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特表2023-512559体液においてTBを検出するためのCRISPRに基づくアッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】体液においてTBを検出するためのCRISPRに基づくアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20230317BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20230317BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20230317BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20230317BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230317BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALI20230317BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230317BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20230317BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230317BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/04 ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6806 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/689 Z
C12N15/09 110
C12N15/10 110Z
C12N15/10 112Z
C12N15/10 120Z
C12N15/10 100
C12N15/09 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547848
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021016931
(87)【国際公開番号】W WO2021159000
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】62/971,210
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591069318
【氏名又は名称】ジ アドミニストレイターズ オブ ザ チューレン エデュケイショナル ファンド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】フー,イエ トニー
(72)【発明者】
【氏名】ニン,ボー
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ツェン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ13
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR72
4B063QR75
4B063QR80
4B063QS12
4B063QS13
4B063QS15
4B063QS17
4B063QS24
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS38
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、体液サンプルにおいてヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の存在を検出するための方法を記載する。方法は、ガイドRNAおよびレポーター分子と共にCRISPRエフェクタータンパク質を利用し、それにより、ガイドRNAが標的ヌクレオチド断片とハイブリダイズする場合に、CRISPRエフェクタータンパク質がレポーター分子を切断することで、検出可能なシグナルを生じる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液サンプルにおいてヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)を検出する方法であって、
a)体液サンプルからMTB標的核酸配列を増幅するステップ;および
b)CRISPR媒介システムを用いて前記MTB標的核酸配列の存在を検出するステップ
を含み、
前記CRISPR媒介システムが、CRISPRエフェクタータンパク質、MTB標的核酸断片とハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)、および前記CRISPRエフェクタータンパク質による切断時に検出可能であるレポーター分子を含む、方法。
【請求項2】
a-1)前記体液サンプルから核酸を抽出するステップ
をステップa)の前にさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的核酸断片がDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップa-1)において、前記抽出ステップが、
a-2)抗ヒトDNA抗体を用いてヒトDNAを枯渇させるステップ
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップa-1)において、前記抽出ステップが、
a-3)抗MTB抗体を用いてMTB細菌DNAを富化するステップ
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ステップa-1)において、前記抽出ステップが、
a-4)超遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、ポリマー沈殿、膜ろ過または膜親和性単離のうちの少なくとも1種により細胞外小胞を単離するステップ
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、またはループ媒介等温増幅(LAMP)を用いて行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)がPCRを用いて行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ハイブリダイゼーションエンハンサーが前記PCRで用いられ、前記ハイブリダイゼーションエンハンサーが検出ステップb)に移行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)において、前記CRISPRエフェクタータンパク質が、Cas12a、Cas9およびCas13からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記レポーター分子が、蛍光およびクエンチャー、金ナノ粒子、またはビオチン-FAMを用いて標識された一本鎖DNAまたは一本鎖RNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記レポーター分子が、5’-6-FAM-TTTTTTTTTTTT-BHQ1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記体液サンプルが、血清、血漿または尿から取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)が室温で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記標的DNA配列が、IS6110、IS986、esxB、gryB、rpoB、katG、inhA、rpsL、rrs、gyrA、gyrB、embB、eisおよびpncAのうちの一部である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記DNA増幅のためにステップb)でプライマーのペアが用いられ、前記プライマーが配列番号1および2である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記DNA増幅のためにステップb)でプライマーのペアが用いられ、前記プライマーが配列番号3および4である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記DNA増幅のためにステップb)でプライマーのペアが用いられ、前記プライマーが配列番号5および6である、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
ステップc)において、前記gRNAが、配列番号7、配列番号8、または配列番号9のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記標的核酸断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
血清サンプルにおいてヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)を検出する方法であって、
a)血清サンプルからDNAを抽出してDNAサンプルを生成するステップ;
b)PCRまたはRPAを用いて前記DNAサンプルからMTB標的DNA配列を増幅し、増幅されたDNAを生成するステップであり、プライマーのペアが用いられ、前記プライマーが配列番号1と2、3と4または5と6である、ステップ;および
c)CRISPR媒介システムを用いて前記増幅されたDNAにおいてMTB標的DNA断片の存在を検出するステップ
を含み、
前記CRISPR媒介システムが、Cas12a、ガイドRNA(gRNA)、およびCas12aによる切断時に検出可能であるレポーター分子を含み、
前記gRNAが、配列番号7、8または9である、方法。
【請求項22】
ステップa)において、前記抽出ステップが、
a-1)抗ヒトDNA抗体を用いて前記血清サンプルもしくは前記DNAサンプルからヒトDNAを枯渇させるステップ、
a-2)抗MTB抗体を用いることにより、前記血清サンプルもしくは前記DNAサンプルからMTB細菌DNAを富化するステップ、または
a-3)超遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、ポリマー沈殿、膜ろ過もしくは膜親和性単離のうちの少なくとも1種により細胞外小胞を単離するステップ
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行関連出願
本出願は、2020年2月6日出願の米国特許出願第62/971,210号に基づく優先権を主張し、該出願は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書中に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
適用なし。
【0003】
本開示は、一般的に、血清、血漿、尿および脳脊髄液(CSF)などの循環体液中で結核(TB)を検出する方法に関し、より詳細には、CRISPRに基づくレポーターシステムを用いて血清中で結核を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
結核(TB)は、毎年数百万人が罹患する重病であり、全世界で上位10の死因のうちに入る。診断の遅れが死亡につながり得る。喀痰サンプルが、肺結核を診断するために主に用いられるが、一部の患者、例えば、非常に重症であるかまたは非常に若い患者は、喀痰を吐き出すことができない。
【0005】
現在、TB診断は、喀痰サンプルを必要とするXpert MTB/RIF(登録商標)に依存する。喀痰中の細菌量は多いが、サンプルとして回収するのが困難な場合がある。加えて、喀痰は、すべてのTB患者、特に肺外結核患者からは回収できない場合があり、肺外結核(EPTB)は、特にHIV患者では一般的である。
【0006】
血液は、喀痰よりも回収が容易かつ信頼度が高いので、特にHIV感染患者では、血液がTB検出に対する代替的な候補である。しかしながら、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は、血液検査では稀にしか検出されない。TB血液培養は、陽性になるまで数週間を要する場合があり、かつ、ある特定の設備を有する施設を必要とする。核酸増幅検査は、血液では低い感度(20~55%)に起因して理想的とは言えず、これは、低い細菌量、PCR阻害因子の存在、またはこれらの検査に対して典型的に利用されるサンプルの体積の少なさが原因であり得る。
【0007】
したがって、高い特異度を有する、結核のための高感度血清検査に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、血清サンプルにおいてヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(「MTB」)を検出するための方法を記載する。本開示の方法を図示する図1を参照されたい。最初のステップでは、核酸を、血清サンプルなどのサンプルから抽出する。続いて、存在する場合にはMTB特異的配列を標的として、核酸を増幅する。次に、増幅産物を、レポーター分子と共にgRNA-CRISPRシステムと反応させる。MTB特異的配列が存在する場合、gRNAがこれにハイブリダイズしてCRISPRエフェクタータンパク質を活性化し、その後CRISPRエフェクタータンパク質がレポーター分子を切断することで、レポーター分子により生成されるシグナルの測定に基づいて、MTBの存在を決定することができる。
【0009】
CRISPR(クラスター化され規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し)は、細菌および古細菌などの原核生物のゲノム内に見出されるDNA配列のファミリーである。これらの配列は、以前に原核生物に感染したバクテリオファージのDNA断片に由来し、後続の感染中に類似のファージ由来DNAを検出および破壊するために用いられ、したがって、原核生物免疫系の重要な部分として機能する。
【0010】
CRISPR関連タンパク質9(「Cas9」)は、CRISPR配列に対して相補的なDNAの特異的鎖を認識および切断するためのガイドとしてCRISPR配列を用いる酵素である。Cas9エンドヌクレアーゼは、2個の小さなcrRNA分子およびトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含む4成分系である。2個のRNA配列は、1個のガイドRNA(gRNA)へと融合されたもので、ガイドRNAにより特定されるDNA標的を見出しかつ切断するためにCas9をガイドする。Cas9酵素は、CRISPR配列と一緒に、CRISPR-Cas9として知られる技術の基礎を形成し、この技術は、生物内で遺伝子を編集するために用いることができる。ガイドRNAのヌクレオチド配列を操作することにより、人工的Cas9システムを、切断に対していずれかのDNA配列を標的化するためにプログラムすることができる。
【0011】
Casファミリーの別のメンバーであるヌクレアーゼCas12a(以前にはCpf1として公知であった)は、以下の点をはじめとするCas9とのいくつかの重要な差異を示した:Cas9により生成される「平滑」切断部とは対照的な、二本鎖DNA中の「ジグザグ」切断部を生じさせること、「Tリッチ」プロトスペーサー隣接モチーフに依存すること、したがってCas9に対する代替的な標的化部位を提供すること、および標的化の成功のために1個のCRISPR RNAしか必要としないこと。
【0012】
Cas13(4種類のサブタイプ:Cas13a~dを含む)は、Cas9と同様に機能し、標的特異性をコードするために約64ntガイドRNAを用いる。Cas13タンパク質は、crRNA中の短いヘアピンの認識を介してガイドRNAと複合体を形成し、かつ標的特異性は、標的領域に対して相補的な28~30ntスペーサーによりコードされる。プログラム可能なリボヌクレアーゼ活性に加えて、すべてのCas13は、標的転写産物の認識および切断後に付随的活性を示し、これによりスペーサーに対する相補性とは無関係にいずれかの近傍の転写産物の非特異的分解がもたらされる。
【0013】
一実施形態では、CRISPRエフェクタータンパク質は、Cas12a(以前にはCpf1として公知であった)、Cas9またはCas13である。しかしながら、高い特異度を有する有効な検出を達成できる限り、他のCRISPRエフェクタータンパク質を用いることができる。
【0014】
特定の遺伝子中でのその長さおよび位置を変化させることによりgRNAを適正に設計することによって、所望の特異度および感度を伴ってDNA断片を標的化することができる。したがって、本開示のCRISPR-Cas-gRNA法を用いて、血清中でのMTBの高感度かつ高特異度の検出を数時間のうちに達成することができる。5μLの血清サンプル中の単一コピーのMTB DNAを検出できることが予期される。
【0015】
方法はまた、MTBと非結核性抗酸菌(NTM)とを区別し、かつ菌種特異的DNA断片を標的化することによりマイコバクテリウム属(Mycobacterium)菌種を特定するためにも用いることができる。NTM感染は、MTBにより生じるものと類似の症状を有し、150種類を超える異なるNTM菌種が記載されてきているので、肺検体でのこれらの生物の特定は、活動性感染と常に一致するわけではない。診断を確立するためには補助的なX線所見および臨床所見が必要であり、NTM感染を治療または撲滅することは、困難であった。
【0016】
MTB検出を強化するために、さらなる変法を行うことができる。一実施形態では、抗DNA抗体を用いてまず処理することにより、血清サンプルから抽出されるDNAを、さらに富化することができる。別の実施形態では、サンプルからヒトDNAを枯渇させるために、血清サンプルから抽出されるDNAを、抗ヒトDNA抗体を用いてさらに処理することができる。
【0017】
一実施形態では、抗ヒトDNA抗体は、抗5-メチルシチジン(5mC)抗体である。しかしながら、抗CpG DNAメチル化などのメチル化DNAに結合できる限り、他の抗体またはタンパク質を用いることができ、5-メチルシチジン(5-mC)5-ヒドロキシメチル-(5-hmC)、5-ホルミル-(5-fC)および5-カルボキシル-(5-caC)シトシン抗体;CpG DNAメチル化結合性タンパク質、メチル-CpG結合性ドメイン(MBD)タンパク質:MeCP2、MBD1、MBD2、MBD3、MBD4、MBD5、MBD6、TET1、TET2、TET3、Kaisoおよびそれらの抗体;ならびに抗N7-メチルグアノシン(m7G)、5-メチルシチジン(5mC)およびそれらの酸化型5-ヒドロキシメチルシチジン(5hmC)、N6-メチルアデノシン(m6A)、N1-メチルアデノシン(m1A)、シュードウリジン(Ψ)およびイノシン(I)RNA抗体などのメチル化RNA;ならびにメチルRNA結合性タンパク質METTL3、METTL14、FTO、ALKBH5、YTHDF1、YTHDF2、YTHDC1、ZNF217およびそれらの抗体が挙げられる。
【0018】
増幅に先立って細胞外小胞(EV)を単離することにより、さらなる富化を達成することができる。EVは、多小胞体(multi-vesicular body)が形質膜に融合する際に、エンドソーム細胞区画から生じる小型の膜性小胞である。分泌されたEVは、比較的安定であり、親細胞/細菌由来のタンパク質、ポリペプチド、遺伝子、可溶性因子および膜結合型受容体/リガンドの効果的な担体として作用し、したがって、ヒト血清または血漿から超遠心分離により単離されるEVは、MTB DNAまたはRNA収量を増加させることができる。
【0019】
EVを単離するために、100,000g(42,000rpm)を超える超遠心分離が、一般的に行われる。しかしながら、当業者は、密度勾配分離、ポリマーに基づく沈殿、免疫学的選別、マイクロ流体単離、サイズ排除クロマトグラフィー、膜ろ過、膜親和性単離などの、EVを単離するための他の方法を理解する。
【0020】
密度勾配分離とは、異なる密度プロフィールのスクロース溶液上にサンプルを積載し、続いて超遠心分離を行って、それによりEVをタンパク質凝集物および他の不純物から分離できる方法を指す。例えば、密度勾配超遠心分離は、50%、30%、および10%イオジキサノール層上に血漿サンプルを積載することにより行い、続いて120,000×gで24時間遠心分離することができる。10種類の画分(F1~10)を上部から下部に向かって回収し、最も高いEV含有量を有する画分を、続いてさらに精製することができる。
【0021】
ポリマーに基づく沈殿は、生物学的サンプルをポリマー含有沈殿溶液と混合するステップ、それに続くインキュベーションおよび低速での遠心分離を含む。用いられる最も一般的なポリマーのうちの1種は、ポリエチレングリコールである。
【0022】
免疫選別技術は、細胞外小胞上の公知の表面マーカーを標的化する、抗体に基づく分離方法を用いる。これらのマーカーのうちの一部は、小胞の表面上の、十分に特性決定されているテトラスパニン(CD9、CD63、CD81)または免疫調節因子分子(MHC IおよびII)を含む。
【0023】
マイクロ流体単離は、微小流路中にEVを捕捉することに基づき、生物流体の低体積入力に対する選択肢であり得る。
【0024】
サイズ排除クロマトグラフィーは、分子量ではなくサイズに基づいて巨大分子を分離するために用いられる。この技術は、複数の孔およびトンネルを含有する多孔性ポリマービーズを詰めたカラムを利用する。分子はその直径に応じてビーズを通過する。小さな半径を有する分子は、カラムの孔を通して移動するのにより長い時間がかかり、巨大分子はより早くカラムから溶出される。サイズ排除クロマトグラフィーは、大きな分子と小さな分子との正確な分離を可能にする。さらに、様々な溶出溶液を、この方法に利用することができる。
【0025】
膜ろ過もまた、エクソソームの単離のために用いることができる。微小小胞のサイズによって、この方法は、タンパク質および他の巨大分子からのEVの分離を可能にする。EVはまた、多孔性構造を介して捕捉することによっても単離することができる。特に、微小円柱状多孔性ケイ素線毛状構造(micropillar porous silicon ciliated structure)が、40~100nmのEVを単離するために設計された。標準的ろ過技術に加えて、接線流ろ過もまた、EVの効果的な単離のために用いることができる。この方法は、遊離ペプチドおよび他の小型化合物を除去することにより、十分に決定されたサイズを有するEVの単離のために用いられる。
【0026】
各技術はその利点および欠点を有するので、様々なDNA増幅技術を用いることができる。本開示の方法は、PCR、RPA、RCA、LAMPなどの一般的なDNA増幅技術、および任意の新規に開発された増幅方法を利用することができる。
【0027】
方法は、増幅とCRISPR検出とを組み合わせる。増幅ステップでは、反応バッファー中のハイブリダイゼーションエンハンサー成分を、DNA増幅の各サイクル中に特異的プライマー-鋳型ハイブリダイゼーションを強化するために用いることができ、それにより、ミスプライミングが防止され、かつDNA増幅特異度および収量が改善される。本発明者らは、CRISPR検出に対して5μLの血清サンプル中の単一コピーから、MTB DNAを増幅できることを予期する。
【0028】
ハイブリダイゼーションエンハンサーは、ガイドRNAと標的配列とのハイブリダイゼーションをさらに改善し、かつミスマッチを低減することができるので、CRISPR検出ステップまでさらに持ち越すことができる。そのようなエンハンサーは、CRISPRタンパク質の活性を安定化および強化し、かつシグナルを増幅できることが期待される。
【0029】
一実施形態では、ハイブリダイゼーションエンハンサーは、熱安定性AccuPrimeアクセサリータンパク質である。これらは、PCRの各サイクル中に特異的プライマー-鋳型ハイブリダイゼーションを強化し、それにより、ミスプライミングが防止され、かつPCR特異度および収量が改善される。ハイブリダイゼーションの特異度を強化できる限り、他のハイブリダイゼーションエンハンサーもまた用いることができる。ハイブリダイゼーションエンハンサーの非限定例としては、アニオン性ポリマー、in situハイブリダイゼーションバッファーおよび類似のバッファー成分、AccuPrimeアクセサリータンパク質、ULTRAhyb(商標)超高感度ハイブリダイゼーションバッファーなどが挙げられる。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「CRISPRタンパク質」または「CRISPRエフェクタータンパク質」または「CRISPR酵素」とは、限定するものではないが、Cas9、Cas12a(以前にはCpf1として公知であった)、Csn2、Cas4、C2c1、Cc3、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13dをはじめとする、クラス2 CRISPRエフェクタータンパク質を指す。一実施形態では、本明細書中に記載されるCRISPRエフェクタータンパク質は、好ましくはCpf1エフェクタータンパク質である。
【0031】
本明細書中で用いる場合、「ガイドRNA」または「gRNA」とは、相補的標的DNA配列に結合して、標的DNA鎖との緊密な接触へとCRISPR-Casシステムをガイドする非コードRNA配列を指す。
【0032】
本明細書中で用いる場合、「レポーター分子」とは、蛍光およびクエンチャー、金ナノ粒子またはビオチン-FAMを用いて標識された一本鎖DNAまたは一本鎖RNAを指し、レポーターの解離を、蛍光リーダーまたは、例えば、紙側方流動アッセイ(paper lateral flow assay)もしくは分光計などでの比色変化のいずれかにより検出することができる。
【0033】
本明細書中で用いる場合、「標的DNA断片」は、MTB特異的DNA配列の一部分である。例えば、IS6110は、MTBゲノム当たり複数コピーで存在するMTB複合体特異的挿入配列である。495位、516位および533位でのgryB突然変異が、フルオロキノロン耐性MTBに存在することが報告されており、esxBは、その病原性に寄与する、MTBにより分泌されるCFT-10タンパク質である。したがって、これらのDNA断片を標的化することにより、MTBの検出が容易になることになる。さらなる標的DNA断片はまた、以下のMTB遺伝子からも選択することができる:rpoB、katG、inhA、rpsL、rrs、gyrA、gyrB、embB、eisおよびpncA。
【0034】
本明細書中で用いる場合、「DNA増幅」または「核酸増幅」とは、それにより遺伝子またはDNAの断片のコピー数が、他の遺伝子の比例する増加を伴わずに増加する、天然および人工的プロセスを指す。
【0035】
本明細書中で用いる場合、「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」とは、DNAポリメラーゼおよび標的領域の各末端に対して相補的な2種類のプライマー(フォワードおよびリバース)をdNTPと共に用いることにより、DNA鎖の特異的標的領域を増幅する方法を指す。
【0036】
本明細書中で用いる場合、「リコンビナーゼポリメラーゼ増幅」またはRPAとは、リコンビナーゼ、一本鎖DNA結合性タンパク質および鎖置換性ポリメラーゼを用いて、特異的標的領域を増幅する方法を指す。リコンビナーゼは、オリゴヌクレオチドプライマーを相同配列と二重鎖DNAに対形成させ、一本鎖DNA結合性タンパク質が、DNAの置き換えられた鎖に結合して、プライマーが取り除かれることを防止する。37~42℃の至適温度で、反応が迅速に進み、かつPCRにより必要とされる熱的または化学的融解を必要とせずに、特異的DNA増幅が生じる。
【0037】
本明細書中で用いる場合、「核酸配列に基づく増幅」またはNASBAとは、1つの温度で、単一混合物において、核酸、特にRNA配列を継続的に増幅するための、プライマー依存的方法を指す。3種類の酵素が用いられる:逆転写酵素、リボヌクレアーゼH、およびT7 RNAポリメラーゼ。2種類のプライマーが用いられる:第1のプライマーは、標的配列に対して相補的な3’-末端配列およびT7 RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターの5’-末端センス配列を含み;第2のプライマーは、P1プライミングされるDNA鎖に対して相補的な配列を含む。最初に、RNA鋳型を反応混合物に加え、ここで第1のプライマーが鋳型の3’末端でその相補的部位に結合する。逆転写酵素は、逆向きの相補的DNA鎖を合成し、プライマーの3’末端を伸長して、RNA鋳型に沿って上流へと移動する。このとき、リボヌクレアーゼHが、DNA-RNA化合物からRNA鋳型を破壊する(リボヌクレアーゼHは、一本鎖RNAでなく、RNA-DNAハイブリット中のRNAのみを破壊する)。続いて、第2のプライマーが、(アンチセンス)DNA鎖の5’末端に結合する。その後、T7 RNAポリメラーゼが二本鎖上のプロモーター領域に結合すると、逆転写酵素は、結合したプライマーから別のDNA鎖を再び合成して、二本鎖DNAを生じる。T7 RNAポリメラーゼは3’から5’方向にのみ転写することができるので、センスDNAが転写され、アンチセンスRNAが生成される。これが繰り返され、ポリメラーゼは鋳型の相補的RNA鎖を継続的に生成して、増幅が起こる。
【0038】
このとき、その前のステップと同様のサイクル相が始まることができる。しかしながら、ここで、第2のプライマーは最初に(-)RNAに結合し、このとき、逆転写酵素は(+)cDNA/(-)RNA二重鎖を生成する。リボヌクレアーゼHが再びRNAを分解し、第1のプライマーが今や一本鎖である+(cDNA)に結合し、続いて逆転写酵素が相補的(-)DNAを生成し、dsDNA二重鎖がつくられる。最後に、T7ポリメラーゼは、プロモーター領域に結合し、(-)RNAを生成し、サイクルが完了する。
【0039】
本明細書中で用いる場合、「ローリングサークル増幅」またはRCAとは、環状DNA鋳型および特別なDNAまたはRNAポリメラーゼを用いて、短いDNAまたはRNAプライマーが増幅されて、長い一本鎖DNAまたはRNAが形成される、等温酵素的プロセスを指す。RCA産物は、環状鋳型に対して相補的な数十から数百個のタンデム反復を含有するコンカテマーである。
【0040】
本明細書中で用いる場合、「ループ媒介等温増幅」またはLAMPとは、2種類または3種類のプライマーセットおよび複製活性に加えて高い鎖置換活性を有するポリメラーゼを用いて、60~65℃の一定温度で標的配列が増幅される、単一チューブDNA増幅法を指す。典型的には、4種類の異なるプライマーが、標的遺伝子上の6箇所の異なる領域を増幅するために用いられ、これにより特異度が増加する。追加のペアの「ループプライマー」は、反応をさらに加速させることができる。
【0041】
本明細書中で用いる場合、「レポーター分子」とは、検出可能なレポーター基に連結されたヌクレオチドを有する分子を指し、これにより、ヌクレオチドが一致する配列とハイブリダイズする場合に、レポーター基が検出可能なシグナルを生成する。非限定的なレポーター分子としては、蛍光およびクエンチャー、金ナノ粒子、ビオチン-FAMを用いて標識された一本鎖DNAまたはRNAが挙げられる。
【0042】
本明細書中で用いる場合、「抗ヒトDNA抗体」とは、抗原として二本鎖ヒトDNAを標的とする、抗核抗体を指す。
【0043】
本明細書中で用いる場合、「抗MTB抗体」とは、その特異的メチル化パターンにより、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)DNAを標的とする抗体を指す。
【0044】
特許請求の範囲または明細書中で用語「含む」と組み合わせて用いられる場合、単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、文脈がそうでないことを指示しない限り、1または2以上を意味する。
【0045】
用語「約」とは、明記された値±測定誤差の余地または測定方法が示されない場合には±10%を意味する。
【0046】
特許請求の範囲での用語「または」の使用は、選択肢のみを指すことが明示的に示されていない限り、または選択肢が相互に排他的である場合、「および/または」を意味するために用いられる。
【0047】
用語「含む」、「有する」、「が挙げられる」および「含有する」(ならびにそれらの変形)は、オープンエンドな連結動詞であり、特許請求の範囲で用いられる場合、他の要素の追加を許容する。
【0048】
語句「からなる」は、閉じており、かつすべての追加的要素を除外する。
【0049】
語句「本質的に~からなる」は、追加の物質的要素を除外するが、本発明の性質を実質的に変化させない非物質的要素の包含を許容する。
【0050】
以下の略語が本明細書中で用いられる:
【0051】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本開示の方法の図示を示す図である。
図2】血清サンプルの蛍光結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本開示は、血清サンプルにおいてMTB DNAを検出する新規方法を提供する。方法は、a)血清サンプルから核酸を抽出するステップ;b)標的核酸配列を増幅するステップ、およびc)CRISPR媒介システムを用いて標的核酸配列の存在を検出するステップを含み、CRISPR媒介システムは、CRISPRエフェクタータンパク質、標的核酸配列とハイブリダイズするガイドRNA、およびレポーター分子を含む。
【0054】
DNA増幅ステップで用いられるプライマーは、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)菌種の間で保存されているか、またはある特定の薬物耐性に関して報告されているMTB遺伝子配列のみを増幅するために設計される。例えば、IS6110は、MTB特異的挿入配列である。esxB、rpoB、katG、inhA、rpsL、rrs、gyrA、gyrB、embB、eisおよびpncAなどの他のMTB特異的遺伝子もまた増幅することができる。
【0055】
ヒト型結核菌(M. tuberculosis)IS6110のDNA配列は、受託番号X17348.1に見出すことができる。H37Rv株由来のヒト型結核菌(M. tuberculosis)esxBのDNA配列は、AL123456.3(4352274~4352576)に見出すことができる。H37Rv株由来のヒト型結核菌(M. tuberculosis)gryBのDNA配列は、AL123456.3(5240~7267)に見出すことができる。プライマーの設計では、CRISPRエフェクタータンパク質により認識可能なPAMを増幅することに焦点が置かれる。
【0056】
gRNA配列は、標的断片およびDNA増幅ステップで用いられるプライマーに従って設計された。言い換えれば、gRNA配列は、IS6110、IS986、esxB、gryB、rpoB、katG、inhA、rpsL、rrs、gyrA、gyrB、embB、eisまたはpncAのうちの一部である。これらの遺伝子は、表1に列挙される。
【0057】
【表2】
【0058】
本発明は、標的断片としてのIS6110、esxB、gryBに関して例示される。しかしながら、これらの標的は例に過ぎず、本発明は、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)菌種の中の他の保存領域に広く適用することができる。以下の実施例は、例示的であることのみが意図され、添付の特許請求の範囲を過度に限定することは意図されない。
【実施例
【0059】
[実施例1]
4種類のサンプルを、以下の通りに回収/調製した。本開示の方法は、4種類すべてのサンプルに対して行われた。
【0060】
【表3】
1.DNA抽出
【0061】
血清サンプルからDNAを抽出するために、以下の材料を用いた:S&P 5×消化バッファー、プロテイナーゼK、S&P DNA結合バッファー、Zymo-Spin(商標)III-Sカラムアセンブリ、S&P DNA Prep洗浄バッファー、S&P DNA洗浄バッファー、DNA溶出バッファー(10nM Tris-HCL、pH8.5、0.1mM EDTA)、および1.5mLチューブを含む、Quick-cfDNA(商標)血清&血漿キット(D4076)。
【0062】
血清サンプルが-80℃で保存される場合、まずサンプルを室温に30分間置き、融解させる。100μLの融解血清を、DNA低結合性チューブの中で25μLのS&P 5×消化バッファーおよび10μLのプロテイナーゼKと混合した。
【0063】
その後、混合物を、消化のために55℃で30分間インキュベートし、続いて、消化済みサンプルに2容積のS&P DNA結合バッファーを添加し、十分に混合した。
【0064】
続いて、混合物全体を、1.5mLチューブの中のZymo-Spin(商標)III-Sカラムアセンブリに移し、1000gで2分間遠心分離した。フロースルーを廃棄した。
【0065】
400μLのS&P DNA Prepバッファーをカラムに添加し、10000g以上で30秒間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。400μLのS&P洗浄バッファーを用いてカラムを2回洗浄し、それぞれ10000g以上で1分間遠心分離した。
【0066】
続いて、カラムを1.5mL DNアーゼ不含チューブに移した。40μLのDNA溶出バッファーをカラムマトリックスに直接添加し、室温で3分間インキュベートし、続いて、最大速度で30秒間遠心分離した。次に、回収したDNAを、さらなる使用まで-20℃で保存した。
【0067】
2.DNA増幅
DNA増幅の例としてPCRを行ったが、上述の通り、他のDNA増幅技術を用いることができる。PCRを行うために、以下の材料を用いた:DEPC処理水(1907041)、プライマーFおよびプライマーR(以下の表中のリスト)、10×DNAポリメラーゼPCRバッファー、AccuPrime(商標)Taq DNAポリメラーゼシステム。
【0068】
MTBゲノムのIS6110、esxBおよびgryBを増幅するために、3ペアのプライマーを設計した。IS6110を選択した理由は、上述の通り、MTBゲノムがその複数コピーを有し、これにより感度を増加できるからである。esxBは異なるマイコバクテリウム属(Mycobacterium)菌種の間で保存されているので、esxBに対するプライマーを設計した。gryBに対するプライマーは、MTBがフルオロキノロン耐性であるか否かを特異的に検出するために設計した。本ステップで用いられる設計されたプライマーを、以下に列記する:
【0069】
【表4】
【0070】
以下の成分を、室温で、滅菌薄壁0.2mL PCRチューブに添加した:
【0071】
【表5】
【0072】
チューブの内容物を十分に混合し、簡潔に遠心分離して内容物を回収した。チューブをサーマルサイクラーにおいて95℃で2分間インキュベートして、DNA鋳型を完全に変性させ、かつ酵素を活性化した。
【0073】
続いて、35サイクルのPCR増幅を以下の通りに行った:変性:95℃30秒間;アニーリング:60℃30秒間、伸長:72℃30秒間。35サイクルの完了後、反応混合物の温度を4℃で維持した。次に、得られたPCR産物を、次のステップまで-20℃で保存した。
【0074】
3.CRISPR検出
増幅ステップ後、CRISPR-Casシステムを用いるMTB検出を、以下の材料を用いて行った:DEPC処理水(1907041)、EnGen(登録商標)Lba Cas12a(Cpf1)、10×NEBuffer(商標)2.1、gRNA(以下の表中のリスト)、蛍光レポーター(5’-6-FAM-TTTTTTTTTTTT-BHQ1)、およびCorning(登録商標)96ウェルハーフエリアマイクロプレート。
【0075】
上述の通り、gRNA配列を、標的断片およびPCRプライマーに従って設計した。それらを以下に列記する:
【0076】
【表6】
【0077】
CRISPR検出ステップを行うために、以下の成分をハーフエリアマイクロプレートウェルに添加し、十分に混合し、室温で10分間インキュベートした:
【0078】
【表7】
【0079】
バッファー溶液からPCR産物を分離するのではなく、バッファー溶液混合物を含むPCR産物をCRISPR検出混合物に添加したことに留意されたい。これもまた、検出感度を増大させる。
【0080】
システムを、振動させながら暗所にて37℃で20分間インキュベートした。プレートリーダーを用いて蛍光シグナルを測定した。結果を図2に示す。サンプルが陰性対照のシグナル強度に対して2倍高いシグナル強度を生じる場合に、陽性であると規定される。図2に見て取れる通り、陽性サンプル1、2、および4は、陽性対照と同等の蛍光強度を示す一方、陰性サンプル3は陰性対照と同等の蛍光強度を示す。
【0081】
予測的な例1
最良の結果を得るために、CRISPR検出ステップでの(Cas12a:gRNA:レポーター分子)の比率を変化させ、それ以外は、DNA抽出、DNA増幅およびCRISPR検出ステップは実施例1と同じである。この最適化比率は、本方法の特異度および感度をさらに改善する。
【0082】
予測的な例2
本方法の感度をさらに改善するために、血清サンプルからのMTB-DNA富化および/またはヒトDNA枯渇が、DNA増幅ステップに先立って行われる。ヒトDNAは、抗ヒトDNA抗体のエピトープとして機能する特異的メチル化パターンを有する。血清サンプル中のヒトDNAを枯渇させるために抗ヒトDNA抗体を用いて抽出済みDNAを処理することにより、本開示の方法の感度がさらに改善されることが予期される。
【0083】
同様に、MTB DNAは、系統または菌種特異的でありかつ抗MTB抗体に対するエピトープとして機能することができる、それ自体の特異的メチル化パターンを有する。したがって、MTB DNA断片のみを捕捉するために抗MTB抗体を用いて血清サンプルを処理することにより、本方法の感度をさらに改善することができる。
【0084】
以下の参考文献は、すべての目的のためにその全体で参照により組み入れられる。
図1
図2
【配列表】
2023512559000001.app
【国際調査報告】