(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】モジュラー培養チャンバおよびウイルス不活化方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230316BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20230316BHJP
C12N 7/04 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/12
C12N7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547087
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2021052481
(87)【国際公開番号】W WO2021156276
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コトン,トマ
(72)【発明者】
【氏名】マルドゥーン,ジョーセフ・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】オーモンド,ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA27
4B029BB01
4B029BB15
4B029CC01
4B029DG08
4B029GB10
4B065AA95X
4B065AC20
4B065BD13
4B065BD14
4B065BD50
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
生成物ストリームの流量および/または滞留時間の柔軟性を提供するために、モジュラー形式で提供され得る培養チャンバが開示される。生体分子の精製のためのこのような培養チャンバを含むアセンブリが開示され、生体分子精製のための方法、および特に1つの培養チャンバまたは直列に配置された複数の培養チャンバにおけるウイルス不活化のための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養チャンバであって、
流体を受容するための入口ポートと、
流体を分注するための出口ポートと、
内部空洞と、
を備える、培養チャンバハウジングと、
前記内部空洞内で、入口ポートおよび出口ポートと流体連通して配置された螺旋コイルと、
を備え、
前記培養チャンバは、第1の輪郭を有する上部外表面と、第2の輪郭を有する底部外表面とを有し、前記上部外表面は、前記第2の輪郭を有する底部外表面を有する培養チャンバと解放可能に嵌合することができ、前記底部外表面は、前記第1の輪郭を有する上部表面を有する培養チャンバと解放可能に嵌合することができる、培養チャンバ。
【請求項2】
前記螺旋コイルは傾斜している、請求項1に記載の培養チャンバ。
【請求項3】
前記螺旋コイルは、第1の方向で前記内部空洞内に配置された第1の領域と、前記第1の方向に略直交する第2の方向で前記内部空洞内に配置された第2の領域とを有する、請求項1に記載の培養チャンバ。
【請求項4】
互いに流体連通するように構成された第1および第2の培養チャンバを備えるモジュラーアセンブリであって、第1の培養チャンバハウジングを備える前記第1の培養チャンバは、
流体を受容するための第1の入口ポートと、
流体を分注するための第1の出口ポートと、
第1の内部空洞と、
前記第1の内部空洞内で、第1の入口ポートおよび第1の出口ポートと流体連通して配置された第1の螺旋コイルと、
を備え、
第2の培養チャンバハウジングを備える第2の培養チャンバは、
流体を受容するための第2の入口ポートと、
流体を分注するための第2の出口ポートと、
第2の内部空洞と、
前記第2の内部空洞内で、第2の入口ポートおよび第2の出口ポートと流体連通して配置された第2の螺旋コイルと、
を備え、
前記第1の培養チャンバは、第1の輪郭を有する上部外表面を有し、前記第2の培養チャンバは、第2の輪郭を有する底部外表面を有し、前記上部外表面は、前記底部外表面と解放可能に相互接続することができる、モジュラーアセンブリ。
【請求項5】
前記第1の螺旋コイルは、前記第1および第2の培養チャンバが相互接続されたときに前記第2の螺旋コイルと流体連通するように構成されている、請求項4に記載のモジュラーアセンブリ。
【請求項6】
標的分子を含有する試料中の1つ以上のウイルスを不活化するための方法であって、方法は、前記標的分子を精製するプロセスの間、試料を連続的に不活化条件に曝しながら、培養チャンバの内部空洞内に配置された螺旋コイルに試料を流すステップを備え、前記培養チャンバは第1の輪郭を有する上部外表面と、第2の輪郭を有する底部外表面とを有し、前記上部外表面は、前記第2の輪郭を有する底部外表面を有する培養チャンバと解放可能に嵌合することができ、前記底部外表面は、前記第1の輪郭を有する上部表面を有する培養チャンバと解放可能に嵌合することができる、方法。
【請求項7】
前記流体試料にタンパク質Aアフィニティクロマトグラフィプロセスを行い、それによって溶出液を取得するステップと、前記溶出液にウイルス不活化剤を導入するステップと、前記螺旋コイルに前記溶出液を連続的に移送し、前記ウイルスを不活化するのに十分な時間にわたって前記溶出液を前記螺旋コイルに流すステップと、をさらに備える、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記流体試料にイオン交換クロマトグラフィプロセスを行い、それによって溶出液を取得するステップと、前記溶出液にウイルス不活化剤を導入するステップと、前記螺旋コイルに前記溶出液を連続的に移送し、前記ウイルスを不活化するのに十分な時間にわたって前記溶出液を前記螺旋コイルに流すステップと、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広範囲の滞留時間および流量を有する流体の培養に関する。より具体的には、培養チャンバおよび流体の培養方法の実施形態は、インラインウイルス不活化を達成し、流体粒子の狭い滞留時間分布(RTD)を作成するように流路が設定されることを保証するのを支援する。
【背景技術】
【0002】
治療用タンパク質、特にモノクローナル抗体の精製を取り巻く大規模生産および経済は、バイオ医薬品業界にとってますます重要な問題となっている。治療用タンパク質は、一般に、対象のタンパク質を生成するように操作されている哺乳動物細胞または細菌細胞のいずれかにおいて生成される。しかしながら、一旦生成されると、対象のタンパク質は、宿主細胞タンパク質(HCP)、内毒素、ウイルス、DNAなどのような様々な不純物から分離される必要がある。
【0003】
典型的な精製プロセスでは、細胞培地収穫物は、細胞破片の除去のための清澄化ステップを受ける。次いで、対象のタンパク質を含有する清澄化された細胞培地収穫物は、アフィニティクロマトグラフィステップまたは陽イオン交換クロマトグラフィステップを含む、1つ以上のクロマトグラフィステップを受ける。治療候補のウイルス安全性を確保し、規制上の要件を満たすために、ウイルス排除単位操作が精製プロセスに組み込まれる。このようなステップは、タンパク質Aおよびイオン交換クロマトグラフィ、濾過、ならびに低pH/化学的不活化を含む。
【0004】
ウイルス不活化は通常、クロマトグラフィステップの後(例えば、アフィニティクロマトグラフィの後または陽イオン交換クロマトグラフィの後)に実行される。典型的な大規模精製プロセスでは、対象のタンパク質を含有するクロマトグラフィ溶出プールは、大きなタンクまたはリザーバに収集され、溶出プール内に存在し得るあらゆるウイルスの完全な不活化を達成するために、約30分~約数時間かかる可能性のある、混合を伴う長期間のウイルス不活化ステップ/プロセスを受ける。
【0005】
モノクローナル抗体(mAb)処理では、例えば、一連の独立した単位操作がバッチモードで行われ、単位操作間で材料を貯蔵し、ステップ間での任意の必要な溶液調整を容易にするために、保持タンクが使用される。典型的に、材料は1つのタンク内に収集され、そこで材料は、目標不活化条件を達成するために調整される。これは、低いpH目標レベルを達成するための酸の添加によるものであってもよく、または洗剤ベースの不活化プロセスにおける洗剤の添加によるものであってもよい。次に、材料は、規定の培養時間にわたって不活化条件に保たれる第2のタンクに移送される。移送の目的は、目標不活化条件に到達しておらず、ウイルス粒子を含有する可能性がある第1のタンクの壁上の液滴のリスクを排除することである。材料を異なるタンクに移送することによって、このリスクが低減される。
【0006】
タンパク質溶液を特定の温度、pH、または放射線に曝露すること、洗浄剤および/または塩などの特定の化学薬品への曝露を含む、いくつかのウイルス不活化技術が当該技術分野で知られている。あるウイルス不活化プロセスは、所定の期間、例えば60分にわたって低pHおよび/または洗浄剤への曝露などの不活化条件で材料が保持される、大きな保持タンクを伴う。この静的保持ステップは、連続処理に向かう際のボトルネックである。
【0007】
しかしながら、ウイルス死滅動態は、不活化時間が変動し得ることを示しており、これは、処理時間を著しく短縮(または増加)することができ、ウイルス不活化のための静的保持タンクを排除することができ、この方法が連続処理により適し得ることを示唆している。
【0008】
近年、単位操作が互いにリンクされ、手動溶液調整が最小限に抑えられた連続プロセスを有することが望まれている。これを容易にするために、インラインウイルス不活化ならびに他のインライン溶液調整を可能にする、インライン処理方法を開発するための努力がなされている。連続または半連続フローシステムでは、連続フローシステムにおいて狭い滞留時間分布を維持する方法を提供することが望ましいであろう。
【0009】
ウイルス不活化の過去の実践は、不活化される液体を低pH溶液(例えば、3.6未満のpH)に導入し、必要であれば均質化し、次いで必要な期間にわたって放置することを含んでいた。次いで、ウイルスを含有する液体の全体積をバルクの低pH流体と固定不動作処理時間にわたって接触させることによって、ウイルス不活化が行われる。
【0010】
連続または半連続処理は、液体に含まれる生成物(タンパク質など)を損傷する可能性のある低pH条件での長い滞留時間なしにウイルスの効果的な不活化を保証するために、ウイルス不活化がノンストップで、かつ最小滞留時間を満たすという文脈において行われることを必要とする。これらの新しいシステムは、滞留時間、流体の流動特性(層流対非層流)、ならびに滞留時間および流動特性を達成するためのシステム/ハードウェア要件の注意深い考察を必要とする。
【0011】
従来のシステムは、流体に対して作用する遠心力を有する螺旋状に巻回されたチューブ内の照射光を使用する連続ウイルス不活化(国際公開第2002/038191号、欧州特許第1339643号明細書、欧州特許第1464342号明細書、欧州特許出願公開第1914202号明細書、および欧州特許出願公開第1916224号明細書)、および巻き数および屈曲角が流れの滞留特性を決定して改善するのに役立つ、コイル軸線の周りの巻き数だけチューブが螺旋状に巻回されたコイルフローインバータ(CFI)(流体はチャンバ管に沿って延びているため、流動粒子の滞留時間の分布につながるチューブ断面に沿った結果的な速度プロファイルのある管壁の特に近くに示されるように、粘性効果によってその粒子のすべてが同じ速度で流れることはない)(国際公開第2015/135844号)を含み、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。これらのシステムは剛性であり、様々なバイオ医薬品製造プロセスにおける様々なウイルス不活化需要の柔軟性を可能にするように設計されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2002/038191号
【特許文献2】欧州特許第1339643号明細書
【特許文献3】欧州特許第1464342号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1914202号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1916224号明細書
【特許文献6】国際公開第2015/135844号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、低pH設定での連続ウイルス不活化において異なる流量および滞留時間を使用する能力を有する流体の最も狭い滞留時間分布(RTD)での予測可能な条件下での均質な混合が、具体的な目的である。広範囲の滞留時間および流量のために構成することができる新しいモジュラー培養チャンバは、当該技術分野における進歩を表す。
【0014】
したがって、連続または半連続フローシステムにおいて、狭い滞留時間分布を維持する方法を提供することが望ましいであろう。生体分子精製用、特にタンパク質精製用の連続または半連続フローシステムの提供が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来技術の問題は、本明細書に開示される実施形態によって対処されており、実施形態は、滞留時間分布の分散を狭めながら生成物ストリームの流量および/または滞留時間の柔軟性を提供するために、モジュラー形式で提供され得る培養チャンバに関するものである。生体分子の精製のためのこのような培養チャンバを含むアセンブリが開示され、生体分子精製のための方法、および特に1つの培養チャンバまたはモジュラー形式で直列に配置された複数の培養チャンバにおけるウイルス不活化のための方法も開示される。
【0016】
特定の実施形態では、培養チャンバが開示され、培養チャンバは、培養チャンバハウジングであって、ハウジングは、流体を受容するための入口ポートと、流体を分注するための出口ポートと、内部空洞とを備える、培養チャンバハウジングと、内部空洞内で、かつ、入口ポートおよび出口ポートと流体連通して配置配置された螺旋コイルと、を備え、培養チャンバは、第1の輪郭を有する上部外表面と、第2の輪郭を有する底部外表面とを有し、上部外表面は、第2の輪郭を有する底部外表面を有する培養チャンバと解放可能に嵌合または相互接続することができ、底部外表面は、第1の輪郭を有する上部表面を有する培養チャンバと解放可能に嵌合または相互接続することができる。
【0017】
特定の実施形態では、培養チャンバは、螺旋またはコイル状チューブを収容する。チャンバは、コイル状チューブの一端と流体連通している入口ポートと、コイル状チューブの他端と流体連通している出口ポートとを有してもよい。各ポートは、閉鎖系を形成するために無菌コネクタによって閉鎖されてもよい。
【0018】
特定の実施形態では、複数の培養チャンバは、垂直に積み重ね可能であり、解放可能に連結可能であってもよい。いくつかの実施形態では、積み重ね可能な培養チャンバは連結可能である。これらは互いに流体連通しているか、または流体連通して配置されてもよく、例えば第1の培養チャンバの出口は、第2の培養チャンバの入口と流体連通しているか、または流体連通して配置されるように構成される。いくつかの実施形態では、第2の培養チャンバの出口は、第3の培養チャンバの入口と流体連通しているか、または流体連通して配置されるように構成される、などとなっている。
【0019】
特定の実施形態では、螺旋コイルは、単一の培養チャンバ内に異なる配向を有する領域を有してもよい。いくつかの実施形態では、螺旋コイルは、単一の培養チャンバ内で垂直に積み重ねられてもよい(すなわち、培養チャンバのベースがx-y平面内にあるz方向に積み重ね可能である)。
【0020】
特定の実施形態では、コイル状チューブは、培養チャンバの専有面積を最小化するために、培養チャンバの内側に編成される。
【0021】
特定の実施形態では、標的分子(例えば、抗体またはタンパク質を含有するFc領域)を含有する流体試料内に存在し得る1つ以上のウイルスを不活化するための方法であって、溶出液を取得するために流体試料に対してクロマトグラフィプロセス(例えば、タンパク質Aクロマトグラフィなどのアフィニティクロマトグラフィ)またはイオン交換クロマトグラフィプロセスを行うステップと、前記溶出液にウイルス不活化剤を導入するステップと、螺旋流路を含む培養チャンバに溶出液を連続的に導入し、ウイルスを不活化するのに十分な時間にわたって溶出液を流路に流すステップと、を備える方法が提供される。特定の実施形態では、クロマトグラフィプロセスは、連続または半連続モードで実行される。アフィニティクロマトグラフィプロセスからの溶出液は、そのpH、導電率、濃度などの勾配のすべてを伴ってシステムに入るカラムからのリアルタイム溶出であってもよく、または均質化の後に不活化を受ける溶出のプールとすることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、異なるプロセスステップは、連続的または半連続的に動作されるように接続される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなウイルス不活化方法は、連続または半連続精製プロセスにおけるプロセスステップを構成し、ここで試料は、例えば、タンパク質Aアフィニティクロマトグラフィステップまたはイオン交換クロマトグラフィステップからウイルス不活化ステップに、そして通常はフロースルー精製プロセスステップであるプロセスの次のステップまで連続的に流れる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ウイルス不活化プロセスステップは、連続的または半連続的に実行され、すなわち、前の結合および溶出クロマトグラフィステップ(例えば、タンパク質Aアフィニティクロマトグラフィ)などの前のプロセスステップからの溶出液は、培養チャンバに含まれる流体流路を用いるウイルス不活化ステップに流入し、その後、いくつかの実施形態では、ウイルス不活化溶出液は、次のプロセスステップが実行されるまで貯蔵容器に収拾されてもよく、またはいくつかの実施形態では、次の下流のプロセスステップに直接連続的に供給されてもよい。
【0024】
本明細書に記載される方法および装置は、連続的または半連続的にウイルス不活化を達成することができ、これは、モジュラー形式によって流量および滞留時間の著しい柔軟性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】特定の実施形態による培養チャンバの斜視図である。
【
図1A】特定の実施形態による、チャンバの内部空洞内に配置された螺旋コイルを有する、開放位置にある培養チャンバベースおよびカバーの斜視図である。
【
図1B】特定の実施形態による、チャンバの内部空洞内に配置された螺旋コイルを有する、開放位置にある培養チャンバベースおよびカバーの別の斜視図である。
【
図1C】特定の実施形態による、チャンバの内部空洞内に配置された螺旋コイルを有する、開放位置にある培養チャンバベースおよびカバーのさらに別の斜視図である。
【
図1D】特定の実施形態による、内部空洞内に配置された螺旋コイルを有する、開放位置にある培養チャンバベースおよびカバーのさらに別の斜視図である。
【
図2】特定の実施形態による螺旋コイルを含む内部チャンバを有する、
図1の培養チャンバの分解図である。
【
図3】特定の実施形態による
図2の培養チャンバの内部チャンバの上面図である。
【
図4】特定の実施形態による培養チャンバの内側に配置するように構成された螺旋コイルの上面図である。
【
図5】特定の実施形態による2層の螺旋コイルを収容する培養チャンバハウジングの斜視図である。
【
図6】特定の実施形態による斜め螺旋コイルの斜視図である。
【
図7】特定の実施形態による内部空洞内の空間を最適に利用する斜め螺旋コイルを有する内部空洞を示す、培養チャンバの上面図である。
【
図8A】可動カート上に組み立てられたモジュラーアセンブリの斜視図である。
【
図8B】可動カート上に組み立てられたモジュラーアセンブリの斜視図である。
【
図9】特定の実施形態による可動カート上のモジュラーアセンブリのさらなる斜視図である。
【
図10】特定の実施形態による積み重ね可能な円筒形のモジュラーアセンブリの概略図である。
【
図11】特定の実施形態による培養チャンバの底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に開示される構成要素、プロセス、およびデバイスのより完全な理解は、添付図面を参照することによって取得することができる。図は、本開示を説明する上での便利さおよび容易さに基づく単なる概略図であり、したがって、そのデバイスまたは構成要素の相対的なサイズおよび寸法を示すこと、および/または例示的な実施形態の範囲を定義または限定することを意図するものではない。
【0027】
明確さのために以下の説明では特定の用語が使用されるが、これらの用語は、図面における説明のために選択された実施形態の、特定の構造のみを指すように意図されており、本開示の範囲を画定または限定するように意図されるものではない。図面および以下の説明では、同様の数字表示は同様の機能の構成要素を指すことを理解すべきである。
【0028】
単数形の「a」、「an」および「the」は、別途明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。
【0029】
本明細書で使用される際に、様々なデバイスおよび部品は、他の構成要素を「備える」と記載されることがある。本明細書で使用される用語「備える(comprise)」、「含む(include)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含む(contain)」、およびこれらの変形は、追加構成要素の可能性を除外しないオープンエンドの移行句、用語、または単語であることを意図している。
【0030】
「ウイルス不活化(virus inactivation)」または「ウイルス不活化(viral inactivation)」という用語は、1つ以上のウイルスがもはや複製できないかまたは不活性となるような方法での、1つ以上のウイルスを含む試料の処理を指す。本明細書に記載される方法では、「ウイルス(virus)」および「ウイルスの(viral)」という用語は、同義に使用され得る。ウイルス不活化は、物理的手段、例えば熱、紫外光、超音波振動によって、または化学的手段、例えばpH変化または化学物質(例えば、洗浄剤)の添加を使用して達成されてもよい。ウイルス不活化は、典型的に、特に哺乳動物由来の発現系から治療用タンパク質を精製する場合に、ほとんどの哺乳動物タンパク質精製プロセス中に使用されるプロセスステップである。本明細書に記載される方法では、ウイルス不活化は、流体流路内で実行される。当該技術分野で既知の標準的なアッセイおよび本明細書に記載されるアッセイで試料中の1つ以上のウイルスを検出することができないということは、1つ以上のウイルス不活化剤を用いた試料の処理に続く、1つ以上のウイルスの完全な不活化を示すことが理解される。本明細書で使用されるウイルス不活化剤は、溶液状態の変化(例えばpH、導電率、温度など)、または試料中の1つ以上のウイルスと相互作用する洗剤、塩、酸(例えば、3.6または3.7のpHを達成するためのモル濃度を有する酢酸)、ポリマー、溶媒、小分子、薬物分子、または任意の他の適切な実体など、もしくはこれらの任意の組み合わせの添加、あるいはウイルス不活化剤への曝露が1つ以上のウイルスを不活性または複製不能にするような物理的手段(例えば、UV光への曝露、振動など)を含んでもよい。特定の実施形態では、ウイルス不活化剤はpH変化であり、ウイルス不活化剤は、例えば静的ミキサ内で標的分子を含有する試料(例えば、タンパク質A結合および溶出クロマトグラフィステップからの溶出液)と混合され、次いで流路に向けられる。
【0031】
本明細書で使用される「連続プロセス」という用語は、1つのプロセスステップからの出力が中断することなくプロセス内の次のプロセスステップに直接流入するような、2つ以上のプロセスステップをその持続時間の少なくとも一部にわたって同時に行うことができる、2つ以上のプロセスステップ(または単位操作)を含む標的分子を精製するためのプロセスを含む。言い換えると、連続プロセスの場合、試料の一部がプロセスステップを通じて常に移動している限り、次のプロセスステップが開始される前にプロセスステップを完了する必要はない。
【0032】
同様に、「半連続プロセス」は、1つ以上の単位操作の、周期的な中断を伴う設定期間にわたって連続モードで実行される動作を包含してもよい。例えば、連続的な捕捉動作中に他の律速ステップの完了を可能にするために、供給物の装填を停止する。
【0033】
ここで
図1~
図4を参照すると、特定の実施形態による培養チャンバ10が見られる。図示される実施形態では、培養チャンバ10は、カバー12およびベース14を有する。カバー12およびベース14は、内部培養チャンバ空洞16(
図2)を囲むために封止関係で嵌合するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、カバー12は、ベース14にヒンジ留めされてもよい。螺旋コイル20の入口端部18aおよび出口端部18bを収容するために培養チャンバ内に、1対の開口部17a、17bが設けられてもよい。図示される実施形態では、開口部(ならびに螺旋コイル20の入口端部18aおよび出口端部18b)は、培養チャンバ10の同じ側に配置されているが、当業者は、入口端部18aおよび出口端部18bが培養チャンバ10の異なる側に位置するように培養チャンバ10内の螺旋コイル20の配置が修正されることができることを理解するだろう。この実施形態における螺旋チューブ20の1つの適切な内径は9.6mmであり、チューブ長は28.08mである。
【0034】
特定の実施形態では、カバー12の上部表面または最上部表面12aは、複数の培養チャンバ10が容易に積み重ね可能で連結可能なように、別の培養チャンバ10’のベース14’の底部表面または面(図示せず)の対応する輪郭と係合するように構成された輪郭を有してもよい。例えば、図示される実施形態では、カバー12は、上部表面または最上部表面12aよりも高さが低い周縁部12bを有する。周縁部12bは、フランジが陥凹内に着座して、2つの培養チャンバ10が積み重ね関係で嵌合または連結することを可能にするように、ベース14’から下方または軸線方向に延在する対応する周辺フランジ14a(
図11)を収容することができる。いくつかの実施形態では、上面および底面のそれぞれの構成は、連結後に互いに容易に取り外すことができるようになっている。
【0035】
ここで
図4に戻ると、培養チャンバ10内での使用に敵した螺旋コイル20の一実施形態が示されている。好ましくは、螺旋コイル20は、ガンマ線滅菌可能な材料で作られる。例えば、シリコーン製の管などの円形プラスチック管が、螺旋コイル20に適している。図示される実施形態では、螺旋コイル20は、培養チャンバ10内の最適な流体流路を可能にするために配置される。この目的のために、螺旋コイルは、「y」方向に配置された第1の領域20aと、第1の領域20aに直交または略直交する「x」方向に配置された第2の領域20bと、第2の領域20bに直交または略直交する(したがって第1の領域20aと平行または略平行な)「x」方向に配置された第3の領域20cと、第3の領域20cに直交または略直交する(したがって第2の領域20bと平行または略平行な)第4の領域20dとを有する。特定の領域は、1つのコイル領域から次のコイル領域に移行するにつれて方向を変えるコイル移行部分を含む。したがって、第1の領域20aは、第1の領域20aから第2の領域20bに移行するコイル移行部分20a’を有し、第2の領域20bは、第2の領域20bから第3の領域20cに移行するコイル移行部分20b’を有し、第3の領域20cは、第3の領域20cから第4の領域20dに移行するコイル移行部分20c’を有する。螺旋コイル20は、入口端部18a、出口端部18b、およびこれらの間の連続的な流体流路を含む。したがって、領域20a、20b、20c、および20dの各々は流体連通しており、連続的な流体流路を画定する。このように構成されたコイルは、
図3に示されるように、培養チャンバ10の内部空洞内にきちんと配置されることができる。
【0036】
螺旋コイル20の巻き数および螺旋コイル20の直径は各々変えることができ、螺旋コイル20によって画定された流路内の試料の所望の滞留時間によって、少なくとも部分的に決定される。適切な設計パラメータは、約15~21巻き、約3.2~9.6mm(1/8’’~3/8’’)のチューブ内径、および40~105mmの巻芯径を含む。好ましくは、最低5巻きある。特定の実施形態では、滞留時間は、ウイルスを不活化させるのに有効なpHでウイルス不活化を可能にするのに十分な時間であるべきである(例えば、少なくとも約30分にわたって3.6の最大pH。当業者は、あまりにも長期間にわたってウイルスを不活化するのに十分な低pHに生成物試料を曝露することで生成物が劣化する可能性があり、したがって本明細書に開示される実施形態は、ウイルス不活化を最適化するために、滞留時間および1つ以上の培養チャンバ10内のコイルを通る流れの容易な調整を可能にすることを理解する。典型的に、流れは、螺旋コイル内では層流であるが(例えば、レイノルズ数<2000)、乱流状態は、培養チャンバ効率に対して悪影響を及ぼさない(システムの他の部分では、流れは乱流であってもよい)。pHは、例えば、サンプリングおよびオフラインセンサを使用して検証することができる。
【0037】
図1Aは、内部空洞を画定する領域が螺旋コイル20によって完全に占有されていない培養チャンバ10の実施形態を示す。図示される実施形態では、螺旋コイル20は、螺旋チューブ20の直線長さを最適化するために、開口部17aおよび17bに最も近い、内部空洞の右下象限に配置される。この実施形態では、適切なチューブIDは4.8mmであり、適切なチューブ長は11.99mである。
【0038】
図1Bは、内部空洞を画定する領域がやはり螺旋コイル20によって完全に占有されていない培養チャンバ10の別の実施形態を示す。図示される実施形態では、螺旋コイル20は、内部空洞の右下および左上象限内に配置されており、右上領域は、螺旋チューブ20の直線長さを最適化するために、開口部17aおよび17bに最も近い。この実施形態では、適切なチューブIDは4.8mmであり、適切なチューブ長は23.99mである。
【0039】
図1Cは、内部空洞を画定する領域が螺旋コイル20によって完全に占有されていない培養チャンバ10のさらに別の実施形態を示す。この実施形態は、培養チャンバ10自体の専有面積がより大きく(例えば、
図1Aの培養チャンバの高さ65mmに対して130mmの高さ)、したがって螺旋チューブ20の内径がより大きいことを除いて、
図1Aの実施形態と同様である。図示される実施形態では、螺旋コイル20は、螺旋チューブ20の直線長さを最適化するために、開口部17aおよび17bに最も近い、内部空洞の右下象限に配置される。この実施形態では、適切なチューブIDは6.4mmであり、適切なチューブ長は20.49mである。
【0040】
図1Dは、内部空洞を画定する領域が、螺旋コイル20によって完全に占有されていない培養チャンバ10のさらに別の実施形態を示す。この実施形態は、培養チャンバ10自体の専有面積がより大きく、したがって螺旋チューブ20の内径がより大きいことを除いて、
図1Bの実施形態と同様である。図示される実施形態では、螺旋コイル20は、螺旋チューブ20の直線長さを最適化するために、開口部17aおよび17bに最も近い、内部空洞の左上象限および右下象限に配置される。この実施形態では、適切なチューブIDは6.4mmであり、適切なチューブ長は40.98mである。
【0041】
特定の実施形態では、複数の培養チャンバは、第1の培養チャンバの出口が第2の培養チャンバの入口に供給されるようにするなど、直列に配置されてもよい。したがって、モジュラーアセンブリを構築することができ(例えば、
図8Aおよび
図8B)、アセンブリに1つ以上の培養チャンバを追加することによって滞留時間および/または流量を増加させるための、またはアセンブリから1つ以上の培養チャンバを取り外すことによって滞留時間および/または流量を減少させるための柔軟性をユーザに提供する。特定の実施形態では、培養チャンバ間の接続は、完全閉鎖系を保証する無菌接続(例えば、ASEPTIQUIK(R)コネクタ)である。モジュラー培養チャンバのアセンブリは、場所から場所に移動可能とし得るカート50などに支持されてもよい(
図8Aおよび
図8B)。カート50は、設定を容易にするためにサイドアクセスを提供することができる。
【0042】
図9に最もよく見られるように、流体接続された培養チャンバのモジュラーアセンブリは、異なるサイズの培養チャンバを含むことができる。例えば、図示される実施形態では、
図1Cの螺旋コイル20構成を有する24個の培養チャンバおよび
図1Dの螺旋コイル20構成を有する12個の培養チャンバがある。
【0043】
あるいは、または追加で、より大きい内径を有する螺旋コイルを有する培養チャンバ10を使用して、より高い流量および/またはより長い滞留時間を達成することができる。同様に、より小さい内径を有する螺旋コイルを有する培養チャンバを使用して、より低い流量および/またはより短い滞留時間を達成することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、モジュラーアセンブリの培養チャンバ内の、すべての螺旋コイル長および/または径(内径)が同じであるモジュラーアセンブリが形成されてもよい。いくつかの実施形態では、アセンブリの1つ以上の培養チャンバ内のすべての螺旋コイル長および/または径がアセンブリの1つ以上の別の培養チャンバ内の螺旋長および/またはコイル径とは異なるモジュラーアセンブリが形成されてもよい。いくつかの実施形態では、モジュラーアセンブリは、複数のうちの少なくとも1つの培養チャンバが複数のうちの別の培養チャンバの螺旋チューブ長の2倍の螺旋チューブ長を有する、流体的に接続された、または接続可能な複数の培養チャンバで形成することができる。
【0045】
したがって、滞留時間および流量の柔軟性は、培養チャンバ10の外形寸法を修正する必要なしに達成される。
【0046】
流量および管長は、特定の滞留時間を目標に選択されてもよい。ウイルス不活化用途では、滞留時間は、好ましくは何らかの安全率で、流路内のウイルス不活化を達成するのに十分な時間として選択されてもよい。例えば、30分の滞留時間がウイルス不活化に十分である実施形態では、設計パラメータは、粒子の大部分が約36分でチャンバを通過し、チャンバ内の最も速い滞留が約32分、最も遅いものが約45分となるように選択することができる。最小滞留時間はまた、ウイルス不活化のための許容可能な安全率に関する規制ガイダンスに依存してもよい。
【0047】
適切な公称滞留時間は、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、および60分を含むが、これらに限定されない。
【0048】
図5に示されるように、いくつかの実施形態では、培養チャンバ10’の内部空洞は十分に深く、例えば、螺旋コイル20の2つ以上の垂直層を収容するのに十分な容積を有する。いくつかの実施形態では、
図8Bに示されるように、このような培養チャンバ10’を培養チャンバ10と併せて使用することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、培養チャンバ10の高さを減少させるために、螺旋コイル20は、
図6に示されるような斜め構成で形成されてもよい。適切なスキュー角は、約30°~約60°の範囲である。これによって培養チャンバの全幅が増加するが、螺旋コイルに培養チャンバ内の内部空間を可能な限り占有させることによって、培養チャンバ10’またはチャンバの専有面積を最小化することができる。斜め螺旋コイルの1つの適切な配置が
図7に示されている。
【0050】
さらなる実施形態では、培養チャンバ10は、螺旋コイル流路が円筒形のコアの周りに巻き付けられた、円筒の形態であってもよい。このような円筒は、
図10に示されるように積み重ね可能であってもよく、
図1のカセット状の実施形態と同様に直列に配置されてもよい。
【国際調査報告】