(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-COV-2に対する特異的免疫を誘導するための薬剤の利用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/215 20060101AFI20230317BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230317BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230317BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230317BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230317BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230317BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230317BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230317BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230317BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230317BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230317BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20230317BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20230317BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230317BHJP
C07K 14/165 20060101ALN20230317BHJP
【FI】
A61K39/215
A61P11/00
A61P31/14
A61P37/04
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
A61K35/761
C12N15/50 ZNA
C12N15/861 Z
C12N7/01
C07K14/165
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520203
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 RU2022000047
(87)【国際公開番号】W WO2022197209
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522075140
【氏名又は名称】フェデラル ステート バジェタリー インスティテューション“ナショナル リサーチ センター フォー エピデミオロジー アンド マイクロバイオロジー ネームド アフター ザ オナラリー アカデミシャン エヌ.エフ.ガマレヤ”オブ ザ ミニストリー オブ ヘルス オブ ザ ロシアン フェデレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ズブコワ,オルガ ヴァディモヴナ
(72)【発明者】
【氏名】オザロフスカイア,タチアナ アンドレーヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ドルジコワ,インナ ヴァディモヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ポポーワ,オルガ
(72)【発明者】
【氏名】シチェブリアコフ,ドミトリー ウィークトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】グロウソワ,ダリア ミハイロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ザルラエワ,アリーナ シャミロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ツカバツリン,アミール イルダロビヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ツカバツリーナ,ナタリア ミハイロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】シシェルビニン,ドミトリー ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】エスマガムベトフ,イリアス ブラトビッチ
(72)【発明者】
【氏名】トカルスカヤ,エリザヴェータ アレクサンドロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ボティコフ,アンドレイ ジェンナデビッチ
(72)【発明者】
【氏名】エロコワ,アリーナ セルゲーヴナ
(72)【発明者】
【氏名】イザエヴァ,ファティマ マゴメドヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ニキテンコ,ナタリア アナトレヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ルベネッツ,ナデジダ レオニドヴナ
(72)【発明者】
【氏名】セミキン,アレクサンドル セルゲーヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ナロディツキー,ボリス サベリエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ログノフ,デニス ユーリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ギンツブルク,アレクサンドル レオニドヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ボリセヴィチ,セルゲイ ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】チェルネツォフ,ウラジーミル アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリュコフ,エフゲニー ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】バビラ,ウラジーミル フェドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】キタエフ,ドミトリー アナトレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ロギノヴァ,スヴェトラーナ ヤコヴレヴァ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA45
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB15
4C076BB25
4C076CC06
4C076CC35
4C076DD09
4C076DD23
4C076DD37
4C076DD49
4C076DD50Z
4C076DD67
4C076EE23
4C076GG06
4C076GG41
4C085AA03
4C085BA71
4C085DD84
4C085GG03
4C085GG10
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA17
4C087MA44
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZB09
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA29
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明群はバイオテクノロジー、免疫学及びウイルス学に関し、特に、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2によって引き起こされる疾患を予防するための薬剤に関する。このために、E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1、及び/又はE1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2、及び/又はE1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分3を含む薬剤の利用の6つの変異型が開発された。特許請求される構成成分は、個別でも組み合わせても使用される。本発明群は、生後1か月以上の小児においてSARS-CoV-2ウイルスに対する液性及び細胞性免疫応答の反応の発生を可能にする、安全で有効な薬剤の作製を提供する。また、本薬剤は成人の免疫応答に相当する液性免疫応答を誘導すると共に、呼吸器において増強された粘膜応答を誘導する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための使用。
【請求項2】
E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための使用。
【請求項3】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための使用。
【請求項4】
E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための使用。
【請求項5】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための使用。
【請求項6】
E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための使用。
【請求項7】
前記薬剤が呼吸器の粘膜における粘膜免疫応答の誘導を可能にする、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記薬剤が液体形態又は凍結乾燥形態で調製される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記薬剤の液体形態が、重量%で:
トリス 0.1831...0.3432
塩化ナトリウム 0.3313...0.6212
スクロース 3.7821..7.0915
塩化マグネシウム六水和物 0.0154...0.0289
EDTA 0.0029...0.0054
ポリソルベート-80 0.0378...0.0709
エタノール 95% 0.0004...0.0007
水 残り
の緩衝液を含有する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記薬剤の減圧凍結乾燥形態が、重量%で:
トリス 0.0180...0.0338
塩化ナトリウム 0.1044...0.1957
スクロース 5.4688...10.2539
塩化マグネシウム六水和物 0.0015...0.0028
EDTA 0.0003...0.0005
ポリソルベート-80 0.0037...0.0070
水 残り
の緩衝液を含有する、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記薬剤の構成成分(単数及び/又は複数)が鼻腔内及び/又は筋肉内投与を対象とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記薬剤が、5×10
9~5×10
10ウイルス粒子の用量での投与を対象とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記薬剤の構成成分が1週間を超える間隔での連続投与を対象とする、請求項3、5、6、9、10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記薬剤の構成成分が同時投与を対象とする、請求項3、5、6、9、10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記構成成分が異なるパッケージ内にある、請求項3、5、6、9、10のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、バイオテクノロジー、免疫学及びウイルス学に関する。特許請求される薬剤は、重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2によって引き起こされる疾患を予防するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
2019年12月に、中華人民共和国の湖北(Hubei)省において、SARS-CoV-2と命名された人獣共通感染症由来の新規のコロナウイルスが蔓延した。SARS-CoV-2により引き起こされる伝染病はコロナウイルス疾患-19と呼ばれ、COVID-19と略される。所与の疾患は、無症状及び軽症型と、敗血症及び多臓器系不全を伴うこともある重症型との両方で進行し得る。数か月以内に疾患は世界中に広がり、200を超える国に影響を与えた。2020年1月に、世界保健機関はSARS-CoV-2関連の大流行が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であると宣言し、3月にはこの疾患の蔓延をパンデミックであると表現した。2021年7月28日までに195百万を超える症例が確認され、4百万の人々が死亡した。
【0003】
COVID-19の持続的な大流行は、公衆衛生の究極の脅威を引き起こす。現在、SARS-CoV-2に対する安全で有効なワクチンの開発は、最も重要な世界的優先事項である。
【0004】
パンデミック開始の翌年内に、種々の製薬会社がCOVID-19に対するその候補ワクチンの変異型を提供した。
【0005】
製薬会社Pfizerは、バイオテクノロジー企業BioNTechと共同して、BNT162b2ワクチン(トジナメラン)を開発した。所与のワクチンは、SARS-CoV-2 Sタンパク質突然変異型をコードする修飾mRNAが封入された脂質ナノ粒子を表す。現時点で、このワクチンは成人及び12歳以上の小児に対して使用することが認められている(F.P. Polacketal. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. N Engl J Med 2020; 383: 2603-2615; www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/recommendations/adolescents.html)。
【0006】
製薬会社Modernaは、National Institute of Health(USA)と共同して、mRNA-1273ワクチンを開発した。このワクチンの活性成分は、脂質コーティングで包囲された、SARS-CoV-2 Sタンパク質をコードするmRNAである。現在、このワクチンの緊急使用は、18歳以上の成人に対して認められている。また、Modernaは12~17歳の小児に対して研究を実行しており、現在審査中である。現時点で、KidCOVEと呼ばれる6か月~12歳の小児を免疫化する研究が進行中である(L. A. Jackson etal. An mRNA Vaccine against SARS-CoV-2 - Preliminary Report. N Engl J Med 2020; 383:1920-1931;https://penntoday.upenn.edu/news/covid-vaccine-kids; https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04796896)。
【0007】
University of Oxfordは、製薬会社AstraZenecaと共同して、ChAdOx1 nCoV-19ベクターワクチン(AZD1222)を開発した。このワクチンの活性成分は、組織プラスミノーゲン活性化因子リーダー配列を伴うSARS-CoV-2ウイルスの全長Sタンパク質のコドン最適化コード配列(GenBank MN908947)を含むチンパンジーアデノウイルスChAdOx1である。ワクチン接種プロトコルは、28日間隔の2回免疫化を含む(M. Voysey et al. Safety and efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2: an interim analysis of four randomised controlled trials in Brazil, South Africa, and the UK. TheLancet. Vol. 397, Issue 10269, P99-111, 2021)。
【0008】
CanSino社は、SARS-CoV-2全長S糖タンパク質を発現する組換えヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)に基づいた、COVID-19に対するベクターワクチンを開発した。現在、ワクチンは、18歳以上の成人における緊急使用を対象としている(GenBankYP_009724390)(Feng-Cai Zhu et al. Immunogenicity and safety of a recombinant adenovirus type-5-vectored COVID-19 vaccine in healthy adults aged 18 years or older: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial. The Lancet. Vol. 369, Issue 10249, P479-488, 2020)。
【0009】
Johnson and Johnson及びJanssen Pharmaceutical Researchグループは、Beth Israel Deaconess Medical Centerと共同し、JanssenAdVac(登録商標)技術を実行して、いくつかの候補ワクチンを作製した。安全性及び有効性研究の実行後、候補ワクチンAd26.COV2.S(Ad26COVS1)を選択した。このワクチンの活性成分は、フューリン切断部位の突然変異及び2つのプロリン安定化突然変異を伴うSARS-CoV-2 Sタンパク質遺伝子を含む、E1及びE3領域の欠失を有する組換えアデノウイルスベクター血清型26である。ワクチンは、18歳以上の成人に対して緊急状態で利用され得る。現在、ティーンエイジャー及び出生直後からの小児におけるワクチン利用の研究が進行中である(J. Sadoff et al. Interim Results of a Phase 1-2a Trial of Ad26.COV2.S Covid-19 Vaccine. N Engl J Med, 2021 Jan 13.DOI: 10.1056 / NEJMoa2034201; https://www.janssenmd.com/janssen-covid19-vaccine/special-populations/pediatrics/use-of-janssen-covid19-vaccine-in-pediatric-participants)。
【0010】
Beijing Institute of Biological Products Co.では、COVID-19に対する不活化ワクチンが開発された。このワクチンの緊急使用は、18歳以上の成人において認められている。また、3~6歳、7~12歳、13~17歳の年齢グループの小児に対するこのワクチンの臨床研究に関する情報が公開されている。現在、研究は進行中である(https://www.who.int/news/item/07-05-2021-who-lists-additional-covid-19-vaccine-for-emergency-use-and-issues-interim-policy-recommendations; https://clinicaltrials.gov /ct2/show/NCT04917523?cond=covid-19+vaccine&age_v=5&draw=2&rank=10)。
【0011】
したがって、現在、COVID-19に対して1つのmRNA系ワクチン(Pfizer)だけが小児における使用のために承認されている。しかしながら、医師らにより、COVID-19診断で入院する若年患者の数は増加していることが気付かれている。若年集団の間の死亡率も上昇しており(https://www.paho.org/en/news/5-5-2021-hospitalizations-and-deaths-younger-people-soar-due-covid-19-paho-director-reports)、小児におけるCOVID-19の予防のためのワクチンの必要性がもたらされる。
【0012】
SARS-CoV-2コロナウイルスに対する防御免疫は、いくつかの一連の免疫系を活性化する。COVID-19に対する有効なワクチンは、液性免疫応答及び細胞性免疫応答の両方を誘導するであろうと思われる。その上、防御免疫の重要な要素は、ウイルス侵入ゲートである上咽頭における粘膜免疫(例えば、IgA抗体の発現により実行されるもの)の活性化であろう。
【0013】
したがって、本発明の背景では、主要な感染ゲートである呼吸器の粘膜を含む、小児においてSARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導することができる新規の薬剤の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の実行
特許請求される発明群の技術的課題は、生後1か月以上の小児においてSARS-CoV-2ウイルスに対する免疫応答(粘膜免疫応答を含む)を効果的に誘導するための薬剤の作製である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
技術的結果は、生後1か月以上の小児においてSARS-CoV-2ウイルスに対する液性及び細胞性免疫応答の反応の発生を可能にする、安全で有効な薬剤の作製にある。
【0016】
小児は未成熟の先天性及び適応免疫系を持って生まれ、これは小児の成長と共に発達し、記憶を獲得する。ヒトの誕生から思春期まで、免疫系は、その発達においていくつかの段階を経る。
【0017】
新生児の免疫系は抑制状態にある。食作用系は発達していない。非共有抗原の影響が母体の同種抗原によって大きく制限される場合、新生児のT細胞は成人の細胞とは大きく異なり、これは、母体内の生命の結果である。したがって、かなり早期の適応T細胞性免疫は、疫寛容原性の反応性、同種抗原認識の低下、及び非共有抗原に対する応答の弱さを特徴とする。新生児のB細胞も成人のB細胞とは大きく異なる。新生児のB細胞は、TACI、BCMA及びBAFF-R発現の低下、並びにCD40L及びIL-10に応答するIgG及びIgA産生の低下を有することが知られている(Kaur K, Chowdhury S, Greenspan NS, Schreiber JR. Decreased expression of tumor necrosis factor family receptors involved in humoral immune responses in preterm neonates. Blood. 2007 Oct 15;110(8):2948-54. doi: 10.1182/blood-2007-01-069245. Epub 2007 Jul 18. PMID: 17634409)。まとめると、これらの特性は、免疫グロブリンの種類の不完全な切換えと共に、液性免疫応答の抑制の一因となる。新生児及び2か月未満の乳児のB細胞は、成人と比較して、抗体の親和性成熟を制限する体細胞超変異の低下を実証する。また、早期生命段階における骨髄の間質細胞は、形質芽細胞の長期生存及び血漿細胞への分化を支援することができず、したがって、より年上の小児及び成人とは対照的に、免疫化後に産生されるIgG抗体はどれも急速に減少する(Pihlgren M, Friedli M, Tougne C, Rochat AF, Lambert PH, Siegrist CA. Reduced ability of neonatal and early-life bone marrow stromal cells to support plasmablast survival. J Immunol. 2006 Jan 1;176(1):165-72. doi: 10.4049/jimmunol.176.1.165. PMID: 16365407)。結果として、T細胞依存性抗原への初期応答に関する適応免疫系の有効性は、より年上の小児及び成人と比較して新生児でははるかに低い(A.K. Simon, G.A. Hollander, A. McMichael.Evolution of the immune system in humans from infancy to old age. Proc Biol Sci. 2015 Dec 22; 282(1821): 20143085. doi: 10.1098/rspb.2014.3085, PMCID: PMC4707740, PMID: 26702035)。
【0018】
乳児期において、免疫系は徐々に成熟する。母親が以前に回復した多数の感染症に対する非常に重要な初期防御は、母親から胎盤を介して、そして乳によって移行された受動IgG抗体によって提供される。
【0019】
次の発達段階は、母体抗体の破壊によって提供される。感染侵入への一次免疫応答はクラスM免疫グロブリンの合成によって発生し、免疫記憶を残さない。このようなタイプの免疫応答は感染症に対するワクチン接種の場合にも起こり、ワクチン再接種のみが、IgGクラス抗体の産生により二次免疫応答を形成する。
【0020】
小児は成長と共に外界との接触が増加する。徐々に、免疫反応はIgGクラス抗体の形成に切り換わる。しかしながら、多数の抗原に対する一次免疫応答は残存する(IgM合成)。局所免疫系は、依然として未成熟なままである。徐々に、IgG及びIgMの平均血中濃度は増大し、成人に相当するレベルに到達するが、IgAの血中レベルは依然として目標値に到達しない。
【0021】
免疫系の最後の発達段階は思春期である。性ステロイドの分泌の増大を背景として、リンパ系器官の容積が減少する。性ホルモンの分泌は、細胞性免疫連鎖の抑制を引き起こす(Shcheplyagina, L.A., Kruglova, I.V. Age peculiarities of immunity in children, Russian Medical Journal No. 23 of 11.11.2009, p. 1564)。
【0022】
したがって、SARS-CoV-2ウイルスに対する液性及び細胞性免疫応答の反応の発生を含むSARS-CoV-2ウイルスに対する免疫応答を効果的に誘導するために小児に対して利用するための薬剤の開発は、複雑な科学的課題である。
【0023】
小児がSARS-CoV-2に直面すると、ウイルスは最初に呼吸器の粘膜に影響を与える。これは、ウイルスと免疫系との間の相互作用が、最初に主に呼吸器及び口腔の粘膜において起こることを意味する。したがって、粘膜免疫の誘導は、医薬品の防御特性に影響を与える重要な因子である。
【0024】
技術のレベルに基づいて、成人対象ワクチンの小児への投与は、小児の免疫系が未成熟であるために、その有効性を低減し得ると提言することができる。しかしながら、行われた研究により、成人用量の10分の1の開発薬剤を小児へ投与すると、成人の免疫応答に相当する液性免疫応答が誘導されることが示された。この場合、これは予想外の結果である。
【0025】
また、若い動物において、開発薬剤の投与は、呼吸器の粘膜上のIgG抗体のレベルの上昇を引き起こすことが実証された。その上、免疫化プロトコルに薬剤の鼻腔内投与法を導入すると、これにより、粘膜上のIgG抗体の分泌がもたらされる。したがって、実行された研究の結果として、呼吸器において増強された粘膜応答を誘導する薬剤投与パターンが開発された。
【0026】
所与の技術的結果は、特許請求の範囲によって達成される:
【0027】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0028】
E1及びE3部位の欠失を有する組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0029】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位の欠失を有する組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0030】
E1及びE3部位の欠失を有する組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0031】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位の欠失を有する組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0032】
E1及びE3部位の欠失を有する組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位の欠失を有する組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0033】
特定の実施形態において:
本薬剤は、呼吸器の粘膜における粘膜免疫応答を誘導する。
【0034】
本薬剤は、液体形態又は凍結乾燥形態で調製される。
【0035】
そこにおいて、薬剤の液体形態は、以下の緩衝液(重量%)を含む:
トリス 0.1831...0.3432
塩化ナトリウム 0.3313...0.6212
スクロース 3.7821...7.0915
塩化マグネシウム六水和物 0.0154...0.0289
EDTA 0.0029...0.0054
ポリソルベート-80 0.0378...0.0709
エタノール 95% 0.0004...0.0007
水 残り
【0036】
そこにおいて、薬剤の減圧凍結乾燥(reduced lyophilized)形態は、以下の緩衝液(重量%)を含む:
トリス 0.0180...0.0338
塩化ナトリウム 0.1044...0.1957
スクロース 5.4688...10.2539
塩化マグネシウム六水和物 0.0015...0.0028
EDTA 0.0003...0.0005
ポリソルベート-80 0.0037...0.0070
水 残り
【0037】
特定の実施形態において、薬剤の構成成分(単数及び/又は複数)は、鼻腔内及び/又は筋肉内投与を対象とする。
【0038】
特定の実施形態において、薬剤は、5*109~5*1010ウイルス粒子の用量での投与を対象とする。
【0039】
特定の実施形態において、薬剤の構成成分は、1週間を超える間隔での連続投与を対象とするか、又は同時投与を対象とする。
【0040】
そこにおいて、薬剤の構成成分は、個々のパッケージ内にあることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図面の簡単な説明
【
図1】開発医薬品Ad26-CMV-S-CoV2によりマウスを免疫化した後、免疫化の前(1日目)及び研究の14日目の増殖性CD4+(А)及びCD8+(Б)Tリンパ球の百分率を説明する。ドットは、研究に参加している各動物についての値を示す。中央値は、各データ群について黒色線で示される。偏差は95%信頼区間を示す。記号
**は、1日目及び14日目の値の間の統計的有意差を示す(p<0.01、マンホイットニー検定)。Y軸 - 増殖性細胞の数(%) X軸 - 時間(日)
【
図2】開発医薬品Ad5-CMV-S-CoV2によりマウスを免疫化した後、免疫化の前(1日目)及び研究の14日目の増殖性CD4+(А)及びCD8+(Б)Tリンパ球の百分率を説明する。ドットは、研究に参加している各動物についての値を示す。中央値は、各データ群について黒色線で示される。偏差は95%信頼区間を示す。記号
*(p<0.05)及び
**(p<0.01)は、1日目及び14日目の値の間の統計的有意差を示す(マンホイットニー検定)。Y軸 - 増殖性細胞の数(%) X軸 - 時間(日)
【
図3】1x10
10ウイルス粒子の用量で開発医薬品によりボランティアを免疫化した後、ワクチン接種の前(1日目)並びに研究の21、28及び42日目のSARS-Cov2ウイルスSタンパク質のRBDドメインに特異的なIgG抗体の力価を説明する。ドットは、研究に参加している各ボランティアについての値を示す。抗体力価の幾何平均値は、各データ群について黒色線で表される。偏差は95%信頼区間を示す。21、28及び42日目の値の間の統計的有意差は括弧で示され、その上に、値p(ウィルコクソンの順位和検定)が示される(♯♯♯♯-p<0.0001)。UCは、所与のデータサンプル間の不確定の差異を意味する。ワクチン接種の前(1日目)の値と比較した21、28及び42日目の値の間の統計的有意差は、ウィルコクソンの順位和検定によって決定した(
****-p<0.0001)。Y軸 - 抗原特異的IgG抗体の力価; X軸 - 時間(日)。
【
図4】2x10
10ウイルス粒子の用量で開発医薬品によりボランティアを免疫化した後、ワクチン接種の前(1日目)並びに研究の21、28及び42日目のSARS-Cov2ウイルスSタンパク質のRBDドメインに特異的なIgG抗体の力価を説明する。ドットは、研究に参加している各ボランティアについての値を示す。抗体力価の幾何平均値は、各データ群について黒色線で表される。偏差は95%信頼区間を示す。21、28及び42日目の値の間の統計的有意差は括弧で示され、その上に、値p(ウィルコクソンの順位和検定)が示される(♯♯♯♯-p<0.0001)。UCは、所与のデータサンプル間の不確定の差異を意味する。ワクチン接種の前(1日目)の値と比較した21、28及び42日目の値の間の統計的有意差は、ウィルコクソンの順位和検定によって決定した(
****-p<0.0001)。Y軸 - 抗原特異的IgG抗体の力価; X軸 - 時間(日)。
【
図5】1x10
10ウイルス粒子の用量で開発医薬品によりボランティアを免疫化した後、免疫化の前(1日目)及び研究の28日目の増殖性CD4+(A)及びCD8+(Б)Tリンパ球の百分率を説明する。ドットは、研究に参加している各ボランティアについての値を示す。中央値は、各データ群について黒色線で示される。偏差は95%信頼区間を示す。記号
****は、1日目及び28日目の値の間の統計的有意差を示す(p<0.0001、ウィルコクソンの順位和検定に従う)。Y軸 - 増殖性細胞の数(%) X軸 - 時間(日)
【
図6】2x10
10ウイルス粒子の用量で開発医薬品によりボランティアを免疫化した後、免疫化の前(1日目)及び研究の28日目の増殖性CD4+(A)及びCD8+(Б)Tリンパ球の百分率を説明する。ドットは、研究に参加している各ボランティアについての値を示す。中央値は、各データ群について黒色線で示される。偏差は95%信頼区間を示す。記号
****は、1日目及び28日目の値の間の統計的有意差を示す(p<0.0001、ウィルコクソンの順位和検定に従う)。Y軸 - 増殖性細胞の数(%) X軸 - 時間(日)
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の実施形態
重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する免疫生物学的薬剤の開発の第1段階は、ワクチン抗原の選択であった。このプロセスの一部として文献調査を実施し、コロナウイルスSタンパク質は、候補ワクチンを作製するために最も有望な抗原であることが実証された。これは、ウイルス粒子の細胞への結合、融合及び侵入に関与する1型膜貫通糖タンパク質である。実証されるように、これは中和抗体の誘導因子である(Liang M et al, SARS patients-derived human recombinant antibodies to S and M proteins efficiently neutralize SARS-coronavirus infectivity. BiomedEnvironSci. 2005 Dec;18(6):363-74)。
【0043】
SARS-CoV-2Sタンパク質に対する免疫反応の最も効果的な誘導を達成するために、著者らは、発現カセットの複数の変異型を開発した。
【0044】
発現カセット配列番号1は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなる。CMVプロモーターは、多数の細胞型における構成的な発現を可能にする初期サイトメガロウイルス遺伝子のプロモーターである。しかしながら、CMVプロモーターにより管理される標的遺伝子発現の力は、細胞型に応じて異なる。さらには、CMVプロモーターの制御下での導入遺伝子発現レベルは、DNAメチル化に関連する遺伝子発現の抑制のために細胞培養時間の増加と共に低下することが示された[Wang W., Jia YL., Li YC., Jing CQ., Guo X., Shang XF., Zhao CP., Wang TY. Impact of different promoters, promoter mutation, and an enhancer on recombinant protein expression in CHO cells. // Scientific Reports - 2017. - Vol. 8. - P. 10416]。
【0045】
発現カセット配列番号2は、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなる。CAGプロモーターは、CMVプロモーターの初期エンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター及びキメライントロン(ニワトリβ-アクチン及びウサギβ-グロビン)を含む合成プロモーターである。実験的に、CAGプロモーターの転写活性はCMVプロモーターよりも高いことが示された[Yang C.Q., Li X.Y., Li Q., Fu S.L., Li H., Guo Z.K., Lin J.T., Zhao S.T. Evaluation of three different promoters driving gene expression in developing chicken embryo by using in vivo electroporation. // Genet. Mol. Res. - 2014. - Vol. 13. - P. 1270-1277]。
【0046】
発現カセット配列番号3は、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなる。EF1プロモーターは、ヒト真核生物翻訳伸長因子1β(EF-1α)のプロモーターである。このプロモーターは、広範な細胞型において構成的に活性である[PMID: 28557288. The EF‐1αpromoter maintains high‐level transgene expression from episomal vectors in transfected CHO‐K1 cells]。EF-1α遺伝子は、真核細胞において最も広範囲に広がるタンパク質の1つである伸長因子-1αをコードし、哺乳類細胞の全ての型において発現される。このEF-1αプロモーターは、多くの場合、ウイルスプロモーターが制御された遺伝子を発現することができない細胞において、そしてウイルスプロモーターが徐々に抑制される細胞において活性である。
【0047】
発現カセット配列番号4は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなる。
【0048】
SARS-CoV-2コロナウイルスSタンパク質遺伝子を人体に効果的に送達するために、アデノウイルス科に基づくベクター系を選択した。アデノウイルスベクターはあらゆる利点を有する:これらはヒト細胞において増殖することができず、これらは増殖性及び非増殖性細胞の両方に侵入し、これらは細胞性及び液性免疫応答を誘導することができ、これらは高レベルの標的抗原の発現を保証する。
【0049】
著者らは、種々の血清型のアデノウイルス科に基づいて、2つの構成成分を含む薬剤の変異型と、1つの構成成分を含む変異型とを開発した。したがって、薬剤の第1の構成成分又は一成分薬剤の投与後に起こり得るアデノウイルスベクター部分への免疫応答は先になって増大されることなく、二成分薬剤の利用の場合、又は一成分薬剤の反復投与が必要な場合(後者の場合、別のアデノウイルスに基づく薬剤が投与され得るので)に、ワクチン抗原に対する抗原特異的免疫応答の発生に影響を与えない。
【0050】
その上、開発薬剤は、SARS-CoV-2コロナウイルスに対する免疫応答の誘導のための薬剤の範囲を広げ、これは、集団の一部においてアデノウイルス科の一部の血清型に対する既存免疫(pre-immunity)の存在の問題に関する困難の克服を可能にすることになる。
【0051】
したがって、実行した研究の結果として、以下の技術的解決策が開発された。
【0052】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0053】
E1及びE3部位の欠失を有する組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0054】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位の欠失を有する組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0055】
E1及びE3部位の欠失を有する組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分を含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0056】
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位の欠失を有する組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0057】
E1及びE3部位の欠失を有する組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分1と、E1及びE3部位の欠失を有する組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の構成成分2とを表す組合せを含む薬剤の、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための利用。
【0058】
特定の実施形態において:
本薬剤は、呼吸器の粘膜における粘膜免疫応答を誘導する。
【0059】
本薬剤は、液体形態又は凍結乾燥形態で調製される。
【0060】
そこにおいて、薬剤の液体形態は、以下の緩衝液(重量%)を含む:
トリス 0.1831...0.3432
塩化ナトリウム 0.3313...0.6212
スクロース 3.7821...7.0915
塩化マグネシウム六水和物 0.0154...0.0289
EDTA 0.0029...0.0054
ポリソルベート-80 0.0378...0.0709
エタノール 95% 0.0004...0.0007
水 残り
【0061】
そこにおいて、薬剤の減圧凍結乾燥形態は、以下の緩衝液(重量%)を含む:
トリス 0.0180...0.0338
塩化ナトリウム 0.1044...0.1957
スクロース 5.4688...10.2539
塩化マグネシウム六水和物 0.0015...0.0028
EDTA 0.0003...0.0005
ポリソルベート-80 0.0037...0.0070
水 残り
【0062】
特定の実施形態において、薬剤の構成成分(単数及び/又は複数)は、鼻腔内及び/又は筋肉内投与を対象とする。
【0063】
特定の実施形態において、薬剤は、5*109~5*1010ウイルス粒子の用量での投与を対象とする。
【0064】
特定の実施形態において、薬剤の構成成分は、1週間を超える間隔での連続投与を対象とするか、又は同時投与を対象とする。
【0065】
そこにおいて、薬剤の構成成分は、個々のパッケージ内にあることが可能である。
【0066】
さらに、著者らは、-18℃よりも低い温度における凍結形態の貯蔵、及び+2℃~+8℃の温度における凍結乾燥物形態の貯蔵の両方を可能にする緩衝液の変異型を開発した。
【0067】
また、有効量で生物に投与することにより、生後1か月以上の小児において重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための薬剤の利用を開発した。
【0068】
開発薬剤は、呼吸器の粘膜において粘膜免疫応答を誘導することが示された。
【0069】
さらに、同様に1つの構成成分からなる薬剤を1回使用することもできる。
【0070】
ワクチン再接種は、ワクチン接種に使用された薬剤に関係なく、特許請求される薬剤のいずれかを用いて実施することができる。
【0071】
本発明の実施形態は、以下の実施例によって支持される。
【実施例】
【0072】
実施例1
組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムを含む発現ベクターの取得。
研究の第1段階では、ヒトアデノウイルス血清型26のゲノムと相同の2つの部位(2つの相同性アーム)、及びアンピシリン耐性遺伝子を含むプラスミド構築物pAd26-Endsの設計。1つの相同性アームは、ヒトアデノウイルス血清型26のゲノムの開始(左側逆位末端反復配列からE1部位まで)、及びpIXタンパク質を含むウイルスゲノムの配列である。第2の相同性アームは、ORF3 E4部位の後からゲノム末端までのヌクレオチド配列を含む。pAd26-Ends構築物は、CJSC「Evrogen」(Moscow)によって合成された。
【0073】
ウイルス粒子から単離されたヒトアデノウイルス血清型26のDNAをpAd26-Endsと混合した。pAd26-EndsとウイルスDNAとの間の相同組換えの結果として、E1部位が欠失されたヒトアデノウイルス血清型26のゲノムを含むpAd26-dlE1プラスミドが得られた。
【0074】
次に、得られたpAd26-dlE1プラスミドにおいて、標準的なクローニング法を用いて、ヒトアデノウイルス血清型26がHEK293細胞培養物において効果的に増殖できるように、オープンリーディングフレーム6を含む配列(ORF6-Ad26)をヒトアデノウイルス血清型5のゲノムからの類似配列で置換した。結果として、pAd26-dlE1-ORF6-Ad5プラスミドが得られた。
【0075】
次に、構築プラスミドpAd26-dlE1-ORF6-Ad5において標準的な遺伝子操作法を使用して、アデノウイルスゲノムのE3部位(遺伝子pVIIIとU-エクソンの間の約3321b.p.)を欠失させて、ベクターのパッキング能力を高めた。結果として、ヒトアデノウイルス血清型5のオープンリーディングフレームORF6を有し、且つE1及びE3部位の欠失を有するヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づいた組換えベクターpAd26-only-nullが得られた。
【0076】
さらに、著者らは、いくつかの発現カセット設計を開発した:
- 発現カセット配列番号1は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなり;
- 発現カセット配列番号2は、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなり;
- 発現カセット配列番号3は、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなる。
【0077】
プラスミド構築物pAd26-Endsに基づき、遺伝子操作法を用いて、発現カセット配列番号1、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ含むと共に、アデノウイルス血清型26ゲノムの相同性アームも含む構築物pArms-26-CMV-S-CoV2、pArms-26-CAG-S-CoV2、pArms-26-EF1-S-CoV2を得た。その後、構築物pArms-26-CMV-S-CoV2、pArms-26-CAG-S-CoV2、pArms-26-EF1-S-CoV2を相同性アーム間の唯一の加水分解部位で直線化し、各プラスミドを組換えベクターpAd26-only-nullと混合した。相同組換えの結果として、ヒトアデノウイルス血清型5のオープンリーディングフレームORF6を有し、且つE1及びE3部位の欠失を有する組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムを含み、発現カセット配列番号1、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ有する、pAd26-only-CMV-S-CoV2、pAd26-only-CAG-S-CoV2、pAd26-only-EF1-S-CoV2プラスミドが得られた。
【0078】
第4段階では、pAd26-only-CMV-S-CoV2、pAd26-only-CAG-S-CoV2、pAd26-only-EF1-S-CoV2プラスミドを特定の制限エンドヌクレアーゼで加水分解して、ベクター部分を除去した。得られたDNA調製物を使用して、HEK293培養細胞をトランスフェクトした。
【0079】
したがって、E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26領域がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムを含み、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターが得られた。
【0080】
実施例2
E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた、発現ベクターの形態の薬剤の取得。
所与の研究段階では、アニオン交換及び排除クロマトグラフィ方法により、実施例1で得られた発現ベクターを精製した。準備のできた懸濁液は、薬剤の液体形態のための緩衝液中又は薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中にアデノウイルス粒子を含有した。
【0081】
したがって、E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づいた以下の免疫生物学的薬剤が得られた:
1.E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号1を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad26-CMV-S-CoV2)。
2.E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号1を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad26-CMV-S-CoV2)。
3.E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号2を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad26-CAG-S-CoV2)。
4.E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号2を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad26-CAG-S-CoV2)。
5.E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号3を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad26-EF1-S-CoV2)。
6.E1及びE3部位が欠失され、そしてORF6-Ad26部位がORF6-Ad5により置換された組換えヒトアデノウイルス血清型26のゲノムに基づき、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号3を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad26-EF1-S-CoV2)。
【0082】
得られた免疫生物学的薬剤のそれぞれは、開発薬剤の変異型1及び変異型2の構成成分1である。
【0083】
実施例3
組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムを含む発現ベクターの取得。
研究の第1段階では、サルアデノウイルス血清型25のゲノムと相同の2つの領域(2つの相同性アーム)を含むpSim25-Endsプラスミド構築物の設計が開発された。1つの相同性アームは、サルアデノウイルス血清型25のゲノムの開始(左側逆位末端反復配列からE1部位まで)及びE1部位の末端からpIVa2タンパク質までの配列である。第2の相同性アームは、右側逆位末端反復配列を含むアデノウイルスゲノムの末端の配列を含む。pSim25-Ends構築物は、CJSC「Evrogen」(Moscow)によって合成された。
【0084】
ウイルス粒子から単離されたサルアデノウイルス血清型25のDNAをpSim25-Endsと混合した。pSim25-EndsとウイルスDNAとの間の相同組換えの結果として、E1部位が欠失されたサルアデノウイルス血清型25のゲノムを含むpSim25-dlE1プラスミドが得られた。
【0085】
次に、構築pSim25-dlE1プラスミドにおいて標準的な遺伝子操作法を使用して、アデノウイルスゲノムのE3部位(遺伝子12,5Kの開始から遺伝子14,7Kまでの3921b.p.)を欠失させて、ベクターのパッキング能力を高めた。結果として、E1及びE3部位が欠失されたサルアデノウイルス血清型25の全ゲノムをコードするpSim25-nullプラスミド構築物が得られた。
【0086】
さらに、著者らは、いくつかの発現カセット設計を開発した:
- 発現カセット配列番号4は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなり;
- 発現カセット配列番号2は、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなり;
- 発現カセット配列番号3は、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなる。
【0087】
次に、プラスミド構築物pSim25-Endsに基づいて遺伝子操作法を用いて、発現カセット配列番号4、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ含むと共に、サルアデノウイルス血清型25の相同性アームも含む構築物pArms-Sim25-CMV-S-CoV2、pArms-Sim25-CAG-S-CoV2、pArms-Sim25-EF1-S-CoV2を得た。その後、構築物pArms-Sim25-CMV-S-CoV2、pArms-Sim25-CAG-S-CoV2、pArms-Sim25-EF1-S-CoV2を相同性アーム間の唯一の加水分解部位で直線化し、各プラスミドを組換えベクターpSim25-nullと混合した。相同組換えの結果として、E1及びE3部位が欠失されたサルアデノウイルス血清型25の全ゲノムと、それぞれ発現カセット配列番号4、配列番号2又は配列番号3とを含む組換えプラスミドベクターpSim25-CMV-S-CoV2、pSim25-CAG-S-CoV2、pSim25-EF1-S-CoV2が得られた。
【0088】
第3段階では、pSim25-CMV-S-CoV2、pSim25-CAG-S-CoV2、pSim25-EF1-S-CoV2プラスミドを特定の制限エンドヌクレアーゼにより加水分解して、ベクター部分を除去した。得られたDNA調製物を使用して、HEK293培養細胞をトランスフェクトした。得られた材料を使用して、予備的な量の組換えアデノウイルス科を蓄積した。
【0089】
結果として、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子を含む組換えヒトアデノウイルス科血清型25が得られた:simAd25-CMV-S-CoV2(発現カセット配列番号4を含む)、simAd25-CAG-S-CoV2(発現カセット配列番号2を含む)、simAd25-EF1-S-CoV2(発現カセット配列番号3を含む)。
【0090】
したがって、E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムを含み、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターが得られた。
【0091】
実施例4
E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、配列番号4、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の薬剤の取得。
所与の研究段階では、アニオン交換及び排除クロマトグラフィ法を用いて、実施例3で得られた発現ベクターを精製した。準備のできた懸濁液は、薬剤の液体形態のための緩衝液中又は薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中にアデノウイルス粒子を包含した。
【0092】
したがって、E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づいた以下の免疫生物学的薬剤が得られた:
1.E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号4を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(simAd25-CMV-S-CoV2)。
2.E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号4を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad26-CMV-S-CoV2)。
3.E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号4を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(simAd25-CAG-S-CoV2)。
4.E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号2を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(simAd25-CAG-S-CoV2)。
5.E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号3を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(simAd25-EF1-S-CoV2)。
6.E1及びE3部位が欠失された組換えサルアデノウイルス血清型25のゲノムに基づき、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号3を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(simAd25-EF1-S-CoV2)。
【0093】
得られた免疫生物学的薬剤のそれぞれは、開発薬剤の変異型1の構成成分2及び開発薬剤の変異型3の構成成分1である。
【0094】
実施例5
組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムを含む発現ベクターの取得。
研究の第1段階では、ヒトアデノウイルス血清型5のゲノムと相同の2つの領域(2つの相同性アーム)を含むpAd5-Endsプラスミド構築物の設計が開発された。1つの相同性アームは、ヒトアデノウイルス血清型5のゲノムの開始(左側逆位末端反復配列からE1部位まで)及びpIXタンパク質を含むウイルスゲノムの配列である。第2の相同性アームは、ORF3 E4部位の後からゲノム末端までのヌクレオチド配列を含む。pAd5-Ends構築物は、CJSC「Evrogen」(Moscow)によって合成された。
【0095】
ウイルス粒子から単離されたヒトアデノウイルス血清型5のDNAをpAd5-Endsと混合した。pAd5-EndsとウイルスDNAとの間の相同組換えの結果として、E1部位が欠失されたヒトアデノウイルス血清型5のゲノムを含むpAd5-dlE1プラスミドが得られた。
【0096】
次に、構築pAd5-dlE1プラスミドにおいて標準的な遺伝子操作法を使用して、アデノウイルスゲノムのE3部位(遺伝子12,5Kの末端から配列U-エクソンの開始までの2685b.p.)を欠失させて、ベクターのパッキング能力を高めた。結果として、ゲノムのE1及びE3部位の欠失を有するヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づいた組換えプラスミドベクターpAd5-too-nullが得られた。さらに、著者らは、いくつかの発現カセット設計を開発した:
- 発現カセット配列番号1は、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなり;
- 発現カセット配列番号2は、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなり;
- 発現カセット配列番号3は、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルからなる。
【0097】
次に、プラスミド構築物pAd5-Endsに基づき、遺伝子操作法を用いて、発現カセット配列番号1、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ含むと共に、アデノウイルス血清型5のゲノムの相同性アームも含む構築物pArms-Ad5-CMV-S-CoV2、pArms-Ad5-CAG-S-CoV2、pArms-Ad5-EF1-S-CoV2を得た。
【0098】
その後、構築物pArms-Ad5-CMV-S-CoV2、pArms-Ad5-CAG-S-CoV2、pArms-Ad5-EF1-S-CoV2を相同性アーム間の唯一の加水分解部位で直線化し、各プラスミドを組換えベクターpAd5-too-nullと混合した。相同組換えの結果として、E1及びE3部位の欠失を有する組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムを含み、発現カセット配列番号1、配列番号2又は配列番号3をそれぞれ有するpAd5-too-CMV-S-CoV2、pAd5-too-GAC-S-CoV2、pAd5-too-EF1-S-CoV2プラスミドが得られた。
【0099】
第4段階では、pAd5-too-CMV-S-CoV2、pAd5-too-GAC-S-CoV2、pAd5-too-EF1-S-CoV2プラスミドを特定の制限エンドヌクレアーゼで加水分解して、ベクター部分を除去した。得られたDNA調製物を使用して、HEK293培養細胞をトランスフェクトした。得られた材料を使用して、予備的な量の組換えアデノウイルスを蓄積した。
【0100】
結果として、S SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子を含む組換えヒトアデノウイルス科血清型5が得られた:Ad5-CMV-S-CoV2(発現カセット配列番号1を含む)、Ad5-CAG-S-CoV2(発現カセット配列番号2を含む)、Ad5-EF1-S-CoV2(発現カセット配列番号3を含む)。
【0101】
したがって、E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムを含み、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターが得られた。
【0102】
実施例6
E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、配列番号1、配列番号2、配列番号3から選択される発現カセットが組み込まれた発現ベクターの形態の薬剤の取得。
所与の研究段階では、アニオン交換及び排除クロマトグラフィ法を用いて、実施例5で得られた発現ベクターを精製した。準備のできた懸濁液は、薬剤の液体形態のための緩衝液中又は薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中にアデノウイルス粒子を包含した。
【0103】
したがって、E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づいた以下の免疫生物学的薬剤が得られた:
1.E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号1を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad5-CMV-S-CoV2)。
2.E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号1を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad5-CMV-S-CoV2)。
3.E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号2を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad5-CAG-S-CoV2)。
4.E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、CAGプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号2を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad5-CAG-S-CoV2)。
5.E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号3を含む、薬剤の液体形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad5-EF1-S-CoV2)。
6.E1及びE3部位が欠失された組換えヒトアデノウイルス血清型5のゲノムに基づき、EF1プロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセット配列番号3を含む、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中の免疫生物学的薬剤(Ad5-EF1-S-CoV2)。
【0104】
得られた免疫生物学的薬剤のそれぞれは、開発薬剤の変異型1及び変異型3の構成成分2である。
【0105】
実施例7
緩衝液の取得。
開発薬剤の各構成成分は、緩衝液中の発現カセットを含む組換えアデノウイルスに基づいた薬剤である。
【0106】
本発明の著者らは、組換えアデノウイルス粒子の安定性を保証する緩衝液組成物を開発した。所与の溶液は、以下を含む:
1.溶液のpHを維持するために必要とされるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)。
2.必要とされるイオン強度及びモル浸透圧濃度を得るために添加される塩化ナトリウム。
3.凍結保護剤として使用されるスクロース。
4.二価カチオン源として必要とされる塩化マグネシウム六水和物。
5.フリーラジカル酸化の阻害剤として使用されるEDTA。
6.界面活性剤として使用されるポリソルベート-80。
7.フリーラジカル酸化の阻害剤として使用されるエタノール95%。
8.溶媒として使用される水。
【0107】
本発明の著者らは、薬剤の液体形態のため及び医薬品の凍結乾燥形態のための、2つの緩衝液変異型を開発した。
【0108】
薬剤の液体形態のための緩衝液中に含まれる物質の濃度を決定するために、実験群のいくつかの変異型を得た(表1)。得られた緩衝液のそれぞれに薬剤の構成成分の1つを添加した:
1.CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセットを有する組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づく免疫生物学的薬剤、1*1010ウイルス粒子。
2.CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセットを有する組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づく免疫生物学的薬剤、1*1010ウイルス粒子。
3.CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセットを有する組換えサルアデノウイルス血清型25に基づく免疫生物学的薬剤、1*1010ウイルス粒子。
【0109】
したがって、薬剤中に含まれるアデノウイルス科の血清型のそれぞれの安定性を試験した。得られた薬剤を-18℃及び-70℃の温度で3か月間貯蔵してから、解凍し、組換えアデノウイルス科の力価の変化を分析した。
【0110】
【0111】
実行された実験の結果は、組換えアデノウイルス科の力価が、-18℃及び-70℃の温度で3か月間、薬剤の液体形態のための緩衝液中で貯蔵した後に変化しないことを実証した。
【0112】
したがって、薬剤の液体形態のために開発された緩衝液は、以下の活性成分の範囲(重量%)において開発薬剤の全ての構成成分の安定性を保証する:
トリス:0.1831重量%...0.3432重量%;
塩化ナトリウム:0.3313重量%...0.6212重量%;
スクロース:3.7821重量%...7.0915重量%;
塩化マグネシウム六水和物:0.0154重量%...0.0289重量%;
EDTA:0.0029重量%...0.0054重量%;
ポリソルベート-80:0.0378重量%...0.0709重量%;
エタノール95%:0.0004重量%...0.0007重量%;
溶媒:残り
【0113】
薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中に含まれる物質の濃度を決定するために、実験群のいくつかの変異型を得た(表2)。得られた緩衝液のそれぞれに薬剤の構成成分の1つを添加した:
1.CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセットを有する組換えヒトアデノウイルス血清型26に基づく免疫生物学的薬剤、1*1010ウイルス粒子。
2.CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセットを有する組換えヒトアデノウイルス血清型5に基づく免疫生物学的薬剤、1*1010ウイルス粒子。
3.CMVプロモーター、SARS-CoV-2ウイルスSタンパク質の遺伝子、及びポリアデニル化シグナルを含む発現カセットを有する組換えサルアデノウイルス血清型25に基づく免疫生物学的薬剤、1*1010ウイルス粒子。
【0114】
したがって、薬剤中に含まれるアデノウイルス科の血清型のそれぞれの安定性を試験した。得られた薬剤を+2及び+8℃の温度で3か月間貯蔵してから、解凍し、組換えアデノウイルス科の力価の変化を分析した。
【0115】
【0116】
実行された実験の結果は、組換えアデノウイルス科の力価が、+2℃及び+8℃の温度で3か月間、薬剤の凍結乾燥形態のための緩衝液中で貯蔵した後に変化しないことを実証した。
【0117】
したがって、薬剤の凍結乾燥形態のために開発された緩衝液は、以下の活性成分の範囲において開発薬剤の全ての構成成分の安定性を保証する:
トリス:0.0180重量%...0.0338重量%;
塩化ナトリウム:0.1044重量%...0.1957重量%;
スクロース:5.4688重量%...10.2539重量%;
塩化マグネシウム六水和物:0.0015重量%...0.0028重量%;
EDTA:0.0003重量%...0.0005重量%;
ポリソルベート-80:0.0037重量%...0.0070重量%;
溶媒:残り
【0118】
実施例8
筋肉内投与の際に粘膜免疫応答を誘導する開発薬剤の能力の評価。
この研究のために、BALB/c系統の若いマウス(21~28日齢)を使用した。動物を10個の群に分配し、以下の薬剤を投与した:
1)Ad26-CMV-S-CoV2、筋肉内(i/m)、用量5x109v.p./100ul;21日後に、Ad26-CMV-S-CoV2、筋肉内(i/m)、用量5x109v.p./100ul。
2)Ad5-CMV-S-CoV2、i/m、用量5x109v.p./100ul;21日後に、Ad5-CMV-S-CoV2、i/m、用量5x109v.p./100ul。
3)simAd25-CMV-S-CoV2、i/m、用量5x109v.p./100ul;21日後に、simAd25-CMV-S-CoV2、i/m、用量5x109v.p./100ul
4)Ad26-null、i/m、用量5x109v.p./100ul;21日後に、Ad26-null、i/m、用量5x109v.p./100ul
5)Ad5-null、i/m、用量5x109v.p./100ul;21日後に、Ad5-null、i/m、用量5x109v.p./100ul
6)simAd25-null、i/m、用量5x109v.p./100ul;21日後に、simAd25-null、i/m、用量5x109v.p./100ul
7)Ad26-CMV-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量5x109v.p./100ul;21日後に、Ad26-CMV-S-CoV2 i/n、用量5x109v.p./100ul。
8)Ad5-CMV-S-CoV2、i/n、用量5x109v.p./100ul;21日後に、Ad5-CMV-S-CoV2、i/n、用量5x109v.p./100ul。
9)Ad26-CMV-S-CoV2、i/m、用量5x109v.p./100ul;21日後に、Ad26-CMV-S-CoV2 i/n、用量5x109v.p./100ul。
10)Ad5-CMV-S-CoV2、i/m、用量5x109v.p./100ul;21日後に、Ad5-CMV-S-CoV2、i/n、用量5x109v.p./100ul。
11)緩衝液
【0119】
最後の免疫化から14日後に、実験動物の気管支肺胞洗浄(BAL)において、ELISA法によりIgG及びIgA抗体の力価を決定した。
【0120】
そうするために:
1)ELISAのための96ウェルプレートのウェルに抗原(組換えRBD)を+4℃で16時間吸着させた。
2)非特異的結合を除去するために、TPBS中5%の乳を100ul/ウェルでプレートウェルに添加した。それを37℃の振とう機において1時間インキュベートした。
3)BALサンプルを25倍に希釈してから、2倍希釈法により希釈した。
4)50ulの各希釈血清サンプルをプレートウェルに添加した。
5)次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
6)インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
7)西洋わさびペルオキシダーゼと結合されたマウス免疫グロブリンに対する二次抗体を添加した。
8)次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
9)インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
10)次に、西洋わさびペルオキシダーゼの基質であり、反応の結果として着色化合物に変化するテトラメチルベンジジン(TMB)を添加した。硫酸の添加により15分後に反応を停止させた。次に、分光光度計を用いて、各ウェルにおいて450nmの波長で溶液の光学濃度(OD)を測定した。
【0121】
抗体の力価は、溶液の光学濃度が負の対照群よりも確実に高い最後の希釈度として決定した。得られた結果(幾何平均値)は、表3に示される。
【0122】
【0123】
得られた結果によると、開発薬剤の全ての変異型は、呼吸器の粘膜表面においてIgG抗体の力価の上昇を引き起こす。IgA抗体の発現は、薬剤の投与方法に依存する。動物が筋肉内、そして次に鼻腔内で順次免疫化されると、IgA抗体の最大力価が誘導される。
【0124】
したがって、実行された研究の結果として、小児の呼吸器の粘膜においてSARS-CoV-2ウイルスに対して粘膜免疫応答を誘導することができる免疫生物学的薬剤と、粘膜免疫応答の増強をもたらすこの薬剤の投与パターンとが開発された。
【0125】
実施例9
種々の齢の哺乳類において免疫応答を誘導する開発薬剤の能力の評価。
この研究のために、種々の齢のBALB/cの若いマウスを使用した。動物を5つの群に分配した:
1)15~18日齢のマウス
2)28~35日齢のマウス
3)50~60日齢のマウス
【0126】
ヒトアデノウイルス血清型5に基づいて開発された免疫生物学的薬剤(Ad5-CMV-S-CoV2)により、108v.p./50ulの用量で全ての動物を1回免疫化した。免疫化後21日目に、動物の血清中のIgG抗体の力価を測定した。そうするために:
1)ELISAのための96ウェルプレートのウェルに抗原(組換えRBD)を+4℃で16時間吸着させた。
2)非特異的結合を除去するために、TPBS中5%の乳を100ul/ウェルでプレートウェルに添加した。それを37℃の振とう機において1時間インキュベートした。
3)血清サンプルを50倍に希釈してから、2倍希釈法により希釈した。
4)50ulの各希釈血清サンプルをプレートウェルに添加した。
5)次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
6)インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
7)西洋わさびペルオキシダーゼと結合されたマウス免疫グロブリンに対する二次抗体を添加した。
8)次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
9)インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
10)次に、西洋わさびペルオキシダーゼの基質であり、反応の結果として着色化合物に変化するテトラメチルベンジジン(TMB)を添加した。硫酸の添加により15分後に反応を停止させた。次に、分光光度計を用いて、各ウェルにおいて450nmの波長で溶液の光学濃度(OD)を測定した。
【0127】
抗体の力価は、溶液の光学濃度が負の対照群よりも確実に高い最後の希釈度として決定した。得られた結果(幾何平均値)は、表4に示される。
【0128】
【0129】
したがって、提供されたデータから示されるように、開発された免疫生物学的薬剤は、種々の齢の成熟動物及び若い動物の両方において液性免疫応答の発生を誘導する。これにより、薬剤が種々の年齢区分の人々における利用に効果的であり得ると提言することが可能になる。
【0130】
実施例10
単回ワクチン接種後の細胞性免疫応答の評価のための、若いマウスにおける開発薬剤の免疫原性の研究。
免疫原性研究のために若いBALB/cマウス(21~28日齢)を使用した。動物を5つの群に分配し、以下の薬剤を1回投与した:
1.Ad26-CMV-S-CoV2、筋肉内(i/m)、用量1010vp/100ul;
2.Ad5-CMV-S-CoV2、筋肉内(i/m)、用量1010vp/100ul
【0131】
SARS-CoV-2の組換えSタンパク質による細胞の反復再刺激後に、インビトロで培養中のマウス脾臓から単離された増殖性CD4+及びCD8+リンパ球の量を評価することにより、細胞性免疫レベルを決定した。免疫化の前及び14日後に動物の脾臓を回収し、ficoll溶液密度勾配(1.09g/mL;PanEco)における遠心分離により、そこから単核細胞を単離した。次に、単離した細胞を蛍光染料CFSE(Invivogen、USA)で着色し、96ウェルプレートのウェルに播種した(2*105細胞/ウェル)。コロナウイルスSタンパク質を培地に添加する(最終タンパク質濃度1μg/ml)ことにより、インビトロ条件下でリンパ球の反復刺激を実行した。抗原が添加されないインタクト細胞を負の対照として使用した。
【0132】
増殖性細胞の%を決定するために、これらを、Tリンパ球CD3、CD4、CD8のマーカー分子に対する抗体(BDBioscienses、USA)で染色した。フローサイトフルオロメーターBD FACS AriaIII(BD Biosciences、USA)を使用して、細胞混合物中の増殖性(より少量の細胞着色剤CFSEを有する)CD4+及びCD8+Tリンパ球を決定した。コロナウイルスSタンパク質抗原で再刺激された細胞の分析中に得られた結果から、インタクト細胞の分析中に得られた結果を差し引くことにより、各サンプルにおいて得られた増殖性細胞の百分率を決定した。
【0133】
研究の1日目(免疫化前)及び14日目の、増殖性CD4+及びCD8+Tリンパ球の百分率の決定の結果(統計処理が行われる)は、
図1(Ad26-CMV-S-CoV2)及び
図2(Ad5-CMV-S-CoV2)に示される。
【0134】
得られたデータは、免疫化後14日目の抗原再刺激の後、開発薬剤によるマウスの単回免疫化により、増殖性CD4+及びCD8+Tリンパ球の百分率の確実な増大が可能になることを示した。
【0135】
したがって、開発された免疫生物学的薬剤によるマウスの単回免疫化は、高レベルのワクチン接種後細胞性免疫の形成を引き起こすことができるという結論を下すことができる。
【0136】
実施例11
種々の投与方法による若いマウスにおける開発薬剤の免疫原性の研究。
免疫原性研究のために若いBALB/cマウス(21~28日齢)を使用した。動物を5つの群に分配し、以下の薬剤を投与した:
3.Ad26-CMV-S-CoV2、筋肉内(i/m)、用量109vp/100ul
4.Ad26-CAG-S-CoV2、筋肉内、用量109vp/100ul
5.Ad26-EF1-S-CoV2、筋肉内、用量109vp/100ul
6.Ad5-CMV-S-CoV2、筋肉内、用量109vp/100ul
7.Ad5-CAG-S-CoV2、筋肉内、用量109vp/100ul
8.Ad5-EF1-S-CoV2、筋肉内、用量109vp/100ul
9.simAd25-CMV-S-CoV2、筋肉内、用量109vp/100ul
10.simAd25-CAG-S-CoV2、筋肉内、用量109vp/100ul
11.simAd25-EF1-S-CoV2、筋肉内、用量109vp/100ul
12.Ad26-CMV-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
13.Ad26-CAG-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
14.Ad26-EF1-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
15.Ad5-CMV-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
16.Ad5-CAG-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
17.Ad5-EF1-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
18.simAd25-CMV-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
19.simAd25-CAG-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
20.simAd25-EF1-S-CoV2、鼻腔内(i/n)、用量109vp/100ul
【0137】
21日後に動物の血液を採取し、血清を単離し、SARS-CoV-2コロナウイルスのSタンパク質に対するIgG抗体の力価をELISA法により決定した。そうするために:
1.ELISAのための96ウェルプレートのウェルに抗原を+4℃で16時間吸着させた。
2.非特異的結合を除去するために、TPBS中5%の乳を100ul/ウェルでプレートウェルに添加した。それを37℃の振とう機において1時間インキュベートした。
3.免疫化マウスの血清サンプルを2倍希釈法により希釈した。全体として、各サンプルの12個の希釈物を調製した。
4.50ulの各希釈血清サンプルをプレートウェルに添加した。
5.次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
6.インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
7.西洋わさびペルオキシダーゼと結合されたマウス免疫グロブリンに対する二次抗体を添加した。
8.次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
9.インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
10.次に、西洋わさびペルオキシダーゼの基質であり、反応の結果として着色化合物に変化するテトラメチルベンジジン(TMB)を添加した。硫酸の添加により15分後に反応を停止させた。次に、分光光度計を用いて、各ウェルにおいて450nmの波長で溶液の光学濃度(OD)を測定した。
【0138】
IgG抗体の力価は、溶液の光学濃度が負の対照群よりも確実に高い最後の希釈度として決定した。得られた結果(幾何平均値)は、表5に示される。
【0139】
【0140】
得られたデータに基づいて、開発薬剤により単回免疫化は、SARS-CoV-2糖タンパク質に対する液性免疫応答を誘導する。
【0141】
実施例12
種々の用量で若い動物に投与したときの開発薬剤の免疫原性の研究。
所与の研究の目的は、開発薬剤を種々の用量で若い動物に投与して、SARS-CoV-2のSタンパク質に対する液性免疫応答を評価することであった。
【0142】
開発薬剤の免疫原性を研究するために、C57/Bl6系統の若いマウス(3~4週齢)を使用した。動物を5つの群に分配し、以下の薬剤を28日の間隔で2回筋肉内に投与した。
1)Ad5-CMV-S-CoV2、5*109vp/100ul、
2)Ad5-CMV-S-CoV2、1010vp/100ul、
3)Ad5-CMV-S-CoV2、5*1010vp/100ul。
【0143】
21日後に動物の血液を採取し、血清を単離し、SARS-CoV-2コロナウイルスのSタンパク質に対するIgG抗体の力価をELISA法により決定した。そうするために:
1.ELISAのための96ウェルプレートのウェルに抗原を+4℃で16時間吸着させた。
2.非特異的結合を除去するために、TPBS中5%の乳を100ul/ウェルでプレートウェルに添加した。それを37℃の振とう機において1時間インキュベートした。
3.免疫化マウスの血清サンプルを100倍に希釈してから、2倍希釈法により希釈した。全体として、各サンプルの12個の希釈物を調製した。
4.50ulの各希釈血清サンプルをプレートウェルに添加した。
5.次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
6.インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
7.西洋わさびペルオキシダーゼと結合されたマウス免疫グロブリンに対する二次抗体を添加した。
8.次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
9.インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
10.次に、西洋わさびペルオキシダーゼの基質であり、反応の結果として着色化合物に変化するテトラメチルベンジジン(TMB)を添加した。硫酸の添加により15分後に反応を停止させた。次に、分光光度計を用いて、各ウェルにおいて450nmの波長で溶液の光学濃度(OD)を測定した。
【0144】
抗体の力価は、溶液の光学濃度が負の対照群よりも確実に高い最後の希釈度として決定した。得られた結果(幾何平均値)は、表6に示される。
【0145】
【0146】
得られたデータに基づいて、開発薬剤は、選択された用量の全範囲内で免疫原性を実証する。
【0147】
実施例13
種々の投与プロトコルによる若いマウスにおける開発薬剤の免疫原性の研究。
開発薬剤の免疫原性を研究するために、C57/Bl6系統の若いマウス(3~4週齢)を使用した。動物を5つの群に分配し、以下の薬剤を投与した:
1)Ad26-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、Ad26-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
2)Ad26-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、Ad5-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
3)Ad26-CMV-S-CoV2、i/n、109vp/100ul;3週間後に、Ad5-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
4)Ad26-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、simAd5-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
5)Ad5-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、Ad5-CMV-S-CoV2 i/m、108vp/100ul;
6)Ad5-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、Ad26-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
7)Ad5-CMV-S-CoV2、i/n、109vp/100ul;3週間後に、Ad26-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
8)Ad5-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、simAd5-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
9)simAd25-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、simAd5-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
10)simAd25-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、Ad5-CMV-S-CoV2 i/m、109vp/100ul;
11)simAd25-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul;3週間後に、Ad26-CMV-S-CoV2、i/m、109vp/100ul。
【0148】
21日後に動物の血液を採取し、血清を単離し、SARS-CoV-2コロナウイルスのSタンパク質に対するIgG抗体の力価をELISA法により決定した。そうするために:
1.ELISAのための96ウェルプレートのウェルに抗原を+4℃で16時間吸着させた。
2.非特異的結合を除去するために、TPBS中5%の乳を100ul/ウェルでプレートウェルに添加した。それを37℃の振とう機において1時間インキュベートした。
3.免疫化マウスの血清サンプルを2倍希釈法により希釈した。全体として、各サンプルの12個の希釈物を調製した。
4.50ulの各希釈血清サンプルをプレートウェルに添加した。
5.次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
6.インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
7.西洋わさびペルオキシダーゼと結合されたマウス免疫グロブリンに対する二次抗体を添加した。
8.次に、サンプルを37℃で1時間インキュベートした。
9.インキュベーションの後に、ウェルをリン酸緩衝液で3回洗浄した。
10.次に、西洋わさびペルオキシダーゼの基質であり、反応の結果として着色化合物に変化するテトラメチルベンジジン(TMB)を添加した。
11.硫酸の添加により15分後に反応を停止させた。次に、分光光度計を用いて、各ウェルにおいて450nmの波長で溶液の光学濃度(OD)を測定した。
【0149】
抗体の力価は、溶液の光学濃度が負の対照群よりも確実に高い最後の希釈度として決定した。得られた結果(幾何平均値)は、表7に示される。
【0150】
【0151】
得られた結果は、種々の投与プロトコルにより開発薬剤が若い動物においてSARS-CoV-2に対する液性免疫応答の発生を提供することを実証する。
【0152】
実施例14
小児のために重症急性呼吸器症候群ウイルスSARS-CoV-2に対する特異的免疫を誘導するための開発薬剤の利用の研究。
12~17歳の100人のボランティアが所与の研究に参加した。提言される免疫化プロトコルは、変異型1に従う医薬品の構成成分1及び構成成分2(Ad26-CMV-S-CoV2、Ad5-CMV-S-CoV2)の連続筋肉内投与を包含した。1人のボランティアは、新たに高血圧症と診断されたために構成成分1の投与の前に参加を中止し、それに応じて99人のボランティアが研究中の治療を開始した。1人は欠席のため、1人は有害事象(白血球減少)のため、1人は未知の病因の腸管感染(エンテロウイルス型)のため、1人は構成成分の投与の5日後に化膿性フルンケル(purulent furunculus)による入院のため、1人は入院(腸管感染)のため、そして1人はCOVIDのために構成成分2が投与されず、2人は参加を拒否した。それに応じて、91人のボランティアが両方のワクチン構成成分を受けた。
【0153】
ワクチン投与後に73人のボランティア(73.0%)において発生した205のAEを記録した。表8は、MedDRA辞書に従う器官別大分類(SOC)及び基本語(PT)によって、そして研究中の調製物及び重症度との関連によって、各群においてAEが存在したボランティアの数(占有率)を含む。χ2検定を用いて、そして必要に応じて、セルのいずれかの期待度数が5より低ければ、フィッシャーの正確確率検定を用いて、AE発生頻度の群間比較を行った。分析では、群間の個々のAEの頻度による統計的有意差は明らかにならなかった。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
研究の間、以下のカテゴリーの有害事象(AE)が観察された:
1)全身の障害及び投与部位状態 - 76AE:
用量の1/10:35症例
用量の1/5:22症例
2)全身反応 - 54AE
用量の1/10:29症例
用量の1/5:25症例
3)検査逸脱(Laboratory deviation) - 76AE
用量の1/10:44症例
用量の1/5:32症例
【0158】
以下のAEは、研究中の調製物と関連があった(関連性評価が「可能な(possible)」、「ほぼ確実(probable)」又は「確実(certain)」であるように):注射箇所の圧痛、インフルエンザ様症候群、疲労、亜熱性温度(subfebrile temperature)、ほてり、ワクチン注射直後に起こる鼻づまり、頭痛、咽頭炎、咳、関節痛、全身の脱力感、胃痛、パニック発作、好中球の減少、ビリルビンレベルの上昇。
【0159】
他のAEについては、関連性は「疑わしい(doubtful)」又は「関連性なし(no connection)」と決定された。研究中の調製物に対するアレルギー反応は観察されなかった。
【0160】
全体として、研究中に明らかになった有害事象は、ほとんどのワクチン薬に特徴的であると言うことができる。生命にかかわる有害事象の発生の症例は記録されなかった。
【0161】
実施例16
液性免疫レベルの評価に基づいた、開発医薬品による小児の免疫化の有効性の決定。
12~18歳の95人の小児が所与の研究に参加した。SARS-CoV-2ウイルスのSタンパク質のRBDドメインに特異的なIgG抗体の力価を評価することにより、液性免疫レベルを決定した。研究の参加者を2つの群に分けた:
1)1x1010ウイルス粒子/1mlの用量の、変異型1による医薬品の構成成分1及び構成成分2(Ad26-CMV-S-CoV2、Ad5-CMV-S-CoV2)の連続筋肉内投与(47人)。
2)2x1010ウイルス粒子/1mlの用量の、変異型1による医薬品の構成成分1及び構成成分2(Ad26-CMV-S-CoV2、Ad5-CMV-S-CoV2)の連続筋肉内投与(48人)。
【0162】
ワクチン接種前に研究の1日目に採取した同じボランティアのサンプルをリファレンスとして使用した。
【0163】
第1の群の抗原特異的IgGの力価を研究の21日目、28日目及び42日目に評価し、第2の群については研究の21日目及び28日目に評価した。
【0164】
SARS-CoV-2ウイルスのS抗原のRBDドメインに対するIgGの力価の決定を可能にするELISAのための検査システムを用いて、抗体の力価を決定した。
【0165】
RBD(100ng/ウェル)が予め吸着されたプレートを洗浄緩衝液で5回洗浄した。次に、100ulの正の対照及び100ulの負の対照をプレートウェルにデュプリケートで添加した。研究サンプルの一連の2倍希釈物を他のウェルに添加した(各サンプルにつき2回の繰返し)。プレートをフィルムで密封し、300rpmの速度で混合しながら+37℃で1時間インキュベートした。次に、ウェルを洗浄緩衝液の作用溶液で洗浄した。次に、モノクローナル抗体の結合体の100ulの作用溶液を各ウェルに添加し、プレートを接着剤フィルムで密封し、300rpmの速度で混合しながら+37℃で1時間インキュベートした。次に、ウェルを洗浄緩衝液の作用溶液で洗浄した。次に、100ulのクロモゲン基質溶液を各ウェルに添加し、暗所において+20℃からの温度で15分間インキュベートした。その後、50ulの停止試薬を各ウェルに添加する(1M硫酸溶液)ことによって反応を停止させた。分光光度計において450nmの波長で光学濃度を測定することにより、反応停止後の10分間に結果を決定した。
【0166】
免疫化した参加者のOD450血清値が対照血清値(免疫化前の参加者の血清)の2倍を超える最大血清希釈率として、IgGの力価を決定した。
【0167】
第1の群(1x10
10ウイルス粒子/用量)におけるRBD特異的IgG抗体の力価の決定の結果は
図3に示される。提供されたデータによると、SARS-Cov2ウイルスのSタンパク質のRBDドメインに特異的な抗体の力価はワクチン接種後に徐々に増大し、42日目に最大値に達する。所与の点の対数幾何平均値(reciprocal mean geometrical value)は13192である。研究の42日目までに、所与の群を構成する47人のボランティア全てにおいて抗体陽転が観察された。
【0168】
第2の群(2x10
10ウイルス粒子/用量)におけるRBD特異的IgG抗体の力価の決定の結果は
図4に示される。提供されたデータから分かるように、SARS-Cov2ウイルスのSタンパク質のRBDドメインに特異的な抗体の力価は、成人用ワクチンの全治療用量の1/5によるワクチン接種後に徐々に増大し、42日目に最大値に達する。所与の点の対数幾何平均値は19292である。研究の42日目までに、所与の群を構成する49人のボランティア全てにおいて抗体陽転が観察された。
【0169】
したがって、実行された研究の結果により、開発された免疫生物学的薬剤による小児のワクチン接種は、高レベルのワクチン接種後液性免疫の形成を誘導することができると示された。
【0170】
実施例15
細胞性免疫レベルの評価に基づいた、開発医薬品による小児の免疫化の有効性の決定。
12~18歳の95人の小児が所与の研究に参加した。研究の参加者を2つの群に分けた:
1)1x1010ウイルス粒子/1mlの用量の、変異型1による医薬品の構成成分1及び構成成分2(Ad26-CMV-S-CoV2、Ad5-CMV-S-CoV2)の連続筋肉内投与(47人)。
2)2x1010ウイルス粒子/1mlの用量の、変異型1による医薬品の構成成分1及び構成成分2(Ad26-CMV-S-CoV2、Ad5-CMV-S-CoV2)の連続筋肉内投与(48人)。
【0171】
SARS-CoV-2の組換えSタンパク質による細胞の反復再刺激後に、インビトロ培養中のボランティアの末梢血の増殖性CD4+及びCD8+リンパ球の量を評価することにより、細胞性免疫レベルを決定した。免疫化の前及び28日後に患者の血液サンプルを採取し、ficoll溶液密度勾配(1.077g/mL;PanEco)における遠心分離により、そこから単核細胞を単離した。次に、単離した細胞を蛍光染料CFSE(Invivogen、USA)で着色し、96ウェルプレートのウェルに播種した(2*105細胞/ウェル)。コロナウイルスSタンパク質を培地に添加する(最終タンパク質濃度1μg/ml)ことにより、インビトロ条件下でリンパ球の反復刺激を実行した。抗原が添加されないインタクト細胞を負の対照として使用した。抗原添加の72時間後に増殖性細胞の%を測定し、ガンマインターフェロン量を測定するために培地(cultural medium)を採取した。
【0172】
増殖性細胞の%を決定するために、これらを、Tリンパ球CD3、CD4、CD8(抗CD3 Pe-Cy7(BDBiosciences、SK7クローン)、抗CD4 APC(BDBiosciences、SK3クローン)、抗CD8 PerCP-Cy5.5(BDBiosciences、SK1クローン))のマーカー分子に対する抗体で染色した。フローサイトフルオロメーターBD FACS AriaIII(BD Biosciences、USA)を使用して、細胞混合物中の増殖性(より少量の細胞着色剤CFSEを有する)CD4+及びCD8+Tリンパ球を決定した。コロナウイルスSタンパク質抗原で再刺激された細胞の分析中に得られた結果から、インタクト細胞の分析中に得られた結果を差し引くことにより、各サンプルにおいて得られた増殖性細胞の百分率を決定した。
【0173】
研究の1日目(免疫化前)及び28日目の、増殖性CD4+及びCD8+Tリンパ球の百分率の決定の結果(統計処理が行われる)は、
図5及び
図6に示される。
【0174】
得られたデータは、免疫化後28日目の抗原再刺激の後、選択された両方の用量での開発薬剤による小児の免疫化により、増殖性CD4+及びCD8+Tリンパ球の百分率の確実な増大が可能になることを示した。
【0175】
得られたデータに基づいて、開発された免疫学的薬剤による小児の2回ワクチン接種は、高レベルのワクチン接種後細胞性免疫の形成を誘導することができるという結論を下すことができる。
【0176】
したがって、提供された実施例は、実行された研究の結果として、生後1か月以上の小児においてSARS-CoV-2ウイルスに対する液性及び細胞性免疫応答の反応の発生を誘導する安全で有効な薬剤が作製されたことを確認する。
【0177】
産業上の利用可能性
提供された実施例は全て、生後1か月以上の小児においてSARS-CoV-2ウイルスに対する免疫応答を効果的に誘導する開発薬剤の有効性及び産業上の利用可能性を支持する。
【配列表】
【国際調査報告】