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特表2023-512407液体試料の分析のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】液体試料の分析のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230317BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230317BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230317BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20230317BHJP
   G01N 33/82 20060101ALI20230317BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N33/483 C
G01N33/68
G01N33/72 A
G01N33/82
G01N33/92
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022537791
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2020087539
(87)【国際公開番号】W WO2021136718
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】PA201901564
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522241871
【氏名又は名称】クライフ エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】QLIFE APS
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワーソー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ファインディング,エッベ
(72)【発明者】
【氏名】エルキャア,ロバート
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA17
2G043CA04
2G043DA02
2G043DA08
2G043EA01
2G043EA13
2G043FA03
2G043KA02
2G043NA01
2G043NA11
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA35
2G045DA36
2G045FA13
(57)【要約】
本発明は、液体試料中の分析物の有無を定量的に検出するための方法及び装置に関する。本方法は、部品のセット(液体試料物質を採取する容器、フィルター材料、及び、反応液を含む検出装置)を準備し、計量された液体試料物質を容器に加え、計量された液体試料物質を容器からフィルター材料に移動させ、その後、計量された試料物質を含有するフィルター材料を反応液と接触させ、反応液とフィルター材料とを混合し、それによって検出液を得るという工程を経る。その後に、検出液を通り抜ける1つ以上の波長の電磁放射線の透過、及び/又は、検出液からの1つ以上の波長の電磁放射線の放射を測定し、測定で得られた結果を内部標準と比較して試料中の分析物の量を検出する。本方法は、計量された試料が容器からフィルター材料に「毛管力を利用して」移動することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の分析物の量を測定する方法であって、当該方法は、以下の工程を備える、即ち、
a.部品のセットを準備する工程であり、当該部品のセットが、
(i) 液体試料物質を採取するための容器と、
(ii) フィルター材料と、
(iii) 反応液を含む検出装置と
を含んでなる、工程と、
b.計量された量の液体試料物質を前記容器に加える工程と、
c.前記計量された量の液体試料物質を前記容器から前記フィルター材料に移動させる工程と、
d.前記計量された量の試料物質を含有する前記フィルター材料を前記反応液と接触させ、前記反応液と前記フィルター材料とを混合し、それによって検出液を得る工程と、
e.前記検出液を通り抜ける1つ以上の波長の電磁放射線の透過、及び/又は、前記検出液からの1つ以上の波長の電磁放射線の放射を測定する工程と、
f.工程eで得られた結果を内部標準と比較することによって前記試料中の分析物の量を検出する工程と、
を備えており、
当該方法は、工程cにおいて、前記計量された量の試料が前記容器から前記フィルター材料に毛管力を利用して移動されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記フィルター材料が、工程bで前記容器に加えられる前記計量された量の液体試料物質よりも多くの液体を含むことができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルター材料は、当該材料中の繊維が前記容器から出る前記液体試料の流れ方向と平行になるように配置される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記血液試料が、50μl未満、好ましくは40μl未満、さらにより好ましくは40μl未満からなる全血試料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程dにおける前記混合が、前記検出液を円運動又は楕円運動で振れ動かすことにより行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体が、前記試料中に存在する分析物に結合する物質、例えば、HbA1検出のためのフルオロフォアであるホウ酸エオシン(eosin-borate-acid)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分析物が、フェニルアラニン、hs-CRP、HbA1c、ビタミンD、d-ダイマー、または脂質である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施するためのパーツキット。
【請求項9】
a.計量された量の液体試料物質を毛管力によって採取するための容器と、
b.前記計量された量の液体試料物質を毛管力によって前記容器から採取することができるフィルター材料と、
c.反応液を含む検出装置と、
を備えてなるパーツキット。
【請求項10】
請求項9に記載のパーツキットであって、
d.電磁放射線源、電磁放射線を検出するための手段、及び、液体試料を含む検出装置を受け入れるための手段を具備した検出アセンブリと、
e.前記検出アセンブリの円運動又は楕円運動での迅速な振れ動きを提供するための手段と、
を更に備えてなるパーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された感度、精度及び総アッセイ時間で液体試料中の分析物(analyte,分析対象物)の有無を定量的に検出するための方法及び装置に関する。詳細には、本発明は、血液試料中のバイオマーカーの有無を定量的に検出する方法及びパーツキット(部品のキット)に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患は、体液試料中のマーカー又はバイオマーカーなどの特定の分析物の有無をモニタリングすることによって、特に、血液試料中の特定の分析物の有無をモニタリングすることによってモニタリングすることができる。
【0003】
そのような疾患マーカーをモニタリングする場合、分析に使用される装置及び方法の感度、精度、及び総アッセイ時間(TAT)は常に重要な問題である。
【0004】
ポイントオブケア装置、及び血液などの液体を分析する方法では、50μlを超える試料サイズを使用することは現実的に許容されない。多くの場合、試料サイズは、1~2滴の血液中に存在する液体の量、すなわち約40μl又は20μl以下に制限される。そのような少量の試料で作業する場合、装置及び分析に使用される方法の感度、精度及びTATは非常に重要な問題となり、装置及び方法の感度、精度及び/又はTATを増大させる方法は常に困難を伴う。
【0005】
これまで、一滴の血液などの少量の液体試料を分析する場合に、様々な方法で感度、精度、及びTATの改善がなされてきた。
【0006】
いくつかの方法及び装置は、試料を正確に計量することに関して改善をもたらすことに焦点を合わせており、それによって精度を高めることができる。この技術は、少ない血液量の正確で精密な採取を可能にする多孔質親水性先端部を有するサンプラーの使用を含む。採取プロセスは、通常、HCTレベルに関係なく約2~4秒かかる。乾燥後、試料は、保存され、輸送され又は直接分析され得る。この技術は、その簡潔さ及び費用効果のためにますます注目されている。この技術の目的は、一定体積の血液試料を提供することによって試験の信頼性を改善し、最小限の指示で自己サンプリングができるようにすることである。
【0007】
他にも、特定の試料の成分と検出手段(フルオロフォア(蛍光プローブ)、透過率、吸光度など)とを正確に混合することができ、それによって感度及び精度を高めることができる改善された方法及び装置を提供することに焦点を合わせている。
【0008】
他の方法は、分析に使用される試料材料の品質を(例えば、試料の望ましくない成分を除去することにより)改善することに焦点を合わせている。しかしながら、当技術分野において、特にポイントオブケアホーム用途のための方法及び装置では、液体試料中に存在する特定の分析物を正確に分析することは、おなじみの問題(よくある課題)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】(国際調査報告を参照)
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、液体試料、例えば50μL未満を含む液体試料の中の1つ以上の分析物の有無を定量的に検出することができる光学測定に基づく既存の装置及び方法の感度、精度及びTATを改善することである。
【0011】
光学ベースの方法は、電磁放射線源が容器(例えば、キュベット)内に存在する液体試料を照射し、その後、キュベット(cuvette)内の試料由来の電磁放射線の吸収及び/又は放出がモニタリングされる光学測定システムに依存する方法として理解される。
【0012】
[発明の概略説明]
本発明による1つの重要な改良された変更点は、分析手順に入る試料の計量及び導入が専ら毛管力を利用して行われることである。
【0013】
本発明者らは、試料材料(試料物質)を手動で計量し、ポイントオブケアの現場(診療等の現場)において外力を用いて試料を適用するというあらゆる工程が必然的にアッセイの不正確さを増大させ、精密で信頼性の高いアッセイ結果を提供する上で問題となることに気付いた。この問題は、専ら毛管力によって試料材料を計量することによって解決された。
【0014】
本発明の非常に好ましい実施形態では、計量は、計量された量の試料を収容し採取することができる容器を使用して、より大きな液体試料から計量された量の液体試料を毛管力によって採取し、続いて、試料が充填された容器を少なくとも計量された量の試料を含有することができるフィルター材料と接触させ、続いて、試料を含有するフィルター材料を分析反応液と接触させることによって行った。
【0015】
したがって、1つの非常に好ましい態様において、本発明は、液体試料中の分析物の量を測定するための方法であって、当該方法は以下の工程(を含む)、即ち、
a.部品のセットであって、
i.液体試料材料を採取するための容器と、
ii.フィルター材料と、
iii.反応液を含む検出装置と
を含む部品のセットを用意する工程と、
b.計量された量の液体試料材料を容器に加える工程と、
c.計量された量の液体試料材料を容器からフィルター材料に移動させる工程と、
d.計量された量の試料材料を含有するフィルター材料を反応液と接触させ、反応液とフィルター材料とを混合し、それによって検出液を得る工程と、
e.検出液を通り抜ける1つ以上の波長の電磁放射線の透過及び/又は検出液からの1つ以上の波長の電磁放射線の放射を測定する工程と、
f.工程eで得られた結果を内部標準と比較することによって試料中の分析物の量を検出する工程と、
を含み、
工程cにおいて、計量された量の試料が容器からフィルター材料に毛管力を利用して移動することを特徴とする、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、実施例において以下に使用されるEgooデバイスカプセルの形で具体化される。本発明の技術的利点は、以下の実施例/事例から明らかである。
【0017】
[定義]
本発明では、「フィルター」及び「膜」という用語は同義語として使用される。本発明の文脈において、フィルター材料は、Fusion5又はWhatman903などの任意の市販のフィルター(膜)材料、あるいは、一定量の液体材料を含有して受動的に保持することができ、さらには液体試料を液相(血漿又は血清など)と保持相(血球など)に分離することができる、すなわち特定の試料の特定の成分(例えば、血球、細胞膜成分又は高分子量物質)を保持することができる任意の他の親水性フィルター材料を意味する。好ましいフィルター材料は「Fusion5」であり、これは単層マトリックス膜フィルターであって、ラテラルフロー試験キットの従来のモジュール式コンポーネントと置き換えるために使用することができる。
【0018】
好ましくは、フィルター材料は、50mm未満の直径を有する平坦な円形ディスクとして使用される。さらにより好ましくは、本発明によるフィルター材料の直径は、10mm未満、例えば5mm未満、又は3mm未満、又はさらに2mm未満である。最も好ましい態様では、フィルター材料は5mm以下の直径を有する。
【0019】
本発明において、「容器」という用語は、チューブ又はピペットなどの液体試料を収容することができる区画を含むことを意味する。好ましくは、容器は、計量された量の試料を毛管力によって引き込むことができる中空円筒である。
【0020】
精度(Precision)
分析手順の精度は、所定の条件下での均質な試料の多重サンプリングから得られた一連の測定値が相互間で一致する度合(分散の程度)を表す。精度は、以下の3つのレベル、すなわち、1)併行精度(repeatability)、2)室内再現精度(intermediate precision)、及び3)室間再現精度(reproducibility)、で考察され得る。併行精度は、短い時間間隔にわたる同じ動作条件下での精度を表す。併行精度はアッセイ内精度とも呼ばれる。室内再現精度は、実験室内の変動、すなわち、異なる日、異なる分析者、異なる機器などを表す。室間再現精度は、実験室間(通常、方法論の標準化に適用される共同実験)の精度を表す。精度は、均質で真正な(フルスケールの)試料を使用して調査されるべきである。ただし、フルスケールの試料を得ることができない場合は、パイロットスケール又はベンチトップスケールの試料又は試料溶液を使用して調査することができる。分析手順の精度は、通常、一連の測定の分散、標準偏差又は変動係数として表される。
【0021】
確度(Accuracy)
確度は、統計的バイアスの尺度である系統誤差を説明するものであり、この系統誤差が結果と「真」の値との間に差を生じさせる。簡潔に言うと、同じ量の反復測定から得られたデータ点のセットを仮定した場合に、それらの値が互いに近い場合には、そのセットは高精度であると言うことができる一方で、それらの平均が測定された量の真の値に近い場合には、そのセットは高確度であると言うことができる。確度及び精度の概念は互いに独立しているため、特定のデータセットについて、高確度又は高精度のいずれかであると言うことができ、あるいは高確度かつ高精度であると言うことができ、あるいは高確度でも高精度でもないと言うことができる。
【0022】
試料の計量
従来、液体試料の精密な計量及び分析試薬への精密な添加は、臨床現場の検査技師が臨床ピペッティング装置を使用して行っている。しかしながら、これは、ポイントオブケアの現場では実行不可能である。したがって、より大きな供給源から毛管力によって精密な量の試料を引き抜いて収容することができる使い捨てピペットが設計され、市販されている。そのようなピペットは、ユーザがピペットのバルク端部を押すと同時にその中の空気孔を塞ぐと試料を放出するように設計されており、それによって計量された液体試料をピペットから押し出す。
【0023】
しかし、本発明に至る研究の過程で、これらのピペットを能動的に操作する(例えば、使用者がピペットのバルク端部を押すと同時に空気孔を塞ぐという、意図された使用法に従った操作を行う)と、得られる計量された試料の測定値が著しく不正確になることが見出された。
【0024】
その結果、毛管力のみを用いて試料材料をピペットから引き込む必要があることもまた見出された。このことは、計量された量の試料を計量ピペットから引き込むフィルター材料を導入することによって達成され、その後、試料を含有するこのフィルター材料がさらなるアッセイ操作に供される。
【0025】
[発明の詳細な開示]
本発明の一態様では、驚くべきことに、計量された量の試料を含むフィルター材料を検出液に直接加える(又は分析液と接触させる)ことによって液体試料材料を検出アッセイに加えることにより、確度と精度の両方の点で有意に優れた結果が得られることが見出された。
【0026】
さらに、フィルター材料は特定の試料汚染物質を保留することができるので、精密に計量された量の試料を加えると同時に、試料の望ましい精製をもたらすことが可能であることが分かった。
【0027】
したがって、本発明の要旨は、試料を計量し、毛管力によって分析区画間で試料を移動させることに依る。
【0028】
本発明の一実施形態では、後述するEgoo検出システムによって実行されるように、(計量された試料を含有する)フィルターをカプセルのメインキュベット内の液体と接触させ、振動混合作用によってフィルターから試料成分を容易く取り出し、それによってフィルター材料が試料成分を空にして検出液を生成する。Egooカプセル内で、フィルター材料は、それぞれの区画の子シール分離(foal sealing separation)に侵入することによってメインキュベット内の液体と接触させられ、その後、フィルター材料に含有される試料材料は、検出液をボルテックスすること(voltexing)によってアッセイ溶液中に放出され、それによって、計量された量の試料の全体が放出されて検出液を生成する。
【0029】
したがって、一態様において、本発明は、液体試料中の分析物の量を測定するための方法であって、当該方法は以下の工程(を含む)、即ち、
a.部品のセットであって、
i.試料材料を採取するための容器(例えば、精密な量の液体試料を計量することができるピペット)と、
ii.フィルター材料と、
iii.反応液を含む検出装置と
を含む部品のセットを用意する工程と、
b.計量された量の液体試料材料を容器に加える工程と、
c.計量された量の試料を容器からフィルター材料に移動させる工程と、
d.計量された試料材料を含有するフィルター材料を反応液と接触させ、液体とフィルター材料とを混合し、それによって検出液を得る工程と、
e.検出液を通り抜ける1つ以上の波長の電磁放射線の透過及び/又は検出液からの1つ以上の波長で電磁放射線の放射を測定する工程と、
f.工程eで得られた結果を内部標準と比較することによって試料中の分析物の量を検出する工程と、
を含み、
工程cにおいて、計量された量の試料が、容器からフィルター材料に毛管力のみを利用して移動することを特徴とする、方法に関する。
【0030】
当初は、精密に計量された量の試料材料のみを含有することができるフィルター材料を使用することによって、精密な計量が得られることが推察された。しかしながら、それは実現可能ではないことが分かった。これに対して、フィルター材料に過剰な容量を持たせて、計量容器によって試料の計量を行う必要があることが分かった。したがって、本発明の非常に好ましい態様では、フィルター材料は、工程bで容器に加えられる液体試料材料の計量された量よりも多くの液体を含むことができる。
【0031】
驚くべきことに、容器からフィルターへの液体試料材料の効率的かつ正確な移動は、フィルター材料内の繊維が容器から出る液体試料の流れ方向と平行に延びるようにフィルター材料が配置されることによって強化されることも見出された。
【0032】
さらに、一実施形態では、本発明は、上記の方法を実行するためのパーツキット(部品のキット)を含む。このようなパーツキットは、
i.計量された量の液体試料材料を毛管力によって採取するための容器と、
ii.計量された量の液体試料材料を毛管力によって容器から採取することができるフィルター材料と、
iii.反応液を含む検出装置と、
を含む。
【0033】
パーツキットは、好ましくは、併せて、
iv.電磁放射線源と、電磁放射線を検出するための手段と、液体試料を含む検出装置を受け入れるための手段とを含む検出アセンブリと、
v.検出アセンブリの円運動又は楕円運動で迅速な振動(oscillation,振れ動き)を提供するための手段と、
を含む。
【0034】
本明細書に記載の発明に従って試料中の分析物の存在を検出するために、任意の光学的方法を最終的に使用することができる。これらには、分析の分光法及び分光光度法が含まれる。分光光度計の使用は、物理学、材料科学、化学、生化学、及び分子生物学などの様々な科学分野に及ぶ。
【0035】
分光法及び分光光度法は、従来、試料から吸収/放出される光の波長の関数として、材料(分析物)の吸収特性、反射特性及び/又は透過特性を定量的に測定するのに使用されている。これらの技術の使用は当技術分野で周知である。
【0036】
吸収分光法は、試料との相互作用に起因する放射線の吸収を周波数又は波長の関数として測定する分光技術を指す。試料は、放射場からエネルギー、すなわち光子を吸収する。吸収の強度は周波数の関数として変動し、この変動が吸収スペクトルである。吸収分光法は、電磁スペクトルにわたって実施される。
【0037】
一般に分光光度法と呼ばれる吸光度分光法は、所与の波長で試料によって吸収された光の量を測定することに基づく分析技術である。特に電磁スペクトルの可視部分及びUV部分における分光測定は、化学及びライフサイエンスにおいて最も用途が広く使用されている技術の1つである。吸収分光法は、試料中の特定の物質の存在を調べ、多くの場合、存在する物質の量を定量するための分析化学ツールとして使用される。赤外及び紫外可視分光法は、分析用途において特に一般的である。吸収分光法は、分子及び原子物理学、天文学的分光法並びにリモートセンシングの研究においても使用されている。
【0038】
吸収スペクトルを測定するための様々な実験アプローチがある。最も一般的な構成は、生成された放射線ビームを試料に向け、それを通過する放射線の強度を検出することである。透過エネルギーを使用して吸収を計算することができる。線源、試料配置及び検出技術は、周波数の範囲及び実験の目的に応じて大きく異なる。
【0039】
蛍光分光法は、蛍光特性に基づいて溶液中の分析物の濃度を決定するための迅速で簡単で安価な方法である。これは、分析される化合物の種類(分析物)が既知である比較的単純な分析に使用することができ、例えば、試料中の分析物の濃度を測定するための定量分析を実行するために使用することができる。蛍光は、主に溶液中の化合物を測定するために使用される。
【0040】
蛍光分光法では、電磁ビームがキュベット内の溶液を通過し、試料中の分析物がビームからエネルギーを吸収する。このエネルギーは、異なる波長の電磁ビーム(光)として放射される。試料によって吸収及び放出される光の量は、試料中の分析物の存在に比例する。蛍光分光法では、励起スペクトル(分析物が吸収する光)及び/又は発光スペクトル(励起された分析物が放出する光)の両方を測定することができる。分析物の濃度は、発光の強度に正比例する。
【0041】
濁度測定は、その中に懸濁された粒子の散乱効果による透過光の強度の損失を測定するプロセスである。光は、既知の波長の光を作り出すフィルターを通過し、次いで、アッセイ溶液を含むキュベットを通過する。光電検出器は、キュベットを通過した光を集光する。次いで、吸収された光の量の測定が行われる。
【0042】
免疫比濁法は、臨床化学の広範な診断分野における重要なツールである。これは、古典的な臨床化学法では検出できないタンパク質を決定するために使用される。免疫比濁法は、古典的な抗原抗体反応を使用する。抗原抗体複合体は、光度計によって光学的に検出され得る粒子である。より詳細には、液体試料を緩衝液に加え、ラテックスに結合した、分析物に対するモノクローナル抗体の懸濁液と混合する。分析物はラテックス結合抗体に結合し、凝集する。粒径の増加によって引き起こされる光散乱は、分析物濃度の尺度として使用される。光散乱の量は、試料中の分析物の濃度に比例する。
【0043】
「光学的検出方法を実施する際の一般的な手順」
従来、光学的検出方法は、液体試料を容器(例えば、「キュベット」)に直接導入すること、及び試料の存在によって生成される光学信号の変化の測定に依る。通常、容器には、試料の導入前に試料を含まない液体が入っている。反応液は、分析物の存在下、試料中の分析物と相互作用してシグナルを生成し得る特定の試薬を含み得る。別法として、そのような試薬は、試料の導入後に添加される。容器は、例えば、特定の方法では、フルオロフォアを含み得、フルオロフォアは、容器内に液体が入来すると可溶化され得る。
【0044】
バックグラウンド基準を提供するために試料ブランク測定を実行することができる。バックグラウンド測定は、検出液中の分析物以外の成分によって生成された信号である非特異的信号(「ノイズ」)、並びに信号に対するシステム(例えば、容器)の影響について試料測定値を補正するために行われる。例えば、濾過された血漿/血清の品質に影響を及ぼす血液溶血によって、非特異的シグナルが生成される場合がある。したがって、一般化された方法は、時間Tにおいて第1の液体を通る1つ以上の波長の電磁放射線の透過及び/又は放射を測定することによって試料ブランク測定値を得る工程を含む。
【0045】
この点において、T測定値は、試料の導入前に測定され、又は別法として、試料からの放射線の透過/放出の定量的変化をもたらし、試料中のバックグラウンドによって生成されたシグナルを提供する試薬の導入前(又はその直後)に測定される。ブランク測定の精度を高めるために、繰り返し測定を行ってもよい。
【0046】
導入された試料/試薬は、検出液を通る1つ以上の波長の電磁放射線の透過又は放射を変化させ、変化の程度は、導入された試料中の分析物の存在のレベルを反映する。換言すれば、試料/試薬の導入は、検出可能な放射線に基づく信号の変化をもたらし、この変化は、存在する試料の(例えば、既知濃度の試料を含む内部標準を用いて決定される)量に定量的に比例する。
【0047】
試料を試薬に導入した後、正確で精密な試料測定値を生成するために、生成された検出液の成分を完全に混合しなければならない。
【0048】
[本発明の好ましい実施形態]
一実施形態では、本発明は、以下でより詳細に説明するように、Egooデバイスを用いて実施される。
【0049】
「Egooデバイス」
Egooデバイスは、本発明を実行可能なMicro Opto Electro Mechanicalのデバイスである。Egooデバイス全体は、ヒト血液中のバイオマーカーを測定するための光学ユニット及びEgooカプセルからなる。使い捨てアッセイカプセルには、アッセイを実施するためのすべてのアッセイ試薬が入っている。アッセイカプセルをEgooデバイスに挿入し、次いで、アッセイが自動的に実行される。
【0050】
本質的に、Egooデバイスは、光源と、アッセイキュベットが光源と検出器との間に配置され得るように配置された検出器とからなる検出アセンブリからなる。Egooデバイスは、Egooカプセルがアセンブリに追加されたときに検出アセンブリ全体をボルテックスするための手段をさらに備える。Egooデバイスには、アッセイキュベットを含むカプセルと、液体試料を加えることができるフィルター材料を含む別個のチャンバとが補充される。
【0051】
このように、Egooデバイスは、経験の浅いユーザによるポイントオブケア用途のために設計されたパーツキットである。
【0052】
パーツキットは、測定装置と、試料材料を受け入れるためのカプセルとを備える。
【0053】
「Egoo光学ユニット」
Egoo光学ユニットは、電磁放射線源と、電磁放射線を検出するための手段と、液体を含む容器(「キュベット」)を受け入れるための手段とを備える「検出アセンブリ」を備える従来の光学測定システムを備え、当該手段及び容器は、電磁放射線が線源から液体を通って検出手段に放射するように線源と検出手段との間に配置される。試料液体を含む容器を受け取った後、装置は、液体を含む容器のみの振動が標準である従来の装置及び方法とは対照的に、光学測定システム(検出アセンブリ)全体を振動運動(oscilating motions)(「ボルテックス」(voltex))にさらすことができる。
【0054】
検出アセンブリの内側に配置された光学システムは、2つの光路からなる。光路1では、光源としてLED570nmを、検出器としてフォトダイオード1を用いて吸光度信号を測定して、570nmにおける透過率を測定する。光路2では、光源はLED390であり、フォトダイオード1は蛍光信号を測定するための検出器である。
【0055】
「Egooカプセル」
Egooカプセルは、メインキュベット(反応チャンバと呼ばれることもある)及び分離された区画を含む。
【0056】
1つの区画(区画1)は、(少なくとも)計量された量の試料材料に対応する量の液体を収容することができる親水性フィルター材料を含む。
【0057】
他の区画は、アッセイ試薬を含有する流体充填容器である(区画2~4)。さらに、カプセルはプランジャ/シールブレーカを含み、プランジャ/シールブレーカは、各区画からの試薬又は材料が液体不透過性シールの破壊後にメインキュベット内の液体と流体連通することができ、及び/又はシールを通ってキュベット内に注入されることによってメインキュベットに入るように、活性化することができる。
【0058】
「試料材料(試料物質)」
好ましくは、液体試料は、40μl未満の液体からなる試料である。そのような試料サイズは、自動化された方法及び装置に適している。より好ましくは、液体試料は、20μl未満の液体からなる試料である。そのような試料サイズは、ポイントオブケア装置及び方法に適している。
【0059】
非常に好ましい実施形態では、分析される試料は血液試料である。好ましい一実施形態では、血液試料は全血である。別の好ましい実施形態では、血液試料は血漿試料である。
【0060】
「混合」
上述した方法では、検出液の内容物の混合は、少なくとも1000rpmの速度での円運動又は楕円運動で検出液イオンを急速に振動させること(振れ動かすこと)によって行うことが非常に好ましい。好ましくは、円運動又は楕円運動で検出液を急速(1000~4000rpm)に振動させること(ボルテックスすること)により混合が行われる。
【0061】
「電磁放射線源」
検出アセンブリは、電磁放射線源を備え、電磁放射線源は、電磁放射線が放射される手段として定義される。関連する電磁放射は、原則として、任意の適切な波長のものであってもよい。しかしながら、300nm~900nmの波長の電磁放射線が好ましい。
【0062】
「電磁放射線を検出する手段」
分析物検出アセンブリは、電磁放射線を検出する手段を備え、電磁放射線を検出する手段は、電磁放射線が検出される(すなわち、吸収され、電気エネルギーに変換される)手段として定義される。検出される関連する電磁放射は、原則として、任意の適切な波長のものであってもよい。ただし、検出される電磁放射線は、線源及び/又は試料によって放射される電磁放射線の観点から適切でなければならない。
【0063】
「分析物(分析対象物)」
一般に、本発明の方法及び装置は、臨床化学、癌診断及び全ての他の関連する診断分野における全ての血液バイオマーカーを測定するために使用することができる。
【0064】
しかしながら、本発明の方法及び装置は、好ましくは、以下の血液マーカー(分析物)、すなわち、
フェニルアラニン(フェニルケトン尿症患者)、CRP、hs-CRP、脂質パネル(炎症及び心血管血管疾患バイオマーカー)、脂質プロファイル(総コレステロール、HDL及びトリグリセリド)、HbA1c(糖尿病バイオマーカー)、ALAT(肝臓バイオマーカー)、ビタミンD、及びD-ダイマー、のうちの1つ以上の検出に使用される。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、反応液は、試料中に存在する分析物に結合する物質、例えば、HbA1検出のためのフルオロフォア・エオシン-ホウ酸を含む。
【実施例
【0066】
以下の実施例の目的は、説明した発明(本願に開示の本発明)を使用してアッセイ精度であるCV%(標準偏差/平均*100)を説明(記述)し比較することである。
【0067】
実施例1では、5つの異なる方法(そのうちの1つは本発明による方法である)を、試料の計量及び採取の精度試験でテストする。
【0068】
実施例2では、血液試料に対するフェニルアラニンアッセイの精度を、説明した発明と、これに対する血液試料中のフェニルアラニンの採取及び分析のための今日の標準的な方法のいずれかを用いてテストする。
【0069】
実施例3では、血液試料に対するヘモグロビンアッセイの精度を、説明した発明と、これに対する計量及び採血プロセスを実行する代替方法のいずれかを使用してテストする。
【0070】
「本発明は、Egooデバイス上で実行してもよいこと。」
本質的に、Egooデバイスは、光源と、アッセイキュベットが光源と検出器との間に配置され得るように配置された検出器とからなる検出アセンブリからなる。Egooデバイスは、Egooカプセルがアセンブリに追加されたときに検出アセンブリ全体をボルテックスするための手段をさらに備える。Egooデバイスには、アッセイキュベットを含むカプセルと、液体試料を加えることができるフィルター材料を含む別個のチャンバとが補充される。フィルター材料(及び試薬)は、Egooデバイスの動作中に別個のチャンバからアッセイキュベットに移動させることができ、それにより、デバイスの動作中に試料材料及び試薬を電磁放射線の吸収及び/又は放出についてアッセイすることができる。
【0071】
より正確には、Egooカプセルは、試料注入区画R1、流体チャンバR2、R3及びメインキュベットR4からなる。Egooデバイスは、関連するアッセイに応じて、R1、R2及び/又はR3の構成要素をメインキュベット(R4)に付加することができる。
【0072】
[実施例1.試料の計量及び採取のための精度試験]
説明した発明を検証するために、5人のユーザに、5つの異なる方法で試料の採取及び計量プロセスを実行するように指示した。各計量プロセスをユーザ毎に10回繰り返した。青色染料を試料材料(試料物質)として用いた。使用した膜は、ポリエチレンとポリプロピレン材料の混合物からなるPorex R34436であった。
【0073】
【表1】
【0074】
[使用した試薬及び材料]
「Egooカプセル」
Egooカプセルは、試料注入区画R1、流体チャンバR2、R3及びメインキュベットR4からなる。Egooデバイスは、関連するアッセイに応じて、R1、R2及び/又はR3の構成要素をメインキュベット(R4)に付加することができる。
【0075】
「計量ピペット」
15μlポイントの採取毛細管(CEマーク)を使用した。これらのピペットは、15μlの試料を採取して移すように設計された使い捨てピペットである。このピペットは、15μlのキャピラリーストップを含む毛細管と、採取された試料を放出するために(空気孔を塞ぎながら)押圧されるピペットの端部の小さなバルクとからなる。ピペットの端部のバルク部分は、空気が逃げることを可能にする小さな穴をさらに含み、それによって毛管力が15μlの試料をピペットに(キャピラリーストップまで)引き込むことができる。意図された使用の過程で、ユーザは、試料をピペットの端部と接触させることによって15μlの試料を採取し、それによって15μlの青色染料が毛管力によってピペットに入る。その後、ユーザは、意図された使用の過程で、ピペットのバルク部分の穴を指で塞いで、ピペットのバルク部分を押すことによって試料を放出する。
【0076】
「染料」
ブロモフェノールブルー溶液(水中0.04wt、シグマ・アルドリッチ313744、ロットMKCD9662)
【0077】
試験手順:
1.15μlの青色染料を上記の表1に記載の血液計量移送ピペットに加えた。
2.各人が各方法を1時間以内に10回実施した。
3.時間Tまでの吸光度を測定することによって試料ブランク測定を行った。
4.ブロモフェノールブルー溶液(水中0.04wt、シグマ・アルドリッチ 313744、ロットMKCD9662)を、表1に概説した5つの異なる手順によってEgoo PHEカプセルに添加した。
5.振動(ボルテックス)運動を用いて青色染料をR1試薬と混合した。
6.Tで、吸光度測定を行い、結果を、
吸光度=2-log(T/T×100)として計算した。
7.CV%を、標準偏差/平均*100として計算した。
【0078】
【表2】
【0079】
考察
実施例1の目的は、説明した発明を使用して、計量された量の青色染料をEgooカプセル上の採取膜に移動させることの可能性を検証し、説明した発明を4つの他の方法と比較することであった。
【0080】
CV%値が低いことは、測定値がデータセットの平均(期待値とも呼ばれる)に近い傾向があることを示す一方で、CV%値が高いことは、値がより広い範囲に広がっていることを示す。
【0081】
観察され得るように、本発明による方法3を(訓練を受けていないポイントオブケアユーザが)使用した場合の精度は、較正されたピペットを使用する訓練された検査技師によって得られる精度(方法4及び5)に匹敵する。また、任意の種類の能動的な圧力を移送ピペットに印加すると(方法1及び2)、ポイントオブケアのユーザが実施した場合には、CV%値が有意に増加することも見て取ることができ、熟練した検査技師が手順(方法1及び2)を実施した場合でさえ、同じくCV%値が実質的に増加したことが見受けられた。
【0082】
[実施例2.本発明による試料の計量及び移送方法の精度を、フェニルアラニンアッセイにおける血液試料の計量及び移送のための今日の標準的な方法と比較すること]
【0083】
実施例2の目的は、周知の蛍光ベースのフェニルアラニン(PHE)アッセイを、説明した発明と統合する可能性を検証し、この設定を家庭で採取した血液試料の採取及び計量の標準的な方法と比較することであった。
【0084】
フェニルケトン尿症(PKU)は、肝フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)活性の欠損によって引き起こされる常染色体劣性遺伝性障害である。コーカサス人集団では、約50人に1人がキャリアであり、10000人に1人がPKUに罹患している。PAH欠損のため、フェニルアラニンはアミノ酸チロシンに変換されない。これにより、脳を含む身体のすべての部分、血液及び尿の中に過剰量のPHE及び毒性代謝産物が蓄積する。これらの過剰は、様々な程度の精神遅滞をもたらす化学的不均衡を引き起こす。過去10年間に、いくつかの販売業者は、家庭でPHEレベルを測定するための最良の方法、すなわち糖尿病患者の家庭における血糖測定に匹敵するものでなければならない方法を見つけ出すために様々なアッセイ方法をテストしてきた。残念なことに、フェニルアラニン分子は、グルコース(mM)と比較して血液中に1/500~1/1000倍の低い濃度(μM)で存在する。これまでのところ、家庭ベースの方法を見つけ出すためのすべての試みは、アッセイ感度、アッセイ精度、アッセイ安定性、アッセイ比較及びアッセイの複雑さといったアッセイ関連パラメータに苦労している。本発明は、上記のアッセイ関連の課題を克服することに成功した。
【0085】
本発明を使用すれば、ユーザの家庭内の小型のEgoo POCデバイスで、最先端の実験室ベースの装置と比べてそれと同等の又はより良好な分析性能を有するPHEアッセイを実行することが可能である。
【0086】
「PHEアッセイの原理」
フェニルアラニンアッセイは、蛍光ニンヒドリンアッセイ法を利用する。アッセイ手順は、McCaman及びRobinによって1962年に最初に公開された蛍光アッセイ手順(Lab Clin.Med 59、885~890頁)を改良したものである。このアッセイは、血液中のPHEの定量を目的とした化学的方法に基づいている。
【0087】
「本発明によるPHEアッセイ手順の概要」
精密な量の毛細管血液(15μl)を実施例1の方法3に記載したように指から血液計量移送ピペットに移した。血液計量移送ピペットをEgooカプセルのカプセル入口に挿入し、そこで膜材料(Whatman-903)と接触させた。計量移送ピペットが膜材料と物理的に接触すると、血液はピペット内の毛細管チャネルから膜材料の中に受動的に流入した。乾燥期間後、その膜をメインキュベットに投入し、そこで抽出溶液(R1)とEgooデバイス内部でのキュベットの振動(ボルテックス)運動を用いることによって、膜からアミノ酸フェニルアラニン(及び他のすべてのアミノ酸)を抽出した。次に、R2試薬をメインキュベットに投入して、混合した。48℃(45~80℃)でインキュベートした後、PHEは直ちにニンヒドリンと蛍光化合物を形成した。蛍光測定の応答及び特異性は、ジペプチドL-ロイシル-L-アラニンの存在によって大幅に増強された。特異性を最大にするために、反応中のpHを5.8+/-0.1のコハク酸緩衝液によって厳密に制御した。ニンヒドリン反応後、最適な蛍光検出のために、R3溶液をメインキュベットに投入することによってpHを8.0超に調整した。励起波長を390nmとし、蛍光分子を450nmで測定した。
【0088】
PHEアッセイ試薬:
R1:膜を含む試料注入器
R2:水中70mMニンヒドリン
R3:0.3M NaHPO、0.05M NaOH、pH=11.5
R4:70%エタノール、0.2M コハク酸緩衝液 pH4.9、0.4%NaCl、10mM L-ロイシル-L-アラニン
【0089】
Egooカプセルは、試料注入区画R1、流体チャンバR2、R3及びメインキュベットR4からなる。Egooデバイスは、関連するアッセイに応じて、R1、R2及び/又はR3の構成要素をメインキュベット(R4)に付加することができる。
【0090】
手順1. 本発明に記載の血液計量及び採取。血液を計量してアッセイカプセルに加えた後、全てのアッセイ工程をEgooデバイスを用いて行った。
【0091】
1.実施例1の方法3に記載したように、15μlの全血を血液計量移送ピペットに加えた。
2.計量移送ピペットをEgoo PHEカプセルの入口に挿入した。
3.計量移送ピペットがR1中のWhatman903メンブレン材料と物理的に接触したとき、血液は、実施例1の方法3に記載したように受動的に膜材料の中に流入した。血液を移した後、定量移送ピペットを廃棄した。
4.Whatman-903メンブレンに血液を移した後、そのフィルターを3時間乾燥させた。
5.乾燥後、R1の血液膜をメインキュベットに投入し、そこで抽出溶液(R4)が振動(ボルテックス)運動と相まって抽出溶液(R4)中にPHE分子(及び他のアミノ酸)を抽出(放出)した。
6.R2試薬をメインキュベットに投入し、蛍光アッセイを開始した。
7.時間Tまで蛍光を測定することによって試料ブランク測定を行った。
8.アッセイ混合物を48℃で30~90分間インキュベートした。
9.蛍光増強のためにR3試薬をメインキュベットに注入してPHを8.0超に調整した。
10.次に、Tで蛍光測定を行い、その結果をT/Tとして算出した。
11.最後に、検量線を使用して生の蛍光データを最終PHE濃度に変換することによってPHE濃度を計算した。
【0092】
手順2. ゴールドスタンダード基準の血液計量及び採取。血液を計量してアッセイカプセルに加えた後、全てのアッセイ工程をEgooデバイスを用いて行った。
【0093】
手順2では、標準的な血液スポット(DBS)採取カードを使用して血液を採取した。血液で満たされた膜材料の規定の領域の試料を切り出した(このタスクのために設計された切断デバイスを使用した「打ち抜き」)。切断された(計量された)膜をEgooカプセルデバイスに挿入した。他の全てのアッセイ工程は、Egooデバイスを用いて実施した(慣例的な手順では、DBS採取カードを用いて家庭で血液を採取した後、そのカードを病院の中央検査室に郵送し、そこで訓練された職員が所定の領域を切り出し、それによって試料を計量した)。
【0094】
手順2は以下の工程からなる。
1.指先からの全血をWhatman DBS採血カード(Whatman903メンブレン)に加えた。約4×70ulの血液を使用、必要な量の血液を出すために指を激しくマッサージする必要がある。
2.フィルターを3時間乾燥させた(従来の利用法では、このカードは郵便によって病院検査室に送られた)。
3.血液含有膜から規定の膜領域を切り出した。
4.血液含有膜をEgooカプセルに挿入し、Egooデバイスが手順1で上述したように工程5から使用された。
【0095】
結果
以下の分析性能特性試験を決定した。
精度
- イントラ精度試験(イントラバリアビリティ)
- インター精度試験(インターバリアビリティ)
【0096】
約50μM及び500μMのフェニルアラニンを含有する血液試料(血液試料1及び血液試料2)を2つの手順でアッセイした。
【0097】
イントラ精度。1回の一連のPHE測定(手順1又は手順2)において、1台のデバイスで一人のオペレータが経験するばらつき。
結果を以下の表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
インター精度試験。インター精度は、実験室内における、日間、異なる器具間及び異なるオペレータ間のばらつきである。結果を以下の表4に示す。
【0100】
【表4】
【0101】
考察
実施例2の目的は、周知の蛍光ベースのPHEアッセイを説明した発明と統合する可能性を検証することであった。その結果は、説明した発明に基づく装置が、DBS採取カードを使用する標準的な方法に匹敵する(又はより良好な)優れた性能を示していることを示唆している。
【0102】
観察され得るように、本発明を使用したイントラ精度及びインター精度は、DBS採取カードを使用した血液を採取及び計量と、それに続くEgooデバイスを用いた同一のPHEアッセイと比較して大幅に改善される。
【0103】
標準的な採取及び計量方法と比較して有意に良好な精度の理由は、本発明による計量と、定義された膜領域を切断することによる計量(標準的な方法)とを比較して、血液の計量がより精密である可能性が高いことにある。
【0104】
全体として、精度に関して、PHEアッセイが、周知の標準DBS採取カード法と比較して有意に良好なアッセイ結果を与えたことを見て取ることができる。
【0105】
[実施例3.計量及び採血プロセスを実施する代替方法と比較した、本発明を使用するヘモグロビンアッセイの精度]
【0106】
実施例1では、Egooカプセルへの試料の計量及び採取のために5つの異なる方法を使用した。実施例3では、これら5つの方法のうちの最良の4つ(方法2、3、4及び5)を、血液及び周知のヘモグロビンアッセイを使用して繰り返した。各計量プロセスを、4つの方法及び2つのHb濃度を用いて10回繰り返した。
【0107】
【表5】
【0108】
「ヘモグロビンアッセイの原理」
ヘモグロビンは、よくある診断パラメータである。
【0109】
この実施例では、シアン化物を含まないラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を使用する周知のSLSヘモグロビン検出方法を使用した。試薬は、試料中の赤血球及び白血球を溶解する。化学反応は、グロビンを変化させることによって開始し、次いでヘム基を酸化した。その後、SLSの親水性基はヘム基に結合し、安定な着色錯体(SLS-HGB)を形成することができ、これを、測光法を使用して分析した。
【0110】
Egooデバイスでは、LED(570nm)が単色光を送出し、混合物を通って移動することによって、SLS-HGB錯体によって光が吸収された。吸光度は、フォトセンサによって測定され、試料のヘモグロビン濃度に比例した。
【0111】
「Hbアッセイ手順の概要」
精密な量の毛細管血液(15μl)を指先から血液計量移送ピペットに移した。血液計量移送ピペットをカプセル入口に挿入し、能動的プロセス(参考方法2及び4)又は受動的移送(本発明による方法3)によってフィルターに移送し、又はアッセイキュベットに直接移送した(参考方法5)。方法3の優れた結果は、血液が繊維と平行に膜に入ったときに観察された。さらに、膜を密接に積み重ねた場合に優れた結果が観察されることが見受けられた。血液で満たされた膜をメインキュベットに投入し(方法2、3及び4)、そこでボルテックス運動を用いて血液を膜から即座に抽出した。Hbが直ちにSLS-HGB複合体を形成し、これをR1試薬で2分間インキュベーションした後に570nmで測定することができた。
【0112】
「ヘモグロビンアッセイ試薬」
R4:市販のSLSヘモグロビン検出試薬(Sysmex)
【0113】
アッセイ手順:
1.指先からの15μlの全血を、血液計量移送ピペットに加えた。
2.計量移送ピペットをEgoo Hbカプセルの入口に挿入し、そこで計量移送ピペットが膜材料と物理的に接触した(方法2、3及び4)。血液は表5の3つの方法で膜材料に入った。血液を移した後、定量移送ピペットを廃棄した。
3.時間Tまでの吸光度を測定することによる試料ブランク測定を行った。
4.R1上の膜に血液を移した後、血液をメインキュベットに注入し、振動(ボルテックス)運動を用いて血液をR4試薬と混合した。方法5では、血液をこの時点で直接添加した。
5.2分後のTで吸光度測定を行い、T/Tを算出した。
6.最後に、検量線を使用してHb濃度を計算し、生の吸光度データを最終Hb濃度に変換した。
【0114】
分析性能特性
イントラ精度。イントラ精度は、1回の一連のヘモグロビン測定において1台のデバイスで一人のオペレータが経験するばらつきである。
【0115】
結果
結果を表6に示す。ヘモグロビンアッセイのためのイントラ精度試験。
Hbアッセイを、4つの方法及び2つのHb濃度を使用して10回実行した。
Egooで実行したHbアッセイの合計回数 4×2×10=80回
【0116】
【表6】
【0117】
考察
実施例3の目的は、周知の吸収に基づくHbアッセイを本発明と統合する可能性を検証することであった。
【0118】
表6から分かるように、説明した発明(方法3)を使用する精度は、較正されたピペットを用いて訓練された検査技師によって行われる手順と同等(又はより良好)である。また、任意の種類の能動的な圧力を移送ピペットに印加することで、CV%値が有意に増加したことを見て取ることができる(方法2)。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の分析物の量を測定する方法であって、当該方法は、以下の工程を備える、即ち、
a.部品のセットを準備する工程であり、当該部品のセットが、
(i) 液体試料物質を採取するための容器と、
(ii) フィルター材料と、
(iii) 反応液を含む検出装置と
を含んでなる、工程と、
b.計量された量の液体試料物質を前記容器に加える工程と、
c.前記計量された量の液体試料物質を前記容器から前記フィルター材料に移動させる工程と、
d.前記計量された量の試料物質を含有する前記フィルター材料を前記反応液と接触させ、前記反応液と前記フィルター材料とを混合し、それによって検出液を得る工程と、
e.前記検出液を通り抜ける1つ以上の波長の電磁放射線の透過、及び/又は、前記検出液からの1つ以上の波長の電磁放射線の放射を測定する工程と、
f.工程eで得られた結果を内部標準と比較することによって前記試料中の分析物の量を検出する工程と、
を備えており、
当該方法は、工程cにおいて、前記計量された量の試料が前記容器から前記フィルター材料に毛管力を利用して移動されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記フィルター材料が、工程bで前記容器に加えられる前記計量された量の液体試料物質よりも多くの液体を含むことができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液試料が、50μl未満、好ましくは40μl未満、さらにより好ましくは40μl未満からなる全血試料である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
工程dにおける前記混合が、前記検出液を円運動又は楕円運動で振れ動かすことにより行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体が、前記試料中に存在する分析物に結合する物質、例えば、HbA1検出のためのフルオロフォアであるホウ酸エオシン(eosin-borate-acid)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分析物が、フェニルアラニン、hs-CRP、HbA1c、ビタミンD、d-ダイマー、または脂質である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法を実施するためのパーツキット。
【請求項8】
a.計量された量の液体試料物質を毛管力によって採取するための容器と、
b.前記計量された量の液体試料物質を毛管力によって前記容器から採取することができるフィルター材料と、
c.反応液を含む検出装置と、
を備えてなるパーツキット。
【請求項9】
請求項8に記載のパーツキットであって、
d.電磁放射線源、電磁放射線を検出するための手段、及び、液体試料を含む検出装置を受け入れるための手段を具備した検出アセンブリと、
e.前記検出アセンブリの円運動又は楕円運動での迅速な振れ動きを提供するための手段と、
を更に備えてなるパーツキット。
【国際調査報告】