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特表2023-512573逆電気浸透濾過システム及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(54)【発明の名称】逆電気浸透濾過システム及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20230101AFI20230317BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 71/10 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 71/50 20060101ALI20230317BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20230317BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230317BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/44
B01D61/44 500
B01D61/46 500
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02
B01D71/10
B01D71/50
B01D71/68
C02F1/44 G
C02F1/44 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548040
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2021052717
(87)【国際公開番号】W WO2021156393
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】20305110.7
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】512073725
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボケ,リデリック
(72)【発明者】
【氏名】シリア,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ムバルキ,アミン
(72)【発明者】
【氏名】ペレス-カルバハル,ハビエル
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA18
4D006HA41
4D006JA42C
4D006JA51Z
4D006JA68Z
4D006KA62
4D006KE15Q
4D006KE16Q
4D006KE17Q
4D006KE18Q
4D006MA03
4D006MA06
4D006MA12
4D006MA22
4D006MA25
4D006MB20
4D006MC01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC05
4D006MC11
4D006MC18
4D006MC28
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC36
4D006MC49
4D006MC60
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB04
4D006PB05
4D006PB08
4D006PB09
4D006PB12
4D006PB13
4D006PB14
4D006PB34
4D006PB52
4D006PC47
4D061DA02
4D061DA04
4D061DA08
4D061DA10
4D061DB13
4D061DB18
4D061EA11
4D061EB02
4D061EB04
4D061EB12
4D061EB13
4D061EB19
4D061EB28
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB31
4D061EB39
4D061EB40
4D061GC12
4D061GC14
(57)【要約】
本発明は、複合又はハイブリッド膜要素を通る逆電気浸透流を使用する精製/濾過システムに関する。本発明はまた、そのようなシステムを使用して電解質溶液を精製するためのプロセスに関する。本発明は更に、本発明による逆電気浸透濾過システムを含む、水精製システム、塩水脱塩システム、及び埋め込み可能な人工腎臓に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆電気浸透濾過システムであって、
a)目的の溶質が濃縮されている第1の電解質溶液(11A)を受容することを意図した第1の容器(10A)であって、前記第1の容器(10A)中に含有される前記第1の電解質溶液(11A)と接触している第1の電極(20A)を含む、第1の容器と、
b)同じ目的の溶質を実質的に含まない又は枯渇している第2の電解質溶液(11B)を受容することを意図した第2の容器(10B)であって、前記第2の容器(10B)中に含有される前記第2の電解質溶液(11B)と接触している第2の電極(20B)を含み、前記第1の電解質溶液(11A)は、前記第2の電解質溶液(11B)よりも高濃度の溶質を含有しているか、又は、前記第2の容器(10B)に受容されることが意図された前記第2の電解質溶液(11B)において、≧99%、好ましくは≧99.5%、より好ましくは≧99,8%、更により好ましくは≧99,9%、最も好ましくは100%の前記目的の溶質が、前記第1の電解質溶液(11A)に比べて除去されている、第2の容器と、
c)前記第1の容器及び前記第2の容器を分離している逆浸透膜要素(30)であって、
(i)半浸透膜要素(31)、及び
(ii)電気運動分析器を使用して測定するとき、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)であって、ISO15901基準によって測定するとき、<1μm、好ましくは≦500nmである平均細孔径を有する、ナノ多孔質膜を組み合わせており、
前記半透膜要素(31)及び表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜要素(32)は、2つの異なる要素であり、
前記半透膜要素(31)は、前記第1の容器(10A)の前記第1の電解質溶液(11A)と接触するように構成されている、逆浸透膜要素と、を備え、前記逆浸透膜要素(30)は、(i)溶質濾過の機能、及び、(ii)前記第1の電解質溶液(11A)の溶媒の流れを前記第1の容器(10A)から前記第2の容器(10B)への前記逆浸透膜要素(30)を介して電気誘導する機能、の両方を満たし、
前記第1の容器(10A)及び前記第2の容器(10B)中の前記第1の電解質溶液(11A)及び前記第2の電解質溶液(11B)は、それぞれ、同じ極性溶媒を含み、前記極性溶媒は、≧6の誘電率及び≧1.50Dの双極子モーメントを有する非プロトン性溶媒、並びに、水、アルコール、ギ酸、酢酸、フッ化水素、及びアンモニアなどのプロトン性溶媒を含み、
前記第1の電極(20A)及び前記第2の電極(20B)は、電気エネルギー源(40)に動作可能に連結されており、
前記逆電気浸透濾過システムは、前記第1の電極(20A)と前記第2の電極(20B)との間に電場を印加し、前記第1の電解質溶液(11A)の前記極性溶媒の逆浸透流を前記第1の容器(10A)から前記第2の容器(10B)へと前記逆浸透膜要素(30)を介して誘導するように構成されている、逆電気浸透濾過システム。
【請求項2】
前記半透膜要素(31)及び表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜要素(32)が、一緒に組み合わされた2つの異なる要素であって、2層の複合非対称膜(30A)を形成し、前記複合非対称膜(30A)は、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有する、荷電ナノ多孔質膜(32)と重ね合わせた半透膜(31)を含む、請求項1に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項3】
前記半透膜(31)が、化学親和性による分離に基づく半透膜などの、所与の電解質溶液から特定の分子又はイオンの分離/濾過を可能にする、サイズ排除膜、イオン交換膜、又は任意の他の膜であり、好ましくはサイズ排除選択膜又はイオン交換膜である、請求項
2に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項4】
前記半透膜(31)が、積層されたグラフェンオキシドフレークから構成されるサイズ排除選択膜である、請求項3に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項5】
表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜(32)が、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<100nm、最も好ましくは<50nmの平均細孔径を有し、TiO2、窒化ホウ素、SiO2、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、陽極酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、Ni-Fe層状複水酸化物、Ni2dobdc、Mg2dobdc(dobdc=1,4-ジオキシド-2,5-ベンゼンジカルボキシレート)、セルロース、又は
高分子電解質層ポリマー膜、例えば、ポリカーボネート膜上のカチオン性ポリエチレンイミン及びアニオン性ポリ(アクリル酸)の連続的浸漬コーティング層によって得られるナノ多孔質膜、好ましくは、TiO2、BN、SiO2、ポリカーボネート、陽極アルミナ、ハイドロタルサイト、Ni-Fe層状複水酸化物、Ni2dobdc、Mg2dobdc、セルロース、又は高分子電解質層ポリマー膜、最も好ましくは、TiO2、BN、陽極アルミナ、SiO2、又はポリカーボネートから選択される材料で本質的に形成される、請求項2に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項6】
前記荷電ナノ多孔質膜(32)の表面が、前記ナノ多孔質膜の表面電荷を増強するために化学的に修飾されている、請求項2又は4に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項7】
前記化学的修飾が、前記ナノ多孔質膜の細孔壁の表面にもたらされる、請求項6に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項8】
前記荷電ナノ多孔質膜(32)が、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<200nmの平均細孔径を有するポリカーボネート膜から得られ、その内部細孔壁が、前記ポリカーボネート膜をポリドーパミン水溶液中に浸漬コーティングすることによって化学的に修飾されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項9】
前記電気エネルギー源要素(40)が、電池である、請求項1~8のいずれか一項に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項10】
前記電気エネルギー源要素(40)が、光であって、特に、前記電気エネルギー源要素は、太陽電池又は光ダイオードを備える、光、又は、前記逆浸透膜要素(30)を通して電解質溶液を圧送する逆電気浸透効果の使用、のうちの1つによって充電されるように構成されており、特に、前記電気エネルギー源要素(40)は、前記逆電気浸透膜要素(30)に動作可能に接続された水力タービン要素を備える、請求項9に記載の逆電気浸透濾過システム。
【請求項11】
極性溶媒中の電解質溶液を精製するためのプロセスであって、
i)極性溶媒中に望ましくない溶質を含む、第1の電解質溶液(11A)を提供する工程であって、前記極性溶媒は、≧6の誘電率及び≧1.50Dの双極子モーメントを有する非プロトン性溶媒、並びに、水、アルコール、ギ酸、酢酸、フッ化水素、及びアンモニアなどのプロトン性溶媒を含む、工程と、
ii)工程i)と同じ又は異なる極性溶媒中に前記望ましくない溶質を含まない、第2の電解質溶液(11B)を提供する工程と、
iii)逆電気浸透濾過システムを提供する工程であって、前記システムは、
a)第1の電極(20A)を備えた第1の容器(10A)と、
b)第2の電極(20B)を備えた第2の容器(10B)であって、前記第1の電極(20A)及び前記第2の電極(20B)は、電気エネルギー源(40)に動作可能に連結されている、第2の容器と、
c)前記第1の容器(10A)及び前記第2の容器(10B)を分離している逆浸透膜要素(30)であって、
(i)半浸透膜要素(31)、及び
(ii)電気運動分析器を使用して測定するとき、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)であって、ISO15901基準によって測定するとき、<1μm、好ましくは≦500nmである平均細孔径を有する、ナノ多孔質膜を組み合わせており、
前記半透膜要素(31)及び表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜要素(32)は、2つの異なる要素であり、
前記半浸透膜要素(31)は、前記第1の容器(10A)の前記第1の電解質溶液(11A)と接触しており、表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜要素(32)は、前記第2の容器(10B)の前記第2の電解質溶液(11B)と接触している、逆浸透膜要素と、を備え、
前記逆浸透膜要素(30)は、(i)溶質濾過の機能、及び、(ii)前記第1の電解質溶液(11A)の溶媒の流れを前記第1の容器(10A)から前記第2の容器(10B)へと前記逆浸透膜要素(30)を介して電気誘導する機能の両方を満たし、
前記逆浸透膜要素(30)は、前記望ましくない溶質の前記逆浸透膜要素(30)を介する拡散を選択的に阻止するように適合されている、工程と、
iv)前記第1の容器(10A)内に精製される前記第1の電解質溶液(11A)を配置して、備えられている前記第1の電極(20A)が、前記第1の電解質溶液(11A)と接触するようにする、工程と、
v)前記第2の容器(10B)内に十分な量の前記第2の電解質溶液(11B)を配置して、備えられている前記第2の電極(20B)が、前記第2の電解質溶液(11B)と接触するようにする、工程と、
vi)前記第1の電極(20A)と前記第2の電極(20B)との間に電場を印加して、前記極性溶媒の逆浸透流を前記第1の容器(10A)から前記第2の容器(10B)へと、前記第1の容器(10A)及び前記第2の容器(10B)を分離している前記逆浸透膜要素(30)を介して誘導する、工程であって、
それにより、前記第1の容器(10A)から前記第2の容器(10B)に向かって前記溶媒を流しながら、前記望ましくない溶質を前記第1の容器(10A)内に保持することを可能にする、工程と、
vii)精製された前記第2の電解質溶液(11B)を、望ましくない溶質を実質的に含まない、又は枯渇している前記第2の容器(10B)から回収する、工程であって、前記第1の電解質溶液(11A)は、前記第2の電解質溶液(11B)よりも高濃度の溶質を含有しているか、又は、≧99%、好ましくは≧99.5%、より好ましくは≧99,8%、更により好ましくは≧99,9%、最も好ましくは100%の前記目的の溶質が、前記第2の電解質溶液(11B)から、前記第1の電解質溶液(11A)に比べて除去されている、工程と、を含む、プロセス。
【請求項12】
前記極性溶媒が、酸性イオンを生成することができる溶媒、例えば水、メタノール若しくはエタノールなどのアルコール、水アルコール混合物、アンモニア、アセトン、又はアセトニトリルである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記望ましくない溶質が、固体粒子、有機又は無機小分子、例えば、染料錯体、生体分子、例えば、ホルモン、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素、若しくは抗体、汚染物質、代謝廃棄物、又は塩/イオンから選択される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の逆電気浸透濾過システムを含む、水精製システム。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の逆電気浸透濾過システムを含む、塩水脱塩システム。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の逆電気浸透濾過システムを含む、埋め込み可能な人工腎臓。
【請求項17】
海水を脱塩するためのプロセスであって、
i)逆電気浸透濾過システムを提供する工程であって、前記システムは、
a)海水を含有する、第1の電極(20A)を備えた第1の容器(10A)であって、備えられている前記第1の電極(20A)は、前記第1の容器(10A)に含まれる海水と接触している、第1の容器と、
b)海水を含有する、第2の電極(20B)を備えた第2の容器(10B)であって、備えられている前記第2の電極(20B)は、前記第2の容器(10B)に含まれる海水と接触しており、前記第1の電極(20A)及び前記第2の電極(20B)は、電気エネルギー源(40)に動作可能に連結されている、第2の容器と、
c)前記第1の容器(10A)及び前記第2の容器(10B)を分離している逆浸透膜要素(30)であって、
(i)<1nmの平均細孔径を有する半透膜要素(31)、及び
(ii)電気運動分析器を使用して測定するとき、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)であって、ISO15901基準によって測定するとき、<1μm、好ましくは≦500nmである平均細孔径を有する、ナノ多孔質膜を組み合わせており、
前記半透膜要素(31)及び表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜要素(32)は、2つの異なる要素であり、好ましくは互いに重ね合わされており、
前記半透膜要素(31)は、前記第1の容器(10A)に含まれる海水と接触しており、表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜要素(32)は、前記第2の容器(10B)に含まれる水と接触している、逆浸透膜要素と、を備え、
前記逆浸透膜要素(30)は、(i)溶質濾過の機能、及び、(ii)水の流れを前記第1の容器(10A)から前記第2の容器(10B)へと前記逆浸透膜要素(30)を介して電気誘導する機能の両方を満たし、
前記逆浸透膜要素(30)は、Na+及びCl-の前記逆浸透膜要素(30)を介する拡散を選択的に阻止するように適合されている、工程と、
ii)前記第1の電極(20A)と前記第2の電極(20B)との間に電場を印加して、水の逆浸透流を前記第1の容器(10A)から前記第2の容器(10B)へと、前記第1の容器(10A)及び前記第2の容器(10B)を分離している前記逆浸透膜要素(30)を介して誘導する、工程であって、
それにより、前記第1の容器(10A)から前記第2の容器(10B)に向かって水を流しながら、Na+及びCl-溶質を前記第1の容器(10A)内に保持することを可能にする、工程と、
iii)Na+及びCl-溶質を実質的に含まない前記第2の容器(10B)から、脱塩水を回収する工程であって、≧99%、好ましくは≧99.5%、より好ましくは≧99,8%、更により好ましくは≧99,9%、最も好ましくは100%のNa+及びCl-溶質は、前記第2の容器(10B)に含まれる海水中に保持される、工程と、を含む、プロセス。
【請求項18】
前記半透膜要素(31)及び表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜要素(32)が、一緒
に組み合わされた2つの異なる要素であって、2層の複合非対称膜(30A)を形成し、前記複合非対称膜(30A)は、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有する、荷電ナノ多孔質膜(32)と重ね合わせた半透膜(31)を含む、請求項11~13及び17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記半透膜(31)が、化学親和性による分離に基づく半透膜などの、所与の電解質溶液から特定の分子又はイオンの分離/濾過を可能にする、サイズ排除膜、イオン交換膜、又は任意の他の膜であり、好ましくはサイズ排除選択膜又はイオン交換膜である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記半透膜(31)が、積層されたグラフェンオキシドフレークから構成されるサイズ排除選択膜である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
表面電荷を有する前記ナノ多孔質膜(32)が、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<100nm、最も好ましくは<50nmの平均細孔径を有し、TiO2、窒化ホウ素、SiO2、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、陽極酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、Ni-Fe層状複水酸化物、Ni2dobdc、Mg2dobdc(dobdc=1,4-ジオキシド-2,5-ベンゼンジカルボキシレート)、セルロース、又は高分子電解質層ポリマー膜、例えば、ポリカーボネート膜上のカチオン性ポリエチレンイミン及びアニオン性ポリ(アクリル酸)の連続的浸漬コーティング層によって得られるナノ多孔質膜、好ましくは、TiO2、BN、SiO2、ポリカーボネート、陽極アルミナ、ハイドロタルサイト、Ni-Fe層状複水酸化物、Ni2dobdc、Mg2dobdc、セルロース、又は高分子電解質層ポリマー膜、最も好ましくは、TiO2、BN、陽極アルミナ、SiO2、又はポリカーボネートから選択される材料で本質的に形成される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項22】
前記荷電ナノ多孔質膜(32)の表面が、前記ナノ多孔質膜の表面電荷を増強するために化学的に修飾されている、請求項18又は20に記載のプロセス。
【請求項23】
前記化学的修飾が、前記ナノ多孔質膜の細孔壁の表面にもたらされる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記荷電ナノ多孔質膜(32)が、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<200nmの平均細孔径を有するポリカーボネート膜から得られ、その内部細孔壁が、前記ポリカーボネート膜をポリドーパミン水溶液中に浸漬コーティングすることによって化学的に修飾されている、請求項21~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記電気エネルギー源要素(40)が、電池である、請求項17~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記電気エネルギー源要素(40)が、光であって、特に、前記電気エネルギー源要素は、太陽電池又は光ダイオードを備える、光、又は、前記逆浸透膜要素(30)を通して電解質溶液を圧送する逆電気浸透効果の使用、のうちの1つによって充電されるように構成されており、特に、前記電気エネルギー源要素(40)は、前記逆電気浸透膜要素(30)に動作可能に接続された水力タービン要素を備える、請求項25に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
このPCT出願は、2020年2月6日に出願された欧州特許出願公開第20305110.7号に対する優先権を主張するものであり、これらの内容全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、複合又はハイブリッド膜要素を通る逆電気浸透流を使用する精製/濾過システムに関する。本発明はまた、そのようなシステムを使用して電解質溶液を精製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
人口の増加や生活の質の向上により、世界各地で清潔な水の確保が中心的な問題となっている。飲用水は、着色剤及び殺虫剤、薬物及びホルモンなどの粒子から小分子に及ぶ、様々な原因による多種多様な汚染物質で汚染されつつある。実際、第一次産業により水中に広がっているホルモンは、現在最も一般的な汚染物質の一つであり、除去が困難な汚染物質の一種となっている。これらの分子はごく少量であり、通常は標準検出限界を下回るが、環境及び人の健康に害を及ぼす。例えば、計画的妊娠の利用により、エストラジオール及び精子の品質低下と関連する他のホルモンが潜在的飲用水に放出される。農業、精密産業において存在する、又はヒトによって直接排泄されるこれらのホルモンは、更に土壌、植物、及び動物中に取り込まれる。ヒト乳癌のうち70%超がエストロゲン依存性であり、それらの発生及び増殖は、内因性エストロゲンだけではなく、恐らく環境中のエストロゲン様内分泌撹乱物質によっても影響されると考えるべきである。水精製法の中で、浸透現象による精製方法が知られている。浸透圧は、次の原理に基づく自然現象であり、すなわち、異なる濃度の塩などの不純物を有する2種類の水溶液が、水に対して透過性であり、かつ塩などの不純物に対して不透過性である半透膜によって分離されているとき、純水は、濃度が低い溶液から濃度が高い溶液に移る。
【0004】
具体的には、半透膜は、水に溶解された塩の通過を防ぐため、純水の移動が、膜の両側での濃度バランスの確立を可能にする唯一の手段である。
【0005】
高濃度溶液を含有する区画に純水が移動する直接的な結果は、膜上の溶液圧の上昇である。この圧力は、浸透圧(Posm)と呼ばれる。
【0006】
半透膜の特性及び浸透現象を利用した2種類の水処理技術があり、一方は、いわゆる逆浸透法であり、他方は、いわゆる直接(順)浸透法である。
【0007】
現在、最も開発された技術は逆浸透法である。これは、浸透圧よりもはるかに高い圧力を高濃度溶液に適用し、半透膜を通る水分子の流れを逆転させることからなる。
【0008】
この逆浸透法は、高純度の水の生成を可能にするが、浸透圧Posmよりもはるかに高い圧力と、非常に高いエネルギー消費を実装する技術である。例えば、逆浸透による水の脱塩は、水処理の分野における既知の技術である。しかしながら、逆浸透脱塩は、比較的高い圧力を人工的に適用することを伴い、したがって、非常に高いエネルギー消費を必然的に伴う。その結果、逆浸透施設の投資コスト及び運営コストは高額である。
【0009】
更に、これらのプロセスは、一般に、特に標的がナノサイズ範囲内の汚染物質の除去で
ある場合、低選択性(低除去率)の高水流を得ることを可能にする。低濃度及び小さいサイズのホルモン分子は、例えば、水中汚染物質測定における日常的な分析方法による検出を妨げるだけでなく、一般的な精製方法によるこの種の小有機分子の除去も妨げる。
【0010】
現在の市販の海水逆浸透(SWRO)脱塩は、最大50%の回収率の脱塩水を達成することができるが、その結果、7%の塩分と784psiの関連浸透圧を有する除去された流れが生じる。実際の脱塩動作圧力は、ポンプ装置及び制御システムの非効率性により、必要なポンプ圧力が1000psiを超える可能性があることを考慮しなければならない。
【0011】
海水の脱塩に適したほとんどの半透性ポリマー膜は、1,100psiを超える圧力における運転の維持又は分離効率の維持ができず、多かれ少なかれ破損するため、膜寿命を維持するために、低い脱塩率、すなわち40%以下で脱塩プロセスを運転しなければならない。
【0012】
当該技術分野において既に知られているプロセス及びシステムはエネルギー効率の増加を目指しているが、主な欠点は、依然として比較的高いエネルギー消費を要求することである。
【0013】
したがって、逆浸透水精製システムにおける更なる改善に対する大きな必要性が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、更なる関連する利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】複合逆浸透膜要素(30)を伴う、本発明による例示的なシステムを概略的に示す。
図2】ハイブリット逆浸透膜要素(30)を伴う、本発明による例示的なシステムを概略的に示す。
図3】複合逆浸透膜要素(30)と多孔質支持体(33)を伴う、本発明による例示的なシステムを概略的に示す。
図4A】本発明によるシステムの例示的な特徴を示す。本発明による例示的な濾過システム/実験装置を概略的に示す。
図4B】本発明によるシステムの例示的な特徴を示す。本発明による例示的な濾過システムにおける分子の濾過プロセスを概略的に示す。
図4C】本発明によるシステムの例示的な特徴を示す。本発明によるGO/PC複合逆浸透膜要素のGO表面の代表的なFE-SEM画像(左)、及び、高度に積層されたGOの90断面図(右)であり、自己担持GOの厚さが8.66μmを示している。
図4D】本発明によるシステムの例示的な特徴を示す。第1のピークが0.7~1.4nmの範囲のGOの層間面に関連し、第2のピークが複合膜中のPCの存在と相関している、本発明によるGO/PC複合逆浸透膜要素のX線回折図である。
図5A】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な結果を示す。100mMのKCl存在下、セルの各容器における経時的な飽和電圧の発生(平衡化時間は2時間とみなした)。
図5B】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な結果を示す。電気浸透流量対塩濃度及び強度。
図5C】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な結果を示す。強度対電気浸透流量。
図5D】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な結果を示す。電流対強度。
図5E】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な結果を示す。印加されたイオン電流の関数として測定された電圧。非対称性応答は、GO/PC複合膜を介した電荷非対称性のためである。この測定は、膜が異なる特徴を有する2つの材料で構成されていることを証明している。
図5F】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な結果を示す。-1~1mAの範囲の一定の強度値を加え、電圧平衡が達成された後に得られた電圧、(挿入図)塩濃度が低くなり、また加えられた強度が高くなると、流量が速くなることを示している、両容器において、塩の濃度を変えながら(1mM、10mM、30mM、及び100mMについて)、装置によって生成された様々な電気浸透流。
図6A】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な除去結果を示す。初回除去結果。
図6B】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な除去結果を示す。2回目の最適化染料。
図6C】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な除去結果を示す。ホルモン除去:濾過のために供給された容器中に存在するテストステロンのUV可視スペクトル(「テスト初期」)を、溶出相中に濾過後得られた吸収スペクトル(「テスト溶出」)と比較。
図6D】本発明によるシステム(GO/PC複合膜)を使用する例示的な除去結果を示す。モデル(Rubypy)として使用される分子の動作電気浸透条件(1mMのKCl、0.5mA)下の完全除去率の範囲。
図7】シミュレーション法:本発明による例示的なシステムにおける、電圧降下(AV)下の非対称膜全体の水流の計算。Q=膜を通る水の流れ、Qosm=ΔV=0において膜を通る水の浸透流。
図8】本発明によるGO/PC複合膜の表面の光学顕微鏡像(長距離において亀裂が検出されない)。
図9】BET表面積(本発明によるGO/PC複合逆浸透膜のGO膜要素の、PC基材の非存在下での、平均細孔径の分析)。
図10】1.8nm~6nmの広い分布を示している、本発明によるGO/PC複合逆浸透膜のGO膜要素の細孔径分布。
図11】本発明によるGO/PC複合逆浸透膜のGO膜要素の窒素吸着BET等温線。
図12】本発明による濾過システムの例示的な実施形態の写真。
図13】容器分離膜としてむき出しのPC膜(PCのみの膜)、及び異なる濃度のKCl電解質溶液を使用した、電気浸透流量対濃度及び電圧。
図14】較正曲線:Ru(biPy)濃度対283nmでの吸光度。
図15】容器分離膜としてPCのみの膜(白丸)又は本発明によるGO/PC複合膜(黒丸)を使用することによって、試験された比較的低濃度(1mMのKCl)かつ異なる強度値で決定された比較電気浸透流量。複合膜における流れ対電流の調整は、膜の電荷非対称性を示す。
【0015】
本出願のシステム及びプロセスは、様々な修正及び代替形態の影響を受けやすいが、その特定の実施形態は、例として図面に示されており、本明細書において詳細に説明される。しかしながら、特定の実施形態の本明細書の説明は、開示される特定の実施形態に適用を限定することを意図するものではなく、それに対して、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される本出願のプロセスの趣旨及び範囲内にある全ての修正、均等物、及び代替物を網羅することであることを理解されたい。
【0016】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法及び以下に記載される実験方法は、当該技術分野で周知であり、一般的に用いられるものである。
【0017】
本開示の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句を以下に定義する。
【0018】
特許請求の範囲以外で使用される場合、「a」、「an」、「the」、及び/又は「当該」という用語は、1つ以上を意味する。特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び/又は「含む(comprising)」という用語
に関連して使用されるとき、「a」、「an」、「the」、及び/又は「前記」という語は、1つ又は2つ以上を意味し得る。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「有する(having)」、「有する(has)」、「である(is)」、「有する(have)」、
「含む(including)」、「含む(includes)」、及び/又は「含む(include)」という用語は、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprise)」
と同じ意味を有する。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「別の」とは、少なくとも第2以上を意味し得る。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「約」は、値(例えば、測定値、比率などの計算値)についての任意の固有の測定誤差又は数字の丸めを指し、したがって、「約」という用語は、任意の値及び/又は範囲と共に使用され得る。
【0019】
「それらの組み合わせ」という語句は、それらの混合物、及び列挙に続く類似の語句、列挙の一部としての「及び/又は」の使用、表中の列挙、列挙の一部としての「など」の使用、語句「例えば」、及び/又は、「例えば」若しくはすなわちを伴う括弧内の列挙は、列挙された一連の要素の任意の組み合わせ(例えば、任意の部分セット)を指し、かかる列挙中に直接配置されていないが、本明細書に記載の組み合わせ、関連種の混合物、及び/又は実施形態もまた企図される。本明細書に記載のそのような関連する及び/又は同様の属、亜属、種、及び/又は実施形態は、特許請求され得る個々の要素の形態、並びに、特許請求の範囲に「~から選択される少なくとも1つ」、「それらの混合物」及び/又は「それらの組み合わせ」として記載され得る混合物及び/又は組み合わせの両方が企図される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、この用語が関連付けられている項目のうちのいずれか1つ、項目の任意の組み合わせ、又は項目の全てを意味する。
【0021】
当業者には理解されるように、成分の量、空洞/細孔径及びゼータ電位などの特性、実験条件などを表現するものを含む全ての数は近似値であり、任意選択的に、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解される。これらの値は、本明細書に説明される教示を利用して当業者によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る。また、そのような値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じるばらつきを本質的に含むことも理解される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、指定された値の±5%の変動を指し得る。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態では、45~55パーセントの変動を含み得る。整数範囲について、「約」という用語は、列挙された整数よりも1又は2大きい及び/又は小さい整数を含み得る。本明細書に別段の指示がない限り、「約」という用語は、個々の成分、組成物、又は実施形態の機能性に関して同等である、列挙された範囲に近接する値、例えば濃度値を含むことを意図している。
【0023】
当業者によって理解されるように、特に書面の説明を提供することに関して、任意の及び全ての目的のために、本明細書に列挙される全ての範囲はまた、任意の及び全ての可能性のある部分範囲及びそれらの部分範囲の組み合わせ、並びに範囲を構成する個々の値、特に整数値についても包含する。列挙された範囲は、その範囲内の各特定の値、整数、小数点、又は同一性を含む。任意の列挙された範囲は、十分に記載され、同じ範囲を少なく
とも等分、3分の1、4分の1、5分の1、又は10分の1に分解できることが容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下部3分の1、中間3分の1、上部3分の1などに容易に分解され得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例示的な実施形態を以下に説明する。明確にするために、実際の実装の全ての特徴が本明細書に記載されていない。もちろん当然のことながら、任意のそのような実際の実施形態の開発において、1つの実装毎に変化するシステム関連及びビジネス関連の制約の遵守など、開発者の特定の目標を達成するために実装固有の決定を行う必要がある。更に、当然のことながら、そのような開発努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって日常的である。
【0025】
本明細書では、装置が添付の図面に描かれている際に、様々な構成要素間の空間的関係、及び構成要素の様々な態様の空間的向きに言及することができる。しかしながら、本出願を完全に読んだ後に当業者によって認識されるように、本明細書に記載される装置、部材、器具などは、任意の所望の向きに位置付けられ得る。したがって、様々な構成要素間の空間的関係、又はそのような構成要素の態様の空間的向きを説明するための用語の使用は、本明細書に記載の装置が任意の所望の方向に向けられ得るため、構成要素間又はそのような構成要素の態様の空間的向きの相対的関係を説明すると理解されるべきである。
【0026】
本出願によるシステム及びプロセスは、従来の膜技術及びプロセスに共通して関連する上述の問題のうちの1つ以上を克服する。具体的には、本出願のシステムは、逆電気浸透濾過システムを使用する。本システムのこれらの独自の特徴は、以下に論じられ、添付の図面に例示される。
【0027】
添付の説明と併せて添付の図面から、その構造及び動作の両方として、システム及びプロセスが理解されるであろう。このシステムのいくつかの実施形態は、本明細書において図1図15中に提示される。異なる実施形態の様々な構成要素、部品、及び特徴を、互いに組み合わせ、及び/又は互いに交換することができ、全ての変形例及び特定の実施形態が図面に示されていないとしても、その全てが本出願の範囲内であることを理解されたい。また、様々な実施形態間の特徴、要素、及び/又は機能の混合及び一致は、本明細書において明示的に企図されており、当業者は、特に記載がない限り、本開示から、一実施形態の特徴、要素、及び/又は機能を、適宜別の実施形態に組み込むことができることを理解されたい。
【0028】
一態様では、本発明は、逆電気浸透濾過システムを提供し、このシステムは、
a)目的の溶質が濃縮されている電解質溶液(11A)を受容することを意図した第1の容器(10A)であって、容器(10A)中に含有される電解質溶液(11A)と接触している第1の電極(20A)を含む、第1の容器と、
b)同じ目的の溶質を実質的に含まない又は枯渇している電解質溶液(11B)を受容することを意図した第2の容器(10B)であって、容器(10B)中に含有される電解質溶液(11B)と接触している第2の電極(20B)を含む、第2の容器と、
c)2つの容器を分離している逆浸透膜要素(30)であって、
(i)半浸透膜要素(31)、及び
(ii)|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは>20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)を、組み合わせており、半浸透膜要素(31)及び表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)は、1つの同じ要素であるか、又は2つの異なる要素であってよく、
半浸透膜要素(31)は、第1の容器(10A)の電解質溶液(11A)と接触するように構成されており、表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)は、第2の容器(10
B)の電解質溶液(11B)と接触するように構成されている、逆浸透膜要素と、を備え、当該逆浸透膜要素(30)は、(i)溶質濾過の機能、及び、(ii)電解質溶液(11A)の溶媒の流れを容器(10A)から容器(10B)へと逆浸透膜要素(30)を介して電気誘導する機能の両方を満たし、
容器(10A)及び(10B)中の電解質溶液(11A)及び(11B)は、それぞれ、同じ極性溶媒を含み、
第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、電気エネルギー源(40)に動作可能に連結されており、
第1の電極(20A)と第2の電極(20B)との間への電場の印加は、電解質溶液(11A)の極性溶媒の逆浸透流を容器(10A)から容器(10B)へと逆浸透膜要素(30)を介して誘導する。
【0029】
本発明による濾過システムは、精製システムであってよい。
【0030】
別の態様では、本発明は、極性溶媒中の電解質溶液を精製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、
i)極性溶媒中に望ましくない溶質を含む、電解質溶液(11A)を提供する工程と、ii)工程i)と同じ又は異なる極性溶媒中に望ましくない溶質を含まない、第2の電解質溶液(11B)を提供する工程と、
iii)逆電気浸透濾過システムを提供する工程であって、このシステムは、
a)第1の電極(20A)を備えた第1の容器(10A)と、
b)第2の電極(20B)を備えた第2の容器(10B)であって、第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、電気エネルギー源(40)に動作可能に連結されている、第2の容器と、
c)2つの容器(10A)及び(10B)を分離している逆浸透膜要素(30)であって、
(i)半浸透膜要素(31)、及び
(ii)|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)を、組み合わせており、半浸透膜要素(31)及び表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)は、1つの同じ要素であるか、又は2つの異なる要素であってよく、
半浸透膜要素(31)は、容器(10A)の電解質溶液(11A)と接触しており、表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)は、容器(10B)の電解質溶液(11B)と接触している、逆浸透膜要素と、を備え、
当該逆浸透膜要素(30)は、(i)溶質濾過の機能、及び、(ii)電解質溶液(11A)の溶媒の流れを容器(10A)から容器(10B)へと逆浸透膜要素(30)を介して電気誘導する機能の両方を満たし、
逆浸透膜要素(30)は、望ましくない溶質の逆浸透膜要素(30)を介する拡散を選択的に阻止するように適合されている、工程と、
iv)容器(10A)内で精製されるように電解質溶液(11A)を配置して、備えられている第1の電極(20A)が、上記電解質溶液(11A)と接触するようにする、工程と、
v)容器(10B)内に十分な量の第2の電解質溶液(11B)を配置して、備えられている第2の電極(20B)が、上記電解質溶液(11B)と接触するようにする、工程と、
vi)第1の電極(20A)と第2の電極(20B)との間に電場を印加して、極性溶媒の逆浸透流を容器(10A)から容器(10B)へと2つの容器(10A)及び(10B)を分離している逆浸透膜要素(30)を介して誘導する、工程であって、
それにより、容器(10A)から容器(10B)に向かって溶媒を流しながら、望ましくない溶質を容器(10A)内に保持することを可能にする、工程と、
vii)精製された電解質溶液(11B)を、望ましくない溶質を実質的に含まない、又は枯渇している容器(10B)から回収する工程と、を含む。
【0031】
本開示全体を通して、第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、電気エネルギー源(40)に動作可能に連結され、第1の電極(20A)と第2の電極(20B)との間に電場が印加される又はされ得るようにする(例えば、電気エネルギー源(40)は、第1の電極(20A)と第2の電極(20B)との間の電場の印加を可能にする)。
【0032】
本明細書で使用される場合、「溶質」という用語は、電解質溶液(11A)及び/又は(11B)に使用される極性溶媒中に溶解する液体又は固体材料を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「溶質を実質的に含まない」という用語は、≧99%、好ましくは≧99.5%、より好ましくは≧99,8%、更により好ましくは>99,9%、最も好ましくは100%の溶質が、除去されていることを意味する(≧99.0%、より好ましくは≧99.5%、更により好ましくは≧99.8%、なおより好ましくは≧99.9%、最も好ましくは100%又は約100%の溶質除去が達成されることを意味する)。言い換えれば、2つの容器(10A)及び(10B)を分離する逆浸透膜要素(30)により、<1.0%、より好ましくは<0.5%、更により好ましくは<0,2%、なおより好ましくは<0.1%、最も好ましくは0%の望ましくない溶質が、逆浸透膜を通過できる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「溶質が濃縮されている」という用語は、供給した電解質溶液(11A)が溶出した電解質溶液(11B)よりも高い濃度の溶質を含有することを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「溶質が枯渇している」という用語は、溶出した(第2の)電解質溶液(11B)が供給した(第1の)電解質溶液(11A)よりも低い濃度の溶質を含有することを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「半透膜」という用語は、濾過膜の分野における用語の従来の意味から逸脱せず、拡散又は人工的に作製された流動によって特定の分子又はイオンの通過を可能にする膜を指す。例えば、所与の電解質溶液から特定の分子又はイオンの分離/濾過を可能にする、サイズ排除膜、イオン交換膜、又は任意の他の膜であり得る(例えば、化学親和性による分離に基づく半透膜)。
【0037】
本明細書で使用される場合、「電解質溶液」という用語は、電気浸透性を誘導する可動イオンを含む、導電性溶液を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ナノ多孔質膜」という用語は、濾過膜の分野における用語の従来の意味から逸脱せず、平均細孔径が<1μm、好ましくは≦500nmである膜を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、膜表面電荷を指すとき、「ゼータ電位」は、電気化学的用語の従来の意味から逸脱せず、膜表面と膜表面に付着した流体の固定層との間の電位差を指す。ゼータ電位は、典型的には、膜表面の性質、及び膜表面と接触している電解質溶液の特性(例えば、pH、イオン濃度、イオン力など)に依存する。ゼータ電位は、スモルコフスキーの式(以下の式1参照)を用いて計算することができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、|ゼータ電位|は、ゼータ電位の絶対値(すなわち、符号に関係なくゼータ電位の数値)を指す。本開示から容易に理解されるように、本発明は、
負又は正の表面電荷を有するナノ多孔質膜要素を使用して実行することができ、ゼータ電位は、膜が電解質溶液と接触すると、それぞれ負又は正であってよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「極性溶媒」という用語は、従来の意味及び分野における一般的な知識/使用から逸脱しない。一般に、極性溶媒としては、≧6の誘電率及び≧1.50Dの双極子モーメントを有する非プロトン性溶媒、並びに、水、アルコール、ギ酸、酢酸、フッ化水素、及びアンモニアなどのプロトン性溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の背景にある根本的な現象は、逆電気浸透効果に基づく。これは、電気泳動及び拡散浸透効果などの他の拡散現象を除外する。
【0043】
逆浸透膜要素(30)は、複合膜要素、又はハイブリッド膜要素であってよい。
【0044】
除外された溶質が除去されている透過物は、逆浸透膜要素(30)を透過物流(50)として出て、容器(10B)に回収され得る。したがって、本発明はまた、本発明による濾過システム又は精製プロセスを使用して、溶媒及び溶質を溶質含有電解質溶液から分離する方法にも関する。
【0045】
1.複合膜
例示的な実施形態は、図1に示されている。
【0046】
変形例では、逆浸透膜要素(30)は複合膜要素であってよく、本発明による逆電気浸透濾過システムは、半透膜要素(31)及び表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)が、一緒に組み合わされた2つの異なる要素であり、2層の複合非対称膜(30A)を形成する。複合非対称膜(30A)は、荷電ナノ多孔質膜(32)と重ね合わせた半透膜(31)を含み得る。有利には、上記複合非対称膜(30A)は、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有する、荷電ナノ多孔質膜(32)と重ね合わせた半透膜(31)を含み得る。
【0047】
以下で論じられるように、半透膜要素自体は、半透膜と多孔質支持層とを組み合わせてもよい。
【0048】
1.1.半透膜
本発明の文脈で使用可能な半透膜は、当該技術分野において既知の任意の半透膜であり得る。例えば、半透膜要素(31)は、所与の電解質溶液から特定の分子又はイオンの分離/濾過を可能にする、サイズ排除膜、イオン交換膜、又は任意の他の膜であってよく(例えば、化学親和性による分離に基づく半透膜)、有利には、サイズ排除膜又はイオン交換膜である。例えば、塩及び他の不純物から純水分子を分離する半透膜であってもよく、水に透過性を有し、溶解塩、有機物、細菌、及び発熱物質並びに他の小分子を含む様々な溶解不純物に対して相対的に不透過性を有する膜であってもよい。したがって、汚染された水からイオン、分子、及びより大きな粒子を除去するために半透膜を使用する、水精製技術で従来使用されている半透膜であり得る。水精製又は脱塩システム、逆浸透システムにおいて使用するための半透膜、例えば薄膜複合膜(TFC又はTFM)であり得る。
【0049】
逆浸透で使用される膜は、一般に、主に水に対する透過性と、塩イオン及び濾過することができない他の小分子を含む様々な溶解不純物に対する相対的な不透過性によって選択されたポリアミドから作製される。更に別の例では、半透膜要素(31)は、アニオン交換膜(AEM)又はカチオン交換膜CEM)であり得る。例えば、半透膜要素(31)は、Nation半透膜であり得る。
【0050】
半透膜の平均細孔径は、電解質溶液(11A)から標的溶質を濾過するように適合されている。したがって、膜の平均細孔径は、標的溶質(及び標的溶質よりも大きい粒径を有する任意の他の溶質)の半透膜(31)の通過が妨げられ、一方、極性溶媒及び他のより小さいサイズの溶質に半透膜(31)を通過させるように、十分に小さい。半透膜の平均細孔径は、精密濾過(50~500nm)、限外濾過(1~50nm)、又はナノ濾過(≦1nm)の、意図される用途タイプに応じて適合される。有利には、半透膜要素(31)は、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<100nm、最も好ましくは<50nmの平均細孔径を有し得る。好ましい変形例では、濾過システムは限外濾過を意図しており、半透膜要素(31)は、1~50nmの平均細孔径を有し得る。別の好ましい変形例では、濾過システムはナノ濾過を意図しており、半透膜要素(31)は、<1nmの平均細孔径を有し得る。そのようなナノ濾過システムは、例えば、脱塩のために有用であり得る。
【0051】
有利には、半透膜は、ナノ多孔質炭素膜であり得る。ナノ多孔質炭素膜として、カーボンナノチューブ膜、ナノ多孔質グラフェン膜、及び多層グラフェンオキシド膜が挙げられる。これらの全ての材料は、選択的透過性について同様の特性を示すことができ、ナノ濾過、脱塩などの膜分離を含む用途においてモレキュラーシーブとして使用することができる。カーボンナノチューブ膜は、定義された直径の短いカーボンナノチューブによって接続された2つの穿孔されたグラフェンシートからなる。しかしながら、これらの実用的な用途は、その製造の複雑さのために限定される。ナノ多孔質グラフェン膜は、定義されたサイズのナノ細孔を有するグラフェンの単一シートからなる。しかしながら、事前に定義された細孔径及び高い細孔密度で大きなグラフェンシートを得ることは依然として困難である。グラフェンオキシド(GO)膜は、膜を通る選択的浸透を可能にする細孔を形成する相互接続されたナノチャネルによって分離された積層GOナノシートで構成される。これらは、噴霧、浸漬コーティング、スピンコーティング、真空濾過などによって、GO溶液を様々な支持体上に堆積することによって比較的容易かつ安価に製造することができ、現在最も一般的に使用されている。
【0052】
更に、GOシートは、元のグラフェンと同様の電気的、熱的、機械的、及び表面特性を有するグラフェン様還元型GO(rGO)シートに変換され得る。
【0053】
したがって、本発明の文脈において、半透膜は、カーボンナノチューブ膜、ナノ多孔質グラフェン膜、又は多層GO若しくはrGO膜、好ましくは多層GO若しくはrGO膜、最も好ましくは多層GO膜であり得る。
【0054】
有利には、半透膜(31)は、積層されたグラフェンオキシドフレークで構成されるサイズ排除選択膜であり得る。有利には、積層されたグラフェンオキシドフレークは、GOフレーク間に0.7~1.4nmの範囲の層間間隔を有する2Dナノチャネルのネットワークを形成し得る。積層されたグラフェンオキシドフレーク間の層間間隔は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法によって測定され得る。例えば、XRDを使用して測定することができる。
【0055】
有利には、ナノ多孔質炭素膜の細孔径は、0.7nm~1.5nmの範囲、好ましくは≦1.4nm、より好ましくは≦1.3nm、更により好ましくは≦1.1nm、なおより好ましくは≦1.0nmであってよい。「細孔径」は、炭素質半透膜を指すとき、カーボンナノチューブ及びナノ多孔質グラフェン膜の場合は孔径を、多層GO又はrGO膜の場合は層間間隔の幅を指す。典型的には、ナノ多孔質炭素膜は、カーボンナノチューブ膜の場合、0.05μm~1μmの厚さ、好ましくは100~500nmの厚さであってよい。多層GO又はrGO膜の場合、炭素膜は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、
最大で300層のGO又はrGOシートを含んでよく、0.05~20μmの厚さ、例えば、0.05~15μmの厚さ、0.05~10μmの厚さ、0.05~5μmの厚さ、又は0.05~1μmの厚さであり得る。例えば、炭素膜は、約0.1μmの厚さであってよい。
【0056】
別の変形例では、半透膜は、ラメラ材料の積層膜であり得る。任意のラメラ材料が使用され得る。例えば、MoS2、六角NiB、粘度、グラファイト系。
【0057】
例えば、半透膜は、多層MoS2膜、層六角NiB膜、又は多層GO又はrGO膜、好ましくは多層GO又はrGO膜、最も好ましくは多層GO膜であり得る。
【0058】
別の例示的な変形例では、半透膜は、アニオン交換膜(例えば、OH-、Cl-輸送)又はカチオン交換膜(例えば、H+、Na+、K+輸送)などのイオン交換膜であり得る。
【0059】
半透膜は、表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)上に直接配置され得る。これは、例えば、好ましくは湿潤条件(水又は水性溶媒中の分散液)における真空濾過によって達成され得る。例えば、炭素質材料(例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、GO又はrGO)又はラメラ材料(例えば、MoS2、六角NiB、粘度、グラファイト系)の水中分散液は、表面電荷を有するナノ多孔質膜の上部に真空下で滴加され得る。例えば、表面電荷を有するナノ多孔質膜は、真空ポンプに接続されたブフナー漏斗上に配置され得、炭素質材料又はラメラ材料の水中分散液は、表面電荷を有するナノ多孔質膜上にゆっくりと添加されて(例えば、滴加)、炭素質材料又はラメラ材料が積層された膜(半透膜要素)を形成することができる。あるいは、半透膜は、まず、別の多孔質支持層(33)上に配置されて(例えば、製造及び/又は取り扱いの容易さのため)、その後、表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)上に配置され得る。多孔質支持層(33)は、電解質溶液(11A)の極性溶媒の流れを、容器(10A)から容器(10B)へと逆浸透膜要素(30)を介して透過可能にするために、はるかに大きい細孔径を有するべきである。したがって、使用されるとき、多孔質支持層は、好ましくは、半透膜要素(32)の細孔径よりも少なくとも5倍、10倍、又はそれ以上の細孔径を有し、30~300μm、より好ましくは100~200μmの厚さを有する。多孔質支持層(33)は、中性(表面電荷なし)非反応性ポリマー材料、例えば、フッ化ポリビニリデン(PVDF)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマー、又は混合セルロースエステル若しくは酢酸セルロースで作製され得る。また、非限定的な例として、アルミナなどの多孔質セラミック材料、又はシリカベースの多孔質セラミックで作製することができる。
【0060】
半透膜(31)が多孔質支持層(33)上に配置されるとき、得られる組み合わせ濾過膜を、任意の、すなわち、半透膜面、又は多孔質支持体面のいずれかが表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)と接触できる向きで使用することができる。半透膜(31)が多孔質支持層(33)の両側に配置されるか、又は別の方法としては、2つの多孔質支持層間に配置される、組み合わせ濾過膜、並びに、2つ以上の層の半透膜(31)が2つ以上の層の多孔質支持体(33)と交互になっている多層組み合わせ濾過膜も使用できる。
【0061】
有利には、半透膜は、好ましくは98.0%以上の溶質除去、好ましくは≧98.5%、より好ましくは≧99.0%、更により好ましくは≧99.5%、最も好ましくは100%又は約100%の溶質除去を達成するように適合され得る。
【0062】
当然のことながら、半透膜の平均細孔径は、濾別されることが意図される溶質に適合される。
【0063】
1.2.表面電荷を有するナノ多孔質膜
本発明の文脈において使用可能なナノ多孔質膜は、ナノ多孔質で作製された当該技術分野で既知の表面電荷を有する任意の膜、つまり任意のナノ多孔質膜であってよく、膜のナノチャネルの内面の少なくとも一部は、適切な表面電荷を有する少なくとも1つの材料で本質的に形成されている。本開示で使用される場合、特に指示がない限り、材料の「本質的に形成される」という用語は、「材料から作製される」という意味である。この用語はまた、材料を任意選択的に化学修飾し(例えば、表面上及び/又は細孔壁表面上に)、その物理化学的特性を意図された用途に適合するように調節する可能性も包含する。化学修飾として、ドーピング(例えば、材料ネットワークの表面又はコア上に金属元素を添加すること)、コーティング(例えば、好適な表面電荷を有する材料の薄層を使用)、共有結合性官能化、例えば、化学蒸着、原子層堆積、ゾルゲルコーティング若しくは浸漬コーティング、若しくは電気化学堆積による化合物/種の物理吸着若しくは化学吸着、又は、pH変化による材料の表面におけるイオン化可能な官能基のイオン化を挙げることができる。
【0064】
1つの好ましい実施形態では、ナノチャネルの内面の少なくとも一部は、適切な表面電荷を有する少なくとも1つの材料で本質的に形成されるか、又はコーティングされている。有利には、ナノチャネルは、好ましくは、好適な表面電荷を有する少なくとも1つの材料から完全に形成されるか、又はコーティングされ得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ナノチャネルの内面の少なくとも一部」は、ナノチャネルの内面が、適切な表面電荷を有する材料から本質的に形成された1つ以上のセクションを含み得る、又は、内面全体が、適切な表面電荷を有する少なくとも1つの材料で本質的に形成され得るという事実を指す。上記セクションは、規則的若しくは不規則的、断続的若しくは非断続的、及び/又は、単一層若しくは多層の形態であり得る。好ましくは、ナノチャネルの全内面は、適切な表面電荷を有する少なくとも1つの材料で本質的に形成される。
【0066】
本発明の文脈で使用可能なナノ多孔質膜は、正又は負の表面電荷を有し得る。
【0067】
ナノ多孔質膜が正の表面電荷を有するとき、電極(20A)と(20B)(このとき、第2の容器(10B)の電解質溶液(11B)と接触している電極(20B)は正に荷電されている)との間に電場を印加すると、電解質溶液(11B)中で、ナノ多孔質膜要素(32)の正に荷電された細孔表面から電極(20B)に向かうアニオンの流れが誘導される。このアニオンの流れは、同時に、第1の容器(10A)から第2の容器(10B)に向かう、逆浸透膜要素(30)を介する極性溶媒の流れを誘導する。
【0068】
逆に、ナノ多孔質膜が負の表面電荷を有するとき、電極(20A)と(20B)(このとき、第2の容器(10B)の電解質溶液(11B)と接触している電極(20B)は負に荷電されている)との間に電場を印加すると、電解質溶液(11B)中で、ナノ多孔質膜要素(32)の負に荷電された細孔表面から電極(20B)に向かうカチオンの流れが誘導される。このカチオンの流れは、同時に、第1の容器(10A)から第2の容器(10B)に向かう、逆浸透膜要素(30)を介する極性溶媒の流れを誘導する。
【0069】
有利には、正又は負の表面電荷を有するナノ多孔質膜は、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有する。
【0070】
本発明によるナノ多孔質膜要素に適した表面電荷を有する材料の例として、酸化チタン、窒化ホウ素、SiO2、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、陽極酸化アルミニ
ウム(陽極アルミナ)、ハイドロタルサイト、Ni-Fe層状複水酸化物、Nidobdc、Mgdobdc(dobdc=1,4-ジオキシド-2,5-ベンゼンジカルボキシレート)、セルロース又は高分子電解質層ポリマー膜、例えば、ポリカーボネート膜上のカチオン性ポリエチレンイミン及びアニオン性ポリ(アクリル酸)の連続的浸漬コーティング層によって得られるナノ多孔質膜が挙げられる。Nidobdc及びMgdobdcは、dobdcリガンドと、それぞれNi又はMg金属部位を有する既知の金属有機構造体である。有利には、本発明によるナノ多孔質膜要素に適した表面電荷を有する材料として、酸化チタン、窒化ホウ素、SiO、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、陽極酸化アルミニウム、好ましくは、酸化チタン、窒化ホウ素、SiO、ポリカーボネート、及び陽極酸化アルミニウム、最も好ましくは、酸化チタン、ポリカーボネート、及び陽極酸化アルミニウムから本質的に形成される材料が挙げられる。
【0071】
酸化チタンとは、任意の種類の酸化チタン、例えば、酸化チタン(IV)又は二酸化チタン、及びそれらの2つ以上の混合物を意味する。これらの酸化チタンは、異なる固体多形形態、特に非晶質形態又は結晶形態であり得る。二酸化チタン(TiO)に関して、ルチル又はアナターゼ結晶型が主に使用され、好ましくはアナターゼ型である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「酸化チタン、窒化ホウ素などから本質的に形成される」は、不純物などの少量の元素を含み得る、酸化チタン、窒化ホウ素などから形成された材料を指す。
【0073】
酸化チタン、窒化ホウ素、陽極酸化アルミニウム、SiOなどの材料の物理化学的特性は、一般に、ドーピング若しくは官能化によって、すなわち、鉄、銀、バナジウム、金、白金、ニオブ、タングステンなどの金属元素、又は窒素、硫黄、炭素、水素、ホウ素、リンなどの非金属元素、又はシラン、アミン若しくは他の有機族の異なる化合物を、好ましくは少量、材料ネットワークの表面上又はコア内に挿入することによって、調節及び増幅され得る。
【0074】
例えば、ナノ多孔質膜材料は、鉄、銀、バナジウム、金、白金、ニオブ、タングステンなどの金属元素、又は窒素、硫黄、炭素、水素、ホウ素、リンなどの非金属元素、又はシラン、アミンなど異なる化合物を、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~5重量%の量で挿入することによって、結晶ネットワークの表面上又はコア内にドーピングされ得る、酸化チタンであってよい。
【0075】
本発明の文脈において使用可能なナノ多孔質膜は、好適な表面電荷を有する少なくとも1つの材料が堆積されているナノ多孔質又は穿孔機械的基材によって担持され得る。例えば、上記ナノ多孔質膜は、好適な表面電荷を有する少なくとも1つの材料、例えばTiOの層が堆積されている可撓性ポリマー膜で構成され得る。
【0076】
セラミック膜(例えば、酸化チタン、陽極酸化アルミニウム、SiO)などの好適な表面電荷を有する少なくとも1つの材料で本質的に形成されるか、又はコーティングされた内面を有するナノチャネルを含む膜は、金属箔(例えば、Ti、Al又はSi)を陽極酸化することによって直接得ることができる(Progress on free-standing and flow-through TiOnanotubes membranes,Guohua Lin,Kaiying Wang,Nils Hoivik,Henrik Jakobsen,Solar Energy Materials & Solar Cells,98,2012,pp 24-38;TiO nanotubes synthesis and applications,Poulomi Roy,Steffen Berger,Patrick Schmuki,Angewandte Chemistry Int.Ed,50,2011,pp 2
904-2939参照)。ブロックコポリマー又はグラフト化コポリマーの存在下におけるゾルゲル法などの他の手法もまた、規則的な配向したナノチャネルを有するTiO膜などのセラミック膜の合成を可能にする(Jung Tae Park,Won Seok Chi,Sang Jin Kim,Daeyeon Lee & Jong Hak Kim,Scientific Reports 4:5505,Nature,2014参照)。この方法では、貫通ナノチャネルの形態学的パラメータ、長さ、幅、及び非対称性を調節することも可能である。加えて、粉末及び焼結法を使用して、規則的な制御された貫通ナノチャネルを有する酸化チタン膜などの非常に薄いセラミック膜を得ることができる。上記膜はまた、例えば、予め形成された形態を有するナノ多孔質基材上への、CVD(化学蒸着)、ALD(原子層堆積)又はHiPIMS(高出力インパルスマグネトロンスパッタリング)により様々な堆積技術を用いて得ることができる。
【0077】
あるいは、負又は正に荷電された材料の表面は、所与のpHの電解質溶液と接触させた後に材料上に自然に存在する負又は正の電荷をそれぞれ増強するように化学修飾されてもよい。言い換えれば、荷電ナノ多孔質膜(32)の表面は、ナノ多孔質膜の表面電荷を増強するために化学的に修飾され得る。化学修飾は、化学蒸着、原子層堆積、ゾルゲルコーティング又は浸漬コーティングによってもたらされ得る。有利には、化学修飾は、ナノ多孔質膜細孔壁の表面上に達成され得る。例えば、荷電ナノ多孔質膜(32)は、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<200nmの平均細孔径を有し、内部細孔壁が、ポリカーボネート膜をポリドーパミン水溶液中に浸漬コーティングすることによって化学的に修飾されている、ポリカーボネート膜から得ることができる。pH=7において、ポリカーボネートは負の表面電荷を有し、これは、ポリカーボネート表面がポリアミンでコーティングされると増強される。
【0078】
別の代替例では、膜材料の表面がイオン化可能な官能基を有する場合、膜の表面電荷は、pHを使用して調節され得る。例えば、表面に-OH基を有するTiO、SiO、AIなどの膜材料では、膜と接触している電解質溶液のpHを塩基性の値(pH=8~14)にすると、-OH基が脱プロトン化されることにより、負に荷電された表面を増強する。したがって、pHの変化を利用して、膜表面のゼータ電位を調節/制御することができる。実際には、ナノ多孔質膜要素(32)が接触している電解質溶液のpHに応じて、同じ膜の表面電荷は正又は負になり得る。例えば、TiOから本質的に形成されたナノ多孔質膜要素(32)は、pH≧9で負の表面電荷を、pH≦6で正の表面電荷を有し得る。
【0079】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、負の表面電荷を有する材料のナノチャネルは、それらの種類、サイズ、及び物理化学的特性、特に、それらの以下の順の表面電荷密度を考慮して、二酸化チタン:~-100mC/m(pH≧9)
窒化ホウ素:~-1C/m(pH≧10)
二酸化ケイ素:~-10mC/m(pH≧6)
ポリカーボネート:~-10mC/m(pH≧5)
電場の印加によって生じる電気浸透ナノ流体現象を介して、カチオン(すなわち、材料の表面電荷と反対の電荷を有するイオン)の通過を促すことが提案されている。表面電荷の影響下でアニオン及びカチオンの不均衡を含むために全体的に荷電されている、負に荷電された膜表面の界面でのデバイ層からのカチオンの流れは、次に、カチオン流と同じ方向の極性溶媒の流れを誘導する。したがって、好適な電場の印加下では、極性溶媒は、逆浸透膜要素(30)を通り、容器(10A)から容器(10B)に流れる。逆浸透膜要素(30)が、電解質溶液(11A)中に存在する1つ以上の特定の溶質について選択された半透膜要素(31)を含むため、ナノ多孔質膜(32)の細孔内に生成されたカチオンの流れは、容器(10A)から容器(10B)への電解質溶液(11A)の流れを誘導し、一方で溶質が通過するのを防ぐ(溶質は、濾別され容器(10A)内に留まる)。
【0080】
逆に、正の表面電荷を有する材料のナノチャネルは、電場の印加によって生じる電気浸透ナノ流体現象を介して、アニオン(すなわち、材料の表面電荷と反対の電荷を有するイオン)の通過を促すことが提案されている。
【0081】
その両方の場合(カチオン又はアニオンの流れ)において、極性溶媒の流れは、電極(20A)と(20B)との間の好適な電場の印加により生成されたカチオン/アニオンの流れと同じ方向に誘導される。
【0082】
膜表面電荷は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を使用して測定され得る。例えば、ナノ多孔質膜のゼータ電位は、電気運動分析器を使用して解明してもよい。
【0083】
以下の式を実施して、膜の表面上のゼータ電位値を推定することができる。
【0084】
【数1】

式中、
εは、溶媒(例えば、水)の誘電率であり、
ζは、ゼータ電位であり、
ηは、溶媒(例えば、水)の粘度であり、
は、電解質溶液に曝露された膜内の全ての細孔の総断面表面積であり、
ΔPは、細孔の長さL全体の圧力降下であり、
streamは、荷電電流である。
【0085】
蛇行性が低い多孔性を有するナノ多孔質膜が使用される(例えば、ほとんどが円筒形の細孔を有するナノ多孔質陽極アルミナ)場合、細孔Lの長さは、ナノ多孔質膜の厚さに相当し得る。顕著に蛇行している細孔を有するナノ多孔質膜の場合、加えられた圧力に対する透過性を計算することにより、関連する蛇行係数を適用することによって総細孔長を決定することができる。
【0086】
膜表面のゼータ電位は、適切な濃度の好適な酸(例えば、HCl)又は塩基(例えば、KOH、NaOHなど)を使用して、電解質溶液のpHを変化させることによって、異なるpH値(酸性、中性、及び塩基性条件)で測定することができる。好ましくは、酸/塩基は、本発明によるプロセス/システムで使用される電解質溶液中に存在するイオンとの相溶性に関して選択される。例えば、KCl電解質溶液が使用される場合、pHを調整するために塩基としてKOHが使用され得る。
【0087】
例えば、膜表面において最低5mVの|ゼータ電位|を望む場合、高い表面電荷を有する膜材料を選択でき、それにより、膜が電解質溶液と接触しているときに、表面において高いゼータ電位を維持することができる。
【0088】
平均細孔径-ナノ多孔膜
ナノ多孔質膜要素(32)は、好ましくは、半透膜要素(31)よりも大きい平均細孔径を有し、溶質の濾過機能は、半透膜要素(31)によって実行され、一方、ナノ多孔質膜要素(32)の機能は、電極(20A)と(20B)との間の適切な電場の印加により、溶媒の逆浸透流を促すことである。
【0089】
有利には、正又は負の表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)は、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<100nm、最も好ましくは<50nmの平均細孔径を有し得る。好ましくは、本発明の文脈において、ナノ多孔質膜要素(32)のナノチャネルの平均径は、1~500nm、好ましくは1~300nm、より好ましくは10~100nm、最も好ましくは10~50nmであり得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、「平均径」という用語は、ナノチャネルの内部平均径を指す。ナノチャネルは、ナノチューブ状、円錐形非対称、ネック状、又は有孔基材形態を有し得る。ナノチャネルが、ナノチューブ形態、すなわち円形断面を有する場合、平均径は、円形断面の内径に対応する。ナノチャネルが円錐形非対称、ネック状、又は有孔基材形態、すなわち楕円形若しくは不規則な断面を有する場合、平均径は、最小及び最大の内径の平均に対応する。ナノチャネルの平均径は、当業者に既知の手段を使用して測定され得る。例えば、平均径は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡によって測定することができる。有利には、ナノ多孔質膜要素(32)に含まれるナノチャネルは、均質な直径を有し得る。1つの同じ膜上で、ナノチャネルが全て均質な直径を有さない場合、平均径は全てのナノチャネルの平均径の平均に対応する。
【0091】
有利には、本発明の文脈において、ナノチャネルは、ナノチューブ状、円錐形非対称、ネック状、又は有孔基材形態を有し、好ましくは、上記ナノチャネルは、円錐形非対称形態を有する。
【0092】
本発明の文脈において使用可能なナノ多孔質膜の形態学的パラメータは、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、共焦点走査レーザー顕微鏡(CSLM)、及び透過電子顕微鏡(TEM)などの、従来の技術を使用して評価され得る。あるいは、又は追加的に、X線コンピュータ断層撮影(マイクロCT)、核磁気共鳴(NMR)、スピンエコー小角中性子散乱(SESANS)及び/又は磁気小角中性子散乱(MSANS)を使用することができる(これらの技術は、一般的により速く、より完全な技術であるため、3D(体積)解析を実施できる)。これらの技術を用いて、細孔径、細孔径分布、表面粗さ、分子量カットオフ及び厚さなど、本発明によるナノ多孔質膜の形態学的パラメータを評価することができる。
【0093】
細孔径は、可変断面のチャネルである細孔の寸法を表す。2つの対向する細孔壁間の距離は、単純な幾何学的形状の細孔径として使用される(典型的には、細孔径について円筒形細孔の直径は>2nm、細孔径についてスリット形状の細孔の幅は<2nm)。細孔が不規則な形状を有する場合、平均細孔径を出すためにいくらかの平均化が行われる。細孔が全て同じサイズ及び/又は幾何学的形状を有していない材料に対する、非線形最適化及びモンテカルロ積分のようなモデルを使用する、一部の統計解析手法など、多孔質材料の細孔径、平均細孔径、及び細孔径分布を測定するための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、ISO15901基準参照)。ナノ多孔質膜要素(32)の化学的及び物理学的性質、並びに、平均細孔径の範囲(好ましくは、ナノ多孔質膜要素(32)のナノチャネルの平均径は、1~500nm、好ましくは1~300nm、より好ましくは10~100nm、最も好ましくは10~50nmであり得る)を考慮すると、ISO15901基準によると、平均細孔径は、-196℃(液体窒素温度)での窒素ガス吸着によって測定され得る。
【0094】
本発明の文脈で使用可能なナノ多孔質膜は、対称又は非対称であり得る。本明細書で使用される場合、本発明によるナノ多孔質膜を指す場合、「非対称」は、ナノ多孔質膜細孔径分布が膜厚にわたって均一ではないことを意味する。逆に、対称膜は、膜厚にわたって均一な細孔径分布を有する。典型的には、非対称膜において、特定の細孔直径を有する多孔質副層の上部の機能層として作用する、非常に薄い高密度表面層が存在する。非対称膜
は、例えば、0.1~1μm厚の表面薄層(選択的バリア)が、高度に多孔質の100~200μm厚の下部構造上にあるものからなる。多孔質副層の細孔径は、≦1nm程度から500nm程度までであってよく、細孔径範囲は、非対称膜が使用され得る用途の種類、すなわち、精密濾過(50~500nm)、限外濾過(1~50nm)、及びナノ濾過(≦1nm)を画定する。細孔径及びその分布は、膜断面の電子顕微鏡写真で観察された細孔寸法の数値分析によって決定され得る。前述の孔径の数値は、膜断面にわたる走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察された細孔径の分布の算術平均を表す。
【0095】
有利には、ナノ多孔質膜ナノチャネルの平均断面及びそれらの特定の規則的な貫通形態は、膜を通る溶液の良好な拡散を促進する。したがって、ナノチャネルの各々が、有利には、水分子及びイオンのサイズよりも大きい断面を有するため、これらの分子の両方の循環を潜在的に可能にするナノチャネルを介して、ナノ多孔質膜要素(32)は、半透膜要素(31)から明確に離れてそれ自体を設定する。
【0096】
したがって、一態様では、本発明による逆電気浸透濾過システムは、半透膜(31)と、表面電荷を有する荷電ナノ多孔質膜(32)とを組み合わせ、このとき、半透膜(31)は、好ましくは、荷電ナノ多孔質膜(32)と重ね合わされる。したがって、本発明を達成することにより、電解質溶液(11A)の溶媒の容器(10A)からの流れを電気誘導する機能において、荷電膜の性能に悪影響を及ぼし得る表面化学的性質に関して、技術的な欠陥が著しく克服される。例えば、GO及び2D材料の膜と酸化物タイプの膜(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン)との関連付けにより、特定の条件下で(ヒドロキシル縮合を介して)2つの表面間に化学結合が形成され得、複合膜要素の剥離をより困難にし、複合膜要素の安定性及び全体的性能を潜在的に損なう可能性があることが予想され得る。既存の技術的な欠陥とは異なり、本発明の発明者らは、安定性が高く、高性能の複合膜を実施することを減らし、半透膜(31)と、表面電荷を有する荷電ナノ多孔質膜(32)を関連付ける。
【0097】
1.3.複合膜濾過システムの例示的な特徴
例示的な実施形態では、本発明による逆電気浸透濾過システムは、特に有利に選択された、半透膜(31)、|ゼータ電位|が≧5mVである表面電荷を有する荷電ナノ多孔質膜(32)、並びに電極(20A)及び(20B)を組み合わせ得る。
【0098】
半透膜(31)は、ナノ多孔質炭素膜、又はラメラ材料の積層膜から選択され得る。ナノ多孔質炭素膜又はラメラ材料の積層膜は、前述の通りであり得る。ナノ多孔質炭素膜の細孔径は、0.7nm~1.5nmの範囲、好ましくは≦1.4nm、より好ましくは≦1.3nm、更により好ましくは≦1.1nm、なおより好ましくは≦1.0nmであってよい。例えば、半透膜は、多層MoS2膜、層六角NiB膜、又は多層GO又はrGO膜、好ましくは多層GO又はrGO膜、最も好ましくは多層GO膜であり得る。有利には、半透膜(31)は、積層されたグラフェンオキシドフレークで構成されるサイズ排除選択膜であり得る。
【0099】
|ゼータ電位|が≧5mVである表面電荷を有する荷電ナノ多孔質膜(32)は、酸化チタン、窒化ホウ素、SiO2、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、陽極酸化アルミニウム、好ましくは、酸化チタン、窒化ホウ素、SiO2、ポリカーボネート、及び陽極酸化アルミニウム、最も好ましくは、酸化チタン、ポリカーボネート、及び陽極酸化アルミニウムから作製され得る。
【0100】
半透膜(31)は、好ましくは、荷電ナノ多孔質膜(32)と重ね合わされる。半透膜は、表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)上に直接配置されてよく、又は、まず、別の多孔質支持層(33)上に配置されて(例えば、製造及び/又は取り扱いの容易さの
ため)、その後、前述の表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)上に配置され得る。
【0101】
第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、容量効果を有し得る任意の金属又は炭素電極であり得る。好適な金属電極としては、Zn、Fe、Pt、及びAu電極が挙げられる。好適な炭素電極としては、カーボンペースト電極、ガラス状炭素電極、グラファイト、又はグラファイト状炭素電極、又は塩電池に使用される任意の炭素電極が挙げられる。有利には、第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、白金電極であり得る。好ましくは、第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、炭素電極であり得る(その利点は、非常に低い電圧(1~2Vほど)下で本発明による濾過システムを動作可能であることである)。
【0102】
2.ハイブリッド膜
例示的な実施形態は、図2に示されている。
【0103】
別の変形例では、逆浸透膜要素(30)はハイブリッド膜要素であってよく、半透膜要素(31)及び表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)は、単一のハイブリッド膜(30B)を形成するための1つの同じ要素である。有利には、ハイブリッド膜(30B)は、濃縮/枯渇又は除去/濾別される標的溶質に適合した所定の細孔径及びゼータ電位を有し得る。有利には、単一のハイブリッド膜(30B)は、電解質溶液(11A)からの標的溶質の濾別に適合した平均細孔径、及び、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである、ハイブリッド膜の内部細孔壁表面上の表面電荷を有し得る。
【0104】
例えば、ハイブリッド膜の平均細孔径は、標的溶質(及び標的溶質よりも大きい粒径を有する任意の他の溶質)のハイブリッド膜(30B)の通過が妨げられ、一方、極性溶媒及び他のより小さいサイズの溶質にハイブリッド膜(30B)を通過させるように、十分に小さい。ハイブリッド膜(30B)の平均細孔径は、精密濾過(50~500nm)、限外濾過(1~50nm)、又はナノ濾過(≦1nm)の、意図される用途タイプに応じて適合される。有利には、ハイブリッド膜(30)の多孔性(すなわち、ISO15901基準によって測定される平均細孔径)は、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<100nm、最も好ましくは<50nmであり得る。好ましい変形例では、濾過システムは限外濾過を意図しており、ハイブリッド膜(30B)は、1~50nmの平均細孔径である多孔性を有し得る。
【0105】
ハイブリッド膜要素は、好ましくかつ有利な変形例などの、一般的にかつ上記任意の変形例で説明される好適な(正又は負の)表面電荷を有するナノ多孔質膜であってよく、直前の段落に記載されているように、標的溶質を電解質溶液(11A)から除去/濾別するように適合された平均細孔径を有する。ナノ多孔質膜に関する説明部分は、簡潔にするためにここでは再掲しないが、ハイブリッド膜要素に準用できることが理解されるであろう。
【0106】
有利には、ハイブリッド膜(30B)は、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVであり、正又は負の表面電荷を有する材料から本質的に形成されたナノ多孔質膜、例えば、TiO、窒化ホウ素、SiO、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、陽極酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、Ni-Fe層状複水酸化物、Nidobdc、Mgdobdc(dobdc=1,4-ジオキシド-2,5-ベンゼンジカルボキシレート)、セルロース又は高分子電解質層ポリマー膜、例えば、ポリカーボネート膜上のカチオン性ポリエチレンイミン及びアニオン性ポリ(アクリル酸)の連続的浸漬コーティング層によって得られるナノ多孔質膜、好ましくは、TiO、BN、SiO、ポリカーボネート、陽極アルミナ、ハイドロタルサイト、Ni
-Fe層状複水酸化物、Nidobdc、Mgdobdc、セルロース又は高分子電解質層ポリマー膜、最も好ましくは、TiO、BN、陽極アルミナ、SiO、又はポリカーボネートであってよい。
【0107】
有利には、ハイブリッド膜(30B)は、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVであり、正又は負の表面電荷を有する材料で、その内部細孔壁上をコーティングしたサイズ排除選択膜、例えば、TiO、窒化ホウ素、SiO、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、陽極酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、Ni-Fe層状複水酸化物、Nidobdc、Mgdobdc(dobdc=1,4-ジオキシド-2,5-ベンゼンジカルボキシレート)、セルロース又は高分子電解質層ポリマー膜、例えば、ポリカーボネート膜上のカチオン性ポリエチレンイミン及びアニオン性ポリ(アクリル酸)の連続的浸漬コーティング層によって得られるナノ多孔質膜、好ましくは、TiO、BN、SiO、ポリカーボネート、陽極アルミナ、ハイドロタルサイト、Ni-Fe層状複水酸化物、Nidobdc、Mgdobdc、セルロース又は高分子電解質層ポリマー膜、最も好ましくは、TIO、BN、陽極アルミナ、SiO、又はポリカーボネートであってよい。
【0108】
容器(10A)及び(10B)
本開示において、容器(10A)及び(10B)を分離する任意の逆浸透膜要素(30)が、それを通して溶質を透過させず、それを通して主に溶媒を透過させる限り、特に限定することなく使用できる。有利には、逆浸透膜要素(30)は、好ましくは98.0%以上の溶質除去、好ましくは≧98.5%、より好ましくは≧99.0%、更により好ましくは≧99.5%、最も好ましくは100% or約100%の溶質除去を達成するように適合され得る。
【0109】
本発明によるプロセスを実行するためには、逆浸透膜要素(30)によって分離された2つの区画を備える任意の分離装置/システムを使用することができる。分離する混合物を第1の区画(容器(10A))に入れ、抽出された有機化合物を第2の区画(容器(10B))に回収する。
【0110】
本開示において、逆電気浸透濾過/精製システムは、その効果を最大化するために、バッチ式又は連続式で実施され得る。例えば、本発明による逆電気浸透濾過/精製システムは、複数で構成され得る。言い換えれば、「容器(10A)-逆浸透膜要素(30)-容器(10B)」の単位が、複数の段階で構成され得る。
【0111】
1つの例示的な変形例では、逆電気浸透濾過/精製システムが、N個の容器(10)とN-1個の逆浸透膜要素(30)とを備え、Nが整数であるように、提供することができる。例えば、Nは、3~100の範囲、より具体的には3~50であってよい。この多容器装置において、容器及び逆浸透膜要素は、上記で定義されたようなものであり得る。したがって、アセンブリは、目的の溶質が濃縮されている電解質溶液と、より低濃度の電解質溶液を交互に含み、逆浸透膜要素(30)によって互いに分離されている、交互の容器(10)で形成され得る。
【0112】
極性溶媒
極性溶媒は、有利には、酸性イオンを生成することができる溶媒であり得る。例えば、極性溶媒は、水、メタノール若しくはエタノールなどのアルコール、水アルコール混合物、アンモニア、アセトン、又はアセトニトリルであり得る。
【0113】
電解質溶液(11A)及び(11B)並びに溶質
本発明の文脈において使用可能な電解質溶液は、本明細書で定義される極性溶媒中に、
少なくとも1つの目的の溶質/望ましくない溶質を含有する任意の電解質溶液であり得る。
【0114】
例えば、溶媒は、水、又は水溶液であり得る。
【0115】
好ましい変形例では、電解質溶液は、電解質を含む水溶液であり得る。電解質は、荷電イオンの形態で溶液中に溶解される限り、任意の化学種であり得る。好ましくは、これらのイオンは、NaCl、KCl、CaCl及びMgClなどの溶解塩に由来する。電解質溶液は、合成溶液、湖又は川由来の淡水、地下水、汽水、海水、工業生成水、石油生成水、又は生体液/流体などの天然溶液であってよい。
【0116】
本発明による電解質溶液として使用される溶質含有水溶液の例としては、海水、汽水、細胞代謝産物、反応生成物、生体流体などが挙げられ、細胞代謝産物は、動物細胞、植物細胞、又は微生物の培養物、それらの一次代謝産物、二次代謝産物、インビトロ分泌タンパク質、生体内変化産物などを含むことが意図される。
【0117】
反応溶液の例としては、化学反応生成物及び酵素反応生成物が挙げられる。
【0118】
微生物一次代謝産物の例としては、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、コハク酸など)、アルコール(例えば、エタノール、ブタノールなど)、ヘキサン、アミノ酸(例えば、リジン、トリプトファンなど)、ビタミン、多糖類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
微生物二次代謝産物の例としては、抗生物質(例えば、ペニシリンなど)、酵素阻害剤、生理学的活性物質(例えば、タキソールなど)などが挙げられ、微生物のインビトロ分泌タンパク質の例としては、アミラーゼ、セルラーゼなどの酵素、インスリン、インターフェロン、モノクローナル抗体などが挙げられる。更に、微生物の生体内変化産物は、微生物又は酵素を使用することによって生成される物質であり、それらの例としては、ステロイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
生体流体の例としては、血液、血清、血漿、尿、唾液、涙液、透析液、腸内容物、非経口栄養液、精漿、及び脳脊髄液が挙げられる。
【0121】
好ましくは、上記電解質溶液は、アルカリハライド又はアルカリ土類ハライドから選択される、好ましくは、NaCl、KCl、CaCl及びMgClから選択される溶質を含む水性溶液であってよく、より好ましくは、溶質はNaClである。
【0122】
溶質は、固体粒子、有機又は無機小分子、例えば、染料錯体(例えば、トリス(2,2’-ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)六水和物)、生体分子、例えば、ホルモン(例えば、テストステロン)、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素又は抗体、汚染物質(例えば、廃水、工業生成水、又は埋め立て地浸出水由来)、代謝廃棄物、又は塩/イオンから選択され得る。濃縮される目的の溶質が固体である場合、好ましくは、温度及びpHに応じて容易に結晶化され、高濃度でも高い粘性でない材料である。
【0123】
本開示において、溶質は塩(又は液体)であり得、溶媒は水であり得る。例えば、電解質溶液(11A)は、海水であり得、溶質はNaClであり、プロセスは、塩水脱塩である。したがって、本発明はまた、本明細書に記載の任意の変形例における、本発明による逆電気浸透濾過システムを含む塩水脱塩システムに関する。したがって、一態様では、本発明は、海水の脱塩プロセスに関し、このプロセスは、i)逆電気浸透濾過システムであ
って、
a)海水を含有する、第1の電極(20A)を備えた第1の容器(10A)であって、備えられている第1の電極(20A)は、第1の容器(10A)に含まれる海水と接触している、第1の容器と、
b)海水を含有する、第2の電極(20B)を備えた第2の容器(10B)であって、備えられている第2の電極(20B)は、第2の容器(10B)に含まれる海水と接触しており、第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、電気エネルギー源(40)に動作可能に連結されている、第2の容器と、
c)第1及び第2の容器(10A)及び(10B)を分離している逆浸透膜要素(30)であって、
(i)<1nmの平均細孔径を有する半透膜要素(31)、及び
(ii)電気運動分析器を使用して測定するとき、|ゼータ電位|が≧5mV、好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)を、組み合わせており、ナノ多孔質膜は、ISO15901基準によって測定するとき、<1μm、好ましくは<500nmである平均細孔径を有し、
半透膜要素(31)及び表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)は、2つの異なる要素であり、好ましくは互いに重ね合わされており、
半透膜要素(31)は、第1の容器(10A)に含まれる海水と接触しており、表面電荷を有するナノ多孔質膜要素(32)は、第2の容器(10B)に含まれる水と接触している、逆浸透膜要素と、を備える、システムを提供する工程であって、
上記逆浸透膜要素(30)は、(i)溶質濾過の機能、及び、(ii)水の流れを第1の容器(10A)から第2の容器(10B)へと逆浸透膜要素(30)を介して電気誘導する機能の両方を満たし、
逆浸透膜要素(30)は、Na+及びCl-の逆浸透膜要素(30)を介する拡散を選択的に阻止するように適合されている、工程と、ii)第1の電極(20A)と第2の電極(20B)との間に電場を印加して、水の逆浸透流を第1の容器(10A)から第2の容器(10B)へと第1及び第2の容器(10A)及び(10B)を分離している逆浸透膜要素(30)を介して誘導する、工程であって、
それにより、第1の容器(10A)から第2の容器(10B)に向かって水を流しながら、Na+及びCl-溶質を第1の容器(10A)内に保持することを可能にする、工程と、
iii)Na+及びCl-溶質を実質的に含まない第2の容器(10B)から、脱塩水を回収することであって、≧99%、好ましくは≧99.5%、より好ましくは≧99,8%、更により好ましくは≧99,9%、最も好ましくは100%のNa+及びCl-溶質は、第1の容器(10A)に含まれる海水中に保持される、工程と、を含む。このプロセスによって、第1の容器(10A)に含まれる水は、プロセスの開始時に第1の容器(11A)に入れられた海水よりも、NaClがより濃縮された状態になる。逆に、このプロセスによって、淡水(フランス語の「eau douce」)を第2の容器(11B)に回収することができる。半透膜要素(31)は、水の精製又は脱塩システム、逆浸透システムにおいて使用するための任意の半透膜、例えば薄膜複合膜(TFC又はTFM)であり得る。半透膜要素(31)は、任意のナノ濾過半透膜であり得る。例えば、本開示に記載されるナノ多孔質炭素膜の細孔径は、0.7nm~1.5nmの範囲、好ましくは≦1.4nm、より好ましくは≦1.3nm、更により好ましくは≦1.1nm、なおより好ましくは≦1.0nmであってよく、本発明による脱塩プロセスに適し得る。例えば、半透膜(31)は、積層されたグラフェンオキシド又は還元型グラフェンオキシドフレークで構成されるサイズ排除選択膜、好ましくは、積層されたグラフェンオキシドフレークで構成されるサイズ排除選択膜であり得る。塩分濃度は、海洋の場所により変化するが、最も主要な溶解成分の相対的な割合は、実質的に一定のままである。海水中には少量の他のイオン(例えば、K+、Mg2+、S042-)があるものの、ナトリウム(Na+)及び塩化物(Cl-)イオンは、海水中の全イオンの約91%を占める。有利には、本発
明による海水の脱塩プロセスは、≦5%の塩分濃度(≦50千分率)、好ましくは≦3%の塩分濃度(≦30ppt)、より好ましくは≦1%の塩分濃度≦<10ppt)、最も好ましくは≦0.5%の塩分濃度(≦5ppt)を有する、除去された流れを生じ得る。塩分濃度は、多くの場合、導電率(EC)測定に由来する。ECは、水試料中の2つの金属プレート又は電極の間に電流を流し、プレート間の電流が容易に流れる程度を測定することによって測定される。海水のイオン含有量を推定するためのEC測定の利用は、実用塩分尺度1978の策定につながった(PSS-78は、Joint Panel on
Oceanographic Tables and Standardsによって検討され、全ての海洋学団体によって、将来的な塩分データを報告する尺度として推奨されている)。海水の試料の実用塩分濃度は、温度15℃かつ圧力1標準大気圧における海水試料の導電率の、同じ温度かつ圧力の、質量32.4356gのKClを質量1kgの溶液中に含む塩化カリウム(KCl)溶液の導電率に対する比として定義される。1に等しい比は、実用塩分濃度35(標準海水)に対応する。定義は比率であるため、実用塩分濃度は無次元数として表される。
【0124】
本発明はまた、本明細書に記載の任意の変形例における、本発明による逆電気浸透濾過システムを含む精製システムに関する。例えば、濾過される水質汚染物質として、内分泌撹乱物質、ホルモン、殺虫剤、及び/又は染料を挙げることができる。
【0125】
より正確には、一態様では、本発明は、電気逆浸透法を実装する水及び不純物を含む液体を精製するための方法に関する。水を精製する、水精製とは、一般に、不純物を初期含有量で含有する水を処理することによって、この操作の終わりには、不純物の最終含有量が初期含有量よりも低くなることからなる、任意の操作を意味する。不純物とは、純水を構成する要素、すなわち、HO、OH、及びHとは異なる、任意の元素、分子、イオン、又は他のものを意味する。例えば、この精製方法は、例えば海水を脱塩するための方法、工業生成水を処理するための方法、又は埋め立て地浸出水を処理するための方法であり得る。
【0126】
したがって、一態様では、本特許出願は、膨大な塩水の供給源、特に様々な濃度の塩化ナトリウムを含む表面水から飲用水を回収するための方法を促進する。適用は、1%未満から20%の塩分濃度、例えば、次の塩分濃度の水、すなわち、0.5%~3.5%の塩分濃度の汽水、3.5~4.5%の塩分濃度の海水、及び5%~20%の塩分濃度の塩水まで及ぶ。
【0127】
本開示において、溶質含有電解質溶液は、生体流体、好ましくは透析流体であり得る。したがって、本発明はまた、本明細書に記載の任意の変形例における、本発明による逆電気浸透濾過システムを含む埋め込み可能な人工腎臓に関する。
【0128】
本発明の背景にある原理は、逆浸透膜要素(30)(単一のハイブリッド膜)、又は少なくともその一部(半透膜要素(31)及びナノ多孔質膜要素(32)を含む複合膜)は、十分な表面電荷(正又は負であり得る)を有し、電極(20A)と(20B)との間に好適な電場を印加すると、ナノ多孔質膜のナノチャネルを通る、それぞれアニオン又はカチオンの流れを誘導するのに十分に高い、膜/電解質溶液界面でゼータ電位を誘導することである。
【0129】
この現象は、コロイド粒子懸濁液に印加されるゼータ電位と同じ原理によって支配される。
【0130】
コロイド懸濁液の場合、多くの有機及び鉱物コロイド粒子が水性環境において負電荷を有するという事実は、それらを互いに反発させ、それらを特徴付ける分散の安定状態を維
持する。コロイド粒子の電気化学的分散は、長年にわたって研究されている。コロイドの安定性を説明するために、二層及びDLVO理論などのいくつかのモデルが開発されている。二層モデルは、懸濁された粒子が液相中に存在する場合、粒子の電荷によって引き付けられた溶液中のイオンからなる、各粒子の表面における内部の高密度層は、懸濁液の物理的及び化学的条件下で粒子自体の天然の電荷とは反対の極性電荷を示すことを予測している。これも溶液中のイオンからなる反対の極性の外層は、粒子の表面から所与の距離内で拡散される。一般に、当該技術分野でゼータ電位と称される2つの層間の正味電位は、粒子間の引力のファンデルワールス力を相殺する反発力を生成する。外層が十分に広い半径にわたって拡散され、それによってゼータ電位の影響が増加する場合、粒子は離れて保持され、安定した懸濁液中に留まる。一方、外層の拡散半径が、ファンデルワールスが打ち勝つ点まで縮小する場合、粒子は引き付けられて、液相から分離する傾向を有する凝集体を形成する。
【0131】
この原理を本発明に拡大して、ナノ多孔質膜の内部細孔壁の表面に存在する表面電荷によって引き付けられた電解質溶液中のイオンからなる、ナノ多孔質膜の内部細孔壁の表面における高密度層は、電解質溶液の物理的及び化学的条件下でナノ多孔質膜自体の天然電荷とは反対の極性電荷を示す。これも溶液中のイオンからなる反対の極性の外層は、ナノ多孔質膜の表面から所与の距離内で拡散される。2つの層間の正味電位はゼータ電位と称される。ゼータ電位は、緻密なシュテルン層と液体との間の電位差である。したがって、ナノ多孔質膜の内部細孔壁の表面上の電荷の分布を特徴付ける。
【0132】
したがって、ゼータ電位は、電解質溶液のイオン力、及び膜表面の周りの溶液中のイオン濃度に依存する。
【0133】
データ電位を増加させ、逆浸透膜要素のいずれかの側で生成された逆浸透流を改善するために、電解質溶液(11A)及び(11B)のpHは、表面電荷(32)(複合膜要素)又は(32A)(ハイブリッド膜要素)を有するナノ多孔質膜のナノチャネルの内面の等電点の関数として調整することができる。
【0134】
膜表面電荷に対するpHの影響は、異なるpHの電解質溶液でのナノ多孔質膜試料のゼータ電位を測定することによって研究され得る。ナノ多孔質膜のゼータ電位は、電解質溶液のpH値の増加を伴い、負の値に向かって進み得る。例えば、pH増加がゼータ電位を負の値に向かって進める1つの機構には、膜の内部細孔壁の表面における種の脱プロトン化(例えば、OHのOへの脱プロトン化、例えば、TIO又はSiO膜表面における)が挙げられる。
【0135】
例えば、TiO又はBNナノ多孔質膜などのセラミックナノ多孔質膜が使用される場合、ナノチャネルの内面上に負電荷を得るために、溶液のpHは、(pHiso+1)~14の値、より好ましくは(pHiso+2)~12の値に調整され得る。ナノチャネルの内面上に正電荷を得るために、溶液のpHは、0~(pHiso-1)の値、更に好ましくは1~(pHiso-2)の値に調整され得る。pH増加を伴う、ナノ多孔質膜の負のゼータ電位値の増加は、例えば、膜表面上の官能基の脱プロトン化によって起こり得る。
【0136】
本明細書で使用される場合、「pHiso」は、ナノチャネルの内面の構成材料の等電点のpHを指す。pHisoは、当業者に既知の方法、特に電位差酸塩基滴定法を使用して測定される。
【0137】
溶質を含有する電解質溶液が水性溶液である場合、この水性溶液は、ナノ多孔質膜の性質及びその上に天然に存在する表面電荷、並びに、水が液体状態に維持される温度、例え
ば、0~100℃、好ましくは15~50℃、より好ましくは20~40℃に応じて、2~13のpHを有し得る。温度は、上記温度よりも高いか、又は低くてもよい。例えば、他の溶質/溶媒の混合物は、上記温度から逸脱した温度を有し得る。
【0138】
電極(20A)及び(20B)
前述したように、本発明による精製/濾過システムの容器(10A)及び(10B)の各々は、電極が電解質溶液(それぞれ11A及び11B)と接触するように配置された電極(それぞれ20A及び20B)を備える。異なるタイプの電極が、本発明の文脈において使用され得る。
【0139】
カチオン又はアニオン(例えば、Na又はClイオン)の流れを回収可能な全てのタイプの電極、好ましくは、銀及び塩化銀(Ag/AgCl)、炭素及び白金(C/Pt-)、炭素(C-)、グラファイト、又は[Fe(CN)4-/[Fe(CN)-のタイプの鉄複合体から構成される電極が使用され得る。第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、容量効果を有し得る任意の金属又は炭素電極であり得る。好適な金属電極としては、Zn、Fe、Pt、及びAu電極が挙げられる。好適な炭素電極としては、カーボンペースト電極、ガラス状炭素電極、グラファイト、又はグラファイト状炭素電極、又は塩電池に使用される任意の炭素電極が挙げられる。有利には、第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、白金電極であり得る。有利には、第1及び第2の電極(20A)及び(20B)は、炭素電極であり得る。炭素電極を使用する利点は、本発明による濾過システムを非常に低い電圧(1~2Vほど)で動作可能にすることである。
【0140】
電極(20A)及び(20B)を、それぞれ電解質溶液(11A)及び(11B)中に部分的又は完全に浸漬することができる。電極(20A)及び/又は(20B)が、容器(10A)及び/又は(10B)の壁の少なくとも一部分である形態になり得るように提供することもできる。
これらの電極(20A)及び(20B)は両方とも、電源(40)に接続され、両電極間の電場の発生を可能にする。これらの電極を、単なるケーブルを介して電源(40)に接続することができる。
【0141】
電気エネルギー源要素(40)
本発明によるシステム及びプロセスにおいて、電気エネルギー源要素(40)は、当該技術分野で既知の任意の好適な電源であり得る。例えば、電力発生器、バッテリ、太陽光発電パネル、又は任意の他の形態の電源であり得る。本開示において、エネルギー源要素(40)の目的は、電極(20A)と(20B)との間に電場を発生させることである。その点において、エネルギー源要素(40)に接続された電極(20A)及び(20B)
は、膜要素により(例えば、拡散浸透効果により)生成されたイオン電流を回収するために使用されない。
【0142】
有利には、電気エネルギー源要素(40)は、1つ以上の電池を含み得る。したがって、本発明による逆電気浸透濾過システムは、携帯型/モバイルシステムであり得る。例えば、電気エネルギー源要素(40)は、光によって充電されるように構成され得、特に、電気エネルギー源要素は、太陽電池又は光ダイオードを備える。
【0143】
有利には、電気エネルギー源要素(40)は、逆浸透膜要素(30)を通して電解質溶液を圧送する逆電気浸透効果を使用することによって充電されるように構成され得る。
【0144】
その効果のため、電気エネルギー源要素(40)は、逆電気浸透膜要素(30)に動作可能に接続された水力タービン要素を備えることができる。
【0145】
流量制御(50)
本発明による複合又はハイブリッド膜要素を通る逆電気誘導流量は、異なるパラメータを使用して制御され得る。
【0146】
(i)ナノ多孔質膜の表面電荷:膜要素を横切る流量は、膜の表面電荷がより高いと、増加し得る。表面電荷は、材料の選択、膜表面電荷を改質するために適用され得る任意の化学修飾、表面電荷を有する膜表面と接触している電解質溶液のpHによって調製され得る。有利には、|ゼータ電位|が≧5mV、より好ましくは≧20mV、最も好ましくは≧50mVである最低表面電荷が好ましい。膜表面電荷は、前述のように、膜を構成する材料の選択、及び/又は膜と接触する電解質溶液のイオン力/濃度に基づいて調整され得る。
(ii)細孔径:半透膜に関して(例えば、複合膜が使用される場合)、細孔径は、濾過/分離される溶質のサイズ及び/又は化学特性に必然的に依存する。
ナノ多孔質膜要素(システム内の「ポンプ機能」を満たす)に関して、ナノ多孔質膜要素がサイズ除外型半透膜の役割も果たす場合を除いて、細孔径に関する特定の制約はない(例えば、本明細書に記載のハイブリッド膜要素の場合、ナノ多孔質膜の平均細孔径は、分離/濾過される溶質のサイズに適合されるべきである)。言い換えれば、電気浸透は、ナノ多孔質膜要素の細孔径に全く又はほとんど依存しない。ナノ多孔質膜の細孔径は、単に、膜を通る極性溶媒の電気浸透流を誘導するのに十分である必要がある。これは、複合膜が使用される変形例、更にハイブリッド膜が使用される変形例(すなわち、図2のような二重半透性/ナノ多孔質膜要素が使用される場合)に当てはまる。有利には、ナノ多孔質膜要素の平均細孔径(システム中の極性溶媒の流れを電気誘導する機能を満たす)は、<500nm、好ましくは<300nm、より好ましくは<100nm、最も好ましくは<50nmであり得る。好ましい変形例では、濾過システムは限外濾過を目的としており、ナノ多孔質膜要素の平均細孔径は、1~50nmであり得る。
(iii)細孔の形状:一般に、半透膜は、十分に定義された細孔形状を有していなくてもよい(例えば、「スパッゲッティ」様であり得る)。ナノ多孔質膜要素に関して、細孔幾何学に関する特定の制約はない:システムは、対称的細孔形状を有する材料(円筒形孔を特徴とする陽極酸化アルミニウムなど)から高度に蛇行した多孔性を有する材料(ポリカーボネートなど)にわたる、任意の細孔形状(ただし、本明細書で更に詳述されるように、ナノ多孔質膜材料は、好適な表面電荷を有する)で機能する。例えば、ナノ管状形態の多孔性、すなわち円形断面の円筒形孔、円錐状非対称細孔形状、ハニカム状細孔形状、砂時計状多孔性などが使用され得る。ナノ多孔質膜を横切る電気浸透流は、膜の細孔形状を調節することによって最適化され得る。これは、当該技術分野で周知の方法を使用して、所与のナノ多孔質膜の細孔形状を変更することによって経験的に達成され得る。
一般に、膜細孔形状が好ましくは対称であり、ほとんど又は全く蛇行していない場合、流量は最適化され得る。したがって、ナノ管状形態、すなわち円形断面は、例えば円錐状非対称細孔形状とは対照的に、膜を横切る流量を増加させる効果を有する。
(iv)電場強度:本発明によるシステムにおける所与のナノ多孔質膜(32)、及び電解質溶液に曝露される膜表面積について、流量は、電極間に印加される電流(つまり、電場)が増加するにつれて増加する(例えば、図4B及び12参照)。印加電流の選択は、濾過用途(精密濾過(50~500nm)、限外濾過(1~50nm)、又はナノ濾過(≦1nm))に部分的に依存する。強度及び電場は、流れを最大化するように選択される。それはまた、電気浸透流が誘導され得る細孔の数、つまり、電解質溶液と接触しているナノ多孔質膜の表面積及びナノ多孔質膜の表面細孔密度にも依存する。一般に、電解質溶液中のpH濃度などの所与の条件について、流量対強度(又は電流)曲線をプロットして、電場強度の最適範囲を決定する。限外濾過目的において、印加される電流は、好ましくは、膜のサイズに対して、0.5mA~20mA、例えば、0.5mA~15mA、0.5mA~10mA、好ましくは0.5mA~5mA、より好ましくは0.5mA~2mAの範囲である。電場強度は、使用される電極及び/又は膜に応じて好ましくは適合され
る:例えば、電極及び/又は膜を損傷する可能性がある二次的還元/酸化反応がないことを注意すべきである。例えば、白金電極が使用される場合、印加され得る電圧に限界はない(電極は、任意の電圧に耐えることができる):むしろ、電圧限界は、溶媒の電気分解が開始するときの電圧閾値になる(例えば、水が溶媒として使用される場合、印加電圧は、水の電気分解を回避するために5Vを超えてはならない)。
逆に、Ag/AgCl電極が使用される場合、印加電圧は、電極レベル(この場合は、印加される電圧を制限する電極の性質)における二次的還元/酸化反応を回避するために、1Vを超えてはならない。
(V)電解質溶液のイオン力/濃度:流量は、解質溶液中の塩分濃度に反比例する(例えば、図4B及び図12参照)。
電解質溶液中の塩分濃度の選択は、達成される流量に依存する。限外濾過目的において、電解質溶液中の塩濃度は、好ましくは、0.1mM~100mM、好ましくは0.1mM~50mM、より好ましくは0.1mM~10mM、最も好ましくは1mM~10mMの範囲である。
【0147】
要約すると、我々は、顕著な表面電荷を有し、ナノメートルの平均細孔径(<500nm)を有する複合膜を使用して、電場の印加に基づく濾過方法を開発した。上記膜が、水(又は他の極性溶媒)及び可動電解質(例えば、塩)を含有する2つのリザーバ/容器を分離するとき、セルの2つのリザーバ/容器間に電場の適用することにより、電気浸透流(通常の浸透流の反対方向の、一方のセルから他方への水/溶媒の移動)を生成する。本明細書では、濾過/精製用途のため、表面電荷を有するナノ多孔質膜と選択膜の予想外の組み合わせによって、この逆浸透流を使用可能であることが実証されている。したがって、電解質で荷電された水は、非荷電分子(ホルモン、染料、薬物など)の分離ベクターとして使用することができる。セルの2つのリザーバ/容器間に電解質濃度の差を有する必要はなく、流れを得るために圧力差を加える必要もない。この流れは、膜の表面電荷、細孔の直径及びそれらの形状(蛇行性、非対称性など)、及び電場などの異なるパラメータによって制御することができる。
【0148】
前述のように、飲用水資源の不足は、主要な国際的な懸念事項である。一方、特定の産業、特に製薬及び化学産業の廃棄物は、処理場において大きな問題をもたらす。一方、一部の乾燥地域の国は、飲用水を得るために逆浸透脱塩プロセスを大いに利用している。しかしながら、これらのプロセスのエネルギーコストは、水の価格や設備投資をも大幅に増加させる。
【0149】
電場濾過は、従来の水処理プロセスにおいて高圧の適用を可能にする。例えば、脱塩では、浸透圧を超える圧力(>30バール)を適用する必要がある。これらのプロセスの実装は高価で複雑である。電場の適用は、しばしば除去が困難であるより大きな分子(ホルモン、薬物など)においても、水処理コストを低減する。2Dナノ材料(例えば、グラフェンオキシド又は窒化ホウ素)の使用と、この濾過法を組み合わせると、より薄い膜での実施も可能になり、したがって、同一の選択性に対する透過性が向上する。
【0150】
本発明は、圧力差による機械力に基づく標準的な方法(典型的には逆浸透タイプ)とは反対に、分離及び濾過を誘導するための電場の使用の実施を低減する。したがって、本発明は、濃度差(直接浸透など)又は圧力差(逆浸透)ではなく、電場の印加に基づく濾過方法を提供する。これは、大きな経済的利点、つまり、より安価な設備、圧力よりも電力印加の方がより安価であり、機械的ストレス(本明細書には当てはまらないが、通常は膜に対して50バールもの圧力を用いる)を回避するプロセスを提供する。これはまた、精製プラントにおいて除去される複雑な分子の濾過のための上流での解決策を提供することができるため、顕著な生態学的利点も有する。例えば、本発明による電場濾過システムは、廃水の前処理のため、製薬又は繊維業の工場に設置することができる。
【0151】
したがって、本発明は、既存のプロセスの欠点を克服する、濾過/精製プロセス及び水処理プロセスの非常に価値のある代替物を提供する。
【0152】
等価物
以下の代表的な実施例は、添付の図面と共に、本発明に説明に役立てることが意図されており、本発明の範囲を限定することを意図するものでも、そのような構築を必要とするものでもない。実際、本明細書に示され説明されるものに加えて、本発明の様々な修正及びその多くの更なる実施形態は、本明細書において引用される科学文献及び特許文献に従い、それらを参照した例を含む、本明細書の完全な内容から当業者に明らかになるであろう。
【0153】
引用された参考文献の内容は、当該技術分野の例示に役立てるため、参照により本明細書に組み込まれることが更に理解されるべきである。
【0154】
以下の実施例は、様々な実施形態及びその均等物における本発明の実施に適合され得る重要な追加の情報、例示、及びガイダンスを含む。
【実施例
【0155】
本発明によるプロセス及びシステム並びに実施に対するそれらの簡略化は、プロセスの一部の実行方法を示す実施例によって更に理解され得る。しかしながら、これらの実施例は、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことが理解されよう。現在既知であるか又は更に開発される本発明の変形例は、本明細書に記載され、以下に特許請求されるように、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0156】
略語
GO:グラフェンオキシド
PC:ポリカーボネート
PMMA:メチルポリメタクリレート
【0157】
材料及び方法
0,4重量%の濃度の市販のグラフェンオキシド水分散液を、Graphenea SAから購入した。ポリカーボネートトラックエッチド膜は、Sterlitech Corporationから供給された。塩化カリウム(>99%)、トリス(2,2’-ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)六水和物(99.95%)及びテストステロン(>99.9%)は、Sigma-Aldrichから購入した。全ての実験は、室温(25±3℃)かつ中性pHで実施した。
【0158】
実施例1-複合膜の調製及び特性評価
GO/PC膜を真空濾過によって調製した。典型的な調製において、グラフェンオキシド(GO)の希釈分散液は、Graphenea SAによって提供される市販の分散液を、まず低速(2000rpm、ALLEGRA 64-R)で遠心分離することによって調製される。この沈殿した固体を、分散液の密度が、1.003mg L-1に調整されるまで、典型的には、4サイクル廃棄した。次いで、1.5mLのこの懸濁液を、総量15mLまでMiliQ(登録商標)水(advantage A10システム(Millipore)で得た)で希釈した。この希釈されたGO分散液を、ブフナー漏斗上に配置された、24±1μmの厚さと100nmのトラックエッチド孔により与えられた4.7%の多孔性を呈する25mmのポリカーボネート(PC)基材ディスク(Nuclepore Track-Etch Membrane、25mm、0.1μm)の上部に滴下して添加し、一端を封止し、他方の端部を、真空ポンプに接続した。真空濾過プロセス
が終了したとき、典型的には、16時間未満、複合GO/PC膜ディスクを2つの断片に分割した。1つの画分を精製装置に差し込み、他方は特性評価のために保管した。
【0159】
PC膜の表面電荷を、コンダクタンス式[1]を用いて測定し、約0.2mC/mであると判定された。
【0160】
GO膜の細孔径は、XRDを用いて測定し、平均0.8ナノメートル(積層されたGOフレーク間の平均層間距離)であると判定された。XRD図は、層間距離の広い分布を明らかにした(0.7~1.4nm)。
【0161】
材料の特性評価
GO/PC膜の表面形態は、透過モードの光学顕微鏡、及び、Thermo-Fischer(商標)Quattro S装置の電場放出走査電子顕微鏡(FE-SEM)によって観察した(図4C)。GO層の断面は、試料ホルダーを90°傾けた後に観察した。膜のX線回折図は、粉末XRD回折計(Bruker(登録商標))を用いて屈折モードで収集した(図4D)。77Kにおける窒素吸脱着等温線は、TRIFLEX micrometries(登録商標)容積測定装置で収集した。GO/PC膜のGO層間の平均間隙は、記録した回折図の001ピークにブラッグの法則を適用することによって決定し、一方、膜の細孔径分布及びその比表面積は、典型的な窒素吸着等温線に、それぞれDFTモデル及びBET式を適用することによって決定した。
【0162】
実施例2-染料錯体の濾過
本発明による電気浸透精製システムの評価は、実施例1によって調製された複合GO/PC膜が、各6mL容の2つのリザーバを分離しているカスタム電気運動装置を用いて実施した(図1の装置)。流量判定中、各リザーバ(10A)及び(10B)に、水の溶液と同濃度の塩(KCl)を満たした。除去率の実験では、1~200μMのトリス(2,2’-ビピリジル)ジクロロルテニウム(II)六水和物(99.95%)(Ru-bypi)を、試験汚染物質としてリザーバ(10A)中に添加した。
【0163】
1本のPt電極(Sigma-Aldrich)を各リザーバ(10A)及び(10B)に配置し、ケースレー2410ソースメーターに結線して、-1~1mAの一定電圧を確実にした。
【0164】
2つのリザーバ間の間隔には、中央に直径0.5cmの円形の穴を備えたPMMAディスクを取り付けた。その旨において、接着剤(Staycast 1266、Aldrich)をGO/PC複合膜の周りに広げ、PMMAディスクの穴に面する中央部を空けておいた。接着剤の硬化後(典型的には、24時間)、穴を覆うGO/PC複合膜を有するPMMAディスクをリザーバ間に配置し、各Oリング上に置き、次いで圧縮して機械的に密封した。
【0165】
電気回路を閉じた後、リザーバ(10A)からリザーバ(10B)への流量を、リザーバの出口パイプをミリメートルの較正されたキャピラリーからなる流量計に連結することによって測定し、簡潔に述べると、各リザーバを、流量計(量が分かるように、横に定規を備える既知の直径のガラスキャピラリー)に独立して接続した。Ru-bypiの定量的測定は、nanodrop(Thermo Fisher Scientific)のUV-Visによって行った。装置の外部較正曲線及び除去測定は、0.5μM~100μMのRu(bypi)溶液を調製し、その283nmでの吸収能を決定することによって実施した。
【0166】
実施例3-ホルモンの濾過
実施例2は、Ru(bypi)染料の代わりに10mg mL-1テストステロンを汚染物質として使用して繰り返した。
【0167】
テストステロンの定量的測定は、nanodrop(Thermo Fisher Scientific)のUV-Visによって行った。装置の外部較正曲線及び除去測定は、0.9μM~9μMのテストステロン溶液を調製し、その283nmでの吸収能を決定することによって実施した(図5A参照)。
【0168】
結果及び考察
上記の実施例を通じて、限外濾過プロセス及びシステムが、好適な表面電荷を示すポリカーボネートナノ多孔質膜と組み合わせたグラフェンオキシド(半透膜)から構成される薄い複合半透膜(~8~9μm)によって達成されており、ここでは、流れが、低エネルギー電力を印加することによって得られる。実施例は、電圧降下が膜の面間に印加され得る、本発明による複合膜によって分離された2つのリザーバ(10A)及び(10B)からなる実験装置を例示している。システムは、最初にプローブ分子を用いて操作条件を最適化し、最終的には飲用水を汚染することが多い物質、テストステロンホルモンを用いて、流動及び除去率について試験した。
【0169】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、電圧降下において、PC材料の荷電表面と密接に接触して形成されたデバイ層により、PC膜のナノ細孔内で水の電気浸透流が生成されることが提唱されている。表面電荷[2]を呈するナノ多孔質材料で作製された膜の全体的な非対称性により、水流対電圧降下の非対称応答がもたらされる。水の流量は、次式を取る。
Q=Qosm+Qs(exp(V/V0)-1) (式2)
式中、Qosm=K_hydrokT Dc2は、流量に対する浸透圧寄与であり、第2項は、非対称膜中の整流された電気浸透流に由来する。Qは、流動の飽和値であり、膜細孔の特性に依存する。
【0170】
GO膜の半透性により、イオンを運ぶことができないため、水のみがGO/PC膜を通過することができる。一方、層毎の凝集性が高いGO膜は、精製プロセス中に高い選択性を提供する。
【0171】
まず、電圧降下(AV)における非対称膜を通る水流を計算した(図7)。興味深いことに、ΔV>0において、流れは電圧降下と共に指数関数的に増加し、流れの浸透圧寄与を克服する。これは、浸透流量が閾値電圧を超えて相殺され得ることを示す。この状況では、流れは、膜の正極から負極まで生成され得る。
【0172】
この段階では、上記が、式2中の特性電圧がΔV0によって固定されることを示すことは特に注目に値する。
【0173】
次いで、流入してくる環境及び人の健康に害を及ぼす汚染物質から、水精製の現象を利用するという前提の下に動作可能な、簡易な測定可能装置を作製した。この装置は、実施例1で調製された半透GO/PC膜によって分離される2つのリザーバ(10A)及び(10B)からなり、各々水及び塩(KCl)の溶液で更に満たされた後、2つの白金電極によって電源に接続した(図4A)。ポリカーボネートの上部の透過選択性グラフェンオキシド層は、圧力差及び水透過によって、GOフレークを層毎に積み重ねることによって形成される。調製されたGO/PC膜は、長距離において亀裂が検出されないため(図8)精製に好適であり、圧力差及び水透過によって、GOフレークを層毎に積み重ねることによって形成した。膜の表面のFE-SEM像(図4C)により、事前に観察された凝集性が確認され、一方、膜の断面は、厚さが約9μmである膜の緻密な中間構造を明らかに
する(図4C)。
【0174】
この膜は、PXRD図から導かれるとき、0.8ナノメートルの平均層間距離を示す(図4D)し、水の存在下で調製されたこれまで報告されたGO膜とよく一致する。回折図に記録されたブロードなピークは、層間距離の広い分布(0.7~1.4nm)を示している。[2] PC基材の存在もまた、回折図において確認され、17度を中心とする第2の回折ピークに対応する。[3] PC基材の非存在下において、複合膜のGO層の平均細孔径の更なる解析を行ったところ、18mg-の見かけの表面積が明らかとなり(図9)、同様の方法に従って調製されたこれまで報告されたGO膜と一致している[4]。また、GO層の細孔径分布も窒素吸着等温線の収集データから求めたところ、1.8nm~6nmの広い分布を示し(図10)、これに加え、等温線が約0.6P/P0でプラトーに達する傾向(図11)が、膜中に大きな孔がないことを示す。
【0175】
GOの膜を一致させた後、GO/PC膜をシステムのリザーバ間に配置した。リザーバ(10A)の内容物は複合GO/PC膜のGO側と接触し、一方、リザーバ(10B)の内容物は複合GO/PC膜のPC側と接触した。電気運動セルを機械的に閉じ、この現象及び意図された用途の実現可能性を示すためにいくつかの実験を行った。
【0176】
各リザーバを、6mLの水で独立して満たして、まずシステム内に漏れがないこと、その後、電気的駆動力が印加されない場合の流動の静止性を確認した(図12)。次いで、1Aに固定することによって、電圧を電極に印加した。期待したように、2時間後、駆動力が、表面に近いGO表面電荷を相殺するイオンの動きによってのみ与えられるため、システムにおける変化は検出されなかった。[5]
【0177】
イオンの不均衡を生じさせることができる第2の薬剤が含まれると(100μMのKOl)、駆動力の印加後に水の流動が検出された(図5A)。この現象の境界条件は、我々の理論的モデルによって予測される、ΔV=0と推定した。次いで、異なる塩濃度、及び、リザーバ分離膜としてGO/PC膜(図5B)、又はむき出しのPC基材(図13)を使用することによって印加される強度において、得られる流動を推定した。図5Bは、塩濃度が減少するにつれて、システム全体の流れが増加するという明確な傾向を明らかにしている。これは、100mM~1mMの塩の濃度範囲、及び、1mA~0.5mAの強度について、むき出しのPC及びGO/PCの両方において観察可能である。したがって、動作可能な条件である1mMのKClを固定した。膜全体に流動を駆動するために追加の圧力が必要とされないため、必要な開始材料の量が少ないというコストの観点から薄膜の使用が好ましい。
【0178】
-1~1Aの範囲の可変強度を電極に印加した(図5C)。水の流動は、流動なしから1.3mLs-1まで、印加される強度により閾値にわたって指数相関的に生じ、この値を下回ると流動がなく、このこともモデル予測によく一致している。興味深いことに、GO表面の負の性質もまた、ΔV<0のときにこの流動が見られないことによって対抗される。これらの条件下では、表面に近い相間が形成されず、結果として、流動は促進されない。同じ膜を保持し、供給溶液を変更することによって、又は新しいものに切り替えることによって測定を行った場合、流動の変化が得られなかったことから、プロセスに対する膜の復元力が実証されたことにも留意されたい。現象の基礎を確立した後、プロセス中の相間の電圧降下を収益化した(図5D)。得られた値は、圧力駆動プロセスに匹敵する低コストエネルギーのプロセスを示唆する。更に最適化することなく、ラボスケールの値が外挿され、線形相関を考慮する場合、1mの膜窓において、膜全体の流動は238L/時間を超えると推定される。
【0179】
図5では、電気力下の複合膜の電気運動応答が示される。GO/PC膜は、水及び10
0mMのKCl溶液で満たされた、2つの肉眼で見えるリザーバ間に配置されている。最初に、一定の電圧降下が電極に印加され、誘導されたイオン電流が記録される。図5Aによって証明されるように、システムは、平衡値で安定化するために比較的長い時間を必要とした。約2hの4Vの一定電位の後、~2mAの一定の電流が測定される。このような一定電流の形態が達成される場合にのみ、溶液で満たされたGOの全ての面において、膜が平衡状態にあるとみなす。次いで、塩濃度を、淡水における現実的な条件である、Cs=1mMに低下させる。図5Eでは、本発明で記録された電圧-電流を示し、膜応答を完全に特徴付ける。このプロットは、等しい強度を有する負の電流よりも、正の電流の方が大きな電圧をもたらす、明確な非対称性応答を示す。このような非対称性応答は、幾何学的又は電荷の非対称性を示すナノ流体系に一般的である。研究中のシステムでは、中性GOと負に荷電されたポリカーボネートとの間の電荷の対比によって、非対称性が生じると推測される。最も重要なことに、測定によって、流体-固体界面において表面電荷の存在が確認され、そのような表面伝導形態は、電気浸透流に不可欠である。図5Fでは、最後に、電気力によって誘導された膜を通る水流について実験する。Cs1~100mMの異なる塩濃度について、電流強度の関数としての水流が示され、誘導された流れは、電流に対して直線性を有し、塩濃度に強く依存し、低濃度では、より大きい電気浸透流をもたらす。電気浸透速度は、次式で定量化することができる。
【0180】
【数2】

式中、Aは、有効表面であり、ζは、界面電荷に比例するいわゆるゼータ電位であり、ηは、流体粘度であり、RMは、膜のイオン抵抗性であり、Iは印加電流であり、Lは膜厚さである。直線性は、印加された電気力によって回復し、更に、界面において一定の表面電荷を有する材料の場合、ζ電位は、濃度と共に減少し、実験結果と非常によく一致することが示されている。図5Fの挿入図において、複合GO/PC膜とむき出しのPCにおいて誘導された電気浸透流を比較する。2つのシステムの応答は非常に類似しており、プロセスの核心部が、荷電ポリカーボネート材料にあることを示している。ポリカーボネートが、約0.2mC/mのわずかな表面電荷を示すにも関わらず、単に受動的な基材として機能せず、実際には、プロセスにおける膜の活性相である。表面からすぐのナノメートルにおいて発生する電気浸透は、その後、膜を通る目に見える水の流れを生成することができる。図5Fより、この流れをФ~250L h-1-2と計算できる。圧力で駆動される流れと電気浸透流を比較すると特に興味深く、膜から1cmに電極を位置付けた本明細書で実験した膜において、圧力1バールによって誘導される流動が、一定の40Vの電位によって誘導される流れに対応することが得られた。この値は、膜の活性部分の表面電荷を増加させること、及び/又は電極と膜との間の間隔を短縮することのいずれかによって、大いに低減することができる。
【0181】
電気浸透条件下での精製のための装置の例示
上記の条件下では、電圧降下が印加されると水分子のみが流れ、一方、GO膜の層間の積み重なりは、膜平均細孔径の流体力学的直径を超える分子のモレキュラーシーブとして働き、膜の選択性を提供する。PC膜が水の流れのエンジンとして働く場合、薄層GOは選択的フィルタの役割を果たす。完全な2Dフレークの積み重なりを有するGOは、水の存在下で更に低減し得る、層間距離が-0.8nmである非常に整理された構造を提示する。流体中の、この臨界距離よりも大きい任意の粒子は、複合膜を通過することができない。
【0182】
除去実験では、0.6nmの予想される流体力学的半径を有する小分子(Ru-bip
y)が選択された。[6] 分子の除去率は、2時間の電気浸透プロセス後に決定した(式3、図14)。
除去=1-(Cperm/Cfeed) (式3)
式中、Cpermは、透過物中の溶質の濃度を表し、Cfeedは、供給溶液中の溶質の濃度を表す(システムを使用して濾過される電解質溶液)。
【0183】
第1のアッセイにおいて、9μMの供給量(Ru-bipy濃度)及び1mAの一定強度において、Ru-bipy濾過を行った。溶出相は、only presents 0.9μMの濃度のRu(bypi)のみを示し、90%の除去率に対応している(図6A)。この実験は、逆電気浸透条件下で小分子を含有する水を精製するための本発明によるシステムの使用を既に実証している。
【0184】
完全除去アッセイ
印加される強度は0.5mAまで低下し、それにより、印加される駆動力を低下させ、結果として、分子がGO膜ナノ欠陥を通過する可能性を低下させた。これらの条件下では、150μMまでの濃度のRu-bipyによって完全除去が得られ、このとき、それぞれ除去率は0.99まで、最終的には、200μMのRu-bipy溶液が共有された際に0.84まで低下した(図6B)。この完全除去は、低エネルギーコスト条件下で得ることができる。
【0185】
ホルモン除去
低エネルギーコスト条件下(0.32kWh/m)で完全除去を得られ得ることをプローブ分子で実証した後、リザーバにホルモンであるテストステロン水溶液(10mg/mL)を供給したが、このホルモンの選択は、水中に一般的に存在する値を超えることから、特に興味深い。一部の水源に一般的に存在するこの分子は、その流体力学的半径の小ささによって、検出や濾液が困難である。複合GO/PC膜のGO側に接触して電解質溶液を含有するリザーバ(10A)に、ホルモンであるテストステロンの水溶液(10mg
mL)を満たしたが、この濃度は、実際の水試料において予想される値の100倍以上を意味する。[7]一部の水源に一般的に存在するこの分子は、割合が低いため、検出及び濾過が困難である。最適化条件を適用し(実施例で使用された膜について、印加される強度は0.5mAまで低下し、~78mmの表面積は、2つのリザーバ(10A)と(10B)との間の間隙の表面に対応し、ディスクは0.5cmの直径である)、供給溶液中に存在するホルモンのうち約75%の保持(図6C)が確認され、水精製に対するこの新たな方法の大きな可能性を示している。
【0186】
要約すると、供給リザーバ(10A)、半透グラフェンオキシド系膜、溶出リザーバ(10B)、及び膜の2つの面の間に電圧降下を誘導する2つの電極から構成される、逆電気-浸透による水精製容実験装置が開発されている。この実験装置は、4.7mL/hの水流動を達成することができる。GO系膜によって実施される電圧誘導性逆電気浸透精製は、閾値電圧全体で液体の流れをもたらし、それは、40Vにおける1バール当たりの流動に相当し、0.5mAで操作する、つまり、0.32kWh/mのエネルギー消費という意味合いでの、0.6nmの小分子の完全除去に最適化されている。その小さなサイズと、この現象が直線的に外挿されると予想されることを考慮すると、より大きな膜部により、従来の濾過方法に匹敵する流動まで上昇されるが、本発明による方法の高い選択性の利点を伴っていると考えられる。GO系膜で行われる逆電気浸透精製は、エネルギー消費及び除去率に関して最適化されており、0.5mAが印加される場合、流れをもたらすための閾値電圧V>0、及び、流体力学的半径が0.6nmである試験分子(Ru-bipy)の完全除去が推定されている。
【0187】
最後に、飲用水において現在検出される一般的な濃度のホルモン(テストステロン)の
濾過用途についても装置を試験し、検出された流れを顕著に損なうことなく、高い保持率(75%)が推定されている。
【0188】
参考文献のリスト
1.Bocquet,L.& Charlaix,E.Nanofluidics,from bulk to interfaces.Chem.Soc.Rev.,2010,39,1073-1095。
2.Zhang et al.JACS,2015,137,46,14765-14772。
3.Vijayalakkshmi et at.International Journal of Polymer Science,2011,1687。
4.Wei etal.International journal of hydrogen energy,2016,41,11692-11699
5.Kirby,2009,Cambridge University press.Micro-nanoscale fluid mechanics:Transport in microfluidic devices。
6.Joshi et al.Science,2014,343,752-754。
7.US geological survey (USGS),2008,www.epa.gov
8.A.Siria,P.Poncharal,A.-L.Biance,R.Fulcrand,X.Blase,S.Purcell,L.Bocquet,”Giant
osmotic energy conversion measured in a
single transmembrane boron- nitride nanotube” Nature 494455-458 (2013)
図1
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【国際調査報告】