(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】骨成長及び組織結合のさらなる向上を目的とする、内外吸収性を備えた生体吸収性インプラント並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20230317BHJP
A61L 27/10 20060101ALI20230317BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20230317BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20230317BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/10
A61L27/20
A61L27/56
A61B17/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546504
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-09-28
(86)【国際出願番号】 US2021015852
(87)【国際公開番号】W WO2021155248
(87)【国際公開日】2021-08-05
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522302460
【氏名又は名称】エスディーアイピー イノベーションズ プロプリエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】マナヴィテヘラニ,イマン
(72)【発明者】
【氏名】パルヴィス,マーヤム
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081BA12
4C081BA13
4C081BA16
4C081BB03
4C081CA16
4C081CD02
4C081CD03
4C081CD04
4C081CD15
4C081CF02
4C081CF03
4C081DA16
4C081DB05
4C081DB06
4C160LL31
4C160LL70
(57)【要約】
内外吸収機構を利用して骨成長及び組織結合がさらに向上した生体吸収性インプラント、並びに骨切り術及び骨軟組織再建術に使用するための生体吸収性インプラントを製造するための方法を開示している。生体吸収性インプラントは、ポリマーA(例えば、脂肪族ポリマーマトリックス)及び/又はポリ(プロピレンフマラート))、炭水化物B(例えば、生体吸収性の天然炭水化物フィラー)、並びにセラミックCを含む。インプラントは、好適な気孔率、細孔サイズ、細孔の相互連結性、並びに骨芽細胞の侵入及び骨形成をさらに向上させるための機械的特性を有する多孔質足場構造であり、組織が生体吸収性インプラントと結合するのを促進させることができる。インプラントは、ウェッジ、骨充填材、並びにスクリュー、ロッド、及び/又はアンカーのような軟組織の固定インプラントとして成形されてもよい。いくつかの実施形態では、インプラントはパテであってもよい。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外吸収性ならびに卓越した骨および組織結合を備えた生体吸収性インプラントであって、
移植位置で構造的一体性を提供するように構成された脂肪族ポリマーと、
一定期間にわたり前記生体吸収性インプラントの外部に浸出するように構成された生体吸収性の天然炭水化物フィラーと、
セラミックと、
を含む、生体吸収性インプラント。
【請求項2】
成分が溶融混合で混合される、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項3】
前記脂肪族ポリマーが、ポリ(dl-乳酸)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ブチレンサクシナート)、ポリ(プロピレンカーボナート)、またはポリ(プロピレンフマラート)を含む、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項4】
前記脂肪族ポリマーがポリ(プロピレンカーボナート)を含む、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項5】
前記生体吸収性インプラントは約45℃以上ではパテ状であるように構成され、約37℃で硬化状態となるように構成されている、請求項3に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項6】
前記生体吸収性の天然炭水化物フィラーが、セルロース、ゼラチン、アルギナート、酸化多環芳香族リグニンまたはデンプンを含む、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項7】
前記デンプンがトウモロコシである、請求項6に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項8】
前記生体吸収性の天然炭水化物フィラーが粒子、繊維またはウィスカの形状である、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項9】
前記生体吸収性の天然炭水化物フィラーが5μm~30μmの粒子サイズを有する、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項10】
前記セラミックがリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトまたはバイオガラス45s5を含む、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項11】
前記セラミックが粒子、繊維またはウィスカの形状である、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項12】
前記セラミックが1μm~20μmの粒子サイズを有する、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項13】
移植状態をさらに含み、前記生体吸収性インプラントが移植状態である場合、前記生体吸収性の天然炭水化物フィラーが2週間~6ヶ月の期間にわたり前記生体吸収性インプラントの外部に浸出するように構成されている、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項14】
前記生体吸収性インプラントが、前記生体吸収性インプラントの内部領域から組織成長を引き起こすように構成されている、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項15】
前記生体吸収性インプラントが、ウェッジ、骨充填材、骨軟組織界面の固定インプラント、または軟組織の固定インプラントの形状である、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項16】
構成物は、3D印刷、ガス発泡法、エレクトロスピニング法またはソルトリーチング法によって多孔質となる、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項17】
前記脂肪族ポリマーが多孔質である、請求項1に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項18】
前記脂肪族ポリマーが50μm~400μmの細孔サイズを有する、請求項17に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項19】
前記脂肪族ポリマーが10%~90%の気孔率を有する、請求項17に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項20】
内外吸収性の骨および組織結合を備えた生体吸収性インプラントであって、
構造的一体性を提供するように構成された脂肪族ポリマーと、
前記生体吸収性インプラントの外部に浸出するように構成された生体吸収性の天然炭水化物フィラーと、
骨結合ミネラルと、
を含み、
前記生体吸収性インプラントには移植前状態および移植後状態があり、前記生体吸収性の天然炭水化物フィラーは、前記生体吸収性インプラントが移植後状態にある間、2週間~6ヶ月の期間にわたり前記生体吸収性インプラントの外部に浸出するように構成され、
前記生体吸収性インプラントはパテ、ウェッジ、骨充填材、骨軟組織界面の固定インプラント、または軟組織の固定インプラントの形状である、生体吸収性インプラント。
【請求項21】
前記脂肪族ポリマーがポリ(プロピレンカーボナート)を含む、請求項20に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項22】
内外吸収性ならびに骨および組織結合を備えた生体吸収性インプラントであって、
構造的一体性を提供するように構成され、多孔質である脂肪族ポリマーと、
前記生体吸収性インプラントの外部に浸出するように構成された生体吸収性の天然炭水化物フィラーと、
骨結合ミネラルと、
を含み、
前記生体吸収性インプラントには移植前状態および移植後状態があり、前記生体吸収性の天然炭水化物フィラーは、前記生体吸収性インプラントが移植後状態にある間、2週間~6ヶ月の期間にわたり前記生体吸収性インプラントの外部に浸出するように構成され、
前記生体吸収性インプラントはパテ、ウェッジ、骨充填材、骨軟組織界面の固定インプラント、または軟組織の固定インプラントの形状である、生体吸収性インプラント。
【請求項23】
前記生体吸収性インプラントは約45℃ではパテ状であるように構成され、約37℃で硬化状態となるように構成されている、請求項22に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項24】
前記生体吸収性インプラントは約45℃ではパテ状であるように構成され、約37℃で硬化状態となるように構成されている、請求項21に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項25】
患者の骨の移植部位に生体吸収性パテ状インプラントを移植する方法であって、前記方法が、
インプラントを、閾値温度を超える第1の温度に加熱して前記インプラントをパテ状にすることと、
前記インプラントを所望の形状に成形することと、
前記インプラントを前記移植部位に適用することと、
前記インプラントを、閾値温度未満の第2の温度に冷却して硬化させることと、
を含み、
前記インプラントが、
移植位置で構造的一体性を提供するように構成された脂肪族ポリマーと、
一定期間にわたり前記インプラントの外部に浸出するように構成された生体吸収性の天然炭水化物フィラーと、
セラミックと、
を含む、方法。
【請求項26】
前記インプラントが手で成形される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記脂肪族ポリマーがポリ(プロピレンカーボナート)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記脂肪族ポリマーが多孔質である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記閾値温度が45℃である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記生体吸収性の天然炭水化物フィラーがデンプンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記セラミックがリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトまたはバイオガラス45s5を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
内外吸収を可能にするための生体吸収性インプラントであって、
移植位置で構造的一体性を提供するように構成され、ポリ(プロピレンカーボナート)を含む脂肪族ポリマーと、
一定期間にわたり前記生体吸収性インプラントの外部に浸出するように構成された生体吸収性の天然炭水化物フィラーと、
セラミックと、
を含み、
前記生体吸収性インプラントが軟化温度超で軟化状態および硬化温度未満で硬化状態を有するパテの形状を有する、生体吸収性インプラント。
【請求項33】
前記生体吸収性インプラントには移植前状態および移植後状態があり、前記生体吸収性の天然炭水化物フィラーは、前記生体吸収性インプラントが移植後状態にある間、2週間~6ヶ月の期間にわたり前記生体吸収性インプラントの外部に浸出するように構成されている、請求項32に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項34】
前記軟化温度が42℃である、請求項32に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項35】
前記硬化温度が37℃である、請求項32に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項36】
前記脂肪族ポリマーが多孔質である、請求項32に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項37】
細孔サイズが50μm~400μmである、請求項36に記載の生体吸収性インプラント。
【請求項38】
気孔率が10%~90%である、請求項36に記載の生体吸収性インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2020年1月30日に出願された米国特許出願第62/968,056号及び2020年8月26日に出願された米国特許出願第63/070,704号の優先権を主張するものであり、全ての目的のため、本明細書の一部を援用するものとしてこれらの内容を援用する。
【0002】
[0002]本発明は医療機器に関するものであり、より詳細には、ウェッジ、骨充填材及び骨折固定インプラントなどの生体吸収性インプラントに関する。より具体的には、かかるインプラントは、遠位大腿骨骨切り術、高位脛骨骨切り術、小児の骨切り術などの外科手術に使用されてもよい。かかるインプラントはまた、上腕骨近位骨折、脛骨プラトー骨折、骨腫瘍及び骨嚢胞、海綿骨骨折、全関節の骨溶解、及び骨軟組織の再建にも使用されることができる。
【背景技術】
【0003】
[0003]金属の除去手術は、最も一般的に実施されている外科手術の1つである。米国単独での整形外科インプラントの除去手術件数は、国内全体で100,000人あたり毎年90件に相当する。いくつかの研究は、金属を入れていた部位での疼痛及び違和感、並びにインプラントを除去したことによる機能障害を示している。いくつかの研究は、整形外科で使用する金属の除去による併発症が24%~50%であると報告している。
【0004】
[0004]生体吸収性インプラントは、金属製インプラントを除去する目的で再手術する必要性を取り除くために市場に導入された。生体吸収性インプラントは、インプラントの吸収時に損傷組織の正常機能の回復を促進させる再生医療の一端を担っている。生分解性の合成ポリマーは、こうした用途向けでは最も商業的に競争力があると考えられている。これは、こうした合成ポリマーが適用性の広い特徴を備え、費用対効果が高い方式で作製されることができるからである。生分解性の合成ポリマーは生体適合性をも有しており、その物理化学的特性は、広範囲の医療用途に好適であることから、例えば、縫合糸、プレート、骨固定装置、ステント、スクリュー及び組織修復など、種々の医療機器の製造にも使用されることができる。こうしたインプラントは、オッセオインテグレーションを目的としている。
【0005】
[0005]オッセオインテグレーションは、何らかの中間線維組織を形成することなく、破断した端部からの組織成長を含む骨の治癒プロセスを誘導する外科用インプラントを用いた骨の結合であると臨床的には定義されている。整形外科用のオッセオインテグレーテッドインプラントは、骨組織内で強固に固定される。骨インプラントに関する共通の課題は、体組織でのインプラントの振動が応力遮蔽を引き起こす可能性があるという点である。この応力遮蔽により骨の漸次的な吸収がもたらされ、続いて機械的安定性の損失、最終的にはインプラントの完全な破損がもたらされる。ステンレス鋼、チタン系合金やコバルト-クロム合金などの金属を使用したインプラントは、骨インプラントの経時的な機械的不安定性をもたらし得る応力遮蔽を引き起こす傾向性を有しているという点で、特に問題がある可能性がある。
【0006】
[0006]近年、いくつかの生体吸収性ポリマーデバイスは、一部の適応症にとって採算がとれる代替物を作る上で使用可能となった。技術が進化することで予想されるように、ある一連の課題を解決することで別の課題が生まれている。初期の見込みにもかかわらず、現行の生体吸収性インプラントに由来する予想し得なかった分解プロファイル及び酸性の副生成物の分泌により、臨床的併発症を理由として、急速に成長し続けている市場への浸透が制限されてしまっている。生体吸収性インプラントは今までのところ、こうしたインプラントに共通した化学的性質の欠点を理由に、理想的な代用品としての卓越した吸収及び回復プロファイルの提供といった点では失敗している。インプラントを除去するための再手術は、一次修復術よりもさらに急速に増加している。生体吸収性インプラントに使用されている最も一般的な医療用ポリマーであるポリ(乳酸)(PLA)及びポリ(グリコール酸)(PGA)により、嚢胞形成(13.3~25.8%)及び局所炎症(14~29%)が発生している。現行の10種類の生体吸収性インプラントのうち9種類は、3年以内では部分的に/完全にそのまま残り続けている。したがって、現行の生体吸収性インプラントは、予想し得なかった吸収のプロセスとそれによって結果的に組織結合が損なわれることとを理由に、金属製インプラントと比較した場合、その健康アウトカムを向上させていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]本開示は、組織結合をさらに向上させる、複数成分の複合材料の生体吸収性インプラントに関する。
【0008】
[0008]本発明のいくつかの実施形態は、脂肪族ポリマー(例えば、構造的一体性を提供する目的)、インプラントの外部に浸出する生体吸収性の天然炭水化物フィラー(例えば、オッセオインテグレーションを促進する目的)、及び骨結合ミネラル(例えば、オッセオインテグレーションをさらに促進させ、そうすることで骨細胞の接着部位を提供して骨組織の再生をさらに向上させる目的)を含み、内外吸収性並びに卓越した骨及び組織結合を備えた3成分の生体吸収性インプラントに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]脂肪族ポリマーは、ポリ(dl-乳酸)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ブチレンサクシナート)、ポリ(プロピレンカーボナート)又はポリ(プロピレンフマラート)であり得る。
【0010】
[0010]生体吸収性炭水化物フィラーは、セルロース、ゼラチン、アルギナート、酸化多環芳香族リグニン又はデンプンであり得る。デンプンはトウモロコシであってもよい。生体吸収性炭水化物フィラーは、粒子、繊維又はウィスカの形状をとることができる。生体吸収性炭水化物は、5~30μmのサイズ範囲であり得る。
【0011】
[0011]骨結合ミネラルは、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、バイオガラス45s5、又は他の好適な骨結合ミネラルなどのセラミックであり得る。骨結合ミネラルは、粒子、繊維又はウィスカの形状をとることができる。骨結合ミネラルは、1~20μmのサイズ範囲であり得る。
【0012】
[0012]いくつかの実施形態では、インプラントは4成分の生体吸収性インプラントであってもよく、第4の組成物は例えば、骨形成タンパク質、サイトカイン又は他の好適な酵素系骨成長剤などの活性薬である。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態では、生体吸収性の天然炭水化物フィラーが2週間~6ヶ月の期間にわたりインプラント外部に浸出している場合、生体吸収性インプラントは移植状態にあり得る。また、セラミックが例えば、新生骨細胞向けの接着部位を提供することでインプラント全体にわたる二次多孔質構造を促進させる一助となっている。移植状態にある間、インプラントはその内側から細胞増殖及び組織成長を引き起こすことができる。
【0014】
[0014]インプラントは、ウェッジ、骨充填材、骨軟組織界面の固定インプラント、軟組織の固定インプラント、又は移植可能なパテの形態をとり得る。例えば、インプラントは脂肪族ポリマーの熱特性を使用することができ、例として40~50℃の温度ではインプラントは軟化したパテ状組成物であるが、体内に移植した後にはインプラントは硬化状態へと硬化されることができる。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態では、インプラントのポリマーは多孔質であってもよい。孔は例えば3D印刷、ガス発泡法、エレクトロスピニング法又はソルトリーチング法などの手段で製造されてもよい。細孔は、50~400μmのサイズ範囲であってもよい。気孔率は10~90%の範囲であってもよい。
【0016】
[0016]本発明のいくつかの実施形態は、構造的一体性を提供する脂肪族ポリマー、インプラントの外部に浸出する生体吸収性の天然炭水化物フィラー)、及び骨結合ミネラルを含み、内外吸収性並びに卓越した骨及び組織結合を備えた生体吸収性インプラントに関する。インプラントには移植前状態と移植後状態があってもよい。この場合、生体吸収性の天然炭水化物フィラーは、インプラントが移植後状態にある間、2週間~6ヶ月の期間にわたりインプラント外部に浸出する。インプラントは、漸次的に吸収されている最中であったとしても骨を支持する上で構造的な耐荷重特性を移植後状態で維持することができ、新生骨組織を再生させるためのオッセオインテグレーションの時間を十分なものとすることができる。いくつかの実施形態では、インプラントは十分な骨成長及びオッセオインテグレーションを可能とするために少なくとも3ヶ月にわたり依然として耐荷重性を有していてよい。脂肪族ポリマーは、侵入並びに内外分解及び吸収を促進させるために多孔質であってもよい。
【0017】
[0017]別の態様では、本開示は、整形外科用途向けの生体吸収性インプラントの製造方法に関する。インプラントは、合成脂肪族ポリマーマトリックス(ポリマーA)、天然炭水化物(炭水化物B)、及び骨結合成分(セラミックC)を含む。この足場は、本明細書に開示された内外吸収機構を利用して骨成長及び組織結合をさらに向上させ、骨切り術及び骨軟組織再建術の生体吸収性インプラントの製造を実現させる。
【0018】
[0018]さらには、本開示は、ガス発泡法、3D印刷、エレクトロスピニング法及びソルトリーチング法などの製造方法を使用し、最適な細孔サイズ、気孔率及び細孔の相互連結性を備えた、耐荷重性及び非耐荷重性の整形外科用途及び軟組織用途用の最適な多孔質インプラントに関する。
【0019】
[0019]材料の選択とは独立している、骨切り術及び骨軟組織再建術の生体吸収性インプラントの製造方法を開示する。本明細書に開示された内外吸収機構により、二次オッセオインテグレーションを提供する生体吸収性インプラントの製造が実現する。生体吸収性インプラントは3ブロックの複合材料であってもよく、この場合、各ブロックは特定の機能を担っていてもよい。ポリマーAは、脂肪族ポリマーから選択された複合材料マトリックスとして機能する。炭水化物Bは、天然の生体吸収性炭水化物から選択された急速に吸収可能なフィラーとして機能する。セラミックCは、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト及びバイオガラス45s5などのミネラルから選択された骨結合要素として機能する。
【0020】
[0020]この方法は、上記成分のいずれかの選択に依存しないということを理解されたい。本明細書の実施例に提示されたポリマーA、炭水化物B及びセラミックC用の特定の材料の選択は、特許請求の範囲における限定であると構成されるべきではない。本イノベーションの方法に関する特許請求の範囲は、提示されたポリマー及び/又はセラミックファミリー群に由来する材料の任意の選択による性能に限定されるべきではない。
【0021】
[0021]本開示は、3D印刷及び/又はガス発泡法などの技術に基づき、基本的に安全であり、かつ適時吸収される、骨切り術のウェッジ、骨充填材及びスクリュー、ロッド及び/又はアンカーなどの軟組織の固定インプラントなどの生体吸収性インプラントにおいて、二次オッセオインテグレーション及び組織結合を提供するという目的を担う生体吸収性インプラント複合材料を形成する。
【0022】
[0022]本開示のこうした実施形態、態様及び特徴、並びに他の実施形態、態様及び特徴は、添付の図面及び図と併せて読んだ際に、こうした実施形態の以下の詳細な説明からより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】実施形態による、生体吸収性インプラントの図である。
【
図1B】実施形態による、ポリマー、炭水化物及びセラミックを示した生体吸収性インプラントの走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)画像である。
【
図2】
図2A~
図2Cは、実施形態による、様々な重量パーセントを有する異なる生体吸収性インプラントのSEM画像である。
【
図3】骨細胞によって覆われた生体吸収性インプラント表面のSEMの顕微鏡写真である。
【
図4】
図4A~
図4Cは、実施形態による、大腿骨頭が欠損したラット中の生体吸収性インプラントを時系列に並べた一連のマイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)タイムラプス画像である。
【
図5】実施形態による、生体吸収性インプラントの3D印刷に使用される、フィラメントとして押出成形されたインプラント複合材料の例を示す。
【
図6A】ガス発泡技術を使用した多孔質生体吸収性インプラントの段階的な形成を示す。
【
図6B】ガス発泡技術を使用した多孔質生体吸収性インプラントの段階的な形成を示す。
【
図6C】ガス発泡技術を使用した多孔質生体吸収性インプラントの段階的な形成を示す。
【
図7A】実施形態による、生体吸収性インプラントの細孔分布のマイクロCT画像である。
【
図7B】実施形態による、生体吸収性インプラントの細孔分布のマイクロCT画像である。
【
図8】
図8A~
図8Dは、実施形態による、様々な気孔率を有する生体吸収性インプラントのSEM画像である。
【
図9A】実施形態による、多孔質生体吸収性インプラントで処置された皮膚のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)組織画像である。
【
図9B】実施形態による、多孔質生体吸収性インプラントで処置された皮膚のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)組織画像である。
【
図10A】実施形態による、生体吸収性インプラントの分解プロファイルのグラフを示す。
【
図10B】実施形態による、生体吸収性インプラントの分解プロファイルのグラフを示す。
【
図11】実施形態による、生体吸収性インプラントの移植方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0035]骨成長を誘導可能である、固定インプラント、骨充填材、及び/又はウェッジのような、骨切り術、骨間及び骨軟組織再建術に使用するための生体吸収性インプラントを本明細書に記載する。インプラントは3つのブロックを含み、それぞれが骨組織の再生にとって種々の役割を果たす。
【0025】
[0036]
図1Aは、例示的な生体吸収性インプラント100の図である。実施形態では、生体吸収性インプラント100は3ブロックの複合材料であってもよい。示されている生体吸収性インプラント100は、ポリマーA110、炭水化物B120及びセラミック130の3つの成分を有する。ポリマーAは生体吸収性インプラント100に構造性を提供する。図示されているような構造は例示目的のためのものであり、インプラントは例えばディスク、正方形、非晶質形状、パテ状組成物又はそれ以外など図示されている立方体以外の多数の構造をとってもよいことを理解するべきである。加えて、3ブロックの複合材料としてのインプラント図示は、限定しないことを目的としており、インプラントは好適である任意の数の成分から構成されていてもよい。
図1Aの生体吸収性インプラント100では、炭水化物B120はポリマーA110全体に分布している。セラミックC130は、ポリマーA110全体にさらに分布している。
【0026】
[0037]ポリマーA110は、構造的一体性及び機械的強度を提供する脂肪族ポリマーマトリックスを形成してもよい。例えば、ポリマーAは脂肪族ポリエステルであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーAは、ポリ(dl-乳酸)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ブチレンサクシナート)、ポリ(プロピレンカーボナート)及び/若しくはポリ(プロピレンフマラート))並びに/又は10LA/90GA、20LA/80GA、25LA/75GA、30LA/70GA、40LA/60GA、45LA/55GA、50LA/50GA、30LA/70GAを含むポリ(乳酸-グリコール)酸などのこれらのコポリマー、並びにポリ(ε-カプロラクトン及びプロピレンカーボナート)ブロックコポリマーのうち、1つ又は複数であってもよい。
【0027】
[0038]いくつかの実施形態では、ポリ(プロピレンカーボナート)(poly(propylene carbonate):PPC)は、ポリマーマトリックスとして使用されてもよい。PPCは、他の生体適合性の分解可能なポリマー材料と比較すると、組織結合及び吸収をさらに向上させることができる。典型的には、他のこうしたポリマーは、移植部位周囲の環境のpHを低下させる酸性の副生成物に分解し、炎症及び/又は嚢胞形成をもたらす。またこれは一般には、オッセオインテグレーション及び骨再生プロセスの速度を低下させる。例えば、最も一般的な医療用ポリマーであるポリ(乳酸)(PLA)及びポリ(グリコール酸)(PGA)により、嚢胞形成(13.3~25.8%)及び局所炎症(14~29%)が発生している。対照的に、PPCは水及びCO2といった酸性ではない副生成物に分解するが、これらは同様の問題を有さない。
【0028】
[0039]炭水化物B120は、マイクロメートル~ナノメートルのサイズ範囲である粒子、クラスタ、ウィスカ及びフィラメントの形状である天然生体吸収性フィラーであってもよい。炭水化物B120は、セルロース、ゼラチン、アルギナート、酸化多環芳香族リグニン及び/又はデンプン(トウモロコシ)などの生体吸収性炭水化物のうち1つ若しくは複数、又はこれらの組合せである。炭水化物B120は、炭水化物B120が吸収(ポリマーA110マトリックスと比較すると相対的に急速である)されるにつれ、ポリマーA110マトリックス内部に細孔を作り出す、急速に再吸収可能な成分として機能してもよい。生成された細孔によって、骨細胞が侵入可能であり、細孔中でインプラントに接着可能であるため、オッセオインテグレーションが可能となる。さらには、これらの細孔は、内外吸収のため、足場内部の水を浸透させる経路を提供することができる。内外吸収とは、インプラントの内部領域から少なくとも部分的に生じる吸収を指す。吸収は、インプラントの全体にわたり生じることができる。内外吸収の間、水はインプラントの内部領域へと浸透し、インプラントの内部領域だけでなくインプラントの外部からもインプラント分解を開始させることができる(例えば、分解し、かつ炭水化物B外部に浸出することによる)。これが生じる際には、新生組織のためにさらなる空間が生成されることから、インプラントの内部領域への組織成長はさらに促進されてもよい。これは、主にインプラント外部から内側への吸収のみが可能となる多くの従来型インプラントとは明らかに異なっている。内外吸収機構は、インプラント全体で急速なオッセオインテグレーションを促進させることから、特に有利である。
【0029】
[0040]炭水化物によってもたらされる細胞接着特性は、疎水性ポリマー(例えば、PPC)のポリマーA110マトリックスを使用する実施形態では、特に重要であり得る。これは、こうしたポリマーが細胞接着を妨げる傾向があることが理由である。ポリマーAマトリックス内部にフィラーとして炭水化物を導入する(例えば、ポリマーA110がPPCである場合)ことで、こうした効果を打ち消すように機能し得る。
【0030】
[0041]実施形態では、セラミックC130は、生物活性及び骨再生能を提供する骨結合ミネラル化合物の微粒子であってもよい。セラミックC130は、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト及びバイオガラス45s5などの骨結合化合物のうち少なくとも1つ又はこれらの組合せであってもよい。セラミックC130として生物活性ミネラルのうち少なくとも1つ又はこれらの組合せが存在することで、例えば新生骨細胞の接着部位を提供することによる骨結合のさらなる向上並びに移植後の骨芽細胞の侵入及び成長がもたらされる。セラミックC130の重量パーセントは、1重量%、2.5重量%、5重量%、7.5重量%、10重量%、12.5重量%、15重量%、17.5重量%、20重量%、25重量%及び30重量%の範囲であり得る。
【0031】
[0042]上記ポリマーA110、上記炭水化物B120、及び上記骨結合ミネラル(セラミックC130)を含む任意の好適な組合せは、実施形態による好適なインプラントを生成するために使用されてもよい。例えば、卓越した骨吸収のためのインプラントの一実施形態は、ポリ(プロピレン)カーボナートから作製され、デンプンフィラー及びバイオガラス45s5とともにインプラントのマトリックス構造を提供することができる。PPCが、PPCマトリックス全体にわたるデンプン占有領域及び分布しているバイオガラスにより製造された孔を有する場合には、記載されたPPC-デンプン-バイオガラスインプラントは移植前状態であり得る。いくつかの実施形態では、インプラントは、以下でさらに詳細に記載されるように(例えば、
図6A~
図8に関して)、ディスク、ロッド、ウェッジ、スクリュー、ワイヤ又は移植部位への移植にとって好適な任意の形状へと予め形成されてもよい。
【0032】
[0043]内外分解の機構は、ポリマーAマトリックスの構造内部に炭水化物Bフィラーが存在していることに部分的には基づいている。かかる実施形態では、炭水化物Bの量によって分解時間が調節される。1重量%~10重量%という低い存在量では、分解プロファイルは低下する。ただし、炭水化物Bが50重量%存在することで、急速に吸収可能なインプラントが作製される。炭水化物Bの重量パーセントは、所望の分解プロファイルに応じて、1重量%、3重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%及び50重量%の範囲であり得る。
【0033】
[0044]いくつかの実施形態では、インプラントは、漸次的に吸収されている最中であったとしても骨を支持する上で構造的な耐荷重特性を移植後状態で維持することができ、新生骨組織を再生させるために、オッセオインテグレーションの時間を十分なものとすることができる。いくつかの実施形態では、インプラントは十分な骨成長及びオッセオインテグレーションを可能とするために少なくとも3ヶ月にわたり依然として耐荷重性を有していてよい。
【0034】
[0045]炭水化物B120は、水がインプラントへと流れ込む際にバルク侵食されることで分解することができる。バルク侵食により、インプラント全体にわたる分解が可能となり、より深く骨組織がより多くインプラントへと結合することが可能となる。
【0035】
[0046]
図1Bは、本開示の一実施形態に従って作製されたポリマーA110、炭水化物B120及びセラミックC130を表している生体吸収性インプラント100のSEM画像を示す。10kVの加速電圧で動作させたZeiss EVO 50 SEMを使用し、SEM画像を捕捉した。導電性シルバーペイントを使用し、アルミニウム製スタブ上に試料断面をマウントし、SEM分析前に金スパッタした(Emitech K550X スパッタコースタ)。
【0036】
[0047]実施形態では、インプラントは第4の成分として活性薬を組み込んでもよい。活性薬は、骨成長をさらに向上させる生物活性化合物であってもよい。活性薬は、インプラント全体にわたって分布されてもよい。活性薬は骨形成タンパク質(bone morphogenic protein:BMP)、サイトカイン又は骨成長を酵素的に促進させる好適な化学物質であってもよい。こうした活性薬は、例えばカルシウム、ナトリウム、カリウム及びリン酸など、骨成長に必要なイオンの流れを体に生成させることで骨成長をさらに促進させることができる。実施形態では、活性薬は、炎症及び感染症を回避し、これらを最小限に抑えるための例えばゲンタマイシン若しくはバンコマイシンなどの抗菌薬、又は例えばデキサメタゾン及びガレクチン-3阻害剤などの抗炎症薬であってもよい。活性薬は、上記生物活性化合物のうち1つ、又はいずれかの組合せであってもよい。
【0037】
[0048]
図2A~
図2Cは、異なる重量パーセントの炭水化物Bを有するインプラントについての内外吸収機構のSEM比較を示す。このSEM写真は、動的環境にて37℃の擬似体液中でインキュベーションさせた8週間後のインプラントを示している。10kVの加速電圧で動作させたZeiss EVO 50 SEMを使用し、SEM画像を捕捉した。導電性シルバーペイントを使用し、アルミニウム製スタブ上に試料断面をマウントし、SEM分析前に金スパッタした(Emitech K550X スパッタコースタ)。
【0038】
[0049]
図2Aは、低速な吸収をもたらし、炭水化物Bが0重量%である例示的なインプラントを示す。使用時のインプラントの観察は、ポリマーAの構造の外部に浸出する炭水化物Bによりさらなる空隙を形成することなしに細胞及び組織のインプラント内部への到達させるための時間は、内外成長を促進させるため上で都合が悪いということを実証している。
【0039】
[0050]
図2Bは、25重量%の炭水化物Bを含む例示的なインプラントを示す。こうしたインプラントは、中程度の吸収速度を有する。
【0040】
[0051]
図2Cは、50重量%の炭水化物Bを含む例示的なインプラントを示す。吸収可能な炭水化物Bの百分率がより高くなることで、より高い重量パーセントのインプラントが経時的に外部に浸出するにつれてインプラントの分解プロファイルはより高くなる。このSEM写真は、動的環境にて37℃の擬似体液中でインキュベーションさせた8週間後のインプラントを示している。10kVの加速電圧で動作させたZeiss EVO 50 SEMを使用し、SEM画像を捕捉した。導電性シルバーペイントを使用し、アルミニウム製スタブ上に試料断面をマウントし、SEM分析前に金スパッタした(Emitech K550X スパッタコースタ)。
【0041】
[0052]
図2B~
図2Cでは、破線は、多孔質足場を提供する浸出領域を示す。水及び体液が浸透すると、試料のバルク内部から加水分解が開始する。
【0042】
[0053]
図3は、ヒト骨芽細胞に播種された、脂肪族ポリマーマトリックス(ポリマーA)、天然の生体吸収性炭水化物フィラー(炭水化物B)及び骨ミネラル剤(セラミックC)を有する生体吸収性ロッド300表面のSEMの顕微鏡写真を表示している。細胞はマトリックスに固着するように誘導され、急速吸収性フィラーに固着するようには誘導されなかったが、結合した細胞の層は足場上面に静止する。誘導された骨芽細胞及び骨細胞の結合及び増殖は、炭水化物B外部に浸出するための細孔を開くための方法として使用される。これらの結合及び増殖によって、細胞が生体吸収性インプラント内部に侵入及び浸透可能となり、インプラントのバルクからの内外組織成長を誘導することになる。
【0043】
[0054]10kVの加速電圧で動作させたZeiss EVO 50 SEMを使用し、表面形状を試験した。導電性シルバーペイントを使用し、アルミニウム製スタブ上に試料断面をマウントし、SEM分析前に金スパッタした(Emitech K550X スパッタコースタ)。培養24時間以内の足場表面での骨芽細胞の細胞形態を試験するため、SEM分析を使用した。この分析のため、24ウェルプレートに試料を入れ、ウェルあたり2×105細胞を有するように細胞懸濁液75μLを各ウェルに加えた。結合した細胞を2.5%のグルタルアルデヒド中で1時間固定し、少なくとも3回PBSを用いて洗浄した。生体吸収性ディスクを、二次固定液(0.1M PBS中1%の四酸化オスミウム)中でさらなる時間室温でインキュベートした。30%、50%、70%及び90%を含む種々のグレードのエタノール及び純粋エタノール中で順次脱水を行った。ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane:HMDS)0.5mLを使用して、試料からエタノール残留物を除去し、室温で2分間インキュベーションした。続いて、蓋を外した状態のデシケータで試料を乾燥させ、一晩HMDSを蒸発させた。最終SEM分析のために金コーティングを使用した。
【0044】
[0055]
図4A~
図4Cは、実施形態による、ラットの大腿骨頭の移植前、移植時、移植後の時系列のマイクロCT画像を示す。
図4A~
図4Cのインプラントは、本開示の実施形態に従い作製された、骨再生を促進させるための3ブロックの複合材料である。ポリマーAは、ポリカプロラクトン及び/又はポリプロピレンカーボナートなどの脂肪族ポリマーから選択し、炭水化物Bは、セルロース及び/又はアルギナートなどの天然の吸収性炭水化物の選択であり、生物活性及び骨再生をさらに向上させるためにハイドロキシアパタイト及び/又はリン酸カルシウムなどの生物活性ミネラル剤を使用した。遠位大腿骨頭骨切り術のシミュレーションを行うため、大腿骨頭を欠損した15+週齢のオスのウィスター系ラット(Animal Resources Centre)にロッドを移植した。12週にわたってロッドを移植した。設計された内外分解機構は、移植後12週間という早期でインプラント構造内部に新生組織を形成する一助となる点で効果的である。
【0045】
[0056]
図4Aは、遠位大腿骨頭骨切り術のシミュレーションを行うために、ラットの大腿骨頭に生成された大腿骨頭欠損を示している。続いて、生体吸収性インプラント100などの生体吸収性インプラントを大腿骨頭欠損に移植した。
図4Bは、ロッド形状の生体吸収性インプラント(例えば、生体吸収性インプラント100)を移植した
図4Aの大腿骨頭欠損を示している。
図4Cは、移植後12週間の同領域を示している。図に見られるように、初期欠損の境界を越えて充填された組織が拡張している骨成長を観察することができる。加えて、内部領域で組織成長を見ることができるが、これはインプラント外部の境界線を越え、インプラント内部の組織成長を示している。
【0046】
[0057]0.5mmのアルミニウムフィルタ、50kVのX線管電圧、800μAの管電流及び4500msの走査露光時間を使用し、14μmの等方ボクセル分解能で骨切り術及び/又は軟組織-硬組織界面再建用の
図4A~
図4Cの生体吸収性ロッド及び/又はウェッジを走査した。NReconソフトウェアを使用した3D再建用に0.3gcm
-3のミネラルから作製した石灰化組織のカットオフを使用した。
図4A~
図4Cは特定の手術による特定位置での生体吸収性インプラントの移植を表しているが、本開示は、類似の結果を得るために好適であるいずれかの手術について、好適であるいずれかの位置の類似の移植を企図している。
【0047】
[0058]本明細書に開示されたインプラントは、多段階オッセオインテグレーションを表している。例えば、インプラントにより2段階オッセオインテグレーションプロセスが可能となる。この例では、細胞及び体液がインプラント中の細孔(多孔質構造として出発することができる)に侵入する際に、最初のオッセオインテグレーションが生じる。インプラントの気孔率により、ごく初期から内外吸収が可能となる。インプラントが体内にある間に分解する(最初はその大半が炭水化物Bの外部浸出によるが、これに比べると低速なポリマーAの分解にもよる)際に、さらなる細孔が生成される。これらのさらなる細孔は二次オッセオインテグレーションの足場を設定し、さらなる細胞侵入を可能にする。さらなる細孔により、さらなる体液の進入が可能となる。この結果、インプラントの分解が増加し、さらなる細胞侵入が重ねて可能となる。こうした方法では、インプラントが分解するにつれて内外吸収がますます可能となる。分解プロファイルが整調可能であることで、二次オッセオインテグレーションが開始及び進行する速度の制御が可能となる。さらなる細孔によって血管新生及び結合組織成長をさらに向上させることもまた可能となる。したがって、さらに向上した骨結合及び有効な治癒がもたらされる。
【0048】
[0059]いくつかの実施形態は、さらに向上した組織再生を促進させるためにインプラント内の多孔質構造を使用することができる。かかる実施形態では、ポリマーA、炭水化物B及びセラミックCから構成された生体吸収性インプラント内部の多孔質構造は、3D印刷、エレクトロスピニング法、ソルトリーチング法及び/又はガス発泡法を使用して形成されることができる。PLA、PLGA及びPCLなどの脂肪族ポリマーは、ガス発泡法を使用して小孔を形成する可能性を提供する二酸化炭素に可溶である。
【0049】
[0060]
図5は、実施形態による、3D印刷された例示的な生体吸収性インプラント複合材料を示す。
図5は、押出成形フィラメントを含む、3D印刷によって得られた全体的に一様なパターンを示している。この実施形態では、ポリマーAの種類に応じて、ダイ温度が125℃~210℃の範囲である単一のスクリュー押出成形機を使用した。3D印刷により、10%~90%の気孔率の範囲で100μm~150μmの細孔サイズを得ることができる。
【0050】
[0061]
図6A~
図6Cは、本開示に従い、ガス発泡した生体吸収性インプラント(例えば、生体吸収性インプラント100)の一実施形態を形成させる工程を示している。ガス発泡法は、均一な細孔を発生させる上で効率が良い技術であり得る。
【0051】
[0062]
図6Aは、生体吸収性インプラントを形成するためのカスタムモールド600を示す。型組立体は、1つ又は複数の鋳型(例えば、鋳型605-1、605-2及び605-3)を含んでもよい。生体吸収性インプラントは、好適であるいずれかの方法(例えば、混合物への注入)によりこれらの鋳型内部で作製することができる。カスタムモールド600は、多数の生体吸収性インプラントを形成するために任意の数の鋳型(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれ以上)を有してもよい。鋳型のそれぞれは、所望のインプラントを生産する上で好適である任意の形状を有していてもよい。例えば、鋳型はディスク形状のインプラント、ウェッジ形状のインプラント、ロッド形状のインプラント、又は好適である他の何らかのインプラントを生産するように構成されていてもよい。
【0052】
[0063]いくつかの実施形態では、カスタムモールド600は、生体吸収性インプラントの複合材料を形成するための混合物で充填され、続いてガス発泡させるために圧力チャンバ内に置かれてもよい。生体吸収性ディスク、ロッド、ウェッジ、スクリュー及びワイヤを形成するための圧力チャンバは、高圧容器(例えば、Thar、100mLのビューセル)であり得る。容器を加圧する前に、Thar反応温度コントローラを使用し、例えば25℃、30℃及び40℃などの所望の温度を設定する。CO2を用いて、シリンジポンプ(例えば、ISCO、モデル500D)を使用して50bar、75bar及び125barのPsなどの所定の圧力にシステムを加圧し、続いてポンプを一定の圧力モードで運転させてもよい。1時間、2時間、4時間及び12時間などの望ましい時間の後、温度を漸次的に室温へと低下させることができ、例えば0.2bar/秒、2.5bar/秒、及び10bar/秒などの所定の減圧速度でシステムを減圧させることができる。
【0053】
[0064]
図6Bは、上記プロセスによりカスタムモールド600から形成された例示的なインプラント610(ディスク形状のインプラント)を示す。
図6Cは、インプラント610の接写写真を示す。図に見られるように、インプラント610は構造全体にわたって細孔620を有する多孔質構造である。インプラントの構造を押出成形するために、ガス発泡プロセスを利用することでこれらの細孔を得ることができる。
【0054】
[0065]
図7A~
図7Bは、試料スライスにおける細孔分布及び全体の気孔率を分析するマイクロCTの異なる画像を示す。細孔分布及び気孔率を評価する際には、使用される脂肪族ポリマーの二酸化炭素中の溶解度に基づき、各試料に対して温度、圧力、減圧速度及び浸漬時間を最適化した。亜臨界点、臨界点及び超臨界点は、CO
2の圧力-温度相図から求めた。こうすることで20%~75%の範囲の気孔率を発生させ、卓越した骨結合を提供するため、細孔は生体吸収性インプラントのバルクに対して一様に分布することができる。
【0055】
[0066]マイクロコンピュータ断層撮影(マイクロCT)により、多孔質の骨結合生体吸収性インプラントをさらに分析した。Skyscan1072(Bruker MicroCT)を使用し、マイクロフォーカスX線源を用いて標本を走査した。走査中、標本を360℃超で少しずつ回転させ、各段階でX線投影画像を捕捉した。Avizo(登録商標)3Dソフトウェアを使用して再構成画像を取得し、3D多孔質構造及び細孔の相互連結性を分析した。
【0056】
[0067]
図8A~
図8Dは、異なるガス発泡パラメータに基づいた様々な気孔率を有する生体吸収性インプラントの種々の実施形態を示す。温度及び圧力を変更させることで種々の多孔質構造を得ることができる。いくつかの実施形態では、多孔質構造は50μm~400μmの範囲のサイズを有することができる。いくつかの実施形態では、インプラント(例えば、生体吸収性インプラント100)は、10%~90%の範囲の気孔率を有することができる。
【0057】
[0068]走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分析(Scanning Electron Microscopy Energy-Dispersive X-ray Spectroscopy:SEM-EDS)により、ガス発泡させた試料の細孔サイズを測定した。導電性シルバーペイントを使用し、アルミニウム製スタブ上に試料をマウントし、Emitech K7550X機器を使用して金をコーティングした。10kVの加速電圧で動作させたZeiss EVO 50 SEMを使用し、SEM分析を実施した。ImageJソフトウェア(National Institutes of Health,USA)を使用し、画像を分析した。LaB6フィラメントをSEM装置にも取り付け、iXRF Iridium Ultra EDSシステムを使用し、EDS測定を行った。
【0058】
[0069]
図9は、多孔質生体吸収性ディスクで処置された皮膚のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)組織写真を示す。H&E染色では、それぞれ、典型的には青色色素及びピンク色素を用いて細胞核及び細胞質を染色した。
【0059】
[0070]
図9の生体吸収性ディスクをマウスに移植し、組織再生を観察した。組織再生は移植後2週間という早い時間で観察された。皮下移植したマウスモデルを使用し、多孔質足場に対する組織の浸出を評価した。多孔質ディスク(直径5mm及び高さ3mm)を無菌状態で調製し、移植前に滅菌クリーンベンチ内で操作した。病原菌を有さない、オスのBALB/cマウス(週齢12~14週、体重27±1.9g)を、Australian Animal Resources Centreから購入した。全ての動物は、オーストラリアのシドニーにあるSydney Local Health District(SLHD)Animal Welfare Committeeにより認可されたプロトコルの下で取得し、飼育し、調査した。ケタミン(50mg/mL)とキシラジン(50mg/mL)との混合物を体重の0.01mL/gの体積で腹腔内注射することで、各マウスに個々に麻酔をかけた。背中を剃毛し、皮膚をベタジン溶液で清浄化して滅菌生理食塩水で洗浄した。
【0060】
[0071]背面領域に長さにして約1cmの切開部を2箇所作製し、中に多孔質足場を挿入する袋を皮下に生成するために切開した。全ての創傷を縫合し、Atrauman(登録商標)(Hartmann,Australia)及びIV3000創傷ドレッシング(Smith&Nephew)を使用して7日間被覆した。カルプロフェン(5mg/kg)を麻酔時及び術後翌日の麻酔のために投与した。手術後、直後の2日間は各マウスを個別に檻に入れ、その後水と食物を自由に摂取できるように檻につき3匹のマウスを入れた。
【0061】
[0072]続いて、認知されている科学的プロトコルを使用して試料を得た。移植後2週間時点で、組織学的分析のため皮膚生検を収集した。各時点で得られた皮膚生検を10%(w/v)のホルマリンで24時間固定し、組織を処理し、パラフィンに包埋した。キシレンで5μmの切片を脱パラフィンし、組織学的分析のためにヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
図9は、こうした生検試料の写真を示している。
【0062】
[0073]固形のインプラントに加えて、他の形状のインプラントを使用してもよい。こうしたインプラントは異なる手術に特に適合している。例えばいくつかの実施形態では、インプラントは移植前状態ではパテ材料であってもよい。上述のポリマー、炭水化物及び骨結合ミネラルを含む3成分の組成物など、好適であるいずれかの組成物が使用されてもよい(代替的には、活性薬を含み得る4成分の組成物も使用されてもよい)。いくつかの実施形態では、インプラントは、ポリマーマトリックスを形成するためにポリマーAとしてPPCを使用してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントは、PPC、デンプン炭水化物フィラー及びバイオガラス45s5といったセラミックから構成されてもよい。
【0063】
[0074]これらのPPCインプラントでは、PPCは、移植時にPPCインプラントに構造的一体性及び耐荷重性といった特性を提供する多孔質マトリックスを形成する。デンプンフィラーはマトリックス全体に分散し、結果、侵食時には、PPCインプラントは骨組織との二次オッセオインテグレーションのためにさらに開いた状態となり、PPCインプラントの内外吸収を提供する。バイオガラス45s5といったセラミックは、細胞接着を促進させるためにPPCインプラント全体に分散される。
【0064】
[0075]いくつかの実施形態では、PPCインプラント組成物は、移植前にこれをパテ状とすることができ、かつ所望の構造にPPCインプラントを成形した後、移植後状態に硬化させることができる。これらの実施形態では、PPCインプラントは依然として移植前状態である間、PPCインプラントは40℃~50℃の温度に加熱され得る。PPCの熱特性により、他のポリマーで形成されたマトリックスを使用したインプラントよりもはるかに低い温度で、PPCインプラントを移植前にパテ状にすることができる。例えば、PPCマトリックスを含むインプラントは、大きく扱いにくい熱防護装備を着用する必要なしに外科医が扱い易く、かつ移植部位周囲で患者に熱損傷を引き起こすことなく移植が可能となる、約40℃~45℃の低い温度で成形可能なパテ状となることができる。
【0065】
[0076]パテ状の硬さを得るために、PPCインプラントを約40℃~50℃の軟化温度に加熱することができる。この状態の間、パテ状の硬さを得るための加熱温度がより低いことから、外科医は、移植時に不正確さ及びミスを引き起こす熱の損失を生じることなく、PPCインプラントを容易に扱うことができる。さらに、PPCインプラントと休止状態での体温との熱差異が低いことにより、PPCインプラントから生じる過剰な熱により患者に不快感を生じさせることなく容易に移植可能となる。好ましくは、最も余裕を持ってパテ状インプラントを扱うことを可能とする目的から、軟化温度は約40℃~45℃であってもよい。
【0066】
[0077]移植時には、PPCインプラントのパテ状の硬さは、約37℃といった体にとっておおよそ自然な温度で硬化(cure)及び硬化(harden)させることができる。PPCインプラントの硬化時には、構造的一体性はPPCインプラント全体に耐荷重特性を提供し、回復過程にわたって移植部位を強化かつ支持する。加えて、フィラーが分解した際であっても、PPCインプラントは耐荷重特性を維持している。PPCの耐荷重能に関するさらなる情報は、’’Reinforced Poly(Propylene Carbonate)Composite with Enhanced and Tunable Characteristics,an Alternative for Poly(lactic Acid)’’,Applied Materials&Interfaces(2015)で確認することができ、全ての目的のため、本明細書の一部を援用するものとしてこの内容を援用する。
【0067】
[0078]移植後、PPCインプラントは硬化した移植後状態に入ってもよい。移植後状態では、PPCインプラントのマトリックスは、およそ37℃の体温で硬化し、硬化した耐荷重構造を形成することができる。移植後状態では、2週間~6ヶ月の期間内では、水がPPCインプラントに入り、この中を通って流れることから、デンプンがバルク侵食により分解する。炭水化物がPPCインプラントから分解する間、マトリックスは、PPCインプラント全体で骨組織再生のさらなる向上を促進させるために、荷重を支持及びこれを支えることができる。セラミックは、PPCマトリックス上に接着部位を形成し、かつ骨組織再生をさらに向上させることができる。デンプンは、PPCマトリックス内では細胞接着をさらに促進させることができ、内外吸収効果を可能とする。
【0068】
[0079]直前に記載した特定の温度プロファイルは、PPCインプラントが約40℃~45℃の温度でパテ状であり、体温(例えば、37℃付近)では硬化し、耐荷重性を有する移植後状態である場合、ポリマーマトリックスとしてPPCを使用することで可能なものとなる。こうした温度プロファイルは、例えばPLA又はPGAなどの大半の従来型ポリマーを使用すると可能なものではなくなる。さらに、より詳細に上述されているように、PPCは、さらなる吸収を促進させ、PPCが、酸性ではなく、有害ではない副生成物へと経時的に分解することで、回復中に体に生じるストレスを減少させることができる。これは患者の回復の一助となり、酸性の副生成物による疼痛を原因とする再手術の必要をも減らすことができる。本開示は、PPCを基としたインプラントパテに焦点を当てているが、本開示は、好適であるいずれかのポリマーがインプラントパテ中のポリマーAとして使用することができることを企図している。
【0069】
[0080]
図10A~
図10Bは、炭水化物Bに対するポリマーAの2種類の異なる比を有する生体吸収性インプラント複合材料の分解プロファイルを比較するグラフを示す。26週間にわたって体液環境のシミュレートを行うため、リパーゼ及びα-アミラーゼといった酵素で飽和させた擬似体液中にて、これらのグラフを反映させた分解プロファイル試験を実施した。26週間にわたる重量損失パーセントに関して分解を測定した。
【0070】
[0081]
図10Aは、ポリマーA:炭水化物B=1:1の比である生体吸収性インプラント複合材料の分解プロファイルを示す。
図10Bは、ポリマーA:炭水化物B=1:0の比である生体吸収性インプラント複合材料の分解プロファイルを示す。すなわち、
図10Bのグラフは、炭水化物Bを一切含まない複合材料に関するデータを反映している。これらの2つのグラフを比較すると、2つの複合材料の分解(重量損失パーセントにより示される)は、おおよそ4週間時点までは類似した状態のままである。この時点では、
図10Aの複合材料(炭水化物Bを含む)は、
図10Bの複合材料(炭水化物Bを含まない)よりも速く分解することが明らかとなっている。上記にてさらに詳細に説明されているように、4週間時点は、炭水化物Bが
図10Aの複合材料の外部へと浸出し始め、二次多孔質構造を生成する時間付近であり得る。こうすることでさらなるオッセオインテグレーション及び体液の進入がもたらされ、これがさらなる分解をもたらす。
図10Bに見られるように、時間経過に伴って効果は倍増し、ますます急速な速度で複合材料が分解する場合には、分解プロファイルの加速が生じる。
【0071】
[0082]ポリマーAのみが存在するものとは対照的に、炭水化物Bを追加した生体吸収性インプラントの分解がより急速なものとなることで、より早い時点で骨が体重を支え始めることが可能となる。インプラントが分解するにつれて骨が漸次的に体重を支えることができることで、はるかにゆっくりと分解し、結果としてより急速な骨治癒及び骨強度を促進させる上で骨が体重を支えるのを妨げる
図10BにあるようなポリマーAのみのインプラントとは対照的に、骨強度がさらに漸次的に回復し、骨の治癒が可能となる。上で説明されるように、分解プロファイルは高度に整調可能であり、結果として最適な複合材料が形成され、骨構造が過負荷状態となることなく最適な速度で増加する体重量を支えることができる。例えば、分解プロファイルを、炭水化物Bに対するポリマーAの比を調整することで整調することができる。
【0072】
[0083]
図11は、患者の骨の移植部位へと生体吸収性パテ状インプラントを移植するための例示的な方法1100を示す。方法は、工程1102では、インプラントを、閾値温度を超える第1の温度に加熱してパテ状にすることを含んでもよい。工程1104では、方法は、インプラントを所望の形状に成形することを含んでもよい。工程1106では、方法は、インプラントを移植部位に適用することを含んでもよい。工程1108では、方法は、インプラントを閾値温度未満の第2の温度に冷却してこれを硬化させることを含んでもよい。
【0073】
[0084]いくつかの実施形態では、例示的な方法1100のインプラントは、生体吸収性インプラント100などの脂肪族ポリマー、生体吸収性炭水化物フィラー及びセラミックから構成されていてもよい。
【0074】
[0085]特定の実施形態は、必要に応じて、
図11の方法の1つ又は複数の工程を繰り返してもよい。本開示は、特定の順序で生じるものとして
図11の方法の特定の工程を記載及び図示しているが、本開示は好適である任意の順序の
図11の方法の好適であるいずれかの工程を企図している。さらには、本開示は、
図11の方法の特定の工程を含む、患者の骨の移植部位へと生体吸収性パテ状インプラントを移植するための例示的な方法を記載及び図示しているが、本開示は、必要に応じて、
図11の方法の工程の全て、いくつかを含み得る、又はこれらの工程を含み得ないが好適であるいずれかの工程を含む、患者の骨の移植部位へと生体吸収性パテ状インプラントを移植するための好適であるいずれかの方法を企図している。さらに、本開示は、
図11の方法の特定の工程を実行する特定の成分、装置又はシステムを記載及び図示しているが、本開示は、
図11の方法の好適であるいずれかの工程を実行する、好適であるいずれかの成分、装置、又はシステムの好適であるいずれかの組合せを企図している。
【0075】
[0086]本発明の特定の実施形態が記載されているが、種々の修正、変更及び代替的な構造及び同等物もまた、本発明の範囲内に包含される。本発明の実施形態は、ある特定の環境内での操作に限定するものではないが、複数の環境内で自由に行われる。さらには、本発明の方法の実施形態が特定の連続及び工程を使用して記載されるが、本発明の範囲は記載された一連のやり取り及び工程に限定されないことは、当業者には明らかである。
【0076】
[0087]さらには、本発明の実施形態は金属の特定の組合せを使用して記載されているが、金属の他の組合せもまた本発明の範囲内にあることも理解されたい。したがって、明細書及び図面は限定的な意味ではなく、例示的な意味であると見なされるべきである。ただし、より広範な意図及び範囲から逸脱することなく、こうした明細書及び図面に対する追加、一部の削除、削除及び他の修正及び変更が行われてもよい。
【国際調査報告】