(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】音響的クランクピン位置検出
(51)【国際特許分類】
B24B 5/42 20060101AFI20230317BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230317BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20230317BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20230317BHJP
B24B 5/02 20060101ALI20230317BHJP
B24B 49/00 20120101ALI20230317BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
B24B5/42
B24B41/06 J
B24B49/10
B24B49/16
B24B5/02
B24B49/00
B23Q17/22 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547843
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 US2020016996
(87)【国際公開番号】W WO2021158226
(87)【国際公開日】2021-08-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522163850
【氏名又は名称】ファイブズ・ランディス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】ハイクス,ティモシー・ダブリュー
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C029AA15
3C034AA01
3C034BB74
3C034BB92
3C034CA11
3C034CA13
3C034CA16
3C034CA24
3C034CB14
3C043AA01
3C043AC21
3C043CC03
3C043CC11
3C043DD02
3C043DD05
3C043DD06
(57)【要約】
1つまたは複数の砥石車を含む研削機が、クランク軸を解放可能に保持しかつクランク軸を長手軸の周りで回転させるように構成された被加工物ホルダと、スピンドル軸およびスピンドル軸に取り付けられた砥石車を含む、少なくとも2つの方向に移動可能なスピンドル組立体と、研削機に結合された音響放出センサと、を有し、それにより、研削機は、音響放出センサからの出力信号を監視し、砥石車を第1の角度位置におけるクランク軸と接触させ、出力信号に基づいて砥石車とクランク軸との接触を検出し、検出された砥石車とクランク軸との接触に基づいて砥石車の位置を判定し、砥石車をクランク軸から離れる方向に移動させ、クランク軸を定められた角度量だけ回転させ、砥石車を第2の角度位置におけるクランク軸と接触させ、検出された砥石車とクランク軸との接触に基づいて砥石車の位置を判定して、クランク軸表面の位置を判定するように、構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の砥石車を含む研削機であって、
クランク軸を解放可能に保持しかつ前記クランク軸を長手軸の周りで回転させるように構成された被加工物ホルダと、
スピンドル軸および前記スピンドル軸に取り付けられた砥石車を含む、少なくとも2つの方向に移動可能なスピンドル組立体と、
前記研削機に結合された音響放出センサと、
を備え、前記音響放出センサからの出力信号を監視し、前記砥石車を第1の角度位置において前記クランク軸と接触させ、前記出力信号に基づいて前記砥石車と前記クランク軸との接触を検出し、前記検出された前記砥石車と前記クランク軸との接触に基づいて前記砥石車の位置を判定し、前記砥石車を前記クランク軸から離れる方向に移動させ、前記クランク軸を定められた角度量だけ回転させ、前記砥石車を第2の角度位置における前記クランク軸と接触させ、前記検出された前記砥石車と前記クランク軸との接触に基づいて前記砥石車の位置を判定して、クランク軸表面の位置を判定するように構成される、研削機。
【請求項2】
請求項1に記載の研削機において、前記音響放出センサが、マイクロホンである、研削機。
【請求項3】
請求項1に記載の研削機において、前記音響放出センサが、前記研削機の外部表面に結合される、研削機。
【請求項4】
請求項1に記載の研削機において、タッチプローブをさらに備える、研削機。
【請求項5】
請求項1に記載の研削機において、隙間ゲージをさらに備える、研削機。
【請求項6】
請求項1に記載の研削機において、前記被加工物ホルダが、主軸台および心押し台を備える、研削機。
【請求項7】
研削車位置を判定する方法であって、諸ステップが、
(a)被加工物ホルダによって保持されたクランク軸の角度位置を判定するステップと、
(b)スピンドル軸に結合された砥石車を前記クランク軸に向かって移動させるステップと、
(c)研削が始まる前に前記砥石車が前記クランク軸に向かって移動するときに音響放出センサを監視するステップと、
(d)前記砥石車が前記クランク軸に接触するときに前記音響放出センサからの出力に基づいてそのことを検出するステップと、
(e)前記砥石車を前記クランク軸から離れる方向に移動させるステップと、
(f)前記被加工物を第2の角度位置まで定められた角度量だけ回転させるステップと、
(g)前記砥石車を前記第2の角度位置における前記クランク軸に向かって移動させるステップと、
(h)研削が始まる前に前記砥石車が前記第2の角度位置における前記クランク軸に向かって移動するときに前記音響放出センサを監視するステップと、
(i)前記砥石車が前記第2の角度位置における前記クランク軸に接触するときに前記音響放出センサからの出力に基づいてそのことを検出するステップと、
(j)ステップ(d)および(i)に基づいて前記砥石車の位置を判定するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記砥石車を前記被加工物と接触させる前にタッチプローブを前記被加工物と接触させるステップをさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記タッチプローブが、複数の角度位置において前記被加工物に接触する、方法。
【請求項10】
1つまたは複数の砥石車を含む研削機であって、
クランク軸を解放可能に保持しかつ前記クランク軸を長手軸の周りで回転させるように構成された被加工物ホルダと、
スピンドル軸および前記スピンドル軸に取り付けられた砥石車を含む、少なくとも2つの方向に移動可能なスピンドル組立体と、
スピンドル駆動モータによって消費される電力を測定するように構成されたマイクロプロセッサと、
を備え、前記砥石車を第1の角度位置における前記クランク軸に接触させ、前記スピンドル駆動モータによって消費される電力の変化に基づいて前記砥石車と前記クランク軸との接触を検出し、前記検出された前記砥石車と前記クランク軸との接触に基づいて前記砥石車の位置を判定し、前記砥石車を前記クランク軸から離れる方向に移動させ、前記クランク軸を定められた角度量だけ回転させ、前記砥石車を第2の角度位置における前記クランク軸に接触させ、前記検出された前記砥石車と前記クランク軸との接触に基づいて前記砥石車の位置を判定して、クランク軸表面の位置を判定する、研削機。
【請求項11】
請求項10に記載の研削機において、タッチプローブをさらに備える、研削機。
【請求項12】
請求項10に記載の研削機において、隙間ゲージをさらに備える、研削機。
【請求項13】
請求項10に記載の研削機において、前記被加工物ホルダが、主軸台および心押し台を備える、研削機。
【請求項14】
請求項10に記載の研削機において、前記マイクロプロセッサが、電力の増大を検出する、研削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、工作機械に関し、より詳細には、研削機に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]研削機は、細長い被加工物を機械加工または研削するために使用され得る。細長い被加工物は、1つまたは複数の砥石車が被加工物の外側表面に接触しかつ材料を除去することによりその表面を成形するように、頭部および尾部において保持され、かつ、回転され得る。細長い被加工物は、内燃機関(ICE)またはポンプにおいて使用されるクランク軸であり得る。クランク軸のジャーナル表面およびクランクピン表面は、それらの表面が非常に正確なサイズおよび形状を有するように、注意深く研削される。研削機は、専用のプローブを用いて表面に物理的に接触することにより細長い被加工物の表面を位置付けることができ、また、接触がなされると、機械は、表面がどこに位置しているかを判定することができる。しかし、表面が位置付けられかつ/または測定される精度を高めることが可能である。
【発明の概要】
【0003】
[0003]1つの実施態様では、1つまたは複数の砥石車を含む研削機が、クランク軸を解放可能に保持しかつクランク軸を長手軸の周りで回転させるように構成された被加工物ホルダと、スピンドル軸およびスピンドル軸に取り付けられた砥石車を含む、少なくとも2つの方向に移動可能なスピンドル組立体と、研削機に結合された音響放出センサと、を有し、それにより、研削機は、音響放出センサからの出力信号を監視し、砥石車を第1の角度位置におけるクランク軸と接触させ、出力信号に基づいて砥石車とクランク軸との接触を検出し、検出された砥石車とクランク軸との接触に基づいて砥石車の位置を判定し、砥石車をクランク軸から離れる方向に移動させ、クランク軸を定められた角度量だけ回転させ、砥石車を第2の角度位置におけるクランク軸と接触させ、検出された砥石車とクランク軸との接触に基づいて砥石車の位置を判定し、かつ、クランク軸表面の位置を判定するように、構成される。
【0004】
[0004]別の実施態様では、砥石車位置を判定する方法が、被加工物ホルダによって保持されたクランク軸の角度位置を判定するステップと、スピンドル軸に結合された砥石車をクランク軸に向かって移動させるステップと、研削が始まる前に砥石車がクランク軸に向かって移動するときに音響放出センサを監視するステップと、砥石車がクランク軸に接触するときに音響放出センサからの出力に基づいてそのことを検出するステップと、砥石車をクランク軸から離れる方向に移動させるステップと、被加工物を第2の角度位置まで定められた角度量だけ回転させるステップと、砥石車を第2の角度位置におけるクランク軸に向かって移動させるステップと、研削が始まる前に砥石車が第2の角度位置におけるクランク軸に向かって移動するときに音響放出センサを監視するステップと、砥石車が第2の角度位置におけるクランク軸に接触するときに音響放出センサからの出力に基づいてそのことを検出するステップと、砥石車の位置を判定するステップと、を含む。
【0005】
[0005]別の実施態様では、研削機が、1つまたは複数の砥石車と、クランク軸を解放可能に保持しかつ長手軸の周りでクランク軸を回転させるように構成された被加工物ホルダと、スピンドル軸およびスピンドル軸に取り付けられた砥石車を含む、少なくとも2つの方向に移動可能なスピンドル組立体と、スピンドルモータによって消費される電力を測定するように構成されたマイクロプロセッサと、を含み、研削機は、砥石車を第1の角度位置におけるクランク軸と接触させ、スピンドルモータによって消費される電力の変化に基づいて砥石車とクランク軸との接触を検出し、検出された砥石車とクランク軸との接触に基づいて砥石車の位置を判定し、砥石車をクランク軸から離れる方向に移動させ、クランク軸を定められた角度量だけ回転させ、砥石車を第2の角度位置におけるクランク軸と接触させ、検出された砥石車とクランク軸との接触に基づいて砥石車の位置を判定し、クランク軸表面の位置を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0006]音響放出センサを有する研削機の一実施態様を示す斜視図である。
【
図2】[0007]音響放出センサを有する研削機の一実施態様の一部分を示す斜視図である。
【
図3】[0008]音響放出センサを有する研削機の一実施態様を示す斜視図である。
【
図4】[0009]音響放出センサを有する研削機の一実施態様の一部分を示す別の斜視図である。
【
図5】[0010]音響放出センサを有する研削機の一実施態様の一部分を示す断面図である。
【
図6】[0011]砥石車位置を判定する方法の一実施態様を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0012]研削機が、砥石車に対する被加工物の位置を判定するために、音響検出を使用する。具体的には、オービタル研削機が、研削が始まる前に砥石車がクランクピンまたはクランク軸のジャーナル軸受などの被加工物表面と接触させられるときにそのことを音響的に検出する音響放出センサを含み得る。被加工物表面の寸法公差は、単独でまたは物理的プローブとの組合わせで作業面におけるクランクピンおよび/またはジャーナル軸受表面の位置を音響的に検出することによって減少され得る。研削が始まる前に、砥石車が、砥石車が切削するであろう被加工物の表面に近接近させられ得る。被加工物表面は、クランク軸のジャーナル軸受表面またはクランクピンであり得る。マイクロホンなどの音響放出センサが、場合により車の中心においてまたは砥石車を担持するスピンドル組立体上で、砥石車に含まれ、砥石車は、被加工物の表面に接触するまで、被加工物に向かって移動され得る。研削機は、空間における砥石車表面の位置を非常に厳密な精度で判定することができる。音響放出センサは、砥石車が被加工物の表面に接触するときに、接触が起きるときに生じる音を検出することにより、砥石車を担持するスピンドル軸の正確な位置を検出することができる。コンピュータプロセッサが、砥石車が被加工物の表面に接触する点を監視し得る。
【0008】
[0013]対照的に、これまでの研削機は、空間内のクランク軸のクランクピンまたはジャーナル軸受を位置付けるために、カートリッジの端部に取り付けられた物理的プローブを単独で使用した。プローブは非常に正確なものであるが、被加工物を研削することに関連する多くの変数が、プローブ測定に付加誤差を導入し得る。例えば、より大きなクランク軸(例えば、>1.5メートル)は、中央部でたるみ、また、機械加工している間に曲がる傾向がある場合があり、または、砥石車は、摩耗し、それにより、スピンドルの周りの車回転軸とクランクピンもしくはジャーナル軸受との間の距離を減少させて、誤差を導入する可能性がある。また、熱的変動が、機械における寸法変化を引き起こして、プロービング工程の全体的な正確度に影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
[0014]現在、研削機によって切削される-クランク軸などの-被加工物は、計算された厚さの硬化材料を残す種々の異なる硬化技法のうちの1つを使用して硬化され得る。例えば、クランク軸は、表面を窒化するために、クランク軸を加熱する炉内でアンモニアにさらされ得る。現在のところ、クランク軸は、研削における誤差が硬化材料を故意でなく貫通して研削することがないように、約0.1mmの硬化材料を受け取り得る。しかし、そのような厚さの硬化材料を作り出すことは、規定の時間にわたってクランク軸を処理することを伴い、クランク軸上の硬化材料の厚さは、時間に明確に相関する。したがって、クランク軸上に必要とされる硬化材料の厚さを減少させて、硬化材料を適用するのに消費される時間を短くすることが、有益であろう。研削の前に音響放出センサを使用してジャーナル軸受および/またはクランクピンの位置を判定することは、クランク軸上の硬化材料の厚さの減少を可能にし得る。例えば、ジャーナル軸受および/またはクランクピン位置を検出するために音響放出センサを使用する場合、わずか0.03mm厚の硬化材料を適用することが可能である。
【0010】
[0015]
図1~5は、少なくとも1つの音響放出センサ12を含む研削機10を示し、音響放出センサ12は、砥石車14が被加工物と接触させられたときに生じる音響放出を検出する。この実施形態では、研削機10は、クランク軸被加工物の外側表面を研削するように設計されたオービタル研削機である。より具体的には、オービタル研削機は、クランク軸16上にジャーナル表面およびクランクピン表面を作り出すことができる。この実施態様では、オービタル研削機10は、1.5メートル(m)ほどの小ささおよび12mほどの長さのクランク軸に対応し得る。そのような研削機10の1つの実施態様は、Fives Landis LT3eオービタルクランク軸研削機である。しかし、様々なタイプの被加工物または研削機を使用する他の実施形態が、被加工物に対する砥石車の位置を判定するために、音響放出センサを使用し得る。
【0011】
[0016]オービタル研削機10は、主軸台20および心押し台22を有する被加工物ホルダ18と、砥石車14に結合されたスピンドル組立体26を含む砥石車組立体24と、機械台板(machine bed)28とを含み得る。機械台板28は、床の上に横たわって研削機10の要素を支持する、比較的平坦な構造体であり得る。例えば、機械台板28は、クランク軸16が主軸台20および心押し台22の両方と係合されかつ台板28より上に持ち上げられるように、機械台板28の表面上で主軸台20および心押し台22を支持し得る。機械台板28は、X軸に沿った長さよりもZ軸に沿った長さのほうが長くなるように、長方形であり得る。1つまたは複数の砥石車レール30が、Z軸に沿った砥石車組立体24の移動を容易にするために、Z軸に沿って機械台板28の表面沿いに延在してよく、それにより、砥石車組立体24は、X軸沿いの特定の軸方向点に砥石車を位置決めするために、レール30に沿っていずれの方向にも摺動または転動する。砥石車組立体は、線形サーボモータを使用してZ軸に沿ってレール30上を移動されてよく、また、X軸沿いの砥石車14の位置を確認するために、光学スケールが使用されてよい。
【0012】
[0017]1つまたは複数の被加工物ホルダレール32が、砥石車レール30から離間され、機械台板28上で砥石車レール30に対向して位置決めされて、Z軸に沿って延在し得る。主軸台20および心押し台22は、様々な軸方向長さを有するクランク軸に適応し、クランク軸16の頭部およびクランク軸16の尾部それぞれをチャックまたはコレットなどの被加工物ホルダ34と係合させ、それによりクランク軸16を特定の位置に保持するために、被加工物ホルダレール32に沿って摺動または転動することができる。主軸台20の被加工物ホルダ34および心押し台22の被加工物ホルダ34は、それぞれが電気モータを含むことができ、それらの電気モータは、クランク軸16をいずれの角度方向にも360度の運動範囲においてその長手軸(C)の周りで回転させることができる。クランク軸16の角度位置を判定するために、回転エンコーダが、主軸台20および心押し台22において使用され得る。主軸台20および心押し台22は、それぞれ、サーボモータおよびラックドライブを使用してZ軸に沿って個別に移動され得る。
【0013】
[0018]砥石車組立体24は、砥石車レール30上に位置する基部36を含み得る。スピンドル組立体26は、砥石車レール30上をz軸に沿って移動可能であるように基部36によって支持されてよく、かつ、スピンドル組立体26に結合された砥石車14、基部36とスピンドル組立体26との間の1つまたは複数の切込み送りレール40、線形サーボモータ、光学スケール、および音響放出センサ12を含む。スピンドル組立体26は、スピンドル軸48を回転させて最終的にはスピンドル軸48に結合された砥石車14を回転させる、スピンドル駆動モータ46を含み得る。砥石車14は、クランク軸16に接触しかつスピンドル軸回転の軸(a)から外方に面する、径方向表面44を有し得る。スピンドル駆動モータ46は、スピンドル駆動モータ46の回転子50がスピンドル軸48と結合され、また、固定子52が回転子50と同心であるように、スピンドル軸48と同心であり得る。前部軸受54および後部軸受56が、スピンドル軸48の両端上に位置決めされて、動作中の支持を提供し得る。軸受54、56は、静圧軸受として実装され得る。回転エンコーダ58が、スピンドル軸48および砥石車14の角度位置、速度、または加速度を判定するために、スピンドル軸48の遠位端部に取り付けられ得る。切込み送りレール40は、X軸に沿って延在し、かつ、砥石車レール30に対して垂直に位置決めされ得る。
【0014】
[0019]スピンドル組立体26は、切込み送りレール40上でX軸に沿ってクランク軸16のより近くにまたクランク軸16からさらに離れる方向に摺動することができる。線形モータは、ボールねじなどの線形アクチュエータを回転させる電気モータ、および、X軸に沿った砥石車組立体24の位置を特定するエンコーダを使用して、砥石車組立体24を切込み送りレール40上でX軸に沿って移動させることができる。砥石車組立体24はまた、砥石車組立体24から延在して特定の位置でクランク軸16に接触しかつ砥石車組立体24とクランク軸16との間の距離を高い精度で判定する、タッチプローブ60を含み得る。タッチプローブ60は、プローブ再現性、研削機10の熱的変動を含む機械正確度、およびクランク軸16の目標表面仕上げなどの因子に応じて、クランクピンまたはジャーナル軸受などのクランク軸の表面の位置を2.0マイクロメートル(μm)から10.0μmの間の精度で単独で判定し得る。クランクピンの寸法を測定するために、隙間ゲージ70が、砥石車組立体24に取り付けられ、かつ、クランクピンに物理的に接触し得る。隙間ゲージ70は、組立体24から延在してクランクピン表面に接触するように向けられてよく、また、クランク軸がC軸の周りで回転されるときに、ゲージ70はクランクピンを測定することができる。
【0015】
[0020]音響放出センサ12は、砥石車組立体24によって担持され、かつ、砥石車14がクランク軸16に接触するときに生じる音を監視するために使用され得る。砥石車組立体24は、様々な箇所のうちの任意の1つに音響放出センサ12を含むことができる。十分な信号対雑音比を助長するために音響放出センサ12を可能な限り砥石車14の近くに位置決めすることが、有益であり得る。例えば、音響放出センサ12は、砥石車14の近くで砥石車組立体24の外側表面に固定され得る。音響放出センサ12は、特定の周波数範囲に同調されたマイクロホンであってよい。1つの実施態様では、音響放出センサ12は、100~300MHzの周波数範囲内の可聴放射を検出するように同調され得る。音響放出センサ12は、圧電タイプの音響放出マイクロホンであってよい。
【0016】
[0021]コンピュータプロセッサ62が、上記で特定された複数の構成要素への入力を提供し、かつ、それらの構成要素からのフィードバックを受信し得る。例えば、砥石車レール30に沿った機械台板28の移動、切込み送りレール40に沿った砥石車組立体24の移動、スピンドル軸48の動作、ならびに/または主軸台20および心押し台22の電気モータを制御するサーボモータは全て、命令されたモータ速度およびモータ方向などのコンピュータプロセッサ62からの入力信号を受信することができ、また、実際の角度位置、角度軸速度、および/または角度方向などのコンピュータプロセッサ62への出力信号を提供することができる。音響放出センサ12は、音の有無または音の強さを示す信号の形態で、コンピュータプロセッサ62への出力を提供することができる。コンピュータプロセッサ62は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ホストプロセッサ、コントローラ、および特定用途向け集積回路(ASIC)を含む、電子命令を処理することができる任意のタイプのデバイスであってよい。コンピュータプロセッサ62は、説明された方法を実行するためだけに使用される専用のプロセッサであってよく、または、研削機10によって実行される他の機能と共有されてもよい。コンピュータプロセッサ62は、コンピュータ可読記憶装置に記憶されたソフトウェアまたはファームウェアプログラムなどの、デジタル的に記憶された様々なタイプの命令を実行する。しかし、これらの要素のうちの少なくともいくつかがプリント回路板上に一緒に実装され得る他の実施態様が可能であることが、理解されるべきである。
【0017】
[0022]次に
図6に目を向けると、砥石車位置を判定する方法600が示されている。方法600は、タッチプローブ60をクランク軸表面と接触させて初期ロケーション位置を判定することにより、ステップ610から始まる。方法600のこの実施形態のためのクランク軸表面は、クランク軸16のクランクピンという観点で説明される。しかし、他のクランク軸表面または被加工物表面も考えられる。砥石車組立体24は、研削またはミルターニング加工などによりクランクピンを加工するために使用される砥石車14の径方向表面44がZ軸に沿ってクランクピンと位置合わせされるように、Z軸に沿って移動され得る。主軸台20および心押し台22は、プローブ60がX軸に沿って移動された場合でもタッチプローブ60がクランクピンに衝突しないことを確実にするように、クランク軸をC軸の周りで回転させることができる。次いで、タッチプローブ60は、プローブの一端がC軸の周りでのクランクピン回転の円内に入るように、X軸に沿って移動され得る。次いで、主軸台20および心押し台22は、クランクピンがタッチプローブ60に接触するまで、クランク軸をC軸の周りで第1の回転方向に回転させることができる。クランク軸16の現在の角度位置が、主軸台20および心押し台22の回転エンコーダを使用して判定され得る。次いで、コンピュータプロセッサ62は、クランクピンがプローブ60に接触した角度位置を記録することができる。次いで、主軸台20および心押し台22は、クランクピンがタッチプローブ60に接触するまで、クランク軸を反対の回転方向に回転させることができる。次いで、コンピュータプロセッサ62は、クランクピンが2回目にタッチプローブに接触したときのクランク軸の角度位置を記録し、かつ、2つの接触角度間の差に基づいてクランクピンおよび/または砥石車組立体24の位置を判定することができる。物理的プローブ測定に基づいたクランクピン表面の位置を示すデータは、読書き能力を有するランダムアクセスメモリ(RAM)などのコンピュータ可読媒体に記録され得る。主軸台20および心押し台22は、クランク軸16をクランクピンから離れる方向に定められた角度量だけ回転させることができ、砥石車組立体24は、X軸に沿ってクランク軸から後退することができる。方法600は、ステップ620に進む。
【0018】
[0023]ステップ620において、砥石車14は、クランク軸16に向かって移動される。まだそのように位置決めされていない場合、砥石車組立体24は、砥石車14がz軸に沿ってクランクピンと位置合わせされるように位置決めされることが可能であり、その結果、X軸に沿った組立体24の運動が、砥石車14をクランクピンと接触させる。クランク軸16の現在の角度位置が、主軸台20および心押し台22の回転エンコーダを使用して判定され得る。主軸台20および心押し台22は、クランク軸を第1の角度位置まで回転させることができる。第1の角度位置は、任意の値であってよいが、この実施態様では、第1の角度位置は、0度である。スピンドル組立体26は、砥石車14がクランクピンに接近するまで、速い速度でクランクピンに向かって移動することができる。スピンドル組立体26がクランクピンの所定の範囲内に入った後、組立体26は、砥石車14がクランクピンに接触するまで、遅い速度でクランクピンに向かって移動することができる。方法600は、ステップ630に進む。
【0019】
[0024]ステップ630において、音響放出センサ12は、砥石車14がクランクピンに接触したとき放出される音がないかどうか監視される。スピンドル組立体26がクランクピンに向かってX軸に沿って切込み送りレール40と平行に移動するときに、コンピュータプロセッサ62は、センサ12が音の無し/有りおよび/または放出された音の強さを検出するように、音響放出センサ12を作動させることができる。音響放出センサ12が音を検出すると、音響放出センサ12からコンピュータプロセッサ62に出力信号が送られ得る。次いで、コンピュータプロセッサ62は、音響放出センサ12の信号に基づいて、組立体24が第1の角度位置(この実施形態では、ゼロ度)におけるクランクピンに接触するときのX-Z平面における砥石車組立体24の位置を記録することができる。X-Z平面上方の砥石車14の高さを知るかまたは判定することが可能であり、また、砥石車14がクランクピンに接触するときのスピンドル48の回転軸(a)の極座標を判定することが可能である。データは、コンピュータ可読媒体に記録され得る。別の実施態様では、マイクロプロセッサ62は、砥石車14がクランクピンに接触するときにそのことを判定するために、スピンドル駆動モータ46によって消費される電力を監視することができる。スピンドル組立体26がクランクピンに向かってX軸に沿って切込み送りレール40に平行に移動するときに、コンピュータプロセッサ62は、電力の変化を検出するために、スピンドル駆動モータ46によって消費される電力を監視することができる。電力の変化は、砥石車組立体24がクランクピンに接触するときにそのことを示すことができる。方法600は、ステップ640に進む。
【0020】
[0025]ステップ640において、砥石車14は、クランク軸から離れる方向に移動され、クランク軸は、C軸の周りで定められた角度量だけ回転される。主軸台20および心押し台22は、クランク軸16を第2の角度位置まで、90度などの定められた角度量だけ回転させることができる。次いで、砥石車14は、ステップ620に関して説明されたように、クランクピンに向かって移動されてよく、コンピュータプロセッサ62は、音響放出センサ信号に基づいて、砥石車14が第2の角度位置におけるクランクピンに接触するときのX-Z平面における砥石車組立体24の位置を記録することができる。異なる角度位置に回転されたクランクピン表面の測定は、繰り返されてよく、また、1つの実施態様では、4つの位置-0度、90度、180度、および270度-において測定され得る。測定結果は、コンピュータ可読記憶装置に記録され得る。この実施態様では、砥石車14は、4つの角度位置においてクランクピンに接触する。しかし、クランクピンが接触される角度位置の数は、増減されてよい。例えば、この数は、クランクピン表面の状態に基づいて選択され得る。丸みの少ない、または指定の寸法から定められた量を超えて外れているクランクピン表面は、砥石車14がクランクピンと接触させられる角度位置の数の増大を必要とする場合があり、一方で、より良い状態のクランクピン表面は、少しの測定結果しか必要としない場合がある。方法600は、ステップ650に進む。
【0021】
[0026]ステップ650において、コンピュータプロセッサ62は、十分な数の測定結果が集められたかどうかを判定し、もしそうであれば、音響測定結果に基づいて砥石車14に対するクランクピンの真の位置を判定する。砥石車の径方向表面44に対するクランクピンの位置は、複数の角度位置における音響センサ測定結果を使用して判定され得る。研削前のクランクピンの行程および角度(throw and angle)は、様々な技法のうちの1つを使用して判定され得る。1つの実施態様では、行程および角度(throw and angle)は、クランクピンがX平面において最も正である位置およびクランクピンがX平面において最も負である位置の2つの角度(0~180度の間)において砥石車がクランク軸表面に接触する位置の違いを検出し、かつ、砥石車がクランクピンを上にしてその部分に接触する位置およびクランクピンを下にしてその部分に接触する位置(90および270度)の違いから角度を判定することによって、判定され得る。別の実施態様では、粗いクランクピン表面の位置は、英国規格(BS)3730-2:1982で説明されるような最小二乗円フィット(least squares circle fit)などの回帰技法を使用して算出され得る。最小二乗円フィットを適用する際に、砥石車接触位置は、参照によりその内容が組み込まれるLandisに譲渡されたEP1235662で説明されている軸経路(axis path)を使用して解釈され得る。音響放出センサ12からの出力信号に基づいた砥石車14に対するクランクピンの測定結果は、研削機10の現在の熱的歪みだけでなく、以前に行われた研削に起因する砥石車14の変形の変化を補償し得る。次いで、方法600は、終了する。
【0022】
[0027]これまで述べてきたことは、本発明の1つまたは複数の実施形態に関する説明であることが、理解されるべきである。本発明は、本明細書において開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲によってのみ定められる。さらに、上記の説明に含まれる記述は、特定の実施形態に関するものであり、また、用語もしくは語句が上記で明確に定義されている場合を除き、本発明の範囲への制限または特許請求の範囲において使用される用語の定義への制限と解釈されるべきではない。様々な他の実施形態、ならびに開示された実施形態に対する様々な変更および修正が、当業者には明らかになるであろう。全てのそのような他の実施形態、変更、および修正は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれることが意図されている。
【0023】
[0028]本明細書および特許請求の範囲において、用語「例えば(e.g.)」、「例えば(for example)」、「例として(for instance)」、「~などの(such as)」、および「~のような(like)」、ならびに動詞「備えている(comprising)」、「有している(having)」、「含んでいる(including)」、およびそれらの他の動詞の形態は、1つまたは複数の構成要素もしくは他の物品の列挙と併せて使用された場合、それぞれ無制限と解釈されるべきであり、つまり、列挙は、他の追加の構成要素または物品を除外すると見なされるべきではない。他の用語は、異なる解釈を必要とする文脈においてそれらの用語が使用される場合を除き、それらの用語の最も広い妥当な意味を使用して解釈されるべきである。
【国際調査報告】