(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】鉱物ウール複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 25/14 20180101AFI20230317BHJP
C03C 25/34 20060101ALI20230317BHJP
C03C 25/285 20180101ALI20230317BHJP
D06M 15/41 20060101ALI20230317BHJP
D06M 15/11 20060101ALI20230317BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C03C25/14
C03C25/34
C03C25/285
D06M15/41
D06M15/11
D06M15/263
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535234
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2020085063
(87)【国際公開番号】W WO2021116097
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】イケダ ミズキ
【テーマコード(参考)】
4G060
4L033
【Fターム(参考)】
4G060BA04
4G060BC06
4G060BD24
4G060CB09
4G060CB24
4L033AA09
4L033AB01
4L033AB03
4L033AB07
4L033AC11
4L033CA06
4L033CA18
4L033CA34
(57)【要約】
【課題】循環水を再使用する鉱物ウール複合材料の製造方法の提供。
【解決手段】本発明は、鉱物ウール複合材料を製造するための製造装置を洗浄するのに用いられる循環水をろ過して製造装置において循環水を再使用する鉱物ウール複合材料の製造方法であって、方法が以下の工程(a)~(c):(a)循環水へ浄水を提供しつつ、循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された循環水を含有する第一のバインダー組成物を調製し、次いで、鉱物繊維上に第一のバインダー組成物を噴霧することによって、第一の鉱物ウール複合材料を製造すること;(b)任意の順序で、又は同時に、以下のサブ工程(b1)及び(b2):(b1)第一のバインダー組成物の調製用の循環水の抽出を休止すること;(b2)循環水の少なくとも一部を抽出して、第一のタンクに抽出された循環水を格納することを実施すること;(c)循環水へ浄水を提供しつつ、循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された循環水を含有する第二のバインダー組成物を調製し、次いで、鉱物繊維上に第二のバインダー組成物を噴霧することによって、第二の鉱物ウール複合材料を製造することをこの順で含み、第一のバインダー組成物及び第二のバインダー組成物が互いに異なる、方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物ウール複合材料を製造するための製造装置を洗浄するのに用いられる循環水をろ過して前記製造装置において前記循環水を再使用する、鉱物ウール複合材料の製造方法であって、前記方法が、以下の工程(a)~(c):
(a)前記循環水へ浄水を提供しつつ、前記循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された前記循環水を含有する第一のバインダー組成物を調製し、次いで、鉱物繊維上に前記第一のバインダー組成物を噴霧することによって、第一の鉱物ウール複合材料を製造すること;
(b)任意の順序で、又は同時に、以下のサブ工程(b1)及び(b2):
(b1)前記第一のバインダー組成物の調製用の前記循環水の抽出を休止すること;
(b2)前記循環水の少なくとも一部を抽出して、第一のタンクに抽出された前記循環水を格納すること
を実施すること;
(c)前記循環水へ浄水を提供しつつ、前記循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された前記循環水を含有する第二のバインダー組成物を調製し、次いで、鉱物繊維上に前記第二のバインダー組成物を噴霧することによって、第二の鉱物ウール複合材料を製造すること
をこの順で含み、
前記第一のバインダー組成物及び前記第二のバインダー組成物が互いに異なる、
方法。
【請求項2】
前記第一の鉱物ウール複合材料及び/又は前記第二の鉱物ウール複合材料を製造しながら前記工程(b)を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(b)が、任意の順序で、又は同時に、
以下のサブ工程(b3):
(b3)浄水を提供して、浄水を含む前記第一又は第二のバインダー組成物を調製すること
並びに前記サブ工程(b1)及び(b2)
を実施することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)が、任意の順序で、又は同時に、
以下のサブ工程(b4):
(b4)前記循環水への浄水の提供を休止すること
並びに前記サブ工程(b1)及び(b2)
を実施することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(c)が、以下のサブ工程(c1):
(c1)前記第一のタンクに格納された水を前記循環水に提供すること
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(c)が、以下のサブ工程(c2):
(c2)前記第一のタンクに格納された水、及び前記循環水を提供して前記第二のバインダー組成物を調製すること
をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(c)の後に、追加の工程(d)を含み、
この追加の工程(d)では、以下のサブ工程(d1)及び(d2):
(d1)前記第二のバインダー組成物の調製用の前記循環水の抽出を休止すること;
(d2)前記循環水の少なくとも一部を抽出して、第二のタンクに抽出された前記循環水を格納すること
が、任意の順序で又は同時に実施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一及び第二のタンクが同じタンクである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一及び第二のタンクが別のタンクである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(d)の後に以下の工程:
(a)’前記循環水へ浄水を提供しつつ、前記循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された前記循環水を含有する第三のバインダー組成物を調製し、次いで、鉱物繊維上に前記第三のバインダー組成物を噴霧することによって、第三の鉱物ウール複合材料を製造すること
をさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第三のバインダー組成物及び前記第三の鉱物ウール複合材料が、それぞれ前記第一のバインダー組成物及び前記第一の鉱物ウール複合材料と同じである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バインダー組成物のうちの1つが、
(i)フェノール/ホルムアルデヒド縮合体を含む組成物、例えば、フェノール/ホルムアルデヒド及び尿素/ホルムアルデヒドの縮合体を含む組成物、フェノール/ホルムアルデヒド及びフェノール/ホルムアルデヒド/グリシンの縮合体を含む組成物、又はフェノール/ホルムアルデヒド縮合体を含み、尿素/ホルムアルデヒド縮合体を含まない組成物;
(ii)アミンと炭水化物(特に還元)とを含むメイラード反応物を含む組成物;
(iii)アクリルポリマーと、ポリヒドロキシル又はポリアミノ化合物などの架橋剤とを含む組成物;
(iv)非還元糖及び/又は水素化糖、及びクエン酸などのポリカルボン酸反応物を含む組成物;及び
(v)特に無水物とアルカノールアミンの反応から得られるアミノ-アミド化合物を含む組成物
から選択される水性組成物から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のバインダー組成物及び前記第二のバインダー組成物が、前記第二のバインダー組成物が前記第一のバインダー組成物とは異なる種類のバインダー組成物であるという条件で、種類(i)~(v)の組成物から選択される水性組成物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第一のバインダー組成物が種類(i)又は(ii)の組成物から選択される水性組成物から選択され、前記第二のバインダー組成物が種類(iii)、(iv)、又は(v)の組成物から選択される水性組成物から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
バインダー組成物のうちの1つが、淡色又は白色のバインダーをもたらし、好ましくは前記第一のバインダー組成物が有色のバインダーをもたらし、かつ、前記第二のバインダー組成物が淡色、特に白色のバインダーをもたらす、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、鉱物ウール複合材料の製造方法に関し、特に、鉱物ウール複合材料を製造する製造装置において用いられる循環水を製造装置において再使用する、鉱物ウール複合材料の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、バインダー組成物の種類が変更される場合でさえ、大量の循環水を処分することなく、鉱物ウール複合材料の目標品質を得ることができる、循環水の一部が抽出され、バインダー組成物の原材料として用いられる鉱物ウール複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
JP2009-155172Aにおいて開示されるように、鉱物ウール複合材料の製造方法は知られており、たとえば日本の特開2009-155172号公報に記載されたものは、遠心力によってスピナーから高温にて溶融無機材料をブローアウトして鉱物繊維を得ること、及び鉱物繊維上にバインダー組成物を噴霧して鉱物繊維を凝集させ、鉱物ウール複合材料を得ることを含む。バインダー組成物としては、フェノール樹脂及びアクリル樹脂などのバインダー樹脂の水性分散液が挙げられる。
【0003】
鉱物ウール複合材料を製造する場合、水は製造装置の洗浄のために大量に用いられる。WO2009/007648A及びUS8821625Bは、鉱物ウール複合材料を製造するプロセス中に用いられる循環水を循環させ、再使用する方法を開示する。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
技術的課題
鉱物ウール複合材料を製造するプロセス中に再使用されるような循環水は、バインダー組成物に由来するバインダー樹脂を含有する。一方、循環水の一部は抽出されることができ、抽出された循環水は、バインダー組成物の原材料として再使用することができる。
【0005】
しかしながら、循環水の一部が抽出され、バインダー組成物の原材料として用いられる方法において、バインダー組成物の種類が鉱物ウール複合材料の連続生産中に変更される場合、大量の循環水を処分することが必要である。これは、変更前のバインダー樹脂を含有する循環水を、変更後のバインダー組成物を調製するための原材料として用いる場合、変更されたバインダー組成物を用いて製造された鉱物ウール複合材料の品質に悪影響が及ぶ可能性があるためである。
【0006】
本発明は、バインダー組成物の種類が変更される場合に、大量の循環水を処分せずに、鉱物ウール複合材料の目標品質を得ることが可能である、循環水の一部が抽出され、バインダー組成物の原材料として用いられる鉱物ウール複合材料の製造方法を提供する。
【0007】
課題への解決方法
本発明者らは、以下の側面を有する発明によってその課題を解決することができることを見出した。
[1]鉱物ウール複合材料を製造するための製造装置を洗浄するのに用いられる循環水をろ過して製造装置において循環水を再使用する鉱物ウール複合材料の製造方法であって、以下の工程(a)~(c):
(a)循環水へ浄水を提供しつつ、循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された循環水を含有する第一のバインダー組成物を調製し、次いで、鉱物繊維上に第一のバインダー組成物を噴霧することによって、第一の鉱物ウール複合材料を製造すること;
(b)任意の順序で、又は同時に、以下のサブ工程(b1)及び(b2):
(b1)第一のバインダー組成物の調製用の循環水の抽出を休止すること;
(b2)循環水の少なくとも一部を抽出して、第一のタンクに抽出された循環水を格納すること
を実施すること;
(c)循環水へ浄水を提供しつつ、循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された循環水を含有する第二のバインダー組成物を調製し、次いで、鉱物繊維上に第二のバインダー組成物を噴霧することによって、第二の鉱物ウール複合材料を製造すること
をこの順で含む、方法。
[2]第一の鉱物ウール複合材料及び/又は第二の鉱物ウール複合材料を製造しながら工程(b)を実施する、[1]に記載の方法。
[3]工程(b)が、任意の順序で、又は同時に、
以下のサブ工程(b3):
(b3)浄水を提供して、浄水を含む第一又は第二のバインダー組成物を調製すること
並びにサブ工程(b1)及び(b2)を実施することを含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]工程(b)が、任意の順序で、又は同時に、
以下のサブ工程(b4):
(b4)循環水への浄水の提供を休止すること
並びにサブ工程(b1)及び(b2)を実施することを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]工程(c)が、以下のサブ工程(c1):
(c1)第一のタンクに格納された水を循環水に提供すること
をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]工程(c)が、以下のサブ工程(c2):
(c2)第一のタンクに格納された水、及び循環水を提供して第二のバインダー組成物を調製すること
をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]工程(c)の後に、追加の工程(d)を含み、
この追加の工程(d)では、以下のサブ工程(d1)及び(d2):
(d1)第二のバインダー組成物の調製用の循環水の抽出を休止すること;
(d2)循環水の少なくとも一部を抽出して、第二のタンクに抽出された循環水を格納すること
が、任意の順序で又は同時に実施される、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]第一及び第二のタンクが同じタンクである、[7]に記載の方法。
[9]第一及び第二のタンクが別のタンクである、[7]に記載の方法。
[10]工程(d)の後に以下の工程:
(a)’循環水へ浄水を提供しつつ、循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された循環水を含有する第三のバインダー組成物を調製し、次いで、鉱物繊維上に第三のバインダー組成物を噴霧することによって、第三の鉱物ウール複合材料を製造すること
をさらに含む、[7]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]第三のバインダー組成物及び第三の鉱物ウール複合材料が、それぞれ第一のバインダー組成物及び第一の鉱物ウール複合材料と同じである、[10]に記載の方法。
[12]バインダー組成物のうちの1つが、
フェノール/ホルムアルデヒド縮合体又はフェノール/ホルムアルデヒド及び尿素/ホルムアルデヒドの縮合体を含む組成物;
アミンと炭水化物(特に還元)とを含むメイラード反応物を含む組成物;
アクリルポリマーと、ポリヒドロキシル又はポリアミノ化合物などの架橋剤とを含む組成物;
非還元糖及び/又は水素化糖、及びクエン酸などのポリカルボン酸反応物を含む組成物;及び
特に無水物とアルカノールアミンの反応から得られるアミノ-アミド化合物を含む組成物
から選択される水性組成物から選択される、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]バインダー組成物のうちの1つが、淡色又は白色のバインダーをもたらす、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、本発明の方法の基本構成に含まれる工程における液体の流れを示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の方法に含まれる工程(b)に好ましくは含まれるサブ工程(b3)における液体の流れを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の方法に含まれる工程(b)に好ましくは含まれるサブ工程(b4)における液体の流れを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の方法に含まれる工程(c)に好ましくは含まれるサブ工程(c1)における液体の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の方法に含まれる工程(c)に好ましくは含まれるサブ工程(c2)における液体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態
本発明は、鉱物ウール複合材料の製造装置の洗浄に用いられる循環水をろ過して製造装置において再使用する鉱物ウール複合材料の製造方法であって、方法が、以下の工程(a)~(c):
(a)循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された循環水を含有する第一のバインダー組成物を調製しつつ、循環水に浄水を提供すること、及び鉱物繊維上に第一のバインダー組成物を噴霧して、第一の鉱物ウール複合材料を製造すること、
(b)任意の順序で、又は同時に、以下のサブ工程(b1)及び(b2):
(b1)第一のバインダー組成物の調製用の循環水の抽出を休止すること;及び
(b2)循環水の少なくとも一部を抽出して、第一のタンクにそれを格納すること、
を実施すること;
(c)循環水の少なくとも一部を抽出して、抽出された循環水を含有する第二のバインダー組成物を調製しつつ、循環水に浄水を提供すること、及び鉱物繊維上に第二のバインダー組成物を噴霧して、第二の鉱物ウール複合材料を製造すること
をこの順で含み、第一のバインダー組成物及び第二のバインダー組成物が互いに異なる、方法に関する。
【0010】
工程中に好ましいタイミングで各操作を少なくとも一度だけ実施する必要があるため、工程中、本発明の各工程の各操作を常に実施する必要はない。
【0011】
図中の矢印は、循環水、浄水、タンクに格納された水並びに第一及び第二のバインダー組成物などの液体の流れを示すが、図において示されない液体の流れが各工程においてさらに存在してもよい。また、本発明の有利な効果が得られる限り、図において示される各工程における液体の流れは、その工程中に存在する必要はない。
【0012】
本発明の方法において、第一の鉱物ウール複合材料の製造から第二の鉱物ウール複合材料に切り替える際に、大量の循環水を処分することは必要ではない。製造装置の洗浄に用いた循環水をバインダー組成物の調製のために再使用する鉱物ウール複合材料の製造方法において、洗浄によって洗い流されたバインダーのような樹脂は、循環水を汚染するため、異なるバインダー組成物を利用する鉱物ウール複合材料の製造に切り替える際に、循環水を処分することは多くの場合必要である。例えば、切り替え前後のバインダー組成物間で反応が起こる場合があるため、及び切り替え前後のバインダー組成物が異なる色を有する場合には鉱物ウール複合材料の色が切り替え後に許容できない場合があるため、切り替え後の鉱物ウール複合材料の品質が許容範囲内にあるように、切り替えの前にバインダー樹脂を含む循環水は処分される必要がある。
【0013】
本発明の方法において、切り替え前のバインダー樹脂を含む循環水はタンクに格納され、再使用され、それによって、循環水の廃棄が最小限に低減されることが可能となる。例えば、タンクに格納されていた切り替え前のバインダー樹脂を含む循環水は、切り替え後の鉱物ウール複合材料の品質が許容可能であるような範囲において、切り替え後の鉱物ウール複合材料の製造に用いられる循環水と徐々に混合されることができ、またはそれは切り替え前のバインダー組成物を含む鉱物ウール複合材料の後の製造中の使用のために格納されることができる。
【0014】
本発明の方法において、循環水は、鉱物ウール複合材料の製造装置の洗浄、及びバインダー組成物の調製のために用いられる。洗浄される製造装置は、バインダー組成物が噴霧された鉱物繊維が蓄積されたコンベヤーなどであることができる。係る製造装置は、バインダー組成物からの付着材料を潜在的に含有することがあるため、付着材料の洗浄の後の洗浄水はバインダー組成物からの成分を含む。循環水がバインダー組成物の調製に用いられることになっている場合、循環水はバインダー組成物の分散媒又は溶媒として用いられることができる。
【0015】
本発明の方法において、循環水は再使用される前にろ過される。ろ過はスクリーンろ過又は限外ろ過などの既知の方法によって実施することができる。本発明の方法中にろ過を絶えず実施する必要はなく、本発明の方法が実施されている間の所望のタイミングで少なくとも一度だけ実施する必要がある。
【0016】
モノクロラミンなどのバイオサイド剤を、好ましくはろ過の後に循環水に加えることができる。循環水に添加されるバイオサイド剤の量は、循環回路及びバインダー組成物の構成に依存する。バイオサイド剤は、循環水の50~500g/m3の量で循環水に典型的には1日に複数回添加される。
【0017】
本発明の方法において、浄水は、バインダー組成物に由来する成分の濃度が循環水より低い水である。浄水は、バインダー組成物に由来する成分を本質的に含有しない水であることができ、例えば、それは、浄水、脱イオン水、蒸留水、水道水、地下水又は工業用水であることができる。
【0018】
図1(a)に示されるように、工程(a)において、浄水が循環水に供給され、一方で循環水の少なくとも一部が抽出され、抽出された循環水を含有する第一のバインダー組成物が調製され、第一のバインダー組成物が鉱物繊維上に噴霧されて第一の鉱物ウール複合材料が製造される。
【0019】
工程(a)において、浄水は循環水に提供される。例えば、
図1(a)に示されるように、鉱物ウール複合材料の製造装置の洗浄に用いられた後に回収して他の循環水と混合することによって、浄水は循環水に供給されることができる。代わりに、図示されていないが、浄水は、循環水に直接供給されることができる。加えて、これも図示されていないが、浄水は、バインダー組成物を調製し、次いで、バインダー組成物が鉱物ウール複合材料の製造に用いられた後に回収して他の循環水と混合することによって、循環水に供給されることができる。
【0020】
工程(a)において、循環水の少なくとも一部は抽出され、抽出された循環水を含有する第一のバインダー組成物が調製される。抽出された循環水は、第一のバインダー組成物の調製のために、バインダー組成物の調製用タンクに供給されることができ、またはそれは、例えば、第一のバインダー組成物の調製のために、静的ミキサーなどを用いて配管において別のバインダー樹脂と混合されることができる。追加の浄水も第一のバインダー組成物の調製に用いることができる。
【0021】
工程(a)において実施される鉱物繊維上に第一のバインダー組成物を噴霧することによって、第一の鉱物ウール複合材料を製造する方法については、先行技術において知られている方法を参照することができる。
【0022】
工程(a)において、あらかじめ回収された水を格納するタンクが存在する場合、格納された水を、第一のバインダー組成物を調製するか、循環水を提供するのに用いることができる。そのような場合、第一の鉱物ウール複合材料の品質が許容範囲内にある限り、格納された水は再使用されることができる。
【0023】
図1(b)に示されるように、以下のサブ工程(b1)及び(b2)は、工程(b)において、任意の順序で又は同時に実施される。
(b1)第一のバインダー組成物の調製用の循環水の抽出を休止すること、及び
(b2)循環水の少なくとも一部を抽出して、第一のタンクにそれを格納すること。
【0024】
工程(b)において、第一の鉱物ウール複合材料の製造から第二の鉱物ウール複合材料に切り替えるための準備が実施される。第一の鉱物ウール複合材料の製造を工程(b)において継続することができ、または第二の鉱物ウール複合材料の製造を開始することができ、または鉱物ウール複合材料の製造を停止することができる。
【0025】
サブ工程(b1)において、第一の鉱物ウール複合材料の製造が依然として継続しており、第一のバインダー組成物の調製用の調製タンクが存在する場合、調製タンク中の第一のバインダー組成物は、第一の鉱物ウール複合材料の製造のために提供されることができる。さらに、第一のバインダー組成物は以下のサブ工程(b3)によって調製されることができ、第一の鉱物ウール複合材料の製造は継続される。
【0026】
サブ工程(b2)において、第一のバインダー組成物からの成分を含む循環水は、第一のタンクに格納され、それによって、循環水中の第一のバインダー組成物からの成分の絶対量が低減される。これは、循環水中に存在する第一のバインダー組成物からの成分が、第二の鉱物ウール複合材料の製造中に低減されることを可能にし、その結果、第二の鉱物ウール複合材料の品質を許容範囲内とすることができる。
【0027】
サブ工程(b2)の結果第一のタンクに格納された循環水は、循環水の一部のみであることができ、第二の鉱物ウール複合材料の品質がその製造中に許容範囲内にある場合、第一のバインダー組成物に由来する成分は循環水中に存在することが許容されてよい。
【0028】
循環水の一部は、循環水中の第一のバインダー組成物からの成分の絶対量を低減するために処分することができる。
【0029】
工程(b)は、浄水を提供し、循環水の代わりに浄水を用いて第一又は第二のバインダー組成物を調製するサブ工程(b3)をさらに含むことができる。
【0030】
図2は、サブ工程(b3)における液体の流れの例を示す。
図2は第一又は第二の鉱物ウール複合材料の製造用の第一又は第二のバインダー組成物の流れを示さないが、第一の鉱物ウール複合材料の製造を継続することができ、または第二の鉱物ウール複合材料の製造をサブ工程(b3)において開始することができる。
【0031】
具体的には、第一の鉱物ウール複合材料の製造がサブ工程(b3)において継続されている場合、浄水は第一のバインダー組成物の調製のための提供されることができる。また、第二の鉱物ウール複合材料の製造が開始されている場合、浄水は第二のバインダー組成物の調製のために提供されることができる。
【0032】
サブ工程(b1)によって第一のバインダー組成物の調製用の循環水の抽出が休止される一方、浄水をサブ工程(b3)によって提供することができ、第一のバインダー組成物の調製が継続され、それによって第一の鉱物ウール複合材料の製造が継続される。また、第二の鉱物ウール複合材料の製造が開始された場合、浄水をサブ工程(b3)によって供給することができ、第二のバインダー組成物が調製され、第二の鉱物ウール複合材料の製造が開始される。
【0033】
サブ工程(b1)が開始される前に、サブ工程(b3)を実施することができ、例えば、循環水を抽出しながら、第一のバインダー組成物の調製のために浄水を提供することもできる。
【0034】
サブ工程(b3)において、浄水はタンクに提供され、バインダー組成物用の他の原材料と混合されるか、または浄水は配管において静的ミキサーなどを用いて、バインダー組成物用の他の原材料と混合されることができ、それによって、第一又は第二のバインダー組成物が調製される。
【0035】
工程(b)は、循環水への浄水の供給を休止するためのサブ工程(b4)をさらに含むことができる。
【0036】
図3は、サブ工程(b4)における液体の流れの例を示す。第一のバインダー組成物からの成分を含む循環水がサブ工程(b2)において第一のタンクに格納されるため、循環水中の第一のバインダー組成物からの成分の絶対量は、連続的に低減される。したがって、循環水への浄水の供給が継続される場合、第一のバインダー組成物からの成分の濃度は減少し続けるが、第一のタンクに格納される循環水の量は対応して増加する。
【0037】
したがって、サブ工程(b4)において、循環水への浄水の提供は、第一のタンクに格納された循環水中の第一のバインダー組成物からの成分の一定の濃度を維持するために休止することができる。これは、第一のタンクに格納される水の量を相対的に低減することを可能にする。
【0038】
図1(c)に示されるように、工程(c)において、浄水を循環水に提供しつつ、循環水の少なくとも一部が抽出され、抽出された循環水を含有する第二のバインダー組成物が調製され、第二のバインダー組成物が鉱物繊維上に噴霧されて第二の鉱物ウール複合材料が製造される。
【0039】
浄水は、工程(a)に類似して、工程(c)において循環水に同様に供給される。浄水は、循環水と混合することにより循環水に直接供給されることができ、またはそれは循環水に間接的に供給されることができる。
【0040】
工程(c)において、循環水はバインダーの調製のため、第二のバインダー組成物の調製のためにタンクに供給されることができ、または循環水は、第二のバインダー組成物の調製のために、例えば静的ミキサーなどを用いて、配管において、別のバインダー樹脂と混合されることができる。
【0041】
工程(c)において実施される鉱物繊維上に第二のバインダー組成物を噴霧することによって、第二の鉱物ウール複合材料を製造する方法については、先行技術において知られている方法を参照することができる。
【0042】
図4に示されるように、工程(c)は、工程(b)のサブ工程(b2)によって第一のタンクに格納された水が、循環水に提供され、製造装置の洗浄に用いられるサブ工程(c1)をさらに含むことができる。
【0043】
サブ工程(c1)が実施される場合、第二の鉱物ウール複合材料の品質が許容範囲にあるように、第一のタンクに格納された水を循環水に提供することができる。第一のタンクに格納された水は、サブ工程(c1)によって徐々に消費されることができる。
【0044】
さらに、
図5に示されるように、工程(c)は、工程(b)のサブ工程(b2)によって第一のタンクに格納された水が、第二のバインダー組成物の調製に用いられるサブ工程(c2)をさらに含むことができる。
【0045】
サブ工程(c2)が実施される場合、第二の鉱物ウール複合材料の品質が許容範囲にあるように、第一のタンクに格納された水を循環水に提供することができる。第一のタンクに格納された水は、サブ工程(c2)によって徐々に消費されることができる。
【0046】
サブ工程(c2)が実施される場合、第二の鉱物ウール複合材料の品質が許容範囲にあるように、第一のタンクに格納された水を再使用することができる。
【0047】
工程(c)において、サブ工程(c1)及び(c2)は、任意の順序で又は他の操作と同時に実施することができる。
【0048】
本発明の方法は、工程(c)の後に、以下のサブ工程(d1)及び(d2)が、任意の順序で又は同時に実施される追加の工程(d)をさらに含むことができる。
(d1)第二のバインダー組成物の調製用の循環水の抽出を休止すること、及び
(d2)循環水の少なくとも一部を抽出して、第二のタンクにそれを格納すること。
【0049】
工程(d)は本質的に上記の工程(b)を繰り返す工程である。したがって、工程(b)のサブ工程(b3)及び(b4)に対応するサブ工程も、工程(d)に含まれることができる。
【0050】
サブ工程(b2)によって第一のタンクに格納された水が、工程(c)のサブ工程(c1)及び(c2)において完全に消費される際、サブ工程(d2)は、第一のタンク及び第二のタンクについて同じタンクで実施することができる。
【0051】
しかしながら、代わりに、第二のタンクは、第一のタンクとは異なるタンクであることができる。
【0052】
本発明の方法において、前述の工程(a)~(c)を、工程(d)の後に繰り返すことができる。工程(a)の繰り返しは、第三の鉱物ウール複合材料が、第一のバインダー組成物ではなく、第一及び第二のバインダー組成物とは異なる第三のバインダー組成物を用いて製造される工程(a)’であることができる。
【0053】
任意の所望の種類のバインダー組成物の用いた任意の所望の種類の鉱物ウール複合材料の製造のために、当業者は繰り返しの工程(a)’~(c)’を上記のように実施することができるであろう。
【0054】
第一のバインダー、第二のバインダー及び任意選択的に第三のバインダー組成物は、次のものから選択される水性組成物であることができる。
(i)例えばWO2008/043960、WO2008/043961又はWO2012/025699において開示されるようなフェノール/ホルムアルデヒド及び尿素/ホルムアルデヒドの縮合体を含む組成物、フェノール/ホルムアルデヒド及びフェノール/ホルムアルデヒド/グリシンの縮合体を含む組成物、又はフェノール/ホルムアルデヒド縮合体を含み、尿素/ホルムアルデヒド縮合体を含まない組成物などのフェノール/ホルムアルデヒド縮合体を含む組成物;
(ii)例えばWO2007014236において開示されるようなアミンと炭水化物(特に還元糖)とを含むメイラード反応物を含む組成物;
(iii)EP583086、EP990727、EP1741726、US5318990及びUS2007/173588において開示されるようなアクリルポリマーと、ポリヒドロキシル又はポリアミノ化合物などの架橋剤とを含む組成物;
(iv)WO2009/080938、WO2013/021112及びWO2015/159012において開示されるような非還元糖及び/又は水素化糖、及びクエン酸などのポリカルボン酸反応物を含む組成物;及び
(v)WO99/36368、WO01/05725、WO01/96460、WO02/06178、WO2004/007615及びWO2006/061249において開示されるような、特に無水物とアルカノールアミンの反応から得られるアミノ-アミド化合物を含む組成物。
【0055】
第一のバインダー組成物及び第二のバインダー組成物は、第二のバインダー組成物が第一のバインダー組成物とは異なる種類のバインダー組成物であるという条件で、組成物(i)~(v)の任意の種類であることができる。本発明の方法は、バインダー組成物のうちの1つが、淡色、特に白色のバインダー、たとえば上記の組成物(iii)、(iv)又は(v)をもたらす場合に特に有利である。好ましい実施態様において、第二のバインダー組成物は、淡色、特に白色のバインダー、たとえば組成物(iii)、(iv)又は(v)をもたらし、第一のバインダー組成物は、有色のバインダー、たとえば組成物(i)又は(ii)をもたらす。幾つかの特定の実施態様において、第一及び第二のバインダー組成物は、それぞれ種類(i)及び(iii)、又は(i)及び(iv)、又は(i)及び(v)、又は(ii)及び(iii)、又は(ii)及び(iv)、又は(ii)及び(v)であることができる。
【国際調査報告】