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特表2023-512488基板面を処理する方法、そのための装置、及び処理されたガラス物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】基板面を処理する方法、そのための装置、及び処理されたガラス物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
C03C15/00 Z
C03C15/00 D
C03C15/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543652
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 US2021012155
(87)【国際公開番号】W WO2021146075
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】62/962,529
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アグネロ ガブリエル ピアース
(72)【発明者】
【氏名】バナージー ジョイ
(72)【発明者】
【氏名】リ アイズ
(72)【発明者】
【氏名】マンリー ロバート ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】シェン ファン-フン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタチャラム シヴァ
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB13
4G059AC03
4G059BB04
4G059BB12
4G059BB14
(57)【要約】
基板を処理する、例えば、基板をテクスチャ加工するための装置及び方法。一部の実施形態では、マスキング材料が、予め決められたパターンで基板の面に付加され、面は、その後に、マスキング材料を除去する腐食液と接触する。面を腐食液と接触させることは、複数の併置されたテクスチャを生成する。他の実施形態では、マスキング段階は省くことができ、腐食液は、複数の併置されたテクスチャを生成するために、予め決められたパターンで付加される。更に他の実施形態では、基板は化学組成を有し、基板は、基板面で変化する化学組成を有する基板を生成するために、化学組成の少なくとも1つの成分を浸出させる滲出液に露出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸線に沿った第1の方向に第1の大きさ及び第1の空間周期を備え、該第1の空間周期の2倍に等しいか又はそれよりも大きい長さを該第1の軸線に沿って延びる周期的な第1のテクスチャと、該第1のテクスチャと併置され、約1ナノメートルに等しいか又はそれよりも小さい平均面粗度Saを備える等方性の第2のテクスチャとを備える第1の主面を備えている、
ことを特徴とするガラス基板。
【請求項2】
前記第1の大きさは、約2ナノメートルから約500ナノメートルの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板。
【請求項3】
前記第1の空間周期は、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のガラス基板。
【請求項4】
前記第1の主面は、前記第1のテクスチャと併置された周期的な第3のテクスチャを更に備え、該第3のテクスチャは、前記第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の大きさ及び第2の空間周期を備え、前記第2のテクスチャは、該第2の空間周期の2倍に等しいか又はそれよりも大きい長さを該第2の軸線に沿って延びることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板。
【請求項5】
前記第2の軸線は、前記第1の軸線と直交することを特徴とする請求項4に記載のガラス基板。
【請求項6】
前記第2の大きさは、約2ナノメートルから約500ナノメートルの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のガラス基板。
【請求項7】
前記第2の空間周期は、約0.1ミリメートルから約25ミリメートルの範囲にあることを特徴とする請求項6に記載のガラス基板。
【請求項8】
前記第1の主面は、前記第3のテクスチャと併置された周期的な第4のテクスチャを更に備え、該第4のテクスチャは、前記第2の軸線に沿って第3の大きさ及び第3の空間周期を備え、該第4のテクスチャは、該第3の空間周期の2倍に等しいか又はそれよりも大きい長さを該第2の軸線に沿って延びることを特徴とする請求項7に記載のガラス基板。
【請求項9】
ガラス基板をテクスチャ加工する方法であって、
前記ガラス基板を搬送方向に搬送経路に沿って搬送する段階と、
前記ガラス基板が搬送される時に該ガラス基板の第1の主面に第1の予め決められたパターンでマスキング材料を付加する段階と、
前記ガラス基板が搬送される時に前記マスキング材料を前記付加する段階の後で前記第1の主面の第1の区域にわたって、該第1の主面をエッチングし、該マスキング材料を除去し、かつ該第1の区域に第1の軸線に沿って第1の大きさ及び第1の空間周期を有する第1のテクスチャを形成する腐食液を付加する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1の大きさは、約2ナノメートルから約100ナノメートルの範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の周期は、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲にあることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のテクスチャは、異方性であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記エッチングは、約1ナノメートルよりも小さい平均面粗度Saを有する第2のテクスチャを前記第1の主面上に形成することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のテクスチャは、等方性であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エッチングは、前記第1のテクスチャと併置された第3のテクスチャを形成し、該第3のテクスチャは、前記第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の大きさ及び第2の空間周期を備えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第3のテクスチャは、異方性であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の軸線は、前記第1の軸線と直交することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記エッチングは、前記第1のテクスチャと併置された第4のテクスチャを形成し、該第4のテクスチャは、前記第2の軸線に沿って第3の大きさ及び第3の空間周期を備えることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第1のパターンが、交替するピーク及びバレーの平行で離間した列を備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項20】
前記マスキング材料は、前記腐食液が付加される間は未硬化であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記マスキング材料は、ポリマーを備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記マスキング材料は、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリレート、ノボラック、又はシリコーンを備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マスキング材料は、スチレンマレイン酸を備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項24】
前記腐食液による前記マスキング材料の除去速度が、前記ガラス面の溶解速度よりも低いことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項25】
前記マスキング材料は、前記エッチング中に前記第1の主面から完全に除去されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項26】
前記マスキング材料を前記付加する段階は、複数のリッジを備えるローラーを用いて該マスキング材料を付加する段階を備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項27】
前記複数のリッジは、前記ローラーのシャフトと同心であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数のリッジは、前記搬送方向と直交する回転軸に沿って配置された複数のホイールによって形成されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記複数のリッジは、前記ローラーのシャフトと平行であることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記マスキング材料を前記付加する段階は、複数のローラーアセンブリを用いて該マスキング材料を付加する段階を備えることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記腐食液は、HFを備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項32】
前記腐食液は、H3PO4を備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項33】
ガラス基板をテクスチャ加工する方法であって、
前記ガラス基板を搬送方向に搬送経路に沿って搬送する段階と、
前記ガラス基板が搬送される時にパターン付きローラーを用いて予め決められたパターンで該ガラス基板の第1の主面上に、該第1の主面をエッチングし、かつ第1の軸線に沿って第1の大きさ及び第1の空間周期を有する第1のテクスチャを形成する腐食液を付加する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項34】
前記エッチングは、前記第1のテクスチャと併置された第2のテクスチャを前記第1の主面上に形成し、該第2のテクスチャは、約1ナノメートルよりも小さい面粗度Saを備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のテクスチャは、異方性であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第2のテクスチャは、等方性であることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の大きさは、約2ナノメートルから約100ナノメートルの範囲にあることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の周期は、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲にあることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記エッチングは、第1の区域に前記第1のテクスチャと併置された第3のテクスチャを形成し、該第3のテクスチャは、前記第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の大きさ及び第2の空間周期を備えることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記第3のテクスチャは、異方性であることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記エッチングは、前記第1のテクスチャと併置された第4のテクスチャを形成し、該第4のテクスチャは、前記第2の軸線に沿って第3の大きさ及び第3の空間周期を備えることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の軸線は、前記第1の軸線と直交することを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項43】
第1のパターンが、交替するピーク及びバレーの平行で離間した列を備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記ローラーは、複数のリッジを備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記複数のリッジは、前記搬送方向と直交する回転軸に沿って位置合わせされた複数のホイールによって形成されることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記腐食液を前記付加する段階は、前記第1の主面を複数のローラーアセンブリと接触させる段階を備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項47】
前記腐食液は、HFを備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記腐食液は、H3PO4を備えることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項49】
第1の化学組成を備え、該第1の化学組成の少なくとも1つの成分の濃度が第1の軸線に沿って第1の空間周期と共に周期的に変化する第1の面、
を備えることを特徴とするガラス基板。
【請求項50】
前記少なくとも1つの成分の前記濃度は、前記第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の空間周期と共に周期的に変化することを特徴とする請求項49に記載のガラス基板。
【請求項51】
前記第1の軸線と前記第2の軸線間の角度が、0度よりも大きく、かつ90度に等しいか又はそれよりも小さいことを特徴とする請求項50に記載のガラス基板。
【請求項52】
異方性表面化学組成を有するガラス基板を作る方法であって、
前記ガラスシートを搬送方向に搬送経路に沿って搬送する段階と、
前記ガラス基板が搬送される時に第1の予め決められたパターンで該ガラス基板の第1の化学組成を備える第1の主面の第1の区域にマスキング材料を付加する段階と、
前記ガラス基板が搬送される時に前記第1の主面上に、該第1の主面から前記第1の化学組成の少なくとも1つの成分を浸出させ、かつ前記マスキング材料を除去し、該第1の化学組成の少なくとも1つの成分の濃度が、該浸出の後に第1の空間周期と共に第1の軸線に沿って周期的に変化する滲出液を付加する段階と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項53】
前記第1の空間周期は、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲にあることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿った前記少なくとも1つの成分の前記濃度は、第2の空間周期と共に周期的に変化することを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記第2の軸線に沿った前記濃度は、異方性であることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の軸線は、前記第1の軸線と直交することを特徴とする請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記マスキング材料は、前記滲出液が付加される間は未硬化であることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記マスキング材料は、ポリマーを備えることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記マスキング材料は、ポリウレタン又はポリオレフィンを備えることを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記マスキング材料は、スチレンマレイン酸を備えることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項61】
前記マスキング材料は、前記エッチング中に前記第1の主面から完全に除去されることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項62】
前記マスキング材料を前記付加する段階は、複数のリッジを備えるローラーと前記第1の主面を接触させる段階を備えることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項63】
前記複数のリッジは、前記搬送方向と直交する回転軸に沿って位置合わせされた複数のホイールによって形成されることを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記マスキング材料を前記付加する段階は、複数のローラーアセンブリを用いて該マスキング材料を付加する段階を備えることを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記滲出液は、HCl、H2SO4、H3PO4、又はHNO3のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも1つの成分は、Mg、Ca、Sr、Al、又はBのうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、その内容が依拠され且つその全体が引用によって本明細書に組み込まれている2020年1月17日出願の米国仮特許出願第62/962、529号の「35 U.S.C.§119」に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明の開示は、異方性表面テクスチャを有する基板面を形成する方法を含む基板面を処理する方法、異方性表面テクスチャを形成するための装置、及び異方性表面テクスチャを備える物品に関する。
【背景技術】
【0003】
光散乱及び/又は光トラップ(例えば、太陽電池パネル産業における)、医療技術における生体活性改善、フラットパネルディスプレイ産業に独特な接触帯電現象の低減、及びソナー検出のような広範な用途に対して基板、例えば、ガラス基板の面をテクスチャ加工することが公知である。テクスチャ加工する方法は、腐食液を用いる湿式エッチング、例えばプラズマ放電を用いる乾式エッチング、及びレーザ融除を含むことができる。レーザは、基板を物理的に融除して亀裂及び/又は窪みの形態の小欠陥を誘発するのに又は加熱及び/又は相変化を通じて基板構造を局所的に変更するのに使用することができ、様々な形態の湿式又は乾式化学エッチングは、制御可能に基板面を工作し、必要性に基づいてランダム又は周期的特徴部を生成するのに多くの異なる産業にわたって広く利用されている。しかし、そのような方法は、それらが基板の面全体に一様に適用され、かつ等方性表面特性(例えば、粗度)を生成するという点で典型的に均質である。形成中のガラス熱履歴又は緩和後熱サイクルは、テクスチャ加工された面をマイクロ又はマクロスケールで変更する可能性がある。基板面をテクスチャ加工することは、利用可能な方法の量に鑑みて困難ではないが、単一段階工程を使用して基板面の上に複数のタイプの特徴部を意図的にパターン化することは、明確には明らかにされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1又は2以上の異方性テクスチャを示す基板面は、同じ製品に対して複数の機能性を可能にする場合がある。製造可能性の観点から、そのような製品は、高価な資本工学的アップグレードを追加することなく更により魅力的な技術的進路を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の開示により、周期的な第1のテクスチャを備えた第1の主面を備える基板、例えば、ガラス基板を開示し、第1のテクスチャは、第1の軸線に沿った第1の方向に第1の大きさと第1の空間周期を備え、第1のテクスチャは、第1の空間周期の2倍に等しいか又はそれよりも大きい長さを第1の軸線に沿って延びる。第1の大きさは、例えば、約2ナノメートルから約500ナノメートルの範囲にあるとすることができる。第1の空間周期は、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲にあるとすることができる。
【0006】
第1の主面は、第1のテクスチャと併置された等方性の第2のテクスチャを更に備えることができ、第2のテクスチャは、約1ナノメートルに等しいか又はそれよりも小さい平均面粗度Saを備える。
【0007】
第1の主面は、第1のテクスチャと併置された、例えば、第1のテクスチャ及び第2のテクスチャと併置された周期的な第3のテクスチャを更に備えることができ、第3のテクスチャは、第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の大きさと第2の空間周期を備え、第2のテクスチャは、第2の空間周期の2倍に等しいか又はそれよりも大きい長さを第2の軸線に沿って延びる。
【0008】
第2の軸線は、第1の軸線と直交することができる。第2の大きさは、約2nmから約500nmの範囲にあるとすることができる。第2の空間周期は、約0.1mmから約25mmの範囲にあるとすることができる。
【0009】
別の実施形態では、第1の軸線に沿った第1の方向に第1の大きさと第1の空間周期とを備える周期的な第1のテクスチャを備えた第1の主面を備える基板、例えば、ガラス基板を説明し、第1のテクスチャは、第1の空間周期の2倍に等しいか又はそれよりも大きい長さを第1の軸線に沿って延び、等方性の第2のテクスチャが、第1のテクスチャと併置される。第1の大きさは、約2ナノメートルから約500ナノメートルの範囲にあるとすることができる。第1の空間周期は、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲にあるとすることができる。第2のテクスチャの平均面粗度Saは、約1ナノメートルに等しいか又はそれよりも小さいとすることができる。
【0010】
ガラス基板は、第1のテクスチャと併置された、例えば、第1のテクスチャ及び第2のテクスチャと併置された周期的な第3のテクスチャを更に備えることができ、第3のテクスチャは、第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の大きさと第2の空間周期を備え、第2のテクスチャは、第2の空間周期の2倍に等しいか又はそれよりも大きい長さを第2の軸線に沿って延びる。第2の軸線は、第1の軸線と直交することができる。第2の大きさは、約2nmから約500nmの範囲にあるとすることができる。第2の空間周期は、約0.1mmから約25mmの範囲にあるとすることができる。
【0011】
基板は、第1のテクスチャと併置された、例えば、第1のテクスチャ、第2のテクスチャ、及び第3のテクスチャと併置された周期的な第4のテクスチャを更に備えることができ、第4のテクスチャは、第2の軸線に沿って第3の大きさと第3の空間周期を備え、第4のテクスチャは、第3の空間周期の2倍に等しいか又はそれよりも大きい長さを第2の軸線に沿って延びる。第3の大きさは、約2ナノメートルから約500ナノメートルの範囲にあるとすることができる。第3の空間周期は、約0.1ミリメートルから約25ミリメートルの範囲にあるとすることができる。
【0012】
更に別の実施形態では、基板を搬送方向に搬送経路に沿って搬送する段階と、基板が搬送される時に基板の第1の主面に第1の予め決められたパターンでマスキング材料を付加する段階とを備える基板、例えば、ガラス基板をテクスチャ加工する方法を開示する。腐食液が、基板が搬送される時にマスキング材料を付加する段階の後で第1の主面の第1の区域にわたって付加され、腐食液は、第1の主面をエッチングし、マスキング材料を除去し、第1の区域に第1の軸線に沿って第1の大きさと第1の空間周期とを有する第1のテクスチャを形成する。エッチングは、例えば第1のテクスチャと併置された第2のテクスチャを第1の主面上に形成することができ、第2のテクスチャは、約1ナノメートルよりも小さい平均面粗度Saを備える。第1のテクスチャは等方性とすることができる。第2のテクスチャは等方性とすることができる。第1の大きさは、約2nmから約100nmの範囲にあるとすることができる。第1の空間周期は、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲にあるとすることができる。
【0013】
エッチングは、第1のテクスチャと併置された、例えば、第1のテクスチャ及び第2のテクスチャと併置された第3のテクスチャを更に形成することができ、第3のテクスチャは、第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の大きさと第2の空間周期を備える。第3のテクスチャは、異方性とすることができる。
【0014】
エッチングは、第1のテクスチャと併置された、例えば、第1のテクスチャ、第2のテクスチャ、及び第3のテクスチャと併置された第4のテクスチャを更に形成することができ、第4のテクスチャは、第2の軸線に沿って第3の大きさと第3の空間周期を備える。第2の軸線は、第1の軸線と直交することができる。
【0015】
一部の実施形態では、第1のパターンは、交替するピークとバレーの平行で離間した列を備えることができる。
【0016】
一部の実施形態では、マスキング材料は、腐食液が付加される間は未硬化であるとすることができる。マスキング材料は、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリレート、ノボラック、又はシリコーンのようなポリマーを備えることができる。一部の実施形態では、マスキング材料は、スチレンマレイン酸を備えることができる。
【0017】
様々な実施形態では、腐食液によるマスキング材料の除去速度は、基板面の溶解速度よりも低いとすることができる。例えば、一部の実施形態では、マスキング材料は、エッチング中に第1の主面から完全に除去することができる。
【0018】
マスキング材料を付加する段階は、複数のリッジを備えるローラーを用いてマスキング材料を付加する段階を備えることができる。複数のリッジは、例えば、ローラーのシャフトと同心とすることができる。複数のリッジは、搬送方向と直交する回転軸に沿って配置された複数のホイールによって形成することができる。
【0019】
一部の実施形態では、複数のリッジは、ローラーのシャフトと平行とすることができる。
【0020】
様々な実施形態では、マスキング材料を付加する段階は、複数のローラーアセンブリを用いてマスキング材料を付加する段階を備えることができる。
【0021】
様々な実施形態では、腐食液は、HF、H3PO4、又はその組合せを備えることができる。
【0022】
更に他の実施形態では、基板を搬送方向に搬送経路に沿って搬送する段階と、基板が搬送される時に基板の第1の主面上に予め決められたパターンで腐食液を付加する段階とを備える基板、例えば、ガラス基板をテクスチャ加工する方法を開示する。腐食液は、第1の主面をエッチングし、かつ第1の軸線に沿って第1の大きさと第1の空間周期とを有する第1のテクスチャを形成する。
【0023】
エッチングは、第1のテクスチャと併置された第2のテクスチャを第1の主面上に更に形成することができ、第2のテクスチャは、約1ナノメートルよりも小さい面粗度Saを備える。第1のテクスチャは、異方性とすることができる。第2のテクスチャは、等方性とすることができる。第1の大きさは、約2ナノメートルから約100ナノメートルの範囲にあるとすることができる。第1の周期は、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲にあるとすることができる。
【0024】
一部の実施形態では、エッチングは、第1のテクスチャと併置された、例えば、第1のテクスチャ及び第2のテクスチャと併置された第3のテクスチャを形成することができ、第3のテクスチャは、第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の大きさと第2の空間周期を備える。第3のテクスチャは、異方性とすることができる。
【0025】
一部の実施形態では、エッチングは、第1のテクスチャと併置された、例えば、第1のテクスチャ、第2のテクスチャ、及び第3のテクスチャと併置された第4のテクスチャを形成することができ、第4のテクスチャは、第2の軸線に沿って第3の大きさと第3の空間周期を備える。第2の軸線は、第1の軸線と直交することができる。
【0026】
様々な実施形態では、第1のパターンは、交替するピークとバレーの平行で離間した列を備えることができる。
【0027】
一部の実施形態では、腐食液を付加する段階は、複数のリッジを備えるローラーと第1の主面を接触させる段階を備えることができる。複数のリッジは、例えば、搬送方向と直交する回転軸に沿って位置合わせされた複数のホイールによって形成することができる。
【0028】
腐食液を付加する段階は、第1の主面を複数のローラーアセンブリと接触させる段階を備える場合がある。
【0029】
腐食液は、HF、H3PO4、又はその組合せを備えることができる。
【0030】
別の実施形態では、第1の化学組成を備えた第1の面を備える基板、例えば、ガラス基板を説明し、第1の化学組成の少なくとも1つの成分の濃度は、第1の空間周期と共に第1の軸線に沿って周期的に変化する。
【0031】
少なくとも1つの成分の濃度は、第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿って第2の空間周期と共に周期的に変化することができる。第1の軸線と第2の軸線間の角度は、0度よりも大きく、かつ90度に等しいか又はそれよりも小さいとすることができる。
【0032】
更に別の実施形態では、搬送方向に搬送経路に沿ってガラスシートを搬送する段階と、基板が搬送される時に基板の第1の主面の第1の区域に第1の予め決められたパターンでマスキング材料を付加する段階であって、第1の主面が第1の化学組成を備える前記付加する段階と、基板が搬送される時に第1の主面上に滲出液を付加する段階であって、滲出液が、第1の主面から第1の化学組成の少なくとも1つの成分を浸出させ、かつマスキング材料を除去し、第1の化学組成の少なくとも1つの成分の濃度が、浸出後に第1の空間周期と共に第1の軸線に沿って周期的に変化する前記付加する段階とを備える異方性表面化学組成を有する基板、例えば、ガラス基板を作る方法を開示する。
【0033】
第1の空間周期は、約0.1mmから約100mmの範囲にあるとすることができる。
【0034】
一部の実施形態では、第1の軸線とは異なる第2の軸線に沿った少なくとも1つの成分の濃度は、第2の空間周期と共に周期的に変化することができる。第2の軸線に沿った濃度は、異方性である。第2の軸線は、第1の軸線と直交することができる。
【0035】
一部の実施形態では、マスキング材料は、滲出液が付加される間は未硬化とすることができる。
【0036】
マスキング材料は、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリレート、ノボラック、又はシリコーンのようなポリマーを備えることができる。一部の実施形態では、マスキング材料は、スチレンマレイン酸を備えることができる。様々な実施形態では、マスキング材料は、エッチング中に第1の主面から完全に除去することができる。
【0037】
一部の実施形態では、マスキング材料を付加する段階は、複数のリッジを備えるローラーと第1の主面を接触させる段階を備えることができる。複数のリッジは、搬送方向と直交する回転軸に沿って位置合わせされた複数のホイールによって形成することができる。マスキング材料を付加する段階は、複数のローラーアセンブリを用いてマスキング材料を付加する段階を備えることができる。
【0038】
滲出液は、例えば、HCl、H2SO4、H3PO4、又はHNO3のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0039】
少なくとも1つの成分は、Mg、Ca、Sr、Al、又はBのうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0040】
更に他の実施形態では、搬送方向に搬送経路に沿って基板を搬送する段階と、基板が搬送される時に基板の主面にマスキング材料を付加する段階と、基板が搬送される時に第1の予め決められたパターンで主面にわたって滲出液を付加する段階であって、主面が、第1の化学組成を備え、滲出液が、第1の主面から第1の化学組成の少なくとも1つの成分を浸出させ、第1の化学組成の少なくとも1つの成分の濃度が、浸出後に第1の空間周期と共に第1の軸線に沿って周期的に変化する前記付加する段階とを備える基板、例えば、ガラス基板をテクスチャ加工する方法を説明する。第1のテクスチャは、異方性とすることができる。第1の大きさは、約2nmから約500nmの範囲にあるとすることができる。
【0041】
本明細書に開示する実施形態の追加の特徴及び利点は、以下の詳細説明に列挙しており、かつ部分的にその説明から当業者には明らかであり、又は以下の詳細説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む本明細書に説明する実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0042】
以上の一般説明及び以下の詳細説明の両方は、本明細書に開示する実施形態の性質及び特性を理解するための概要又は骨組みを提供するように意図した実施形態を提示することは理解されるものとする。添付図面は、更なる理解を提供するために含められ、かつ本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、本発明の開示の様々な実施形態を示し、かつ説明と共にその原理及び作業を解説する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の開示の実施形態により基板を処理するための例示的処理装置の側面断面図である。
図2図1の処理装置の上面図である。
図3A図1及び図2の処理装置内でマスキング材料を付加するのに使用することができる例示的ローラーの側面図である。
図3B】マスキング材料に少なくとも部分的に浸漬された図3Aのローラーを示す断面側面図である。
図3C図3A及び図3Bのローラーに対する様々な例示的構成を示す図である。
図4A図1及び図2の処理装置を用いて腐食液を付加するための例示的ローラーの側面図である。
図4B】均質本体とそれを通って延びるシャフトとを備える図4Aによるローラーの断面図である。
図4C】本体とそれを通って延びるシャフトとを備え、本体がその周囲の周りに位置決めされた外側層を備える図4Aによるローラーの断面図である。
図5】本発明の開示の実施形態により基板を処理するための別の例示的処理装置の断面側面図である。
図6図5の処理装置の上面図である。
図7A図5及び図6の処理装置内で腐食液を付加するのに使用することができる例示的ローラーの側面図である。
図7B】腐食液に少なくとも部分的に浸漬された図7Aのローラーを示す断面図である。
図7C図7A及び図7Bのローラーのリッジ面に対する様々な例示的構成を示す図である。
図8A】均質本体とそれを通って延びるシャフトとを備えるローラーの断面図である。
図8B】本体とそれを通って延びるシャフトとを備え、本体がその周囲の周りに位置決めされた外側層を備えるローラーの断面図である。
図9】マスキング材料で被覆された及び被覆されない交替する領域(例えば、ストライプ)を示す図1の装置を用いて処理された基板の面の模式図である。
図10A】マスキング材料で被覆されて次に腐食液に露出される基板からの基板材料及びマスキング材料の漸進的溶解を示す一連の模式図である。
図10B】マスキング材料で被覆されて次に腐食液に露出される基板からの基板材料及びマスキング材料の漸進的溶解を示す一連の模式図である。
図10C】マスキング材料で被覆されて次に腐食液に露出される基板からの基板材料及びマスキング材料の漸進的溶解を示す一連の模式図である。
図10D】マスキング材料で被覆されて次に腐食液に露出される基板からの基板材料及びマスキング材料の漸進的溶解を示す一連の模式図である。
図11】腐食液によって被覆された及び腐食液によって被覆されない基板の交替する領域(例えば、ストライプ)を示す図5の装置を用いて処理された基板の面の模式図である。
図12A】被覆されてパターン付与腐食液に露出された基板からの基板材料及びマスキング材料の漸進的溶解を示す一連の模式図である。
図12B】被覆されてパターン付与腐食液に露出された基板からの基板材料及びマスキング材料の漸進的溶解を示す一連の模式図である。
図12C】被覆されてパターン付与腐食液に露出された基板からの基板材料及びマスキング材料の漸進的溶解を示す一連の模式図である。
図12D】被覆されてパターン付与腐食液に露出された基板からの基板材料及びマスキング材料の漸進的溶解を示す一連の模式図である。
図13】3つの併置されたテクスチャを備える基板面のコンピュータ発生光学画像の図である。
図14図13のテクスチャのうちの1つに対する表面テクスチャ線プロファイルを示すプロットの図である。
図15図13のテクスチャのうちの2つに対する表面テクスチャ線プロファイルを示すプロットの図である。
図16図13の光学像の高速フーリエ変換を示すプロットの図である。
図17】マスキング材料又は腐食液を基板に付加することができる例示的配置の模式図である。
図18】マスキング材料又は腐食液を基板に付加することができる別の例示的配置の模式図である。
図19】マスキング材料又は腐食液を基板に付加することができる更に別の例示的配置の模式図である。
図20】別の例示的処理装置の断面側面図である。
図21図20の処理装置の上面図である。
図22】マスキング材料(又は腐食液)で被覆された基板面の離散領域を示す基板の上面図である。
図23】マスクなしサンプルと比較したマスク付き基板サンプルに対する移動速度の関数として面高さデータをナノメートル単位で示す一連のプロットの図である。
図24】リフト試験後の平均面粗度(Ra)の関数として平均電圧を示すプロットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ここで添付図面にその例を示す本発明の開示の実施形態を以下で詳細に参照する。同じ又は類似の部品に言及するために可能な限り同じ参照番号を図面全体を通して以下で使用する。しかし、本発明の開示は、多くの異なる形態に具現化することができ、本明細書に説明する実施形態に限定されると解釈すべきではない。
【0045】
本明細書に使用する場合に、用語「約」は、量、サイズ、調合、パラメータ、及び他の量及び特性が正確ではない、正確である必要がない、公差、換算係数、四捨五入、及び測定誤差などのような及び当業者に公知の他の因子を反映して望むように近似的である、及び/又はより大きい又はより小さい可能性があることを意味する。
【0046】
本明細書では範囲は、「約」1つの値から及び/又は「約」別の値までとして表現することができる。そのような範囲を表す場合に、別の実施形態では一方の値から他方の値までを含む。同様に、用語「約」を用いて値を近似値として表す場合に、その値は別の実施形態を形成することは理解されるであろう。更に、各範囲の端点は、他の端点と関連して及び他の端点と無関係に有意であることは理解されるであろう。
【0047】
本明細書に使用する場合の方向用語、例えば、上方、下方、右、左、前、後、上部、底部は、描かれた時の図に関連して提供するに過ぎず、絶対的な向きの示唆は意図していない。
【0048】
特に明示しない限り、本明細書に説明するいずれの方法も、その段階を特定の順序で実行することを必要とすると解釈すること、同じく、いずれの装置についても、特定の向きを必要とすることを決して意図するものではない。従って、方法の特許請求の範囲がその段階が従うべき順序を実際に列挙しない場合、又はいずれかの装置の特許請求の範囲が個々の構成要素に対する順序又は向きを実際に列挙しない場合、又は段階を特定の順序に限定すべきことが特許請求の範囲又は明細書に別の方法で明確に示されない場合、又は装置の構成要素に対する特定の順序又は向きが列挙されない場合に、順序又は向きが推測されることは決して意図されない。これは、段階の配置、作動の流れ、構成要素の順序、又は構成要素の向きに関する論理の問題、文法的構成、又は句読点から導出される平明な意味、及び明細書に説明される実施形態の数又はタイプを備える解釈に関して考えられるあらゆる非表現的基礎について当て嵌まる。
【0049】
本明細書に使用する場合に、複数形でない名詞は、関連上明らかに他を指示しない限り、複数形への言及を含む。従って、例えば、複数形でない構成要素への言及は、関連上明らかに他に指示しない限り、2又は3以上のそのような構成要素を有する態様を含む。
【0050】
本明細書では、言葉「例示的」、「例」、又はそれらの様々な形を用いて例、事例、又は例示として役立つことを示す。本明細書に「例示的」又は「例」として説明するいずれの態様又は設計も他の態様又は設計よりも好ましいか又は有利であると解釈すべきではない。更に、例は、単に明確化及び理解のために提供され、開示する主題又は本発明の開示の関連部分をいずれかの方法で制限又は限定することを意図していない。様々な範囲の無数の追加例又は代替例を提示することが可能であるが、簡潔にするために省略すると理解することができる。
【0051】
本明細書に使用する場合に、用語「備える」及び「含む」及びそれらの変形は、特に指示のない限り、同義で非限定として解釈するものとする。移行句備える又は含むに続く要素のリストは、リスト内に具体的に列挙されたものの他にも要素が存在する可能性があるような非排除的なリストである。
【0052】
本明細書に使用する用語「実質的な」、「実質的に」、及びその変形は、説明する特徴が値又は説明に等しいか又はほぼ等しいことを表すように意図される。例えば、「実質的に平面状の」面は、平面状であるか又はほぼ平面状である面を示すことが意図される。更に、「実質的に」は、2つの値が等しいか又はほぼ等しいことを示すことが意図される。一部の実施形態では、「実質的に」は、互いの約10%以内、例えば互いの約5%以内、又は互いの約2%以内の値を意味することができる。
【0053】
本明細書に使用するように、異方性表面テクスチャとは、基板の主面を移動する第1の方向では、基板の主面を移動する第1の方向とは異なる第2の方向とは異なる属性を含むが、その差が実質的に変化しない表面テクスチャである。例えば、基板の主面を第1の向きに横切って取得した第1の線プロファイルと、異なる向き、例えば、第1の線プロファイルに直交する向きに主面を横切って取得した第2の線プロファイルについて、第1の線プロファイルの平均粗度Ra1と第2の線プロファイルの平均粗度Ra2との差を決定することが可能である。しかし、第1の線プロファイル及び第2の線プロファイルが取得される主面上の場所に関わらず、第1の線プロファイル及び第2の線プロファイルの絶対的な向きと、第1の線プロファイルの第2の線プロファイルに対する相対的な向きとが同じままであれば、第1の線プロファイルと第2の線プロファイルとの選択特性の差は同じである。すなわち、第1の線プロファイルの平均粗度の大きさは、主面上の位置に関係なく同じままであり、第2の線プロファイルの平均粗度の大きさは、主面上の位置に関係なく同じままである。従って、第1の予め決められた長さ(予め決められた長さは、主面に関する最大表面特性の2周期長さ(すなわち、反復)よりも大きいとすることができる)と主面上の第1の向きとに関して主面上のいずれかの場所で取得される第1の線プロファイルの平均粗度は、第1の予め決められた長さと主面に対する第1の向きとに関して主面上のいずれかの他の場所で取得される別の線プロファイルの平均粗度と測定機能の範囲内で実質的に等しい。同様に、第1の向きとは異なる第2の向きを有する第2の予め決められた長さ(予め決められた長さは、主面に関する最大表面特性の2周期長さ(すなわち、反復)よりも大きいとすることができる)に関して主面上のいずれかの場所で取得される第2の線プロファイルの平均粗度は、第2の予め決められた長さと第2の向きとに関して主面上のいずれかの他の場所で取得される別の線プロファイルの平均粗度と実質的に等しく、第1の線プロファイルに関するいずれかの平均粗度と第2の線プロファイルに関するいずれかの平均粗度の差は、実質的に一定である。
【0054】
図1及び図2に示すのは、基板12の主面を処理する例示的処理装置10のそれぞれ断面側面図と上面図である。本明細書に使用する場合に、用語「基板」は、材料のシート、プレート、リボン、又はペインを含む。基板は、同じか又は異なる材料の複数の層を有する積層基板とすることができる。基板12は、ガラスベースの材料を備えることができる。本明細書に使用する場合に、「ガラスベース」は、ガラスとガラスセラミックの両方を備え、ガラスセラミックは、1又は2以上の結晶相と非晶質の残留ガラス相とを有する。ガラスベースの材料(例えば、ガラスベースの基板)は、非晶質材料(例えば、ガラス)と、任意的に1又は2以上の結晶性材料(例えば、セラミック)とを備えることができる。例示的ガラスは、アルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスなどを備えることができる。一部の実施形態では、基板12は、シリコンウェーハ又はシリコンシートを備えることができる。別の実施形態では、基板12は、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化バリウム(BaF2)、サファイア(Al23)、セレン化亜鉛(ZnSe)、ゲルマニウム(Ge)、又は他の材料を備えることができる。基板12は、液晶ディスプレイ(LCD)、電気泳動ディスプレイ(EPD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、又はプラズマディスプレイパネル(PDP)のような様々なディスプレイ用途に使用することができる。
【0055】
基板12は、第1の主面14と、第1の主面14に対向する第2の主面16とを備える。一部の実施形態では、第1の主面14は、第2の主面16に平行とすることができるが、他の実施形態では、第1の主面14は、第2の主面16に平行でない場合がある。例えば、一部の実施形態では、長さ方向に又は長さ方向と直交する幅方向に基板の厚みを通して取得される基板12の断面形状は、楔形とすることができ、この場合に、第1又は第2の主面の一方は、第1又は第2の主面の他方に対して例えば0度(平行)よりも大きいが、約10度未満の角度で角度付けされる。基板12は、第1の主面14と第2の主面16の間に定められる約50マイクロメートル(μm)から約0.7mmの範囲、例えば、約50μmから約0.5mmの範囲の厚み「T」を備えることができ、この場合に、厚みTは、主面の一方又は両方に直交して測定される。別の実施形態では、他の厚み及び/又は非可撓性の構成を設けることができる。例えば、別の実施形態では、基板12は、約50μmから約3mmの範囲、例えば、約0.5mmから約3mmの範囲の厚みを備えることができる。
【0056】
基板12は、第1又は第2の主面の平面内で四辺形の周囲形状を有し、基板12の搬送方向20に関連付けられた前縁18と、前縁18と反対の後縁22と、対向する側縁24,26とを備えることができる。搬送方向20は、基板の長さ方向とすることができる。様々な実施形態では、前縁18と後縁22は、平行な縁部とすることができる。実施形態では、側縁24及び26は、平行な縁部とすることができる。一部の実施形態では、前縁18は、側縁24又は側縁26の一方又は両方に直交することができる。例えば、一部の実施形態では、基板12は、第1又は第2の主面14又は16の一方又は両方の平面内で矩形形状を有することができ、その場合に、側縁24,26は、搬送方向20に平行であり、前縁及び後縁18,22は、搬送方向20に直交する。
【0057】
図1及び図2に示すように、処理装置10は、搬送経路30に沿って基板12を搬送方向20に搬送するように構成された複数の搬送ローラー28と、マスキングローラー32と、マスキング材料リザーバ35を形成する第1の容器34と、腐食液ローラー36と、腐食液リザーバ39を形成する第2の容器38とを備えることができる。処理装置10は、リザーバ39と流体連通し、ポンプ42及び配管44を通して第2の容器38内に腐食液を循環させるように構成された腐食液循環システム40を更に備えることができる。
【0058】
搬送ローラー28は、回転可能に装着されて回転軸64の周りに回転するように構成された全長ローラーとすることができ、この場合に、搬送方向20に直交する方向の搬送ローラーの長さ88は、第1及び第2の側縁24,26間に定められる基板12の幅90に等しいか又はそれよりも大きいとすることができる(図2A参照)。搬送ローラー28は、従動ローラーとすることができる。例えば、搬送ローラー28は、搬送ローラー28をそれぞれの回転軸の周りに回転させて搬送経路30に沿って搬送方向20に基板12を搬送する1又は複数のモータ(図示せず)に結合することができる。別の実施形態では、搬送ローラー28は、個々にそれぞれの回転軸の周りに自由回転することができるように非従動式である。更に別の実施形態では、処理装置10は、従動式と非従動式の搬送ローラー28の組合せを備えることができる。搬送ローラー28は、基板12の下方に位置決めされ、それによって基板12を第1の主面14で支持するものとして示しているが、別の実施形態では、追加の搬送ローラー28が、基板12の上方に位置決めされ、第2の主面16に接触することができる。例えば、第2の主面16に接触する上側搬送ローラーは、駆動されない下側搬送ローラーの上で基板12を搬送方向20に推進する従動ローラーとすることができる。一部の実施形態では、1又は2以上の対の搬送ローラーは、搬送方向20に直交する方向に部分的に延びるように構成することができる。例えば、一部の実施形態では、第2の主面16に接触する上側搬送ローラー(図示せず)のような搬送ローラーは、基板12の縁部分に接触し、第1の及び/又は第2の主面の中心部分には接触しないとすることができる。
【0059】
更に図1及び図2を参照すると、マスキングローラー32は、搬送ローラー28と類似の方式で搬送経路30に沿って位置決めすることができる。従って、マスキングローラー32は、搬送方向20と直交する方向に基板12の幅90を横切って延びることができ、この場合に、マスキングローラー32の長さ92は、基板12の幅90に等しいか又はそれよりも大きいとすることができる。しかし、マスキングローラー32の長さ92は、基板の全面積未満が処理されることになる場合に、基板12の幅90よりも小さくすることができる。図3Aに示すように、マスキングローラー32は、長手軸線(例えば、回転軸)48を有するシャフト46と、溝54によって分離された複数のリッジ52を含むローラー本体50とを備えることができる。すなわち、リッジ52と溝54は、長手軸線48と平行なマスキングローラーの長さ方向に交替することができる。回転軸である長手軸線48は、搬送方向20と直交するように配置することができる。一部の実施形態では、マスキングローラー32は、ローラー本体50が、例えば、元々形成されているか又は図3Aに示すように複数の部品を確実に接合することによる単体構成のものとすることができる。従って、一部の実施形態では、ローラー本体50は、シャフト46と接続することができ、その場合に、シャフト46とローラー本体50は、回転軸48の周りを一緒に回転することができる。別の実施形態では、図3Bに示すように、マスキングローラー32は、ホイール56上の突起(図示せず)によって又はホイール56間に交互配置されたスペーサ58によって離間し、シャフト46上に位置決めされた複数のホイール56を備えることができ、この場合に、回転軸48に直交する方向のスペーサの直径は、ホイールの直径よりも小さい。そのような実施形態では、ホイール56は、リッジ52を形成し、スペーサ58は、溝54を形成する。一部の実施形態では、ホイール56は、回転軸48の周りをシャフト46に対して独立に回転可能とすることができ、その場合に、ホイール56は、別のホイール56と無関係に回転することができる。そのような実施形態では、シャフト46は、ホイール及び任意的にスペーサが回転する間は静止することができるが、別の実施形態では、シャフト46とホイール56は、回転軸48の周りを個々に自由に回転可能とすることができる。
【0060】
一部の実施形態では、マスキングローラー32は、マスキングローラー、例えば、シャフト46が回転軸48の周りにマスキングローラーを回転させるモータ(図示せず)に結合される従動ローラーとすることができ、別の実施形態では、マスキングローラー32は、駆動されず、自由に回転可能とすることができる。一部の実施形態では、マスキングローラー32は、搬送ローラー28に結合することができる。例えば、処理装置10は、搬送ローラー28及びマスキングローラー32を同時に回転させるように構成された駆動機構を備えることができる。すなわち、一部の実施形態では、マスキングローラー32の回転は、搬送ローラー28の回転と同期させることができるので、マスキングローラー32は、搬送ローラー28と同じ回転速度で回転し、基板12の搬送方向20への移動を助けることができる。例えば、一部の実施形態では、搬送ローラー28及びマスキングローラー32は、例えば、それぞれのシャフトに結合されたギアを通してチェーンで駆動することができ、チェーンは、チェーンを駆動してそれによって搬送ローラー28及びマスキングローラー32を回転させるモータに結合され、別の実施形態では、搬送ローラー28及び/又はマスキングローラー32は、完全にギアで駆動することができる。更に別の実施形態では、搬送ローラー28及び/又はマスキングローラー32は、モータ結合された1又は2以上のベルトで回転させることができる。本発明の技術分野で公知の他の搬送方法をこれに加えて又はこれに代えて用いることができる。一部の実施形態では、処理装置10は、単一マスキングローラー32を備えることができるが、別の実施形態では、処理装置10は、複数のマスキングローラー32を備えることができる。
【0061】
ローラー本体50(又はホイール56)は、複数の層、例えば、同心層を備えることができる。一部の実施形態では、ローラー本体50は、ポリ塩化ビニル(PVC)によって形成された外側層を備えることができるが、機械加工が容易であり、エッチング耐性ポリマーと接触した時に濡れやすく、かつ剛性を与える他の材料を用いることもできる。
【0062】
マスキングローラー32は、図3A及び図3Bでは、対向する円形縁部間に定められた周囲面84を備える直円柱セクションによって形成された複数のリッジを備えて示しているが、リッジ52は、他の周囲面形状を有することができる。例えば、リッジ52は、波状縁部を有する周囲面、平行縁部を有する周囲面(すなわち、同じ直径が、平行平面内に位置する2つの円の周囲間に定められ、それぞれの中心が、平行平面に直交する同一線上にある)、ジグザグ又は鋸歯状の縁部を有する周囲面、又は規則的又は不規則的な他の曲線から構成される縁部設計を備えることができる。そのような面形状の対向する縁部は、対称である必要はない。図3Cは、リッジの側縁60,62の間に定められる4つの例示的周囲面縁部パターンを示す:(a)円形縁部、(b)波状縁部、(c)正方形波状縁部、及び(d)ジグザグ(鋸歯状)縁部。他の周囲面パターンが可能であり、かつ考えられている。
【0063】
マスキングローラー32は、回転軸48の周りに回転可能であり、かつリッジ52の少なくとも周囲面84が、第1の容器34に閉じ込められたマスキング材料66と接触する、例えば、それに浸漬されるように、シャフト46を通じて第1の容器34の上に装着することができる。マスキング材料66は、液体として容易に付加されて選択された腐食液によって除去されるあらゆる適切なマスキング材料を備えることができる。例えば、一部の実施形態では、マスキング材料66は、スチレンマレイン酸(SMA)を備えることができるが、別の実施形態では、他のマスキング材料、例えば、アクリレート、ノボラック(ホルムアルデヒド対フェノールのモル比が1未満のフェノール-ホルムアルデヒド樹脂)、又はシリコーンを用いることができる。
【0064】
処理装置10は、搬送経路30に沿って位置決めされた腐食液ローラー36を更に備えることができる。一部の実施形態では、処理装置10は、単一腐食液ローラー36を備えることができるが、別の実施形態では、処理装置10は、複数の腐食液ローラー36を備えることができる。腐食液ローラー36は、回転可能に装着され、かつ回転軸64の周りに回転可能とすることができる。腐食液ローラー36は、搬送方向20に対してマスキングローラー32の下流側に位置決めされ、その場合に、搬送方向20に搬送経路30に沿って移動する基板12は、マスキングローラー32に遭遇した後で腐食液ローラー36に遭遇する。
【0065】
図4A及び図4Bに示す一部の実施形態では、腐食液ローラー36は、シャフト72に装着された連続的な(例えば、均質な)組成のモノリシックローラー本体70を備えることができる。しかし、別の実施形態では、ローラー本体70は、非均質とすることができる。一部の実施形態では、ローラー本体70は、同心層のような複数の層を備えることができる。例えば、図4Cに示すように、ローラー本体70は、シャフト72に結合されたコア74と、コア74上に位置決めされ、コア74に結合された腐食液ローラー36の外面86を定める外側層76とを備えることができる。腐食液ローラー36は、コア74と外側層76の間に1又は2以上の中間層を更に備えることができる。コア74は、中実コアを備えることができるが、別の実施形態では、中空又は部分的に中空の内部コアを設けることができる。コア74は、回転軸64の周りに腐食液ローラー36を回転させるためにシャフト72に結合されたモータから外側層76へのトルクの伝達を容易にすることができ、一方で外側層76は、基板12が腐食液ローラー36の上を移動する時に第2の容器38からの腐食液78の望ましい持ち上げと基板12の第1の主面14上の腐食液のコーティングとを提供するように設計された材料で製作することができる。例えば、腐食液ローラー36は、発泡材料を備えた外側層76を備えることができる。外側層76は、例えば、ポリウレタン又はポリオレフィン材料のような腐食液耐性材料の開放多孔性繊維網を備えることができる。
【0066】
マスキングローラー32と同様に、腐食液ローラー36は、搬送方向20と直交する方向に基板12の幅90の全て又は一部を横切って延びることができる。すなわち、腐食液ローラー36の回転軸64は、搬送方向20と直交することができる。実施形態では、腐食液ローラー36は、腐食液ローラー36の周囲面86が第2の容器38に閉じ込められた腐食液78と接触する、例えば、それに浸漬されるように第2の容器38の上に回転可能に装着することができる。様々な実施形態では、腐食液78は、フッ化水素酸(HF)を備えることができるが、別の実施形態では、基板12の材料に応じて他の適切な腐食液を用いることができる。本明細書に説明する例では、腐食液78は、40℃で1モル(M)濃度のH3PO4+0.35モル濃度のNaFを備える。しかし、基板材料に応じて他の適切な腐食液を用いることができる。例えば、ガラスのHFベースのエッチングは、最初は時間依存性であり、達成可能な平均粗度Ra値は、最終的に約0.5nmで飽和する。処理された基板12の得られる表面テクスチャは、高さと共に横方向にもナノメートルの尺度であり、相関長さもナノメートル程度とすることができる。
【0067】
図5及び図6は、搬送経路130に沿って基板12を搬送方向120に搬送するように構成された複数の搬送ローラー128と、腐食液ローラー136と、腐食液リザーバ139を形成する容器138とを備える別の例示的処理装置100を示している。処理装置100は、腐食液リザーバ139と流体連通してポンプ142及び配管144を通して容器138内に腐食液を循環させるように構成された腐食液循環システム140を更に備えることができる。
【0068】
搬送ローラー128は、全長ローラーとすることができ、この場合に、搬送方向120に直交する方向の搬送ローラーの長さ94は、第1及び第2の側縁24,26間に定められる基板12の幅90に等しいか又はそれよりも大きいとすることができる(図6参照)。搬送ローラー128は、従動ローラーとすることができる。例えば、搬送ローラー128は、搬送ローラー128をそれぞれの回転軸の周りに回転させて搬送経路130に沿って搬送方向120に基板12を搬送するモータ(図示せず)に結合することができる。他の実施形態では、搬送ローラー128は、駆動されず、個々に自由回転することができる。更に他の実施形態では、処理装置100は、従動式と非従動式の搬送ローラー128の組合せを備えることができる。搬送ローラー128は、基板12の下方に位置決めされ、それによって基板12を第1の主面14で支持するものとして示しているが、更に別の実施形態では、追加の搬送ローラー128は、基板12の上方に位置決めされ、第2の主面16に接触するとすることができる。例えば、第2の主面16に接触する上側搬送ローラーは、基板12を搬送方向120に推進する従動ローラーとすることができる。一部の実施形態では、1又は2以上の対の搬送ローラーは、搬送方向20に直交する方向に部分的に延びるように構成することができる。例えば、一部の実施形態では、搬送ローラーは、第2の主面16の縁部分に接触するが、第2の主面の中心部分には接触しないとすることができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、処理装置100は、回転軸132の周りに回転するように構成された1つの腐食液ローラー136を更に備えることができるが、別の実施形態では、処理装置100は、複数の腐食液ローラー136を備えることができる。腐食液ローラー136は、搬送方向120と直交する方向に基板12の幅90を横切って延びることができ、この場合に、腐食液ローラー136の長さ96は、基板12の幅90に等しいか又はそれよりも大きいとすることができる。しかし、更に別の実施形態では、基板12の全幅未満を処理することになっている場合に、長さ96は、幅90よりも小さいとすることができる。図7A及び図7Bに示すように、腐食液ローラー136は、シャフト172と、溝154によって分離された複数のリッジ152を含むローラー本体170とを備えることができる。すなわち、リッジ152と溝154は、回転軸132に沿って腐食液ローラー136の長手方向に交替する。
【0070】
腐食液ローラー136は、図7A及び図7Bでは、対向する円形縁部間に定められた周囲面156を含む直円柱セクションによって形成された複数のリッジを備えるように示しているが、リッジ152は他の周囲面形状を有することができる。例えば、リッジ152は、波状縁部を有する周囲面、平行縁部を有する周囲面(すなわち、同じ直径が、平行平面内に位置する2つの円の周囲間に定められ、それぞれの中心が、平行平面に直交する同一線上にある)、ジグザグ又は鋸歯状の縁部を有する周囲面、又はあらゆる他の曲線から構成される周囲面を備えることができる。そのような面形状の対向する縁部は、対称である必要はない。図7Cは、リッジの側縁160,162の間に定められる4つの例示的周囲面パターンを示す:(a)円形縁部、(b)波状縁部、(c)正方形波状縁部、及び(d)ジグザグ(鋸歯状)縁部。他の周囲面パターンが可能であり、かつ考えられている。
【0071】
一部の実施形態では、図8Aに示すように、腐食液ローラー136は、シャフト172に装着された連続的な(例えば、均質な)組成のモノリシックローラー本体170を備えることができる。しかし、更に別の実施形態では、腐食液ローラー本体170は、図8Bに示すような複数の層、例えば、同心層を備えることができる。従って、腐食液ローラー本体170は、シャフト172に結合されたコア174と、コア174上に位置決めされ、腐食液ローラー136の周囲を定める外側層176とを備えることができる。図示しないが、腐食液ローラー136は、コア174と外側層176の間に1又は2以上の中間層を更に備えることができる。コア174は、中実コアを備えることができるが、他の実施形態では、中空又は部分的に中空の内部コアを設けることができる。コア174は、腐食液ローラー136を回転させるためにシャフト172に結合されたモータから外側層176へのトルクの伝達を容易にすることができ、一方で外側層176は、基板12が腐食液ローラー36の上方を移動する時に容器138からの腐食液178の望ましい持ち上げと基板12の第1の主面14上への腐食液のコーティングとを提供するように設計された材料で製作することができる。例えば、腐食液ローラー136は、発泡材料を備えた外側層176を備えることができる。外側層176は、例えば、ポリウレタン又はポリオレフィン材料のような腐食液耐性材料の開放多孔性繊維網を備えることができる。
【0072】
一部の実施形態では、腐食液ローラー136は、従動ローラーとすることができ、この場合に、回転軸1328の周りに腐食液ローラーを回転させるモータ(図示せず)に腐食液ローラーを結合することができ、一方で更に別の実施形態では、腐食液ローラー136は、駆動されず、回転軸132の周りに自由に回転可能とすることができる。一部の実施形態では、腐食液ローラー136は、搬送ローラー128に結合することができる。例えば、処理装置100は、搬送ローラー128及び腐食液ローラー136を同時に回転させるように構成された駆動機構を備えることができる。すなわち、一部の実施形態では、腐食液ローラー136の回転軸132周りの回転は、搬送ローラー128の回転と同期させることができるので、腐食液ローラー136は、搬送ローラー128と同じ回転速度で回転する。例えば、一部の実施形態では、搬送ローラー128と腐食液ローラー136は、チェーンで駆動することができ、チェーンは、チェーンを駆動してそれによって搬送ローラー128及び腐食液ローラー136を回転させるモータに結合される。
【0073】
一部の実施形態では、リッジ152は、腐食液ローラー136に沿って等間隔に配置することができる。例えば、その間隔パターンは、処理後の基板12の望ましい性能属性によって定めることができる。従って、一部の実施形態では、リッジが等間隔に配置されないか、又は複数のリッジの個々のリッジが搬送方向と直交する方向に異なる周囲面幅を有することができる。
【0074】
腐食液ローラー136は、リッジ152の少なくとも周囲面156が容器138に閉じ込められた腐食液78と接触する、例えば、それに浸漬されるように、シャフト172を通じて容器138の上に回転可能に装着することができる。
【0075】
処理装置10とは異なり、処理装置100の実施形態にはマスキングローラーが不要であり、処理装置10でのマスキングローラー32によって提供される機能的利益は、処理装置100では腐食液ローラー136が果たす。すなわち、腐食液78による基板面の直接侵食を防止するためにマスキング材料を用いるのではなく、腐食液は、パターン付き腐食液ローラー136によって予め決められたパターンで基板の第1の主面14に付加される。基板主面のエッチングは、腐食液ローラー136によって腐食液が直接に付加される面部分で最も容易に起こり、その後に腐食液が基板面上に広がることに起因して、腐食液ローラーによって腐食液が直接に付加されない基板面の部分を侵食する。その結果として、腐食液ローラー136によって腐食液が直接に付加された基板主面の部分は、腐食液の広がりに起因してエッチングされたそれらの面部分よりも多くエッチングされる。
【0076】
本発明の開示の方法により、基板12は、例えば、搬送ローラー28によって腐食液ローラー36に隣接して、例えばその上を搬送することができる。処理装置10の実施形態では、基板12の第1の主面14は、マスキング材料66の自由面の上方で離間し、かつ自由面に向いている。本方法は、基板12が搬送経路30に沿って搬送方向20に搬送される時にマスキング材料66を第1の容器34から基板12の第1の主面14に移すために回転軸48の周りにマスキングローラー32を回転させる段階を更に備えることができる。例えば、マスキングローラー32は、マスキング材料66を第1の容器34から持ち上げて基板12の第1の主面14に接触させ、それによって第1の主面14をマスキング材料66の層で被覆しながら搬送方向20への基板12の平行移動を容易にするのに適する方向に回転することができる。
【0077】
マスキングローラー32が回転すると、基板12が搬送経路30に沿って搬送方向20に搬送される時に、マスキング材料66は、リッジ52によって定められる予め決められたパターンで基板12の第1の主面14に付加される。例えば、リッジ面が2つの平行な円形縁部間に定められる実施形態では(例えば、図3C(a)参照)、マスキングローラー32は、第1の主面14が、交替するマスキング材料66の平行列、例えば、マスキング材料66で被覆された列と介在する未被覆列68(図9参照)とを含むように、マスキング材料66の平行列を第1の主面14上に堆積するように構成される。
【0078】
基板12が搬送経路30に沿って搬送方向20へ前方に搬送された状態で、この時点でマスキング材料66によって予め決められたパターンに被覆された第1の主面14は、腐食液ローラー36の上を通り過ぎる。腐食液ローラー36が回転する時に、腐食液78は、基板12の第1の主面14に、例えば、マスキング材料66の列とマスキング材料66で被覆されていない列68との上に、例えば、第1の主面14全体に付加される。
【0079】
ここで図10Aから図10Dを参照すると、幅90の横断面で見た場合の基板12に関する一連の断面プロファイルを提供しており、マスキング材料で被覆されていない列68での第1の主面14からの基板材料の除去と、マスキング材料66の列の除去とを示している。この一連のものが示すように、基板12の被覆されていない部分にわたる材料の除去は、腐食液78での被覆の後に急速に始まるのに対して、マスキング材料66で被覆された基板の部分は、元々はマスキング材料で保護されている。図10Aでは、マスキング材料66の列が第1の主面14に既に付加されている。図10Bから10Cでは、マスキング材料が腐食液78によって除去され、腐食液78は、第1の主面14の益々大きい面区域を侵食することができるようになる。しかし、マスキング材料の存在により、マスキング材料66の下にある区域の材料除去が遅れることに起因して、マスキング材料が第1の主面14に堆積した場所では、元々被覆されていない場所、例えば、マスキング材料で被覆されていない列(面)68よりも基板材料の除去が少ない。最終的に、図10Dに示すように、マスキング材料66を第1の主面14から完全に除去することができ、腐食液78は、予めマスキング材料66で被覆された第1の主面14の区域を侵食し、そこから材料を除去し始める。一部の事例では、マスキング材料66の除去は迅速であり、マスキング材料の除去に数秒しか掛からないとすることができる。いずれにせよ、結果として第1の主面14を横切って交替する複数のリッジ領域80と複数の陥凹領域又はバレー領域82とを含む面を有する基板が取得される。すなわち、腐食液78でエッチングした後に、第1の主面14は、基板の厚み変動を表すピーク及びバレーに関する低周波数の起伏を備えることができ、この場合に、バレー領域の厚みは、ピーク領域の厚みよりも小さい。本明細書に使用する場合に、用語「厚み」は、名目上、第1又は第2の主面の少なくとも一方に直交する方向での基板12の主面間の距離を指す(例えば、エッチング前の)。これに加えて、リッジ領域も陥凹領域も第1の主面14を覆う腐食液の全体的なエッチング作用から生じる微細でほぼ等方性のテクスチャを更に備えることができる。従って、本発明の開示によるエッチング後の第1の主面14は、エッチングされた基板面のマスク領域と非マスク領域の組合せから生じる第1の低周波マクロスケール異方性テクスチャを備えることができる。基板は、元々のマスク領域と非マスク領域の両方に課せられた微細な高周波等方性表面テクスチャを更に備えることができ、異方性テクスチャがピークツーピーク周期と大きさとを含むのに対して、等方性テクスチャは、約1ナノメートルに等しいか又はそれよりも小さい平均面粗度Saで最も良く特徴付けられ、このテクスチャは、腐食液が付加された基板の面全体にわたって延び、面を横切る方向に関わらず一様である。
【0080】
別の実施形態では、類似の方法は、処理装置100の実施形態に使用することができるが、処理装置10の実施形態を参照して上述したように、腐食液78が基板の面全体に均一に付加され、マスキング材料が面の予め決められた区域での面の直接エッチングを遅らせる代わりに、処理装置100の実施形態により、腐食液78を基板12の第1の主面14に選択的に付加することができ、それにより、腐食液78が直接に付加された基板の特定の区域は、腐食液が直接に付加されなかった基板の他の区域よりもより迅速にエッチングされる。すなわち、第1の主面14の腐食液被覆部分の列は、未被覆面部分の列98によって分離される(図11参照)。図12Aに示すように、腐食液78は、第1の主面14に平行列を成して付加され、基板12の第1の主面14から材料の除去を開始する。図12Bでは、腐食液は延び始め、材料の除去が元の腐食液付加区域を超えて延びる。図12Cは、次第に多くなる材料の除去が示しており、腐食液が後で広がった区域よりも腐食液が元々付加された区域では、より多くの材料が除去されることを説明している。図12Dでは、腐食液は、リッジ領域80と、バレー領域82、すなわち、腐食液が元々付加された場所に関連付けられた陥凹領域とを生成する。従って、本発明の開示によるエッチング後の第1の主面14は、第1の低周波マクロスケール異方性テクスチャを備えることができる。基板は、更に、腐食液と接触していた基板の主面全体にわたって課せられた微細な高周波等方性表面テクスチャを備えることができる。異方性テクスチャがピークツーピーク周期と大きさとを含むのに対して、等方性テクスチャは、約1ナノメートルに等しいか又はそれよりも小さい平均面粗度Saで最も良く特徴付けられ、この異方性テクスチャは、腐食液が付加された基板の面全体にわたって延び、かつ特徴付けが行われる方向に関わらず一様である。
【0081】
処理装置10又は処理装置100のいずれかによって適用される方法から取得される処理された基板は、第1のテクスチャを備えることができる。例示的に、図13は、処理装置10又は処理装置100から取得される第1のテクスチャを有するテクスチャ付き基板面に関するコンピュータ模擬光学ビュー(例えば、光学機器、例えば、顕微鏡を通して撮像可能である)を示す。第1のテクスチャは、大きい白い矢印164に示すように1つの方向(この場合に、方向は、リッジ、例えば、波面に似たリッジの線と直交する軸線に沿ったもの)を有する異方性テクスチャとすることができ、これは、基板12の搬送方向20と及び従ってマスキングローラー32(又は腐食液ローラー136)と直交して延びる(ここでは-45°として示す)。従って、第1のテクスチャの方向は、図示の+45°方向に延び、処理装置10の実施形態でのマスキングローラー32の回転軸48又は処理装置100の実施形態での腐食液ローラー136の回転軸132と平行な軸線に沿って連続的である。第1のテクスチャ、例えば、離間した複数のリッジに直接関連するテクスチャ102は、図14のプロットに示しており、第1のテクスチャは、この例では正弦波パターンを含む。しかし、第1のテクスチャは、正弦波パターンを示す必要はなく、マスキング又は腐食液ローラーリッジの構成(例えば、処理装置10又は処理装置100)に応じて他のパターンを示すことができる。図14を参照すると、第1のテクスチャは、約0.1ミリメートルから約100ミリメートルの範囲、例えば、約1ミリメートルから約75ミリメートルの範囲のピークツーピーク周期104を有することができる。第1のテクスチャ102は、約2ナノメートルから約100ナノメートルの範囲のピークツーバレー大きさ106を有することができる。
【0082】
基板12は、基板12の露出した第1の主面14に対する腐食液の全体的な作用から生じる第2の等方性テクスチャを備えることができ、上述のように、方向に関係なく均一な特性、すなわち、等方性テクスチャを備えることができる。例えば、第2のテクスチャは、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した場合に、約1nmに等しいか又はそれよりも小さい平均面粗度Saを示すことができる。
【0083】
一部の実施形態では、第1の主面14は、第1のテクスチャ102と併置された第3のテクスチャ108を備えることができる。第3のテクスチャ108は、図15に正弦波テクスチャとして示す低周波テクスチャとすることができるが、第3のテクスチャ108は、第1のテクスチャ102と同じように、正弦波である必要はない。第3のテクスチャ108は、約0.1マイクロメートルから約25マイクロメートルの範囲のピークツーピーク波長110を有することができる。第3のテクスチャ108は、約2ナノメートルから約50マイクロメートルの範囲のピークツーバレー大きさ112を有することができる。第3のテクスチャ108は、例えば、搬送方向20(120)での基板の直線運動とは直接関連しない基板12の運動から生じる可能性がある。すなわち、基板が搬送ローラーの上を搬送方向に横断することにより、例えば、揺動運動のような付随的な基板の運動が生じる場合があり、それにより、第3のテクスチャ108が生成される場合がある。従って、第3のテクスチャ108は、第3のテクスチャ108の連続する波面に対して垂直に延びる線が搬送方向20(120)と平行になるように-45°方向に延びることができる。
【0084】
一部の実施形態では、第1の主面14は、図15に第3のテクスチャ108と併置された高周波テクスチャとして示す第4のテクスチャ118を備えることができる。腐食液リザーバから腐食液ローラーへの及び/又は腐食液ローラーから基板12の第1の主面14への腐食液の移動に関連付けられた流体力学により、追加の第4のテクスチャ118を生成することができる。第4のテクスチャ118は、約0.1ナノメートルから約2ナノメートルのピークツーピーク周期122を有することができる。
【0085】
図16は、図13によって表わされる模擬テクスチャの高速フーリエ変換を表し、この変換の高周波成分を示している。周期は、式X(メートル)=2π/X*(メートル-1)によって周波数と関連し、ここでXは、ピークツーピーク周期であり、X*は、それぞれの周波数である。従って、テクスチャ周期104、110、及び122(図13参照)は、それぞれ、300m-1、600m-1、及び6000m-1という周波数104*、110*、及び122*を有する。
【0086】
処理された主面、例えば、第1の主面14上の異方性テクスチャを特徴付ける方法は、例えば、低倍率対物レンズを用いて基板の予め決められた区域を走査する光干渉法(例えば、Zygo NexView)を含む。一部の実施形態では、複数区域の走査を必要とする場合があり、その場合に、隣接する走査を継ぎ合わせて望ましい全視野を得ることができる。得られた画像は、オープンソースの画像解析パッケージ、例えば、Gwyddion Ver 2.51を用いて処理することができる。例えば、画像の外縁を整えて画像のアーチファクト及びデータの欠落に対処することができる。次に、4次の平面当て嵌めを用いてZ軸線(高さ)のスケールを例えば±10nmに制限して画像を均し、微細な形態変化を検出可能とすることができる。望ましい場合に、画像を回転させて処理装置を通過するガラス運動に対応するように画像を位置合わせすることができる。次に、高速フーリエ変換を用いて画像を変換し、空間周波数シグナチャの分析を可能とすることができる。
【0087】
図17から図19は、基板12上にテクスチャの(異方性の)列をもたらすことができる例示的マスク及びエッチパターンを示している。すなわち、クロスハッチ区域は、処理装置10によるマスキング材料66か、又は処理装置100による腐食液のパターン付き付加のいずれかの付加の区域を示している。追加の段階を実行してより複雑なエッチングパターンを取得することができることは、以上の説明から明らかであるべきである。例えば、基板12を予め決められた角度だけ回転させて再度マスキングした後に、エッチング又は再度エッチングすることができる。例えば、処理装置10に関して基板12は、第1の方向に平行列を成すマスキング材料66の列を付加することによってマスキングすることができ、次に、基板を回転させて、予め決められた角度βだけ回転した第2の方向に第2の組のマスキング材料列を付加することができる。角度βは、約1°から90°の範囲とすることができる。図17は、角度βを90°として示している(この場合に、2つのパターンは直交する列である)。図18は、マスキング材料の平行列が、基板の縁部と平行ではない、例えば、基板の長軸線180と平行ではないように堆積される別の実施形態を示している。すなわち、マスキング材料の列は、軸線180から角度βだけ回転的にオフセットして堆積される。
【0088】
図19は、マスキング材料66(及び従ってその後のエッチ領域の位置)又は処理装置100の場合に腐食液78が等間隔の列を成して付加されない更に別の実施形態を示している。これは、例えば、マスキングローラー32(又は処理装置100の場合に腐食液ローラー136)のリッジを不均等に離間させることで達成することができる。処理装置10に関して上述したように、その結果として、マスキング材料66を堆積させたリッジ領域とマスキング材料が付加されなかった陥凹領域とを有する基板が取得されることは明らかであるべきである。処理装置100に関して、腐食液78が腐食液ローラー136で最初に付加されない場所にリッジ区域が生成され、腐食液78が腐食液ローラーで最初に付加される場所に陥凹領域が生成される。いずれの場合も、処理装置10又は処理装置100に関して上述した第1から第4のテクスチャのうちのいずれか1又は2以上を生成することができる。
【0089】
図20から図21に示す代替工程では、スプレーノズルを用いてマスキング材料66を離散場所に堆積することができる。図22により、処理装置200は、基板12が搬送経路230に沿って搬送方向220に搬送される時に基板12の幅方向に延びるように配置された複数のスプレーノズル202を備えることができる。スプレーノズル202は、共通プレナム204と流体連通することができ、このプレナムは、次に、マスキング材料66のためのリザーバ207を形成する容器206と流体連通する。マスキング材料66は、例えば、スチレンマレイン酸(SMA)を備えることができるが、別の実施形態では、他のマスキング材料、例えば、アクリレート、ノボラック(ホルムアルデヒド対フェノールのモル比が1未満のフェノール-ホルムアルデヒド樹脂)、又はシリコーンを用いることができる。図示しないが、スプレーノズル202は、更に別の実施形態では搬送方向220に延びることができる。例えば、スプレーノズル202は、スプレーノズルの直交する横列及び縦列のアレイに配置することができる。スプレーノズル202は、非常に微細な高解像度パターンを基板上に「印刷」することができるインクジェットノズルの形態とすることができる。離散場所は、規則的、周期的な予め決められたパターン、又は図22に示すランダム化されたパターンのようなランダム又は擬似ランダムパターンをもたらすことができる。
【0090】
処理装置200は、搬送経路230に沿って基板12を搬送方向220に搬送するように構成された複数の搬送ローラー228と、腐食液78のための腐食液リザーバ239を形成する容器238とを更に備えることができる。搬送ローラー228は、回転可能に装着されてそれぞれの回転軸の周りに回転するように構成された全長ローラーとすることができ、この場合に、搬送方向220に直交する方向の搬送ローラーの長さ288は、第1及び第2の側縁24,26間に定められる基板12の幅90に等しいか又はそれよりも大きいとすることができる。搬送ローラー228は、従動ローラーとすることができる。例えば、搬送ローラー228は、搬送ローラーをそれぞれの回転軸の周りに回転させて搬送経路230に沿って搬送方向220に基板12を搬送する1又は複数のモータ(図示せず)に結合することができる。他の実施形態では、搬送ローラー228は、駆動されず、個々にそれぞれの回転軸の周りに自由回転することができる。更に他の実施形態では、処理装置200は、従動式と非従動式の搬送ローラー228の組合せを備えることができる。搬送ローラー228は、基板12の下方に位置決めされ、それによって基板12を第1の主面14で支持するものとして示しているが、更に別の実施形態では、追加の搬送ローラー228が基板12の上方に位置決めされ、第2の主面16に接触することができる。例えば、第2の主面16に接触する上側搬送ローラーは、駆動されない下側搬送ローラーの上で基板12を搬送方向220に推進させる従動ローラーとすることができる。一部の実施形態では、1又は2以上の対の搬送ローラーは、搬送方向20に直交する方向に部分的に延びるように構成することができる。例えば、一部の実施形態では、第2の主面16に接触する上側搬送ローラー(図示せず)のような搬送ローラーは、基板12の縁部分に接触し、第2の主面16の中心部分には接触しないとすることができる。
【0091】
処理装置200は、搬送経路230に沿って位置決めされた腐食液ローラー236を更に備えることができる。一部の実施形態では、処理装置200は、単一腐食液ローラー236を備えることができるが、更に別の実施形態では、処理装置10は、複数の腐食液ローラー236を備えることができる。腐食液ローラー236は、搬送方向20に対してスプレーノズル202の下流側に位置決めされ、その場合に、搬送方向20に搬送経路30に沿って移動する基板12は、スプレーノズル202が第1の主面14にマスキング材料66を堆積させた後で腐食液ローラー236に遭遇する。様々な実施形態では、腐食液ローラー236は、処理装置10の腐食液ローラー36と類似に又は同一に構成することができる。
【0092】
腐食液ローラー236は、搬送方向220と直交する方向に基板12の幅90の全て又は一部を横切って延びることができる。すなわち、腐食液ローラー36の回転軸264は、搬送方向20と直交することができる。処理装置200は、リザーバ239と流体連通し、ポンプ242及び配管244を通して容器238内に腐食液78を循環させるように構成された腐食液循環システム240を更に備えることができる。実施形態では、腐食液ローラー236は、腐食液ローラー36の周囲面が容器238に閉じ込められた腐食液78と接触する、例えば、それに浸漬されるように容器238の上に回転可能に装着することができる。様々な実施形態では、腐食液78は、フッ化水素酸(HF)を備えることができるが、更に別の実施形態では、基板12の材料に応じて他の適切な腐食液を用いることができる。本明細書に説明する例では、腐食液78は、40℃で1モル(M)濃度のH3PO4+0.35モル濃度のNaFを備える。しかし、他の適切な腐食液を用いることができる。例えば、ガラスのHFベースのエッチングは、最初は時間依存性であり、達成可能な平均粗度Ra値は、最終的に約0.5nmで飽和する。処理された基板12の得られる表面テクスチャは、高さと共に横方向にもナノメートルの尺度であり、相関長さもナノメートル程度であるとすることができる。
【0093】
上述の実施形態は、基板12の主面をエッチングする段階に関して説明するものであるが、腐食液78を滲出液に代えることにより、処理装置10、100、又は200を用いて腐食液で見られる表面テクスチャの変化をある程度模倣する基板の面での化学組成の変化を生じさせることができる。例えば、例示的実施形態は、搬送方向に搬送経路に沿って基板12を搬送する段階と、基板が搬送される時に基板12の第1の主面14の第1の区域にマスキング材料を付加する段階と、第1の主面14の第1の区域にわたって滲出液を付加する段階とを備えることができ、第1の主面14は第1の化学組成を備え、滲出液は、第1の主面14から第1の化学組成の少なくとも1つの成分を浸出し、その結果として、浸出後に第1の化学組成の少なくとも1つの成分の濃度は、浸出後に第1の空間周期と共に第1の軸線に沿って周期的に変化することができる。適切な滲出液は、以下に限定されるものではないが、HCl、H2SO4、HNO3、又はその組合せを備えることができる。浸出可能なガラス成分は、以下に限定されるものではないが、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Al(アルミニウム)、及び/又はB(ホウ素)を備えることができる。
【0094】
実施例
厚み0.5mm、面積(主面当たり)150mm2を有するCorning Lotus NXTサンプルを本明細書に説明するマスキング技術に従ってエッチングした。4つのエッチング時間を用いて実施し、腐食液への露出時間は40秒から160秒まで40秒刻みで変化させた。25ミリメートル/秒、65ミリメートル/秒、及び100ミリメートル/秒の3つの異なる速度でサンプルをエッチングした。光干渉法(Zygo NexView)を用いて得られた面を解析し、最低倍率の対物レンズを用いて6x6の画像マトリックスを走査し、フレームを互いに継ぎ合わせて約32mm2の全視野を提供した。得られた画像(例として図13参照)は、以下に概説する手順に従ってGwyddion Ver.2.51を用いて処理した。
【0095】
最も長いエッチング時間(160秒)では、最も顕著なテクスチャ特徴が生じた。比較のために未処理のLotus NXTと、40℃で1MのH3PO4+0.35MのNaFによる一般的な面エッチングを受けた基板サンプルとからもデータを収集した。各条件下でAFMを実施してナノテクスチャを評価した。AFM撮像を通して全てのエッチング条件が類似の基板表面特性を示した。4つの面全てについて、線プロファイルを図23に示している。マスキングを施さない一般的なエッチング面(1MのH3PO4+0.35MのNaF)は、ローラーの動きに平行な線と垂直な線の両方に沿って延びるフリンジを有するハッシュパターンを示した。これらのフリンジ構造は、面全体で実質的に等しいピークツーバレー大きさを有し、ピークツーピーク観察値は、それぞれ約+0.4ナノメートルと-0.25ナノメートルであった(図23(a))。低速(例えば、25ミリメートル/秒)でマスキングを付加しても、全体の線プロファイルは大きく変化しなかった(図23(b))。より高いマスキング付加速度(65ミリメートル/秒及び100ミリメートル/秒)では、テクスチャのバンドは、視覚的にも線プロファイル抽出を通してもより顕著になった。ローラー軸線に沿った方向の周波数は洗い取られ、明確に定まらなくなった。マスク領域の高低差は、図23(c)、(d)に示す線プロファイルでも明確に観察される。テクスチャの一部のバンドは、他のテクスチャバンドに対して僅かに角度がずれて付加されているように見えており、この理由のために、ピークツーバレー大きさ(約+1.1ナノメートルから約-0.8ナノメートル)の増大は、これらの領域が線プロファイル内で互いに融合していることを示している。他のバンドは、より明瞭であり、マスクパターン化ローラー上に見られるリッジ-バレー半径の範囲内で数mm程度の距離だけ離れて存在する。予備的なリフト試験測定により、これらのテクスチャは、マスキングの付加とエッチング速度に応じてESC性能を約12%も改善することが示された。リフト試験は、10cm×10cmのステージプレートを取り付けた平らな真空面(例:真空プレート)と、ステージプレートを取り囲む絶縁性リフトピンと、ガラスプレート面の上に吊り下げられた静電界メータのアレイとを備える。測定シーケンスは、被試験サンプルをエッチング面を下にして真空プレートに位置決めされたリフトピンの上に置くことで始まる。高流量コロナ放電式イオナイザを用いて、サンプルに残留する電荷を除去する。ベンチュリの方法で真空を生成し、リフトピンを用いてサンプルを真空プレート上に降ろすことにより、一定かつ制御圧力の下でガラスプレートと真空面を接触させる。この状態を数秒間維持し、その後に真空を解除し、ガラスサンプルプレートをリフトピンで真空面から約80cmの高さ(電界メータアレイの約10mm下)まで上昇させる。ガラス面の電圧は、真空工程から発生した最大電圧と共にその後の減衰率に関するデータを取得するのに十分な時間にわたって電界メータでモニタされて記録される。
【0096】
図24は、特徴的な間隔の関数として平均%電圧改善を示すプロットであり、ここで特徴的間隔は、異方性テクスチャの波形の周期と類似する。信頼区間と共に示すデータは、未処理の未エッチングサンプルに対するエッチング済みサンプルから得られた最大リフト試験電圧V(V@リフトピン高さ80cm)の変化率(減少又は増加)を表し、試験されたサンプルの静電帯電(ESC)への洞察を提供するものである。例えば、0%の変化率は、対照サンプルと同じ電圧発生を表し、100%の場合は、面電圧発生が事実上なくなったことを表し、-100%の場合は、対照サンプルよりも面電圧発生が2倍に増加したことを表すことになる。試験は、等級1000クリーンルーム及び相対湿度40%で行われ、装置自体は、専用HEPA空気濾過器を有する帯電防止アクリルハウジングに閉じ込められた。データは、異方性テクスチャの特徴的間隔が例えば約0mmから約75mmの範囲を通して増加する時にESC改善(Vssavg)が増加したことを示している。
【0097】
本発明の開示の思想及び範囲から逸脱することなく本発明の開示の実施形態に対して様々な修正及び変更を行うことができることは当業者には明らかであろう。すなわち、本発明の開示は、そのような修正及び変更をそれらが添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲に入ることを前提として網羅するように意図している。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】