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特表2023-512372ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断
<図1A>
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図1A
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図1B
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図2A
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図2B
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図2C
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図3A
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図3B
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図3C
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図4
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図5
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図6
  • 特表-ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物及びライブラリ断片切断
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20230317BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20230317BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6874 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576683
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 US2021016228
(87)【国際公開番号】W WO2021158556
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/969,440
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダン・カオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エス・フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】フィオナ・ケイパー
(72)【発明者】
【氏名】タルン・クマール・クラーナー
(72)【発明者】
【氏名】トン・リュウ
(72)【発明者】
【氏名】ブラク・オクムス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・ジェー・キジャーノ
(72)【発明者】
【氏名】クリフォード・リー・ワン
(72)【発明者】
【氏名】イル-シュアン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】シ・ミン・シャオ
(72)【発明者】
【氏名】ホンシア・シュ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
4B029BB20
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QS34
4B063QX01
(57)【要約】
ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物の一例は、ホルムアミド試薬及び塩緩衝液を含む。ホルムアミド試薬は、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物の総体積に基づいて、約10%~約50%の範囲の量でビオチン-ストレプトアビジン切断組成物中に存在する。塩緩衝液は、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物の残部を構成する。いくつかの例では、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物は、ライブラリ断片を固体支持体から切断するために使用される。他の例では、他の機構を使用して、ライブラリ断片を固体支持体から切断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物であって、
約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、
残部として塩緩衝液と、を含む、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物。
【請求項2】
前記ホルムアミド試薬が、100%ホルムアミドである、請求項1に記載のビオチン-ストレプトアビジン切断組成物。
【請求項3】
前記塩緩衝液が、水中約0.75Mの塩化ナトリウム及び約75mMのクエン酸ナトリウムを含む、請求項1又は2に記載のビオチン-ストレプトアビジン切断組成物。
【請求項4】
前記塩緩衝液が、約0.25重量%~約1.5重量%の生体適合性界面活性剤を更に含む、請求項3に記載のビオチン-ストレプトアビジン切断組成物。
【請求項5】
前記組成物が、約50%の前記ホルムアミド試薬及び約50%の前記塩緩衝液を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のビオチン-ストレプトアビジン切断組成物。
【請求項6】
前記組成物が、約40%の前記ホルムアミド試薬及び約60%の前記塩緩衝液を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のビオチン-ストレプトアビジン切断組成物。
【請求項7】
ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物であって、
ホルムアミド及び任意選択的な緩衝液を含む約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、
塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び生体適合性界面活性剤を含む残部として塩緩衝液と、からなる、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物。
【請求項8】
方法であって、
ライブラリ断片をフローセルに導入することであって、前記ライブラリ断片がストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着している、導入することと、
ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物を前記フローセルに導入することであって、前記ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物が、
約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、
残部として塩緩衝液と、を含む、導入することと、
前記ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物を約60℃~約70℃の範囲の温度で前記フローセル内でインキュベートすることを許容し、それにより、前記ライブラリ断片のうちの少なくともいくつかを前記固体支持体から放出させ、前記フローセルの表面上の増幅プライマーに播種させることと、を含む、方法。
【請求項9】
前記ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物が約2分間~約5分間の範囲の時間にわたって前記フローセル内でインキュベートされることが許容される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ストレプトアビジンコーティング固体支持体のうちの少なくともいくつかが、前記フローセルの表面上のビオチン捕捉部位に結合した状態になり、
前記ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物を前記フローセル内でインキュベートすることを前記許容することが、同様に、前記結合したストレプトアビジンコーティング固体支持体のうちの少なくともいくつかを前記ビオチン捕捉部位から放出させる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
インキュベーション後に前記ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物を前記フローセルからすすぎ、それにより、前記ストレプトアビジンコーティング固体支持体及びあらゆる未播種ライブラリ断片を除去することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ホルムアミド試薬と前記塩緩衝液とを混合することによって前記ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物を調製することを更に含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ホルムアミド試薬が、100%ホルムアミドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塩緩衝液が、水中約0.75Mの塩化ナトリウム及び約75mMのクエン酸ナトリウムを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記塩緩衝液が、約0.25重量%~約1.5重量%の生体適合性界面活性剤を更に含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
キットであって、
ストレプトアビジンコーティング固体支持体と、
一方の末端にビオチンを付着させたアダプター配列であって、前記ビオチンが前記ストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着するようになる、アダプター配列と、
断片化されて前記アダプター配列に付着するようになるゲノム配列を含む試料流体と、
ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物であって、
約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、
残部として塩緩衝液と、を含む、キット。
【請求項17】
前記ホルムアミド試薬が、100%ホルムアミドである、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記塩緩衝液が、水中約0.75Mの塩化ナトリウム及び約75mMのクエン酸ナトリウムを含む、請求項16又は17に記載のキット。
【請求項19】
前記塩緩衝液が、約0.25重量%~約1.5重量%の生体適合性界面活性剤を更に含む、請求項16~18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
方法であって、
デスチオビオチン化ライブラリ断片をフローセルに導入することであって、前記デスチオビオチン化ライブラリ断片がストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着している、導入することと、
切断組成物を前記フローセルに導入することであって、前記切断組成物が約18℃~約30℃の範囲の温度であり、前記切断組成物が、
遊離ビオチンと、
塩緩衝液と、を含む、導入することと、
前記切断組成物の前記温度を約60℃~約70℃まで上昇させ、それにより、前記ライブラリ断片のうちの少なくともいくつかを前記固体支持体から放出させ、前記フローセルの表面上の増幅プライマーに播種させることと、を含む、方法。
【請求項21】
前記塩緩衝液が、水中約0.75Mの塩~約0.85Mの塩を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記遊離ビオチンが、約2.5μM~約10mMの範囲の濃度で前記切断組成物中に存在する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記塩緩衝液が、水中約0.75Mの塩化ナトリウム及び約75mMのクエン酸ナトリウムを含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ライブラリ調製流体であって、
液体キャリアと、
前記液体キャリア中のライブラリ調製ビーズと、を含み、各ライブラリ調製ビーズが、
固体支持体と、
前記固体支持体に付着したトランスポソーム複合体と、を含み、前記トランスポソーム複合体が、
トランスポサーゼ酵素と、
前記トランスポサーゼ酵素に結合した二本鎖分子であって、
3’トランスポゾン末端配列、アダプター配列、切断部位、及び5’連結末端配列を含む転移鎖(transferred strand)であって、前記アダプター配列及び前記5’連結末端配列が前記切断部位に隣接している、転移鎖と、
3’トランスポゾン末端配列を含む非転移鎖と、を含む、二本鎖分子と、
前記切断部位をスプリントするように、前記アダプター配列の少なくとも一部分及び前記5’連結末端配列の少なくとも一部分にハイブリダイズされたスプリント配列と、を含む、ライブラリ調製流体。
【請求項25】
前記切断部位が、化学的に切断可能な切断部位、酵素的に切断可能な切断部位、及び光切断可能な(photocleavable)切断部位からなる群から選択される、請求項24に記載のライブラリ調製流体。
【請求項26】
方法であって、
複数の調製済ライブラリ調製ビーズを反応容器に導入することであって、前記調製済ライブラリ調製ビーズの各々が、
固体支持体と、
前記固体支持体に付着した複数の架橋分子と、を含み、前記架橋分子の各々が、
二本鎖DNA断片と、
転移鎖であって、その5’末端で前記二本鎖DNA断片の各鎖にそれぞれ付着しており、各転移鎖が、3’トランスポゾン末端配列、第1のアダプター配列、切断部位、及び5’連結末端配列を含み、前記アダプター配列及び前記5’連結末端配列が前記切断部位に隣接している、転移鎖と、
第2のアダプター配列であって、その3’末端で前記二本鎖DNA断片の各鎖にそれぞれ付着している、第2のアダプター配列と、
前記切断部位をスプリントするように、前記第1のアダプター配列の少なくとも一部分及び前記5’連結末端配列の少なくとも一部分にハイブリダイズされたスプリント配列と、を含む、導入することと、
前記調製済ライブラリ調製ビーズを切断剤に曝露して前記切断部位を除去することであって、これにより、前記複数の架橋分子が前記スプリントを介して前記固体支持体に付着したままになる、除去することと、
前記フローセルを前記スプリント及び前記二本鎖DNA断片の解離温度まで加熱することと、を含む、方法。
【請求項27】
前記反応容器が、フローセルであり、
前記複数のライブラリ調製ビーズのうちの少なくともいくつかが、前記フローセルの表面上に固定された状態になり、
前記方法が、前記ライブラリ調製ビーズを前記切断剤に曝露する前に、非固定化ライブラリ調製ビーズを前記フローセルから除去することを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記切断部位が、化学的切断部位であり、前記調製済ライブラリ調製ビーズを前記切断剤に曝露することが、化学的切断剤を前記反応容器に導入することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記切断部位が、酵素的切断部位であり、前記調製済ライブラリ調製ビーズを前記切断剤に曝露することが、酵素的切断剤を前記反応容器に導入することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記切断部位が、光切断可能切断部位であり、前記調製済ライブラリ調製ビーズを前記切断剤に曝露することが、切断を活性化する波長の光を前記反応容器に照射することを含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月3日に出願された米国特許仮出願第62/969,440号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的アレイは、タンパク質、核酸などを含む分子を検出、分析、及び/又は精製するために使用される広範囲のツールの1つである。いくつかの用途では、アレイは、目的の分子を捕捉することができるプローブを含むように操作される。他の用途では、アレイは、結合対の一方のメンバーで操作され、目的の分子は、結合対の他方のメンバーで標識又はタグ付けされる。結合対の例としては、ビオチン及びアビジン又はストレプトアビジンが挙げられる。ビオチンに対するアビジン又はストレプトアビジンの親和性は、最も強い非共有結合性生物学的相互作用のうちの1つである。更に、ビオチン標識が標識分子の機能を妨害することはめったにない。これらの特性は、ビオチン及びアビジン又はビオチン及びストレプトアビジンを様々な生物学的用途に特に望ましいものにする。
【0003】
いくつかの生物学的用途では、目的の分子が条件付き及び制御された様式で繋留又は連結されることが望ましく、繋留又は連結が特定の時点で切断され、切断された目的の分子の解離が制御される。いくつかの事例では、ビオチン及びアビジン又はビオチン及びストレプトアビジン相互作用の強度が条件付き及び/又は制御された切断を困難にする可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
ライブラリ断片をそれらが付着している固体支持体から切断するために使用され得る組成物及び方法が本明細書に開示される。組成物の一例は、ビオチン-ストレプトアビジン結合を迅速かつ効果的に切断することができる。組成物の別の例は、ライブラリ断片の空間的放出を可能にする条件下で活性化される。方法の一例は、ライブラリ断片の固体支持体からの2段階放出を含む。2段階放出の切断機構は直交しており、それ故に、第1の切断機構は不安定であり、第2の切断機構は安定している。第2の切断機構は、ライブラリ断片の空間的放出を可能にする。
【0005】
本組成物及び本方法は、フローセル上で使用されてもよい。本明細書に開示される実施例の各々は、フローセル表面上の化学的性質、例えば、高分子ヒドロゲル、増幅プライマーなど)に悪影響を及ぼすことなく、フローセル表面上で使用することができる。
【0006】
本明細書に開示される第1の態様は、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物であり、このビオチン-ストレプトアビジン切断組成物は、約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、残部として塩緩衝液と、を含む。
【0007】
本明細書に開示される第2の態様は、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物であり、このビオチン-ストレプトアビジン切断組成物は、ホルムアミド及び任意選択的な緩衝液を含む約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び生体適合性界面活性剤を含む残部として塩緩衝液と、からなる。
【0008】
本明細書に開示される第3の態様は、方法であり、この方法は、ライブラリ断片をフローセルに導入することであって、ライブラリ断片がストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着している、導入することと、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物をフローセルに導入することであって、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物が、約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、残部として塩緩衝液と、を含む、導入することと、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物を約60℃~約70℃の範囲の温度でフローセル内でインキュベートすることを許容し、それにより、ライブラリ断片のうちの少なくともいくつかを固体支持体から放出させ、フローセルの表面上の増幅プライマーに播種させることと、を含む。
【0009】
本明細書に開示される第4の態様は、キットであり、このキットは、ストレプトアビジンコーティング固体支持体と、一方の末端にビオチンを付着させたアダプター配列であって、ビオチンがストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着するようになる、アダプター配列と、断片化されてアダプター配列に付着するようになるゲノム配列を含む試料流体と、約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬及び残部として塩緩衝液を含むビオチン-ストレプトアビジン切断組成物と、を含む。
【0010】
本明細書に開示される第5の態様は、方法であり、この方法は、デスチオビオチン化ライブラリ断片をフローセルに導入することであって、デスチオビオチン化ライブラリ断片がストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着している、導入することと、切断組成物をフローセルに導入することであって、切断組成物が約18℃~約30℃の範囲の温度であり、切断組成物が遊離ビオチン及び塩緩衝液を含む、導入することと、切断組成物の温度を約60℃~約70℃まで上昇させ、それにより、ライブラリ断片のうちの少なくともいくつかを固体支持体から放出させ、フローセルの表面上の増幅プライマーに播種させることと、を含む。
【0011】
本明細書に開示される第6の態様は、ライブラリ調製流体であり、このライブラリ調製流体は、液体キャリアと、液体キャリア中のライブラリ調製ビーズとを含み、各ライブラリ調製ビーズは、固体支持体と、固体支持体に付着したトランスポソーム複合体とを含み、トランスポソーム複合体は、トランスポサーゼ酵素と、トランスポサーゼ酵素に結合した二本鎖分子であって、3’トランスポゾン末端配列、アダプター配列、切断部位、及び5’連結末端配列を含む転移鎖(transferred strand)であって、アダプター配列及び5’連結末端配列が切断部位に隣接している、転移鎖と、3’トランスポゾン末端配列を含む非転移鎖と、を含む、二本鎖分子と、切断部位をスプリントするように、アダプター配列の少なくとも一部分及び5’連結末端配列の少なくとも一部分にハイブリダイズされるスプリント配列と、を含む。
【0012】
本明細書に開示される第7の態様は、方法であり、この方法は、複数の調製済ライブラリ調製ビーズを反応容器に導入することであって、調製済ライブラリ調製ビーズの各々が、固体支持体と、固体支持体に付着した複数の架橋分子と、を含み、架橋分子の各々が、二本鎖DNA断片と、転移鎖であって、その5’末端で二本鎖DNA断片の各鎖にそれぞれ付着しており、各転移鎖が、3’トランスポゾン末端配列、第1のアダプター配列、切断部位、及び5’連結末端配列を含み、第1のアダプター配列及び5’連結末端配列が切断部位に隣接している、転移鎖と、第2のアダプター配列であって、その3’末端で二本鎖DNA断片の各鎖にそれぞれ付着している、第2のアダプター配列と、切断部位をスプリントするように、第1のアダプター配列の少なくとも一部分及び5’連結末端配列の少なくとも一部分にハイブリダイズされたスプリント配列68と、を含む、導入することと、調製済ライブラリ調製ビーズを切断剤に曝露して切断部位を除去することであって、これにより、複数の架橋分子がスプリントを介して固体支持体に付着したままになる、除去することと、反応容器をスプリント及び二本鎖DNA断片の解離温度まで加熱することと、を含む。
【0013】
これらの態様のうちのいずれか1つのいずれの特徴も任意の望ましい様式で一緒に組み合わせられてもよいことを理解すべきである。更に、第1の態様及び/又は第2の態様及び/又は第3の態様及び/又は第4の態様及び/又は第5の態様及び/又は第6の態様及び/又は第7の態様の特徴の任意の組み合わせが、本明細書に開示される実施例のうちのいずれかと組み合わせられて、例えば、改善されたビオチン-ストレプトアビジン結合切断を含む、本開示に記載される利益を達成することができることを理解すべきである。
【0014】
本開示の例の特徴は、以下の詳細な説明及び図面を参照することにより明らかになろう。図面において、同様の参照番号は、類似なものではあるが、おそらく同一ではない構成要素に対応している。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号又は特徴は、それらが現れる他の図面と関連させて記載してもよく、記載しなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本明細書に開示される標的材料の異なる例の概略図である。
図1B】本明細書に開示される標的材料の異なる例の概略図である。
図2A】非転移鎖のタグ付け前(2A)、タグ付け中(2B)、並びにタグ付け後及びライゲーション中(2C)のライブラリ調製ビーズの一部分の概略図である。
図2B】非転移鎖のタグ付け前(2A)、タグ付け中(2B)、並びにタグ付け後及びライゲーション中(2C)のライブラリ調製ビーズの一部分の概略図である。
図2C】非転移鎖のタグ付け前(2A)、タグ付け中(2B)、並びにタグ付け後及びライゲーション中(2C)のライブラリ調製ビーズの一部分の概略図である。
図3A】フローセルの一例の上面図である。
図3B図3Aの3B-3B線に沿って取られた、フローチャネル及びパターン化されていない配列決定表面の例の拡大断面図である。
図3C図3Aの3C-3C線に沿って取られた、フローチャネル及びパターン化された配列決定表面の例の拡大断面図である。
図4】調製済ライブラリ調製ビーズからの配列決定可能なライブラリ断片の二重機構放出を示す概略フロー図である。
図5】切断組成物(X軸)中のホルムアミド試薬の体積%に対する、テトラクロロフルオレセイン(tetrachloro-fluorescein:TET)QCプライマーの蛍光強度(Y軸)を示すグラフである。
図6】様々な洗浄工程後に残留するビーズの割合を示す棒グラフである。
図7】高塩条件下で遊離ビオチン又はデスチオビオチンに曝露されたときの異なる温度でのデスチオビオチン化DNA放出の割合を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
いくつかの配列決定用途では、DNAライブラリ断片は、固体支持体(例えば、ビーズ)上のフローセルに導入される。ライブラリ断片が生成されるより長い遺伝物質の隣接性情報を保存することができるため、固体支持体の使用が望ましい場合がある。いくつかの事例では、DNAライブラリ断片は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して固体支持体に付着される。フローセル上のライブラリ播種及び増幅のために、ビオチン化DNAライブラリ断片は、固体支持体から放出されなければならない。本発明者らは、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を破壊するのに十分に強力ないくつかの試薬も、フローセル表面上のプライマーへのビオチン化DNAライブラリ断片のハイブリダイゼーションを妨害するか、又はそれに別様に悪影響を及ぼすことを見出した。一例として、強力な変性試薬(例えば、約95%のホルムアミド及び約10mMのエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid:EDTA))及び高温のインキュベーション(例えば、90℃で2分間)がビオチン-ストレプトアビジン相互作用を破壊することが見出されたが、放出されたビオチン化DNAライブラリ断片は、フローセル表面にハイブリダイズしない。
【0017】
一例では、ビオチン化DNAライブラリ断片を完全に放出するビオチン-ストレプトアビジン結合を効率的に破壊することができる切断組成物が、本明細書に開示される。放出時に、切断組成物中で、ビオチン化DNAライブラリ断片はハイブリダイゼーションを受けることができる。したがって、本明細書に開示される切断組成物は、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を効率的に破壊し、即時ハイブリダイゼーションを確実にする。本切断組成物は、70℃以下の温度でも有効である。70℃は大半のフローセルの動作温度を下回るものであり、それ故に、フローセルにおける切断組成物の使用は、フローセル表面上の化学的性質、例えば、高分子ヒドロゲル、増幅プライマーなど)に悪影響を及ぼさない。
【0018】
本明細書に開示される切断組成物は、ビオチン-ストレプトアビジン結合を非常に迅速に、効果的に破壊することができる。いくつかの事例では、インキュベーション時間は、約2分間~約5分間の範囲である。これらの時間は、15分間の振盪及び15分間のインキュベーションを含み得る他の方法、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate:SDS)、尿素、及びビオチンを含む方法と比較して有意に短縮された時間である。
【0019】
本明細書に開示される切断組成物は、ビオチン-ストレプトアビジンの結合対を破壊することが望ましい他の用途で使用されてもよい。
【0020】
別の例では、ビオチン化DNAライブラリ断片は、デスチオビオチン化DNAライブラリ断片で置き換えられる。この例では、切断は、ライブラリ断片の空間的放出を可能にする条件下で活性化される。「空間的放出」とは、DNA断片が、慣性流体混合の不在下で放出され、したがって、断片が解放された固体支持体の近傍でフローセル表面上に制御可能に拡散及び播種することができることを意味する。フローセル表面上で切断が起こる場合、切断条件は、フローセル表面上の化学的性質、例えば、高分子ヒドロゲル、増幅プライマーなど)に悪影響を及ぼすことがない。
【0021】
更に別の例では、DNAライブラリ断片は、二重放出機構で固体支持体に付着している。二重放出機構は、切断部位及びスプリントを含み、その両方がライブラリ断片を固体支持体に保持し、その各々が異なる放出プロセスを含む。ライブラリ断片放出が望まれる場合、好適な切断剤を使用して切断部位を最初に除去し、次いで、熱を使用してスプリントを除去してもよい。切断条件が2つの直交プロセス(一方のプロセスが他方のプロセスを開始しない、それに影響を及ぼさない、又はそれを別様に妨害しない)を含むため、この例は、ライブラリ断片の制御放出を可能にする。
【0022】
定義
【0023】
本明細書で使用される用語は、別段の指定がない限り、関連技術の通常の意味をとるものと理解されるであろう。本明細書で使用されるいくつかの用語及びそれらの意味は、以下に記載される。
【0024】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、単数形並びに複数形の両方を指す。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「包含する」、「含有する」又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非限定的であり、更なる列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0025】
「一例」、「別の例」、「例」などへの本明細書全体を通じての言及は、例に関連して記載されている特定の要素(例えば、特徴、構造、組成、構成、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの例に含まれており、他の例に存在しても、存在しなくてもよいことを意味している。更に、文脈上明確に別段の指示がない限り、任意の例に関する記載される要素は、様々な例において任意の好適な様式で組み合わせられ得ることを理解すべきである。
【0026】
特許請求の範囲を含む本開示全体で使用される「実質的に」及び「約」という用語は、処理における変動などに起因するような小さな変動を記載及び説明するために使用される。例えば、それらの用語は、表示値から±10%以下、例えば、表示値から±5%以下、例えば、表示値から±2%以下、例えば、表示値から±1%以下、例えば、表示値から±0.5%以下、例えば、表示値から±0.2%以下、例えば、表示値から±0.1%以下、例えば、表示値から±0.05%以下を指すことができる。
【0027】
更に、本明細書で提供される範囲は、明示的に列挙されているかのように、表示範囲及び表示範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことを理解すべきである。例えば、約2mm~約300mmによって表される範囲は、約2mm~約300mmの明示的に記載された限界だけでなく、約15mm、22.5mm、245mmなどの個々の値、及び約20mm~約225mmなどの部分範囲も含むと解釈するべきである。
【0028】
アダプター:例えば、ライゲーション又はタグメンテーションによって核酸分子に融合され得る直鎖状オリゴヌクレオチド配列。好適なアダプターの長さは、約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、又は約12ヌクレオチド~約60ヌクレオチド、又は約15ヌクレオチド~約50ヌクレオチドの範囲であり得る。アダプターは、ヌクレオチド及び/又は核酸の任意の組み合わせを含み得る。いくつかの例では、アダプターは、プライマー、例えば、ユニバーサルヌクレオチド配列(例えば、P5又はP7配列)を含むプライマーの少なくとも一部分に相補的な配列を含むことができる。具体的な一例として、配列の一方の末端におけるアダプターは、第1のフローセルプライマーの少なくとも一部分に相補的な配列を含み、断片の他方の末端におけるアダプターは、第2のフローセルプライマーの少なくとも一部分と同一の配列を含む。相補的アダプターは、第1のフローセルプライマーにハイブリダイズすることができ、同一のアダプターは、その相補的コピーのための鋳型であり、クラスタリング中に第2のフローセルプライマーにハイブリダイズすることができる。いくつかの例では、アダプターは、配列決定プライマー配列又は配列決定結合部位を含むことができる。異なるアダプターの組み合わせを、DNA断片などの核酸分子に組み込むことができる。
【0029】
化学的捕捉部位:標的材料(例えば、複合体、タンパク質バイオマーカなど)の局在化を可能にする化学的特性で修飾されているフローセル表面の一部分。一例では、捕捉部位は、化学的捕捉剤(すなわち、標的分子(例えば、複合体)に付着、保持、又は結合することができる材料、分子又は部分)を含んでもよい。化学捕捉剤の一例は、標的材料(又は標的材料に付着した連結部分)に結合し得る受容体リガンド結合対(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、レクチン、炭水化物、核酸結合タンパク質、エピトープ、抗体など)のメンバーを含む。化学捕捉剤の更に別の例は、標的材料と静電相互作用、水素結合、又は共有結合(例えば、チオールジスルフィド交換、クリックケミストリ、ディールス・アルダー反応など)を形成することができる化学試薬である。
【0030】
複合体:固体支持体などのキャリア、及びキャリアに付着した配列決定可能な核酸断片。本明細書に開示される実施例のうちのいくつかでは、キャリアはまた、他のメンバーが捕捉部位の一部であるビオチン-ストレプトアビジン結合対の一方のメンバーを含む。
【0031】
堆積:手動又は自動であってもよく、いくつかの事例では、表面特性の変更をもたらす、任意の好適な塗布技術。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用して行われ得る。いくつかの具体的な例としては、化学蒸着(chemical vapor deposition:CVD)、スプレーコーティング(例えば、超音波スプレーコーティング)、スピンコーティング、ダンク又はディップコーティング、ドクターブレードコーティング、液滴分配(puddle dispensing)、フロースルーコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0032】
くぼみ:基材又はパターン化された樹脂による隙間領域によって少なくとも部分的に囲まれる表面開口部を有する、基材又はパターン化された樹脂における別個の凹状の機構。くぼみは、表面の開口部において、例として、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を持つ)などの、様々な形状をとることができる。表面と直交するように取られたくぼみの断面は、湾曲形状、正方形、多角形、双曲線、円錐、角のある形状などであることができる。例として、くぼみは、ウェル又は2つの相互接続されたウェルであり得る。くぼみはまた、尾根、階段状の作りなど、より複雑な構造を有し得る。
【0033】
デスチオビオチン:ビオチンよりもアビジン及びストレプトアビジンにしっかりと結合しない、硫黄を含まないビオチン類似体。この用語はまた、デュアルデスチオビオチン及びトリプルデスチオビオチンを含んでもよい。
【0034】
各々:アイテムのコレクションを指して使用される場合、各々がコレクション内の個々のアイテムを識別するが、必ずしもコレクション内の全てのアイテムを指すわけではない。明示的な開示又は文脈がそうでないことを明確に指示する場合、例外が生じ得る。
【0035】
フローセル:反応を実行することができるチャンバ(例えば、フローチャネルを含んでもよい)と、チャンバに試薬を送達するための入口と、チャンバから試薬を除去するための出口とを有する容器。いくつかの例では、チャンバは、チャンバ内で発生する反応の検出を可能にする。例えば、チャンバは、アレイ、光学的に標識された分子などの光学的検出を可能にする1つ以上の透明な表面を含み得る。
【0036】
フローチャネル:液体試料を選択的に受け取ることができ、結合又はその他の方法で付着した2つの構成要素間に画定された領域。いくつかの例では、フローチャネルは、2つのパターン化された又はパターン化されていない配列決定表面の間に画定され得、したがって、配列決定表面の1つ以上の構成要素と流体連通し得る。
【0037】
断片:遺伝物質の一部分又は一片(例えば、DNA、RNAなど)。隣接性が保存されたライブラリ断片は、断片化されているより長い核酸試料のより小さい一片であり、より長い核酸試料の隣接性情報が断片に保存されている。
【0038】
核酸分子又は試料:任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドであり、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらの類似体、又はそれらの混合物を含み得る。この用語は、一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドを指す場合がある。
【0039】
「鋳型」核酸分子(又は鎖)は、解析されることになる配列を指し得る。
【0040】
核酸分子中のヌクレオチドは、天然に存在する核酸及びそれらの機能性類似体を含み得る。機能性類似体の例は、配列特異的な形式で核酸にハイブリダイズすることができるか、又は特定のヌクレオチド配列の複製のための鋳型として使用され得る。天然に存在するヌクレオチドは、一般に、ホスホジエステル結合を含有する骨格を有する。類似体構造は、当技術分野で知られている様々なもののいずれかを含む代替骨格結合を有することができる。天然に存在するヌクレオチドは、一般に、デオキシリボース糖(例えば、DNAに見られる)又はリボース糖(例えば、RNAに見られる)を有する。類似体構造は、当技術分野で知られている様々なもののいずれかを含む代替糖部分を有することができる。ヌクレオチドは、天然又は非天然の塩基を含むことができる。天然のDNAは、アデニン、チミン、シトシン、及び/又はグアニンのうちの1つ以上を含むことができ、天然のRNAは、アデニン、ウラシル、シトシン、及び/又はグアニンのうちの1つ以上を含むことができる。ロックド核酸(locked nucleic acid:LNA)及び架橋核酸(bridged nucleic acid:BNA)などの任意の非天然塩基が使用され得る。
【0041】
プライマー:ライブラリ断片に付着したアダプターなど、標的配列にハイブリダイズし得る核酸分子。一例として、増幅プライマーは、鋳型増幅及びクラスタ生成の開始点として機能し得る。別の例として、合成された核酸(鋳型プライマー)鎖は、合成された核酸鎖に相補的な新しい鎖の合成をプライミングするために、(例えば、配列決定プライマー)がハイブリダイズし得る部位を含み得る。任意のプライマーは、ヌクレオチド又はそれらの類似体の任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの例では、プライマーは、一本鎖のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。プライマーの長さは、任意の数の塩基の長さであることができ、様々な非天然ヌクレオチドを含むことができる。一例では、配列決定プライマーは、10~60塩基、又は20~40塩基の範囲の短鎖である。
【0042】
配列決定可能な核酸断片:3’及び5’末端にアダプターを有する遺伝物質の一部分。配列決定可能な核酸断片では、各アダプターは、既知のユニバーサル配列(例えば、フローセル上のプライマーの少なくとも一部分に相補的又はそれと同一)及び配列決定プライマー配列を含む。両方のアダプターは、インデックス(バーコード又はタグ)配列を含むこともできる。一例では、一端(例えば、P5’又はP5配列を含む)は、固体支持体インデックスを含み得、他端(P7又はP7’配列を含む)は、試料インデックスを含み得る。配列決定可能な核酸断片は、トランスポゾンの挿入を介して結合されてもよく、挿入されたDNA分子は固体支持体(例えば、ビーズ)の表面に固定化され、又は、結合対若しくは他の切断可能なリンカを介して直接固定化され、又は、ハイブリダイゼーションにより結合され、相補的アダプター配列が固体支持体の表面上に存在する。
【0043】
配列決定表面:それにグラフトされた1つ以上のタイプの増幅プライマーを有する高分子ヒドロゲルを含む。配列決定表面はまた、増幅プライマーで又は増幅プライマーの近くで、複合体を固定化するための化学的捕捉剤を含んでもよい。
【0044】
固体支持体:例えば、球形、卵形、微小球、又は規則的若しくは不規則な寸法を有するかどうかにかかわらずその他の認識される粒子形状を特徴とする形状を有する、硬質又は半硬質の材料で作製された小体(small body)。固体支持体は、それに対して付着した配列決定ライブラリを有することができる。
【0045】
標的材料:ビオチン-ストレプトアビジン結合又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合を含む、任意の物質。
【0046】
転移鎖及び非転移鎖:「転移鎖」という用語は、2つのハイブリダイズされたトランスポゾン末端の転移した部分を含む配列を指す。同様に、「非転移鎖」という用語は、2つのハイブリダイズされたトランスポゾン末端の非転写部分を含む配列を指す。転移鎖の3’末端は、インビトロ転位反応において二本鎖断片に連結又は転移される。転移されたトランスポゾン末端配列に相補的なトランスポゾン末端配列を呈する非転移鎖は、インビトロ転位反応において二本鎖断片に連結又は転移されない。
【0047】
トランスポサーゼ:トランスポゾン末端含有組成物(例えば、トランスポゾン、トランスポゾン末端、トランスポゾン末端組成物)を備えた機能複合体を形成し、例えば、インビトロ転位反応で、それがインキュベートされる二本鎖DNA試料へのトランスポゾン末端含有組成物の挿入又は転位を触媒することができる、酵素。本明細書に提示されるトランスポサーゼはまた、レトロトランスポゾン及びレトロウイルスからのインテグラーゼを含み得る。本明細書に記載の多くの例は、Tn5トランスポサーゼ及び/又は過活性Tn5トランスポサーゼに言及するが、意図された目的でDNA試料に5’タグを付けて断片化するのに十分な効率でトランスポゾン末端を挿入し得る任意の転位システムを使用し得ることが理解される。特定の例では、転位システムは、トランスポゾン末端をランダムに又はほぼランダムな様式で挿入し、DNA試料に5’タグを付けて断片化することができる。
【0048】
トランスポソーム複合体:組込み酵素(例えば、インテグラーゼ又はトランスポサーゼ)と、組込み認識部位(例えば、トランスポサーゼ認識部位)を含む核酸との間で形成される複合体。例えば、トランスポソーム複合体は、非共有結合複合体形成を支持する条件下で二本鎖トランスポゾンDNAとプレインキュベートされたトランスポサーゼ酵素であり得る。二本鎖トランスポゾンDNAは、例えば、Tn5DNA、Tn5DNAの一部分、トランスポゾン末端組成物、トランスポゾン末端組成物の混合物、又は過活性Tn5トランスポサーゼなどのトランスポサーゼと相互作用することができる他の二本鎖DNAを含み得る。
【0049】
トランスポゾン末端:インビトロ転位反応で機能するトランスポサーゼ又はインテグラーゼ酵素との複合体を形成するために必要な、ヌクレオチド配列(「トランスポゾン末端配列」)のみを呈する、二本鎖核酸DNA。いくつかの例では、トランスポゾン末端は、転位反応においてトランスポサーゼと機能複合体を形成することができる。例として、トランスポゾン末端は、19塩基対(base pair:bp)外端(outer end:「OE」)トランスポゾン末端、内端(inner end:「IE」)トランスポゾン末端、又は野生型若しくは変異体Tn5トランスポサーゼによって認識される「モザイク末端」(mosaic end:「ME」)トランスポゾン末端を含むことができる。トランスポゾン末端は、インビトロ転位反応においてトランスポサーゼ又はインテグラーゼ酵素と機能複合体を形成するのに好適な任意の核酸又は核酸類似体を含み得る。例えば、トランスポゾン末端は、DNA、RNA、修飾された塩基、非天然の塩基、修飾された骨格を含み得、一方の鎖又は両方の鎖にニックを含み得る。「DNA」という用語は、トランスポゾン末端の組成物に関連して本開示では使用されてもよいが、任意の好適な核酸又は核酸類似体がトランスポゾン末端において利用され得ることが理解されるべきである。
【0050】
切断組成物
【0051】
本明細書に開示される切断組成物の第1の例は、70℃以下の温度でビオチン-ストレプトアビジン相互作用を破壊するのに好適である。
【0052】
切断組成物の第1の例は、約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、残部として塩緩衝液とを含む。
【0053】
ホルムアミド試薬は、ホルムアミド:
【化1】
を含み、これはまた、メタンアミドとしても知られている。いくつかの例では、ホルムアミド試薬は、ホルムアミドを単独で含んでもよい(いかなる他の構成要素も含まない)。したがって、いくつかの例では、ホルムアミド試薬は、100%ホルムアミドである。他の例では、ホルムアミド試薬は、ホルムアミド及び任意選択的な緩衝液を含んでもよい。
【0054】
切断組成物の第1の例の残部は、塩緩衝液である。任意の好適な塩緩衝液を使用してもよい。例として、塩緩衝液は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせを含む水溶液である。具体的な一例では、塩緩衝液は、水中約0.75M(750mM)の塩化ナトリウム及び約75mMのクエン酸ナトリウムを含む。いくつかの例では、塩緩衝液は、約0.5Mの塩化ナトリウム~約3Mの塩化ナトリウム、及び/又は約50mMのクエン酸ナトリウム~約300mMのクエン酸ナトリウムを有する水を含む。
【0055】
塩緩衝液はまた、生体適合性界面活性剤を含んでもよい。好適な生体適合性界面活性剤の例は、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート又はポリソルベート20(Sigma-AldrichによってTWEEN(商標)20として市販されている)である。いくつかの例では、塩緩衝液は、(塩緩衝液の総重量に基づいて)約0.25重量%~約1.5重量%の生体適合性界面活性剤を更に含む。
【0056】
切断組成物の第1の例は、約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、残部として塩緩衝液とを含む。したがって、切断組成物の第1の例における塩緩衝液(及び、その個々の構成要素)の量は、存在するホルムアミド試薬の量に依存する。例として、切断組成物の第1の例は、約10体積%のホルムアミド試薬及び約90体積%の塩緩衝液;又は約20体積%のホルムアミド試薬及び約80体積%の塩緩衝液;又は約30体積%のホルムアミド試薬及び約70体積%の塩緩衝液;又は約40体積%のホルムアミド試薬及び約60体積%の塩緩衝液;又は約50体積%のホルムアミド試薬及び約50体積%の塩緩衝液を含んでもよい。より多量(50%超)のホルムアミド試薬が含まれる場合、増幅プライマーにハイブリダイズされた放出ライブラリ断片は、25℃で変性する可能性があり、これは望ましくない。
【0057】
いくつかの例では、切断組成物の第1の例は、ホルムアミド及び任意選択的な緩衝液を含む約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び生体適合性界面活性剤を含む残部として塩緩衝液と、からなる。この例では、切断組成物の第1の例は、いかなる他の構成要素も含まない。
【0058】
本明細書に開示される切断組成物の第2の例は、約60℃~約70℃の範囲の温度でデスチオビオチン-ストレプトアビジン相互作用を破壊するのに好適である。
【0059】
切断組成物の第2の例としては、遊離ビオチン及び塩緩衝液が挙げられる。
【0060】
切断組成物の第2の例における遊離ビオチンの量は、部分的には、切断組成物で破壊されるデスチオビオチン-ストレプトアビジン相互作用の量に依存する。一例では、遊離ビオチンは、破壊されるデスチオビオチン-ストレプトアビジン相互作用の量よりも約10モル~約100モル高い範囲の量で存在してもよい。具体的な一例として、遊離ビオチンは、約2.5μM~約10mMの範囲の濃度で切断組成物の第2の例に存在する。別の例では、遊離ビオチンは、約4μM~約8mMの範囲の濃度で切断組成物の第2の例に存在する。
【0061】
切断組成物の第2の例の残部は、塩緩衝液である。塩を含む任意の好適な水溶液を使用してもよい。いくつかの例では、塩は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又はそれらの組み合わせである。塩緩衝液は、比較的高い塩濃度を有する。例えば、塩緩衝液は、水中約0.75Mの塩~約0.85Mの塩を含む。具体的な一例では、塩緩衝液は、水中約0.75M(750mM)の塩化ナトリウム及び約75mMのクエン酸ナトリウムを含む。
【0062】
塩緩衝液はまた、生体適合性界面活性剤を含んでもよい。好適な生体適合性界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート又はポリソルベート20(Sigma-AldrichによってTWEEN(商標)20として市販されている)が挙げられる。いくつかの例では、塩緩衝液は、約0.1重量%~約1重量%の生体適合性界面活性剤を更に含む。
【0063】
いくつかの例では、切断組成物の第2の例は、遊離ビオチンと、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び生体適合性界面活性剤を含む残部として塩緩衝液と、からなる。この例では、切断組成物の第2の例は、いかなる他の構成要素も含まない。
【0064】
ビオチン-ストレプトアビジン結合又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合を含む標的材料
【0065】
本明細書に開示されるいくつかの例では、第1の切断組成物は、破壊されるビオチン-ストレプトアビジン結合を含む任意の標的材料と共に使用されてもよい。本明細書に開示される他の例では、第2の切断組成物は、破壊されるデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合を含む任意の標的材料と共に使用されてもよい。これらの例のうちのいずれでも、標的材料は、複合体であってもよい。
【0066】
複合体10A及び10Bのいくつかの例が、それぞれ、図1A及び図1Bに示される。本明細書に開示される方法のいくつかの例では、複合体10A、10Bは、固体支持体12、及びビオチン-ストレプトアビジン結合を介して固体支持体12に付着したDNAライブラリ断片14、14’、14”を含む。本明細書に開示される方法の他の例では、複合体10A、10Bは、固体支持体12、及びデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合を介して固体支持体12に付着したDNAライブラリ断片14、14’、14”を含む。
【0067】
固体支持体12は、ガラス(例えば、制御された細孔ガラスビーズ)、磁気応答性材料、プラスチック、例えば、アクリル、ポリスチレン、又はスチレンと別の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン又はポリテトラフルオロエチレン(The Chemours CoからのTEFLON(登録商標));アガロース、SEPHAROSE(登録商標)ビーズ(Cytiviaから入手可能なアガロースの架橋ビーズ形態)、又はSEPHADEX(登録商標)ビーズ(Cytiviaから入手可能なデキストランの架橋ビーズ形態)などの多糖類又は架橋多糖類;ナイロン;ニトロセルロース;樹脂;シリコン及び変性シリコンを含むシリカ又はシリカ系材料;炭素繊維;金属;無機ガラス;光ファイバーバンドル;又は他の様々なポリマーであり得るが、これらに限定されない。
【0068】
「磁気応答性」材料は、磁場に対応する。磁気応答性固体支持体の例は、磁気応答性材料を含むか、又はそれらから構成される。磁気応答性材料の例としては、常磁性材料、強磁性材料、フェリ磁性材料、及びメタ磁性材料が挙げられる。好適な常磁性材料の例としては、鉄、ニッケル、及びコバルト、並びにFe、BaFe1219、CoO、NiO、Mn、Cr、及びCoMnPなどの金属酸化物が挙げられる。市販例の1つには、ThermoFisher ScientificのDYNABEADS(商標)M-280ストレプトアビジン(ストレプトアビジンコーティング超常磁性ビーズ)が上げられる。いくつかの例では、磁気応答性材料は、ポリマービーズのシェルに埋め込まれる。他の例では、磁気応答性材料はビーズ形態であり、酸化シリコン又は窒化シリコンなどの不動態化材料でコーティングされる。
【0069】
固体支持体12の任意の例は、固形ビーズ、多孔質ビーズ、又は中空ビーズの形態を有してもよい。
【0070】
図1A又は図1Bには示されていないが、固体支持体12は、ビオチン-ストレプトアビジン結合対又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合対の一方のメンバーで官能化される。「結合対」は、一般に、互いに付着することができる2つの剤(例えば、材料、分子、部分)を指す。本明細書に開示されるいくつかの例では、結合対は、ストレプトアビジン及びビオチンを含む。本明細書に開示される他の例では、結合対は、ストレプトアビジン及びデスチオビオチンを含む。結合対のストレプトアビジンは、固体支持体12の表面に配置されてもよく、結合対のビオチン又はデスチオビオチン(その各々が参照番号20で表される)は、DNAライブラリ断片14、14’、14’’に付着されてもよい。
【0071】
いくつかの例では、固体支持体12上のストレプトアビジンは、それが、(i)DNAライブラリ断片14、14’、14’’に付着したビオチン又はデスチオビオチン20に結合することができる点、及び(ii)フローセルの配列決定表面上のビオチン又はデスチオビオチン捕捉部位に結合することができる点で、多官能性であってもよい。他の例では、固体支持体12は、2つの異なる結合対メンバー、例えば(i)ストレプトアビジン(DNAライブラリ断片14、14’、14’’に付着したビオチン又はデスチオビオチン20に結合することができる)、及び(ii)別のメンバー(フローセルの配列決定表面上で捕捉部位に結合することができる)で官能化させてもよい。
【0072】
固体支持体12の官能化は、固体支持体12をストレプトアビジンにより単独で、又は別の結合対メンバーと組み合わせて、コーティングすることを含んでもよい。
【0073】
DNAライブラリ断片14、14’、14’’は、固体支持体12に付着している。各DNAライブラリ断片14、14’、14’’は、3’及び5’末端にアダプター(例えば、18、18’、18’’、22、22’、22’’)を有する長い遺伝物質の一部(例えば、断片16、16’、16’’)を含む。DNAライブラリ断片14、14’、14’’は、より長い遺伝物質を断片化し、断片の末端に望ましいアダプターを組み込む任意のライブラリ調製技術を使用して調製されてもよい。いくつかの好適なライブラリ調製技術は、図1A及び図1Bを参照して説明される。しかしながら、他のライブラリ調製技術もまた使用され得ることを理解すべきである。
【0074】
図1Aは、DNAライブラリ断片14、14’を含む複合体10Aの例を示す。これらのDNAライブラリ断片14、14’は、断片16、16’(より大きな核酸試料由来)及び断片16、16’の対向する末端におけるアダプター18、22又は18’、22’を含むため、配列決定可能である。断片16、16’の隣接性は、固体支持体12上で保存される。
【0075】
複合体10Aを作製するための方法の例が本明細書に記載されるが、配列決定可能な核酸断片14、14’が、ビオチン-ストレプトアビジン結合対又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合対を介して固体支持体12に付着するものであるならば、他の方法を使用してもよいことを理解すべきである。
【0076】
図1Aに示す複合体10Aを形成する方法の一例では、アダプター配列18、18’は、ビオチン又はデスチオビオチン20に結合される。一例では、アダプター配列18、18’は、第1の配列決定プライマー配列(例えば、読み取り1配列決定プライマー配列)及びフローセル上の増幅プライマー(例えば、P5)のうちの1つの少なくとも一部分に相補的な第1の配列(P5’)を含んでもよい(図3A図3B、及び図3Cに示される)。アダプター配列18、18’は、インデックス配列又はバーコート配列も含み得る。アダプター配列18、18’はビオチン又はデスチオビオチン20に結合し、その結果、次に、ビオチン-ストレプトアビジン結合対又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合対のストレプトアビジンを含む固体支持体12の表面に結合することができる。
【0077】
この例では、トランスポソーム複合体(図示せず)もまた、ライブラリ調製法の開始時に固体支持体12に結合されてもよい。トランスポソーム複合体を固体支持体12、にロードする前に、部分的なYアダプターをトランスポサーゼ酵素(例えば、2つのTn5分子)と混合し、トランスポソーム複合体を形成してもよい。部分的なYアダプターは、互いにハイブリダイズする2つのモザイク末端配列(又は他のトランスポゾン末端配列)を含んでもよい。モザイク末端配列の一方は、2つの遊離末端を有することから、遊離のモザイク末端配列と呼ばれ、例えば、一方の末端はアダプター18、18’に付着することができ、他方の末端はタグ付け中に、断片化されたDNA鎖16、16’に付着することができる。このモザイク末端配列は、転移鎖の一部である。モザイク末端配列の他方は、別のアダプター(例えば、22、22’)に付着させることができ、アダプターは、第2の配列決定プライマー配列(例えば、読み取り2配列決定プライマー配列)、及びフローセル上の別の増幅プライマー(P7)の少なくとも一部分と同一である第2の配列(P7)を含む。増幅中、同一の配列により、フローセル上の他の増幅プライマー(P7)の少なくとも一部分に相補的なコピーの形成が可能になる。アダプター配列22、22’は、タグ付け中に断片化されたDNA鎖16、16’に付着されず、したがって、非転移鎖の一部である。
【0078】
トランスポソーム複合体を固体支持体12上にロードすることは、トランスポソーム複合体を固体支持体12と混合すること、遊離モザイク末端の遊離末端をアダプター配列18、18’の3’末端にライゲーションするための好適な条件に混合物を曝露することを含んでもよい。個々のトランスポソーム複合体は、固体支持体12上のアダプター配列18、18’の各々に付着されてもよい。
【0079】
次いで、複合体10Aを形成するこの方法の例では、タグ付けプロセスが行われ得る。より長い核酸試料(例えば、DNA)を含む流体(例えば、タグ付け緩衝液)が、アダプター配列18、18’及びそれに結合したトランスポソーム複合体を有する固体支持体12に追加されてもよい。試料がトランスポソーム複合体と接触すると、より長い核酸試料にタグ付けられる。より長い核酸試料は断片16、16’に断片化され、(例えば、遊離モザイク(又は他のトランスポゾン)末端配列の他方の遊離末端のライゲーションによって)各々がその5’末端で部分的なYアダプターにタグ付けされる。より長い核酸試料の連続的なタグ付けにより、結果としてトランスポソーム複合体間で複数の架橋分子が得られる。架橋分子は、固体支持体12の周囲を包み込む。トランスポソーム複合体は、架橋分子としてより長い核酸試料の隣接性を維持する。
【0080】
次いで、トランスポサーゼ酵素を、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate:SDS)処理又は熱若しくはプロテイナーゼK消化によって除去することができる。トランスポサーゼ酵素を除去すると、断片16、16’が固体支持体12に付着したままになる。
【0081】
配列決定可能なDNAライブラリ断片14、14’を完成させるために、試料断片16、16’がアダプター配列22及び22’に確実に付着するように、更なる伸長及びライゲーションが行われる。得られた複合体10Aは図1Aに示される。
【0082】
各配列決定可能なDNAライブラリ断片14、14’は、いずれかの末端にそれぞれのアダプター配列18及び22又は18’及び22’が付着した、隣接性が保存されたライブラリ断片16、16’を含む。アダプター配列18、18’は、最初に固体支持体12に結合したものであり、第1の配列決定プライマー配列、及びフローセルプライマーの一方に相補的な第1の配列を含む。アダプター配列18、18’は、ビオチン-ストレプトアビジン結合対又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合対のビオチン又はデスチオビオチンに付着している。アダプター配列22、22’は部分的なYアダプターからのものであり、別のフローセルプライマーと同一の第2の配列及び第2の配列決定プライマー配列を含む。配列決定可能な各DNAライブラリ断片14、14’には、増幅(例えば、ブリッジ増幅など)及び配列決定に好適なアダプターが含まれるため、PCR増幅は行われない。したがって、これらの断片14、14’は配列決定可能である。更に、隣接性が保存されたライブラリ断片16、16’は同じ長い核酸試料に由来するものであることから、元の試料の隣接性が保存され、ライブラリ断片14、14’は連結された長い読み取りアプリケーションに好適であり得る。
【0083】
図1Bは、固体支持体12と、ビオチン-ストレプトアビジン結合対又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合対を使用して固体支持体12に付着した配列決定可能DNAライブラリ断片14’’とを含む、別の複合体10Bを示す。一例では、PCRを含まないヌクレオチドライブラリをチューブ中に作り出し、次いで、そのライブラリをチューブ中の固体支持体12にハイブリダイズさせる。図1Bに示す例では、アダプター18’’、22’’は、チューブ内のライブラリ断片16’’に追加され、そこに付着するビオチン又はデスチオビオチン20を有するプライマーは、チューブ内でアダプター18’’にハイブリダイズされ、次に、配列決定可能な核酸断片14’’は、ビオチン-ストレプトアビジン結合対又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合対を介して固体支持体12に結合される。別の例では、固体支持体12は、ビオチン-ストレプトアビジン結合対を介して支持体12に付着したプライマー(例えば、支持体12上のストレプトアビジン及びプライマーに付着したビオチン又はデスチオビオチン20)を有してもよい。これらのプライマーは、ライブラリ断片16、16’に付着したアダプター18’’にハイブリダイズする(したがって、プライマー及びビオチン又はデスチオビオチン20は、断片16、16’の一方の末端にあり、他端にはない)。更に他の例では、伸長は、鎖置換酵素を使用して行われ得る。これにより、完全に二本鎖のライブラリ(例えば、図1Bに示すように、フォークやYアダプターがない)が得られる。
【0084】
前述のように、DNAライブラリ断片14、14’、14’’が、ビオチン-ストレプトアビジン結合対又はデスチオビオチン-ストレプトアビジン結合対を介して固体支持体12に付着している限り、他のライブラリ調製技術を使用してもよい。
【0085】
二重放出機構を有するライブラリ調製ビーズ
【0086】
本明細書に開示されるいくつかの例では、DNAライブラリ断片16、16’、16’’は、固体支持体12に付着し、二重放出機構で固体支持体12から放出可能である。二重放出機構は、切断部位及びスプリントを含み、これらの各々は、図2A図2Cを参照してより詳細に説明される。
【0087】
タグ付け前のライブラリ調製ビーズ11の例を図2Aに示す。ライブラリ調製ビーズ11は、固体支持体12、及び固体支持体12に付着したトランスポソーム複合体52を含み、トランスポソーム複合体52は、(i)トランスポサーゼ酵素54と、(ii)トランスポサーゼ酵素54に結合した二本鎖分子56であって、この二本鎖分子56が、(iia)3’トランスポゾン末端配列62A、アダプター配列18、切断部位64、及び5’連結末端配列66を含む転移鎖58であって、アダプター配列18及び5’連結末端配列66が切断部位64に隣接している、転移鎖58と、(iib)3’トランスポゾン末端配列62Bを含む非転移鎖60と、を含む、二本鎖分子56と、(iii)切断部位64をスプリントするように、アダプター配列18の少なくとも一部分及び5’連結末端配列66の少なくとも一部分にハイブリダイズされたスプリント配列68と、を含む。
【0088】
固体支持体12は、本明細書に記載の例のうちのいずれかであってもよい。
【0089】
上述のように、トランスポソーム複合体52は、トランスポサーゼ酵素54を含む。トランスポサーゼ酵素54は、本明細書に記載の例のうちのいずれかであってもよい。図2Aに示される例では、トランスポソーム54は、二本鎖分子56に結合する各モノマーA、Bを有する二量体(例えば、Tn5)を含む。したがって、トランスポソーム複合体52のこの例は、トランスポサーゼ酵素54、及びトランスポサーゼ酵素54のモノマーA、Bにそれぞれ結合した2つの二本鎖分子56を含む。各二本鎖分子56は、ハイブリダイズされた3’トランスポゾン末端配列62A、62Bを含む。3’トランスポゾン末端配列62A及び3’トランスポゾン末端配列62Bは、互いに相補的であり、トランスポサーゼ酵素54と複合体を形成するために必要なヌクレオチド配列のみを含む。したがって、モノマーA、Bは、それぞれ、そのハイブリダイズされた3’トランスポゾン末端配列62A、62Bを介して二本鎖分子56に結合する。
【0090】
二本鎖分子56の3’トランスポゾン末端配列62Aは、転移鎖58の一部分を構成する。3’トランスポゾン末端配列62Aに加えて、転移鎖58はまた、3’トランスポゾン末端配列62Aに連結されたアダプター配列18を含み、切断部位64はアダプター配列18に連結され、5’連結末端配列66は切断部位64に連結されている。したがって、アダプター配列18及び5’連結末端配列66は、切断部位64に隣接している。
【0091】
アダプター配列18は、本明細書に開示される実施例のうちのいずれかであってもよい。増幅がフローセルの表面上で行われる場合、アダプター配列18は、第1の配列決定プライマー配列(例えば、読み取り1配列決定プライマー配列)、フローセル上の増幅プライマー(例えば、P5)のうちの1つの少なくとも一部分に相補的な第1の配列(例えば、P5’)、及び/又はインデックス若しくはバーコード配列を含んでもよい。
【0092】
切断部位64は、化学的に切断可能な切断部位、酵素的に切断可能な切断部位、及び光切断可能な(photocleavable)切断部位からなる群から選択される。
【0093】
いくつかの例では、切断部位64は、化学的に切断可能な切断部位及び酵素的に切断可能な切断部位からなる群から選択される。化学的に切断可能な切断部位は、化学的に切断可能な核酸塩基、化学的に切断可能な修飾核酸塩基、又は化学的に切断可能なリンカ(例えば、核酸塩基間)を含んでもよい。化学的に切断可能な核酸塩基、修飾核酸塩基、又はリンカの例としては、ビシナルジオール(例えば、過ヨウ素酸によって切断可能な1,2-ジオール)、ジスルフィド、シラン、アゾベンゼン、光切断可能な基、アリルT(アリル官能基を有するチミンヌクレオチド類似体)、アリルエーテル、又はアジド官能性エーテルが挙げられる。酵素的に切断可能な切断部位は、酵素的に切断可能な核酸塩基であってもよい。酵素的に切断可能な核酸塩基は、グリコシラーゼ及びエンドヌクレアーゼとの反応、又はエキソヌクレアーゼとの反応による切断の影響を受けやすい場合がある。酵素的に切断可能な核酸塩基の具体的な一例は、デオキシウラシル(deoxyuracil:dU)であり、これは、USER酵素(DNAグリコシラーゼ(UDG)とDNAグリコシラーゼ-リアーゼエンドヌクレアーゼVIIIとの混合物)によって標的化され得る。他の無塩基部位を使用してもよい。酵素的に切断可能な核酸塩基の別の具体的な例はRNAであり、RNaseで標的化することができる。
【0094】
他の例では、切断部位64は、光切断可能な部位であってもよい。光切断可能な部位は、特定の波長の光への曝露による切断の影響を受けやすい場合がある。光切断部位の例は、以下の構造を有するニトロベンジルリンカである。
【化2】
これは、365nmの光を照射すると切断される。
【0095】
5’連結末端配列66は、固体支持体12の表面に付着することができるヌクレオチド配列又は結合対メンバーであってもよい。いくつかの例では、固体支持体12は、5’連結末端配列66への共有結合のために、表面に反応性基を有してもよい。そのような反応性基の例としては、カルボン酸、第一級脂肪族アミン、芳香族アミン、芳香族クロロメチル(例えば、塩化ビニルベンジル)、アミド、ヒドラジド、アルデヒド、ヒドロキシル、チオール、及びエポキシが挙げられる。これらの反応性基は、固体支持体12の表面に本質的に存在してもよく、又は任意の好適な官能化技術(例えば、化学反応、固体支持体12の反応性基含有ポリマーなどによるコーティング)を通して固体支持体12の表面に組み込まれてもよい。他の例では、固体支持体12は、結合対の一方のメンバーでコーティングされてもよく、5’連結末端配列66は、結合対の他方のメンバーに付着してもよい。
【0096】
スプリント配列68は、アダプター配列18の少なくとも一部分に相補的な部分、及び5’連結末端配列66の少なくとも一部分に相補的な部分を有する、ヌクレオチド配列である。スプリント配列68のそれぞれの部分は、スプリント配列68が切断部位64を架橋するように、アダプター配列18及び5’連結末端配列66のそれぞれの部分にハイブリダイズする。切断部位64をスプリント又は架橋するスプリント配列68の部分は、切断部位64に付着していない。図2A図2Cには示されていないが、スプリント68のいくつかの例は、5’連結末端配列66全体に相補的な部分を含んでもよい。この例では、スプリント68の3’末端は、結合対又は共有結合を介して固体支持体12に付着してもよい。
【0097】
二本鎖分子56の3’トランスポゾン末端配列62Bは、非転移鎖60の全体を構成する。
【0098】
図2Bは、ライブラリ調製ビーズ11を含むタグ付けプロセスを概略的に示す。DNA試料70は、ライブラリ調製ビーズ11と混合されてもよい。DNA試料70は、DNAであってもよく、又はRNA試料に由来する相補的DNA(complementary DNA:cDNA)であってもよい。RNA試料のcDNA試料への変換は、逆転写酵素を利用する逆転写を使用して行ってもよい。いくつかの例では、逆転写及び第2の鎖の合成のためのキットが使用される。これらの例では、ThermoFisher Scientificの大容量cDNA逆転写キットが使用され得る。他の例では、逆転写及び鋳型スイッチ(第2の鎖用)用のキットが使用される。これらの例では、New England Biolabsの鋳型スイッチングRT酵素混合物が使用され得る。
【0099】
DNA試料70は、ライブラリ調製流体を生成するために、キャリア液体(例えば、タグ付け緩衝液)に組み込まれてもよい。このライブラリ調製流体は、ライブラリ調製ビーズ11と混合されてもよい。トランスポソーム複合体52は、試料DNA70に結合し、図2B中の稲妻によって示されるDNA骨格内に2つのニックを生成する。これにより、断片16、16’が作成される。図2Bに示される例では、ニックは、いずれかの鎖上で9塩基離れている。トランスポソーム複合体52は、ニック間に7、8、9、10、11、又は12bpのギャップを生成できることを理解されたい。各トランスポソーム複合体52の2つの鎖のうちの一方(例えば、転移鎖58)は、各ニック位置で各断片16、16’の5’末端にライゲーションされる。転移鎖58の各断片16、16’への付着を図2Cに示す。
【0100】
次いで、トランスポサーゼ酵素54(モノマーA及びBの両方)は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)処理又は熱若しくはプロテイナーゼK消化によって除去されてもよい。トランスポサーゼ酵素54を除去すると、断片16、16’が転移鎖58を介して固体支持体12に付着したままになる。
【0101】
配列決定可能な断片14、14’(図1Aに示される例と同様の両末端にアダプター18、22を含む)の形成を完了するために、試料断片16、16’が非転移鎖60及び/又は追加のアダプター配列22に付着することを確実にするために、更なる伸長及びライゲーションが行われる。いくつかの事例では、非転移鎖60が(例えば、熱又は酵素的消化を介して)除去され、次いで、アダプター配列22は、(例えば、伸長ライゲーションを介して)断片16、16’の3’末端に付加される。他の事例では、非転移鎖60は断片16、16’の3’末端にライゲーションされ、次いで、アダプター22は、ここでライゲーションされた非転移鎖60に付加される。
【0102】
配列決定可能な断片14、14’を固体支持体12から放出することが望ましい場合、二重放出機構は、図4を参照して本明細書で更に説明されるように使用されてもよい。
【0103】
フローセル
【0104】
いくつかの例では、複合体10A、10B、又は調製済ライブラリ調製ビーズ11’(図4に示される)は、増幅及び配列決定のためフローセルに導入される。フローセル24の例の上面図が図3Aに示される。図3B及び図3Cを参照して考察されるように、フローセル24のいくつかの例は、2つの配列決定する対向した配列決定表面を含む。パターン化されていない配列決定表面30、30’の例が図3Bに示され、パターン化された配列決定表面32、32’の例が図3Cに示される。各配列決定表面30、30’又は32、32’は基材(図3Aで26として概ね示される)によって支持され、フローチャネル(図3Aで28として概ね示される)は配列決定表面30、30’又は32、32’の間に画定される。他の例では、フローセル24は、基材によって支持された1つの配列決定表面、及び基材に付着した蓋を含む。これらの例では、フローチャネル28は、配列決定表面30又は32と蓋との間に画定される。
【0105】
これらの例のうちのいずれでも、基材26は、単層/材料であってもよい。単層基材の例は、図3Bの参照番号26A及び26A’に示される。好適な単層基材の例26A、26A’は、エポキシシロキサン、ガラス、修飾又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(ChemoursのTEFLON(登録商標)など)を含む)、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(cyclo-olefin polymer:COP)(ZeonのZEONOR(登録商標)など)、ポリアミドなど)、ナイロン(ポリアミド)、セラミック/酸化セラミック、シリカ、溶融シリカ、又はシリカベースの材料、ケイ酸アルミニウム、シリコン及び修飾シリコン(例えば、ホウ素ドープp+シリコン)、窒化シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、五酸化タンタル(Ta)又は他の酸化タンタル(TaO)、酸化ハフニウム(HfO)、炭素、金属、無機ガラスなどを含む。
【0106】
基材26はまた、多層構造であり得る。多層基材の例は、図3Cの参照番号26B及び26B’に示される。多層構造26B、26B’のいくつかの例は、表面に酸化タンタル又は別のセラミック酸化物のコーティング層を備えたガラス又はシリコンを含む。図3Cを特に参照すると、多層構造26B、26B’の他の例は、その上にパターン化された樹脂36、36’を有する下部支持体34、34’を含む。多層基材26B、26B’の更に他の例は、シリコンオンインシュレータ(silicon-on-insulator:SOI)基材を含み得る。
【0107】
一例では、基材26(単層であるか、多層である)は、約2mm~約300mmの範囲の直径、又は最大約10フィート(~3メートル)までの最大寸法を有する長方形のシート又はパネルを有し得る。一例では、基材26は、約200mm~約300mmの範囲の直径を有するウェーハである。別の例では、基材24は、約0.1mm~約10mmの範囲の幅を有するダイである。例示的な寸法が提供されているが、任意の好適な寸法を有する基材26を使用することができることを理解すべきである。別の例として、300mmの丸いウェーハよりも大きい表面積を有する長方形の支持体であるパネルが使用され得る。
【0108】
図3Aに示す例では、フローセル24は、フローチャネル28を含む。いくつかのフローチャネル28が示されるが、任意の数のチャネル28がフローセル24(例えば、単一のチャネル28、4つのチャネル28など)に含まれ得ることを理解すべきである。本明細書に開示される実施例のうちのいくつかでは、各フローチャネル28は、2つの配列決定表面(例えば、30と30’又は32と32’)と2つの付着した基材(例えば、26A及び26A’又は26B及び26B’)との間で画定される領域である。本明細書に開示される実施例の他の例では、各フローチャネル28は、1つの配列決定表面(例えば、30又は32)と蓋との間に画定された領域である。本明細書に記載の流体は、フローチャネル28に導入され、かつそれから除去され得る。各フローチャネル28は、フローセル24内で互いにフローチャネル28から分離され得、その結果、任意の特定のフローチャネル28に導入された流体は、隣接するフローチャネル28に流れ込まない。
【0109】
フローチャネル28の一部分は、基材26の材料に部分的に依存する任意の好適な技術を使用し、基材26内に画定され得る。一例では、フローチャネル28の一部分がガラス基材26へとエッチングされる。別の例では、フローチャネル28の一部分は、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィなどを使用し、多層基材28B、28B’の樹脂36、36’へとパターン化され得る。更に別の例では、別個の材料(例えば、図3B及び図3Cの材料50)は基材26に適用され、別個の材料がフローチャネル28の壁の少なくとも一部分を画定してもよい。
【0110】
一例では、フローチャネル28は直線の構成を有する。フローチャネル28の長さ及び幅は、それぞれ、基材26の長さ及び幅よりも小さくてもよく、その結果、フローチャネル28を取り囲む基材表面の一部分は、別の基材26への取り付けに利用可能である。いくつかの事例では、各フローチャネル28の幅は、少なくとも約1mm、少なくとも約2.5mm、少なくとも約5mm、少なくとも約7mm、少なくとも約10mm、又はそれ超であり得る。いくつかの事例では、各フローチャネル28の長さは、少なくとも約10mm、少なくとも約25mm、少なくとも約50mm、少なくとも約100mm、又はそれ超であり得る。各フローチャネル28の幅及び/又は長さは、上で指定された値よりも大きい、より小さい、又はそれらの間であり得る。別の例では、フローチャネル28は正方形(例えば、10mm×10mm)である。
【0111】
各フローチャネル28の深さは、例えば、マイクロコンタクト、エアロゾル、又はインクジェット印刷を使用し、流路壁を画定する別個の材料を堆積する場合、複数の単層の厚さまで小さくすることができる。他の例では、各フローチャネル28の深さは、約1μm、約10μm、約50μm、約100μm、又はそれ超であり得る。一例では、深さは、約10μm~約100μmの範囲であり得る。別の例では、深さは約5μm以下である。各フローチャネル28の深さは、上で指定された値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であることを理解すべきである。フローチャネル28の深さはまた、例えば、パターン化された配列決定表面32、32’が使用される場合、フローセル24の長さ及び幅に沿って変化してもよい。
【0112】
図3Bは、パターン化されていない対向する配列決定表面30、30’を含むフローセル24の断面図を示す。一例では、これらの表面30、30’の各々は、基材26A、26A’上に調製され得、次に、基材26A、26A’は、フローセル24の例を形成するために互いに付着し得る。接着剤、結合を助ける放射線吸収材料などの任意の好適な結合材料50を使用し、基材26A、26Bを共に結合し得る。
【0113】
図3Bに示す例では、フローチャネル28の一部は、単層基材26A、26A’の各々に画定される。例えば、各基材26A、26A’は、その中に画定された凹状領域38、38’を有し得、凹状領域には配列決定表面30、30’の構成要素が導入され得る。配列決定表面30、30’の構成要素によって占有されていない凹状領域38、38’内の任意の空間は、フローチャネル28の一部であると見なされ得ることを理解すべきである。
【0114】
配列決定表面30、30’は、高分子ヒドロゲル40、40’、高分子ヒドロゲル40、40’に付着した増幅プライマー42、42’、及び化学的捕捉部位44、44’を含む。
【0115】
高分子ヒドロゲル40、40’の例としては、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド、PAZAMなどのアクリルアミドコポリマーが挙げられる。PAZAM及び他のいくつかの形態のアクリルアミドコポリマーは、次の構造(I)で表され、
【化3】
(式中、
は、アジド、任意選択で置換アミノ、任意選択で置換アルケニル、任意選択で置換アルキン、ハロゲン、任意選択で置換ヒドラゾン、任意選択で置換ヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意選択で置換テトラゾール、任意選択で置換テトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、硫酸塩、及びチオールからなる群から選択され、
はH又は任意選択で置換アルキルであり、
、R、及びRは各々、H及び任意選択で置換アルキルからなる群から独立して選択され、
-(CH-の各々は、任意選択で置き換えられ得、
pは1~50の範囲の整数であり、
nは1~50,000の範囲の整数であり、及び
mは、1~100,000の範囲の整数である)。
【0116】
当業者であれば、構造(I)において繰り返される特徴「n」及び「m」の配置が代表的なものであり、モノマーサブユニットがポリマー構造(例えば、ランダム、ブロック、パターン化、又はそれらの組み合わせ)中に任意の順序で存在し得ることを認識する。
【0117】
PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーの分子量は、約5kDa~約1500kDa又は約10kDa~約1000kDaの範囲であり得るか、あるいは具体的な例では、約312kDaであり得る。
【0118】
いくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは線状ポリマーである。他のいくつかの例では、PAZAM及び他の形態のアクリルアミドコポリマーは、軽度に架橋されたポリマーである。
【0119】
他の例では、高分子ヒドロゲル40、40’は、構造(I)の変形であり得る。一例では、アクリルアミドユニットはN,Nージメチルアクリルアミド
【化4】
で置き換えられ得る。この例では、構造(I)のアクリルアミドユニットは
【化5】
で置き換えられ得、R、R、及びRは各々H又はC1~C6アルキルであり、R及びRは各々C1~C6アルキルである(アクリルアミドの場合のようにHではない)。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。別の例では、アクリルアミドユニットに加えて、N,N-ジメチルアクリルアミドが使用され得る。この例では、構造(I)は繰り返す特徴「n」及び「m」に加えて
【化6】
を含み得、R、R、及びRは各々H又はC1~C6アルキルであり、R及びRは各々C1~C6アルキルである。この例では、qは、1~100,000の範囲の整数であってもよい。
【0120】
高分子ヒドロゲル40、40’の別の例として、構造(I)における繰り返す特徴「n」は、構造(II)を有する複素環式アジド基を含むモノマーで置き換えられ得、
【化7】
式中、RはH又はC1~C6アルキルであり、RはH又はC1~C6アルキルであり、Lは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される2~20個の原子と、炭素上の10個の任意選択の置換基及び鎖中の任意選択的な窒素原子を有する線状鎖を含むリンカであり、Eは、炭素、酸素、及び窒素からなる群から選択される1~4個の原子を含む線状鎖であり、その線状鎖中の炭素原子及び任意の窒素原子上に任意選択的な置換基を含み、Aは、H又はC1~C4アルキルがNに付着したN置換アミドであり、Zは窒素含有複素環である。Zの例としては、単環構造又は縮合構造として存在する5~10員環が挙げられる。Zのいくつかの具体的な例としては、ピロリジニル、ピリジニル、又はピリミジニルが挙げられる。
【0121】
更に別の例として、高分子ヒドロゲル40、40’は、構造(III)及び(IV)の各々の繰り返し単位を含み得、
【化8】
1a、R2a、R1b及びR2bの各々は、水素、任意選択で置換アルキル又は任意選択で置換フェニルから独立して選択され、R3a及びR3bの各々は、水素、任意選択で置換アルキル、任意選択で置換フェニル、又は任意選択で置換C7~C14アラルキルから独立して選択され、L及びLの各々は、任意選択で置換アルキレンリンカ又は任意選択で置換ヘテロアルキレンリンカから独立して選択される。
【0122】
オリゴヌクレオチドプライマー42、42’をグラフトするように官能化されるものであるならば、その他の分子を使用して、高分子ヒドロゲル40、40’を形成することもできることを理解すべきである。好適なポリマー層の他の例としては、アガロースなどのコロイド構造、又はゼラチンなどのポリマーメッシュ構造、又はポリアクリルアミドポリマー及びコポリマー、シランフリーアクリルアミド(silane free acrylamide:SFA)、又はアジド分解バージョンのSFAなどの架橋ポリマー構造を有するものが挙げられる。好適なポリアクリルアミドポリマーの例は、アクリルアミドとアクリル酸若しくはビニル基を含むアクリル酸とから、又は[2+2]光付加環化反応を形成するモノマーから合成され得る。好適な高分子ヒドロゲル42の更に他の例としては、アクリルアミドとアクリレートとの混合コポリマーが挙げられる。本明細書に開示される実施例では、星状ポリマー、星型又は星型ブロックポリマー、デンドリマーなどを含む分岐ポリマーなど、アクリルモノマー(例えば、アクリルアミド、アクリレートなど)を含む様々なポリマー構造は利用され得る。例えば、モノマー(例えば、アクリルアミドなど)は、ランダムに又はブロックで、星型ポリマーの分岐(アーム)に組み込まれ得る。
【0123】
高分子ヒドロゲル40、40’を凹状領域38、38’に導入するために、高分子ヒドロゲル40、40’の混合物が生成され得、次にそれぞれの基材26A、26A’(凹状領域38、38’が画定される)に適用され得る。一例では、高分子ヒドロゲル40、40’は、混合物(例えば、水との混合物、又はエタノールと水との混合物)中に存在し得る。次に、混合物は、スピンコーティング、浸漬又は浸漬コーティング、あるいは正圧又は負圧下での材料のフロー、又は別の好適な技術を使用し、それぞれの基材表面(凹状領域38、38’を含む)に適用され得る。これらのタイプの技術は、高分子ヒドロゲル40、40’を基材26A、26A’のそれぞれの基材上に(例えば、凹状領域38、38’及びそれに隣接する隙間領域46、46’に)全面的(blanketly)に堆積させる。他の選択的堆積技術(例えば、マスク、制御された印刷技術などを含む)を使用し、隙間領域46、46’ではなく、凹状領域38、38’に高分子ヒドロゲルを特異的に堆積させることができる。
【0124】
いくつかの例では、基材表面(凹状領域38、38’を含む)が活性化され得、次に、混合物(高分子ヒドロゲル40、40’を含む)がそれに適用され得る。一例では、シラン又はシラン誘導体(例えば、ノルボルネンシラン)は、蒸着、スピンコーティング、又は他の堆積方法を使用し、基材表面に堆積され得る。別の例では、基材表面はプラズマ灰化に曝露されて、高分子ヒドロゲル40、40’に付着し得る表面活性化剤(例えば、-OH基)を生成することができる。
【0125】
高分子ヒドロゲル40、40’の化学的性質に応じて、適用された混合物は硬化プロセスに曝露され得る。一例では、硬化は、室温(例えば、約18℃~約25℃)~約95℃の範囲の温度で、約1ミリ秒~約数日の範囲の時間にわたって行われてもよい。
【0126】
次いで、凹状領域38、38’の周囲の隙間領域46、46’から高分子ヒドロゲル40、40’を除去し、かつ凹状領域38、38’の表面上に高分子ヒドロゲル40、40’を少なくとも実質的に無傷のまま残すために、研磨が行われ得る。
【0127】
配列決定表面30、30’はまた、高分子ヒドロゲル40、40’に付着した増幅プライマー42、42’を含む。
【0128】
グラフトプロセスが行われて、増幅プライマー42、42’が凹状領域38、38’の高分子ヒドロゲル40、40’にグラフトされ得る。一例では、増幅プライマー42、42’は、プライマー42、42’の5’末端又はその近傍における一点共有結合性付着によって、高分子ヒドロゲル40、40’に固定化され得る。この付着により、(i)プライマー42、42’のアダプター特異的部分が、その同族の配列決定可能な核酸断片にアニーリングするように自由になり、(ii)3’ヒドロキシル基が、プライマー伸長のために自由になる。この目的のために、任意の好適な共有結合を使用することができる。使用され得る末端プライマーの例は、アルキン末端プライマー(例えば、高分子ヒドロゲル40、40’のアジド表面部分に付着し得る)、又はアジド末端プライマー(例えば、高分子ヒドロゲル40、40’のアルキン表面部分に付着し得る)を含む。
【0129】
好適なプライマー42、42’の具体的な例としては、HiSeq(商標)、HiSeqX(商標)、MiSeq(商標)、MiSeqDX(商標)、MiNISeq(商標)、NextSeq(商標)、NextSeqDX(商標)、NovaSeq(商標)、Genome Analyzer(商標)、ISEQ(商標)、及び他の装置プラットフォームでの配列決定のためにIllumina Inc.により販売される市販のフローセルの表面上で使用される、P5プライマー及びP7プライマーが挙げられる。P5プライマー及びP7プライマーのいずれも、高分子ヒドロゲル40、40’の各々にグラフトされ得る。
【0130】
一例では、グラフトは、フロースルー堆積(例えば、一時的に結合された蓋を使用する)、ダンクコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、又はプライマー42、42’を高分子ヒドロゲル40、40’に付着させる別の好適な方法によるものであり得る。これらの例示的な技術の各々は、プライマー42、42’、水、緩衝液、及び触媒を含み得るプライマー溶液又は混合物を利用し得る。グラフト法のうちのいずれかを用いて、プライマー42、42’は、凹状領域38、38’において高分子ヒドロゲル40、40’の反応基と反応し、周囲の基材26A、26A’に対して親和性を有さない。したがって、プライマー42、42’は、高分子ヒドロゲル40、40’に選択的にグラフトする。
【0131】
図3Bに示す例では、化学的捕捉部位44、44’は、高分子ヒドロゲル40、40’の少なくとも一部に付着又は適用される化学的捕捉剤を含む。本明細書で開示される化学的捕捉剤の任意の例を使用してもよい。いくつかの例では、化学的捕捉剤は、ビオチンであってもよく、これは、ストレプトアビジンコーティング複合体10A、10Bをフローセル配列決定表面30、30’又は32、32’に付着させるのに役立ち得る。他の例では、化学的捕捉剤は、ビオチン-ストレプトアビジン結合対以外の結合対の別のメンバーであってもよい。これらの他の例では、複合体10A、10Bは、2つの異なる結合対メンバー、例えば(i)ストレプトアビジン(DNAライブラリ断片14、14’、14’’に付着したビオチン20に結合することができる)、及び(ii)別のメンバー(フローセルの配列決定表面上で捕捉部位44、44’の化学的捕捉剤に結合することができる)を含む。これらの他の例では、化学的捕捉剤は、結合対の非ビオチンメンバーであってもよく、結合対の他方のメンバーは、ストレプトアビジンに加え、固体支持体12に付着する。
【0132】
いくつかの例では、高分子ヒドロゲル40、40’の遊離官能基(例えば、プライマー42、42’に付着しないもの)は、いくつかの化学的捕捉部位44、44’が高分子ヒドロゲル40、40’の表面にわたって形成されるよう、化学的捕捉剤で官能化され得る。一例では、クリックケミストリを使用し、アルキン-PEG-ビオチンリンカ又はアルキン-ビオチン遊離アジド基を、高分子ヒドロゲル40、40’上の遊離アジドに共有結合させることができる。別の例では、増幅プライマー42、42’に相補的なプライマーは、このプライマーに付着した化学的捕捉剤(例えば、ビオチン又は結合対の別のメンバー)を有してもよい。これらの相補的なプライマーは、いくつかの増幅プライマー42、42’にハイブリダイズされ、化学的捕捉部位44、44’が形成され得る。
【0133】
別の例では、化学的捕捉剤は、マイクロコンタクト印刷、エアロゾル印刷などを使用して望ましい場所に堆積され、化学捕捉部位44、44’が形成され得る。更に別の例では、マスク(例えば、フォトレジスト)は、化学的捕捉剤が堆積され、したがって化学的捕捉部位44、44’が形成される空間/場所を画定するために使用され得る。次に、(例えば、リフトオフ、溶解、又は別の好適な技術を介して)化学的捕捉剤が堆積され得、マスクが除去される。この例では、化学的捕捉部位44、44’は、化学的捕捉剤の単層又は薄層を含み得る。
【0134】
図3Cは、パターン化された対向する配列決定表面32、32’を含むフローセル24の断面図を示す。一例では、これらの表面32、32’の各々は、基材26B、26B’上に調製され得、次に、基材26B、26B’は、フローセル24の例を形成するために互いに(例えば、材料50を介して)付着し得る。
【0135】
図3Cに示す例では、フローセル24は、多層基材26B、26B’を含み、その各々は、支持体34、34’及び支持体34、34’上に配置されたパターン化された材料36、36’を含む。パターン化された材料36、36’は、隙間領域46、46’によって分離されたくぼみ48、48’を画定する。
【0136】
図3Cに示す例では、パターン化された材料36、36’はそれぞれ、支持体34、34’に配置される。くぼみ48、48’及び隙間領域46、46’を形成するために選択的に堆積、又は堆積及びパターン化され得る任意の材料が、パターン化された材料36、36’に使用され得ることを理解すべきである。
【0137】
一例として、無機酸化物は、蒸着、エアロゾル印刷、又はインクジェット印刷を介して支持体34、34’に選択的に適用され得る。好適な無機酸化物の例としては、酸化タンタル(例えば、Ta)、酸化アルミニウム(例えば、Al)、酸化シリコン(例えば、SiO)、酸化ハフニウム(例えば、HfO)などが挙げられる。
【0138】
別の例として、樹脂は支持体34、34’に塗布されてからパターン化され得る。好適な堆積技術としては、化学蒸着、ディップコーティング、ダンクコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、液滴分配、超音波スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷などを含む。好適なパターニング技術としては、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ(nanoimprint lithography:NIL)、スタンピング技術、エンボス技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術などが挙げられる。好適な樹脂のいくつかの例としては、多面体オリゴマーシルセスキオキサン樹脂ベースの樹脂、非多面体オリゴマーシルセスキオキサンエポキシ樹脂、ポリ(エチレングリコール)樹脂、ポリエーテル樹脂(例えば、開環エポキシ)、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、メタクリレート樹脂、アモルファスフルオロポリマー樹脂(例えば、BellexからのCYTOP(登録商標))、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0139】
本明細書で使用される場合、「多面体オリゴマーシルセスキオキサン」(Hybrid Plasticsから商標名POSS(登録商標)として市販)という用語は、シリカ(SiO)とシリコーン(RSiO)とのハイブリッド中間体(例えば、RSiO1.5)である化学組成物を指す。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの例は、Kehagiasら、「Microelectronic Engineering」第86巻(2009年)第776~778頁に記載されているものであり得、これは、参照によりその全体が組み込まれる。一例では、組成物は、化学式[RSiO3/2を有する有機シリコン化合物であり、R基は同じであっても異なってもよい。多面体オリゴマーシルセスキオキサンの例示的なR基としては、エポキシ、アジド(azide)/アジド(azido)、チオール、ポリ(エチレングリコール)、ノルボルネン、テトラジン、アクリレート、及び/又はメタクリレート、あるいは、更に、例えば、アルキル、アリール、アルコキシ、及び/又はハロアルキル基を含む。本明細書に開示される樹脂組成物は、モノマーユニットとして1つ以上の異なるケージ又はコア構造を含み得る。平均ケージ含有量は、合成期間に調整され得、及び/又は精製方法によって制御され得、モノマーユニットのケージサイズの分布は本明細書に開示される実施例で使用され得る。
【0140】
図3Cに示すように、パターン化された材料36、36’は、それぞれそこに画定されたくぼみ48、48’、及び隣接するくぼみ48、48’を分離する隙間領域46、46’を含む。規則的、繰り返し、及び非規則的なパターンを含む、くぼみ48、48’の多くの異なるレイアウトが想定され得る。一例では、くぼみ48、48’は、密なパッキング及び改善された密度のために六角形グリッドに配置される。他のレイアウトは、例えば、直線的な(長方形)レイアウト、三角形のレイアウトなどを含み得る。いくつかの例では、レイアウト又はパターンは、行及び列をなしているくぼみ48、48’のx-y形式であり得る。他のいくつかの例では、レイアウト又はパターンは、くぼみ48、48’及び/又は隙間領域46、46’の繰り返し配置であり得る。更に他の例では、レイアウト又はパターンは、くぼみ48、48’及び/又は隙間領域46、46’のランダムな配置であり得る。パターンは、ストライプ、渦巻き、線、三角形、長方形、円、円弧、照合印、格子縞、対角線、矢印、正方形、及び/又は斜交平行を含んでもよい。
【0141】
くぼみ48、48’のレイアウト又はパターンは、画定された領域におけるくぼみ48、48’の密度(例えば、くぼみ48、48’の数)により特徴付けられ得る。例えば、くぼみ48、48’は、1mm当たり約200万の密度で存在し得る。例えば、1mm当たり約100、1mm当たり約1,000、1mm当たり約10万、1mm当たり約100万、1mm当たり約200万、1mm当たり約500万、1mm当たり約1000万、1mm当たり約5000万、又はそれ超又はそれ未満の密度を含む、異なる密度に調整され得る。パターン化された材料36、36’のくぼみ48、48’の密度は、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間にあり得ることを更に理解すべきである。例として、高密度アレイは、約100nm未満で分離されたくぼみ48、48’を有するものとして特徴付けられ得、中密度アレイは、約400nmから約1μm分離されたくぼみ48、48’を有するものとして特徴付けられ得、低密度アレイは、約1μmを超えて分離されたくぼみ48、48’を有するものとして特徴付けられ得る。密度の例が提供されるが、任意の好適な密度を使用することができることを理解すべきである。くぼみ48、48’の密度は、くぼみ48、48’の深さに部分的に依存してもよい。いくつかの事例では、くぼみ48、48’間の間隔が、本明細書に記載された例よりも更に大きいことが望ましい場合がある。
【0142】
くぼみ48、48’のレイアウト又はパターンは、更に又は代替として、平均ピッチ、又はくぼみ48、48’の中心から隣接するくぼみ48、48’の中心までの間隔(中心間間隔)若しくは1つのくぼみ48、48’の端部から隣接するくぼみ48、48’の端部までの間隔(端から端までの間隔)に関して、特徴付けてもよい。パターンは、平均ピッチ周辺の変動係数が小さくなるように規則的である場合もあれば、パターンが不規則である場合もあり、その場合、変動係数は比較的大きくなる可能性がある。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、おおよそ約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、又は約100μmであってもよい。くぼみ48、48’の特定のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択された低い値の1つと高い値の1つとの間であり得る。一例では、くぼみ48、48’は、約1.5μmのピッチ(中心間の間隔)を有する。平均ピッチ値の例が提供されるが、他の平均ピッチ値も使用され得ることを理解すべきである。
【0143】
各くぼみ48、48’のサイズは、その体積、開口面積、深さ、及び/又は直径によって特徴付けられ得る。
【0144】
各くぼみ48、48’は、フローセル24に導入される少なくともいくらかの流体を隔離する(confining)ことができる任意の容積を有し得る。最小又は最大の容量は、例えば、フローセル24の下流での使用に期待されるスループット(例えば、多重度)、解像度、ヌクレオチド、又は分析物の反応性に対応するように選択され得る。例えば、体積は、少なくとも約1×10-3μm、少なくとも約1×10-2μm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ超であり得る。代替的又は更に、体積は、最大で約1×10μm、最大で約1×10μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.1μm、又はそれ未満であり得る。
【0145】
各くぼみの開口部が占有する面積は、上記の体積と同様の基準に基づいて選択され得る。例えば、各くぼみ開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm、少なくとも約1×10-2μm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ超であり得る。代替的又は更に、面積は、最大で約1×10μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.1μm、最大で約1×10-2μm、又はそれ未満であり得る。各くぼみの開口部が占有する面積は、上記の値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0146】
各くぼみ48、48’の深さは、高分子ヒドロゲル40、40’の一部を収容するのに十分な大きさであり得る。一例では、深さは、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ超であり得る。代替的又は更に、深さは、最大で約1×10μm、最大で約100μm、最大で約10μm、又はそれ未満であり得る。いくつかの例では、深さは約0.4μmである。各くぼみ48、48’の深さは、上で示された値よりも大きいか、それよりも小さいか、又はそれらの間であり得る。
【0147】
いくつかの事例では、各くぼみ48、48’の直径又は長さ及び幅は、少なくとも約50nm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μm、又はそれ超であり得る。代替的又は更に、直径又は長さ及び幅は、最大で約1×10μm、最大で約100μm、最大で約10μm、最大で約1μm、最大で約0.5μm、最大で約0.1μm、又はそれ未満(例えば、約50nm)であり得る。いくつかの例では、直径又は長さ及び幅は約0.4μmである。各くぼみ48、48’の直径又は長さ及び幅は、上で指定された値よりも大きい、小さい、又はそれらの間であり得る。
【0148】
この例では、配列決定表面32、32’の構成要素のうちの少なくともいくつかは、くぼみ48、48’に導入され得る。配列決定表面32、32’の構成要素によって占有されていないくぼみ48、48’内のあらゆる空間は、フローチャネル28の一部であると見なされ得ることを理解すべきである。
【0149】
図3Cに示す例では、高分子ヒドロゲル40、40’は、くぼみ48、48’の各々の中に配置される。高分子ヒドロゲル40、40’は、図3Bを参照して説明されるように適用されてもよく、その結果、高分子ヒドロゲル40、40’は、くぼみ48、48’に存在し、周囲の隙間領域46、46’には存在しない。
【0150】
図3Cに示す例では、プライマー42、42’は、各くぼみ48、48’内の高分子ヒドロゲル40、40’にグラフトされてもよい。プライマー42、42’は、図3Bを参照して説明されるように適用されてもよく、したがって、周囲の隙間領域46、46’ではなく、高分子ヒドロゲル40、40’にグラフトされる。
【0151】
図3Cに示す例では、化学的捕捉部位44、44’は、隙間領域46、46’のうちの少なくともいくつかに適用される化学的捕捉剤である。例えば、化学的捕捉剤は、マイクロコンタクト印刷、エアロゾル印刷などを使用して隙間領域46、46’のうちの少なくともいくつかに堆積され、化学的捕捉部位44、44’が形成され得る。更に別の例では、マスク(例えば、フォトレジスト)は、化学的捕捉剤が堆積され、したがって化学的捕捉部位44、44’が形成される空間/場所を画定することに使用され得る。次に、(例えば、リフトオフ、溶解、又は別の好適な技術を介して)化学的捕捉剤が堆積され得、マスクが除去される。
【0152】
他の例では、化学的捕捉部位44、44’は、高分子ヒドロゲル40、40’の遊離官能基(例えば、プライマー42、42’に結合されないもの)に付着された化学的捕捉剤である。更に他の例では、化学的捕捉部位44、44’は、増幅プライマー42、42’のいくつかにハイブリダイズされるプライマーに付着された化学的捕捉剤である。これらの例では、化学的捕捉部位44、44’はくぼみ48、48’に存在し、隙間領域46、46’に存在しない。
【0153】
本明細書に開示される化学的捕捉剤の任意の例は、図3Cに示す例において使用されてもよい。化学的捕捉剤は、部分的に固体支持体12がどのように官能化されるかに応じて、ビオチン又は結合対の別のメンバーであってもよい。
【0154】
図3B及び図3Cに示すように、基材26Aと26A’又は26Bと26B’は、配列決定表面30と30’又は32と32’がそれらの間に画定されたフローチャネル28で互いに向き合うように互いに付着する。
【0155】
基材26Aと26A’又は26Bと26B’は、隙間領域46、46’のいくつか又は全てで互いに結合され得る。基材26Aと26A’又は26Bと26B’との間に形成される結合は、化学的結合、又は機械的結合(例えば、留め具を使用するなど)であり得る。
【0156】
レーザー結合、拡散結合、陽極結合、共晶結合、プラズマ活性化結合、ガラスフリット結合、又は当技術分野で知られている他の方法などの任意の好適な技術を使用し、基材26A及び26A’又は26B及び26B’を共に結合し得る。一例では、スペーサ層(例えば、材料50)を使用し、基板26A及び26A’又は26B及び26B’を結合し得る。スペーサ層は、基板26Aと26A’又は26Bと26B’の少なくともある部分を共にシールする任意の材料50であり得る。いくつかの例では、スペーサ層は、結合を助ける放射線吸収材料であり得る。
【0157】
示されていないが、フローセルが1つの配列決定表面を有するように、蓋が基材26A’又は26B’のうちの1つに結合されてもよいことを理解されたい。
【0158】
ビオチン-ストレプトアビジン結合を有する標的材料を含む方法及びキット
【0159】
切断組成物の第1の例を利用する方法の例は、概して、ライブラリ断片14、14’、14’’をフローセル24に導入することであって、ライブラリ断片14、14’、14’’がストレプトアビジンコーティング固体支持体12に付着している、導入することと、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物をフローセル24に導入することであって、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物が、約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬と、残部として塩緩衝液と、を含む、導入することと、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物を約60℃~約70℃の範囲の温度でフローセル内でインキュベートすることを許容し、それにより、ライブラリ断片14、14’、14’’のうちの少なくともいくつかを固体支持体12から放出させ、フローセル24の表面上の増幅プライマー42、42’に播種させることと、を含む。
【0160】
本方法を行う前に、ライブラリ断片14、14’、14’’を調製し、固体支持体12に付着させてもよい。一例では、複合体10A又は10Bは、核酸試料と、複数の固体支持体12を含むライブラリ調製流体とを使用して調製されてもよい。
【0161】
いくつかの例では、図1Aを参照して説明するように、ライブラリ調製流体中の固体支持体12の各々は、例えば、そこに付着したアダプター(アダプター18など)を有してもよい。タグ付け及びライブラリ調製は、複合体10Aを形成するために、図1Aに定義されるように行われ得る。核酸試料70、固体支持体12、部分的なYアダプター、及びトランスポサーゼ酵素は、複合体10Aを形成することが望まれるまで、別々の流体に含有されてもよい。
【0162】
他の例では、ライブラリ調製流体中の固体支持体12の各々は、例えば、支持体に付着したオリゴヌクレオチドを有してもよい。いくつかの例では、PCRを含まないヌクレオチドライブラリ調製は、固体支持体12とは別に行われてもよく、次に、調製したライブラリ断片は、固体支持体12の表面でビオチン20を介して付着したオリゴヌクレオチド(プライマー)にハイブリダイズされ得、この一例は図1Bを参照して説明される。ビオチン20を介して固体支持体12上に結合したオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる前に、断片が一本鎖断片に変性される限り、ライブラリ調製のその他の例(例えば、PCRを含む)も使用されてもよい。
【0163】
固体支持体12(この例では、複合体10A、10B)に付着したライブラリ断片14、14’、14’’は、流体に添加されてもよい。流体は、任意の緩衝水溶液であってもよい(例えば、弱酸及びその塩のうちの1つ(共役塩基)又は弱塩基及びその塩のうちの1つ(共役酸)。緩衝水溶液中の塩濃度は、複合体10A、10Bが望ましい配列決定表面に流れることができるように調整されてもよい。固体支持体12と流体との間の密度差が大きいほど、複合体10A、10Bの沈降時間はより速くなる。例として、流体は、トリス-HCl緩衝液又は0.5×生理食塩水クエン酸ナトリウム(saline sodium citrate:SSC)緩衝液であってもよい。
【0164】
次いで、複合体10A、10Bを含有する流体をフローセル24に導入してもよい。フローセル24に導入されると、複合体10A、10B及び捕捉部位44、44’は各々結合対のメンバーを含むため、複合体10A、10Bは、捕捉部位44、44’に付着することができる。いくつかの例では、結合対は、ビオチン-ストレプトアビジンである。捕捉部位44及び/又は44’は、複合体10A、10Bのうちの少なくともいくつかを固定化する。
【0165】
流体中のいくつかの複合体10A、10Bは捕捉されなくてもよく、これらの複合体10A、10Bは、更なる処理の前にフローセル24から除去されることを理解されたい。フローセル24から流体及び任意の非固定化複合体10A、10Bを除去する前に、所定の時間を経過させてもよい。一例では、所望の数の固定化された複合体10A、10Bを得るために、所定の時間は、約5分間~約30分間の範囲であってもよい。より長いインキュベーション時間も使用され得る。
【0166】
次いで、この方法の例は、フローセル24から、流体及び捕捉されていない複合体10A、10Bを洗浄することを含む。洗浄は、洗浄流体をフローセル24に導入するステップを含み得る。フローは、沈降せず、配列決定表面30、30’又は32、32’で固定化された任意の複合体10A、10B(又は他の標的材料)を、フローセル24の出口ポートを通して押し出してもよい。複合体10A、10B(又は他の標的材料)と配列決定表面30、30’又は32、32’の捕捉部位44、44’との間の固定化機構(例えば、結合対、ハイブリダイゼーション、共有結合など)は、沈降及び固定化された任意の複合体10A、10B(又は他の標的材料)が出口フローの一部になることを防止してもよい。
【0167】
この方法は、切断組成物の第1の例をフローセル24に導入することを含む。本明細書に開示される切断組成物の第1の例のいずれの例を使用してもよい。
【0168】
切断組成物の第1の例は、約60℃~約70℃の範囲の温度でフローセル24内でインキュベートされることが許容される。一例では、温度は、約65℃である。一例では、切断組成物の第1の例は、約2分間~約5分間の範囲の時間にわたってフローセル24内でインキュベートされることが許容される。一例では、この時間は、約5分間である。
【0169】
インキュベーション中、切断組成物の第1の例は、ライブラリ断片14、14’、14’’を固体支持体12に保持するビオチン-ストレプトアビジン結合を、効率的に破壊する。したがって、切断組成物の第1の例は、ライブラリ断片14、14’、14’’のうちの少なくともいくつかを、固体支持体12から放出させる。インキュベーション温度では、放出ライブラリ断片14、14’、14’’もまた、フローセル24の配列決定表面30、30’又は32、32’上で増幅プライマー42、42’に播種することができる。したがって、ライブラリ断片14、14’、14’’放出及び播種は、単一の試薬で達成されてもよい。
【0170】
フローセル24のそれぞれの配列決定表面30、30’又は32、32’のプライマー42、42’は、放出された断片14、14’、又は14’を播種し得る。播種は、断片14、14’、又は14’’のアダプター18又は22の第1又は第2の配列と、それぞれの配列決定表面30、30’又は32、32’のプライマー42、42’の相補的配列との間のハイブリダイゼーションによって達成される。播種は、切断組成物インキュベーション温度で行ってもよい。
【0171】
フローセル24内の14、14’、又は14’’の播種が位置する場所は、部分的に、プライマー42、42’がどのように付着するかに応じて異なる。パターン化されていない配列決定表面30、30’を有するフローセル24の例では、放出された配列決定可能な核酸断片14、14’、又は14’’を、凹状領域38、38’の高分子ヒドロゲル40、40’にわたって播種する。パターン化された配列決定表面32、32’を有するフローセル24の例では、放出された配列決定可能な核酸断片14、14’、又は14’’を、くぼみ48、48’の各々の中の高分子ヒドロゲル40、40’にわたって播種する。
【0172】
ビオチン-ストレプトアビジン結合対を、複合体10A、10Bを捕捉部位44、44’に捕捉するためにも使用した場合、切断組成物の第1の例は、捕捉部位44、44’から固体支持体12を放出することもできる。
【0173】
したがって、方法のいくつかの例では、ストレプトアビジンコーティング固体支持体12のうちの少なくともいくつかは、フローセル24の表面上のビオチン捕捉部位44、44’に結合するようになり、ビオチン-ストレプトアビジン切断組成物(切断組成物の第1の例)をフローセル24内でインキュベートすることを許容することが、同様に、結合したストレプトアビジンコーティング固体支持体12のうちの少なくともいくつかをビオチン捕捉部位44、44’から放出させる。断片14、14’、14’’が播種された後の固体支持体12の除去は、下流のクラスタリング及び配列決定のための清潔な表面にとって望ましい。
【0174】
複合体10A、10Bを捕捉部位44、44’に捕捉するために異なる結合対が使用される場合、別個の放出組成物をフローセル24に導入して、捕捉部位44、44’から固体支持体12を除去してもよい。
【0175】
次いで、この方法の例は、インキュベーション後にビオチン-ストレプトアビジン切断組成物(切断組成物の第1の例)をフローセル24からすすぎ、それにより、ストレプトアビジンコーティング固体支持体12及びあらゆる未播種ライブラリ断片14、14’、14’’を除去することを含んでもよい。フローは、あらゆる放出された固体支持体12及びあらゆる未播種ライブラリ断片14、14’、14’’を、フローセル24の出口ポートを通して押し出してもよい。配列決定表面30、30’又は32、32’の断片14、14’、14’’と増幅プライマー42、42’との間の固定化機構(例えば、ハイブリダイゼーション)は、任意の断片14、14’、14’’が出口フローの一部になることを防止してもよい。
【0176】
本明細書に記載の方法のこの例を行うためのキットは、ストレプトアビジンコーティング固体支持体と、一方の末端にビオチンを付着させたアダプター配列であって、ビオチンがストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着するようになる、アダプター配列と、断片化されてアダプター配列に付着するようになるゲノム配列を含む試料流体と、約10体積%~約50体積%のホルムアミド試薬及び残部として塩緩衝液を含むビオチン-ストレプトアビジン切断組成物(切断組成物の第1の例)と、を含んでもよい。キットはまた、部分的なYアダプター、トランスポサーゼ酵素などの他のライブラリ調製構成要素を含んでもよく、それらの各々は、複合体10A、10Bなどのいずれかの例を形成することが望まれるまで、別個の流体に含有されてもよい。キットのいくつかの例はまた、フローセル24を含んでもよい。
【0177】
デスチオビオチン化ストレプトアビジン結合を有する標的材料を含む方法及びキット
【0178】
切断組成物の第2の例を利用する方法の例は、概して、デスチオビオチン化ライブラリ断片をフローセル24に導入することであって、デスチオビオチン化ライブラリ断片がストレプトアビジンコーティング固体支持体12に付着している、導入することと、切断組成物をフローセル24に導入することであって、切断組成物が約18℃~約30℃の範囲の温度であり、切断組成物が遊離ビオチン及び塩緩衝液を含む、導入することと、切断組成物の温度を約60℃~約70℃まで上昇させ、それにより、ライブラリ断片14、14’、14’’のうちの少なくともいくつかを固体支持体12から放出させ、フローセル24の表面上の増幅プライマー42、42’に播種させることと、を含む。
【0179】
この方法の例を行う前に、ライブラリ断片14、14’、14’’を調製し、図1A又は図1Bを参照して本明細書に記載されるように、固体支持体12に付着させてもよい。
【0180】
固体支持体12(すなわち、この例では複合体10A、10B)に付着したライブラリ断片14、14’、14’’は、流体に添加されてもよい。流体は、任意の緩衝水溶液であってもよい(例えば、弱酸及びその塩のうちの1つ(共役塩基)又は弱塩基及びその塩のうちの1つ(共役酸)。
【0181】
複合体10A、10Bを含有する流体をフローセル24に導入してもよい。フローセル24に導入されると、複合体10A、10B及び捕捉部位44、44’は各々結合対のメンバーを含むため、複合体10A、10Bは、捕捉部位44、44’に付着することができる。いくつかの例では、結合対は、デスチオビオチン-ストレプトアビジンである。捕捉部位44及び/又は44’は、複合体10A、10Bのうちの少なくともいくつかを固定化する。
【0182】
流体中のいくつかの複合体10A、10Bは捕捉されなくてもよく、これらの複合体10A、10Bは、更なる処理の前にフローセル24から除去されることを理解されたい。フローセル24から流体及び任意の非固定化複合体10A、10Bを除去する前に、所定の時間を経過させてもよい。一例では、所望の数の固定化された複合体10A、10Bを得るために、所定の時間は、約5分間~約30分間の範囲であってもよい。より長いインキュベーション時間も使用され得る。
【0183】
次いで、この方法の例は、フローセル24から、流体及び捕捉されていない複合体10A、10Bを洗浄することを含む。洗浄は、洗浄流体をフローセル24に導入するステップを含み得る。フローは、沈降せず、配列決定表面30、30’又は32、32’で固定化された任意の複合体10A、10Bを、フローセル24の出口ポートを通して押し出してもよい。複合体10A、10B(又は他の標的材料)と配列決定表面30、30’又は32、32’の捕捉部位44、44’との間の固定化機構は、沈降及び固定化された任意の複合体10A、10Bが出口フローの一部になることを防止してもよい。
【0184】
この方法は、切断組成物の第2の例をフローセル24に導入することを含む。本明細書に開示される切断組成物の第2の例のうちいずれかの例を使用してもよい。
【0185】
切断組成物の第2の例は、約18℃~約30℃の範囲の温度で導入される。この温度で、かつ切断組成物の第2の例における塩の存在下で、デスチオビオチンは安定化され、固体支持体12からのその解離は、遊離ビオチンがまた存在しても低減又は防止される。導入された切断組成物は、流体フロー及び/又は混合が少なくとも実質的に停止するように沈降させられる。
【0186】
次いで、切断組成物の温度を、約60℃~約70℃の範囲の温度まで上昇させる。一例では、切断組成物の温度は、約65℃まで上昇する。この温度で、かつ遊離ビオチンの存在下で、デスチオビオチンは不安定化され、固体支持体12から解離される。これはライブラリ断片14、14’、14’’を放出する。これらの温度では、放出ライブラリ断片14、14’、14’’もまた、フローセル24の配列決定表面30、30’又は32、32’上で増幅プライマー42、42’に播種することができる。ライブラリ断片14、14’、14’’が放出される場合、流体フロー及び/又は混合は行われないため、放出ライブラリ断片14、14’、14’’は、それらが放出される固体支持体で12の又はその近くで、フローセル表面上に拡散及び播種することができる。したがって、ライブラリ断片14、14’、14’’放出及び拡散依存性空間播種は、単一の試薬で達成されてもよい。
【0187】
デスチオビオチン-ストレプトアビジン結合対を、複合体10A、10Bを捕捉部位44、44’に捕捉するためにも使用した場合、切断組成物の第2の例は、捕捉部位44、44’から固体支持体12を放出することもできる。
【0188】
したがって、方法のいくつかの例では、ストレプトアビジンコーティング固体支持体12のうちの少なくともいくつかは、フローセル24の表面上のビオチン捕捉部位44、44’に結合し、既に導入されたデスチオビオチン-ストレプトアビジン切断組成物(切断組成物の第2の例)の温度上昇は、結合したストレプトアビジンコーティング固体支持体12のうちの少なくともいくつかをデスチオビオチン捕捉部位44、44’から放出させる。断片14、14’、14’’が播種された後の固体支持体12の除去は、下流のクラスタリング及び配列決定のための清潔な表面にとって望ましい。
【0189】
複合体10A、10Bを捕捉部位44、44’に捕捉するために異なる結合対が使用される場合、別個の放出組成物をフローセル24に導入して、捕捉部位44、44’から固体支持体12を除去してもよい。
【0190】
次いで、この方法の例は、播種後にデスチオビオチン-ストレプトアビジン切断組成物(切断組成物の第2の例)をフローセル24からすすぎ、それにより、ストレプトアビジンコーティング固体支持体12及びあらゆる未播種ライブラリ断片14、14’、14’’を除去することを含んでもよい。フローは、あらゆる放出された固体支持体12及びあらゆる未播種ライブラリ断片14、14’、14’’を、フローセル24の出口ポートを通して押し出してもよい。配列決定表面30、30’又は32、32’の断片14、14’、14’’と増幅プライマー42、42’との間の固定化機構(例えば、ハイブリダイゼーション)は、任意の断片14、14’、14’’が出口フローの一部になることを防止してもよい。
【0191】
本明細書に記載の方法のこの例を行うためのキットは、ストレプトアビジンコーティング固体支持体12と、一方の末端にデスチオビオチンを付着させたアダプター配列であって、デスチオビオチンがストレプトアビジンコーティング固体支持体に付着するようになる、アダプター配列と、断片化されてアダプター配列に付着するようになるゲノム配列を含む試料流体と、遊離ビオチン及び塩緩衝液を含むデスチオビオチン-ストレプトアビジン切断組成物(切断組成物の第2の例)と、を含んでもよい。キットはまた、部分的なYアダプター、トランスポサーゼ酵素などの他のライブラリ調製構成要素を含んでもよく、それらの各々は、複合体10A、10Bなどのいずれかの例を形成することが望まれるまで、別個の流体に含有されてもよい。キットのいくつかの例はまた、フローセル24を含んでもよい。
【0192】
2段階放出を含む方法及びキット
【0193】
上述のように、本明細書に開示されるいくつかの例は、ライブラリ調製ビーズ11から配列決定可能なライブラリ断片14、14’を放出するための二重放出機構を利用する。二重放出機構は、切断部位64及びスプリント68を利用する。図4を参照してより詳細に説明されるように、好適な切断剤を使用して切断部位64を除去し、熱を使用してスプリント68を除去してもよい。切断条件が2つの直交プロセス(一方のプロセスが他方のプロセスを開始しない、それに影響を及ぼさない、又はそれを別様に妨害しない)を含むため、この例は、ライブラリ断片14、14’の制御放出を可能にする。
【0194】
二重機構放出は、フローセル24の配列決定表面30、30’又は32、32’で行われてもよく、又は試験管などの別の反応容器内で行われてもよい。
【0195】
この方法の例は、図4に概略的に示されており、概して、複数の調製済ライブラリ調製ビーズ11’を反応容器(図示せず)に導入することであって、調製済ライブラリ調製ビーズ11’の各々が、固体支持体12と、固体支持体12に付着した複数の架橋分子72、72’と、を含み、架橋分子72、72’の各々が、二本鎖DNA断片16及び16’と、転移鎖58、58’であって、その5’末端で二本鎖DNA断片の各鎖16、16’にそれぞれ付着しており、各転移鎖58、58’が、3’トランスポゾン末端配列62A、62A’、第1のアダプター配列18、18’、切断部位64、64’、及び5’連結末端配列66、66’を含み、第1のアダプター配列18、18’及び5’連結末端配列66、66’が切断部位64、64’に隣接している、転移鎖58、58’と、第2のアダプター22、22’であって、その3’末端で二本鎖DNA断片の各鎖16、16’にそれぞれ付着している、第2のアダプター22、22’と、切断部位64、64’をスプリントするように、第1のアダプター配列18、18’の少なくとも一部分及び5’連結配列66、66’の少なくとも一部分にハイブリダイズされたスプリント配列68、68’と、を含む、導入することと、調製済ライブラリ調製ビーズ11’を切断剤74に曝露して切断部位64、64’を除去することであって、これにより、複数の架橋分子72、72’がスプリント68、68’を介して固体支持体12に付着したままになる、除去することと、反応容器をスプリント68、68’及び二本鎖DNA断片16、16’の解離温度まで加熱することと、を含む。
【0196】
調製済ライブラリ調製ビーズ11’を図4の左側に示す。調製済ライブラリ調製ビーズ11’は、図2A図2Cを参照して説明した方法を使用して調製されてもよい。したがって、架橋分子72、72’の各々は、配列決定可能な核酸断片14、14’(断片16、16’、5’末端近傍の3’トランスポゾン末端配列62A、62A’、及び対向する末端のそれぞれのアダプター18、22又は18’、22’’)、並びに切断部位64、64’、5’連結末端配列66、66’、及びスプリント68、68’を含む。
【0197】
一組の架橋分子72、72’が図4の固体支持体12上に示されているが、単一の固体支持体12は、複数組の架橋分子72、72’を含んでもよいことを理解されたい。
【0198】
架橋分子72、72’及び固体支持体12から配列決定可能な核酸断片14、14’の放出を開始するために、本方法は、調製済ライブラリ調製ビーズ11’を切断剤74に曝露することを最初に含む。使用される切断剤74は、転移鎖58、58’の切断部位64、64’に依存するであろう。切断部位64、64’が化学的切断部位である場合、調製済ライブラリ調製ビーズ11’を切断剤74に曝露することは、化学的切断剤を反応容器に導入することを含む。一例として、過ヨウ素酸塩を使用して、1,2-ジオール化学的切断部位を切断してもよい。切断部位64、64’が酵素的切断部位である場合、調製済ライブラリ調製ビーズ11’を切断剤に曝露することは、酵素的切断剤を反応容器に導入することを含む。例として、USER酵素を使用してデオキシウラシルヌクレオチドを切断し、RNaseを使用してリボヌクレオチドを切断してもよい。切断部位64、64’が光切断可能な切断部位である場合、調製済ライブラリ調製ビーズ11’を切断剤74に曝露することは、切断を活性化する波長の光を反応容器に照射することを含む。一例として、ニトロベンジルリンカは、365nmの紫外線光に曝露されてもよい。
【0199】
化学的若しくは酵素的切断剤のインキュベーション又は光曝露は、切断部位64、64’を切断するのに十分な時間にわたって行われてもよい。インキュベーション時間は、部分的に、化学的又は酵素的切断剤の反応性に依存してもよく、光曝露時間は、光源(例えば、その強度)に依存してもよい。一例では、インキュベーション時間は、約30分間~約3時間の範囲である。別の例では、光曝露は、約30秒間~約2分間の範囲であってもよい。次いで、化学的又は酵素的切断剤を反応容器から除去してもよく、又は光照射を停止してもよい。次いで、調製済ライブラリ調製ビーズ11’を洗浄して(例えば、水、緩衝液などで)、切断された切断部位64、64’、いくつかの事例では、化学的又は酵素的切断剤を除去してもよい。
【0200】
図4の中心に示されるように、切断部位64、64’の切断後、配列決定可能な断片14、14’は、固体支持体12に付着したままである。スプリント68、68’は切断剤74の影響を受けず、したがって、配列決定可能な断片14、14’は、架橋され、固体支持体12に付着したままである。
【0201】
架橋分子72、72’及び固体支持体12から配列決定可能な核酸断片14、14’の放出を完了するために、本方法は、次いで、調製済ライブラリ調製ビーズ11’を熱に曝露することを含む。選択された温度は、アダプター18、18’及び5’連結末端配列66、66’からスプリント68、68’を解離することができ、並びに配列決定可能な断片14、14’の任意の二本鎖部分を解離することができる。一例では、加熱のための温度は、約60℃~約70℃の範囲である。
【0202】
調製済ライブラリ調製ビーズ11’からの配列決定可能なライブラリ断片14、14’の二重機構放出がフローセル24上で発生する場合、複数の調製済ライブラリ調製ビーズ11’のうちの少なくともいくつかは、フローセル24の表面に(例えば、フローセル24に導入された場合、捕捉部位44、44’を介して)固定化され、本方法は、調製済ライブラリ調製ビーズ11’を切断剤74に曝露する前に、非固定化ライブラリ調製ビーズ11’をフローセルから除去することを更に含む。
【0203】
加えて、調製済ライブラリ調製ビーズ11’からの配列決定可能なライブラリ断片14、14’の二重機構放出がフローセル24上で発生する場合、断片14、14’の空間的放出が達成される。最終的な放出機構は熱であるため、流体フロー及び/又は慣性混合は存在しないか又は最小限で存在し、したがって、放出された断片14、14’は、断片14、14’が放出される固体支持体12の近傍にあるプライマー42、42’に播種され得る。
【0204】
配列決定
【0205】
フローセル24上で断片14、14’、14’’放出が発生する場合、断片14、14’、14’’は、フローセル配列決定表面30、30’又は32、32’上においてプライマー42、42’に播種されてもよい。断片14、14’、14’’放出が別の反応容器中で発生する場合、放出された断片14、14’、14’’は、固体支持体12(図4の右手側に示されるように、それに付着した5’連結末端配列66を有する)から分離されてもよく、ライブラリ断片14、14’、14’’は、プライマー42、42’に播種するためにフローセル24に導入されてもよい。
【0206】
断片14、14’、14’’が放出され、播種されると、フローセル24は、下流分析の準備が整う。
【0207】
播種されたライブラリ断片14、14’、14’’は、クラスタ生成を使用して増幅することができる。
【0208】
クラスタ生成の一例では、断片14、14’、又は14’’は、高性能再現性DNAポリメラーゼを使用して3’伸長によって、ハイブリダイズされたプライマー42、42’からコピーされる。元の断片14、14’、又は14’’は変性され、コピーは配列決定表面30、30’又は32、32’に固定化されて残る。固定化されたコピーを増幅するために、等温ブリッジ増幅又は何らかの他の形態の増幅が使用され得る。例えば、コピーされた鋳型はループオーバーして隣接する相補的プライマー42、42’にハイブリダイズし、ポリメラーゼはコピーされた鋳型をコピーして二本鎖架橋を形成し、構造は変性して2本の一本鎖を形成する。これらの2本の鎖は、ループオーバーして隣接する相補的プライマー42、42’にハイブリダイズし、再度伸長して、2つの新しい二本鎖ループを形成する。このプロセスを、等温変性及び増幅のサイクルによって各鋳型コピーに対して繰り返して、密集したクローンクラスタを作り出す。二本鎖架橋の各クラスタが変性される。一例では、逆方向鎖は、特異的な塩基切断によって除去され、順方向鋳型ポリヌクレオチド鎖を残す。クラスタ化により、配列決定表面30、30’又は32、32’に沿っていくつかの鋳型ポリヌクレオチド鎖が形成される。このクラスタ化の例はブリッジ増幅であり、行われ得る増幅の一例である。排除増幅(Examp)ワークフロー(Illumina Inc.)などの他の増幅技術が使用され得ることを理解すべきである。
【0209】
鋳型ポリヌクレオチド鎖上の相補的配列にハイブリダイズする配列決定プライマーを導入してもよい。この配列決定プライマーは、鋳型ポリヌクレオチド鎖を配列決定の準備ができた状態にする。鋳型の3’末端及び任意のフローセル結合プライマー20(コピーに付着しない)は、配列決定反応との干渉を防止するために、特に、望ましくないプライミングを防止するために、ブロックされてもよい。
【0210】
配列決定を開始するために、組込み(incorporation)混合物がフローセル24に加えられ得る。一例では、組込み混合物は、液体キャリア、ポリメラーゼ、及び蛍光標識したヌクレオチドを含む。蛍光標識したヌクレオチドは、3’OHブロッキング基を含み得る。組込み混合物がフローセル24に導入されると、流体はフローチャネル28に入り、いくつかの例では、くぼみ48、48’(鋳型ポリヌクレオチド鎖が存在する)に入る。
【0211】
蛍光標識したヌクレオチドが鋳型に依存する方法で配列決定プライマーに追加され(それにより、配列決定プライマーを伸長し)、配列決定プライマーに追加されたヌクレオチドの順序及びタイプの検出が、鋳型の配列決定に使用され得る。より具体的には、ヌクレオチドのうちの1つは、それぞれのポリメラーゼにより、配列決定プライマーを伸長し鋳型ポリヌクレオチド鎖に相補的な新生鎖に組み込まれる。言い換えれば、フローセル24にわたる鋳型ポリヌクレオチド鎖のうちの少なくともいくつかにおいて、それぞれのポリメラーゼは、組込み混合物中のヌクレオチドのうちの1つによってハイブリダイズされた配列決定プライマーを伸長する。
【0212】
ヌクレオチドの組込みは、画像化イベントを通じて検出され得る。画像化イベント中に、照明システム(図示せず)が、それぞれの配列決定表面30、30’又は32、32’に励起光を提供してもよい。
【0213】
いくつかの例では、ヌクレオチドは、ヌクレオチドが配列決定プライマーに加えられると、更なるプライマー伸長を終結させる可逆的終結特性(例えば、3’OHブロッキング基)を更に含み得る。例えば、可逆的末端部分を有するヌクレオチド類似体が配列決定プライマーに加えられ、その結果、デブロッキング剤が送達されてこの部分を除去するまで、その後の伸長は起こり得ない。したがって、可逆的終端を使用する例の場合、検出が行われた後、デブロッキング試薬はフローセル24に送達され得る。
【0214】
洗浄は、様々な流体送達ステップの間で行ってもよい。次に、SBSサイクルをn回繰り返し、配列決定プライマーをnヌクレオチドによって伸長し、それにより、長さnの配列を検出することができる。
【0215】
いくつかの例では、順方向鎖が、配列決定され、除去され、次に、逆方向鎖が、本明細書に記載されるように構築され、配列決定されてもよい。
【0216】
SBSが詳細に説明されるが、本明細書に記載のフローセル24は、遺伝子型決定のために、又は他の化学的及び/又は生物学的用途において、他の配列決定プロトコルと共に利用され得ることを理解すべきである。いくつかの事例では、フローセル24のプライマー42、42’は、同時ペアエンド配列決定を可能にするように選択されてもよく、この場合、順方向鎖と逆方向鎖の両方が高分子ヒドロゲル40、40’上に存在し、各読み取りの同時塩基呼び出しを可能にする。順次及び同時ペアエンド配列決定により、ゲノム再配列及び反復配列要素、並びに遺伝子融合及び新規転写物の検出が容易になる。別の例では、本明細書に開示されるフローセル24は、オンセルライブラリ生成に使用されてもよい。
【0217】
本開示を更に説明するために、本明細書に例を示す。これらの例は、例示の目的で提供され、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。
非限定的な実施例
【実施例1】
【0218】
図1Aに示したものと同様の複合体を、平均直径3μmで調製した。複合体の固体支持体は、ThermoFisher ScientificのDYNABEADS(商標)M-280ストレプトアビジンビーズであった。特定のビーズ上の断片は、同じ長いDNA分子(ヒトゲノムから)由来のものであった。ライブラリ断片は、ビオチンオリゴ(biotin oligo)を介して固体支持体に付着した。ライブラリ断片は、インデックス配列と共にP5’及びP7配列を含み、読み取り1及び読み取り2配列を含んだ。
【0219】
複合体は、ドデシル硫酸ナトリウムにより生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液に組み込まれ、この流体は、非パターン化配列決定表面(P5及びP7プライマーを含む)及び蓋を含むフローセルにロードされた。非パターン化配列決定表面はまた、ビオチン捕捉部位を含んでいた。
【0220】
次に、フローセルは洗浄液で洗浄された。
【0221】
本明細書に開示される切断組成物の第1の実施例は、ホルムアミド及びクエン酸三ナトリウムを含む約40体積%のホルムアミド試薬と、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び生体適合性界面活性剤を含む約60体積%の塩緩衝液と、を含むように調製された。切断溶液をフローセル中に導入し、80℃で約20秒間インキュベートさせた。次いで、フローセルを20℃まで冷却し、その温度で約3分間維持した。
【0222】
次いで、フローセルを洗浄溶液で洗浄して、固体支持体及びあらゆる未播種放出ライブラリ断片を除去した。
【0223】
放出され播種されたライブラリ断片を、サイクル増幅によりクラスタへと増殖させた。次いで、クラスタをSytox greenで染色する。得られた画像(本明細書では再現しない)は、播種されたライブラリ断片が複合体の近傍で増幅されたことを示した。
【0224】
次に、配列決定をフローセル上で行った。配列決定結果は、長いDNA分子カバレッジが40%に近かったことを示した。これは、本明細書に開示される切断組成物の第1の実施例が、固体支持体からのライブラリ断片の効率的な放出をもたらしたことを示した。
【実施例2】
【0225】
本明細書に開示される第1の実施例に係るいくつかの異なる切断組成物は、ホルムアミド試薬(ホルムアミド及びクエン酸三ナトリウムを含む)及び塩緩衝液(塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び生体適合性界面活性剤を含む)を含むように調製された。各切断組成物における試薬及び緩衝液の割合を表1に示す。
【表1】
【0226】
フローセル表面P5及びP7プライマーを、TET QCプライマー(例えば、蛍光色素で標識された相補的P5及びP7(cP5及びcP7)プライマー)にハイブリダイズさせた。この実施例では、蛍光標識を、変性イベントのレポータとして使用した。試薬が変性を引き起こした場合、蛍光標識プライマーは表面を離れ、より低い蛍光強度が得られた。切断組成物で使用される、TET強度(蛍光)とホルムアミド試薬と割合とを図5に示す。図示されるように、ホルムアミド試薬が60体積%まで増加した場合、蛍光シグナルは減少した。これは、播種されたライブラリ断片が変性したことを示した。ホルムアミド試薬を70体積%まで増加させた場合、ビオチン-ストレプトアビジン結合を切断することができたが、表面P5/P7プライマーのハイブリダイゼーションは、室温でさえも安定ではなかったことが見出された。したがって、開示される実施例におけるホルムアミド試薬:塩緩衝液の体積比は、結合切断及び望ましい播種条件の両方を確実にするために、1:9~約1:1の範囲にわたる。
【実施例3】
【0227】
ThermoFisher Scientific製のDYNABEADS(商標)M-280ストレプトアビジンビーズは、ドデシル硫酸ナトリウムにより生理食塩水クエン酸ナトリウム緩衝液に組み込まれ、この流体は、非パターン化配列決定表面(P5及びP7プライマーを含む)及び蓋を含むフローセルにロードされた。非パターン化配列決定表面はまた、ビオチン捕捉部位を含んでいた。したがって、M-280ビーズは、ビオチン-ストレプトアビジン結合を介して表面上に固定化された。
【0228】
非パターン化配列決定表面を画像化し、表面上の固定化ビーズを、顕微鏡画像を使用して計数した。
【0229】
フローセルを、次いで、比較用切断剤(ホルムアミド及びクエン酸三ナトリウムを含むホルムアミド試薬)で洗浄した。比較用切断剤を65℃で2分間インキュベートさせた。非パターン化配列決定表面を画像化し、表面上の固定化ビーズを、顕微鏡画像を使用して計数した。
【0230】
フローセルは、次いで、ホルムアミド及びクエン酸三ナトリウムを含む約50体積%のホルムアミド試薬と、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び生体適合性界面活性剤を含む約50体積%の塩緩衝液と、を含む、本明細書に開示される切断組成物(切断剤例と称する)の第1の実施例により洗浄された。切断剤例を65℃で2分間インキュベートさせた。非パターン化配列決定表面を画像化し、表面上の固定化ビーズを、顕微鏡画像を使用して計数した。
【0231】
フローセルを切断剤例で再び洗浄し、画像化した。切断剤例を65℃で2分間再びインキュベートさせた。切断剤実施での第2の洗浄後、表面上の固定化ビーズを、顕微鏡画像を使用して計数した。
【0232】
洗浄前、比較用切断剤での洗浄後、切断剤例での第1の洗浄後、切断剤例での第2の洗浄後に、フローセル表面上で計数されたビーズの数を、図6に示す。
【0233】
予備洗浄では、溶液中のビーズの100%が、フローセル表面上に固定化された。比較用切断剤で洗浄した後、ビーズの15%未満が除去された。切断剤例での第1の洗浄後、ビーズの約85%が除去された。切断剤例での第2の洗浄後、ビーズの約90%が除去された。これらの結果は、本明細書に開示される切断混合物例が、ストレプトアビジン-ビオチン結合を破壊するのに有効であることを示している。
【実施例4】
【0234】
DNA断片を、デスチオビオチンを使用してThermoFisher Scientific製のDYNABEADS(商標)M-280ストレプトアビジンビーズに付着させた。デスチオビオチン化DNAの熱放出を、異なる温度で、かつ異なる条件下で(例えば、遊離ビオチン又は遊離デスチオビオチンの存在下で)試験した。
【0235】
遊離ビオチンと遊離デスチオビオチンとの混合物を、825mMのナトリウム塩水溶液中で調製した。第1の混合物は100μMのデスチオビオチンを含有し、第2の混合物は2.5μMのビオチンを含有し、第3の混合物は10μMのビオチンを含有した。
【0236】
対照試料を、いずれの混合物も用いずに25℃又は60℃のいずれかに曝露させた。試料例を、第1の混合物(100μMのデスチオビオチン)、第2の混合物(2.5μMのビオチン)、又は第3の混合物(10μMのビオチン)の存在下で、25℃又は60℃のいずれかに曝露させた。それぞれの処理後にビーズから放出されたDNAの割合を、定量的PCRによって決定した。結果を図7に示す。
【0237】
図7に示すように、デスチオビオチン化DNA断片の大半が、25℃及び60℃(対照)のいずれかの遊離ビオチン又は遊離デスチオビオチンの不在下でビーズから放出されなかった。同様に、デスチオビオチン化DNA断片の大半が、25℃の遊離デスチオビオチン又は遊離ビオチン(濃度関係なし)の存在下でビーズから放出されなかった。25℃にて第3の混合物(10μMの遊離ビオチン)へ曝露したビーズは、デスチオビオチン化DNA断片の約1.5%しか放出されず、最も低いDNA断片放出を呈した。対照的に、デスチオビオチン化DNA断片の約90%が、60℃で遊離デスチオビオチンの存在下でビーズから放出され(混合物1)、デスチオビオチン化DNA断片の95%超が、60℃で遊離ビオチンの存在下でビーズから放出された(濃度関係なし、混合物2及び3の結果を参照のこと)。より高いDNA断片放出が、60℃の遊離ビオチンの存在下で、25℃の遊離ビオチンの存在下よりもはるかに低い濃度で観察された。
【0238】
追記事項
【0239】
以下により詳細に考察される、前述の概念及び更なる概念の全ての組み合わせが、(かかる概念が相互に矛盾しなければ)本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図されることを理解されたい。具体的には、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部であると企図される。本明細書で明示的に用いられ、また参照により組み込まれる任意の開示においても出現し得る用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も一致する意味が与えられるべきであることも理解すべきである。
【0240】
いくつかの実施例を詳細に説明してきたが、開示された例は修正され得ることを理解すべきである。したがって、これまでの説明は非限定的なものであると考えるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】