(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】組成物及び製造の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20230317BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/66 20060101ALI20230317BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230317BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230317BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230317BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61K36/185
A61K8/66
A61K8/9789
A61P17/02
A61Q19/00
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022539183
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 IB2020062349
(87)【国際公開番号】W WO2021130675
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505018315
【氏名又は名称】フェニックス イーグル カンパニー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ブロックルハースト, キース
(72)【発明者】
【氏名】トリジャンテ, ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AD471
4C083AD472
4C083CC02
4C083EE11
4C083EE13
4C084AA02
4C084BA01
4C084CA13
4C084DC03
4C084DC07
4C084MA02
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA89
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA09
4C088BA16
4C088CA05
4C088CA14
4C088MA01
4C088MA63
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
(57)【要約】
本発明は、カリカ・パパイヤ由来セリンプロテアーゼを含む組成物、果実供給源からプロテアーゼを抽出する方法、並びにその美容的及び治療的使用、並びに関連キットに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリカ・パパイヤ(Carica papaya)植物の熟した果実から抽出された1種又は複数の活性セリンプロテアーゼを含む、組成物。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸118~763と少なくとも95%の相同性を有する連続アミノ酸配列を有する活性セリンプロテアーゼを含む、組成物。
【請求項3】
配列番号1のアミノ酸142~618と少なくとも95%の相同性を有する連続アミノ酸配列を有する活性セリンプロテアーゼを含む、組成物。
【請求項4】
カリカ・パパイヤ(Carica papaya)植物の熟した果実から抽出された1種又は複数の活性セリンプロテアーゼ及び1種又は複数の活性システインプロテアーゼとの混合物を含む、組成物。
【請求項5】
カリカ・パパイヤ(Carica papaya)植物の熟した果実パルプを、加熱ステップに供することなく、アルカリで処理するステップを含む、活性セリンプロテアーゼを含む組成物を調製するための方法。
【請求項6】
前記アルカリが弱アルカリである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記弱アルカリが11未満のpKaを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記弱アルカリが炭酸水素ナトリウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が活性システインプロテアーゼをさらに含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
可溶性プロテアーゼが、前記アルカリ処理後に不溶性植物材料から分離される、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、前記プロテアーゼの濃度を増加させるためにさらに処理される、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項5~11のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な活性セリンプロテアーゼを含む、組成物。
【請求項13】
活性カリカ・パパイヤ(Carica papaya)セリンプロテアーゼを、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~4及び12のいずれか一項に記載の組成物を、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項15】
活性カリカ・パパイヤ(Carica papaya)セリンプロテアーゼを、化粧品として許容できる担体又は希釈剤とともに含む、化粧品組成物。
【請求項16】
請求項1~4及び12のいずれか一項に記載の組成物を、化粧品として許容できる担体又は希釈剤とともに含む、化粧品組成物。
【請求項17】
創傷デブリードマンにおける使用のための、請求項13又は14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
皮膚エクスフォリエーション(exofoliation)における、請求項15又は16に記載の組成物の使用。
【請求項19】
請求項1~4及び12~16のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、皮膚病状を予防する、治療する、低下させる、又は改善する方法。
【請求項20】
請求項1~4及び12~16のいずれか一項に記載の組成物、並びに使用のための使用説明書を含む、皮膚病状を予防する、治療する、低下させる、又は改善することにおける使用のための又は使用される場合のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリカ・パパイヤ(Carica papaya)植物において同定された少なくとも1種のプロテアーゼを含む組成物、カリカ・パパイヤ植物から組成物を産生するための方法、前述の方法によって取得される又は取得可能な少なくとも1種のプロテアーゼを含む組成物、医薬及び化粧品の製造におけるそのような組成物の使用、創傷を含めた疾患及び障害の治療におけるそのような組成物の使用、美容的適用におけるそのような組成物の使用、並びに本発明の方法又は使用を行うための関連キットに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性足潰瘍、褥瘡、静脈性潰瘍、及び動脈性潰瘍を含むがそれらに限定されない、多くのタイプの慢性創傷の有効な管理は、依然として課題のままである。そのような創傷は、治癒するのに著しい量の時間を要することがある又は決して本当には治癒せず、医療専門家からの著しい援助を要する。アスコルビン酸、I型コラーゲン、及びアルファ-トコフェロールアセテートを含有する、デンプンの加水分解によって取得されるD-グルコース多糖の包帯等、創傷治癒を支援する数々の製品がこれまでに開発されている(米国特許第6,187,743号)。
【0003】
創傷デブリードマン(debridement)のためのパパイン及びブロメライン等のプロテアーゼの使用にもこれまでに関心が集まっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、熟したパパイヤ(カリカ・パパイヤ)の果肉をアルカリで処理することによって取得される濾液において、その果実において活性プロテアーゼとしてこれまでに同定されていないプロテアーゼの存在を同定した。本発明者らは、このプロテアーゼがセリンプロテアーゼであること、並びに濾液がセリンプロテアーゼ及びシステインプロテアーゼ活性の両方を含有することを確認した。薬用蛆虫からの分泌物において同定されたセリンプロテアーゼ(van der Plasら、2014、PLoS ONE 9(3):e92096)は、プラスミノーゲンを分解することによってプラスミノーゲン活性化因子誘導性線維素溶解を増強することがこれまでに示されており、このセリンプロテアーゼは、壊死組織の創傷をデブリードする薬用蛆虫の能力に寄与することができることが示唆された。
【0005】
したがって、第1の態様において、本発明は、アルカリ処理された、パルプ化した(pulped)熟したカリカ・パパイヤ果実(pulped ripe Carica papaya fruit;熟したカリカ・パパイヤ果実パルプ)から抽出された活性セリンプロテアーゼ等、カリカ・パパイヤ植物の熟した果実から抽出された活性セリンプロテアーゼを含む組成物を提供する。
【0006】
1つの実施形態において、活性セリンプロテアーゼは、不溶性カリカ・パパイヤ由来材料を実質的に含んでいない。
【0007】
第2の実施形態において、セリンプロテアーゼは、配列番号1のアミノ酸113~771と少なくとも95、96、97、98、又は99%の相同性(との配列同一性等)を有する連続アミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、セリンプロテアーゼは、65~75kDa、例えば約70kDaの分子量を有する。
【0008】
第3の実施形態において、セリンプロテアーゼは、45~55kDaの分子量を有し、配列番号1のアミノ酸142~618と少なくとも95%の相同性を有する連続アミノ酸配列を含む。ゆえに、本発明は、45~55kDaの分子量を有し、配列番号1のアミノ酸142~618と少なくとも95%の相同性を有する連続アミノ酸配列を含む、単離された活性セリンプロテアーゼを含む組成物を提供する。
【0009】
本発明は、不溶性カリカ・パパイヤ由来材料を実質的に含んでいない単離された活性セリンプロテアーゼを含む組成物であって、セリンプロテアーゼは、45~55kDaの分子量を有し、配列番号1のアミノ酸142~618と少なくとも95%の相同性を有する連続アミノ酸配列を含む、組成物も提供する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、カリカ・パパイヤに由来する又はそれから導き出せる1種又は複数の活性セリンプロテアーゼと、カリカ・パパイヤに由来する又はそれから導き出せる1種又は複数の活性システインプロテアーゼとの混合物を含む組成物を提供する。1つの実施形態において、1種又は複数の活性プロテアーゼは、熟したカリカ・パパイヤから抽出される。別の実施形態において、1種又は複数の活性プロテアーゼは、組み換え発現システムを使用して産生される。
【0011】
本発明は、熟したカリカ・パパイヤからプロテアーゼを抽出することによって、少なくとも1種の活性セリンプロテアーゼを含む組成物を調製する方法にも関する。したがって、第3の態様において、本発明は、活性セリンプロテアーゼを含む組成物を調製するための方法であって、方法は、パルプを加熱ステップに供することなく、熟したカリカ・パパイヤ果実パルプをアルカリで処理するステップを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、アルカリは、弱アルカリ、好ましくは炭酸水素ナトリウムである。
【0012】
この方法によって作製される組成物は、カリカ・パパイヤに由来する又はそれから導き出せる1種又は複数のシステインプロテアーゼをさらに含んでもよい。
【0013】
1つの実施形態において、少なくとも1種の可溶性プロテアーゼは、アルカリ処理後に不溶性植物材料から分離される。
【0014】
組成物は、例えば凍結乾燥、透析、サイズ排除クロマトグラフィー、又はその組み合わせを使用して、1種又は複数のプロテアーゼの濃度を増加させるためにさらに処理されてもよい。
【0015】
第4の態様において、本発明は、本発明の方法によって取得される又は取得可能なセリンプロテアーゼを含む組成物をさらに提供する。
【0016】
組成物は、薬学的又は美容的適用により適しているように製剤化されてもよい。したがって、第5の態様において、本発明は、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とともに活性カリカ・パパイヤセリンプロテアーゼを含む医薬組成物、並びに化粧品として許容できる担体又は希釈剤とともに活性カリカ・パパイヤセリンプロテアーゼを含む化粧品組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、薬学的に許容できる担体又は希釈剤との本発明の第1、第2、又は第4の態様のいずれかの組成物、並びに化粧品として許容できる担体又は希釈剤とともに本発明の第1、第2、又は第4の態様のいずれかの組成物を含む化粧品組成物を提供する。
【0017】
本発明の組成物は、薬学的及び美容的適用の範囲において使用されることができる。したがって、第6の態様において、本発明は、皮膚病状に罹患している患者を治療する方法であって、方法は、患者の病変エリアに本発明の組成物を投与するステップを含む、方法も提供する。一部の実施形態において、組成物は、創傷を含めた疾患及び障害の治療に使用される。一部の実施形態において、組成物はデブリードマンに使用される。一部の実施形態において、組成物は、火傷を治療するために使用される。一部の実施形態において、組成物は、潰瘍を治療するために使用される。一部の実施形態において、組成物は、壊疽を治療するために使用される。一部の実施形態において、組成物は局所的に適用される。
【0018】
本発明は、第7の態様において、個体の表皮を滑らかにすること及び再生等の所望の美容的成果を達成する方法であって、方法は、患者の病変エリアに本発明の組成物を適用するステップを含む、方法をさらに提供する。本発明は、本発明の組成物を使用した美容的方法も提供する。一部の実施形態において、組成物は、エクスフォリエーションに、皮膚を明るくするために、又はシワ、皮膚のシミ、そばかす、吹き出物、ニキビ、酒さ、黒点(sun spot)、傷痕、若しくは静脈瘤に適用するために、又は乾燥した、老化した、若しくは損傷を受けた皮膚に適用するために使用される。
【0019】
第8の態様において、本発明は、医薬の製造における、第1、第2、第4、又は第5の態様の組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、医薬は、創傷を含めた疾患及び障害の治療のためのものである。一部の実施形態において、医薬はデブリードマンのためのものである。一部の実施形態において、医薬は、火傷を治療するためのものである。一部の実施形態において、医薬は、潰瘍を治療するためのものである。一部の実施形態において、医薬は、壊疽を治療するためのものである。
【0020】
第9の態様において、本発明は、化粧品の製造における、第1、第2、第4、又は第5の態様の組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、化粧品はエクスフォリエーションのためのものである。
【0021】
第10の態様において、本発明は、創傷を含めた疾患及び障害の治療における使用のための、第1、第2、第4、又は第5の態様の組成物を提供する。一部の実施形態において、治療はデブリードマンである。一部の実施形態において、治療は潰瘍に対するものである。一部の実施形態において、組成物は局所的に適用される。
【0022】
第11の態様において、本発明は、エクスフォリエーションにおける使用のための、第1、第2、第4、又は第5の態様の組成物を提供する。
【0023】
第12の態様において、本発明は、第1、第2、第4、又は第5の態様の組成物を含むキットを提供する。1つの実施形態において、キットは、本発明の方法を実施するために使用される。
【0024】
本発明の組成物は、例えばカプセル、錠剤、クリーム、軟膏、溶液、ペースト、液滴、スプレー、エアロゾル、蒸気、ワイプ、パッチ、ガーゼ、ゲル、又は液体として製剤化され得る。したがって、1つの実施形態において、本発明の組成物は、カプセル、錠剤、クリーム、軟膏、溶液、ペースト、液滴、スプレー、エアロゾル、蒸気、ワイプ、パッチ、ガーゼ、ゲル、又は液体として提供され又はパッケージされ、使用前に再構成される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】重ね合わせザイモグラフィーの概略的表示である。重ね合わせザイモグラフィープロセス、及び、その後の酵素活性スポットからのバンドの後続の切り出し、SDS PAGEゲルへのプロセス。
【
図2】フランツ型セル拡散システムを使用したデブリードアッセイの表示である(Shi、Ermisら、2009)。
【
図3】OPAL A及びOPAL B濾液のL-BApNAタンパク質分解活性の棒グラフプロットである。時間経過の傾きによって測定される、L-BApNAに対するOPAL A及びOPAL B濾液。OPAL B濾液は、OPAL A濾液と比較して、ほぼ8倍大きな触媒活性を有する。結果は、n=8の実験に対する平均±S.Dとして表されている。スチューデントT検定を使用して、構造分析を行った(
***p<0.001)。
【
図4】OPAL B濾液による及びE-64の添加を有する、L-BApNAの酵素的加水分解の分光光度プロットである。代表的なプロットは、OPAL B濾液による基質L-BAPNAの酵素的加水分解、及びシステインプロテアーゼ阻害剤E-64による部分的活性阻害を示し、システインプロテアーゼに加えて他のプロテアーゼの存在を示唆する。
【
図5】OPAL B濾液のタンパク質分解活性に対するプロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC)の効果についての分光光度プロットである。代表的なトレース図は、OPAL B濾液による基質L-BAPNAの酵素的加水分解、及びPICによる酵素的加水分解の完全な阻害を示す。
【
図6】OPAL B濾液のタンパク質分解活性に対する種々のプロテアーゼ阻害剤クラスの効果についての棒グラフプロットである。
【
図7】OPAL B濾液のタンパク質分解活性に対するE-64+AEBSFの効果についての分光光度プロットである。代表的なトレース図は、システインプロテアーゼ阻害剤E-64及びセリンプロテアーゼ阻害剤AEBSFの組み合わせによる、OPAL B濾液におけるL-BAPNA活性の完全な阻害を示す。
【
図8】OPAL B濾液の重ね合わせザイモグラフィー分析の図である。
【
図9】OPAL B濾液の重ね合わせザイモグラフィー分析、及び阻害剤を使用することに対する効果を示した図である。OPAL BサンプルにおけるネイティブPAGEゲルバンドを取得し、その後、タンパク質バンドをゲルからニトロセルロース膜に移した。ザイモグラフィー分析は、対照における2種の酵素活性、並びにシステインプロテアーゼ阻害剤E-64を用いた上方バンドの完全な阻害(---)、及びセリンプロテアーゼ阻害剤AEBSFを用いた下方バンドの阻害(---)を示す。
【
図10】溶出2~10を用いて流したSDS PAGEゲルの銀染色の図である。80kDaにおいて第6画分に存在する高強度のバンド、並びに50kDa及び30kDaにおけるバンドを、LC/MS分析を使用して分析し、サブチラーゼとして明らかにした。
【
図11】様々な処理を使用してセリンプロテアーゼプローブで処理されたOPAL B濾液のSDS PAGEウェスタンブロッティング分析の図である。tris-HClを有しない(レーン2)、及び5mg/ml tris-HClを有する(レーン4)、10mg/ml tris-HCLを有する(レーン6)、並びにそれぞれAEBSFを有する(レーン3、5、及び7)、1μlプローブ(100μlあたり)で処理されたOPAL B濾液のSDS PAGEウェスタンブロッティング分析。E-64とともに(レーン6)並びにE-64及びAEBSFとともに(レーン7)、1μlプローブ及び10mg/mL tris-HClを用いたOPAL B濾液は、バックグラウンドの乱れを示さない。
【
図12】OPAL Aは、コラーゲン及びフィブリンを消化することにおいてより優れており、一方で対照ラテックスパパインは、エラスチンを消化することにおいてより優れていることを示した、ラテックス-パパインと比較した、OPAL A濾液によるAWE基質の差示的消化(活性パーセンテージ)を示した図である。結果は、n=3の実験に対する平均±SDとして表されている。スチューデントT検定を使用して、構造分析を行った(
**p<0.01、
***p<0.001)。
【
図13】天然OPAL A濾液と比較した、透析されたOPAL A及びOPAL A+10%尿素によるAWE基質の差示的消化(活性パーセンテージ)を示した図である。透析されたOPAL Aは、フィブリン及びエラスチンの両方に対する増強したデブリード活性を有したが、コラーゲンに対しては有せず、このことは、コラーゲンに対するOPAL Aのより低い活性と相関する。尿素のOPAL A添加は、AWEアッセイにおいて、フィブリン及びエラスチンに対する酵素の活性を阻害した。結果は、n=3の実験に対する平均±S.Dとして表されている。スチューデントT検定を使用して、構造分析を行った(
**p<0.01、
***p<0.001)。
【
図14】OPAL Bを用いた重度の褥瘡の管理に関するインビボ事例研究、Opal Bを用いた治療の開始前の図である。壊死の中央エリア。偏菱形の(romboid)皮弁を用いて潰瘍のサイズを低下させようとする試みの失敗。浅黒い皮弁の遠位部分。注意-グラフィック画像。
【
図15】OPAL Bを用いた重度の褥瘡の管理に関するインビボ事例研究、治療2日目の図である。生存可能となるものから壊死になるエリアの描写。ピンク色の創傷の縁、及び皮膚皮弁への良好な血流。注意-グラフィック画像。
【
図16】OPAL Bを用いた重度の褥瘡の管理に関するインビボ事例研究、治療4日目の図である。生存組織と生存不能組織との間のはっきりとした境界。生存組織は、綺麗で且つピンク色に見える。皮膚皮弁は十分に生存可能に見える。注意-グラフィック画像。
【
図17】OPAL Bを用いた重度の褥d瘡の管理に関するインビボ事例研究、治療16日目の図である。創傷を外科的にデブリードし、縫合糸を除去し、皮弁を切除した。綺麗な創傷表面の早期肉芽形成が明瞭である。創傷の縁はピンク色であり、新たな皮膚成長の示唆である(これまでの画像の皮膚の色に合致するように調整された曝露)。注意-グラフィック画像。
【
図18】OPAL Bを用いた重度の褥瘡の管理に関するインビボ事例研究、治療19日目の図である。皮膚及び創傷の色、特に創傷の縁は浅黒くなる。創傷は綺麗なままである(より早期の画像の皮膚の色に合致するように調整された曝露)。注意-グラフィック画像。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
別様に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は等価の任意の方法及び材料が、本発明の実践又は試験において使用されることができるものの、好ましい方法及び材料が記載される。本発明の目的上、以下の用語が下で定義される。
【0027】
「約」によって、参照の分量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さと20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%ほど変動する、分量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを意味する。
【0028】
「活性プロテアーゼ」によって、タンパク質分解的に活性(proteolyticactivity)であるプロテアーゼを意味する。
【0029】
本明細書を通じて、文脈上別様に要されない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと(comprising)」という用語は、明記されるステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素の群の内包を意味するが、任意の他のステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素の群の除外を意味するわけではないと理解されるであろう。ゆえに、「含むこと」等の用語の使用は、列挙されるステップ又は要素は要される又は必須であるが、他のステップ又は要素は任意選択であり、存在してもしなくてもよいことを示す。
【0030】
「からなる」によって、「からなる」という語句の後に続くものは何でも含み且つそれに限定されることを意味する。ゆえに、「からなる」という語句は、列挙される要素は要され又は必須であり、他の要素は存在することができないことを示す。「から本質的になる」によって、該語句の後に列挙される任意の要素を含み、列挙される要素に対する開示において指定される活性又は作用を妨害しない又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。ゆえに、「から本質的になる」という語句は、列挙される要素は要される又は必須であるが、他の要素は任意選択であり、それら他の要素が、列挙される要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもしなくてもよいことを示す。
【0031】
「デブリードマン」という用語は、創傷からの死んだ及び損傷を受けた組織の除去を指す。
【0032】
「導き出せる」という用語は、「取得可能な」という用語と互換可能に使用されてもよい。
【0033】
「由来する」という用語は、「取得される」という用語と互換可能に使用されてもよい。
【0034】
「単離された」によって、材料の天然状態において通常では材料に伴う構成要素の一部又はすべてを実質的に又は本質的に含んでいない材料を意味する。例えば、本明細書において使用される「単離されたプロテアーゼ」とは、ペプチド又はポリペプチドプロテアーゼ分子の天然の細胞環境からの、及び細胞の構成要素の一部又はすべてとの結び付きからの、ペプチド又はポリペプチドプロテアーゼ分子のインビトロ単離及び/又は部分的精製を指す。
【0035】
「取得可能な」という用語は、本発明のタンパク質又は組成物との関連で使用される場合、特定の指定される方法によって産生されるタンパク質又は組成物だけでなく、しかしながら、例えば果実若しくは野菜由来のプロテアーゼを供給することによって、又は例えば組み換え発現システムを使用することによる組み換えDNA技術若しくは他の遺伝子操作法によって産生される同じタンパク質又は組成物も含む。
【0036】
「患者」、「対象」、及び「個体」という用語は互換可能に使用され、ヒト又は他の動物の患者、対象、及び個体を指し、本発明を使用して疾患、障害、又は病状を治療する、予防する、改善する、又はその重症度を低下させることが望まれる任意のものを含む。しかしながら、「患者」とは、症状が存在することを暗示するわけではないことが理解されるであろう。本発明の範囲に入る哺乳類等の適切な動物は、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、実験室試験動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、伴侶動物(例えば、ネコ、イヌ)、及び捕獲野生動物(例えば、キツネ、シカ、ディンゴ)を含むが、それらに制限されるわけではない。
【0037】
「野生型」及び「天然に存在する」という用語は、天然に存在する供給源から単離された場合に、そのタンパク質の特徴を有するタンパク質を指すために互換可能に使用される。野生型タンパク質(例えば、ポリペプチド)とは、集団において最も高頻度に観察され、ゆえに任意に、当該タンパク質の「通常の」又は「野生型」形態と呼ばれるものである。
【0038】
「創傷」という用語は、皮膚が切れている又は分断されている、生体組織への傷害を意味し、ヒフ潰瘍及び火傷を含む。ヒフ潰瘍は、糖尿病性潰瘍、褥瘡、静脈性(又は静脈瘤)潰瘍、及び動脈性潰瘍を含んでもよい。
【0039】
本明細書における任意の先行技術への参照は、先行技術が、当業者の共通の一般知識の一部を形成するという承認又は任意の形態の示唆ではなく、承認又は任意の形態の示唆として受け取られるべきではない。
【0040】
本明細書において挙げられるすべての刊行物、特許、特許出願、及び他の資料の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【発明の詳細な説明】
【0041】
セリンプロテアーゼを含む組成物
本発明は、カリカ・パパイヤ植物の熟した果実を、炭酸水素ナトリウム等のアルカリでパルプ化する(pulp)処理後等、カリカ・パパイヤ植物の熟した果実から抽出され得る又は別様に由来し得る少なくとも1種の活性セリンプロテアーゼを含む組成物に関する。
【0042】
「活性セリンプロテアーゼ(proetease)」という用語は、1種又は1種を上回る活性セリンプロテアーゼを指すと理解されるべきである。
【0043】
1つの実施形態において、活性セリンプロテアーゼは、配列番号2~5に示される配列の1種若しくは複数の配列、例えば配列番号2、3、及び4に示される配列、又は配列番号2、3、4、及び5にそれぞれ示される4種すべての配列を含むアミノ酸配列を有する。
【0044】
少なくとも1種の活性セリンプロテアーゼは、主要な触媒三残基Asp、His、及びSer(それぞれ、配列番号1において残基151、221、及び558に示される)、並びに残基326における保存された基質結合部位Asnを含有する当該タンパク質の触媒ドメインである、配列番号1のアミノ酸142~618と少なくとも95%の配列相同性(好ましくは配列同一性)、例えば96、97、98、又は99%の配列相同性(好ましくは配列同一性)を有する連続配列を典型的に含む。
【0045】
配列番号1(太字で示される、His221及び配列番号2~19のペプチド)
アミノ酸1~25は推定シグナル配列であり、アミノ酸26~112は、切断されて成熟タンパク質を形成する推定プロ領域である。
【0046】
配列番号2~配列番号5は、それぞれ配列番号7、配列番号12、配列番号14、及び配列番号15のペプチドフラグメントである。
【0047】
1つの実施形態において、本発明の少なくとも1種の活性セリンプロテアーゼは、当該タンパク質がセリンプロテアーゼ活性を保持するという条件で、最高3又は5個等の最高1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個、又はそれを上回る数のアミノ酸改変(欠失、挿入、及び/又は置換)を有する、配列番号1のアミノ酸118~763由来のアミノ酸配列を含む。
【0048】
ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、切り取り、及び挿入を含めた様々な手段で改変されることができる。そのような操作のための方法は、当技術分野において一般的に知られている。
【0049】
本発明のセリンプロテアーゼは、それらの活性形態である、すなわち不活性酵素前駆体としてではない。
【0050】
1つの実施形態において、本明細書における実験結果は、カリカ・パパイヤから単離され且つ50kDaの見かけの分子量を有するタンパク質が、活性セリンプロテアーゼとして存在したことを示唆する。したがって、1つの実施形態において、本発明の少なくとも1種の活性セリンプロテアーゼは、45~55kDa、例えば48~52kDa、例えば約50kDaの分子量を有してもよい。本発明の少なくとも1種のプロテアーゼの分子量は、約45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、又は55kDaであってもよい。分子量はSDS PAGEによって査定されることができ、ゆえに、プロテアーゼは、48~52kDa、例えば約50kDa等の45~55kDaの、SDS PAGEによって測定される平均分子量を有する。代替的に、分子量は、一次アミノ酸配列に基づいて算出され得る。
【0051】
活性セリンプロテアーゼ(複数可)は、典型的に、実質的に単離された形態にある。実質的に単離された形態にあるということは、活性セリンプロテアーゼが、活性セリンプロテアーゼのカリカ・パパイヤ供給源材料から少なくとも部分的に精製されている、又は組み換えで産生されていることを意味する。1つの実施形態において、単離された活性セリンプロテアーゼは、セルロース、リグニン等の不溶性植物材料を実質的に含んでいない。不溶性植物材料を実質的に含んでいないということは、典型的に、不溶性材料を除去して、溶液に可溶性活性セリンプロテアーゼを残す1つ又は複数の精製ステップの結果としてのものであろう。この精製ステップは、下でさらに記載されるであろう。「不溶性植物材料を実質的に含んでいない」とは、組成物の2%w/w未満、例えば1%w/w又は0.5%w/w未満が、プロテアーゼのための供給源材料に由来する不溶性植物材料を含有することを意味する。
【0052】
セリンプロテアーゼとシステインプロテアーゼとの混合物を含む組成物
チオールプロテアーゼ及びシステインエンドペプチダーゼとしても知られるシステインプロテアーゼ(EC 3.4.22)は、タンパク質を分解する酵素である。システインプロテアーゼは、触媒三残基又は二残基に求核性システインチオールを伴う共通の触媒メカニズムを共有する。システインプロテアーゼは多様な生物に存在する。特に、システインプロテアーゼは、パパイヤ(カリカ・パパイヤ及びヴァスコンセレア・クンディアンマルセンサス(Vasconcellea cundianmarcensus))、パイナップル(アナナス・コモサス(Ananas comosus))、イチジク(フィカス・カリカ(Ficus carica))、及びキウイフルーツ(オニマタタビ(Actinidia chinensis))を含めた果実によく見出される。1つの実施形態において、システインプロテアーゼは果実に由来する。ゆえに、システインプロテアーゼは、パパイン(EC 3.4.22.2)、キモパパイン(EC 3.4.22.6)、ブロメライン(茎ブロメライン-EC 3.4.22.32及び果実ブロメライン-EC 3.4.22.33)、フィカイン(EC 3.4.22.3)、及びアクチニダイン(EC 3.4.22.14)を含む。
【0053】
「活性システインプロテアーゼ」という用語は、1種又は1種を上回る活性システインプロテアーゼを指すと理解されるべきである。
【0054】
カリカ・パパイヤに由来する(抽出による又は組み換えで産生される)1種又は複数の活性セリンプロテアーゼは、カリカ・パパイヤに由来する上で言及されるシステインプロテアーゼの1種又は複数等、1種又は複数の活性システインプロテアーゼを含有する混合物に存在することがある。下でさらに記載される本発明の方法は、1種のそのような混合物をもたらす。
【0055】
ゆえに、活性システインプロテアーゼの1つの供給源は、活性セリンプロテアーゼに対するものと同じ、すなわちカリカ・パパイヤ植物の果実であり得る。好ましくは、パパイヤは熟している。熟していないパパイヤ(パパインの現在の商業的供給源である)の代わりに供給源材料としての熟したパパイヤの1つの利点は、システインプロテアーゼを含む結果として生じる組成物が、パパインの典型的な商業的供給源よりもはるかに低いレベルのラテックスを有することである。ラテックスはアレルギー反応を引き起こし得る。
【0056】
活性システインプロテアーゼは、活性セリンプロテアーゼに関して上で記載されるように、典型的には実質的に単離された形態にある。実質的に単離された形態にあるということは、活性システインプロテアーゼが、カリカ・パパイヤ等、活性システインプロテアーゼの生物学的供給源材料から少なくとも部分的に精製されている、又は組み換えで産生されていることを意味する。1つの実施形態において、単離されたシステインプロテアーゼは、セルロース、リグニン等の不溶性植物材料を実質的に含んでいない。不溶性植物材料を実質的に含んでいないということは、典型的に、不溶性材料を除去して、溶液に可溶性活性プロテアーゼを残す1つ又は複数の精製ステップの結果としてのものであろう。
【0057】
セリンプロテアーゼ及びシステインプロテアーゼを取得するための方法
本発明の方法を使用して、熟したパパイヤ果実から本発明の少なくとも1種の活性セリンプロテアーゼを単離し得る。熟したパパイヤ果実は、典型的に、果実の外側のほとんどが黄色である。熟していないパパイヤ(その皮からラテックスを収穫してパパインを産生する)は緑色である。熟したパパイヤは、圧搾された際に硬くないはずであるが、わずかに圧痕を与え且つわずかな圧痕を保持するはずである。圧搾された際にパパイヤが非常に柔らかい場合には、パパイヤは熟し過ぎである。1つの実施形態において、パパイヤ果肉を、皮及び種子から分離する。別の実施形態において、皮及び種子を含めた果実全体を使用する。果肉等の果実を、次いで、機械的に引き裂いてパルプを形成する(例えば、滑らかなパルプが取得されるまでブレンダーにおいて)。
【0058】
結果として生じるパルプを、次いでアルカリで処理する。適切なアルカリは、NaOH等の強塩基及び炭酸水素ナトリウム等の弱塩基を含む。アルカリは、乾燥粉末として又は水溶液で添加され得る。1つの実施形態において、アルカリは炭酸水素ナトリウムであり、典型的に、少なくとも3%w/w、例えば少なくとも5%w/wの量で粉末として添加される。量は、典型的に、15%w/w未満、例えば12%w/w未満である。特定の実施形態において、添加される量は5~12%w/wである。
【0059】
1つの実施形態において、アルカリは11未満のpKaを有してもよい。一部の実施形態において、アルカリは、重炭酸塩若しくは炭酸塩、又はその組み合わせであってもよい。一部の実施形態において、アルカリは、水溶性アルカリ金属重炭酸塩若しくは水溶性アルカリ金属炭酸塩、又はその組み合わせであってもよい。一部の実施形態において、添加されるアルカリの量は、約1%w/w~約40%w/w、約1%w/w~約35%w/w、約1%w/w~約30%w/w、約1%w/w~約25%w/w、約1%w/w~約20%w/w、約1%w/w~約15%w/w、約1%w/w~約10%w/w、約2%w/w~約40%w/w、約2%w/w~約35%w/w、約2%w/w~約30%w/w、約2%w/w~約25%w/w、約2%w/w~約20%w/w、約2%w/w~約15%w/w、約2%w/w~約10%w/w、約3%w/w~約40%w/w、約3%w/w~約35%w/w、約3%w/w~約30%w/w、約3%w/w~約25%w/w、約3%w/w~約20%w/w、約3%w/w~約15%w/w、約3%w/w~約10%w/w、約4%w/w~約40%w/w、約4%w/w~約35%w/w、約4%w/w~約30%w/w、約4%w/w~約25%w/w、約4%w/w~約20%w/w、約4%w/w~約15%w/w、約4%w/w~約10%w/w、約5%w/w~約40%w/w、約5%w/w~約35%w/w、約5%w/w~約30%w/w、約5%w/w~約25%w/w、約5%w/w~約20%w/w、約5%w/w~約15%w/w、又は約5%w/w~約10%w/wであってもよい。1つの実施形態において、添加されるアルカリの量は、約1%w/w~約20%w/wであってもよい。好ましい実施形態において、添加されるアルカリの量は、約1%w/w~約15%w/wであってもよい。特に好ましい実施形態において、添加されるアルカリの量は、約4%w/w~約15%w/wであってもよい。
【0060】
1つの実施形態において、アルカリは、アルカリがパルプと反応した後の組成物の最終pHが、少なくとも7.5、例えばpH7.5~pH11.5であるような量で添加される。一部の実施形態において、組成物は、約7.0~約14.0、約7.0~約13.5、約7.0~約13.0、約7.0~約12.5、約7.0~約12.0、約7.0~約11.5、約7.0~約11.0、約7.0~約10.5、約7.0~約10.0、約7.0~約9.5、約7.0~約9.0、約7.0~約8.5、約7.0~約8.0、約7.0~約7.5、約7.1~約14.0、約7.1~約13.5、約7.1~約13.0、約7.1~約12.5、約7.1~約12.0、約7.1~約11.5、約7.1~約11.0、約7.1~約10.5、約7.1~約10.0、約7.1~約9.5、約7.1~約9.0、約7.1~約8.5、約7.1~約8.0、約7.1~約7.5、約7.2~約14.0、約7.2~約13.5、約7.2~約13.0、約7.2~約12.5、約7.2~約12.0、約7.2~約11.5、約7.2~約11.0、約7.2~約10.5、約7.2~約10.0、約7.2~約9.5、約7.2~約9.0、約7.2~約8.5、約7.2~約8.0、約7.2~約7.5、約7.3~約14.0、約7.3~約13.5、約7.3~約13.0、約7.3~約12.5、約7.3~約12.0、約7.3~約11.5、約7.3~約11.0、約7.3~約10.5、約7.3~約10.0、約7.3~約9.5、約7.3~約9.0、約7.3~約8.5、約7.3~約8.0、約7.3~約7.5、約7.4~約14.0、約7.4~約13.5、約7.4~約13.0、約7.4~約12.5、約7.4~約12.0、約7.4~約11.5、約7.4~約11.0、約7.4~約10.5、約7.4~約10.0、約7.4~約9.5、約7.4~約9.0、約7.4~約8.5、約7.4~約8.0、約7.4~約7.5、約7.5~約14.0、約7.5~約13.5、約7.5~約13.0、約7.5~約12.5、約7.5~約12.0、約7.5~約11.5、約7.5~約11.0、約7.5~約10.5、約7.5~約10.0、約7.5~約9.5、約7.5~約9.0、約7.5~約8.5、又は約7.5~約8.0の域にある最終pHを有してもよい。特に好ましい実施形態において、組成物は、約7.5~約9.5の域にある最終pHを有してもよい。
【0061】
反応は、好ましくはパルプをいかなる加熱ステップにも供することなく、30℃又はそれ未満の温度でパルプを用いて実施される。それゆえ、反応は、例えば、標準的な室温及び圧力等、室温で実施されてもよい。反応は、約4℃等、より低い温度でも行われ得る。したがって、一部の実施形態において、反応は、約4℃~約25℃、又は約4℃~約22℃、又は約4℃~約20℃の域で実施される。
【0062】
アルカリがパルプと反応する十分な時間を有したら、処理されたパルプを次いで分離ステップに供して、不溶性植物材料を除去する(炭酸水素ナトリウムの場合、処理されたパルプがもはや気泡を発しなくなったら、分離ステップが実施され得る)。例えば、処理されたパルプを、遠心分離及び/又は濾過し得る。遠心分離は、例えば約6000~18000gで実施され得る。1つの実施形態において、処理されたパルプを遠心分離し、得られた上清を、次いで0.22μmフィルターを通して濾過する。
【0063】
得られた組成物を1つ又は複数の精製ステップに供して、本発明のプロテアーゼを濃縮し及び/又は他の細胞構成要素からさらに分離し得る。適切な技法は、(i)実施例に記載される、例えばSephadex G-100を使用して、分子量に基づいてタンパク質を特異的に分離するゲル濾過(サイズ排除)クロマトグラフィー;(ii)イオン交換クロマトグラフィー;(iii)透析;(iv)酢酸アンモニウム沈殿;及び/又は(v)凍結乾燥、を含む。クロマトグラフィーから得られる組成物/画分を試験して、例えば実施例に記載されるアッセイ(L-BapNA、場合により、プロテアーゼ活性がセリンプロテアーゼ又はシステインプロテアーゼ活性に起因することを判定するために、アッセイの間に添加されるセリンプロテアーゼ阻害剤又はシステインプロテアーゼ阻害剤とともに用いる)を使用して、プロテアーゼ活性の継続的存在を確認し得る。本発明の少なくとも1種のセリンプロテアーゼの公知の分子量を使用しても、例えばSDS-PAGEによって、少なくとも1種のセリンプロテアーゼの存在及び量を確認し得る。
【0064】
精製プロセスを好都合に使用して、医薬製品又は美容製品への組成物の製剤化に適切なレベルにpH及び/又は塩濃度を調整することもできる。
【0065】
別の実施形態において、方法は、アルカリの添加後に混合物を叩くステップをさらに含んでもよい。さらなる実施形態において、方法は、混合物を濾過して濾液を取得するステップをさらに含んでもよい。さらなる実施形態において、方法は、混合物を濾過して残留物を取得するステップをさらに含んでもよい。さらなる実施形態において、方法は、組成物を凍結し且つ融解するステップをさらに含んでもよい。取得された混合物は、濾過の前に凍結され得且つ融解されてもよい。
【0066】
最終組成物は、好ましくは不溶性植物材料を実質的に含んでいない、例えば約2%、1%、0.5%、又は0.1%w/w未満の不溶性材料を含有する。1つの実施形態において、総タンパク質についてのプロテアーゼの重量パーセンテージは、約0.01%~5%の域にある。最終組成物は、約1~100IU/mlのセリンプロテアーゼ活性を含んでもよい。一部の実施形態において、最終組成物は、約1~約10IU/ml、約1~約20IU/ml、約1~約30IU/ml、約1~約40IU/ml、約1~約50IU/ml、約1~約60IU/ml、約1~約70IU/ml、約1~約80IU/ml、約1~約90IU/ml、約10~約100IU/ml、約20~約100IU/ml、約30~約100IU/ml、約40~約100IU/ml、約50~約100IU/ml、約60~約100IU/ml、約70~約100IU/ml、約80~約100IU/ml、約90~約100IU/ml、約1~約90IU/ml、約10~約90IU/ml、約20~約90IU/ml、約30~約90IU/ml、約40~約90IU/ml、約50~約90IU/ml、約60~約90IU/ml、約70~約90IU/ml、約80~約90IU/ml、約1~約80IU/ml、約10~約80IU/ml、約20~約80IU/ml、約30~約80IU/ml、約40~約80IU/ml、約50~約80IU/ml、約60~約80IU/ml、約70~約80IU/ml、約1~約70IU/ml、約10~約70IU/ml、約20~約70IU/ml、約30~約70IU/ml、約40~約70IU/ml、約50~約70IU/ml、約60~約70IU/ml、約1~約60IU/ml、約10~約60IU/ml、約20~約60IU/ml、約30~約60IU/ml、約40~約60IU/ml、約50~約60IU/ml、約1~約50IU/ml、約10~約50IU/ml、約20~約50IU/ml、約30~約50IU/ml、約40~約50IU/ml、約1~約40IU/ml、約10~約40IU/ml、約20~約40IU/ml、約30~約40IU/ml、約1~約30IU/ml、約10~約30IU/ml、約20~約30IU/ml、約1~約20IU/ml、又は約10~約20IU/mlのセリンプロテアーゼ活性を含んでもよい。
【0067】
医薬組成物の製剤化
カリカ・パパイヤに由来する又はそれから導き出せるプロテアーゼ等、本発明の少なくとも1種のセリンプロテアーゼ、及び任意選択でシステインプロテアーゼを含む組成物と、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とを組み合わせて医薬組成物を形成し得る。本明細書において使用するとき、本発明の医薬組成物は、典型的に水を含有するであろうが、「薬学的に許容できる担体又は希釈剤」という用語は水を除外する。
【0068】
化粧品組成物に関する以下の節に記載される担体及び希釈剤は、典型的に、医薬組成物にも使用され得る。そのような組成物は、例えば、クリーム;ローション;セラム;軟膏;又はゲルの形態にあり得る。組成物は、創傷用包帯、例えばガーゼパッド等の固体形態にも適用され得る/含浸され得る。
【0069】
化粧品組成物の製剤化
カリカ・パパイヤに由来する又はそれから導き出せるプロテアーゼ等、本発明の少なくとも1種のセリンプロテアーゼを含み、及び任意選択でシステインプロテアーゼも含む組成物と、化粧品として許容できる担体又は希釈剤とを組み合わせて化粧品組成物も形成し得る。本明細書において使用するとき、本発明の化粧品組成物は、典型的に水を含有するであろうが、「化粧品として許容できる担体又は希釈剤」という用語は水を除外する。
【0070】
本発明に従った化粧品組成物は、そのような製剤化に対して従来的に公知のすべての活性材料及び適当な構成要素を適切に含み得る。そのような構成要素は、例えば、ゲル化剤、アニオン性ポリマー、増粘剤、界面活性剤、水和剤、皮膚軟化剤、キレート剤、抗酸化物質、防腐剤、緩衝化合物、香料、充填剤、着色料、揮発性物質又は非揮発性物質、変性又は非変性シリコーン、及び還元剤を含む。種々の構成要素の相対的比率は、適切には、従来的な美容製剤において使用されるものである。当業者であれば、任意選択で存在する材料を当然ながら選択し、望む酵素活性と関連した有利な特性が著しく改変されない又は取り除かれないような手段で、本発明に従った組成物にこれらの材料を組み入れるであろうことが想定される。ある特定の構成要素は、1つを上回る基準を満たすことができることがさらに想定され、例えばグリセリンは、溶媒及び保湿剤の両方として作用することが公知である。
【0071】
上で触れられるように、多様な構成要素が本発明の組成物に存在してもよく;これらの構成要素の真っ先に挙げられるものは、おそらく溶媒としての水である。水の量は、組成物についての約25重量%~約90重量%等の約1重量%~約95重量%に及んでもよい。他の適切な溶媒は、グリセリン及びベンジルアルコールを含む。
【0072】
本発明の化粧品組成物は、例えば組成物がローション、クリーム、ゲル、又はセラムの形態にある場合、1種又は複数の乳化剤を含んでもよい。本発明において使用され得る適切な乳化剤は、例えば1種若しくは複数のアルコキシル化脂肪アルコール、C14-22アルコール、アルキルポリグリコシド、C14-20アルキルグルコシド、鹸化剤、アルキルサルフェート、モノアルキル及びジアルキルホスフェート、アルキルスルホネート、アシルイセチオネート(isothionate)、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ソルビタン、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリル、又はその任意の組み合わせを含む。
【0073】
本発明のある特定の水中油型エマルジョンベース組成物は、エマルジョンを安定させる1種又は複数の安定剤も含んでもよい。適切な安定剤は、例えばアルコール、アルコキシル化アルコール、脂肪アルコール、ステアリン酸グリセリル等のグリセリルエステル、ゴム、石鹸、合成ポリマー、ワックス、又はその任意の組み合わせを含む。特に適切なエマルジョン安定剤は、ステアリルアルコール又はステアリン酸グリセリルを含む。
【0074】
本発明の組成物は、皮膚を柔らかくし且つ滑らかにする1種又は複数の皮膚軟化剤をさらに含んでもよい。適切な皮膚軟化剤は、例えば植物油、ヒマシ油、ヤシ油、及びココアバター、シアバター等の1種若しくは複数の脂肪及び油(水素化又は非水素化)、並びにクエン酸トリカプリル(tricapryl citrate)及びイソノナン酸イソノニル(isononyl isonanoate)等のエステル、又はその任意の組み合わせを含む。
【0075】
本発明の組成物は、1種又は複数の保湿剤を含んでもよい。保湿剤とは、水分を吸収する又は保持する構成要素である。本組成物において使用され得る適切な保湿剤は、例えば尿素、ピログルタミン酸、アミノ酸(例えば、グルタミン酸)、吸湿特性を有するポリオール若しくは他の化合物、又はその任意の組み合わせを含む。典型的に、保湿剤は、ソルビトール等のポリオールである。セラムの形態にある本発明の組成物において、存在する主な保湿剤は、メチル-グルセス-20及びプロピレングリコールを含む。
【0076】
本発明の組成物における使用のための適切な防腐剤は、例えばフェノキシエタノール等の1種若しくは複数のアルカノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、EDTA脂肪酸コンジュゲート、イソチアゾリノン、メチルパラベン及びプロピルパラベン等のパラベン、プロピレングリコール、ソルベート、ジアゾリジニル尿素及びイミダゾリジニル尿素等の尿素誘導体、第四級アンモニウム塩、又はその任意の組み合わせを含む。
【0077】
本発明の組成物に含めるための適切なキレート剤としては、例えばEDTA誘導体、又はその任意の組み合わせを挙げ得る。
【0078】
組成物は、組成物のpHを調整し且つ維持する働きをする1種又は複数の緩衝化合物を含んでもよい。適切な緩衝剤は、例えば1種若しくは複数のアジピン酸、グリシン、クエン酸、水酸化カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、トリエタノールアミン、又はその任意の組み合わせを含む。
【0079】
存在する場合、緩衝剤は、組成物の通常の貯蔵寿命及び使用の期間にわたって組成物における安定なpHを確保するのに適切なレベルで存在するべきである。
【0080】
化粧品組成物は、1種又は複数の界面活性剤も含んでもよい。界面活性剤は、石鹸又は洗顔料等、皮膚洗浄の目的のためのものである本発明の組成物において特に重要である。適切な界面活性剤としては、例えばアニオン性、非イオン性、カチオン性、両性、又はその任意の組み合わせを挙げ得る。好ましくは、1種又は複数の界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。適切な非イオン性界面活性剤としては、例えば1種若しくは複数のアルコキシル化アルコール、エトキシ化アルコール、プロポキシ化(propoxylated)アルコール、内部分散した(inter-dispersed)エトキシ化-プロポキシ化アルコール、共重合体、脂肪酸、アルキルフェノール、ポリグリコシド、ポリグルコシド、n-アルキルピロリドン、ブロック共重合体、又はその任意の組み合わせを挙げ得る。
【0081】
典型的に、本発明の化粧品組成物は、クリーム;ローション;セラム;洗顔料;シャンプー;泡;皮膚洗浄剤;皮膚トニック;軟膏;又はゲルの形態にある。しかしながら、当業者であれば、表皮に本発明の活性酵素を投与するのに適切な任意の組成物が使用され得ることを解するであろう。
【0082】
本発明の組成物は、約0.1IU/ml~約100IU/mlの総セリンプロテアーゼ活性が服用ごとに皮膚に適用されるのを可能にする十分なタンパク質分解活性を含有するべきであり、服用は、約2ml~約10mlの量の製品であることが想定される。一部の実施形態において、本発明の組成物は、約1~約10IU/ml、約1~約20IU/ml、約1~約30IU/ml、約1~約40IU/ml、約1~約50IU/ml、約1~約60IU/ml、約1~約70IU/ml、約1~約80IU/ml、約1~約90IU/ml、約10~約100IU/ml、約20~約100IU/ml、約30~約100IU/ml、約40~約100IU/ml、約50~約100IU/ml、約60~約100IU/ml、約70~約100IU/ml、約80~約100IU/ml、約90~約100IU/ml、約1~約90IU/ml、約10~約90IU/ml、約20~約90IU/ml、約30~約90IU/ml、約40~約90IU/ml、約50~約90IU/ml、約60~約90IU/ml、約70~約90IU/ml、約80~約90IU/ml、約1~約80IU/ml、約10~約80IU/ml、約20~約80IU/ml、約30~約80IU/ml、約40~約80IU/ml、約50~約80IU/ml、約60~約80IU/ml、約70~約80IU/ml、約1~約70IU/ml、約10~約70IU/ml、約20~約70IU/ml、約30~約70IU/ml、約40~約70IU/ml、約50~約70IU/ml、約60~約70IU/ml、約1~約60IU/ml、約10~約60IU/ml、約20~約60IU/ml、約30~約60IU/ml、約40~約60IU/ml、約50~約60IU/ml、約1~約50IU/ml、約10~約50IU/ml、約20~約50IU/ml、約30~約50IU/ml、約40~約50IU/ml、約1~約40IU/ml、約10~約40IU/ml、約20~約40IU/ml、約30~約40IU/ml、約1~約30IU/ml、約10~約30IU/ml、約20~約30IU/ml、約1~約20IU/ml、又は約10~約20IU/mlの総セリンプロテアーゼ活性が服用ごとに皮膚に適用されるのを可能にする十分なタンパク質分解活性を含有するべきであり、服用は、約2ml~約3ml、約2ml~約4ml、約2ml~約5ml、約2ml~約6ml、約2ml~約7ml、約2ml~約8ml、約2ml~約9ml、約3ml~約4ml、約3ml~約5ml、約3ml~約6ml、約3ml~約7ml、約3ml~約8ml、約3ml~約9ml、約3ml~約10ml、約4ml~約5ml、約4ml~約6ml、約4ml~約7ml、約4ml~約8ml、約4ml~約9ml、約4ml~約10ml、約5ml~約6ml、約5ml~約7ml、約5ml~約8ml、約5ml~約9ml、約5ml~約10ml、約6ml~約7ml、約6ml~約8ml、約6ml~約9ml、約6ml~約10ml、約7ml~約8ml、約7ml~約9ml、約7ml~約10ml、約8ml~約9ml、約8ml~約10ml、又は約9ml~約10mlの量の製品である。
【0083】
セリンプロテアーゼ活性は、セリンプロテアーゼ構成要素を判定するアッセイの間にセリンプロテアーゼ阻害剤の使用を伴う実施例に記載されるL-BApNAアッセイによって測定され得る。代替的に、英国特許第2,440,117号に記載されるベンゾイル-L-アルギニンエチルエステル(BAEE)アッセイが使用されてもよい。1つの実施形態において、セリンプロテアーゼ活性は、適用用量あたり約5単位~約60単位の域にある。
【0084】
本発明の組成物は、同様のレベルのシステインプロテアーゼ活性も含有してもよい。システインプロテアーゼ活性は、システインプロテアーゼ構成要素を判定するアッセイの間にシステインプロテアーゼ阻害剤の使用を伴う実施例に記載されるL-BApNAアッセイによって測定され得る。
【0085】
美容セラムの形態における、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)由来のセリンプロテアーゼと、システインプロテアーゼとの組み合わせは、40人の女性のボランティア群において、皮膚表面マイクロトポグラフィーの測定を使用して判定される、14~28日間の期間にわたって皮膚の滑らかさを向上させ、シワを減少させることがこれまでに示されている(英国特許第2,440,117号)。本発明の組成物は、個体の表皮を滑らかにすること及び再生を促進するための美容的方法等、様々な美容的適用においても使用され得る。
【0086】
組成物の使用
通常、本発明の化粧品組成物は、顔、手、及び首に適用されるが、しかしながら他の皮膚表面が美容的処理に供されてもよい。唯一の禁忌は、炎症を起こした皮膚又は目に近い皮膚等、皮膚の特に敏感なエリアは避けられるべきであることである。本発明の組成物は、通常、従来のようにユーザーによって手で皮膚表面に直接適用される。
【0087】
それゆえ、本発明の方法は、個体の表皮に本発明の化粧品組成物を適用するステップを含む。
【0088】
本発明の医薬組成物は、皮膚病状及び創傷を含めた疾患、障害、及び病状の治療に関連した多様な薬学的適用において使用され得る。本発明の組成物は、多様な美容的適用においても使用され得る。
【0089】
したがって、本発明は、本発明の組成物の局所的適用を含む、創傷のデブリードマンの方法、創傷を治療する方法における使用のための本発明の組成物、火傷に罹患している個体を治療する方法であって、方法は、本発明の調製物を個体の病変エリアに局所的に又は投与の他の経路によって投与するステップを含む方法、創傷を治療する方法における使用のための又は使用される場合の本発明の組成物、本発明の組成物を創傷に局所的に又は投与の他の経路によって投与するステップを含む、創傷治癒を増強する方法、本発明の化粧品組成物を皮膚に適用するステップを含む、皮膚をエクスフォリエーションする又は明るくする方法、皮膚をエクスフォリエーションする又は明るくするための本発明の化粧品組成物の使用、本発明の化粧品組成物を皮膚に適用するステップを含む、乾燥した、老化した、又は損傷を受けた皮膚を治療する方法、及び乾燥した、老化した、又は損傷を受けた皮膚を治療するための本発明の化粧品組成物の使用、をさらに提供する。
【0090】
本発明のプロテアーゼ組成物は、糖尿病性潰瘍、褥瘡、静脈性潰瘍、及び動脈性潰瘍等の慢性創傷を含めた創傷、並びに湿疹、乾癬、ニキビ、酒さ、魚鱗癬、白斑、蕁麻疹、脂漏性皮膚炎を含むがそれらに限定されない他の皮膚病状を含めた、多様な皮膚病状を予防する、治療する、低下させる、又は改善するために特に使用されることができる。
【0091】
1つの好ましい実施形態において、医薬組成物は、創傷をデブリードするために使用され得る。そのような創傷は、典型的に壊死組織を含有し、糖尿病性潰瘍、褥瘡、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍等を含む。ゆえに、そのような創傷は慢性創傷であってもよい。使用において、組成物(又は、組成物を含浸させた包帯等)は病変エリアに適用される。適用は、典型的に、1日に少なくとも1回、例えば1日2回行われるであろう。組成物の量及び適用の頻度は、医師によって決定され得る。
【0092】
本発明の組成物は、治療的に又は美容的に投与されてもよい。そのような適用において、組成物は、病状及び任意の合併症を治癒する又は少なくとも部分的に食い止めるのに十分な量で、病状にすでに罹患している対象に投与されてもよい。組成物の分量は、患者を有効に治療するのに十分であるべきである。
【0093】
組成物は、リポソームの形態でも投与されてもよい。リポソームは、リン脂質又は他の脂質物質に由来することができ、水性媒体に分散した単層又は多層の水和液晶によって形成されることができる。リポソームを形成し得る任意の非毒性の生理学的に許容でき且つ代謝可能な脂質が使用されてもよい。リポソーム形態にある組成物は、安定化剤、防腐剤、及び賦形剤を含有してもよい。好ましい脂質としては、天然でも合成でも、リン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)が挙げられる。リポソームを産生するための方法は当技術分野において公知であり、この方法に関して、具体的な参照が、Prescott編、Methods in Cell Biology、XIV巻、Academic Press、New York、N.Y.(1976)、33ページ、以下参照に対してなされ、文献の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0094】
本発明の組成物は、対象の皮膚病状を予防する、治療する、低下させる、又は改善するための医薬の製造において使用されてもよい。
【0095】
本発明の組成物は、対象の皮膚病状を予防する、治療する、低下させる、又は改善するための化粧品の製造においても使用されてもよい。
【0096】
投薬量
任意の特定の患者に対する「治療有効」用量レベルは、当技術分野において周知の他の関連因子とともに、治療されている病状及び病状の重症度、採用された組成物の活性、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食生活、投与の時間、投与の経路、治療の持続期間、並びに治療と組み合わせて又は同時に使用される任意の薬物を含めた多様な因子に依存するであろう。それゆえ、当業者であれば、ルーチン的実験によって、適用可能な病状を治療するために要されるであろう組成物の有効な非毒性の量を判定し得るであろう。
【0097】
さらに、組成物の個々の投薬の最適な分量及び間隔は、治療されている病状の性質及び程度、投与の形態、経路、及び部位、並びに治療されている特定の個体の性質によって判定されるであろうことは当業者に明白であろう。また、そのような最適な条件は、従来的技法によって判定され得る。
【0098】
既定の日数の間の1日あたり与えられる組成物の服用の回数等、治療の最適なコースは、治療判定試験の従来的コースを使用して当業者によって突き止められ得ることも当業者に明白であろう。
【0099】
投与の経路
本発明の組成物は標準的経路によって投与され得る。概して、組成物は局所的経路によって投与されてもよい。典型的に、本発明の組成物は、個体の病変エリアに局所的に投与される。
【0100】
他の実施形態において、組成物は、直腸、舌下、若しくは唇下等の他の経腸/腸内経路によって、又は硬膜外、脳内、若しくは脳室内経路を通じて等の中枢神経系を介して投与されてもよい。投与の他の位置としては、皮膚上、経皮、皮内、経鼻、動脈内、心臓内、骨内(intraosseus)、髄腔内、腹腔内、膀胱内、硝子体内、陰茎海綿体内、膣内、又は子宮内経路を介したものを挙げ得る。
【0101】
療法のタイミング
典型的に、治療的適用において、治療は、疾患状態の持続期間に対するものであろう。
【0102】
当業者であれば、本明細書に開示される組成物は、診断時に又はその後に続いて、例えば、そのような治療に対する現在利用可能な療法を補完するもの(compliment)としての経過観察治療又はコンソリデーション療法として、単剤として又は本明細書に開示される方法との組み合わせ療法手法の一部として投与されてもよいことを解するであろう。本明細書に開示される組成物は、そのような疾患を遺伝的に又は環境的に発症しやすい対象に対する予防的療法としても使用されてもよい。
【0103】
組成物は、病状の向上が見られるまで等、必要とされる限りの間定期的に投与されてもよい。それゆえ、組成物は、1時間に1回、1日に複数回、毎日、1週間に複数回、1週間に1回、1カ月に1回、又は適当であると考えられるどんな頻度でも投与されてもよい。
【0104】
キット
本発明のキットは、本発明の方法の採用及び使用を容易にする。典型的に、本発明の方法又は使用を行うためのキットは、方法を行うために必要な試薬及び手段のすべてを含有する。例えば、1つの実施形態において、キットは、本発明の組成物、及び任意選択で、臨床現場での方法のためのデバイス等、組成物を投与するための手段を含んでもよい。
【0105】
典型的に、本明細書に記載されるキットは、1つ又は複数の容器も含むであろう。本発明の文脈において、区分化されたキットは、組成物が別個の容器に含有されている任意のキットを含み、小さなガラス容器、プラスチック容器、又はプラスチック若しくは紙の細長い切れを含んでもよい。そのような容器は、組成物の交差夾雑を回避しながらの、一方の区分からもう一方の区分への組成物の効率的な移動、及び一方の区分からもう一方への定量的な形での各容器の作用物質又は溶液の添加を可能にすることができる。
【0106】
典型的に、本発明のキットは、適当な方法及び使用を実施するために、キットを使用するための使用説明書も含むであろう。
【0107】
本発明の方法、使用、組成物、及びキットは、ヒトを含めた、例えば非ヒト霊長類、馬、牛、羊、山羊、兎、鳥類、猫、及び犬の種を含めた、任意の動物に等しく適用可能である。したがって、異なる種への適用に関して、本発明の単一のキットが適用可能であることがある、又は代替的に、例えば各個々の種に特異的な組成物を含有する異なるキットが要されることがある。
【0108】
当業者であれば、本明細書に開示される種々の特質を組み合わせて、本発明の範囲内にある特質の組み合わせを形成することができることを理解し且つ解するであろう。
【0109】
本発明は、例示的であり且つ非限定的である以下の実施例をさらに参照して、ここで記載されるであろう。実施例は、以下の図を参照する。
【実施例】
【0110】
OPAL A及びOPAL Bの調製
OPAL A濾液の製造プロセスを滅菌条件において実施した。カリカ・パパイヤ植物の熟した果実の末端を切って整え、皮を剥いた。果実の果肉を4等分し、次いで種子を切除した。パパイヤ片を、滑らかなパルプが取得されるまでブレンダー中で混合した。パルプを、80℃に設定された水槽の内側にあるビーカーに置き、パルプの温度が55℃であるまで(ガラス温度計を使用して測定された)継続的に撹拌した。10重量%の炭酸水素ナトリウムをビーカーに添加した。次いで、ビーカーを水槽に置き、55℃に設定し、5分間ゆっくりと撹拌した。炭酸水素ナトリウムを含有するパルプを12000×gで30分間遠心分離した後、上清を収集し、0.22μmフィルター(FDR-050-071N-Fisher Scientific)を使用して濾過することによって、滅菌ユニバーサルチューブに移した。加熱ステップを省略するという点において製造プロセスにおける1つのステップ変化を有して、OPAL B濾液を調製した。
【0111】
Sephadex G-100 Superfineを使用したゲル濾過クロマトグラフィー
ゲル濾過クロマトグラフィーを使用して、分子量に基づいてタンパク質を特異的に分離した。Sephadex G-100(G10050-Sigma)(4kDa~150kDa間の分離)を有する14mLの長さのクロマトグラフィーカラム(C3919-1EA-sigma Aldrich)を詰め、0.15M NaClを有するpH8の100mM Tris-HClで一晩洗浄した。1mLの要されるサンプルをカラムに別個に通して、分子量に基づいてタンパク質を分離した。要される数の0.5mL画分を収集し、A280を測定した。次いで、50μLの各画分を96ウェルプレートに置き、50μLの1.5mM L-BApNAバッファー(10mM Tris-HCl pH8.5バッファーで作製された)を添加した。次いで、A410におけるL-BApNA活性を、Synergy HTマイクロプレートリーダー(カタログ12926527、Bio-Tek Instruments、Thermo Fisher Scientific、UK)を使用して、即時及びその後2時間後の両方に測定した。値の差をプロットし、より高いL-BApNA活性を有する画分をSDS PAGEゲルを通じてランし、次いでゲルをクマシー又は銀染色を使用して染色した。
【0112】
L-BApNA(N-ベンゾイル-L-アルギニン4-ニトロアニリド塩酸塩)アッセイ
1.5mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に63mgのL-BApNAを溶解し、次いで水で100mlにすることによって、L-BApNA(B-3133 sigma)の1.5mMストック溶液を調製した。アルギニンとp-ニトロアニリン部分との間の結合におけるL-BApNAの加水分解は、発色団p-ニトロアニリンを放出し、p-ニトロアニリンは国際単位(IU)で410nmの吸光度にて分光法によって検出され得る。IUは、過剰な基質条件下で0.01単位/分の吸光度の増加を引き起こす酵素の量として定義される(ゼロ次反応速度論(zero order kinetics))。固体の特異的活性はIU/mgで表現され、一方で液体製剤の場合、活性はIU/mLで表現される。
【0113】
実験を通じてゼロ次反応速度論を維持する最適な基質濃度を判定するために、ある域の基質濃度を用いて、一連の滴定ランを行った。このようにして見出された最小濃度は0.2mM又は1:6希釈のストック1.5mM溶液である。表1は、すべての速度論的実験に使用された試薬用量を示している。リン酸塩バッファーは他のバッファーと比較して最も高い酵素活性読み出しを与えるため、pH6のリン酸塩バッファーをL-BApNAアッセイにおいて使用した。
【表1】
【0114】
基質純度を検証するために、アルカリによって触媒される制御された全加水分解を、以下の条件下で行った。
【表2】
ゆえに、
結果は、メーカーによって明記される基質の99%純度を裏付けた。
【0115】
阻害剤
E-64(IUPAC名:(1S,2S)-2-(((S)-1-((4-グアニジノブチル)アミノ)-4-メチル-1-オキソペンタン-2-イル)カルバモイル)シクロプロパンカルボン酸)は、システインプロテアーゼの強く且つ不可逆的な特異的阻害剤である。E-64のtrans-エポキシスクシニル基(活性部分)は、システインプロテアーゼの活性チオール基に不可逆的に結合し、それによってシステインプロテアーゼを阻害する。E-64は、非プロテアーゼ酵素と反応せず、セリンプロテアーゼを阻害しない。
【0116】
2,2’-ジピリジルジスルフィド(2DPS)を、パパイン、ブロメライン、及びフィシンを含めたシステインプロテアーゼに対するチオール特異的可逆的阻害剤として使用する。
【0117】
プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC)を、表3に示されるように製剤化した。
【表3】
【0118】
重ね合わせザイモグラフィー
一部の改変を有して、Vinokurovら(2005)における手順に従って、重ね合わせザイモグラフィーを行った(
図1)。簡潔には、ニトロセルロース膜を、水中1.2mg/mL L-BApNA溶液に浸した。その後、膜を放置して5分間空気乾燥させ、次いで、サンプルをランした後のネイティブPAGEゲルの上部に重ね、膜を、サンプルそれぞれのランニングバッファーにわずかに浸した。膜を、10mM DTT又は25mMシステインのいずれかを有する35M β-アラニン、0.14M酢酸、pH4.3に浸す2つの付加的な実験を行った。次いで、すべてのザイモグラフィーを、37℃で30~60分間密閉チャンバーにおいてインキュベートした。膜を取り出し、再度放置して5分間乾燥させ、p-ニトロアニリンをジアゾ化によって可視化した。
【0119】
Hosseininavehら(2009)に詳述されるプロトコールに従うことによって、ジアゾ化を実施した。簡潔には、膜を、亜硝酸ナトリウム溶液(1M HCl中1mg/mL)に5分間、次いでスルファミン酸アンモニウム溶液(1M HCl中5mg/mL)、及び最後に、任意のジアゾ化p-ニトロアニリンが紫色のスメア/バンドとしてはっきりと目に見えるようになるまで約30秒間~1分間、NNED溶液(N-(1-ナフチル)-エチレンジアミン二塩酸塩)(48%v/vエタノール/水中0.5mg/mL)に逐次的に浸した。
【0120】
質量分析
コロイドクマシー染色で同定されたタンパク質バンドを、ケンブリッジ大学のPNAC Facility、Department of BiochemistryにてMALDI-Massフィンガープリンティングによって分析した。ゲルバンドを切り出し、以下の処理-ステップあたり30分間、20℃、200μLの100mM炭酸水素アンモニウム/50%アセトニトリルにおいて:1)5mM Tris(2-カルボキシエチル)ホスフィンを用いた還元;2)ヨードアセトアミドの添加によるアルキル化(25mM最終濃度);並びに3)液体の除去及びその後の洗浄、に供した。
【0121】
洗浄したら、ゲル片を真空にて10分間乾燥させ、次いで5μg/mL修飾トリプシン(Promega)を含有する25μlの100mM炭酸水素アンモニウムを添加した。消化を32℃で17時間実施した。ペプチドを回収し、μC18 ZipTip(Millipore)を使用して脱塩し、50%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸中1~2μLのアルファ-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸マトリックス(Sigma)を使用してmaldiターゲットプレートに溶出した。ペプチド質量を、Bruker ultrafleXtreme Maldi質量分析計をリフレクトロン様態で使用して判定し、ms/msフラグメント化をLIFT様態で実施した(peroformed)。FlexAnalysis、BioTools、及びProteinScapeソフトウェア(Bruker)を用いて、データ分析に着手した。組み合わせた質量フィンガープリントデータのデータベース検索を、Mascot(Matrix Science)を使用して実施した。要される場合、Protein Prospectorにより、付加的な操縦を実施した。
デブリードアッセイ
AWEデブリードアッセイとは、Health Point(Shi、Ermisら、2009)によって開発された創傷壊死組織タンパク質分解活性のインビトロ代理である。AWEデブリードアッセイは、インビボ動物データに十分に匹敵することが示されている。AWE基質は、それぞれが異なるフルオロフォアでタグ付けされた3種の創傷関連細胞外マトリックスタンパク質(コラーゲン、エラスチン、及びフィブリン)のペレットからなる。このマトリックスの段階的分解は、フランツ型拡散セル設定における蛍光強度の漸進的増加によって測定され得る(
図2)。実験に対する最終読み出しを、24時間の時点で取得する。
【0122】
デブリードアッセイのための材料は、コラーゲン-フルオレセインイソチオシアネート(FITC)(CF308)、Elastin products company、USA製のエラスチン-ローダミン(R144)、Merck chemicals limited製のトロンビン及びフィブリノゲン(605157、341573)、すべてSigma製の、100mM NaCl及び10mM CaCl2とともに50mM Trisを含有するTrisバッファー、磁気スターラーバー(Z328936)、L-システイン(W326305)、エラスチン-牛(E1625)、7-アミノ-4-メチルクマリン(A9891)、並びにパパイヤラテックス由来のパパイン(P3375)であった。
【0123】
フィブリン-クマリンの調製:10mg/mLの最終フィブリノゲン濃度(Trisバッファー中)を有して、クマリン溶液(Trisバッファー中0.02mg/mL)においてフィブリノゲンを混合することによって、フィブリノゲンを7-アミノ-4-メチルクマリンで標識した。混合物を、回転式振とうを用いて室温で1時間インキュベートした。フィブリノゲン-クマリン溶液にトロンビン溶液(2.5単位/mL)を添加し、2時間凝固させることによって、クマリン標識されたフィブリンを導き出した。
【0124】
形成された凝固物を水で3回洗浄し、蒸留水及びメタノール(1:1)において一晩静置させて、過剰な色素を除去した。次いで、凝固物を、透明の非粘着性濾紙を有するガラス容器に移し、3日間乾燥させた。乾燥したフィブリン-クマリンを、乳棒及び乳鉢を使用して微粉にすりつぶした。
【0125】
人工創傷痂皮(AWE)基質の調製
コラーゲン-FITC、エラスチン-ローダミン、及びフィブリン-クマリンを、表4において言及される組成に従って混合した。フィブリノゲンを除いて、すべての材料を50mLコニカル遠心分離チューブに計量した。組織分裂器(tearer)を使用して、10mL Trisバッファーにおいて材料を3~5分間ホモジナイズした。10mLの15mg/mLフィブリノゲン溶液を、別個のチューブにおいてTrisバッファーpH6.8中に調製した。2つの溶液を組み合わせ、組織分裂器を使用することによって約2分間徹底的に混合した。トロンビン溶液(50U/mL)を添加し、迅速に混合し、次いで溶液を、90mmの非反応性膜を含有するペトリディッシュに注ぎ、1時間凝固させた。次いで、凝固した基質を水で3回(それぞれ5分間)リンスしてトロンビンを除去した。洗浄後、ティッシュペーパーを使用することによって過剰な水を除去し、さらなる使用まで4℃で保管した。
【0126】
フランツ型拡散セルシステム
膜に依然として付着したAWE基質を用い、生検トレパン(biopsy punch)を使用して9mm径片の穴を開けた。9mm AWE基質を非反応性ニトロセルロース膜の上部に置き、2つのチャンバー間のフランツ型拡散セルに置き、2つのチャンバーのうちの下方(レセプターセル)を、1%(v/v)ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するTrisバッファーで満たした(
図2)。サンプルホルダーを上部に置き、アセンブリ全体をレセプターセルにねじ留めを用いて取り付け、35℃の水槽で取り囲んだ。次いで、サンプルホルダーの上方のチャンバーにサンプルをロードし、通気孔を開けたパラフィルムで覆った。実験を通して500rpmで磁気スターラーを使用して、溶液を混合した。ゼロ時点で及び最高24時間までの一定の間隔で、100μLの溶液をレセプターセルからサンプリングした。収集されたサンプルを、蛍光プレートリーダー(Synergy HT KC4 v3.4)を使用した即時の蛍光測定のために、96ウェルマイクロプレートにロードした。測定後、100μLのサンプルをレセプターセルに戻した。
【0127】
以下の方程式を適用して、基質における3種すべてのタンパク質構成要素の総累積消化を判定した。
CD
n=In×V
セル
式中、n=時間での時間、CD
n及びInは、累積消化パラメーター及び時間nにおける蛍光強度であり、V
セルはセルの体積(5.1mL)である。
【表4】
【0128】
実施例1-OPAL B濾液-OPAL A濾液のバリアント、及びOPAL B濾液のタンパク質分解活性
カリカ・パパイヤは、パパイヤ科(Caricaceae)の小さなファミリーに属し、カリカ・パパイヤの食用果実及びラテックスのために、熱帯及び亜熱帯において栽培される主たる果実の1つである。これらの実施例において使用された果実は、地元のUKを拠点とするスーパーマーケットにおいて購入された、ブラジル及びジャマイカから主に取得された熟したパパイヤ果実である。十分に特徴付けされ且つ集中的に研究されたシステインプロテアーゼのほとんどは、パパインファミリーのメンバーである。パパイン、キモパパインA及びB、キモパパインM、並びにカリカインはすべて、カリカ・パパイヤから抽出されているが、熟した果実からは特徴付けされたことがない。
【0129】
本発明者らは、質量分析の仕事をこれまでに行っており(Richard J.Lipscombe-西オーストラリア大学Proteomics International laboratory)、カリカ・パパイヤの熟した果実抽出物由来のOPAL A濾液が、システイン(チオール依存的)プロテアーゼを含有することを示した。これらのシステインプロテアーゼは、伝統的には、パパイヤラテックスから又はパパイヤの皮からのみ抽出される(Proteomics International、パーソナルコミュニケーション)。OPAL A濾液におけるシステインプロテアーゼを機能的に同定するために、分光光度アッセイを実施した。これらの実験は、OPAL A濾液による、発色基質L-BApNA(Nα-ベンゾイル-L-アルギニン4-ニトロアニリド塩酸塩)の触媒的加水分解をモニターすることを伴った。
【0130】
アルギニンとp-ニトロアニリン部分との間の結合における、プロテアーゼの存在下でのL-BApNAの加水分解は、発色団p-ニトロアニリンを放出し、次いでp-ニトロアニリンは410nmの波長で分光法によって検出され得る。L-BApNA活性判定の手順は、上の方法に記載される。採用された最適化条件下で、過剰な基質はゼロ次反応速度論をもたらし、ゼロ次反応速度論は直線として明白であり、直線の傾きは酵素活性に比例する。
【0131】
本発明者らは、OPAL Aが、システインプロテアーゼを特異的に阻害する阻害剤E-64の添加によって本質的に無効になるシステインプロテアーゼ活性を有することをこれまでに立証している(未発表データ)。それゆえ、本発明者らは、OPAL Aにおけるプロテアーゼ活性は、活性システインプロテアーゼの存在のみに本質的に起因するとこれまでに結論付けた。加熱処理ステップを省略することの効果を判定するために、OPAL A及びOPAL B濾液の両方におけるプロテアーゼ活性を、L-BApNAアッセイを使用して試験した。10分後、E-64阻害剤を添加した。
【0132】
OPAL Bは、OPAL Aと比較して、ほぼ8倍増加した触媒活性(経時的なA
410基質放出の直線的増加)を呈するように見えた(
図3)。興味深いことに、OPAL B濾液へのE-64の過剰な添加は、OPAL Aにおけるような、活性の完全な阻害をもたらさなかった。それゆえ、且つ理論によって拘束されることを望むことなく、基質を用いたA
410値の増加は、非チオール依存的(非システインプロテアーゼ)触媒に起因し得た。システインプロテアーゼ阻害剤E-64での処理が、プロテアーゼ活性を完全には無効にしなかったという事実は、
図4に示されるように、システイン及び非システインプロテアーゼの両方がOPAL B濾液に存在したことを示唆する。
【0133】
実施例2-酵素反応速度論による、OPAL B濾液におけるシステイン及びセリンプロテアーゼの同定
OPAL B濾液における非チオール依存的又は非システインプロテアーゼをより理解するために、すべての必須プロテアーゼ阻害剤を含有する(表3を参照されたい)プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC)(sigma P2714)を使用して、酵素アッセイを最初に行った。
図5に示されるように、OPAL B濾液に20μLのPICを添加することにより、プロテアーゼ活性の完全な阻害を達成した。
【0134】
これらのデータに基づき、本発明者らは、次に、OPAL Bの増強した活性に関与することがあるPICの各構成要素を個々に試験することによって、各活性阻害剤の効果を検討した。カクテルに存在するプロテアーゼ阻害剤の構成要素は表3に示されている。
【0135】
OPAL B濾液を用いてPICに存在する各阻害剤を試験した後、2種の阻害剤のみがタンパク質分解活性を中断させ得た。これら2種の阻害剤は、
図6に示されるように、それぞれシステインプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼ阻害剤であるE-64及びAEBSFであった。
【0136】
両阻害剤の組み合わせは、
図7に示されるように、酵素活性を完全に破棄した。このことは、OPAL B濾液における酵素活性がシステイン及びセリンプロテアーゼのみからなることを示唆する。
【0137】
実施例3-酵素反応速度論によって判定される、プロテアーゼを機能的に同定するためのザイモグラフィーアッセイ
OPAL B濾液は、多くのタンパク質の複雑な混合物であるように見える。それゆえ、分光光度アッセイによって検出されたプロテアーゼ活性を個々に可視化するために、本発明者らは、重ね合わせザイモグラフィーと呼ばれる技法を使用した。この技法では、タンパク質を、酵素活性を保つ標準的なネイティブPAGEゲルでまず分離する。基質溶液(1.2mg/mLのL-BApNA)を含有する膜を、次いでゲルの上に重ね合わせ、着色増強剤を使用して現像した。この技法は、活性プロテアーゼが膜で直接可視化されるのを可能にする。
【0138】
図8に示されるように、コロイドブルー染色されたネイティブPAGEゲルは、一方向性(陽極側)の相でのOPAL B濾液におけるバンドを明らかにした。ゲルからニトロセルロース膜へのタンパク質の移動、及び後続のザイモグラフィー分析は、酵素活性(2種の酵素活性を示す)の明確な増加を示した。
【0139】
本発明者らは、観察された2つのシグナル又はバンドが、それぞれシステイン及びセリンプロテアーゼであることを検証するために、
図8において取得された2つのザイモグラフィーバンドをさらに特徴付けした。ネイティブPAGEゲルの上部に膜を置く前に、ニトロセルロース膜に特異的阻害剤(システインプロテアーゼに対するE-64、及びセリンプロテアーゼに対するAEBSF)を含めることによって、方法を改変した。取得されたデータは、バンドが、実際にOPAL B濃縮濾液におけるシステインプロテアーゼ(複数可)及びセリンプロテアーゼ(複数可)であることをはっきりと明らかにした。
図9に示されるように、システインプロテアーゼ(複数可)は上方のバンドに相当し、セリンプロテアーゼ(複数可)は下方のバンドに相当する。
【0140】
実施例4-セリンプロテアーゼを同定するためのサイズ排除クロマトグラフィー
セリンプロテアーゼ(複数可)を精製するために、OPAL Bを濃縮し、4kDa~150kDaの域にあるタンパク質を分離するsephadex G-100カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。E-64で及び100mM L-アルギニンで前処理された(2時間インキュベートされた)透析されたOPAL Bを、14mL sephadex G-100カラムを通じてランさせた。24個の溶出画分を収集し、96ウェルプレートL-BApNAアッセイを実施した(データ示されず)。最も高いL-BApNA活性を含む画分をSDS PAGEゲルに選択し、次いでゲルを、
図10に示されるように銀染色した。存在量がL-BApNA活性と相関する、画分におけるバンドを選択し、LC/MS-MS分析によって分析した(つまり、80kDa、50kDa、及び30kDaのバンドにおいて第6画分に存在する強度のバンド)。これらのバンドは、サブチラーゼとして推定的に同定されていた、配列番号1に示されるカリカ・パパイヤ配列に合致した。
【0141】
この結果は、以下のように配列番号1内で4つのフラグメントを同定した、完全OPAL B濾液の分析と一貫している。
【0142】
実施例5-セリンプロテアーゼの活性形態を同定するための反応性プローブ
種々のバンドのうちのどれが、OPAL B濾液におけるサブチラーゼのタンパク質分解的に活性な形態に相当するのかを立証するために、本発明者らは、ビオチンに連結されたフルオロスルホネート基を介して活性セリンプロテアーゼを特異的に標識する反応性プローブを使用した。次いで、この反応性プローブは、アルカリホスファターゼ等のストレプトアビジンコンジュゲート酵素を使用して、ウェスタンブロッティング技法により普通のSDS PAGEゲルで可視化され得る。この技法を使用することにより、
図11に示されるように、およそ50kDaにおける、AEBSF処理によって阻害される活性セリンプロテアーゼバンドの可視化が可能となった。このバンドは、質量分析によりパパイヤサブチラーゼとして同定されたクロマトグラフィー実験からの観察されたバンドの1つに相当するものの、バンドの分子量は、全長タンパク質又はプロ酵素(それぞれ70及び85kDa)のいずれかの発表値と合致しない。理論によって拘束されることを望むことなく、本発明者らが、同じタンパク質を起源とするいくつかのバンドを観察したという事実は、種々のアイソフォームが存在することがあり、種々のアイソフォームのうちの50kDa形態のみがタンパク質分解的に活性であることを示唆する。
【0143】
全体的結論
本発明者らは、国際公開第2004/008887号において、熟したパパイヤ(カリカ・パパイヤ)の果肉由来のOPAL Aとして公知の組成物を産生するための方法をこれまでに記載した。この方法は、加熱ステップ、それに続く炭酸水素ナトリウムでの処理、及びその後の濾過ステップを伴う。OPAL Aについての本発明者らのこれまでの分析は、システインプロテアーゼ活性を同定した。OPAL Aは、広範な障害を治療することにおいて活性を示している。本発明者らは、OPAL Bを産生するために、加熱ステップを省略することによってOPAL Aプロセスを改変した。本発明者らは、OPAL Bが、システインプロテアーゼと関連しない付加的なプロテアーゼ活性を含有することを驚くべきことに且つ予想外に見出した。本発明者らは、この付加的なプロテアーゼ活性を、OPAL Aに存在しない少なくとも1種のセリンプロテアーゼの存在に起因するものとして特徴付けした。このタンパク質は、1種を上回る形態で存在するように見えるが、SDS-PAGEによって判定される50kDaの平均分子量を有するタンパク質のみがセリンプロテアーゼ活性を示した。LC-MS/MS分析は、該タンパク質を、サブチラーゼとして推定的に同定されたC.パパイヤ配列の配列(Othman及びNuraziyan、2010)と同一の配列を有するものとして示したが、このことは生化学的特徴付けによって確認されなかった。さらに、このサブチラーゼは、組み換えで発現する場合、本発明者らが目下同定している活性セリンプロテアーゼの50kDaの分子量と比較して、約70kDaの分子量を有する。
【0144】
したがって、本発明者らは、OPAL Bは、1種又は複数のタンパク質分解的に活性なセリンプロテアーゼ及び1種又は複数のタンパク質分解的に活性なシステインプロテアーゼの両方の混合物を含有し、一方で、カリカ・パパイヤにおいて認識されている現在までのところ唯一の公知の活性プロテアーゼはシステインプロテアーゼであることを示した。
【0145】
実施例6-インビトロでのOPAL A及びOPAL B濾液のデブリード効力の定量化
デブリードマンとは、根底にある生存組織を露出するための、創傷からの壊死(死んだ)組織及び外来物質の除去である。このプロセスは、創傷治癒を促進し且つ加速させる。本発明者らは、OPAL A濾液において同定されたシステインプロテアーゼが、人工創傷痂皮(AWE)デブリードアッセイを使用して測定されるデブリードマンにおいて活性であろうかどうかを検討した。
【0146】
AWEデブリードアッセイとは、Health Point(Shi、Ermisら、2009)によって開発された創傷壊死組織タンパク質分解活性のインビトロ代理である。AWEデブリードアッセイは、インビボ動物データに十分に匹敵することが示されており、それゆえ、OPAL A濾液製剤のデブリード効能を査定するために使用された。AWE基質は、それぞれが異なるフルオロフォアでタグ付けされた3種の創傷関連細胞外マトリックスタンパク質であるコラーゲン、エラスチン、及びフィブリンのペレットからなる。このマトリックスの段階的分解は、フランツ型拡散セル設定における蛍光強度の漸進的増加によって測定され得る。実験に対する最終読み出しを、24時間の時点で取得する。
【0147】
第1セットの実験において、天然OPAL A濾液(0.7mg/mLタンパク質等価)のタンパク質分解効能を、フランツ型セル拡散システムを使用して、パパイヤラテックス由来の対照粗パパイン(10mg/mL、Sigma)に対して比較した。
図12に示される結果は、コラーゲン及びフィブリンのOPAL A濾液サンプル消化が、ラテックスパパイン(10mg/mL)よりも一貫して優れているが、エラスチンに対しては弱いことをはっきりと示す。
【0148】
実施例7-デブリード効能を向上させるための、透析を使用したOPAL A濾液活性の濃縮
新しく調製されたOPAL A濾液のL-BApNA活性は、平均して0.60IU/mLである。新しいOPAL A濾液のタンパク質含有量はおよそ0.7mg/mLであり、およそ1IU/mgの特異的固体活性に相当する。およそ10IU/mgの純粋なラテックスパパインの活性と比較して、およそ1IU/mgは、OPAL固体の約9%のパパイン含有量に近い。顕著には、実施例6において実施されたAWEデブリードアッセイは、
図12に示されるように、OPAL Aの名目上のパパイン含有量から予想されるであろうよりも、OPAL Aの有意により高い活性を明らかにしている(0.6IU/mL対ラテックスパパインに対する30IU/mL)。
【0149】
OPAL Aの固体残留物含有量は、抽出物を凍結乾燥することにより測定され、0.216±0.005g/mLのバッチにわたって一貫した値をもたらす。それゆえ、OPAL A濾液固体の圧倒的多数は、天然には潜在的に非タンパク質分解性であることがはっきりしている。それゆえ、抽出物から固体を除去することによって、抽出物の特異的活性を増加させることが可能であることがある。このことを検討するために、本発明者らは、新しいOPAL A濾液を、12kDa及び25kDaのカットオフサイズを有する膜を使用した透析に供した。透析を4℃で24時間行い、透析後に、溶液の残留タンパク質分解活性をL-BApNAアッセイにより測定した。溶液のアリコートも、凍結乾燥させて固体含有量を測定した。処理は、小さな(20%)浸透圧体積増加を引き起こし、その増加を算出において考慮に入れた。
【0150】
表5における結果は、12及び25kDaのカットオフサイズを使用したいずれかの透析に対する、且つおよそ86%の固体低下と組み合わせた、活性のほぼ完全な保持を示している。
【表5】
この結果は、カリカ・パパイヤタンパク質分解酵素の一般に受け入れられているサイズ(23~30kDa)、及びOPAL A濾液が、透析されると除去される大量の低分子量糖類を含有するという事実と一貫している。固体含有量が12kDa~25kDaの透析によって有意に変化しないという事実は、これら2つの値の間の中間にあるサイズを有する分子の、組成物における非存在を示す。それゆえ、本発明者らは、12kDaのカットオフ透析膜をさらなる実験に使用した。
【0151】
OPAL A濾液対天然Opal Aのデブリード強度を、実施例6のとおりに測定した。
図13におけるデータは、透析されたOPAL Aが、フィブリン及びエラスチンを消化することにおいて天然OPAL Aよりも優れているが、コラーゲンに対しては劣ることを示している。
【0152】
要約すると、透析されたOPAL A濾液は、天然OPAL A濾液と比較して、タンパク質分解活性の完全な保持、しかし対照よりも86%少ない固体低下を示した。このことは、OPAL A濾液における固体の大多数が天然には非タンパク質分解性であり、透析により除去され得る低分子量糖類として存在することを立証する。透析されたOPAL A濾液は、ラテックスパパイン及び天然OPAL Aと比較して、フィブリン及びエラスチンの両方に対する増強したデブリード活性を有したが、天然OPAL Aと比較して、コラーゲンに対するわずかに少ない効果を有した。
【0153】
実施例8-OPAL Bを用いた、重度の褥瘡の管理に関するインビボ事例研究
この事例研究は、OPAL Bの局所的適用による、高齢患者における組織壊死を伴う重度の潰瘍の早急な治療を開示する。それゆえ、OPAL Bは、少なくとも組織再生性で且つ抗壊死/デブリード性の因子を伴う作用の多因子様態を通じて、重度の潰瘍の治癒において治療的有益性を提供するように見える。
【0154】
認知症を有する70代の寝たきり状態の老人ホーム患者は、重度の褥瘡を発症していた。潰瘍は、患者の腰背部の大部分にわたって横方向に広がり、著しい組織壊死を示した。病院に移されると、潰瘍を生じた創傷によってもたらされる過剰な滲出液を一掃しようとする試みで真空包帯(vacuum dressing)が適用された。偏菱形の皮弁を用いて潰瘍のサイズを低下させる付加的な外科的介入も試みられた。病院スタッフによる継続的な治療の努力にもかかわらず、創傷の重症度は持続した(
図14)。
【0155】
患者を治療する外科医の同意を得て、創傷のすぐ周りを取り囲む皮膚への30%希釈OPAL B水性クリームの毎日の適用と併せた、創傷表面への直接の新しい非希釈OPAL Bの毎日の適用を支持して、真空包帯治療及び他の外科的介入は延期された。
【0156】
Opal B治療の2~4日目までに、創傷はより綺麗で且つあまり炎症を起こしていないように見えた(
図15及び16)。いくらかの壊死組織は依然として観察されたものの、壊死組織は、創傷のより小さなエリアに局在するように見えた。16~19日目までに、創傷サイズの低下を伴うさらなる向上が観察された(
図17及び18)。安定すると、創傷を外科的にデブリードした。今まで極めて重度で且つ治療不可能な潰瘍であったものを治療することにおいてなされた、悪化/壊死及び進行の極めて早い食い止めは驚くべきものであり且つ顕著である。
【0157】
理論によって拘束されることを望むことなく、OPAL Bは、いくつかの作用の様態を有することがあると思われる:OPAL Bは、生存不能である組織に局在し、周辺虚血を逆転させ、それによって壊死組織の量を低下させるように見えた。OPAL Bが、潰瘍におけるスラフをデブリードし始めていたという証拠もある。
【0158】
上の個々の節において言及される本発明の様々な特質及び実施形態は、必要に応じて、他の節に準用される。その結果として、1つの節において指定される特質は、必要に応じて、他の節において指定される特質と組み合わされてもよい。
【0159】
上の明細書において触れられるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において開示され且つ主張される組成物及び/又は方法のすべては、本開示を踏まえて過度の実験なしで行われ得且つ実行され得る。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態の観点から記載されているものの、本発明の概念、精神、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物及び/又は方法に、並びに方法のステップにおいて又はステップの配列において変動が適用されてもよいことは当業者に明白であろう。
【0160】
実施例9-OPAL Bのプロテオームマッピング
UniProt緑色植物亜界(Viridplantae)データベースを検索するプロテインパイロット(Protein Pilot)(商標)を使用したOPAL Bのプロテオームマッピングにおいて、検出されたペプチドフラグメントは、下に太字で示されるものである。
【0161】
配列番号1(太字で示される、触媒三残基、Asn336、及び配列番号2~5のペプチド)
【0162】
アミノ酸1~25は推定シグナル配列であり、アミノ酸26~112は、切断されて成熟タンパク質を形成する推定プロ領域(putative pro region)である。
【0163】
参考文献
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリカ・パパイヤ(Carica papaya
)の熟した果実から抽出された1種又は複数の
タンパク質分解的に活性
であるセリンプロテアーゼを含む、組成物。
【請求項2】
カリカ・パパイヤ(Carica papaya)の熟した果実から抽出された1種又は複数の単離されたタンパク質分解的に活性であるセリンプロテアーゼを含む、組成物。
【請求項3】
カリカ・パパイヤ(Carica papaya
)の熟した果実から抽出された1種又は複数の
タンパク質分解的に活性
であるセリンプロテアーゼ及び1種又は複数の活性システインプロテアーゼとの混合物を含む、組成物。
【請求項4】
カリカ・パパイア(Carica papaya)の熟した果実から抽出された1種又はは複数の単離されたタンパク質分解的に活性であるセリンプロテアーゼ及び1種又は複数の活性システインプロテアーゼの混合物を含む、組成物。
【請求項5】
カリカ・パパイヤ(Carica papaya
)の熟した果実パルプを、加熱ステップに供することなく、アルカリで処理するステップ
と、前記アルカリ処理後、不溶性植物材料から可溶性プロテアーゼを分離するステップとを含む、
タンパク質分解的に活性
であるセリンプロテアーゼを含む組成物を調製するための方法。
【請求項6】
前記アルカリが弱アルカリである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記弱アルカリが11未満のpKaを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記弱アルカリが炭酸水素ナトリウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が
タンパク質分解的に活性
であるシステインプロテアーゼをさらに含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、前記プロテアーゼの濃度を増加させるためにさらに処理される、請求項5~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項5~
10のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な
タンパク質分解的に活性
であるセリンプロテアーゼを含む、組成物。
【請求項12】
請求項5~10のいずれか一項に記載の方法によって取得されるタンパク質分解的に活性であるセリンプロテアーゼを含む、組成物。
【請求項13】
タンパク質分解的に活性
であるカリカ・パパイヤ(Carica papaya)セリンプロテアーゼを、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とともに含
み、前記セリンプロテアーゼが、カリカ・パパイヤの熟した果実から抽出される、医薬組成物。
【請求項14】
単離されたタンパク質分解的に活性であるカリカ・パパイヤ(Carica papaya)セリンプロテアーゼを、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とともに含み、前記セリンプロテアーゼが、カリカ・パパイヤの熟した果実から抽出される、医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~4
、11及び12のいずれか一項に記載の組成物を、薬学的に許容できる担体又は希釈剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項16】
タンパク質分解的に活性
であるカリカ・パパイヤ(Carica papaya)セリンプロテアーゼを、化粧品として許容できる担体又は希釈剤とともに含
み、前記セリンプロテアーゼが、カリカ・パパイヤの熟した果実から抽出される、化粧品組成物。
【請求項17】
単離されたタンパク質分解的に活性であるカリカ・パパイヤ(Carica papaya)セリンプロテアーゼを、化粧品として許容できる担体又は希釈剤とともに含み、前記セリンプロテアーゼが、カリカ・パパイヤの熟した果実から抽出される、化粧品組成物。
【請求項18】
請求項1~4
、11及び12のいずれか一項に記載の組成物を、化粧品として許容できる担体又は希釈剤とともに含む、化粧品組成物。
【請求項19】
創傷デブリードマンにおける使用のための、請求項13
~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
創傷デブリードマンのための医薬品の製造における、請求項13~15のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項21】
皮膚エクスフォリエーション(exofoliation)における使用のための、請求項16~18のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項22】
皮膚エクスフォリエーション(exofoliation)における、請求項
16~18のいずれか一項に記載の
化粧品組成物の使用。
【請求項23】
請求項1~4及び
11~
18のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、皮膚病状を予防する、治療する、低下させる、又は改善する方法。
【請求項24】
請求項1~4及び
11~
18のいずれか一項に記載の組成物、並びに使用のための使用説明書を含む、皮膚病状を予防する、治療する、低下させる、又は改善することにおける使用のための又は使用される場合のキット。
【国際調査報告】