(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】乗物用の透明サンバイザー
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20230317BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20230317BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20230317BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1334
G02F1/1333
G02F1/1347
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022539002
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2020087667
(87)【国際公開番号】W WO2021130246
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】102019135757.8
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522250611
【氏名又は名称】オヴィエーション ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】Oviation B.V.
【住所又は居所原語表記】Jan Campertstraat 5,Building 7C,6416SG Heerlen,Niederlande
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナジャフ ポーア アークチェシュメ,ハミド-レザ
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA61
2H088HA01
2H088HA02
2H088JA05
2H088JA10
2H088MA20
2H189AA04
2H189AA22
2H189BA04
2H189HA16
2H189JA05
2H189JA07
2H189JA10
2H189LA01
2H189LA03
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】本発明は乗物用サンバイザーに関する。
【解決手段】乗物用サンバイザーは、電気的に切替可能な光学特性を備えている。
【選択図】なし。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に切替可能な光学特性を備えた乗物用のサンバイザーであって、
電圧不負荷状態で可視領域の光に対し最大の半透明性と最小の不透明性を有し、及び電圧不負荷状態に比べ印加電圧状態で可視領域の光に対しより低い半透明性及び/又はより高い不透明性を有することを特徴とするサンバイザー。
【請求項2】
(a)第一基材と、
(b)第一液晶セルと、
(c)特に、接着層を含んでいる第一中間層と、
(d)必要に応じて、二つの透明電極の間に、PN又はPD液晶素子TN又はVA、特にPNを有する液晶素子VA又はPDを有する液晶素子TNを備えた第二液晶セル、
(e)第一中間層(c)に対して等価の第二中間層、
(f)第一液晶セルに対して等価の第二液晶セル、及び
(g)第一基材に対して等価の第二基材
を有していることを特徴とする請求項1に記載のサンバイザー。
【請求項3】
前記第一液晶セルがPN-VA液晶素子を含み、又はPD-TN液晶素子(f)を有しない場合のとき、前記中間層(e)が省略されていることを特徴とする請求項2に記載のサンバイザー。
【請求項4】
特にPN-VA液晶素子又はPD-TN液晶素子(d)が無い場合であり、前記第二中間層(e)が第一基材に対応する基材の形状になっていることを特徴とする請求項2に記載のサンバイザー。
【請求項5】
前記第一及び/又は第二基材及び/又は前記中間体が夫々、ミネラルガラス特に硬質ガラス、及び/又はプラスチック特にポリ(メチル メタクリレート)又はポリカーボネートを含むことを特徴とする請求項2~4の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項6】
前記第一及び/又は第二液晶素子は、透明な導電性酸化物でコーティングされた2枚の硝子又はシートの間に、液晶混合物を有していることを特徴とする請求項2~5の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項7】
前記第一及び第二液晶素子が、電圧印加の機能として半透明を切り替える、第一及び第二の分極層を形成していることを特徴とする請求項2~6の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項8】
PN VA液晶素子、又はPD TN液晶素子が、無電源状態で、透明となっていることを特徴とする請求項2~7の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項9】
電圧無印加状態で、標準光源D65を備えた透過率計NDH2000を用いた測定によるヘイズが、可視光領域において1%未満、特に0.5%未満であることを特徴とする請求項2~8に何れかに記載のサンバイザー。
【請求項10】
電圧無印加状態で、標準光源D65を備えた透過率計NDH2000を用いた測定による透過率が、少なくとも50%、特に少なくとも60%であることを特徴とする請求項2~8の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項11】
電圧印加したときに、標準光源D65を備えた透過率計NDH2000を用いた測定によるヘイズが、70%を超え、特に80%を超え、及び/又は標準光源D65を備えた透過率計NDH2000を用いた測定による透過率が、20%まで、特に10%まであることを特徴とする請求項2~10の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項12】
明-暗、及び/又は透明-不透明制御の切替区画領域を有していることを特徴とする請求項1~11の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項13】
さらに、スクリーン/ディスプレイ手段を有していることを特徴とする請求項1~12の何れかに記載のサンバイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に切替可能な光学特性を有する、乗物用の透明サンバイザーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
WIKIPEDIAによれば、キーワードとしてスマートガラスで2019年6月28日に検索したところ、「スマートガラス」という用語は、電圧(エレクトロクロミズム)、光学状況変化(フォトクロミズム)、または加熱(サーモクロミズム)を応用することによって透明度を変更できる着色可能なグレイジングと定義されている。異なる応用技術・分野でも、「スマートガラス」という一般用語に纏められている。設計によっては、このようなガラスは、例えば日光プロテクター(ガラスは透明のままである)として機能でき、又は視界プロテクター(ガラスは不透明になる)の機能をもたらすことができる。
【0003】
特許文献1は、特に外を見られる能力を維持しつつ、乗物内への入射光を軽減するための日光プロテクターに関するものであり、それの少なくとも一方の面に、透明な基層と透明な外層とを有するフレキシブルな多層プラスチックシートとして設計されている。不透明なシートに穴を開けること無く透明性を低下させるために、基層と外層との間に微細な模様形状で遮る実質的に不透明な薄層を備えることが提案されている。
【0004】
特許文献2は、電気的に切替可能な光学特性を有するグレイジングに関するものであり、外側硝子と、少なくとも一つの熱可塑性フィルムを介して少なくとも一表面で前記外側硝子に接続された切替可能な機能性素子とを少なくとも有するもので、前記熱可塑性フィルムが少なくとも発光材料を含有するというものである。
【0005】
特許文献3は、切替可能な光学特性を有するグレイジングに関するものであり、外面及び内面を有する透明基材と、前記外面上及び/又は前記内面上の反射層と、前記反射層に対して前記内面に配置された切替可能な機能性素子とを少なくとも有するもので、前記反射層が屈折率nRを1.6~2.5とする材料からなり、前記反射層の屈折率nRとその厚さdとの積を250nm~960nmとするものである。
【0006】
特許文献4には、エレクトロクロミック可変透過ウィンドウが開示されている。前記エレクトロクロミック可変透過ウィンドウは、導電性物質に関わる第一及び第二の実質的透明基材と;少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの陽極電気活性材料、少なくとも1つの陰極電気活性材料、および少なくとも1つの陽極および陰極電気活性材料を含み、前記第一及び第二基材の間に配置されたチャンバに含まれるエレクトロクロミック媒体とを有しており、前記エレクトロクロミックウィンドウが約20未満、より好ましくは約5未満のEγを有しつつ、通常の日光条件下で低透過率状態にあるというものである。
【0007】
特許文献5には、一体化されたガラス板とそれに取り付けられた液晶フィルムとが一体化された自己制御可能な電気的サンプロテクターが、開示されている。前記液晶フィルムは、複数の表示領域で形成され、前記表示領域の液晶フィルムは、ストライプ状にカットされ、又は前記表示領域が互いに隣接して主としてストライプ状に形成される。コントローラは、前記表示領域と電源との間に設置され、信号を送信してコントローラに電力を生成して制御するのに使用される入力ユニットに接続される。前記コントローラは、電気的に接続又は電気的に切断して夫々透明又は不透明となるように前記表示領域の前記液晶フィルムを制御して、従来の窓のカーテンのように光を部分的に遮光する様々な状態にするという効果を達成する。
【0008】
特許文献6には、車のルーフの内側から引き下げることができるディスプレイユニットと、水平収納位置でルーフと平行に位置しそこから垂直にぶら下がっているディスプレイ面とを備えた情報ディスプレイ装置が、開示されている。その動作位置は、助手席後部である。そのディスプレイ領域は、水平収納位置にある透明なルーフ部位または透明なスライド式ルーフ部位のサンプロテクターとして機能する。
【0009】
特許文献7は、光による温度効果のために光の透過率を変化させる層配置に関するもので、前記層配置は、第一偏光層、温度効果のために光の偏光特性に影響を与える切替層、第二の偏光層、及び不随的なNIR透過防止層を備えるというものである。
【0010】
特許文献8には、可視光の高い透明度を維持しながら特定の一つの偏光のみの反射率を効果的に向上可能な光反射フィルム、並びにこの光を制御するためのフィルム、光学フィルム、機能性ガラス、及びヘッドアップディスプレイが、開示されている。光反射フィルムは、少なくとも2つの光反射層を含んでいる。少なくとも2つの光反射層は、光反射層PRL-1、光反射層PRL-2、及び光反射層PRL-3のうちの少なくとも一つを含む。前記光反射層PRL-1は、中心反射波長が少なくとも400nmであるが500nm未満であり、前記中心反射波長における通常の光の反射率が5%以上であるが25%以下である。光反射層PRL-2は、中心反射波長が少なくとも500nmであるが600nm未満であり、中心反射波長における通常の光の反射率が5%以上であるが25%以下である。前記光反射層PRL-3は、中心反射波長が少なくとも600nmであるが700nm未満であり、中心反射波長における通常の光の反射率が5%以上であるが25%以下である。少なくとも2つの光反射層は、相互に異なる中心反射波長を有する。
【0011】
特許文献9は、透過外側光量を制御できるだけでなく、ミラーとしても使用できるラミネートを、提供している。第一ラミネートは、第一液晶素子、反射偏光素子、及び第二液晶素子を有している。前記第一液晶素子は、配向状態が変化する第一液晶セルと、吸収型の第一偏光素子とを、有する。前記第一液晶セルは、入射光のうちある種の偏光を遮断し他の偏光を遮断するモードと、入射光のうちある種の偏光を遮断し他の偏光をシフトさせて透過させるモードとの間で、入射光が変化せずに透過するモードと、ある種の偏光を遮断し他の偏光を透過させるモードとの間で、及び入射光のうちある種の偏光を遮断し他の偏光を透過させるモードと、入射光のうちある種の偏光を透過し他の偏光を遮断するモードとの間で、切替可能である。
前記反射型の偏光素子は、前記第一液晶素子が透過した光を受光し、入射光のある種の偏光を透過し、他の偏光を反射する。前記第二液晶素子は、配向状態が変化する第二液晶セルと、吸収型の第二偏光素子とを有する。前記反射型の偏光素子が偏光を透過した場合、前記第二液晶セルは、偏光を遮断するモードと偏光を透過するモードとを切り替えることができる。
【0012】
特許文献10は、必要な時のみ、例えば接近し又は停止している光源によって目が眩む場合における、フロントガラスへの活性な着色について、記載されている。前記フロントガラスの透明度(半透明性)の低下は、透明な外側液晶硝子(液晶シート)の使用による、又は同様な効果を奏する他の技術による最も近道で成し遂げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第38 23780A号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/086555A1号
【特許文献3】国際公開第2014/072138A1号
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/0268289A1号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2015/103280A号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10 226406A号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10 2012 006 231A1号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2017/0235030A1号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2019/0331947A1号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第203 13 276U1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
対照的に、本発明は、電気的に切替可能、即ち調光可能で、日光やそれによる眩惑から保護する、透明なサンバイザーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
さらに、サンバイザーの不可欠な構成は、次の通り
1.好ましくはフェイルセーフ(「通常無色モード」、即ち無電源状態で透明)
2.均質で、色彩的に中性
3.配置の適応性、例えばパターンやデザイン、局所に限定された液晶ディスプレイのような区画区分、例えばブラインド若しくは部位及び/又はレタリング
4.電源、好ましくは低電圧
5.遮光と日光保護機能との組み合わせ機能
である。
【0016】
本発明によれば、「サンバイザー」という用語は、乗物、特に航空機例えばコックピット、船、列車、及び自動車特に乗用車・トラック・移動式住宅及びバスに関する。
【発明の効果】
【0017】
自動車の標準的なサンバイザーに関する従来技術の1つの問題は、例えば自動車のバイザーが故障または損傷した場合に、具体的には既知のエレクトロクロミック又はエレクトロトロピックのサンバイザーの交換及び/又は改造にある。従来技術の既知システムでは、時間と費用がかかってしまう。陸上用又は水上用乗物の市販サンバイザーは、通常、不透明であり、使用時に光学特性を低下させて、場合によっては死角を形成するというものである。
【0018】
したがって、本発明の目的は、“自己制御可能な”サンバイザーを提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第一実施形態では、上記の目的は、電気的に切替可能な光学特性を有する乗物用サンバイザーによって達成される。
サングラスや通常のサンバイザーブラインドを用いたままにして、このサンバイザーは、可視領域(380nm~780nm、特に400nm~750nm)の光に対し、無電圧状態で最大の半透明性(透明度)を有すると共に最小の不透明度を有しつつ、対照的に電圧印加状態でより低い半透明性(透明度)及び/又はより高い不透明度を有する。本発明のサンバイザーはそれ自体、サンバイザーとサングラスとを組み合わせたものであり、運転時の視界を妨げず、従来のサンバイザーと対照的に視野が維持される。本発明のサンバイザーは、ドライバーにサングラスの着用、装着、および入手を免れるために、日射を妨げ及び/又は遮る範疇でのみ作用する。
【0020】
従って本発明の本質的な中核としては、好ましくは「フェイルセーフ スマートガラス ウィンドウ」(任意選択でさらに駆動太陽電池/バッテリーを有し得る)を詳述するものであり、これによって従来技術を凌駕し、交換又はメンテナンスせずとも代替解決手段となり、及び新しい機能の提供をするものである。上記先行技術に対する本発明の本質的な利点は、その適用性:即ち
・色の中性性
・従来のサンバイザーと比較し、視野の完全なる保持
・均質性
・例えば3mm未満である狭小リム、又は任意に実質的にリム無し
・軽量
・例えば1秒未満である短い切替時間
・例えば3~8mmのように自由に選択し得る、材料ガラス/基材の厚さ
・気泡形成無し
・長耐用寿命
にある。
【0021】
本発明のサンバイザーは、乗物の電源に直接接続でき、又はそれの電源(例えばソーラーバッテリー)から供給されることができる。本発明によるサンバイザーは、累積的又は代替的に、一連の新規開発のために、RFID及び/又は環境発電または太陽電池をも備えてもよい。特に、光照射が低いときにサンバイザーの機能を必要としないため、独立したソーラー電源がサンバイザーを乗物の電源から独立しているのは合理的である。
【0022】
本発明の第一の実施態様では、前記目的は電気的に切替可能な光学特性を有する乗物用サンバイザーによって達成され、サンバイザーは、無電圧状態で可視領域の光が、最大(最適)の半透明性、及び最小(最適)の不透明度を有し、かつ無電圧状態と比較して印加電圧の状態で可視領域の光より低い半透明性及び/又はより高い不透明度を有するということを特徴としている。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、サンバイザーは、第一形態中、外側から内側に、
(a)第一基材、
(b)第一液晶セル、
(c)特に接着剤層を有している、第一中間層、
(d)任意選択で、二つの透明電極間に、PN及び/又はPD液晶素子TN及び/又はVA、特にPNを有する液晶素子VA、又はPDを有する液晶素子TNを、備えた第二液晶セル、
(e)第一中間層(c)に等価の第二中間層、
(f)任意に、第一液晶セルに等価の第二液晶セル、及び
(g)第一基材に等価の第二基材
を有してなる。
【0024】
第一液晶セルがPN-VA液晶素子を含む場合、又はPD-TN液晶素子(f)が存在しない場合には、中間層(e)を任意に省略してもよい。
【0025】
特にPN-VA液晶素子又はPD-TN液晶素子が無い場合に、第二中間層(e)も、基板の形状に設計されていてもよい。
【0026】
【0027】
ECBは、電気制御複屈折(ECB)モードを表す。
PNは「ポリマーネットワーク」、即ちポリマーネットワークに結合した液晶素子を表す。
PDは、「高分子分散」、即ちマトリックスに分散した高分子液晶素子を表す。
【0028】
PDLC液晶の代わりに、いわゆるPSCLC液晶、即ち、平面配向ブラッグ繊維中の未反応液晶分子の存在下でのin situ反応液晶分子光重合によって得られるポリマー安定化コレステリック液晶が、用いられてもよく、UV架橋が熱的誘発ピッチ変化と組み合わされて、使用できる。
【0029】
TNは、「ねじれネマティック」即ちネマティックねじれセルを表し、殆ど薄い2枚の基材間の内側が透明な電極層、例えばインジウムスズ酸化物層でコーティングされ、間には数マイクロメートルの厚さの液晶層が配置されている。さらに、2枚の基材は90°ねじれた偏光フィルターでコーティングされている。
VAは、「垂直方向の配置」を表す。VA LCDsにおいて、ホメオトロピック液晶、即ち基材表面に垂直に配向した液晶は、基材に垂直に配向した電界を印加することにより、ガラス基材と平行に切り替えられる。したがって、電界に対して垂直に配向する負の誘電異方性を備えた液晶混合物が必要である。このことは、側方極性側鎖基をメソゲン分子に組み込むことによって達成される。
【0030】
無電圧状態では、液晶のホメオトロピック配向により、先ず、交差した偏光子間でほぼ理想的な黒色状態になる。そのため、VAディスプレイは優れたコントラスト値を示すことを特徴としており、普通は「通常のブラックモード」で動作する。このことは、無電圧状態で、画面が例えば黒(暗色)に着色されているということである。
【0031】
OCAは、「光学的に透明な接着剤」即ち光学的に視認できない接着剤を表す。
【0032】
第二の実施態様では、第一の実施態様と比較して、層(d)及び(f)が置き換えられているため、外観が乳白色にぼやけた模様として前面に表示される。
【0033】
【0034】
本発明の利点は、光透過の適用性にある。さらに、プライバシー(不透明)や日光保護(暗色)の組み合わせが一緒になって、とりわけフェイルセーフ解決手段として、補完される。可変多層の組み合わせによる光学適用も可能である。例えば、第一実施態様から第二実施態様への転用参照。これには、任意に、例えば計8層にすることも可能である。
【0035】
本発明の特に好ましい態様は、前記第一及び/又は第二液晶素子が、透明な導電性酸化物でコーティングされた2枚の硝子(シート)の間に市販の液晶混合物を含むことを特徴とするサンバイザーである。対応する素子は、例えばメルク社から市販されている。
【0036】
本発明のサンバイザーは、VA液晶素子又はTN液晶素子が有る場合にも、電力無供給状態で無色透明であるという特徴であると、特に好ましい。その利点は、フェイルセーフティであるということである。電源が落ちた場合でも、乗客は(VAとPN)を介して見ることができる。
【0037】
本発明の前記のようなサンバイザーは、前記第一及び/又は第二液晶素子が、電圧印加の機能として半透明性を切り替える第一及び/又は第二偏光層を形成することを特徴としていると、特に好ましい。ここでも、フェイルセーフティに利点がある。さもなければ、このことは、PNおよびVA液晶素子の存在が利点とならなくなってしまう。好ましくは、両システムをフェイルセーフとすべきである。
【0038】
本発明を使用すれば、無電圧状態で、標準光源D65を備えたヘイズメータNDH2000を用いて測定される可視光領域でのヘイズが1%未満、特に0.5%未満であることを特徴とするサンバイザーを首尾よく提供することができる。このようにサンバイザーは、無電圧状態で、実質的に清澄な透明である。同じ電圧状態で、標準光源D65を備えたヘイズメータNDH2000を用いて測定される透過率は、少なくとも50%、とりわけ少なくとも60%とすることもできる。従って、本発明による層構造は、通常の条件下で実質上肉眼で見えない。ヘイズと透過率は、標準光源D65を用いサンバイザー全体について、従来技術により通常どおり測定される(WIKIPEDIA、照会日2019年6月28日のキーワード「標準光源」を参照)。
【0039】
本発明によれば、電圧が印加された時に、標準光源D65を備えたヘイズメータNDH2000を用いて、70%を超え、特に80%を超えるヘイズが測定され、及び/又は標準光源D65を備えたヘイズメータNDH2000を用いて、最大20%、特に最大10%の透過率が測定される。
【0040】
任意に、サンバイザーは、局所的な明-暗及び/又は透明-不透明を制御する分画されたセル切替領域を有していてもよい。グレイジング又は個々のセルの電源供給・制御は、搭載電源システムへの外部接続によって、影響される。例えば、制御は、たとえば太陽電池からの電圧を保存し個々の(電圧)スイッチング状態を可能にするもので(任意に)乗物用BUSシステムバッテリーを備えたフラット自己制御可能コントロールユニット(PCB)によって、行われる。これによって、サンバイザーと個々のセルの特性の自立した機能と制御が可能である。
【0041】
本発明のサンバイザーは、別個の又は一体化したスクリーン/表示手段をさらに有していてもよい。なぜなら、本発明によれば、アクティブ又はパッシブなマトリックスを制御することができるからであり、例えば、速度、時刻、危険表示、警告表示(帯状)などを表示できる。同様に、(小型の)OLEDディスプレイを埋め込むこともできる。
【0042】
本発明の別な好ましい実施態様では、サンバイザーは、可撓性で任意に組み込まれ例えば動作ユニット内にタッチ機能を備え太陽電池で動作する統合電池を、さらに有していてもよい。その後、操作は、接触膜を介して行われる。これら接触素子により、PCB(BUSシステム)を介して機能し又はオン・オフ及び切替コマンドで制御して、変換される。ユーザーは、任意にマスクされた接触領域に触れることにより、サンバイザーのグレイジングを直接操作、たとえばサンバイザー自体又は別の操作ユニットで操作できる。
【実施例】
【0043】
(実施例)
[状態の説明]
・切替オフ:清澄で明光:フェイルセーフには、第一液晶層として、VA(垂直な配置)、PNLCポリマーネットワーク液晶を含んでいる。
・切替オン:ぼやけ、任意に暗色:TN(ねじれネマティック)、PDLCポリマー分散液晶
・A:断面構造で二重セル1+2:日光保護のみ(TN含有TN、又はVA含有VAのみ)
・B:断面構造で二重セルA+3:日光防止とプライバシー効果との組み合わせ
・1.層2枚×0.2mm(基材:ガラス又はプラスチック、特にポリカーボネート)TN又はVAセル(計1.1mm)
・2.層2枚×0.2mm(基材:ガラス又はプラスチック、特にポリカーボネート)TN又はVAセル(計1.1mm)
任意に0.4mmPNLC、PN、又はPDLC、PC、又はPSC(任意に、プライバシー効果あり)。PNLCとVAのみは、フェイルセーフを実現するために組み合わせられる。それ以外の場合は、PDLC又はPSCをTNと組み合わせる必要あり。
【0044】
[構造の説明]
・光学的に透明な接着剤(OCA)で、又は積層プレスコネクト法で、接合
・積層:基材、セル又はシートは、EVA及び/又はOCAの手段を用いて混成法で積層した。
・試料:TNセルは、OCA手法によって、又はEVA手法による積層によって、接続できる。
・構造:二重セル
【表3】
【0045】
[利点:]
PMMA及びPC基材により、軽量化と安全性の向上が実現する。道路交通又は航空交通の登録には問題がない。
【0046】
[電源の技術データ:]
存在しない場合は、DC-ACコンバータが必要になる。
入力電圧:0.04A~0.09Aで12~28VのDC-ACコンバーター。
9~16Vの一次電圧は、恒常状態を維持しておく。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に切替可能な光学特性を備えた乗物用のサンバイザーであって、
電圧不負荷状態で可視領域の光に対し最大の半透明性と最小の不透明性を有し、及び電圧不負荷状態に比べ印加電圧状態で可視領域の光に対しより低い半透明性及び/又はより高い不透明性を有
しており、
(a)第一基材と、
(b)第一液晶セルと、
(c)特に、接着層を含んでいる第一中間層と、
(d)必要に応じて、二つの透明電極の間に、PN液晶素子TN又はVA、特にPNを有するVAを、備えた第二液晶セル、
(e)第一中間層(c)に対して等価の第二中間層、
(f)第一液晶セルに対して等価の第二液晶セル、及び
(g)第一基材に対して等価の第二基材
を有している
ことを特徴とするサンバイザー。
【請求項2】
前記第一及び/又は第二基材及び/又は前記中間体が夫々
、ポリ(メチル メタクリレート)又はポリカーボネートを含むことを特徴とする請求項
1に記載のサンバイザー。
【請求項3】
前記第一及び/又は第二液晶素子は、透明な導電性酸化物でコーティングされた2枚の硝子又はシートの間に、液晶混合物を有していることを特徴とする請求項
1又は2に記載のサンバイザー。
【請求項4】
前記第一及び第二液晶素子が、電圧印加の機能として半透明を切り替える、第一及び第二の分極層を形成していることを特徴とする請求項
1~3の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項5】
PN VA液晶素子、又はPD TN液晶素子が、無電源状態で、透明となっていることを特徴とする請求項
1~
4の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項6】
電圧無印加状態で、標準光源D65を備えた透過率計NDH2000を用いた測定によるヘイズが、可視光領域において1%未満、特に0.5%未満であることを特徴とする請求項
1~
5に何れかに記載のサンバイザー。
【請求項7】
電圧無印加状態で、標準光源D65を備えた透過率計NDH2000を用いた測定による透過率が、少なくとも50%、特に少なくとも60%であることを特徴とする請求項
1~
6の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項8】
電圧印加したときに、標準光源D65を備えた透過率計NDH2000を用いた測定によるヘイズが、70%を超え、特に80%を超え、及び/又は標準光源D65を備えた透過率計NDH2000を用いた測定による透過率が、20%まで、特に10%まであることを特徴とする請求項
1~
7の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項9】
明-暗、及び/又は透明-不透明制御の切替区画領域を有していることを特徴とする請求項1~
8の何れかに記載のサンバイザー。
【請求項10】
さらに、スクリーン/ディスプレイ手段を有していることを特徴とする請求項1~
9の何れかに記載のサンバイザー。
【国際調査報告】