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特表2023-512400音声を捕捉しかつ解釈するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】音声を捕捉しかつ解釈するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 3/14 20060101AFI20230317BHJP
   G10D 13/063 20200101ALI20230317BHJP
   G10D 13/10 20200101ALI20230317BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G10H3/14 Z
G10D13/063
G10D13/10 160
G10D13/10 180
G10H1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533141
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 US2020062684
(87)【国際公開番号】W WO2021113225
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】16/704,258
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517106349
【氏名又は名称】サンハウス・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】エスパルザ, トラカエレル, ミゲル
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478CC10
5D478CC31
5D478NN11
(57)【要約】
ドラムキットのシンバルのような楽器などの対象物によって生じる振動を捕捉するための装置が提供される。装置は、金属シムのような強磁性要素などの検出可能要素と、楽器から離間されかつ楽器に対して配置されたセンサとを備える。検出可能要素は、センサと楽器との間に配置される。楽器が振動するときに、センサは、静止したままであり、検出可能要素は、楽器によりセンサに対して振動させられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物によって生成された振動を捕捉するための装置であって、
前記対象物に対して配置された検出可能要素と、
前記対象物から離間されかつ前記対象物に対して配置されたセンサと、を備え、
前記検出可能要素は、前記センサと前記対象物との間に配置され、
前記対象物が振動するときに、前記センサは静止したままであり、前記検出可能要素は前記対象物により前記センサに対して振動させられる、装置。
【請求項2】
前記対象物は、楽器である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記対象物は、シンバルであり、前記装置は、シンバルクランプである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記検出可能要素は、強磁性シムであり、前記センサは、誘導コイルであり、前記装置は、前記対象物が振動するときに前記誘導コイルおよび磁石が静止したままであるように前記誘導コイルに隣接して固定された前記磁石をさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記強磁性シムは、第1のパッドまたはパッドの第1の部分により前記シンバルから離間され、前記強磁性シムは、第2のパッドまたはパッドの第2の部分により前記センサから離間され、それにより、前記強磁性シムの前記振動は、前記シンバルの前記振動に比例する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のパッドまたはパッドの第1の部分、および前記第2のパッドまたはパッドの第2の部分は、フェルトを含み、前記強磁性シムは、金属シムである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
シンバルクランプであって、
上側パッドと下側パッドとの間のシンバルクランプ位置と、
前記上側パッドおよび前記下側パッドのうちの一方により前記シンバルクランプ位置から離間されたセンサモジュールと、
前記シンバルクランプ位置と前記センサモジュールとの間に配置された検出可能要素と、を備え、
前記シンバルクランプ位置におけるシンバルでの音声事象の発生時に、前記センサモジュールは、シンバル取付け位置に対して静止しており、前記検出可能要素は、前記センサモジュールに対して動く、シンバルクランプ。
【請求項8】
前記検出可能要素は、前記上側パッドまたは前記下側パッドに埋め込まれる、請求項7に記載のシンバルクランプ。
【請求項9】
前記シンバルクランプ位置と前記センサモジュールとの間にある前記上側パッドおよび前記下側パッドのうちの前記一方は、第1のパッド部分および第2のパッド部分を備え、前記検出可能要素は、前記第1のパッド部分と前記第2のパッド部分との間に配置される、請求項7に記載のシンバルクランプ。
【請求項10】
前記検出可能要素は、強磁性である、請求項7に記載のシンバルクランプ。
【請求項11】
前記検出可能要素は、金属シムである、請求項10に記載のシンバルクランプ。
【請求項12】
前記センサモジュールは、
ハウジングと、
誘導コイルと、および、
前記コイルを付勢するように前記誘導コイルに隣接して固定された磁石と、を備え、
前記金属シムの振動は、前記誘導コイルによって検出可能な電磁気の乱れを生じさせる、請求項11に記載のシンバルクランプ。
【請求項13】
音声事象の発生時に、前記シムは、前記シンバルの振動周波数に直接関係した周波数で振動する、請求項12に記載のシンバルクランプ。
【請求項14】
前記センサモジュールにおいて検出された振動に基づいて音声事象を識別するプロセッサをさらに備える、請求項7に記載のシンバルクランプ。
【請求項15】
前記プロセッサによって識別された前記音声事象に基づいて音を出力するための音声出力をさらに備える、請求項14に記載のシンバルクランプ。
【請求項16】
前記上側パッドおよび前記下側パッドのそれぞれが、フェルトパッドである、請求項7に記載のシンバルクランプ。
【請求項17】
シンバルスタンドであって、
上側パッドと下側パッドとの間のシンバルクランプ位置と、
前記上側パッドおよび前記下側パッドのうちの一方により前記シンバルクランプ位置から離間されたセンサモジュールと、
前記シンバルクランプ位置と前記センサモジュールとの間に配置された検出可能要素と、を備え、
前記シンバルクランプ位置におけるシンバルでの音声事象の発生時に、前記センサモジュールは、前記シンバルスタンドに対して静止しており、前記検出可能要素は、前記センサモジュールに対して動く、シンバルスタンド。
【請求項18】
前記シンバルクランプ位置と前記センサモジュールとの間にある前記上側パッドおよび前記下側パッドのうちの前記一方は、第1のパッド部分および第2のパッド部分を備え、前記検出可能要素は、前記第1のパッド部分と前記第2のパッド部分との間に配置された強磁性シムである、請求項17に記載のシンバルスタンド。
【請求項19】
前記センサモジュールは、
ハウジングと、
誘導コイルと、および、
前記コイルを付勢するように前記誘導コイルに隣接して配置された磁石と、を備え、
前記強磁性シムの振動は、前記誘導コイルによって検出可能な電磁気の乱れを生じさせる、請求項18に記載のシンバルスタンド。
【請求項20】
前記音声事象の発生時に、前記強磁性シムは、前記シンバルの振動周波数に直接関係した周波数で振動する、請求項19に記載のシンバルスタンド。
【請求項21】
前記センサモジュールにおいて検出された振動に基づいて音声事象を識別するプロセッサをさらに備える、請求項17に記載のシンバルスタンド。
【請求項22】
前記プロセッサによって識別された前記音声事象に基づいて音を出力するための音声出力をさらに備える、請求項21に記載のシンバルスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年12月5日に出願された米国特許出願第16/704,258号に対して優先権を主張するものであり、そのそれぞれの内容は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、音声(audio)を捕捉しかつ解釈することに関する。具体的には、本開示は、シンバルなどの打楽器を捕捉しかつ合成するシステムのためのハードウェア構成要素に関する。
【背景技術】
【0003】
打楽器などの多くの従来のアコースティック楽器は、電子システムによって容易にエミュレートまたは合成することができない。電子ドラムを構築する試みがなされてきたが、そのような電子ドラムは、現在のところアコースティックドラムキットの音を再現することはなく、また、アコースティック演奏の機微は、既存のドラムの電子工学的同等物を使用することによって失われ得る。
【0004】
現代の電子ドラムキットは、典型的には、電子ドラムパッドのトリガを叩くことにより特定の音が生成されるように、2進トリガ(binary trigger)のセットを使用して作動される。しかし、アコースティックドラムキットは、一連の別個のトリガではなく連続体としての主ドラムパッドを使用すること、楽器の一部としてドラムのリムを使用することにより、また、様々な材料でドラムを叩くこと、または様々な音を生成するための様々な方法で物理的対象の音響をそれぞれが作動させる様々な技法を利用することにより、はるかに幅広い多様な音を生成することができる。例えば、ドラム奏者は、ドラムのリムもしくはドラムの側部、または電子デバイスがトリガを有し得ない他の箇所を叩くことにより、独特の音を出すことができる。一部の電子ドラムパッドは、より強い打撃とより弱い打撃とを区別することができるが、それらは依然として、どのトリガが作動されまた何の力で作動されるかに限定される。
【0005】
伝統的に、アコースティックドラム音は、ドラムから発する音以外の周囲音も検出する傾向がある標準的なアコースティックマイクロホンによって捕捉されてきた。そのような周囲音は、処理中に分離することが難しい不要な音を含む場合がある。さらに、そのようなマイクロホンは、捕捉された演奏から、特定の音声を再現するのに使うことができる信号を作り出すことができるが、そのような信号は、コンピュータ化されたシステムにとって解釈するのが困難または不可能であるので、そのようなマイクロホンは、演奏の再生を修正するかまたは洗練させるためには使用され得ない。さらに、そのような信号は、コンピュータを制御して、捕捉された音声の増幅されたバージョン以外の音声のカスタマイズされた再生を生じさせるためには、容易に使用され得ない。
【0006】
同様に、シンバルピックアップの場合、アコースティックシンバルピックアップは、典型的には、シンバルに接近して位置決めされた標準的なマイクロホン、または、シンバル自体に固定された振動感知要素から成る。マイクロホンの場合、デバイスは、シンバルの音を外部音から十分に分離せず、また、デバイスは、容易に操作され得る電子信号を生成しない。振動感知要素の場合、これらのデバイスは、典型的には、有線要素をシンバル自体に固定することを必要とするが、シンバルはそれらのスタンド上で激しく振動しかつ揺動および回転するので、そのような固定は、問題をはらむ。
【0007】
さらに、既存の電子ドラムキットは、演奏家が慣れているものとは異なる見た目および感覚の新たな機器のセットに習熟することを、演奏家に要求する。ドラム奏者は、典型的には、彼らのキットに慣れており、また、ドラム奏者は、何年も使用してきた機器で特別なドラミング技法を行うことに熟達している。
【0008】
重要な問題は、人間とコンピュータの相互作用の1つである。現在、音楽家のためのコンピュータインターフェースは、典型的には、次元性が限定された2進法のボタン、ノブ、および制御装置の使用を必要とする。音楽制作にコンピュータを使用することは、システムのインターフェースを学ぶことを要求する。それらのインターフェースは、典型的には低次元の入力デバイスから成るので、音楽表現性の範囲は、必然的に、アコースティック楽器で可能とされるものには及ばない。コンピュータインターフェースとは異なり、アコースティック楽器は、非常に複雑なアナログインターフェースを有する。ドラムを例に取ると、電子ドラムパッドは、演奏者によって打たれたときに可変の音量で単一の音を再生することが可能とされ得るが、アコースティックドラムは、ドラムがどのように叩かれるか、ドラムのどこが叩かれるか、および、ドラムが何で叩かれるかに応じて、無限に可変の音を作り出す。
【0009】
さらに、現在のデジタル楽器およびデジタル環境は、その使用者に従って音楽的に意味のある方法で応答することができない。例えば、シーケンサは、メロディ、ハーモニー、およびシフトする調性(shifting tonality)を時間内に再生するようにプログラムされることが可能であるが、シーケンサは、それと一緒に演奏している別の演奏家に従って、その演奏家のテンポ、コード、または調子を変えようとする意図にリアルタイムで応答することが可能でない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
元の楽器のアコースティックかつアナログな性質の便益を損なうことなしに打楽器をエミュレートしかつ合成することができるシステムが必要とされている。さらに、そのような打楽器から捕捉された信号を解釈してそれらをコンピュータシステムの出力を制御するために利用することができるシステムも必要とされている。さらに、従来のマイクロホンの限界を伴うことなしに、打楽器奏者が現在使用しておりまた馴染んでいる楽器に適応できるシステムが、必要とされている。
【0011】
さらに、説明されたシステムが捕捉された信号をより良く認識するように訓練され得るプラットフォーム、および、他の場所で取得された音声データストリームから音楽情報が抽出され得るプラットフォームが、必要とされている。
【0012】
最後に、他の音楽家に従う、他の音楽家と一緒に演奏する、および、他の演奏家を支持するために、その入力を音楽的に関連性のある情報として解釈する能力を有するシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、音声(audio)を捕捉しかつ解釈ためのシステムおよび方法、ならびにシステムおよび方法による解釈に基づいて選択された音(sound)を出力するためのシステムおよび方法を対象とする。システムとともに使用するための装置(device)も開示される。
【0014】
ドラムキットのシンバルのような楽器などの対象物によって生成される振動を捕捉するための装置が提供される。装置は、金属シムのような強磁性要素などの検出可能要素と、楽器から離間されかつ楽器に対して配置されたセンサとを備える。検出可能要素は、センサと楽器との間に配置される。楽器が振動するときに、センサは、静止したままであり、検出可能要素は、楽器によりセンサに対して振動させられる。
【0015】
装置は、シンバルとともに使用するためのシンバルクランプであってよい。センサは、誘導コイルなどの誘導ピックアップ(inductive pickup)であってよく、装置は、シンバルが振動するときに誘導コイルおよび磁石が静止したままであるように誘導コイルに隣接して固定された磁石をさらに備えることができる。
【0016】
シムは、第1のパッドまたはパッドの一部分によりシンバルから離間されてよく、シムは、強磁性シムの振動がシンバルの振動に比例するように第2のパッドまたはパッドの一部分によりセンサから離間されてもよい。そのような振動は、シンバルの振動と同じ周波数であってよい。パッドは、フェルトであってよく、シムは、鋼鉄(steel)であってよい。
【0017】
金属シムの振動は、誘導コイルによって検出可能な電磁気の乱れを生成することができる。
【0018】
装置は、上側パッドと下側パッドとの間に配置されたシンバルクランプ(clump)位置を備えるシンバルクランプであってよい。センサモジュールは、上側パッドまたは下側パッドのうちの一方によりシンバルクランプ位置から離間されてよく、検出可能要素は、シンバルクランプ位置とセンサモジュールとの間に配置される。ドラムスティックからの打撃などによるシンバル取付け位置におけるシンバルでの音声事象の発生時に、センサモジュールは、シンバル取付け位置に対して静止したままであるかまたは比較的に静止していてよく、検出可能要素は、センサモジュールに対して動いてよい。
【0019】
検出可能要素は、上側または下側のパッドに埋め込まれてよく、または、パッドのうちの一方は、第1のパッド部分および第2のパッド部分に分割されてよく、検出可能要素は、パッド部分間に配置されてよい。
【0020】
装置は、さらに、装置自体が、上側パッドと下側パッドとの間のシンバルクランプ位置と、上側パッドまたは下側パッドによりシンバルクランプ位置から離間されたセンサモジュールと、シンバルクランプ位置とセンサモジュールとの間に配置された検出可能要素と、を有するシンバルスタンドであるように、シンバルスタンドの一部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】楽器からの音声を捕捉しかつ合成するためのシステムの一実施態様を示す図である。
【0022】
図2】楽器からの音声を捕捉しかつ合成するための装置の図である。
【0023】
図3図2の装置の分解組立図である。
【0024】
図4】シンバルクランプ位置に固定されたシンバルを含む、図2の実施形態の図である。
【0025】
図5】シンバルクランプ位置に固定されたシンバルを含む、図2の実施形態の斜視図である。
【0026】
図6】シンバルを含む図2の装置の分解組立図である。
【0027】
図7図2の装置の構成要素の分解組立斜視図である。
【0028】
図8】シンバルクランプ位置に固定されたシンバルを含む図2の装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の原理による例示的な実施形態の説明は、本明細書全体の一部と見なされるべき添付の図面とともに読まれることが意図されている。本明細書において開示される本発明の実施形態の説明において、方向または配向に対するいずれの言及も、単に説明の便宜のためのものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図されたものではない。「下側の」、「上側の」、「水平な」、「垂直な」、「~より上側に」、「~より下側に」、「上」、「下」、「頂部」、および「底部」などの相対語、ならびにそれらの派生形(例えば、「水平に」、「下方に」、「上方に」、など)は、そのとき説明されている配向、または論じられている図面に示される配向を指すと解釈されるべきである。これらの相対語は、単に説明の便宜のためのものであって、そのように明確に示されていない限り、装置が特定の配向において構成または動作されることを必要としない。「取り付けられた」、「固定された」、「接続された」、「結合された」、「相互接続された」などの用語、および類似の用語は、そうでないことが明確に説明されていない限り、構造が互いに直接にまたは介在する構造を介して間接的に固着されるかまたは取り付けられる関係性、ならびに移動可能なもしくは不動の取付けまたは関係性の両方を意味する。さらに、本発明の特徴および便益は、例示される実施形態を参照することによって示される。したがって、本発明は、明らかに、単独でまたは特徴の他の組合せで存在し得る特徴のいくつかの考えられる非限定的な組合せを示すそのような例示的な実施形態に限定されるべきではない。本発明の範囲は、ここに添付された特許請求の範囲によって定められる。
【0030】
本開示は、目下予定されているものとして、本発明を実施する最良の形態を説明する。この説明は、限定的な意味で理解されるように意図されていないが、本発明の利点および構造について当業者に知らせるために添付の図面を参照することにより単に例示の目的のために提示される本発明の一例を提供するものである。図面の様々な図において、同様の参照文字は、同様のまたは類似の部品を示す。
【0031】
楽器から音(sound)を捕捉し、それらの音を解釈し、生成された信号をコンピュータの音声(audio)出力を制御することなど、コンピュータを制御するのに使用するために、ハードウェアシステムがソフトウェア方法と組み合わせられる。そのようなシステムは、捕捉された音をエミュレート(emulate)または合成し得るか、または、そのようなシステムは、代わりに、楽器によって生成された音にマッピングされた音声サンプルを出力し得る。マッピングされた音声サンプルは、楽器の実際の音に音質的に関係しない新たな音であってよいが、むしろ、楽器の音響、および楽器と相互作用する音楽家の方法に構造的に関係した音声であってよい。
【0032】
説明されるハードウェア構成要素は、本明細書では装置ともマイクロホンとも呼ばれる、楽器から音を捕捉するために使用され得る複数のセンサを備える装置を含み得る。捕捉された音は、電気信号に変換され、この電気信号は、様々なソフトウェア方法を使用して、コンピュータシステムにおいて処理され得る。同様に、本明細書および関連する開示において開示されるソフトウェア方法は、楽器のための音声を識別しかつエミュレートまたは合成するために、説明されたもの以外のハードウェア構成要素から抽出された信号を解釈するために利用され得る。開示される実施形態は打楽器、特にドラムに関係するが、類似のハードウェアおよびソフトウェアは、他の楽器および音響的対象物からも音を捕捉しかつエミュレートするために用いられ得ることが、さらに理解される。
【0033】
論じられるソフトウェアルーチンは、事象の開始(ドラムの打撃、旋律の開始)、音質(音色の内容)、定常状態のトーンのピッチ(旋律)、同時に存在しかつ展開するトーンの構造(ハーモニーおよびメロディ)、リズミカルな構造(テンポ、拍子記号、フレーズ)、音楽構造(歌曲形式、動的なシフト、構成上のシフト)、および特定の演奏者、グループ、または音楽のジャンルに特有の音楽創作のスタイルなどの音楽的に関係する情報を信号から抽出するように設計される。そのようなソフトウェア方法は、これらの多層の音楽情報を抽出して、それらを記号的なデータフォーマットに変換することができ、そのようなデータフォーマットは、これらの音楽情報のレベルが他の目的のための一般的制御ソースとして使用されることを可能にする。このシステムは、即時の感覚的入力に応答して、また、事前に記録された感覚的入力に応答して、どちらも実時間で動作するように設計される。
【0034】
いくつかの実施形態では、任意の入力信号が、音楽的に関連する情報を有すると解釈され得る。本明細書に含まれる説明は、主に、ドラムからの音声を捕捉しかつ合成するためのシステムおよび装置に関するが、入力は、マイクロホンを通じてピックアップされる任意のアコースティック楽器からの信号、楽器を演奏する人物からもたらされるアコースティック音および物理的移動を追跡するように設計された別のセンサタイプからの信号、内蔵ピックアップを介するエレキギターなどの電気-アコースティック楽器からの信号、ならびに/または、任意の種類のMIDI鍵盤楽器もしくはMIDIコントローラなどによる時系列として音楽的に関連する情報を運ぶ一連のシンボルデータからの信号を含み得る。
【0035】
音楽的に関連する情報を含む入力信号は、様々な方法で分類され得る。アナログ楽器および/またはアコースティック楽器は、以下のカテゴリ、すなわち
a.ドラム、シンバル、および他の無音程打楽器を含む、無音程楽器(unpitched instrument)、
b.管楽器、木管、合成モノフォニック音(synthesized monophonic sound)、などを含む、有音程単音楽器(pitched monophonic instrument)、ならびに、
c.ギター、バイオリン、ピアノ、および合成ポリフォニック音、などを含む、有音程多音楽器(pitched polyphonic instrument)
に分類され得る。
【0036】
記号的な楽器は、以下のカテゴリ、すなわち、
a.MIDIを出力する電気ドラムパッドおよび指パッドドラムを含む、無音程楽器、ならびに
b.MIDIを出力するキーボードを含む、有音程楽器
に分類され得る。
【0037】
図1は、ドラムからの音声を捕捉しかつ合成するためのシステムの一実施態様を示す。示されるように、システムは、ドラムから音声を捕捉するためのいくつかの装置100を備える。同一のまたは類似の装置100が、スネアドラム110、トムドラム120、またはキックドラム130を含む様々なドラムタイプから、音声を捕捉し得る。システムおよび装置は、ドラムをベースとする実施態様に関して示されるが、システムは、システムの構成要素を変更することにより、任意の楽器に適合され得る。同様に、方法は、音声信号から抽出される特徴を変更することにより、多数の楽器のうちの任意のものに適合するように修正され得る。例えば、システムは、以下で詳細に論じられるシンバルからの音声または振動を捕捉するための図2~8の装置などの、追加の楽器から音声を捕捉するための任意の数の装置を組み込むことができる。
【0038】
捕捉された音声は、アナログ信号として、プリアンプ、またはアナログ-デジタル変換を有する音声インターフェース140に送信され、プリアンプまたは音声インターフェース140は、音声信号を処理し、次いで音声をさらに処理し、出力する音声サンプルを選択し、次いでPAシステム145またはヘッドホンモニタ147などの音声出力に送信する出力信号を生成する。いくつかの実施形態では、音声インターフェースは、さらなる処理のために、また、音声サンプルを選択するかまたは音声合成プロセスを適用して出力信号を生成するために、得られるデジタル信号を外部コンピュータ150または異なる外部ユニットに送信する。そのような実施形態では、コンピュータ150は、音声信号をリアルタイムで出力するための音声増幅器またはスピーカに接続され得るか、または、コンピュータ150は、分析の結果または音声出力の記録を記憶するように構成され得る。いくつかの実施形態では、コンピュータ150または音声インターフェース140は、ユーザが設計した出力プロファイルを可能とするために、インターフェースを介してシステムによって制御され得る照明システムまたはハードウェアシンセサイザなどの他のハードウェアデバイスに接続され得る。例えば、制御メッセージは、システムの外側で届けられ得る一般的なMIDIメッセージとして出力され得る。
【0039】
このシステムは、リアルタイム演奏のために使用されてもよく、その場合、音声は、装置100を使用してドラムキットの各ドラム110、120、130から捕捉され、処理のために音声インターフェース140に送信され、搭載プロセッサによって処理されるかまたはさらなる分析および分類のためにコンピュータ150に送られ、エミュレートされたまたは合成された音の即時再生のために増幅器に送信される。即時再生は、ドラムキットのアコースティック再生に可能な限り似て鳴るように設計されたサンプルのものであってよいが、即時再生はまた、異なるドラムキットの音プロファイル、異なるタイプのドラムの音プロファイル、または従来の打楽器演奏に関係しない独特なサンプルの音プロファイルなどの異なる音プロファイルをドラムキットに与えるように設計された、代替的なサンプルまたは合成音の再生であってよい。さらに、信号は、ハードウェアシンセサイザ、照明、または他の装置などの音声以外の機能のための制御信号として解釈されかつ使用されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、システムは、センサ100を含むが処理回路を含まない装置、およびスタンドアロン型処理装置として機能する別体の音声インターフェース140として、提供され得る。演奏中、装置100内のセンサの出力は、信号を処理しかつ解釈するために音声インターフェース140に提供されてよく、音声インターフェースは、増幅のための最終音声信号を出力することができる。
【0041】
論じられるソフトウェア方法は、図1に示された装置100の出力、または図2~8に関して以下で論じられる装置の出力を利用することができるが、代替形態では、センサまたはセンサのセットによりその振動が捕捉され得る任意の物理的対象物に適用され得る。アコースティック楽器は、この種の対象物の理想的な例である。
【0042】
図2は、この場合ではドラムキットのためのシンバル3210である楽器から音声を捕捉するための装置3200の一実施形態である。したがって、本実施形態を論じるにあたって、シンバル3210が参照されるが、類似の装置は他の楽器にも同様に作用し得ることが、理解される。いくつかの実施形態では、装置3200は、上記で大まかに論じられた方法のいずれかを使用して、音声をさらに合成および/または出力することができる。
【0043】
図3は、図2の装置3200の分解組立図である。図4は、シンバルクランプ位置に固定されたシンバル3210を含む図2の実施形態の側面図であり、図5はその斜視図である。図6は、シンバル3210を含む図2の装置3200の分解組立図である。
【0044】
示されるように、装置3200は一般に、シンバルクランプであってよく、また、装置3200は、シンバルスタンド3220に組み込まれてよい。したがって、シンバルスタンドは、取り付けられたシンバル3210の位置を調整するためのヒンジ3230を含み得る。次いで、シンバルクランプ3200は、上側パッド3250と下側パッド3260との間にシンバル3210を配置するシンバルクランプ位置3240を提供し得る。組立体は、下側パッド3260と上側パッド3250とシンバル3210とが完全に組み立てられたときに固定要素が全ての構成要素を所定の位置に固定し得るように、固定要素3270をさらに備える。これは、シンバルクランプ3200のねじ付きシャフト3280と嵌合するための、示されるような蝶ねじ3270であってよい。あるいは、固定要素は、シンバルスタンド内のクランプ位置においてシンバルを固定するための複数の装置のうちの任意のものであってよい。
【0045】
シンバルクランプの上側パッド3250および下側パッド3260の配置は、従来のクランプの典型である。示された実施形態では、パッドはフェルトで作られ得るが、パッドはまた、従来のシンバルクランプで使用されるものに類似した任意の材料で作られてよい。これにより、材料選択およびパッド構造は、シンバルクランプ3200内のシンバルの感触または音に影響しないであろう。
【0046】
さらに、シンバルクランプ3200はシンバルスタンド3220との関連で示されているが、装置3200は、既存のシンバルスタンドに組み込まれるように設計されたシンバルクランプ単体であってよく、または、装置は、既存のシンバルクランプの構成要素に置き換わるように設計されたセンサモジュール3300および1または複数のパッド構成要素であってよいことが、理解されるであろう。したがって、本明細書において説明される装置3200は、シンバルスタンドの「スリーブ」部分の全てまたは一部分を本明細書において説明される電子構成要素を組み込む機械的に類似のまたは同一の構成要素と置き換えることにより、標準的なシンバルスタンド3210の要素を修正する。
【0047】
シンバルクランプ3200は、シンバル3210に対して配置された典型的には金属シムなどの強磁性物体である検出可能要素3290と、シンバルから離間されたセンサモジュール3300とを備える。シム3290は、センサモジュール3300とシンバル3210との間に配置される。シムは、典型的には小さく、例えば6mmの鋼鉄円板であり得る。
【0048】
典型的には、シンバル3210およびセンサモジュール3300は、上側パッド3250または下側パッド3260により、互いに離間される。示されるように、標準的なシンバルスタンド3220では、これは、通常、下側パッド3260であろう。したがって、シム3290は、下側パッド3260に埋め込まれてよく、または、下側パッドは、第1のパッド部分3263および第2のパッド部分3266を含むことができ、シム3290は、それらの間に配置され得る。いずれにしても、シム3290は、センサモジュール3300とシンバル3210との間に配置され、かつ、その両方から離間される。
【0049】
示されたシンバルスタンドのような従来のシンバルスタンド3220は、表面上に置かれて、スタンドの頂部にまたはその近くにシンバル3210を配置するが、様々なシンバルスタンド構造が存在する。例えば、一部のシンバルスタンドは、部分的に水平に延在する場合があり、また、支持アームより下側にシンバルを吊す場合がある。したがって、従来のシンバルスタンド3220では、センサモジュール3300は組み立てられたときにシンバル3210より下側に配置されて、下側パッド3260によりシンバルから離間されるが、ハンギングシンバルスタンドは、代わりに、センサモジュール3300がより直接的に支持アームに固定され、したがってそのような支持アームに対して動かないままでいることができるように、センサモジュール3300をシンバル3210より上側に配置することができる。そのような実施形態では、センサモジュール3300は上側パッド3250によりシンバル3210から離間され、したがって、シム3290は上側パッドに埋め込まれ得るか、または、上側パッドはパッド部分を含み得ることが、理解されるであろう。あるいは、センサモジュール3300は、シンバルの重量がシンバルとセンサモジュールとの間の下側パッド3260にかかり、それにより常に振動をシム3290に伝えるように、常にシンバル3210より下側に配置され得る。
【0050】
ドラムスティックによって叩かれたときなど、シンバル3210が振動するときに、シンバルクランプ3200のセンサモジュール3300は、シンバルスタンド3220に固定されたままであるので、実質的に静止しており、シム3290は、シンバル3210によりセンサに対して振動させられる。典型的には、シム3290は、シンバル3210の振動に基づいた周波数で振動し、センサモジュール3300は、シム3290の振動を検出する。シム3290の振動周波数は、シンバル3210自体の振動に関係するであろう。例えば、シム3290の振動周波数は、比例的であり得るか、さもなければ、シンバル3210の振動周波数の代理または近似として機能し得る。したがって、シム3290の振動周波数は、音声事象の発生時に、シンバル3210の振動周波数に直接関係する。したがって、上記で論じられた方法は、シム3290において検出された振動からシンバル3210の振動を導き出すことができる。
【0051】
図7は、図2の装置3200の構成要素の分解組立斜視図である。図8は、シンバルクランプ位置3240に固定されたシンバル3210を含む装置3200の断面図である。示されるように、センサモジュール3300は、ハウジング3400、誘導コイル3410、および、ハウジング内で誘導コイルに隣接して固定された磁石3420を備え得る。誘導コイル3410および磁石3420はどちらも、電子回路板3430上に取り付けられる。
【0052】
したがって、センサは、誘導コイル3410であってよく、磁石3420は、コイルを付勢するように、コイルに隣接して位置決めされる。シム3290の振動は、誘導コイル3410によって検出可能な電磁気の乱れを生じさせる。磁石3420は、誘導コイル3410から例えば3mmだけ離間されたネオジム磁石であり得る。
【0053】
シンバル3210がスタンド3220上に配置されると、シンバル3210は、シムを含む下側パッド3260を圧迫する。すると、シンバル3210からの振動は、下側パッドの第1の部分3270を通過し、シム3290を振動させ、それが誘導コイル3410と磁石3420の対の磁場を乱し、したがって、誘導子における測定可能な電圧を作り出す。
【0054】
装置3200は、センサモジュール3300において検出された振動に基づいて音声事象を識別するための回路板3430上のプロセッサ3440をさらに備え得る。そのような実施形態では、装置は、プロセッサ3440によって識別された音声事象に基づいて音を出力するための音声出力3450をさらに提供し得る。この識別は、例えば、本開示の他の箇所で論じられた方法のいずれかによるものであってよい。
【0055】
あるいは、装置3200は、センサモジュール3300から得られた生データを出力してよく、また、シンバルクランプの外部で処理が行われてもよい。そのような実施形態では、コイルピックアップとして機能する誘導コイル3410と磁石3420の対によって生成された電圧ベースの信号は、次いで、電子回路板3430上の演算増幅器ベースの回路などの回路を介して調整および増幅され、センサモジュール3300の外へ延在するケーブルを通過して、下流のシステムにおいて記録されるか他の形で使用される。
【0056】
本明細書において説明される主題および動作の実施形態は、デジタル電子回路において、または、本明細書において開示される構造およびそれらの構造上の均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアにおいて、または、それらのうちの1もしくは複数の組合せにおいて、実施され得る。本明細書において説明される主題の実施形態は、データ処理装置による実行のためにまたはデータ処理装置の動作を制御するためにコンピュータ記憶媒体上で符号化される1または複数のコンピュータプログラム、すなわちコンピュータプログラム命令の1または複数のモジュールとして、実施され得る。あるいは、またはさらに、プログラム命令は、人為的に生成された伝播性信号、例えば、データ処理装置による実行のための適切な受信機装置への送信のために情報を符号化するように生成された機械生成の電気的な、光学的な、または電磁的な信号上で符号化され得る。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶デバイス、コンピュータ可読記憶基板、ランダムアクセスメモリもしくはシリアルアクセスメモリのアレイまたはデバイス、あるいはそれらの1または複数の組合せであるか、それらに含まれ得る。さらに、コンピュータ記憶媒体は、伝播性信号ではないが、コンピュータ記憶媒体は、人為的に生成された伝播性信号において符号化されたコンピュータプログラム命令の出所または送信先であってよい。コンピュータ記憶媒体はまた、1または複数の別体の物理的な構成要素もしくは媒体(例えば、複数のCD、ディスク、または他の記憶デバイス)であるか、それらに含まれてもよい。
【0057】
本発明は、説明されるいつかの実施形態に関してかなり長くまたかなり詳細に説明されたが、本発明がいずれかのそのような詳細もしくは実施形態またはいずれかの特定の実施形態に限定されるべきであることは意図されておらず、本発明は、従来技術を考慮して添付の特許請求の範囲の可能な限り広範な解釈を提供するために、したがって、本発明の意図された範囲を事実上包含するために、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。さらに、これまで述べてきたことは、現在予見されない本発明の実質的でない修正がそれでもなお本発明の均等物を表し得るにもかかわらず、授権的な説明が利用可能であった本発明者によって予見された実施形態の観点から、本発明を説明する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】