(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法、光学機器の製造方法、及び光学機器
(51)【国際特許分類】
C03C 27/04 20060101AFI20230316BHJP
C04B 37/04 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C03C27/04 B
C04B37/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561159
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2021058894
(87)【国際公開番号】W WO2021204776
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】102020109968.1
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513155138
【氏名又は名称】イェノプティック オプティカル システムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】グイード ヘルゲンハン
【テーマコード(参考)】
4G026
4G061
【Fターム(参考)】
4G026BA01
4G026BB33
4G026BF11
4G026BG02
4G026BH13
4G061AA06
4G061BA12
4G061CB13
4G061CD02
4G061CD16
4G061DA35
(57)【要約】
【課題】ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法、光学機器の製造方法、及び光学機器を提供する。
【解決手段】本発明は、ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法(400)に関し、ガラス素子は第一の膨張率を有し、支持要素は第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有する。この方法(400)はそれゆえ、中間ガラス材料を支持要素に取り付けるステップ(405)を含み、中間ガラス材料は第二の膨張率に実質的に対応する第三の膨張率を有する。追加的に、この方法(400)は、中間ガラス材料を局所的に加熱して、ガラス素子を中間ガラス材料を介して支持要素に接合するステップ(410)を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス素子(105)を支持要素(100)に熱的に安定に接合する方法(400)であって、前記ガラス素子(105)は第一の膨張率を有し、前記支持要素(100)は前記第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有し、前記方法(400)は、
中間ガラス材料(600)を前記支持要素(100)に取り付けるステップ(405)であって、前記中間ガラス材料(600)は、前記第二の膨張率に実質的に対応する第三の膨張率を有するステップと、
前記中間ガラス材料(600)を局所的に加熱して、前記ガラス素子(105)を、前記中間ガラス材料(600)を介して前記支持要素(100)に接合するステップ(410)と、
を含む方法(400)。
【請求項2】
前記取付けステップ(405)中に、前記中間ガラス材料(600)は、中間層を用いずに前記支持要素(100)に直接固定される、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項3】
前記取付けステップ(405)中に、前記中間ガラス材料(600)は円盤状の形状である、請求項1又は2に記載の方法(400)。
【請求項4】
前記局所的加熱ステップ(410)の前に、前記中間ガラス材料(600)の厚さを薄くするステップ(505)を有する、請求項1~3のいすれか1項に記載の方法(400)。
【請求項5】
前記取付けステップ(405)中に、前記中間ガラス材料(600)が加熱されて前記中間ガラス材料(600)は前記支持要素(100)に接合され、前記取付けステップ(405)は前記局所的加熱ステップ(410)の前に実行される、請求項1~4のいすれか1項に記載の方法(400)。
【請求項6】
前記支持要素(100)にはんだ(610)を付加して、前記中間ガラス材料(600)を前記支持要素(100)に前記はんだによって取り付けるステップ(500)を有する、請求項1~5のいすれか1項に記載の方法(400)。
【請求項7】
前記局所的加熱ステップ(410)中に、前記ガラス素子(105)と前記中間ガラス材料(600)はパルスレーザビーム(805)を使って加熱される、請求項1~6のいすれか1項に記載の方法(400)。
【請求項8】
前記局所的加熱ステップ(410)中に、前記レーザビーム(805)はナノ秒、ピコ秒又はフェムト秒の範囲の短パルスで提供される、請求項7に記載の方法(400)。
【請求項9】
前記取付けステップ(405)中に、前記中間ガラス材料(600)は前記支持要素(100)の凹部(605)の周囲にリング状に取り付けられる、請求項1~8のいすれか1項に記載の方法(400)。
【請求項10】
支持要素(100)とガラス素子(105)とを提供するステップ(905)であって、前記ガラス素子(105)は第一の膨張率を有し、前記支持要素(100)は前記第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有するステップ(905)と、
ガラス素子(105)を支持要素(100)に熱的に安定に接合する、請求項1~8に記載の方法(400)の前記ステップ(405、410)を実行している間に、前記ガラス素子(105)を前記支持要素(100)に接合するステップ(910)と、
を含む、光学機器(800)の製造方法(900)。
【請求項11】
前記支持要素(100)はセラミック及び/又は金属から形成される、請求項10に記載の方法(900)。
【請求項12】
前記ガラス素子(105)の前記第一の膨張率は0.5×10
-6K
-1未満であり、及び/又は前記中間ガラス材料(600)の前記第三の膨張率は2×10
-6K
-1~4×10
-6K
-1の範囲内である、請求項10又は11に記載の方法(900)。
【請求項13】
前記支持要素(100)は凹部(605)を有する形状であり、前記凹部(605)は前記接合ステップ(910)中に前記ガラス素子(105)により覆われる、請求項10~12のいすれか1項に記載の方法(900)。
【請求項14】
支持要素(100)とガラス素子(105)とを有する光学機器(800)であって、前記ガラス素子(105)は第一の膨張率を有し、前記支持要素(100)は前記第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有し、前記支持要素(100)は、前記ガラス素子(105)により覆われているか又は覆われることが可能な凹部(605)を有する形状であり、前記支持要素(100)と前記ガラス素子(105)とは、前記凹部(605)の上に配置された中間ガラス材料(600)により接合され、前記中間ガラス材料(600)は前記第二の膨張率に実質的に対応する第三の膨張率を有する光学機器(800)。
【請求項15】
中間ガラス材料としての、ホウケイ酸ガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本研究は、ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法、光学機器の製造方法、及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)では、同程度の膨張率を有する材料を接着剤、はんだ、又は溶接により接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2016 213 561 A1号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この背景に鑑み、本研究では特許請求の範囲の主請求項に記載のガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法、光学機器の製造方法、及び光学機器を提示する。有利な設計は、それぞれの従属項及び以下の説明からわかる。
【0005】
例えば半導体用露光装置等での作業のためには、セラミックの支持体に強固に接合される平滑なガラス表面が必要である。それと同時に、コンポーネントはその加工、製造、及びその輸送中に温度変化にさらされ得る。本願で提示される方式により、ガラスとセラミックとの接着剤を用いない強固な接合が可能となり得、これはプロセスに関する、又は輸送に関する温度上昇を経た後であっても室温で平滑な表面を有し得る。
【0006】
ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法が提示され、ガラス素子は第一の膨張率を有し、支持要素は第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有する。この方法はそれゆえ、中間ガラス材料を支持要素に取り付けるステップを含み、中間ガラス材料は第二の膨張率に実質的に対応する第三の膨張率を有する。追加的に、この方法は、ガラス素子を中間ガラス材料を介して支持体に接合するために、中間ガラス材料を局所的に加熱するステップを含む。
【0007】
例えば、ガラス素子はチタンドープ石英ガラスであり得、これは例えば約20重量%未満のTiO2部を有し得る。これは例えば、いわゆる超低膨張ガラス(ULE(Ultra Low Expansion)ガラス)に当てはまる。このようなガラス素子又はそれと類似の物質は例えば、0+/-3×10-8K-1の膨張率を有し得て、他方で支持要素は例えば、3×10-6K-1の第二の膨張率を有し得る。支持要素は例えば、セラミック支持体又は金属支持体であり得る。支持要素のその他の材料は例えば、シリコン、ゲルマニウム、サファイヤ、又は石英等の単結晶又は多結晶固体であり得る。
【0008】
支持要素へのガラス素子の接着剤又ははんだ等による直接接合及びそれに伴う温度変化中、支持要素は温度に応じて膨張する可能性があり、他方でガラス素子はほとんど変化しないままである可能性がある。したがって、ガラス素子の表面に凹凸が生じる可能性がある。本願で提示する方法によれば、有利な点として、ガラス素子が支持要素に接着剤を用いずに、中間ガラス材料によって接合され得るという点で、このような凹凸が回避され得る。残念ながら、特にSiSiCセラミックは、黒鉛生成のため、ULEガラスに直接溶接することができない。
【0009】
この理由により、例えばホウケイ酸ガラス等の中間ガラス材料が第一のステップで支持要素に例えば溶接又ははんだにより接合され得る。中間ガラス材料は、ガラス1とも呼び得るが、支持要素の第二の膨張率と同程度の第三の膨張率を有するため、例えば溶接中の温度変化により、それには支持要素と同様の応力変化が生じ得る。例えば20℃の室温までの一般的な冷却の場合、中間ガラス材料は支持要素の上に平坦な表面を形成し得る。例えば、中間ガラス材料と支持要素は同じ膨張率を有し得るか、又は中間ガラス材料と支持要素の膨張率はわずかに異なり得て、例えばそれらの差は5%未満、10%未満、15%未満、又は20%未満であり得る。
【0010】
第二のステップで、ガラス素子は、ガラス2とも呼び得るが、中間ガラス材料に選択的熱接合法、例えば選択的レーザ溶接により接合され得る。したがって、ガラス素子と中間ガラス材料はレーザにより同時に加熱され、そのようにしてガラス素子と中間ガラス材料は相互に接合される。中間ガラス材料と支持要素は、例えば溶接又ははんだ等の接合のために全体的プロセスによって事前に強固に接合されている。それゆえ、ガラス素子は支持要素に局所的加熱によって接合され、それゆえ、支持要素に中間ガラス材料を介して間接的にのみ接合される。ガラス素子を中間ガラス材料に接合している間、1つの実施形態によれば、支持要素の温度は室温のままであり、これは、そうでなければ室温まで冷却する間に歪曲が生じ得るからである。したがって、レーザ溶接の使用は、この方法を使用することで溶接プロセスのために局所的に十分な温度上昇が容易に得られ、それと同時にレーザの超短パルスによって支持要素の温度がほとんど一定であることから、特に有益である。
【0011】
その結果、提示される方法により機能的ガラス素子を金属本体又はセラミック本体に中間ガラス層によって接合し得て、機能的ガラス素子と金属本体又はセラミック本体は異なる膨張率を有する。はんだ接合部と溶接接合部を介して、又は2つの溶接接合部を介して実現される接合により、温度上昇の際のコンポーネントの相互に関する変位もまた最小限にされ得る。
【0012】
一例によれば、取付けステップ中、中間ガラス材料は中間層を用いずに支持要素に直接固定され得る。例えば、中間ガラス材料、例えばホウケイ酸ガラスは、例えば接着剤等の添加物を使用せずに支持要素に接合され得る。1つの実施形態によれば、ホウケイ酸ガラスを含むコンポーネント全体が適切な接合温度まで加熱され、その後冷却され得る。中間ガラス材料はそれゆえ、中間ガラス材料及び支持要素の膨張率が溶接温度と室温との間の温度差に対してできるだけ等しくなるように選択すべきである。その例は、ホウケイ酸ガラス及びSiSiCセラミック、アンバ及び石英ガラス若しくはコバール及びいわゆるイエナインストルメントガラス、又は同等の特性を有するガラス若しくはその他の材料の組合せであろう。中間ガラス材料と支持要素はそれゆえ、有利な点として、費用効果が高い方法で、それと同時に一体的に接合され得る。このようにして支持要素とガラス素子との間の接着剤の使用は、例えば100℃までの中程度の加熱中に軟化しない接合部に置き換えられ得る。
【0013】
別の例によれば、取付けステップ中、中間ガラス材料は円盤のような形状とされ得る。例えば、中間ガラス材料はガラス盤の形状とされ、支持要素の表面上に設置され、その後、支持要素に例えば溶接又ははんだ付けされ得る。有利な点として、このようなガラス盤は費用効果の高い方法で製造、保管され得る。
【0014】
別の例によれば、方法は、局所的加熱のステップの前に中間ガラス材料の厚さを薄くするステップを含み得る。例えば、中間ガラス材料は、取付けステップの後に例えば、例えば約100μmの薄層まで摩耗させることによって薄くされ得て、それによってガラス薄層を有する支持要素が得られ得る。薄層とは約10~200μmの層を意味すると理解され得るが、これは常に使用される具体的な材料及びその特性に依存し得る。中間ガラス材料の厚さを薄くする前の凹凸はそれゆえ、最大で例えば1mmの大きさであり得る。有利な点として、堆積されるガラスの数マイクロメートルまで、例えば0.1μmまでの範囲の表面残留歪曲もまた、薄層化中の研削及び研磨プロセスにより排除され得る。
【0015】
別の例によれば、取付けステップ中、中間ガラス材料を加熱して中間ガラス材料を支持要素に接合し得て、取付けステップは局所的加熱ステップの前に実行され得る。例えば、中間ガラス材料がガラスはんだとして使用され得て、それが温度上昇の過程で支持要素との一体的接合を実現し得る。有利な点として、取付けステップはそれゆえ、時間及び費用の点で有利に実行され得る。
【0016】
別の実施形態によれば、方法は、はんだを支持要素に追加して中間ガラス材料を支持要素にはんだによって取り付ける追加的ステップを有し得る。例えば、中間ガラス材料より低い融点を有する金属はんだ又はガラスはんだが支持要素と中間ガラス材料との間に配置され得る。はんだの加熱中、これは支持要素と中間ガラス材料とを接合するように作用し得る。このようにして、支持要素及び中間ガラス材料の膨張率の調整が容易となり得、それによって接合プロセスに必要な温度が低くなり得る。
【0017】
別の例によれば、局所的加熱ステップ中、ガラス素子と中間ガラス材料はパルスレーザビームを使って加熱され得る。ガラス素子の中間ガラス材料への接合は、例えば短パルスによるレーザ溶接で行われ得る。これには、加熱がごく局所的にのみ行われ、例えば溶接若しくははんだ又は接着剤テンパリング中等にコンポーネント全体が加熱されることが回避され得るという利点がある。
【0018】
別の例によれば、局所的加熱ステップ中、レーザビームはナノ秒又はピコ秒又はフェムト秒の範囲の短パルスで提供され得る。例えば、パルスは、ガラス素子及び中間ガラス材料の素材並びにそれらのパラメータに応じて、ナノ秒範囲内にあり得るだけでなく、ピコ秒及びフェムト秒範囲内にもあり得る。有利な点として、局所的加熱期間はそれゆえ、加熱ステップ中に支持要素が同様に加熱されるのが防止される。
【0019】
別の例によれば、取付けステップ中、中間ガラス材料は支持要素の凹部の周囲にリング状に取り付けられ得る。例えば、支持要素は光を通過させるための凹部を有し得る。凹部は、光透過ガラス素子により覆われ得る。例えば、中間ガラス材料は、リング状円盤の形態で提供され、取り付けられ得る。中間ガラス材料を凹部の周囲に取り付けることには、ガラス素子が凹部の周囲に均一に固定され得るという利点がある。
【0020】
この方法は、本発明によれば、この方法の前述のステップを実行し、追加的又は代替的にこれらを制御するために備えられたコンピュータプログラムを有する制御ユニットにより補足され得る。この制御ユニットは機械可読記憶媒体を含み得て、その上にコンピュータプログラムが記憶される。
【0021】
追加的に、光学機器の製造方法が提示され、この方法は、支持要素及びガラス素子を提供するステップを含み、ガラス素子は第一の膨張率を有し、支持要素は第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有する。追加的に、この方法は、ガラス素子を支持要素に接合するステップを含み、その間に前述のガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法の1つの形態のステップが実行される。有利な点として、例えば輸送中に温度変化が生じたとしても室温で平滑な表面を有する光学機器が、このような製造方法によって製造され得る。光学機器の製造方法を実行するために、例えば個々のステップを制御するための1つ又は複数の制御手段が使用され得る。ここで、例えば制御手段は個々のコンポーネントの、接着剤を用いない、例えば溶接又ははんだによる接合を制御し得て、他方で別の制御手段が、例えば組立後の中間ガラス材料とガラス素子との間の、例えばレーザ溶接による選択的熱接合を実現し得る。追加的に、研削及び研磨装置が、中間ガラス材料の表面の、はんだ付けされたガラスの数マイクロメートルまでの範囲の残留歪曲が加工され得るように位置付けられ得る。
【0022】
一例によれば、支持要素はセラミックから、及び追加的又は代替的に金属から成形され得る。有利な点として、支持要素はセラミック又は金属から特に費用効果の高い方法で製造できる。
【0023】
別の例によれば、ガラス素子の第一の膨張率は0.6×10-6K-1未満であり得、追加的又は代替的に中間ガラス材料の第三の膨張率は2×10-6K-1~4×10-6K-1の範囲にあり得る。例えば、ガラス素子にはまた、温度変化があっても、極めてわずかな膨張しか生じない可能性があり、それによって有利な点として、これは光学機器において、例えば精密測定技術、宇宙旅行及び衛星技術において、レーザ共鳴器において、又はEUVセンサモジュールにおいて使用され得る。それと同時に、例えばホウケイ酸ガラスであり得る中間ガラス材料の膨張率は例えば3.3×10-6K-1であり得る。支持要素の第二の膨張率はそれゆえ、中間ガラス材料と同程度の、例えば3.5×10-6K-1の膨張率を有し得る。有利な点として、支持要素及び中間ガラス材料はそれゆえ、取付けステップ中に温度が上昇したときに同様に膨張し、それによって組立後のコンポーネント上の応力と凹凸が最小化され得る。
【0024】
別の例によれば、支持要素は凹部を有するような形状とされ得て、この凹部は接合ステップ中にガラス素子により覆われ得る。例えば、中間ガラス材料はそれゆえ、凹部の周囲にリング状に配置され得て、それによってガラス素子は支持要素上に特に均一に固定され得る。有利な点として、このような凹部は例えば光源と組み合わせられ得て、その光ビームがガラス素子を通じて案内され得る。
【0025】
追加的に、支持要素とガラス素子を有する光学機器が提示され、ガラス素子は第一の膨張率を有し、支持要素は第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有し、支持要素は、ガラス素子により覆われる、又は覆われることが可能な凹部を有する形状とされ、支持要素とガラス素子は凹部の上に配置された中間ガラス材料により接合され、中間ガラス材料は第二の膨張率に実質的に対応する第三の膨張率を有する。ガラス素子はそれゆえ、固体に取り付けられ得て、それによって温度上昇及びその後の冷却を経ても歪まない。有利な点として、このような光学機器は、例えば極紫外放射を検知するためのセンサモジュールであるEUVセンサモジュール等のセンサモジュール又はその他の高精度光学モジュールにおいて使用され得る。このようなコンポーネントユニットはその中で、歪曲を生じさせずに必要な特性を保証するために必要とされる。
【0026】
追加的に、ホウケイ酸ガラスの中間材料としての新規な使用が提示される。例えばホウケイ酸ガラスは、支持要素をガラス素子に接合するための中間ガラス材料として使用され得る。ホウケイ酸ガラスは、ガラスはんだと同様に、支持要素ともガラス素子とも一体に接合され得る。有利な点として、ホウケイ酸ガラスを中間ガラス材料として使用する場合、例えば接着剤等の追加的な接合層が省かれ得る。
【0027】
ここで、提示される方式の例が下記の図面中に示されており、以下の説明文の中でより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】室温での、ガラス素子が接着された支持要素の例の概略図を示す。
【
図2】上昇した温度での、ガラス素子が接着された支持要素の例の概略図を示す。
【
図3】冷却後の、ガラス素子が接着された支持要素の例の概略図を示す。
【
図4】ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法の例のフロー図を示す。
【
図5】ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法の例のフロー図を示す。
【
図6】中間ガラス材料が取り付けられた支持要素の例の概略断面図を示す。
【
図7】中間ガラス材料が薄層化された支持要素の例の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好ましい例に関する以下の説明において、異なる図面に示される同様の動作を有する要素には同じ又は同様の参照番号が使用され、これらの要素の繰返しの説明は省かれている。
【0030】
図1は、あくまでも例として20℃の室温での、ガラス素子105が接着された支持要素100の例の概略図を示す。あくまでも例として、支持要素100は第二の膨張率3.0×10
-6K
-1を有するケイ素含浸炭化ケイ素(SiSiC)で製作されたセラミック支持体である。例としてチタンドープ石英ガラスで製作され、この例では約0K
-1の第一の膨張率を有する円盤状ガラス素子105が支持要素100に、あくまでも例として接着剤110により接着されている。ガラス素子105はそれゆえ、ここで示される図では支持要素100に平行な平滑表面を形成する。
【0031】
図2は、上昇した温度での、ガラス素子105が接着された支持要素100の例の概略図を示す。ここに示される支持要素100及びガラス素子105は、前の
図1について説明した支持要素及びガラス素子に対応するか、又はそれらと同様である。ここに示される図において、支持要素100とガラス素子の両方があくまでも例として80℃まで加熱されて、それらの間に配置された、ボンドとも呼ばれ得る接着剤110がテンパリングされる。それゆえ、支持要素100のセラミックは膨張するが、ガラス素子105は膨張しない。それに対応する膨張202が
図2に概略的に示されている。接着剤110が軟化し、ガラス素子105と支持要素100との間の相対変位が可能となる。
【0032】
図3は、室温まで冷却した後の、ガラス素子105が接着された支持要素100の例の概略図を示す。ここに示される支持要素100及びガラス素子105は、前の
図1及び2について説明した支持要素及びガラス素子に対応するか、又はそれらと同様であるが、前の
図2について説明した加熱によって、ここに示される支持要素100及びガラス素子105はわずかに変形している。接着剤110は、あくまでも例として約50℃~60℃の間の接着剤110のガラス転移温度未満で強固な接合部を形成する。セラミック支持体は冷却中に再び収縮するが、ガラス素子105は収縮しない。したがって、ここに示されるガラス素子105はバイメタル効果により歪曲している。換言すれば、接着剤110は、接合相手同士が異なる膨張率を有する場合に、ガラス転移温度より高温で接合相手同士の変位によって熱的に誘導された応力を生じさせ、冷却後にこれらを変位した、したがって不適正な、又は正しくない位置にいわば凍結させる。
【0033】
他の例において、同様の応力又は凹凸がはんだによっても生じ得る。はんだ付け中、コンポーネント全体が典型的にははんだ温度まで加熱される。室温まで冷却している間に、はんだの固化温度で接合位置が固定され、それによって、はんだ付けされた部品の膨張率が異なる場合に、冷却により熱的に誘導された応力が生じ、これが表面の歪曲につながる。この効果は接着剤と同等であり、はんだの固化温度は接着剤のガラス転移温度に対応する。はんだの融点は、固体から液体への転移により明確に定められる。接着剤は液体にならないか、又ははんだとの比較において、実際に固体とならない。接着剤はアモルファスであり、それゆえ、その粘性が変化するだけのサブクール状態の液体である。室温でのはんだと接着剤との違いは、はんだ中には、初期状態であっても、接合相手同士が応力を生じずに、したがって平滑且つ強固に相互に接合されないことである。
【0034】
図4は、前の
図1~3について説明したような、ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法400の例のフロー図を示し、ガラス素子は第一の膨張率を有し、支持要素は第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有する。
【0035】
方法400は、中間ガラス材料を支持要素に取り付けるステップ405を含み、中間ガラス材料は、第二の膨張率に実質的に対応する第三の膨張率を有する。中間ガラス材料は、例えば粉末形態で例えば1つの塊で、又は複数の塊で堆積される。この例では、取付けステップ405中、あくまでも例として中間ガラス材料は支持要素の凹部の周囲にリング状に取り付けられ、中間層を用いずに支持要素に直接固定される。それゆえ、あくまでも例としてホウケイ酸ガラスが中間層又は添加物を使用せずにセラミック支持体に溶接される。他の例では、中間ガラス材料は支持要素にはんだによってはんだ付けされる。
【0036】
1つの例によれば、中間ガラス材料の全体と、任意選択により支持要素もまた接合温度まで加熱され、これによって中間ガラス材料と支持要素との間に、例えば中間ガラス材料が少なくとも支持要素上に載る1つの表面において溶融するという点で一体的接合を実現しやすくなる。その後、コンポーネントが冷却されて、中間ガラス材料が支持要素に永久的に接合される。
【0037】
1つの例において、取付けステップ405の後に、中間ガラス材料及びガラス素子を局所的に加熱するステップ410が続き、ガラス素子が中間ガラス材料に接合され、それによってガラス素子の支持要素への接合が間接的に行われる。ガラス素子はそれゆえ、あくまでも例としてそこに溶接されたホウケイ酸ガラスと機械的に接触し、2つのガラスの強固な接合が例えば超短パルスレーザによる選択的溶接によって実現される。このように使用されるレーザビームは、あくまでも例として例えば10ナノ秒の持続時間の短パルスに設定されて、中間ガラス材料とガラス素子を局所的に加熱する。他の例において、短パルスはまた、ピコ秒又はフェムト秒の範囲でも提供される。短パルスの使用により、加熱を極めて局所的にのみ実行することが可能となり、通常の溶接若しくははんだ又は接着剤テンパリングのようにコンポーネント全体が加熱されることはない。しかしながら、代替的に非パルスレーザビームもまた中間ガラス材料の加熱に使用され得る。
【0038】
図5は、ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法400の例のフロー図を示す。ここに示される方法400は、前の
図4について説明した方法に対応し、又はそれと同様であるが、追加のステップを有する点が異なる。したがって、この例において、はんだを支持要素に付加するステップ500が取付けステップ405に先行する。あくまでも例として、付加するステップ500では金属はんだが支持要素の上に配置され、この例では円盤の形状の中間ガラス材料が金属はんだの上に設置される。その後の取付けステップ405で、支持要素は金属はんだ及び中間ガラス材料と共に加熱されて、中間ガラス材料が支持要素にはんだによって取り付けられる。中間ガラス材料はそれゆえ、ガラスの、及び支持要素のセラミックの膨張率が、はんだの固化温度と室温との温度差に対してできるだけ等しくなるように選択される。この例では、取付けステップ405の後に、中間ガラス材料の厚さを薄くする追加のステップ505が続く。あくまでも例として、円盤状の中間ガラス材料がそれゆえ、研削及び研磨される。それゆえ、はんだ付けされた中間ガラス材料の表面に残る歪曲は、この研削及び研磨プロセスによって、あくまでも例として最大20μmの範囲で除去される。それゆえ、中間ガラス材料と支持要素との間の熱的に誘導される中程度の機械的応力について言及される。この例では、前の
図4で説明したように、薄層化ステップ505の後にのみ局所的加熱ステップ410が行われる。
【0039】
図6は、中間ガラス材料600が取り付けられた支持要素100の例の概略断面図を示す。ここに示される支持要素100は前の各図において説明した支持要素に対応し、又はそれらと同様である。この例では、支持要素100はあくまでも例としてセラミック支持体として構成され、凹部605を有し、その周囲にあくまでも例としてリング状の設計のホウケイ酸ガラスが中間ガラス材料600として配置される。中間ガラス材料600は、あくまでも例として150μmの厚さであり、この例においてはガラスはんだ610によって支持要素100に接合される。他の例では、この接合部はまた、金属はんだによっても、又は溶接プロセスによる中間層が全くなくても生成され得る。
【0040】
図7は、中間ガラス材料600が薄くされた支持要素100の例の概略断面図を示す。ここに示される支持要素100は前の各図において説明した支持要素に対応し、又はそれらと同様であり、ここに示される中間ガラス材料600は前の
図4~6において説明した中間ガラス材料に対応し、又はそれらと同様である。この例では、中間ガラス材料600は、例えば
図6に示される状態から始まって、例えば100μmの厚さまで薄くされており、それによってこれは支持要素100の上に特に薄く平坦なガラス層が形成される。他の例では、中間ガラス材料の層の厚さは約10~200μmであり得るが、これは常に具体的な材料とその特性に依存する。
【0041】
1つの例によれば、中間ガラス材料600の層の厚さを薄くすることは適当な薄層化方法によって実行され、それによって中間ガラス材料600の平坦な表面が生成される。ガラス素子は、例えば
図8に示されるように、支持要素100と反対に面するこの平坦な表面上に設置できる。
【0042】
図8は、光学機器800の例の概略断面図を示す。この例の光学機器800は、前の各図において説明したような支持要素100と、前の
図1~5について説明したようなガラス素子105を含む。ガラス素子105は、前の
図4~7において説明したように、中間ガラス材料600を介して支持要素に接合される。この接合部を固化させるために、1つの例では、短パルスを使って中間ガラス材料600を局所的に加熱するレーザビーム805が使用される。あくまでも例として、レーザビーム805の短パルスの持続時間は20ピコ秒である。他の例では、短パルスは、使用される材料とそのパラメータに応じて、ナノ秒範囲又は秒範囲でもあり得る。この例において、中間ガラス材料600内に溶接の気泡810が生成される可能性があり、それによってガラス素子105と中間ガラス材料600との一体的な接合を、UKPレーザとも呼ばれ得るレーザビーム805によって生成できる。
【0043】
1つの例によれば、レーザビーム805は中間ガラス材料600の表面の全体又は一部にわたって案内されて、中間ガラス材料600がガラス素子105に確実に接合される。例えば、溶接気泡810の中に見えるように、一連の溶接点が設定される。必ずしも表面全体が溶接されるとはかぎらない。表面上に分散された特定の数の溶接点を設定すれば十分である。
【0044】
1つの例によれば、光学機器800はEUVセンサモジュールである。例えば、支持要素100はそれゆえ、ガラス素子105を通過する極紫外放射を記録するセンサ820のハウジングを形成する。
【0045】
図9は、前の
図8において説明したような光学機器の製造方法900の例のフロー図を示す。方法900は、支持要素とガラス素子を提供するステップ905を含み、ガラス素子はあくまでも例として0.4×10
-6K
-1の第一の膨張率を有し、支持要素は第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有する。あくまでも例として、この例の支持要素はセラミックから形成され、その膨張率は例えば3×10
-6K
-1である。代替的に、支持要素はまた、金属から、又は両方の材料の組合せからも構成され得る。次に、この例では、ガラス素子を支持要素に接合するステップ910が、提供ステップ905に続く。接合ステップ910は、前の
図4において説明したような、ガラス素子を支持要素に熱的に安定に接合する方法のサブステップ405及び410を含む。あくまでも例として、支持要素に形成された凹部は、ガラス素子により覆われる。
【符号の説明】
【0046】
100 支持要素
105 ガラス素子
110 接着剤
405 取付けステップ
410 局所的加熱ステップ
505 薄層化ステップ
600 中間ガラス材料
605 凹部
610 はんだ
800 光学機器
805 レーザビーム
810 気泡
820 センサ
905 提供ステップ
910 接合ステップ
【手続補正書】
【提出日】2022-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス素子(105)を支持要素(100)に熱的に安定に接合する方法(400)であって、前記ガラス素子(105)は第一の膨張率を有し、前記支持要素(100)は前記第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有し、前記方法(400)は、
中間ガラス材料(600)を前記支持要素(100)に取り付けるステップ(405)であって、前記中間ガラス材料(600)は、前記第二の膨張率に実質的に対応する第三の膨張率を有するステップと、
前記中間ガラス材料(600)を局所的に加熱して、前記ガラス素子(105)を、前記中間ガラス材料(600)を介して前記支持要素(100)に接合するステップ(410)と、
を含む方法(400)。
【請求項2】
前記取付けステップ(405)中に、前記中間ガラス材料(600)は、中間層を用いずに前記支持要素(100)に直接固定される、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項3】
前記取付けステップ(405)中に、前記中間ガラス材料(600)は円盤状の形状である、請求項1又は2に記載の方法(400)。
【請求項4】
前記局所的加熱ステップ(410)の前に、前記中間ガラス材料(600)の厚さを薄くするステップ(505)を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(400)。
【請求項5】
前記取付けステップ(405)中に、前記中間ガラス材料(600)が加熱されて前記中間ガラス材料(600)は前記支持要素(100)に接合され、前記取付けステップ(405)は前記局所的加熱ステップ(410)の前に実行される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法(400)。
【請求項6】
前記支持要素(100)にはんだ(610)を付加して、前記中間ガラス材料(600)を前記支持要素(100)に前記はんだによって取り付けるステップ(500)を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法(400)。
【請求項7】
前記局所的加熱ステップ(410)中に、前記ガラス素子(105)と前記中間ガラス材料(600)はパルスレーザビーム(805)を使って加熱される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法(400)。
【請求項8】
前記局所的加熱ステップ(410)中に、前記レーザビーム(805)はナノ秒、ピコ秒又はフェムト秒の範囲の短パルスで提供される、請求項7に記載の方法(400)。
【請求項9】
前記取付けステップ(405)中に、前記中間ガラス材料(600)は前記支持要素(100)の凹部(605)の周囲にリング状に取り付けられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法(400)。
【請求項10】
支持要素(100)とガラス素子(105)とを提供するステップ(905)であって、前記ガラス素子(105)は第一の膨張率を有し、前記支持要素(100)は前記第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有するステップ(905)と、
ガラス素子(105)を支持要素(100)に熱的に安定に接合する、請求項1~8に記載の方法(400)の前記ステップ(405、410)を実行している間に、前記ガラス素子(105)を前記支持要素(100)に接合するステップ(910)と、
を含む、光学機器(800)の製造方法(900)。
【請求項11】
前記支持要素(100)はセラミック及び/又は金属から形成される、請求項10に記載の方法(900)。
【請求項12】
前記ガラス素子(105)の前記第一の膨張率は0.5×10
-6K
-1未満であり、及び/又は前記中間ガラス材料(600)の前記第三の膨張率は2×10
-6K
-1~4×10
-6K
-1の範囲内である、請求項10又は11に記載の方法(900)。
【請求項13】
前記支持要素(100)は凹部(605)を有する形状であり、前記凹部(605)は前記接合ステップ(910)中に前記ガラス素子(105)により覆われる、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法(900)。
【請求項14】
支持要素(100)とガラス素子(105)とを有する光学機器(800)であって、前記ガラス素子(105)は第一の膨張率を有し、前記支持要素(100)は前記第一の膨張率とは異なる第二の膨張率を有し、前記支持要素(100)は、前記ガラス素子(105)により覆われているか又は覆われることが可能な凹部(605)を有する形状であり、前記支持要素(100)と前記ガラス素子(105)とは、前記凹部(605)の上に配置された中間ガラス材料(600)により接合され、前記中間ガラス材料(600)は前記第二の膨張率に実質的に対応する第三の膨張率を有する光学機器(800)。
【国際調査報告】