(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】加圧流体タンクのエンドピース
(51)【国際特許分類】
F17C 1/06 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
F17C1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542995
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2021050637
(87)【国際公開番号】W WO2021144335
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521525527
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・クリエル
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172BA01
3E172BB03
3E172BC01
3E172BC08
3E172BD03
3E172CA12
3E172CA13
(57)【要約】
加圧流体タンクのためのエンドピースであって、タンクが第1の円筒形外側面(21)を有する筒状中央部(20)を具備するライナ(2)を備えるエンドピースにおいて、エンドピース(1)が、第2の円筒形外側面(11)を有する終端部(10)を備え、終端部(10)が、筒状中央部(20)と同軸に位置決めされるように構成され、第2の円筒形外側面(11)が、第1の円筒形外側面(21)に対して径方向に面一となるその延長上にあり、エンドピース(1)が、エンドピース(1)の内部キャビティ(13)に設けられた環状溝(12)の中に終端部(10)と同軸に配置されたシールリング(4)によってライナ(2)のネック(22)の外側に気密に組み付けられるように構成されて、タンクの内圧がネック(22)をシールリング(4)に対して径方向外側に押し付けようとする傾向をもつようにされることを特徴とする、エンドピース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧流体タンクのためのエンドピース(1)であって、前記加圧流体タンクが第1の円筒形外側面(21)を有する筒状中央部(20)を具備するライナ(2)を備えるエンドピース(1)において、前記エンドピース(1)が、第2の円筒形外側面(11)を有する終端部(10)を備え、前記終端部(10)が、前記筒状中央部(20)と同軸に位置決めされるように構成され、前記第2の円筒形外側面(11)が、前記第1の円筒形外側面(21)に対して径方向に面一となるその延長上にあり、前記エンドピース(1)が、前記エンドピース(1)の内部キャビティ(13)に設けられた環状溝(12)の中に前記終端部(10)と同軸に配置されたシールリング(4)によって前記ライナ(2)のネック(22)の外側に気密に組み付けられるように構成されて、前記加圧流体タンクの内圧が前記ネック(22)を前記シールリング(4)に対して径方向外側に押し付けようとする傾向をもつようにされることを特徴とする、エンドピース(1)。
【請求項2】
前記終端部(10)の前記第2の円筒形外側面(11)が第2の外径D2をもつこと、および前記内部キャビティ(13)が第1の内径D4をもち、D4/D2比が、0.6から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間であることを特徴とする、請求項1に記載のエンドピース。
【請求項3】
加圧流体タンク(100)、特に自動車両における加圧ガスの貯蔵および配給のための加圧流体タンクであって、
ライナ(2)であって、
第1の外径D1をもつ第1の円筒形外側面(21)を有する筒状中央部(20)と、
第1の肩部(23)によって筒状中央部(20)に連結された第1のネック(22)と、
を備えるライナ(2)と、
前記第1のネック(22)に気密に組み付けられた第1のエンドピース(1)と、
前記ライナ(2)の補強エンベロープ(3)と、
を備えるタンクにおいて、
前記第1のエンドピース(1)が、前記第1の円筒形外側面(21)に対して径方向に面一となるその延長上に前記筒状中央部(20)と同軸に位置決めされた第2の円筒形外側面(11)を有する終端部(10)を備えること、および前記第1のエンドピース(1)が、前記第1のエンドピース(1)の内部キャビティ(13)に設けられた環状溝(12)に前記終端部(10)と同軸に配置されたシールリング(4)によって前記ライナ(2)の前記第1のネック(22)の外側に気密に組み付けられて、タンクの内圧が前記ネック(22)を前記シールリング(4)に対して径方向外側に押し付けようとする傾向をもつようにされることを特徴とする、加圧流体タンク(100)。
【請求項4】
前記第1のエンドピース(1)の前記終端部(10)の前記第2の円筒形外側面(11)が第2の外径D2を有し、前記第2の外径D2は前記第1の外径D1に等しいことを特徴とする、請求項3に記載の加圧流体タンク。
【請求項5】
前記第1のエンドピース(1)がねじ-ナット式の組立てによって前記第1のネック(22)に気密に組み付けられることを特徴とする、請求項3または4に記載の加圧流体タンク。
【請求項6】
前記ライナ(2)の前記筒状中央部(20)の前記第1の円筒形外側面(21)と反対側では、前記第1のエンドピース(1)の前記終端部(10)の前記第2の円筒形外側面(11)が、前記第1のエンドピース(1)の中間部(15)の略半球形の外側面(14)によって軸方向に延び、前記略半球形の外側面(14)は、前記ライナ(2)の前記補強エンベロープ(3)によって包み込まれることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項7】
前記第1のエンドピース(1)の前記中間部(15)が第4の外径D5をもち、D5/D2比が、0.5から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間であることを特徴とする、請求項6に記載の加圧流体タンク。
【請求項8】
前記ライナ(2)の前記補強エンベロープ(3)が、前記ライナ(2)の前記筒状中央部(20)の周りおよび前記第1のエンドピース(1)の前記中間部(15)の周りにらせん状に巻かれた複数の補強フィラメント層を備える複合巻回体からなり、少なくとも1つの第1の層のらせん巻回の角度(A)が、54°未満、好ましくは53°未満であり、少なくとも1つの第2の層のらせん巻回の角度が、53°から56°の間、たとえば54.7°であることを特徴とする、請求項6または7に記載の加圧流体タンク。
【請求項9】
前記第1のエンドピース(1)が、過圧防止安全弁、好ましくは熱動トリップ式過圧防止安全弁、流量制御装置をなす弁、逆止弁、手動閉止弁、インジェクタ、フィルタ、温度センサ、圧力センサの中から選択される少なくとも1つの機能要素をさらに備えることを特徴とする、請求項3から8のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項10】
前記ライナ(2)が、熱可塑性または熱硬化性のポリマー材料、好ましくは強化繊維を充填した熱可塑性ポリマー材料の射出成形、回転成形または押出し-ブロー成形によって製造されることを特徴とする、請求項3から9のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項11】
前記ライナ(2)がフィラメント巻回によって製造されることを特徴とする、請求項3から9のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項12】
前記ライナ(2)の前記補強エンベロープ(3)が、耐火材の1つまたは複数の層によって、好ましくは膨張性の耐火材、たとえばケイ酸塩またはリン酸塩を主体とする被覆、好ましくはポリリン酸アンモニウムが10%~50%配合された被覆によって被覆されることを特徴とする、請求項3から11のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項13】
前記エンドピース(1)が、金属製部品、たとえばアルミニウム製部品であることを特徴とする、請求項3から12のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項14】
前記第2の円筒形外側面(11)と前記エンドピース(1)の前記略半球形の外側面(14)とが、少なくとも部分的に複合構造(25)によって覆われ、前記複合構造(25)が、前記エンドピース(1)と前記ライナ(2)の前記補強エンベロープ(3)との間に挟まれることを特徴とする、請求項3から13のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項15】
車両、好ましくは自動車両であって、
請求項3から14のいずれか一項に記載の加圧流体タンク(100)と、
車両の駆動手段にエネルギーを供給するように構成されたエネルギー変換手段であって、前記第1のエンドピース(1)を介して前記加圧流体タンク(100)と流体連通して流体の供給を受けることができるようにされた、エネルギー変換手段と、
前記加圧流体タンク(100)の補給手段であって、前記第1のエンドピース(1)を介して前記加圧流体タンクと流体連通した、補給手段と、
操作信号に応答して前記エネルギー変換手段または前記補給手段を選択的に起動するように構成されたアクチュエータと、
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流体を入れるためのタンク、特に自動車両に搭載されるタンクに関する。より詳細には、本発明はそのようなタンクのためのエンドピースに関する。ここで対象となる流体は、天然ガス、バイオガス、液化石油ガス、水素などであるが、それだけに限らない。
【背景技術】
【0002】
そうしたタンクの様々な機能は以下のとおりである。
- 加圧流体を収容する。すなわち、その機械的強度を有する。
- 外部に対する気密性を保つ。
- エンドピースに取り付けられた電磁弁を使って加圧流体の補給を行う。
- エンドピースに取り付けられた同じ電磁弁を使って加圧流体を送達する。
- 保持構造に固定される。
- 輸送および使用の条件に耐える。
- 外部環境からの機械的、熱的侵襲に耐える。
- タンク製造時の条件に耐える。
【0003】
こうしたタンクは、あらゆる固定または移動体の機材(道路車両、鉄道車両、船舶、航空機、宇宙船)に取り付けることができる。加圧流体タンクは、金属材料で、または最近では重量面での利得や安全上の理由から、複合材料で製造される。
【0004】
コンポジットタンクとも呼ばれる複合材料製のタンクに関しては、その気密性は、内容物に対する気密性を容器にもたせることができる「ライナ」と呼ばれる器を設けることによって一般に実現される。タンクの製造者によっては、ライナは金属材料製またはプラスチック材料製のものが提案される。
【0005】
「プラスチック」タイプのライナは、タンクの補給および抜取りのための少なくとも1つの開口部を有する。ライナは、たとえば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリフタルアミド、ポリウレタン、シリコーンなどの熱可塑性または熱硬化性(フランス語では「thermodur」と短縮される)ポリマー材料の射出成形、回転成形または押出し-ブロー成形によって製造される。有利には、熱可塑性ポリマー材料に強化繊維を充填して複合材料を作り上げる。強化繊維は、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、アラミド繊維、ポリマー繊維、シリカ繊維、ポリエチレン繊維、天然繊維、金属繊維、合金繊維、セラミック繊維などである。これらの繊維は、複合材料の耐変形性を高めることができる。強化繊維を充填したポリマー材料内では、強化繊維とポリマー材料がからみあって単一成形材料を形成する。このような複合材料については、出願人が2018年11月30日に出願した仏国特許出願第18 72197号で説明されている。この出願は第3089160号として公開されている。
【0006】
あるいは、ライナはフィラメント巻回によって製造される。フィラメント巻回による器の製造例は、仏国特許第1431135号に記載されている。
【0007】
そのライナは、次いでタンクの本体、すなわちタンクの強度構造をなす複合材料製のライナの補強エンベロープによって覆われるが、この補強エンベロープはタンク内に含まれる流体によってかかる圧力(これ以降「内圧」という)に耐えることができなければならない。補強エンベロープに対しては、一般にタンクの気密性の確保が要求されることはない。
【0008】
この補強エンベロープは、
- 一般に、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、またはシリカ繊維、さらには植物繊維のようなその他の、連続繊維からなる補強材と、
- 繊維と同時に付着させるか(フィラメントワインディング法)、または乾燥状態の「プリフォーム」をなすエンベロープが形成された後に付着させた樹脂と
からなる。乾燥状態のプリフォームは、必要な剛性をもたせるため、その後、強化される。強化は、樹脂を噴射するか、またはそのプリフォームに樹脂を浸透させる(インフュージョン法)ことによって、さらには真空中で樹脂を含浸させることによって行う。
【0009】
有利には、補強エンベロープは、耐火材の1つまたは複数の層によって、好ましくは膨張性の耐火材、たとえばケイ酸塩またはリン酸塩を主体とする被覆によって被覆する。ケイ酸塩およびリン酸塩は、火にさらされると膨張し、断熱バリアを形成する膨張剤である。それにより、タンクの耐熱性および耐火性が向上する。
【0010】
いずれの場合も、タンクの製造時には、エンドピースは、流体の補給および送達を行えるように、ライナに対して気密に組み付けられる。一般に、このエンドピースは金属製(鋼またはアルミニウム)である。エンドピースはライナの補給/抜取りネックに取り付けられ、ライナに対する支承カラーが設けられる。エンドピースにはまた、エンドピースに電磁弁を取り付けられるようにねじ穴が設けられている。こうしたエンドピースについては、米国特許第6230922号に記載されている。
【0011】
タンクの重量を減らす方法として、ライナの補給/抜取り開口を小さくして、付随するエンドピースのサイズを小さくし、それによって重量を減らすことが知られている。この方法は、エンドピースが鋼製の場合には特に大きな意味をもつ。実際、鋼製のエンドピースは、強度は高いが、重くもなるためである。一方、アルミニウム製のエンドピースは、鋼製よりも弱いものの、プラスチック製ライナとは互いの膨張係数が十分近く、相性がよい。いずれの場合も、ライナの補給/抜取り開口を小さくすれば、ライナの補強エンベロープを形成するのに必要な材料の量は増える。実際、従来、ライナは、2つのドーム形によって両端が閉じた中空の筒状中央部を有しており、ドーム形の少なくとも一方は、ライナの補給/抜取り開口を備えている。補給/抜取り開口が小さくなれば、ライナの補強エンベロープで覆うべきドーム形は増え、それによってタンクの重量が増すことは容易に理解される。
【0012】
また、現在のエンドピースには、他にも不都合な点がある。すなわち、
- エンドピースおよびライナとのその接続部は、エンドピースの設計そのものや、異なる材料間の膨張係数の扱い方が原因で、しばしば、特に時間が経つほどに、気密性に欠陥を生じる。
- エンドピースは、組立品の機械的な耐久性を保つにはライナとの間に十分な一体性をもたない。
【0013】
水素駆動車両などの航続距離を伸ばすため、車両に搭載する貯蔵容量を増やすことは当然考えられるところである。自明な解決法は、既存の水素タンクをより容量の大きなタンクに代えることである。一方で、既存の水素タンクが収められているスペースを拡大することはできず、タンクを大型化して貯蔵容量を増やすことはできない。別の解決法は、より多くの水素の貯蔵に適したスペースを車両の設計段階から用意するというものである。そうしたスペースは、ほぼ角柱形で比較的平坦な形状をなす。そのスペースを最大限に利用するためには、長く、薄い複数のタンク、すなわち直径に対する長さの比率が大きいタンクのアセンブリによってスペースを埋めるのが有利である。その場合、利用可能な最大限の貯蔵スペースを埋めつつ、各々のタンクの重量を減らす方法を探ることがより肝要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許出願第18 72197号(仏国特許出願公開第3089160号)
【特許文献2】仏国特許出願公開第1431135号
【特許文献3】米国特許第6230922号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的の1つは、重量、貯蔵流体の量および機材の耐久性に関する利用者の期待に応える技術的解決法を提案することで、上述の欠点のすべてまたは一部に対処することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのため、本発明は、加圧流体タンクのためのエンドピースであって、タンクが第1の円筒形外側面を有する筒状中央部を具備するライナを備えるエンドピースにおいて、エンドピースが、第2の円筒形外側面を有する終端部を備え、終端部が、筒状中央部と同軸に位置決めされるように構成され、第2の円筒形外側面が、第1の円筒形外側面に対して径方向に面一となるその延長上にあり、エンドピースが、エンドピースの内部キャビティに設けられた環状溝の中に終端部と同軸に配置されたシールリングによってライナのネックの外側に気密に組み付けられるように構成されて、タンクの内圧がネックをシールリングに対して径方向外側に押し付けようとする傾向をもつようにされることを特徴とする、エンドピースを対象とする。こうしたレイアウトにより、気密性は、特に高圧時に、きわめて効果的となる。このレイアウトの別の利点は、第1のネックがシールリングに接する部位におけるライナのプラスチック材料のクリープを低減できるところにある。
【0017】
「径方向に面一」という表現は、ライナの筒状中央部の第1の円筒形外側面とエンドピースの終端部の第2の円筒形外側面との間で径方向のずれがないことをいう。
【0018】
物体の長手方向軸に対してほぼ垂直な方向のことを、「径方向の」や「径方向に」として表す。
【0019】
物体の各部分の径方向位置を「内側」と「外側」という言い方で表す。たとえば、外側面と内側面とを有する長手方向軸(X)の物体の場合、物体の外側面は、前記物体の内側面と比べて長手方向軸(X)から径方向に余計に離れている。
【0020】
そこで、本発明によるエンドピースは、長く、薄いタンクのライナに組み付けられるエンドピースの気密性に完璧な適合性を有する。実際、出願人は、コンポジットタンクの直径に対する長さの比が大きくなると、エンドピースの気密性が向上し、加えてライナの補強エンベロープの構成に必要な材料が減るという知見を得た。実際、直径に対する長さの比が6以上のタンクであれば、ライナ両端のドーム形の存在の必要はなくなる。すると、エンドピースにはライナに対する支承カラーの必要がなくなるが、ライナの筒状中央部の外側面と位置合せされる外側面を備えた円筒形終端部が必要となる。
【0021】
また、ライナの筒状中央部の第1の円筒形外側面とエンドピースの終端部の第2の円筒形外側面との間の径方向のずれがなくなることで、ライナおよびエンドピースとライナの補強エンベロープとのかぶりをよくすることができる。
【0022】
エンドピースは、アルミニウム製などの金属部品であることが好ましい。
【0023】
本発明によるエンドピースの追加的な特徴によれば、終端部の第2の円筒形外側面は第2の外径を、内部キャビティは第1の内径をそれぞれもち、第2の外径に対する第1の内径の比は、0.6から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間である。それにより、エンドピースの製造に必要な材料の量を減らすことができ、それによってエンドピースが軽量化され、その結果、エンドピースが組み付けられるタンクの重量も軽くなる。
【0024】
本発明によるエンドピースの追加的な特徴として紹介した、第2の外径に対する第1の内径の具体的な比であるが、これは本発明によるエンドピースに限定されるものではなく、コンポジットタンクのあらゆるタイプのエンドピースに当てはめることができるものである。そのため、本発明の別の対象は、加圧流体タンクのためのエンドピースにおいて、外径と内径を有しており、外径に対する内径の比が、0.6から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間であることを特徴とするエンドピースである。
【0025】
本発明はまた、加圧流体タンク、特に自動車両における加圧ガスの貯蔵および配給のための加圧流体タンクであって、
- 第1の外径をもつ第1の円筒形外側面を有する筒状中央部と、
- 第1の肩部によって筒状中央部に連結された第1のネックと
- を備えるライナと、
- 第1のネックに気密に組み付けられた第1のエンドピースと、
- ライナの補強エンベロープと
を備えるタンクにおいて、
第1のエンドピースが、第1の円筒形外側面に対して径方向に面一となるその延長上に筒状中央部と同軸に位置決めされた第2の円筒形外側面を有する終端部を備えること、および第1のエンドピースが、第1のエンドピースの内部キャビティに設けられた環状溝に終端部と同軸に配置されたシールリングによってライナの第1のネックの外側に気密に組み付けられて、タンクの内圧がネックをシールリングに対して径方向外側に押し付けようとする傾向をもつようにされることを特徴とする、タンクも対象とする。
【0026】
こうしたレイアウトにより、タンクの気密性は、特に高圧時に、きわめて効果的となる。このレイアウトの別の利点は、第1のネックがシールリングに接する部位におけるライナのプラスチック材料のクリープを低減できるところにある。
【0027】
そのため、本発明により、大容量の単体の貯蔵タンクを小容量の複数のタンク、特に長く、薄いタンクと入れ替えつつ、貯蔵流体重量と貯蔵アセンブリの許容重量との比を、たとえば700バールの水素貯蔵アセンブリの場合で4%超となるように保つことができる。
【0028】
好ましくは、タンクはIVタイプ、すなわち、熱可塑性または熱硬化性のポリマー材料、好ましくは強化繊維を充填した熱可塑性ポリマー材料の射出成形、回転成形または押出し-ブロー成形などによって製造されたプラスチック素材のライナであって、その円筒形部位および端部にフィラメント巻回(複合巻回体)が施されたライナからなるコンポジットタンクである。たとえば、ライナはポリアミド製で、その厚さは5mm以下である。
【0029】
別法では、本発明におけるライナは、複合材料の射出成形、回転成形または押出し-ブロー成形などによって製造される。それにより、強化繊維を充填しない熱可塑性ポリマー材料で同じようにして製造されたライナと同じ変形強度を保ちながら、ライナの厚さを薄くすることができる。そのため、複合材料で製造されたライナを含むIVタイプのタンクは、同等の外形寸法と同等の耐内圧強度をもちつつ、強化繊維を充填しない熱可塑性ポリマー材料で製造されたライナを備える同じタンクよりも多くの流体を貯蔵できる一方で、タンクの重量を減らすことができる。実際、ライナの厚さを減らすことで、タンクの内部寸法を増やしながらライナの補強エンベロープの厚さも減らすことができ、それによって、補強エンベロープを形成するために必要な材料の量を減らしながら、タンクの有効容積を増やすことができる。
【0030】
別法では、本発明におけるライナは、ポリマーを含浸させた帯状の連続繊維または短繊維などのフィラメント巻回によって製造する。その繊維は、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、アラミド繊維、または、シリカ繊維やポリエチレン繊維などのその他の繊維である。それにより、熱可塑性ポリマー材料で同じようにして製造されたライナと同じ耐変形強度を保ちながら、ライナの厚さを薄くすることができる。そのため、フィラメント巻回で製造されたライナを含むIVタイプのタンクは、同等の外形寸法、同等の耐内圧強度でありながら、射出成形、回転成形または押出-ブロー成形で製造されたライナを備える同じタンクより多くの流体を貯蔵できる一方で、タンクの重量を減らすことができる。実際、ライナを薄くすることで、タンクの内部寸法を増やしながらライナの補強エンベロープの厚さも減らすことができ、またそうすることで、補強エンベロープを形成するために必要な材料の量を減らしながら、タンクの有効容積を増やすことができる。
【0031】
別法では、本発明におけるライナは、金属、たとえばアルミニウム6061で製造される。
【0032】
本発明の追加的な特徴によれば、
- 第1のエンドピースの終端部の第2の円筒形外側面は第2の外径をもち、その第2の外径は第1の外径に等しい。それにより、ライナの筒状中央部の第1の円筒形外側面とエンドピースの終端部の第2の円筒形外側面との間に径方向のずれがないようにする。
- エンドピースの内部キャビティは第1の内径を有し、ライナのネックは第3の外径を有し、第1の内径は第3の外径に等しい。このレイアウトにより、エンドピースは、ライナのネックの直近位置に組み付けられる。
- 第1のネックの内部には、第1のネックをシールリングに径方向に締め付けて保持するための補強リングが配置される。そうすることにより、気密性が最適化され、タンクの内圧にかかわらず、同じ有効性が得られるようにする。
- シールリングはエラストマーリングである。そのため、シールリングは圧力を受けて変形することができ、それによって圧力が増大したときに気密の有効性を高めることができる。
- シールリングはOリングである。そのため、シールリングをあらゆる形状の環状溝に適合させることができる。
- 第1のエンドピースはねじ-ナット式の組立てによって第1のネックに気密に組み付けられる。それにより、ネックに対するエンドピースの工業的な組立てが容易となり、エンドピース/ネックのアセンブリがフィラメント巻回による外力によりよく耐えられるようになる。
- 第1のエンドピースは、第1のネックに対してクリッピングによって気密に組み付けられる。そうすることでエンドピースの組付けをより迅速に行うことができる。
- 第1のエンドピースは、第1のネックに対して接着または締りばめによって気密に組み付けられる。そうすることでエンドピース/ネックのアセンブリの機械的強度を高めることができる。
- ライナの筒状中央部の第1の円筒形外側面と反対側では、第1のエンドピースの終端部の第2の円筒形外側面が、第1のエンドピースの中間部の略半球形の外側面によって軸方向に延び、略半球形の外側面は、ライナの補強エンベロープによって包み込まれる。それにより、ライナの補強エンベロープは第1のエンドピースに係止することができる。
- 第1のエンドピースの中間部は第4の外径をもち、第2の外径に対する第4の外径の比は、0.5から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間である。それにより、複合巻回体の形成と、第1のエンドピースに対する複合巻回体の係止とに必要な材料の量を同時に最適化することができる。実際、第2の外径に対する第1の外径の比が0.5を下回ると、ライナの端部を覆うためにより多くの複合巻回体が必要となる。反対に、第2の外径に対する第4の外径の比が0.95を超えると、第1のエンドピースに対する複合巻回体の係止が実質的に保証されなくなる。
- ライナの補強エンベロープは、ライナの筒状中央部の周りおよび第1のエンドピースの中間部の周りにらせん状に巻かれた複数の補強フィラメント層を備える複合巻回体からなり、少なくとも1つの第1の層のらせん巻回の角度が、54°未満、好ましくは53°未満であり、少なくとも1つの第2の層のらせん巻回の角度が、53°から56°の間、たとえば54.7°である。すると、第1のエンドピースに対する複合巻回体の係止が強まるため、タンクに圧力がかかったときに第1のエンドピースが飛び出すのを防ぐ。上述のらせん巻回角度は、可能な複数の角度の中から出願人が行った選択の結果として得られたものである。実際、出願人は、らせん巻回の一定の角度が、国連欧州経済委員会(UNECE)規則第134号で定められている破裂強さ試験において他よりも優れた結果をもたらすことを、コンピュータシミュレーションを通して発見した。
【0033】
コンポジットタンクの機械的強度という点からは、複合巻回体の設計、とりわけ補強フィラメント層の巻回角度が重要なパラメータであることが留意される。既知の研究結果によれば、らせん層(ライナの筒状中央部の周り、および第1のエンドピースの中間部の周りにらせん状に巻き付けられた補強フィラメント層)のみを有するコンポジットタンクにあっては、54.7°という角度が最適化された角度であるものと考えられる(英語で「netting analysis」と呼ばれる解析モデルによる計算による)。フィラメント巻回は互いに交錯するらせん層を生じさせることから、さらに±Aの角度について言及している研究も幾つかある。しかし、IVタイプのタンクの設計は、らせん層に加え、円周層(ライナの筒状中央部の周りに円周をなして巻き付けられた補強フィラメント層)からなるのが一般的で、円周層には、ライナの筒状中央部でらせん層を締固めるというメリットがある。円周層とらせん層を有する従来型の積層シーケンスは、概ね(90°, A)タイプである。ここで、Aはらせん巻回角度で、タンクの軸に対して約20°である。とは言え、角度Aは、層の数および厚さや、推奨される最適化目標に応じた積層順序など、幾つかのパラメータによって変わる可能性がある。
【0034】
それらパラメータのうちの幾つかを変化させたところ、出願人は驚くべき発見をした。実際、出願人は、直径90mmのコンポジットタンクの上に8つのらせん層を様々ならせん巻回の角度構成で積層した。そのうちの3つの構成(構成A、B、C)を下表に示す。
【0035】
【0036】
続いて、出願人は、「netting analysis」タイプの解析モデルを用いたソフトウェアComposicaD(商標)で、取り上げた様々な構成のタンクについて軸方向および径方向のタンク破裂圧力を計算した。構成A、B、Cについて得られた結果を下表に示す。
【0037】
【0038】
最後に、出願人は、取り上げた様々な構成のタンクについて、タンクの径方向の破裂圧力に対するタンクの軸方向の破裂圧力の比を計算した。構成A、B、Cについて得られた結果を下表に示す。
【0039】
【0040】
UNECE規則第134号によって定められている破裂強さ試験の枠組みでは、タンクの破損は、タンクの両端部でなく筒状中央部で起きることで、エンドピースが飛び出すことのないようにすることが好ましい。実際、飛び出したエンドピースは危険な飛翔物となる。タンクの破損がタンクの筒状中央部で起こるようにするためには、タンクの径方向の破裂圧力に対するタンクの軸方向の破裂圧力の比が、1未満、理想的には0.9以下となるようにしなければならない。構成BおよびCはその基準を満たしており、構成Cは理想的な構成を示している。
- 少なくとも1つの第1のフィラメント層は複合巻回体に対して内側の層であり、少なくとも1つの第2のフィラメント層は複合巻回体に対して外側の層である。
- 補強フィラメントは、ガラス繊維、アラミド繊維および/または炭素繊維からなる。
- ライナの補強エンベロープは、耐火材の1つまたは複数の層によって、好ましくは膨張性の耐火材、たとえばケイ酸塩またはリン酸塩を主体とする被覆、好ましくはポリリン酸アンモニウムが10%~50%配合された被覆によって被覆される。実際、出願人は、膨張性の耐火材に対して幾多の試験を行い、ポリリン酸アンモニウムを10%~50%配合した被覆が、加圧流体タンク用途に最良の結果をもたらすことを発見した。
- タンクは、ライナの補強エンベロープを包み込むガラス繊維の保護層を含む。
- 第1の外径に対する第3の外径の比は、0.6から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間である。このレイアウトにより、ネックは可能な限り幅広になる。
- 第1のエンドピースは、過圧防止安全弁、好ましくは熱動トリップ式過圧防止安全弁、流量制御装置をなす弁、逆止弁、手動閉止弁、インジェクタ、フィルタ、温度センサ、圧力センサの中から選択される少なくとも1つの機能要素を備える。
- 第2の円筒形外側面とエンドピースの略半球形の外側面とは、少なくとも部分的に複合構造によって覆われ、その複合構造がエンドピースとライナの補強エンベロープとの間に挟まれる。この実施形態では、エンドピースの第2の外径は、複合構造を包含する。
【0041】
上述の複合構造は、エンドピースの材料の伸びを抑える機能を果たし、それによってエンドピースの重量を軽減する一方でタンクの有効容積を増大させることができる。エンドピースがアルミニウムで製作される例では、UNECE規則第134号に規定される液圧サイクルの圧力にさらされるエンドピースの材料の伸びは、UNECE規則第134号に規定される液圧サイクル試験に合格するためには典型的には0.5%未満でなければならない。
【0042】
上述の複合構造は、ライナの補強エンベロープに統合することができる。あるいは、上述の複合構造は、ライナの補強エンベロープとは独立したものであること、すなわち、補強エンベロープとの間に化学結合をもたないものであることができる。
【0043】
本発明による複合構造によって、ライナの補強エンベロープの一部をなくすことができ、それによってタンクを軽量化することができる他、フィラメント巻回に必要な時間を短縮してコンポジットタンクの生産ペースを速めることができる。
【0044】
上述の複合構造には、ポリエチレン、ポリアミド、ポリフタルアミド、ポリウレタン、シリコーンなどの熱可塑性または熱硬化性ポリマーが含まれる。有利には、熱可塑性ポリマー材料に強化繊維を充填して複合材料を形成する。強化繊維は、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、アラミド繊維、ポリマー繊維、シリカ繊維、ポリエチレン繊維、天然繊維、金属繊維、合金繊維、セラミック繊維などである。
【0045】
上述の複合構造は、ライナの補強エンベロープ製造の最初の段階で、エンドピースのフィラメント巻回によって製造される。別法では、上述の複合構造は、エンドピースに複合素材をオーバーモールドすることによって製造される。別の別法では、上述の複合構造は、エンドピースに乾燥状態の繊維のシートを置き、その上でインフュージョン成形または(英語の「High Pressure Resin Transfer Moulding」の頭字語で)HP-RTMとも呼ばれる高圧樹脂トランスファ成形のステップを行うことによって製造される。さらに別の別法では、上述の複合構造は、プリプレグ繊維(英語では「towpreg」)から製造される。
【0046】
本発明によるタンクの追加的な特徴として紹介した上述のらせん巻回の角度は、本発明によるタンクのみに限定されるものではなく、タイプを問わず、コンポジットタンクに適用することが可能である。そのため、本発明の別の対象は、加圧流体タンク、特に自動車両における加圧ガスの貯蔵および配給のためのタンクであって、ライナおよびライナの補強エンベロープを備えるタンクにおいて、ライナの補強エンベロープが、複数のらせん層を含む複合巻回体によって構成され、少なくとも1つの第1のらせん層のらせん巻回の角度が、54°未満、好ましくは53°未満であり、少なくとも1つの第2のらせん層のらせん巻回の角度が、53°から56°の間、たとえば54.7°であることを特徴とする、タンクである。
【0047】
また、本発明によるタンクの追加的な特徴として紹介した第2の外径に対する第4の外径の具体的な比は、本発明によるタンクのみに限定されるものではなく、タイプを問わず、コンポジットタンクに適用することができる。そのため、本発明の別の対象は、加圧流体タンク、特に自動車両における加圧ガスの貯蔵および配給のためのタンクであって、第1の外径を有する円筒形外側面をもつ終端部を含むエンドピースを備え、終端部はエンドピースの中間部のほぼ半球形の外側面によって軸方向に延びるタンクにおいて、エンドピースの中間部が第2の外径を有し、第1の外径に対する第2の外径の比が、0.6から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間であることを特徴とする、タンクである。
【0048】
また、本発明によるタンクの追加的な特徴として紹介した上述の複合構造は、本発明によるタンクのみに限定されるものではなく、タイプを問わず、コンポジットタンクに適用することができる。そのため、本発明の別の対象は、加圧流体タンク、特に自動車両における加圧ガスの貯蔵および配給のためのタンクであって、ライナと、複合構造によって少なくとも部分的に覆われたエンドピースとを備え、複合構造がエンドピースとライナの補強エンベロープとの間に挟まれた、タンクである。
【0049】
本発明は、車両、好ましくは自動車両であって、
- 本発明によるタンクと、
- 車両の駆動手段にエネルギーを供給するように構成されたエネルギー変換手段であって、第1のエンドピースを介してタンクと流体連通して流体の供給を受けることができるようにされた、エネルギー変換手段と、
- タンクの補給手段であって、第1のエンドピースを介してタンクと流体連通した、補給手段と、
- 操作信号に応答してエネルギー変換手段またはタンク補給手段を選択的に起動するように構成されたアクチュエータと
を備える車両も対象とする。
【0050】
本発明は、添付の図面を参照しながら例としてのみ示す以下の説明を読むことによってよりよく理解されよう。同一、同様または類似の機能を有する要素は、図面を通して同じ参照符号で示してある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2】
図1のタンクの詳細の分解斜視図であって、本発明によるエンドピースの封止の第1の実施形態を示した図である。
【
図3】
図1のタンクの詳細の断面図であって、本発明によるエンドピースの封止の第1の実施形態を示した図である。
【
図4】本発明によるタンクの詳細の断面図であって、本発明によるエンドピースの封止の第2の実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下の実施は例である。説明は1つまたは複数の実施形態について行うが、各々の符号が同じ実施形態に関するものであることを必ずしも意味するものではなく、特徴は必ずしも1つの実施形態にのみ当てはまるものでもない。異なる実施形態の1つ1つの特徴は、組合せおよび/または入替えによって別の実施形態をもたらすこともできる。
【0053】
この説明では、特定の要素またはパラメータ、たとえば第1の要素または第2の要素、第1のパラメータまたは第2のパラメータ、さらには第1の基準および第2の基準などに対して添字を付けることができる。その場合、それは、似通ってはいても、同一ではない要素、パラメータまたは基準について差異を示して命名するための添字に過ぎない。その添字は、それぞれの要素、パラメータまたは基準の別のものに対する優先性を含意するものではなく、そうした命名は、本明細書の枠組みから外れることなく、容易に入れ替えることが可能である。また、そうした添字は、時間的な順位を含意することによって、たとえば何らかの基準の評価に資するというものでもない。
【0054】
図1に、本発明の実施形態による、加圧流体、特に加圧ガス-たとえば700バールの水素-の貯蔵および配給のための、自動車両(図示せず)におけるタンク100を示す。タンク100は、長手方向軸Xの円筒形のタンクであり、筒状中央部20と2つの端部を有するライナ2を備える。筒状中央部20は第1の円筒形外側面21を有する。ライナ2の第1および第2の端部には、第1および第2のネック22が設けられている。第1および第2のネック22は、第1および第2の肩部23によって筒状中央部20に連結される。タンク100は、第1および第2のネック22に対して気密に組み付けられた第1および第2のエンドピース1を備える。タンク100は、ライナ2の補強エンベロープ3をさらに備える。第1および第2のエンドピース1は、第1の円筒形外側面21に対して径方向に面一となるその延長上に同軸に位置決めされた第2の円筒形外側面11を有する終端部10をそれぞれ備える(
図2~
図4も参照のこと)。
【0055】
図示するように、ライナ2の筒状中央部20の第1の円筒形外側面21は第1の外径D1をもち、第1のエンドピース1の終端部10の第2の円筒形外側面11は第2の外径D2(
図2参照)をもち、第2の外径D2は第1の外径D1に等しい。
【0056】
ネック22は第3の外径D3をもち、第1のエンドピース1は、ネック22を受けるための内部キャビティ13を備える。内部キャビティ13は、第3の外径D3が第1の内径D4と等しくなる第1の内径D4をもつ。さらに、第2の外径D2に対する第1の内径D4の比は、0.6から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間である。
【0057】
有利には、エンドピースは、金属製部品、たとえばアルミニウム製部品である。
【0058】
有利には、ライナは、たとえばポリアミドなどの熱可塑性または熱硬化性のポリマー材料の射出成形、回転成形または押出し-ブロー成形によって製造され、ライナの厚さは5mm以下である。
【0059】
あるいは、ライナは、複合材料の射出成形、回転成形または押出し-ブロー成形によって製造される。
【0060】
別法では、ライナはフィラメント巻回によって製造される。
【0061】
別法では、ライナは金属、たとえばアルミニウム6061で製造される。
【0062】
有利には、タンク100は、ライナ2の補強エンベロープ3を包み込むガラス繊維(図示せず)の保護層を含む。
【0063】
有利には、ライナの補強エンベロープは、耐火材(図示せず)の1つまたは複数の層によって、好ましくは膨張性の耐火材、たとえばケイ酸塩またはリン酸塩を主体とする被覆、好ましくはポリリン酸アンモニウムを10%~50%配合した被覆によって、被覆される。
【0064】
引き続き図示した例では、タンク100は長くて薄く、すなわち、直径に対する長さの比が6以上である。実際、タンク100の長さは、1000mmから2000mmの間であり、その直径は100mmから150mmの間である。
【0065】
図2および
図3は、エンドピース/ネックのアセンブリの封止の第1の実施形態であって、第1のエンドピース1が加圧流体タンク100に適合するように設計され、タンクが第1の円筒形外側面21を有する筒状中央部20を具備するライナ2を備え、第1のエンドピース1が、第1の円筒形外側面21に対して径方向に面一となるその延長上に同軸に位置決めすることができる第2の円筒形外側面11を具備する第1の終端部10を備える、実施形態を示している。封止のこの第1の実施形態では、第1のエンドピース1は、第1のエンドピース1の内部キャビティ13に設けられた環状溝12に同軸に配置されるシールリング4によって第1のネック22の外側に気密に組み立てられる。第1のネック22の内部には、第1のネック22をシールリング4に径方向に締め付けて保持するための補強リング5が配置される。
【0066】
有利には、第1のエンドピース1は、ねじ-ナット式の組立てによって第1のネック22に気密に組み付けられる。そのため、第1のネック22の外周には、ねじ24が切られる。
【0067】
あるいは、第1のエンドピース1は、クリッピング、接着または締りばめ(図示せず)によって第1のネック22に気密に組み立てられる。
【0068】
有利には、シールリング4はエラストマーリングである。
【0069】
有利には、シールリング4はOリングである。
【0070】
上に説明した各要素の他、
図3には、第1のエンドピース1に電磁弁(図示せず)を取り付けるためのねじ穴16が、第1のエンドピース1の長手方向軸上にあることが示されている。
【0071】
ライナ2の筒状中央部20の第1の円筒形外側面21と反対側では、第1のエンドピース1の終端部10の第2の円筒形外側面11が、第1のエンドピース1の中間部15の略半球形の外側面14によって軸方向に延びており、それにより、略半球形の外側面14は、ライナ2の補強エンベロープ3(図示せず)によって包み込まれる。第1のエンドピース1の中間部15は第4の外径D5をもち、第2の外径D2に対するその第4の外径D5の比は、0.5から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間である。
【0072】
図4に、エンドピース/ネックのアセンブリの封止の第2の実施形態を示す。封止のこの第2の実施形態では、第1のエンドピース1は、第1のエンドピース1の内部キャビティ13に設けられた環状溝12に同軸に配置されたシールリング4によって第1のネック22の外側に気密に組み立てられ、タンク100の内圧は、第1のネック22をシールリング4に対して径方向外側に押し付けようとする傾向を有する。図示した例では、内部キャビティ13は、円環状のキャビティ形状を有する。円環状キャビティの内壁と第1のネック22の内壁との間にはわずかながら自由空間が設けられる。この自由空間の目的は、加圧流体がその空間を占めるようにすることで、流体によって第1のネック22の内壁にかかる径方向の力を増やすことにある。矢印Fは、流体によってライナ2の内壁にかかる圧力の方向を示している。
【0073】
図示するように、ライナ2の補強エンベロープ3は、ライナ2の筒状中央部20の周りおよび第1のエンドピース1の中間部15の周りにらせん状に巻かれた複数の補強フィラメント層を含む複合巻回体からなり、少なくとも1つの第1のフィラメント層のらせん巻回の角度Aが、54°未満、好ましくは53°未満であり、少なくとも1つの第2のフィラメント層のらせん巻回の角度が、53°から56度の間、たとえば54.7°である。
【0074】
少なくとも1つの第1のフィラメント層は、複合巻回体の内側層であるものとする。
【0075】
少なくとも1つの第2のフィラメント層は、複合巻回体の外側層であるものとする。
【0076】
有利には、補強フィラメントは、ガラス繊維、アラミド繊維および/または炭素繊維からなる。
【0077】
図3および
図4は、本発明の別の実施形態であって、第2の円筒形外側面11とエンドピース1の略半球形の外側面14とが少なくとも部分的に複合構造25によって覆われ、その複合構造25が、エンドピース1とライナ2の補強エンベロープ3との間に挟まれている、実施形態を示している。
【0078】
上述のようなタンクは、たとえば車両、好ましくは自動車両に配置され、その場合、自動車両は、
- 本発明によるタンクと、
- 車両の駆動手段にエネルギーを供給するように構成されたエネルギー変換手段であって、第1のエンドピースを介してタンクと流体連通して流体の供給を受けられるようにされた、エネルギー変換手段と、
- タンクの補給手段であって、第1のエンドピースを介してタンクと流体連通した、補給手段と、
- 操作信号に応答してエネルギー変換手段またはタンク補給手段を選択的に起動するように構成されたアクチュエータと
を備える。
【0079】
本発明は、説明した実施形態だけに限定されるものではなく、特に第1のエンドピースには少なくとも1つの機能要素を統合することが可能である。その機能要素は、過圧防止安全弁、好ましくは熱動トリップ式過圧防止安全弁、流量制御装置をなす弁、逆止弁、手動閉止弁、インジェクタ、フィルタ、温度センサ、圧力センサの中から選択される。また、エンドピースに関する設計は、扱う流体やタンクの形状そのものにかかわらず(円筒形であれ、卵形であれ)、あらゆる加圧タンクを対象とする。
【符号の説明】
【0080】
1 エンドピース
2 ライナ
3 補強エンベロープ
4 シールリング
5 補強リング
10 終端部
11 第2の円筒形外側面
12 環状溝
13 内部キャビティ
14 略半球形の外側面
15 中間部
20 筒状中央部
21 第1の円筒形外側面
22 ネック
23 肩部
24 ねじ
25 複合構造
26 ねじ穴
100 タンク
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧流体タンクのためのエンドピース(1)であって、前記加圧流体タンクが第1の円筒形外側面(21)を有する筒状中央部(20)を具備するライナ(2)を備えるエンドピース(1)において、前記エンドピース(1)が、第2の円筒形外側面(11)を有する終端部(10)を備え、前記終端部(10)が、前記筒状中央部(20)と同軸に位置決めされるように構成され、前記第2の円筒形外側面(11)が、前記第1の円筒形外側面(21)に対して径方向に面一となるその延長上にあり、前記エンドピース(1)が、前記エンドピース(1)の内部キャビティ(13)に設けられた環状溝(12)の中に前記終端部(10)と同軸に配置されたシールリング(4)によって前記ライナ(2)のネック(22)の外側に気密に組み付けられるように構成されて、前記加圧流体タンクの内圧が前記ネック(22)を前記シールリング(4)に対して径方向外側に押し付けようとする傾向をもつようにされることを特徴とする、エンドピース(1)。
【請求項2】
前記終端部(10)の前記第2の円筒形外側面(11)が第2の外径D2をもつこと、および前記内部キャビティ(13)が第1の内径D4をもち、D4/D2比が、0.6から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間であることを特徴とする、請求項1に記載のエンドピース。
【請求項3】
加圧流体タンク(100)、特に自動車両における加圧ガスの貯蔵および配給のための加圧流体タンクであって、
ライナ(2)であって、
第1の外径D1をもつ第1の円筒形外側面(21)を有する筒状中央部(20)と、
第1の肩部(23)によって筒状中央部(20)に連結された第1のネック(22)と、
を備えるライナ(2)と、
前記第1のネック(22)に気密に組み付けられた第1のエンドピース(1)と、
前記ライナ(2)の補強エンベロープ(3)と、
を備えるタンクにおいて、
前記第1のエンドピース(1)が、前記第1の円筒形外側面(21)に対して径方向に面一となるその延長上に前記筒状中央部(20)と同軸に位置決めされた第2の円筒形外側面(11)を有する終端部(10)を備えること、および前記第1のエンドピース(1)が、前記第1のエンドピース(1)の内部キャビティ(13)に設けられた環状溝(12)に前記終端部(10)と同軸に配置されたシールリング(4)によって前記ライナ(2)の前記第1のネック(22)の外側に気密に組み付けられて、タンクの内圧が前記ネック(22)を前記シールリング(4)に対して径方向外側に押し付けようとする傾向をもつようにされることを特徴とする、加圧流体タンク(100)。
【請求項4】
前記第1のエンドピース(1)の前記終端部(10)の前記第2の円筒形外側面(11)が第2の外径D2を有し、前記第2の外径D2は前記第1の外径D1に等しいことを特徴とする、請求項3に記載の加圧流体タンク。
【請求項5】
前記第1のエンドピース(1)がねじ-ナット式の組立てによって前記第1のネック(22)に気密に組み付けられることを特徴とする、請求項3または4に記載の加圧流体タンク。
【請求項6】
前記ライナ(2)の前記筒状中央部(20)の前記第1の円筒形外側面(21)と反対側では、前記第1のエンドピース(1)の前記終端部(10)の前記第2の円筒形外側面(11)が、前記第1のエンドピース(1)の中間部(15)の略半球形の外側面(14)によって軸方向に延び、前記略半球形の外側面(14)は、前記ライナ(2)の前記補強エンベロープ(3)によって包み込まれることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項7】
前記第1のエンドピース(1)の前記中間部(15)が第4の外径D5をもち、D5/D2比が、0.5から0.95の間、好ましくは0.8から0.95の間であることを特徴とする、請求項6に記載の加圧流体タンク。
【請求項8】
前記ライナ(2)の前記補強エンベロープ(3)が、前記ライナ(2)の前記筒状中央部(20)の周りおよび前記第1のエンドピース(1)の前記中間部(15)の周りにらせん状に巻かれた複数の補強フィラメント層を備える複合巻回体からなり、少なくとも1つの第1の層のらせん巻回の角度(A)が、54°未満、好ましくは53°未満であり、少なくとも1つの第2の層のらせん巻回の角度が、53°から56°の間、たとえば54.7°であることを特徴とする、請求項6または7に記載の加圧流体タンク。
【請求項9】
前記第2の円筒形外側面(11)と前記エンドピース(1)の前記ほぼ半球形の外側面(14)とが、少なくとも部分的に複合構造(25)によって覆われ、前記複合構造(25)が、前記エンドピース(1)と前記ライナ(2)の前記補強エンベロープ(3)との間に挟まれることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項10】
前記第1のエンドピース(1)が、過圧防止安全弁、好ましくは熱動トリップ式過圧防止安全弁、流量制御装置をなす弁、逆止弁、手動閉止弁、インジェクタ、フィルタ、温度センサ、圧力センサの中から選択される少なくとも1つの機能要素をさらに備えることを特徴とする、請求項3から
9のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項11】
前記ライナ(2)が、熱可塑性または熱硬化性のポリマー材料、好ましくは強化繊維を充填した熱可塑性ポリマー材料の射出成形、回転成形または押出し-ブロー成形によって製造されることを特徴とする、請求項3から
10のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項12】
前記ライナ(2)がフィラメント巻回によって製造されることを特徴とする、請求項3から
10のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項13】
前記ライナ(2)の前記補強エンベロープ(3)が、耐火材の1つまたは複数の層によって、好ましくは膨張性の耐火材、たとえばケイ酸塩またはリン酸塩を主体とする被覆、好ましくはポリリン酸アンモニウムが10%~50%配合された被覆によって被覆されることを特徴とする、請求項3から
12のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項14】
前記エンドピース(1)が、金属製部品、たとえばアルミニウム製部品であることを特徴とする、請求項3から
13のいずれか一項に記載の加圧流体タンク。
【請求項15】
車両、好ましくは自動車両であって、
請求項3から14のいずれか一項に記載の加圧流体タンク(100)と、
車両の駆動手段にエネルギーを供給するように構成されたエネルギー変換手段であって、前記第1のエンドピース(1)を介して前記加圧流体タンク(100)と流体連通して流体の供給を受けることができるようにされた、エネルギー変換手段と、
前記加圧流体タンク(100)の補給手段であって、前記第1のエンドピース(1)を介して前記加圧流体タンクと流体連通した、補給手段と、
操作信号に応答して前記エネルギー変換手段または前記補給手段を選択的に起動するように構成されたアクチュエータと、
を備える車両。
【国際調査報告】