(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】CD71を用いた自己癌抗原反応性CD8T細胞分離方法およびその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20230317BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230317BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230317BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61P35/00
A61K35/17
A61P35/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547768
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 KR2021001346
(87)【国際公開番号】W WO2021157993
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0012409
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522310993
【氏名又は名称】サムダ バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMDA BIOTEC CO., LTD
【住所又は居所原語表記】(Madu-dong) 4F, Room 9, National Cancer Center, Research Center 323, Ilsan-ro, Ilsandong-gu, Goyang-si, Gyeonggi-do 10408, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ボムギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウンソク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB19
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BB63
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本発明は、CD71を用いて自己癌抗原反応性CD8T細胞を単離する方法およびその応用に関する。本発明の分離方法を用いて自己癌抗原反応性CD8T細胞を分離する場合、自己癌抗原に特異的なCD8T細胞以外に様々な癌抗原に反応するCD8T細胞も一緒に分離されるので、より少ない血液でも大量にCD8T細胞数を増幅して有意な抗癌効果を提供することができる。したがって、養子細胞の治療など、治療のために一時的な免疫不全を誘導する免疫治療などに効果的に使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)癌患者の血液由来PBMCに自己癌抗原由来ペプチドを添加および培養した後、自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖を誘導する工程;
b)上記工程a)における自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖レベルが高い自己癌抗原由来ペプチドを選択する工程;
c)前記工程b)で選択された自己癌抗原由来ペプチドを、前記工程a)の癌患者と同一の癌患者の血液由来PBMCに添加して培養する工程;及び
d)前記工程c)の培養PBMCからCD71+CD8+T細胞を単離する工程;を含む、
自己癌抗原反応性CD8T細胞単離方法。
【請求項2】
前記工程a)の癌が、胃癌、肺癌、膵臓癌、黒色腫、脳腫瘍、白血病、卵巣癌および肉腫からなる群から選択される少なくとも1つである、
請求項1に記載の自己癌抗原反応性CD8T細胞分離方法。
【請求項3】
前記工程a)の自己癌抗原が、hTERT、WT-1、NY-ESO-1およびMAGE-3からなる群から選択される少なくとも1つである、
請求項1に記載の自己癌抗原反応性CD8T細胞分離方法。
【請求項4】
前記工程b)の選択が、4-1BBを発現する自己癌抗原特異的CD8T細胞を高発現する自己癌抗原由来ペプチドを選択することを特徴とする、
請求項1に記載の自己癌抗原反応性CD8T細胞分離方法。
【請求項5】
前記工程c)の癌患者の血液が10~100mlである、
請求項1に記載の自己癌抗原反応性CD8T細胞分離方法。
【請求項6】
前記工程c)の培養が12日~17日間行われることを特徴とする、
請求項1に記載の自己癌抗原反応性CD8T細胞分離方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法で単離された自己癌抗原反応性CD8T細胞。
【請求項8】
請求項7に記載の自己癌抗原反応性CD8T細胞を含む癌予防または治療用医薬組成物。
【請求項9】
癌患者に、請求項7に記載の自己癌抗原反応性CD8T細胞を含む組成物を投与することを含む、
癌の改善または治療方法。
【請求項10】
a)癌患者の血液由来PBMCに自己癌抗原由来ペプチドを添加および培養した後、自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖を誘導する工程;
b)上記工程a)における自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖レベルが高い自己癌抗原由来ペプチドを選択する工程;
c)前記工程b)で選択された自己癌抗原由来ペプチドを、前記工程a)の癌患者と同一の癌患者の血液由来PBMCに添加して培養する工程;
d)前記工程c)の培養PBMCからCD71+CD8+T細胞を単離する工程;及び
e)前記工程d)で単離されたCD71+CD8+T細胞を増幅する工程;を含む、
抗癌細胞治療剤用組成物の製造方法。
【請求項11】
前記工程d)の分離は、PBMCにおけるCD71+CD8+T細胞の割合が1~25%である場合に行われることを特徴とする、
請求項10に記載の抗癌細胞治療剤用組成物の製造方法。
【請求項12】
前記工程e)の増幅が、12日~17日間行われ、CD71+CD8+T細胞が10
9~10
11個となるように増幅することを特徴とする、
請求項10に記載の抗癌細胞治療剤用組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の製造方法で製造された抗癌細胞治療剤用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年02月03日に出願された大韓民国特許出願第10-2020-0012409号を優先権として主張し、上記明細書全体は本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、CD71を用いて自己癌抗原反応性CD8T細胞を単離する方法およびその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
養子縁組T細胞療法(Adoptive T cell therapy)は、癌抗原特異的T細胞を単離および大量培養して癌患者に投与することによって癌を治療する方法である。初期研究では、がんに対する特異性なしにがん患者の血液やがん組織のT細胞を大量増殖させ、CIK(cytokine-induced killer cells)、LAK(lymphokine-activated killer cell)またはTIL(tumor-infiltrating lymphocyte)を生産した後、癌患者に投与することによって安全性と有効性を評価した。しかし、ほとんどが癌患者で安全性は確認されたが、有効性はなかったが、臨床試験に使用されたCIK、LAKおよびTIL細胞のがんに対する特異性が低いことがその原因と判断された。がん抗原特異的T細胞を単離および大量培養するための培養方法が適用されたT細胞治療剤の臨床試験が順次進行され、がん細胞に対する特異性が付与されると抗がん効果は増加することが報告された。しかし、がん細胞特異的T細胞を用いても再発したがん患者を治癒させる割合は極めて低いことが分かった。 T細胞治療剤の低い効力問題を解決するための方法として、化学抗がん剤の事前投与を通じて一時的免疫不全を誘導した後にT細胞治療剤を投与する方法が用いられている。
【0004】
現在開発中または開発中の抗癌T細胞治療薬は、癌抗原特異的T細胞の単離および大量培養の概念を本質的に含む。全てのT細胞治療剤が癌細胞特異的T細胞の単離及び投与という同じ目標を有するが、T細胞の単離及び大量培養過程、並びに培養されたT細胞の特性は全て異なる。血液やがん組織内のがん抗原特異的T細胞の割合が極めて低いため、一般的にがん抗原特異的T細胞の分離前に、これらの細胞の比率を高めるための増幅過程をほとんど必要とする。癌抗原特異的CD8T細胞を単離するための最も代表的な方法は、MHC I/peptide multimerを用いて単離する方法であるが、利用可能なMHC I/peptide multimerが限定的であり、多様な患者に適用できない。この限界を克服するために、活性化されたT細胞でのみ選択的に発現する4-1BBの特性を用いた抗原特異的T細胞分離工程が開発された(韓国登録特許第10-1503341号)。
【0005】
4-1BBを使用する方法は、理論的にはあらゆる種類の癌抗原に適用できるという利点を有する。しかしながら、養子性T細胞治療のための一時的な免疫不全を誘発する場合、約1011個以上のリンパ球が除去されるが、この方法では、1つの癌抗原特異的CD8T細胞を109個の規模で提供するのにとどまる。これは、がん細胞の免疫回避の可能性から免疫不全による副作用が発生する可能性を高めることができ、これに対する解決策が求められる実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、自己がん抗原に反応するCD8T細胞を少量の血液から分離して短期間内に細胞治療剤に適用できる程度の有意なレベルで増幅する方法を提供しようと努力した結果、自己がん抗原で末梢血液単核球(PBMC)を刺激する場合、自己がん抗原特異的CD8T細胞以外に様々ながん抗原に反応することができるCD8T細胞が一緒に増殖し、これをCD71を利用して分離する場合に有意な抗がん効果を提供可能なCD8T細胞を単離および増殖できることを確認し、本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、CD71を用いて自己癌抗原反応性CD8T細胞を単離する方法およびその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)癌患者の血液由来PBMCに自己癌抗原由来ペプチドを添加および培養した後、自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖を誘導することを含む工程;b)上記工程a)における自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖レベルが高い自己癌抗原由来ペプチドを選択する工程;c)前記工程b)で選択された自己癌抗原由来ペプチドを、前記工程a)の癌患者と同一の癌患者の血液由来PBMCに添加して培養する工程;及びd)前記工程c)の培養PBMCからCD71+CD8+T細胞を単離する工程;を含む自己癌抗原反応性CD8T細胞単離方法および前記方法で分離された自己癌抗原反応性CD8T細胞を提供する。
【0009】
本発明の好ましい一実施形態によれば、上記工程a)の癌は、胃癌、肺癌、膵臓癌、黒色腫、脳腫瘍、白血病、卵巣癌および肉腫からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0010】
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記工程a)の自己癌抗原は、hTERT、WT-1、NY-ESO-1およびMAGE-3からなる群から選択されるいずれか1つ以上である。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態によれば、工程b)の選択は、4-1BBを発現する自己癌抗原特異的CD8T細胞を高発現する自己癌抗原由来ペプチドを選択することである。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ステップc)の癌患者の血液は10~100mlである。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態によれば、工程c)の培養は12日から17日間行われる。
【0014】
本発明はまた、単離された自己癌抗原反応性CD8T細胞を含む癌予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明はまた、癌患者に、単離された自己癌抗原反応性CD8T細胞を含む組成物を投与することを含む、癌の改善または治療方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、a)癌患者の血液由来PBMCに自己癌抗原由来ペプチドを添加および培養した後、自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖を誘導することを含む工程;b)上記工程a)における自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖レベルが高い自己癌抗原由来ペプチドを選択する工程;c)前記工程b)で選択された自己癌抗原由来ペプチドを、前記工程a)の癌患者と同一の癌患者の血液由来PBMCに添加して培養する工程;d)前記工程c)の培養PBMCからCD71+CD8+T細胞を単離する工程;及びe)上記工程d)で単離されたCD71+CD8+T細胞を増幅する工程;を含む抗癌細胞治療剤用組成物の製造方法および上記方法で製造された抗癌細胞治療剤用組成物を提供する。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態によれば、工程d)の単離は、PBMC中のCD71+CD8+T細胞の割合が1~25%である場合に行われるものである。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記ステップe)の増幅は、12日から17日間実施してCD71+CD8+T細胞が109~1011個になるように増幅するものである。
【0019】
本発明の「自己癌抗原反応性CD8T細胞」は、自己癌抗原を含む様々な癌抗原に反応することができるCD8T細胞を意味する。
【0020】
本発明の「傍観者活性化(bystander activation)」は、特定の抗原に対する免疫反応中に他の抗原に特異的なT細胞が活性化されることを意味する。
【0021】
本発明の「細胞治療剤」は、個体から分離、培養または特殊な操作により製造された細胞および組織であり、治療、診断または予防の目的に使用される医薬品であって、細胞もしくは組織の機能を回復させるために生きている者、同種または異種細胞をインビトロで増殖選択する、または他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を通じて、これらの細胞が疾患の治療、診断または予防の目的に使用される医薬品を意味する。
【0022】
上記のように、既存の細胞治療に使用されるCD8T細胞増幅方法は、細胞治療のために誘導された免疫不全を回復するには増幅されるCD8T細胞の量が不足し、1つのがん抗原のみに特異的に反応する。場合が多く、有意な抗がん効果を得るには不足していた。
【0023】
本発明の自己癌抗原反応性CD8T細胞分離方法を用いる場合、50~100mlの癌患者血液から約25日間の培養過程を通じて>1010個の抗癌CD8T細胞を培養することができるので、CD8T細胞の抗がん効果を高めるために、抗がん剤投与を通じてgrade3-4レベルのリンパ球減少症(lymphopenia)が発生し、大量のリンパ球が除去されてもそれを補完できるレベルで投与可能な抗がんCD8T細胞を産生することができる。
【0024】
hTERTおよびWT1は代表的な自己がん抗原で健康な人の体内では極めて低い割合で存在して増殖が難しいが、がん患者はhTERTを含む様々ながん抗原に対するCD8T細胞反応が活性化されており、健康な人とは異なりhTERTと同じ自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖および単離が可能である。ただし、自己癌抗原に由来するペプチドを用いて抗癌CD8T細胞を培養する過程は、癌患者の体内にこれらの細胞が十分に高い割合で存在する場合にのみ培養が可能である。
【0025】
本発明は、CD71+CD8T細胞単離により、CD8T細胞増殖に用いたhTERTまたはWT1ペプチド特異的CD8T細胞だけでなく、がん患者自らがん細胞の増殖に対応して持続的に高めてきた自己がん抗原特異的CD8T細胞のいくつかは、傍観者活性化を介して増殖および単離することができる。したがって、最終培養抗癌CD8T細胞は、hTERTまたはWT1と組み合わせて癌患者が自己増殖させた別の癌抗原特異的CD8T細胞を含むので、非常に優れた抗癌効果を引き起こす可能性がある。
【0026】
したがって、本発明は、a)癌患者の血液由来PBMCに自己癌抗原由来ペプチドを添加および培養した後、自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖を誘導することを含む工程;
b)上記工程a)における自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖レベルが高い自己癌抗原由来ペプチドを選択する工程;
c)前記工程b)で選択された自己癌抗原由来ペプチドを、前記工程a)の癌患者と同一の癌患者の血液由来PBMCに添加して培養する工程;及び
d)前記工程c)の培養PBMCからCD71+CD8+T細胞を単離する工程;を含む自己癌抗原反応性CD8T細胞分離方法および前記分離方法で分離された自己癌抗原反応性CD8T細胞を提供することができる。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態によれば、工程a)の癌は、胃癌、肺癌、膵臓癌、黒色腫、脳腫瘍、白血病、卵巣癌および肉腫からなる群から選択されるいずれか1つ以上であり得る。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態によれば、上記工程a)の自己癌抗原は、hTERT、WT-1、NY-ESO-1およびMAGE-3からなる群から選択されるいずれか1つ以上であり得、より好ましくは、hTERTおよびWT-1からなる群から選択されるいずれか一つであることができる。
【0029】
上記自己癌抗原由来ペプチドは、hTERT、WT-1、NY-ESO-1およびMAGE- 3からなる群から選択される任意の1つ以上の自己癌抗原に由来するペプチドであり得るが、好ましくはhTERTまたはWT-1で由来のペプチドであってもよく、より好ましくは配列番号2~配列番号59のペプチドであってもよい。
【0030】
本発明の好ましい一実施形態によれば、工程b)の選択は、4-1BBを発現する自己癌抗原特異的CD8T細胞を高発現する自己癌抗原由来ペプチドを選択することであり得る。具体的には、全CD8T細胞のうち4-1BBを発現するCD8T細胞の割合が10%以上である自己癌抗原由来ペプチドを選別するものであってもよい。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ステップc)の癌患者の血液は10~100mlであり得る。好ましくは、癌患者の血液は20~80mlであることが好ましく、より好ましくは30~50mlであることができる。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態によれば、工程c)の培養は、12日から17日間実施することができる。好ましくは13日~16日間実施することができ、より好ましくは14日~15日間実施することができる。
【0033】
本発明はまた、単離された自己癌抗原反応性CD8T細胞を含む癌予防または治療用医薬組成物を提供することができる。
【0034】
本発明の医薬組成物は、非経口のいくつかの製剤であり得る。非経口投与用の製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤または坐剤などが含まれる。非水性溶剤および懸濁溶剤としてプロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどを使用することができる。坐剤の基剤としては、ウィテプソール、マクロゴール、ツイン61、カカオジ、ラウリンジ、グリセロール、ゼラチンなどを用いることができる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、非経口で投与することができ、非経口 投与時 皮膚外用;腹腔内、直腸、静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜または脳血管内に注射する注射剤の形態で当技術分野で公知の方法に従って製剤化することができる。
【0036】
注射剤の場合は、必ず滅菌し、必ず滅菌し、細菌や真菌などの微生物の汚染から保護する必要があります。注射剤のための適切な担体の例は、これらに限定されないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの混合物および/または植物油を含む溶媒または分散媒体である。できる。より好ましくは、適切な担体としては、ハンクス溶液、リンガー溶液、トリエタノールアミンを含むリン酸塩緩衝液(PBS)または注射用滅菌水、10%エタノール、40%プロピレングリコールおよび5%デキストロースなどの等張溶液などが使用できる。注射剤を微生物汚染から保護するためには、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどのような様々な抗菌剤および抗真菌剤をさらに含むことができる。さらに、注射剤は、ほとんどの場合、糖または塩化ナトリウムなどの等張化剤をさらに含み得る。
【0037】
本発明の医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与される。薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与時間、投与経路および排出率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、および他の医学分野で周知の要素に応じて決定することができる。本発明の医薬組成物は、個々の治療剤として投与することも、他の治療剤と併用して投与することもでき、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができ、単回または複数投与することができる。すなわち、本発明の医薬組成物の総有効量は、単一投与量で患者に投与することができ、複数投与量で長期間投与される分割治療方法によって投与される。できる。上記のすべての要素を考慮して、副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0038】
本発明の組成物は、単独で、または手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法および生物学的反応調節剤を使用する方法と組み合わせて使用することができる。
【0039】
本発明はまた、癌患者に、単離された自己癌抗原反応性CD8T細胞を含む組成物を投与することを含む癌改善または治療方法を提供することができる。
【0040】
本発明の上記組成物は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量で投与され、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路排出率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、および他の医療分野でよく知られている要素に応じて決定することができる。本発明の組成物は、個々の治療剤として投与するか、または他の治療剤と組み合わせて投与することができ、従来の治療剤と順次または同時に投与することができ、単回または複数回投与することができる。すなわち、本発明の組成物の総有効量は、単一投与量で患者に投与することができ、複数投与量で長期間投与される分割治療方法によって投与することができる。上記のすべての要素を考慮して、副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0041】
本発明はさらに、a)癌患者の血液由来PBMCに自己癌抗原由来ペプチドを添加および培養した後、自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖を誘導することを含む工程;
b)上記工程a)において、自己癌抗原特異的CD8T細胞の増殖レベルが高い自己癌抗原由来ペプチドを選択する工程;
c)工程b)で選択された自己癌抗原由来ペプチドを、工程a)の癌患者と同一の癌患者の血液由来PBMCに添加および培養する工程;
d)前記工程c)の培養PBMCからCD71+CD8+T細胞を単離する工程;及び
e)上記工程d)で単離されたCD71+CD8+T細胞を増幅する工程;を含む抗癌細胞治療剤用組成物の製造方法および上記方法で製造された抗癌細胞治療剤用組成物を提供することができる。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記工程d)の分離は、PBMCにおけるCD71+CD8+T細胞の割合が1~25%である場合に行うことができ、好ましくは割合が4~25%であることが好ましい。そして、より好ましくは10~25%であることが好ましい。PBMC中のCD71+CD8+T細胞の割合が10%を超える場合、PBMCから単離されるCD71+CD8+T細胞の純度と同様のレベルの回収率を安定的に得ることができる(実施例6)。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記工程e)の増幅は、12日から17日間実施してCD71+CD8+T細胞が109~1011個になるように増幅するものである。工程e)の増幅は、好ましくは13日~16日間実施することができ、より好ましくは14日~15日間実施することができる。前記CD71+CD8+T細胞が好ましくは109~1010個となるように増幅するものであってもよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明の分離方法を用いて自己癌抗原反応性CD8T細胞を分離する場合、自己癌抗原に特異的なCD8T細胞以外に様々な癌抗原に反応するCD8T細胞も一緒に分離されるので、より少ない血液でも大量にCD8T細胞数を増幅して有意な抗癌効果を提供することができる。したがって、養子細胞の治療など、治療のために一時的な免疫不全を誘導する免疫治療などに効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1は、増殖するMelan-A特異的および傍観者活性化CD8+T細胞における4-1BBおよびCD71発現を示す。
【0046】
図2は、Melan-Aペプチドの存在下で傍観者活性化によって増殖したCD8+T細胞がヒト腫瘍反応性CD8+T細胞を含むことを示す。(A)インキュベートしたPBMCをPE-コンジュゲートMelan-Aペプチド/MHCクラスIマルチマー(pMelan)および抗CD8-PE-Cy5で染色した。ゲートされたCD8+細胞をCFSE対pMelanでプロットし、示されたCD8+T細胞をフローサイトメトリーした結果を示す。(B~C)pMelan+CD8T(R1)、CFSE-pMelan-CD8T(R2)およびCFSE + CD8T(R3)細胞の3つの異なるCD8+T細胞を、急速な拡張方法(rapid expansion method)を用いて増幅することによって、抗CD8-PE-Cy5およびanti-CD25-PEで染色した後、フローサイトメトリーの結果を示す。
【0047】
図3は、拡張CD71+CD8+T細胞によるMelan-A+およびMelan-A-黒色腫細胞の死を示す。
【0048】
図4は、hTERTペプチドによって活性化されたCD8+T細胞における4-1BBおよびCD71の発現を示す。赤い点線ボックスは、より高いパーセントの4-1BB+CD8+T細胞を含むPBMCを意味し、PBMCは最終的にCD71+CD8+T細胞を分類するために使用された。
【0049】
図5は、分類されたCD71+CD8+T細胞の拡張およびその表現型を示す。(A)選択したPBMCをプールし、CD71+CD8+T細胞をフローサイトメトリーした結果を示す。(B)分類されたCD71+CD8+T細胞をラピッドエクスパンション法を用いて増殖させ、5×10
5細胞は13日以内に>1×10
9細胞となった。(C)拡張CD8+T細胞を、抗CD8-PE-Cy5と組み合わせたPE結合抗CD45RA、anti-CD45RO、anti-CD57またはanti-PD-1で染色した。(D)拡張CD8T細胞をアネキシンV-FITCおよびPIで染色してその生存率を確認した結果を示す。
【0050】
図6は、CD71+CD8+T細胞がWT1ペプチド特異的CD8+T細胞を含むことを示す。
【0051】
図7の(A)HLA-A*0201対立遺伝子を有する健康なボランティアのPBMCから、Melan-A CTLペプチドを用いて、Melan-A-陽性または陰性CD8+T細胞を単離した。(B)拡張pMelan+およびpMelan-CD8+T細胞を異なる割合で混合し、pMelan-CD8+T細胞を自動細胞分類器(Tyto)を用いて5×10
6個の細胞混合物から分類および計数してフローサイトメトリーした。(C)(B)の結果からpMelan+CD8+T細胞の純度及び回収率(recoveryrate)を計算した結果を示す。
【0052】
図8は、癌患者の血液からhTERT特異的CD8T細胞を含む腫瘍反応性CD8T細胞を産生するためのワークフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
[実施例1]
CD8T細胞におけるCD71発現の測定
【0054】
自己抗原であるMelan-A特異的CD8T細胞を用いて、CD8T細胞増殖用ペプチドによって増殖するCD8T細胞がCD71を発現するかどうかを証明することを目的とした。すべての血液サンプルはHLA-A*02対立遺伝子(allele)を有し、HLA-A0201/Melan-A26-35(配列番号1:ELAGIGILTV)マルチマー(ペンタマー)陽性CD8T細胞を有する健康なボランティアからの研究大韓西面洞の後に提供を受けた。
【0055】
具体的には、Melan-A26-35特異的CD8T細胞は、Melan-A抗原の細胞毒性Tリンパ球(cytotoxic T lymphoycte、CTL)エピトープであるMelan-A26-35(配列番号1:ELAGIGILTV)ペプチドを用いて増殖誘導もした。健康なボランティア(Donor#1および#2)の血液を10mlのBD Vacutainer Heparin Tube(BD Bioscience)に採血した。採血した血液から末梢血液単核球(peripheral blood mononuclear cell;PBMC)を分離するために15mlコニカルチューブに5ml Ficoll-Paque(GEHealthcare)添加した後、採血した血液10mlをFicoll溶液上層にゆっくり分注した。800×g、no brake、20分間遠心分離した後、最上層の血漿を回収し、0.2μMシリンジフィルターで濾過し、自己血漿として使用し、PBMCを回収してRPMI1640培地で2回洗浄して培養に使用した。
【0056】
分離したPBMCを10μM CFSE(CellTrace CFSE Cell Proliferation kit, Thermo Fisher)で5分間染色した。CFSE標識PBMCは、3%の自己血漿を含むRPMI1640培地に1×106 cells/mlの濃度で懸濁し、14mlの丸い遠心管(round tube、BD Bioscience)に1mlずつ分注した。各チューブに2μg/mlの濃度で前記Melan-A26-35ペプチドを2μg/mlの濃度で添加した後、CO2インキュベーターで培養した。培養2日目に、100IU/mlのIL-2および3%自己血漿を含むRPMI1640培地を1mlずつ各チューブに添加した。培養7、9、11または13日目に各チューブから1ml培地を除去した後、100IU/ml IL-2と3%自己血漿を含む新しいRPMI1640培地を1ml添加して14日間培養した。培養7、9、11または14日目にチューブのPBMCを回収し、RPMI1640培地で1回洗浄した後、抗CD8-PE-Cy5と共にpMelan-PE、抗-4-1BB-PE、または抗CD71-PE抗体で染色し、FACSCalibur(BD Bioscience)でフローサイトメトリーを分析した。
【0057】
その結果、
図1に示すように、培養7日目のほとんどのpMelan
+CD8T細胞は9回以上の細胞分裂が発生してCFSE-negative状態となり、同時に傍観者活性化(bystander activation)されたCFSE
-pMelan
-CD8T細胞も高い割合で発見された。Donor#1はpMelan
+CD8T細胞の割合が高く検出されたボランティアであり、CD8T細胞の増殖率も高いことが示され、Donor#2はpMelan
+CD8T細胞の割合が低く検出されたボランティアでpMelan
+CD8T細胞の増殖率が低くなった。培養11日までpMelan
+CD8T細胞の割合は着実に増加したが、培養14日には部分的に減少することが確認された(
図1の左)。培養7日目に、増殖中のCFSE
-CD8T細胞の一部において4-1BBの発現が検出されたが、9日後には検出されなかった(
図1の中央)。CD8T細胞の増殖が進行し、CFSE蛍光値が減少するほどCD71の発現が増加することが示され、培養14日目9~10回以上増殖したCD8T細胞の大部分がCD71を発現していることが確認された(
図1の右)。
【0058】
上記の結果は、Melan-Aペプチド特異的および非特異的に増殖したCD8T細胞の大部分がCD71を発現していることを意味すると判断した。
【0059】
[実施例2]
Melan-A由来CTLペプチドによるCD8T細胞活性化
【0060】
上記<実施例1>で確認された傍観者活性化(Bystander activation)を通じて増殖したCD8T細胞が黒色腫を認識できるかどうかを確認しようとした。
【0061】
具体的には、上記<実施例1>の培養PBMCの全てを収集し、pMelan-PEと抗-CD8-PE-Cy5で染色した後、FACSAria(BD Bioscience)を用いて、gated CD8T細胞中のpMelan+CD8T(R1)、CFSE-pMelan-CD8T(R2)およびCFSE+CD8T(R3)細胞をそれぞれ単離した。単離された3種類のCD8T細胞は、ラピッドエクスパンション法を用いて14日間培養し、>109 レベルに大量増殖させた。50ml ALyS505N(CSTI,Japan)培地に最終単離されたCD8T細胞5×105個、1×108 irradiated allogeneic PBMCs、40ng/ml anti-human CD3mAb、1,000 IU/ml rhIL-2、および3%自己血漿を混合した後、培養4日目に50ml、7日目に100ml、培養9日目に300ml、11日に500ml添加し、1L culture bag(Nipro,Japan)に注入して14日間培養した。最終培養CD8T細胞2×106個とヒト黒色腫細胞株であるSK-Mel-5 2×105個(10:1)を24well culture plateに分注した後、100IU/ml rhIL-2と3%自己血漿を含む状態で24時間培養し、陰性対照群ではSK-Mel-5なしでCD8T細胞のみを培養した。培養後、細胞を回収し、anti-CD8-PE-Cy5およびanti-CD25-PE抗体で染色およびFACSCalibur(BD Bioscience)で分析し、SK-Mel-5によって活性化されたCD8T細胞の割合を決定した。
【0062】
その結果、
図2に示されるように、pMelan
+CD8T細胞の増殖とともに、一部のpMelan
-CD8T細胞が傍観者活性化を通じて一緒に増殖することが確認できた(
図2のA)。pMelan
+CD8T(R1)、CFSE
-pMelan
-CD8T(R2)およびCFSE
+CD8T(R3)細胞のみを24時間培養した場合、活性マーカーであるCD25の発現は3~5%と低いレベルを維持した。しかし、HLA-A*02
+ SK-Mel-5細胞とCD8T細胞を1日間共培養した場合、pMelan
+CD8T細胞は急速に活性化され、CD25を発現する細胞の割合が60%レベルであった。したがって、HLA-A*02
+ SK-Mel-5細胞は、正常にMelan-AペプチドをMHCクラスIに搭載して細胞表面に列挙することにより、CD8T細胞の活性を誘導できると判断した。同時に、R2およびR3に相当するCD8T細胞においてもSK-Mel-5との共培養後のCD25発現が増加し、非dividing CD8T細胞であるCFSE
+CD8T細胞よりもCFSE
-pMelan
-CD8T細胞におけるSK-Mel-5に反応する細胞の割合が高いことが確認できた(
図2のC)。
【0063】
以上の結果は、Melan-Aペプチドの傍観者活性化効果により増殖したCD8T細胞には、がん抗原特異的CD8T細胞が高い割合で含まれていることを意味すると判断した。
【0064】
[実施例3]
CD71+CD8+T細胞のがん細胞除去能力の確認
【0065】
HLA-A*0201-制限Melan-A-特異的CD8+T細胞を有する健康なボランティアのPBMCにMelan-A CTLペプチドを添加して14日間培養した後、CD71+CD8+および4-1BB+CD8+T細胞を分離して大量培養した後、Melan-A-陽性のSK-Mel-5細胞株とMelan-A-陰性のA375細胞株と共培養して癌細胞除去能力を比較しようとした。
【0066】
具体的には、上記<実施例1>で培養したPBMCで、培養14日目にCD71+CD8+T細胞をセルソーター(FACSAria、BD Bioscience)で分離した。4-1BB+CD8+T細胞の場合、培養14日目に細胞を回収し、RPMI1640培地で2回洗浄した後、2×106cells/mlでCTL mediaに細胞懸濁し、12well culture plateに分注し、同じMelan-A CTLペプチドを5μg/mlの濃度で添加し、1日間再刺激して4-1BB+CD8+T細胞を単離した。単離された4-1BB+CD8+ TおよびCD71+CD8+T細胞は、急速な拡張方法を介して14日間大量培養した。
【0067】
HLA-A*0201対立遺伝子を有し、Melan-A-陽性SK-Mel-5細胞株またはMelan-A-陰性A375細胞株を10μM CFSEで5分間染色して蛍光標識した後、RPMI1640培地で洗浄して標的細胞を準備した。1×105個の蛍光標識SK-Mel-5またはA375細胞株と最終培養4-1BB+CD8+ TおよびCD71+CD8+T細胞を0、0.1、0.2、0.5、1または5倍の割合で混合し、100IU/ml rhIL-2と3%自己血漿を含むCTL培地で6時間37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。培養完了後、細胞をアネキシン-PEで染色し、フローサイトメトリーにより死滅する細胞の割合を分析した。
【0068】
その結果、[
図3]に示すように、Melan-A-特異的CD8T細胞のみを含む4-1BB+CD8+T細胞は、Melan-A+SK-Mel-5細胞株のみを選択的に除去し、Melan-A-特異的CD8T細胞とともに、傍観者活性化されたCD8T細胞を含むCD71+CD8+T細胞の場合、Melan-A+SK-Mel-5細胞株だけでなく、Melan-A-A375細胞株を全て除去することが確認できた。
【0069】
[実施例4]
hTERT由来CTLペプチドによるCD8T細胞の活性化
【0070】
癌患者のPBMCにおいても、hTERT由来のCTLペプチドを用いて、hTERT特異的および傍観者活性化されたCD8T細胞を増殖できるかどうかを調べた。
【0071】
【0072】
具体的には、標準治療に不応で再発した肺がん患者の30ml血液から前記<実施例1>と同様の方法で分離したPBMCを上記[表1]の38種類のhTERT由来のCTLペプチドとともに14日間培養した。培養14日目に同じペプチドで1日間再刺激し、培養15日目に各チューブのPBMCの一部をanti-4-1BB-PEまたはanti-CD71-PEおよびanti-CD8-PE-Cy5で染色した。フローサイトメトリーを介して4-1BB+CD8+T細胞を含み、同時にCD71+CD8+T細胞の割合が高いように見えるhTERTペプチドを選択した。選択したチューブのPBMCをプールした後、CD71+CD8+T細胞をFACSAriaを用いて単離し、単離したCD8T細胞をラピッドエクスパンション法を用いて14日間大量培養し、最終培養CD8T細胞は、ani-CD45RA、anti-CD45RO、anti-CD57またはanti-PD-1抗体を用いて表現型を分析した。
【0073】
また、これとは別に最終選別した8本のチューブのPBMCをプールし、FACSAriaを用いてCD71
+CD8+T細胞分離してアネキシンV-FITCとPIで染色して細胞の生存率を決定した(
図5のA)。
【0074】
その結果、[
図4]に示すように、様々なhTERTペプチド刺激により4-1BB
+CD8T細胞が増加することが確認できた。
【0075】
4-1BB+CD8+T細胞は、添加されたペプチドに対して特異的に活性化されたCD8T細胞であることを既存の研究によって決定しました。発現しており、添加されたhTERTペプチド特異的及び傍観者活性化されたCD8T細胞を含んでいると判断した。
【0076】
また、[
図5]のBに示すように単離されたCD71
+CD8+T細胞を、ラピッドエクスパンション方式を用いて14日間大量増殖させた場合、14日以内に5×10
5細胞が1-3×10
9細胞に増殖した。最終増殖させたCD8T細胞はCD45RA
-CD45RO
+でメモリタイプの細胞であり、CD57を発現する老化細胞の割合は15%以内であり、PD-1を発現する枯渇性(exhausted)CD8T細胞の割合は10%以内であることを確認した(
図5C)。アネキシンVおよびPI染色により細胞生存率を測定したところ、死滅した細胞の割合は5%以内であることが確認された(
図5のD)。
【0077】
以上の結果は、癌患者の血液中に存在するPBMC内にhTERT特異的CD8T細胞が存在する場合、それらの増殖とともに傍観者活性化CD8T細胞が増加し、CD71を用いてhTERT特異的CD8T細胞とともにhTERTペプチドによって傍観者活性化されたCD8T細胞を単離および大量培養することが可能であることを意味すると判断した。
【0078】
[実施例5]
WT1由来CTLペプチドによるCD8T細胞活性化
【0079】
hTERTの場合と同様に、WT1癌抗原由来のCTLペプチドを用いて、癌患者のPBMCからWT1特異的および傍観者活性化されたCD8T細胞を増殖させることができるかどうかを調べた。
【0080】
【0081】
具体的には、前記<実施例4>と同様の方法で研究に書面に同意した卵巣癌患者の血液から分離したPBMCを、上記[表2]のWT1アミノ酸配列に由来する20種類のCTLペプチドと共に14日間培養し、培養14日目に同じペプチドで一日再刺激した。培養15日目、各チューブのPBMCをanti-4-1BB-PEまたはanti-CD71-PEとanti-CD8-PE-Cy5で染色し、フローサイトメトリーにより4-1BB+CD8+T細胞を含んでおり、同時にCD71+CD8+T細胞の割合を分析した。
【0082】
その結果、[
図6]に示すように、様々なWT1ペプチド刺激により4-1BB
+CD8T細胞が増加することが確認できた。
【0083】
また、培養15日目にCD8T細胞のみをgatingしてCD71および4-1BBの発現をフローサイトメトリーの結果、4-1BBとCD71の発現が比例的な4-1BB+CD71+CD8T細胞がほとんどの場合(red)、4-1BB+CD71+CD8T細胞を含む傍観者活性化4-1BB-CD71+CD8T細胞が比較的多数含まれている場合(yellow)、傍観者活性化4-1BB-CD71+CD8T細胞がほとんどの場合(青)が観察されることにより、卵巣癌患者の状態とWT1ペプチドの種類によってWT1ペプチド特異的CD8T細胞の増殖とともに傍観者活性化されたCD8T細胞の増殖が異なるように発生することが確認できた。
【0084】
[実施例6]
自動細胞分離器を用いた抗原特異的CD8T細胞分離
【0085】
抗原特異的CD8+T細胞を無菌状態から高純度に分離するために、自動細胞分離器を用いた分離プロセスを確立しようとした。
【0086】
具体的には、上記<実施例1>と同様の方法で自己抗原であるMelan-A特異的CD8T細胞を有するHLA-A*0201陽性ボランティアから血液を採血してPBMCを分離した後、メラン-A CTLペプチドを添加して14日間ペプチド特異的CD8T細胞で一次増殖させた。一次培養PBMCをPE-コンジュゲートMelan-A peptide/MHCクラスIマルチマー(pMelan)および抗CD8-PE-Cy5で染色し、Melan-A-specific(pMelan+)およびMelan-A-nonspecific(pMelan-)CD8+T細胞をセルソーター(BD Bioscience、FACSAria)を用いて単離した。単離されたpMelan+CD8+T細胞およびpMelan-CD8+T細胞は、それぞれラピッドエクスパンション法によって14日間大量増殖させた(
図7のA)。最終培養したpMelan+CD8+T細胞とpMelan-CD8+T細胞を様々な割合で混合してpMelan+CD8+T細胞の割合を調節し、これらを無菌状態で自動細胞分離が可能なTyto(Miltenyi Biotec)を用いてpMelan+CD8+T細胞を単離することによって、pMelan+CD8+T細胞の割合に従って最終的に単離されたpMelan+CD8+T細胞の純度回復率を決定した。
【0087】
その結果、
図7のBに示すように、最終培養したpMelan+CD8+T細胞およびpMelan-CD8+T細胞はそれぞれ63%および3%レベルであることが確認された。
【0088】
また、pMelan+CD8+T細胞とpMelan-CD8+T細胞を様々な割合で混合してpMelan+CD8+T細胞の割合が3~20%になるようにした後、Tytoを用いて分離されたpMelan+CD8+T細胞の純度を再確認した結果、pMelan+CD8+T細胞の割合が高いサンプルほど、単離された細胞内pMelan+CD8+T細胞の割合が高くなることが確認できた。また、5×10
6cells/ml条件でpMelan+CD8+T細胞を分離した後、ソーティング前サンプルに含まれたpMelan+CD8+T細胞の数と最終分離されたpMelan+CD8+T細胞の総数とを比較してrecovery rateを決定した。分析結果ソーティング前のサンプル中のpMelan+CD8+T細胞の割合が4%以上の場合、安定して40%以上の細胞が細胞分離後に回収されることが示された(
図7のC)。
【0089】
総合的に、>65%の純度、>40%の回復率を標的細胞単離のための最小基準として考えると、細胞分離前のCD71+CD8+T細胞の割合は約4%以上でなければならないと判断した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の分離方法を用いて自己癌抗原反応性CD8T細胞を分離する場合、自己癌抗原に特異的なCD8T細胞以外に様々な癌抗原に反応するCD8T細胞も一緒に分離されるので、より少ない血液でも大量にCD8T細胞数を増幅して有意な抗癌効果を提供することができる。したがって、養子細胞の治療などの治療のために一時的な免疫不全を誘導する免疫治療などに効果的に使用できるため、産業上利用可能性が大きい。
【0091】
配列リスト Free Text
配列番号1は、HLA-A0201/Melan-A26-35(Melan-A26-35)のアミノ酸配列である。
配列番号2は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT1のアミノ酸配列である。
配列番号3は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT2のアミノ酸配列である。
配列番号4は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT3のアミノ酸配列である。
配列番号5は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT4のアミノ酸配列である。
配列番号6は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT5のアミノ酸配列である。
配列番号7は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT6のアミノ酸配列である。
配列番号8は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT7のアミノ酸配列である。
配列番号9は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT8のアミノ酸配列である。
配列番号10は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT9のアミノ酸配列である。
配列番号11は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT10のアミノ酸配列である。
配列番号12は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT11のアミノ酸配列である。
配列番号13は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT12のアミノ酸配列である。
配列番号14は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT13のアミノ酸配列である。
配列番号15は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT14のアミノ酸配列である。
配列番号16は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT15のアミノ酸配列である。
配列番号17は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT16のアミノ酸配列である。
配列番号18は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT17のアミノ酸配列である。
配列番号19は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT18のアミノ酸配列である。
配列番号20は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT19のアミノ酸配列である。
配列番号21は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT20のアミノ酸配列である。
配列番号22は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT21のアミノ酸配列である。
配列番号23は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT22のアミノ酸配列である。
配列番号24は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT23のアミノ酸配列である。
配列番号25は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT24のアミノ酸配列である。
配列番号26は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT25のアミノ酸配列である。
配列番号27は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT26のアミノ酸配列である。
配列番号28は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT27のアミノ酸配列である。
配列番号29は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT28のアミノ酸配列である。
配列番号30は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT29のアミノ酸配列である。
配列番号31は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT30のアミノ酸配列である。
配列番号32は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT31のアミノ酸配列である。
配列番号33は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT32のアミノ酸配列である。
配列番号34は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT33のアミノ酸配列である。
配列番号35は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT34のアミノ酸配列である。
配列番号36は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT35のアミノ酸配列である。
配列番号37は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT36のアミノ酸配列である。
配列番号38は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてのhTERT37のアミノ酸配列である。
配列番号39は、hTERTに由来するCTLペプチドとしてhTERT38のアミノ酸配列である。
配列番号40は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてのWT11のアミノ酸配列である。
配列番号41は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT12のアミノ酸配列である。
配列番号42は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT13のアミノ酸配列である。
配列番号43は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT14のアミノ酸配列である。
配列番号44は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT15のアミノ酸配列である。
配列番号45は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT16のアミノ酸配列である。
配列番号46は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてのWT17のアミノ酸配列である。
配列番号47は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT18のアミノ酸配列である。
配列番号48は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてのWT19のアミノ酸配列である。
配列番号49は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 10のアミノ酸配列である。
配列番号50は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてのWT1 11のアミノ酸配列である。
配列番号51は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 12のアミノ酸配列である。
配列番号52は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 13のアミノ酸配列である。
配列番号53は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 14のアミノ酸配列である。
配列番号54は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 15のアミノ酸配列である。
配列番号55は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 16のアミノ酸配列である。
配列番号56は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてのWT1 17のアミノ酸配列である。
配列番号57は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 18のアミノ酸配列である。
配列番号58は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 19のアミノ酸配列である。
配列番号59は、WT1癌抗原に由来するCTLペプチドとしてWT1 20のアミノ酸配列である。
【配列表】
【国際調査報告】