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特表2023-512404媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置
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  • 特表-媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置 図1
  • 特表-媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置 図2A
  • 特表-媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置 図2B
  • 特表-媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置 図2C
  • 特表-媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置 図3A
  • 特表-媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置 図3B
  • 特表-媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置 図3C
  • 特表-媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
A61B8/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535728
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020085606
(87)【国際公開番号】W WO2021116326
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】1914432
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508291928
【氏名又は名称】スーパー ソニック イマジン
【氏名又は名称原語表記】SUPER SONIC IMAGINE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ボゥ
(72)【発明者】
【氏名】トン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ドルゴフ,シリル
(72)【発明者】
【氏名】スポルトゥシュ,エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ,ジャン-ピエール
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD19
4C601DD23
4C601EE09
4C601GB03
4C601JC11
4C601JC15
4C601KK02
4C601KK16
4C601KK31
(57)【要約】
媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法、及びこの方法を実施する装置を提供する。媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法であって、本方法は、下記のステップ、すなわち、A1.媒体から時間的に一連の剪断波弾性データを収集することと、A2.剪断波を収集する間に、予め決められた変形のシーケンスに従って逐次的に変化する変形を媒体に適用することと、A3.変形の実際の(推定された)進展を観察することと、B.時間的に一連のデータ及び変形の進展に依存して、媒体の非線形弾性を定量化することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法であって、上記方法は、下記のステップ、すなわち、
A1.上記媒体から時間的に一連の剪断波弾性データを収集することと、
A2.剪断波の収集中に、予め決められた変形のシーケンスに従って、逐次的に変化する変形を上記媒体に適用することと、
A3.実際の変形の進展を観察することと、
B.上記時間的に一連のデータ及び上記変形の進展の関数として、上記媒体の非線形弾性を定量化することとを含む、
方法。
【請求項2】
上記実際の変形の進展を観察することは、リアルタイムで又は準リアルタイムで実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記逐次的に変化する変形は、超音波プローブによって上記媒体を逐次的に圧迫又は逐次的に減圧することで、上記プローブによって適用され、
上記プローブは、上記時間的に一連のデータを収集すること及び/又は上記実際の変形の進展を観察することのために同時に使用される、
請求項1及び2のうちの1つに記載の方法。
【請求項4】
逐次的な圧迫及び/又は逐次的な減圧が連続的かつ漸次に実行される、
請求項1~3のうちの1つに記載の方法。
【請求項5】
上記実際の変形の進展を観察するステップは、上記媒体から、時間的に一連の超音波データを収集することを含む、
請求項1~4のうちの1つに記載の方法。
【請求項6】
推定された実際の変形のレベル及び目標変形のレベルは、ユーザインターフェースにおいて通知され、
上記推定された実際の変形は、特にリアルタイムで、観察された変形に対応し、
上記目標変形は、特にリアルタイムで、上記予め決められた変形のシーケンスに従って変化する、
請求項1~5のうちの1つに記載の方法。
【請求項7】
上記推定された実際の変形のレベル及び上記目標変形のレベルは、上記ユーザインターフェースの画面上に表示される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(A1)において生成される上記剪断波弾性データは、下記のサブステップ、すなわち、
A1.1.少なくとも1つの合焦した超音波を放射させることによって上記媒体において剪断波が生成される励振ステップと、
A1.2.上記媒体から時間的に一連の超音波データを取得することで剪断波の伝搬が観察される観察ステップと、
A1.3.上記媒体の上記超音波データから及び剪断波伝搬モデルから弾性データが決定される処理ステップと
によって生成される、
請求項1~7のうちの1つに記載の方法。
【請求項9】
上記時間的に一連のデータを収集すること及び上記逐次的に変化する変形を観察することは、剪断波弾性ショット及び静的弾性プルを挿入することで超音波シーケンスによってセットアップされ、及び/又は、上記静的弾性データ及び上記剪断波弾性データは時間的にインターリーブされる、
請求項1~8のうちの1つに記載の方法。
【請求項10】
上記方法は、上記媒体の静的弾性(Δε)の時間的に一連のデータを収集するステップA1’.をさらに含み、
ステップA3において、上記実際の変形は上記静的弾性(Δε)によって導出される、
請求項1~9のうちの1つに記載の方法。
【請求項11】
上記静的弾性の値(Δε)の積分に基づいて合計静的弾性(ε)が決定され、
ステップA3において、上記実際の変形は、決定された上記合計静的弾性(ε)の関数として決定される、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
上記方法は、剪断波弾性(Et)、静的弾性(Δε)、及び合計静的弾性(ε)のうちの少なくとも1つの関数として特性パラメータを決定するステップA6.をさらに含む、
請求項1~11のうちの1つに記載の方法。
【請求項13】
上記特性パラメータは、上記合計静的弾性の現在の値(ε)及び以前の値(εt-1 )の比較に基づいて決定され、及び/又は、
特性結果はブール変数であり、及び/又は、
上記特性パラメータは、第1の識別閾にわたって増大又は減少した上記合計静的弾性の以前の値(εt-1 )を上記現在の値(ε)が超過するか否かに基づいて決定される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記特性パラメータは、推定された実際の変形のレベルが目標変形のレベルに対応している最短時間に基づいて決定される、
請求項12~13のうちの1つに記載の方法。
【請求項15】
上記特性パラメータは、上記剪断波弾性(Et)及び/又は上記静的弾性(Δε)の現在の値のエントロピーが予め定義された範囲内に存在するか否かの関数として決定される、
請求項12~14のうちの1つに記載の方法。
【請求項16】
上記決定された特性パラメータが第1の最小特性しきい値を超過する限り、ステップBにおいて、上記剪断波弾性(Et)及び上記合計静的弾性(ε )の現在の値を用いて、上記媒体の非線形弾性を定量化する、
請求項12~15のうちの1つに記載の方法。
【請求項17】
上記決定された特性パラメータが最小特性しきい値を超えない限り、
上記媒体の非線形弾性を定量化するために、上記剪断波弾性(Et)及び上記合計静的弾性(ε)の現在の値は使用されず、及び/又は、
上記決定された特性パラメータを表すフィードバック情報は、プローブのユーザに提示され、及び/又は、
オプションで、次のサイクル(t+1)において処理が繰り返される、
請求項12~16のうちの1つに記載の方法。
【請求項18】
上記予め決められた変形のシーケンスは、上記特性パラメータに従って適応化され、及び/又は、
上記決定された特性パラメータが最小特性しきい値を越えない場合、上記予め決められた変形のシーケンスは中断又は一時停止される、
請求項12~17のうちの1つに記載の方法。
【請求項19】
上記方法は、上記媒体の非線形弾性のレベルを示す少なくとも1つの画像、スコア、及び/又はシンボルを含む、上記媒体の非線形弾性のレベルを表す視覚情報を決定するステップC.をさらに含む、
請求項1~18のうちの1つに記載の方法。
【請求項20】
上記方法は、実際の変形、特性パラメータ、及び視覚情報のうちの少なくとも1つを含むフィードバック情報を、プローブのユーザに提示するステップD.をさらに含む、
請求項10~19のうちの1つに記載の方法。
【請求項21】
ステップA1.~B.又はA1.~C.又は、A1.~D.が繰り返され、及び/又は、
下記の条件、すなわち、
決定された特性パラメータが、第1の最小特性しきい値より低い第2の最小特性しきい値を越えないこと、及び/又は、
最大回数の反復が実行されたこと、及び/又は、
処理の最大時間が経過したこと、及び/又は、
上記媒体の非線形弾性に係る最小回数の定量化が実行されたこと
のうちの少なくとも1つが満たされるまで、ステップA1.~B.又はA1.~C.又は、A1.~D.が繰り返される、
請求項1~20のうちの1つに記載の方法。
【請求項22】
A4.上記媒体から時間的に一連のBモードのデータを収集して、プローブに関する上記媒体の動きの補償を計算するステップと、
A5.上記補償を弾性データに適用するステップとをさらに含む、
請求項1~21のうちの1つに記載の方法。
【請求項23】
上記Bモードのデータ、上記静的弾性のデータ、及び上記剪断波弾性のデータは、時間的にインターリーブされる、
請求項22記載の方法。
【請求項24】
ステップ(A1)~(A3)又は(A1)~(A6)は同時に実行され、及び/又は、
ステップ(A1)~(A3)又は(A1)~(A6)又は(A1)~(D)は、リアルタイムで又は準リアルタイムで実行される、
請求項1~23のうちの1つに記載の方法。
【請求項25】
上記時間的に一連のデータの各瞬間について、又は、少なくとも一部の瞬間について、次式に従って線形回帰フィッティングを実行することで、剪断波非線形性パラメータの値が決定され、
【数1】
ここで、
E(t)は、変形の進展中での、変形の各瞬間における弾性であり、
は、第1の瞬間(t0)における弾性であり、
εは変形であり、
Aは上記非線形剪断パラメータである、
請求項1~24のうちの1つに記載の方法。
【請求項26】
ステップ(A1)に先行するステップ(0)であって、予め決められた変形シーケンスに従って変形を適用することなく、上記媒体の少なくとも1つの超音波又はMRI(magnetic resonance imaging)画像又はマンモグラフィー画像又は剪断波弾性画像が決定され、ステップ(A1)~(B)に従って非線形弾性を定量化するための関心対象領域(region of interest:ROI)が決定されるステップ(0)をさらに含む、
請求項1~25のうちの1つに記載の方法。
【請求項27】
非線形弾性画像の表示と並列に、信頼度マップが表示される、
請求項1~26のうちの1つに記載の方法。
【請求項28】
画像の各データ又は各画素について、予め定義された基準値に対する非線形弾性値が表示される、
請求項1~27のうちの1つに記載の方法。
【請求項29】
イメージング装置(1)を用いて媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法であって、
上記イメージング装置(1)は、超音波プローブ(6)、マイクロコンピュータ(4)、及びオプションでユーザインターフェースを備え、
上記方法は、
上記媒体の表面に上記プローブを配置するステップと、
非線形剪断波弾性(NL-SWE)のイメージングを行う第1のモードを起動するステップであって、上記第1のモードにおいて、上記プローブは、上記媒体に対して次第に圧迫又は次第に減圧することで、予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用し、
上記装置は、時間的に一連の超音波データを収集し、上記プローブを用いて上記媒体において生成された剪断波のイメージングを行い、上記媒体の弾性を推定することを可能にし、
上記装置は、時間的に一連の超音波データを収集し、上記プローブによって適用された上記媒体の変形の進展を推定することを可能にする
ステップと、
上記時間的に一連のデータ及び観察された上記変形の進展の関数として計算される、上記媒体の非線形弾性を定量化するステップとを含み、
上記方法は、
オプションで、上記媒体の非線形弾性についての画像を上記ユーザインターフェースに表示するステップと、
オプションで、画像の予め定義された計算及び測定を含む、時間的に一連の画像を記録するステップと、
オプションで、時間的に一連の画像を上記ユーザインターフェースに表示するステップと、
オプションで、非線形画像の解釈の結果を表示するステップとを含む、
方法。
【請求項30】
上記予め決められた変形のシーケンスは、上記定量化するステップの前に、オプションで自動的に停止するサブステップを含む、
請求項29記載の方法。
【請求項31】
特に、上記第1のモードを起動する前に、
上記プローブを上記媒体の表面に配置することと、
第2の剪断波弾性(SWE)イメージングモードを起動することと、
予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用することなく、上記媒体に剪断波を適用することで、上記媒体の少なくとも1つの剪断波弾性画像を決定することと、
オプションで上記画像の予め定義された計算及び測定を含む、上記画像を保存することと、
上記画像において関心対象領域を決定することで、上記領域の非線形弾性のイメージングを行うこととをさらに含む、
請求項29及び30の一方に記載の方法。
【請求項32】
請求項1~31のうちの1つに記載の方法を用いて、良性病変と比較して悪性病変を決定する方法であって、上記悪性病変は、非線形弾性のレベルに基づいて検出される、
方法。
【請求項33】
請求項1~32のうちの1つに記載の方法を用いて、良性病変と比較して悪性病変を決定する方法であって、研究される媒体は、生物学的な乳腺及び/又は腋窩組織である、
方法。
【請求項34】
超音波プローブ(6)及びマイクロコンピュータ(4)を備えるイメージング装置(1)であって、請求項1~33のうちの1つに記載された、媒体の非線形弾性を定量化する方法を実施するように適応化されたイメージング装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘弾性媒体の画像を提供する超音波イメージング方法及び装置に関する。特に、本方法は、媒体の非線形を定量化し、具体的には、媒体における軟部癌領域(すなわち、非癌媒体に比較して未硬化の領域)を検出することを目的とする。
【0002】
より詳しくは、本発明は、超音波を用いて、上記超音波の反射粒子を含む粘弾性媒体における散乱を観察するイメージング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
超音波画像は複数の異なる方法によって取得されうる。例えば、取得された画像は、観察される組織を変形することで取得される静的歪みタイプであってもよく、又は、剪断波エラストグラフィー(shear wave elastography:SWE)タイプであってもよい。
【0004】
硬化した癌は、一般的に、剪断波エラストグラフィー(SWE)超音波イメージングによって検出される。しかしながら、この技術では軟部癌は検出されないが、その理由は、従来技術のエラストグラフィーを用いると、そのような癌が非癌媒体と同様の弾性を有するからである。
【0005】
また、例えば非特許文献1及び2に記載のように、媒体の非線形特性を決定することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0234230号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0252295号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Latorre-Ossa, JL Gennisson, E. De Brosses, M Fink, "Quantitative imaging of nonlinear shear modulus by combining static elastography and shear wave elastography", IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control. 2012 Apr; 59(4):833-9,
【非特許文献2】M. Bernal, F. Chamming's, M Couade, J Berfcoff, M. Tanterm JL Gennisson, "In Vivo Quantification of the Nonlinear Shear Modulus in Breast Lesions: Feasibility Study". IEEE Trans Ultrason Ferroelectr Freq Control. 2016 Jan; 63(1):101-9. doi: 10.1109/TUFFC.2015.2503601. Epub 2015 Nov 24.
【非特許文献3】O'Donnell et al, "Internal displacement and strain imaging using speckle tracking", IEEE Transactions on Ultrasonic, Ferroelectrics, and Frequency Control, Vol. 41, Issue 3, May 1994, p. 314-325
【非特許文献4】Ophir et al., "Elastography: A Quantitative Method for Imaging the Elasticity of Biological Tissues", Ultrasonic Imaging, Vol. 13, p.111-134, 1991,
【非特許文献5】J-Y Bouguet, "Pyramidal Implementation of the Lucas Kanade Feature Tracker. Description of the Algorithm", Intel Corp.
【非特許文献6】Gennisson and Al., J. Acoust. "Acoustoelasticity in soft solids: Assessment of the nonlinear shear modulus with the acoustic radiation force", Soc. Am (122), December 2007, p. 3211-3219,
【非特許文献7】H. Latorre-Ossa et Al., "Quantitative Imaging of Nonlinear Shear Modulus by Combining Static Elastography and Shear Wave Elastography", IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, Vol. 51, Issue 4, p. 833-839,
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非線形性から情報を取得するためには、いくつかの問題特に、剪断係数及び変形の関数として剪断係数の非線形性を表す数学的表現を発見すること、この数学的表現を計算するために必要な値を決定/測定すること、及び、このデータの検索を可能にする測定及び計算処理を確立することを解かなければならない。
【0009】
従って、本発明は、硬化していない癌の検出及び診断を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的で、本発明は、下記のステップを用いて、媒体の非線形剪断波弾性を定量化する方法を提供する。
A1.媒体から時間的に一連の剪断波弾性データを収集すること、
A2.剪断波の収集中に、予め決められた変形のシーケンスに従って、逐次的に変化する変形を媒体に適用すること、
A3.変形の実際の(推定された)進展を観察すること、及び、
B.時間的に一連のデータ及び変形の進展の関数として、媒体の非線形弾性を定量化すること。
【0011】
これらの条件下で、超音波画像による軟部癌、例えば乳癌の検出又は診断が改善されうる。軟部癌は、標準的なSWEエラストグラフィー画像(圧迫なし)において、健康な組織又は軟部の良性病変と同様の弾性を示す。しかしながら、SWE中に組織(媒体)を圧迫することによって、健康な組織及び悪性病変において弾性が異なって変化することが発見された。NL-SWEイメージングは、この現象の特性を決定して定量化することを目的とする。
【0012】
例えば、音響弾性の理論に基づいて、組織の非線形剪断係数又は非線形弾性剪断係数又は硬化は、歪み及びSWE画像から推定されうる。具体的には、このモードでは、プローブを用いて組織を圧迫又は減圧することによって、人間のオペレータ(又はマシン、又は超音波プローブを取り扱うか操作することができる任意のもの)は、媒体の剪断係数又は硬化レートの非線形性を表すマップを導出するために使用される、一連のSWE及び歪み画像を取得することができる。
【0013】
さらに、本発明は、特に、非線形性からデータを取得する目的で、下記の問題を解いてもよい。
1.剪断係数及び変形の関数として非線形剪断係数を表す数学的表現を発見すること。
2.Bモード画像、剪断波エラストグラフィー(SWE)画像、及び歪みエラストグラム(変形による)を同時に取得することができる超音波シーケンスを開発すること。
3.圧迫中に、又は圧迫の終了時に、又は圧迫過程中の専用ステップにおいて、歪み及びSWEの画像を集約して再整列させる技術を開発すること。
4.圧迫/減圧を実行する際にオペレータをガイドするユーザインターフェースを開発すること。
5.圧迫/減圧をガイドするプローブアタッチメントを作成すること。
【0014】
本発明に係る方法の異なる実施形態では、オプションで、下記の条件のうちの1つ及び/又はもう1つがさらに使用されてもよい。
【0015】
一態様によれば、実際の変形の進展を観察することは、リアルタイム又は準リアルタイムで行われる。したがって、このリアルタイム又は準リアルタイムの観察のおかげで、変形は、連続的かつ漸進的に(すなわち一時停止なしで)実行されうる。
【0016】
一態様によれば、逐次的に変化する変形は、超音波プローブによって媒体を逐次的に圧迫又は逐次的に減圧することで、プローブによって適用される。プローブは、時間的に一連のデータを収集すること及び/又は実際の変形の進展を観察することのために同時に使用される。この方法は、ドップラー効果、スペックル追跡、及び/又は光フローに基づく方法を含む(ただしこれらに限定されない)動き推定アルゴリズムを使用してもよい。
【0017】
実際の変形の進展を観察することは、(後述するように)媒体の歪みによって表現又は測定されうる。
【0018】
一態様によれば、逐次的な圧迫及び/又は減圧は、連続的かつ漸進的に実行される。例えば、圧迫及び/又は減圧は、一時停止又は停止なしの連続的な動きである。
【0019】
一態様によれば、実際の変形の進展を観察するステップは、特に変形の計算を可能にするために、媒体の時間的に一連の超音波データを収集すること、例えば、時間的に一連の静的弾性(歪み)データを収集することを含む。
【0020】
一態様によれば、推定された実際の変形のレベル及び目標変形のレベルは、ユーザインターフェースにおいて報告される、推定された実際の変形は、特にリアルタイムで、観察された変形に対応し、目標変形は、予め決められた変形のシーケンスに従って、特にリアルタイムで、(特に連続的かつ漸進に)変化する。
【0021】
実際の変形レベルが推定のみされうる、すなわち、このレベルが多少不正確かもしれないことに注意する。
【0022】
一態様によれば、推定された実際の変形のレベル及び目標変形のレベルは、ユーザインターフェースの画面上に表示される。
【0023】
一態様によれば、ステップ(A1)において生成される剪断波弾性データは、下記のサブステップによって生成される。
A1.1.少なくとも1つの合焦した超音波を放射することによって媒体において剪断波が生成される励振ステップ、
A1.2.媒体の時間的に一連の超音波データを取得することで剪断波の伝搬が観察される観察ステップ、
A1.3.媒体の超音波データ及び剪断波伝搬モデルから弾性データが決定される処理ステップ
【0024】
この処理は平面波を使用してもよいが、このステップは、合焦した波を用いて実行されてもよい。
【0025】
一態様によれば、時間データを収集すること及び逐次的に変化する変形を観察することは、剪断波弾性バースト及び静的弾性バーストをインターリーブすることで超音波シーケンスによって達成され、及び/又は、静的弾性データ及び剪断波弾性データは時間的にインターリーブされる、
【0026】
本処理はさらに、ステップ:A1’.媒体の静的弾性(Δε)について時間的に一連のデータを収集することを含んでもよい。
【0027】
ステップA3において、実際の変形は静的弾性(Δε)によって導出されうる。
【0028】
この静的弾性は、ラグランジアン静的弾性(Δε)であってもよい。
【0029】
特に、静的弾性(Δε)についての時間的に一連のデータは、時間的に一連の静的弾性値(Δε)を含んでもよい。時間的に一連の剪断波弾性データ(Et)は、時間的に一連の剪断波弾性値(Et)を含む。
【0030】
静的弾性値(Δε)の積分の関数として合計静的弾性(ε)が決定される。
【0031】
ステップA3において、実際の変形は、決定された合計静的弾性(ε)の関数として決定されうる。
【0032】
本処理はさらに、ステップ:A6’.剪断波弾性(Et)、静的弾性(Δε)、及び合計静的弾性(ε)のうちの少なくとも1つに基づいて特性パラメータを決定することを含んでもよい。
【0033】
特性パラメータは、合計静的弾性の現在の値(ε)及び以前の値(εt-1 )を比較する関数として決定されうる。
【0034】
特性結果はブール変数であってもよい。
【0035】
特性パラメータは、第1の識別閾にわたって増大又は減少した合計静的弾性の以前の値(εt-1 )を現在の値(ε)が超過するか否かについての関数として決定されうる。この予め定義された識別閾は、固定されてもよく、又は、予め定義された関数に従ってもよい。
【0036】
特性パラメータは、推定された実際の変形のレベル(合計静的弾性(ε)によって示される)が目標変形のレベル(例えば、予め定義された許容量を有する)に対応している最短時間の関数として決定されうる。
【0037】
特性パラメータは、剪断波弾性(Et)及び/又は静的弾性(Δε)の現在の値のエントロピーが予め定義された範囲内に存在するか否かの関数として決定されうる。
【0038】
決定された特性パラメータが第1の最小特性しきい値を超過する限り、ステップBにおいて、剪断波弾性(Et)及び合計静的弾性(ε )の現在の値を用いて、媒体の非線形弾性を定量化しうる。従って、許容できる特性レベルの値のみを使用可能である。しかしながら、不適格な値は、次のt+1サイクルにおいて比較値として使用可能である。
【0039】
決定された特性パラメータが最小特性しきい値を超えない限り、下記のオプションの動作が利用可能である。
媒体の非線形弾性を定量化するために、現在の剪断波弾性(Et)及び合計静的弾性(ε)の値が使用されないこと、及び/又は、
決定された特性パラメータを反映するフィードバック情報が、プローブのユーザに提示されること、及び/又は、
オプションで、次のサイクル(t+1)において処理が繰り返されること。
【0040】
予め決められた変形のシーケンスは、特性パラメータの関数として適応化されてもよい。
【0041】
決定された特性パラメータが最小特性しきい値を越えない場合、予め決められた変形のシーケンスは中断又は一時停止されてもよい。
【0042】
したがって、予め決められた変形のシーケンスは予め定義されてもよいが、オプションで、取得されるデータの特性に依存してもよい。
【0043】
本方法はさらに、ステップ:C.媒体の非線形弾性のレベルを示す画像、スコア、及び/又はシンボルのうちの少なくとも1つを含む、媒体の非線形弾性のレベルを表す視覚情報を決定することを含んでもよい。
【0044】
本方法はさらに、ステップ:D.実際の変形、特性パラメータ、及び視覚情報のうちの少なくとも1つを含むフィードバック情報を、プローブのユーザに提示することを含んでもよい。
【0045】
ステップA1.~B.又はA1.~C.又は、A1.~D.が繰り返されてもよく、及び/又は、下記の条件のうちの少なくとも1つが満たされるまで、ステップA1.~B.又はA1.~C.又は、A1.~D.が繰り返されてもよい。
決定された特性パラメータが、第1の最小特性しきい値より低い第2の最小特性しきい値を越えないこと、及び/又は、
最大回数の反復が実行されたこと、及び/又は、
最大処理時間が経過したこと、及び/又は、
媒体の非線形弾性に係る最小回数の定量化が実行されたこと。
【0046】
従って、本処理は、決定された値が更新及び/又は改善される複数t回のサイクルを含んでもよい。
【0047】
一態様によれば、本方法は、媒体の非線形弾性のレベルを示す画像、スコア、及び/又はシンボルを決定するステップC.をさらに含んでもよい。
【0048】
スコア及び/又はシンボルは、アイコン、値対しきい値、フレーズ、値のテーブル、などであってもよい。
【0049】
一態様によれば、本方法はさらに、下記のステップを含んでもよい。
A4.媒体から時間的に一連のBモードのデータを収集して、プローブに関する媒体の動き補償を計算するステップ、
A5.補償を弾性データに適用するステップ。
【0050】
一態様によれば、Bモードのデータ、静的弾性のデータ、及び剪断波弾性のデータは、時間的にインターリーブされる。
【0051】
一態様によれば、ステップ(A1)~(A3)又は(A1)~(A5)又は(A1)~(D)は同時に実行され、及び/又は、ステップ(A1)~(A3)又は(A1)~(A5)又は(A1)~(D)は、リアルタイムで又は準リアルタイムで実行される。
【0052】
一態様によれば、時間的に一連のデータの各瞬間について、又は、少なくとも一部の瞬間について、次式に従って線形回帰フィッティングを実行することで、剪断波の非線形性パラメータの値が決定される。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、
E(t)は、変形の進展中での、変形の各瞬間における弾性であり、
は、第1の瞬間(t0)における弾性であり、
εは変形であり、
Aは非線形剪断パラメータである。
【0055】
一態様によれば、本方法はさらに、ステップ(A1)に先行するステップ(0)であって、予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用することなく、媒体の少なくとも1つの超音波又はMRI(magnetic resonance imaging)又はマンモグラフィー又は剪断波弾性画像が決定され、ステップ(A1)~(B)に従って非線形弾性を定量化するための関心対象領域(ROI)を決定することを可能にするステップ(0)を含む。
【0056】
一態様によれば、提示される「結果」画像の各点の評価された信頼度レベルを従業者に知らせるために、信頼性レベルを含む信頼度マップが、非線形弾性画像とともに表示される。
【0057】
この信頼度マップは、媒体の非線形弾性のレベルを示す画像の各部分の信頼性レベルを示すマップ(又は画像)であってもよい。信頼性レベルは、例えば、線形回帰の結果から導かれる統計情報から導出されてもよく、及び/又は、組織に適用される実際の動きの特性(等速度、一軸の動き、…)を考慮してもよい。このマップは、行列、画像、カラーコード、及び/又はテーブルを用いて実装されてもよい。
【0058】
一態様によれば、予め定義された基準値に関する非線形弾性値が、各データについて、又は、画像の各画素について表示される。この予め定義された基準値は、科学文献からの予め定義された値であってもよく、及び/又は、以前の検査中にこの同じ患者について計算されてもよく、又は、統計的計算の結果であってもよく、及び、オプションで、グラフィック的に表示されてもよい。例えば、この値は、(例えば、各画素又は一群の画素に係る)非線形弾性値の代替又は追加として表示されてもよい。予め定義された値を表示することは、例えば軟部癌媒体の、信頼できる分析及び/又は診断を可能にし、及び/又は、観察される癌のタイプを示すことができるという利点を有する。
【0059】
本発明は、イメージング装置(1)を用いて媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法にも関し、
イメージング装置(1)は、超音波プローブ(6)、マイクロコンピュータ(4)、及びオプションでユーザインターフェースを備え、
本方法は、下記のステップ、すなわち、
プローブを媒体の表面に配置するステップと、
非線形剪断波弾性(NL-SWE)のイメージングを行う第1のモードを起動するステップであって、第1のモードにおいて、プローブは、媒体に対して漸進的に圧迫又は漸進的に減圧することで、予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用し、
装置は、時間的に一連の超音波データを収集し、プローブを用いて媒体において生成された剪断波のイメージングを行い、媒体の弾性を推定し、
装置は、時間的に一連の超音波データを収集し、プローブによって適用された媒体の変形の進展を推定することを可能にする
ステップと、
時間的に一連のデータ及び観察された変形の進展の関数として計算される、媒体の非線形弾性を定量化するステップとを含み、
本方法は、
オプションで、媒体の非線形弾性についての画像をユーザインターフェースに表示するステップと、
オプションで、画像の予め定義された計算及び測定を含む、時間的に一連の画像を保存するステップと、
オプションで、時間的に一連の画像をユーザインターフェースに表示するステップと、
オプションで、非線形画像の解釈の結果を表示するステップとを含む。
【0060】
これらの画像の各々は、二次元又は3Dであってもよい。
【0061】
このNL-SWEモードを開始する前に、例えば臨床例(患者のサイズ、考慮される器官のサイズ、特にそれが乳房組織に関する場合、観察される病変の深さ、組織の密度、など)に従って、予め決められた変形のシーケンスのパラメータを設定するステップを実行してもよい。
【0062】
さらに、いったん非線形性画像が表示されると、例えばユーザの選好情報(他のBモード画像をオーバーレイすること、など)に従って、表示パラメータを設定すること、単位を変更すること、カラーコードを変更すること、などのステップを行う。
【0063】
圧迫(応力)又は減圧が漸進的な動きである場合、ユーザ又は間接付きのアーム又は他の任意のオペレータは、一時停止なしに、それを連続的に実行してもよい。
【0064】
処理の収集ステップの各々において、プローブは超音波データを収集してもよく、このデータに対して、変形に関連する情報を抽出するために、及び/又は、収集された超音波データを再整列するために、動き推定方法(Bモード又はドップラー効果に対するスペックル追跡)を適用してもよい。
【0065】
一態様によれば、予め決められた変形のシーケンスは、定量化するステップの前に、オプションで自動的に停止するサブステップを含む。このことは、例えば、十分なデータが収集されたので取得セッションが終了される、とオペレータに通知する追加の利点をもたらす。
【0066】
一態様によれば、本方法は、特に第1のモードを起動する前に、
プローブを媒体の表面に配置するステップと、
第2の剪断波弾性(SWE)イメージングモードを起動することと、
予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用することなく、媒体に剪断波を適用することで、媒体の少なくとも1つの剪断波弾性画像を決定することと、
オプションで画像の予め定義された計算及び測定を含む、画像を保存することと、
画像において関心対象領域を決定することで、領域の非線形弾性のイメージングを行うこととを含む。
【0067】
さらに、本発明は、上述した方法を用いて、非癌媒体と比較して未硬化の癌媒体(良性病変と比較して未硬化の悪性病変)を決定する方法を提供し、未硬化の癌媒体(未硬化の悪性病変)は、非線形弾性のレベルに応じて検出される。
【0068】
具体的には、本発明は、上述した方法を用いて、非癌媒体と比較して未硬化の癌媒体を決定する方法を提供し、検査される媒体は、生物学的な乳房及び/又は腋窩組織である。
【0069】
本開示は、超音波プローブ及びマイクロコンピュータを備えたイメージング装置であって、上述したような媒体の非線形弾性を定量化する方法を実現するように適応化されたイメージング装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波イメージング装置の概略図である。
図2A】本発明に係る処理の例、特に、逐次的に変化する概略的な変形を媒体に適用することを概略的に示す。
図2B】本発明に係る処理の例、特に、逐次的に変化する概略的な変形を媒体に適用することを概略的に示す。
図2C】本発明に係る処理の例、特に、逐次的に変化する概略的な変形を媒体に適用することを概略的に示す。
図3A】本開示に係る方法を実行する場合の装置ユーザインターフェース画面の概略図である。
図3B】本開示に係る方法を実行する場合の装置ユーザインターフェース画面の概略図である。
図4】本開示に係る改善された処理の論理回路図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
例示の目的で提供された様々な図にわたって、同じ参照数字は同一又は同様の構成要素を示す。
【0072】
図1に示すイメージング装置1は、超音波疎密波を散乱する粘弾性媒体2であって、例えば、医療用アプリケーションの場合には、生体、例えば患者の身体の一部(乳房、肝臓、腹など)であってもよい粘弾性媒体2の画像を提供することが意図される。イメージング装置1は、弾性剪断波伝搬を検査することで、媒体2の弾性画像を提供することもできる。
【0073】
媒体の画像は、例えば、マイクロコンピュータ4(キーボード又は類似物のような少なくとも1つの入力インターフェース4bと、画面又は類似物のような出力インターフェース4aとを備える)又は他の任意の電子的中央装置によって生成され、これは、超音波疎密波を媒体2へその外部の表面3から送信し、超音波疎密波は、媒体2に含まれる散乱粒子5と相互作用し、これらの粒子は、超音波疎密波を反射する。粒子5は、媒体2の任意の異成分によって構成されてもよく、特に、医療アプリケーションの場合、ヒト組織に存在するコラーゲン粒子(これらの粒子は、超音波画像において、いわゆる「スペックル」を形成する)によって構成されてもよい。
【0074】
媒体2を観察して媒体の画像を生成するために、観察される媒体2の外表面3に対して配置された超音波プローブ6が使用されてもよい。このプローブは、例えば0.5~100MHzの間及び好ましくは0.5~15MHzの間、例えば約4MHzの周波数で、超音波検査において一般的に使用されるタイプの圧縮性の超音波パルスを、Z軸に沿って送信する。
【0075】
超音波プローブ6は、n個の超音波トランスデューサT1,T2,…,Ti,…,Tnのアレイからなり、nは、1より大きい整数又は少なくとも1に等しい整数である。
【0076】
このプローブ6は、例えば、リニアアレイの形式を有してもよく、これは、例えば、Z軸に垂直なX軸に沿って整列したn=128個のトランスデューサを備えてもよい。問題となっているプローブは、トランスデューサの二次元アレイ(平坦又はその他)であってもよい。
【0077】
トランスデューサT1,T2,…Tnは、マイクロコンピュータ4によって互いに独立に制御されてもよく、おそらくは、例えば、可撓性ケーブルによってプローブ6に接続された電子的ラック7に含まれる、中央処理装置(CPU)によって互いに独立に制御されてもよい。
【0078】
したがって、トランスデューサT1~Tnは、下記のいずれかを選択的に放射することができる。
平面の超音波疎密波(すなわち、この場合、X,Z平面において直線である波面を有する波)、又は、媒体2における観察のフィールド全体を照射する他の任意のタイプの合焦していない波、例えば、様々なトランスデューサT1~Tnにランダム音響信号を放射させることで生成された波、
又は、媒体2の1つ又は複数の点に合焦した超音波疎密波。
【0079】
特許文献1は、合焦していない複数の疎密波、例えば、異なる角度の平面波を使用し、これらの平面波の戻り波を合成して媒体の画像を改善された特性で非常に迅速に取得する合成イメージング技術を提案する。
【0080】
本発明に係るイメージング装置1及び方法は、媒体の剪断波非線形弾性定量化を実行する。この処理を開始するために、非線形剪断波弾性(NL-SWE)に係る第1のイメージングモードが起動されてもよい。
【0081】
NL-SWEモードは、媒体の剪断波弾性(SWE)を決定するために超音波方法を使用する。
【0082】
この処理(すなわち、各データ収集又はスキャン)は、変形の進展をリアルタイム又は準リアルタイムで観察する超音波処理と同時に組み合わされる及び/又はインターリーブされてもよい。
【0083】
これらの3つの超音波処理の詳細な例は、詳しくは下記で説明される。SWE及び歪み処理は平面超音波に基づいてもよく、一方、Bモード処理は非平面超音波に基づいてもよい。
【0084】
静的弾性(歪み)を決定する超音波方法の代替又は追加として、プローブは、圧力センサを備えることで、媒体における変形の進展を観察(又は追従)してもよい。
【0085】
図2A図2Cは、本発明に係る処理の例、特に、逐次的に変化する概略的な変形を媒体に適用することを提供する。
【0086】
この例において、処理は、図2Aに示す状態で開始し、図2Cに示す状態で終了する。図2A図2Cは、特に、逐次的に変化する変形を媒体に適用することで引き起こされた媒体の変形の進展を示す。イメージング装置1は、本発明に係る媒体の剪断波非線形弾性定量化を同時に実行する。
【0087】
処理は、数秒、例えば5~10秒かかってもよい。この時間は、媒体の変形の進展中に十分なデータを収集する(すなわち、この進展中に媒体の非線形剪断波弾性を十分に定量化する)ことに有用である。
【0088】
ユーザは、彼/彼女がプローブ又は他の任意の手段を介して組織に変形を適用する準備ができた状態になるように、カウントダウンを介して警報を受けてもよい。
【0089】
図2A図2Cに示す変形は概略のみである。図3A図3Cのコンテキストにおいて説明するように、本開示に従って適用される変形のレベルは、予め定義された変形のシーケンスによって予め決められる。
【0090】
図2Aは、プローブ6が外表面3に対して圧力Pをほとんど又はまったく与えない場合の、処理の時刻t0におけるイメージング装置1の動作を示す。外表面3は、実質的に、(X方向に)水平のままである。媒体Iの画像は、例えば、外表面3に対して深度Z1において封入体2iを含む。同時に、(上に説明したような)媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波処理が開始される。
【0091】
図2Bは、Pより大きな外圧P’(又は応力)が与えられ、それにより、外表面3を媒体2の内部に向かってZ方向に変形する場合の、処理の時刻t1におけるイメージング装置1の動作を示す。このように、媒体の変形は逐次的に変更された。
【0092】
図2Cは、t1において与えられたP’よりもずっと大きな外圧P”が存在する場合の、処理の時刻t2におけるイメージング装置1の動作を示す。
【0093】
図2A図2Cに示すような逐次的な圧迫は、連続的かつ漸進的な方法で実行されてもよい。このことは、実際の変形の進展を観察することで、リアルタイムで又は準リアルタイムで実行可能である。代替として、逐次的な減圧が、媒体を含む組織に対して適用されてもよい。
【0094】
既出のように、図2A図2Cに示す変形の進展はランダムでなく、ただし、予め定義された変形のシーケンスによって予め決められる。例えば、このシーケンスは、例えば、装置1のユーザインターフェース画面4aにおいてユーザに対してグラフィック的に表示されてもよく、これにより、処理の各瞬間においてユーザが正しい圧力を適用することを可能にする。例えば、適用すべき圧力と適用及び測定された圧力とを同じグラフにおいて示すカーソル、又は、プローブにおける振動を表示することで、ユーザに、彼又は彼女が予め定義されたシーケンスに従っているか否かを示す。例えば、予め定義されたシーケンスに従って自動化された方法でプローブを移動させるロボットアームを用いることによって、変形処理を自動化することも可能である。
【0095】
図3A図3Cは、本開示に係る処理中における装置のユーザインターフェースの例示的な画面4aを示す。例えば、図3A図3Cは、図2A図2Cにおける瞬間t0~t2を参照してもよい。
【0096】
画面4aは、少なくとも1つの超音波画像を示すフィールド41を表示してもよい。例えば、この画像は、処理を開始する前、すなわちt0の前に取得された媒体における関心対象領域の画像(例えば、剪断波弾性(SWE)画像)であってもよい。瞬間t2の後、フィールド41は、本発明に従って媒体の非線形弾性レベルを示す画像を表示してもよい。
【0097】
画面4aはさらにフィールド42を示す。処理中に、上記フィールド42は、現在の推定された実際の変形のレベルを(例えば、十字形又は点Oによって)表示し、また、目標変形のレベルを(例えば、ボール又は円Cによって)表示する。
【0098】
推定された実際の変形Oは、特にリアルタイムで、現在観察されている変形であり、目標変形Cは、特にリアルタイムで、変形の予め決められたシーケンスに従って、逐次的に変化する。目標Cは、処理中にフィールド42において漸進的に変化してもよく、これにより、各瞬間における予め決められた変形のシーケンスの進展を示し、したがって、ユーザをガイドする。
【0099】
図3Aは、図2A及びしたがって瞬間t0の状態を反映しうる。その結果、プローブ6は、外表面3に対して外圧Pをほとんど又はまったく与えない。したがって、現在の推定された実際の変形のレベルO及び現在の目標変形のレベルCは、ともにゼロである。
【0100】
図3Bは、図2B及びしたがって瞬間t1の状態を反映しうる。従って、プローブ6は、外表面3に対して増大した外圧Pを与える。この例示的なシナリオにおいて、推定された実際の変形Oと現在の目標変形のレベルCとの間にレベル差が存在する。この実施例では、現在の推定された実際の変形のレベルOは、現在の目標変形のレベルCより低い。すなわち、ユーザは、圧力をさらに増大させるように目標Cによってガイドされる。
【0101】
図3Cは、図2C及びしたがって瞬間t2の状態を反映しうる。従って、プローブ6は、t1におけるP’よりもさらに高い外圧P”を与える。t2が予め決められた変形のシーケンスの終わりであるので、現在の推定された実際の変形のレベルO及び現在の目標変形のレベルCは、ともに、予め決められた変形のシーケンスの最大値である。
【0102】
オプションで、イメージングは、瞬間t2において停止又は固定される。このことは、イメージングを手動で停止することを必要とすることなく、t2まで予め定義された変形のシーケンスにユーザが集中できるという利点を有する。
【0103】
瞬間t2又はその後に、又は、データ取得中に、装置1は、媒体の非線形弾性を定量化し、それは、時間t0~t2の間における時間的に一連のデータと観察された変形の進展との関数として計算される。ユーザインターフェースは、フィールド41において媒体の非線形弾性の画像を表示してもよく、それは、定量化された非線形弾性の関数として決定される。オプションで、装置1は、時間t0~t2の間に収集された時間的に一連のデータ(又は画像)を記録してもよい。このステップは、予め定義されたデータ計算及び測定を含んでもよい。さらに、画面4aは、ユーザインターフェースにおいて時間的に一連の画像を表示してもよい。
【0104】
いったん画像が表示されると、ユーザは、彼又は彼女の選好情報(他のBモード画像をオーバーレイすること、など)に従って表示パラメータを設定すること、単位を変更すること、カラーコードを変更することを行ってもよい。例えば、単位なしの表示と、単位(例えばkPa)ありの表示との間で切り換えることが可能であり、前者はより解釈しやすく、後者は、値を解釈するために科学文献とともに使用すると有益であるかもしれない。これらの分析は、任意の手段、例えば人工知能によって、統計的アルゴリズムを介して実行されてもよい。
【0105】
さらに、装置は、超音波イメージング、剪断波弾性(SWE)イメージング、及び/又はマンモグラフィーの第2のモードを行ってもよい。このモードは、NL-SWEモードを用いる前に、又は、以前のスタンドアロンセッションの間に、起動されてもよい。このモードにおいて、装置は、予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用することなく、媒体に剪断波を適用することで、媒体の少なくとも1つの剪断波弾性画像を決定してもよい。画像が保存されてもよく、オプションで、画像の予め定義された計算及び測定を含む。次いで、ユーザは、画像における関心対象領域(ROI)を決定し、第1のNL-SWEモードに従って領域の非線形弾性をイメージングしてもよい。
【0106】
図4は、本開示に係る改善された処理のフローチャートの概略図である。この処理は、特に、収集されたデータの特性基準を含む。
【0107】
処理は、複数サイクルtにわたって繰り返されてもよい。したがって、処理は、複数サイクルtを含む可変な時間期間にわたって継続してもよい。この可変な時間又は継続時間及び/又はサイクル数は、予め定義されてもよく、(後述するように)取得されるデータの特性に従って適応化されてもよい。処理は、下記の条件のうちの1つが満たされるまで、繰り返されてもよい。
決定された特性パラメータが、第1の最小特性しきい値より低い第2の最小特性しきい値を越えないこと、及び/又は、
最大回数の反復が実行されたこと、及び/又は、
媒体の非線形弾性に係る最小回数の定量化が実行されたこと。
【0108】
ステップ1において、ユーザは、媒体の表面にプローブを配置する。ステップ2において、スキャニング又はイメージングモードが起動される。このモードは、特に、剪断波弾性(SWE)イメージング及び静的弾性(歪み)イメージングを含み、その実行中に、プローブは、媒体に対して次第に圧迫又は次第に減圧することで、予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用する。ステップ2のスキャンは、可変な処理時間にわたって継続してもよい。
【0109】
ステップ3.1において、媒体において生成される剪断波をイメージングする、時間的に一連の超音波データは、プローブを用いて収集され、剪断波弾性(SWE)Eを導出することを可能にする。このステップは、本開示に係るステップA1であってもよい。特に、ステップ2のスキャン中における各サイクルtについて、実際の剪断波速度測定のヤング率Eが収集されうる。
【0110】
ステップ3.2において、プローブを用いて、媒体の時間的に一連の静的弾性データが収集され、媒体の静的弾性Δεが導出される。このステップは、本開示に係るステップA1’であってもよい。特に、ステップ2のスキャン中における各サイクルtについて、現在の画像及び履歴画像を比較することで、瞬間の静的(ラグランジアン)弾性Δεが導出される。例えば、静的弾性は、媒体からの受信された無線周波数エコーの現在(t)のRFエコー値及び以前(t-1)のRFエコー値を比較することで決定される。
【0111】
時間的に一連の静的弾性データΔεは、時間的に一連の静的弾性値(特に、サイクルtごとに1つの値)を含んでもよく、及び/又は、時間的に一連の剪断波弾性データ(Et)は、時間的に一連の剪断波弾性値(特に、サイクルtごとに1つの値)を含む。
【0112】
ステップ5において、合計静的(軸方向)弾性は、静的弾性Δεを積分することで計算されるεである。この合計静的弾性εは特性決定器に送られる(ステップ4を参照)。この合計静的弾性εは、実際の変形を決定するために、及び/又は、ステップ7におけるプローブ位置決めインジケータ(すなわち、図3A図3Cにおける現在の推定された実際の変形レベルO)を更新するために使用される。これらのステップ5及び/又は7は、本開示に係るステップA3であってもよい。
【0113】
ステップ4において、収集されたデータの特性が定量化される。特に、特性パラメータが決定される。予め決められた変形のシーケンスは。特性パラメータに従って適応化されてもよく、及び/又は、決定された特性パラメータが最小特性しきい値(すなわち第1の特性しきい値)を越えない場合、予め決められた変形のシーケンスは中断又は一時停止されてもよい。例えば、決定された特性パラメータが最小特性しきい値を越えなかった場合、現在の値は使用されず、次のサイクルt+1において、剪断波弾性Et+1、静的弾性Δεt+1、及び合計静的弾性εt+1の未来の値に基づいて、特性が再び測定される。
【0114】
ステップ4において、決定された特性パラメータが第1の最小特性しきい値を越える場合、剪断波弾性及び合計静的弾性の現在の値は、決定された特性Et及びε 値として報告され、これらの値は、媒体の非線形弾性を定量化するために使用される。特性パラメータの可能な決定についての非網羅的な説明が、下記のオプション1~3で与えられる。
【0115】
ステップ9において、特性及び/又は特性パラメータは、特性レベルを示す画像、スコア、及び/又はシンボルとして提示されてもよい。特に、特性の結果は、ブール値(例えば、赤又は緑の色を備え、オプションで、詳細のための他の色、例えばアンバーを備えた信号灯、及び/又はスマイリー顔)として、スケール上の数値インジケータ(例えば、0~10)として、及び/又は、プローブを用いて行われる運動の表示(例えば、特性パラメータに従って適応化された長さ及び/又は幅を有する矢印)として提示されてもよい。
【0116】
従って、特性パラメータに依存して、フィードバック情報がユーザに提示されてもよい(ステップ10を参照)。例えば、取り込まれたデータの特性を許容できない場合(例えば、特性パラメータが、予め定義された特性しきい値を越えない場合)、ユーザは、スキャンを継続するように通知され、未来のデータ(t+1)が再びテストされる。これらのステップ4及び/又は9は、本開示に係るステップA6であってもよい。
【0117】
ステップ6において、合計静的弾性ε 及び剪断波弾性(SWE)E の決定された特性値を用いて、非線形剪断波弾性μNL,t(NL-SWE)が計算される。
【0118】
ステップ8において、μNL,t値を用いて、非線形剪断波弾性(NL-SWE)情報、例えばSWE-NLマップが更新される。この情報もまた、例えば、媒体の非線形弾性のレベルを示す画像、スコア、及び/又はシンボルとして提示されてもよい。更新は、各サイクルtのスキャン中にリアルタイム又は準リアルタイムで実行されてもよい。特に、NL-SWEマップは、各μNL,t値により、すなわち各サイクルtにおいて改善されてもよい。ステップ8は、本開示に係るステップCであってもよい。
【0119】
ステップ10において、各サイクルtのスキャン中に、リアルタイムで又は準リアルタイムで、フィードバック情報がプローブのユーザに提示される。この情報は、ステップ7において更新された実際の変形、ステップ4において更新された特性パラメータ、及び/又はステップ8において更新された非線形剪断波弾性(NL-SWE)情報を含んでもよい。ステップ10は、本開示に係るステップDであってもよい。
【0120】
特性パラメータの可能な決定についての非網羅的な説明が、下記に与えられる。これらの決定は、個々に使用されてもよく、又は、組み合わせで使用されてもよい。
【0121】
オプション1:静的弾性による特性の決定
特性パラメータは、合計静的弾性の現在の値ε及び以前の値εt-1 を比較する関数として決定されうる。特性パラメータは、第1の識別閾にわたって増大した合計静的弾性の以前の値εt-1 を現在の値εが超過するか否かについての関数として決定されうる。この場合、剪断波弾性及び合計静的弾性の現在の値は、決定された特性Et及びε 値として報告され、媒体の非線形弾性を定量化するために使用される。目標C(図3A図3Cを参照)は、増大した変形レベルに移動してもよい。
【0122】
この予め定義されたしきい値は、時刻tにおいて設定されてもよく、又は、予め定義された関数に従って(例えばリアルタイムで)計算されてもよい。
【0123】
オプションで、以前のεt-1 値が、例えば第2の識別閾にわたって増大して、現在のε値を超過する場合(すなわち、第1の特性しきい値より低い第2の特性しきい値に到達していない場合)、非線形弾性を定量化する処理(例えばスキャン)は停止されてもよく、オプションで、処理が終了されることに係るエラー及び/又はメッセージがユーザに示されてもよい。
【0124】
上述の説明は、ユーザがスキャン中に逐次的な圧迫を適用することを仮定している。しかしながら、ユーザがスキャン中に逐次的な減圧を適用することも可能である。言いかえると、スキャンの開始前に、ユーザは、第1の圧迫レベルに従って圧迫を適用し、次いで、スキャン中に減圧する。このシナリオにおいて、しきい値を用いて現在のε値を以前のεt-1 値と比較する処理は、対応して逆転される。(第1の圧迫レベルより低い)第2の予め定義された圧迫レベルに到達している場合、スキャンは停止されてもよい。オプションで、処理が完了したことを示すメッセージが、ユーザに表示/提示されてもよい。第1の圧迫レベルは、ユーザによって選択されてもよく(すなわち、適用された最大圧力レベルによって定義されてもよく)、及び/又は、処理によって(例えば、目標圧力レベルを指示することにより)予め定義されてもよい。第2の圧迫レベルは、設定されてもよく、又は、予め定義された関数であって、例えば、第1の圧力レベルに依存する、及び/又は、非線形弾性を定量化するために十分なデータが収集されたか否かに依存する関数に従って選択されてもよい。
【0125】
オプション2:ワークフローによる特性の決定
特性パラメータは、合計静的弾性εによって示される推定された実際の変形のレベルが、特に予め定義された許容量を有する目標変形のレベルに等しくなる、予め定義された時間期間の関数として決定されてもよい。したがって、プローブの場所が、時間期間中に目標場所C(図3A図3Cを参照)と一致する場合(すなわち、第1の特性しきい値に到達している場合)、剪断波弾性及び合計静的弾性の現在の値は、決定された特性Et,ε 値として報告され、媒体の非線形弾性を定量化するために使用される。この結果は、ステップ10において、例えば特性インジケータに所定の色を表示することで、ユーザに示されてもよい。目標Cは、増大した変形レベルに移動してもよい。
【0126】
しかしながら、プローブが目標場所に到達していない場合、目標はそのレベルに留まってもよい。プローブが、予め定義された継続時間より長い時間期間にわたって目標場所に到達しない場合(すなわち、第1の特性しきい値より低い第2の特性しきい値に到達していない)、非線形弾性を定量化する処理(及び/又はスキャン)は停止されてもよく、オプションで、処理が終了したことを特定するエラー及び/又はメッセージがユーザに示されてもよい。
【0127】
予め定義された継続時間は、少なくとも1サイクルtを含んでもよく、可変な処理時間よりも短いという優位点を有する。例えば、予め定義された継続時間は、1秒未満(例えば、30ミリ秒~100ミリ秒)であってもよく、可変な処理時間は数秒間にわたって継続してもよい。予め定義された時間が数サイクルtからなる場合、サイクル中にステップ1~4のみが実行され、ステップ6~10はその後でのみ実行されることが可能である。予め定義された時間は、固定されてもよく、又は、予め定義された関数に従って適応化されてもよい。
【0128】
さらに、非線形弾性を定量化する処理(及び/又はスキャン)のための可変な時間は、最大限度の後で自動的に停止してもよい。
【0129】
このコンテキストにおいて、波によって媒体が加熱されうるので、スキャン時間の追跡が有益であることに注意すべきである。従って、最大時間の後に処理を停止すること、及び/又は、データ取り込みを迅速に完了することが望ましい。
【0130】
オプション2のシナリオは、ユーザがスキャン中に圧迫及び/又は減圧を自由に適用することも可能にする。この場合、予め決められた変形のシーケンスは、1つ又は複数の圧迫レベルとして実現されてもよい。例えば、本方法は、最小及び最大しきい値レベルを提供してもよい。
【0131】
オプション3:瞬間の測定による特性の決定
特性パラメータは、現在の値のエントロピーが、特に剪断波弾性(Et)及び/又は静的弾性(Δε)の現在の値の、予め定義された範囲内に存在する場合(すなわち、このエントロピーが予め定義された区間内に制限される場合、及び/又は、第1のしきい値に到達している場合)に決定されてもよい。
【0132】
この場合、剪断波弾性及び合計静的弾性の現在の値は、決定された特性Et及びε 値として報告され、媒体の非線形弾性を定量化するために使用される。この結果は、ステップ10において、例えば特性インジケータに所定の色を表示することで、ユーザに示されてもよい。目標Cは、増大した変形レベルに移動してもよい。
【0133】
以前のεt-1 値が、例えば第2の識別閾にわたって増大して、現在のε値を超過しない場合のみ(すなわち、第1の特性しきい値より低い第2の特性しきい値に到達していない場合)、オプション3のテストは前提条件を有してもよい。この場合、非線形弾性を定量化する処理(例えばスキャン)は停止されてもよく、オプションで、処理が終了されることを示すエラー及び/又はメッセージがユーザに通知されてもよい。
【0134】
「Bモード」におけるI媒体の画像の決定
下記の処理は、「Bモード」イメージングとして知られる。Bモードの時間的に一連のデータ(又は画像又は画像データ)は、(前述したように)逐次的に変化する変形を適用する場合にプローブに関する媒体の動き補償を計算するために使用されてもよい。
【0135】
媒体の画像(I)を生成するために、イメージング装置は例えば下記のステップを実行する。
(i1)マイクロコンピュータ4が、粘弾性媒体に向けて少なくとも1つの合焦していない超音波疎密波バーストをプローブ6に放射させること、
(i2)マイクロコンピュータ4が、粘弾性媒体の反射粒子5との相互作用により合焦していない超音波疎密波によって生成されたエコーを含む、粘弾性媒体2から受信された音響信号を、プローブ6にリアルタイムで検出及び記録させること、及び
(i3)マイクロコンピュータ4が、サブステップ(i2)において粘弾性媒体2から受信された音響信号を処理して媒体の1つ又は複数の画像(I)を決定する処理ステップ。
【0136】
焦点が合わない超音波疎密波は、非常に高い伝搬速度を有する媒体2を介して、例えば人体では約1500m/sで伝搬し、反射粒子5と相互作用し、エコー又は同様の信号擾乱を生成する。これは、超音波イメージングの分野ではスペックルノイズとして知られる。
【0137】
スペックルノイズは、合焦していない超音波疎密波バーストの後で、サブステップ(i2)の間にT1,…,Tnトランスデューサによってピックアップされる。このように各Tiトランスデューサによって取り込まれたsi(t)信号は、まず、高周波(例えば30~100MHz)においてサンプリングされ、このトランスデューサにそれぞれ接続されたラック7におけるサンプラーE1,E2,…Enによってリアルタイムでディジタル化される。
【0138】
このようにサンプリング及びディジタル化されたsi(t)信号は、次いで、Tiトランスデューサに固有のラック7におけるMiメモリに、またリアルタイムで、格納される。
【0139】
各Miメモリは、例えば、128MBの容量を有し、受信されたすべてのsi(t)信号を格納する。
【0140】
いったんすべてのsi(t)信号が保存されると、中央処理装置(CPU)は、サブステップ(i3)ごとの標準パス形成処理によって、ラック7における総和回路Sによりこれらの信号を再処理する(又は、それはこれの処理自体を実行し、又は、前記処理はマイクロコンピュータ4に実行されてもよい)。
【0141】
このように信号S(x,z)が生成され、これらの信号は、合焦していない超音波バーストを受けた媒体の視野画像にそれぞれ対応する。
【0142】
例えば、S(t)信号は、次式を用いて計算されてもよい。
【0143】
【数2】
【0144】
ここで、
siは、超音波疎密波バーストを受けたトランスデューサNo.iによって検出される未処理信号であり、
t(x,z)は、座標(x,z)を有する視野における点に超音波疎密波が到達するまでにかかる時間であり、t=0をバーストの開始部とし、
di(x,z)は、座標(x,z)を備えた視野における点とトランスデューサNo.iとの間の距離、又はこの距離の近似値であり、
Vは、観察される粘弾性媒体における超音波疎密波の平均伝搬速度であり、
αi(x,z)は、アポディゼーション法則を考慮した重み付け係数である(実際に、それは、多くの場合、αi(x,z)=1として考慮されてもよい)。
【0145】
上述の式は、視界が3次元(トランスデューサの二次元のアレイ)である場合、(x,z)平面の空間座標を空間座標(x,y,z)で置き換え、必要な変更を加えて適用される。
【0146】
オプションのパス形成ステップの後で、CPUは、最後のバーストに対応するS(x,z)画像信号を、ラック7におけるメインメモリーMに格納する。これらの信号はまた、マイクロコンピュータ4が媒体の画像(I)自体を計算するために、マイクロコンピュータ4に格納されてもよい。
【0147】
合成イメージング技術のような、媒体の画像(I)を生成するための他の技術が存在する。媒体の画像を取得するための任意のイメージング技術が使用されてもよい。理想的には、高速に画像を取得できる技術が使用される。
【0148】
静的弾性(歪み)の決定
下記の処理は、静的弾性(歪み)イメージングとして知られている。時間的に一連の静的弾性(歪み)データ(又は画像又は画像データ)は、(前述したような)実際の変形の推定された進展を観察するために使用されうる。
【0149】
媒体の画像(I)は、相関によって処理されてもよく、利点として、2つずつの相互相関によって、すなわち、インデックスkの媒体の画像(I)と、インデックスk-1の媒体の画像(Ik-1)との間で処理されてもよい。
【0150】
相互相関は、例えば、ラック7の専用電子回路DSPにおいて実行されてもよく、又は、CPU又はマイクロコンピュータ4においてプログラミングされてもよい。
【0151】
この相互相関処理の間に、相互相関関数<Sk-1(x,z),S(x,z)>が最大化されることで、各粒子5が受けて超音波エコーをもたらす変位が決定される。
【0152】
そのような相互相関計算の例は、従来技術では、特に非特許文献3~5において与えられる。
【0153】
したがって、変位フィールド、すなわち、媒体2の各位置(x,z)における一組の変位ベクトル又はu(x,z,t)が取得され、それは、時間変数tを画像インデックスkで置き換えるu(x,z)として示されうる。これらの変位ベクトルは、オプションで、単一の成分、又は、2つ又は3つの成分に整理されてもよい。考慮する実施例において、画像インデックスkにおける変位フィールドuは次式になる。
【0154】
【数3】
【0155】
この変位フィールド(一組の変位ベクトル)はメモリM又はマイクロコンピュータ4に格納される。
【0156】
変位フィールドIuの画像が生成されてもよく、媒体の時間的に一連の画像を表す変位フィールドIuのすべての画像が、特にマイクロコンピュータ画面4aによって、例えば、変位値がグレーレベル又はカラーレベルのような光学的パラメータによって示されるスローモーション動画として、可視化されてもよい。
【0157】
部分的変形画像IΔεの決定
次いで、媒体2の各点において、部分的な変形Δε、すなわち、各空間変数(考慮している実施例ではX,Zに係る座標)に関する変位ベクトル成分の微分係数を成分として有するベクトル、すなわち次式のベクトルが計算されてもよい。
【0158】
【数4】
【0159】
代替として、実施例によれば、Z方向における単軸の変形/部分的変形のみが計算される。この理由は、プローブの外圧に起因する圧迫が主としてこの方向に生じるからである。同様に、後の応力計算において、おそらくは、Z方向における単軸の部分的応力/応力のみが計算される。このことは計算を簡単化する。
【0160】
変位ベクトルの場合のように、部分的変形画像(IΔε)は、X-Z平面(画像平面)の座標(x,z)の任意の点で計算された一組の部分的な変形から生成されてもよい。
【0161】
これらの部分的変形ベクトル又は部分的変形画像(IΔε)は、特にマイクロコンピュータ画面4aによって、スローモーション動画として、表示されてもよい。
【0162】
外圧に起因する媒体の移動の決定
外表面3に与えられる外圧Pにおける変動に起因する媒体2の変形は、遅く、弾性を有し、準一様な変形である。この変形は、粘弾性媒体2の内部において伝搬し、媒体2に含まれる粒子5及び要素を移動させる。
【0163】
外圧Pによって生じる外部変形は、インデックスkに係る媒体の画像(I)と、インデックスk-1に係る媒体の以前の画像(Ik-1)との間の移動を生じさせるとみなされてもよい。
【0164】
次いで、移動は、インデックスkに係る媒体の画像と、インデックスk-1に係る以前の媒体の画像との間における変位フィールド(u)によって決定されうる。
【0165】
特に、この動きは、画像インデックスkステップにおける変位フィールドの一組の変位u(x,z)を、一般的かつ簡単な方法で、すなわち、例えば10個未満の非常に少ないパラメータで表す、インデックスkの幾何学的変換Tによってモデル化されうる。
【0166】
第1の変形例によれば、図2A及び図2Bの間で示すように、幾何学的変換Tは並進を含む。
【0167】
第2の変形例によれば、幾何学的変換Tは、並進及び相似変換を含む。
【0168】
第2の変形例によれば、幾何学的変換Tは、並進、相似変換、及び回転を含む。
【0169】
したがって、X-Z平面、画像平面において、幾何学的変換は、行列形式で次式のように表されてもよい。
【0170】
【数5】
【0171】
ここで、下記の幾何学的変換(Tk)パラメータを用いる。
Tx,Ty:画像平面における並進係数、
Hx,Hz:画像平面における相似変換係数、及び、
θ:画像平面に垂直な軸の回転角。
【0172】
したがって、各座標(x1,z1),(x2,z2),(x3,z3)の画像の3点P1、P2、及びP3をとると、点P1、P2、及びP3の変位ベクトルのX及びZ成分を書き直すために、次式の関係が得られる。
【0173】
【数6】
【0174】
ここで、
dx1=ux1 dz1=uz1
dx2=ux2 dz2=uz2
dx3=ux3 dz3=uz3
【0175】
さらに、上述した行列A及びB、すなわち、画像における3点の座標に対応する行列Aと、これらの同じ3点の座標に対応し、これらの点の変位(移動)を含む行列Bとから幾何学的変換Tを計算することを可能にする関係が存在する。したがって、幾何学的変換の行列は、行列Bと行列Aの逆行列との行列積によって得られる。
【0176】
【数7】
【0177】
この関係を適用することで、3点P1,P2,P3から幾何学的変換Tを計算することが可能になる。
【0178】
逆に、いったん幾何学的変換Tが確立されると、この関係の逆の関係によって、任意の点Pの座標(x,z)がわかる。
【0179】
【数8】
【0180】
次いで、以前の移動からの任意のタイプの画像を補償することは、以前の幾何学的変換の行列の乗算によって、すなわち、1からkまで変化するインデックスiを有する幾何学的変換Tiの行列の乗算によって実行されうる。
【0181】
3点を用いて確立される上述の関係は、画像の3、4、5、又は6点を含む点群に一般化されてもよい。点群は、3~10個の画像点を含む。
【0182】
さらに、一実施形態では、(点群の)3つの画像点の個体群が使用され、上記固体群は、大きな個数Ngの点群を含む。例えば、この固体群サイズにおいて、点群の個数Ngは100より大きい。
【0183】
従って、幾何学的変換Tのパラメータは、画像の点群の固体群から計算されたパラメータのメジアン値によって取得される。
【0184】
特に、この技術が変位フィールドuの画像に適用されることで、インデックスkの媒体に係る画像と、インデックスk-1の媒体に係る以前の画像との間の動きが導出されうる。
【0185】
点群の個体群を用いることによって、インデックスkの媒体に係る画像と、インデックスk-1の媒体に係る以前の画像との間の移動をより包括的に表す幾何学的変換を決定することができる。
【0186】
利点として、各グループにおける点は、画像においてランダムに選択される。この構成を用いて、画像間の移動をより包括的かつ確実に表す幾何学的変換が決定されうる。
【0187】
媒体の剪断波弾性画像IEの決定
下記の処理は、媒体の剪断波弾性イメージングとして知られる。時間的に一連の剪断波弾性データ(又は画像又は画像データ)は、(前述したような)媒体の非線形弾性を定量化するために使用されうる。
【0188】
特許文献2は、粘弾性媒体2のために弾性イメージング技術を提案し、イメージング装置1は、この媒体における弾性剪断波の伝搬を検査する。弾性剪断波の動きは、上述した手段によって、特にマイクロコンピュータ4によってモニタリングされる。
【0189】
このことは、いくつかのステップで行われる。
(e1.1)プローブ6によって、粘弾性媒体に合焦した少なくとも1つの超音波を放射することで、マイクロコンピュータ4が粘弾性媒体2において弾性剪断波を生成する励振ステップ、
(e1.2)粘弾性媒体2における観察フィールドの複数の点において同時に剪断波伝搬が観察される観察ステップであって、媒体の時間的に一連の複数の中間画像IIj,kが生成されるサブステップを含むステップ。jは、両端を含む0~Mの範囲にわたる中間画像インデックスであり、M+1は、生成される中間画像の個数である。
【0190】
媒体の各中間画像は、例えば、媒体の画像Ikを決定する前述の方法によって生成され、本方法によれば、少なくとも1つの合焦していない超音波疎密波バーストがプローブ6によって送信され、受信される音響信号がプローブ6によって検出及び記録され、これらの音響信号を処理することで、媒体の中間画像(IIj,k)が生成される。
【0191】
ステップ(e1)において送信される合焦した超音波の焦点及びタイミングと、ステップ(e2)において送信される合焦していない超音波のタイミングとは、視野における剪断波の伝搬中に、合焦していない超音波がこの視野に到来するように適応化される。したがって、剪断波は、媒体の生成された中間画像IIj,kにおいて可視化される。
【0192】
次いで次のステップに進む。
(e1.3)媒体の中間画像を処理して媒体の弾性画像IEを決定するステップ。
【0193】
媒体の中間画像IIj,kは、例えば、前述のように相関又は相互相関によって、変位フィールドuj,kを計算するように処理される。例えば、インデックスjの媒体に係る中間画像(IIj,k)と、インデックスj-1の媒体に係る中間画像(Ij-1,k)との間の相互相関によって。決定した変位ベクトルは、剪断波伝搬を動画として可視化するために使用されうる。さらに、変位フィールドから、媒体2の各点における部分的変形Δεが計算されうる。
【0194】
変位又は変形のフィールドから、マイクロコンピュータ4は、次いで、マッピングステップに進みうるという利点を有する。マッピングステップでは、視野における時間にわたる動きパラメータ(変位又は部分的変形)の進展に基づいて、視野の所定の選択された点において、又は、視野全体において、少なくとも1つの剪断波伝搬パラメータが計算される。
【0195】
次いで、視野の様々な点における一組の剪断波伝搬パラメータに対応して、弾性画像IEが生成されうる。
【0196】
媒体のこの弾性画像IEは、特に、マイクロコンピュータの画面4aを介して見ることができ、この場合、伝搬パラメータの値は、グレーレベル又は色レベルのような光学的パラメータによって示される。
【0197】
マッピングステップにおいて計算される剪断波伝搬パラメータは、例えば下記から選択される。
剪断波速度Cs、又は、
剪断係数μ、又は、
ヤング率E=3μ、又は、
剪断波減衰α、又は、
剪断弾性μ1、又は、
剪断粘度μ2、又は、
媒体組織の機械的な緩和時間τs。
【0198】
例えば、視野の異なる点において、下記を計算することができる。
組織の硬さへのアクセスを提供する剪断波速度値Cs、
媒体のローカル粘度の特性である、組織の機械的緩和時間の値τs
【0199】
この目的で、例えば、媒体の各位置rにおける剪断波によって生成された変位uが従う次式の伝搬方程式によって表される、剪断波伝搬モデルが使用される。
【0200】
【数9】
【0201】
ここで、
ρは組織の密度であり。
τSは組織の機械的緩和時間であり、
cSは、組織のヤング率Eに直接的に関連する、次式の剪断波速度である。
【0202】
【数10】
【0203】
一組の変位uを用いてこの伝搬方程式を解くことは、上に引用した伝搬パラメータ(cS,τS)をもたらす。
【0204】
1つ又は複数の伝搬パラメータの計算の変形例もまた可能である。
特に、波動方程式は、フーリエ法によって、例えば周波数帯にわたって値を平均することによって、解くことができる。
変位に代えて、部分的変形が使用されてもよい。
【0205】
複数の異なる剪断波を用いて、伝搬パラメータマッピング、すなわち弾性画像が確立されてもよい。
次いで、より正確なマッピングを得るために、例えばそれらの平均を計算することによって、それらを組み合わせることができる。
【0206】
媒体2における剪断波の伝搬速度は、弾性画像IE(剪断波の伝搬パラメータ)を決定するために媒体の多数の画像(中間画像)が撮影されるこの処理の間に、外表面3に与えられる外圧Pの変動が存在しないことを考慮するように十分に高くなる。
したがって、媒体のこれらの画像は、媒体の移動によって補正されない。
【0207】
しかしながら、媒体の弾性画像IEは、初期媒体の画像Iと比較されうるように、又は、補正された変形画像Iε と比較されうるように、考慮される瞬間又は近接した瞬間(インデックスkによって表される)における動きに対して補正されなければならない。
【0208】
非線形性パラメータの画像INLの決定
線形弾性領域において、媒体2は、応力σに比例して変形し、フックの法則に従う。
【0209】
【数11】
【0210】
ここで、
は線形領域のヤング率であり、
εは変形である。
【0211】
非線形弾性領域において、この比例はもはや有効ではない。ほとんどの場合、媒体2における材料のヤング率Eは、圧迫に応じて増大する。
【0212】
次いで、弾性係数又はヤング率Eは、応力-変形曲線の勾配として、すなわち、次式により定義される。
【0213】
【数12】
【0214】
ここで、
Eはヤング率であり、
Δσは局所的な応力変動、すなわち部分的応力であり、
Δεは、瞬間(t)において瞬間(t-Δt)に関して定量化された静的弾性であり、したがって、Δεは局所的な変形変動、すなわち、ゼロに近づく(Δt)にわたる部分的変形Δεである。
【0215】
弾性の非線形性パラメータは、例えば、非特許文献6及び7において言及された剪断Aにおける3次弾性係数と呼ばれるランダウ係数であってもよい。
【0216】
特に、前述の文献における数式(1)は、弾性(ヤング率)E及び応力σの間の関係(R1)として書き直すことができる。
【0217】
【数13】
【0218】
ここで、
Eはヤング率又は弾性係数であり、
は、線形領域のヤング率、すなわち、圧迫なしの媒体の材料のヤング率であり、したがって、時間的に一連の画像における第1の補正された弾性画像であり、
σは応力であり、例えば、プローブ6のユーザによって与えられる外圧によって引き起こされる圧迫に実質的に対応する、垂直Z方向における一軸方向のσ応力であり、
Aは、求める非線形性パラメータである。
【0219】
上述の関係R1の微分により、次式が得られる。
【0220】
【数14】
【0221】
数式(eq.1)のヤング率の定義によって除算することにより、また、積分することにより、弾性(ヤング率)E及び変形εの間の関係R2、すなわち次式が得られる。
【0222】
【数15】
【0223】
ここで、
Eはヤング率であり、
は、線形領域のヤング率、すなわち、圧迫なしの媒体の材料のヤング率であり、したがって、時間的に一連の画像における第1の補正された弾性画像であり、
ln()は自然対数関数であり、
εは変形であり、
Aは、決定すべき非線形性パラメータである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法であって、上記方法は、下記のステップ、すなわち、
A1.上記媒体から時間的に一連の剪断波弾性データを収集することと、
A2.剪断波の収集中に、予め決められた変形のシーケンスに従って、逐次的に変化する変形を上記媒体に適用することと、
A3.実際の変形の進展を観察することと、
B.上記時間的に一連のデータ及び上記変形の進展の関数として、上記媒体の非線形弾性を定量化することとを含む、
方法。
【請求項2】
上記実際の変形の進展を観察することは、リアルタイムで又は準リアルタイムで実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記実際の変形の進展を観察するステップは、上記媒体から、時間的に一連の超音波データを収集することを含む、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ステップ(A1)において生成される上記剪断波弾性データは、下記のサブステップ、すなわち、
A1.1.少なくとも1つの合焦した超音波を放射させることによって上記媒体において剪断波が生成される励振ステップと、
A1.2.上記媒体から時間的に一連の超音波データを取得することで剪断波の伝搬が観察される観察ステップと、
A1.3.上記媒体の上記超音波データから及び剪断波伝搬モデルから上記剪断波弾性データが決定される処理ステップと
によって生成される、
請求項1~のうちの1つに記載の方法。
【請求項5】
上記方法は、上記媒体の時間的に一連の静的弾性(Δε データを収集するステップA1’.をさらに含み、
ステップA3において、上記実際の変形は上記静的弾性(Δε)によって導出される、
請求項1~のうちの1つに記載の方法。
【請求項6】
上記時間的に一連のデータを収集すること及び上記逐次的に変化する変形を観察することは、剪断波弾性ショット及び静的弾性プルを挿入することで超音波シーケンスによってセットアップされ、及び/又は、上記静的弾性データ及び上記剪断波弾性データは時間的にインターリーブされる、
請求項記載の方法。
【請求項7】
上記静的弾性の値(Δε)の積分に基づいて合計静的弾性(ε)が決定され、
ステップA3において、上記実際の変形は、決定された上記合計静的弾性(ε)の関数として決定される、
請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
上記方法は、上記剪断波弾性(Et)、上記静的弾性(Δε)、及び上記合計静的弾性(ε)のうちの少なくとも1つの関数として特性パラメータを決定するステップA6.をさらに含む、
請求項記載の方法。
【請求項9】
上記特性パラメータは、上記合計静的弾性の現在の値(ε)及び以前の値(εt-1 )の比較に基づいて決定され、及び/又は、
特性結果はブール変数であり、及び/又は、
上記特性パラメータは、第1の識別閾にわたって増大又は減少した上記合計静的弾性の以前の値(εt-1 )を上記現在の値(ε)が超過するか否かに基づいて決定される、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
推定された実際の変形のレベル及び目標変形のレベルは、ユーザインターフェースにおいて通知され、
上記推定された実際の変形は観察された変形に対応し、
上記目標変形は上記予め決められた変形のシーケンスに従って変化する、
請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
上記推定された実際の変形は、観察された変形にリアルタイムで対応し、
上記目標変形は、上記予め決められた変形のシーケンスに従ってリアルタイムで変化する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
上記推定された実際の変形のレベル及び上記目標変形のレベルは、上記ユーザインターフェースの画面上に表示される、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
上記特性パラメータは、上記推定された実際の変形のレベルが上記目標変形のレベルに対応している最短時間に基づいて決定される、
請求項10~12のうちの1つに記載の方法。
【請求項14】
上記特性パラメータは、上記剪断波弾性(Et)及び/又は上記静的弾性(Δε)の現在の値のエントロピーが予め定義された範囲内に存在するか否かの関数として決定される、
請求項8~13のうちの1つに記載の方法。
【請求項15】
上記逐次的に変化する変形は、超音波プローブによって上記媒体を逐次的に圧迫又は逐次的に減圧することで、上記超音波プローブによって適用され、
上記超音波プローブは、上記時間的に一連のデータを収集すること及び/又は上記実際の変形の進展を観察することのために同時に使用される、
請求項8~14のうちの1つに記載の方法。
【請求項16】
上記逐次的な圧迫及び/又は上記逐次的な減圧が連続的かつ漸次に実行される、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
上記決定された特性パラメータが第1の最小特性しきい値を超過する限り、ステップBにおいて、上記剪断波弾性(Et)及び上記合計静的弾性(ε )の現在の値を用いて、上記媒体の非線形弾性を定量化する、
請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
上記決定された特性パラメータが上記第1の最小特性しきい値を超えない限り、
上記媒体の非線形弾性を定量化するために、上記剪断波弾性(Et)及び上記合計静的弾性(ε)の現在の値は使用されず、及び/又は、
上記決定された特性パラメータを表すフィードバック情報は、上記超音波プローブのユーザに提示される、
請求項17記載の方法。
【請求項19】
次のサイクル(t+1)において処理が繰り返される、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
上記予め決められた変形のシーケンスは、上記特性パラメータに従って適応化され、及び/又は、
上記決定された特性パラメータが上記第1の最小特性しきい値を越えない場合、上記予め決められた変形のシーケンスは中断又は一時停止される、
請求項17~19のうちの1つに記載の方法。
【請求項21】
上記方法は、上記媒体の非線形弾性のレベルを示す少なくとも1つの画像、スコア、及び/又はシンボルを含む、上記媒体の非線形弾性のレベルを表す視覚情報を決定するステップC.をさらに含む、
請求項17~20のうちの1つに記載の方法。
【請求項22】
上記方法は、上記実際の変形、上記特性パラメータ、及び上記視覚情報のうちの少なくとも1つを含むフィードバック情報を、上記超音波プローブのユーザに提示するステップD.をさらに含む、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
ステップA1.~B.又はA1.~C.又は、A1.~D.が繰り返され、及び/又は、
下記の条件、すなわち、
上記決定された特性パラメータが、上記第1の最小特性しきい値より低い第2の最小特性しきい値を越えないこと、及び/又は、
最大回数の反復が実行されたこと、及び/又は、
処理の最大時間が経過したこと、及び/又は、
上記媒体の非線形弾性に係る最小回数の定量化が実行されたこと
のうちの少なくとも1つが満たされるまで、ステップA1.~B.又はA1.~C.又は、A1.~D.が繰り返される、
請求項22記載の方法。
【請求項24】
A4.上記媒体から時間的に一連のBモードデータを収集して、上記超音波プローブに関する上記媒体の動きの補償を計算するステップと、
A5.上記補償を弾性データに適用するステップとをさらに含む、
請求項22又は23のうちの1つに記載の方法。
【請求項25】
上記Bモードデータ、上記静的弾性データ、及び上記剪断波弾性データは、時間的にインターリーブされる、
請求項24記載の方法。
【請求項26】
ステップ(A1)~(A3)又は(A1)~(A6)は同時に実行され、及び/又は、
ステップ(A1)~(A3)又は(A1)~(A6)又は(A1)~(D)は、リアルタイムで又は準リアルタイムで実行される、
請求項24又は25記載の方法。
【請求項27】
上記時間的に一連のデータの各瞬間について、又は、少なくとも一部の瞬間について、次式に従って線形回帰フィッティングを実行することで、剪断波非線形性パラメータの値が決定され、
【数1】
ここで、
E(t)は、変形の進展中での、変形の各瞬間における弾性であり、
は、第1の瞬間(t0)における弾性であり、
εは変形であり、
Aは上記剪断波非線形性パラメータである、
請求項1~26のうちの1つに記載の方法。
【請求項28】
ステップ(A1)に先行するステップ(0)であって、予め決められた変形シーケンスに従って変形を適用することなく、上記媒体の少なくとも1つの超音波又はMRI(magnetic resonance imaging)画像又はマンモグラフィー画像又は剪断波弾性画像が決定され、ステップ(A1)~(B)に従って非線形弾性を定量化するための関心対象領域(region of interest:ROI)が決定されるステップ(0)をさらに含む、
請求項1~27のうちの1つに記載の方法。
【請求項29】
非線形弾性画像の表示と並列に、信頼度マップが表示される、
請求項1~28のうちの1つに記載の方法。
【請求項30】
画像の各データ又は各画素について、予め定義された基準値に対する非線形弾性値が表示される、
請求項1~29のうちの1つに記載の方法。
【請求項31】
イメージング装置(1)を用いて媒体の非線形剪断波弾性を定量化する超音波方法であって、
上記イメージング装置(1)は、超音波プローブ(6)及びマイクロコンピュータ(4)備え、
上記方法は、
上記媒体の表面に上記超音波プローブを配置するステップと、
非線形剪断波弾性(NL-SWE)のイメージングを行う第1のモードを起動するステップであって、上記第1のモードにおいて、上記超音波プローブは、上記媒体に対して次第に圧迫又は次第に減圧することで、予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用し、
上記装置は、時間的に一連の超音波データを収集し、上記超音波プローブを用いて上記媒体において生成された剪断波のイメージングを行い、上記媒体の弾性を推定することを可能にし、
上記装置は、時間的に一連の超音波データを収集し、上記超音波プローブによって適用された上記媒体の変形の進展を推定することを可能にする
ステップと、
上記時間的に一連のデータ及び観察された上記変形の進展の関数として計算される、上記媒体の非線形弾性を定量化するステップとを含む、
方法。
【請求項32】
上記イメージング装置(1)は、ユーザインターフェースをさらに備え、
上記方法は、
上記媒体の非線形弾性についての画像を上記ユーザインターフェースに表示するステップと、
時間的に一連の画像を上記ユーザインターフェースに表示するステップと、
非線形画像の解釈の結果を表示するステップとをさらに含む、
請求項31記載の方法。
【請求項33】
画像の予め定義された計算及び測定を含む、時間的に一連の画像を記録するステップをさらに含む、
請求項31又は32記載の方法。
【請求項34】
上記予め決められた変形のシーケンスは、上記定量化するステップの前に自動的に停止するサブステップを含む、
請求項31~33のうちの1つに記載の方法。
【請求項35】
超音波プローブを上記媒体の表面に配置することと、
第2の剪断波弾性(SWE)イメージングモードを起動することと、
予め決められた変形のシーケンスに従って変形を適用することなく、上記媒体に剪断波を適用することで、上記媒体の少なくとも1つの剪断波弾性画像を決定することと、
記画像を保存することと、
上記画像において関心対象領域を決定することで、上記領域の非線形弾性のイメージングを行うこととをさらに含む、
請求項31~34のうちの1つに記載の方法。
【請求項36】
上記超音波プローブを配置するステップ、上記第2のSWEイメージングモードを起動するステップ、上記媒体の少なくとも1つの剪断波弾性画像を決定するステップ、上記画像を保存するステップ、及び上記関心対象領域を決定するステップは、上記第1のモードを起動する前に実行される、
請求項35記載の方法。
【請求項37】
上記画像を保存するステップは、上記画像の予め定義された計算及び測定を含む、
請求項35又は36記載の方法。
【請求項38】
請求項1~37のうちの1つに記載の方法を用いて、良性病変と比較して悪性病変を決定する方法であって、上記悪性病変は、非線形弾性のレベルに基づいて検出される、
方法。
【請求項39】
請求項1~38のうちの1つに記載の方法を用いて、良性病変と比較して悪性病変を決定する方法であって、研究される媒体は、生物学的な乳腺及び/又は腋窩組織である、
方法。
【請求項40】
超音波プローブ(6)及びマイクロコンピュータ(4)を備えるイメージング装置(1)であって、請求項1~39のうちの1つに記載された、媒体の非線形弾性を定量化する方法を実施するように適応化されたイメージング装置(1)。
【国際調査報告】