(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】抗TREM2抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230317BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230317BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230317BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230317BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230317BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230317BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230317BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230317BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230317BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230317BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230317BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230317BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230317BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P21/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542652
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 US2021013200
(87)【国際公開番号】W WO2021146256
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】デニス マーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】グー ジェンユ
(72)【発明者】
【氏名】カリオリス ミハリス エス.
(72)【発明者】
【氏名】マホン キャサル エス.
(72)【発明者】
【氏名】モンロー キャスリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーク ジョシュア アイ.
(72)【発明者】
【氏名】プロロク レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン アダム ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン レンゲリッチ ベティーナ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
(57)【要約】
一態様では、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)タンパク質に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、可溶性TREM2(sTREM2)のレベルを低下させる。いくつかの実施形態では、抗体は、TREM2活性を増強する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(a)i.G-F-T-F-T-α
6-F-Y-M-S(配列番号28)(配列中、α
6はDまたはNである)の配列を含むCDR-H1配列、
ii.V-I-R-N-β
5-β
6-N-β
8-Y-T-β
11-β
12-Y-N-P-S-V-K-G(配列番号29)(配列中、β
5はKまたはRであり、β
6はAまたはPであり、β
8はGまたはAであり、β
11はAまたはTであり、β
12はGまたはDである)の配列を含むCDR-H2配列、
iii.γ
1-R-L-γ
4-Y-G-F-D-Y(配列番号30)(配列中、γ
1はAまたはTであり、γ
4はTまたはSである)の配列を含むCDR-H3配列、
iv.Q-S-S-K-S-L-L-H-S-δ
10-G-K-T-Y-L-N(配列番号31)(配列中、δ
10はNまたはTである)の配列を含むCDR-L1配列、
v.WMSTRAS(配列番号8)の配列を含むCDR-L2配列、及び
vi.Q-Q-F-L-E-φ
6-P-F-T(配列番号32)(配列中、φ
6はYまたはFである)の配列を含むCDR-L3配列
を含む、可変領域、
(b)トランスフェリン受容体に特異的に結合するように修飾された第1のFcポリペプチド、ならびに
(c)第2のFcポリペプチド
を含む、前記抗体。
【請求項2】
前記CDR-H1配列が、配列番号4または12から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記CDR-H2配列が、配列番号5、13、または25から選択される、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
前記CDR-H3配列が、配列番号6、14、または17から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
前記CDR-L1配列が、配列番号7または23から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記CDR-L3配列が、配列番号9または18から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記可変領域が、
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(e)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(g)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記可変領域が、配列番号2、10、15、19、21、24、及び26のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するV
H配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
前記V
H配列が、配列番号15に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
前記V
H配列が、配列番号15に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記V
H配列が、配列番号15を含む、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
前記V
H配列が、配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の抗体。
【請求項13】
前記V
H配列が、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
前記V
H配列が、配列番号24を含む、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記可変領域が、配列番号3、11、16、20、22、及び27のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するV
L配列を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項16】
前記V
L配列が、配列番号16に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
前記V
L配列が、配列番号16に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
前記V
L配列が、配列番号16を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
前記V
L配列が、配列番号22に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項15に記載の抗体。
【請求項20】
前記V
L配列が、配列番号22に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項19に記載の抗体。
【請求項21】
前記V
L配列が、配列番号22を含む、請求項20に記載の抗体。
【請求項22】
前記V
L配列が、配列番号27に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項15に記載の抗体。
【請求項23】
前記V
L配列が、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項22に記載の抗体。
【請求項24】
前記V
L配列が、配列番号27を含む、請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
前記可変領域が、
(a)配列番号15を含むV
H配列、及び配列番号16を含むV
L配列、または
(b)配列番号19を含むV
H配列、及び配列番号20を含むV
L配列、または
(c)配列番号21を含むV
H配列、及び配列番号20を含むV
L配列、または
(d)配列番号19を含むV
H配列、及び配列番号22を含むV
L配列、または
(e)配列番号21を含むV
H配列、及び配列番号22を含むV
L配列、または
(f)配列番号24を含むV
H配列、及び配列番号20を含むV
L配列、または
(g)配列番号26を含むV
H配列、及び配列番号20を含むV
L配列、または
(h)配列番号24を含むV
H配列、及び配列番号22を含むV
L配列、または
(i)配列番号26を含むV
H配列、及び配列番号22を含むV
L配列、または
(j)配列番号2を含むV
H配列、及び配列番号3を含むV
L配列、または
(k)配列番号10を含むV
H配列、及び配列番号11を含むV
L配列、または
(l)配列番号24を含むV
H配列、及び配列番号27を含むV
L配列
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項26】
前記第1のFcポリペプチドが、EU付番に従って、位置380のTrp、Leu、またはGlu、位置384のTyrまたはPhe、位置386のThr、位置387のGlu、位置388のTrp、位置389のSer、Ala、またはVal、位置390のSerまたはAsn、位置413のThrまたはSer、位置415のGluまたはSer、位置416のGlu、及び位置421のPheを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項27】
前記第1のFcポリペプチドが、前記トランスフェリン受容体のアピカルドメインに結合する、請求項26に記載の抗体。
【請求項28】
野生型Fc二量体を有する抗体と比較して、脳への取り込みが改善されている、請求項26または27に記載の抗体。
【請求項29】
EU付番に従って、前記第1のFcポリペプチドがT366W置換を有し、前記第2のFcポリペプチドがT366S、L368A、及びY407V置換を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項30】
EU付番に従って、前記第1のFcポリペプチドがT366S、L368A、及びY407V置換を有し、前記第2のFcポリペプチドがT366W置換を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項31】
前記第1のFcポリペプチド及び/または前記第2のFcポリペプチドが、エフェクター機能を低下させる修飾を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項32】
エフェクター機能を低下させる前記修飾が、EU付番に従って、位置234のAla及び位置235のAlaである置換を含む、請求項31に記載の抗体。
【請求項33】
前記第1のFcポリペプチド及び/または前記第2のFcポリペプチドが、
血清半減期を延長する、天然Fc配列に対するアミノ酸修飾
を含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項34】
前記アミノ酸修飾が、EU付番に従って、位置428のLeu及び位置434のSerである置換を含む、請求項33に記載の抗体。
【請求項35】
前記第1のFcポリペプチドが配列番号41または配列番号64の配列を含み、前記第2のFcポリペプチドが配列番号39または配列番号63の配列を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項36】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号41を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号39を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項35に記載の抗体。
【請求項37】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号64を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号63を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項35に記載の抗体。
【請求項38】
(i)配列番号42に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項35または36に記載の抗体。
【請求項39】
(i)配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項35または37に記載の抗体。
【請求項40】
前記第1のFcポリペプチドが配列番号44または配列番号66の配列を含み、前記第2のFcポリペプチドが配列番号39または配列番号63の配列を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項41】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号44を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号39を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項40に記載の抗体。
【請求項42】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号66を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号63を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項40に記載の抗体。
【請求項43】
(i)配列番号45に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項40または41に記載の抗体。
【請求項44】
(i)配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項40または42に記載の抗体。
【請求項45】
前記第1のFcポリペプチドが配列番号47または配列番号68の配列を含み、前記第2のFcポリペプチドが配列番号39または配列番号63の配列を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項46】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号47を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号39を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項45に記載の抗体。
【請求項47】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号68を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号63を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項45に記載の抗体。
【請求項48】
(i)配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項45または46に記載の抗体。
【請求項49】
(i)配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項45または47に記載の抗体。
【請求項50】
前記第1のFcポリペプチドが配列番号47または配列番号68の配列を含み、前記第2のFcポリペプチドが配列番号61または配列番号84の配列を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項51】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号47を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号61を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項50に記載の抗体。
【請求項52】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号68を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号84を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項50に記載の抗体。
【請求項53】
(i)配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号52に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項50または51に記載の抗体。
【請求項54】
(i)配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項50または52に記載の抗体。
【請求項55】
前記第1のFcポリペプチドが配列番号50または配列番号70の配列を含み、前記第2のFcポリペプチドが配列番号39または配列番号63の配列を含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項56】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号50を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号39を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項55に記載の抗体。
【請求項57】
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号70を含む前記第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号63を含む前記第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、請求項55に記載の抗体。
【請求項58】
(i)配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項55または56に記載の抗体。
【請求項59】
(i)配列番号71に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項55または57に記載の抗体。
【請求項60】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号41を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項61】
(i)配列番号42に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項60に記載の抗体。
【請求項62】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号64を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項63】
(i)配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項62に記載の抗体。
【請求項64】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号44を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項65】
(i)配列番号45に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項64に記載の抗体。
【請求項66】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号66を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項67】
(i)配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項66に記載の抗体。
【請求項68】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号47を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項69】
(i)配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項68に記載の抗体。
【請求項70】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号68を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項71】
(i)配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項70に記載の抗体。
【請求項72】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号47を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号61を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項73】
(i)配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号52に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項72に記載の抗体。
【請求項74】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号68を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号61を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項75】
(i)配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項74に記載の抗体。
【請求項76】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号50を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項77】
(i)配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項76に記載の抗体。
【請求項78】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体であって、
(i)配列番号24を含むV
Hと配列番号70を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号24を含むV
Hと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに
(iii)配列番号22を含むV
Lをそれぞれ含む2つの軽鎖
を含む、前記抗体。
【請求項79】
(i)配列番号71に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、
(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに
(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)
を含む、請求項78に記載の抗体。
【請求項80】
可溶性TREM2タンパク質(sTREM2)のレベルを減少させる、請求項1~79のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項81】
TREM2活性を増強する、請求項1~80のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項82】
食作用を増強するか、または骨髄細胞、ミクログリア、もしくはマクロファージの遊走、分化、機能、もしくは生存を増強する、請求項1~81のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項83】
神経炎症を増加させずにミクログリア機能を増強する、請求項1~82のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項84】
Sykリン酸化を増強する、請求項1~83のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項85】
TREM2リガンドの存在下でSykリン酸化を増強する、請求項84に記載の抗体。
【請求項86】
カニクイザルTREM2タンパク質との交差反応性を示す、請求項1~85のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項87】
請求項1~86のいずれか1項に記載の単離された抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項88】
請求項1~86のいずれか1項に記載の単離された抗体または請求項87に記載の医薬組成物と、
その使用説明書と
を含む、キット。
【請求項89】
対象における神経変性疾患を処置する方法であって、請求項1~86のいずれか1項に記載の単離された抗体または請求項87に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項90】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、原発性年齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアムの筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、認知症を伴うグアドループ型パーキンソニズム、グアドループ型PSP、ハラーフォルデン・シュパッツ病、スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、那須・ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球橋黒質変性症、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維型老年認知症(tangle only dementia)からなる群から選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
神経変性疾患を有する対象においてsTREM2のレベルを減少させる方法であって、請求項1~86のいずれか1項に記載の単離された抗体または請求項87に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項92】
神経変性疾患を有する対象においてTREM2活性を増強する方法であって、請求項1~86のいずれか1項に記載の単離された抗体または請求項87に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項93】
請求項1~86のいずれか1項に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項94】
配列番号42、45、48、51、53、54、及び61のいずれか1つをコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項95】
配列番号42、53、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項96】
配列番号45、53、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項97】
配列番号48、53、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項98】
配列番号48、52、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項99】
配列番号51、53、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項100】
請求項93~99のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項101】
請求項93~99のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項100に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項102】
ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する抗体を発現させる方法であって、請求項101に記載の宿主細胞を、前記抗体の発現に好適な条件下で培養することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月13日に出願された米国特許仮出願第62/960,663号、2020年8月26日に出願された米国特許仮出願第63/070,728号、及び2020年10月14日に出願された米国特許仮出願第63/091,717号の優先権を主張し、その開示は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)は、ミクログリアに発現する膜貫通受容体であり、食作用の調節、細胞の生存、及び炎症性サイトカインの産生において機能すると考えられている。TREM2の突然変異は、アルツハイマー病、那須・ハコラ病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、及び前頭側頭型認知症を含む神経変性疾患で同定されている。さらに、可溶性TREM2(sTREM2)のレベルの変化が、TREM2に突然変異を有するアルツハイマー病患者または前頭側頭型認知症患者の脳脊髄液において報告されている。
【0003】
TREM2活性またはsTREM2のレベルを調節する治療剤が依然として求められている。
【発明の概要】
【0004】
概要
一態様では、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、トランスフェリン受容体タンパク質に結合することができる修飾Fcポリペプチドを含む。本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、抗体は、本明細書で提供される例示的な配列のいずれかに従うCDR、VH、及び/またはVLを含み得、本明細書に記載のトランスフェリン受容体結合変異を含む修飾されたFcポリペプチドをさらに含み得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、TREM2に特異的に結合する抗体は、以下を含む:
(a)i.G-F-T-F-T-α6-F-Y-M-S(配列番号28)(配列中、α6はDまたはNである)の配列を含むCDR-H1配列、
ii.V-I-R-N-β5-β6-N-β8-Y-T-β11-β12-Y-N-P-S-V-K-G(配列番号29)(配列中、β5はKまたはRであり、β6はAまたはPであり、β8はGまたはAであり、β11はAまたはTであり、β12はGまたはDである)の配列を含むCDR-H2配列、
iii.γ1-R-L-γ4-Y-G-F-D-Y(配列番号30)(配列中、γ1はAまたはTであり、γ4はTまたはSである)の配列を含むCDR-H3配列、
iv.Q-S-S-K-S-L-L-H-S-δ10-G-K-T-Y-L-N(配列番号31)(配列中、δ10はNまたはTである)の配列を含むCDR-L1配列、
v.WMSTRAS(配列番号8)の配列を含むCDR-L2配列、及び
vi.Q-Q-F-L-E-φ6-P-F-T(配列番号32)(配列中、φ6はYまたはFである)の配列を含むCDR-L3配列を含む、可変領域、
(b)トランスフェリン受容体に特異的に結合するように修飾された第1のFcポリペプチド、ならびに
(c)第2のFcポリペプチド。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び第2のFcポリペプチドは、会合してFc二量体を形成する。
【0007】
いくつかの実施形態では、CDR-H1配列は、配列番号4または12から選択される。いくつかの実施形態では、CDR-H2配列は、配列番号5、13、または25から選択される。いくつかの実施形態では、CDR-H3配列は、配列番号6、14、または17から選択される。いくつかの実施形態では、CDR-L1配列は、配列番号7または23から選択される。いくつかの実施形態では、CDR-L3配列は、配列番号9または18から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、可変領域は、以下を含む:
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(e)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(g)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0009】
いくつかの実施形態では、可変領域は、配列番号2、10、15、19、21、24、及び26のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列を含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号15に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号15に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号15を含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号24に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号24に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VH配列は、配列番号24を含む。
【0012】
本態様のいくつかの実施形態では、可変領域は、配列番号3、11、16、20、22、及び27のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列を含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号16に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号16に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号16を含む。
【0014】
ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号22に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号22に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号22を含む。
【0015】
ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号27に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号27に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、VL配列は、配列番号27を含む。
【0016】
本態様のいくつかの実施形態では、可変領域は、以下を含む:
(a)配列番号15を含むVH配列、及び配列番号16を含むVL配列、または
(b)配列番号19を含むVH配列、及び配列番号20を含むVL配列、または
(c)配列番号21を含むVH配列、及び配列番号20を含むVL配列、または
(d)配列番号19を含むVH配列、及び配列番号22を含むVL配列、または
(e)配列番号21を含むVH配列、及び配列番号22を含むVL配列、または
(f)配列番号24を含むVH配列、及び配列番号20を含むVL配列、または
(g)配列番号26を含むVH配列、及び配列番号20を含むVL配列、または
(h)配列番号24を含むVH配列、及び配列番号22を含むVL配列、または
(i)配列番号26を含むVH配列、及び配列番号22を含むVL配列、または
(j)配列番号2を含むVH配列、及び配列番号3を含むVL配列、または
(k)配列番号10を含むVH配列、及び配列番号11を含むVL配列、または
(l)配列番号24を含むVH配列、及び配列番号27を含むVL配列。
【0017】
本態様のいくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、EU付番に従って、位置380のTrp、Leu、またはGlu、位置384のTyrまたはPhe、位置386のThr、位置387のGlu、位置388のTrp、位置389のSer、Ala、またはVal、位置390のSerまたはAsn、位置413のThrまたはSer、位置415のGluまたはSer、位置416のGlu、及び位置421のPheを含む。いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは、トランスフェリン受容体のアピカルドメインに結合する。特定の実施形態では、抗体は、野生型Fc二量体を有する抗体と比較して、脳への取り込みが改善されている。
【0018】
ある特定の実施形態では、EU付番に従って、第1のFcポリペプチドはT366W置換を有し、第2のFcポリペプチドはT366S、L368A、及びY407V置換を有する。
【0019】
他の実施形態では、EU付番に従って、第1のFcポリペプチドはT366S、L368A、及びY407V置換を有し、第2のFcポリペプチドはT366W置換を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させる修飾を含む。ある特定の実施形態では、エフェクター機能を低下させる修飾は、EU付番に従って、位置234のAla及び位置235のAlaである置換を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチド及び/または第2のFcポリペプチドは、血清半減期を延長する、天然Fc配列に対するアミノ酸修飾を含む。ある特定の実施形態では、アミノ酸修飾は、EU付番に従って、位置428のLeu及び位置434のSerである置換を含む。
【0022】
本態様のいくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは配列番号41または配列番号64の配列を含み、第2のFcポリペプチドは配列番号39または配列番号63の配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号41を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号64を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号42に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0023】
本態様のいくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは配列番号44または配列番号66の配列を含み、第2のFcポリペプチドは配列番号39または配列番号63の配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号44を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号66を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号45に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0024】
本態様のいくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは配列番号47または配列番号68の配列を含み、第2のFcポリペプチドは配列番号39または配列番号63の配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号47を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号68を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0025】
本態様のいくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは配列番号47または配列番号68の配列を含み、第2のFcポリペプチドは配列番号61または配列番号84の配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号47を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号61を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号68を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号84を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号52に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0026】
本態様のいくつかの実施形態では、第1のFcポリペプチドは配列番号50または配列番号70の配列を含み、第2のFcポリペプチドは配列番号39または配列番号63の配列を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号50を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号70を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号71に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0027】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号41を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号42に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0028】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号64を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0029】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号44を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号45に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0030】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号66を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0031】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号47を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0032】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号68を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0033】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号47を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号61を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、(i)配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号52に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)。
【0034】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号68を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号61を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0035】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号50を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号39を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号53に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0036】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、当該抗体は、(i)配列番号24を含むVHと配列番号70を含む第1のFcポリペプチドとを含む、第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号24を含むVHと配列番号63を含む第2のFcポリペプチドとを含む、第2の重鎖(HC)、ならびに(iii)配列番号22を含むVLをそれぞれ含む2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、(i)配列番号71に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第1の重鎖(HC)、(ii)配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる第2のHC、ならびに(iii)配列番号54に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ含むかまたはそれからなる第1及び第2の軽鎖(LC)を含む。
【0037】
本明細書に記載の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、可溶性TREM2タンパク質(sTREM2)のレベルを減少させる。いくつかの実施形態では、抗体は、TREM2活性を増強する。いくつかの実施形態では、抗体は、食作用を増強するか、または骨髄細胞、ミクログリア、もしくはマクロファージの遊走、分化、機能、もしくは生存を増強する。いくつかの実施形態では、抗体は、神経炎症を増加させずにミクログリア機能を増強する。いくつかの実施形態では、抗体は、Sykリン酸化を増強する。いくつかの実施形態では、抗体は、TREM2リガンドの存在下でSykリン酸化を増強する。いくつかの実施形態では、抗体は、カニクイザルTREM2タンパク質との交差反応性を示す。
【0038】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の単離された抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0039】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の単離された抗体または本明細書に記載の医薬組成物と、その使用説明書とを含む、キットを提供する。
【0040】
別の態様では、本開示は、対象における神経変性疾患を処置する方法であって、本明細書に記載の単離された抗体または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、原発性年齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアムの筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、認知症を伴うグアドループ型パーキンソニズム、グアドループ型PSP、ハラーフォルデン・シュパッツ病、スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、那須・ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球橋黒質変性症、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維型老年認知症(tangle only dementia)からなる群から選択される。
【0041】
別の態様では、本開示は、神経変性疾患を有する対象においてsTREM2のレベルを減少させる方法であって、本明細書に記載の単離された抗体または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0042】
別の態様では、本開示は、神経変性疾患を有する対象においてTREM2 活性を増強する方法であって、本明細書に記載の単離された抗体または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0043】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0044】
別の態様では、本開示は、配列番号42、45、48、51、53、54、及び61のいずれか1つをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0045】
別の態様では、本開示は、配列番号42、53、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0046】
別の態様では、本開示は、配列番号45、53、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0047】
別の態様では、本開示は、配列番号48、53、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0048】
別の態様では、本開示は、配列番号48、52、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0049】
別の態様では、本開示は、配列番号51、53、及び54をコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0050】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0051】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたは本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0052】
別の態様では、本開示は、ヒト骨髄細胞発現トリガー受容体2(TREM2)に特異的に結合する抗体を発現させる方法であって、本明細書に記載の宿主細胞を、当該抗体の発現に好適な条件下で培養することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1A】ヒトTREM2-Dap12過剰発現HEK細胞における、代表的な抗TREM2抗体(CL0020188)のヒト化し配列最適化したバリアントについて用量設定した細胞結合曲線を示す。
【
図1B】ヒトTREM2-Dap12過剰発現HEK細胞における、代表的な抗TREM2抗体(CL0020188)のヒト化し配列最適化したバリアントについて用量設定した細胞結合曲線を示す。
【
図1C】ヒトTREM2-Dap12過剰発現HEK細胞における、代表的な抗TREM2抗体(CL0020188)のヒト化し配列最適化したバリアントについて用量設定した細胞結合曲線を示す。
【
図1D】ヒトTREM2-Dap12過剰発現HEK細胞における、代表的な抗TREM2抗体(CL0020188)のヒト化し配列最適化したバリアントについて用量設定した細胞結合曲線を示す。
【
図1E】ヒトTREM2-Dap12過剰発現HEK細胞における、代表的な抗TREM2抗体(CL0020188)のヒト化し配列最適化したバリアントについて用量設定した細胞結合曲線を示す。
【
図1F】ヒトTREM2-Dap12過剰発現HEK細胞における、代表的な抗TREM2抗体(CL0020188)のヒト化し配列最適化したバリアントについて用量設定した細胞結合曲線を示す。
【
図1G】ヒトTREM2-Dap12過剰発現HEK細胞における、代表的な抗TREM2抗体(CL0020188)のヒト化し配列最適化したバリアントについて用量設定した細胞結合曲線を示す。
【
図1H】ヒトTREM2-Dap12過剰発現HEK細胞における、代表的な抗TREM2抗体(CL0020188)のヒト化し配列最適化したバリアントについて用量設定した細胞結合曲線を示す。
【
図2】HEK293細胞における、代表的なATV:TREM2及び非トランスフェリン結合Fcを有する対応する抗TREM2抗体(「抗TREM2」)のヒトTREM2に対する用量反応結合曲線を示す。
【
図3】TREM2発現HEK293細胞における、代表的なATV:TREM2及び対応する抗TREM2抗体(TREM2 IgG)によるpSykシグナル活性化の用量反応結合曲線を示す。
【
図4A】iPSCミクログリアにおける、代表的なATV:TREM2による処置に応じた脂質クリアランスの用量反応曲線を示す。
【
図4B】iPSCミクログリアにおける、代表的なATV:TREM2による処置に応じた脂質クリアランスの用量反応曲線を示す。
【
図5A】オレイン酸刺激後にATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における脂質蓄積の代表的画像を示す。
【
図5C】ミエリン刺激後にATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞におけるトリグリセリド、アシルカルニチン、及びTCA回路中間体種のレベルの調節を示すヒートマップである。
【
図5D】ミエリン刺激後にATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における代表的なトリグリセリド種レベルのレベル変化を示す棒グラフを示す。
【
図5E】ミエリン刺激後にATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における代表的なアシルカルニチン種レベルのレベル変化を示す棒グラフを示す。
【
図5F】ミエリン刺激後にATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における代表的なTCA回路中間体種レベルのレベル変化を示す棒グラフを示す。
【
図6A】ミエリン刺激後にATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における特定のトリグリセリド種のレベル変化を示す棒グラフを示す。
【
図6B】ミエリン刺激後にATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における特定のセラミド種のレベル変化を示す棒グラフを示す。
【
図6C】ミエリン刺激後にATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における特定のアシルカルニチン種のレベル変化を示す棒グラフを示す。
【
図7A】ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリアにおけるmTORシグナル経路標的のウエスタンブロットの代表的な画像である。
【
図7B】ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリアにおけるmTORシグナル経路標的のレベル変化を示すプロットを示す。
【
図7C】ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリアにおけるmTORシグナル経路標的のレベル変化を示すプロットを示す。
【
図7D】ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリアにおけるmTORシグナル経路標的のレベル変化を示すプロットを示す。
【
図7E】ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリアにおけるmTORシグナル経路標的のレベル変化を示すプロットを示す。
【
図8】ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリアにおけるプログラニュリン(PGRN)のレベル変化を示す棒グラフである。
【
図9】ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリアにおける代表的なビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)種のレベル変化を示すグラフである。
【
図10A】ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリアにおける酸素消費の代表的なカイネティクスグラフである。
【
図10B】CPT1阻害剤の存在下及び非存在下で、ATV:TREM2で処置したiPSC由来ミクログリア細胞の最大呼吸能力を示す棒グラフである。
【
図11A】抗TREM2抗体で処置したヒトマクロファージ細胞における細胞生存率の用量反応曲線である。
【
図12】抗TREM2抗体で処置したヒトマクロファージ細胞における相対的サイトカイン放出のヒートマップである。
【
図13A】抗TREM2抗体で処置したiPSC由来ミクログリア細胞におけるトリグリセリド種の相対変化を示すボルケーノプロットを示す。
【
図13B】抗TREM2抗体で処置したiPSC由来ミクログリア細胞におけるトリグリセリド種の相対変化を示すボルケーノプロットを示す。
【
図13C】抗TREM2抗体で処置したiPSC由来ミクログリア細胞におけるトリグリセリド種の相対変化を示すボルケーノプロットを示す。
【
図13D】抗TREM2抗体で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における代表的なトリグリセリド種のレベル変化を示す棒グラフを示す。
【
図13E】抗TREM2抗体で処置したiPSC由来ミクログリア細胞における代表的なトリグリセリド種のレベル変化を示す棒グラフを示す。
【
図14A】抗TREM2抗体で処置したiPSC由来ミクログリア細胞の細胞溶解物における抗体濃度に対するTREM2レベルのプロットである。
【
図14B】抗TREM2抗体で処置したiPSC由来ミクログリア細胞の細胞培養培地における抗体濃度に対するTREM2レベルのプロットである。
【
図15】カニクイザルに投与した抗TREM2抗体の薬物動態プロファイルを示すプロットである。
【
図16】A及びBは、ATV:TREM2またはATV:RSVのいずれかで処置したTB36/hTfR KIマウスの脳内における1mm
2あたりのEdU
+Iba
+細胞(A)及び相対Iba
+領域(B)を示すプロットである。
【
図17】A及びBは、ATV:TREM2、対応するTREM2抗体、参照抗体#2、またはATV:RSVのいずれかで処置したTB36/hTfR KIマウスの脳内における1mm
2あたりのEdU
+Iba
+細胞(A)及び相対Iba
+領域(B)を示すプロットである。グラフは、平均±SEM及びp値を示す:一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定;*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001。
【
図18】A及びBは、ATV:TREM2、対応するTREM2抗体、参照抗体#2、またはATV:RSVのいずれかで処置したTB36/hTfR KIマウスの脳内におけるサイトカインIP-10レベル(A)及びサイトカインMCP-5レベル(B)を示すプロットである。グラフは、反復実験の±SEMの平均値を示す。グラフは、平均±SEM及びp値を示す:一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定;**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001。
【
図19】ATV:TREM2、対応するTREM2抗体、参照抗体#2、またはATV:RSVのいずれかで処置したTB36/hTfR KIマウスの脳内におけるグリアマーカーCSF1Rレベルを示すプロットである。グラフは、平均±SEM及びp値を示す:一元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定;*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001。
【
図20】TB36/hTfR KIマウスにおけるATV:TREM2、対応するTREM2抗体、参照抗体#2、またはATV:RSVのいずれかの血漿中PKプロファイルを示すプロットである。
【
図21】TB36/hTfR KIマウスにおけるATV:TREM2、対応するTREM2抗体、参照抗体#2、またはATV:RSVのいずれかの脳内PKプロファイルを示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
I.緒言
TREM2は、ミクログリア、樹状細胞、マクロファージ、及び破骨細胞の細胞表面に発現する膜貫通受容体である。特定の理論に束縛されるものではないが、リガンド結合後、TREM2は膜貫通アダプタータンパク質であるDNAX活性化タンパク質12(DAP12)とシグナル伝達複合体を形成し、次に、プロテインキナーゼSRCによってチロシンリン酸化されると考えられている。活性化TREM2/DAP12シグナル伝達複合体は、Sykキナーゼなどのキナーゼを動員しリン酸化することにより、細胞内シグナル伝達を媒介すると考えられている。TREM2/DAP12シグナル伝達は、食作用、細胞の増殖及び生存、炎症性サイトカイン分泌などの活性、ならびにミクログリア及びマクロファージなどの細胞の遊走を調節する。TREM2は調節された膜内タンパク質分解を受け、膜結合性完全長TREM2が、メタロプロテアーゼADAM10によって、細胞からシェディングされるsTREM2部分と、ガンマセクレターゼによってさらに分解される膜に保持されたC末端断片とに切断される。sTREM2のレベルの変化が、アルツハイマー病または前頭側頭型認知症を有し、かつTREM2に突然変異を有する患者において報告されている。さらに、TREM2の突然変異は、食作用の障害及びミクログリア機能の低減などの機能の変化に関連する。
【0055】
以下の実施例セクションに詳述するように、ヒトTREM2に特異的に結合し、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体の1つ以上の下流の機能を調節する抗体を作製した。ある特定の実施形態では、抗体は、Fcポリペプチドのトランスフェリン受容体(例えば、ヒト由来のTfR)への結合を可能にする変異を含有するFcポリペプチドをさらに含む。いくつかの態様において、本明細書で開示される抗体は、修飾されたFcポリペプチドを介してトランスフェリン受容体タンパク質(例えば、脳内皮細胞(BEC)の表面上に発現するもの)に結合することができ、それにより、TfR結合Fc変異を欠く抗体よりも効果的に血液脳関門(BBB)を通過することができる。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、Fcポリペプチド中にエフェクター機能を低下させるまたは排除する変異、及び例えば、抗体FcのFc胎児性受容体(FcRn)への結合を増加させることによって、in vivo半減期を増加させる変異を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2活性を増強する(例えば、食作用を増強するか、または骨髄細胞、ミクログリア、もしくはマクロファージの分化、機能、遊走、もしくは生存を増強する)。したがって、別の態様では、TREM2活性を、例えば、神経変性疾患を有する対象において増強する方法が提供される。
【0057】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、sTREM2のシェディングを低減させる。したがって、別の態様では、sTREM2のレベルを、例えば、神経変性疾患を有する対象において減少させる方法が提供される。
【0058】
II.定義
本明細書で使用する場合、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という単数形には、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「抗体」への言及は、2つ以上のそのような分子などの組み合わせを任意選択的に含む。
【0059】
本明細書で使用する場合、「約」及び「およそ」という用語は、数値または範囲で指定された量を修正するために使用される場合、その数値及び当業者に公知の値からの妥当な偏差、例えば、±20%、±10%または±5%が、記載された値の意図する意味の範囲内であることを示す。
【0060】
本明細書で使用する場合、「TREM2タンパク質」という用語は、遺伝子TREM2によってコードされる骨髄細胞発現トリガー受容体2タンパク質を指す。本明細書で使用する場合、「TREM2タンパク質」は、任意の脊椎動物、例えば、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット)、及び他の哺乳動物の天然の(すなわち、野生型)TREM2タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、TREM2タンパク質は、UniprotKBアクセッション番号Q9NZC2(配列番号1)に同定される配列を有するヒトTREM2タンパク質である。
【0061】
本明細書で使用する場合、「抗TREM2抗体」という用語は、TREM2タンパク質(例えば、ヒトTREM2)に特異的に結合する抗体を指す。
【0062】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリンフォールドを有するタンパク質であって、その可変領域を介して抗原と特異的に結合するタンパク質を指す。この用語は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体などの多重特異性抗体、単一特異性抗体、一価抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体を包含する。「抗体」という用語はまた、本明細書で使用する場合、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、及び二価scFvを含むがこれらに限定されない抗体断片であって、その可変領域を介して結合特異性を保持する抗体断片も含む。抗体は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される軽鎖を含有し得る。抗体は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類される重鎖を含有し得、これらは順に、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEという免疫グロブリンクラスをそれぞれ定義する。
【0063】
本明細書で使用する場合、「抗TREM2抗原結合部分」という用語は、TREM2タンパク質(例えば、ヒトTREM2)に特異的に結合する抗原結合セグメントまたは全体を指す。「抗原結合部分」及び「抗原結合断片」という用語は、本明細書において互換的に使用され、その可変領域を介して抗原(例えば、TREM2タンパク質)に特異的に結合する能力を保持した1つ以上の抗体の断片を指す。抗原結合断片の例としては、Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片)、F(ab’)2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片から構成される二価断片)、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、相補性決定領域(CDR)、VL(軽鎖可変領域)、ならびにVH(重鎖可変領域)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、生殖系列可変(V)遺伝子、多様性(D)遺伝子、または結合(J)遺伝子に由来し(かつ定常(Cμ及びCδ)遺伝子セグメントには由来せず)抗体に抗原と結合する特異性を与える、抗体重鎖または軽鎖中のドメインを指す。通常、抗体可変領域は、3つの超可変「相補性決定領域」が散在する4つの保存された「フレームワーク」領域を含む。
【0065】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域によって構築された4つのフレームワーク領域に割り込む、各鎖中の3つの超可変領域を指す。CDRは、抗原のエピトープへの抗体結合を主として担っている。各鎖のCDRは、通常、N末端から順番に付番してCDR1、CDR2及びCDR3と称され、通常、特定のCDRが位置する鎖によっても識別される。したがって、VH CDR3またはCDR-H3は、それが見出される抗体重鎖の可変領域に位置し、一方、VL CDR1またはCDR-L1は、それが見出される抗体軽鎖の可変領域に由来するCDR1である。
【0066】
異なる軽鎖または重鎖の「フレームワーク領域」または「FR」は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成要素である軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域を組み合わせたものは、CDRを3次元空間に配置し整列させるように機能する。フレームワーク配列は、生殖系列抗体の遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースまたは公開されている参照文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、ヒト及びマウス配列に関する「VBASE2」生殖系列可変遺伝子配列データベースに見出すことができる。
【0067】
CDR及びフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当該技術分野における様々な周知の定義、例えば、Kabat、Chothia、国際ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、AbM、及び観察された抗原接触(「Contact」)を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、CDRは、Contact定義に従って決定される。MacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745(1996)を参照されたい。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、及び/またはContact CDR定義の組み合わせにより決定される。
【0068】
「エピトープ」という用語は、抗体のCDRが特異的に結合する抗原の区域または領域を指し、数個のアミノ酸または数個のアミノ酸の一部、例えば、5個または6個以上、例えば、20個以上のアミノ酸、またはそれらのアミノ酸の一部を含み得る。例えば、標的がタンパク質である場合、エピトープは、連続したアミノ酸(例えば、線状エピトープ)、またはタンパク質フォールディングによって近接するタンパク質の異なる部分からのアミノ酸(例えば、不連続エピトープもしくは立体構造的エピトープ)で構成され得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、1つのアミノ酸において(例えば、セリンまたはスレオニン残基において)リン酸化される。
【0069】
本明細書で使用する場合、「エピトープを認識する」という語句は、抗TREM2抗体に関して使用する場合、抗体CDRが、抗原(すなわち、TREM2タンパク質)と、そのエピトープにおいて、またはそのエピトープを含有する抗原の部分において相互作用するか、またはそれに特異的に結合することを意味する。
【0070】
「モノクローナル抗体」は、細胞の単一クローンまたは単一細胞株より産生され、それらの一次アミノ酸配列と同一の抗体分子からなるか、またはそれから本質的になる抗体を指す。
【0071】
「ポリクローナル抗体」は、集団中の異なる抗体が抗原の異なるエピトープに結合する、不均一な抗体集団から得られた抗体を指す。
【0072】
「キメラ抗体」は、定常領域またはその一部が、変化されているか、置換されているか、または交換されており、その結果、抗原結合部位(すなわち、可変領域、CDR、またはその一部)が異なるまたは変化されたクラス、エフェクター機能、及び/または種の定常領域に連結しているか、あるいは可変領域またはその一部が、異なるまたは変化された抗原特異性(例えば、異なる種に由来するCDR及びフレームワーク領域)を有する可変領域によって変化されているか、置換されているか、または交換されている抗体分子を指す。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ある供給源または種(例えば、マウス)に由来する可変領域と、別の供給源または種(例えば、ヒト)に由来する定常領域とを含むモノクローナル抗体である。キメラ抗体を作製する方法は、当該技術分野において説明されている。
【0073】
「ヒト化抗体」は、CDR外の非ヒト免疫グロブリンに由来する最低限の配列を含有する非ヒト供給源(例えば、マウス)に由来するキメラ免疫グロブリンである。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ(例えば、2つ)の抗原結合可変ドメイン(複数可)を含み、CDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に実質的に対応し、フレームワーク領域は、ヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域に実質的に対応する。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリン配列の少なくとも一部を含み得る。抗体ヒト化の方法は、当該技術分野において公知である。
【0074】
「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」は、典型的にはヒト生殖系列遺伝子に由来する、ヒト重鎖及び軽鎖配列を有する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト細胞によって、ヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト動物(例えば、ヒト抗体配列を発現するように遺伝子操作されたトランスジェニックマウス)によって、またはファージディスプレイプラットフォームによって産生される。
【0075】
「特異的に結合する」という用語は、試料中のエピトープまたは標的に対して、別のエピトープまたは非標的化合物(例えば、構造的に異なる抗原)に結合するよりも、より高い親和性で、より高い結合力で、及び/またはより長い持続時間、エピトープまたは標的に結合する分子(例えば、抗体またはその抗原結合部分)を指す。いくつかの実施形態では、エピトープまたは標的に特異的に結合する抗体(またはその抗原結合部分)は、他のエピトープまたは非標的化合物よりも少なくとも5倍高い親和性、例えば、少なくとも5倍、10倍、100倍、1,000倍、または10,000倍以上の親和性で、エピトープまたは標的に結合する抗体(またはその抗原結合部分)である。本明細書で使用する場合、特定のエピトープまたは標的「への特異的な結合」、「に特異的に結合する」または「に特異的である」という用語は、例えば、結合するエピトープまたは標的に対して、例えば、10-4M以下、例えば、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12Mの平衡解離定数KDを有する分子によって示され得る。ある種に由来する標的(例えば、TREM2タンパク質)に特異的に結合する抗体が、その標的(例えば、TREM2タンパク質)のオルソログにも特異的に結合し得ることが、当業者には理解されよう。
【0076】
「結合親和性」という用語は、本明細書では、2つの分子間、例えば、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の非共有結合相互作用の強度を指すものとして使用される。したがって、例えば、別途示さない限り、または文脈から明らかでない限り、この用語は、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の1:1の相互作用を指し得る。結合親和性は、平衡解離定数(KD)を測定することにより定量化することができ、これは、結合速度定数(ka、時間-1 M-1)で除した解離速度定数(kd、時間-1)を指す。KDは、複合体形成及び解離のカイネティクスを、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えばBiacore(商標)システム)、KinExA(登録商標)などの結合平衡除外法、及びBioLayer干渉法(例えば、ForteBio(登録商標)Octetプラットフォームの使用)を使用して測定することにより決定することができる。本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、抗体(またはその抗原結合部分)と抗原との間の1:1の相互作用を反映するような正式な結合親和性のみならず、強力な結合を反映し得るKD値が算出される見かけの親和性をも含む。
【0077】
「交差反応する」という用語は、本明細書で使用する場合、抗体を産生させた抗原とは別の抗原に結合する、抗体の能力を指す。いくつかの実施形態では、交差反応性は、抗体を産生させた抗原とは別の種に由来する抗原に結合する、抗体の能力を指す。非限定的な例として、ヒトTREM2ペプチドに対して産生された本明細書に記載の抗TREM2抗体は、異なる種(例えば、サルまたはマウス)に由来するTREM2ペプチドまたはタンパク質との交差反応性を示し得る。
【0078】
本明細書で使用する場合、「トランスフェリン受容体」または「TfR」は、トランスフェリン受容体タンパク質1を指す。ヒトトランスフェリン受容体1ポリペプチド配列は、配列番号62に記載される。他の種に由来するトランスフェリン受容体タンパク質1配列も知られている(例えば、チンパンジー:アクセッション番号XP_003310238.1、アカゲザル:NP_001244232.1、イヌ:NP_001003111.1、ウシ:NP_001193506.1、マウス:NP_035768.1、ラット:NP_073203.1、及びニワトリ:NP_990587.1)。「トランスフェリン受容体」という用語は、トランスフェリン受容体タンパク質1染色体遺伝子座にある遺伝子によってコードされる例示的な参照配列、例えば、ヒト配列のアレルバリアントも包含する。完全長のトランスフェリン受容体タンパク質は、短いN末端細胞内領域、膜貫通領域及び大きな細胞外ドメインを含む。細胞外ドメインは、プロテアーゼ様ドメイン、ヘリカルドメイン、及びアピカルドメインの3つのドメインを特徴とする。ヒトトランスフェリン受容体1のアピカルドメイン配列は、配列番号55に記載される。
【0079】
本明細書で使用する場合、「CH3ドメイン」及び「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン定常領域ドメインポリペプチドを指す。IgG抗体の文脈では、CH3ドメインポリペプチドは、EU付番スキームに従って付番された位置341前後~位置447前後のアミノ酸のセグメントを指し、CH2ドメインポリペプチドは、EU付番スキームに従って付番したとき、位置231前後~位置340前後のアミノ酸のセグメントを指す。CH2及びCH3ドメインポリペプチドはまた、IMGT(ImMunoGeneTics)付番スキームによって付番することもでき、IMGT Scientificチャートナンバリング(IMGTウェブサイト)に従うと、CH2ドメイン付番は1~110であり、CH3ドメイン付番は1~107である。CH2及びCH3ドメインは、免疫グロブリンのFc領域の一部である。IgG抗体の文脈では、Fc領域は、EU付番スキームに従って付番したとき、位置231前後~位置447前後のアミノ酸セグメントを指す。本明細書で使用する場合、「Fc領域」という用語は、抗体のヒンジ領域の少なくとも一部も含み得る。例示的な部分ヒンジ領域配列は、配列番号57に記載される。
【0080】
ポリペプチド配列中の所与のアミノ酸残基を同定する文脈で使用する場合、「~に対応する」、「~を参照して決定される」、または「~を参照して付番される」という用語は、所与のアミノ酸配列を参照配列に対して最大限アライメントして比較したときの、特定の参照配列の残基の位置を指す。したがって、例えば、配列番号38に最適にアライメントした場合、配列番号38のアミノ酸と残基がアライメントする場合、ポリペプチド中のアミノ酸残基は、配列番号38のアミノ酸111~217の領域のアミノ酸「に対応する」。参照配列にアライメントされるポリペプチドは、参照配列と同じ長さである必要はない。
【0081】
本明細書で使用する場合、「Fcポリペプチド」という用語は、構造ドメインとしてのIgフォールドを特徴とする、天然免疫グロブリン重鎖ポリペプチドのC末端領域を指す。Fcポリペプチドは、少なくともCH2ドメイン及び/またはCH3ドメインを含む定常領域配列を含有し、ヒンジ領域の少なくとも一部を含有し得るが、可変領域は含有しない。
【0082】
「修飾されたFcポリペプチド」は、野生型免疫グロブリン重鎖Fcポリペプチド配列と比較して、少なくとも1つの変異、例えば、置換、欠失または挿入を有するが、天然Fcポリペプチドの全体的なIgフォールドまたは構造を保持するFcポリペプチドを指す。
【0083】
「単離された」という用語は、核酸またはタンパク質(例えば、抗体)に関して使用する場合、核酸またはタンパク質が、その天然状態において会合していた他の細胞成分を本質的に含まないことを示す。純度及び均一性は、通常、電気泳動(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー)などの分析化学技法を使用して判定される。いくつかの実施形態では、単離された核酸またはタンパク質(例えば、抗体)は、少なくとも85%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、または少なくとも99%純粋である。
【0084】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるもの、ならびにそれらのアミノ酸が後で修飾されたもの、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンである。天然α-アミノ酸には、限定されないが、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びこれらの組み合わせが含まれる。天然α-アミノ酸の立体異性体には、限定されないが、D-アラニン(D-Ala)、D-システイン(D-Cys)、D-アスパラギン酸(D-Asp)、D-グルタミン酸(D-Glu)、D-フェニルアラニン(D-Phe)、D-ヒスチジン(D-His)、D-イソロイシン(D-Ile)、D-アルギニン(D-Arg)、D-リジン(D-Lys)、D-ロイシン(D-Leu)、D-メチオニン(D-Met)、D-アスパラギン(D-Asn)、D-プロリン(D-Pro)、D-グルタミン(D-Gln)、D-セリン(D-Ser)、D-スレオニン(D-Thr)、D-バリン(D-Val)、D-トリプトファン(D-Trp)、D-チロシン(D-Tyr)、及びこれらの組み合わせが含まれる。「アミノ酸類似体」とは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合している、α炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。「アミノ酸模倣物」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の形で機能する化学化合物を指す。アミノ酸は、本明細書では、一般に知られている3文字の記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字の記号のいずれかにより言及されている場合がある。
【0085】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は本明細書において互換的に使用され、単一鎖中のアミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸ポリマーは、全てがL-アミノ酸のもの、全てがD-アミノ酸のもの、またはL-アミノ酸及びD-アミノ酸の混合物を含み得る。
【0086】
本明細書で使用する場合、「タンパク質」という用語は、単一鎖ポリペプチドの1つのポリペプチドまたは二量体(すなわち、2つ)または多量体(すなわち、3つ以上)のいずれかを指す。タンパク質の単一鎖ポリペプチドは、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)または非共有結合相互作用によって連結され得る。
【0087】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、任意の長さのヌクレオチドの鎖を互換的に指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、あるいはDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼにより鎖に組み込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。本明細書において企図されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖DNA及び二本鎖DNA、一本鎖RNA及び二本鎖RNA、ならびに一本鎖DNAと、二本鎖DNAと、一本鎖RNAと、二本鎖RNAとの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。
【0088】
「保存的置換」、「保存的突然変異」という用語は、あるアミノ酸の、類似の特徴を有すると分類され得る別のアミノ酸による置換をもたらす変化を指す。このように定義された保存的アミノ酸グループの分類の例としては、Glu(グルタミン酸またはE)、Asp(アスパラギン酸またはD)、Asn(アスパラギンまたはN)、Gln(グルタミンまたはQ)、Lys(リジンまたはK)、Arg(アルギニンまたはR)、及びHis(ヒスチジンまたはH)を含む「荷電/極性グループ」、Phe(フェニルアラニンまたはF)、Tyr(チロシンまたはY)、Trp(トリプトファンまたはW)、及び(ヒスチジンまたはH)を含む「芳香族グループ」、ならびにGly(グリシンまたはG)、Ala(アラニンまたはA)、Val(バリンまたはV)、Leu(ロイシンまたはL)、Ile(イソロイシンまたはI)、Met(メチオニンまたはM)、Ser(セリンまたはS)、Thr(スレオニンまたはT)、及びCys(システインまたはC)を含む「脂肪族グループ」を挙げることができる。各グループ内で、サブグループを特定することもできる。例えば、荷電または極性アミノ酸のグループは、Lys、Arg及びHisで構成される「正に荷電したサブグループ」、Glu及びAspで構成される「負に荷電したサブグループ」、ならびにAsn及びGlnで構成される「極性サブグループ」を含むサブグループに細分することができる。別の例では、芳香族または環状のグループは、Pro、His及びTrpから構成される「窒素環サブグループ」、ならびにPhe及びTyrから構成される「フェニルサブグループ」を含むサブグループに細分することができる。さらなる別の例では、脂肪族グループは、サブグループ、例えば、Val、Leu、Gly及びAlaから構成される「脂肪族非極性サブグループ」、ならびにMet、Ser、Thr及びCysから構成される「脂肪族微極性サブグループ」に細分することができる。保存的突然変異の分類の例としては、前述のサブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、限定されないが、正電荷を維持することができるような、Argの代わりにLysまたはその逆;負電荷を維持することができるような、Aspの代わりにGluまたはその逆;遊離-OHを維持することができるような、Thrの代わりにSerまたはその逆;及び遊離-NH2を維持することができるような、Asnの代わりにGlnまたはその逆、が挙げられる。いくつかの実施形態では、疎水性アミノ酸は、疎水性を保持するために、例えば活性部位中で天然疎水性アミノ酸に対して置換される。
【0089】
2つ以上のポリペプチド配列との関連における「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、比較ウィンドウにわたって、または配列比較アルゴリズムを使用して、もしくは手動アラインメント及び目視検査により測定される指定領域にわたって、最大限一致するように比較及びアラインメントされる場合に、同じであるかまたは特定のパーセンテージ、例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%以上、特定の領域にわたって同一であるアミノ酸残基を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。
【0090】
ポリペプチドの配列比較では、通常、1つのアミノ酸配列が参照配列として機能し、これを候補配列と比較する。最大アラインメントを得るために、当業者が利用可能な様々な方法、例えば、視覚的アラインメントまたは公知のアルゴリズムを使用した公的に利用可能なソフトウェアを使用してアラインメントを実施することができる。そのようなプログラムとしては、BLASTプログラム、ALIGN、ALIGN-2(Genentech,South San Francisco,Calif.)またはMegalign(DNASTAR)が挙げられる。最大アラインメントを得るためのアラインメントに用いられるパラメータは、当業者によって決定され得る。本出願の目的のためのポリペプチド配列の配列比較では、デフォルトパラメータを用いて2つのタンパク質配列をアラインメントするための、BLASTPアルゴリズムの標準タンパク質BLASTを使用する。
【0091】
本明細書で互換的に使用される「対象」、「個体」及び「患者」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス及びモルモット)、ウサギ、雌ウシ、ブタ、ウマならびに他の哺乳動物種を含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。一実施形態では、対象、個体、または患者はヒトである。
【0092】
本明細書で使用される「処置する」、「処置」などの用語は、一般に、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを意味する。「処置する」または「処置」は、患者の生存における緩和、寛解、向上、生存期間もしくは生存率の増加、症状を減少させることもしくは疾患を患者がより耐えられるものにすること、変性もしくは減退の速度を緩慢にすること、または患者の身体的もしくは精神的幸福を向上させることなどのあらゆる客観的及び主観的パラメータを含む、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病または本明細書に記載の別の神経変性疾患)の処置または改善における成功のあらゆる兆候を指し得る。症状の処置または改善は、客観的または主観的パラメータに基づき得る。処置の効果を、処置を受けていない個体または個体のプールと、または処置前もしくは処置の間の異なる時点での同じ患者と比較することができる。
【0093】
「薬学的に許容可能な賦形剤」という用語は、限定されないが、緩衝液、担体、または保存剤などの、ヒトまたは動物における使用に生物学的または薬理学的に適合する非活性医薬品成分を指す。
【0094】
本明細書で使用する場合、薬剤(例えば、本明細書に記載の抗体)の「治療量」または「治療有効量」は、対象における疾患の症状の重症度を処置するか、軽減させるか、緩和するか、または低減させる薬剤の量である。薬剤(例えば、本明細書に記載の抗体)の「治療量」は、患者の生存の向上、生存期間もしくは生存率の増加、症状を減少させること、損傷、疾患もしくは状態(例えば、神経変性疾患)をより耐えられるものにすること、変性もしくは減退の速度を緩慢にすること、または患者の身体的もしくは精神的幸福を向上させることが可能である。
【0095】
「投与する」という用語は、生物学的作用の所望の部位に薬剤、化合物、または組成物を送達する方法を指す。これらの方法としては、局所送達、非経口送達、静脈内送達、皮内送達、筋肉内送達、髄腔内送達、結腸送達、直腸送達、または腹腔内送達が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、静脈内投与される。
【0096】
「対照」または「対照値」という用語は、基準値またはベースライン値を指す。適切な対照は、当業者により決定され得る。場合によっては、対照値は、同じ対象または実験内のベースラインに対して決定される場合があり、例えば、抗TREM2抗体による処置前に採取したsTREM2の測定値は、同じ対象におけるsTREM2レベルの処置後測定値に対する対照値であり得る。他の場合では、対照値は、対照対象(例えば、健常対照もしくは疾患対照)に対して、または対照対象の集団(例えば、健常対照もしくは疾患対照、例えば、10、20、50、100、200、500、1000以上の対照対象の集団)における平均値に対して決定される場合があり、例えば、ベースライン時または処置後のいずれかの対象のsTREM2レベルの測定値は、健常対照の値と比較され得る。
【0097】
III.抗TREM2抗体
一態様では、TREM2タンパク質に特異的に結合する抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、他のTREM様受容体(例えば、TREM1)に比べてTREM2に対して選択的である。
【0098】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に開示される1つ以上の相補性決定領域(CDR)配列、重鎖可変領域配列、及び/または軽鎖可変領域配列を含む抗体である。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に開示される1つ以上のCDR配列、重鎖可変領域配列、及び/または軽鎖可変領域配列を含み、本明細書に開示される1つ以上の機能特性、例えば、TREM2活性を増強する(例えば、食作用を増強するか、または骨髄細胞、ミクログリア、もしくはマクロファージなどの細胞の遊走、分化、機能もしくは生存を増強する)抗体、あるいはsTREM2のレベルを減少させる抗体をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に記載の1つ以上の修飾を含むFcポリペプチドを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、ヒト化及び/または親和性成熟抗体である。
【0100】
抗TREM2配列
いくつかの実施形態では、重鎖配列もしくはその一部、及び/または軽鎖配列もしくはその一部は、本明細書に記載の抗TREM2抗体(例えば、クローンCL0020306、クローンCL0020188、またはクローンCL0020307)に由来する。これらのクローンのCDR、重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域アミノ酸配列は、表8に記載されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、以下からなる群から選択される1つ以上のCDRを含む:
(a)配列番号4及び12のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号4及び12のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR1(CDR-H1)配列、
(b)配列番号5、13、及び25のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号5、13、及び25のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR2(CDR-H2)配列、
(c)配列番号6、14、及び17のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号6、14、及び17のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、重鎖CDR3(CDR-H3)配列、
(d)配列番号7及び23のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号7及び23のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR1(CDR-L1)配列、
(e)配列番号8のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号8のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR2(CDR-L2)配列、ならびに
(f)配列番号9及び18のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、または配列番号9及び18のいずれか1つのアミノ酸配列に対して最大2つのアミノ酸置換を有する、軽鎖CDR3(CDR-L3)配列。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(a)~(f)のうちの2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(a)のCDR-H1、(b)のCDR-H2、及び (c)のCDR-H3を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(d)のCDR-L1、(e)のCDR-L2、及び(f)のCDR-L3を含む。いくつかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換を有するCDRは、参照配列に対して1つのアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換を有するCDRは、参照配列に対して2つのアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、最大2つのアミノ酸置換は、保存的置換である。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、以下からなる群から選択される1つ以上のCDRを含む:
(a)配列番号4及び12のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、
(b)配列番号5、13、及び25のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、
(c)配列番号6、14、及び17のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、
(d)配列番号7及び23のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、
(e)配列番号8のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、ならびに
(f)配列番号9及び18のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-L3配列。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(a)~(f)のうちの2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ全てを含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(a)のCDR-H1、(b)のCDR-H2、及び (c)のCDR-H3を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(d)のCDR-L1、(e)のCDR-L2、及び(f)のCDR-L3を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、以下を含む:
(a)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(d)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(e)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(f)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3、または
(g)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2、10、15、19、21、24、及び26のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2は、配列番号2、10、15、19、21、24、及び26のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3、11、16、20、22、及び27のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3、11、16、20、22、及び27のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2、10、15、19、21、24、及び26のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号3、11、16、20、22、及び27のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2は、配列番号2、10、15、19、21、24、及び26のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号3、11、16、20、22、及び27のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、以下を含む:
(a)配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(b)配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(c)配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(d)配列番号19に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(e)配列番号21に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(f)配列番号19に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(g)配列番号21に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(h)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(i)配列番号26に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号20に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(j)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(k)配列番号26に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列、または
(l)配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVH配列、及び配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性を有するVL配列。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に開示されるコンセンサス配列により包含される1つ以上の配列を含む。非限定的な例として、コンセンサス配列は、重鎖配列または軽鎖配列(例えば、CDR)を、同じ(または類似の)生殖系列に由来する抗体に対してアラインメントすることにより同定することができる。いくつかの実施形態では、コンセンサス配列は、同じ(または類似の)長さの配列及び/または少なくとも1つの極めて類似したCDR(例えば、極めて類似したCDR3)を有する配列を含有する抗体から生成され得る。いくつかの実施形態では、それらの抗体におけるそのような配列は、保存されたアミノ酸またはモチーフ(すなわち、配列における変化がタンパク質機能を変化させ得る場所)及び/または変異が配列に存在する領域(すなわち、配列の変異がタンパク質機能に著しく影響を与える可能性が低い場所)を同定するためにアラインメント及び比較され得る。あるいは、コンセンサス配列は、重鎖配列または軽鎖配列(例えば、CDR)を、同じまたは類似の(例えば、重複する)エピトープに結合する抗体に対してアラインメントして、保存されたアミノ酸またはモチーフ(すなわち、配列における変化がタンパク質機能を変化させ得る場所)及び変異が配列のアラインメントに存在する領域(すなわち、配列の変異がタンパク質機能に著しく影響を与える可能性が低い場所)を決定することにより同定され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のコンセンサス配列は、本明細書に開示される抗TREM2抗体と同じまたは類似のエピトープを認識する抗体に対して同定され得る。例示的なコンセンサス配列は、配列番号28~32を含む。配列番号28~32のコンセンサス配列において、大文字は、アラインメントした配列(例えば、アラインメントしたCDR配列)間で完全に保存されているアミノ酸残基を表しており、一方、「X」またはギリシア文字(例えば、「α」、「β」、「γ」、「δ」、「ε」、または「φ」)は、アラインメントした配列間で完全には保存されていないアミノ酸残基を表す。「X」またはギリシア文字によって記された位置に挿入するためにアミノ酸を選択する場合、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アラインメントした配列中の対応する位置に見られるアミノ酸から選択されることが理解されるであろう。
【0111】
クローンCL0020188、CL0020306、CL0020307、及びCL0020188のバリアント
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、以下を含む:
(a)G-F-T-F-T-α6-F-Y-M-S(配列番号28)(配列中、α6はDまたはNである)の配列を含むCDR-H1配列、
(b)V-I-R-N-β5-β6-N-β8-Y-T-β11-β12-Y-N-P-S-V-K-G(配列番号29)(配列中、β5はKまたはRであり、β6はAまたはPであり、β8はGまたはAであり、β11はAまたはTであり、β12はGまたはDである)の配列を含むCDR-H2配列、
(c)γ1-R-L-γ4-Y-G-F-D-Y(配列番号30)(配列中、γ1はAまたはTであり、γ4はTまたはSである)の配列を含むCDR-H3配列、
(d)Q-S-S-K-S-L-L-H-S-δ10-G-K-T-Y-L-N(配列番号31)(配列中、δ10はNまたはTである)の配列を含むCDR-L1配列、
(e)WMSTRAS(配列番号8)の配列を含むCDR-L2配列、及び
(f)Q-Q-F-L-E-φ6-P-F-T(配列番号32)(配列中、φ6はYまたはFである)の配列を含むCDR-L3配列。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4及び12から選択されるCDR-H1配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号5、13、及び25から選択されるCDR-H2配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号6、14、及び17から選択されるCDR-H3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7及び23から選択されるCDR-L1配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号9及び18から選択されるCDR-L3配列を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2、10、15、19、21、24、及び26のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2、10、15、19、21、24、及び26のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3、11、16、20、22、及び27のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3、11、16、20、22、及び27のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0115】
クローンCL0020188
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4、5、及び17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号16に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号4、5、17、7、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と結合を競合する。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号4、25、及び17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号23、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号22に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号4、25、17、23、8、及び18のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と結合を競合する。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号4、25、及び17のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号24に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号27に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、95%、または97%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号4、25、17、7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号24のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号27のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と結合を競合する抗体である。
【0133】
クローンCL0020306
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号4、5、及び6のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号3に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号4、5、6、7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と結合を競合する。
【0139】
クローンCL0020307
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1配列、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2配列、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3配列、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2配列、及び配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3配列を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体または抗原結合部分は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号12、13、及び14のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む軽鎖CDR1~3を含み、かつ配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する、軽鎖可変領域を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に記載の抗体(例えば、配列番号12、13、14、7、8、及び9のアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3を含む抗体、または配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体)と結合を競合する抗体である。
【0145】
抗TREM2抗体の結合特性
いくつかの実施形態では、TREM2タンパク質に特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、細胞(例えば、ヒトマクロファージなどの内在的にTREM2を発現する一次細胞もしくは細胞株、または例えば、以下の実施例セクションに記載されているようなTREM2を発現するように操作されている一次細胞もしくは細胞株)上に発現するTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体は、精製もしくは組換えTREM2タンパク質もしくはその一部に結合するか、またはTREM2もしくはその一部を含むキメラタンパク質(例えば、TREM2を含むFc融合タンパク質もしくはTREM2の外部ドメインを含むFc融合タンパク質)に結合する。
【0146】
いくつかの実施形態では、いくつかの実施形態、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体は、別の種の1つ以上の他のTREM2タンパク質との交差反応性を示す。いくつかの実施形態では、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体は、カニクイザル(「cyno」)TREM2タンパク質との交差反応性を示す。いくつかの実施形態では、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体は、マウスTREM2タンパク質との交差反応性を示す。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、ヒトTREM2、cyno TREM2、及びマウスTREM2との交差反応性を示す。
【0147】
結合親和性、結合カイネティクス、及び交差反応性を分析するための方法は、当該技術分野において公知である。これらの方法としては、固相結合アッセイ(例えば、ELISAアッセイ)、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore(商標)(GE Healthcare,Piscataway,NJ))、結合平衡除外法(例えば、KinExA(登録商標))、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、BioLayer干渉法(例えば、Octet(商標)(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA))、及びウエスタンブロット分析が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ELISAを使用して、結合親和性及び/または交差反応性を判定する。ELISAアッセイを実施するための方法は当該技術分野において公知であり、以下の実施例セクションにも記載されている。いくつかの実施形態では、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を判定する。いくつかの実施形態では、結合平衡除外法を使用して、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を判定する。いくつかの実施形態では、BioLayer干渉法アッセイを使用して、結合親和性、結合カイネティクス、及び/または交差反応性を判定する。
【0148】
抗TREM2抗体によって認識されるエピトープ
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、本明細書に記載の抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じヒトTREM2のエピトープを認識する。本明細書で使用する場合、「実質的に同じ」という用語は、本明細書に記載の抗体クローンによって認識されるエピトープに関して使用する場合、本明細書に記載の抗体クローンによって認識されるエピトープと同一であるか、そのエピトープ内にあるか、またはそれとほぼ同一であるか(例えば、そのエピトープに対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、またはそのエピトープに対して1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換、例えば保存的置換を有する)、あるいはそのエピトープと実質的に重複する(例えば、そのエピトープと少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または95%重複する)エピトープを抗TREM2抗体が認識することを意味する。
【0149】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、クローンCL0020306、クローンCL0020188、クローンCL0020307、及びそれらのバリアントからなる群から選択される抗体クローンによって認識されるエピトープと同じかまたは実質的に同じヒトTREM2のエピトープを認識する。
【0150】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2のストーク領域内のエピトープでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号1の残基129~172または残基131~169を含むか、その中にあるか、またはそれからなるヒトTREM2のエピトープを認識する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、配列番号1の残基129~148(例えば、配列番号1の143~148)を含むか、その中にあるか、またはそれからなるヒトTREM2のエピトープを認識する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(例えば、Sykなどのキナーゼのリン酸化を誘導することによって)TREM2/DAP12シグナル伝達を活性化し、TREM2のストーク領域内のエピトープでヒトTREM2に結合するアゴニストである。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2のストーク領域内のエピトープでヒトTREM2に結合し、プロテアーゼ(例えば、ADAM17)によるTREM2の切断を阻害する。
【0151】
抗TREM2抗体の機能特性
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体(例えば、開示されている1つ以上のCDR配列、重鎖可変領域配列、及び/または軽鎖可変領域配列を有する抗体)は、本明細書に開示される1つ以上のTREM2活性において機能する。例えば、いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、sTREM2タンパク質のレベル(例えば、細胞表面から細胞外試料にシェディングされたsTREM2のレベル)を調節し、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体と相互作用するキナーゼ(例えば、Sykキナーゼ)の動員もしくはリン酸化を調節し、及び/または食作用、細胞増殖、細胞生存、細胞分化、サイトカイン分泌、もしくは細胞遊走などのシグナル伝達複合体の下流の1つ以上の活性を調節する。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、リガンドによって誘導される1つ以上のTREM2活性(例えば、本明細書に記載のもの)を増強する。いくつかの実施形態では、リガンドは、脂質リガンドである。TREM2脂質リガンドの例としては、1-パルミトイル-2-(5’-オキソ-バレロイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POVPC)、2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)、7-ケトコレステロール(7-KC)、24(S)ヒドロキシコレステロール(24OHC)、25(S)ヒドロキシコレステロール(25OHC)、27-ヒドロキシコレステロール(27OHC)、アシルカルニチン(AC)、アルキルアシルグリセロホスホコリン(PAF)、α-ガラクトシルセラミド(KRN7000)、ビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)、カルジオリピン(CL)、セラミド、セラミド-1-リン酸(C1P)、コレステリルエステル(CE)、リン酸コレステロール(CP)、ジアシルグリセロール34:1(DG34:1)、ジアシルグリセロール38:4(DG38:4)、ジアシルグリセロールピロリン酸(DGPP)、ジヒドロセラミド(DhCer)、ジヒドロスフィンゴミエリン(DhSM)、エーテルホスファチジルコリン(PCe)、遊離コレステロール(FC)、ガラクトシルセラミド(GalCer)、ガラクトシルスフィンゴシン(GalSo)、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGM3、グルコシルスフィンゴシン(GlcSo)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)、Kdo2-リピドA(KLA)、ラクトシルセラミド(LacCer)、リゾアルキルアシルグリセロホスホコリン(LPAF)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、リゾホスファチジルグリセロール(LPG)、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、リゾスフィンゴミエリン(LSM)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、N-アシル-ホスファチジルエタノールアミン(NAPE)、N-アシル-セリン(NSer)、酸化ホスファチジルコリン(oxPC)、パルミチン酸-9-ヒドロキシ-ステアリン酸(PAHSA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルエタノール(PEtOH)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、スフィンガニン、スフィンガニン-1-リン酸(Sa1P)、スフィンゴミエリン(SM)、スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸(So1P)、及びスルファチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
sTREM2シェディングの調節
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、試料中のsTREM2タンパク質のレベル、例えば、細胞表面から細胞外試料にシェディングされたsTREM2のレベルを変化させる。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、sTREM2のレベルを減少させる。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、処置した試料中のsTREM2の量が対照値と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上減少する場合、sTREM2のレベルを減少させる。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、処置した試料中のsTREM2の量が対照値と比較して、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上減少する場合、sTREM2のレベルを減少させる。いくつかの実施形態では、対照値は、無処置試料(例えば、抗TREM2抗体で処置されていないTREM2発現細胞からの上清、もしくは抗TREM2抗体で処置されていない対象からの試料)または適切な非TREM2結合抗体で処置された試料中のsTREM2の量である。
【0155】
いくつかの実施形態では、sTREM2のシェディングは、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、または脳脊髄液を含む試料を使用して測定される。いくつかの実施形態では、試料は、脳脊髄液を含む。いくつかの実施形態では、試料は、細胞培養物からの上清(例えば、ヒトマクロファージなどの内在的にTREM2を発現する一次細胞もしくは細胞株からの、または例えば、以下の実施例セクションに記載されているようなTREM2を発現するように操作されている一次細胞もしくは細胞株からの上清)を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、試料中のsTREM2のレベルは、免疫測定法を使用して測定される。免疫測定法は、当該技術分野において公知であり、限定されないが、酵素多重免疫測定法(EMIA)などの酵素免疫測定法(EIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、微粒子酵素免疫測定法(MEIA)、免疫組織化学法(IHC)、免疫細胞化学法、キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光法、化学発光免疫測定法(CL)、及び電気化学発光免疫測定法(ECL)が含まれる。いくつかの実施形態では、sTREM2レベルは、ELISAアッセイを使用して測定される。いくつかの実施形態では、sTREM2レベルは、以下の実施例セクションに記載されているELISAアッセイを使用して測定される。
【0157】
キナーゼの動員またはリン酸化の調節
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体(例えば、限定されないが、Syk、ZAP70、PI3K、Erk、AKT、またはGSK3b)と相互作用するキナーゼのリン酸化を誘導する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、天然TREM2リガンドの結合を遮断せずに、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体と相互作用するキナーゼのリン酸化を誘導する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2リガンド(例えば、脂質リガンド)によって誘導されるTREM2/DAP12シグナル伝達複合体と相互作用するキナーゼのリン酸化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、Sykのリン酸化を誘導または増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処置した試料中のSykリン酸化のレベルが、対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上増加する場合、Sykのリン酸化を誘導または増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処置した試料中のSykリン酸化のレベルが、対照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上増加する場合、Sykのリン酸化を誘導する。いくつかの実施形態では、対照値は、無処置試料(例えば、抗TREM2抗体で処置されていないTREM2発現細胞を含む試料、もしくは抗TREM2抗体で処置されていない対象からの試料)、またはTREM2リガンドで処置されているが抗TREM2抗体では処置されていない試料、または適切な非TREM2結合抗体で処置された試料中のSykリン酸化のレベルである。
【0158】
試料中のリン酸化(例えば、Sykリン酸化)を検出及び/または定量化するために、いくつかの実施形態では、免疫測定法が使用される。いくつかの実施形態では、免疫測定法は、酵素免疫測定法(EIA)、酵素多重免疫測定法(EMIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、微粒子酵素免疫測定法(MEIA)、免疫組織化学法(IHC)、免疫細胞化学法、キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光法、化学発光免疫測定法(CL)、または電気化学発光免疫測定法(ECL)である。いくつかの実施形態では、リン酸化は、増幅発光近似均質アッセイ(amplified luminescent proximity homogenous assay)(AlphaLISA(登録商標)、PerkinElmer Inc.)を利用する免疫測定法を使用して検出及び/または定量化される。
【0159】
いくつかの実施形態では、リン酸化は、1つ以上の細胞、例えば、1つ以上のTREM2発現細胞(例えば、ヒトマクロファージもしくはiPSC由来ミクログリアなどの内在的にTREM2を発現する一次細胞もしくは細胞株、または例えば、以下の実施例セクションに記載されているようなTREM2を発現するように操作されている一次細胞もしくは細胞株)を含む試料を使用して測定される。いくつかの実施形態では、試料は、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、または脳脊髄液を含む。いくつかの実施形態では、試料は、組織(例えば、肺、脳、腎臓、脾臓、神経組織、もしくは骨格筋)またはそのような組織からの細胞を含む。いくつかの実施形態では、試料は、(例えば、ヒト対象または非ヒト対象からの)内因性体液、組織または細胞を含む。
【0160】
食作用の調節
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、死細胞デブリ、組織デブリ、アミロイドベータ粒子、または異物の食作用を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、天然TREM2リガンドの結合を遮断せずに食作用を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2リガンド(例えば、脂質リガンド)によって誘導される食作用を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処置した試料中の食作用のレベルが、対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上増加する場合、食作用を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処置した試料中の食作用のレベルが、対照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上増加する場合、食作用を増強する。いくつかの実施形態では、対照値は、無処置試料、TREM2リガンドで処置されているが抗TREM2抗体では処置されていない試料、または適切な非TREM2結合抗体で処置された試料中の食作用のレベルである。
【0161】
いくつかの実施形態では、食作用は、標識基質を用いた食作用アッセイを使用して測定される。食作用アッセイは、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、食作用アッセイは、TREM2を内在的に発現する細胞、例えば、ヒトマクロファージまたはミクログリアを含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、食作用アッセイは、TREM2を発現するように操作された細胞を含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、食作用は、以下の実施例セクションに記載されているヒトマクロファージ食作用アッセイを使用して測定される。
【0162】
細胞の分化、機能、遊走、及び生存の調節
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、ならびにiPSC由来ミクログリア及び疾患関連ミクログリアを含むミクログリアの)細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。疾患関連ミクログリア及び疾患関連ミクログリアを検出する方法は、Keren-Shaul et al.,Cell,2017,169:1276-1290に記載されている。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、1つ以上の細胞タイプ(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、またはミクログリア)の細胞遊走を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、1つ以上の細胞タイプ(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、またはミクログリア)の細胞生存を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、1つ以上の細胞タイプ(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、またはミクログリア)の細胞機能を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、1つ以上の細胞タイプ(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、またはミクログリア)の細胞分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、骨髄細胞の遊走、生存、機能、及び/または分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、マクロファージの遊走、生存、機能、及び/または分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、ミクログリアの遊走、生存、機能、及び/または分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、ミクログリア活性化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、疾患関連ミクログリアの遊走、生存、機能、及び/または分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、天然TREM2リガンドの結合を遮断せずに、細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2リガンド(例えば、脂質リガンド)によって誘導される細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処置した試料中の活性(例えば、遊走、生存、機能、または分化)のレベルが、対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%以上増加する場合、細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、抗TREM2抗体で処置した試料中の活性(例えば、遊走、生存、機能、または分化)のレベルが、対照値と比較して少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上増加する場合、細胞遊走、細胞生存、細胞機能、または細胞分化を増強する。いくつかの実施形態では、対照値は、無処置試料(例えば、抗TREM2抗体で処置されていない試料)、TREM2リガンドで処置されているが抗TREM2抗体では処置されていない試料、または適切な非TREM2結合抗体で処置された試料中の活性(例えば、遊走、生存、機能、または分化)のレベルである。
【0164】
いくつかの実施形態では、細胞遊走は、走化性アッセイを使用して測定される。走化性アッセイは、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、細胞遊走アッセイ(例えば、走化性アッセイ)は、TREM2を内在的に発現する細胞、例えば、ヒトマクロファージを含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、細胞遊走アッセイ(例えば、走化性アッセイ)は、TREM2を発現するように操作された細胞を含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、細胞遊走は、以下の実施例セクションに記載されているヒトマクロファージ走化性アッセイを使用して測定される。
【0165】
いくつかの実施形態では、細胞生存は、細胞生存率アッセイを使用して測定される。細胞生存率アッセイは、当該技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、細胞生存アッセイ(例えば、細胞生存率アッセイ)は、TREM2を内在的に発現する細胞、例えば、ヒトマクロファージを含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、細胞生存アッセイ(例えば、細胞生存率アッセイ)は、TREM2を発現するように操作された細胞を含む試料で実施される。いくつかの実施形態では、細胞生存は、以下の実施例セクションに記載されているヒトマクロファージ生存率アッセイを使用して測定される。
【0166】
いくつかの実施形態では、細胞機能は、その細胞に適した機能アッセイを使用して測定される。例えば、いくつかの実施形態では、マクロファージ細胞機能は、例えば、以下の実施例セクションに記載されているように、食作用アッセイを使用して評価される。
【0167】
いくつかの実施形態では、細胞分化は、TREM2を内在的に発現する細胞の分化能力を評価することにより測定される。例えば、いくつかの実施形態では、細胞分化は、例えば、実施例セクションに記載されているように、単球から分化するマクロファージの能力を評価することにより測定される。
【0168】
いくつかの実施形態では、ミクログリアの活性化は、in vivoで測定される。いくつかの実施形態では、ミクログリア活性化は、TSPO-PETイメージングを使用して測定される。TSPO-PETイメージング法は、当該技術分野において公知である。
【0169】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、神経炎症を増加させずにミクログリア機能を増強する。神経炎症のレベルは、限定されないが、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-1ra、TGFβ、IL-15、またはIFN-γなどのサイトカイン(例えば、炎症性サイトカイン)のレベルを測定することにより判定され得る。いくつかの実施形態では、サイトカインレベルは、免疫測定法、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、酵素多重免疫測定法(EMIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、微粒子酵素免疫測定法(MEIA)、免疫組織化学法(IHC)、免疫細胞化学法、キャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫蛍光法、化学発光免疫測定法(CL)、または電気化学発光免疫測定法(ECL)を使用して測定される。
【0170】
IV.抗TREM2抗原結合部分を有するタンパク質のFcポリペプチド変異
いくつかの態様において、抗TREM2抗体は、2つのFcポリペプチドを含み、その一方または両方は、独立して選択される修飾(例えば、変異)をそれぞれ含んでもよいし、野生型Fcポリペプチド、例えば、ヒトIgG1Fcポリペプチドであってもよい。一方または両方のFcポリペプチドに導入することができる変異の非限定的な例としては、例えば、Fcポリペプチド(またはそれを含む抗体)のBBB受容体、例えば、トランスフェリン受容体(TfR)タンパク質(例えば、脳内皮細胞上に発現し得るものなどのヒトまたはカニクイザルTfR)への結合を可能にする変異、血清安定性を増加させる、エフェクター機能を調節する、グリコシル化に影響を与える、ヒトにおける免疫原性を低減させる、及び/またはFcポリペプチドのノブ及びホールのヘテロ二量体化をもたらすための変異が挙げられる。
【0171】
トランスフェリン受容体結合変異
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、FcポリペプチドのTfRタンパク質への結合を可能にする修飾(例えば、アミノ酸置換)を含むFcポリペプチドを含む。簡潔に述べると、例えば、脳内皮細胞上に発現するTfRタンパク質(例えば、そのアピカルドメイン)への結合は、いくつかの実施形態では、本開示の修飾されたFcポリペプチドまたはそれを含む抗体が受容体媒介トランスサイトーシスを介して血液脳関門を通過することを可能にし得る。ある特定の実施形態では、受容体媒介トランスサイトーシスは、Fcポリペプチドを含むタンパク質が脳内(すなわち、血液脳関門の管腔側上)に存在する能力を増強または改善することができ、これにより、CNSにおけるTREM2への結合、及び他の機能、例えば、クリアランス、中和、または標的の免疫枯渇などを改善することを可能にし得る。
【0172】
Fc(例えば、CH2及び/またはCH3部分、断片、またはドメイン)への例示的なTfR結合アミノ酸修飾、ならびにアミノ酸修飾を含むFcポリペプチド及びその部分は、PCT特許公開第WO2018/152326A1号に記載されている。これらのアミノ酸修飾、TfR結合Fcポリペプチド配列及びTfR結合Fcポリペプチド、ならびにそれらを作製及び試験する技術は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示のFc二量体の1つまたは2つのFcポリペプチドは、TfRへの結合を可能にする修飾を含むように操作することができる。ある特定の実施形態では、Fc二量体の一方のFcポリペプチドはTfRへの結合を可能にする修飾を含み、他方のFcポリペプチドは含まない。
【0173】
いくつかの実施形態では、修飾されたFcポリペプチドは、YxTEWSS(配列番号58)モチーフを含む。いくつかの実施形態では、修飾されたFcポリペプチドは、TxxExxxxF(配列番号59)モチーフを含む。いくつかの実施形態では、修飾されたFcポリペプチドは、YxTEWSS(配列番号58)及びTxxExxxxF(配列番号59)モチーフを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、修飾されたFcポリペプチドは、EU付番に従って、位置380、389、390、及び415に野生型アミノ酸残基を含み、野生型アミノ酸残基は、配列番号38の対応する位置に見出される。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、EU付番に従って、以下のアミノ酸:位置380のTrp、Leu、またはGlu、位置384のTyrまたはPhe、位置386のThr、位置387のGlu、位置388のTrp、位置389のSer、Ala、またはVal、位置390のSerまたはAsn、位置413のThrまたはSer、位置415のGluまたはSer、位置416のGlu、及び位置421のPheを有するFcポリペプチドを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、EU付番に従って、以下のアミノ酸:位置380のTrp、位置384のTyr、位置386のThr、位置387のGlu、位置388のTrp、位置389のSer、位置390のSer、位置413のThr、位置415のGlu、位置416のGlu、及び位置421のPheを有するFcポリペプチドを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、EU付番に従って、以下のアミノ酸:位置380のGlu、位置384のPhe、位置386のThr、位置387のGlu、位置388のTrp、位置389のSer、位置390のAsn、位置413のSer、位置415のGlu、位置416のGlu、及び位置421のPheを有するFcポリペプチドを含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、EU付番に従って、以下のアミノ酸:位置380のGlu、位置384のTyr、位置386のThr、位置387のGlu、位置388のTrp、位置389のVal、位置390のAsn、位置413のThr、位置415のGlu、位置416のGlu、及び位置421のPheを有するFcポリペプチドを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、EU付番に従って、以下のアミノ酸:位置380のGlu、位置384のTyr、位置386のThr、位置387のGlu、位置388のTrp、位置389のSer、位置390のAsn、位置413のSer、位置415のGlu、位置416のGlu、及び位置421のPheを有するFcポリペプチドを含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、修飾されたFcポリペプチドは、配列番号40、43、46、及び49のいずれか1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、修飾されたFcポリペプチドは、配列番号41、44、47、及び50のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0181】
修飾されたFcポリペプチドの追加の例は、表8に記載されている。
【0182】
Fcポリペプチドのヘテロ二量体化を促進する変異
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗TREM2抗体に存在するFcポリペプチドは、ヘテロ二量体の形成を促進し、ホモ二量体の形成を妨げる、ノブ及びホール変異を含む。一般に、この修飾は、第1のポリペプチドの界面に突起(「ノブ」)を導入し、第2のポリペプチドの界面に対応する空隙(「ホール」)を導入するものであり、ヘテロ二量体の形成が促進され、ホモ二量体の形成が妨げられるように、突起を空隙内に配置することができる。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換することにより構成される。突起に対し同一または類似のサイズの補完的なくぼみは、大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面上に作成される。いくつかの実施形態では、そのような追加の変異は、FcポリペプチドのBBB受容体、例えば、TfRへの結合に悪影響を及ぼさない(例えば、阻害しない)、Fcポリペプチド中の位置にある。
【0183】
二量体化のためのノブホールアプローチの例示的な一実施形態では、本明細書に記載のタンパク質に存在するFcポリペプチドの一方の位置366(EU付番スキームに従う付番)は、天然スレオニンの代わりにトリプトファンを含む。二量体中のもう一方のFcポリペプチドは、位置407(EU付番スキームに従う付番)に、天然チロシンの代わりにバリンを有する。もう一方のFcポリペプチドは、位置366(EU付番スキームに従う付番)の天然スレオニンがセリンに置換されている置換、及び位置368(EU付番スキームに従う付番)の天然ロイシンがアラニンに置換されている置換をさらに含み得る。したがって、本開示の抗TREM2タンパク質のFcポリペプチドの一方は、T366Wのノブ変異を有し、もう一方のFcポリペプチドは、典型的にT366S及びL368Aのホール変異を伴う、Y407V変異を有する。
【0184】
いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、ヘテロ二量体化のための他の修飾を含有するように操作されてもよく、例えば、天然の荷電性であるCH3-CH3界面内の接触残基の静電的操作または疎水性パッチ修飾がある。
【0185】
いくつかの実施形態では、血清半減期を増強するための修飾が導入され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の抗TREM2タンパク質に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、EU付番スキームに従って付番したとき、位置252にチロシン、位置254にスレオニン、及び位置256にグルタミン酸を含み得る。したがって、一方または両方のFcポリペプチドは、M252Y、S254T、及びT256E置換を有し得る。あるいは、一方または両方のFcポリペプチドは、EU付番に従って、M428L及び/またはN434S置換を有し得る。あるいは、一方または両方のFcポリペプチドは、N434SまたはN434A置換を有し得る。
【0186】
Fcエフェクター機能
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗TREM2タンパク質の一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させる修飾、すなわち、エフェクター機能を媒介するエフェクター細胞上に発現されるFc受容体に結合すると、ある特定の生物学的機能を誘導する能力を低下させる修飾を含み得る。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合と補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化が挙げられるが、これらに限定されない。エフェクター機能は、抗体クラスによって変化し得る。例えば、天然ヒトIgG1及びIgG3抗体は、免疫系細胞上に存在する適切なFc受容体に結合すると、ADCC活性及びCDC活性を惹起することができ、天然ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4は、免疫系細胞上に存在する適切なFc受容体に結合すると、ADCP機能を惹起することができる。
【0187】
いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を調節する修飾を含み得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させるまたは排除する修飾を含み得る。エフェクター機能を低下させる例示的なFcポリペプチド変異としては、CH2ドメイン中の置換、例えば、EU付番スキームに従って、位置234及び235での置換が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、位置234及び235にアラニン残基を含み得る。したがって、一方または両方のFcポリペプチドは、L234A及びL235A(LALA)置換を有し得る。
【0189】
エフェクター機能を調節する追加のFcポリペプチド変異としては、以下のもの、すなわち、位置329で、プロリンが、グリシン、アルギニン、セリン、またはFcのプロリン329とFcγRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成されるFc/Fcγ受容体界面を破壊するのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換されている変異を有し得ることが挙げられるが、これらに限定されない。追加の例示的な置換としては、EU付番スキームに従って、S228P、E233P、L235E、N297A、N297D、N297G、及びP331Sが挙げられる。複数の置換が存在してもよく、例えば、EU付番スキームに従って、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、及びP329G、ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、及びP329S、ヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235E、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びG237A、ヒトIgG1 Fc領域のL234A、L235A、及びG237A、ヒトIgG2 Fc領域のV234A及びG237A、ヒトIgG4 Fc領域のL235A、G237A、及びE318A、ならびにヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL236Eがある。いくつかの実施形態では、一方または両方のFcポリペプチドは、ADCCを調節する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、EU付番スキームに従って、位置298、333、及び/または334の置換を有し得る。
【0190】
FcRn結合部位及び血清半減期を延長させる変異
ある特定の態様では、本開示の抗TREM2タンパク質に存在するFcポリペプチド(例えば、修飾されたFcポリペプチド)は、FcRn結合部位を含み得る。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、Fcポリペプチドまたはその断片中にある。
【0191】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、天然FcRn結合部位を含む。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、天然FcRn結合部位のアミノ酸配列に対するアミノ酸変化を含まない。いくつかの実施形態では、天然FcRn結合部位は、IgG結合部位、例えば、ヒトIgG結合部位である。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、FcRn結合を改変する修飾を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、変異された、例えば、置換されたアミノ酸残基を1つ以上有し、この変異(複数可)は、血清半減期を延長させるか、または血清半減期を実質的に低下させない(すなわち、血清半減期の低下が、変異位置に野生型残基を有する同等物のFcポリペプチドと比較して、同じ条件下でアッセイした場合、25%以下である)ものである。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、EU付番スキームに従って、位置251~256、428、及び433~436に置換された1つ以上のアミノ酸残基を有する。
【0193】
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位の残基またはその近傍の残基の1つ以上は、ポリペプチドの血清半減期を延長させるために、天然のヒトIgG配列に対して変異されている。いくつかの実施形態では、変異は、位置252、254、及び256のうちの1つ、2つまたは3つに導入されている。いくつかの実施形態では、変異はM252Y、S254T、及びT256Eである。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、変異M252Y、S254T、及びT256Eをさらに含む。特定の実施形態では、本開示の抗TREM2タンパク質に存在する一方または両方のFcポリペプチドは、EU付番スキームに従って付番したとき、位置252にチロシン、位置254にスレオニン、及び位置256にグルタミン酸を含み得る。したがって、一方または両方のFcポリペプチドは、M252Y、S254T、及びT256E置換を有し得る。
【0194】
いくつかの実施形態では、変異は、M428L及び/またはN434Sである。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、M428Lの有無にかかわらず、変異N434Sをさらに含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、EU付番スキームに従って、位置T307、E380、及びN434の1つ、2つまたは3つ全てに変異を含む。いくつかの実施形態では、変異は、T307Q及びN434Aである。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、変異T307A、E380A、及びN434Aを含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、EU付番スキームに従って、位置T250及びM428に変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、変異T250Q及び/またはM428Lを含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、EU付番スキームに従って、位置M428及びN434に変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、変異M428L及びN434Sを含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、2つのFcポリペプチドを含み得、2つのFcポリペプチドのそれぞれは、M428L及び/またはN434S置換を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、N434SまたはN434A変異を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、2つのFcポリペプチドを含み得、2つのFcポリペプチドのそれぞれは、N434SまたはN434A置換を含む。
【0195】
V.抗体の調製
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体応答を誘導するための抗原または抗原混合物で動物(複数可)(例えば、マウス、ウサギ、またはラット)を免疫化することにより調製される。いくつかの実施形態では、抗原または抗原混合物は、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント)と併せて投与される。初回免疫化後、抗体産生を向上させるために、1回以上の後続する抗原(複数可)の追加免疫注射が投与され得る。免疫化後、抗原特異的B細胞が、例えば、脾臓及び/またはリンパ組織から回収される。モノクローナル抗体を作製するために、B細胞を骨髄腫細胞と融合させ、続いて、抗原特異性についてスクリーニングする。抗体を調製する方法は、以下の実施例セクションにも記載されている。
【0196】
目的の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を細胞からクローニングすることができ、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子を、ハイブリドーマからクローニングして組換えモノクローナル抗体を産生させるために使用することができる。モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子ライブラリもまた、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製される。あるいは、ファージまたは酵母ディスプレイ技術を使用して、選択した抗原に特異的に結合する抗体及びFab断片を同定することができる。抗体はまた、二重特異性にすることができる。すなわち、2つの異なる抗原を認識することができる。抗体はまた、異種コンジュゲート、例えば、2つの共有結合的に連結した抗体または免疫毒素であり得る。
【0197】
抗体は、原核生物発現系及び真核生物発現系を含む、任意数の発現系を使用して産生され得る。いくつかの実施形態では、発現系は、哺乳動物細胞の発現、例えば、ハイブリドーマまたはCHO細胞発現系である。多数のそのような系が、商業的供給元から広く入手可能である。抗体がVH及びVL領域の両方を含む実施形態では、VH及びVL領域は、例えば、ジシストロン性発現ユニット中で、または異なるプロモーターの制御下で、単一のベクターを使用して発現され得る。他の実施形態では、VH及びVL領域は、別個のベクターを使用して発現され得る。本明細書に記載のVHまたはVL領域は、任意選択で、N末端にメチオニンを含み得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。キメラ抗体を作製する方法は当該技術分野において公知である。例えば、マウスなどの1つの種の抗原結合領域(重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)が、ヒトなどの別の種のエフェクター領域(定常ドメイン)に融合されたキメラ抗体を作製することができる。別の例として、抗体のエフェクター領域が異なる免疫グロブリンクラスまたはサブクラスのエフェクター領域で置換された、「クラススイッチされた」キメラ抗体を作製することができる。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。一般に、非ヒト抗体は、その免疫原性を低減させるためにヒト化される。ヒト化抗体は、通常、非ヒト(例えば、マウス可変領域配列に由来する)である1つ以上の可変領域(例えば、CDR)またはその一部、及び場合により非ヒトであるいくつかのフレームワーク領域またはその一部を含み、ヒト抗体配列に由来する1つ以上の定常領域をさらに含む。非ヒト抗体をヒト化させる方法は、当該技術分野において公知である。トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物などの他の生物を使用して、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現させることができる。抗体をヒト化させる他の方法としては、例えば、可変ドメインリサーフェイシング(resurfacing)、CDRグラフティング、特異性決定残基(SDR)グラフティング、ガイド選択(guided selection)、及びフレームワークシャッフリングが挙げられる。
【0200】
ヒト化の代替として、完全ヒト抗体を作製することができる。非限定的な例として、免疫化時に、内在性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生させることができる。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失により、内在性抗体産生が完全に阻害されることが説明されている。そのような生殖系列突然変異マウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの導入により、抗原曝露の際にヒト抗体の産生がもたらされる。別の例として、ヒト抗体は、ヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株を作製するための初代ヒトB細胞を使用するなどの、ハイブリドーマベースの方法により産生され得る。
【0201】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイ技術を使用して産生され得る。ファージディスプレイでは、可変重鎖及び可変軽鎖遺伝子のレパートリーは、ファージディスプレイベクター中で増幅され、発現される。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリは、ヒト源から増幅された天然のレパートリーである。いくつかの実施形態では、抗体ライブラリは、重鎖配列及び軽鎖配列をクローニングし、組換えて、様々な抗原特異性を有する抗体の大型プールを作製することにより作られた合成ライブラリである。ファージは通常、抗体断片(例えば、Fab断片またはscFv断片)を提示し、これは、次いで目的の抗原への結合についてスクリーニングされる。
【0202】
いくつかの実施形態では、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、VH、またはVHHなど)が作製される。抗体断片を産生するための様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解消化により得られていた。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞を使用して直接産生され得る。例えば、抗体断片は、抗体ファージライブラリから単離され得る。あるいは、Fab’-SH断片は、大腸菌(E.coli)細胞から直接回収され、化学的にカップリングされてF(ab’)2断片を形成し得る。別のアプローチによると、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者には明らかであろう。
【0203】
いくつかの実施形態では、抗体または抗体断片は、in vivoでの半減期の延長をもたらすために、別の分子、例えば、ポリエチレングリコールにコンジュゲート(ペグ化)されるか、または血清アルブミンにコンジュゲートされる。
【0204】
VI.核酸、ベクター及び宿主細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗TREM2抗体は、組換え法を使用して調製される。したがって、いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の抗TREM2抗体のいずれか(例えば、本明細書に記載のCDR、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のうちのいずれか1つ以上)をコードする核酸配列を含む単離された核酸;そのような核酸を含むベクター;ならびに抗体をコードする核酸を複製するため及び/または抗体を発現するために使用される核酸が導入された宿主細胞、を提供する。
【0205】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、単離されたポリヌクレオチド)は、本明細書に記載の抗体(例えば、「抗TREM2抗体配列」の表題で前述のセクションに記載されているもの)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、以下の表8に開示されている1つ以上のアミノ酸配列(例えば、CDR配列、重鎖配列または軽鎖配列)をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、以下の表8に開示されている配列(例えば、CDR配列、重鎖配列、または軽鎖配列)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、異種核酸、例えば、異種プロモーターに作動可能に連結されている。
【0206】
本開示の抗体、またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含有する好適なベクターには、クローニングベクター及び発現ベクターが含まれる。選択されるクローニングベクターは使用される予定の宿主細胞によって異なり得るが、有用なクローニングベクターは、一般に自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼの単一の標的を有し得、及び/またはベクターを含有するクローンの選択に使用することができるマーカーの遺伝子を保有し得る。例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び他の多くのクローニングベクターが、BioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業的供給業者から入手可能である。
【0207】
発現ベクターは、一般に、本開示の核酸を含有する複製可能なポリヌクレオチドコンストラクトである。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの不可分の一部としてのいずれかで宿主細胞内で複製し得る。好適な発現ベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含む)、及び他の任意のベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、原核細胞または真核細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、原核生物である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ヒト細胞、例えば、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である。
【0209】
別の態様では、本明細書に記載の抗TREM2抗体を作製する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、抗体の発現に適した条件下で本明細書に記載の宿主細胞(例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはベクターを発現する宿主細胞)を培養することを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、その後宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収される。
【0210】
VII.抗TREM2抗体を使用する治療方法
別の態様では、本明細書に開示される抗TREM2抗体(例えば、前述のセクションIIIに記載されている抗TREM2抗体)を使用する治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上のTREM2活性を(例えば、神経変性疾患を有する対象において)調節する方法が提供される。
【0211】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、原発性年齢関連タウオパチー、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症、17番染色体に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、嗜銀顆粒性認知症、筋萎縮性側索硬化症、グアムの筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS-PDC)、大脳皮質基底核変性症、慢性外傷性脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ボクサー認知症、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、球状グリア性タウオパチー、認知症を伴うグアドループ型パーキンソニズム、グアドループ型PSP、ハラーフォルデン・シュパッツ病、スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、ハンチントン病、封入体筋炎、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、那須・ハコラ病、神経原線維変化優位型認知症、ニーマン・ピック病C型、淡蒼球橋黒質変性症、パーキンソン病、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、プリオンタンパク質脳アミロイド血管症、進行性皮質下グリオーシス、亜急性硬化性全脳炎、及び神経原線維型老年認知症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、那須・ハコラ病である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、前頭側頭型認知症である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、パーキンソン病である。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する単離された抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、本明細書に記載の抗TREM2抗体)、または本明細書に記載の抗TREM2抗体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗TREM2抗体(またはその抗原結合部分もしくは医薬組成物)は、TREM2の突然変異を特徴とする神経変性疾患の処置に使用される。いくつかの実施形態では、TREM2の突然変異を特徴とする神経変性疾患は、アルツハイマー病、例えば、TREM2のR47H突然変異を特徴とするアルツハイマー病である。
【0213】
いくつかの実施形態では、対象(例えば、神経変性疾患を有する対象)において1つ以上のTREM2活性を調節する方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、sTREM2のレベルを調節すること、TREM2/DAP12シグナル伝達複合体と相互作用するキナーゼ(例えば、Sykキナーゼ)の動員またはリン酸化を調節すること、食作用(例えば、細胞デブリ、アミロイドベータ粒子などの食作用)を調節すること、細胞遊走(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、ミクログリア、及び疾患関連ミクログリアの遊走)を調節すること、及び/または(例えば、骨髄細胞、マクロファージ、ミクログリア、及び疾患関連ミクログリアの)細胞分化を調節することを含む。いくつかの実施形態では、神経変性疾患を有する対象において1つ以上のTREM2活性を増強する方法が提供される。いくつかの実施形態では、神経変性疾患を有する対象においてsTREM2のレベルを減少させる方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象において1つ以上のTREM2活性を調節する方法は、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する単離された抗体もしくはその抗原結合部分(例えば、本明細書に記載の抗TREM2抗体)、または本明細書に記載の抗TREM2抗体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、処置される対象は、ヒト、例えば成人ヒトまたは小児ヒトである。
【0215】
いくつかの実施形態では、神経変性疾患を有する対象においてプラーク蓄積を低減させる方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載の抗体または医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、アルツハイマー病を有する。いくつかの実施形態では、対象は、神経変性疾患の動物モデル(例えば、5XFADまたはAPP/PS1マウスモデル)である。いくつかの実施形態では、プラーク蓄積は、例えば、陽電子放出断層撮影(PET)スキャニングを使用してアミロイドプラークイメージング及び/またはタウイメージングによって測定される。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体の投与は、ベースライン値(例えば、抗TREM2抗体の投与前の対象におけるプラーク蓄積のレベル)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%、プラークの蓄積を低減させる。
【0216】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、治療有効量または治療有効用量で対象に投与される。しかしながら、投与量は、選択した投与経路、組成物の配合、患者の応答、状態の重症度、対象の体重、及び処方医の判断を含む、いくつかの要因によって変化し得る。投与量は、個々の患者による必要に応じて経時的に増加または減少され得る。特定の場合では、患者に最初に低用量を与え、次いで、患者が耐えられる有効な投与量まで増量する。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0217】
本明細書に記載の抗TREM2抗体の投与経路は、経口、腹腔内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、吸入、局所、病巣内、直腸、気管支内、経鼻、経粘膜、腸内、眼もしくは耳への送達、または当該技術分野で公知の他の任意の方法であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、経口投与、静脈内投与、または腹腔内投与される。
【0218】
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体(及び任意選択で別の治療剤)は、長時間にわたり、例えば、少なくとも30日間、40日間、50日間、60日間、70日間、80日間、90日間、100日間、150日間、200日間、250日間、300日間、または350日間以上対象に投与される。
【0219】
VIII.医薬組成物及びキット
別の態様では、ヒトTREM2タンパク質に特異的に結合する抗体を含む医薬組成物及びキットが提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物及びキットは、神経変性疾患の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物及びキットは、1つ以上のTREM2活性、例えば、Sykリン酸化の調節(例えば、増強または阻害)に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物及びキットは、sTREM2レベルの調節(例えば、減少)に使用するためのものである。
【0220】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、前述のセクションIIIに記載されている抗体またはその抗原結合断片である。
【0221】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の抗TREM2抗体を含み、1つ以上の薬学的に許容可能な担体及び/または賦形剤をさらに含む。薬学的に許容可能な担体には、生理学的に適合性があり、活性剤の活性を妨害しないか、またはさもなければ阻害しない任意の溶媒、分散媒またはコーティング剤が含まれる。様々な薬学的に許容可能な賦形剤が、当該技術分野において周知である。
【0222】
いくつかの実施形態では、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、経口投与、腹腔内投与、髄腔内投与、経皮投与、局所投与または皮下投与に適している。薬学的に許容可能な担体は、例えば、組成物を安定化させるように、または活性剤(複数可)の吸収を増加もしくは減少させるように作用する、1つ以上の生理学的に許容可能な化合物(複数可)を含み得る。生理学的に許容可能な化合物としては、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、活性剤のクリアランスもしくは加水分解を低減させる組成物、または賦形剤または他の安定剤及び/または緩衝液を挙げることができる。その他の薬学的に許容可能な担体及びその製剤は、当該技術分野において周知である。
【0223】
本明細書に記載の医薬組成物は、当業者に公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。以下の方法及び賦形剤は、単に例示的なものであり、決して限定するものではない。
【0224】
経口投与のために、抗TREM2抗体を、当該技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることにより製剤化することができる。そのような担体によって、処置される患者の経口摂取用に、化合物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、エマルション、親油性懸濁液及び親水性懸濁液、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能となる。経口使用のための医薬調製物は、化合物と固体賦形剤とを混合し、任意選択で得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工して、所望により適切な助剤を添加後に錠剤または糖衣錠芯を得ることにより、得ることができる。好適な賦形剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加することができる。
【0225】
抗TREM2抗体を、例えば、ボーラス注射または持続注入によるなど、注射による非経口投与用に製剤化することができる。注射の場合、化合物(複数可)を水性または非水性溶媒、例えば、植物性または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールに溶解、懸濁または乳化させることによって、ならびに必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び保存剤などの従来の添加剤とともに、調製物に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、水溶液、例えば、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液中で製剤化することができる。注射用製剤は、保存剤を添加した単位剤形、例えばアンプルまたは複数回用量の容器で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションなどの形態をとることができ、また、懸濁剤、安定剤、及び/または分散剤などの製剤化剤を含有することができる。
【0226】
通常、in vivo投与に使用するための医薬組成物は、滅菌されている。滅菌は、当該技術分野において公知の方法、例えば、加熱滅菌、蒸気滅菌、滅菌濾過、または照射によって実現され得る。
【0227】
本開示の医薬組成物の投与量及び望ましい薬物濃度は、想定される特定の用途に応じて変動し得る。適切な投与量または投与経路の決定は、十分に当業者の技術範囲内である。好適な投与量は、前述のセクションVIIにも記載されている。
【0228】
キット
いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、抗TREM2抗体は、前述のセクションIIIに記載されている抗体またはその抗原結合断片である。
【0229】
いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の抗TREM2抗体を含み、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病の処置に使用するための1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、神経変性疾患の認知症状または行動症状の処置に使用するための薬剤(例えば、抗うつ薬、ドパミンアゴニスト、または抗精神病薬)である。いくつかの実施形態では、治療剤は、神経保護剤(例えば、カルビドパ/レボドパ、抗コリン剤、ドパミン作用薬、モノアミンオキシダーゼB(MAO-B)阻害剤、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤、グルタミン酸作動性薬、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、カンナビノイド、カスパーゼ阻害剤、メラトニン、抗炎症剤、ホルモン(例えば、エストロゲンもしくはプロゲステロン)、またはビタミン)である。
【0230】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の抗TREM抗体を含み、sTREM2レベルを測定するための1つ以上の試薬をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の抗TREM抗体を含み、TREM2活性を測定するための(例えば、Sykリン酸化を測定するための)1つ以上の試薬をさらに含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法の実施のための指示書(すなわち、プロトコル)を含む説明用資料(例えば、前述のセクションVIに記載されている治療方法のためのキットを使用するための説明書)をさらに含む。説明用資料は通常、書面または印刷物で構成されるが、そのようなものに限定されない。そのような説明書を保管することができ、それらをエンドユーザーに伝達することができる任意の媒体が、本開示により企図される。そのような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、磁気テープ、磁気カートリッジ、磁気チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。そのような媒体には、そのような説明用資料を提供するインターネットサイトへのアドレスが含まれ得る。
【実施例】
【0232】
IX.実施例
本開示を、具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、例証目的で提示されるにすぎず、決して本開示を限定するようには意図されていない。
【0233】
実施例1.抗TREM2抗体の作製及び初期特徴付け
マウスFcが融合したヒトTREM2 ECDの組換え発現及び精製
ヒトTREM2(UniProtKB ID-Q9NZC2)の外部ドメイン(残基19~172)を、N末端領域にマウスIgGカッパ鎖V-III、アミノ酸1~20(UniProtKB ID-P01661)に由来する分泌シグナル、及びC末端領域にマウスFcタグ(TREM2 ECDとFcの間にGGGGS(配列番号34)を有する)を含めて、pRKベクターにサブクローニングした。
【0234】
Expi293F(商標)Expression System Kitを製造業者の指示に従って使用して、精製したプラスミドをExpi293F(商標)細胞(Thermo Fisher)にトランスフェクトした。N-結合型グリカンの成熟を阻害し、グリコシル化の不均一性を低減させるために、高マンノシダーゼIの阻害剤であるキフネンシン(Sigma)をトランスフェクション直後に1μg/mLの濃度で培養物に添加した。トランスフェクトした細胞を、オービタルシェーカー(Infors HT Multitron)内で、6%CO2の湿潤雰囲気中、37℃、125rpmでインキュベートした。トランスフェクションの16時間後に、ExpiFectamine(商標)293 Transfection Enhancer1及び2を細胞に添加し、培地上清をトランスフェクションの96時間後に回収した。清澄化した上清にEDTA不含プロテアーゼ阻害剤(Roche)を補充して、-80℃で保管した。
【0235】
rhTREM2-Fcの単離のために、清澄化した培地上清をHiTrap MabSelect SuRe Protein Aアフィニティーカラム(GE Healthcare Life Sciences)にロードし、200mMのアルギニン及び137mMのコハク酸塩緩衝液(pH5.0)で洗浄した。融合タンパク質を、pH3.0の100mM QBクエン酸塩緩衝液及び50mM NaCl中に溶出させた。溶出直後に、pH8.0の1M Tris-HCl緩衝液をタンパク質溶液に添加してpHを中和した。Superdex 200 increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare Life Sciences)でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、タンパク質凝集体を分離した。SEC移動相の緩衝液を、タンパク質保存緩衝液でもあるpH8.0の20mM Tris-HCl、100mM NaCl及び50mMアルギニンで保持した。全てのクロマトグラフィーステップを、AKTA pureシステムまたはAKTA Avantシステム(GE Healthcare Life Sciences)により実施した。
【0236】
Hisタグ付きTREM2 ECDの組換え発現及び精製
TREM2(UniProtKB-Q9NZC2)の外部ドメイン(残基19~172)を、N末端領域にマウスIgカッパ鎖V-III、アミノ酸1~20(UniProtKB ID-P01661)に由来する分泌シグナル、及びC末端領域に6X-Hisタグ(配列番号35)を含めて、pRKベクターにサブクローニングした。配列決定によって挿入を確認し、マキシプレッププラスミド精製を実施した。
【0237】
Expi293F(商標)Expression System Kitを製造業者の指示に従って使用して、精製したプラスミドをExpi293F(商標)細胞(Thermo Fisher)にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、オービタルシェーカー(Infors HT Multitron)内で、6%CO2の湿潤雰囲気中、37℃、125rpmでインキュベートした。トランスフェクションの16時間後に、ExpiFectamine(商標)293 Transfection Enhancer1及び2を細胞に添加し、培地上清をトランスフェクションの96時間後に回収した。
【0238】
回収した培地にpH8.0の1Mイミダゾールを10mMの最終濃度まで補充し、孔径0.4ミクロンのNalgene(商標)Rapid-Flow(商標)使い捨てフィルターユニット(Thermo Fisher)を使用して濾過した。HisPur(商標)Ni-NTA Resin(Thermo Fisher)をMQ水で洗浄し、ロード緩衝液(pH8.0の20mM Tris、150mM NaCl、及び10mMイミダゾール)で平衡させた。グラビティフロー(gravity flow)法を使用してアフィニティー精製を実施した。回収した培地を樹脂にロードし、非特異的に結合したタンパク質を50mM及び100mMイミダゾールを補充したロード緩衝液で洗浄した。結合したHisタグ付きTREM2外部ドメインをpH8.0の20mM Tris、150mM NaCl、及び200mMイミダゾールで溶出させた。溶出したタンパク質をAmicon 10kDaコンセントレータを使用して濃縮し、濃縮したタンパク質をAKTA Avantシステム(GE Healthcare Life Sciences)を使用したゲル濾過クロマトグラフィーでさらに精製した。このタンパク質を、1×PBSで平衡させたHiLoad Superdex 200 16/600(GE Healthcare Life Sciences)カラムにロードし、1×PBSを泳動用緩衝液として使用して溶出させ分画した。溶出画分を、変性及び天然条件下でのポリアクリルアミド(PAGE)ゲルでの電気泳動によって分析した。溶出画分を、分析用サイズ排除クロマトグラフィー及びインタクトタンパク質質量測定によりさらに特徴付けた。PAGE及び分析的特徴付けからの結果を使用して、高度にグリコシル化されたタンパク質画分をプールし、これらを分取して-80℃で保管した。
【0239】
抗体の作製
げっ歯類(マウス及びラット)を、rhTREM2-Fc免疫原または完全長Trem2受容体を発現するBWZ細胞を用いた標準プロトコルを使用して免疫化した。様々な時点で採取した血清を使用して、免疫化全体を通して力価を測定した。抗原特異的免疫応答の検出を、rhTREM2-Fc免疫原及び完全長TREM2を発現するBWZ生細胞を用いたフローサイトメトリーを使用して実施した。候補抗体の選択基準には、フローサイトメトリーで検出したげっ歯類抗体の産生及びTREM2への結合の特異性を含めた。抗体分泌細胞を、脾臓、リンパ節、及び骨髄を含む動物の免疫組織から単離した。
【0240】
単一細胞懸濁液を分析し、分泌された抗体の結合特性を判定した。抗体分泌細胞をマイクロ流体デバイスにロードし、ナノリットル容量の反応チャンバー中に単離し、蛍光及び明視野画像ベースの顕微鏡アッセイを使用して分泌された抗体の検出を可能にした(例えば、米国特許第9,188,593号を参照されたい)。抗原をコートしたマイクロビーズに結合する抗体の検出、ビーズ上に固定化した抗体に結合する可溶性蛍光標識抗原の検出、及び細胞表面発現抗原に結合する抗体の検出を含む、結合アッセイを実施した。細胞表面発現抗原には、細胞表面に提示された組換え型と天然型の両方の抗原が含まれた。
【0241】
画像分析を使用して、所望の特性を有する抗体を産生する単一細胞の存在を示している陽性の蛍光シグナルを呈するチャンバーを同定し、チャンバーの内容物を回収して、384ウェルプレート中で溶解した(例えば、米国特許第10,087,408号を参照されたい)。次いで、単一細胞溶解物をRT-PCRに供し、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を増幅した。次いで、得られたアンプリコンを配列決定し、選択した単一細胞から対形成した重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のcDNA配列を決定した。得られた配列を手動で検査及び分析して、配列多様性及び体細胞超変異を判定した。スクリーニングデータ及び配列多様性に基づいて、発現のために配列を選択した。発現した抗体を試験して、抗原結合特異性を確認した。
【0242】
実施例2.抗TREM2抗体の配列最適化及びヒト化
例示的な抗TREM2抗体を配列最適化し、ヒト化してから、結合カイネティクス及び結合特異性について特徴付けした。
【0243】
配列最適化を、化学修飾を受けやすい残基(例えば、アスパラギン脱アミド化モチーフ(NG)、アスパラギン酸異性化モチーフ(DS))、ならびに酸化される可能性のある残基(トリプトファン(W)及びメチオニン(M))のCDR配列内を探索することにより、ならびにそのような配列の傾向を取り除くために保存的及び生殖系列残基によってアミノ酸置換することにより行った。次いで、ヒト化し配列最適化した抗TREM2抗体のバリアントを、Biacore及びHEK293-H6細胞への用量設定した細胞結合を使用して、結合カイネティクスについて分析した(代表的なプロトコルについては、実施例5を参照されたい)。
【0244】
実施例3.修飾されたFcポリペプチドを有する抗TREM2抗体(「ATV:TREM2」)の作製
ヒト化親和性成熟抗TREM2抗体のFd(VH+CH1)領域(配列番号22及び24)を、ヒトトランスフェリン受容体(TfR)に結合するように操作したFcポリペプチドをコードする配列(CH3C.35.23.1.1、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.3 cisLALA、またはCH3C.35.24)またはカニクイザルトランスフェリン受容体に結合するFcポリペプチドをコードする配列(CH3C.35.21)を含む発現ベクターにクローニングした。Fcポリペプチドをコードする配列は、ホモ二量体化を妨げ、「ホール」(T366S/L368A/Y407V)変異を含むFcポリペプチドとのヘテロ二量体化を促進する「ノブ」(T366W)変異を含有した。また、Fd領域を、ホール変異を有するが、TfR結合変異を欠くFcポリペプチドをコードする配列を含む対応する「ホール」ベクターにクローニングした。コーディング配列(Fd-ノブ-FcとFd-ホール-Fcの両方のコンストラクト)はまた、エフェクター機能を低下させるヒンジ領域中の「LALA」(L234A;L235A)変異(Wines et al.,J.Immunol.164:5313-5318(2000)及びFcRnへの結合を増加させるFcCH3領域中の「LS」(M428L;N434S)変異(例えば、Zalevsky et al.、Nat.Biotech.28(2):157-159(2010)を参照されたい)も含有した。ベクターによって発現される、最終的にコードされた重鎖配列を表1に記載する。
【0245】
【0246】
対応する上記のノブ及びホールベクターを、対応する軽鎖ベクター(配列番号54)とともに1:1:2のノブ:ホール:軽鎖の比でExpiCHO細胞またはExpi293細胞にコトランスフェクトした。発現したタンパク質を、プロテインAクロマトグラフィー、続いて、分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製して、精製された抗TREM2タンパク質を単離した。
【0247】
抗TREM2タンパク質のヒトトランスフェリン受容体への結合は、以下のように決定した。抗ヒトFabをCM5チップ上に固定し、抗TREM2タンパク質を捕捉した。全長ヒトTfRまたはヒトTfRアピカルドメインを連続希釈(例えば、1~1,000nMの濃度)でチップ上に流し(180秒の会合時間)、次いで解離させた。1:1結合モデルを使用してフィッティングを実施した。
【0248】
実施例4.抗TREM2抗体の特徴付け
以下のセクションは、作製した抗TREM2抗体の結合特性及び機能特性を評価するために実施した様々なアッセイについて記載する。
【0249】
Biacoreカイネティクス測定による親和性測定
表面プラズモン共鳴(Biacore(商標)8K機器)を使用して、ヒト及びカニクイザルTREM2 ECDについて抗TREM2抗体の親和性を測定した。抗TREM2抗体を、Human Fab Capture Kit(GE Healthcare Life Sciences、カタログ番号28958325)を使用して、Biacore Series S CM5センサーチップ(GE Healthcare Life Sciences、カタログ番号29149604)上で捕捉した。組換えヒトTREM2または組換えカニクイザルTREM2の3倍段階希釈液を、30μL/分の流量で注入した。抗体の結合を300秒間モニタリングした後、HBS-EP+泳動用緩衝液(GE Healthcare Life Sciences、カタログ番号BR100669)中で600秒以上抗体の解離をモニタリングした。結合応答は、空のフローセルからRU値を差し引くことによって補正した。カイネティクス分析には、kon及びkoffの同時フィッティングの1:1Languirモデルを使用した。KD結合値をkon及びkoffから算出した。
【0250】
TREM2発現HEK細胞におけるTREM2結合の評価
抗TREM2抗体の結合特性を、ヒトTREM2を発現するHEK293細胞で以下の通り評価した。
【0251】
ヒトTREM2/DAP12を安定して発現するHEK293細胞株を、野生型ヒトTREM2及びDAP12を発現するベクター、ならびにDAP12のみを発現するベクターでそれぞれ細胞をトランスフェクトすることにより作製した。安定発現クローンを選択し、細胞表面TREM2の発現をフローサイトメトリーで評価した。APCコンジュゲートラット抗ヒト/マウス-TREM2モノクローナル抗体(R&D、カタログ番号MAB17291)を使用して、表面TREM2の発現を検出した。最も高い野生型TREM2の発現レベルを示すクローンを選択し、「HEK293-H6」と命名した。DAP12を安定して発現しているクローンをウエスタンブロットにより分析し、選択したクローンを「HEK293-DAP12#1」と命名した。
【0252】
ヒトTREM2を高発現するHEK293(HEK293-H6)及びGFPを高発現するHEK293(B5)を0.05%トリプシンにより回収し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離し、FACS緩衝液(PBS+0.5%BSA)で2回洗浄した。混合細胞を、ヒトTrustain FcX溶液(Biolegend、カタログ番号422302)を含むFACS緩衝液に、細胞株あたり106/mLの密度で再懸濁させた。混合した細胞株を96ウェル丸底プレートにウェルあたり200,000細胞で播種し、室温で20分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離し、用量設定の抗TREM2抗体とともに氷上で45分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を遠心分離し、FACS緩衝液で3回洗浄した。次いで、細胞を二次抗体(Alexa Fluor 647 AffiniPure F(ab’)2 Fragment Goat Anti-human IgG(H+L)、Jackson ImmunoResearch Laboratories、カタログ番号109-606-088、1:800希釈)とともに、氷上で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をFACS緩衝液で3回洗浄し、100μLのFACS緩衝液に再懸濁させ、フローサイトメトリー(BD FACSCanto II、San Jose,CA)により分析し、各試料につき30,000事象を得た。細胞あたりの平均蛍光強度をFlowJoソフトウェアで算出し、用量反応結合曲線の作成に使用した。
【0253】
TREM2依存性pSykシグナル伝達の活性化
TREM2依存性pSykシグナル伝達の活性化を、Perkin-Elmerの市販のAlphaLisaアッセイを使用して、ヒトマクロファージ細胞中またはHEK293-H6細胞中で測定した。
【0254】
70%DOPC及び30%POPSを含有する脂質小胞の使用を含む全ての実験では、脂質小胞を実験から2週間以内に次のように調製した:7mgのDOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及び3mgのPOPS(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン)をガラスバイアル内のクロロホルム中に合わせ、N2ガス流下で1~2時間、または完全に乾燥するまで乾燥させた。脂質混合物を1mL HBSSに(最終脂質濃度が約10mg/mLになるように)再懸濁させ、2~3分間ボルテックスした。続いて、脂質懸濁液を、1つの100nm孔径の膜で構成されたAvantiミニエクストルーダを使用して押し出し、10mg/mLで小さな単層小胞を形成した。
【0255】
1.細胞への抗体の投与
アッセイの前日、ヒトマクロファージ細胞またはHEK293-H6細胞を、ポリ-D-リジンでコーティングした96ウェルプレートに、それぞれ100,000細胞/ウェルまたは40,000細胞/ウェルで播種した。抗体を10段階の連続希釈で、段階間は3倍でPBSに希釈した。アンタゴニストの用量反応曲線については、70%のDOPC及び30%のPOPSを最終濃度1mg/mLで含有する脂質小胞も抗体/PBS混合物に含めた。Biotek405/406プレート洗浄機を使用して細胞をHBSSで3回洗浄した後、Hamilton Nimbusリキッドハンドラーを使用してウェルあたり50μLの抗体/PBS(小胞を含むかまたは含まない)溶液を添加した。次いで、細胞プレートを37℃のインキュベータに5分間移した。プレートをはじいてリポソーム/抗体溶液を除去し、リキッドハンドラーを使用して1μMのPMSFを含有する40μLの溶解緩衝液(Cell Signaling Technologies、CST)を添加した。次いで、溶解物を-80℃で凍結するか、またはAlphaLisaアッセイで直ちにアッセイした。
【0256】
ヒトマクロファージ細胞を以下の通りアッセイ用に調製した。ヒト単球を、RosetteSepヒト単球濃縮カクテルプロトコル(Stemcell Technologies、参照#15068)に従って新鮮血液から単離した。単離した単球を洗浄緩衝液(PBS+2%FBS)で洗浄し、10mLのACK溶解緩衝液(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A10492)に再懸濁させ、赤血球を溶解させた。20mLの洗浄緩衝液を添加して細胞溶解を停止させ、試料を遠心分離し、培地(RPMI、10%Hyclone FBS、1%ピルビン酸ナトリウム、1%Glutamax、1%非必須アミノ酸、及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン)でもう一度洗浄した。次いでヒト単球を、250mLフラスコで、50ng/mLのヒト組換えM-CSF(Gibco、カタログ番号PHC9501)の存在下の培地中でマクロファージ細胞に分化させた。新鮮ヒトM-CSFを3日目に添加し、続いてヒトマクロファージを5日目に回収してアッセイに使用した。
【0257】
2.AlphaLisaアッセイ
Perkin Elmer pSyk AlphaLisaキットの標準プロトコルを使用して、細胞溶解物をpSykについてアッセイした。簡潔に述べると、10μLのライセート/ウェルを不透明な白色の384ウェルOptiplate(Perkin Elmer)に移した。次に、5μLのAcceptor Mix(アクセプタービーズの使用溶液(working solution)を含有する)をウェルごとに添加し、続いてプレートをホイルシールで密封し、室温で1時間インキュベートした。続いて、5μLのDonor Mix(ドナービーズの使用溶液を含有する)を、減光条件下で各ウェルに添加した。プレートを再度密封し、室温で1時間インキュベートした。最後に、Perkin Elmer EnVisionプレートリーダーでAlphaLisaの設定を使用してプレートを読み取った。
【0258】
ヒトマクロファージ細胞における生存アッセイ
ヒト単球を、RosetteSepヒト単球濃縮カクテルプロトコル(Stemcell Technologies、カタログ番号15068)に従って単離した。単離した単球を洗浄緩衝液(PBS+2%FBS)で洗浄し、10mLのACK溶解溶液(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A10492)に再懸濁させ、赤血球を溶解させた。20mLの洗浄緩衝液を添加して溶解を停止させた。細胞懸濁液を遠心分離し、培地(RPMI1640+10%FBS+ペニシリン/ストレプトマイシン)で1回洗浄した。細胞を106細胞μL/mLの密度で培地に再懸濁させ、以下に記載する生存アッセイに使用した。
【0259】
アッセイの前日、96ウェルプレートに抗TREM2抗体またはアイソタイプ対照を、用量設定(45μL/ウェル、合計12段階)で予めコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、予めコーティングしたプレートをPBSで2回洗浄し、次いで低濃度のヒトM-CSF(5ng/mL、Gibco、カタログ番号PHC9501)の存在下で、ヒト単球(105細胞/ウェル)をプレートにロードした。37℃で5日後、培地を吸引し、100μL PBS+100μL Celltiter-glo培地(Promega、カタログ番号G7571)を各ウェルに添加した。10分間のインキュベーション後、細胞培地をルミノメーターの使用に適合したマルチウェルプレートに移し、細胞生存率に関する発光を記録した。
【0260】
脂質貯蔵アッセイ
アッセイの前に、ヒト多能性幹細胞(iPSC)をまず、市販のキット(StemCell TechnologiesのSTEMdiff Hematopoietic Kit)を使用して、造血前駆細胞(HPC)に分化させた。HPCを初代ヒトアストロサイトを含有するプレートに移し、14~21日間共培養した。共培養物中の浮遊細胞が主に(>80%)成熟ミクログリアであると同定してから、ミクログリアをアッセイに使用した。
【0261】
細胞(iPSC由来ヒトミクログリア、30,000細胞/ウェル)を、完全血清培地入りのPDLコーティング96ウェルプレートに播種した。37℃で24時間後、培地を、オレイン酸アルブミン(最終濃度10μMまたは33μM、Sigma O3008)または精製した非標識ミエリン(最終濃度50μg/mL、Safaiyan et al.(2016、Nature Neuroscience19(8):995-998)に記載されている方法を使用して野生型C57Bl/6マウス脳(Jackson Laboratories)から精製)を含有する完全血清培地に交換した。37℃で24時間脂質処置した後、培地を抗TREM2抗体を含有する培地と交換した。一点の実験について、使用した抗TREM2抗体の濃度は、100nMであった。用量反応曲線のために、100nMの抗TREM2抗体を含有する培地を合計10段階で3倍連続希釈した。RSVを、対照として使用した。細胞を37℃でさらに48時間インキュベートしてから、以下に記載されるように、Bodipy染色を使用して細胞をイメージングするか、またはリピドミックのために細胞を抽出した。
【0262】
Bodipyイメージングでは、上清を除去し、1:2500のDMSO中の1mg/mLのBodipy493/503溶液(Thermo-Fisher D3922)及び1滴/mLのNucblue(ThermoFisher、カタログ番号R37605)を含有する生細胞イメージング緩衝液(Life Technologies、カタログ番号A14291DJ)中で、細胞を37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション期間後、染色溶液を除去し、細胞を生きたままイメージングするか、または4%パラホルムアルデヒドで固定した。Opera Phoenixハイコンテント共焦点イメージャーで、BodipyのためのAlexa 488チャネル及びDAPI照射設定を使用して、細胞をイメージングした。機器に付属のHarmonyソフトウェアのスポット検出アルゴリズムを使用して、脂質スポットを分析した。
【0263】
リピドミック分析のために、細胞を氷上に保持しながらPBSで1回洗浄した。1:100の内部標準物質を含有する70μL容量の9:1メタノール:水溶液を、96ウェルプレート中の細胞に添加した。プレートを振盪器で4℃、1200rpmで20分間撹拌した後、300×gで5分間遠心分離した。上清の50μL試料をLCMSバイアルに移し、機器で分析するまで-80℃で保持した。
【0264】
エレクトロスプレー質量分析法(QTRAP 6500+Sciex、Framingham,MA,USA)と連結した液体クロマトグラフィー(Shimadzu Nexera X2システム、Shimadzu Scientific Instrument,Columbia,MD,USA)によって、脂質レベルを分析した。各分析のために、試料5μLを、55℃で0.25mL/分の流量を用いてBEH C18 1.7μm、2.1×100mmカラム(Waters Corporation,Milford,Massachusetts,USA)に注入した。陽イオン化モードの場合、移動相Aを10mMギ酸アンモニウム+0.1%ギ酸を含む60:40のアセトニトリル/水(v/v)で構成し、移動相Bを10mMギ酸アンモニウム+0.1%ギ酸を含む90:10のイソプロピルアルコール/アセトニトリル(v/v)で構成した。陰イオン化モードの場合、移動相Aを10mM酢酸アンモニウムを含む60:40のアセトニトリル/水(v/v)で構成し、移動相Bを10mM酢酸アンモニウムを含む90:10のイソプロピルアルコール/アセトニトリル(v/v)で構成した。勾配を、0.0~8.0分で45%Bから99%Bへ、8.0~9.0分を99%Bで、9.0~9.1分で45%Bへ、9.1~10.0分を45%B、のようにプログラムした。エレクトロスプレーイオン化を、次の設定:カーテンガス:30、コリジョンガス:中等度に設定、イオンスプレー電圧:5500(陽性モード)または4500(陰性モード)、温度:250℃(陽性モード)または600℃(陰性モード)、イオン源ガス1:50、イオン源ガス2:60、を適用して陽イオンモードまたは陰イオンモードのいずれかで実施した。Analyst 1.6.3(Sciex)を、多重反応モニタリングモード(MRM)で使用して、以下のパラメータ:滞留期間(msec)及びコリジョンエネルギー(CE)、デクラスタリング電位(DP):80、エントランス電位(EP):10(陽性モード)または-10(陰性モード)、及びコリジョンセルイグジット電位(CXP):12.5(陽性モード)または-12.5(陰性モード)を用い、データ取得を実施した。非内在性の内部標準物質の混合物を使用して、脂質を定量化した。脂質を、それらの保持時間及び市販の参照標準物質(Avanti Polar Lipids,Birmingham,AL,USA)のMRM特性に基づいて同定した。
【0265】
TREM2依存性mTORシグナル伝達の活性化
野生型iPSC由来ヒトミクログリアを培養し、抗TREM2抗体(最終濃度100nM)及びDMSOまたは市販のmTOR阻害剤(Selleckchem、カタログ番号AZD8055、最終濃度20nM)のいずれかで96時間処置した。その後、処置した細胞を溶解し、mTOR経路における主要なシグナル伝達標的のリン酸化を調査するために、細胞溶解物をウエスタンブロット用に調製した。ウエスタンブロットの一次抗体は、Cell Signaling Technologiesから入手した:(1)ホスホ-mTOR(Ser2448)、製品番号5536T;(2)mTOR(7C10)、製品番号2983T;(3)ホスホ-AKT(Ser473)、製品番号9271T;(3)ホスホ-GSK-3beta(Ser9)、製品番号5558T;(4)ホスホ-S6リボソームタンパク質(S235/236)、製品番号4858T;(5)ホスホ-4E-BP1(Thr37/46)、製品番号2855T;(6)ベータ-アクチン、製品番号58169S。
【0266】
実施例5.結果
ヒト化し配列最適化した抗体CL0020188のバリアントの結合特性の分析結果を表2及び
図1A~1Hに示す。CL0020188CDR-H2配列(配列番号5)及びCDR-L1配列(配列番号7)中のNGモチーフを修飾し、ヒトフレームワーク領域上にグラフトして分析した。表2は、HEK293-H6細胞における、Biacoreによって測定したK
D値、及び用量設定した結合アッセイによって測定したEC
50値を示す。
図1A~1Hは、ヒト化し配列最適化したバリアントに関する、HEK293-H6細胞によって発現されたTREM2への結合の代表的な用量反応曲線を含む。バリアントは塗りつぶした黒丸(●)で表され、アイソタイプ対照は白丸(○)で表される。
【0267】
(表2)配列最適化しヒト化したCL0020188のバリアントの結合特性
【0268】
表2に示すように、ヒト化し配列最適化したCL00201088のクローンは、Biacoreで測定した場合、親抗体(K
D=9.5nM)と比較してhTREM2に対して同様の親和性値を示した。これは、表1に示すHEK293-H6細胞の細胞結合の結果と一致しており、対応する用量反応曲線を
図1A~1Hに示す。親抗体(EC
50=0.44nM)と比較して、ヒト化し配列最適化したクローンは、HEK293-H6細胞中で発現したTREM2に対して同等かつナノモル以下の親和性を示した。総合すると、結果は、親抗体と、ヒト化し配列最適化したバリアントとの間の同等の結合カイネティクスを示す。
【0269】
実施例3に記載のATV:TREM2バリアントについての結果を以下の表3にまとめる。ヒトTREM2発現HEK細胞への結合及びFACSによる分析に基づく例示的な細胞結合曲線を
図2に示す。
【0270】
【0271】
HEK-H6細胞におけるTREM2依存性pSykシグナル伝達、ヒトマクロファージ細胞の生存を促進する能力、及びiPSC由来ヒトミクログリア細胞(以下、「iPSCミクログリア」または「iMG」と称する)における脂質蓄積を調節する能力に関して、抗体を評価した。
図3は、ATV:TREM2バリアント(ATV:TREM2#3)及び対応する抗TREM2抗体の結果を示す。ATV:TREM2は、対応するTREM2抗体よりも有意に大きな程度で、TREM2を発現するHEK293-H6細胞におけるpSykシグナル伝達を活性化することができ、これは、分子にATVを付加することで、その効力を高めることができることを示している(
図3)。さらに、ATV:TREM2は、マクロファージの生存を誘導し、EC
50は4.1+0.3nMであった。最後に、抗TREM2抗体は、ミエリン処置したiMGにおける脂質蓄積を低減させる能力を示し(
図4A及び4B)、脂質貯蔵の阻害に対するIC
50は0.20nM(97.7+0.3%最大阻害)であった。
【0272】
ATV:TREM2が脂質蓄積を低減させる能力を調査するために、追加の研究を実施した。
図5A~5F及び
図6A~6Cは、代表的なATV:TREM2バリアント(ATV:TREM2#3)が脂質蓄積を低減させる一方、脂肪酸酸化中間体を増大させることを示しており、これは、ミトコンドリア機能の増強におけるATV:TREM2の潜在的役割を示唆している。オレイン酸脂質刺激(33μM)で処置した後にATV:TREM2とインキュベーションした細胞(iMG)は、Bodipy染色によって示されるように、脂質蓄積を低減することが可能であった(
図5A及び5B)。ミエリンで24時間処置した後にATV:TREM2と48時間インキュベーションしたiMGのLCMS分析は、ATV:TREM2がトリグリセリド(TG)種を減少させる一方で、同時にベータ酸化中間体(アシルカルニチン)及びTCA回路中間体(
図5C~5F)を増加させることを示した。
図5Cは、1.5倍を超える変化倍率(p<0.05)を示した全てのTG、アシルカルニチン、及びTCA回路中間体種を示すヒートマップを提供する。一方、
図5D~5Fは、刺激後にATV:TREM2またはアイソタイプ対照とインキュベートしたビヒクル及びミエリン刺激iMGにおける代表的な種の変化を示す。
図6A~6Cは、ミエリン刺激後にATV:TREM2またはアイソタイプ対照とインキュベートしたiMGにおける特定のTG、アシルカルニチン、及びTCA回路中間体種の変化を示す。
図6A~6Cに示すように、ATV:TREM2は、TG及びセラミドの全ての種を低減させる一方で、ある特定の短鎖アシルカルニチン種を増加させることから、ATV:TREM2がミトコンドリア機能を増強させ得ることを示している。
【0273】
ミクログリア細胞増殖は、mTORシグナルの活性化及び連携と関連する。したがって、mTOR経路シグナル伝達の下流におけるATV:TREM2の役割を探索した。mTORシグナル経路標的のリン酸化状態を、mTOR阻害剤の存在下及び非存在下で、代表的なATV:TREM2バリアント(ATV:TREM2#3)とインキュベートした野生型iPSCミクログリアにおけるウエスタンブロットによって分析した。
図7Aは、mTORシグナル経路標的の代表的なウエスタンブロット画像を示す。ウエスタンブロットデータの定量化を
図7B~7Eに示す(ベータ-アクチンローディング対照に対して正規化したリン酸化レベル)。ATV:TREM2で処置した試料のぞれぞれのリン酸化レベルを、各独立した実験について、アイソタイプ抗体対照で処置した試料と比較した(n=6)。結果は、アイソタイプ対照と比べてATV:TREM2で処置した試料において、mTORのセリン
2488、AKTのセリン
473、リボソームタンパク質S6(RPS6)のセリン
235/236、及びGSK3bのセリン9のリン酸化レベルの上昇によって証明されるように、ATV:TREM2がmTOR経路シグナル伝達を活性化することを示している(
図7B-7E;統計概要:「ns」(p>0.05);「
*」(p<0.01);「
**」(p<0.001))。RPS6は、mTORC1複合体の下流にあるシグナル標的であり、GSK3bは、mTORC2複合体の下流にあるシグナル標的である。
図5A~
図7Eで生成された全てのデータについて、ATV:TREM2#3のアイソタイプコントロール(「ISO」)は、表5に示す配列を含有する。
【0274】
実施例6.リソソーム機能不全におけるATV:TREM2の役割
リソソーム機能におけるATV:TREM2の役割を調査した。リソソーム機能への影響を評価するために、ATV:TREM2バリアントで処置したiPSC由来ミクログリア細胞(「iMG」)におけるプログラニュリン(PGRN)及びビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)のレベルを測定した。
【0275】
ATV:TREM2のPGRNレベルへの影響を評価するために、96ウェルプレートに1ウェルあたり30,000細胞の密度でiMGを播種し、ATV:TREM2#3(100nM)と72時間インキュベートした後、細胞上清及び細胞溶解物を回収し、比色サンドイッチELISAを使用してプログラニュリン(PGRN)レベルを分析した。
【0276】
PGRNレベルの測定には、Thermo Scientific384ウェルMaxisorpプレートを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した4μg/mLの捕捉抗体(R&D 抗PGRN抗体、DuoSet ELISAキット、カタログ番号DY2420)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。試料ウェルを3%BSA含有PBSで90分間ブロッキングした。細胞試料を3%BSA含有PBSで1:10に希釈し、プレート上の各試料ウェルに加え、続いて、室温で90分間インキュベーションした。その後、125ng/mLに希釈した検出抗体(R&D PGRN抗体、DuoSet ELISAキット、カタログ番号DY2420)を各試料ウェルに加え、プレートを室温で90分間インキュベートした。最後にHRP結合ストレプトアビジン(R&D SA-HRP、DuoSet ELISAキット、カタログ番号DY2420)を1:200に希釈し、各試料ウェルに加えた。プレートを室温で20分間インキュベートした。試料ウェルをPBSで洗浄した後、発色試薬(TMB基質)を加え、5分間反応させた後、反応を4N H
2SO
4で停止した。BioTek Synergy Neo2プレートリーダーを使用して吸光度を測定し、4パラメータロジスティック曲線にあてはめた標準曲線からの補間よってPGRNレベルを決定した。
図8に示すように、ATV:TREM2とのインキュベーションにより、アイソタイプ対照と比べて、上清及び細胞溶解物の両方でPGRNレベルが上昇した。
【0277】
BMPレベルへの影響を評価するために、iMGをミエリンまたはビヒクルで24時間刺激し、続いて、ATV:TREM2#3(100nM)と48時間インキュベーションした。内部標準混合物を含有するメタノールの添加により細胞脂質を抽出し、国際PCT公開第WO2020/112889号に記載のものと同様のQ-trap 6500(SCIEX)で液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS/MS)によりBMP存在量を測定した。BMP種を、内部標準のBMP(14:0_14:0)を使用して定量し、その保持時間及びMRM特性に基づいて同定した。定量化は、同位体のオーバーラップの補正後、MultiQuant 3.02(Sciex)を使用して実施した。BMP種は、測定された全ての脂質種含有量の中央値に対して正規化した。タンパク質濃度をビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce,Rockford,IL,USA)を使用して測定した。代表的なBMP結果を
図9に示す。
図9に示すように、ミエリンで刺激した後にATV:TREM2で処置したiMGは、BMP種のレベルが低減したことから、ミエリンによって誘導されたリソソーム刺激に対する潜在的な救済が示唆される。
【0278】
図8及び
図9に示すように、iMGをATV:TREM2とインキュベーションすることで、PGRNレベルが上昇し、ミエリン誘導BMPレベルが修正されたことから、リソソーム効果の調節におけるATV:TREM2の役割が示される。
図8及び
図9において、ATV:TREM2#3のアイソタイプ対照(ISO)は、表5に示す配列を含有する。
【0279】
実施例7.ミトコンドリア呼吸におけるATV:TREM2の役割
ミトコンドリア呼吸に対する影響を評価するために、ATV:TREM2バリアントまたはアイソタイプ対照で処置されたiPSC由来ミクログリア細胞(「iMG」)において、Seahorse XFe96アナライザー(Agilent)を使用し、Seahorse XF Palmitate Oxidation Stress Kit(Agilent103693)の材料及びプロトコルを使用して、酸素消費を測定した。Seahorse実験の前に、XF96マイクロプレート(Agilent、カタログ番号102416)上で、細胞をATV:TREM2#3(100nM)またはアイソタイプ対照と72時間培養した。Seahorse実験の16時間前に、0.5mM グルコース(Agilent 103577)、1mM グルタミン(Agilent 103579)、0.5mM L-カルニチン(Seahorse XF Palmitate Oxidation Stress Kitの一部)、及び1% Hyclone FBSを加えたSeahorse XF RPMI(Agilent 103576)からなる基質制限培地に細胞を曝した。実験直前に、細胞に、パルミチン酸塩-BSAコンジュゲート(166μM)またはBSA対照のいずれかを投与した。(1)エトモキシル(4μM)(カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)阻害剤)またはビヒクル、(2)オリゴマイシン(1.5μM)(ATPシンターゼ複合体V阻害剤)、(3)カルボニルシアニド4-(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP、ミトコンドリア脱共役剤、1μM)、及び(4)ロテノン/アンチマイシン(各0.5mM、それぞれ複合体I及び複合体III阻害剤)の逐次注入を使用して、細胞のミトコンドリア呼吸能力を評価した。Seahorseアナライザー(Agilent)によって、実験中の酸素消費率を測定した。ミトコンドリア呼吸を評価するための実験条件の概要を表4に示す。
【0280】
【0281】
酸素消費の代表的なカイネティクスグラフを
図10Aに示し、細胞の最大呼吸能力を示す棒グラフを
図10Bに示す。図に示すように、ATV:TREM2は、脂肪酸基質のパルミチン酸(PAL)と同程度に最大呼吸を増加させる。この作用は、CPT1阻害剤の存在下で減少した。結果は、ATV:TREM2が最大ミトコンドリア呼吸を増大させ、この効果が脂肪酸酸化能力の増大によって付与されるようであることを示している。
【0282】
実施例8.ATV:TREM2特性比較
ATV:TREM2#1及びATV:TREM2#3の特性をWO2019/028292に記載されている、TREM2に結合する参照抗体の特性と比較した。参照抗体#1(「Ref.Ab.#1」)の重鎖及び軽鎖配列は、それぞれ配列番号74及び75で表されるものである。参照抗体#2(「Ref.Ab.#2」)の重鎖及び軽鎖配列は、それぞれ配列番号76及び75で表されるものである。各抗TREM2抗体のアイソタイプ対照の重鎖及び軽鎖配列を表5に示す。
【0283】
【0284】
ATV:TREM2は、参照Abよりも、in vitroでより強力であり、炎症の誘導が少ない(サイトカイン放出が少ない)。
実施例4に記載されるヒトマクロファージ細胞生存アッセイを使用して、抗TREM2抗体を評価した。
図11Aは、抗TREM2抗体による細胞生存率用量反応曲線を示し、「ISO」は、ATV:TREM2#3のアイソタイプ対照(表5)を指す。用量反応曲線から決定された対応する効力(EC50)及び最大反応(Emax)の値を
図11B及び
図11Cに示す。個々のマークは、ヒト細胞ドナー(n=3)から得た単一の値を表す。
図11A~11Cに示す結果は、ATV:TREM2#3が、参照抗体#1及び#2よりもin vitroにおけるヒトマクロファージ生存の促進により強力であることを示している。
【0285】
別の実験において、ヒトマクロファージ細胞を100nMの表面固定化抗TREM2抗体で5日間処置し、その後、各細胞セットの細胞培養培地を回収し、Luminex xMAP技術及び市販のビーズベースマルチプレックスアッセイキット(Human Cytokine 42-Plex Discovery Assay(登録商標)、Eve Technologies Corp.)を使用して、サイトカイン放出について分析した。相対的なサイトカイン放出レベルのヒートマップを
図12に示す(プロッティングにZスコアを使用)。
図12の結果は、ATV:TREM2#3が、参照抗体#1及び#2よりもヒトマクロファージ細胞における炎症の誘導が少ないことを示している。
【0286】
まとめると、ATV:TREM2#3、参照抗体#1、及び参照抗体#2は、ヒトマクロファージの生存及び増殖を促進することが可能である(
図11A)。しかしながら、ATV:TREM2#3は、細胞生存に対してより強い効力を示し、参照抗体#1及び#2と比べて、全体的なサイトカインシグネチャーを低減させた(
図11B、11C、及び12)。
【0287】
ATV:TREM2は、刺激後のトリグリセリド種レベルを低減させることができる。
抗TREM2抗体を、実施例4に記載したように、脂質貯蔵アッセイ(10μM オレイン酸刺激を使用)によって評価した。ATV:TREM2#3、参照抗体#1、及び参照抗体#2の結果を
図13A~13Eに示す。
【0288】
図13A~13Cは、LCMSによって定量したiPSC由来ミクログリア細胞(「iMG」)におけるトリグリセリド種について、p<0.05のカットオフ及び1.5倍を超える変化倍率を有するボルケーノプロットを示す。データを各抗体のアイソタイプ対照に対して正規化した。
図13A~13Cに示すように、ATV:TREM2#3は、オレイン酸投与後のトリグリセリド(TG)種を調節することが可能であるが、参照抗体では、オレイン酸刺激後のTG種の変化レベルは有意に変化しなかった。
図13D及び13Eは、データをATV:TREM2#3のアイソタイプ対照に対して正規化した、代表的なTG種の測定の棒グラフを示す。
【0289】
ATV:TREM2は、in vitroでTREM2レベルを調節することができる。
抗TREM2抗体がiPSC由来ミクログリア細胞(「iMG」)のTREM2レベルにどのように影響するかを評価するために、iMGをATV:TREM2#3または参照抗体#1と様々な濃度で72時間インキュベートし、続いて、iMG細胞溶解物及び細胞培養培地のTREM2レベルを測定した。TREM2を以下の通り測定した。簡潔に述べると、MSDスモールスポットストレプトアビジンプレート(Meso Scale Discovery)を、ビオチン化ヤギ抗hTREM2ポリクローナル抗体(R&D Systems、BAF1828)で室温で1時間コーティングした。次いで、プレートをMSD Block A緩衝液(Meso Scale Discovery)により室温で1時間ブロッキングした。試料及び標準をアッセイ緩衝液(TBST中の25%MSD Block A緩衝液)で調製/希釈し、ブロッキングした後、30μLの試料及び標準をプレートにローディングした。室温で1時間インキュベーションした後、プレートをTBSTで洗浄し、一次抗体(ATV:TREM2#3)に室温で1時間結合させた。その後、希釈したスルホタグ付きヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotech、2049-01)をプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。TBSTで洗浄後、2×MSD読み取り用緩衝液Tを使用してMSDプレートを発色させ、続いてMSD Sectorプレートリーダーを使用して検出した。Meso Scale Discovery ソフトウェア(Discovery Workbench)を使用して標準曲線をフィッティングすることにより、MSD値をTREM2の絶対定量に変換した。
【0290】
図14A及び14Bは、抗TREM2抗体とのインキュベーション後のiMG細胞溶解物及び細胞培養培地における抗体濃度に対するTREM2レベルのプロットを示す。各抗体のTREM2レベルをその固有のアイソタイプ対照に対して正規化した。
図14A及び14Bにおいて、「ISO」は、ATV:TREM2#3のアイソタイプ対照を表す。
図14Aに示すように、全TREM2のレベルは、ATV:TREM2#3及び参照抗体#1で処置したiMGの細胞溶解物において、抗体の量が増加するにつれて増加した。対照的に、可溶性TREM2のレベルは、抗体で処置した細胞の細胞培養培地において、抗体の量が増加するにつれて減少した。
【0291】
ATV:TREM2は、非ヒト霊長類において優れた薬物動態プロファイルを示す。
抗TREM2抗体の薬物動態(PK)特性を非ヒト霊長類において検討した。簡潔に述べると、36~53ヶ月の範囲の月齢の若年成体/成体のオスのカニクイザルに30mg/kgの試験物質を単回投与で静脈内投与した(表6、1コホートにつきn=5)。投与後24、168、及び336時間にCSF試料を採取した。
【0292】
結果を表6及び
図15に示す。表6は、非ヒト霊長類の脳脊髄液(CSF)における抗TREM2抗体のPK値を示す。ATV:TREM2バリアントのPK値は、これらの抗体が、CSFにおいて、TREM2 Ab(トランスフェリン受容体の結合能力なし;配列番号83及び54でそれぞれ表される重鎖及び軽鎖配列)及び参照抗体#1と比べてより高い曝露を有することを示している。
【0293】
(表6)非ヒト霊長類における抗TREM2抗体のCSF薬物動態プロファイル
【0294】
図15は、投与した非ヒト霊長類のCSF中における抗TREM2抗体のPKプロファイルを示す。
図15及び表6に示すように、ATV:TREM2は、参照抗体#1と比較して、CSF PKにおいて少なくとも2倍の増加を示す。
【0295】
実施例9.ヒト化TREM2マウスにおけるATV:TREM2の特性
ATV:TREM2のin vivoにおける影響を調査するために、ヒトTREM2を発現するBACトランスジェニックマウスを作製した。これらのマウスを米国特許第10,143,187号に記載のヒトトランスフェリン受容体ノックインマウスと交配し、本明細書に記載のATV:TREM2分子の特徴付けをできるようにした。
【0296】
ヒトTREM2 BACトランスジェニックモデルの作製
ATV:TREM2のin vivoにおける影響を調査するために、修飾されたBAC DNA CTD-2210D2(ThermoFisher Scientific;カタログ番号96012)を使用することによって、ヒトTREM2を発現するいくつかのトランスジェニックマウス系統を作製した。元のBAC DNA CTD-2210D2では、ヒトTREM2コード領域及びその調節エレメントが2つの他のTREM様遺伝子TREML1及びTREML2に挟まれている。これらのTREM様遺伝子からの干渉を回避するために、TREML1からエクソン1及びTREML2からエクソン3を欠失させることによって、その発現を停止した。この操作したBAC CTD-2210D2 DNAコンストラクトをC57BL/6Jマウスの受精マウス卵子の前核に注入した。2つの独立したファウンダー系統(TB36及びTB45と呼ばれる)が得られ、生殖細胞系列への伝達があることが示された。
【0297】
これらの2つのトランスジェニック系統の特徴付け及び比較を行うために、ヘミ接合性トランスジェニック動物及び野生型非トランスジェニック同腹子対照を分析に使用した。ヒトTREM2のコピー数は、テールゲノムDNAのqPCR分析を使用して決定した。脳、肝臓、肺、及び脾臓におけるヒトTREM2 mRNA及びタンパク質レベルをqRT-PCR及びanMSDアッセイによって測定した。ヒトTREML1及びTREML2 mRNAを、qRT-PCRによって、脳選別したミクログリアで分析した。骨髄由来マクロファージ(BMDM)の表面TREM2発現をFACSによって定量した。ヒトTREM2機能をin vitro BMDM生存アッセイによって評価した。
【0298】
ヒトTREML1及びTREML2は、TB36またはTB45のいずれにおいても検出されなかったことから、これらの遺伝子の欠失の成功を示している。qPCR分析は、TB36及びTB45にはそれぞれ2コピー及び1コピーのヒトTREM2導入遺伝子があり、脳及び末梢組織において、TB45と比べてTB36でのヒトTREM2発現のほうが高いことと対応している。in vitro生存アッセイでは、ヒトTREM2アゴニスト抗体がTB45系統よりもTB36系統でより強い反応を誘発することが示された。
【0299】
このex vivo及びin vitroでの特徴付けに基づいて、以下の育種及びin vivo試験にはTB36を選択した。ヘミ接合性TB36マウスをC57BL/6Jにさらに3回戻し交配し、次いで、hTfR KIマウス(米国特許第10,143,187号に記載)と交配してヒトTREM2 BACヘミ接合性;hTfR KIヘミ接合性マウスマウスをin vivo試験用に作製した。
【0300】
TB36/hTfR KIマウスにおけるATV:TREM2による薬物動態及び薬力学反応
ATV:TREM2がin vivoにおいてミクログリア反応を誘発することができるかどうかを決定するために、単回投与のATV:TREM2#3または対応するアイソタイプ対照(ATV:RSV)(100mg/kg)をTB36/hTfR KIマウスに0日目に静脈投与し、ex vivo分析のために投与後1日目または4日目にマウスを屠殺した。屠殺時には、2.5%Avertinの腹腔内注射により動物に麻酔をかけた。終末血を心臓穿刺からEDTAチューブに採取し、ゆっくり反転させ(10回)、次いで、15,350gで7分間、4℃で遠心分離した。血漿(上層)を1.5mlエッペンドルフチューブに移し、測定まで-80℃で保管した。採血後、CSF試料を大槽から事前に引き出したガラスキャピラリーチューブによって採取し、次いで、0.5mLのProtein LoBind Eppendorfチューブに移し、12,700rpmで7分間、4℃で遠心分離した。CSF試料の上清をドライアイス上で急速凍結し、測定まで-80℃で保管した。次いで、動物を冷PBSで灌流し、脳を解剖し、2つの半球を分離した。右半脳を4%パラホルムアルデヒドに4℃で24時間浸漬固定し、次いで、0.1%アジ化ナトリウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液に移し、30%スクロース処理及び切片化の準備が整うまで保存した。左半脳を2つに切断し、PK測定及び他の標的の連携/サイトカイン分析のために、それぞれ2つのチューブに急速凍結した。
【0301】
投与後1日目及び4日目にヒトIgGの血漿中及び脳内レベルを評価した。それを以下の表7に示す。
【0302】
(表7)TB36/hTfR-KIマウスにおける血漿中及び脳内薬物動態プロファイル
【0303】
ミクログリア増殖に対するATV:TREM2の影響
新たに合成されたDNAに組み込まれ得るチミジン類似体の5-エチニル-2’-デオキシウリジン(EdU、80mg/kg)の4用量を、0日目のATV:TREM2#3またはATV:RSVの処置後、0日目、1日目、2日目及び3日目にマウスに腹腔内投与した。
【0304】
増殖ミクログリア(EdU+Iba1+)を検出するために、投与後4日目の脳切片をClick-iT EdUイメージングキット(ThermoFisher Scientific、C10637)で処置した後、Iba1免疫染色した。EdU-Iba1染色は、ATV:TREM2が脳内の新生ミクログリア数(EdU+Iba1+;
図16A)及び総ミクログリア被覆領域(Iba1+領域;
図16B)をアイソタイプ対照と比較して劇的に増加させることを示しており、したがって、ATV:TREM2が対照と比較してミクログリア増殖を有意に増加させることを証明している。
【0305】
ATV:TREM2は、マウスモデルにおけるミクログリア増殖について、非ATV TREM2抗体よりも劇的に強力である。
ATV:TREM2の最低有効量を決定し、非ATV TREM2抗体と比較するために、単回投与のATV:TREM2#3(1、3、10、30mg/kg)または対応するTREM2参照抗体(「TREM2 Ab」;30mg/kg)、参照抗体#2(30mg/kg)もしくはアイソタイプ対照(ATV:RSV;30mg/kg)を0日目にTB36/hTfR KIマウスに静脈内投与した。ミクログリア増殖を測定するために、抗体処置後0日目、1日目、2日目、3日目にマウスにEdUをIP投与した。分析のためにマウスを1日目及び4日目に屠殺した。EdU-Iba1二重染色は、4日目において、1mg/kg~10mg/kgのATV:TREM2を投与した動物の新生ミクログリアの投与量依存的な増加を示し、10mg/kgのATV:TREM2は、ミクログリア増殖に対して最大効果を示す(
図17A及び17B)。さらに、ミクログリア増殖に対する1mg/kgのATV:TREM2の効果は、30倍高い投与にもかかわらず、抗TREM2または参照抗体#2のいずれよりもわずかに高い(統計的に有意ではない)。
【0306】
ATV:TREM2は、TB36/hTfR KIマウスにおいて、脳内サイトカインレベルを一過性に上昇させる。
ATV:TREM2のサイトカイン(例えば、ケモカイン)レベルに対する影響を決定するために、Mouse Cytokine Array/Chemokine Array 44-Plex(MD44)を使用して、TB36/hTfR KIマウスの終末血漿及び脳溶解物(Cell Signaling 溶解緩衝液#9803により調製)中のサイトカインレベルを測定した。ATV:TREM2#3による処置は、血漿中で測定されるサイトカインレベルを変えなかったが、投与後24時間に脳内で測定されるいくつかのサイトカインレベル(例えば、IP-10及びMCP-5)は急激に増加し、これらのサイトカインレベルは投与後96時間にベースラインレベルに戻ったことが明らかになった。3mg/kgのATV:TREM2#3が脳サイトカインレベルに対して最大効果を有した(
図18A及び18B)。
【0307】
ATV:TREM2は、TB36/hTfR KIマウスにおいて、脳内CSF1Rレベルを上昇させる。
ATV:TREM2のグリアマーカーCSF1Rレベルに対する影響を決定するために、市販のELISAキット(Abcam ab240681)を使用して、TB36/hTfR KIマウスの脳溶解物(Cell Signaling溶解緩衝液#9803により調製)中のCSF1Rタンパク質レベルを測定した。ATV:TREM2#3の投与量を増量すると、処置後1日目及び処置後4日目でCSF1Rタンパク質レベルが増加することがわかった(
図19)。
【0308】
ATV:TREM2の血漿中PKプロファイル
1mg/kg~100mg/kgの範囲の用量のATV:TREM2#3では、血漿中PKの比例的な増加が観察された。24時間における血漿中濃度は、30mg/kgの用量で一致するATV:TREM2#3、参照抗体#2、及びTREM2 Abで有意差はなかった。参照抗体#2は、同じ用量のATV:TREM2#3及びTREM2 Abと比較して低いクリアランスを有するようであった(
図20)。
【0309】
ATV:TREM2の脳PKプロファイル
24時間で、10mg/kgのATV:TREM2#3の脳内濃度は、30mg/kgのTREM2 Abと同様であり、1~3mg/kgのATV:TREM2#3の脳内濃度は、30mg/kgの参照抗体#2と同様であった。3mg/kg~10mg/kgの用量のATV:TREM2#3では比例的な増加を超える増加が観察され、他の用量では比例的な増加が観察された。96時間で、10mg/kgのATV:TREM2#3の脳濃度は、30mg/kgのTREM2 Ab及び参照抗体#2と同様であった(
図21)。全体として、ATV:TREM2#3の脳の取り込みは、TREM2 Ab及び参照抗体#2よりも効果的である。
【0310】
【配列表】
【国際調査報告】