報告した。
【0375】
ヤギ抗ヒトFcγ特異的捕捉抗体(Jackson ImmunoResearch)を20mM酢酸ナトリウム、pH4.3に緩衝液交換し、0.4mg/mLに希釈し、450μLのクエン酸安定化20nm金ナノ粒子(TedPella、米国)に50μLを添加し、室温で一晩放置した。コンジュゲート化ナノ粒子を55μLのPEG-チオールで1時間ブロックし、21,000×gで6分間遠心分離し、上清を除去し、20mM酢酸ナトリウム、pH4.3に再懸濁して最終容量150μLにした。
【0376】
10273抗体をPBS、pH7.4(200μL)中で22μg/mLに希釈し、等量の非特異的全IgG(Jackson ImmunoResearch)に添加し、短時間ボルテックスし、72μLを96ウェルプレートに添加した。8μLのナノ粒子を各ウェルに添加した(n=4)。吸光度をBMGプレートリーダで500~600nmから読み取り、ローレンツカーブ(RShiny)に適合させ、PBSのみを試料から差し引いて、表14に詳述するΔλmaxを得た。Δλmaxが大きいほど、自己相互作用の傾向が大きくなる。試験した10273抗体は、低いλmax及びΔλmax(PBSバックグラウンドから)を示し、自己相互作用の傾向が低いことを示唆した。
【表14】
【配列表フリーテキスト】
【0377】
配列表30 <223>ウサギVL
配列表31 <223>ウサギVLヌクレオチド
配列表32 <223>ウサギVH
配列表33 <223>ウサギVHヌクレオチド
配列表35 <223>10273 gL2 VLヌクレオチド
配列表36 <223>10273 gL2軽鎖
配列表37 <223>10273 gL2軽鎖ヌクレオチド
配列表39 <223>10273 gL2 VL Q1Rヌクレオチド
配列表40 <223>10273 gL2軽鎖Q1R
配列表41 <223>10273 gL2軽鎖Q1Rヌクレオチド
配列表43 <223>10273 gL2 L Q1Kヌクレオチド
配列表44 <223>10273 gL2軽鎖Q1K
配列表45 <223>10273 gL2軽鎖Q1Kヌクレオチド
配列表47 <223>10273 gL2 VL Q1Hヌクレオチド
配列表48 <223>1027 gL2軽鎖Q1H
配列表49 <223>10273 gL2軽鎖Q1Hヌクレオチド
配列表51 <223>10273 gH1 VHヌクレオチド
配列表52 <223>10273 gH1重鎖
配列表53 <223>10273 gH1重鎖ヌクレオチド
配列表55 <223>10273 gH1 VH D19Nヌクレオチド
配列表56 <223>10273 gH1重鎖D19N
配列表57 <223>10273 gH1重鎖D19Nヌクレオチド
配列表59 <223>10273 gH1 VH D19Eヌクレオチド
配列表60 <223>10273 gH1重鎖D19E
配列表61 <223>10273 gH1重鎖D19Eヌクレオチド
配列表63 <223>10273 gH4 VHヌクレオチド
配列表64 <223>10273 gH4重鎖
配列表65 <223>10273 gH4重鎖ヌクレオチド
配列表67 <223>10273 gH4 VH D19Nヌクレオチド
配列表68 <223>10273 gH4重鎖D19N
配列表69 <223>10273 gH4重鎖D19Nヌクレオチド
配列表71 <223>10273 gH5 VHヌクレオチド
配列表72 <223>10273 gH5重鎖
配列表73 <223>10273 gH5重鎖ヌクレオチド
配列表75 <223>10273 gH5 VH D19Nヌクレオチド
配列表76 <223>10273 gH5重鎖D19N
配列表77 <223>10273 gH5重鎖D19Nヌクレオチド
配列表79 <223>10273 gH8 VHヌクレオチド
配列表80 <223>10273 gH8重鎖
配列表81 <223>10273 gH8重鎖ヌクレオチド
配列表83 <223>10273 gH VH D19Nヌクレオチド
配列表84 <223>10273 gH8重鎖D19N
配列表85 <223>10273 gH8重鎖D19Nヌクレオチド
配列表86 <223>10273 gH10 VHヌクレオチド
配列表87 <223>10273 gH10 VHヌクレオチド
配列表88 <223>10273 gH10重鎖
配列表89 <223>10273 gH10重鎖ヌクレオチド
配列表91 <223>10273 gH10 VH D19Nヌクレオチド
配列表92 <223>10273 gH10重鎖D19N
配列表93 <223>10273 gH10重鎖D19Nヌクレオチド
配列表95 <223>10273 gH11 VHヌクレオチド
配列表96 <223>10273 gH11重鎖
配列表97 <223>10273 gH11重鎖ヌクレオチド
配列表99 <223>10273 gH11 VH D19Nヌクレオチド
配列表100 <223>10273 gH 11重鎖D19N
配列表101 <223>10273 gH 11重鎖D19Nヌクレオチド
配列表103 <223>10273 gH1 VH Y4F D19Nヌクレオチド
配列表104 <223>10273 gH1重鎖Y4F D19N
配列表105 <223>10273 gH1重鎖Y4F D19Nヌクレオチド
配列表107 <223>10273 gH1 VH Y6F D19Nヌクレオチド
配列表108 <223>10273 gH1重鎖Y6F D19N
配列表109 <223>10273 gH1重鎖Y6F D19Nヌクレオチド
配列表111 <223>10273 gH1 VH Y9F D19Nヌクレオチド
配列表112 <223>10273 gH1重鎖Y9F D19N
配列表113 <223>10273 gH1重鎖Y9F D19Nヌクレオチド
配列表115 <223>10273 gH1 VH Y12F D19Nヌクレオチド
配列表116 <223>10273 gH1重鎖Y12F D19N
配列表117 <223>10273 gH1重鎖Y12F D19Nヌクレオチド
配列表119 <223>10273 gH1 VH Y15F D19Nヌクレオチド
配列表120 <223>10273 gH1重鎖Y15F D19N
配列表121 <223>10273 gH1重鎖Y15F D19Nヌクレオチド
配列表123 <223>10273 gH1 VH Y16F D19Nヌクレオチド
配列表124 <223>10273 gH1重鎖Y16F D19N
配列表125 <223>10273 gH1重鎖Y16F D19Nヌクレオチド
配列表126 <223>10273 gH1 VH T14N D19Nヌクレオチド
配列表127 <223>10273 gH1 VH T14N D19Nヌクレオチド
配列表128 <223>10273 gH1重鎖T14N D19N
配列表129 <223>10273 gH1重鎖T14N D19Nヌクレオチド
配列表131 <223>10273 gH1 VH T14V D19Nヌクレオチド
配列表132 <223>10273 gH1重鎖T14V D19N
配列表133 <223>10273 gH1重鎖T14V D19Nヌクレオチド
配列表135 <223>10273 gH1 VH T14S D19Nヌクレオチド
配列表136 <223>10273 gH1重鎖T14S D19N
配列表137 <223>10273 gH1重鎖T14S D19Nヌクレオチド
配列表138 <223>ヒトIGKV1D-13 JK4アクセプターフレームワーク
配列表139 <223>ヒトIGKV1D-13 JK4アクセプターフレームワークヌクレオチド
配列表140 <223>ヒトIGHV3-66 JH6アクセプターフレームワーク
配列表141 <223>ヒトIGHV3-66 JH6アクセプターフレームワークヌクレオチド
配列表142 <223>ヒトKLK5 (シグナル配列を有する全長)
配列表143 <223>ヒトKLK5プロフォーム
配列表144 <223>活性ヒトKLK5
配列表145 <223>ヒトLEKTI D5ウサギFc
配列表146 <223>ヒトKLK7プロフォーム
配列表147 <223>活性ヒトKLK7
配列表148 <223>カニクイザルKLK7プロフォーム
配列表149 <223>活性カニクイザルKLK7
配列表150 <223>活性マウスKLK5
配列表151 <223>活性カニクイザルKLK5
配列表152 <223>ヒトLEKTI D8ウサギFc
配列表153 <223>ウサギ10273 mIgG軽鎖
配列表154 <223>ウサギ10273 mIgG重鎖
配列表155 <223>ウサギ10273 mIgG軽鎖ヌクレオチド
配列表156 <223>ウサギ10273 mIgG重鎖ヌクレオチド
配列表157 <223>ウサギ10236 mIgG軽鎖
配列表158 <223>ウサギ10236 mIgG重鎖
配列表159 <223>ウサギ10236 mIgG軽鎖ヌクレオチド
配列表160 <223>ウサギ10236 mIgG重鎖ヌクレオチド
配列表161 <223>10236軽鎖Fab
配列表162 <223>10236軽鎖Fabヌクレオチド
配列表163 <223>10236重鎖Fab
配列表164 <223>10236重鎖Fabヌクレオチド
配列表165 <223>10273軽鎖Fab
配列表166 <223>10273軽鎖Fabヌクレオチド
配列表167 <223>10273重鎖Fab
配列表168 <223>10273重鎖Fabヌクレオチド
配列表169 <223>ヒトLEKTI D5 Fab H鎖
配列表170 <223>ヒトLEKTI D5 Fab L鎖
配列表171 <223>ウサギ/ヒトキメラ軽鎖(hCK S171C) 10236
配列表172 <223>ウサギ/ヒトキメラ重鎖10236
配列表181 <223>10236ウサギVL
配列表182 <223>10236ウサギVLヌクレオチド
配列表183 <223>10236ウサギVH
配列表184 <223>10236ウサギVHヌクレオチド
配列表185 <223>マウスKLK7プロフォーム
配列表186 <223>活性マウスKLK7
【配列表】
【国際調査報告】