(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】X線散乱装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/20008 20180101AFI20230317BHJP
G01N 23/201 20180101ALI20230317BHJP
【FI】
G01N23/20008
G01N23/201
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022539408
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020087964
(87)【国際公開番号】W WO2021136771
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522255111
【氏名又は名称】ゼノックス ソシエテ パー アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】ヨンセン, カーステン
(72)【発明者】
【氏名】マエ, ロナン
(72)【発明者】
【氏名】ウグホイ, ピーター
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA14
2G001CA01
2G001DA06
2G001JA01
2G001JA06
2G001SA02
(57)【要約】
本発明は、X線散乱によって分析されるサンプル(17)を整列および/または配向するサンプルホルダ(16)と、第1X線源(18)と第1モノクロメータ(20)を含みサンプルホルダ(16)に向かう伝播方向(Y)のビーム経路に沿って第1X線ビーム(22)を生成および方向付けるためにサンプルホルダ(16)の上流に配置された第1X線ビーム送達システム(12)と、サンプルホルダ(16)の下流に配置され、第1X線ビーム(22)とサンプル(17)から異なる散乱角で散乱されたX線とを検出するように、伝播方向(Y)に沿って、特に、電動方式で移動可能な遠位X線検出器(14)と、を備え、第1X線ビーム送達システム(12)は、サンプルホルダ(16)から最大の距離に配置されたときに、第1X線ビーム(22)を遠位X線検出器(14)上またはその近くの焦点に集束させる、または平行ビームを生成するとともに、X線散乱装置(10)は、第2X線ビーム(42)をサンプルホルダ(16)上またはその近くの焦点に集束させる第2X線ビーム送達システム(28)をさらに備えた、X線散乱装置(10)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線散乱によって分析されるサンプル(17)を整列および/または配向するサンプルホルダ(16)と、
第1X線源(18)と第1モノクロメータ(20)を含み、前記サンプルホルダ(16)に向かう伝播方向(Y)のビーム経路に沿って第1X線ビーム(22)を生成および方向付けるために、前記サンプルホルダ(16)の上流に配置された第1X線ビーム送達システム(12)と、
前記サンプルホルダ(16)の下流に配置され、第1X線ビーム(22)と前記サンプル(17)から異なる散乱角で散乱されたX線とを検出するように、伝播方向(Y)に沿って、特に、電動方式で移動可能な遠位X線検出器(14)と、
を備え、
前記第1X線ビーム送達システム(12)は、前記サンプルホルダ(16)から最大の距離に配置されたときに、前記第1X線ビーム(22)を前記遠位X線検出器(14)上またはその近くの焦点に集束させる、または平行ビームを生成するとともに、
第2X線ビーム(42)を前記サンプルホルダ(16)上またはその近くの焦点に集束させる第2X線ビーム送達システム(28)をさらに備えている、
X線散乱装置(10)。
【請求項2】
前記第1X線ビーム(22)を通過させ、前記サンプル(17)から散乱されたX線を検出するように、前記サンプルホルダ(16)の下流に配置された近位X線検出器(44)をさらに備えた、
請求項1に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項3】
前記第2X線ビーム送達システム(28)は、第2X線源(30)および第2モノクロメータ(32)を含む、
請求項1または2に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項4】
前記第2X線ビーム送達システム(28)を前記サンプルホルダ(16)の上流の位置で前記第1X線ビーム(22)に移動させる挿入モジュール(36)を、さらに備えた、
請求項1から3のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項5】
前記第1X線ビーム送達システム(12)の下流の位置から前記サンプルホルダ(16)の上流の位置までビーム経路に沿って延びるメインコリメーションチューブ(38)を、さらに備え、
前記挿入モジュール(36)は、前記第2X線ビーム送達システム(28)またはコリメーションチューブ延長部(34)をメインコリメーションチューブ(38))と前記サンプルホルダ(16)との間の位置で、前記ビーム経路に交互に配置する電動プラットフォーム(36)を有している、
請求項4に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項6】
前記第2X線ビーム送達システム(28)のビーム経路への接続は、真空気密接続のための接続要素(362,364,366,368)を含む、
請求項5に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項7】
前記メインコリメーションチューブ(38)の下流端および前記コリメーションチューブ延長部(34)の上流端には、真空気密接続のためのそれぞれの接続要素(362,364,366,368)が設けられている、
請求項5または6に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項8】
前記コリメーションチューブ延長部(34)には、収縮/拡張機構が設けられている、
請求項5から7のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項9】
前記第2X線ビーム送達システム(28)は、光学モジュール(48)と、前記光学モジュール(48)を前記サンプルホルダ(16)の上流の位置において、前記第1X線ビーム(22)に配置する位置決めモジュール(46)を有し、
前記光学モジュール(48)は、前記第1X線ビーム(22)を、前記サンプルホルダ(16)上またはその近くの焦点に集束された前記第2X線ビーム(42)に変換するように構成される、
請求項1または2に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項10】
前記位置決めモジュール(46)は、前記光学モジュール(48)を保持するように構成された真空適合電動ホルダ(50)を有している、
請求項9に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項11】
前記位置決めモジュール(46)は、前記光学モジュール(48)またはチャネルカットモノクロメータ(52)を、前記サンプルホルダ(16)の上流の位置において、前記第1X線ビーム(22)に交互に位置決めするように構成される、
請求項9または10に記載のX線散乱装置(10)。
【請求項12】
前記第1X線ビーム(22)を成形するために組み合わせて使用される前記サンプルホルダ(16)の上流に配置された第1および第2スリットモジュール(24)を、さらに備え、
前記第2スリットモジュール(24)は、前記第2X線ビーム送達システム(28)の下流に配置され、前記第2X線ビーム(42)をさらに成形し、
前記第2スリットモジュール(24)と前記第2X線ビーム送達システム(28)との間の距離は、5cm以下である、
請求項1から11のいずれか1項に記載のX線散乱装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線散乱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、X線散乱およびX線回折装置には、以下のものが含まれる。
1)線源
2)波長セレクタ(モノクロメータ)
3)コリメーションセクション(ビーム方向を定義し、残留バックグラウンド散乱または発散を除去)
4)サンプルエリア
5)検出器領域。
X線分析が採用されて以来、より高速な測定とより優れたデータ品質の必要性に駆り立てられた個々のコンポーネントの驚異的な開発が行われ、構造化および準構造化サンプルのますます多くのグループに特性評価の回答が提供されている。
【0003】
さらに、例えば、より特定の情報を抽出するために、さまざまな高度に専門化された回折および散乱ジオメトリが開発されている。
1)粉末X線回折
a、ブラッグ-ブレンターノ反射
b、ギニエトランスミッション
2)単結晶回折(透過)
3)後方反射ラウエ
4)かすめ入射X線回折
5)X線反射率
6)テクスチャ
7)小角X線散乱(透過)
8)広角X線散乱(透過)
9)Bonse-Hartウルトラスマート角度散乱
【0004】
機器への投資を最大限に活用するために、いくつかのX線散乱装置により、様々な構成を簡単に切り替えることができる、一例として、ソースアノード材料を変更することによって波長を切り替える。XenocsデュアルソースSAXS、またはコリメーションコンポーネントを変更することによるスイッチング技術が挙げられる。したがって、わずかな追加コストで、まったく新しい散乱または回折アプリケーション用に機器を再最適化することができる。材料科学と開発では、材料機能に対する階層構造の影響を研究するために、大規模な構造の特性評価が必要である。複雑な材料は、長さのスケールに応じて、多かれ少なかれ構造化されたエンティティを示す。さらに、新しい材料の開発には、外部パラメータに応じた現場での特性評価、または動作中の構造特性評価が必要になる。通常1~150nmの長さスケールの構造を持つナノ構造材料は、十分な電子密度コントラストを持つ2つの相がサンプルによって弾性的に散乱されたX線ビームの強度を分析することによって存在する。この手法は、溶液中のポリマー、コロイドまたはタンパク質の分野において、ソフトマターの特性評価に広く使用されている。
【0005】
新しい材料の特性評価では、結晶構造を特性評価するために広角X線散乱(WAXS)と組み合わせる必要があり、ほとんどのSAXS特性評価機器は、SAXS/WAXSとUSAXS(超小角X線散乱)とを組み合わせて、1方向のみの散乱プロファイルを測定する、例えば、USAXS Bonse-Hart構成を使用して、通常、1Aから数ミクロンの構造をプローブする。
言い換えると、広角X線散乱(WAXS)は、通常、分析対象のサンプルの結晶化度と結晶相に関する情報にアクセスできるが、小角X線散乱(SAXS)は、通常、ナノスケールレベルのサンプル構造(ナノ構造)に関する情報へのアクセスを提供する。結晶相とナノ構造の両方が材料特性に影響を与えるため、同じサンプルと同じ機器でSAXSとWAXSの両方を実行することに関心がある。
【0006】
しかしながら、上記の関心のあるX線技術のほとんどは、卓上アプリケーションに適したかなりコンパクトな機器、または2m×2m未満のフットプリントのせいぜい小さな実験室機器で最適に構成できるが、長い機器(3mから10mm)は、一貫して解像度と強度のより良い組み合わせを提供するSAXS機器には当てはまらない。より短い機器は、SAXSで望まれる最高の解像度でより少ない強度を提供し、その結果、機器は長くとどまる。
それにもかかわらず、最近の開発では、従来のSAXSを、Bonse-Hart超小角X線散乱、かすめ入射回折、広角X線散乱、粉末およびテクスチャ分析などの他の構成と組み合わせ始めている。
【0007】
同じサンプルおよび機器でSAXSおよびWAXS測定を実行するために、X線散乱装置は、以下を含む。
-X線散乱によって分析されるサンプルを整列および/または配向するためのサンプルホルダ;
-第1X線源と第1モノクロメータを含み、第1X線ビームを生成してビーム経路に沿ってサンプルホルダに向かって伝播方向に向けるためにサンプルホルダの上流に配置された第1X線ビーム送達システム;
-サンプルホルダの下流に配置され、特に電動方式で、第1X線ビームおよびサンプルから異なる散乱角で散乱されたX線を検出するなどの伝播方向に沿って移動可能な遠位X線検出器;ここで、第1X線ビーム送達システムは、サンプルホルダから最大の距離に配置されたときに遠位X線検出器上またはその近くの焦点に第1X線ビームを集束させるように、または平行ビームを生成するように構成され、「Xeuss3.0」という名前で出願人から市販されている。
【0008】
この従来のX線散乱装置の第1X線ビーム送達システムは、第1X線源、例えば、X線を生成するためのCuまたはMoアノードを備えた線源、および、生成された第1X線ビームを、本質的に水平な伝播方向に沿ってサンプルホルダに向けて方向付けおよび調整する第1モノクロメータ、および、X線散乱の分野で知られ真空チャンバ内に配置されてもよい他の通常のサンプルステージ装置、を含む光学およびコリメーションシステムを備えている。
【0009】
この従来のX線散乱装置は、サンプルホルダの下流、すなわち、第1X線ビーム送達システムの側面と反対のサンプルホルダの側面に配置された少なくとも1つのX線検出器を含む:遠位X線光線検出器は通常、検出器ステージに取り付けられ、サンプルホルダから5000mmまでの大きな水平距離(通常は50mmから1000mm以上の範囲)で直接ビームの伝播方向に沿って移動できるようにする。遠位X線検出器の位置の詳細とそのセンサのサイズに応じて、通常、サンプルから散乱されたX線を、約2θ=0.05°および60°から70°までの大きさという小さな直接X線ビームに対して散乱角で検出することができる。したがって、遠位X線検出器は、ナノスケールレベルでサンプル構造に関する情報を提供する小角X線散乱(SAXS)およびサンプルの結晶化度に関する情報を提供する広角X線散乱(WAXS)に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、最適なSAXSのX線光学スキームは、WAXS測定に最適な条件を提供しない。例えば、長いコリメーションは発散の少ないビームを提供し、場合によっては、サンプルから1~5メートルに対応する第1X線源から3~8メートルの典型的なSAXS距離に焦点を合わせるように計画される。しかし、WAXSの場合、検出器ははるかに近く、基本的に焦点が合っていないため、焦点よりも大きなビームがある。さらに、集束ビームの場合でも、焦点サイズSFはレンズ方程式SF=M*S,M=P2/P1に従う。ここで、Mは倍率、Sは光源のサイズ、P1は光源と光学部品またはモノクロメータの間の距離、P2は光学部品と焦点の間の距離である。長いSAXSの場合、コリメーションMは通常>10であって、開口部が非常に小さくて強度が大幅に低下しない限り、小さなスポットサイズを達成することは不可能になる。同様の問題は、SAXSで十分な強度と分解能を達成するために、通常0.5~1mm2のオーダーのビームサイズを使用するコリメートミラーでも発生する。
【0011】
同様の問題は、サンプルをスキャンするアプリケーションや、マイクロ流体チップのチャネル内などのサンプル環境のためにサンプルの量を少なくする必要があるアプリケーション等、より低い解像度を許容しながらサンプルの小さな露出領域を必要とする散乱アプリケーションにも存在する。ここでも、長いコリメーション長とレンズ方程式により、アパーチャで強度の大部分をカットせずに達成できるビームサイズに不十分な下限が設定されている。
【0012】
第1X線源をサンプルに近づける等、コンポーネントと相対距離を変更するためにX線散乱装置を機械的および手動で再構成することは、システムの再構成と再調整に必要な時間を考慮すると問題がある。
したがって、本発明の目的は、SAXSおよびWAXS測定にそれぞれ最適な条件を提供することを可能にする、上記のタイプの改良されたX線散乱装置を提案することである。
【0013】
本発明によれば、この目的は、上記の従来型のX線散乱装置によって達成され、これは、X線散乱装置が、サンプルホルダ上またはその近くの焦点に第2X線ビームを当てて集束するように構成された第2X線ビーム送達システムをさらに備えることを特徴とする。第1X線ビーム送達システムによって生成された第1X線ビームをSAXS測定に使用されるが、第2X線ビーム送達システムによって取得された第2X線ビームは次のようなWAXS測定または高解像度WAXS測定または小サンプル露光領域散乱アプリケーション(以下、高空間解像度アプリケーションと呼ぶ)に使用される。
【0014】
遠位X線検出器をサンプルの近くに配置すると、特定の最大散乱角までWAXS測定を実行できるが、遠位検出器を伝播方向(Y)に沿って移動する必要がある。その場測定のような同時SAXSおよびWAXS測定を必要とする用途または90°までの非常に広い角度での測定を必要とするWAXS用途の場合、本発明によるX線散乱装置は、好ましくは、第1X線ビームを通過させ、サンプルから散乱されたX線を検出する等のサンプルホルダの下流に配置された近位X線検出器をさらに含む。近位X線検出器は、第1X線ビーム伝播方向(Y)に沿って約80~150mmの距離に固定された固定検出器、または検出器がエワルド球の表面に沿って移動し入射面(YZ)または横方向のいずれかに広角で散乱した散乱パターンを測定できるように、電動検出器のいずれかである。電動化された場合、近位X線検出器には、その表面を入射ビーム方向に対して垂直に保つための追加の回転ステージを装備することもできる。
【0015】
本発明の第1の実施形態では、第2X線ビーム送達システムは、第2X線源および第2モノクロメータを含む。それらは、第1X線ビームから完全に独立した第2X線を生成し、それをサンプルホルダ上またはその近くに集束させることを可能にする。
この第1の実施形態の好ましい例では、X線散乱装置は、第2X線ビーム送達システムをサンプルホルダの上流の位置で第1X線ビームに移動させるように構成された挿入モジュールをさらに含む。次に、挿入モジュールは、ユーザによる手動の相互作用を回避して、第2X線ビーム送達システムのコンピュータ制御された動きを可能にする。
【0016】
この場合、X線散乱装置は、好ましくは、ビーム経路に沿って、第1X線ビーム送達システムの下流の位置からサンプルホルダの上流の位置まで延びるメインコリメーションチューブをさらに含み、挿入モジュールは、構成された電動プラットフォームを含む。あるいは、第2X線ビーム送達システムまたはコリメーションチューブ延長部を、メインコリメーションチューブとサンプルホルダとの間の位置でビーム経路に配置する。SAXS測定の場合、コリメーションチューブ延長部がビーム経路に配置され、第1X線ビームがサンプルホルダに取り付けられたサンプルに衝突する直接ビームとして機能できるようになる。しかしながら、WAXSまたは高空間分解能の散乱測定の場合、第2X線ビームデリバリーシステムは、電動プラットフォームによってビームパスに配置される。次に、X線散乱装置の制御システムは、第1X線ビーム送達システムのシャッタを作動させて第1X線ビームを遮断し、第2X線ビーム送達システムのシャッタを作動させて、第2X線-光線ビームは、第2モノクロメータによってサンプルホルダ上またはその近くに集束される。
【0017】
好ましくは、メインコリメーションチューブの下流端およびコリメーションチューブ延長部の上流端は、真空気密接続のためのそれぞれの接続要素を備えている。これにより、SAXS測定中にコリメーションチューブ延長部がビームパスに配置されたときに、第1X線ビーム送達システムからサンプルホルダまでのビームパスを基本的に真空に保つことができる。
【0018】
好ましくは、コリメーションチューブ延長部は、収縮/拡張機構を備えている。次に、コリメーションチューブ延長部は、例えば、望遠鏡機構によって格納および拡張することができる。収縮状態では、コリメーションチューブ延長部を保持する電動プラットフォームの移動中に接触する機械要素との摩擦と接触を減らすことにより、コリメーションチューブ延長部をメインコリメーションチューブとサンプルホルダとの間に簡単に挿入できる。コリメーションチューブ延長部がビーム経路の最終位置に達するとすぐに、メインコリメーションチューブおよび/またはサンプルホルダが配置されている真空チャンバまたは真空チャンバの上流に設けられたその他の光学部品と接触するまで拡張できる。
【0019】
本発明の第2の実施形態では、第2X線ビーム送達システムは、光学モジュールと、光学モジュールをサンプルホルダの上流の位置で第1X線ビームに配置するように構成された位置決めモジュールとを備える。ここで、光学モジュールは、第1X線ビームを、サンプルホルダ上またはその近くの焦点に集束された第2のX線ビームに変換するように構成される。一方、本発明の第1の実施形態では、第2X線ビーム送達システムを使用する場合、第1X線ビームは、第1X線ビーム送達システムのシャッタによって本質的に遮断される。本発明の第2の実施形態は、第1X線ビームを、異なる焦点、すなわち、サンプルホルダ上またはその近くの焦点を有する第2X線ビームに変換する。
【0020】
第2の実施形態の好ましい例では、位置決めモジュールは、光学モジュールを保持するように構成された真空適合電動ホルダを備える。これにより、基本的に第1X線ビーム照射システムから延びるメインコリメーションチューブ内に位置決めモジュールを配置することができる。
この好ましい例の特に用途の広いバージョンでは、位置決めモジュールは、光学モジュールまたはチャネルカットモノクロメータを、サンプルホルダの上流の位置で第1X線ビームに交互に位置決めするように構成される。チャネルカットモノクロメータは、サンプルホルダの下流に配置された追加のチャネルカットアナライザをさらに含むBonse-Hartモジュールの一部にすることができる。
【0021】
第1または第2の実施形態の好ましい例では、本発明によるX線散乱装置は、サンプルホルダの上流に配置された第1および第2スリットモジュールをさらに含み、第2スリットモジュールは、第2X線の下流に配置され、第2スリットモジュールと第2X線ビーム送達システムとの間の距離が5cm以下になる。第1および第2スリットモジュールを組み合わせて使用して、第1X線ビームを成形することができる。第2スリットモジュールはさらに、第2X線ビームを成形するために使用することができる。
【0022】
本発明によるX線散乱装置の好ましい実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)は、SAXS測定のための構成における本発明によるX線散乱装置の第1の実施形態の概略上面図を示す。(b)は、WAXS測定用の構成における(a)のX線散乱装置の概略上面図を示す。
【
図2】(a)は、サンプルホルダの上流にある
図1(a)のX線散乱装置の一部の斜視図を示す。(b)は、サンプルホルダの上流にある
図1(b)のX線散乱装置の一部の斜視図を示す。
【
図3】(a)は、
図2(a)のX線散乱装置の上面図を示す。(b)は、
図2(b)のX線散乱装置の上面図を示す。
【
図4】(a)は、
図1(a)のX線散乱装置の第2X線ビーム送達システムの拡大斜視図を示す。(b)は、
図1(b)のX線散乱装置の第2X線ビーム送達システムの拡大斜視図を示している。
【
図5】本発明の第2の実施形態で使用される第1モノクロメータおよび光学モジュールの概略図を示す。
【
図6】本発明の第2の実施形態で使用される測位モジュールの概略側面図を示す。
【
図7】追加のX線ミラーを使用する本発明の別の例の概略上面図を示す。
【
図8】2つの第2X線源を備えた第1の実施形態の修正の上面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1(a)は、SAXS測定のための構成における本発明によるX線散乱装置10の第1の実施形態の概略上面図を示している。X線散乱装置10は、第1X線ビーム送達システム12の上流端から遠位X線検出器14の下流端まで示されている。
図2(a)は、X線散乱装置10の一部のサンプルホルダ16の上流の斜視図を示している。
図3(a)は、
図2(a)のX線散乱装置10の上面図を示している。
【0025】
図1(b)、
図2(b)および
図3(b)は、X線散乱装置10の第1の実施形態がWAXS測定のためのその構成に配置されたときのそれぞれの図を示している。この構成は、特に、高解像度のWAXS測定に使用されるが、高空間解像度のSAXS測定にも使用される。
図に示されている全ての上面図において、X線散乱装置10の上流端は左側にあり、下流端は右側にある。したがって、第1X線ビームおよび第2X線ビームの伝播方向Yは、左から右である。さらに、伝播方向Yは、実験室システムでは水平であると想定され、Yに垂直な水平方向をX方向、XとYに垂直な垂直方向をZ方向と呼ぶ。
【0026】
第1X線ビーム送達システム12は、第1X線源18および第1モノクロメータ20を含む。
図1(a)の点線で示されるように、第1モノクロメータ20は、遠位X線検出器14がサンプルホルダ16からY方向に最大の距離に配置された場合、第1X線源18によって生成されたX線を収集し、それらを第1X線ビーム22として遠位X線検出器14上またはその近くの焦点に集束するように選択および設定される。この文脈において、「近い」とは、第1X線ビーム22の焦点と遠位X線検出器14との間の距離が、焦点および第1モノクロメータ20間の距離P2(
図1(a)の二重矢印によって示される)の約20%であることを意味する。焦点は、遠位X線検出器14の前(すなわち、上流)または後(すなわち、下流)であり得る。あるいは、第1モノクロメータ22が本質的に平行なビームを生成することも可能である。
【0027】
第1X線源18は、好ましくは、点焦点源であり、第1モノクロメータ20は、好ましくは点焦点モノクロメータである。
ビーム形状は、好ましくは「散乱のない」または「散乱のない」タイプであるスリットモジュール24によってさらに定義することができる。
図1(a)には、2つのそのようなスリットモジュール24が示されている。第1モジュールは、第1モノクロメータ20のすぐ下流にあり、第2モジュールは、真空チャンバ26のすぐ上流にある。この真空チャンバ26は、電動並進および/または回転ステージ、およびX線散乱の分野で知られている他の典型的なサンプルステージデバイスを含み得るサンプルホルダ16を収容する。
【0028】
第2スリットモジュール24の上流および近くで、X線散乱装置10は、第2X線源30および関連する第2モノクロメータ32ならびにコリメーションチューブ延長部34を含む第2X線ビーム送達システム28を備える。第2スリットモジュール24と第2X線ビーム送達システム28との間の距離は、通常、数センチメートル、好ましくは5センチメートル以下に達する。第2X線源30、第2モノクロメータ32、およびコリメーションチューブ延長部34は、
図1(a)に破線で概略的に示されている電動プラットフォーム36を有する挿入モジュールに取り付けられている。
【0029】
X線散乱装置10の第1の実施形態のSAXS構成では、
図1および
図2に示されるように。
図1(a)、
図2(a)および
図3(a)では、電動プラットフォーム36は、コリメーションチューブ延長部34が、第1スリットモジュール24の下流に延長するメインコリメーションチューブ38と整列するような位置に移動される。次に、第1X線ビーム22は、メインコリメーションチューブ38およびその後のコリメーションチューブ延長部34を通ってY方向に沿って伝播し、これらは両方とも、X線散乱の分野で知られているように排出することができる。第1X線ビーム22は、好ましくは、メインコリメーションチューブ38と同じ真空環境にあり、サンプルホルダ16に取り付けられたサンプルに当たる真空チャンバ26に入る。直接ビームとして送信された第1X線ビーム22、ならびにサンプルによって生成されたSAXS信号は、対応する出口ポートを通って真空チャンバ26を出て、真空チャンバ26の下流のさらに真空にされたチューブ40の遠位端の近くに配置された遠位X線検出器14によって検出される。
【0030】
サイズが200nmより大きいサンプル構造を測定できるようにするために、遠位X線検出器14は、通常、サンプルホルダ16から少なくとも1m、好ましくは1.5mを超えて4または6メートルまでの距離に配置される。
第1モノクロメータ20は、典型的には多層X線モノクロメータであり、好ましくは、SAXS測定位置に配置された際に遠位X線検出器14の最も遠い位置にビームを遠距離に集束させるようにビームを2方向に調整するように適合されることで、最高の解像度、つまり、最大の特性寸法を測定したり、最小の散乱角度を検出したりできる。あるいは、第1モノクロメータ20は、はるかに長い距離に集束するため、発散が非常に小さいか、または平行ビーム(無限に集束するのと同等)、すなわち、残留発散が0.2mradians未満である。第1モノクロメータ20は、2Dビーム調整を生成するために形作られる、すなわち、それは、回転楕円体(ビームを集束する場合)または回転楕円体(ビームをコリメートする場合)として形作られるか、または2つの1Dミラーがいわゆるモンテルミラー構成で交差結合されて作られる。あるいは、X線源18がラインフォーカス源である場合、第1モノクロメータ20は、1Dビーム調整を生成するために一方向に湾曲したミラーである。
【0031】
図1(a)の上面図では、第1モノクロメータ20は、1メートルより大きく6~8メートルにもなるサンプルから検出器までの最長距離で、そのSAXS測定位置に配置されたときに、この平面のビームを遠位X線検出器14に集束させるために、XY平面の楕円として湾曲していることが分かる。このように第1モノクロメータ20によって調整されたX線ビームは、寄生散乱を除去し、ビームエッジ強度を減衰させて遠位X線検出器14で十分に制御されたビームサイズを達成する2つの散乱のないスリットモジュール24によってさらにコリメートされる。寄生スリット散乱の発生を防ぐために、各スリットモジュール24は、結晶性材料(銅Ka放射線の場合はSi、MoKa放射線の場合はGeまたはGaAsまたはそれ以上のエネルギー)で作られたブレードを有する。2つのスリットモジュール24は、システムの最大サンプルから検出器までの距離に応じて、通常、80cmから1または2メートルの範囲の距離で、大きな距離だけ離れて配置されている。
【0032】
さらに、この構成では、真空チャンバ26内の遠位X線検出器14をY方向に沿ってサンプルホルダ16に近づけることによって、いくつかのWAXS信号を測定することもできる。
一方、X線散乱装置10の第1の実施形態の専用WAXS構成では、
図1(b)および
図2(b)および
図3(b)に示すように、電動プラットフォーム36は、第2X線源30および関連する第2モノクロメータ32がメインコリメーションチューブ38と整列するような位置に動かされる。
【0033】
第2モノクロメータ32は、第2X線源30によって生成されたX線を第2X線ビーム42としてサンプルホルダ16上またはその近くの焦点に集束させるように選択および設定される。次に、サンプルから散乱または回折されたWAXS信号は、真空チャンバ26の内部に配置された近位X線検出器44によって検出される。本発明の実施形態では、サンプルから散乱または回折されたWAXS信号は、伝播方向(Y)に沿って移動した後、サンプルの近くに配置されたときに遠位X線検出器14によって収集することができる。
【0034】
多くの場合、WAXS構成におけるサンプルホルダ16の位置は、SAXS構成におけるものと同じである。しかしながら、本発明は、第2X線ビーム42がサンプルホルダ16上またはその近くの焦点に集束されることを要求するだけであり、サンプルホルダ16がSAXSポジションとWAXSポジションの間の真空チャンバ26内で移動される状況もカバーするので、これは必須ではない。サンプルホルダ16のそのような動きは、本質的にY方向に沿ったものであり得るが、Xおよび/またはZ成分を有していてもよい。
【0035】
第2X線源30は点焦点源であってもよく、第2モノクロメータ32は、第2X線ビーム42を2方向に集束させて、サンプル上またはその近傍に小さなスポットを生成するように適合させることができる。近接とは、通常、サンプルからY方向に100mm以下、サンプルの前後、好ましくはサンプルの前後50mm未満、より好ましくはサンプルの前後25mm未満の距離を意味する。
【0036】
第2X線ビーム送達システム28は、最後の(散乱のない)スリットモジュール24の直前で、サンプルの近くに配置されているので、サンプル上に小さなスポットを生成するように適合されている。例として、第2X線源30は、サンプルから700mm未満の距離(P’1+P’2)に配置することができ、ここで、P’1は、第2X線源30から第2モノクロメータ32までの距離である。P’2は、第2モノクロメータ32から、サンプルホルダ16上またはその近くの第2X線ビーム42によって生成される焦点までの距離である。P’1とP‘2は、
図1(b)においてそれぞれの矢印で示される。この配置により、倍率が係数P’2/P’1で与えられる、小さな倍率で二次多層光学系を配置することができる。
そうすることにより、マイクロフォーカス密封チューブ線源を使用する場合、第1モノクロメータ20で達成される強度と比較して桁違いに高い強度で200ミクロン以下の範囲のスポットサイズを達成することが可能である。
【0037】
本発明によるX線散乱装置10のこの同一直線上のSAXS/WAXS構成を用いて、第2X線ビーム送達システム28は、第1X線ビーム22のビーム経路と整列された第2X線ビーム42を生成する。これは、サンプルに向かって同じ伝播方向を有するという利点を提供し、同じ遠位X線検出器14または検出器構成を、遠位X線検出器14および近位X線検出器44とともに、ゴニオメータまたは電動アームにおいて、検出器を配向する必要なしに使用することを可能にする。また、真空チャンバ26内で引張ステージを使用して、サンプル上に第2回転ステージを有する必要なしにサンプルを伸ばす場合には、特定の散乱方向が調査される2Dアプリケーションに同じサンプル配向を使用することもできる。さらに、同じ傾斜を維持することで、そうでなければ、集束ビームで測定する場合に直接ビームが遠位X線検出器14に確実に当たるように、サンプルステージの追加の傾斜および遠位X線検出器14の向きが必要となるため、マッピングや小さなスポットアプリケーション、例えば、マイクロフルイディクスで重要であるサンプル上の同等のX線ビームフットプリントが確保される。
【0038】
共線形SAXS/WAXS設計は、散乱測定のために装置10で異なるサンプル位置が使用される場合、つまり、サンプルを検出器までの距離を変更することが部分的にサンプルを移動することによって行われる場合にも、より有利である。これにより、挿入モジュールがより単純に維持され、平行移動をサンプルの動きと同期させる必要なしに、第2X線ビーム送達システム28を挿入するために必要な平行移動のみが行われる。いずれにせよ、サンプル位置がすべての実験に対して事前定義され固定されるように、遠位X線検出器14を動かすことによって、サンプルから検出器までの距離の変化を実現することが好ましい。
【0039】
さらに、コリニアSAXS/WAXSセットアップを使用することにより、第1X線ビームのビーム経路で第2スリットモジュール24を使用して、第2X線ビーム送達システム28によって生成された集束された第2X線ビーム42の発散を調整することもできる。この第2スリットモジュール24はまた、遠位X線検出器14と一緒に使用して、ある構成から別の構成に切り替えるときの強度を制御し、再調整の潜在的な必要性を検出することができる。並進方向に平行なスリットモジュール24の1Dスキャンを使用して、スリットモジュール24を再調整し、集束測定のためにビームラインを再調整するために、第2X線ビーム42のビーム経路の中心を再定義することもできる。
【0040】
場合によっては、メインコリメーションチューブ38は、USAXSまたはSAXS測定をそれぞれ行うときに、チャネルカットモノクロメータをX線ビームの内外に配置するための電動ホルダを含むBonseHartモノクロメータモジュールを含んでいてもよい。この電動BonseHartモノクロメータは、サンプルの後に配置されたチャネルカットモノクロメータを備えたBonse Hartアナライザに関連付けられており、USAXSまたはSAXS測定をそれぞれ実行するときにビームの内外に配置される。BonseHartモノクロメータモジュールは、第2X線ビーム送達システム28の上流に配置されて、第2X線ビーム送達システム28が第2スリットモジュール24に最も近接していることを確実にすることができる。
【0041】
図4(a)は、
図1(a)、
図2(a)および
図3(a)のSAXS構成における本発明に係るX線散乱装置10の第2X線ビーム送達システム28の拡大斜視図を示す。このSAXS構成では、第1X線ビーム22は、第2スリットモジュール24に到達する前に、メインコリメーションチューブ38およびコリメーションチューブ延長部34を通って伝播する。
【0042】
図4(b)は、
図1(b)、
図2(b)および
図3(b)のWAXS構成における第2X線ビーム送達システム28の拡大斜視図を示している。このWAXS構成では、電動プラットフォーム36は、第2X線源30および第2モノクロメータ32を含む第2X線ビーム送達システム28が、メインコリメーションチューブ38の下流および第2スリットモジュール24の上流のビーム経路に配置されている。第2X線ビーム送達システム28がアクティブである、すなわち、それは、サンプルホルダ16上またはその近くの集束スポットに集束された第2X線ビーム42を生成する。
【0043】
図1と
図2から分かるように、
図4(a)および
図4(b)に示されるように、メインコリメーションチューブ38の下流端およびコリメーションチューブ延長部34の上流端は、真空気密接続のためのそれぞれの接続要素を備えている。これらの接続要素は、真空気密Oリングを備えたスライドプレートで構成されている。同じことがコリメーションチューブ延長部34の下流端にも当てはまり、第2スリットモジュール24への真空気密接続を可能にする。この設定により、第1X線ビーム送達システム12または第2X線ビーム送達システム28がアクティブであるとき、または構成の変更中の場合には、コリメーションチューブ延長部34の内部がメインコリメーションチューブ38の内部と同じ真空環境にあることを保証する。
【0044】
図4(a)は、真空気密接続を確保しながら、接続部364を介してコリメーションチューブ延長部34の下流端と第2スリットモジュール24との間の接続を行うスライドプレート362を示している。このスライディングプレート362はまた、同じく真空気密接続の下で、接続部分364を介して第2X線ビーム送達システム28と第2スリットモジュール24との間の接続を行う。真空気密接続は、接続部分364の平坦で滑らかな表面に沿ってスライドするスライドシール366,368によって保証され、真空がコリメーションチューブ延長部34の内部および第2ビーム送達システム28の内部にいつでも保たれることを保証する。スライドシール366,368は、Oリングとフラットガスケットとの重ね合わせを含むことができ、例えば、ばね式Oリングは、低摩擦ガスケットを接続部分364に押し付ける。
【0045】
図4(a)および
図4(b)に示される2つの接続部分364の間の接続、すなわち、メインコリメーションチューブ38の下流端にある第1接続部分364と、コリメーションチューブ延長部34の下流端にある第2接続部分364との間は、要素間の接続の剛性を維持しながら、それぞれのスライディングプレート362が摩擦なしに動くことができるように、一定の柔軟性を確保しながら、接続が行われる。この目的のために、コリメーションチューブ延長部34は、剛性チューブ、あるいはベローズとより剛性の高い部品を組み合わせたより柔軟なシステムであってもよい。あるいは、コリメーションチューブ延長部34に収縮/拡張機構を設けることができ、それにより、コリメーションチューブ延長部34またはその一部を収縮および拡張して、構成の変更を容易にすることができる。
【0046】
第2X線ビーム送達システム28が第2X線源30および第2モノクロメータ32を含む本発明の代替の実施形態では、この第2X線ビーム送達システム28は、代替的に、真空チャンバ26の入口は、好ましくは、第1X線源18と同じ水平面XY内に第2X線源30の焦点を合わせている。このような構成は、通常、Y方向に沿った第1X線ビーム22の方向に関して、第2X線源30および第2モノクロメータ32の傾斜を必要とする。本発明のそのような実施形態は、サンプルから散乱されたX線ビームを広角で収集できるように配置された近位X線検出器44を使用する高分解能WAXS測定に適合されるであろう。この専用の測定は、近位X線検出器44が、エワルド球の表面に沿って移動して、入射面(YZ)または横方向のいずれかで広角に散乱された散乱パターンを測定することができる電動検出器である場合には、有利である。
【0047】
図1(b)、
図2(b)、および
図3(b)に示す構成は、高分解能WAXS測定を含むWAXS測定に適しているが、高空間分解能SAXS測定にも適している。
図5は、本発明によるX線散乱装置10の第2の実施形態の概略図を示している。この第2の実施形態では、装置10は、単一のX線源、すなわち第1X線源18のみを使用し、第2X線ビーム送達システム28は、光学モジュールと、光学モジュールを、サンプルホルダ16の上流の位置にある第1X線ビーム22に配置するように構成された位置決めモジュールとを備える。光学モジュールは、第1X線ビーム22を収集し、それをサンプルホルダ16上またはその近くの集束スポットに集束された第2X線ビーム42に変換するように構成される。
【0048】
図6は、本発明の第2の実施形態で使用される測位モジュール46および光学モジュール48の概略側面図を示す。光学モジュール48は、多層モジュール、例えば、多層ミラーであってもよい。
位置決めモジュール46は、光学モジュール48を保持する真空適合電動ホルダ50を備えている。電動ホルダ50は、
図6の破線の二重矢印によって示されるように、垂直Z方向に沿って上下に移動することができる。その最下部の位置である第1X線ビーム22は、位置決めモジュール46、光学モジュール48、または第2X線ビーム送達システム28の他の構成要素の影響を受けず、
図1(a)、
図2(a)および
図3(b)に示すようにサンプルに到達する。したがって、電動ホルダ50の最下部の位置は、X線散乱装置10のSAXS構成に対応する。
【0049】
電動ホルダ50が垂直Z方向に沿って上方に動かされると、それは、光学モジュール48が第1X線ビーム22を遮断する位置に到達する。光学モジュール48は、例えば、反射またはブラッグ回折によって、第1X線ビーム22を第2X線ビーム42に変換し、それをサンプル上またはその近くの焦点に集束させるように選択および設定される。これを
図5に模式的に示す。第1モノクロメータ20が回転楕円体の形状を有する場合、光学モジュール48は、楕円体と双曲面がそれらの焦点の1つを共有し、双曲面の第2焦点がサンプル位置にある回転楕円体として成形することができ、楕円体の第1焦点は、第1X線源18の位置にある。
【0050】
あるいは、
図5に示されるように、第1モノクロメータ20が平行または低発散ビームを生成するための第1回転放物面の形状を有する場合、光学モジュール48は、この平行ビームを収集し集束ビームに変換するための第2回転放物面の形状を有することができる。第2X線ビーム42は、比M2=(P’’
2/P1)
*S1、によって与えられる寸法を有するスポットサイズF2を生成する。ここで、P’’
2は、光学モジュール48の中心と光学モジュール48の形状を定義する第2放物面の焦点との間の距離であって、P1は、第1モノクロメータ20とその形状を定義する第1放物線の焦点との間の距離であり、S1は、第1放物線の焦点に配置された第1X線源のサイズである。スリットモジュール24の寸法、および真空チャンバ26内のサンプルホルダ16の位置を考慮に入れると、光学モジュール48は、
図5で強調されるように、第1モノクロメータ20とは異なる焦点距離を有する可能性がある。表現平面F2xのスポットサイズF2は、X線源サイズS1xよりも大きくなっている。本発明の好ましい実施形態では、X線散乱装置10は、光学モジュール48とサンプルとの間のかなり短い距離、典型的には30から40cm以下の範囲を達成する。これにより、倍率3または4の最大範囲の倍率M2が保証され、したがって、第1X線源18が光学収差を考慮したマイクロフォーカス密封チューブ線源である場合、200ミクロン未満のスポットサイズが提供される。
【0051】
光学モジュール48の位置合わせを容易にするために、位置決めモジュール46は、電動ホルダ50に加えて、ブラッグ角度位置合わせのための追加の回転ステージおよび/または光学位置合わせのための追加の回転または水平並進ステージを備えてもよい。しかしながら、位置決めモジュール46は、光学モジュール48の有無にかかわらず構成を選択するための電動ホルダの動きは、通常、光学アライメントの設置時または定期的な保守検証中にのみ行われる光学モジュール48の光学アライメント設定に影響を及ぼさないように設計されている。
【0052】
図6に示される例では、測位モジュール46はさらに、Bonse-Hart USAXSモジュールのチャネルカット入射モノクロメータ52部分を支持する。位置決めモジュール46は、光学モジュール48またはチャネルカット入射モノクロメータ52のいずれかを、入ってくる第1X線ビーム22に配置するように構成される。チャネルカット入射モノクロメータ52を第1X線ビーム22に配置するには、電動ホルダ50をさらに上向きに動かす必要がある。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、電動ホルダ50は真空適合されており、本発明のこの第2の実施形態に係る第2X線ビーム送達システム28は、メインコリメーションチューブ38内に完全に収容することができ、その後、2つのスリットモジュール24の間で完全に延びることができる。
図7は、本発明の別の例の概略側面図を示しており、X線散乱装置10は、追加のX線ミラー、すなわち、サンプルホルダ16の上流に設けられた偏向ミラー54をさらに備えている。このミラー54は、好ましくは、例えば、サンプル17の表面を水平に保ちながら、GISAXSのかすめ入射下で分析するサンプル17の表面に到達するように、第1X線ビーム22を角度偏差2θだけ偏向させる平面X線ミラーであって、ここで、角度θは、ミラー54への入射角である。これは、放牧の際に分析されるサンプルが液体である場合に特に有利である。ミラー54が全反射形状で使用される場合、サンプル17への入射制御の調整は、入射ビームの発散によって与えられる分解能で可能である。この入射角制御の範囲は、実験中に入射角を変更したり、特定の角度を設定したりするための銅線の場合、>0°から最大0.4°の間である可能性がある。本発明の好ましい実施形態では、この偏向ミラー54は、追加のオプションの光学スキームとして電動ホルダ50の一部であってもよい。
【0054】
図8は、サンプルの位相差イメージングに適合した追加のX線ビームを生成するために電動プラットフォーム36上に配置された一次スリットモジュール56に結合された画像化X線源55からなる第3X線ビーム送達システムを備えた第1の実施形態の変形の上面図を示す。位相コントラストX線イメージングは、軟質材料内の微細な密度差をイメージングし、従来の吸収X線イメージングのコントラスト限界を克服するのに特に有利である。
【0055】
位相差イメージングを実行するために、イメージングX線源55は、多色ビームを生成する点焦点源であって、一次スリットモジュール56に結合されて、サンプルホルダ56の方向に円錐形のX線ビームを生成し、両方のサンプルを照射できるようにし、ランダム構造のオブジェクト57は、通常、サンプルの直前に配置される。イメージングX線源55は、典型的には、小さな焦点サイズ、すなわち、50ミクロン以下、好ましくは、10ミクロン以下の焦点の分析される材料に応じて、最大50kV、あるいは最大70kVまで励起されたタングステンまたはモリブデンアノードを備えた線源であってもよい。あるいは、イメージングX線源55は、銅アノードを含むことができる。イメージング特性化ステップは、通常、伝播されたX線ビーム58と干渉するためにサンプルが配置されていない状態で長距離に配置された遠位検出器14上のランダム構造の物体57によって作成されたスペックルパターンを測定し、同じ距離に維持された遠位検出器14上のスペックルパターンのサンプル誘導歪み画像を記録するために適所に配置されたサンプルとランダム構造の物体57とを用いて、追加の露光を実行することを含む。サンプルの有無にかかわらずスペックルパターンの相関分析により、サンプルの二次元位相マップは、スペックルのサイズに応じた解像度、すなわちランダム構造の物体57の特徴の解像度で取得することができるが、遠位検出器の14ピクセルサイズとサンプルまでの距離もある。ランダム構造の物体57は、小さな特徴および高いX線強度コントラストを備えたランダム構造で作られたサンプルであり、例えば、サンドペーパーまたはボール紙であってもよい。このスペックルX線イメージングの代替の特徴付けシーケンスは、空間分解能を高めるためにスペックルサイズよりも小さい移動ステップでランダム構造の物体57の異なる横方向位置を有するスペックルパターンのスキャンを含んでいてもよい。
【0056】
X線スペックルイメージングは、複雑なアナライザ構造を必要とせず、使用する線源の空間コヒーレンスの要件を軽減するため、特に有利な位相差イメージング法である。第2ビーム送達システム28に使用されるものとして相互挿入モジュールを備えた画像化X線源55を使用することにより、
図8に記載のX線散乱装置は、同じ検出スキームで、すなわち、長距離にわたるサンプルから検出器までの距離の容易で優先的に電動化された変更に適合された遠位X線検出器14を使用して、SAXSおよびX線画像化を達成することができる。一般に、X線イメージングには、通常、最小ピクセルサイズの場合は75pmの範囲、または検出器サイズ要件、高カウントレート(直接ビームまたは高ダイナミックレンジ信号を測定できるようにするための)、および低ノイズの両方に対応するために172pmの範囲のピクセルサイズを有するSAXSで使用されるハイブリッドピクセルフォトンカウンティング検出器よりも小さいピクセル検出器が必要である。本発明によるセットアップは、比S2/(S1)によって与えられる高い画像倍率を達成し、ここで、S1は、線源から物体までの距離であり、S2は、通常、係数10よりも高い線源から画像検出器までの距離である。X線散乱装置10が位相差イメージング機能を含む本発明の別の実施形態では、イメージングX線源55および一次スリットモジュール56は、サンプルまでの距離を短くして、より高い強度とさらに大きなイメージング倍率を実現するために、例えば、一次入射ビームラインの入射ビーム経路のためにポートの上部または下部に配置された追加の入射ビームポートに順番に固定されたサンプルチャンバ壁に取り付けられる。この場合、SAXSから位相差イメージングへの測定構成の変更には、必要に応じてX線遠位検出器の同等の変更と組み合わせたZ方向に沿ったサンプルの位置の変更が含まれる。あるいは、SAXSに使用されるX線検出器は大型の検出器(>70×70mm
2であり、>150×150mm
2と同じくらい大きい場合もある)であるため、検出器を垂直方向に動かす必要がない場合がある。
【0057】
SAXSおよび/またはUSAXSを位相コントラストイメージングと組み合わせると、粘土、繊維、不均一なナノコンポジット等の不均一な軟質材料に特に有用であり、ここで、不均一性は、ここで説明する位相コントラストイメージング測定法で最初に検出でき、数十ミクロンまたは数ミクロンのオーダーの分解能を達成し、次に、SAXSまたはUSAXS測定で不均一性のナノ構造をさらに詳しく調べる。
【0058】
第1X線源18および第2X線源30で使用されるX線発生器は、密封チューブX線源、好ましくは、マイクロフォーカス密封チューブ線源、または好ましくは点焦点を備えた回転陽極、または液体ジェットアノードを含むことができる。
説明およびクレーム全体で使用される「焦点」は、必ずしも点状である必要はない。また、それぞれのサンプルと目的のX線散乱分析に応じて、線状にすることも、一般に2Dまたは3D形状にすることもできる。
【国際調査報告】