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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】訓練装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20230317BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20230317BHJP
   G09B 23/36 20060101ALI20230317BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230317BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
G09B23/36
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542983
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021050591
(87)【国際公開番号】W WO2021144310
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】2000256
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520159363
【氏名又は名称】ヴィルチュアリサージ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カンダル-トゥータ,ニノン
(72)【発明者】
【氏名】ミニャン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,セシル
(72)【発明者】
【氏名】リバーサット,デビッド
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA04
2C032CA06
2C032CB01
(57)【要約】
本発明は、科学的または医学的対象物の科学的または医学的手技のための訓練装置(1)であって、訓練装置(1)は、少なくとも1つの解剖学的部位(3、4)と、前記解剖学的部位(3、4)のエンベロープ(2)とを備え、前記解剖学的部位(3、4)は、前記科学的または医学的対象物の少なくとも1つの画像から、少なくとも1つの第1の材料で作製され、前記第1の材料の各々は、特定の触覚フィードバックを生成することができ、前記エンベロープ(2)は、前記科学的または医学的対象物の同じ画像から、第1の材料とは異なる少なくとも1つの第2の材料であって、第1の材料の触覚フィードバックとは異なる少なくとも1つの触覚フィードバックを生成する少なくとも1つの第2の材料で製造され、エンベロープ(2)は、解剖学的部位(3、4)の全体または一部を覆うことができ、解剖学的部位(3、4)およびエンベロープ(2)の製造は、付加製造法すなわち3Dプリンティングまたは除去製造法または成形によって実施されることを特徴とする、訓練装置(1)に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
科学的または医学的対象物の科学的または医学的手技のための訓練装置(1)であって、前記訓練装置(1)は、前記科学的または医学的対象物の解剖学的に現実的な3Dコピーを備え、前記科学的また医学的対象物の3Dコピーは、
前記科学的また医学的対象物の3Dコピーの内側層を形成する少なくとも1つの解剖学的部位(3、4)であって、前記少なくとも1つの解剖学的部位(3、4)は外面および内面を有し、前記少なくとも1つの解剖学的部位(3、4)は、特定の触覚フィードバックを生成することができる少なくとも1つの第1の材料で作製される、解剖学的部位(3、4)と、
前記科学的また医学的対象物の3Dコピーの外側層を形成するエンベロープ(2)であって、前記エンベロープ(2)は、前記第1の材料とは異なる第2の材料で作製され、前記第1の材料とは異なる少なくとも1つの触覚フィードバックを生成し、前記エンベロープ(2)は、前記少なくとも1つの解剖学的部位(3、4)の全体または一部を覆うことができ、前記少なくとも1つの解剖学的部位(3、4)および前記エンベロープ(2)は、解剖学的整合構造を形成するために前記エンベロープ(2)が前記解剖学的部位の外面の全体形状に正確に一致するように構造的に協働するように意図され、前記解剖学的部位(3、4)および前記エンベロープ(2)の製造は、前記科学的また医学的対象物の少なくとも1つの画像から、付加製造法すなわち3Dプリンティングまたは除去製造法または成形によって実施される、エンベロープ(2)と、
を備えることを特徴とする、訓練装置(1)。
【請求項2】
前記科学的または医学的対象物は、ヒトもしくは動物の身体の全体もしくは一部、細胞もしくは組織生物由来製品、化学製品または製造された工業製品であることを特徴とする、請求項1に記載の訓練装置(1)。
【請求項3】
前記解剖学的部位(3、4)および前記エンベロープ(2)は、互いに取り外し可能であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項4】
前記エンベロープ(2)は、異なる性質の少なくとも2つの触覚フィードバックを生成することを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項5】
第1の材料は、硬器官、特に骨、頭蓋骨、脊椎または胸郭を代表する、TPUとして知られる熱可塑性ポリウレタンエラストマー、および/または軟器官、特に脳、肝臓、胃または肺を代表する、TPUとして知られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項6】
前記第2の材料は、0.006GPa~20GPaのヤング率を有するヒトの皮膚を代表する、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項7】
前記エンベロープ(2)は、15mm未満の直径の単一の開口部または複数の開口部を備え、前記開口部の周囲に均等に分布した少なくとも2つ、3つ、または4つの切り込みを備えることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項8】
前記エンベロープ(2)は、前記解剖学的部位(3、4)上に重ね合わされる、または前記解剖学的部位(3、4)の上に嵌合されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項9】
前記解剖学的部位(3、4)および前記エンベロープ(2)が独立して固定される基部(5)をさらに備え、前記エンベロープ(2)は前記解剖学的部位(3、4)の全体または一部を覆うことを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項10】
前記解剖学的整合構造は、前記基部(5)に取り付けるための手段を備えることを特徴とする、先行する請求項に記載の訓練装置(1)。
【請求項11】
前記解剖学的整合構造は、前記エンベロープ(2)と前記解剖学的部位(3、4)との間の取り付け手段を備えることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項12】
前記訓練装置(1)は、仮想現実ソフトウェアおよびそのような仮想現実のための表示装置と通信するように意図されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)。
【請求項13】
科学分野、医学分野、獣医学分野、細胞核分野、化学分野、薬学分野、生物学分野および工業分野における外科的行為または科学的もしくは技術的行為を訓練するための、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)の使用。
【請求項14】
仮想現実ソフトウェアおよびそのような仮想現実のための表示装置と組み合わせにおける、先行する請求項のいずれか一項に記載の訓練装置(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教育教示用具、方法および材料に関する。より詳細には、本発明は、科学者または医療従事者用の科学的または医学的手技のための訓練装置に関する。さらに、本発明は、外科的処置における訓練のための装置に関し、前記装置は、好ましくは外科医の訓練を意図した装置である。
【背景技術】
【0002】
科学的または医学的な処置における訓練は、通常、実例における実地に基づいており、研修生は、最初の訓練から始まって、経験不足の処置がリスクをもたらし得る実際の状況において、有益であり得る化学物質、生物学的もしくは医学的な材料または科学機器を用いて作業することが多い。
【0003】
例えば、ほとんどの外科訓練は、現在、実際の条件で、患者に対して、外科医の同伴を通じて行われる。ごく一部の外科のインターンしか利用できない訓練装置における訓練の中には、多くの明確な限界があるものがあり、一例を挙げると、既知の訓練装置の1つであるペルビトレーナー(pelvitrainer)は、トロカールおよびカメラが挿入される単純なボックスであり、例えば発泡体などの不活性材料上で縫合を訓練することができる。このタイプの訓練は、非常に集中的であり、限定されている。他の訓練は動物に対して行われる。動物に対する手技は、倫理、費用およびヒトとの限定的な解剖学的相関の主要な問題を提示する。
【0004】
本出願人によって出願された国際特許出願WO2019/092382(国際公開第2019/092382号公報)は、外科医の訓練および教育のための手術シミュレーションシステムを開示している。該装置は、筐体を備え、筐体は、少なくとも1つの外科用器具を受容するための操作インターフェースを画定する第1の表面と(筐体の表面の残りが基部を形成する)、前記第1の表面に配置された開口部と、前記開口部の周囲に保持された接続インターフェースとを備える。第1の表面は、基部に対して移動可能な部分を有し、開口部は、前記移動可能な部分に配置される。この筐体は、様々な処置が実行されるようにするが、外科的処置を通して連続的な触覚体験を可能にしないので、特に興味深い。このような理由で、本出願人は、その研究を継続し、外科的処置の現実をよりよく反映する訓練装置を提示するために本発明を作製した。
【0005】
先行技術では、解剖学的部位を皮膚様と思われる環境と組み合わせる装置がいくつかある。例えば、米国特許US 10,002,546(米国特許第10,002,546号公報)は、脊椎の一部が埋め込まれた透明な熱可塑性エラストマーマトリックスを備える解剖学的訓練用モデルであって、合成脊椎シースが脊椎の一部を貫通しているモデルを提示している。透明な熱可塑性エラストマーマトリックスにより、針が貫通する際に針の経路を可視化することができる。脊椎および合成脊椎シースは、針貫通中に触覚フィードバックを提供する。この装置は、外科医が脊椎注射を行う準備をするためのものである。該装置は、異なる外科的処置に関する訓練を可能にするものではない。
【0006】
米国特許出願US 2018/0322807(米国特許出願公開第2018/0322807号公報)には、腹腔鏡外科技術を実施するための腹壁の模擬モデルが記載されている。このモデルは、支持体の2つの要素間に捕捉された腹壁の模擬部分を備える。支持体は、外科訓練装置に接続可能である。該モデルは、訓練装置に接続されると、訓練ユニットの内部空洞へのアクセスのための腹部組織の貫通可能部分を提供する。模擬腹壁は、皮膚層と、後腹直筋鞘組織層と、低反発ポリウレタンフォームの模擬脂肪層と、模擬横筋筋膜および筋肉層の貫通時に異なる触覚フィードバックを提供する少なくとも2つの層とを含む複数の層を備える。模擬腹壁は、模擬組織のいくつかの層にわたる模擬臍を備える。この文献に記載されているシステムは、任意の腹部をシミュレートすると仮定される一般的なシステムであり、異なる患者の類型から生じる外科的な変動性を考慮したものではない。
【0007】
また、外科訓練用の外科シミュレータを記載している文献WO2017/059417(国際公開第2017/059417号公報)も知られている。シミュレータは、筐体を画定するフレームと、筐体内に配置された模擬組織モデルとを備える。模擬組織モデルは、経肛門切除術および経膣子宮摘出術を含む多数の外科的処置を実施するのに適している。模擬組織モデルは、フレーム内に模擬組織モデルを懸架するために、フレーム内の開口部を貫通するように構成された締結具を用いてフレームに交換可能に接続された追加の構成要素を含む。フレーム筐体は、模擬組織モデルの構成要素を漸進的に閉じ込めるために、長手方向軸に沿って横方向に次第に狭くなる。この場合も、シミュレータは一般的なシミュレータであり、患者およびそのプロファイルの多様性によって生じる様々な状況を学習することができない。
【0008】
先行技術を考慮して、本出願人は、科学者および外科医の意見を聞いて、(1)モデルが患者および異なる病態に適合していない場合には学習が完全ではないこと、(2)単一のモデルを提供することが所与の外科的処置についての全ての状況を反映しないこと、および(3)異なる形態を有する被検体の類型を定義し、被検体のカテゴリまたはタイプごとにモデルを提案することが可能であり、このことにより、より現実に近い条件下での学習が可能になることに気付いた。
【0009】
したがって、本発明の目的は、先行技術の装置よりも実際の処置経験に近い訓練装置であり、外科訓練のために、患者の類型および病態を考慮した訓練装置を提案することである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、科学的または医学的対象物の科学的または医学的手技のための訓練装置であって、訓練装置は、科学的または医学的対象物の解剖学的に現実的な3Dコピーを備え、科学的または医学的対象物の解剖学的に現実的な3Dコピーは、
・前記科学的また医学的対象物の3Dコピーの内側層を形成する少なくとも1つの解剖学的部位であって、外面および内面を有し、特定の触覚フィードバックを生成することができる少なくとも1つの第1の材料で作製される、少なくとも1つの解剖学的部位と、
・科学的または医学的対象物の3Dコピーの外層を形成するエンベロープであって、第1の材料とは異なる少なくとも第2の材料で作製され、第1の材料の触覚フィードバックとは異なる少なくとも1つの触覚フィードバックを生成するエンベロープと
を備えることを特徴とする、訓練装置である。
【0011】
本発明によれば、エンベロープは、少なくとも1つの解剖学的部位の全体または一部を覆うことができ、少なくとも1つの解剖学的部位およびエンベロープは、解剖学的整合構造を形成するためにエンベロープが解剖学的部位の外面の全体形状に正確に一致するように構造的に協働するように意図されている。
【0012】
さらに本発明によれば、解剖学的部位およびエンベロープの製造は、付加製造法すなわち3Dプリンティングまたは除去製造法または成形によって、科学的または医学的対象物の少なくとも1つの画像から実行される。
【0013】
したがって、本発明のシミュレーションにより、解剖学的および/または触覚の観点から、異なる触覚特性を有する組織/材料の少なくとも2つの層を有する科学的または医学的対象物、例えば、骨エンベロープで覆われた器官、または皮膚エンベロープで覆われた器官または別の組織で覆われた組織に対する科学的または医学的介入を現実的にシミュレートすることが可能である。
【0014】
用語「解剖学的部位」は、科学的または医学的対象物の二次元または三次元構造を再現する部位を意味し、特に、限定されるものではないが、器官または骨格構造を含む人体の要素を意味する。
【0015】
本発明の意味における解剖学的整合構造とは、問題となっている構造が生物学的解剖学的モデルと合致する現実的な寸法および形状を有することを意味する。さらに、解剖学的整合構造とは、使用される材料が生物学的解剖学的モデルの触覚の感覚に近い触覚感覚を可能にすることを意味する。
【0016】
一実施形態によれば、科学的または医学的対象物の科学的または医学的手技は、ユーザの存在および介入を必要とする。一実施形態によれば、ユーザは、特に、外科医、医療スタッフ、科学者、技術者である。
【0017】
一実施形態では、科学的または医学的対象物は、有害材料または希少材料である。有害材料は、とりわけ、放射性、可燃性、爆発性、腐食性、酸化性、窒息性または生物学的に有害な材料であり得る。有害材料は、アレルギー性、病原性または毒性の物質または微生物であり得る。
【0018】
一実施形態によれば、科学的または医学的対象物は、動物、植物または真菌種の全体または一部である。一実施形態によれば、科学的または医学的対象物は、ヒト、生物由来製品(特に、細胞もしくは細胞組織)、または化学製品もしくは工業製品(例えば、機械)である。したがって、科学的または医学的対象物は、特に、ヒトもしくは動物の身体の全体もしくは一部、細胞もしくは組織生物由来製品、化学製品または製造された工業製品であり得る。一実施形態によれば、科学的または医学的対象物は、患者の類型および/または病態および/または外傷を代表するので、選択された画像の被検体として定義される標準被検体である。この科学的または医学的対象物は、その画像に基づいて、3Dと略される3次元コピーを生じさせることができるものでなければならない。一実施形態によれば、標準被検体は、16~75歳の成人である。一実施形態によれば、標準被検体は、75歳を超える高齢者である。一実施形態では、標準被検体は、2~16歳の小児である。一実施形態では、標準被検体は、2歳未満の幼児である。一実施形態では、標準被検体は、6ヶ月未満の小児である。一実施形態では、標準被検体は男性である。一実施形態では、標準被検体は女性である。
【0019】
実施形態によれば、科学的または医学的対象物は、外科的または内科的処置を必要とする病態に罹患している、または外傷を患っている患者である。
【0020】
一実施形態によれば、本発明に係る科学的または医学的手技は、外科的または内科的行為、穿刺、注射、縫合、研究、調査、分析、試験または製造プロセスにおけるステップである。一実施形態によれば、本発明に係る科学的または医学的手技は、低侵襲外科的行為である。一実施形態によれば、本発明に係る科学的または医学的手技は、侵襲性の低い胸部または内臓の外科手術である。一実施形態によれば、本発明に係る科学的または医学的手技は、脳神経外科手術である。一実施形態によれば、本発明に係る科学的または医学的手技は、整形外科手術である。
【0021】
一実施形態によれば、本発明に係る科学的または医学的手技は、全ての外科的処置および整形外科手術を含み(手術の形態および材料の種類にかかわらず)、特に以下のものを含む。
・関節形成術、特に第1期の全寛骨大腿関節形成術、部分膝関節形成術
・反復性肩脱臼の外科的修復
・肩峰形成術
・肢節の孤立性骨折または多発性骨折の骨接合術
・複雑な外傷を除く、前腕における腱創傷の外科的修復
・複雑な外傷を除く、手の腱創傷の外科的修
・上肢の乳管症候群の外科的解放
・デュピュイトラン病における外科的解放
・踵骨腱(AN:アキレス腱)の外科的修復
・前足の外科的修復
・脛骨粗面(AN:前脛骨粗面)の骨切り術および/または転位
・靭帯形成術を除く、膝の関節鏡検査(半月板切除など)
・足首の靭帯形成術
・外科的腱転位(中枢神経病態を除く)
・椎間板プロテーゼを除く、椎間板外科手術
・関節固定を伴う脊椎外科手術
・関節固定を伴わない管解放のための脊椎外科手術、整形外科手術、例えば、整形外科的に治療される、肢節の孤立性もしくは多発性骨折、または骨盤の関節外骨折、安定型の非手術脊椎骨折
【0022】
一実施形態では、外科的処置は術前処置である。
【0023】
本発明によれば、解剖学的部位は、好ましくは少なくとも1つの3Dモダリティを有する、X線撮影、超音波検査、スキャナまたは磁気共鳴イメージングもしくはシンチグラフィもしくは超音波検査もしくは分光イメージングなどの医用画像ファイルから作成されたファイルから、付加製造法または除去製造法で製造される。一実施形態では、画像は、X線技術によって、場合によっては被検体に放射性医薬品を投与した後に得られる。一実施形態では、画像は超音波技術によって得られる。一実施形態では、画像は磁気共鳴によって得られる。一実施形態では、画像は3次元画像である。一実施形態では、付加製造法または除去製造法のためのファイルは、1つ以上の2次元画像から作成され、3次元部品を製造するために処理される。
【0024】
一実施形態では、画像は、患者の類型および/または病態および/または外傷を代表するので、選択された標準被検体(例えば、ヒトを含む動物の身体部分)の全体または一部の匿名画像である。
【0025】
一実施形態では、画像は特定の被検体の画像であり、解剖学的部位およびエンベロープは、その被検体の生理機能のカスタマイズされた複製物である。したがって、エンベロープおよび解剖学的部位は、被検体の科学的、より具体的には解剖学的整合構造を形成する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、科学的もしくは医学的対象物、または被検体もしくは標準被検体の画像から、解剖学的部位およびエンベロープが作製される。一実施形態では、解剖学的部位およびエンベロープの形状およびサイズは同一である。一実施形態では、解剖学的部位および/またはエンベロープの寸法は、嵌まり合うように適合される。一実施形態では、エンベロープおよび/または解剖学的部位は、互いに取り付けるための手段または基部に取り付けるための手段を備える。一実施形態によれば、エンベロープおよび解剖学的部位は、互いから切り離されてもよく、その後、再び互いに取り付けられてもよい。
【0027】
一実施形態では、解剖学的部位は、TPUとして知られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーの中から選択される少なくとも第1の材料で作製され、一実施形態では、TPUは、解剖学的部位が軟器官(特に、脳、肝臓、胃、肺)のタイプを代表するように選択され、この実施形態では、好ましくは、TPUは0.006~20GPaのヤング率を有する。別の実施形態では、TPUは、解剖学的部位が硬組織(例えば、特に、骨、頭蓋骨、脊椎、胸郭)を代表するように選択され、この実施形態では、好ましくは、TPUは0.024GPa~30GPaのヤング率を有する。一実施形態では、解剖学的部位は、適切なヤング率を有する異なる材料で作製された、器官または軟組織を代表する部位と、器官または硬組織を代表する部位とを備える。
【0028】
一実施形態では、エンベロープは剛性材料で作製される。一実施形態では、エンベロープは、変形可能な材料または弾性材料から作製される。一実施形態では、エンベロープは、解剖学的部位に重ね合わされるように、または解剖学的部位上に嵌合するように適合される。別の実施形態では、エンベロープは、解剖学的部位の全体または一部を覆うように適合される。一実施形態では、エンベロープを構成する第2の材料は、好ましくは0.006GPa~20GPaのヤング率を有するヒトの皮膚を代表する熱可塑性エラストマーである。
【0029】
一実施形態では、解剖学的部位およびエンベロープは、付加製造技術または除去製造技術を使用して製造される。一実施形態では、解剖学的部位および/またはエンベロープは成形によって製造され、成形型は、科学的または医学的対象物、特に標準被検体または被検体の画像から、付加製造法または除去製造法によって製造される。
【0030】
したがって、解剖学的部位およびエンベロープは、訓練用に、科学的または医学的対象物、特に標準被検体または被検体の構造を再現して、この対象物、この標準被検体またはこの被検体に対する1つ以上の科学的または医学的手技を可能にする。したがって、本発明は、単純な一般的なボックスではなく、科学的または医学的対象物、特にヒトまたは動物の解剖学的部位の現実的な物理的表現である。
【0031】
一実施形態では、付加製造法または除去製造法用に作成されたファイルは、特にエンベロープ上および/または解剖学的部位上に開口部を形成するために、製造前に修正される。開口部(複数可)の存在によって得られる利点は、特に、ユーザがトロカールの位置を選択することを触診によって学習することが可能であること、およびトロカールをオリフィスに挿入することを触覚フィードバックで学習することが可能であることである。
【0032】
一実施形態では、エンベロープ上の開口部は、標準被検体または被検体の皮膚の切開をシミュレートするために使用され得る。
【0033】
科学的または医学的手技の性質に応じて、前記エンベロープ上の開口部の形状および数は変化し得、例えば、
(i)例えば、開腹術として知られる非低侵襲外科的処置のための単一の開口部であって、非常に長く、前記外科的処置の性質に適合され得、器具の挿入またはいくつかの器具の同時挿入を可能にし、解剖学的部位への直接アクセスも可能にする単一の開口部と、
(ii)例えば低侵襲外科的処置(MIS)のための複数の開口部と
を備える。
【0034】
これらの開口部は、前記外科的処置を実施するために使用されるトロカールの直径(トロカールの直径は、典型的には5~15mmである)よりも小さい直径を有する円筒形状を示し得る。これらの開口部は、さらに、開口部の周囲に、均等に分布した少なくとも2つ、3つ、好ましくは4つの切り込み(例えば、星形)を備え得、このことは、トロカールを適所に保持するのに十分な機械的摩擦が得られるという利点を有し、複数とは、2~50個、好ましくは2~30個、より好ましくは5~15個の開口部を意味する。
【0035】
開口部の直径は、5mm~15mmであり得る。開口部は、好ましくは0.001GPa~0.1GPaのヤング率の弾性を有し得、特に器具を交換するときに、挿入されたトロカールが定位置に留まるようにするという利点を有する。開口部は、トロカールの360°の枢動接続と、シェルの平面に平行な平面に対して垂直な平面からの前記挿入されたトロカールの位置決めとを可能にし得る。開口部の縁部は、トロカールまたは外科用器具またはユーザの指の挿入および除去の間の耐摩耗性を有し得る。
【0036】
一実施形態によれば、訓練が胸郭に対して行われる場合、開口部は、好ましくは、標準被検体または被検体の解剖学的部位の肋骨の間に配置され、開口部の数は、10~30個、好ましくは20~25個であり得、開口部は、好ましくは、2つの椎骨の間に2cmごとに、好ましくは120℃の軸椎骨上に位置決めされ、有利には、開口部の数は、ライン当たり10~12個である。
【0037】
一実施形態によれば、解剖学的部位は、標準被検体または被検体の身体部分、肢または器官をシミュレートすることを可能にする。この実施形態では、解剖学的部位は以下の2つのカテゴリに分割される。
(i)前記外科的処置に関係する標準被検体または被検体の身体の一部の3Dプリンティングに対応する身体の解剖学的構造であって、非限定的な方法で、
・胸部MIS処置のための肋骨を有する胸郭、
・内臓MIS処置のための腹部、
・脳神経外科手術のための頭部もしくは頭蓋骨、または
・整形外科手術のための膝または股関節
によって傾斜され得る身体の解剖学的構造。
(ii)前記外科的処置に関係する標準被検体または被検体の1つまたは複数の器官の3Dプリンティングに対応する、器官の解剖学的構造。器官の解剖学的構造は、脊椎、肝臓、胃または肺によって非限定的に傾斜され得る。
【0038】
一実施形態によれば、解剖学的部位および/またはシェルは、3Dプリンティングすなわち付加製造法または除去製造法によって非限定的に製造される。
【0039】
周知であるように、付加製造法は、3Dプリンタを使用して連続層を積み重ねることによって、材料を追加または凝集させることによって部品を大量に製造することからなる。一方、除去製造法は、精密機械を使用して寸法目標を達成するために、ブロックまたは未加工部品から材料を除去することからなる。
【0040】
一実施形態によれば、解剖学的部位は、非限定的な方法で、好ましくは例えばシリコーン系材料を用いて成形することによって製造される。
【0041】
一実施形態によれば、解剖学的部位の製造に使用される3Dプリンティングプロセスは、非限定的に以下のタイプのプロセスである。
・FDM-ワイヤの溶融堆積
・SLMとして知られる、粉末の選択的レーザ溶融
・SLSとして知られる、粉末の選択的レーザ焼結
・粉末のバインダジェッティング
・粉末の電子ビーム溶融(EBM)
・SLA粉末光重合
・SLA液体ステレオリソグラフィ
・LOM固体積層体モデリング、または
・デジタル光処理(DLP)
【0042】
一実施形態によれば、解剖学的部位の製造に使用される材料は、非限定的には、以下のタイプのTPEとして知られる熱可塑性エラストマー群からなる。
・TPE-UまたはTPUと呼ばれるポリウレタンTPE、
・TPE-SまたはTPSと呼ばれるスチレン系TPE、
・TPE-AまたはTPAと呼ばれる熱可塑性コポリアミド、または
・PEBAとして知られるエーテル・アミドブロックコポリマー。
【0043】
一実施形態によれば、解剖学的部位を製造するのに使用される材料は、非限定的には、エラストマー樹脂、シリコーン、ネオプレン および他の合成ゴムの群からなる。
【0044】
一実施形態では、解剖学的部位は、科学的または医学的対象物の実際の(生物学的な意味で実際の)解剖学的部位の接触を再現し、ユーザの接触覚または触覚の外受容性感覚を刺激することを可能にする物理的接触特性を有する材料で作製される。
【0045】
触覚は、特に以下を区別することを可能にする。
・摩擦および変位によって感じられる質感
・圧力によって感じられる硬度
・固定および静的接触によって感じられる温度
・持ち上げおよび秤量によって感じられる重量
・包み込むことによって感じられる形状
・輪郭追跡によって感じられる全体形状
【0046】
一実施形態では、解剖学的部位は、科学的または医学的対象物の実際の解剖学的部位の色を再現する物理的色特性を有する材料で作製される。
【0047】
一実施形態によれば、解剖学的部位は、実際の状況と同様に一緒に配置された複数の器官を含む。一実施形態によれば、解剖学的部位は、実際の状況において(すなわち、生物学的状況において)エンベロープの下に配置されているであろう1つ以上の器官を再現する。上述したように、エンベロープは、解剖学的整合構造を形成するために解剖学的部位の外面の全体形状に正確に一致するように意図されている。エンベロープは、解剖学的部位と直接接触し得る。別の実施形態では、シェルと解剖学的部位との間に間隙が存在し得る。
【0048】
一実施形態によれば、エンベロープは、1つ以上の器官または骨などの解剖学的構造を覆う、標準被検体または被検体の皮膚をシミュレートすることを可能にする。前記外科的処置の性質に応じて、前記エンベロープは、身体の解剖学的構造の全体または一部を覆うのに適しており、覆うように意図されている。別の実施形態によれば、エンベロープは、例えば、1つ以上の器官を覆う骨空洞をシミュレートすることを可能にする。別の実施形態によれば、エンベロープは、組織、器官または任意の解剖学的構造の外層をシミュレートすることを可能にし、覆われる解剖学的対象物は、組織、器官または解剖学的構造の内層または内部をシミュレートすることを可能にする。例えば、カバーは表皮をシミュレートし、解剖学的対象物は真皮および皮下組織をシミュレートし得る。
【0049】
一実施形態によれば、エンベロープは、非限定的には、以下のタイプのTPEと呼ばれる熱可塑性エラストマー群の材料から製造される。
・TPE-UまたはTPUとして知られるポリウレタンTPE、
・TPE-SまたはTPSと呼ばれるスチレン系TPE、
・TPE-AまたはTPAと呼ばれる熱可塑性コポリアミド、または
・PEBAとして知られるエーテル・アミドブロックコポリマー
【0050】
一実施形態によれば、エンベロープは、非限定的には、エラストマー樹脂、シリコーン、ネオプレン および他の合成ゴムの群からなる材料で作製される。
【0051】
このタイプの材料の利点は、エンベロープが抵抗性を示し、ユーザの手の圧力、直接的に加えられる圧力(開腹術のためのハンドルまたは前腕の圧力)または間接的に加えられる圧力(低侵襲外科手術のためのトロカールおよび器具の圧力)の下で潰れないことである。
【0052】
一実施形態では、エンベロープは、非限定的には、標準被検体または被検体の身体の解剖学的構造の印象を取ることによる成形によって製造され、これは、次に、エンベロープの単一プリントまたはいくつかのコピーの作製を可能にするために材料が配置される型としての機能を果たす。プリントは、材料(液体、ペースト、粉末、シート、プレート、タブレットなど)を型に入れることからなり、材料は型の形状をとる。
【0053】
一実施形態によれば、解剖学的部位およびエンベロープを構成する材料の選択は、手で触れたときの感覚に関して、およびトロカールが導入されるか、または外科用器具が使用されるときの解剖学的部位の抵抗性および柔軟性に関して、実際の外科的処置中に予想されるものに可能な限り近い感覚レンダリングを提供するために重要である。
【0054】
特に、エンベロープは、覆われている解剖学的部位とは無関係に、ユーザが生物学的現実に近い触覚フィードバックを感じることを可能にしなければならない。解剖学的部位は、エンベロープとは無関係に、ユーザが生物学的現実に近い触覚フィードバックを体験することを可能にしなければならない。したがって、解剖学的部位とエンベロープとの組み合わせは、最適触覚フィードバックを可能にし、その結果、代表される科学的または医学的対象物に対する科学的または医学的手技(特に、外科的手技)の間に感じられる触覚および立体的感覚の真の正確な再現をユーザに提供することができる。
【0055】
一実施形態によれば、エンベロープは、異なる性質の少なくとも2つの触覚フィードバックを生成するようなものである。異なる性質のこれらの2つの触覚フィードバックは、配置された少なくとも2つの材料と接触して生成され、他方と比較して一方の異なる反応性を提供する。
【0056】
一実施形態では、少なくとも2つの触覚応答の差は、解剖学的部位を製造するために使用される材料の異なる特性に起因する。
【0057】
したがって、エンベロープは、外科用器具の最初の挿入から手術の最後のステップまで、外科的処置全体に対応する連続触覚体験を生成するようなものである。
【0058】
この連続的な触覚体験は、標準被検体または被検体の画像に基づく解剖学的部位の製造に起因する。
【0059】
一実施形態では、訓練装置はさらに、解剖学的部位およびエンベロープが独立して取り付けられる基部をさらに備え、エンベロープは解剖学的部位の全体または一部を覆う。
【0060】
一実施形態では、訓練装置は、解剖学的部位全体を覆い、基部に取り付けられた連動エンベロープからなる。
【0061】
本発明に係る訓練装置は、科学分野、医学分野、獣医学分野、細胞核分野、化学分野、薬学分野、生物学分野および工業分野における外科的処置または科学的もしくは技術的処置を訓練するために使用され得る。
【0062】
本発明によれば、科学的または医学的対象物の解剖学的に現実的な3Dコピーは透明である必要はない。実際に、本発明の文脈では、訓練装置は、それ自体が訓練装置およびこの仮想現実のための表示装置と組み合わせて動作する仮想現実ソフトウェアと組み合わせて使用され得、訓練装置は触覚フィードバックを可能にし、ソフトウェアは視覚および/または音声フィードバックを可能にする。この実施形態によれば、訓練装置は、仮想現実ソフトウェアおよび表示装置と通信するように意図されている。したがって、訓練装置を使用する際に、ユーザは、例えば外科用器具を操作することによってシェルおよび/または解剖学的部位と相互作用し、ソフトウェアおよび表示装置によって前記相互作用を視覚化する。表示装置は、例えば、ユーザに対して調整可能であり、音声フィードバックを提供することができる仮想現実ヘッドセットであり得る。表示装置は、訓練装置と仮想現実ソフトウェアとの間のリンクとして作用する。
【0063】
本発明は、以下の図面を参照しながら、例として示され、限定的ではない、以下の説明からより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】支持体上に載置された訓練装置を示す写真である。
図2a】支持体上に載置された、解剖学的器官の一例(この場合は脊椎および胸郭の一部)を示す写真である。
図2b】解剖学的器官の一例(この場合は胸郭の一部)を示す写真である。
図3a】矢状断面における半胸郭の一部に対する低侵襲外科手術(MIS)処置のための複数の開口部を有するエンベロープの一例を示す、透視写真である。
図3b】矢状断面における半胸郭の一部に対する低侵襲外科手術(MIS)処置のための複数の開口部を有するエンベロープの一例を示す、図3aと比較して異なる視点での写真である。
図3c】矢状断面における半胸郭の一部に対する低侵襲外科手術(MIS)処置のための複数の開口部を有するエンベロープの一例を示す、底面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
これらの図において、図面ごとの同一の参照符号は、同一または類似の要素を示す。明確にするために、図示されている特徴部は、別段の記載がない限り、原寸に比例していない。
【0066】
図1に示す一実施形態では、矢状断面において、訓練装置1は被検体の半胸郭に対応する。訓練装置1は、解剖学的部位3、4の全体を覆う連動エンベロープ2からなり、全体が基部5に取り付けられる。締結手段により、ユーザは、特別な工具を使用せずに、訓練装置1の構成要素を手で挿入し、取り外すことができる。図2aに示す一実施形態では、横断面において、胸郭3の内側に入れ子にされた脊椎35に対応する2つの解剖学的部分が基部5に取り付けられている。この実施形態では、エンベロープ2(図示せず)は、2つの解剖学的部位の上に嵌合される。図2bに示す一実施形態では、矢状断面において、半胸郭のプロファイルに対応する解剖学的部位3、4が示されている。解剖学的部位3、4を構成する材料の選択は可変であり、粉体床技術(タイプSLSまたはMJF)、ワイヤ堆積(FDM)または樹脂光硬化(タイプSLAまたはDLP)の付加製造プロセス(3Dプリンティング)によって実現され得る。0.006GPa~20GPaのヤング率の弾性を有する身体部分をシミュレートする場合、例えば、解剖学的腹部の場合、この解剖学的部位の構造は、PEBA、PEBAXもしくはTPUなどのエラストマー熱可塑性(TPE)材料、またはシリコーン、ネオプレンおよび他の合成ゴムなどのエラストマー樹脂での3Dプリンティングによって作製され得る。
【0067】
図3aに示す実施形態では、エンベロープ2は、矢状断面における半胸郭のプロファイルに対応し、例えば、開腹術として知られる非低侵襲外科的処置のための単一の開口部23を支持し、この開口部23は、非常に長く、前記外科的処置の性質に適合され得、この開口部23は、器具の挿入またはいくつかの器具の同時挿入を可能にし、また、低侵襲外科的処置(MIS)における訓練を目的とする解剖学的部位、複数の開口部21への直接アクセスを可能にする。これらの開口部21は、外科手術に使用されるトロカールの直径よりも小さい直径を有する円筒形状を示し得、トロカールの通常の直径は、5~15mmであり、開口部の周囲に、均等に分布した少なくとも2つ、3つ、好ましくは、4つの切り込み22(例えば、星形)を備え得る。エンベロープ2を構成する材料の選択は可変であり、厚さ3mmの熱可塑性ポリウレタン(TPU)またはネオプレンの中から選択され得る。エンベロープ2を構成する材料のカラーパネルは可変であり、マット調であり、処置に適合した色、または科学的もしくは医学的対象物に適合した色、またはカメラによる空間位置決め装置の機能を妨げない色のいずれかに適合される。エンベロープ2は、その基部において、エンベロープ2を支持するように意図された矩形フレーム24からなる。
【0068】
図3bに示す一実施形態では、図3aと比較して異なる視点で、エンベロープ2は、矢状断面における半胸郭のプロファイルに対応して示されており、開口部21は円筒形状であり、トロカールの直径よりも小さい直径を有する。エンベロープ2の基部は、エンベロープ2を支持するための矩形フレーム24からなる。フレーム24は、エンベロープ2を基部5(ここでは基部5は図示せず)に締結するためにフレーム24の短辺にわたって分布した複数の締結手段25を備える。
【0069】
図3cに示す一実施形態では、底面図において、エンベロープ2は、矢状断面における半胸郭のプロファイルに対応して示され、低侵襲外科的処置(MIS)の場合に複数の開口部21を支持する。開口部の数は、は20~25個であり、開口部は、2つの椎骨間で2cmごとに助骨間に、120℃の軸椎骨上に位置決めされ、開口部の数は、ライン当たり10~12個である。
【0070】
図3cに示す一実施形態では、エンベロープ2の基部は、矩形フレーム24によって形成される。フレーム24は、エンベロープ2を基部5(ここでは基部5は図示せず)に固定するためにフレーム24の短辺にわたって分布した複数の締結手段25を備える。
【0071】
本発明は、全ての分野において応用され、科学分野、医学分野、獣医学分野、細胞核分野、化学分野、薬学分野、生物学分野および工業分野において使用される。
【0072】
したがって、本発明は、医学的および/または科学的手技、特に外科手術の間に、医学的および/または科学的環境、特に解剖学的環境の技術的複雑さを現実的な方法で再現することを可能にする。本発明により、この手術中に知覚される感覚の忠実な再現が可能であり、したがって、効率的で、確実で、かつ安全な方法で手術を実行するための空間的戦略について検討することが可能になる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
【国際調査報告】