(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】微細結晶、高保磁力のネオジム鉄ボロン系焼結磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230317BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230317BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20230317BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20230317BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20230317BHJP
H01F 1/057 20060101ALI20230317BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C22C38/00 303D
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F3/24 B
H01F41/02 G
H01F1/057 170
C22C33/02 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547759
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 CN2021090874
(87)【国際公開番号】W WO2021219063
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】202010367655.8
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522310502
【氏名又は名称】烟台正海磁性材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】于永江
(72)【発明者】
【氏名】張玉孟
(72)【発明者】
【氏名】王鵬飛
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K018AA27
4K018BA18
4K018BB04
4K018BD01
4K018CA04
4K018CA11
4K018DA31
4K018DA33
4K018FA08
4K018KA45
5E040AA04
5E040BD01
5E040CA01
5E062CD04
5E062CE04
5E062CG02
(57)【要約】
微細結晶、高保磁力のネオジム鉄ボロン系焼結磁石及びその製造方法である。前記ネオジム鉄ボロン磁石は、化学式がRFeBMであり、そのうち、Rが希土類元素、Feが鉄、Bがボロンであり、Rの含有量が26~35 wt%、Bの含有量が0.8~1.3 wt%であり、MがCo、Ga、Cu、Al、Zr、Tiのうちの複数種であり、前記ネオジム鉄ボロン系焼結磁石は結晶粒度が小さく、また、結晶粒度が低減されると共に、磁石中の元素C、O、Nの含有量が制御され、それにより、磁石の保磁力を大幅に向上させる。前記方法により製造された磁石は、より低い不純物C、O、Nの含有量を有し、このような製品に対して拡散処理を行うことにより、より良い粒界、より良い拡散経路を提供することができる。従って、微細結晶製品を再拡散すると、性能がより高い磁石を生産することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジム鉄ボロン磁石であって、化学式がRFeBMであり、そのうち、Rが希土類元素、Feが鉄、Bがボロンであり、Rの含有量が26~35wt%、Bの含有量が0.8~1.3wt%であり、MがCo、Ga、Cu、Al、Zr、Tiのうちの複数種であり、そのうち、Coの含有量が0.5~3.0wt%、Gaの含有量が0.05~0.4wt%、Cuの含有量が0.05~0.5wt%、Alの含有量が0~1.5wt%、Zr又はTiの含有量が0~0.3wt%であり、残りが鉄と不可避的不純物で、且つ、磁石中の元素C、O、Nの含有量がC+O+N(ppm)≦[1500+(5.0-結晶粒度(μm))×600](ppm)を満たす、ネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項2】
前記ネオジム鉄ボロン磁石の結晶粒度は5μm以下である、請求項1に記載のネオジム鉄ボロン磁石。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のネオジム鉄ボロン系焼結磁石の製造方法であって、
1)ストリッピング-水素爆発の方法によりR-Fe-B-M合金微粉末を得るステップと、
2)ステップ1)の合金微粉末をジェットミルで研磨して粒度D50が4.0μm以下の磁性粉末を得て、前記磁性粉末と潤滑剤を混合した後、磁性粉末を圧粉体に加圧成形するステップと、
3)ステップ2)の圧粉体を500~900℃で低温焼結し、低温焼結時に10kPa以下のアルゴンと水素の混合ガスを注入し、0.1~2h保温した後、100Pa以下になるように真空引きし、循環処理を少なくとも1回行い、その後、980~1040℃で高温焼結し、3~8h保温し、冷却後に焼き戻し処理を行い、前記ネオジム鉄ボロン系焼結磁石を製造するステップと、
を含む請求項1又は2に記載のネオジム鉄ボロン系焼結磁石の製造方法。
【請求項4】
ステップ1)において、前記ストリッピング-水素爆発の方法は、例えば、
R-Fe-B-M合金を真空又は不活性ガスの雰囲気で、温度が1200~1600℃の条件下で溶融し、溶融体を回転速度が0.3~4m/sの急冷ロールに注入してR-Fe-B-M合金ストリップを作製し、その後、合金ストリップに対してHD水素爆発炉で水素爆発処理を行い、処理前に100Paよりも低くなるように真空引きする必要がある、というステップを含む、
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップ2)において、具体的には、
ステップ1)の合金微粉末をジェットミルで研磨し、そのうち、ジェットミルプロセスにおける酸素含有量は50ppmよりも小さい、というステップを含む、
請求項3~4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ2)において、前記潤滑剤の添加量は前記磁性粉末の質量の0.1~0.5wt%である、請求項3~5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ2)において、磁性粉末を酸素含有量が500ppmよりも小さく、配向磁場強度が1~2Tの磁気配向成形装置で圧粉体に加圧成形する、請求項3~6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ3)において、前記低温焼結はアルゴンと水素の混合雰囲気下で行われ、前記混合雰囲気には、アルゴンが混合雰囲気の総体積の95~99vol%を占め、水素が混合雰囲気の総体積の1~5vol%を占める、請求項3~7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記焼き戻し処理は、一次焼き戻し処理と二次焼き戻し処理を含む、請求項3~8の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記一次焼き戻し処理の温度は700~900℃で、前記一次焼き戻し処理の時間は3~7hであり、前記二次焼き戻し処理の温度は450~600℃で、前記二次焼き戻し処理の時間は3~7hである、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2020年4月30日に中国国家知識産権局に提出した特許出願番号が202010367655.8で、発明名称が「微細結晶、高保磁力のネオジム鉄ボロン系焼結磁石及びその製造方法」である先行出願の優先権を主張し、当該先行出願の全文は、引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、ネオジム鉄ボロン系焼結磁石の分野に関し、特に、微細結晶、高保磁力のネオジム鉄ボロン系焼結磁石及びその製造方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
ネオジム鉄ボロン永久磁石材料はその発見以来、その優れた磁気特性と高い費用効果をもって通信、医療、自動車、電子の分野で広く適用されているが、その比較的低い保磁力及び比較的悪い温度安定性と耐食性のため、その適用範囲の拡大が深刻に制限されている。
【0004】
現在、従来技術には、一般的に、下記の4つの方法でネオジム鉄ボロン永久磁石材料の保磁力を向上させる:(1)原料合金に重希土類を添加し、主相の結晶磁気異方性を向上させること、(2)保磁力が異なる2種の合金粉末を混合して焼結する二合金法、(3)結晶粒を微細化する方法であって、結晶粒度が小さくなるにつれて、結晶粒の有効な散乱磁場因子が小さくなり、磁石の保磁力が増加すること、及び(4)粒界拡散法であって、この技術により、重希土類が粒界相に沿って拡散し、粒界での異方性定数を著しく向上させ、重希土類が少量に使用される場合に磁石保磁力を明らかに向上させることが達成されることである。これらの方法の中に、方法(3)は比較的優れている。この方法は、方法(1)及び(2)と比べ、重希土類を使用せずに、又は少量の重希土類を使用することで、磁石保磁力を大幅に向上させると共に残留磁気が変わらないことを保証することができる。方法(4)と比べ、製品のサイズの影響を受けずに磁石の性能を向上させると共に、磁石の内部と外部で均一な性能を保証する。
【0005】
従来の文献には、高圧アルゴンによる熱間静水圧焼結方法により磁石の結晶粒度を制御する方法が更に開示されている。まずは、平均粒度が3 μmの磁性粉末を製造し、この方法により結晶粒度が5.2 μm、緻密度が99.5%の焼結磁石を最終的に製造した。従来の文献には、平均粒径が2~5 μmの磁性粉末を利用して焼結磁石を製造し、そのうち重希土類の含有量が0.2%よりも低く、製品の直角度が0.95以上であることが更に開示されている。従来の文献には、磁性粉末の平均粒度を2.4 μmに制御し、低温焼結により、結晶粒度が5 μm程度の47 Hの磁石を得て、磁石の保磁力が重希土類のない場合に17 kOeに達することが更に開示されている。
【0006】
以上、種々の方法により結晶粒度が5~6 μmの磁石が製造され、結晶粒の微細化により磁石の保磁力を向上させることを開示した。重希土類のない場合に、製品性能は、47 Hに達することができる。重希土類のない条件下で、製品性能を更に向上させるには、結晶粒を5 μm以下に低減する必要がある。
【0007】
従来の文献には、c軸に垂直な断面における結晶粒の粒径中央値が4.5 μm以下である微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石が更に開示されている。磁石の結晶粒度を低減することにより、磁石の保磁力を向上させる。従来の文献には、鱗片状の柱状結晶を微細化することにより、結晶粒度が0.5~5.0 μmの磁石を製造し、それにより、重希土類の使用量を低減させることが更に開示されている。
【0008】
以上、鱗片状の柱状結晶の大きさを制御することにより、磁性粉末の粒度を微細化し、最後に、磁石の結晶粒が5 μmよりも小さいネオジム鉄ボロン磁石を製造し、それにより、製品の保磁力を更に向上させることを開示したが、その中で言及された性能の向上には限度がある。これは、主に、結晶粒が5 μmよりも小さくなるにつれて、対応する粉末の活性が強くなり、最終的な磁石中の元素C、O、Nの含有量が次第に高くなるためである。元素C、O、Nは、不純物として粒界中の希土類元素を消費すると共に、逆磁化ドメインの核形成サイトとして、粒界の構造に影響を与え、磁石の保磁力を低下させてしまう。
【0009】
従って、磁石中のC、O、Nという不純物元素を制御しなければ、磁性粉末の粒度が減少するにつれて、磁石の結晶粒は小さくなり、磁石の保磁力は上昇してから下降する傾向が現れるようになる。従来の文献にも、磁石の結晶粒が小さくなり、特に5 μmよりも小さくなる場合における製品中の元素C、O、Nへの制御及び制御方法は言及されていない。
【0010】
〔発明の概要〕
従来技術の不足を改善するために、本発明は、微細結晶、高保磁力のネオジム鉄ボロン系焼結磁石及びその製造方法を提供する。前記ネオジム鉄ボロン系焼結磁石は結晶粒度が5 μm以下であり、また、結晶粒度を低減すると共に、ネオジム鉄ボロン系焼結磁石中の元素C、O、Nの含有量を良く制御することができ、それにより、ネオジム鉄ボロン系焼結磁石の保磁力を大幅に向上させる。
【0011】
本発明の目的は下記の技術案によって実現される。
【0012】
化学式がRFeBMであり、そのうち、Rが希土類元素、Feが鉄、Bがボロンであり、Rの含有量が26~35 wt%、Bの含有量が0.8~1.3 wt%であり、MがCo、Ga、Cu、Al、Zr、Tiのうちの複数種であり、そのうち、Coの含有量が0.5~3.0 wt%、Gaの含有量が0.05~0.4 wt%、Cuの含有量が0.05~0.5 wt%、Alの含有量が0~1.5 wt%、Zr又はTiの含有量が0~0.3 wt%であり、残りが鉄と不可避的不純物で、且つ、磁石中の元素C、O、Nの含有量がC+O+N(ppm)≦[1500+(5.0-結晶粒度(μm))×600](ppm)を満たすネオジム鉄ボロン磁石である。
【0013】
本発明によれば、前記Rの含有量は、例えば、26 wt%、27 wt%、28 wt%、29 wt%、30 wt%、31 wt%、32 wt%、33 wt%、34 wt%又は35 wt%である。
【0014】
本発明によれば、前記Bの含有量は、例えば、0.8 wt%、0.9 wt%、1 wt%、1.1 wt%、1.2 wt%又は1.3 wt%である。
【0015】
本発明によれば、前記Coの含有量は、例えば、0.5 wt%、0.8 wt%、1 wt%、1.2 wt%、1.5 wt%、2 wt%、2.5 wt%又は3.0 wt%である。
【0016】
本発明によれば、前記Gaの含有量は、例えば、0.05 wt%、0.1 wt%、0.2 wt%、0.3 wt%又は0.4 wt%である。
【0017】
本発明によれば、前記Cuの含有量は、例えば、0.05 wt%、0.1 wt%、0.2 wt%、0.3 wt%、0.4 wt%又は0.5 wt%である。
【0018】
本発明によれば、前記Alの含有量は、例えば、0.01 wt%、0.05 wt%、0.1 wt%、0.2 wt%、0.5 wt%、1 wt%、1.2 wt%又は1.5 wt%である。
【0019】
本発明によれば、前記Zr又はTiの含有量は、例えば、0.01 wt%、0.05 wt%、0.1 wt%、0.2 wt%又は0.3 wt%である。
【0020】
本発明によれば、前記希土類元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)とスカンジウム(Sc)から選ばれる。
【0021】
本発明によれば、前記ネオジム鉄ボロン磁石の結晶粒度が5 μm以下であり、例えば、4.8 μm、4.5 μm、4.3 μm、4 μm、3.8 μm、3 μm、2 μm又は1 μmである。
【0022】
本発明は、前記ネオジム鉄ボロン系焼結磁石の製造方法を更に提供し、前記方法は、
1)ストリッピング-水素爆発の方法によりR-Fe-B-M合金微粉末を得るステップと、
2)ステップ1)の合金微粉末をジェットミルで研磨して粒度D50が4.0 μm以下の磁性粉末を得て、前記磁性粉末と潤滑剤を混合した後、磁性粉末を圧粉体に加圧成形するステップと、
3)ステップ2)の圧粉体を500~900℃で低温焼結し、低温焼結時に10 kPa以下のアルゴンと水素の混合ガスを注入し、0.1~2 h保温した後、100 Pa以下になるように真空引きし、循環処理を少なくとも1回行い、その後、980~1040℃で高温焼結し、3~8 h保温し、冷却後に焼き戻し処理を行い、前記ネオジム鉄ボロン系焼結磁石を製造するステップと、を含む。
【0023】
本発明によれば、ステップ1)において、前記ストリッピング-水素爆発の方法は、例えば、下記のステップを含む:
R-Fe-B-M合金を真空又は不活性ガスの雰囲気で、温度が1200~1600℃の条件下で溶融し、溶融体を回転速度が0.3~4 m/sの急冷ロールに注入してR-Fe-B-M合金ストリップを作製し、その後、合金ストリップに対してHD水素爆発炉で水素爆発処理を行い、処理前に100 Paよりも低くなるように真空引きする必要がある。
【0024】
そのうち、前記合金ストリップの厚さが0.1~0.5 mmである。
【0025】
本発明によれば、ステップ2)において、具体的には下記のステップを含む:
ステップ1)の合金微粉末をジェットミルで研磨し、そのうち、ジェットミルプロセスにおける酸素含有量は50 ppmよりも小さい。
【0026】
本発明によれば、ステップ2)において、前記潤滑剤の添加量は、前記磁性粉末の質量の0.1~0.5 wt%である。
【0027】
本発明によれば、ステップ2)において、前記混合の時間は0.1~3 hである。前記混合の温度は室温である。
【0028】
本発明によれば、ステップ2)において、磁性粉末を酸素含有量が500 ppmよりも小さく、配向磁場強度が1~2 Tの磁気配向成形装置で圧粉体に加圧成形する。圧粉体の大きさとサイズについては特に定義されておらず、最終的な製品の必要量によって調整することができる。
【0029】
本発明によれば、ステップ3)において、前記低温焼結はアルゴンと水素の混合雰囲気下で行われ、前記混合雰囲気には、アルゴンが混合雰囲気の総体積の95~99 vol%を占め、水素が混合雰囲気の総体積の1~5 vol%を占める。低温焼結プロセスにアルゴンと水素の混合雰囲気を注入し、特定の温度範囲で保温処理を行うことにより、水素を磁石の隙間を通じて磁石中の潤滑剤及び磁性粉末の表面に吸着した酸素、窒素と反応させ、最終反応物が排出され、磁石中の炭素、酸素、窒素不純物の含有量を低減させ、製品性能を向上させる。
【0030】
本発明によれば、ステップ3)において、前記低温焼結の温度は500℃、600℃、700℃、800℃又は900℃である。前記高温焼結の温度は、980℃、990℃、1000℃、1010℃、1020℃、1030℃又は1040℃である。
【0031】
本発明によれば、前記焼き戻し処理は、一次焼き戻し処理と二次焼き戻し処理を含む。
【0032】
そのうち、前記一次焼き戻し処理の温度は700~900℃(例えば、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃)で、前記一次焼き戻し処理の時間は3~7 hである。前記二次焼き戻し処理の温度は450~600℃(例えば、450℃、480℃、500℃、520℃、550℃、580℃、600℃)で、前記二次焼き戻し処理の時間は3~7 hである。
【0033】
本発明によれば、前記方法を採用すると、結晶粒度が5.0 μm以下のネオジム鉄ボロン系焼結磁石を得ることができると共に、前記ネオジム鉄ボロン磁石中のC+O+Nの含有量(ppm)≦[1500+(5.0-結晶粒度(μm))×600](ppm)である。
【0034】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕実施例1における磁性粉末の粒度の測定結果である。
【0035】
〔
図2〕実施例1における磁石の走査型電子顕微鏡により走査された破面写真である。
【0036】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明により請求される請求範囲内に含まれる。
【0037】
下記実施例に使用される実験方法は特別な説明がなければ、何れも従来の方法であり、下記実施例に使用される試薬、材料などは、特別な説明がなければ、何れも商業的に入手することができる。
【0038】
器具と機器
本発明における結晶粒度の算出方法は下記の通りである:走査型電子顕微鏡により走査された圧粉体の破面図を利用し、破面図において結晶粒の個数を算出し、その後、これらの結晶粒の個数の金属組織図の面積下での平均等面積を算出し、等面積によって結晶粒度を算出する。
【0039】
本発明における磁性粉末の粒径D50は、レーザー回折式粒度分布計により測定される。
【0040】
実施例1
(1)少なくとも99%重量純度のNdPr、Co、Al、Fe、Cu、Ga、Zrとフェロボロンを利用してアルゴン雰囲気において高周波溶融し、溶融体を急冷ロールに注入することにより、質量百分率が31%のNdPr、0.8%のCo、0.5%のAl、0.2%のCu、0.15%のGa、0.10%のZr、0.96%のBで、残りが鉄と不可避的不純物である合金を作製する。当該合金を水素化して粗粉末に粉砕し、その後、粗粉末をジェットミルで研磨し、得られた磁性粉末の粒度D50は3.5 μmである。上記ジェットミル粉末に0.2 wt%の潤滑剤を添加した後、材料を2 h混合し、常温と磁場強度が2 Tの配向場の環境下で成形する。
【0041】
(2)圧粉体を真空焼結炉に入れ、600℃で体積比が98:2のアルゴンと水素の混合ガスを10 kPa充填し、0.5 h保温する。保温終了後、0.1 kPaに真空引きして昇温し続け、1030℃で6 h焼結する。保温終了後に冷却処理し、900℃で一次焼き戻し処理を行い、時間が3 hである。520℃で二次焼き戻し処理を行い、時間が5 hである。冷却して炉から取り出した後、微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石を得る。この磁石はA1と称され、A1磁石にD10~10 mmのサンプルカラム(直径10 mm、長さ10 mm)を加工し、性能試験を行う。
【0042】
比較例1
他のステップは実施例1と同じであるが、ステップ(2)だけにおいて異なっている:
圧粉体を真空焼結炉に入れ、1030℃で6 h焼結する。保温終了後に冷却処理し、900℃で一次焼き戻し処理を行い、時間が3 hである。520℃で二次焼き戻し処理を行い、時間が5 hである。冷却して炉から取り出した後、微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石を得る。この磁石はB1と称され、B1磁石にD10~10 mmのサンプルカラムを加工し、性能試験を行う。
【0043】
【0044】
表1から見られるように、本発明の方法によれば、重希土類がなく、結晶粒度が4.5 μmの条件下で、実施例1の磁石A1は高保磁力の46 Hレベルに達している。実施例1は比較例1と比べてBrが相当し、Hcjがより高く、これは主に、実施例1の方法により不純物含有量(C+O+N)が比較的に良く制御されているためである。実施例1と比較例1の不純物含有量を比較してみると、実施例1<1500+(5.0-結晶粒度)×600<比較例1である。
【0045】
実施例2
(1)少なくとも99%重量純度のNdPr、Dy、Co、Al、Fe、Cu、Ga、Tiとフェロボロンを利用してアルゴン雰囲気において高周波溶融し、溶融体を急冷ロールに注入することにより、質量百分率が32%のNdPr、0.3%のDy、1.0%のCo、0.8%のAl、0.15%のCu、0.15%のGa、0.15%のTi、0.98%のBで、残りが鉄と不可避的不純物である合金を作製する。当該合金を水素化して粗粉末に粉砕し、その後、粗粉末をジェットミルで研磨し、得られた磁性粉末の粒度D50は3.2 μmである。上記ジェットミル粉末に0.3 wt%の潤滑剤を添加した後、材料を2 h混合し、常温と磁場強度が2 Tの配向場の環境下で成形する。
【0046】
(2)圧粉体を真空焼結炉に入れ、650℃で体積比が99:1のアルゴンと水素の混合ガスを8 kPa充填し、1 h保温する。保温終了後、100 Paよりも低くなるように真空引きして700℃に昇温し続け、体積比が99:1のアルゴンと水素の混合ガスを5 kPa充填し、0.5 h保温する。保温終了後、0.1 kPaに真空引きして昇温し続け、1020℃で5.5 h焼結する。保温終了後に冷却処理し、850℃で一次焼き戻し処理を行い、時間が4 hである。550℃で二次焼き戻し処理を行い、時間が5 hである。冷却して炉から取り出した後、微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石を得る。この磁石はA2と称され、A2磁石にD10~10 mmのサンプルカラムを加工し、性能試験を行う。
【0047】
比較例2
他のステップは実施例2と同じであるが、ステップ(2)だけにおいて異なっている:
圧粉体を真空焼結炉に入れ、1020℃で5.5 h焼結する。保温終了後に冷却処理し、850℃で一次焼き戻し処理を行い、時間が4 hである。550℃で二次焼き戻し処理を行い、時間が5 hである。冷却して炉から取り出した後、微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石を得る。この磁石はB2と称され、B2磁石にD10~10 mmのサンプルカラムを加工し、性能試験を行う。
【0048】
【0049】
表2から見られるように、本発明の方法によれば、重希土類が低い条件下で、実施例2の磁石A2は高保磁力の42 SHレベルに達している。実施例2は比較例2と比べてBrが相当し、Hcjがより高く、これは主に、実施例2の方法により不純物含有量(C+O+N)が比較的に良く制御されているためである。実施例2と比較例2の不純物含有量を比較してみると、実施例2<1500+(5.0-結晶粒度)×600<比較例2である。
【0050】
実施例3
(1)少なくとも99%重量純度のNdPr、Dy、Co、Al、Fe、Cu、Ga、Tiとフェロボロンを利用してアルゴン雰囲気において高周波溶融し、溶融体を急冷ロールに注入することにより、質量百分率が31.5%のNdPr、0.5%のDy、1.0%のCo、0.6%のAl、0.2%のCu、0.10%のGa、0.2%のTi、0.98%のBで、残りが鉄と不可避的不純物である合金を作製する。当該合金を水素化して粗粉末に粉砕し、その後、粗粉末をジェットミルで研磨し、得られた磁性粉末の粒度D50は2.6 μmである。上記ジェットミル粉末に0.15 wt%の潤滑剤を添加した後、材料を2 h混合し、常温と磁場強度が2 Tの配向場の環境下で成形する。
【0051】
(2)圧粉体を真空焼結炉に入れ、800℃で体積比が96:4のアルゴンと水素の混合ガスを6 kPa充填し、1 h保温する。保温終了後、100 Paよりも低くなるように真空引きし、引き続き800℃で体積比が96:4のアルゴンと水素の混合ガスを6 kPa充填し、1 h保温する。保温終了後、0.1 kPaに真空引きして昇温し続け、1000℃で7 h焼結する。保温終了後に冷却処理し、850℃で一次焼き戻し処理を行い、時間が4 hである。500℃で二次焼き戻し処理を行い、時間が6 hである。冷却して炉から取り出した後、微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石を得る。この磁石はA3と称され、A3磁石にD10~10 mmのサンプルカラムを加工し、性能試験を行う。
【0052】
比較例3
他のステップは実施例3と同じであるが、ステップ(2)だけにおいて異なっている:
圧粉体を真空焼結炉に入れ、1000℃で7 h焼結する。保温終了後に冷却処理し、850℃で一次焼き戻し処理を行い、時間が4 hである。500℃で二次焼き戻し処理を行い、時間が6 hである。冷却して炉から取り出した後、微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石を得る。この磁石はB3と称され、B3磁石にD10~10 mmのサンプルカラムを加工し、性能試験を行う。
【0053】
【0054】
表3から見られるように、実施例3は比較例3と比べてBrが相当し、Hcjがより高く、これは主に、実施例3の方法により不純物含有量(C+O+N)が比較的に良く制御されているためである。磁性粉末の粒度が小さくなるにつれて、理論的に、比較例3は磁石の保磁力が増加するが、不純物含有量も急激に増加するので、最終的な製品の性能が低くなる。実施例3と比較例3の不純物含有量を比較してみると、実施例3<1500+(5.0-結晶粒度)×600<比較例3である。
【0055】
実施例4
(1)少なくとも99%重量純度のNd、Co、Al、Fe、Cu、Gaとフェロボロンを利用してアルゴン雰囲気において高周波溶融し、溶融体を急冷ロールに注入することにより、質量百分率が31%のNd、0.8%のCo、0.3%のAl、0.2%のCu、0.1%のGa、1%のBで、残りが鉄と不可避的不純物である合金を作製する。当該合金を水素化して粗粉末に粉砕し、その後、粗粉末をジェットミルで研磨し、得られた磁性粉末の粒度D50は3.5 μmである。上記ジェットミル粉末に0.1 wt%の潤滑剤を添加した後、材料を2 h混合し、常温と磁場強度が2 Tの配向場の環境下で成形する。
【0056】
(2)圧粉体を真空焼結炉に入れ、600℃で体積比が99:1のアルゴンと水素の混合ガスを10 kPa充填し、0.5 h保温する。保温終了後、0 Paに真空引きして昇温し続け、1030℃で6 h焼結する。保温終了後に冷却処理し、900℃で一次焼き戻し処理を行い、時間が3 hである。510℃で二次焼き戻し処理を行い、時間が5 hである。冷却して炉から取り出した後、基材A4とマークされる微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石を得る。
【0057】
磁石をサイズが20-10-5 mmの四角片に加工し、脱脂・酸洗い後に四角片にTb粒界拡散処理を行い、Tbの拡散量が0.4 wt%であり、この実施例の粒界拡散は溶射法を選択して処理され、拡散処理後の当該製品はA5と称される。
【0058】
比較例4
他のステップは実施例4と同じであるが、ステップ(2)だけにおいて異なっている:
圧粉体を真空焼結炉に入れ、1030℃で6 h焼結する。保温終了後に冷却処理し、900℃で一次焼き戻し処理を行い、時間が3 hである。510℃で二次焼き戻し処理を行い、時間が5 hである。冷却して炉から取り出した後、基材B4とマークされる微細結晶のネオジム鉄ボロン磁石を得る。
【0059】
磁石をサイズが20-10-5 mmの四角片に加工し、脱脂・酸洗い後に四角片にTb粒界拡散処理を行い、Tbの拡散量が0.4 wt%であり、この比較例の粒界拡散は溶射法を選択して処理され、拡散処理後の当該製品はB5と称される。
【0060】
【0061】
表4から見られるように、A4はB4と比べてBrが相当し、Hcjがより高く、これは主に、実施例4の方法により不純物含有量(C+O+N)が比較的に良く制御されているためである。A4とB4の不純物含有量を比較してみると、A4<1500+(5.0-結晶粒度)×600<B4である。更に、A4とA5の保磁力から見ると、A5の保磁力は798 kA/m増加する。B4とB5の保磁力から見ると、B5の保磁力は721 kA/m増加する。A4の磁石は、より低い不純物C、O、Nの含有量を有するため、重希土類の拡散により有利であるが、A5の磁石は保磁力がより高い。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神と原則内で行われた修正、等価置換、改良などは、何れも本発明の請求範囲に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】実施例1における磁性粉末の粒度の測定結果である。
【
図2】実施例1における磁石の走査型電子顕微鏡により走査された破面写真である。
【国際調査報告】