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特表2023-512467気密封止された透明キャビティおよびその筐体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】気密封止された透明キャビティおよびその筐体
(51)【国際特許分類】
   B81B 1/00 20060101AFI20230317BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20230317BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20230317BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20230317BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20230317BHJP
   C03B 23/20 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
B81B1/00
B81C1/00
H01L23/02 D
H01L23/08 B
B23K26/21 P
C03B23/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543088
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2021050825
(87)【国際公開番号】W WO2021144431
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】102020100819.8
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ツェッテラー
(72)【発明者】
【氏名】アンティ マーテネン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ウルリヒ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】小根澤 裕
【テーマコード(参考)】
3C081
4E168
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA07
3C081AA17
3C081BA04
3C081BA11
3C081BA21
3C081BA30
3C081BA32
3C081CA15
3C081CA19
3C081CA21
3C081CA23
3C081CA31
3C081CA32
3C081DA03
3C081DA06
3C081DA07
3C081DA08
3C081DA09
3C081DA27
3C081EA01
3C081EA03
3C081EA05
3C081EA21
3C081EA39
4E168AD07
4E168AD18
4E168AE05
4E168JA12
4E168JA14
4E168JA15
(57)【要約】
複数の気密筐体を提供するための方法であって、各筐体によりキャビティが形成され、キャビティは、筐体の側周縁部、下面および上面で囲まれており、キャビティは特に、電子回路、センサまたはMEMSを収納するための収容キャビティとして形成されており、方法は、少なくとも2つの基材を提供するステップであって、基材のうち少なくとも1つは、透明材料からなりかつ透明基材であり、少なくとも2つの基材は、互いに直に接するようにまたは重なり合うように配置されており、少なくとも1つの透明基材によって、密封すべきキャビティの各筐体の各縁部および各上面が形成され、第2の基材によって、各筐体の各下面が形成され、少なくとも2つの基材の間の接触面にそれぞれ1つの接触面が形成され、それにより各筐体が少なくとも1つの接触面を有するものとするステップと、各筐体の接触面に沿って少なくとも2つの基材を接合することによりキャビティを気密封止するステップと、切断または分離のステップによって各筐体を個別化するステップとを含む方法において、該方法では粒子線を使用し、粒子線によって透明基材から材料をアブレーションにより除去する、方法が提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密封止筐体(1)であって、前記筐体(1)は、
前記筐体の少なくとも1つの部分を形成する、ベース基材(3)およびカバー基材(5)と、
前記筐体に囲まれた少なくとも1つの機能領域(12,13,13a)、特に、電子回路、センサまたはMEMSなどの収容物(2)を収納するための気密封止された収容キャビティ(12)と
を備えており、
少なくとも前記カバー基材は、好ましくはガラス状の材料を含み、
前記筐体の少なくとも2つの部分が少なくとも1つのレーザ接合線(8)で接合されることで、前記気密封止筐体が形成されており、
前記カバー基材は、前記筐体の側周縁部(21)と前記筐体の上面(23)との双方を一体的に形成しており、前記ベース基材は、同じレーザ接合線で前記カバー基材と互いに気密に接合されているため、前記筐体は2つの部分のみから形成されており、
かつ/または
前記筐体は、前記側周縁部および/または端部(14)において、前記ベース基材(3)の表面の法線に対して10~45度、好ましくは15~30度、さらに好ましくは18~25度のフランク角(α)を有する、気密封止筐体(1)。
【請求項2】
前記筐体の前記周縁部(21)を形成する中間基材(4)がさらに含まれており、かつ/または
前記少なくとも1つのレーザ接合線(8)は、距離DFで前記機能領域(12,13,13a)の周囲を囲んでいる、請求項1記載の気密封止筐体(1)。
【請求項3】
前記機能領域(12,13,13a)は、気密封止されたキャビティ(12)を備えており、前記気密封止されたキャビティ(12)は特に、収容物(2)、例えば電子回路、センサまたはMEMSを収納するための気密封止された収容キャビティ(12)として形成されており、
前記キャビティ(12)は、前記カバー基材(5)の表面の法線方向に深さを有し、かつ
前記キャビティの深さは、前記キャビティの面全体にわたって前記深さの30%未満、好ましくは15%未満だけ変動し、かつ/または
前記キャビティの深さは、前記キャビティの面全体にわたって10%超、好ましくは5%超、または2%超だけ変動する、請求項1または2記載の気密封止筐体(1)。
【請求項4】
前記基材(3,4,5)のうち少なくとも1つ、特に前記カバー基材は、少なくともある領域で、少なくとも1つの波長範囲に対して透明である、請求項1から3までのいずれか1項記載の気密封止筐体(1)。
【請求項5】
前記筐体は、レーザ接合プロセスによって接合され、前記ベース基材、前記カバー基材および必要に応じて1つ以上の中間基材が前記少なくとも1つのレーザ接合線によって互いに接合されていることにより前記気密封止筐体となっており、かつ/または
前記ベース基材(3)、前記中間基材(4)および/または前記カバー基材(5)は、ガラス、ガラスセラミック、シリコンもしくはサファイア、または前述の材料の組み合わせからなる、請求項1から4までのいずれか1項記載の気密封止筐体(1)。
【請求項6】
前記機能領域(12,13,13a)は、アブレーションプロセスによって前記カバー基材(5)に導入されており、かつ/または
アブレーションプロセスによって前記気密封止筐体(1)が他の気密封止筐体から個別化されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の気密封止筐体(1)。
【請求項7】
前記筐体は、前記筐体と組織との結合を提供するための組織支持構造体をさらに有し、
前記組織支持構造体は、特に前記筐体の前記側周縁部に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の気密封止筐体(1)。
【請求項8】
複数の気密筐体(1)を提供するための方法であって、各筐体により機能領域(12,13,13a)、特にキャビティ(12)が形成され、前記キャビティ(12)は、前記筐体の側周縁部(21)、下面(22)および上面(23)で囲まれており、前記キャビティは特に、電子回路、センサまたはMEMSを収納するための収容キャビティとして形成されており、前記方法は、
- 少なくとも2つの基材(3,4,5)を提供するステップであって、前記基材のうち少なくとも1つは透明基材であり、
前記少なくとも2つの基材は、互いに直に接するようにまたは重なり合うように配置されており、前記少なくとも1つの透明基材によって、前記各筐体の前記各縁部および前記各上面が形成され、前記第2の基材によって、前記各筐体の前記各下面が形成され、前記少なくとも2つの基材の間の前記接触面にそれぞれ1つの接触面(7,25)が形成される、ステップと、
- 各筐体の前記接触面に沿って前記少なくとも2つの基材を接合することにより、前記機能領域を気密封止するステップと、
- 切断または分離のステップによって前記各筐体を個別化するステップと
を含む方法において、
前記方法では粒子線を使用し、前記粒子線によって前記透明基材から材料をアブレーションにより除去する、方法。
【請求項9】
前記機能領域(12,13,13a)の前記気密封止をレーザ接合プロセスにより行い、かつ/または
各筐体によりキャビティ(12)が形成され、前記キャビティ(12)は、前記筐体の前記側周縁部(21)、前記下面(22)および前記上面(23)で囲まれており、前記キャビティは特に、電子回路、センサまたはMEMSを収納するための収容キャビティとして形成されている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記粒子線(28)により前記透明基材(4,5)をくり抜いて、請求項9記載による前記各機能領域(13,13a)または前記各キャビティ(12)を作製するステップが含まれており、かつ/または
前記粒子線(28)は、前記透明基材(4,5)用のアブレーション噴射材、特に炭化ケイ素を含み、かつ/または
前記機能領域(12,13,13a)は、前記アブレーションプロセスステップによって前記カバー基材(5)に導入されており、かつ/または
前記各気密封止筐体(1)は、前記アブレーションプロセスステップによって他の気密封止筐体から個別化されている、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記透明基材(4,5)は、基材厚さを有し、
前記粒子線(28)により前記透明基材から前記基材厚さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは70%以上を除去することで、前記透明基材内に前記キャビティ(12)を形成し、かつ/または
前記粒子線(28)により前記透明基材(4,5)の前記基材厚さから少なくとも100μm、好ましくは少なくとも150μm、さらに好ましくは少なくとも200μm、特に好ましくは少なくとも250μmを除去し、特に前記基材厚さの300μm未満を除去して、前記透明基材内に前記キャビティ(12)を形成する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記キャビティ(12)の可能な限り均一な深さを提供するアブレーション深さが前記透明材料(4,5)において達成されるように前記粒子線(28)を操作し、その際、前記キャビティの前記深さの変動は、前記キャビティの面全体にわたって、特に前記深さの30%未満、好ましくは前記深さの15%未満であり、前記キャビティの前記深さの変動は、前記キャビティの面全体にわたって特に5%超、または2%超である、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの基材(3,4,5)を、少なくとも2つ、好ましくは3つのウェハを含むウェハスタック(18)として提供することにより、同じ作業プロセスで、前記ウェハから複数の気密筐体(1)をまとめて製造する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ベース基材(3)、前記中間基材(4)および/または前記カバー基材(5)は、ガラス、ガラスセラミック、シリコンもしくはサファイア、または前述の材料の組み合わせからなり、かつ/または
前記少なくとも1つの基材(3,4,5)は、前記透明基材(4,5)とは異なる材料を含むか、あるいはすべての基材(3,4,5)が透明材料からなる、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの透明基材(3,4,5)は、第1および第2の透明基材を含み、前記第1の透明基材は、前記各縁部(21)を形成し、前記第2の透明基材は、前記機能領域(12,13,13a)の各上面(23)を形成する、請求項8から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記各筐体(1)の前記個別化ステップを、粒子線切断プロセスにより行い、その際、前記筐体が個別化されるまで前記筐体から材料をアブレーションにより除去する、請求項8から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記粒子線(28)を前記機能領域(12,13,13a)の周囲で周方向に操作し、かつ/または
前記粒子線(28)を前記透明基材(4,5)の前記上面および前記透明基材の前記下面に交互に向けることで、前記筐体(1)を前記上面と前記下面との双方から個別化する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記筐体(1)において、前記透明基材(4,5)の表面の法線に対するフランク角(α)が、前記透明基材の表面の法線に対して10~45度、好ましくは15~30度、さらに好ましくは18~25度に設定されるように前記粒子線(28)を向ける、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記筐体(1)の外輪郭を自由に決められるように前記粒子線(28)を操作することができる、請求項8から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記透明基材(4,5)は、500μm未満、好ましくは300μm未満、さらに好ましくは120μm未満、さらにより好ましくは80μm未満の厚さを有する、請求項8から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記筐体にラッカーが、特にリソグラフィープロセスによってある領域に施与されているため、前記ラッカーが施された領域において、特に請求項7記載の前記個別化のため、または請求項9記載のキャビティの製造のための材料のアブレーション時に、前記ラッカーによって前記筐体がアブレーションから保護される、請求項8から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
請求項8から21までのいずれか1項記載の方法により製造された、中に密閉された気密封止された収容キャビティ(12)を備えた筐体(1)。
【請求項23】
請求項8から21までのいずれか1項記載の方法により製造された、中に密閉された気密封止された収容キャビティ(12)を備えた筐体(1)の、医療用インプラントとしての、またはセンサとしての、特に気圧計としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の気密筐体を提供するための方法、および透明筐体に関する。
【0002】
発明の背景および概要
気密封止筐体は、繊細な電子機器、回路または例えばセンサの保護に使用することができる。例えば、医療用インプラントは、例えば心臓の領域や網膜において、またはバイオプロセッサに使用することができる。チタン製の筐体を利用したバイオプロセッサが知られており、これが使用されている。
【0003】
特に不利な環境条件では、センサを本発明による筐体で保護することができる。こうした分野には、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)や気圧計も含まれる。
【0004】
本発明による筐体の別の使用分野としては、スマートフォンのカバーや、バーチャルリアリティグラスなどの分野が挙げられる。本発明による筐体は、例えば、エレクトロモビリティにおけるフローセルの製造にも使用することができる。しかし、本発明による筐体は、航空宇宙産業、高温用途、およびマイクロオプティクスの分野でも使用することができる。
【0005】
これらの用途に共通するのは、電子機器の堅牢性に対して高い要求が課されていることである。そのため、電子機器を不利な環境の影響から保護する必要がある。さらに、筐体の内部領域、すなわち筐体によって形成されたキャビティとのやりとり、すなわち例えば電磁放射線、特に可視域および/またはマイクロ波放射線の領域の電磁放射線とのやりとりが保証されること、すなわち、筐体が少なくとも部分的におよび/または少なくともある領域で透明であることが要求される場合がある。例えば、少なくとも電磁放射線の波長範囲に対して透明であることにより、キャビティ内に配置された電子機器あるいはセンサからのおよびこれを用いた通信プロセス、データまたはエネルギー伝送、および測定、特に光学的測定が可能となる。
【0006】
複数の部材を組み合わせ、これらの部材を、コンポーネントを収納できる収容領域がスペースに生じるように配置することは原理的に知られている。例えば、Schott Primoceler Oyの欧州特許第3012059号明細書には、光学部品保護用の透明部品の製造方法が示されている。ここでは、新規のレーザプロセスが用いられている。
【0007】
本発明は、SCHOTTの進歩の上に成り立っている。したがって、本発明は、筐体の改良、特に耐久性の向上という枠組みで捉えられるべきものである。これにより、環境の影響や例えば機械的負荷に対する堅牢性を向上させることができる。
【0008】
本発明のさらなる部分態様は、筐体の角部や端部での損傷の確率を減らすために筐体の個別化を改善すること、すなわち、同様により堅牢な筐体を得ることである。
【0009】
最後に、例えば生体適合性に関する材料特性だけでなく材料の組み合わせもその後の使用において重要となり得るという事実を考慮し、本発明のさらなる部分態様は、使用する材料および/または接続材料の数を減らすことである。
【0010】
本発明のさらなる部分態様は、任意の外輪郭を有し得る筐体を提供することである。
【0011】
例えば、リソグラフィープロセスを利用することで、従来のウェハソーイングなどの分離プロセスでは不可能な自由度を得ることができる。例えば、生物学でよく見られるように、特に例えば骨構造のキャビティなど、既存の補完的な構造にフィットするように、ほぼすべての幾何学的輪郭を作成することが可能である。
【0012】
すなわち、本発明は、より厳しい環境条件や影響に耐え得るようにキャビティ用筐体を改良するという第1の課題と、さらには筐体の外形あるいは外輪郭および/または寸法を可能な限り自由に選択できるようにするという第2の課題とに基づいている。
【0013】
改良された筐体も市場の競争状況において優勢を保たなければならないため、本発明のさらなる態様は、特に費用対効果の高い方法で、しかも信頼性および耐久性の高い方法で筐体の改良を提供することである。
【0014】
よって、本発明において、複数の気密筐体を提供するための方法が提示される。本方法によって単一の筐体のみが製造されるように本方法を変更することは容易に可能ではあるが、同じプロセスシーケンスで複数の筐体を製造することは、時間、労力および原材料の節約が可能であるため、経済的観点から合理的である。
【0015】
本発明による気密封止筐体は、少なくとも1つのベース基材とカバー基材とを備えており、すなわち、筐体の少なくとも1つの部分を形成する第1の基材と第2の基材とを備えている。筐体は、筐体に囲まれた少なくとも1つの機能領域、特に、電子回路、センサまたはMEMSなどの収容物を収納するための気密封止された収容キャビティをさらに備えている。
【0016】
ここで、カバー基材は、ガラス状の材料、または少なくともある領域でおよび少なくとも波長範囲に対して透明な材料を含むことが好ましい。
【0017】
筐体の少なくとも2つの部分が少なくとも1つのレーザ接合線で接合されることで、気密封止筐体が形成されている。
【0018】
ここで、カバー基材は、筐体の側周縁部と筐体の上面との双方を一体的に形成でき、ベース基材は、同じレーザ接合線でカバー基材と互いに気密に接合されているため、各筐体は2つの部分のみから形成されている。
【0019】
これに代えてまたはこれに加えて、気密封止筐体は、透明筐体の周縁部またはその一部を形成する中間基材を含むことができる。このように、筐体の側周縁部は、筐体の少なくとも1つの面でベース基材からカバー基材までの部分によって形成されている。ここで、側周縁部は、必ずしもベース基材の(典型的にはどちらかといえば平坦状の)下面に対して垂直ではなく、かつ/またはカバー基材の(同様にどちらかといえば平坦状の)上面に対して垂直ではなく、カバー基材および/またはベース基材に対して直角よりも小さい角度を成している。特に好ましくは、筐体の縁部は、カバー基材およびベース基材の双方に対して直角よりも小さい角度を成すように形成されている。これは、縁部が丸みを帯びているかまたは端部もしくは破断線を有しているため、例えば、ベース基材の下面に位置する縁部のセクションが下面から90°未満の角度で縁部に移行し、他方では、カバー基材の上面に位置する縁部のセクションも同様に上面から90°未満の角度で縁部に移行する場合に実現可能である。その場合、縁部は、例えば、互いに異なって配向している表面を有する少なくとも2つのセクションを有する。
【0020】
本発明の一実施形態では、筐体は、その縁部または周縁部および/またはその端部において、第2の部分の表面の法線に対して10~45度、好ましくは15~30度、さらに好ましくは18~25度であるフランク角を有する。
【0021】
したがって、筐体は、特にその狭い面において直方体状ではないが、筐体の側周縁部は、透明基材の表面の法線に対して、直角に相当しない、例えば直角よりも小さい角度を有している。この角度をフランク角といい、側周縁部あるいは狭い面を筐体のフランクと呼ぶこともある。このように仕上げられた筐体には多くの利点がある。例えば、側周フランクが、隣接する基材の表面に対して直角よりも小さい角度、特に上面の法線に対する角度が10~45度であるという点で既に「破断」している筐体は、欠けに対するより低いリスクを示すことができる。このように整えられた縁部は、特定の生物活性あるいは生体適合性をも特徴とし得る。
【0022】
例えば、側周縁部は、上方から形成されていても下方から形成されていてもよい。側周縁部は、互いに角度を成して配向している2つのセクションを有することができる。また、側周縁部は、丸みを帯びていてもよいし、凹状にベース基材および/またはカバー基材の材料から成形あるいはそこから除去されていてもよい。
【0023】
さらに、少なくとも1つのレーザ接合線は、距離DFで機能領域を周方向に囲むことができる。さらに、キャビティは、透明部分の表面の法線方向に深さを有することができ、キャビティの深さは、キャビティの面全体にわたって特に深さの30%未満、好ましくは15%未満だけ変動する。適切な場合には、キャビティの深さは、キャビティの面全体にわたって10%超、5%超、または2%超だけ変動し得る。
【0024】
好ましくは、基材のうち少なくとも1つ、すなわち特にカバー基材は、少なくともある領域で、少なくとも1つの波長範囲に対して透明である。その場合、放射線は、この領域、特にカバー基材を通過し、特にキャビティに進入し、そこで測定または処理されることが可能である。放射線を透過するように適合された少なくとも1つの透明基材は、ガラス、ガラスセラミック、シリコンもしくはサファイア、または前述の材料の組み合わせから構成されていることが好ましい。
【0025】
気密封止筐体は、特にレーザ接合プロセスによって接合され、ベース基材、カバー基材および必要に応じて1つ以上の中間基材が少なくとも1つのレーザ接合線によって互いに接合されていることにより気密封止筐体となっている。
【0026】
機能領域は、有利には、アブレーションプロセスによって、カバー基材および/またはベース基材に導入することができる。つまり、アブレーション手段によって基材から材料を取り除いてこの領域に窪みを形成し、この窪みを機能領域あるいはキャビティとして利用することができる。また、アブレーションプロセスによって気密封止筐体を他の気密封止筐体から個別化すること、すなわちアブレーション手段を分離手段あるいは切断手段として使用することも可能である。
【0027】
各筐体は、特にキャビティなどの機能領域を有し、この機能領域は、特に筐体の側周縁部、下面および上面によって囲まれている。つまり、機能領域あるいはキャビティは、筐体によって全面的に囲まれている。この場合、キャビティの筐体は、典型的には、周縁部、下面および上面を形成する。
【0028】
本願の趣意において、「下面」あるいは「上面」は、筐体の最終位置に関して他方のどちらの面であってもよい幾何学的構成である。あるいは上面を第1の面と表記し、下面を第1の面と反対側の第2の面と表記し、「縁部」を第1の面と第2の面との間の中間領域と表記することもでき、縁部は通常、第1の面および/または第2の面に対して実質的に垂直である。ただし、以下では、本発明の理解を容易にし、代表的な説明を近似的に行うために、説明したように、「上面」、「下面」および「周縁部」を用いることとする。
【0029】
そして、キャビティの上面は、第1の基材、ディスクまたはプレート、特にカバー基材などの上層によって形成することができる。キャビティの周縁部は、さらに、例えば、第2または中間の基材、ディスクまたはプレートによって形成することができ、第2の基材は「孔」を有し、この孔が後のキャビティとなる。本発明において、周縁部は、好ましくは上層あるいはカバー基材によって一緒に形成され、その際、キャビティは、上層から作製される。最後に、中間層の下方に下層を配置することで、下層、基材、ディスクまたはプレートによってキャビティの下面を形成することができる。また、下層にキャビティや部分キャビティ、あるいは一般的には機能領域が作製されていてもよい。
【0030】
このキャビティは、特に収容キャビティとして形成されており、つまり、例えば電子回路、センサまたはMEMSを各キャビティに挿入することができる。特に電子回路、センサまたはMEMSなどの前述のデバイスは、収容キャビティ内に配置されているため、筐体によって全面的に囲まれている。
【0031】
本発明による方法では、少なくとも1つの透明基材と第2の基材とが提供され、少なくとも2つの基材は、互いに直に接するように、または重なり合うように配置される。言い換えれば、少なくとも2つの基材は、少なくとも2つの基材の間に他の層が存在せずに平らに互いに接するように、互いに接するように配置あるいは取り付けられる。技術的な理由により、基材層間のわずかなガスの混入も避けることができない場合があり、これは基材層の凹凸にも起因し得る。例えば、特に少なくとも2つの基材を互いに押し付けることにより圧力を高めることによって、または基材層を研磨プロセスなどの表面処理によって、平坦な基材層(すなわち特に接触面)の間に閉じ込められるガスの量をさらに減少させることができる。事前に排気することが有利である。また、プロセスパラメータや使用する材料によっては、ガスや液体を充填することも有利となり得る。
【0032】
したがって、基材間に発生し得る間隙の厚さが5μm以下であれば特に好ましく、1μm以下であればさらに好ましい。その場合、接合ゾーンの厚さが10~50μmとなるようにレーザで接合することができ、それにより気密封止が保証される。
【0033】
少なくとも1つの透明基材によって、密封すべきキャビティの各筐体の各縁部および各上面が形成される。第2の基材によって、各筐体の各下面が形成され、少なくとも2つの基材の間にそれぞれ1つの接触面または界面が形成されることにより、各筐体は、少なくとも1つの接触面を有する。接触面は、各基材の表面全体にわたって延在することができる。ここで、各筐体には少なくとも1つの接触面が割り当てられる。つまり、透明基材全体としては、基材全面にわたって延在しかつ第2の基材と接する接触面を有していても、この接触面は、概念的には各筐体に分割あるいは細分化されるため、各筐体にこの接触面の一部が割り当てられることになる。
【0034】
接触面は、光学的に透明である必要はない。場合によっては、下部基材が可視波長域で不透明となるように形成されていると有利である。レーザが通過して接触面に到達する上部基材のみが、少なくとも1つのスペクトル「窓」を有することで、少なくとも使用するレーザの波長が基材を少なくとも部分的にまたは少なくともある領域で通過することできる。接触面は、レーザがこの面にエネルギーを加えることができるような状態にある。例えば、互いに接する2つの基材の表面は、オプティカルコンタクトにより接合されていてよく、さらに、例えばnm範囲の粗さを有することができる。レーザはこの面で少なくとも部分的に吸収されるため、そこにエネルギーを導入することができる。総じて、本願の趣意における接触面とは、この面で入射レーザビームがエネルギーを加えることができる面と理解されるべきであり、したがって、この接触面に沿って接合プロセスを実施することができる。このような界面の単純な一例は、互いに接する2つの基材間の接触面である。
【0035】
好ましい一実施形態では、すべての基材層が透明であるため、下面、縁部に加えて上面、ひいては筐体のすべてが透明材料からなる。
【0036】
基材が互いに接するように接合されることで、共通の筐体が形成され、かつキャビティが気密封止される。キャビティを気密封止するステップは、各筐体の接触面に沿って少なくとも2つの基材を接合することによって行うことができる。有利には、これはレーザ接合プロセスによって行うことができる。言い換えれば、接触面の領域に、レーザを用いて、冷間接合プロセスと呼ばれるような局所的な方法でエネルギーを加えることができる。このように、接合のために提供された熱エネルギーが接触面の延在部に集中的に与えられ、筐体の残りの材料には比較的ゆっくりとしか拡散しないため、特にキャビティでは大きな温度上昇は起こらない。これにより、キャビティ内に配置された電子機器の過熱が防止される。
【0037】
レーザを用いて両基材の材料を接触面に沿って各筐体の領域で局所的に溶融することで、少なくとも2つの基材が局所的に結合する。当業者であれば、これに関して例えば欧州特許第3012059号明細書を参照することができ、その内容を本明細書に援用するものとする。
【0038】
少なくとも3つの基材を接合するステップの前に、基材を、オプティカルコンタクトによって各筐体の界面に沿って少なくとも一時的に互いに結合させることができる。
【0039】
少なくとも1つの透明基材は、隣接する2つの透明基材を含むことができる。2つの透明基材を使用する場合、1つ目はキャビティの縁部を形成し、2つ目はキャビティの上面を形成するため、各筐体には周方向の2つの接触面が割り当てられている。この場合、好ましくはレーザ接合プロセスにより2つの界面に沿って接合することで、各キャビティが気密封止される。2つの透明基材に加えて第2の基材も互いにしっかりと溶接され、キャビティが気密封止される。
【0040】
各筐体は、切断または分離のステップによって個別化される。これは、各筐体が他の材料から個別化されるように基材を切断あるいは分離することを意味する。
【0041】
本方法では、粒子線を使用して透明基材から材料をアブレーションにより除去する。
【0042】
一例として、少なくとも2つの基材は、少なくとも2つのウェハを含む1つのウェハスタックの好ましい形態で提供される。その場合、同じ作業プロセスで、このウェハまたはウェハスタックから複数の気密筐体をまとめて製造することができる。この方法は、ウェハの廃棄量が特に少なく、材料のロスが特に少ないため、特に経済的であることが判明した。つまり、1つのウェハスタックから複数の気密筐体が切り出されるが、切断によってある程度の量の材料のロスが生じる。切断プロセスの種類や筐体のサイズおよび配置によって、材料のロスを最小限に抑えることができる。
【0043】
好ましい一実施形態では、粒子線によって透明基材をくり抜いて、各キャビティを形成する。その場合、粒子線は特に、例えば炭化ケイ素(SiC)、コランダム(Al)、ガーネット、WCやTiCなどの炭化物などの透明基材用のアブレーション噴射材、すなわち例えば透明基材の材料よりも硬い材料を含む。
【0044】
ビーム流量、ビーム形状(ビームプロファイル)あるいはビーム量は、ターゲットサイズ、すなわち特に筐体を製造するためのウェハあるいは基材のサイズに基づいて調整することができる。
【0045】
つまり、粒子線を透明基材に向けて、透明基材から材料を除去するように照射し、このようなくり抜きによって透明基材内にキャビティを作製する。本実施形態では、有利には、厚い基材ではキャビティの深さを大きくすることによりキャビティをくり抜くより大きな空間を基材内部に提供するために、透明基材は、より大きな厚さを有することができる。ここで、透明基材から材料を可能な限り均一に除去し、ひいては透明基材におけるアブレーション深さが可能な限り均一となるようにするために、粒子線を透明基材の表面上を移動させる。この場合、キャビティのサイズや面積は、粒子線を透明基材上で移動させる面積により調整することができる。この場合、粒子線を片面から透明基材に照射し、例えば、透明基材内にキャビティが作製されるように、透明基材の表面上を連続的に移動させる。透明基材がウェハの形態で提供される例では、粒子線をウェハ上の異なる位置に向け、その際に粒子線が向けられないスペースを残すことで、粒子線によりウェハに複数のキャビティを形成することができる。このスペースが、後にキャビティの周壁となる。
【0046】
これに代えてまたはこれに加えて、ラッカーを基材の表面領域に施与することができ、特にラッカーは、構造化された状態で、さらに特にリソグラフィーにより施与することができる。ラッカーは、例えば、細いウェブ状に施与することができる。ラッカーは基材表面をアブレーションから保護するため、アブレーションを続けると、保護されていない領域にキャビティが形成され、ラッカーで保護された領域には例えばウェブ状物が残る。
【0047】
透明基材は、基材厚さを有する。粒子線により、各キャビティの領域において透明基材から基材厚さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは70%以上を除去することで、透明基材内にキャビティを形成することが好ましい。一実施形態では、粒子線により、透明基材の基材厚さから少なくとも100μm、好ましくは少なくとも150μm、さらに好ましくは少なくとも200μm、特に好ましくは少なくとも250μmを除去する。
【0048】
本実施形態では、粒子線は、基材内のすべてのキャビティの可能な限り均一な深さを提供するアブレーション深さが透明材料において達成されるように操作される。この場合、キャビティの深さの変動は、好ましくはキャビティの面全体にわたって、深さの30%未満、さらに好ましくは深さの15%未満である。場合によっては、キャビティの深さの変動は、キャビティの面全体にわたって、5%超、あるいは2%超であり、同様に基材内の異なるキャビティの深さが変動し得る。
【0049】
少なくとも1つの透明基材は、好ましくは、ガラス、ガラスセラミック、シリコン、サファイア、または前述の材料の組み合わせからなる。例えば、このようなガラスの組み合わせは、ガラス/シリコンの組み合わせ、ガラス/シリコン/サファイアの組み合わせ、またはシリコン/サファイアの組み合わせである。さらなる基材は、Al、サファイア、Si、またはAlNを含むことも、あるいはこれらからなることもできる。透明基材と、異なる種類の基材とを組み合わせることで、例えば半導体特性を実現することができる。例えば、特に圧力センシング用のピエゾ抵抗Si層や、MEMSによるパルス計測などのマイクロメカニカル用途の厚膜層など、コーティングを使用することも可能である。
【0050】
あるいは、少なくとも1つの基材あるいはウェハは、透明基材とは異なる材料からなる。例えば、キャビティの下面を形成する基材は、必要に応じて特に電気伝導性や電気絶縁性などの他の特性を有する光学的に透明でない材料から提供することができる。それに対して、筐体の縁部および上面は、好ましくは透明材料から提供されている。さらに好ましいのは、すべての基材を透明材料から提供することである。ガラス製またはガラスを主成分とする、特にホウケイ酸ガラス製の透明筐体の場合、これが化学的に不活性であることが特に有利である。
【0051】
基材にはコーティングが施されていてもよい。レーザの照射領域において、使用するレーザ波長に対して透明あるいは少なくとも部分的に透明であることが保証される限り、例えば、ARコーティング、保護コーティング、生物活性フィルム、光学フィルター、例えばITOまたは金製の導電層を使用することができる。
【0052】
各筐体の個別化ステップは、好ましくは、粒子線切断プロセスにより行うことができる。このステップでは、筐体が個別化されるまで筐体から材料をアブレーションにより除去する。
【0053】
例えば、ここでは粒子線を使用することができ、粒子線をキャビティの周囲で周方向に操作して、これを、粒子線が筐体から除去する軌道で筐体の厚みに達して筐体の周囲の材料からの分離が達成されるまで、必要であれば複数回行う。このような粒子線により基材に点状あるいは線状に作用させることで、そこでのアブレーション効果を高め、ひいてはより迅速に切断効果が得られる。
【0054】
面状のアブレーション効果を有する粒子線を使用することが好ましい。粒子線は、好ましくは、適用面積全体にわたって良好な均一性を有し、適用面積は、単一のキャビティのサイズと比較して大きくすることができる。すなわち、除去される基材の片面の表面のすべてまたは大部分が同時に除去されるように、すなわち表面がある領域においてではなく全体として除去されるように、アブレーションプロセスを使用することが好ましい。そのためには、表面効果の大きい粒子線を利用することができる。この場合、除去すべきでない領域を保護するために、これらの領域には保護剤、例えば保護ラッカーを施与することができる。
【0055】
粒子線を透明基材の上面および該基材の下面に交互に向けることで、筐体を上面と下面との双方から個別化したり、そこで材料を除去したりすることができる。つまり、粒子線は、基材に切り込みを入れるための切断手段として機能する。例えばビーム能力やビーム強度に関して粒子線のビーム操作が十分であれば、筐体から材料が連続的に除去される切断挙動が生じる。
【0056】
したがって、一例では、粒子線は、基材上の施与面-これは好ましくは基材の面全体である-にアブレーション効果および切断効果を達成するために、切断プロセスとしてのその機能で透明基材に面状で向けられる。例えば、先に説明したラッカー施与との組み合わせにより、ラッカーで保護された領域を除去しないフラットビーム法を用いることができる。必要に応じて、フラットビーム法を用いると、キャビティの深さをより良好に均すことができる。
【0057】
特に、切断プロセスにおける筐体での粒子線は、透明基材の表面の法線に対するフランク角が、透明基材の表面の法線に対して10~45°、好ましくは15~30°、さらに好ましくは18~25°に設定されていることが好ましい。すなわち、このプロセスで製造された筐体は、好ましくは、透明基材の表面の法線に対して10°~45°、好ましくは15°~30°、さらに好ましくは18°~25°のフランク角を有することができる。
【0058】
粒子線は、筐体の外輪郭を自由に決められるように操作することができる。つまり、筐体の輪郭は、粒子線を基材上でどのように動かすかにのみ依存する。例えば、既知の切断ステップを実施する先行技術とは対照的に自由な成形が可能であるため、正方形だけでなく、例えばレンズの製造に有利である丸い形状も作成できる。さらに、楕円形や六角形、長方形および他のあらゆる外輪郭の筐体も作成可能である。
【0059】
透明基材は、典型的には500μm未満の厚さを有する。好ましくは、透明基材の厚さは、300μm未満、さらに好ましくは120μm未満、さらにより好ましくは80μm未満である。
【0060】
ここで、側周縁部、下面または上面の少なくとも1つは、少なくともある領域で、ある波長範囲に対して透明である。言い換えれば、筐体の少なくとも1つの部分要素が、その部分要素の少なくともある部分領域で好ましい波長範囲に対して透明であれば十分であり、その際、波長範囲は予め既知であり、希望する場合には、使用するレーザの波長に応じて材料を調整することができる。
【0061】
筐体を、レーザ接合プロセスにより接合して気密封止筐体とする。言い換えれば、縁部、下面および上面は、好ましくは2つ以上の部材、例えば2つまたは3つ以上の部材からなり、それらの部材が互いにレーザで接合されて筐体が完成する。
【0062】
さらなる実施形態では、筐体は、例えばSCHOTT自身の特許出願DE102019119195号に記載されているように、少なくとも部分的および/またはある領域で化学強化されていてよく、前述の開示内容は、参照により本明細書に援用される。例えば、筐体の1つの表面、つまり例えば上面が化学強化されている。また、上面および縁部が化学強化されていてもよい。特に好ましくは、上面に加えて縁部および下面も化学強化されているため、上面あるいは下面の各表面だけでなく、各端部、すなわち縁部も化学強化されている。
【0063】
同様に、収容物を収納するための気密封止された収容キャビティを有する透明筐体も本発明の範囲内にある。収容物とは、例えば、電子回路、センサまたはMEMSである。
【0064】
このような筐体は、例えば医療用インプラントとして、またはセンサとして、特に気圧計、血液ガスセンサもしくはグルコースセンサとして使用することができる。
【0065】
ここで特に重要であるのは、医療用インプラントとしての透明な気密封止筐体の使用である。この場合、封入材料として生物学的に不活性な材料を使用することも特に有利であり、ここで特に、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、および45S5などのバイオガラスが挙げられる。
【0066】
人体は固定されたシステムではないため、インプラントはその寿命の間にその本来の使用位置から離れることがある。この移動は、組織がインプラントの包埋材と融合する場合に防ぐことができる。言い換えれば、筐体、あるいはいずれにせよ筐体のいずれかの基材が、組織と融合するように適合または配置されていてもよい。
【0067】
この融合は、対応する表面を粗面化し、ひいては有効表面積を増加させた場合にさらに促進することができる。特に徹底したまたは高度の粗面化、およびそれに対応する基材あるいはガラスの場合、そのような表面は「足場」としてバイオマスと一体化することさえ可能である。言い換えれば、筐体または筐体の少なくとも1つの基材は、組織が支持構造体との形状接続または支持構造体の囲いを形成し得るように、組織のために支持構造体を形成または提供するように適合されていてよい。そのため、筐体は組織内にアンカーを有する。
【0068】
本明細書で提示されたアブレーション作用を有する「サンドブラスト」プロセスによって粗面化あるいは成形または除去された端部は、組織との接続について、組織との強固な接続あるいは融合に特に有利な特性を有することができるように準備あるいは適合させることができることが判明した。本願に記載の個別化プロセスにより、生体インプラントの端部および表面に、その後の組織との接続に有利に準備あるいは適合された表面を設けることができる。言い換えれば、アブレーション作用を有する個別化プロセスによって、後に生体内あるいは組織内で使用するための表面を準備し、かつ/またはこのために支持構造体を提供することができる。この目的で破壊あるいは準備された筐体のフランクは、組織に対する付着性を高め、組織への筐体の「入り込み」を促進するため、生物活性を有する。そのため、フランクは組織支持構造体を有する。
【0069】
マスキングプロセスステップにより、気密封止インプラントの機能性に必要となり得る光学的機能面を表面粗面化から省くことができることは特に有利である。つまり、このプロセスでウェハから個別化されたインプラントは、光学通信に最適な平滑な表面を有することができ、この表面は、例えば透明であることが可能である。同時に、同じ筐体が組織接続用の表面も有することができるため、同じ筐体において2つの表面形態が組み合わせられていてもよい。
【0070】
本発明による(少なくとも部分的に透明な)筐体は、第1の部分から作製され、透明材料で構成された側周縁部と、第2の部分から作製された下面とを含み、これらが一体的に収容キャビティを完全に囲んでいる。筐体の少なくとも2つの部分がレーザ接合プロセスによって接合されることで、気密封止筐体が形成される。
【0071】
第1の部分は、筐体の側周縁部および上面と一体的に形成されているため、各筐体は2つの部品のみから形成される。つまり、2つの基材が設けられており、第1の基材はその内部にくり抜かれたキャビティを有し、このくり抜かれたキャビティが第2の基材により封止される。キャビティの側周縁部および上面を形成する透明基材は、キャビティの下面を提供する第2の基材と一緒に、2つの部分から構成される透明筐体を形成する。
【0072】
一例では、筐体は、その縁部または周縁部において、第2の部分の表面の法線に対して10~45°、好ましくは15~30°、さらに好ましくは18~25°のフランク角を有する。また、筐体の端部においても同様の角度を設定することができ、その際、全周縁部のみならず端部においても前記角度を有する連続したフランクが形成されることで筐体の端部が丸められる場合に好ましい。
【0073】
筐体は、例えば3mm×3mm以下のサイズを有することができ、特に、収容キャビティは、2mm以下の直径を有する。例えば、筐体は、0.2mm×0.2mm以下のサイズを有することもできる。しかし一方で、使用分野によっては筐体を十分により大きなサイズで製造することも可能であり、長さ数センチメートル以上も可能である。実務上のサイズ制限は、好ましい製造方法に起因するがそれ自体はサイズ制限であると理解されるべきではなく、これは単に、切断すべきウェハのサイズである。しかし、製造のためのウェハの使用は、一例としてのみ理解されるべきである。一般的なウェハサイズよりも大きな寸法を有し得る筐体の製造には、例えば板ガラスを使用することも十分に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1a】開放された収容キャビティの上面図である。
図1b】閉鎖された筐体の3D図である。
図1c】開放された収容キャビティのさらなる図である。
図2】3つの基材を有する筐体の接合領域の詳細断面図である。
図3】筐体のさらなる実施形態の上面図である。
図4a図3に示す筐体の実施形態の線A->Bに沿った断面図である。
図4b図3に示す筐体の実施形態の線C->Dに沿った断面図である。
図5a図3に示す筐体の実施形態の線A->Bに沿った断面図である。
図5b図3に示す筐体の実施形態の線C->Dに沿った断面図である。
図6図3に示す筐体の実施形態の線C->Dに沿った断面図である。
図7】本発明による筐体の個別化プロセスを示す図である。
図8】本発明による筐体のさらなる製造方法を示す図である。
図9】3つの基材層を有する筐体の断面図である。
図10】2つの基材層を有する筐体のさらなる実施形態を示す断面図である。
図11】典型的な端部プロファイルの断面図である。
図12a】自由形状ウェハの例示的な形状を示す図である。
図12b】例示的な円形の筐体を示す図である。
図12c】例示的な楕円形の筐体を示す図である。
図13a】第2の自由形状ウェハの例示的な実施形態を示す図である。
図13b】円形の筐体の例示的な第2のウェハを示す図である。
図13c】楕円形の筐体に対応した例示的な第2のウェハを示す図である。
図14】くり抜かれたキャビティと粒子線で加工された縁部とを有する透明基材の顕微鏡写真を示す図である。
図15】粒子線で加工されたキャビティの表面粗さの顕微鏡写真を示す図である。
【0075】
発明の詳細な説明
図1aは、下部基材3上で中間基材4により埋め込まれた、保護すべき収容物2を示す。収容物2が上部基材5で覆われることで、キャビティ12が封止される。こうして、キャビティ12内に配置された収容物2の周囲で、3つの基材3,4,5が一体となって筐体1を形成する。すなわち、図1aの例では上部基材5を中間基材4上に載置すると、閉鎖された収容キャビティ12が形成され、これをその後のステップで気密封止する必要がある。ここで、中間基材4は、下部基材3および上部基材5とは異なる材料で作製することができる。好ましくは、中間基材4と上部基材5とは同じ材料を有する。図示の層3,4,5はウェハスライスであってもよいため、3つのウェハスライスをウェハススタックとして重ね合わせ、それらを接合または溶接することによって筐体が形成される。
【0076】
図1bは、このようにして形成された気密封止筐体1を示している。この筐体1では、下部基材、中間基材4および上部基材5が重なり合うように積層されており、一方では下部基材3と中間基材4との間に、また他方では中間基材4と上部基材5との間に、それぞれ接触面25が存在する。また、図1aからも分かるように、中間基材層4は、面状に連続した形で形成されていないため、収容キャビティ12は、中間基材層の高さで形成されている。
【0077】
図1cは、筐体1のさらなる実施形態を示しており、下部基材3上に収容物2が配置されている。上部基材4は、その内部がくり抜かれており、これがカラー部を形成するように構成されており、筐体1が閉鎖されると、カラー部4aは収容物2の周囲に配置される。このため、基材4のカラー部4aは、収容物2が配置されるキャビティ12の縁部および上面を形成する。
【0078】
図2は、接合領域の詳細断面図を示しており、レーザ接合されたインターフェースゾーン7およびレーザ接合ゾーン8を認めることができる。レーザ接合ゾーン8は、接触面25の領域に配置されている。筐体1の外側からは、環境の影響が筐体1、特にこの場合はレーザ接合スタック18の角部6に作用し得る。レーザ接合ゾーン8は、例えば基材スタック18に向かう薬液が収容キャビティ12、ひいては収容物2に侵入することも防止する。
【0079】
図3は、本発明による筐体1の上面図を示しており、周囲のレーザ接合ゾーン8が機能領域13を取り囲んでいる。機能領域13は、様々な様式で構築されていてよい。機能領域13の構成例、および筐体の他の選択肢の例については、図4a~図8bに示されている。図3では、すべての上面図が同じ様式で模式的に図示されているため、機能領域13の異なる構成を図において組み合わせて1つにまとめることができる。線A-BあるいはC->Dに沿って断面が図示されており、それらが図4a~図8bに示されている。
【0080】
機能領域は、異なるタスクを実現することができ、これは例えば、光学的受容体であってもよいし、機能領域13に配置されている技術的、電気機械的および/または電子的な部品であってもよい。これらのタスクのいくつかは、機能領域13で実現することもできる。筐体8は、上部基材5によって上から覆われている。レーザ接合ゾーン8は、この上部基材5に入り込んでいる。
【0081】
図4aを参照すると、筐体1の第1の実施形態の第1の断面図が示されており、この筐体1は、ベース基材3およびカバー基材5を有する。すなわち、筐体は、ベース層3とカバー層5との2層で構築または構成されている。図4aはさらに、連続した複数のレーザパルスヒット領域16から構成されるレーザ接合線8の構造を示しており、これらのレーザパルスヒット領域16は、ベース基材3の材料とカバー基材5の材料とが互いに隙間なく融合するように互いに近接して配置されている。
【0082】
図4bは、図3に挿入された線C->Dに沿った筐体1の一実施形態の断面図を示す。カバー基材5は、その上面あるいは外側に第1の強化層47を備え、この第1の強化層47は、カバー基材5の材料中に厚さDoLにわたって入り込んで延在している。つまり、カバー基材5、ひいては筐体1は、上面が強化されているか、あるいはそこに強化ゾーン47を備えているため、筐体1は、ある領域で、すなわち片面が強化されている。
【0083】
図4bはさらに、例えば連続した空所またはキャビティとして筐体1内に延在している機能領域13,13aの断面を示している。言い換えれば、キャビティは、ベース基材3からカバー基材5に延在しており、例えば、ベース基材3および/またはカバー基材5の凹部の形態で存在する。また例えば、機能領域13aが活性層、例えば導電層をも含み、機能領域13がキャビティを含むことも可能である。機能領域13,13aの周囲にはレーザ接合ゾーン8が配置されており、これによって、機能領域13,13aは側方で全周にわたって封止されている。機能領域13,13aが全面的に封止されないように、レーザ接合ゾーン8内に開放領域を残しておくことが考えられ、例えば、環境との流体連通を確立できるような連通チャネルを開放しておくことができる。つまり、予め計画した場所あるいは位置を集束レーザビーム9で封止するのではなく、そこに接着剤などの他の手段で気密封止を設定することが設計されていてよい。機能領域13,13aが、全面的に隙間なく封止されていることが好ましい。
【0084】
図5aを参照すると、さらなる実施形態が示されており、本実施形態では、レーザパルスヒット16によって接触面25に沿ってレーザ接合ゾーン8が形成され、その際にカバー基材5がベース基材3に溶接あるいは接合されている。本実施形態は、第1の基材3および第2の基材5の表面が全周にわたって強化されている、すなわち強化層47,48および49を備えているというさらなる特徴を有する。
【0085】
例えば、カバー基材5をベース基材3と結合させる前に、またはベース基材3と結合させた後にも、カバー基材5の上面を強化浴に浸すことができ、それによって、完成した筐体1は化学強化され、すなわち、少なくとも1つの強化面47を備え、かつ/または少なくとも1つの強化層を備えている。言い換えれば、完成した筐体1は、少なくともある領域であるいは少なくとも部分的に強化されており、例えば、特に化学強化されている。化学強化の際、カバー基材5上に圧縮応力が形成される。第1の強化層47は、高さDoLを有する。接合ゾーン8は、高さHLを有する。強化ゾーン47と接合ゾーン8との間には、最小材料厚MMが残っている。カバー基材5の総厚は、HL+MM+DoLから構成されることができる。
【0086】
機能領域13,13aは、強化層47,48,49内に延在しており、強化層48は、機能領域13,13aの周囲の環状領域に配置されている。よって、図5a,図5bに示す実施形態では、カバー基材5、およびさらにベース基材3も、それらの2つの長辺が強化されており、特に強化液中で化学強化されている。すなわち、基材3,5の各長辺、つまり、例えば各上面および下面を個々に化学強化用の強化液に浸して、長辺を強化させた。
【0087】
図5aに示す実施形態では、筐体1は、すべての外面で強化されており、すなわち、対向する2つの長辺が強化層47および49を備えているとともに、筐体の周囲の端部14が強化層48を備え、周囲の端部14が筐体1の周囲に延在している。つまり、直方体状の筐体の場合、直方体が有する4つの短辺がすべて組み合わされて、端部14が形成されている。また、端部14は、キャビティ12の周囲に延在する筐体の縁部21と解釈あるいは称することもできる。図5aに示すような筐体1は、例えば、カバー基材5とベース基材3とを備えた完成した接合筐体を強化液に浸漬し、そこで特に化学強化させることで得ることができる。強化層47,48,49は、このように筐体1の外側に直に配置されている。したがって、強化層47,48,49の内側には接合線8のための領域が残っており、この接合線8は、適宜、強化層47,48,49から距離を置いて導入される。
【0088】
図5bは、筐体1の一実施形態を示しており、線C->Dに沿った断面が示されている。また、機能領域13,13aは、本実施形態においても、ベース基材3からカバー基材5へと入り込んで、例えば各基材の凹部として延在するように配置されている。このような凹部13,13aは、特にサンドブラストプロセスによって(図7図14参照)導入することができる。これらの凹部13,13aの周囲に接合線8が配置されているため、凹部13,13aは、全面的に気密封止されている。
【0089】
筐体1は、図5aの実施形態と同様に、全面的に化学強化されており、言い換えれば、すべての表面に強化領域47,48,49を備えている。例えば、カバー基材5の上面であってもよい第1の長辺には、第1の強化層47が配置され、ベース基材3の下面であってもよい第2の長辺には、第3の強化層49が配置され、周縁部21あるいは周囲の端部14には、第2の強化層48が配置されている。キャビティの上面23は、第1の強化層47の内側に配置され、キャビティの縁部21は、第2の強化層48の内側に配置され、キャビティの下面22は、第3の強化層49の内側に配置されている。このようにして、キャビティあるいは機能領域13,13aは、全面的に強化材47,48,49によって囲まれている。
【0090】
図6は、切断線C->Dに沿った筐体1のさらなる実施形態を示しており、本例では、機能領域13あるいはキャビティ12が、カバー基材5内に配置されている。例えば、本例では、カバー基材5のみがサンドブラストプロセスでくり抜かれていてよいのに対して、ベース基材3はそれ以上処理する必要がない。そのため、加工が必要な筐体の部品が少なく、製造が簡素化できる。
【0091】
図6の本例では、カバー基材5は、その長辺に強化層47を備えており、その端部14に強化層28を備えている。例えば、カバー基材5は、個別にまたはベース基材3との接合後に、カバー基材5の上面を化学強化用の強化液に浸し、第2の強化層48の高さに達するレベルまで浸漬させてある。本例では、ベース基材3は、強化ゾーンを備えていない。本例では、側方の強化ゾーン48は、カバー基材5とベース基材3との間の接触面25の領域で直ちに終わっている。接合線8に沿った接合部を、強化ゾーン48の内側、すなわち緩和された材料に導入した。つまり、筐体1の第1の長辺は、強化層47を備え、第1の短辺14は、ある領域で強化層48を備えている。強化層48は、筐体1の周囲に、例えば機能領域13の周囲で延在することができる。図3と比較すると、そこに引かれた線C->Dの、つまり機能領域13を通る断面が示されている。本実施形態では、機能領域13は、カバー基材5の寸法に制限されており、すなわち、ベース基材3には入り込んでいない。ベース基材3は、カバー基材5に直にかつ即座に接合されているため、ベース基材3とカバー基材5との間には、さらなる層あるいはさらなる基材は配置されていない。機能領域13は、キャビティとして設計されている。キャビティは、例えば、サンドブラストプロセス、一般的にはアブレーションプロセスによって、カバー基材5に導入することができ、また、化学エッチングにより基材にキャビティを導入することも可能である。
【0092】
図7を参照すると、本発明による筐体の製造方法の第1の実施形態が示されている。ステップAでは、基材3,4,5と、収容すべき収容物2との位置合わせを行う。その際、上部基材5を中間基材4の上に載置し、これを今度は下部基材3の上に載置することで、基材スタック18が形成される。キャビティ12が形成された凹部を含む中間基材4が中央に配置されているため、基材スタック18において、収容キャビティ12は全面的に基材材料で囲まれている。すなわち、ステップAで基材3,4,5を位置合わせすると、キャビティ12の縁部21、下面22および上面23により全面的な囲みが形成される。任意に、オプティカルコンタクトによって基材を互いに少なくとも一時的に、すなわち例えば位置を固定するために、結合させることができる。
【0093】
図7に示す方法のステップBは、重なり合うように配置された基材スタック18を示しており、これは、収容物2を収納するためのキャビティ12をその中に有する。任意に、基材スタック18は、オプティカルコンタクトにより接合されており、その際、例えば、表面に水が使用され、水素結合が生成される。この基材スタック18は、その閉鎖された形態で接合プロセスに供給することができ、接合プロセスでは、基材層3,4,5を接合して強固に接合された基材スタック18が形成されるため、この基材スタック18から筐体1を得ることができる。基材3,4,5は、例えばウェハスライスであってよく、ウェハが一体となってウェハスタック18として収容キャビティ12を囲んで筐体1が形成されることにより筐体が形成される。
【0094】
ステップCは、各収容キャビティ12のレーザ接合、すなわち接触面25に沿ったキャビティ12の全面的な封止を示している。この目的のために、レーザユニット15が基材スタック18の上方から基材スタック18の表面を通るように操作され、その際、集束レーザビーム9が、接合すべきゾーン上にスポット形状で向けられる。レーザ接合線は、例えば交差する線のラスターとして実施することができる。また、2本以上のレーザ接合線を平行に引くことも、これが例えば後の個別化対象材料に応じて有利であることが判明している場合には可能である。製造方法のステップCが完了すると、すべてのキャビティ12が気密封止された状態となる。
【0095】
遅くともステップCの後、または必要であればそれ以前に、粒子線28が後に衝突する基材5の表面を保護剤32で処理することができる。例えば、材料を除去すべきでない箇所には、保護ラッカー32のラッカー施与が基材5に施される。本例では、粒子線プロセスによってキャビティ12の分離あるいは個別化のみが達成されるため、表面の大部分に保護ラッカー32が施される。好ましくは、保護剤32による表面の処理に続いて、リソグラフィーのステップを行うことができる。
【0096】
ステップDは、基材スタック18を分離あるいは切断して筐体1を個別化するステップを示している。切断は、粒子線発生装置27から供給される粒子線28によって行われる。例えば、粒子線28は、分離あるいは切断線10に沿って案内され、基材に対する粒子線28のアブレーション作用によって基材スタックを切断あるいは分離することができる。粒子線28が、筐体1の表面に向けられる広く広がる圧縮空気ジェットとして提供されると有利であることが判明している。例えば、照射される筐体1の表面のウェブなどの領域にラッカー、例えばリソグラフィラッカーを施与することによって、残留領域、すなわち粒子線28によって除去されないか、または著しく少ない程度に除去される領域が画定される。粒子線28は、SiC粒子を含むことができる。リソグラフィラッカーは、例えば、17μmの層厚、すなわち特に5~25μmの厚さで施与することができ、例えば、キャビティあるいは機能領域13がどの程度深くくり抜かれるかに依存する。
【0097】
最後に、ステップEは、中に収容キャビティ12が配置された、個別化された気密封止筐体1を示す。
【0098】
図8を参照すると、本発明による筐体1の製造方法のさらなる実施形態が示されている。提供される基材4は、粒子線28に曝される表面上に、例えばスピンコーティングにより保護剤32が既に施されており、リソグラフィーステップに供されている。次にステップAにおいて、粒子線28および粒子線発生装置27により基材4にキャビティを形成することができる。粒子線28は、キャビティが基材4から取り除かれ、その際に粒子線の粒子が基材4の小粒子をアブレーションにより除去するように基材4上で操作される。基材4への粒子線28の作用時間が長くなると、粒子線の進入深さあるいはアブレーション深さが大きくなる。粒子線28が細い場合、これはキャビティ12を作成すべき領域に向けられる。また、粒子線28の噴射領域によってキャビティ12のサイズを調整し、粒子線28の各キャビティ12への作用時間によって各キャビティ12の深さを調整することも可能である。好ましくは、大面積粒子線28が使用され、アブレーションプロセスによって各機能領域12,13,13aの寸法が露出するように、保護剤32が基材4に施与される。
【0099】
つまり、ここで提示される方法を用いることで、形状や幾何学的な寸法だけでなく、その深さの点でも自由に設計できるキャビティ12を製造することができる。例えば、キャビティは、粒子線28をキャビティの中央領域に短時間だけ向けることによって、その上面に突起を有することもでき、またラッカーを施与する場合には、粒子線28がより長い時間向けられるか、あるいは保護ラッカーが施与されていないキャビティ12の隣接領域よりも多くの材料がそこに残るようにそこである領域をラッカーで保護することが可能である。形状に関しては、キャビティ12は要求に適合させることができるため、一般的な正方形のほか、円形、楕円形、多角形および他の任意のあらゆる形状のキャビティを設定することが可能である。また、前述の形状は、他の実施形態に関して既に説明したように、ラッカーが施与された領域が粒子線28によって除去されずに残留領域を形成するように、ラッカーを有利に施与することによっても達成することが可能である。
【0100】
ステップBでは、2つの基材3および4を互いに位置合わせし、その際、下部基材3には、基材4に存在するキャビティ12内に配置すべき収容物2が既に配置されている。
【0101】
ステップCは、重なり合うように配置された基材スタック18を示しており、その際、収容物2は、基材材料で全面的に囲まれるようにキャビティ12内に整列して凹んだ状態にある。
【0102】
方法のステップDは、それぞれの個々のキャビティ12の気密封止を示しており、レーザビーム発生装置15からのレーザビーム9が界面25に沿って各キャビティ12の周囲で操作される、レーザ接合プロセスが適用される。すなわち、各キャビティ12の周囲では、レーザ9を用いて、本発明による接合プロセスにより基材材料が互いに接合される。ステップDに続いて保護剤32の再施与を行うことで、基材材料をまったくまたはわずかにしか除去すべきでない基材領域を保護することができる。
【0103】
ステップEは、ウェハ18あるいは筐体1の分離を示し、その際、例えば、ステップDで収容キャビティ12のレーザ接合にも用いたレーザ9を用いて基材を切断してもよいし、粒子線28を用いて筐体1を個別化してもよい。
【0104】
ステップFは、中に収容キャビティ12が配置された、個別化された気密封止筐体1を示す。
【0105】
図9は、気密封止筐体1の断面を示す。下部基材3がキャビティ12の下面22を形成し、中間基材4がキャビティ12の縁部21を形成し、上部基材5がキャビティ12の上面23を形成している。すなわち、下部基材3、中間基材4および上部基材5が基材スタック18として一体として収容キャビティ12を囲んでいる。キャビティ12内には収容物2が配置されている。本例では、3つの基材3,4,5はすべてガラス基材であり、すなわち光学的に透明である。中間基材4は、特にフレキシニティ(Flexiniti)ウェハであってもよい。3つの基材3,4,5は、マイクロボンディングにより互いに接合されている。基材スタック18の典型的な厚さは1~3mmであり、典型的な基材フォーマットは、例えば1インチ~12インチの典型的なウェハフォーマットを想定することができる。
【0106】
キャビティ12の下面21には、いわゆるビア(TGV)が配置されていてよく、すなわち、例えば収容物2を電気的に接触させるための気密導電性接続部が配置されていてよい。これは、例えばタングステンまたは白金製の垂直針を含むことができるウェハ(いわゆるHERMESウェハ)であってもよいし、例えばレーザで孔が開けられ、これらの孔に例えばスクリーン印刷またはステンシル印刷プロセスにより金属が充填されたガラス基材であってもよい。記載された基材の左側には、第2の基材が接続されている。
【0107】
粒子線28により、2つの基材間の分離領域を切り出した。分離領域35における粒子線28による分離切断の際、基材スタック18の外面にフランク37が形成される。
【0108】
図10を参照すると、さらなる実施形態が断面図で示されており、下部基材3がレーザ接合プロセスにより上部基材4に接合されている。キャビティ12内には2つの収容物2が配置されており、キャビティ12は、粒子線28によって上部基材4からアブレーション作用によりくり抜かれたものである。粒子線28による上部基材4からのキャビティのくり抜きを伴うこの方法によって、筐体のその後の使用目的、すなわち例えばマイクロセンサまたはバイオインプラントの部材をさらに低減することができる。本例では2つの基材層のみで済むが、このアブレーションプロセスを用いない場合には、通常は少なくとも3つの基材層が必要であった。
【0109】
また、端部も粒子線プロセスにより切断されるため、本発明によるフランク37は、筐体1の側面を形成する。
【0110】
図11は、粒子線28によるサンドブラストプロセスの結果としてのフランク37のフランク角αを例示的に示す。実験的には、典型的なフランク角αは、基材表面の法線に対して20°であることが判明しており、この角度は、特に法線から基材表面に10~45°傾斜するように調整することができる。
【0111】
キャビティ12は、適当な溶媒を用いてウェハ4,5などの基材にエッチングすることもできるが、粒子線28を用いた粒子線プロセスの方が、ビームパラメータによってキャビティの形状および深さの双方を調整できるため、キャビティ12の制御性および形状分布が良好であることが判明した。
【0112】
総括すると、本発明は、今や、使用する材料がさらに少なくて済み、すなわち、特に基材層1つ分あるいはウェハ1つ分少なくて済み、この場合に例えば接着剤などの補助材料も省くことができるという点で、筐体の既知の製造方法の大幅な改良を示すものである。これに代えてまたはこれに加えて、本発明は、より良好な材料適合性、すなわち特に生体適合性を提供し得る筐体1の外縁部におけるフランク角の生成を示すものである。また、フランク37を設けた端部は損傷が発生しにくいため、機械的影響に対する耐久性や堅牢性が同様に向上している。それに対して、シャープな端部は、取扱いや使用に際して損傷し易くなる。また、粒子線28を使用して個々の筐体1を個別化することにより、例えば円形、楕円形、多角形といった任意の輪郭あるいは形状の筐体1を作製することもできる。このことは、既知の計量法、一般に分離研磨法と比較して、さらなる利点となる。
【0113】
図12aは、粒子線28によってキャビティ12が導入された上部基材4の例示的な設計を示す。個々のキャビティは形状やサイズに関して異なり、本例では円形および楕円形の形状を選択した。図示の例のウェハ4は、例示的な全体の直径が100であり、ウェハ上の図示の角部には、接合および/または分離ステップでウェハを保持する保持用受け点が設けられている。
【0114】
図12bは、図12aから数字1で示す位置に導入された例示的なキャビティを示す図である。キャビティは、例示的な6の内径を有する。図12cを参照すると、さらなる例示的なキャビティ12が示されており、これは、図12aでは数字2で示される位置に配置されている。
【0115】
図13aを参照すると、ウェハの所定の位置に収容物2を受け入れるために、例えば分離線が付された下部基材3が示されている。分離線は、有利には、レーザ接合ステップにも使用することができる。図13bを参照すると、図13aで数字1が付された位置に配置されているキャビティが示されている。
【0116】
図13cを参照すると、数字2で示されたキャビティ12が示されている。
【0117】
図14を参照すると、本発明によるフランク37が形成されるように、キャビティ12が粒子線によってくり抜かれ、個別化が粒子線28によって行われた基材4を顕微鏡で撮影した図が示されている。
【0118】
図15を参照すると、キャビティ12の上面の微細な凹凸が目立つように、キャビティ12を片側から示した顕微鏡写真を示す。その上面23に示されたキャビティの表面粗さは、例えば、微細なダストによって汚染されている可能性がある。キャビティが光学的に透明になるには、表面を液体で洗浄するか濡らすだけで既に十分であることを、本発明において示すことができた。
【0119】
上述した実施形態は例示的なものとして理解されるべきであり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく様々に変更を加えてよいことは、当業者には明らかである。さらに、各特徴は、本明細書、特許請求の範囲、図面などに開示されているか否かにかかわらず、他の特徴と一緒に記載されている場合にも、個々でも本発明の本質的な構成要素を規定することも明らかである。すべての図面において、同じ参照符号は同じ対象物を表しており、場合により1つの図面のみで言及されるか、またはいずれにせよすべての図面に関連して言及されるわけではない対象物の説明を、それに関してその対象物が明細書において明示的に記載されていない図面にも転用することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 化学強化された気密封止筐体
2 収容物
3 下部基材、下部ウェハ、下部カバー
4 中間基材、中間ウェハ
5 上部基材、上部ウェハ、上部カバー
6 レーザ接合スタック18の角部
7 レーザ接合されたインターフェースゾーン
8 レーザ接合ゾーン
9 集束レーザビーム
10 分離あるいは切断線
12 収容キャビティ
13 機能領域
13a 第2の機能領域
14 端部
15 接合および/または切断用レーザユニット
16 レーザパルスヒット領域
18 スタック
21 縁部
22 キャビティの下面
23 キャビティの上面
25 接触面あるいは界面
27 粒子線発生装置
28 粒子線
30 マイクロチャネル
35 分離位置あるいは分離ゾーン
37 フランク
47 強化ゾーンあるいは第1の強化層
48 強化ゾーンあるいは第2の強化層
49 強化ゾーンあるいは第3の強化層
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図13c
図14
図15
【国際調査報告】