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特表2023-512475三環式PDE3/PDE4二重阻害剤化合物の医薬組成物
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  • 特表-三環式PDE3/PDE4二重阻害剤化合物の医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】三環式PDE3/PDE4二重阻害剤化合物の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230317BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230317BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20230317BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230317BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230317BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230317BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230317BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230317BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230317BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230317BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230317BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P43/00 111
C07D471/04 117A
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/12
A61P11/06
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543589
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2021072145
(87)【国際公開番号】W WO2021143841
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】202010042865.X
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ミャオ
(72)【発明者】
【氏名】スン,ユェンユェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ワンジン
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バオ,ポンユェ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ピン
(72)【発明者】
【氏名】フゥイ,フゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ジー,ションフォン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ユンフー
【テーマコード(参考)】
4C065
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA03
4C065BB10
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK04
4C065KK06
4C065LL01
4C065PP03
4C065PP09
4C065QQ02
4C076CC15
4C076DD01
4C076DD22
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD42
4C076DD46
4C076DD49
4C076EE23
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB10
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZC41
(57)【要約】
三環式PDE3/PDE4二重阻害剤化合物の医薬組成物及びその製造方法であって、具体的には、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物、その製造方法及びその用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤とを含む医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
金属キレート剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
緩衝剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
浸透圧調節剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
希釈剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤と、緩衝剤、浸透圧調節剤、金属キレート剤及び希釈剤の少なくとも1つとを含む請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、
又は、前記界面活性剤がエチレングリコールポリオキシエチレンエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、オクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル、グリセリンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体、獣脂アルキルアミンのエトキシ化物から1つ又は複数選ばれる、
又は、前記界面活性剤がポリソルベート系、スパン系から1つ又は複数選ばれる、
又は、前記界面活性剤がポリソルベート20、ポリソルベート80、スパン20から1つ又は複数選ばれる、
又は、前記界面活性剤の濃度が約0.01~約8mg/mLである、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記緩衝剤が硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、グリシン、ホウ酸、フタル酸から1つ又は複数選ばれる、
又は、前記緩衝剤がクエン酸、クエン酸塩、酒石酸、酒石酸塩、リン酸、リン酸塩から選ばれる、
又は、前記緩衝剤がクエン酸塩、酒石酸塩、リン酸塩から選ばれる、
又は、前記緩衝剤の濃度が約0.01~約50mg/mLである、
又は、前記緩衝剤が前記医薬組成物のpHを約3.0~約8.5に調整するために用いられる、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記浸透圧調節剤が塩化ナトリウム、塩化カリウム、グルコース、マンニトール、キシリトールから1つ又は複数選ばれる、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記金属キレート剤がエデト酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウムから1つ又は複数選ばれる、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記希釈剤が水、エタノール、グリセロールから1つ又は複数選ばれる、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項12】
式(I)の化合物と、界面活性剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤と、金属キレート剤と、希釈剤とを含み、式(I)の化合物の濃度が0.002~50mg/mLであり、界面活性剤の濃度が0.02~3mg/mLであり、緩衝剤の濃度が0.1~約25mg/mLであり、浸透圧調節剤の濃度が5~9mg/mLであり、金属キレート剤の濃度が0.01~約5mg/mLである、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
式(I)の化合物と、ポリソルベート80と、リン酸二水素ナトリウム又はその一水和物と、リン酸水素二ナトリウムと、塩化ナトリウムと、エデト酸二ナトリウムと、水とを含み、任意選択で、式(I)の化合物の濃度が0.002~50mg/mLであり、ポリソルベート80の濃度が0.02~3mg/mLであり、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの濃度が0.1~25mg/mLであり、塩化ナトリウムの濃度が5~9mg/mLであり、エデト酸二ナトリウムの濃度が0.01~約5mg/mLである、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
式(I)の化合物が式(I)の化合物の結晶であり、Cu Kα線を用いる当該結晶のX線粉末回折パターンが、5.81±0.2°、8.38±0.2°、11.16±0.2°、13.96±0.2°、14.47±0.2°、15.01±0.2°、16.76±0.2°、17.95±0.2°、20.83±0.2°、24.73±0.2°、26.13±0.2°から選ばれる2θ角度での5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個の回折ピークを含む、又は、Cu Kα線を用いるX線粉末回折パターンが、2θ角度5.81±0.2°、13.96±0.2°、15.01±0.2°、17.95±0.2°、24.73±0.2°に回折ピークを有する、又は、2θ角度5.81±0.2°、8.38±0.2°、11.16±0.2°、13.96±0.2°、14.47±0.2°、15.01±0.2°、16.76±0.2°、17.95±0.2°、20.83±0.2°、24.73±0.2°、26.13±0.2°に回折ピークを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩の粒度がX50≦10μmである、又は、前記式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩の粒度がX50≦5μm且つX90≦10μmである、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と前記界面活性剤の質量比が約1:200~100:1であり、好ましくは約1:150~50:1であり、より好ましくは約1:50~25:1であり、さらに好ましくは約1:1~15:1である(前記式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩の質量は式(I)の化合物に基づき計算される)、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が懸濁液の形態である、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
界面活性剤と、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、金属キレート剤、
緩衝剤、希釈剤及び浸透圧調節剤から選ばれる少なくとも1つとを混合することを含む請求項6に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項19】
哺乳動物におけるPDE3及び/又はPDE4関連の疾患を予防又は治療する方法であって、当該予防又は治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに治療有効量の請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含み、任意選択で、前記PDE3及び/又はPDE4関連の疾患は喘息、慢性閉塞性肺疾患から選ばれる前記方法。
【請求項20】
PDE3及び/又はPDE4関連の疾患を予防又は治療するための薬物の製造における請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用であって、任意選択で、前記PDE3及び/又はPDE4関連の疾患は喘息、慢性閉塞性肺疾患から選ばれる前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願では、2020年1月15日に中国国家知識産権局に提出された中国発明特許出願第202010042865.X号の優先権が主張され、それが全体として援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、医薬品分野に属し、三環式PDE3/PDE4二重阻害剤化合物の医薬組成物、その製造方法及び用途に関し、具体的には、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
ホスホジエステラーゼ(PDE)は11のファミリーを含むスーパーファミリー酵素群であり、各ファミリーは異なるシグナル伝達に関与し、異なる生理学的プロセスを調節する。そのうち、PDE3はヒト気道平滑筋(ASM)における主なホスホジエステラーゼで、PDE3を阻害すると細胞内cAMPの濃度が上昇し、気管支平滑筋が弛緩する。PDE4は炎症誘発性メディエーター及び抗炎症性メディエーターの発現で主な調節作用を果たし、PDE4阻害剤は炎症性細胞の有害なメディエーターの放出を阻害することができる。したがって、PDE3とPDE4の両方に阻害効果を有する阻害剤ならβ-アドレナリン受容体アゴニストの気管支拡張効果(bronchodilation)及びグルココルチコイドの吸入による抗炎症効果(anti-inflammatory action)を有する。二重標的の機能上の相互補完は理論的に単一の標的よりも大きな効果を有し、従来併用投与でしか得られない治療効果を単一の薬剤で実現し、併用投与の成分薬物の物理的及び化学的特性が完全には適合できないという欠点を解消し、投与方式が一層容易になり、一定用量での投与に有利である。
【0004】
Victoria Boswell et al,J.Pharmaco.Experi.Therap.2006,318,840-848、WO200005830には化合物RPL554、RPL565が報告され、長期的な気管支拡張及び抗炎症効果を有し、溶解度が悪く、血漿クリアランスが高いなどの物理的及び化学的特性を有するため、吸入投与に適するのに対し、PDE4に対するその阻害活性が満足できず、抗炎症効果が芳しくないことがデータから判明したため、良好なPDE3/4阻害活性を併せ持つ化合物の開発が必要である。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO200005830号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Victoria Boswell et al,J.Pharmaco.Experi.Therap.2006,318,840-848.
【発明の概要】
【0007】
本願の一態様では、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤とを含む医薬組成物が提供される。
【化2】
【0008】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は金属キレート剤(金属錯化剤ともいう)をさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は緩衝剤をさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は希釈剤をさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は浸透圧調節剤をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤と、緩衝剤とを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤とを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤と、緩衝剤と、金属キレート剤とを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤と、金属キレート剤とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤と、金属キレート剤と、希釈剤とを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、界面活性剤と、緩衝剤、浸透圧調節剤、金属キレート剤及び希釈剤の少なくとも1つとを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記薬学的に許容される塩はマレイン酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩から選ばれる。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の薬学的に許容される塩は、式(I)化合物と、薬学的に許容される塩を形成する酸イオンのモル比が(1:1)~(1:2
)であってもよく、例えば、1:1、1:2である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物で、前記「式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩」が「式(I)化合物」と置き換えられてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、界面活性剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤と、金属キレート剤と、希釈剤とを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物で、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩の濃度は式(I)化合物で計算すると約0.001~約80mg/mLであり、好ましくは0.002~50mg/mLであり、より好ましくは0.1~20mg/mLから選ばれる。
【0023】
本願の界面活性剤は薬学的に許容される界面活性剤であり、例えば、湿潤剤である。前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤であってもよい。好ましくは、前記1つ又は複数の界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記界面活性剤はエチレングリコールポリオキシエチレンエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、オクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテル、グリセリンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ソルビタンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合体(ポロキサマー)、獣脂アルキルアミンのエトキシ化物(POEA)から1つ又は複数選ばれる。
【0025】
好ましくは、前記界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート系)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、スパン系)から1つ又は複数選ばれる。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルはポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、トゥイーン20)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、トゥイーン80)から1つ又は複数選ばれる。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記ソルビタン脂肪酸エステルはソルビタンモノラウレート(スパン20)、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエートから1つ又は複数選ばれる。
【0028】
より好ましくは、前記界面活性剤はポリソルベート系、スパン系から1つ又は複数選ばれる。
【0029】
いくつかの特定の実施形態において、前記界面活性剤はポリソルベート20、ポリソルベート80、スパン20から1つ又は複数選ばれる。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記界面活性剤の濃度は約0.01~約8mg/mLである。典型的には、当該医薬組成物における界面活性剤の濃度は約0.01~5mg/mLであり、好ましくは約0.02~3mg/mLであり、より好ましくは約0.05~2
mg/mLであり、さらに好ましくは約0.1~1mg/mLである。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物で、前記式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩(式(I)化合物で計算する)と前記界面活性剤の質量比は約1:200~100:1であり、好ましくは約1:150~50:1であり、より好ましくは約1:50~25:1であり、さらに好ましくは約1:1~15:1であり、例えば、約10:1である。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記緩衝剤は薬学的に許容される緩衝剤である。当該緩衝剤は、吸入用液体医薬組成物への使用に適する任意の緩衝液であってもよい。緩衝剤は一般に硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、グリシン、ホウ酸、フタル酸から1つ又は複数選ばれる。好ましくは緩衝剤の種類が2つ又はそれ以上であり、タイプはクエン酸塩緩衝液又はリン酸塩緩衝液であり、より好ましくは両者のナトリウム塩である。クエン酸塩緩衝液はクエン酸、クエン酸ナトリウム、それらの混合物を含む。リン酸塩緩衝液はリン酸、リン酸一ナトリウム(即ちリン酸二水素ナトリウム)、リン酸水素二ナトリウム、それらの混合物を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記緩衝剤はクエン酸、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、酒石酸、酒石酸塩(例えば、酒石酸ナトリウム)、リン酸、リン酸塩(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)から選ばれる。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記緩衝剤はクエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、酒石酸塩(例えば、酒石酸ナトリウム)、リン酸塩(例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)から選ばれる。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記緩衝剤の濃度は約0.01~約50mg/mLであり、好ましくは約0.05~約40mg/mLであり、より好ましくは0.1~約25mg/mLであり、さらに好ましくは0.5~約6mg/mLである。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記緩衝剤は前記医薬組成物のpHを約3.0~約8.5、好ましくは約5~約7に調整するために用いられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記浸透圧調節剤は一般に、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの単純な非毒性塩、又は、グルコース、マンニトール、キシリトールなどの糖類から1つ又は複数選ばれる。いくつかの実施形態において、前記浸透圧調節剤は塩化ナトリウムである。
【0038】
前記浸透圧調節剤の濃度は等張性を得るのに必要な量、例えば、血漿又は肺液との等張性から決定される。浸透圧調節剤の濃度は一般に約0.01~約10mg/mLであり、より一般には約5~9mg/mLである。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記金属キレート剤はエデト酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウムなどのエデト酸塩から1つ又は複数選ばれる。好ましくはエデト酸塩(例えば、カルシウム塩、ナトリウム塩)であり、特に好ましくはエデト酸二ナトリウム(EDTA-2Na)である。
【0040】
金属キレート剤の濃度は前記医薬組成物の製造で導入できる金属イオンの量から決定され、一般に約0.01~約40mg/mLであり、好ましくは約0.01~約20mg/
mLであり、より好ましくは約0.01~約5mg/mLであり、さらに好ましくは約0.01~約2mg/mLである。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物で、希釈剤は薬学的に許容される任意の希釈剤であってもよい。当該希釈剤は吸入投与に適する。一般に、希釈剤は水、エタノール、グリセロールから1つ又は複数選ばれる。希釈剤として好ましくは水であり、希釈剤としてより好ましくは滅菌水である。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物で、希釈剤の使用量は、前記医薬組成物における式(I)化合物若しくは薬学的に許容されるその塩又は添加物の濃度が所定の範囲にあるような適量であってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、ポリソルベート系又はスパン系とを含み、さらに、前記ポリソルベート系又はスパン系はポリソルベート20、ポリソルベート80、スパン20から1つ又は複数選ばれる。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物はリン酸塩をさらに含み、さらに、前記リン酸塩はリン酸二水素ナトリウム又はその一水和物、リン酸水素二ナトリウムから選ばれてもよい。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物はクエン酸ナトリウム又は酒石酸ナトリウムをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、スパン系とポリソルベート系の混合(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、スパン20)と、水とを含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、スパン系とポリソルベート系の混合(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、スパン20)と、クエン酸ナトリウム又は酒石酸ナトリウムと、水とを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、ポリソルベート系(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20)と、リン酸二水素ナトリウム又はその一水和物と、リン酸水素二ナトリウムと、エデト酸二ナトリウムと、水とを含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、ポリソルベート系(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20)と、リン酸二水素ナトリウム又はその一水和物と、リン酸水素二ナトリウムと、塩化ナトリウムと、エデト酸二ナトリウムと、水とを含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、ポリソルベート系(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20)と、クエン酸ナトリウム又は酒石酸ナトリウムと、塩化ナトリウムと、水とを含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、スパン系とポリソルベート系の混合(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、スパン20)と、クエン酸ナトリウム又は酒石酸ナトリウムと、塩化ナトリウムと、水とを含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、界面活性剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤と、金属キレート剤と、希釈剤とを含み、式(I)化合物の濃度は0.002~50mg/mLであり、界面活性剤の濃度は0.02~3mg/mLであり、緩衝剤の濃度は0.1~約25mg/mLであり、浸透圧調節剤の濃度は5~9mg
/mLであり、金属キレート剤の濃度は0.01~約5mg/mLである。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物で、前記界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、金属キレート剤、希釈剤はそれぞれ上記で定義したとおりである。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、界面活性剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤と、金属キレート剤と、希釈剤とを含み、式(I)化合物の濃度は0.002~50mg/mLであり、界面活性剤の濃度は0.02~3mg/mLであり、緩衝剤の濃度は0.1~約25mg/mLであり、浸透圧調節剤の濃度は5~9mg/mLであり、金属キレート剤の濃度は0.01~約5mg/mLである。前記界面活性剤はポリソルベート20、ポリソルベート80、スパン20の1つ又は複数であり、前記緩衝剤はリン酸二水素ナトリウム又はその一水和物、リン酸水素二ナトリウム、酒石酸、クエン酸の1つ又は複数であり、前記浸透圧調節剤は塩化ナトリウムであり、前記金属キレート剤はエデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウムの1つ又は複数であり、前記希釈剤は水である。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、式(I)化合物と、ポリソルベート80と、リン酸二水素ナトリウム又はその一水和物と、リン酸水素二ナトリウムと、塩化ナトリウムと、エデト酸二ナトリウムと、水とを含み、式(I)化合物の濃度は0.002~50mg/mLであり、ポリソルベート80の濃度は0.02~3mg/mLであり、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムの濃度は0.1~25mg/mLであり、塩化ナトリウムの濃度は5~9mg/mLであり、エデト酸二ナトリウムの濃度は0.01~約5mg/mLである。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物は、式(I)化合物が固体形態である。いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物は式(I)化合物の結晶である。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物は、前記式(I)化合物は式(I)化合物の結晶の粒度制御をして得た生成物である。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるX線粉末回折パターンが2θ角度5.81±0.2°、13.96±0.2°、15.01±0.2°、17.95±0.2°、24.73±0.2°に回折ピークを有する。
【0058】
本願のいくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるX線粉末回折パターンが2θ角度5.81±0.2°、8.38±0.2°、11.16±0.2°、13.96±0.2°、14.47±0.2°、15.01±0.2°、17.95±0.2°、24.73±0.2°、26.13±0.2°に回折ピークを有する。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるX線粉末回折パターンが2θ角度5.81±0.2°、8.38±0.2°、11.16±0.2°、13.96±0.2°、14.47±0.2°、15.01±0.2°、16.76±0.2°、17.95±0.2°、20.83±0.2°、24.73±0.2°、26.13±0.2°に回折ピークを有する。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるX線粉末回折パターンが2θ角度5.81±0.2°、8.38±0.2°、9.13±0
.2°、11.16±0.2°、11.60±0.2°、12.82±0.2°、13.96±0.2°、14.47±0.2°、15.01±0.2°、16.76±0.2°、17.95±0.2°、18.91±0.2°、20.83±0.2°、24.36±0.2°、24.73±0.2°、25.78±0.2°、26.13±0.2°に回折ピークを有する。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるX線粉末回折パターンが、5.81±0.2°、8.38±0.2°、9.13±0.2°、11.16±0.2°、11.60±0.2°、12.82±0.2°、13.96±0.2°、14.47±0.2°、15.01±0.2°、16.76±0.2°、17.95±0.2°、18.91±0.2°、20.83±0.2°、24.36±0.2°、24.73±0.2°、25.78±0.2°、26.13±0.2°から選ばれる2θ角度での5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個又はそれ以上の回折ピークを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるX線粉末回折パターンが、5.81±0.2°、8.38±0.2°、11.16±0.2°、13.96±0.2°、14.47±0.2°、15.01±0.2°、16.76±0.2°、17.95±0.2°、20.83±0.2°、24.73±0.2°、26.13±0.2°から選ばれる2θ角度での5個、6個、7個、8個、9個、10個又は11個の回折ピークを含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるX線粉末回折パターンが、5.81±0.2°、8.38±0.2°、11.16±0.2°、13.96±0.2°、14.47±0.2°、15.01±0.2°、17.95±0.2°、24.73±0.2°、26.13±0.2°から選ばれる2θ角度での5個、6個、7個、8個又は9個の回折ピークを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるXRPDパターンにおける回折ピークのピーク位置及び相対強度が次の表1に示すとおりである。
【表1】
【0065】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、Cu Kα線を用いるXRPDパターンが図1に示すとおりである。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、示差走査熱量測定曲線が247.70℃±2℃で発熱ピークを有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、示差走査熱量測定曲線が図2に示すとおりである。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶の熱重量分析曲線は155.75±2℃で重量損失が0.4870%であり、155.75±2℃~262.18±2℃で重量損失が7.287%である。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記式(I)化合物の結晶は、熱重量分析曲線が図3に示すとおりである。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物で、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩の粒度はX50≦10μmであり、好ましくは0.1~8μmである。
【0071】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物で、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩の粒度はX50≦5μm且つX90≦10μmである。
【0072】
本願の前記医薬組成物は経口又は吸入でヒトに投与するのに適するように形成されるさまざまな形態の製剤であってもよく、例えば、溶液などである。
【0073】
いくつかの実施形態において、本願の医薬組成物は吸入で投与される。
【0074】
いくつかの実施形態において、本願の医薬組成物は口腔又は鼻腔吸入で投与される。
【0075】
いくつかの実施形態において、本願の医薬組成物は吸入用溶液である。
【0076】
いくつかの実施形態において、本願の医薬組成物は懸濁液の形態である。
【0077】
いくつかの実施形態において、本願の医薬組成物は吸入用懸濁液の形態である。
【0078】
本願の別の態様では、界面活性剤と式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩を混合するプロセスを含む前記医薬組成物の製造方法が提供される。好ましくは、前記製造方法は界面活性剤と、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、金属キレート剤、緩衝剤、希釈剤及び浸透圧調節剤から選ばれる少なくとも1つとを混合することを含む。より好ましくは、本願では、湿潤剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤と、金属キレート剤と、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩と、希釈剤とを混合する工程を含む前記医薬組成物の製造方法が提供される。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物の製造方法は、
1)湿潤剤と、緩衝剤と、浸透圧調節剤と、金属キレート剤と、希釈剤とを混合して溶液を生成する工程と、
2)式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩とステップ1)の溶液とを混合する工程を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記製造プロセスは、ステップ2)の生成物を均質化するステップ3)をさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記均質化工程後に、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩の粒度はX50≦5μm且つX90≦10μmである。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記製造プロセスは充填ステップをさらに含む。
【0083】
本願の別の態様では、さらに、予防又は治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに治療有効量の前記医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物におけるPDE3及び/又はPDE4関連の疾患を予防又は治療する方法が提供される。
【0084】
本願の別の態様では、さらに、PDE3及び/又はPDE4関連の疾患を予防又は治療するための薬物の製造における前記医薬組成物の使用が提供される。
【0085】
本願の別の態様では、さらに、前記医薬組成物のPDE3及び/又はPDE4関連の疾患を予防又は治療するための用途が提供される。
【0086】
本願の別の態様では、さらに、PDE3及び/又はPDE4関連の疾患を予防又は治療するための前記医薬組成物が提供される。
【0087】
本願のいくつかの実施形態において、前記PDE3及び/又はPDE4関連の疾患は喘
息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)から選ばれる。
【発明の効果】
【0088】
本願の式(I)化合物及びその医薬組成物はPDE3及びPDE4に明らかな二重の阻害効果を有し、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)中のTNF-αにも明らかな阻害効果を有する。リポ多糖(lipopolysaccharide、略称LPS)誘発ラット急性肺損傷モデルにおいて優れた抗炎症効果を示している。インビボ血漿クリアランスが高く、経口投与では血漿中曝露量及び生物学的利用能が低く、局所経路投与では安全性が高い。ヒト肝ミクロソーム由来シトクロムP450の5つのアイソエンザイム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4)に対する阻害効果が低く、薬物相互作用のリスクはない。BALFの白血球総数を減らすなど、明らかな抗炎症効果があり、最小有効量が低い。気道抵抗指標Penhを低減できる。
【0089】
本願の式(I)化合物の結晶及び薬学的に許容されるその塩の結晶は薬物活性、薬物動態、生物学的利用能、吸湿性、融点、安定性、溶解性、純度、製造しやすさなどにおいて利点を有するため、薬物の製造、保管、輸送及び製剤などに関する要件が満たされる。式(I)化合物の結晶形は吸湿性が弱いため、吸入した薬物の吸収に有利である。
【0090】
本願の式(I)化合物の医薬組成物は、良好な安定性を有し、不純物は増えず、薬学的に許容される程度である。良好な分散性を有し、また、粒子の明らかな沈降がなく、粒度が増加せず、吸入製品の効果的な送達に必要な範囲内にあるなど、薬物動態が安定している。また、当該組成物は粒子サイズが均一でほどよく、吸収速度が早い。優れた送達速度と正確な用量を有し、吸入可能なエアロゾル粒子の割合が高く、微粒子形態での用量が高い。
【0091】
「用語の説明」
本願で指定のない限り、明細書全体と添付した特許請求の範囲において、用語「含む(comprise)」、類似の用語及び英語の同等な表現、例えば、「comprises」「comprising」又は同等なものは、「…を含むが、それらに限定されない」と開放的で包括的な意味で理解され、列挙されている要素、成分又はステップの他に、明記していない要素、成分又はステップを含んでもよいことを意味する。
【0092】
明細書全体を通して使用される「一実施形態」「実施形態」「別の実施形態において」又は「いくつかの実施形態において」とは、少なくとも1つの実施形態が当該実施形態に記載の関連する特定の参照要素、構造又は特徴を含むことを意味する。したがって、明細書全体の異なる箇所で出現する表現「一実施形態において」「実施形態において」「別の実施形態において」又は「いくつかの実施形態において」は必ずしも同じ実施形態を対象とするとは限らない。また、特定の要素、構造又は特徴を任意の適切な方式で1つ又は複数の実施形態において組み合わせることができる。
【0093】
なお、本願の明細書と添付した特許請求の範囲で使用される単数形の限定語「一」(英語の「a」「an」「the」に対応する)は、明確な規定がない限り、複数の対象の場合を含む。言い換えれば、本明細書において、単数形の用語は用語の複数形を含み、逆の場合も同様である。したがって、例えば、「触媒」を含む反応とは、1つの触媒、又は2つ若しくはそれ以上の触媒を含むものである。なお、用語「又は」は、明確な規定がない限り、一般に「及び/又は」の意味を含んで使用される。
【0094】
用語「治療」とは、疾患又は前記疾患に関連する1つ又は複数の症状を改善又は解消するために、本願に記載の化合物又は製剤を投与することを意味し、且つ以下の事項を含む。
(i)疾患又は疾患の状態を阻害し、即ちその進行を抑えること、
(ii)疾患又は疾患の状態を緩和し、即ち当該疾患又は疾患の状態を解消させること。
【0095】
用語「予防」とは、疾患又は前記疾患に関連する1つ又は複数の症状を予防するために、本願に記載の化合物又は製剤を投与することを意味し、哺乳動物における疾患又は疾患の状態の出現を予防すること、特に当該疾患の状態になりやすい哺乳動物が、当該疾患の状態と診断されていない時の予防を含む。
【0096】
用語「治療有効量」とは、(i)特定の疾患、症状若しくは障害を治療又は予防すること、(ii)特定の疾患、症状又は障害の1つ若しくは複数の症状を軽減、改善若しくは解消すること、又は(iii)本明細書に記載の特定の疾患、症状若しくは障害の1つ若しくは複数の症状の発生を予防若しくは遅延させる、本願の化合物の用量を指す。本願の化合物に係る「治療有効量」は、当該化合物、疾患の状態とその重症度、投与方式及び被治療哺乳動物の年齢によって変わるものであるが、当業者がその知識と本開示の内容に基づいて決定することができる。
【0097】
一般に、粒子の粒度は、レーザー回折により特徴的な等価な球の直径(球相当直径という)を測定することにより定量化され、例えば、レーザー粒度測定計で測定する。
【0098】
本願では球相当直径(VD)で粒度分布(particle size distribution)を表す。
【0099】
用語「X10」とは、積算分布のパーセントが10%になっている時の対応の粒径を指し、物理的には粒径がそれ未満の粒子が総体積の10%を占めることを意味する。
【0100】
用語「X50」とは、体積累積中位径(volum median diameter)と呼ばれ、積算分布のパーセントが50%になっている時の対応の粒径を指す。物理的には粒径がそれ未満の粒子が総体積の50%を占めることを意味する。
【0101】
用語「X90」とは、積算分布のパーセントが90%になっている時の対応の粒径を指し、物理的には粒径がそれ未満の粒子が総体積の90%を占めることを意味する。
【0102】
本明細書において、特に説明のない限り、各パラメータの値(2θ角度、反応条件を含む)はいずれも、測定などによる値の誤差を含むように、用語「約」で修飾されたものと見なされ、例えば、記載された値に対し、±5%の誤差がある。
【0103】
本明細書では説明と開示のために、特許、特許出願又は既存の刊行物が援用により全体として組み込まれる。これらの刊行物は本願の出願日前に発表されているため提供できる。これらの書類の開示日に関する声明又はその内容の記載は出願人が知り得た情報に基づくもので、これらの書類の開示日又はその内容が正しいと承諾するものではない。しかも全ての対象国において、本明細書へのこれらの刊行物の援用で、当該刊行物が本分野の周知の常識になると認めるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1図1は式(I)化合物の結晶のXRPDパターンである。
図2図2は式(I)化合物の結晶のDSC曲線である。
図3図3は式(I)化合物の結晶のTGA曲線である。
図4図4は式(I)化合物の結晶のDVS曲線である。
図5図5はBALF中の白血球総数である。
図6図6はメタコリン(Mch)誘発下の肺機能測定(気道抵抗指標Penh)である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下の特定の実施例は、当業者が本願を明瞭に理解して実施できるよう提供される。本願の範囲に対する限定ではなく、本願の例示的な説明と典型的な例と見なされるべきである。
【実施例
【0106】
中間体BB-1の合成
【化3】

【化4】
【0107】
ステップ1:化合物BB-1-2の合成
窒素雰囲気下で、化合物BB-1-1(21.10g)とシアノ酢酸エチル(11.00g、10.38mL)の混合物を100℃下で16時間攪拌した。反応終了後、混合物を70℃に冷却して、ゆっくりとエタノール(30mL)を滴加すると、大量の固形物が析出した。濾過し、ケーキを減圧下で乾燥して生成物BB-1-2を得た。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=8.26(t,J=5.2Hz,1H),6.86(d,J=8.0Hz,1H),6.79(br s,1H),6.71(d,8.0Hz,1H),4.00(q,J=6.8Hz,2H),3.72(s,3H),3.59(s,2H),3.31~3.23(m,2H),2.64(t,J=7.2Hz,2H),1.32(t,J=6.8Hz,3H)。
MS-ESI m/z:263.1[M+H]
【0108】
ステップ2:化合物BB-1-3の合成
窒素雰囲気下で、三塩化ホスホリル(379.50g、230.00mL)を85℃に上げ、数回に分けて化合物BB-1-2(26.00g)を加えた。反応混合物を85℃下で攪拌しながら2時間反応させた。反応終了後、減圧下蒸留で三塩化ホスホリルの大半を除去した。残留物にジクロロメタン(200mL)を加え、水(100mL×2)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過して乾燥剤を除去し、減圧下で
濃縮した。粗生成物を得て酢酸エチル(20mL)でパルプ化し精製して、化合物BB-1-3を得た。
H NMR(400MHz,CDOD)δ=7.16(s,1H),6.83(s,1H),4.62(s,1H),4.12(q,J=6.8Hz,2H),3.86(s,3H),3.35(d,J=6.4Hz,2H),2.84(t,J=6.4Hz,2H),1.44(t,J=6.8Hz,3H)。
MS-ESI m/z:245.1[M+H]
【0109】
ステップ3:化合物BB-1-4の合成
0℃下で、98%濃硫酸(12.88g、128.69mmol、7.00mL)に数回に分けて化合物BB-1-3(1.00g)を加えた。反応混合物を27℃下で3時間攪拌した。反応終了後、混合物を冷水(15mL)に加え、その後、水酸化ナトリウム水溶液(4mol/L、32mL)を滴加してpHを中性に調整し、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して乾燥剤を除去し、減圧下で濃縮して、化合物BB-1-4を得た。
MS-ESI m/z:263.1[M+H]
【0110】
ステップ4:化合物BB-1-5の合成
0℃下で、ナトリウム(2.42g)を数回に分けてエタノール(80mL)に加えた。混合物を28℃下で30分間攪拌した後、溶液に数回に分けて化合物BB-1-4(6.90g)を加え、80℃下で30分間攪拌した。続いて、一度に炭酸ジエチル(9.32g、9.51mL)を加え、当該混合物を引き続き80℃下で5時間攪拌した。反応終了後、混合物を室温に冷却し、ゆっくりと氷水(30mL)を加え、その後、希塩酸(2mol/L、53mL)でpHを中性に調整して大量の固形物が析出し、濾過し、ケーキを得てエタノール(10mL)でパルプ化し精製して化合物BB-1-5を得た。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=11.22(br s,1H),7.35(s,1H),6.95(s,1H),6.22(s,1H),4.09(q,J=6.8Hz,2H),3.90(br s,2H),3.83(s,3H),2.89(br s,2H),1.35(t,J=6.8Hz,3H)。
MS-ESI m/z:289.1[M+H]
【0111】
ステップ5:化合物BB-1-6の合成
室温下で化合物BB-1-5(5.00g)を三塩化ホスホリル(30mL)に溶解した。窒素雰囲気下で、反応混合物を100℃下で16時間攪拌した。反応終了後、減圧下蒸留で溶媒の大半を除去した。水(100mL)を加え、ジクロロメタン(150mL×2)で抽出した。有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して乾燥剤を除去し、減圧下で濃縮して、化合物BB-1-6を得た。
MS-ESI m/z:306.9[M+H]
【0112】
ステップ6:化合物BB-1の合成
室温下で化合物BB-1-6(925.67mg)をイソプロパノール(8mL)に溶解し、2,4,6-トリメチルアニリン(2.10g)を加えた。窒素雰囲気下で、反応混合物を90℃下で15時間攪拌した。反応終了後、混合物を室温に下げて、減圧下で濃縮し、残留物を得てエタノール(6mL)でパルプ化し精製して化合物BB-1を得た。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=8.85(br s,1H),7.27(s,1H),6.97(s,1H),6.90(s,2H),6.45(s,1H),4.10(q,J=6.8Hz,2H),3.90(t,J=6.0Hz,2H),3.86(s,3H),2.87(t,J=6.0Hz,2H),2.45(s,3H),2.11(s,6H),1.37(t,J=6.8Hz,3H)。
MS-ESI m/z:406.2[M+H]
【0113】
化合物BB-4の合成
【化5】

【化6】
【0114】
ステップ1:化合物BB-4-1の合成
室温下で化合物BB-1(1.00g)を2-ブタノン(35mL)に溶解し、2-(2-ブロモエチル)イソインドリン-1,3-ジオン(3.76g)、炭酸カリウム(3.07g)、ヨウ化ナトリウム(2.22g)をこの順に加えた。窒素雰囲気下で、反応混合物を85℃下で72時間攪拌した。反応終了後、混合物を濃縮して有機溶媒の大半を除去し、水(30mL)を加えて、酢酸エチル(25mL×3)で抽出した。有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して乾燥剤を除去し、減圧下で濃縮し、残留物を得てフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤は石油エーテル:酢酸エチル=15:1~3:1)で精製して化合物BB-4-1を得た。
MS-ESI m/z:579.3[M+H]
【0115】
ステップ2:化合物BB-4の合成
室温下で化合物BB-4-1(500.00mg)をクロロホルム(3mL)とエタノール(3mL)に溶解し、抱水ヒドラジン(152.67mg、純度85%)を加えた。窒素雰囲気下で、混合物を28℃下で16時間攪拌した。反応終了後、混合物を濃縮して有機溶媒の大半を除去し、水(15mL)を加えて、ジクロロメタン(15mL×3)で抽出した。有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して乾燥剤を除去し、減圧下で濃縮して化合物BB-4を得た。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=6.95(s,1H),6.85(br s,2H),6.66(s,1H),5.31(s,1H),4.14(t,J=6.8Hz,2H),4.05(q,J=6.8Hz,2H),3.91(t,J=6.4Hz,2H),3.62(s,3H),2.90~2.86(m,4H),2.22(s,3H),1.95(br s,6H),1.33(t,J=6.8Hz,3H)。
MS-ESI m/z:449.2[M+H]
【0116】
実施例1:式(I)化合物の製造
20℃下で5-ヒドロキシ-3-メチル-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸(18.50mg)をDCM(1mL)に溶解し、HATU(8.80mg)、トリエチルアミン(57.40μL)を加えて2時間攪拌し、続いて、化合物BB-4(50mg
)を加えて、当該温度を維持しながら引き続き16時間攪拌した。混合物をDCMで10mLに希釈して水(30mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して乾燥剤を除去し、濾液を減圧下で濃縮して溶媒を蒸発させて除去して粗生成物を得た。粗生成物をprep-HPLCで精製して黄色の固体の式(I)の目的化合物を得た。
H NMR(400MHz,CDOD)δ=6.94(s,2H),6.87(s,1H),6.77(s,1H),5.52(s,1H),4.48(t,J=6.0Hz,2H),4.15(s,3H),4.12~4.08(m,2H),4.01(t,J=6.0Hz,2H),3.87(t,J=6.0Hz,2H),3.69(s,3H),2.94(t,J=6.0Hz,2H),2.29(s,3H),2.06(s,6H),1.41(t,J=6.8Hz,3H)。
MS m/z:574.1[M+H]
【0117】
実施例2:式(I)化合物の結晶の製造
50mgの式(I)化合物を4mLガラス瓶に加え、1mLの無水エタノール、0.2mLの水を加えて温度を40℃に上げて48時間攪拌した。自然冷却で室温に下げ、遠心分離して固体を得、真空乾燥して46mgの固体結晶を得た。XRPDパターン、DSC曲線、TGA曲線は、それぞれ図1図2図3に示すとおりである。
【0118】
実施例3~36:
製造プロセス:
1)調製タンクに各添加物を加え、攪拌して清澄化させ、添加物溶液を得た。
2)上記で調製した添加物溶液に式(I)化合物を加え、攪拌して均一な懸濁液を得た。
3)高圧ホモジナイザー、マイクロジェット又はサンドミルなどの装置で、製剤における式(I)化合物の粒度をX50≦5μm且つX90≦10μmに調整した。
4)製品を得た。
【0119】
各添加物の用量及び製品は次の表2に示すとおりである。
【表2-1】

【表2-2】
【0120】
実験例1:式(I)化合物の結晶の固体の安定性に関する研究
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):
HPLC法の構成については次を参照する。
カラム:Zorbax SB C-18,4.6mm×150mm,5μm(PDS-HPLC-007)。
移動相A:水中0.1%TFA。
移動相B:100%ACN。
サンプル調製:アセトニトリルと水の混合溶媒(アセトニトリル:水=50:50(V:V))でサンプルを溶解した。
【0121】
固体の安定性を検討するための静置方法:
化合物を次の条件下で静置する場合の安定性を検討し、異なる時点でサンプルを採取して含有量を測定した。実施例2で製造した式(I)化合物の結晶約5mgを正確に秤量して、乾燥した清潔なガラス瓶に入れ、2連サンプルとして、薄く敷き詰めたものを正式な試験サンプルとし、影響因子試験条件下((60℃)、(相対湿度92.5%)、光(総照度1.2×10Lux・hr/近紫外域200W・hr/m)、(40℃、相対湿度75%)、(60℃、相対湿度75%))で静置し、サンプルが完全に曝露するように静置し、アルミニウム箔をかけて、小さな穴を開けた。5日、10日、1か月、2か月、3か月でサンプルを採取して分析した。光(可視光1200000Lux、紫外200W)条件下で静置したサンプルは室温下で完全に曝露していた。実験結果は表3を参照する。
【表3】
【0122】
以上から分かるように、本願の式(I)化合物の結晶は高温、高湿度又は光条件下でいずれも良好な安定性を有し、試験中に不純物が増えなかった。
【0123】
実験例2:式(I)化合物の結晶の吸湿性に関する研究
装置モデル:SMS DVS Advantage動的水蒸気吸着測定装置
測定条件:サンプル(10~20mg、実施例3で製造した結晶)をDVSサンプルトレイに置いて測定した。
【0124】
詳細なDVSパラメータは次のとおりである。
温度:25℃。
平衡:dm/dt=0.01%/分(最小10分、最大180分)。
乾燥:0%RH下で120分間乾燥。
RH(%)測定ステップ:10%。
RH(%)測定ステップ範囲:0%-90%-0%。最終的な動的水蒸気収着(DVS)曲線は図4に示すとおりである。
【0125】
図4から分かるように、本願の式(I)化合物の結晶は低吸湿性である。
【0126】
実験例3:PDE3A酵素に対する化合物の阻害活性のインビトロ測定
実験目的:蛍光の偏光によりAMP/GMPの発現を測定し、つまりAMP/GMP抗体の結合を追跡して酵素活性を示す。
【0127】
試薬:
実験緩衝溶液:10mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM MgCl、0
.01%Brij 35、1mMジチオトレイトール(DTT)、1%DMSO。
【0128】
酵素:Sf9昆虫細胞のバキュロウイルスにおいてN末端GSTタグで組換えヒトPDE3A(遺伝子アクセッション番号NM_000921、アミノ酸669末端)を発現し、分子量は84kDaであった。
【0129】
基質:1μM cAMP。
測定:Transcreener(登録商標)AMP2/GMP2抗体及びAMP2/GMP2 AlexaFluor633を追跡した。
【0130】
手順:
1.組換えヒトPDE3A酵素、基質(1μM cAMP)をそれぞれ新たに調製した実験緩衝液に溶解した。
2.前記PDE3A酵素緩衝溶液を反応ウェルに移した。
3.音響学的手法(echo 550、精度ナノリットル)を利用して、PDE3A酵素緩衝溶液を含む反応ウェルに100%DMSOに溶解した化合物を加え、室温下で10分間インキュベートした。
4.基質緩衝溶液を前記反応ウェルに加えて反応を開始させた。
5.室温下で1時間インキュベートした。
6.測定混合物(Transcreener(登録商標)AMP2/GMP2抗体及びAMP2/GMP2 AlexaFluor633追跡)を加えて反応を停止させ、ゆっくりと混合しながら90分間インキュベートした。蛍光の偏光の測定範囲はEx/Em=620/688であった。
【0131】
データ解析:AMP/GMP標準曲線に基づいて、ソフトウェアExcelを用いて蛍光の偏光信号からDMSO対照に対する酵素活性のパーセントを計算し、nMに換算した。曲線当てはめはGraphPad Prism(医学グラフ作成用)を用いた。実験結果は表4を参照する。
【0132】
実験例4:PDE4B酵素に対する化合物の阻害活性のインビトロ測定
実験目的:蛍光の偏光によりAMP/GMPの発現を測定し、つまりAMP/GMP抗体の結合を追跡して酵素活性を示す。
【0133】
試薬:
実験緩衝溶液:10mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM MgCl、0.01%Brij 35、1mM DTT、1%DMSO。
【0134】
酵素:Sf9昆虫細胞のバキュロウイルスにおいてN末端GSTタグで組換えヒトPDE4B(遺伝子アクセッション番号NM_002600、アミノ酸305末端)を発現し、分子量は78kDaであった。
【0135】
基質:1μM cAMP。
測定:Transcreener(登録商標)AMP2/GMP2抗体及びAMP2/GMP2 AlexaFluor633を追跡した。
【0136】
手順:
1.組換えヒトPDE4B酵素、基質(1μM cAMP)をそれぞれ新たに調製した実験緩衝液に溶解した。
2.前記PDE4B酵素緩衝溶液を反応ウェルに移した。
3.音響学的手法(echo 550、精度ナノリットル)を利用して、PDE4B酵
素緩衝溶液を含む反応ウェルに100%DMSOに溶解した化合物を加え、室温下で10分間インキュベートした。
4.基質緩衝溶液を前記反応ウェルに加えて反応を開始させた。
5.室温下で1時間インキュベートした。
6.測定混合物(Transcreener(登録商標)AMP2/GMP2抗体及びAMP2/GMP2 AlexaFluor633追跡)を加えて反応を停止させ、ゆっくりと混合しながら90分間インキュベートした。蛍光の偏光の測定範囲はEx/Em=620/688であった。
【0137】
データ解析:AMP/GMP標準曲線に基づいて、ソフトウェアExcelを用いて蛍光の偏光信号からDMSO対照に対する酵素活性のパーセントを計算し、nMに換算した。曲線当てはめはGraphPad Prism(医学グラフ作成用)を用いた。
【0138】
実験結果は表4を参照する。
【表4】
【0139】
本願の医薬組成物の有効成分はPDE3及びPDE4に明らかな二重の阻害効果を有する。
【0140】
実験例5:ビーグル犬による薬物動態試験
本研究では試験動物として雄のビーグル犬を用い、LC-MS/MS法でビーグル犬への式(I)化合物の静脈注射又は強制経口投与後の異なる時点での血漿中薬物濃度を定量的に測定することにより、式(I)化合物のビーグル犬におけるインビボ薬物動態特性を評価した。
【0141】
式(I)化合物の清澄溶液を頭静脈又は大伏在静脈より10~12kgのビーグル犬2匹の体内に注射し、式(I)化合物の清澄溶液を10~12kgのビーグル犬2匹(一晩絶食)に強制経口投与した。全ての動物は、投与後0.0333時間、0.0833時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、24時間で末梢静脈から約500μL採血して0.85~1.15mgのKEDTA・2HOを含む抗凝固遠心管に移し、4℃下で、3000gで10分間遠心分離して血漿を採取した。LC-MS/MS法で血中薬物濃度を測定し、薬物動態ソフトウェアWinNonlin(商標)Version 6.3(カリフォルニア州マウンテンビュー市、Pharsight社)を用いて、ノンコンパートメントモデル×線形台数法で関連の薬物動態パラメータを計算した。
【表5】
【0142】
本願の医薬組成物の有効成分はインビボ血漿クリアランスが高く、経口投与では血漿中曝露量及び生物学的利用能が低い。
【0143】
実験例6:ヒト肝ミクロソーム由来シトクロムP450のアイソエンザイム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4)に対する活性阻害効果
CYPの5つのアイソエンザイムの5つの特異的なプローブ基質であるフェナセチン(Phenacetin、CYP1A2)、ジクロフェナク(Diclofenac、CYP2C9)、(S)-メフェニトイン((S)-Mephenytoin、CYP2C19)、デキストロメトルファン(Dextromethorphan、CYP2D6)、ミダゾラム(Midazolam、CYP3A4)をそれぞれヒト肝ミクロソーム及び式(I)化合物と共インキュベートし、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元型(NADPH)を加えて反応を開始させ、反応終了後にサンプルを処理し液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)法で、特異的な基質が生成した5つの代謝生成物であるアセトアミノフェン(Acetaminophen)、4’-ヒドロキシジクロフェナク(4’-Hydroxydiclofenac)、4’-ヒドロキシメフェニトイン(4’-Hydroxymephenytoin)、デキストロルファン(Dextrorphan)、1’-ヒドロキシミダゾラム(1’-Hydroxymidazolam)の濃度を定量的に測定して、対応の半数阻害濃度(IC50)を計算した。
【表6】
【0144】
本願の医薬組成物の有効成分はヒト肝ミクロソーム由来シトクロムP450の5つのアイソエンザイム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4)に対する阻害効果が低い。
【0145】
実験例7:受動喫煙誘発ラット急性肺損傷モデルにおける薬力学研究
実験動物:
雄のSPF基準Sprague-Dawleyラット(上海斯莱克実験動物有限公司提供)を用い、体重は約200gであった。
【0146】
実験手順:
1.動物は施設に受け入れた後、環境に適応するよう1週間飼育してから、体重によってランダムに6群に分けた。
2.実験1~3日目に、各群では対象化合物を30分間霧化投与し、その後、モデル群及び各化合物処理群の動物を1時間受動喫煙に曝露させ、4時間の間隔で、再び1時間受動喫煙に曝露させた。毎日2回で、3日間連続してタバコの煙に曝露させた。対照群動物は室内で空気に曝露させた。
3.実験4日目に、各群では対象化合物を30分間霧化投与し、モデル群及び各化合物処理群の動物は霧化吸入により150μg/mLのLPSに15分間曝露させ、霧化投与開始から3時間後、1時間受動喫煙に曝露させて、動物肺機能(Penh、F)を測定し、COで動物を安楽死させた後に細胞計数のために肺胞洗浄液を収集した。
【0147】
4.投与処理
投与方式:全身曝露用霧化投与装置を用いて、最大霧化率(約12mL)で30分間被験化合物及び参照化合物を霧化投与した。
【0148】
投与頻度:毎朝受動喫煙前に30分間霧化投与し又は溶媒を投与し、4日目にLPS霧化吸入前に投与した。
【0149】
5.薬力学的エンドポイントの測定
(1)BALF(肺胞洗浄液)の白血球総数。
(2)メタコリン(Mch)誘発下の肺機能測定(気道抵抗指標Penh)。
【表7】
【0150】
実験結果は図5及び図6を参照する。
【0151】
図5及び図6に示されるように、本願の医薬組成物の有効成分は、肺胞洗浄液中の白血球数及び気道抵抗指標Penhを効果的に低減できる。
【0152】
実験例8:ヒト末梢血単核細胞中のTNF-αに対する化合物の阻害活性のインビトロ測定
実験目的:ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)中のTNF-αのレベルで、被験化合物の細胞レベルの抗炎症活性を示す。
【0153】
手順:
1.健常者から全血を採取し、EDTA抗凝固管で抗凝固処理を行った。
2.Ficoll密度勾配遠心法でPBMCを分離して、計数し、細胞濃度を2×10/mLに調整した。
3. U底96ウェルプレートの各ウェルに2×10の細胞、1ng/mLのLPSを加え、式(I)化合物をそれぞれ濃度100μM、10μM、1μM、100nM、10nM、1nM、100pM、10pMのDMSO溶液に調製し、各ウェルは200μLの反応系とした。
4. 24時間培養して、上清を収集した。
5.ELISA法で上清中のTNF-αレベルを測定し、ソフトウェアGraphpad Prismで阻害曲線を当てはめしてIC50を計算した。
【0154】
実験結果は表8を参照する。
【表8】
【0155】
したがって、本願の医薬組成物の有効成分は効果的な抗炎症活性を表すことができ、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)中のTNF-αに明らかな阻害効果を有する。
【0156】
実験例9:安定性試験
実施例28で得た製品を加速条件(40℃±2℃/RH 25%±5%)、長期条件(30℃±2℃/RH 65%±5%)下で6か月静置し、結果は表10を参照する。
【表9】
【0157】
以上から分かるように、本願の医薬組成物は加速条件と長期条件下で良好な安定性を示しており、不純物の明らかな増加はなく、粒度が増加しなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】