(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】癌を治療するための投与養生法および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/133 20060101AFI20230317BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230317BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230317BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20230317BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A61K31/133
A61P1/18
A61P35/00
A61K31/7068
A61K31/337
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543648
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2021014112
(87)【国際公開番号】W WO2021150559
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520278859
【氏名又は名称】パンベラ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ガニョン,スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ニーナン,トマス,エックス.
(72)【発明者】
【氏名】カレン,マイケル,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA66
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA02
4C206MA01
4C206MA02
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4C206MA37
4C206MA86
4C206NA06
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZB26
(57)【要約】
本発明は、重度の肝臓毒性の開始を予想外に逆転するかまたは低減し、患者の安全性プロフィールを向上する、(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与養生法を投与する工程を含む、患者において癌を治療するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療を必要とする患者に、(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与養生法を投与する工程を含む、患者において癌を治療するための方法であって、該投与養生法が、2回以下の4連続治療サイクルの間、各治療サイクルの連続して5日間毎日(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与することを含み、各治療サイクルが約28日である、方法。
【請求項2】
投与養生法が、2回以下の連続治療サイクルの間、連続して5日間毎日(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(S,S)-(HO)2DEHSPMの毎日の遊離塩基等価用量が、約0.14mg/kg/日、約0.27mg/kg/日および約0.41mg/kg/日から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
患者における肝臓毒性が、(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与養生法を受けた後に有害事象共通用語基準(CTCAE)でグレード3未満である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
(S,S)-(HO)2DEHSPMが、各治療サイクルの1~5日目に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
患者が、治療に対して完全応答を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
患者が、治療に対して部分応答を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ゲムシタビン(GEM)もしくはnab-パクリタキセル(NAB)またはGEMおよびNABの両方(GEM/NAB)と、(S,S)-(HO)2DEHSPMを少なくとも1治療サイクルの間に共投与することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
共投与が、ゲムシタビン(GEM)もしくはnab-パクリタキセル(NAB)またはGEMおよびNABの両方(GEM/NAB)を、少なくとも1治療サイクルの1、8および15日目に投与することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
2回の連続した治療サイクルがサイクル1および2である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
治療サイクル2の後の治療サイクルの間に(S,S)-(HO)2DEHSPMを定期的に投与することをさらに含む方法であって、定期的な投与が、連続しない日に投与される(S,S)-(HO)2DEHSPMの14以下の用量を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
(S,S)-(HO)2DEHSPMの定期的な投与が治療サイクル3に始まる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
定期的な投与が、サイクル3で開始する各治療サイクルの1、8および15日目である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
癌の治療を必要とする患者に(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与養生法を投与する工程を含む、癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法であって、該投与養生法が、2回の連続治療サイクルの間の各治療サイクルの第1週の間に連続して5日間毎日(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与することを含み、各治療サイクルが約28日であり、続いて第3およびその後の治療サイクルの間の1、8および15日目に(S,S)-(HO)2DEHSPMが定期的に投与される、方法。
【請求項15】
癌の治療を必要とする患者に(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与養生法を投与する工程を含む、癌の治療を必要とする患者において癌を治療する方法であって、該投与養生法が、第1の2回の治療サイクルのそれぞれの第1週の間に約0.27mg/kg/日の遊離塩基等価用量で連続して5日間毎日(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与し、続いて第3およびその後の治療サイクルの1、8および15日目に約0.21mg/kg/日~約0.34mg/kg/日の遊離塩基等価用量で(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与することを含む、方法。
【請求項16】
(S,S)-(HO)2DEHSPMが、第3およびその後の治療サイクルの1、8および15日目に約0.27mg/kg/日の遊離塩基等価用量で投与される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
総累積遊離塩基等価用量が約8.2mg/kg以下になるまで治療が継続される、請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
総累積遊離塩基等価用量が約3.4mg/kg~約6.9mg/kgになるまで治療が継続される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
総累積遊離塩基等価用量が約5.8mg/kg~約6.5mg/kgになるまで治療が継続される、請求項17記載の方法。
【請求項20】
総累積用量が約8.6mg/kg~約9.0mg/kgになるまで治療が継続される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
治療サイクルのそれぞれの間にGEM/NABを共投与することをさらに含む、請求項14~20いずれか記載の方法。
【請求項22】
GEM/NABが、各治療サイクルの1、8および15日目に投与される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
患者が、3回以上の治療サイクルで、または完全応答もしくは部分応答、疾患進行もしくは許容できない毒性が生じるまで治療される、請求項15記載の方法。
【請求項24】
(S,S)-(HO)2DEHSPMの遊離塩基等価用量が、0.14mg/kg/日、0.27mg/kg/日および0.41mg/kg/日から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項25】
(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与養生法を受けた後、患者における肝臓毒性が、有害事象共通用語基準(CTCAE)でグレード3未満である、請求項14~24いずれか記載の方法。
【請求項26】
癌が膵臓癌である、請求項15~25いずれか記載の方法。
【請求項27】
患者に救出投与養生法を投与することを含む、(S,S)-(HO)2DEHSPMの参照用量で治療されている患者において肝臓毒性を逆転させる方法であって、該救出投与養生法が、治療サイクルの全部または一部の間に(S,S)-(HO)2DEHSPMの用量を低減するかまたは(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与を中断し、続いて肝臓毒性が逆転されるまで、1回以上のその後のサイクルの間、参照用量と比較して少なくとも約25%以上だけ低減される用量で(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与を再開することを含む、方法。
【請求項28】
肝臓毒性が、CTCAEスケールでグレード3未満であるレベルまで逆転される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
(S,S)-(HO)2DEHSPMの参照用量で治療されている患者が、少なくとも3回の連続治療サイクルの間のそれぞれの治療サイクルの間に連続して5日間、参照用量を投与されており、それぞれの治療サイクルが28日である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
(S,S)-(HO)2DEHSPMの用量が、参照用量と比較して少なくとも約50%だけ低減される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
癌の治療を必要とする患者に、それぞれの治療サイクル当たり14以下の用量の(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与する工程を含む、患者において癌を治療する方法であって、投与が連続しない日に起こり、それぞれの治療サイクルが28日である、方法。
【請求項32】
患者が、1治療サイクルあたり10以下の用量を投与される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
患者が、1治療サイクルあたり5以下の用量を投与される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
患者が、それぞれの治療サイクルの1、8および15日目に(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与される、請求項31記載の方法。
【請求項35】
患者が、3回以上の治療サイクルで投与される、請求項31記載の方法。
【請求項36】
(S,S)-(HO)2DEHSPMが皮下注射として投与される、請求項1~35いずれか記載の方法。
【請求項37】
(S,S)-(HO)2DEHSPMが(S,S)-(HO)2DEHSPM.4HClとして投与される、請求項1~36いずれか記載の方法。
【請求項38】
癌が膵臓癌である、請求項1~37いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年1月20日に出願された米国仮出願第62/963,492号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
膵臓の腺癌は、毎年世界中で約460,000人、例えば米国(US)で55,440人およびオーストラリアで3,364人に影響を及ぼす。これは、USにおける癌による死亡の第3位の主要な原因である。膵管腺癌(PDA)は、全ての膵臓癌の約95%に相当し、5年生存率は約8.5%である。転移性疾患および良好な性能状態を有する以前に治療されていない患者についての全体のメジアン生存は、最も利用可能な治療養生法により8.5ヶ月~11.1ヶ月であることを考慮すると、PDAのための有効な治療は、まだ対処されていない主要な医学的必要性を残す。
【0003】
初期の臨床的徴候および症状ははっきりせず非特異的であるため、膵臓癌の診断はしばしば遅れる。診断がなされる時にはすでに、約85%の患者は局所的に進行するかまたは転移性の腫瘍(通常領域的なリンパ節、肝臓、肺および腹膜に)を有し、そのために治療的目的を持った外科的切除に従順でない。最も一般的にみられる症状としては、時々糖尿病の最近の開始の設定において、体重減少、上腹部および/または背中の疼痛、ならびに黄疸が挙げられる。不確かで断続的な上腹部の疼痛とは対照的に、背中の疼痛は典型的に、鈍く、絶えず続き、背中に広がる内臓起源のものである。より一般的でない症状としては、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振およびグルコース不耐症が挙げられる。
【0004】
現在、外科的切除は、治療的である可能性のある治療のみを提供するが、ほとんどの患者は、診断の時点で局所的に進行するかまたは転移性である疾患を有するために、切除はまれにしか選択肢にならない。これらの患者の予後は悪く、進行に関連のある合併症によりほとんどが死亡する。転移性疾患のための治療のかなめは化学療法である。
【0005】
現在の化学療法治療養生法としては、単一剤ゲムシタビンおよび白血球(WBC)成長因子を頻繁に補充される複数薬物FOLFIRINOX(ロイコボリン(フォリン酸)、フルオロウラシル、イリノテカンおよびオキサリプラチン)養生法に対する種々のゲムシタビン組合せが挙げられる。これらの治療は、ゲムシタビン単独の対照に対して、良好な性能状態の選択された患者に、7週~4ヶ月の範囲のメジアン生存利益を与える。明確に、患者安全性プロフィールの向上も提供する、切除できない膵管腺癌および他の癌についてのより効果的な治療が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明は、重度の肝臓毒性の開始を予想外に逆転または低減し、患者安全性プロフィールを向上する(S,S)-(HO)2DEHSPM ((6S,15S)-3,8,13,18-テトラアザイコサン-6,15-ジオール)の投与養生法を投与する工程を含む、患者において癌を治療するための方法を提供する。
【0007】
本発明の1つの好ましい方法は、第1の2~4治療サイクルの間に連続して5日のそれぞれに日用量として(S,S)-(HO)2DEHSPMまたはその薬学的に許容され得る塩を投与する工程を含み、ここでそれぞれの治療サイクルは約28日であり、任意に1以上の治療サイクルが続き、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、各治療サイクルの1、8および15日目に定期的に投与される。好ましくは、該方法はさらに、ゲムシタビン(本明細書において「GEM」または「G」とも称される)、nab-パクリタキセル(本明細書において「NAB」または「A」とも称される)または両方を、1以上の治療サイクルの間に共投与する工程を含む。好ましくは、GEMおよび/またはNABは、各治療サイクルの間の1、8および15日目に投与され、ここで(S,S)-(HO)2DEHSPMも投与されている。
【0008】
本発明はまた、肝臓毒性が重度である場合は(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与を中断するかまたは(S,S)-(HO)2DEHSPMの用量を、開始用量の少なくとも約25%だけ低減し、続いて肝臓毒性が逆転されるまで、施される少なくとも1以上の治療サイクルの間に開始用量の約50%で(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与に戻す工程を含む、(S,S)-(HO)2DEHSPMにより治療された患者において癌における肝臓毒性の開始を逆転または低減するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
【
図1A】
図1は、被験体当たりの最良応答を示すグラフである-コホート2および3、N=13。評価可能な被験体における最良応答は、8(62%)においてPR、5(38%)においてSDであった。3名の被験体は、RECIST腫瘍評価によるポストベースラインスキャンを有さなかった。
【
図1B】
図1Bは、応答によるベースラインからの最大CA19-9パーセント変化を示すグラフである-コホート2および3、N=16。コホート2および3中11名の被験体(69%)は、60%より大きいCA 19-9最大減少を有した。ND-行わなかった(Not Done)。
【
図1C】
図1Cは、コホート2および3についての試験の日数を示すグラフである。2020年1月4日現在、コホート2および3の16名中8名の被験体は試験中である。中断の理由としては、放射線医学PD(N=1)、有害事象(N=2)、臨床的進行(N=4)および患者の決定(N=1)が挙げられる。4名の被験体は、膵臓癌を終わらせた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
定義
当業者は、ルーチンの実験、本明細書に記載される本発明に従う特定の態様の多くの均等物を超えないものを使用することを認識するか、または確実にし得る。本発明の範囲は以下の記載に限定されることを意図せず、むしろ添付の特許請求の範囲に示される。
【0011】
特許請求の範囲において、冠詞、例えば「a」、「an」および「the」は、文脈からそうではないと示されないかまたはそうではないと明らかでない限り、1つまたは1つより多くを意味し得る。群の1つ以上の構成メンバーの間に「or」を含む請求項または記載は、文脈からそうではないと示されないかまたはそうではないと明らかでない限り、1つ、1つより多いまたは全ての群の構成メンバーが、所定の物またはプロセスに存在する、それに使用される、またはそうでなければそれに関連する場合、充足されるとみなされる。本発明は、群の正確に1つの構成メンバーが、所定の物またはプロセスに存在する、それに使用される、またはそうでなければそれに関連する態様を含む。本発明は、1つより多いまたは全ての群の構成メンバーが、所定の物またはプロセスに存在する、それに使用される、またはそうでなければそれに関連する態様を含む。
【0012】
用語「含む(comprising)」は、開放的であると意図され、さらなる要素または工程の含有を許容するが必要としないことも注意される。したがって用語「含む(comprising)」が本明細書で使用される場合、用語「からなる(consisting of)」もまた、含まれかつ開示される。
【0013】
範囲が与えられる場合、終点は含まれる。さらに、そうではないと示されないかまたはそうではないことが文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈にそうではないと明らかに示されない限り、範囲の下限の単位の1/10までの、本発明の異なる態様中の記載された範囲内の任意の特定の値または部分範囲(subrange)を想定し得ると理解されるべきである。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「約(about)」または「約(approximately)」は、述べられた値に適用される場合、述べられた値の10%以内、すなわち述べられた値の90%から述べられた値の110%までの値をいう。ある態様において、用語「約」は、そうではないと述べられないかまたはそうでなければ文脈から明らかでない限り、述べられた値のいずれかの方向で(より高いかまたはより低い)10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ以下内に含まれる値の範囲をいう(かかる数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「実質的」は、目的の特徴または特性の全てまたはほぼ全ての程度または度合を示す量的条件をいう。生物学的技術の当業者は、生物学的および化学的現象が、あるとすればまれに、完了(completion)まで進むかおよび/または完了(completeness)まで進行するか、あるいは絶対的な結果を達成するかまたはそれを回避することを理解する。そのため、用語「実質的に」は、多くの生物学的および化学的現象に固有の完了の欠如の可能性を捕捉するように本明細書において使用される。好ましくは、薬学的に許容され得るは、連邦政府もしくは州政府の規制機関または米国以外の国の相当する機関により承認されるかまたは承認され得ること、あるいは動物、より特定にはヒトにおける使用について、米国薬局方または他の一般的に認識される薬局方に列挙されることを意味する。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」または「患者」は、本開示による組成物が、例えば実験、診断、予防および/または治療の目的で投与され得る任意の生物をいう。典型的な被験体は、動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類およびヒトなどの哺乳動物)および/または植物を含む。好ましくは、「患者」は、治療を受けようとし得るもしくは治療の必要があり得る、治療を必要とする、治療を受けている、治療を受けるヒト被験体、または特定の疾患もしくは状態についての訓練された専門家によるケアの下にある被験体をいう。
【0017】
句「薬学的に許容され得る」は、正常な医学的判断の範囲内にあり、過度な毒性、刺激性、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症なしでヒトおよび動物の組織との接触における使用に適切な、妥当な利益/リスク比につり合うこれらの化合物、材料、組成物および/または剤型をいうために本明細書において使用される。
【0018】
用語「薬学的に許容され得る賦形剤」は、本開示の化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体をいう。薬学的に許容され得る賦形剤は一般的に、非毒性、生物学的に許容され得るおよびそうでなければ被験体への投与に生物学的に適切な物質、例えば薬理学的組成物に添加されるかまたはそうでなければビヒクル、担体または希釈剤として使用されて、薬剤の投与を容易にし、それらと適合性の不活性物質である。賦形剤の例としては、所望の特定の剤型に適合されるような、水、任意および全ての溶媒、分散媒体、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁補助剤、界面活性剤、等張性剤、濃化剤もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑剤等が挙げられる。Remington's The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, A. R. Gennaro (Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, Md., 2006;参照により本明細書に援用される)には、医薬組成物の製剤化に使用される種々の賦形剤およびそれらの調製のための公知の技術が開示される。任意の望ましくない生物学的効果を生じるかまたはそうでなければ医薬組成物の任意の他の構成要素(1つまたは複数)と有害な様式で相互作用することなどにより任意の従来の賦形剤媒体が物質またはその誘導体と非適合性である限りを除き、その使用は、本開示の範囲内にあることが企図される。
【0019】
本明細書で使用する場合、「組合せ」、「組み合された療法」および/または「組み合された治療養生法」の投与または共投与の任意の形態は、いずれか別々でもしくは組み合わされた製剤中で同時に、または分、時間もしくは日で分けられた異なる時間で連続して投与または共投与され得るが、いくつかの方法において、一緒になって作用して、所望の治療応答を提供し得る少なくとも2つの治療的に活性な薬物または組成物をいう。
【0020】
用語「治療剤」は、かかる治療の必要のある個体において症状または疾患を治療するために投与される任意の剤を包含する。かかるさらなる治療剤は、治療されている特定の適応症に適切な任意の有効成分、好ましくは互いに有害に作用しない相補的な活性を有するものを含み得る。好ましくは、さらなる治療剤は抗炎症剤である。
【0021】
用語「化学療法剤」は、癌細胞と相互作用して、それにより細胞の増殖状態を低減し得るおよび/または例えば細胞分裂もしくはDNA合成を損なうことによりまたはDNAを損傷することにより、速く分裂する細胞を効果的に標的化することにより細胞を殺傷し得る化合物またはその誘導体をいう。化学療法剤の例としては、限定されないが、アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、オキサリプラチン、イホスファミド);代謝拮抗剤(例えばメトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはそれらの誘導体);置換されたヌクレオチド;置換されたヌクレオシド;DNA脱メチル化剤(代謝拮抗剤としても公知;例えばアザシチジン);抗腫瘍抗生物質(例えばマイトマイシン、アドリアマイシン);植物由来抗腫瘍剤(例えばイリノテカン ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、nab-パクリタキセル(pacitaxel)、アブラキサン);シスプラチン;カルボプラチン;エトポシド等が挙げられる。かかる剤としてはさらに、限定されないが抗癌剤トリメトトレキサート(TMTX);テモゾロミド;ラルチトレキセド;S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR);6-ベンジルグアニジン(benzyguanidine)(6-BG);ニトロソウレア(nitrosoureas a nitrosourea) (ラビノピラノシル(rabinopyranosyl)-N-メチル-N-ニトロソウレア(Aranose)、カルムスチン(BCNU、BiCNU)、クロロゾトシン、エチルニトロソウレア(ENU)、フォテムスチン、ロムスチン(CCNU)、ニムスチン、N-ニトロソ-N-メチルウレア(NMU)、ラニムスチン(MCNU)、セムスチン、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン));シタラビン;およびカンプトテシン;またはそれらのいずれかの治療誘導体が挙げられ得る。化学療法剤はまた、FOLFIRINOXなどの化学療法カクテルを含む。
【0022】
句「治療有効量」または「有効量」は、被験体に投与される場合に、疾患、障害または状態の任意の症状、局面または特徴に対して任意の検出可能な正の効果を有し得る量での、単独または医薬組成物の一部としてのいずれか、および単一用量または一連の用量の一部としてのいずれかの被験体への剤の投与をいう。治療有効量は、関連のある生理学的効果を測定することにより確かめられ得、これは、投与養生法および被験体の状態等の診断分析に関して調整され得る。癌または制御されない細胞分裂に関連する病状に関して、治療有効量は、(1)腫瘍のサイズを低減する(すなわち腫瘍退縮)、(2)異常な細胞分裂、例えば癌細胞分裂を阻害する(すなわちある程度遅延する、好ましくは停止する)、(3)癌細胞の転移を予防もしくは低減する、および/または(4)制御されないもしくは異常な細胞分裂に部分的に関連するかもしくはそれにより引き起こされ病状、例えば癌に関連する1つ以上の症状をある程度まで和らげる(または好ましくは排除する)効果を有する量をいう。
【0023】
「有効量」はまた、本発明の治療活性組成物の投与の際に、所望のPDおよびPKプロフィールならびに所望の免疫細胞プロフィールを生じる量である。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「非経口」は、注射または注入としての投与が意図される剤型をいい、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、鞘内および筋内の注射ならびに通常は静脈内経路による注入注射が挙げられる。
【0025】
用語、疾患(または状態もしくは障害)を「治療すること」またはその「治療」は、本明細書で使用する場合、疾患にかかりやすくあり得るが、まだ疾患の症状を経験または発現しないヒト被験体または動物被験体において疾患が生じることを予防すること(予防的処置)、疾患を阻害すること(その発症の遅延または阻止)、疾患の症状もしくは副作用からの軽減を提供すること(例えば軽減的処置)、および疾患の後退を引き起こすことをいう。癌に関して、これらの用語はまた、癌に罹患した個体の期待寿命が増加され得ることまたは疾患の症状の1つ以上が低減されることを意味する。「治療すること」はまた、被験体において抗腫瘍応答を高めることまたは延長することを含む。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「予防すること」は、感染、疾患、障害および/または状態の開始を部分的もしくは完全に遅延すること;特定の感染、疾患、障害および/または状態の1つ以上の症状、特徴もしくは臨床的発現の開始を部分的もしくは完全に遅延すること;特定の感染、疾患、障害および/または状態の1つ以上の症状、特徴もしくは発現の開始を部分的もしくは完全に遅延すること;感染、特定の疾患、障害および/または状態からの進行を部分的もしくは完全に遅延すること;および/または感染、疾患、障害および/または状態に関連する病理学の発生のリスクを減少することをいう。
【0027】
句「膵臓の全体の外分泌部分の機能の化学的切除または除去を引き起こすこと」は、本明細書で使用する場合、膵臓の外分泌部分の実質的に全ての機能の排除をいい、膵臓の外分泌部分における臨床的に有意な数の腺房細胞および/または元のサイズの30%未満への膵臓の物理的な縮みを排除することを含む。
【0028】
用語RECISTは、固形腫瘍の応答評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)を表し、癌患者が治療の際に向上する(「応答」)か、同じままである(「安定」)かまたは悪化する(「進行)時間を定義する国際的な撓曲の共同研究(例えばEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC)、National Cancer Institute (NCI) of the U.S.およびNational Cancer Institute of Canada)により確立および公開された一組の規則である。
【0029】
「進行なし生存(PFS)」は、本明細書に記載される癌の文脈で使用する場合、患者の客観的腫瘍進行または死亡までの、癌の治療中および治療後の時間の長さをいう。治療は、客観的または主観的なパラメーター;例えば身体検査、神経学的検査または精神医学的評価の結果により評価され得る。好ましい局面において、PFSは、盲検画像中央評価(blinded imaging central review)により評価され得、ORRまたは盲検独立中央評価(blinded independent central review) (BICR)によりさらに任意に確認され得る。
【0030】
「全体生存(overall survival) (OS)」は、カプラン-マイヤー法により特定の時点(例えば1年および2年)のOS率により評価され得、対応する95% CIは、それぞれの腫瘍型についての試験治療により、Greenwoodの式に基づいて導かれる。OS率は、その時点で生存している参加者の割合として定義される。参加者についてのOSは、第1投与日から任意の原因による死亡の日までの時間として定義される。
【0031】
本明細書で使用する場合、「完全応答」は、治療に応答した癌の全ての徴候の消失である。完全応答は、本明細書において「総寛解」とも称され得る。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「部分応答」は、腫瘍のサイズまたは治療に応答する身体中の癌の程度の減少を意味する。部分応答は、本明細書において「部分寛解」とも称され得る。
【0033】
用語「癌」は、本明細書で使用する場合、制御なしで異常な細胞が分裂する疾患についての一般的な用語として、その一般的な意味を与えられる。
【0034】
用語「腫瘍の低減」または「腫瘍退縮」は、本明細書で使用する場合、腫瘍塊の重量、サイズまたは体積の低減、被験体中の転移した腫瘍の数の減少、癌細胞の増殖性状態(癌細胞が増殖している度合)の減少をいう。例えば、腫瘍の重量、サイズまたは体積は、ベースラインと比較して、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上だけ低減され得る。腫瘍が低減されたかどうかまたは退縮されたかどうかを確立する技術は当該技術分野で公知である。
【0035】
本明細書で使用する場合、任意の投与養生法における(S,S)-(HO)2DEHSPMの「総累積用量」(TCD)は、特定の時間に特定の用量で患者において投与された(S,S)-(HO)2DEHSPMの総量をいう。本発明の文脈において、TCDは、好ましくは、単一治療サイクルの間または全治療サイクルが終了した後に患者に投与された(S,S)-(HO)2DEHSPMの総用量をいう。
【0036】
用語「治療サイクル」は、化学療法に関する分野におけるその通常の意味を有し、化学療法薬物の投与、続いて薬物が投与されない時間の過程をいう。薬物有りの治療期間および休息期間を合わせて、1治療サイクルを作る。そうではないと特定されない限り、用語「治療サイクル」は、本明細書で使用する場合、28日治療サイクルをいう。
【0037】
本明細書で使用する場合、「グレード3」または「重度」の肝臓毒性は、国立がん研究所(NCI)により確立されるようにヒト臨床試験の間に生じる有害事象(AE)についての標準化された定義に基づいて決定される。国立衛生研究所(NIH)の国立がん研究所(NCI)は、癌治療を受ける患者についての臓器毒性の重症度を説明するための「共通毒性基準(common toxicity criteria)」(CTC)とも称される有害事象共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events) (CTCAE)として知られる有害事象(AE)についての標準化され定義を公開した。CTCAEにおいて、有害事象(AE)は、癌のための療法の使用に一過的に関連する任意の異常な臨床的所見として定義され;因果関係は必要とされない。これらの基準は、化学療法投与および投薬の管理のため、ならびに治療関連毒性の定義において標準および一貫性を提供するための臨床試験において使用される。肝臓毒性について、CTCAEは、>ULN(正常の上限)~3×ULNの場合、軽度(グレード1);>3~5×ULNの場合、中度(グレード2);>5~20×ULNの場合、重度(グレード3);および>20×ULNの場合、生命の脅威(グレード4)に血清酵素活性(アラニンアミノトランスフェラーゼ」(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST))の上昇を分類し;致死(グレード5)については定義はない。同様に、これらは、血清総ビリルビン濃度を、>ULN~1.5xULNの場合に軽度、>1.5~3×ULNの場合に中度、>3~8×ULNの場合に重度および>8xULNの場合に生命の脅威と等級づけした。
【0038】
(S,S)-(HO)2DEHSPM薬物生成物
(HO)2DEHSPMは、内因性スペルミンと同様のポリアミンアナログであるホモスペルミンの小分子エチル化およびヒドロキシル化誘導体であり、以下の式1を有する。
【化1】
【0039】
式1の化合物は少なくとも2つのキラル中心を含むことが当業者に理解される。式1の化合物は、2つの異なる光学異性体(すなわち(+)または(-)エナンチオマー)およびジアステレオマーの形態で存在し得る。全てのかかるエナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ混合物を含むそれらの混合物は、本発明の範囲に含まれる。式1の化合物のエナンチオマーは、米国特許第6,160,022およびWO 2019/152323に開示される方法により得られ得る。式1の化合物のエナンチオマーはまた、キラルHPLCおよび化学分解などの当該技術分野で周知の方法により、ラセミ混合物から得られ得る。代替的に、式1の化合物のエナンチオマーは、光学活性の開始材料を使用して合成され得る。
【0040】
(S,S)-(HO)2DEHSPMは、式1のS,Sエナンチオマーである。(S,S)-(HO)2DEHSPMについての化学名は、(6S,15S)-3,8,13,18-テトラアザイコサン-6,15-ジオールまたはN1,N14-ジエチル-3S,12S-ジヒドロキシホモスペルミンであり、本明細書において(HO)2DEHSPM)とも称され得る。(S,S)-(HO)2DEHSPMについてのCAS番号は259657-09-5である。好ましくは、該化合物は、薬学的に許容され得る塩の形態で単離、製剤化および投与され、組成物および投与に関する(S,S)-(HO)2DEHSPMについての全ての参照は、そうではないと記載されない限り、遊離塩基および塩の形態をいう。(S,S)-(HO)2DEHSPMの好ましい形態は、安定な四塩酸塩であり、本明細書において(S,S)-(HO)2DEHSPM.4HClと称される。(S,S)-(HO)2DEHSPMの用量についての全ての参照(例えばmg、mg/kgまたはmg/kg/日の単位)は、そうではないと特定されない限り、本明細書において(S,S)-(HO)2DEHSPM.4HClの質量をいう。ある例において、(S,S)-(HO)2DEHSPM.4HCl用量には括弧内に対応する遊離塩基均等用量が続く。例えば、「0.4mg/kg/日(0.27mg/kg/日)」の用量についての参照は、0.4mg/kg/日の(S,S)-(HO)2DEHSPM.4HClの用量および0.27mg/kg/日の対応する遊離塩基均等用量をいう。
【0041】
スペルミンを含むポリアミン(PA)は、全ての哺乳動物細胞に見られる遍在的な生物学的分子である。ポリアミンは、正常細胞の増殖、再生および機能ならびにプログラム細胞死(アポトーシス)に必須である。3つの天然のポリアミン(スペルミン、スペルミジンおよびプトレッシン)のそれぞれは、細胞内で代謝され、レベルは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)、S-アデノシルメチオンデカルボキシラーゼ(SAMDC)、スペルミジン/スペルミンN1-アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)、ポリアミンオキシダーゼ(PAO)および他のものなどの一連の酵素により狭い範囲に維持される。SSATおよびPAOを介したポリアミン代謝は、SSATおよびアポトーシスを誘導する過酸化水素(H2O2)を発生し、チェックされない場合、正の細胞死シグナル生成サイクルをもたらし得る。
【0042】
新生物組織におけるポリアミンおよびそれらの生合成酵素の増加した生合成は、この部類の分子を、癌治療努力のための有望な標的にしている。ポリアミン輸送取込み機構は、ポリアミンについての需要が高い膵管腺癌などの種々の腫瘍型において上方制御されるように思われる。
【0043】
機能不全性合成ポリアミンアナログの細胞取込みを介したポリアミン枯渇を誘導することが、抗腫瘍戦略として提唱されている。ポリアミンアナログは、ポリアミン輸送因子を介して細胞に進入し、それらの自己制御の役割において天然のポリアミンに取って代わるが、細胞増殖の促進において天然のポリアミンのようには機能できない。結果的に、「偽ポリアミン」過剰の状態が細胞内に作られ、それによりポリアミン合成の原因である酵素が下方制御され、いくつかの場合において細胞内ポリアミン異化の原因である重要な酵素のSSATが誘導される。
【0044】
(S,S)-(HO)2DEHSPMは、天然に存在するポリアミンであるスペルミンの機能不全アナログである。これは、スペルミンに取って代わることにより細胞増殖を阻害し、スペルミンレベルを低減し、スペルミジンおよびプトレッシンの細胞内プールを枯渇させる。この戦略は多くの種類の癌、例えば固形腫瘍に対して有用であり得る。
【0045】
(S,S)-(HO)2DEHSPMの投与は、ヒト膵臓腺癌の3つの異なるマウス異種移植片モデルにおける腫瘍負荷の低減において有効であることが見出された。(S,S)-(HO)2DEHSPMの抗新生物効果は、6個のヒト膵臓腫瘍細胞株を用いたインビトロ細胞生存能力試験においてさらに示された。
【0046】
(S,S)-(HO)2DEHSPMを用いた前臨床動物データにより、膵臓腫瘍細胞に対する効力およびビーグル外分泌性膵臓の切除の両方は、高血漿薬物レベルを必要としないがむしろ総累積用量(TCD)を必要とする(S,S)-(HO)2DEHSPMの累積効果であることが示唆される。以前に治療された局所的に進行したかまたは転移性の膵管腺癌を有する患者における(S,S)-(HO)2DEHSPMの最大許容用量(MTD)および用量限界毒性(DLT)を決定するために、ファースト・イン・ヒューマン第1相試験を行った。ファースト・イン・ヒューマン第1相試験における投与スケジュールは、抗腫瘍効果の代理として外分泌性膵臓切除についての有効用量を使用して選択した。
【0047】
新生物組織に加えて、(HO)2DEHSPMエナンチオマーへの曝露後の高い膵臓組織レベルにより証明されるように、外分泌性膵臓の腺房細胞も、他の組織と比較して、ポリアミンの増加した取込みを示すように思われる。健常ビーグルにおける(S,S)-(HO)2DEHSPMの反復用量への累積曝露は、炎症性応答なしで、島細胞機能の保存を有して、外分泌性膵臓機能不全を伴う外分泌性膵臓萎縮を生じた。(外分泌性膵臓のほぼ完全な切除をもたらす)イヌの外分泌性膵臓に対するこの効果は、治療剤としてのこのポリアミンアナログの開発における予想されない発見であった。これは、イヌにおいて薬物投与を中断した数週間後に用量依存的な様式で起こった。最後の投与の5~6週間後に開始して、高用量レベルで、動物は迅速に体重を減少し、それらの血清トリプシン様免疫反応性は<2.5μg/Lまで減少し、これはこの種における外分泌性膵臓機能不全について特徴的である。また、脂肪吸収試験は異常になり、肝臓トランスアミナーゼの値は増加した。安楽死させた動物の膵臓は、特に腺房の広汎性の中度から重度の膵臓萎縮を伴い顕著に萎縮した。しかしながら、島は、血清グルコースレベルおよび経口グルコース負荷試験に基づいて組織学的にインタクトかつ機能性の両方であるように見えた。
【0048】
医薬組成物
(S,S)-(HO)2DEHSPMまたはその薬学的に許容され得る塩は、好ましくは1つ以上の薬学的に許容され得る希釈剤、担体または賦形剤を用いて医薬組成物として製剤化される。医薬組成物は、好ましくは、注射、好ましくは非経口注射による、およびさらにより好ましくは皮下注射による患者への投与のために製剤化される。好ましくは、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、例えば注射、好ましくは皮下注射のためのpH調整滅菌水中のきれいな滅菌溶液中で(S,S)-(HO)2DEHSPM.4HClの形態で製剤化される。しかしながら、(S,S)-(HO)2DEHSPMまたはその薬学的に許容され得る塩の、経口、肺、鼻腔、頬側、直腸、舌下および経皮などの他の投与様式も企図される。
【0049】
投与養生法
ファースト・イン・ヒューマン(第1a/1b相)試験の間に、0.05mg/kg (1.8mg/m2)の開始用量の(S,S)-(HO)2DEHSPM.4HClを、ラットにおける4週反復用量毒性試験において観察された(3mg/kg/日;1.8mg/m2)1/10の重度に毒性の用量(severely toxic dose) (STD10)として選択した。この用量は、Nonclinical Development for Anti-Cancer PharmaceuticalsのICH S9ガイドラインに従って選択した。第1a/1b相投与スケジュールの間に、患者に、約6mg/kgの総累積用量(TCD)について、月曜日から金曜日まで3週間、0.4mg/kg/日までを投与した。この動物実験において、1サイクルは、8週の総サイクル長さの間の3週の投与および5週の休息からなった。
【0050】
第1a/1b相投与スケジュールは、個々の用量レベルおよび総累積用量の両方を評価するように設計された。多くのヒト腫瘍はポリアミン取込み機構を加速させ、膵臓腫瘍の破壊は、正常組織における任意の標的外の効果(例えば腺房細胞萎縮)の前に起こると予想されたことが知られるが、投与スケジュールは、この曝露が非腫瘍組織において効果を生じ得るとしても、抗腫瘍効果を生じるのに十分な(S,S)-(HO)2DEHSPMの累積用量を評価することを意図した。
【0051】
最初の第1a/1b相試験において投与されるように計画された最大総累積用量(TCD)は60mg/kgであり、これは、最大許容用量(MTD)で有意な腫瘍低減を生じた異種移植片試験(実施例2)においてヌードマウスに投与された平均最高累積用量のヒト同等物である。試験の用量段階的拡大段階(第1a相、実施例3)の間、(S,S)-(HO)2DEHSPMの最大許容用量は、0.8mg/kg/日未満であると決定された。薬物関連の重度の有害事象(SAE)または用量限界毒性(DLT)は、月曜日から金曜日x3週間に0.4mg/kg/日まで(8週サイクル当たりTCD約6mg/kg)を受けた被験体において観察されなかった。
【0052】
ヌードマウスおよびビーグル犬を用いた前臨床試験の間に、最少有効累積用量が示されることが発見され、ここで「有効」は、転移(マウス)または正常外分泌性膵臓細胞の萎縮(イヌ)のいずれかを含む腫瘍体積の有意な低減をもたらした用量および治療の持続時間であると定義された。「最少」は、イヌ外分泌性膵臓またはヒト膵臓腫瘍細胞以外の任意の臓器系における最低数の有害な所見または変化を伴って有効であったこれらの用量および持続時間として定義された。前臨床試験の間に、膵臓腫瘍細胞に対する効力および外分泌性膵臓の切除の両方は、高い血漿薬物レベルを必要としないがむしろ総累積用量(TCD)を必要とする(S,S)-(HO)2DEHSPMの累積効果であることも発見された。そのため、効力について特定の血漿濃度を達成するために用量に頼る他の薬物とは異なり、(S,S)-(HO)2DEHSPMの有効用量は、腫瘍低減のための最少有効TCDを決定するために微妙なバランスを必要とするが、標的外の効果および肝臓毒性は回避される。
【0053】
第1a/1b相試験(実施例4)からのさらなるデータは、NCIにより臨床試験について確立された有害事象共通用語基準(CTCAE)に従って「重度」またはグレード3の評点を有する数名の患者において、上昇した肝臓毒性を示した。肝臓毒性を和らげるが最少有効TCDを維持するために、それぞれの28日治療サイクルの間の本明細書において「短縮された毎日投与養生法」と称される改変された毎日投与養生法は、参照投与スケジュールと比較して、予想外に、患者において毒性プロフィール、特に肝臓毒性を向上することが発見された。「参照投与スケジュール」は、該用語が本明細書で使用される場合、以下の投与スケジュール:少なくとも3回の連続した治療サイクルおよび好ましくは少なくとも5回の連続した治療サイクルおよびより好ましくは少なくとも8回の連続した治療サイクルの間のそれぞれの治療サイクルの連続して5日間(例えば1~5日目)の(S,S)-(HO)2DEHSPMの毎日投与をいい、ここでそれぞれの治療サイクルは28日である。
【0054】
「短縮された毎日投与養生法」は、例えば5回以下の連続した治療サイクル、好ましくは4回以下の連続した治療サイクル、好ましくは3回以下の連続した治療サイクル、好ましくは2回以下の連続した治療サイクルおよび好ましくは1回以下の治療サイクルの間のそれぞれの治療サイクルの連続して5日間(例えば1~5日目)の毎日投与を含み得、ここで治療サイクルは28日である。好ましくは、短縮された毎日投与養生法は、2回以下の連続した治療サイクルおよび好ましくは1回のみの治療サイクルについて使用され、ここで(S,S)-(HO)2DEHSPMは、それぞれの治療サイクルの連続して5日以下の間(例えば1~5日目)に毎日投与される。
【0055】
本発明の任意の治療養生法における(S,S)-(HO)2DEHSPMのそれぞれの用量の量は、参照投与スケジュールの間に送達されるものと同じであり得るか、または参照投与スケジュールの間に使用されるもの未満である用量、例えば1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上だけ低減される(S,S)-(HO)2DEHSPMの用量であり得る。(S,S)-(HO)2DEHSPMの好ましい用量としては、限定されないが、以下の用量、0.2mg/kg/日(0.14mg/kg/日)、0.4mg/kg/日(0.27mg/kg/日)および0.6mg/kg/日(0.41mg/kg/日)が挙げられる。
【0056】
本発明の別の好ましい投与養生法は、同じまたは異なる治療サイクルにおける(S,S)-(HO)2DEHSPMの短縮された毎日投与養生法と(S,S)-(HO)2DEHSPMの定期的な投与の組合せを含む。(S,S)-(HO)2DEHSPMの毎日投与と(S,S)-(HO)2DEHSPMの定期的な投与を組み合わせることを含むこの治療養生法は、本明細書において「組合せ短縮毎日投与養生法/定期的投与養生法(1または複数)」と称される。
【0057】
1つの好ましい組合せ短縮毎日投与養生法/定期的投与養生法は、上述のような(S,S)-(HO)2DEHSPMの短縮毎日投与養生法、続いて1以上の治療サイクルを投与することを含み、ここで(S,S)-(HO)2DEHSPMは、例えば以下の治療サイクルのそれぞれの1、8および15日目に定期的に投与され、ここでそれぞれの治療サイクルは28日である。好ましくは、短縮毎日投与養生法は、2回以下の連続した治療サイクル(例えばサイクル1および2のみ)、続いて1回以上の治療サイクル(例えばサイクル3~8またはそれ以上)の間に投与され、ここで(S,S)-(HO)2DEHSPMは、例えば治療サイクルの1、8および15日目に定期的に投与され、それぞれの治療サイクルは28日である。一態様において、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、患者に、1治療日当たり約0.4mg/kg(約0.27mg/kg)の用量で短縮毎日投与養生法/定期的投与養生法の(S,S)-(HO)2DEHSPMで投与される。他の態様において、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、患者に、短縮毎日投与養生法の間の1治療日当たり約0.4mg/kg(約0.27mg/kg)の用量および定期的投与養生法の間に1治療日当たり約0.3mg/kg(約0.21mg/kg)~約0.5mg/kg(約0.34mg/kg)の用量で、短縮毎日投与養生法/定期的投与養生法で投与される。ある態様において、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、患者に、定期的投与養生法の間に1治療日当たり約0.35mg/kg(約0.24mg/kg)~約0.45mg/kg(約0.31mg/kg)の用量で投与される。好ましくは、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、患者に、定期的投与養生法の間に1治療日当たり約0.4mg/kg(約0.27mg/kg)の用量で投与される。患者は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも8もしくは少なくとも10またはそれ以上の治療サイクルの間、または完全もしくは部分応答、疾患進行もしくは許容され得ない毒性が生じるまで治療され得る。一態様において、患者は、短縮毎日投与養生法の2治療サイクル、続いて定期的投与養生法の4~6治療サイクルの間治療される。
【0058】
本発明の投与養生法のある態様において、例えば上に開示される短縮毎日投与養生法、定期的投与養生法または短縮毎日投与養生法/定期的投与養生法は、患者が、前もって特定された総累積用量(「TCD」)の(S,S)-(HO)2DEHSPMを受けるまで継続される。ある態様において、TCDは、約12mg/kg(約8.2mg/kg)以下または約10mg/kg(約6.9mg/kg)以下である。ある態様において、TCDは、約5mg/kg(約3.4mg/kg)~約12mg/kg(約8.2mg/kg)、約5mg/kg(約3.4mg/kg)~約10mg/kg(約6.9mg/kg)、約8mg/kg(約5.5mg/kg)~約10mg/kg(約6.9mg/kg)、約8.5mg/kg(約5.8mg/kg)~約9.5mg/kg(約6.5mg/kg)である。好ましくは、TCDは、約8.6mg/kg(約5.9mg/kg)~約9.0mg/kg(約6.2mg/kg)または約8.8mg/kg(約6.0mg kg)である。
【0059】
本発明の別の好ましい投与養生法は、1以上の治療サイクルの間に(S,S)-(HO)2DEHSPMの定期的な投与のみを含む(すなわち(S,S)-(HO)2DEHSPMの毎日投与はない)。この治療養生法は、本明細書において「定期的投与のみの養生法(1または複数)」と称される。好ましい定期的投与のみの養生法は、1治療サイクル当たり約5以下~約14以下の投与の間に定期的に(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与することを含み、ここで投与は、連続しない日に生じる。1つの好ましい定期的投与養生法は、任意の1以上の治療サイクルおよび好ましくは少なくとも1、2、5、8またはそれ以上の治療サイクルの間のそれぞれの1、8および15日目に(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与することを含む。別の好ましい定期的投与養生法は、第1および第2の治療サイクルの間の約5以下~約10以下の投与の間に定期的に(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与することを含み、ここで投与は、連続しない日に生じ、その後それ以降の全ての治療サイクル(例えばサイクル3~5またはそれ以上)の1、8および15日目に(S,S)-(HO)2DEHSPMを投与する。
【0060】
別の好ましい投与養生法は、例えば参照投与スケジュールに関連する肝臓毒性と比較して、治療の間に肝臓毒性を逆転するまたは和らげることを意図する。この投与養生法は、本明細書において「救助投与養生法」と称され、1以上の治療サイクルの全てまたは一部の間の時間に(S,S)-(HO)2DEHSPMを用いた投与の量または頻度を低減すること((S,S)-(HO)2DEHSPMを用いた投与を全体的に中断することなど)、次いで参照投与スケジュールの間に使用される用量未満の用量、例えば約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上だけ低減される(S,S)-(HO)2DEHSPMの用量での(S,S)-(HO)2DEHSPMの用量を用いた治療を再開することを含む。
【0061】
本発明の投与養生法は予想外に、例えば参照投与スケジュールと比較して、最少有効TCDを維持しながら、重度の肝臓毒性を予防する。好ましくは、本発明の投与スケジュールは、NCIにより臨床試験について確立されたCTCAEに従ったグレード3またはそれ以上の重度の肝臓毒性を予防する。
【0062】
したがって、上述の投与スケジュールのいずれかは、特に参照投与スケジュールと比較して、TCDが標的腫瘍を低減するのに有効であり、一方で肝臓毒性を少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは98%またはそれ以上だけ低減もするように、種々の方法で組み合され得ることが理解される。例えば、患者は、短縮毎日投与養生法を投与され得るが、患者がグレード3またはそれ以上の重度の肝臓毒性を経験していると思われる場合、患者はその後、1以上のサイクルの間に救助投与養生法を投与され得、次いで1以上のさらなるサイクルの間に最初の短縮毎日投与養生法または代替的に組み合わされた短縮毎日投与養生法/定期的投与養生法または代替的に定期的投与のみの養生法を再開し得る。
【0063】
本発明の投与養生法のいずれか1つは、参照投与スケジュールと組み合され得ることも理解される。例えば、参照投与スケジュールは、サイクル1および2の間に使用され得、続いて救助投与養生法は、1以上のサイクルの間、続いて短縮毎日投与養生法および/または組み合された短縮毎日投与養生法および/または定期的投与のみの養生法は、1以上のサイクルの間である。
【0064】
肝臓毒性の低減に加えて、本発明の投与養生法はまた、予想外に、最少有効TCDを達成しながら、限定されないが胃腸の運動性の低下および膵臓萎縮および機能不全などの患者における他の副作用を低減する。好ましくは、本発明の投与養生法は、以下:標的癌細胞におけるポリアミン、例えばプトレッシン、スペルミンおよびスペルミジンのレベルの低減;腫瘍増殖の阻害;患者の他の臓器への転移の阻害ならびにかかる転移の増殖の阻害の1つ以上を生じる。
【0065】
本発明の投与スケジュールのいずれかは、1以上の治療サイクル、例えば1以上の28日治療サイクルの間に実行され得ることが理解される。好ましくは、患者は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも8および好ましくは少なくとも10もしくはそれ以上の治療サイクルの間、または完全もしくは部分応答、疾患進行もしくは許容され得ない毒性が生じるまで治療される。
【0066】
ゲムシタビン(GEM)およびnab-パクリタキセル(NAB)との併用療法
好ましくは、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、GEMおよびNABの1つまたは両方と組み合わせて投与される。好ましくは、GEMおよび/またはNABは、(S,S)-(HO)2DEHSPMの前、その後またはそれと同時に(S,S)-(HO)2DEHSPMとは別の組成物中で投与される。好ましくは、例えば28日治療サイクルの1、8および15日目など、それぞれの治療サイクルの1日以上の間に、GEMは約1000mg/m2の用量で投与され、NABは125mg/m2の用量で投与されるか、または標準的処方推奨により投与される。好ましくは、GEMおよびNABは一緒になって投与され、両方の化学療法剤の投与は、本明細書において「GEM/NAB」の投与と称される。
【0067】
好ましくは、(S,S)-(HO)2DEHSPMとGEMおよび/またはNABを共投与する場合、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、上述の本発明の投与養生法のいずれか1つ、例えば短縮毎日投与養生法、組合せ短縮毎日投与養生法/定期的投与養生法または定期的投与養生法に従って、1以上の治療サイクルの間に投与され、GEM/NABおよびNABは、1以上の治療サイクルの1、8および15日目に投与される。好ましくは、(S,S)-(HO)2DEHSPMがGEMおよび/またはNABと同じ日に投与される予定であるこれらの治療サイクルの間に、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、GEMおよび/またはNABの投与の前に別の組成物中で投与される。(S,S)-(HO)2DEHSPMは、GEMおよび/またはNABの数分または数時間前に投与され得る。
【0068】
ある態様において、併用療法は、(S,S)-(HO)2DEHSPMを連続して5日間、例えば治療サイクル1および2の第1週の間の1~5日目、ならびにGEM/NABを治療サイクル1および2の1、8および15日目(ここでそれぞれの治療サイクルは28日である)に投与して、続いて(S,S)-(HO)2DEHSPMおよびGEM/NABをサイクル3およびそれ以降の全てのサイクルの間の1、8および15日目に共投与することを含む。
【0069】
1つの好ましい併用療法は、(S,S)-(HO)2DEHSPMを、治療サイクル1および2の1~5日目に、1治療日当たり約0.4mg/kg(約0.27mg/kg)の用量でならびにGEM/NABを治療サイクル1および2の1、8および15日目(ここでそれぞれの治療サイクルは28日である)に投与して、続いて(S,S)-(HO)2DEHSPMを、定期的投与養生法の間に1治療日当たり約0.35mg/kg(約0.24mg/kg)~約0.45mg/kg(約0.31mg/kg)または定期的投与養生法の間に1治療日当たり約0.4mg/kg(約0.27mg/kg)の用量で投与することを含む。好ましくは、GEM/NABは、サイクル3およびそれ以降の全てのサイクルの1、8および15日目に投与される。好ましくは、併用療法は、(S,S)-(HO)2DEHSPMの予め決定されたTCDが上述のように到達されるまで続けられる。ある態様において、TCDは、約12mg/kg(約8.2mg/kg)以下または約10mg/kg(約6.9mg/kg)以下である。ある態様において、TCDは、約5mg/kg(約3.4mg/kg)~約12mg/kg(約8.2mg/kg)、約5mg/kg(約3.4mg/kg)~約10mg/kg(約6.9mg/kg)、約8mg/kg(約5.5mg/kg)~約10mg/kg(約6.9mg/kg)、約8.5mg/kg(約5.8mg/kg)~約9.5mg/kg(約6.5mg/kg)である。好ましくは、TCDは、約8.6mg/kg(約5.9mg/kg)~約9.0mg/kg(約6.2mg/kg)または約8.8mg/kg(約6.0mg kg)である。
【0070】
好ましくは、種々の癌を治療および/または予防するためにGEMおよびNABの1つまたは両方と組み合わされる(S,S)-(HO)2DEHSPMは、個々の療法自体の投与と関連する任意の有害な効果を最小化するように働く。例示により、GEMおよび/またはNABと組み合わせて、短縮毎日治療養生法、組合せ短縮毎日治療養生法/定期的投与養生法、定期的投与のみの養生法または救助投与養生法を使用する(S,S)-(HO)2DEHSPMの追加は、治療目標を達成するために必要とされるGEMまたはNABの量の低減を可能にし得、したがってGEMおよびNABに関連する重度および致死の有害反応を低減(またはさらに排除)する。
【0071】
例えば、骨髄抑制、疲労および構成的な症状、ならびに末梢神経障害(nab-パクリタキセル)などのGEMおよびNABの同様の毒性プロフィールは、しばしば1つまたは両方の薬物の用量低減または中断を必要とする。(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法の前臨床および臨床試験は、骨髄抑制と末梢神経障害のいずれも観察されないかったことを示し(実施例3)、これらの毒性が、(S,S)-(HO)2DEHSPM、GEMおよびNABの組合せを用いた治療により悪化する可能性が低いことを示唆する。したがって、GEMおよびNABと組み合わせて投与される(S,S)-(HO)2DEHSPMは、腫瘍低減および退縮において予期されない相乗効果を伴って、標準的な化学療法を用いた治療に有効な選択肢を提供する。
【0072】
(S,S)-(HO)2DEHSPMおよび本発明の組合せ治療養生法は、好ましくは1以上のサイクルの間に、患者が治癒するまでまたは患者がもはや治療養生法から利益を受けなくなるまで患者に投与される。
【0073】
さらなる相補的併用療法
本発明の(S,S)-(HO)2DEHSPM投与養生法は、本発明に従った単一療法またはGEM/NABとの併用療法として使用され得るが、本発明の文脈における他の抗癌治療と本発明の投与養生法の組合せも企図される。(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法としての本発明の投与養生法と組み合され得るかまたは(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NAB併用療法としての本発明の投与養生法とさらに組み合され得るさらなる抗癌治療の例としては、以下の抗癌療法が挙げられる。
【0074】
さらなる細胞傷害性および化学療法剤
好ましくは、本発明の方法は、限定されないがアルキル化剤、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗剤、他の抗腫瘍抗生物質ならびに植物および他の天然の供給源由来の薬剤を含む他の細胞傷害性/化学療法剤を用いた投与とさらに組み合される(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/Nab併用療法の投与を含む。
【0075】
アルキル化剤は、生物学的に重要な分子中のアミノ、カルボキシル、スルフヒドリルおよびホスフェート基と共有結合を形成することにより細胞機能を損なう薬物である。アルキル化の最も重要な部位は、DNA、RNAおよびタンパク質である。アルキル化剤は、活性について細胞増殖に依存するが、細胞周期段階特異的ではない。本発明における使用に適切なアルキル化剤としては、限定されないが、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えばチオテパ)、アルキルアルコンスルホナート(alkyl alkone sulfonate) (例えばブスルファン)、ニトロソウレア(例えばBCNU、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(例えばアルトレタミン、ダカルバジンおよびプロカルバジン)、および白金化合物(例えばカルボプラチン、オキサリプラチンおよびシスプラチン)が挙げられる。
【0076】
アドリアマイシンなどの抗腫瘍抗生物質は、グアニン-シトシンおよびグアニン-チミン配列でDNAにインターカレートし、鎖切断を引き起こす自発的酸化および遊離酸素ラジカルの形成を生じる。本発明における使用に適切な他の抗生物質剤としては、限定されないが、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシンおよびプリカトマイシン(plicatomycin)が挙げられる。
【0077】
本発明における使用に適切な代謝拮抗剤としては、限定されないが、フロクスウリジン、フルオロウラシル、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシウレア、チオグアニン、メルカプトプリン、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビンおよびアスパラギナーゼが挙げられる。
【0078】
植物由来剤としては、イチイ属の植物の針状葉から抽出された前駆体の半合成誘導体であるタキサンが挙げられる。これらの薬物は、新規の14員環であるタキサンを有する。微小管分解を引き起こすビンカアルカロイドとは異なり、タキサン(例えばタキソール)は、微小管集合および安定性を促進し、そのために有糸分裂における細胞周期を妨げる。他の植物由来剤としては、限定されないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン(vinzolidine)、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。
【0079】
免疫療法組合せ
他の治療的抗癌治療養生法としては、養子細胞移植養生法、抗原特異的予防接種または抗体投与、DNA修復タンパク質の阻害(例えば核酵素ポリ(アデノシン5'-ジホスホ-リボース)ポリメラーゼの阻害剤[「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」PARP阻害剤」)および免疫チェックポイント阻害分子の遮断、例えば細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4 (CTLA-4)およびプログラムドデス(programmed death)1 (PD-1)抗体またはそれらのリガンド(PDL-1)などの治療的免疫療法が挙げられる。
【0080】
免疫チェックポイントタンパク質は、免疫系においてT細胞機能を制御する。T細胞は、細胞媒介免疫において中心的な役割を果たす。チェックポイントタンパク質は、T細胞にシグナルを送り、T細胞機能を本質的にオフにするかまたは阻害する特異的なリガンドと相互作用する。癌細胞は、腫瘍微小環境に進入するチェックポイントタンパク質をT細胞の表面上で発現するT細胞の制御を生じる、癌細胞の表面上のチェックポイントタンパク質の高い発現レベルを駆動して、抗癌免疫応答を抑制することによりこの系の利益を受ける。このように、本明細書において「免疫チェックポイントタンパク質(ICP)阻害剤」と称される薬剤によるチェックポイントタンパク質の阻害は、T細胞機能の回復および癌細胞に対する免疫応答を生じる。チェックポイントタンパク質の例としては、限定されないが:CTLA-4、PDL-1、PDL-2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK 1、CHK2、A2aR、OX40、B-7ファミリーリガンドまたはそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK 1、CHK2、OX40、A2aR、B-7ファミリーリガンドまたはそれらの組合せであり得るチェックポイントタンパク質のリガンドと相互作用する。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、生物学的治療剤または小分子である。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合タンパク質またはそれらの組合せである。好ましくは、PD1チェックポイント阻害剤は、ニボルマブおよびペンブロリズマブなどの1つ以上の抗PD-1抗体を含む。
【0081】
本明細書に記載される併用療法の方法は、(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABと組み合わせて少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を投与することを含む。本発明は、チェックポイント阻害剤が、(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABと組み合わせて有効量で投与される場合に標的チェックポイントタンパク質の1つ以上の活性を阻害する限り、任意の特定のチェックポイント阻害剤に限定されない。いくつかの例において、例えば相乗効果のために、チェックポイント阻害剤によるチェックポイントタンパク質の最小阻害は、(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABの存在下で十分であり得る。多くのチェックポイント阻害剤が当該技術分野において公知であり、例えば以下:
・イピリムマブ(YERVOY(登録商標))
・ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))
・アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))
・デュルバルマブ(IMFINZ(登録商標))
・アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))
・ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))
は、FDAに承認されたチェックポイントタンパク質阻害剤のリストである。
【0082】
本発明の好ましい治療養生法は、本発明に従って投与される(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABと、チェックポイント阻害剤であるペンブロリズマブを組み合わせる。好ましくは、ペンブロリズマブは、本発明による治療養生法の各治療サイクルの1日目に投与される。好ましくは、200mgのペンブロリズマブは、製造業者の推奨に従って、一般的に3週または21日毎に1回投与される。
【0083】
抗体
好ましくは、(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABの投与は、治療的抗体と組み合され得る。抗体およびその抗原結合断片の作製方法は、当該技術分野で周知であり、例えばそれらの全てがそれらの全体において参照により本明細書に援用される米国特許第7,247,301、US2008/0138336および米国特許第7,923,221に開示される。本発明の方法に使用され得る治療的抗体としては、限定されないが、臨床試験または臨床使用のための開発における使用について承認される当該技術分野で認識される治療的抗体のいずれかが挙げられる。いくつかの態様において、1つより多くの治療的抗体が本発明の併用療法に含まれ得る。
【0084】
治療的抗体の非限定的な例としては、限定されることなく、以下:
・HER-2/neu陽性乳癌または転移性乳癌を治療するために使用されるトラスツズマブ(Genentech, South San Francisco, Calif.によるHERCEPTINTM);
・結腸直腸癌、転移性結腸直腸癌、乳癌、転移性乳癌、非小細胞肺癌または腎細胞癌を治療するために使用されるベバシズマブ(GenentechによるAVASTINTM);
・非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ球性白血病を治療するために使用されるリツキシマブ(GenentechによるRITUXANTM);
・乳癌、前立腺癌、非小細胞肺癌または卵巣癌を治療するために使用されるペルツズマブ(GenentechによるOMNITARGTM);
・結腸直腸癌、転移性結腸直腸癌、肺癌、頭頸部癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、脳癌、膵臓癌、食道癌、腎細胞癌、前立腺癌、子宮頸癌または膀胱癌を治療するために使用され得るセツキシマブ(ImClone Systems Incorporated, New York, N.Y.によるERBITUXTM);
・結腸直腸癌、頭頸部癌および他の起こり得る癌標的を治療するために使用されるIMC-1C11 (ImClone Systems Incorporated);
・CD20陽性、濾胞性であり得る非ホジキンリンパ腫、その疾患がリツキシマブに対して治療抵抗性であり、化学療法後に再発したトランスフォーメーションありおよび無しの非ホジキンリンパ腫を治療するために使用されるトシツモマブならびにトシツモマブおよびヨウ素I131 (Corixa Corporation, Seattle, Wash.によるBEXXARTM);
・再発濾胞性リンパ腫;再発性もしくは治療抵抗性の低グレードもしくは濾胞性非ホジキンリンパ腫;またはトランスフォームされたB細胞非ホジキンリンパ腫を含み得るリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を治療するために使用されるIn111イブリツモマブ(ibirtumomab)チウキセタン;Y90イブリツモマブ チウキセタン; In111イブリツモマブ チウキセタンおよびY90イブリツモマブ チウキセタン(Biogen Idec, Cambridge, Mass.によるZEVALINTM);
・非小細胞肺癌または子宮頸癌を治療するための治療に使用されるEMD 7200 (EMD Pharmaceuticals, Durham, N.C.);
・ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫を治療するために使用されるSGN-30 (Seattle Genetics, Bothell, Wash.による、CD30抗原を標的化する、遺伝子工学的に作り変えられたモノクローナル抗体);
・非小細胞肺癌を治療するために使用されるSGN-15 (Seattle Geneticsによる、ドキソルビシンにコンジュゲートするルイスγ関連抗原を標的化する、遺伝子工学的に作り変えられたモノクローナル抗体);
・急性骨髄性白血病(AML)および骨髄異形成症候群(MDS)を治療するために使用されるSGN-33 (Seattle Geneticsによる、CD33抗原を標的化するヒト化抗体);
・多発性骨髄腫または非ホジキンリンパ腫を治療するために使用されるSGN-40 (Seattle Geneticsによる、CD40抗原を標的化するヒト化モノクローナル抗体);
・非ホジキンリンパ腫を治療するために使用されるSGN-35 (Seattle Geneticsによる、アウリスタチンEにコンジュゲートするCD30抗原に標的化する、遺伝子工学的に作り変えられたモノクローナル抗体);
・腎癌および鼻咽腔癌を治療するために使用されるSGN-70 (Seattle Geneticsによる、CD70抗原を標的化するヒト化抗体);
・SGN-75 (Seattle Geneticsによる、SGN70抗体およびアウリスタチン誘導体で構成されるコンジュゲート);ならびに
・黒色腫または転移性黒色腫を治療するために使用されるSGN-17/19 (Seattle Geneticsによる、メルファランプロドラッグにコンジュゲートする抗体および酵素を含む融合タンパク質)
が挙げられる。
【0085】
本発明の方法において使用される治療用抗体は、本明細書に記載されるものに限定されない。例えば、以下の承認された治療用抗体:未分化大細胞リンパ腫およびホジキンリンパ腫のためのブレンツキシマブベドチン(ADCETRISTM)、黒色腫のためのイピリムマブ(MDX-101;YERVOYTM)、慢性リンパ性白血病のためのオファツムマブ(ARZERRATM)、結腸直腸癌のためのパニツムマブ(VECTIBIXTM)、慢性リンパ性白血病のためのアレムツズマブ(CAMPATHTM)、慢性リンパ性白血病のためのオファツムマブ(ARZERRATM)、急性骨髄性白血病のためのゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARGTM)も、本発明の方法において使用され得る。
【0086】
本発明に従う使用のための抗体はまた、免疫細胞により発現される分子を標的化し得、例えば、CTLA4を標的化し、腫瘍拒絶、再攻撃からの保護および増強された腫瘍特異的T細胞応答の効果を有するトレメリムマブ(CP-675,206)およびイピリムマブ(MDX-010);OX40を標的化し、腫瘍部位で抗原特異的CD8+ T細胞を増加させ、腫瘍拒絶を増強するOX86;PD 1を標的化し、腫瘍特異的記憶T細胞を維持および増殖する効果を有し、NK細胞を活性化するCT-011;CD137を標的化し、確立された腫瘍の退縮ならびにCD8+ T細胞の増殖および維持を引き起こすBMS-663513、ならびにCD25を標的化し、CD4+CD25+FOXP3+Tregの一過性の涸渇を引き起こし、腫瘍退縮を増大させ、エフェクターT細胞の数を増加させるダクリズマブ(ZENAPAXTM)であるがこれらに限定されない。これらの抗体のより詳細な考察は、例えば、Weiner et al., Nature Rev. Immunol 2010; 10:317-27に見出され得る。
【0087】
好ましくは、抗体は、限定されないが、抗TNF抗体、抗IL-1Ra受容体標的化抗体、抗IL-1抗体、抗IL-6受容体抗体および抗IL-6抗体を含む抗体を標的化する前炎症性および/または前腫瘍形成性サイトカインである。好ましくは、抗体としては、前炎症性Tヘルパー型17細胞(TH17)を標的化するものが挙げられる。
【0088】
治療用抗体は、抗体の断片;抗体を含む複合体;または抗体を含むコンジュゲートであり得る。抗体は任意に、キメラまたはヒト化または完全ヒトであり得る。
【0089】
治療タンパク質およびポリペプチド
好ましくは、本発明の方法は、治療タンパク質またはペプチドと組み合わせた本発明の治療養生法による(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABの投与を含む。癌の治療に有効な治療タンパク質は当該技術分野で周知である。好ましくは、治療ポリペプチドまたはタンパク質は、それ自体でまたは他の化合物の存在下で細胞死を引き起こす「自殺タンパク質」である。
【0090】
かかる自殺タンパク質の代表的な例は、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼである。さらなる例としては、水痘帯状疱疹ウイルスのチミジンキナーゼ、細菌遺伝子シトシンデアミナーゼ(これは、5-フルオロシトシンを高度に毒性の化合物である5-フルオロウラシルに変換する)、p450オキシドレダクターゼ、カルボキシペプチダーゼG2、β-グルクロニダーゼ、ペニシリン-V-アミダーゼ、ペニシリン-G-アミダーゼ、β-ラクタマーゼ、ニトロレダクターゼ、カルボキシペプチダーゼA、リナマラーゼ(β-グルコシダーゼとも称される)、大腸菌gpt遺伝子、および大腸菌Deo遺伝子が挙げられるが、他のものが当該分野において公知である。いくつかの態様において、自殺タンパク質は、プロドラッグを毒性化合物に変換する。
【0091】
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」は、毒性生成物、即ち腫瘍細胞に対して毒性のものに変換され得る本発明の方法において有用な任意の化合物を意味する。プロドラッグは、自殺タンパク質により毒性生成物に変換される。かかるプロドラッグの代表的な例としては:チミジンキナーゼに対してガンシクロビル、アシクロビルおよびFIAU(1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウラシル(iod-ouracil));オキシドレダクターゼに対してイホスファミド;VZV-TKに対して6-メトキシプリンアラビノシド;シトシンデアミナーゼに対して5-フルオロシトシン;β-グルクロニダーゼに対してドキソルビシン;ニトロレダクターゼに対してCB 1954およびニトロフラゾン;ならびにカルボキシペプチダーゼAに対してN-(シアノアセチル)-L-フェニルアラニンまたはN-(3-クロロプロピオニル)-L-フェニルアラニンが挙げられる。プロドラッグは、当業者により容易に投与され得る。当業者は、プロドラッグの投与のための最も適切な用量および経路を容易に決定し得る。
【0092】
好ましくは、治療タンパク質またはポリペプチドは、癌サプレッサ、例えばp53またはRbであるか、あるいはかかるタンパク質またはポリペプチドをコードするヌード酸(nude acid)である。当業者は、広範囲のかかる癌サプレッサ、ならびにどのようにそれらおよび/またはそれらをコードする核酸を得るかを知っている。
【0093】
抗癌/治療タンパク質またはポリペプチドの他の例としては、プロアポトーシス治療的タンパク質およびポリペプチド、例えば、p15、p16またはp21WAF-1が挙げられる。
【0094】
サイトカインおよびそれらをコードする核酸も、治療的タンパク質およびポリペプチドとして使用され得る。例としては:GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子);TNF-α(腫瘍壊死因子α);IFN-αおよびIFN-γを含むがこれらに限定されないインターフェロン;ならびにインターロイキン1(IL-1)、インターロイキンβ(IL-β)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン14(IL-14)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン16(IL-16)、インターロイキン18(IL-18)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン24(IL-24)を含むがこれらに限定されないインターロイキンが挙げられるが、他の態様が当該分野において公知である。
【0095】
細胞殺傷性遺伝子のさらなる例としては、限定されないが変異サイクリンG1遺伝子が挙げられる。例として、細胞殺傷性遺伝子は、サイクリンG1タンパク質のドミナントネガティブ変異(例えば、WO/01/64870)であり得る。
【0096】
ワクチン
好ましくは、本発明の治療養生法は、癌に対する宿主免疫を生じるための、癌特異的免疫応答、例えば自然および獲得免疫応答を刺激するための癌ワクチンの投与と組み合された(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABの投与を含む。例示的なワクチンとしては、限定されないが、例えば抗原ワクチン、全細胞ワクチン、樹状細胞ワクチンおよびDNAワクチンが挙げられる。ワクチンの特定の型に応じて、ワクチン組成物は、ワクチンに対する被験体の免疫応答を増強することが公知である1つ以上の適切なアジュバントを含み得る。
【0097】
例えば、ワクチンは細胞ベースであり得、即ち抗原を同定して得るために患者自身の癌細胞からの細胞を使用して作製され得る。例示的なワクチンとしては、腫瘍細胞ベースのおよび樹状細胞ベースのワクチンが挙げられ、ここで被験体からの活性化免疫細胞は、他のタンパク質と共に同じ被験体に戻して送達され、これらの腫瘍抗原感作(primed)免疫細胞の免疫活性化をさらに容易にする。腫瘍細胞ベースのワクチンとしては、全腫瘍細胞および遺伝子改変腫瘍細胞が挙げられる。全腫瘍細胞ワクチンは任意に、抗原提示を増強するために、例えば腫瘍細胞または腫瘍溶解物)のいずれかを照射することにより、プロセシング(processed)され得る。ワクチン投与はまた、使用するワクチンの型に依存して、カルメット-ゲラン(BCG)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のアジュバントを伴い得る。プラスミドDNAワクチンも使用され得、直接注射または遺伝子銃(biolistically)を介して投与され得る。ペプチドワクチン、ウイルス遺伝子転移ベクターワクチンおよび抗原改変樹状細胞(DC)も使用のために企図される。
【0098】
好ましくは、ワクチンは治療的癌ペプチドベースのワクチンである。ペプチドワクチンは、公知の配列を使用するかまたは被験体自身の腫瘍(1つまたは複数)から単離した抗原から作製され得、新生抗原および改変抗原を含み得る。例示的な抗原ベースのワクチンとしては、抗原が腫瘍特異的抗原であるものが挙げられる。例えば、腫瘍特異的抗原は、特に癌精巣抗原、分化抗原および広く生じる過剰発現腫瘍関連抗原から選択され得る。腫瘍関連抗原からのペプチドに基づく組換えペプチドワクチンは、本方法において使用される場合、アジュバントまたは免疫モジュレーターと共に投与され得るかまたは製剤化され得る。ペプチドベースのワクチンにおける使用のための例示的な抗原としては以下のものが挙げられるが、このリストは純粋に例示的であることを意図するために、これらに限定されない。例えば、ペプチドワクチンは、成体組織では通常サイレンシングされているが、腫瘍細胞で転写的に再活性化される遺伝子によりコードされるMAGE、BAGE、NY-ESO-1およびSSX-2等の癌精巣抗原を含み得る。あるいは、ペプチドワクチンは、組織分化関連抗原、即ち正常な組織起源でありかつ正常および腫瘍組織の両方に共有される抗原を含み得る。例えば、ワクチンは、gp100、Melan-A/Mart-1、MAGE-3またはチロシナーゼ等の黒色腫関連抗原を含み得るか;あるいはPSAまたはPAP等の前立腺癌抗原を含み得る。ワクチンは、マンマグロビン-A等の乳癌関連抗原を含み得る。本方法における使用のためのワクチンに含まれ得る他の腫瘍抗原としては、例えばCEA、MUC-1、HER1/Nue、hTERT、rasおよびB-rafが挙げられる。ワクチンに使用し得る他の適切な抗原としては、癌幹細胞または上皮-間葉遷移プロセスに関連するSOX-2およびOCT-4が挙げられる。
【0099】
抗原ワクチンとしては、多抗原および単一抗原ワクチンが挙げられる。例示的な癌抗原としては、約5~約30アミノ酸または約6~25アミノ酸または約8~20アミノ酸を有するペプチドが挙げられ得る。
【0100】
上述のように、免疫刺激アジュバント(RSLAIL-2とは異なる)は、ワクチン、特に腫瘍関連抗原ベースのワクチンにおいて使用され得、有効な免疫応答の生成を補助する。例えば、ワクチンは、免疫の改善を補助するために、病原体関連分子パターン(PAMP)を組み込み得る。さらなる適切なアジュバントとしては、モノホスホリル脂質Aまたは他のリポ多糖;例えば、イミキモド、レシキモド(R-848)、TLR3、IMO-8400およびリンタトリモド等のトール様受容体(TLR)アゴニストが挙げられる。使用に適切なさらなるアジュバントとしては、熱ショックタンパク質または熱ショックタンパク質の阻害剤が挙げられる。
【0101】
遺伝子ワクチンは、典型的に、発現カセットを保持するウイルスまたはプラスミドDNAベクターを使用する。投与の際、該ベクターは、炎症性応答の一部として体細胞または樹状細胞をトランスフェクトし、それにより、交差提示または直接の抗原提示を生じる。好ましくは、遺伝子ワクチンは、1回の免疫において複数の抗原の送達を提供するものである。遺伝子ワクチンとしては、DNAワクチン、RNAワクチンおよびウイルスベースのワクチンが挙げられる。
【0102】
本方法における使用のためのDNAワクチンは、腫瘍抗原を送達および発現するように構築される細菌プラスミドである。DNAワクチンは、任意の適切な投与の様式、例えば皮下または皮内注射で投与され得るが、リンパ節に直接注射されることもあり得る。送達のさらなる様式としては、例えば遺伝子銃、エレクトロポレーション、超音波、レーザー、リポソーム、微粒子およびナノ粒子が挙げられる。
【0103】
好ましくは、ワクチンは、新生抗原または複数の新生抗原を含む。好ましくは、ワクチンは、新生抗原ベースのワクチンである。好ましくは、新生抗原ベースのワクチン(NBV)組成物は、複数の癌新生抗原を一列に(in tandem)にコードし得、ここで各新生抗原は、癌細胞において変異したタンパク質由来のポリペプチド断片である。例えば、新生抗原ワクチンは、複数の免疫原性ポリペプチド断片をコードする核酸構築物を含む第1のベクターを含み得、タンパク質の各々は癌細胞において変異し、各々の免疫原性ポリペプチド断片は、元のタンパク質からの可変数の野生型アミノ酸に隣接される1つ以上の変異アミノ酸を含み、各ポリペプチド断片は、頭から尾へと連結され、免疫原性ポリペプチドを形成する。免疫原性ポリペプチドを形成する免疫原性ポリペプチド断片の各々の長さは変化し得る。
【0104】
ウイルス遺伝子転移ベクターワクチンも使用され得;かかるワクチンにおいて、組換え遺伝子操作(recombinant engineered)ウイルス、酵母、細菌等は、患者の免疫細胞に癌特異的タンパク質を導入するために使用される。腫瘍溶解性または非腫瘍溶解性であり得るベクターベースのアプローチにおいて、ベクターは、例えば、その固有の免疫刺激特性のために、ワクチンの有効性を増大し得る。例示的なウイルスベースのベクターとしては、ワクシニア、改変ワクシニア株Ankaraおよびアビポックスウイルス等のポックスウイルス科からのものが挙げられる。複製コンピテントワクシニア感作ベクターおよび複製非コンピテントフォウルボックス(fowlbox)ブーストベクターを含む癌ワクチンであるPROSTVACも使用に適切である。各ベクターは、PSAならびに集合的にTRICOMと言われる3つの共刺激分子であるCD80、CD54およびCD58についてのトランスジーンを含む。他の適切なベクターベースの癌ワクチンとしては、TrovaxおよびTG4010(MUC1抗原およびIL-2をコードする)が挙げられる。使用のためのさらなるワクチンとしては、細菌および酵母ベースのワクチン、例えば組換えリステリア菌およびサッカロミセス・セレビシエが挙げられる。
【0105】
前記のワクチンは、効力を増大するためにアジュバントおよび他の免疫ブースターと組み合わされ得るかおよび/または製剤化され得る。特定のワクチンに応じて、投与は、腫瘍内または非腫瘍内(即ち全身性)のいずれかであり得る。
【0106】
小分子
好ましくは、本発明の治療養生法は、抗癌小分子の投与と組み合わされた(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABの投与を含む。癌の治療に有効な小分子は当該分野で周知であり、腫瘍増殖に関与する因子、例えばEGFR、ErbB2(Her2/neuとしても公知) ErbB3、ErbB4またはTNFのアンタゴニストを含む。非限定的な例としては、1つ以上のチロシンキナーゼ受容体、例えばVEGF受容体、FGF受容体、EGF受容体およびPDGF受容体を標的化する小分子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)が挙げられる。
【0107】
多くの治療的小分子RTKIは当該分野で公知であり、バタラニブ(PTK787)、エルロチニブ(TARCEVATM)、OSI-7904、ZD6474(ZACTIMATM)、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(SUTENTTM)、セマキサニブ(SU5416)、AMG706、AG013736、Imatinib(GLEEVECTM)、MLN-518、CEP-701、PKC-412、Lapatinib(GSK572016)、VELCADETM、AZD2171、ソラフェニブ(NEXAVARTM)、XL880およびCHIR-265が挙げられるがこれらに限定されない。小分子タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、例えばJiang et al., Cancer Metastasis Rev. 2008; 27:263-72に開示されるものも本発明の方法を実施するのに有用である。かかる阻害剤は、例えばHSP2、PRL、PTP1BまたはCdc25ホスファターゼを標的化し得る。
【0108】
Bcl-2/Bcl-XLを標的化する小分子、例えばUS2008/0058322に開示されるものも本発明の方法を実施するのに有用である。本発明における使用のためのさらなる例示的な小分子は、Zhang et al. Nature Reviews: Cancer 2009; 9:28-39に開示される。特に、免疫原性細胞死を生じる化学療法剤、例えばアントラサイクリン(Kepp et al., Cancer and Metastasis Reviews 2011; 30:61-9)は、延長されたPK IL-2との相乗効果に良好に適している。
【0109】
癌抗原
好ましくは、本発明の方法は、例えば癌ワクチンとしての使用(例えばOverwijk, et al. Journal of Experimental Medicine 2008; 198:569-80参照)のための癌抗原の投与と組み合わされた(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABの投与を含む。予防接種に使用され得る他の癌抗原としては、(i)腫瘍特異的抗原、(ii)腫瘍関連抗原、(iii)腫瘍特異的抗原を発現する細胞、(iv)腫瘍関連抗原を発現する細胞、(v)腫瘍上の胎児抗原、(vi)自己腫瘍細胞、(vii)腫瘍特異的膜抗原、(viii)腫瘍関連膜抗原、(ix)成長因子受容体、(x)成長因子リガンドおよび(xi)癌に関連する任意の他の型の抗原または抗原提示細胞もしくは材料が挙げられるがこれらに限定されない。
【0110】
癌抗原は、上皮癌抗原、(例えば、乳、胃腸、肺)、前立腺特異的癌抗原(PSA)または前立腺特異的膜抗原(PSMA)、膀胱癌抗原、肺(例えば、小細胞肺)癌抗原、結腸癌抗原、卵巣癌抗原、脳の癌抗原、胃癌抗原、腎細胞癌抗原、膵臓癌抗原、肝臓癌抗原、食道癌抗原、頭頸部癌抗原あるいは結腸直腸癌抗原であり得る。
【0111】
別の態様において、癌抗原は、リンパ腫抗原(例えば、非ホジキンリンパ腫またはホジキンリンパ腫)、B細胞リンパ腫癌抗原、白血病抗原、骨髄腫(即ち多発性骨髄腫または形質細胞骨髄腫)抗原、急性リンパ芽球性白血病抗原、慢性骨髄性白血病抗原または急性骨髄性白血病抗原である。記載された癌抗原はほんの例示であり、その任意の癌抗原が本発明において標的化され得る。
【0112】
好ましくは、癌抗原は、全てのヒト腺癌:膵臓、結腸、乳、卵巣、肺、前立腺、頭頸部、例えば多発性骨髄腫およびいくつかのB細胞リンパ腫上で見出されるムチン-1タンパク質またはペプチド(MUC-1)である。炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎のいずれかを有する患者は、結腸直腸癌を発症する増大したリスクを有する。MUC-1は、I型膜貫通糖タンパク質である。MUC-1の主な細胞外部分は、免疫原性エピトープを含む20アミノ酸からなる多数のタンデムリピートを有する。いくつかの癌において、MUC-1は、免疫系により認識される非グリコシル化形態で曝露される(Gendler et al., J Biol Chem 1990; 265:15286-15293)。
【0113】
別の態様において、癌抗原は、黒色腫および結腸癌と関連する変異B-Raf抗原である。大多数のこれらの変異は、ヌクレオチド1796でT-Aの単一ヌクレオチド変化を示し、これは、B-Rafの活性化セグメント内の残基599でバリンからグルタミン酸への変化を生じる。Rafタンパク質はまた、全てのヒトの癌の約1/3に存在するその腫瘍形成形態である活性化Rasタンパク質のエフェクターとして癌に間接的に関連する。正常な非変異B-Rafは、細胞膜から核へとシグナルをリレーする細胞シグナル伝達に関与する。タンパク質は通常、シグナルをリレーするのに必要な場合にのみ活性である。対照的に、変異体B-Rafは、定常的に活性であり、シグナル伝達リレーを破壊するものとして報告されている(Mercer and Pritchard, Biochim Biophys Acta (2003) 1653(1):25-40; Sharkey et al., Cancer Res. (2004) 64(5):1595-1599)。
【0114】
好ましくは、癌抗原は、ヒト上皮成長因子受容体-2(HER-2/neu)抗原である。HER-2/neuを過剰発現する細胞を有する癌は、HER-2/neu+癌と言われる。例示的なHER-2/neu+癌としては、前立腺癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、皮膚癌、肝臓癌(例えば、肝細胞腺癌)、腸の癌および膀胱癌が挙げられる。
【0115】
HER-2/neuは、上皮成長因子受容体(EGFR)と40%の相同性を有する約645aaの細胞外結合ドメイン(ECD)、高度に疎水性の膜貫通アンカードメイン(TMD)、およびEGFRと80%の相同性を有する約580aaのカルボキシ末端細胞内ドメイン(ICD)を有する。HER-2/neuのヌクレオチド配列はGENBANKTMで入手可能である。アクセッション番号AH002823(ヒトHER-2遺伝子、プロモーター領域およびエキソン1);M16792(ヒトHER-2遺伝子、エキソン4):M16791(ヒトHER-2遺伝子、エキソン3);M16790(ヒトHER-2遺伝子、エキソン2);およびM16789(ヒトHER-2遺伝子、プロモーター領域およびエキソン1)。HER-2/neuタンパク質についてのアミノ酸配列はGENBANKTMで入手可能である。アクセッション番号AAA58637。これらの配列に基づいて、当業者は、有効な免疫応答を生じる適切なエピトープを見出すために、公知のアッセイを使用してHER-2/neu抗原を開発し得る。
【0116】
例示的なHER-2/neu抗原としては、p369-377(HER-2/neu由来HLA-A2ペプチド);dHER2(Corixa Corporation);li-Key MHCクラスIIエピトープハイブリッド(Generex Biotechnology Corporation);ペプチドP4(アミノ酸378~398);ペプチドP7(アミノ酸610~623);ペプチドP6(アミノ酸544~560)とP7の混合物;ペプチドP4、P6およびP7の混合物;HER2[9754]等が挙げられる。
【0117】
好ましくは、癌抗原は、上皮成長因子受容体(EGFR)抗原である。EGFR抗原は、EGFRバリアント1抗原、EGFRバリアント2抗原、EGFRバリアント3抗原および/またはEGFRバリアント4抗原であり得る。EGFRを過剰発現する細胞を有する癌は、EGFR癌と言われる。例示的なEGFR癌としては、肺癌、頭頸部癌、結腸癌、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、脳の癌および膀胱癌が挙げられる。
【0118】
好ましくは、癌抗原は、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)抗原である。VEGFRは、癌誘導脈管形成の調節因子と考えられている。VEGFRを過剰発現する細胞を有する癌は、VEGFR+癌と呼ばれる。例示的なVEGFR+癌としては、乳癌、肺癌、小細胞肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、白血病およびリンパ性白血病が挙げられる。
【0119】
好ましくは、癌抗原は、前立腺特異的抗原(PSA)および/または前立腺特異的膜抗原(PSMA)であり、これらはアンドロゲン非依存性前立腺癌において優勢に発現される。
【0120】
好ましくは、癌抗原は、Gp-100糖タンパク質100(gp 100)であり、これは黒色腫に関連する腫瘍特異的抗原である。
【0121】
好ましくは、癌抗原は、癌胎児(CEA)抗原である。CEAを過剰発現する細胞を有する癌はCEA+癌と言われる。例示的なCEA+癌としては、結腸直腸癌、胃癌および膵臓癌が挙げられる。例示的なCEA抗原としては、CAP-1(即ちCEA aa 571~579)、CAP1-6D、CAP-2(即ちCEA aa 555~579)、CAP-3(即ちCEA aa 87~89)、CAP-4(CEA aa 1~11)、CAP-5(即ちCEA aa 345~354)、CAP-6(即ちCEA aa 19~28)およびCAP-7が挙げられる。
【0122】
好ましくは、癌抗原は、炭水化物抗原19-9(CA 19-9)である。CA 19-9は、ルイスA血液型物質に関連するオリゴ糖であり、結腸直腸癌に関連する。
【0123】
好ましくは、癌抗原は、黒色腫癌抗原である。黒色腫癌抗原は、黒色腫の治療に有用である。例示的な黒色腫癌抗原としては、MART-1(例えばMART-1 26~35ペプチド、MART-1 27~35ペプチド);MART-1/Melan A;pMel17;pMel17/gp100;gp100(例えばgp 100ペプチド280~288、gp 100ペプチド154~162、gp 100ペプチド457~467);TRP-1;TRP-2;NY-ESO-1;p16;β-カテニン;mum-1等が挙げられる。
【0124】
好ましくは、癌抗原は、変異体または野生型rasペプチドである。変異体rasペプチドは、変異体K-rasペプチド、変異体N-rasペプチドおよび/または変異体H-rasペプチドであり得る。rasタンパク質における変異は、典型的に12位(例えばグリシンの代わりにアルギニンまたはバリン)、13位(例えばグリシンの代わりにアスパラギン)、61位(例えばグルタミンからロイシンへの)および/または59位で生じる。変異体rasペプチドは、肺癌抗原、胃腸癌抗原、肝癌抗原、骨髄癌抗原(例えば急性白血病、脊髄形成異常)、皮膚癌抗原(例えば黒色腫、基底細胞、扁平上皮細胞)、膀胱癌抗原、結腸癌抗原、結腸直腸癌抗原および腎細胞癌抗原として有用であり得る。
【0125】
本発明の別の態様において、癌抗原は、変異体および/または野生型p53ペプチドである。p53ペプチドは、結腸癌抗原、肺癌抗原、乳癌抗原、肝細胞癌癌抗原、リンパ腫癌抗原、前立腺癌抗原、甲状腺癌抗原、膀胱癌抗原、膵臓癌抗原および卵巣癌抗原として使用され得る。
【0126】
癌抗原は、細胞、タンパク質、ペプチド、融合タンパク質、ペプチドまたはタンパク質をコードするDNA、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA、糖タンパク質、リポ蛋白、リン蛋白、炭水化物、リポ多糖、脂質、それらの2つ以上の化学的に連結された組み合わせ、それらの2つ以上の融合体(fusion or)、あるいはそれらの2つ以上の混合物、あるいはそれらの2つ以上をコードするウイルス、あるいはそれらの2つ以上をコードする腫瘍崩壊性ウイルスであり得る。別の態様において、癌抗原は、約6~約24アミノ酸;約8~約20アミノ酸;約8~約12アミノ酸;約8~約10アミノ酸;または約12~約20アミノ酸を含むペプチドである。一態様において、癌抗原は、MHCクラスI結合モチーフまたはMHCクラスII結合モチーフを有するペプチドである。別の態様において、癌抗原は、1つ以上の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープに対応するペプチドを含む。
【0127】
細胞療法
好ましくは、本発明の方法は、治療的細胞療法の投与と組み合された(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NABの投与を含む。癌を治療するために有用な細胞療法は周知であり、例えば米国特許第7,402,431に開示される。好ましい態様において、細胞療法はT細胞移植である。好ましい方法において、T細胞は、被験体への移植の前に、IL-2を伴うエキソビボで増殖される。細胞療法のための方法は、例えば米国特許第7,402,431、US2006/0057121、米国特許第5,126,132、米国特許第6,255,073、米国特許第5,846,827、米国特許第6,251,385、米国特許第6,194,207、米国特許第5,443,983、米国特許第6,040,177、米国特許第5,766,920およびUS2008/0279836に開示される。
【0128】
癌指標(indication)
(S,S)-(HO)2DEHSPMは、天然に存在するポリアミンスペルミンの機能不全アナログである。これは、スペルミンを置き換えることにより細胞増殖を阻害し、スペルミンレベルを低減し、スペルミジンおよびプトレッシンの細胞内プールを枯渇させる。ポリアミン輸送取込み機構は、種々の腫瘍型において上方制御されると思われる。新生物組織におけるポリアミンの生合成およびそれらの生合成酵素のこの増加は、(S,S)-(HO)2DEHSPMを腫瘍細胞、特に固形腫瘍細胞に標的化させるように高められ得、腫瘍増殖阻害および細胞死を生じる。
【0129】
腫瘍は、悪性または良性に分類され得る。両方の場合に、細胞の異常な凝集および増殖がある。悪性腫瘍の場合、これらの細胞は、より攻撃的にふるまい、増加した侵入性の特性を獲得する。最終的に、腫瘍細胞は、それらが生じて身体の別の領域(通常それらの増殖に助けとならない非常に異なる環境を有する)に広がる、微小環境から離れる能力を獲得しさえし得、この新しい場所でのそれらの迅速な増殖および分裂を継続し得る。これは転移と呼ばれる。一旦悪性細胞が転移すると、治療の達成はより困難になる。良性腫瘍は侵入または転移しない。
【0130】
腫瘍増殖の阻害または低減は、腫瘍塊のサイズまたは体積の低減、被験体における転移した腫瘍の数および/またはサイズの減少、癌細胞の増殖状態(癌細胞が倍加する程度)の減少などをいう。
【0131】
本発明の治療養生法は、限定されないが膵臓腺癌(例えばPDA)、結腸直腸腺癌、前立腺腺癌、乳癌、肺腺癌、胆管癌、リンパ腫、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)、卵巣細胞腫瘍を含み、進行した固形腫瘍および抗癌療法で以前に治療したが以前の治療に対して治療抵抗性のままである腫瘍を含む固形腫瘍を治療するために特に適合される。
【0132】
固形腫瘍および他の型の癌におけるポリアミン合成の上方制御を仮定すると、本発明の(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NAB治療養生法は、多くの種類の癌の治療に有用である。用語「癌」は、本明細書で使用する場合、制御が弱められて異常細胞が分裂する疾患についての一般的な用語として、その通常の意味を与えられる。
【0133】
癌細胞は、近くの組織に侵入し得、血流およびリンパ系を通って身体の他の部分に広がり得る。いくつかの主要な種類の癌があり、例えば癌腫は、内部臓器を裏打ちするかまたはそれを覆う皮膚または組織中で開始する癌であり、上皮に由来する。肉腫は、中皮由来の骨、軟骨、脂肪、筋肉、脈管または他の結合もしくは支持組織中で開始する癌である。白血病は、骨髄などの血液形成組織において開始して、より多くの異常な血液細胞を生じさせ、それらを血流に進入させる癌である。リンパ腫は、非血行性免疫系の細胞において開始する癌である。
【0134】
正常細胞が、特異化された、制御され、調整された単位としてふるまう能力を消失する場合に腫瘍が形成される。一般的に、固形腫瘍は、通常は嚢胞または液体領域を含まない組織の異常な塊である(いくつかの脳腫瘍は嚢胞および液体が充填された中心壊死性領域を有する)。単一の腫瘍はさらに、しくじったプロセスが異なる、その中に異なる細胞の集団を有し得る。固形腫瘍は、良性(癌性でない)または悪性(癌性)であり得る。異なる種類の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類の名をとって命名される。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫およびリンパ腫である。白血病(血液の癌)は一般的に、固形腫瘍を形成しない。
【0135】
代表的な癌としては、限定されないが、特に急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、小児期;急性骨髄性白血病、成人;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児期;AIDS関連リンパ腫;AIDS関連悪性疾患;肛門癌;星状細胞腫、小児期小脳性;星状細胞腫、小児期大脳;総胆管癌、肝臓外;膀胱癌;膀胱癌、小児期;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;グリア芽腫、小児期;グリア芽腫、成人;脳幹神経膠腫、小児期;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児期;脳腫瘍、小脳性星状細胞腫、小児期;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児期;脳腫瘍、脳室上衣腫、小児期;脳腫瘍、髄芽腫、小児期;脳腫瘍、テント上未分化神経外肺葉腫瘍、小児期;脳腫瘍、視路および視床下部神経膠腫、小児期;脳腫瘍、小児期(その他);乳癌;乳癌および妊娠;乳癌、小児期;乳癌、男性;気管支腺腫/カルチノイド、小児期:類癌腫、小児期;類癌腫、胃腸;癌腫、副腎皮質;癌腫、島細胞;未知の原発性の癌腫;中枢神経系リンパ腫、原発性;小脳性星状細胞腫、小児期;大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児期;子宮頸癌;小児期癌;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性障害;腱鞘の明細胞肉腫;結腸癌;結腸直腸癌、小児期;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜癌;脳室上衣腫、小児期;上皮癌、卵巣;食道癌;食道癌、小児期;ユーイングファミリー腫瘍;頭蓋外生殖細胞腫瘍、小児期;性腺外生殖細胞腫瘍;肝臓外総胆管癌;眼の癌、眼内黒色腫;眼の癌、網膜芽腫;胆嚢癌;胃(Gastric)(胃(Stomach))癌;胃(胃)癌、小児期;胃腸類癌腫;生殖細胞腫瘍、頭蓋外、小児期;生殖細胞腫瘍、性腺外;生殖細胞腫瘍、卵巣;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫. 小児期脳幹;神経膠腫. 小児期視路および視床下部;毛様細胞白血病;頭頸部癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(原発性);肝細胞(肝臓)癌、小児期(原発性);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、小児期;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部および視路神経膠腫、小児期;眼内黒色腫;島細胞癌腫(内分泌性膵臓);カポジ肉腫;腎臓癌;咽頭癌;咽頭癌、小児期;白血病、急性リンパ芽球性、成人;白血病、急性リンパ芽球性、小児期;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児期;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、毛様細胞;唇部および口腔癌;肝臓癌、成人(原発性);肝臓癌、小児期(原発性);肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌;リンパ芽球性白血病、成人急性;リンパ芽球性白血病、小児期急性;リンパ性白血病、慢性;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、中枢神経系(原発性);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン;小児期;リンパ腫、妊娠中のホジキン;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児期;リンパ腫、妊娠中の非ホジキン;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ヴァルデンストレーム;男性乳癌;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、小児期;悪性胸腺腫;髄芽腫、小児期;黒色腫;黒色腫、眼内;メルケル細胞癌;中皮腫、悪性;原発潜在性転移性扁平上皮頸部癌;多発性内分泌腫瘍症候群、小児期;多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児期急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性障害、慢性;鼻腔および副鼻腔癌;鼻咽腔癌;鼻咽腔癌、小児期;神経芽腫;神経線維腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児期;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺癌;口癌、小児期;口腔および唇部の癌;口腔咽頭癌;骨の骨肉腫/悪性線維性組織球腫;卵巣癌、小児期;卵巣上皮癌;卵巣生殖細胞腫瘍;卵巣低悪性潜在的腫瘍;膵臓癌;小児期、膵臓癌、島細胞;副鼻腔および鼻腔の癌;副甲状腺癌;陰茎癌;褐色細胞腫;松果体およびテント上未分化神経外胚葉腫瘍、小児期;下垂体腫瘍;形質細胞新生物/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠および乳癌;妊娠およびホジキンリンパ腫;妊娠および非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性肝臓癌、成人;原発性肝臓癌、小児期;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎臓)癌;腎細胞癌、小児期;腎盂および尿管、移行細胞癌;網膜芽腫;横紋筋肉腫、小児期;唾液腺癌;唾液腺の癌、小児期;肉腫、ユーイングファミリー腫瘍;肉腫、カポジ;骨の肉腫(骨肉腫)/悪性線維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児期;肉腫、軟部組織、成人;肉腫、軟部組織、小児期;セザール症候群;皮膚癌;皮膚癌、小児期;皮膚癌(黒色腫);皮膚癌腫、メルケル細胞;小細胞肺癌;小腸癌;軟部組織肉腫、成人;軟部組織肉腫、小児期;原発潜在性の扁平上皮頸部癌、転移性;胃(胃)癌;胃(胃)癌、小児期;テント上未分化神経外胚葉腫瘍、小児期;T細胞リンパ腫、皮膚;精巣癌;胸腺腫、小児期;胸腺腫、悪性;甲状腺癌;甲状腺癌、小児期;腎盂および尿管の移行細胞癌;栄養膜腫瘍、妊娠;未知の原発性部位、癌、小児期;小児期の通常ない癌;尿管および腎盂、移行細胞癌;尿道癌;子宮肉腫;膣癌;視路および視床下部神経膠腫、小児期;外陰癌;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;ならびにウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0136】
キット
注射による投与のために製剤化される(S,S)-(HO)2DEHSPM、ならびに任意に、限定されないがGEMおよびNABなどの任意の他の化学療法または抗癌剤を含むキットも提供される。キットは一般的に、以下に記載される種々の構成要素を収容する物理的構造の形態であり、例えば上述の方法の実施に使用され得る。キットは、例えばプレフィルドシリンジ中で被験体への投与のために適した医薬組成物の形態であり得る(S,S)-(HO)2DEHSPM(例えば滅菌容器内に提供される)を含み得る。医薬組成物は、使用の準備ができた形態、または例えば投与の前に再構成もしくは希釈を必要とする形態で提供され得る。それらの組成物が使用者による再構成を必要とする形態である場合、キットは、(S,S)-(HO)2DEHSPMと共にまたはそれとは別にパッケージングされるバッファ、薬学的に許容され得る賦形剤等も含み得る。併用療法が企図される場合、キットは別々にいくつかの薬剤を含み得るか、またはそれらはキット内ですでに合わされ得る。同様に、さらなる相補的療法が必要である場合(例えばさらなる相補的療法または薬剤とさらに組み合される(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法または(S,S)-(HO)2DEHSPM/GEM/NAB併用療法)、キットは、いくつかの薬剤を別々に含み得るか、またはそれらの2つ以上はすでにキット内で合わされ得る。
【0137】
本発明のキットは、その中に収容される構成要素を適切に保持するために必要な条件(例えば冷蔵または凍結)について設計され得る。キットは、その中の構成要素についての情報を同定することを含むラベルまたはパッケージング挿入物、およびそれらの使用のための指示書(例えば作用機構(1つまたは複数)、薬物動態学および薬力学、有害な効果、禁忌等などの投与パラメーター、有効成分(1つまたは複数)の臨床薬理学)を含み得る。
【0138】
キットのそれぞれの構成要素は個々の容器内に封じられ得、種々の容器の全ては、単一のパッケージ内にあり得る。ラベルまたは挿入物は、ロット番号および有効期限などの製造業者の情報を含み得る。ラベルまたはパッケージング挿入物は、例えば構成要素を収容する物理的構造に組み込まれ得るか、物理的構造内に別々に含まれ得るか、またはキットの構成要素(例えばアンプル、シリンジまたはバイアル)に固定され得る。
【0139】
ラベルまたは挿入物はさらに、ディスク(例えばハードディスク、カード、メモリディスク)などのコンピューター読み取り可能媒体、CD-もしくはDVD-ROM/RAMなどの光学ディスク、DVD、MP3、磁気テープまたはRAMおよびROMなどの電気記憶媒体または磁気/光学記憶媒体などのこれらのハイブリッド、フラッシュメディアまたはメモリ型カードを含み得るかまたはそれらに一体化され得る。いくつかの態様において、実際の指示書はキット内に存在しないが、例えばインターネットサイトを介して遠隔供給源から指示書を入手するための手段が提供される。
【0140】
以下の実施例は例示により提供され、いかなる方法においても特許請求されるものとして本発明を限定するようには解釈されない。
【実施例】
【0141】
実施例
実施例1:L3.6pl膵臓癌細胞のヌードマウスへの正常位移植後のヒト膵管腺癌に対する(S,S)-(HO)2DEHSPMの効力。
背景:
(S,S)-(HO)2DEHSPMは、天然のポリアミン(PA)であるスペルミンのアナログである。膵管腺癌(PDA)などのいくつかの新生物において生じるポリアミン生合成の増加は、これが有望な治療的標的であることを示唆する。これらの試験により、ヒトL3.6pl膵臓癌細胞のヌードマウスの膵臓への正常位移植後の(S,S)-(HO)2DEHSPMの皮下投与の抗新生物効果を試験した。
【0142】
この実施例およびその後の実施例において、(S,S)-(HO)2DEHSPMは4塩酸塩の(S,S)-(HO)2DEHSPM.4HClとして投薬されるかまたは投与され、開示される用量または量は、この塩の質量をいう。
【0143】
方法:
L3.6pl細胞を、ヌードマウスの膵臓に注射して;腫瘍の確立の7~10日後に群(n=10/計画される群)ごとに治療を開始した:
試験1:食塩水(対照)、(S,S)-(HO)2DEHSPM (25mg/kg)、(S,S)-(HO)2DEHSPM (50mg/kg)および(S,S)-(HO)2DEHSPM (100mg/kg)を4~6週間(wk)毎日(QD)。
試験2:食塩水(対照)、(S,S)-(HO)2DEHSPM (25mg/kg QD)、(S,S)-(HO)2DEHSPM (25mg/kg 3x/wk)、(S,S)-(HO)2DEHSPM (15mg/kg 3x/wk)および(S,S)-(HO)2DEHSPM (5mg/kg 3x/wk)を4~6週間。
試験3:食塩水(対照)、ゲムシタビン(GEM) (100mg/kg 2x/wk、腹腔内)、(S,S)-(HO)2DEHSPM (25mg/kg 3x/wk)および(S,S)-(HO)2DEHSPM + GEMを4~6週間。
【0144】
結果:
試験1において、25mg/kg QD投与養生法は、腫瘍保有マウスにおいて膵臓重量の82.9%低減を生じた。50および100mg/kgの用量は、より速い死亡を生じ、毒性であることが明らかになった。組織学的変化は、肝臓において肝細胞の修復的変化、外分泌性膵臓において膵臓腺房の上皮における細胞質顆粒の軽度の減少を含んだ。内分泌性膵臓において、組織学的効果は見られなかった。
【0145】
試験2において、25mg/kg QDの投与養生法は、膵臓重量および腫瘍体積のそれぞれの72.7%および81.4%の低減を生じ、一方で25mg/kg 3x/wk用量群は、47.8%および66.6%の低減を生じた。15mg/kgで、膵臓重量および腫瘍体積の用量関連減少(20.1%および52.6%それぞれ)も観察され;5mg/kgでは減少は示されなかった。メジアン生存は、対照群の21日と比較して、25mg/kg QDでは32日および25mg/kg 3x/wkでは42日であった。
【0146】
試験3において、GEM、(S,S)-(HO)2DEHSPMおよび(S,S)-(HO)2DEHSPM + GEMを用いた治療は、体重においてそれぞれ18.7%、35.6%および42.4%の減少を生じた。対照と比較して、GEM、(S,S)-(HO)2DEHSPMおよびGEM + (S,S)-(HO)2DEHSPMを用いた治療は、膵臓重量において24.7%、58.8%および67.2%の減少ならびに腫瘍体積において37.8%、58.4%および72.9%の減少をそれぞれ生じ、組合せ治療による相乗的または相加的な効果が示唆された。
【0147】
3つ全ての治療群において、肝臓転移の発生率も減少した。
【0148】
結論:
QDまたは3x/wkで投与された(S,S)-(HO)2DEHSPM 25mg/kgは、ヒト膵管腺癌の増殖を阻害し、マウスの生存を長くした。(S,S)-(HO)2DEHSPMとゲムシタビンの共投与は、膵臓腫瘍の低減に関して相加的または相乗的効果を有するように思われた。これらの結果は、膵臓癌についての(S,S)-(HO)2DEHSPMの臨床開発を支持する。
【0149】
実施例2-GEMおよびNABの存在下および非存在下での(S,S)-(HO)2DEHSPMを用いた培養後のヒト膵臓癌細胞生存能力の評価。
導入:
(S,S)-(HO)2DEHSPMは天然のポリアミン(PA)であるスペルミンのアナログである。PA取込み輸送系は、膵管腺癌(PDA)などのいくつかの新生物において上方制御され、有望な治療標的であることを示唆する。この試験により、6個のヒトPDA細胞株におけるゲムシタビン(GEM)およびnab-パクリタキセル(NAB)の存在下および非存在下の(S,S)-(HO)2DEHSPMの抗増殖効果を評価した。
【0150】
方法:
AsPC-1、BxPC-3、Capan-1、HPAF-II、MIA PaCa-2およびPANC-1細胞を、96ウェルプレートに播種して一晩接着させた。24h後、0.5~10μMの濃度の(S,S)-(HO)2DEHSPM単独または+0.5μM GEM、+5nM NABもしくは+両方を含む、あるいはGEM、NABまたはGEM+NAB単独を含む新鮮な培地を添加した。治療の24、48、72および96h後に細胞増殖を3連で測定し、IC50値を計算した。
【0151】
結果:
(S,S)-(HO)2DEHSPMは、全ての細胞株において抗増殖効果を生じ;最大阻害は最もしばしば10μMにより生じた。96hに、10μMの(S,S)-(HO)2DEHSPM+GEM+NABを用いた最大平均阻害は、GEM+NABと比較して、97.3% 対 38.5% (BxPC-3)、90.1% 対 47.1% (Capan-1)、89.7%対38.3% (ASPC-1)および39.4% 対 8.0% (MIA PaCa-2)であった(p<0.005)。(S,S)-(HO)2DEHSPM単独は、ASPC-1、BxPC-3およびCapan-1細胞においてGEM+NABよりも高い阻害を生じた(p<0.005)。ほとんどの細胞株において、IC50は、治療持続時間を増加するにつれて、(S,S)-(HO)2DEHSPMにより減少し、(S,S)-(HO)2DEHSPMとの組合せ治療は、IC50のさらなる減少を生じ、細胞生存能力の減少に対して、GEMおよびNABによる相加的または相乗的な効果を示した。
【0152】
結論:
(S,S)-(HO)2DEHSPMは、単独ならびにGEMおよびNABとの組合せの両方において、PDAに対して顕著な抗増殖効果を示した。(S,S)-(HO)2DEHSPM単独および(S,S)-(HO)2DEHSPM+GEM+NABは、現在の標準治療であるGEM+NABよりも効果的であった。これらの結果により、(S,S)-(HO)2DEHSPMの抗新生物能力を確認し、ヒト膵臓癌のための治療としてのそのさらなる調査のための原理が提供される。
【0153】
実施例3-膵管腺癌(PDA)についてのポリアミン代謝阻害剤である(S,S)-(HO)2DEHSPMの第I相安全性試験。
背景:
(S,S)-(HO)2DEHSPM(ジエチルジヒドロキシホモスペルミン)であるスペルミンのポリアミン(PA)アナログは、6個のヒトPDA細胞株および3つのマウス異種移植片腫瘍モデルにおいて増殖を阻害した。第1相用量段階的拡大試験により、局所的に進行したまたは転移性のPDAを有する以前に治療した患者における(S,S)-(HO)2DEHSPMの安全性、許容性および薬物動態学(PK)を評価した。
【0154】
方法:
改変した3+3用量段階的拡大スキームにおいて、(S,S)-(HO)2DEHSPMの毎日皮下注射は、0.05、0.1、0.2、0.4または0.8mg/kgで月曜日から金曜日まで3週間投与し、その後5週間の観察(1サイクル)を1または2サイクルの間続けた。臨床的および実験室評価により安全性および許容性を評価した。PKは、サイクル1の1日目および18日目に評価した。RECIST基準および全体生存により効力を評価した。
【0155】
結果:
29名の患者を5つのコホート:(1:N=3;2:N=5;3:N=4;4:N=7;5:N=10)に登録した。26名は、≧2の以前の化学療法養生法を有した。コホート1~4における薬物関連毒性は最少であったが、コホート4の1名の患者は、2.3ヶ月目に腫瘍部位で病巣膵炎を発症した。最も一般的な有害事象(AE)は、腹痛、便秘、食欲減少、脱水、下痢、疲労、悪心および嘔吐であった。ほとんどはグレード1もしくは2であったかまたはありそうでないもしくは関連がないとみなされた。薬物関連骨髄抑制または末梢神経障害はいずれの用量でも見られなかった。コホート1~4ではDLTは生じなかった。コホート5の3名の患者は、用量制限毒性とみなされる重度の有害事象:代謝性アシドーシスを伴う細菌敗血症(N=1)、リパーゼの増加を伴う肝および腎不全(N=1)ならびに代謝性アシドーシスを伴う上部腸間膜静脈血栓症(N=1)を発症した。血漿CmaxおよびAUC0-tは、用量に伴って直線状に増加した。コホート3および4のそれぞれ2名の患者およびコホート5の4名の患者で安定な疾患が生じた。コホート3のメジアン生存は5.9ヶ月であった。
【0156】
結論:
(S,S)-(HO)2DEHSPMは、この試験において用量レベル1~4で良好に許容され;0.8mg/kgは最大許容用量(MTD)を超えた。最良の腫瘍応答および生存は、0.2mg/kg/日で生じた。MTD未満のAEの低発生率および骨髄毒性または末梢神経障害の非存在は、PDAについての最先端の治療への付加としての(S,S)-(HO)2DEHSPMについての潜在力を示唆し、組合せ試験を正当化する。
【0157】
実施例4-転移性PDAを有する被験体についての第一線の治療としてのゲムシタビンおよびNab-パクリタキセルと組み合わせた(S,S)-(HO)2DEHSPMの第1a/1b相安全性試験。
要約
背景:ポリアミン代謝性阻害剤である(S,S)-(HO)2DEHSPMは、6個のヒト膵管腺癌(PDA)細胞株およびヒトPDAの3つのマウス異種移植片腫瘍モデルにおいて増殖を阻害した。重度の前治療PDA患者(>2の以前の養生法、N=4)における(S,S)-(HO)2DEHSPM単一療法は、最適用量レベルで5.9ヶ月のメジアン生存を示した。
【0158】
目的:以前に治療されていない転移性PDAを有する患者におけるゲムシタビン(G)およびnab-パクリタキセル(A)と組み合わせた(S,S)-(HO)2DEHSPMの安全性、許容性、PKおよび効力を評価すること。
【0159】
方法:改変された3+3用量段階的拡大スキームにおいて、(S,S)-(HO)2DEHSPMの皮下注射を、それぞれの28日サイクルの1~5日目に0.2、0.4または0.6mg/kgで投与した。G (1000mg/m2)およびA (125mg/m2)は、各サイクルの1、8および15日目に静脈内投与した。安全性および許容性は、臨床的および実験室評価により評価した。PKは、サイクル1の1日目に評価した。効力はCA19-9レベルにより評価して、客観的応答は、RECIST基準、進行なし生存(PFS)および全体的生存(OS)により評価した。
【0160】
中間結果:15名の患者を3つのコホート(1:N=4、2:N=7、3:N=4)に登録し、6サイクルまでの治療を受けさせた(コホート2および3の7名の被験体は継続中である)。(S,S)-(HO)2DEHSPMに関連する最も一般的な有害事象は、疲労(N=4)、悪心(N=2)および注射部位疼痛(N=2)である。(S,S)-(HO)2DEHSPM関連骨髄抑制または末梢神経障害の証拠はない。コホート2の1名の患者は、グレード3~4の可逆的な肝臓酵素上昇を発症した。コホート1のPKパラメーターはほとんどの時点で検出限界未満であったが、血漿CmaxおよびAUC0-tは、コホート2および3において測定可能であった。これらのコホートにおいて、CA19-9レベルは、8名の評価可能な被験体中7名で76~95%減少し(1名のさらなる被験体TBD)、5名の患者は部分応答を達成し(4名継続中)、1名は安定な疾患を達成した。メジアンPFSおよびOSは、依然として達成されなかった。
【0161】
結論:予備的な結果は、(S,S)-(HO)2DEHSPMは、GおよびAと共に投与される場合に十分に許容されることを示唆する。効力のシグナルは、PDAについての第一線の組合せ治療における(S,S)-(HO)2DEHSPMの継続的な開発を支持する。
【0162】
導入
ポリアミン(PA)は、ほぼ全ての生きた細胞中に見られる脂肪族カチオンであり、それらは細胞増殖、タンパク質合成およびアポトーシスに不可欠である。それらの濃度は正常細胞においてしっかりと制御されるが、PDAなどの多くの腫瘍は、増加したPAレベルを有し、それらを有望な治療標的にする。天然に存在するPAであるスペルミンのアナログである(S,S)-(HO)2DEHSPMは、重要な合成酵素を阻害することによりPAプールを低減するポリアミン代謝性阻害剤(PMI)である。非臨床試験は、(S,S)-(HO)2DEHSPMがインビトロおよびインビボにおいてPDAに対して効力を有することを示し、転移性PDAを有する重々しく前治療された患者(ほとんどが≧2の前化学療法養生法を有した)におけるファースト・イン・ヒューマン単一療法試験は、MTD未満の許容され得る安全性プロフィールを示した。かかる試験において、ゲムシタビン(G)およびnab-パクリタキセル(A)を用いて一般的に見られるような有意な骨髄抑制または末梢神経障害はなく、第一線の組合せ治療への付加としての(S,S)-(HO)2DEHSPMの実行可能性が示唆された。
【0163】
試験設計
これは、転移性疾患について以前に治療されていない膵臓癌患者における第一線の治療としてのGおよびAと組み合わせて投与される場合の(S,S)-(HO)2DEHSPMの安全性、許容性、薬物動態学および効力を評価するための多施設のオープンラベル第1a/1b相試験である。目的は、推奨される第2相用量を決定することであった。改変された3+3用量段階的拡大スキームを使用して、被験体のコホートに、それぞれの28日サイクルの1~5日目に0.2、0.4または0.6mg/kgで(S,S)-(HO)2DEHSPMの皮下注射を投与した。ゲムシタビン(1000mg/m2)およびA (125mg/m2)は、各サイクルの1、8および15日目に静脈内投与した。安全性および許容性は、臨床的および実験室評価により評価した。PKは、サイクル1の1日目に評価した。効力は、RECIST基準を使用した客観的応答率(ORR)によりおよびCA19-9レベルの変化により評価した。疾患進行または用量制限毒性の発生まで被験体を治療した。最初の安全性の所見および効力の予備的なシグナルに基づいて、進行なし生存(PFS)および全体的生存(OS)を評価し、試験を、推奨される第2相用量で36名の被験体まで拡大するように、プロトコルを修正した。今日まで、20名の被験体をコホート1~3に登録し、用量制限毒性および効力の早期シグナルについて評価した。
【0164】
人口統計
表1は、試験集団の人口統計を示す。コホート間で性別または年齢における有意な差はなかった。被験体のほとんどは白人であった。
【表1】
【0165】
表2は、コホート1における(S,S)-(HO)2DEHSPMについての薬物動態学的パラメーターはほとんどの時点で検出限界未満であったが、血漿C
maxおよびT
maxは測定可能であったことを示す。C
max値は、記載される以前の第1相単一療法試験と同様であり、用量に伴って直線状に増加した。T
maxは両方の試験において同じであった。
【表2】
【0166】
安全性
表3Aは、≧2の被験体(10%)、N=20*で生じた(S,S)-(HO)2DEHSPM関連有害事象を示す。
【表3】
【0167】
表3Bは、特殊な関心のグレード≧3の有害事象の頻度、N=20およびG+Aの経歴的対照データ*との比較を示す。
【表4】
【0168】
表3Cは、任意の試験医薬に関連するグレード≧3有害事象、N=20を示す。
【表5】
【0169】
任意の試験医薬に関する最も一般的なグレード≧3 AEは、G+Aに起因する6名の被験体の好中球減少症および(S,S)-(HO)2DEHSPMに起因する4名の被験体における上昇した肝臓機能試験(LFT)であり、これらの1つはGにも起因した。数サイクルの治療後に生じた(S,S)-(HO)2DEHSPMに関連する肝臓毒性の増加は、1名の被験体を除き全てにおいて無症候性であり、(S,S)-(HO)2DEHSPM投与を中断し、用量を低減または停止した場合に、1名の被験体を除く全てにおいて逆転した。
【0170】
安全性要約:
治療養生法への(S,S)-(HO)2DEHSPMの追加は、G+A併用療法に対する経歴的対照データと比較した場合、グレード≧3の血液学的事象または末梢神経障害、疲労または下痢の頻度を増加しなかった。
【0171】
結論:
以前に治療されていない転移性膵臓腺癌を有する被験体においてG+Aと組み合わせて試験した用量で投与された場合に(S,S)-(HO)2DEHSPMは良好に許容された。治療関連肝臓機能異常は、ほとんどが無症候性であり、(S,S)-(HO)2DEHSPMを中断し、用量を低減または停止した場合にほとんどが逆転した。例えば、救助投与養生法は、グレード≧3血液学的毒性事象について実行されたものと同様に任意のグレード≧3肝臓機能毒性について開始し、ここで投与は完全に中断するかまたはある時間に減少し、次いで肝臓機能異常がベースラインまたは正常に戻る場合に、ある時間に半分の用量で再開する。
【0172】
(S,S)-(HO)2DEHSPMが、典型的にG+A単独で見られるグレード≧3血液学的事象である末梢神経障害を増強するという証拠はなかった。ORR (62%)およびDCR (85%)は、中枢の試験においてG+A (23%、48%)およびFOLFIRINOX (32%、70%)について報告された経歴的割合を超え;応答は、CA19-9レベルの大きな減少を伴った。
【0173】
データは、進行したPDAのための適切な第一線の治療としての(S,S)-(HO)2DEHSPM単独またはG+Aとの組合せを支持する。
【0174】
実施例5-患者安全性プロフィールの向上および肝臓毒性の制限
実施例4に記載される同じ試験の一部として、患者の1つのコホート(コホート4)には組合せ短縮毎日投与養生法/定期的投与養生法を投与し、肝臓毒性を実施例4に記載される参照投与養生法と比較した。
【0175】
コホート4には、0.4mg/kg/日の(S,S)-(HO)2DEHSPMをサイクル1および2のそれぞれの1日目に開始して連続して5日間(すなわち1~5日目)(合計5投与/サイクル)投与した。その後、コホート4に、0.4mg/kg/日の(S,S)-(HO)2DEHSPMを、サイクル3の1日目に開始して1、8および15日目に投与して(1サイクル当たり合計3投与)、その後の各サイクルの間継続した。コホート4の患者は、個々の患者の治療の許容性に応じて、3~6またはそれ以上の総サイクルの間治療された。
【0176】
結果は、実施例4のコホートと比較して、特に実施例4のコホート3と比較して、重度の肝臓毒性が予期されずに低減または排除されることを示す。コホート4における<グレード3までの肝臓毒性を管理する能力に基づいて、コホート4において使用された用量および養生法は、さらなる開発のために選択される用量および養生法として推奨された。
【0177】
本明細書に引用される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書に引用される全ての米国特許および公開または非公開の米国特許出願は、参照により援用される。本明細書に引用される全ての公開外国特許および特許出願は、参照により本明細書に援用される。本明細書に引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に援用される。
【0178】
本発明は、その好ましい態様に関して特に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者に理解される。本明細書に記載される態様は相互に排他的ではないこと、および種々の態様からの特徴が本発明に従って全体的にまたは部分的に組み合わされ得ることも理解されるべきである。
【国際調査報告】