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特表2023-512337インターロイキン-12とフィブロネクチンのエクストラドメインBに結合する抗体とを含む組換えタンパク質を含む組成物の投与単位およびレジメン、使用、方法または製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(54)【発明の名称】インターロイキン-12とフィブロネクチンのエクストラドメインBに結合する抗体とを含む組換えタンパク質を含む組成物の投与単位およびレジメン、使用、方法または製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20230316BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230316BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230316BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230316BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20230316BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230316BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A61K38/20
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/18
A61K9/08
A61K47/12
A61P35/04
C07K16/24 ZNA
C07K16/18
C07K19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022561419
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2021059570
(87)【国際公開番号】W WO2021209452
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】20169469.2
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518360689
【氏名又は名称】フィロジェン ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】バッチ カミッラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンメル テレーザ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC27
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD49
4C076DD60
4C076DD67
4C084AA01
4C084AA02
4C084DA12
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085BB11
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE03
4C085EE05
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、インターロイキン12(IL-12)と、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質の投与単位またはレジメン、使用、方法または製剤に関する(図3)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質を含む医薬製剤であって、
・ ヒスチジン、スクロース、およびpH8.0±0.3に調整されたEDTA、
・ クエン酸、クエン酸ナトリウム、スクロース、グリセロール、およびpH6.0 ±0.3に調整されたEDTA、または
・ Hepes、NaCl、マンニトール、グリセロール、pH7.0±0.3に調 整されたEDTA
を含む医薬製剤。
【請求項2】
(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質を、ヒト患者の体重に対して0.1μg/kg以上含む、投与単位またはレジメン。
【請求項3】
(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質の、ヒト患者の体重に対して100μg/kg以下含む、投与単位またはレジメン。
【請求項4】
(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質の、ヒト患者の体重に対して、0.5μg/kg以上4μg/kg未満の間で含む、投与単位またはレジメン。
【請求項5】
組換えタンパク質が請求項2~4のいずれか1項に記載の投与単位またはレジメンに従って投与される、がんと診断されているか、またはがんに罹患している患者の治療に使用するための、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質。
【請求項6】
がんの診断を受けているか、またはがんに罹患しているヒト患者の治療のための、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質の(医薬品の製造における)使用であって、タンパク質が、患者に対して請求項2~4のいずれか1項に記載の投与単位またはレジメンで投与するためのものである使用。
【請求項7】
がんと診断されているか、またはがんに罹患している患者を治療する方法であって、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質を、請求項2~4のいずれか1項に記載の投与単位またはレジメンによる用量で、患者に投与することを含む、方法。
【請求項8】
用量が患者に対して毎日、半週、毎週、隔週、3週ごと、毎月または隔月に投与される、請求項5の使用のための組換えタンパク質、請求項6の使用または請求項7の方法。
【請求項9】
進行性/転移性免疫療法反応性固形がんまたはリンパ腫から選択される、がんと診断されているか、またはがんに罹患している患者の治療に用いるための、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)と結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む、組換えタンパク質。
【請求項10】
進行性/転移性免疫療法反応性固形がんまたはリンパ腫と診断されているか、またはがんに罹患している患者を治療する方法であって、(i)インターロイキン12(IL-12)と(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインBに結合する抗体、またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体を含む組み換えタンパク質を治療上十分な量で患者に投与することを含む、方法。
【請求項11】
がん腫またはリンパ腫が、以下からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5、8または9に記載の組換えタンパク質の使用、請求項6に記載の使用、または請求項7もしくは10に記載の方法。
a) 悪性黒色腫
b) 非小細胞肺がん(NSCLC)
c) 腎細胞がん
d) 尿路上皮がん
e) 頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)
f) 高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構 欠損(dMMR)の転移性大腸がん
g) 肝細胞がん
h) 胃がん
i) 皮膚扁平上皮がん
j) 子宮頸がん、および/または
k) びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)。
【請求項12】
がん腫またはリンパ腫が、以下の少なくとも1つを特徴とする、請求項5、8、9または11に記載の組換えタンパク質の使用、請求項6または11に記載の使用、または請求項7または10~11に記載の方法。
a) 免疫チェックポイント阻害療法が進行していた、
b) 東部協力腫瘍学グループ(ECOG)パフォーマンスステータス≦2、および /または
c) 固形がんに関するRECIST(v.1.1)または悪性リンパ腫に関するL UGANO基準で定義された、コンピュータ断層撮影(CT)、MRIまたは PET/CTのいずれかによる少なくとも1つの一次元的に測定可能な病変。
【請求項13】
患者が以下の少なくとも1つを特徴とする、請求項5、8、9または11~12に記載の組換えタンパク質の使用、請求項6または11~12に記載の使用、または請求項7または10~12に記載の方法。
a) 直前の治療として免疫チェックポイント阻害療法に基づくレジメンを受けてい たか、
b) 臨床的利点(CR/PR/SD)を有していたことがあり、免疫チェックポイ ント遮断療法中に、転移性疾患を記録した最初の画像診断から3ヶ月以上無増 悪で、免疫チェックポイント遮断療法後のレントゲン写真により疾患進行(r adiographic disease progression)である か、
c) DLCBLと診断されたとき、またはDLCBLに罹患したときに、2種類以 上の先行する全身療法を受けたことがあるか;および/また
d) HIV、HBVおよびHCVの検査が陰性である。
【請求項14】
組換えタンパク質に含まれる抗体が、少なくとも1つの単鎖Fv(scFv)抗体フラグメント、場合により単鎖ダイアボディを含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の投与単位、使用のための組換えタンパク質、方法または製剤。
【請求項15】
組換えタンパク質に含まれるIL-12が、リンカーで連結されたp40サブユニットとp35サブユニットを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の投与単位、使用のための組換えタンパク質、方法または製剤。
【請求項16】
以下の少なくとも1つを含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の投与単位、使用のための組換えタンパク質、方法または製剤。
・ p40サブユニットおよびp35サブユニットが、それぞれ配列番号1または配 列番号3に記載のアミノ酸配列を含むか、
・ 組換えタンパク質に含まれる抗体が、VLドメインとして配列番号5に記載のア ミノ酸配列、およびVHドメインとして配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む 抗EDB抗体L19であるか、
・ 抗体、IL-12および/または両者を連結するリンカーの少なくとも1つが、 WO2019/154986に開示されているものであり、場合により、組換え タンパク質が、WO2019/154986に開示されているものであるか、お よび/または
・ 組換えタンパク質が、配列番号9に記載の配列を含むか、場合により配列番号9 に記載の配列からなる。
【請求項17】
組換えタンパク質が以下を含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の投与単位、使用のための組換えタンパク質、方法または製剤。
a) p35ドメインに第1のリンカーで連結されたp40ドメイン、
b) SADリンカーによってp35ドメインに連結された第1のL19 VHドメ イン、
c) 第3のリンカーによって第1のL19 VHドメインに連結された第1のL1 9 VLドメイン、
d) 第4のリンカーによって第1のL19 VLドメインに連結された第2のL1 9 VHドメイン;および/または
e) 第5のリンカーによって第2のL19 VHドメインに連結された第2のL1 9 VLドメイン。
【請求項18】
投与が静脈内または皮下である、前記請求項のいずれか1項に記載の投与単位またはレジメン、使用のための組換えタンパク質、方法または製剤。
【請求項19】
請求項1に記載の製剤で提供される、前記の請求項のいずれか1項に記載の投与単位またはレジメン、使用のための組換えタンパク質。
【請求項20】
前記の請求項のいずれか1項に記載の投与単位またはレジメンまたは組換えタンパク質を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項21】
以下を含むキット。
a) 前記請求項のいずれか1項に記載の使用のための投与単位または組換えタンパ ク質、
b) 投与単位または組換えタンパク質を投与するための装置、および、場合により
c) キットの使用のための説明書。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質を含む組成物の投与単位およびレジメン、使用、方法または製剤に関する。
<参照による援用>
本出願で引用されたすべての刊行物、特許、特許出願およびその他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願またはその他の文書が参照により援用されることが個別に示されている場合と同じ程度に、すべての目的のために参照により全体が援用される。本明細書に援用された1つ以上の文献の教示と本開示との間に矛盾がある場合、本明細書の教示が意図される。
【背景技術】
【0002】
IL-12は、p35およびp40という2つのジスルフィド結合サブユニットを含むヘテロ二量体サイトカインである。IL-12はT細胞やナチュラルキラー細胞からのIFNγの産生を刺激し、またTh1ヘルパー細胞の分化を誘導する。IL-12は、自然免疫および細胞性免疫の重要なメディエーターであり、抗がんおよび抗転移活性の可能性がある。
【0003】
しかし、他の多くのサイトカインと同様に、IL-12の投与は、1日1μg/kgという低用量でも、重度の毒性と関連しており(Car et al., 1999)、1日1μg/kgという低用量でも、抗がん剤としての開発を妨げている。
【0004】
多くのサイトカインは、がんや免疫疾患の前臨床動物モデルで有益な効果を示し、治療薬として有望視されている。しかし、有望な結果が得られているにもかかわらず、医薬品として承認されているサイトカインはわずかである(例:インターロイキン2(IL2、Proleukin(登録商標))、腫瘍壊死因子(TNF、Beromun(登録商標))、インターフェロンアルファ(IFNα、Roferon A(登録商標)およびIntron A(登録商標))。(Gutbrodt and Neri,2012).現在、がん領域では、転移性腎細胞がん、悪性黒色腫、有毛細胞白血病、慢性骨髄性リンパ腫、肉腫、多発性骨髄腫などに、単剤あるいは化学療法との併用で適応がある。さらに、ある種のサイトカインは、臨床においてウイルスや細菌感染の治療に使用され、慢性炎症性疾患に苦しむ患者に投与されている。残念ながら、低用量でかなりの毒性が見られるため、治療効果のあるレジメンにエスカレートすることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒトに投与する免疫サイトカインの適切な用量や投与レジメンを見つけるのは、とても難しいことである。当業者は、作用機序が全く異なること、毒性の問題が加わることから、例えば抗体のような他のバイオ医薬品で行われた経験を信頼することはできない。したがって、本発明の一つの目的は、(i)インターロイキン12(IL-12)と(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体とを含む免疫サイトカインの適切な用量または投与レジメンを見出すことである。
【0006】
抗体などの治療用組換えタンパク質の製剤化は、臨床応用に必要な保存性や投与経路の様々な要求に対応するために、独自の医薬品添加物を用いた複雑な最適化プロセスである。
【0007】
免疫サイトカインは、抗体を中心としたタンパク質の結合分子とサイトカインを含む組換えタンパク質である。そのため、免疫サイトカインは抗体とは化学的・物理的な性質が大きく異なる。例えば、ドメイン構造、分子量、あるいは鎖間および鎖内のジスルフィド橋の数などがこれに該当する。その結果、免疫サイトカインの溶解性、凝集挙動、薬理作用は、抗体で知られているものと大きく異なる可能性がある。したがって、抗体から学んだことは、免疫サイトカインにそのまま転用することはできない。
【0008】
このように、ヒトに投与する免疫サイトカインの製剤を見つけることは、一筋縄ではいかないことがわかる。それゆえ、本発明の他の一つの目的は、(i)インターロイキン12(IL-12)と(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体とを含む免疫サイトカイン用製剤を見出すことである。
【0009】
IL12-L19L19という用語は、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質を指し、これは、本明細書に説明するように単鎖ダイアボディ形態(「タンデムダイアボディ」ともいう)で提供されるものである。組換えタンパク質は、配列番号9に記載のアミノ酸を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】IL12-L19L19の製剤研究。濃縮ステップ前後の異なる製剤化サンプルのSEC分析。
【0011】
図2】IL12-L19L19の製剤研究。濃縮ステップ前後の異なる製剤化サンプルのSEC分析。
図3】IL12-L19L19の模式図。この分子は、免疫調節ペイロードIL12の2つのサブユニットからなる一本鎖ポリペプチドとヒト血管標的抗体が融合した単鎖ダイアボディからなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、特に、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質を含む組成物の投与単位、使用、方法または製剤を提供するものである。
【0013】
本発明およびその特徴の一般的な利点を以下に詳細に説明する。
【0014】
本発明の一態様によれば、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体、またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質の、ヒト患者の体重に対して、0.1μg/kg以上(≧0.1μg/kg)を含む、投与単位が提供される。
【0015】
Rudmanet al.(2011)では、AS1409が開示され、これは、インターロイキン12(IL-12)に結合されたIgGフォーマットのヒト化抗体BC1を含む融合タンパク質である。フィブロネクチンのED-B変異体を標的とする抗体を用いて、腫瘍に関連する血管系にIL-12を送達するように設計されている。AS1409の週1回点滴投与の第1相試験は、腎臓がんおよび悪性黒色腫患者を対象に実施した。安全性、有効性、IL-12を介した免疫反応のマーカー、および薬物動態を評価した。15μg/kgと25μg/kgの投与量を検討した。試験では、このアプローチの安全性が実証され、提案された作用機序に対する薬力学的な裏付けが得られた。転移性黒色腫に対する有効性のエビデンスとともに、第II相試験へ移行する根拠となる実験であると規定された。しかし、第2相臨床試験は開始されなかった。
【0016】
一般に、免疫サイトカインは、1つのサイトカインが2つ以上の免疫細胞を刺激することができ、免疫系に増強効果を持つため、安全かつ効率的な投与量の決定は、例えば、不活性化すべきリガンドやブロックすべき受容体など、所与の標的の量が分かっていて、抗体と標的との間の明確な確率的関係が計算できる抗体療法よりもはるかに困難である。
【0017】
Strauss et al.(2018)は転移性固形腫瘍を対象とした腫瘍標的サイトカイン(NHS-IL12)のファーストインヒューマン第I相試験を開示する。NHS-IL12免疫サイトカインは、2つのIL-12ヘテロダイマーが、それぞれ抗ヒストン抗体NHS76のH鎖の1つと融合したものである。最大耐容用量(MTD)は16.8μg/kgと決定された。NHS76はヒストンを介して一本鎖および二本鎖のDNAに親和性を持つため、NHS-IL12は腫瘍壊死でDNAが露出した部位への送達を標的としている。
【0018】
NHS抗体の標的であるヒストンが、細胞外の標的であるEDBと比較して、細胞内の標的であること、ヒストンの腫瘍組織における存在量がEDBと異なることなどから、少なくともこの研究からの教示は、本発明のIL12-抗EDB組換えタンパク質に転用することができない。
【0019】
Puca et al.(2019)において、新規融合タンパク質(L19-mIL12と称する)のクローニングと特性付けが開示されている。この融合タンパク質は、マウスのインターロイキン12を単鎖の形態で、抗EDB抗体L19を単鎖ダイアボディ(「タンデムダイアボディ」とも呼ばれる)形態で順次融合させたものである。著者らは、マウスにおいて、L19-mIL12は体表面スケーリングファクターを考慮したヒトの用量2mgに相当する12μgの用量で非常によく耐性を示したと報告している-この用量は、Rudman et al.およびStraus et al.によって報告されてきたものよりはるかに高いものである。
【0020】
本発明の別の態様によれば、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質の、ヒト患者の体重に対して、100μg/kg以下(≦100μg/kg)を含む投与単位またはレジメンが、提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧0.1μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧0.25μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対して≧0.5μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対して≧1μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧2μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧3μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧4μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧5μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧6μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧7μg /kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧8μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧9μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧10μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧11μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧12μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧13μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧14μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧15μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧16μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧17μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧18μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧19μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧20μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧21μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧22μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧23μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧24μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧25μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧26μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧27μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧28μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧29μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧30μg/kgを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦95μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦90μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦85μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦80μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦75μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦70μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦65μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦60μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦55μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦50μg /kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦45μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦40μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦35μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦32μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦30μg/kgを含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≦25μg/kgを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧2と≦20μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧3と≦25μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧4と≦30μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧5と≦35μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧6と≦40μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧7と≦45μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧8と≦50μg /kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧9と≦55μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧10と≦60μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧11と≦65μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧12と≦70μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧13と≦75μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧14と≦80μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧15と≦85μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧16と≦90μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧17と≦95μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧18と≦100μg/kgとの間を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧2と≦30μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧4と≦35μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧6と≦40μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧8と≦45μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧10と≦50μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する、≧12と≦55μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧14と≦60μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧16と≦65μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧18と≦70μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧20と≦75μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧22と≦80μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧24と≦85μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧26と≦90μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧28と≦95μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧30と≦100μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧32と≦105μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧34と≦110μg/kgとの間を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧2と≦30μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧6と≦35μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧10と≦40μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧14と≦45μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧18と≦50μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧22と≦55μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧26と≦60μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧30と≦65μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧34と≦70μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧38と≦75μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧42と≦80μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧46と≦85μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧50と≦90μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧54と≦95μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧58と≦100μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧62と≦105μg/kgとの間を含む。いくつかの実施形態では、投与単位またはレジメンは、組換えタンパク質のヒト患者の体重に対する≧66と≦110μg/kgとの間を含む。
【0026】
本発明の一態様によれば、(i)インターロイキン12(IL-12)、および(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体、またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体を含み、がんと診断されている患者、またはがんに苦しむ患者の治療において使用する組換えタンパク質であって、組換えタンパク質が上記の説明による用量で投与される、組換えタンパク質が提供される。
【0027】
本発明の一態様によれば、患者を治療する方法が提供され、患者は、がんと診断されているか、またはがんに罹患しており、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメント若しくは誘導体とを含む組換えタンパク質を含む組成物を、上記の説明による投与単位に応じた量で、患者に投与することを含む。
【0028】
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する実施形態によれば、用量は、毎日患者に投与される。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する実施形態によれば、用量は、半週ごとに患者に投与される。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する実施形態によれば、用量は、患者に毎週投与される。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する実施形態によれば、用量は、患者に、隔週で投与される。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する実施形態によれば、用量は、3週間ごとに患者に投与される。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する実施形態によれば、用量は、患者に毎月投与される。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する実施形態によれば、用量は、2ヶ月に1回患者に投与される。
【0029】
(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質の以下の投与レジメンは、ヒト患者の体重に対して、良好な有効性と副作用低減の妥協点を提供するものである。
【0030】
表に示すように、上記投与レジメンの一つは、半週から月1回の投与間隔を目安に、1x,2x,3x,4x,5x,6x,7xまたは8x投与することができる。
【0031】
したがって、いくつかの実施形態において、(i)インターロイキン-12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメント若しくは誘導体とを含む組換えタンパク質の、ヒト患者の体重に対する≧0.5μg/kgと<4μg/kgとの間を含む投与単位またはレジメンが提供される。
【0032】
次の表は、体重(kg)が異なる患者に対する各投与ごとの総投与量をμg単位で示したもので、投与単位/投与レジメンの違いによるものである(μg/kg-1)。
【0033】
本発明の一態様によれば、がんと診断されているか、またはがんに罹患している患者の治療のための(使用における)、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む、組換えタンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、がんは、進行性/転移性免疫療法反応性固形がんまたはリンパ腫である。
【0034】
本発明の一態様によれば、患者を治療する方法が提供され、患者は、進行性/転移性免疫療法反応性固形がんまたはリンパ腫と診断されているか、またはそれに罹患しており、本方法は、治療上十分な量の、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメント若しくは誘導体とを含む組換えタンパク質を含む組成物を患者に投与することを含む。
【0035】
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、悪性黒色腫である。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、非小細胞肺がん(NSCLC)である。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、腎細胞がんである。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、尿路上皮がんである。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)である。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)転移性大腸がんである。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、肝細胞がんである。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、胃がんである。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、皮膚の扁平上皮がんである。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、子宮頸がんである。治療方法または使用のための組換えタンパク質に関するいくつかの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0036】
本開示の一部として、上記の条件は、組み合わせることもできる。
【0037】
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する1つの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫には、免疫チェックポイント遮断療法が進行している。
【0038】
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する1つの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、東部協力腫瘍学グループ(Eastern cooperative oncology group:ECOG)パフォーマンスステータス≦2である。
【0039】
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する1つの実施形態によれば、がん腫またはリンパ腫は、固形腫瘍に関するRECIST(v.1.1)または悪性リンパ腫に関するLUGANO基準で定義された、コンピュータ断層撮影(CT)、MRIまたはPET/CTのいずれかによる少なくとも1つの一次元的に測定可能な病変である。
【0040】
本開示の一部として、上記の条件は、組み合わせることもできる。
【0041】
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する1つの実施形態によれば、患者は、直前の治療として免疫チェックポイント遮断療法に基づくレジメンを受けたことがある。
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する1つの実施形態によれば、患者は、臨床的利点(CR/PR/SD)を有していたことがあり、免疫チェックポイント遮断療法中に、転移性疾患を記録した最初の画像診断から3ヶ月以上無増悪で、免疫チェックポイント遮断療法後のレントゲン写真により疾患進行(radiographic disease progression)と定義される
【0042】
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する1つの実施形態によれば、患者は、DLCBLについて診断されたとき、またはDLCBLに罹患したときに、2種類以上の先行する全身療法を受けたことがある。
【0043】
治療方法または使用のための組換えタンパク質に関する1つの実施形態によれば、患者は、HIV、HBVおよびHCVの検査が陰性である。
【0044】
本開示の一部として、上記の条件は、組み合わせることもできる。
【0045】
本明細書で使用するCR/PR/SDという用語は、RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)基準により定義される奏効に関するものである。完全奏効(CR)=標的病変のすべてが消失した場合、部分奏効(PR)=標的病変のLDの合計が、投与前のLDの合計を基準として30%以上減少した場合、疾患安定(SD)=投与開始後のLD合計が最小となる場合を基準として、PRとなるほどの縮小でもPDとなるほどの増加でもない場合。
【0046】
本明細書で使用する「ECOGパフォーマンスステータス」という用語は、東部協力腫瘍学グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)によって開発された、患者の介護能力、日常活動、身体能力(歩行、作業など)の機能レベルを表すスコアである。
【0047】
本明細書で使用する「免疫チェックポイント阻害療法」という用語は、免疫チェックポイント阻害剤として知られる薬剤を用いて、いくつかのタイプのがんに対処する療法に関するものである。具体的には、これらの薬は、体の免疫システムががん細胞を認識し、攻撃するのを助けることができる。免疫チェックポイント阻害剤には、特にCTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG 3、TIM3およびOX40に対する阻害剤またはアンタゴニストが含まれる。免疫チェックポイント阻害剤としては、イピリムマブ(Ipilimumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アベルマブ(Avelumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、セミプリマブ(Cemiplimab)などがよく知られている。
【0048】
用語「HIV、HBVおよびHCVの検査が陰性」とは、HIVウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスへの感染、またはそれらに対する抗体の存在が陰性であったことを意味する。
【0049】
本発明の一態様によれば、(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントもしくは誘導体とを含む組換えタンパク質を含む、医薬製剤が提供される。
【0050】
一実施形態では、製剤は、ヒスチジンを含むことができる。一実施形態では、製剤は、スクロースを含むことができる。一実施形態では、製剤は、EDTAを含むことができる。一実施形態では、製剤は、ヒスチジンおよびスクロース、並びに場合によりEDTAを含むことができる。
【0051】
一実施形態では、製剤は、クエン酸を含むことができる。一実施形態では、製剤は、クエン酸ナトリウムを含むことができる。一実施形態では、製剤は、スクロースを含むことができる。一実施形態では、製剤は、グリセロールを含むことができる。一実施形態では、製剤は、EDTAを含むことができる。一実施形態では、製剤は、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、並びに場合によりスクロース、グリセロールおよびEDTAの少なくとも1つを含むことができる。
【0052】
一実施形態では、製剤は、HEPESを含むことができる。一実施形態では、製剤は、NaClを含むことができる。一実施形態では、製剤は、マンニトールを含むことができる。一実施形態では、製剤は、グリセロールを含むことができる。一実施形態では、製剤は、EDTAを含むことができる。一実施形態では、製剤は、HEPESおよびNaCl、ならびに場合によりマンニトール、グリセロールおよび、EDTAのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0053】
一実施形態では、製剤は、8.0±0.3のpHを有するように調整された、ヒスチジン、スクロースおよびEDTAを含むことができる。別の実施形態では、製剤は、6.0±0.3のpHを有するように調整されたクエン酸、クエン酸ナトリウム、スクロース、グリセロール、EDTAを含むことができる。一実施形態では、製剤は、7.0±0.3のpHを有するように調整されたHepes、NaCl、マンニトール、グリセロール、EDTAを含むことができる。
【0054】
これらの製剤は、ストレス条件下での安定性(凍結・解凍を数回繰り返してもタンパク質の損失が少なく、2~8℃では凝集体の形成が少ない)に関して高い要求を満たしている。
【0055】
AS1409(Rudman et al.,上掲)は、pH6.0の水性バッファー中の1mg/ml溶液として供給された。0.9%塩化ナトリウムで1対1に希釈して患者に投与された。NHS-IL12(Strauss et al.,上掲)については、製剤に関するデータは示されていない。L19-mIL12(Pucaet al.,上掲)をリン酸緩衝生理食塩水で希釈した。
【0056】
これらの製剤は、科学的な臨床試験には間違いなく使用できるが、保存性や凝集性などの問題が考慮されていないため、市場には適さないことは確かである。次の表は、6つの好ましい製剤を示したものである。
【0057】
本発明の出願人に譲渡された出願WO2018/011404A1には、抗体L19とサイトカインTNFを含む免疫サイトカイン用製剤が開示されている。WO2018/011404A1の25~27頁で開示されている実施例4では、特に以下の製剤を検討した。
【0058】
(i)pH6、8、9に調製したヒスチジンバッファー。
・ Hist-1は、pH6.0の20mM ヒスチジン、8.5%スクロース(w/ v)、130mM EDTAを含む。
・ Hist-2は、pH8.0の20mM ヒスチジン、8.5%スクロース(w/
v)、130mM EDTAを含む。
・ Hist-3は、pH9.0の20mM ヒスチジン、8.5%スクロース(w/
v)、130mM EDTAを含む。
【0059】
(ii) pH 6.6に調製したクエン酸バッファー
・ Citrate-1 は、5.6g/L クエン酸ナトリウム、0.21g/L クエン酸、70g/L トレハロース二水和物、0.2g/Lポリソルベート
80、1% (w/v)グリセロール、5mM EDTA、pH6.6を含む。
出願WO2018/011404A1の21~23頁で開示されている実施例1では、特に以下の製剤を検討した。
【0060】
(iii)pH7.5および8.0に調製したHepesバッファー。
・ Hepes-1は、30mM Hepes(pH 7.5)、5mM EDTA、
75mM マンニトール、1.8%グリセロール(w/v)を含む
・ Hepes-2は、30mM Hepes(pH 7.5)、5mM EDTA、
75mM マンニトール、1.8%グリセロール(w/v)および 0.1%ポリ
ソルベート20 を含む
・ Hepes-3 は、15mM Hepes(pH 8.0)、5mM EDT
A、75mM マンニトールおよび1.8%グリセロール(w/v)を含む
・ Hepes-4は、15mM Hepes(pH 8.0)、5mM EDTA、
75mM マンニトール、1.8%グリセロール(w/v)および0.005%ポ
リソルベート20を含む
・ Hepes-5は、15mM Hepes(pH 8.0)、5mM EDTA、
75mMマンニトール、1.8%グリセロール(w/v)、0.01%ポリソル
ベート20を含む
・ Hepes-6は、15mM Hepes(pH 8.0)、5mM EDTA、
75mM マンニトール、1.8%グリセロール(w/v)および0.05%ポリ
ソルベート20を含む
【0061】
ヒスチジンバッファーについては、許容基準を満たさなかった。クエン酸バッファーでは、視覚的透明度とA280安定性の基準は満たしたが、純度の基準は満たさず、懸濁液中の粒子や3量体の凝集が示唆された。ヒスチジンバッファーとクエン酸バッファーは、粒子が懸濁しており、さらなる検討の対象とはならなかった。
【0062】
0.1%未満のポリソルベート20を含むHepes製剤については、許容基準も満たさなかった。満たした場合のみ。0.1%以上のポリソルベート20を含むHepes製剤は、許容基準を満たした。
【0063】
その上で、上記の表による製剤が、WO2018/011404A1の実施例1および4で使用された製剤と高度に類似しているにもかかわらず、また、本発明の組換えタンパク質がWO2018/011404A1のL19-TNFと構造的類似性を有するにもかかわらず、許容できる結果をもたらすことは、非常に驚くべきことである。
【0064】
本発明の投与単位、使用のための組換えタンパク質、治療方法または製剤の実施形態によれば、組換えタンパク質に含まれる抗体は、少なくとも1つの単鎖Fv(scFv)抗体フラグメント、場合により単鎖ダイアボディを含む。
【0065】
本明細書中で使用される用語「単鎖ダイアボディ」は、短いリンカー、好ましくは3から10アミノ酸長、より好ましくは5アミノ酸長を有する2つの単鎖Fv(scFv)抗体(「ダイアボディ」としても知られる)が、より長いリンカー、好ましくは5から20アミノ酸長、より好ましくは15アミノ酸長によって互いに連結された構築物に関し、以下の式(N->C配向):
L19VH-リンカー-L19VL-リンカー-L19VH-リンカー-L19VL
で記載される。
【0066】
本発明の投与単位、使用のための組換えタンパク質、治療方法または製剤の実施形態によれば、組換えタンパク質に含まれるIL-12は、リンカーによって連結されたp40サブユニットとp35サブユニットとを含む。
【0067】
本発明の投与単位、使用のための組換えタンパク質、治療方法または製剤の実施形態によれば、p40サブユニットおよびp35サブユニットは、それぞれ配列番号1または配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。
【0068】
本発明の投与単位、使用のための組換えタンパク質、治療方法または製剤の実施形態によれば、組換えタンパク質に含まれる抗体は、VLドメインとして配列番号5に記載のアミノ酸配列、およびVHドメインとして配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む抗EDB抗体L19である。
【0069】
本発明の投与単位、使用のための組換えタンパク質、治療方法または製剤の実施形態によれば、抗体、IL-12および/または両者を連結するリンカーの少なくとも1つは、WO2019/154986に開示されているものであり、場合により、組換えタンパク質は、WO2019/154986に開示されているものである。
【0070】
WO2019/154986には、本発明の対象となる組換えタンパク質の技術的および生理的特性が記載されている。WO2019/154986A1の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0071】
本発明の投与単位、使用のための組換えタンパク質、治療方法または製剤の実施形態によれば、組換えタンパク質は、以下を含む。
【0072】
・ p35ドメインに第1のリンカーで連結されたp40ドメイン。
・ SADリンカーによってp35ドメインに連結された第1のL19 VHドメイ
ン。
・ 第3のリンカーによって第1のL19 VHドメインに連結された第1のL19
VLドメイン。
・ 第4のリンカーによって第1のL19 VLドメインに連結された第2のL19
VHドメイン。
・ 第5のリンカーによって第2のL19 VHドメインに連結された第2のL19
VLドメイン。
【0073】
本発明の投与単位、使用のための組換えタンパク質、治療方法または製剤の実施形態によれば、組換えタンパク質は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含むか、場合により配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる。
【0074】
本発明の投与単位、使用のための組換えタンパク質、治療方法または製剤の実施形態によれば、投与は静脈内または皮下で行われる。
【0075】
本発明の実施形態によれば、使用のための投与単位または組換えタンパク質は、上記の説明による製剤で提供される。
【0076】
本発明の実施形態によれば、上記の説明による製剤は、上記の説明による投与単位または組換えタンパク質を含む。
【0077】
本発明の一態様によれば、以下のものを含む部品キットが提供される。
a) 上記の説明による使用のための投与量単位または組換えタンパク質、
b) 投与単位または組換えタンパク質を投与するための装置、および、場合により
c) キットの使用のための説明書。
【実施例
【0078】
本発明は図面および前記の説明において詳細に図示および説明されてきたが、そのような図示および説明は例示または例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。開示される実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求される発明を実施する際に当業者によって理解され、実施され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a(1つの)」又は「an(1つの)」は複数形を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを使用して利益を得ることができないことを示すものではない。特許請求の範囲のどの引用符号も、範囲を限定すると解釈するべきではない。
本明細書に開示される全てのアミノ酸配列は、N末端からC末端に示される。
【0079】
実施例1カニクイザルを用いた毒性試験
IL12-L19L19でL19抗体の標的となるフィブロネクチンのエクストラドメインBは、種を超えて非常によく保存されたドメインで、ヒトとサルでは100%同じである。
【0080】
ヒトとサルのIL12の相同性は、p40が98%、p35が95%であり、ヒトIL12はヒトとサルの両方で活性を持つことが分かっている。IL12-L19L19の活性は、ヒトとサルの末梢血単核細胞(PBMC)でテストされた。IL12-L19L19と組換えヒトIL12は、ヒトとサルの両方のPBMCに対するIFNγ増加に関して同等の活性を有している。しかし、IL12-L19L19も組換えIL12も、サルではヒトPBMCの10倍も活性が低い。
【0081】
毒性試験では、サルにヒト等価用量(HED)13、51、213μg/kg/週でIL12-L19L19を週8回静脈内投与した。試験された用量は、IL12-L19L19に関連する観察結果が報告されていないことから、呼吸器系、中枢神経系、心臓系、腎臓系に対する安全性が確認された。
【0082】
実施例2:製剤開発
塩組成とpHの異なる複数のバッファーをスクリーニングし、製剤化を検討した。以下のバッファーを検討した。
1)Hepesバッファー
・ 1A.15mM Hepes、50mM マンニトール、1%w/v グリセロー
ル、5mM EDTA、pH7.0
・ 1B.15mM Hepes、30mM NaCl、50mM マンニトール、
1% w/v グリセロール、5mM EDTA、pH 7.0
2)ヒスチジンバッファー
・ 2A.20mM ヒスチジン、8,5% w/v スクロース、50mg/L E
DTA、pH6.0
・ 2B.20mM ヒスチジン、8,5% w/v スクロース、50mg/L E
DTA、pH8.0
3)リン酸バッファー
・ 3A.15mM NaH2PO4、10mM Na2HPO4、30mM NaCl5
0mM マンニトール、1% w/v グリセロール、5mM EDTA、pH
6.5
・ 3B.15mM NaH2PO4、10mM Na2HPO4、30mM NaCl、
50mM マンニトール、1% w/v グリセロール、5mM EDTA、pH
7.5
4)クエン酸バッファー
・ 4A.1mM クエン酸、10mM クエン酸ナトリウム、8% w/v スク
ロース、1% w/v グリセロール、5mM EDTA、pH6.0
【0083】
この研究は、以下のような操作方法を適用して行われた。
【0084】
1) 製剤化は脱塩クロマトグラフィーによって行われる。
2) 製剤化製品は分析前に0.22μmのフィルターでろ過される。
3) 製剤化されたタンパク質の濃縮は、アミコンデバイス(10kDaカットオフ)
を使用し、遠心分離することで行われる。
4) 製品は2mg/mlで製剤化される。
【0085】
製剤化製品を受け入れるために安定性試験を開始する前に、外観に関連する予備的な許容基準を以下のように評価した。
・ 溶液が濁っていたり、懸濁液中の粒子が見える場合⇒サンプルを拒絶する。
・ 溶液が透明で、懸濁液中に目に見える粒子がない場合⇒安定性試験を実施する。
【0086】
安定性試験を表1にまとめた各サンプルについて行った。以下は定義である:
・ 最初のデータが規格外であっても、安定性試験のすべての時点を分析する必要があ る。
・ A280nmはサンプルを遠心分離した後に評価する。
・ A280nm pharmacopoeia 法を適用(参考:Ph.Eur. curr. ed., paragraph 2.5.33)。
・ TSKgel G3000 SWXLカラムを用いてSEC分析を行う。
【0087】
表1 IL12-L19L19の製剤研究。保存温度、時点、アッセイ、許容基準について詳述する。
【表1】
【0088】
製剤化試験を行うために使用した材料は、IL12-L19L19の分取SECによって得られた:TGE手順(すなわちTransient Gene expression)によって発現し、TEA 100mM native pHで溶出してProtein A樹脂上で精製し、次にWO2019154896に記載されているようにPBSで脱塩したものである。
【0089】
記録された結果を表2にまとめた。
【0090】
表2 IL12-L19L19の製剤研究。製剤化後および2mg/mlまでの濃縮後にSECで評価した、ステップ収率(製剤化および濃縮ステップ)と単鎖ダイアボディ純度の概要である。
【表2】
【0091】
総収率(製剤+濃縮工程)は86.2%~90.2%であり、検討した異なる製剤条件間で非常に同等なデータが記録された。製剤化工程後の単鎖ダイアボディ純度は95.49%から96.11%であった。入力サンプルの純度が96.06%であることを考慮すると、製剤化後の記録データは、バッファー交換によって凝集体の形成が誘発されなかったことを証明するものである。2mg/mlまで濃縮した後、SECの結果、単鎖ダイアボディの割合は93.15%から94.89%で、濃縮手順そのものによる高MWフォーム(3%未満)の増加がわずかであることが示された。
【0092】
図1および2に製剤化後と濃縮後のサンプルのSECプロファイルを示す。
【0093】
すべての製剤化および濃縮されたサンプルの視覚的外観は、目に見える粒子がなく透明であった。次に、ストレス条件(すなわち、-80℃での凍結と常温での解凍を3サイクル繰り返す)および2~8℃保存温度におけるサンプルの安定性について調査した。
【0094】
表3は、各製剤化サンプルの安定性試験で記録された結果である。
【0095】
表3 IL12-L19L19の製剤研究。各サンプルについて各時点で収集したA280nmとSECの結果。両方についてストレス条件後(すなわち、凍結/解凍の3サイクル繰り返し)および2-8℃保存後である。
【表3】
【0096】
IL12-L19L19の安定性を、ストレス条件下(すなわち、-80℃での凍結と常温での融解の3サイクル)および2-8℃での14日間保存後の7つの製剤バッファーで検討した。すべてのサンプルで外観は非常に良好であった。
【0097】
SECプロファイルと単鎖ダイアボディの割合は、すべてのサンプルでよく比較でき、ダイアボディの減少と凝集体(表3では「HMWフォーム」と報告)の増加という点では非常に小さな変動しか観察されなかった。
【0098】
外観とSECで記録された同等の結果に基づき、A280nmの値を用いて異なる製剤を比較し、最適な条件を定義した。
【0099】
表4は、各サンプルについて記録した凍結融解3サイクル後のA280nm値の減少を示したものである。A280nmの損失に基づいて、サンプルを最良から最悪に分類した。
【0100】
表4 IL12-L19L19の製剤研究。ストレス条件下での安定性試験:凍結・解凍3サイクル後のA280nmの損失を評価し、この損失に基づいてサンプルを最良から最悪に分類する。
【表4】
【0101】
280nmで評価したタンパク質の損失は、バッファーのpHだけでなく、バッファーの賦形剤に大きく依存するようである。
詳細は以下である:
・ ヒスチジンバッファーの比較:pH8.0(2B)はpH6.0(2A)よりも優
れている。どちらのバッファーにも8.5% w/vスクロースが入っているが、
この場合、pHが異なる。
・ ヒスチジンバッファーpH8.0(2B)とクエン酸バッファーpH6.0(4
A)を比較すると、同じ安定性が記録されていた。どちらのバッファーにもスク
ロースが含まれている(それぞれ8.5% w/vと8% w/v):スクロース
は安定性を保証するもので、pHは関係ないようだ。
・ Hepes/NaClバッファー(1B)とNaClを含まないHepesバッ
ファー(1A)を比較すると⇒NaClの存在が安定性に寄与しているようであ
る。
・ リン酸バッファー pH6.5(3A)では、同じ組成のバッファー組成であるp
H7.5(3B)よりも製品の安定性が向上している。
【0102】
ストレス調査に基づき、以下のバッファーが良い候補として選ばれた。
・ 2B. 20mM ヒスチジン、8.5% w/v スクロース、50mg/L EDTA、pH8.0
・ 4A. 1mM クエン酸、10mM クエン酸ナトリウム、8% w/v スクロース、1% w/v グリセロール、5mM EDTA、pH6.0
1B. 15mM Hepes、30mM NaCl、50mM マンニトール、1% w/v グリセロール、5mM EDTA、pH 7.0
【0103】
表5は、研究対象の各サンプルについて記録された、2~8℃で14日間保存した後のA280nm値の損失を報告している。A280nmの損失に基づいて、サンプルを最良から最悪に分類した。
詳細は以下である:
【0104】
・ ヒスチジンバッファーpH8.0(2B)=ヒスチジンバッファーpH6.0(2
A)=(非常に似ている)。クエン酸バッファーpH6.0(4A):同じく2-
8℃で、スクロースの存在が安定性を保証し、2%のタンパク質損失がこれらの
ケースで記録された最大値であった。しかし、上記のバッファーでは、単鎖ダイア
ボディ形態の減少が最も大きかった:2.4%.
・ Hepes/NaCl バッファー(1B)=NaClを含まないHepesバッ
ファー(1A)では、2.4-2.5%のタンパク質の損失が見られた。
・ リン酸バッファーpH7.5(3B)では、リン酸バッファーpH6.5(3A)
(同一組成)に比べて生成物の安定性が良好であった。それぞれ0.8% vs. 2.9%のタンパク質の損失があった。
【0105】
表5 IL12-L19L19の製剤研究。2~8℃における安定性試験:14日間保存後のA280nmの損失を評価し、この損失に基づいてサンプルを最良から最悪に分類する。
【表5】
【0106】
製剤研究中に記録された結果に基づき、好ましい製剤バッファーがバッファー2B(20mM ヒスチジン,8.5% w/v スクロース,50mg/L EDTA,pH 8.0)であることがわかった。
【0107】
ストレス条件下での試験で最高の結果を示し(凍結・解凍の3サイクル目でタンパク質の損失が3.3%、SEC分析でダイアボディの損失がない)、2-8℃での試験で良好な結果を示した(タンパク質の損失はわずか2.1%、凝集体形成を伴う単鎖ダイアボディフォームの損失は2.4%)。
【0108】
参考文献
その開示は、その全体が本明細書に参照により援用される。
Gutbrodt and Neri, Antibodies 2012, 1(1), 70-87
Rudman SM et al, Clin Cancer Res.2011 April 1; 17(7):1998-2005
Strauss J et al., Clin Cancer Res.2019 Jan 1;25(1):99-109. doi:10.1158/1078-0432.CCR-18-1512. Epub 2018 Aug 21.
Puca et al (2019) Int J Cancer.2020 May 1;146(9):2518-2530.
Car BD et al., Toxicol Pathol.1999 Jan-Feb;27(1):58-63.
配列
下記の配列は、本出願の開示の一部を形成する。WIPO ST 25互換性のある電子化配列表もまた、この出願と共に提供される。疑義を避けるため、以下の表中の配列と電子化配列表中の配列との間に齟齬が存在する場合、この表中の配列は正しいものとみなされるものとする。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
【配列表】
2023512337000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)インターロイキン12(IL-12)と、(ii)フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED-B)に結合する抗体またはその標的結合フラグメントとを含む組換えタンパク質を含む医薬製剤であって、
・ ヒスチジン、スクロース、およびpH8.0±0.3に調整されたEDTA、
・ クエン酸、クエン酸ナトリウム、スクロース、グリセロール、およびpH6.0±0.3に調整されたEDTA、または
・ Hepes、NaCl、マンニトール、グリセロール、pH7.0±0.3に調整されたEDTA
を含む医薬製剤。
【請求項2】
組換えタンパク質に含まれる抗体が、少なくとも1つの単鎖Fv(scFv)抗体フラグメント、場合により単鎖ダイアボディを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
組換えタンパク質に含まれるIL-12が、リンカーで連結されたp40サブユニットとp35サブユニットを含む、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
以下の少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の製剤。
・ p40サブユニットおよびp35サブユニットが、それぞれ配列番号1または配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むか、
・ 組換えタンパク質に含まれる抗体が、VLドメインとして配列番号5に記載のアミノ酸配列、およびVHドメインとして配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む抗EDB抗体L19であるか、および/または
・ 組換えタンパク質が、配列番号9に記載の配列を含むか、場合により配列番号9に記載の配列からなる。
【請求項5】
組換えタンパク質が以下を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の製剤。
a) p35ドメインに第1のリンカーで連結されたp40ドメイン、
b) SADリンカーによってp35ドメインに連結された第1のL19 VHドメイン、
c) 第3のリンカーによって第1のL19 VHドメインに連結された第1のL19 VLドメイン、
d) 第4のリンカーによって第1のL19 VLドメインに連結された第2のL19 VHドメイン;および/または
e) 第5のリンカーによって第2のL19 VHドメインに連結された第2のL19 VLドメイン。
【請求項6】
投与が静脈内または皮下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製剤。

【国際調査報告】